運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-11-06 第76回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月六日(木曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員の異動  十一月六日     辞任         補欠選任      粕谷 照美君     鶴園 哲夫君      野口 忠夫君     川村 清一君      相沢 武彦君     三木 忠雄君      木島 則夫君     栗林 卓司君      喜屋武眞榮君     下村  泰君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大谷藤之助君     理 事                 岩動 道行君                 中山 太郎君                 矢野  登君                 柳田桃太郎君                 松永 忠二君                 宮之原貞光君                 矢追 秀彦君                 渡辺  武君                 向井 長年君     委 員                 安孫子藤吉君                 井上 吉夫君                 石破 二朗君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 黒住 忠行君                 源田  実君                 斎藤栄三郎君                 坂野 重信君                 中村 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 最上  進君                 森下  泰君                 八木 一郎君                 吉田  実君                 上田  哲君                 小野  明君                 川村 清一君                 工藤 良平君                 佐々木静子君                 辻  一彦君                 鶴園 哲夫君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 野口 忠夫君                 太田 淳夫君                 桑名 義治君                 三木 忠雄君                 岩間 正男君                 須藤 五郎君                 内藤  功君                 栗林 卓司君                 下村  泰君    国務大臣        内閣総理大臣   三木 武夫君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        法 務 大 臣  稻葉  修君        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        文 部 大 臣  永井 道雄君        厚 生 大 臣  田中 正巳君        農 林 大 臣  安倍晋太郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  木村 睦男君        郵 政 大 臣  村上  勇君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣  仮谷 忠男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      福田  一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 井出一太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       植木 光教君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       松澤 雄藏君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       佐々木義武君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  小沢 辰男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  金丸  信君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        任用局長     小野 武朗君        総理府人事局長  秋富 公正君        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        公正取引委員会        事務局経済部長  野上 正人君        警察庁刑事局長  土金 賢三君        行政管理庁長官        官房審議官    川島 鉄男君        行政管理庁行政        監察局長     鈴木  博君        防衛庁参事官   伊藤 圭一君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁調査        局長       宮崎  勇君        国土庁土地局長  河野 正三君        法務省民事局長  香川 保一君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省中近東ア        フリカ局長    中村 輝彦君        外務省経済局次        長        野村  豊君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵省主計局長  吉瀬 維哉君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  松川 道哉君        大蔵省銀行局長  田辺 博通君        大蔵省国際金融        局長       藤岡眞佐夫君        国税庁次長    横井 正美君        文部省初等中等        教育局長     今村 武俊君        文部省大学局長  井内慶次郎君        文部省管理局長  清水 成之君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        厚生省年金局長  曾根田郁夫君        農林省農林経済        局長       吉岡  裕君        農林省農蚕園芸        局長       澤邊  守君        林野庁長官    松形 祐堯君        通商産業省生活        産業局長     野口 一郎君        資源エネルギー        庁長官      増田  実君        労働大臣官房審        議官       細野  正君        労働省労政局長  青木勇之助君        労働省婦人少年        局長       森山 真弓君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        建設大臣官房長  高橋 弘篤君        建設省住宅局長  山岡 一男君        自治大臣官房審        議官       石見 隆三君        自治省行政局公        務員部長     植弘 親民君        自治省財政局長  松浦  功君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 正雄君    参考人        日本銀行総裁   森永貞一郎君        住宅金融公庫総        裁        淺村  廉君        日本住宅公団総        裁        南部 哲也君        日本輸出入銀行        総裁       澄田  智君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)(内  閣提出、衆議院送付) ○昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付) ○理事の辞任及び補欠選任の件     —————————————
  2. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  補正予算案審査のため、本日、日本銀行総裁森永貞一郎君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 昭和五十年度一般会計補正予算  昭和五十年度特別会計補正予算  昭和五十年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑を行います。栗林卓司君。(拍手)
  5. 栗林卓司

    栗林卓司君 私は、主に経済問題を中心にしながら、内政、外交について伺ってまいりたいと思います。  冒頭総理お尋ねをいたしたいと思いますが、昨今深刻な不況下にあるわけです。この問題に触れて、総理はこの予算委員会答弁を通じてもこういう趣旨の御発言をされておいでだったと思います。というのは、三木内閣発足当時の国民の強い声というのは物価の安定である、物価問題の解決にまず全力を尽くすのが内閣責任であると考えたという趣旨の御発言だったと思います。  そこでお尋ねをしたいのは、物価問題を解決してもらいたいという国民の声というのは、もう雇用はどうあってもよろしい、景気はどうでもいい、とにかく物価だけが下がればよろしいということではなかったと思います。雇用の方もあるいは景気の方も、そこそこの水準に落ちつきながら、あわせて物価解決してもらいたい、そういう条件つきの気持ちが国民の真意だったと思いますが、この点について、まず総理の御見解を伺いたいと思います。
  6. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは栗林君の言うとおりだと思います。やはりインフレ不況もということでしょう。しかし御承知のように、新しい経験としてインフレ不況とが同時に来ておるわけですね。したがって、政府経済政策というものは両面政策であるべきだと私は思うのです。ただしかし、そのときの経済情勢を見てどちらにアクセントをつけるかということは、重要なやっぱり経済政策というものの政府選択だと思うのです。  御承知のように日本は、昭和四十六年から七年にかけて非常に通貨がだぶついて、いわゆる過剰流動性ということで、それでインフレが高進したわけです。その上さらに拍車をかけたものが、石油の大幅なる一挙に四倍という値上げで、狂乱物価と言われるような状態日本がなってきたわけです。そこで三木内閣ができたときは、栗林君御承知のように、卸売物価は三一・三%ですからね、一年間の値上がりが。消費者物価は二四・五%というんですからね。そういうものをそのままにしておいて、日本経済というものはこれはもう破綻に瀕することは明らかです。だから国民は、この物価を抑えてもらいたいという声が強かったことは当然だと思う。  政府は、しかし両面の作戦をとらなければならぬわけですから、だから、まず物価を抑えることに政策重点を置きましたよ。しかし一方において、不況というものを深刻にしてはいけないということで、総需要抑制ですから景気はよくなるはずはない、しかし、そういうことでやはり景気というものの動向にも心を配っておりましたから、二月と三月と六月とに不況対策をやったわけです。景気の回復の足取りはもっと早いと政府が考えたことは事実です。ところが、日本の戦後初めてマイナス成長ですからね、去年は。そんなことはないんですから。〇・六というマイナス成長で冷え込んでおった経済というものが、しかも稼働率の指数もまだ八三%というような状態ですから、設備投資の意欲は起こってこないし、国民経済生活に対する堅実な考え方もあらわれてきて、余り個人消費もふえませんし、海外も世界全体が不景気ですから貿易もふるわないということで、予定どおり足取りではない。それでも物価というものが頭にあるわけです。やっぱり物価というものを優先するという政策経済政策中心でなけりゃならぬ。  そういうことで、物価は、政府目標は、公約というものはもうことごとく果たしてきておるわけですからね、物価問題に対して。野党の諸君はこういうことは一人も評価されませんけれども、しかし物価問題に対しては、これはその言ったときには実現するとは思っていなかったんです、そんなことはできるものでないと言ったのに、政府国民協力を得て政府目標は達成しておるわけです。これで大体見通しがつきましたから、ここで本格的に補正予算を組んで、景気浮揚策に乗り出していったわけです。  そういうことで、これからは高度経済成長には返らぬですよ、もう条件はないんですから。今度は高度経済成長よりも低い成長であっても、それが長続きのする安定した適正成長の軌道に乗せていこうとするわけですから、どうしてもその調整といったら摩擦が起こるわけですよ。その摩擦をできるだけ少なくしようと。その摩擦の最大のものが倒産であり、失業であるわけですから、それを少なくしようということで、今回の補正予算なんかも、これはもう政府は一刻も早く、国民は待ちわびておるのですから、御審議を促進していただいて本格的不況対策に乗り出していきたい、こう考えておるわけで、栗林君の言われるように、政府はもう物価さえ抑えれば、失業やあるいはまた倒産なんか余り気を配ってないのじゃないかというようなお話でございますが、そうじゃありませんよ。それはもう政府責任ですから、これに対しては常に雇用の安定、あるいはまた倒産の防止ということは頭から離れないことなんです。しかし、日本経済のいままでの状態を考えれば、そういう政策をとらざるを得なかったということは栗林君の御理解を得ておきたいと思うわけでございます。
  7. 栗林卓司

    栗林卓司君 総理がいま冒頭に言われた、とにかく物価雇用景気もである、それは白書も指摘している点ですが、雇用といいますと景気対策に入ることになるわけですが、物価景気同時達成というのが政府のとるべき道であるという御答弁はそのとおりだと思います。  そこで、物価も上がれば困りますし、また失業が出れば困る。どちらの方を重視するかと言われてもなかなかに選びにくい問題だろうと思うんですが、ただ、個人生活に与える痛みということを考えますと、たとえば欧米の例では、経済政策選択する場合にまず頭にかかるのが失業問題であるということがよく言われております。今日、日本ですと、条件が違うものですから日本失業率というのはなかなか参考になりません。なりませんが、実体としてそういう条件があるということは、いろんな数字から想像することはできます。  そこで、たとえば先ほど物価が最重点だということでおっしゃったのですが、三木内閣発足以降、下がり続けている数字は何かといいますと、有効求人倍率。恐らく日本失業状態というのはこの有効求人倍率に一番あからさまに出ると考えてもいいのではなかろうかと思いますが、これが七月の指標を見ても〇・五六である。百人とにかく職につきたいと言っても四十四人があぶれてしまうという状況だと思うんですが、これは当初三木総理として予測をした——国民の要望というのは雇用物価もなんだとおっしゃったわけですが、予測をした状況だったのでしょうか。
  8. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま、学校を出る人たち就職というものは、相当厳しいものがあるということは御承知のとおりです。しかし、もし大企業ということならば就職機会というものは非常に栗林君御指摘のように狭いですが、もう少しそれを、大企業ばかりじゃなしに中小企業分野にまで就職の場所を拡大していけば、今日の段階において吸収できないような状態とは私は思ってないわけであります。  しかし、できるだけ希望をしておるところに働けるような条件をつくることは理想でございますから、雇用の安定のためにはどうしてもやっぱり景気を回復せなければいかぬ。これは企業自体にしても、日本雇用システムは、欧米であればそのときの経済状態からして過剰人員が出ればすぐに整理できるのですけれども、終身雇用制ですから、会社が無理な人々を抱えておるわけですね。だから、そういう点で企業の採算というものは非常に悪化して、九月決算などにもそれはあらわれておるわけでございますから、どうしたって雇用の安定のためにも日本景気を回復させなければ根本的な解決にはならぬということで、まあ、いろいろ雇用の問題というのは深刻な問題であるとわれわれも受け取っておることは事実でございます。
  9. 栗林卓司

    栗林卓司君 いま有効求人倍率のことで、大学を新しく卒業した人たちのことを例に出されました。それもまた深刻な事態であることは否定はいたしませんが、日本失業の深刻なのは、中高年に集中することなんです。米国の場合ですとレイオフという制度がありますが、これは若年層からレイオフ対象になってくる。日本の場合には中高年失業対象になって、なおかつ七月現在で〇・五六の求人倍率になっておる。一家を抱えてどうするんだというのが、実は先ほどお伺いした理由なんです。そこで、とにかく物価だという選択をされたわけですから、そのした結果としてこういう姿があるということを予期されましたかというのが、先ほどの質問でした。
  10. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) こういう高度経済成長から安定成長への路線というものが、非常に大きな転換を必要とするわけですから、やはりいろいろな摩擦は出てくると思いましたが、そのために、いままでも補正予算を出す前にいろいろな景気対策というものに対しては気を配ってきたわけですが、その足取りが必ずしも政府の考えておったような足取りでないという事実は、これはわれわれも認めざるを得ない。そういうことで、雇用問題に対しても、相当深刻な事態というものはわれわれもよく考えまして、高年齢層などに対しては、労働省雇用対策のこれは一最重点の施策にいたしておるわけでございます。
  11. 栗林卓司

    栗林卓司君 私が先ほど来お伺いしているのは、三木内閣発足当時の判断の問題なんです。  そこで、有効求人倍率で伺ってきたので、改めて伺いますが、一というのは大体希望する人に職がある望ましいことだと思いますが、総理としても、有効求人倍率が少なくも一を維持するというのが福祉指標として目標であるとお考えになっておりますか。
  12. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 理想としましては、その求人倍率の一というような状態に持っていくことが理想であることは、それは栗林君の言われるとおりだと思います。
  13. 栗林卓司

    栗林卓司君 そうすると、お伺いしますけれども、去年の暮れ三木内閣発足当時、すでに有効求人倍率は一を割りまして、十二月で〇・七七、その前の十一月で〇・八四、すでにとにかく職がなくなって、何とか次の職を求めたいというときに、百人のうちで〇・八四ですと十六人の人が職がない。十二月〇・七七だと、何と二十三人の人が職がないというのが三木内閣発足当時の実態だった。そのときにこれを気にしなくてよかったのですか。
  14. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはもうわれわれは、雇用の安定ということはやっぱり社会安定の基礎になりますから、常に頭に瞬いたことは当然のことでございます。
  15. 栗林卓司

    栗林卓司君 重ねての質問なんですが、十二月〇・七七、望ましい数字では毛頭ございません。これがずっと下がり続けて、七月で〇・五六、まあ何と昭和三十五年ぐらいの大変経済水準の低い状態に落ち込んでしまった。そのときに、前国会の施政方針演説を拝見しますと、総理はこう言われているのです。「景気は停滞の色を濃くしつつあることも否定できません。」、恐らくこの中に十二月の〇・七七も入っているんでしょう。「西独米国でもインフレ対策から不況対策重点を移行し始めました」、「わが国の場合では、簡単には総需要抑制策を外すわけにはいきません。」とおっしゃったからには、今日の深刻な雇用状態は予期されていたわけでしょう。
  16. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、簡単に物価安定という政策日本の場合は軽視するわけにはいかぬというのは、インフレの度合いが、私の内閣が出発したときには、これは世界に比べて非常にインフレというものの進行状態が深刻でありましたからね。西独の場合を例にとってみましても、消費者物価というのはかなり日本と違って安定をしておりましたし、そういうことで、よその国と比較にならぬ。こういう場合に物価安定ということは捨ておけないということであったわけでございますから。  これは雇用というものについては労働省、一番大きな省としての政策目標でございますから、雇用の安定ということは。あらゆる努力をして、そしてたとえばいま言った、自分の希望するような大企業には勤められないけれども、まあ自分の適性などを考えて、そして中小企業分野まで拡大すれば今日就職機会がないわけではないわけでございますから、こういう一つの大きな経済転換過渡期には、働く人々たちもその経済事情というものを理解されて、そうして就職機会を得てもらう。しかし、政府は一方において景気対策というものを大胆にこれから講じていこうとしておるときですから、こういうことによって景気が回復されれば、そうすれば、三月ごろから経済指標というものは上向いてきておることは栗林君御存じのとおりでございますが、まだまだ各企業についてはいろんな事情が皆違っておって、全体として非常に企業経営というものが苦しい状態にあることは事実ですから、どうしても雇用というものは手控えざるを得ないわけです。いまでも相当過剰な人員を擁しておるわけですから、新規の採用というものはやっぱり制限せざるを得ないわけです。その雇用不安定の根本になっておる景気というものをこの際安定成長路線に向かって回復せなければならぬということで、政府雇用問題のことを頭に入れればこそ、こういう景気対策というものに大胆に乗り出しておる次第でございます。
  17. 栗林卓司

    栗林卓司君 お言葉をひとつ返すようですが、雇用問題というのは、若者が新しく学窓を旅立って次に行くだけの問題ではございませんから、そこは誤解のないようにお願いをしたいと思います。一家を抱えて、昨今の経済状況なんだからおまえさんわかってくれやと言われて、なかなかそうはまいりません、中高年なんですから。ということは重ねて申し上げておきたいと思います。  そこで、いま政府景気対策をやっているというお話ですが、一次から四次までやってきながらなかなかはかばかしくない。理由は何かというと、個人消費がなかなか伸びない。なぜ伸びないかというと、国民が財布をどうしても締める気持ちになっている有力な原因が雇用先行き不安なんです。したがって、今日の景気対策の伸びがなかなか伸び悩んでいるのも、ここに出ている〇・五六という有効求人倍率が有力に示している。ですから、一年前にさかのぼりながら重ねてお伺いをしているんです。  そこで、物価とおっしゃるのですが、ちょっと数字を挙げてみたいと思うのです。十二月の状態で見ますと稼働率指数が八一・六。副総理がよく引用される稼働率指数で最低が七七でございました。とにかく、きょう現在よりも低い数字であるわけですから、よほどこの稼働率指数は深刻な状態である。有効求人倍率が〇・七七は申し上げたとおり。鉱工業生産指数は前期比で赤の一五・〇。よほどの不況にはまり込んだという数字だと思うのです。では物価はどうかといいますと、卸売物価指数が四十九年十一月が対前月比〇・三%増、十二月が〇・二%増、一月が〇・四%減、二月が〇・五%減。消費者物価は、同じように十一月が〇・七%増、以下〇・四、〇・五、〇・三と対前月伸び率が下がってきている。なるほど前月に比べれば、げたは高いのです。そのときに、景気雇用物価もという選択を迫られたときに、いま申し上げた数字だけを見ても——物価がどうでもいいという議論を私しているのではありません。物価も下げていかなければいかぬが、いよいよ不況対策、特に雇用対策、ほうってはおけないようになったと御判断すべきであったのではないですか。
  18. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そういう不況ということも頭にあったものですから、今度初めて本格的な景気対策に乗り出したというわけではなしに、二月、三月、六月と、こう継続的にやってきたわけですね。その回復の足取りというものが政府が考えておるような足取りよりも遅かった。上向いておることは事実ですよね、いろんな面で。しかし、そういうことで、今度は補正予算を本格的に組んで景気対策に乗り出してきたということでございます。そういういろんな経済情勢の実情を頭に入れながら、そういう政策というものに政府が大胆に乗り出してきた。それはやっぱり雇用安定の一つの基礎であるからであるという考えでございます。
  19. 栗林卓司

    栗林卓司君 ちょっと理屈を申し上げるようで恐縮ですけれども、前国会の総理施政方針演説を拝見しますと、「わが国は、コストインフレと国際収支の悪化に悩まされております。」と書いてあります。当時のインフレはコストインフレなんだという御認識だったと思います。問題は、その片方で「わが国の場合では、簡単には総需要抑制策を外すわけにはいきません」。これを二つ合わせますとどういう経済状態が出るのか。コストインフレと普通需要インフレと相対置して言われるわけですが、需要インフレの場合には超過需要が物価高の原因になるわけですから、総需要を抑制すれば需要と供給の関係がおのずからうまくいって、物価も正常な水準に戻るであろうということだと思いますが、コストインフレの場合には、コストの面でいろんな値上げ要因がメジロ押しになっているものを総需要抑制策で無理やり抑えるわけです。  どこにしわが寄るかといいますと、企業利潤と賃金コスト。もう一つは海外一次産品の値上がりによるコスト高もありますが、これはわが国としてどうしようもないということになりますと、急速に企業利潤が落ちる。まあこの際、これはどうでもいいことかもしれませんが、これが今回の約四兆円に及ぶ歳入欠陥の最大の原因になっているわけですから、決してほうっていい問題ではありません。それはそれとして、しわは賃金コストに絶対くる。これは何かといったら失業倒産、賃下げだ。そのままの姿が出てきたわけです。  あなたがもしコストインフレだということがわかっていたのなら、総需要抑制策をとるというのは大変危険なことなんだという認識がまずなければいけなかったのではなかったでしょうか。の安定ということをおっしゃいますけれども、いま申し上げたことを踏まえて言う限りは、お言葉だけではなかったか。結局、物価指標だけをかざして、皆さん三月一五%になりましたとおっしゃっただけではなかったのかという気がいたしますが、いかがでございますか。
  20. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは物価目標を達成するということも大事ですけれども、やはり経済全般について政府が細かい配慮をすることは、当然の政府責任でございます。日本の場合コストインフレ、賃金にしても三二%という賃上げは、これは世界から見ても異例のことである。そういうふうな状態になるということは、やっぱりいろんな需要を呼ぶわけであります。賃上げというものといろんな需要というものに対しては関連があるわけでありますから、総需要抑制政策というものをとらなければ、あの場合日本インフレ状態というものを鎮静さすということは私はできないと、こういうふうに考えておりますから、コストインフレ要因が日本インフレの大きな要因だから、だから総需要抑制政策はとらなくていいんだというふうに私は考えない。それは非常な相関関係を持っているということなんで、石油もあるけれども、これはまあ海外の要因でございますから、やはりこのデマンドプルみたいなことは、これだけの操業度も低いですからそれは起こり得ない。やっぱりコストインフレというものは、日本インフレの場合に一番警戒しなければならぬことは御指摘のとおりだと思う。
  21. 栗林卓司

    栗林卓司君 コストインフレの場合に総需要の抑制をかけたら、失業、賃金カットが出てまいりますよ、そういう危険がありますよということを申し上げたのですが、総理は、そうは言われてもあの際は総需要抑制しか仕方がなかったと。私はその立場がないとは言いません。そのときには、はっきりとわが三木内閣は完全雇用政策は捨てたのだと言わなければいけません。片一方でコストインフレに悩みながら完全雇用政策をどうやって実現していくのかが、欧米先進諸国の共通の悩みだ。ですから、先ほどみたいに簡単にお答えになれない。  では、欧米ではこれはどういう対策を打っているか。御承知のことでしょうけれども、後の質問とも絡みますので申し上げますけれども、かっては所得政策ということを工夫してみた、やってみたけれども、やっぱりうまくいかない。なぜかといいますと、一定期間制限をすると、たがを外した途端にキャッチアップの上昇が起こってくる。しかし、無理なひずみを経済に植え込みますと、国際競争力を含め供給力を含め、いろんな問題が出てくるから、所得政策はこれはあかぬということに昨今なってまいりました。そこで、西ドイツにしてもあるいはフランスにしても英国にしても、どこで苦慮しているかというと、こうなったらやっぱり賃金問題と物価問題はとうてい無関係ではないのだから、労働組合の皆さん参加をしてください、責任をとってください、そのための環境をつくりましょうというのが、これからおいでになるパリを含めた各地の経済政策でしょう。あなたはそれを一切おっしゃらない。総需要抑制一本やりだということは、結果から見ても三木内閣は完全雇用政策は捨てたと言われても仕方がないのじゃないですか。
  22. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、やっぱり働きたい者に職場があるということは政治の目標でございますから、捨てたという、そういう内閣というものはあり得ないわけですが、それはどこの国でも目指すものは完全雇用ということでしょう、この近代国家は。それでも、御承知のようにアメリカでも八%以上の失業率が出ているわけですからね。しかも、そういう場合に、それならいま栗林君は、イギリスの所得政策というものは賃金ストップやったわけですが、どうもこれは成功しておるとは言えないし、また西ドイツの共同決定法をめぐる労使の関係も、いろいろ学ぶ点は私はあると思いますよ。しかし、日本とイギリスと西独との間では国情が違いますから、それを日本にそのまま持ってきて私は成功するとは思わない。また、この国際的評価も、必ずしも大成功だという評価はあらわれていないわけですからね。  そこで、やはり何としても、賃上げの問題にしても問題は物価ですから、賃上げの理由は。ことしの春闘というものが一三・一ですか、そういうものでおさまったというのは、物価の鎮静の傾向というものに対してある程度の政府の施策に信頼感もあったからおさまったのですね。やはり賃上げというものの根拠の中には、物価インフレが高進していくということに対して労働者の生活を守らなければならぬということが起こってくるわけですから、私はこれは経済政策の基調というものは物価の安定に置かなければいかぬ。そうでなければコストプッシュといわれるものにもこれを抑える方法がないではないか。そういうことで、景気浮揚政策をとっておりますけれども、やはり物価の安定というものは経済政策の基調としての視点を外したくはないと私は思うわけでございます。
  23. 栗林卓司

    栗林卓司君 そうすると、改めて伺いますが、完全雇用政策というのはどういうぐあいに位置づけてお考えになるんですか。大変ひがんで言うわけじゃありませんけれども、政府に対する信頼感が春闘におけるなだらかな賃上げになったというお話ですが、もっとドラスチックな言い方をしますと、あれは有効求人倍率が下がりゃ下がるんだという見方が政府部内で多い。したがって、兵糧攻めに遭ったのかという見方さえなかったわけではない。であればあるほど、完全雇用政策をどのように位置づけておいでなのか、やっぱり伺わなければいけません。
  24. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、ああいうなだらかな春闘に終わったのは、労働組合が国民経済全般というものに対しての労働組合の責任というものを感じられて、労使の節度のある一つの協調の態度が生んだものだと思うが、その背景に、それでも物価がいままでのような、もう二〇%にも三〇%にも消費者物価が年間に上がっていくという状態でいかに労使の節度ある態度と言ってもそれは無理ですから、やはり物価も鎮静したということが大きな、あのようななだらかな決定の背景にあったということを私は否定することはできぬと思います。  そして完全雇用というものは、政府が、統制経済でありませんから、やはりある程度の経済水準高度経済成長から安定成長と言っても、これはある程度の雇用を確保するためにはある程度の成長水準は持たなけりゃできませんよ。いま経済企画庁においても、経済社会中期計画などにおいて成長率というものを検討しておるわけですね。しかし、それはやっぱり働きたい者には職場があるという、それだけの経済成長は確保しなければならぬ。いままでのは、これは世界に類例のない、一〇%を超える成長が長期に続いていくということは一つのけた外れのことでございますが、今後は成長率は落ちてきても、雇用を確保する成長率は確保しなければならぬというのが考え方でございますから、そういう中で、働きたい者に職場がある経済条件をつくり出さなければならぬ。統制経済ではないわけですから雇用を計画的にということじゃございませんが、そういうふうな経済環境をつくるということが政府責任であると、こういうふうに考えておる次第でございます。
  25. 栗林卓司

    栗林卓司君 こればかり議論をしていても仕方がありませんから、この辺で一区切りはつけますけれども、雇用については考えているんだとおっしゃるんですが、やっぱりなかなかその御答弁というわけにはいかないと思います。大変、各閣僚が雇用問題どのぐらい御熱心かと思いまして、今臨時国会の所信表明演説を、三木さんと福田さんと大平さんと、雇用という字が何回使われているかを数えてみた。三木総理が二回です、わずかに。福田総理が二回。大平大蔵大臣が三回。しかし、これは入っているからいいといたしましょう。問題は、前の国会の三木内閣総理大臣施政方針演説では雇用ゼロ。結局その認識がなかった。それで、単にゼロだけではないんです。その種問題に触れているところがあるんですが、どういう触れ方をしているかというと、高度経済成長は今後できませんという条件の中に入っている。人手不足経済は今後とも続くという御認識なんです。これが、発足当時すでに有効求人倍率が一を割っていたにもかかわらず、総需要抑制策をやっても大丈夫なんだという誤算を生んだ原因ではないかと思いますが、またこんにゃく問答になりますから、このお答えは要りません。  ただ、一つお伺いしたいのは、理屈の完全雇用政策じゃなくて、やっぱり物価雇用も何もあるわけですから、そういう政府目標指標というのは、国民はどこを見たら探すことができますか、具体的な指標を。
  26. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは一応経済見通しですね。これは毎年毎年つくっておりますが、それで大体御観測願う、こういうことかと思います。
  27. 栗林卓司

    栗林卓司君 そうすると、経済見通しというのは、政府目標指標が中に含まれているということだと思いますが、そうなりますと、今回の政府見通しの改定というのは、さまざまな福祉指標を含めた政府目標の改定である、こう理解をせざるを得ませんが、それがかくも大幅に改定された場合、改定で済むのでしょうか。
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 改定で済まないで一体どういうふうにするんでしょうかという反問をしたくなりますが、まあ別に反問はいたしませんが、経済事情が非常に変わってきたのでありまして、経済見通しの改定を行う、こういうことになったわけですが、その改定も、おっしゃる通り手直し程度のものじゃないんです。もう成長率から、実質四・三%、そういうふうな見方をしておったのを二・二%に変える、これくらいな大きな改定でございますので、これは全面的にやり直しと、こういうふうに言っても支障はございません。
  29. 栗林卓司

    栗林卓司君 変えなければいけないのだからいまさら言われてもという御趣旨だと思いますが、ただ、政府のいろんな目標を含んでの政府見通しということになりますと、国民はそれを見ながら、政府物価を言っているけれども雇用はどうなんじゃ、個人消費がこのぐらい伸びると言っておるからわれわれの可処分所得も多少いいことがあるんだろう、こんなことを考えながら生活設計をしてみたりする。外国は外国で、あれを見ながら、ああ日本政府はこんなぐあいに経済を運営していくのか、近隣窮乏化政策はせぬようだというようなことを考えながら見ていくのがあれでしょう。  で、今回は個人消費が、改定見通しですと約二兆円ばかり減額になっている。というのも、それと直接国民の可処分所得とつながる話ではないとしても、昨今の雇用状況なり昨今の先行き不安なりを考えますと、政府は当初、内閣発足当時、一月に決めた目標を大幅に切り下げてきたと受け取って普通ではないのじゃないでしょうか。  そこで、私は何もここで子供じみた政治責任論議をするつもりはありませんけれども、あれほど大幅に変わった場合には、まあ変えて、後は後だということで通るのでしょうか。その点については総理はどうお考えになりますか。
  30. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 栗林君にも御理解を願いたいのは、何か大きな転換期にわれわれは差しかかっている。世界的にも激変の時代をわれわれが行っておるわけですから、各国とも、これは各国がそうだから日本がそうであっていいというのではないのですよ、各国とも非常な見通しの改定というのは繰り返しておるわけですね。それは何かと言ったならば、日本だけの要因ではないということですね。世界経済全体が不況であって、貿易というものも——日本のような輸入、輸出、貿易に対する依存度の非常に高い国では、やっぱり原料などを輸入するわけですからね。それでまた製品を売らなければならぬ。加工して、加工貿易で生きておるというような国ですから、海外要因が非常に多いわけですからね。だから、改定の必要のないような見通しを立てることが理想であることは、これはもうよくわかりますけれども、やっぱり大きな激動の時期において、経済見通しの改定というものは、それはそのことが結構なことだと私は思ってないのですけれども、やむを得ないものがあるということも栗林君の御理解を得ておきたいと思うわけでございます。
  31. 栗林卓司

    栗林卓司君 では、見通しの一つとしてお伺いをしたいのですが、今回第四次の不況対策について、副総理の方から、所期の効果を上げたとすると大体こういった状況になるというお話がございました。そこの中で、企業の操業度ということが大変重要なんで、稼働率を何とか三月までに九〇に引き上げていきたいというお話がございました。これは操業度に置き直しますと八一前後ということになると思うのですが、この八一前後というものは、仮に所期の期待どおり達成したとしても、ミクロの段階でどういう姿だと御判断になっておりますか。
  32. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 稼働率指数でいきますと、大体望ましい水準九五、その辺に考えるわけです。そうしますと、実際の操業度はそれに〇・九掛けるというのがこれは定説でございますが、そうすると、八六ということになりますね。その八六という望ましい操業度に対して、来年の三月の時点におきましては八一だ、こういうのですから、なお望ましい水準に対しましては五ポイントの不足がある、こういうことなんです。その不足は、これは五十一年度努力してひとつ詰めてみたい、こういう考え方でございます。
  33. 栗林卓司

    栗林卓司君 問題は、操業度とミクロの段階が絡み合うのは損益分岐点の水準だろうと思うのです。これは先ほどの雇用問題とも実は絡むのですが、コストインフレ下で総需要抑制をかましてくると、日本の場合には失業率に出ないで、企業の中に抱え込みながら損益分岐点が上がってくる、こういうかっこうをとるわけです。それがいま副総理が言われた八六ないし八一とどういう絡みがあるかということを政府に伺いましたが、資料がないものですから、ある民間の資料を参考にしながらお伺いしたいと思うのです。  その民間の調査によりますと——一部上場で考えてみました。昭和五十年の春で損益分岐点が九〇%以上、これは八一じゃどうにもならない。九〇%以上が当時五百五十一社のうちで百九十五社になっている。夏になりますと、五百五十四社のうちで三百二十三社、これが九〇%以上。この中身をもう少し言いますと、一〇〇%以上、これは処置なしですね。一〇〇%以上が百十一社。この調査が正しいとすると、一部上場五百五十四社のうちの五社に一社が処置なしである。もし仮に八〇%以上どうかということになりますと、ほとんど大半が八〇%以上。そうすると、来年三月に稼働率指数が九〇である、民間の操業度に直すと八一だとおっしゃいますが、仮に所期の効果を上げたとしても、一層倒産失業の危険をはらみながら年を越して三月に向かうのじゃないでしょうか。御判断いかがですか。
  34. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私はもうしばしば申し上げているのですが、今回の日本経済の受けた打撃というものは、そうなまやさしいものじゃない。これは安定点に達するには三年を必要とする。いまちょうどその半分なんですよ。半分道中です。それから、来年の三月になってやっと二年だと、こういう状態です。  ですから、今度世界が非常に変わってきた、その打撃を日本経済が受けた、その深手というものの認識ですね、これが非常に大事だと思うのです。あれは大したことはないんだ、一年で治るのだという認識をとった人に対しましては、今日の状態というものは非常に苦痛に私は響くと思うのです。しかし、これは三年かかる病気だ、健康体には三年待たなければならぬという認識をしておる企業に対しましては、三年たてばよくなるのだが、そこに向かって堅実にいま企業が動いておる、こういう認識を持ってくるだろうと、こういうふうに思うのでありまして、これはまあ、あんまり世界経済が激変をしたその中で、資源のないわが日本国がどういう立場にあるかということを深く認識し、そしてあの狂乱と言われるような状態を正常に戻すにはそう簡単にはいかないのだという認識をみんなに持ってもらいたい。そういう認識をお持ちになりますれば、私は、いま日本企業というものは前途が非常に明るく見えると思うのです。来年三月になれば八一までいくのだ、再来年になればこれは八五、望ましい水準までいくのだ、こういうふうな見方になるわけでありまして、私はその認識、そう甘くこの客観情勢を見るというところに問題がある、そういうふうな見解でございます。
  35. 栗林卓司

    栗林卓司君 先のことですから、余り悲観論、楽観論を言うのはいかがかと思いますので、一応これはこれでとめながら次にいきたいと思います。  ひとつ日銀総裁お尋ねをいたしたいと思うのですが、実は私が先ほど来お伺いしている気持ちというのは、物価に目が余りに行き過ぎて雇用問題を捨ててしまったのではないか。捨てたとは言わないまでも、それに対して余り注意を払わなかった。これが結果として経済を過度に冷却する羽目になってきたのではないかということで幾つかお伺いしてきたわけです。  日本銀行が去年の六月発行された調査月報を拝見しますと、そこの中で、日本経済の展望と課題に触れながら、こう書いておられるのです。引き締め政策がさらに長期であることが必要であろうと前置きをされながら、「企業収益の悪化や倒産の増加など多少の摩擦現象は生じようが、いまの産業界には、総体としてみればそれに耐える力があり、雇用面でも」「大きな不安が生じることは予想されない。」、こういう御判断が去年及びことしの全国銀行大会における日銀総裁あいさつの中身にも私はつながっているように拝見をしたわけですが、この「雇用面でも大きな不安が生じることは予想されない」という御判断は少し過ぎたのではなかったのでしょうか。お伺いする意味は、去年一年、通貨供給が非常に低位を続けてまいりました。人によっては、あれがことしに入ってからの過度の景気落ち込みの原因をなしたのではないかと言う人もいるわけですが、それとの見合いで、雇用問題を日銀として通貨供給を含めて金融政策を調節する場合にどのようにお考えであったか、ひとつお伺いしておきたいと思います。
  36. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 一昨年来の金融引き締めの強化は、これはもちろん狂乱物価に象徴されましたようなデマンドプル型の物価騰貴を何はともあれ鎮静しようということでとった措置でございまして、その結果不況が進行し、需要が減退し、在庫調整の実行のために減産が強化され、また雇用問題にも困難な場面が生じてきたのは事実でございます。これは私ども、物価雇用、両全を期したいところでございますが、何はともあれ物価を鎮静させることが日本経済の立て直しのために先決であると考えておったわけでございまして、その過程におきまして若干の摩擦現象はやむを得なかったかと存ずる次第でございます。  しかし、その景気の方も、二、三月を底にして、まあわずかではございますが微増に転じ、一時この三、四月ごろ、雇用問題につきましても、先ほど来御指摘の有効求人倍率の低下がやや下げどまったような感じで、小康を得た感じもいたしたのでございますが、その後さらに御指摘のように〇・五台に下がるというようなことがございまして、私どもやはりこれは雇用面の問題をもっと重視すべきであるというような政策配慮から、幸いにして物価の方も鎮静化傾向が定着しかかってまいりましたので、この辺で景気の着実なる回復を図る必要があるということで、政府における一次から始まりました不況対策に呼応いたしまして、公定歩合も引き下げつつ、窓口規制につきましても弾力化を図る等政策のウエートを景気対策の方に逐次移してまいったわけでございます。  その仕上げとも言うべきものが先月の第四次引き下げであったわけでございまして、私どもといたしましては、もちろん物価安定の大枠は崩すわけにはまいりませんですが、その枠内で逐次できるだけ景気の着実なる回復に資し得るよう政策の運営を図っておる次第でございまして、その裏にはやはり雇用問題についての重要性も考慮されておることを御理解いただきたいと存ずるわけでございます。
  37. 栗林卓司

    栗林卓司君 時間がなくなりましたので次に移りますが、雇用問題について、実はいま日銀総裁の御答弁も含めて、なるほど長いこと人手不足時代が続いてまいりましたから、その余勢を駆ってやっぱりこの次もという感じはわからないでもありませんけれども、事柄の深刻さというのは、物価よりも雇用の方が直接その人に行くわけです。その意味で、雇用問題についてもう少し真剣にお考えをいただきたいと要望しておきたいと思います。  次に、当面の不況対策の問題に入りながら伺いたいんですが、副総理にお伺いしたいのは、これまでの御答弁を伺いますと、最終需要のうちで、個人消費は人為的に刺激まではしたくない、民間設備投資景気回復の主要な役割りは求められない、したがって最終需要の喚起は主として財政活動にまつしかないという趣旨の御答弁でございました。この意味はどういうことなんですか。というのは、今回一兆六千億円の第四次不況対策をしながら三兆円の需要創出効果があるという御説明の中は、割って考えますと、個人消費設備投資もともどもに伸びてくれということが入っていると思うんですが、それと個人消費は人為的に刺激したくない、設備投資もちょっとあかんかもしらぬという御判断の間を、もう少しかみ砕いて御説明いただけますか。
  38. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私ども政府が考えておる経済のかじ取りのねらいを当面何に置くかといいますと、これは企業操業度の改善に置きたいと、こういうふうに考えておるのです。企業操業度の改善は一体どうやって実現するかというと、これは最終需要を喚起するほかはない。最終需要喚起政策をとるわけです。  最終需要というのは、これは申し上げるまでもございませんけれども、これは国民の消費、次いで設備投資、産業消費ですね。それからさらに政府需要、政府の消費です。それから海外への消費、つまり輸出であります。この四つの要因をそれぞれ選択しなきゃならぬわけでございますが、さあ設備投資は一体どうかというと、設備がいま余っておる、こういう状態で、特別に公害対策だとか安全投資でありますとか、あるいはボトルネック産業、そういうところでは投資の必要を感ずるでしょう。しかし、一般的にここで工場をさらにつくりましょうという活動は起こってこないですから、これに景気浮揚の主力、これを求めることは非常にむずかしいだろう。それから輸出はどうかというと、先ほど申し上げましたように、いまわが国の経済はとにかく三月からずっと上昇に移っているんですよ。プラス成長でございます、上半期の実績は。それから下半期を通じて見ましても、これは経済対策の効果もあり、とにかく二・二%成長ということになることが展望される。そういう中で世界じゅうがいま赤字でしょう。いま世界どの国をとりましても、成長の黒字になる国はないんです、これは。そういう中でありますので、これは輸出というものもそう大きく伸びることは、昨年のように四〇%伸びます、五〇%伸びますと、そんなようなことはとうてい考えられません。  そうすると、どうしても残るものは政府財政しかない。しかし、政府財政は大変困難な状態です。御承知のとおりでございます。しかし、政府財政以外にはこれは道はないというので、財政による最終需要の振起、そういうことを考えたわけでありますが、それが多少設備投資にも影響はあります、また個人消費にも多少の影響はありますが、主力は財政措置を中心にする。そうしてそういう影響なんかを総合いたしますと、大体三兆円の最終需要を起こす効果がある、こういう判断でございます。  いま個人消費の問題に触れられましたが、私は、個人消費というものは沈滞はしている、活発な状態じゃない。しかし、言われるように非常に落ち込んでいる状態でもまたないんです。経済の見通しでは一八%と、こう見たわけです。それがいま現実には一五%ぐらいになっているんです。いま、名目のことしの成長は一体どのくらいになるかというと一〇%ですよ。実質は二・二%。その中で個人消費が一五%ふえます、こういう状態は、決して個人消費の立場が日本経済の中で悪い状態であると、こういうふうには言えません。そういう中におきまして、この個人消費をここでまた減税だとか何とかというような手段を講じてひとつ伸ばそう、さあ景気刺激をするんです、物を使ってください、減税をします、そういうような考え方はとれないのじゃないか。  それからさらに、消費が活発でないという背景の中には私は貴重なものがあると思うんです。インフレに対する拒絶反応というものももちろんあります。それから将来の不安に備えるという貯蓄、そういうようなことの反射的現象としての消費の不振ということもある。しかし、非常に貴重なものがあるんですよ。あるのは、世の中が非常に変わってきたなあ、物を大事にしなけりゃならぬなあ、こういう動きもまた非常に顕著に出てきていると思うんです。その大事な動きというものは、これは本当に大事だと思うんです。これから世界が変わっていく、その中で資源小国であるわが日本がどうするかというと、やっぱり国民一人一人も、企業もそうです、政府もそうですが、国民一人一人もまた使い捨てというようなひらめきが頭の中にあるような、そういう生活態度では日本社会はもうやっていけない。  ですから、私はこの消費を健全にしようという動き、これを刺激するなんというのはとんでもないことで、むしろ大事に育てはぐくんでいかなけりゃならぬ、こういうふうに考えておりますので、その方式はとらないということを申し上げているんです。そこで、政府は苦しいけれども財政でいくと、こういう考えでございます。
  39. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまの御説明をお伺いした上で大蔵大臣にお尋ねをしたいんですが、その財政の再建問題。先ほどの質問とも実は絡んでのことなんですが、今回約四兆円の歳入欠陥が出ました。改定見通しですと、当初、これは名目で一五.九%が一〇%に落ちた。従来ですと租税弾性値などというごく大ざっぱな感じを持ちながら、大体一五・九から一〇%に落ちたらどれぐらい税収が減るかという目検をつけてみたりするわけですが、今回その目検をつけても一兆円そこそこだろう。上へ出ますけれども、とても四兆円という額にならない。今度の改定見通しを背景にして、どうして四兆円という巨額な歳入欠陥が出たのか、それを一遍見ておかないと、ではこの歳入欠陥から財政再建にどうやって持っていくかという話は私は出てこないと思いますので、その観点で内容をお伺いしたいと思います。
  40. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 確かに栗林委員御指摘のとおり、全体のGNPで申しますと、改定後でもプラス一〇%でございますから、普通の場合であれば、四十九年度に対して五十年度が若干であれ税収がふえるはずだという感じが出てまいろうかと思います。現実には、四月から九月までで、依然として対前年度実績に対しましては累計で九三%程度の税収になっております。その原因は、先ほどの御質問の中にもございましたが、これは法人収益の激減ということに求めざるを得ないと思います。逆に申しますと、補正後の税収見込みにおきましても、法人税、会社臨時特別税、それから申告所得税、なお特殊の要因としての関税、この四つを除きますと、他の税目はそれぞれ伸びてはいるわけでございます、対前年度税収に対しまして。ただ、伸び率が当初に見込んだほど伸びない。これは改定によって諸指標を見直した結果であるということでございます。  法人税の税収が前年度比で激減をいたしておりますその原因は、経済見通しの改定の中にございますように、鉱工業生産指数が当初見込みがプラスであったのに対して逆に減になる。それから民間設備投資が当初プラス一四であったのが逆にプラス五・四になる。これらを合わせまして、先ほどの御質問にもございました稼働率が落ちる。それによって所得率が落ちる。そういう作用を通じまして、ほかの税が伸び率が鈍りながら若干の増があるにもかかわらず、法人税としては絶対額で非常な減少を来した。それが今回の三兆八千七百九十億円の減収の最大の原因であろうかというふうに私は考えております。
  41. 栗林卓司

    栗林卓司君 余り細かい御説明は要らないんですが、その法人税が大きく落ち込んだ原因をもう少しわかりやすく簡単におっしゃっていただけますか。
  42. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 当初の積算との対比で申しあげるのがよろしかろうかと思いますが、法人税の税収の見込みは、生産、物価を相乗いたしまして、これに一応所得率を推定いたしまして積算いたしております。当初見込みでは、生産は前年比九九、物価は一一二、所得率九五と置きまして、税額を一〇五と見ておりました。これに対しまして補正の見込みでは、生産は八八、物価は一〇七、所得率は七五、税額で七一と、このように見ております。なお、ただいま申しました生産、物価それぞれは、企画庁が公表いたしております経済見通しとは時期的なずれがございますので、経済見通しにおける数字とは一致いたしません。
  43. 栗林卓司

    栗林卓司君 話が細かくなり過ぎているので簡単に申し上げますと「約四兆円の歳入不足が出たんですが、いただいた資料によりますと、四十九年度歳入不足が出たものですからやむを得ず数字として狂ってきてしまった分、したがって、今後の財政再建を考える場合には一応どけておいてもいい数字が約八千百四十億円、これは今後に持ち越しにならない、いわば予算編成上の問題として出てきちゃった歳入不足。逆の言い方をしますと、予算の水ぶくれ分。そのあと細かい数字を除きますと、約三兆円というのが、いまの説明にもありましたように、法人収益の大幅な落ち込みからきた法人税の大幅減。  私がこれをお伺いする理由は、これから財政再建をやっていく。来年は赤字公債またやむを得ないであろうという想定があるようですが、それはそれでこれからどうやって再建していくのか。片一方は、法人税は減収が今後どういったぐあいに解消していくのか、なかなか見通しが立たぬ。そこで副総理の、操業度を高めながら法人の収益性を高めて財政の再建もしていきたい、こういう話になると思う。ところが、財政の再建ということを考えますと、今回の落ち込みの主体というのは、企業収益の落ち込みからくる法人税減収なんです。財政を急速に再建していかないと、副総理がおっしゃるいわゆる財政主導型の景気浮揚もなかなかできない。そう考えますと、操業度を高めるためには最終需要は高めていかなきゃいかぬ。それはいつまでか時間はわからないけれども、いつの間にか、どんなに時間をかけてもいいということではなくて、片方で財政再建という課題があったら、相当早期に急いで最終需要を高め、操業度を高め、財政再建の基盤をつくることが必要なのではないか。そのときに、最終需要の大半をなす個人消費に対して先ほどの御説明で通っていていいのだろうか。思い切った減税を含む処置というのは、副総理の先ほどの財政主導の経済再建のためにも、日限を切って急ぐ必要があると思うが、そのためにも減税を含めて対策を講ずべきだと思いますが、いかがですか。
  44. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 話が減税の話になりましたので、先ほどの私の答弁をさらに補足しますが、私は個人消費を刺激しない、そういう政策はとるべきでないと、こういうふうに申し上げましたのは、先ほど申し上げましたように、健全な生活態度、これはここで育てはぐくんでいきたいということで先ほどこれは申し上げたところです。  第二に理由があるんです。一つは、いま財政のお話でございますが、多額の特例公債を発行する。また来年もそうせざるを得ないような形勢である。そういうときに、これが完全に消化されませんと、これは本当に皆さんから御心配のように、インフレの危険につながっているのですよ。その消化する手段というのは何だと言えば、これは国民の貯蓄から生まれ出るほかはないんですから、直接公債を買っていただくという方法もありまするけれども、大方はこれは金融機関を通ずるいわゆる引き受け消化、こういうことになるわけでありまして、貯蓄ということ、これは非常に重大な問題になってくる。そういう際に、そういう消費を奨励するかのごとき印象を与えては断じて相ならぬ、こういうふうに思います。  それからもう一つ問題があるんです。減税をする、それには財源が要るんです。一兆円の財源を使って減税をして幾ばくの消費刺激効果があるかというと、貯蓄に回らぬで、それが消費に全部回るにいたしましても一兆円です。しかし反面、一兆円の財源があれば、これを公共投資に使うということになれば、これが乗数効果を生んで、そして何倍かの効果を生ずる。私どもはそれを大体二倍というふうにかたく見ておりましたが、まあ倍数を掛けての効果があるのでありまして、いまこの局面で最終需要を振起するという考え方をとるときに、いかなる角度から考えましても、これは消費をここで刺激するという考え方にはならぬと、こういうことを補足して申し上げます。
  45. 栗林卓司

    栗林卓司君 問題は今後の経済見通しについての見解の分かれだと思いますから、一応ここで話をとめておきます。  次に、日銀総裁に金利の問題でお尋ねをしたいんですが、最初端的にお伺いしたいのは、従来、公定歩合は金利調節の重要な柱だと理解をしておったわけですが、今回、公定歩合の変動時期が、預貯金の金利が決まるまでずるずると引っ張られてきた。これは見ておりますと大変けげんな感じがするのですが、結局、公定歩合というのは金利調節機能の柱としての役割りをもう持たなくなってきたのか、その辺の御判断はいかがでございますか。
  46. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 公定歩合は依然として金利調整の柱であることには変わりがないと信じております。ただ、第四次の公定歩合の引き下げに際しましては、三次までの引き下げに際し預貯金金利をそのまま据え置いてまいりましたので、金利体系上ぎりぎりのところへまいっておったと思います。と申しますのは、三次までの引き下げの結果、短期の標準金利の利率が一年物定期の利率と同じところまでまいっておったわけでございまして、もしその預貯金金利をそのままにして、さらに公定歩合の引き下げに踏み切り、標準金利をさらに引き下げるということになりますと、一年物定期との間の関係が逆転をするということになる。逆転をするとどういうことになるかと申しますと、金融機関はそれだけ収益が圧迫され、その逆ざやを補うために量的な貸し出し競争に走るというようなことが、過去の経験に徴しても大変苦い経験として記憶に新たなわけでございますので、その辺はやはり逆ざやにならないようにすることが最小限度の限界、前提ではないか。  それともう一つは、三回にわたる公定歩合の引き下げに対する金融機関の貸出金利の低下の追随のテンポはわりあいに順調ではあったのでございますが、しかし、預金金利はそのままであるという条件のもとではそこにも限界がある。そこで景気の着実なる回復を一層促進いたしますために、金融機関の貸出金利をさらに一瞬低下させるためには預貯金金利を引き下げることが前提であるという判断を、これは八月の時点においていたしておったわけでございます。そこで、九月になりまして、その後の経済情勢をいろいろ勘案し、さらに一段と公定歩合の引き下げ、低下を図る必要があるという判断に達したのでございますが、それには預貯金金利の引き下げからまず手をつける必要があるということでございまして、それには、金融機関につきましては金利調整審議会、郵便貯金につきましては郵政審議会の議を経るという手続が必要なわけでございまして、それらの手続を終えるのに若干の時間がかかりましたところで公定歩合引き下げの最終的な判断をいたしたわけでございます。時間がかかりまして、あたかも公定歩合の引き下げ問題がたなざらしになるような感じを与えましたことは私どもも大変遺憾に存じておる次第でございまして、今後は預貯金金利の引き下げの問題につきまして、もっと手っ取り早く結論が出るようにいろいろと政府においてもお考えいただきたいとお願いをしておるところでございます。
  47. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまの問題、ちょっと基本的な点でお考えを伺いたいと思うのですが、去年、第五次の預金金利の引き上げがございました。そのときの経過を大蔵省の銀行局金融年報から拾ってみますと、一番大きな理由は貸出金利上昇への追随でございます。都銀が一・〇八〇%、これは一−八月で比べてですが、一・〇八〇%貸出金利が上がった。地銀が〇・九八五上がった。相互銀行が〇・八七一上がった。したがって、預金金利はほうっておけないから追随して上げるのだ。これが何で〇・五でとどまったのかという議論はこの際おきます。時期がよかったという議論もおきます。しかし、貸し出しに追随してという働きは本来健全な気もいたします。その意味で、今回の預金金利も、本当は貸出金利が下がってくるに従って、どうしても経営上しようがないなら下げればよろしいのだ。貸出金利追随が基本型だと思いますが、この点について御意見をいただきたいと思います。
  48. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 預貯金金利が自由化されておりますような状態のもとにおきましては、貸出金利が下がるに応じて、金融機関としても預貯金金利を引き下げざるを得ないわけでございまして、理想としては、私も預貯金金利を含めまして金利の自由化がもう一層徹底することが望ましいと存ずる次第でございますが、現在の日本の金融機構と申しましょうか、のもとにおきましては、なかなか預貯金金利、特に預貯金金利の自由化を即時実行することが困難な事情が多々あるわけでございます。御承知のように、金融機関にはいろいろございまして、その経営能力には大変な格差があるわけでございまして、もし預貯金金利を完全に自由化いたしますと、そこにいわゆる弱肉強食の現象が起こりまして、中小金融機関は大変な苦境に立つ。それらの中小金融機関は中小企業金融の担い手でございまして、その面からも大変な問題が起こってくるわけでございます。そこで、現在の段階におきましては、どうしても預貯金金利を自由化するわけにはいかないわけでございます。  金利調整法の仕組みによりますと、大蔵大臣が預貯金金利の引き下げ方について政策委員会に命令があり、政策委員会では金利調整審議会を開いて、どのぐらい変更したらいいかということを審議する。それによって決まったところを大蔵大臣が告示をされ、そうしてまた、私の方もその告示の最高限のもとでガイドラインを設定するというようなことをいたしておるわけでございますが、そういう仕組みは、現在の情勢のもとにおいてはまだ必要だと思っております。しかし、その現在の仕組みの中におきましても、できるだけ金利を機動的に動かすということは必要でございまして、その点につきましては今後とも努力をしてまいらなければならないと思っておる次第であります。
  49. 栗林卓司

    栗林卓司君 いま総裁のお答えのように、預金金利の場合、臨時金利調整法で大蔵大臣の権限のもとで命令があり、告示があって、最高一%の引き下げ限度を今度決めたわけですが、そこで、これは見方によりますと、大蔵大臣が政府を代表して、どのぐらいの金利水準がよろしいかということにかかずらわりながら決めておいでになるわけですから、おっしゃるように、自由化ではなくて一種の統制価格ラインに近い。これがいろいろ金融機関の中の内部事情で、どうしても今回一%下げないと貸出金利を下げることができないということになると、その間の事情は、大蔵大臣として、国民に向けて納得のいくような御説明をする必要というものが出てまいりませんでしょうか。一%下げることはどうしても必要なんだということは、大蔵大臣も御納得の上で、今回の臨時金利調整法に基づく告示をされたと思う。なぜそれが本当に一%なのか。この予算委員会でも多々議論がございました。なぜ議論があるかというと、よく中身がわからない。通常の公共料金だったら、かくかくの次第によってこうでございますという資料を添えての議論になるわけですが、この預金金利についても同様の、臨時金利調整法は政府、大蔵大臣の権限のもとに金利を上げ下げするわけですから、当然同じような対処をするのが筋道だと思いますが、いかがですか。
  50. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 金利の議論は、物価が上がっておるにかかわらず預貯金金利を下げるというようなことは目減り現象を起こしていけないじゃないかという議論が主たる論点になっておるようでございます。その論点も理解できないことはございませんけれども、金利問題というのは本来、資金の需給関係、金融の実勢から出てくるものでございまして、物価政策上の観点から、金利政策というのはそういう観点からだけ割り出すべきものではないと思うのでございます。したがって、日本銀行の政策委員会に発議を私から申しまして御検討を願う。で、審議会が開かれまして、各方面の意見が調整されて一つの答申を得るという姿になっておるので、その場合の考慮すべき事項は、ひとり物価政策上の観点ばかりでなく、経済全体の運営の観点からしかじかの金利がこの際妥当ではなかろうかということで、それで最高金利というものを決めて、日本銀行の方でそれに基づいてガイドラインを設定する、各銀行はそういうラインで個々の取引をやってまいるということになっておるわけでございまして、先ほど総裁からも言われましたように、今日の仕組みとしてはそういう仕組みが実際的でもあり、また、やむを得ない手続きではないかと考えております。
  51. 栗林卓司

    栗林卓司君 臨時金利調整法は最高限を決めるわけです。いま大蔵大臣が言われたガイドラインというのは、臨時金利調整法の精神から言うと下は自由なんですが、その中について、日本銀行がまた細かく、一年物は幾ら、二年物は幾らというガイドラインを決めているという御説明なんですが、このガイドラインというのは、大蔵省として中身についても承認されて出ていくのですか。この性格はどういうものだと大蔵省としては御判断になっておるんですか。
  52. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 定期預金につきまして、預金の期間別に日本銀行政策委員会がガイドラインを別途決定して公表されておるわけでございますが、これは権限の上と申しますか、所掌の上から申しますと、日本銀行政策委員会が決めておることでございます。しかし、大蔵省はどうなのかと聞かれますれば、われわれとしても相談にあずかって、まあその辺が妥当であると、こう判断をしておるわけでございます。
  53. 栗林卓司

    栗林卓司君 日銀総裁お尋ねをいたしたいんですが、これも何もきょうの議論ではないわけですが、ひとつきちんとさしておきたいのでお伺いするわけですが、この日銀のガイドラインというのは、私が理解する限りでは、日銀法の権限には入っていないと思うんですが、どういう根拠で——事実上このガイドラインが決まりますと、いまの大蔵省のお話のように、これを尊重しなさいという大蔵省通達も出ているわけですから、実施期日を含めてそのとおりになるわけです。そういったものをお決めになる法的な根拠というのはどういうことだったのでございましょうか。
  54. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 告示で最高限度が決まりまして、その中で、預金の種類別にどういうふうにするかということを決めますのがガイドラインでございます。これは文字どおりガイドラインでございまして、政策委員会として各金融機関を指導するという意味においてのガイドラインでございます。政策委員会といたしましては、そのような権限を政策委員会の権限として行使しておるということでございます。
  55. 栗林卓司

    栗林卓司君 ここで公取委員長お尋ねをしたいのですが、金融業というのは独占禁止法の範囲外ではない、中に入っておる。日本銀行は適用除外団体ではございません。それが、もともと臨時金利調整法というのは、御承知のように昭和二十二年に独占禁止法ができまして、それまでは預金金利は業者間協定でやっておったわけですが、独占禁止法違反のおそれが強いというので臨時に臨時金利調整法をつくったといういきさつがございます。その後、途中で、最高限だけ決めて中は自由なんだというたてまえが、いまのお話しのガイドラインということで事実上失われてきた。これは特定の明確な法律に基づいてのガイドラインではないということは、いま日銀総裁の御返答にございました。しかし、これは先ほど大蔵当局のお話のように、大蔵省の権限をもって事実通達も出ているわけですが、従いなさいよとなっているわけですから、施行期日も含めてこれは従うことになります。この一連の姿というのを公取としてどう見たらいいんだろうかということが一つ。  これは臨時金利調整法の規制外の分野ですが、あわせてお伺いしたいのですが、十月二十八日の報道ですと、長期貸付金利の改定について、二十七日、大蔵省、日本銀行、金融界、証券界は、プライムレートを来月一日から年〇・五%引き下げる等につき基本的合意に達した。事実関係について大きな違いはないと思う。しかし、これもまた本来は自由な競争原理の中で決めるというのが筋道だと思うのです。なぜこうなったかという実際上の理由はおきまして、あらわれている姿というのは、公取委員長としてどう御判断になるか、伺いたいと思います。
  56. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 最初にお尋ねになりました預金金利に関する日本銀行のガイドライン、つまり法定せざる部分についてのガイドラインでございます。これは形の上から言えば、確かに明白な根拠のない行政指導でありますから、形式的に言いますと私どもの方の独禁法に触れるおそれもあるわけです。ところが、私振り返ってみましたら、四十五年、これは私はおりませんが、その当時に、四十五年三月です、主として大蔵省から公正取引委員会に、こういうふうにしたいのだがどうかという相談がありまして、そして現在の制度を認めておるのですね。公正取引委員会が、いわば正式にというのですか、承諾した、これは了解するというふうなことを伝えておるわけです。そういうことでありますから、公正取引委員会の側から言いますといまさら独禁法違反だとは言いませんけれども、他の場合においてはカルテルに見られるようなものはいかぬというのが私の方の基本的態度でございます。  そうしますと、確かにその部分について、いまだにおかしいじゃないかという考えはあります。しかしながら、なぜそういうことを大蔵省が当時持ち出してこられたかと言いますと、一言に言いますと、金利の自由化、弾力化を目ざすワンステップであるということだったわけです。ところがその後、四十五年から五年間経過しましたが、預金金利についての自由化は全然行われておりません。その間の経済の変動は激しく、金利にも、公定歩合は最高と最低をとらえると二倍以上違う、こういう波乱動乱の時期でございましたので、そういう問題に手をつけることができなかったというのが釈明でございますが、これからの問題を考えましても、私は日本の金融界の占める大きなウエートから考えまして、先ほど日銀総裁がおっしゃいましたとおり、金利の自由化ということは全般的にうかつにはできない仕事である。これは必ず弱肉強食という結果になりますから、そういう乱暴なことはちょっと手がつけられない。外国でじゃ全部金利を公定しているかというと、必ずしもそうでないようであります。しかし、非常に細かい工夫がこらされている。つまり、預金の奪い合いで弱い金融機関が倒産するというようなことがないような配慮がなされた上での自由化であるというふうに聞いておりますが、それが日本の場合にそのまま採用できるかどうかということは、今後の重大な研究課題だと思います。  確かに市中の情勢によって金利が定まり、それによって金融が自然に緩和したところへ公定歩合が下がってくるという方が望ましいかもしれません。日本は公定歩合がむしろ主導型でございます。公定歩合を下げることによって市中金利を下げていこう、それには預金金利が高いままでは下げられないということもあるわけです。それは先ほど総裁がおっしゃったとおりでございます。  また、長期の問題は、〇・五%を一律に下げようじゃないかという話し合い、これは私は日本の社債市場が、国債市場を含めまして、はなはだもって未熟な状態にあるということは争えない。実際に発行レートを、発行条件を決めるのはだれかというと、大きな証券会社、アンダーライターになっている証券会社と一部の有力関係銀行でございます。そこへ大蔵省もそれは口を出すでしょうが、決まり方が、いわゆる社債市場が本当の意味で動いていませんから、信頼すべき市中金利というのは出てないわけです。しかし、こういうふうに金利が下がったときに、実際の売買価格上から見ますと、市中金利は若干上がりぎみなんです。上がっているというような状態で下げなきゃならぬということになりますと、新規発行のレートを高いレートで出すかということについてはやっぱりかなり問題があるように思いますので、はなはだ変則的でありますけれども、ぜひこれは社債市場を本格的な意味でつくり上げていくという努力を重ねていって、その結果、自然に発行条件が定まってくる。外国ではそうなっております。自然の市場の条件によって新しいものはどんどん条件が変わっていく。これが本来のあり方だと思いますが、いまはある程度やむを得ないのじゃないかという感じでおります。  なお、先ほどのガイドラインにつきましても、本来ならば、いま自由化の見込みがないのならば、すべて疑いなく臨時金利調整法にあっても結局同じではないか。望むらくはその方にしていただきたいんだが、それは自由化を早期におやりになるという決意がおありならばまた格別でございます。独禁法の立場からは、法定主義によらざるを得ないのじゃないかというふうな希望を持っておりますが、先にその承諾を与えてしまっているといういきさつも考慮しなきゃなりませんので、明快なる答弁になりません。申しわけございません。
  57. 栗林卓司

    栗林卓司君 先に承諾を与えてしまっているというお話ですが、伺ったところでは、本当に当分の間ですよというただし書きがついていたそうです。重ねてお尋ねはいたしませんが、物事の姿というのは、ほかの公取委員会が問題にされている分野と全く同じなんですから、なぜこれだけが特別かということになれば、逆に言うと、もしおっしゃるとおりだとすれば、金融機関の持つ社会的責任はきわめて大きいと言わざるを得ないと思うんですが、ただ、私がお伺いした意味は、競争原理が働いていると預金金利を一%下げなきゃいかぬということも何となくわかる。そうじゃないと、一々何だと聞かなきゃいかぬ。  しかも、現実に下げてみてどうかというと、これは日銀総裁お尋ねをしますが、預金担保貸し付け急増という記事が出ております。内容を御存じだと思います。銀行が大企業にお金を貸して、それを損金に振り込んで、あんた、前の高い金利でいいからというかっこうの取引を盛大にやっているので、大蔵、日銀当局が目を光らしている。これをやって得をするのは大体一千万円を超える大口の預金者である。こういうことが横行するというのは、下げなくたって貸出金利が下げられるという意味でもあるわけです。  それやこれやを考えますと、公取委員長にお願いをしておきたいのは、当分の間ですよということでたしかお受けになったはずですから、その点を含めて今後よろしくごらんいただきたいと思います。  私が次にお伺いしたいのは、とにかくいろんな問題がありながら一%下げた。一%下げた意味は、日銀総裁のお言葉を借りますと、昨今の状況の中で企業の資金コストを何とか低くしたい、仮にたとえば目検で、貸出金全部で残高が百兆円とすると、一%下がれば一兆円下がるかもしらぬという話を日銀の記者会見でおっしゃったという話を新岡で拝見しました。それでいくとしたら、高度の金融機関の社会的責任からいって、目をつぶって全部一%下げないと形が悪いはずだと思いますが、長期金利が何で〇・五にとどまったのですか。お伺いする意味は、長期金利というのはなるほど利付金融債との関係がありますから、債券市場の問題があってなかなか容易にいかぬ。これはわかりますが、市中銀行の場合には一%下がった安いコストの預金に対して都市銀行もまた長期ローンで借しているわけです。また、利付金融債を含めて運用しているわけです。一%下げなきゃいかぬと言っているのは、結局は銀行の経営を、程度は別にして、改善したことになりませんか。この皮肉な姿についてどうお考えになりますか。
  58. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 預金金利の変更あるいは貸出金利の変更は、それぞれの契約に期限がございますので、その影響がフルに出てまいりますのには若干の時間のかかることは御承知のとおりでございます。先ほど御指摘がございましたように、昨年の九月に預金金利を引き上げました影響がいまだに出つつあるわけでございまして、一方、この四月から貸出金利を下げましたことの影響も逐次出つつあるわけでございますが、その影響が完全に出切ると申しますか、出てしまうのは、恐らく来年じゃないかと思っておるわけでございます。その間、金融機関の利ざやは縮小し、利益は減少しつつあったというのが四次引き下げ前の状態であったわけでございます。  そこへ四次の引き下げを実行いたしましたのは、もっともっと金利の低下を促進をはかりたいという趣旨によるものでございまして、どのぐらい資金コストが金融機関全体として下がるか、その辺の計算はなかなか簡単ではございません。と申しますのは、金融機関によりまして預金の種類別構成が違いますし、それから貸出金の構成も違います。長短の割合とかいろんなことがございます。さらにはまた、他の運用物件の利回りがどうなるか、ベースアップその他の人件費、その他経費万端がどういうふうに推移するかということによってさまざまな影響があるわけでございますけれども、きわめて大胆な憶測をいたしますと、都市銀行につきましては、今度の預金金利引き下げの結果、預金金利の支払いが減少いたしますのは大体〇・七%ぐらいだと考えております。他方、公定歩合の引き下げに伴う長短金利の引き下げの追随の幅は、これは時間はかかりますけれども、大体〇・六から七ぐらいのところに落ちついているのが過去の実例でございますので、今度の場合も、第四次を含めまして、金融機関が鋭意貸出金利の引き下げに追随していくことによって、〇・七だけ資金コストが下がりました分は食われていく、そういうことを期待しておるわけでございまして、利益をただいたずらに蓄積するだけじゃなくて、その利益がもし出るようでございますれば、さらにさらにもっと金利を引き下げるように努力をしていただきたい。私どもといたしましても、そのような指導を今後続けてまいりたいと思っておる次第でございます。
  59. 栗林卓司

    栗林卓司君 大変くどくて恐縮ですが、重ねて確認の意味で伺うんですが、過去は問いません、いろいろ経緯があって金利をやってまいりましたから。ただ、金融機関の場合には特別扱いをしなければならない社会的影響力が多いから、なかなか競争原理というわけにいかぬ。競争原理が働いていればこんなことお伺いしなくて済むんです。それを人為的に長期金利も含めていじっていかなければいかぬから無理が出るという中の話なんですから、過去は問わず、一応一%預金金利が下がった。預金構成がありますから、加重平均をすれば〇・七、そんなことなんでしょう。だったら長期も含めて全部〇・七下げて、がたぴししても一番わかりやすい形にするのが金融機関の義務ではございませんか。しない限りは、なるほどそれぞれによって効いてくる時期の差はありましょうが、平たく言えば銀行の経営内容改善に協力した、そう言わざるを得ないではないですか、ということが一つ。  それから、今後とも下げてまいりますと。これをたとえば債券市場を含めて申し上げますが、下がる条件が本当にございますか。国債が出てまいります。一般金融機関が引き受けるということになりますと、その調査資金のためにまた債券を売却しなけりゃいかぬ。下げる条件がありますか。あるとしたら、そのときにどういう資金供給をなさいますか。含めて伺います。
  60. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) まず前段でございますが、金融機関の短期金利につきましては、標準金利、並手金利、いずれも公定歩合にそのままスライドいたしまして下がっておるわけでございます。これは私ども金融機関に対して協力方を要請し、各金融機関が自主的に余り時間を置かないで下げておるというのが実情でございます。それから長期金利につきましては、日本銀行は何らの介入をいたしておりません。長期金利の需給ないしは一般金利水準の低下促進への努力は要請しておりますが、そういう背景のもとに各金融機関が自主的に下げておるわけでございまして、それが今度の場合は長期プライム〇・五ということに落ちついたわけでございます。それで長短合わせまして貸し出し約定金利全体としてどのぐらい下がるかということを私どもはにらんでおるわけでございまして、過去の実例によりますと、公定歩合が一%下がりました場合には、約六カ月ぐらいの期間はかかりますけれども、〇・六ないし七ぐらいを追随して下げておるのが都市銀行の実例でございます。地方銀行その他それぞれ事情がございまして、必ずしも追随率は同じではございませんが、都市銀行の場合には六、七カ月の期間の後に〇・六ないし〇・七追随しておるわけでございますので、今度の場合にもその程度はぜひとも追随して下がるようにということを協力を要請したいと思っておりますし、もし、さらに余裕があるようでございますれば、その限度を超えても下がるようにという努力を金融機関にお願いをしたいと思っておる次第でございます。  次に、第二点の長期金利のうち、債券等の金利についての見通しでございますが、これまた起債市場における資金の供給者と需要者との需給のバランスというようないわゆる市場の実勢を無視するわけにはまいりませんけれども、コールレートが資金過剰期に際しまして格段に下がってまいっておりますし、金融市場全体として余剰ぎみに推移しておる現状でございますので、今般すでに引き下げ方の決定したものもございますが、先々さらに低下が促進されるような市場環境を私どもとしても維持したいと思っております。細かいことでは、たとえば流通市場のあり方をどうしたらいいかとか、あるいは公社債流通金融をどうしたらいいかとか、あるいは流通市場に対する集中度をもっと高めた方がいいんじゃないかとか、いろんな問題がございますが、それらの施策と相まち、そして根本は市場実勢に応じた発行条件を維持するというようなことで起債市場全体を健全に維持していくということがこの際大変重要なことじゃないかと思っております。
  61. 栗林卓司

    栗林卓司君 重ねて恐縮ですが、そういう起債市場を健全に運営していくことも含めまして、今回の膨大な国債、地方債の発行、あわせて資金供給としてはどれくらいの伸びになると見ておいでになりますか。
  62. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 結局、マネーサプライがどのぐらい増加するかという問題になろうかと思います。  昨年の十月の対前年同期比一〇・七でしたかがマネーサプライの底でございましたのが、ことしになりましてだんだん増加してまいりまして、昨今が一三%ぐらいのところまできております。これは企業の手元流動性が引き締め当時からだんだんに改善されておることの反映でもあろうかと思いまして、そういった漸増傾向は今後も続くのではあるまいかと思っております。そこへもってきて公債の発行、国債の発行が加わる。国債の発行は、マネーフローの問題としては資金循環の中で吸収されると思いますけれども、やはりこのマネーサプライには増加の影響を持つわけでございますが、その増加の程度がどのぐらいかという問題になりますと、これは市中金融機関の貸し出し態度いかんということにかかってくるわけでございます。  その点、目下の情勢では産業資金の需要がそんなに強いわけではございませんので、私はそんなに急激に伸びるというようなことにはならないで済むのではないか。また着手の伸びは、企業の手元流動性の回復ということからやむを得ないのじゃないかと思っておるわけでございますが、しかし、先々景気が上昇傾向に転じて民間の産業資金の需要も起こってまいりましたようなときに、国債発行によってさらにこのマネーサプライが増加し、それが信用創造につながるということになりますといろんな問題が出てくるわけでございますので、私どもといたしましては、具体的な数字はなかなかむずかしくて申し上げられませんが、マネーサプライの動向には今後とも慎重な注意を払っていきたい。もちろんマネーサプライだけではございません。それと物価との関係、景気との関係、その辺の要素を慎重に見比べながら、マネーサプライが過大に陥るようなことがないようにという点についての配慮だけは持ち続けなければならぬと思っておる次第でございます。
  63. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまから軽々にマネーサプライの伸び率の想像ができないというお話はわかる気がしますが、日銀総裁にこれは念のために確認でお伺いするんですが、国債、地方債が市中消化されたとしても、金融機関が引き受けた場合にはマネーサプライの増加につながるわけです。ですから、今回国債、地方債合わせて五兆円近い、あるいは資金運用部から二兆円近くが日銀売却ということも、その現象だけをとらえてみれば事実上国債発行に近い役割りを果たす。こうしたものがマネーサプライに大きな伸び率として影響を与えないはずはないと思いますが、具体的な数字は無理としても、傾向の見通しはいかがですか。
  64. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 個人が引き受けました場合には、これはマネーサプライには関係ございません。金融機関が引き受けました場合には、引き受けの時点ではマネーサプライには影響がないわけでございますが、それが政府の支出となって、だれかの預金となって金融機関に集まってまいりますと、そこで若干それだけのマネーサプライの増加になるわけでございます。それがさらに信用創造等を引き起こし、というようなことになっていくわけでございますが、いまのこの金融情勢のもとにおきましては、その程度は非常に急激に大幅に増加するというようなものではないのではないかという予測を立てております。
  65. 栗林卓司

    栗林卓司君 数字の裏づけのない御答弁なんで、よくわかりかねますが、私は数字は無理としても、傾向として上がっていくか。下がるわけはないんですが、動向ということをお伺いしたんです。  お伺いする意味をもう少し申し上げます。これは七月の日銀の調査月報を見ますと、こういう趣旨のことが書いてあります。長いですから要約して言いますが、これまでの日本の経験によると、マネーサプライ、資金供給ですが、これのM2残高が変動すると物価もまた同じ方向に変動する、これが経験則として確かめられているということがあります。で、市中消化かどうかということが議論されますが、地方債はまあほとんどですし、国債の場合も九割が金融機関であるということになりますと、いまの御説明のように、仮に市中消化の原則を守ったとしてもマネーサプライは増加傾向になる。これが従来の経験則として日本銀行が御確認されているように、今後、来年以降の物価にどういう影響を及ぼすか。少なくも中立ではないと思いますが、いかがですか。
  66. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 国債の発行はマネーサプライが増加する傾向の一つの要因であるということはお説のとおりだと存じます。したがいまして、私どもマネーサプライの動向に慎重に注意していかなければならぬと思っておるわけでございます。  それからマネーサプライと物価との関係でございますが、実体経済とマネーサプライとの動きが非常に安定的に動いておるということにつきましては、まだ確証を得ておりません。その辺は断定を下すのにはまだ時期尚早であろうかと存じます。そしてまた、物価が上がったからマネーサプライがふえるのか、あるいはマネーサプライの増加が物価騰貴を招くのか、その辺はなかなか簡単には割り切れないのでございますが、しかし過去の四十六、七年の例を見ますと、マネーサプライの増加が物価騰貴に無関係であったとは思っておりません。
  67. 栗林卓司

    栗林卓司君 公取委員長、結構でございます。  重ねて日銀総裁にお伺いをしながら、最後に総理にこの項の最後の質問としてお尋ねをいたしますが、総裁のごあいさつを伺っておりますと、なかなか金融調節がむずかしい、物価対策をどうするかということで、今日の大変管理価格的な傾向を考えると、過度に金融を緩めると——この過度というのは程度問題ですが、緩めると、それがコストインフレを誘発しながら物価の上昇を招くのではないかという御懸念が総裁のごあいさつの中にありました。まことにごもっともだと思います。その意味で、これからのマネーサプライの増加が物価に対してどうかということはむずかしい議論であるとしても、少なくも中立ではないわけですから、競争政策があるかないかということは、日銀の金融調節を進めるに当たって大変重要なファクターではないか。この点についての御意見を伺いたいのが一つ。  総理に伺いたいのは、独占禁止法の改正案は次期通常国会と言われておりますが、この複雑微妙な経済の中で間に合うのでございますか。その点二つだけ。
  68. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 私どもの立場から申しましても、自由なる経済競争が、量的にも質的にも日本経済の発展を図っていく上において大変大切なことであると考えております。
  69. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) しばしば申し上げますように、この臨時国会は問題をしぼったですから、独禁法というものは通常国会の議題にしたい。通常国会を目途として自民党でいま調整をしておるわけで、通常国会を目標にしておることは変わりはございません。
  70. 栗林卓司

    栗林卓司君 これは冒頭お尋ねした雇用問題と全く同じなんです。いつ独禁法を出すかという党内の話とか、それから経済政策で何を選択するかということと無関係に経済は動いていくんですから、注意深く見ていただかないと困りますよ。そのことでいまお尋ねをしたんですから、午前中の時間が時間ですから、あとは午後に譲りますが、先ほどの雇用問題と独占禁止法というのは全く同じなんです。三木さんの思うように経済が動いていくわけではないんです。ですから、一体どうなっているのか、一体何に注意しなければいけないのか。先ほど来日銀にお伺いをしているのは、今回五兆円もの国債、地方債を出す、あるいは二兆円もの資金運用部からの国債の売却をする、これが物価に中立的であるわけはないわけですから、その影響がいつ出てくるのかを見ながら、ではわれわれはそのときにどのような競争強化政策を持っていたらいいかということは、わが国会が国会法によっていつ通常国会を持つかということとは無関係な問題なんですから、十分その点は御理解いただきたいと思います。
  71. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そういう経済情勢なども踏まえて、自民党でいま検討を加えておるさなかでございます。
  72. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 午後零時五十五分まで休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      —————・—————    午後零時五十九分開会
  73. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  理事の辞任及び補欠選任についてお諮りいたします。  岩間正男君から、都合により理事を辞任いたしたいとの申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  補欠選任につきましては、先例により、の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事に渡辺武君を指名いたします。     —————————————
  76. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 午前に引き続き、栗林君の質疑を行います。栗林君。
  77. 栗林卓司

    栗林卓司君 大変困難な財政の見通しあるいは経済の先行きに対する不安感ということで、これから福祉政策がどのような内容で進んでいくのか、国民の不安も幾多あろうかと思いますので、幾つかの点を選びながら関係大臣の御所見を伺いたいと思います。  最初に、労働大臣にお尋ねをいたしますが、午前の質疑でも申し上げてまいりました中周年雇用問題について、事の深刻さを改めて申し上げるまでもないと思いますが、単に一般的な雇用問題というだけではなくて、核家族化の問題あるいは地域社会の防衛機能の低下等ということが言われております。そういった中で中高年雇用問題にどう対処なさるのか、お伺いしたいと思います。
  78. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 景気の停滞の中で一番滞留をしているのは、実は中高年齢者の方々の問題でございます。いまから日本は高年齢社会になりますから、なおさらこういうきっかけによく対策を練って考えていかなきゃならぬと思いますが、ことに敗戦後のいままでの日本経済活動をされた方々でございますし、バイタリティーもありますから、なおさら私たちは最重要施策の一つとしてやらなきゃならぬと、こう考えておりまして、人材銀行等々を活用し、あるいはまた雇用対策法に基らく職業転換給付金とかいろんな施策の中に、しかも四十八年度からやっております雇用対策基本計画をこの際に見直して、午前中にお話のありましたように、総理、副総理からもお話がありましたが、内閣全体として労働問題に対し、雇用問題に対して考えていく。その中において、ことに中高年層の問題については万全の対策を立てつつこれに邁進したいと、こういう感じであります。
  79. 栗林卓司

    栗林卓司君 定年の問題についてどのようにお考えでございますか。
  80. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 総理のライフサイクルの中にもいろいろ論ぜられておりますけれども、やはり年金と将来は定年が続くようなかっこうで、私は、定年延長を従来も労働省はいろいろ助成などをやっておりましたが、こういうときにそれぞれの組合あるいはそれぞれの企業がぜひともひとつ前向きにやってもらいたいということで、いままでやった以上に民間かれこれには強力に推進してまいりたいと、こう思っております。
  81. 向井長年

    ○向井長年君 関連。  午前中に栗林議員から、財政問題、経済問題の中で雇用問題について取り上げて質問をいたしました。そういう中で、特に政府狂乱物価を抑えるためになりふり構わずにあらゆる措置をとってきたと思うんです。これは総理、認めなけりゃならぬと思いますよ。幾らどう言おうと、こういう不況状態があらわれるということもこれは予想したかもしらぬけれども、あるいはまた失業者の増大、倒産、破産、こういう問題が出てくることはこれはもう当然経済の仕組みになっておるのだから、これは認めなけりゃならぬと思います。そういう中で、特に雇用問題について午前中、栗林君からいろいろと政府に愚見をただしましたけれども、これは十分な回答はございません。  特に私は、いま中高年層の雇用問題を取り上げておりますけれども、本年度の学卒といいますか、こういう諸君の雇用についても、本年度の施政方針の中でわが党の議員が質問をいたしましたところが、総理も先ほど言われましたし、長谷川労働大臣も、皆さんは大企業中心に物を考えておるけれども、いまや中小企業は手を受けて待っておるではないかと、こういうことを言われているのですよ。議事録に明確に出ておりますよ。中小企業で学卒をいま採用する状態にあるのかどうか、あるとするならばどういう企業にあるか、あればひとつ明確にしていただきたい。われわれ、恐らく与野党を含めた議員も、この不況の中で就職問題のいろんな依頼がたくさんあると思います。しかし、どこもほとんど制限をしつつある。しかも中小企業ごときは大学出なんかはほとんどとらない。にもかかわらず、労働大臣は、いや中小企業は手を受けて待っておるではないか、なぜそちらへ行かないかと、こういう発言が本会議でされておるんですよ。どこにそんなのがあるのですか、それを聞かしていただきたい。総理も先ほど午前中の答弁の中でそういうような意味のことを言われた。事実上いま雇用問題は深刻な問題となってあらわれている。中高年齢層だけではないのでありまして、この全般について、ただこの予算委員会で若干こういう答弁すればいいだろうということではいかぬと思うんだ。経済全般の仕組みの中からこういう問題をいかに処理するかということをひとつ明確にしていただきたいと思います。
  82. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 大学卒業生の問題はまさに大事なことでございます。従来の高度経済成長の時代は、大学から直ちに企業あるいは事業所の方に書類が行き、またそして採用された時代でございますが、こういう時代になりましてから、労働省も何とかこういうむずかしい時代であるからと思いまして、十一月に入社試験の日にちを延ばしてみたり、さらにはまた一つ一つの中小企業者と、名前はいざ知らず、私が会った若干の中には、自分の方にも大学の卒業生がほしいと、こういうところもあるわけであります。しかも、私は考えますと、昭和六十年には高等学校の卒業生と大学の卒業生の数が同じになる、低経済成長の時代に従来のようなわけにいかぬから、やっぱりそれぞれの分野を開拓してもらう、こういうふうなことを実は学生諸君にも言うているわけでありまして、大企業がおしなべて二割、三割のカットをしている事態もありますが、一方において中小企業で待っているという実情もありますので、そういうところにひとつ分野を開拓してやってもらいたいと、こういうことでございます。
  83. 向井長年

    ○向井長年君 関連でございますから多くは述べませんが、どういう産業にその中小企業が手を受けて待っておるところがあるんですか。これは明確にここで言いなさい、労働省。具体的にどういう産業であるか、そしてまた人員はどれくらいこれは要求しておるか、こういう問題、明確に資料をもってやりなさいよ。
  84. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) お答えいたします。  来年三月卒業の新卒者の就職は大変厳しい情勢ではございますが、中卒につきましては、御承知のように、ことしの十月現在で五倍の求人がございます。それから高卒につきましては、五十数万の就職希望者に対しまして十月一日現在で二・〇七倍の求人がございます。大学卒につきましては、確かに先生お話しのように、昨年までとは全く違ったような情勢でございますが、私どもの方で第一部、第二部上場の百五十社を抽出いたしまして調査いたしました結果、いわゆる大企業では大体四割程度の求人減になっております。ただ、この場合大企業と申し上げますのは、いわゆる資本金一億円以上、従業員三百人以上という意味ではございませんで、まあ言ってみれば超大企業といいますか、そういった分野につきましては確かに求人が大幅に減っておりますけれども、全体としまして大学側が受けております求人は二・一倍程度ございます。それはいわゆる中小企業だけではございませんで、いわゆる大企業に分類されますいわゆる中堅企業、こういったところで、いままでの大学卒業生には就職分野として見向きもされなかったようなそういう企業で、ぜひ大学卒を採りたいと、こういった求人が相当ございます。したがいまして、いままでのようないわゆる一流の超大企業だけでなくて、そういった中堅の大企業あるいはそれ以下の中小企業、こういったところに学生が目を向けてくれれば就職の場は十分確保できる、こういうことでございますので、これは大学側の求人の状況、それから企業側の求人状況からいたしまして、具体的にどこの分野、どこの産業、どこの企業とおっしゃられましても、それはここでいまお答えすることはできませんけれども、私どもの調査の結果ではそういう状況でございますので、非常にむずかしい情勢ではございますけれども何とか就職の場は確保できるんじゃないかと、かように考えているわけでございます。
  85. 栗林卓司

    栗林卓司君 関連するわけですが、先ほどの質問に戻って、定年について延長奨励制度が一昨年来発足をしておるという話でした。五十五歳定年が現在全体の五二%ですからまだまだなんですが、この定年延長奨励金制度の利用状況を各年ごとに教えてください。
  86. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 定年延長奨励金の制度は昨年度から実施いたしまして、まだ利用状況は必ずしも十分ではございません。  それから、いま私どもの方にこの奨励制度につきまして要望が出ておりますのは、余りにもその奨励金の額が低い。しかも、定年制度をとっております企業の大部分が大企業に集中いたしております。したがいまして、この定年延長奨励金制度の対象が現在は中小企業に限られておりますので、定年延長の最も対象として重点的に考えなければならない大企業にまでこの奨励制度を拡張するようにと、こういう御要請がございますので、来年度以降につきましてそういう方向で最善の努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  87. 栗林卓司

    栗林卓司君 利用者が何人ですかとお伺いしました。
  88. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 件数で約二百件余りでございますが、具体的な対象人員数はいまここに手元に資料を持ち合わせておりませんので、調査の上で御報告いたします。
  89. 栗林卓司

    栗林卓司君 大臣は中高年の能力開発ということを言われました。職業訓練等の制度があるわけですが、この利用状況も何人か教えてください。
  90. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) じゃ、あわせて調査の上御回答願います。
  91. 栗林卓司

    栗林卓司君 では私から申し上げます。労働省からいただいた数字です。総理、よく聞いてください。  定年延長奨励金制度で昭和四十八年百五人。百五人ですよ。四十九年二百二十人。能力開発、昭和四十八年四百十六人、うち通学は五十三人。四十九年が九百七十八人、うち通学が七十二人。三木内閣というのは雇用問題に真剣に取り組む姿勢がありますかと言わざるを得ませんが、これはいただいた数字間違いありませんか。何でこういう状況なのか。どういう対策を打たれるのか。労働大臣と総理から伺いたいと思います。
  92. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 御指摘の数字は間違いないと思います。
  93. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 実施した時期がただいま政府委員が答えたとおりでございます。そこでこういう大事なときでございますから、私の方といたしますれば、来年からは高年齢者の雇用問題等は率を上げて事業所別にしようとか、そういうことでいま前向きに考えていることでありまして、定年延長もこういう際に私は企業の方々にもお願いをしているところでございますが、制度が発足して間もないために、援助資金というのが少ないということはまだ残念だと思っております。
  94. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いままでの数字は、先ほど労働省からお話を申し上げたとおりでございます。おととしですか、この制度ができて、そしてこういう現在の雇用状態というものがなかなか深刻な状態もあって、定年延長のことに対して推進というものが、数字から見れば非常に強力に推進したというわけではないわけですが、今後企業側に対しても協力を求めまして、一層これは推進をしてまいるように——いままでの数字というものは余り積極的というものではないことは事実でございます。
  95. 栗林卓司

    栗林卓司君 定年というのが、年金の給付開始時期を含めて大変重要な時点であるということはもう十二分に御承知だと思うんです。その定年の延長奨励金制度をつくって、四十八年利用者百五人。けた違いじゃないですよ。四十九年が二百二十人。なぜかといいますと、一人当たりの補助額が月額三千七百五十円、結局これは対策に金がかかるわけです。一方財政危機がある。いま総理お尋ねをしたのは、この辺は金がかかる問題なんだが、やはり相当真剣に取り組まなきゃいかぬとまずお答えいただけますかということが一つ、まずそれだけをお伺いします。
  96. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 取り組まなけりゃならぬ問題だと考えております。
  97. 栗林卓司

    栗林卓司君 それからもう一つ、これは別な角度からまた総理お尋ねをしたいのですが、なるほど定年問題は大変だからわが社はそうしよう、やると、大変苛酷な話ですが、競争条件は悪くなってくる。定年が持っている社会的な福祉の面での意義を考えますと、本当はこういうものは公正な競争条件の一環として規範化すべきではないのか、それでもいけない中小企業をどうするかというときに初めてこの制度が本当に生きてきて幾ら必要なのかということになるんじゃないのですか。国の内外を問わず、こうしたものは公正競争基準ということで本来決めていくべきであって、一生懸命取り組んでいるところが商売で何ともどうにもいかぬわいということでは、私は制度は生きない。  この問題とからめてですが、実は中高年の職種別の雇用率の問題なんです。これはもうあえてお伺いするまでもございませんが、これまたなかなか進捗していない。こういうものも私は規範化すべきだ。何もペナルティをつけろとは言いません。しかしあくまでも公正な競争基準なんだから、各企業とも守りなさい、守れないところは企業の大中小、規模に応じて助成措置を講じましょうというのが本来ではございませんですか。
  98. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 企業にもいろいろ言い分があるでしょうからね、定年制の延長というものに。だからまあ政府としては、いろんなこの基準になる問題を含んでおりますから、今後企業側にも協力を求めて、理解を得ながらこれを推進していかなければならぬというふうに考えております。
  99. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) この問題につきましてはまさに栗林さんのおっしゃるとおりでございまして、雇用率の問題にいたしましても、実はいまから先やっぱり事業所別にやっていくような考え方、さらにはまた定年延長でも、いままで数少なくやっておったといっても、これは中小企業が多いわけです。大企業にもそういうふうなムードを、それをまた推進してもらう、こういう形で進めてまいりたい、こう思っております。
  100. 栗林卓司

    栗林卓司君 一年一年はその人にとってはかけがえない速度で歩いていくわけですから、早急な、かつ真剣な処置をお願いいたしたいと思います。  では、大変こま切れで恐縮ですが、厚生大臣に年金について、この中高年雇用問題との絡みでお尋ねをいたしたいと思いますが、来年は見直しの年でもあろうかと思いますし、いわゆるナショナルミニマムとの兄合いで、どういう方法で来年は年金について考えておいでになりますか伺いたいと思います。
  101. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 毎々御答弁申し上げているとおり、本来ですと昭和五十三年が年金の再計算時ですが、これを五十一年に繰り上げて再計算を実施をいたそうと思っております。その内容については、今日鋭意検討をいたしておりますが、まだ最終決着を得ておりません。  しかし、内容については、第一には、標準年金額を現在この八月に二一・八%スライドアップをいたしまして七万二千九百円になっておりますが、これについては、賃金と生活水準の向上分をこれに導入をいたしましてある程度の引き上げをいたしたいと考えているのが第一であります。それから、いろいろと世間で問題があります在職老齢年金制度については、これをある程度の改善をいたしたいというふうに考えております。また、障害と遺族については通算制度がございませんものですから、これもいろいろ国会で御論議がございましたものですから、これについての通算制度を起こしたいというふうに考えております。また、遺族の年金の給付額は老齢年金の五割でございますが、これについても最近の社会情勢にかんがみてこれを引き上げていただきたいという声がありますので、ごもっともだということで、これについてもある程度の手直しをいたしたいなどというところが明年度の財政計算の主たる内容でございますが、さらにいろいろと今後の年金制度の基本的なあり方についてかなり抜本的な改善を加えたいというふうに考え、省内にプロジェクトチームをつくりましていろいろと検討をいたしております。  その考え方の基礎になるものは、ライフサイクルにもございますし、また社会経済国民会議、中山伊知郎先生の主宰している会議、あるいは同盟ビジョン等々を踏まえまして、いわゆる各公的年金を通じての基礎的部分を共通にいたそうなどということを考えて、いろいろと詰めをいたしておりますが、何分にもこの第二の問題は非常に広範多岐にわたり、複雑でございますので、若干の期日はかかると思いますが、そうした方面についても意欲的に今日検討、努力をいたしておる次第であります。
  102. 栗林卓司

    栗林卓司君 確認でお伺いするんですが、これもまた財源のかかる仕事でありますが、賦課方式かあるいは積み立て方式かの議論の中で、修正賦課方式の方向を考えますとたしか総理から答弁をいただいた記憶があるんですが、それも含めて基本的な部分の再検討をする、そう理解してよろしいですか。
  103. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 毎々御答弁申し上げているとおり、賦課方式というものも今後の年金の財政方式として十分考慮をいたすべきものであるというふうな認識のもとに、いろいろと考究をいたしております。要は、いついかなる範囲で、どういうプロセスで賦課方式に移行をするかということが、これが大きな問題だろうと思います。いま私が申し上げました、いわゆる基礎的な部分を共通にする年金については、この部分について賦課方式を導入できないものかどうかという真摯ないま検討を続けているところであります。
  104. 栗林卓司

    栗林卓司君 ぜひ積極的な御検討をお願い申し上げたいと思います。  文部大臣にお尋ねをしたいんですが、家計を賄っていて学費というのは大変な問題である。そこで、先日大臣の本を拝見しながら、私学の、とりわけ文科系の生徒の学費というものはという面がございました。これまで産業社会が要求している人材の養成というのは、主として私学が——これはいま大学をとらえて申し上げているわけですが、担当してきた。私学の医学部を含めた理科系の費用は文科系の子供たちが負担をしながら、数が足らぬからマンモス教室になる。やっと出たら就職難だと、こういう始末になる。なおかつ足らないからもっと出せと言われても、親たる者いいかげんにしろと言いたくなるんじゃないか、こういう問題について文部大臣として、問題点は重々御承知のところでございますから、どのように今後取り組んでいかれますか、伺いたいと思います。
  105. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) ただいま御指摘のように、私学、特に大学の授業料が親にとって大変な負担でございますし、これは幾つかの対処の方式があるわけでございますが、まず第一点は、ここに座っていらっしゃいます坂田防衛庁長官が文部大臣でおられた時分に、私学振興ということが始まりまして、そこで私学に対する助成を行ってまいりました。ただなかなかインフレーションの予測がつかなかったということで、当初計画されたようには実際私学が経常費の上で助けられるというところまできていなかったわけです。そこで、去る国会で私学振興助成法というものが成立いたしまして、これも経済の全体に関連いたしますが、今後なるべくこのインフレを抑制していくということができますといたしますと、私たちは私学の経営を助けるという姿で授業料の抑制に貢献できる面があると、これが一つでございます。  しかし、特に困っている家庭の人たちの問題を考えなければいけない。これにつきましては、五十年度予算がそうでございますが、育英資金、これは今度は私学を伸ばすことにいたして、国立につきましては大学院だけでございますが、私学の特別奨学金というものを、あれは七千人から一万人を超える数にふやしているわけでございます。  さらに第三点といたしまして、そういうことを言うけれども、入学時に非常にたくさん取るではないかということがあるわけです。しかも幾つも受けますから、幾つも受けて、結局は一つしか入らないので入学辞退をいたします。入学辞退をするけれどもなお納付金を取られるではないか、こういう御不満もずいぶんありまして、私もそういう御家庭の御父兄ともお目にかかってお話をいたしました。そこで九月に通達を出しまして、一度は、入学を辞退される方につきましては入学金以外の納付金は取らないことということをいま私学にお願いを、もうすでに九月から始めたわけでございます。これに対しまして私大連盟というような団体は、積極的にそういう方向で考えていこうということでございますので、いま私たちが考えております問題、やり方というのは、以上申し上げました三つの方法、私学振興の全体的助成、育英、それから入学時に当たって不当に取られることのないように、こういう方法で対処しているわけでございます。
  106. 栗林卓司

    栗林卓司君 いま大臣が最後に言われた入学前納金先取り問題、新聞報道では何と百億円に近いんです。これは確認ですが、先ほどの通達で、そういったことはもうこれからはなくなると、単純に理解してよろしゅうございますか。
  107. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) これはさきの国会でも議論が出まして、私も重要であると考えましたので通達を出したわけでございます。申し上げましたように、私大連盟のほうは積極的にそういう角度で考えようという御意向でございますが、私立大学にほかにもいろいろ組織がございます。そこで全体的に私立大学がどう対応するかということはまだ最終的決定でございません。しかし、私たちの態度といたしましては、ぜひこういう政策を続けていくと、そういうふうに私学の方にお願いをしていこう、こう考えているわけでございます。
  108. 栗林卓司

    栗林卓司君 いろいろ伺いたい点があるんですが、時間がなくなってまいりましたので。そういういろんな福祉に対する多様な国民の要望に財政としてどうこたえていくかが、これは一番頭の痛いところではないかと思います。そこで、どちらにしても従来のような大きな自然増収はこれ期待できないわけですから、そこの中で一体何をしていくのか、時間がありませんのでポイントだけお伺いをしてみたいと思いますが、恐縮ですが、自治大臣にまず地方財政の問題ということでお伺いをしたい。  今年度は資金運用部の借入金も含めてどうにかかっこうをつけた形ですが、来年はなかなかそうもいくまい。じゃ全部公債で持つかといったら、そんな長く続けられるものではございません。しかも福祉ということになると、やはり地方の自治体が受けざらになりながら懸命にやっていかなきゃいかぬ。そうなりますと、地方の行財政全般にわたって少なくも来年じゅうに相当思い切った改革をしなければいけないのではないか、時間がありませんから先を急ぎますが、従来から懸案の種種の問題がございました。そういったことについても、なかなかこれはできないんだが、実は見ようによってはいいチャンスじゃないか。したがって、団体委任事務とか機関委任事務等々という問題について、相当思い切って来年じゅうに抜本的改革をやるべきだと思いますが、いかがでございますか。
  109. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。  ただいま御指摘のとおりだと私は考えておるわけでありますが、御案内のように、交付税率というものがすぐにそのときには浮かび上がってくるんですが、これが適当であるかどうかということが一つの大きな課題であります。しかし、それを今年、いまの、来年度の予算編成の場合にやるということになりますと、なかなかちょっとそれを簡単にできないことはあなたもおわかりを願えると思う。しかし、来年の秋ごろになりますというと、五十二年度の景気の動向等もわかってくるでありましょう。それからまた、いましきりに言われておるところの自治の拡充といいますか、もっともっと自治体に力をつけて、いわゆる国の事務を移譲すべきではないかという意見が相当あります。これは理論として正しいんでありますが、実現がどの程度までできるかということを真剣に考えてみなければなりません。  そうして、その問題を踏まえると同時に、一方においてはやはり地方自体の経済、何というか、担税力といいますか、税収がどの程度求められるかということをまた見直してみなければならない。それからまた地方の歳入の面では、これは余り言いにくいことでもありますけれども、人件費その他いろいろのものにおいて適正に行われておるかどうかということも考えてみなければなりません。そういうことを考えた上で、やはりどうしても交付税率は低いじゃないか、いわゆる国と地方との財源負担がこの程度ではいけないと、自信を持って私は問うべき時期にいま来ておるのではないか、そういう意味合いにおいて今後努力をしてまいりたい、かように考えておるところであります。
  110. 栗林卓司

    栗林卓司君 細かく伺えないのが残念でございますが、とにかく来年というのは前期三年間の最後の一年かどうかは別にして、ここでしっかりやっておかないと後に悔いを残すだろうという気がいたしますし、いま地方財政で伺ったんですが、これは国としても同じことだと思います。その意味で大蔵大臣に、これはあたりまえ過ぎる質問かもしれません。来年、時限を切りながら、国としても、国と地方の財源問題あわせて相当思い切った行財政の見直しをしていくべきだと思いますが、御所見伺います。
  111. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおりだと思っております。
  112. 向井長年

    ○向井長年君 関連。  いまの審議している予算ですね、これはわれわれから言うならば、財政経済見通しの誤りから大きな歳入欠陥を起こした、したがって国民に借金をしなきゃならぬ、こういうことで国債発行問題が出ておると思います。そこで、まあこれも現状いろいろありますけれども、やむを得ないのではないかという感じを持っているわけでありますが、しかし、国民に国債消化を依頼するためには、政府自体としてもやらなければならぬことがあるのではないかと思います。たとえば経費の節減であります。これは新規事業をやめるとかというようなことはそれぞれ各省で考えられることでしょうが、日常の経費節減という問題についてどう考えておられるか。  私は実は先般、民間のある会社の実情を見たのでございます。労働組合と会社が団体交渉経営協議会でいろいろ論議をしている場を見たのでありますが、その内容はどういうことか。この不況下において企業も大変である、組合にもひとつ協力を願ってあらゆる経済再建のために努力をしよう。その内容を見ますと、ことしは、たとえば消耗品にしても、たとえば鉛筆あるいは紙一枚あるいはインクというものをこれくらい節減してやろうではないか、そうすればこのくらいの財源が生まれてくる、そういうことが論議されておるんですよ。民間は深刻なんだ。  ところが、政府の機関はどうなんですか。この間自民党の斎藤議員からも若干指摘がありましたけれども、本年度の予算約二十二兆円の中で、たとえば一%の経費節減をやったらどれだけの財源が生まれるんですか。二千億以上が生まれてくるでしょう。そうなりますと、私はいま酒、たばこあるいは郵便料金、やかましく言われておりますが、これを幾ら上げても一千億余りでしょう。こういうことを政府は今日までやろうとするのかしないのか。ただ財源問題で国民に借金をする。今後大蔵大臣としては各省の予算をできるだけ縮減していこうとするでしょうけれども、ただそれは新規事業をやめさすだけではなくて、みずから直ちにできる問題を、これは行管でやるのか大蔵省でやるのか知りませんけれども、こういう問題をやはり——国民は各企業なり、家庭でもそうであります。家庭でも少なくともガス料金が高くなる、電気料金が高くなる、したがって少しずつ節約しようとしてみんな努力しておるんですよ。政府みずからそういう姿勢があるのかどうか、また今後こういう問題をどう対処するのか。これはひとつ総理なり大蔵大臣、十分ひとつ腹に入れて答弁を願いたいと思います。われわれ民社党は、まず国民に訴えるためにはみずからの姿勢を正し、経費の節減をやりなさい、そして国民も納得した中で国債に対する、これに対する理解を求めようではないか、こういう感じでおりますが、政府の所信をただしたいと思います。
  113. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 一昨年来、大変な経済危機でございまして、石油初め各資源が大変な値上がりでございます。輸入物価にいたしましても平均七割の値上げであるということでございまして、これはひとり日本国民全体がこの状況に対して対応していかなけりゃならぬわけでございます。国内におきましてはいろいろ公害問題、立地問題、たくさんの問題を抱えておりまして、社会的なコストが非常に経済にのしかかってきておる段階でございまするので、今日、向井さんがおっしゃるとおり、国民は家計の切り盛りにおきまして、企業はその運営の面におきまして、この事態にどのように対応するかに非常な努力をいたされておることは痛いほど私も感ずるのであります。したがいまして、その国民に対しまして公債の発行について理解を求める、あるいは財源の調達について理解を求める以上は、向井さんがおっしゃったとおり、政府みずからが姿勢を正さなけりゃならぬということ、仰せのとおりでございます。  したがって、この補正予算につきまして五百四十一億円の節約をお願いいたしたわけでございます。先般、本委員会の審議におきまして、わずか五百四十一億ばかりの節約では話にならぬじゃないかという御批判もございました。しかし、これだけをしぼり出すにはよほどの骨であったわけでございます。いま今日、たとえば東京都におきましても水道料金を大幅に上げるということでございまして、各官庁が水の使用というような、コストは大変増高してまいるわけでございますけれども、そういった中でこれを支払いながら、しかもこれだけの節約を実現してまいるということは容易ならぬことでございますけれども、こういう中で人事院の勧告も実施してまいらなけりゃならぬということなんだから、難きところをひとつごしんぼういただきたいということで、従来よりは非常に強い感度で庁費を初めといたしまして節約を願ったわけでございます。  それから、この本委員会でたびたび申し上げておりますとおり、歳入歳出全体にわたりましてもう一度彫りの深い見直しをやらなければならぬ。そこに不経済があってはいけない、そこに不公正が残っておったのでは公債を発行するとかあるいは増税を起こすとかというようなことに対して理解を得られないはずでございます。仰せのとおりでございますので、その段取りは政府の方でいま鋭意進めておりますことも本委員会で御報告申し上げておるとおりでございまして、まずそういう姿勢が確立しない限り御協力が縛られないのではないかということは仰せのとおりでございますので、私どもといたしましては今日までも努力してまいりましたけれども、一層真剣な努力を傾けて御期待にこたえなければならぬと心得ております。
  114. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 向井君も御指摘になりますように、これだけ公債を発行して、それは国民の将来にわたる負担になるわけですから、政府の方としては行政、財政全般にわたって厳しい見直しをやらなければ国民の皆さんにも納得が得られない。全く向井君の言うとおりに考えておりますから、われわれもこの財政難に処して、財政、行政全般にわたって見直しをいたす所存でございます。
  115. 栗林卓司

    栗林卓司君 それではスト権問題について二、三伺いたいのですが、従来、スト権いつまでに結論出すんだという角度での議論でございましたが、ちょっと角度を変えて総理の御意見を承りたいのですが、非常に高度化した今日の産業社会の中で、午前にも申し上げましたが、物価問題の解決も含めて労使関係が果たしていく役割りというのは非常に大きくなってきたと思います。たとえば、西ドイツの現在審議中の新共同決定法案にしてそうでございますし、フランスではジスカールデスタン大統領の特別諮問委員会が同種の検討を継続しながら、立法化への道を歩いているわけです。そういう社会的な責任の自覚において労使関係が世の中のための役割りを果たしていく。私は、これが次の時代をあけていく大きなとびらではないかと思いますが、そういう労働組合の一つとして、総理は公企体労働組合を期待されますか、されませんか。
  116. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 公共企業体のいわゆる俗に言うスト権の問題は、しばしば私が申し上げますように、専門委員の懇談会でいま検討している。それを受けて政府は閣僚協議会でこれを政府の結論を出したいという方針に変わりはないわけでございます。  いま栗林君の御指摘のように、やはりこういう産業社会において、労使の関係というものが正常な関係にあるということが産業社会の基礎になることは御指摘のとおりであります。私は、民間の労働組合というものは非常に健全な方向に、労働組合というものがそういう国民経済の中における労働組合の使命というものを考えて、非常に健全化されていっておると考えるわけでございます。  公共企業体の労働組合との間がうまくいかない、処分とストの繰り返しをしておる、このことについては、何とかこういう労使関係というものを改善をしたいという熱意に燃えておるわけでございます。そのためには、政府側としてもいろいろ改善を加える道はあると思いますが、労働組合においても、公共企業体というものは長岡の一つの企業体と違って、これはそういうストなどによってすぐに会社経営全体に影響を受けるわけですから、非常に労働組合連動に対しても節度をわきまえざるを得ないわけですが、公共企業体は親方日の丸と俗に言われる、そういう面もあるということに思いをいたされて、労働組合自体も、公共企業体の国民に果たしておる、果たすべき役割りの重さというものを考えて、そして政治ストのようなことは、これは労働組合連動としてはいつまでも解決するわけがないんですから、労働組合本来の一つの組合連動に返って、労使間の関係というものをもっと正常な関係に置かなければならぬ。政府もこれは強く望んでおる次第でございます。
  117. 栗林卓司

    栗林卓司君 よく親方日の丸論議が出るのですが、私は労使関係というのは相対的な関係だと思うんです、片方がよくて片方が悪いということは、まあまあないのであって。ですから、公企体労働組合の親方日の丸ということは、管理者も親方日の丸だし、それを抱えている政府の行政組織そのものが実は親方日の丸なんですね。だから、決して他をもって非難するわけに私はいかないと思うんだけれども、おっしゃるような環境をまた対象として求めていくというのなら、その環境を醸成する努力をやはり政府もすべきだと思います。そのときに、相手をっ縛ておいて、おいおまえ考えろという論法が通ずるのか、この点については大きな政治判断としてどうお考えになりますか。
  118. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 労使間の環境というものを改善していくということは、これは政府としてやらなければなりませんが、栗林君はだからスト権を与えるべきだということならば、これはやはり労使関係と関連はありましょうけれども、この場合、一つのスト権の場合における国民経済に与える影響というもの、あるいは労働組合の現実の実態というもの、そういうものもいろいろ判断の基礎になるということは、国民生活に責任を持っておる政府としては、当然のやはりいろいろ検討する場合の検討の一つの要素になることは御理解を願っておきたいのでございます。
  119. 向井長年

    ○向井長年君 関連。  まことに済みません、もうこれで終わりますが、関連は三回までということで理事会で申し合わせしておりますから、多くは述べません。  ただ、政府に聞きたいのは、いまの労働組合のスト権の問題ですが、これは総理から答弁いただき、あるいは労働大臣から答弁いただきたいと思いますが、政府は常に専門委員会とか、あるいは諮問委員会とか、こういうところにいろんなことを諮問されますね。これは非常に結構なことだと思う。ところで、諮問される場合においては政府自身の一つの考え方を提起して諮問されておるのが多いわけであります。たとえば農林大臣が米価の問題を決定するときに、政府案はこうだ、そしてどうでしょうかというかっこうで諮問されておる。先般の発言の中で、防衛庁長官が新防御構想をみずから出されて、これを国防会議にかけるんだということを言われておる。常に政府は一つの指針を持ってあらゆる機関に相談をかけられておるのが常道であります。  ところで、このスト権問題については政府の姿勢が那辺にあるのか。たとえば今回、このスト権問題は二つの機関があると思います。一つは、民間の電力の産業に対するスト権の禁止の問題で調査会が持たれております。これは一昨年、田中内閣時代から決定されて持たれて今日に至っております。一方においては、先ほどからお話のありますところの閣僚協の専門委員懇談会ですか、ここでいろいろと討議をされている。これは皆さん、どう考えましても労使の立場に立ち公益の立場に立っていろいろな意見が闘わされておりますから、恐らくは現状の段階においては、どちらの専門委員会なり調査会でも一本の結論が出てこないと思うのですよ、見通しは。それだから、政府も秋までにはぜひひとつ結論を出したいということを言っておりましても、出てこないでしょう、延ばさざるを得ない状態が出ておるでしょう。いまもう秋ですよ。これは少なくとも、やはりその専門懇なりあるいは調査会においてはいろいろな意見がふくそうしているからこういう結果が生まれてくるのですよ。他の問題については政府が一つの指針を持って諮問されておるから、それに近い結論が、反対があっても出てくるはずなんです。  ここに私は、今回のこのスト権問題についての政府の諮問されたこの中に、政府の姿勢がどっちを向いているのか、やろうとするのかしないのか、何か場当たり的な形が私はうかがえるわけです。この点について、総理なり労働大臣なり、どう対処されようとするのか、この問題を明確に、政府の現在のこれに取り組む姿勢を私は答弁いただきたいと思います。
  120. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。  御案内のように、公制審で八年もかかった問題でもありますし、そしてまた昨年の春闘のときのいろんな話し合いの中からできましたので、ことしの秋には結論を出したいということで、その中においては当事者の方々も、あるいは組合の方々もみんな意見を述べ、中にはまた委員に入っておられる方もありまして、そうしたところで御議論をいただく、その上で閣僚協として結論を出す、これも私は一つの行き方じゃないかと、こう思っておりまして、総理を初め私が御答弁申し上げましたように、秋の専門懇の結論を待って、私たちがそれに対してはっきりした——(「秋って、いまいつだよ、いま秋じゃないのか。」と呼ぶ者あり)深い秋もありますから、御理解いただきます。  それから、電力の関係はあなたが非常にお詳しいですが、あの中には労使ともどもに入って、従来の経過なりいろんなことを研究されておって、そういうところで結論が出るのが一番いいことじゃなかろうかと、こう思っているわけであります。
  121. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 向井君の御指摘のように、懇談会とかいろいろ審議会とかに、政府の結論を出して、いかがなものであろうかという諮問の行き方もあれば、結論を出さないで自由な意見を聞きたいという場合もあるわけでございます。今度の場合は、この専門委員懇談会など生まれてきたようないきさつは、いままでの従来の長い組合と政府とのいろいろ話し合いの中から生まれたので、それはあらかじめ政府が先に結論を出してというのじゃなくして、いろんな経過を経て、そして政府が秋までに結論を出すということでございましたので、これほど国民の意見もいろいろ分かれておるわけでございますから、政府があらかじめこうしたいんだというような態度ではなくして、自由に意見を皆御開陳願い、御討論を願って、そういう推移なども見まして、政府の方で、これは政府責任において政府の態度を決めたいというわけでございまして、やり方としては私はいろいろな経緯から見ても、この問題の重要性から見ても、あらかじめ政府が決めてどうだというのでなくして、こういう会の運ばせ方が適当ではないかと、こう考える次第でございます。
  122. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまの総理の御答弁について、実はかねがね伺いたいと思っていたんですけれども、よく言われる議会政治という観点からいまの御答弁を考えてみるとどうなんだろう。確かに、専門委員会に目下聞いておりますから結論が出るまではという御答弁はあり得ると思う。専門委員会はたくさんの人が集まって、いわば多数決的な結論になりますから、その結論に対して一人も、それはおれが責任をとると言える人はいません。それを内閣が受けて、閣議でまた多数決で決めて、それがまた国会に持ち越されて多数決と。答弁としてそれは審議会にというのは、いわば審議会の場を責任分散の場にするのじゃないか。ですから、おっしゃるような答申の求め方はありますよ、ありますが、それが出てこないから政府答弁ができないという隠れみのに使っては絶対にいかぬ。もし議会政治ということを高めることをお考えならば、私の意見に同感されると思うんですが、非常に私は重要な点だと思うんです、国会のやりとりがどことなくかすんでしまう部分でもあるわけですから。総理が言われる民主政治と議会政治との見合いにおいて、この辺はどうお考えになりますか。
  123. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはやっぱり政府が意思決定をする前に、いろんな慎重な手続をとることは、民主主義の行き方として私はそれは妥当だと思うんですよ。政府が独断で決めないで、いろんな各方面の意見を聞いて、そして政府がそういう各方面の意見などにも耳を傾けて結論を下すという形は、一つの民主主義的な手続として当然のことであると思う。ここで政府が結論を出しましたら、これはもう国会において十分御審議を願わなければならぬので、隠れみのといったって、政府はいつまでもそういうわけにはいかぬわけですから、政府は結論を出したときに、ここで十分な御討議を国会で願うというのが議会制民主主義のあり方である。政府が案を出すまでの間、いろんな過程で各方面の意見を聞くというのは、今日のような複雑な社会では当然あり得ることじゃないでしょうか。出てきたら十分御審議願います。
  124. 栗林卓司

    栗林卓司君 聞くことをいけないと言っているのではありません。聞く前に、また聞いた後でも、固有の意見があってしかるべきだ。その意見においてそれぞれが政治責任をとっていくということになるのがリーダーシップのある議会制民主主義の姿ではないかと思いますが、まあ、そういう御答弁になるのでしょう。深くは伺いませんが、深い秋までも含めて秋までということですから、しばらく見守りながらこの議論はここで打ち切りたいと思います。  そこで、最後に、いささか各論にわたるようで恐縮ですけれども、総理がこれからお出かけになる首脳会議の議題とも若干関連はすると思いますので、実は非鉄金属産業の問題について二、三お伺いをしておきたいと思うんです。  そこで、これもたくさんあるものですから、たまたま銅を代表格にしてお伺いしたいと思うんですが、この銅の産業の今日の状況について、かいつまんでで結構ですが、通産大臣から概略御報告いただけますでしょうか。
  125. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 非鉄産業はおしなべて不況でございますが、その中でも銅はとりわけ不況になっております。一つは需要が非常に減退したということ、それからもう一つは、昨年の十一月以降輸出を中止しておるということ、それから銅鉱石の輸入等長期契約がございまして、やはり不況になりましてもある程度は契約に従って輸入をしなければならぬという、いろいろな問題が重なりまして、一時は九十万円近くいっておりました価格がいまは約四割に下落をしておる、こういう状態でございまして、経営が非常にむずかしい状態になっております。  そこで、政府の方といたしましては、いろいろな対策を立てておりますが、一つは、こういう非鉄金属などはやはりある程度備蓄をすることが必要じゃなかろうかと、こういうことも考えまして対策を立てておりますが、同時にあわせまして、銅の業界では金融的に非常に困っておりますから、金融対策も並行いたしまして資金のめんどうも見ていくと、こういうことをしております。
  126. 栗林卓司

    栗林卓司君 非鉄金属、銅の問題というのは、単に産業問題だけではなくて、山が含まれております。地域社会、自治体の問題にもなっている非常に幅の広い、中の深い問題であることはもう御承知のとおりです。いま通産大臣からもお答えがあったのですが、銅鉱石の輸入は余りとめるわけにいかぬ、これは外交問題になるわけです。少しぐらいは勘弁してくれということは言えても、入れなければいかぬ。しようがないからつくるわけです。つくって、国内は不況ですから輸出しようと思うと、やらせてくれない。輸出は銅地金でやるわけですけれども、銅地金はじゃ輸入していないかというと、これまた日本は輸入している。こういう状況の中に置かれて産業は成り立つんだろうか。そこで、何で輸出を禁止したのか、お伺いをしたいと思います。
  127. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) これは世界的に銅が余っておりまして、そういうさなかに昨年日本が相当出したものですから、世界的に暴落しておるところへさらに暴落をした、こういうことがございまして一時中止をしておる、こういうことでございます。
  128. 栗林卓司

    栗林卓司君 私の記憶に間違いがなければ、CIPEC、これはOPECではなくて、銅ですからCIPECになりますが、CIPECの方から、日本の銅地金輸出が世界の市況を悪化させるから何とかやめろ、そのかわりわれわれも生産制限をするから、こういうような話し合いが通産に来た。そこでやむを得ず、では輸出をとめましょうかということになったんだけれども、CIPEC諸国は生産をそのときの約束ほど落としていない。結局日本が輸出をとめただけで、銅市況は何ら改善の色が見られない。これが実態だと聞いておりますが、間違いありませんか。
  129. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 背景としてはそのとおりでございます。ただしかし、根本的にはやはり世界全体が不況である、ここに最大の私は原因があると思います。そういう立場に立って考えますと、今月の中旬から開かれる首脳会談等におきましてこういう一次産品の問題等も取り上げられるということは、何らかの私は前進になるのではないかと、こう思っております。
  130. 栗林卓司

    栗林卓司君 一次産品の価格安定問題については次に伺いたいのですが、ひとつここで通産大臣に注意を喚起しておきたい気がしますのは、日本の銅地金輸出が何でCIPEC、LMEを含めて、これはロンドン・メタル・エクスチェンジですけれども、そこから気にされたかというと、どうも商売人に聞きますと、あれは輸銀の融資を受けているものですから、その都度ロットで認可するわけです。ロットで認可しますと相当のたまりががばっとマーケットに出ますから、これは相当市況に影響を与える。そうではなくて、常時これを自由にしておいて、流れとして自由にしておくと市況に与える影響も少ないのではないか、なおかつ問題があればそのときにとめればよろしいという米国政府のやり方の方が本当は賢明だったのではなかったんですか、いかがですか。
  131. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 考え方といたしましてはいろいろあろうかと思います。しかし、いずれにいたしましても、銅の業界は非常な苦境になっておりまして、現状ではどうにもならぬと、こういう状態でございますので、やはりさしあたって有力な手段は備蓄しかないと、少し政府資金を出しまして備蓄をやってみようと、こういうことで関係方面と折衝しております。
  132. 栗林卓司

    栗林卓司君 これは本当は、備蓄ということになりますと金がかさみますから大蔵大臣にお尋ねをするのが筋道になりますが、一次産品価格安定ということも含めたステージに昨今なってまいりました。そういうものの備蓄というのは民間任せではどうにもならぬ、国としての力を出しながらどうしていこうかというデザインをしていかなければいけない時代になりました。そこで、これから政府資金を投じながら、いま通産大臣が言われたように備蓄を図っていくという点について、総理はいかがにお考えになりますか。
  133. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ある物資はやっぱり備蓄を図っていかなければならぬ物資が私は出てくると考えております。
  134. 栗林卓司

    栗林卓司君 そうすると、この銅の問題の場合むずかしいのは、銅の場合には相手先が全部開発途上諸国ではございません。それがまたこのCIPECを大変むずかしくしているわけですけれども、そういった意味で、なかなか開発途上諸国向けの一次産品価格安定問題ということでは一括できない。したがって、国際的な協議もさることながら、とりあえず日本としての備蓄を先行させながら、地方自治体の問題も構えたこの産業問題を政府としてカバーをしていくという構えが私は必要だと思いますが、念のためですが、改めて伺います。
  135. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 政府として十分にその問題は研究をしなければならぬ課題であると考えます。
  136. 栗林卓司

    栗林卓司君 では、いまの問題とあわせて大蔵大臣にお尋ねをしますが、これも各論の各論で恐縮ですけれども、山を保護するというのは、山はつぶしたらもうそれっきりですから、しかも海外に銅の鉱山を日本として技術協力をしながら、資金協力をしながら開発するといたしましても、技術者をどうするんだと、一遍出ていっても、帰ってくるメーンランドがなきゃいけないんだと、そういった意味でも、日本の銅山というのはやはり何としてでも守っていかなければいけないわけですが、これが昨今の市況下落で、これは備蓄だけでもなかなか解決ができません。そこで、従来からこれは関税のガードを設けながら日本の鉱山が相成り立つようにやってまいりましたが、お伺いをしたいのは、その関税のバーの高さなんです。現在、実質的には四十二万五千円ぐらいのととろがバーに当たるわけですが、それを超しましても、世界的に見て銅のコストというのは、これは開発途上諸国、先進国を問わず、大体、五十万から六十万のライン、昨今、景気が回復しながらいまなお水面下であると同じように、そのバーを外れたとたんに山が立ちいかなくなる。これは関税制度の問題として真剣に考慮すべきではないか。それ自体が多くの金を必要とする問題ではございません。本来、そのバーの置かれた趣旨に照らして見直しをすべきだと思いますが、いまの備蓄の問題とあわせて大蔵大臣の御所見を承ります。
  137. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 銅とかあるいはレアメタルにつきましては、四十九年度から五十年度にかけまして、備蓄ではございませんけれども、輸銀を通じまして緊急融資をいたしまして急場に備えてきたわけでございます。しかし、通産省からは、五十一年度の予算要求といたしまして、備蓄のシステムを持った要求が出ていることは事実でございます。この問題につきましては、国の内外にいろいろな構想が論議されておるようでございますし、したがって、私どもとしてその採否につきましてはいろいろ十分検討していかなければならぬと存じておりますことは先ほど総理が言われたとおりと思っております。  それから、関税のことにつきましては、私、とっさのお尋ねでございますのでよくつまびらかにいたしておりませんが、事務当局も控えていないようでございますが、承りましたので、その問題点はわかりましたので、配慮いたします。
  138. 栗林卓司

    栗林卓司君 最後のところで大変歯切れが悪くなるわけでございますが、現状在庫指数を見ますと、これは六月で見て非鉄金属工業で三四五、非鉄金属地金で何と七五六、これはつぶれてみろと言わんばかりの姿なんで、これがほかの産業なら、国際経済の中でどうお互いに分け合うかという産業構造問題だといけますけれども、こればかりはそうはいかぬわけですから、今後御出席になる首脳会議の課題とも実は触れてまいりますし、この問題について、ウィルソン首相にしても、フランスにしても、しかるべく準備と討論を国内でやっているように聞いております。あわせて将来の方向に対する御検討と、当座の急場の対策と、二つぜひお願いをしておきたいと思います。
  139. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) さしあたりの問題といたしましては、さっき大蔵大臣が御答弁になりましたように、先般、約二百八十億円で非鉄金属類を中心といたしまして緊急輸入をする、こういう対策も立てております。  それから、来年度以降の考え方につきましては、さっき申し上げたとおりでございます。  また、関税の問題はいまおっしゃったような実情になっておりますが、これはもう少し国際価格の動き等を見まして、その基準を変更する必要があるならば、そういうふうに大蔵省と折衝の上、変えていきたいと思います。  なお、繰り返しますが、世界的な非鉄金属類の状況、特に銅の状況等にかんがみまして、やはり備蓄対策をやるということが日本にとりまして非常に重大である、これしか対策はないのではないかと、こういうふうに考えまして、大蔵省とも十分相談の必要はありますけれども、ぜひ来年度からこれを実現したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  140. 栗林卓司

    栗林卓司君 それでは、いよいよ時間がなくなりましたので、最後に、これから首脳会議にお出かけになるわけですけれども、その点について一、二要望を含めて御見解をただしておきたいと思います。  昨今、先進国どう集まってみても、不況失業インフレで頭が一ぱいなわけですから、それぞれがお互いに期待し合うだけで、なかなかこれという妙案が出てくるかどうか私は疑問だと思います。むしろ、各国それぞれの利害が複雑に対立する国際会議にもなっていくんではないか、そう思うわけですが、そこの中で総理がリーダーシップを発揮していかれることは私は賛成なんですが、大切なのは国際信義ということではないか。平たく言うと、約束したことはやる。その意味で国際会議でどのような御提案を提げて行かれるか、検討中だと思いますし、ここで洗いざらい伺うことは適切だと思いませんので、個々には伺いませんが、約束したことはとにかくやるという覚悟で各国と折衝をする、この問題について御所見をぜひ伺っておきたいと思います。
  141. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、国際的な信義というものは、約束したことは万難を排して実行する、実行のできない約束はしないと、これはもう第一の原則だと思います。したがって、そういう考え方で首脳会談にも臨みたいと考えております。
  142. 栗林卓司

    栗林卓司君 大変お言葉を返すようですが、先般、石油危機のときにアラブにおいでになりましたが、あの約束は全部やっておりますでしょうか。個々にはもう申し上げません。核防条約についてやるという約束をしておいでではございませんでしたか。DACの援助問題について早くから水準を上げると言ってこなかったですか、日本は。本当にそれをやってくださいというお願いでございます。したがって、私は、外交に先立って大切なのは国内のコンセンサスだと思いますが、大変失礼なことを申し上げるようですが、総理の場合には、国内のコンセンサスを問う前に党内のコンセンサスをぜひ固めていただかないと、見ておりますわれわれとして本当にはらはらせざるを得ない。  最後に伺いますが、核防条約はどうなさるおつもりですか。
  143. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 石油危機のときに、一昨年参ったアラブ諸国との約束というものに対して、いろいろ御質問の中に触れておられましたが、私は、政府として約束したことはほとんど実行をした。エジプトの商品援助であるとか、スエズ運河の円借款、これはもう交換公文が締結されておるわけです。締結を完了した。イラクとの経済技術協力協定、円借款、民間信用に関する交換公文の締結はもう完了したわけです。それからサウジアラビアとの間にも経済技術協力協定が締結を完了をしたわけです。このように、政府として約束したことは全部実行に移したわけです。民間の経済協力というものに対しては、いろいろ経済の変動期ですから予定どおりに進んでおらないのもありますが、イラクとの間には肥料のプロジェクトを日本企業との間に落札をして円借款の適用を決定しましたし、イランとの間には大型プロジェクトに対する協力についていま交渉中で、民間の方は、経済変動が激しいときですから、なかなかやっぱり予定どおりにいかない面もありますが、政府が約束したことは必ず守る、こういうことをいたしてきておるわけでございます。  核防条約についても、これはもうできるだけ早く私は批准をすべきだと、こう言っておるわけで、私が演説した場合に、これを特に臨時国会というものをメンションしなかったのは、臨時国会というものは不況対策ということに問題をしぼって、これにやっぱり財政的な、財政関連の法案ということに問題をしぼりましたから。これはやっぱりいろいろ各党の方の意見を私は知っておるわけですよ、各党の。こういう問題はできれば各政党とも御賛成を願いたいと思う。長く日本を拘束するものですからね。そういうことで、遅くとも通常国会には必ず批准を受けたい、これは私の変わらない決心でございます。だから、無制限に次々に延ばしておるのではない。通常国会には必ず批准を受けたい、遅くとも。これが私の決心でございます。
  144. 栗林卓司

    栗林卓司君 終わります。
  145. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして栗林卓司君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  146. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  補正予算案審査のため、本日、日本住宅公団総裁南部哲也君、住宅金融公庫総裁淺村廉君、日本輸出入銀行総裁澄田智君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  148. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) なお、引き続き質疑を行います。佐々木静子君。(拍手)
  149. 佐々木静子

    佐々木静子君 ことしは、国際連合が全世界の婦人の地位の向上を目指して、国際婦人年ということで記念すべき年であると同時に、また、戦後日本における婦人参政三十周年という記念すべきときでございますので、主として婦人の問題にしぼってお尋ねいたしたいと思います。  まず、この国連における世界行動計画が御承知のとおり採択されまして、国内的な取り組みというものが急がれているわけでございますが、どうも掛け声だけで終わりそうだということが大変に心配されているわけですが、総理に伺いたいんです。政府の基本的な姿勢について、まずお尋ねしたいと思います。
  150. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 佐々木委員も御出席になって、お顔を拝見しましたが、いわゆる国際婦人年の記念の、やっぱり婦人の会議がございまして、そういうことにも私は申し上げたように、あのメキシコにおける国連の婦人年に対する総会で行動綱領というものが二百十九ほどあります。その中で、日本の中で適用できるものもあるし、そうもいかないものもあるでしょう。その行動綱領をできるだけ日本にも適用するように持っていきたいということで、私が本部長となって政府に婦人問題企画推進本部をつくりまして、その下に——あの場合に、市川さんおいでになりますが、市川さんは婦人が副本部長に入っていないというお話でございましたが、あの審議会にはたくさん婦人の人を中心にして入ってもらって、そしてそこでいろいろ御審議を願って、できるだけメキシコ大会における行動綱領を実施するように努力なしたいと思っておるのが基本的な態度でございます。
  151. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、はからずも総理の方からお話しございましたが、これは超党派の婦人議員が、この婦人問題企画推進本部に婦人をもっと本部員に入れるべきだということを各党から婦人議員がお願いしているはずでございます。それが一向に実現しておらない。その点についてどうですか、婦人をもっと登用されたらどうなんですか。
  152. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 私、副本部長でございますのでお答えをいたしますが、婦人問題についての企画推進本部の本部員は、お話のように総理が本部長、私が副本部長、そして本部員は関係省庁の次回をもってこれに充てております。しかしながら、御婦人が一人も入っておられないのは事実でございますので、   〔委員長退席、理事岩動道行君着席〕 参与という制度を置きまして、参与四名の方々に御就任をいただきまして、そのうちの三名は婦人の方でございます。さらに、本部の中には幹事会を置いておりまして、幹事会には関係省庁の局長等にその仕事に当たっていただくということにいたしたわけでございます。これには、申すまでもなく、労働省の婦人少年局長を初めとする御婦人も入っておられます。それからさらに、この本部の諮問機関といたしまして、婦人問題企画推進会議を設けまして、全部で三十三名でございますが、そのうちの三分の二は婦人の方々でございます。したがいまして、本部といたしましては、十分御婦人の方々の御意見を反映させることができるというふうに考えているのでございます。また、国会には多くの婦人議員の方々がおられるわけでございまして、婦人議員にも、この企画推進会議等にも御出席をいただくなり、あるいはその他御相談を本部から申し上げるなどいたしまして、十分にその声を反映さしていただきたいと考えているところでございます。
  153. 佐々木静子

    佐々木静子君 植木総務長官昭和生まれの男性のチャンピオンとしてお入りになったということは、私どもも必ずしも歓迎しないというわけじゃないんですけれども、この本部員の名前を見ますと、十三人全部が男ですよ。ここの国会を見ても、みんな政府委員にしても議員もほとんど男ですけれども、人口の半分が婦人だというのに、これはいかにもおかしい。しかも、婦人問題を取り上げるのに男ばっかりずらっと十三人並んで考えたって、失礼ながら余りいい知恵は出ないと思いますよ。その点、どう考えていられるんですか。
  154. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 先ほどお答えいたしましたように、その本部員というのは関係省庁の次官以上をもって充てておりますので、婦人の次官がまだおられませんものですからこういう姿になっておるわけでありますけれども、実質的ないろいろな仕事はもちろん本部員がいたしますけれども、幹事会がこれを推進をしていくことになろうかと存じます。  それから先ほど申し忘れましたけれども、これらの仕事をいたしてまいります上での事務的な面は、総理府の中に新たに婦人問題担当室というのを設けまして、そしてそこでいろいろ仕事を進めていくことにいたしております。この担当室の室員は、七名のうち六名までが婦人でございます。先ほど申し上げました婦人会議のメンバーも三分の二が御婦人なのでございますから、この点については万遺漏がないように事は進んでいくというふうに思っているのでございます。
  155. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあ、そんなに婦人のことを考えていられるとすれば、いまとりあえずそれで発足したということはやむを得ないとしても、総理いかがですか、将来、副本部長を、総務長官も結構ですよ、しかし一人に限ったことじゃない、やはり婦人を入れるというようなことをここでお約束できませんか。
  156. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 佐々木君のいまのお話は、総務長官が選考するときに、次官という一つの現在の役所の——それは次官がおったら無論入るわけです。次官がいませんから、ある役職におる人たちで構成したわけで、それを補うためにいろいろ実際の仕事をする推進役になるのは御婦人の方が中心になってやるわけですから、その会議体としての中に婦人の声が強く反映するということは当然にあると思います。むしろそういうおえら方よりも、そのもとをいろいろとこう、案をつくりますそういう人たちの方が大事ですからね。実際問題としては、佐々木君の御指摘のようなそういう結果にはならぬと考えております。
  157. 佐々木静子

    佐々木静子君 その御趣旨はわかりますが、そのおえら方の中に婦人を入れるということに、この国際婦人年の世界行動計画の意義があるわけです。次官プラス婦人の代表ということにされたらどうですか。
  158. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは将来考えなけりゃならぬことで、役所というのは形式的に考えますからね、役所の人事、そういうことでしたんでしょうが、それはそういう形式的に考えないで、特別にそういう場合を考えるぐらいの弾力性があっていいんだと思いますが、それはひとつ将来の考える課題にいたします。
  159. 佐々木静子

    佐々木静子君 党人派である総理が、役所の形式主義を是正する意味においても、ひとつここでお約束していただきたい。将来のことで結構です。
  160. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは全体のなんでございますから、約束と、こう、いますぐに約束というわけにも、皆と相談もしなきゃなりませんが、実際に動かすところへは婦人中心に、この会議というものを動かしていく重要な部門には婦人の方々が中心になる、そういうことで、運用面においては、それは佐々木君のいろいろ御懸念なさるようなそういうことにはならないで、あくまでも婦人というものの意見が十分反映できるような運営をいたしますことはお約束をいたします。
  161. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういう御趣旨ならなおのこと、この際ぱっと思い切って総理がやられれば、総理の人気も上がるはずですよ、二三%よりも。ですから、そこは篤とお考えになったらいいと思うんです。  ただ、時間上このことばっかりにかけられませんので、この国際婦人年に、いま深刻な問題として四年制の女子大学生の就職問題があるわけです。で、これは先ほど来の栗林委員質問に対し、また先日黒住委員質問に対して総理並びに労働大臣が、求人が二・一倍だからと楽観的なことを言ってらっしゃるけれども、これはなかなかそういう問題じゃないわけです。これは私、いまこれ、きょう着いた分だけ持ってきたんですけれども、女子大生の人々がそれぞれ深刻な悩みを持って訴えてきているわけです。その事柄について、これは総理並びに労働大臣にお考えを、対策を述べていただきたい。
  162. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) ことしの企業のなかなか厳しい情勢でございますから、一般の男子大学生もなかなか厳しい。そこで御心配いただいてるんですが、特に女子大学生の場合には四年制大学になかなかむずかしい問題があるように、私も個人的な陳情もいただいております。何とかしてこういう方々が入社試験のチャンスをどうして得られるかと。短大の方々は文部省の数字などを見ましても、まだまだ余裕があるようでございますけれども、四年制の大学卒業生、本当にこうした方方に、企業に対しましても、りっぱな女性に働いてもらうことは企業のためにもなりますし、そういうことでせっかくいまそちこちに対して働きかけをし、いまから先もやっていこうと、こう思っております。
  163. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ、一般の雇用というものがこういう状態でございまして、いま御指摘のように、四年制の女子大学生というものの就職の門が狭くなっておることは事実です。まあ労働省を督励しまして、できるだけ就職機会を増大するように努力はいたします。
  164. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは文部省に伺いたいんですけれども、どうも女子大生の訴えを見ますと、大学当局自身が女子大生の就職に対してはきわめて力を入れておらない。あるいは、これは東大の今度卒業する学生の方たちの話でも、就職の相談に行くと、あなたのように魅力のある人は永久就職の方がいいんじゃないかとか、四年間大学にいてていい相手が見つからなかったかとか、そういうふうな答えらしい。そういうことはいまの大学制度というものをどう考えているのか、文部省の方としてもどういう行政指導をしておられるのか、その点伺いたいと思いますね。
  165. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) お答え申し上げます。  文部省といたしましては、学生の指導あるいは就職あっせんなどに当たりまして、決して男女の別というようなことを考えることはないようにと思っておりますから、そういう態度で臨んでおりますし、また私は、いま別に先生が婦人議員であるということでお聞きになっているとも思わずお返事を申し上げております。そういう態度で考えております。ただ問題は、いまわれわれが調べましたところでは、やはり職種別によりましてある程度の差異があるようでございます。ですから、先ほど労働大臣が申されましたように、短大の方が余裕がある、四年制の場合でも流通関係などは比較的就職がしやすいというような問題があるというふうに聞いております。それが現状でございます。
  166. 佐々木静子

    佐々木静子君 文部大臣に伺いますけどね、その各大学の学生の就職のことについて、ほとんど女子大の場合は資料がないそうです、昨年はどうだったとか。もうほとんどなくて、個人のコネに任せている。そういう事柄について、教授の内容とかなんとか、そういうことはともかくとして、その大学当局のそういうあり方について、婦人が社会的に進出していくためにはもう少し文部当局としたら前向きの姿勢に取り組まなくちゃならたいんじゃないか、そのあたりいかがですか。
  167. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) ただいまのことでございますが、これは個々の大学によって差異もあろうかと思います。しかし、先ほど申し上げましたような流通関係のことを専門にしておりますような大学では、実は婦人に対する求人数が非常に倍率が高いというようなケースもあり、当然そういう学校では従来からのケース、そういうものに基づいての将来計画というものもあるわけでございます。あるいは申し上げるまでもございませんが、一般に看護婦さんが不足しているというふうなことで、そうしたものにつきましては当然将来計画というふうなものもあり、従来の実績というものを配慮して考えていくということもあるかと思います。  ただ、御指摘のように、あるいは学校によりましては、男性の学校ほどそういうことに配慮していないところがあるいはあるかもわかりません。しかし、これは個々の学校のことでございますから、全体的なパーセンテージがどうなっているか、学生部の指導方針がどうかというふうなことを私どもは残念ながら現状では把握いたしておりませんけれども、高等教育に関しまして私たちが考えております態度は、これは申し上げるまでもなく、全く男女の別のない事柄であると考えております。
  168. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは労働大臣に伺いますが、九月のこれは十日でございますか、婦人少年問題審議会での労働大臣の談話というものをいただいておるのですが、「今や婦人の能力の有効発揮が今後の国の発展を左右するといっても過言ではありません。」ということを言っておられるのですよね。そのことは結構なんですが、現実にいま就職で起こっている問題、これは各大学からいろんなデータが集まっているのです。ともかく女子大学の場合は、結婚したらすぐやめてもらうがそれでいいかとか、三十三歳になったらやめてもらう、三十五歳になったらやめてもらう、お茶くみはしてもらう、女子の下宿通勤はだめだ、いろんなことを企業が、もうこれは枚挙にいとまがないほど言っているのです。こういうことに対して、労働君は一体どういう態度をとっておられるのですか。
  169. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 先生はきのうも、国際婦人年の東京会議にも御出席いただきましたが、あの際も私がごあいさつ申し上げましたように、男女平等をうたいながら、まだまだその実が上がっていない。そういうところに私たちは、今度の世界会議の勧告もありますし、なお一生懸命努力しなきゃならぬ。そして、これがおっしゃるように線香花火に終わらないように、総理大臣を本部長としてこういう会議などを持ちながら、やっぱり社会の啓発、宣伝、そういう中に、またお勤めになる御婦人方の勤労に対する考え方と申しますか、そういうことで、あわせながら啓蒙、啓発、宣伝というものを一生懸命やらなけりゃだめだ、こう思っているわけであります。
  170. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういう抽象的なことはわかりましたが、具体的に私、いろいろな会社のデータを集めたんですが、いま就職を希望していった人のことだけを聞いて、会社側の言い分を聞かずにここで会社の名前を一々挙げるのもどうかと思うので、なんでございますけれども、こういうことについて労働省は適切な行政指導をやっていられないんですか。野放しにしていられるんですか。
  171. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 婦人少年局長から……。
  172. 森山真弓

    政府委員(森山真弓君) お答えいたします。  男女の雇用問題における差別につきましては、確かに理想は、かねて私どもの考えていることは変わりませんけれども、現実には非常にむずかしい問題があるということは先生御指摘のとおりでございます。男性に比べて若い年齢で退職をしなければならないという事態があるのも事実でございますし、その他いろいろな面で、法律、制度上ではございませんけれども、それ以外の面で実際上いろいろと問題があるということは、私ども日ごろの仕事の上で始終接触していることでございます。たとえば若年定年の問題につきましては、具体的に事例が起こりました場合には早速に是正を指導しておりますし、そのほか、その以前に基準法上に請いてございます同一労働同一賃金に対する問題につきましては、監督指導を強化しているというようなことで、個々の事例につきまして具体的な指導をいたしております。  ほかに、先ほど先生がおっしゃいました大臣の談話は九月十日に出たわけでございますが、その後を受けまして九月十五日から十日間婦人労働旬間というのを私どもの機関でいたしまして、特にこの面につきまして世論の啓発、指導ということに力を入れてやったわけでございます。その中では、特に働く婦人の側から問題を提起していただくチャンスを広げようと思いまして、特別の相談日その他を設けまして御相談に応じるという活動もいたしましたし、また一般に対する啓発、指導ということもいろいろな場をかりまして大きく展開したわけでございますが、なかなかその理想のとおりに直ちには実現がしにくいというところにいろいろと問題があるわけでございます。今後とも続けて努力をいたしていきたいと思う次第でございます。
  173. 佐々木静子

    佐々木静子君 婦人少年局は非常に努力をしていらっしゃるということはよくわかるんですが、しかし、困った質問になると男性大臣が逃げてしまうんじゃ困りますね。やっぱり、しっかり大臣も答えてもらわないといけませんね。
  174. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 日本じゅうの役所の中にたった一人の局長でございます。あの人が一生懸命やられるのを、私がしっかりバックアップしていかなきゃなりません。
  175. 佐々木静子

    佐々木静子君 総理はどうですか、基本的に。
  176. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、森山局長、労働大臣、皆——私ももちろんでございます。
  177. 佐々木静子

    佐々木静子君 非常に結構な御答弁なんですが、それじゃ伺いますが、まず、その本家本元の国家公務員ですね、この国際婦人年に私もメキシコの会議に顧問の一人として参加さしていただいたんですが、それに行くについて、実は行政庁、各省の人事課長さんにお運びいただいて、国家公務員の採用状況について伺ったわけです。  それで、これは人事院総裁にまず伺いますけれども、この五十年度の国家公務員試験の概要、これを見ると、男子に限るというところが非常に多いわけですね。特にけしからぬと思うのは、国税専門官、これはなぜ、人事院総裁、男子に限るというふうなことで募集していられるのですか。
  178. 藤井貞夫

    政府委員(藤井貞夫君) まず私からお答えいたしまして、補足的には国税庁の方が専門でございますので、御説明があると思います。  いま先生御指摘になりましたように、受験の資格を男子に限っておりまする試験が、いまのところ十二区分ございます。これにつきましては前々からも各方面から議論もございますし、われわれといたしましても問題意識を持たないわけではないわけでございます。特に本年に入りましてからは国際婦人年というようなこともございますので、前向きの姿勢で取り組みたいという気持ちは私といたしましては持っておるわけでございます。ただ、試験というのは、これは御承知のように、われわれの方では、試験の枠が決まりますれば、その仕組みに従って公正妥当に行えるように努力をするものでございますけれども、   〔理事岩動道行君退席、委員長着席〕 それぞれ採用いたしまする各省は、要するに需要者側でございまして、いろいろ注文があるわけでございます。税務の関係で申しますると、直接に採用するのは国税庁ということに相なります。また、刑務官というようなことになりますと法務省というようなことで、それぞれ注文があるわけでありまして、それについては、われわれの方といたしましては、むげにこれを無視するというわけにはまいらないということでございます。たとえば、国税の関係で申しますと、滞納処分の問題であるとか、あるいは実際の脱税等の査察であるとかいうようなことになりますと、仕事の内容がどうしても非常に酷になる、なかなか男性でも大変だというようなこともございます。そういうことで、従来から男子に限る十二区分の試験というものをいままで実施をしてきたわけでございます。ただ、いまも申し上げましたように、いろいろ問題点もあることも事実でございますし、少なくとも試験を受けさせるということぐらいはやったらいいじゃないかというお考え方にもごもっともな点もございますので、ことしになりまして、私どもの方から各省庁の方に働きかけまして、いろいろひとつ見直しをやってくれということで検討をいたしております。従来の長い間のいきさつもございまするし、各省庁の仕事の実情ということもございますので、急に結論を出して来年からどうこうということは、いまこの席上ではお約束をいたしかねることでございますけれども、前向きに検討をいたしておりまするので、その結果を待ってひとつ十分に慎重な考慮を払ってまいりたい、かように人事院といたしては考えておる次第でございます。
  179. 佐々木静子

    佐々木静子君 人事院がそういう形式的な御答弁だとすると、実質的に、たとえばいまの国税専門官の件、これは国税庁ということですが、主管官庁は大蔵省になるんじゃないんですか。大蔵大臣、大変に御退屈なさっていらっしゃるようですけれども、大蔵大臣、いかがですか、この国税専門官、男子に限るということについて。——大臣に先に。
  180. 横井正美

    政府委員(横井正美君) 技術的なことがございますので、私からとりあえず御答弁をさしていただきます。  最初に、前提といたしまして、私どもの職場におきまする女子の処遇でございますが、現在四千九百名ほど女子職員がおるわけでございます。この中には、非常に能力があり、意欲もある方がございます。そこで、私ども、そういう方、だんだん登用してまいりまして、現在税務署の課長クラスでございます統括官、これに七名、それから補佐、専門官、こういうクラスに合計二千名ほど登用いたしまして、女性につきましてもよい職場にいたしておると、こういうつもりでございます。  ただいまお尋ねの国税専門官でございますが、これは四十五年創設以来、大学卒の国税専門官試験でございますが、男子に限っておるということでございます。この理由でございますが、第一に御理解いただきたいと思いますのは、私どもの税務の職場の特殊性でございます。税務の仕事の中心は、御承知のように、調査、検査、滞納処分、こういう仕事が中心であるわけでございます。これは、御承知のように、単独で納税者の事務所、事業所等に参りまして、単に帳簿に当たるだけではございませんで、現物について当たる、あるいはまた反面調査をするというふうな仕事でございまして、大変肉体的、精神的にも苦痛を伴う仕事でございます。特に、国税専門官につきましては、採用後数年の経験を経まして、そういう税務の仕事の中でも特に複雑困難な仕事をお願いいたしたいというふうに考えておるわけでございます。そういう意味合いから考えまして、まあ男性が中心であり、また男子を必要とすると、こういう仕事であるということについて御理解をいただきたいと思うわけでございます。  第二に申し上げたいのは、女子の特殊性でございまして、私ども、現在高校卒を笹年百五十名から二百名程度採用いたしておりますが、この離職率をながめてみますと、二十三歳で三〇%の方が離職をされます。二十五歳で五〇%、三十歳になりますと七〇%の方が離職されまして、残りは三〇%になるわけでございます。また、法律的な問題ではございませんけれども、現実の問題といたしまして、転勤が非常に困難だと、こういう事情もございます。そういうことからいたしまして、私どもの税務の中心的事務である調査、検査あるいは滞納処分、こういう事務につきましては、終身働いていただける、それからまた、どこででも働いていただける、どんな仕事でもやっていただける、こういう意味合いにおきまして、男性に限らざるを得ないと、かように考えておるわけでございまして、この辺の事情を御理解いただきたいと考えておるわけでございます。
  181. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま事務当局からお話し申し上げましたような事情でございますので、御理解を賜りたいと思うのでございますが、佐々木先生も御承知のように、税務につきましても、初級一般の試験は女性にも開放いたしておるわけでございまして、その後の処遇、昇進等につきましては、男性と差別はいたしていないと承知いたしております。
  182. 佐々木静子

    佐々木静子君 全く御答弁納得できないんです。と言うのは、私は大蔵省はこの人事の採用について最も差別意識がはなはだしいと思うわけです。これは何も女であれば何でもかでも採用してくれと、踏み台に乗せてでも採用してくれと言うんじゃなくて、私の質問趣旨は、上級職の試験を受けさせろということで、その試験の結果だめな者まで採用してくれとは言ってないわけなんですね。そこら辺で、これはほかの官庁の上級職だって、これは転勤があることはあたりまえのことですよ。危険を伴うとかなんとか言ったって、婦人の検事だっているんですよ。労働基準監督賞だっているんですよ。大蔵省はその点非常に意識が古いですね。何とかもうちょっと、大物大臣がおられるんだから、改善されたらどうですか。どうですか。
  183. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) まあ精いっぱい考えてみます。
  184. 佐々木静子

    佐々木静子君 非常に簡単なお答えなんですが、本当にこれは、まあことし、五十年度のはなんですが、五十一年度の、もう来年の受験がありますよ。それまでに改正できますか。
  185. 横井正美

    政府委員(横井正美君) お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたような事情がございます。これが将来どのように変わってまいるか、もちろん、その意欲があり、能力がある女性はたくさんいらっしゃるわけでございます。しかし、一般論といたしますならば、現在の女性の採用につきましては、先ほど申し上げましたような事情でございますので、試験をお受けいただくわけにまいらないと、かように考えておるわけでございます。そういうことでございますけれども、私ども実は、これからの女性の私どもの職場においてやっていただく仕事は何であるか、あるいはまた、女性についてそういう仕事についていただくために、採用時あるいはその後にどういう研修をしたらいいか、あるいはまた、どういう処遇をしていったらいいかというふうなことを検討はいたしたいと、かように考えておりまして、国税庁内部でございますけれども、検討委員会はつくっておるわけでございます。  それからあわせまして、高校卒について申し上げますと、女子の採用時の研修が各国税局によりまして若干短いところもございましたので、これを統一的に研修を実施いたそうと、若干充実いたしたいということで、当面、来年から、採用当初におきまして、数カ所に分けまして一カ月程度の研修を実施いたそうというふうなことを決めておるわけでございます。
  186. 佐々木静子

    佐々木静子君 ともかく、いま労働大臣も言われ、総理もそのとおりだと言われた、この女性の能力がどれだけ社会的に活用されるかは国の命運を決めているということまでになっているんですよね。税金というようなことは国民生活にきわめて関係の深い問題、これを女子を幹部から締め出しているということは私はけしからぬ片手落ちだと思うんです。しかも、その税務署の幹部になる税務大学校ですね。そこへなぜ研修に女子をやらないかというと、税務大学校に女子寮がないからやれないというのがいままでの返事ですよ。どうですか、本末転倒もはなはだしいでしょう。それから、あるいは税務大学校に、極端な人は、女子のトイレがないから、だから女子をたくさん採用するわけにはいかないんだなんて、そういうふうなふまじめな議論を大蔵省はしていられるんですよ、いままで。どうですか、大臣からしっかりした答弁をしていただきたいですね。
  187. 横井正美

    政府委員(横井正美君) 技術的なことでございますので、私からとりあえず御答弁申し上げます。  ただいま御指摘がございましたような理由ではございませんで、御案内のように、人事院規則におきまして、研修と申しますのは、「職員が現在ついている官職又は将来つくことが予想される官職の職務と責任の遂行に密接な関係のある知識、技能等を内容とするものでなければならない。」と、このように定められておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、私どもの職場におきまする中心的な仕事でございます調査、検査、滞納処分、これは原則といたしまして男性にやっていただかなければいけないと、こういう仕事であろうかと考えております。女子につきましては、その周辺にございますような仕事をいろいろお願いしておりますが、もちろん、これも非常な知識、経験を必要とすることでございますので、研修を施しました上で税務職俸給表を適用しておると、こういうことでございます。そこで、男子につきましては、まあ生涯、税務の調査、検査、滞納処分等をやっていただくということでございますから、それに必要な研修ということで一年間の税務大学校普通科の研修を行っておるわけでございます。女子につきましては、当面ついていただきますところの所得税、法人税等の内部事務等についての必要な研修を施しまして、それぞれの職場についていただいておるということでございます。その女子の場合におきましては、当面ついていただく仕事が限られておるわけでございますから、短期間の研修にとどめておるというのが実情でございます。その後におきましては、随時必要な研修を施しまして、先ほど申し上げましたように、税務署の課長とか補佐、専門官、係長、こういうところに登用しておるという状況でございます。
  188. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) せっかく御指摘がいろいろございましたので、篤と検討させていただきまして、前向きに対処させていただきます。
  189. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはぜひとも、大臣、前向きに取り組んでいただかないといけないと思いますよ。もう一遍世界行動計画をよく読んでいただいて、この女性というものに対する非常に誤った観念、これは明治以前の意識ですね。大蔵省は、その点、非常に頭の改革をしていただかないと、これはもう国民と完全にずれ離れておりますよ。そこは十分検討していただきたい。——うなずいていらっしゃるから、必ずやっていただけるというふうに私は受け取りまして、次の質問に移ります。  いま、婦人少年局の方から、若年定年制の問題などについてもいろいろ苦労しているというような御発言がありましたが、これは自治大臣に伺いたいのですけれども、いま、地方自治体が、財政の窮乏というようなこともあるとは思うんですが、そういう事柄にかこつけて、どうも勧奨退職を女子にしぼって行っている。特に、共かせぎの夫婦のうち、夫を管理職につけてやるから妻の方は退職せよというふうな、非常に悪らつな、陰湿なやり方をしている。これは熊本県の八代市、五人そういう話がありました。そのほか、各地方自治体にいろいろあるんですけれども、自治大臣はその点についてどういう指導をしていられるんですか。
  190. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。  熊本県においてそういうような事例があったということは承っておりますが、具体的にどうであったかということについては、まだ正確な報告は受けておりません。しかし、いずれにしても、婦人の場合におきましては、その職務の実態、それから、果たして勧奨退職をさせることが合理的な必然性があるのかどうかというようなこともよく考えて、そしてまた、本人の自由意思というものを十分認めて処置をすべきものであるというのがわれわれの一般的な考えでございます。
  191. 佐々木静子

    佐々木静子君 民間企業においては、たび重なる裁判所の判例で、もう定年差別というものは行えないということがかなり徹底しているわけです。その点、地方自治体は非常に民間よりおくれておるわけですね。自治大臣、その点どうですか。
  192. 福田一

    国務大臣福田一君) 自治省といたしましては、いま御指摘になったような意味で無理を各地方自治体がしておるというふうには考えておりません。私が先ほど申し上げたような一般原則に基づいて適切な措置をとるようにという方向を示しておるわけでございまして、具体的な例について、これはそれぞれの個々の事情がございますから、それに基づいて処理をしていただく。大体、自治省が余り自治体に干渉いたしますと、自治を阻害するということでいろいろおしかりを受けることもございますが、そういう意味からいっても、やはり一応の方向というものは出さにゃいけないけれども、あとは、やはりそれぞれの地域あるいはその自治体における特殊性に基づいて、また、その個々の雇用の関係とかあるいはその雇われている人の事情とか、いろいろなことで私は処理をされるべきものであると考えておるわけであります。
  193. 佐々木静子

    佐々木静子君 この地方自治体の自治の尊重ということも、もちろん憲法上の規定で大事だと思うんですけれども、いまのこの男女平等ということももちろん憲法上の規定で最も大事な人権保障の規定なんですからね。あなた、勝手に自分の都合のいいところばかり地方自治の尊重と言うんじゃ話にならぬですよ。  それで、労働省が民間企業に対して定年退職制というものを厳しく行政監督していかなければならないのに、県や市が若年退職を認めているというんじゃ、これはもう説得力もなくなってしまいますよ。その点、労働大臣と自治大臣に、もう一つこの件についてどういう御見解にあるのか、どのように対処していかれるおつもりなのか、お聞きしたいと思います。
  194. 福田一

    国務大臣福田一君) いままでの慣例とか、あるいは従来の事情とか、いろいろございましょう。そういうことがこういうことになっていると思うんでありますけれども、まあ、男女平等というこの一つのたてまえも、これは一つの考え方であると私は思っておりますから、今後研究をいたしてみたいと思います。
  195. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 若年定年制の問題につきましては、先生おわかりのとおり、憲法とか、労働基準法とか、あるいはまた勤労婦人福祉法の基本理念にもとるものと、こういうことを考えまして、私の方としますと、おっしゃるとおり、積極的に労使、社会一般にこの啓発をずっと進めてきたことでありまして、個別的な事例につきましても、婦人少年局長から、そういう問題があった場合には、それぞれまた御指導申し上げ、啓発をしていると、こういうことでございます。
  196. 佐々木静子

    佐々木静子君 ともかく、国際婦人年と言いながら、情けなくなるくらいに日本国内には男女の差別が満ちあふれているわけです、特に働く婦人について。  それで、総理に伺いたいんです。総理は今度、主要国の首脳会議にお越しになるということで張り切っていらっしゃる。この先進国の中で男女差別が日本はかけ離れて大きいわけですよ。総理は、今度の婦人問題の企画推進本部長でいらっしゃるでしょう。日本でどのぐらいの男女差別があり、他の、いわゆる今度いらっしゃる国々、先進国の中の男女差別との比較はどのぐらいなのかということを、一遍総理自身から答えていただきたいです。
  197. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) その数字的な比較は労働省からでもお答えしますが、われわれしばしばいろんな外国にも参りますが、それは各方面で婦人が活躍をしておるわけでございまして、日本は、まあそれは一つの、婦人を不平等に扱うというよりも、長い社会的慣習もあると思いますよ。特にこう、婦人に対して不平等な扱いをするから婦人の働く場所が狭いというよりも、日本の婦人というのは非常にいいところもありますからね、婦人は。(笑声)また、日本婦人の持っておる特性があるですからね。やはり西欧の社会というものは本当の平等から出発したわけですが、日本は、古い、ああいう市民革命のような形を経てないですからね、そういう点で、長い日本の慣習、歴史的な伝統があって、昨今言われるように、婦人を不平等に扱ったからそういうふうになった、不平等に扱うという意識的な扱いというよりも、それは日本の持っておるいろんな歴史的な慣習というものがあるんじゃないでしょうか。そういうもので、西欧の社会に比べて非常に婦人の職場における働き場所というものが狭いと思いますね。これはやはり是正していかなければならぬ。いま大蔵大臣との間にもいろいろの質疑応答がありましたが、まあ日本は男子だけの職場というのが十種類ぐらいあるんですよ、十種類ぐらい。その中で、必ずしも合理的でないじゃないかと思われるものもあるんですよね。男子に限る必要はないんじゃないかと思われる点もありまして、森山局長は人事院の任用局長に向かって——民間に奨励するですからね、婦人の職場を広げてくれと。政府みずからが姿勢を示さなければならぬ。だからもう職場における男女平等を確立するように、ひとつ人事院からも各省に対してそういうふうな勧告を与えてもらいたいといって強硬な申し出をしたんですよ。私はやっぱりもっともな話だと思いまして、私も閣議でしばしば、もう少し各省が採用試験の場合に、婦人というものはこの職場はいかぬ、あの職場はいかぬと言わないで、まあ職場によったら婦人の向かぬ職場もありますが、できるだけ婦人の採用をふやしてほしいということを、いままでも閣議で私が発言したこともございますし、まあ将来広げていかなければならぬと考えております。
  198. 佐々木静子

    佐々木静子君 格差のことについて伺っている、賃金格差。
  199. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 賃金格差は、婦人の、何ですね、一つの職場、仕事の職種といいますか、それと勤続年数なども婦人の方が短いということであり、そういう点でやむを得ない格差もありますが、統計の上においては、男女の格差というものは、男女の賃金の格差というものは、それはあるということですよ。それはやっぱりいろんなやむを得ぬ事情もあるけれども、合理的でないなあと思われる点もございますから、この点はやっぱり是正していかなければならぬ点だと思います。
  200. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう少し賃金格差の現状というものを——婦人問題の企画推進本部長ですからね、一番中心になってやっていただかないといけないわけですよ。それを私が心配しているんですよ、男ばかり集まって、そういうことにどれだけ関心を持っているかということね。非常にその点残念ですね。担当の大臣いかがですか。
  201. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) いま総理からも御答弁がありましたけれども、まあこの努力によりまして、その格差が従来言われたよりは年々縮小している、こういう傾向にあることも御理解いただきたいと、こう思います。
  202. 佐々木静子

    佐々木静子君 総理が首脳会議にいらっしゃる、これデモクラシーのためにぜひ必要だということをこの委員会でも強調されたわけですね。総理、ちょっとよく聞いてください。日本における男女の賃金格差は五三ですよ、一〇〇対五三。ほかの先進国と言われる今度行かれる国は、みんなもっともっと、七七とか、フランスなんかは八七ですか、一番少ない国でも六〇台ですよ。総理、恥ずかしくないですか、デモクラシーと言われる以上。本部長としてこの問題の解消にどのように取り細まれますか。
  203. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) ただいま五三%とおっしゃいましたけれども、私どもの調査では、同じ勤務時間で五九%という数字が出ております。私どもの方ではそういう数字が出ております。  それで、実は御承知のように、日本の場合年功序列制でございます。で、先ほどお話がございましたように、若年定年制と申しますか、若年でやめていかれる方が多いという実情等もございますために、いま申し上げましたような格差が生まれているのでございます。確かに先進諸国に比べますと差がございますので、この点につきましては、この格差を埋めますための努力を続けてまいらなければならないと存じます。
  204. 佐々木静子

    佐々木静子君 総務長官に伺いますけれども、いま総理の御答弁にもあったけれども、働いている婦人の平均年齢が労いからということですが、本当に若いですか。いま平均年齢の推移がどんなになってるか、ちょっとお述べいただきたいです。
  205. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 平均年齢が幾らであるかということは、私は承知いたしておりません。ただ、先ほど御答弁の中に、どなたかにございましたように、非常に早くやめていかれる率というものは、それぞれ二十三歳で何%とか二十五歳で何%というふうに出ておりますように、最近は少しずつ改善はされつつありますけれども、非常に率としては、ほかの国に比べますと早くやめる人の率が高い。就業率につきましては、先進諸国と変わっているとは承知いたしておりません。
  206. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは総務長官総理もですが、婦人は若くてやめていくと言われるけれども、これはもう少し最近の統計をよく勉強した上で婦人問題を考えていただかないと困りますね。昭和三十年ごろはそうだったのですよ。昭和三十年には三十歳未満女子雇用者が六九%だったけれども、いまは非常に中高年になってきているわけですよ。四十九年では——たとえば三十年には未婚者は六五%で、有配偶者で働いている人は二〇%だったけれども、いまでは未婚者は三九%、有配偶者は五〇%、離別・死別者が一一%、六一%の人間が主婦あるいは……。ですから、つまり中年、高年の婦人が働いているわけですよ。そこら辺の婦人の労働についての推移ということを考えていただかないと、本部長はとても勤まらぬじゃないですか、どうですか。
  207. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も本部長でございますから婦人問題を勉強をしておるわけですが、いま御指摘の、確かに、たとえば四十五歳から五十九歳までの婦人というのは二百万名いるのですね、独身と離別あるいは夫を亡くされた人。その中で百万名働いていますからね、百万名。相当やっぱり働いておる婦人の層は多いと見なければならぬ、半分は働いておるわけですからね。そういう点で、やはり御指摘の昭和三十年ごろとは大分やっぱり雇用状態は違っておるということは承知いたしておる次第でございます。
  208. 佐々木静子

    佐々木静子君 この婦人の賃金差別というもの、婦人の場合は、これは一昨年、四十八年の統計ですけれども、ピークになるのが二十五歳から二十九歳、これが六万円ですよ、平均賃金、一昨年で。そして、それがそのままずっと横ばいで五十歳まで続いているわけですよ。男の人はこの五十歳の一番ピークになる時期には、初めは同じで出発しても、十四万円になっているわけですよ。三倍の違い。ただ男だ女だというだけのことで三倍の違いが起こっているんですよ。そういうことを本部長もっと真剣になって考えないとだめですよ。これがいいと思いますか。
  209. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も高年齢層がやっぱり平均年収六十万円ぐらいのものだということは承知しておるわけです。男子に比べて低い水準であることは事実です。会社側に言わせればいろんな理由があるのでしょうけれども、水準としてはやっぱり低い。これはやはり民間企業に対しても、できるだけ賃金の格差を縮めていく努力はしなければならない問題点の一つであると思います。
  210. 佐々木静子

    佐々木静子君 格差を縮めると言ったところで、具体的にどうやれば縮まると思うかということを総理と労働大臣に伺いたいわけです。あるいは総務長官もお考えがあれば述べていただきたいと思います。
  211. 森山真弓

    政府委員(森山真弓君) 先生御指摘の賃金格差のことにつきまして、少し数字を持っておりますので、大臣方の御答弁の前に御説明申し上げたいと思いますが、先生おっしゃいますとおり、比較では、確かにいわゆる先進国に比べまして日本はかなり低うございます。ただし、賃金制度あるいは給与の体系が違いますので、直接比較するということが必ずしも妥当ではないということは、先生よく御承知のことだと存じます。それから、平均勤続年数でございますが、男性の場合は九・八年、女性が五・五年というふうに、賃金構造基本統計調査、四十九年でわかっております。それから、働く労働者の平均年齢でございますが、女子は三十二・五歳、男子が三十六歳でございまして、そんなに大きな開きは、平均でとる限りございませんと思います。  それからなお、賃金の格差を縮めるという方法につきまして、わが国におきまして、同じ仕事に対して同じ賃金を払うということが労働基準法でははっきりと書いてございますので、法律上の問題は少なくともないというふうに思いますが、先ほど来お話が出ておりましたように、まず同じ仕事を与えるということが非常に大きな課題ではないかというふうに私は考えます。
  212. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) おっしゃるように、昭和三十年代は、なかなか男女の初任給なども格差がありました。しかし、四十年代になりますと、非常に需給関係が逼迫しておったということもありまして、中学校、高等学校、大学卒業生、大体初任給は一緒、そして長く勤めている間に職務内容によって差が出てくるというのがいままでの数字でございます。
  213. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 基本的には同一労働同一貨金というのに向かって努力をすべきであると思います。それから、現在のところ、職種、職場というものが十分に開放されておりませんので、それを広げていくということに努めなければならないと存じます。
  214. 佐々木静子

    佐々木静子君 対策について。もう重ねて私は質問したんですけれども、お二人に。現状がどうかということだけじゃなしに、その具体的な対策。
  215. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ただいま労働大臣からお答えございましたように、初任給につきましては、中卒、高卒、大学卒、男女についての差別はほとんどなくなっております。ただ、それから後、職務内容によりまして、たとえば労働基準法、その他いろいろな法令上の制限がありまして、一定の職種については、一定の作業内容については女子はつけないと、こういうことによりまして、次第に差がついていく、職務内容によっておのずから差がついていくということが男女間の格差の一番大きな原因であろうかと考えております。したがいまして、これを解決するためには、やはり男子と女子で——必要な女子の就業制限はこれは当然かと思いますが、一般的に行われているような必要のない職種制限、こういったものも現在はいろいろあろうかと思います。そういう点で、いま総務長官お話がありましたように、女子の職場を拡充していく、拡大していくということが、これが格差を解決する一つの大きな必要性かと考えております。
  216. 佐々木静子

    佐々木静子君 法令上と言うけれども、労働基準法の第三条に、性別による差別をしてはならないという、その性別という規定がないでしょう。ILO条約を、現在百十一号を批准するということを早くからこれだけ国民がやかましく言っているのに批准しないのも、その性別の二字を入れたくないために批准しないわけでしょう。そこら辺はどうなんですか。本気にやる気があれば早く批准して、労働基準法の第三条を改正すればいいじゃないですか。労働大臣、どうですか。
  217. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 基準法は私の所管ではございませんが、私の所管いたしております。たとえば新規採用で求人の条件等について、いろいろ、男子でなければならないと、こういう問題がございます。で、その一つは、いろいろ法令上の制限もございますか、ある一定の職場では、たとえば深夜業が禁止寄れている、残業が規制される、そういうことのために男子でなければ使えない、こういうことで、求人側から男子に限るというような条件がついてまいります。あるいはその他、いろいろ危険、有害業務等で、外国の例では認められているものが日本では非常に厳しくされている例がございます。したがって、そういう場合に、女子の職場がどうしても制限される、あるいは採用後そういう職種につけない、こういうふうなことで男女間の差がついてまいります。こういう点をやはり合理的に解決することが必要であろうかと、かように考えております。
  218. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは労働大臣も、それから総理もお答えいただきたいわけですよ。先ほどからあの局長のおっしゃっているのでは、母性保護の規定を結局悪用して、これがあるから平等にいかないんだと。母性保護というのは、これは女の人に恩恵を与える規定じゃないですよ。男の人は、ここへ幾ら並んでいらして、どんな偉い人か知らないけど、子供は産めないんですからね。ですから、そのために婦人に母性保護の規定があるので、これは人類に与えられた保護ですよ。そこをすりかえていらっしゃるわけですよ。ですから、その問題と混同したらだめですよ。労働大臣と総理の御意見を伺いたいですね。
  219. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 職安局長の答えたこともおわかりいただいたと思っているんです。同一業種で同一賃金、これは一つの例を申し上げますと、学校の先生などは男女とも同じだと思うんです。そういう意味での私は同一賃金、そうしてそこの辺に格差がなくなる、こういうふうな方向にいくべきだと、こう思っております。
  220. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私はこういうことだと思うんですね。職種というものと、やっぱり雇用形態がありますね。終身雇用制で、年とれば自然に給料が上がっていくという、こういう雇用形態、職種によって賃金が違うと、こういうことで、一つにはやっぱり婦人のための職種といいますか、働く場所というものを広げていく努力というものが必要であるし、また、できるだけこれからは働く婦人がふえていくと思いますから、婦人でも、生理的な休暇は別として、やっぱりそれでまた就職できるという機会を確保して、そうして相当長期にわたって婦人が働けるようにすると、こういうふうなことで、これは国際婦人年でもありますし、いままでも労働省はやっておったんでしょうけれども、さらに強力に民間にも働きかけて、そういう点で同じような労働で賃金の差別待遇があるということは、これはもう許されぬことでございますから、そういうことは無論あってはならないのだが、さらに職種を広げていく、また、婦人の雇用の期間をできるだけ延ばしていけるように、民間に対しても強力に働きかけるということが問題の解決の焦点になる。また、官庁などに対しては、婦人の採用の門戸を広げていく、こういうことだと思います。
  221. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは本気になって考えていらしたら、問題なしに、ILO条約の百十一号を批准すれば、これはもう自動的。ただ、批准しないから、わざわざいまの政府はこういう差別をつくって、婦人の賃金格差、その他労働条件の不利益をつくっているわけですよ。あらゆる差別というものが、このILO条約の百十一号を批准することによって解消されるのですけれども、この差別の問題について、やはりもう少し、総理、真剣になって考えていただかないと困ると思いますね。いかがですか。女性差別だけの問題じゃないですよ。社会的差別、民族的差別、人種的差別、信条の差別、これ全部を撤廃しないといけないというのは、もう二十年前に国際条約で日本も加盟して決まっているし、総理が今度行かれる主要国会議の主な国々は、これはドイツもイタリアも、いろいろな国々がもう批准しているのです。日本だけが入っていないのです。そこら辺は近代国家として恥ずかしいとお思いになりませんか、どうですか。——総理の御意見です。総理に伺っているのです。
  222. 森山真弓

    政府委員(森山真弓君) ILO百十一号条約の批准につきましては、先ほど来お話が出ておりますように、わが国の現行の法律と多少問題があるところがございますので、それを検討しているところでございます。また、特に労働基準法につきましては、先生御承知のとおり、労働基準法全体につきまして、二十数年前にできた法律でございますので、いろいろと現在の状態と合わない点につきまして検討をいま専門家にお願いしているところでございますので、その結論を待っているところでございます。
  223. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 毎年の国会で、ILO条約を二本ぐらい、二本ぐらいというふうに、最近はずっと御批准あるいは御賛成いただいているわけでありまして、そういう国際的なレベルに日本が上っていくこと、そういう意味から、いま申しました条約についても、内部において労働基準法等々についても検討会をやって前向きの姿勢でがんばって、しかも、国際婦人年でございますから、幸いにこういうときにスピードアップをするというふうな考えでやっております。
  224. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 労働大臣と同じような考えでございます。
  225. 川村清一

    川村清一君 関連。  差別の問題についていろいろ議論が展開されておりますので、私も関連して一言、総理大臣にお尋ねをいたします。  三木総理は、十一月一日帝国ホテルで開かれた社会経済国民会議のパーティーに出席されまして、日本は教育水準も高いし、人種問題もないし、戦争もしない、これで世界のモデル国ができなければ政治家はだめになると、まことに結構な演説をされたように報道されておりますが、私はこの演説にけちをつける気持ちは毛頭ございません。しかし、いささか胸につかえることがありますので、あえてお伺いするために立った次第でございます。  総理のお言葉の中に、「人種問題もない」、こういう言葉があるわけでございますが、総理はどのような御認識によって発言されたのか私にはわかりませんが、総理、御存じかどうかわかりませんが、日本人は決して単一民族ではないわけであります。もちろん、アメリカのような人種問題はございませんが、日本のただ一つの少数民族である、しかも、北海道の先住民族でありましたアイヌ民族というのが存在しておるわけでございます。この民族の人たちは、明治政府以来政府の同化政策によりまして土地を取られ、言葉から生活、文化、皆奪われまして、貧困と病気、また就職、結婚、あらゆるものに差別を受けて、約一世紀にわたって今日に至っておるわけであります。しかし、戦後、民主主義の発展とともに、これらの人たち自分たちの力によってこの差別を撤廃しなければならないと立ち上がって活発な運動を展開しつつあります。私どももその側面からそれらの人々協力して、差別が完全に撤廃されるようにいろいろと努力をしてまいっております。しかし、この問題は解決しない。まだまだ差別が存在して、これらの人たちは苦しんでおるわけであります。こういう事実を認識された上に立って、日本には「人種問題もないし」というようなまことに結構な演説をされたのかどうか、この点、三木総理の御理解をまずお伺いいたしたいと存じます。
  226. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アイヌ民族の問題を御提起になったわけですが、私が言うのは、やっぱり各国が抱えておる人種問題というものは非常に社会的緊張を呼ぶような人種問題ですね。日本にアイヌ民族——いまは無論こういう局主主義のもとにおいて平等であるわけですが、いろいろそういう社会的慣習というものはいまだに残っておるのかもしれません、御指摘の。しかし、一つの原則として特に不平等という取り扱いはないわけでございますが、とにかく、よその国の抱えておる人種問題というものは、これは日本のいま御指摘のような問題というようなのではなくして、アメリカでもあれだけのやっぱり非常に人種問題を抱えて、内政上の最大の課題であるわけですから、アイヌ民族のこととかなんとか、私はそういういろいろ緻密に検討して言ったんではなくして、いわゆる世界で言う人種問題と称せられるような問題は、まあ日本では幸いにして、諸外国にあるような人種問題は抱えていないということを言ったので、細かい——細かいと言ってはなんですが、そういう問題を分析して言ったわけではない。全体として日本は、世界の持っておるような人種問題はない国である、まあ同質の民族であると、こういうことで言ったわけでございます。
  227. 川村清一

    川村清一君 関連質問でございますので、あと一問しかできませんので簡単に申し上げますが、総理の御答弁を承りまして、余り総理はこの問題につきましては知識もないようでございますし、深刻にもお考えになっていらっしゃらないように私は受け取りました。  私は少なくとも、社会党のアイヌ民族対策特別委員会の委員長という立場でお尋ねしておる次第でございまして、この問題は、総理、私はっきり申し上げておきますが、本州における部落解放運動のように大きな政治的な問題に発展する可能性は十分ございます。アイヌ民族というのはそもそもきわめて温厚な民族でございます。であるがゆえに、彼らの言葉で言えばシャモ、つまり和人——われわれであります、によって征服されたわけであります。そこで、私どもは一番の問題のこの差別を完全に撤廃したいと、そのためには、彼らに対する福祉政策を強化、拡充いたしまして、彼らの生活、地位というものをうんと上げてやらなければならない。そのためには教育の問題があり、住宅の問題があり、生活環境の問題があり、あるいは産業発展の問題等々、たくさんあるわけであります。したがいまして、毎年予算編成期に当たりましては、私どもは厚生省あるいは建設省、農林省、文部省、各省庁にわたって、ウタリ対策と言うんですが、ウタリ対策予算を強化することについて要求してまいりました。総理は余り御存じないようでございますが、政府におきましては、各省庁にまたがる問題でございますので、北海道開発庁にこの窓口を響いて、そこで各省庁にまたがる問題を調整して大蔵省に予算を要求しておる、これが実情なんであります。
  228. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡単に願います。
  229. 川村清一

    川村清一君 総理にぜひお答えいただきたいのは、この問題を完全に解決するためには、同和対策のように特別立法をすることが最も必要であります。そのためには審議会のようなものをつくって、ぜひ検討していただきたい。この御用意があるかどうか、そういう御意思があるかどうか。これを総理から明確にお聞かせいただきたいことと、明年度の予算のためには、北海道開発庁長官、大いに努力する意思があるかどうか。それを受けて大蔵大臣、予算編成の上にそれを実現するために最大の努力をする御用意があるかどうか。この御三方からそれぞれ御見解を承りまして、私の質問は終わらしていただきます。
  230. 福田一

    国務大臣福田一君) ウタリ対策の問題につきましては、北海道開発庁としては非常な熱意を持ってこの問題の解決に当たっておるわけでございまして、その点はわれわれとして決して軽視をするというような考えはございません。来年度の予算の編成に当たりましても十分に関係各省に対して要請をいたしまして、問題の解決に前進をするようにいたしたいと思います。  なお、審議会を設置するかどうかということにつきましては、ただいま、いかが処置するかということについて、北海道開発庁におきましても、また北海道自治体におきましても、いろいろ検討をいたしておる段階でございますので、さよう御承知を願いたいと思います。
  231. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 北海道開発庁からの御要求につきまして、誠意をもって検討の上対処いたしたいと思います。
  232. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま、大蔵大臣あるいは北海道開発庁長官の申したようなこの問題に対して熱意を持って取り組むことにいたします。
  233. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、差別の問題については十分に内閣としても責任を持っていただくということを重ねて要望し、次の問題に移りたいと思います。  これは、ことしの国勢調査の結果がまだ出ておりませんので、四十五年の国勢調査の結果によりますと、これは当時の四十五歳から五十九歳までの人口の違い、これは女の方が百三十五万多いわけです。これはどういうわけでかは無論おわかりになると思いますが、どういうわけでですか、総理
  234. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 戦争によりまして多くの男性が死亡したからでございます。
  235. 佐々木静子

    佐々木静子君 この統計を分析してみますと、これは五年前のことですが、当時の戦争中、いまから三十年前の一般の結婚による年齢差というものを五年と考えてみたときに、四十歳から五十四歳までの女の人と、それから五歳足して四十五歳から五十九歳までの男の人の人口を比べると、女は九百五十万人、男は六百八十六万人なんです。いま私は百三十五万と言いましたが、この五歳の年齢差というものを入れると、二百六十四万人というのが女の方が多いわけなんです。これをいまもっと細かく分けると、特に差の多いのが当時の——五年前のことです、四十五歳から四十九歳までの女の人は三百十九万日本にいるわけです。それに五を足した五十歳から五十四歳までの男の人の数は、実に百万少ないのですね。二百十五万なんです。また、当時の四十歳から四十四歳までの女の人の人口は三百六十七万、それから五を足した四十五歳から四十九歳までの男の人の数が二百六十七万、ここも百万人違うわけなんですね。結局、この世代に二百万という人、これが一億の中で二百万というんじゃなくって、二百六十万の女の人のうち百万、男の人の数が少なかったわけです、当時、結婚適齢期に。それからまた、三百十九万の女の人の中で、男の人は二百十五万しか、つまり百万以上の数が少なかったわけです。三人に二人しか配偶者は得られない時代だったわけですね。これは重大な問題だと思うのです、いま総理、はからずも独身中高年女性と言われたけれども。この女性か——これはやはり男社会で、男の人は数が少ないから、みんな奥さんを持っていらっしゃる。だから、これは別に余り問題として取り上げられずにこの三十年来ているんですけれどもね。このあぶれた二百何十万という人は、いまいよいよ初老を迎えようとしているわけですね。このことについて、内閣はどのような、総理はどういうふうなことを国として責任を感じておられるわけですか。
  236. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) やはり結婚の相手が、そういう人口の比が、差があるわけですから、結婚の機会を失う、やっぱり戦争の犠牲者の一人だと思いますが、したがって、私が先ほども申したように、案外働いていられるんですね、この中で半分の人が。働いている、家庭に入らなかった人人が多いわけです。そういうことで、できるだけそういう人たちの職場というものは確保できるように、やはり政府の方としてもできるだけ努力をしなければならぬ。民間が多いわけですからね、そういう戦争犠牲者であるという見地から、やはり雇用の確保、拡大に向かって努力をしなければならぬ点だという認識を持っておるわけでございます。
  237. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは総理と労働大臣にまず伺いますけれども、総務長官も推進本部の副部長として伺いたいと思いますがね。働いておられるというようなのんきな問題じゃないですよ。生きていかなくちゃならないんだから、全部働いていますよ、ほとんどの人が。食べさしてもらうだんなさんというのがいないんですから、みんな。ですから、そんなのんきな話じゃないんですが、政府で、どこの省か知らないけれども、このあぶれた二百万余りの女性、二百六十四万ですよ、こういう女性の生活の実態調査というものをなさっておられますか。担当省に答えていただきたいですけれども、とりあえず労働省総理府、それから総理にお答えいただきたいと思いますね。これはまさに戦争の犠牲者ですよ。
  238. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) ただいまお話のありました独身とか中高年齢婦人、まあ二百万という話もありますが、死別、離別された方々を含めて四十五歳から六十四歳までの婦人が二百万、その中でお若い方、未婚の方、これが二十八万、こういうふうな大体数字になっております。  最近のような厳しい雇用情勢のことでございますから、再就職が困難な中高年齢の方々に対しては、いまの雇用率制度の活用とか定年延長とか、いろいろ事業主に対して解雇防止の弧化などを図っておりますが、やむなく離職した人については、職業紹介あるいは相談、それから訓練などをやっていく。特に本年から労働省で寡婦に対する雇用奨励金というものを出しておりまして、そういうことで援護措置を拡大して、いまから先もこういう、しっかりと早期に再就職できるようにしようと思っています。特に私の方からいたしますというと、こういう方々の就業中の育児制度ですね、こういう問題などについてはなお重点的にやっていこう、こう思っております。
  239. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) いま先生おっしゃいましたように、四十五年度の国勢調査、それからさらにその後の労働力調査、それから四十八年には厚生省が母子世帯等の実態調査をいたしております。これらを見ました場合に、御指摘のような実態がございまして、これの対策が急がれるところでございます。なお、東京都におきましても四十八年に調査をしておられまして、これは非常に貴重な資料でございます。で、私どもといたしましては、全般的に中高年の男女を含めましての対策をしなければならないのでありますが、特に中高年の御婦人の対策といたしましては、まず健康の問題があろうかと存じます。また、経済生活そのものの問題、それから住宅問題、それから将来にわたっての老後の病気の際の介護の問題、あるいは孤独感をどうするかという、経済そして精神面、両面にわたる対策が必要なのでございまして、ひとつ今回でき上がりました本部におきましてこの問題を大きな施策の柱といたしまして努力をさしていただきたいと存じます。なお、五十年度の国勢調査の結果もやがて明らかになります。これも大いに活用をしたいと存ずるのでございます。
  240. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も東京都の実態調査はちょっと大体のことは読んだんです。やはり健康を害されている人も多いんですね。半分の人が働いていると言いましたが、また残りの半分の人も働きたいという人が大分あるわけですね。その働き場所というのは非常に狭い。非常に孤独を訴えられておるという人が多いわけで、これはやはり戦争の犠牲を受けられた人たちですから胸を痛めておることですが、これはやはりいま言ったような民間側の協力も、気の毒な人たちですから、長めまして、そして雇用機会を確保するように努力をしなければならぬと考えております。
  241. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは場当たりじゃなくって、これは大変に戦後処理の大きな問題ではないかと思うんです。亡くなった二百何十万という男の方もお気の毒ではありますけれども、死んだ方はそれでもう死んでしまったんですけれども、生き残った者は、これまだ、平均寿命が延びて、二百何十万、二百七十何万という婦人が戦争犠牲というかっこうで、まだ何十年も生き続けていかなければならない。この現状は、これは前の亡くなった佐藤総理は、沖繩返還が終わらない限り日本の戦後は終わらないと言われたけれども、私は、この戦争被害によって結婚の機会を失った女性が幸せに老後を送れるような体制をとって、その老年期が終わらない限り、日本の戦後は終わらないというふうに思っているわけです。これはもっと、場当たり的じゃなしに、政府とすると真剣に考えていただかないと困りますよ。  それで、多分働いているとかなんとか、のんきなことを言いますけれども、これ、東京都の調査ですが、ほとんどの人が働いておって、それが十万円以上の収入を取っている人はほとんどいないわけですよ。七〇%までが十万円以下、そして七万円以下の収入の人は五〇%、まあ二五%が五万円未満の収入ですよ。そして、自分自身が世帯を持って、自分自身ひとり住まいですね。ひとり住まいで何十年と生き続けてきたわけですね。そういう方がいま不況の波にさらわれて、またちょうど定年期を迎える時期に当たって、もうこれから先どうにもいかないという状態で、私もうこの間からこの戦争犠牲者による独身者を、私は同性でもあり、世代的にも同じような世代ですから、親しみも持てるものですから、ずうっと回ったんです。しかし、それはもう本当に考えると夜も眠れないくらい気の毒な状態ですね。これ私は、政府はもっと本腰を入れて、この問題によ、この問題専属に——いま労働大臣は寡婦年金とか育児何とかと言われたけれども、これも無論大事ですけれどもね。結婚する機会のなかった人は、寡婦年金ももらえなければ、育児何とか、母子年金ももらえないのですよ。それをやっぱり考えないと困ると思いますよ。どうですか。そして皆さん方が、賃金が少ない、そして昇進という機会は全くない、定年は来る。その日暮らしであるから預金は全くない、そういう状態の中にいま置かれているわけです。  そして、いまはからずも労働大臣が母子福祉年金のことを、寡婦についての優遇措置のことを言われましたけれどもね。これ、厚生大臣にも伺いたいんですけれども、母子年金とか寡婦福祉資金の貸付制度などというものがございますけれどもね。これはやはり寡婦だけじゃなしに、結婚する機会のなかった独身女性に、これもやはり適用すべきじゃないか。また母子年金にしてみても、いま子供を抱えておるお母さんが苦労していられるというのも大変ですけれども、いまもう初老に差しかかって、自分は子供を持ってない女性がどれだけこれから年がいって心細い思いをして生きていかなければならないか。これは考え方によると、母子よりももっと深刻な問題なんですね。そこら辺のところでその年金の幅をもう少し厚生省としても考えなければならないんじゃないか、いかがですか。
  242. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 独身中高年婦人対策、先生のおっしゃるとおり、大いに進展をしなきゃならぬと思うのであります。こうした人の現在の状態にもいろいろと不安や不満がありますが、さらに、どうも老齢に達したときには非常に心配であるというふうな声をわれわれは聞くわけでございますので、今後施策の充実を図らなければならないというふうに思っておるわけであります。いま申されました寡婦年金等々につきましてはその適用がございませんが、これ等については将来の検討課題だというふうに思います。  なお、年金につきましては、これはどうしても、やはり世界じゅうの年金制度はすべて俸給と勤続年数によって決まるものでございますが、しかし、これについてはやはり定額部分という制度がございまして、これと報酬比例部分と掛け合わせておるものでございますから、したがって、計数的には男子の場合よりもその保険料あるいは納付期間等に比較をいたしまして有利に実は支給をしていることは事実でございますが、しかし、このような制度をもってしてもなおかつこの人たちの要望にこたえ得ないという面もあろうと思いますから、今後対策会議等を中心にいたしましてこうした、先生がいま御指摘の点について、政策を掘り下げ、推進をいたさなければならないというふうに思っているわけでございます。
  243. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひそのようにお願いしたいと思いますとともに、住宅公団並びに建設大臣に伺いたいんですけれども、これらの独身女性の住むところが大変に気の毒な状態ですね。民間アパートに住んでいる人だと、やはり一万数千円の家賃を払っている。東京都の場合は大体三畳一間ですね。それでそのぐらいの家賃。しかも収入が五万円とか六万円とか、そういう状態であるから、ぜひ公営住宅あるいは公団住宅に入りたいけれども、いまの公営、公団住宅は全部夫婦単位の家族が対象になっているから、ひとり住まいの人はまず応募する資格がないわけですね。それで行きどころがない。その問題をひとつ考えていただきたいことと、それから私は、都内に少ない独身者の女子住宅を回って見たんですけれども、それに相応する男子の独身者の公営住宅だと、これは、高校なり学校を出て、そして結婚すると皆ほかへ移る。大体二、三年で移るわけですね。女子の場合は、一たん入ったならば、三十歳ぐらいで入ったならば、そのまま居ついているわけです。出れないわけですよ、いつまでもひとり暮らしだから。だから、ちょうど建ったときに、昭和三十年に建った住宅なら、そのときに入ったまま、二十年にももうなる。ずっと住んでいる、移動がないわけですね。そして、入るときはまさか、ここは二、三年のつもりだったけれども、このままいくと、これは多分自分がここが死に場所になるということで、みんなあきらめの気持ちを持っているわけですね。これは大変気の毒な状態ですね。一人三畳ですよ。三畳一間のところに、洋服だんすと整理だんすと、そして炊事場からテレビから置いたら、座るのがやっとこさ、私はどうして寝られるのだと思うんです。そこで死ぬまでいなければならない。そういう状態に対して住宅公団は独身住宅にもっと力を入れていただかないといけないし、こういう対策についてもっと考えていただかないといけないし、それから建設大臣についてもその対策について伺いたいと思いますね。
  244. 南部哲也

    参考人(南部哲也君) お答えいたします。  住宅公団では、昭和四十一年度から実は単身者の住宅の建設をストップしております。これは、お話のありましたように、世帯持ちの方がやっぱり住宅に困っている人が多い。これは諸種の住宅調査の結果そう出ておりますので、四十一年から本年まで約十年間ストップしております。その結果、いまお話しのような状態が現実に起こっておるわけでございます。これに対してどのように対処していくか、実は単身者は、私どもの方の言葉で申しますと、1K、台所だけであって、おふろもついておりませんし、便所も共用というようなことになっておりますので、そういうようなものをやめるために、実は一DK、もう一つ上の一DKというのが現在約七万戸ぐらいございます。1Kは一万戸しかございません。そこで、1DKのうちで、先般、住宅対策審議会の方から答申のありました二人家族の最低限というのは、総面積で三十六平米、居住面積で二十九平米、実はこれに到達していない一DKが約四万戸ぐらい、三万戸以上ございます。これを単身者向けに振りかえたらどうだろうかと、ただいまそういう点で検討いたしております。できれば来年度からでもお話のような点を考慮いたしまして、単身者をこの一DKの方の空き家の募集に入れると。そういたしますと、一体、単身者と世帯向きとを混合さしたらいいのか、あるいは棟別にどうしたらいいのか、あるいはその場合の、女子の場合お話のような年齢制限でもした方がいいのかどうか、いろいろ問題がございます。そういう点をただいま検討中でございますけれども、明年度からこれはぜひ実施していきたいと、このように考えておる次第でございます。
  245. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 住宅政策対象が二人以上の普通世帯に重点を置いてきたということ、それから公営住宅の入居資格が、御承知のように、普通世帯に限定されていることはおっしゃるとおりであります。そこで、いま公団総裁が申し上げましたように、一時私の方も単身者の住宅をつくっておりましたけれども、四十一年からストップをいたしております。そこで、いま先生の御趣旨のような方々の問題、さらには単身の老人の問題、こういう問題が最近また非常に強く要望されて、その必要性が迫られておりますから、ここら辺でもう一遍住宅問題を洗い直してみようということになっております。そこで、特に単身の世帯の人々には、いま総裁が言ったような住みかえの問題を考える。それと含めて、さらに単身用の住宅もひとつ建設することを検討しよう、こういうことで、来年度からぜひ実施をしてみたいと考えておるわけであります。あわせて、公営住宅についても単身世帯が入居できるような問題を一遍検討しなければならないのじゃないか、そういうふうに思っております。
  246. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは総理並びに労働大臣にも、それから総理長官にも最終的にお願いをしたいのですが、私が同性で、同じ年齢であるということからの親しさから、皆さんのところを回って伺った話でも、非常に多くの苦悩を抱えていらっしゃる。結局、自分たちは、ともかく良妻賢母になる、そのころの時代では家庭婦人になるという教育だけを受けた、そして世の中にはうり出された者が、結局結婚の機会を得ずに働き続けてこういう状態になっている、極端な言い方をすれば、一年間でもいいから夫というものを持ちたかった、あるいは未婚の母でもいいから子供を一人でも産んでおけばよかった、あるいはもう一生、何十年働き続けて、一カ月でもいいから一遍管理職というものについて、自分が満足する仕事を一カ月でもいいからやりたいと、本当に気の毒な切実な訴えを持っているわけです。この二百何十万という、戦争のために独身を余儀なくされた婦人に対する対策、これはこれだけとして、ひとつぜひとも政府で取り組んでいただきたいわけです。そうじゃなければ日本の戦後は私は終わらないと思うのです。いかがですか。
  247. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 三名の御指名がございましたが、私代表して答弁をさしていただきます。  問題点は十分認識をしております。私どもの先輩、あるいは友人にも同じ境遇の方がおられるわけでございます。そこで、先ほど申し上げましたように、婦人対策の今度の本部におきまして、世界行動計画の中の百五十七項にもこの問題が明記されているところでございますので、国内施策への取り入れのために最大の努力をしてまいりますことをお約束をいたします。
  248. 佐々木静子

    佐々木静子君 総理いかがですか。   〔委員長退席、理事柳田桃太郎君着席〕
  249. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 同じように考えております。
  250. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはぜひ総理に本格的に取り組んでいただきたいと思いますが、もう時間もありませんので、最後の妻の法律上の地位の問題についてお尋ねしたいと思います。  いま独身婦人のことを申し上げましたが、いま二千五百万という数の主婦が日本にいるわけでございます。これは国際婦人年ということで、特にこの婦人の問題が中心課題になっているわけですが、この婦人の地位あるいは権利というものが戦後足法で非常に飛躍的に向上し、われわれにはバラ色の民法というふうに当初思われたわけですが、実際上は非常に男女同権ということを事実上阻害している規定が多いように思うわけです。そういうことで、特に婚姻中の夫婦の収入の帰属の問題とか、あるいは家庭婦人の労働に対する高い価値を置くべきだとか、あるいは嫡出子と非嫡出子に対する平等な権利義務を持つべきだというふうな、いろいろな世論あり、法務省でも民法の改正についていろいろと御検討と伺っておりますが、大臣、このことについて、基本的な姿勢をお伺いしたいと思います。
  251. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 家庭婦人の地位の向上、すなわち夫と妻との法律上の平等性の確保につきましては、御承知のように、法務省の法制審議会でただいま検討中でございまして、ずいぶん長くかかりましたけれども、もう一年、来年いっぱいくらいで結論を出したいと思っておりますが、詳しいところは民事局長に答えさせます。
  252. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣から基本的な姿勢、もうちょっと……。
  253. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 基本的な姿勢としては、家庭婦人の妻と夫の地位の平等性が進むように、そういう方向で検討をしてもらっていますから、その結論がだんだん煮詰まってまいりまして、中間報告も出ておるくらいですから、先生御存じのとおりです。妻に——どう言いますかね、妻の味方的な方向に行っている。
  254. 柳田桃太郎

    ○理事(柳田桃太郎君) 法務省、答弁ありますか。
  255. 香川保一

    政府委員(香川保一君) ただいま大臣が申されましたように、男女平等という理念のもとで、新憲法のもとにできました民法の親族法、相続法の関係につきまして、果たして実態から見て真の平等が確立されておるかどうかというふうな観点から見直しを、現在法制審議会にお願いしてやっておるわけでございます。先生御承知のとおり、中間報告を先般公表いたしておりますが、この中にも、お説のいろいろ問題点全部網羅して、一般の御意見をお聞きした上で結論を出したいと、かように考えておるわけでございます。
  256. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう少し大胆並びに民事局長に具体的に述べていただきたいんですけれどもね。結局、いま法制審議会で議題となっておる、これはたとえば、いま申し上げた夫婦の収入の帰属の問題、夫の収入は夫のものという、妻の収入は妻のものという、このいまの別産制ですね、民法上。これが妻の家事労働に対する評価を低くして、ひいては妻の経済的地位を不安定にしているのではないかということで、先年総理府が実施した世論調査によっても、八七%という方々から別産性は好ましくなく、実情に合わないという意見も出ているわけですね。しかも六六%という人から、婚姻中に取得した財産は夫婦の共有とすべきだという意見も出ている。もちろんこれについてはいろいろ意見があると思うんですけれども、やはり妻の地位を高めていくというためには、いまのままでは感心しないというのが世論なわけですね。この事柄について法務省の基本的な態度、これはもう少し具体的に大臣と局長お尋ねします。
  257. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) お答えいたしますが、民法は、夫婦間においても経済的独立をすることが夫婦の平等に役立つとの理念に基づいて、いわゆる別産制をとっておるわけです。しかし、主婦専業の妻、それのいわゆる内助の功が適切に評価されないし、また妻の経済的地位をさらに強化すべきである等の議論もあります。一方、共有制につきましても、夫の負担する債務をどうするのか、夫または妻と取引をする第三者の利害の調整をどうするのか、そういう困難な問題も一方ございますね。そこで、現在、法制審議会民法部会でこれらの点について検討しておりますが、いずれの制度をとるにせよ、妻の経済的地位が実質的に、より夫と平等になるような結論が得られるものと期待しております。法務省としては、そういう基本的な態度で結論を急いでもらっておるところでございます。
  258. 香川保一

    政府委員(香川保一君) 佐々木委員承知のとおりに、わが国は別産制をとっておりますけれども、外国の立法例でも、むしろ別産制が多いわけでございます。フランスあたりが徹底した共有制をとっておるようでございます。ただ、この問題は、別産制をとるのは、形式的には男女平等と申しますか、妻の地位をそれだけ独立させると申しますか、さようなたてまえ論としてはうなずける面があるわけでございます。ただ、実質的にそれが果たして妥当かどうかというふうなこともございますし、わが国の一般の夫婦の意識として、先ほど御指摘の六〇何%が共同のものだと、こういうふうな世論調査の結果も出ておるようでございますけれども、果たしてそれが法律的に言う共有制をとれというふうな意識なのかどうかもちょっと問題があろうかと思うわけでございます。いま大臣が申されましたように、共有制をとった場合に債務をどうするかというふうな問題もございますし、いろいろかえって妻の地位が損なわれる事例も、特に働いておられる御婦人の場合には、さようなことが容易に考えられるわけでございます。他方、別産制をとるか、共有制をとるかということは、結局のところ、日本の実態から申しまして、婚姻が続いておる間はさほど問題にはならないのじゃないか。問題は結局、離婚というふうなことになった場合に、妻の地位、法律上の地位をどこまで保護するかという意味で問題になってくる。したがって、離婚の際の現在の分与の制度とか、あるいは夫が死亡した場合の妻の相続分とか、そういった面から実質的にわが国情に合った妻あるいは母の経済的な独立をどのようにつかまえるべきか、かような問題になろうかと思うのであります。さような面を中心にいたしまして、現在、民法部会で検討しておる、かようなことでございます。
  259. 佐々木静子

    佐々木静子君 この問題と関連して、うらはらになる一つの問題だと思うのですけれども、配偶者の相続でございますね。この相続法も、戦前は妻には相続権がないということだったのが、戦後の民法で、子供と相続するとき三分の一は相続権があるということで、非常に妻の権利が認められたかのように思われたのですけれども、現在の実情から見ると、どうも三分の一じゃ、これは少な過ぎる。相続という意味をどう解釈するかにもよりますが、ともかく、まず第一に老後の生活保障とか、共同して財産をつくった者がまず優先的に配分を受けるべきだという考え方からいくと、もっと多くしなければならないのじゃないか、そういうことで、いま社会党は配偶者の老後の生活保障などを中心に考えて、配偶者の相続分は、子供とともに相続するときには、ともに二分の一ずつ、そして子供がない場合、尊属と配偶者が相続するときには配偶者が三分の二、尊属は三分の一、そして尊属も卑属もいない場合に、被相続人に配偶者と兄弟姉妹のいるときには、いまだったら配偶者が三分の二、兄弟姉妹が三分の一のところを、もう全部配偶者が相続するようにしたらどうかど、そういう案を出しているわけです。これは、立法当時はまだ日本の核家族というものがいまのように細分化されない状態だったし、子供の数も多かったから、その当時とするとそれでよかったのでしょうが、いまではもう、いまの相続分は実情に合わなくなってきているとわれわれは思っているわけです。この点について、法務大臣並びに担当局長の御意見を伺いたいと思うわけです。
  260. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) いまおっしゃいましたように、旧民法当時は配偶者の相続権は原則としてなかったのでありますが、戦後の民法改正によって新たに配偶者に相続権を認めるに当たって、わが国の相続観、血統主義が強いわが国の相続観及び平均的家族構成なども考慮いたして定められました、いまの三分の一というのは。  配偶者の相続分について、いろいろ具体的な御提案がいま佐々木さんからございましたが、御承知のようにこれが非常に法制審議会の論議が盛んな問題でございます。国民一般に非常に大きな影響を与える問題でありますから、法制審議会でも慎重に審議しており、その結論を待ちたいと思っております。  なお、具体的にどういう論議が行われて紛糾しているかというような点につきましては、民事局長からお答えさせます。
  261. 香川保一

    政府委員(香川保一君) 御指摘の問題につきましては、民法部会でいろいろの意見がございまして、まだどういう方向にしぼられていくか、ちょっと見当がつきかねるわけでございます。  確かに民法の現行三分の一の相続分にした当時は、大体子供が三人ぐらいというふうな想定のもとに考えられたようでございまして、それが現在の実情から必ずしも合致していないというふうな批判があるわけでございます。したがいまして、三分の一を維持するという積極的な根拠というものはさほど強くはないと思いますけれども、いろいろの形態がございまして、たとえば先妻の子供がおる場合とか、あるいは子供がまだ小さい場合とか、いろいろの例を考えますと、一律に現在妻の相続分を二分の一に上げるということが実情に合うかどうかというふうな点が論議の中心になっているようでございます。もちろん、二分の一に引き上げますと、債務も妻のところに半分集中するというふうな問題もあるわけでございまして、いろいろきめ細かく検討しなければならない問題があるということで、ただいまいろいろの画から論議していただいておるのが実情でございまして、ちょっとまだどういう方向に結論が出していただけるか、定かでない状況でございます。
  262. 佐々木静子

    佐々木静子君 こういう問題はぜひ、大きな問題ですが、真剣に取り組んでいただきたい。法制審議会で多くの民法学者の方々が真剣に議論していただいているということは大変結構ですけれども、これは政治は生きてるんです。刻々と人間の利害関係に関することですから、やはり単に抽象論の、議論だけの議論を楽しむなら大学の研究室でやっていただかないといけないので、やはり時宜に合うように早急にこういうことを決めていただかないと、またこれがおくれたために泣かなければならない婦人がたくさん出るわけですから、そのあたりは真剣に考えていただかなければいけないと思いますね。  それと同時に、これはわりにともかくまず、しやすいのではないかと思うことは、妻の権利を守る最後のとりでとしての人事訴訟手続法ですね、この人事訴訟手続法の第一条によると、婚姻中の夫婦の訴訟が、夫の氏を称する夫婦の場合は夫の住所地、妻の氏を称する夫婦の場合は妻の住所地と、一見平等のようになっているわけですけれども、日本では、私の調べたところでは九六%までの夫婦は夫の名字を唱えている。そうすると、実情は、夫が蒸発して遠方に行っている、その夫に対して訴訟を起こすにも、またその夫から訴訟を起こす場合にも、これは夫の住所地になるわけなので、ただでさえ経済的に苦しい妻が多くの経済的負担をこうむらなければならないという問題があるわけですね。こういうふうなことは簡単にできるんじゃないですか。夫または妻の住所地と変更すればいいんじゃないか。これも社会党が一生懸命に提案していることですが、大臣並びに担当局長にお答えいただきたいと思います。
  263. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 御指摘のように、人事訴訟手続法における離婚訴訟管轄は、訴訟が一個の裁判所に集中して行われる、そういうことが必要であります。少なくとも望ましい。そこで称氏者の、氏を称する者の普通裁判籍所在地の裁判所に専属するといまは定めておりますが、それがいけない、選択できるようにしたらいいだろうという、御指摘のような事例が生ずる余地がたくさんございます。したがって、その改正につきましては早急に検討をして結論を出したいと思っております。
  264. 香川保一

    政府委員(香川保一君) いま大臣の申されましたように、離婚の裁判所、これは専属管轄にいたしておるわけでございます。訴訟法上、専属管轄というのは複数あってはいろいろ複雑な問題が生ずるということで、現行法は専属管轄は一つになっておるわけでございます。ただ、離婚の訴訟の実態を調べますと、妻の方からの、つまり原告が妻になっておるのが約六割から七割ぐらいあるようでございます。実際この専属管轄がちょっと問題になっておりますので、先ほど申しました原則は踏まえながらも、技術的にいろいろ立法上配慮すれば、専属管轄が複数あることの弊害は十分防止できるのではないかというふうな観点で、前向きに現在検討いたしております。
  265. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは現在検討しているというよりも、大臣にしろ、局長にしろ、もうできることからどんどんやってくださいよ。ただ検討ばかりしておられてもだめなわけで、そのことについて御答弁願います。
  266. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) これはそう論議紛糾というような問題でありませんから、なるべく早く結論を出したい。もうちょっとお待ちいただきたいと思います。
  267. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではもう時間がありませんが、最後に婚姻と氏の問題ですけれども、いまの民法では結婚すると名字をどちらかにしないといけない。   〔理事柳田桃太郎君退席、委員長着席〕 これも、どちらかという点は平等のようだけれども、いまも言ったように男の名字にほとんどの人が変わっている。変わることによって過去の社会生活、人間関係というものが中断されるということがあるんですが、いまこの問題はともかくとして、離婚による場合、氏を旧姓に戻らなければならないと日本の民法は決めておりますけれども、これは世界の国、あちらこちらの先進国、先進国ばかりじゃない、いろんな国の民法でも、日本だけといっていいと思うんです。これはまさに家族制度の残滓だと思うんです。わが党の先輩の藤原道子議員が二十五年前にこのことを国会で取り上げたときに、当時の法務大臣が早急にこのような女性を侮辱した法律は改めるということを言っておきながら、この二十五年間ほうったらかしになっている。そのために多くの働く婦人が犠牲になってきているわけです。これは働く婦人の問題ばかりじゃない。母子家庭において子供と母親の名字が違うというような不利益をこうむっているわけです。これはまさに男社会が生んだ罪悪だと思うわけです。法務大臣と担当局長、いかがですか、これはいつ改正されますか。
  268. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 氏を異にする婚姻を認めることにつきましては、これはお言葉ではございますけれども、夫婦が共同生活をするという実態、また社会生活上重要な問題でございまして、果たして国民感情にも合致すると言えるのかどうかということを法制審議会民法部会等では言うんでございますよ。そうしてこれは慎重な検討を要するなあというふうな空気でございます、偽らざるところ。また、このような制度を採用しますと、戸籍制度全般を改めなければならぬ、こうなるものですから、佐々木先生の方へこうすっと行くというわけにもいかないような状態でございます。  それからもう一つの、離婚の際に、婚姻によって氏を改めた場合の夫または妻に、前の氏に自然に当然に復帰するかどうか、これを選択させろということは、さきの問題ほどいろいろな影響の強い問題ではないと考えられますし、長年使用してきた氏を変更さぜるを得なくなった者の不便は理解できますけれども、この問題につきましても現在法制審議会民法部会で検討中でありますので、その検討を待って、その結論を待って対処したいと存じます。キパッとした返答ができませんで申しわけありません。
  269. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして佐々木静子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  270. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) この際、住宅金融公庫総裁淺村廉君から発言を求められておりますので、これを許します。淺村住宅金融公庫総裁
  271. 淺村廉

    参考人(淺村廉君) さきの十月三十日の予算委員会において適切な御答弁ができなかった点について、深くおわびを申し上げます。  以下、お許しを得て、当日の答弁を補足し、あわせて住宅金融公庫の個人住宅申し込み受け付けの適正化について私の決意を申し述べさせていただきます。  本年一月の個人住宅融資の申し込み受け付けに関して、三月十一日の予算委員会において、上田先生から、銀行と業者の癒着についての御質問がございましたので、直ちに調査をいたしましたが、業者の説明会に場所を提供し、共同の広告を行っていたことは事実でありましたので、横浜銀行に対しては厳重に注意をいたしました。また、全委託金融機関に対し、そのようなことがないよう強く注意を促しました。しかし、調査の上、御報告することをお約束しながら、今日まで御報告のおくれたことを大変申しわけなく思っております。  本年四月の申し込み受け付けに際しては、前回の一月の受け付けの経緯にかんがみ、また、主務大臣からの強い御指示があり、私どもも本所に代理業務課を設置する等努力いたしましたが、三月の予算委員会で私が強く否定いたしました業者の申込用紙の一括購入、一括申し込み、取り扱い機関の一括受け付けが事実上一部に行われましたことは、公庫の委託金融機関等に対する指導がおくれ、また、不徹底な点があったものと深く反省をいたしております。  なお、今次の不始末を単なる不なれのための業務上のミスとして処置しているような関係金融機関のあり方は、事の重要性を認識していないものと判断されますので、厳重に注意し、指導いたす所存でございます。  以上の点につきまして、私は深くその責任を感じるとともに、心からおわびを申し上げます。今後は、二度とかようなことのないよう公庫みずからの姿勢を正し、委託金融機関の指導を強化して、いやしくも公庫業務の執行に疑いを受けるようなことのないよう万全の措置を講じてまいりたいと決意しております。  また、仮にも金融機関と業者の癒着の疑惑を受けることのないよう格段の努力をするとともに、もし癒着の事実が明らかになりました際は、委託金融機関の指定の取り消し等を含む厳重な措置をいたす所存でございます。どうかよろしく御了承をお願い申し上げます。     —————————————
  272. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 引き続き質疑を行います。小野明君。(拍手)
  273. 小野明

    小野明君 ただいまの総裁の御発言でありますが、冒頭にありましたが、適切な答弁ができなかったということではないんですね。一体事実はどうなのか、どうであったのか、そのことに対する反省、今後の方針、こういうものが承りたかったわけであります。この問題は、わが党上田委員あるいは宮之原委員から指摘された問題でもあります。まあ私ども初めは業者が悪いと、こう思っておりました。さらにそれより悪いのは銀行である、こう思ってきた。ところが、やっぱり一番悪いのは金融公庫である。あなたですね。ですから、これが一度あるいは二度続けて行われているわけでありますから、いまの御答弁の最後の方ですね、今後全くこういう過ちがないように運営に十分御配慮をいただきたい。御注意を申し上げておきます。
  274. 淺村廉

    参考人(淺村廉君) 十分に御趣旨を体しまして、今後一生懸命やってまいりたいと思います。どうぞ御了承願います。
  275. 小野明

    小野明君 総裁ね、二度あることは三度ある、こういうことわざもありますから、今後絶対にないように念をさらに押しておきます。  総理お尋ねをいたしたいと思います。  若干、政治姿勢に関する問題でありますが、先般から自民党の百億円の借金を肩がわりをする、五十億肩がわりしていく、この問題であります。この問題は、自民党が抱えております約百億の借入金、半額五十億円を財界が肩がわりをする、残りの五十億については長期返済の計画のもとに実質的にたな上げをする、こういうことになる模様ですね。三木内閣というのはクリーン三木ということを旗印に登場をされたわけなんですね。ところが、来年一月の新政治資金規正法の施行を前に、まあ私どもから言わせれば馬脚をあらわしたと、こう言わなければならぬと思うんです。なぜなら、半額五十億円の財界肩がわりというのは、自足党の政治献金割り当てそのものである。しかも、鉄鋼、銀行あるいは自動車の大手業界がこれに当たるということのようですね。この事実から、三木内閣が金脈問題で失脚した田中内閣と何ら変わることのない政治姿勢を維持しておることが明らかとなったと思います。総理国民にこの事実をどのように説明をするお考えでありますか。
  276. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 小野君が御指摘になったように、自民党が相当大きな借金を抱えておることは事実です。借金ですから、これは棒引きにするわけにはいきません。そこで私として、これは自局党総裁として処理する責任があるわけです。このことは世間でもいろいろ知っておるわけですからね。そういうことで、非常にこのことに同情される人たちが多いわけです、何とかしてやっぱり協力してあげようと。この借金を抱えて自民党は金利の支払いも相当大きな支払いになるわけですから、政党の活動に対していろんな制約されるわけですから。そういう人たちが相当おるわけですね。だから、そういう人たちの好意は私は受けたいと思っております。  しかし、私が常に言っておることは、それに甘えてはいけない。甘えてはいけないので、自民党自身としても、皆それぞれ党員自体にもこの借金の支払いに対しては協力をしてもらいたい。全部肩がわりしてやろうとは、また、それほど好意に甘えてはいけないと思っておるわけでございますから、そういう自民党に対して理解と同情を持たれる人の献金は私は受けたい。しかし、それは甘えてはいけぬのですから、自民党自身としても党員が皆相当なやっぱり犠牲を払ってこの借金を払うだけの努力はいたしていきたい。しかし、そのことによって自民党の政治が曲げられるようなことは断じてしないと。これはもうそういうことがあれば民主政治は崩れますから。また私は政治が金で支配されるようなことは、これはもうそういうことがあれば日本の民主政治は持てないというぐらいの危機感を持っておりますから。そういうことで、政治資金規正法のごとき法律も、あれはなかなか厳しい法律ですよ、小野君。よくごらんになれば相当に厳しい。それは現状からすればですよ、相当に厳しい政治資金規正法の改正をあえて私は熱意を持って通したわけでございますから、そういうことで金権に対する三木内閣の姿勢というものについては御理解を願いたいと思うのでございます。
  277. 小野明

    小野明君 財界から受けるということは事実ですからね。そのことを私どもは指摘しておるわけですよ。それによってまた政治が変えられるなんていったら、それはもう日本の政治は崩壊しますね。いま総理の御答弁の中であったんですが、全部が全部肩がわりではないと。しかし、私どもが理解をしておりますのは、半額はもらうけれども、残りの五十億円も結局財界が肩がわりしてしまう、全部引き受けるんだと、このように理解をしておりますが、いかがですか。
  278. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 幾ら幾らを何か財界から献金を受けるというような、そういうまだ段階には至っていないんですが、そういう非常に気の毒であるという理解と同情を示しておる献金は受けますけれども、これはやっぱり大きな自民党の借入金の全部を補うことは無論できませんし、また、してはならぬと私は思うんです。そこまで甘えてはいけない。自民党党員自身が、皆がこれに対して応分の犠牲を分担をしてこの問題を処理したいと考えておる次第でございます。
  279. 小野明

    小野明君 夕べも総理は銀行の代表とお会いになられたようですが、借入金というのが第一勧銀、富士、住友、三和、三菱、三井、東海、太陽神戸、大和、この各行の融資によるものと、こういうふうにされておるようであります。銀行に競争原理が働いておれば、収益性のない、そして安全性の乏しい政党に融資するはずがないんですね、共同して。そこには各行の申し合わせなど、一般企業では不可解の一語に尽きる行為が堂々と行われていると思います。金融機関は、御承知のように預金者保護を中心とする公共性あるいは社会的な責任が最も強く要求される業務ですね。これは焦げつくことが明らかであります。そして財界の肩がわりが予想される不明朗な融資が行われる。金融機関の公共性という見地から、預金者あるいは国民一般にどのような説明をなさるおつもりであるのか。これはこれらの各行の頭取からお聞きする面もないといけないと思いますけれども、こういう場所でありますから、総理の御見解をいただきます。
  280. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは一つは私、昨夜都市銀行の頭取連中と話をしたわけです。何を議題にしたかというと、フランスにおける首脳会議、これはやはり通貨、貿易あるいはまた景気の回復等について長い経験を国際経済について持っておる人たちですから、意見を聞きたいということです。どうしてそういう人たちとおったら政治献金とすぐ結びつけて見るんでしょうかね。政治献金の話は一つもないんですよ、小野君。実際ないんです。それはもう献金のケの字も言わないのに、そういうふうに何か献金の話をした、どうしてそんなに人と会うことを何か次元を低く見るんでしょうかね。  私はそういう風潮が気に入らない。それは、非常に日本経済に対して長い経験を持っておる人でしょう。しかも世界経済の中に生きてきておるんですからね、非常な経験を持っておるんですから、その意見を私は聞いておきたいと考えることは当然のことで、また政治献金のために会うという、どうしてそんなに——まあ疑わさすということはいろんな反省しなければならぬ面もあるのかもしれませんが、どうもそういうふうに見る社会の風潮というものは国民に誤解を与えますからね。私は新聞を見て、おかしいな、どうしてこういうふうに物事を見るんだろうかということで、私自身も非常に理解に苦しんだ点でございます。  また、この自民党の借金というものは、私はその衝に当たっておりませんでしたから、どういう経緯でできたか知りませんが、私はその借金があるという事実に対して自民党総裁として責任を果たしたい。政党の借金といえども、これは政党だからといって特別にどうという取り扱いを受ける性質のものでないから、私がいま苦心をしておるのは、受け継がれたことは事実ですからね、その借金であるという事実に対して総裁としての責任を果たさなければならぬと努力をしておるので、どういういきさつでそういうことになったかということは、衝に当たっておりませんので私は存じていないわけでございます。
  281. 小野明

    小野明君 まあ総理、特別にこの献金問題ということを話し合わなくても、以心伝心で話は通じておる。そこが問題ですね。私がお尋ねをしておりますのは、金融機関には公共性、預金者保護という大きな使命がございます。これらから、これらの物差しから照らして、これらの大手銀行から献金を受けることはいかがなものか。さらにもう一つ申し上げますならば、預金金利を引き下げる。約一%引き下げれば、きのうの答弁にもあったようですけれども、四千五百億円という利益が上がる。そうすりゃ百億は安いものじゃないかと、国民はこう見るんですよ。そこらはちゃんと結びつけて考えるわけです。その疑惑にお答えをいただきたいと、こうお尋ねしておるんです。
  282. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そうなりますと、自民党総裁というのは実業界の人に会えないことになってしまうんですね。だから、それは私のここで言っておることを御信用願って、そういう銀行とか企業とかいう代表者に会うことは献金のことで会うというのではない。そうでしょう、やはり日本経済の中で大きな役割りを果たしておる人の意見を聞くということは、小野君、あってしかるべきですよ。内閣企業側の人と会ったらすぐ献金だというふうに、そういうふうなことなら、総理大臣というのは人に会えないことになってしまうんですからね。そういうふうにお考えにならない方がいい。  それからまた、私は言っておきますが、三木内閣はそういう献金と政治とを結びつけて考えない内閣である。これは信用してください。私自分がそういう考えはないんですから。ないんです。それはもう私自身が非常にその点は厳しく考えておるわけです。もしそういうことになれば議会制民主主義というのは維持できませんよ。これはもう私は非常に厳しくこの点は考えておりますので、献金とこの三木内閣の政治というものを結びつけて考えることは絶対にない、これだけは私は強く申し上げておく次第でございます。だから、小野君の御指摘になるような問題とそういうこととは、私は関連しては全然考えていないということは申し上げておく次第でございます。
  283. 小野明

    小野明君 どうも総理、私がお尋ねしておることに正面から答えてないですね。銀行の公共性、預金者保護、こういうところから見ていかがなものかと、こう申し上げておるんですよ。これに答えてください。
  284. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 銀行というものの持っておる性格がきわめて公共性が高い。したがって、銀行との政治献金などの関連性というものはできるだけ厳しく対処しなければならぬと思います。誤解を生ずるようなことがあってはいかぬと思います。
  285. 小野明

    小野明君 たてまえと本音がみごとに使い分けられて答弁をなさっておられる。  そこで、大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思います。昭和四十年の五月に銀行局長通達がございます。「金融機関経営の刷新について」という見出しですが、取引先の実体把握が不十分で安易に貸し出しを行い云々とあって、社会的に大きな影響を及ぼした事例があるので、「信用をむねとする金融機関本来のあり方に照して不適当と認められる事項については、徹底的な改善をはかるよう」、こう指示しています。残りの五十億円というのはまさに不適当と認められる不良貸し付けと私ども見ざるを得ないですね。このような通達違反の行為についてどういう措置をおとりになるのか、お尋ねをいたします。
  286. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 自由民主党が銀行から巨額の信用を受けておるということは私も聞いております。しかしながら、この銀行からの融資につきましては、天下の公党でございまする自由民主党は必ず完済をされるものと期待いたしておるんでありまして、あなたが御指摘のように、これが不良化するなどということはみじんも私は考えておりません。
  287. 小野明

    小野明君 前内閣からの借金でかなり長い間苦慮されておる。結局、そのこと自身が、この期間そのものが不良貸し付けであるということを証明していると思うんです。  で、申し上げたいことはたくさんありますが、時間をこればっかりにとるわけにはいきませんので、資料要求を大蔵省にいたしておきたいと思います。  今回の借り入れ前の借り入れの事例について。一、借り入れ年月日。二、融資銀行名。三、銀行別融資額。四、肩がわりした企業名とその金額。大きい二、現在の借入金について。一、銀行別融資額とこれまでの利息。二、残り五十億円の具体的返済計画。返済時期別返済額。元本と利息。二、たな上げすることによる銀行別の損失額。三、現在の借入金の担保明細。この資料要求をいたします。
  288. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 銀行の個々の取引につきましては、その関係者の立場を考えまして、大蔵省といたしまして、それを調べた上で外部に公表するということはいたしておりません。いま小野委員が挙げました事案、御要求がございました事項でございますけれども、そのうち私どもとして差し支えのないことにつきましては、調査の上御報告を申し上げたいと思います。
  289. 小野明

    小野明君 これは大臣、最低限の要求なんですよ。ですから、差し支えのないということではなくて、いま申し上げた全部をひとつ御提出をいただきたい。後刻またこの問題については検討していきたいと思います。全部を出してもらいたい。
  290. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いままで国会からの資料の御要求につきまして、たびたび政府としてそういう趣旨のことは申し上げておるつもりでございますが、本件につきましてもそういう制約を政府として受けておりますことは、小野委員重々御案内のとおりと思うんでございます。そういう制約の範山内におきまして精いっぱいのところを御報告申し上げるつもりです。
  291. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  292. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。
  293. 小野明

    小野明君 同じく政治姿勢の問題でありますが、総理お尋ねをいたします。  皆さんがお触れになられた問題ですが、先進国首脳会談の問題、これは経済的にも政治的にもきわめて重大な問題であります。どなたが行かれるんですか。
  294. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 現在予定しておりますのは私と大蔵大臣、外務大臣と考えております。まだ閣議は十二日に決定をいたしますから——十一日に決定して正式に議運に申し出たいと考えております。
  295. 小野明

    小野明君 行かれるのは十三日から十八日ぐらいまでですね。その間は政局の中心は、そうしますとパリに移ると、こういうことですね。
  296. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この国会は生活関連の法案もございますし、いま小野君自身が御指摘になりましたように、これは重要な会議であるわけでございまして、日本はジスタールデスタン大統領がこういうものを提唱したときに、フランス大使が初めのうちに参りまして、どうしても日本は参加してもらいたいという要請もあったわけであります。今日、世界の問題を論ずる場合に日本は外せない国になったということですね。それは日本の地位に関する国際評価でもあるわけですけれども、日本としても責任というものが伴ってきたわけですから、国会という理由日本だけが欠席をいたしますると、これからの日本の国際的立場というものに私は非常にこれは影響すると思いますので出席をいたしたい。また、野党の各位もこの点については御理解を願えるものだと考えておるわけでございます。  したがって、私どもが出席をいたしました留守においても、福田総理総理の臨時代理をお願いすることになりますから、どうかやはり支障のない法案は御審議を促進していただきたいと、こう思うんですよ。それは小野君、実際これは国際的に見れば皆各国ともそういう事情を抱えておると思いますよ。だから、そういうときにやはり野党側もその会議の重要性にかんがみて、その間、貴重な不況対策という一刻を争う法案と、それに関連する財政関連の法案ですから、どうかできるだけ審議を促進していただきたいと切に願っておるわけでございます。そのことが日本の議会政治の国民に対する信用と責任を果たす道であるというふうに考えておるわけであります。私はそんな大した会議じゃなければこんなもの行きませんよ。しかし、この会議の重要性から見て、どうかそれを理解されて、私の留守中においても審議を促進される野党の一つの、それだけの雅量を野党に望むわけでございます。
  297. 小野明

    小野明君 総理、私は行くなと言っているんじゃないんですよ、行ってらっしゃいと。後のことはそれはまた別の話ですからね、これは。首脳会談の重要であることはもちろんよくわかります。いずれも、きずのある国の代表が皆集まるわけですから、どうするかということで。  ところで、首脳会談のテーマ、内容を見ますと、この前、総理がアメリカに行かれて共同声明、後の記者会見、日米記者会見、中身を見ますとほとんど同じですね。これだけ抱えているテーマが同じだ、問題が同じだということからかもしれません。そこで、首脳会談というのは四十何年ぶりかで開かれるわけですが、この前の会議は失敗をしていますね。今度の会議といえども、激しくエゴとエゴがぶつかり合う、こういう懸念なしとしません。日本は日米共同声明のあれからいきますと、アメリカのしり馬に乗っただけと、こういうことになることを懸念をいたします。この点いかがですか。
  298. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それも小野君、そういう考え方も私はやはりこの際払いのけてもらいたい。何でもアメリカのしり馬に乗るというような、そういうようなことではありません。日本日本としての国力を踏まえ、国益を踏まえて自主的に対処することはもう言うまでもない。これはお互いに自信を持って国際問題というものは処理せないと、何かコンプレックスのようなものを持って国際関係を考えることは、今日の事態で私は日本のためにはなると思わないのですよ。これだけの五大国の首脳会議を、最初は五大国であったわけですが、日本は外せない国になってきたのですからね。それだけのやはり自信と責任というものを国民が感じてこれから国際問題を処理していきませんと、従来の惰性で考えることは私は日本の外交というものを誤らすことになると考えるわけでございます。だから、日本日本の国益を踏まえて自主的な態度を持ってこの会議に臨む。しかし、この会議は世界経済に対して責任を最も背負わなければならぬ首脳が寄るわけですから、ここでこの会議が失敗であったという事実あらしめてはならない。やはりこの会議は成功させたいと願うわけでございます。  そして、みんなすぐに協定が生まれたりするような成果は生まれないにしても、世界経済に最も責任を感じなければ、政治経済責任を感じたければならぬ主要国が寄って、お互いに、いま景気の問題にしても、議題になるエネルギーでも、あるいは第一次産品でも、貿易、通貨、南北問題でも、日本もまた重大な関心を持っておるし、不況対策でも日本の国内だけで問題解決はできませんからね。国会で御審議を願っておるけれども、この不況の根本的解決というものは日本の国内の経済政策だけでできるとは私は思わない。やはり世界経済という、世界景気というものを回復さすということと関連がありますからね。だから、そこですぐに協定のようなものは生まれなくても、主要なる国々が寄ってこの経済の危機というものに対してお互いに協力し合って、そしてデモクラシーと自由経済体制というものに対しての自信、またこの自信の裏づけになる各国が協力し合って問題の解決に当たろうというそういう姿勢というものは、私は非常に重要な意味があると思うわけでございます。そして問題に対して皆話し合うわけですからね、三日間。話し合って一つの方向が出て、専門家の手によっていろいろと検討されるということは歴史的な意義があるのではないか、すぐに結論が出なくても。そういう意味において、これはどうか三木内閣の問題としてとらえないで、日本の国際的評価に影響をする会議である、こういうふうな見地でこの会議をとらえて、野党の各位の協力も得たいと思うわけでございます。
  299. 小野明

    小野明君 総理はそのようにごらんになっておられるかもしれませんが、ソ連、中国あるいは第三世界、それぞれ非常に批判的な目でこの会議を見ていますね。逆に西側世界の力の結束を誇示する、こういうことになってはいかぬと思いますね。先般国連の経済特別総会、木村前外相が出席をされました。帰られて、大変恥ずかしかったと、こういうことでした。南北問題あるいはエネルギー問題、あるいは一次産品の問題にいたしましても、具体的な提案というものがないとやはり反発を買うだけという結果に終わりかねませんですね。そういう具体的な提案というものが固まっておるのか、どういう方針で出ようとされるのか。
  300. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 出席をいたします以上は、各項目に対して日本の見解というものを明確に述べなければならぬ。そしていろいろな話し合いが行われるわけです。また、具体的な提案というものについては、いま政府の部内においても検討を続けておるさなかでございますから、この席でこういう提案をしたいんだということを申し上げる段階ではございませんが、問題によったならば具体的な提案も出さなければならぬと考えておる次第でございます。
  301. 小野明

    小野明君 率直に申し上げて、この日本の外交姿勢といいますか、三木内閣の外交姿勢というのは非常に自主性がないといいますか、日米会談以来全くアメリカ追随の外交という印象を受けます。その最たるものが韓国条項の再確認されて帰られた問題だと思います。あれはやはり私ども朝鮮半島が自主的平和的に統一をしていく、これを促進をするという態度でなければならぬのですが、この辺が大変私は厳しい見方をしなければならぬと思うんです。東南アジアの情勢につきましても激動しておりますが、何らそれに対応する有効な手段というもの、対策というものがとられていないように思います。これらの批判については、総理はどうお答えになりますか。
  302. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 三木内閣の外交姿勢には自主性がないという御批判でございますが、せっかく小野君の御意見でございますが、これは私は全面的に承服できない。日米会談にしても、いままでの日米会談よりも本当に自主的な立場で話し合った歴史的な日米会談だと私は思っておるんですよ。私はアメリカから荷物を背負わされたことは何もないんですよ、一つもね。アメリカ自身がアメリカの意思を日本に押しつけようという態度は全然ありませんです。私自身も私の率直な気持ちを述べたわけで、だから日米間というものが何か両方が、大きな国際協力という枠はありますよ、自主性、自主性ということが、各国との間に対決していくのが自主性だとは思わない。大きな国際協力の中において日本日本の国益を踏まえて外交をやるのですから、アメリカと意見の違う問題だってあると思う。いろいろと出てくることは当然であります。その立場の違いというものを両方が理解し合って、そうして国際協力という枠の中でお互いに協力するということでなければ、これはやはりこれからの世界日本のような国がやっていけるわけではない。  朝鮮半島の問題をお話しになりましたけれども、新韓国条項と言われておるですが、あれは新聞がつけたことで、私はそうは思ってないです。従来は日本と韓国、日本と韓国と、こういうふうに言われておったのを、私の今度の新聞発表では目を北鮮に向けたわけです。日本と韓国と言うだけでは朝鮮半島というものの安定はありません。いわゆる北鮮の動向というものがやはり韓国の平和と安全に大きな影響をするので、従来の韓国条項よりも視野を広げて、もう少し柔軟性を持たしたのがあの共同新聞発表ですよ。だから、そうでしょう、やはり日韓間だけでなしに、朝鮮半島全体の平和と安定というものが日本を含めての東アジアの平和と安定に影響するという新聞発表ですから、だから従来よりずっと視野を広げて朝鮮の将来ということを頭に入れた新聞発表である。韓国条項だ、新韓国条項だというふうには私はとらえていない。もっと、何というのですか、現実の上に立った素直な朝鮮半島の状態というものを表現したのがあの新聞発表だと思っておるので、小野君のように何か日本が背負わされてきたのだというふうに、そういうふうに考えてないのですよ。  そういうことですから、やはり朝鮮民族の悲願は平和的に南北が統一することであるということを、私もそのとおりだと思いますよ。だから、南北の間に三年ほど前には対話が始まったのですから、ああいうふうな南北の緊張緩和できるような国際環境をつくるということに日米とも協力しようということですから、どうか日本外交の自主性というものに対しては、小野君自身ももう少し自信を持って、お互いにこれは日本の外交を推進しようじゃないですか。そうでないと、非常に日本国民に対してもそれだけ自信を日本外交に失わさすことは私はプラスにならぬと思う、これは。
  303. 小野明

    小野明君 私も自信を持ちたいです。しかしながら、総理がアメリカに行かれた共同声明、これは何もないですが、共同新聞発表、あるいは八月二十七日ソウルで行われた韓米安全保障協議会共同声明、その他一連のナショナルプレスクラブの演説もありますが、これらを読んでみますと、まさにこの首脳会談とあわせ見ましたときに、全くこれは主体性、自主性がない。東南アジア、これはもう中華人民共和国が生まれたそのとき以上の激動の情勢だと思うのですね。それに対しても適切な対策が打たれてない。そういう全くこれはアメリカ旨いなりの外交姿勢ではないのかという感じを深くするのです。こういう感じを申し上げたわけであります。この点はいずれ、この委員会では時間もないことでありますから、他の委員会で論議が行われると思いますが、私は三木総理の政治姿勢の最後に、いずれこれは表面化するのではないかと思う問題が一つございますので、ここで真偽を明らかにしていただきたいと思うものであります。  総理はクリーンということで誕生したと思います。先ほどから何度も申し上げております。衆議院で楢崎代議士が、大阪におけるLPガスの課税にからむ汚職事件、当時通産大臣だった総理が本件にからんで、三木派にからんでいると、こういう疑点を述べておるところであります。この件は衆議院が記録を裁判所側に要求をして、裁判所の記録の提出を待っているところですね。これは大阪のタクシーの事件は十年前の事件でありますが、今度私が取り上げておりますのは、十月六日、徳島県で武市知事、これは総理と非常に近い関係にあるということでありますが、告発をされたではないかと、こういうふうに伺っておりますが、この点御存じですか。
  304. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 小野君、そういうこと、私知りませんが。そういうことは知っておりません。告発されたということはないと思います。告発されたというようなことは、私は事実は知らぬです。
  305. 小野明

    小野明君 これは各省に通告をしておけばよかったと思いますが、わかる範囲でお答えいただきたい。これは徳島県の橘湾の漁業補償にからむ問題であります。  まず運輸大臣に、四十八年六月ごろ、徳島県橘湾に住友重機が百万トンの大型タンカーを建造する計画があったやに聞いておりますが、御存じですか。
  306. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) その問題に関連しないんですが、さきに小野君の言われたLPガスの問題ですか、こういう問題は、私もちょいちょい言っておるように、まあ私もいろいろこう至らぬ点はあるけれども、一つだけ言えることは、自分の権力を利用して利権をあさったことは、私の政治経歴の中でないんだということです。一遍もない。このLPガスの問題だって、あれだけ問題が大きくなっていろいろ取り調べを受けたでしょう。私は疑いをかけられたことはないわけです。十年たってきて、そういうものはLPガスに通産大臣として関連をしたということは、政治家の名誉として私は言っておかなきゃならない、私は自分の政治家として今日までそういうことに一度も関連したことがないということが、私の政治家としての大きな私自身の自負するところでございます。
  307. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 存じておりませんので、いま事務当局の方に調べさしております。
  308. 小野明

    小野明君 次に農林大臣、百万トンドックの建造で漁業補償の問題が起きて補償がなされたと聞いておりますが、その金額は幾らですか。
  309. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま初めて聞きますので、調査をいたします。
  310. 小野明

    小野明君 自治大臣に。徳島県は漁業補償費を県費から支出をしておるのでありますが、その支出はむだ金になっていると思います。これを自治省はどう指導をしておられますか。
  311. 松浦功

    政府委員(松浦功君) 御質問の件、ただいま伺いましたので、すぐ調査をいたしまして回答いたします。
  312. 小野明

    小野明君 同じ質問環境庁長官にもあるわけであります。この国定公園の一部解除の措置がとられて、そうして県と住友重機と環境庁が合意をしたと聞いておるが、いかがですか。
  313. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) お答えいたします。  私が着任後、橘湾の一部国定公園になっております部分、この解除につきましての話はずいぶん承っておりましたが、正式な手続は全然ございません。話によりますとずいぶん前からの計画でございまして、あそこに相当の大規模ないろいろ企業誘致をしたいというので、広島県のむしろ与野党挙げての念願であるというふうに聞いております。具体的な手続はございません。最近は県の方から私どもの事務当局に参りまして、むしろ国定公園の部分等に手をつけないで何とかやる方法を考えつつ、その打ち合わせに来たという事実はございますが、いまのところ正式な手続はまだ来ておりません。
  314. 小野明

    小野明君 これは当時の環境庁長官三木総理である、こういう関係がありますのでお尋ねをしておるわけです。ただ、急のことでもあり、御答弁ができないようでありますから、早急に、いま各省にお尋ねをいたした件について答弁ができるように調査をしておいていただきたいと思います。
  315. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) ただいま答弁中、徳島県というのを広島県と私は言ったようでございますので、徳島県でございますので、訂正をいたしておきます。
  316. 小野明

    小野明君 いいですか、それは。
  317. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 関係の大臣、よろしゅうございますか。——じゃ、関係当局にはいまの質疑者の点を踏まえられて、ひとつ早速調査回答願います。
  318. 小野明

    小野明君 質問は保留しておきます。  次に進みますが、防衛駐在官の問題で、防衛庁の方でイスラエルとアラブに派遣をする、こういう意向を固められた、こういうことですね。これを御説明いただきたいと思うのです。
  319. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えをいたします。  防衛駐在官は在外公館に勤務し、主として防衛に関する事務に従事する者でございますが、現在十四カ国に二十三人が配置されております。現在の配置状況を申しますと、米国が六人、ソ連三人、韓国二人、タイ二人、英国、フランス、西独、トルコ、インド、南ベトナム、インドネシア、ビルマ、ベルギー、中国おのおの一人、昭和五十年度中にオーストラリアに海上自衛官一人が新たに配置される予定でございます。  これは各国の国防政策の動向、軍事科学の技術の趨勢に関する情報を収集するためでございますが、いま御質問のございましたイスラエル、エジプトに派遣する構想があるかということでございますが、防衛庁といたしましては、各国の安全保障政策、国防政策の動向、軍事科学技術の趨勢を把握するために、適切な国に逐次派遣していきたいと考えております。五十一年度につきましては現在慎重に検討中でございますし、外務省等関係省庁と調整の上決めていきたいと思います。
  320. 小野明

    小野明君 そうすると長官、これは、イスラエルとエジプトに派遣をするということは、決めたわけではないんですか。決めたとすれば、その理由をちょっと言ってください。
  321. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) まだ決まらないわけでございます。
  322. 小野明

    小野明君 いや、それを派遣をするおつもりですか。
  323. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これは防衛庁から要請を出しまして、そして外務省当局と御相談の上最終的に決まる課題でございます。
  324. 小野明

    小野明君 そうすると、もう防衛庁の意向は固まっておるんですね。
  325. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 質問はお立ちを願います。
  326. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) その中には含まれております。しかし、この二カ国だけじゃございませんから、要求をいたしておりますのは。
  327. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 敷衍させていただきます。  まず、防衛駐在官でございますが、これは、戦前のようにそれぞれの陸海空軍が直接派遣をしておるのではございませんで、現在各国も直接派遣、陸海空軍それぞれから派遣されておるようでございますが、わが国の場合には外務省に身分が移ります。したがいまして、外務公務員として外務大臣の指揮監督のもと、現地の大使の区処を受けて主として防衛の事務に従事する、こういうことになっておるわけでございます。制服を着用いたします関係で、外務事務官に発令になりました際に、兼ねてそれぞれの階級の発令がございます。そういうことでございまして、したがって当初から防衛庁から概算要求を出します場合には、当庁の希望として、ただいま、いま大臣から申し上げましたようにイスラエル、エジプトを含めました来年度予算につきましては六カ国でございますが、これを要求を出しております。しかしながら、外務当局におきまして各省庁との要求その他全般を勘案をされまして、最終的に大蔵省との折衝においてお決めをいただく、こういうことになっておりますので、当庁としてエジプト、イスラエルにすでに方針を決定したということではございません。
  328. 小野明

    小野明君 そういう手続のことを聞いておるのではないんですよ。防衛庁がイスラエルとエジプトに派遣をするという方針を決めたかどうか、これを私は問題にしておるんですよ。国連の本会議でも大変大激論になっておるようですが、PLOとイスラエルの大激論。国際的にもこれは重大問題です。ここに日本は武官がおりませんから、駐在武官を派遣をするということが、日本の中東外交にとんでもない影響を私は与えるのじゃないかという危惧をいたします。この辺の配慮を、また、中東情勢をどのように見ておられるのか、防衛庁長官お尋ねをいたしておきます。
  329. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これは、直接は外務大臣からお答えいただいた方がいいのじゃないかと思います。
  330. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの駐在官の方のことはすでにお答えがあったとおりでございますが、防衛庁のほかに各省からもいろいろそういう御希望がございますわけでございますから、外務省といたしましては、外務省自身の定員が実はどうなりますかということがこれからの折衝問題でございますので、それがはっきりいたしませんと、本格的にお話を聞かしていただくという段階に至っておらないわけでございます。
  331. 小野明

    小野明君 これは総理もかつて中東に使節として行かれた。その事情を御存じだと思いますよ。大変なこれは問題のある地域です。それを防衛庁、いま外務大臣も手続問題ばかり言っておられるんだが、私はイスラエルに派遣をするということはやめてもらいたいと、こう言っておるんですよ。やめたらいかがですか、こういうことは。中東情勢を見られてその辺をどのようにお考えになって決められたのか、これは防衛庁長官が、あなた責任逃れをせんで、まず答えなさいよ、あなたが決めておるんだから。
  332. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私の御答弁といたしましては、日本の安全と独立ということのためには、世界各国の軍事情勢、そういうものをやはり常に把握をしておくということは必要かと考えておるわけでございまして、できるだけひとつそういう情報収集もやりたいというふうには思っております。しかしながら、外交上のいろいろの問題がございますから、これはむしろイニシアチブを外務大臣がおとりいただいて最終的にお決めいただくことになるかと思います。
  333. 小野明

    小野明君 外務大臣はどういうふうにお決めになりますか。
  334. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたような理由で、まだ本格的に各省分、防衛庁分、検討する段階に至っておりませんけれども、もしそのような問題が出てまいりましたら、ただいま仰せの趣旨もよく心に入れまして、慎重に考えさせていただきます。
  335. 小野明

    小野明君 私はそういう危惧を持つんですが、総理は、かつて行かれたことがあるんですよ。イスラエル、PLOなんというのは大変な問題ですね。そういう火中のクリを拾う以上の危険を冒すことになるんではないかということを危惧いたします。総理の御見解をひとつ伺いたいと思います。
  336. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いろいろ小野君の御注意なども体して、この問題は慎重に検討いたします。
  337. 小野明

    小野明君 これはひとつ十分考えて、防衛庁の誤った方針をおとりにならぬように、ひとつやめてもらいたいと思います。重ねて希望しておきます。  副総理お尋ねをいたします。  経済問題若干ですが、副総理は月例報告ではたびたび四十九年末から五十年夏まで見解を発表されております。経済は底入れをすれば自律反転をするんだと。底入れすれば自律反転をする、こう言われておるんです。それで四十九年底、あるいは五十年三月底、六月底、何回も底を言われるが、一向に言われるように自律反転をしなかった。V字型に立ち直りをしなかったですね。これは事実が証明しておるわけです。それでなければ第四次対策なんて要らぬわけですから。これはやっぱり日本経済の実体に対する副総理の認識が少し違うておったのではないかという気がいたしますが、いかがですか。
  338. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、経済が底に来ればV字型の反転をする情勢になってくると、こういうふうに申し上げたことはいまだかつて一回もないです。むしろ、なだらかな成長過程に入るだろう、こういうふうに申し上げてきておるんですが、そういう経過はたどっているんです。つまり、あらゆる指標から見まして、この三月が底です。そして三月から生産は微弱ながらずっとふえ、出荷もふえる、稼働率も改善される、こういうような状態になってきているんです。そういう状態ですが、その速度がどうもいかにも微弱である。なぜ微弱であるかというと、これは世界情勢、非常に私どもの見ておったところと狂ってきた。それとも連動しながら設備投資が大変不振である。そういうようなことで、どうも思わしい成長にならぬ。そこで一次から四次にわたる景気対策というものをとりまして、政策的に景気の浮揚を図ろうとしておる。そういうことでありまして、傾向は出てきておるわけなんですが、傾向が、世界経済等の影響を受けて思ったような勢いで出てきておらぬ。そういうところに問題がある、そういう認識でございます。
  339. 小野明

    小野明君 午前中の栗林委員質問の御答弁で大体わかっておるんです。しかし、私は経済が回復しないのは個人消費、これを軽視されたからだと、こういうふうに思っておるんです。これは何というてもGNPの過半数を占めておるわけですからね。こういったときには、やっぱり私は減税、これをとるべきではないか、こういうふうに思っております。個人消費を刺激するあるいは減税をというのは副総理はこれは絶対反対と、こういうふうに言われておるんですが、昭和四十年には副総理は大蔵大臣でしたが、法人税中心に減税政策をおとりになりましたね。国家財政の場合は減税をとる。これは大企業の蓄積に役立つからというお考えかもしれませんが、こういった不況のときに、雇用不安のありますときに、やっぱり個人消費というものを重視していかなければ嫌気は回復をしてこないのではないかという見方を持っておりますが、いかがですか。
  340. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十年のときと今日は、わが国経済を取り巻く環境がもうまるっきり変わっちゃったんです。これは小野さんもよく御理解されておるところじゃないかと、こういうふうに思いますが、あのときは、景気が回復過程に入ればかなりの高い速度の成長が可能であるという条件をわが国は持っておったんです。今度はそうじゃなくて、世界の環境から見ましても、あるいは公害問題でありますとか、国内の立地というような設備の立地というようなことを考えても、がんじがらめの状態になってきておる。そこであの当時のような野放図な成長政策、つまりV字型というようなことはもう展望できない。景気が回復いたしましても、これはかなり静かで控え目な成長と私言っておりますが、そういう姿勢をとらなきゃならぬ。そういう際に、政府企業も、また家庭も、それに順応していかないと日本の社会、日本経済の運営というものはうまくいかない。つくりましょう、使いましょう、捨てましょうというような風潮ではもうやっていけない、こういうことが非常にはっきりしているんです。  そういうさなかにおいて消費は一体どうだというと、先ほど栗林さんにも申し上げましたが、消費の落ち込み落ち込みと言います。確かに見通しを立てたときよりも落ち込んでいるんです。見通しじゃ一八%と見た。それが今度は一五%ぐらいになっているんです。それで、それに対応して経済は四・三%実質成長と見たのが、二・二%成長に落ち込んでいるんです。これはノミナルで言いますと一〇%成長ですよ、名目成長は。二・二実質成長は名目では一〇%成長である。その一〇%成長というときに、個人消費の方は一五%の伸びを示しているんですから、これは決してそうこれを手直ししなければならぬという、そういう状態じゃないと思うんです。そういうことも考えなきゃならぬし、また財政事情ですね、公債の消化、これは本当に私は肝要な問題となってくるけれども、そのうらはらをなすものは何だと、こう言いますれば、これは貯蓄以外に頼るところはないわけであります。貯蓄はまたこの消費とのうらはらの問題である。  それからさらに減税減税とおっしゃいますが、減税するには財源が要るんです。いま問題としておるのは、これは景気をどういうふうにするかという問題でしょう。さあ一兆円の財源がある。それを減税に使いますと言ったら、それは個人消費は、まあ貯蓄に仮に回らないとするならば一兆円の購買力となって、そして最終需要をそれだけ発揮するということになりまするけれども、これを公共事業に使うということになれば何倍かの波及効果となって景気を刺激する。いま現実に一兆六千億の財政措置を第四次対策としては講じたんですが、これは三兆円の波及効果を持つと、こういうふうに判断しているので、まあいろいろむずかしい議論は別といたしましても、さあ景気対策として減税がいいか、あるいは公共事業がいいのかというと、私はもう決定的に公共投資の方がいいと、こういうふうに考えております。
  341. 工藤良平

    ○工藤良平君 関連。  私は、一日の日に問題を提起をいたしました財政投融資の貸付残高の問題と、それから労働省雇用保険法に基づいた支出の面で質問をいたしておりますので、その点を若干御報告をいただいて、一、二点質問をいたしたいと思います。
  342. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) お話しの件は、工藤良平先生から御要求のありました輸出入銀行の融資残高の問題だろうと思いますが、これは先生の御要求に従いまして、融資先上場会社の大口のものにつきまして、これは別途当該企業が有価証券報告書に掲載をしておりますので、その数字から拾い上げましてチェックしたものを提出いたしております。
  343. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 労働省に関しましては、先生の御質問は支出を予定される経費についてはそれらの項目を予算に計上すべきである、それはどうかと、こういうふうな御質問だったと思いますので、お説のとおりでごもっともでございまして、今後もそのように対処してまいる考えであります。
  344. 工藤良平

    ○工藤良平君 そこで私は御質問いたしますが、財政投融資資金が日本輸出入銀行を通じまして企業に貸し出されておりますが、いまお話しのこの資料によりますと、三井物産にこれは五十年三月末現在で二千四百億円の融資残があります。ところが、これは昨年私は決算の際に資料要求いたしましたが、なかなかそれが公式に出なかったわけでありますけれども、私の手元にいただきました四十八年の九月末現在の貸付残高が千六百四十九億円になっているわけであります。そういたしますと、このわずか一年ぐらいの間に、特に物価上昇が非常に急上昇に転じてまいりましたその段階で、実は四六%、一企業に対しまして七百五十一億円という実は融資がなされているのでありまして、この点につきましては、私は非常に大きな政府資金の融資といたしまして問題を提起をしてきたところでありました。  ちなみに、この間にたとえば四十八年から四十九年にかけて農業のために財政投融資資金が幾ら使われたかということを調べてみますと、この間に二千九百五十一億円の四十八年度の計画が四十九年には三千六十一億円と、わずか百十億円しか全農家に対して割り当てがふえていないのであります。一商社に対しまして七百五十一億円という莫大な資金が流れているということ、このことを私は財政運営上からいたしまして非常に大きな問題だと考えるわけであります。この点については輸出入銀行からの御回答をいただきたい。  なおただいま雇用保険法に基づきました第五十七条の常用就職支度金につきましては、これは法律上きちんと支払う制度ができたわけでありますから、当然、当初の予算積算の基礎として計上すべきが私は本来の姿であると考えるわけでありまして、これが計上されないままに簡単に予備費から支出をされるということは、今後の財政運営におきましても非常に重要な問題だと思いますので、この点については大蔵省の方からも、今後このようなことがないように労働、大蔵省ともに十分な配慮をしていただきたいと、こういうことを申し上げて御回答をいただきたいと思います。
  345. 澄田智

    参考人(澄田智君) ただいま御質問の点でございますが、四十八年から四十九年、この時期におきまして、海外資源の開発輸入ということが非常に緊急な課題であったことは御承知のとおりでございます。そして、これらの海外からの重要資源の輸入、そのための投資、こういったものが輸銀の重要なる職責であったわけでございます。たとえば天然ガスでございますとか、あるいはアルミ、銅、ニッケルといったような、こういった天然資源の確保のために開発輸入の輸入金融を行う、あるいは海外投資の投資金融を行う、こういうような案件がいろいろとあった次第でございます。御指摘の三井物産に関する点につきましても、このような点でもって融資額がそういう案件によってふえていると、こういう次第でございます。
  346. 工藤良平

    ○工藤良平君 総裁にもう一つお伺いいたしますが、もちろん三井物産につきましては、その要素も私も若干理解をいたします。しかし、日商岩井が三五%増、あるいは伊藤忠が二三%増と、各商社とも非常に大幅に上昇しているわけです。もちろん資源輸入という要素についてはわかりますけれども、物価上昇の元凶をつくったのは何かといいますと、これは本国会でも問題になりました商社が非常に物価上昇の元凶をつくっていったわけです。しかも、これが四十九年から五十年の三月にかけての異常な物価高の際にこれだけの資金が貸し出されていったということは、私は非常に重大な問題として提起をいたしたいわけです。そういうチェックがなされないままに、私はもしもこの融資が今後続けられるとするならば重大な問題だと思いますので、この点につきましては大蔵大臣としても厳しい監視と、私はこの運営に対する今後の対処を望みたいと、このように思います。
  347. 澄田智

    参考人(澄田智君) ただいま御指摘の他の商社の点でございますが、この点につきましては、資源の案件もございますが、それとともにプラントの輸出案件がございまして、国際価格が非常に上がってまいりまして、プラントの案件が大型化をしてきているという現状でございます。ただいまの御指摘の点は、主として輸出金融のその案件、その大型化ということによるものでございます。  なお輸出入銀行は、個々の案件につきまして、その案件の性格、内容、重要性というようなものにわたって慎重に審査をいたしまして、必要最小限度の資金を貸し付ける、こういうような方針でやっておる次第でございます。
  348. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 工藤委員が御指摘になりました労働保険特別会計の補正における予備費に関連しての御質問でございますが、これに関して大蔵省の見解を求められております。本件につきましては、従来とも御指摘の趣旨に沿いまして、必要な予定経費についてそれぞれの予算科目内で必要な措置をとってきたところでございますけれども、今後も御指摘の趣旨に如意して予算計上を行ってまいる所存でございます。  それから第二の輸銀の融資先の問題でございますが、首肯すべき理由がないにかかわりませず、特定の融資先に巨大な資金が偏向していくというようなことにつきましては重々注意してまいりたいと思います。
  349. 小野明

    小野明君 副総理に一問。  消費性向が伸びない。副総理個人消費を非常に否定されるんですけれども、消費性向を見ますと、第五分位といいますか、高所得者層ばかなり安定的な消費をやっていますね。ところが、低所得者層になりますと非常に生活を切り詰めておるわけですよ。それが全部貯金に回っておる。日本だけ二四、五%ですか、前年に比べれば六〇%増というような大変な貯蓄率ですよ。これは日本経済に対して不安を持っておる。老後の問題はもう自分でやらないかぬと、目減り承知で貯蓄に回しておるわけですよね。そういう家計の実態にある。貯金の目減りを量で補おうと、そういう低所得者といいますか、非常に苦しみ多い家計を運営しておると思うんです。そういう面から、やっぱり私は個人消費という面を十分配慮していかなきゃいかぬと思うんです。栗林委員に対する答弁の中では、副総理は、減税は乗数効果はなくて、財政支出には約二倍の乗数効果があると、こういう答弁をされておる。私、岩波の経済学辞典を引いてみました。これは完全な誤りです。両者の間には差はないと書いてあるんです。これをお尋ねしておきます。
  350. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体この乗数効果論ですね、これはもう公共事業の方が数倍の波及効果を持つ、これは私は定説だと思うんです。まあ少数説、それはいつでもありますから、あえてそれをまで否定するわけじゃございませんけれども、大体定説化しておるのは、乗数効果は公共事業の場合には数倍のものになる、こういうことでございます。  それはそれといたしまして、これから日本の社会経済は一体どうなっていくのだろうということですね。資源の制約が出てきたという、こういう時代、しかも資源保有国、これがどういう行動をとるか、こういうことについても不安定要素というものが非常にある。あるいは資源供給自体を制限するとか、あるいは価格を一方的に引き上げるとか、いろんな動きがあることをこれまた予想しなけりゃならぬだろうと思うんです。これはひとり石油ばかりじゃありません。いろんな資源についてそういう傾向が出てくる。  そういう中で、日本社会が資源小国と言われる中でどうして安全にやっていくかというと、いままでのような生産をたくさんいたしましょう、また物もうんと使いましょうという姿勢ではもうやっていけない。と同時に、ことし特例公債を出す。その後遺症、これは相当私は大きなものがこれからあると思うんですが、そういうむずかしい問題をいかに乗り越えていくかということを考えるときに、これはやっぱり貯蓄ですよ。これが進む以外に道は私はないだろうと、こういうふうに思います。そういうときに、さあ景気が悪くなった、だから消費を、物を使うようにいたしましょうというような方向へいくと、これは大変なことになりはしないかと非常に私は心配しているんです。ですから、景気刺激論として減税ということが言われまするけれども、それは減税ということはいいことであるに違いありませんけれども、しかし、それにうかうかと飛びつくわけにはいかぬ、非常にこれは慎重に考えなけりゃならぬと、そういうふうに考えております。
  351. 小野明

    小野明君 地方財政について二、三問質問をしたいと思います。  いままでの答弁を見ますと、自治大臣おられますね、交付税率の引き上げについて検討するという答弁をしておられませんですね。これは自治、大蔵両大臣の覚書にある「配慮」という言葉の意味は、交付税率の引き上げということを意味しておるんですか、おらぬのですか。
  352. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。  配慮ということにつきましては、起債の問題について両省の間で配慮をするというか、縁故債を募集する際に、これが地域によって地方自治体が縁故債を募集しても銀行で応じてくれないような場合がありますというと、地方自治体の赤字を埋めることができませんので、その場合には大蔵、自治両省の間で相談をいたしまして連絡をつけて、そして銀行その他を通じてそれができるようにするという申し合わせはいたしておりますけれども、交付税の問題についてはまだ問題が出ておりません。  あなたのおっしゃる意味は、交付税についてどういう考えを持っておるかという……。
  353. 小野明

    小野明君 上げるかどうかという、それを答弁すればいいんだ。
  354. 福田一

    国務大臣福田一君) わかりました。  そこで、ことし交付税が非常に落ち込んだことは事実でございます。一兆一千億円ほど落ち込みました。これが地方に渡らないということになると大変でございますから、こういうことは、実は交付税の税率を上げたのが四十一年に三二%に上げたんですが、その後も、金額は相違しておりますが、交付税特別会計が三、四度国から金を借りまして、そしてその金を地方に交付税として渡しております。そして、次の年度から償還をいたしておるという事実がございます。そこで、今度の場合、そういうような一兆一千億円もの赤字が出ましたから、やはりこれは国から借りることにいたしまして、そうしてそれを地方に交付税として渡すことにいたしたわけであります。ところが、例年ならば、これはその次の年から償還をするのでございますけれど、いまは非常に経済がこういう厳しい状況で、税収等も非常に困っておるような状況でありますので、来年からすぐにその交付税を返せといってもこれは無理でございます、実際問題として。そこで二年間据え置いて、五十三年から八年間に年賦償還をするということで、年賦割りも大体全部数字を決めておるようなわけであります。  そこで、問題は、事実はそのようなとおりでありますが、問題は、こういうふうに地方財政が非常に困難を来すようなことになっておるのであるならば、交付税率を上げて、国から全部出させるようにしたらいいではないか、こういう御質問であろうと私思うのでありますが、ところが、御案内のように、いま交付税率の問題というのは、この前三二%に上げたとき、二・五%上げたときも大変な議論が七年くらい続いておったわけであります。そして結局国において、そのときには、何といいますか、相当国の財政がゆとりができました、非常にゆとりがある。しかも減税をしたりするようなことがありましたから、減税をしておいて、減税をすれば当然、それまでは二九・五%の税率でありましたけれども、減税をされれば非常にその分だけ減ってしまいます。その分はぜひ減税しない前の分で地方がもらわないというと、これはつじつまが合わぬではないかという議論になりまして、そこで二・五%上げて三二%にしたという経緯があるわけでございます。  今度の場合はどうかといいますと、国の財政は豊かどころではない、税収が二六%も減っておるのでありますから非常な赤字であります。その赤字のときに交付税率の問題を言いましても、国としても非常に困難であります。そこで、一応借り入れという形にいたしておきますが、借り入れたといっても、それではこの借り入れた償還をどういうふうにするかということは先ほど申し上げたとおりでありますけれども、その三年目から八年間、五十三年から八年間に返す場合に、まだ地方財政が非常に困難であるというときには、これはやはり国の方と相談をして、地方財政に余り迷惑がかからないようにするという、これは申し合わせというか、話し合いがついておるわけであります。こういうときに交付税率を上げる——しかし、それはそれとして私は事実を申し上げたのですが、こういうときに交付税率を上げろとおっしゃってもなかなかこれは容易ならざることでございまして、一カ月や二カ月の話し合いでできる問題でもございません、これは基本になる問題でありますから。  そこで、これをどう処理するかということになりますと、大体今度の予算というもの、今度補正を出しましたが、まあ五十年と五十一年が赤字になることは大体明瞭でありますから、また五十二年も赤字になるというような場合になりますというと、交付税法の関係でもって、これは当然交付税率の問題を処理しなければならないという法律になっておるわけであります。そこで五十一年がどうなるかということが問題になるわけです。その五十一年を見て、私は来年の秋ごろにはひとつこの問題を処理をする必要が起きるのではないか、こう考えておるわけでございまして、ただいますぐにこの交付税の問題に手をつけるということは、事実問題としても、また法理論からいってもそれをしなければならないという義務がないということをひとつ御理解をしていただきたいと思うのであります。
  355. 小野明

    小野明君 五十一年、五十二年を見ますと、当然自治省の方でも予測されておるようですが、「引き続き」「著しく」と、こう交付税法六条の規定にあると思いますよ。そこでそういう措置をとられる、こういうことですね。その場合、税についてはそうしますと税源を地方自治体に移譲をする、抜本的な検討をする中でね。そういう方向で税制の洗い直しを行う。当然所得税、法人税など国税も含めた検討をするということになりますか。
  356. 福田一

    国務大臣福田一君) その場合に、交付税率の問題を考えるということが一つございます。それから来年中、いますぐにと言っても無理でありますけれども、地方税に何か移譲するものがあるのかどうか、あるいは地方税のうちで税率を引き上げるような工夫を認めるかどうかとか、それは国税と地方税の関係でいろいろの問題がございますが、これは当然税制調査会にかけなければできないことでございますから、これはもう当然われわれとしてはその種の問題を考えまして、必要かどうかということを一応考えて、そうして税制調査会の議を経て今度は皆様に御相談をするというか法律を出して認めていただく、こういうことになるのではないかと思っておるわけであります。
  357. 小野明

    小野明君 この前の予算委員会野口委員質問で、文部省の管理局長が超過負担がありませんと、こういう答弁をされておるわけですね。本当に文部省に超過負担はありませんか。
  358. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 先般、野口委員の御質問に対しまして、管理局長が超過負担はないと考えますというふうに申し上げたわけでございます。ただ、その説明に言葉の足りないところがあったと思いますから、その内容を申し上げますと、意味するところは三点であったわけでございます。  まず第一点は、昭和五十年についての御質問でございましたが、その前年度、昭和四十九年度に文部省といたしましても実態調査を行って補助単価というものについて調べた。そこで補正予算で二百九十六億円を加えまして超過負担の解消を図った。これが第一点でございます。  第二点は、そこで五十年についてどうしたかという場合に、この四十九年における調査に基づいて、さらに物価の上昇分というものを織り込みまして、補助単価を三一・九%ふやしまして、そこで、三一・九%ふやしましたから、こういう形で文教施設の補助単価は十分であるというふうに考えておることが第二点でございます。  しかし、さらに第三点は、その予算を執行いたしますにつきまして、地域によってやはり違いもございますし、そこで予算の執行にあたっては実情に応じまして執行いたしている。そこで、執行にあたっていまのような実情に応じた若干の調整も行いながらやってまいりますので、そこで文部省といたしましては、五十年度超過負担の問題というものを解消し得るものと考えております。  かような三つの点を申し上げるわけであったわけですが、多少その点詳細な御説明が足りなかったので、つけ加えて、いまの意味合いであるということを申し上げるわけでございます。
  359. 小野明

    小野明君 地方債の消化ですね、大臣、国債にはシンジケート団とかいうのがありますが、地方債の消化というのがなかなか私は困難であると思うんです。これをどのようにお考えになっておるのか。地方自治体、皆これで困っておるんですよ。
  360. 松浦功

    政府委員(松浦功君) 先ほど大臣からお話がございましたように、大蔵、自治両省で今回増発される地方債の円滑な消化に協力をするというお約束をいただいております。私どもも、あるいは大蔵省の方も、銀行局その他各関係機関にお願いをいたしまして消化に全力を挙げるつもりでございます。何とか消化できるものと思っておりますが、仮にどこかの地方公共団体で許可された起債に消化がむずかしいという問題がございますれば、自治省の方にお申し出をいただければ、個々の問題として大蔵省なり日銀なりにお願いをして、完全に消化できるようにわれわれとしては努めていきたいと、こう考えております。
  361. 小野明

    小野明君 大臣、これは知事会からも要望が出ておると思いますが、やっぱり地方債の統一共同引受機関といいますか、統一地方債、こういったものを工夫すべきではないですか。
  362. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま実は公営企業金融公庫というのがございまして、公営企業についてはその金融をするような機関を持っております。これを改組をいたしまして、そうして地方が非常に困ったような場合にその金融をつけるような工夫をしてはどうかということについてただいま検討をいたしておるというか、これは御案内のようにやはり大蔵省との関係もございまして、わが省だけでどうこうするわけでもない、政府の方針にもなりますので、いま真剣に検討をしておるという段階でございます。
  363. 小野明

    小野明君 再度、大臣、五十一年、五十二年の地方財政の見通しというものをお聞かせいただきたいと思います。
  364. 福田一

    国務大臣福田一君) 何しろ五十年度の見込みも、一応計画しても大変な落ち込みがあったような段階でございまして、われわれとしては期待感は持っております、五十一年には何としても大体六%前後の成長率に持っていきたいんだという、そういう考えは持っておりますけれども、それが果たしてできるかどうかということは、今回の補正予算を実施をいたしまして景気がどの程度に回復してくるかということとも関連をいたしますので、   〔委員長退席、理事柳田桃太郎君着席〕 これはいまここでどの程度になるであろうということは申し上げることは……
  365. 小野明

    小野明君 予想が出ていますよ。
  366. 福田一

    国務大臣福田一君) それはだれが出しておるんですか。
  367. 小野明

    小野明君 衆議院で答えられておるんじゃないですか。
  368. 福田一

    国務大臣福田一君) いや、衆議院では、私はそれは相当赤字が出るのではないか、二兆円前後のやっぱり赤字を考えながら処理をしていかにやならぬじゃないかという意味のことを申し上げたのでありまして、それは予想でございまして、幾ら入って幾らという、その的確な数字を申し上げたわけではございません。そういう意味で申し上げておるわけであります。だから来年度も、五十一年度も赤字が出るであろうということを予想して申し上げておる。  で、これは交付税との関係がありますから、来年が赤字で、また再来年も赤字ということになれば、これは当然、税率は法律に基づいて変えなければいけないということはございますが、来年の分については一応そういうことがあっても、いまこの段階で交付税率の引き上げというような問題を国が二六、七%も税収が減っておるときに言うと、親元がえらい貧乏しておるときに息子がまだそれに乗っかって金をよこせというようなことはちょっと無理があるし、実際問題としてこれは困難である、こういう私は考えを持っておるということでございます。
  369. 小野明

    小野明君 ストライキ権についてお尋ねをいたします。  総理、スト権については国会答弁で十一月末までと、こういう答弁をなさっておると思います。この十一月末までに結論を出されますね。
  370. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 小町君御承知のように、私、時期を区切ってはいないと思います。今秋にということでお答えをしておると思っております。
  371. 小野明

    小野明君 官房長官、最近そういう言い方が自民党の中にずいぶんはやっておるようですが、この了解事項の三項は「二年を目途とし、昭和五十年秋ごろまで」と、これは時期は皆この秋までということで了解をしておる。しかも総理答弁も、いままで十一月末と、こういうふうにありますよ。
  372. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 秋……。
  373. 小野明

    小野明君 秋じゃなくて、十一月末ということになっていますよ。出すおつもりですか。
  374. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この秋を目途にして政府としての方針を出したいと鋭意努力をしておることは、小野君御承知のとおりでございます。
  375. 小野明

    小野明君 これは了解できませんね。十一月というきちっと日限が切ってありますよ。  官房長官、この点はあなたが大体責任者でやっておられると思いますが、大体この去年の了解事項の三公社五現業の問題についてはいまのように私は了解しておりますが、非現業の三公社五現業以外の公務員について、公制審で刑事罰問題を検討するようになっていると思います。この点はいかがですか。
  376. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 当時、口頭了解事項というものがございまして、三公社五現業等につきましては「昭和五十年秋ごろまでに結論を出すよう努力する」と、こういうことでございます。  それから非現業につきましては、その五項に「非現業職員の労働基本権については、公務員問題連絡会議で引き続き検討するものとする。」こういうことに了解をいたしております。
  377. 小野明

    小野明君 そこで、私がさらに申し上げたいのは、公制審の答申では、刑事罰について検討するとあるんですよ。だから、その問題は一体どうなっておるのか。これは検討してないんじゃないか、約束違反になっているんじゃないかと、こう申し上げておるんです。
  378. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) ただいま御指摘の非現業職員の労働基本権問題につきましては私の方の所管でございまして、公務員問題連絡会議で引き続き検討をしているわけでございます。御指摘の刑事罰の規定につきましても、この公務員問題連絡会議におきましていろいろ協議を重ねてまいっております。  この問題は交渉不調の際の調整方法、消防職員の団結権問題と並びまして、きわめていろいろな困難な問題を含んでおるのでございます。最近では十月の十三日に連絡会議を開きまして、この刑事罰問題についてもいろいろ詰めをいたしたところでございますけれども、国家公務員法における刑事罰、刑罰規定全体の整合性という問題もあるものでございますから、今日に至るまでまだ結論を得ていないという状況でございます。いずれにいたしましても、私どもが取り組んでおります非現業に関します公制審の答申には期限の制約はついておりませんけれども、私どもといたしましては、できるだけすみやかに結論を得べく努力中であるというのが現在の状況でございます。
  379. 小野明

    小野明君 これは五項目了解事項ですから、三公社五現業とあわせて非現業の公務員についても並行してきっちりひとつ結論を出してもらいたい。  いま一つ問題がありますが、新聞報道によりますと七月下旬から八月上旬に、小野田レミコンという会社がございます。これが、東海銀行の事務センターの建築中に強度不足の生コンを使った、こういう事件がございました。この事件について通産省の御報告をいただきます。
  380. 野口一郎

    政府委員野口一郎君) ただいまの件、お答え申し上げます。  七月の二十四日の日に、御指摘のように新聞で本件が明らかにされたわけでございます。   〔理事柳田桃太郎君退席、委員長着席〕 関東小野田レミコンというその会社、品川工場の出荷した生コンが問題であるわけでございますが、先生のおっしゃいましたように、東海銀行の東京事務センターの新築工事にこの会社の工場の生コンが使用されたわけでございますが、この生コンの強度が不足という問題が明らかにされまして、大体工事が七割ぐらい進捗したところで工事が一応中止になったわけでございます。それがちょうどことしの一月ごろでございます。その後、建築会社の方とこの生コン会社といろいろ話し合いをやりまして、四月からでき上がった部分の取り壊しが始められまして、六月ごろからコンクリートの打ち直しが行われたわけでございます。そうこうしているところで先ほど言いましたように新聞に出たわけでございますが、当省といたしましては直ちにいろんな措置をとったわけでございます。  その第一は、この関東小野田レミコンの工場は、工業標準化法のJIS表示許可を受けている工場でございます。そこで、東京通産局をして七月の二十五日の日に立入検査をさせた、工業標準化法に基づきまして品川工場に対して立入検査をいたしたわけでございます。これは製造の設備、検査方法、品質管理の方法等々が妥当であるかどうかということの検査を行ったわけでございます。この立入検査の結果をいろいろ検討いたしましたところ、JISの表示許可工場といたしましては品質管理上いろいろ問題があるということが明らかになったわけでございます。越えて八月になりまして、八月の二日付で社長の方から、同社の方から、このJIS表示は辞退いたしますという願いが出てまいりまして、八月五日にこの許可を当省としては取り消したわけでございます。それと同時に、関東小野田レミコンはほかに二工場ございます、品川工場以外に。そこで八月の十一日に、その他の二工場につきましても立入検査をいたしたわけでございます。  ちょっとさかのぼりますが、七月の三十日には、私のところに関東小野田レミコンの社長を招致いたしまして、事態を究明すると同時に警告を発したわけでございます。  その後とりました措置は、大きくいって二つございます。  一つは、この工場がJISの表示工場であるということでございますので、他の全国的な生コンの表示工場に対しまして、JISの許可表示工場に対しまして、このJISの規格なり許可条件を守っているかどうかということにつきまして厳重な注意を促し、製品の規格あるいは製造工程、管理等に万全を期するように八月五日に通達、指示を出したわけでございます。  それと同時に、実は全国に数多くのJIS表示の許可工場があるわけでございますが、サンプル的に立入検査を、これは通産局を使いまして、一部の工場でございますが、約十九社二十工場につきまして立入検査をやったわけでございます。これも同じように製造設備、品質管理の方法、その他、JISに定める技術的な生産条件に合うかどうかということにつきましての検査を行ったわけでございます。その結果、大部分の工場につきましては許可を継続するのが妥当であるということになったわけでございますが、一部少数の工場につきましては不完全なことが発見されましたものですから、厳重な注意を促し、早急な改善措置を講じさしたわけでございます。  それから一般に生コンクリート業界に対する指導でございますけれども、これは当局の生活産業局長名をもちまして八月五日の日に、こういうような事態が再び生じないようにということで、当の関東小野田レミコン会社、さらには生コンクリート関係団体及びセメントのメーカーに対しまして文書をもって指導、通告を出したわけでございます。このような指導を通じまして、今回のような事態が起こらないように行政指導をしてまいってきたわけでございます。
  381. 小野明

    小野明君 東海事務センターというようなビルが全部セメントをばらして建て直す、こういう問題になっておりまして、きわめて重大な問題、事人命に関する問題ですから、これは警察庁も捜査をなさっておると思いますが、新聞によると捜査をやめたというようなこともありますが、この点を真偽を明らかにしてください。
  382. 土金賢三

    政府委員土金賢三君) お答え申し上げます。  新聞報道によりまして本件を認知しました警視庁におきましては、直ちに捜査をいたしました。その結果、欠陥の生コンが生じた原因は、その製造過程におきまして、仕様書にはないフライアッシュというものが混入されていたためである。納入検査に当たっては検体ピースをすりかえていたため、検査当時発見できなかったものであることが判明いたしました。この事実が詐欺やあるいは建築基準法違反などにならないかどうか、現在、関係者の事情聴取、あるいは製造工場の実況検分など現在捜査を続行いたしておりまして、決して捜査を中止したとかそういうことはございません。
  383. 小野明

    小野明君 この小野田レミコンというのは、小野田セメントの一〇〇%子会社ですね。そこでこの小野田レミコンが、公共事業に皆この生コンが使われておったとすれば大変です。私の調査でも五十数件挙がっておりますが、過去一年間にわたるこの関東小野田レミコンが納入した公共事業にかかわりある分を資料として提出をしてもらいたい。
  384. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 調べて提出いたします。
  385. 小野明

    小野明君 先般から宮澤外務大臣の問題が保留になっておりますが、私ども問題としたいのは、外務大臣の答弁を読みましたが、立法府であるところの衆議院予算委員会におきましては、そのような行政府の判断は立法府の判断するところでは適当でない、したがって立法府の意思としてかくかく努力をいたすべきであると。行政府と立法府の考え方が違うということは、これは三権分立の立場からあたりまえである、こういうことですね。だから立法府と行政府というのは別々の考え方を持って対処してしかるべきだと、こういう答弁がなされておるわけです。それは、国会を国権の最高機関と憲法四十一条で規定をしてありますが、その規定と矛盾するのではないか、これを第一に申し上げておきたいと思います。
  386. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この件は、憲法で申しますれば、外交関係を処理することが一応行政府の義務となっておるということとの関連があろうと思いますが、いずれにいたしましても、本件は、先般申し上げましたように、衆議院の予算委員会における小林議員の御発言を予算委員長がもっともと思われまして、善処方を政府に御要望になりましたので、政府としては予算委員会における審議の経過を詳細に韓国側に伝えるにとどまらず、この問題について韓国側と政府として誠意を持って話をするということをお約束いたしまして、それを忠実に履行いたしたいと考えておるわけでございます。
  387. 小野明

    小野明君 これはいまのでもやっぱり行政府と立法府の関係がありますが、法制局長官、この宮澤外務大臣の見解について所見を伺いたい。
  388. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 憲法上、内閣は行政権を行うわけでございます。行政事務の処理といたしましては第七十三条に列挙してございますが、そのような行政事務の処理について、内閣は行政権を担うものとして責任を持ってみずからの判断において、重要なものは内閣の段階において、またそれよりやや重要性の低いものは各省大臣の段階においてそれぞれ処理をいたしまして、その処理をした結果については国会に対して内閣としては責任を負うということでございます。そのことにつきまして、内閣としては行政権としての判断はいたします。それについて国会が国政調査等において国会としての、立法権と申しますか、国権の最高機関と申しますか、国会としての立場において違う見解を述べられることは当然あるわけでございます。それに対して国会として行政権の判断がもし誤りであるということでございまするならば、それに対して憲法上設けられておりますところの内閣責任を問う手段をおとりになるということになるわけでございまして、内閣内閣なりとして行政権の行使についてみずからの責任において判断をいたす、それに対して国会がまた別な見地から判断をなさるということを外務大臣は述べたものであろうと私は考えております。
  389. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 田君、簡単に願います。
  390. 田英夫

    ○田英夫君 関連。  いまの外務大臣の御答弁と法制局長官のお答えをあわせて考えますと、先般来問題になっております外務大臣の御答弁は、衆議院におけるやりとりを含めて考えますと、つまり立法府である衆議院予算委員会の意思は、金東雲元一等書記官の出頭を求めるべきであるということになったわけですね。そのことは、行政府である外務省が七月二十二日に韓国の口上書によって金東雲事件は解決したというふうに措置をとられた、その行政府の措置が誤っている、こういうふうに立法府である衆議院予算委員会が意思を表示したと、こういうふうに判断をせざるを得ないと思います。つまり、国権の最高機関である国会の意思は、この問題に関する限り、七月二十二日の口上書で金東雲事件が解決したとしたこの行政府の措置は誤りであると指摘をしたわけですよ。そのことをわれわれ参議院予算委員会もまたその立場から確認をし、政府に対してその対策を問うているという、こういう経過だと思います。したがって、いまのも、法制局長官のお答えをこれに当てはめますと、確かに行政府が一つの措置をとられた、これが誤っていると立法府が指摘をした、どうなさいますか、これに対して行政府がどうされるのか、つまり国民の名においてわれわれ立法府は、行政府のとった措置、金東雲事件に関する限りその措置は誤っていたと指摘をしているわけです。これに対する行政府の措置を伺いたいのです。
  391. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 憲法上の論議を別といたしまして、現実の問題として考えまして、行政府、行政のいたしましたことは適当でないというふうに衆議院の予算委員会が判断されたものと考えますので、したがいまして、金東雲書記官を出頭してもらうことについて、韓国側にその善処方を伝えるということが私に課されました仕事であるというふうに考えております。
  392. 田英夫

    ○田英夫君 委員長、もう一問。  このことは、実は日本政府にとって重大なことになると思います。つまり、一国の政府がその国を代表して外交的に一つの措置をある国との間に取り決めたわけです。それを、その国の国民の名において立法府で誤りを指摘された。その指摘に従って韓国政府に善処方を求める話し合いをするということは、七月二十二日の口上書で解決をしたというその措置を取り消して、そして金東雲事件について改めて話し合いをしなければならぬ、こういうことになるのじゃないですか。  これはそもそも大もとは、政府の方針があの口上書によってとにかく金東雲事件を解決をして、そして韓国との間に日韓閣僚会議をやりたいという、そういう一心からああいう措置をとられたのじゃないですか。なぜあの朴政権とそれほどまでに緊密な状態を保たねばいかぬのですか。さっき三木総理大臣も答弁の中で、小野委員質問に対して、新韓国条項などということを言われているけれども、そんな考えはないんだ、朝鮮半島全体の平和を求めているんだ、これが政府の基本方針だと言われた。にもかかわらず、なぜその中で北朝鮮と敵対関係をあおっている朴政権をそれほどまでに援助をし、これを重要視しなければいけないんですか。国民の意思を曲げてまでそういうことをなぜやらなくちゃいかぬのですか。このところが私どもにはどうしても理解できないわけであります。  したがって、いまのお答えにもかかわらず私は納得できませんし、われわれは納得できませんから、金東雲事件を白紙に戻して、七月二十二日の口上書というものを白紙に戻して、改めて韓国政府とこの問題について話し合うんだと。この捜査は、わが国の捜査当局は依然として捜査を続けているということでありますから、いままですでに指紋の問題以外にもたくさんの捜査結果が蓄積されているというふうに私は聞いています。そういうものを踏まえた上で改めて韓国政府と話し合うんだと、こういうことを改めてここで確認をしたいと思いますが、いかがですか。
  393. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 金東雲書記官の問題につきましては、本来捜査当局が、もちろんわが国の捜査当局としてこれで満足だと言っておりませんことは御承知のとおりでございますし、なお捜査を続行中であるということも言明をしておられるわけでございます。したがいまして、そういう事実もございますから、予算委員会のこのような委員長の御発言というものから考えますと、私どもとしては金東雲書記官に出頭を求めて、そうして事実の究明をせよということが衆議院予算委員会のお考えであると考えまして、そのために努力をいたさなければならないと考えております。
  394. 小野明

    小野明君 いま田委員質問に対して御答弁がありました。私どもとしては、衆議院予算委員会で大臣が答弁をされたその翌日にですね、新聞を見ると、何だ、あれは伝えるだけだと、立法府のそれこそ意思を無視するような発言がございました。その点を私どもいま一つの問題はそれを問題にしておったわけです。その点については大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  395. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは私の真意ではございませんで、せんだってもこの委員会で申し上げましたとおり、この問題について韓国側と誠意をもって話をすることが、お約束を忠実に履行することであると考えております。
  396. 小野明

    小野明君 最初に私が質問をして、調査していない、調査をすると、こういう答弁があっておりますね、総理の政治姿勢の問題。わかりますか、徳島問題。でありますから、調査を明日やってもらって、これは重大な問題ですから私の質問は明日行うのが適当ではないかと思いますが……。
  397. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  398. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  それでは、先ほどの質疑に関連して、調査の結果を関係当局から発言を願います。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  399. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  残余の質疑は明日行うことといたします。  明日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十八分散会