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鶴園哲夫君 私は、
日本社会党を
代表して、ただいま議題となっています
昭和五十年度
補正予算三案に反対の討論を行うものであります。
第一は、わが国の経済、社会をかつてない深刻な危機に陥れたことに対する
三木内閣の責任の問題であります。
三木首相は、石油ショックや世界的経済状況に責任を転嫁し、
政府の政策に誤りのなかったかのごとく強弁されています。しかし、今日の深刻な
事態がすべて
三木首相を初めとする自民党
政府施政のもとに起こったことは事実であり、その施策が適正を大きく欠き、かつ重大な誤りを重ねたことは、これまた今日明白であります。この自覚と反省に欠けることはきわめて遺憾であります。
三木内閣の無責任を強く
指摘せざるを得ません。
第二は、臨時
国会に対する
態度であります。
本臨時
国会の任務は、中央地方を通じてのかつてない財政危機、深刻な
不況、国民の生活不安等に対処する
補正予算案の審議であります。わが党の反対を押し切って、九月十一日に
国会を召集しながら、国民の望んでいない酒、たばこ、郵便料金の値上げ三法案を極端に重要視し、何をおいてもとこれらを先行させ、
補正予算案や国民の期待する生活関連法案が
提出されたのは一ヵ月後であります。いまになっては、約八百億円の酒、たばこの歳入欠陥を最優先し、三兆五千億の歳入欠陥をないがしろにするがごときは、本臨時
国会の任務を忘れた非常識きわまる
態度と言うべきであります。
第三は、財政の見通しの誤りの責任であります。
約三兆九千億円の税収不足を招来いたしました、この見通しの誤りは、
三木内閣の能力と責任を厳しく問うものであります。第一次から第三次に及ぶ
不況対策の失敗、そして、第四次対策の効果も疑問視され、早くも第五次対策すら主張され始めています。これらの原因も、この
三木内閣の見通しの大きな誤りにあります。前代未聞の財政見通しの誤りだけでも、
三木内閣は総辞職に値すると言わなければなりません。
第四は、歳入欠陥を補うための国債の乱発であります。
この、
補正予算案では建設国債約一兆一千九百億円、特例国債約二兆二千九百億円、当初予算の建設国債二兆円を加えると、国債は実に五兆四千八百億円、歳入総額の二六%になり、国の歳入の四分の一以上が借金によって賄われるという全くの不健全財政に転落を余儀なくされています。
さらに、現行財政法は、国債が軍国主義財政の手段に使われたことの反省に立ってこれを禁止しているにもかかわらず、特例法で赤字国債が出せるとの安易な姿勢によって、建設国債では除外されている防衛
関係予算にも何らの制約もなく使われることになっており、財政法の精神が無視されるに至ったことは許すことはできません。
また、赤字国債の歯どめとして、国債返還
計画の
必要性を強く要請したにもかかわらず、十年後に全額償還するというだけで、年次別はもちろん、
計画的償還を何ら約束するものではありません。借金財政のどろ沼に落ち込む懸念を深くするもので、財政法四条並びに特例法三条の趣旨は完全に形骸化されると言わざるを得ません。
第五は、財政構造を変えようとする意図であります。
わが党は、本会議及び当
委員会で強く大企業の所有地の再
評価、各種準備引当金、交際費、租税特別
措置法等について、大企業優遇の税制を是正することによって赤字国債にかえるとともに、社会的不公正の典型である税制改革を強く主張してきましたが、これを顧みないのみならず、九月消費者米価一九%、明年一月消費者麦価三〇%引き上げ、国鉄料金、運賃、電報電話等公共企業や社会保障等の受益者負担の大幅増徴を意図し、またガソリン税、自動車重量税等の大幅引き上げを
考え、さらに付加価値税という一般消費税を来年度税制調査会に諮問の
方針を固め、まず一〇%、三兆円から四兆円の大衆課税の増徴を見込み、財政難の切り札にしようとしています。今回の酒、たばこの値上げはこれらの引き金であります。財政の危機を赤字国債でしのぐ一方、このような大衆課税、受益者負担の大規模な増徴によって財政構造を変えようとしていることは許すことはできません。
第六は、大企業中心の
不況対策であります。
高速道路、新幹線、本四架橋等の大型プロジェクト等、大企業や道路中心の公共事業が高騰した土地代金にその多くを食われることは明らかであり、非効率な事業になる面を強調しなければなりません。高度経済成長型の公共事業から国民生活関連型の公共事業に大きく切りかえるべきであります。
景気の五割四分を支え、景気の大黒柱であります個人消費の拡大を図ることが有効なことは論をまちません。そのための社会福祉の充実や、個人所得減税等を全く無視していることは遺憾であります。このまま所得減税を見逃すならば、平均して一五%から二〇%、所得の低いところは二五%ないし三〇%という税額の増徴を強いられ、インフレと
不況で大きな犠牲を受けている社会的弱者の対策の欠如していることは重大であります。このたび、公定歩合の一%の引き下げと、郵便貯金を初めとする預貯金金利が引き下げられることになりました。一流企業や大企業は臣額の金利負相の軽減となり、
政府は財源なしで膨大な補助金を彼らに与えたようなものであります。また、金融
機関は預貯金金利の引き下げで利ざやを確保できますが、国民大衆は長期のインフレによる預貯金の目減りで苦しんでいる上に、さらに大きな犠牲を強いるものであります。
第七は、物価対策の軽視であります。
現代のインフレの元凶は、赤字財政と独占、寡占価格の二つだと言われております。五十年度
補正予算は典型的大型赤字財政であります。また、独占禁止法改正の
提出をあくまで拒み続けている
三木内閣は、いまやインフレ再燃の危機を冒しつつあると言うべきであります。酒、たばこ、郵便料金を初めとして多くの公共料金の大幅引き上げが迫っています。また石油、鉄、セメント、アルミ、電気料金等の基礎資材の値上げが待機しています。毎月五千億円発行する国債も、やがて莫大な日銀引き受けによって通貨膨張は必至であります。明年五月、六月ごろからのインフレの再燃を国民は深く懸念をいたしておるところであります。
第八は、地方財政対策であります。
一兆一千億円に上る地方交付税の減額、また、一兆一千億円の地方税の落ち込み、さらに
不況対策による公共事業追加の裏負担等、地方財政は困窮の極に立ち至っています。しかるに、
政府は臨時地方特例交付金二百二十億円、超過負担解消百九億円など、文字どおりわずかな対策をとっただけで、国も借金するからと巨額な借金を地方財政に押しつけ、地方財政危機打開のための
政府の責任を放棄していることは許されません。
四十年
不況の際に行った施策を、戦後最大の
不況と宣伝する
三木内閣は何ゆえ今回これが実施できないのでしょうか。わが党は、地方財政のかつてない危機打開のための交付税率の引き上げと、当面の対策として第二交付税の創設を提案をしているところであります。
第九は、中小企業対策であります。
インフレと
不況の中で中小企業の
経営困難と倒産は深刻なものがあります。また、大企業の中小企業分野への進出も重大化しつつあります。中小企業の
不況対策として四千八百億円の融資を見込んでおりますが、実際は昨年の年末融資四千五百億円に比べて、わずかに三百億円の増加にすぎません。また、わが党が中小企業分野確保法の制定の急務を強調するのに対し、
政府が行政
指導の一点張りであるのは、冷淡そのものと言うべきであります。仕事と資金をとは、中小企業の叫びであります。これにこたえることの小さい
政府の
態度は遺憾であります。
第十は、失業と雇用対策であります。
失業と雇用は重大な社会問題となっています。失業の数について
政府は九十万人程度と発表いたしていますが、欧米的条件では三百万人以上と言われています。出稼ぎの困難、臨時工や内職やパート等の解雇、さらに、新しく生活難から高齢者層や婦人層の就職戦線への大幅な進出も始まらざるを得ません。多量解雇の制限、失業給付の改善、就職や失業対策事業の拡大等は緊急の課題でありますが、これという対策は見られません。また、失業対策事業は一円の増額も行われていません。
本
補正予算を通じて、
三木内閣がいかに有言不実行の内閣であり、また、大企業や社会的強者のための
政府であるかは明らかであります。
三木内閣はその基本的姿勢を改めない限り、国民の厳しい不安と不満の中に沈没せざるを得ないであろうことを警告いたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)