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1976-05-12 第77回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十二日(水曜日)    午前十時五分開議  出席委員    委員長 熊谷 義雄君    理事 住  栄作君 理事 竹内 黎一君    理事 戸井田三郎君 理事 葉梨 信行君    理事 山下 徳夫君 理事 枝村 要作君    理事 村山 富市君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    浦野 幸男君       大野  明君    大橋 武夫君       加藤 紘一君    瓦   力君       小林 正巳君    佐藤 孝行君       田川 誠一君    高橋 千寿君       野原 正勝君    橋本龍太郎君       山口 敏夫君    金子 みつ君       島本 虎三君    田口 一男君       田邊  誠君    森井 忠良君       田中美智子君    寺前  巖君       大橋 敏雄君    岡本 富夫君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 田中 正巳君  出席政府委員         厚生政務次官  川野辺 静君         厚生省公衆衛生         局長      佐分利輝彦君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 曾根田郁夫君         社会保険庁年金         保険部長    河野 共之君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 杉浦 喬也君  委員外出席者         大蔵省主計局共         済課長     岡田 愛己君         大蔵省主計局主         計官      梅澤 節男君         大蔵省理財局資         金第一課長   石川  周君         自治省行政局公         務員部福利課長 桑名 靖典君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   中山 正暉君     浦野 幸男君   羽生田 進君     佐藤 孝行君 同日  辞任         補欠選任   浦野 幸男君     中山 正暉君   佐藤 孝行君     羽生田 進君     ————————————— 五月十一日  予防接種法及び結核予防法の一部を改正する法  律案内閣提出第六七号)  戦時災害援護法案片山甚市君提出参法第一  五号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第四〇号)  厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第二七号)      ————◇—————
  2. 熊谷義雄

    熊谷委員長 これより会議を開きます。  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。寺前巖君。
  3. 寺前巖

    寺前委員 私は最初に、基本的な態度について大臣にお伺いをしたいと思います。  一九四五年の広島原爆投下された事情について、広島警察部のその年の十一月三十日現在の調査によると、死者は七万八千百五十人、その他重軽傷、行方不明、罹災者など合わせると三十万六千五百四十五人、それに軍関係者を入れると被爆総人口は四十万前後であったと推定されるということを言っております。また、同年の長崎市に対するところ投下についても、県当局が八月三十日現在で明らかにしている点によりますと、死亡者数は一万九千七百四十八名、重軽傷行方不明者を入れると六万二千六百六十五という数字になっておりましたが、同年十月二十三日現在の発表になるとさらにふえて、死亡者数は二万三千七百五十三、重軽傷、行方不明、罹災者数を含めると十三万八千九百五というふうにふえております。いかに恐ろしい爆弾であったかということはこの数字自身も示しておりますし、その後の罹災者方々実態からもその恐ろしさをうかがうことができるのであります。  そうして、いま戦後三十一年、被爆者の多くは老齢化し、いまなお放射能障害や精神的不安、生活苦にさいなまれております。政府は、被爆者の念願にもかかわらず、国家補償立場に立たず、現行医療法特別措置法により、ごく限定された生存被爆者の健康だけを対象にした措置しかとっておらず、しかも、その内容もきわめて不十分であると思います。被爆者の置かれているこれらの現状を踏んまえて、いまこそ国家補償立場に立つ援護措置を講ずべき段階だと思います。  内容としては、医療全面的給付被爆者生活給付遺族に対する遺族給付など、さらに被爆者根治療法確立のための研究施設の設置を初め、全国重要都市原爆病院相談所などを設置して医療体制の整備を図り、そして、アメリカの手によって投下された世界最初の恐るべき、非戦闘員を含めて投下されたこの責任を追及するとともに、国家的な責任を感ずる措置をとられるように私は願うわけですが、最初大臣に、この立場についてどういうふうにお考えになるのか、お聞きしたいと思います。
  4. 田中正巳

    田中国務大臣 いま寺前さんのおっしゃった趣旨について、一部は厚生大臣として御答弁申さなければならないものもあり、一部はまた直接私の所掌でないような問題についてもコメントがございましたが、とりあえず私の所掌に関する問題についてお話を申し上げますれば、要するに、いま政府のとっている二法系統措置を乗り越えて援護法制定をすべしということでなかろうかと思うのであります。これについては昨年の国会においても、私、るる説明をいたしたところでございまして、その後も実は私の心境は変わっておらないわけでございます。  今日、こうした方々に対してどういう施策をとるかということについては、一般的には、やはり社会保障としては、いかなる縁由、理由によろうとも、現状を把握してそれに対処するというのが普通でございますが、原爆被爆者は特別な事情がある。それは、放射能を多量に浴び、身体疾病を受けている、そしてそれがかかりやすい、治りにくい、固定をしない、不安がある、こうしたことは他のいかなる方々にも見られない事象でございますので、特別な法律をつくって、そうした方々に対し他の方々と違って、なかんずく他の戦災者と違った特別な措置をとっているわけであります。そうなりますれば、これについては、現在のそうした身体に傷痍を受け、そして体がよくない、病気にかかりやすい、治らない、あるいは不安であるというところに着目をした制度であるべきでありますし、またそうなれば、そうした者を対象にして制度を打ち立てていくというのが、公平の見地から見て私は妥当な措置だというふうに思うわけであります。かようなわけで、私どもとしては、二法の系統を主軸としてこれを充実強化していくということが、この問題に対処する一番いい方法だというふうに思っているわけであります。
  5. 寺前巖

    寺前委員 重ねて問題を提起しますが、あの、国民を戦争に駆り立てるために重要な役割をした諸君たちが、戦後、極東裁判といわれる裁判にかけられて、そして一定の措置をとられました。このAクラス戦犯あるいは戦犯容疑者が、それでは今日どういう扱いを受けているのか。ちょっと一端を見るだけでも、たとえば内大臣木戸幸一という人は戦争責任を問われて終身刑に処せられております。ところが今日では年額三百六十万円の恩給をもらう生活をしている。戦争を進めた、こういう犠牲をつくり上げた、そういう人が、十二で割って月に直すと三十万円からの恩給をもらっているときに、一方では、戦争犠牲、なかんずくこういう非戦闘員を皆殺しにまでするところの武器を使われ、その犠牲を受けた人々が一体どうなっているのか。それは病気との関係、問題を中心としただけの対策で果たしていいのか。そして、しかも今日、三十一年の間、この戦争原爆の被害の結果から、その家族がその人を見ていかなければならないという生活上の問題もあれば、あるいはまたその看病の問題からも全力をふるっておられる。そしてその間においては、幾つかの何らかの補償をかち取っておったとしても、たとえばだんなさんが亡くなって残された、看病しておられたところの奥さん、そこには何ら遺族に対するところ措置もない。三十年間付き添ってめんどうを見たけれども、残された者は何もないという姿。この二つを対置して見たときに、そういう現行法だけで事足れりとするのは少し検討し直すべきじゃないだろうか、私はそう思うのです。したがって、閣僚として厚生大臣が、閣議援護法制定の問題について改めて真剣に考えることを積極的に提起すべきだと思いますが、重ねて御意見を聞きたいと思います。
  6. 田中正巳

    田中国務大臣 いま、かつての連合国によるところ戦犯の処遇についてのお話と対比をしてこの問題をお話しをされました。そうしたお話が出ることは、私も心情的に理解ができないわけではございませんが、それはそれとして、別の法体系のもとにそのような組織になっているわけでございます。  原爆被爆者につきましては、私どもといたしましては現在の二法の系統をもって対処するのが適当であると考えております。しかし、時世の推移に応じまして、この二法の系統措置というものを充実強化していくということが私は適当だと思いますので、援護法をこの際提議をせよということですが、閣議で発議をしたり、あるいは申し上げるつもりはいまのところありません。
  7. 寺前巖

    寺前委員 私はきわめて遺憾に思いますが、話を進めてみたいと思います。  現行制度の中において一つ問題点は、認定制度にあることは戦後の被爆者の中において大きな位置を示してきました。最近この認定が厳しくなってきているというふうに一般的に言われているのですが、それは間違いございませんか。
  8. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 原爆医療法第八条第一項の認定患者制度でございますが、その運用について、医学的にも事務的にも厳しくなっているということはございません。ただ、すでに被爆後三十年以上を経過いたしましたので、いろいろ事実を証明する資料の収集その他非常に困難になってまいっておりますので、審査に若干手数のかかるケースもふえてまいっておりますし、また、従前に比べますと、申請の中の認定合格率が下がってきているということは事実でございます。
  9. 寺前巖

    寺前委員 私の手元に、ことしの三月三十一日、公衆衛生局企画課がお出しになったところ認定疾病処理状況があります。三十二年から四十六年を見ると、認定率は八八・九%、四十七年は五四・三%、四十八年は五一・二%、四十九年は五二二%、ところが五十年度になると、それが途端に三四・一%というふうに極端に落ちてきているわけであります。したがって、いま局長さんがおっしゃられた、三十一年もたつとなかなか困難な事態の問題が生まれてきている、私もそうだと思います。    〔委員長退席山下(徳)委員長代理着席〕 それだけに、それに対応するところ処理はきわめて重要だというふうに思います。もっと現実的に処理をしなかったならば困難だという事態が生まれてきているというふうに思うわけであります。  そこで、その第一点でありますが、昭和四十六年の七月に原爆医療審議会が、認定に当たってA、B、Cランクに対するところ答申を出しておられます。この答申では、Aについては、申請者傷病原子爆弾放射能に起因する可能性を肯定できる。Bは、申請者傷病原子爆弾放射能に起因する可能性を否定することはできない。Cは、申請者傷病原子爆弾放射能に起因する可能性を否定できる。この三つランクをお決めになっております。そこで、A、Bについては可能性を否定することができないという段階までです。Cだけは明確に否定することができる。この三つランクから言えることは、挙証責任当局の方がとって、そして、Cは明確に否定することができる、A、Bについてはそれは否定する根拠がないんだから、これは認定できるじゃないかという方向でこの答申は検討されたと私は思うのです。私は前にこの件について質問をしたことがありますので、重ねてこの場で、三十一年たったら証拠を集める上において本人挙証においてはむずかしい問題がある段階だけに、この問題はきわめて重要な位置を占めると思うのですが、厚生省はこの問題についてどういう態度をとられるのか、お聞きしたいと思うのです。
  10. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 御提案の御趣旨はわかるのでございますけれども、この種の制度運用に当たりましては、事務簡素化迅速化を図ると同時に、公平化と申しますか、公正化ということも十分に注意しなければならないわけでございます。そこで、認定患者認定の際に、むしろ行政当局挙証責任を持つというような考え方あるいは態度で今後進めたらどうかというお話でございますが、被爆後三十年以上もたってまいりますと、行政当局としてもなかなか的確な資料あるいは証人を得にくいというような状況になってまいります。しかしながら、全国都道府県で見ればいろいろ問題があるのかもしれませんけれども、たとえば広島とか長崎におきましては、県や市の行政当局もできるだけ御援助をして、本当被爆者の方、また本当認定患者に当たるような方々はできるだけお救いをしていくという努力をしているところでございます。ただ、その際も、すでに被爆後三十年以上たっておりますので行政当局の力のみでは解決できないのでございまして、やはり医療機関あるいはその他の住民の御協力も得なければなりません。そういう関係で、行政当局医療機関住民等一体となって、先生の御提案の御趣旨を体して、今後認定制度の迅速、適切な運用を図っていくべきであろうと考えております。
  11. 寺前巖

    寺前委員 この四十六年の医療審議会答申に基づいて、いまも体してやっていきたいということをおっしゃっていましたが、疑わしき者は認定するという態度処理をするというふうに当委員会でも私は聞いたように思いますが、間違いございませんね。
  12. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、認定に当たりましては医学的な側面事務的な側面がございます。したがって、医学的な側面につきましては疑わしきは認定するという態度をとっております。現にそうしております。
  13. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、それは指導方向としてきちっと確立しておられる以上は、都道府県に対して通達は出ているのでしょうか。
  14. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 そのようなはっきりしたものは出ていませんけれども、おおむねそのような趣旨を述べたものはございます。また、私どもは、全国衛生部局長会議あるいは原爆対策所管課長会議等において、そのような点について強く指示しているところでございます。
  15. 寺前巖

    寺前委員 この問題はきわめて大事な指導方向立場の問題ですから、当委員会でお述べになった立場に立って各都道府県に公式に通達としてお示しをいただきたいと思いますが、大臣、いかがなものでしょう。
  16. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 ただいまこれに関連する通達を正確に覚えておりませんので、ここで直ちにお約束をするわけにはまいらないのでございますが、従来の通達をよく点検した上で、必要があればそのような手続をとりたいと思います。
  17. 寺前巖

    寺前委員 そこで、この認定関係して幾つか引き続いてお聞きをしたいと思うのですが、局長さん自身がお述べになっておられましたように、手続が少し遅くなるという問題をお述べになっておりました。私の手元に、昨年八月上旬に提出した岩手県の人から、こういう話が来ているのです。高橋武夫さんという方ですが、認定申請を昨年の八月に出したけれども、本年の一月三十日付で認定になった。そして本人宅に連絡が来たのは三月であった。ところが御本人は昨年の十二月にすでに死んでしまわれた。いわゆる死後認定という形になっているわけです。岩手県を調べてみますと、被爆者総数で百十名です。ところが、死後認定が何と三件、認定却下が二件あって、両方合わせて死後に態度が決められたというのが五件も出ている。総数で百十名という状況の中で五件も出てくるということは、テンポとしてもよほど考えなければならない事態が生まれているのじゃないだろうか。特に被爆者の多くが老齢化してきているという事態だけに、この処理問題の改善は直ちに何らかの具体的な措置を考えられる必要があるのじゃないだろうかと思うのですが、こういう問題に対して何か具体的に検討されているのでしょうか。
  18. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 前回の御質問のときにもお答えしたかと思いますが、事務簡素化をまず図らなければなるまい。そうすると、主治医の意見書とか診断書、こういったものも許される限り簡略化を図りたい。また次に、その認定に当たりましてもできるだけ事務をスピード化いたしたい。ただ、先般来申しておりますように、三十年以上たっておりますので、どうしても必要な資料が不備である、ないという場合があって、差し戻されるケースがふえてきているわけでございます。しかしながら、ただいま御指摘のように被爆者も老齢化してまいりましたし、このようなケースの割合も以前に比べればだんだん高くなっておりますので、なお一層事務迅速化について努力をいたしたいと考えております。
  19. 寺前巖

    寺前委員 八カ月かかったとか、いろいろ出てくるわけですし、死後認定もこういうことになってきておりますので、たとえば二カ月に一回開いている医療審議会、これもおくらせる一つの原因にもなるでしょうし、あり方をもっと合理的に、テンポを早めるように再度御検討いただくことを提議しておきたいと思います。  それから次に、認定の問題で問題になるのは、原爆投下後に入市したという問題ですね。原爆投下後に入市された人に対しては認定しないというような方向が何かあるのかどうか。入市したということによって左右されるということになっていないのかどうか。一つはそれについてお聞きしたいのと、それから爆心地からの距離チェックする一つ内容になっているのかどうか、そこをちょっとお聞きしたいと思うのです。
  20. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 まず第一の御質問の入市者考え方でございますが、これは入市者の場合も認定患者対象にいたしております。特に原子爆弾爆発直後から救急活動に従事した方というのはかなりいらっしゃるわけでございますから、そういう方は最も問題になるわけでございます。  第二の、爆心地からの距離の問題でございますが、これはおのずから世界医学界、日本の医学界でコンセンサス、定説というものがあるわけでございます。しかしながら、物事はそう割り切って運用するわけにもまいりません。また実態として、たとえば三キロの点で瞬間被爆は受けたけれども、後で直ちに入市をした、もっと近い距離に入っていったというような方もあるわけでございますから、そういうことなどもよく勘案して認定の適正を図っているところでございます。
  21. 寺前巖

    寺前委員 ちょっと念のために聞いておきますが、いまおっしゃった勘案してということは、チェックする条件にしているという意味ですか、それとも、疑わしきものは全部入れるんだ、だから、距離が離れているからそれはまたそれとは別個にチェックされるんだというのか。疑わしいということになったら距離も何もあったものじゃないし、入市条件であろうと何であろうと疑わしきものは疑わしいので、何もそういうチェックをことさらする必要はない、私はそう思うのですが、何かそこは矛盾しているように感ずるのです。ことさらそういうふうにはしていないのか、ことさらしているのか、そこはどうなんですか。
  22. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 そのあたりは申請の際の行政指導指導が行われているわけでございまして、通常は、先ほど具体的に申しましたように、三キロで被爆したけれども爆発直後さらに一キロの地点に入ったというようなことが申請書に書かれてくるわけでございます。また、書かれていないときには、そういうことがあったかどうか、こちらの方で調べているわけでございます。
  23. 寺前巖

    寺前委員 ぼくの言うているのは、ことさらにチェックするのか。疑わしきものは全部認定するんだという立場から言うたら、ことさらチェックするというのは矛盾してくるじゃないか、こういうことを言うておるのです。
  24. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 いまのような、何キロで被爆した、あるいは何キロの地点に入市したというようなことは、先ほど申し上げました事務的側面の問題でございまして、純粋な医学的側面の問題ではございません。したがって、そういった当時の事務的な側面から見た事実関係については、これは被爆者に対する事務の運営の公正化立場から厳しくチェックをしているところでございます。
  25. 寺前巖

    寺前委員 片一方では公正化から厳しくチェックする、片一方では疑わしきものは認定する、これは矛盾しませんか。認定というのは、疑わしきものは認定するという前提に立ったらそんなことはチェック条件じゃないじゃないか。もうそれだけだと私は思うのです、認定というものはそういうことだと言うのだったら。そこがちっともわからない。
  26. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 先ほど申しましたように、まずその被爆者が当時どういうふうな状態に置かれていたかということが一つの問題になります。それから、その後どういうふうに発病してどういうふうになっているかという医学的なことが問題になるわけでございます。医学的な面につきましては、先ほども申しましたように、現在の医学の通念で疑わしいと思われるものは全部救うという方針でございますが、当時の被爆の事実関係につきましては、やはりこれはかなり厳しくチェックをいたしませんといろいろと問題が起こってくるのでございます。その端的な例は、これは認定患者ではございませんけれども、先般の広島における原爆手帳不正交付等の問題、こういったことが具体的な事例になろうかと思います。
  27. 寺前巖

    寺前委員 いや、ぼくはちっとも理解できないんだ、局長さん。疑わしいというのは、原爆に起因して疑わしいと言うておるのだ。そのこと自身は疑わしい中に入ってしまっているのだ。それをことさらチェックするというのは筋が通らぬ話じゃないか。何か相矛盾した意見だな、こう思うんだ。だから、疑わしきものは認定すると言えば、それ以外のチェックはない。きわめて明確だ。疑わしい中には、前提被爆者であるという前提がなければ話にならぬのはそれは当然だ。そうでしょう。特別なチェックじゃないじゃないか。その点ははっきりしておきなさいよ、私は聞いておってどうもそこのところがよくわからぬから。疑わしきものは認定する、これ以外にありません、ぼくはそれはあたりまえだろうと思うんだけれども大臣、どうでしょう。
  28. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 どうも私の説明が下手なものでございますからなかなかわかっていただけないようでございますが、医学的な立場からは疑わしいものを全部救って、しかし、当時の被爆の事実関係についてはかなり厳しくチェックをいたしておりますということでございます。というのは、先ほど広島原爆手帳の問題は少しオーバーな問題でございますけれども、現在もうすでに被爆者手帳をお持ちになっている方は三十六万人にも及んでおりまして、爆心地からの距離で申しますと、やはり標準五キロから六キロぐらいまでの範囲になっているわけでございます。そういうふうな関係もございまして、やはり被爆の事実関係というものはある程度厳しくチェックせざるを得ないと考えるわけでございます。
  29. 寺前巖

    寺前委員 私は、被爆していない人に被爆だというようなことを言えということを言っているのじゃないので、被爆者であるということは当然でなければならない。その場合に、疑わしいときには認定するという態度をおとりになった。ぼくは、それ以上のことはないじゃないか。そして、入市者であろうと、距離が離れておったって、いろんな関係でどういう被爆状況になるかわからぬ。だから、疑わしいものは全部採用するという基本であくまでも通してもらうということを強くお願いして次にいきますが、そういう点は、私は認定が減ってきている問題との関連で何か新しく対応されたのかなと思ってちょっと聞いてみたので、そうじゃないのだったらそれで結構です。  それから、この間もちょっと聞いておりましたら、外傷性のケロイドの人の認定がここで問題になっていました。ところが、私の知っている限りでは、これは大阪のある病院の患者さんの実態を調べてみたら、昭和四十七年の三月六日に、ある女の人、大正十年生まれの女の人が広島で受けた、それでケロイドがある、熱焼瘢痕治療障害ということで加療中、認定、こうなっているのですよ。それから大正五年生まれの女の人が、やはり同じようなことで昭和四十八年三月二十九日になっている。それから大正七年生まれの男の人、長崎で受けた方がやはり同じように、なっているというふうに、次々ずっと見ていると、前は手術をしなくたって認定をしているじゃないか、最近になって、手術をしなければ認定しない、方針が変わられたのかどうか、そこのところをちょっと聞いておきたい。
  30. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 ケロイドの場合には、やはり手術をするような場合に認定するというのが原則でございます。ただ、ケロイドの状態あるいはその被爆者のいろんな心身の状態によっては、手術、つまり外科的な治療まではしないが、内科的な治療をしなければならないという場合もあり得るわけでございまして、そのようなケロイドによって何らかの内科的な治療が必要という場合には、認定患者として認定することができると思います。
  31. 寺前巖

    寺前委員 時間の関係がありますので先に進みますが、健康診断で、視覚障害が全被爆者の四〇・八%にまでずっと達してきております。この中でも白内障の有病率が被爆者の中では非常に高いということは、もう一般的常識になってきています。ところが、現在の検査項目を見ると目の問題は入っていない。さらにまた、がんの問題が被爆者にとって高い位置を占めるようになってきております。ところがこういう問題についても検査項目の中では出てこないことになってしまう。ですから、そういう意味では健康診断の一般検査のあり方について改善をする必要があるのじゃないか、検査項目その他についても。同時に、そのことは現在の検査料単価そのものも、一般で千八百二十円、精密で四千二十円というふうに五十一年度予算でなっていますけれども、その辺もちょっと低いということになるのではないだろうか。ちなみに、公害の場合の検査状況を見ても、大気汚染のぜんそくについては八千九円の単価になっているし、あるいはその第二地域の水俣なんかを見ると三万四千二百八十六円という数字にもなってきている。要するに二つの点、検査項目の問題と単価の問題について再検討する段階になってきているのではないかと思いますが、その点、いかがでしょう。
  32. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 まず、健康診断の検査項目の問題でございますが、これはやはり、原爆に基づく疾患あるいは原爆の影響があると思われる疾患、そういったものについての医学の進歩と合わせて内容は変えられていくべきものであろうと思います。ただ、基本的に申しますと、集団検診という方式にはおのずから限度がございまして、ある一定水準の検査以上はとても集団検診ではやれないということになってくるわけでございます。そこで、そういった医学の新しい知見、また実施可能かどうかというようなことも考えながら絶えず検討し、改良を加えていかなければならないと思うのでございますが、たとえば、先ほどございました目の検査でございますが、これもトラホームの健康診断のように、まぶたをひっくり返してみればわかるというものではないわけでございまして、もうすでに指定医療機関が四百、また一般疾病医療機関が三万六千あるわけでございますから、そういう方々はそういった指定医療機関、担当医療機関で診ておもらいになればどうであろうかと思うのでございます。がんについては、これは集団検診でどこまでできるかという問題のほかに、先ほど医学考え方にかかわってまいりますけれども、現在のところ、たとえば胃がん、子宮がんが明らかに原爆放射線によってふえるという確たる知見がないわけでございます。そういう関係で、二つの面から集団検診に取り入れていないわけでございます。  また、単価については、年々単価を引き上げて改善に努めているところでございますけれども、まず第一次の集団検診の単価については、これは検査項目によっておのずから決まってまいります。ただ、保健所でやります場合と、また受託医療機関でおやりになる場合ではおのずと単価が変わってまいりますけれども、しかし、一次集団検診の単価のようなものは、その内容の項目でおのずから決まってまいります。問題は第二次の精密検査でございますが、これは前年の実績等を勘案して一応一人当たりの平均単価を決めており、しかも年々これも引き上げているのでございますけれども、精密検査は一人一人の被爆者によって検査の種類、内容が著しく違うわけでございます。一人三万円かかる方もあれば、一人千円で済む方もある。そういったものの平均がここにあらわれている単価でございまして、しかもそれも毎年引き上げているところでございます。
  33. 寺前巖

    寺前委員 ぼくは、一般検査というのはいま被爆者が一番直面しているところの問題で、きちっと検査をしてあげるということが一番中心問題だろうと思うのです。三十一年たってきたら、その間にはずっと被爆の原因に基づくところの諸関係に変化が生まれてくる、これは当然のことだと思うのです。その変化が生まれているやつにぴたっと合った検査をやっていくというのは、もう当然のことだろうと思うのです。そのことを早く発見することによってそれに対する対応策も出てくるということで、当然検査項目についても検討をし直していくというのがぼくはあたりまえだと思うのです。それが専門医の場所でやった方がいいというのだったら、専門医中心の一般検診という問題を提起して、皆さんおいでなさいよと、こういうふうにやっていくのがぼくは親切なやり方だと思うのですよ。それは、そういうものが出てきておるからそっちへ行ってやりなさいということじゃなくして、やはりその時代に合った検査項目を検討して、それを中心にして検討していこう、それに必要な予算をどうしたらいいだろうか、こういうふうに考えていくのが当然だと思うのです。これは現時点においてもう客観的に明らかなんだから、どの分野がいまの段階における多い部分になってきている、これを早期に発見することが重要だ。私がさっき言ったようなことなんだから、これはぜひとも再検討してもらいたい。どうです。
  34. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 先ほど来申し上げましたように、集団検診の限界、また現在の集団医学の限界、そういったいろいろな問題があるのでございますが、御指摘のように、被爆者の年齢も上がってまいっております。また、放射線影響研究所等の成果からまた新しい原爆放射線と疾病との関係も逐次明らかになってきておりますので、そういったことを取り入れながら内容を絶えず改善していく必要はあろうかと思います。したがって、こういった問題につきましては、原爆医療審議会の御意見ども聞きながら検討を進めてまいりたいと存じます。
  35. 寺前巖

    寺前委員 それじゃ、それをひとつやってください。  それから、昨年の段階から新しい問題になってきたのに保健手当の問題があります。もう細かいことは省略いたしますが、二キロという限界問題があります。これは私は社会保障制度審議会でも提起した問題であり、社会保障制度審議会の答申の中でも、保健手当の支給範囲についてはその根拠に不明確な点を残しているということをわざわざ提起されている問題であります。実態を見ましても、たとえば健康管理手当、これは被爆者のかかりやすい病気ということで出されたところの手当です。それを見ると、たとえば広島市の場合、五十一年三月末調べを見ると、健康管理手当が支給されているのは二キロ以内の人が一万四百五十九人、二キロ外の人が九千七百人、これは広島市の例ですよ。こういう実態になっているわけです。とすると、二キロ以内の被爆者であろうと二キロ外の被爆者であろうと、これはもう同じように多くの人たちがもらっているという事実は否定することができないわけですね。  この保健手当はこう書いてありますね。「近距離で直接被爆した人に日ごろから保健上の注意を払うことができるように支給されます」と、被爆者ハンドブックに書いてあるのです。「日ごろから保健上の注意を払うことができるよう」、そうすると被爆者のかかりやすい病気というのを対象にして健康管理手当を出しているのですから、これはかかりやすい病気、だから日ごろから注意せんならぬ病気、その手当をもらっている人が二キロ以内も三キロ外も同じ数あらわれているということになったら、この日ごろから保健上の注意を払わなければならぬ人を二キロで制限しなければならぬという理由は一つも明らかにならない。だから、二キロを基準とすることの根拠は、私は学問上の話はきょうはやめますよ、現実の問題から見てきわめて不合理じゃないか。だからここは改善する必要があるという問題をひとつ聞きたい。簡単にお答えいただきたい。  時間がありませんので飛ばします。  それからもう一つは、長崎原爆病院を調べてみたら、健康管理手当に関係する問題ですが、消化器系の疾患の人がかなりふえているのですよ。消化器系統のが四番目か五番目くらいになっているのです。前にこの健康管理手当の疾患対象を、八疾患であったものが十疾患に現実的に対応されたのだけれども、それでも四番目か五番目くらいのところに消化器系の疾患が位置してきているということになってみると、この問題についても対象について検討する必要が生まれているのじゃないか。私はこの二点を最後に聞いて終わりたいと思うのです。
  36. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 まず第一に、保健手当の二キロの問題でございますけれども、保健手当は、まだ特別手当も健康管理手当もおもらいになっていない被爆者方々の中で、原爆放射線のためにあるいは今後健康障害が出てくるかもしれない、そういう方々にその予防を主たる目的として差し上げる手当でございます。そういう関係で、どうしても医学的、科学的な根拠に基づいて線引き、キロ数は決めていかなければならないと考えております。  次に健康管理手当、現在十種類の障害が定めてあるわけでございますが、消化器系の障害がまだ定めていない、原爆病院で見てもそういう人たちが第三位に上がってきているではないかというお話でございます。これにつきましては、あと残っております問題は、御指摘の消化器系の機能障害、それと皮膚系統の障害、こういったものではないかと思うのでございますが、一般的に日本の国民に非常に多い障害、疾病でございまして、特に原爆被爆者の方に多いという確たる証拠がまだ得られていないのでございます。しかしながら、四十九年十月から呼吸器の機能障害と運動器の機能障害を新たに加えましたときも、第一線の指定医療機関あるいは医療担当機関のお医者さん方の御意見を集約したという形で原爆医療審議会委員から提案されて、御審議の結果追加したものでございます。今後もそのように第一線の御意向というものをよく反映させながら、こういった問題は慎重に検討してまいりたいと思います。
  37. 寺前巖

    寺前委員 大臣に最後にお聞きします。  先ほどの二キロの問題は制度審においても答申の中に書いてあるわけです。現実的な実態から見てもこれは再検討しなければならない段階に来ているのだ。せっかく出発されたのですから、この問題について審議会の方からもそういう問題が提起されているので、大臣としてはどう対処されるのか、それを最後にお聞きして終わりたいと思います。
  38. 田中正巳

    田中国務大臣 保健手当の支給対象、具体的に言うと爆心地から二キロメートルということにつて、いろいろ国会の内外で議論のあることを私どもも知っております。これについては、国際放射線防護委員会の結論に基づいて、人間が一生に一度だけ浴びる放射能の量のグレンツというものを考えてやったということになっておりますが、こういうものについて、一体どの程度で線を引くかということについてはいろいろな角度から問題があると思われますが、私どもとしては、現在身体上何にも障害のない人について特別な配慮をして何とか手当を出すということでございますので、したがってこういう根拠を設けたわけでございます。しかし、この放射線医学に関する研究が進んで、新しい成果が出てまいりますれば、そういったことによってまた改善することはやぶさかではありません。
  39. 寺前巖

    寺前委員 終わります。
  40. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 次に、田中美智子君。
  41. 田中美智子

    田中(美)委員 被爆者の問題について質問いたします。  昨年の特別措置法の改正案の審議のときに、附帯決議として「相談業務の強化」ということがうたわれています。これは昨年だけでなくて、毎年この附帯決議が出ているわけです。相談事業の強化ということが出ているわけです。それを厚生省は一応お認めの上、四十八年度から五十年度まではこの予算を概算要求のときに大蔵省に要求しているわけですね。一応要求しているということは、熱意がどこまであったかは別としても、一応やろうという気持であったということは認めたいと思うわけです。それをどうしてことし、五十一年度の予算要求のときにしなかったかということです。それはもう昨年も附帯決議できちっと、これを強化するということを五党一致でやっているわけですね。それをなぜやらなかったのかということをまず大臣にお聞きしたいと思います。
  42. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 この問題につきましては、私どもも非常に重大な関心を持って四十八年以来臨んできたわけでございます。端的に申しますと、広島長崎の間でこの相談事業の推進の仕方について意見の相違があるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、両県の被爆者方々意見を調整した上で、必要があれば五十二年度の予算要求でも再度提出をいたしたいと考えている次第でございます。
  43. 田中美智子

    田中(美)委員 そういうお言葉を毎回おっしゃるわけです。昨年、五十年四月二十三日のこの委員会佐分利政府委員、あなたは同じことを言っているのですね。毎年同じことを言って、そして附帯決議には、強化する、こういっている。相談事業というのはそんなに大変ですか。
  44. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 昨年は、予算を要求したけれども予算が入らなかったということで、そのいきさつを御説明したわけです。ただいまは、五十一年度の予算要求をしなかった、その理由について御説明をしたわけでございます。ただ、相談事業というのは、国が補助金を組むということも最終的には必要であるかもしれませんが、一義的にはやはり県なり市なりにおける事業がどうなっているかということが大切であろうかと思います。そういう観点から拝見いたしますと、全国都道府県というわけにはまいりませんが、特に広島とか長崎では、県、市、保健所、それに社会福祉事務所、こういったところが特別な相談室等も設けているわけでございまして、そのような方法で相談事業の実が上がっていれば、それで被爆者のためにもなっているのではないかと考えております。
  45. 田中美智子

    田中(美)委員 いまのお言葉は根本的に間違っていると思います。大臣、ちょっと聞いてください。原爆というのは県や市に任せて済むものではないですよ。あの方たちは自分で好んで原爆の被害を受けたわけじゃないですね。国が勝手な戦争をして、この戦争が間違っていたということはいまわかっていますし、そしてその結果、何の罪もない人たちが国によってやられたと言ってもいいような——これはアメリカがやったわけですね。しかし、アメリカに賠償をしてもらうことを日本の政府が放棄したわけですからね。ということは、日本の政府に賠償の責任があるという、こういう大きな問題です。国の問題ですよ。ですから、この国会の中での社会労働委員会で、相談事業を強化するという附帯決議をいつも、自民党も含めてやっているわけじゃないですか。それを、県がやっていて、これが役に立っていればいいということは反対の問題であって、国がやらないから、見ていられないために県や市が、金がないから幾らかやっているということにすぎないわけじゃないですか。それをいいことにして、いかにも国は責任がないみたいな、県と市がやっていればいいというような、そんな佐分利さんの答弁ではもう聞きたいと思いません。  大臣、この附帯決議——附帯決議というのはただくっつけておけば野党が承知するから、政府としてはそれは考える余地はない、こう考えていらっしゃるのですか。大臣、答えて下さい。これは基本的な問題ですから。
  46. 田中正巳

    田中国務大臣 佐分利局長のいまの話、私、言葉が足らぬものですから先生誤解したんじゃないかと思うのですよ。国がやらなくてもいいんだ、こういうことではない。こうした相談業務というものをどういう機関でやればいいのか、こういうことを申したと思うのであります。たまたま両市で、地方公共団体の機関でやっておるし、そうしたことでまたある程度の目的を達せられるのじゃないか、こういうことで、これで国が免責されるとか手を染めるべきではないんだという意味ではない。その業務の実態が、一体どこでやるならば一番よくやれるかということを申したかったのだろうと思います。かようなわけで、こうしたことについて必要があるとするならば、どこの機関で実際にやるかは別として、やはり国としてもできるだけのことについての援助をする必要があるということならばやった方がいいのじゃないかと思うわけであります。  ただ、私ちょっと聞いたのですけれども被爆者の相談業務を、相談員とは言い条、こういう個人に相談することについて若干違和感を感ずる向きがあるんだということをちょっと聞いた。本当かうそかぼくはわかりませんですけれども。したがって、オフィシャルなところで相談業務をやった方がいいんだという議論も私聞いたことがございますので、こうしたことをめぐって少し検討してみようかなということでいまお尋ねのようなことになっているわけですが、よく検討してみたい、かように思います。
  47. 田中美智子

    田中(美)委員 公衆衛生局長の言葉を大臣が弁護してやるというのですか。これは反対じゃないかと思うのですけれども公衆衛生局長がそんな態度では——いまの大臣のお言葉でも、やった方がいいなら、それはやってもいいと言うけれども、やった方がいいんだということは、この社会労働委員会の中で毎年附帯決議で、やった方がいいという結論が出ているんじゃないですか。それをまだ出てないように、やった方がいいかどうかわからないから、やった方がよければやるという姿勢の中に、五十一年度、この予算を取らないということがあると思うのです。  そして、プライバシーの問題だとか何だとか言いますけれども、相談事業というのは、何も相談したくない人は行かなくていいわけです。それから第一、プライバシーが暴露されるような、そういう相談事業をつくらなければいいわけでしょうう。隠したいというものは相談の中で幾らでも隠せる。これは家庭裁判所だって何だってそうじゃないですか。福祉事務所だってそうじゃないですか。福祉事務所がみんなばらしていますか。そんなことはないじゃないですか。それは、あなた方がやりたくないというところから、そういう一部の意見を金科玉条のように引き出してきてそういう言い方をしていらっしゃるのだとしか考えられないと思うのです。  私は被爆をしておりませんけれども、いまの佐分利さんの話を聞いてかっとするぐらいですので、もし被爆者が聞いていたら、そういう県や市がやっているからというような、幾ら言葉足らずでも、これは言葉足らずじゃなくて思わず本心が出たと思うのですが、私は、非常に怒ると思うのです。現状というのはあなたはよく知っているはずですよ。まだ健康な人が、幾らか体がきくからというので被爆者の人が世話をやっていた。この被爆者自身が老齢化したり、いろいろな病気になったりして、世話役自身がほかの被爆者の世話ができなくなってきているという状態になっているわけです。そして、いろいろな科学的に間違ったうわさなども流れているわけです。そういう中でいろいろ心配しまして、手当の受給の問題だけでなくて、健康の問題、生活の問題、子供、孫に関する問題まで、必要以上の心配をしたりしている場合もあると思うのですけれども、そういう苦しみや悩みというものが非常に多様化してきているわけです。原爆被爆者であるがためにそうなっているわけです。ですから、そういう不安を聞いてほしい。もしその不安が、しなくてもいい不安であるならそれを直してあげたい。それから、三十年間こうして苦しめられた恨みつらみもだれかに聞いてもらいたい。それはだれかれに言えないということもある。それがきちっとした国の機関の相談所であるならば、当然その方がプライバシーが守られるんだし、そこで恨みもつらみも聞いてもらいたい。いろいろな気持ちがあるのじゃないですか。もう少し、血と涙を持った人間ならばそれぐらいのことは、それほどの金がかかるわけでなし、いままで厚生省も一応概算要求をしていたのに、それを後退させるということは余りにもむごいことではないかと思うのです。  いま大臣が検討なさるとおっしゃいましたので、時間がありませんので検討していただくということを確認いたしまして、また今度も附帯決議できちっとつくと思いますので、来年度は必ずこの概算予算を強く請求し、大蔵省からこの予算を取っていただきたい。私たちも被爆者と一緒にそのために全力を挙げたいと思いますので、その点、一応了承して次の質問に移ります。  二番目の問題ですが、特別手当をもらっている方で生活保護をもらっていらっしゃる方はいま何人ぐらいいらっしゃいますか。
  48. 翁久次郎

    ○翁政府委員 世帯にいたしまして二百七世帯でございます。
  49. 田中美智子

    田中(美)委員 この二百世帯の人たちが保護手当をもらうと同時に特別手当をもらうわけですけれども、これはいままで放射線障害加算というので、半分だけ認定されるという形になってきたわけですね。これは今後どうしていくわけですか。これもいままで何遍もここの国会の附帯決議にもあり、毎年検討するという形で来ているわけです。全国でわずか二百七世帯ですよ。一体幾らの金額になるのですか。今度政府がまだ白紙還元していないロッキードの飛行機、ボデーだけでも六十億、七十億、こう言われているものを、一体幾らになるのか。なぜこれを全額加算しないのかということなんですけれども、なぜなんですか。
  50. 翁久次郎

    ○翁政府委員 生活保護の体系で申し上げますと、一応収入のある世帯についてはこれを収入として認めるという一つの原則がございます。それに対して、たとえば老人であるとか母子であるとか放射線を受けたという人に対して別途の加算をとっているわけです。いまの放射線障害を受けられた人でいろいろな手当がございますけれども、特別手当につきましては、性格がいわば生活援護的なものであるということで加算という対応をしているのが現状でございます。ただ、おっしゃいますように、この問題についてはいろいろと検討すべきことであるということになっておりますので、厚生省といたしましても、一応加算という対応はしておりますけれども、なお検討中であると旧いうことを申し添えておきます。
  51. 田中美智子

    田中(美)委員 検討中、検討中と言う。毎回ここで附帯決議もつけられて、それも数からすればわずか二百七世帯ですよ。それも、国のきちんとした責任をいまなお三十年たっても明らかにしないで、援護法さえも通そうとしないで、そういう中でせめてこれぐらいのことは、だれが考えたって全額加算するのは当然じゃないですか。わずかな金額ですよ。現行二千四百円ですね。それは千二百円加算しているのですか、現在。
  52. 翁久次郎

    ○翁政府委員 現状では二万四千円の特別手当にいたしまして、一万二千円出るようになっております。
  53. 田中美智子

    田中(美)委員 数字を間違いました。二万四千円ですね。そうすると半額一万二千円出しているわけですね。これは検討するとおっしゃるのですけれども、一体いつごろにこの検討の結果が出るんですか。永遠に続きますと、もう老齢化しておりますし、もう三十年たっているんですよ。このことを三十年検討し続けたんじゃないでしょうけれども
  54. 翁久次郎

    ○翁政府委員 私も昨年の国会で本問題がありましたことを十分承知しております。財政当局という相手のあることでございますけれども、この問題についてはなお極力進めてまいりたいと思っております。
  55. 田中正巳

    田中国務大臣 この問題についてはいろいろ議論のあるところでございます。いま先生、財政上の問題から、幾らもお金がかからぬ、こういうことを言っておりますが、お金ではそうかもしれません。しかし、ミクロで見て、各保護世帯のバランスの問題が非常に政策担当者の間で議論になるらしいのでございます。しかし、こうした方々でございますから、私としては全額加算ができるかどうかはバランス論からいってなかなか簡単には言えないが、しかし何ぼかでもよくしたいものだというふうに思って、率直なところ、いま財政当局とやり合っているところで、私は実はいま判こを押さないのですよ。それで私はいま抵抗しているところでございますが、もうちょっとがんばってみたい、こういうふうにざっくばらんなところを先生に説明申し上げて、どこまでいけますか、ともかくがんばっている途中でございますのでどうぞよろしく……。
  56. 田中美智子

    田中(美)委員 非常にがんばっていらっしゃるということですので……。いまのバランス論ということですけれども被爆者に対してはバランスというのはないと思うのです。同じ状態の中でいろいろ病気になったという場合には、これはバランス論というのはわかります、こちらによくてこちらに悪い。被爆者の場合にはバランスはないと思う。だれとも比べるものはないと思うのですね。ですから、他の保護者がどうであろうと、これが低い、低くないというところはそこの次元で考えるとして、バランス論で、これが多かったからバランス、こういうことはないというふうに思うのです。ですから、大臣が一生懸命やっていらっしゃることは認めますけれども、まだ大臣の頭の中にそういうバランス論がありますと困るので、やはり判こを押すときに、もっと強く、これは押さぬ、絶対に出せ、バランス論はないのだという形でやるべきではないですか。世界にも類のないこういう大きな被害を受けた人たちです。
  57. 田中正巳

    田中国務大臣 特別措置法の観点から見れば先生のような議論が成り立つ。しかし、生活保護法の観点から見ればまた議論が残る。そこに厚生大臣の苦しみがあるわけですよ。ですから、全然被保護者とのバランスを考えなくてよろしいというわけにもなかなかいかぬだろう。その点は先生気に入らぬかもしれません。しかしどうも、私も率直に考えまして、この点についてはこの際全然バランス論をネグレクトして考えろということについては、私いま、そうしますとは言いかねるわけでございますので、被爆者の特別な状況にかんがみて、できるだけひとつ特別措置法的観点にウエートを置きながらやっていきたいというところでございまして、この後結論は出ると思いますが、私が先生の仰せのとおりやらないからといってまたしかられてはかないませんから、私率直に申し上げますが、そういう趣旨で、できるだけ被爆者の特別な立場というものを重く見て、この際この問題の前進を図ろうというふうに思っております。
  58. 田中美智子

    田中(美)委員 もちろん、それは、十万も二十万も加算せよというのでしたらバランス論にはなるかもしれません。しかし、いまのでいけば、一万二千円を足すか足さないかということですので、被爆者が一万二千円多かったからといって——放射線加算を一緒にしましても三万四千円ですね。それが多いからといって、それがバランス論の中には私は入らないと思うのです。金額によっては確かに、全部十万、二十万ではバランス論はないとは言いませんけれども。そういう点でいま一生懸命やっていらっしゃると言いますので、これは今年度のことですね。  それではこの運用規則は毎年出ているのが七千五百円になっているのです。しかし、七千五百円になっているのに実際には一万二千円出しているわけでしょう。ということは一刻も早くこれを直さなければいかぬわけですよ。これをどうして直さないのかということは非常に疑問なんですけれども、時間になりましたので、ぜひこれを直すということですね。そして、いま大臣努力を、これは真実のお答えだというふうに、大臣のお人柄から見ましても私は信頼しておりますので、その点、今年度必ず改善されるものと思いまして、次の質問をちょっとだけさせていただきたいと思います。  これは原爆病院の問題ですけれども、いま三十年の中で被爆者はいろいろ移っています、居住地が。広島長崎だけにいるわけではないです。それが愛知とか大阪、東京、そういう大都会に非常に移られているわけです。こういう方たちが病気にかかったときに、原爆病院長崎広島しかないというのは非常に困るというので、せめて各都道府県の大都市に国立の専門の原爆病院や療養所を建ててほしいというのは、これは被団協の要求も特に強いし、被爆者の要求というのは非常に強いというふうに思います。安心してかかれる病院がほしいということですので、ぜひ国立の原爆病院なり療養所なりというものをつくっていただきたいというふうに思うのですけれども、その点はいかがでございましょうか。
  59. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 現在原爆病院と申しておりますのは広島長崎の日赤の病院でございますが、そのほかに原爆の指定病院は約四百、また一般疾病医療機関は三万六千あるわけでございます。また、国立病院や療養所もその中に含まれているわけでございます。  問題は、原爆症の方々の診療はどういうところに特徴があるかと申しますと、まず第一はやはり、がんがよく出てまいりますので、がんの機能が強くないといけない。それからもう一つは、やはり被爆者も老齢化してまいりましたから、そういった老人の被爆者あるいは原爆孤老、こういった方のお世話ができなければいけないところであろうかと思います。そこで、先生御提案のように、各県に国立の原爆病院、療養所をつくるということは理想ではございましょうけれども広島長崎以外の被爆者の数が少ないわけでございますから、現在国立病院、国立療養所が進めております計画をそのまま進めていけば、他の患者さんのお世話もいたしますけれども被爆者方々医療面について十分要望にこたえられるようになるものと考えております。
  60. 田中美智子

    田中(美)委員 現状は十分要望に応じられていないからこういう要求というのが出きているわけですので、ぜひこういう観点で、十分要望に応じられるような対策をとっていただくことを要求いたしまして、私の質問を終わります。
  61. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 次に、大橋敏雄君。
  62. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 引き続いて質問をさせていただきます。  昨年は被爆三十年ということで、被爆者の皆さんはもちろんのこと、関係者の団体の皆さんから、とにかく国家補償に基づく援護法制定を急げということで、大変な運動が展開されたわけです。確かに被爆者の皆様もほとんど高齢化なさいまして、もう待てない、死んでからでは遅過ぎるというような必死の訴えとともにいまの運動が展開されたわけです。  そういう中でわれわれ野党四党は皆様の御要望を何としても実現させたいということで、それこそ連日連夜にわたって援護法の検討をいたしまして、遂に具体案をまとめ上げたわけです。そしてこれを国会に提案し、努力をしたわけでございますが、御承知のようないきさつで、遂にいまは継続審議ということで参議院に置かれたままになっているわけでございますが、被爆者が求めているものは一体何か、それはお恵みだとかあるいは同情、こういうものではないのであります。すなわち、戦争責任の所在だ。したがいまして、それに値する法改正、すなわち援護法の即時制定であったということを深く自覚しなければならぬと思うのであります。政府は、国家補償による援護法には反対であると、大変な強い意気込みでこれを述べて、少なくともいまの社会保障の範囲の中で、原爆二法で何としてもこれを見ていきますからということで、いわゆる援護法に対しての態度を変えようとしないけれども、やはりこれはもう一歩真剣にこの問題と取り組んで進んでもらいたい。大臣自体も去年の質疑応答の中で、「きわめて特別な立場にあるこの立法、施策でございますので、私は、今後はひとつそういう観点に立って考えるときに、」いろいろとそれからおっしゃっております。また、私どもが附帯決議をいたしました中に、「被爆者が現在もなお置かれている特別の状態と被爆者の援護対策の充実強化の要望を配慮し、今後被爆者援護措置全般にわたる制度の改善を図ること。」と、はっきりこうしてうたい、附帯決議として認められたわけです。ところが、政府の言うことと今回改正案を出された内容を見てみますと、全く期待外れだと言わざるを得ないのでございますが、まずこの点についてどういうお考えであったのか、お尋ねしてみたいと思います。
  63. 田中正巳

    田中国務大臣 援護法制定せよということについて昨年あたりから、昨年急に始まったわけじゃございませんけれども、かねがねいろいろと御意見がございまして、いろいろと私から御答弁申し上げております。実はけさほども寺前委員お話を申し上げたように、この点については私は終始一貫変わりがございません。いまお話がございました、特別な状態に置かれておるということにかんがみというのは、まさしくこうした原爆二法の系統が生まれ出ている根拠だろうというふうに私は思うわけであります。それをどう把握をし、どう位置づけるかということについての議論の違いだろうというふうに思います。  われわれとしては、原爆被爆者が多量の放射能を浴び、健康に非常に障害がある、あるいは不安があるといったようなことは、これは他の戦争犠牲者には見られない独特の問題でございますから、したがって、理由をこの種の法律の中に求めてやる立法というのはないのですが、原子爆弾被爆者についてはそうしたことを特別に考えて、二法の系統を今日実施しているわけであります。また、具体的な施策についても、いろいろ議論がその法律の出発点から出てくるわけでございますが、私どもとしては現行二法の系統における施策というものを拡充強化していく方が適当であろうと考えますので、私どもとしては、援護法制定ということについてはいまのところ考えておらないわけでございます。
  64. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 なるほど、原爆二法の範囲の中で諸手当を引き上げていこう。今回の改正案で各種手当額は確かに引き上げられてはきましたけれども、問題は、手当額で治るものじゃないわけですね。原爆症に対する治療というものが、いまだにその決め手が究明されていない、私はここに第一問題があると思うのですね。手探り状態であると言っても過言ではないと私は思うのであります。いずれにいたしましても、確かにお金の問題もかなり重要な問題でもありますので、各種手当額の引き上げについては反対するわけじゃございませんが、相変わらず所得制限やあるいは種々の規則がこれに加えられて、決して満足なものではないわけです。  ですから、私はここで提案をしたいわけでございますが、野党の言うような国家補償に基づく援護法がにわかにできないということであるならば、現在の各種手当というものは健康管理あるいは生活保護的な性質のものでありますので、遺族補償も含めて特別の配慮をして、終身無条件にこれを支給していく、このように思い切った内容に改めるべきではないか、こう考えるわけでございますが、いかがでございましょう。
  65. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 所得制限の撤廃の問題でございますけれども、私どもといたしましては、四十三年特別措置法制定以来、四十六年度を除き、毎年所得制限の緩和策は講じてきたわけでございます。また、本年度におきましても、たとえば標準的な健康管理手当で申しますと、従来は前年の所得税額が十一万七千五百円であったものを、十八万三千八百円というふうに大幅に引き上げるということをしたわけでございます。これによって、本年度の予想では健康管理手当は支給率が九〇%になろうかと思いますし、認定患者の特別手当では支給率が九四%程度になるものと考えております。
  66. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 そういうことよりも、最後の問題について答えてください。
  67. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 問題は、私どもも大いに今後も所得制限の緩和の措置を講じてまいりたいと思いますが、この制度国家補償制度ではございませんので、やはり所得の多い方々には応分の負担をしていただくということがたてまえとして残るであろうと考えております。また、死没者に対する補償遺族年金とか弔慰金、こういった問題は、前から申しておりますように一般戦災者との関係がございまして、きわめて困難であると考えております。
  68. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 これは大臣局長さんで答えられる問題ではないと思うのですね。要するに、健康管理あるいは生活保護的な性質のもとに諸手当が支給されているのだ。そこで、遺族補償も含めて、いま言ったような援護法がにわかにできないということになれば、少なくとも皆さんが安心して生涯こういう手当を受けられるように、終身無条件に支給していく、このような配慮は他になされるべきではないか、こう私は聞いているわけです。これは大臣の決断以外にないと思うのです。
  69. 田中正巳

    田中国務大臣 終身無条件というのを一体どういうふうに考えておられるのか、よくわかりません。しかし、こうした特別の事情にある方々に対する特別な措置でございますので、その方々のニードに対応してそれぞれ処置することが適当であろうということでありまして、一回そういう処置を受けたならばその条件は全然動かないのだ、こういうわけにも実はいかぬだろうと思います。しかし、こういう方々がこうした二法の系統において必要な状況にあるとするならば、もうこの方は一生その状況に応じて処置を受けるわけでありまして、そういう意味では終身だろう。無条件というのは、それはどんなに収入があっても考えるなという、つまり所得制限との間のことを抽象的におっしゃっているのではないかと思いますが、これについてはいま援護局長が申しましたが、われわれとしては、所得制限については本措置趣旨にかんがみてできるだけこれをなくするようにいたしたいものだというふうに思って努力はいたしておりますが、まだ、これについては完全に撤廃をするというところまで、政府全体としてのコンセンサスを得てないというのが実情でございます。
  70. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでは特別手当について、生活保護の収入認定から外すようにという意見が前国会でもかなり強く出たわけです。私もここで要請いたしましたが、この点については検討されましたか。
  71. 翁久次郎

    ○翁政府委員 本件につきましては先ほど田中委員の御質問にもお答え申し上げたわけでございます。これは生活保護のたてまえと現在支給されております各種手当との調整の問題でございます。生活保護の上では、御承知のとおり収入認定除外の方法と加算の方法と両方ございます。被爆者につきましては、大多数の者は収入認定除外で措置をしているわけでございます。ただ、この特別手当は、いわば手当の性格が生活援護的な性格であるということに着目いたしまして、本制度発足以来、これに対しては一応収入認定をしながら、被爆者の方の生活上、たとえば保健上の配慮あるいは通院、入院というようなことに着目いたしまして、大体半額相当額をいままで加算で対応してきたわけでございます。したがいまして、生活保護のたてまえから申し上げますと、これを収入認定除外ということに措置することは私は大変むずかしい問題である、かように考えているわけでございます。
  72. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 われわれは、全く除外しろとまでは言ってないわけですよ。ただ、現在の二分の一調整ということが妥当かどうかということを再検討しろ、こう言ったわけですね。要するに、現在の二分の一調整、支給手当額の半分を政府の方で特別加算しているというあり方は、あなたもおっしゃる生活援護的なものという立場から見た場合、やはりこれは妥当ではない。被爆者の皆さんというものは放射能にむしばまれた体でございまして、その精神的あるいは肉体的苦痛、苦悩は大変なもので、それが三十一年でございます。もう何とか本当の意味の援護の手を差し伸べていただきたい、これは偽らざる心境であろうと思います。ただ検討、検討いたしますと言って、中身の変わらない検討ではしようがございませんので、それこそ、いずれまた来年度においてこの被爆者問題の法案が検討、審議されると思いますので、そのときにはどうしても前進した内容でこの問題が取り上げられることを強く要望いたしておきます。  次に移ります。原爆病院の整備改善でございますけれども、病院財政について十分な配慮をなされたのかどうか、端的にお答え願いたいと思います。
  73. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 本年度におきましては、広島長崎原爆病院の運営費補助金といたしまして二千六百万円を計上いたしました。新規でございます。そのほか、四十九年度から補助しておりましたが、原爆後遺症に関する研究費、これが従来それぞれ二千二百五十万円でございましたものを、約一千万円ふやしましてそれぞれ三千二百八十万円にいたしております。また、従来から建物、設備については必要に応じて補助金を交付してまいりましたけれども、本年度は特に広島原爆病院百七十床のうち百四十床を移転改築いたしますので、それに対する国の補助金三億二千万円を計上いたしております。また、長崎原爆病院は血液の自動分析測定装置を購入したいということでございますので、約八百万円の補助金を計上いたしております。
  74. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 要するに、原爆の患者の皆さんが最大のよりどころとしているこの二つの原爆病院、ここが財政面から思うような施策ができないということになると、本当に悲しい問題だと思います。特段の配慮をしていただきたいということですね。  去年の委員会で参考人がおっしゃっていた話の中にも、「被爆障害の学問的究明が三十年たった今日もできていないために、被爆者の不安をつのらせております。世界でただ一つ被爆体験国である点から、まことに残念で、被爆者は救われないという感を深くしているのであります。したがって、医療の万全を期していただくためには、被爆者専門の病院を国費で運営して、十二分な研究と十二分な治療があわせて行えるような専門病院を設立し、被爆者が信頼して安心して医療が受けられるようにしていただきたいと存じます。原爆病院の国営移管をお願いいたしておりますが、これもこの要望に沿ってお願いしているところであります。」これは参考人の要望でございましたね。こういう点を踏まえて、もう一度大臣の方からこの点についてお答え願いたいと思います。
  75. 田中正巳

    田中国務大臣 原爆病院に対する助成というのは、実は、先生の方から見るとまだいろいろ問題があっておしかりがあるのだろうと思いますが、予算折衝のときにこれは最大の眼目であったわけでありまして、押し合いへし合い、相当なものでございました。特に広島の施設整備補助金、これを私は何とか出してやろうと思いまして、実はあれから委員会の質疑応答がございましたから何とかしなければならぬと思いまして、広島の八月六日の記念日に行ったときにも、何とかするということを不退転の決意で皆さんに実は申し上げたわけであります。でありますからやらなければならぬということでありますけれども、何分にも日赤病院でございますから、いろいろ議論がございましてずいぶん苦労いたしましたが、結局三億二千万円という、これは渡し切りというような、くくった補助金というかっこうで出すことについて、これはずいぶん国会の先生方のお世話にもなりましたが、こういうことで行った。それもただならぬ、一筋ならぬ道であったということを御披露申し上げたいと思います。  それから、運営費が赤字が出るということで、いろいろいままで苦労してやってまいりました。研究委託費でやってきたのですが、これは研究委託費だけでは、これ以上ふくらませるということになると問題が出てくる。率直に言うと、研究委託費の名目で金を余りふやしていると、しまいに会計上の問題も出てくるということでございまして、他の病院との間にいろいろ波及するとかしないとか、率直なところそういう議論もありましたが、とにかく今年は新しく運営費補助金というものを起こすことに成功いたしたわけであります。これはまあ、よそに波及するのだといって抵抗が激しかったわけでございますが、それは違うんだと言ってずいぶんがんばりまして成功したのです。これには当委員会の審議などが大きく役に立った、私の心境にも役に立ったと思いますし、また皆さんの当時の御支援もあったものと思います。いずれにしても、まだ十分じゃないということだと思いますが、やった私どもにすれば、よくぞここまで来にけるものかなというふうに思っているわけでございます。
  76. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 まあ自分自身、自画自賛なさっているわけでございますが、じゃあなたのその熱意だけは評価いたしましょう。  健康診断における検査項目の改善についてでございますが、昭和三十二年、法制定以来全く改善されていないということのようでございます。実は私の手元原爆被害者団体の方々から「被爆者健康診断についての要望書」という一つ資料が届けられました。私はこれをつまびらかに拝見したわけでございますが、本当に貴重な意見がずいぶんと羅列されているように思えてなりません。時間が許せばこれを全部読み上げたいわけでございますけれども、それもできません。恐らく厚生省関係ところには届けられていると思いますので、その中の一、二を私は申し上げたいと思います。  一般検査に次の項目の追加の要請が関係団体から起こっております。それは、「一般検査は原爆放射能との因果関係が明らかだとされている原爆認定疾患や、被爆者が比較的かかり易いとされる健康管理手当該当疾患が早期に発見され、治療効果があるような内容とすべきであり、そのために次の点を考慮した改善を希望します。」ということですが、一つ目に「肝機能検査(最小限GPT、ZTT、ALIP)」それから二つ目に「心電図」三つ目に「血糖値(飲食後一時間又は二時間)」としてあります。それから次に「血液像」その次に「その他広く専門家の意見をきくこと」こうあるわけでございますが、まずこうした要望についての見解を承っておきたいと思います。
  77. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 具体的な御提案がございましたので、それに基づいて御説明いたします。  まず、肝臓機能の精密検査でございますが、これはやはり第一次の集団検診にはなじまないものである、第二次の精密検査でやるべきものであると思われます。また、心電図でございますが、これもなかなかむずかしい問題がございます。第一は、県によりましては一次検診で心電図の測定診断までやる能力が弱いというような県がございますし、また医学的には、集団検診で心電図をとったその結果がどの程度役に立つであろうかというふうな純粋な問題がございます。そのほか、血糖値の測定も第一次の集団検診にはなじまないもので、第二次検診で行うべきものであろうと思いますし、血液の検査については、すでに当初からこの部分には特に注目して、ほかの集団検診では見られないほどのいろいろな検査をすることにしているのでございますが、ただいま申し上げましたように、やはり集団検診には実施面から、実施の体制あるいは医学的な現在の水準、そういった面からおのずから限度がございます。精密検診に今後たくさん持っていかざるを得ないものと考えておりますけれども、しかし、原爆放射線の影響による各種疾患もだんだんと明らかになってきておりますし、また被爆者方々もだんだんと老齢化なさっておりますので、そういうふうな点を勘案しながら、学界、専門家の御意見も聞いて、内容の改善について今後も検討を続けていかなければならないと考えております。
  78. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いま、第一次検診と第二次検診との混同された内容だ云々というお話がありますけれども、この原爆被害者団体の方々が健康診断のあり方について実験的検診を実施なさいまして明らかになったことは、いわゆる厚生省の指示による第一次、第二次に分けての検診のあり方については大変問題があるということですね。あるいは第一次の検査項目には大きな欠陥があるということがわかってきたわけでございますが、実はその実験的検診というのは、第一次、第二次を分離しないで、いわゆるワンタッチ方式で行ったというわけです。その実験結果が出ているわけですけれども、検診の内容が七項目に分かれております。そのうちの三つ厚生省で指示している第一次検診の内容で、あとの四つが第二次関係に含まれるわけですね。その二つを一緒にひっくるめていわゆるワンタッチ方式で行ったところが、実は、一部分の員数でございますけれども、こういう結果が出たというのです。  すべての検査項目で異常値のなかった者は二十二名、一二・二%であった。一項目以上のいずれかに異常値のあった者は百五十八名、八七・八%。そのうち厚生省認定の第一次検診項目で異常はなく、精密検査部分に異常値を認めた者、これが七十六名、四二・二%、こうですね。「即ち、何らかの異常を認めた百五十八名のうち第一次検診項目で既に異常のあった者八十三名、第一次検診項目で異常なく精密検診部分で異常のあった者七十六名である。以上の関係が二回以上受診した者でどうなっているかを見ると」次のような問題があるといって、またそれの分析された内容が出ておるのですけれども、いま言ったように、第一次検診、第二次検診を分離してやっているいまの厚生省の指示によるやり方というものにかなり問題がありますよという、これは実験的な証明なんですね。ですからこの点も思い切って改めるべきではないかと私は思うのですが、この点、どうですか。
  79. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 ただいま御提案のような御意見は、原爆の検診だけでなく、ほかの検診についても最近一部から出ております。要するに、外来人間ドックのようなことを初めからやったらどうかという御意見でございます。それにつきましては、まず第一に実施能力の問題がございます。いつでもどこでもできるような実施体制がまだございません。それから第二の問題は、やはりそういうふうな外来人間ドックのような、遠くへわざわざ行って長い時間をかけてやるような検診はお断りだという方がございます。やはり身近なところで一応のスクリーニング検査をしてほしいという方々も非常に多いわけでございます。また、はっきり申しますと、外来人間ドック方式の精密健康診断につきましても、まだ本当医学的にその評価が固まったものではございません。なかなかむずかしい問題がございます。  そういうふうなことを総合勘案いたしまして、御指摘のように現在の被爆者の健康診断のあり方は絶えず検討を加えなければなりませんけれども、やはり従来の第一次検診はそのまま残し、できるだけ多く第二次検診に行っていただく。また場合によっては、不安のある方は初めから、もうすでに四百ございます指定医療機関とか、あるいは三万六千ございます一般疾病担当医療機関、そういうところを訪れていただく、そういう方法でいくのがいいのではないかと考えております。
  80. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間が非常に限られておりますもので、まだいろいろとたくさん聞きたいことがあるのでこの問題ばかりにこだわれませんので、これはこれで済みますけれども、この点は非常に重要な問題だと私は思っておりますので、実際にそういうことをやられた方々意見を十分聞いて、再検討していただきたいことを強く要請しておきます。  次に、問診についてでございますけれども、いかなる認識に立っておられるか。これは重要な問題なのでお伺いしたいわけですけれども、もうすでに過去、昭和三十三年八月十三日、公衆衛生局通達で、被爆者の健康を一般検診の成績のみで判断してしまうことは、原爆後遺症の研究も十分でない現状では大変危険であるというふうに、問診の重要性を訴えてはいるわけですけれども、これは実際は非常に不徹底だそうですね。いろいろな事情があるにもせよ、これは被爆者の皆さんの共通した要請です。問診をもっともっと真剣にやっていただきたいということです。この点についてお考えを聞いておきます。
  81. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 御指摘のように、もともと医学の診断において問診というのは非常に重要なことでございますが、特に被爆者の場合にはもっと重要であろうと思います。最近は、一般検診の場合に、対象被爆者も多いものでございますので、ややもすれば問診がなおざりになっているところもあるようでございますが、その点は今後姿勢を正すことにいたしますが、このような問診も、被爆者の方の健康台帳のようなものがきちんとしておれば毎年毎年お聞きしなくてもいいわけで、一年間の特別な事項だけをお聞きすればいいということでございますけれども、その点がまだ書類が不備でございます。また、いまの健康診断を見ますと、検診の受託機関が毎年変わっていたりするわけでございます。これではまた毎年とり直さなければならぬというような問題もございます。そういったところも含めて、今後被爆者の健康診断制度の改善を図ってまいりたいと存じます。
  82. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 問診がなおざりになっているところがあるという、一部分みたいな言い方のようでございますが、これはむしろ全般的な傾向だということなんですよ。ですから、決してなおざりにならないように。また、いみじくも局長から、きちっと記録をとっていれば云々という話がありました。書類が不備でということだったのですね。確かにこれは問題です。したがいまして、被爆者健康調査票を使用して、さらに現在の健康診断個人票ですが、一般検診用に、できれば「治療中の疾病欄」を設けてほしいという要望もあるのです。というのは、たった二つの判断、治ったか治らないか、いいか悪いかというような問題だけじゃなくて、一方に該当しなくとも、まだまだほかの問題で治療しているんだというような実情がたくさんあるわけですから、そうした面も含めて検討していただきたいということです。要するに、設けるべき治療中の疾病欄というのは、自覚症状あるいは疾患なしとか、糖尿病治療中だとか、高血圧治療中だとか、心疾患治療中だとか、ずっとこういう要望が十項目にわたって実はあるわけですけれども、こういうものもつけ加えていただいて書類整備をしていただきたい。強く要請をいたしておきます。被爆者の健康管理上の判定が単に臨床病理学的検査のみで行われないように、制度的な措置を講ずる必要があると私は考えるので、これも強く要望いたしておきます。  時間が迫ってきましたので、次に移りますが、被爆者医療費は全額公費負担とすべきである。これはこの前も大変強い要請をしたわけでございますが、さしあたり国民健康保険特別調整交付金の増額について検討されたものと思いますので、この点について御見解を承りたいと思います。
  83. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 医療費の負担制度でございますが、認定患者原爆症の治療に対する費用は全額国費で持つべきだと思いますが、認定患者の場合にも、自動車事故を起こすとかかぜを引くとか、その他の疾病が出てくることがあるわけでございます。また、特に認定患者以外の被爆者の場合には原爆放射線の影響があると思われる疾病対象にいたしておりまして、認定患者認定疾病ほど原爆放射線との因果関係は明らかでございません。そういう関係で、そういった方々については自己負担分を国費で負担しているわけでございますが、ただいま御指摘のように、昨年の附帯決議にもあり、国民健康保険に対する特別な財政措置につきましては原爆医療費の分も十分に考えて手当をいたしております。
  84. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 実は原爆二世の人々でございますけれども、結婚や就職の適齢期を迎えているわけですね。現実問題といたしまして、こういう二世の方々の中に、原因不明の疾病による死亡がぼつぼつと出てきているという話も聞いているわけです。そういうことで、これらの症状についてはそれこそ全額国費による救済の道を講ずべきではないかと思うのでございますが、この点について、これは大臣の決断だろうと思いますので、お願いします。
  85. 田中正巳

    田中国務大臣 原爆二世のいろいろな障害について議論がございます。しかし、現在私どもの聞いている限りにおきましては、原爆二世の方々原爆障害についての因果関係は学問的には究明されておらないところでありまして、むしろ否定的な意見の方が多いというふうに私は聞いております。そうした根拠に立つときに、直ちにこうした人たちに対する施策をすべて公費で賄うということについてはなかなか論理的につながってこないということでございまして、この問題については、ただいまのところ直ちに解決するというふうなお答えをするわけにはいかぬと思います。
  86. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 直ちに解決しろと言っているわけではございません。先ほども言いましたようにに、現実問題として原爆二世の中に、原因不明の疾病によって死んでいっている幾つかの例が挙がってきているわけですね。そういうことで関係者は非常に心配もし、生活的な問題からもその要請が出てきているわけであって、全額国庫負担で救済の道を講じてほしいというこの切実な訴えに対して、少なくとも検討していただきたい、こういうことです。
  87. 田中正巳

    田中国務大臣 要は、この二世の方々が一体原爆被爆との間にどういう関係があるのか、そうしたことについての医学的な知見との勘案において考えるべきことであろうと思われるわけでありまして、そうしたことを踏まえて、もしそういうことが明らかになった場合にはこれは問題がございません。そうした状況を見て対処をいたそう、こういうことでございます。
  88. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それではまた変わった立場お話をいたしますが、原爆症の認定についてでございますけれども被爆者の実情に即応するように改善の検討が指摘をされてきたはずでございます。その問題についての見解を聞きたいことと、それから、実は四月二十八日に中国新聞に出た記事なんですけれども広島の市長が厚生省被爆者手帳の廃止の申し入れを行ったという趣旨のものなんです。五十一年の二月に広島市において、被爆者でない者に広島市議や職員などが被爆者手帳手続をし交付させ、健康管理手当等を不正受給させたという事件が捜査当局の調べで明らかにされた。調査を受けた被爆者の中に二名の自殺者があった。そのために広島市長は、被爆以来三十年も経過している今日、その認定業務に自信が持てないという理由からということですけれども厚生省にその旨の申し入れをしたという記事が実は出ていたわけでございます。これは本当かどうかという問題なんですが、いかがでございましょう。
  89. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 まず、認定制度の合理化の問題でありますが、これは御指摘のように特に今後重大な考慮を払わなければならないことと考えております。やはり事務簡略化を図らなければなりませんし、また審査の迅速化を図らなければなりません。しかし、一方においては不公平の起こらないように、公平化ということに力を注がなければならないと考えるわけでございまして、申請書類等の改善、また原爆医療審議会における審査の進め方についていろいろと工夫をこらしているところでございます。また、すでに認定を受けた方につきましても、たとえば本年度から小頭症の方々の永久認定制度を設けました。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕  次に第二の、広島における手帳交付を、この際、一定期間を置いた後打ち切ったらどうかというような御提案でございますが、私どもは正式に聞いておりません。私が放影研の日米理事会で広島に参りましたときに、市の局長からそれらしいお話はちょっと聞いておりますが、正式なお話ではございません。この問題についてはむしろ中国放送、中国新聞の方から御質問がございましたけれども厚生省としてはいまのところそのようなことは全く考えておりません。
  90. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 厚生省としては全く考えていないということですね。わかりました。  被爆者手帳全国の開業医でも利用できるように善処していただきたい、こういう強い要請が実はなされております。現行では登録医のみがそれをあれするわけでございますが、長崎広島にはかなりそういう関係者がいるわけでございますけれども、それ以外は非常に少ない。地方の被爆者は、現行の援護対策すら受けられない状況にある人々もおるところでありますので、どこに居住していようとも被爆者手帳が利用できるように、特段の配慮をしていただきたい、こういうことです。
  91. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 現在の方式でまいりますと、原爆の指定医療機関あるいは一般疾病担当医療機関の数をどんどんふやしていくという方式でございます。一般疾病担当医療機関は昨年からことしにかけて約五百ぐらいふえておりますが、特にこれは各都道府県に対して強く要請しているところでございます。そのほか、医師会の方では、指定医療機関でない場合には、患者さんがいらっしゃると代理請求という方法を普通は使っておるのでございますが、被爆者の方に御迷惑がかからないで医療機関が請求する、そういうような方法もございますし、また、公害の指定医療機関のように、いやなところだけ辞退届けをするというような方法もあるわけでございます。その点については医師会、病院協会等の問題もございますから、その辺ともよく相談をしながら、なお一層の改善を図ってまいりたいと考えております。
  92. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 これも切実な問題ですので、真剣に取り組んでいただきたいことを要請しておきます。  保健手当の支給条件の拡大についてでございますけれども爆心地から二キロとしたことは、被爆者間の分断、いわゆる差別的な問題を派生してくるのじゃないかという大変な懸念がなされておるわけでございますが、この点について善処される考えがあるのかどうか、お尋ねします。
  93. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 先ほど大臣がお答えいたしましたように、この問題はすぐれて医学的、科学的な問題でございます。現在、よりどころにしておりますのは国際放射線防護委員会の勧告でございます。これが近くまた新しい勧告が出るやに聞いておりますので、そういう点をよく見ながら制度の改善を図ってまいりたいと考えております。
  94. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 改善の意思は十分あるということですね。
  95. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 改善の意思と申しますか、とにかくこれは国際的にも非常にむずかしい問題でございますから、国際的な方針に従って厚生省は判断をしてまいりたいという考えでございます。
  96. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでは最後に、沖縄在住の被爆者に対する措置でございますけれども、専門病院等の整備をしろというふうにわれわれは訴えてきたわけですが、この点について具体的にどのよに進められているか、お尋ねいたしたいと思います。
  97. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 原爆病院の整備は沖縄では行っておりません。しかしながら、総合病院の整備につきましては、特に沖縄はここ数年力が入れられております。したがいまして、そういった地元総合病院の強化のほかに、私どもといたしましては、専門医の沖縄への派遣、また沖縄の被爆者の方の広島長崎原爆病院における治療、そういった点について特別の配慮をいたしております。
  98. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 最後に大臣に要請をしておきますが、確かに原爆二法の内容の改善は認められますものの、根本的な物の考え方が、われわれ野党四党の考え方厚生省、なかんずく厚生大臣考え方とまだかなり開きがありますので、この点をもう少し掘り下げて検討していただいて、被爆者の要望している国家補償に基づく援護法制定努力をしていただきたいことを強く要望して、私の質問を終わります。
  99. 熊谷義雄

    熊谷委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  この際、午後一時まで休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後一時五分開議
  100. 熊谷義雄

    熊谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は終了いたしております。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。瓦力君。
  101. 瓦力

    ○瓦委員 私は、自由民主党を代表し、内閣提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、賛成の立場から討論を行います。  原爆被爆者対策といたしましては、被爆者の方が原爆によって放射能を多量に浴び、健康上特別の配慮を必要とするという特殊事情に着目し、一般的な社会保障制度の枠の中にとどまることなく、その健康と福祉の充実を図るという考え方に立つべきものであります。この考え方の上に立って、わが党といたしましては、昭和三十二年の原爆医療法昭和四十三年の原爆特別措置法制定とその後の法改正を中心に、被爆者対策の充実強化に努めてきたところでありますが、今回の改正案においても、その対策の充実が着実に図られていると考えられます。  今回の改正案の内容でありますが、まず、原爆医療法第八条第一項に基づく厚生大臣認定を受けた被爆者で、現に負傷または疾病の状態にある者に支給する特別手当を月額二万四千円から二万七千円に、負傷または疾病の状態にない者に支給する特別手当を月額一万二千円から一万三千五百円に引き上げることにしております。  また、原子爆弾放射能の影響に関連があると思われる障害を伴う疾病にかかっている被爆者に支給する健康管理手当を、月額一万二千円から一万三千五百円に引き上げることにしております。  さらに、爆心地から二キロメートルの区域内で被爆した方々に支給する保健手当を月額六千円から六千八百円に引き上げることにしております。  これら手当額の増額は、被爆者方々の健康の保持増進、福祉の向上に大きく寄与するとともに、その他の施策と相まって、今後の被爆者対策をさらに充実させるものと思われます。  よって、自由民主党といたしましては、本改正案について賛成するものであります。(拍手)
  102. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、森井忠良君。
  103. 森井忠良

    ○森井委員 私は、日本社会党を代表して、本案に反対の討論を行います。  以下はその理由であります。  その第一は、この一年間も、被爆者やその遺族被爆者援護を願う諸団体から、国家補償の見地からの手厚い援護措置を要求する運動が展開され、政府はその要求を十分承知しながら、本案は全くそれにこたえていないということであります。  本来、医療特別措置のいわゆる現行二法は、政府も答弁しているとおり、社会保障の枠内で制定されたものであります。これでは死没者への弔慰金はもちろんのこと、全被爆者遺族への年金、被爆二世の健康や生活への不安解消など、国民的な課題は解決されるはずがありません。  もともと、対米請求権を放棄した日本政府は、国際法違反の原子爆弾で被害を受けた方々に、国家の責任において補償をすべきであります。  したがって、原爆投下の時点にさかのぼって、被爆者やその遺族が受けた被害に根差した援護措置がとられなければなりません。特に、原爆による爆風、熱線、放射能などの人体に及ぼす影響ははかり知れないものがあり、その抜本的対策は急を要するものがあります。今日まで意図的に、いわゆる身分関係論などを振りかざし、責任を回避してきた政府に強く反省を求めるものであります。  第二の反対の理由は、本法案は、特別手当など諸手当の引上げのみというきわめて薄い中身であるということであります。しかも、諸手当の額の引き上げにいたしましても、物価の上昇分のみで、被爆者は物価上昇に伴う目減り分を回復できるにすぎず、医療生活に追われる原爆被害者の実態からは、およそかけ離れたものと言わねばなりません。  ところで、厚生省は、たとえば昨年の保健手当のように、私ども野党の被爆者援護法案による刺激もあってか、毎年、わずかではあっても新しい施策を出してまいりました。しかるに今回はゼロであります。  昨年の本委員会で私が指摘いたしましたように、保健手当の支給範囲の問題を一つとってみましても、科学的根拠のきわめて薄いものであり、二十五レムという基準は再検討すべきであるにもかかわらず、全く改善されておりません。  また、被爆者が加齢現象もあって一層老齢化が進んでいる現状や、治癒能力の減退などを考えると、医療手当は認定患者に限るべきでなく、すべての医療を要する被爆者に支給すべき時期に来ているにもかかわらず、われわれの主張に耳をかさない態度はまことに遺憾であります。  第三の理由は、私どもは現在、参議院に、野党四党及び二院クラブによる被爆者援護法案を提案し、すでに本会議委員会で審議が行われた実績を有し、現在なお社会労働委員会に付託中であります。  この被爆者援護法案は、本案の欠陥を是正し、真に原爆被害者の要求にこたえたものであり、一日も早く可決されるものと期待しております。  どうか、政府におかれましても、本案を撤回し、われわれの被爆者援護法案に賛成され、その成立に協力されるよう強く要求し、反対の討論といたします。(拍手)
  104. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、石母田達君。
  105. 石母田達

    ○石母田委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、賛成の立場から討論を行います。  広島長崎への原爆投下から三十一年、被爆者の多くの方々は老齢化し、いまなお放射能障害や精神的不安、生活苦にさいなまれています。さらに、被爆による病気や障害によって死亡した被爆者の遣族は、筆舌に尽くしがたい生活を余儀なくされているのであります。  一瞬にして三十万人余の生命を奪い、広島長崎両市を焦土と化したアメリカの原爆投下は、明らかに国際法違反であり、これによって生じた損害に対して、すべての被爆者とその遺族は、アメリカ政府に賠償を要求する当然の権利があるのであります。  しかるに、日本政府は、サンフランシスコ平和条約でアメリカに対する損害賠償請求権を放棄したのであります。したがって、被爆者とその遺族及び子や孫の医療生活を全面的に援護をする責任は、当然日本政府が負うべきものであります。ここに、国家補償の原則に立つ被爆者援護法の正当性があるのであります。  しかるに、政府は、いまだに現行特別措置法医療法によって、ごく限定された被爆者に対して、主として健康に着目した措置しかとっておらず、被爆者の苦しみは放置されたままであります。  先日、自民党の源田実参議院議員は、日本民族は原爆三つや四つ落としても降伏するような民族ではなかったという、被爆者の感情を逆なでする全く許すことのできない発言がなされています。一部の戦犯や高級軍人、果ては特務機関の勤務についていた者についてさえ、国との身分関係があったとして恩給法による手厚い援護を与えているのを見るにつけ、戦争を起こした者に厚く、その被害者には何もしないか、あるいはきわめて薄い援護しかしない現在の自民党政府に、強い憤りを覚えるものであります。  本委員会においても、わが党は国家補償による被爆者援護法制定を強く政府に要求しましたが、一般戦災者との均衡論や、現行二法の限界などを理由にかたくなに拒否していることは、きわめて遺憾であると言わなければなりません。  政府は、いまこそ被爆者の切実な願いである被爆者援護法制定を真剣に考えるべきときであります。そのことこそが被爆者の要求にこたえる道であり、また、亡くなられた遺族への償いであります。  今回の政府改正案は、特別手当、健康管理手当、保健手当の引き上げであり、被爆者の要求を、きわめて不十分ではありますが反映した内容であり、したがって、わが党は賛成の態度をとるものであります。しかし、現行法及び現在の施策では被爆者立場にこたえるものでないことは、本委員会でもるる述べたところであります。先ほども本委員会に私たちが、国家補償による原爆被爆者援護措置制度の推進に関する決議をしようと提起したところであります。  わが党は、現在参議院で継続審議となっている、自民党を除く四党案の審議、成立に全力を挙げるとともに、政府が、一刻も早く国家補償の精神に立った援護措置をとられることを改めて要求し、討論を終わります。(拍手)
  106. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、大橋敏雄君。
  107. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は、公明党を代表して、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、反対の意見を述べるものであります。  政府は、原爆二法により被爆者の健康の保持向上と生活の安定を図ってきたと述べておりますが、きわめて疑問とするところであります。  原爆医療法制定は、昭和二十年八月、原爆投下以後実に十二年も経過してからであり、また、特別措置法に至っては二十三年目であります。それも、被爆者等の援護法制定の強い要請の世論に押されて、やっと制定されたものであります。  しかも、この二法は、被爆者及び遺家族を抜本的に救済するものとはなっていないし、いわばざる法的であるということは周知の事実であります。今日まで若干の改善は見たものの、被爆者等が要請している援護法にはほど遠いものであります。われわれは、政府のうをい文句とはうらはらな実態に対して、被爆行政の怠慢を厳しく指摘するものであります。  さらに、本法案は、特別手当を初め諸手当の引き上げや所得制限の緩和などでありますが、被爆者はますます老齢化し、遺家族ともども、いまなお放射能障害を初め、生活難、精神的、肉体的苦悩等の著しい状態に置かれているのであります。単なる社会保障の枠内ではとうてい救済できぬ実態にかんがみ、昨年、わが党を初め野党四党は、国家補償に基づく被爆者援護法案をまとめて提案したのでありますが、残念ながら参議院に継続審議の形でとどまり、いまなお審議されず放置されているのであります。政府・自民党は真剣な検討、審議をして、野党四党案の即時制定に全力を挙げるべきであります。  最後に、さきの国会で、法案の改善目標を附帯事項として決議いたしましたが、依然として、適用範囲の限定、所得制限の存続、医療費の自己負担、沖縄の地域格差及び放射線影響研究所の運営等、懸案の諸問題が未解決のまま本法案が提出されております。少なくとも被爆者生活に直接関係がある点についての改善は、速やかに実施すべきであります。  以上述べたように、本法案は、一部の改善は見られますものの、被爆者を抜本的に救済するものではなく、まことに遺憾であります。  わが党は、今後被爆者の生命と生活を守るために援護法制定に全力を挙げることを付して、反対の討論を終わります。(拍手)
  108. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、小宮武喜君。
  109. 小宮武喜

    ○小宮委員 民社党は、毎国会たびに、原爆被爆者援護については国家補償という立場から行うべきであると、繰り返し繰り返し主張してまいりました。そこで野党四党は、原爆被爆者に対しては国家補償すべきだという観点から、原爆被爆者援護法案を共同提出いたしておるのであります。  しかるに、政府は野党の要求に一顧だにせず、あくまで社会保障の一環としてとらえており、野党四党とは基本姿勢に根本的な相違があるのであります。  また、現行法にしても、少しずつ改善されてはいるものの、各種手当の引き上げ、所得制限の撤廃、被爆者の二世、三世対策被爆地域の拡大、原爆病院対策等々、被爆者の切実な願いとはほど遠く、被爆者の期待を裏切るものと言わざるを得ないのであります。  したがって、わが党は本改正案に反対するものであります。  以上、私の反対討論を終わります。(拍手)
  110. 熊谷義雄

    熊谷委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  111. 熊谷義雄

    熊谷委員長 これより採決いたします。  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  112. 熊谷義雄

    熊谷委員長 起立多数。よって本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  113. 熊谷義雄

    熊谷委員長 この際、住栄作君、枝村要作君、石母田達君、大橋敏雄君及び小宮武喜君から、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  その趣旨説明を聴取いたします。住栄作君。
  114. 住栄作

    ○住委員 私は、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表いたしまして、本動議について御説明を申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、原子爆弾被爆者が現在もなお置かれている特別の状態と被爆の援護対策の充実強化の要望を配慮し、今後被爆者援護措置全般にわたる制度の改善を図ること。更に、政府は、本法の施行に当たり、次の事項についてその実現に努めること。 一 各種手当の額を更に引き上げるとともに、所得制限の撤廃、適用範囲の拡大を図りつつ被爆者に必要な施策の整備充実に努めること。 二 原爆病院の整備改善を行い、病院財政の助成に十分配慮するとともに、その運営に当たっては、被爆者が必要とする医療を十分受けられるよう万全の措置を講ずること。 三 特別手当については、生活保護の収入認定からはずすよう検討すること。 四 原爆症の認定については、被爆者の実情に即応するよう改善を検討すること。 五 被爆者に対する家庭奉仕員制度を充実するとともに、相談業務の強化を図ること。 六 被爆者医療費については、全額公費負担とするよう検討することとし、さしあたり国民健康保険の特別調整交付金の増額については十分配慮すること。 七 被爆者実態調査を今後の被爆者援護施策に十分活用するよう努めるとともに、復元調査を更に整備充実し被爆による被害の実態を明らかにするよう努めること。 八 被爆者とその子及び孫に対する放射能の影響についての調査、研究及びその対策について十分配慮し、原爆医療調査研究機関の一元化、一体化について検討し、その促進を図ること。 九 沖繩在住の原子爆弾被爆者が、本土並みに治療が受けられるよう専門病院の整備に努めるとともに、沖繩の地理的歴史的条件を考慮すること。 十 葬祭料の額を更に大幅に増額するとともに、過去の死亡者にも遡及して支給することを検討すること。  十一 放射線影響研究所の運営については、被爆者及び関係者等の意見を聴取するなど、真に健康と福祉に役立つものとすること。 以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  115. 熊谷義雄

    熊谷委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  116. 熊谷義雄

    熊谷委員長 起立総員。よって、本案については住栄作君外四名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められております。厚生大臣田中正巳君。
  117. 田中正巳

    田中国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして、努力をいたす所存でございます。     —————————————
  118. 熊谷義雄

    熊谷委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 熊谷義雄

    熊谷委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
  120. 熊谷義雄

    熊谷委員長 ただいま、石母田達君外二名から、国家補償による原爆被爆者援護措置制度の推進に関する件について決議されたいとの動議が提出されました。  本件についての取り扱いについては、理事会で協議いたしたいと思います。      ————◇—————
  121. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、厚生年金保険法等の一部を改善する法律案を議題といたします。  まず、提案理由の説明を聴取いたします。田中厚生大臣
  122. 田中正巳

    田中国務大臣 ただいま議題となりました厚生年金保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  高齢化社会の到来を目前に控えたわが国において、老後保障の中核たる役割りを果たすべき年金制度に対する国民の期待は非常な高まりを示しております。昭和四十八年度には、厚生年金及び国民年金を中心に年金額の水準を大幅に引き上げるとともに、多年の懸案でありました物価スライド制を導入するなどの大幅な改善が行われたところでありますが、その後、今日までの間における社会経済情勢の変動は著しく、これに適切に対応するため、給付額の引き上げ等の給付改善を行う必要が生じております。  今回の改正法案は、このような趣旨にかんがみ、厚生年金、国民年金等について、本来昭和五十三年度に予定される財政再計算期を二年繰り上げて昭和五十一年度に実施し、給付額の引き上げを行うとともに、障害年金、遺族年金等についても各種の改善措置を講ずるほか、福祉年金の額の引き上げ等を行うことにより、年金制度の実質的な充実改善を図ろうとするものであります。  また、本法案は、年金給付の改善とあわせて、児童扶養手当、特別児童扶養手当等についても額の引き上げその他の改善を行い、国民の福祉の向上を図ることといたしております。  以下、改正案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  まず、厚生年金保険法の一部改正について申し上げます。  第一に、年金額の引き上げにつきましては、改正後新たに老齢年金を受ける者の標準的な年金額を月額約九万円に引き上げることとし、定額部分については単価の引き上げ及び被保険者期間の上限の延長、報酬比例部分について過去の標準報酬の再評価を行うことといたしております。そのほか、加給年金額並びに障害年金及び遺族年金の最低保障額を引き上げることといたしております。  第二に、在職老齢年金の改善として、六十五歳以上の在職者に支給される老齢年金について、年金額の二割が一律に支給停止されているのを、一定の標準報酬月額以下の者には全額を支給するとともに、六十歳以上六十五歳未満の在職者に支給される老齢年金について、支給対象者の標準報酬月額の限度額を引き上げることといたしております。  第三に、障害年金及び遺族年金の受給資格期間について、他の公的年金制度の加入期間を通算することとするほか、通算老齢年金の受給資格期間を満たした者が死亡した場合に、その遺族に通算遺族年金を支給することといたしております。  第四に、遺族年金について、寡婦加算制度を創設し、有子の寡婦及び六十歳以上の高齢寡婦には一定額を遺族年金の額に加算することといたしております。  第五に、障害年金について、廃疾認定日を初診日以後三年を経過した日から一年六カ月を経過した日に早めるとともに、廃疾認定日には軽度の障害であるため障害年金の支給の対象とならない者が、初診日から五年以内に障害年金の支給の対象となる程度の廃疾の状態に該当するに至ったときは障害年金を支給する事後重症制度を創設することといたしております。  第六に、標準報酬については、最近における賃金の実態に即して、三万円から三十二万円の三十六等級に改めることといたしております。  第七に、保険料率については、給付改善及び将来の受給者の増加に対応して、長期的に財政の健全性を確保するため、千分の十八引き上げることといたしております。  次に、船員保険法の一部改正についてでありますが、おおむね厚生年金保険の改正に準じた改正を行うことといたしております。  次に、国民年金法の一部改正について申し上げます。  拠出制国民年金については、まず、年金額の引き上げを図ることとし、二十五年加入の場合の年金額を月額三万二千五百円とし、現実に支給されている十年年金の額を月額二万五百円に、五年年金の額を月額一万五千円に、それぞれ引き上げることといたしております。そのほか、障害年金の最低保障額及び母子年金等の額を引き上げることといたしております。  第二に、厚生年金保険の改正と同様に、障害年金及び遺児年金について通算制度を創設するとともに、障害年金について廃疾認定日を早めることといたしております。  第三に、国民年金の財政につきましては、まず、保険料の額について、財政の健全性を確保する見地から、昭和五十二年四月分より月額二千二百円に改定することとし、以後段階的に引き上げることといたしております。また、将来にわたる財政の安定化に資するため、国庫負担方式を拠出時負担から給付時負担に切りかえることといたしております。  福祉年金については、老齢福祉年金の額を月額一万三千五百円に、障害福祉年金の額を一級障害について月額二万三百円に、二級障害について月額一万三千五百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金の額を月額一万七千六百円に、それぞれ引き上げるほか、母子福祉年金及び準母子福祉年金について、子の年齢要件を義務教育終了前から三年計画で段階的に十八歳未満に引き上げることといたしております。  次に、児童扶養手当法の一部改正についてでありますが、児童扶養手当の額を、児童一人の場合月額一万七千六百円に、児童二人の場合月額一万九千六百円に、それぞれ引き上げるほか、支給対象児童の年齢を義務教育終了前から三年計画で段階的に十八歳未満に引き上げることといたしております。  次に、特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部改正についてでありますが、特別児童扶養手当の額を、重度障害児一人につき月額二万三百円に、中度障害児一人につき月額一万三千五百円に、福祉手当の額を重度障害者一人につき月額五千円に、それぞれ引き上げることといたしております。  最後に、実施の時期については、厚生年金保険及び船員保険の改正は本年八月から、拠出制国民年金の改正は本年九月から、福祉年金、児童扶養手当等の改正は本年十月から、国民年金の保険料の額の改正は昭和五十二年四月からとしております。なお、障害年金及び遺族年金の通算制度の創設並びに障害年金の廃疾認定日の変更及び事後重症制度の創設は政令で定める日からとしております。  以上が、この法律案の提出理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  123. 熊谷義雄

    熊谷委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田口一男君。
  124. 田口一男

    ○田口委員 私は、いま提案のありました公的年金制度問題について四点ほど、項目を分けてお尋ねをしたいと思うのです。  まずその前に、いまも大臣から趣旨の御説明がありましたけれども昭和五十一年度の本改正案に取り組む姿勢について再度確かめたいと思うわけでございます。そう言う意味は、前回の昭和四十八年の改正、これは新聞なんかの報道の表現をかりますと、いわゆる大改正という「大」がついておったわけでありますけれども、その四十八年度改正の際に本委員会で相当議論のあったことはお互い承知をいたしております。そういった議論を受けて、来るべき財政再計算期には、五年後にはひとつ抜本改正をやろうじゃないか、こういった合意ができておったと私は理解をするわけであります。合意ということがそこまで正確でなければ、ひとつ次の機会には抜本改正をやろう、そういった意味合いで、国会はもちろんのこと、国会の外においてもこの公的年金制度についていろいろな意見が出ておることも御承知のとおりであります。ところが、いま御提案があり、その内容を見てまいりますと、これは大山鳴動ネズミ一匹ということを言っても極言ではないのじゃないか、そういった感じがするわけであります。  そこで、改めてこれは大臣からお答えをいただきたいと思いますけれども、五年ごとの財政再計算期をいまも趣旨説明がありましたように、二年繰り上げて五十一年に持ってきたというその意義というものは一体どうなのか。四十八年改正の論議を踏まえて考えた場合に、二年繰り上げて三年間の財政再計算期にしたという、その意義は一体何かということがどうも疑わしくなってくるのであります。それが第一であります。そのお答えを聞いた後であと二点ほどお伺いをいたしますけれども、まずその点について。
  125. 田中正巳

    田中国務大臣 昭和四十八年度改正、かなり大きく実は改正をいたしたことは事実でございます。しかし、次の財政再計算期に抜本的に改正をいたすというふうなお約束があったかどうか、その辺については、私も当時議員として参加をいたしておりましたが、そういう話はあったけれども、五十一年度は抜本的に直すんだというようなことについてのどの程度の合意があったものか、また、抜本的改正といったようなものは、一体それぞれどういうふうな程度を具体的に考えておったかということについては、いろいろ議論が分かれるところではなかろうかと思います。よく抜本、抜本と言いますが、この抜本についての各人のイメージがかなり違うというところがこの社会保障については議論をいろいろ呼んでおる。年金制度でもあるいは医療保険においても同様な状況があるのではなかろうかと思われるわけであります。  今回の改正はそうした状況とは別に、この間におけるあの石油ショックのはなはだしい経済指標の変化というものに対応し、いわゆる緊急是正的な意味が一面にありますし、また、この間に出てきた制度のいろいろな欠陥ないしは制度の充実の要望というものを局部的に受けとめて、これを実はかなりあれこれ拾い上げていることも事実でございまして、これをネズミ一匹と言うわけにはどうもいかないんじゃないか、少なくとも五、六匹は出ているんじゃないかというふうに私は思うわけでございますが、これについての評価は御自由でございます。
  126. 田口一男

    ○田口委員 抜本的改正、その抜本的のとりようは、確かに詰めていけば差異が出てくると思うのですね。それで、四十八年改正の際に御承知のようないわゆる狂乱物価、しかも一両年立っていわゆる減速経済の今日を迎えた、こういう中で、たとえば大臣自身、いつでしたか、札幌においていわゆる基礎年金構想を吹き上げた。その基礎年金構想の内容の是非は別として、来るべき五十一年の改正に当たってはという期待を抱かせたことは、これは否定できないと思うのです。それから、公的年金制度全般についていろいろな意見があります。たとえば、厚生年金、国民年金、他の共済年金を一本化すべきだというふうな意見もあります。これは思う方は勝手だと言えばそれまでですけれども、そういう点について国民の側に、今回の五十一年度改正に当たってはそういった制度間にまたがる問題についても、ある程度メスを入れた公的年金制度の改正というものの芽が吹き出すんじゃないか、こういった期待があることは否定できない。そういうことにこの五十一年度の改正というものははっきりとこたえていない。その意味から大山鳴動ネズミ一匹という表現も当たるんじゃないか。もう一度お願いします。
  127. 田中正巳

    田中国務大臣 大山のお話でございますが、確かに年金制度の改善についてはいろいろなものが考えられるわけでございます。いま田口さんがおっしゃったような財政方式、あるいは制度間を含めた年金のストラクチュアに触れるような改善というものを要望するお声も相当強く、私もその点の必要を認めておるわけでございまして、今日あれこれ、これについての検討に努力しているわけでございます。  しかし、そうしたことはきわめて広範多岐にわたる問題を含み、また時間もかかるわけでありまして、このことを打ち立てるまでの間何もやらないというふうなわけにはいくまい。さっき申したような、経済変動等に対応した緊急是正的なことも迫られておりますし、また、この間に出てきた制度の中のいろいろな改善要請に対してもこたえなければならないということでいろいろと取り上げたわけでございまして、このたびの改正は、そうした意味においては実は私は相当の事項を改善しているものというふうに思います。  制度間のいろいろな問題についても、皆さんの方から見ればこれでは問題にならぬと言うけれども、ある意味ではいささかこたえているものに、今回の通算年金制度の創設と拡充という問題もありまして、いろいろな点についての評価はございますが、私どもはとりあえずこのような制度の改善を行い、このようなことだけで終わることなしに、今後さらに先生のおっしゃるようなこと、また私どもの考えているようなことについては、これを並行して実現に向かって努力をしなければならないというわけでございまして、決してこれですべてを終わらせようという考えはございません。そうした政策要請については、私どもも十分心に受けとめまして、そのような方向努力をいたします。しかし、さればといって、目下のところいま御提案申し上げているような改善も急がれるのではなかろうかというふうに思いますので、よろしく御審議を願いたいと思います。
  128. 田口一男

    ○田口委員 大臣の言質を取ろうという意味でいまから申し上げるのではないのですが、いまのお答えや、それから札幌における基礎年金構想、ああいったお考えを私どもはずっと系統的に見てまいって、いまの七つか八つあるそれぞれの年金制度、たとえば年金開始年齢を見ましても、五十五歳、六十歳、六十五歳というふうに分かれておる。こういった公的年金制度をあの基礎年金構想というものを一応土台にして考えた場合に、昭和五十五年度とか六十年度というふうに年度をぴちっとここで私は要求するのではありませんけれども、いずれはひとつこういった公的年金制度の統合といいますか、一元化、こういったことにすべきであるというふうに大臣はお考えであるかどうか、そこをまず基本的に……。
  129. 田中正巳

    田中国務大臣 先生、いま各公的年金制度の一元化ということをおっしゃいました。しかし、われわれは、この一元化というものをどういうふうに概念把握するかということについて、いろいろ議論があるところだと思います。しかし、分立したままでは問題にならぬというお声もあります。したがって、私どもとしては、できるだけこの分立した公的年金制度の間に共通点を持たせるようにいたしたいものだというふうに考え、全部が一つのるつぼの中に溶け込む年金制度をつくり上げ得るかどうかということについてはいま私がにわかに皆さんにお約束するわけにはいきませんが、できるだけそういったような統合化の方向に向かって進まなければならない政策要請があるということは事実でございまして、そうしたことを踏まえて、さっきから私、余り皆さんには申し上げないのですけれども、私ども一つの試案というものの中に基礎年金構想などというようなことがあり、このことを新聞に申したことも事実でありました。あれだけが唯一無二のものではございませんが、絶対のものではございませんが、ああしたような手法の考察といったようなものも必要だということで、この問題と並行いたしましてああした問題についての検討、考察というものを進めていることは事実でありまして、私もぜひあのような方向というものについて、具体的なやり方についてはいろいろ議論がありますが、おおむねああしたような考え方についてやはり私どもは検討を進めなければならぬということを考えております。これも今日の御時世でございますので、私どもとしてはやはり相当急いでやりたいものだというふうに思っているわけでございます。
  130. 田口一男

    ○田口委員 では、そういう御見解を承っておきまして、以下、各年金別に、やや技術的な問題も入るのですが、御質問をいたしたいと思います。  まず第一は、これは年金局長、それから社会局の所管にもまたがる問題もあると思うのでありますけれども、この福祉年金ということについて、たしか昨年の本委員会でもどなたかと大臣と相当、例の二万円という問題について議論のあったことを記憶しておるのですが、それはそれとして、無拠出の老齢福祉年金、本委員会でもたびたび議論になりましたけれども、これについて改めて確認をしたいと思うのです。老齢福祉年金というものの位置づけ、性格といいますか、こういうものについて、何回か審議会の意見が出ておりますけれども、現時点で一体どういうふうにつかまえて見ておられるのか。
  131. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 福祉年金の性格と申しますか、位置づけと申しますか、現行の福祉年金は、御案内のように、拠出制国民年金発足に際しまして年齢その他の点でこの拠出制年金でカバーできない方々、あるいはまた拠出制年金発足後も納付要件その他の点で拠出年金と結びつかない方々、そういった人をカバーする、いわゆる経過的、補完的性格のもあというのが現行法のもとにおける福祉年金のいわば性格であろうと思います。  しかし、問題はそういう形式的な性格ではなくて、この福祉年金の実質的内容というものをどう評価するか。これにつきましては、先般も御議論がございましたように、当初は、やはりそういう性格のものでもあるし、全額一般会計負担であるというようなこともございまして、非常に低いレベルで発足し、あめ玉年金等とも言われたのでございますけれども、ここ数年の年金への国民の期待の高まりを背景といたしまして、敬老的なものから生活保障的な性格を目指す、関係審議会等でもそのような御提言があったわけでございまして、私どもも気持ちとしてはその方向に沿って、過去数次にわたりかなり大幅な改善を行ってきたところでございます。もちろん、この福祉年金というものを、現在の拠出制国民年金の経過的、補完的なものでなく、全く別のものとして組み立てるかどうか、それはまた新しい別な議論としてあるわけでございまして、その点は、先ほど大臣も申されました基礎年金構想等、今後、年金の将来構想の検討に入るわけでございますけれども、その中の一つの大きな議論の焦点になろうとは思いますけれども現行制度の性格は以上述べたとおりでございます。
  132. 田口一男

    ○田口委員 改めてお聞きしますが、そうすると、この老齢福祉年金そのものは所得保障を目指してはおるけれども所得保障そのものではない、あくまでも補完的なものである、今日ただいまの一万三千五百円という提案をした場合にそういった性格のものである、こういうふうに定義づける、そのとおりでよろしゅうございますか。
  133. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この所得保障というものをどういうふうに理解するかによりますけれども、常識的な意味においては、当然所得保障の重要な一環をなすものと考えております。ただ、とにかくこの法律上の性格といいますか、そういうことに対しましては、現行法上の福祉年金は補完的、経過的なものとしてとらえられている。しかし、そのことは、レベルが低くていいとか、そういったこととは直接の関係がないわけでございまして、私どもとしては、所得保障制度の一環をなすものであるわけですから、できるだけそのレベルアップを図っていきたい。そしてその方向としては、敬老的なものから生活保障的なものへ、そういう方向で改善を図っていきたいということでございます。
  134. 田口一男

    ○田口委員 言葉の意味にこだわるのじゃないのですけれども昭和四十九年四月四日の七十二国会における本委員会で、わが党の田邊委員の御質問に答えて当時の斎藤厚生大臣がこう言っておるのですね。「段階的に福祉年金の額を高めることが拠出制年金の水準をプッシュしたことにもなった」だから、いま局長おっしゃったように「敬老的、補完的な年金のままでずっと推移をするわけにはまいらぬだろう」こういうことを言って、そういった議論を受けて、昨年から軽費老人ホームとかなんとかということも含めて、二万円といった具体的な金額まで出て議論があったのですが、補完的という意味は、一体何を補完するのか、ここのところです。
  135. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この補完的というのは、多少法律的な性格として申し上げたのでございますけれども、御承知のように、国民年金法の制定によりましていわゆる国民皆年金体制ができ上がった。ところが、皆年金とはいいながら、先ほど申し上げましたように、拠出制国民年金は一定の納付要件がございますから、どうしてもそれに結びつかない者も出てくる。あるいはまた、制度発足時に一定年齢以上で、この制度ではどうしてもカバーされない者も出てくる。そうすると、国民皆年金といいながらやはり年金の網の目から漏れる者が出てくる、これはやはり問題ではないかということで福祉年金ができたわけでございますから、そういう意味で拠出制年金を補完して国民皆年金の実を上げるという意味での補完というふうに私どもは理解しております。
  136. 田口一男

    ○田口委員 再度、補完的という意味でお尋ねするのですが、いまのお答えですと、たとえば、昭和三十四年に国民年金制度ができた、しかしそれは成熟をしていない、いま五年年金、十年年金ができましたけれども、さらに厚生年金その他の公的年金があるが、入ろうにも入れなかった明治四十四年四月二日以前のお年寄りに対してはひとつ国民皆年金という制度で、いまの公的年金制度を補うためにという意味での補完的というふうにとっておるのか。それとも金額的にいって、これは後でまた質問したいと思うのですが、厚生年金の水準を今度九万円台に乗せた、それから国民年金にしても三万何がしに乗せた、そういった数字で老後の生活を支えられるものではないと思いますけれども、一応国際水準からいって現役当時の六割を保障する、そういった水準を、老齢福祉年金でいった場合に、何かの所得があって、それだけでは十分ではないから老齢福祉年金というものを出して補完する、こういう意味合いも私はあると思うのです。これは補完という中には入らぬのですか。
  137. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 一般常識的な意味での補完ということではあるいはそのような場合も入り得るかと思いますけれども、私は福祉年金そのものの性格、そういうお尋ねに対してお答えいたしておりますので、私の言うのは拠出制年金の補完、そういう意味で申し上げておるわけでございます。
  138. 田口一男

    ○田口委員 そうしますと、先ほど大臣のお答えのありました基礎年金構想に私はこだわるわけではないのですけれども、あの中でも出ておりましたように、ナショナルミニマムを確保する。このナショナルミニマムを確保する方法としての基礎年金構想といった言われ方をしておるのですから、この純技術的といいますか、マーケットバスケットとかなんとかは抜きにして、俗な言葉でいえば、現時点でナショナルミニマムというものを押さえた場合には大体幾らになるのか、幾らぐらいが妥当だろうか、どうお考えでしょうか。
  139. 翁久次郎

    ○翁政府委員 いろいろな見方、考え方があろうかと思いますが、いわゆる最低生活を保障するという立場で考えました場合に、七十歳以上の老人の一人の生活ということを生活保護の立場で申し上げますと、大体、額にいたしまして三万一千円程度になるわけです。これは五十一年度におきます老人一人世帯の一級地における最低生活の保障水準、こういうふうに言えるのではないかと思います。
  140. 田口一男

    ○田口委員 三万一千円、まあ三万円というふうに一応考えて、それが生活保護法の観点から見たいわゆる最低生活費。そうなってまいりますと、先年大いに議論のあった二万円ということがもう一遍ぶり返してくるわけですけれども、私は時間の関係でそこはぶり返したくはありません。  三万円とした場合に、ここで社会局長にお尋ねをいたしたいのですが、生活保護法による実施要領の中で、従来は、老齢福祉年金の扱いをめぐって相当な議論のあげく、七千五百円当時だったと思うのですけれども、七千五百円の老齢福祉年金が出た場合に同額の老齢加算というものを生活保護上ではやっておったんですね。ところが昨年の十月、一万二千円に老齢福祉年金が改定になったことを一つの契機にして、この老齢加算の金額が普通でいけば一万二千円だと考えておったものが八千円になった、本年四月一日からはその八千円が八千五百円になったのですが、その理由づけは一体何か。当初は同額であった。この七千五百円当時だけが同額ではなくて、昭和三十四年に老齢福祉年金が一千円で出発をした際にも老齢加算が一千円。ずっと去年の十月までは同額だったわけですね。それが変わった。その辺の理論づけはどうなんです。     〔委員長退席、住委員長代理着席
  141. 翁久次郎

    ○翁政府委員 これまた生活保護の立場で申し上げますと、生活保護の立場では、いわば見舞金とかあるいは弔慰金というようなものは収入として認めずにそのまま見ておるわけでございますけれども、それ以外の収入のある保護家庭につきましては、その収入は一応差し引いた上で生活保護するという大原則があるわけでございます。その場合に先生おっしゃいました加算というのが片方にございますのは、老齢であるとかあるいは障害を持った人であるとかあるいは母子家庭というようなことに着目いたしまして加算制度というのを別途設けているわけでございます。  ただいまお話のございました老齢福祉年金は三十五年四月に一千円で発足しております。その当時、やはり生活保護のたてまえ上、老齢加算といたしまして一千円の同額加算をしております。このときの根拠、と言えば少し言い過ぎでございますけれども、当時における七十歳以上の老人の一人当たりの生活そのものの費用の大体半額ということでございました。自来、老齢福祉年金は千円程度のものが、若干ずつ上積みをされて四十八年までまいっております。四十八年、四十九年と非常な物価高騰の時期に際しまして、三千三百円から五千円、七千五百円と、こうなったわけでございます。たまたま生活保護基準の方での、いわば一類基準と私ども申しておりますけれども、六十五歳以上の老人の生計費に当たる部分の半額が大体これに見合ってきたわけでございます。五十年から五十一年にかけまして老齢福祉年金が大幅に改善を見ております。したがいまして、私どもといたしましては一応それを収入認定いたしました上で、大体六十五歳以上の老人の一人当たりの一類経費の半額、これが昨年の十月時点におきまして八千円程度、ことしの四月から八千五百円ということになりましたので、これを加算として見ているわけでございます。まあ、理屈っぽいことを申し上げますと、もともとこの加算と収入認定というのは別の制度としてあるわけでございますけれども、老齢福祉年金の場合にこれが長い間同額加算であったということが、ただいま御質問のあった一つの大きな原因ではなかろうか、かように考えるわけでございます。
  142. 田口一男

    ○田口委員 昨年の十月に八千円にした、その理由は、生活保護基準の一類の二分の一という一応の理屈といいますか、根拠をお示しになったのですが、この問題でいまそういう根拠を出されても……。私のところにも、なぜ減ったんだろうという素朴な疑問の手紙がたくさんきておるのですが、さっきの三万円、それから補完的ということもここでもう一遍大臣に思い起こしていただきたいのですけれども、この十月から老齢福祉年金が一万三千五百円になる。それを私の解釈でいけば、さっき年金局長制度的な補完という解釈をしましたけれども、他に収入、所得があって、老後の生活を支える補完的な役割りを老齢年金が果たすんだというふうに理解をすれば、いままで生活保護法の適用を受けておったお年寄りに対する老齢加算も、ざっくばらんに言えばいろいろなそろばん勘定がありますけれども、一万二千円、七千五百円当時は結果はずばり加算ですから、ずばりプラスになるのですから、これは文字どおり生活保護基準のお年寄りに対して生活を補完するというふうにとれるわけですね。ところがそれを一類の半分に削ってしまうと、生活保護を受けておるお年寄りと、老齢福祉年金を受ける、いわゆる一般というふうにここでは言いますけれども、一般のお年寄りとの間になお差ができてしまうじゃないか。そうすると、老齢福祉年金という性格は一体何なんだということをもう一遍生活保護法の立場から問い直さなければならぬ。生活を補完する老齢福祉年金であるならば、最低生活に満たないお年寄りについて生活保護法を適用するわけですから、保護家庭にするわけですから、当然にその保護家庭の対象のお年寄りと一般のお年寄りとは、まあ多少の差があるとか、いままで言われておりますけれども、これを埋めるのが老齢福祉年金じゃないのか。生活を補完する老齢福祉年金であるならば、生活保護主体のお年寄りに対しても即全額を支給してあたりまえなんじゃないか、こういうふうに思うのですが、大臣どうでしょうか。
  143. 田中正巳

    田中国務大臣 さっきから年金局長との間に補完的という意味について御議論がありました。これは法文の上で経過的、補完的という文句は、私、実は記憶がないのです。ただ、あれができたときに福祉年金の性格論をめぐっての解釈として、確かに解釈書には経過的、補完的年金であるというふうにあって、まあ主としてこのことを言ったのは初代の年金局長であった小山進次郎君がこういうような名文句を考えたもののようでございます。したがって、解釈のまた解釈が実は必要になってきたようなわけでございますが、私どもは、この補完的というのは年金の制度の中における補完的という意味に考えて今日までまいりました。他の収入との間を補完するというような、そうした概念は、少なくともいま田口先生からお話を承るまでは実は予想をしておりませんで、なるほどそういうふうな解釈も生まれるかなと、いま聞いて思っておったわけであります。ですから、そういう考え方からこの問題を考えるということはいささか無理ではなかろうか。問題は実態論だろうと思います。  まあ、お互い社会保障を考える者においては、老齢福祉年金の受給者であるような年寄りにできるだけ公的資金を給付いたしたいという気持ちは半面あるものの、一体これをどこまでも無制限に加算してよろしいのかどうかという問題が実際論としてあるわけでございまして、一千円ぐらいのときには全額加算ということもあえてだれも不思議に思っておりませんでした。だんだん金額が上がってまいりますと、福祉年金をもらっている方と、もらわないその直近の方との間のバランスなどという問題が実際問題として非常にぎらつくということでございますので、したがって、いろいろと考究をした結果、さればといってこれは皆やめてしまうというわけにはいきませんし、加算をする必要があるということだろうと思いますので、いろいろ考えた結果、さっき年金局長の申したような程度の加算制度を起こす。大体いま二万七、八千円から三万円前後の生活保護に一万三千円なり四千円というものが上回ってくるということになると、まあ早い話が六十九の者と七十歳の者との間の開きというものも実際問題としてかなりいろいろ考えさせられるものもあるものですから、この辺のところを彼此勘案して苦心の結果、一類基準、飲食費と衣料費の半分というものが大体その辺だろうということで加算制度を起こして、できるだけよくはするが、あまりがちっとならないようにという配慮がこの制度だというふうに御理解願えれば幸いだと思います。
  144. 田口一男

    ○田口委員 ちょっと時間がありませんから、いまの問題でたとえばこういう意見書が各自治体から上がってきていることを最後に申し上げたいのですが、改正の趣旨として福祉年金の性格が生活保護的色彩を帯びるに至った、だから私が言ったようなことをどこの議会でも言っているわけですね。そういうことで、一類の二分の一にそういう根拠を持たしてもやはり実態としては相当摩擦、無理がある、大変冷たい仕打ちだということが該当者から言われておるということをひとつ記憶にとどめていただきたい。  さらに、それに関連してこれだけは何とかならぬかと思うのですが、重度障害者の生活保障の問題について今回も改正がされておりますけれども、たとえば障害福祉年金、二十歳以上一級の場合二万三百円ですね。それから特別児童扶養手当、二十歳未満一級で二万三百円、同額です。これに対するいわゆる福祉手当というものが、これは常時介護をするということですから月五千円ですね。この例から申し上げた場合、たとえば夫が障害福祉年金二万三百円もらう。そうすると妻に対しては、これは健康な方ですから介護手当分として福祉手当が五千円出る。二万五千三百円。さっきの数字からいった場合、夫は全然労働能力を失っているのですから、二万三百円という数字はともかくとして、妻そのものが常時介護をしなければならぬわけですからね。そうすると、全一日の介護を必要とする妻はそれだけ所得がない。この重度障害者の生活保障という問題については、いま言った老齢加算なり何々加算といった意味合いとは大いに趣を異にするのじゃないか。これは年金の額の方を引き上げるのか、それとも福祉手当の額を引き上げるのかという、どちらかの方になるのですが、その辺はどうでしょう。
  145. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいま御質問のございました福祉手当につきましては、全額加算という対象の引き方をしております。それから障害福祉年金につきましては、老齢福祉年金とは別にこれの五割増しの加算をすることにいたしております。したがいまして、例をことしの五十一年四月にとりますと、障害加算は一万三千円になるわけでございます。  なお、生活保護のたてまえといたしまして、御承知のとおり生活実態に着目いたしますので、きわめて重度の障害者を抱えておられる貧困家庭につきましては別途重度の障害加算というものがございます。したがいまして、老齢加算とは別の意味で障害者に即した加算制度というものを対応させるようにいたしておるわけでございます。
  146. 田口一男

    ○田口委員 じゃ福祉年金は以上で一応終わります。  次に、拠出制の国民年金について、時間がありませんから先に私の方から三点ほど一遍に申しますが、先ほど趣旨説明であった国庫負担の変更、現在までいわゆる拠出時の二分の一の国庫負担が本年九月から給付時の三分の一に改める、それは将来的なことを考えてという、その限りではわからぬでもないのですが、ことし限りで見た場合、きょういただいたこれの参考資料を見ますと、国庫負担を見た場合に一般会計よりの受け入れが昭和五十年度に比較して三百九十二億七千万減になるわけですね。これは三分の一と二分の一ですから数字から言えばそういうことになるでしょう。ところが私はどうも解せぬのは、今日拠出制国民年金の財政が大変苦しい苦しいと言っておりながら、この国庫負担のやり方を変更したことに伴って積立金の取り崩し一千六百八十九億。これを厚生省が出しておるいろいろな資料説明を見ますと、この一千六百八十九億円の理由は、昭和五十一年以降は、すべての被保険者が受給時に給付費の三分の一の国庫負担となるので、既往の拠出時に受け入れた国庫負担は一応清算、返戻することとなり、年賦で一般会計に戻すのだ、それが一千六百八十九億だというふうな説明をされておるわけです。これは財政技術上から言ったらそういうことになるのでしょうけれども、大変な国民年金の財政困難ということに八十五条の問題から言ってなるので、八十五条はそうあるけれどもここしばらくはということにはならぬのですか。財政当局との交渉でならなかったのかどうか、そこはどうでしょう。
  147. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 今回国民年金の国庫負担方式を切りかえたわけでございますが、この理由は、大きく言いまして二つございまして、一つは財政的に安定するということと、一つは当面本年度の財政事情、そういう緊急な要請があったということでございます。  まず、その財政上の問題でございますが、非常に長期的に見ますと、少なくとも年金数理の上では、拠出時であろうと給付時であろうと、要するに全体の費用を国が三分の一持つという考えでございますから、そういう意味では長期的には同じことになるわけでございますが、現実の問題として、現在保険料の二分の一という国庫負担でございますが、この保険料というものが実は本来必要な保険料よりはるかに低く抑えられておる、そういったことから、二分の一を積み立てましても、その安定した財政という立場から見ますと多少問題がある。それをはっきり給付時の一定割合といたしますと、これはいわばはっきりと公に国として認めたことになりますから、そういう意味で財政的には安定した状態にとにかく乗ったと言えるのではないか。それが一つでございます。  それからもう一つ、これがより切実な問題でございますけれども、五十一年度の保険料は御案内のように本年四月から月千四百円、そういう非常に低額でございますので、これに見合った拠出時の国庫負担というのもおのずから非常に少ない額になってしまう。したがいまして、本年度についてだけ見ましても、拠出時の国庫負担額と給付時に切りかえた場合の国庫負担では後者の方が大きい額になる。具体的に言いますと、現行拠出時方式で計算いたしました国庫負担は二千六百九十三億でございますが、これを給付時にいたしますと、先生御指摘の資料の十七ページにございますように二千八百八十九億でございます。まあ大した差がないというあるいは御意見がおありかと思いますけれども、国民年金の財政はそのような非常に小さな額も問題とされるほど実は窮迫をいたしておりまして、どうしても年度間の収支バランスをとるためには大きな国庫負担が必要である。  ところで、国庫負担としては二千八百八十九億でございますが、この資料にございますように、方式を切りかえますと、少なくとも過去拠出時の保険料二分の一相当として積み立てておった分、これにつきましては、今後給付時の三分の一ということになりますと当然国庫負担の重複が生じますから、これは清算する必要がある。そういうことで今回はとりあえず、この積立金より受け入れという欄にございますように一千六百八十九億を調整したことでございますけれども、実質はこの両者合計したものが国庫負担でございます。したがいまして、今後なおまだ積立金の国庫負担分の残がございますからこれを将来調整するという問題がございますけれども、一遍に多額の調整をいたしますと運用収入その他の点で問題が出てまいりますので、その点は国民年金の財政収支に支障のないように計画的にやってまいりたいというふうに考えております。
  148. 田口一男

    ○田口委員 いまもお答えの中にあったのですが、大変財政が国民年金に限っては苦しい。そこで、保険料そのものも千四百円、本案では二千二百円に来年なるのですが、このいわゆる平準保険料、この資料から見ますと、ことしの九月で五千四十円ですか、平準保険料そのものは。この平準保険料ということに限って私は申し上げたいのですが、平準保険料にしろこの実際の保険料にしろ、年々変わるということは納める側からいって好ましいものではないわけですね。できれば急激な変化じゃなしに、時間がたとうとも、納める保険料というものはずっと一定でいってもらいたいということは常識的にわかると思うのです。しかし、今日までの国民年金の平準保険料だけを見た場合に、昭和四十九年が二千六百六十一円、それから本年三月が四千九百六十円、九月が五千四十円、来年の四月が五千百六十円というふうに、平準保険料というものが年々上がっていく傾向を見せております。これをある学者に言わせれば、平準保険料というものは年金制度の成熟化と比例をするものだからしようがないだろうという言い方をしておるのですけれども、国民年金というのを釈迦に説法のように保険料が均一、支給される年金額も均一、この制度をこのまま続けていった場合に、いまのような国庫負担方式で保険料負担というものがどんどん上がっていくことは、これは否めませんね。平準保険料よりもいまのところ低く抑えておる。しかし、制度が成熟化をし、保険料がどんどん上がっていく、こういった場合に、均一の保険料、均一の年金支給、この国民年金制度をこのまま持続をさせていくということは財政的に見て将来いかがなものか。この辺、どうなんですか。
  149. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 ただいま先生お述べになりました点は、まさしく国民年金制度上の一つの大きな問題でございます。今回の改正に当たりまして、事前に関係審議会にいろいろ検討をお願いいたしたのでございますけれども、その際もやはりその点は問題になっただけでございまして、結果としては、準備その他の問題もございますので、審議会の御意向としても、今回改正には間に合わないだろうけれども、いわば次回の検討課題ということに結果的にはなったのでございますけれども、今後の国民年金の財政を考えますと、果たして現在のままの定額保険料一本でいいのかどうか。もっとも、国民年金の対象者を考えますと、所得比例ないしは段階保険料、そういったものに余り大きな期待を持つということは多少問題がございますけれども、しかし、定額保険料一本でいくということについてはあらゆる角度から検討を加えて、財政の安定のためにはやはりできるだけの努力を払うべきではないかと考えておりまして、今回はいずれにしてもいろいろの事情で間に合いませんでしたけれども、今後、非常に重要な問題として引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。
  150. 田口一男

    ○田口委員 いまおっしゃったように、平準保険料そのものをずばり適用するわけではないですからなにですけれども、仮に国民年金の給付水準を時代の推移につれて、いまは二十五年で三万幾らになりますけれども、これを五万円にする、六万円にする、だから、年金水準が高くなるのだから保険料もたくさんよこしなさいということでは、国民皆年金というたてまえではあるにしても、この国民年金に限ってはどんどん抜けていくという危険がいまのままではいけば出てくると私は思うのですね。たとえば来年二千二百円、スライドで割れば二千三、四百円になるだろう。一人ならばいいのですが、国民年金は個人単位ですから、二人なり三人になりますと一カ月六千円、七千円の負担になってくる。これが三千円、四千円になるということになりますと、一世帯で一万円近い年金保険料の負担にいまのままでいけばなるわけですから、したがって、これは関係審議会なんかでもその意見がありますように、所得捕捉がむずかしいということを言われておるようですけれども、考えればやる方法があるわけですから、国民年金財政の安定、健全化ということと、しかも給付水準を高めるということからも、ひとつ年金保険料の徴収の方法についてさらに検討を進めていただきたい。  そして、この機会にあとやや事務的なことを二つほどお尋ねをしますが、千四百円に四月からなりました。来年二千二百円になろうとしておる。私、ちょっと不勉強なんですが、国民年金の掛金を集める方法として、私が聞いているのは、三月に一回ぐらいしか集めに来ないというのですね。これを毎月徴収する、しかも、農村が多いのですから農協なり何なりに納入をするというふうな方法がとれておるのか。私が聞いた限りではとれてないようなんですが、これは制度としてはどうなんでしょうか、徴収の方法は。
  151. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 保険料の徴収の点でございますが、先生がおっしゃられましたように、法律上は三カ月ごとに納付期限が定められているわけでございます。しかし、現実の運用といたしましては、納付組織あるいは市町村等におきまして、毎月集金をしておるところかなりあるわけでございます。
  152. 田口一男

    ○田口委員 では、大臣のおるうちに厚生年金の問題で一つだけ、いまの財政に絡んで。  今回、千分の十八、厚生年金の掛金を引き上げた。その理由は、新聞なんかの発表その他を見ますと、給付がふえるのだから当然に掛金を上げていかなければそろばんが合わぬという、まあ、ざっくばらんにはそういう理由ですね。ここで私がごく短時間大臣質問をしてお答えをいただいたのは、一体厚生年金の積立金というものは何なのかということです。この積立金というものが約十三兆円あるのでしょう。私は結論から言うと、今度の千分の十八の引き上げは、給付の水準を高めるために掛金を上げるのだと言ってはおりますけれども、結果的に言うと、はっきり言って積立金の目減りを保険料によって補おうとしておるのだ、こうとしか思えぬのですね。  それで大臣にお尋ねしたいのですが、この積立金は全部が全部、選挙演説のように大資本に持っていかれたということは私はここで言いません、ある程度は生活関連に還元をされておるとは思いますが、そういう分も含めて、積立金というものは今日までの日本の経済を支えた、年金の積立金は日本の経済成長に寄与したと言っても言い過ぎじゃないと私は思うのですね。そうすると、日本の経済成長に寄与した年金積立金なら、当然寄与した分だけ年金被保険者に何らかの形で還元をされるということは、これはストレートの見方としてあたりまえじゃないか。ざっくばらんにどういう方法で還元するかと言えば、利子です。まあ、ここで信託の利回りはどうだ、あちらの利回りがどうだということは言いませんが、公的年金のたてまえからいって、どうも余り高利の利回りには使っていないようであります。ですから、そういう積立金の目減りを保険料を値上げをすることによって埋め合わせるということではなくて、経済成長に寄与した性格を持っておるのですから、いま権力を持っておるおたくの政府でこんなことはできると思うのですが、いままで二回年金がスライドいたしましたけれども、積立金自体をスライドに合わせて、または特定の経済指標というものに合わせて、連動させて積立金を再評価していくという方法はとれないものか。インデクセーションですね、そういったことの適用ができぬものか。そうでなければ、いまのように積立金制度でいく限りは積立金の目減りは否定できない。それを保険料で補うというふうなことではたまったものじゃありませんから、目減りを補うためにというよりも、経済成長に寄与した積立金であるから、年金のスライドがあれば、そのスライドと連動させていまある積立金を再評価する、こういう方法がとれぬものか、こう思うのですが、大臣どうですか。お急ぎでしょうけれども……。
  153. 田中正巳

    田中国務大臣 いろいろなことをおっしゃいました。積立金の効用はいかん、これもまたいろいろ議論のあるところでございまして、われわれは一つの考えを持っておりますが、いま最後にお尋ねになりましたのは、年金の積立金のデバリュエートした部分を再評価して、さらに大きく評価がえをする。現実に、評価がえをしただけでは、空財産でございますから何にもなりません、やはりこれを埋め合わせるのには財源が必要だろうということになりますと、どこから金を持ってくるか。一般会計から補てんするとすれば、保険料で積み立てなかった分を税金で補完するというかっこうになりまして、政策論議として一体十全なものかどうか、いろいろ議論のあるところだろうと思います。いずれにしても国民の負担でございます。どのような方法で十分な積み立てをやっていくかというようなことをわれわれは考えなければなるまい。そこで、積立方式の一番の問題点である積立金のデバリュエーション、これをどうやって逃れるかといったようなことについて、今後われわれの研究する課題があるのではなかろうか、かように思っております。
  154. 田口一男

    ○田口委員 いまの問題が出ましたから、年金局長、一体積立金の運用利回りは幾らなのですか。
  155. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 現在の預託利率は年七分五厘でございますが、それぞれの期間ごとに預託利率が変わっておりますので、五十年度末見込みで申しますと、全体の平均利回りは厚生年金の場合六分八厘八毛となっております。
  156. 田口一男

    ○田口委員 大体、厚生省は企業年金なんかの行政指導には、企業年金の積立金は高利回でひとつ運用しなさい。公的年金と私的年金の違いということはありますけれども、私が言ったインデクセーションの適用をすべきじゃないかという一つの提起に対して、ではどこから金を持ってくるかという大臣お話がいまありましたけれども、そうであるならば、積立金の半分は被保険者の掛金と言ってもいいのですから、その分くらいは一般私的年金がやっておるような高利の運用を図ってもその分だけで、私はきょうはもう時間があとありませんから数字を挙げませんけれども厚生年金について言うならば、千分の十八引き上げる、こういう問題に結びつける必要はない。一般の被保険者が言っておる、十三兆円も積立金がありながら、なぜこの機に掛金を上げなければならぬのだという素朴な質問に答えるためにも、積立金の高利運用をやればそれは防げていくのじゃないか、私はそういうことを提起しておきたいと思います。  あと二問だけで終わりたいと思いますが、国民年金にまた戻ります。  本来六十五歳から支給される国民年金の繰り上げ支給を六十歳からやっておりますけれども、この状態を聞くと千差万別なんですが、ひとしく言われておる要望は、六十五までずっと来て、本格年金支給でまたもとへ戻らぬかということです。そのためにはいま割り引かれて支給される減額年金の割引率が多少高くなってもいいから、六十五歳でまたもとに戻らぬかということがあるのですが、これは不可能ですか。
  157. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 不可能かというお尋ですと、これは制度ですから不可能ということはないのですけれども、減額年金制度はもともと数理的に本来のレベルに見合ったものとして設定しているわけですし、いまのように一定年齢になると本来年金のレベルまで戻すとなれば当然保険財政その他に影響があるわけですから、そのような設定が不可能とは申せませんが、私どもが減額年金と考えておりますのはいずれにしても数理的に本来の年金に見合ったものでございます。したがいまして、一定の減額率で受給すればそれがずっと最後まで変わらないというのがいわゆる減額年金でございますので、私ども、いまのところこの制度を変えるという考えは全くございません。
  158. 田口一男

    ○田口委員 では、最後に要望を申し上げます。  国民年金にいたしましても厚生年金にいたしましても、今日までの議論は、もちろん今日も続いておりますが、給付水準そのものをもっと上げろということであります。ところが去年あたりからは、給付水準を上げることはもちろんであるけれども、年金財政という問題について、有識者はもちろんのことでありますが、一般被保険者、年金受給者まで相当強い関心を持つに至ってきております。そういったときに、本年の二月に年金局長全国部長会議か何かで平準保険料と保険料率との関係に触れて、六〇%を維持すること、そのことを見直さなければならぬのじゃないかという意味の発言があったようでございますけれども、これはいま私が申し上げたような年金受給者、被保険者の気持ちからいくと、どうも逆なでをするような言い方にとれるわけですね。六〇%を維持しようと思ったらもっと保険料を上げなければならぬ、保険料を上げることがいやなら六〇%については云々するなというふうにとれるじゃないか、そういう解釈をした者があるのですよ。年金給付水準をもっと上げなければならぬ、しかし財政問題も考えなければならぬというふうにだんだん進んできておるのですから、この財源問題について、たとえば国民年金は均一の保険料徴収ではなしに所得によって取るとか、それから厚生年金についても積立金の運用について、武士の商法じゃなしに、もっと積極的に、もうかるというのですか、総保険料で埋め合わせるようなことを安易に考えずに、そういう点についてより検討を深めていただきたいことを要望して、時間が参りましたから終わります。
  159. 住栄作

    ○住委員長代理 次に、加藤紘一君。
  160. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 先ほど田口委員から今後の年金のあり方、特に年金の基本問題構想懇談会ですか、それに関連したお話があったようでございましたが、私もそれに関して幾つかの質問をしてみたいと思います。  最初に、いま各種年金が幾つかあるわけでございまして、それを統合しなければならぬという話があるわけですが、それが出てきます理由として二つあると思うのです。一つは、事務的に余りばらばらになってはめんどうくさいし、通算制度なんというものを考えるのもめんどうくさいという事務上の問題もあると思います。それからもう一つは、制度間にアンバランスがあって、不平等でないかという話が基本にあると思うのです。  最初厚生省にお伺いいたしますが、現在各種ある年金相互間にかなりの不平等があると思われますが、単純にこうお聞きしたいと思うのですが、政務次官、いかがですか。
  161. 川野辺静

    ○川野辺政府委員 お答え申し上げます。  仰せのように、各種にいろいろの差別がありますけれども、こういったものが実際にいろいろ繁雑とかなんとかという問題もあるようでございますけれども、こういうことにつきましては、それぞれの場合でその必要に応じて考えられてここまで来ておることでございますので、まあ、いまこれをすぐどうこうというわけにはまいりませんし、さらにこれはよく検討していかなければならないと思っております。
  162. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 それぞれの必要とそれから経緯があったということでありましょうけれども、最近、年金というものについての関心が高まった段階では、過去の経緯及びそれぞれの制度間の利害ということだけではほうっておけない事態に来ていると思います。  専門の曾根田局長さんにお伺いしたいと思いますが、いわゆるアンバランス、これは一番大きいのは給付開始年齢というものがあるのでしょうけれども、その点も含めまして、総合的に、いまの各種制度間の中でどこが比較的得をしてどこがまだまだと思われるか、単純にお聞きしたいと思います。給付開始年齢も含めて、総合的に見ますならば。給付水準等も入れてですね。
  163. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 大変むずかしい問題で、これは給付だけでとらえるのは十分でございませんで、やはり拠出との見合いも本当は考えなければいかぬと思うのですけれども、お尋ねの点、私の考えを申し上げますと、一般的に言って、やはり共済組合グループ、これは開始年齢五十五、最終給与に一応リンクした体系でございますから、この辺が相対的には非常に有利な取り扱いになっておると思います。それから国民年金の方は開始年齢その他から言いまして、他の制度に比べますと、まあレベルとしては低いと言わざるを得ないわけですけれども、しかし、これが直ちに拠出との見合い等々から見て不合理であるかどうかということは、それぞれの制度趣旨なり目的、それぞれに差がございますので、必ずしも一概には言い切れないのではないかという感じでございます。
  164. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 いま、各種共済というものが有利な感じがするというお話でございましたけれども最初に大蔵省の岡田共済課長さんにお伺いいたしますが、国家公務員共済を総括的に取りまとめておられる立場として、国家公務員共済というものがほかの年金制度に比べて比較的有利であるという御認識をお持ちでございますか。
  165. 岡田愛己

    ○岡田説明員 お答えいたします。  給付において有利であるかということが御質問趣旨だろうかと思います。有利、不利というのはどういう観点で言うかというと、非常にむずかしい問題があると思います。それは恐らく、事実といたしまして、先ほど年金局長の方からお話しございましたように、給付開始年齢が五十五歳という点は、確かに厚生年金に比べあるいは国民年金に比べて繰り上がっておるわけでございます。ただし、この場合であっても、厚生年金はたとえば退職を要件といたしませんが、われわれの場合には、五十五歳以上であっても退職しない場合、依然として共済年金が出ないという意味で、一概に年齢だけでもって有利、不利は比較できにくいのではないか。あるいは、たとえば遺族年金をとりましても、遺族年金の最短の支給年限について申してみますと、厚生年金は六カ月ということでございますが、われわれの場合にはこれが一年になるというようなことがございます。遺族年金についてもう一つ申し上げますと、最低の支給の基準というのは、厚生年金の場合二十年みなしでございますが、われわれの場合は十年みなしということで、いろいろ差がございます。そういうものを総合し、かつ負担の点におきましても、御存じのとおり、共済組合の場合におきましてはいわゆる公経済主体としての国庫負担というものは一五%でございます。この点は他の公的年金に比べて一番低いと思います。また、掛金水準におきましても、この新しい制度が発足いたしました三十四年においては、組合員の掛金率は千分の四十四というふうにすでにかなり水準も高くなっております。そういう負担というものとの兼ね合いで給付というものが決まっておりますので、有利、不利というのを端的にお答えできないのは残念でございます。
  166. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 非常にあいまいな質問をいままでやってきたわけですけれども、これから基本構想を考える際に、制度間で一体どこが有利か不利かということを端的に考える基準というのがなければ、本当制度を一緒にしなければならぬのかどうかという議論が実ってこないんじゃないか。せいぜい支給開始年齢をみんな同一にしなければならぬという議論がある程度で、あとは、各種制度間それぞれの経緯があったのだし、いままでの既得権もあるのだからほうっておきなさいというような話で終わってしまう可能性があるから、あいまいな質問をしたわけであります。  それで、後でまたこの問題をお聞きいたしますけれども、いまの年金制度間の中で有利、不利とか、いろんなこれからの財政の面で特に問題になりますのが共済であり、また公営企業体の共済組合ではないかと私は思います。  国鉄についてお伺いいたします。国鉄の本年度の運営上の赤字ですね、運転上の単年度の赤字は幾らか、これが一つです。それから、国鉄の一般会計の中からいわゆる長期共済の方に組み込む額は幾らでございますか。
  167. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 ただいまの赤字という点でございますが、国鉄自身の赤字ということと理解いたしますが、本年度、五十一年度の予算上の収支バランスといたしまして四千九百億程度の赤字を一応見込んでおります。その前提といたしましては、運賃改定等を織り込んだ結果としましてそうした赤字を見込んでおります。それから、五十一年度の国鉄から国鉄の共済組合に対する負担金、これは一般の負担金と追加費用、両方合わせまして約千五百億ということになっております。
  168. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 国鉄の赤字というのは大変である。それで大きくいろいろ論じられているのですけれども、これでわかりますように約五千億の赤字があります。それで、国鉄の一般会計の中から共済に組み込んでおるのが千五百億もあるのですね。これは一般に、どうしても支払わなければならぬ問題であるのかという問題点があると思うのです。国鉄のスト権ストの問題があったときに、私はタクシーの中で運転手さんに聞きました。同じ労働者なんだし、スト権ストを支持してあげるという気持ちになるのでしょうかねと言うと、冗談じゃないと言うから、なぜかと聞きますと、彼らはスト権はないかもしれぬけれども、われわれよりはいい目をしているから余り支援する気にならぬのだ。単純な話です。じゃどういう特典でいい目をしているのかと言ったら、彼らは老後がいいじゃないか、駅の荷物係で、何も助役にならずとも駅長にならずとも、駅の荷物係で定年退職してもいま十二、三万、たしかもらっているはずだぞと言うわけですね。これは端的に、いま日本の各種年金相互間にあるアンバランスの問題を本能的に皮膚の感覚で言っていることだと思うのです。そして、赤字と言われる国鉄の一般会計から年間千五百億もつぎ込まれている、これは若干問題になると思われませんか。多過ぎると思われませんかか。それともこれは仕方のない額と思われますか。
  169. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 ただいまの約五千億という赤字のよって来る収支上の問題でございますが、支出の面では、これは損益勘定でございますが、約二兆七千億程度の支出が全体でございます。この内訳としましては、人件費、物件費あるいは市町村納付金の納付とか、あるいは利子の支払いとか減価償却費とか、全体込めましてそのような金額になっておるわけでございます。  御指摘の共済の負担金の千五百億、これは人件費の内訳といたしまして約一兆六千億程度の人件費が本年度考えられるわけでございますが、それの一割弱というような割合になっております。したがいまして、全体の経費の中でこの共済の負担金が非常に高いかどうかという判断の問題でございます。この数年間続きまして約五%程度の負担割合になっておるわけでございます。もちろん、国鉄の経営上、全体的に経費が非常に高まり、あるいは逆に収入が減っておる状況でございますので、支出の面ではできるだけ節約をし、金額が少ない方がもちろんこれは望ましいことでございまして、今後十分にそういう点では全般的に支出の面での節約を励行しなければいかぬというふうに思います。その中でこの共済組合の負担金そのものが今後だんだん毎年ふえていく傾向にあるというふうに見通されるわけでございますが、この金額自体が非常に全体の中で著しく現在時点において負担が強過ぎるとか、あるいは好ましくないとかいうような断定は、現在の段階ではちょっとしにくいということでございます。
  170. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 好ましくない、ほかの制度から比べてこれがちょっと出し過ぎだというような感覚はないということでございますか。
  171. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 現在の共済制度のその制度の枠の中で本来的な負担金及び追加費用という形で毎年負担をさせられているものでございまして、これ自身につきましていろいろな問題はあると思います。あると思いますので、総体的にそうした問題を今後どうするかという点は検討しなければならぬと思いますけれども、それ自体について、このことが非常にアンバランスであるというふうにはいまちょっと申し上げられないわけであります。
  172. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 それでは端的にお聞きいたしますけれども、この千五百億のうち、いわゆる共済の国庫負担に類する、公的負担に類する、百分の十五ございますね、それは幾らであって、使用者負担としての四十二・五が幾らであって、追加負担というのが幾らになるか、その内訳を知らせていただきたいと思います。
  173. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 年次がちょっと古くなりますが、決算が出ております四十九年度で申し上げますと、いわゆる負担金が千百三十四億、それから追加費用が六百七十九億で、要するに純粋な経理上の負担、百分の五十七・五に相当する部分は四百五十四億になります。これを仮に一五%負担分ということで計算いたしますと、四百五十四億に対しまして一五%相当額が約百十八億というような割合になるわけでございます。
  174. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 問題は、この百十八億とそれから六百七十九億の解釈だと思うのです。これはほかの公的年金も全部同じですから、自治省の方にも大蔵省の方にもお聞きしたいと思うのですが、先ほどの答弁でもございましたその公的年金のうち共済の方は、厚年の方が二〇%拠出し、給付時負担しているのに比べて、一五%でございますよ、そんなに有利ではございません、こういう議論がありますね。しかし、一五%の部分、確かに国鉄については百十八億です。しかしこの追加費用と称する変なやつで、これが実に六百七十九億もあるじゃないですか。これは四十九年度であって、五十一年度ですと恐らく一千億に近いのじゃないですか。私の聞いたところでは九百九十億くらいになる。年間約一千億です。私は、これは国家公務員共済でも地方公務員共済でも同じだと思うのですが、いわゆる追加費用とか財源調整とかいわれるもの、これが地方公務員では幾らあって、国家公務員の場合幾らあるか、お聞きしたいと思います。
  175. 岡田愛己

    ○岡田説明員 お答えいたします。  先ほど運輸省の方で四十九年度の決算でお話しになりましたので、同じ年度について申し上げますと、いわゆる使用主といいますか、事業主負担である国の負担額が七百七十三億、それから公経済主体の立場のいわゆる国庫負担が二百七十三億、これは特別会計、一般会計を含めまして国家公務員に対して負担してもらっております。
  176. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 済みません、もう一度お願いします。公的負担が……。
  177. 岡田愛己

    ○岡田説明員 公的負担が二百七十三億、それから事業主負担が七百七十三億でございます。そのほかに、先ほど追加費用という表現で整理資源のお話が出ましたが、その金額が六百二十六億ございます。合わせて千六百七十二億。  なおここで、追加費用の話が出ましたので、蛇足かと思いますがつけ加えさせていただきますが、御案内のとおり、国家公務員の場合には、共済年金というのは従来の恩給制度から昭和三十四年に切りかえられた制度であります。それまでのいわゆる恩給制度から社会保険制度に移ったということでございますが、問題は、恩給公務員期間につきましてはそれに見合う積立金というものがございません。そういうことで、この積立金の不足額を追加費用とわれわれは称しておりまして、この追加費用を使用主としての国という立場で償却するための財源、これをまあ通常、追加費用あいは整理資源という言葉で言っております。
  178. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 自治省、いかがですか。
  179. 桑名靖典

    ○桑名説明員 地方公務員共済組合における四十九年度の決算に基づきます使用者負担額が二千百五十八億でございます。そのほかにいわゆる公経済の主体としての地方公共団体の負担、先ほど先生が負担と言われた部分でございますが、それが八百三十四億でございます。それから追加費用と言われるものが千五百三十六億ございます。
  180. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 問題は追加費用だと思うのです。国鉄の場合においても六百数十億、それから国家公務員でも六百数十億、人数の多い地方公務員では実に千五百三十六億、この額を全部足しますと、これ以外に電電がありますしそれから専売がありますから、約三千億近いものが国から出ているということではないでしょうか。性格についてはいろいろ議論があろうと思います。しかし、厚生年金の拠出時負担の現在でもたしか二千億前後ぐらいだったんじゃないかと思うのですが、それにもまさる膨大な額がこれぐらいの人数のものに出ている。先ほど大蔵省の方から、これは昔の恩給との連続性を保つものであるということを言われました。それは要するに過去勤務債務ということでございますか。
  181. 岡田愛己

    ○岡田説明員 過去勤務債務の一つであると言えると思います。過去勤務債務というのは、御存じのように二つございまして、いわゆる制度発足後の制度改善によりまして、現在の組合員を含めましてまだ積み立て不足の分、それから制度発足前のとございます。これは制度発足前のものでございます。
  182. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 わかりました。制度発足前にしろ、後のいわゆる目減りの問題にしろ、過去勤務債務の一種だと思うのですが、自治省はどう思われますか。
  183. 桑名靖典

    ○桑名説明員 先ほどの追加費用の額は、地方公務員の共済年金におきましては、いわゆる共済制度発足前の地方公共団体における退職年金条例の適用を受けておった期間あるいは恩給準用者の恩給法の適用を受けておった期間、その期間を引き継ぎまして通算いたしまして共済年金の給付を支給することになっておりますので、その施行日前の期間についての費用でございます。
  184. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 年金局長にお伺いしたいと思うのですが、国鉄の場合はこれは完全に過去勤務債務だろうと思うのです。これは、いわゆる目減りにしろ、制度が前からいろいろな形であってその部分を補てんするという形にしろ、こういうものが公的資金で補てんされている制度がほかにありますか。たとえば農業者年金、これは過去勤務債務は全部被保険者の保険料アップになるということになっていますね。厚生年金もこういう追加費用とか整理財源というものはないと思うのです。恐らくいわゆる共済だけにある。そしてその額が多額にある。ぼくはこの額が実は、親方日の丸の恩給はいいという庶民の端的な感覚をもたらす原因じゃないかと思うのですが、理論的に年金制度間の問題としてどう御判断なさいますか。
  185. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 過去勤務債務を当然に別枠で国庫負担するという考えはもちろんございません。国庫負担率が一五%あるいは二〇%というような場合に、その理由の一つとして、まあ過去勤務債務もこれありということで率が設定されたという経緯はございますけれども、当然のこととしてこれを別枠で国費持ちということは、私どもの方の管掌しております制度にはございません。
  186. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 最初私は、各制度間に、どれが有利か不利か、アンバランスがあると思うけれども、その比較をお願いしたいと言ったときに、基準がないということが皆さんの答弁にあったと思うのですが、私は、この過去勤務債務を公的資金で見るか見ないかということは、猛烈に大きな不平等の判断をする一つの基準じゃないかと思うのです。いま年金局長が、共済組合の場合には一五%でございますよ、普通の二〇とか三分の一に比べて低い、低くてがまんせざるを得ない一つの理由になっておるというような答弁でございましたけれども、いまの過去勤務債務にしろ、追加費用というものと百分の十五の公的負担とを足したもので全体の長期給付の負担を見た場合には一体何%になるでしょうか。御計算なさったことないかと思いますけれども、念のため地方公務員の昭和四十九年について見ますと、実に三六%になります。正確に言うと三五・四%です。これは国民年金の、今度は給付時負担になりましたけれどもも、それの三分の一の三三%よりも多い額ではございませんか。国民年金は使用者がいないから優遇されておりますよ、と。しかし地方公務員はもっと優遇されているではありませんか。その点、どう思われるか、桑名課長と曾根田局長にお聞きしたいと思います。不平等じゃないですか。
  187. 桑名靖典

    ○桑名説明員 先ほどもお答え申し上げましたとおり、追加費用はいわゆる施行日前の期間に対する給付の補てん額でございまして、結局、その当時における制度は積立制度をとっておらなかった時代でございまして、使用者である地方公共団体も被用者である地方公務員も積み立てをしていなかった時代の分でございますので、それを加えて全体で何割だということをお話しいただきましても、必ずしも負担が大きいということにはならないのではなかろうかという感じがいたすわけでございます。
  188. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 私も他制度関係の財政事情を必ずしも十分承知しておりませんので軽々しく発言いたすのはいかがかと思いますけれども、厚生年金にいたしましても国民年金にいたしましても、財政状態、まことに、何といいますか、いまのようなお話をお聞きしますと、非常にまじめに再計算を行い保険料の設定をしておるという感じは、率直に申しましていたすところでございます。
  189. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 いまの局長の話は、まじめに計算して被保険者にぶっかけているのがばからしくなるという解釈と受け取っていいと思うのですよ。  それから、桑名課長にお言葉をお返しいたしますけれども、昔積み立てていなかったと言っても、それは皆さんの仲間の話でしょう。制度一つ一つつくってある、だからわれわれは国家公務員ということでずっと連続性があって制度をやっております、そして昔から恩給制度がありました、そして昔の人たちは積み立てておかなかったので国からお金を出しますというのはおかしいのじゃないですか。それは昔の人が出してなかったんで、われわれ後代がいろいろな保険金の中で若干負担してその分は埋め合わせをしようというのが本来であって、それを国から取ってくるというのは自分が財布を預かっているからこそできる話じゃないでしょうか。それが厚生年金グループでできますか。
  190. 桑名靖典

    ○桑名説明員 地方公務員の年金制度におきましては、施行日後の期間の分につきましては三者負担をとっているわけでございます。したがいまして、施行日後の期間の制度の改正等に伴う増加負担分につきましてはいわゆる三者負担をとっているわけでございまして、いま申し上げました追加費用というのは施行日前の期間の分でございます。  それで、いま先生のお尋ねの、積み立てをしていないのは仲間の話じゃないかという点でございますが、もちろん施行日前の期間についてはそういうような制度がなかったわけでございますが、ただ、こういう年金制度が確立いたします前はいわゆる退職手当制度自体もなかったわけでございまして、こういう社会保険制度としての共済制度ができ上がる前の、なかった期間についての追加費用を地方公共団体が負担しているわけでございます。
  191. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 大蔵省に同じ質問を申し上げます。大蔵省は昔から恩給制度があったわけでしょう。そのときどうやっていたか詳しいことは知りません。しかし、恩給制度があって、その後国家公務員共済の長期給付になった。確かに法律は変わって制度は新しくなったかもしれませんけれども、そして私は社労の委員とかなんとかをしているから、恩給というのは共済ですというような、何かごちゃごちゃしたことはある程度知っていますけれども、一般の国民にとっては、いまの国家公務員の共済の長期だって恩給と呼んでいるわけです。同じ恩給の仲間じゃないか。昔の人が積んでなかったからその分を国庫財源から取ってきて、それも公的負担の二百七十三億に比べれば六百二十六億、約二・五倍、膨大な額だと思うのです。それが社会的公平という観点から是認されると思われますか、お聞きしたいと思います。
  192. 岡田愛己

    ○岡田説明員 お答えいたします。  施行日前の期間の部分につきまして、いわゆる整理資源という形で毎年入れております金額は筋が通らぬではないかというお話だと思うのですが、実はこれは恩給制度のそもそもになるわけでございますのでこれははしょりますが、当時官吏と言われたいわゆる公務員につきましては、恩給納付金といたしまして毎月百分の二ずつ本俸から繰り入れているわけでございます。ただ、それを積み立てという形で国がとらえておらないということでございます。したがいまして、そもそも公務員が何もしてなかったということにはならないと思います。  それからもう一点、一般の民間でございますと、戦前はむしろ一時的な退職金というのが一般でございましたが、官吏の場合は御存じのとおり、長期勤務いたしますと、普通の場合、戦前は退職金はございません。そのかわりに恩給という年金形式で老後というものをカバーする、こういう思想でございます。したがいまして、その年金の部分だけとらえて国がどれだけ出すのがいいか悪いかという議論はなかなか言えないのではないかと思います。要するに、昔も民間と同じように退職手当も出し、かつ年金的なものも出しといった場合の論議じゃないかと思います。  それからもう一つ、これも申し上げておきますが、これは国と言っても国庫ではございません。国に使用せられておる公務員でございます。いわゆる勤労者でございます。そういう意味で、たまたまその使用者が国であったということでございます。
  193. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 いまのは詭弁だと思うのですよ。仮に積み立てていたとします。しかし目減りしているわけですね。戦前、五円か十円積み立てていたところで現在何もないわけですから。その発想でいきますと、理論的には、積み立ててなかったからその部分ですけれども、積み立てていたとしたって、過去勤務債務は二種類あるとおっしゃいましたけれども、本来の過去勤務債務の負担部分として国が出すことになるわけですね。そうでしょう。積み立てていたとしたって同じことをやっていますよ。ですから、本来はこれは百分の八十五の中で折半で負担するか、それでなければ給付水準を低めるか、そうしない限り、私たちは百分の十五でございますよというような話にはならぬと思うのですよ。現に、お役人及び親方日の丸の年金はいい、いっぱい出していますよという話は確かにあります。国鉄の場合だって、当人負担が今度改正して何%になるのですか。五・五%ぐらいじゃないですか。厚年だって大差はない。今度値上げになれば四・七ですか。そんなにめちゃくちゃにいっぱい保険料を払っているように思えないのです。それなのに現実には、現在退職した人の年金というのは格段の差がある。  それで、先ほど大臣が田口さんの質問に対して一生懸命答弁されておりました。過去勤務債務というものをどういうところでどう負担すべきなのか、それはむずかしい、慎重に考えなければならぬ問題ですということを言いながら、国家公務員、地方公務員、それから公共企業体にはもう全然論議なくすぽんとやっているじゃないですか。これが年金制度の間の不平等でないとどうして言えるでしょうか。年金局長もひとつ遠慮なく、その辺どう思われるか。年金相互間の一つの不平等ですということをここで断定してもいいと思うのですが、いかがですか。
  194. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 私は何も各種共済組合等について云々するつもりはございませんけれども、ただ関係審議会等で、たとえば共済組合の年金制度の性格論なども議論になっているようでございます。厳密な意味で厚生年金と全く同じ公的年金だけの性格のものなのか、あるいはやはり敬老年金的な性格といったものも加わっておるのかどうか、そういう問題もございますので、その点は十分考えなければいかぬと思いますけれども、いずれにいたしましても、年金関係の懇談会が発足いたしまして、そういう点も含めて問題点を大いに煮詰めていこうというのが実はきのう発足に当たっての各委員の御意見でもございましたので、そういう点も含めまして、これから各制度問題点を洗い出して今後の参考にいたしたいというふうに考えております。
  195. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 国鉄をこれからどうなさいますか。五年後、過去勤務債務が二千億円になります。何ぼ運賃を値上げして黒にしたところで、これを国鉄の一般会計から持ち出して、それは人件費の一部でございますからといって出し続けられますか。これはこれから五年後、国鉄財政の非常に大きな問題になると思うのですけれども、それについて検討なさっておりますか。
  196. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 国鉄自体の財政問題につきましては、御指摘のように大変な事態に立ち至っているわけでございまして、当面、五カ年間を目標にいたしまして再建計画をつくっておるわけでございます。一応そうした計画の中側の問題といたしまして、先ほど申し上げました支出の面での検討ということも十分にやっておるわけでございまして、その中で共済組合の負担金の増額、増加傾向というものは、やはりかなり大きな問題であるという認識はいたしております。  しかしながら、そうした点だけをとらえてまいるわけにもまいりませんで、国鉄全体の経営、経理というものにつきまして、私どもは、運賃改定なりあるいは国庫の助成なりあるいは経費の節減なり、多角的な分野からこれを解決したいというふうに考えておりますので、現在の時点におきまして、この負担金の金額いかんという点にだけメスを当てるということは考えておりません。全体にわたりまして、その一環として考えてまいりたいというふうに考えております。
  197. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 このように過大な、ほかの年金では考えられないような、そして実は年金制度というものがかなり目減りするという本質を持っている段階で、最大の悩み事をこういった形ですらっと解決している共済制度という問題は、私は、年金間の最大の不平等であろうと思います。  これは一般に余り論じられてないことだし、給付を受ける方は、これはいいわけですから余り論じない。これは野党の方も論じられない、われわれも余り論じたくない問題ですけれども、しかし年金制度間の基本問題を論ずる際に、どこが有利か不利かというその認定というのは、非常に重要なことだと思います。  大臣いま来られて、論議が途中で申しわけないのですが、専門家でいらっしゃいますから、先ほど質問をもう一回繰り返します。  大臣は、先ほど田口さんの質問に対して、いわゆる過去勤務債務目減りによって生じます、その給付時に要する積立金で賄い切れないところを後代が保険料で負担すべきかどうか、そういうのはこれから慎重に、十分に考えていかなけれればならぬ問題ですと非常に慎重に答弁されておりました。しかし私がいま質問をいたしましたのは、国鉄及び公営企業体、それから地方及び国家の公務員共済では、その面で膨大な額が国庫から支払われている。公務員と公営企業体全部合わせて四十九年度で年間三千億です。それぐらいのものが、この少ない人数、国民全体から見れば少ない人数に支払われ、目減りの問題がすらっとここで逃げられている、これは一つの大きな不平等ではないか。だからこそ親方日の丸、公務員の年金というのは、確かに掛金も高いだろうけれどもいい目をしているという国民の本能的な感覚があるのではないか。これは是正すべきだと思うのですけれども大臣いかが思われますか。
  198. 田中正巳

    田中国務大臣 加藤さん、各種長期給付年金の内容についていろいろ御勉強になっておりまして、私、大変心強く思うわけであります。私も、いま厚生大臣ですが、一国会議員として先生と同じような問題を実はフォローアップしたことがございます。いま厚生大臣として私、国民年金と厚生年金のみを所掌しているわけでございまして、私の立場から各種の共済年金について直ちに論評することはいかがかと思いますが、しかし、やはり年金制度の基本をお預かりしている私どもとしては、その方面の注意も怠ってはいけない、かように思っております。  したがいまして、恐らくいま答弁があったと思いますが、私どもところでごく最近発足をさせました年金懇等でも、そうしたことについても考察をしていただくということで出発をしているわけであります。  確かにおっしゃるように、年金の性格が違うとは言い条、いろいろ相互間にアンバランスがあったり、制度自体に問題があるということを、私は当時から、厚生大臣就任前から知っているわけであります。財政内容についてあるいは給付のあり方について、制度内部にいろいろな解決しなければならぬ問題があり、また相互間にいろいろとアンバランスがあって、これが国民的立場でもってこのままでいいかどうかという問題がいろいろあることを私は知っております。こうしたことの解決のために、われわれは努力しなければなるまい、その一端を年金懇等でもお願いをいたしたいというふうに思っているわけでございます。  問題は、広範多岐にわたりまして、個々の問題についていろいろ申し上げれば申し上げる材料もないわけではございませんが、この場面では、先生も恐らく御存じだろうと思いますから、あれこれの点について申しませんが、今後確かに政府として考察をいたさなければならない問題であるということは、私も、さように思っておるわけでございます。
  199. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 先ほど過去勤務債務の問題を論じました。それは、いま大臣が答弁されましたように、非常に大きな問題としてこれから取り扱っていただきたい、こう思います。  それではもう一つ、もうちょっと簡単なお話を岡田課長にお聞きしたいと思います。  どう考えても、給付開始年齢五十五歳、もうちょっと早くやれば五十二歳あたりからでも云々と、この問題についてはどうも不平等だというので、公務員共済審議会で今井会長も最近メモを出されておりますね、引き上げるべきだ、若干アナクロであると。この意見に対してどう御判断なさいますか。
  200. 岡田愛己

    ○岡田説明員 国家公務員の五十五歳支給開始、それのみでございませんで、年金間、たとえば厚生年金と国民年金との間で格差がございます。ただ五十五歳というのがいかにも早いではないかという御意見であろうと思いますが、こういうものにつきまして御批判の声があるということは十分承知しております。また公的年金の調整をする場合、やはり給付開始年齢というのが一つの大きなポイントであろうということも承知しております。  ただ、先ほど委員に申し上げましたように、厚生年金等と違いまして、共済年金の場合は、これは地方などの場合も同様でございますが、退職を支給の条件にしているという点があるわけでございます。だから、そういう前提というものを抜きにしてこれだけをとっての議論というのは、あるいは適当でないという片方での反論もございます。そこで、老齢年金と退職年金、それぞれの年金の目的というものの性格上の差異というものも含めまして、各年金制度でいろいろ議論をしていただいているわけでございます。  先ほど触れられましたように、私ども、大蔵大臣の諮問機関でございます国家公務員共済組合審議会におきましても、いわゆる今井メモという形で提起された問題点などを中心に、公的年金制度内における私どもの共済年金のあり方について、鋭意審議会におきまして、いま、さらに御検討願っているわけでございます。
  201. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 あっさり若過ぎると思いますと言っていただけるならこういう質問はしません。  それでは、現実にいま支給開始年齢の平均はどれぐらいになっていますか。
  202. 岡田愛己

    ○岡田説明員 手元に最近の正確なデータがございませんので私の記憶でございますが、約六十歳でございます。
  203. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 厚生年金は幾つになっていますか。
  204. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 平均いたしまして約六十三歳前後というふうに承知しております。
  205. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 ですから、それは退職を要件にするとかいろいろ細かいことはありますが、そんなことを言えば厚生年金の方だって、六十歳だってもらえない人が大分いるのです。ですから私は、そういうことで本質を逃げるべきじゃないと思います。私は、長期構想懇談会ですか、これからいろいろやられますけれども、どんなにいい答申をなさいましても、各制度が既得権を主張して強引なことを言っていたら、どうにもならぬと思うのです。私、きょうの答弁、各課長さんからお伺いしておりますと、まさにここに長期懇が何ぼ答申しても、こんな答弁をされてはどうにもならぬということをひしひしと感じます。本当に恵まれているという感覚はないのでしょうか。六百数十億のものを出したり、そして全然その感覚がないというのは、この長期懇が先行きに暗いものを出すと思うのです。私は、これから、もちろん膨大な問題ですし、毎日毎月銭がくるという何万人の話ですから、簡単に答弁できないということはわかります。しかし真剣に社会的公正ということで、みずからの置かれた立場を離れて、非常に客観的に物事をこれから判断していただきたいと思うのです。そうしない限り、私は、年金制度の進歩というものはないと思うのですが、ここでひとつ大臣にお聞きいたしたいと思います。  いわゆる年金相互間のいろいろな問題ですね。今度、私ちょっと調べてみたいなと思っていろいろお聞きしても、年金制度を全体で見ている行政機関というのはないのですね。厚生省にお聞きしますと、やはり厚生省管轄以外の問題は余り手を出したくないというような感じであります。社会保障制度審議会の事務局というのがあるのでしょうけれども、そんなに私はイニシアチブをとってこの問題を考えていこうというところではないように思うのです。きのう、長期構想懇談会のあるメンバーの人と、会議が終わってから会いました。結局、行政の中でどこかがこの問題を制度間を通じて考える、そしてプッシュし、イニシアチブをとるところがなければ、われわれの努力は徒労に終わるのではないかと言っておりました。その役割りはどこが果たすべきなのでしょう。そういう役割りを果たす行政組織がなければいかぬと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  206. 田中正巳

    田中国務大臣 いま加藤先生がいみじくも述べたことが、この問題についていままでも、そして今後も、問題の解決なり前進というものを円滑にしなくしている一つの基盤であるというふうに私も議員時代から思っておりました。それぞれのお役所がそれぞれ所掌をいたしております。国会の委員会も、実はそれぞれ別の委員会所掌をいたしておりまして、自分のところ所掌している年金だけ給付がよければ、あるいは改善すれば、他の方は余り横を見ないというような傾向があったことは、私は否めないと思います。そういう意味では、私ども厚生省も、実は先生おっしゃるように、厚生年金と国民年金だけを見ているわけでございます。しかし長期給付の年金について、いろいろと国民の間にも御意見があることでございますし、したがって私どもも、問題意識を持って、ある程度は各種の年金についての調整というものを厚生省が中心になってやらざるを得まいということで、そういういままでの所掌事項を若干オーバーしたかっこうで、年金懇に対していろいろな問題を今後提起をする所存でございます。  なお、率直に言うと、いささかこれを全般的に見ているのは大蔵省主計局であることは私は知っておるわけでございまして、大蔵省主計局は確かに各種の共済についてはある程度見れる仕掛けになっているということは、議員時代から知っておりました、しかし、これとてもなかなか簡単に問題を一元化するような立場にはございませんで、そうした考察というものが今後必要になってくるということは、私は否定をいたしません。
  207. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 主計局に期待せざるを得ないのかもしれませんけれども、主計局も国家公務員共済の仲間ですからね。ですから、そういう制度の必要がある、どこかの行政組織が見ていかなければならぬということでございます。それが何らかの形でこれから必要になってまいると思いますので、その努力をしていただきたいし、もしそれができなかったら、ぼくはやはり厚生省だと思うのです、人数から見ましても。ですから、農林年金から農業者年金から、特に農業者年金なんて、これから一体どうするのかねと思うような制度でございますけれども、そこまで心配する、とりあえずは厚生省年金局が心配するだけのおせっかいさをこの問題については期待したいと思います。  時間もありませんので、一つだけ私の日ごろ思っておりますことをちょっと述べます。  石野局長にちょっとお伺いしたいと思います。児童手当のために本年度国庫から幾ら支出されますか。
  208. 石野清治

    ○石野政府委員 五十一年度ベースで七百十二億でございます。
  209. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 福祉手当のために幾ら支出されますか。
  210. 石野清治

    ○石野政府委員 これは社会局所管でございますが、百十二億と聞いております。
  211. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 子供が三人目が生まれてお国から月五千円ですか、それを国民はみんなげらげら笑っています。国も確かに豊かなものだなといって。何もこんなものこなくたって子供は育てるよと国民は言っています。それで、たとえば五つ子なんぞ生まれれば、これは確かに効き目があると思うのですが、国全体が子供は二人ぐらいがいいだろうというような話が行き渡っていて、それで五人目がまた生まれたら五千円くる。確かにこれはあればあるにこしたことはないというか、あった方がいいと思います。あれば。しかし、これから財政が厳しくなってくるとき、児童手当に七百数十億、そして在宅で重度の子供を抱えて、おばあさんが見ていて、そしておばあさんが死ぬときに、この子供を見る人はもうだれもいないといって、その子を殺し、みずからも死んでしまう、そういう心中事件、悲惨な家庭に配ろうとする福祉手当、そのための財源が百数十億。児童手当の額を福祉手当に回したらどんなことができるだろうかというふうに感じます。たまたまことしは児童手当の引き上げがなかったようであります。(「ロッキードをやめたらすぐできる」と呼ぶ者あり)それはナンセンスだ。そういうのを女の論理というのだ。ですから私は、これからそういう福祉政策の中の優先度の問題について十分に考えて予算の編成を進めていただきたい。本来ならば私は、福祉手当は月間二万ぐらいにもなるべき筋合いのものだろうと思っています。在宅と入所の国が払っている差額というのは、一人当たり約十三万から十五万あるはずであります。それを二万円でできれば確かに安いのだという感覚で、今後福祉手当の増額に格段の努力を来年度予算でも払っていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  212. 住栄作

    ○住委員長代理 次に、金子みつ君。     〔住委員長代理退席、戸井田委員長代理     着席〕
  213. 金子みつ

    ○金子(み)委員 年金とは何だというのがまだはっきりした概念がないみたいなことも伺いました。しかし一般論としては、年金というのは働いている間賃金をもらって、その賃金を得て、それが生活の保障になっているというふうに考えられるのですが、働けなくなった後に、言葉をかえて言えば、老後のと申しますか、退職後と申しますかの所得保障というような言い方がございますね。しかし日本の場合は、所得保障だけでなくて、生活保障的な意味合いが含まれているのではないかというような感じもするわけなんです。しかし年金というのが何だというのは、いろいろと議論があってはっきりしたあれはないと思うのですが、厚生省では、政府ではそれをどういうふうにお考えになっていらっしゃるのかということをまずお尋ねしたいのですが、どういうふうにお考えでしょうか。
  214. 田中正巳

    田中国務大臣 金子先生は、所得保障と生活保障ということを対比させて言っているのですが、概念規定が私よくわからないわけでございます。普通社会保障では所得保障と医療保障というふうに分けるのですが、こういう分け方については私、余り学識がございませんのでよくわかりませんけれども、もう少し説明していただければ、あるいは的確な御答弁ができるかと思います。
  215. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私は、それを別にちゃんとした学説があって言っているのじゃなくて、そういう考え方幾つかあるということなんですよ。ですから、それについて政府はどう考えるか。たとえば幾つかある意見の中から意味をとりますと、所得保障というのは、いわゆる賃金に見合ったものという考え方があるわけですね。それから生活保障というのは、もう少し幅が広い、こういう考え方になる。たとえば所得保障として考える年金——日本の場合でなくて外国にある例だと思いますが、所得保障として年金額が給付されて、そして、そのほかに別に住宅手当であるとかあるいはそのほかのものが付加されるというような実態があるわけですね。そういうふうなことがあるとすると、日本の場合ですと年金というのはその全部を含めているのじゃないかというふうに考えられるわけですね。そこで、そういう見方があるのじゃないかと私は思ったわけなんですが、政府ではどうお考えかとお尋ねしてみたのですが、はっきりした概念はまだお出しになっていらっしゃらないとすれば、また考えてみたいと思います。  そこで、それはそれといたしまして、日本の国の年金制度というのは、年金の給付水準が非常に低いということなんですけれども、例を老齢年金にとってみますと、ILOが調べた一九七二年の調査ですと、老齢年金給付はアメリカが六八・四、西ドイツが五六・二、イギリスが四二・二、フランスが三三・二というふうなぐあいに二けたで、しかもかなり高い数字ですね。そのときに日本は八・六という数字になっているのです。非常に低い。そして同じ一けたのものを探すと、イランが三・六という数字があるわけです。こういう数字を見ましても、大変に低い段階にあるということは事実だと思います。  そこで問題なのは、それですのに、日本の場合は、経済の減速化というのが大変に理由になっておりまして、福祉見直し論というものが生まれてみたり、あるいはまた公的年金に関してもそうですけれども、拡充に限界を設けて、拡充限界論みたいなものが生じてきたりしているというようなことに非常に問題があるというふうに思うわけです。私どもが考えますのには、不況であればあるほど拡充限界などしないで、そしてそれを乗り越えて、公的年金制度にしても、あるいは福祉政策にしても十分拡充を進めていかなければならないのではないか、そういうふうに思うわけでございます。ところが、今回の年金保険法の改正につきましては、基本的な問題は避けているのだということは、はっきりうたい出していらっしゃいますから、それはそれといたしまして、給付額を引き上げることに努力をしておられるというのも見えるわけでございます。ですから、若干の考慮が払われているということもわかりますから、これはこれとして評価できると思いますが、しかし、その上げ方について、いわゆる限度論というのが、拡充限界論みたいなものが存在するからなんだろうと思いますけれども、みんなが期待するほどの引き上げにはなっていないということがあると思います。  それはそれといたしまして、それよりも何よりも主として今度の制度の改正案は、財政対策に根ざしているということですね。したがって、急激な国民の負担増というものが前面に打ち出されているような今度の改正案であるというふうに私どもは受けとめるのでございますけれども、この点は厚生大臣お認めになりますでしょうか。
  216. 田中正巳

    田中国務大臣 先生いまいろいろなことをおっしゃいましたが、わが国の年金給付水準が低いというので何か数字を挙げ、国際比較を挙げましたが、あれは恐らくぼくは振替所得のシェアを言っているのじゃないかと思うのでありまして、これは実はおのずから次元の違う問題であるわけでございます。振替所得が年金そのものでイコールではないわけでございまして、社会保障水準をはかる一つのメルクマールであることは事実でございますが、これで年金そのものの給付の厚薄につながるわけではございません。むしろ年金の標準年金額は、私は国際水準と比較をしてそう遜色がない、むしろこの点については、かなりの水準まで来ていると思うのですが、問題は、わが国の年金の成熟化がいまだしというところに問題があって、これを踏まえてわれわれは努力をしなければならぬということだろうと思います。したがいまして、二十七年、二十八年保険料を納付した人については余り問題はないのじゃないか。問題は、そうしたところまでいかなかった人の年金受給権をどのように扱うかというところに今後われわれとしては考えなければならぬ問題があろうというふうに思っているわけであります。  いずれにしても、この種のものを拡充強化するときには、公的費用というものが必要なわけでございまして、これをどういうふうに調達するかということは、今後われわれの間で検討を進めなければならぬ。金がなければどうにもならぬ、平たく言えばそういうことであります。これを保険料でやるか、一般会計で税金の形で納めていただくか、いずれにしても、何らかの費用を求めなければならぬということだろうと思います。一般会計に依存をする政策については、御承知のとおり現在いわゆる日本の経済のさま変わりによって相当窮屈になってまいりましたから、その意味では私はある程度やはり考えなければならぬ一面があろうと思います。ですからこそ、またこうした社会保障費の給付財源の調達については知恵をしぼり、国民の協力を求めなければならないということだろうと思います。  負担についていろいろお話がございましたが、これは今後、この年金の保険料の問題に連なる基本的な問題でございまして、考え方について実はいろいろあるわけでございますので、いまここで私があれこれ申し述べますると、先生から質問しないことを答弁したということになりますので、これについては、ひとつこれはこれなりにまた御討議をいたしたいと、こういうふうに思います。
  217. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そういう考え方を基本に置いて私はただいまから少しお尋ねさせていただいて、御意見を承りたいと思いますのは、今回の改正の中に具体的にあらわれてきている問題をとらえてみたいと思います。基本的な問題は、同僚の田口議員が質疑をいたしておりましたので、重複を避けたいと思いますので、私は、むしろ具体的な問題に入ってみたいというふうに思っております。  今度の厚生年金の一部改正に当たりまして、基本年金額を改正して標準的な年金額の月額を約十万円、十万円年金という言葉を使っておりますね。約十万円になるということが表明されております。しかしこれは、この前四十八年度のときに五万円年金というのがございましたね。そういうのを打ち出されておりましたが、あのときもそうだったのですけれども、みんながそれだけもらえるという錯覚を一般的にはしているわけでございますね。しかし御承知のように、実際には十万円年金が受け取れるような人は、あの条件にかなっていなければならないわけですから、あれだけの条件にかなっている人たちというのはそうたくさんいない。一〇%そこそこぐらいしかいないと思いますね。そうすると、大方の人たちは平均六万八千円ぐらいということになるわけですから、大変に違ってきますね。そこら辺は、まやかしじゃないのでしょうけれども、錯覚を起こすような表現の仕方をしておられるというところ一つ問題があると思います。しかし、そのことをいま御答弁いただこうと思っているわけじゃありませんで、そういうことを踏まえて実は私、伺いたいのは、今度の改正の中で金額の引き上げとして変わってきたわけですが、妻の、配偶者の加給金制度というのがございますね。従来二千四百円だったのが今度は六千円になる。金額が大きくなるから大変結構だろうということで、まあ結構は結構だと思いますけれども、私がお尋ねしたいのは、妻の加給金というのは何だということなんですね。というのは、厚生年金は個人年金でなくて家族年金という考え方がございますね。そうすると、妻も子供も含まれているというふうに一応考えて見ているわけなんです。そこへ今度また新たに妻の加給金というのが追加されているというのですが、どういうふうに位置づけて考えたらいいのかわからないので御説明いただきたい。
  218. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 厚生年金の場合、給付の体系といたしまして一応世帯というものを想定いたしまして、単身の場合、有配偶者の場合、それぞれ差を設けておりまして、それが具体的には加給年金ということで差を設けておるわけでございますが、この点が国民年金の個人単位の考えとは違うわけでございますけれども、いずれにしても制度発足当初から加給金ということでやっておりますので、今回の改正は、従来のそういう基本的な考え方を踏襲してこの金額の見直しを行ったということでございます。
  219. 金子みつ

    ○金子(み)委員 今回はそうだろうと思います。それはわかったのですけれども、私は、いままで質問をするチャンスがなかったものですから、いま初めてお尋ねする次第なんでございますが、なぜ加給金という制度を設けたかということを伺っているわけなんです。
  220. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 単身の場合と有配偶者の場合の生活費と申しますか、これは当然差があるわけでございますから、そういう意味で、加給金によってその需要にこたえることにいたしておる、そういうのが現在の考え方でございます。
  221. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そういうふうにお答えをいただきますと、それなら妻は六千円でいいのかということになってしまうのですけれども、この問題ばかりやっていてもなんですから、適当な形におさめておきたいと思うのですが、加給金制度というのは非常に煩わしいものだと思うのです皇ね。もつとすっきりとした方がいいと思うのです。加給金制度として妻は六千円だ。二千四百円分だったのが今度六千円になったから、少し格が上がったのだなというような大変ふまじめな議論もあるぐらいでして、これは非常に煩わしいし、理解しにくい存在だと思うのです。いま単身者と妻帯者では費用が違ってくるからだろうと局長おっしゃったのですが、まあ思いやりのある考え方でおやりになったのかしらというふうに思うのですが、そうすると、金額として非常におかしいということになってしまいます。率直に考えて、これは要するに年金の支給額が余りにも低いから、それを何とかごまかすというと言葉が何ですけれども、それじゃ余り低過ぎて何となく気になるから妻の分としてくっつけたのだというぐあいに解釈できるのですけれどもね。大変率直な言い方で恐縮なんですけれども、そういうことじゃないのですか。
  222. 田中正巳

    田中国務大臣 金子先生、そこまで勘ぐってお考えにならなくてもいいんじゃないかと思うのですよ。実は厚生年金は世帯単位というかっこうでできておりまして、国民年金とは性格が違います。そこで当時のこの制度を立案した者の頭の中には、いわゆるサラリーマンの給与形態というものがあったのだろうと私は思うのです。ですから、いわゆる家族給的な思想というものがこの中へ入ってきているということであります。そしてこの金額も、率直に言うと実は国家公務員の家族手当、家族給ですか、人事院勧告にのっとって正直にこういうふうに直したわけでありまして、あれこれ悪い魂胆があってやったなんという気持ちは毛頭ないのであります。財政不如意の折ではございまするけれども、やはり何とかそこのところをちゃんとしないと、一体今度は何で人事院勧告と違ったのだということでおしかりを受けるので、私どもとしては、人事院勧告を受けて、それだけはきれいに乗せようじゃないかということで乗せたわけでございます。  基本論として、こういうものがあってしかるべきか、ない方がいいかという議論は一つあるだろうと思いますが、私は、いまのところ、こういうものを全廃をするということについては、社会的抵抗もあり、よほど考えなければなるまい、なおしばらくこういう制度でやっていった方が年金受給者のためによろしかろうというふうなことを考えてやっているわけでございます。
  223. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それはわかりました。国家公務員の場合、いまお話しのように、給与プラス扶養手当として妻、子供がついてきますが、そういうこと自体、やはり同じような理由で制度としておかしいとは思っているのです。すっきりしないと思います。  しかしその問題は、そこまでにしておきまして、その次に、今度の改正の中に遺族年金がございます。この遺族年金の場合でございますが、遺族年金は日本の場合は大変に低い。これは、また低い話になってしまうのですけれども、配偶者、まあ話が早いですから夫と妻というふうに話を持っていってみたいと思いますが、夫が亡くなった場合に、その夫が給付されるはずの年金の五〇%が遺族年金として妻に与えられるということになっているわけでございますね、この五〇%という数字が大変に低いという意味なんです。  それで、これは昨年のILO百二号条約の批准のときにも、かなり論議された問題でございますから御記憶にあると思うのですけれども、ILO百二十八号条約では、生前夫が働いていた標準報酬の四五%が年金として妻に与えられるというのがILOの水準なんですね。そうすると日本の場合は、夫の給与の五〇%じゃなくて夫が受けるべき年金の五〇%ですから、これを給与に換算しますと二一%ぐらいにしかならないわけですよね。ですから非常に低い。約半分ぐらいです。そこで私たちは、昨年の百二号条約の批准の際にも厚生大臣にずいぶんお願いをいたしました。そして妻が受ける遺族年金は最低七〇%、これは世界のどこの国を見ても最低七〇%になっていますから、一〇〇%なんて大それたことを一遍には言えないのでまず七〇%からということで、七〇%に引き上げていただきたいということをお願いをいたしまして、厚生大臣もそれはぜひやりたいとおっしゃってくだすって、たしか五十一年度の予算にはこれを盛り込んで予算要求をしていただいたはずだというふうに私どもは記憶いたしております。それが実際問題としては、そうならなくてやはり五〇%のままで、しかも、そこに寡婦加算制度というのが新しく生まれたわけですね。六十歳以上の未亡人であった場合には月額二千円ですか、これを加算する。これは、さっきの加給年金の場合と大変よく似た考え方みたいに思うのですね。七〇%要求したのが、それができなくて五〇%のままに据え置いてしまったから、何とかしなければならないというので一生懸命考えてくださったのでしょうか。月額二千円の寡婦加算制度を新たに設けたということで、ありがたいことだとは思いますけれども本当だったらこうではなくて、基本的な比率を高めていただく方がありがたかったと思うわけです。  そこで、なぜ年金給付率を引き上げるのではなくて寡婦加算制度になったかということについて、きょうは大蔵省の方来ていらっしゃると思うのですが、私、厚生省は一生懸命に予算獲得のためにがんばってくださったと思います。ですから、言うなれば大蔵省で切られたのだというふうに理解できないでもないですね。大蔵省の方にそこら辺の説明をしていただいたら納得できるかしらと思いますので、この点は大蔵省の方にまず説明していただきたいと思います。
  224. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 遺族年金の問題につきましては、ただいま委員指摘のように、五十一年度予算の編成に当たりまして、厚生省の方から改善の御要求がございました。私ども厚生省当局と各種の角度から検討したわけでございますけれども、かいつまんで申し上げますと、現在の日本の遺族年金というのは、ただいま御指摘のように、基本の年金額の二分の一という水準になっているわけでございますけれども、各国の遺族年金制度をいろいろ洗ってみますと、日本の場合、夫の要件それから妻の要件等の面で、俗な表現で言えば非常に甘い面もあるわけでございます。たとえば主要国の遺族年金を見ますと、若年でお子さんのないような遺族に年金を支給しているという国はほとんどないという状態でございます。それから国によりましては、いろいろ工夫をいたしておりまして、年齢別に給付率をいろいろバリエーションを持たしておる。たとえばスウェーデンなんかの場合、私の記憶でございますけれども、三十六歳の奥さんでございますと、確か御主人の年金の一六、七%、それが一歳上がるごとに給付率が上がっていく、こういう仕組みもあるわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、現在の遺族年金五〇%の水準を、現在の遺族年金の制度をそのままにしておいて一律に引き上げるということについては相当問題がある、将来日本の遺族年金をどういうふうに構想するかということは、先ほど来御議論がございます日本の年金制度を今後どう見ていくかという問題の一つの主要な部分であると思うのでございますけれども、そういった事情もございまして、いまこれを一律に七割に上げるということは非常に問題がある、さればといって、厚生省が強く御主張になりますように、たとえば高齢の寡婦とかあるいは子供さんの多い家庭の遺族とそうでない家族、それを一律五割にしておくというのは、やはり合理的な根拠を欠く、したがって、基本的な問題の検討は将来に譲ることといたしましても、当面、その結論が出るまでの段階においては、先ほど御指摘になりましたように、今回寡婦加算制度というものを、定額の年金制度を創設したわけでございます。この結果、たとえば子供二人の家庭でございますと、御主人の生前の給与が、現在の厚生年金の平均給与ぐらいの水準で大体七割が確保できる、それ以外の低い所得階層に実質上七割以上の年金給付が行われる、こういう水準になっているわけでございます。
  225. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いま大蔵省の方が説明なさった中身を、私も承知しているつもりでございます。ただ、いまのお話は、理屈はそのとおりだというふうに納得できるかもしれないと思いますけれども、日本の場合と諸外国の場合とはもとが違いますよ。いま比率だけでお話しになりましたけれども、その比率が掛けられるもとの金額が違っていると思いますから、これは一概に言い切れないと思います。それから全体の社会保障制度の違いというものもありますししますから、この遺族年金だけをとらえて日本は甘いと一口に言い切ってしまうことはどうなのかというふうに思うわけです。  そういたしますと、いまの理論からいきますと、それでは当分の間、これは引き上げる意思はおありにならないというふうに考えていいのでしょうか。寡婦加算とかあるいは遺児加算の金額を引き上げていけばいいということですか。
  226. 田中正巳

    田中国務大臣 遺族年金の金額五〇%を低いということで何とかしょうと思ったわけです。ところが日本ではもう五〇%、二分の一というのは、長い間定着した制度でございまして、低いなと思って私も何とかしょうと思ったのですが、だんだんやってみますと、いま主計官の言ったような問題もございまして、寡婦加算制度というものをかわって今回実施することになったわけであります。  問題は、これで満足してもう努力しないのじゃないかというお話でございますが、私この問題については、当委員会でも御答弁をさきにいたしましたが、今後ともそうした問題点を掘り下げてさらに検討をいたし、何とかひとつわれわれが考えている方向にさらに前進ができるように努力をいたしたいということでございまして、決してただいまのこの寡婦加算制度でずっといこうという気持ちではございません。できるならば改善をいたしたい、こう思っております。
  227. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私は、同じことを大蔵省の御答弁もいただきたいのですが……。
  228. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 ただいま厚生大臣が御答弁になりましたように、遺族年金の問題というのは、今後基本的な制度問題があるわけでございますが、当面そういう結論が出ますまでの間におきまして、今回創設される予定でございます寡婦加算制度、これをたとえば五十二年度以降どうするかということは、来年度の予算の問題になるわけでございますけれども厚生省の御意見も重々承りまして、今後とも慎重に検討してまいりたいと思います。
  229. 金子みつ

    ○金子(み)委員 ありがとうございました。これは七〇%にしても、わずか七十億円ぐらいしかなりませんね。ですから、今回はできなかったということは一応わかりましたけれども、次の年度の予算のときには必ず成立できるように図っていただきたいと思うわけでございます。それは強く要望しておきたいと思います。  この問題に関連いたしまして、妻が加給金で取り扱われたり、あるいは加算制度で取り扱われたりというふうに、大変妻の座の扱いというものがはっきりしないんですね。大変混乱しているというふうに思うわけです。これは、なぜかとその原因を考えてみたら、妻の独立した年金権がないというのが一つ大きな原因ではないかというふうにも思うわけです。  現在、妻の独立した年金権が日本の場合はございませんが、これをもし確立するとすれば、いまの日本の年金制度のたてまえから言えば、個人年金であるところの国民年金に加入するという方法以外にはないのではないかと思うわけです。この国民年金に加入するについて、いわゆる被保険者の妻、被用者の妻、サラリーマンの妻ですね、この人たちは国民年金に入ることは現在は任意になっていますが、これが私はやはり問題だと思うのです。これを強制加入にするというお考えはございませんでしょうか。これが強制加入になれば、国民年金の中身は余り十分じゃございませんけれども、中身はこれから改善するといたしましても、とにかく妻のための独立した年金権が確立するというふうに考えられるのですが、それは間違いでございましょうか、御意見をお聞かせください。
  230. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 いまお述べになりました点は、一つの御意見として十分検討に値するものと考えておりますし、また第一線でそのような要望があるのも事実でございます。  しかしながら、この任意加入制度を当初つくりましたときの趣旨から見ましても、いずれにいたしましても、曲がりなりにも被用者の妻というものは被用者保険である程度カバーされておる、しかし、それは十分でないということで任意加入という制度ができたわけでございます。  それからまた、これを強制加入にいたしますことは、当然に、給付面で十分の保障が得られると同時に、やはり負担の強制を伴うわけでございますから、そういう点から考えますと、現在の任意加入というものが、実態としてはわが国の現状に合っているのではないか。しかしながら、この問題は被用者保険サイドでできるだけ被用者の妻の処遇を図るべきであるという有力な御意見も方にあるわけでございますので、それらの点を勘案をして今後とも検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  231. 金子みつ

    ○金子(み)委員 この点につきましては、一層検討していただきたいと思います。  それから次に、児童扶養手当法と特別児童扶養手当法の改正が今度ございますね。これは、そのいずれもが母子福祉年金あるいは障害福祉年金と合わせた一貫した引き上げの方法であったと思うわけでございますけれども、これは、そのこと自体問題にしているわけじゃないのですけれども、伺いたいと思いますことは、子供によって金額が違ってきていますね、第一子、第二子、第三子、それぞれ格差がございますでしょう、これをなぜそういうふうにおつけになったのかということが一つと、それからいま一つは、本来の児童手当制度が据え置きになったのはなぜであったか、こういうことなんですが、これをあわせて御答弁いただきたいと思います。
  232. 石野清治

    ○石野政府委員 第一点の第一子、第二子の問題につきましては、御案内のとおり母子福祉年金等に位置しておりますので、年金局長の方から御答弁願いたいと思いますけれども、第二点の方の児童手当につきまして額を引き上げなかった理由につきましては、いろいろな御意見はございます。児童手当制度そのものについてもう一遍見直すべきではないかという御議論もございますし、同時に、給付の改善をいたします場合に、やはり先ほど申しましたように、額の問題で非常に大きな額がかかります、そうしますと、政策的な意味で優先度合いの問題でいろいろ議論がございまして、実は今年度におきましては、手当額の引き上げを行わなかったわけでございます。いずれにいたしましても、今後児童手当をどうするかという問題が基本的にございますので、本年度におきまして、特に大方の調査をいたしまして、国民の意識、方向というものを十分勘案いたしまして充実さしていきたい、こういうように考えております。
  233. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この母子福祉年金の一子、二子の金額の差でございますけれども、いずれにいたしましても、一子は母子という状態で当初の基本年金額に入っておりますから、二子以降ということになるわけですけれども、二子以降の二千円というものは、御案内のように今回の厚生年金、拠出制国民年金、これが先ほど大臣も申されましたように、扶養手当等の関係で二千円に引き上がった、これをそのまま福祉年金にも援用しているということでございます。三子以降、これも厚生年金、拠出制国民年金共通の問題でございますけれども、公務員の扶養手当、三子以降四百円というものが据え置きになっておりますので、それを踏襲したということでございます。
  234. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それぞれ理由はあるわけでございますね、そういうふうに。それはそれとしてわかるのですけれども、私がここでお尋ねしたいのは、児童手当だけについても三種類あるわけですね、ここに法律上。児童手当といまの児童扶養手当と、それから特別児童扶養手当、対象が違うかもしれませんけれども。それと今度は、少し形は違いますけれども、さっきから話に出ております遺児年金とかあるいは寡婦加算と一緒に子供があった場合——これは遺児年金になりますね。そういうふうにいろんなところに出てきているわけなんですけれども、これを性格が違うというふうに考えてしまえばそれまでかもしれませんが、子供のための手当としてこれを家族手当一本にして、そして家族手当制度の中でこれをもう少し調節をして、そして家族手当としてしっかりしたものを用意すれば、特別なものはしなくて済むのじゃないか。そのうちで取り扱いを別にしなければならないかと思われるのは、いわゆる重度心身障害児のための手当というものは別に考えなければならないかもしれないと思いますが、それ以外のものは家族手当としてしっかりした制度を設ければ、それでかえってすっきりしていけるのじゃないかしらというふうに私は思いますが、そういうことはお考えになったことはないでしょうか。
  235. 田中正巳

    田中国務大臣 先生いま重度障害児の話をされましたが、いみじくもそこに出ているように、これはみんな状況が違いますし、本当の話が結局ニードが違うんですね。すべてのお子さんに出すという制度には、国が社会保障としてそこまで踏み込んでいるわけじゃございません。たとえば知恵おくれだとか、あるいは生別母子だとかという一つ一つの事象をつかまえまして、そこに独特なニードがあるということで社会保障対象にしているわけでございます。金額だけをそろえて家族手当みたいなことをやるというのは社会保障としてはいかがか。ただ計算の基礎をどこへ置くかというお話かとも思いますけれども、それにしても、やはりニードが違いますから、一律にいかないということじゃなかろうかと思いますが、先生のおっしゃっていることについて、誤解しているかもしれませんが、いま聞いた限りでは、そういうふうに私はちょっと考えるわけでございます。
  236. 金子みつ

    ○金子(み)委員 おっしゃるとおりだと思うのです。それぞれ目的が違っているということもわかるわけですけれども、児童手当制度というのは、通常の子供、通常の家庭の手当制度、基本的な制度でございますね。ただ、この基本的な児童手当制度の中身をもう少し改善して、充実していくということによって、いわゆるその次に存在する児童扶養手当、これは母子家庭のためでございますね、そういった一つの違った条件があるということもわかりますけれども、その場合にでも、私は、それが該当させられるのではないかというふうに考えたわけです。しかしこれは、そのためにプラスになる面も出るでしょうけれども、非常におかしな、マイナスとまで言わなくても、矛盾した線も出てくるということもあるかもしれませんから、いま少し検討してみたいと思いますけれども、余りにいろんな形になっているのをもう少し整理できないかという意味だったわけでございます。  それから、関連しておりますが、今度は重度心身障害児者を家庭でお世話をしていらっしゃる方たちに福祉手当が出ておりますが、これが千円追加されましたね。四千円から五千円になりましたが、千円ふえたというのは何だったのかということなんです。この金額が余りにも僅少だということで、なぜ五千円になったのかなあという疑問を持つわけなんでございますけれども、実はこの金額の問題なんでございます。重度心身障害の子供でもあるいは大人でも、家庭におりますと、必ずその人のために世話をしなければならない人が出てきますね。これは本当についていて世話をしなければならないわけです。ですから、四六時中ついているということになりますが、大体一日のうちに四、五時間は、その子供あるいはその人のために仕事をしなければなりませんから、その人は外へ出て働くことはできないわけですね。そうしますと、大体多くの場合女性です。妻であるかきょうだいであるかわかりませんが、とにかく女性だと思います。そうすると、もし女性が外に出て働くことができるような条件であるとすれば、いまの平均賃金でいけば、低い方で八万円、大体十万円か十二万円くらいというのが、いまの標準だと思いますけれども、時間が少ないから仮に低い賃金を仮定してみて、八万円なら外へ出ても八万円は取れるはずだった、しかし八時間働いていない、四時間か五時間ぐらいしかうちの中で仕事をしていないとすれば、それの半分というような単純計算をしてみましても、やはり三、四万円ぐらいのものは当然手に入るべきはずだったのを、そういう人たちがいるためにできなかったということで、その人たちのための手当として福祉手当が出ているのは大変ありがたいことだから、この福祉手当をもっと引き上げていただくことはできないだろうか、こういうことなんでございますが、その四千円が五千円になった事情を聞かせていただきたい。
  237. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいまの福祉手当でございますが、これは御承知のとおり昨年成立いたしました法律でございまして、支給の対象は重度の障害児者本人になっているわけでございます。それから手当の性格でございますけれども、いろいろ御議論がございましたけれども、この手当は、重度の障害を持つことによる精神的な不安あるいは物質的な負担に対するものとして創設されたものでございます。それ以前に重度の心身障害児に特別福祉手当というのがございます。これは三千円でございます。それが昨年発足に当たりまして四千円という額で発足したわけでございますけれども、この内容について在宅のいろいろな福祉の措置はございますけれども、いわゆるそういった本人の精神的、物質的負担に対応するものとして、今年度におけるいろいろな消費者物価の動向というようなものを総合的に考えまして、四千円を五千円というようにした次第でございます。
  238. 金子みつ

    ○金子(み)委員 わかりました。時間の関係もございますので先に行きたいと思います。  老齢福祉年金のことで少しお尋ねしたいことがございます。老齢福祉年金は四十八年度で決定いたしましたとおりに、ずっとその年金の給付額が引き上げられてきているわけで、五十年度では月額一万円、五十一年度は、今度はそれが一万二千円。一万円のところを物価上昇その他を考慮して一万二千円にした。これは大変よかったと思うんですね。そして、それが五十一年度になったら幾らに上がったかといったら、一万三千五百円にしかならなかったという問題です。これも老人福祉年金は、最低保障として二万円をぜひ獲得したいということは、厚生大臣が折々おっしゃっていらっしゃいました。この二万円という金額は、軽費老人ホームに入る場合に必要な金額ということで、最低基準というふうな位置づけがあったというふうに私は記憶しているのでございますが、そういたしますと、今度一万三千五百円ということに決まりました場合に、これは、どういうふうにこの老人福祉年金を位置づけなさるのかなあ、その基準を設定なさるのにどうなさるかなあということが大変疑問なのですが、これをどういうふうにお考えでいらっしゃるかということと、いま一つ関連でございますから続けてお尋ねいたしますが、厚生年金の方で、今回、定額でございますが、最低保障額全部三万三千円になったわけでございますね、これとの関係がどうなるかということなのです。それをひとつ御説明いただきたいと思います。
  239. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 厚生年金あるいは拠出制国民年金の三万三千円という額でございますが、これは従来の考え方を踏襲いたしまして、一応二十年分の厚生年金の定額相当額ということでございまして、従来の経緯から見ましても、直接的に福祉年金のレベルと結びつけてはおりませんので、従来の考え方によってそれぞれ引き上げを行ったということでございます。
  240. 金子みつ

    ○金子(み)委員 福祉年金の一万三千五百円は……。
  241. 田中正巳

    田中国務大臣 これはさっき、福祉年金の性格をどう考えるか、こういう御質問があったわけですが、生活保障的なものを志向しておるのだ、こういうことでございます。で、最初千円で始まったのですが、あの節の千円だって、決してあれで食べていかれるという性質のものじゃございませんでしたが、だんだん国民の意識が変わってまいりまして、福祉年金といえども生活がほぼ賄えるようなものを欲しいという国民のお声があるものですから、それの方向に持っていかなければならぬと思って努力している過程だというふうにお考え願えれば幸いだと思います。  そこで、私どもとしては、できるだけこれについては生活を支えるに足るようなところまで持っていきたいと思いますが、これについては例の、御承知のとおり一般会計ですべてを支弁しているものですから、したがって、これについては多くを期待をいたしても実際上は無理だということになってまいり、特に今年のような財政不如意で、公債発行率三〇%なんというときになりますと、非常に上げるのが骨が折れるというかっこうになってくるわけでございます。そこで、われわれとしては一万二千円を大体千五百円上げまして、どうやら従来のものが実質価値が減らないで、いささかでもプラスになるようにということで努力をしたわけであります。  したがいまして、ナショナルミニマム的な福祉年金というものを考える場合には、やはり年金の財政方式というものをこの際変えて、その中から財源を求めていかなければ、そうしたことについて満足のいくような制度というものができないのじゃないかというふうに私は考え、さっきからいろいろお話を申しているわれわれの今後の政策、検討の課題も、こうしたものとの絡み合いもあることは事実でございます。
  242. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そうすると、老人福祉年金はナショナルミニマムでもないし、それから所得保障でもないというふうに理解していていいわけですね。
  243. 田中正巳

    田中国務大臣 つまり現在のところは、そうした方向を志向しつつも、その経過的な過渡的な、つまりオン・ザ・ウェーだというふうにお考えくださるならば一番わかるのじゃないかと思います。
  244. 金子みつ

    ○金子(み)委員 その過程だということは理解できると思います。そうだといたしますと、なぜ所得制限があるのかなあということがまた疑問になるのですけれどもね。所得保障じゃないのに所得制限があるというのはなぜか。
  245. 田中正巳

    田中国務大臣 まあ、所得保障ではないけれども、所得保障でないから所得制限があっては困るのだという議論というのは、私は、ちょっとのみ込めないわけでございます。これは、やはり国民の税金から出している給付金でございますので、やたらお金のある方について国民の税金からそういったようなものを持っていくということはいかがだろうか。現実にお考えになってみても、たとえば地方で商工会議所の会頭をやってかなりかっぷくのいいおじいさんに、月に幾らか福祉年金を差し上げるというのは、政策としてはまずいと私は思うのでございまして、この福祉年金の今日の位置づけがどうあろうとも、やはり所得制限というものはある程度なければ、社会的なバランスなり公平というものは保てないのじゃないかというふうに思っているわけでございます。しかし、これはやたら低いところでもってやられるということになると、こっちはがまんできぬものですから、努力をいたしておりますが、まあまあ今日のところはこの辺でないかというふうに思って、所得制限制度をなお実行をしているわけでございます。
  246. 金子みつ

    ○金子(み)委員 まあ、十分納得はできないのですけれども、やむを得ないと思います。と申しますのは、考え方が、これは福祉年金だ、拠出していないのだ、だから、たくさんもらえなくたって仕方がないじゃないかというふうな気持ちがあるように、私の邪推かもしれませんが、受け取れるのですね。ですから、その拠出できないというのはなぜかということを考えていただけば、むしろ最初に申し上げましたけれども、そういう人だからこそ社会保障として福祉の立場からちゃんとめんどうを見るべきじゃないかというふうに思うものですから、私は、そこのところはどうもかちっといかないのですが、その辺は厚生省の政策の上ではやはりどこまでも社会保障立場から物を考えていただくということを、ぜひお願いしたいと思うわけです。
  247. 田中正巳

    田中国務大臣 いや、あなた方拠出してないのだから低い金額でがまんしてくれというような、以上はもらうことを望むのは無理よ、こういうことを私どもは考えているわけじゃございません。ただ制度の仕組みがこういうことですから、こうした方々は一般会計に依存せざるを得ないという仕掛けになっているものですから、一般会計が苦しいということになると、まあやむを得ず低い金額でがまんをしていただかなければならぬということで、考え方の発想は、いま先生はそうは思っていないので、私どもに対してむごくおっしゃったのだろうと思いますが、考え方は逆でございまして、私どもとしては、差し上げたいのですが、何しろ一般会計なものですから、そしてお手元不如意なものですから、まあこの金額でがまん願うのだということで、あなた方は長い間拠出をしてないのだから、したがって、この金額以上は望んじゃ無理よ、こういうようなことは、私どもとしては申し上げておらないわけであります。
  248. 金子みつ

    ○金子(み)委員 時間も大分切迫してまいりましたので、最後の質問にしたいと思います。  関連しておりますので二つ続けて申し上げたいと思います。  その一つは、今回の改正で保険料率の引き上げが行われるという問題でございます。これは先ほど田口議員からも質問として出ておりましたので、私は、くどくは申し上げませんし、御答弁も簡単で結構なんでございますが、今回、厚生年金の場合に千分の十八上がりますね。一・八%になりますか。千分の十八上がるということになるわけなんですが、この上がり方が急激じゃないかということを考えるわけです。国民年金の場合も、時間がございませんからあれですけれども、とっととっとと上がっていきますね、今度の保険料の引き上げというのは。来年は二倍になるわけですからね。このような調子で上がっていったら、国民年金は個人年金ですから、家族が三人いれば三倍に、四人おれば四倍になるということでかなり大きな負担になるだろう。そうすると、そのうちに負担に応じ切れないということが起こってくるのじゃないかということが一方では心配されます。  それから厚年の場合でございますと、ここまで引き上げなくても、その後で質問になります問題として年金の積立金の問題がございますが、ものすごい金額の積立金がございますね。この資料で読みますと、七五年度では十三兆九千七百九十三億円というのが厚年と国年の合わせたものでございますね。ですから、非常に大きな金額の積立金がございます。この積立金の使い方も、本来ならこれは保険料を支払った人たちのために使われるべきものだ、これはもう原則的なものじゃないかというふうに思うのですが、一〇〇%使われていないというところに大きな問題があると思うのです。一〇〇%使われていないのだったら、その分は一〇〇%使えるような形に還元させるという意味合いから言って、保険料の引き上げはこの際見合わせる、据え置くというようなことができるのじゃないだろうか、あるいは据え置きが無理だとすれば、減額するというふうなことが考えられはしないかというふうに思うわけですが、その点はいかがでしょう。
  249. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 今回の改正案におきまして、厚生年金の場合は千分の十八の引き上げ、男子で千分の九十四になるわけでございますが、国民年金も千四百円が来年の四月からは二千二百円。いろいろ御意見はございますけれども、厚生年金の場合、私どもは、そういったことも十分考えまして、従来の考え方であれば、もう少し上げ幅を大きくしなければならないところを、昨今の経済情勢にかんがみまして千分の十八にとどめたところでございますし、それからまた国民年金につきましては、もう財政収支の均衡がこれで保たれるかどうかというような状態でございますので、その点は十分御理解の上、御協力をお願いしたいというのが私どもの気持ちでございます。  いずれにいたしましても、保険料引き上げに伴いまして、厚生年金の場合、当面の現象としては、積立金の増高がかなり大きくなるという問題がございますので、積立金の運用問題につきましては、従来より以上に私ども関係者の要望にこたえるような努力をいたさなければならぬと思っておりますが、これまでの経緯をごらん願いましてもおわかりのように、逐年改善されておりますが、今後ともこの巨額な積立金の管理運用につきまして十分努力いたしてまいりたいというふうに考えております。
  250. 金子みつ

    ○金子(み)委員 年金積立金の使い方の問題について、大蔵省の方来ていらっしゃいますので、ちょっと説明していただきたいと思いますのは、この積立金の管理運用の仕方については、逐年改善が図られて、保険料を支払っている人たちのために少しでも多く還元させるという形にだんだん改善されてきているというのもわかりますから、それではそれで評価できると思うのですけれども現状においては六六・七%という数字が出ておりますが、それがそういうことに使われておるのであって、そのほかの部分については、別の目的に使用されているというふうに報告されているのでございますが、どういう目的に使用されているのか教えていただきたいし、今後この問題をどのように考えられるのか、一〇〇%に近く本人たちのために還元していくという方向に進められるのか、あるいはそれはとてもできないことなんだというふうにお考えなのか、説明していただければと思います。
  251. 石川周

    ○石川説明員 お答え申し上げます。  年金積立金の資金運用部への預託は、先ほど説明のありましたように、五十年度末で約十四兆円、運用部資金の三割弱のウェートを持った膨大な資金量でございます。で、資金運用部といたしましては、この年金資金初めいろいろな資金を統合運用いたしまして、毎年度財政投資計画という形で、四十八年度からは長期運用につきまして国会の議決をいただく予算の一部として織り込むような形で御承認をいただいております。  その中で年金資金、年金積立金についての運用につきましては、いろいろな角度から配慮しているつもりでございまして、一つは、先生の御指摘もございました還元融資という制度でございまして、毎年度の年金積立金の増加額の約三分の一を直接被保険者に還元するような、利益を及ぼすような、そういう使途に使う。それからもう一つは、還元融資だけではございませんで、年金資金の全体につきまして財政投融資の毎年度の使途別分類というのがございますが、これもたとえば住宅であるとか生活環境であるとか、そういった国民生活に密着した部分に、私ども俗な言葉では使途別分類の一から三までの一−三分類と言っておりますが、これに年金資金の三分の二を充てる。それからさらに、そのほかに中小企業、農林漁業といったような国民生活に密着した分野、一−六分類と言っておりますが、これに年金資金等の八五%を充てる、こういう考え方運用いたしております。
  252. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それは私もこの資料を拝見してよくわかったわけなんですけれども、八五%でございますね、直接の分は六六・七、そのほかの分を入れて八五になるというふうに報告されているわけですけれども、これが一〇〇になるということについてお考えになっていらっしゃるかどうかというのを伺ったのです。
  253. 石川周

    ○石川説明員 現在そこまでの考えは持っておりません。
  254. 金子みつ

    ○金子(み)委員 その理由は何でしょう。
  255. 石川周

    ○石川説明員 還元融資という制度は、毎年度の財政投融資資金運用一つ考え方の整理でございまして、ただいま御説明申し上げましたように、本来年金資金に限らず、財政投融資計画全体につきまして国民生活に密着した分野、その基盤となる分野に重点的に投入していかなければならないものでございまますし、かつ年金資金以外のもろもろの資金の統一運用、統合運用ということも基本にございますし、できるだけの御要望に応じながらそういった財政的な行政との妥協を調整し、調和を見出していきたいというのが現在の仕組みでございます。現在の仕組みを修正する考えはございません。
  256. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そういうことになりますと、この年金の積立金制度がやはり問題になるんじゃないかと考えますね。もう時間がございませんから、そのことを申し上げている時間はないのでございますけれども、基本的に積立方式がいいかどうかということにやはりかかってくるような気がいたします。  これは、また別の機会に御意見をいただくことにいたしまして、最後に、いまのに関連ですけれども厚生大臣にお尋ねしたいのですが、年金問題懇談会という厚生大臣の私的諮問機関がございますね、そういう組織を持っていらっしゃると思うのですけれども、その私的諮問機関では、この積立金の運用に関する取り扱いなどについて議論をなさることはないのでございますか。
  257. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 私の受け取りが間違っているとなんでございますが、年金懇談会というのは、積立金関係の懇談会でございましょうか。今回発足いたしました将来構想の懇談会……。
  258. 金子みつ

    ○金子(み)委員 前の分です。
  259. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 これにつきましては、一昨年の夏発足いたしまして、積立金の管理運用問題は、一応現行の還元融資等を中心とする現行の枠内で具体的な改善を図るという趣旨でございまして、それで、毎回予算要求なり予算折衝の際に御意見をいただいて参考にさせていただいておりますし、今回今年度予算で、たとえば個人住宅資金貸し付け等で期間の短い方々に重点的に改善したというのも、懇談会の御意向を受けて努力したところでございますが、基本的に管理運用問題そのものをどうするかということにつきましては、一方、社会保険審議会の関係部会もございますので、そういうところとあわせまして検討してまいりたいと考えておりまきす。
  260. 金子みつ

    ○金子(み)委員 その委員会の中には、保険料を支払っている人たちの代表が入っておりますか。
  261. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 もともと積立金の管理運用問題の改善ということから発足いたしましたので^当然のことといたしまして、労使代表を含む関係審議会の委員の代表の方に入ってもらっておるということでございます。
  262. 金子みつ

    ○金子(み)委員 わかりました。  時間になりましたから、私はここで、中途半端ですが、きょうはこれだけでとめることにいたしますが、きょう私がお尋ねいたしました問題の中で、大臣に最後にお願いしたいのですが、ILOの百二号条約批准のときに論議になりました遺族年金の問題とか児童手当の問題でございますとか、これらはあの条約を批准いたしますときの附帯決議にもなっておりますから、できるだけ早い機会に関係法案を準備することにして、そうしてILOが示している水準に近づくことに努力をしていただきたいと思うのですが、それはいかがでしょう。
  263. 田中正巳

    田中国務大臣 話はILO百二号条約の批准ででも出ましたし、国内的な政策の問題としてもいろいろ出たわけでございます。私は、ILO条約との関連でこの問題を深刻に考えたわけではございません。むしろ国内的な政策としてこのことを何とか進めたい、こういうふうに思っているわけでございまして、国際比較ということになりますと、参考にはなりますものの、国情の違い、制度の立て方の違い等があっていろいろ問題だろうと思いますが、いずれにしても、私どもも、この辺のことについては、施策内容も充実を図らなければならぬと思っておりますから、今後もさらに研究をいたし、前向きの努力をいたしたい、かように思っております。
  264. 金子みつ

    ○金子(み)委員 ありがとうございました。
  265. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 次に、田中美智子君。
  266. 田中美智子

    田中(美)委員 年金についての質問をいたします。  まず、先ほど加藤議員が川野辺政務次官に質問をしたとき、大臣お留守だったのですが、そのとき川野辺さんが加藤さんに対して、日本の制度にはさまざまの差別がありますというふうにお答えになったわけです。これは政府としては差別をしているという観点なのでしょうか、大臣に御意見を聞きたいと思います。
  267. 田中正巳

    田中国務大臣 実は私、参議院本会議厚生省関係の法案が上がるものですから、ちょっと中座をいたしまして、私どもの政務次官どう申し上げたかわかりませんけれども、こういうことじゃなかろうかと思うのです。  年金が分立しております。いろいろの制度があります。これが全く条件と給付が同じかと、こう聞かれると、これは大分いろいろ違いがある。あるものはある点が有利であったり、ある点が不利であったり、ある制度はある点が有利だったり、アンバランスがあることだけは事実でございますが、これをどう評価するかということは、これはなかなか簡単にはいきませんけれども問題点であることは事実です。
  268. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、その中身の問題を言っているのではなくて、たとえば国年の方が差別を受けているというふうに私どもは言っています。しかし政府が、政府の政務次官ともあろうものが、日本のあれは差別を初めからしでいるのだという見解であるとすれば、政府は初めから差別をしているのであるというのなら、重大問題だというふうに思うものですから、そこのところを、川野辺さんのおっしゃったことは、政府の代表、大臣の代理として言われたものですから、その点をちょっと確認しているわけです。中身がどうということは、これはいろいろの見解があると思います。ですけれども政府の代表の大臣の代理が、日本の制度は差別をしておりますと、こう言ったということは、やはり非常に重大な問題だと思いますので、その点についてだけ簡潔にお答え願いたい。
  269. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 私も承知いたしておりますし、また念のため政務次官にもお伺いしたのでございますけれども、政務次官の申し上げました趣旨は、あくまで格差がある、そういうことをああいう言葉で表現したようでございます。
  270. 田中美智子

    田中(美)委員 それじゃ訂正なさるわけですね。
  271. 田中正巳

    田中国務大臣 用語が不適当だったのではないかと思うのです。要するに政府がインテンショナルにそういうことをやっているのじゃないのだ、現状として達観してながめるならば、その間にいろいろなアンバランスや不均衡がある、こういうことだというふうに御認識を願いたいと思います。
  272. 田中美智子

    田中(美)委員 では、訂正なさるということは了解いたしますけれども、政務次官など、お言葉に気をつけていただきたいというふうに思います。  次に、先ほどやはり加藤議員が、国鉄の労働者の荷物掛でさえも十二、三万円の年金になるとか、公務員の年金が非常に高いというふうに受けとれるような、そういう御発言があったわけです。このことについては別に、それぞれの見解の相違ですから、私はそういうふうに思いませんが、どうというわけではありませんけれども、もしそういうふうにおっしゃるならば、私としては、国年や厚年が非常に低いというふうに思うだけでなく、もしそれが格差があるからけしからぬというのでしたら、国会議員の年金はどうなのかということを私はお聞きしたいわけです。  ついきのうでしたかおとといでしたか、国会でまた値上げの問題が本会議にかかりました。そのとき、私ども共産党・革新共同だけがこれに反対したわけですけれども、国会議員の年金は、現在歳費が約六十八万でしたか、それの三分の一、二十二万何千円ということで約二十三万というものが、いま十年議員をした人にはもらえるわけですね。これの国庫補助がどうなっているのかということも調べてみましたけれども、結局全部掛金は国庫に入る。それで予算は予算でまた組むのだという形で、国民に非常にわかりにくくなっているわけですね。そこの点を、幾らにしろ全部約二十三万というものは、掛金が足ろうが足るまいが、そういうお金が払われている。それで、福祉年金は一万二千円。じゃあ福祉年金の方たちは、いままで日本の国に対して貢献してこなかったのか。国会議員は確かに貢献しているかもしれませんが、国民だって、詐欺や賄賂やどろぼうや、そういうことをしている人たちは、問題があるかもしれませんけれども、まじめに働いてきた国民というのは、みんな社会のために役立ってきているわけです。余りにもその差が大きいのではないかというふうに思いますが、大臣、その点どうお考えになりますか。
  273. 田中正巳

    田中国務大臣 国会議員互助年金法は、実は厚生省所管ではございません。国会の法律制度でございますが、これについては、この種のものはみんなそれぞれの政策目的があってそれぞれやっているわけでございますが、これは私、余り詳しく知りませんけれども、一種の賦課方式みたいになっているのじゃないかと思うのです、国会議員互助年金は。そして、その過不足は国庫でしりぬぐをするということですね。ですから、皆さんお互いに歳費の袋を見ると、かなり高い保険料を実は払っているはずでございます。したがって、保険料があれだけ払えれば、かなりの給付を実は他の共済年金なんかでもできるのじゃないか、こう思いますが、そういうふうに払えるのは、たまたま国会議員さんだけなものですから、ああいうふうになっているのだというふうに私は思っておりますが、国会議員という浮き沈みの激しい立場から多少そういったようなことになったのじゃないかと思います。これは国会で起こした法律制度でございますから、所掌の違う厚生大臣があれこれ論評するのはいかがかと思いますが、そうした特殊の事情があったのじゃないかというふうに思います。
  274. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、国民感情として——きょうこれを質問するつもりはなかったわけです。しかし加藤議員の質問を聞いておりまして、国鉄の労働者や公務員労働者が攻撃されているというふうに感じたものですから、きのうですか、おとといありました国会でやりました——決してこれは保険会社にわれわれがお金を払ってもらっているものではなくて、国庫からもらっているわけですので、やはりこれは非常に国民感情に対して——これがそういう言い方ができるなら、公務員や国鉄の労働者が高いというふうに言えるならば、国会議員はどういうことなんだ。国会議員をやめてしまってからは同じ老人です。浮き沈みとかそんなこと言えば、業者なんというのはしょっちゅう倒れたりなんかします。それでも国年にしか入っていませんね。そういうことですから、一言そのことを申し述べて、国会議員はそういう点では非常に優遇されているということです。ここに対して国庫補助がどれだけあるのかということを私は知りたいと思いますけれども、きょうその担当の人を呼んでおりませんので、次の厚生大臣に対する質問にかわりたいと思います。  障害年金のことについて集中的にしていきたいと思うのですけれども、この障害年金に通算制度がないということで国会でも私、取り上げましたし、国会外でも国民の運動が高まっておりました。それに対して、厚生省がこれを受けて通算制度を新設したということは、非常に私は評価したいと思います。しかし昔から仏つくって魂入れずという言葉がありますように、一定の前進はあるにしても、むしろ後退しているところなどがある。そういうことが、せっかく障害年金が通算制になったといって喜んだとたんに、自分はどうかと考えたときに、相当後退する、悲しむ人たちが出てくるということについて少しお話ししていきたいというふうに思います。  まず、厚年とか船員保険、共済年金、それから国民年金、こういうものがずっと全部年限として通算されるわけですね。そのとき一番最後が何になったかということです。長い間厚生年金に掛けていて、最後に国年に入った人、共済に入っていて国年に入った人、それから国年に入って厚年に入ってまた国年に入ってと、いろいろあるわけですね。結局、今度の通算年金は最後何であったかということによって金額が違うということなんですが、これはやはり非常に不公平だというふうに思います。国民年金が最後であった場合、これは一般の企業に勤めていらっしゃる方たちには非常に多いわけですね。会社に十七年勤めた、そうしておやめになってから国年に入るということは非常に多いわけですね。こういう方が加入なさった場合に、この加入期間が通算して一年とあるわけですけれども、ここに二つの条件がついています。その一つは免除期間がないとか滞納期間がないことという条件がついている。この免除期間、滞納期間というのは、ほかの年金が最後になったときには全部通算されているわけです。国年のときだけ通算されていない。これは年金局長、よく御存じだと思います。御存じじゃないですか。  それから、こういうことが書いてありますね。「初診日の属する月前における直近の基準月の前月までの一年間以上」非常にむずかしい言葉が書いてありますけれども、要するにほかのところは一年、厚年は六カ月となっていますけれども、この国年のときにはけがをした初診日によって、これが一年、長いときには一年五カ月になるという形になるわけです。そうすると、その中でもらえない人が出てくる。これはどうしてこういう条件を国年にだけつけたのでしょうか。
  275. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 ちょっと大変失礼ですが、先生の御質問多少誤解がおありじゃないかと思いますが、いま御指摘のような点はございませんで、私どもあくまで現行制度をたてまえにして、ただ、とにかくその制度で期間が満たないためにいまの制度では障害年金を受けられないという人について、前におった制度を加算したならば資格期間が満たされるものについて救済しようということでございますから、いま御指摘の点はどうも当たらないと思うのですが……。
  276. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、最後が国年であろうと厚年であろうと全く同じですか。
  277. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 障害年金は、この年金権発生の制度がどこであるかによって支給するわけです。ですから、もちろん国民年金あるいは厚生年金で事故が発生して初診日から起算して一定の要件に該当するということであれば、これは現在でもそういう状態でございますから、最後が国年か厚年かによって差があるというのは、現在がそうでございまして、要するに現状を踏まえまして、現状では出ないものについて前の期間を加算したならば一定の期間になる人を救おうというのが今回の通算でございますから、この通算措置によって改めていま御指摘のような問題点が特別に浮かび上がるということはどうも解せないわけでございます。
  278. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、国年の場合には、収入が減ったときに掛金を免除されたりしますね。それから入院なんかしていますと、その間長期に入院したときに滞納なんかしますね。後から払うということですけれども、国年もそういうときにそういう年限が通算されるのですね。
  279. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 国民年金と、その前のたとえば被用者年金の通算の場合ですが、問題は他の制度を国民年金の納付期間とみなして通算するということが今回の改正によって新しく生ずるわけでございまして、その免除期間云々について何も現状を変更するとか、新しいものが出るとか、そういう問題はございません。
  280. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、共済組合のときには保険料の免除された期間が通算の対象になるけれども、国民年金のときにもなるんですね。ここをちょっとお聞きしたい。——わからないのでしたら、これは一番最後に回します。時間がもったいないですから、調べておいてください。わかりますね、係の方。私は二つの条件がついていると言っているのです。それをつけないというなら、これは結構です。ですから、そこのところを確認しまして、次に進みます。  その次、通算制度をつくるに当たって廃疾認定主義から初診日認定主義に変わっているわけですが、これはどうしてなんでしょうか。
  281. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 今度通算という新しい措置をとりましたことに伴いまして、関係省庁で話し合ったわけでございますけれども、この廃疾認定日を初診日に登録時点として改めたという点につきましては、もともと今回の通算というものは、現にある制度の前の制度の期間を通算しようということになるわけです。そこで、いまの制度の仕組み、つまり年金権が発生した制度から支給するという仕組みは、現状前提としておりますから、もしその仕組みを現状のまま通算を行うとした場合に、廃疾認定日をそのままにしておきますと、初診日から廃疾認定日までの間に予想せずに入るということが当然あり得るわけですけれども、そうした場合に、結果として後の制度の期間を前の年金権発生の制度が見るということになりますと、これはやはり問題ではないか。それから、もともと各種共済では初診日に統一されておりますので、関係省庁とも話し合いました結果、初診日に一応統一して手直しをしたということでございます。
  282. 田中美智子

    田中(美)委員 これは受給制限ですよ。ずいぶん大幅に損することになるわけですからね。たとえばけがをしたり病気になったりして入院している、そういう中で年金に入っていないということを知って、それであわてて年金に入る、掛金を掛けている、それからだって障害年金はもらえるわけですね。しかし初診日からということになりますと、そのときに年金に入っていなかったらもらえなくなりますよ。
  283. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 確かに御指摘のようなケースもあろうかと思います。初めて国民年金に入ったという場合、たとえば逆に国民年金で疾病になって初診日を迎えた、疾病になった結果、十分の稼得力がなくなって保険料を納めるのがむずかしくなるという場合も十分考えられるわけですから、そういう方にとっては果たしてどうであろうか。何よりも今回は、従来なかった年金の谷間に取り残されてしまう人をできるだけ救おうという通算制度、これが一番のねらいでございますから、全体として考えて通算制度の創設に伴う利点というのは、私どもは評価しなければいかぬのではないか。先生の御指摘のようなケースが全くないとは私、言い切れないと思いますけれども、それを余りある今回の制度の改正であるというふうに理解いたしたいと思います。
  284. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、結局いまのお答えは、そういうのは切り捨てていくということですね。改善する余地はないわけですか。なぜ廃疾認定日主義をとらないのですか。いままでこれをとってきたのに、なぜこの初診日主義に変えたのですか。ということは、たくさんの人をできるだけ救う、あなたはこうおっしゃるけれども、できるだけ受給者を少なくするという方向じゃないですか。
  285. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この廃疾認定日によるということは、未来永劫これができないということではございません。ただ先ほど言いましたように、私どもは、現在の制度前提としまして年金権発生の制度から支給する、そういうことで通算制度をつくりますと、何といいますか論理的に廃疾認定日によるということができなくなる。しかし障害年金の問題というものは、通算問題をとってみましても、これですべて解決したわけではございませんで、依然としてやはり一定の資格要件というのがあるわけですから、そういう問題は、また別個の問題としまして、年金の将来構想との関連において解決していきたい。しかし、少なくとも今回現行制度前提とした通算をとる以上は、そのような措置はやむを得ないというふうに御理解いただきたいと思います。
  286. 田中美智子

    田中(美)委員 じゃあ未来永劫にやるわけではないので、これは検討の余地があるということですか。簡潔にお願いします。
  287. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 障害年金につきましては、いろいろ問題がございますので、今後とも検討したいというふうに思っております。
  288. 田中美智子

    田中(美)委員 では、その次の質問をいたします。  二十歳前の若い人ですね、これは中学を出たり高校を出たりという方、若い労働者が厚年に入ってから六カ月以内に病気やけがになった場合、福祉年金がもらえないんじゃないですか。いま二十歳前の人というのはもらえますね、それがこういう人はもらえないわけですね。そうすると、中卒とか高卒とかの方は、若いときにけがをしたり病気したりというときに非常に困るわけです。そこのところは、なぜここのところがもらえないように——谷間になるわけですね、こういう人たちは。
  289. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 日本の年金制度が拠出制年金としていろいろな資格要件等を設けておる以上、どうしてもその要件を満たさないケースが発生することはやむを得ないわけでございまして、私ども決してそれがいいと申しておるわけではございませんので、先ほど申しましたように、将来の問題としてそういう点も含めて解決していきたいというふうに考えます。
  290. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、これが外れるケースというのがある場合に、せめてこの人たちに福祉年金の方が出るような例外をつくっておいたらいいんじゃないですか。そうしませんと、年金が全くもらえないという宙に浮く人が出てくるわけですね。それは残酷じゃないですか。どこかで制度の中で、厚年の中で救えないというのでしたら、これは当然二十歳前ですから、いままで生きてきたあれも少ないし、掛けた人にしてもそれほど差はないわけですから、そういう歯どめをちょっとつけておくというのが、血の通った年金のつくり方じゃないでしょうか。
  291. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 いま御指摘の点は、現在の福祉年金が拠出制国民年金とうらはらの関係と申しますか、そういう形をとっておりますので、福祉年金の支給によって救済するというのは、現行制度ではできないわけでございますけれども先ほども申し上げましたように、実は障害給付についていろいろ問題がございます。今回の通算に当たっても、拠出要件をどうするか等の議論からしたような次第もございまして、将来の問題として十分考えたいと思います。
  292. 田中美智子

    田中(美)委員 ちょっといま最後の言葉聞こえなかったんですけれどもね。
  293. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 将来の問題として十分考えてみたいと思います。
  294. 田中美智子

    田中(美)委員 先ほど言いました廃疾認定の問題ですけれども、こうした制度を変えるときには、非常に慎重にしないといろいろ落ちこぼれが出て、その人たちの実際にもらえないという嘆きと、それから自分だけどうしてもらえないのだという差別感というので非常に精神的に苦しむわけですね。ですから、慎重にしていただきたいわけです。この廃疾認定日主義というものを初診日主義に変えるときに、審議会に意見を聞いているんでしょうか。
  295. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 審議会は大綱と申しますか、改正法案要綱の形で御審議願いまして、法律事項すべてが網羅されておるわけではございませんので、その点は入ってなかったと記憶いたしております。
  296. 田中美智子

    田中(美)委員 なぜ審議会に意見を聞かなかったわけですか。
  297. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 そう御指摘になりますと困るのですけれども、この改正事項非常にたくさん広範にわたりまして、要綱の形で整理されるのは文字どおり主な改正事項でございますから、非常に細かい点まで従来の例からいいましても御審議煩わしておりませんので、従来の大体考え方によって要綱をつくり、それを御審議願ったということでございます。特別このことを意識的にどうこうというようなことは全くございません。
  298. 田中美智子

    田中(美)委員 この問題は、障害者にとってはとっても大きいですよ。非常に大きな受給制限になりますので、これで外れるという人が出てくるわけですね。そういうものは当然審議会に答申すべきだと思うのです。一種の受給権の侵害ですからね。ですから、そういうものを審議しなかったことは、非常に大きな手落ちで、何の他意もないとおっしゃるけれども、何の他意もないことで非常に大きな被害を受ける人たちが出てくるわけです。  この点、大臣はなぜこれをしなかったのか、審議会になぜこういう重大な問題をかけなかったのか。むしろ大幅に上がるときは、まだうんと改善ならばいいですよ、それをうっかりして審議会に聞かなかったというならばいいですよ。しかし大幅に後退するものを、審議会に聞かないということは問題ではないかと思いますけれども大臣、どう思いますか、今後の問題がありますので……。
  299. 田中正巳

    田中国務大臣 実は大臣というのは、そこまで細かく見切れません。率直に申しまして、これを審議会にかけておったのか、かけておらなかったのかは、大臣としては知っておりませんし、また今後もそこまで目が届くということは、これは実際大臣をおやりになってみるとわかるだろうと思いますが、いかないものでございますので、そういう点については、十分気をつけますけれども、私自身にその点を聞かれても、ちょっとお答えできません。
  300. 田中美智子

    田中(美)委員 それじゃ大臣に申し上げておきますけれども、私が大臣の経験がありませんので、そこまではわからないのだとおっしゃいますけれども、原則として受給権が制限される、一種の改悪ですね、改悪されるもの、こういうものについては、必ず審議会にかけるというたてまえだけはきちっと大臣が御指導しておいていただきたいと思うのです、基本線というものは。いろいろ小さい問題をかけたかかけなかったかということまで大臣が知っていなければならないとは言いません。しかし基本的にこれが受給制限になる問題は、審議会にかけるように指導すべきですし、後からこういうものが出されてきた場合には、大臣はそれは間違っている、だから今後、こういうことがないようにするように、そういう指導をするのが大臣の役割りじゃないですか。
  301. 田中正巳

    田中国務大臣 なるほど国民の権利義務に大きく影響するようなことについては、やはり審議会にお諮りをするのが当然だと思います。自今重々事務当局にそういったことについて万遺漏のないように指導督励をいたします。
  302. 田中美智子

    田中(美)委員 一応いまのお言葉ですが、これは来年度、廃疾認定日主義に変えるように検討をしていただきたいというふうに思います。よろしいですね。
  303. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 障害年金全体の問題として検討いたしてまいりたいと思います。
  304. 田中美智子

    田中(美)委員 その次に、国年と厚年の障害年金ですが、厚年には三級までありますね、国年には二級までしかありません。どうしてこうなるのでしょう。同じ障害を持った人、通算されるときには、さっき言ったように、最後が国年になるか厚年になるかでいろいろ違ってきては困るわけですね。ですから、両眼で合わせて〇・一しかない人、こういう方は、厚年では三級としてもらえるわけです。ですから、最後が厚年ならばもらえるのに、同じ〇・一の人でも、最後が国年だったらこれが二級までしかないからもらえない。どうしてこういう——さっき川野辺さんが、うっかり格差があるということを、差別をしています、こう言われたというふうに私は理解しようと思いますけれども、こういうものを見ますと、やはりどこかに差をつけておかないと気に入らない、何でもちょっと金額の少ない人は差をつけておかないと気に入らない。しかし、この場合には金額の少ない人ではないんですね。だから、国年にそういう差がついているために、通算をやりますと——普通の年金のように、それぞれのところからお金が出るというのだったら、それはいいわけです。ですけれども、今度のようになりますと、結局前のベースが間違っているから、最後の年金が何かということによって、同じ障害があり同じように掛金を掛けている人でこういうふうにもらえる人ともらえない人が出てくるということですが、これはどうしてここにお気づきにならないのでしょうか。
  305. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 何度も申し上げておりますように、私ども今回の通算は、各制度現状を踏まえまして、そのもとでできるだけ落ちこぼれのないようにいたしたいということで、また非常に手広くやりますと、恐らく今回の改正に時間的に間に合うかどうかという問題もございましたので、いま御指摘のような点は、実は国民年金制度をつくるときに議論のあった問題でもございますので、結局は財政その他の問題でこのような姿になったわけでございますけれども、こういう問題は、やはり今後の問題として検討しなければならぬというふうに考えております。
  306. 田中美智子

    田中(美)委員 今後の検討の問題、今後の検討の問題というのがたくさん出てきますけれども、一体いつ検討されるのかということが問題です。この国年の問題は、前から一級しかない、これはやはり三級まですべきだということでやっと二級になっているわけです。ですから、よもやここが三級がないということをうっかりしていたというふうに思えないわけです。掛金が少ない人でもないんですよ、それがどうしてこういうことになるのか。大至急にこれを改善していただきたい。三級を設けていただきたいと思う。  大臣、これは簡単なことですからおわかりになると思いますが、同じように目が悪くても、同じように金額を掛けていても、障害の通算をしたときの最後の年金によって、厚年のときには障害年金がもらえるのに、国年ではもらえないという問題です。大臣さえ混乱するほど日本の年金というのは複雑なんですよ。大変だと思いますけれども、これはわかっていただきたいと思うのです。厚年が三級まであるのに国年には二級までしかないということ、最後の年金が何かによって三級のお金がもらえないということです。どう思いますか、大臣
  307. 田中正巳

    田中国務大臣 理想としては、同じような給付を受けることが望ましいのだと思います。しかし現実問題として両年金の財政力の違いもあろう、拠出能力にも違いがございます。そうしたことで、全く一緒にするわけにはいかなかったということが、こうした違いが出てきた原因だと思います。  なお実際には、私どもの知っている限りでは、表が少し違うようでございまして、厚年の三級でも国年の二級でもらえる場面もありますが、それだからといってこれでいいという意味じゃございませんよ。そういうふうなことについては、できるだけ均一な給付をいたしたいものと思いますが、やはり先立つものがなかなかうまくいかないものですから、そういう差がやむを得ず出てきているものというふうに思います。
  308. 田中美智子

    田中(美)委員 いま大臣がお触れになったところが一番大切なところなんですけれども、この障害程度の裁定基準というのがそろっていないということなんですよ。年金制度がものすごく複雑ですね。国民はやっと日本にも年金制度ができて皆年金と言うから、皆と言えばみんな私も入るのだというふうに思いましてやっていくわけです。そうしますと、そこがあっちもこっちもめちゃくちゃになっている。一人一人、私はどうですか、私はどうですかと聞かなければ、もらえるのかもらえないのか、幾らもらえるのかわからないほどになっている。その上に年金のあれによって——これは金額だけじゃないですよ、財源の問題じゃないですよ、厚生省の姿勢の問題ですけれども、財源の問題は別にしても、障害の程度を合わせるということは、これは当然じゃないですか、同じ日本にいて。障害が一級、二級、三級というのが、厚年と国年とではみんな程度が違う。こういうことをしているから、こんなふうになってしまうわけです。  ですから、まず最初に、何としてでも障害の程度の裁定基準をそろえるということをぜひやってほしいと思うのですけれども、これならばできるでしょう、財源がなくてもできるわけですから。
  309. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 御指摘の問題点は、確かに障害給付の上での一つの問題でございますので、今後検討してまいりたい。厚生年金等被用者保険の場合は、先生御案内のように、労働力喪失という立場で廃疾を決めておる。国民年金の方は、日常生活能力の喪失度合いというので、基本的な考え方が違いますので、手直しにはちょっと時間がかかると思いますけれども、これは前から指摘されている問題でございますので努力いたしたいと思います。
  310. 田中美智子

    田中(美)委員 時間がかかるというのは、一体どれくらいめどとしてかかるのでしょうか。
  311. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この廃疾表の一本化の問題は、実はずいぶん以前のことでございますが、医療関係者に検討依頼したことがございますけれども、なかなか各科のバランスの問題がございまして、それぞれ専門の方は、自分のたとえば眼科とか耳鼻科とかをどうしてもなるべく重く評価したいというような傾向が多少ございまして、医療関係者のまず意見の一致を見るということが非常にむずかしい経緯がかってございましたけれども、しかし最終的には、これは行政上の判断の問題でございますから、努力いたしたいと思います。
  312. 田中美智子

    田中(美)委員 努力じゃなくて、どれくらいでできるか、いつごろどれくらいの期間がかかるか、十年かかるのか、一年くらいでできるのかという目安を私は聞いているわけです。これは、いまも局長のおっしゃったように、前から言われておることですので、こういうことですが、そうすると、これは財源がなければできないとか、いまこの財源をどこから持ってくればいいかわからない、ということは、現状がそうであれば、いまのような社会保障という立場で年金を考えないで——日本の年金は、多分に保険会社的な構想が多いわけですからね。ですから結局、そこのお金の問題というものが絡らんでくる。ですから、そこで困難になってくるということはまだわかります、現状を認めれば。しかしこういうのは前から言われていることですので——それはそれぞれ障害の人が、足がない人と目がない人とどっちが不便か、不自由かというような議論になれば、それぞれの論議はあると思いますよ。しかし、それは前から言われていることですので、政府は、それをやる気になる姿勢さえ持てば、これはお金の問題じゃないのですから、この最低基準というものは決められると私は思うのです。  ですから一体、政府がこれから取り組んで、大きい機構ですから大体どれくらいかかるのだろうか、検討するということで眠っておられると、また今度の国会で同じことをやるということじゃかないませんので、めどをお願いしたいと思います。
  313. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 十年というようなお話ございましたけれども、それほどの時間のかかる問題ではいずれにしてもないと思いますので、次の再計算の機会までにでき得れば検討してみたいと思います。  ただ、この問題は、先生お金の問題ではないという御意見でございますけれども、結局はこれはどこまで広げるかによりますけれども、厚生年金の場合でも三級が一番該当が多いわけでございますから、当然に費用負担にはね返る、そうしますと、国民年金はいろいろ問題を抱えておりますから、給付改善の優先順位としてどういうものからやっていくかという問題の一環としてとらえなければならぬということを御了承願いたいと思います。
  314. 田中美智子

    田中(美)委員 次の再計算というのは、いつなんですか。
  315. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 制度的には五年、従来の例から言うと四年でやった例も多くございますので、四、五年ということになろうかと思います。
  316. 田中美智子

    田中(美)委員 そうしますと、いつ計算したんですか。再計算のときまでというと、これはいつ計算したんですか。
  317. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 もし今回御審議願っております改正法案が成立いたしまするならば、五十一年度からということになります。
  318. 田中美智子

    田中(美)委員 そうしますと、あと五年か四年までこれはやらないということですか。再計算というと、これはその次早くて四年ということですね。そうすると、昭和五十五年でないとこの計算できないというわけですか。ちょっと大臣、しっかりしてくださいよ。
  319. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 私は、作業のめどとしてのお尋ねに対してお答えしたのでございまして、再計算をいつやるか、そういう政策問題について申し述べる立場にはございません。
  320. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣、答えて下さい。幾ら何でも検討します、検討しますではね。すぐやるのもたまにはあります。しかし検討しますと言えば、何か検討してくれているのだろうと思うけれども、その次聞いてみますと、全く眠っている。そしてまた検討します、それじゃいかぬと思うんですよ。  やはりいまのめどでは、四年も五年もかかるのですか。お金じゃないと言うけれども、国年の三級まで全部入れれば確かにお金に計算されてきます。しかし最低基準を合わせるという計算をするということは、そんなにかからないじゃないですか。ちょっと大臣、そこは……。
  321. 田中正巳

    田中国務大臣 この廃疾の表、障害の表はかねてから問題になっているところでございます。しかし基本的には、やはり単なる技術上の問題だけにはとどまらない、医学上の問題だけにはとどまらないようであります。要するにこの表というものは、結局給付のための別表でございますから、したがって、当然給付の問題と絡むわけです。そうすると、一つ一つの法目的との関連が出てくるわけですが、それにしても、もう少し何とかならないかいというのが、われわれもそういうふうに議員時代から思っておったわけであります。いまにわかにいつの幾日までと言って、また、それを外して田中先生にしかられるといけないから、政府側で慎重に話しておりますが、まあできるだけ早くやらなければいくまい、こう思っておりまして、いまここでちょっと私、急に返事することはいかがかと思いますから、役所に帰ってからよく相談しまして、あなたにまた返事いたします。
  322. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、何もいつの幾日とは言いません。作業した上で多少伸びたり縮んだりとありますけれども、いまのように次の再計算までなんというようなことでなくて、できるだけこれを早く計算してみるという考え方——じゃあ、その返事を楽しみにお待ちしております。  次に、今度の制度ですね、遺族年金、障害年金、通算それから事後重症制度、こういうものは政令に定める日に施行すると書いてありますけれども、これはいつなんですか。
  323. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この障害関係につきましては、法律上は一年六カ月以内で政令で定める日ということですが、ちょっとこの段階で的確な、準備その他に相当な時間がかかりますので予測がつきかねるので、余裕を持っておりましたけれども、気持ちの上ではやはりできるだけ早くいたしたい、でき得ればこの改正法案が実施を予定いたしておりますのが本年八月でございますから、来年の八月までには準備を急いで間に合わせたいというのが目下の段階の考えでございます。
  324. 田中美智子

    田中(美)委員 そんなにかかるものなんですか。どうしてそんなにかかるのですか。一年以上かかりますね、実施が来年の八月ということになれば。
  325. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 施行日の点でございますけれども、今回の改善におきましては、廃疾認定日の短縮と、それから事後重症制度の創設という二つの柱が入っております。そのために、廃疾が一年半ということに短縮されましたために、症状によりまして、ことに内科的疾患でございますが、症状がかなり固定していないものも出てくる、こういうようなことから申しまして、従来の認定基準を基本的に見直す必要がございます。したがいまして、私どもは、この一年半の短縮に伴う認定基準の見直し、それからもう一つは、事後重症制度の創設によりまして、また将来症状が悪化するというようなことがございますので、一人一人の障害給付請求者の記録をコンピューターでもって的確に管理していかなければいかぬ、こういうようなことで、そのプログラムの問題とか従来のシステムの見直しがあるわけでございます。したがいまして、私どもは、一年半というタイムミリットがこの障害給付の点についてはあるわけでございますので、その範囲内で全力を尽くしまして短縮に努めたい、かように考えております。
  326. 田中美智子

    田中(美)委員 ずいぶん遅いものだなというふうに思いましたが、せっかく前進面があるわけですから、なるたけ早くしていただきたいと思います。  それから、いまおっしゃいました事後重症制度なんですけれども、これがまた国年と厚年と年限が違いますね。これは厚年の方は五年以内というふうに切られています。国年の方には期限がない。どうしてこういうふうに制度をつくるときにに、いつもぐじゃぐじゃなんですかね。すかっとしたらいいじゃないか。そうするから、また次の新しい制度でぐじゃぐじゃ、こういうふうになって、これは皆さんたちの仕事量もすごく多くなるだろうし、すごく効率が悪いというふうに思います。これは受給者が損をするというだけでなくて、国家的に見たって非常にむだです。そういう点でどうしてこういうことをしているのか、特に厚年の人がなぜ五年に切られているのか、この点お聞きしたい。
  327. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この事後重症制度でございますけれども、被用者保険の場合に、この被用者保険加入期間中の事故であるということが必要でございますから、そういういわば記録と申しますか、そういう点で無期限にこれをするということは、事務処理の面からいいましても非常に困難な問題もございます。そこで、たとえばカルテの保存期間が一応五年になっているというようなこと、あるいは現に各種共済、他の被用者年金制度では五年ということで事後重症制度を期限を切っておりますので、そういったことを総合的に考えまして、実は五年といたしたわけでございます。
  328. 田中美智子

    田中(美)委員 そういう効率の悪いお返事をなさらぬようにしてもらいたい。そんなことはわかっています。そんなことではなくて、私の聞いていますのは、なぜ厚年と国年と年限が違うのかと、こう聞いているのです。なぜ五年にしたのか、こう言っているわけじゃないのですよ。国年は期限がないのに、なぜ厚年には期限があるのかと、こう聞いているのです。もう少し効率よく質問をやっていきたいので、一分、二分の時間を惜しんでやっているわけですから、そちらもそのつもりで真剣に、まじめにやっていただきたいと思います。
  329. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 やはり一般国民を対象とする国民年金の場合と、一生の生活を通じて被用者という状態にある期間というのは、ちょっと意味が違うと思うのです。  それで実は、部内で検討いたしまして、むしろ国年が問題ではないかという議論もございましたけれども、とにかく今回は現在の不十分なところを改善するという、そちらに主眼を置くということで、他の被用者年金に合わせて新しい制度としてとにかく五年という期限でこの制度をつくったということでございます。
  330. 田中美智子

    田中(美)委員 いま病気が、難病やいろいろなものが出てきています。初めは病気でないと思っていたものが、ひどい病気だったということも出てきているわけですので、やはりこういうふうに期限を切るということは問題だと思います。そういうただ早く足がぽんとなくなってしまったか、それとも長い間に障害者になったかという問題の違いですので、同じことだと思いますので、この期限をぜひ取っ払っていただきたいというふうに要請いたします。  それからその次に、時間がありませんのでちょっと急いでいきますが、簡潔に聞きますので、そちらも簡潔にお答え願いたいと思います。  この廃疾認定日を今度一年半に短縮するということは、私は非常に評価しております。しかし、これでもまだ傷病手当金との間に期限があくわけですね。あくということが結局ILO百二号条約の廃疾給付の水準というものを満たさないわけですね。ですから、これを何とかあかないように今後とも短縮するような努力をしてほしいということがまず第一点です。
  331. 田中正巳

    田中国務大臣 これは中があいているものですからしかられました。何とかやりたいと思っているのですが、とにかく年金の方でまずアプローチしようじゃないか、商店の方は、何しろ保険がおないしょが苦しいものですからできない。それではやめようかと思ったのですけれども、現在やろうと、こういうことでございますから、これでいいというわけではございません。とにかく幾らかでも縮めよう、年金の方で幾らか余裕があるならそれでいこうじゃないか。商店の方は健康保険の中ではちょっと無理だということで、これは抑えていますが、今後の検討課題であろうと思います。
  332. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、この一年半になったということは評価しています。しかし現状あいているということは、やはりお心に入れていただきたい。  そして、ちょっとお願いなんですけれども、結核の場合には、これがあかないわけですね。ところが難病というのは、昔の結核よりもっと大変な状態にあるわけです。ですから、せめて難病は結核並みに扱ってもらいたいということが切なるお願いなんですけれども、これは何とかなりませんでしょうか。
  333. 八木哲夫

    ○八木政府委員 傷病手当金の問題につきましては、今回の健保改正の際に関係審議会でいろいろ御議論をいただいたわけでございますけれども、基本的には、制度の全般的な改正という問題となりますと大きな問題であるということで、確かに問題点があるのは事実でございまして、今後の検討課題といたしまして社会保険審議会等でもこの問題と取り組んでいくということでございます。
  334. 田中美智子

    田中(美)委員 難病はいま本当にふえておりますし、非常に苦しんでいるわけです。だから、マンマンデーでやられますと、本当に気の毒ですよ。御存じだと思いますけれども。どうかその人たちの立場になって、これは早急にやっていただきたい。いままで結核ができたんですから、この難病は結核並みに六カ月にしていただきたい、これを強く要請いたします。  その次に、せっかく前進面の通算制度ができましても、今後とも問題があるわけですけれども、障害年金を裁定する業務というのが、杉並の中央センターに全国から全部送られてきているわけですが、申請いたしましても、長いのには六カ月も七ヵ月もかかるということです。その日暮らしの人たちはたくさんいるわけですし、人間ですから倉庫の中で寝ている、冷蔵庫の中で寝ているというわけにいかないわけです。毎日毎日三度の食事を二度にしてでもがまんしてがんばっている方たちというのは、とても六カ月、七カ月というふうに待てないわけです。それで私は、地方の社会保険事務所にこの業務の一部を移管するというふうなやり方をしてもらえないかというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  335. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 御指摘のように、遺憾ながら障害年金の裁定につきましては、ほかの年金の裁定と違いまして、遅延している事実がございます。その主な理由といたしましては、これは障害の認定ということのために必要な診断書等の不備がございまして、それを補正するために相当の日数を要しておる、こういう点があるわけでございます。私どもとしましては、それを是正することによって相当短縮できるのではないか、こういうことで、地方庁に対しましても、書類受け付けの際に十分審査するようにという通知を最近も出しましたし、事務処理体制の業務課における整備ということにも留意しておるつもりでございます。  私どもとしましては、先生ただいま御提案のございましたような、地方にこの裁定業務を移すというようなことも含めまして、今後この障害年金の裁定の迅速化ということについて慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  336. 田中美智子

    田中(美)委員 結局やはり一番隘路というのは、いまあなたがおっしゃったように、診断書があいまいなものだからということです。ということは、障害認定基準があいまいになっているからなかなかできない。これは専門医という形でやっているものですから、そういうふうになるわけですね。ですから、どこの医者でも、医者というのは、やはりいろいろな面でレベルの高い人たちなんですから、自分の専門でないにしても、基本的なことはいろいろわかっている方たちですので、やはり国が障害の個別の認定基準というものを年次計画を立てて作成して、どこの医者でもこれがわかりやすいようにする。そうすれば、いまのような診断書をもう一遍もとに返してもう一遍というふうにして六カ月も七カ月もかかる——それでいて専門医がわずかしかいない。結局これは医者の力量というよりも、むしろ認定基準がわからないから、医者が認定に沿ったような診断書が書けないということで、医者の能力の問題ではないのです。ですから、やはりこの個別の認定基準を年次計画を立てて作成してほしいというふうに思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。
  337. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 非常に疾病の種類が多いわけでございまして、それを個別に認定基準をつくるということは非常にむずかしいかと思いますが、今度の認定日の改正に伴いまして認定基準の見直しをいたすことにしておりますので、その点も考慮しながら検討してまいりたいと思います。
  338. 田中美智子

    田中(美)委員 時間がありませんので大急ぎでやります。  次に、婦人の年金の問題ですけれども大臣にちょっと恨みつらみを言いたいというふうに思うのです。これは遺族年金の問題ですが、昨年、社労でもやりましたし、また外務委員会のILOのときにも厚生省の方が遺族年金をことしから改善するというふうなニュアンスのお言葉があったわけです。それに付随しまして、いろいろ新聞や雑誌などに報道されたのでは、厚生大臣がどこかでちょっと漏らしたことだとか、そういうふうなムードから、国会の中では七〇%とはおっしゃっておりませんけれども、報道の中では七〇%というのが相当に報道されていたわけですね。政府も積極的に七〇%でないという否定もなさっていなかった。そういうことで私も七〇%ぐらいにはなるのではないか、私は八〇%を要求していましたけれども大臣も大体そういうふうな含みで言っていらっしゃいましたね。これは以心伝心でもあったし、あちこちの報道もどうもそうなるらしい。そういうふうにしていたものですから、ふたをあけましたら、これはだまされた。ないよりましとそちらではお考えになるかもしれませんが、七〇%というのは、大体国民に浸透していたわけですね。ですから何だあれほど言っていながらこんなことかということで、こんなものは何だ、そういう国民感情になっているということを大臣にお伝えしておきたいわけです。いまさら七〇%にやれと言ってもやらないでしょうし、時間がありませんので、こうした恨みつらみを国民は腹の底に持っておるということですね。よろしいでしょうか。
  339. 田中正巳

    田中国務大臣 私も実は、正直言って七〇%にしたい、こう思って、事実そういう予算要求をいたしました。激しい予算折衝をいたしました。しかし、どうもやはりさっきもお話があったとおり、わが国の遺族年金の受給要件等が違うということが財政当局からいろいろ話がございまして、私ども、みんなみんなやるつもりじゃなかった、やはり子持ちとか年寄りとかいうようなものにやりたいと言っていたのですが、それでもなお研究不足ということで寡婦加算制度というものになってしまったわけです。ですから、これで怒られたんじゃ、ぼくはもう余り口をきかぬ方がいいのじゃないかというふうに政治家としてなにして、わけのわからぬ答弁をした方がいいのかなと思っていますが、正直言って、私は、そういうことをやりたいと思っておったわけですが、局面としては、そういう寡婦加算制度で終わらざるを得なかったということで残念に思っております。決してだますつもりはございません。なお今後とも努力をいたしますが、しかし恨みつらみを言われているばかりでもなさそうでございまして、ぼくはこの間、未亡人協議会へ行きましたら、これはこれなりに評価を受けておりましたので、人いろいろの評価があるのではなかろうかと思います。
  340. 田中美智子

    田中(美)委員 それはそのとおりだと思いますけれども厚生大臣というのはそんなに弱いのだろうか。せめてこういうことぐらいは、いま国際婦人年の十年の第一年目ですね、そういうときですので、もう少し厚生大臣は強い立場に立っていただきたいと思うのです。何でも大蔵大臣の方が上だということでは本当の民主主義じゃないと思うのですよ。そういう面で田中大臣が弱いということを言っているわけじゃありませんけれども厚生大臣の地位が弱いということを、今度この問題でしみじみと感じまして、あなたに恨みつらみを言うわけではありませんけれども、非常に残念な気持ちがするわけです。ですから、今後ともこの点は十分に考えていただきたいと思います。  あと質問を一括して申しますが、先ほど話が出ておりましたように、妻の座が六千円というのが少ないとか少なくないとかという、少ないに決まっておりますが、じゃあ一体、妻の年金権というのはどうなるのだ。六千円というのも夫の名儀で払われるわけですから、年をとって余り仲のよくない夫婦が一緒に住みながらもけんかをしておるというと、いまの民法は夫婦の別産制になっておりますので、これはあくまでも男のものになりまして、おじいさんがおばあさんにくれなければどうしようもないということですので、やはり妻のお金がはっきりと六千円なんだということにはなっていないと思うのです。そういうことから考えますと、妻の年金権をどういうふうにするかということで、国民年金審議会とか制度審とかそういうところで、みんな被用者年金サイドで妻の年金権は考えるべきだというふうな答申も出ております。それから離婚した夫が再婚して死んだ、そういう場合に、そうすると妻が二人いるわけですね、先妻と後妻と。いま後妻だけですね。先妻のはないわけですね。西ドイツなどは、これを期間で分けているということが新聞に出ておりました、事実をよく知りませんが。それがいいか悪いかということは、ちょっとわかりませんけれども、再婚するときには妻に五年分くらい一時金で渡しておくとか、いろいろな制度があるようです。こういう年金権の問題、これをどうするか、非常にむずかしいと思うのです。  それから、フランスのP・ラロックという婦人の社会保障の専門家、この方の論文の中にありましたのは、私この前も要求しましたが、夫が死亡したときには妻に遺族年金が行くけれども妻が死亡したとき、私が死んだ場合に夫に遺族年金が行かないわけですね。女だって、愛する夫をこの世に残して死んでいくときに、せめて自分がいままで掛けた掛金というものが遺族年金として夫に行ってほしいということを、私自身も願いますし、多くの妻が願うであろう。結婚年齢も短かくなってきておりますし、私のように夫が年下の人もいます。そうしますと、いままでのように、いつも男がずっと高い年代のときには大抵男が先に死ぬ、年齢的にそうなるわけですけれども、だんだん結婚の年齢も変わってきますと、妻の方が先に死ぬというケースも出てくるわけですね。そうすれば、夫にも遺族年金が行くようにということを検討してほしい、こういう問題があるわけです。  ですから、これがどうであるかこうであるかということを、一つ一つ言っていますと大変ですので、ぜひ私は、今度大臣が四月二十七日に年金制度基本構想懇談会というものをつくられたということを聞いていますが、その中の審議委員に婦人が一人しかいないということも非常に問題だというふうに思うので、国民皆年金の「皆」の中に入っていない婦人の問題というものをもう少し考えてほしいわけですけれども、これは基本構想ですので、たくさんの年金をという考え方なのかもしれませんが、婦人をこの中に多くしてほしいということと、もう一つ、婦人の年金権を検討する諮問機関というものを一つつくっていただきたい。いまのようにたくさんの矛盾があって、いつもそこで何だかんだやり合っているわけですから、私は、そういう機関をつくって、そこの答申を受けていくというふうな、そういう抜本的な、女性の年金権を確立するという第一歩を踏み出してほしいと言うのです。いまこれをすぐどうせよと言っても、なかなかだと思いますので、その点をちょっと大臣にお聞きしたいと思います。
  341. 田中正巳

    田中国務大臣 妻の年金権の問題は、私も心を痛めております。非常にむずかしい問題でございますが、これについては、何とか前進を図らねばならぬということを考えております。したがいまして、今後の年金制度の改正の節には、何とか目鼻をつけたいものだというふうに実は思っておりますが、しかし基本的に、やはり年金のストラクチュア、仕組みとも関連いたしますので、簡単ではないと思います。夫の問題については、生計維持者である場合は何とかなるようですが、これは男の稼得能力との関係で……(田中(美)委員「そういう機関をつくってほしいということを言っているのです」と呼ぶ)機関については、私は、むしろいろんな機関をつくってしかられているのですよ。大体厚生大臣は、審議会好きとかなんか新聞に書かれまして、私は、そういうつもりは毛頭ないので、これは積極的な意欲でやりたいと思うのですが、これまたつくったら、いよいよもって言われますので……。それから全体の制度の中の一環として位置づけるためには、一つの機関の中で考えた方がいい。しかし国年審なりあるいは基本構想懇談会ですか、こういうところでとにかく妻の年金権については十分審議してくれということは、私からも申しましょう。
  342. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、国民の半分は婦人であるということを、大臣、忘れないでいただきたいと思うのです。男だけがいるのだというふうに思っていただくと困ると思うのです。  それで、最後に一つだけ申し上げますが、今度「国内行動計画概案」というのが政府から出されました。その中に「老後等における経済的安定の確保」というところで「厚生年金の保険料率、支給開始年齢等について、男子との均衡を図ることを基本として検討を進める。」という項目があるわけです。これは、ただごとではないというふうに私は見ておるわけですので、この点、いまのように婦人の賃金は男の半分というふうな少ない賃金の上に、それからまた開始年齢というふうなものも全部男の方に合わせていくというふうな検討であるとすれば、これは、ただごとでない、婦人に対する圧迫であるというふうに考えます。  それで、こういうこともありますので、私は、婦人のためだけの審議会をつくって、十分にやってほしいというのです。こういう改悪だけがもし進められるとすれば、どういう検討かわかりませんけれども、均衡を図るということになりますと、いまの女の方が率も開始年齢も低いわけですから、これが上がっていくとなると、賃金は低いのにお金はたくさん取られるということになりますので、この点を厳重に、そういうことにならないように、いまよりも改悪されないように——社会が完全に男女同権になっていく中でならばいろいろ考えられます。いまのように婦人の働く条件も悪い中でこのような改悪がもしなされるとするならば、ただごとではないと思いますので、その点を十分に御忠告申し上げておきたいと思います。
  343. 田中正巳

    田中国務大臣 婦人の問題企画推進本部のこの条項というのは、女性は女性として男性と同一でありたいという気持ちが出てこういうことを書いたのだろうと思うのですけれども、しかし年金制度等については、お説のとおり、勤労の形態も違いますし、いろいろな違いがございますから、したがって、これをこのままでもって——私ども精神はわかります、プライドはわかりますけれども、やはり実際においては、多少違わざるを得ない、違っていく方が実情に合うというふうに思っておりますから、その点については、そつなくやる所存でございますし、こちらの方にも、そういう意味のことは踏まえてくれということは、私からもよく注意しておきます。
  344. 田中美智子

    田中(美)委員 そこは各省から言ってきているのですから、厚生大臣責任ですので、その点お願いします。
  345. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 時間が経過しておりますので……。
  346. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、これで質問を終わります。
  347. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 大橋敏雄君。
  348. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 インフレ、不況、それから老齢人口の急増、預金、貯金の目減り等々で、いまわが国の国民の年金制度に対する関心の高まりというものは異常なものがあると私は思うのです。私は、ただいまから議題となっております年金改正案の質疑に入るに当たりまして、現在の日本経済の中における年金のあるべき姿、社会保障や社会福祉の立場から果たしてどうあるべきか、年金の水準、制度のあり方を大局的に見ていかに改革していくべきかという私なりの考え方をまず述べさせていただきまして、厚生大臣の御意見を承った上で具体的な質疑に入っていきたいと思います。少し長くなるかと思いますが、もし余りにも意見が違うときには、その都度指摘なさっても結構でございますが、できれば最後に一括してまとめて御意見を承りたいと思います。     〔戸井田委員長代理退席、山下(徳)委員長代理着席〕  今回の改正案は、給付の改善、障害年金、遺族年金の通算制度の創設、廃疾認定日の短縮、初診日から三年というのを一年六カ月に、通算遺族年金の創設等、評価すべきものもありますけれども、大幅な保険料率の引き上げ、男子の場合七・六%から九・四%に、加えて標準報酬の上限二十万円を三十二万円、下限は二万円から三万円の引き上げによって、被保険者の負担が急激に増大する等の問題点もあります。  とりわけ、政府が昨年来繰り返し約束してきました五十一年度における年金の抜本的改善とはほど遠いものと言わざるを得ません。これは去る三月の委員会のときにも指摘しまして、大臣も抜本改革とは言えないとお認めになったとおりでございます。  中でも、厚生大臣も約束されました福祉年金二万円がわずかに千五百円の改善、一万二千円から一万三千五百円に終わったことは不満であります。このことにつきましては、厚生大臣は、従来の答弁から予想されますけれども、多分最大限の努力はしたが、不況による財政難でいたし方なかったと言われるに違いありません。恐らくそうだと思います。しかし社会保障制度審議会が繰り返し言っておりますように、福祉年金も生活保障的な水準のものでなくてはならないのであります。減速経済への移行に伴いまして、福祉も減速ということであってはならないと思うのであります。かつての高度経済成長の時代には、まず分けるパイを大きくしてからということで、国民の貯蓄はすべて民間企業の設備投資に振り向けられ、その結果、確かに経済は成長し、物質的には豊かになったけれども、反面、国民の福祉は立ちおくれ、社会保障の水準は先進諸国と比べてむしろその格差が増大していったのであります。これもお認めになるはずでございます。このことにつきましては、わが国の福祉政策が高度経済成長の余力依存型という消極型で進められてきたことは、昨年十月二十八日に発表されました国民生活白書が明確に述べておるところでございます。  また、福祉水準を示すGNPに対する社会保障費支出、振替支出の割合を見てみますと、西ドイツでは一九六〇年にすでに一二%に達しておりましたが、一九七二年には一三%を超えており、同年のわが国の四・八%をはるかに上回っているのであります。これも御承知のはずでございます。  人口一人当たりの社会保障費支出で見ましても、西ドイツは一九六〇年にすでにわが国の一九七二年の水準の倍も上回っていたのですが、一九七三年にはさらに同年のわが国の五倍にもなっており、格差は一段と進んでいるのであります。これは昨年の八月八日に発表されました経済白書の中で述べられているところであります。これも御承知のはずでございます。  社会保障制度審議会においても、さすがにこうした点を見落とすはずがなく、昨年の十二月一日に「今後の老齢化社会に対応すべき社会保障の在り方について」という建議書を出しておりますが、この中で、減速経済への移行があっても社会保障の充実は急がねばならないとして、今後は公共部門投資中に占める社会保障関係の比重を思い切ってふやすことによって、新しい経済循環の構造をつくるべきであると言っています。つまり、従来の民間設備投資主導による経済成長の余力依存型の福祉政策を直接福祉に投資する政策に転換しなさいということを言っているのです。そうして、そうすることが今後の日本経済に発生のおそれのある総需要の不足、不況の慢性化に対処するためにもきわめて有効な手段となるであろうと述べているのでございます。これは、いま言いました社会保障制度審議会の建議書です。  消費の停滞による今回の不況は長期にわたり、戦後最大と言われ、企業倒産は昨年の九月に千件を超えて以来、去る三月まで、十二月の千九百四十三件をピークにすべて千件を超えております。失業者もまた昨年十月に百三万人となって以来、十一月の九十八万人を除いて百万人を突破しております。本年二月には百二十五万人に達しております。これも御承知のはずでございます。こうした中で賃金は、どうやら八%ぐらいにおさまりそうな情勢ですが、これでは消費者物価の三月末の前年比八・八%にも及ばないわけで、最終需要の増大は望めそうもありません。一方、所得減税は見送られておりますから、勤労者の実質所得は低下して、この面からも消費の停滞は解消しそうにもありません。  そこで、こうした中で経的政策的な面からも福祉の充実は急がねばならないのであります。制度審議会も言いますように、福祉への投資を通じて経済循環の構造をつくる必要があるわけであります。たとえば福祉年金が引き上げられたからといいましても、その支給された年金が貯蓄に回る心配はないわけであります。たとえば福祉年金が二万円になったといたしましても、それは生活必需品を購入しますから、消費は必ずその分だけふえ、生産流通の量が拡大されて、景気に対して好影響を与えるばかりでなく、企業の収益も好転し、その結果、物価抑制の効果も果たし、失業、倒産の減少効果も果たすことができるわけであります。これが減速経済下における経済循環の新しいパターンだと考えています。  ですから、厚生大臣のように減速経済で財源がないから福祉も減速だということではだめで、このようなときには公債を発行してでも福祉の充実を急ぐことこそが、経済政策の上からも必要であり、昨年の予算委員会における私の提案もこの意味から出たものであります。本四架橋の工事が今年度から始められておりますが、これをおくらせてでも国民福祉の充実を推進すべきだったと思うのでございますが、初めに総括的に大臣の御見解を承った後で、具体的な質問に入っていきたいと思います。
  349. 田中正巳

    田中国務大臣 いろんな所説を一遍に申し上げましたので、これを全部お答えいたしたのでは、時間がなくなってしまうのじゃないか、かように思います。  そこで、振替所得がヨーロッパの国々と比較して低い、確かに低いのであります。この点については、われわれとしては大いに注目し、また努力もしなければならぬと思いますが、これにはやはり社会構造の違いというものも考えなければならぬというのは、もう先生御存じのとおりでありまして、人口の老齢化との間のパラレルの数字というものを追ってみるならば、やはり日本においてもむちゃくちゃに低い、ただノミナルな数字だけを対比するということは、いささか当を得ないのじゃないかというふうに私は思いますが、これは大いに頂門の一針としなければならぬ数字であることは、私は否定をいたしません。  なおこの際、消費を刺激せよということですが、これは経企庁長官じゃないので私はなにしませんが、日本の消費というのは、かなり最近まで強含みでございまして、消費を極端に刺激をしなければならぬというようなことではなさそうでございます。むしろこの際、いわゆる投資を福祉の方面に充実をさせたいということについてのお話ですが、厚生大臣としては、私はそういったような方向に向きたいと思っていますが、しかし今日の経済情勢は、どうして一体資金の効率化を図るかということを考えるべきだと私は思うのであります。その意味では、たとえばいま年金のお話がございましたが、やはり年金のような給付とこうした公共事業等の間には、同じ金を使っても、いわゆるインベストメントマルチプライアーというやつですか、投資効率と訳すこれがかなり違います。  そうしたことを考えるときに、財政が不如意で公債を三〇%も発行しなければならぬようなときに、わずかのできるだけ少ない資金で景気構造を変えようとするならば、投資効率の大きい方に依存をしなければならぬということで政府全体としてその方向に向かって努力をしたことだろうと思います。しかしさればといって、社会保障費よりもこうした公共投資の方は比率が小さいことは、先生御案内のとおりであります。減速経済下でございますが、やはり社会福祉は、これを向上しなければならぬと言うのですが、これは何といったって公的費用を必要とするのですから、これを一体どこから求めるかということで、われわれは努力をしなければならないと思うのであります。もつと公債を出すといっても、いま財特法がこの騒ぎでやっている今日ですから、これ以上公債を発行することは、なかなか困難ではなかろうか、制度上もまた経済上も政治上も問題があるということで、これにもまた一つの壁があるのではなかろうかと思います。  いずれにしても、こうした社会保障の給付をよくするためには公的資金によらざるを得ない。この公的資金は租税の形でやるか、あるいは保険料の形でやるかしかないわけでございまして、そうしたことを考えるときに、いまの税金についてもなかなか問題がある、また保険料についても、少しよけい御協力願おうと言うと、なかなか抵抗感も生ずるというところに私の悩みがありますが、社会保障給付をよくするためには、やはりみんなで相ともにこの財源を見出すということについて努力もし、協力もしなければならぬというところに、いままでの社会保障の充実のパターンと違った状況が出てきた、そこに私のまたむずかしいところがありますが、これを乗り越えなければ厚生大臣じゃないということで、今後とも努力をいたす所存でございます。
  350. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は、時間の節約も含めまして、いま私の考えを一挙に述べさせていただいたわけでございますが、先ほども申し上げましたように、年金改革に対する国民の関心はきわめて強く高いものがあります。今回抜本改革をされるであろうということであったわけでございますが、諸般の事情から今回見送られた。しかし厚生大臣としては、これはいよいよ早急に手直しをし、改革しなければならぬのだということは、十分自覚もなさっておられることでもございますので、いま私が申し上げましたようなことは、あくまで私だけの物の考え方ではなくて、社会保障制度審議会の専門家の皆さんの御意見やそのほかの関係者の意見を交えまして申し上げた内容でございますから、大改革の中において十分参考になる意見が述べられていることを私は自負して申し上げておきます。  そこで、具体的なものに入りますけれども遺族年金についてでございますけれども遺族年金の最低保障額、これは昭和四十八年十一月からは二万円であったのが物価スライドされまして、五十年八月から二万八千三百円になっておりますね。そして今回三万三千円になろうとしているわけでございますが、この最低保障額というのは、一体いかなる根拠によって決められていくのか、私、これが非常に疑問でならないのです。この点の基準を示していただきたいと思います。
  351. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 遺族年金の最低保障の考え方は、従来から厚生年金の二十年分の定額給付相当額という考え方によっております。もともと厚生年金の定額部分というものは、昭和二十九年の改正によって導入されたわけでございますけれども一つの機能として所得再配分による最低保障的な意味合いを持っておったわけでございますので、それをそのまま採用して二十年分の定額というのが従来の考え方でございます。
  352. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いま大臣お聞きになったように、厚生年金の定額部分二十年分が最低保障額だということなんですね。なぜその二十年分というのが決められたのか、恐らくお答えになれないのじゃないかと私は思うのです。いまのところ遺族年金というものは、基本年金の半分に加給年金を加えた額であるはずでございますが、今回の改正で、基本年金の半分が三万三千円に達しない場合は、最低保障額三万三千円に加給年金及び今回創設される寡婦加算を加えた額となる、こういうことになるわけですね。厚年の最低保障額は、私は余りにも低過ぎる、こう思うのです。それはなぜかといいますと、まずILO百二号条約、これは去年承認いたしましたね。批准いたしました。この条約によりますと、子供が二人ある寡婦の場合に遺族年金は、死亡した勤労者の従前所得の四〇%が支給されることになっております。この条約と厚生年金の最低保障額との関係は一体どうなっているのだろうか、このように私は理解に苦しむのでございますが、この点についてお答え願いたい。
  353. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 今回の改正案におきます最低保障額は、三万三千円でございますが、今回の寡婦加算制度の新設によりまして、子供二人を有する寡婦の場合、四万二千円、一子の場合が三万八千円、それから六十歳以上の子供を持たない寡婦でも三万五千円ということになるわけでございます。  そこで、お尋ねのILO百二号条約基準との関係でございますが、まあ、はなはだ形式的な問題としてお答え申し上げますと、この三万三千円というものは、従前所得というものをどういうとり方をするかによって相違がございますけれども一つの基準として、たとえば旋盤工の賃金、これは本春闘最終的にまだ終わっておりませんので、これは全くの現時点における見込みでございますけれども、多少安全率を見ましても、十二万五、六千円から十三万八千円、これが五十一年度における男子の旋盤工の賃金というふうに推定されますので、そういう点から言いますと、少なくともこの二子の状態、標準年金受給者の二子の状態については、形式的には合致しておると言えようかと存じます。
  354. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 厚生大臣、これは非常に重大なところですから、よく聞いておっていただきたいと思います。  理由のいかんを問わず、ILO百二号条約は批准したわけです。条約の精神は尊重されねばならぬということですね。私は、この条約の審議のときに外務委員会に出て、この問題を質問させていただいたんですが、この遺族年金については、まだ条件を満たしていないけれども、引き続いて努力していくという答弁をいただいております。  しかし今回、またそれが話にならぬほどの内容で出されてきたわけですね。ですから、このILO条約の水準までの改善を急ぐのは、これは国の責務でございます。年金は多いほどよいという考えを持っているわけではございませんが、少なくとも老人とかあるいは母子家庭、いわゆる社会的弱い立場にある人々にとっては、非常に不安な生活を送るわけですから、少なくともこういう人々が安心して生活できるようにしてあげなければならぬ。特に近年の激しいインフレによって、わずかな貯金やあるいは生命保険金などが大幅に目減りをして、自分の力だけではとても生活ができない、生活設計が困難になってきているという実情に照らしまして、こうした遺族年金の引き上げというものは急務でなければならぬ。最低保障ができる程度年金額を上げる必要は本当に急務中の急務だ、こう思うのですが、その点について大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  355. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 年金制度における最低保障の持つ意味というものは、非常に大きなウエートがございますので、この最低保障の充実ということについては、今後ともできるだけ努力してまいりたいと思います。
  356. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 厚生大臣、私が何でこう一生懸命言っているかというと、今度改正されて三万三千円ですよ、最低保障額。これがいかに低いかということを、私いまから厚生省がいろいろ出されております資料による数字を使って理解を深めていただきたいと思います。  厚生行政基本調査によりますと、子供が一人ある母子家庭の生計費は、四十八年度で四万七千四百六十円、四十九年度で六万二千百八十円になっております。子供が一人ある母子家庭の生計費ですよ。これは厚生行政基本調査にあるんですよ。それから子供が二人の母子家庭の場合では、四十八年度で六万三百九十円ですよ。四十九年度では七万百三十円になっているのです。いま局長言うけれども、全然話にならぬでしょう。  ところが、今回の改正案では、子供一人の寡婦の場合の遺族年金は三万八千円です。それから子供二人の寡婦の場合では四万二千円、全然話にならぬじゃないですか。三万三千円、いわゆる母子家庭の生計費も賄えないそういう内容では、話にならぬじゃないですか。いかに最低保障額が低いか、これは本当にわかってもらわなければならぬと思うのです。     〔山下(徳)委員長代理退席、竹内(黎)委員長代理着席〕  さらに角度を変えてみますと、最低生活保障水準、いわゆる生活保護基準、厚生大臣、よく聞いておってくださいよ。九歳の男の子を持つ三十歳の母子家庭の場合、これもみんな厚生省が調べた数字ですから間違えないようにしてくださいよ。私が勝手に編み出したのじゃないのですから。生活扶助あるいは母子加算、教育扶助、住宅扶助の合計で、五十年度当初で一級地で五万九千二百九十六円ですよ。四級地で四万四千四百八十三円であります。五十一年度当初では一級地六万五千九百二十八円、四級地四万九千六百八十四円であります。また九歳の男の子と四歳の女の子を持つ三十歳の母子家庭の場合を見てみますと、五十年度当初で一級地七万二千七百七十円、四級地五万四千五百三十八円、五十一年度では一級地が八万一千六十五円、四級地ですらも六万九百七十一円、こういうふうになっているんですよ。これと三万三千円を見ると、もう話にならぬわけですよ。これでよく、私は遺族年金のことで努力しました、どうのこうのといま大変りっぱな発言をなさっていたように伺いましたが、大臣……(田中国務大臣「いや、そんなことは言わない、遺憾でございますと言っていた」と呼ぶ)いや、そうではないですよ。あなたがおっしゃっていたことは、自分の努力は寡婦加算の創設を一生懸命やったのだからそれは認めろ、こう言っていますけれども、そのくらいのことでお茶を濁されるような問題ではなかったと言いたいわけです。この遺族年金と引き上げということは本当に重大問題ですよ。その点について、じゃ厚生大臣の御見解を承りたいぬですね。
  357. 田中正巳

    田中国務大臣 私は、遺族年金の寡婦加算制度が大成功であって、いばるんだなんという気持ちは毛頭ありません。そうお聞きになったら聞き違いだろうというふうに思います。まことに遺憾至極であった、また不勉強であったことも残念である、今後ともひとつリカバリーをやろう、こういうことを言っているわけでありまして、いばり散らすような気持ちは毛頭ございません。  なお、遺族年金の最低保障額については、かねて長い間、定額部分の二十年分相当を設定しておるわけでございますが、これを今回の改正によりかなり引き上げたわけですが、これで食えるのか、こういう観点から見ると問題が出てくるということは、私も知っております。いずれにしても今後この最低保障額については引き上げなければなりませんが、しかし年金制度は、それによって生活のすべてを賄うということを前提にするまでには、もう少し努力が必要なのではないかというふうに思っております。理想はそこへ行くべきでありますが、現在の年金はそこまでいってないということであるというふうに思っております。
  358. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 今回の改正案で厚年の遺族年金最低保障額が三万三千円だということですね。この金額というものは、生活保護を受けている家庭の生活水準にも及ばないのだということ、四級地の生活保護による生活水準にも及ばないということを御理解願えたと思います。わかりましたね、それは。  そこで、もう一つお尋ねいたしますが、さて、この厚生年金の遺族年金を受給している者の中で、この最低保障額の適用を受けている者は、その何割ぐらいになっているのかということが一つ。それからもう一つ、今回の改正案が仮に成立した場合、現在最低保障の適用を受けていなかった者でも、改正後は適用を受けることとなる者がかなりふえると考えるわけでございますが、改正後は何割にふえると予想なされているか、この二つをお尋ねいたします。
  359. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 二つの場合とも、おおむね八六%前後でございます。
  360. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大臣、お聞きになったとおり、全体の八六%も最低保障額の適用を受けているんですよ。遺族年金の八六%の方がその低い水準に甘んじさせられているという事実です。平均標準報酬が十六万五千円以下で被保険者期間が二十年未満の者は、すべてこの最低保障の三万三千円の適用を受けることとなるわけでございますね。言いかえますれば、月給が二十万円くらいで四十歳ぐらいの働き盛りの主人が妻と小学生と中学生の子供を残して死亡した場合は、加給年金や寡婦加算を加えても四万二千円にしかならないわけであります。ここはいまぼくが言ったとおりですね。これでは、五十年度の生活保護四級地の生活水準にも及ばないし、しかも遺族年金の受給者の大部分が適用されているということでございますので、これは大問題ではないか、私はこう言っているわけです。この点について、もう一度大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  361. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 最低保障該当の数字の点からのお尋ねがございましたけれども、また逆に見方を変えますと、今回の寡婦加算で二子を持った寡婦の場合に、亡くなった主人の賃金がおおむね十三万五、六千円程度、その以下の方にとりましては、むしろ定額加算という方が有利だ、そういう見方もあるわけでございまして、私どもこれで十分と思っておるわけでは毛頭ございませんけれども、それなりの御理解はいただきたい。しかし、いずれにいたしましても、遺族年金が遺族生活実態から見て不十分である、これがそもそも今次改正の当初私ども考えました給付率引き上げの一番のねらいだったわけでございますので、今後とも努力したいと思います。
  362. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 今回の改正案をずっと見まして計算してみたところ、六十歳未満の寡婦で三万三千円、六十歳以上で三万五千円になります。子供二人持っていると四万二千円、子供一人の場合は三万八千円、このようになるわけでございますが、いま申し上げましたように、遺族年金というものは、わが国の場合は非常に低過ぎる。少なくとも、先ほど申し上げましたILO百二号条約の水準に引き上げていただきたい。  いまも申し上げましたように、寡婦加算の創設は、私はある意味では、この遺族年金の公約を果たせなかったそのまやかしだ、ひどい言い方かもしれませんが、こうとっております。二千円ないし五千円の加算を加えても、生活保護基準にも達しないわけですから、いわんや厚生省調査の母子家庭生活費には遠く及ばないという事実がいまわかったわけでございますから、思い切って支給割合を引き上げていただきたい。今度はまた大改革をなさるということでございますので、そのときにはどの程度まで引き上げようという決意をなさっているか、大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  363. 田中正巳

    田中国務大臣 余り具体的なことを言うと、またしかられるので、私もこのごろ口が重くなってしまいました。しかし私どもとしては、七割ぐらいを給付したいものだという予算要求をした事実はございます。しかしこの場合でも、全部について七割給付をしようという予算要求では実はなかったわけでございます。たとえばある程度稼得能力のあるような遺族については御遠慮願うというふうなことでございますが、遺族実態と合わせまして、これについてできるだけひとつ給付水準を向上いたすようにいたしたいと私は思っておりますし、その場合には前回の——本当の話が、まあ私は、あえてこれは失敗と申しますが、寡婦加算ができたのは、これでもうまことに結構であるなんて思っていないのです。しかし本当の話が、私も最後に悩んだんですよ。ゼロ配になるよりも、これだけでも残そうかという心境でこれをのんだわけでございますので、したがって、定率給付というものを目指してその要件等についていろいろ精査をいたし、理論武装も固めて、さらにひとつ定率の給付向上というところに持っていきたいというのが私のいまの心境でございます。
  364. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 もうすでに七割まで引き上げるという気持ちは表明してきた、それが思うとおりにならなかったのは残念だというお話でございますが、いま申し上げましたように、あらゆる点から見て、この七割ないしは八割程度まで引き上げるのは国の責務だと私は思いまして、これは強く要望いたしておきます。  それから、厚生年金法の最低保障額は、いま言いました三万三千円になるわけですけれども、この厚生年金の最低保障額を各公的年金はすべて採用しております。その意味では、厚生年金が主導的な役割りを果たしているのでございますけれども一つここに問題を感ずるのは、国民年金の母子年金だけが、そういう立場から見ても、まま子いじめになっていると私は思うのです。すなわち、子供一人分の加給年金分だけ少ない額となっているわけでしょう、どうですか。
  365. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 母子年金のお尋ねがございましたが、私ども決してそのように考えておりませんので、これを他の年金制度における遺族と比較いたしますと、むしろ国民年金の場合は、本来の老齢年金に準じたとらえ方をしておるわけですから、老齢年金の二分の一という考え方とは全く関係のない定め方でございます。一子、二子のお話もございましたけれども、これは母子という状態でとらえた年金でございますので、当然一子は基本部分に入らざるを得ない。したがって、加算は二子以降ということになるわけでございますが、その点もあわせて御了承願いたいと思います。
  366. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまぼくは、そこを言わんとしたわけですよ。いわゆる母子年金だからということでペアになっているというのか、一つになっているのだから、子供が一人いても、それに対する加算はほかの制度ではしているけれども、国民年金の母子年金だけは、子供が一人いても二人いることにはならないのだという物の見方ですね。二人目から二千円上げるわけでしょう。一人目は全然つけないわけでしょう。それは二人目から二千円をつけるわけですから、やはり母子年金は、その名のとおり母と子をセットにしている物の考え方、だから子供一人の場合には加給年金は上げません、二人目から一人分の二千円をつけてあげましょう、こういうことじゃないですか。非常に官僚的な物の発想だ、私はこう思うのです。これは、やはり二千円程度だから、ほかの制度と同じようにしてあげるべきだと思うのですが、どうですか。
  367. 田中正巳

    田中国務大臣 これは私も、本当の話が最初不思議に思ったんですよ。しかし聞いてみると、母子の年金は、少なくとも二子が必ずくっついていなければ母子ではないのです。したがって、織り込み済みだ。したがって、もし分離すると言えば、それは一つの方法として分離はできますよ。しかし、それでは体裁が悪かろうということで、要するに分離して、一子分だけのいて母子年金だと称してやれば、それはそれとして一つのやり方でございますが、しかし母子は少なくとも子供は一人はいるのだということでセットでそこにやった。ですから、これはやりようによってどうにもなると思いますが、いまのところは観念的にそういうふうにくくっているというので、そう悪くするためにそういうことにやっているのではないのだというふうに私どもは言っております。(大橋(敏)委員「わずかに千円です、悪くなっているじゃないですか」と呼ぶ)だから二千円引いて母子年金だ、こう言えば、それは形の上では整いますけれども、それではおかしいから、したがってこの際、ワンセットでやっているのだ、ペアでやっているのだ、こういうふうに観念できないでしょうか。
  368. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 最低保障額にはっきりした思想がないから、私はこのような発想が起こると思うのです。だから、最低保障に、たとえば最低生活水準というような考え方を取り入れるとすれば、決してこのようなことにはならぬだろうと私は思うのです。最低保障である以上、それを下回るような制度はおかしいということになるわけですから。  大臣、よく聞いておいてくださいよ。共済組合の年金では、逆に妻の加算年金が、六千円の半分の三千円が加えられているわけです。ですから、ここのところが、物の考え方、思想を改めなければならぬというところです。そうでしょう。共済組合では逆に三千円プラスしている。これは、わずか二千円程度のことでございますから、この際、母子年金も同じように公平に支給をしていくように改めていただきたい、こういうことです。
  369. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この共済組合における最低保障を厚生年金の例によって算定しておりますけれども、その際に平均的な加給年金対象が幾らあるかというようなことで一・五というような数字を使っているようでございますけれども、いずれにいたしましても、この厚生年金の最低保障、これが国民年金にも援用されておるという事情もございますので、今後ともこの点の改善につきましては努力いたしたいというふうに思います。
  370. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 これは厚生大臣最初おかしいなと思ったとおっしゃるように、直観的に感ずるわけですよね。これは次いで行われる年金の大革改のときには改めていただきたいということを強く要望しておきます。  次に、六十歳以上の老人の寡婦に対する遺族年金は、今回の改正案でも三万五千円になるわけですね。これも生活水準に達するか達しないかのすれすれ程度のものだと私は思うのです。たとえば七十歳の女性の場合の生活保護が、五十一年度一級地で四万二千七百六十一円です。七十歳の寡婦はこの生活水準を保つことはできない、こういうことになるわけですね。四級地で三万一千七百九十六円、やっと四級地程度の生活が保たれるという金額でしかないわけです。厚生行政基本調査によりますと、四十九年度の老人一人世帯の生計費は三万四千六百五十円です。いま私の言ったのは四十九年度ですね。四十九年度が三万四千六百五十円。今度六十歳以上の老人の寡婦に対する遺族年金は改正されて三万五千円です。四十九年度の老人一人世帯の生計費とやっと見合う程度なんですね。これもいかに低いかという実例です。これもよく肝に銘じておっていただきたいと思います。  制度審議会の建議の中に「国民のすべてが安心して生活し、活動できる体制を整備することは近代国家の基本である」こう言っておりますね。この指摘のとおりに、やはり遺族年金だけではなくて、福祉年金もあるいは五年年金も十年年金も水準の低い年金を生活できる年金に引き上げていかねばならぬ。これこそ私は国の義務であると思うのでございますが、この点について確たる大臣の御見解を承っておきたい。
  371. 田中正巳

    田中国務大臣 大橋先生のおっしゃることは、そのとおりでございます。これをいかなる方法をもっていかなる財源で実現するかということにわれわれは苦慮しているわけであります。そうした方向に向かって今後、従来の手法だけではなかなか律し切れないものもあろうと思いますので、広範囲な角度からいろいろと政策を練り直して、そのような方向に進まなければならないというふうに私は真剣に考えておるわけでございます。
  372. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 確かに年金の改革につきましては、種々とむずかしい問題が横たわっているわけでございますけれども、要するに国民連帯と世代間相互扶助の精神に立って一日も早く国民すべてが安心して生活できるようにしなければならぬと私は思うのでございます。高福祉には高負担ということがよく言われておりますけれども、そういうことにしようとすれば、三木総理がおっしゃるように、社会的公正がまず図られなければならぬと私は思うのでございます。不公平な税制の改革や物価の高騰を抑制をしなければなりませんし、あるいは今度、新聞で見たわけでございますが、厚生省には年金制度基本構想懇談会という大臣の諮問機関が発足したということではございますが、一日も早く改革案が国民の前に提案されることを強く望みたいところであります。われわれも真剣にこの研究を続けてまいるつもりでございます。そういう気持ちを十分くんでもらって、私のこの気持ちをくんでもらった上でもう一度大臣の気持ちを伺っておきたいと思います。
  373. 田中正巳

    田中国務大臣 大橋先生の考えている政策を指向する方向と私のとは同じようでございます。ただ、その手法がどうであるかということについては、あるいは意見が大分食い違っているかもしれません。しかし持っていくそのターゲットと申しますか、目標は私は全く同じだということだろうと思っておりまして、大変心強く思っておりますが、ひとつ相ともに協力して、そういう方向に持っていきたい。ただ、こちらはやはり実際の行政を預かっているものですから、あれやこれやの意見もあり、また、いろいろ国民的な御意見の上に立たなければならぬということで、問題がしかく簡単ではない。私が一議員のときに考えたのと、また厚生大臣としての立場で考えることとは、なかなか実は次元が違うなということを感じておりますが、ともあれ先生のおっしゃることと私の考えていることと大体似ているようですから、そういう方向で大いに努力をいたしたい。しかも、それをやっている、やっていると言って、いつまでたっても成果を結ばぬのじゃ申しわけないですから、できるだけ早くこれをやりたいものだというふうに、私もいささかせっかちなものですから、少し拙速に、急いでいろいろと頼んだり物を言っておりますが、できるだけ早くやりたいという気持ちでいっぱいでございます。
  374. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 冒頭から申し上げましたように、年金の改革は、国民的課題だと私は思うのであります。そして八種類にわたる公的年金をみんなだんごにして統合しようとしても、これは実際的には無理でございます。従来の厚生年金あるいは共済年金等々の既得権や期待権は認めながら、しかも共通する部分を統合させて、いわゆる基礎年金構想、その中にナショナルミニマムを求めていく真剣な検討がなされて、一日も早くこれが実際に実施されるように努力していかないと、御承知のように、国民年金の財政的な立場から言っても、もういっぱいいっぱいの問題が来ておりますし、毎年毎年保険料の大幅値上げでそれをカバーしていくなんということは、国民も許さなくなってまいりました。そういうことも十分御承知のはずでありますから、いまの気持ちを、ただ政治的な立場だけではなくて、本当に国民の生活を考えて、真剣に取り組んでいただきたい、こう思うのでございます。  もう時間も大分遣ってまいりましたので、最後に、もう一つ具体的な問題を取り上げてみたいと思います。  それは、地方公務員の方から私あてに手紙が来たわけです。陳情書になっておりますが、これを読んでみますと、私もなるほどなと感ずるところがあるわけです。これは未支給の年金を受けることができる遺族の範囲に関する問題点が、こんなにたくさん書かれているわけです。これを全部読み上げると時間が足りませんので、私これを要約してまいりました。  未支給金というのは、おわかりになるでしょう。たとえば年金を受けるのは毎月じゃなくて、三カ月ごとぐらい、年に四回支給されている。その間にいわゆる年金を受けていた人が死亡したり何かした場合に、当然受けるべき支給金が本人手元にいかなくなるわけですから、遺族にそれが渡るが、その遺族の範囲についていろいろと矛盾があるわけです。  まず、年金を受けている者が死亡した場合、年金の未支給分が残ることがあるわけでございますけれども、厚生年金あるいは国民年金法では、これを受けることができる遺族の範囲というものを、まず死亡した年金権者と生計を同じくしていた配偶者、子供、父母、孫、祖父母、兄弟、姉妹に限る、このようにしているわけですね。いまは厚生年金と国民年金のいわゆる遺族の範囲を述べたのですが、ところが同じわが国の年金制度でも、恩給法、国家公務員あるいは地方公務員、私立学校職員、公共企業体職員、農林漁業団体職員の各共済組合法、戦傷病者戦没者遺族援護法等では、先ほど申し上げました配偶者など遺族がないときには、死亡した年金権者の相続人にその未支給の年金を支給することができるとなっているわけですね。要するに範囲がぐっと広がっているわけです。ですから、恩給法や共済組合法で定める遺族の方が厚生年金法や国民年金法のそれよりもその範囲が広いわけでありますが、これが一つ問題点ですね。  もう一つ問題点は、国民年金法ではその上に、第十九条第三項にただし書きで、福祉年金について特に厳しい制限を設けております。それは福祉年金の未支給分は一切だれにも支給しない、こうされていると思うわけでございますが、まず、これを確認をしておきたいと思います。
  375. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 御指摘のとおりです。
  376. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大臣、いま述べましたとおり、また局長さんもお認めなさったとおりです。矛盾がたくさんあるわけですが、年金の未支給分というのは、たまたま支給期月といいますか、支給される月が到来しないために請求できなかった、あるいは請求しないうちに死亡してしまった、あるいは請求手続中に死亡したというようなものが大部分であろうと私は思うのでございます。それは本来、当然に支給されるべきものでありますから、恩給法や各共済組合法などは、それぞれ沿革などがあって、遺族の範囲に相続人まで入れているわけでありますから、これは、やはり同じように、わが国の年金制度でありますから、少なくとも厚生年金や国民年金も同様な扱いにしなければおかしいのではないか、私はこう思うのでございますが、この点についてはいかがでしょうか。
  377. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 いま御指摘の点に限らず、いろいろ各分野にわたって制度間に差異がございまして、それぞれそれなりの十分な理由のあるものでございましょうし、あるいは立法時期等の差異からくるような事情もございましょうけれども、まあ特別の理由がない以上は、やはりできるだけ整合性を保つということが望ましいわけでございますので、すべて全部ここでそろえるというお約束はいたしかねますけれども、検討いたしたいというふうに考えます。
  378. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 先ほど申し上げましたように、これは当然もらえるべきお金であったわけですね。それがもらう前に亡くなった、あるいは手続中に亡くなったとかいうような特殊事情でございますので、それが制度によってこちらは遺族の範囲が広い、こちらは狭い、一方では全く支給しない、こんな極端な差があってはよくない、まさに差別扱いだと私は思うのです。しかし差別扱いにする理由に乏しいのではないか。福祉年金だから、無拠出の年金だから未支給分は一切支給しないというのも、私は理由に乏しいのではないか、こう思うわけでございます。未支給分というのは、本来当然支給すべきものでありますから、同居の親族あるいは葬祭を行った者にまで支給範囲を広げてもよいように思えてならないのでありますけれども、この点について厚生大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  379. 田中正巳

    田中国務大臣 理屈を言うと、共済組合は恩給系統をくむとか、いや、こっちはそうじゃないのだとか、いろいろ理屈はあるようでございますが、しかし率直に考えて、ここまで差をつける必要はないんじゃないか、私はこう思いますので、できるだけ整合性を保つようにします。  ただ、福祉年金については、若干これは議論が出てくるかもしれません。この点については軽々とお約束するのは危険かなというふうに、いまちょっと思っております。
  380. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 まあ、非常に慎重な答弁をなさるようになられましたですね。しかし問題点をはっきり理解なさったわけでございますので、いつもの厚生大臣の馬力でぐんぐんと押していっていただいて、こういう差別的なものは一日も早く撤廃していくように努力していただきたいと思います。  時間が参ったようでございますので、また引き続きあすにでも残りの問題を取り上げてみたいと思います。  では、きょうはこれで終わります。
  381. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 次に、小宮武喜君。
  382. 小宮武喜

    ○小宮委員 わが国の社会保障制度を見てみますと、制度としては近年非常に完備をされてまいりました。しかしながら、その中身たるや欧米先進国に比べても非常に見劣りがするわけです。そればかりではなくて、近年のインフレによって社会的不公正がますます拡大されて大きな社会問題となっておる今日、やはり政府としても、社会保障制度については重大決意をもって取り組むべきだというふうに考えます。     〔竹内(黎)委員長代理退席、山下(徳)委員長代理着席ところ政府は、この社会的不公正の是正に対しても、これを是正するというようなことを公約しながらも、現実には財政難を理由として福祉の大幅後退、それに今度は国民負担の強化を行おうとしております。そういった国民世論を無視した低福祉高負担について、われわれは絶対に承認するわけにはまいらないのであります。そういった意味で、私は、やはり社会保障全体の問題についても、その年その法律案を出す、出すから審議会に諮問する、諮問を受けて今度答申をした、答申に基づいて改正案を出すということではなくて、やはり一つの計画的な年次計画を策定して、それで社会保障制度というものを向上させていくというような努力をしなければ、場当り的な考え方だけでは、やれ財政難だ、金がない、だから、いままではこういうふうにやろうと思ったけれども、できなかったのだというようなことになってくるのが、これが私は落ちだと思うのです。だから、やはり一つの年次計画を立てて、ことしは幾ら、来年はこうしたい、再来年はこうしたいというような長期的な、少なくとも長期的でないとしても中期的な年次計画を策定すべきだ。  その端的な例が、たとえば田中前総理大臣は、五十一年度には老人福祉年金は二万円にいたしますということをはっきり言ったわけです。ところが三木さんになってみたら、これは財政難の理由か何かは知りませんが、今度は一万三千五百円にとどまっておる。いろいろな、たとえば下水道にしても住宅にしても港湾にしても、すべて何年計画というものを立てて、計画に基づいて施策を進めているわけです。だから、社会保障制度についても、少なくとも中期的な、五年間ぐらいの見通しをやはり策定して、そうして取り組むべきだと私は考えておりますけれども、そういった少なくとも五年間ぐらいの社会保障制度、社会福祉の向上に対する計画を策定する意思がありやなしや、その点、大臣、いかがでしょうか。
  383. 田中正巳

    田中国務大臣 お説のとおり、社会保障に長期といいますか中期といいますか、計画がなければいけないということは、かねがね実は長い問議論があったところでございますが、前回もやろうと思いましたが、あの節は石油ショック等で経済事情が非常な急変をいたしましたものですから、これについては途中であきらめました。しかし今度、経済企画庁で五十年代前期経済計画というのを立てました。これの中にも一部社会保障に関する指標が入っておりますが、これをもっと厚生省において精細にして、わが方独特の社会保障の長期計画をこの五十年代前期経済計画に対応したものをつくろうということで、いま私どもの官房で鋭意努力をいたしているところでございまして、早くつくれということを言っておるわけでございます。  ただ先生、ここで私は、これはお互いに社会保障を考える者として申し上げたいのですが、そうは言うものの社会保障を何とかしたいと思うものですから、したがって、これは計画だけ立てたのじゃだめだわいと、こういうふうに私は思っているわけです。というのは、私も、いまこそ厚生大臣ですが、いままで国会議員としていろいろな政策を扱ってきましたが、公共事業の中期計画、五カ年計画なんて、あれは一〇〇%達成したものはないんですよね、本当の話が、先生は選挙区を持っているから御存じだと思うのですが。ですから、結局ひどいのになると、達成率五四%なんというので次の計画に乗り移っているという状況もございます。したがって、計画も立てなければならぬが、しかし計画だけじゃだめなんじゃないかというふうに思って、私は、ことしの予算折衝を振り返ってみて、何とかこれは社会保障には固有の財源をひとつ持たなければなるまいな、こういうことを私はしみじみ感じました。要するに、いままで余り一般会計にばかりわれわれ依存をしておった。国会の議員もそうですよね。大体大蔵省からもらってこい、出さないのはどうのと、一般会計が頭にあったわけですが、一般会計による社会保障費の増高というのは、景気のいいときにはいいんですけれども、一たび調子が悪くなってくると、ぐらぐらしてくるということでございますので、私は、やはり国民の理解と協力を得て、どんな経済情勢のもとにあっても社会保障が前進できるような、厚生省としてよそ様に余り頭を下げぬでもちゃんとできるような固有の財源を持ちたいものだな、それでなければ本当の減速経済下の社会保障の前進はできないのじゃないかというふうに思って、この辺からいろいろ施策を考えていかなければなるまいと、二つですね、計画と財源論と二つを考究しなければ、今後のむずかしい時世における社会保障の発展は望めないというふうに思っているわけでございます。
  384. 小宮武喜

    ○小宮委員 財源の問題を考えると、確かにそれは石油ショックがあった、だから、石油ショックのためにやむを得なかったのだというようなことは、ある程度理解できる点もございます。しかしながら、少なくとも社会保障制度を推進してゆく場合に、何も具体的な中期的な、長期的でも構いませんけれども、何もなくて、言うてみれば、ただ景気のいいときはよけいするとか、景気が悪くなったらやめてしまうとかいうような行き当りばったりの社会保障政策というものは、これはどう見てもやはりうなずくわけにはまいりません。だから、それはそれとして、やはり計画は策定して、五〇%しか達成されなかったところもあるじゃないかといっても、それはそれなりに、お互いにどうしてもできなかったのかということを論戦し合うことによって理解も深めていかれる。だから、いまの大臣の話のように、前向きに進むためには、やはり将来の青写真というものを示してするのが行政の立場に立つ厚生省としては当然ではないか。行き当たりばったりじゃ、これは余りにも無節操な、無定見な、無為無策というところまで言いませんけれども、ちょっと国の政策としてはうなずくわけにはまいりません。  だから、そういうような点について、先ほど言われましたけれども、今後は減速経済であろうと六%なら六%、七%になるかもしれませんが、やはりある一定の成長率を保つわけですから、そういうふうなことを考慮しながらも、やはり中期的な、長期的な、社会保障制度をどう向上さしていくかということをぜひ検討し、策定してもらいたいということを要望として申し上げておきます。  それからもう一つは、先ほどからも話がありましたように、やはり年金におけるナショナルミニマムの確立だと思うのです。周知のとおり、わが国の年金制度は、制度が非常に多岐に分かれており、その制度間に非常に激しい格差が出ておる。同時に、年金制度が持つ所得の再配分機能も十分に働いていないわけです。だから、そういった意味では、こういうふうな矛盾の原因は、やはりナショナルミニマムが確立されていないというところにあるんじゃないかというような気もいたします。だから、そういった意味で私は、この厚生年金の定額部分をナショナルミニマムとして最低保障するというような制度を一刻も早く確立すべきだというふうに考えます。先ほどから各年金間の問題がいろいろ出ましたように、これは私、いつも口を酸っぱくして言っておるのは、いわゆる厚生年金にしても他の共済年金との関係、しかも厚生年金は加入期間が二十年たてば受給資格はある、しかしながら、あっても六十歳にならなければくれぬ、六十歳になればくれるかと思えば、それをまた二割天引きだ、五割天引きだといって、自分たちが納めた厚生年金、当然もらえるべき権利のある厚生年金を何とかかんとか因縁つけては支給停止をしたりカットなどしているというような、われわれは厚生年金受給者の方々から非常にいろいろな不満を聞いておるわけです。そういった意味で、いまのナショナルミニマムの問題についても、ひとつぜひ制度として考えていただきたいということを質問しますけれども大臣どうでしょうか。
  385. 田中正巳

    田中国務大臣 小宮先生おっしゃるとおり、現在の年金制度が非常に分立をしておって、また要件等もいろいろ違うわけでございまして、これをこのままにしておくことは、やはりよくないということで、一定の条件下に一定のものを統合できな食いうことを考えて、いまいろいろ、こうした御審議を願っている問題とは別に、われわれとしては考究をしているわけでございます。既得権等々と絡んで非常にむずかしい問題でございますが、やはりそうしたことを確立しなければ社会の要請にこたえることができないというので、私どもとしては、ずいぶんこれについて心配もし、また熱心にやっているつもりですが、問題がむずかしいものですから、なかなか先生方の前にこれですと見せられないものですから御心配だろうと思いますが、一生懸命やります。
  386. 小宮武喜

    ○小宮委員 厚生省が考えておるのは、あらゆる年金があるけれども、その年金全体の問題の調整はやはり非常にむずかしい、しかしどう考えても、厚生年金財源を使って何か国民年金との間の調整をやりやすいところから手をつけていこうというような傾向がどうも私には見受けられるわけです。そうなると、われわれから見れば、厚生年金は、これは先に言いますけれども、相当な積み立て財源を持っておる、持っておりながらも、そういうふうな支給率やいろいろな制限を設けておる、それで金は余った、余ったから今度はこちらの方に回そうというふうな考え方を持っておられるとすれば、やはり私は問題があると思いますが、そういうふうな考え方はお持ちですか。
  387. 田中正巳

    田中国務大臣 先生、そうではないのです。厚生年金で集めたお金をほかのグループに割いてくれというようなことはやりません。しかし、やはり弱いグループの人々にある程度の給付をするためには、とにかくどこからか財源を見つけてこなければならぬわけでございますので、その辺に工夫の要るところでありまして、いま厚生年金の積立金からたとえば国民年金の方に回してくれと言ったって承知するはずがないのですから、そんなやぼなことは私どもとしてはいたす所存はございません。
  388. 小宮武喜

    ○小宮委員 次に、在職老齢年金の問題についてもお尋ねします。これは私のところなんかに非常に手紙がくるわけですが、結局給付額が、いわゆる六十五歳以上にしても給付額は二割も減額される。しかも、その給付額に上積みされないにもかかわらず、一般の被保険者として今度はまた相当の保険料を納めるわけですね。そうすると、やはりこの問題について、これは非常に不合理じゃないかというような声も出ているのです。だから、こういった国民の声を年金改正に正しく反映するために、たとえば在職老齢年金の減額制度は六十五歳以上はもう廃止するというような思い切ったことまで考えるべきじゃないのか。減額制度を廃止して十割にする、それと同時に、保険料を六十五歳以上になれば免除するかあるいは被保険者としないような措置をするか、いろいろそういったことも私は真剣に取り組んでもらいたいと思うし、検討してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  389. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この在職老齢年金制度につきまして、いろいろ御意見がございまして、先生ただいまお述べになりましのも、これらをめぐる問題の一つだろうと思っておりますが、結論といたしましては、私ども関係審議会等の意向も十分反映させる意味で、今回御審議願っておる改正案の内容のようにいたしたものでございます。私どもは、現段階ではこのような考え方が最善であろうと思っておりますけれども、しかし先ほど申しましたように、今後の問題としては、いろんな角度からこの問題は検討する必要があろうというふうに考えております。
  390. 小宮武喜

    ○小宮委員 きょうは総括的なことを質問して、後から法律内容に入りますから。  保険料の労使の負担割合の問題ですが、わが国の社会保険は、労使折半方式であるために、社会保険拠出に占める使用者の負担が大体五二・九%にすぎません。外国の実情を見ますと、西ドイツが六〇・五%、フランスが七八・四%、イタリアが八〇・四%、スエーデンが六六・七%、ベルギーが七八・三%になっておって、わが国に比べれば使用者負担が著しく高くなっているわけです。したがって、わが国においても、負担能力のある使用者負担を少しでも高めるように再検討すべきではないかと思いますが、その点お考えはどうでしょうか。
  391. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この社会保険の保険料の労使折半負担、これは、わが国では一応折半負担という考えが定着しておりますけれども、お述べになりましたように、諸外国の例等では必ずしも一般的な大勢とも言えない面もございます。この点は、ただ社会保険という立場だけではなくて、恐らくは企業内福利の問題、さらにひいては税制が国によってどういうふうな体系となっておるか、そういったことを総合的に考えなければいかぬと思いますので、いま直ちにこれをどうこうということは申し上げにくいのでございますけれども、実はこの問題は、諸外国の労使の負担割合の裏にあるそういう諸事情について十分検討するようにという大臣からの御指示がかなり前からございますので、今後そういう点も含めてひとつ検討していきたいと思います。
  392. 田中正巳

    田中国務大臣 この問題は、各方面から広く言われているわけであります。したがいまして、いま年金局長が言ったように、よほど検討してみなければならぬ。われわれがただ比率で見る以外の外国におけるバックグラウンドについても、いろいろ問題があるということも聞いておりますので、そういう点も勉強するように実は言ってあります。それからまた、こうしたことを仮に切りかえた場合に、賃金形成に一体どういう影響がくるだろうかということも考えてみなければならぬというわけで、労働大臣ともこのことについて話をしておるわけでございまして、向こうでも考えてくれや、こういうことも言っておるようなわけであります。非常に重大な問題ですから、幅広く根深くこれについては検討いたさなければなるまい、ただいまこれについてにわかに確たる方向を申し上げるわけにはいかないというのが現状でございます。
  393. 小宮武喜

    ○小宮委員 次に、われわれも各施設を見て回るわけですけれども、社会福祉事業従事者の年金基金の創設という問題がいろいろ出てきておるわけですけれども、御存じのように、社会福祉事業従事者がわが国の福祉サービスを担っておるわけですから、これは労働条件にしても非常に厳しい中でこれらの仕事をし、業務の遂行に当たっているわけですが、そのために非常に苛酷な労働条件もある。そういう中で非常に定着率が少ない。したがって、人材不足が深刻化しておるわけですが、そのためにいろいろここでもああいった施設に働く人たちの労働条件の改善の問題が出るわけですけれども、しかし、ただ単なる小手先の問題だけではこの問題は解決できないのじゃないかということを考えた場合に、やはり定着率を高めて、この人たちが本当に社会福祉事業に真剣に働いてもらうためには、御存じのように石炭鉱業年金基金という制度がありますが、これに見習って社会福祉事業従事者年金基金というものを創設して、ここでこの人たちの処遇改善なり作業環境の改善なりをやるべきではないかと考えます。これは非常にむずかしい問題ではありますし、いろいろな問題との兼ね合いから見てもありますけれども、ひとつ厚生省の見解だけを承っておきたい。
  394. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 直接私の所管ではございませんが、石炭年金のお話どもございましたので、問題は石炭年金の場合、安定補給金という特定財源がございますので、その費用負担の問題が格段ございませんから、問題は費用負担をどうするかということだろうと思うのです。ただその前に、今回御審議願っております改正案で相応の改善を図ったつもりでございますし、定額部分を大幅に改善いたしますことは、結局一般的には男子に比べて賃金が低い女子の従業員にとりましては、かなりの改善になっておるはずでございますので、それ以上に果たして年金制度に対する需要があるかどうか、これは関係局とも相談をいたしたいと思っておりますけれども、一番の問題は、そういう需要のほかに費用負担をどうするかという点だろうと思います。
  395. 小宮武喜

    ○小宮委員 それから今回の改正案でわれわれが一番問題にするのは、やはり保険料率の大幅な値上げにあると思うのです。だから私は、少なくとも大幅な保険料の値上げはひとつ撤回しなさい、こう主張をするものでございますけれども、しかし社会保障の増進には財政対策は非常に不可欠な問題であるということは、私も承知をしております。しかし今回の値上げは、非常に大幅な値上げになっておるということで、われわれも問題にしておるわけですが、財源対策という問題、今後の問題もありますけれども、私は大幅な修正でもやるべきだ、こういうように考えておりますけれども政府はこの修正に応ずるお考えがあるかどうか、その点いかがですか。
  396. 田中正巳

    田中国務大臣 いろいろ保険料率引き上げについては、御意見があることを私も仄聞をいたしております。私どもとしては、この案というものが当面どうしても必要な保険料率だというふうに思って御提案をしているわけでございます。しかし国会の御意思というものは、国家最高の機関の御意思でございますから、これを無視したのではどうにもならないわけでございますが、私どもといたしましては、これでもなお少ないのでございますから、きっと年金局長から御説明があったと思いますが、まだ平準保険料よりはるかに下で、これでいいのかと思うくらいのことでございますので、何とかひとつこれでいきたいものだと思っております。
  397. 小宮武喜

    ○小宮委員 法案の中身についてちょっとまた質問しますけれども、時間もございませんので厚生年金にしぼって若干質問します。  今回の改正案でいわゆる加入期間が二十八年で平均報酬月額が十三万六千四百円の場合に、配偶者の加算金六千円を含めて九万三千九十二円、いわゆる九万円年金と言われておるわけですが、実際に九万円年金を受給できる者は大体何%ぐらいですか。
  398. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 今回の改正後に九万円以上の年金を受ける方々は、新規裁定につきましては全体の大体三六%程度、それから既裁定を含む受給者全体で見ますと一四%、そういう数字でございます。
  399. 小宮武喜

    ○小宮委員 さらに今回の改正で加入期間の上限が三十年から三十五年に引き上げられたわけですが、それでは具体的に二十八年で標準報酬が十三万六千円の場合は九万円になる、そうした場合に、今度は三十年、三十二年あるいは三十五年の場合は、年金額は大体どれくらいになりますか。
  400. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 これは二十八年で約九万円でございます。それから非常に大ざっぱに申し上げますと、それ以降一年増すごとに——これはもちろん二十八年の標準年金受給者の平均標準報酬であるとされる十三万六千四百円ですか、この標準報酬が同じだとした場合でございますが、一年につきおよそ三千円ふえると御理解願っていいと思うのです。つまり一年につき報酬比例部分としまして十三万六千円の一%、千三百六十円、それから定額部分が千六百五十円でございますから、合計して約三千円ちょっと、ですから、非常に大ざっぱに言うと三千円ずつふえるわけでございます。
  401. 小宮武喜

    ○小宮委員 私が知りたいのは、結局いま二十八年で平均報酬月額が十三万六千円だから、たとえば三十年、三十五年の人は、標準報酬月額は幾らで年金は幾らもらうようになるのかということを聞いておるわけです。その十三万六千円を基準にしていま答弁を求めているわけではないのですから……。
  402. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 今回私ども二十八年の方のケースで十三万六千四百円を想定したものですから、実はそれ以上年数がふえるたびに少しずつ額が変わるものですから、一応十三万六千四百円という同じ条件の場合ということで申し上げたのでございまして、三十年では九万六千四百二十円になるわけでございますが……。
  403. 小宮武喜

    ○小宮委員 わかっていないならいいです。  それから、既裁定年金受給者の平均受給額は幾らですか。
  404. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 およそ六万八千円でございます。
  405. 小宮武喜

    ○小宮委員 厚生省が今後の厚生年金保険の収支見通しをまとめておりますが、それを見ますと、昭和五十一年の保険収入は保険料二兆八千億、国庫負担二千億、利子収入八千億、合計三兆八千億となっております。一方支出は、給付額一兆二千億で、差し引き二兆五千億の剰余金が出る、こういうふうになっております。しかも年度末の累積積立金は十四兆三千億、五年後には三十三兆三千億、十年後には六十六兆五千億とものすごい見通しをし、また積立金がかなり膨大になるわけですけれども、もちろんその前提としては、保険料率を五年ごとに一・八%上げるとか言っておりますけれども、私は、ここでこれだけの財源もあるし、結局いまの年金給付額は、標準報酬月額の六〇%ということで計算をしておるわけです。だから、これは何かILOの三分の二とかいう問題も考えておるのでしょうけれども、私は、こういった膨大な財源が出てくるわけですから、給付の方もやはり標準報酬月額の六〇%で抑えていくということについて、非常に不合理を感ずるわけですが、もっと財源に余剰が出てくれば、当然六〇%のものは六五%なり七〇%なりに上げていって、やはり厚生年金の給付をよくしていくというように努力をすべきだ。いまの収支見通しの中では、給付を標準報酬の六〇%に抑えて、ほかのものは全部これだけ上げます、標準報酬もどういうように上昇してきます、これだけは抑えますよということで、こういうような数字を出している。十五年後には百十六兆となっておるわけですね。だから、そこらあたりで、私が先ほどから言うのは、こういうような給付にしても、どうして年々上げていくかということで、私に言わせれば、いまの九万円年金は安過ぎると言いたいのです。こういったものについては、標準報酬の六〇%になぜこだわらなければいかぬのか、もう少しそれを上げていってもいいじゃないか、こういうように考えるのですが、どうでしょうか、局長
  406. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 先生御指摘になりましたのは、関係審議会の要求がございまして、一つの試算として提出した資料でございますけれども、財政の面からこれだけ余裕があるから絶対レベルをこれだけ上げるというのはやはり問題ではないか。本来的に必要な年金のレベルというのはどのようなものであるか、そういったものがまず設定されて、その財源調達をどのようにやっていくかというのが、やはり本来の年金の考え方ではないか。そういう点から言いますと、現在の平均標準報酬のおおむね六〇%というレベルは、将来にわたって考えますとかなりの水準でございますので、財政が一時的に余裕があるからということで議論するのは、基本的にどうも問題ではないかというのが私どもの考えでございます。
  407. 小宮武喜

    ○小宮委員 その問題を切り離してでも、やはり年金を改善していくという立場から見れば、去年は二十七年で八万何千円、来年は二十九年で九万五千円になるのか十万円になるのか、その次は三十年だ、そういうようなのを見れば、初めは二十五年で五万円年金で出発した、この次は二十八年で九万円だ、この次は三十年で、この次は三十五年だ。たとえば二十五年なら二十五年の人が金額が上がっていくならいいけれども、加入期間がみんな上がっていくわけだから、そのために標準報酬月額が上がるわけだから、そういうような意味では、何かかっこうのいい、努力をしておるぞ、九万円年金ですよと外部にはそれを見せつけて、実際に中身が五万円年金の場合に、二十五年なら二十五年で五万円が九万円になるならまだいいけれども、二十八年に上げたということで、われわれ見せかけだけの年金の改善ではないかというような見方もするわけです。そういう点、根本的な問題もありますけれども、これは一応これぐらいにしておきます。  それから、在職老齢年金の問題ですが、六十五歳以上については、先ほど申し上げましたように、一律に二割の支給であったのを、今度改正をされて、十一万円以下の場合は全額支給する、十一万円を超える場合についてのみ従来のように二割を支給すると改善されておりますけれども、この改善によってどれぐらいの受給者が恩典に浴することになるのか、また十一万円以上の対象者は実際どれぐらいいるのか、その点いかがですか、局長
  408. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 六十五歳以上の在職老齢年金受給者数でございますが、昭和五十一年度におきまして約四十二万人を予定いたしておりまして、そのうち標準報酬月額十一万円以下のため全額支給となる者は、おおむね六〇%の二十四万人を予定いたしております。それから六十三歳までの在職老齢年金受給者数でございますが、十八万四千人程度を見込んでおります。
  409. 小宮武喜

    ○小宮委員 この十一万円というのは、どうして決めたのですか。
  410. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 私どもが改正案をまとめます際に、従来の慣例によりまして関係審議会の御審議を煩わしたわけでございますけれども、その際、できれば撤廃してもらいたい、これがむずかしければかなり大幅な改善という要望が非常に強くございました。それで、いろいろ総合的に判定しまして、おおむね六割程度の方がこれに該当するというところで、一応十一万という線を引いたということでございます。
  411. 小宮武喜

    ○小宮委員 どうもあいまいではっきりしませんけれども、もう時間がございませんから先に進みます。  六十歳以上六十五歳未満の在職老齢者に対する年金の停止または一部のカット、これは六十五歳以上の場合も同様ですが、これは私、考えてみて、何のためにこういうような措置をするのか、その根本的な理由がどうも理解できません。厚生年金の一部支給停止だとか一部カットだとか、こういうようなことをする根本的な理由は何ですか。
  412. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 結局この制度が導入されました事情、つまりもともと厚生年金は退職を条件にしておった、しかし六十五歳以上は賃金の低い人も多いであろうしということで、他の制度とのバランスから六十五歳になれば一定額を支給しましょう、それとの見合いでその後六十歳から六十五歳までの人につきましても何か差し上げたいというようないきさつがございました。  しかし何と言いましても、所得保障としての年金制度が、現に就労しておって賃金を得ておる人にすべて一〇〇%の年金を出すということは、やはり年金制度の財源配分の問題として問題でございますので、何らかの支給制度は必要であろう、そういうことが現在の在職老齢年金制度趣旨と理解しております。
  413. 小宮武喜

    ○小宮委員 時間がなくなりますから先に進みます。  今回の改正に伴って厚生年金の保険料も大幅に引き上げられ、同時に、保険料算定の基礎となる標準報酬の上限も、現行の二十万から三十二万に、下限も二万から三万に引き上げられたわけですが、標準報酬が二十五万の人、三十二万の人で、従来よりは保険料が毎月どれだけふえることになるのか、教えてください。
  414. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 いま先生のお尋ねの点と少し数字が違うのですが、手元にある数字で二十万、二十六万、三十二万、それぞれの人について言いますと、現行では二十万の人が七千六百円、それが改正案では九千四百円、これは男子の場合であります。二十六万の方、これは現行は全部一緒でございますが、改正案では一万二千二百二十円、それから三十万未満の方、これは改正案では一万五千四十円でございます。
  415. 小宮武喜

    ○小宮委員 かなり高くなりますね。われわれも財政が現在赤字であれば、当然収入の多い人はそれに応じて負担してもらうというその精神は理解します。しかしながら、先ほども申し上げたように、三十万の人は二倍になるわけですから、非常に大幅値上げということになっております。そういった意味で、先ほどから大幅値上げについては再考しなさい、撤回しなさいと言っておるわけですが、それは先ほど質問で大体済んでおりますので、これはやめます。  それから、厚生省は福祉向上のため、厚生、国民年金等の公的年金のうち、毎年増加する積立金の三分の一は還元融資として住宅とか保育所とか老人ホームの建設に融資されておりますね。この年金還元融資額の割合を二分の一に拡大をするという方針を厚生省は打ち出しておるようですが、これは五十二年度から実施されるのかどうか、その点ひとつ明らかにしてください。
  416. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 その件につきまして、厚生省としてそのような方針を現段階で固めたということはございません。一部新聞でそのような趣旨の報道があったことは事実でございますけれども、ただ近い将来、恐らくは年金の給付費が相当増加してまいりますから、この還元融資枠というものの伸び率が相対的に鈍化するということが当然予想されるわけです。そうした場合に、やはり現行の三分の一ということでは十分対処できないということも十分考えられますから、将来の問題として、そういうことは考えなければいかぬだろうというようなことが関係審議会でも議論されておりますし、私どもも、そのような事態になれば、資金需要等も勘案して、そういう折衝をいたさなければならぬというふうに考えております。
  417. 小宮武喜

    ○小宮委員 時間も参りましたので最後に一点だけ……。  厚生年金だとか国民年金、船員保険等による老齢年金及び通算老齢年金は、現行制度では老齢者年金特別控除制度によって、六十五歳以上の老齢者が受ける公的年金に対しては七十八万円までが非課税となっていることは御案内のとおりです。しかし年金は、老後の生活保障の中心となっておりますので、この税金については、私は、やはり六十五歳以上の人たちに対しては非課税とすべきであるというふうに考えますが、いかがでしょうかということと、特に無拠出の老齢福祉年金あたりは、やはりぜひひとつ非課税にしてもらいたいというように考えますが、いかがでしょうか。非課税にすることが非常に無理というような問題もあることもまあ承知するわけですが、この七十八万円の限度額を少なくとも百万円ぐらいまで引き上げてもらいたいということを強く要望しますが、ひとつ御答弁を願います。
  418. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この非課税問題がむずかしくても、現在の控除限度額を大幅に引き上げたいということで関係方面とも折衝したのでございますが、今度年は減税見送りに伴う各種控除額の据え置きということもございまして、七十八万円の限度額も含めまして見送りになったのは、私どもとしては、大変残念でございます。今後ともこの点は努力してまいりたい。
  419. 小宮武喜

    ○小宮委員 もう時間もございませんので、これで私の質問を終わります。
  420. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 次回は、明十三日木曜日、午前九時四十五分理事会、十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十三分散会      ————◇—————