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田中国務大臣 ただいま議題となりました
厚生年金保険法等の一部を改正する
法律案につきまして、その
提案の理由及び
内容の概要を御
説明申し上げます。
高齢化社会の到来を目前に控えたわが国において、老後保障の中核たる役割りを果たすべき年金
制度に対する国民の期待は非常な高まりを示しております。
昭和四十八年度には、厚生年金及び国民年金を中心に年金額の水準を大幅に引き上げるとともに、多年の懸案でありました物価スライド制を導入するなどの大幅な改善が行われた
ところでありますが、その後、今日までの間における社会経済情勢の変動は著しく、これに適切に対応するため、給付額の引き上げ等の給付改善を行う必要が生じております。
今回の改正法案は、このような
趣旨にかんがみ、厚生年金、国民年金等について、本来
昭和五十三年度に予定される財政再計算期を二年繰り上げて
昭和五十一年度に実施し、給付額の引き上げを行うとともに、障害年金、
遺族年金等についても各種の改善
措置を講ずるほか、福祉年金の額の引き上げ等を行うことにより、年金
制度の実質的な充実改善を図ろうとするものであります。
また、本法案は、年金給付の改善とあわせて、児童扶養手当、特別児童扶養手当等についても額の引き上げその他の改善を行い、国民の福祉の向上を図ることといたしております。
以下、改正案の主な
内容につきまして御
説明申し上げます。
まず、厚生年金保険法の一部改正について申し上げます。
第一に、年金額の引き上げにつきましては、改正後新たに老齢年金を受ける者の標準的な年金額を月額約九万円に引き上げることとし、定額部分については単価の引き上げ及び被保険者期間の上限の延長、報酬比例部分について過去の標準報酬の再評価を行うことといたしております。そのほか、加給年金額並びに障害年金及び
遺族年金の最低保障額を引き上げることといたしております。
第二に、在職老齢年金の改善として、六十五歳以上の在職者に支給される老齢年金について、年金額の二割が一律に支給停止されているのを、一定の標準報酬月額以下の者には全額を支給するとともに、六十歳以上六十五歳未満の在職者に支給される老齢年金について、支給
対象者の標準報酬月額の限度額を引き上げることといたしております。
第三に、障害年金及び
遺族年金の受給資格期間について、他の公的年金
制度の加入期間を通算することとするほか、通算老齢年金の受給資格期間を満たした者が死亡した場合に、その
遺族に通算
遺族年金を支給することといたしております。
第四に、
遺族年金について、寡婦加算
制度を創設し、有子の寡婦及び六十歳以上の高齢寡婦には一定額を
遺族年金の額に加算することといたしております。
第五に、障害年金について、廃疾
認定日を初診日以後三年を経過した日から一年六カ月を経過した日に早めるとともに、廃疾
認定日には軽度の障害であるため障害年金の支給の
対象とならない者が、初診日から五年以内に障害年金の支給の
対象となる程度の廃疾の状態に該当するに至ったときは障害年金を支給する事後重症
制度を創設することといたしております。
第六に、標準報酬については、最近における賃金の
実態に即して、三万円から三十二万円の三十六等級に改めることといたしております。
第七に、保険料率については、給付改善及び将来の受給者の増加に対応して、長期的に財政の健全性を確保するため、千分の十八引き上げることといたしております。
次に、船員保険法の一部改正についてでありますが、おおむね厚生年金保険の改正に準じた改正を行うことといたしております。
次に、国民年金法の一部改正について申し上げます。
拠出制国民年金については、まず、年金額の引き上げを図ることとし、二十五年加入の場合の年金額を月額三万二千五百円とし、現実に支給されている十年年金の額を月額二万五百円に、五年年金の額を月額一万五千円に、それぞれ引き上げることといたしております。そのほか、障害年金の最低保障額及び母子年金等の額を引き上げることといたしております。
第二に、厚生年金保険の改正と同様に、障害年金及び遺児年金について通算
制度を創設するとともに、障害年金について廃疾
認定日を早めることといたしております。
第三に、国民年金の財政につきましては、まず、保険料の額について、財政の健全性を確保する見地から、
昭和五十二年四月分より月額二千二百円に改定することとし、以後
段階的に引き上げることといたしております。また、将来にわたる財政の安定化に資するため、国庫負担方式を拠出時負担から給付時負担に切りかえることといたしております。
福祉年金については、老齢福祉年金の額を月額一万三千五百円に、障害福祉年金の額を一級障害について月額二万三百円に、二級障害について月額一万三千五百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金の額を月額一万七千六百円に、それぞれ引き上げるほか、母子福祉年金及び準母子福祉年金について、子の年齢要件を義務教育終了前から三年計画で
段階的に十八歳未満に引き上げることといたしております。
次に、児童扶養手当法の一部改正についてでありますが、児童扶養手当の額を、児童一人の場合月額一万七千六百円に、児童二人の場合月額一万九千六百円に、それぞれ引き上げるほか、支給
対象児童の年齢を義務教育終了前から三年計画で
段階的に十八歳未満に引き上げることといたしております。
次に、特別児童扶養手当等の支給に関する
法律の一部改正についてでありますが、特別児童扶養手当の額を、重度障害児一人につき月額二万三百円に、中度障害児一人につき月額一万三千五百円に、福祉手当の額を重度障害者一人につき月額五千円に、それぞれ引き上げることといたしております。
最後に、実施の時期については、厚生年金保険及び船員保険の改正は本年八月から、拠出制国民年金の改正は本年九月から、福祉年金、児童扶養手当等の改正は本年十月から、国民年金の保険料の額の改正は
昭和五十二年四月からとしております。なお、障害年金及び
遺族年金の通算
制度の創設並びに障害年金の廃疾
認定日の変更及び事後重症
制度の創設は政令で定める日からとしております。
以上が、この
法律案の提出理由及びその
内容の概要であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
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