○多賀谷
委員 私は、保全機関を設けることが悪いと言っていませんよ。これは担保にならないということを言っておるのですよ。例を挙げましょう。ある
企業が退職金を借りてきたわけです、よそから。これは
政府機関から借りておる。借りるためには、退職金を支払ったという個人の署名がなければ貸さないのです。それを全部署名をとっちゃった。そして借りてきたその金は再建資金に使っちゃったのです。いいですか、自分の退職金をもらっていもせぬで、もろうたという判をつくぐらいの組合もあるのですよ。それを組合で決定して、みんなに判をつかせたわけです。金融機関に行きますと——合理化事業団ですよ、整備資金を貸したのは。石炭合理化事業団に行きますと、ちゃんともらいましたという判がいっておるのですよ、書類が。ところが全然もらっていないのですよ。やはりこれほど問題があるのです。ですから、私はそのことをいま言っておるわけじゃないのですが、この保全機関ということで、
労働者の代表が参加しておるじゃないかということではどうも担保ができていないのじゃないか、こういうように思います。
それから、この社内預金というのは退職金が多いのですよ。どういうことかと言いますと、退職をする場合に退職金がないのですよ。通い通帳だけやるのですよ、通い通帳だけ。ことに私の場合は石炭に
関係しましたから、財閥
会社ですからみんな信用しておるわけです。そして退職金を全然もらっていないのです。通い通帳をもらっておるわけです。ですから膨大な社内預金が問題になった。それは三井鉱山を初めとして問題になった。そこで結局払えないという
状態が起こって、いま社内預金は
政府機関から肩がわりしてもらったのですよ、債務を。まあこれは石炭という特殊事情があった。ですから私は、この保全機関というので、ただ
労働組合が参加しておるということだけでは担保にならないのじゃないか、これが
一つ。
それからもう
一つは、最近、要するに三月三十一日よりも後に短期に預金をした者です。これの救済ができないじゃないかということです。私は、その退職金が社内預金というのはおかしいじゃないか、こういうことなんですけれども、これは
企業が、第二
会社をつくったときにその退職金を払う。その退職金を、もとの
企業に資金がありませんから管理貯金にしておるという場合が非常に多いのです。そういう場合がきわめて多いのですよ。そうすると、現在は当該
企業にはいないけれども、管理貯金だけは前の退職金を管理貯金として預け入れているという、この例がきわめて多いのです。ですから、現在従業員でおる人だけの管理貯金じゃなくて、退職者の管理貯金が非常に多い。現実、大きいところを言いましても、たとえば新日鉄でも退職者は皆管理貯金に預けておるのですよ、利子が高いから。現実はそうですよ。そうすると
会社としては社債を発行するよりも、九分の利子でも安いのですよ。ですから、退職者の預金は強制はしませんけれども、ほとんど管理貯金になっている。社内預金というものが、現在の従業員の社内預金ではないのです、ほとんど一番大きい額は。調べてごらんなさい。そういうところにやはり問題があるのです。幸いにして余りつまずきがなかった。あったのは石炭です。しかし、石炭は何か補てんをする方法をいたしましたので、十分ではありませんでしたけれども、いま問題がないとしても、非常な大きな問題だということが
一つ。
時間もありませんからついでに言っておきますが、大正炭鉱という炭鉱があります。いまだに退職金が払われていないのです。一八%しかもらっていないのです。山がつぶれたのは
昭和三十九年。こういう例があります。それからまた、私が実際扱った例で、千九百万円退職金があったけれども、もらった金が七十五万円というのがありました。二百人の従業員で。
ですから、社内預金並びに退職金の
確保というものはどうするか。ことにいま、先ほどお話のあった
賃金の未払いというのはほとんど少ないのですよ、現実問題としては。いま
賃金を払わないで
労働者が来ますか。
賃金だけ、定期給与だけは払うのですよ、それはもう倒産する寸前まで。問題はほとんどが退職金なんですよ。ですからこの退職金の
確保をどうしてするのか。というのは、三条から五条に来ますと、五条はなお義務じゃないでしょう。これは
措置の努力義務ですね。「講ずるように努めなければならない。」と書いてある。ですから、一番やはり問題が起こるのは、ぼくは現実問題としては退職金じゃないか、こういうように思います。
それから、ついでですから言っておきますが、
賃金未払いは現実に起こらないけれども、
労働組合が労金から借りて、
会社のかわりに
賃金を払っておるのですよ。現実はそうなんです。それだけ
労働組合は協力するわけですよ。
会社は、ひとつ労金から金を借りてくれと言うのです、組合に。そこで組合は労金から金を借りて、そして
賃金を払っている。要するに労金から
労働組合が借りて、その金を
会社に貸して、
会社が払っておるわけです。ですから、
労働者と
会社との間には
賃金未払い問題は起こっていないのですよ。問題は、
会社が倒産しても、これは一般債権ですよ、担保も何もない。借りておるのは組合が借りておるのですから。こういうのは枚挙にいとまがないですよ。いま労金を調べてごらんなさい。こういうものを一体どういうふうに救済するのか。
まあ、悩みは尽きぬわけですけれども、現実がこういう
状態であるということをひとつ御理解を願って、時間がありませんからこれで終わりたいと思いますが、後から法務省にちょっと一言だけ聞いておきたいと思います。