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1976-04-23 第77回国会 衆議院 運輸委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年四月二十三日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 中川 一郎君   理事 江藤 隆美君 理事 小此木彦三郎君    理事 加藤 六月君 理事 西銘 順治君    理事 増岡 博之君 理事 金瀬 俊雄君    理事 斉藤 正男君 理事 三浦  久君       木部 佳昭君    佐藤 孝行君       佐藤 文生君    徳安 實藏君       宮崎 茂一君    渡辺美智雄君       太田 一夫君    久保 三郎君       坂本 恭一君    楯 兼次郎君       梅田  勝君    紺野与次郎君       石田幸四郎君    松本 忠助君       河村  勝君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 木村 睦男君  出席政府委員         運輸省港湾局長 竹内 良夫君         海上保安長官  薗村 泰彦君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     山岸 勘六君         日本国有鉄道常         務理事     田口 通夫君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 四月二十二日  港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五七号) 同月十四日  地方交通機関確保に関する請願八百板正君  紹介)(第三二〇四号)  国鉄運賃値上げ反対等に関する請願梅田勝  君紹介)(第三二六二号)  京都市電存続等に関する請願外一件(梅田勝  君紹介)(第三二六三号)  同(紺野与次郎紹介)(第三二六四号)  同外一件(寺前巖紹介)(第三二六五号)  同(三浦久紹介)(第三二六六号)  国鉄運賃値上げ反対等に関する請願多田光  雄君紹介)(第三二六七号)  同(横路孝弘紹介)(第三三一二号)  国鉄運賃値上げ及び運賃法定制度廃止反対  に関する請願米原昶紹介)(第三二六八  号) 同月十九日  京都市電存続等に関する請願梅田勝君紹  介)(第三三六五号)  同(梅田勝紹介)(第三四五九号)  水戸線、両毛線の直通運転及び複線化促進に関  する請願赤城宗徳紹介)(第三四五八号) 同月二十一日  国鉄運賃値上げ反対等に関する請願青柳盛雄  君紹介)(第三五二二号)  国鉄運賃値上げ及び運賃法定制度廃止反対  に関する請願青柳盛雄紹介)(第三五二三  号)  同(庄司幸助紹介)(第三五二四号)  同外一件(青柳盛雄紹介)(第三五七五号)  同(庄司幸助紹介)(第三五七六号)  同(庄司幸助紹介)(第三六二三号)  国鉄運賃値上げ反対に関する請願中島武敏  君紹介)(第三六二二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  海洋汚染防止法の一部を改正する法律案内閣  提出第三三号)  港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五七号)  日本国有鉄道経営に関する件      ————◇—————
  2. 中川一郎

    中川委員長 これより会議を開きます。  海洋汚染防止法の一部を改正する法律案並びに港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案を順次議題とし、それぞれ提案理由説明を聴取いたします。木村運輸大臣。     —————————————  海洋汚染防止法の一部を改正する法律案  港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 木村睦男

    木村国務大臣 ただいま議題となりました海洋汚染防止法の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  海上災害防止につきましては、従前から、港則法海上交通安全法等により海上災害原因となる事故の発生の防止に努めるとともに、海洋汚染防止法により油の排出があった場合における防除等について必要な措置を講じてきたところでありますが、最近における大型タンカー火災、大量の油の流出等事故に見られるように、これらに伴う被害はますます広範かつ重大なものとなってきております。このような海上災害に対処するためには、従前措置に加え、油の流出等事故が発生した場合において、迅速、効果的に、かつ、油の流出及び火災を一体的に防除するための対策を早急に確立する必要があります。このため、このたび海洋汚染防止法の一部を改正し、大量に油が排出された場合に対処するための措置を強化することとし、さらに、海上火災等が発生した場合における消火等措置及び現場周辺船舶交通の危険の防止について定めるとともに、関係機関及び民間海上災害防除のための体制整備することとした次第であります。  次に、改正案の概要について御説明申し上げます。  第一に、危険物排出があった場合または海上火災が発生した場合は、船長等海上保安庁の事務所にその旨を通報し、かつ、応急措置を講じなければならないこととするとともに、海上保安庁長官は、現場海域における火気の使用制限船舶の進入の中止命令火災が発生した船舶その他の財産の処分等を行うことができることといたしております。  第二に、海上保安庁長官は、危険物等排出があった場合または海上火災が発生した場合における船舶交通の危険を防止するため、火災が発生した船舶を安全な海域に曳航すべきことを命ずることができることとするとともに、海上火災等現場周辺海域において船舶航行を制限し、または禁止することができることといたしております。  第三に、一定の大きさ以上のタンカーが主要な湾内、内海等航行する場合は、その所有者油回収船等を配備しなければならないことといたしております。  第四に、海上災害防止に関する業務を行う海上災害防止センター運輸大臣の認可により設立し得ることといたしております。また、海上保安庁長官は、排出された油の防除措置を緊急に講ずる必要がある場合で船舶所有者等に対してその措置を講ずべきことを命ずるいとまがない場合等においては、海上災害防止センターに対しその措置を講ずべきことを指示することができることといたしております。  以上のほか、海上保安庁消防機関との間の消防活動に関する協力及び調整、海上保安庁長官による排出油防除計画の作成、タンカー所有者等による排出油防除協議会設置等について所要の規定を整備することとし、これらに伴い、海洋汚染防止法の題名を海洋汚染及び海上災害防止に関する法律に改めることといたしております。  以上が、この法律案を提案する理由であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。  次に、港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  港湾は、交通、産業、住民生活等の諸活動を支える重要な基盤であり、その整備推進国民経済の健全な発展にとって必要不可欠であることは申すまでもないところでございます。このような見地から政府は数次にわたり港湾整備五カ年計画を策定し、港湾整備計画的な実施を鋭意推進してまいりましたが、昭和五十年代におきましても港湾取り扱い貨物量の着実な増加が見込まれるばかりでなく、さらに、海上コンテナ輸送等推進による貨物輸送合理化地域振興のための基盤施設整備船舶航行の安全の確保港湾及び海洋の環境の改善等必要性が増大しており、港湾整備に対する要請はますます多様化し、かつ、差し迫ったものとなっております。  このような情勢にかんがみ、港湾整備を引き続き強力かつ計画的に実施するため、このたび港湾整備緊急措置法の一部を改正し、昭和五十一年度を初年度とする新しい港湾整備五カ年計画を策定することとした次第であります。  以上がこの法律案を提案する理由であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。
  4. 中川一郎

    中川委員長 これにて提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  5. 中川一郎

    中川委員長 日本国有鉄道経営に関する件について調査を進めます。  この際、日本国有鉄道総裁から国鉄経営について発言を求められておりますので、これを許します。高本日本国有鉄道総裁
  6. 高木文雄

    高木説明員 ただいま御指名をいただきました高木でございます。  就任早々相次いで違法ストが起こりまして、特に、去る二十日からのストにつきましては……(発言する者あり)
  7. 中川一郎

    中川委員長 静粛に願います。奇声を上げないでください。
  8. 高木文雄

    高木説明員 全国的に国民生活に重大な影響を及ぼす規模のものとなりまして、まことに申しわけないと思っております。まずもってこの点について深くおわび申し上げます。  本日は、総裁就任に際しての所信を述べよということでございますが、去る三月五日に国鉄総裁を拝命いたしましてから、いまだ四十日余りを経過したばかりでございまして、この間におきまして、春闘問題との取り組みに追われていたような事情もございますので、国鉄経営全般についての所信を申し上げることにつきましてははなはだ戸惑いを感ずる次第ではございますが……(発言する者あり)
  9. 中川一郎

    中川委員長 静粛に願います。
  10. 高木文雄

    高木説明員 この際、各位の御理解と御支援をお願いいたしたく、私の考え方を申し述べさせていただきます。  国鉄現状につきましては、五十年度において一日の赤字が二十三億円にも及ぶほどでございまして、その意味において、財政経営面から行き詰まっております。また、他方、安定した輸送確保するという国鉄の使命を十分果たしているとは言えない残念な状態にございます。  このような状況の中にあって、この際まず何よりも重要なことは、私は、四十三万人の職員がもって一丸となってもろもろの困難を克服するという体制を固めることにあると考えます。不幸にもいろいろな事柄が交錯いたしまして、労使間に紛争を生じたり、あるいはまた経営体制について国民皆さんからいろいろと疑念を持たれるような事態にあることは事実でございます。しかしながら、毎日の定められた精密なスケジュールのもとにおいてこれだけの大量輸送が行われている事実に改めて相応の評価を賜り、職員自信を持って広く国民皆さんから愛される国鉄としての信頼をいただき得ますように、元気で明るく毎日の仕事に専念するような雰囲気をぜひともつくってまいりたいと存じます。労使の間に対立を事とせず、一体となって事に当たるという体制を整え、外からもそのように見ていただけるようになりまするならば、国民皆さん方から次第次第に信頼を寄せられることになると信じます。  それにつけても、この一カ月余り春闘をめぐるいろいろな動きについて国民皆さん方からも生々しい印象を持たれている際でもございまして、ただいま申しましたような考え方については、はなはだ心もとない、具体的なプランがないではないかという御批判もあろうかと存じますが、また、反面、ここ一、二年の足取りをつぶさに見てこられた方々からは、わずかながらではあるが改善の芽が育ちつつあるという意見も寄せていただいておりますので、私も、一方において勇を鼓しつつ、しかし、同時に、しばらくの時間をおかりしながら事に当たることによって解決の糸口を見出してまいりたいと存じております。  ただいま申し上げましたように、職員がもって一丸となってもろもろの困難を克服する体制を固めることが最重点事項であるということに加えて、以下、二、三の点についてこの際申し述べます。  第一は、安全の問題でございます。  国鉄経営にあって最大の課題は安全な輸送確保にあります。この点につきましても、過日、北海道釧路地区における特急「おおぞら」の脱線事故、福島県郡山地区における踏切事故による貨物列車脱線等、私の就任後のごく短い期間にも相次いで事故が発生いたしましたが、少しく長い期間をとって比較していただきますれば、安全確保の面におきましても前進の跡をお認めいただけるかと思います。今後も物心両面にわたる総合的な施策の推進と絶えざる努力が不可欠であり、安全設備整備教育訓練充実、正しい作業の実施について最重点の注意を払ってまいりたいと思います。  第二に、経営基盤確立を図らなければならないと思います。  このたび、昭和五十一年度予算に当たり、過去債務の負担軽減措置が盛り込まれており、また、当国会には、本年六月に運賃改定を行うことを含む必要な措置を盛り込んだ国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案の御審議をお願いいたしておりますが、これをお認めいただきますようお願い申し上げます。特に、今回の春闘に当たって、いわゆる条件つき有額回答をいたしました関係もありまして、国鉄としては焦眉の急の問題でもあり、ぜひとも各般の御審議をお願いいたします。  第三に、私どもは、国鉄業務全般にわたり改善すべき宿題を数多く抱えております。責任ある経営体制確立職員管理充実業務運営の刷新、貨物輸送近代化地方交通線対策、資産の有効利用輸送サービス改善など、いろいろと処理しなければならない問題が山積いたしております。これらにつきましても、衆知を集めて一つ一つ解決の道を見出してまいりたいと思っております。  労働基本権の問題であるとか、当事者能力運賃法定制というような問題について、近時広く国民皆さんからいろいろと御意見が寄せられ、国会においても論議をいただいておりますが、これらの問題につきましては、いずれも長いいきさつを背景にした、いわば盤根錯節した問題でございますので、就任日の浅い私がにわか勉強で物を申しますのもいかがかと考えますので、本日のところは御容赦いただきたく存じます。  今後、当委員会において、各般にわたり御指導、御鞭撻をいただきたいと存じます。私は、長い歴史と伝統を持った国鉄の新生のために大いに努力を傾ける所存でございます。  ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  11. 中川一郎

    中川委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。斉藤正男君。
  12. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 ただいま高木国鉄総裁所信の披瀝がございました。私は一言半句逃すまいとして耳をそばだてておりましたけれども、第一の印象は、どうも総裁の執筆になるものではないらしい、総裁がみずからお考えになったことを率直に述べたものではない、だれかが作文をしたものを多少総裁意見を入れ、修正はしただろうけれども、何か高木色といったようなものがにじみ出ていないという感じであります。  率直に言って、私どもは、異色総裁とか大物総裁とかいう世間の評価に対して、なるほどとうなずけるようなごあいさつが何かもう少しあることを期待しておったわけでありますけれども、やはり、御自分でお考えになっていることを率直に言うことは、国会という場において、あるいは総裁という立場においてチェックをされたのじゃないかという気持ちが強いわけであります。正直申し上げて、私は、国鉄現状をつぶさに御承知の上でこの大役をお引き受けになったについては、それにはそれなりに総裁には毅然とした態度と不動の決意があってしかるべきだというように思っていたわけでございますが、そういう意味で率直に申し上げるならば、きわめて形式的な、当たりさわりのない、いわゆる国会用あいさつに終始をしたということで遺憾であります。あなた自体はもう少し言いたいこともおありでしょうし、お考えになったこともあると思うのですけれども就任されて日が浅いと言いましても、もはや一カ月余もたっているわけでございますから、この際、国会を通じて本当に国民に訴えたいという点がもっとあってもいいんじゃないかと私は思います。  聞いていますと、春闘関係をして、いわゆるストライキ等々で連日対策に追われ、ひたすら国会を通じて国民におわびするという言葉に終始をしておられますが、その謙虚な態度は私どももわからないわけではありませんけれども、なぜそういうことになってきたのか、そのよって来る原因を追及する中で、再三再四国民に謝罪をしなければならないような事態を回避する努力、具体的な方法につき、総裁総裁なりにお考えがあると思うのだけれども、どうも通り一遍のような気がしてなりません。  そこで、伺いますけれども国鉄がいまやのっぴきならぬ土壇場という実態にあることを承知の上で就任をされたと思うわけでございます。そういう意味から、大蔵官僚として直接運輸省なり国鉄予算編成等にタッチしたことがないというような報道もあって、すべてを知悉してお引き受けになったのではないというようなことも報道されておりますけれども、少なくとも、三木総理民間有力者就任要請して断られ、運輸省なり国鉄出身者大物と言われる方々要請をして断られ、特に経団連等々からは、いまごろ何を言っているか、手のつけられないような状態にしておいて、財界からの人材派遣も全くお話にならぬことだというようなことではねられたという経緯等々も私は聞いております。まあ、一口に言えば、異常な決意を持ってお引き受けいたしましたという答弁になるかと思いますが、率直に言って、最初に二つ伺いたい点は、国鉄総裁お引き受けになるに当たってどのような決意お引き受けになったのかということと、もう一つは、就任前の国鉄現状分析と、就任されてから一カ月余、総裁としての実務を担当された今日の国鉄現状分析とに違いがあるのかないのかということ、この二つの点を伺いたいと思います。
  13. 高木文雄

    高木説明員 率直に申しまして、突然の御指名でございまして大変戸惑った次第でございまして、こういう道を選んだならば何とか解決がつくということについて、何といいますか、十分の自信と申しますか、目安と申しますか、そういうものを持ってお引き受けしたわけではないのでございます。これまでも大蔵省におりましたものですから、その関係でいささかのいろいろな関係はございましたけれども、外から見ておりましても大変問題が複雑でむずかしいという感じを持っておりましたし、また、いまもお触れになりましたように、直接国鉄予算を担当するというような機会がございませんでしたので、さほど深く事情を知っているわけでもございませんので、そういう意味で、私としては、率直に申し上げて、自信があるとかうまくいく見通しを持っているとかいうことでは決してないわけでございますが、とにかくやってみてくれということでございまして、そこまで言われましたならばということでお引き受けをいたした次第でございました。大変心もとないやつだとお思いかもしれませんが、それが実情でございます。  それから、第二点の、就任前と就任一カ月たってからの感じはどうだということでございますが、お話を承りましたときに、ぜひ引き受けておやりなさいと言ってアドバイスしてくださった方方の中からは、一時は職場大変荒廃をした、現在でももとに立ち直って非常にいい職場になったというところまでは決していかないけれども、しかしだんだんいい方向には向かいつつあるというのが実感であるということを、国鉄の内部の事情を御存じのかなり大ぜいの諸先輩から承ったわけでございますが、この一カ月はスト等でいろいろなことがございましたけれども、その基本といいますか、中身といいますか、職場現状につきましては、就任直前にいろいろお寄せいただきましたその御意見のように、だんだんと一日一日いい方向に向かっておるというふうに私は感じております。職員全体が何とか一致協力してやっていこうという空気にだんだんと近づきつつあるのではないかというふうに私は考えております。  なお、細かいことといいますか、たくさんあるいろいろの問題につきましては、とてもまだ勉強が進んでおりませんので、整理をして、こういう点をこんなふうに感じておったけれども、中で見るとなるほどこういうふうに違っておったというようなことを申し上げる段階までにはまだ至っておりません。しかし、全体としては、努力をしてまいりますならば何とかかんとかやっていけるのではないか、いい方向に持っていけるのではないかというふうに私は思っております。
  14. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 答弁にもございましたように、ある時期に比べれば、国鉄労使関係を含めて非常に上向きの方向に行っていたことは私も認めます。しかし、それは、前藤井総裁人柄あるいは国鉄経営に対する方針、あるいはこれを補佐する国鉄幹部、さらに国民理解といったようなものが混然一体となって、労使関係を含めて国鉄職場というものが明るいいい方向に向いていたことは事実だと思うのです。しかし、それは、歯に衣を着せないで、しかも、これぞと思うときには大胆率直に物を言ってきた前藤井総裁人柄にもあったことは事実だと私は思うわけであります。そういう意味で、高木総裁お引き受けになった以上は相当な抱負と信念を持ってお引き受けになったと思うわけでありますが、これ以上国鉄に対する国民信頼をさらに高めるのも、あるいはもとのように逆戻りをするのも、あなたの今後の国鉄運営に対する態度いかんにかかっているというように思いますときに、御自分でももちろん感じていると思いますし、また、決意もされていると思いますけれども、なまやおろそかの努力決意や行動だけでは崩壊寸前国鉄を再建するのはとても困難だというように私は思います。  したがいまして、弁護士の資格も持たれ、大学の先生にもなられようとしたあなたが、全く百八十度の転身をしてこの重責に座ったわけでございますから、異常な決意で臨んでおられると思いますが、三木さんが執拗に要請をされて、とうとう引き受けざるを得なかったというようなお話でありますけれども、あなたは就任に当たってほぼ三つの要望を出されたと聞いております。一つは、端的に言うならば大蔵省が金の面で十分めんどうを見てくれるということ、二つは、監督官庁である運輸省が全面的に国鉄支援する体制の中で指導監督をするということ、三つ目は、自民党に全面的な支援協力をいただけるということ——自民党と言ったかどうかわかりませんけれども、何か問題が自民党の中にもあって自民党あれこれくちばしを出すようではやりにくい、したがって、政党政治の今日、政府内閣をつくっている自民党の全面的な協力がなければ困るということで、この辺は当然な要求であるし、率直なあなたらしい態度表明であったと思うのです。  この三つを要求され、特に三木さんに対しての全面的な協力政府筋からももらえるかという念押しに対し、三木さんは、大丈夫だ、心配するなというようなことを言われたそうでありますけれども、今日の三木さんでは言ったこととやることが違いますのでなかなか容易なことじゃないと思いますけれども、それにしても、藤井総裁がやめた経緯等々について漏れ聞いたところによりますれば、自由民主党皆さんから大変しかられていやになっちゃった、こんなことを言われてまでやっていることはないということでやめたということが社会通念になっているわけでありますけれども、この三つ約束をされたということを聞いておりますが、確かにそのとおりなのか、そして、また、この三つ約束が完全に履行されると思っているのかどうか。自由民主党には、正式な機関である交通とか運輸とかいうようなものを担当する政調機関もありましょうけれども、そうでない自主的な有力なグループもあるわけでございまして、これらの皆さん方の力も過小評価するわけにはいかぬと思うわけでありますけれども総裁の見解を伺いたい。
  15. 高木文雄

    高木説明員 大筋においては、ただいま挙げられましたように、いまの経営状態から申しまして、やはり、財政的な面での立ち直りが必要だという趣旨において大蔵省がどう考えるかということが一つの重要なポイントであると考えましたし、それから、また、私どものように今日まで全く御縁のない者がいままで大体国鉄の御経験のある方が占められておったポストに横から入っていくような形になりますことについて、本当の意味でそれを歓迎していただけるかどうかということは一つの問題であるというふうに考えましたし、それから、現在の政党内閣制のもとにおいて、与党の中におきますところの皆さんの、きわめて漠たるもので結構でございますけれども、精神的な応援をいただけるかどうかということが問題であると考えましたから、その三つが調いますかどうか——そういう条件ということはおかしいし、また、約束というようなことではないわけでございますけれども、そういう環境といいますか、雰囲気といいますか、そういうものが調うかどうかということが前提でございますよということを申し上げたことは事実でございます。  そして、いろいろのお話の間におきまして、その三つの方面からそれぞれ御支持をいただけるというか、御理解をいただけるというか、温かい気持ちで応援をいただけるという感触を得ましたものですからお引き受けをいたしたということでございまして、それは約束とか条件とかいう言葉は必ずしも適当ではございませんけれども、全体としての雰囲気として、その三つのことが調わないとぐあいが悪いということを申し上げ、いろいろお話を承って、これならばやれるのではなかろうかということでお引き受けしたことは事実でございます。
  16. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 就任なお日浅くして、感触としてあれこれ言う段階ではまだないということもわかりますけれども、希望的な条件として、ぜひこうしてほしいという申し入れをされたということですが、現状はいかがでございますか。この三つの条件はほぼ満たされそうですか。満たされていますか。いかがですか。
  17. 高木文雄

    高木説明員 今日までのところ、皆さんから大変応援をいただいておると思っております。
  18. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 もし総裁のおっしゃるようなことならば大変結構なことであって、国鉄再建のめどというものは努力をすればおのずから立っていくというようにお考えだと私は判断をいたします。  そこで、先ほどのごあいさつでも終始言葉として出ておりましたけれども国民に対する国鉄信頼の回復のためには、労使一体となってこれと取り組まなければならないということであります。そこで、財政の問題については総裁は権威でございますし、第一人者ですから、それぞれのプランを持っておられると思いますけれども国鉄財政が均衡がとれるようになったとかあるいは黒字になったということで国鉄再建が終わったということではない、やはり、国有鉄道としての本来の使命を達成する中で労使関係がきわめて円滑に運営をされることが望ましいし、それが最終的には国民信頼をされる国鉄になっていく最大の原因になっていくというように私は思うわけでございますが、国鉄労働者とどういう態度で接触をして労使ともども国鉄再建に立ち向かうのか。  国鉄労働者がいろいろな要求を出しておりますけれども基本的な労働者の人権の主張としてこれが間違っておるものではないという観点に私は立っているわけであります。たとえばストライキ権等の問題について、藤井前総裁は御承知のような見解を公式の場で表明をされておりますが、あなたは新聞記者等々の質問に答えて、この問題はメーンの問題ではないというようなことを言われ、時間が要るというようなことも言われておりますけれども現状労使関係考えたときに、一時きわめて上向きのいい方向にあった労使関係が逆戻りの感がないでもないと私は考えざるを得ないわけであります。  したがって、国鉄再建のための二本の柱を財政と労使関係というものにもし置くとするならば、財政の問題はともかくとして、労使関係の問題を基本的にどういう角度でとらえておられるのか、承りたいと思います。
  19. 高木文雄

    高木説明員 もろもろ経営体の中で国鉄が持っております特殊性としては、何としても非常に職員の数が多いということと、それから仕事の内容が非常に各種各様であるということと、また、その職務の内容が非常に重いということ、たとえば夜も車を動かさなければならぬというような職場でありますし、天候の悪いときでも車を動かさなければならぬというような職場でございますし、そういう意味においてきわめて厳しい職場であるというような点で、数多くの職場の中でもいろいろな意味で特殊な環境に置かれざるを得ない条件にあると存じます。  そこで、おのおのの職場におきますところのいろいろの苦労なり、それから職員諸君の生活なり、そういうものの実態を、当局側といいますか、管理者側が十分に認識をしてすべてのことに当たるという基本的な心構えが必要ではないかと思いますが、いままでももちろんその点は十分気を配ってやってこられたと思いますけれども、戦後のいろいろな事情によりましてまだまだ行き届いていない面もあると思うわけでございます。いわゆる労使のいろいろな話し合いの場のあり方等につきましても、まだまだ改善すべき点がいろいろあると思いますし、それによって職場の諸君が求めているものについてまだまだこたえていくべき余地がいろいろあると思っておるわけでございます。それらにつきましては、いままでも、当局側といいますか、管理者側もきっと十分気を配ってきたとは思いますが、私のように全然中におりませんでした者がまた新しい目で見ていくならば、新しい一つの糸口が見つかるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、ただいまもお触れになりましたが、いわゆるスト権の問題につきましては必ずしもメーンの問題ではないというふうに記者会見等で申しましたわけでございますけれども、それは、現在、就任早々の私にとりましては、一番大事なことは、安全確実に列車そのものを動かすということがどうやったら実現するか、どうやったら少しずつ改善して国民皆さんから喜んでいただけるようになるかということがメーンの問題であって、制度論そのものにつきましては、私以外にも政府の中においていろいろ研究される場があるわけでございますし、また、国会においてもいろいろ御論議があるわけでございますが、安全確実に汽車を動かしていくという仕事だけは他の方にお願いすることはできないので、私自身が全力を投入してやらなければならない仕事であるという意味において申したわけでございます。基本的な問題として、そういう問題はきわめて重要な問題であるということの認識は欠いていないつもりでございます。
  20. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 きょうは、どうも私が期待している高木さんじゃないですね。周囲から大分いろいろと入れ知恵されて、発言に一々注意をされておるようです。その注意も結構ですけれども、やはり、率直にお答えをいただかないとぐあいが悪いと思うのです。  いろいろな経緯はあっても、国鉄当局が、特に前藤井総裁がああいう毅然たる態度で表明をされたことをあなたは否定をするのか、肯定をするのか、それとも、それは藤井時代のことであって、私は別の考えを持っているというのか、その辺が私どもは承っていてさっぱりわからないわけであります。政府・与党に協力を願うということも当然でありますけれども、私ども野党も国鉄の再建について非協力ということではない。協力できる面は協力していきたいという気持ちはだれしも持っているわけです。そういう立場から言いますと、あなたの基本的な態度がもう少し明確になってこないと協力の度合いも違ってくるわけでございます。これは別にいや味を言うわけでもおどかしをするわけでも何でもございませんけれども、周囲からいろいろ言われて、慎重に慎重にという態度ばかりでございまして、これではあなたの答弁は私は全く理解できません。  スト権の付与にはいろいろございますし、条件がありましょう。それでもやむを得ないといまの段階では私どもも思っているわけです。かくして当事者能力ができてくる。そして運賃法定主義等等の検討ということまで実は考えているわけでございまして、むしろ、新総裁のお考えになっていることよりも私ども考えていることの方が現実的であり、具体的である。しかも、国鉄再建のための最短距離がそこにあるように実は思っているわけでございます。  これからいろいろ具体的には申し上げていきますけれども総裁総裁らしく、もう少し自分意見を部内はもちろん部外にも出して、高木総裁はやるぞ、これならついていける、これなら信頼できるという態度をぜひ表明していただきたい。これは意見でもあり希望でもありますけれども、最終的にもう一遍伺いたい。
  21. 高木文雄

    高木説明員 前藤井総裁の場合には、非常に長いこと国鉄に奉職をされたわけでございますし、また、総裁就任後二年余りの月日を経過されました上であのような御見解をお示しになったわけでございます。したがいまして、藤井さんがあのような見解を示されますことは当然の一つの見識であるというふうに考えるわけでございますが、私のように国鉄事情をよく知りません者が今日の段階で軽々に何か判断をするということは、これはある意味で申しますと常識から外れるのではないかというふうに考えております。もっとよく考えました上でいろいろと考え方をまとめていきたいと思うわけでございまして、現在外から見ておりました感じだけできわめて基本的な問題について何か物を申すのは適当でないのではないかと思うわけでございます。  斉藤委員からもう少しはっきりせいということでございますが、私の置かれました環境から申しますと、いまここではっきり申し上げるというような事情にはないというふうに思います。
  22. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 時間がありませんので、もうこれ以上お尋ねいたしませんけれども、そうすると、藤井前総裁態度表明を否定するわけでもないが、肯定をするわけでもない、暫時時間をかしてほしいというように了解してよろしいですか。
  23. 高木文雄

    高木説明員 そのとおりでございます。
  24. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 終わります。
  25. 中川一郎

  26. 紺野与次郎

    ○紺野委員 私は、当運輸委員会の一員として初めてあなたに質問をするわけですけれども、ある懸念を持って質問をするわけであります。初めてでありまして、幾つかの不安な点があるので、その点についてひとつお聞きしたいと思います。  第一は、あなたは大蔵官僚であったわけで、かつて田中角榮大蔵大臣のときに大臣官房秘書課長でありましたね。それから金脈問題が田中氏について大きな問題になって国会で追及されている際に、大藤省が守秘義務ということを非常に強調しまして、そしてこれを守ったように世間は見ているわけですが、そのときの事務次官をあなたはしておったと思います。そういう点から見て、あなたは周囲からは用中派の大蔵官僚と見られているということですが、現在でもそういう関係があるのかどうか、あるいは、そういうことをきっぱりと切って自主独立で事を処理するという力を持って表明されるのかどうか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  27. 高木文雄

    高木説明員 大蔵省では田中大蔵大臣という時期もございましたし、福田大蔵大臣という時期もございました。また、水田大蔵大臣という時期もかなり長かったわけでございますし、また、事務次官のときには大平大臣にお仕えをしたわけでございまして、どの大臣に対しましても一生懸命お仕えをしたつもりでございまして、特に格別にどなたとどういう関係だというようなことではないと自信を持って申し上げます。
  28. 紺野与次郎

    ○紺野委員 ところで、具体的に話を申しますと、昨年のストストのとき、公労協のスト権の要求に対して非常に厳しい政府声明が出されたわけですが、この基礎になった懇談会の意見その他等を通じてこういうふうな強硬な意見政府声明に盛られた背景には、大きな派閥としての田中派の派閥が最も大きく動いたと当時新聞でも報道されております。スト権を恐れること蛇蝎のごとくでありましょうか、この人たちは非常に敵意を燃やしまして、そして、特に、国鉄労働者のストライキ権及び通信労働者のストライキ権については条件つきでも絶対だめだというふうな強硬意見が言われたと言われておるのですけれども、そういう点から見て、田中派の大きな影響を受けていると世間から見られているあなたに対して、本当にそうではないと多分言うだろうと思っているけれども、事実はやはり事実で確かめなければならないので申しますが、あなたが国鉄総裁になってから、ストライキ権問題については、スト権問題はメーンの仕事ではないというふうに言われたということと思いあわせて、スト権についても発想方法がやはり田中派的な、最も反動的な立場ですね。そういうものをやはり持っているのじゃないかという不安が非常に大きいということですね。  そういう点で、あなたが田中氏の思想的な影響もお金の方の影響も絶対にないということならば、あなたは相当な地位にあって、責任ある地位にあるわけですから、国鉄労働者のスト権に対して賛成か反対かという点について、自分の判断によっていまの考えを率直に言ってもらいたい。
  29. 高木文雄

    高木説明員 昨年の秋にどのような事情が背景にありましたかは、私はよく存じておりません。当時はすでに大蔵省を離れておりましたし、全く自由人でございましたから、背景にどういうことがあったのか、私どもも存じておりません。  第二に、スト権の問題、特に国鉄スト権についてどう考えるかという点につきましては、先ほど斉藤委員のお尋ねに対してお答えいたしましたことと同じでございまして、私は、現在の段階でどちらがよろしいということを申し上げるだけの見識を持っておりませんので、その点は御容赦をいただきたいと存じます。(「それを不見識と言わねばならぬ」と呼ぶ者あり)
  30. 中川一郎

    中川委員長 梅田君に申し上げます。奇声は慎んでいただきます。
  31. 紺野与次郎

    ○紺野委員 全く不見識のそしりを免れないということでありまして、第一、私は、物の発展があると思うのですよ。あなたの前任者の藤井総裁は、労使間の安定した関係がなければ国鉄再建はあり得ないという体験を通じて、そして、痛切なそういう判断に基づきまして、当時の政府の圧迫にもかかわらず、また、自由民主党の諸君も大分圧迫を加えたようでありますが、それにもかかわらず、条件つきスト権付与なしには労使間の安定した関係というものはあり得ないんだ、これは事実だ、事実としてそこまで来ているんだということで、あえて彼はそのことを直言したわけですね。公言したわけですよ。公式に発表しました。  したがって、物事の発展としては、それを受け継いで、前任者の到達点を踏まえて、その上に立って前向きにさらに道を切り開くというのが当然のことですよ。何でもかんでも前任者の後をぶち壊して、また一からやるということでは、後からその席にある者として責任を果たさないということになると私は思う。これは不見識もはなはだしいですね。いわんや詰め腹を切らされて藤井総裁がやめたのじゃないかというふうに言われているときに、藤井総裁の到達点を評価して、悲壮な考えでそこから出発するということを誓ってこそ国鉄労働者もあなたに対して人物として信頼するであろうし、交渉は交渉で別ですが、やはり、人としてそういう誠意があると見る。労使の間というものも、あなたが先ほど言いましたように、明朗な関係でなければだめだと言っているのですから、それが第一前提ですよ。その前提をはっきりと承認して前進するのか、その到達点を壊して一からいくのか、その点はどうですか。
  32. 高木文雄

    高木説明員 現在の制度がこのようになっておりますことを、全般につきましてそれがよろしいかどうかということは、これは政府の段階で立案されるべきであり、国会の段階で御審議願うべきものでございますから、現場をお預かりしております私として、現段階で何か意見を申し上げるのは適当ではないのではないかと思います。  スト権の問題だけでなくて、もろもろの制度全体についていろいろ問題がございますので、近く、政府においても、そういうことを検討する審議会でございますか、懇談会でございますかが設けられることになっておりますので、しばらくその各方面の権威の方々の御論議を見守るというのが私が現在とるべき立場ではないかというふうに考えておるわけでございまして、重ねてのお尋ねではございますけれども、私として、今日の段階で私自身の考え方をまとめて申し上げるべき時期ではないのではないかというふうに考えております。
  33. 紺野与次郎

    ○紺野委員 だから、その点で、前任者が到達した地点を沈思三考、大いに考えるということはいいことですけれども、ただ、問題は、その到達点というものを、事実が積み上げられた過程でありますから、それをやはり事実として認めて、その上から出発するということですね。それはあなたのいろいろの判断はあるでしょうけれども、そういう到達点というものを発展的に承認して、そしてその上に立って前進するのかどうか、この点についてお聞きしたいのです。到達点を認めるかどうか、もう一度伺います。
  34. 高木文雄

    高木説明員 いろいろな経緯を経て、いろいろな事実を前提としてあのような御見解をお示しになったものと思われます。非常に荒廃した状態から、藤井前総裁がお見えになってからだんだん立ち直ってきた過程を経てあのような見解をお示しになったものと私は思います。そのことはそのこととして、貴重な御経験をもとにしてお示しになったわけでございますから、そのこと自体としては大いに敬意を表する次第でございますけれども、私が置かれました環境としましては、その後また新しい事態が起こってきているわけでございますから、それはその方向考えるとか、その方向考えないということをいまここで申し上げる段階ではないというふうに考えます。
  35. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そこのところに、あなたが選ばれた、田中氏たちの発想方法を継承するものとして、いままでの到達点を崩すという役割りをもって派遣されたのではないかという危険を持つから、そういうことは重々ないと先ほどは言ったのですから、そういうことのないようにしてもらいたい。  その点で、一つ新しい状態から今度はお聞きしますが、あなたが総裁になられてからの一つの大きな発展は、この間の四月二十日と二十一日の両日にわたってストライキが行われたということであります。これはストストは違法であるとか、あるいはこの方法がいいか悪いか考えなければならぬとか、あなた方がいろいろ考えているときに、事実の発展というものは堂々としてこのストライキが二日間行われたということであります。ストストライキが違法であろうが何であろうが、政府がいろいろ言ったにもかかわらず、やはり、事実としては大ストライキが悠々とやられたということなんです。これはどういうことかと言えば、ストライキ権というのは、労働者と資本あるいは使用者がある社会において、生活の中から必然的に当然出てくるということなんです。これはどんなに違法だとか何とか言っても、このことは生活の中から当然出てくるものであって、法則的なものであって、最初は小さいけれどもだんだんだんだん大きくなって、去年のストストであれほどたたかれながらもまだ成長をやめず、巨木となってストライキ権というものはつくられておる、現存しておるということなんです。問題は、法律の方が事実に合わないということであります。これを違法と言うのは、事実の方に席を譲って、法律がこれを承認しなければいけないというところに来たのだということですね。これが大きな発展であります。  こういう点から見て、このストライキ権というもの、あるいは国鉄労働者が要求しているストライキ権というものは法則的なものであるというふうにあなたは御理解かどうか、何か、これを禁止したり弾圧したりしてなくなるものだとお考えかどうか、その点をお聞きしたい。
  36. 高木文雄

    高木説明員 御指摘のように、残念ながら法律と事実が食い違っておることが公然と行われておるわけでございます。そして、紺野委員のお言葉ではございますけれども、一方におきましてそういう行動について国民に大変な迷惑が及ぶということで、国民サイドといいますか、住民サイドといいますか、そこからかなりの強い批判が出ておることもまた事実として考えなければならないわけでございまして、法律と事実との食い違いの問題とは別に、この種の行動について大変強い批判が寄せられ、それがまた国鉄信頼を失うおそれのある状態になっていることも事実でございますので、そのことでまた現在の国民のそういう物の見方というものをよく考えなければならないと私は考えます。
  37. 紺野与次郎

    ○紺野委員 二点についてお聞きします。  第一は、これは法則的なものでとめることができないものだという認識に立たれておるかどうかということ。それから、国民がいろいろの不便をこうむるということについても、一方では大変理解が進んできております。そして、それは、ストライキというものは労働者にとってはなくてはならないものだ、憲法が保障するものだということもやはり徹底しているからなのです。それで、迷惑については、むしろこのストライキ権を与えないためにかえって迷惑が大きくなるのだということなんです。与えれば迷惑は本当になくなりますよ。そういうことをあなたはどう考えるか。
  38. 高木文雄

    高木説明員 ストライキ権は、本来労働基本権のうちの最も基本的なものとして認められておるわけでございますけれども、それが国鉄の場合法律上与えられておりませんのは、その行使が、国民の公共的福祉といいますか、利益との関係においてどうバランスさるべきかという見地から禁止されておるということは申すまでもないわけでございます。  したがいまして、ただいまお尋ねの法則的なものとしてどう考えるかということでございますが、しかし、他の産業の場合と違いまして、国鉄の機能が巨大であるだけに、その与えます影響がきわめて大きいだけに、それが行ってはならないというたてまえがとられておることもまた、それなりに十分制度に意味があるわけでございますので、紺野委員のお尋ねではございますが、私は、労働基本権との関係から、それ以外の制度はあり得ない、ストが認められない労働団体というものはあり得ないというふうには考えませんので、それはやはり公益との調整でいろいろな考えがあり得るというふうに考えてよろしいのではないかと思います。
  39. 紺野与次郎

    ○紺野委員 いまあなたは言いましたね。国鉄労働者のスト権というものは公益が云々だから与えないのだということ、その考えは間違っていると思います。これはマッカーサーの書簡によって禁止されたのです。そのときに、非常に残念である、占領下において残念であるということを当時の三木首相の政党も言ったというふうないわくつきのものでございまして、歴史的に見れば、これは完全占領制度時代の占領軍による禁止であります。そういう点から言って、今日これは当然回復されるべきものなのです。その当時の公共というのは、実は、占領軍の利益ということなのです。そういう点で、いまはこのことはもうやめなければいけないというふうになっているのです。その点についてはどうですか。
  40. 高木文雄

    高木説明員 経緯的にはただいま紺野委員がおっしゃったようなことかもわかりませんが、それが何で今日までこれだけ続いているかということにつきましては、やはり、国鉄の持ちます非常に大きな機能が停止をするということが大変大きな影響があるということを考える人が多いということから現行制度が続いているというふうに考えるわけでございまして、過去のいきさつとは別に、現段階においても、それなりにそういう政策が十分あり得る考え方だというふうに思います。
  41. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それはまた違うのだな。つまり、アメリカ占領軍がそうやって以降、いかに国鉄に対しておかしなことをしたか、思い起こしてください。下山総裁事件とか松川事件とか、すでにその当時からCIAが日本に対して、当時の政府に対していろいろな影響を与えているということがいま明らかにされつつあります。そういう点から見ても、アメリカは、その後ずっと一貫して、自由民主党に対する政策として、陰の政府、裏の政府の大きな影響力を行使して、彼らのそういったいままでの政策を継続せよということを言ってきているのですよ。そういうことに従ってきているから今日ロッキード事件まで起きてしまったのですけれども、いま問題になっているわけです。  ですから、この際見直して、アメリカのそういう不当な干渉のもとに起こったこういったことを続けるということはやめにして、そして、だれからも制肘されない自主独立の立場で基本権利というものを回復すれば、労使間の国鉄の状況も画期的に改善されることは明瞭でございます。国民の間でもそうです。何も恐れる必要はないのです。ああいうものを抑えているからかえって迷惑することが起きているのですよ。こういうふうにわれわれは考えますけれども、重ねてもう一度あなたの御意見をお聞きします。
  42. 高木文雄

    高木説明員 輸送がとまるということは、旅客にとりましても、それから貨物利用の方々にとりましてもはかり知れない影響があるわけでございまして、ただいま御指摘のような角度からごらんになる見方も確かにあるとは思いますけれども、現実の問題として、鉄道が動かないということによる影響は現時点においても決して軽く見るわけにはいかないと思います。でありますから、現行制度のもとにおいてどうであるとか、あるいはこれを変えた後においてどうであるかということを別にいたしまして、いずれにいたしましても、こういう大事な大動脈がとまることと、また、それをとめることを権利として認めるということのいいか悪いかということは大変大きな問題ではないかと思います。  しかし、いずれにいたしましても、そこまでまいりますと政策論でございますので、先ほど来申しておりますような立場から、私としては、ここでどちらがいいということを断定的に申し上げることは御容赦いただきたいと思います。
  43. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それは、とめるための、というのではないのですよ。労働者の低い賃金を上げて、景気もよくなるようにして、国民購買力が高くなるようにして、そして全体として勤労者の権利が高まっていくという、そこが目的ですよ。これは手段であり、正宗の名刀みたいなもので、いつでも包丁みたいに使うものじゃないのです。正宗の名刀のようにちゃんと権利としてそれは保障されるということであって、ただとめるための、人殺しをするためのものじゃないのです。そういう点をよく考えてもらわなければいけない。あなたの考えはそういう点でもっと高くなってもらわないと困ると私は思います。そういうことでは労使間の関係改善はできません。  さて、今度のストライキについて二点についてお伺いしますが、一つは、仲裁裁定への移行によって近いうち正式に決まった場合、この裁定を尊重しますか。
  44. 高木文雄

    高木説明員 それは、まず、政府の方で仲裁をどういうふうに扱われるかという問題であると思います。
  45. 紺野与次郎

    ○紺野委員 あなたは当事者でしょう。だから、そういう点で、この仲裁裁定に対して尊重するというふうに出るのか。あるいは、尊重しない、私は何にも知りません、そして政府の方にすべてげたを預けているという態度なんですか。
  46. 高木文雄

    高木説明員 現在の仕組みがそうなっておるわけでございまして、そこが現在の国鉄の、非常に不正確な表現でございますが、いわゆる当事者能力とかなんとかいう言葉で表現されている点でございますが、現行制度はそうなっておりますので、私としては、現在、現行制度のもとにおいて申し上げる以外に道はないかと存じます。
  47. 紺野与次郎

    ○紺野委員 損害賠償ですが、この前のストストでは五百億くらい請求されたわけですが、今度はその点についてはどうですか。この委員会で正式におっしゃってください。
  48. 高木文雄

    高木説明員 政治的な問題とかあるいは労使の問題とかいうこととは別にいたしまして、経営の問題として考えました場合には、国鉄ストによって被害を受けました場合には、民事的な立場で損害賠償をすべきものと思います。しかしながら、損害賠償は法律技術的にいろいろな問題を持っておりまして、さればこそ今日まで損害賠償の請求ということが行われてこなかった。ただ、昨年のストストの場合には、期間あるいは時期等の関係もありまして、技術的に損害額の算定が比較的容易な状態にございましたので、初めて損害賠償請求訴訟を起こしたわけでございますが、いままでそういうものをしてなかったという理由としては、何よりも技術的な理由によるものでございます。  したがいまして、理論的には、筋道といたしましては、国鉄経営がこういうふうに非常に赤字になっておりますときに、さらに損害を受けたのを放置しておくことはいかがかとは思いますけれども、技術的に非常に困難なものはやむを得ないわけでございまして、私は、現段階では、今回の場合には非常に無理なのではないかというふうに考えております。
  49. 紺野与次郎

    ○紺野委員 損害賠償は、そういうことを具体的に請求する手続やその他を法的にもやるということは現在のところ考えておらないということですか。
  50. 高木文雄

    高木説明員 技術的に非常にむずかしいということでございます。
  51. 紺野与次郎

    ○紺野委員 では、最後に、あなたがおっしゃらなかったことで、当委員会では何遍も言われた点について質問します。  それは福祉ということなんです。社会福祉的な観点ですね。これも公共交通機関として大切な点でありまして、そういう点で、身体障害者に対する割引なんかもいろいろとありますけれども、内部疾患の身体障害者への運賃割引ということはまだ適用されてはおらないので、これについて拡大するということをしてもらいたいと思いますが、そういう点について今後努力してもらえるかどうかという点が一つであります。大体、われわれがいままで試算をしたもの、四十七年度の試算ではこれは五千万円ぐらい必要だと言われております。現在それよりも幾らか高くなると思いますけれども、その程度のものであります。でありますから、この点について考慮をしてもらいたいということです。  もう一つは、この問題についての老人の問題ですが、運賃の何らかの割引とか、あるいは何らかの無償、無料の券とか、あるいは運賃の無料化とか、そういったいろいろの形態があると思いますが、これらについて何万あるいは何十万という人が署名をして請願に来ております。  そういう点で、地方自治体においてはこういう制度がすでにとられているところが東京その他にあるわけですけれども、国の方のいろいろな補助ということをも当然考慮に入れなければならないにしても、これらの福祉の点について見るべき前進をこの二つの面においてあなたはやってもらえるかどうか、そういうお考えがあるかどうか、お聞きしたいと思います。
  52. 高木文雄

    高木説明員 身体障害者なり老人福祉の問題は、今日、日本の社会において非常に重要な問題であるとは考えるのでございますけれども、私ども経営状態はまことに驚くべき悪い状態になってしまったわけでございまして、まあ、俗に言う破産というような状態になっておるわけでございますので、全体の政策としてどういうふうなことが望ましいといたしましても、国鉄の負担においていろいろな福祉政策のために支出をするということは、現在の経営から言うときわめて困難だというふうに残念ながら申し上げざるを得ないというふうに考えております。
  53. 紺野与次郎

    ○紺野委員 国の方の補助が出た場合にはどうですか。そういう制度について……。
  54. 田口通夫

    ○田口説明員 現在、身体障害者が百三十一万四千人で、内部疾患者が六万六千人おられます。それで、先ほど約五千万円とおっしゃいましたですけれども、六万六千人を、現在身体障害者が鉄道を利用しております年間の利用率が一・七五回でございますので、それを基準にいたしましても一億はかかる。さらに、たとえば腎臓疾患のような場合ですと、一週間に二回も血を洗わなくちゃならぬということでございますとさらに費用がかかる。  こういうことでございまして、われわれとしては、いままでの身体障害者の割引額も、これからの内臓疾患のいま御要求されました六万六千人分も、国の補助ということよりも、むしろもう少し高い立場で御解決を願いたいということを考えておるわけでございます。
  55. 紺野与次郎

    ○紺野委員 高い立場でというのはどういうことですか。
  56. 田口通夫

    ○田口説明員 むしろ、政府の高い立場で、国民的福祉という立場で総合的な判断をして解決をしていただきたいということでございます。
  57. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そうすると、政府の方でそういう法律案をつくるとか等々をやるような形でやってもらえれば、ということですか。
  58. 高木文雄

    高木説明員 先ほども申しましたように、国鉄経営は非常にぐあいが悪くなってしまっておりますので、いずれにいたしましても、国鉄の負担において処理をするということは、いままではいろいろと割引制度等があったわけでございますけれども、少なくとも現時点でこれを拡大するということは——いろいろとお客さんに料金を上げることをお許し願いたいということを申し上げているような時点でございますので、そのことを考えますと、現時点で国鉄の負担で処理をするということだけは御勘弁願いたい。片一方で値上げをお願いしているという事態において、福祉のことについていろいろ国鉄がお手伝いをするということが一つ意味があるといたしましても、料金問題というようなことが起こっている際でございますから、そういう際には少なくとも御勘弁願いたい、こういう感じでおるわけでございます。
  59. 紺野与次郎

    ○紺野委員 では、そういうことで、高い立場で、議員立法その他でもわれわれは考えておりますけれども、そういう方向へ進むことについては異存はありませんか。もう一遍伺いたい。
  60. 高木文雄

    高木説明員 これは、やはり、まず第一次的には運輸大臣のお考えをいただくことではないかと思います。私どもがお答えできることは、国鉄の負担でできるかできないかということであれば、それはできませんということでございまして、それから先の問題は運輸省あるいは厚生省というところを中心として、政府部内でどう判断されるかということであり、さらには国会でどう御判断になるかということではないかと思います。
  61. 紺野与次郎

    ○紺野委員 では、以上をもちまして終わります。
  62. 中川一郎

    中川委員長 松本忠助君。
  63. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 きょうは高木総裁に公の場所で初めて党を代表してお伺いをするわけでございます。  総裁就任以来すでに四十有余日経過いたしたわけでございまして、ずいぶんと国鉄に対して御研究が進まれたことと存じますが、きょうは総裁に概念的にお答えをいただきたいと思います。と申しますのは、先ほどから同僚議員の質問にお答えになりました総裁の御答弁を伺っておりますと、どうも、肝心かなめのところになりますと結論はぐらぐらと揺れているように思うわけでございまして、非常に確信に満ちた御答弁がないように思います。非常に遺憾に思うわけでございます。いずれにいたしましても、国有鉄道の運賃法並びに日本国有鉄道法の一部を改正する法律案がいずれかの日には議題になるわけでございます。したがいまして、その折には財政的な点を十分にお伺いするといたしまして、きょうは何点かについて質問をいたしたいと思います。  第一点でございますが、三兆一千億を超すところの累積赤字並びに六兆八千億と言われるところの長期債務を抱えられた国鉄、しかも、公労協のスト権問題という難題を抱えており、加えて、国鉄の再建について、運賃あるいは賃金などの決定に当事者能力を持たない公共企業体であるところの国鉄、この国鉄の将来をどうするかという大変な難問のときにあなたは国鉄総裁に御就任されました。みずから火中のクリを拾われたと申し上げてはいかがかと思いますけれども、本当に御苦労さまと申し上げる次第でございますが、まず、総裁に御就任になりまして四十数日を経過してはおりますけれども総裁に御就任になった、そのときの心境についてお答えをいただきたいと思うわけでございます。
  64. 高木文雄

    高木説明員 私のような国鉄の外におりました者が、このようなむずかしい時点において山積をいたしております難問を解決できるかどうかということはきわめて危惧をいたしたわけでございます。それでありますので、私もお話がありましたときに極力御辞退申し上げたわけでございますが、とにかくやってみてくれということでお引き受けをした次第でございまして、率直に申しまして、このような道筋を経て解決をいたしますというめどを十分持っておるわけではないわけでございまして、何分素人でございますので、とにかく今日までの経験をベースといたしまして、ただひたすらに一生懸命やるということを申し上げる以外にお答えのしようがない現状でございます。  しかしながら、その後四十日たちました今日の段階におきまして、国鉄の内部にはこれを再建しなければならないという意気込みがはだで感じ取られますので、諸君とともにがんばっていけば何とか解決の道があるのではないかというふうに希望を抱いておるところでございます。
  65. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 御承知のように、昨年末五十一年度予算を決めます段階において、国鉄再建要綱なるものが一夜にして出現をいたしたわけであります。その内容については、前任総裁の置きみやげでございますし、新総裁は何もその決定については参画されておりません。したがいまして、そういうものに制約をされ、そしてまたさらに五十一年度と五十二年度の二カ年間で収支の均衡を図るということはとてもできない相談だと私は思っております。しかも、ことしは名目五〇%の値上げを六月一日に実施したいというわけでございますけれども、果たして六月一日から実施ができるかどうか、現在の国会の情勢からして非常に疑問とするものでございます。また、さらには、人員削減につきましても、昭和五十五年度までに一万五千人、あるいは六十年度までにさらに五万人減などという難問山積の日本国有鉄道総裁にあなたは御就任されたわけですが、その御就任の際に記者会見がございまして、その抱負などについていろいろと新聞紙上をもって私も拝見をいたしました。先ほども同僚議員からこの問題は取り上げられた問題でございますが、スト権問題については政府国会の役割りであって、国鉄総裁のメーンの仕事ではないというような御発言がございました。  これは大分組合側を刺激しているように見えるわけでございますが、この発言は何か総裁の舌足らずのきらいがあるのではなかろうかと私は思うわけでございますが、総裁の真意は一体どこにあったのか、この点をお伺いしたいわけでございます。
  66. 高木文雄

    高木説明員 国鉄の問題の中におきまして、労使の問題というものがきわめて中心的課題であることは十分認識しておるつもりでございます。そこで、労使の問題の中で、いろいろないきさつとの関連もありまして、労働基本権のあり方ということが組合の方の関心事であるということも承知はいたしております。しかしながら、まずそれから片づけなければならないという状況にはないと私は考えておるわけでございまして、この非常にむずかしい問題、二十年余りもいろいろ論議されながら結論に至らずして続いております現行制度そのものをどのようにしたらよろしいかという問題は、これは広く各界の方々の御意見あるいは政府の検討、国会の御論議ということで決めていただくべき問題ではないかと思うわけでございます。  もう一つ、私どもにとりましては、やはり何と申しましても確実、安全に列車、電車を動かすという使命を持っているわけでございまして、この方は政府にお願いするとか国会にお願いするとかいうことではなくて、まさに私自身が責任を持って処理に当たらなければならない問題であるというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、いろいろと山のように問題がございますけれども、私が責任を持って処理をいたさなければなりませんのは、列車、電車を確実に動かして、国民の皆様に何がしかの御迷惑を現在かけておりますのを少しずつ解消するということであると思うわけでございまして、制度につきましては、それは関連はございますけれども、私がまず取り組むべき中心的課題ではないという意味でメーンではないというふうに申したわけでございます。
  67. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 確かにそれは総裁のお考えもうなづけないではございませんが、とにかく多年にわたって問題になり、解決のつかない問題でございます。こういう問題が最重要でないとしても、国鉄総裁の言われる安全輸送という面と、それからいまお言葉がなかったようでございますが、財政再建という問題と、こういう問題を踏まえながら、このスト権問題の処理というものも当然大きな段階に差しかかっておるわけでございますので、メーンでないと言って傍観視するようなことのないように取り組んでいただきたいと思うわけでございます。  前総裁は、スト権に対しまして条件つき一括付与という方向でございましたが、新総裁はどのようにお考えであるか。この点は同僚議員からもお尋ねがありましたが、重ねて公明党といたしましてもお伺いをいたしておく次第でございます。
  68. 高木文雄

    高木説明員 他の委員のお尋ねにもお答えいたしましたとおり、現段階において私がこの問題について確固たる信念を持つにはとても至らないわけでございまして、よほど内部の事情等をよく勉強した上でなければ私の考え方を申し上げるということはできない、これは不可能であるというふうに考えております。
  69. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それではお伺いしますが、いつごろその時点が来るでしょうか。
  70. 高木文雄

    高木説明員 それは、いまからちょっとお約束申し上げられません。
  71. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 総裁、任期はいつまであるわけでしょうか。
  72. 高木文雄

    高木説明員 四カ年でございます。
  73. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 四カ年の間に解決がつくというように御確信でございましょうか。
  74. 高木文雄

    高木説明員 御存じのように、近く、総理府と申しますか内閣と申しますかに、審議会でございますか、懇談会が設けられまして、各界の方がお集まりになって、政府の段階でまずいろいろ御検討があるというふうに聞いております。そういう場所でございますとか、運輸省の内部におきますいろいろな御検討でありますとかがどのように進行いたしますか、その進行状況にもよることでございまして、私一人の問題ではないので、その四年間ということかどうかということについても、いまここで時期をお答え申し上げることはお許しをいただきたいと思います。
  75. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは、高木個人としてはどうでしょうか。総裁は、国鉄総裁に御就任になる直前に慶応義塾大学の講義に立たれる御意思もあったように伺っておりますし、また、弁護士として開業の意思があって、その宣誓の直前であったというふうにも伺っているわけでございますが、学者として、あるいはまた弁護士として、公共企業体に対してストライキ権を与えるべきであるかどうかという基本的な問題に対して高木個人としてはどのようにお思いになるのでしょうか、お伺いをいたしておきます。
  76. 高木文雄

    高木説明員 私は、学校の講師をやらせていただくとか、あるいは弁護士の仕事をするとかいうことでございましたけれども、労働法とか公共企業体関係の方の専門ではございませんので、その面について、個人としてといいますか、学者の端くれとか弁護士の端くれとかいう意味でも、何か特にそれについて権威ある見解を持っておったわけではございませんので、その点もまた恐縮でございますがお許しをいただきたいと思います。
  77. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 財政的には高木に任しておけ、しかし、労働基本権の問題、労働問題等々についてはまだ自分としても十分研さんが積んでいないというようなお話に承ったわけでございますが、非常に私は残念に思うわけでございます。仮にも官僚の最高峰と言われる大蔵事務次官として敏腕を振るわれた高木総裁でありますから、そういう基本的な問題について自分は全然知らないということでは済まされないと思います。  これは、中学校あるいは高等学校の生徒さんでも十分この点についての認識がある今日でありますので、重ねて御意見を個人的にお漏らしをいただきたい。
  78. 高木文雄

    高木説明員 重ねてのお尋ねではございますが、私は現在国鉄総裁でございますので、個人としても、高等学校の学生よりは少しはましなつもりではございますけれども、個人としてのお答えもお許しをいただきたいと思います。
  79. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 どうも非常に慎重になられまして、国鉄総裁というお立場からやはり慎重にならざるを得ないわけでありまして、個人でも見解を述べるわけにはいかないというわけでございますが、それでは、現時点における国鉄労働組合のおやりになったところの二十日、二十一日のストについては違法のストとお認めになられるわけでしょうか、いかがでございましょうか。
  80. 高木文雄

    高木説明員 現行制度のもとにおいて違法であると考えざるを得ないと存じます。
  81. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 では、現行制度のもとにおいて違法であるとするならば、総裁は処分をせられるわけでございますか。
  82. 高木文雄

    高木説明員 処分をいたします。
  83. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは、その処分の時期はいつごろをめどとしておられるわけですか。
  84. 高木文雄

    高木説明員 ようやく昨日収束したばかりでございますので、まだ明確に決めておりませんが、本来なるべく早く行うのが筋道であるというふうに考えております。
  85. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 違法ストと認められ、しかもそれに対しては処分をするというようなお話でございますが、その点について私はきょうはお伺いをしておきます。  こういう公開の席上においてはっきりと処分をするとおっしゃったわけでございますが、この問題は非常にデリケートな問題であるということは御承知のとおりと思います。  そこで、角度は変えますが、昨年末のストストにおきまして組合に対して損害賠償請求をいたしましたが、今回の二日間のストに対しては損害賠償の請求をする意思があるのでしょうか、ないのでしょうか。
  86. 高木文雄

    高木説明員 筋道といたしましては、損害がありますれば、経営体としては、どなたに対しましても、加害者に対して賠償請求をするのが筋道であると思います。  しかしながら、昨年の秋の場合を別にいたしまして、今日まで賠償請求をしていないというのはなぜかと申しますと、賠償請求をする訴訟をいたす技術的な困難がいろいろとあるからだというふうに聞いております。そこで、今回の場合にも、どちらかというと今回のストのタイプは昨年の秋ないし冬の問題と違いまして、例年の場合に非常に近いケースでございますので、これまで同様技術的に大変困難なことではないかというふうに考えております。したがって、筋道は請求をすべきものでございましょうけれども、技術上の問題として、実際問題としては困難なのではないかというのが現在の考え方でございます。
  87. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 どうもつじつまが合わないように思います。昨年のストは当然処分もします、損害賠償請求もする、ことしのこの二日間のストについては違法ストであるから処分はする、しかし損害賠償請求はしないということになりますと、これは非常につじつまが合わないように私は思います。こういう問題については、やはり確固たる信念を持って堂々とおやりになるべきではないかと思うのです。どうもその辺の点について、私は少しおかしいと思うのです。  この労働基本権を与えるということは、われわれとしても当然のことだとは思います。私どもとしましても、条件つき一括付与という線で臨んでおります。そういった点から考えましても、この問題について国鉄総裁としまして十分の御検討を願って、そして、全くどこからも文句を言われないような取り扱いがなされなければならない。期間が長かったから損害賠償請求をするとか、期間が短いから損害賠償請求しないとか、昨年のストとことしの二日間のストではストの性格が違うとか、いろいろと言い抜けはするでしょうけれども、この問題については十分の御検討をしていただいて、また後刻私どももこの問題についてははっきりさせたいと思っておりますので、いずれこの問題は再質問をすることにいたします。  そこで、先ほどお述べになりました総裁所信の第一点に安全な輸送という問題がございましたが、私も全く同意見でございます。国鉄の最大の使命は、安全、正確な輸送サービスを安定的かつ能率的に提供して国民福祉の増進に努めることで、これは当然のことだと私も思います。  そこで、安全、正確な輸送は何によって達成されるかという点についてお尋ねをいたしたいわけでございますが、機械力によること、あるいはコンピューター等によること、これも否定するものではございませんけれども、最も大事なことは、何といっても労使間の安定という問題から出てくるのではないかと思うのです。国鉄という限られた職場において労使間の安定が非常に揺らいでいるというような時期でございますので、労使間の話し合いが完全に行われて、そして国鉄再建につながっていかなければならない。いかに事務当局だけががんばってみても、労働者諸君の賛成が得られなければ再建ということはなかなかできないと思うわけでございます。そうなりますと、総裁としても、当然、各労働組合との間にかみしもを脱いで裸で話し合えるような体制をつくる必要があるのではないかと思う。これを私はいままでもずっと述べ続けてまいりました。石田総裁のときも、磯崎総裁のときも、あるいはまた前藤井総裁のときも私どもはこういう観点から述べてまいりました。  御承知のように、国労、動労、鉄労、さらには施設労組あるいは全動労と、その他にもあるようでございますけれども、たくさんに分裂をしている組合がございます。お互いに主張に若干の違いがございます。しかも、組合の中には大組合もあれば小組合もあります。しかし、大小いずれを問わず、その主義主張がどうであろうとも、とにかく総裁としては、同じレベルで、組合の首脳部との間にまず総裁自身が対話を重ねることによって道が開けてくるのではないかと思うわけでございます。就任以来総裁は非常にお忙しい中でございましたが、しかし、四十日の経過をたどってみましても、いまだかつて総裁が労働組合の幹部諸君と直接さしでお会いになったということは私も聞いておりません。非常に残念に思うわけでございます。  私は、労使間の対話をして、まず総裁自身が見本を示していくということが必要ではないかと思いますので、それに対する総裁のお考えを伺わせていただきたいわけでございます。
  88. 高木文雄

    高木説明員 全く松本委員のおっしゃるとおりだと思います。安全、正確な輸送をするためには労使の間の心の通いということが重要であると思いますし、そのためには私自身が組合の幹部諸君と十分話し合いたいと考えます。  現実問題といたしましては、就任以来いろいろな方法、機会を通じまして、公式かあるいは非公式か、いずれでもいろいろ話し合おうではないかということを申し入れておるわけではございますが、まことに残念ながら、いろいろと事情があるとみえまして、その機会に応じてもらえないということに今日まではなっておりますが、ようやく昨日こういう形で春闘も一段落したことでもございますので、かなり近い機会にそういう機会を持ち得るものと確信をいたしておりますから、ぜひそういう機会をつかまえまして、よく話し合いをしてまいりたいと思っております。
  89. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いまのお話でございますが、積極的に総裁の方から話を進めるという態度を示さなければいかぬと思う。今回のストも完全にこれで終わったというわけでもないようでございますし、あるいはまだまだこれから長引いていくのではないかと思います。しかし、いずれにしても、何らかの時間をつくってお互いに話し合いをするということを始めなければいかぬと思う。まず、呼びかけを総裁の方からしなければ向こうは応ずる気遣いはないと私は思うのでありますが、その点についてはいかがですか。
  90. 高木文雄

    高木説明員 そのようにいたしてまいります。
  91. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは、そのことを期待いたします。なるべく早い時期にあらゆる組合と総裁がひざを交えてお話し合いをするということを切望いたしておきます。  それから、総裁がお考えになっていることが地方の鉄道管理局を通じまして最末端までずっと浸透しているかどうか、血が通っているかどうか、血管が本当に何の障害もなくて、総裁考えを完全に末端まで運んでいけるような機構になっているかというと、この点については私もなかなか不安に思う一人でございます。そういう点で上意下達が完全に行われ、また、同時に、下意上達ができるかどうか、こういう問題について具体的にどのように総裁はお考えでございましょうか。  私は、決して上意下達が完全無欠に行われているというふうには思えない。ということは、文書でやるわけですから、その文書の字面だけ読めば当然間違いなくそれを理解できるわけですけれども自分の都合のいいような拡大解釈をするときが間々あるようでございます。そういたしますと総裁の真意がなかなか伝わっていかないと思いますので、この点についての総裁のお考えを伺っておきたいわけであります。
  92. 高木文雄

    高木説明員 非常に残念ながら、現状におきましては御指摘の点はまだ十分ではないと思っております。何分四十三万人という職員の数でございますし、地域も非常に広くわたっておりますし、それから職場のバラエティが大変いろいろでございますので、本来的に上と下とが意思がつながるということが尋常一様にはなかなかうまくいかないような状況にあるということでございますけれども、それにいたしましても、もっともっといろいろな努力を重ね、さらに手段方法も考えまして、いままでより一層パイプをよくして、現場の実態であるとか職員考え方について私どもも直接はだで感ずることができるようなことをいたしてみたいと思っております。ぜひそれはやってまいりたいと思います。
  93. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 下意上達についてはいかがですか。
  94. 高木文雄

    高木説明員 やはり、きわめて重要なことでございまして、何らかの方法で私どもがなるべく機会をつくって現場を訪れるというようなことを通じて、職員諸君の生活実態や物の考え方をくみ取る努力をいたしたいと思います。
  95. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 上意下達、下意上達、いずれも大事なことでございますので、この点については総裁の積極的な御努力を大いに期待いたします。  次に、労働組合の問題でございますけれども、特に国鉄関係の労働組合がそうだと申し上げるわけではございませんけれども、最近の労働運動を見ておりますと、働かないことが労働運動であるかのごとき錯覚をしている層があるように思います。これは国鉄だというわけではございませんけれども、そういう層があるということは皆さんがよく言われます。私もそう考えます。  そこで、国鉄のように輸送する対象が人間であり、貴重な物資であるというような場合、その安全輸送につながらないところのおそれが出てくるのではないか、働かないことが労働運動であるかのごとき感覚を持つ者が一人でもいてはならない、こういうふうに思うわけでございますが、こういう風潮に対して総裁はどのように受けとめられますか。  国鉄の場合は、財政の面からも組織の面からも再建をしなければならない非常に重要なときでございます。労使間の不信感を除去するという意味からも、いい意味国鉄一家をつくらなければ再建はおぼつかないと私は思っております。そういうことはいま私が申し上げましたような労働界全般の中にある問題でございますけれども、働かないことが労働運動だというような風潮がもし仮にも国鉄の中に少しでもあったとするならば非常に残念だと思うわけでございますが、こういう問題について総裁はどのようにお考えでございますか。
  96. 高木文雄

    高木説明員 まさに、きわめて重要なことでございまして、料金を上げさせていただくとか、あるいは過去債務のたな上げをするとかいう形で経理面で再建を図っていくということもきわめて重要ではございますけれども、おっしゃるように、何しろ大ぜいの四十三万という数でございますから、その諸君に大いに働きがいを感じて一生懸命毎日の仕事をしてもらえるかどうかということが再建のかぎでもございます。その意味におきまして、もしや御指摘のような風潮がございますといたしますならば、一般論として、労働運動として非常に困ったことだということのほかに、今日のような経営状態から立ち直るためには絶対にそういうことがあってはならないということになっておりますので、そのような働かないことが一つの目標だというような生活行動が、組合問題といたしましても、また組合問題外の問題といたしましても、いやしくもあってはならないわけでございまして、絶対そういうことがないように、多少ともありますとするならば、ぜひそれを改善いたしますようにいたさねばならぬと思っております。  私が短い期間に本社内部の職員諸君から聞いておりますところでは、一時期に比べますれば全体としていい方向に向かいつつあるというふうに聞いておりますので、それをなお前進させていきたいと思います。
  97. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは、最後に一つ伺っておきたいことがございますが、国鉄の内部で、いろいろずいぶん御研究なさったようでありますが、こういうお話を聞いたことがあるかないか。  それは、いわゆる運転系統と施設関係と一言にしてぱっと言いあらわした言葉でございますが、「花の運転、涙の保線」というような言葉がございますが、ここには差別感が非常に盛り込まれていると思うわけでございまして、本社や地方鉄道管理局に背広で御出勤なさいます方もあるかと思うと、屋外で雪に埋もれ、ほこりにまみれて働く屋外労働者の国鉄職員もいるわけでございます。特に、施設労働者は、安全輸送という面から考えてみたならば、これなくしては安全輸送は成り立たないわけです。保線関係を傍観視しておったのでは花の運転は実現できないわけであります。であるとするならば、この保線業務に携わっている人たちに対しても総裁は深い関心を払っていただかなければならぬと思うわけでございます。  特に、列車便所のたれ流しの問題ですが、しぶきを浴びながら保守、保線に精を出している人たちがいるということの認識はあると思いますけれども、この列車便所のたれ流しという問題は、保線に携わっている者のみの問題ではなくて、沿線に住む住民にも大変迷惑をかけているということは御承知でございましょう。これに対する苦情が頻々としてわれわれも耳にいたしております。  このたれ流しの改善につきましては、いままでしばしば国会の質疑において取り上げてまいりました。列車便所の改造、貯留槽の設置、基地における排せつ業——そのタンクの設置などというものは基地としても余り歓迎しない設備でございまして、協力的に国鉄に施設を提供しよう、用地を提供しようという方がなかなかないようでございますので、国鉄当局としても大変苦慮していることはわかります。けれども、この点のお答えというものは、いつもいつも前向きに取り組むということだけでお茶が濁されているわけでございます。そういう意味から考えまして、新総裁といたしましては、こういう分野で働く者に対する待遇改善を含めて考えていただきたいと思うわけでございます。  総裁も御承知と思いますけれども国鉄の一日当たりの乗客数を仮に二千二百万人として計算をいたしましても、乗客の中で百人のうち三人が大便をするとしても二十万キログラム、また、百人のうち二十人が小便をしても百四十五万キロリットルという数字が出てくるわけです。総裁はにこにこ笑っていらっしゃいますけれども、これはとんでもないわけです。停車中は便所の使用をするなという掲示が出ているが、停車中にこれをしたら駅の構内は大変なことになってしまうわけです。ですから、停車中にはやらないわけです。乗客も心得ておりますから走っているときにやる。走っているときにやれば、そのしぶきは保守、保線の業務をやっておる人間にも当然かかるし、沿線住民の洗たく物が黄色くなる、汚物がくっつくということはもうしばしば言われておるわけでございます。その拡散の範囲が、風の関係もありますけれども、大体四十メートルに及ぶということがいままでの調査でわかっております。これは沿線住民にはもう非常に迷惑をかけておるわけでございます。  そういう点を考えまして、沿線住民に対する迷惑の排除と、あるいはまた保守、保線の労働者に対しては、そういう中で黙々としてやっておる人たちに対する待遇改善ということは当然のことだと思いまして、私はしばしばこの問題を取り上げておりますけれども、いつも前向きに取り組む、前向きに取り組むと言うだけで何らの進展を見ていないわけでありますけれども総裁の四年間の任期の中でこれだけはぜひともやっていただきたい。これは要望でございます。
  98. 高木文雄

    高木説明員 労使問題を考えます場合に、なかんずく日の当たらない場所といいますか、目立たない場所で仕事をしておる諸君のことに十分気をつけなければいけないということは御指摘のとおりでございます。私もそう思っておりますので、そのような心構えでいたしたいと思います。  特に、いま御指摘がありました汚染の問題につきましては、きわめて重要なことであり、私は、しばしば松本委員から御指摘を受けておるということも聞いておりましたが、前向きに取り組むという言葉の上で解決を延ばしておるということでは決してなくて、いままでも相当真剣に取り組んできて、実績を上げておると思いますし、これからもやってまいりたいと思います。ただ、いまもお触れになりましたように、現実的にはなかなか基地がうまく整備できない、その御協力がまたいただけないというような問題があるようでございますが、しかし、それはそれなりにまた関係住民の方の御協力を得て進めるように督励をしてまいりたいと思います。
  99. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 約束の時間も過ぎましたので、以上でとどめます。  先般、根室本線の事故につきまして、四月十四日でしたか、われわれ公明党、社会党、共産党三党は、別室でこの事故の経過について伺ったわけでございますが、この事故原因対策等については後日それぞれ責任者から伺うことにいたしまして、きょうはこれで質問を終えておきます。
  100. 中川一郎

    中川委員長 河村勝君。
  101. 河村勝

    ○河村委員 一番最初に、総裁にちょっと御注意申し上げておかなければいけないのですが、さっき総裁は、仲裁裁定を守るかという質問に対して、それは政府考えることだというお話がありましたね。しかし、これはまだ政府ないしは大蔵省の立場を離れていないので、まだ国鉄総裁におなりになっておらぬということではないかと思いますので、御注意をしておきます。  公労法の三十五条には、仲裁裁定に対しては、「当事者は、双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならず、また、政府は、当該裁定が実施されるように、できる限り努力しなければならない。」とあって、十六条で、予算上、資金上支出不可能な裁定には政府は拘束されないということがあるわけですね。だから、総裁であれば服従をしなければならないのですから、当然のこと、これは守ります、実施のために全力を挙げますと言わなければならないものであるが、いかがですか。
  102. 高木文雄

    高木説明員 まことに申しわけございません。三十五条によって服従すべきものと思います。
  103. 河村勝

    ○河村委員 こういうことはトラブルのもとになりますから、御注意を願います。  総裁は先ほどから、就任後日が浅いのでまだ十分わかっていないという角度からの答弁が多かったようでありますが、総裁就任されてからまだ本当に四十日くらいにしかなりませんが、その間に、三月十七日、三月三十日、それに今回の二日間と、このわずかの間に違法ストが繰り返されておりますが、私は、就任後日が浅い、いままで第三者であったということはマイナスの面もあるけれども、逆にプラスの面もあると思うのです。いろいろないきさつにとらわれないで客観的に物を見て、しかも、当事者として、最高責任者として、いままでのようにテレビやラジオ等を通ずるのではなくて、正確な情報が入手できますね。事実関係については正確に把握ができる。だから、かえって判断がしやすいだろうと私は思う。  それで、三回もストが繰り返されて、三月十七日のごときは団交すら行われていない。その他の場合でも形式的な団交だけでスケジュールに従ってストに突入をしてしまう、そしてストが中止されても収拾の段階でまた混乱をしてしまうという、そういう事情を十分お聞きだろうと思うが、それについて、あなたは、そういうとらわれない感覚でどういう感想を持たれたか、それをまず伺いたいと思う。
  104. 高木文雄

    高木説明員 本来ならばもっと労使の間でいろいろと議論が闘わされて、それによって争点が浮き彫りになって、その上でスト権が与えられている場合にはストが行われるというのが本来の姿であろうかと思いますし、私どもの少ない経験から申しましても、たとえば大蔵省におりました関係上で申しますと、税務署の職場であるとかその他の職場におきましても、非現業でありましても、スト権はございませんでもやはりいろいろ話し合いの機会があるわけでございます。そういう経験から申しましても、もう少し話し合いということがなくてはならぬのではないかと思います。  それから、もう一つは、意思決定の過程が一体どういうふうに行われているのかということについてもいろいろ疑問を持つわけでございまして、いま御指摘のようにちょっと奇異に思うことがときどきあるわけでございます。ただ、それが一般的にそうなのか、ことしの場合に特にそうなのか、その辺の事情がまだよくわかりませんので、今後勉強した上で、そういうルールといいますか、慣行といいますか、そういうものを少しずつ高めていかなければならないというふうに考えております。
  105. 河村勝

    ○河村委員 今度のストが終わった段階で、私は新聞でしか見ないのですけれども、八王子−高崎間の八高線で、ストライキの中止指令が出たにもかかわらず、その後まる一日、まあ一、二本は動いたかもしれないけれども、ほとんど全部の列車が動かなかったということについて、あなたは報告を受けていますか。
  106. 高木文雄

    高木説明員 報告を受けております。当初はああいう問題が起こるということが予測されていなかったようでございまして、昨日の朝から大体において動きますという報告であったわけでございますが、漸次報告が入ってまいりまして、しかもそれが大変長引いていった次第でございます。  その原因の詳細はまだ報告が来ておりませんが、どうも、よく言われます労労問題というようなことがあったようでございまして、こういうことでは何ともならぬわけでございますから、今後これをどう処理するか、今回の事柄を一つの教訓として、今後またこういうことが起こらないための材料として展開しなければならないというふうに考えております。
  107. 河村勝

    ○河村委員 いま総裁はいみじくも労労問題という言葉を使われたが、そうすると、新聞に書いてあるのはやはり本当ですか。何か、国労と動労のどっちに話をするのが先であったとか後であったとかということで、それがこじれて線路確認のための列車が動かなくなって、そのために結局全部動かなくなったという、そういう事実は本当ですか。
  108. 山岸勘六

    ○山岸説明員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  109. 河村勝

    ○河村委員 労労問題であっても、それは管理者に責任がないということにはならないと私は思う。ただ、新聞で見ると、管理者側の責任者は、何か、自分の方の手違いで大変申しわけないと言って謝ってばかりいるようだけれども、謝って済むことじゃないでしょう。そのときに打つべき手があるはずだ。  総裁、私がこれを特に言うのは、このほかにまだ二、三例を申し上げますが、結局管理者側が管理者としての仕事をしておらぬからこういうことになるのです。労労問題でこじれてどうしても話に応じなければ動かせばいいでしょう。できないのですか。
  110. 山岸勘六

    ○山岸説明員 もちろん、先生のおっしゃるように、労労問題だからということで私どもがこの問題から逃げようとしているわけじゃ決してございません。先生のおっしゃるように、日ごろの管理姿勢がりっぱであればこういうことにはならないものと思います。  ただ、現実の問題といたしまして、昨日の場合には何としても早く立ち上がりたいということが現場の第一線管理者の頭に働いておったようでありまして、結局一昨日のお昼ごろからこの安全確認列車の運転についての話がこじれ出したわけでありますが、この安全確認列車の運転が正確には十九時二分に八王子を八高線に向かって出ておるわけでありますけれども、その後のいざこざもありまして、結局終列車の時間が過ぎましたので運転することができなかったということであります。  そこで、組合もストを解除した後においてなぜ命令によって運転開始ができなかったかという点については、先生のおっしゃるような問題がひそんでおりますので、先ほど総裁が申し上げましたように、十分にこの点の調査をいたしまして、この問題に対する処置並びに今後の反省材料といたしたいと考えておる次第でございます。
  111. 河村勝

    ○河村委員 労働組合と交渉によって解決しなければならないものは当然交渉によって解決しなければならない。だけれども経営者側として当然その職分でできることを、それは仮に現場で普通の場合は意見を聞いてやっているものがあったにしても、それがこじれて汽車が動かないとかなんとかいう場合には、それは経営者側の本来やるべき領分に戻って当然やらなければならない。そこのところがすべていま失われているのではないかという懸念を私は非常に持つのです。乗務員の乗務行路全体についての一つの基準については、それは団体交渉事項でしょう。だけれども、一々の仕業をどうするかということは、仮に現場で話し合いが行われるとしても、それは権限としてやらなければならないことは当然やってよろしいわけだ。そうでしょう。どうもそのけじめがさっぱりついていない。そこに最大の原因があると私は思う。  もう一つ聞きます。三十日のストライキの翌日、新幹線で大阪で乗務すべき運転士を人を間違えて起こして、そのために新幹線が一時間動かなかったという例がある。これもまた新聞の報ずる例ですが、この場合、少なくとも通常の場合よりもはるかよけいの運転士が大阪には滞留していたはずだ。新聞で見ると二百四十人と書いてあるが、二百四十人の運転士がいて、一人起こし間違ったかどうか知らないが、新聞によれば、国鉄本社運転局は、「スト後で混乱があったとはいえ、まことに、おはずかしい次第。ほとんど前例のないミスだ。」と言って非常に謝っておる。これは起こし間違ったことが大変悪いと謝っているわけですね。そういうことでよろしいのかどうか。
  112. 山岸勘六

    ○山岸説明員 この事件の背景には、一五〇Aというひかり号でございますが、こういった場合の予備乗務員として常に一人を起こしておくという体制をとっておるわけでありまして、この場合もそういう予備要員をとっておったことは事実でありますが、ただ、この前の列車で乗務員がおなかのぐあいが悪いというので振りかえてこの予備要員を使ってしまった直後において、さらに人間の氏名が同じ名字であるがために間違えて起こした。そして、乗務員を寝せておいたところはホテルを借りて寝せておいたわけでありますけれども、この起こし方においてもっと明確な指示をすればこんな間違いはなかったと思うわけであります。  したがいまして、いまの先生の御質問の中で、起こし間違えたことに対して何か謝っているということでありますけれども、反省といたしましては、予備員を使ったら直ちに予備員を補充しておくという作業をまずやっておかなければならない。乗務員といえども人間でありますから、いつどういうことがあるかわかりませんので、常にあれだけの列車を運転している運転者といたしましては、手元に一つ予備員を置いておく、そして使ったら直ちに補充しておくということがやはり一つ体制であろうかと思います。  ただ、先生の認識しておられるところの、乗務員は起こしてやらなければ出勤しないのかという問題があろうかと思います。確かに、私ども若い時代に乗務いたしました場合には、みずからの責任において起きてまいったわけでありますけれども昭和三十年ごろから、折り返し時間の短い時間等におきましては起床装置等を設けておりまして、一応これらの集中監視装置というようなものをつくったわけでありますけれども、その辺の時代から、できるだけ十分に睡眠をとらせてくれというような方向から起こし番というようなものができたわけでありまして、現在、そういう形のとれるところについてはそういう形をとっているのが現状であります。  なお、そういう形がとれない場合もあるわけであります。たとえば民泊を実施しておるというふうなところにおきましては、目覚まし時計等の貸与によって、それによってみずから起きてくるというシステムをとっているわけであります。  この点につきましては、もうすでに長年の間そういう体制をとってきておりますが、ただ、反省といたしましては、それが助役に本当の仕事を十分にやらせる余裕を与えているかどうかという点に反省点があろうかと思いまして、早速最近こういう問題がほかにも起こっておりますので、それらの作業を勉強をやらせているところでございます。
  113. 河村勝

    ○河村委員 普通の場合に起こし番があっても一向差し支えない。そういう一般の慣行があることは少しも悪くない。だけれども、ちょっと聞いておきたいけれども、ホテルを手配して寝かせておいたと言うが、ストライキのために乗務員が大阪にたまっていて、そのホテルを当局側が借りて寝かせているのですか。
  114. 山岸勘六

    ○山岸説明員 私どもは、ストライキ中といえどもいつでもストライキをやめさせて立ち上がらせるということを常に本筋として考えておるわけでありまして、ストライキだからどこへ行ってもその間はわれわれの時間だというような終始一貫した態度でおられたのでは、解除になった場合に直ちに立ち上がるという処置はとてもとれませんので、乗務員のいるところを明確にしておくという意味におきまして、ホテルの指定をできるだけ近いところでやっている次第でございます。
  115. 河村勝

    ○河村委員 民間の労働組合がストライキをやる場合に、組合側で一番苦労して準備をすることは、いかに立ち上がりを早くやるかということなんです。スト中止指令が出たらたちどころに仕事ができるような体制をつくるのが組合の責任なんだ。いわんや違法ストだ。そういうところに非常な甘やかしがあるのです。(「労働者の敵だ」と呼ぶ者あり)敵ではない。だから、これは争議権を持っており、堂々たる争議をやるところで、それを労働組合の責任としてみんなやっておるわけだ。労働運動というものは、争議行為というものはフェアでなければいけないのです。お互いにフェアでなければいけない。これが鉄則なんです。いま違法論を一応抜きにしても、それによって正当性がある。これではまるで不当労働行為だ。ストライキをやった、ホテルを使って立ち上がりのために施設を提供している、これは不当労働行為ですよ。そう思いませんか。
  116. 山岸勘六

    ○山岸説明員 いろいろと問題はあろうかと思いますけれども、私どもにとりましては、ストライキそのものが違法というような、ストライキやった場合の決め方というようなものができないわけでありまして、常に列車を立ち上がらせること、運転をするという体制をとっておくこと、これが現在における私どものとり得る一つの処置ではないかと考えている次第であります。
  117. 河村勝

    ○河村委員 総裁、あなたはとらわれない頭でこれから考えてほしい。これはスト権問題とも絡んでくるのです。条件つきスト権を付与すべしというのが私たちの主張ですから、だから、それとも関係いたしますけれども、これはスト権がないことによる一つの影響だということも言えないことはない。しかし、実際にストライキが行われている限りは、そこのところのけじめだけははっきりしないと現場の管理体制というものは崩れるばかりですよ。この場合だって予備の一人を置いてなかったのは悪かったというようなことを言っているけれども、二百四十人も運転者がたまっていて、なぜ立ち上がりのときに一人でも連れてきて運転させられないのか、それを考えたことがありますか。
  118. 高木文雄

    高木説明員 現在の全体の仕組みが、前月にどの車にだれが乗るかということが決まることになっておりまして、若干の予備員は置いておりますが、いわゆる変仕業について非常に流動性がない。変仕業について非常にトラブルが多いようでございます。  いまの新幹線の例もそうでございますが、八高線ほどではございませんでしたが、昨日朝少しおくれが出ましたのも変仕業問題に関連した問題のようでございますので、変仕業ということについて何かもう少しルールをつくらぬことにはあちこちでトラブルが今後とも起こる可能性がありますので、十分考え直してみてほしいという気持ちでいま指導をいたしております。
  119. 河村勝

    ○河村委員 その変仕業の手配のための通常のルールがどうなっているのか、私も最近のことはよく知りませんが、いずれにしてもこれは異常時でしょう。ストライキによって膨大な人間がたまっておる。しかも、いろいろな仕業変更はあるのがあたりまえです。本当にそういう急場で、とにかく汽車を動かそうというときに、二百何十人も運転士がいて、正規の予備員が一人いないから動くべき汽車が一時間もおくれるということは常識に合わないでしょう。総裁労使関係というのは常識なんです。常識に合わないことはどこかおかしいのです。そういう観念でやってほしいと私は思うのです。汽車を動かすのは使命だから、どうしても何とかして汽車を動かしたいという一心で——その気持ちはぼくもわからぬことはないけれども、しかし、それと本当に労使関係の規律を秩序正しくやっていくということとは仕分けて考えないと、一時的に汽車は動いても、結局長期にわたってだんだんそういう癖がついて、組合管理的様相を呈してくるのです。  総裁、この前八日間違法ストが行われて、それで賃金カットが四億円か、本来なら二百億以上でしょう。汽車は全部とまっていた。これも不思議だと思いませんか。争議行為が正当性を持つためには、両方とも被害を受けるというところに条件が成立しているわけだ。ストライキの場合には、ストライキによって経営者側は得べかりし利益を失う、組合側はその間賃金が払われないという損失がある。そこでバランスがとれて、その兼ね合いでもって、どのくらいストライキをやめるかやめないかというバランスが維持されている。経営者側のロックアウトも同じでしょう。やはり相互に被害を受けるというところでバランスがとれている。(「経営側はロックアウトはできないことになっているんだよ」と呼ぶ者あり)ストライキもできないことになっておるんだ。この点を考えれば、少しぐらい問題があってもとにかく賃金カットをやる。とにかく違法なストライキが行われているわけだ。経営者側は得べかりし利益を失っている。とにかく一般的な法原則から言えばロックアウトは国鉄に認められていないことも事実であるけれども、しかし、フェアでなければならぬ。公平の原則から言えば賃金カットをしてもいいはずだ。それが成り立つかどうか一遍裁判に持ち出したらよろしい。そのくらいのことは総裁として当然やるべきだ。初めから裁判に負けるだろうなどと考えてやらぬところにかえって間違いがある。  きょうは私が総裁に何か訓示みたいなことを言っているようでありますけれども総裁はいま就任早々で非常にフリーな立場にある。だから、この期間に、フリーな立場から、いままであたりまえとして行われてきた最近の悪い慣行をぜひ一遍見直しをして、そこから手をつけていかないといけない。労使関係を本当に正しいものにするのには、経営者はやはり強くなければだめなんです。強い経営者があって初めて強い労働組合もできるのですね。だから、弱くて言いたいことも言えないような経営者があればまじめな者は損をするというような職場秩序ができる。そうなれば、そこに生まれる労働組合というものは曲がってくるのがあたりまえである。その辺からもう一遍出直さないといけないのではないか。  スト権問題は、きょうは時間もありませんから私はやめますが、そういうところをまず正して、しかる後に条件つきスト権付与を——スト権付与というのは、ストをうんとやらせるためにやるわけじゃないのですからね。めったなことではストができないような体制をつくるということなんで、その一つ基本にもなるわけです。そういう意味で、総裁にそういうことについてぜひもう一遍突っ込んで検討していただきたい。  それを最後にお願いして、私の質問を終わります。      ————◇—————
  120. 中川一郎

    中川委員長 海洋汚染防止法の一部を改正する法律案議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますのでこれを許します。小此木彦三郎君。
  121. 小此木彦三郎

    ○小此木委員 大臣、しばらくでございます。  まず、先ほどの説明にもありましたけれども、今回海洋汚染防止法の一部を改正する法律案国会に提案した経緯及び理由について、いま一度詳しく説明していただきたいと思う次第でございます。
  122. 木村睦男

    木村国務大臣 ただいま御審議をいただこうとしております今回の海洋汚染防止法の一部改正をどういう理由運輸省といたしましては作成、提案をいたしましたかということを簡単に申し上げますと、実は、一昨年、御承知のように水島で大量の油の流出事故もございまして、また、第十雄洋丸の事故等がございまして、油の流出の非常に大きな事故が相次いで起こったわけでございます。これが一つの発端となりまして、特に、臨海工業地帯にあります石油コンビナートの災害防止のために特別に石油コンビナートの災害防止法律が成立をいたしたわけでございます。そのときに、関係委員会におきましても、海上においても同様の措置を講ずべきであるという決議もあったわけでございます。  同時に、こういった石油コンビナートの事故が海上に移ってくるということも十分考えられることでございますし、また、海上自体におきましても同じような大規模の事故が将来発生し得る可能性もあるということから、従来はただ単に海上の汚染の防止ということで考えてまいったのでございますけれども、ことに可燃性の油等が流れた場合には火災の大規模なものが起こる公算も非常にあるということから、それらをすべてひっくるめまして、海上の一つの大きな災害としてこれが防止を図ろうということで、今回このような一部法改正を提案いたしまして、コンビナートの災害防止と相並んで、海上汚染のみならず火災等の大災害に対して防除の的確を期せよという趣旨から一部改正を考えたものでございます。
  123. 小此木彦三郎

    ○小此木委員 そこで伺いたいのでありますけれども、今度は長官に伺いますが、なぜ今回の海上防災立法を石油コンビナート等災害防止法のように単独法としないで、海洋汚染防止法の一部改正ということで措置することにしたのか、まず、その理由について説明してもらいたいと思います。
  124. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 ただいまは大臣からも御説明申し上げましたように、水島の事故、第十雄洋丸の事故を初めとする海上災害の多発にかんがみまして、まず、われわれの考えましたことは、従来の海洋汚染防止法だけの防除措置では不十分ではないかということで、特に、第十雄洋丸の事故は、御承知のとおりLPGのガス噴出事故による火災ということでございましたが、従来の海洋汚染防止法は、いわゆる黒物という重油を主とする油の防除措置だけに限られておりました。それでは不十分であって、白物という引火性の強い油類、ガソリンでありますとかLPG、LNGというようなものについても火災ということを想定した災害対策考えておくべきではないかということが一番大きな問題でございました。そこで、新しい法律を立法化するに当たりまして、実は問題が三つばかりございました。  まず、第一に、油の汚染と申しますけれども、単なる自然条件の破壊ということにとどまらないで、油の汚染がそのまま大きな財産の被害、いわゆる災害というものまでもたらす場合が多いということでございます。そのために、実は、新しい法律の中では、たとえば油の回収船の配備を義務づけるというような規定を上乗せで考えておるわけでございますが、そういった場合に実際どこまでが海洋汚染なのか、どこからが災害なのかということを考えていきますと、どうも重なり合ってはっきり限界がつかないという問題がまず一つございました。そこで、仮に汚染と災害という二つの目的を別々に法律で制定していくということを考えていきますと、たとえば現在の海洋汚染防止法の第六章の規定であるとか、あるいはいま申し上げました油回収船の上乗せの規制であるとかというようなことをどちらの法律にも両方書き込んでいかなければいかぬのじゃないかというような点がまず第一番目にございました。  それから、次に、第二番目には、油の種類によりまして、たとえば原油でございますが、これは海上に単に流れ出たという事態ではまず油の汚染という状況が始まるわけですが、事故の態様によりまして原油にも火がつく場合が予想されるわけでございます。その場合に、油の単なる汚染のときには海洋汚染防止法である、それから一たん火がついて災害になりますと災害防止法であるというふうに分けることはできない。また、火が消えたらもう一度海洋汚染防止法に戻るのかというようなことすら予想されまして、時間の経過を追って両方の法律が働くというようなことは国民に義務を負わせたりする場合にかえって混乱が生ずるのではないかということ、これが第二点であります。  それから、第三番目には、油危険物排出または海上火災が発生した場合において現場でどういう措置をとるかということを具体的に考えましたときに、現場海域あるいはその周辺海域におきまして、船舶の進入禁止でありますとか、あるいは航行制限とかいうような措置をしなければならないわけですが、これは油の防除とそれから火災という災害が発生した場合に防除措置をしたり、消火活動をしたりするときに共通の問題として出てくる。したがって、これを一体的に規定することが適当である。  以上三つほどの点から、われわれはやはり従来の海洋汚染防除対策とそれから災害防止対策とを一体的に取り上げて、従来の海洋汚染防止法の改正というかっこうで災害対策にまで及んだ改正案をお願いするということにいたした次第でございます。
  125. 小此木彦三郎

    ○小此木委員 その考え方理解できますけれども、本来この法は公害立法であったはずであります。ところが、この法律の目的規定に海上災害防止船舶交通の危険の防止を加えたことによって、公害立法のはずであったこの法がかえってその趣旨が不明確になったと私には思われるのでありますけれども、その点はいかがでありますか。
  126. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 もともと現行の海洋汚染防止法に特色がございます。それはほかの公害法と異なりまして、第六章のところに排出油の防除に関する規定というものが入っております。単なる油の排出を規制するというような一般の公害法と違いまして、その油の防除をいかにするかという規定がすでに現在の法律の中に入っているというところに海洋汚染防止法としては特色がございます。それを私どもは今回の改正において、防除措置ではなくて災害防止措置にまで広げたのでございまして、そのために従来の法律に盛られておるところの汚染防止のための措置が後退するものでは決してない、逆に、新しい法律改正によりまして、迅速かつ効果的な排出油の防除体制整備が今回さらに強化されることはあっても、従来の公害立法の特色は決して失われるものでない、と思っております。  また、新しい法律によりまして船舶交通の危険の防止のための措置について規定することにしておりますけれども、これは排出油の迅速かつ効果的な防除措置ということを行うためにも必要な措置でございまして、こういった措置を設けることは、これまた公害防止のための規制を後退させるということでは決してない、公害立法としての性格を損なうものではない、と考えております。
  127. 小此木彦三郎

    ○小此木委員 改正によって公害立法の性格がさらに強まったということでよろしいわけですね。  そこで、一昨年十一月九日に第十雄洋丸が東京湾内の浦賀水道でパシフィック・アリス号と衝突して、約三十名の死者が出た。私はあのときに空から視察に行ったのでありますけれども、燃え盛る雄洋丸を房総沖に引き出してもなお火勢が衰えなかった。何とか処置しなければいけないということで、自衛隊機に出動を要請して爆沈をしてもらおうということになったが、幸か不幸か自衛隊機がそういう経験が少ないせいか、なかなかうまく当たらなくて、ずいぶん時間がかかって困ったということを覚えておるのでございますけれども、それはとにかく、そのような大きな事故、あるいは続く十二月十八日に起きた水島の事故などを踏まえて、当局はこの法律においてその教訓をどのように生かし、また反映しているのか、その点について聞きたいと思う次第であります。
  128. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 お説のとおり、第十雄洋丸の事故のときに大火災が発生して多数の死亡者が出たのでございますが、そのときに、従来の海洋汚染防止法が油の防除措置だけを講じておって、引火性のある危険物、LPGなどの防除措置について何にも規定していないということがやはり非常に反省されたわけでございます。そこで、そういった引火性の危険物によりまして火事が起こったような場合に——これはもちろん起こらないように防止もしなければいけませんが、起こった場合には延焼防止措置もとらなければいかぬ。また、海上保安庁等が消火活動を急いで効果的に行うのですが、そういったことのためにも、火災船舶の移動であるとか処分であるとかというような強制権限を平素から法律にはっきりしておかなければいかぬという必要を感じました。  それから、もう一つの水島事故のときには、油の拡大がああいうふうにひどいことになるということは実は予想以上のものがございましたので、やはり、初動の段階において効果的な防災を実施するための体制整備しておかなければならない、また、関係者間において防災のための協力体制を平素から確立しておかなければならない、という必要性感じたわけでございます。  そこで、具体的に申しますと、われわれはそういった教訓にかんがみて三つばかりのことを新しい法律の中に盛っているのでございます。  まず、第一番目には、油の防除の効果的な実施のために、一定の海域航行する大型タンカー油回収船等を配備させるとともに、関係者の防除のための協力体制に資するために、排出油の防除計画を平素から作成して確立しておくということでございます。また、初動の緊急の防除措置実施するための機関として海上災害防止センターを設立し得ることといたしまして、海上保安庁長官は、緊急の場合に措置義務者が措置を講じていない場合、緊急に措置する必要があるときにそのセンターに対して防除実施を指示し得るということにいたしております。  第二番目には、火災あるいは危険物排出があって、火災発生のおそれがあるときには船長等海上保安庁の事務所に対して通報しろということ、また、延焼防止火災発生防止等の応急措置の義務を課すること、それから、海上保安庁長官火災が発生した船舶に対する曳航命令を規定すること、その他、船舶その他の財産の処分権を規定すること、こういう内容を持っております。  第三番目には、これらの事故による第二次的な災害の発生を防止することと、また、付近を航行船舶交通の安全を確保するために、現場海域あるいはその周辺海域において船舶の進入禁止、航行制限等の交通規制を実施することができるように規定する。  以上三点ほどのことを、水島と第十雄洋丸の事故の教訓にかんがみて新しい法律の中に盛った次第でございます。
  129. 小此木彦三郎

    ○小此木委員 いまさら申し上げるまでもなく、いまの答弁の中にもありましたが、海上の災害というものは海象、気象あるいは風波等の影響を非常に大きく受ける。したがって、ごく初期の段階に効果的にこの防除活動に努めなければならないということでありますけれども、十分気をつけて今後これに対処してもらいたいと思うのであります。  二、三具体的な問題をお聞きしますが、ただいまの答弁の中にもありましたけれども大型タンカーに対して油回収船等の配備を義務づけるという三十九条の四に関連して、運輸省令で定める特定タンカーというのは一体どの程度以上のトン数を考えているのか、教えてもらいたいと思います。
  130. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 総トン数で五千トン以上のタンカーに配備を義務づけるという考えでございます。
  131. 小此木彦三郎

    ○小此木委員 その五千総トン以上のタンカーに義務、つけるという理由は何であるか。  さらに、時間の関係上、二、三まとめて聞くわけでございますけれども、ここに出てくる「特定タンカーが常時航行する海域」というのは一体どこを言うのであるかということと、いま一つ、「油回収船及び油を回収するための機械器具の配備の場所」という、その配備の場所はどこを言うのであるか、教えてもらいたいと思います。
  132. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 まず、過去の経験値を統計的に見まして、五千総トン以上のタンカーの衝突等の事故が発生した場合に、大体百キロリッター以上の積載油が流出する可能性が高い。百キロリッターの流出というのは、これはもう社会的にかなり影響が大きい災害でございます。したがって、私どもは、総トン数五千トン以上のタンカー油回収船等の配備を義務づけるということにいたした次第でございます。  なお、現在の海洋汚染防止法におきまして、五千総トン未満のタンカーにつきましても、総トン数百五十トン以上のタンカーについては、オイルフェンス、薬剤その他の資材の備えつけがすでに義務づけられておりますので、それらの船については現行の義務づけで十分であると考えております。  それから、次に、特定タンカーが常時航行する海域油回収船等を配備しておくということを義務づけておりますが、この特定の海域とは、私どもは、東京湾、伊勢湾、大阪湾、それから瀬戸内海を三地域に分けまして、東部、中部、西部ということを考えております。  御参考までに申し上げますが、大阪湾と申しますと、大体紀州の日ノ御埼と四国の徳島側の蒲生田岬を結ぶ線以北の紀伊水道、大阪湾、播磨灘中央部までの海域考えております。それから瀬戸内海の東部とは、播磨灘中央部以西来島海峡までの備讃瀬戸、備後灘、燧灘を含む海域考えております。それから瀬戸内海の中部と申しますのは、来島海峡以西愛媛県佐田岬と山口県千葉崎を結ぶ線に囲まれる広島湾、安芸灘、伊予灘を含む海域考えております。最後に、瀬戸内海の西部と申しますのは、愛媛県佐田岬と大分県の関崎を結んだ線以北の周防灘と関門港の港域を含む海域考えております。  次に、油回収船等の配備場所については、大量の油の排出があったときに現場海域においてすぐに油回収船等を使用することができるように、その基準を定めたい。具体的には、一定の時間以内に油の排出があった現場に到着できるように陸上の基地等に常置しておくという方式が考えられますが、今後、油の回収船については、性能その他いろいろ方式もございまして、検討すべき点がございます。そういった点を十分考慮して、現実的、効果的な配備場所を検討していきたいと考えております。
  133. 小此木彦三郎

    ○小此木委員 次に、海上災害防止センターのことでちょっと聞きたいのでありますが、この時期に財団法人海上防災センターをある意味で拡大強化することになるわけでございますが、それにはそれなりの必要性があればこそと思うのでありますけれども、その点について十分納得のいく説明をしてもらいたいのであります。  また、これを認可法人として海上災害防止センターとするという理由について伺いたいし、さらに、そもそも海上災害防止センターというのはどういうことをやるのか、この際、説明とともに宣伝をしておいてもらいたいと思うのであります。
  134. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 海上災害は、先ほどの水島の例あるいは第十雄洋丸の例にもございましたように、海象、気象の影響を受けて、短時間のうちにその災害の範囲が拡大するという点が非常に心配でございます。それから、災害が船舶に発生する場合が非常に多いのですが、船舶というのは、その船内において防災活動するということについてはどうしても立地条件としての制約がございます。また、その船舶自体が絶えず各地に移動して回るという状態がございます。  そこで、油の防除につきましては、船主等の防災の責任者にその防除の義務を課しておるといいましても、どうしてもその初動のときの措置に手おくれがあり、しかも、災害の広がりの範囲が非常に早くて大きいという点がございます。そこで、防除の責任者であるところの船主その他にどうしても一元的な防除体制を設立させることを、民間の方もその必要を感じておりますし、われわれもぜひそれが必要ではないかということを考えておるわけでございます。そこで、民間の発意に基づきまして——御承知のとおり、認可法人は主務大臣の認可によってその設立を特別に認可されるということでございますが、その業務は、海上の災害の一元的な体制として考えましたときには非常に公共性が強いので、国の立場として適切な監督と指導を行っていかなければならぬという必要性考えております。  現在の海上防災センターという財団法人が四十九年の十二月に設立されて、一部、この防災のための資材の共同備蓄でありますとか防災に対する訓練等の業務を行っておりますが、さらに、初動の防災体制を十分指導監督して行わせていくというために、海上保安庁長官の指示を受けて緊急な油の防除措置を講ずるなど、今回は新たに海上防災のための措置実施に対する業務をぜひ行わせる必要があるということを私ども考えております。  これらの仕事は公益性が非常に高いものでございますので、今回国の出資を二億円行いまして助成するとともに、適切な指導監督を行っていく必要を感じて、従来の民法に基づく公益法人を発展的に解消いたしまして、その設立に主務大臣の認可を要する認可法人ということで発足をさせたいと考えている次第でございます。  そこで、どういう仕事をするかということにつきましては、まず、第一に、大量の排出油の防除措置を緊急に講ずる必要がある場合で、船舶所有者等措置義務者に措置命令を行ういとまがないと認められるとき、あるいは措置命令を受けた船舶所有者等がその措置を講じていないと認められますときには、海上保安庁長官の指示を受けて防除措置を講じまして、その措置に要した費用を措置義務者から徴収するという仕事を一つ考えております。  それから、第二番目には、船舶所有者等の委託を受けまして、消防船、オイルフェンス及び油処理剤等を使用して消火もしくは延焼の防止または排出油の防除等措置を講ずることを考えております。  第三には、海上防災のための措置に必要な油回収船、油回収装置、オイルフェンスその他の船舶、機械器具及び資材を保有しまして、これらを船舶所有者の利用に供することを考えております。  第四には、海上防災のための措置に関する訓練を行うことを考えております。  第五番目には、海上防災のための措置に必要な機械器具及び資材並びに海上防災のための措置に関する技術について調査及び研究を行い、その成果を普及するということを考えております。  以上のうちで、すでに現在の財団法人の海上防災センターにおきまして、東京湾におきましては、二隻の大型消防船の「おおたき」「きよたき」によって消防警戒業務を行っております。また、全国二十九基地に共同備蓄のための資材の保有を行っております。また、第三番目に、訓練事業としては、東京湾第二海堡に演習場を、横須賀に宿泊設備を設けた研修所をつくりまして、タンカーの乗組員等に対しまして消防訓練及び排出防除訓練を行う計画でありまして、五十一年度中にこの仕事を開始する予定であります。  以上三つの仕事は、現在の財団法人の仕事としてすでに始められている内容でございますが、さらにそれを発展的に強化して認可法人として役立てたいというのが今回の趣旨でございます。
  135. 小此木彦三郎

    ○小此木委員 この法の範囲というか、適用範囲はどこまでであるのか。そして、それに関連して、いま国際的に論議されている領海問題が当然出てくるわけでありますけれども、もしも海洋法が通って領海が拡大された場合に、海上保安庁としては、いまの整備状況を踏まえて、これに今後どう対処していくのか。具体的に言えば、巡視艇その他必要な機材をどう増強していくのか、考え方を示してもらいたいと思います。
  136. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 この法律は、わが国の領海内においては、すべての人、船舶海洋施設その他の施設について適用されるわけでございます。  公海上においては、日本の船舶及び日本人の海洋施設について適用されるが、外国の船舶及び外国人の海洋施設については適用されないというのが適用範囲でございます。  私どもは、従来から、巡視船艇三百八隻、航空機三十四機をもちまして、海上における人命、財産の保護ということで、海難救助と海洋汚染防止海上災害防止ということにいろいろ努めてまいったわけでございますが、今回領海問題が国際的な問題として取り上げられまして、仮に現行の三海里が十二海里になるということだけを考えてみましても、従来の巡視船艇、航空機というものをより効果的に使うと同時に、かなり増強も考えなければいけないのではないかと思います。  また、さらに、海洋汚染防止ゾーンが広がるという問題がございますし、また、経済水域がすでに二百海里という数字で取り上げられて国際的に論議されている現在の状況でございますが、そういった新しい事態に対しては私どもとしても今後勢力の増強ということを十分考えていかなければならぬのではないかということを考えております。
  137. 小此木彦三郎

    ○小此木委員 では、最後に、大臣に、私の意見を多少申し上げると同時に二、三お聞きしたいことがあるのでありますが、先ほども申し上げましたけれども、この海洋の汚染や海上の災害というものは潮流や風波あるいは海象、気象等の影響に左右されまして、予想外に急速に拡大することを常に覚悟しておかなければならないと思うのでありますが、それが陸から起こるものでありましても、船舶側から起こるものでありましても、効果的な防除活動が大変むずかしい。特に、船舶が常態として移動しているために、その措置がおくれることが非常に多い。そういう特殊性を考えると、一層私どもは心配することが多いのであります。それゆえに、最も効力のある体制整備が急務であります。であるがために、運輸省海上保安庁においては専心この法律の通過、成立促進に精力を傾けなければならないのであります。それによって汚染や災害の絶滅を期されたいし、たとえ事が起きても、これが大事に至らないように努力されたいと思います。  そこで、この際その決意のほどを大臣に示してもらいたいし、また、そのためには海上災害防止センターというものが民間の発意で設立される性格のものだという考え方も結構でありますし、また、それに期待することも当然でございましょうけれども、先ほど私が申し上げた領海問題の推移ということを考えると、当局としては、自分自身で施設や機材をもっと増強整備して、どんな事態にも対処する態勢を整えておかなければならないと私は思うのでございますが、この点も大臣の考え方を聞いて、私の質問を終わります。
  138. 木村睦男

    木村国務大臣 小此木委員の御指摘のとおりでございまして、海上といえども陸上と同じように、その災害につきましては国が最終的な責任を持って防除に当たらなければならないわけでございまして、海上における災害の防除の責任は海上保安庁であるわけでございます。したがいまして、一昨年来のあの大規模な流出事故あるいは火災等、そういうものに対しまして、消防船を初め、オイルフェンスの展張船とか、あるいは油回収船とか、いろいろな必要な資材、機材をこれから整備していかなければならないわけでございます。  実は、一昨年の事故にかんがみまして、この五十一年度の予算におきましても、前年に比べましてはかなり予算も計上いたしておるわけでございますが、さらに五十二年度の予算編成——これはこの夏ごろから始まるわけでございますが、それまでにはいまお話しの、特に海域の拡張、領海が十二海里に拡張される可能性も十分あると思いますので、そういうことも考え合わせまして、海上保安庁としての機材の整備予算措置をさらに一層十分つけるように努力をいたし、また、国会の御理解も得たいと決意をいたして、五十二年度も一層の整備を図りたいと思っておるわけでございます。  同時に、陸上におきましても、警察なり消防団等の公的機関のほかに民間のいろいろな協力機関が一緒になって初めて災害が防除できると同じように、海上におきましても、船舶でありますとか、海上に施設を持っております事業者あるいは臨海の倉庫業者その他の事業者とか、こういうものが海上の災害におきましては原因者であることもありますし、また、被害者であることもあるわけでございます。こういういわば民間関係機関が隣組をつくりまして、そして保安庁のやります災害防除活動民間の立場から応援し援助するという体制を完備いたしたいというのが今回のこの考え方であるわけでございまして、こういうセンターをつくることによって保安庁の責任を軽からしめるとか、あるいは保安庁の権限を弱くするとか、そういうものではないわけでございます。  このセンターに対して命令あるいは活動開始等の指示もいたしますと同時に、この活動が公共性の高いものでございますから、政府も財政上の援助もいたしてこれが育成を図ろうということによりまして今後の大規模の海上の災害防止に一層徹底を期したいという趣旨からでございますので、ぜひその点を御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  139. 小此木彦三郎

    ○小此木委員 質問を終わります。
  140. 中川一郎

    中川委員長 次回は、来る二十七日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十四分散会      ————◇—————