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国務大臣(
福田赳夫君) 私ども
政府が考えておる
経済のかじ取りのねらいを当面何に置くかといいますと、これは
企業操業度の改善に置きたいと、こういうふうに考えておるのです。
企業操業度の改善は一体どうやって実現するかというと、これは最終需要を喚起するほかはない。最終需要喚起
政策をとるわけです。
最終需要というのは、これは申し上げるまでもございませんけれども、これは
国民の消費、次いで
設備投資、産業消費ですね。それからさらに
政府需要、
政府の消費です。それから海外への消費、つまり輸出であります。この四つの要因をそれぞれ
選択しなきゃならぬわけでございますが、さあ
設備投資は一体どうかというと、設備がいま余っておる、こういう
状態で、特別に公害対策だとか安全投資でありますとか、あるいはボトルネック産業、そういうところでは投資の必要を感ずるでしょう。しかし、一般的にここで工場をさらにつくりましょうという活動は起こってこないですから、これに
景気浮揚の主力、これを求めることは非常にむずかしいだろう。それから輸出はどうかというと、先ほど申し上げましたように、いまわが国の
経済はとにかく三月からずっと上昇に移っているんですよ。プラス
成長でございます、上半期の実績は。それから下半期を通じて見ましても、これは
経済対策の効果もあり、とにかく二・二%
成長ということになることが展望される。そういう中で
世界じゅうがいま赤字でしょう。いま
世界どの国をとりましても、
成長の黒字になる国はないんです、これは。そういう中でありますので、これは輸出というものもそう大きく伸びることは、昨年のように四〇%伸びます、五〇%伸びますと、そんなようなことはとうてい考えられません。
そうすると、どうしても残るものは
政府財政しかない。しかし、
政府財政は大変困難な
状態です。御
承知のとおりでございます。しかし、
政府財政以外にはこれは道はないというので、財政による最終需要の振起、そういうことを考えたわけでありますが、それが多少
設備投資にも影響はあります、また
個人消費にも多少の影響はありますが、主力は財政措置を
中心にする。そうしてそういう影響なんかを総合いたしますと、大体三兆円の最終需要を起こす効果がある、こういう判断でございます。
いま
個人消費の問題に触れられましたが、私は、
個人消費というものは沈滞はしている、活発な
状態じゃない。しかし、言われるように非常に落ち込んでいる
状態でもまたないんです。
経済の見通しでは一八%と、こう見たわけです。それがいま現実には一五%ぐらいになっているんです。いま、名目のことしの
成長は一体どのくらいになるかというと一〇%ですよ。実質は二・二%。その中で
個人消費が一五%ふえます、こういう
状態は、決して
個人消費の立場が
日本経済の中で悪い
状態であると、こういうふうには言えません。そういう中におきまして、この
個人消費をここでまた減税だとか何とかというような手段を講じてひとつ伸ばそう、さあ
景気刺激をするんです、物を使ってください、減税をします、そういうような考え方はとれないのじゃないか。
それからさらに、消費が活発でないという背景の中には私は貴重なものがあると思うんです。
インフレに対する拒絶反応というものももちろんあります。それから将来の不安に備えるという貯蓄、そういうようなことの反射的現象としての消費の不振ということもある。しかし、非常に貴重なものがあるんですよ。あるのは、世の中が非常に変わってきたなあ、物を大事にしなけりゃならぬなあ、こういう動きもまた非常に顕著に出てきていると思うんです。その大事な動きというものは、これは本当に大事だと思うんです。これから
世界が変わっていく、その中で資源小国であるわが
日本がどうするかというと、やっぱり
国民一人一人も、
企業もそうです、
政府もそうですが、
国民一人一人もまた使い捨てというようなひらめきが頭の中にあるような、そういう生活態度では
日本社会はもうやっていけない。
ですから、私はこの消費を健全にしようという動き、これを刺激するなんというのはとんでもないことで、むしろ大事に育てはぐくんでいかなけりゃならぬ、こういうふうに考えておりますので、その方式はとらないということを申し上げているんです。そこで、
政府は苦しいけれども財政でいくと、こういう考えでございます。