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1976-05-07 第77回国会 衆議院 運輸委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月七日(金曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 中川 一郎君    理事 江藤 隆美君 理事小此木彦三郎君    理事 加藤 六月君 理事 西銘 順治君    理事 増岡 博之君 理事 金瀬 俊雄君    理事 斉藤 正男君    三浦  久君       片岡 清一君    木部 佳昭君       佐藤 孝行君    佐藤 文生君       關谷 勝利君    田村  元君       丹羽喬四郎君    細田 吉藏君       三原 朝雄君    宮崎 茂一君       渡辺美智雄君    太田 一夫君       久保 三郎君    兒玉 末男君       坂本 恭一君    楯 兼次郎君       梅田  勝君    紺野与次郎君       石田幸四郎君    松本 忠助君       河村  勝君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 木村 睦男君  出席政府委員         運輸政務次官  佐藤 守良君         運輸省船舶局長 内田  守君         運輸省港湾局長 竹内 良夫君         海上保安庁長官 薗村 泰彦君  委員外出席者         環境庁水質保全         局企画課長   西村 純幸君         国土庁大都市圏         整備局計画官  村井  登君         水産庁研究開発         部漁場保全課長 森川  貫君         海上保安庁総務         部長      鈴木  登君         海上保安庁警備         救難部長    山本 了三君         建設省道路局企         画課長     浅井新一郎君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   徳安 實藏君     片岡 清一君   中村 寅太君     細田 吉藏君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     徳安 實藏君     ————————————— 四月二十四日  国鉄運賃値上げ及び運賃法定制度廃止反対  に関する請願庄司幸助紹介)(第三六五八  号)  同(庄司幸助紹介)(第三六九一号)  国鉄運賃値上げ反対に関する請願三浦久君  紹介)(第三七三五号) 同月二十七日  東久留米市上の原地区東京航空交通管制部移  転に伴う跡地払下げに関する請願外二件(福田  篤泰君紹介)(第三九四四号) 同月三十日  山陰本線等輸送力増強に関する請願瀬野栄  次郎紹介)(第四〇二三号)  国鉄運賃値上げ反対等に関する請願金子満広  君紹介)(第四〇七五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  海洋汚染防止法の一部を改正する法律案(内閣  提出第三三号)      ————◇—————
  2. 中川一郎

    中川委員長 これより会議を開きます。  海洋汚染防止法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。金瀬俊雄君。
  3. 金瀬俊雄

    金瀬委員 私は、まず最初に、海上保安庁が平素、海上におけるあらゆる災害に備え、大変な努力をされ、精進をされておることに心から敬意を表します。  しかし、努力した結果がすべての国民や海で働く人たちに理解され、感謝されているというわけではございません。問題によりますとかえって逆の結果を与えるような面もあり、十分な成果を上げておらないという点もありますので、私はこういう点を幾つか取り上げながら、このたび提案されております改正案に関連して御質問を申し上げます。  まず、第一に、この改正法案は、最近の海上事故がますます巨大なものとなって、たとえば東京湾に起きた第十雄洋丸衝突事故あるいは瀬戸内海における三菱の石油流出事故等、いままでと全く異なった、私たちが想像をするよりもはるかに上回るような被害が広範囲にしかも巨額に達するものがあり、いままでの港則法とか海上交通安全法とか海洋汚染防止法ではこういう事態には対応できないということを判断して今回の法改正に踏み切ったのかどうかということについて御説明願いたいと思います。
  4. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 海上における大規模火災、大量の排出油による海上災害防止につきましては、従来から、ただいま御指摘がございましたように、海洋汚染防止法によって、海洋汚染観点から、油の排出規制排出された油の防除等について対策を講じますとともに、港則法海上交通安全法等によりましてこれらの災害原因となる事故未然防止に努めてまいったのでございますが、最近における大規模海上災害発生の状況にかんがみまして、さらに海上災害防止という観点からその対策を強化する必要があると考えまして今回の改正を行うこととしたものでございます。  そこで、改正の眼目といたしましては、まず、現行の海洋汚染防止法では、防除対象となっておりますのは、重油等のいわゆる黒物という油に限られておりまして、引火性を有する白物と言われる揮発性の油によるところの火災発生防止対策が全く欠けておりますので、そのための所要の措置を講ずることにいたしました。  それから、第二番目には、従来から行っておりました黒物の油による汚染被害につきましても、初動の措置を円滑にするとともに効果的な防除を行うために、その体制を確立する必要があるところから、まず、油回収船配備の義務づけを行うこととか、排出油防除計画の作成を行うこととか、海上災害防止センターに対する指示など、油の防除に関する措置を強化することにいたしたものでございます。  もちろん、そういったことで海上災害対策を新たに強化する観点から本法の改正をお願いする次第ですが、従来からやっておりました海上交通安全法港則法等によりますところの事故未然防止についても決してないがしろにするわけではございませんので、引き続きその充実強化を図っていきたいと考えております。
  5. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いままでの法律を適用して十分やっておったけれども、それではまだ不十分な点が出てきたということで今度の改正案に踏み切ったということでございますが、それでは、いままでの法律の中で、たとえば海上交通安全法は四年前に衆参両院を通過いたしまして、施行されてからことしでちょうど三年になるわけでございますが、衆参両院でこの法案が通過するときに付帯条件が決議されております。  この付帯条件が的確に守られてきたか、また、実施されてきたか。もし実施されたとすればどういう点が実施されておって、どういう点が欠けておったかということについて御説明願いたいと思います。
  6. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 海上交通安全法衆参両院の通過に当たりましての附帯決議につきまして、私ども運輸省の分を御質問に答えて申し上げたいと思います。  まず、第一番目に、「外海の適地に中継基地を設けパイプライン網整備を急ぐ等、船舶航行ふくそうの緩和をはかると共に将来長期的に巨大船舶内海航行について、上限規制等歯止め措置を講ずること。」という点がございますが、これにつきましては、四十六年から運輸省では各種の調査を行いまして、現在準備されている新港湾整備五カ年計画案においても、東京湾大阪湾瀬戸内海地区においてパイプラインによる輸送システムの促進ということを考えておるわけでございます。  ただ、残念ながら、現在の港湾法では、港湾計画の立案に当たりまして、地方公共団体がこれに当たることとなっておりまして、この構想の実現のためには地元意見の一致による計画の発意ということがなければならないのですが、現在、地元意見がまとまっているところまで至っていないというのが実情でございます。  巨大船舶内海航行を制限することにつきましては、ただいま申し述べましたCTSパイプライン網の制定を待って措置するということになりますので、遺憾ながらCTSパイプライン網整備がはかばかしくはかどっておりませんので、その措置を待ってからでなければ航行制限を行うことはできないと考えております。  第二番目に、「将来法指定航路におけるふくそう増大化によりいかにしても船舶の航行安全と漁業操業とが実態的に両立しがたい場合においては、国の責任において漁業者に対する補償制度を確立すること。」という点がございますが、この点につきましては、海上は言うまでもなく船舶交通の場であるとともに漁業生産の場でもございますので、両者の互譲による調整が非常に大事だと私ども考えております。  この趣旨に沿うために、海上保安庁では漁業関係者から成る協議会を各地に結成させまして、海上保安庁出先機関との話し合いの場を設けるとともに、これを通じて航路付近出漁船に対して早目巨大船通航予定時刻を周知して、漁業操業及び避航を容易にするということを行っております。  また、航路においては、もちろん、われわれの巡視船艇によります現場指導に加えまして、協議会所属の漁船の協力も得まして、通航船舶の動静を出漁船に伝達するとともに、操業方法避航方法について指導を行う等、通航船舶安全航行漁業安全操業との確保にわれわれは努めておるつもりでございます。  それから、第三番目に、「船舶交通ふくそうする海域における旅客船の航行安全については、人命尊重観点から、一層安全対策充実強化に努めること。」ということが書かれておりますが、この点につきましては、私どもは、毎年行われます海上交通安全運動の折を初め、年間を通じて、カーフェリー等旅客船について、緊急時の避難であるとか安全運航指導救助訓練関係法令の周知に努めておるつもりでございます。  以上で、運輸省の分三点についてお答えいたしました。
  7. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この中で、参議院の附帯決議の第五点で、「加害者不明の船舶油等による漁業被害については、これを救済するための有効な制度の確立をはかること。」ということが出ておるわけですが、いままで、原因者不明の油濁被害に対しては、対策として、財団法人漁場油濁被害救済基金というものができてそういうものがある程度救済されてきたわけですが、この法律は恒久的な法律ではなくて期限があるわけです。ことしあたり期限が切れるということでございますが、このことについてはどういう対策をとっておるか、質問申し上げます。
  8. 森川貫

    森川説明員 御指摘のとおり、原因者不明の油濁によります漁業被害救済につきましては、現在、暫定的に財団法人漁場油濁被害救済基金に助成いたしまして二年間の対策を講じておるわけでございます。  水産庁におきましては、今後の救済対策といたしまして、環境庁物的被害救済に係る費用負担等検討委員会報告書並びに公害に関する費用負担の今後のあり方についての中央公害対策審議会費用負担部会の答申の結論を基礎にいたしまして、具体的な対策検討するために、昭和五十年度におきまして公害による漁業被害の全国的な事例調査を実施いたし、専門的な学者、弁護士等協力を得まして、現在、その結果の取りまとめ、今後の救済対策の方向を検討しておるところでございます。  水産庁といたしましては、これらの検討結果を参考にいたしまして、運輸省通産省等関係各省庁の協力を得まして、五十二年度以降におきましては、現在の暫定救済措置を恒久的な制度にすることにつきまして積極的に取り組んでまいる所存でございます。
  9. 金瀬俊雄

    金瀬委員 これは時限的に五十年と五十一年だけこの基金制度救済されるということになっておるわけですね。そうしますと五十一年度で切れるわけですが、この制度については漁民が非常に希望しておるし、また、これがなければ原因者不明の被害について漁民救済するような道がないわけですので、この点については、恒久的にこのことが法制化されるように御努力をお願いしたいと考えております。  この問題については、大臣がおいでになりませんので答弁は大臣の代理で結構でございますけれども運輸省としても水産庁とともども努力するということを確約していただきたいと考えております。
  10. 佐藤守良

    佐藤(守)政府委員 金瀬委員の御質問につきましては全くおっしゃるとおりでございまして、今後、水産庁と協議しまして、その意思に沿うよう努力いたしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  11. 金瀬俊雄

    金瀬委員 佐藤政務次官が確約してくれましたので、この問題については、昭和五十二年度から実現されますように徹底的な御努力をお願いしたいと考えております。  次に、第三項でございますが、東京湾の場合を例にとってみますと、船舶巨大船が航行するためにいままで漁場であった場所操業できなくなるというような場所が相当出てきておるわけでございますが、そういう場合には、附帯決議では、適切な補償措置をするということと、もう一つ代替漁場をつくることを国の責任においてやるというようなことが書かれておるわけでございますが、いま、漁場が使えなくなっている場所がどのくらいあるのか、また、その場所に対する補償措置をどうするつもりなのか、また、そういう漁場を失った漁民に対する代替漁場をつくる計画があるのかどうか、そういうことについて御質問申し上げます。これは海上保安庁の方と水産庁の方でお答え願いたいと思います。
  12. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、私どもは、海上船舶交通の場であるとともに漁業生産の場であるということを両立させて考えていきたいと思っておりますので、現在の海上交通安全法の施行の過程におきまして、お互いの互譲によって調整が図られておると私どもは思っておりまして、現状において両立することが困難であるというふうには私ども考えておらないのです。  今後も両立するように、海上交通あり方を十分検討していくときに、漁業の立場も考え合わせていくつもりでございます。
  13. 金瀬俊雄

    金瀬委員 長官は、互譲ということで、話し合いで解決したいということでございますが、いま、東京湾の例をとってみますと、三分に二隻ぐらいの割合で船がどんどん入ってきております。そういう航路とか航路周辺においては操業がとてもできるような状態ではないということが漁民から言われております。  そういう場合には、その地域で働いておる漁民に対しては補償を十分することによって被害を最小限に食いとめなければならないと思いますが、そういう点については、互譲ということではなくて、この地域はとても漁業ができないという判断に立った場合には、約束のとおり速やかに国で補償するような処置をとっていただきたい、また、そういうふうに話を進めなければならない、さように思っておりますが、長官の決意をお伺いしたいと思います。
  14. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 海上交通安全法ができまして四年ほどになるのでございますが、航路におきます交通量は確かにかなり多い実態ではございますけれども、私ども、この四年間に特にそういう状態が非常に過密なものになって、現状ではもうとうてい漁業船舶交通とを両立させて行うことができない状態になってしまったとは実は思っておりませんので、私ども海上交通安全の方策を考えるときにも、必ず、そこが漁業生産の場であるということを十分考慮して対策を講じていきたいと思っておるのが現状でございます。
  15. 金瀬俊雄

    金瀬委員 長官と私の考え現状認識において多少違う点もありますので、長官には、今度、東京湾の入口とか、あぐり船とか、そういうものを調査していただくなりあるいは意見を聞いていただいて、対策をもう一度再検討していただきたいと思います。  それから、水産庁の方は現状をどう思っていますか、その点についてお伺いします。
  16. 森川貫

    森川説明員 担当課長ではございませんが、お答えいたします。  ただいまの問題につきましては、海上保安庁長官のおっしゃられるとおり、水産庁海上保安庁十分事前調整をしつつ問題のないように取り計らっておるわけでございますが、漁業法上、船舶航行等、いわゆる公益上の必要がある場合には、漁業権等につきまして変更あるいは取り消しができることになっております。  この場合には、同法によりまして、その損失に対して補償するということになっておりますので、具体的な事例があります場合にはこの法律に基づいて措置がされるというふうに考えております。
  17. 金瀬俊雄

    金瀬委員 ここに代替漁場をつくるというようなことが付帯条件で決議されていますが、この代替漁場という点については水産庁で研究したことがあるかどうか、お伺いします。
  18. 森川貫

    森川説明員 先ほど申し上げましたように、担当課長でございませんので、十分検討いたしまして、後ほど資料としてお答えいたしたいと思います。
  19. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでは、この問題については、約束でございますので、附帯決議になっておりますので、漁業振興のために代替漁場をつくることを十分検討していただきたい、さように希望しておきます。  次に、この法案内容にわたりまして御説明していただきたいと思いますが、たとえば東京湾の例をとってみますと、流出油の発見というのは、四十九年が三百六十四件、五十年が百二十一件。これは海上保安庁調査とは多少違っておりまして、この方が多くなっていますが、そのほとんどが原因不明であるということでございます。  この原因不明の最大の原因はどんなことなのか、御説明願いたいと思います。
  20. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 五十年の数字で申し上げますと、油による海洋汚染が千五百八十四件ございますが、そのうち排出源が明らかなもの千七十一件で、六八%でございます。排出源不明のものが五百十三件で、三二%ございます。ただ、この排出源不明のものは、四十九年の七百八件に比べて百九十五件、それから四十八年の七百五十二件に比べると二百三十九件減ってきておるという現状にはございます。  私どもも、原因者不明の油濁をできるだけ減少を図らなければならぬと思って、鋭意監視取締まりを実施しているところでございますが、やはり、正直に申しまして、原因者不明の油の中には、船舶から排出されている油が相当数あると私ども考えております。  そこで、私どもは、船艇航空機を使いまして、できるだけこれの監視取り締まりに当たるということに努力をしているわけでございますが、何分広大な海域でございますので、全国を網羅してということはなかなか行き届かないというのが実情でございます。しかし、冬場島根県の沖に原因者不明の油が流れ着くという事例が毎年多いという事実がございますので、私ども、ことしも福岡基地から航空機を飛ばしまして、特に冬場、風向きによって日本海に原因者不明の油が流れ着くという時期に厳重に監視取り締まりを行って、その結果はよかったように私は思っております。  そういうことでございますので、そういう原因者不明の油の排出件数ができるだけ減りますように、私ども今後とも努力をさせていただくつもりでございます。
  21. 金瀬俊雄

    金瀬委員 不法に油を投棄したりほかのものを投げ捨てるということは夜間とか荒天とかいう場合が多いので、取り締まる場合に大変苦労されると思いますが、この点については最大限の努力をしていただきたいと考えております。  それから、船舶から油を流出させるということの海上保安庁からいただいた資料によると、昭和五十年度は、故意による油の排出、つまりわざとやったというのが二百五十六件で、取り扱い不注意のために油が出たというのが五百五十四件です。それから船の破損というのは三十五件で、海難というのが百三十六件です。この海難破損というのはやむを得ないという考えはわれわれにも多少わかるわけでございますが、故意排出とか取り扱い不注意というものについては、これは取り締まり方法によっては何とかして防げるのではないかということが考えられますが、これに対する対策はどうなっておるか。
  22. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 先生の御指摘のように、故意排出だとか、その他取り締まり対象になるような事例がかなり多いのでございます。五十年の例で申しますと、先ほど申し上げました汚染件数千五百八十四件のうちで、海洋汚染防止法の四条によりましての「油を排出してはならない」という規定に違反します事例については、検挙件数が五百八十九件、それからその他港則法違反によって取り締まりを行いました件数が二百三十五件、合わせて検挙件数が八百二十四件でございまして、汚染件数に対しまして検挙の比率は五二%ということになっております。  ちなみに、四十九年は四七%、四十八年は四〇%でございましたので、そういう取り締まりを行って検挙を行うということを極力今後とも続けていきたいと思っております。
  23. 金瀬俊雄

    金瀬委員 もう少し検挙率を上げることができれば、故意排出とかあるいは取り扱い不注意による海洋汚染というものを防ぐことができるのではないかと思いますが、海上保安庁人員が足らないとか、あるいは取り締まり船が不足しておるとか、そういうことがございますか。
  24. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 私どもは、現在の人員、現在の船艇で、かなり広い仕事でございますけれども、その広い仕事の中の一つとしてできるだけ公害取り締まりをやっていきたいと思っております。  現在、船艇が三百八隻、航空機が三十四機で、両方から相互に連絡をとり合いながら公害監視取り締まりに当たるという実情でございますが、いまお願いしております五十一年度の予算案の中身といたしましても、海上保安庁船艇の建造といたしましては、三百五十トン型六隻と巡視艇が四隻、それから航空機スカイバンを五十一年度と五十二年度にわたりまして一機増強するということで、公害防止だけではございませんけれども、その他海難救助等もあわせて行う船艇航空機増強に今後とも努力をしていきたいと思っております。
  25. 金瀬俊雄

    金瀬委員 これは漁民の話ですが、漁民の話を聞くと、海上保安庁取り締まりの船が非常に少ないことはもちろんでございますが、それ以上に航空機配備が非常に少ない、もう少し航空機をふやしてもらえば取り締まりも厳重にできて大変いいんじゃないか、そして空の上からながめることの方が非常にいい、と、こういうようなことを言っている人が多いのですよ。もう十機ぐらい航空機をふやすことが必要ではないかというような声が高いのですが、その点についてはどう考えていますか。
  26. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 お説のとおり、航空機というものは非常に大事だと思います。先ほどの例での島根沖のことしの冬の取り締まり実情を申しましても、実は福岡基地から持っていったというような現状でございまして、非常に有効な監視取り締まり体制としては航空機が大事だと私ども考えております。  さらに、また、海洋法改正の問題が現在まだニューヨークで論議されているところですけれども公害防止ゾーンが非常に広くなってあるいは二百海里の経済水域と同じところまで広がるのではないかというようなことが現在一部論議の内容となっているようですが、そうなりましたら確かに航空機によらなければ公害監視取り締まりができないというようなことになるかと思いますので、かなり乏しい予算でございますので一遍に十分に増強ができるかどうかは問題でございますけれども、私どもは今後ともその整備増強にはできるだけの努力をしていきたいと考えております。
  27. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いま長官から話がございましたように、今度、海洋法関係で、海上保安庁守備範囲と申しますか、守備面積と申しますか、そういうものが非常に広がるわけですが、広がった海面を全部取り締まるとかいろいろ調査をするということになりますと、船ではとても間に合わない。だから飛行機の数をふやすということは非常に必要だということで、どこの漁民もそういうような話をしておりますので、飛行機をできるだけ至急に整備されるようにお願いしたいと考えております。  それから、この法案内容について御質問を申し上げますが、この中に船長の通報義務ということと応急措置をすることについて書いてございますが、このことについては、通報義務は油が流出した時点ですぐに通報しなければだめではないかというようなことを言っておる人が多いわけです。これは火災発生があってからとか、あるいは火災発生のおそれがあるときとか、そういうときに通報するというふうに書いてありますが、そうでなくて、流出したらすぐに通報した方がいいというような話が多いのですが、この点についてはどう考えておりますか。
  28. 山本了三

    ○山本説明員 お答えいたします。  先生の御指摘の件でございますが、この新しい海洋汚染防止法改正の部分にはその点は御指摘のとおりになっておりますけれども、現在施行されております海洋汚染防止法におきましては、油が流出した場合には直ちに海上保安庁の事務所に通報するという義務規定が明定されております。
  29. 金瀬俊雄

    金瀬委員 これは火災発生するおそれがあるときとか火災発生したときだけに通報するということではまだるっこい。油が流れたらすぐに通報するように義務づけることが必要だという声が非常に高いのでございますので、そういう点については今後十分に注意していただきたいと考えております。  それから、この中に、船長がやるべきことは延焼の防止とそれから応急措置をすることということを書いてありますが、いまの船舶に応急措置をするような設備は義務づけられていますか。そして、それはまたどんな設備をしてあるかをお伺いしたいと思います。
  30. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 船舶については、船舶安全法に基づきまして、ガス検知器、消火器等の消防設備を備えることが義務づけられております。また、シーバース等の危険物を管理する施設につきましても、消防法に基づきまして消火設備の義務づけがなされておりますので、当面応急措置を講ずる資機材は船内に一応用意されているというふうに理解しております。
  31. 金瀬俊雄

    金瀬委員 これは海洋にあるときは別ですが、港湾の中に入っているときは、部内と申しますか、陸上部との連絡が必要なわけですが、その連絡は緊密にとれるようになっておりますか。
  32. 山本了三

    ○山本説明員 船舶には船舶無線が備えられておりますので、そういう緊急の場合には直ちに連絡がとれるという状態に通常なっております。
  33. 金瀬俊雄

    金瀬委員 次に、防災センターのことについて質問いたします。  このセンターの訓練場を千葉県の富津岬にある第二海堡につくるというようなことが言われておりますが、また、この中の説明書きにもございますが、それは事実ですか。
  34. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 訓練の施設といたしましては、第二海堡に訓練施設をつくるという予定になっております。
  35. 金瀬俊雄

    金瀬委員 これはつくる前に地元漁民と十分話をしていただきたいと思いますが、漁民の納得が得られるということはきわめて困難だろうと思います。その点は、第三海堡を撤去するということがいま港湾局で折衝が行われておりますが、この問題とも絡んでおるということと、それから第二海堡を訓練所に使うということが、それなりに自分たち漁場が狭められるようなことにならないかということと、それからまた訓練といっても、訓練中に油を使ったりいろいろのものを使うわけですから、そういうものから油が流れ出すとかあるいは災害が起こる心配はないかということ、これらについて非常に危惧の念を持っておるというわけでございますので、その点について御説明願いたいと思います。
  36. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 私も関係漁民の方からの反対があるということをちょっと聞いておるのでございまして、非常に心配しておるわけでございます。この防災センター、現在の海上防災センターがすでにこの訓練事業に手をつけて施設も行っておりまして、もうこの数日中には訓練船が実はできあがってくるというはずでございますが、どうしても適当な場所で訓練の実施をしたいということでございます。もちろん地元漁民の方には十分お話をいたしまして、誤解のないように、被害などを与えることなく訓練が行えるということについて今後とも十分センターから説明をさせるということに努力をいたしたいと思っております。
  37. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この海上災害防止センターの役員の構成でございますが、これは後でまた御質問があると思いますので、この点の中の一つだけについて御質問申し上げたいと思います。  この役員の中に、いままでも漁民代表というのが入っておりません。ですから漁民の代表を入れる意思があるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。  この役員というのは全部加害者ですよ。油を出す方と取り締まる方と、それから官僚と、それだけがいままで入っていて、被害を受ける方の漁民の代表がこの中に入っていないですよ。だから、今後この中に入れるような考えがあるのかどうか、その点についてお伺いしたい。
  38. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 現在のセンターの組織の中に漁民代表の方が入っておらないということは事実でございます。現在は十数名の理事が並んでおりますが、これはこのセンターの仕事に対して、オイルフェンス等の備蓄をここで共同で行うとか、あるいは消防船の利用を行うとか、直接関係のある人がそれぞれ業界の代表として主として入ってきておるというかっこうになっております。  それで、今度の新しいセンターの組織の中では評議員という制度がございまして、いままでのセンターの理事はその新しい評議員のメンバーにおそらく移行していくんじゃないかと思っております。と申しますのは、このセンターは認可法人でございまして、国がその組織あるいはその役員の任命を直接指示したりするというかっこうにはなっておりませんので、あくまでも民間の方々がみずからの自主的な防災措置をとるための発意に基づいて、大臣の認可ということで認可法人としての新しい組織が出ていきますので、そういった役員の内容につきましても、今後どういうかっこうでその申請が行われるかということによるわけでございます。  先生の御指摘のように、漁民被害者だという観点は、実は、私どもとしてはちょっとそうではないんじゃないかということを考えておりますのですが、評議員のメンバーの中に漁民代表に全国的な見地から入っていただくことが妥当かどうかという点については、私ども先生の御意見をいま承りましたので、そういう被害者、加害者という立場ではなくて、海上防災に対して学識経験を持っている方として入っていただけるかどうかということは、先ほど申し上げました定員などの面もございますので、今後慎重に考えていきたいということを考えております。
  39. 金瀬俊雄

    金瀬委員 漁民の代表を入れるということについては、被害者代表とかいうことではなくて、やはり同じ意味で、海で生活しておるという点について、共同責任ということでひとつ漁民の代表を入れて、漁民にも海洋汚染防止の役割りを果たすようにすることが行政的には将来大変にいいのじゃないかと思っておりますので、その点については最大限の考慮をお願いしたいと思っております。  それから、この法案の中に「排出油防除計画」というのがございますが、その中に「油が著しく大量に排出された場合」ということが載っておりますが、「著しく大量」というのは、基準として大体どの程度のことを言っておるのですか。
  40. 鈴木登

    ○鈴木説明員 具体的にはまだ決めておりません。今後検討して決めたいと思います。
  41. 金瀬俊雄

    金瀬委員 その中で協議会をつくるということになっておりまして、協議会については、「係留施設の管理者その他の関係者は、協議会に参加することができる。」ということが書いてありますが、「協議会に参加することができる。」ということでは非常にあいまいなんですよね。だから、これを「参加しなければならない」というふうに直すべきだと思いますが、その点については御意見はどうですか。
  42. 鈴木登

    ○鈴木説明員 この協議会のメンバーの件でございますけれども、実は、四十三条の三の条文は油の排出防除義務者を中心に書いてございます。したがいまして、一応タンカーの船舶所有者を中心に書いたわけでございますが、ただ、それでは不十分な場合ということで、いま先生の御指摘のような関係者を加入させることができるようにいたしたわけでございます。  ただ、ここで、あくまでも義務者を直接防除協議会への参加義務者にいたしまして、直接の防除義務が大きく課されていない人たちにはできるだけこちらの方から要請して協力してもらうというふうな体制をとったわけでございます。
  43. 金瀬俊雄

    金瀬委員 海洋汚染がひどくなり始めたのは昭和三十五年ごろからでございます。そして、昭和四十八年ごろにPCBの汚染とかいろいろなことがありまして、海の問題については、国民的な課題として、特に、このまま進んでいけば人間の生命にも関係してくるということで、生存の問題としてこれが大きくなってきたわけでございますが、海が汚染されてきた最大の原因は、船舶からのものと、それから陸上における工場から排出された油とか廃棄物とか——シーバースとかドルフィンとかいう設備から出たものなのか、あるいは都市下水の処理が不十分のために汚染されたものなのか、そういう点についての調査資料があったら説明願いたいと思います。
  44. 山本了三

    ○山本説明員 海洋汚染につきましては、先生の御指摘のとおり四十年の半ばくらいから非常に進んでまいったのでございますが、四十五年に海洋汚染防止法が制定されましたし、その後各種の規制が進んでまいりまして、海洋汚染は目に見えて改善されていると思います。  何が最大の原因かというふうな御質問でございますけれども、先生の御指摘のとおり、油の汚染につきましては、船舶からの油の排出が大部分と言いますか、これがその元凶であろうかと思います。それから水質の汚染につきましては、産業廃棄物と生活廃棄物の海洋投棄、それからもう一つは、水質の汚濁については工場からの排水というように、こういう各種の原因が総合されまして海洋汚染発生しておるというように考えられます。  それの割合はどんなものかと申し上げることはなかなかむずかしいことであろうと思いますし、また、それほど厳密に分析された資料はないと考えています。
  45. 金瀬俊雄

    金瀬委員 環境庁調査は出ておると思いますが、工場排水がこのくらい、船舶からのものはこのくらい、あるいは都市下水のものはこのくらいという、おおよその目安はできていますか。
  46. 西村純幸

    ○西村説明員 汚染原因物質にもいろいろございますし、その物質ごとにそれぞれの発生寄与率が変わりますので、これらの全体を総括して申し上げることはできません。  それから、CODなどが指標となる有機性の汚染関係の寄与率に関しましては、いまここでデータを持っておりませんので御説明いたしかねますので、後で調べて資料として御提出いたします。
  47. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この海洋汚染が始まってからのいろいろの日本の政治の動きを見てみると、ちょうど高度経済成長政策を始めてから海洋汚染が急激にふえているわけです。ですから、これがふえてきたのは政治が悪いからだということが考えられるわけですが、余暇開発センターというのが、前の通産次官の佐橋という人がやっておって、いろいろな統計を出していますが、そのアンケートをとった統計を出したものの中に、昭和元年から五十年までの間で、昭和十五年から二十年というのは最悪の年であったということが出ています。それから、その次は昭和四十五年から五十年の間が最悪の年であったということが出ております。その中で一番悪い政策はどんな政策だったかという統計が出ていますが、その中に、日本列島改造論というのは最悪の政策だということがはっきりこの統計で出ていますが、その最悪の政策が海を悪くした。大気汚染もそうでございますが、いろいろな面で出てきておるのがそうであるというようなことが統計上出されております。  海で働く漁民は、海をされいにして昔と同じように魚がたくさんとれるような海にしたいということが願望であり、少なくとも昭和三十五年前くらいの海に返してくれというのが全漁民の願いであるわけですので、この点については、この法律を運用することによってできるだけこれ以上汚染が進まないように、少なくとも海を昔の姿に返すことができるように運用していただきたいということを強く要望いたします。  それから、最後に、東京湾横断道路のことについて御質問いたしますが、これは数年前から調査費を組んでおりますが、この道路ができた場合に海上交通はどうなるかということについて、海上保安庁に御説明願いたいと思います。
  48. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 東京湾の横断道路の計画については私どもも承っておりますが、率直に申しますと、海上交通の安全とか海洋汚染防止とかということから見たら、その影響は、不用意に行いますとかなり悪影響があるのじゃないかということが非常に心配でございますので、そういう交通の安全と汚染防止という面から、もし建設するならば今後どういうふうな対策を講じていくべきかということについては私どもは十分検討をしていきたいと考えております。
  49. 金瀬俊雄

    金瀬委員 建設省に伺いますが、建設省では、この計画ができますと島が二つできるとか、いろいろ計画があるようですが、そういう場合は海上交通に非常に大きな影響を及ぼすし、事故が多くなればそれだけに汚染が広がるわけでございますし、また、島ができるということになれば海水の動きが停滞するということも考えられますので、その点についてはどういう考え調査費を組んで調査しておるのか、また、どの程度の調査が進んでおるのか、現況を報告していただきたいと思います。
  50. 浅井新一郎

    ○浅井説明員 御説明いたします。  東京湾横断道路は御承知のように川崎から木更津の間約十五キロを結ぶ道路でございますが、その間に御指摘のように人工島を二カ所設けまして、両側から橋で来て眞ん中を沈埋トンネルで渡るという計画になっております。  島が二つできる関係から湾内の水の流れに若干の影響があるのではないか、したがってそれに伴う海上汚染の問題があるのではないかということが考えられまして、この横断道路の計画調査に当たりましては早くからこの問題に取り組みまして、昭和四十八年度から実は国土開発技術研究センターにアセスメント調査ということで全般的な調査をやっていただいておるわけですが、その中で東京湾横断道路水質調査委員会というものをつくりまして、学識経験者を中心にいたしましていろいろ検討していただいておるわけでございます。  いま継続中でございますが、現在までの段階では、シミュレーションモデルによります計算の結果は、潮流の速度は横断道路の開口部でやや増大する。当然でございますが、その程度は、現在の流速の上げ潮の最強時に対しまして大体毎秒〇・三ないし〇・二メーターということで、大体一〇%程度の流速の増ではないかという計算になっております。  それから、この横断道路によりますCOD濃度分布で汚染の状況を推測いたしたわけでございますが、それでは横断道路近傍で局部的に〇・五ppm程度の変化がある。全般的には〇・三ppm程度の変化というふうにとらえております。現在の汚染濃度が大体二・五ないし五ppmということでございますので、それに対して〇・三ないし〇・五というような範囲の濃度分布の変化ということでございまして、横断道路の存在自体によってこの汚染が非常に大きく広がるというようなことはまず考えられないというふうに把握しております。  しかし、いずれにいたしましてもこれはシミュレーションモデルの計算でございますので、このモデル自身も今後もう少し精度を高めましてさらに検討を進めていきますと同時に、工事中におきます汚濁の問題も心配になるわけでございますが、これにつきましても十分慎重に検討していきたいというふうに考えております。
  51. 金瀬俊雄

    金瀬委員 東京湾の道路の問題については、先ほど海上保安庁長官から話がございましたように、海上交通に及ぼす影響とか海洋汚染に及ぼす影響というものは重大な関心事になっておりますので、その点については十分慎重に調査をして進めていただきたいと考えております。  それから、最後に、これは大臣がおりませんので大臣が出席したときに質問を申し上げたいと思いますが、東京湾の中で船舶事故が起きて、まだ解決されていない問題がございます。まず、明原丸の問題でございますが、これは五年前に起きた問題でございまして、ちょうどその当時八億四千万の被害が出て、その裁判が行われております。その後第十雄洋丸が火を噴きながら富津の海岸へ連れていかれて、御存じのように鎮火させることができなくて、外洋に連れ出して魚雷によってそれを沈めたといういきさつがございますが、そのときの補償も解決されておりません。それから、その後の栄光丸の問題の解決もされておりません。大臣がこの前私に、この問題については閣議でも問題にして早期に解決するように話し合うということを約束されておりますが、その後何の連絡も大臣から受けておりませんので、その点について再度きょう質問したいと思いますので、よろしく委員長において取り計らっていただきたいと思います。
  52. 中川一郎

    中川委員長 承知いたしました。
  53. 金瀬俊雄

    金瀬委員 では、以上で打ち切ります。ありがとうございました。
  54. 中川一郎

    中川委員長 坂本恭一君。
  55. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 いま金瀬委員の方から質問がございましたので、それと重複しないように質問をさせていただきたいと思います。  まず、海洋汚染防止法は四十五年の暮れに制定されたものでございまして、ちょうどまる五年を経過しておりますが、その五年の間に、海上保安庁あるいは船舶局、港湾局はそれぞれこの法律に基づいてどういうことを主としてやってきたかということを、まず概略御説明を願いたいと思います。
  56. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 海洋汚染防止法の制定以来、私どもは、重油、原油等の粘着性のあるいわゆる黒物という油の防除につきまして、できるだけその汚染被害を少なくするために、巡視船艇航空機の勢力を導入して現在まで監視取り締まりに従事してまいりました。
  57. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 港湾局としても、それぞれ施設も関係があるわけですが、その点について港湾局はどういうことを主としておやりになったか。また、船舶局は船舶についてどういうことをやってきたか。海洋汚染防止法の趣旨を生かす事業といいますか、それについてどういうことをやってきたかということを概略御説明をお願いします。
  58. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 港湾局の方といたしましては、各港湾に廃油処理施設を設けまして、たとえばバラスト水等の油に対する処理をいたしております。現在各港ほとんどすべて整備が完了しているというような状況でございます。また、そのほかに直轄事業といたしまして油回収船あるいはごみ処理船というものをつくりまして、平生原因者の不明である油の処理について、海面上の油を回収したりあるいはごみを取るというようなこともやっております。また、港湾管理者に対しまして補助金を出しまして、その各港湾におきまして清掃船をつくってもらうというような形で助成しておりまして、大きな災害というわけではございませんけれども原因の不明な油であるとか平生のごみの処理を常時行っているというような姿勢で仕事を進めているわけでございます。
  59. 内田守

    ○内田政府委員 私どもの方は主として船のハードの面の開発あるいは規制等をやっております。開発の面では、たとえばオイル関係のセパレーターの開発であるとかあるいは回収船、オイルフェンス等々のものの開発を進めておるわけでございます。それから、規制の面としましては、先生も御承知のとおり、これは国際的にも合意をしているわけでございますけれども、船のタンクの容量を制限するとか、そういう面の規制をやっております。
  60. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 これから主として海上保安庁にお尋ねをしてまいりますが、いわゆる監視取り締まり体制という言葉を使っておりますけれども、その監視取り締まり体制について、現在の航空機とかいろいろ統計はありますけれども、現時点で監視取り締まり体制をどういうふうにつくっているかということを御説明ください。
  61. 山本了三

    ○山本説明員 海洋汚染監視取り締まり体制についてお答えいたします。  まず、油の監視取り締まり体制でございますが、これは油の汚染船舶からの排出に大部分の原因があるということは御承知のとおりでございます。したがいまして、船舶が最もふくそういたしております東京湾、伊勢湾、大阪湾瀬戸内海というような重要なふくそう海域につきましては、毎日ヘリコプターを飛ばして、海上には巡視船艇を待機させ、この連係によりまして厳重な監視取り締まりを行っております。  それから、そういう重点海域の外洋にあります湾港等につきましては第二の重点海域考えておりまして、ここにつきましても、頻度は若干少なくなりますけれども航空機巡視船艇の連係によって監視取り締まりを実施いたしております。  それから、外洋のタンカーの通路に当たります海域につきましては、大型の飛行機を適当の間隔で飛ばして、これまた大型の船艇を要所に配置して、連係でもって監視取り締まりを行うという体制をつくっております。  なお、全国的な監視網を整備する必要があるという観点から、現在のところはおおむね日本周辺海域全般に及んで、頻度の差はございますけれども監視体制を確立いたしております。  それから、水質の汚濁等につきましては、工場排水等が一つの大きな原因になっておりますので、海域排出する排出口を持っております工場等の排水口につきましては、年数回、これは全部の排水口から海上保安庁自身でもって採取をいたしまして、これを海上保安庁自身でおおむね分析して、排水基準に適合しておるかどうかということを監視いたしております。  その他、産業廃棄物等あるいは生活廃棄物等の汚染投棄につきましては、巡視船艇航空機をこれまた重点海域に配置して、その違反の摘発に努める等、そのような監視体制をとっております。
  62. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 現実に行っている行動はそうだろうと思うのですけれども、その航空機とか巡視船艇の現在保有している数もちょっと説明してください。
  63. 山本了三

    ○山本説明員 海上保安庁で保有いたしております航空機は、飛行機、ヘリコプターを合わせまして三十四機、それから船艇は、巡視船、巡視艇を合わせまして三百八隻、そういう勢力になっております。
  64. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 施設についてはそうでしょうけれども、いわゆる要員、人間の面ではどういう体制がとられているわけですか。
  65. 山本了三

    ○山本説明員 海上保安庁の職員数は御承知のとおり一万一千名でございますけれども、この約半数近くが船艇航空機に配置をいたしております。さらに、本庁には海上公害課がございますし、管区本部にもおおむね海上公害課が置かれておりまして、そういった陸上の組織とそれから船艇でもって監視の企画あるいは実施に当たっております。
  66. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 後ほど防災センターについてはお尋ねをしたいと思うのですが、その監視取り締まり体制と、今度新しくつくろうとしているいわゆるセンターがどういう役割りを果たすのか、あるいはそれは全然ないのか、その辺のことをちょっとお尋ねしたいと思います。
  67. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 現在公益法人として防災センターがございますが、この仕事は、船舶の乗組員等関係者に対する船舶火災消防及び流出油防除の訓練の実施、それから二番目に、消防船による東京湾における火災、油濁等の災害防止活動の実施、三番目に、海洋汚染防止法及び同法施行規則に定める汚染防除資機材の全国的な陸上における共同配置、というようなことが主な仕事になっております。  一方、現実に油の防除活動が行われている実態を見ますと、まず、油という特性から、海上においては言うまでもなくどうしてもすぐに広がります。それから二番目に、海上保安庁としては先ほど申し上げました勢力で防除の活動に十分努力をいたしますが、基本的には油については原因者がその防除措置を行うのだという、原因者の措置義務というものが課せられておるわけでございます。三番目に、先ほどもお話が出ましたように、船舶安全法によって防災の設備が一応応急のものとして船内にございますけれども、船内という、陸上に比べると狭いところ、限られた資材という制約がどうしてもございます。さらにまた四番目には、船の事故でございますので、言うまでもなく海上を動き回るという特性がございます。そこで、一たん事故が起こりましたときに、私どもももちろん自分の勢力で防除の活動に従事するわけでございますが、第一義的に、その防除責任を持っている原因者がまず手を下してもらいたいという必要がございます。  ところで、先ほどのような特性から、船舶に起因して全国の海域のどこでそういう不慮の事故が起こるかわかりませんので、事故が一たん起こったときに現場に措置義務者がおらないとか、あるいはまた外国船の例などで言いますと、単に代理店がおっても措置義務に対して本格的な責任を持っている人がおらないとかいうような点がございまして、その初動の防除体制にいきなり原因者が飛び出すということについてどうしても欠くる点があるということをわれわれは痛感しているわけです。そこで、海上保安庁措置義務者に対して措置義務を命令するわけですけれども、先ほど申しましたような事情で命令をするべき相手がその場にいないとか、あるいは出しました命令に対してその措置義務が不十分であるというような例がかなりいままであったわけです。そこで、私どもとしては、全国を一元化した防災組織というものを新しい認可法人によるところの海上災害防止センターというところにやらせたい。それは、従来旧センターでやってきた訓練事業であるとか消防船事業であるとか共同備蓄事業であるとかということに新たに加える必要があるのは、防止活動の実施の面で防災基金の事業というものをやらせたいということを考えておるわけでございます。  初動のときに手を下すためにはどうしても金がかかるわけですが、原因者が現場にいないとか、あるいはいても権限がないとかいうことでそういう手当てができないときに、基金事業によりまして、海上保安庁長官から指示をして、そのセンターを出動させて、それに必要な金は基金から出していく、後ほど基金は原因者から求償しましてまた補てんをするというような制度をとることが大事なことではないかということで、そういう基金事業を新たに始めるということを加味して認可法人で新しい海上災害防止センターというものをつくっていくということでございます。もちろん海上保安庁も自分の固有の警察的な責任に基づきます防除活動をないがしろにするわけではございません。両々相まって防除活動の、特に初動のときの体制整備をやりたいというのが目的でございます。
  68. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 あとで御説明を願うことをいま御説明いただいたような感じですが、そうすると、結局、監視取り締まりは保安庁が全部従来どおりやらなければならぬということですね。ほかのところに任せるわけにはいかないという趣旨ですね。  海上保安庁の出しているいろいろな統計とか資料を見ますと、外国船による汚染が年々ふえてきているが、そういう監視取り締まりは外国船に対してはどういう形で行われているんでしょうか。
  69. 山本了三

    ○山本説明員 外国船の海洋汚染監視取り締まりでございますが、船舶によります海洋汚染監視取り締まりにつきましては、日本船舶あるいは外国船舶と仕分けをして実は監視取り締まりをやっているわけではございませんで、同じような監視取り締まりを実施いたしておるわけでございます。ただ、外国船は日本の状況にふなれであるとか、あるいは日本人の作業者との間に言語の関係で連絡が不十分であるとかいうような点がございますので、荷役等の場合にはそういう陸上との連携あるいは関係者との連携を密にするようにというような、いわゆる漏油防止指導につきましては日本船舶以上に厳重に指導を強化しておるところでございます。
  70. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 今度の改正法の中に、三十九条の四に油回収船等を配備しなければならないという規定があるわけですが、これは外国船に対してはどういうふうに徹底をさせるんでしょうか。
  71. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 申すまでもなく、この法律は領海内におきましては外国船にも適用になるということでございますので、日本船、外国船の区別なく、特定の海域に入港いたします船舶については油回収船配備を義務づけるということにいたしたいと思っております。
  72. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 法案の中身に若干入っていきたいと思いますが、現行の四条、五条あるいは六条、七条等にいろいろと義務づけなり規制なりがありますね。四条の規制あるいは五条の規制、油を排出してはならないとか、防止装置をつけろとか、あるいは防止管理者を設けろとか、油の記録簿を保管をしろとか、いろいろあるわけですが、すべての義務者といいますか、規制を受ける船舶については現実にこれが確実に守られてきているんでしょうか。
  73. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 海上保安庁昭和五十年に検挙いたしました違反送致件数は、海洋汚染防止法関係が千三百三十一件、それから水質汚濁防止法が二十件、廃棄物処理法によりますものが七十二件、港則法が二百九十四件、その他六件ばかりございますが、合計で千七百二十三件というのが送致件数でございます。  そのうち、海洋汚染防止法関係の違反送致件数が千三百三十一件と申しましたが、そのうちで、先生からお話しのございました第四条違反の、船舶からの油の排出禁止規定違反が五百八十九件ございます。その他ビルジの排出防止装置設置義務違反が五十七件、油濁防止管理者不選任、油濁防止規程制定義務違反が合わせて三十二件、油記録簿備えつけ、記載、保存義務違反が三百九十六件、船舶からの廃棄物排出禁止規定違反が六十一件、その他百九十六件で、合わせて千三百三十一件となっております。  そこで、私どもは、こういう違反送致件数にも見られますように、年間を通じまして船舶への立入検査などをやって厳重に取り締まりをやり、その反面、汚染防止講習会などの機会を利用して汚染防止指導に努めるということを行っているのが現状でございます。
  74. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 四条違反で言えば、五十年は四十九年より若干減っているとか、いろいろ数字の見方はあろうと思うのですが、違反件数が多いということは、それだけ守られていないということになるのじゃないかと思います。そういう面では、立入検査とか、海上保安庁のやるべき仕事はたくさんあろうかと思うのですが、そういう法律を守らせることを徹底することについてこれまで以上にやっていく必要があるのではなかろうかというふうに感じているわけです。  その次に、先ほども問題にしたのですが、三十九条の四の「油回収船等の配備」については、回収船をつけるか、あるいは回収の用具を備えつけるか、その辺は運輸省令で決めるということになっておるようですけれども、その中身はどうなっているのですか。どういう場合には回収船を備えなければいけないとか、どういう場合には用具でいいのかということですね。
  75. 鈴木登

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  実は、油回収船自体もまだ開発途上にございますし、三十九条の四に書いてございますその他の油回収装置というのはなおさら開発途上にありまして、いまわれわれ運輸省の特に船舶局あたりを中心にしましてそれの研究開発をやっておる最中であります。したがいまして、現在、これだというふうな非常につぼを押さえた油回収船あるいは回収装置がまだあらわれていないと言っても過言ではないと思います。したがいまして、この法律の附則にございますように、この三十九条の四の施行は三年間の施行延期にしてございます。これから三年間鋭意開発を進めまして新しい機械を世に出す、それと同時に、私どもの方でも、その開発に応じまして油回収船あるいは油回収装置の配備基準を関係者の意見を十分入れながら検討していこうというふうに考えております。したがいまして、近日中に油回収船配備基準を定めるための委員会を広く関係者を募って発足させまして、その中で検討していきたいと思います。
  76. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 そうすると、附則にあるように三年以内に施行するというか、実施をする。三年をめどにこれから研究開発等をあわせて決めていこうということになるわけですね。これは委員会をつくって検討されるのでしょうけれども、できるだけ厳しい方向で物を考えてもらわぬと、結局ほとんどの船舶は、危険なものでも用具を備えつけていればいいというような程度に終わってしまうのではないかというふうに私は思うわけですので、海上保安庁の方としては、その辺は十分頭に入れて委員会なり何なりの結論を出して運輸省令を決めていただきたいと思います。  それから、四十二条の九から十一にかけて、海上保安庁と消防庁の関係について、特に海上火災について規定が設けられることになっているようですが、いわゆる海上保安庁と消防庁、さらには警察も条文の中に入ってきますが、これはどういう関係になるのですか。
  77. 鈴木登

    ○鈴木説明員 実は、海上保安庁が発足いたしましたのも、それから消防庁が発足いたしましたのも、ほぼ第二次大戦後の昭和二十二、三年の時代でございます。その当時から、岸壁も含めまして海上周辺の消火活動とか、あるいはそういうもろもろの防除活動をどうするかという点が非常に大きな問題となってまいったわけでございますが、実は、消防組織法の方にも市町村の区域については消防機関は人命救助の義務を有するというふうになっておりますし、海上保安庁の方も、海上において人命、財産の保護に任ずるというふうに海上保安庁法で規定されてございます。したがいまして、その間でどういうふうな調整をとろうかということで、海上保安庁と消防庁の間で従来業務協定が締結されております。  それは、一応上架中の船舶、すなわちドックの中に入っておる船舶と、それから岸壁に係留されている船舶は陸上の消防機関が主として消火活動に当たり、それに海上保安庁協力するということになっております。それから、それ以外の船舶、すなわち係留を解いておる船、要するに港湾あるいは外洋に浮かんでおる船は海上保安庁が主としてやりまして、それに対して消防機関が協力するというふうな業務協定で、海上保安庁の発足以来両庁が協力してやってまいったわけでございます。  ところが、今回この海洋汚染防止法の一部を改正いたしまして、これが災害対策関係にも関係するということで、先ほどから御説明申し上げております油の除去だとか火災の消火についてはどうかということが再び消防庁と海上保安庁の間で話題になって、今回のためには従来の協定の線を維持すると同時に、前国会からコンビナート防災法などの点で問題にされておりますように、一たん災害発生いたしますと非常に大きな社会的な問題が派生いたしますので、一つのセクショナリズムを越えまして総合的に協力していかなければいかぬじゃないかというような考え方からこの四十二条の九以下の条文ができたわけでございます。  それの詳細は、ここに書いてありますとおりに、一応岸壁に係留されておる船舶につきましては消防機関が主としてやり、その場に消防機関がいないとき、あるいは消防機関の方から要請があったときには海上保安庁が出ていってやる。それから、反対に、それ以外の船舶、すなわち海洋、港湾に浮いておる船、あるいはもやいをすでに外しました船、そういう船につきましては主として海上保安庁の機関がやりますが、海上保安庁の機関がそこにいない場合、あるいは海上保安庁だけでは手が足りないということで海上保安庁機関から消防機関に要請いたしましたときに、その際には消防機関がもろもろの消火、救助活動をやるというような調整をとりまして、いわばお互いにその意思がはっきり疎通するような方法を講じたわけでございます。  それから、警察関係につきましては、まず警察法で人命、財産の安全を守る責務を有してございます。これにつきましては、すでに消防組織法の中に警察と消防各機関の業務提携の方法が書いてございまして、消防機関がいないときには警察が権限を行使するというふうな規定がございます。それをそのままその形を今回の海洋汚染防止法改正案でも取り上げまして、現場に海上保安庁の機関あるいは消防機関がいないとき、あるいはまた消防機関あるいは海上保安庁の機関が要請したときにだけ警察が出るというふうな形での調整をとったわけでございます。これは、現在、消防組織法における消防と警察のいわゆる権限調整といいますか、相互協力調整といいますか、それと同じ方式を採用してございます。
  78. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 そうすると、従来の消防庁と海上保安庁との間の業務協定といいますか、それはそのまま適用するという形になっておるわけですね。時間が余りありませんから先に進みます。  海上防災センターというものが現在財団法人としてございますが、先ほども若干御説明がありましたが、それを今度の防止センターが完全に引き継ぐような形になるのではないかと思うわけですが、現在の海上防災センターの資産状況といいますか、これはどういうものを資産として現在保有しているのか。活動している期間はまだ一年半ぐらいしかたっていないわけですが、どういう資産を現在持っているのかを御説明ください。
  79. 鈴木登

    ○鈴木説明員 先ほど私ども長官の方から業務内容を御説明申し上げましたけれども、その業務内容に関連いたしまして御説明申し上げます。  先ほど申し上げましたように、業務内容といたしまして大きく分けまして、訓練事業、それから消火防災事業、それから資材の備蓄事業というふうな三つの大きな業務がございます。  その関連で申し上げますと、まず、防災訓練事業といたしまして、四十九年度に訓練船の補助船を購入いたしまして、それを所有してございます。それから、五十年度に演習場として、先ほど金瀬先生の方から御質問がございました東京湾内の第二海堡の使用許可をとっております。それの使用用地です。それから横須賀市の日の出町の国有地を払い下げてもらいまして、ここで座って勉強します場合の座学の用地を持っております。それから、五十年度に入りまして、ついせんだって、訓練船——これは要するにここに乗っけまして防災訓練を実施するための訓練船でございますけれども、その訓練船を所有してございます。以上が訓練船及び訓練補助船、それから演習場の用地の使用権でございますけれども、それから研修所の用地の所有権、この辺が訓練のために所有している資産でございます。  それから消防船事業、いわゆる防災事業といたしまして、先ほど御説明申し上げました大型船あるいは危険物運搬船に随伴したり警戒業務を実施したりするための船といたしまして、「おおたき」という船と「きよたき」という船の二隻を所有しております。この「おおたき」の方は、実は、以前は海上保安協会で所有されておりましたが、それを海上防災センターが引き継いだものでございます。「きよたき」は新しく五十年の七月に建造したものでございます。  それから、最後に、排油防除資材の備蓄事業といたしまして、先ほど御説明申し上げましたとおりに全国に二十九の基地を設けまして、その基地にオイルフェンス、油の処理剤、それから油吸着剤というようなものを具体的にかなりのトン数を所有してございます。  以上でございます。
  80. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 そうすると、いま御説明があった訓練船とか消防船とか研修所関係の資産というのは、これは財団法人の方の定款にも多分あるのだろうと思いますが、無償で引き継ぐということになるわけですね。
  81. 鈴木登

    ○鈴木説明員 無償で引き継ぐことに相なります。
  82. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 財団法人として一年半ぐらい活動してきて、それをこの時点で認可法人に変えることのメリットは何があるのでしょうか。
  83. 鈴木登

    ○鈴木説明員 一般的に申しますと、法人はやはり営利法人と、いわゆる民法上の公益法人、それから認可法人、それから特殊法人と、こういう四つくらいあるのじゃなかろうかと思われますが、現在の海上防災センターの仕事内容はもちろん非常に公益性の高いものでございまして、しかも民間が非常に自発的にやっておるものという意味で、従来、運輸大臣の認可によりまして民法上の公益法人としてこれは成立したものでございます。成立後わずかにまだ一年半ほどしかたっておりませんけれども、先ほどから御説明申し上げておりますとおり、従来の第十雄洋丸だとか、栄光丸だとか、あるいは水島事故というような事故にかんがみまして、もう少しそういうものを強力に育てていく必要があるのではなかろうかということで、つきましては、強力に育てまして、さらに海上保安庁の下部機関と言いますと語弊があるかもしれませんけれども長官が指示すればすぐにそれに応じて発動し得るというふうな公益性をより高める必要があるのではなかろうかというふうな感じからいたしまして、より公益性の高い認可法人にしてはどうかというふうに考えたわけでございます。  ただ、ここでもう一つ問題になります特殊法人という方法もございますけれども、いわゆる特殊法人といたしますと、たとえばこれは初めから法律の方で組織の内容も全部決めてしまいまして、法律で名称も決めまして、何もかも全部決めてしまうというきわめて統制的な国家的な色彩の強いものになってしまいます。  しかし、この海上災害防止センターの方は、もう少し民間の発意を尊重いたしまして、民間の方でまずそういうものの設立をやっていただきまして、それを運輸大臣の方で認可するというふうな認可法人がやはりいいのじゃなかろうかということで、重ねて申し上げますと、公益性をもう少し強くすると同時に民間の発意をもっと残しておくという意味で認可法人の形態をとったわけでございます。
  84. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 これは若干議論したいところですけれども、時間がないようですから割愛いたします。  そういう防止センターを認可法人としてつくる。また、その中に排出油防除協議会を持つ。あるいはそのほかに、これまで、財団法人の防災センターと並んで、大型タンカー事故対策連絡協議会とか、流出油災害対策協議会とか、海上防災についてのいろいろな協議会とか、いろいろな団体があるわけですけれども、その辺の関連性といいますか、防止センターをつくれば、そういう防除協議会は別にしまして、これまであるものをある程度整理する必要もあるのじゃないかというふうに感ずるわけですけれども、その辺はどういうふうにお考えになっておりますか。
  85. 鈴木登

    ○鈴木説明員 実は、御指摘のとおりに、現在、流出油災害対策協議会とそれから大型タンカー事故対策連絡協議会という二つのものがございます。  この大型タンカー事故対策連絡協議会は最初に民間のある程度の自発的な意思で出てまいりまして、それがかなり数多く、すでに三十六ほど現在ございますけれども、そういうものがかなり以前からあったわけでございます。ところが、最近、先ほどから御説明申し上げておりますようにいろいろと大量の流出油事故発生いたしまして、これではもう少し対策を組織化しなければいかぬじゃないかということから、海上保安庁の方である程度それをリードいたしまして、大型タンカー事故対策連絡協議会を大量流出油災害対策協議会というものに、もう少ししっかりしたものに漸次組織がえをやってきたわけでございます。これが現在四十ございます。これは新しくつくったものから、従来の大型タンカー事故対策連絡協議会を組織がえしたものまで、いろいろニュアンスはございますけれども、それが四十、全部合わせまして現在七十ほどのシステムが全国各地にございます。そういたしまして、いざ事故が起こりましたときにはこういう人たちとも連絡を緊密にいたしまして、お互いに事故災害の拡大の防止を図ってきたわけでございます。ところが、何せこういうものは、いま御説明申し上げましたように、私どもの方の行政指導でやってきたということで、何ら法的な根拠もございません。したがいまして、やはりもう少しその点をはっきりしたものにいたす必要があるのではないか、こういう新しい法律をつくる際にもう少しはっきりした存在価値をつけるべきではなかろうかという考え方から、今回四十三条の三で排出油防除協議会というものを設けたわけでございます。  ただ、排出油防除協議会を、先ほども質問がございましたように法律上のかっちりとしたものにするためにはやはり加入義務者というものを、メンバーをはっきり決めなければなりませんので、これにつきましては、一番防除責任がありあるいは防除義務のありますタンカーの船舶所有者を第一義的なメンバーにいたしまして、従来大量流出油災害対策協議会とか大型タンカー事故対策連絡協議会とかいうものに加入しておられた方々にできるだけ加盟していただくというふうな形をとったわけでございます。したがって、今後はできるだけ排出油防除協議会の方に特定海域におきましては徐々に切りかえていきたい、その他の海域におきましては従来どおりの組織を温存させて強化指導に務めたいと思っております。
  86. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 できるだけ一本化といいますか、一元化をしてもらった方が活動面でもやりやすいのではないかと思いますので、そういう方向でやっていただきたいと思います。  港湾局に水俣湾の関係でちょっとお尋ねしたいのですが、もうすでに諸手続がいろいろととられて、港湾審議会の結論も出ましたし、工事の着工にかかるばかりだと私どもは見ているわけですが、いまだに着工の時期がはっきりしていませんが、港湾局の方としてはその辺はどういうふうにお考えになっているのか。港湾審議会等が開かれたころは、熊本県の方では本年度内着工というのはことしの三月三十一日までということでしたが、それをとうに経過をして現在に至っているわけですが、その辺の原因はどういうことになっているのでしょうか。
  87. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたように、水俣港の汚泥しゅんせつ事業につきましては、すでに熊本県が本年二月十四日に県公害対策審議会の意見を聞きまして費用の負担計画等も決定しているわけでございます。また、港湾計画も、いまおっしゃいましたように本年の二月二十日に港湾審議会の議を経まして決められております。さらに、漁業補償等につきましては、五十年度、すなわち三月三十一日までに一応地元との話もつきまして、補償も完了させているという状態でございます。  今後はこれに着工するばかりで、これは言われるとおりでございますが、この工事に着手するためには、一つの問題といたしましては公有水面の埋め立ての関係がございまして、この公有水面埋め立ての免許取得のための手続を現在進めているわけでございます。また、もう一点、仕事につきまして、主要な工事は大変むずかしゅうございますので、国の方で県から受託いたしまして施行するということになっているわけでございます。現在、下関にございます第四港湾建設局におきましても具体的な設計とか施行計画等の検討を進めているわけでございまして、先ほど申し上げました公有水面埋め立て免許取得の手続が完了いたしまして免許が取得された後にできるだけ早い時期に現地で着工できるように努力したい、と、このように考えておる次第でございます。
  88. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 公有水面埋立法の手続は大体いつごろ完了するのですか。大体のめどで結構です。
  89. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 現在手続中でございますが、いまのところはっきり何とも申し上げかねるのですが、私どもの希望といたしましては、県との例の受託契約を五月ごろにはしたい、それで、着工は恐らく後三、四カ月は必要ではないかということで、公有水面の手続並びに受託契約等を考えますと、なお三、四カ月の期間が必要ではないかと考えております。
  90. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 三、四カ月というと、八月ないし九月ということになるわけですね。港湾局の皆さんとしては大体そのころを一応のめどに置いているということになるわけですか。
  91. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 その方針で進めていきたいというふうに考えております。
  92. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 最後に、船舶局にせっかくおいでいただいて、特に日本船舶振興会のことについて、いわゆる特殊法人のことについて、今度の災害防止センターのことと関連して若干お聞きをするつもりだったのですが、できませんでしたので、この前組織とか機構図については若干いただいたのですけれども、その中の交付金とか、損益計算書といいますか、そういうものをできれば資料としていただきたいと思うのですが、よろしいでしょうか。
  93. 内田守

    ○内田政府委員 後刻提出いたします。
  94. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 大臣がお見えになるからもうしばらく質問を続けろということですので、またもとに戻ります。  それでは、水俣湾の関係で、聞くことはいっぱいあるのですけれども、若干質問をさせていただきたいと思います。  着工時期については先ほどお話があったのですが、二次公害というものがいろいろ心配をされているわけです。特に、ことしの三月九日に東大の宇井純さんが熊本県に対して公開質問状を出しており、それに対して県の方は四月六日に回答を出していますけれども、その辺は御存じですか。
  95. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 まず、二次公害に対する私ども考え方を申し上げたいと思います。  まず、汚泥を除去するに当たりましては、おっしゃいますように二次公害防止することは大変必要なことであると思いますので、そのため、しゅんせつ地点、要するに機械が掘っている地点からの二次公害と、それからどろを吐いてまいりましてためていきますが、その埋立地の余水路という余った水が出ていく地点がございますが、この余水吐きからの汚染物質の拡散について非常に心配されますので、従来から慎重な検討を行ってきた次第でございます。  県におきましても技術委員会を設けましてその検討をしてきたわけでございますが、先ほど申し上げましたしゅんせつ地点の汚染につきましては、普通のしゅんせつ工法を採用しても二次公害をもたらすおそれがないというような研究結果でございますけれども、実際のしゅんせつに当たりましては北側の湾口部を仮締め切りいたします。また、普通のしゅんせつの方法ではなくて、かき回すカッターというもののないカッターレスしゅんせつ船を使いまして、新形式のヘドロしゅんせつ工法を使用するということにしております。また、余水吐きからの問題でございますが、この余水吐きから排出される汚水につきましては、汚染物質が拡散しないような排出前の十分な処理を行うということとしているわけでございます。  このように慎重な配慮で二次公害防止に努めるわけでございますけれども、同時に、環境庁で「底質の処理・処分に関する暫定指針」というものを定めているわけでございまして、それに基づきまして二次公害防止のための監視計画をつくります。この監視計画はすでに技術委員会検討済みでございまして、これらによって二次公害発生しないように万全を期したいというように考えている次第でございます。  なお、先生がおっしゃいました東大助手の宇井先生の質問がございまして、これに関しましては熊本県の方からことしの三月三十一日に同氏に対しましてすでに回答がなされております。この質問の主要な論点は三つございまして、一つは水銀のメチル化に関しての除去基準値の問題、二つ目が海水中における水銀のメチル化の問題、三つ目が二次公害発生時の対応の問題でございまして、実は、この一点と二点につきましては私の所管外でございますが、環境庁の方の基準に従った計画を進めているとお答えするしかないわけでございます。  ただ、二次公害発生時の対応の三点目でございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたように最善の努力をするとともに、もし二次公害監視計画の中で二次公害発生のおそれがあるということが認められた場合には、工事を中断するとか、延期するとか、あるいはある程度ゆっくりやっていくというような必要な対策を行いましてそれに対応する仕事を進めていきたい、このように考えている次第でございます。
  96. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 いま監視計画のお話もちょっと出たのですが、監視はどういう形でやっていこうということになっておるのでしょうか。
  97. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 これも先ほど申し上げましたように、「底質の処理・処分に関する暫定指針」の中に、たとえば汚染水域とそうでない水域との間で何回はかるとか、そういうものを環境庁の方で一応決めまして、それを通達してございます。それに従って技術委員会等で検討したものに従いましてやっていく、このように考えております。
  98. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 監視計画とか、その基準というものはいまお話があったのでわかるわけですが、いわゆる監視を、現実にそういうことをやるのは技術委員会がやるのですか。それとも別に何か監視委員会みたいなものができるのでしょうか。
  99. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 県が監視委員会を別途つくりまして、その監視委員会にやっていただく、こういうことになると思います。
  100. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 終わります。
  101. 中川一郎

  102. 金瀬俊雄

    金瀬委員 大臣に二、三点質問を申し上げます。     〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕  第一点は、海上保安庁の業務の点についてでございますが、国際関係海洋法が今度は大分変わるわけでございますが、領海が三海里が十二海里になり、また、経済水域が二百海里ということになると、いままでの守備範囲から大幅に拡大されるわけでございまして、いままでの海上保安庁の能力ではとうてい役目を果たすことができないわけでございますけれども、この際、海上保安庁の機能を強化する意味で、航空機増強あるいは大型巡視船の増強整備する必要があると思いますが、その点について大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  103. 木村睦男

    ○木村国務大臣 金瀬委員の御指摘のように、恐らく将来十二海里に領海が拡張される可能性が非常に強いと思いますが、そういたしますと、領海以内におきます海上保安関係の業務は質的にも量的にもふえることも当然予想されるわけでございます。そうでなくても海上におきますいろいろな汚染その他の事故等もふえてまいっておりますので、われわれといたしましても、これらも同時に考えまして、今後海上保安庁海上保安、警備の装備その他の強化を図っていきたいと考えておるところでございまして、五十一年度の予算はすでに御審議をいただいており、その中で、五十年度に比べましてはやや前進はいたしておりますが、まだ十分ではないものがございます。  そこで、もうすぐ五十二年度の予算編成に入るわけでございますので、五十二年度の予算編成におきましてはいま御指摘のような点を十分考えまして、海上保安、警備関係の充実のために強力な予算措置を講じてまいりたい、御趣旨を十分生かしていきたいと考えております。
  104. 金瀬俊雄

    金瀬委員 次に、先ほど佐藤政務次官の方から約束をしていただきましたが、念のためにもう一度大臣から約束をしていただきたいと考えておりますが、原因者不明の油流出によります汚濁被害についての救済措置というのが、いま漁民に対しては財団法人漁場油濁被害救済基金によって賄われておるわけでございますが、これが時限立法でございまして、五十年、五十一年と二カ年でございます。  この二カ年が終わりますと昭和五十二年度から先の見通しがないわけでございますが、この点については、恒久的にこのことが処理されますように、法制化して漁民救済に当たっていただきたいということをお願い申し上げます。
  105. 木村睦男

    ○木村国務大臣 そういう漁場の汚濁の防止につきましては、水産庁が中心で所管事項として努力をしておられるところでございまして、運輸省といたしましても、所管に属する問題がありますればこれに協力をいたしてまいっておるわけでございます。  いま御指摘のように、その期間も時限立法のようでございますので、恐らく水産庁の方もそれ以後のことについて十分な施策も考えておられることと思いますが、運輸省といたしましても十分に連絡をとりまして、漁場の汚濁防止についての水産庁努力あるいは施策に協力してまいりたいと考えております。
  106. 金瀬俊雄

    金瀬委員 最後に、東京湾船舶事故のことについて毎度御質問申し上げまして恐縮でございますが、前の徳永運輸大臣のときかと存じますが、明原丸の事件が起きたわけでございます。そのときに八億八千万円ほどの被害が出まして、その被害をめぐりましていま裁判中でございます。その後引き続きまして第十雄洋丸の事件が起きたわけでございますが、また、最近に至りまして、栄光丸の事件が昨年起きたわけでございます。  この三つの事件については、補償問題がまだ裁判中でございますので解決されておりませんが、この裁判の促進方につきまして大臣からこういう答弁をいただいております。閣議において法務大臣と話をして、少なくともこういう裁判は漁業者にとって大変なことであるので促進されるように最大限の努力をするという、こういう約束がされておるわけでございますが、その後裁判が促進されておりません。明原丸の場合はことしでもう五年になるわけでございまして、当時の八億八千万というのは、いまの金に直すと大分物価が上がっておりますのでだんだん価値が下がってきてしまうという状況でございますので、少なくとも漁民の方は調停に応ずるという態度でございますので、裁判の結果を待たなくても急いで調停なり和解なりが行われますように、大臣の方から法務大臣に対してそういう処置をされるように要請をしていただきたい。さようにお願い申し上げます。
  107. 木村睦男

    ○木村国務大臣 お話しのように、民事事件として裁判所に係属をいたしておる事件でございますので、いまお話しのような和解その他の方法につきまして、運輸省といたしましてお役に立つ面がありますれば、法務大臣と十分連絡をとりたいと思います。  いずれにいたしましても、民事事件としての結果が出ました場合には、その内容に従って、本件の処理が十分納得のいくように行われるように関係者の指導をしてまいるつもりでございます。
  108. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでは、終わります。ありがとうございました。
  109. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 紺野与次郎君。
  110. 紺野与次郎

    ○紺野委員 大臣質問いたします。  本改正案の提出の経過を見ますと、ことしの一月十六日に内閣官房で提出した内閣提出の予定法律案件の件名調べでは、最初海上災害防止に関する法律案(仮称)となっていたわけでありますけれども、それがいつの間にか海洋汚染防止法の一部改正というふうになったということで、その本体が海の下に沈没したのではないかというふうに、きわめてあいまいになってきた点についてわれわれは不審に思うのです。ぼやけてしまっている。どうしてこれが海上災害防止法というふうな法律にならなかったのか。ちょうど問題になりましたコンビナート災害防止法も御承知のように陸上だけになっておって海が欠落しているわけですね。そういうことでは臨海工業地帯のある日本におけるコンビナートの災害防止は完全を期せられない、それを取り巻く海洋災害というものを一つのものとしてとらえなければりっぱなものにならないという点から見ても、海洋汚染防止法という形になったいきさつはどういうことでしょうか。
  111. 木村睦男

    ○木村国務大臣 いままで海洋汚染防止法の中では海水の汚濁ということが中心での法律であったわけでございますけれども、水島の事故からさらに火災、いわゆる白物の油の流出による火災等もあったわけでございまして、今回この法律をつくるにつきましてはそういう点を中心とした法律改正ということで考えたわけでございます。  しかしながら、白物と言いながら、同時に、油が流出いたしまして火災が起こる場合には海水の汚濁も当然起こることでございますので、両者を截然と区別して別々の法律でこれを規制するよりも、むしろいままであります海洋汚染防止法の中に取り入れまして、両方の災害を一本の法律で対処した方がより妥当ではないかという考えに基づいてこのような改正法案にしたわけでございまして、紺野委員のおっしゃいますそもそもの趣旨は十分この中に生かされて運用できるということをねらっての改正であるわけでございます。
  112. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そうであるならばお聞きしますけれども、これをずっと見ますと、大体を言ってこれは結果論になるのですね。油が漏れてしまった、それをどうするか、火がつきそうだ、それをどうするかということなんですね。それで、これは物事の半分なんですね。後の半分は頭の方で、どうして漏れたか、どうしてそういう海上災害が起きたかという点についての施策がほとんど見られないという欠陥があると私は思うのです。そういうところがないから、油が漏れた、これは海洋汚染防止法と一緒にしていいのじゃないかというふうに安直に考えたのではないかというふうにさえ疑われる。そういうことがないとすれば、災害が起きてくること、そのこと自体の発生防止ということについて十分に配慮するということが必要だと私は思うのです。  そういう点で具体的にお伺いしますが、東京湾で第十雄洋丸がパシフィック・アリス号と衝突したとか、その他東京湾でいろいろの災害が起きたところを見ると、一つの問題はあそこの中ノ瀬航路なんですね。東京湾の銀座通りのようなところをわざわざ海上交通安全法によって設定されている。玄関からずっと入ってくる。ところが、そこに船が三隻沈んでいる。中ノ瀬航路の入り口の十九メートルの深さのところに一隻、それから出口のところに、二十二メートルと二十四メートルの水深のところにあります。それから入り口の中ノ瀬航路、つまり浦賀水道航路の終点のあたりにやはり二隻沈んでいますね。二十四メートル前後の船が二隻沈んでいる。そうして、あそこで十九メートルのところに底から二メートルくらい今度はエンジンが頭を出しているというのです。そうすると十七メートルですね。十七メートルのところですからとても第十雄洋丸が通れないということで、いわゆる喫水十六メートル以上の船舶については当分の間ここを通ることを適用を除外するといって迂回措置を認めたわけですね。そして今度は栄光丸でああいう事故が起きてしまったというふうなことで、やはりここを中心に起きているのですね。  災害が起きるメカニズムというのか、そういう壊れた危ないものがここに設定されて、これが海上交通安全法という法のもとで公然と存在しておるということは、これは海上災害を促進することになっていると私は思うのです。この点はおかしいじゃないか、運輸大臣としてこの船は取るべきだと私は思うのです。排除して、そうして初めて災害はかくのごとく起こらないようにしましたよ、その上で災害が起こるようなことに対しても対策を立てますよというふうにすべきであって、この沈船を当然ここから排除すべきだと思いますが、どうですか。
  113. 木村睦男

    ○木村国務大臣 中ノ瀬航路の問題につきましては当時当委員会でも申し述べたところでございますが、いま御指摘の沈船をどうしても撤去しなければなりません。そうしてマイナス二十二メートルまで水深を深めるという方針でそれを進めておるわけでございますけれども、この沈船を撤去いたしますにつきましても、この中ノ瀬航路港湾法で規定しております開発保全航路という指定を受けなければいけないわけでございます。  まず、その指定を受けるべく関係方面と現在意見調整をいたしておりますが、遺憾ながら今日の段階ではまだ具体的なところまでいっておりませんけれども、これは極力急いでぜひこの指定を受けるようにいたしたいと思っております。これができますればこの工事にかかれるわけでございます。同時に、沈船そのものが漁場になっておるというふうな実態面もあるわけでございますので、これにつきましては、それにかわる漁場的なものを設置するというようなことも考えて、中ノ瀬航路東京湾海上交通安全のために役立つ措置を極力、できるだけ早く講じたい、と、かように努力をいたしておるところでございます。
  114. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それでいいですが、港湾法ができまして、運輸大臣が開発保全航路を開発する、その責任があるということが書いてありますから、われわれがここでやったのですから、ぜひこれを至急に設定してもらいたいと思います。
  115. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 石田幸四郎君。
  116. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 時間がありませんから一問だけにしておきますが、今回の改正案については、海上保安庁の権限強化という意味においては一歩前進かもしれませんけれども、たとえばこの防災センターの機構を見ますと、いろいろと運輸省の説明を聞きますと、まだきわめて規模の小さなものですね。日本の海域は御存じのとおり広いわけでございますから、災害はいつどこで起こるかわからない。ということになりますと、たとえば全国港湾にこういった防災センターを逐次拡大整備しなければならぬと思うのですけれども、その説明を聞いても、当初はきわめて微々たるものというような感じで、これでは実際の運用に当たって支障を来すのではないかと私は思うのです。  これは運輸省はこれだけのものをつくろうとするわけでございますが、全国にいつまでにかなりの機構ができるのか、そういう整備をするつもりなのか、それだけ伺っておきたいと思います。
  117. 木村睦男

    ○木村国務大臣 こういう新しい一つの機構をつくるのにはいろいろな制約がございましてなかなかむずかしいわけでございますが、おかげさまでとにかくスタートいたすことになるわけでございますので、われわれといたしましては小さく産んで大きく育てようという考えでおるわけでございまして、御指摘のように全国の海上にわたって機能ができるように今後強化、拡大は図っていきたいと思いますが、そういう場合にはひとつまた皆さんの格別の御協力をお願いいたしたいと思っております。  あくまでも民間主導の一つのセンターでございますから、最終の責任は政府、海上保安庁が持つわけでございますが、それの補完機関としての機能をもっともっと強化できるようにこのセンターを今後育成していきたい、かように考えておると  ころでございます。
  118. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 その決意は非常に結構でございますけれども、この防災センターが機能するだけの整備というものは、大体何年間ぐらいあればまずまず機能が果たせるのではないかというめどをつけなければいかぬと思うのですけれども、そのめどについて伺っておるわけですけれども、いかがですか。
  119. 木村睦男

    ○木村国務大臣 スタートしたばかりでございますので、五十二年度予算編成も間近でございますから、私といたしましては、五十二年度予算編成の際に今後の拡大強化の一応の青写真的なものをつくってみたい、かように考えております。
  120. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 終わります。
  121. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 午後一時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  122. 中川一郎

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。紺野与次郎君。
  123. 紺野与次郎

    ○紺野委員 大臣質問で、東京湾の中ノ瀬航路における沈船問題で、港湾法に基づいて開発保全航路に指定しまして……(発言する者あり)
  124. 中川一郎

    中川委員長 静粛に願います。
  125. 紺野与次郎

    ○紺野委員 指定を行うことに努力をしており、それができれば沈船問題も直ちに解決するように努力するということでありましたから、これは一つの一歩前進だと思いますが、これについてもう少し聞きたいのです。  大体いつごろ沈船を引き揚げることができるのか、また、どれくらいの予算がかかるものか、それから何年くらいで完了すると見られるか、この三点についてもっと具体的にお聞きしたいと思います。
  126. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 中ノ瀬航路につきましては、いまおっしゃいますように、沈船が十九メートルのところに頭を出している。これをとっただけでは通りませんので、当面二十二メートルに掘りまして、幅七百メートル程度の航路にしたいというのがいまの目標でございます。  工事をするにつきましては開発保全航路に指定しなくてはいけないわけでございますが、この開発保全航路に指定するには各省の意見の一致がなくてはいけませんので、いろいろな問題がございます。その中での最大の問題点は漁民の皆さん方のコンセンサスを得ることでございまして、鋭意それを努力中でございます。  予算につきましては、一応二十二メートル全部通すには約五十億円を予定しております。これは御審議をいただく港湾整備五カ年計画の中でやっていきたいというように考えている次第でございます。なお、予算につきましては、すでに五十年度からある程度一部をここに予定していたわけでございますけれども、指定の問題でいろいろおくれている次第でございます。  なお、この開発保全航路の指定につきましては、横浜にございます第二港湾建設局におきまして——浦賀水道に第三海堡という海堡がございまして、この第三海堡の撤去がより以上に重要な問題だと私ども考えているわけでございますが、この第三海堡における工事のための指定と、この中ノ瀬航路の指定と、同時にいま努力中でございますが、第二港湾建設局におきまして、神奈川県であるとか、あるいは千葉県であるとか、あるいはそれぞれの漁業者であるとか、こういうところと話を詰めているわけでございます。  大体におきまして、千葉県側の漁民の方々にはいろいろ問題がございまして、この中ノ瀬航路の問題だけでなく、富津の問題であるとか、あるいは京葉シーバースというバースがございまして、それの問題等で漁民の方との間にはいろいろ話し合わなければいけないことがありまして、これは順次解決していきませんと、短兵急にやるというわけにもなかなかいかない事情がございまして、おくれている次第でございます。
  127. 紺野与次郎

    ○紺野委員 大体いつごろにめどがつくかということと、工事をやったならばどれくらいの年月で完了かということを伺います。
  128. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 漁民の皆さん方との話し合いは、私どもといたしましては、五十年度中にでも話をつけたい、本年度につきましてもあしたにでも話をつけたいという気持ちでございますけれども、相手のあることでございますので、ある程度相手の気持ちにもなって、いろいろな交渉といいますか、要求に対しての手当てとか、そういうことを十分考えていかなくてはいけませんから、いついつと言われましても直ちにはお答えできないのですが、本当にできるだけ早くやるように努力していきたいと思います。  それから、工事に関しましては、五カ年の中では二十二メートルには十分できる予定でございます。
  129. 紺野与次郎

    ○紺野委員 たとえば、かわりの魚礁の点ですね。大体どの辺にどういう計画があるか。
  130. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 魚礁を直ちにつくるということまでお約束しているわけではございませんで、中ノ瀬航路の工事に伴いまして、その漁獲等にいろいろな問題があった場合、漁民の皆さん方からそういう点についての御要求があれば、それに対して前向きに一緒に考えていくということは十分考えられることだろう、私どもはそういう要求があればその道を講ずるように努力したい、したがって、どこに魚礁をつくったらいいとかなんとかということについてはここではまだわかっていないということでございまして、各方面の方々とも相談しながらやっていかなければいけないというふうに思っております。
  131. 紺野与次郎

    ○紺野委員 では、もう一つ東京湾の問題で、災害が起こる危険のあるところをお聞きしたいのですが、この間の第十雄洋丸とパシフィック・アリス号の衝突が起こった中ノ瀬航路の出口ですね。これは一般には魔の交差点と言われているのですね。つまり、ちょうど航路を出るところに木更津から来る航路がほとんど直角に交わるような形になっておって、ある意味では第十雄洋丸の事件というのはそういう欠陥から起こったと言ってもいいと思うのですが、特に、最近海難審判が行われてその判決が行われたのですが、その審判はどういうふうに言っているのですか、どっちに責任があると言われているのですか。
  132. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 実は、海難審判については、海難審判庁の方が来ておりませんので、ちょっとお返事しかねます。
  133. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それは新聞の報ずるところによると、どっちにも責任があいまいであるということなんです。ということは、この魔の航路の交差点の性格をあらわしているわけですね。航路から行くものにとっては、わきから来るものは避けて通るようにという言い分で直進しているし、現に、あの雄洋丸はおしりの方は航路に乗っかっているわけです。  もう一つは、木更津航路から来るものはやはりこれはこれとして避けなければならない——法律があって曲がらなくてもいいのかな、真っすぐに行ける航路になっていますからね。片っ方の航路を通るものはまた航路を通る法律に従ってやっていく。両方ともあいまいなところで交差しているためにああいう事故が起こる。だから、どうしてもこれはあの魔の交差をやめるということだと思うのですね。こういうふうな魔の交差点というものは何とか別に設計して、そういうことが起こらないようにやるべきだと思うのですが、これについては、現に事故が起こっただけに、どういう反省が行われてどういう対策をとられているのか、お聞きしたいと思います。
  134. 山本了三

    ○山本説明員 中ノ瀬航路の北口の航行の安全の問題でございますが、先生御指摘のとおり、航路を航行しておる船舶は、航路外から航路を横切る船に対しては強いという立場にあります。要するに、航路外から横切る船は航路内を走っている船舶を避けなければならない。一方、航路を出ますと、今度は中ノ瀬航路から北上する船は木更津航路から出てくる船に対しては避航する義務がある。そういう衝突予防法の法律関係が成立いたします。  そういうことで私ども海上保安庁としては一応割り切っておりますけれども海難審判庁ではいろいろな意見があるようでございます。近々高裁の判決が出るというふうに聞いておりますけれども、高裁の方の裁決はまだ実施されておりません。  なお、この件に関しまして、中ノ瀬航路の北口におきます第十雄洋丸とパシフィック・アレスの衝突事故の直後、東京湾関係者が集まっていろいろ協議いたしまして、中ノ瀬航路の北方千五百メートルのところにブイを設置いたしました。そして、木更津航路を出て西行する船はこの北を回りなさいという指導を行いました。いわば、北口を、ラウンドアバウト方式といいますか、ぐるぐるっと回る方式をいまとらせております。そういうことで現在のところ北口の安全は迂回航法によって確保されておる、と、そのように考えております。
  135. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そういう点で、あの事件が起きた直後にも、迂回というか、もっとあの辺の航行を変えるようにということをわれわれは主張し、また、水先案内をあの湾全体で強制水先にするようにということで、これは実際上実現したと思います。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕  東京湾は最も過密な港湾でありますから、最近、海上安全船員教育審議会に対して海上交通安全法の見直しを諮問しているはずなんですが、そういう点については大体どういう点が問題点として提起されているのか、お聞きしたいと思います。
  136. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 ただいまお話がございました海上交通安全法の見直しについて諮問している経緯、内容について御説明申し上げたいと思います。  まず、第一に、諮問をいたしました理由といたしましては、船舶交通が特にふくそうする東京湾等におきまして、海上交通安全法によって特別な交通ルールを定めて各種の規制を行っておりますが、海上交通ふくそうに加えて、大型化、高速化、危険物輸送の増大など、これらの海域における交通がさらに複雑な様相を呈しておりますので、特に第十雄洋丸と栄光丸等の事故東京湾の入り口で起こったりいたしましたことにかんがみまして、海上保安庁としては特に東京湾における安全対策をより充実強化する必要があると考えまして、去年の十月に、海上安全船員教育審議会に対しまして、「海上交通安全法及び同法に基づく政省令の見直しについて」という諮問をいたしました。  諮問事項といたしましては、法律事項として検討していく事項と、それから政省令で片づく事項ということに分けまして、まず、政令で片づく事項につきましては、検討の結果を踏まえて、本年の一月八日に運輸省令第一号ですでに公布をいたしましたが、その内容は、中ノ瀬の航路、備讃瀬戸等におきまして、制限速力を十二ノットにするということが一つでございます。それから二番目には、航路航行に関する通報航行の改正ということで、入港予定日の前日正後までに通報しなければならない船の種類などを再検討いたしました。それから三番目には、進路警戒船等の配備の指示に関する基準を明確にして告示化をいたしました。それから四番目には、行き先表示の改正を行うことにいたしました。それが省令として一月にすでに改正を行った事項でございます。  次は、法律制度として検討していく問題でございますが、まずは、東京湾の中を、交通量の整流ということで、一定の経由地点を決めて一方交通にするということが一つでございます。それから二番目には、航行管制の充実強化ということで、現在行っている航行管制についてさらに対象船舶の拡大を図って、位置通報等の制度を設けるということでございます。それから三番目には、航行制限ということで、余裕水深の保持と、それから錨泊の禁止等を行いたいということでございます。四番目については、その他行き先の表示等について必要な見直しをするということでございます。  現在、同審議会で、大体月一回ということで鋭意審議が行われておりますが、あとしばらく審議の経過を見ながら、一方ではまたこれに関係する漁業との調整という問題がやはり大きな問題として横たわっておりますので、それをどう解決していくかということを考えながら今後対処していきたいということでございます。
  137. 紺野与次郎

    ○紺野委員 去年、瀬戸内海東京湾、伊勢湾等でタンカー事故が起きているというデータが出ているわけですが、それによると、結局、一万トン以上の事故東京湾と伊勢湾でそれぞれ一隻、それから瀬戸内海が四隻なんですね。やはり瀬戸内海が危険な海上災害発生の場になっているということを事実で示していると思うのです。そういうことで、いまのように海上交通安全法の見直しということを海上災害防止の見地からも一体のものとしてぜひ促進していただきたいということですが、ちょっとお聞きしておきたいのは、瀬戸内海で四隻昨年一万トンクラスが事故を起こしていますが、どこでどんな船がどの程度の事故を起こしているのか、お聞きしたいと思います。
  138. 山本了三

    ○山本説明員 ただいま手元に資料がありませんので、後刻調べまして早速御報告申し上げます。
  139. 紺野与次郎

    ○紺野委員 では、そういうことにしますが、皆さんに資料要求をすると、どうも数学が抽象的な数字で出てきて、具体的な内容が伴わない場合がありますので、その点、資料をあとで届けていただきたいと思います。  今度はこの法案ですが、この法案によって受ける印象としては、海上保安庁努力というものが海上災害防止センターに振りかわって、権限だけは強くなっているけれども内容的には後退してしまうのではないかという不安があるのですけれども、その点はどうですか。
  140. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 結論的に申し上げますと、私ども海上災害防止センターを認可法人として今回生み出し、また、育てていくということのために、海上保安庁本来の責務を免れるとは決して思っておりません。ただ、先ほどもちょっと申し述べさせていただいたのですが、やはり、海上災害については特殊性がございまして、油の特性からすぐ広がるとか、あるいは当庁の勢力でやりましても、全海域でございますのでなかなか十分に手が届かぬとか、また、三番目には、船ということで、全国どこで事故が起こるかわからぬということ、また、四番目には船上の処理には限界があるということでございますので、私どもはもちろん当庁の勢力で防除仕事も行うのでありますが、基本的には原因者に措置義務があるということを踏まえて、措置義務者が、自衛のために、全国を一元化した組織で、こういった海上災害防止センターの手でやってもらいたい。それに対して、現場に措置義務者がいないときとか、また、おっても措置に対する権限が十分に行われるような場合でないとかというようなときには、当庁が指示してセンターを使って防災の仕事をやらせるということにいたしたいと思っておるわけでございます。
  141. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そうすると、原因者負担の原則を踏まえてやらせるということ、これはちゃんと貫いているのですか。
  142. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 貫いております。特に、油については、原因者に応急措置から本格的な防除措置等全部の責任がかかっておりますので、それに基づく措置原因者にさせるということを基本に考えておるわけでございます。ただ、火災の場合は若干異にするということでございまして、これは非常に危険な仕事だから国が責任を持ってやるということでございます。
  143. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そうすると、油については特にそれをするということですが、海上保安庁の側として、特に火災に対する化学消防船については責任を持って増強する方針をとっているのですか、どうですか。
  144. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 御指摘のように、せんだっての第十雄洋丸のLPGタンカーの例を見ましても、単なる放水の消火能力では不十分である、沈でも不十分である、さらに紛末の消火能力を持たなければいかぬということでございますので、現在、海上保安庁としては、大型消防船を三隻、東京湾、下津、四日市の三カ所に置いてございますが、五十一年度のただいま御審議をお願いしている予算では、さらに大型消防船を一隻堺に常備するということで、建造にかかる予定でございますが、これには、当然、新しい消火能力として紛末の消火能力も備えたものにしていくということでございます。
  145. 紺野与次郎

    ○紺野委員 この間の第十雄洋丸のときを見ると、延々と最後まで燃えたのですね。ちっとも消せなかったわけですね。大体、保安庁で持っている消防船というのはあれくらい大きいものになると手がないのですか。能力はどうなんですか。
  146. 山本了三

    ○山本説明員 第十雄洋丸のLPGが燃えたときでございますけれども、私も現場に参りまして実際に消火作業を行いました。あの当時第十雄洋丸の火を消した方がいいのか悪いのかということにつきまして、学者先生あるいは実務家、専門家の方の集合をお願いいたしまして検討いたしましたが、私、現場に参りまして考えられたことは、この火は消そうと思えば消せるという自信がありました。しかし、諸先生方の意見を聞きますと、LPGは火を消した場合にはガスがどこへ漂うかがはっきりわからない、したがってむしろ火をつけておいた方が安全であるという結論がその会議で持たれまして、その結論に従って、極力火を消さないようにしながら、なおかつ大きな爆発が起こらないようにという措置を続けて、最後は引き出した、そういう経過でございます。  したがいまして、海上保安庁で持っております大型の消防船三隻につきましては、燃え盛っております第十雄洋丸火災につきましては、その時点ではあるいは能力として不十分だったかとも思いますけれども、ある程度おさまった場合とか、そういうときには十分に威力を発揮して消し得るというように私は考えております。
  147. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そういうふうにとにかく消す能力は持っているということですが、その能力は持たなければいけないと思うのです。ああいうことが起きたときにはいつも燃した方がいいという結論が出てくるのでは全く困りますから、やはり、基本的には消火する、また、引火することを防止するという方向で、結論としては強化する方向をとるべきだと私は思いますが、そういう点で、いまの消防船の力というものはもっと強化する必要はないのですか。トン数やその他はいまどれくらいなんですか。
  148. 山本了三

    ○山本説明員 消防船としては、能力をアップすればアップするほど好ましい状態であろうかと思います。しかし、現在の世界に存在いたします消防船といたしましては、わが方の消防船は第一級に属するということでございます。  能力がアップすればアップするほどいいということはお説のとおりだと思います。
  149. 紺野与次郎

    ○紺野委員 大体何トンですか。
  150. 山本了三

    ○山本説明員 いま、二百トン……。
  151. 紺野与次郎

    ○紺野委員 その辺になるとなかなか非常にあいまいな感じですね。一千トンぐらいのものをつくったらどうかという話も聞きますから、二百トンぐらいでいいというふうにはならないんじゃないかと思いますけれども、こういう点ではもっと研究する余地があるんじゃないかと思うのです。  現在、消防船の消火能力ということについて研究しているところはあるのですか。ただどこかからのものを買ってくるというだけですか。それはどうですか。
  152. 山本了三

    ○山本説明員 消防船の能力あるいは機能等につきまして現在研究しておるというところはございません。必要に応じまして、海上保安庁船舶技術部等が世界の消防船等を参考にしながら必要があれば開発していくということでございます。
  153. 紺野与次郎

    ○紺野委員 私は、そこが非常に弱点だと思いますね。日本の東京湾というのは世界でも最大のコンビナート地帯なんです。あそこには恐らく六千ぐらいの大小の石油タンクがあると言われておりますね。それから石油化学工業があるのです。ですから、ここでは、万が一にも海上で白い油だとか原油などが広がって引火する場合には手に負えないと言われているのですね。現に、東京消防庁は、大きな二十万トンクラスのタンカーがあそこで事故を起こせば三万トンの油が流れると言っているのです。それが引火したならば手に負えないだろうと言っている。これはコンビナート地帯ですからね。だから、そういう点から見て、あなた方の消防船に対する研究心とか、あるいはそういう起こり得る東京湾とかコンビナート地帯の災害について——これは大体コンビナート防災法の災害防止から発展してきた問題なんです。海の方からそういうことを起こしてはならないということでありますから、もっと真剣に責任ある研究組織を考えることが必要だと私は思うのです。  このことは、もう一つ油回収船関係してもそうなんです。あの水島の事故のときに、一番新しい新造の回収船の、一時間五十トンの油吸収の能力がある船を派遣したら一日に二十トンだったんですね。一時間五十トンだと思って持っていったところが一日二十トンだったんですが、それは知っていますか。
  154. 山本了三

    ○山本説明員 油回収船の能力でございますが、いわゆるカタログのデータと実際に油を回収いたします場合の回収能力とは相当に開きがあろうかと思います。カタログのデータは、ある特定の、場合によっては理想的と言ってもいいかもしれませんけれども、そういう状態での回収能力をあらわしております。しかし、実際の場合には、いわゆるねばねばという状態ですが、油の粘度とか、それから油の厚さとか、それから気象、海象とか、波の影響ですが、そういったことの原因のために油の回収の能力は非常に落ちるというのが現在の回収船の能力でございます。したがいまして、水島におきましてもなかなか思うようにいかなかったといいますか、カタログどおりの能力は発揮できなかったというのが実情でございます。
  155. 紺野与次郎

    ○紺野委員 もう一つそれに加わったのはマットですね。吸着マットを捨ててどんどん油はそれに吸着するが、それが今度はポンプの吸い口にみんな詰まりまして、あいた口がふさがらないというのではなく、ふさがってしまって通らなくなったわけですよ。それでしょうがなくてひしゃくでくんだり、いろいろなことが起きた。それでまたパイプが詰まるのですね。  そういうことで、この分野は新しい分野であるから、油の回収船とか消防船とかいうものについてはもっともっと研究して開発すべき分野だと私は思うのですね。だから、海上保安庁を中心として、油回収船をつくりました、消防船も持っていますと言うだけではなくて、これに対する能力をもっと高めるとか、あるいはいろいろの災害が起こったり妨害があって計算どおりにいかないというふうなことをもっと研究する対策をやるようにしなければならないと思うのですが、どうですか。
  156. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 実は、運輸省全体としましてちょっとお聞きいただきたいのは、先生がおっしゃるように油回収船の技術開発について、船舶局で五十年度からかなりやり始めておりますという実情で……
  157. 紺野与次郎

    ○紺野委員 どこで、ですか。
  158. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 船舶局です。船舶局長が来ておりますが……。  それから、港湾局でも実働二隻の船を試験的に使っていろいろやっております。  運輸省としては、そういうことで、先生がおっしゃるように、方々で衆知を集めて、技術開発なり研究の促進なりを今後とも続けてやっていきたいと考えております。
  159. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それをどこが中心で責任を持ってやるかというふうな点についてぜひ明確にしていただきたいと思いますが、それはどの辺が中心になりますか。あっちこっちですか。
  160. 内田守

    ○内田政府委員 油回収船の研究開発の経緯を含めて概略御説明いたしますと、回収船そのものは、例の海洋汚染防止法が施行されました昭和四十五年ごろから、民間あるいは政府を含めましていろいろな型の油回収船の研究開発が進んできたわけでございます。私どもといたしましても、当局の船舶局はもちろん、船舶技術研究所の研究開発あるいは民間に対する科学技術研究補助金の交付等、従来からその促進に努力をしてまいったわけでございます。特に、私どもの方といたしましては、昭和四十八年に大量流出油に対処する油回収船の試設計を行いまして民間の回収船の開発の促進を図ったわけでございまして、ある程度の成果は得られたというふうに考えております。  しかし、いま御指摘のとおり、技術開発というものは常に一層の性能の向上を図ることを目指すものでございますし、そういう意味におきましても、昭和五十年から、昨年からでございますけれども、例の瀬戸内海における大量流出油事故の経験にもかんがみまして、さらに高性能の油回収船の開発を現在推進しておるところでございます。もし、御必要でございましたら数字その他は御説明させていただきます。  なお、港湾における回収船につきましては、先ほど長官が申しましたように、港湾局でも鋭意努力されておるわけでございます。
  161. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 先ほどもお答えしたわけでございますが、港湾の方といたしましては、海洋の浮遊油を回収するという目的で、昭和四十八年から、国みずから、流出油防除を行う油回収船の建造に関する研究開発を進めてまいりまして、それに対応いたしまして、現在までに二百トンないし三百トンの油回収船を三隻建造しております。そのうち二隻がすでに東京湾では横浜港で、それから大阪湾におきましては神戸港で稼働中でございまして、この大阪湾にありました回収船がこの前水島のときに出動したわけでございます。なお、その以前におきましては、昭和四十七年度から試験研究補助金を民間の方につけまして、それによりましてもこの開発をしている次第でございます。  なお、新しい油回収船といたしましては、大体昭和五十五年までに六隻を計画しております。  また、確かにいろいろ問題がございまして、回収しているうちに油がどんどん固まってまいります。固まってきますと、非常にやわらかいときの油を吸収するような機械が効かなくなってくるという点がございましたり、あるいは油と一緒にごみが流れてまいりまして、ごみといっても非常に大きな材木が流れてくるというような点が間々ございまして、そういういろいろな状況に対応するために先生のおっしゃるような研究が必要であると思います。そこで、いままで三隻つくった回収船につきましては、私ども、それぞれの特徴を生かして検討している最中でございます。  また、本年から三千トンの大型しゅんせつ船をつくることにしておりますが、この大型しゅんせつ船には大量の油回収機能を同時につけていきた  いということで、現在工事を発注すべく準備を進めている次第でございます。大体、この船は常時は普通のしゅんせつ船として活動させる予定でございますが、同時に油の回収機能を持たせまして、  一時間に約一千立米の水と油を吸収して、十時間には一万立方メートルの水と油を吸収するだけの能力を持たせて、いざというときには海上保安庁とタイアップいたしまして御協力を申し上げられるような段取りを現在研究中でございます。
  162. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そういう点で、油の方はある程度進展しているかとも思われますが、水島の新船としていたものが、一時間五十トンだったものが一日二十トンだったということがあるのですね。ですから、決して現状でいいということではないと思いますので、消防船と油回収船については常に研究体制をしいて、絶えず能力を高めるようにしてもらいたいと思います。  それから、センターの問題で、資金の問題がよくわからないのです。これは、つまり、海上防災センターという現在の組織を吸収するわけですが、大体、新しくできるセンターが基金制度をとっていますね。基金をつくって、特に消防及び油回収に関する方面に金を使う。ところが、この基金の内容ですけれども、これは出資金と、それからもう一つ民間から——民間からかどこからかわけのわからない金が基金の中に入ってきているようですが、いわゆる政府以外の出捐金というやつですね。この出捐金と出資金の内容をちょっと知らせてもらいたいのです。
  163. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 センターの仕事につきましては、従来の旧センターの訓練事業、消防船事業、備蓄事業にプラスして新たに基金事業を設けたい。そこで、海上保安庁からの指示あるいは民間の自発的な委託によってセンターが防災事業をしたときに、その基金を利用して、たとえば金が即座に要るときには立てかえ払いをして後で原因者から求償するという方法でやっていきたいという基金をつくりたいのでありますが、大体、その基金にわれわれは五十一年度で六億円、五十二年度ではさらに一億円増加して七億円という予定をしております。  その基金をつくるための方法といたしましては、資本金によるということで、出資というかっこうで三億円で、国が二億円と船主協会が一億円、それから出捐金の方は船舶振興会から五十一年度三億円、五十二年度一億円という予定をして、合計七億円という金を基金として用意するつもりでございます。
  164. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それで、先ほどあなたは原因者負担の原則を貫くと言われましたが、この資金を見ると、この中で原因者というのはだれですか。  それから、いまの金のうちで、この三億円というのは、国が二億ですね。それからあとはどうなんですか。
  165. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 出資金の内容は、国が二億円と船主協会が一億円です。  それで、先生がおっしゃるのは、恐らく、原因者負担と言いながら原因者でないところからの金が入っているじゃないかということだと思うのですが、それは違いますので、そういう基金を用意して仕事に支障がないように基金として役立てますが、その基金は、たとえば立てかえ払いで使うときには最終的に原因者から求償するのでありまして、その金は基金として、いわゆる回転する金として置いておくのであって、最終的には原因者から求償するということで、原因者の手に負担がかかっていくということで、原因者の負担の原理が働いているということでございます。
  166. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そうすると、七億の基金のうち国が二億で船主が一億ということですが、これは大体事故が起きてくる場合の原因者なんですね。あとの五十一年度の三億と五十二年度の一億というのは日本船舶振興会でしょう。このお金はギャンブルじゃないですか。モーターボートのギャンブルの金が半分以上占めてしまって、そういうもので運転されるということじゃないですか。
  167. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 船舶振興会は、交付金の制度として、海難防止、造船振興その他公益に資するように金を補助しているということでございまして、船舶振興会から二十数億円の金を海難防止事業につぎ込んでおるという実績もございますので、そういう点で船舶振興会から基金としての出捐を仰いでもおかしいものとはわれわれは考えておりません。
  168. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そこにやはり大きな問題があるのだな。これはやはりギャンブル資金ですね。しかも、これを牛耳っておられる方は笹川氏ですね。大体そう言われておる。彼が運輸関係のいろいろなこういう機関に顔を出して、船舶振興のためでございます。海のためでございますと言っておるのだけれども、最近はおかの上に上がってテレビに出演してみたり、自分の顔を何のために宣伝するのか知らぬが盛んに宣伝して、国民は不安に感じておるのですね。あの人は戦争犯罪者です。元のA級戦犯ですよ。こういう分野でそういう人が大きな顔をしてテレビにのこのこ出てくるということはわれわれとしては遠慮してもらいたいと思います。  そういう点で、せっかくできる海上災害防止センターの資金が原因者負担ということになれば、やはり、船主とか製油メーカーとかあるいは商社とか、こういう人たちが資金を出してやるというならば筋が通るけれども、そういうことは全然なくて、ギャンブル資金を持ってきて、半分以上これでやるというのは本格的ではない、正しくないと私は思うのですが、それはどう思いますか。
  169. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 ただいまもお答え申し上げましたように、船舶振興会はモーターボート競走法に基づいてできた特殊法人として、造船振興であるとか海難防止に補助というかっこうで金を拠出しておる団体でありまして、そのうちの大事な仕事として海難防止に補助金が出されており、その金を受け取ってセンターの基金にするということについては、私どもは疑念を差しはさんでおりません。  それ以外のことにつきましての御批判は先生の御自由でございますが、私どもとしては、船舶振興会の性格から、海難防止の金を受け取るということについては決して疑っておらないところでございます。
  170. 紺野与次郎

    ○紺野委員 原因者負担という原則でやると言うあなたの言明とやっておることとが違うということを私は言っておるのです。原因者負担であるならば、船主のほかに国が二億出しておるのですから、それより多くの金を、石油のメーカーとか商社とかいう、実際に油の災害に直接関係のある大企業に負担してもらい、そこが出捐金を出すとかいろいろの基金をつくるということは当然ですよ。国民はそう思っておるのです。これはあけてみて、何だ、ここにもこんなものがあるのかとみんなびっくりしておるのです。そして、国の方は船主よりももっと多く出しておる。大企業を擁護して、全く別の方からわれわれの金を引き出してくる。こういうようなところにロッキード事件みたいなことが起きてくる体質の奥深い誤りがあるのだと私は思うのです。あなたはちっともそれを不思議がっていないけれども、実は、これは不思議ですね。
  171. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 いま、石油業界だとか船舶海運業界の負担というお話が出ましたが、先生にこの新しい法律を見ていただいてもわかりますように、先ほどお話の出ました油回収船配備義務というようなものも当然海運業界の負担にかかってきます。それから、これと並んですでにできております石油コンビナート等災害防止法の中では、海運に油回収船配備を義務づけたと同じように、陸上の石油事業者に油回収船配備を義務づけておるわけでございます。  そういう点でもかなり大きな負担がそれぞれの業界にもかかっていくということでありますので、基金の造成については別途そういうことを船舶振興会に仰いでおるということについては、現在の経済情勢から言いましても、別にわれわれは大企業だけを擁護するわけではありませんが、当然のことだと思っておるわけでございます。
  172. 紺野与次郎

    ○紺野委員 とにかく、いまのようなやり方は間違いだと私は思います。納得できません。  時間がありませんから最後にお聞きしますが、災害防止センターの職員の皆さんは準公務員でしょう。公務員に準ずると言われていますね。仕事内容が当然そういうことを示しております。問題は、それにふさわしいような扱いをしていくかどうかですね。事故災害その他が必ず起きる可能性を持っておりますから、こういう方々の事故や病気やその他は労働災害と言っていいと思いますが、こういうことについては特別の配慮をした制度をつくるのですか、どうですか。
  173. 鈴木登

    ○鈴木説明員 先生の御指摘の点につきまして、実は、私から御説明申し上げるまでもなく、労働者災害補償保険法という法律がございますが、この労働者災害補償保険法は国家公務員災害補償法とか地方公務員災害補償法と完全に歩調を同一にしておりまして、それに対する補償体制は完全に平仄を合わせてございます。したがいまして、今回この法律が成立いたしますと、発足いたします海上災害防止センターの職員は当然労働者災害補償保険法の適用対象ということになります。  ただ、正式な公務員ではございませんので、国家公務員災害補償法とか、あるいは地方公務員災害補償法の適用はございません。そのかわり、いま申し上げましたように、労働者災害補償保険法の適用を受ける。その保護の内容は三者とも完全に同一でございまして差異がないので、それで十分だというふうに私ども考えております。
  174. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それは、このこと自体は必要なことで、こういうことは何らかの立法措置を講じなければいけないということだと思います。問題は、それがどこから見ても臭いものがついていない、社会的な災害の危険もないというふうに、本格的に正々堂々ときれいにやってもらいたいということで、私どもの要望を申し上げまして、私の質問を終わります。
  175. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 石田幸四郎君。
  176. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 海洋汚染防止法の一部を改正する法律案の審議に関連をいたしまして、その運用問題について特にこれから質疑をいたしたいと思います。  いま私が取り上げようとするのは、昨年の九月二十四日に伊勢湾で事故がありましたデンマークの貨物船クリフォード・マースク号の問題でございますけれども、これに大量の油の処理剤を散布いたしたわけでございますが、この油の処理剤の散布について、その運用上に大変疑問があると私は思うわけでございます。  まず、最初に水産庁の方にお伺いいたしますが、このときの被害状況はどの程度のものか、お答えをいただきたいと思います。
  177. 森川貫

    森川説明員 御指摘のクリフォード・マースク号の油流出によります漁業被害状況でございますが、愛知県からの報告によりますと、船首部の燃焼タンクからC重油が流出いたしまして、知多半島西岸の小鈴谷漁協及び野間漁協管下のノリ養殖施設と定置網に油汚染が生じ、その清掃防除が行われたというふうに聞いております。  また、愛知県からの報告によりますと、被害発生後斃死魚が認められたという報告がございましたが、同県の水産試験場では、汚染漁場から採水をいたしまして分析し、また、クルマエビの飼育試験を実施いたしました結果、異常がなく、これらの斃死原因は酸欠であろうという結論を出しております。  また、たまたまこの時期はまだノリの採苗時期に入っておりませんため、ノリ網は敷設されておりませんでしたので、ノリそのものに対する被害はございませんでした。
  178. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 まず、その被害問題でございますけれども、時期的に見て九月でございますからノリを栽培していないことは明らかでございますけれども、しかし、油の流出並びに油処理剤の散布による被害というものは、当然後日その影響があらわれてくるわけでございますけれども、それについての被害状況の調査はなさいましたか。
  179. 森川貫

    森川説明員 水産庁としてはいたしておりませんが、愛知県当局で調査をいたしました結果によりますと、まず、御承知のように、当地は知多半島で、愛知県の水揚げの半数を水揚げする重要な海域でございますが、特に漁獲上の影響はないように聞いております。  ただ、アサリについて本年水揚げが少なくなっているという実態がございますが、これにつきましては、四十九年には相当多く漁獲はされておりますが、それ以前の漁獲の変動もございますので、その原因が何であるかまだわかってはおりません。
  180. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 われわれが調べたところによりますと、小鈴谷漁業協同組合等に問い合わせをいたしました結果はかなりの被害が出ているわけです。これらの問題、特に網の清掃といいますか、網の被害については賠償金の妥結を見ているわけでございますけれども、しかし、状況から見ますと、その妥結額も非常に低いように思うのです。ノリの養殖関係で大体想定されているのが六億二千五百万で、魚類、貝類を入れて約九千万というような被害状況の訴えがあるわけでございますので、これはもう一遍水産庁において厳重に調査をしていただきたいと思うのですが、この点は調査をしてくれますか。
  181. 森川貫

    森川説明員 御指摘の点につきましては、再度愛知県当局を通じまして調査をいたしたいと思います。
  182. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、海上保安庁の方にお伺いいたします。  いま私が手元に持っている資料海上保安庁の方から出ているものでございますが、特に、油の処理剤の使用基準というものが暫定的につくられておる。これを見ますと、この暫定的な基準をつくったのは全国で伊勢湾だけらしいのでございますけれども、この中に油の処理剤についての使用可能区域というものがある。それから、季節によって使用できない海域というものがありますね。それから、使用についても関係地方自治体と協議を要する海域がある。こういう三つの分類がなされておるわけでございますが、この資料海上保安庁が策定したものに間違いありませんか。
  183. 山本了三

    ○山本説明員 海上保安庁漁業者の皆さまと——これは県も入っておりますけれども関係者が相談をして決めたものであります。
  184. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 デンマークのクリフォード・マースク号事件が起こったときに、これは常滑のシーバースの先百メートルと言われておりますが、この海域は、この地図で見ますと油の処理剤が使用できない海域である。つまり、十一月から四月ごろまでの間はこれを使用してはならないというふうになっておるわけでございますけれども、この九月という時期はこれらの問題については関係はないわけですか。
  185. 山本了三

    ○山本説明員 夏分でございますので関係はないと思います。
  186. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 しかし、これによってかなり神経を使って散布をしなければならない地域であることは間違いありませんな。いかがですか。
  187. 山本了三

    ○山本説明員 御説のとおりでございます。
  188. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そうしますと、今度はこの散布をいたした油処理剤の量の問題になりますけれども海上保安庁が出されている通達を見ますと、特に、「油の処理剤の使用に際しては、下記の事項に留意しなければならない。」とされておりまして、その「ロ」のところに、「特に過度の散布にならぬこと。なお、標準的な規格の処理剤が効果的に作用する場合には、油量の二〇—三〇%が適量である。」というふうに明確に書かれております。皆さん方の報告によりますと、油の流出量は約一キロリットル、それに対して散布をいたした処理剤の量は一・五キロリットルということですが、そうなりますと、ここに示された基準の量の少なくとも五倍は散布されたということになりますが、なぜこういうような事態になったのか、この間の事情を御報告願いたい。
  189. 山本了三

    ○山本説明員 油の流出量は一キロリットルというように推定いたしております。これは先生の御指摘のとおりでございます。それで、その量とそれから散布いたしました処理剤の量を比較しますと、指導文書と相違いたしておるということは明白なことでございます。しかし、このクリフォード・マースク号から流出いたしました油の量は、これは確定量として一キロリットルということを申し上げているわけではございません。流出が起こりまして巡視船等が翌朝現場に駆けつけたときにはすでに流出防止のための措置が行われておりまして、要するに破口が水面上にまで上げられておったということで、正確な油の流出量についての算定はいたしかねるという状況でございました。それで、海上保安庁といたしましては、海面に漂流いたしております油の厚さあるいは広がり等から一応一キロリットル程度というふうに推定をいたしたわけでございます。  そこで、処理をいたします油がその推定の量でございますので、さっきの二〇%ないし三〇%というのがどうかということがまた問題になってくるわけでございますけれども、私どもの経験則からいたしまして、油の厚さが薄くて広がりが大きいという場合には処理剤の散布量が実績としてどうしても多くなるということがございます。そういった関係で、これは油が流れてすでに六時間以上経過した後の広がった油を除去するという作業をやっておりますので、二割、三割じゃなくて相当多量の処理剤を必要としたであろうということがこれまた推定できると思います。  こういうことを総合いたしてみますと、油の量がはっきりしていないということ、あるいはその広がりが薄く広がっておったというようなこと等を見、また、処理業者が処理をいたしております態様等を勘案いたしますときには、まあこういうぐらいの処理剤の使用もあるかというように考えられる次第であります。
  190. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いいかげんなことを言ってもらっちゃ困るんだな。この報告で、この問題について私がいろいろ事情を聞いたときにはあなた方は一キロであると明確にお答えになっている。  では、もう少し突っ込んでお伺いしますが、油の処理剤の散布については、業者が散布しておるわけでしょう。その際に海上保安庁は立ち会っておるのですか。いかがですか、簡単に答えてください。
  191. 山本了三

    ○山本説明員 海上保安庁はそばにいて立ち会ったというわけではございません。ただし、この処理をいたしております伊勢湾防災株式会社というのは、過去伊勢湾におきまして油が流れた場合には必ず出動いたしておるといってもいいくらいの処理業者でございます。非常に良心的な散布をやっておるのが従来の実績であります。
  192. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そういう詭弁は通りませんよ。業者は油の散布で飯を食っておるわけですから、だれも監督する人がいなければ、多少余計まいても、まあそのくらいやっておけということになるのじゃないですか。しかも、あなたは一キロリットルというのは明確な推定量ではないと言いますけれども、これはあくまでも海域の状況を見てのことですからそれは推定でやる以外にないんだけれども、それに一・五倍の油処理剤がまかれたというのは、あなた方の監視体制が悪いから処理剤をまき過ぎたということはだれが見ても明らかじゃないですか。そういう失態があったということはあなた方はお認めにならぬのですか。どうですか。
  193. 山本了三

    ○山本説明員 先生も御承知かと思いますが、この防除作業は二日にわたって行われておりますが、海上保安庁巡視船艇が現場付近において一応これの監督等を行っております。そういうことで、処理作業が非常に不当に行われたとは考えられないと思います。
  194. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それじゃ、この油処理剤を五倍もまき過ぎたということについてはやむを得ないとあなた方は判断をするわけですか。こういう新しい処理剤をまくわけでございますから、それがどの程度魚介類に影響を与えるか、その因果関係は過去の実例を見なければわからないし、あるいは学者の意見等を聞かなければ明確にわからないけれども、あなた方が二〇%−三〇%と決めたのは、少なくともそういう学者のいろいろな説あるいは過去の新潟等のそういう事件から推定して、そこら辺が適切な量であろうというふうに決めたわけでしょう。それ以外に決めようがないんだからね。それなのに五倍もまき過ぎたということについて、あなた方がそれを肯定するというのはおかしいじゃないですか。  何のためにその基準を決めるんですか。見た目ではわかりません。まあ、多少なら私も了解はしますけれども、あなた方が二〇%−三〇%と決めておいて、五倍もまいておいて、いろいろな被害が出ているのに、それはやむを得ませんでしたでは通らぬでしょう。基準をつくる必要がなくなってしまうじゃないですか。魚介類に影響を与えるからそういう基準をつくるんでしょう。まき過ぎということを認めませんか。どうですか。
  195. 山本了三

    ○山本説明員 先ほどから御説明申し上げましたとおり、油が薄く広がっておるという状態と、それから二日間にわたってまかれておるというようなことを考えますときには、一・五キロリッター程度の処理剤がまかれることも考え得ると思います。
  196. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そういういいかげんなことじゃだめじゃないですか。多少のことは私も認めないわけじゃありませんよ。だけれども、魚介類に影響を与えるからこそ、散布の量を推定で大体このくらいと基準をつくっているのじゃないですか。それだったら基準の数値をつくる必要はないじゃないですか。  長官、どうですか。そんな数値をつくる必要はないじゃないですか。インチキじゃないですか。
  197. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 一般の場合に二〇%ないし三〇%くらいの分量でまけという基準をつくってあるのは事実でございまして、できるだけその基準を守らせるように平素から行政指導しているということが実態でございます。  ただ、先ほどからも話が出ましたように、ケース・バイ・ケースでいろいろな点があろうかと思いますが、それによって魚介類に影響が出たという因果関係も、私どもが聞いているところではどうもはっきりしていないような点でございますので、私どもとしては、つくっている基準は守らせるように今後は十分指導監督していくということはお約束できると思います。
  198. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私は今後のことを聞いているのじゃないのですよ。五倍もまき過ぎたのでしょう。だったら何も基準をつくる必要はないじゃないですか。これは災害防止センターの方にも関連があるじゃないですか。適量というのは、だれが監視するのですか。あなた方は監視をしないのですか。そういう責任が今度の法律によってあるわけでしょう。もう一遍答弁願いたい。
  199. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 行政指導の線に沿ってできるだけ私ども指導していくということでございます。ただ、本件の場合、そういう因果関係が果たしてどこまではっきりしているかということを私は直接よく承知していないということでございます。
  200. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 あなたは因果関係を承知していないと言うけれども、この因果関係がどこまで出てくるかということについては、学界にだってまだ明確な定説がないのですよ。そういう関係からいけばあなたが承知していないのは当然であるけれども、しかし、実際にいろいろな被害が出ている状況から考えてみれば、これらの油の処理剤の散布についても、過去においてこういう失敗があったから、今後そういう問題が起きたときにはさらに十分に注意をするようにと通達をあなた方は出さなければならないじゃないですか。そういう意味から、これは事実関係を明確にしなければいかぬと私は言っているわけですよ。  現実に、最近この海岸では潮干狩りでアサリが全くとれない。ところが、潮干狩りにはそれぞれ料金を取って入らせるわけでございますから、そういう料金を取る方にはがんがん抗議の電話が入ってきている状態なんですよ。それは確かにまだ因果関係はわからぬでしょう。しかし、それは科学的分析がまだできないというだけのことであって、そういう可能性もあり得るかもしれないということでしょう。だったら、やはり、この因果関係を明らかにしておいて、今後の注意を喚起する必要があるのじゃないですか。いかがですか、長官
  201. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 今後厳重に行政指導をやっていくということはお約束できると思います。
  202. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 では、認めたのですね。どうですか。
  203. 山本了三

    ○山本説明員 現在使用いたしております処理剤でございますが、これは先生も篤と御承知と思いますけれども、今回クリフォード・マースク号の油流出事故において使用いたしました油処理剤は、いわゆる認定品でございます。  この認定品の認定の基準でございますけれども、水産学者を含みました学識経験者の方たちの協議によりまして、水産動植物に被害を与えないということを前提として基準を設定されておるものであります。  現在認定されておりますこの処理剤を適法に散布いたします場合においては、海水に適当な混入といいますか、分散が行われました場合には、水産動植物に対する被害はまず起こらないというのが現在の学者先生方のお考えであります。  そういう考えによってつくられた処理剤でございますので、あの事件が発生いたしました海域で、一・五キロリッター程度の処理剤の適法な使用であれば、水産動植物に対する被害発生するであろうということはなかなか即断することはむずかしかろうというふうに考えられるところであります。
  204. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 まき過ぎでないということを、あくまでもあなた方はそんな形で逃げるのですかね。それなら基準は必要ないじゃないですか。  あなたがそういう答弁をしますから、さらにこの処理剤の種類と使用量について伺いますけれども、この事故が起こったときに六種類の処理剤が散布されていますね。その中でスノーラップE一二〇〇〇はもうすでに承認がなされている処理剤ですか。もう一つ、ハイトロン3ですか、これはまだ承認の申請さえ行われていない処理剤じゃないですか。この点はどうですか。
  205. 山本了三

    ○山本説明員 先生の御指摘のこれらのものは、海上保安庁の試験センターによる認定品であります。
  206. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 これはあなた方の報告ですよ。それにはスノーラップE一二〇〇〇、型式承認申請中、五十一年二月二十日となっています。それからハイトロンは型式承認申請なし。こういうものを使っているじゃないですか。
  207. 山本了三

    ○山本説明員 型式承認の問題と海上保安庁の認定品の問題とがちょっとこんがらがっておりますけれども、当初処理剤は試験センターの認定品という形で認定されておりました。その後制度が変わりまして型式承認という形になっておりますけれども、先生の御指摘のものは海上保安庁の試験センターの認定品であったということでございまして、型式承認のところまではまだいっていなかったということでございます。しかし、中身は同じことであります。
  208. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 あなた方はそういうふうにして逃げますけれども、問題は、こういう処理剤を使おうというのですから、大体これは内容の似たものを使うのは決まっておるので、私はそんなことを一々言うておるのじゃないのですよ。だけれども、少なくとも基準が二〇%、三〇%と言っているのにこんなにまき過ぎて、それでいいということならば、今後の処理業者はみんなそういう形で油の処理に当たるじゃないですか。先ほども申し上げたように、魚介類に影響が出るか、この因果関係がまだわからぬと言うけれども、出る可能性だってあるんでしょう。そうじやないんですか、長官。だからこそ基準をもうけるのじゃないんですか。いかがですか、長官。論理的におかしいじゃないですか。
  209. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 果たして一トンであったか、それからどの程度広がったかということについて、実は、私、ここでいまはっきり認めるとか認めぬとかということを申し上げにくいということを申し上げているわけであります。基準は基準でございますから、そういうまき過ぎのおそれがないようにわれわれが通達などでよく指導していくということはお約束できるということでございます。
  210. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私はこの問題についてはいいかげんにやめますけれども、あなたが説明に来たときには、確かにまき過ぎでございますと言っているじゃないですか。長官の立場上そんなことを言うと損害賠償で訴えられるかもしれないものだから言わぬのですけれども、これはせっかくこういう基準をつくられたわけだから、こういうミスが起こっていることは事実でございますので、今後中和剤の二次汚染というような因果関係が明確になりますと、この規制というものがますます被害者側から厳しく要請されるところだと思うのです。  今度の法改正を見ましても、やはり運用が一番問題じゃないですか。幾らりっぱな機構をつくっても、その運用が着実に実施されなければ意味がないという立場で私は申し上げておるわけでございまして、この運用についての政務次官の今後の御決意を伺っておきたいと思います。
  211. 佐藤守良

    佐藤(守)政府委員 お答えします。  実は、先ほどから海上保安庁長官と山本部長と石田委員との質疑応答を聞いておりまして、海上保安庁はなかなか苦しいところがあると私は理解しておるわけでございますが、実は、流出油量をあらかじめ想定した上で油処理剤の適正な使用量を予定して作業に着手するのが一番理想でございますけれども、問題は、このような状況判断を個々の作業者がすることは大変困難だというようなことでございます。  また、油処理剤については、二次的な被害防止するために海洋汚染防止法施行規則等で対生物毒性等についての規格が決められておりますけれども、といって、これも桧山先生等を中心にその研究をお願いしておりますけれども、一〇〇%被害がないという結論は出ていないという実情でございます。  ただ、一つ石田委員に御理解願いたいことがありますのは、海上保安庁としては実は補償問題には触れる立場ではないという原則論があるわけでございまして、この辺が、石田委員質問を理解しないから石田委員の理解を得られるような答弁が出ないという点があるかと私は思いますが、その辺は御賢察を特にお願いしたいと思うわけでございます。  したがって、石田委員の意を十分くみまして、厳重に行政指導をいたして、今後はかかることのないように努力いたしたいと思いますゆえ、ひとつよろしくお願いいたします。
  212. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 なお、この問題については、いま、農林省の方にも、被害状況をさらに調査するようにお願いをいたしました。  さらに、この中和剤の二次汚染がどういうような形で出てくるのか、あるいは出てこないのか、なお因果関係を突き詰めていかなければならないと思うのですけれども、それによってはかなりまた問題が発展をするかもしれないので、こういう点を十分御承知おきいただきたいと思うわけです。  さらに、これらの油の処理剤を散布するについて、先ほども指摘を申し上げましたように、これは業者だけではいけないのではないかと思うのです。いかに海上保安庁が命令権限があるといいましても、業者の方は仕事の量が拡大されればされるほど利益が上がるというような因果関係があるわけでございますので、適正な処置ということになりますれば、今度の災害防止センターからの指示等もあるようでございますけれども、そういう監視体制を明確にしていかなければならぬのではないかと思うのですけれども、ここら辺は今後どのように対処されるのか、伺っておきたいと思うのです。
  213. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 おっしゃるとおり、現場に海上保安庁がおるべきだということについては、私どももそのとおりだと思いますので、今後事故が起こったときに、大小すべてということは土地柄あるいは許されない時期もあるかもしれませんけれども、原則としては、現場に海上保安庁の船が出て立ち会ってそういう指導、監督に当たるということはお約束させていただきたいと思います。
  214. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、この問題はこの程度にする以外にないと思いますけれども、この点についてはまだ私は承服しかねますので、法律通過後といえどもなおこれらの問題について研究をすることを明確にいたしておきたいと思うわけです。  それから、もう一つ伺っておくのですが、伊勢湾に油の処理剤使用基準というものが暫定的に設けられておるわけでございますが、これは全国でここだけだそうですね。今後全国的にこういう方向に進められるのかどうか、もし進められるとすれば、いつごろをめどにして海域の指定をされるのか、この点について伺っておきたいと思います。
  215. 山本了三

    ○山本説明員 伊勢湾でそういうふうな関係者の協議によりまして油処理剤をまく場合の基準といいますか、そういうことについての話し合いを持っておりますけれども、この考え方は全国に推し広めてまいりたいと考えております。それで、なるべく早い機会に、ということで御了解いただければありがたいと思います。
  216. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 さらにもう一点お伺いをしたいわけでございますけれども、季節によってこのように油処理剤を使用できない海域指定をするという場合で、しかしながら、その期間内にもし事故が起きて油が流出をしたという場合にはどういう対処の仕方をしていくのか、これを伺っておきたい。
  217. 山本了三

    ○山本説明員 ノリとか水産動植物への被害の波及ということを考えまして、季節ということあるいは海域の制限ということを考えております。第一次的にといいますか、あらかじめの話し合いで使用できない海域におきまして使用できない時期に流出事故発生いたしました場合には、関係者と協議の上で了解を取りつけて、必要があれば処理剤を散布する、そのようにいたす処存であります。
  218. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 その場合に、これを相談する相手は関係自治体ということになりますか。
  219. 山本了三

    ○山本説明員 関係県の水産課並びに関係漁業者であります。
  220. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、法案内容に若干入りたいと思うのでございます。  まず、第三十九条の四の二項の問題についてお伺いをいたしたいわけでございますけれども、「油回収船及び油を回収するための機械器具の配備場所その他配備に関し必要な事項は、運輸省令で定める。」となっておるわけでございますけれども、この運輸省令の内容については、すでにもう検討済みですか。
  221. 鈴木登

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  三十九条の四は、油回収船と、それから油回収船類似の機械器具の設備の設置を義務づけておりますけれども、実は、けさからも御説明申し上げましたように、油回収船自体も、天然の気象あるいは油の性質によりましてその性能に非常に差がある。まして、その機械器具、すなわち船舶ではなく船舶に取りつけるものでございますけれども、そういう装置も、これはという非常につぼを得たものがなかなか見つからないというようなことで、現在、そういう設備あるいは船舶の現存状況を全部調査中でございます。  もちろん、その調査も、委員会をこれから編成いたしまして、その委員会にお願いいたして、さらに引き続いて調査をお願いいたしまして、その委員会でもって、どういうところにはどの程度の油回収船、あるいはどの程度の船にはどの程度の油回収装置を、しかもどういうつけ方をするかという、そういう細かいところまで検討していただこうと思っております。そのためにこの三十九条の四だけはわざわざ三年間施行を延期いたしまして、ある程度の時間的な余裕をもちまして、これから委員会検討いたしたいというふうに考えておる次第でございます。その委員会検討結果を踏まえまして、それを制定あるいは省令化しようというふうに考えておるわけでございます。
  222. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それから、第四十二条の三十七に、センターに対する指示を海上保安庁ができるようになっておるわけですが、このセンターの内容について若干お伺いをしたいのでございます。  先ほど大臣にも御質問をいたしましたけれども海上災害防止センターの機能というものは非常に微弱ではないかと思いますね。いろいろな港湾があるわけですけれども、小さい港湾は別としましても、大きい港湾等にセンターができれば、そのセンターの職員といいますか、そういうものを任命することになると思うのですけれども、当初はどの程度の規模考えておりますか。
  223. 鈴木登

    ○鈴木説明員 現在は、非常勤を除きまして、常勤だけで申しまして、十八名の要員でやっておりいますが、その要員をもちまして、先ほど長官からも御説明申し上げましたように、訓練事業、消防船事業、資材備蓄事業という、その三つの仕事を主にやっているわけでございます。  いま先生の御指摘の地方組織のような点につきましては、現在、資材備蓄事業の一環といたしまして、全国二十九の港に備蓄の基地を設けてございますが、その基地の設け方は、実は、センターの方が倉庫業者とか港運業者とかあるいは現地の防災事業者と契約いたしまして、センターの防除資器材を二十九の基地で所有してもらっており、必要なときにはそこに指示をしましてそれを事故現場に持っていってもらったり、あるいは事故現場で配付してもらったりするというふうなシステムをとっておるわけでございます。  やはり、現地に災害防止センターの職員を置きまして、できるだけセンターの職員自身でそれを保管したりあるいは現地に運びましたり、あるいはそれを散布したり使用したりということをやるのが本筋でございますけれども、何せ、その事故がいつ起こるかもしれない、あるいは一年も二年も起こらないかもしれないというふうな状態のもとで非常に大規模な人間を常に抱えておくということは経済的にもきわめて困難な問題でございます。したがいまして、私どもは、現在各地に防災事業者というものをかなり育てつつありますし、かなり育ちつつありますので、それを指導育成していくと同時に、そういう防災事業者とこのセンターとが契約いたしまして、一たん緩急ある場合にはその防災事業者に出動を要請していく、それをセンターの方でコントロールしていくというふうなシステムに持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  224. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そこでちょっと疑問に思うのは、従来、こういう事故発生したときには防災事業者の方へ海上保安庁の方から要請してやっておるわけですね。これはセンターを拡充強化するといたしましても、かなりの日数と人件費とがかかると思うのですね。いまも話があったように、起こるかもしれない、起こらないかもしれないというような状況もありますし、そういう点を考えてみますと、実際問題として、防止センターの機構を全国に十分に整備するというのはかなり困難ではないか。そうなりますと、勢い資材を備蓄しているいろいろな船舶の業者の人たちがセンターの役員になって指示を出すというようなかっこうになると思うのですね。あるいは防災事業者等からもその中へ入ってくるのかもしれませんけれども、直接的に海上保安庁から防災事業者の方に命ずるというふうにはならぬのですか。というのは、仮に地方へ一人任命したとしましても、一人ではどうにもならぬわけでしょう。いない場合もあるわけですからね。一々それを経由しなければならぬということではいかぬので、センターがそういう仕事を主たる業務としてやることはわかりますけれども、やはり、直接的に命令できる、指示できるというふうにもしておかなければならぬのではないかというのが私の疑問なんですが、お答えをいただきたい。
  225. 鈴木登

    ○鈴木説明員 海上保安庁が直接そのセンターの地方組織を指示するようにということでございますけれども、実は、先ほどからも問題になっておりましたように、廃油防除対策協議会というようなシステムがありまして、これは地方組織でございますけれども、地方の各海域別に設けられる防除協議会あたりで海上保安庁がリーダーシップをとりまして常に地方の防除事業者との連携を密にしておりますので、直接海上保安庁がそういう業者を使うよりも、やはり、センターを通じてそういうものの出動を要請する方がスムーズに動くのじゃなかろうかというふうに考えてわれわれはそういうシステムをとったわけでございます。
  226. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 その趣旨はわからぬではないのですよ。だが、緊急の場合、まだまだ機構が整備されていない段階ということも考えますと、やはり二本立てにしておく必要があるのではないか、直接海上保安庁から防災事業者に命ずることができる、指示することができるという必要もあるのではないか、その点が抜けているのではないかというふうに思うのですが、どうですか。
  227. 鈴木登

    ○鈴木説明員 実は、原則は、先ほども長官から申し上げておりますとおりに、海上保安庁あるいは海上保安官が現場におりましてこういう災害に対処するというのが筋でございます。そして、海上保安官が現場にいないとき、あるいは海上保安官の手だけでは足りないとき、さらに原因者が近所にいないときという場合にこのセンターを使うということでありまして、そのセンターの使い方についても、実は、私どもがこのシステムを考えておりますのは、地方でそういう事故発生いたしますと、何をさておいても地方の方から情報が海上保安部署に入りまして、海上保安部署に入りますと私どもの専用の通信で本庁のオペレーションの方に入りまして、本庁のオペレーションの方で長官がそれを判断いたしまして、すぐに地方の本部にさらに流すと同時に、センターの本部が東京にございますので、東京の方のセンターに指示するというようなシステムをとってございます。  これは何せ、防除措置とかそういう災害防止措置というのは、この法律にも書いてありますとおり、もちろん原因者が応急措置をとるべくこの法律措置してございますけれども、具体的なセンターの出動ということになりますと、特に費用のかかることでもございますし、利害関係ということが非常に大きく権利義務に絡んでまいりますので、高度の判断から海上保安庁長官がまず判断をいたしまして、それをさらに海上保安庁の通信施設を用いまして地方へ流し、一方ではセンターに指示し、センターの方は専用電話あるいは——これは夜間も常に二十四時間体制をとらせるつもりでおりますけれども、地方の基地の方へ出動を要請し、そしてセンターの方はセンターの方で常時地方の防災事業者と契約を結んでおりまして、その通信方法もはっきり決めておく、そういうふうなシステムをとっておるわけでございます。
  228. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 さらに、こういう港湾等の中において事故発生した場合の港湾管理者との命令、権限の関係ですね。港湾管理者もそういう防災装置や資材をかなりだんだんと整備しつつあるわけですけれども、ここら辺の連携はどのような形で行われるのか。海上保安庁の方から港湾管理者に指示をすることができるようになっているのかどうか、ここら辺についてもちょっとお伺いをしたいと思います。
  229. 鈴木登

    ○鈴木説明員 この海洋汚染防止法では直接指示をするような立場をとっておりません。ただ、四十三条の二に排出油防除計画がございますし、それから、先ほど申し上げました四十三条の三で排出油防除協議会というのがありまして、そういうシステムを通じて常に港湾管理者との連携を密にしておく。そうして事故が起こった場合には、そういうところにふだんから連絡通報体制はとってございますので、連絡通報体制をとりまして相互に協力してやっていくというふうに考えております。
  230. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、問題を変えまして、先ほど紺野委員からも質疑があった問題でございますけれども、財団法人の海上防災センターから権利義務を承継するような形になっておりますが、これは新しい機構をつくるというような考え方に立てば必ずしも適切ではないのじゃないかというふうに思うのですけれども、そういうふうになった理由は何ですか。長官、いかがですか。
  231. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 旧センターがやっている仕事は訓練事業、消防船事業、備蓄事業ということでございます。ただ、ここで抜けておりますのは防除の活動事業そのものでございます。そこで、新しいセンターにその仕事をさせるということで、国が二億の出資をして、その事業の公共性を認めて、法人の組織の改正をやろうということでございます。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕  その場合に、やはり、原因者負担の原則から始まって、自衛の防災組織を民意に基づいてつくり上げるということでございますので、従来の公益性よりも高くなるけれども、強制的に国がその設立を命ずるような特殊法人にはなじまないということで、民間の発意の申請を待ってそれを大臣が認可するというかっこうの認可法人をつくる。ただし、せっかくいままでやっております消防船事業、備蓄事業、訓練事業等は、従来やっておる団体のものもそのまま仕事を引き継ぐ、従事員もそのまま引き継いで、それに新たに基金事業のための人をつぎ込んで、新しい組織でやるということで仕事を引き継いで新しい組織に移る、その新しい組織は認可法人でやりたいというのがわれわれの趣旨であります。
  232. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 では、その点はその程度にしておきます。  これは政務次官にお伺いをしたいのでございますけれども、いままで、財団法人の海上防災センターについても、いわゆる高級官僚の天下りというような傾向が見られましたね。元運輸事務次官とか海上保安庁長官というような人たちが役員になっている。この認可法人をつくるに当たっては技術屋さんなどを入れるのは当然かと私は思いますけれども、この認可法人が運輸省の退官者の吹きだまりみたいになってしまったんじゃ意味がないのじゃないかと思いますので、その面の御所信を承りたいと思います。
  233. 佐藤守良

    佐藤(守)政府委員 海上防災センターというのは、先ほどから長官が説明しましたように、民間の総意が十分生かされるような事業運営をいたしたいということでつくられたわけでございます。  実は、役員については、天下り等とかいろいろな意見がありますが、一番大切なことは、海上防災に関する深い知識と熱意を持っておって、そして事業運営に関する手腕を有する有能な人材を起用することが必要だというように実は考えたわけでございまして、そういう人であるならば民間、役人を問わず大いに歓迎いたしたいということで、私は天下りとは考えておらないということでございます。
  234. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 ひとつ、技術屋さんを中心に御編成をいただきたいという御要望を申し上げておきます。  それから、港湾の問題でお伺いをしたいのでございますけれども、いわゆる水深の問題ですね。各港については、そのバースにおいて、現在の船の喫水と比較いたしますときわめて危険なバースがあるように思われるわけでございます。  たとえば、千葉の出光興産のバース等におきましては、現行水深が十六メートルで、喫水が十四・五メートルの船舶が入港してくるわけでございます。また、そのバースまでの航路が十四・八メートルの水深という、そういう状況になっているので、満ち潮を利用してバースに接岸をしておるというような状況です。これは海員組合のデータによっていろいろ指摘をされておるわけでございますけれども、こういう点がまだほかにもあるようでございますので、ここら辺の問題についてはきちっと整備をしないと、せっかくこういう法律をつくっても運航上支障が出てくるということになると思うので、この点について今後どのような対策を立てられるのか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  235. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 いろいろな調査が出ておりまして、いつの時点で船の喫水を実測したのであろうかという点など、私ども資料としてはちょっとよくわからないような点もございますが、われわれは一般に港内の余裕水深としては入港時喫水の一〇%を考えるということでございます。それで、潮高などをその場合にどう加味するかということについては、国際的にも問題があるし、国内でもいろいろな論議が行われているので、実は、定説がないわけであります。  そこで、今後の問題としては、海難防止協会などの委員会でその問題を検討してもらおうということで、今後、交通安全のために余裕水深をどの程度持たせたらいいかということを私ども検討していきたいと思っております。
  236. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 最後に、先ほどの中和剤の二次公害禍という問題について確認をしておきたいのでございますけれども、油の流出があって中和剤がまかれたというときに、そのときだけの魚介類の損害を測定するということはできないと私は思うのですよ。これはやはりかなり長時間にわたってのものが必要だと思う。特に、貝類等においてはそういうようなことが必要だと思うのですね。  そういう意味から、中和剤の二次公害の心配はないといっても、いわゆる二〇%、三〇%なら間違いはないかもしれませんけれども、それ以上についてはそういう実害があるのかもしれないというおそれもあるわけでございますから、そこら辺の科学的な分析を海上保安庁として責任を持って明確になさる必要があると私は思うのですが、その点についての長官の見解を承って終わりにしたいと思います。
  237. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 二〇%、三〇%で適切であるかどうかというようなことについての技術的検討というのは、やはり、われわれは引き続いてやっていかなければいかぬと思います。  なお、先ほどもお話し申し上げましたとおり、そういう疑義が残らないように、われわれは中和剤等のサンプルについても現場で厳重に指導、監督するということを今後やっていきたいと考えております。
  238. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 終わります。
  239. 中川一郎

    中川委員長 河村勝君。
  240. 河村勝

    ○河村委員 逐条的に何点か質問をいたします。  今度の改正案で、四十二条に新しい条文が設定をされて、危険物の流出があった場合に対するいろいろな措置が規定をされていますね。これは従来もやっていたはずであるけれども、それはどういう準拠法規によってやっておったか、それを先に伺います。
  241. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 従来から、海洋汚染防止法は一般の公害法とは違った面を一つ持っていました。一般の公害法というのは、排出規制について基準を設けるというようなところで終わっているのが通例でございますけれども、第六章に油の防除措置というところまで書いていたというところが特色のある立法だったと思います。  ただ、そこで書いております防除措置というのは、黒物という重油を主とする油の海洋に流れての汚染防止するという見地からその防除措置等が書かれておったわけですが、ところが、われわれは、第十雄洋丸の例を見てもわかるように、実は火事について抜けておるということに一番大きな問題点を見出したわけであります。そこで、火事の原因となる、黒物でない白物、ガソリンその他LPGとかLNGというような引火度の高い石油類について、危険物の排出ということで一つとらえ、さらにそれが火災発生に及ぶ災害というものを考えて、それをいかに防除するかということを今回の法律でうたったというつもりでございます。
  242. 河村勝

    ○河村委員 一般的にそうでしょうけれども、今度の場合の、危険物が流出して海上火災発生した場合のその地域からの退去命令であるとか、さらに海上火災発生した場合の財産の処分というものはいままでの海上汚染防止法にはなかったはずですね。それで、現実には第十雄洋丸のような場合には、実際に潜水艦や駆逐艦を持ってきて撃沈するというようなことをやっているわけなんですが、それは一体どういう根拠法規によってやったのですか。
  243. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 火災について通報する、それから応急措置を講ずる、それから退去を命ずる、それから進入中止を命ずる、それから財産の処分をする、それからさらに安全な場所へ曳航していく命令を出すというような一連の措置考えたのはこの法律が初めてでございます。  いままで、雄洋のときにそれをどうしてやってきたかということは、一般に海上保安庁の庁法としてあるところの人命、財産の保護を図るということからやっておったのですが、そういうことでは根拠が少ないということで、新しい法律に具体的にそれを取り入れたということでございます。
  244. 河村勝

    ○河村委員 しかし、海上保安庁法と言うけれども、財産の処分その他まで強制的にやるということが海上保安庁法でやれるとは思わない。それは何か根拠法規がないとできないだろうと私は思うが、何でやっていたのか。
  245. 鈴木登

    ○鈴木説明員 第十雄洋丸の処分関係につきましてはいろいろと措置してございますが、一つは、船舶を富津沖に一時座礁させた後にさらにそれを東京湾外へ除去したというのは、これは海上交通安全法三十三条第二項に基づく行為として、当時一応処理をしてございます。  それから、船舶自体を処分してしまったというのは、これは今度の法律は本人の了解なしにでもできるようにしてございますけれども、当時の第十雄洋丸のときには、所有者の了解を得た上で、海上自衛隊の方にも協力要請をして処理したということになっております。
  246. 河村勝

    ○河村委員 それでは、財産処分等については、強制したのではなくて、合意の上でやったということですね。  そこで、海上火災発生した場合にいろいろな措置を講ずるのに、四十二条の五の二項の「海上火災の現場の海域」というのと、四十二条の七の「当該障害の発生した海域の周辺の海域」というのをわざわざ区分してやる必要はないように思われるのです。一般的に必要と認める海域についていろいろな強制処分をするというふうに書く方がより合理的ではないかと思うのですが、何か理由があるのですか。
  247. 鈴木登

    ○鈴木説明員 先生の御指摘のとおりに、四十二条の五という条文と四十二条の七という条文がございまして、いずれも同じように船舶の曳航を命じたり、あるいは出入禁止をしたり、あるいは退去を命じたりというふうな措置をとってございますけれども、四十二条の五の方は、これは消防法なんかにもございますとおりに、実際に火災発生している、その発生現場をつかまえた上での、あくまでも火災対策という観点から四十二条の五を規定しております。それに対しまして、四十二条の七は、それよりもさらにある程度広域的な考え方から、船舶交通の安全という考え方からとらえた新しい一つ考え方と御理解いただきたいと思います。
  248. 河村勝

    ○河村委員 陸上の場合には、火事の発生した場合と、その他の市街区域というものはかなり状況が違う。海の場合には別段道があるわけではないし、まあ、水路はあるけれども、ずっとつながっておって、油も自然と流れていく。そういうように余り差別のつかないような場合が多いのではないかと思う。それをわざわざこういうふうに区別をしなければならないという理由は余りないように私は思うのだけれども、どうしてもこれは分けなければならぬ理由があるのかどうか、それを聞かせてください。
  249. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 いま御説明申し上げていたのですけれども、四十二条の五というのは、火災発生のおそれがある現場と、それから火災発生した場合の当該の海域というものをわりあいに狭くとりまして、そこで、その海域にある船長に対して退去、進入中止などを命じていくということですが、四十二条の七は、その周辺海域ということをとらえて、船舶の所有者に対して曳航命令を出すというようなことを船舶危険の防止観点から考えたということであります。  おっしゃるとおり、海域については、現場と周辺とについて別に道がついているわけではございませんので、そういう意味からはあるいは一緒にできたかもしれないという気がいたしますけれども、あくまでも四十二条の五は、火災現場における責任を持った海上保安庁が消火活動をするのに邪魔にならないように立ち退けとか進入中止とかいうことをやっており、四十二条の七は、そういった災害が他に及ばないように、むしろ影響のない周辺の海域に及ばないようにその船を早く引き出そうではないかということを考えているというふうに解釈しております。
  250. 河村勝

    ○河村委員 四十二条の九の一項の一号で陸上の消防機関と海上保安庁との作業権限の区分を一応やって、陸上の方は埠頭に係留された船舶まで権限が及ぶようにしてあるわけですね。だけれども、同時に四十二条の九の一項の二号で例外規定がある。それは、「その委任を受けてその権限を行う海上保安官が現場にいないとき、」というようなことらしいが、これは実際にはどういう場合を想定しているのですか。大体、主たる海域を想定しているのは東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等を考えているようだが、そういうところでもやはり海上保安官がいないというような場合を想定しているのですか。
  251. 鈴木登

    ○鈴木説明員 これは先ほど申し上げましたとおりに、従来、海上保安庁と消防庁との業務提携が長官同士の覚え書きのような形でございまして、それをこの法律化に際しましてある程度法文化したというのがこの四十二条の九の規定でございます。その際に、消防機関と海上保安庁の機関ができるだけ相互に有無相通じて活躍できるようにという形でこの四十二条の九を置いたわけでございます。その骨子は、覚え書きの方では、岸壁に係留している船及び上架中の船は主として陸上消防機関がやり、その他の船は主として海上保安庁の機関がやるというふうな整備をしてございますが、それだけでは主としてという意味がなかなかわからないというような問題もございまして、この四十二条の九を新しく設けまして、岸壁に係留中の船は消防庁の機関、ただし消防庁の方がいないときあるいは海上保安庁に要請したときには海上保安庁も出得るとしたわけです。  そして、いまの先生の御指摘のいないときというのは、どちらかといいますと、大体のところは東京湾のような場合はほとんどおりますけれども瀬戸内海のような場合につきましては、やはり、かなり大きな海域でございますし、必ずしも全部に海上保安庁の機関が網羅されておるというわけではございません。むしろ、市町村の消防機関の方が地域的には細かく配置されておるというようなこともございまして、そういう場合を前提に一つ書いたわけでございます。
  252. 河村勝

    ○河村委員 そういう場合の市町村の消防機関というのは、海を動く船というか、そういうものは持っていないはずだな。そういう場合に、埠頭に係留された船舶ならいいけれども、離れた船舶対象にして権限を行使するというと、一体どうやってやるのですか。
  253. 鈴木登

    ○鈴木説明員 各市町村の消防機関はすでにかなりの消防船を備えつけております。現実には東京湾ですでに十七隻、伊勢湾で三隻、大阪湾で五隻、瀬戸内海で二隻ほどの消防消火能力のあるものを配置しております。それから、化学消防能力があるものとしては、東京湾に九隻、伊勢湾に三隻、大阪湾に五隻、瀬戸内海に二隻というくらいの消防船を配置してございます。  それから、消防庁の言い分によりますと、具体的な消防船がなくても、たとえば漁船をチャーターすることによって、その漁船に消防能力を付加して、すぐに出られる体制にはあるのだというふうなことを消防庁の方から聞いております。
  254. 河村勝

    ○河村委員 次に、海上災害防止センターに関してお伺いをいたしますが、認可法人を新しくつくるということは重大なことですね。いま、政府の方針としても、公社、公団、認可法人を含めて一切つくらないということだが、ところが、とかく認可法人というものが隠れみのになって、公社、公団ではないということで何となくふえてくるという傾向が従来もある。そういう意味で、仮に必要であるにしても、その機構なり何なりというものは、さっきも話が出ているような天下り受け入れ機関というようなものになってはならないということが一番大事なことです。  この法律案にも、その役員について、「会長一人、理事長一人、理事四人以内及び監事一人」というなかなかけんらんたる配置になっていますが、一体、給料をもらって専従するのはこの役員のうちどのようなものがなるのですか。
  255. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 会長は無給にするつもりです。理事長は専門にします。それから、監事一人も専門にします。理事は四人以内ということになっておりますが、当面は三人ということで、三人をできれば有給にしたいというつもりでございます。
  256. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、理事長一人、理事が当面三人、監事が一人ということで、役員だけで五人だな。これは相当高給を取るはずだ。もしこれを海上保安庁の一部局で担当するとしたら、こういう最高の地位にある人間というのは恐らく一人もふやさぬでもできるのじゃないかと私は思う。せいぜい課長級ぐらいのところが一人二人ふえるということでやれるはずだと私は思うが、そういうように思いませんか。
  257. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 旧センターでやっている仕事の大部分をそのまま受け継ぎます新センターは、新しい基金の仕事をそれにプラスするというつもりです。  そこで、実は、認可法人でございますので、民間の申請を待って組織づくりをするというのがたてまえなので、ちょっと申し上げにくいのですけれども、会長は従来無給であれば当然無給でやってもらうというつもりです。  それから、月給が高いというお話は、実は、これから給与なども決めるということでございますが、現在、旧センターにおる常務理事の月給などはかなり安いものでございます。それと余り変わりないような給料でやるということでございまして、認可法人であるからいきなり高い給料で大ぜいの者がぬくぬくとやるということについては、そのつもりではございません。
  258. 河村勝

    ○河村委員 仮にこれを海上保安庁の一部局で行うとしたら、少なくとも部長はふやさぬでもいいはずだな。要るとしても課長級一人、あとせいぜい補佐を一人ぐらいふやせばやれるというぐらいの業務量であろうと思うが、どうですか。
  259. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 実は、事業規模として大体九億か十億の仕事をやっているはずでございますが、いまの公益法人で、公益法人に対する監督を行っているとはいいながら、会長も無給、理事長も無給、それから理事が十数人おりまして、そのうち有給の理事がただ二人ということでやっている現在の姿自体が、いかにも責任体制がとれていないと私には思えます。  それで、国の出資を二億して基金事業をやらせて、したがって基金事業としては一年間にまた七億の基金を扱ってやるということになりますので、かなり事業量がありますので、役所でやったらどの程度かという比較はちょっとできにくいのですけれども、ほかの認可法人に比べてもこの人数は多くないと私は思いますし、できるだけ小さい組織で、給料も余り高くないようなところで仕事をやっていきたいと考えておるわけでございます。
  260. 河村勝

    ○河村委員 事業規模が一年に七億というのは本当に零細なものですよね。それで、ちょっと考えても、役員というのは一人いれば十分ぐらいのウエートです。あと、理事長一人、理事四人とくれば、どうせその下に部長が何人かついて、また課長がつくのでしょう。管理機構のウエートというのは一体どのくらいになるのですか。まだ予算はできていないかもしらぬが、予算の中で占める管理部門の人件費の割合は一体どのくらいになりますか。
  261. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 部は、総務部と、それから従来からやっております訓練部、消防船部、それから備蓄部、それと今度の基金事業部ということで、その部長の数などは一人ずつですが、現在もうすでに総務部と訓練部、消防船部、備蓄部というのが部長がおりますので、現在の組織からふえるのは基金事業部一つだと思います。  実は、職員も余りふやさないで、かなり窮屈な予算でやろうと思っておりますので、その意味では管理部門の比率が高くなって、先生のおっしゃるとおりの心配があるかもしれませんけれども、一人ずつの単価というものは、できる前から月給が安いなどということはちょっと申し上げかねるのですけれども、決して高給を取るということではなくてやっていきたいということを現状に即して考えているということでございます。
  262. 河村勝

    ○河村委員 私は別段月給を安くしろと言っているわけじゃないですよ。要するに、こういうものをつくると、そういう役職員をやたらとふやして、それが失業救済みたいなかっこうになる。そういうものをつくると、結局はその下に部もでき、課もでき、頭でっかちになるのです。実際に必要以上に人間を使っている事例が余りにも多いので、いままでがそうであったからそれに一つ加えるだけだというのではないんですよ。ですから、これは本当に良心的に考えてもらいたい。これはでき上がってから、あるいはその過程においても、もうちょっと具体化した段階でよく説明をしてください。  そこで、この四十二条の四十ですが、その前に「資本金」というのがあるのですが、これは資本金と基金と分けてありますね。それにもう一つ出捐金というのが出てくる。これは資本金があって、出捐金があって、それを一緒にしたものが基金という形ですね。資本金にはすでに政府以外のものの出資も予定をしていますが、この政府以外のものの出資というのはどういうところを考えていますか。
  263. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 船主協会から一億円です。
  264. 河村勝

    ○河村委員 それだけですか。
  265. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 それで国の出資が二億円、合わせて出資金としては三億円でございます。
  266. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、出捐金というのはどういうものですか。
  267. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 船舶振興会から五十一年度三億円、五十二年度さらに一億円、したがって、全部そろいますと七億円という基金でございます。
  268. 河村勝

    ○河村委員 これをなぜ資本金として扱わないのか、その理由はどういうわけですか。
  269. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 資本金というのは、一般の会社の例にも見られるように、最終的には債務の担保と申しますか、そういう計算上の金額として資本金を置いておきたい。それで、これは出資ということになりますので、出す側から言いますと、その出資の権利というものを持っておりまして、仮にこの法人が解散したらまたその資金が返ってくるというかっこうになります。ただ、そのときには恐らく税金はかかるというようなかっこうでなされるのが出資でございます。出捐というのは、もう一時に出してしまうということで、別に解散したらもとに戻ってくるというような金ではなくて、一時にそういう金額を拠出するということでございまして、これは恐らく税金がかからないという措置になる。民間から出してもらうのにそういう二通りの道を用意してあるということでございます。  ちなみに、船舶振興会などは他の事業に対する出資ということができません。事業の補助ということでございますので、出捐というかっこうで金を出してもらうということでございます。
  270. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、この出捐金というのは何ですか。運転資金ですか。
  271. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 これは拠出金として受け入れて、それを出資金と合わせた基金としては事業に使っていくという現実の金になるということでございます。
  272. 河村勝

    ○河村委員 基金と言うからには、やはり資本金と同じ性格のものなんじゃないですか。わざわざ基金という言葉を使ったのはどういうわけですか。
  273. 鈴木登

    ○鈴木説明員 実は、この法律のたてまえは、基金というものを一つ設けまして、その基金を使って、たとえば資材備蓄事業に要ります金の一時立てかえ払いをしたり、あるいは完全に損失になる場合の、その損失の穴埋めをするというふうなシステムをとってございます。  なぜ基金を設けたかといいますと、先ほどから御説明しております基金事業という事業は非常に現ナマの要る仕事でございます。したがいまして、資本金のように何らかの別の形でなくなってしまって、現金として持っていないというような状態になりますと非常に不便なものでございます。したがいまして、一つの現金の補てん基金とか、そういう意味での現金として持っておくために、この基金システムというものをつくったわけです。  では、その基金に何を入れるかという点で、資本金と出捐金という二つの種類のものを基金の中にぶち込むというふうなシステムをとりましたが、さらに申し上げますと、資本金と出捐金はどう違うのかということになりますと、先ほど長官から御説明申し上げましたように、資本金というのはあくまでも持ち分で、その所有権はあくまでも出した人のところに残っておる。それに対しまして出捐金は、もう出してしまって、そのもともとの持ち主の手から完全に所有権が離れてしまうというような性格でございます。  では、なぜこの二つのシステムを設けたかといいますと、受け入れる方のセンターの方は、出捐金でいただこうがあるいは資本金でいただこうが、実は、どちらでも結構でございます。ただ、出す方が出捐金の方が都合がいいとか、あるいはどうしても資本金にしてほしいというふうないろいろの要望もございまして、金を集めるのを容易にいたしますために出捐金の制度と資本金の制度の二つの制度を採用したわけでございます。それでもって財政的な基礎固めをしようというふうに図ったわけでございます。
  274. 河村勝

    ○河村委員 四十二条の三十七に、緊急に排出油防除のための措置を講ずる必要がある場合に、センターに対して海上保安庁が指示をして措置をとらせるということになっている。そして、それの措置に要した費用を設置者に負担させるという規定がありますね。これは一体何を想定しているのですか。
  275. 鈴木登

    ○鈴木説明員 実は、こういう措置は緊急を要します。そして、たとえば原因者にやらせるときには、原因者がまず備蓄資材を、要するに防除資機材を買ってまいりまして、それを自分で使用するというふうな事態もございますけれども、そういうふうな悠長なことをやっておっては災害防止はできない。したがって、センターが常にそういうものを持っておりまして、海上保安庁長官から指示があった場合、あるいは原因者からの要請があった場合にすぐ飛び出していくわけですが、ただ、その際に、センターが出しますときに、最終的には事故を起こした人たちから備蓄資材の購入費という形で金を補てんしてもらうわけではありますけれども、それが二カ月とかあるいは三カ月とかいうふうな形で、原因者の補てんが時間がかかる。ところが、その間、たとえば備蓄資材を投げ込むときには人夫も雇わなければなりませんし、その人夫には金を払わなければなりませんから、そういう具体的にすぐ要る金がなかなか手配がつかない。したがいまして、このセンターにそういう基金を設けておきまして、長官から指示があった場合、あるいはセンター自身がその事業者と契約してやる場合に、とにかく立てかえ払い的にセンターがその基金を使って金を支払うというふうなシステムをとったわけでございます。
  276. 河村勝

    ○河村委員 この四十二条の三十七で、センターが仕事をするものの対象というのは、「第三十九条第三項の規定により措置を講ずべき者がその措置を講じていないと認められるとき、」ということですから、オイルフェンスその他の備えつけ義務がありながらそれを備えつけていない者があった場合ということになるんでしょう。そうじゃないの。
  277. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 オイルフェンスの備蓄の義務は、新しい法律では、実は三十九条の三になっております。それで、その三十九条の三項で、措置義務者がやっている措置が不十分であるときに、長官はその措置を講ずべき者に対して必要な防除措置を講ずることを命ずることができるということになっております。それが三十九条の三項です。したがって、措置義務者が講ずべき措置を講じていないということがありますときに、長官としては命令を出して、その措置義務者に措置を講ずることを命ずるということをやるべきですが、その命令によってその措置を講じない者があったときに、その措置が不十分であるというときが「講じていないと認められるとき」です。措置義務者に命令を出して措置をやれということを命じて、その措置が十分でないときというのがその「措置を講じていないと認められるとき」。それから事故が起こって、その人が現場にいないということでいとまがないというようなときに、保安庁としてはここで書いてあるように指示を出すわけです。  まず、具体的な状態としては、センターにかねて共同備蓄してある資材を使って適当な措置をやりなさいと言ってセンターに命じて、センターが後は手足を雇って、その備蓄した資材を出してオイルフェンスを張り、薬剤を投入するというような実際の措置をすることがあります。あるいはそこに備蓄がないときには、現場の第三の防除業者に、いわばまる抱えで全部出てこの油をとってやれということをさらに平素から委託しておいて、その人に命令をすることがある。そういうときに、資材を使ったらすぐ後の補充をしなければいかぬ。あるいは第三の防除業者に命ずるときにはすぐ金を払うぞという裏打ちをしてやらないと、いままでどうも防除業者がすぐに出なかった。措置義務者に対する資力信用について不安があるということで出なかった。そういうことをなくするために基金を使って立てかえる。それを原因者から最終的には取り立てるけれども、一時立てかえ払いというかっこうになる。そこで基金が要るというかっこうでございます。
  278. 河村勝

    ○河村委員 説明を聞いておりますと、この海上災害防止センターというのは余り手足を持たないで、結局、いざというときには防災事業者を使って仕事をするわけでしょう。そうすると、こういう緊急のときにはわざわざセンターに命令するより、海上保安庁が防災事業者に直接やらしてしまった方が早いのじゃないですか。
  279. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 実は、そういうことも考えまして、国の予算で予備費からとってきてすぐ裏づけができるというような制度がとれないかということも研究したのですけれども、国の予算というのは、いかんせん予備費の使用一つにしても非常に流動的でない面がありますので、国である海上保安庁がいきなり国の予算を使って防除業者に命じて、それに立てかえ払いをしてやって後でとってくるというようなことはできないということがありますので、センターにそういう基金を用意させて立てかえ払いをさせていき、後は補充していくということの制度をとったわけでございます。(「会社に負わせればいい」と呼ぶ者あり)
  280. 河村勝

    ○河村委員 いまちょっと不規則発言があったのですが、この場合、不規則でもそのとおりであって、結局金を取るのは原因者から取るわけだ。だから、船主でしょう。だから、何も手足のないセンターをトンネルに置かなくても、直接にやった方がよっぽど仕事が早いという感じは否めないと思うのだね。この四十二条の三十六を見ますと、センターが排出油防除のための措置を講じた場合には、その費用を原因者から徴収できる。それから、船舶所有者その他の委託によっていろいろな防災をやった場合も、これまた同様ですね。結局みんな船主から徴収ができるわけだ。そうすると、手足は全部防災事業者がやる。センターは消防船を二隻ぐらい持っているようだけれども、そのほかは一体何かあるのですか。要するに、これはトンネルでありて、立てかえのための基金だけが意味があって、そのために膨大なる管理職を置くということになりそうな気がするが、そうではないのですか。
  281. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 当面センターは自分で活動力をなかなか持てないというきらいがありますので、さしあたり二十九基地に置いてある共同備蓄の資材を利用するというようなことはやりますが、それを運び出す、あるいは現場でオイルフェンスを展張するというようなことについてはやはりよその手をかりざるを得ない。それから、その資材を使わないで、第三の防災事業者の持っている資材を使い人手も使うということで利用するということがあると思いますが、それだったら防災センターが全部直営になるのはどういうかっこうになるかということでございますが、実は、先ほどからちょっと触れましたように、防災事業というものは、地方の防災事業者自体がタグの兼業であるとか通船その他の事業の兼業ということが多くて、防災事業としてはなかなか一本立ちのしない仕事である。というのは、事故発生というものはなかなか不規則でありますし、これは専業ではなかなか成り立たぬということでありますので、そういう手足としては第三の防災事業者を使っていくという状態は続くのじゃないかと思っているわけです。
  282. 河村勝

    ○河村委員 いまちょっと聞いたのですが、従来の海上防災センターが直接持っているのは消防船二隻ということを聞きましたが、そうすると、そのほかに全国の幾つかの基地に機材は持っているわけですか。
  283. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 現行法では三十九条の二、新しい法律ですと三十九条の三になりますが、そこにタンカーの百五十トン以上の人が備蓄をしなければならないオイルフェンス、油処理剤、油吸着材の数量その他が書いてありますが、それを共同で備蓄するという仕事をセンターが持っておって、現在のところ全国の二十九基地に保管をしておりますが、オイルフェンスは四万九千七百メートル、油処理剤は約百三十キロリットル、油吸着材は約八万一千キログラムというものを義務づけられた備蓄の共同として持っておるわけでございます。
  284. 河村勝

    ○河村委員 それはセンターのものじゃなくて、船主が法律によって義務づけられたオイルフェンスその他をそういう基地に置いているわけでしょう。その共同備蓄の責任をセンターが負っているわけですか。それほどの規定に基づくのですか。
  285. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 諸機資材の所有権はセンター自身にある。センター自身でそういう諸機材を持っておって、それに対して使用契約を結んでおるというかっこうで備蓄の義務が果たされるということが三十九条の二に基づく省令の中で書いてあるということでございます。
  286. 河村勝

    ○河村委員 ちょっとわからぬところがあるが、まあいいでしょう。  次に、センターの行う業務ですね。これは排出油防除だけをやらせて消防はやらせないという、その理由は何ですか。
  287. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 この法律の中でも、火災については、一言で申しますと、最終の防火の責任者は、国の消防機関あるいは海上保安庁という公的機関が最終責任を負っているというのが火事に対する見解でございます。これは陸上でも同じであって、火事を出した人自体が消火をしなければならないという義務づけにはなっていない。それは、この消火の作業自体が非常に危険性の多いものであって、やはり一私人の責任に帰することは無理であり、国が公的な責任としてそれを負うべきであるという観点からそうなっております。  一方、油の方は原因者がその防除措置をするべきであるという第一義的な責任を持っておる。そこで、このセンターはその排出油防除措置に対する自衛の手段として、任意に基づいて組織するセンターでありますから、その最終責任者である原因者が当然その措置をするように海上保安庁からも指示することができるし、また、措置義務者が委託をしてこのセンターに頼むこともできるようにする。しかし、消火に対しては最終責任はやはり国が負っておりますので、一私人であるところの火事を出した人にそういったことを自衛手段として指示するというようなことはしない。したがって、センターに対する指示は、油についてはするけれども火事についてはしないというたてまえになっているわけであります。
  288. 河村勝

    ○河村委員 それはおかしいよ。火事を起こした人に消防をやるのを義務づけてはいけない——それはそれでいいが、だけれども、防災センターというのはそのためにつくった法人でしょう。一私人ではないのだ。それが海上保安庁の指示によって消防をやってどうしていけないのです。その四十二条三十六の二項目には、船舶所有者その他の者の委託によって消火をやるのはよろしいと書いてあるのだ。委託ならよろしくて、海上保安庁長官がセンターに消防をやれと言ったらやってはいかぬというのは、それはどういう理屈ですか。
  289. 鈴木登

    ○鈴木説明員 実は、この消防理論というのは消防庁あたりとずいぶん議論したわけでありますけれども、消防理論というものがありまして、実際に火事を起こした場合に、その火事の原因者が応急措置的に家庭にある消火器とかできるだけの器具をもってそれを消しとめるというのは、これはやはり一応火災原因者の義務というように考えられるわけでありますけれども、別途実際に公的な機関として消防行為を行う一つの組織というものは、これはあくまでも国家権限であり、あるいは地方公共団体の固有の権利義務であるというふうに考えられております。したがいまして、そういう国家権限を行使するような消防事業をセンターに行わせることはできないというのがこの消防理論から出てくる考え方でございます。ただ、四十二条の三十六の項に書いてございますのは、いわゆる自家消防的な、あくまでも臨時措置的な最小限度の防除措置というふうに考えております。
  290. 河村勝

    ○河村委員 どうも理屈がさっぱりわからぬ。海上保安庁長官は、消防庁と同じように消防をやる権限は持っておるわけでしょう。だから、最終責任海上保安庁長官が負うのは当然だ。だけれども、それは下部組織として防災センターを使って消防をやっちゃいかぬという理屈はどこにあるのですか。陸上の消防だって、消防庁あるいは地方自治体が民間の消防団を使っているでしょう。消防団というのは役所ですか。役所じゃないでしょう。
  291. 鈴木登

    ○鈴木説明員 消防団の方は、一つの役所の組織としてすでに規定されてございます。消防組織法の消防組織として規定されているわけでございます。
  292. 河村勝

    ○河村委員 それなら同じことだ。法律で今度新しくできたセンターを海上火災の場合の下部組織に指定すれば、組み入れればそれでいいでしょう。なぜそれができないのですか。
  293. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 油の場合は、第一義的に原因者に措置義務がある。それで、海上保安庁は、措置義務者が措置をしていないと認めるときには、それにかわって海上保安庁がその措置義務をして、そのときにかかった費用を求償することができるというようなことが海洋汚染防止法の四十一条にあるのです。それはあくまでも原因者が行うべき措置義務を海上保安庁がかわって、国が代執行するというたてまえになっておる。それが油の場合です。その代執行の一部をセンターにやらせるということで、指示をするということに油の場合は結びつくわけですが、火事の場合はそういうことがありませんので、センターに対して指示をするということはない。ただ、火事の場合といえども、新しい法律で道義的には火事の延焼防止をして、二条の二項に——新しい法律の二条の二項ですが、「消火及び延焼の防止等の措置を講ずることにより、海上災害防止に努めなければならない。」という、いわば道義的責任に対する精神的規定というようなものを置いてありますので、できる限り消火、延焼防止をやらなければいかぬということのために、たとえばセンターの消防船を利用して、委託によってセンターの機能を利用するということは余地を残してあるということでございます。
  294. 河村勝

    ○河村委員 国会というのは立法を議論しているところで、法律の解釈論をやるところじゃないのですよ。私は新しい法案の解釈をあなたに聞いておるのではないのだ。この新しい法律をつくる際になぜ消防をせっかくつくった防災センターにやらしてはいけないのか、それを聞いているのですよ。これを読めば、海上保安庁長官が消防を命ずることになっていない。そんなことは読めばわかりますよ。そんなことの解釈をあなたに聞いているのじゃなくて、この法律をつくるに当たってなぜそれをやらしちゃいけないのかということを聞いているのですよ。
  295. 鈴木登

    ○鈴木説明員 先ほど私から消火義務あるいは消防の権利義務は国家の権利義務であると申し上げましたが、それは、一つは、さらに裏返しますと、消防事業は有償事業ではあり得ないという考え方がございます。したがいまして、民間のセンターは、役所のかわりあるいは消防機関のかわりに基づきましてその消火行為を行いましても、金が取れないという一つ補償問題もございまして、このセンターにそれをやらせないというふうなことにしてあります。
  296. 河村勝

    ○河村委員 そんなばかなことはないよ。それは法律でもってそういう規定をこしらえればできるんだ。だから、なぜやらないかということを私は聞いているのだが、ちっとも答弁になっていない。  大分時間を催促されているから、一つだけ最後に聞きますけれども、これは全然別の問題だけれども、これから消防船の整備をやりますね。消防船というのはなかなか金がかかるようで、一隻について十億ないしは十五億くらいかかるそうだ。いま、鯨がとれなくなってキャッチャーボートがいっぱい余っているわけだ。キャッチャーボートが余っているのが十五隻くらいある。これを改造して消防船にすれば二億くらいでできるということである。漁業関係では、これは海上保安庁ないしは運輸省仕事ではないが、現実にそういうものが余っておって、それに従事する人間もまた余っておる。であれば、こういうやつを転用して、それで消防船の整備を図るということを考えたらどうかと思うが、いかがですか。
  297. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 ちょっといますぐ思い出せないので非常に申しわけないのですけれども、実は、私どもも、鯨の業界の方が船が余ってきたということで転用ができないかという問題を一度検討をしたことがありまして、いまちょっと思い出しているのですが、船の性能と船の維持費、それから一番大事なことは、警察行為をしますのでやはり海上保安庁の人間を乗せなければできないというような点がありまして、いまちょっと的確にお答えできないのですけれども、結論的にはどうも非常に無理だということを検討した覚えがございます。
  298. 河村勝

    ○河村委員 私は別に海上保安庁の職員にしろと言っているのではありません。消防船を一般の防災事業者が使うわけでしょう。だから、そういう有効な資源があり、有効な余剰人員があるのだから、そういうものに対してそれを使うことを一遍検討したらいかがですかという提案です。きょうは水産庁に来てもらっていないから具体的な話は聞くことはできないけれども、一遍これは検討してみてください。国民経済的に見てこれはいいことだと私は思うから、お願いします。  終わります。
  299. 中川一郎

    中川委員長 梅田勝君。
  300. 梅田勝

    ○梅田委員 海洋汚染防止法という名前どおりにいきますと、海洋汚染されないできれいなはずでありますが、実際には海は年々汚れておりまして、一昨年十二月の三菱石油水島製油所の事故のごときは、瀬戸内海に生活をしている関係住民に深刻な打撃を与えておりまして、その傷はいまだにいえておりません。石油コンビナート等災害防止法や、このたび海洋汚染防止法改正案が出てまいりましたのも、これら重大な損害から国民が救われていくように、今後こういうことが起こらないようにという強い要望によって出されてきたものと思います。したがいまして、本改正案はそれらの切実な国民の願いにかなったものにしていくことが必要であろうと思います。  そういう点で、昨年十一月十一日に衆議院地方行政委員会におきまして石油コンビナート等災害防止法案が可決されましたときに附帯決議が行われておりますが、その中で、「石油コンビナート等における災害の特殊性にかんがみ、すみやかに海上防災に関する立法措置を講じ、本法と相まって陸上および海上を通ずる総合的・一体的な防災体制を確立すること。」ということが望まれて本法案の提案という運びになったかと思いますが、私は、まず、陸と海の接点で起こりましたような先般の水島事故の経験から考えますと、海洋汚染防止法の場合にも目的をはっきりさせる必要があると思う。せっかく災害防止ということを入れまして目的が強化されるわけでありますから、この際、「この法律は、船舶及び海洋施設から海洋に油及び廃棄物を排出することを規制し、」というところは当然陸上施設をも含めないと——陸上施設から海へ流れてくる油についてこの法律は規制するんだ、陸からの油の流出によって海を汚すことは許さないんだということを目的の中にも明確にする必要がある。  大体、これはもともとなかったのが不思議であって、第三十八条や第三十九条の従来の規定から言いましても、「その他の施設(陸地にあるものを含む。)」というように法の条文におきましては規制対象になっておるわけでありますから、ここのところはそういうように盛り込む必要があるのではないかと思うが、その点はどのように御検討なさったのか。運輸大臣がおられたら一番いいのでありますが、次官の方から御答弁願います。
  301. 鈴木登

    ○鈴木説明員 ただいまの梅田先生の御質問は、陸上からの排出規制の問題と、それから排出した油の処置の問題というふうに承っております。  まず、陸上から油が排出することを規制するという点につきましては、いわゆる陸上の工場排出の規制法が別途ございますので、それでもって規制されておりまして、海洋汚染防止法船舶からの排出とそれから海洋施設からの排出だけを規制しておるというふうな形になっております。  それから、今回のこの改正排出された油に伴います災害防止の問題でございまして、その排出された油は、陸上から排出されようが船舶から排出されようが、要するに海域排出された油に対してすべて新しい法律を適用するという立場に立っております。
  302. 梅田勝

    ○梅田委員 水島製油所のああいう大量の油の流出によって、現在法的にどのような処罰を受けようとしておりますか。あれはまだ起訴されていないのでしょう。どうなんですか。
  303. 山本了三

    ○山本説明員 水島におきます三石の流出事故につきましては、警察並びに海上保安庁で検察庁に書類送致をいたしております。まだ、処罰を受けているとかあるいは裁判を受けているということは聞いておりません。
  304. 梅田勝

    ○梅田委員 そのように捜査をしても起訴に至らないようないいかげんなことをやられておるわけです。これは、この法律が、ああいう悪いことをして庶民に迷惑をかけているような、海洋汚染をしているような企業に対して厳重に取り締まるという規定になっていないからこういうことになるのである。ここのところをあの問題から一番深刻な反省としてとらえないといかぬということです。三木内閣は依然として大企業本位の政府であるということを再び立証している。これは反省してもらいたい。  そこで、次に移りますが、外国船の事故が非常に多いのは御承知のとおりでありまして、その対策を強化していただきたいと思うのであります。最近五年間の動向を見ましても、昭和四十六年十一月三十日には、新潟におきましてリベリアのタンカー船の有名なジュリアナ号が座礁して、四十七年七月には、愛知県伊良湖水道におきまして同じくリベリア船のグランドフェア号が衝突をしている。四十八年一月になりますと、水島におきましてリベリアのタンカーが座礁しておりますし、四十九年の十一月には、東京湾でこれまたリベリア船が第十雄洋丸と衝突をしておる。五十年の六月になると、同じように栄光丸がリベリアの船と衝突しかけて座礁をしておるという事故が起こっておる。これはずっと全部外国船であります。しかも、有名な、いわゆる便宜置籍船に関係したものが多い。大体、よそのことを知らぬのが出てきて迷惑をかけておるわけですよ。そういうことをきちっと取り締まることが非常に重要だと私は思うのです。  そこで、今度の改正に当たりまして、外国船、特に便宜置籍船の航行について、その安全対策についてどのようなことをお考えになっておるのか、この改正案によってそういう点がよくなるのかどうか、これをひとつお聞きしたいと思う。
  305. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 外国船に海難海洋汚染が比較的多い。日本船に比べて多いのは事実でございます。ただ、なれないところへ来て事故を起こすという点では、日本船といえども外国に行ったらなれないところであるが、日本の船員はちゃんとそこの海図を見て、ちゃんと資料を調べて、安全航行に細心の注意を払ってやっているので事故が起こらない。ところが、相手の人はそうじゃない者があって困るので、われわれは英文の資料をつくって訪船をする代理店に渡すというようなことで指導をやっている。特に、去年の秋からは、外国船について、日本へやってくる場合、日本の海図の保有状況であるとか、交通関係法令の把握状況とか気象条件の把握の状況などの安全運航に関する事項について、一々訪船をして指導をしました。それから代理店にもよくそういう点を指導をしたわけです。これは去年の十月十六日から十二月二十七日までやったということでございます。  そういうことで、今後とも外国船については指導を重ねていきたい。向こうの不勉強な点はこっちから指導して補ってやるほかはない。特別に法規で相手方を厳重に縛るというようなことはしません。ただ、法規に照らせば確かに向こうのケースは多いわけですから、それは送致するというようなことで適当に処分をしていくということであります。
  306. 梅田勝

    ○梅田委員 便宜置籍船はどういう企業がどのようにしてやっておるか、どういう労働条件でやっておるか、そこの船員がどういうような指導を受けておるかということをあなたはよく御存じの上でそういう白々しい答弁をしておったらいけませんな。  東京湾は強制水先案内をやられておりますが、それ以外の伊勢湾であるとか、あるいは大阪湾とか瀬戸内海地域はもうちょっと指導を強化する必要があるのじゃないですか。その点はどうですか。
  307. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 去年の指導も全国的にやりましたので、東京湾だけということだけではありません。全国的にわれわれは指導は続けています。
  308. 梅田勝

    ○梅田委員 いや、私は、水先案内をもっとつけてきちっとやる必要があるのじゃないかというふうに言うておるのです。
  309. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 海運局の仕事やら船員局の仕事やら、いろいろ出てくるのでちょっと困るのですが、強制水先の制度については、この運輸委員会でお世話になって、五十二年の一月から東京湾について一万トン以上の船に強制水先ということができたのは非常に幸せだと思っております。恐らくこれを全国的に強化していくという方向に船員局もあろうと思いますので、これは将来の方向として御理解を願いたいと思います。
  310. 梅田勝

    ○梅田委員 ああいう便宜置籍船につきましては、質が悪いのですから、そこはよく見て、行政上におきましてもいろいろな措置が必要であるということをよくよくお考えの上善処していただきたいということを要望しておきます。  それから、今国会に提起された改正案は、災害が起こったときにどうするか、この手当てがどうだということが問題になっているのですね。第十雄洋丸のような火災が起こったときには、先ほど御答弁がございましたように手の施しようがない。結局は撃沈してしまう以外にないとか、燃え尽きるまで待たなければしようがないとかということになっておる。それから水島の場合で言いますと、われわれもすぐに飛んでいって見たのでありますけれども、これまた手の施しようがないのです。そして、科学技術が発達しておると言いながら、よけい人間を動員してひしゃくで一々油をすくわないことにはどうにもならぬというのが実態であった。あれが原油だったらえらいことです。だから、非常に過密化してきた海上交通におきまして一たん事が起こると大変なことになる。だから、最大の目的は、そういう大型タンカーが事故を起こさないようにするということが海洋汚染防止法の一部を改正する法律案という形で出す場合には一番念頭に置かなければならぬ問題ではなかろうかと思うわけです。  そういう点で、根本的な対策というものを本改正案を提起するときにどのようにお考えになって位置づけられたのか、そこのところを簡単に説明していただきたい。
  311. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 この法律考えますに当たっては、端的に申し上げまして、陸上のコンビナート等災害防止法案から始まっておるということでございます。  そこで、先ほどもちょっと触れましたけれども、翻って、海に水島の事故相当のものを考えたら、実は第十雄洋丸であったり栄光丸であったりしたわけです。そのときにわれわれがいままで手をつけていなかったのがLPG、LNG、運発油というようなもので、それらが噴き出て火事になったときにどうするかということで、海洋汚染防止法には何も書いてない。振り返ってみたらそれは当然のことでありまして、海洋汚染防止法というのは、黒いどろどろした油が出てきて、それの環境保全ということで汚染防除しようということから始まっておった。それだけではいかぬ。それすらも、水島の事故のときには、先生がおっしゃるように大変遠方まで予期以上に広がって水産物に被害を与えたということでありまして、油ももうちょっと防除に全力を尽くさなければ災害が防げない。そこで、先生はひしゃくとおっしゃいましたが、油の回収船もよけいつくらなければならぬ、防除計画も平素から立てておかなければならぬ、それから協議会をつくって関係者が寄り寄り一たん事あるときの計画をつくっておかなければならぬというようなことで、海洋汚染防止法黒物整備強化を図ったのが一つです。それから片一方は、全く野放しになっておったLPG、LNG、ガソリンに火がつくというような第十雄洋丸のような事件について先ほども指摘がありましたように、船主から、あるいはそれにプラスして保険会社から財産を放棄するという承諾書をとらないと、あのときに銚子沖に持っていって沈没させるというような措置がとれなかった。それでは遅い、ここでちゃんと火事が出たら通報しよう、退去を命令することもできるようにしよう、進入中止もさせよう、それから財産の処分もできるようにしよう、また、静かなところへ曳航していくともできるようにしようということをここに書いた。ただ、それは差し迫って、災害防止法としての対策法であるということは先生御指摘のとおりであって、その原因となる事故未然防止のための法律としては、現在、航路においては海上交通安全法なり、それから湾内に入って来たら、港内では港則法というものですでにいろいろ手当てをしておるところであります。  そこで、われわれは、当面この災害防止法を新たにお願いすると同時に、原因となる事故未然防止ということについては、さらに従来の交通安全法を見直したり、あるいは港則法によるところの安全のための対策を強化していくという方向で事故未然防止には努めたいということであります。
  312. 梅田勝

    ○梅田委員 具体的に事故というものは防止していきませんと、やはり大型船が出てきているわけでありますから大変なことになると思うのです。  そういう点で、水島の場合について、ちょっと二、三具体的に運輸省におきましても海上保安庁におきましても考えていただきたい問題があるのでありますが、一つは、日本鉱業第二原油桟橋というのがありますが、そこでいろいろ資料を見ますと、係留中の船と他船との距離が五十メートルしかない。非常に巨大船化してきておるときに非常に狭いという問題です。それから、入港中の最大喫水が十六・三メートル。これは二十五万二千トンがいままで入ったものの最大であるようでありますけれども、現行の水深は十七メートル。運輸省が望ましいということで、一割の余裕を見ているということからいきますと十七・九メートルということになりまして、非常に危険な状態にあるということがわかるわけであります。また、バースが製油所内にあるということですね。そこで一たん事故が起こるとすぐに波及するという状態で、これは非常に危険であるし、そういうような桟橋というものは規制をしていく必要があるのではないかという問題です。これが一つです。  それから、航路上の問題におきましては、上濃地島付近が非常に危険だというふうに言われている。水島の事故がありましたときにも私は現地に二、三回行ったのでありますけれども、あそこは干満の差が非常に激しくて水路が狭い。それで座礁しやすいわけです。だから、海流もそういう形で激しいわけでありますから、そういうところの大型船の航行についてはよほど注意する必要がある。  それで、昨年、京都大学工学部の都市防災学研究室というのが、倉敷市の依頼で水島臨海工業地帯の総合的な防災診断というのをいたしております。これによりましても非常に危険であるということが言われております。それによると、「タンカーの衝突する危険が大きい水島航路の上濃地島東約三百メートルの海上と、日鉱の原油積み下ろし桟橋のいずれかで原油が流出すると可燃性ガスが発生流出油は円状に広がり、流出後十分で着火すると流出点から半径千六百四十二メートル内、三十分後では半径二千二百六十二メートル内にいる人はやけどをする。」となっている。これはもう大変なことですよね。  さらに、三菱石油水島製油所もありますし、この辺一帯はまあコンビナートですわね。こういう大規模石油タンクがあるところで火災発生したらどうなるかということにつきましても警告がなされております。ここの場合は、「例えば日本鉱業の四基のうち、一基とそれを囲む防油堤内で同時に火災が起きれば、タンクからは高さ百五メートルもの火炎があがり、防油堤内でも巨大な炎が無数に立つ。その放射熱で防油堤の南六十—八十メートルの字頭間地区(百五戸)だけでなく、防油堤から百五十五メートル以内にある木造家屋はすべて燃え上がり、人は二百五十メートル以上離れていなければやけどする。これに対し、現有消防力では六万−八万キロリットルの原油タンク火災までしか対応できない。」となっているが、これは大変なことですわね。  要するに、一たん事故が起これば手の施しようがない。何ぼこんなにいい法律をつくらはりましても役に立たぬのです。だから、一番考えていただかなければならぬことは、まず、第一に、大型タンカーの航行につきましては総量規制というものが必要である。ふくそうしているところについては総量規制が必要だ。第二に、大型船の狭水道航行につきましても規制が必要である。第三に、港につきましては、水深でありますとかバースの距離でありますとかいう関係におきましてはもっと十分な規制措置が必要である。この三点が絶対必要だと私は思うのだけれども、どうですか。それを検討していく用意があるかどうか、お伺いしたいと思います。
  313. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 東京湾その他において入港船舶の総量規制をせいという御意見は、従来からも非常に耳を傾けて承っておるところでございます。ただ、CTSその他の施設が外にできて中に大型タンカーを入れないということを行いませんと、現在の立地条件で東京湾にあるコンビナートが大型タンカーが入ってこないというようなことになりますと、小型だけでかえって混乱をしたり、また、大型タンカーが入ってこないというだけで非常に困るというような事態になってまいりまして、遺憾ながら現状で一挙にその入湾規制をやるということは不可能であろうと思います。  したがって、私どもとしては、海上保安庁巡視船艇航空機その他の戦力を全部使って海上交通安全のために、また公害防止のために秩序ある安全対策を行っているのが現状でございます。したがって、航路における大型船の通航については、われわれは海上交通安全法によって特別なルールをつくってやっております。たとえば東京湾へ入ってくるときには消防能力のあるところの進路警戒船をつけろというようなことで十分指導取り締まりをやっているつもりでございます。
  314. 梅田勝

    ○梅田委員 まあ何と心細い話を聞くのでしょうね。要するにお手上げなんですよ。だから、私が最初に申し上げましたように、そもそも、こういう海洋汚染防止法というのは、法律では罰則をきつくやって事故が起こらぬようにしておくことが必要なんですよ。いろいろと施設は不十分であって、何をしようとしてもやりょうがない。だから事故が起こって、国民がえらい損害を受けるのですよ。そこのところをきちっとしなければならぬ。  せっかく国土庁がおいでになっておりますので御質問申し上げますが、昭和四十九年の十一月に、国土庁は、第十雄洋丸の事件にかんがみて安全な東京湾にしなければいかぬということで、海陸一体で過密解消をはかるということを当時の橋口国土庁事務次官が発言をされております。新聞も持ってきておりますが、この当時問題になっておりました東京湾の過密解消策といたしましては、一つは旧首都圏整備委員会などが進めていた北関東新港計画ですが、しかし、これは水戸射爆場跡地利用について、自衛隊が使用しているからだめだ。実現ができない。もう一つ運輸省構想で、湾外に原油、石油の係留基地を設けることによって危険なタンカーをなるべく湾内に入れないというものです。しかし、これは着船がむずかしいとかパイプライン新設が困難であるとかいうことでできない。要するに、できぬということですよね。  そこで、国土庁が考えまして、京浜、京葉コンビナートを初めとする沿岸の過密がどうにもならぬ、これは何とかしなければならぬ、そしてタンカーが東京湾に集中してくるのを避けなければならぬということが言われたようでありまして、日本列島改造論がそこから結びつく危険性もあるわけでありますけれども、要するに、高度成長政策というものが今日失敗してきておるわけですから、そういう点をどのように現在は考え対策をやろうとしておるのか、一言簡潔に御答弁を願いたいと思う。
  315. 村井登

    ○村井説明員 いまの先生の御指摘の問題でございますけれども東京湾地域整備連絡会議というものがございまして、現在まで、東京湾地域の過密の解消問題、環境保全、安全維持などの観点から、東京湾の埋立地の造成とかその利用についてはできるだけ抑制をしたいという方向で意見調整を行っております。  また、さらに、首都圏整備計画というものが五十年度で切れるわけでございまして、六十年目標に現在改定作業中でございます。その中には、東京湾の過密の問題としては、陸だけではなくて海陸一体とした観点から解決する必要があるということから、東京湾地域への人口とか産業の集中の抑制、流通港湾等の整備を軸とした北関東地域の開発、たとえば先ほど先生の言われた水戸射爆場の開発等でございますが、そういうものを軸としまして他地方への分散を図りたいということで、現在改定作業中でございます。
  316. 梅田勝

    ○梅田委員 ただいまの御答弁には意見がございますが、時間の関係で、最後の意見を述べまして私の質問を終わりたいと思います。  今回の海洋汚染防止法改正案は、油回収船配備あるいは海と陸との接点での事故が起きた場合、ある程度責任分担を明らかにしていく、あるいは地方公共団体の長の意見を聞き排出油防除計画を作成するなど、若干の改善点がありますが、しかし、重要な問題点もございます。  たとえば第一に、災害発生してどうするかということが主として言われておりますけれども、重要なことは、災害をどのように防止するかという問題ですね。これが非常に明確でない。高度成長のもとにおきまして大規模なコンビナート群がどんどん建設をされておりますし、大型の港湾もできております。そして非常に海上交通ふくそうしてきている。こういう状況に対して、総量規制あるいは大型タンカーの狭水道の航行規制、制限の問題、バースとバースとの距離、バースと船首との距離についての適切な規制とか、航路の水深を適切なものにするとか、あるいは消防施設を十分なものにするとか、あるいはバース内に船員の休憩所がないために喫煙ができないとか、その危険があるとか、こういうものについてきちっとした対策がなってない。だから真の災害対策にはなっていないという問題がございます。こういう構造的な危険をそのままにしておいては真の解決にはならない。これは第一点でございます。  第二点は、現在の財団法人の防災センターをそのまま認可法人に移行させまして国の金を出資する。これは結局企業の負担を軽くしてやるというもの以外の何物でもない。要するに、こういう公害問題におきましては、私どもがかねて言っておりますように、発生源の規制、被害救済の原則、さらには原因者負担、いわゆるpppの原則等によってやるということが重要でありますが、そうなっていない。これは問題なんですね。  それから、第三に、認可法人として国の権限を委譲する組織が大部分船舶振興会の補助に頼るということも、先ほど質問の中であったとおり非常に問題でございます。  したがって、わが党としては棄権をするということを最後に申し上げまして、質問を終わります。
  317. 中川一郎

    中川委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  318. 中川一郎

    中川委員長 これより本案を討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  海洋汚染防止法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  319. 中川一郎

    中川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  320. 中川一郎

    中川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  321. 中川一郎

    中川委員長 この際、木村運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。木村運輸大臣
  322. 木村睦男

    ○木村国務大臣 ただいまは、海洋汚染防止法の一部を改正する法律案について慎重御審議の結果御可決いただきまして、まことにありがとうございます。  私といたしましても、本委員会における審議の内容を十分尊重いたしまして、今後とも海洋汚染及び海上災害防止に遺憾なきを期する所存でございます。  まことにありがとうございました。(拍手)
  323. 中川一郎

    中川委員長 次回は、来る十一日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十五分散会