○木村国務
大臣 ただいま議題となりました
国有鉄道運賃法及び
日本国有鉄道法の一部を改正する
法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。
国鉄は、過去百年間
国内輸送の大動脈として、
国民生活の向上と
国民経済の
発展に寄与してまいりました。今日全
輸送機関の中で国鉄が占める
輸送割合は逐年低下し、かつての独占的地位は薄れてきてはおりますが、
鉄道としての特性を発揮できる
輸送分野もなお多く存在するものと思われます。すなわち、国鉄は、わが国の
交通体系の中で、今後とも、
都市間旅客
輸送、
大都市圏旅客
輸送及び中長距離・大量
貨物輸送について
重点的にその役割りを果たすとともに、国鉄の本来の使命から見て、これらの分野以外の分野を含めた全体につきまして独立採算性を指向した自立経営を行っていくことが強く期待されるものであります。
一方、国鉄の財政は、
昭和三十九年度に赤字に転じて以来急速に悪化の
傾向をたどってまいりました。このため、
政府におきましては、
日本国有鉄道財政再建
促進特別措置法に基づき、
昭和四十四年度及び
昭和四十八年度の二度にわたって国鉄の財政再建に関する
基本方針を決定し、各種の
対策を鋭意
推進してまいったところであります。しかしながら、その後、
輸送構造の
変化、運賃改定のおくれ等による収入の不足と人件費及び物件費の大幅な上昇等による経費の増高のため、国鉄財政は
改善の兆しを見せず、
昭和五十年度には約八千五百億円の減価償却後損失を生じ、繰越欠損金は約三兆一千億円にも及ぶ見通しとなり、
昭和四十八年度を初年度とする現行財政再建
計画の
目標を達成することはきわめて困難な状況に立ち至っております。
このような現況にかんがみ、
政府といたしましては、この際現行の財政再建
対策が十分にその目的を達成できなかった原因について反省を加え、抜本的な再建
対策を策定して、これを強力に実施していく必要があると考え、昨年末に
日本国有鉄道再建
対策要綱を閣議了解いたしました。
今回の国鉄再建に当たりましては、国鉄自身が安易な経営に陥ることのないよう厳しい姿勢のもとに
国民に対して責任ある経営体制を確立することが再建を達成するための
基本であり、このためには、労使関係を速やかに正常化することを初め、責任ある業務遂行体制と厳正な職場規律を確立するとともに、組織、人事制度の抜本的改革を行うことが必要であると考えております。
次に、国鉄の財政問題につきましては、その収支の均衡を速やかに回復し、以後これを維持していくことをもって
基本方針といたしております。このため、国鉄の業務運営の
合理化その他の経営の
改善を図る一方、いわゆる過去債務の
処理を初めとする国の助成措置の強化とあわせて平均約五〇%の運賃改定を実施しようとするものであります。
次に、この
法律案の概要について御説明申し上げます。
まず、
国有鉄道運賃法の改正の内容について申し上げます。
第一に、
鉄道の普通旅客運賃につきましては、その賃率をおおむね五五%引き上げ、現行賃率では営業一キロメートルごとに、六百キロメートルまでの部分については五円十銭、六百キロメートルを超える部分については二円五十銭となっておりますのを、六百キロメートルまでの部分については七円九十銭、六百キロメートルを超える部分については三円九十銭に改定することといたしております。
第二に、航路の普通旅客運賃につきましては、
鉄道の普通旅客運賃とほぼ同
程度の改定を行うことといたしております。
第三に、
貨物につきましては、車扱い
貨物運賃の賃率をおおむね五九%引き上げることといたしております。
なお、これらの改定は、本年六月一日から行うこととし、これによりましておおむね三七%の増収が得られる見込みとなっております。
次に、
日本国有鉄道法の改正の内容について申し上げます。
第一に、国鉄は、その
事業の収支の均衡の速やかな回復及び維持を図るとともに、その業務の適正な運営を図ることにより、その経営の健全性を確立するよう努めなければならないことを明らかにいたしております。
第二に、国鉄に対して経営の
改善に関する
計画の作成及び実施を義務づけるとともに、運輸
大臣が経営
改善計画の変更その他経営の
改善に関し必要な事項について指示をすることができることといたしております。
第三に、
政府は、
昭和五十年度末の国鉄の長期債務のうち、累積赤字相当額の一部について、その償還が完了するまでの毎年度その償還額を無利子で貸し付けるとともに、その利子を補給することができることといたしております。
第四に、前述の貸付金の償還が完了するまでの間、国鉄は、特定債務整理特別勘定を設けて他の勘定と区分計理を行うとともに、収入支出子算についても他の勘定と区分することといたしております。
第五に、国鉄は、前
事業年度から繰り越された損失があるときは、運輸
大臣の承認を受けて、資本積立金を減額して整理することができることといたしております。
第六に、
政府は、国鉄経営の健全性の確立のため必要があると認めるときは、財政上の措置その他の措置を講ずるよう特別の配慮をすることといたしております。
なお、以上の措置に伴い、
日本国有鉄道財政再建
促進特別措置法は廃止することといたしております。
以上がこの
法律案を提案する理由であります。
何とぞ慎重御審議の上速やかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。(「反対だ」と呼ぶ者あり)