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1976-05-13 第77回国会 衆議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十三日(木曜日)    午前十時開議  出席委員    委員長 熊谷 義雄君    理事 住  栄作君 理事 竹内 黎一君    理事 戸井田三郎君 理事 葉梨 信行君    理事 山下 徳夫君 理事 技村 要作君    理事 村山 富市君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    大野  明君       大橋 武夫君    加藤 紘一君       瓦   力君    田川 誠一君       高橋 千寿君    野原 正勝君       羽生田 進君    橋本龍太郎君       粟山 ひで君    山口 敏夫君       金子 みつ君    島本 虎三君       田口 一男君    田邊  誠君       多賀谷真稔君    森井 忠良君       田中美智子君    寺前  巖君       大橋 敏雄君    岡本 富夫君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 田中 正巳君  出席政府委員         厚生大臣官房審         議官      竹内 嘉巳君         厚生省公衆衛生         局長      佐分利輝彦君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 山下 眞臣君         厚生省医務局長 石丸 隆治君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 曾根田郁夫君         社会保険庁年金         保険部長    河野 共之君  委員外出席者         厚生省年金局企         画課長     持永 和見君         厚生省年金局数         理課長     竹内 邦夫君         厚生省援護局調         査課長     石田 武雄君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     多賀谷真稔君 同日  辞任         補欠選任   多賀谷真稔君     稲葉 誠一君     ————————————— 五月十二日  廃棄物処理及び清掃に関する法律及び廃棄物  処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第六三号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第二七号)  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第二四号)  予防接種法及び結核予防法の一部を改正する法  律案内閣提出第六七号)  廃棄物処理及び清掃に関する法律及び廃棄物  処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第六三号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 熊谷義雄

    熊谷委員長 これより会議を開きます。  厚生年金保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず、厚生大臣がさきに各地において発表されました二万円の基礎年金構想について承りたいと思います。
  4. 田中正巳

    田中国務大臣 二万円の基礎年金といいますか、別に私、二万円というものをグルントに置いての基礎年金ではございませんで、御承知のとおり、わが国の年金は非常に多岐にわたって分立をいたしております。その支給要件給付額費用負担、実はそれぞれ区々まちまちでございまして、したがって、いろいろな点で今日社会問題化しているわけでございます。また実際面として、今回通算制度を拡充しようと思いましても、非常にたくさんの問題を解決しなければならぬ。実際は解決し切れないで、これは先生承知だと思うのですが、通算制度を一応起こして拡充したというようなことでございます。  そこで、私どもとしては、各種年金に分立しているものを、何とか共通点統合を心がけなければならぬと思っておりますが、しかし、すべてをるつぼに入れて全部統合するということは、実際問題としてめんどうであろうというふうに思われましたものですから、したがって、基底部分について、これが一体どの程度になるかわかりませんし、この点は今後の議論によるところですが、基底部分共通にいたしまして、その上にそれぞれ本人所得あるいは拠出に応じた年金を積み重ねていこうという二階建ての年金というものを考えているわけでございます。そして、この基底部分については、賦課方式というものを導入できないだろうかと考えまして、それを導入したらどうだろうかというのが概略の考え方でございます。  これは非常にラフな考え方でございまして、これを実際の制度に積み上げていく上においては、今後さらに精細な検討が必要であろうというふうに思います。したがって、基底部分をどの程度にするかということについても、今後の検討を待たねばなるまいということでございます。私ども年金財政方式を改め、統合の一歩を踏み出すといったような一つ考え方のもとに出ているものでございまして、私どもの申しているものは、理論的にはまだ相当の検討が必要であり、今後いろいろと考究しなければなりませんので、ファイナルなものではございませんし、また、あの構想でなければならないというわけのものではございません。一つの試案であるわけでございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣構想基底部分というのは、少なくとも学界やまた私どもが主張しております年金ナショナルミニマム最低生活が何とか保持できる年金の額という意味ですか。
  6. 田中正巳

    田中国務大臣 そこがまさしく今後の問題のところでございまして、先生御存じだと思うのですが、一体、年金におけるナショナルミニマムというものはどういうものであろうか、これについて今後われわれは掘り下げねばなるまいというふうに思っておるわけであります。一般的な生活保護等におけるところの最低生活水準というものをナショナルミニマムに置くべきか、あるいは年金年金独自のナショナルミニマムというものを考えるべきか、そうしたことについても、いろいろ議論があろうと思います。そういう意味では、たとえば多賀谷先生が去年、軽費老人ホームに入る程度のものがナショナルミニマムではないかという一つエグザンプルを私にお示しになったことがございます。これも一つ考え方だろうと思います。しかし、この軽費老人ホームというのは、公的関与があって初めて成り立つものでございますので、こうした公的関与というものを基底に置いてなお生活ができるというものがナショナルミニマムであるのか、あるいはそういうものを一切外して生活ができるものがナショナルミニマムであるのか、そしてまた、年金というものが本人の一切の生活というものを根底から保障しなければならないものであるのか、あるいはそれに近いものでよろしいのか、あるいは老人の場合には、もう一定の方々は大部分生活の基盤ができている、たとえば住居等があるであろうというようなことを考えて、その部分は当然のこととして、その上の生活費考えるべきか、いろいろな考え方があろうと思うのでありまして、いまここで画然たるお答えができませんが、この基礎年金構想などを詰めていく場合においては、こうしたことも一つの重要な課題であるというふうに思っております。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣が二万円という話をされたのは、どういう根拠なんですか。
  8. 田中正巳

    田中国務大臣 多賀谷先生とのやりとりを、私、鮮やかに覚えているのですが、一つエグザンプルとして軽費老人ホームに入れる程度のものは確保してやったらどうか、私もヨーロッパ等年金制度のことも頭にあるものですから、それは望ましい姿だ、少なくともそうしたことをやってやりたいというふうに思っていたのですが、その後、社会局長から、当時の軽費老人ホームは大体幾らくらいで賄えるかということで、二万円というような答えがあったものですから、自然二万円ということになりましたが、これは恐らく五十年度価格じゃないかと思いますから、そうしたこともフィックスしたものではないのじゃないか。いずれにしても、こうした年金におけるナショナルミニマムをどう考えるか、そして、それが具体的な金額としてどう出てくるかといったようなことと関連をするわけで、決して固定的な数字ではないと思います。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私が軽費老人ホームに少なくとも入れると申しましたのは、福祉年金老齢年金をとりあえずその程度にしたらどうかというので、むしろ私は、そのほか小遣いも要るし、生活費が要るわけですから、三万円ぐらい要るのじゃないかという話をしたわけですが、まあそれは結構だと思います。これ以上論議をいたしません。  やはり英国等老齢者に対する生活保護とか、あるいはまた身障者等生活扶助をやめて年金に切りかえたというあの経緯から見ますと、どうも社会に貢献して年齢が高くなった人、あるいは身障者方々という場合には、生活扶助というのは、一般的な概念から言いますと、どちらかというと社会から落伍したという、いわばもらうには若干気がひけるという、そういう卑屈な感じを与えないようにというので全部年金に切りかえたわけですね。そういうように考えますと、やはりナショナルミニマムというのは、少なくとも最低生活が確保されるというような線に持っていかなければならないのじゃないか、こういうように思うわけです。  そこで、その後社会党としては、いろいろ検討をいたしまして、まず、その基準になるのは、生活保護の現在の費用、これは七十歳以上の単身老人住宅加算を除きますと、五十一年には一級地で四万円になります。それから住宅加算を入れますと四万五千五百円くらいになります。二級地では住宅加算を入れますと四万二千六百七十五円、三級地が三万七千七百四十二円、四級地が三万三千八百六円ということになるわけです。これは七十歳以上の単身男子老人です。ですから、少なくともこの程度はやはりナショナルミニマムと言う以上は必要ではないか。それを経過的にどう見るかということは別にしても必要ではないか、こういうふうに考えるわけです。  そこで、現実に現在の生活保護世帯もお年寄り世帯ウエートが非常に大きくなってきた。ですから、そういう点から見ても、お年寄りにまで生活保護というような状態でなくて、むしろ社会に貢献したのですから年金生活ができるというようにしたらどうか、こういうように考えるわけです。被保護者のうち高齢者世帯が三丁六%、障害者世帯母子家庭を合わせると八六・五%です。八六・五%というのは、少なくとも年金制度に切りかえれば、その方々年金の対象になるということになるわけですから、先ほど申しました、英国国民扶助制度を廃止して年金にリンクさせたという状態から見ても、そのことが必要ではないか。その程度保障がやはりナショナルミニマムではないか、こういうように考えるわけです。  いろいろ学者先生方からは、国民所得の四〇%というのが出ております。あるいは現在の平均賃金の三分の一という数字も出ておるわけです。これらをいろいろ総合してみると、大体四万円という数字になるわけですけれども、それを、やはりむしろナショナルミニマムとしてどの年金制度の中にも確保してやるということが必要ではないか、こういうように考えるわけです。  そこで、わが党もいろいろ考えてみたわけですけれども、まず福祉年金の額を経過的に逐次上げてみても、だんだんお年寄りは亡くなっていくわけですから年寄りは待てないわけです。ですから、十年後に、二十年後に完備しますよと言っても、いまのお年寄り自身は亡くなっていくわけですから、これはどうしてもやはり早急にやるべきである。ですから、いまの日本経済の実力からすると、本当にやろうとしてやれないことはないのではないか、こういうように思うのです。  それで老齢福祉年金、これは七十歳ですけれども、七十歳開始の時点の金額、それからわれわれは厚生年金の場合の定額分、これも合わせてみたい。それから国民年金の五年年金金額とも合わせてみたい。五年年金の方は五年間も支払っておるではないかという問題もあるでしょうけれども、これは六十五歳からの支給ですから、福祉年金は七十歳ですから、この五年間というのは、余命年数から見ると非常に大きなウエートを占めるわけですから、バランスがとれるのではないか、こういうように考えておるわけです。  あなたの方の今度の案の三万三千円という金額、四十八年度のときの二万円という金額、これは厚生年金定額部分は四十八年度は二万円で、これが三万三千円になる。それから遺族年金最低保障額が二万円で、これが三万三千円になる。それから二十五年の国民年金が二万円であったのが、今度はちょっと下がったのですが、三万二千五百円になるわけです。大体あなたの方はあなたの方で、政府側は一応線をそろえられておるわけです。そう考えますと、国民年金の二十五年というのは、三万二千五百円でちょっと不ぞろいのところもあるのですけれども、若干線はそろえられておる。そういうことで線がそろうならば、私は、ナショナルミニマム水準を、少なくとも最低生活が確保できる線に持っていくべきではないか、こういうように思うのです。物の考え方はそう違っていないのではないか、こういうように思うのですが、どうでしょうか。
  10. 田中正巳

    田中国務大臣 先生年金におけるナショナルミニマム、これは拠出制年金でも、また福祉年金でも同じように考える、これをどこに想定するかということについて、むしろわれわれのいま御審議願っている法律案の内容から援用をした金額あたりを、いろいろいかがであろうかという御説明がございました。私どもとしても、一つ考え方であろうと思っておりますが、規定において年金ナショナルミニマムというものがどうあるべきかということについて、われわれとして確たる定説を持っているわけではございません。また世間においても、この点についてはいろいろ議論があるところだろうと思います。問題は実際論でございまして、そうしたものの費用をどのように国民に御負担願うかということを離れては議論ができないというのが、実際問題を扱っているわれわれのまた一つの重要な視点になるというふうに考えておるわけであります。しかし、それが必要であれば、それについて努力をしたらよろしいという反論も出てくるわけですが、これについては、やはり国民の理解と協力を求めなければならないという一つの実際問題としての課題もございます。そういうわけで、先生の御提案は一つの重要な示唆と受けとめまして、今後の参考資料に資したいというふうに思っております。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 田中厚生大臣は、非常に頭がいいものですから、ちょっと言葉の端々にきわめて有利に引用されますけれども、私は、三万三千円をいまナショナルミニマムの額とは言っていないのです。あなたの方の物の考え方として、厚生年金定額部分遺族年金最低保障や二十五年の国民年金、大体線がそろっています、こう言っておる。額ということを私が言ったのではないので、大体そういう線をそろえるという意味においては、線をそろえて出されておりますね、こういう話をしたわけですから、私は、言葉じりをとらえませんけれども、なかなか頭がいいものですから、それらを後に引用されては困りますので申し上げておきます。  そこで、拠出制も無拠出もやがて一致するのだというのが、三木さんが提唱されておるライフサイクルにも書いてあるのです。とにかく昭和六十年になると、福祉年金も八万六千七百九円、それから国民年金も八万六千七百九円、ここにぴしゃっと書いてあるのです。十年待たすと半分以上の七十歳以上のお年寄りは亡くなるのですから、そんなにいまの日本経済において十年も待たすのかという感じがするのです。ですから、それは早くおやりになったらいいじゃないかという感じがするんですよ。  ですから、物の発想としては、やがては福祉年金も、それから拠出制も同じにするのだという物の発想があるでしょう。ですから、私は矛盾はないと思うのです。ことに、いまのような年齢の五年間の差を持っておるという場合には、私は、ほとんど差はないのじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、その点どうでしょうか。
  12. 田中正巳

    田中国務大臣 ライフサイクルにも実は似たような構想は書いておりますが、具体論としては、大分われわれの考えとは違っているわけであります。ですから、総理には大変申しわけないのですが、ライフサイクルをどう考えるかというと、総論なり日本の国内の分析については、私は高く評価するけれども、具体的な手法についてはいろいろ議論がございますということを、総理の前でも申しているわけでございます。  そういうわけですが、私は、ライフサイクルあるいは社会経済国民会議というのも似たような考え方、ストラクチュアの似たようなものを出しておりますが、こうしたところに国民年金に志向するイメージというものが、だんだん定着をしつつあるのじゃなかろうかと思われますものですから、彼此勘案をしてやっていきたいというふうに思っておりますが、私どもとしては、今日の年金制度拡充強化というものが喫緊の急務であるというふうに言われているものですから、できるだけ早くやらなければいかぬ。十年後にどうのというわけにはいかぬ。したがって私どもとしては、できるだけ早くやろうということで努力をいたしておりまして、まだ先生のお話がございませんが、年金懇というのを開きましたが、年金懇にもひとつ急いでやってくれということをお願いしているわけでございまして、私どもとしては、遠い将来理想的なものをやればよろしいのだということは考えておりません。とにかく一つのシステムというものをつくって、あるべき姿に今後それを改善していくといったような方向の方が、私は、具体的な政策要請にかなうものというふうに思っているわけであります。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣基底部分賦課方式にするという、ある新聞なんかが紹介したところによると、どうも大臣年金構想は、イギリス国民年金大陸型の積立方式とを一緒にしたのじゃないかということを紹介した人もあります。しかしイギリス国民年金というのは、これは全部国庫負担ですからね。あなたの方は、基底部分賦課方式だ、こう言っておるわけですよ。ですから、どうも同じ二万円なら二万円という数字が出ましても、イギリスの場合は国民年金ということで、それはほとんどが政府公費負担、あなたの場合は基底部分賦課方式だというのですから、よく似たようできわめて似てないんですね。そう言えば、財政的に見ると、きわめてずるいやり方考えておるんじゃないか。  そこで私どもも、いろいろ年金について考え方をときどき発表しているのですが、やはり一番問題は、国民コンセンサスが得られるかどうかということですね。ですから、これは非常にむずかしい問題だと思うのです。ですから私は、既得権を絶対に侵害してはならぬというのが絶対的な要件だと思う。ですから、大臣基礎年金構想にいち早く労働組合が反対したのは、高いところから削って低いところに土盛りをするんじゃないかというその考え方感じを持って反対しておるのです。ですから私は、どういう案をつくってみても、既得権を侵害したり高いところのものを低いところに回すという構想では、日本のように給付水準の低いところでは絶対に成立をしないと思うのです。これは私、十分考えていかなければならないと思うのです。  いろいろ議論がありまして、とにかくいろいろな座談会へ出ましても、みんな自分年金の範囲で物を考えるわけです。ですから少なくとも、給付水準を削って低いところへ回すという構想は、どんなにいい構想をつくってみてもそれはこわれる。でありますから、やはり既得権を侵害しないような方向で、この水準を高める方向でやる以外にはない、私はこう思っておるのですが、どうですか、その点は。
  14. 田中正巳

    田中国務大臣 先生のいま御提議になったアイデアというものは、私どもは重要な実際問題として受けとめなければなるまいと思っております。決して私、イギリス型と大陸型をコンバインしたということは考えていないので、われわれはわれわれ独自でもっていろいろ構想を練ったわけで、いろいろ評釈は自由でございますが、そういう考えはございません。ただ、われわれの悩みは、新しい何にもないところに、白地に年金制度をつくるのではございませんので、いまもうすでに各種の分立した年金制度があって、これをひとつできるだけ統合をしようということですから、したがって、いろいろと工夫が必要であるので、決してずるいやり方ではないと私は思っているわけであります。  お説のとおり、国民的なコンセンサスを得なければこの問題はできないということが最大の眼目だ、ですから、高いところから金を持ってきて、そして低い方へやるということは実際は成り立たない。ですから私は、そういうことはできるだけ避けようということで、報酬比例制期間比例制賦課年金をその上に上げて積み重ねようということは、とりもなおさず現行既得権を尊重しようということでございます。  しかしまた、一切合財おれたちのものはおれたちのものだけでもって人のめんどうは見ないのだというような考え方では、私は、やはり社会保障制度拡充強化めんどうである、だから、既得権はできるだけこれを尊重いたし、損なうことのないようにし、極端なものは、たとえば厚生年金の基金の中から国民年金の方へ金を回したらどうかという議論がありますが、そんなものは成り立つはずがないと思って、私たちはこれは一顧だにいたしませんけれども、そうしたことではなしに、やはり国民的な合意のもとに、既得権は尊重しますが、いわゆる人のことは考えないという団体的、エゴ的なセンス、感覚というものは、やはりこの際止揚していただかなければこの種のものの発展は望めないのじゃないか。ですから、既得権を損なうことはしないようにしますけれども、できるだけ他の、自分らの集団以外のもののめんどうを見るというようなお気持ちを持っていただくようにできないものかな、この辺がコンセンサスを得るということについて非常に努力の要るところじゃないかというふうに思うわけでございます。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 めんどうを見るということがどういうことであるのか、よくわかりませんけれども、他の年金がよくなることに対して、いわばねたみを持つというようなことは、私は絶対に避けるべきだと思う。水準を公平化していく、全体的に上げるという必要はあると思います。あると思いますけれども既得権侵害という面が出ると、やはり日本は全体的に給付水準が低いですから、そういうことは絶対に条件としてはやらないで、そして統合の、しかも公平の方向にいく、こういうことが必要じゃないか。それはまあ下を上げればいいわけですからね。  ひとつ大臣、そういう方向でなければ、幾ら大臣がいい案をつくられても、これはできっこないと思いますから、その点はぜひ確約していただきたいと思います。
  16. 田中正巳

    田中国務大臣 先生既得権を侵害しないというのも一体どういうふうに考えていいのか、これは幅の広い概念と低い概念、これだけの銭を出すのだから、これを全部おれの方に回すのならもっと高い給付金ができるはずだというような意味での既得権というか、というならばちょっと困るのでございまして、ですから、自分らの拠出というものについて、これは全部自分のものであるということを、期待権を含めてそういうふうなことを考えられるということになるとこれは問題ですが、しかし、いまの現行制度の中における既得権というものは、これを損なわないようにしていくというのは、いみじくも多賀谷先生に御注意をいただいた点については、拳々服膺してやるべきものというふうに思います。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで、この前から質問を続けておるのですけれども、とにかく福祉年金がそのときの政治の、いわば恣意的と言っても私は過言でないと思うのですが、恣意的に金額が決められるのは非常に困ると思うのです。福祉年金老齢年金ができまして、一体どういう変遷をたどったか、ちょっとと説明してもらいたい。上がったり、だっと据え置いていてまた思い出して上げてみたり、そして今度のようなこと、後から質問いたしますが、どうも恣意的にこの引き上げがなされておるという感じですね。ですから支給昭和三十四年ですか、できてから一体どういう変遷をたどって金額が今日まできたか、ちょっと説明してもらいたい。
  18. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 福祉年金年金額の推移をながめてみますと、御指摘のように三十四年十一月の発足当初が千円でございまして、大体四十五年の改正までは、御指摘のように百円ないし二百円のアップ、これは必ずしも恣意的と言えますかどうか、やはりそれぞれの時代の財政事情がございますから、そういうことで推移しまして、四十五年十月から二千円になった。四十六年が二千三百円でございまして、四十七年、ここで千円のアップというふうに、かなり大幅の改善がございました。四十六年から四十七年にかけて千円、その後御案内のように、四十八年十月からは五千円、当時の田中総理の御発言もございまして、四十九年九月からは七千五百円、昨年の十月からは一万二千円、過去二年間大幅な改善があったところでございます。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで、一万三千五百円という千五百円アップは一体どういう根拠ですか。どうもせっかくの年金に、最も意欲のある田中厚生大臣になって、急にまた停退をしたというのはどういうわけですか。
  20. 田中正巳

    田中国務大臣 年金に熱心かどうかは人様の御評価ですが、就任直後、当時七千五百円から一万円と言われておったのを、一万二千円に四面楚歌の中でやったのも私でございますので、その点のいろいろな評価もまた加味をしていただければ幸いだと思います。  しかし私は、こうしていまの数字を見ましても、これがこのような形で、多賀谷先生のみならず、世間から見ていかにも定見がない、恣意的というふうな御批判が出るようなことになったのは、要するに日本現行福祉年金というものが、一般会計にすべてを依存しているというところから出てきたものでないか、そればかりではございますまいが、そこに大きな原因があるというふうに私は思われるわけでございます。ことし私どもとしては、一般会計方式によってももう少し引き上げることができないかということを考えたこともございます。しかし何分にも御承知のとおりのような財政状況でございますので、私どもとしては、千五百円にとどめざるを得なかったわけでございまして、こういうことを考えるにつけても、この種の年金の財源というものは、景気の変動、財政の状況に左右されないような財源というものを持たなければいけないのだということを私は痛感をいたし、こうしたことから、また基礎年金などというものについてのあこがれというものを強く持つようになったというのも、一つのこうした経緯を踏まえてのことでございます。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 福祉年金は一二・五%でしょう。五年年金は一五・三%、十年年金は一五・八%。思いついてと言ったら、はなはだ失礼ですけれども、どうもそこにルールがないんですよ。ですから、いやしくも年金制度のような場合に、まだ基本的な将来展望にわたる抜本的なものができなくても、一応当面の問題でもある程度のルールを確立して、こういうことでことしは行ったのだ、これは幾らおっしゃっても説明がつかぬでしょう。もし説明がつくとすると、それは生活保護の引き上げですか。それから失対賃金は若干低いですけれども生活保護の引き上げの率をやったのですか。
  22. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 福祉年金につきましては、御指摘のように、結果といたしまして生活保護の基準と同じ一二・五%のアップになったのでございますけれども、私どもの方は、福祉年金の財源問題もございますし、一方、拠出年金等のバランスということも同時に考えなければいかぬ。先生御指摘のように、五年年金と同額までは開始年齢も違うのだからいいじゃないかという御議論も確かにあろうかと思うのでございますけれども、やはり従来の経緯もございますし、今回五年年金につきましては、一万五千円というようなアップ、これが財政事情から見て、どうもこの辺でとどまらざるを得ないということから、そういった点も考慮いたしまして、少なくとも物価上昇を上回る一二・五%ということに決定いたした次第でございます。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、全体が低いから余り言いたくないのですけれども、本来ならば低い方を上げるというのがアップ率としては妥当性があるのです。今度はそうではないのです。しかし十年年金が低いから、私はこれ以上言いませんけれども、どうもそういう点は厚生省がやる仕事としては逆じゃないかという感じを持っておるわけです。  そこで、制度化されておる三万三千円の根拠というのは何ですか。
  24. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 今回の厚生年金の引き上げに当たりまして、基本的には四十八年改正時の平均標準報酬実費の男子の六〇%程度を標準年金につきまして確保する、そういうことで具体的にこれを定額部分、報酬比例部分にどういうふうな配分を行うか検討いたしまして、いろいろ賃金上昇あるいは生活水準国民所得上昇等を勘案いたしまして、結果といたしまして、定額部分は四十八年の単価千円が千六百五十円でございますから、前回レベルに比べまして六五%の引き上げということになったわけでございまして、その結果、二十年の定額部分として三万三千円、これをたとえば国民年金等の母子年金等にも援用したというわけでございます。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いや、その経緯はわかるのですが、三万三千円というのは、どういう生活上の位置づけになるのですか。何とか食えるとかなんとかなるのですか。ことにあなたの方は遺族年金最低保障額、こういうことを言っておられますが、何かそこに根拠があるわけですか。
  26. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 先生も御案内のように、この定額部分は、沿革的には、昭和二十九年に現行制度ができましたときは、文字どおり一律定額、当時二千円、このときは一応当時の保護基準等、そういったことも一つの参考にして設定されたといういきさつがございますが、御案内のように、その後通算年度の導入に伴いまして、一律定額というものが年数比例の定額ということに多少そういう意味では変わったわけでございますけれども、しかし少なくとも、二十年基準に定額部分考える場合に、当時の考え方というのはやはり生きている。問題は、二十年の定額相当部分最低生活がどうかということよりは、現在においては基本的に再配分的な、定額部分に全体の給付内容をどういうふうに配分するか、これは二十九年当初からおおむね全体の半分程度定額部分、半分程度は賃金比例の報酬比例部分という考え方で推移しておりますので、従来のそういう基本的な考え方におおむね沿って今回も改正を行ったということになろうかと思います。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実は千円単価で年数を掛けるというのは、国会で千円に修正したわけですからね。これは、われわれも若干責任がないことはない。四十八年のときですね。しかし何か最低保障額だとかあるいは定額部分、ことに私は、最低保障額を言うのですが、最低保障額という以上は、何か生活水準との関係をやはり論議すべきじゃないでしょうか。遺族年金最低保障額というようなことをおっしゃるならば、何かそこに生活水準というものの要素が入るべきではないか、あるいは生活水準を見直しながら最低保障額制度の改革のときに決めるべきじゃないか、こう思うのです。  あなたの方は、ただ一律に、定額部分が二万円だったから今度は六五%を足した分だ、そこで三万三千円になるのだ、そのことがすなわち遺族年金最低保障額になるのだ、何か機械的なような感じがするのです。ですから、三万三千円なら三万三千円というのは、生活水準のどのくらいで——いろいろ議論はあるだろうけれども、当面どういう生活水準の位置にあるのだというようなこと、あるいは生活保護から見たらこうなるのだと、最低保障額という以上は生活水準との面で何かそこにリンクした考え方発想として出ないのですか。
  28. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 御指摘の点は、ごもっともな御意見だと私思います。ただ、これは冒頭先生が述べられましたように、年金のレベルといいますか、ナショナルミニマムといいますか、年金としてのいわばナショナルミニマムというものと最低生活というものが必ずしも結びつくのかどうか。たとえば、これは国際的な基準でもございます従前所得の四割とか四五%とか——やはり年金制度の場合は、従前とにかく一定の生活水準を維持していて、一定の保険事故によってその所得が失われる、ですから、たとえば住宅とかそういうことが当然前提となって、老後のよりどころとしてどの程度年金を出すかということだろうと思うのです。年金が非常に庭低額の時代は、確かに厚生年金もそうでございますけれども最低生活水準どの関連で政策目標としてその引き上げということが非常に強く要望されたことは事実でございますけれども、四十八年の改正によりまして、それまで余り確たるあれがなかったと思うのですけれども、四十八年の改正によりまして、ともかくも平均標準報酬の六〇%程度といういわば国際的にも通用する基本的な考え方が確立されたわけでございますので、その枠の中で定額と報酬比例部分にどのように配分するか、それは従来のおおむね半分半分という考え方でいいと私は思うのでございますが、そういうことで推移しておりますので、確かに、それではいまの二十年相当の最低保障がベストであるかどうかについては、御議論があると思うのですけれども、しかし基本的には、私は、四十八年改正で一応の水準が確立された、それに沿って今回の手直しを行ったわけでございますので、御意見はごもっともと思いますけれども、私どもは、今回の改正がおおむね妥当なものではないかというふうに考えるわけでございます。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 従来の経緯からいうと、そういう算術計算になるのですけれども、何かそこに生活水準というようなものとのリンクが余りにもないのではないかという感じがするのです。ですから、この点は遺族年金についても言い得ることでありまして、どうも機械的にいままでものを処理してきておるのではないか。四十八年度は大改正だということでありますけれども、それをそのままただ算術計算的にずっと数字を乗じていいものであろうかという感じがする。あの時代以上に今日は年金の要求が強いわけですから、やはりある程度金額を出した以上は、しかも最低保障額と言った以上は、そこにどれだけの意義があるかということを説明のできる数字が必要ではないか、こういうように思うわけです。  次に進みたいと思いますけれども、いまの点は遺族年金に関して言ったわけですが、遺族年金のことは、もう厚生省自体が五十一年度の予算に七〇%を出して、それが五〇%に削られて、寡婦年金等が若干ふえたということですから、もうこれは追及はしませんが、五十二年度のときはどうするのですか。
  30. 田中正巳

    田中国務大臣 これは、もう衆参両院のこの委員会で、一体どうするのだ、つまり平たく言うと、寡婦加算制度で満足してもうこれから出ないのか、寡婦加算制度ないしは寡婦加算制度というものを拡充強化することによってしばらくいくのか、それともまた、さらに原点に立ち返っていろいろ考究するのか、こういう御質問がありまして、多賀谷先生のも恐らく同じような御質疑だと思いますが、私どもとしては、もう過去の経緯はあれこれ二度も三度も述べませんけれども、やはり理論の詰めと国際比較等々が不十分であって、予算折衝がうまくいかなかったものですから、もう少しよく検討をし、理論武装をかとうしてさらにひとつリカバリーをやってみたいというのがわれわれの考え方でございまして、今後さらに定率の面に向かって進みたいということを今日われわれは考えております。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 すると、五十二年度の予算には、厚生省はとにかくこの分だけでも制度として、率として改正を要求していくという構えですか。
  32. 田中正巳

    田中国務大臣 まあ、五十二年度というお約束をすることはいかぬかと思いますが、私どもとしてはできるだけ早くやりたい。遅くも次の再計算期までには何とかいたしたいというふうに思っておりますが、今度やったら大蔵省とは負けないようなものをつくっていかなければなるまいというふうに思っておりますから、その辺のところについては、われわれとしては慎重かつ速やかに実現をするように努力をいたしたいというふうに思っております。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それはちょっと大臣、驚いたですね。あれだけ意欲を燃やしておって、とにかく五十一年度の予算は財政が窮迫しておるからとか何とかいうことでもう引っ込んだ。それで私は、遺族年金のことについてだけは五十二年度予算にぜひ率の引き上げをやるのだろうと思ったのですが、どうなんですか。次の再計算期のときに理論武装をしてやる、それは再計算期のときはもう全体的な問題になるのですからね、どうです、大臣
  34. 田中正巳

    田中国務大臣 私どもとしては、せっかくやってうまくいかなかったのですから、何とか一日も早くこれは失地回復したいという気持ちでいっぱいですけれども、いまここでやたらなお約束を申し上げて、またぞろ食言と言われてはかないませんから、慎重な答弁をしておりますけれども、私としては、できるだけ早くやりたいものだというふうに思っております。遅くもという意味でございます。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 厚生省としては、遺族年金のその五〇%の率を引き上げる要求をとにかく大蔵省にするわけでしょう、五十二年度予算に向かって。それだけははっきりしてください。できる、できないはまた後の話です。
  36. 田中正巳

    田中国務大臣 実際に予算折衝をした私としては、ことしこれで勝負がついたものですから、なかなか来年というところは抵抗がきつかろう、少しほとぼりがさめなければなかなかうまくいかぬのではないという気持ちもあるものですから、率直に申し上げているわけでございますが、私としては、できるだけ早くやりたいというふうに思っておるわけでございまして、これが一種の政策改定であるから、したがって、論理的に財政再計算期にならなければという議論もありますが、そうしたことを乗り越えられるかどうか、そうした問題もいろいろ含めてできるだけ早くやりたいのだという気持ちでございます。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 えらい今度は慎重になりましたね。ぼくは厚生省が大蔵省に予算要求だけはされるのですか、こう聞いておるんですよ。結果的に五十二年度の予算がどうなるかというのは、これは何も厚生大臣の力だけではないのですから。しかし厚生大臣としては、大蔵省に遺族年金の率の改定だけは要求としてされるのですか、これを聞いておるんですよ。期待しておるんですよ。
  38. 田中正巳

    田中国務大臣 とにかく予算要求してもできなかったのを、おまえの食言だとか、いや、失態だとかいってしかられるものですから、このごろ実に口がかたくなりまして、私としては、余りよけいなことを言わぬ方がいいということで慎重に構えているわけですが、気持ちの上では一日も早く実現したいということでございますので、まだ実はこれについての、これならば財政当局も文句は言えまいという案もできていない今日でございますので、やはり私としては、もう少し検討させていただきたいということでございます。いま、この辺なら何とか財政当局も参った、こういうような案を持っている今日なら別でございますが、私どもとしては、もう少し検討をさせていただきたい、こういうことでございます。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この前の、私が昨年の二月の予算委員会で外国の水準で四分の三という程度遺族年金は必要ではないかということについて、大臣は、その四分の三というわけではないけれども、その近い付近で引き上げたい、こういうことでした。これは私、これ以上食言とかなんとか言いませんけれども、とにかく要求だけはしてもらいたいと思うのです。あのときの予算委員会ではあなたが実現する、こう言ったのですから、これは問題ですが、大蔵省に厚生大臣として要求する、そのくらいはここでお話しになってもいいじゃないですか。
  40. 田中正巳

    田中国務大臣 ですから、私どもも七〇%という予算要求をいたしたわけでございます。その結果がどうも大変なおしかりでございますので、これはやたらなことを言ってはまずいなということを、一年半閣僚をやって、もうしみじみ感じましたものですから、もう少しこの問題についてのこちらの方の検討というものが進んでいれば、また先生に御満足のいけるような御答弁もできると思うのですが、実はこの案をつくるのに狂奔をしておりましたものですから、五十二年度の分についてはまだ白紙でございますので、こういう時期にそういうことを、来年五十二年度に予算要求をするのだというようなことを申し上げるのは、私は、軽率のそしりを免れないのじゃないかと思いますので、しばらく検討させていただきたいと思います。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 食言とか言ってそんなに追及していませんよ。本来、食言くらいあったら、予算委員会が一日や二日はストップするんですよ。しかし大臣が積極的な答弁をすることによって、それを一々われわれが追及しておると、せっかくの大臣の熱意がだんだん後退すると思って、ただ注意をしたにとどまったのです。ですから、今度の場合はひとつ要求するくらいはやはりここではっきりさせたらどうですか、要求するくらいは。できるできないは時の内閣が決めるんですからね。予算は一応八月に出すわけでしょう。
  42. 田中正巳

    田中国務大臣 多賀谷先生、大変おわかりになって御質問なさいますけれども、実は他の議員さんにはかなり手厳しいおしかりをこうむったわけでございますので、私としては、この際もう少し検討させていただいた上で確たる御答弁をさせていただきたいと思います。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間ばかりたちますけれども、これはぜひ厚生大臣としては要求してもらいたいと私は思うのです。それは、いままでこの案をつくったので追われてと言うけれども、ロッキードで役所の方は休んでおったんですからね。ですから十分検討できたわけですよ。ですから私は、とにかくこの問題については、はっきりした意思表示をどうしてもこの委員会中にしてもらいたいと思うのです。従来の経緯もありますし、それから一応信念を持って要求したのでしょうから。私の持ち時間があれですし、これで十五分くらい同じことを繰り返しているのですから、やめますけれども、ぜひひとつわれわれは期待をしておきたいと思います。  そこで、今度のスライド制ですけれども、四十年に比して今度は一六五%アップになるわけですが、この一六五がどうも私は少ないように思うのです。といいますのは、一六五が少ないというよりも、前の読みかえ規定がどうも低かったのじゃないか、すなわち四十年度のですね。  そこで私は、平均賃金、これは定期給与だけですけれども、全産業の平均を調べてみました。昭和三十二年と五十年、これは暦年ですけれども、四十五年を一〇〇といたしますと、三十二年が三〇・一ですよ。それから五十年が二二八・八。そこで七・六倍になるのです。そういたしますと、政府の方の昭和三十三年三月以前とそれから五十年と比べますと、五十年というより五十年の三月ですかは六・三九倍になるわけです。この差がやはり実感としては非常に低い、こういうことになるのではないかと思うのです。ですから、完全スライドされていない。これは私、標準報酬の関係、頭打ち等の関係もありますけれども、そのスライドの問題だけは、これは平均賃金のスライドをとってもらいたい、こういうように思いますが、どうですか。
  44. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 スライドの指標を何に求めるかについて、賃金によるべきであるという強い御意見があることは重々承知いたしておりますけれども、私ども、やはり今回の政策改定を通じて考えましても、また今後の経済状況等の見通し等から考えましても、やはり物価スライドで実質価値を維持して、変動著しい場合には、政策改定の適宜繰り上げによって対処する今回の手法が適当なものではないか。そのほかに賃金により得ない事情はいろいろございますけれども、これは、もう先生承知と思いますので省略いたしますが、どうもやはり現行やり方がいいのではないかというふうに考えております。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 賃金スライドか物価スライドかという議論のほかに、私は、読みかえ規定そのものが低かったのではないかと言っているのです。大体が読みかえ規定は賃金スライドなんですよ。ですから、今度の再改定期における読みかえ規定、すなわち四十年度の読みかえ規定の一・六五倍しておるわけですから、現実に平均賃金のスライドと今度の改定期における読みかえ規定との差が出ておるのではないですか。この再計算期における読みかえ規定というのは、これは賃金スライドでしょう。少なくとも給与スライドでしょう。そのとり方を標準報酬に求めるか平均賃金に求めるかの差でしょう。ですから私は、途中の物価スライドを言っているのじゃないんですよ、いまの議論は。
  46. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 今回の標準報酬、報酬比例部分の再評価は、御指摘のように、前回、四十八年改正時と違いまして、まあ期間も短い関係もございまして、平均標準報酬の倍率だけで算出したのでございますが、結局、先生の御指摘は、四十八年改正時の再評価が適当であったかどうかということになろうかと思います。当時は、最初の再評価でもございましたし、やはり何分三十二年から四十六年までの非常に長期にわたった期間についての再評価でございますから、当時幾つか、三つばかり修正いたしましたけれども、たとえば平均年齢の上昇による影響あるいは標準報酬の頭打ちがございますが、こういった影響、それから三十二年以前の切り捨てによる影響、それぞれやはり問題としては十分あったろうと思うのです。ただ結果として、その倍率に一定の修正を掛けたわけですけれども、それがいまの目から見て正しい、間違いなかったかどうか、それについてはあるいは御意見があろうかと思います、これは率直に言いまして。しかし今回、前回の再評価の中身に立ち入って吟味し直すということは、実際問題としては、事務的にも、当時の記録その他の関係もございますので、これはもうほとんど不可能に近い。そういうことで、私どもは、今回は、まあ期間の短いということもありまして、平均標準報酬のみの倍率によって再評価を行ったのが今回の実態でございます。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣、この点やはり公務員や公企体の共済と違う、それから労災保険とも違う点です。ですから、同じ年金制度で、賃金スライドか物価スライドかという問題と読みかえ規定とをあわせてやはりこの差がかなり出ておる。これが非常に不公平だという議論につながっておる。これをひとつよく考えて、読みかえ規定については、もう一回将来にわたって再検討してもらいたいと思う。どうでしょうか。
  48. 田中正巳

    田中国務大臣 過去における標準報酬というものを取り上げて計算するというのは、他の共済年金等には余り例のない……(多賀谷委員「あるよ、スライドはあるのです。スライドの話をしているのです。」と呼ぶ)スライドの話ですか。——ですから、この問題については、ひとつ今後とも検討はいたしますが、どちらの方に決めていいかということについては、なかなか議論のあるところで、さらにひとつわれわれの間でも検討をさしていただきたいと思います。
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 読みかえ規定というのはスライドですよ。ですから、公務員の場合は積み残し是正というのをやるんですよ。すなわち公務員はかつては賃金アップをそのまま入れなかった。ですから、物価の上昇率プラス賃金上昇率マイナス物価上昇率の六割、こういうようにいった。それが給付水準を低めておるというので、最近その是正をしているのです。この二、三年ずっと是正をしてきた。要するに積み残しというものの是正をやってきた。それをもとに返したのです。ですから公務員の場合でも、過去にさかのぼってやっておるのですから、厚生年金もやったらどうかと思うのです。そういうことをやってきたんですから。公務員は自分でやってきておるんですよ、そういうことを。ですから今後の問題として、過去のものをもう一回再検討するということは、公務員自身も行ったのですから当然じゃないかと私は思うが、どうですか。
  50. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 今回の再評価、特に前回再評価部分の再評価、これは一・六五でやむを得なかったと思いますけれども、将来にわたる再評価のあり方につきましては、今後とも検討していきたいと思います。
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今度の一・六五というのは、昭和五十年の三月はですか。
  52. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 五十年度の年度平均の平均標準報酬でございます。
  53. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、五十年度の物価スライドはないわけですね。
  54. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 五十年度の分のスライドということになりますと、政策改定がなければ五十年度の年度間平均物価上昇率でスライドするわけですけれども、今回は物価スライドを織り込んだ政策改定ということでございますので、その今回の改定の中に物価スライド分は吸収される、そういう考えでございます。
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、今度の六五%というのは五十年度の賃金上昇分が入っている、こう見ていいんですね。
  56. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 そういうことでございます。
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで、厚生年金の場合は、とにかく自分で計算できないというのが最大の欠点なんですよ。これは、だれだって計算できないんですよ。自分の計算ができない、こんな保険ないですよ。これが保険会社だったら、そんな会社にだれも掛けませんよ。契約できない。公務員も公企体共済も、自分がやめたときの賃金の四〇%に一年について千分の十五というようにみんな計算できるわけでしょう。厚生年金に関しては全然できない。ですから私は、自分で計算できる方式にしてもらいたい。こんなことでは生活設計ができぬですよ。ですから、われわれはポイント方式をとってみたんですけどね。とにかく計算のできる方式に次の改定期にはどうしてもしてもらわなければならぬ。こんなに年金に対する関心が深まってきて、そして老後のことが心配になってきて、さて自分幾らもらえるのだということがわからぬというような、こういう方式はいつまでも続けるべきじゃないと思うのです。御存じのように、かつてはわかっておったんですよ。労働者年金時代から厚生年金ができました昭和十九年にはわかっておったのです。あれは賃金の三か月分ですか、二十年を超える一年について四日、きわめて計算がはっきりできた。もうその後は全然わからないですよ。ですから、自分で計算のできるような年金考えるべきではないか、こういうように思いますが、どうですか。
  58. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 御指摘のように、たとえば最終報酬リンクあるいは国民年金のように、定額一本ということであれば年金額は非常にわかりいいわけでございますけれども厚生年金の性格からそれは体系としてとり得ない。そういうことで、年金額が非常にわかりにくいのが実は最大の泣きどころになっておるわけでございます。ただこれは、私どものPRも多少不足していると思いますけれども、非常に大ざっぱに言いますと、定額部分は一年幾らという単価があるわけでございますし、それから報酬比例部分も、再評価が導入されましたので、標準報酬という枠はございますけれども、おおむね一年について賃金の一%ずつ上積みされるというのが基本でございますから、その辺のPRも私ども努力しなければならぬと思います。  それから、御指摘のようなポイント制というものも今後の検討課題になるのではないかと思いますけれども、まあわかりやすくしなければいかぬけれども厚生年金の体系上どうも制約がある、どのように解決したらいいか、これは各方面の御意見も十分お聞かせ願って今後努力していきたいというふうに考えております。
  59. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 わかりにくいだけではなくて生活設計が立たないんですよ。これは第一、本人が平均の標準報酬月額が幾らかというのが全然わからぬのですよ、よっぽどノートか何かにずっと書いて一人一人がわかればいいが。というのは、過去にさかのぼって二十年間ないし三十年間のですからね。しかも読みかえ規定があるわけです。その読みかえ規定にさらに今度の場合一・六五倍かけるわけです。しかも、それは定額がそのときによって変わるわけでしょう。ですから、これはやはり何らかの形でわかりやすい、計算のできるような方式にされることが最も望ましい。それから率直に言うと、やはりポイント方式をとる時期に来ておるのじゃないか。大臣どう思いますか、感覚的にポイント方式をとる時期に来ておるのじゃないですか。
  60. 田中正巳

    田中国務大臣 日本厚生年金は、非常にめんどう本人にわかりにくいということでございますが、制度の仕組み上、これはなかなか一朝一夕に本人にすぐわかるようなわけには——この方式をとっている限りは、私はめんどうだと思うのです。西ドイツのポイント制みたいな、ああいったこともいろいろ考えてみたりしておりますし、また、この方式でも何かもう少し早見表みたいなものができないかというふうに考えておるわけでございますが、いずれにしても、なかなかめんどうな問題ですが、努力はいたします。  どうもアメリカの年金もなかなかめんどうなようでございまして、アメリカの保険庁に大ぜいの人が詰めかけて聞いておる姿を見ると、どうも世界じゅうの役人の考えることは同じだな、こう思いまして、それにしても、もう少し簡単にいくようにできないものか、これは今後の一つ課題だろうと思います。
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 本会議の都合で時間を短縮してくれということでございますから、あとは簡単に質問します、かなり重要な点が残っておりますけれども。  例の毎月一回年金を支払うということが課題になっておるわけですね。三木総理大臣はひとつ検討させましょうということになっておりますが、その点はどういうようになっておるのか。  それから、労災保険との関係ですが、この前から労災保険の議論をしておるのですけれども、ドイツでも、また日本の公務員もそうですけれども、一応労災保険が全額支払う、そして共済はいわばその上積み分だ、こういう形になっておるのです。西ドイツだって日本の公務員だってそうですよ。ところが厚生年金は、ずいぶん財源があると見えて、今度は一年半から障害年金になるわけですが、この分をいままでは休業補償として経営者が払っておったものを、今度は厚生年金がまず全額払うわけです。それからあとは労災がその上積み分を出す、こういう仕組みに日本の場合はなっておるのです。ですから、こういう職場における労災というのは、第一義的には使用者の責任です。厚生年金の方がむしろ調整用にいくべきではないか、しかも現実に公務員はそうなっているのですから、これは一体どういうように考えておるのか、こういうことであります。  それから次に、在職老齢年金の一万一千四百円というのは、やはり低いですね。これは根拠もはっきりしないんですよ。ですから、平均賃金なら平均賃金、何かもう少しはっきりした根拠が必要ではないか。この前は五万円、その次は七万円、そして今度十一万円の標準報酬、これは全く恣意的ですね。根拠も何もないんですよ。この点もどうもはっきりしないわけです。  以上、御答弁を願いたいと思います。
  62. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 年金の毎月支払いの点でございますが、私ども、その後いろいろ検討したわけでございますけれども現行の支払い方式のまま毎月支払いに切りかえますと、申し上げるまでもなく、その事務量が三倍ということで大変なことになる。こういうことで、これらについての事務の合理化を図る必要があるということで、支払い通知書あるいは支払い案内書等の発行等についても現在研究をいたしております。特に問題になりますのは、支払いの窓口に当たります郵便局の体制がどういうふうに対応できるかということが最大の問題であろうかと思います。現在、郵便局は手作業が中心の業務処理でございまして、郵便局で扱っております各種年金の受給者、これは全部で千二百万人ぐらい、支払い件数が三千六百万件ぐらいになりますので、これが毎月支払いになりますと一億二、三千万件ぐらい、こういうことになるわけで、私どもとしましては、郵便局の業務量の増を消化する体制の整備ということが特に必要ではないかということで、郵政省とも協議をしておるわけでございます。  それで、本会議のときに先生が御指摘になりましたように、イギリスにおきましては、毎週支払いというようなこともされておりますし、私どもとしましても、イギリス制度等につきまして、小切手の様式その他について資料を取り寄せております。それから西ドイツ等につきましても、資料を取り寄せておりますので、そういう点も含めまして、今後どういうふうにいたしましたならば、受給者に便利な方法で支払い方式を改善できるかというものについて努力してまいりたいと考えております。
  63. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 第二点の労災との調整でございますが、先生御案内のように、昭和四十二年でございましたか、労災の一時金の年金化という改正に対処いたしまして、労働省とも協議いたしまして、厚生年金の方は生活保障的の意味というもので金額支給、労災の方は二分の一という調整で現在に至って、今回労災の方でもいろいろ問題がございますので、改正案を今国会に提出いたしておるというふうに承知しておりますけれども、確かに御指摘のように、四十二年改正の手法がよかったかどうかについては、いろいろ御議論があると思うのです。しかし今回、そういうことで労災の改正も行われておりますので、しばらくこの改正施行を見守って、なお関係省庁と協議を重ねていきたいというふうに考えております。  それから、在老の支給停止限度額の十一万でございまして、おっしゃるように平均的標準報酬というようなことも、一つ考えではないかと思いますけれども、何と申しましても、在職して賃金を得ている人にとにかく支給する、そういう限度額をどう見るかという問題でございますので、私どもの方は、平均標準報酬も一応考慮いたしつつ、おおむね六十五歳以上について六割以上、低在老については五割を超えるというところで十一万という線を実は引いたわけでございます。
  64. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今度料率の値上げが提案されておりますが、私は、こういうのは財源的に大きな問題だと思うのです。確かにいまの労災の方が、定額部分等がありますからわりあいに格差がないんですよ。ですから、低額所得者の方は、厚生年金の方を先行した方が本人のためにはいい場合もあるのです。しかしどうも私は、本来使用者責任であるのに、何も厚生年金が全額出す必要があるのかと思うのです。それならば料金の改定を変える必要がある。厚生省は使用者に弱いですね。第一、本来労災の事件がかなり健康保険にきているでしょう。あれを精査しただけでも、相当のものだと私は思うんですよ。本来、労災保険が見なければならぬものが健康保険にきておる。これは労災として認定をすると会社としても都合が悪いとか、あるいは労災がメリット制になっているとかいろいろの都合で、私は指摘してもいいけれども、そういう問題がある。  今度は労災保険と厚生年金の関係から言うと、厚生年金の方が全額出して労災の方が調整しておる。これは、まさに逆立ちしているのじゃないか。それほど厚生年金というものは、会計が豊かじゃないのでしょう。豊かだったら保険料を上げなければいいのです。厚生年金は、障害年金が一年半ということになったので、労災のいままでの休業手当を出しておる分をどのくらい負担しなければならぬか。これは労災保険から負担するわけですよ、この一年半の間は。これはふえておるわけです。そういうように考えると、これは労働者も出しておるのですから、私は、厚生年金の会計というものについて、もう少しシビアにしてもらいたい。使用者が全部出すことのできる仕組みで何も厚生年金がわざわざ肩がわってする必要はないじゃないか、こういうように考えるわけです。これはひとつ制度的に勘案してもらいたい。  聞くところによると、さっき事務量の問題がありましたけれども、厚生省がむしろ厚生年金は全額支給して労災を調整してもらいたいと言うのは、事務量として持てない、こういうことが言われておるやに聞くのです。それなら社会保険庁の人間をふやすべきだと私は思うのです。話がどうも逆じゃないですか。それとも労使負担をフィフティー・フィフティーじゃなくて、これは大体労災が払わなければならぬ部分厚生年金が出しておるのだということなら、フィフティー・フィフティーをあっさり変えて、この分は経営者負担にするのだ、それを、本来労災が払うべきものを、これは厚生年金で支払っているのだ、ということになれば、そうすべきじゃないですか。  もう時間がありませんから、大臣から一言御答弁を願うと同時に、とにかく毎月払いという方向は進んでおるのですか、進んでないのですか、この二点。
  65. 田中正巳

    田中国務大臣 第一点の問題は、実はかねがね問題になり、私も正直言うと、ここまで細かくなると余り深くタッチできませんが、どうもこれはおかしいということで議論をいたしましたが、今後の問題として今回はこれでいこう、こういうことになったように私は存じております。今後検討をいたしましょう。  それから、第二の毎月払いの件ですが、これは多賀谷先生から非常に御熱心な御要望がありました。私ども、これをまじめに受けとめまして、あれやこれや実はそのことを実現するための条件あるいは外国のやり方等々を検討いたしておりますが、現在の日本におけるプリミティブなやり方では、とても追いつけないということだろうと思いまして、これを改善する、同時に、郵政の方の御協力も得なければならぬということで、これについては、どうやったら少しでも支給のインターバルが短くなるかということで大いに積極的に検討努力をいたしたい、かように思います。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
  66. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 次に、寺前厳君。
  67. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、今度の年金関係の法律について一番みんなが聞きたがっている点の一つを最初に聞きたいと思うのです。  それは、今度の国家予算を見ますと、保険料の収入は前年よりも七千二百三十七億円増で、総収入が三兆四百八十八億円となっている。一方給付する方は、前年よりも四千百九十七億円増で一兆四千三百十六億円となっている。集める金の方が多くて出す金の量の方が少ない。そうして収支の残の方は、五十年度で二兆四百七十六億円であったものが五十一年度では二兆五千二百十八億円と、単年度においても積立金がふえている。給付の改善を宣伝する割りには、集めるお金の方がどんどんふえていくというのはおかしいではないか、率直に言ってみんなの感じている問題はそのことだと思うのです。みんながそれでは納得できません。  それで、いま平均的な勤労者の月収を十五万円と仮に位置づけてみると、保険料は月額にして五千七百円ぐらいになるでしょう。五十一年度では賃上げがまあ一〇%あったとしても、保険料率は、今度のこれによると一・八%引き上げになって月額七千七百五十円ぐらいになり、月二千五十円の負担増になる。物価上昇はどうなるか知りませんが、たとえば一〇%と考えてみると、賃上げと物価上昇がパアになってしまう。そしてかかってくるのは、保険料率だけはふえてくる。まして物価の値上がりが多くて賃上げが低かったら、賃上げそのものにおいても国民に対する生活の圧迫がふえてくるのに、この保険料増によって国民の負担増が加わってくるということは、これは算術計算から見ても、だれでもわかる話だと思うのです。  そこで、私はお聞きしたいのですけれども、何で厚生年金の保険料率千分の七十六を千分の九十四にしなければならないのか。もちろん給付は五万五千円ぐらいでしたか、六万八千円くらいの平均にするという内容はあるにしても、保険料を上げぬことにはそれができないと言われるのか、上げなくてもできると言われるのか。そこを何で上げなければならぬのか。生活を圧迫するということは事実でしょう。これは、ぼくがさっき第一の質問で言った点だ。賃上げと物価高、それの相殺諸関係と、そこに保険料が上がるという問題は生活圧迫にならないのか、これが一つ。そして保険料を上げなければ給付の改善ができないとおっしゃるのか、それが第二番目の問題。両方を含めてひとつこれは大臣からお話をお聞きしたいと思うのです。
  68. 田中正巳

    田中国務大臣 いま保険料率の引き上げをめぐっての議論がございました。保険料を上げて生活を圧迫しないか、上げないにこしたことはございません。上げなければ、それだけ生活の可処分所得がふえるということは間違いがございません。しかし、どの程度にこれで御迷惑をかけておるかということについての考え方はいろいろあろうと思います。賃上げ率というものについても、予算委員会等でもいろいろ議論がございました。基準内賃金と基準外賃金との問題もありまして、一概には計数的にはいかないだろうというように思います。なお、これにつきましては、単年度勝負の医療保険あるいは賦課方式年金の場合ですと、先生おっしゃったようなことは、当然そうした論理から物を考えることができると私は思いますが、長期の給付である年金については、そうした単年度の短いサイトにおける考え方だけでは律し得ないことは、先生もすでに御存じのところでございます。したがいまして、給付をこのままにしておっても保険料率は引き上げなければならぬというのは、先生承知のとおりでございまして、今回給付改善がございましたから、それが将来に向かって増幅されている一面も実はないわけではございますまい。いずれにいたしましても、保険料率というものをこのままにしておいて、そこに目の前に金があるではないか、あるいはことしはできるではないかということについては、あるいはそういう理屈は成り立つかと思いますが、長期の数理計算の上に立っている保険財政では、やはりそうした考え方だけで律することができないということだろうと思います。ここにまた、実は積立方式における年金の財政について、国民的な理解を得ることに非常にめんどうな一面があるというのが、私どもとしては非常に骨の折れる点でございますが、そうしたことを踏まえてお考えくださるならば幸せだと思います。  なお、細かい点については、ひとつ年金局長から答弁をしていただきます。
  69. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、年金局長にお聞きをしましょう。  単年度では明らかにおっしゃるとおりだ。問題は、長期だからだという御答弁だったと思います。しかし国民の皆さん方に理解を得るのはなかなかめんどうだともおっしゃったとおり、これは理解に苦しむ話が多いのです。  そこで、聞きますが、長期だから将来困るというのですが、将来というのは、どの時期のことをおっしゃるのでしょうか。
  70. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 いま年金給付費はそれほど多額でございませんから、賦課方式的な考えでやるという一つ考え方があり得ると思うのですけれども、それでは一体、賦課方式、つまりそれぞれの年次の給付費をそれぞれの年次の保険料でもし賄うとした場合に、どういう結果が生ずるかということを申し上げますと、これは将来一定の賃金上昇等を見込んだ数字ではございますけれども、率直に言いまして、現在千分の七十六も実は要らないということわけになるです。しかし、それは非常に極端な議論でございますから、七十六を下げるということは、現実問題としてはあれですから、では七十六でやって、その結果、一体どうなるかということを見てみますと、昭和六十四年になりますと、少なくともその収支残は当該年度としては赤字になる。しかしまだ積立金がございますから、それでは積立金を崩せばいいじゃないかという議論が出てくると思うのです。では、積立金を取り崩して一体いつまでもつかというと、七十一年度で積立金がゼロになってしまいます。それはそれでいいのですが、では一体、七十二年度からどうなるかということなんですけれども、それまでは七十六でずっとやってきたわけですね。ところが七十二年度になって、一挙に約倍の千分の百四十六、実はそういうことになるわけなんです。一体そういうことが世代間の負担の均衡という見地から許されるかどうか、それをお考え願いたい。
  71. 寺前巖

    ○寺前委員 ことしは昭和五十一年でしょう。そうすると、いまからざっと二十年先ですね。二十年先のことを心配をするのだ、その二十年先には千分の百四十六になる、一気に倍になる。それでは皆さんが値上げをお考えになっているそのときの料率は、一体何ぼとしてお考えになっておりますか。
  72. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 私どもは、将来のことは別にここでどうこうということでございませんけれども、一応いろんな計画を持っておりますけれども、その中の一つの有力な案といたしまして、これは従来からやっておりますように、修正積み立てによっておおむね五年ごとの再計算のときに段階的に引き上げていく。今回九十四でお願いいたしているわけですけれども、これをことしおおむね千分の十八程度上げ、七十六年以降は千分の二十程度仮に上げるといたしまして、この制度がおおむね成熟化時期に到達するとされております昭和八十五年度では、その料率が千分の二百六というのが一つの計画でございます。
  73. 寺前巖

    ○寺前委員 ちょっと正確にしましょう。昭和七十一年度の段階には千分の百四十六にしなければならないとおっしゃった。倍にするのは大変ですよとおっしゃった。そのときのおたく方がお考えになっている段階的保険料率は、一体何ぼになっているのでしょうかとぼくは聞いているのです。昭和七十一年段階の料率は何ぼになっていますか。
  74. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 千分の百六十六程度でございます。
  75. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣、どうでしょう。昭和七十一年になったら大変ですよとおっしゃった。そのときの料率は千分の百四十六、ところが皆さんがお考えになっている段階的保険料率を上げるのも、そのときには千分の百六十六だったら、大変などころか、おたくら自身が考えている料率が大変な料率じゃありませんか。これは一体どういうことなんでしょう。
  76. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 先生は、七十一年ですか、断面だけとらえておっしゃるので非常にびっくりするような形になるのですが、問題は、一定の期間にきわめて集中的に非常に大幅な負担増を伴うようなことが世代間の均衡として許されるかどうか。ですから、先ほど申し上げましたように、やはり年次的にならしてなだらかに負担増をしていかなければいかぬのではないか。したがいまして、五年ごとの再計算でおおむね千分の十八ということは、これは年間にならせばおおむね千分の三ないし四ずつとにかく上げていきましょう、ですから、五年前の制度の人と五年後にこの制度に入った人とは千分の十八程度の差で済む。ところが非常に極端な賦課方式を貫けば、翌年度、たった一年度の違いで保険料が倍になる、そのようなことが一体、その時代の被保険者に許されるはずがないというのが私ども考えであります。
  77. 寺前巖

    ○寺前委員 二十の青年でも、前年まで学校におった人がこの年に就職をして年金を掛ける、そのときにどっちの方式をとろうと千分の百四十、片方は千分の百四十六、片方はおたくの言われる千分の百六十六だったら、従来どおりの方式の方が安いですな。その青年は歴史的な、昔のことは知らない。千分の百四十六取られるのか千分の百六十六取られるのか、大変だと皆さんはいまおっしゃっているけれども、そのときに初めて掛ける人間にとっては何が大変なのか、これはおたくらがいまつくられる方式の方が高うて大変ですが、その人間にとってはそういう結果しかないんですね、単年度の話なんだから、そのときの時点の話ですから。  それから、長期にわたる人であって、長期にわたって、二十年間にわたって料率は低くあって、そのときに一挙に倍になるというのは、率としては大きいかもしれない、そのこと自身においては。だけれども、その間にいっぱいとどんどん行って、その段階に至って大変だとおっしゃったときに、単年度大変なのは、むしろいまから段階的に高めていく金額の方が高いのだったら、何か積立方式に問題があるのじゃないかということを言わざるを得ないのじゃないですか。何が大変なのか、結果として、このお金で助かりましたという結果がちっとも出てこないじゃないですか。これは、きわめて単純な、数字局長さんから出してもらったのだから、これは専門家でなくたって、まして大臣は、長年専門家としてこの分野に造詣の深い方だから、私はきわめておわかりになる話だと思う。大臣、どうでしょうか。
  78. 田中正巳

    田中国務大臣 これは年金財政方式の基本にかかわる問題でございまして、いま先生一遍に倍になるといったって、そのときに初めて加入する人間は、それはそれとして受けるのだとか、あるいはそういうふうに倍になったって、いままで安ければ得だというふうに言いますが、いま千分の十八上げるといっても、この騒ぎでございますので、そこでもって倍なんと言ったって、とても言うべくして行われることではございません。したがって、段階的に上げていくという方が実際的でございますし、世代間の公平にも相なるということでございまして、こういう方式を現在とっているわけでございます。  しかし、年金財政方式というものは、何もこれだけではございません。いろいろと今後とも考究することについてはやぶさかではございませんが、今日やはりこうした修正積立方式をとっている場合においては、私は、こうしたことの方がより実際的であり、また被保険者のためになるというふうに思っております。
  79. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣のおっしゃること、私には一つもわかりません。将来大変だというのに、将来出てくる数字は、いまの延長線上の方が安いというのだったら、将来何にも救われることにならない、これ以外に言いようがない。これは私、明確にこのことは言っておかなければならない、こういうように思うのです。  そうすると局長さんは、次には、いや七十一年の段階ではなくしてもうちょっと先の段階を説明させてくれということを思っておられるだろうから、どうぞそれを説明してください。
  80. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 いや、私はその前に、現在の姿をお話しした方がよろしいのではないかと思うのですけれども、将来大変だということも言っていますけれども、要するに今回の改正で、本来必要とされる保険料は幾らかというのがすべて基本でございます。これは男女全部平均いたしましてこれだけの給付内容をするに必要な保険料、もし将来とも変わらない保険料として取るならば幾ら必要か、これが平準保険料でございますが、これは千分の百五十でございます。ですから、財政の健全化という点から言えば、しかも将来にわたって同じような負担ということで言えば、本来から言えば千分の百五十取るべきではないかという意見も十分成り立つわけでございます。それを現実問題として一挙にそこまで持っていくことはできぬだろう。特に昨今の経済状況もございますから、ですから私どもは、いろいろ考えまして、男子につきましては千分の九十四、しかし、もともと百五十の保険料が必要なんですから、いま低ければ将来高くなるのはあたりまえなんですね、きわめて簡単なことなんで、要するにいまの人が楽をすれば将来の人が苦労をする、それだけのことなんです。その程度をどれくらいにしようかというのが、修正積立方式のもとにおける段階保険料の設定でございますから、将来の問題とおっしゃいますが、実は現在の問題なんです。その点をひとつ御了承願いたいと思います。
  81. 寺前巖

    ○寺前委員 もうこれは深追いしませんが、将来の問題で現実の問題です。現実の問題だったら、単年度でめんどうを見ていくような生活様式をまず基本に据えなければいかぬと一番最初に言ったわけです。賃上げが物価上昇よりも少なければ、それだけでも大変。国民生活が豊かにならなければ景気の浮揚なんてあり得ない、購売力がない。そこへこれでもってまた下げる、生活を抑えるという役割りをするというのだから、そのこと自身何にもよくならないのです。そういう段階に、単年度を見たら、給付の改善のために金がないという相談ではないということは、大臣も認めた。そうしたら、残ってくるのは、将来負担をいまから軽減しながら考えているのだ、では、その将来計画というのは一体どうなっているのだ。七十一年までは、こんな調子でいったって、そうやすういきませんよ。二十年間、それこそ国民生活安定のためには上げる方式をとらない方がいいに決まっているのだから、そういう点から考えたら、さらにもう一つ、将来を言われるのだったらぼくは論議しますけれども、されないからもうこれはやめます。  次にいきます。これはもう百も承知した論議だから次にいきますが、その次に問題になってくるのは、これは積み立てをせっせとするけれども、一体これもまたどう考えても理解できない、将来のために積み立てておくと言うが、これは一体利回り何ぼで運用するのですかな。ぼくが知っている限りでは、昭和五十一年から五十五年まで六・五%で計算しておられますね。ところが物価の方は一〇%前後上がるということで、積み立てを計算される以上は、お考えになっているわけでしょう。物価が一〇%上がって、積み立てが六・五%だということになったら、だれが考えたってそんなものはおかしいじゃないか、目減りするだけじゃないか、こうなると思うのです。これはもう常識です。常識的に見てぼくはそう思うのだが、これは局長さんでなくったって大臣お答えできる話だと思う。  現に、あなたたちの計算のプランを見せてもらいましたが、一番積立金のピークになる時期はいつだろうということで、ずっと表が書いてあって、八十五年というのが一応出ていますね、八十五年までのやつは。これはぼくは資料としていただいたから、その資料に基づいて言うんですよ。そうするとこうなっています。昭和八十五年の年金給付の総支出は百四十三兆円余りになっている。この計算には五十二年から五十六年までは一〇%のスライド、五十七年から六十一年までは八%のスライド、六十二年以降は六%のスライドなどを仮定して、この計算方式はずっと計算されています。ところが要するに、このスライドというのは、現実に金の値打ちが合わないからスライドするわけでしょう。実質価値を維持することができないから、それでスライドするわけですね。そうすると、現状において五十一年度末の積立金は何ぼになる計算になっているかというと、五十年度末で十二兆円、五十一年度末で十四兆円、これをスライドをやらないで、実質価値が変わらないでいまのままだということでずっとこの金の計算をしていったら、要するに現在のこの十四兆円という積立金は、八十五年には、このスライドを計算していったら、十分の一の価値しかないという計算になっているのじゃないですか。十分の一の価値だ。そうすると、いま積み立てる金が長くなればなるほどその価値は落ちていく、目減りしていくのだということは、この数字からも皆さん方が初めからその計算をしておられると思う。目減りを計算をして積み立てをやはり考えていかなければならぬということになっているわけです。これを考えたら、積み立てというのは、もう一度もとに戻って、どこから考えたって、積み立てれば積み立てるほど金の値打ちを下げさせている、実質価値を維持していないということをやっているのにすぎないのであって、そんなものはとんでもない、お金をほかす役割りをさせているではないか。ここに賦課方式というのを検討しなければならない要因を持っている。したがって、また掛金をいま単年度別に上げなくても給付の改善はできる、この状況の中で上げる必要はなくなるのじゃないか、私はそう思うのです。  これは、もう細かい算術計算は要らないはずですから、大臣、私は、この面からも何も積立方式にこだわる必要はないんじゃないか、速やかに賦課方式に変えられるべきだと思うのだが、いかがでしょうか。
  82. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 数字のお話はよいということでございますから、積立方式賦課方式かの点でお答えいたしますけれども、この年金制度の仕組みとして、基本的に、当初からもう一定の資格期間というものを年金支給要件にしない文字どおりの賦課方式年金を設計する、これがこれから新しい制度をつくる場合の議論としては、一つ議論としては成り立つと思うのです。現に福祉年金は現在、租税負担による賦課方式という形でやっておるわけです。しかし日本を初め諸外国の年金制度というものは、やはり一定の期間、その期間の長短はございますけれども、一定期間とにかく保険料を払って制度に加入しておって一定の事故が発生した場合に年金支給する、これが拠出制年金でございます。そういう仕組みをとっておる制度は、必然的に一定期間経過するまでは収入はあるけれども、支出は制度として原則的にないわけですから、当然その間はその差額が積み立てられる。もちろん積立金としてその運用収入を将来の収入に期待するという面もございますけれども、しかし何も私どもは積立金をためるために保険料を取っているのではなくて、積立方式による年金制度の経過的な問題として積立金が累積されるということでございます。  そこで、長い間に何か非常に大きな積立金がたまっていくというような印象を一般に持たれるのですけれども、実は年金制度にとりまして、あとたかだか二十年ないし三十年で成熟化の段階に差しかかるわけですから、そういう意味では、現在賦課方式云々という議論は、経過的な一時期の議論としてしか意味がない議論ではないか。ですから、もちろん制度の基本として、先ほど言いましたように、資格期間は要らない、一定の事故が発生すればだれにでも年金を出す、そういう制度をつくるなら、こういう問題はもともと起きない。しかし、そうではなくて一定の資格期間を要求すれば、その結果、必然的に積立金は累積されざるを得ない、それを御了承願いたいと思うのです。
  83. 寺前巖

    ○寺前委員 これは、だれにでも年金生活ができるようにするというのが国民年金の趣旨じゃないのですか。だから、そういうふうに考えたら、年金というものを一定の年齢に達した人にすべて支給するということになったら、それを若い諸君たちが皆で持ち合って老後を保障するというのは当然だし、しかも一番重要な問題は、今日戦後三十年たっていますが、私でもここにいま一万円札を何枚か持っていますが、しかし二十年前は、こんなものは一枚だって入ってない。そうでしょう。紙切れが変わってしまっているんですよ。金の値打ちの違いというのはそんなものです。だから、積立金がいっぱいふえると大変だけれども、大したことはないのだと言われる。それはそうでしょう。その時期になったら金の値打ちは変わっておるのです、いままでの歴史から見ると。だから、積立方式というものは、基本的に目減りをさせるものであって、そんなものはひどい話だ。それを利用する人は、たくさん金がたまればたまるほど結構かもしれないけれども、現実の国民にとっては何も負担増をしなければならない理由にはならない。  この問題は、もう終わりますが、大臣、基本的にお考えを直していただいて、現実的に国民生活の関係から言うならば、値上げはさしあたって何にもまして直ちにやめられることを私は要望します。  次に、国民年金について聞きます。  国民年金の加入者といのは農民や商工業者、零細企業に働いている方々、一般的に言うならば、低所得者が多い分野になると思います。  そこで、先進資本主義国においても、制度の違いはいろいろあるにしても、当然国民年金のようなものがあるわけですが、こういう層の諸君の年金問題は一体どうしているのか、財政負担について私は聞きたいと思うのですが、ひとつフランスの例でお聞きしたいと思う。フランスでは一体個人の負担がどの程度占めているのか。それは専門家だから年金局長にお聞きしましょう。
  84. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 非常に概括的な資料しか手元にございませんので、詳細なものは後ほどまたお届けしたいと思いますが、フランスの一般制度、これは被用者の約七〇%ということになっておるのでございますが、一応費用は労使で負担して、原則的に国庫負担はない。もちろん、そのほかに国民連帯基金という全額国庫負担によるのが基礎にございますけれども、いわゆる一般制度である被用者年金については、そういう状況でございます。
  85. 寺前巖

    ○寺前委員 もう一つようわからぬ、きちっと言ってください。
  86. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この国民連帯基金というのは、日本の場合、必ずしも国民年金相当の一般公的年金と言えるかどうか、福祉年金的な性格でございますので、ちょっと事情が違うのではないかと思っております。
  87. 寺前巖

    ○寺前委員 何を言っているのだかよくわからぬぞ。要するに農民層やらそういう層の年金制度というのは、財政負担はどうなっているのだと聞いておるんだ。本人負担で全部やっておるのか。だれでもいいから説明してくれ。
  88. 竹内邦夫

    竹内説明員 私の知っている範囲で答えさせていただきます。  農民を対象といたします年金制度につきましては、保険料は必要財源の十分の一程度しかないと思います。それから商工業者を対象といたします制度につきましても、保険料で賄います財源につきましては、大体三分の一程度だと思います。
  89. 寺前巖

    ○寺前委員 ようわかった。ぼくは、いろいろ細かいことば国会図書館の平山さんという方でしたか、この前フランスへ行かれて研究してこられたものを読ましてももらったし、お話も聞きまして、いろいろな制度があることは大体聞きました。  そこで聞いた問題というのは、いまの連帯基金の問題なんです。社会連帯基金というのですか、何かそういう種類のものである。要するに社会的な責務を持たなければならないという思想が、この年金制度の中に課せられているという問題、私は、これは当然日本でも研究すべき題材だと思うのです。たとえば農林漁業の従事者を見ると、昭和三十七年には三七・五%であったものが四十二年には三六・三%、四十七年には二七・五%と、この分野で働く人たちは激減してきている。そして、ここで食えなくなった人たちが労働者になって働くようになってきて、農村の疲弊が起こってきている歴史的な客観的な事態、フランスも同じような事態の中で、この社会的責務を大企業が持たなければだめじゃないかということが論議になって、こういう分野に対する負担をやろうじゃないかという話となって発展したのがフランスのこの連帯の話です。明らかにこの財源については、一般的な国庫のほかに大企業が責務を持つという社会連帯的な年金特別税を考える必要があるという問題は、国際的にいま全体として検討が始まっている、実施されつつある。  さてこのときに、この国民年金について、日本においても当然考えるべき筋合いのものではないかと私は思うのだけれども大臣、いかがなものでしょうか。
  90. 田中正巳

    田中国務大臣 諸外国の制度、私は、無学でよくわかりませんけれども、私の知っている限りでは、私、世界各国の年金制度を、諸国を歴訪して調べましたが、やはり諸外国でも被用者年金は非常に簡単にできて歴史も古いのですが、自営業者、日本で言う国民年金系統のものについては非常にむずかしく、発足がおくれ、歴史も浅く、また成熟化もいまだしというような状況であったように私は思います。  いまおっしゃったようなことについて、われわれ日本においても、そうしたことを参考にせよということについては、私どもも参考にいたしますが、現行制度におきましても、国民年金においては、いわゆる一般会計に依存するところが大きいというのは、やはりそうした思想と相似たるものがあるのではなかろうかというふうに私は思います。
  91. 寺前巖

    ○寺前委員 似てはいないのです。ちょっと違うんですよ。国庫は国庫で持つのです。それとは別にそういう社会的な連帯税という問題を考えたんですよ。これは、いろいろなほかの要素の経過のあることも事実ですけれども、しかし、それは着目すべき問題ですから、ぜひとも御検討をいただきたいというふうに思います。  しかも、私が、ぜひとも検討してほしいと言うのは意味があるのです。というのは、私ども申し上げましたけれども、単年度を考えてみても、あるいは二十年先まで考えてみても、厚生年金の方には何も掛金を上げなくても二十年間運用することは、可能性を一方では持っているわけです。片一方ではそういう可能性を持っている。その中にはもちろん給付の改善とか、あるいは労使の負担割合の問題とか、改善せねばならぬ点はいっぱいある。あるけれども、いまの体系は、それなりに負担増をしなくても二十年間やっていく財政上の問題はある。ところが問題は国民年金ですよ。国民年金はそう簡単に財政力があるというわけにはいかない。この場合に、フランスのような発想法をわが年金の体系の中に持ち込んで、たとえば緊急措置としていまの掛金が、先ほど千分の四十か五十あったら単年度はいけるというお話がありましたが、そのとおりです。いまの状況の掛金率すら要らない状況なので、そこで労使の関係の七、三負担問題も考慮に入れて、もしも大企業に対して一定の負担を持たせる、全体として料率は少し下げるということをやっても、五千億やそこらの金というのは、私は、いまの連帯税的なものを考えたならば、そうしたら国民年金の方の財政にとっては大きな位置を占めさせることができる。そうすると、さらにいくならば、私、去年お約束になったと理解をしておりました二万円年金の話の水準の問題への道だって、財政的に検討することは可能であった、私はそう思うのです。ですから、このフランスの検討された内容の水準、すなわち大企業におけるところの社会的な責務を果たす特別税の問題については、重要な課題として速やかに検討されるように私はお願いをしたいと思う。それが一つ。これは大臣のお答えを再度お願いしたい。  それから第二番目に、今度の国民年金の財政です。これを見ると、給付費は七千百三十六億円で保険料収入が三千九百九十億円、一般会計からの受け入れとして千二百億円、そして千六百八十九億円というのは積立金を取り崩してここにほうり込むのだ、それであと新しい積み立てとして一千二十二億円、こういう収支バランスを提起しておられますが、今度の法改正によって国民年金の給付時の三分の一の負担を国がやるというふうに改正されますね、これに伴って予算もこういう形で出てきた。ところが、その三分の一の一つは、積立金を取り崩して負担をしているのだということになっていますね。あの積立金は、国の分もあるかもしれないけれども働く者の側もあるのだ。国の側だけが積立金を取り崩して、国民の側は一体どうするのだ。勝手じゃないか。いわば自分の方は賦課方式に近いように現実の金をさっさと使うという方式を云々して、国民には積み立てをやらしていく。いま財政が困難だから窮余の策としておやりになったのだろうと思うけれども、困難なのは国だけではなくて国民も困難なんだから、やるのだったら一緒にやるべきじゃないのか。その点はいかがなものでしょう。  この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  92. 田中正巳

    田中国務大臣 フランスの制度につきましては私、詳しく知りません。いずれ時間を得ましたら、私としてはよく勉強をいたしたいと思います。しかし、いずれにいたしましても、国民年金の財政はまことに窮屈でございます。こうしたものの給付水準を上げるのに、何らかの形で財源を必要とするということがなければ、給付増はなかなか困難であろうというふうに思われるわけでございますが、先生おっしゃったところだけによりますれば、大企業から特別な負担を求めてこうしたものに充てたらどうか、こういうふうなことだとするならば、日本の現在の税体系ですと、法人税の体系をもう少しあんばいをいたしまして、法人税で取って一般会計の中に入れてやるのか、あるいはこうしたものについて特別の保険料を取り立てるのかよくわかりませんが、いずれにしても、これは法人税の一種の増税か付加税みたいなものを考えているということじゃなかろうかというふうに思われます。その点は検討もいたしますが、こうしたことについて、一体国民的なコンセンサスが得られるかどうか、努力はいたしても、今日なおかつ相当問題が多いのではなかろうかと直感をいたしております。  いずれにいたしましても、国民年金の系統に属する財源手当てについてのみならず、社会保障一般の財源について、今後いろいろ考えていかなければならぬ場面において、私どもとしては検討をする一つ参考資料にはいたしますが、いま少しく幅の広い範囲内で物を考えていきたいというふうに思っております。  第二点については、年金局長から御答弁いたさせます。
  93. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この積立金の取り崩しというような言葉から、何か国だけがいままで累積したものを自分のふところに入れたというようなふうに、ちょっと誤解される向きもおありなんですが、これは全くそういう問題ではなくて、要するに国庫負担方式を、いままでやっておりました拠出時に持つという方式を給付時に持つという方式に切りかえた結果、そうなりますと、結局いままで拠出時の負担として積立金の中に累積されている国費分は、給付費に切りかえれば、結局その分をそのままにしておきますとダブってしまうわけです。それを調整しようということでございますから、その辺御理解願いたいと思うのですが、そこで問題は、拠出時負担と給付時負担とどちらがベターかという政策判断になろうかと思うのです。私どもは、従来から、でき得れば給付時負担の方が財政上安定するのではないかということもございましたが、財政当局とのあれがありましてなかなか実現しなかったのですけれども、今回合意を見まして給付時負担に切りかえる、その結果、このような国庫補助の調整が行われることになったというふうに御理解を願いたいと思います。
  94. 寺前巖

    ○寺前委員 やはり同じことですよ。ダブるからと言うのだったら、国民の側もダブっているではないか、それは同じことではないか、それはインチキ理論だ、私はこれについてはそう思う。だから、そんなことではなくして、どうせやるのだったらきちんとやるべきだ。大体切りかえしなければならぬ理由もないと思うのだけれども、やったらやったで根本的に変えるのだったら変えてしまったらいいし、どうもやっていることが中途半端だ。しかし、これは時間もないからもう言いません。  もう時間も来てしまったので最後ですが、要望書を預かっておるのです。これを全部言うわけにもいかないが、サラリーマンユニオンというところから幾つかの要求が出てきている中で、速やかに公務員共済と厚生年金の格差是正をやれとか、老齢年金の一切を非課税にせよとかいうのは、これは前から言われている要求なんですね、この問題についてどういうふうにされるつもりなのか。  それから、春闘共闘からも幾つか出てきているわけですが、さっきもいろいろお話がありました七、三負担問題は、現実にもいろいろ団体交渉その他でもって実質的にかち取ってきている問題もあるのですが、そういうような問題とか、あるいは積立金の大幅還元を含めた管理運用の民主化という形で労働代表を審議会に入れろとか、これも長年にわたって言われてきた内容ですね。あるいは遺族年金の七割か八割かという支給の問題、こういう問題について皆さん方ももっともだと思っておられるのか。思うけれども、いろいろ金の都合もあると言うのか。金の都合でないものもありますね。こういうことについてのけりは、一つずつについて明確になっているのかどうか。この点は明確になっている、この点は不明確だ、この点については、その明確についてもいつの時期からこうするのだというようなちゃんとした計画があるのかどうか。長年提起しておられる問題に対して具体的にお答えになるのが礼儀だろうと思うのですが、ちょっと幾つか言ってみた点について簡単で結構ですから、整理をしてお答えいただきたいと思います。
  95. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 最初の年金制度間の格差是正と申しますか、不合理なアンバランスの是正の問題は、もうすでに発足いたしました厚生大臣の私的諮問機関の懇談会で重要な一つの問題点として今後検討いたすことになっておりますので、その結果を待って対処いたしたいと考えております。  第二番目の労使の負担割合の問題でございますが、これも諸外国等の例もございますように、現在の折半が唯一絶対のものであるかどうかについては御論議があろうと思います。わが国では少なくとも定着はいたしておりますけれども、しかし、これは退職金その他の企業福利施策がどうなっているか、ひいては税制等の問題もございますので、そういった問題も総合的に勘案して慎重な検討が必要であろうと考えます。  遺族年金の改善の問題は、今後も努力してまいりたい。  それから、積立金の運用問題でございますけれども、被保険者の意向を十分反映して、できるだけ有利かつ福祉に還元するという基本的態度に沿って今後とも改善に努力していきたいということでございます。
  96. 寺前巖

    ○寺前委員 審議会参加の問題は……。
  97. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 国年審の委員の構成でございますけれども、いまの方々がいつまでもということもございませんでしょうし、少なくとも被保険者と申しますか年金受給者、そういう関係の事情に十分通じておる適当な方がおれば、私どもは、そういう方を迎えることにはいささかもやぶさかではございません。
  98. 寺前巖

    ○寺前委員 課税問題はあなたのところと違うのか。——まあいい。終わります。
  99. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 次に、石母田達君。
  100. 石母田達

    ○石母田委員 きょうは私、年金問題で質問いたします。  初めに、お互いに御苦労様ですが、今週になりましてから月曜日が労災補償の法案、その次が建設労働法案と未払い賃金の確保法案ですか、その次が原爆被爆者のいわゆる医療と生活保障する法案、それから年金と、生活に関連のある法案が次から次へと出されておりますので、連日の夜間に及ぶ審議をしているわけであります。この審議されております年金の問題も、これまた国民生活に重大な関連をする問題でありますので、私どもも、この法案に対する賛否の態度は別といたしましても、できるだけ早く国会の中で審議をし、成立を図る、こういう態度で臨んでいるわけです。したがって、私たちの審議時間も、この間の厚生年金の同じような問題のときには、私どもの党にしましても一人二時間以上の持ち時間がありましたけれども、今回はその半分以下という状況になっておりますが、いま申しましたような事情で非常に限られた時間での質問でございますので、答弁の方もきわめて簡潔にお答え願いたいし、主として私は大臣の見解をお伺いしたいというふうに思います。  初めに、いま寺前議員の方からも提起されました一つでありますが、老齢年金に対する課税の問題であります。これは私もこの場で再三質問しておりますが、だれが考えても、老後の保障となるべき年金所得税がかかるというのは、どんな説明を受けても納得できない。これはまた年金受給者だけではなく、受給を予定される方々の非常に大きな不満であり、何とかしてほしいという問題であります。私は、年金というのは社会保障だと思うのだけれども、改めて大臣は一体どう考えているか、お答えを願いたいと思うのです。
  101. 田中正巳

    田中国務大臣 年金は、広い意味社会保障、そしてその年金の一部には社会保険形式をとっているものがございます。いずれにしても、広い意味では社会保障だと私は思います。
  102. 石母田達

    ○石母田委員 確かに社会保障だと思うのです。これは一致していると思う。これに所得税がかかる根拠というのは、これを給与所得だと見ているわけですね。それで所得税がかかっているわけです。そうすると、いまの大臣の見解とは——給与所得と見て所得税をかける、そうなると国は給与所得と見ているものに補助も出しているのか、こういう新たな矛盾もまた出てくるわけですね。この点について、いまの大臣の見解といま実施されている給与所得と見て所得税をかけるということとはどういうふうに大臣考えているのか、それに対してまた国庫補助を出しているということですね。
  103. 田中正巳

    田中国務大臣 これは、もう税理論に関係をいたしますから、詳しい話はひとつ大蔵省主税局から聞いていただきたい。  私どもといたしましては、こうしたものについてできるだけひとつ課税をしないようにということを考えまして、毎年のように実は大蔵省と折衝をいたしているわけでございます。私も、いまは大臣ですが、国会議員時代には、これでわあわあ騒いで一生懸命にやったものでございますが、なかなか大蔵省の全面的な賛同を得られないでおるわけでございます。まあこうしたことをがんばったものですから、主税局も老齢者控除制度というものを創設いたし、たしかいま七十八万だったと思いますが、こうしたものについて非課税限度というものを設けるようになりました。私どもとしては、さらにこれを努力いたしたい。  補助があるのにかけるのはおかしいというのと、補助をやっているからかけなければいかぬという議論もあったように私、記憶をしておりますが、いずれにしても、こうしたものについては余り税金をかけないでいただきたいものだなというふうにいまでも思っておりますが、政府部内ではまだこれを非課税にするということについてのコンセンサスを得ていないでおるというのが実態だと思います。
  104. 石母田達

    ○石母田委員 つまり、こうした二重取り的な、働いているときも勤労所得税を取られる、そうして働いたものとして社会保障として得られる年金からまた税金を取られる、こうしたことはどんなに考えても不合理、不当なものであることは明らかであります。したがって、いま厚生大臣が大蔵省に交渉しているけれども、なかなか政府部内のコンセンサスを得られないでいると言っているけれども、最大の障害は一体何なのか。それでまた、今後ともこれを毎回毎回繰り返してコンセンサスを得られないという理由でこのままにしておくつもりなのかどうか、もう一度私は大臣のこの点に対する見解と、大蔵省とか言っている根拠に対して厚生省は一体どういう反論を持って臨んでいるのか、こういうことも聞かしていただきたいと思います。
  105. 田中正巳

    田中国務大臣 私どもといたしましては、これについては、とにかく課税をしないでいただきたいということを毎年申して折衝をいたしております。しかし現状は、さようなところまでいってないで、老齢者控除制度というもので中途半端なものになっているわけでありまして、今後ともひとつ努力をいたしたいというふうに思っております。  なお、私は税については大蔵委員長の経験があるのですが、余り詳しくございませんので、先生御熱心ならひとつ大蔵委員会で主税局相手に猛烈にやっていただいたら助かる、こういうふうにまあ思うのですが、確かにこの主税局の反論の理由の中には、要するに保険料で納めた部分については、これを控除しておるということだから、この際、あのときに取ってないのだから、今度こっちで取らなければならぬというようなことを言っていたような記憶がございます。いずれにいたしましても、今後ともわれわれ努力はいたしますが、ひとつ先生も大蔵委員会等でまたいろいろと理論闘争をしていただきたいと思います。
  106. 石母田達

    ○石母田委員 ずいぶん情けない答弁で、あなたからの御一任があればいつでも交渉しますし、また厚生大臣にでもしてくれればなおさらやりますけれども大臣としても、あなたがいま責任を負っているわけですから、努力するけれども、いまの話だと、どうも大蔵省にはね返されて負けているというような感じなんだけれども、これを貫く上での新たな大臣努力、決意というものを、もう一度大臣に確かめておきたいと思います。
  107. 田中正巳

    田中国務大臣 大いに努力いたします。しかし、やりたいものですから、石母田さん、あなたもひとつ協力してくださいよというわけで、決して石母田さんにだけ押しつけて私どものほほんとしているとか勇気がないということではございませんから、念のためめにひとつ釈明をしておきます。
  108. 石母田達

    ○石母田委員 これまた先ほどの問題でも寺前議員の要求の中に出ていましたが、スライドのいわゆる適用実施の繰り上げの問題であります。これは、おととしでしたか、ここでいろいろ問題がありまして、そしてそのときは、たしか実務上の障害というものでありまして、その問題について私も業務課の方へ視察に行きまして、いろいろの問題点をつかんでまいりまして、厚生大臣にそれを要請し、四十九年でしたか、一定の解決が得られて繰り上げが実施されたわけですが、その後インフレがいろいろまた叫ばれている今日、この繰り上げ実施の要請は非常に高まっているわけであります。したがって、この問題についていまどのように考えておられるか、そして、それを実現する上で最も大きな障害は何なのかという点についてもあわせてお答え願いたいと思います。
  109. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 スライドの実施につきましてですけれども、前年度の消費者物価指数というのが確定いたしますのが、例年五月上旬ごろでございまして、したがって、私どもとしましては、このスライドを年度当初に遡及して適用することにつきましては、支払い調整——支払い調整と申しますのは、結局物価指数が決まりました場合に、差額を支給しましたり、あるいは増額支給した分を調整する、こういうような問題、あるいは失権の取り扱いというような問題があるわけでございます。スライドを行います場合に改定通知、これは現在、五百三十万人を超える程度の受給者に改定通知を出されなければいかぬ、さらに毎年約百万人ずつ受給者が増加していく、こういうような増大する年金の改定業務というものがあるわけでございまして、したがって、この処理のために数カ月を要するというようなことから、実施時期の繰り上げということにつきましては、相当な困難、があるわけでございます。  具体的な問題といたしましては、通算老齢年金支給月が六月でございますので、これの改正ということになりますと、消費者物価指数が決まりましてからわずか一カ月ぐらいの余裕しかない。この間に改定通知を差し上げるということは非常にむずかしい、かように考えております。
  110. 石母田達

    ○石母田委員 そういう理由は、おととしの論議でもなされて、そして、あの後聞きましたら、プログラマーの方も一番ここが障害だったのですけれども、人員もある程度ふえまして、それから実務上の問題についても、かなりいろいろの問題のあったビデオも入ったようですし、改善がなされているようでございます。ですから、スライドの問題について繰り上げについては、あなたがいま冒頭に言っているように繰り上げしたい、した方が、これは受給者にとっていいわけです。ただ、その問題について、この業務上の障害ということが最大の困難のように挙げられておりますが、私の聞くところでは、その点での一定の解決は前進していると思うのですけれども、さらにこのスライドの実施の繰り上げについて、一体そういう障害を除去して繰り上げを実施する意図があるのかどうか、その対策なども含めてこれは大臣に直接聞きたいと思うのです。
  111. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 私どもといたしましても、このスライドの問題につきましては、かねて国会でもいろいろ御議論をいただいておるところでございますので、本年度はコンピューターを一台、そういうような業務課の業務量に対処するための施策としまして増設する、こういうようなことも考えておるわけでございまして、当面通算老齢年金支給月が六月であるということが非常に大きな問題でございますが、そういう問題も含めまして、今後どういうふうにしましたならば、スライドの時期をもっと早くすることができるかということについて検討を進めておるところでございます。
  112. 石母田達

    ○石母田委員 大臣、いまのような答弁を事務当局がしているのですけれども大臣としてもスライドの実施繰り上げにそういう努力検討をされておるようですけれども、それを促進させる上で大臣としての見解をお伺いしたいと思います。
  113. 田中正巳

    田中国務大臣 スライドの実施時期については、従来はもっと遅かったわけでございます。速やかにやれ、こういうことでございますので、たしか四十九年、五十年は本則ではなしに特例で八月、九月にしておるわけでございまして、大いに努力をいたしました。これからさらに短縮が早くやれないかどうか、これについては、私はできるだけ早くやりたい、かように思っております。そのためには人員、機械化あるいはまた、このやり方についての実際の年金支給に関する制度といったようなものにも工夫を加える余地がないかといったようなことも考えて、できるだけ早くやりたい、こう思っております。理想としては、私はもう少し繰り上げることが必要だというふうに思っておりますが、来年すぐできるか、こう言われれば、私は、これまた約束して来年しかられてはかないませんから申し上げませんけれども、私としては、できるだけのことを早くやるようにいたしたい。  なお、さっき言った通算老齢年金の期日が早過ぎるものですから、これについては、また少し考えなければならぬと思うが、原則としては、私どもは、そうした理想に近づけるための万般の努力をいたしたい、かように思っております。
  114. 石母田達

    ○石母田委員 もう少し私はこの問題について真剣に考えてもらいたい。それでいま、いつも出される業務上の実務上の問題については、大臣も行かれたかどうか知りませんけれども、業務課の一番現場のところで大変なところですね、そういうところについて、ぜひそういう障害になっている問題を解決して、いま言われるスライドの実施の繰り上げをできるだけ早く実施するということについて、そういう実態調査も含めましてぜひ大臣の緊急な処置を願いたいと思います。
  115. 田中正巳

    田中国務大臣 例の高井戸の業務課には、私は就任早々行って、よく知っております。その後、一年ほど行っておりませんから、また、なにしようかと思っていますけれども、とにかく早めることについては、いろいろな角度から努力をいたしたいというふうに思っております。
  116. 石母田達

    ○石母田委員 もう一つ、これまた長い間の要望であり、ここでも再三論議されておりますいわゆる福祉年金支給月の繰り上げ、特に一月にもらうものを十二月にやってほしいということで、これはいよいよ郵便貯金の問題であるとかいうことで、実務上といいますか、大きな意味での実務上の問題で障害になって、これが実現されていない。あるいはまた九月にもらうのをぜひお盆の八月にもらいたい、こうした問題について、私どもは、ぜひこれを実現させてあげたいという点について、田中厚生大臣として特別のこの問題に対する措置、努力をお願いしたいと思いますが、この点についてどうですか。
  117. 田中正巳

    田中国務大臣 この問題については、さっき多賀谷委員からの御質問の問題とも関連をいたすわけでありますが、何と言うのですか、実際問題としてわかるのです。     〔竹内(黎)委員長代理退席、住委員長代理着席〕 たとえば暮れに欲しいとか言うのですが、これについては、いまの福祉年金支給の手続、業務の実態等々いろいろめんどうな問題があり、何よりかによりやはり郵便局の窓口問題というのが一番のネックになっているようでございまして、郵政等といろいろ話しておりますが、その方向努力はすべきものと思いますが、いまにわかにこれについて、十二月に払いますとか十一月に払いますとかいうふうなことについてお約束はできませんが、事情もわかりますから、そうした方向努力をいたしたい、こう思います。
  118. 石母田達

    ○石母田委員 これは何年もかかって毎回そういう方向の、内容の御答弁なんですが、今度こそそういう答弁が最後になるようにぜひとも田中厚生大臣の手によって実現していただきたいということを、再度大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  119. 田中正巳

    田中国務大臣 いままでどういうふうにして答弁しておったか知りませんが……(石母田委員「いまと同じ」と呼ぶ)この形式は、あるいは文言は同じかもしれませんが、取り組み方は大分違うというふうに私は思うわけであります。ですから、郵政省とも具体的にいろいろ話し合いをいたし、そのネック等についても今日ぐらい詳しく調べているときは私はないと思うのであります。私も長いこと、いまこそ厚生大臣ですが、前には年金などに心を寄せている議員としていろいろ見てきましたが、今日ぐらい精細にまたまじめに取り組んでいる時期はございません。したがって、答弁の内容は、文言としては同じであろうと思いますが、われわれの取り組み方についてはかなり前向きになっておるということを御理解願いたいと思います。
  120. 石母田達

    ○石母田委員 いまの決意は、確信は、恐らく近くそういうものが必ず実現するだろうということを私も確信しております。  それではもう一つ、これまたあなたたちと絶えず論戦して、いまだに解決していない労使負担割合の問題であります。  先ほどの答弁の中にも若干ありましたが、諸外国との比較を見ましても、この五割、五割、いわゆる半々の負担ということが法律で決められている。しかし実際には、労使間の中でいろいろの論議あるいは協定などで実際の負担割合が変えられているところが多くなっているわけです。そうしたことが一体、法律上から言うとそれは違法行為というものになるのかどうかということについて、改めて私は厚生大臣の見解をぜひ聞きたいと思っているのです。
  121. 田中正巳

    田中国務大臣 社会保険料の労使負担折半、これは長い間定着をしているわが国の制度でございます。これを変えろ、こういう御意見がずいぶんあります。実態論とこれの法律上の位置というものについての御質問と二つ出てくるわけですが、これについては労使折半を崩した場合には税法上の問題が出てきやしないかというふうに思います。ですから、この問題については、企業会計の上に大きな影響が出てくるというのが事実だろうと思います。この労使折半の原則を崩すということについての経済上の影響あるいは賃金形成の影響等々については、なおひとつお互いにこれは詰めていかなければならぬ問題があろうというふうに思っております。
  122. 石母田達

    ○石母田委員 つまり、これは健保でも厚年でも同じですけれども、使用者が労働者の分を一括して納める義務があるわけですからね。これについては、納めない場合については罰則がありますね、しかし、その折半ということについての罰則はあるのですか。
  123. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 折半について特段の罰則はございませんで、そういう意味では形式的な違反ということになろうかと思うのですけれども、どうも私どもの立場では、保険料総額として事業所単位に納入告知書を発し、総額として受け取っておりますから、その中身がどうなっておるかは直接的には把握できないわけなんです。ただ税の関係がございますから、私は、その実態として労使で何らか話し合いがあったとしても、少なくとも税の取り扱いがございますから、税務当局への届け出は一応折半という形式になっているはずだと思うのでございますけれども、それ以上の実態は詳細把握できる立場にございません。
  124. 石母田達

    ○石母田委員 そうしますと、結局、国と使用者、納める義務者、そういう関係だけであって、その使用者と労働者がどのようなふうになっているかということは、把握するすべも、税法上は別としてあなたたちとしてはないし、また、そこまで立ち入ってどうやっているかということで、この法の実施を厳正にするとか、そういうものとしては見ていないということですか。
  125. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 いままでそのような事情もございませんでしたし、まあ調べようと思ってあれすればわかるとは思うのですけれども、こちらとしては保険料総額が納入されておれば、それで一応手続的には完結しておりますから、従来はとやかくその内部に立ち入ったせんさくはどうもいたしていないようでございます。
  126. 石母田達

    ○石母田委員 それは大臣、そうするといまの答弁でよろしゅうございますか。つまり、国としては保険料を納めてもらえばいいというところでは、もちろん法ですからチェックはするでしょうけれども、それ以上の労使間の問題について立ち入ってせんさくするつもりはないということについていま答弁がありましたけれども大臣としてはそれでよろしゅうございますか。
  127. 田中正巳

    田中国務大臣 実際の取り扱いについてはいま年金局長が申したわけであります。保険管掌の役所としてはそうした方向で相臨んできたということだろうと思います。しかし、開き直って、それでどうでもいいのか、こう言われますと、やはり法律で定めているものでございますから、それがそれでいいのだというふうにしり抜けにはまいりません。やはり折半でやっていただくのが正しいということで法律を施行させるような立場に立たなければなりませんが、実際問題としては、われわれの方では把握もできませんし、またフォローもしていないというようなところであるというふうに御理解願いたいと思います。
  128. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると、たてまえはたてまえだけれども、そこまで立ち入ってせんさくするつもりはないということでよろしゅうございますね。いまの局長の答弁、そうですか。そこだけ、イエスかノーか言ってくださいよ。局長の答弁を変えるのかどうかということなんです。
  129. 田中正巳

    田中国務大臣 ですから、実際の取り扱いはそういうことであるということであります。開き直ってそれでいいのかと言って、せっかく法律の条文、原則があるのにかかわらず、それはおまえらはざる法で知らないと言うのかと言われれば、いやそれは困ります、こう言わざるを得ない。その辺のところで大体石母田さん、おわかりになるのではないですか。
  130. 石母田達

    ○石母田委員 どうもあなたはいろいろアルファがつくから……。局長が答弁したとおりでよろしゅうございますかというふうに聞いたのだから。そのとおりですとかプラスアルファとか、ちょっと気にかかるのでもう一回、局長の答弁でいいのですか。
  131. 田中正巳

    田中国務大臣 局長は実情を申し上げたわけでございます。
  132. 石母田達

    ○石母田委員 なかなかそのとおりというふうに言わないけれども、その内容はそのとおりだと思います。  それで、この問題については、いわゆる労働者の社会保障の原則からいってもいろんな社会保険の性質からいっても、本来は労働者の負担がない方が一番いいわけですが、さしあたって使用者が七とかあるいは労働者が三とかというような問題で私どもは要求しているわけですし、またそうした要求が出ているわけです。この実施については、中小業者、零細業者の場合どうするかという実施上の問題はいろいろあると思いますが、そうして労働者の負担をできるだけ軽減していくというのはまさに世界の趨勢であろうというふうに私は思います。このようなところで、労働者と使用者の負担割合を法によってこうした規制をしていくという問題について大きな意味検討していく、あるいはまた実際の実施の中で、運用の中でも、特に定額、そういうようなものに対する処置として負担割合を労働者には軽減する方向で変えていくという問題について、ぜひ私は検討していただきたいというふうに思いますが、この点についてどうでしょうか。
  133. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 現行の負担割合をどうするかという問題につきましては、諸外国等の例もあるわけでございますが、これは単に保険料の負担というだけではなくて、企業内福利、あるいはもっと大きく言えばそれぞれの国における税体系等の問題も関係あろうと思われますので、非常にむずかしい問題ではございますけれども、将来の検討課題として考えていかなければならぬというふうに思います。
  134. 石母田達

    ○石母田委員 当然御承知のことと思いますが、昭和三十七年の社会保障制度審議会の「社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告」という長い名前の答申があるわけですね。この中には明らかにこの問題についての勧告もされているわけですから、ぜひこうした問題について、いま申しましたような法改正も含めての再検討をしていただきたい。これまた御承知のように、雇用保険法の場合に、これまで五対五であったものが、千分の十三の七・五というのを今度八に変えました。これは、千分の三というのはいろいろ論議はあると思いますけれども、とにかく法の改正によってああした問題も出てくるわけでございますから、ぜひ私どもはそうしたことも含めての再検討をしていただきたいという点で、これまた大臣から、いまの局長答弁でいいかどうかを答えてください。
  135. 田中正巳

    田中国務大臣 実態は年金局長の申したとおりでございます。これについては、単なる社会保険料の労使負担割合ということだけではなしに、やはり大きな日本の経済活動の中の一つの問題点として大きく受けとめなければならぬ側面もあろうと思いますし、これは賃金形成にどういうふうに影響するのかという問題も一つあるだろうと思うのです。ただ、七、三にしたのだけれども、今度は労働者の賃金形成がそれを織り込んでやられたのじゃ同じことだという議論も、私、実は耳にいたしました。そうした労働賃金の問題あるいは産業政策的な問題等々、いろいろな角度から検討はしなければならぬ問題じゃないかと思います。
  136. 石母田達

    ○石母田委員 社会保障のあるべき本来の姿というのは、労働者の負担によるべきでない、国と資本家がいずれか、あるいは双方これを負担するというのが、モスクワの第五回の世界労働組合大会で採択された社会保障憲章の中でも明らかに掲げられている原則でございますので、そうした方向への前進としてぜひ検討していただきたいというふうに思います。  最後に私、時間がございませんので、いわゆる調整年金、企業年金です。厚生年金基金の問題について質問したいと思います。  まず初めに現状ですが、この加入者数、それから不況とかインフレの中でこの基金がどのような状況にあるか。たとえば解散というようなものの申請がふえているとか、あるいはそうした問題が起きておるところが多いとか、現状、この不況、インフレの中でどうした変化が起きているかということについて初めにお伺いしたいと思います。
  137. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 まず、現状でございますが、五十年三月末現在で基金の数は九百十七、加入員は五百三十二万九千人でございます。不況下における解散等のお尋ねでございますが、今日までに解散した基金は三つでございまして、最近になって解散等の動きを耳にしておりますのはこのほか二つございますけれども、まだ手続はなされておりません。
  138. 石母田達

    ○石母田委員 その三つの中に日刊工業新聞の解散問題が入っていますか。
  139. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 すでに解散した基金の中には入っておりません。
  140. 石母田達

    ○石母田委員 御承知のように、これまたここの国会で論議された日刊工業新聞の企業年金の問題について、これは都労委にまで出された問題で、その中で厚生省がこの導入に当たって、組合が残念ながら分裂しましたが、片方の組合の意向に反してこれを導入したというような問題が出されているわけであります。いよいよ——いよいよと言うとおかしいけれども、この企業年金が解散ということになりまして申請が出されているというふうに聞きましたが、この解散に対して厚生省が介入している、つまり解散を抑えるとか、あるいは解散の後にも何か、これは加算型でありますから、代行型に変えろとかいうようないろいろの介入らしき指導をしているというふうに聞いておりますけれども、この点について聞いておりますか。
  141. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この当該基金につきまして、関係者から将来見込み等の事情の聴取をしたことはあるようでございますが、それ以外の指導ないし行政介入と申しますか、そういったことはないそうでございます。
  142. 石母田達

    ○石母田委員 これは申請されているのですか。
  143. 持永和見

    ○持永説明員 現在の段階ではまだ解散の申請はされておりません。
  144. 石母田達

    ○石母田委員 私の聞いているところでは、四月二十一日ですか、規約改正が認められて、そして五月、それは一カ月間の何か財産の問題を出さないと解散の申請ができないというんで、今月末か何かに出すというふうに聞いておりますけれども、そういう、すぐ出せるのですか。
  145. 持永和見

    ○持永説明員 先般の規約改正が、大体事実上解散を前提にして規約改正の認可申請がございまして、それを受けて私ども規約改正の認可をいたしまして、近く解散の手続が出るだろうということは当然私どもとしても理解しております。
  146. 石母田達

    ○石母田委員 解散の手続が出ればそれを認めることになりますね。
  147. 持永和見

    ○持永説明員 所要の要件さえそろっておれば当然認可いたします。
  148. 石母田達

    ○石母田委員 この問題についてはとかくそういううわさが絶えないのです。全体として、この企業年金について厚生省が積極的にこれを普及する、あるいは解散に対してはこれを抑えていくというような傾向があるんじゃないかということをあっちこっちで聞くわけなんです。もともと企業年金、調整年金については、もうかっておる企業は保険料を、厚生年金の方を納めないで自分のところに加算するというような、大きく言えばそういう性質のものですよね。企業の格差がまずできる。それだけじゃなくて公的年金との差ができる。こうしたものが、いまそういう格差を何とかしてなくしてほしいということで、厚生大臣もこの前答えていたように、その一つに一元化の問題で出ているわけですよね。こうしたことに対してますます格差をつくるようなこういう調整年金というものを一体普及する、あるいはこれを保護し助成するという問題について、創立の時代からわれわれは意見を持っていた。私、四十八年の六月の質問でもこのことについて質問をいたしました。私は、これから低成長率というような時期がかなり長く続くかもしれないというふうに言われている時期の中で、しかも不況とインフレ、このような時期のもとにこうした調整年金、企業年金が存続していくという上においては、大きな困難がふえこそすれ減りはしないと思うのですよ。にもかかわらずこの問題についてもし厚生省がそういう態度をとっていると、政府は一体どういう考えでいるのかということについて、あくまでもこれを普及させる方向でいくのか、このような時期にそのあり方についても含めて検討されているのか、この点について私は大臣の見解を聞きたい。
  149. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この厚生年金基金創設の趣旨はもういまさら申し上げるまでもないと思いますけれども、実態といたしましてはほぼ普及したんではないかというふうに私どもも見ておりまして、最近の数字を見ましてもここ一両年は年間二、三十件の新設でございますから、問題は、このすでに認可されておる九百を超える基金を健全に育成と申しますか、そういうことが私どもの主たる任務ではないかと思っております。正直言いまして、四十八年の改正に伴いましてこの基金制度のあり方については実はいろんな論議を呼んでおりまして、現在の基金そのものを将来どうするかというのは実は私ども頭が痛いところでございますが、これは基金内部でもいろいろ検討がされておりますし、私どももやはり、長い目で見れば民間企業におけるいわゆる企業年金というものは、諸外国の例を見ましてもむしろ最近では強化するような方向でございますので、そういうことで対処いたしたいと思っております。
  150. 石母田達

    ○石母田委員 ちょっと聞きたいんだけれども、金融機関に対する積立金の額と、その金融機関が取っている手数料、ありますね。これの総額でいいからちょっといまのところを説明してください。
  151. 持永和見

    ○持永説明員 年金基金の資産状況でございますけれども、本年、五十一年の二月末で一兆三千六百五十億円でございます。委託手数料でございますが、信託、生保、そういったところに業務を委託しておりまして、その手数料が四十八年度分で八十六億円でございます。
  152. 石母田達

    ○石母田委員 これは大変なものだ。私がちょうど聞いたときは、まだ発足して間もないけれども、しかし四十八年のときには二千八百億くらいだった。それが一兆になっているんだ。そしてその手数料が八十六億だ。これは大変なものですよ。ですから、金融機関が、企業年金をやるときにばあっと、立入禁止が出るほどこれを取るために入ったというのはここにあるのですよ。これはもうほとんど大きな信託会社と、これは名前はこの間出されたが、大きな銀行と生命保険ですよ。  もう一つ聞くけれども、政府の保証債、あれはいま何%になっています。いわゆる財政投融資資金の方だ。
  153. 持永和見

    ○持永説明員 積立金の中で政府保証債の購入割合は二三%でございます。
  154. 石母田達

    ○石母田委員 二割三分も政府の保証債を買って、いわゆる財政投融資資金に入っているわけですよ。こういうことを見ましても、この企業年金というものが、いわゆる社会保障という基本理念からいっても明らかにこういう格差をつくるものをやっていく、あるいは労務管理に利用されているという面に政府が一体どういう態度をとってきたか。こういうことで、先ほど日刊工業新聞で言われているような事態が言われるという中には、こういう金融機関が非常にこれによって大きな一定の利益を受けている、あるいは政府がこれによって一定なまたこれを利用している。こういうところに、企業年金のあり方にメスを加えて、本当にこれを一体このまま存続させるのがいいのかどうかということまで含め検討を私はいますべきだと思うのですよ。こういう点について私は大臣に、企業年金、調整年金のあり方についてそういうことまで含めた再検討をもう一回ぜひ考えていただきたい。これは大臣の御答弁をお願いいたします。
  155. 田中正巳

    田中国務大臣 いわゆる企業年金、調整年金制度というものは、それはそれだけにまたメリットがあるということで制度を創設したものでございます。しかし、発足当時から、そしてその後、いろいろな問題点が出てきて指摘されているところでございまして、したがいまして、私どもはこうした問題点を克服して、企業年金というものが堅実にやはり育っていくというふうな方向で指導をしていきたいというふうに思っております。細かい問題についていろいろ改善すべき問題があろうというふうに思われますが、それだからといっていま企業年金制度、これをやめてしまうといったようなところまではつながらない。やはりメリットもあることでございますから、このメリットを助長していくという方向努力をいたしたいと思います。
  156. 石母田達

    ○石母田委員 時間がないからこれ以上論争しませんけれども、そういう育成するというふうな方向については反対です。私はこの問題について、いますぐなくせとかなんとかということでなくて、先ほどからるる述べておるような方向で、この間の国会、三年前に述べたような同じ理由から、この企業年金、調整年金について、いわゆる公的年金制度との関係、社会保障年金の根本からしても、またこれが現実に金融機関や政府のそういう財政投融資に使われているという現状においても、このあり方について根本的な再検討を望んで私の質問を終わります。
  157. 住栄作

    ○住委員長代理 この際、午後二時三十分まで休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ————◇—————    午後二時三十一分開議
  158. 熊谷義雄

    熊谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生年金保険法等の一部を改正する法律案について質疑を続けます。岡本富夫君。
  159. 岡本富夫

    ○岡本委員 この法案の前に、先日の委員会で、ベラベラ島の生存日本兵についてはっきりしたお答えがあのときに大臣からもなかった、前向きということだったのですが、その後厚生省としてどういうような検討をされて進めているのか。
  160. 田中正巳

    田中国務大臣 援護局が来ますと詳しい御説明ができるのですが、この前のときはいつの御答弁だったか知りませんが、六日に関係者、たとえば当時あそこの作戦に参加しておった帰還兵の人等に来ていただきまして様子を承りまして、その結論は、まずおらないのじゃないかと思うが、しかしおらないと断定もできない、こういうようなお話であった由であります。そこでわが方といたしましては、外務省を通じまして現地政府に対して、かようなうわさがあるので調査をしていただきたいというふうなことを政府間ベースで依頼をいたしたというところが今日までの状況でございます。     〔委員長退席、住委員長代理着席〕 その状況に応じましては、政府が直接のアクションをとり得る場合もあり得るだろうと思いますが、とりあえず、従来もそういう方法で、プロセスでやってまいりましたものですから、今回もそのようなことでやっているというのが現状でございます。
  161. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで大臣、きのうの報道、あるいはまたテレビなんかも報道いたしておりますけれども、全国のソロモン会ですか、この人たちが、戦友を私たちの手で調査をするんだ。それから、当時この地方から復員した人、あるいはそういった人たちの証言を見ましても、相当この中にまだ残っておるということは非常に確実だということであります。同時にまた、来月調査団を組んで行くんだということでありますが、それにはやはり、何か見ますと約一千万円の費用がかかる、それを募金をするんだというようなことを言っておりますが、私は一この前の小野田さんあるいは横井さん、こういう人たちも厚生省が相当力を入れた、そのためにああして救出された・世界的な話題になったことでありますから、やはり厚生省がもう少し前向きに援助もしていくということが大切じゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  162. 田中正巳

    田中国務大臣 あなたは、あそこから復員してきた元軍人に聞くと、おることが確実だと言うのですが、そうは私は聞いておらないわけでございまして、まずそういう方はおらないんだろうと思うが、おらないと断定することもいかがかというような程度のお話だったというふうに私は聞いております。そこで、御承知のとおり、われわれとしては外交ルートを通じて先方の政府に対してこういうことの調査をお願いするということでありますし、近くこの島については遺骨収集が行われるということでもございますので、そうした機会も考えて適当に対処をいたそうということで、非常に心配をして積極的にやっているわけです。  ただ、浜崎さんが何か急に現地へ伺うという話がその後報道されているわけであります。六日に伺ったときにはそういうお話がございませんでした。それならそれでちょっとおっしゃっていただければという気持ちもせぬでは実はないわけでございますが、これにはいろいろないきさつがあったというふうに聞いております。私もこういうところで申し上げるのはいかがかと思いますし、それにはそれなりの、こういうような発表をせざるを得なかったような事情もあるように聞いております。いずれにいたしましても、われわれが国費をもってこうしたことに対処するためには一定の手順と一定の手続がやはり必要でございまして、浜崎さんがこういうかっこうで行くのについて一千万円のお金が要るが、これをいまにわかに政府でというようなことについては、ちょっとただいまのところさようにはまいらぬということでございます。もちろんわれわれとしては積極的にこの問題と取り組む所存でございますが、従来もそのようなことで、小野田さんのときも横井さんのときもそういうふうな方法をとってきましたものですから、そうした同じようなやり方でこの問題について対処いたしたいということでございまして、決して投げやりだったりあるいは不熱心であるということは、全然私どもの役所としてはそういうつもりはございません。
  163. 岡本富夫

    ○岡本委員 この間、大臣はあのテレビをごらんになりましたかね。私はちょっとこの日にちを忘れましたが、テレビを見ておりますと、ちょうどこの付近から復員された方々が二人出ておりましたがね。そうして、当時の作戦といいますか、あるいはまた撤退といいますか、当時は撤退するのも転進と言うたわけですが、その当時のことを非常に詳しく言っておりまして、そういう面からしましても、私も軍隊におりまして戦場におりましたからよくわかるのですが、それから見ますと非常にこの可能性は強い、こういうように考えられるわけです。したがって、先ほど大臣が、いるかいないか、いないように思うけれどもいるかもわからぬというような、いない方が強いような発言のように思われるのですね。したがって、私はできるだけ早くこの調査をした方がよい。この前申し上げましたけれども、あれは小野田さんと一緒にいたもう一人の方が亡くなっていますわね。ちょうど帰ったときその奥さがいらっしゃった。本当にそれはもう何といいますか、私はあの姿を見まして、生存で帰った人と向こうで亡くなった人の差というものは非常に大きいですよね。こういうことを考えると、まあこの報道を見ましても六十歳を越しているかもわからない、この時分の補充兵といいますと相当年がいっていましたから、私たちより五つ六つ上でしたから、一日も早く、一刻も早くその確認をして救済をしていくということが私は非常に大事だと思うのですね。これはもうほかの省ではできない、厚生省以外に方法はないわけですから、大臣、もう一つ局長にも督励をして、できるだけ早く救済をしていくというようにしてあげたい、こういうように思うのですよ。いかがですか。
  164. 田中正巳

    田中国務大臣 結論は先生と一緒でございます。私どもも、私の援護局も大変に熱心にこれについては調査もいたし、また取り組みもいたしているわけであります。ここにおられたという兵隊の性質というようなものについても、われわれ大臣でさえが実は原局からいろいろ説明を受けているわけであります。どういう部隊が、またどういう態様でここにおったか、あるいは部隊が建制部隊でない兵隊であるといったようなことについてもいろいろな問題があるということを、逐一私も実は原局から聞いておるわけでありまして、そうしたことを踏まえて、できるだけこの問題について遺漏なきよう積極的に取り組む所存でございますので、ひとつ今後とも政府の意のあるところをよく見ていただきたいというふうに思います。
  165. 岡本富夫

    ○岡本委員 私、一つだけ確かめておきたいのは、遺骨収集をやるような計画があるように聞いておりましたが、それ以前にこれがはっきりすればやはり調査団を出してそれで救済するか、この点だけちょっとお聞きしておきたい。
  166. 石田武雄

    ○石田説明員 大臣が先ほど御答弁申し上げましたように、先生も御案内のように、情報はいずれも、浜崎積三さんが、ギゾ島におきまして見た、聞いたという人からさらに伝え聞いたという問題でございます。したがって、現在生存者が残留しておるかどうかということにつきましては、私ども相当数の復員者を参考人といたしまして今月の六日に調査を実施したわけでございますけれども、そのときの状況によりますと、少なくとも参考人として集まりました方々の周辺においては撤退漏れはないはずである、しかしながら深夜の、しかも至短時間の撤退行動であったために、あるいは撤退命令等が十分伝達できなかったので取り残しがあったかもしれない、こういうことでございますのでいずれとも断定しがたい、こういう状況になったわけでございます。そこで私の方といたしましては、早速五月七日に外務省の方にこの情報の確認方を依頼したわけでございます。その回答結果によって、その回答に応ずるような処置をしたいといま考えておるわけでございます。いま先生御指摘ございました遺骨収集の問題につきましては、かねて外務省を通じまして現地政府の承認方を求めておるわけでございますが、それによりますと、早ければ七月ごろ承認が得られるんではないか。したがって、七月以降のそういう機会にあわせてこれを実施したいということでございます。
  167. 岡本富夫

    ○岡本委員 こればかりやっておりますとあれですが、できるだけひとつ配慮をして救出をしていただきたい、これを要望しておきます。  次に、ちょっと大臣に念を押しておきたいのですが、法案が上がるたびに附帯決議というのが超党派でつけられるわけであります。この附帯決議に対するところの考え方、附帯決議に対して、その趣旨を体して努力いたしますで終わり、こんなんじゃ言うただけで何にもならないので、その附帯決議に対するところの態度、あるいはまたそれをどういうように——これは大臣がかわりましても厚生大臣はその職でありますから、どういう決意をなさっておるのか、これをひとつ一遍承っておきたいと私は思うのです。
  168. 田中正巳

    田中国務大臣 附帯決議というものは、法案審議の過程に出てきた国会のあるいは委員会の御意思でございますので、したがって、われわれとしてはこれを尊重いたしまして、その実現方に努力をすることがたてまえでございます。そういう趣旨でわれわれとしては附帯決議というものを受けとめておるわけでございまして、いかに閣僚がかわりましても、やはり附帯決議というものは残っておるわけでございますので、われわれはその後の政策策定については常日ごろ衆参両院の附帯決議というものをよく調べまして、この点は何とかならないかとか、この点は実現をいたすべきだとかいうふうに、十分その後の政策の策定についての非常な、参考というよりも一つのメルクマール、基準といったような考え方で臨んでいるのです。  しかし、附帯決議の中にはかなりの複雑多岐にわたる条項がございまして、中にはすぐには実現をできないもの等もございまして、あるいは、ことし出したがその次の年に出てきた法律案、施策にそれを完全に実施していないものも間々あることはありますが、しかしそれも、国会の意思ですから、その機会にできなければ次の機会というふうに、かなり尊重をし、かなりこれに拘束をされてやっておるということは事実です。事実われわれも、附帯決議はどうだったのだろうかというようなことを常日ごろひっくり返して見るということは、しばしば行政当局にはあることでございます。
  169. 岡本富夫

    ○岡本委員 まことに御丁寧な附帯決議に対するところの尊重度、附帯決議について今後努力しますと言うただけでしまいではないという御発言をいただいて心丈夫に思います。  そこで、これは先々国会ですか、こういう附帯決議があるのは御存じだと思うのですが、児童手当につきまして、特別児童扶養手当等の支給に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議、   児童手当及び福祉手当の支給額を一層増額する等支給内容の改善充実を図ること。   扶養義務者等に対する所得制限を更に緩和すること。   ILO第一〇二号条約の基本的事項の一つであることにかんがみ、長期的展望にたって、積極的に制度の改善を図ること。 という中で、児童手当につきまして一つ念を押しておきたいのです。八月に国民の意識調査をして五十二年度に改正をなさるやに報道されておりますが、これについて、児童手当についてはどういう考え方で改正をなさろうとしておるのか、見直しをされようとしておるのか、この点をちょっと念を押しておきたいと思うのです。
  170. 石野清治

    ○石野政府委員 児童手当制度の今後のあり方につきましては各方面からいろんな御議論がございます。昨日の当委員会におきます加藤委員の御質問にもございましたように、社会保障制度全体の中での優先度合いの問題について疑問も出されておりますし、それからマスコミ等におきましてもやや消極論等もございます。一方、先生のように児童手当制度をぜひ補充すべきだという非常に強い御意見もございます。そういう中で児童手当制度を今後どうするかということは非常に大きな問題であるわけでございます。そこで私どもは、国民の世論と申しますか、国民の目指す方向というのはどう考えておるのだろうか、そういうことについてやはりはっきりとした状況をつかまえて、そしてその上に立って児童手当制度の今後のあり方を考えていきたいというふうに実は考えておるわけでございます。
  171. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、先ほどお聞きした大臣のお話とちょっと違うように思うのです。と申しますのは、この国会の附帯決議を尊重して、そしてそれに向かって努力をするのだ、ことしできなければ次の機会にやるのだ、こういうお話なんです。あなたのいまの御答弁では、マスコミが消極論をとっておるとか、いや何だかんだ言う。それでは附帯決議を尊重するのではないんじゃないでしょうか。この点ひとつ。
  172. 田中正巳

    田中国務大臣 附帯決議については一般論を私申し上げたわけでございます。しかし、附帯決議がついた後にもいろいろ事情が変わってくることもございますし、また、国会の御意見等は最高に尊重いたしますけれども、やはりその他の世論というものも行政当局は考えなければならないということだろうと思います。  そこで、具体的に児童手当の問題でございますが、いま児童家庭局長が申しましたとおりいろいろな御意見がございます。附帯決議をなさった国会の中でもいろいろな議論をその後なさる方々もおられるわけでございます。したがいまして、一体児童手当に対する国民考え方、そしてニードというものはどういうものであるかということをもう少し正確につかみたいというのが今日のわれわれのこの問題に対する考え方であります。もともとこれについては、日本社会的風土の中に児童手当というものを一体どう位置づけたならばよいかということについて、いま少しくわれわれは深い省察をいたすべきであるという議論が出ているところでございますので、そうした日本社会的風土の中に最もなじみ、最も有効な児童手当のあり方はどういうものであろうかということについて考えることも、私は政策担当者としては必ずしも不当なことではないというふうに思われるわけでございます。そうしたことを踏まえて、ことしいっぱいそうしたことについての努力をいたし、児童手当制度の今後のあり方についていろいろとわれわれは検討をし、施策を進めてまいりたいというのが今日のわれわれのこの問題に対処する態度でございます。
  173. 岡本富夫

    ○岡本委員 この附帯決議がされてからまたいろいろなことを言う人もいるという話でありますけれども、附帯決議は超党派で、要するに国会で決めたことですね。いろいろな人の個人の意見はいろいろあろうと思いますけれども、当委員会できちっと決めたそのものに向かってやはり努力していく。いま大臣はそれに向かって努力をするためにいろいろと検討しておるんだというのであれば私は非常に賛成だと思うのですが、その点だけもう一遍。
  174. 田中正巳

    田中国務大臣 調査をいたすから児童手当制度をこの際やめてしまうとか、あるいはこれをひとつ低めていくとかいったような考えは毛頭ございません。要するに、さっきから言うように、日本における児童手当制度というものがどうしたならば本当に国民のニードに合うのか、そうしてまたそれは一体どういう形で考えていくのがいいのか、具体的な施策としてはどうあるべきなのか、そういった広い範囲の問題を踏まえてこの際ひとつ考えてみよう、意見も問うてみようということでございますので、したがって、調査をすることが、政府が児童手当制度について何かこれを附帯決議と違った方向に持っていこうというふうなことではございません。
  175. 岡本富夫

    ○岡本委員 後におっしゃられたことはこれはもう関係ないのですよ。それは文句というのです。そうじゃなくして、最初おっしゃったように、この附帯決議に沿ってこれからさらに日本の風土に合わせ、またよくしていくという、そのための調査だ、そういうように最初おっしゃったんですから、それで終わりなんだ。調査することが何かということを後でおっしゃるからちょっとおかしいのですが。
  176. 田中正巳

    田中国務大臣 岡本先生、何か調査をすることが心配でならぬようなことを言うものですから私はそういうふうに申し上げているわけでございまして、前段が私の主要な論拠でありまして、あとは岡本さんの御心配に対してお答えを申し上げたわけでございます。
  177. 岡本富夫

    ○岡本委員 それならばまことに結構だと言っておるわけですから。  そこで、私が五十年三月二十日に当委員会におきましてこの児童手当の問題について質問したことがあります。そのときに田中厚生大臣はこういうふうに答えられておる。「児童手当制度、これは私は、社会保障制度としてはヨーロッパの国国で発達をした制度でございますが、日本においてこの制度が全く必要ではないと考えませんが、しかしやはり日本の風土においては、この制度社会保障制度の中で一体どういうランクを占めるであろうか」云々がありまして、「ヨーロッパの国国のようないわゆる能率給主義、能力給主義の国、わが国のような年功序列型でないような賃金体系の中にある国々において、勤務者が、子供が大きくなって、子供が育ち盛りに必ずしも給与がふえないという、そういうことをカバーするためにできた制度であるというふうに聞いておるわけでありまして、日本のような年功序列型賃金」では云々と書いてあります。  それで私、このときは時間がなくてあれだったのですが、年功序列型の賃金というものを調べますと、これは大企業に勤めていらっしゃる方、こういう方には年功序列型の制度もありますけれども、普通全体に見ますと、勤労者の中には中小企業に勤めていらっしゃる方あるいは自家営業をされている方あるいは農民の方、こういう割合を見ますと、年功序列型の賃金制度の方は少数ということであります。したがいまして、私は、大臣が御答弁になりましたこれはちょっと一遍考え直していただきたい、こういうように思うのですが、いかがでございましょうか。
  178. 田中正巳

    田中国務大臣 まあ、どの程度であるかということについてはよく調べてみなければなりません。しかし、わが国の賃金形態がヨーロッパ等々と比較をいたしまして年功序列型的であるということは、これはどなたも異論のないところでございます。またしかし、年功序列型賃金であるからということだけではございません。日本には独得ないわゆるファミリーアローアンスといったような、家族給といいますか、そうしたことがまた日本独得の給与形態としてあるわけでありまして、欧米においてはこうしたファミリーアローアンスというものは、日本的な形においては余りやっていないようでございます。こうしたいろいろな日本の雇用形態あるいは社会形態、社会情勢等々に対応していろいろ問題があるんだということを私は当時から考えておったから、さように御答弁申し上げたわけであります。また、諸外国によってはいろんなことを考えてこの児童手当について考えている国がございます。ということは、どこか速記に残っているだろうと思いますが、スイスの児童手当制度について、いわゆる企業間格差というものをこれに利用しているということもございまして、事情は一様ではございませんが、そうした幅の広いことをこの際やはり日本でも一回考察をする必要があろうということが、そうしたことの伏線になっているものというふうに思います。
  179. 岡本富夫

    ○岡本委員 当時の議事録、また当時も、非常に田中厚生大臣は児童手当に対して抵抗を感じておるのではないかというようなことも感じた場合があるのですが、先ほど一番最初に申しましたように、附帯決議を根本にして、さらにその実現に向かっての努力のためにいろいろ調査しているんだということでありますから、この一事で一応私は安心はできるわけですけれども。  そこで、われわれはまたいまの状況を見ますと、子供たちをほとんど全部高校、大学というように、教育費というものが非常にこれから上がっていく、そういうことを考えますと、むしろこれからこそが児童手当が必要になる時代ではないか。教育費も非常に高いじゃないですか。大臣は何歳のお子さんを持っていらっしゃるかわかりませんけれども、小さい子供を持っている人は、非常に教育費も高い、こういうことでありますから、次代を背負う青少年または次代の人たちを育てるためには、やはりそういった第一子だけではなくして、二子以降も支給するような方法でひとつ積極的な見直しといいますか、こういうぐあいにしていただければ非常に幸いだと私は思うのですが、いかがですか。
  180. 田中正巳

    田中国務大臣 私が児童手当制度に対して冷たいんじゃないかというお話ですが、そんなことはございません。あなた方から見るとわが国の児童手当制度についていろいろ御批判がありますが、白地にこの児童手当制度をつくり上げたのは当時一議員だった私どもでございまして、実はさんざん苦労してあの制度というものをつくり上げたわけでございます。そういう私なればこそまた、児童手当についてのいろいろな問題点や反省というものが胸の中に去来するということじゃなかろうか。考え過ぎだと言われればそれまでですが、無意識のうちに、児童手当制度を平面的にながめただけじゃなしに立体的に、いろんな角度からこの制度をつくるときに深くタッチをいたした私としては、それだけにまた心配でならぬ一面もあるということでございます。しかし、いま申し上げたように、こうしたことで今年度調査をいたし、今後の施策を考えるわけでございますが、そのことが直ちに二子以降につながるというわけでもございますまい。いろいろな角度において、どのような方向がよいかということを多面的に考察をしてまいりたいと思います。
  181. 岡本富夫

    ○岡本委員 先ほど申しましたように、生活費の構造が児童手当を必要とする構造に非常になってきておる。したがって、この児童手当については私ども提唱しまして、あなたも一生懸命やってくれたということに対しては了としますけれども、さらに前向きに拡大をしていくんだという調査であっていただきたい。  そこで、余り時間がありませんから、八月に児童手当に対するところの国民の意識調査を全国的規模で行おうというような話でありますが、どういう方法で、どういう調査項目で行うつもりをしておるのか。この点は事務当局からで結構ですから、お聞きしておきたい。
  182. 石野清治

    ○石野政府委員 今年度予定しております調査、実は三本立てになっておりまして、一つは、一般の国民、約一万世帯程度でございますけれども、これについて意識調査を行いたい。それからもう一つは、これはやはり事業主負担等の関係もございますので、事業主に対しまして、約一千カ所の事業主に出しますけれども、それに対しての調査。それからもう一つは、いわば児童手当に関しましてある程度の知識を持っておられるいわゆる有識者に対しまして、数は大体四百人から五百人ぐらいになろうかと思いますけれども、そういう調査をいたしたい。  調査の中身でございますけれども、これは一つは、現行におきます児童手当制度に対します国民なりあるいは事業主なりあるいは有識者の、そういう方々の認識、意識、そういうものについての問題と、それからもう一つは、やはり先生おっしゃいますように今後のあり方の問題が一つございます。これは家族手当の調整の問題等いろいろございますので、いろいろな条件を加味しましてそういう今後のあり方についても御意見を聞きたい。それからもう一つは、現在行われております税制におきまして扶養控除制度がございますが、そういうものとの調整の問題、そういうような他の制度との関連、そういう問題について調査をいたしたいというのが中身でございます。  ただ、これはいま申し上げましたように非常にむずかしい問題がございます。そこで、行政当局だけの判断でやりますと非常に間違いが出ると思いますので、一切この調査を行います際には、時に応じまして学識経験者の御意見なども拝聴いたしまして、そして調査項目、それから調査のやり方、そういうものにつきまして策定を行っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  183. 岡本富夫

    ○岡本委員 調査はそれとして、この割合を見ておりまして、事業主が千世帯で一般国民が一万世帯、これはちょっと比率が違うんじゃないか。これは時間があれですから後で申し上げますけれども、何人使ってどうだということもありましょうから、事業主の中にはこんな負担はかなわぬというのもおるわけですが、しかし国民の中ではこの児童手当ができてから非常に喜んでおる。もう一人できるので今度は児童手当がもらえますと、非常に喜んでおる国民の意思というものを私は尊重しなければならぬと思いますから、その点ひとつよく考えていただきたい。  そこで私、実は田中さんを団長にしてヨーロッパに行ったことがありますが、そのときに西ドイツあたりに行っておる日本人に直接会っていろいろ聞いてみますと、向こうでは日本人に対しても、永住している人に対してはこの児童手当を支給しているわけですね。要するに外国人にも支給しておるわけです。そういうことを考えますと、日本も、長年住んでおる外国人にもこういった児童手当を支給していくというように幅を広げていく、こういうことはいかがか。これをひとつお聞きしておきたいと思います。
  184. 石野清治

    ○石野政府委員 ただいま先生御指摘のように、確かに西欧諸国では外国人の取り扱いにつきまして、適用しておるものもかなりございます。中には、いま御指摘の西ドイツの問題でございますけれども、これなんかは被用者だけに適用するというようなことをやっておりまして、各国それぞれ事情も違いますので一概には申し上げられませんけれども、居住条件を厳格にしまして、たとえば四年以上住んでおるとか、そういうように居住条件を非常に厳格にしながら外国人にも適用しておる例が多いようでございます。  問題は、この外国人をどう取り扱うか、わが国の児童手当制度をどう取り扱うかということは大変実はむずかしい問題でございまして、現在、福祉年金なりあるいは児童扶養手当、それから特別児童扶養手当、そういう一連の福祉施策につきましては、日本国民であるということを条件にしまして支給しているわけでございます。児童手当制度もこれと同一になっておりますので、これをどうするかということになりますと、やはり社会保障制度全体の中で外国人をどう取り扱うかということを慎重に検討しなければならぬのじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  185. 岡本富夫

    ○岡本委員 年金の問題をあれしようと思ったけれども、これは次の大橋先生に譲りまして、いまの問題ですが、ああしてみますと、外国では外国人を尊重する、そのかわり税金は税金でいただくというようにはっきりしておるわけでありますから、次の機会に検討していただいて、余り、日本は厳しいところだとかあるいは排日運動が起こらないように、やはり非常に温かくしてあげるという、一つ制度の中に組み入れていくということも検討していただきたい。これを最後に大臣から承って終わりたいと思います。
  186. 田中正巳

    田中国務大臣 この種のもので外国人をどう扱うかということにつきましては確たる定説はございませんが、一定の傾向があるようでございます。つまり、被用者保険では、国内にある企業に勤めている労働者については外国人であってもこれに対して給付をいたすというのが大体のプリンシプルのようでございます。しかし、被用者年金以外のものについてはそういう扱いをしないというのがまた大方の例のようでございます。こうしたところから見れば、いまの児童手当については一部については確かに原則が貫かれているというふうに思いますが、一部についてはまたそうでないというような一面を持っている政策ではございます。しかしこれについては今後さらに検討はいたします。しかし、いずれにしてもそうむちゃくちゃな線引きをやっているわけではございません。こうしたことでございますので、今後血の通ったやり方というものをこの間においてどういうふうにやるか。たとえば生活保護法、これは国籍要件をとっていますが、実際問題としては、時と場合によっては外国人にもするといったようないろんな便法があろうと思いますので、そうしたことをいろいろ考えてみたいと思っております。
  187. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃあこれで終わりますが、大臣の答弁をいただいて、前の答弁から非常に前向きな姿勢を受けたという感じでございますので、これを機会にひとつぜひりっぱな児童手当を見直しの結果やっていただきたい。これをさらに強く要求をいたしまして、きょうは終わりたいと思います。
  188. 住栄作

    ○住委員長代理 次に、大橋敏雄君。
  189. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は、昨日質疑しました年金法案に関しまして質問を二、三させていただきます。  まず、今回の保険料率の一・八アップですけれども、これは大変な引き上げだということが再三質問の中に出ております。私もこれについては問題だ、こう感じているわけですが、今回また標準報酬の上限の引き上げで二十万円から三十二万円になるわけですね。こうなってきますと、たとえば三十二万円の賃金を受けている人の立場をとると、いままでの立場からいくと保険料の引き上げと標準報酬の引き上げとのいわゆるダブルパンチになるわけですね。これがどれほどの負担増になるか、計算なさったと思うのですけれども、仮に三十二万円の報酬を取っている人が今度改正案に従ってくるとどのくらいの負担増になるか、ちょっと計算なさっているならば教えてください。
  190. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 三十二万円の方は、現行ですと二十万で計算されますから、これは本人負担分だけ申し上げますと七千六百円でございますが、今回の改正で一万五千四十円でございます。
  191. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 確かにいまおっしゃったとおり、現行でいきますと上限が二十万円でございましたので、二十万円の千分の七十六の保険料ですね。それが二分の一ですから七千六百円ですね。今度三十二万円に上限が引き上げられますので、改正後は、仮に三十二万円の人を例にとれば、三十二万円掛ける千分の九十四、それの二分の一で一万五千四十円。その差は七千四百四十円ということになるわけですね。ちょっとこれは引き上げ過ぎだ。先ほど大臣の答弁を聞いておりますと、年金というのは長期保険だ、将来を見通した立場での年金数理がなされるので、これはやむを得ない保険料のアップなんだ、料率のアップなんだ、こういうお話がありました。私も、給付改善をなされるのですから、保険料率を絶対上げちゃいかぬなどというやぼなことは申し上げませんけれども、現実問題として物価は次々と上がっていくし、大変な経済情勢の中で、いま言ったような七千四百四十円も、たとえば三十二万円の人が一挙に負担増になるということはひど過ぎるんではないか、こう思うわけです。  また、厚生大臣は厚生行政の最高責任者であって、今回健康保険の改正案も出されているわけですが、これについてはまた大変な批判があります。これは仮の話ですが、この両方の案が原案どおりに仮に可決したとすれば、こちらの方の引き上げも出てくるわけですね。たとえば健保の保険料の引き上げを見ると、現行ではやはり上限が二十万円ですから、二十万円掛ける、の千分の七十六、それの半分ですから七千六百円ですね。三十二万円の立場をとると、今度は健保の方は千分の七十八だということですから、その二分の一で一万二千四百八十円、こうなるわけですね。仮の話ですけれどもね。厚生大臣考えていらっしゃるようなことで法律がもし実施されますと大変な負担増ということになるんですね。現状でいけば、厚年と仮に健保の負担を見た場合、一万五千二百円であったのが一挙に二万七千五百二十円という、これは月にですよ、こんなに負担しなければならぬ。その引き上げの額だけ見ても、一万二千三百二十円という大幅な引き上げになるわけですね。これはやはりどう考えてみても納得いかない、賛成できないところですね。これはやはり大幅に考えを改められる必要があると私は思うんですけれども、いかがでしょう。
  192. 田中正巳

    田中国務大臣 保険料についてはいろいろ御議論があることは重々聞いております。御承知のとおり、厚生年金の保険料は標準保険料よりもはるかに下回って修正率が高いということも、いまさら御説明申し上げる必要はないと思います。ただ先生年金の保険料とか標準報酬の上限というようなものは、これは給付にリンクをいたします。したがって、それだけにまたメリットも実は十分出てくるわけでございますので、これが取られっ放しであって、本人に対する何のインディビデュアルな戻り、リターンがないといったようなものではない。この点はむしろ医療保険とは問題が違うわけでございまして、そうした意味で私は、年金の方は標準報酬上限を上げるということが必ずしも本人に不利にだけ働くものではない、かなり実はメリットがあるんだということを考えておるわけでございます。医療保険については、本日の議題ではございませんが、これはこれなりにまた費用がふえておるものですから何としてもやらなければならない、お願いしなければやっていけないということでございます。  なお、私は、この年金の保険料の考え方というものは、短期にそのときそのときを見るということではなしに、やはり一生通じてものを考えていただく。いま自分がもらっている月給というものを今月全部使ってしまうというような生計の立て方というのは不健全だ。やはりある程度はリザーブをいたす。そして、それは今月の実質的な消費にはならないけれども、後日にこれを延ばしているんだというような個人生活の態様、これが公的形態でもって変わっているんだというふうにお考えくだされば、私はまた別な考えが出てくるのではなかろうかと思うわけであります。
  193. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は、いまの厚生大臣の理論を否定しているわけじゃありません。それは確かにそうだと思いますけれども、現実問題、実際問題として現在の生活水準あるいは経済情勢の中にあって見た場合に、やはりこれは大きく政治的な配慮が必要ではないか。ですから、年金数理上どうしてもこうなるんだから一歩も譲れないんだという考えは改めてもらいたい。何とかこれは国民の期待にこたえるように、あるいはその負担増が余りにもひどい場合には配慮するというのが、私は厚生大臣の英断ではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  194. 田中正巳

    田中国務大臣 もちろん保険数理からいって必要な金額をちょうだいをいたしたいというのは、これはこの種のものを管理している役所として当然の立場であります。しかし、一遍に急にふえては困るというようなまた端的な国民の声もございます。そうした中に一体どこに調和点を求めるかということで苦労したのがこの案でございますが、したがって、私どもとしては、せっかく御提案申し上げておりますので、この案でいっていただきたいというふうにただいまのところ申し上げているわけでございます。
  195. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでは、年金というものはおっしゃるとおり長期保険ですね。ですから、厚生年金でいえば、保険料を納めていて、条件さえ整えば六十歳になりますと老齢年金支給しますよ、こうなっていますね。そうなってきますと、計算上は六十歳になれば年金が約束どおりに支給される財源が確保されるわけですね。そうなっていなければならぬはずですよ。しかし、現実問題として、厚生年金に入っていても、六十歳になっても退職しない者にはあげない、極端に言えばそうであるわけですね。しかしそれはひどいじゃないかということでこれがまた修正されまして、六十五歳以上の人にはこうだ、それから六十歳から六十四歳の者にはこうだと、二つの支給制限がいま決められ、しかも今回またそれが修正されようとしているわけですね。そうでしょう。ですから、本来的に言えば当然権利としてもらえる立場にあるわけですから、その財源もあるわけですけれども、政治的な立場から、働いている人には少しがまんしてもらいましょう、こういうふうになってきているわけですね。  具体的にお尋ねをいたしますが、現在のいわゆる在職老齢年金というものができましたために、現在この規定で年金をもらえていない人が一体どのくらいいるのか、厚生省おつかみになっておりますか。また、六十歳から六十四歳までの加入者がいまどの程度いるのか。それからこのうち現に老齢年金を受けている者は一体どのくらいいるのか。そういうところをちょっとお尋ねをしてみたいと思うのです。——ちょっと、もう時間が限られておりますから私の方で調べた資料で申し上げますが、極端に食い違っていれば訂正してもらいたい。  いわゆる、現在この規定で年金をもらえない人がどれくらいいるかということになると、厚生省も正確にはこの数字はつかんでいない。そして六十歳から六十四歳までの加入者は約八十四万人と推定されている。このうち現に老齢年金を受けている者は約二万三千四百人、これは五十年の十二月末の大体推計だそうです。そこで八十万人以上がいわゆる年金なしで生活をしている、こういうことになっているわけです。だから私が先ほど申し上げましたように、大体六十歳になればもらえる権利を持っているのに、働いているばっかりにもらえない者がたくさんいるわけです。ですから、それはいろいろ政治的な立場でそうされてきたわけで、少なくとも、今回の改正に当っては一応の支給緩和がなされておりますけれども、私は、もう一歩それを掘り下げてという希望があるわけですよ。いままで言ったことについて一応お答え願います。
  196. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この数字につきまして、細部につきましてはいま調べておりますから後ほどお答えしますが、先生お尋ねがございました開始年齢制度上の開始年齢と実際の受給者の年齢ですね、これは当然もちろん異なるわけでございまして、これは在老というよりは、むしろ本来資格期間に結びつかないということで、そういうような事情から六十三とかいう数字も出てくるわけですけれども、そこで問題は、財源計算上は六十歳ということではなくてあくまで実際の受給年齢で計算しておるわけですから、開始年齢が六十歳だから六十歳で計算しておるのではないかということにつきましては、そのようなことはございませんで、しかもそれは再計算の都度一番新しい数字で財源計算をして料率を設定するというやり方でございますから、その辺は御理解いただきたいと思います。
  197. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間が参りましたので残念でございますが、では私の希望だけ申し上げておきます。  今度、六十五歳以上の在職者に支給される老齢年金支給制限の緩和が、標準報酬月額が十一万円を超えた場合のみ二割停止、現行は一律に二割停止でございますが、このように緩和されるといいますけれども、むしろもう六十五歳は全部この制限を取っ払う、全額支給、こういうふうに踏み切ってもらいたい。もう一つ、六十歳から六十四歳までの低所得の在職者に支給されている老齢年金支給制限の限度額及び支給割合の引き上げでございますけれども、今度の改正案を見ますと、三万円から十一万円の間を三ランクに分けて、支給割合を八〇%、五〇%、二〇%と、こういうふうにランクづけがされておりますけれども、これは余りにもきめが粗過ぎる。もっときめ細かく、たとえばランクがいま三つに分かれているのを、一、二、三、四、五、六、七ぐらいに分けて、八〇%、七〇%、六〇%、五〇%、 四〇%、 三〇%、 二〇%、 このくらいのきめ細かいランクづけにすべきではないか。そうでないと逆転傾向が出てくるんですよ。     〔住委員長代理退席、委員長着席〕 たとえば、現在六万四千円の賃金をもらっている人が八割支給になると五万一千二百円ですから、結局その人が受け取れる金額が十一万五千二百円になるわけですね。六万八千円の賃金をもらっている者は五割になるわけですから三万四千円、合計すると十万二千円というようなことで非常に矛盾が出てくるわけです。ですからその点も細かくこれは分けてもらってランクづけしてもらいたい、これも強く希望します。  この点についての回答をいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  198. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 御意見として承ってまいりたいと思いますが、後段の六十四歳未満の在職老齢の刻みの問題でございますけれども、確かに先生のおっしゃるのはもっともな御意見で、ランクづけによるその段階ごとのばらつきを少しでもなくするという点ではその方が望ましいのですが、一方逆に、事務的な立場もございますけれども、もっと簡素化する、数を少なくする、そういう御意見も非常に強くございます。そういうこともございまして昨年の改正で従来の四段階を三段階にしたというような経緯もございますので、いずれにしてもこれは今後の検討課題といたしたいと思います。
  199. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 では終わります。      ————◇—————
  200. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、健康保険法等の一部を改正する法律案予防接種法及び結核予防法の一部を改正する法律案及び廃棄物処理及び清掃に関する法律及び廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律案の各案を議題とし、順次提案理由の説明を聴取いたします。田中厚生大臣
  201. 田中正巳

    田中国務大臣 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。  医療保険制度につきましては、昭和四十八年の改正により大幅な給付改善が図られるとともに、保険財政の健全化のための諸施策が講じられたところであります。  しかし、御承知のとおり、その後のわが国における社会経済情勢の変動はまことに著しいものがあり、医療保険におきましても財政状況が再び悪化の様相を呈する等その影響を看過することができなくなってきております。医療保険制度の健全な維持発展を図っていくためには、この際、速やかに適切な対応策を講じてゆくことがぜひとも必要であります。  今回の改正は、このような事情を考慮し、経済情勢の変動等に応じて手直しを行う必要がある事項を中心に最小限のスライド的措置を講ずるものであり、標準報酬及び一部負担金について必要な改正を行うとともに、現金給付の水準を実情に合わせて改善するほか、任意継続被保険者制度の拡充を図ることとした次第であります。  以下、この法律の内容について概略を御説明申し上げます。  まず、健康保険法の改正について申し上げます。  第一は、現金給付の改善でありまして、本人分娩費の最低保障額及び配偶者分娩費の額を現行六万円から十万円に引上げるとともに、本人埋葬料の最低保障額及び家族埋葬料の額につきましても、現行三万円から五万円に引き上げることといたしております。  第二は、標準報酬の上下限の改定でありまして、最近における給与の実態にかんがみ、被保険者の保険料負担の公平を図る見地から標準報酬の上限を現行二十万円から三十二万円に、下限を二万円から三万円に改定するものであります。  第三は、一部負担金に関する改正でありまして、その額は昭和四十二年以来据え置かれておりますが、その間医療費、所得等が大幅に伸びていることにかんがみ、初診時一部負担金の額を現行二百円から六百円に、入院時一部負担金の額を現行一日当り六十円から二百円に改定するとともに、入院時一部負担金を支払うべき期間を一カ月から六カ月とすることといたしております。なお、継続療養給付を受ける者の入院時一部負担金の額は、一日当り百円とすることといたしております。  第四は、任意継続被保険者制度の拡充でありまして、この制度を高齢退職者等にも利用しやすいものとするため、その制度の拡充を図ることとしております。  まず、第一点は、任意継続被保険者制度に加入できる期間を現行一年から二年に延長することであります。  第二点は、任意継続被保険者の標準報酬をその者の保険者の管掌する全被保険者の標準報酬月額の平均額またはその者の退職時の標準報酬月額のいずれか低い額とすることにより、保険料負担の軽減を図ることであります。  第三点は、任意継続被保険者が加入期間中にかかった疾病について、一定の条件のもとに資格喪失後も継続して給付が受けられるようにすることであります。  第四点は、現在政府管掌健康保険においてのみ実施している任意継続被保険者制度を健康保険組合においても実施することであります。  次に、船員保険法の改正について申し上げます。  第一に現金給付の改善でありますが、健康保険と同様に分娩費の最低保障額及び配偶者分娩費の額を十万円に、葬祭料の最低保障額及び家族葬祭料の額を五万円に引き上げることとしております。  第二に、標準報酬の上下限の改定でありますが、上限を現行二十万円から三十四万円に、下限を現行二万四千円から三万六千円に改めることとしております。  第三に、一部負担金につきましては、初診時一部負担金の額を健康保険と同様に現行二百円から六百円に改定することとしております。  第四に、任意継続被保険者制度の導入についてでありますが、健康保険における任意継続被保険者制度の拡充と相まって、船員保険にも健康保険に準じた制度を新たに設けることとしております。  また、社会保険診療報酬支払基金法につきましては、基金の業務の範囲を改める等所要の改正を行うこととしております。  なお、この法律の実施時期につきましては、本年七月一日からとしておりますが、船員保険法の標準報酬に係る改正につきましては、本年八月一日から実施することとし、また、社会保険診療報酬支払基金法の改正は、公布の日からとしております。  以上が、この法律案を提出する理由でありますが、何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  ただいま議題となりました予防接種法及び結核予防法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。  予防接種法及び結核予防法による予防接種につきましては、これまで伝染病の発生及び蔓延の予防に所期の効果を上げてきたところでありますが、今回、最近における伝染病の発生状況、医学医術の進歩、生活環境の改善等にかんがみ、予防接種法による予防接種の対象疾病、実施方法等を改めるとともに、予防接種法及び結核予防法による予防接種を受けたことによる健康被害について、新たに法律上の救済制度を設けようとするものであります。  以下、改正案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  まず、予防接種法の一部改正について申し上げます。  第一に、予防接種法の対象疾病について、腸チフス、パラチフス、発疹チフス及びペストを削除するとともに、新たに麻疹、風疹、日本脳炎及び特に必要があると認められる疾病で政令で定めるものを加えることとしております。また、定期の予防接種を行う疾病及びその定期を政令で定めるものとしております。  第二に、臨時の予防接種について、現行の臨時の予防接種を、緊急の必要がある場合に行うものとそれ以外のものとに区分し、緊急の必要がある場合に行う臨時の予防接種の対象疾病は、痘瘡、コレラ及び厚生大臣が定める疾病とすることとしております。  第三に、予防接種を受ける義務の違反については、緊急の必要がある場合に行う臨時の予防接種にのみ罰則を設けることとしております。  第四に、予防接種による健康被害の救済に関する措置でありますが、予防接種を受けたことにより、疾病にかかり、廃疾となり、または死亡した場合には、市町村長は、医療費、医療手当、障害児養育年金、障害年金、死亡一時金及び葬祭料を支給することとしており、その額、支給方法等については、政令で定めることとしております。また、これらの給付に要する費用については、市町村及び都道府県がそれぞれ四分の一、国が二分の一を負担することとしております。  次に、結核予防法の一部改正についてでありますが、結核予防法による予防接種を受けたことにより、疾病にかかり、廃疾となり、または死亡した場合には、市町村長は、予防接種法の例により給付を行うこととしております。  次に、従前の予防接種による健康被害の救済に関する措置についてでありますが、健康被害の救済に関する規定の施行日前に予防接種法結核予防法等により行われた予防接種を受けたことにより、同日以後に疾病にかかり、もしくは廃疾となっている場合または死亡した場合には、市町村長は、予防接種法による給付に準ずる給付を行なうこととしております。  最後に、実施の時期については、予防接種に関する改正は公布の日から施行することとしておりますが、予防接種による健康被害の救済に関する措置の創設は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。  以上が、この法律案の提出理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  ただいま議題となりました廃棄物処理及び清掃に関する法律及び廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  廃棄物の適正な処理は、国民の健康の保護と生活環境の保全のために必要欠くべからざるものであり、このため昭和四十五年には廃棄物処理及び清掃に関する法律を制定し、新たに廃棄物処理体系の整備を図ったところでありますが、その後における産業廃棄物処理の実態は必ずしも適正に行われているとは言いがたい状況にあり、産業廃棄物処理に関する事業者の責務の確実な履行を確保するための措置を整備する等、廃棄物の適正な処理を図るための制度の改善を行うことが必要となっております。  また、廃棄物の適正な処理を図るため、引き続き廃棄物処理施設の緊急かつ計画的な整備を強力に進めていくことが必要であります。  このような諸般の情勢にかんがみ、産業廃棄物処理に関する規制及び監督の強化を中心に、廃棄物処理に関し当面速やかに改善措置を講ずべき事項について必要な制度の改善を行うとともに、現行廃棄物処理施設整備計画に引き続き、昭和五十五年度までの廃棄物処理施設整備計画を策定することとした次第であります。  以下、この法律案の内容について、その要旨を御説明申し上げます。  まず、廃棄物処理及び清掃に関する法律の一部改正について申し上げます。  第一に、事業者がその産業廃棄物処理を他人に委託する場合には一定の基準に従わなければならないこととするとともに、有害な産業廃棄物を生ずる一定の施設が設置されている事業場または一定の産業廃棄物処理施設を設置する事業場ごとに、産業廃棄物の適正な処理を行わせるため、産業廃棄物処理責任者を置かなければならないこととしております。  第二に、産業廃棄物処理業、一般廃棄物処理業等について、その許可制度の整備を図るとともに、産業廃棄物処理業の許可を受けた者は、一定の場合を除き、その処理を他人に委託してはならないものとしております。  第三に、新たに、廃棄物の最終処分場で一定のものを届け出を要する廃棄物処理施設とするとともに、都道府県知事は、廃棄物処理施設の設置等の届け出があった場合において、当該廃棄物処理施設が一定の基準に適合していないと認めるときは、その計画の変更等を命ずることができることとし、さらに設置後において基準に適合しなくなった場合にも必要な改善を命ずることができることとしております。  第四に、事業者及び産業廃棄物処理業者等は、それぞれ帳簿を備え、廃棄物処理に関し所要の事項を記載し、これを保存しなければならないこととし、廃棄物処理の実態の把握に資することとしております。  第五に、都道府県知事または市町村長は、廃棄物の処分基準に適合しない処分によって一生活環境の保全上重大な支障が生じ、または生ずるおそれがあると認められる場合に、その処分を行った者に対してその支障を防除するための所要の措置を命ずることができることとしております。また、産業廃棄物に関しては、委託基準に違反した委託によりその処分が行われたときは、当該委託者に対しても同様の措置を命ずることができることとしております。  第六に、有害な産業廃棄物等、環境保全上特に問題となる産業廃棄物の投棄禁止に違反した者に対する罰則を強化し、委託基準に違反して産業廃棄物処理を委託した者に対し罰則を適用することとするほか、罰則について所要の整備を行うことといたしております。  次に、廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部改正についてでありますが、厚生大臣は、昭和五十五年度までの廃棄物処理施設整備計画を作成し、閣議の決定を求めなければならないこととしております。  なお、廃棄物処理及び清掃に関する法律の一部改正は、公布の日から起算して九カ月を超えない範囲において政令で定める日から、廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部改正は公布の日から施行することといたしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  202. 熊谷義雄

    熊谷委員長 これにて各案の提案理由の説明は終わりました。     —————————————
  203. 熊谷義雄

    熊谷委員長 これより健康保険法等の一部を改正する法律案及び予防接種法及び結核予防法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、質疑に入ります。  質議の申し出がありますので、これを許します。山口敏夫君。
  204. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 私は、ただいま大臣から提案ございました特に健康保険法の問題につきまして幾つかの質疑をさせていただきたいと思います。  提案理由の中にもございましたが、四十八年に改正をされた。しかし、それ以来わが国の経済基調の激変による税やあるいは保険収入の伸び悩み等々に加えまして、依然として医療費は急増をしておるわけでございます。そうした点で今回の改正案もやむを得ないということも言えるわけでございますが、しかし同時に、この負担増というものも、一部負担というものもあるわけで、医療と国民生活というものは非常に重要な関係にあるわけでございまして、そういう一つのある意味においては福祉の根幹に触れる問題でもございますので、この財政難を背景にいたしまして福祉見直し論、また、成長かあるいは福祉かというような二者択一の議論もよく出ておるわけでございます。     〔委員長退席、住委員長代理着席〕  そうした点で、これだけの国民生活に関係の深い健康保険法の改正という前提条件として、私は、今後のこういう安定成長といいますか、石油ショック以来の減速経済の中におきまして福祉政策はいかにあるべきか、その方向についてまず基本的に大臣の見解を承っておきたいと思います。
  205. 田中正巳

    田中国務大臣 わが国は最近急速な老齢化社会を迎えつつあるわけでございます。そのほかに、いわゆる核家族化が進む、就業構造が微妙に変化をしている、たとえば一次産業から二次産業に移行をする、あるいは人口の社会的な変動が起こるといったような大きな社会構造の変化等があるわけでございまして、こういう事態をながめてみるときに、国民社会保障に対する要請というものは私はますます大きくなってくるものというふうに思うわけであります。しかし、こうした要請を受けて社会保障をいかにして拡充強化していくかということについては、従来のような簡単な方法ではできなくなってきたというふうに私は思うわけであります。もう山口先生、私から申し上げるまでもありません、いままでの高度成長経済に支えられてきた政府の自然増収、これを、社会保障の必要性に応じて、この多くのシェアを社会保障費に振り向けることによってわれわれはこれに対応してきたわけであります。しかし、今日いわゆる安定成長あるいは減速経済といったような時代を迎えまして、私どもはそのような従来のような簡単な手法、パターンというものをとり得なくなってきた。それだけでは問題は解決しないということであります。いわゆる従来路線の上に立って、その延長で物を考えることができなくなってきたというのは私は事実だろうと思います。  そこで、いわゆる福祉問題についていろいろな御意見が国民の間に出てきたわけであります。その中の一環として、いわゆる福祉見直し論というものが出てまいりました。私は、まじめな福祉見直し論というものは高く評価してよろしいと思っております。やはり国民の本当のニード、社会保障の本当のニードを的確につかまえていかなければならない。そこに、仮に社会保障であろうともむだがないのか、あるいは必要でない方面に、優先度の低い方面に施策を向けているのではないかという反省、これは私はやはり評価しなければならないと思います。しかし、福祉見直し論というものに藉口をし、これに悪乗りをする態度というものに対しては、私は断固反省を求めなければならないというふうに考えるわけであります。こうした背景を考えてみるときに、やはり私は、こうなってまいりますれば政策の優先度を十分に把握をし、国民が本当に求めているもの、とりあえずどうしてもやらなければならないものというものについて、これは何としてもこういったものを選択し、これについては施策を伸ばしていかなければならないと思います。  また、こういう時代でございますから、経済の動向のいかんにかかわらず福祉のニードはふえていくわけであります。また、この福祉というものは結局は公的費用を伴わなければやっていけないということも現実であります。そうすれば、やはりどなたかに何らかの形でもってこの費用を負担をしていただかなければならないというのも事実だろうと思います。社会保障水準は上げろ、費用の負担はいやだということでは、これは社会保障水準の向上は望めないはずであります。こうしたことを踏まえて、今後われわれは財源をどこから見出すかというようなことについていろいろと模索をし、研究をし、国民の合意と理解を得つつ、こうしたことについての新しい考察と努力が必要なのが今日の日本社会保障の置かれた断面であるというふうに思うわけであります。
  206. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 非常に厳しい財政事情の中ではございますけれども、本年度予算に示された厚生大臣の熱意、また福祉見直し論、こういう外堀、内堀を埋めていくような雰囲気の中で大変な御検討をいただいたということは私どもよく承知をしておるわけでございますし、今度の健保の改正につきましても、多年関係者が努力をした一つの成果といいますか結果といいますか、そういう点で四十八年に実現した第二の皆保険ともいうべき医療保険制度の骨格を何とか守り抜かなければならない、またそれを将来に対する基礎固めといいますか、あるいは医療制度の前進に結びつけていかなければならない、こういう点での一つの改正であろうと思います。  しかし、大臣のお話にもありましたように、財政が落ち込んで厳しいから当然の負担はしていただかなければならない、これはもう社会が存続する以上当然のことではございますけれども、しかし、特に国民生活の中におきましても医療の供給を受けなければならない立場に置かれた生活環境というものは非常に厳しく、また深刻な場面もそれぞれの家庭に存在をするわけでございます。特にそういう点で経済面からくる圧力というものに対して、いろいろな国の制度やあるいは方針の中から生活の安定というものを進めていかなければならない。そういう点で、これだけの改正を行う厚生大臣としての健康保険に対する一つの長期的な展望というものも伺っておかなければならない、私はかように思うわけでございます。その点についての大臣の御見解をひとつ承りたいと思います。
  207. 八木哲夫

    ○八木政府委員 ただいま先生からお話ございましたように、四十八年度の健康保険制度の改正というのは、第二次皆保険と言われるように、従来からの多くの問題を解決したという意味では一つの大きな前進であったわけでございます。特に給付改善の面におきましては、家族給付従来五割であったものを七割に引き上げる、あるいは財政の健全な安定を図るという意味から、定率の国庫負担なりあるいは保険料の調整に伴います国庫負担の連動規定というようなことで、制度の財政面あるいは給付の内容の改善面においても大きな前進を遂げたわけでございます。しかし、もちろんこれをもちまして制度の改善というものが完全に済んだわけではございませんで、まだまだ残された問題というものが多々あるわけでございます。そういうような面からも、今後の問題につきましてかねてから社会保険審議会等におきましてもこの問題を御議論いただいているわけでございますし、今後の問題としましてもわれわれ、先生の御指摘の方向がございましたように真剣に取り組んでいかなければならないというふうに考えておる次第でございます。  ただ、四十八年に飛躍的な健康保険制度の改善が行われたわけでございますが御承知のように、四十八年以後、経済情勢、社会情勢につきまして大きな変動があったわけでございます。オイルショックなりあるいは狂乱物価というような大きな変動があったわけでございまして、医療保険制度におきましても当然この影響というものを受けざるを得ない段階であるわけでございます。そういうような意味から申しまして、四十八年以後の経済情勢、社会情勢の変動に対応して健康保険制度というものを見直していくということがまず第一段階として必要ではないかというようなことから、今回の御審議をお願いしております健康保険制度の改正法案におきましては、そういうような経済情勢、社会情勢の変動というものにいかに対応するか、まずその意味で現在の健康保険制度の対応策というものを考え、基礎固めをし、それをもとにしまして今後の発展というものが必要ではないかというようなことから、御審議をお願いしております。法案を提出しておるような次第でございます。  ただいまお話がございましたように、国民の負担の面というような問題もあろうかと思いますけれども、四十八年後の諸情勢にかんがみましてできるだけ最小限度の負担にとどめるというようなことで、一部負担等の問題あるいは予算等で考えております高額医療の問題等の問題につきましても、その後の経済情勢の変動に伴います最小限度のスライド的な内容というものを中心にしておるような次第でございます。そういうようなことで、今後の健康保険制度の発展というものを考えます場合に、まず基礎固めをするというのが今回の改正の趣旨でございます。
  208. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 そうした具体的な改正の内容について、一部負担の問題があるわけですけれども、確かにいま局長がおっしゃったように世界的に医療費が急増傾向にある。そういう要因の中の一番端的なものは人口の老齢化というものであろうと思いますし、特にわが国の場合は老齢化に向かってきわめて急速に進んでおる。そういう影響のもとに、一方において低成長ということで、大変二重三重の悩みを抱えておるわけでございます。  こういう一つ状態の中で、特に厚生白書あるいは新経済計画等々にも示されておりますように、租税負担の増加や社会保険料の適切な引き上げというものも行わなければならない。いろいろありますけれども、しかし、費用の負担に対して国民の意識調査というようなものを見ますと、こうしたものは国や自治体の予算でやるのが当然だとする者がもう六一%を超えているわけでございます。こうした実施に当たってお互いが助け合ったりあるいは自分たち努力でやるべきだというのがわずかに九・一%である。厚生省の方で大臣以下政府の皆さんが努力はしておるわけでございますけれども国民の医療環境を守るのだという決意とまた努力というものが、必ずしも対象者である国民方々の理解といいますか、コンセンサスを求めておるというまでには言い切れない一つの結果があらわれておるのではないか。こういう一つコンセンサスを求め合うということがある意味においては医療制度を整備充実すること以上に非常に大事なことなんであって、費用負担の問題等々、医療保険制度の健全な維持発展、制度運営の一つの大きなかなめというものを考えたときに、その辺のギャップについてやはり行政の責任者である大臣としてはどうお考えになるか、御見解を承りたいと思います。
  209. 田中正巳

    田中国務大臣 山口委員から医療問題、医療保険制度についてお話がございましたが、これは一般論としても成り立つことでございまして、こうしたものの費用をどうして支弁していくかということについて、国がやってくれ、国の費用でやってくれ、こういうことを言う人が最近非常に多くなってまいりました。つまり、われわれの言葉で言えば一般会計でやってくれということであります。それはとりもなおさず国民の税金ですべてをやれということにつながってくるものと私は思うわけでございます。国とて特別の財源を持っているわけではございません。要するに、租税負担でやってくれということでございますが、こうしたことが安易に出てきて、このようなロジックに逃げ込むという国民のサイコロジーというものは、やはり高度成長経済に支えられた自然増収というものが比較的簡単に得られたということからそういう習慣ができてきたのじゃないかと私は思うわけであります。  しかし今日、さっき冒頭に私が申しましたように、社会保障の要請はますます高くなる、しかも国の経済の情勢はさま変わりをしている、こうした中で、やはり政府も、そして国民も反省をしなければならぬ一面があるのじゃないか。反省というよりも、もう少し物事を洞察して深く考えてみる必要があるのじゃないか。国がやりなさい、あるいは地方公共団体がやればいいじゃないかと言うだけでは問題は解決をしないということだろうと思います。事実、わが国においては社会保障の向上を望む声は強いのですが、そしてまたヨーロッパの国々の社会保障水準というものをいろいろと賛美をいたしますが、しかし、考えてみますと、あの国々とわが国とは、租税負担率ではわが国は三分の二、そして社会保険料については三分の一であるということを考えるときに、こうした局面を迎えて、われわれは、国民のいま少しの考察と御協力を賜わるような努力を政府はしなければならないのではないかと思うわけであります。  もちろん、こうしたことをやるためには条件の整備をしなければならないというのは申すまでもないと私は思うのであります。財源の調達の方法、税の徴収の方法あるいは使い方、あるいは医療保険についてもそのやり方についていろいろと問題があり、さっき言う長期展望という御議論についてもわれわれは考察をしていかなければなるまいと思います。こうしたこともやっていかなければなりませんが、またそうしたことについていろいろ検討もいたしますが、当面、現行のこの制度を維持発展をさしていくためには、やはり何らかの形で国民の御協力を得ていかなければならない。そうしたことのために、この際、いろいろな御意見がございますが、いま御提案している程度のことはお願いをいたさなければならないということになるのではなかろうかと思います。
  210. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 確かに、厚生省のいろいろな御提案に対しまして、国民の理解と協力を得なければ仕事が進まない、そのとおりだと思います。しかし、今日の保険財政の悪化の象徴的な一つの点は、先ほども指摘しましたように、老齢化社会に対する一つの対応という問題につながっていくと思うわけでございます。そういう点でもやはり負担はしてもらわなければならないということは当然でございますけれども、負担をすることの責任と義務というものを被保険者側も十分認識をでき得るような一つ制度のあり方、あるいは内容というものに変えていかなければならないと思うわけでございます。  そういう点で、たとえば財政悪化の要因につながる老人問題にしても、これは単に老齢化社会、お年寄りが多いから健康保険の財政が悪化していくのだということではなくて、お年寄りの方の存在というものはある意味においては日本の今日の力あるいは日本自身ということも言えるわけでありまして、そういう方々の経験なり努力という上で今日の日本が支えられておる。こういう点から考えますと、単に傷病の治療とかあるいは老人医療の充実という形だけではなくて、やはり健康管理、さらには医療、またはリハビリテーション、そうした総合的な老人の保健、治療というような観点からの対策も当然必要になってくるわけでございます。そういう一つの弱者としてお年寄りの方をとらえるということではなくて、お年寄り方々の能力と経験を積極的に社会の中で活用をしていく、そういう分野にまでこの保険行政というものが延長されるところに、大臣がおっしゃるような運営上のお互いの責任と分担という一つの連帯感が出てくるのではないか、かように思うわけでございます。  そうした点で、田中厚生大臣が一昨年就任早々に老人医療の構想を打ち出された。そして最近は老人保健医療問題懇談会というものを発足させて、これらの問題に非常に多面的に意欲的に取り組んでおられるが、これは一層私は田中構想をもっともっと進めていただきたい。この懇談会をつくることだけが仕事じゃないわけであります。その中から生み出される一つの結果というものを国民は期待をし、その成果というものでお互いの分野、分担というものへの理解と認識が広まるわけでございますから、一層進めていただきたいと思うわけでありますが、これらの点について大臣の決意をいま一度この場でお聞きしておきたいと思うわけでございます。
  211. 田中正巳

    田中国務大臣 さっき山口先生は、医療保険の長期展望、抜本改正ということを申されました。よく使われる言葉でありますが、医療保険の抜本改正ということ、これについては人々によって、考えるところの具体的なイメージがそれぞれ違うのではなかろうかと私は思っております。そういう意味で、どれが抜本改正であるかということはいろいろ議論があるところですが、さっき保険局長が言いましたように、なお改善をすべき多々の問題があるということは私も真実だと思います。日本の医療保険のいろいろな仕組みというもの、これがこのままでいいかと検討することについては、いろいろ私もやらなければなるまいと思っております。しかし何分にも、医療保険をめぐる問題は現実問題として利害が鋭角的に対決するという側面を持っておりまして、歴代厚生大臣の悩みの種も実はここにあるわけでございますが、私はいま、そうした数多くの問題の中で、とりあえずとにかくこの老人医療をどう扱うかということについて真剣に取り組み、早急に結論を出さなければならないということであります。  具体的に申すと、これは政府管掌健康保険の問題ではございませんで、むしろ国民健康保険の問題だと思うわけであります。老人、これはかねがね医療の給付費が高いわけであります。一般人の四倍ないし五倍と言われて、そうした金のかかる老人、しかもこれが老人医療の無料化制度と相乗作用を起こしまして、非常に給付が高いわけであります。これを最も弱い保険集団である国民健康保険という制度の中に入れ込んでおいて、まあいろいろな名目で助成はしておるものの、これで一体いいのであろうかどうか。私はこれくらい社会的不公正はないというふうに実は思っておったわけでございますので、就任早々からこうしたことについてこれをとり進めなければならないということで取り組んでまいりました。何分にも制度の基本に触れる問題でございますのでいろいろとめんどうな問題があります。  なお、こうしたものについて制度を行う場合にも、やはり費用はどこかで捻出をしなければなりません。この費用をどこから捻出していただくか、一般会計に依存すべきか、あるいは若い世代にこうした人たちのために何分の応援をしていただくか、いろいろな問題があろうと思いますが、いずれにしてもこれは当面解決をしなければならない問題であるというふうに考え、私ども役所の中でもある程度の素案というものを策定しつつあり、また先般、私の私的諮問機関である老人保健医療問題懇談会、俗称老人懇と言っていますが、これでもっていろいろと広い視野で御討議を願っておるわけでございまして、できるだけ速やかに成案を得て皆さんの御批判を仰ぎたいというふうに思っておりまして、数多くある医療の基本政策ないしは抜本改正の一翼として、私はこの問題は非常に重要であり、急がなければならないという認識を持って努力中であります。
  212. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 医療保険制度が生きるも死ぬも、大臣のそうした考えが実際の運営面で生かされるか否かということも、ある意味においてはやはり医療の制度を取り巻く諸条件の整備充実だと思うのです。そういう意味で、制度が円滑に推進され、また理解をされ、それなりの責任分担というものが明確にされていくためには、どうしても当面、健康保険でございますから医療の現実的な供給体制の問題というものも解決をされなければならないわけでございます。国民生活にとって、大概のことは自分処理することができるわけでありますけれども本人が、あるいは家族が何らかの傷病にかかった、医療の供給を受けなければならないというときに、必要なときに必要な治療を受けられるということ、また進歩しておる医学、理学の成果を自分生活の中で大いに享受でき得る、そういう一つの環境というものを、大臣として、また厚生省として一層進めていただかなければならないわけでございます。そういう意味で、この医療費保障の面では三十六年の皆保険制度あるいは先般の四十八年の大改正ということで、曲がりなりにも一歩一歩前進はしてきておるわけですけれども、この供給の面においてはまだ、三時間待ちの三分間診療でありますとか、あるいは保険あって医療なしというような言葉も、これはもう日常茶飯事に使われておるわけでございます。こういう状態というものが解決をされない、あるいは国民生活の中において十分こういう不足の事態が解消されない限り、健康保険制度というものを抜本的にも長期的にも維持していくということはやはり非常にむずかしいことにもなるわけでありまして、そういう供給面における一つ努力といいますか、成果といいますか、その点についてひとつ現状をお聞かせ願いたいと思います。
  213. 田中正巳

    田中国務大臣 先生おっしゃるとおり、私はわが国においては、いろいろな議論がございますが、医療の給付のための経済的システムというものは比較的早くかなり整備をいたしてきていることは間違いがないと思うのであります。問題は、いま一つの側面であるいわゆる医療供給体制の整備というのがこれに伴っておるかというと、問題があるということだろうと思います。予防医療からリハビリテーションに至る医療を享受できるようにやらなければなりませんので、このため医療関係者の養成確保とか医療機関の整備とか医学研究の促進等いろいろ進めてはまいりましたが、この点も不十分でございます。  なお、この際非常に問題なのは、いわゆる日本の医療供給体制で最も問題は、いわゆる一定の地域、ロケーションと、一定の時間帯における医療供給体制というものが不備だというふうに思うわけであります。前者については、僻地医療の供給体制を整備しなければならないという重要な課題を抱えているわけでございまして、これについてはかねがね国会においていろいろと御論議があり、五十年度予算において相当の前進を見ましたが、なおこれについてもさらに改善を加えていかなければならないということだろうと思います。いわゆる僻地医療対策であります。  いま一つは、いわゆる一定の時間帯の問題であります。ことにこれが休日夜間、救急という問題に具体的にあらわれてくるわけでございまして、こうしたことについては私は非常に問題があるということを考えておりますものですから、したがって、これについて早急にひとつ円滑な実施ができるようにしなければならない。これがまたわが国における医療供給体制の一つのアキレス腱だと思ってさえおるわけであります。こういうことでいままでもいろいろ努力をいたし、今年度予算においてもいろいろと予算措置もいたしまして、先生方のお手伝いをいただいて救命救急センターをつくり、あるいはまたその他の助成策等も講じましたが、なお不十分でございますので、問題の本質を摘出して関係者の御協力を得る、そういったような広い幅で考えてみたい、こういうふうに考えて、先般私の指導で救急医療懇談会、救急懇というものをこれまたつくりまして、今日この方面についての学識経験者あるいは実際家の方々の御意見を聞き、この問題についてとかくの問題が起こらないよういま最大の努力しているところでございます。このことは私は昭和五十二年度予算の最大の眼目、目玉にしたいというふうに考えて、いま鋭意努力検討中でございます。
  214. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 確かに、救急医療の懇談会等を設けるなど、先ほどの老人医療の問題なども含めて厚生大臣がきわめて熱意を持って努力されていることは私ども承知はしておりますが、大臣もお認めになっておるように、必ずしもこの医療の供給体制というものが十分ではない、正直に認められておるということはいいことであります。しかし、国民の側からすればこれはやはり非常な深刻なものでございまして、とにかく、私どもも人口の急増県に住んでおるわけでありますが、大変な都市への人口の集中、そういう点での医療環境というものが必ずしも整備充実をしておらない。そういう点における夜間診療でありますとか休日診療、さらには救急医療というような問題におきましても、非常に生活の中で深刻な問題になっておるわけでございます。  私は、厚生省が福祉元年以来非常に国民の大きな期待を集めながら日本の福祉の前進のために鋭意努力をしておることは認めますけれども、非常にこの窓口といいますか、幅が広いために、ある意味においては総花的な行政運用のきらいがあるのではないかというふうに考えるわけです。ですから、やはりこういう健保法の改正というような時期のときに、単に財政難である、あるいは運用面において非常に厳しい状態であるというだけにとどまらずに、やはり国民の皆さん方が自分ででき得る努力と、どうしても大きな公共の場にその責任といいますか、あるいはその負担を、仕事を任せなければならない一つの分野というものがあるわけでございまして、特に暮らしの中における医療というような問題は、これはもう政府があるいは厚生省が率先して整備しなければならない緊急かつきわめて今日的な課題であろうと思うのでございます。     〔住委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味で、大臣のいまの御決意は御決意として承りますけれども、そうした改正を契機にひとつ一層全力を挙げて医療の供給体制の整備充実という点についてお取り組みをいただきたいと思うわけでございます。いま一度その点における決意をひとつ承っておきたいと思います。
  215. 田中正巳

    田中国務大臣 この問題については、さっき私がるる申し述べたところでございますが、先生のおっしゃるとおり、医療の供給体制というものが欠陥があるということはもう社会的に周知の事実でございますので、そうしたことをめぐってかたい決意でこの問題の打開のために前進をする所存であります。
  216. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 次に、改正案の内容でございますけれども、再三大臣が、今日の健保の置かれておる現状にかんがみて国民の皆さんの理解と分担もいただきたい、こういうことでございますが、いわゆる健保財政が厳しいということは、先ほど来局長からも答弁ありましたように、非常に国民生活を取り巻く経済環境が悪化しておる、石油ショック初めいろいろな国際経済の地盤沈下の中で財政の落ち込みが非常にある。しかし、それは政府だけではなくて、国民生活においてもそういう当然の経済変動の中で生活調整に非常に苦慮しておるわけでございますから、健保財政が厳しいから即また国民の方の分担も広げてもらいたい、こういうことだけでは話が進まないわけでございまして、そういう点では今回の、財政難のもととはいいながらも分娩費等の現金給付額の引き上げでありますとか、あるいは高齢者等の医療保障の充実等々の観点から任意継続被保険者制度の拡充を図るなど、こういう何点か非常に評価すべき点もあるわけでございます。しかし、こうした一部の負担というものを単に国民生活への負担増だというだけにとどめずに、やはりこうした健康保険制度というものが制度として存続をし、それがさらに紆余曲折を経ながらも逐次制度が充実をし、そして内容が国民の共感を得られるように、——大臣、与党質問といいながらもちゃんとよく聞いておいてもらわなければ困りますよ。われわれは国民の大なき支援の中で発言をしているわけでありますから、仲間の進言ということじゃなくて、ひとつ国民の名においてよく承っておいていただきたいと思うわけでございます。  そういうことで、いろいろこの一部負担の問題についても、やはり提案者である政府としても十分配慮して出されたことであろうとは思います。特に医療を現実に受ける者と受けない者との均衡の問題でありますとか、あるいは不必要な受診の抑制、また傷病に対する自己責任の高揚、さらには保険財政の安定化対策など、私どもも多くの理由は理解ができるわけでございます。そういう何点かの一部負担の増額に対する理由は私ども承知せざるを得ない現状を認めておるわけでありますけれども、しかし、いろんな視点から、さらに政府といたしましては慎重に、また今後とも、これでよしとするという立場ではなくていろいろ御研究もいただいて、できるだけ国民の負担の軽減のためにもひとつ御努力をいただきたいと思うわけでございます。そういう点で、この一部負担金の改正に関して、厚生大臣としてどういう御見解の上での御判断かということもひとつ承っておきたいと思うわけでございます。
  217. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生から御指摘ございました一部負担金の基本的なあり方あるいは性格、機能、こういうような面につきましては従来からもいろいろ見解が分かれておるわけでございます。さらに多くの議論があるわけでございます。確かに、基本的なあり方としましては、これだけ議論のある問題でございますし、今後十分考えていかなければならない問題であろうということは私どもも十分認識しているわけでございますが、関係審議会等におきましてもその基本的性格等につきましてはいろいろ御議論があったところでございます。ただ、私ども今回御提案申し上げております健康保険法の改正案の一部負担金の問題につきましては、そういうような基本的な問題につきましては今後の検討にまつにいたしましても、現在の金額というものにつきましては昭和四十二年以来据え置きになっているというようなことから、その後の各種の経済指標の動きあるいは医療費の動き、所得の伸び等を考えました場合に、これを当時の状況と今日の状況を比較しました場合に、今日の状況に適応する程度に改定するということは国民の皆様方にも十分御理解なり御納得いただけるのではないかというようなことから、基本的な性格論は今後の検討課題にいたしまして、当面そういうような各種の指標の動き等に見合いました最小限度のスライド的な改定をいたしたいというのが私ども考え方でございます。
  218. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 局長の御見解もよくわかりますが、一部負担のあり方については私が先ほど述べましたような観点からひとつ真剣な検討を重ねられることを強く希望しておきたいと思います。  当然、こうした一部負担という問題は、差額ベッドでございますとかあるいは付添看護などの保険外負担の存在と重なってくるわけでございまして、そういう点、一部負担金について特にこの機会に、いま局長もあれしましたけれども、保険外負担の現状とその対処方針についてひとつ御見解を承っておきたいと思います。
  219. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 国民の健康を守るための医療保険制度というのがあるわけでございまして、せっかく医療保険制度がありながら、保険外の多額の負担があるというようなことから医療の機会が妨げられるということはあってはならないというふうに私どもは基本的に考えておる次第でございます。御指摘ございました保険外の負担の問題としまして、差額ベッドの問題あるいは付添看護、歯科差額等の問題が現実問題として指摘されているわけでございまして、こういうような問題につきましては、私どもは、先ほど申し上げましたように医療の機会を妨げるということがあってはならないわけでございまして、この問題は厳正な態度で取り扱っていかなければならないことではないかというふうに考えておる次第でございます。  代表的な例として御指摘ございました差額ベッドの問題でございますが、現実に差額の高額な室料の負担があるというために入院できないということはあってはならないわけでございます。そういうような面からも、私どもは室料差額の問題につきましては過去に指導通達というものを出しまして、ただ現実に患者さんの側からのニードというものもあるわけでございますので差額ベッド全部を否定するというわけにはまいらぬと思いますけれども、一定限度内にとどめるというようなことから、従来からも差額ベッドにつきましては二割以内にとどめる、しかも国公立等については一割にするというような指導をし、さらに、差額ベッドの際には一定の条件が必要であるというようなことで指導しておるわけでございますけれども、さらに今後この問題の一層の前進を図るというために、さらにこの問題につきまして真剣に取り組んでまいりたい、指導の徹底を期してまいりたいというように考えておる次第でございます。  それから付添看護の問題でございますけれども、基準看護病院におきましては付添看護はないというたてまえでございますが、今回の診療報酬の改定の際におきましても、基準看護病院等におきましてはその看護料の引き上げ等につきましても特に重点的な配慮を図った。さらに、基準看護でない病院につきましては付添看護料の支給をしておるわけでございますけれども、これも現実の料金等の実態に見合いましてこれの額の引き上げを図りたいというようなことから、五月一日には付添看護料金の引き上げも図ったというような次第でございます。  それから歯科差額の問題でございますが、かねてから社会的な大きな問題になったことでもございますし、さらに先般中医協におきましても歯科差額のあり方につきましての御答申をいただいたわけでございます。現実問題といたしまして、歯科医療の直接の当事者でございます歯科医師会の十分な御協力と理解というものを得ましてこの問題の解決を図っていかなければならないというような考え方でございますので、現在歯科医師会との話し合いをできるだけ精力的に進めまして、この問題の早急な解決を図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  220. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 そうした国民の医療供給の立場からも一層の御努力をいただきたいと思うわけでございます。  また、今回の法律改正事項ではありませんけれども、予算でセットされております高額療養費自己負担限度額の改定と政管健保の保険料率の改定について、これは予算上法律改正とワンパッケージでなされておるわけでありまして、その重要性からいえば決して法律事項に劣るものではない。その考え方について厚生大臣から伺っておきたいと思いますので、御答弁いただきたいと思うのです。
  221. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先ほど、今回の健康保険法の改正の基本的な考え方を申し上げた次第でございますけれども、四十八年度の改正というものは大きな前進が図られたわけでございますが、この骨格をいかに実施し、今後の発展に備えるかというためにも、四十八年以降の経済情勢の変動等に伴います最小限度の手直しというものは必要であるわけでございまして、その基礎固めがなければ今後の国民の健康を守るための医療保険制度というものの発展も期せられないというような観点から、経済変動の影響に伴います最小限度の見直しを今後考えていかなければならないわけであります。  ただいま先生から御指摘ございました高額療養費の引き上げの限度額でございますが、現在は三万円でございます。しかし、四十八年のあの制度ができまして大きく前進したわけでございますが、その制度ができました当時から比較いたしますと、医療費の実績というものも大幅に向上しているわけでございまして、それに見合いまして高額療養費の限度額を考えるということになりますと、現在の三万円が五万円以上になるというような実態であるわけでございますけれども、関係審議会の御意見等もございますし、さらにこういうような厳しい情勢ではございますけれども、できるだけ国民の皆様方の負担を最小限度にとどめたいというようなことから、当面三万円を三万九千円に引き上げたいというふうに考えておる次第でございます。なお、その実施時期等につきましては、七月というのを予定しておる次第でございます。  それから保険料の改定でございますけれども、保険料率につきましても四十八年の改正に伴いまして、医療保険制度の財政状況の実態に見合いまして必要な場合には、給付の改善等も含めまして料率の引き上げという規定が設けられたわけでございます。しかし、この料率の引き上げの問題につきましても、本来でございますれば、医療保険の財政というものも非常に悪化しているというような状態から早急にこの料率の改定の問題も取り組まなければいけないわけでございますけれども、私どもとしましては、最小限度の引き上げ、しかも、できるだけ国民の負担ということも考えまして実施時期をおくらせる。当然五十年あるいは五十一年度におきましても健康保険財政は悪化しているわけでございますが、当面、料率二につきまして十月以降というようなことで、最小限度の幅、それからできるだけおくらせるというようなことから、ぎりぎりのところで国民の御負担をお考えいただきたいというようなことで料率二の引き上げを考えておる次第でございます。
  222. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 いま医療の確保ということは国民生活にとって一番大事なことでもありますし、健康保険制度の健全な運営というものを進めていきませんと、これはやはり非常に重要な問題にもなってくるわけでございます。そういう意味で今度の改正を速やかに実現をする。健康保険が社会経済の変化に対応できないということの事態になりますと、非常に危機的な状況に陥るということは火を見るより明らかでありますし、特に将来の制度への充実あるいは展望、発展というものが全く期待できなくなってしまうわけでございます。  やはり、石油ショック以来、社会秩序といいますか、世界経済の秩序も非常に大きく変わってきておるわけでございますし、特に五十一年度、福祉見直し論の中で田中厚生大臣がそれなりの、苦しい事情にありながら努力をされた。景気浮揚、景気浮揚ということで公共事業優先のような色彩もあったわけでありますけれども、今日の時代、状況というものを的確に把握するならば、やはり福祉を通じた生活環境の整備安定というものこそが最大のまた景気回復にもつながるわけでありますし、また生活の安定にもつながる。こういう意味においては、新しい経済情勢、国民生活の上においても、健康保険制度というものの土台を固めるということは非常に大きな意味を持つものであろうと思うわけでございます。そうした意味で、同僚議員の質問もありますので、最後に厚生大臣の今後の決意を伺っておきまして、この質問を終えたいと思います。
  223. 田中正巳

    田中国務大臣 今回の改正は、一部の現金給付の改善あるいは任意継続制度の改善等がございますが、反面どうも費用負担のためにいろいろと国民にお願いをすることが多いわけであります。それだけに抵抗感の多いことも私ども承知をいたしておるわけであります。しかし、現在の医療保険の給付水準を確保するためにはどうしてもこの程度のことをやらなければならないということでございます。そうでなければどこかに破綻が来るということであります。医療保険制度の一番政府が困るのは、このままにほっておいても被保険者も医者も従来余り困らなかったということであります。何とか政府は資金運用部資金を借りてお医者に支払いをしておったわけであります。お医者は金を払ってもらえる、患者は保険証を持っていけば何とかなる、困るのは政府だけ、それは知ったことじゃないというような態度で、ずいぶんいろいろ長い間議論——それだけじゃございません、保険のあり方についての問題もいろいろあったわけですが、そうしたところに健康保険法改正の非常にむずかしい点があるわけであります。今回についてもそういったような問題がございまして、私どもとしては、非常に喜んでこの改正案に乗っていただけないということについて苦慮しているわけですが、いかんせん、国民の医療を確保するためには医療保険制度はこれを実施していかなければならないわけです。しかも、医療費は上がり、そしてまた収入よりも支出の方がどうしても出ていくという今日、この状況を是正するためにはやはりこうした手当てが必要であるということでございますので、どうぞ皆様方がこうした観点に立って、広い視野で医療保険を守り抜くというようなことで、ひとつこの問題についてよろしく御理解を賜りたいというのが私のただいまの心境でございます。
  224. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 終わります。
  225. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、竹内黎一君。
  226. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 私は、ただいま議題になっております予防接種法及び結核予防法の一部を改正する法律案について、ごく簡単に一、二点伺いたいと思います。  まず、法改正の内容に入る前に、今日風疹が非常に流行しておりまして、私どもの青森県におきましては風疹ウイルスに基づく脳炎によって学童が一名死亡したという事例もございます。そういうことで、現在の風疹の流行状況、今後の予測及び当局の対策についてまずお聞かせ願いたいと思います。
  227. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 風疹の流行は、まず昨年の二月から六月までかなりの流行がございました。教育委員会などからの報告によりますと、昨年は約五万人程度の患者が出ております。このような関係から私どもといたしましては七、八年ごとに風疹の流行が起こると従来からされておりますので、本年も昨年に引き続いてかなりの流行が起こるのではないかということで、各都道府県衛生当局に対しても指示を与えていたところでございます。  それで、本年もやはり二月から東京等を中心にして流行が起こってまいりまして、二月だけで五万人の届け出の報告がございました。また三月には約十万人の報告があったわけでございます。そこで今後の見通しでございますけれども、従来の経験から申しますと、今回の流行もやはり五月、六月と引き続きまして、六月の上旬を山として減少傾向に入るものと考えております。  なお、これに対する対策でございますが、昨年の流行にかんがみまして、昨年の秋に風疹ワクチンの製造販売の承認許可を与えまして、メーカーの方にワクチンの製造方をお願いすると同時に、検定を行います国立予防衛生研究所におきましてもいつでも検定ができるように既存の庁舎を改装いたしました。また、本年度の予算におきましては新たに風疹ワクチン検定用の庁舎の建設費、整備費、それに必要な検定要員の増員を図っていただいたところでございます。  なお、流行の大まかな模様でございますけれども、現在はすでに大都会以外の、たとえば東北地方の郡部の方に流行が移っていっているというような印象を受けております。  また、当面の対策といたしましては、各都道府県及び政令市にございます地方衛生研究所にお願いいたしまして、特に妊婦の血清抗体の検査をできるだけ実施するようにお願いいたしております。と申しますのは、風疹そのものは「三日ばしか」とか「ドイツばしか」と言われますように、小児であれば三日ぐらいで治ってしまう軽い病気でございますけれども、これが妊娠初期のお母さん方に感染いたしますと奇形児の生まれることがございますので、特に妊婦については特別な注意を必要とするのでございます。ただ、これも経験的に申しますと、かつて十二、三年前にアメリカではやった風疹の流行あるいはその直後に沖繩ではやった風疹の流行とは異なって、日本の本土における過去の流行では余り妊婦の風疹感染による奇形児の出生が証明されておりません。先ほども申しましたように、昨年もかなりの流行がございましたが、現在われわれがつかんでおります風疹による奇形児といった方々は二名でございます。
  228. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 これから流行を予測されるものに、例の豚インフルエンザウイルスによるインフルエンザがあるわけでございます。御案内のように、アメリカにおきましてはフォード大統領が全国民に接種をするということで議会に予算も要請している、こういうぐあいに承っておりますが、わが方のこの対策はいかがになっておりますか。
  229. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 豚インフルエンザウイルスによります今秋のインフルエンザ流行の予想でございますが、これはアメリカのフォード大統領のブレーンでございます細菌学者がそのような予測を立てたわけでございます。したがって、WHOも去る三月の上旬、急遽世界各国の専門家を集めましてこの問題の協議をいたしました。その結果、十分な警戒体制をとる必要がある、またワクチンは用意をしておいた方がよろしいというような結論になったわけでございます。  で、その後の各国の模様を見ておりますと、まだ態度を表明していない国が多いわけでございますが、アメリカにおきましては例の、フォード大統領が国会に要求いたしました一億三千五百万ドルの予算が両院を通過いたしまして、すでにワクチンの製造に入り、そのワクチンのテストなども行われております。しかし、イギリスにおきましては、疫学的な判断の結果、今冬そのような豚のインフルエンザウイルスによる流行はまずあるまいというような結論に達しまして、ワクチンもつくらない、予防接種もしないという結論を出しております。そのほかのヨーロッパ各国の方針がまだ決まっておりません。  そこで、わが国でございますが、アメリカ公衆衛生局からの通報を受けまして、二月の下旬からこの問題について関係学者等と相談をいたしておりましたが、三月の上旬に先ほど申しましたようにWHOの会議がございましたので、国立予防衛生研究所の福見副所長を派遣いたしました。その帰朝報告を待って方針を決めるということにいたしまして、その結果、伝染病予防調査会にインフルエンザ小委員会を急遽設置いたしまして、この豚インフルエンザウイルス対策を現在検討していただいているところでございます。ただいまのところまだ最終的な結論は得ておりませんが、豚インフルエンザワクチンを早急につくる。また、このワクチンは従来のワクチンにまぜないで単独で接種するような体制を整えた方がいいであろうということになっております。  ただ問題は、アメリカの公衆衛生当局からこの豚インフルエンザのウイルスを送ってまいりますのが非常におくれましたために、先月の末に届いたわけでございますが、そういう関係でワクチン製造等の手はずが若干当初の予定よりもおくれておりますけれども、今冬には必要最小限度、たとえば老人だとかあるいは慢性の疾患を持っていらっしゃるといった、いわゆる英米で申しておりますハイリスクグループにはお打ちできるように万全の準備を整えたいと考えております。
  230. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 その方面の準備はひとつ万全を期していただきたいと思います。  さて、今回のこの予防接種制度改正法案が国会を通過し、施行されますと、その後の予防接種による健康被害はこの法律に基づいてかなり前進した救済措置も講ぜられるわけでございますが、問題は、この新法制定以前の被害者に対しての救済措置、この点若干不明確な点がありますが、いかが相なっておりますか。
  231. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 御指摘のように、具体的な救済制度などの実施の仕方については政令以下に譲っておりますので、いろいろおわかりにならない点もあるかと存じます。また、確かに過去の予防接種による被害者の救済措置についてはいろいろ問題があるように思われます。過去の被害者は、大きく分けますと、もうすでに死亡なさった方と、もう一つは後遺症を残してまだ病床で呻吟していらっしゃる方と、二種類あるわけでございます。  そこで、まず過去に亡くなった方の救済措置でございますが、私どもといたしましては今度の改正法に基づく救済措置は考えていないのでございます。ただ、この点につきましては、今週火曜日、十一日の閣議におきまして田中厚生大臣から、過去の死没者に対しても何らかのさかのぼり救済措置を講ずるように特別の配慮をしてほしいという御要請があり、これに対して大蔵大臣から、それでは事務当局とよく相談して前向きに検討いたしましょうというお答えがあったわけでございます。そのような閣議における基本的な御了解に基づきまして事務当局といたしましては——こういったさかのぼりの救済措置も一見簡単なようでございますが、いろいろこれまでの閣議了解による救済措置等のいきさつとか経緯とか実績とか、そういうふうなものがございましてむずかしい問題がございます。そこで私どもといたしましては、できれば伝染病予防調査会の制度改正部会にこの問題を御相談いたしまして、そこでさかのぼり救済措置過去の死没者に対する救済措置の問題を詰めてまいりたいと考えております。  また、第二のグループの、過去において被害をお受けになっていま障害を残してまだ生存していらっしゃるという方々でございますが、この方々につきましては、新しい制度が制定されますと事実上それに全部乗り移っていくわけでございます。そこで医療の必要な方には医療費の支給をいたしますし、それにあわせて療養手当も新たに差し上げることにしております。また、十八歳未満の方には障害児養育年金というのを差し上げます。十八歳を過ぎますと障害年金を差し上げます。途中でお亡くなりになれば遺族一時金を差し上げるというように、新制度に準じて救済措置を講ずることにいたしております。
  232. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 わかりました。これで終わります。
  233. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次回は、明十四日金曜日午前九時四十五分理事会、十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十七分散会