運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-11-05 第76回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月五日(水曜日)    午後零時六分開会     —————————————    委員の異動  十一月五日     辞任         補欠選任      遠藤  要君     黒住 忠行君      志苫  裕君     粕谷 照美君      矢原 秀男君     桑名 義治君      上田耕一郎君     須藤 五郎君      下村  泰君     喜屋武眞榮君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大谷藤之助君     理 事                 岩動 道行君                 中山 太郎君                 矢野  登君                 柳田桃太郎君                 松永 忠二君                 宮之原貞光君                 矢追 秀彦君                 岩間 正男君                 向井 長年君     委 員                 安孫子藤吉君                 井上 吉夫君                 石破 二朗君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 黒住 忠行君                 源田  実君                 斎藤栄三郎君                 坂野 重信君                 玉置 和郎君                 中村 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 最上  進君                 森下  泰君                 八木 一郎君                 吉田  実君                 上田  哲君                 小野  明君                 粕谷 照美君                 工藤 良平君                 佐々木静子君                 辻  一彦君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 野口 忠夫君                 相沢 武彦君                 太田 淳夫君                 桑名 義治君                 須藤 五郎君                 内藤  功君                 渡辺  武君                 木島 則夫君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   三木 武夫君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        法 務 大 臣  稻葉  修君        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        文 部 大 臣  永井 道雄君        厚 生 大 臣  田中 正巳君        農 林 大 臣  安倍晋太郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  木村 睦男君        郵 政 大 臣  村上  勇君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣  仮谷 忠男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      福田  一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 井出一太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       植木 光教君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       松澤 雄藏君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       佐々木義武君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  小沢 辰男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  金丸  信君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        公正取引委員会        事務局経済部長  野上 正人君        行政管理庁行政        監察局長     鈴木  博君        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        防衛庁衛生局長  萩島 武夫君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁国民        生活局長     岩田 幸基君        経済企画庁物価        局長       喜多村治雄君        経済企画庁総合        計画局長     小島 英敏君        科学技術庁研究        調整局長     伊原 義徳君        科学技術庁原子        力局長      生田 豊朗君        科学技術庁原子        力局次長     山野 正登君        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁企画調整        局長       柳瀬 孝吉君        環境庁自然保護        局長       信澤  清君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       堀川 春彦君        外務省経済局次        長        野村  豊君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵大臣官房長  長岡  實君        大蔵省主計局長  吉瀬 維哉君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  松川 道哉君        大蔵省証券局長  岩瀬 義郎君        大蔵省銀行局長  田辺 博通君        国税庁次長    横井 正美君        厚生大臣官房長  宮嶋  剛君        厚生省環境衛生        局長       松浦十四郎君        厚生省薬務局長  上村  一君        厚生省社会局長  翁 久次郎君        厚生省年金局長  曾根田郁夫君        農林大臣官房長  森  整治君        農林省農林経済        局長       吉岡  裕君        農林省構造改善        局長       岡安  誠君        農林省食品流通        局長       今村 宣夫君        食糧庁長官   大河原太一郎君        水産庁長官    内村 良英君        通商産業審議官  天谷 直弘君        通商産業大臣官        房審議官     藤原 一郎君        通商産業省貿易        局長       岸田 文武君        通商産業省基礎        産業局長     矢野俊比古君        通商産業省生活        産業局長     野口 一郎君        資源エネルギー        庁長官      増田  実君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        井上  力君        資源エネルギー        庁石油部長    左近友三郎君        中小企業庁長官  齋藤 太一君        運輸大臣官房長  山上 孝史君        運輸省港湾局長  竹内 良夫君        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君        運輸省自動車局        長        高橋 寿夫君        運輸省航空局長  中村 大造君        海上保安庁長官  薗村 泰彦君        郵政大臣官房電        気通信監理官   松井 清武君        郵政省貯金局長  神山 文男君        郵政省電波監理        局長       石川 晃夫君        郵政省人事局長  浅尾  宏君        労働大臣官房審        議官       細野  正君        労働省労働基準        局長       藤繩 正勝君        建設大臣官房長  高橋 弘篤君        建設省計画局長  大塩洋一郎君        建設省住宅局長  山岡 一男君        自治大臣官房審        議官       石見 隆三君        自治省税務局長  首藤  堯君        消防庁長官   佐々木喜久治君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 正雄君    説明員        日本電信電話公        社総裁      米澤  滋君        日本専売公社総        裁        泉 美之松君        日本国有鉄道総        裁        藤井松太郎君    参考人        日本銀行総裁   森永貞一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)(内  閣提出、衆議院送付) ○昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  補正予算案審査のため、本日、日本銀行総裁森永貞一郎君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 昭和五十年度一般会計補正予算  昭和五十年度特別会計補正予算  昭和五十年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑を行います。辻一彦君。
  5. 辻一彦

    辻一彦君 最初に総理にお伺いします。  総理は、主要国首脳会議に非常に情熱を燃やされて、南北問題について日本から新しい提案をされる、こういうことを聞いておりますが、これにつきましての具体的な内容につきましてお考えをお伺いしたいと思います。
  6. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 南北問題、先進工業国発展途上国との格差は拡大するばかりですから、これをそのままに放置しておいて国際関係の安定というものは望めませんから、これは主要国首脳部が寄った場合に、世界全体の景気を回復するという見地からも、世界の平和、安定というものをもたらすためにも、これは重要な課題になりますが、何らかの所得の安定ということ、こういうふうなことをいろいろ考えておるわけですが、こういうことで、また日本の方もここで申し上げるようなところまできていないんです。煮詰まっていない。私もこうやって予算委員会でずっと一日やっておりまして、それから帰っていろいろやるわけですから少し準備がおくれておりますが、まだここで申し上げる段階ではない。何らか日本はこれに対して日本としての提案をしたいと、南北問題に対して。こう考えております。
  7. 辻一彦

    辻一彦君 総理は南北問題に何とか取り組みたいということですが、第一次産品のいわゆる所得補償問題を検討している、こういうことが新聞等にはしばしば出ているし、また、総理は直接各省局長クラスを集めて具体的な指示をされていると、こういうことを聞いておりますが、それでもって何も申し上げることがないということはないので、私は、かなりな構想が固まりつつある、具体的になければその考え方について伺いたいと思います。
  8. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 八月にアメリカに参りましたときに、プレスクラブでこういうことを私自身が必要であるというふうな演説をした中に、第一次産品所得補償方式ロメ協定というものがヨーロッパでこういう構想が打ち出されておるのですが、ヨーロッパアフリカというだけでなしに、もう少し世界的な規模でこういう問題を取り上げる必要があるというような演説をしたわけで、やはりこの発展途上国というものは、工業国工業開発の進んでおる国でありませんから、第一次産品というものにその国の主所得というものは依存しておるわけですから、それが非常に変動が激しいですから、これをやはり何らかの安定した所得が補償できるようなシステムというものは、私自身も興味があって、そういう問題について私が各省連絡会議を開きまして指示した中の重要な項目の一つになっておることは事実です。それで、これをこういう方式でというところまでまだ固まっていないということでございます。
  9. 辻一彦

    辻一彦君 私は、まだ時間が首脳会議に出られるまでにありますから、必ずしも固まっているとは思いませんが、第一次産品東南アジア等で非常に重要であるとするならば、それについてこういう構想といいますか、骨子といいますか、大筋ぐらいは私はもう総理の腹の中にあると思うのですが、あえてそれをひとつお伺いいたしたいと思います。
  10. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはアフリカとまたアジアというものは違いますからね。第一次産品といっても、十二品目ヨーロッパは取り上げておるわけですが、しかし、アジアでは、その中に入っていないものの中でアジアの重要な第一次産品がありますから、やはりアジアというものもグローバルなものにしなければいかぬという、アジアというものも私の頭の中にあるわけですよ。そういうことで、もう少し品目というものが各地域に適用できるような品目でなければならぬということも、日本の立場からすれば一つ考え方基礎にあることでございます。
  11. 辻一彦

    辻一彦君 それでは私ちょっと申し上げますが、昨年本院の派遣で私、東南アジアインドネシア等農業開発を見に行きました。インドネシアの港に、日本が要求して山から切り出したたくさんの木が川をおりて集まっておる。しかし、日本景気関係でその木材が送れないということで、港にたくさんの木材が浮かんだまま非常に困っている。現地では倒産が起きている。こういうことで日本に対する不信感が倍加しているという状況がありましたが、これは私は木材に限らない。アジアにおける第一次産品等はこういう問題がたくさんあると思うのですが、これらに対して具体的な構想をお持ちなんですか。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ことにアジアとの関係では、農産物に限りませず、一次産品につきまして、わが国景気の動向で非常に相手方に迷惑をかけるという例が御指摘のように多うございまして、気の毒なことに思っておるわけでございますが、先ほど御指摘のありましたいわゆる輸出所得補償といったようなことも、そういうこととの関連で考えていかなければならない問題ではないか。備蓄という問題も別途あるわけでございますけれども、これはなかなか品目ごとにむつかしい問題がございますので、輸出所得補償というようなことはやはりわが国としては基本的には前向きに取り組まなければならない問題になっておるというふうに考えております。
  13. 辻一彦

    辻一彦君 外相はある程度具体的な問題をお持ちのようですが、これは今度の首脳会議に具体的に提案する構えなんですか、この問題を。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは先ほど総理お答えになっておられるわけでございますが、総理の言われましたロメ協定というものもいま進行中でありますし、イギリス総理大臣構想を出されるというようなことでございますから、わが国としては、やはり問題の所在というものはしっかり確認をして認識してかからなければならないと思いますが、わが国として、グローバルな規模でありながらしかしアジアというものに一つの重点を置いた構想というものはどのようなものであり得るか、そのための必要な経費の支出、それをどういう仕組みにおいてやるかといったようなことを実は各省がただいま協議をいたしておりまして、私どもとしては総理大臣首脳会議に出られます際には、非常に具体的な数字までの姿でなくとも、基本的なわが国の姿勢というのは、各省の間で、できるならば総理腹固めをしていただくような程度にはまとめておきたいというふうに私どもいま努力をいたしておるところでございます。
  15. 辻一彦

    辻一彦君 基本的ないまの問題の認識について、私は一、二点なお伺いたいと思うのです。  それは国際的な農業開発協力の問題に関して、やっぱりわが国腹構えが大事じゃないかと思います。インドネシアやタイの日本農業開発等を見て回ると、いわゆるオランダやイギリス、フランス、ドイツ等は長い目盛りで長期計画に取り組んでいる。わが国の場合は、技術関係で二、三年というように、効果はわりと早く上がるけれども、根が浅い。その点について、欧米日本の取り組みの違いがかなりはっきりしておりますが、これらについてどうお考えか、伺いたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 従来、わが国のいわゆる農業関係援助でございますが、タイプによりまして、土地の基盤の整備であるとか、あるいは灌漑でありますとか、パイロットファームであるとか、あるいはまた別の観点から言いますと、農機具であるとか、肥料であるとか、品種改良であるとか、また別の観点から、方法としては開発援助であるとか、いろいろなことをやってまいっておりますけれども、御指摘のように、多少長期的な視野というものを欠いておるというふうにおっしゃられれば、そのようなうらみなしといたしませんで、国ごとにもう少しはっきりした長いビジョンを持った計画を本来ならば持つべきであると言われる点は、私は御指摘のとおりと思います。
  17. 辻一彦

    辻一彦君 長期展望が大事だということは確認をされたわけですが、たとえば欧米東南アジアあたりの農村に入っている人たちは、十年とかいって住み込んで真剣にやっている。日本の場合も一生懸命やっておりますが、二年、三年で帰ってくる場合が非常に多い。この差は、本当に農業開発協力する場合に大きな違いとして私は出ると思うのですが、これについての御見解はどうでしょうか。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それも残念ながら御指摘のような点がありまして、すなわち、中には技術員等で隠れた仕事を営々とやっておってくれる人が実際にございます。現地に行きますと、はっと思うようなことがございますけれども、なかなか全体としてはそうまいらずに、いわば医療であるとか教育であるとかいう面で、つまり家族まで住み込んでというようなことがまだもう一つ十分でない。欧米の場合には、たまたまかって植民地関係にあったという国がございまして、そういうことがやりやすいということは私はあろうと思いますけれども、いま私どもがそれを申しましても、これは弁解のようなことでありまして、言われますような点で欠くるところがあると思います。
  19. 辻一彦

    辻一彦君 植民地関係でやりやすいというのは、私はどうかと思うんですね。それならば、日本人の方が皮膚の色が同じだからもっとやりやすいはずなんです。  具体的な例として、インドネシアのランポン州で、十四、五人の各県から派遣された農業関係技術員の皆さんと懇談をした。結局二、三年になるというのは、医療や子供の教育に心配があって腰が落ちつかぬ。このことをきちっとした条件をつくらないと本格的な農業開発というのは東南アジアへ行ってできないと思うんですが、この点についてどう改善される用意があるか、外務大臣農林大臣にお伺いしたい。
  20. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) お答えいたします。  農業協力のためにおいで願っている専門家の方々の医療関係教育関係について問題のあることは御指摘のとおりでありますが、私たちが現在その方面でやっておることを御紹介いたしますと、医療関係では、まず、そういった専門家がおいでいただく前に、その地域に病院があるかどうかというようなことはもちろんチェックいたしますが、万一病気になられた場合は国際協力事業団というところで保障をいたしますと同時に、そういった僻地に対しましては僻地手当支給とか、生活環境整備のための支給とか、それから通常の休暇期間のほかに、毎年一回、最寄りのそういった医療設備のあるところへおいで願うということを考えております。  それから教育につきましては、技術協力専門家に対して教育手当というものを差し上げておりますが、もちろんこの手当だけで解決する問題ではございませんけれども政府といたしましては現地日本人学校をなるべくつくっていくというようなことで考えておりますし、それから専門家の子弟が専門家の任地から離れて通学するということもあり得ると思いますので、この点についても改善の策を講じていきたいというのが現状でございます。
  21. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 東南アジアに対するところの農業協力は非常に私は大事であると思います。この農業協力につきましては、やはり長期的な展望に立ってこれを行わなければならないと基本的に考えておるわけでございますが、現在のところ、いま御指摘がございましたように、側の要請もあるわけですが、大体五年前後というような状況になっておるわけでございます。しかし、今後とも相手国要請を踏まえて、滞在期間等につきましては、こちら側としても協力する体制で向かわなきゃならぬと思うわけでもあります。また同時に、農業技術者につきましては、これはやはり農業特殊性から見まして、国とか都道府県の職員が行っているわけでありますが、その場合は大体中堅クラスということになっております。さらに、向こうでの、いまお話のございましたような生活環境等につきましてはいろいろと問題もあるようでございますが、これに対しましては、いま外務省からもお答えをいたしましたように、農林省としても外務省と緊密な連絡のもとに、技術者が安心をして協力ができるようにわれわれとしても力を尽くしたいと、こういうふうに考えております。
  22. 辻一彦

    辻一彦君 総理、こういう問題をやっぱり真剣に取り組んで改善をしなければ、ただ国際基金にお金を幾ら出すかと、こういうことだけでは私は問題は解決しない。こういうことをもっと本格的に改善をする決意の上に立って百脳会議に臨まれるのかどうか、この点をもう一度お伺いいたしたい。
  23. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) やはりこれは、南北問題というものは大きな問題、ことに日本の場合は、アジアという皆ほとんど発展途上国の中に日本アジアの一員として加わっておるわけですから、ほかの首脳の人たちよりももっとこの問題に対する切実な感じを持っているわけですから、そういう意味で、そのときにただ短期的に技術とか資金とかを供給するというのではなくして、長期的な展望に立って、しかも継続的に農業開発というものをそういう発展途上国に向かってやるということを考え一つの転機に来ていると私は思うんですよ。そういう意味で、辻君の言われるように、これはもうただその場というのでなしに、もう少し長期的な展望に立って従来の農業の開発協力というもののあり方を見直してみる時期に来ておる。いまいろいろ御指摘になったような問題も確かに反省すべき点があると思います。そういう点で、これは一つの転機だと私は受け取っておるわけでございます。
  24. 辻一彦

    辻一彦君 首脳会議には、にぎやかなだけで中身がさっぱり固まっていない感じがします。行かれるなら私はしっかりした構えを持って臨んでいただきたいと思うんです。  そこで、国際農業基金に拠出金が云々されておりますが、どれぐらい出すつもりですか、外務大臣
  25. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国は、世界食糧会議が設立の決議をいたして以来、この会合にはずっと当初から関心国として出席をいたしております。全体として十億ドルないし十億SDRということが言われておるわけでございまして、中にはすでに意図表明をいたした国もございます。わが国としてはまだ意図表明をいたしておりませんで、実は恥ずかしくない金額をということで、各省の間でいまいろいろに話の詰めをいたしております。正式の意図表明は来年になりましてからでも差し支えないのではないかと思っておりますけれども、これも、できるならば総理首脳会議に臨まれますときにはほぼ見当をつけて御出席をいただきたい。言われますかどうかは別といたしまして、そうしたいということで各省がいま詰め合いをいたしておるのでございますが、何分にも御承知のような財政の状態でございます。いま、きちんとした数字を申し上げるところまで話がまだ至っておりません。
  26. 辻一彦

    辻一彦君 第二に、私は金融問題についてお伺いをしたいと思います。総裁に。  ことしの五月に不況対策を大蔵委員会で論議をしたときに、公定歩合の引き下げが小刻み過ぎるので効果が上がらぬのではないか、こういうことを指摘したことがありますが、一次−三次の引き下げによる効果はどういうようにお考えですか。
  27. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 大蔵委員会における御質問の御趣旨もよく記憶いたしております。私どもといたしましては、物価の安定と景気の回復、この両面の配慮をしていかなければならないわけでございまして、あの当時におきましては、まだ物価面についての鎮静化の傾向が定着したとは言えない状態でございましたので、その面の配慮を重視し、公定歩合の引き下げにつきましても〇・五%ずつという小刻みの引き下げを三回続けてきたわけでございますが、私どもといたしましては、それぞれの時期の情勢から考えましてそれは妥当な措置であったと考えておる次第でございます。  その効果がどうであったかということでございますが、直接の効果は短期金利、標準金利あるいは並み手等の短期金利、これは公定歩合に連動して下がるわけでございますが、金融機関の貸し出し全体にどういう影響を及ぼしたかということになりますと、今回の場合は金融機関の貸出金利の追随率が大変順調にいっておりまして、過去の同じような期間に比べまして今度の場合はテンポも早い。九月までのところでは、都市銀行におきましては、公定歩合の引き下げ率一・五%に対しまして四五%の引き下げということになっております。地銀の場合には、預金構成等の違いもございまして、若干それより劣っておりますが、銀行全体として考えましても、貸出約定平均金利は九月の時点ですでに八・九%前後ということに経過しておるのでございまして、これは企業に対しましても、また経済一般の景況に対しましても、それなりの効果があったのではないかと考えております。さらに、窓口規制の弾力化という措置もあわせ講じてきておる次第でございまして、両々相まちまして、金融政策としてはそれなりに効果を上げてきておるものと考えております。
  28. 辻一彦

    辻一彦君 小刻みであった原因は、日銀が個人消費の問題を見通しを誤っておったのではないか。個人消費が回復する、だから経済の、景気の自律反転説をとって、このために小刻みでなかったかと思いますが、個人消費はそういう意味で非常に回復しなかったわけですが、この点の見通しはかなり誤りがあったと思うのですが、どうですか。
  29. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 個人消費は、昨年の暮れの低迷の後を受けまして、ことしに入りましてからは持ち直しまして、その後は一進一退のうちに推移しておるわけでございます。私ども一−三月の時点では、消費者物価の落着とともにもう少し堅実な消費の伸びがあるのかと期待いたしておりましたが、その辺は消費者の態度はやはり慎重でございまして、まあ対前年同期比相当の増加ではございますが、月々をとりますと一進一退というようなことで推移いたしております。しかし、個人消費がもちろん減少しているわけではないわけでございまして、景気の下支えとしての役割りは十分果たしておるということだと存じます。  それよりも、最終需要全体の伸びがどうなるかという問題だと思います。設備投資は、操業率が低下しておる今日、低迷もやむを得ない事情にございますし、輸出が国際的な不況のもと伸び悩んでおります。昨今は、対前年同月比一割前後の落ち込みというようなことでございまして、その辺はやや国際景況からの影響を甘く見過ぎておったような感じでおる次第でございます。なお、政府支出あるいは住宅等につきましては、政府の一次ないし四次に至る不況対策の効果もございまして、着実に伸びておるわけでございますが、総体として最終需要の伸びがはかばかしくないという点だと存じます。
  30. 辻一彦

    辻一彦君 総裁が日銀で公定歩合の大幅引き上げが必要であると感じられた時期はいつですか。
  31. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 御承知のような景況並びに物価の情勢でございますので、この辺でもう一段と景気の着実なる回復に資するために金利の引き下げを促進すべきであるという判断をいたしましたのは、九月の半ばごろでございます。
  32. 辻一彦

    辻一彦君 じゃ、九月の半ばには第四次対策が打ち出されておりますが、それから二カ月近く、一カ月余りたって、公定歩合の引き下げはかなりおくれた感じがします。その間のいきさつはどうだったか、お伺いしたい。
  33. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 一次から三次までの公定歩合の引き下げに際しましては、預貯金の金利を据え置きましたことは御承知のとおりでございます。その結果どういうことが起きていたかと申しますと、一年物の定期預金の金利と標準貸出金利、いわゆるプライムレートが同率というところまできておったわけでございまして、公定歩合をさらに下げますとその辺が逆ざやになる。逆ざやになりますと、四十六、七年の苦い経験があるわけでございますが、金融機関はとかく量的な貸し出しを競いまして、その辺から過剰流動性が生じていったということもございますので、金利体系上やはり逆ざやにしてはいけない。また金融機関の収益の面から申しましても、預貯金金利を据え置いてきておりますので、貸出金利の一層の低下には限界があるというようなことから、第三次の引き下げを決定いたしました際にも、これ以上の金利の引き下げには預貯金の金利の引き下げが前提になるべきである、そういうことを申しておった次第でございます。  今度の一%の引き下げに際しましては、まさに預貯金の金利の引き下げが前提にならなければならないと考えたわけでございまして、その意味でで、金融機関の預貯金の金利、それから郵便貯金等の金利につきまして引き下げのアクションをとっていただくよう政府にもお願いをしたのでございます。それが九月の半ばごろの情勢でございました。政府におかれましては、金融機関全般の金利につきましては、大蔵大臣の発議で政府委員会に御下命があり、政策委員会としては金利調整審議会に諮問をする手続をとりました。また、郵便貯金につきましては、郵政大臣から郵政審議会に諮問がございましたわけでございますが、郵政審議会の方の審議に若干手間取りまして、結論が出ましたのが十月の二十日過ぎということでございまして、その辺の決着を見届けまして公定歩合の引き下げを最終的に判断し決定いたしましたので、引き下げを促進した方がいいという判断をいたしました時期から考えますと一月余りおくれたわけでございますが、これは現行の預貯金金利に関する制度を前提とする以上やむを得ないことであったというふうに考えております。
  34. 辻一彦

    辻一彦君 経緯はそれとして、結果として一カ月余りたなざらしになった。これは公定歩合を通しての景気のいわゆる機能的な、機動的な政策決定というもの、そういうものの機能の麻痺、あるいは日銀の専決事項の手をみずから縛ったんじゃないか、こういう批判がありますが、これについてどう考えますか。
  35. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 預貯金金利の引き下げを伴う金利決定の際に、今度の場合のように時間がかかるということは決して好ましいことであるとは思っておりません。前回の引き下げの際にも同じような問題がございましたが、その辺は私どもといたしましても残念に思っておる次第でございます。しかし、預貯金金利の決定方法につきましてはそれぞれの沿革があるわけでございますし、金利調整審議会と郵政審議会がその審議に当たられるという沿革は尊重しなければならないと思いますし、したがいまして、私どもといたしましては、現行制度の上でどうしたらもっと手っ取り早く決定が得られるか、その辺のところをこれから政府にもお考えいただきたいと思いますし、私どもといたしましてもお願いもしなければならぬと思っておるところでございます。  なお、預貯金金利はこれはたくさんの利害関係者がおるわけでございますので、それをしも日本銀行の専決というわけにもまいりますまい。どうしてもやはり審議会みたいな手続を踏む必要があると思いますが、審議会の運用に際しまして、もっと手っ取り早く機動的に動けるような少なくとも運用を今後は考えていただきたいと考えておる次第であります。
  36. 辻一彦

    辻一彦君 この金利決定機構について、一元化についての批判もありますが、これについては総裁はどう考えますか。
  37. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 二元化とおっしゃられますのは、郵便貯金については郵政審議会、金融機関の預貯金については金利調整審議会、二つの審議会に分かれておることの御指摘だと思います。その辺につきましてはいろいろな意見があり得るところだと存じます。もし白紙で制度を考えるということになりますれば、これはもう一本の機関で審議されることがいいにこしたことはないのでございますが、郵便貯金につきましては長年の伝統、沿革もあることでございますので、いまにわかに郵政審議会における金利審議の機能を省くということもなかなかできにくいことだと思うわけでございまして、私といたしましては、たとえばこの両方の委員をダブらせるとか何とかいろんなことを工夫いたしまして、もう少し相互に緊密なる連絡を保ちつつ、もう少し早く決定ができるようにということを考えなければならぬのじゃないかと思っております。
  38. 辻一彦

    辻一彦君 この問題、大蔵大臣どうお考えですか。
  39. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 金利政策の実行に当たっての機動性を保障するために、金利政策の決定について一元化が望ましいことは申すまでもございませんけれども、沿革的に三元化されております。こういう前提をもとにいたしまして、できるだけ意思の疎通を図りまして二元化の弊をためてまいるというようにいたすべきでないかと考えております。しかし、仮に一元化いたしましても、郵便貯金は政府が管理いたしておるわけでございまするので、郵政大臣がその金利について無関心でおられるはずはないと思うわけでございますので、その意思の疎通は十分図って実行しなければならぬわけでございます。  要は、制度の問題もございますけれども、やはり運用の問題が大事だと思うのでございます。今回大変遅くなったように思いますけれども、前回の決定よりはずいぶん早く処理ができたわけでございますので、運用について特段の工夫を今後とも加えてまいりたいと思っております。
  40. 辻一彦

    辻一彦君 私は一元化が必ずしも望ましいと、そういう意味ではないんですが、この問題はいろいろ検討の要もあろうと思います。  そこで総裁、この公定歩合を引き下げて、標準金利改定によって大企業の受ける金融負担軽減はどのぐらいになりますか。
  41. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 長期と短期とございまして、短期の方は、先ほども申し上げましたように、標準金利あるいは短期優遇金利は公定歩合に連動して下がっておるわけでございます。  企業の場合にはむしろ長期金利の方が問題であろうかと存じますが、長期金利につきましては、今般の公定歩合の引き下げに伴いまして標準貸出金利を〇・五%下げることになりました。社債につきましては、十一月分につきましては〇・三%ということでございますが、さらに将来下がることも期待されておるわけでございます。  おしなべて〇・五%前後のものが引き下がるわけでございますが、これはその効果が企業にフルに及びますのには少し時間がかかるのではないかと思います。と申しますのは、たとえば社債等につきましては、既発債の金利は変わりませんし、これから発行されるものについてのみ下がっていくわけでございます。また長期貸出金利につきましても期限がございまして、期限内のものにつきましては下がりません。それが書きかえられるときに下がるわけでございます。そこで、これからの、たとえば半年なら半年をとりまして、新しい社債がどのぐらい発行せられ、また新しい貸付金がどのぐらい出るか、そしてまた、旧来の貸付金が新しい貸出金にどのぐらい書きかえられるかという、その辺の事情にかかっておるわけでございまして、その辺も的確に各企業について判断し集計することは、これは至難のわざだと思っております。  したがいまして、具体的に何百億という数字はなかなかつかみ得ないのでございますが、時間の経過とともに貸出金利の低下の影響が企業の収益にも及んでいくというふうに申し上げたいわけでございます。
  42. 辻一彦

    辻一彦君 〇・五%が三回、一%と合わせて二・五%、これだけの金利が下げられて標準金利が一応適用されるとすれば、企業は、私は一応このいろいろの試算をもらったんですが、一%で六百億、二・五%で千四百八十九億程度、マクロの計算ですが金利金融負担軽減になると、こういう資料を日銀の方からも聞いておりますが、これはいかがですか。
  43. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 日本銀行では主要企業経営分析というのを定期的にいたしておりますが、その対象企業数は三百三十七社でございます。短期借入金利が、第一次ないし四次を通計いたしまして二・五%下がったとした場合の効果でございますが、金融費用の減少額は千四百八十九億、これは二・五%下がったという前提での計算でございますが、現実にはいろいろな貸付金がございますので、追随率が公定歩合の引き下げ幅に一〇〇%追随するわけにもまいりません。その辺をどの程度と見るかというようなことによって現実の収益に対する影響は違ってくることを申し上げたいわけでございますが、仮に二・五といたしますれば千四百八十九億円という数字が出てまいります。
  44. 辻一彦

    辻一彦君 大蔵大臣に伺いますが、四十八年、四十九年の個人の預貯金の目減りは、マクロとミクロでどのぐらいになりますか。
  45. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 四十八年、四十九年は、世帯当たりの定期性貯金残高、四十八年は八十二万九百円、四十九年は九十九万五千七百円でございます。で、一年制の定期預金の金利は四十八年は五・七五%、四十九年は七・五%でございます。消費者物価は、四十八年が一九・一%の上界、四十九年は二一・九%、両年とも大変高い狂乱時代でございました。したがって、一年中の購買力の減価、四十八年は十五万六千八百円です。それから四十九年が二十一万八千百円でございます。したがって、実質減価、四十八年は十万九千六百円、四十九年は十四万三千四百円、そういうことでございますので、率にいたしますと、四十八年が一三・三五%、四十九年は一四・四%の遺憾ながら減価になっております。
  46. 辻一彦

    辻一彦君 それを、世帯数をマクロの計算をすれば全体の目減りが出ると思いますが、これは巨額なものになると思います。  そこで、総裁のように、一〇〇%公定歩合の引き下げに標準金利がいま追随しているというわけではないにしても、これが若干の時間がたてば千四百八十九億程度のいわゆる金融負担減、言うならばプラスになっていく、収益になっていくと。片方では零細な預貯金をした人は過去に非常に大きな目減りを来して、そして今度は全部同じように郵便貯金も切り下げられる。これでは私は弱いところにうんとしわ寄せを寄せる金融政策というか、政策じゃないかと、こう思いますが、この点について総裁、それから大蔵大臣、どうお考えか、お伺いしたい。
  47. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 景気の着実なる回復を図るということのために金利引き下げを実行いたしておるわけでございまして、今回の一%引き下げにつきましては、預貯金金利の引き下げが前提になったわけでございます。その分はなるほど預金者の手取りが減るわけでございますけれども、全体の景気が回復することによる国民全体の利益ということもあわせ考えなければならないわけでございまして、必ずしも積貯金者のみに不利益を強いるものではないと考えておる次第でございます。やはり金利体系上、望ましき預貯金金利と貸出金利のバランスということを考えなければならぬわけでございまして、その辺のところは預貯金者にも御理解いただけるところではないかと存じます。  もう一つ物価との関係という問題、目減りの問題があるわけでございますが、預貯金金利の引き下げは将来に向かって適用されるわけでございまして、過去のものにつきましては、その期限内は過去の高い金利が適用されるわけでございます。将来の金利としての預貯金金利が下がったわけでございますが、これはそのときどきにおける物価動静が将来どうなるかということとの兼ね合いにおいて判断しなければならないわけでございまして、もちろん極力物価の騰貴を抑制し、目減りを来さないようにという努力が必要なわけでございますが、一年前に比べてまだ一割高いから将来に向かっての預金金利を余り下げられないというようなことにはならぬのじゃないか。あくまでもそのときどきにおける物価の将来の動向を考えていけば済む問題ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  48. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 金利は、経済活動がその適正な金利をめぐりまして順調に行われるという状態であるべきだと思うのでございます。したがって、一概に高い低いということを、そういう経済状態と別個に独立して判断すべきものではないと私は思います。したがって、その経済活動が順便に遂行できる金利は、同時に国民生活の健全性を保証するに足る金利になるわけでございますので、預貯金金利が低目になったということから、直ちにそれが預貯金者に対しまして不利に働くということを断定するわけに私はまいらぬと思うのであります。
  49. 辻一彦

    辻一彦君 まあ短絡はしないとは思いますが、しかし、過去に大きな預金目減りがある。片方では歩合の引き下げに従ってかなり大きな収益がある、片方は零細な貯金も引き下げられる、これでは弱いところに私はしわ寄せが寄る政策ではないか。そういう点で、総理お暇なようですけれども三木内閣は不公正是正を一枚看板にされておりましたが、この経過を見て一体どうお考えになりますか。郵便貯金にはもっと配慮すべきじゃないですか。
  50. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 不公正というものをもたらす根本的な原因は、私はインフレだと思うんです。だから、インフレを抑制するということが不公正是正の出発点である。インフレをそのままに置いておいていろんな社会保障などやっても不公正の是正にはならぬ。その上にもってきて、福祉政策といいますか、社会保障を含めて、これは、今年度の予算をごらんになっても公共事業というものは抑えておる。一兆円ぐらいふえておるわけですから、社会保障費が。非常なやっぱり伸び率である。また税制の面から言っても、課税最低限というものは、百八十三万円というのはこれは世界でも一番高いですね。税制の内容自体も、よその国に比べてみても特に低額所得者に厳しい税金だとは私は思わない。また、いろいろ租税特別措置法のようなものも次第に整理しておるし、そういうふうなことでありますから、全体としての政治の姿勢は、不公正是正というものについての十分な考え方はやっぱり政策の根底に私は持っていると、こう考えております。
  51. 辻一彦

    辻一彦君 ちょっとはっきりわからぬですね。片方で公定歩合が下がって企業は千五百億の収益がある、片方では郵便貯金がばっさりやられて下がっていく、目減りが過去に大きい、その不公平があるじゃないかという不公正に対して、質問に答えておられない。もう一度。
  52. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ総理に対して全般的な不公正是正の御質問ということであったわけでございます。そういうことで私は誓えておるのですが、この郵便貯金の問題というものは、確かにいろんな御議論はあると思いますが、しかし、一般の庶民の貯金として必ずしも郵便貯金ばかりであるとは言えないですね。地方銀行もあるし、信用金庫もあるし、農協もある。だから、郵便貯金の金利だけをそのままに据え置いてということでは非常にやはり金利体系全体のアンバランスが起きる。個人の郵便貯金の占める割合が個人の貯金の二割ぐらい、ほかのいろんな金融機関があるわけですからね。そういう意味で、特別に郵便貯金というものを金利体系の中で据え置くということはできない。ただ、郵便貯金でもいままでの既契約分に対しては引き下げをしないのです。これからの分ですからね。これはやはりとにかく景気というものを回復せなければ、一般に大企業といわず中小企業といわず、法人というものはよその国に比較にならぬ借入金の多い形態ですからね、そういうことで、やはりこの際金利水準を引き下げよと、そのためには郵便貯金だけを別扱いにできないということであったわけでございます。
  53. 辻一彦

    辻一彦君 どうも意味がわからないんですが、この郵便貯金はたくさんの零細な国民が貯金をして、それが財投に回って日本の経済を発展をさしてきた。しかし、それは言うならば多数の零細な人たちの支えだったのですね。それが過去に目減りになり、今度は何の手当てもないということについて、私は非常に不公正の最たるものじゃないかと、こういうことを指摘しているのです。これに対して何らかの検討をして対策を立てるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  54. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) もう辻さんに申し上げるのは釈迦に説法ですけれども、今度の金利は引き下げしないというんですけれども、これは、もと安かったものを政策的にうんと高くしたものを一部復元しようというだけの話なんです。したがって、二年前に比べましてまだ依然として高いわけなんです、引き下げても。で、いまあなたに御説明申し上げましたように、四十八年、四十九年は、大変、計算いたしますと減価を生ずるほどの物価情勢でございましたことは非常に残念でございましたが、物価も幸いに落ちつきを取り戻してまいったわけでございまするので、今日これだけの復元をやらしていただきましても、預金者の立場というのはずっとその当時に比べまして強化されておるわけでございまして、あなたの言う社会的不公正というのは、その限度において是正されてきておりますことは御理解いただけると思うのであります。  ただ私どもは、しかしそれ、だからといってこれでよろしいなんていうことは考えておるわけではございません。あなたが仰せられるとおり、預金者を保護していくということ、とりわけ零細な預金者の利益を保護してまいるということは、物価政策、金融財政政策ばかりでなく、全体の経済政策、社会政策を通じてこれにこたえていかなければいかぬことでございまするし、とりわけ財政金融政策につきましては、運営上の一つの力点でございますことは御指摘のとおりと心得ております。
  55. 辻一彦

    辻一彦君 それじゃちょっと納得ができませんが、今後の零細な貯金者に対する対策を十分検討してまいってほしいと思います。  次に総裁に伺いますが、十一月の金融市場の見通し、それから十二月の資金不足の見通し、この点はいかがですか。
  56. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 十一月は、目下の予想では一兆七千四百億ぐらいの資金余剰になると考えております。ただし、これは国債がどのぐらい発行されるか、その辺の見通しがつきませんので、その発行額が決定いたしますと、それに応じて余剰額が減少をするということになろうかと存じます。昨年の十一月を御参考までに申し上げますと、国債の発行額を除いて考えますと一兆二千五百億でございますので、五千億ぐらいことしの方が余剰が多いということになろうかと存じます。  それに対して十二月でございますが、例年季節的に資金不足を来す月でございまして、昨年は一兆一千四百億円の資金不足でございました。ことしの資金不足がどのぐらいになりますか、それにつきましては、補正予算がいつ成立し、どのように執行されるかということとの関係が目下のところ未確定でございますので、的確な予測はできないのでございますが、昨年よりも国際発行額が増加することも考慮に入れますと、益金不足幅は前年よりも若干拡大するのではないかというふうに考えております。
  57. 辻一彦

    辻一彦君 かなり仮定の問題いろいろありますが、前年より拡大するというのは、ほぼ大まかに言ってどのくらいか、見当つきますか。
  58. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 一兆一千四百億に対してどのぐらい拡大するかという点の確たる見通しはまだついておりません。これからの予算の執行状況並びに国際の発行額等を勘案して、できるだけ早く見込みを固めたいと思っておりますが、そんなに大きな金額になろうとも思えません。まあ一、二割、二、三割ぐらいのところじゃないか、これは私の全くの勘でございますけれども、計算はまだ確定いたしておりませんので御了承いただきたいと思います。
  59. 辻一彦

    辻一彦君 三割ぐらいというと大体二兆円ぐらいになるという見込みですか。
  60. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 一兆一千四百億が、仮に三割ぐらい広がるといたしますれば一兆五千億ぐらいということでございましょうか。しかし、いずれにいたしましても、まだ計算が固まっておりませんので確たることは申し上げかねます。
  61. 辻一彦

    辻一彦君 十二月の金融市場のことですからいろいろの不確定要素があると思いますが、しかし、昨年に比べていろんな要素を勘案すればかなりな資金不足が起こるということが考えられるのですが、それに対して日銀の対策はどうなんですか。
  62. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 金融市場全体の推移を円滑にいたしますために、日本銀行といたしましては常時金融調節を行っておるわけでございまして、特に年末のごとき資金繁忙時におきましては、その機能をフルに発揮しなければならないわけでございます。十一月の末から十二月にかけましての金融市場における資金不足の数字を見きわめながら、手形の借り入れあるいは貸し出しの増加その他のいわゆる調節手段を実施していくわけでございますが、資金不足が昨年よりも少し大きくなるというようなことをもあわせ考えますと、債券オペレーション等をもそれに加えて実施しなければならないのではないかと思っております。ただし、一月になりますとまた再び資金余剰に戻るわけでございますので、債券オペによって資金不足全額をカバーするような調節の仕方はこの際適当でないと考えておりますが、その辺の項国別の見通し等もまだいま全然白紙でございます。
  63. 辻一彦

    辻一彦君 端的に言って、前年国債の買いオペレーションまた預金準備率の引き下げ等を考えているのかどうか、この点いかがですか。
  64. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 国債オペレーションは昨年も年末に行ったのでございますが、ことしも恐らくは行うことになろうかと考えております。  準備率の引き下げでございますが、第一次から第四次までの公定歩合の引き下げに際しましては準備率を据え置いて今日に至っておるわけでございます。本来この準備率は、そのときどきの金融調節の手段というよりは、もっと幅広い長期にわたる金融政策の手段ということになろうかと思うわけでございまして、いままでのところこれを据え置いてまいりましたのは、金融機関の貸し出し態度がどういうふうに動くかということを見きわめる意味で据え置いてまいったのでございます。いまは資金余剰期でございますので、直ちに準備率を引き下げるのは不適当と存じますが、今後年末にかけて資金不足期に入るに当たりまして、あるいはこの準備率の引き下げについても考えなければならぬような段階がくるのではないかと考えておりますが、まだいまのところは決定いたしておりません。
  65. 辻一彦

    辻一彦君 けさの新聞の一部には、四日に大蔵省と日銀は預金準備率の引き下げの方針を決めた、こういうふうに出ておりますが、これは火のないところに煙は立たぬと思いますが、そこらの方針はどうなんですか。
  66. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 準備率をどうしたらいいかということを事務的にいろいろ検討し勉強はいたしておりますが、今日までのところ、いつからどのぐらい下げるというようなことはまだ決定いたしておりません。
  67. 辻一彦

    辻一彦君 事務的にどのぐらいな勉強をしているんですか。念のためにもう一度、事務的にどのぐらいの勉強をされておるのか。
  68. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 預金準備率の操作は、日本銀行の方で大蔵省の方の認可を求めてくるわけでございますが、まだ認可申請が出ておりません。参りましたならば、金融情勢をよく判断いかしまして処理したいと思っております。
  69. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 解除額をどのぐらいにしたらいいかとか、あるいはそのためには引き下げ率を預金の種類別にどのぐらいにしたらいいかとか、いろんな場合を考えまして、いろんな案を並べて検討をしているというところでございます。
  70. 辻一彦

    辻一彦君 いろんなのが並んでいるんなら、多分近く下げるという構えでなかろうかと思いますが、それは具体的に出た段階でまた聞くことにしたいと思います。  そこで、全般の金融市場がかなり年末には窮屈になってくると思いますが、中小企業金融等にいろんな影響が私は出るんではないかと思います。その前に、地方債の消化のめどは一体どう持っておられるか、自治大臣にお伺いしたい。
  71. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをします。  地方債の問題につきましては、市町村のうちでも非常に力の弱いといいますか、そういうような、銀行との関係が弱いようなところにおきましては、これは政府資金をもって大体充てるようにいたします。しかし、相当力があるところであっても、縁故債でございますからなかなか問題が起きると思いますので、この点については自治、大蔵両省が覚書も交わしておりますが、今後ひとつ大蔵省と自治省がよく連絡をとりまして、それぞれの地域の銀行に対して協力を求める方法によって問題の解決を図る、いわゆる円滑な応募ができるようにするというようにしたいと思っております。
  72. 辻一彦

    辻一彦君 国債、地方債、大企業の金融等、強いところから順番にとっていくと、一番後に民間金融で一番弱いのが中小企業金融、ここに私はいろんなしわ寄せが寄る心配がいまあるんじゃないかと思いますが、これに対する対策はどう打たれておるか、お伺いしたい。
  73. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 国債や地方債が相当多量に発行されるということについての金融上のマクロ的な問題、これは先ほど来日銀総裁からも御説明ありましたとおり、全体としては資金需給はそう詰まらないと私ども考えておりますが、やはり時期的あるいは部分的な面におきまして、個別の銀行なり、銀行の種類に応じまして、場合によっては窮屈な場合が出てくるかもしれない、こういうことで、これは別途金融調節上の手段を細かく日本銀行の方には配慮してもらうということが一つでございますが、私どもとしては、中小企業金融に対しては格段の配慮をするように各銀行に対しましてかねてから指導をしておりますが、現在のところ、地方銀行あるいは相互銀行、信用金庫等の貸し出し態度というものは、中小企業金融に対してやはり優先的に考えておる、こういうぐあいに受けとめております。
  74. 辻一彦

    辻一彦君 いろいろ地方の銀行、都銀に指導しているということですが、弱いところに歩積み両建てのいわゆる影響といいますか、これが一番やはりしわ寄せされやすい。たとえば地方で百万円お金貸しましょうと。しかし、そのかわり三十万円持ってきなさい、黄金をしなさいと。百万円から差し引かなくても、先に三十万円預金をさして百万円を貸すと、こういう形のいろんなやり方の歩積み両建ての方法が私はこれから出てくると思うんですが、こういうものを厳に戒め、ないようにしなくてはならないと思いますが、これに対する対策はどうですか。
  75. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 歩積み両建ての問題は、かねてから私ども最重点的に考えている問題でございまして、私どもといたしましては、従来からの指導はかなり効を上げていろというぐあいに評価を自分ながらしておりますけれども、なおこれから金融の情勢いかんによっては、あるいはまた、実効金利の引き下げをわれわれは望んでおるわけでございますが、歩積み両建てというような手法によって実効上の金利負担がなかなか下がらない、こういうようなことがあってはならないと思いまして、これは銀行検査の都度その点を特に重点的に指摘をし指導をしてまいっておるわけでありますけれども、今後とも前向きにこれは処理をしたい、こう考えております。
  76. 辻一彦

    辻一彦君 大蔵大臣、この機会にやはり、末端で歩積み両建てが中小企業の弱いところに寄ってはいかないと思うので、それがもしあればどうするかという決意のほどをひとつ聞かしていただきたい。
  77. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま銀行局長から申し上げましたように、私どもの方で鋭意指導をいたしまして、最近顕著な改善の実績は統計上は出ております。しかし、なお後を絶たないということもまた御指摘のとおりでございます。したがって、銀行にそれぞれこれを専担いたしておりまする地位の高い役職の方を指名いたしまして、それでその徹底を図っておるところでございます。各銀行とも相当誠意を持って当たってくれておると思いますけれども、そこに怠慢、弛緩があってはならないわけでございますので、先ほど局長からも申しましたように、一段と厳しい態度で処理していきたいと思いますが、それを保障するためにどういう措置を講ずるかということでございますが、具体的に許しがたいケースが出た場合の処理につきましては、その事案によりまして私どもとして適当な措置はもとより講じて目的を達することにいたしたいと考えております。
  78. 辻一彦

    辻一彦君 一部新聞等も報じておりますが、この金融のしわ寄せがせっかくいま拡大しようとする民間の住宅ローンに寄せられる懸念があるということも報じられておりますが、住宅ローンにそういうしわ寄せがなされる心配はないかどうか、その点いかがですか。
  79. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 個人住宅ローンにつきましては、各金融機関ともに近年来非常に重点的に経営姿勢をそちらの方に傾けておりまして、昨年度の金融引き締め時のときにおきましても、私どもの方も住宅ローンの融資増加額を少なくとも全体の割合の中で一〇%ぐらいは確保するようにというような指導をやってまいりましたけれども、あの逼迫時におきましても、全体の総貸し出しの増加額は御承知のとおりふえなかったんでございますけれども、住宅ローンの方は着実にふえております。最近の状況を見ましても、相当の部分を住宅ローン向けに各銀行ともに計画をしておるようでございますので、この点についても御心配は要らないと思います。
  80. 辻一彦

    辻一彦君 いまの答弁を必ずひとつ具体的に強化をしてもらいたいと思います。  最後に、金融問題で銀行のモラルという点で一点大蔵大臣にお伺いしたい。  それは、十一月の四日に預金金利が下がるという前に、都銀が大手に預金担保貸し付けを進めて旧金利で積金をする動きがあったと、こういうことで大蔵省が具体的に調査をやっているということを聞いておりますが、その実態があれば御報告をいただきたい。
  81. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 預金金利が引き下がるということは、あらかじめこれは時間の余裕を持って公表をしますものですから、それまでの間にまあある種、駆け込み的と申しますか、従来の預金の期限がまだ到来してなくてももうじき来るというようなものは、中途解約をして預け直すと預金者としては不利になる、そういうようなことで、従来の定期預金を担保にして銀行が貸し出しをして、同額を新しい預金として、しかし、まだ利率の下がらない預金にする、こういうことがままあるように見ております。それで、この点は言ってみれば預金者の知恵といいますか、自己防衛というような評価もできるんでございますけれども、銀行の方が積極的にこれを勧誘するといいますか、そういうことは、まま預金者に対する公平な取り扱いを失する。銀行の方で全面的にそういうことはできませんから、不公平な取り扱いになってはいけない、こういう考え方から、これにつきましては特別にまだ調査はしておりませんけれども、去る十月の下旬に銀行協会に対しまして、各銀行に対して注意をするように促しました。これは全部の金融機関に達せられておりますが、私どもといたしましては、大きなところを選びまして、ある一定期間における定期預金担保の貸し出しの状況を報告するように言ってあります。まだそれは手元に参りませんけれども、そういう現状でございます。
  82. 辻一彦

    辻一彦君 もし、その具体的な事実がかなりあったとすれば、どう対処するか。その調査の結果を国会に報告できますか。
  83. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) これはまだ結果が全くわかりませんので、短期間に預金担保貸し出しがどれだけあったか、それが通常の状態、平年月といいますか、そういうような状態に比較してどうであったかというような判断を下さなければなりませんけれども、仮定の話はちょっと御遠慮いたしたいんですが、非常に行き過ぎなことがあったんではないかというような推定されるような数字が出ましたような場合には、厳重にその銀行に対しては注意をしたいと思っております。また、御要請でございましたならば、でき得る限りの御報告をいたしたいと思います。
  84. 辻一彦

    辻一彦君 それでは、調査の結果をともあれ提出するようにお願いしたい。
  85. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 承知しました。
  86. 辻一彦

    辻一彦君 第三に、私は公共事業の問題について二、三点伺いたいと思います。  副総理に、まずこの担当者としてお伺いしますが、第四次不況対策の中心が公共事業にあるようですが、これは大型のプロジェクト中心ではなしに、農業、漁業等を初めとする住民の生活や生産の基盤に結びついた公共事業がぜひ必要と思いますが、これらについて総括的に考えをまずお伺いしたいと思います。
  87. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 第四次不況対策のねらいは、まさに辻さんの御指摘のような方向でやってます。非常に重点を置きましたのは住宅でございます。それから住宅に関連いたしまして下水、それから治水が非常に弱いところがありますので治水、それから農業基盤、上水道、そういうようなことでございますが、例外的に新幹線と高速道路、これの継続中の事業の促進を行うということもやっております。これはなぜかというと、この高速道路やあるいは新幹線なんか、これも土木事業といたしまして相当の就労の機会をつくり出すわけです。たとえば東北新幹線、これをほうっておきますと、九月ころには工事がなくなる。    〔委員長退席、理事岩動道行君着席〕 そして一万人とも言い、一万二千人とも言いますが、そういう人が就業の機会をなくす。その結果、出かせぎの人、そういう人に大変な失望を与える、こういうような問題もありまして、そういうものにつきましては、これはいわゆる大型事業ではございまするけれども執行する、かたがた新幹線の工事が促進をされる、こういうことになりましたので、例外的に取り入れてありますが、基本的には生活並びに生活関連のものであると、こういう認識でございます。
  88. 辻一彦

    辻一彦君 それでは、具体的な問題で二、三お伺いしますが、建設省の直轄事業の地方負担金の納入問題ですが、いま地方自治体の財政が火の車であるということはもう言うまでもないことですが、道路、河川等の国の直轄事業に対して、地方負担金の納入が非常に困難になっている府県が多いんですが、建設省は事情聴取しているということを聞いておりますが、どういう状況にありますか。
  89. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) お答えをいたします。  直轄事業の地方負担金の問題は、知事会の方からも延納といったようなことで要請をされておるのでありますが、御承知のように、年度内に収納するということが原則で私どもはやっておるわけであります。地方財政が非常に逼迫していることもよくわかっておりますが、御承知のように、今回の不況補正予算では、地方財政対策もかなり強力に対策が立てられるわけでありますから、そういう意味でひとつ完納ができるようなことをぜひ相談をし、努力をいたしてまいりたいと思っておるわけであります。  なお具体的には、たとえば上期の地方負担の問題を見ますと、もうすでに完納しておるものが十七県、それから指定都市で七市ぐらいございます。十二月までには完納できるというのが十三県ぐらいございます。合わせて三十県余りのところは一応完納できるといういまのところ予定に相なっておりまして、未定だというのが七県くらい実はあるわけでありますが、具体的にこういう府県とはよく相談をしようと思っておりますし、今回の補正が一応通れば、そういった面で完納できるような形になることを私どもは期待しまして、そういう面で努力を進めていきたいと、かように存じております。
  90. 辻一彦

    辻一彦君 建設大臣、もう一問伺いますが、どうしても非常に困難で延納、分割等をぜひしてほしいというところに対してはどう対処しますか。
  91. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) そういうことにならないように、今度の補正で地方財源に対するてこ入れもできたんですから、ぜひそういうことにならないように私どもは期待もいたしておりますし、相談してと思っております。年度内の延納といったようなことなら、これは一応若干ずれができますけれども、年度外になってきますと、率直に申し上げまして完納した県も大部分あるわけでありまして、一部完納しないからといってその県だけを特別な扱いをすることには、いろいろ今後の問題とも関連すると思いますから、そういった面が具体的に出てくるとすれば、よく相談をしてみなければならぬと思っております。
  92. 辻一彦

    辻一彦君 年度内ならばこれはやむを得ぬ場合もあると、こういうことに受けとめておきます。  そこでもう一つ、公共事業が仮に決まりましても、雪の多い地域は、せっかく決定した公共事業もなかなか冬の間に消化することができないという問題がありますが、積雪地に対する対策はどう考えておられるか、この点いかがですか。
  93. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 大変ごもっともな御意見であります。私ども、積雪寒冷地域においては、ふだんから、年度当初から早期発注というものを実は考えておるわけでありまして、たとえば本年の場合でも、今年は総体的に早期発注をわれわれは進めてきたわけですが、上期で全体では六八・三%くらいが受注ができておりますが、積寒地域では七八・一%がすでに発注ができておる状態に相なっております。下期ももちろん努力をいたしてまいらなければなりませんが、今回の不況対策で補正予算もいま御審議をいただいておりますから、成立しましたら直ちに着工できるようにと思って、すでに事前にいろいろな事務手続をとって地元との連絡を密にしておる、こういうことで進めてまいりたいと思っております。
  94. 辻一彦

    辻一彦君 雪の地帯には特別な対策を今後ともとってもらいたいと思います。  そこで、この八月に社会党のわれわれの農政議員団で農林漁業調査を北陸地方に行いまして、国営の農用地開発事業あるいは漁港の修築状況等を見ました。進捗状況を調査をしますと、たとえば福井県の坂井郡の北部の丘陵開発、これは畑地七百町歩の開拓、水田の灌漑三千四百町歩に及ぶかなり広範なプログラムですが、百七十億のうち二〇%前後の進捗率、また、その近くの四ケ浦という漁港がありますが、小浜等の漁港等も二七ないし二八%、これは全国は三二、三ですが、いずれにしても農業、漁業関係のこういう公共事業が非常におくれている。しかも、非常に関係農民や漁民は熱心だ、何とかやりたい、こういう状況にありますが、こういう住民の声にこたえて、先ほど副総理御答弁のとおり、公共事業にもっと力をこういう面で入れるべきじゃないかと思いますが、農林大臣の見解を伺いたいと思います。
  95. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 基盤整備事業、漁港整備等、農林省関係の公共事業につきましては、五十年度予算におきましても、基盤整備関係は一〇三%、漁港は一〇九%と、本予算におきましても他の公共事業よりは多少伸びてはおるわけでございますが、今回の補正予算によりましてさらにこれが進捗することになっております。しかし、いまお話がございましたように、全体的な五カ年計画あるいは十カ年計画という面から見ますと、その進捗度は非常に低いわけでございます。につきましては、御指摘のように、五カ年計画でまだ三年目ですが、三二、三%、あるいは新土地改良計画につきましては、十カ年のうちの三年目で一五・五%というふうに非常におくれているわけでございます。しかし、国民食糧の確保という面、さらに自給力を高めるという面からは非常に重大な政治課題でございます中に、この公共事業の促進は特に私は重要になってきたと思っておるわけでございまして、したがって、われわれとしても、こうしたおくれを取り戻すために、来年度におきましても特別会計の対象拡大をする、国営事業等についてはこれを拡大をして入れる、そして財投資金を活用するということによって進捗度を進めたい、こういうことで目下検討をいたしておる最中でございます。
  96. 辻一彦

    辻一彦君 それは、特別会計を設けて財投を導入して早期に進めるという意味ですか。
  97. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 農林省としては、そうした特別会計の対象事業を拡大をして財投資金を活用すれば、事業の進捗は相当早まるんじゃないか、そういうふうに判断をいたしまして、そういう方向でいま検討を進めておる段階でございます。
  98. 辻一彦

    辻一彦君 これは大蔵大臣に伺いますが、農民や漁民の間には、単価はどんどん上がるし、初めの事業量では単価が上がってどうもならぬ、早いところやってほしいという声が非常に強いんですが、いま検討されているこの国営農用地開発等に特別会計、財投を導入してやっていくという、これは私は必要な措置でないかと思いますが、大蔵大臣としてこういう場合の金利等は、ひとつ長期低利の形で対処して農民の声にこたえてもらいたいと思いますが、大蔵大臣、いかがですか。
  99. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 農業に対する投資は、他の産業に対する投資と趣を異にしておりまして、いわゆる長期にわたりまするし、採算におきましても配慮しなければならぬ問題だと思うんです。したがって、本来予算でめんどうを見るべき部面が多いわけで、財投はことしも三千七百億ばかり見ておりますけれども、九兆何ぼの中でございますので四%強でございまして、必ずしもこれは多いと言えないと思うのでございます。したがって、予算上の資金の配分と財投の方とよく見合わせながら、要請にこたえていかなければならぬのではないかと思っております。  辻さん御指摘のように、進捗率がはかばかしくないという現象が方々に出ておるわけでございまして、私どもも財政の許す限りこれを早目に促進してまいるような資金の手当てをいたしたいものと考えますし、条件につきましても配慮しなければならぬものと思いますが、これらの点につきましては、明年度の予算編成との関連におきまして具体的に考慮させていただきたいと思います。
  100. 辻一彦

    辻一彦君 四つ目に、私は不況対策の中の中小企業問題について、若干お伺いしたいと思います。  第一に、中小企業金融の問題ですが、これは先ほど若干触れましたが、いま中小企業の不況は非常に深刻で、金を借りるよりも——まあ金も借りたい、しかし、借りたお金を早く返さなくちゃいかない、これがもう大変なので、何とかして返済を猶予してもらいたいという、非常にこれは深刻な声がずいぶんあります。私は、ケース・バイ・ケースでいまやっておられますが、不況業種の場合、これは指定しておるのでありますから、特定の不況な業種には一律に、景気がある程度回復の兆しが見えるまで、一年、二年とか、ぜひ一律の返済猶予を政府関係三公庫等では行うべきではないかと思いますが、この点、通産大臣いかがでしょう。
  101. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いまお話しの件でございますが、返済猶予を一律に行うということは、これは私はむつかしいと思います。しかし、現在まあケース・バイ・ケースで行っております方法を改善する方法はあると思うんです。たとえば、県の経済部とか、あるいはいろんな組合等を通じて、相当返済猶予を希望する企業の多い場合には、まとめていってもらうとか、まあそういうふうな便法は当然考えられると思います。
  102. 辻一彦

    辻一彦君 この春の予算論議のときには、なかなか組合でまとめてというのは困難なようでありましたが、地域等の非常に不況の組合でまとめて便法がとれると言うなら、これは半歩の前進だと思いますが、この点確認していいですか。
  103. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) それは、申し込みがあったものを全部返済猶予をするということではございませんで、申し込みがあったものを個々に審査をいたしまして、ケース・バイ・ケースでやるということでございますけれども、便法上、希望者を県の経済部とかあるいはまた組合等でまとめてやってもらえば、そういう便宜も図れるのではないかと思っております。
  104. 辻一彦

    辻一彦君 まあいろんな不況産業がありますが、そういう産地の組合等がまとめて扱えばそれをまとめて取り扱える、こういうことですね。
  105. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) まとめて一律に返済猶予をするということではございませんで、組合あるいは県の経済部等でまとめて、これとこれとこれの企業を何とかしてもらいたいと、こういう申し入れがあった場合には、それを一括取り上げて個々に審査をして結論を出す、そういう趣旨でございます。
  106. 辻一彦

    辻一彦君 それは、いままでのケース・バイ・ケースとどのぐらい違いますか。
  107. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私は、ケース・バイ・ケースよりも相当前進だと思います。
  108. 辻一彦

    辻一彦君 まとめて大体やられるということですから、いま非常にいろんな繊維やダンボール等々、小さな企業で産地でお困りのところがありますから、これはひとつそういう扱いをぜひしっかりやってほしいと思います。お金を借りようにも、四千八百億、三公庫の年末手当てがされておりますが、しかし、枠があっても担保借りで、もう樹いっぱい借りてどうしても借りられない、こういうところが多いんですが、これに対して、やはり救済といいますか、対策の措置が要ると思いますが、これに対してはどうでしょう。
  109. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 不況になりますと、どうしても担保を低く見る場合が多くなります。そこで担保を見直してもらいたい、担保がなくなったと、こういうふうなケースが非常に多く出ております。そこで、私は、やっぱり担保をある程度評価がえをしないと新規の借入余力というものはなくなるのではないか、こういうことを考えますので、担保の評価等につきましてもやはり再検討する必要があろうかと思います。
  110. 辻一彦

    辻一彦君 まあそれなら前進ですが、具体的にその担保の評価がえをどういうようにしてやられる考えか、お伺いしたい。
  111. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 担保不足の場合の融資の措置といたしましては、一つは国民金融公庫に三百万円まで無担保による融資の制度がございます。それからもう一つは、信用保証協会におきまして五百万円まで物的な担保なしに信用保証をいたしております。さらに無担保で、保証人もない信用保証というのが、現在百五十万円までということになっておりますが、これを今臨時国会に二百五十万円までに引き上げる案につきまして法律の改正方を御提案申し上げております。あと、政府系の金融機関等の担保の評価の問題につきましては極力弾力的に評価を行うように、特に非常に困っておられまして、しかも担保がすでに借り入れておる等で限界に近い、こういう場合には、その困られる実情に応じましてケース・バイ・ケースで極力弾力的に計らう、こういうふうなように三機関には指導をいたしておるところでございます。
  112. 松永忠二

    松永忠二君 関連。  いま辻委員がいろいろ質問されて、通産大臣は前進的な面もある答弁をされているわけです。しかし、いまこの担保の評価がえというような問題については、ただケース・バイ・ケースで努力をするという程度では、実際それがどういう方法で徹底するのか。たとえば、ここで大蔵省の方が銀行に対してそういうふうな通達を出していくのか、あるいはまた、通産省自身がそういう点について中小企業庁の関係の金融の機関からそういう措置を具体的に行っていくとか、あるいは、具体的にいまわれわれも調べてみるとずいぶん金融機関の担保の評価というのは低いわけである。この点については中小企業の皆さん非常な不満を持っている。もっと担保をいっぱいに見てもらえば、ここで融資の額も向上することができるということを常に訴えているわけです。せっかく通産大臣がそこまで担保の評価がえの必要がある、やはり検討すべきだというふうに具体的におっしゃるなら——おっしゃるならじゃなくて、おっしゃることは当然でありますけれども、それを具体的にどう一体徹底をし、中小企業の人たちのために努力をされるのか、その点を私は辻委員は聞いていると思うんであります。したがいまして、この点についてもっと大臣の方から、考えている具体的な推進の方法をお聞かせをいただきたい。もしそれがこの席で言えないという話であるならば、この問題については検討した上でひとつ具体的に理事会等に提示をされてくるという措置を誓えていただきたい。そういういわゆる逼迫した情勢に、中小企業は不況の中で大変な困難をしているという状況があるわけでありますから、この点について誠意ある御答弁をひとつ通産大臣からいただきたいと思う。
  113. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 大蔵省ともよく相談をいたしまして具体案をつくります。
  114. 松永忠二

    松永忠二君 大蔵省とも相談をして、具体的に検討して、本委員会の開会中に御答弁があるわけでありますな。その点を確かめておきたいと思います。
  115. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) そういうふうに取り計らいます。
  116. 辻一彦

    辻一彦君 ぜひ、いま松永委員質問のとおり、大臣答弁のとおりに処置をしてもらいたいと思います。  次に、中小企業への官公需の発注の拡大の点について二、三伺います。  七月の十一日に閣議で決定されました中小企業向けの官公需拡大の状況、これを、昨年のはわかっておりますが、ことしの四月から九月の実態がどうか、わかればひとつ御報告いただきたい。
  117. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 昭和五十年度の中小企業向けの官公需の確保につきましては、先般七月の十一日に閣議決定をいただきまして、昨年度の実績を相当上回ります三二・九%を中小企業に発注をする、そういった契約方針を決定を見たわけでございます。これの実施につきましては、特に地方の公共団体あるいは中央の出先であります地方支分部局等にこの趣旨の徹底を図りますために、全国四十七カ所におきまして関係の方にお集まりいただきまして、趣旨の徹底のための説明会を開催をいたしたわけでございます。  それから、この上期の実績のトレースでございますけれども、先月の十三日に関係各省の官公需担当官から成ります官公需確保対策推進協議会を開催をいたしまして、実績の取りまとめ方を各省庁並びに公社、公団につきまして御依願を申し上げましたが、何分数万件にわたる件数になりますので、この実績の上半期の取りまとめにつきましては、十二月ころまでの時間がかかろうかと存じております。  なお、下半期の中小企業向けの契約の拡大につきましても、その会議の折に、分割発注の推進でございますとか、あるいは共同受注方式の活用、こういうことを各省庁にお願いをいたしまして、さらに年度当初に定めました目標よりも実績が上回りますように各省庁に御努力方をお願いをいたした次第でございます。
  118. 辻一彦

    辻一彦君 この出された資料によると、四十九年度の官公需の資料は来ておりますが、分割発注の問題ですが、ことしの三月六日の予算委員会でも、建設大臣を初め、各省大臣のほうで分割発注に具体的に取り組む、また、そうできない場合はジョイント発注等を行う、こういうことの発言がそれぞれあったわけですが、具体的に分割発注というものがどう行われているか、それを数字で押さえた資料がありますか。
  119. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 分割発注は、発注します際の契約そのものを細かく割るかどうかという問題でございまして、分割をしようということになりまして契約が行われますと、個々に発注されました契約はそれぞれが独立した契約になりますので、後からこれをトレースします際に、その契約が分割されたものであるのか、分割される前の包括的なものであるのかの判定がなかなか困難でございまして、そういう意味で、総体としての実績のトレースというのはきわめて困難でございます。それで興型的な事例と申しますか、そういったものを極力各省からお話を伺いまして、さらに、それをふやしていただくようにお願いをいたしておる、こういう状況でございまして、その例的なものはございますけれども、総体としての統計的なものは持っておりません。
  120. 辻一彦

    辻一彦君 これは今日、中小企業建設業界の分野の中に、不況ですから、仕事がないというと大手がなぐり込んできて、いままでなら中小の分野でとてもこんな仕事という、そこまでやはり入ってくる場合が往々にしてあります。したがって、具体的に分割発注をどういうようにやっておって、どういう数字であるかというところまでの数字を押さえたきめ細かい対策が打たれなければ、やはり私は中小企業の方に具体的に仕事が回っていかないと思いますが、これらについて単に総体だけわかればいいというのでは私はいけないと思います。一番問題は、やはり建設関係に仕事が多いわけですが、この改善の要ありと思いますが、大臣、いかがですか。
  121. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) お答えいたします。  本件については、さきの通常国会でも先生から厳しい御指摘がありまして、私ども御趣旨に沿って全力を挙げて、それからも努力をいたしてまいったつもりであります。    〔理事岩動道行君退席、委員長着席〕  まず公共事業関係は、前回もお話を申し上げたのでありますが、やはり中小企業受注を至上命題としてやれということで、各出先やそれから県庁の方にもいろいろ御相談をいたしました。当該地域の地元業者をまず優先するということを第一義に考えてまいりました。分割発注の問題も、これはいろいろ考え方はありますけれども、できるだけ工事は細かく分割をして請け食い業者の中小企業に受注の機会を与える、こういうことも大前提として進めて、かなり私どもは進んでおると思っております。それから、どうしても大手でなけりゃならぬ技術的や大型のものがある。これはやむを得ないのでありますが、それでもやはり地方の優秀業者は、大手一社だけでなしに地方の優秀業者はそれに加えてジョイント方式でやりなさいということで、道路公団関係はほとんどその方式で、実績がどの程度上がっているか、ちょっとわかりませんけれども、私の手前で決裁をしているものはほとんどジョイントで、一社は地元業者優先という形でやらしております。共同請け負いの例等の活用もいたしておるわけでありまして、なお、今後の問題としては、この前衆議院の方でも御指摘をいろいろいただいたのでありますが、事業共同組合の工事参加の問題、これも検討はしておりますけれども、組合自体にもいろいろとまだ内容の充実しない問題がありますから、積極的にこれも指導して、ぜひ参加をする機会をつくりたいと思っておりますことと、もう一つは、大変御要望のあります地方の工事事務所の契約限度額ですか、これをもっと引き上げるということによって特に地方業者の受注の機会を大きくしようと、こういった問題。  それから官公需の問題につきましては、これは具体的に細目を指示をいたしまして検討いたしておりまして、今年はほとんど省内の官公需の問題については、これは中小企業の受注にいけるのじゃないかと、こういう考え方を持って進めております。実はまだ、じゃ上期でどの程度の率になっておるかというところまで残念ながらなかなか押さえ切れない面もございますが、昨年は直轄は大体三七%ぐらいでしたが、今年は目標を四〇%にしております。これはぜひひとつそれだけは達成したいと思って努力をいたしておりますし、公共事業の中でも、補助事業の問題でありますが、これは昨年の実績も六七%ぐらいいっておりますし、今年はぜひひとつ七〇%近い率に持っていきたいと思って実は努力もいたしておるわけでありまして、上期のびしっとしたそういう数字はまだできておりませんけれども、いずれにしましても、前回の国会での御指摘もありましたものですから、私どもは全力を挙げて努力をいたしておるということだけは申し上げて、御理解をいただきたいと思っております。
  122. 辻一彦

    辻一彦君 大臣、もう一問。具体的にいろいろな手を打っているということでありますが、その分割発注、ジョイント発注、組合発注等々をやはり総体的に中小企業幾らという数字とあわせて、具体的にその中身はこうであるという数字をやはりまとめて、きめ細かい対策を打つためにまとめて国会に適当な時期に出していただきたいと思うんですが、いかがですか。
  123. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) そのように取り計らいをいたします。
  124. 辻一彦

    辻一彦君 次に、私は中小企業の分野確保の問題について若干伺いたいと思います。  今日非常に不況の中で、大きな資本力を背景にして大企業が中小零細企業の分野に進出をしてくる、こういうことがいろいろと問題になっております。印刷業界で軽印刷のキューブリント、理化医ガラス業界におけるガラス関係、それから紙器、紙の器、箱ですが、段ボール業界等々におけるニューパック等々の問題がありますが、大企業がどういう形でこれらの分野に進出をしているか、態様を伺いたいと思うんです。
  125. 野口一郎

    政府委員野口一郎君) ただいま先生、三つの事例を引用されたわけであります。  最初に、軽印刷の事例について簡単に申し上げたいと思うわけでございますが、御存じのように、大日本印刷というのは日本で最大の印刷メーカーでございますが、これが一〇〇%の子会社のキューブリントという会社をつくりまして、製版から印刷から製本までの一貫のシステムをつくりまして、これを、当初の予定では数百店ぐらいを全国に設置して印刷サービスをやるという事業であったわけでございます。一方、印刷業界には全日本印刷工業組合連合会、あるいは軽印刷の組合、あるいは青写真の組合等の組織がございまして、この大日本印刷の子会社のキューブリントがこの分野に進出することにつきまして非常に問題ありということで、両者の折衝が持たれたわけでございます。当省といたしましても、この面、大企業も中小企業もできれば共存共栄していけるようにということで、現在行政指導をしてきたわけでございます。その間に、両三回にわたりまして当省も行政指導をし、当業界、両業界の間に立って指導をしてきておるわけでございますが、今日までその行政指導の効果も相当上がって、現在解決を見つつあるというふうに考えて見ているわけでございます。  それからもう一つ、第二番目に理化医ガラスの件を御説明いたしたいと思うわけでございますが、これは岩城硝子という、これは大手の会社がございますが、この会社が四十四、五年ごろから理化医ガラスの分野に、フラスコ、ビーカー等の中小企業が大体占めておった分野に進出してきてまいったわけでございますが、具体的にはこの春ぐらいから自動成形機という高能率の機械、大型の機械を入れて、中小企業がつくっておりますフラスコ、ビーカー等の理化医ガラスの分野に出るということにつきまして、やはり中小企業の業界から問題が提起をされたわけでございます。本件につきましても通産省、私ども中心になりまして、両者のお話し合いを指導をしてきておるわけでございます。この件につきましては、まだ完全には解決を見たわけでございませんけれども、両者も相当の歩み寄りを見てきておるわけでございますし、私どもの方も、特に岩城硝子につきましてはそのときどきの販売等の報告も出させましてウォッチをしているわけでございます。  それから第三番目に、本州ニューパックという、これは本州製紙の子会社でございますけれども、これが新潟県に工場をつくりまして、段ボールシートあるいは段ボールの箱をつくるという計画を持っているわけでございます。この件につきましても、新潟県の段ボールの業者が新潟県内における需給が崩れるおそれがあるというようなことで、反対の動きがあるわけでございます。本件につきましては、当省とともに、特に現地の新潟県があっせんに立っておるわけでございまして、現在新潟県のあっせんのもとにおいて話し合いが持たれてきているわけでございます。私どももそういう新潟県の動きを側面からバックアップいたしまして、両者の円満な解決がつくように指導しているわけでございます。
  126. 辻一彦

    辻一彦君 行政指導でかなり効果が上がっているということでありますが、私たちがいろいろ事情聴取をした範囲では非常に問題があるように思います。全部について触れることはできませんから、たとえば、先ほどの岩城硝子、本州ニューパック等について、二点について触れてみたいと思います。  まず、当初に協定が結ばれておるのですが、あるいは念書が通産省に入れられておりますが、中身はどうなっておりますか。
  127. 野口一郎

    政府委員野口一郎君) 岩城硝子がこの理化医ガラスの分野に進出してまいりますその動機は、パイレックスというかなり高級なものが従来は全く輸入に依存しておったわけでございますけれども、それらを国産するということでございます。で、このときも中小企業者との話し合いが持たれまして、私どもの方は通産省あてに念書を入れていただいたわけでございますが、その中身は、その中小企業、今回このパイレックスの生産を始めるに当たりましては中小企業者を含む既存業界と密接な連絡を保つ、協調を保って混乱を起こさないように十分留意をいたしてやっていきます、そのための行政指導には従いますと、こういう念書でございます。  その後、四十四年ぐらいから生産が開始されていたわけでございますが、今回、先ほど申しましたように、TCMと申しますか、自動成形機を入れたわけでございます。この三月ごろに入れまして五月ごろから稼働が始まったわけでございますが、岩城硝子がこういう分野に仕事をする際に、先ほど申しましたような念書が入っているわけでございます。そういう線に沿いまして私ども指導してきて、両者の話し合いを指導してきてまいったわけでございますけれども、今回この自動成形機が動き出すにつきましては、改めてまた岩城硝子の方から私どもの方に念書を入れていただきまして、従来からも入れておる念書の線に沿って既存業界と協調を十分図ってやってまいりますと、こういう趣旨の念書がわれわれの方に入っているわけでございます。
  128. 辻一彦

    辻一彦君 その第一回の念書とその協定のときに、高級の輸入品の分野に限定をし、国内の分野には進出をしないという中身が盛られておるにかかわらず、実際はガラス細管の分野に侵入して、このために十五社が転廃業を余儀なくされたという実態がありますが、これはどうですか。
  129. 野口一郎

    政府委員野口一郎君) 先ほど私が申し上げました念書は、岩城硝子がパイレックスの分野に進出するために技術導入をいたしたわけでございます。その技術導入をしたことに基づくものの生産、販売についての念書でございます。四十四年ごろから本格的に仕事を始めるときには、念書は別にございません。四十年までのその線に沿ってやっているわけでございます。
  130. 辻一彦

    辻一彦君 最初に業界と交わした協定の中身には、国内の分野には進出しないと、こういっておるんですが、実際的には十五社がもう転廃業、倒れてしまった。そしてさらに、いま御答弁のように高度の機械を入れて、三十六業者全部の業界に大体匹敵する日産三万個、年産にすれば一千万個生産することができる。これは三十六の業界の全部の生産量に匹敵する、こういう機能を持った工事をやっておるんですが、こういうのが動き出せば、これはとうてい中小企業は対抗ができない。この実態はどうですか。
  131. 野口一郎

    政府委員野口一郎君) この春入れました自動成形機と申しますのは、フラスコ、ビーカーというような理化医ガラスだけではございませんで、これはいろいろアタッチメントを変えることによりまして、すべてのいろいろな種類のガラス製品をつくることができるわけでございます。現在のところ、こういう不況のせいもあろうかと思いますけれども、この機械は大体稼働率が半分ぐらいに押えられておるわけでございます。そのうち、いまの理化医ガラスで中小企業の製品と競合いたしますのは、現在生産し販売しておりますものの約三割ぐらいの量でございますので、先ほど言いましたように、私ども毎月々々、どういうものをどれだけつくったかということにつきましては報告を求め、ウォッチをしているわけでございます。それから、それの状況を見ておりますと、販売量も春以降減ってきておるわけでございまして、現在のような状況でありますれば、中小企業の方々にもそう大きな影響は与えないのではないか、また、与えないように私ども今後とも指導していくつもりでございます。
  132. 辻一彦

    辻一彦君 二回念書を入れて、それでいま稼働率を落としてあるにしても、すでにつぶれた十五社がもとに返るわけにはいかない。こういう点を考えると、やはり私はこういう種の行政指導の限界があるように思うんですが、その点いかがですか。
  133. 野口一郎

    政府委員野口一郎君) 先ほど申し上げましたような幾つかの事例の中で、私どもの行政指導がかなりうまくいって効果を上げているというものもございますし、なかなか行政指導も行き悩んでいるところもございます。ただ、今後とも関係のところと協力をしながら行政指導の実を上げてまいるつもりでございますし、現行法におきましても、現行法に基づき、たとえば特殊契約というような制度もあるわけでございますし、その他いろいろ調整の制度等もございますので、そういう制度等を活用して行政指導の実を上げてまいりたいというふうに考えております。
  134. 辻一彦

    辻一彦君 特殊契約といっても、それは商工組合をつくって三分の二の参加が要るということですが、これは一回も使われたことがない。なかなかうまくいかないのですね。そういう点で、私はいよいよこの種の大企業進出は行政指導といってもやはり限界もあるのじゃないか。そういう点で福田総理、三月二十六日に本院の予算委員会で質問があった中で、行政指導に問題があれば立法化の点も検討の要ありと、こういう趣旨に近い御答弁をされておりますが、やはり私は中小企業の分野を守っていくには法規制によってこの分野を確保するということが必要ではないかと思いますが、三月二十六日の答弁を踏まえて、いまの状況等の経緯を見ながらいかがでしょう。
  135. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 中小企業と大企業との分野調整につきましては、当時豆腐屋の問題があったように思うのです。そういう問題につきまして通産省で行政指導をいたしまして、その他何件かありましたが、大体円満な落着ができておるのです。これは法律で一律にやるというぎしぎしした仕組みでは、なかなか私はこの問題はうまく解決されないのじゃないか、そういうふうに思います。ですから、これからそういう問題がさらに出てくる可能性はありますが、そういう際に行政指導をどんどんやってみる。それで片づかないという場合にどういうふうに考えるかという問題は私は残ると思いまするけれども、まずまずいままでは片づいておる、またこれからも片づけ得るという見通しなんでございますが、これからの推移を見たい、かように存じます。
  136. 辻一彦

    辻一彦君 いや、私は春からの推移をいま論議しておったのですが、ちょっと熟睡されておったのじゃないかと思いますね。その間に推移が流れたんじゃないかと思うんですが、十五社がそういう行政指導の結果あいまいになってつぶれてしまったという事実をその間にいま論議しておったわけですね。私は、やはりそういう意味の限界があるのじゃないか、だから工事の規制が必要ではないか、こう申し上げておる。いかがですか。
  137. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) どうも中間の議論を聞き落としておりましたが、やっぱり私は本質的にはこれは法律ではうまく片づかない種類の問題だと、そういう感じがするんですよ。いま私も通産省から話を聞いているんです。これは一体行政指導でうまく片づくのか、片づかないのかと。行政指導で片づきます、また、これは法規制をやりましてもそううまい効果は上がりません、こう言っておるんです。でありますので、通産省の行政努力の成果を見まして、そしてこれはどうしてもいかぬという場合に何か考えなけりゃならぬでしょう。そういう際の一つの方法として法規制というものもあり得ると思うんですが、どうもぎしぎしした法規制というので実効をおさめられるかどうかということにつきましては、ただいまのところ私はどうも自信が持てないと、そんな感じがいたします。
  138. 辻一彦

    辻一彦君 このきょう出た例は一つの例にすぎないのであって、実際は力の大きいのがどんどん入ってくる。しかし、いま中小企業はちょっと手を抜いたら自分で倒産してしまうぐらい大変ですから、対応しておれない。気がついたときにはもう間に合わぬという状況がいっぱい私は出ておると思うんですね。大きな道路にダンプとトラックとカブや自転車が一緒に走ったら、小さいのははね飛ばされてしまう道をやっぱりつけて区分けをしなければ、私はこれは安全じゃないと思うんですよ。そういう意味で零細な中小企業の分野を守っていくには、やはり行政指導の限界から法の規制というものをやっぱり考えなくちゃならぬと思うんですが、この点いかがですか。
  139. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) これまで分野調整の問題で幾つかのトラブルが発生したわけでございますけれども、その大部分は解決しておるんです。一、二いま御例示になりましたような、一〇〇%解決していないものも若干はありますけれども、大部分が解決の方向に向かっておる、また解決しておる、こういうことでございまして、立法化するといいますと、やはり立法技術上、それじゃどの分野とどの分野を禁止するかと、こういうふうなむずかしい問題等も発生をいたしますし、それから一律に法律で禁止するということになりますと、技術革新、こういう点でも問題が起こってくる。また、消費者の保護と利益というふうな面からも問題が起こってくる。こういうことでございますので、やはりこの行政指導で全力を挙げていく、これが好ましいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  140. 辻一彦

    辻一彦君 技術革新や消費者の問題は論議をすればいろいろ反論がありますが、こちらの方で長い意見を述べておればその時間がすぐなくなります。消費者にしても、初めはなるほど大企業は安く売れる場合があるでしょう。しかし、しばらくして市場を、そこを押えればまた価格を操作して上げていく。だから必ずしも消費者にとってそれがプラスになるとは言えない。そういう問題がありますが、まあその論議は別として、私はいまのままでいけば表に出ない倒産や転廃業に追い込まれるたくさんの中小企業が実際はあるんじゃないか。その面も法の規制によって守るべきではないかと思います。この点は時間の点もありますから、商工その他の委員会に移して論議をいたしたいと思います。その点では納得ができないと思います。  そこでいま、紙器、紙箱や段ボール等の業界に、さっき言いましたが、新潟等にも百万、二百万平米をつくれるような大きなのが進出をして非常に問題になっているといいますが、製紙関係の大企業は原料を自分で押えている。これは安く手に入る。そして加工の分野にまで入ってくる。こうすれば高い原料を買って製品をつくっている加工業者はこれはとうてい太刀打ちができない、こういう状況があると思います。段ボール、紙器等の今日の状況に対して、当面はまず強力な行政指導をする用意があるのかどうか、その点いかがですか。
  141. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 大企業が、いまさっきお話しになりましたような分野にみだりに入ってきまして中小企業の仕事を脅かす、こういうことのないように十分行政指導で配慮してまいりたいと思います。
  142. 辻一彦

    辻一彦君 その行政指導だけではいかないと思いますが、当面は段ボール、紙器の問題についても具体的に取り扱われるかどうか、いかがですか。
  143. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 具体的に対策を立てます。
  144. 辻一彦

    辻一彦君 中小企業の問題で、私は最後に繊維の輸入規制問題と構造改善事業の問題について二、三点伺いたいと思います。  通産大臣、通産の方は、春のこの予算委員会におきましても、秩序ある輸出を相手国に求める、こういう主張をされておったんですが、最近、綿製品の輸入承認制という点をとられておりますが、このいきさつはどうなのか、ちょっとお伺いしたい。
  145. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 最近は繊維製品の輸入というものは大体落ち着きを取り戻しております。一昨年、昨年に比べますと、全体としては非常に落ち着いた動きになっております。ただ、生糸の一元輸入という問題に関連をいたしまして、対韓国、対中国に一部の問題が起こっております。  そこで、韓国との間は、話し合いをいたしまして、この絹の撚糸等につきましては事前許可制、こういうことで行政指導をしておるところでございます。それから中国におきましては、羽二重とか裏絹、こういう一部の業種には問題が起こっておりますが、これは事前承認制、こういう形で行政指導をいたすことに今度いたしました。そういうことで、原則としては大体順調に推移しておるんですけれども、部分的に問題が起こりましたときには、相手国との話し合い等を通じまして、できるだけ行政指導という形で問題を円満に処理したいと、こう考えております。
  146. 辻一彦

    辻一彦君 今回の措置は恐らく暫定的なものであろうと思います。しかし、それで問題が解決するわけではないので、長期のやはり問題の処理の仕方、あるいは長期における繊維貿易のあり方等について、これからどうされようとしているのか、この点をお伺いします。
  147. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 先ほど申し上げましたように、大体落ち着いた動きを全体としては示しておるわけでございますが、今後は好況あるいは不況等の動きによりまして輸入が急激にふえたり、また急激に減る、そういうことになりますと、国内の市況も暴騰、暴落を繰り返しますし、それから数量の激減、激増によりまして、相手国に対しても非常に迷惑をかける、こういうことになりますので、やはり常に秩序のある輸入を指導していく、こういうふうにやっていく必要があろうと思います。同時に、あわせまして、国内におきましては繊維産業の産業構造を強力に指導いたしまして、体制そのものを強化していく、この二本立てでやっていきたいと思います。  ただ、先ほど申し上げました対中国、対韓国の綿製品の問題でございますが、これは生糸の一元輸入とのうらはらの問題でございますので、この問題がどういうふうに落着をいたしますか、それとの関連において長期的な見通しを立てたいと、こう思います。
  148. 辻一彦

    辻一彦君 次に、繊維業界がいま非常に不況にある。その中で繊維の将来、今後を考えますと、やはり構造改善、体質の改善ということがどうしても必要であると思いますが、旧構造改善事業はかなり進みましたが、しかし輸入攻勢でこれはもうがたがたになった。そういう中で四十九年から新しい構造改善事業が進められておりますが、その進捗状況は必ずしも思わしくないと思いますが、その予算と進捗状況はどういう状況にあるか、この点いかがですか。
  149. 野口一郎

    政府委員野口一郎君) 新構造改善事業は、昨年成立いたしました繊維工業構造改善臨時措置法に基づきまして、法律は昨年の七月から施行になったわけでございますが、政省令あるいは実施要領その他準備がかかりまして、ことしになりまして、ことしの春ぐらいから一応スタートを切ったわけでございます。ただ、残念ながら、ちょうど厳しい不況にぶつかったわけでございます。輸入問題等々当面非常な問題に囲まれまして、繊維工業は、繊維産業はいま非常に苦しんでいるわけでございます。したがいまして、私どもの方は長期的な観点に立ちまして、当面の問題と同時に長期的な構造改善を進めることが必要であるということで、業界を指導をしつつ今日に来ておるわけでございます。  その進行状況がおくれているのではないかという御指摘でございますけれども、確かに五十四年までにこの大きな仕事をやり遂げなければいかぬわけでございます。そういう意味では、私どもも大いに業界の指導と、しりをひっぱたいておるわけでございますけれども、しかし、この厳しい不況という観点から見ますれば相当進んでいるという見方もできるかと思うわけでございます。で、今日多くのプロジェクトが縦の異業種間の結合、縦のグループ、知識集約化グループということで数十のグループが、現在の計画が進んでおるわけでございまして、そのうち六、七十のグループにつきましてはすでに県段階あるいは通産局の段階、審査の段階を終えまして、現在本省においてその計画の内容を審査中でございます。  この事業を遂行するためにどういう予算があるのかというお話でございますが、これは中小企業振興事業団に特別に低利の金を用意してございまして、本年度分では一応四百五十億というお金が用意をされておるわけでございます。現在の進行状況から申しますると、その全額が融資されるというわけにはまいらないかと思うわけでございますけれども、現在審査中の七十に達するグループが承認を受けて動き出すということになりますると、そのうち相当部分は使われることになろうかというふうに見ているわけでございます。
  150. 辻一彦

    辻一彦君 通産大臣、四十九年はほとんどこの構造改善事業が残念ながら進まなかったようですが、五十年はかなり進んでいるということですが、全般としては非常におくれているということは、やはり構造改善をやる条件がなかなか出てこないということにあろうと思います。そこで、繊維関係の産地では、やはり構造改善と輸入の抑制と関税の引き上げのワンセットをもってやらなければなかなか効果のある構改が進まない、こういう声が強いんですが、この点についていかがですか。
  151. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いま政府委員が答弁いたしましたように、構造改善事業は四十九年はほとんど進まなかったわけでございますが、ことしになりましてから大分進んでまいりました。ただしかし、おっしゃるように、本当にこれを効果あらしめるためには近隣諸国からの輸入問題と並行してやっぱり検討していかなければならぬと、こう思います。
  152. 辻一彦

    辻一彦君 通産大臣はこの三月二十六日の予算委で、繊維の輸入増の推移を見て、必要とあれば今日の構造改善事業の見直しを再検討すると、こういう御答弁があったんですが、以来半年の日が動いておりますが、そういう推移を見て構造改善事業の見直しを必要とする時期に来ておるのではなかろうかと思いますが、御見解、いかがですか。
  153. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 先ほど申し上げましたように、昨年と一昨年はこの繊維の輸入が大混乱をしたわけでございますが、現在は全体として一応落ち着いた動きにはなっております。部分的に問題がある品種はございますけれども、それはさっき申し上げましたように部分的に解決方法を講じておるわけでございます。そういう状態で、全体として落ち着いておる、こういうことでございますから、現在の輸入状況から繊維構造の改善事業そのものを見直していくということではなくして、現在進めております構造改善事業を速やかに進めていく、そういう方向で努力をしたいと思います。
  154. 辻一彦

    辻一彦君 それは、この新構造改善事業が評定された時点では輸入のこういう状況というものは余り把握されずにつくられたと思いますが、この点はかなり変わってきたわけですが、そこらをくみ入れて、根本的に変えるというのじゃないけれども、かなりな改善対策をとっていく考えはあるのですか。
  155. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 現在は繊維全体としては落ち着いた動きを、輸入は落ち着いた動きを示しておるわけでございますが、今後仮に非常に混乱をする、そういう事態はないと思いますが、仮に万一そういう事態が起こってまいりました場合には、当然構造改善事業そのものもその角度から検討しなければならぬと思います。
  156. 辻一彦

    辻一彦君 ちょっと十分ではありませんが、時間が限られてまいりましたので次の問題に移りたいと思います。  私は、この間中国にちょっと行ってまいりましたが、中国における石油問題というものは国際的な関心をいま呼んでおります。そこで、日本の石油資源の安全保障確保という点から、中近東一辺倒のやり方というものは問題があると思いますが、石油資源の市場安定確保についてどういうように考えていられるか、お伺いしたいと思います。
  157. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 現在は中近東から八割弱の石油を輸入しておりまして、輸入ソースが一カ所に偏在するということは、これは大きな問題だと思います。でありますから、この輸入ソースの多角化をしていくということは、これはもう積極的に考えていかなければならぬと思います。そういう角度から、中国の石油に対しては非常に大きな関心を持っております。ただしかし、中国の油を急激にふやすということ等につきましては、価格とか品質等の問題がありますので、前向きには取り組んでおるわけでございますけれども、なかなか急速に結論を出すことはむずかしいのではないかと、こう思います。
  158. 辻一彦

    辻一彦君 通産省の資源エネルギー庁では、石油部長計画課長等がすでに中国を再三訪れて、いろんな調査やそういうことをやっておりますが、中国の石油産出量や将来日本の輸入の見通し等についてどういうように通産は見当をつけておりますか。
  159. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 現在の中国の石油の産出量、将来の見通し等についてはある程度の数字は掌握しております。ただしかし、向こう側から出た資料ではありませんので、ここで発表するのは差し控えさしていただきたいと思います。  それから、ことしになりましてからエネルギー庁から二回にわたりましてミッションを派遣いたしまして、具体的にいろいろ長期輸入につきまして問題点を検討さしております。
  160. 辻一彦

    辻一彦君 日中貿易はいま七億ドル前後の、こちらから言えば出超になっておりますが、この貿易のアンバランスを解消し、貿易を拡大していくという点からも、中国の石油はわが国として重大な関心を持ち、期待する面があると思うのですが、これらについての見通しといいますか、考え方はいかがですか。
  161. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 昨年は、いま御指摘のように中国との貿易は日本から出超が約七億ドルであったと思いますが、ことしはさらにそれが拡大する気配でございます。そういう状態でございますので、先ほど来申し上げますように、石油の長期安定輸入ということに対しては非常に大きな関心を持っておるわけでございます。しかし、問題点が若干ありますので急には片づきませんし、仮に片づいたといたしましても、石油問題だけでこの中国の貿易のアンバランスを解消するということはむずかしいと思います。そこで、日中経済協会等を通じまして先方に、日本としてはこういう品物を将来は輸入したい、しかし、問題点としてこういう品質でなければならぬ、品質上こういう問題があると、そういうふうなリストをつくりまして先方に提示をいたしまして輸入の拡大を図っていく、こういう方向で努力をいたしております。
  162. 辻一彦

    辻一彦君 中国産の石油を日本に入れるについてのネックは何ですか。
  163. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 一つは、中東産の石油に比べまして価格が比較的高いということが第一点でございます。それから第二点は、重質油が非常に多うございまして、このために輸送あるいは貯蔵の場合に加熱をしなきゃならぬ、こういう問題等もあります。それから重質でありますために分解装置を新たにつくらなければならぬ、こういう問題等もありまして、新規に設備をするということになりますと非常に膨大な設備資金が必要になるわけでございます。石油業界はいま御案内のような状態でございますので、それだけの負担能力がない、将来大量に輸入する場合には一体その設備をどうするか、こういうふうな問題があるわけでございます。
  164. 辻一彦

    辻一彦君 まあ価格の問題はいろいろあるでしょう。インドネシアとの比率もあると思いますし。ところが、この後の二つのネックは、確かにこれを輸入して大量に活用するとすればかなり問題があるところだと思いますが、これは民間だけに任しておくのか、政府としてこういう問題に対して積極的な対処の対策を立てていくのか、その点はどう考えておられますか。
  165. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 政府といたしましても、この中国の石油については非常に重大な関心を持っておるということは先ほど申し述べたとおりでございます。したがいまして、これの輸入という問題につきましては、一応窓口は民間になっておりますが、将来のことを考えますと、民間だけではやっぱり解決し切れない問題があろうかと思います。たとえば設備投資の問題なんか仮に取り上げる場合に、現状では無理だと思います。そういう場合にはやはり政府がある程度バックアップしなきゃならぬと、こういうふうに考えます。
  166. 辻一彦

    辻一彦君 次に核燃料の再処理対策について若干伺いたいと思います。  よく便所なしのマンションというように日本の原子力開発は害われますが、入り口の濃縮ウランと出口の再処理は全部外国に依存しておる、こういう中でキセルの中だけが太くなってネックができておる、こういうような批判がありますが、この中で、まず昭和六十年までの核燃料の再処理の計画を簡単に聞きたい。
  167. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) お答え申し上げます。  昭和六十年度までのわが国で出ます使用済み燃料が四千百トンでございまして、これをどう処理するかという問題がいまの御指摘の問題でございますが、ただいま動燃事業団で試験中の再処理工場で年間二百十トンの大体処理能力がございます。それに海外に、ドイツとそれから英国の燃料公社でございますが、合わせまして、累計でございますが千八百トンの委託契約が済んでおりまして、先ほどの国内の分を累計いたしますと千六百トンになりますが、大体三千四百トン近くはいままでの契約分あるいは国内生産の分で賄えると思います。若干その間、差がございますけれども、それに対しましては国内で第二の工場をつくっていくか、あるいはただいま電力会社等でさらに英国の燃料公社との間に増加の契約を進めつつございますので、それと合わせますと十分賄っていけるのじゃなかろうかというふうな計画で進めております。
  168. 辻一彦

    辻一彦君 いまイギリスの原子力公社と日本の電力業界との交渉がしばしば新聞等にも報ぜられておりますが、政府は英原子力公社と電力業界のこの再処理工場の建設に関する交渉について、内容に本格的にタッチをしておるのかどうか。
  169. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) ただいま、大枠十カ年でどのくらいを処理するといったような交渉で、また所要資金もどれほどかかるかといったような問題等が主でございまして、できました高レベルの廃棄物をどうするかとかいった細部の点に関しましてはまだ最終的に結論がついておらぬようでございまして、せっかく交渉中でございます。
  170. 辻一彦

    辻一彦君 ずいぶん具体的に何回か交渉されておるのを、ほとんど政府が細部は知らないというのは私はおかしいと思うのですが、なぜタッチしていないのですか。
  171. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) タッチしないのでございませんで、ただいま交渉中でございますから、その交渉の結果を見守っておるところでございます。
  172. 辻一彦

    辻一彦君 じゃ交渉されておる原案といいますか、内容を私は国会に出していただきたいと思いますが、いかがですか。
  173. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いま長官が御答弁になりましたように、交渉中でございまして、いま先方からもいろんなことを言っておりますし、わが方からもいろんなことを言っておる。で、条件がその都度少しずつ変わっておる、こういう状態でございますから非常に微妙な段階でございます。そこで、もうしばらくすると大体の見当もつこうと思いますので、ほぼ最終段階に来たところでは御報告したいと思いますけれども、いまは非常に微妙な段階でございますので、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。
  174. 辻一彦

    辻一彦君 私は昨年、英独仏米の原子力機関をずっと訪ねてみましたが、ドイツでは政府の責任者は、欧州では他国の核燃料の処理済みのものは扱わない、欧州はよそのものはやらない、各国は各国で処理しろと、こう言っていますね。イギリスはウインズケールを中心に、ちょっと違いますが、いま各地におけるイギリスの動き等を見ると、よその核の廃棄物をイギリスで引き受けることはないじゃないかと、こういう動きがどんどん強くなっておりますが、そういう中で私は、やはりこの交渉の内容というものはわれわれとしていろんな角度から知る必要があると思うのですが、早くこの内容を私は提示をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  175. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) もう少し最終の段階になりました場合にはお知らせをいたしたいと思います。
  176. 辻一彦

    辻一彦君 これをいろいろ詰める時間がないので科技特等に移したいと思いますが、先ほど申し上げましたが、総理日本の原子力開発は、キセルにたとえれば吸い口が濃縮ウラン、原料、出口ががん首ですね。この二つがネックになって、中だけはふくらんでどんどん拡張している。しかし、その両辺は外国依存という状況です。私はこれは大変問題がある。再処理はクローズドシステムを、日本の工場等においてもいまありますが、やるべきじゃないかと思います。放射能放出ゼロ、これを目指さなくてはならない、そういう形でないといかないと思いますが、いかがですか。
  177. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 放射能の放出をできるだけ押さえていこうということで、クローズドシステムというのは研究の将来課題だと思います。そこで日本の場合でも、動力炉・燃料の事業団がありますから、そこでやはりクローズドシステムというものは十分研究さしていこうと。ことに日本の場合はそういう国土も狭いしするですから、放射性物質の放出に対してこれを押さえるということの必要度というものは諸国に比べて多いと思いますから、辻君の言われるように、これは大きな研究課題だと考えております。
  178. 辻一彦

    辻一彦君 研究課題じゃない、当面の重大な問題であると私は思いますし、なるべく早い機会に、ぜひ再処理の交渉内容について私は提示をいただきたい。これは別の科技特等で論議をしたいと思います。  ちょっと話をはしょってあれですが、最後に私は、いま農政の最大の問題は過剰米をどう処理するかということと、農地の宅地並み課税の問題があると思います。これについて農林大臣の御見解を伺いたい。
  179. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 十月十五日の作況の指数では、ことしは千三百十万トンと史上第四位の収穫が予想されるわけでありまして、このままでいきますと大体五十万トンぐらいは超過米が出るという見通しになるわけでございますが、しかし、これは十一月の末から十二月にかかって完全に収穫が終わらないと最終的にはわからぬわけでありますが、これまでも毎年毎年過剰米が出るということで最終的には非常に少なく、県間調整等でこれを処理することができたわけで、四十八年なども大体いまごろは五十万トン出るということでありましたが、最終的には七万トンで終わったわけでございます。したがって最終的な結果を待たなきゃわからぬわけですが、私たちとしては、まず第一には県間の調整でこれを処理したい。さらにそれでも余るというふうな事態になれば、自主流通に乗せてこれを処理していくという方向で解決したいというふうに考えております。これまでもそういう方向でやってまいりましたので、現在のところもそういう方向で処理したいと考えておるわけでございます。  それから市街化区域の税制の問題、農地課税ですが、これはやはり市街化区域、農振地域といったように区別があれば、税制上これは区別するのが当然だとは思うわけですが、しかし、担税力という問題もあるわけでございますから、これはやはりわれわれとしては慎重に考えなければならない問題であるというふうに考えております。
  180. 辻一彦

    辻一彦君 まず米の方から……。県間調整の可能性は、作況から見てありますか。
  181. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまのところは正確にはつかめないといいますか、これは県の方の報告が最終段階にならないと集まらないわけでありまして、いまの状態で大ざっぱに言えば、たとえば北海道とかあるいは高知県等は減収という見通しでございます。その他の地区等において最終的にどういう結果が出てくるのか、最後の段階までなかなか県の報告が集まらないということでございますが、相当そういう意味で昨年等と比べると県間調整等も困難な面もあるかとも予想もされますけれども、ある程度はできるんじゃないかというふうに期待をいたしております。
  182. 辻一彦

    辻一彦君 いやこの作況を見れば、ほとんど一〇〇を超えているでしょう。一〇〇を割っているのは二つですね。だから、その可能性はほとんどない。あっても非常に幅が小さい。そうすれば、大量に出る過剰米をどう処理するかということは必要だと思うのですが、その腹構えはいかがですか。
  183. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは自主流通米のルートで処理していきたい。これは一昨年も処理してまいりましたし、昨年も処理してまいりましたし、最終的には自主流通米のルートで処理したい、これができるのじゃないか。いま二百五十万トン自主流通米の枠があるわけでありますが、自主流通米のルートに乗せて最終的には処理をしたいという方向で検討いたしておるわけです。
  184. 辻一彦

    辻一彦君 その場合に条件はどう考えるんですか。
  185. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは一昨年も、四十八年も七万トンばかり自主流通米に乗せて処理をしたわけですが、今回の場合は、その条件等については最終的にはまだ検討を進めておりまして決定をしておらない、検討中の状況でございます。
  186. 工藤良平

    ○工藤良平君 関連。  私はいま農林大臣がお話をいたしました自主流通米でこの五十万トンを超す余剰米を処理をするということはきわめて困難ではないか。なぜかと言いますと、それはすでに消費者米価が大幅に引き上げられているわけです。むしろ標準価格米の方にだんだんウエートが移っているという状態の中で、私はそれは非常に困難な状態ではないか。むしろもう少し抜本的に、備蓄なりそういう問題を大きく大所高所から見て問題を処理をしていかないと大変大きな問題を残すのではないか、こういうような気がいたしますから、この点についてはもちろんまだ最終的に収穫高は決定をしておりませんけれども、そういう点をいまから踏まえてやる必要があるのではないか、こういうことを私は申し上げておきたいと思うんですが、どうですか。
  187. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまお話がありましたように、なかなか自主流通米の伸びが悪いという情報もあるわけであります。しかし、これは全体的に見れば、地区的にはそういう伸びの悪い地区もあるわけですが、全体的には私は二百五十万トンは完全に消化できるのではないかというふうに農林省では判断をしておりますが、しかし、これはまだ今後の問題が残ってくるわけですが、確かに最終的に残ったものをどうするか、これは備蓄ということも考えなきゃならぬわけですが、備蓄の場合も今後本格的に対策を進めていかなきゃならぬわけですが、これは計画的にやりたいというふうに考えております。しかし、備蓄も含め、あるいは自主流通米のルートに乗せるということも考え、さらにその他、最終的な段階で収穫が終わって結果が判明した段階におきましては何とか処理をするということで工夫を、いまいろいろといろいろの事態を想像しながら工夫をこらしておる段階でございます。
  188. 辻一彦

    辻一彦君 二百万トン来年の十月末に備蓄の構想があるわけですから、ことしは百五十万トン、その余ったのを備蓄に繰り入れるということは私はやろうと思えばできないことではないと思うんですが、いかがですか。
  189. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ことしの段階で大体百十三万トン、来年で百五十万トン、それから農林省で、計画は来年から三カ年のうちに二百万トンぐらいの備蓄を計画的に持ちたいということでございます。ですから、私たちとしては、備蓄はただ超過米ができたからといってそれを全部備蓄にすぐ回すということでなくて、計画的段階的に、最終的にはやはり二百万トンという備蓄を持つという方向へ進めていきたいと、こういうふうに考えておりますので、ただ余ったからすぐ備蓄をということには私たちはすぐ考えてはおらないわけでございますが、これから四、五年計画で二百万トンと、こういうことはもちろん本格的に取り組んでいきたいと思っておるわけです。
  190. 辻一彦

    辻一彦君 ことしは天候が幸いして米に余裕がついた。私は大変結構だと思うんです。ソ連は一千万トンの食糧が足りないといって、いま大騒ぎしをしてアメリカに出かけて行っている。そういう中で、農民が苦労し青刈りまでやって、とにかく余分の米が出た。私はやっぱりこの余剰米は備蓄として政府が買い上げるということを考えるべきじゃないかと思いますが、総理いかがでしょうか。
  191. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 現段階としては安倍農林大臣の言うように考えております。これは将来の研究題目ですけれども、現在のところはやはり従来のような県間調整をやって、そしてまた自主流通米に回していくという、これが現在の段階の考えですが、将来はいろいろ研究はいたしますけれども、現在はこれを買い上げるという考え方は持っていないわけです。
  192. 辻一彦

    辻一彦君 世界の人は、日本は土地改良をやって天下の美田を三カ月しか使っていない、そして食糧が足りないといって農林大臣がアメリカへ行っている、日本では米が、主食が余って、そしてこれをどうしようかという、私はよその国から見たら非常にわからない農政だと思うんですよ。少なくもこれだけ苦労した農民の米は全量国が買い上げて、当面備蓄法案まで用意している農林省ならば備蓄に回すべきであると思いますが、重ねて伺いたい。
  193. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、この問題には辻君も十分御理解願えると思う複雑な問題がありますよね。簡単に買い上げると、こう言いますけれども、非常に複雑な問題がある。したがって、この問題はよく研究をしなければ、この段階では私はお答えをする——いろいろ価格の問題からしても複雑な問題がありますよ。簡単な問題ではない。だから、よく研究をいたしますというお答えよりほかにはございません。
  194. 辻一彦

    辻一彦君 総理、あなたは世界首脳会議に出られて、第一次産品問題について具体的な提案をされようとしている。東南アジアの国々の第一次産品の食糧等についての所得補償まで考えておられる。ところが、国内で米がいま余ってきている中で、これを政府は買い上げることもできない。私は大変矛盾していると思うんですが、あえて私はこの米の問題について十分検討して処理していただきたいと思うんですが、いかがですか。
  195. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 先ほど申しておるように、これはよく研究はいたします。
  196. 辻一彦

    辻一彦君 もう一問、農地の買い上げについて、C農地に対してどう考えておられるか、お伺いいたします。
  197. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えします。  御案内のように、三大都市圏の特定の都市のA農地及びB農地については、周辺の宅地との税負担の不均衡が著しい。また宅地化を促進する必要性が特に強いことから課税の適正化措置を講じているものでありますが、いま直ちにこの措置を廃止する考えはございません。  それからなお、その他の市街化区域農地についてどのように措置すべきかは、国全体の土地政策とも関連するところが大きいので、昭和五十一年度における評価がえの状況、市街化の状況、生産緑地制度の運用の状況等を見きわめながら慎重に検討することといたしたいと存じております。
  198. 辻一彦

    辻一彦君 C農地はどうする。C農地に対しては。
  199. 福田一

    国務大臣福田一君) C農地というのは、いまも後で申し上げたことを言っておるんじゃありませんか。——政府委員から答弁させます。
  200. 首藤堯

    政府委員(首藤堯君) ただいま大臣がお答え申し上げましたように、C農地につきましては、今後の状況、特に都市政策上の問題、それから農業政策上の問題もございますし、都市におきます生産緑地制度の運用等の問題もございますので、今後なお慎重に検討をいたしたいと、このように考えておる次第でございます。
  201. 辻一彦

    辻一彦君 来年どうするのですか。
  202. 首藤堯

    政府委員(首藤堯君) 来年の問題としてただいま慎重に検討中でございます。
  203. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして辻一彦君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  204. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 寺田熊雄君。
  205. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 総理にお尋ねをいたします。  総理がライフサイクル計画を打ち出したことは、池田さんが所得倍増十カ年計画を打ち出したり、田中さんが日本列島改造論を打ち出したりするよりは、はるかに国民福祉に貢献すると私は考えておるんです。ただ、この間いろいろほかの方が御質問になりましたけれども総理お答えがとかく総論に傾き過ぎておりますね。ですから、私はもっと具体的な問題、ことに国民の老後、これは私どもの友人で会社の社長なんかも、われわれでさえも老後は心配なんだと言いますね。ですから、老後を安定させるということが政治の重要な目標になり、そのために定年制の延長の問題が一つ考えられる。それからもう一つは、住宅問題が考えられますね。日本の消費支出の中で住宅に向けられる部分というのは非常に多いです、外国と比べて。これは住宅問題。それから年金の問題。この三つの問題について具体的に総理のお考えをお尋ねしたい。
  206. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は人間の一生、何か生涯を通じて皆が安心して希望を持ち、安心して生きがいを求めるような、そういう一つの人生というものをつくるということを目指すことが政治の大きな目標だと思うんですね。どうも、いままでの社会保障にしてもばらばらに取り扱われていますがね、人間の生涯を通じての総合的な結社計画というものではない。生まれてから死ぬまでの間、それをとらえて、福祉もばらばらでなしに全体の福祉、福祉というのは社会保障ばかりでないですからね、そういうものをとらえて一つの生涯計画というものができないか、こういうことで私の総論を述べたわけです。それに賛成した若い学者が、それなら各論をひとつつくってみようということで、ああいうライフサイクル、総福祉生涯計画といいますかね、そういうことでいまこれを党は調査会を設けまして、大調査会を設け、内閣に連絡会議を設けていま検討をしておるわけです。  したがって、各論については、あの提言というものはいろいろ議論がある。この機会にひとつ寺田君から、あなたの意見をひとつ聞かしてもらいたいと思うのですね、あれをお読みになって。やはり真剣にお考えになっておる一人でしょうからね、あなた自身も。だからこの機会に、お読みになってどういう感じを持っていられるか、聞かしてもらえば大変に参考になる。そういうことで、まあこれからやろうということで、これに私が情熱を傾けておることは間違いがないということです。
  207. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 総理構想を伺っているのですよ。
  208. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私のこの基本的な考え方は、まあ人生を四つに分けてあるわけですね。その分けた段階で、その間にやはり教育という問題も出てきますね。それからまた一人の人間が妻をめとり、社会で働いてくれば、やっぱり住宅問題も起こりましょう。それからまた老後の生活も起こってくるし、いろいろ問題も生まれてくるし、これを各段階ごとに、福祉をただ社会保障というだけにとらないで、教育も住宅もみんな福祉政策の一つである、こういうふうにとらえて、その段階ごとに政府として、政府はできるだけそういう機会を提供をすることを考えるわけだけれども、大きな生涯を通じての福祉計画というものは、政府がやるといったってそんなことはできるわけありませんから、政府は最低限の保障というものは考えて、それ以上は皆の努力によらなければならない。  私は、日本はこれから社会保障というものはもう全部国とか地方公共団体がやるものだということでは、園が破産すると思うのですね。やはり自助的な努力、こういうものも加えて、日本的な福祉政策というものが編み出されなければ、全部これは国だ、地方公共団体がやるものだということになれば、これはやっていけないのです。そういう社会連帯、自助的な努力、これを組み合わせた日本独特の一つの福祉政策というものが編み出されなければならぬということで、これはもう単に自民党というだけでなしに、各党が競い合ってこの問題は取り上げなければならぬ問題だと思っておるわけです。それで、この問題に御関心を持つ寺田君の御意見もこの機会に聞かしてもらいたいと思うわけです。
  209. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 総理がそういうふうに私どもの質問に正面から答えないでごまかしていく、こういう態度を続けられる限りは予算委員会の審議というのは実のあるものにならぬのですよ。だから私は、総理がもっと具体的に私の質問に答えるようによくしてほしいということを、あらかじめ参事官の方にも申し入れておったのですよ。そういう抽象論、総論を伺っているのじゃないんですよ。  日本の、たとえば役人が五十五歳でやめてしまう。したがっていろんな会社に天下りせざるを得ない、そういうようなことでいいのか。会社は、従業員は定年が六十二未満である。外国の場合、たとえば西ドイツをとっても六十五歳でしょう、一般的に。そうして、やめれば住宅が容易に手に入ると、老後にどのぐらい安定度があるかわかりませんわね。そういう問題で具体的に総理お答えを伺っているのですよ。それはないならないとおっしゃってください。私が総理にものを教える。こういう場じゃないでしょう。
  210. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) やはり定年などは五十五歳というのは、こんなに人間の寿命が、お互いに平均寿命は七十一歳もなったんですから、これは定年になったら後の人生というものに対して非常に不安になりますからね、私はやっぱり、少なくとも六十歳に定年は延長すべきものだと考えますよ。  それで、たとえば住宅問題にしても、これは政府もやっておる財形貯蓄などはやはりもっと工夫をこらせば、住宅問題というものに、私の言う自助的な努力というものも加わって、こういうものに非常に私は関心を持っておるわけです。教育についても、人生もう皆やっぱり何でしょう、非常に寿命が延びただけに、教育どももう学校だけが教育だというわけにいかないで、学校を出てももう一遍勉強したいという人はやっぱり教育できるような、まあ生涯教育のような、そういうふうな機会というものは与えられてしかるべきじゃないか。御婦人の方なんかも育児は四十歳そこそこで終わるとすれば御婦人の平均寿命は七十六歳ですからね、その後の人生というものは社会的に非常にいろいろ貢献をしたいと思われることは当然のことでしょう。そういうためにもう一遍教育を受けたいということも考えられるでしょう。  そういう各論について、いま政府連絡会議で内閣官房が中心になって各省の意見も徴しておるし、また党でもやっておるわけで、なぜそうするかというと、既成の年金制度にしてもいろいろ制度があるでしょう。これを、何かその年金制度を根本的に考えるというのは大変な問題ですからね。
  211. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 その構想を伺っている。
  212. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) その構想と言っても、まだこれは政府として、総理として私は申し上げる段階に達してないんですよ。これは予算委員会を軽視しているんじゃありませんよ。こうやって不況対策も急がれて、急を要する問題で八日間もかけてこうやって予算審議をしておるということは、これは予算委員会を尊重している姿そのものですよ。これは。こんなにもう一刻を争うのでしょう、国民からすれば。八日間ですからね、これでやっぱり国会を尊重しておらぬと言われると、ちょっとこれは受け取れないですね。
  213. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうもやはりそういう抽象的な実のないお答えではないかとおそれておったんですが、もうちょっと……。ただ、なるほど年金の細かい制度的な改革は、いま総理お答えになろうとしても無理でしょうけれども、老後を安定させるためにはナショナル・シビル・ミニマムとしてどのぐらいが必要なんだというぐらいの構想はお持ちになってもいいんじゃないですか、どうでしょう。
  214. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そういう段階まで達しますと、私は大いにしゃべりたいんですよ。いましかし、総理として言えないでしょう。年金制度なんかだって、ナショナル・ミニマムという考えですからね、私の考えは。これをここで申し上げるということは私は時期として軽率のそしりを免れない。これは十分、既成の年金制度がいっぱいあるわけですから、これをやはりどういうふうにこれからの年金というものをやっていくかと。あの提言の中ではもう大胆な構想があるんですよ。それは私の案とは言えない。これを私の案とするためには十分政府部内においても、あるいはまた党においても検討されなければ、既成の制度に改革を加えられるならば——それは白紙の状態ならばこれは簡単に言えましょう、こういうことをやるつもりだと。これはいろいろあるんですから、そこでやはり、私が故意に答弁を避けているんじゃないんですよ。寺田さも非常にこの問題に対して御熱心に考えておる一人だから言いたいのです。まだしかし、言える段階ではないということは御了察を願いたい。
  215. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私は、委員長総理にもっと具体的にお答えになるように御注意願いたいと思うんですよ。それはなるほど細かい制度的改革のメトーデはいま話すことはできないでしょうが、大体どの程度のナショナル・シビル・ミニマムを自分は考えているんだということぐらいは御答弁になれない道理はないでしょう。  それじゃ総理、いま社会保障関係費の一般会計に占めるシエアがこの補正後一九・四%になったようですが、あなたはどの程度が望ましいというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  216. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 一八・四ということは、世界の国々に比べて低い水準であることは事実ですね。しかし各国とも、寺田君、非常に社会保障というものが充実しておる国は税負担は重いですよ。これは非常に重い。スウェーデンでもイギリスでも、やっぱり社会保障のための税負担というものは国民の間にもいろいろ批判があるぐらい高いですからね。日本の税負担ということから考えて、これは社会保障費の水準を急激にヨーロッパのような、イギリスとかスウェーデンというようなわけには私はいけない。だから、どうしても皆が社会連帯だという意識で、政府もやるし、またみずからもやるんだという意識がないと、これ以上非常なヨーロッパ並みの税負担というものを急激に国民に求めることは無理ではありませんか。だから、そういうこともやはりこれからの大きな検討されなければならぬ題目の一つだと思いますね。  そういうことで、私は水準は決して高いと言わないんです。低いと思う。低いけれども、そのためにはやっぱり国民が皆相互扶助の気持ちでこの社会保障という制度をもっと完備していくんだという意識がないと、ただ社会保障の点で、要求はいっぱいありますわね、それに対して、それは一体どういうふうにやっぱり国民の皆さん方もこたえていただくかということのうらはらですね、この問題は。そういう点でも、これはこれから一つの大きな国民の理解を求めるという点も要ると思うんですね。そういうことで、私はナショナル・ミニマムを考えているんですよ。だから、相当なこれは新しい日本的な工夫をしなければ、いまのままで継ぎ足し継ぎ足しの社会保障制度で私はそうはできるとは思わない。そういうことで大改革になるわけですからね、ここで言えといっても、まだ政府の案も固まってない場合に、私は個人として言うなら言えますよ。この国会という国権の最高機関の予算委員会で案も固まってないものを総理が言うということは適当でないと、こう言っているんですから。
  217. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そういうことはないと思いますよ。あなたが一国の総理として、自分は社会福祉を最重点にするんだ、おれの構想はこうなんだ、それを実現するためには国民負担もこれだけいまより上がるんだと、具体的に構想を国民の前に示して、そして国民のコンセンサスを得ようとすればできるわけでしょう。おれは構想はまだ固まらないんだ、委員会にかけているんだ、個人としてあるけれども言えないんだというような態度では国民は納得しませんよ。大胆にあなたの重点施策を国民の前に示して、そして、そのためにはこれだけの負担を余儀なくせざるを得ないんだという構想、重点施策をもっと大胆に国民の前に提示してほしいんです。どうでしょう。
  218. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはやはりいま申したような、それだけの検討の時間が過ぎたら大胆に訴えたい、国民に大胆に訴えたい。これは国民に訴えなければ、国民の理解がなければできませんよ。いまの時期はまだ早い。しかし、案ができればこれは大胆に訴えたいんです。ちょうどいまは不況を克服しなければなりませんから、一刻を争うような補正予算なんかの御審議を願っておるので、これをやらなければならぬが、その間にはこの問題に対する検討を終えて、これはもう大胆率直に国民に訴えたいというのが私の考えです。
  219. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 三木内閣が誕生してからもう一年以上になるわけですね。あなたとしましては何を重点施策として考えていらっしゃるんでしょうか。
  220. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ日本人、気が早いですから。相当なことをやっているんですよ、寺田君、いままで。
  221. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 公選法とかなんとか、それは要りません。
  222. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは私が組閣をしたときに国民に約束したことは、一つはやっぱり政治の粛正でしょう。
  223. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それはいい。
  224. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはいいことはありませんよ。公職選挙法だって政治資金規正法だって、いままでの歴代内閣で通ったことはないじゃないですか。皆さんの御協力を得て、これはやっぱり国会で大変なことですよ。公職選挙法だって、実際に裏道を考えないであのとおりにやったら、私は選挙は面目一新すると思うんですね、日本の選挙は。そうですよ、それくらいのものですよ。政治資金規正法だって、これはもう政党自身だって、自民党自身だって、これはやはり従来の惰性からすれば大変な改革である。これはやったでしょう。  それからインフレの抑制ということ、それは寺田君自身が内閣ができたときに、あのときは消費者物価が二四・五%ですよ。卸売物価が三一・三%じゃないですか。その中で、来年の三月が来たら一五%以下に抑えるんだという公約はだれも信じなかったでしょう。しかし、それは総需要抑制という厳しい政策を行いまして、それに対して国民の理解も得られたから実現して、それ以下で抑えたでしょう。今度は一けた台という、これ大変な政府の物価政策に対する目標、これに向かってやっている。  そういうことで、そして国会では対話と協調ということで、それは対話と協調だって実際にやりたいんだ、私は。対決したくないんですよ。しかし、自分の気に入らぬ法案というものはなかなか審議に応じてくれないというのじゃ、なかなかこれは議会政治の運営というのはできなくなりますよ。そういうことで、実際は私どもは気に入らぬものを出す場合があるでしょう。それはしかし、審議を通じて徹底的に御批判を願って、最後はやっぱり右するか左するか決めていただかないと、国会は何日開いておってもなかなか結論は出ませんからね。したいんですよ、対話と協調で行きたいんです。そういうことで行きたいのであって、私が言ったことを誠実に履行しようといままでやってきたことは事実ですよ、これは。約束に対してそのときだけという考えはないんですよ、私には。もう私は、私の言ったこと非常にこだわるたちなんだ。だから、非常にこれに対して誠実に履行しようと努力をしておるということは、まあ野党の諸君ひとつ、一つもほめることはないですからね、皆悪いことばかり言いますが、それは短期間の間に、いままでのこの政治のいろいろ歴史をごらんなさいよ、約束したことは誠実に守ろうとして汗流して一生懸命にやっておるということは、これはフェアにひとつ御理解を願いたいと願うわけでございます。
  225. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 政界の浄化、わかりましたよ、それね。あなたが資産公開したことは私も決してむだだとは思いません。それから、まあこのインフレの鎮静もよろしいでしょう。私が伺っているのは財政に関連していま伺っているわけです。総理、それじゃあなたは社会保障、それから防衛、それから生活関連の社会資本の充実、この三つを重点的な施策だと考えておられますか。
  226. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) やはり基本には政治の重点に置くものは国民福祉だと思いますよ、国民福祉である。それは防衛だって、国の安全がなければ国民福祉の基本は成り立ちませんからね。やっぱり目指すところは国民福祉である。そういう意味で国民福祉というものは政治の目標に置くべき課題である。最重点といえばそれは最重点である。いろんな問題、そうでしょう。教育だってやっぱりねらうところは、教育の水準を高めて、人間というものは一生涯自分をできるだけ開発して、自分の能力を開発してやるということは福祉に通じますからね。いろいろな問題が皆落ちつく先は福祉であると、こう考えております。
  227. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いまあなたは、福祉は最重点だということをおっしゃいましたね。  そこで、厚生大臣にお尋ねしたいんですが、厚生大臣は前国会、衆議院で老齢福祉年金の二万円を五十一年度中に実現したいということをおっしゃいましたね、実現するというふうな表現にもとれるんですが。  それから私に対しては、社会福祉関係の職員の充足の問題で、一万九千人の要員増加に関連して大蔵省ともう合憲ができているということを本会議で御答弁になりました。これは実現するためにいま最善の努力を払っていらっしゃるでしょうか。それからその見通しはどうでしょうか。
  228. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 第一の福祉年金の件でございますが、これにつきましては、もともと福祉年金の給付水準というものは拠出制年金のレベル並びに他の福祉施策との勘案をしながら合理的な線を求めなけりゃなりませんが、私どもとしてはできる限りこれが向上するようにこいねがっているわけであります。ただいまのお話は、これは速記をお読みになるとおわかりだと思いますが、年金の財政制度の改善に関連をして出た話でございまして、したがいまして私どもは、いま総理がおっしゃったようなことで、年金の財政方式そのものを改めるべく今日わが省におきまして特別なプロジェクトチームをつくりまして、かなり広範複雑な作業でございますが、年金の財政方式を今日改めるべく鋭意努力をしておるわけでありまして、その一環として、さっきも申したようなことを実現すべくせっかく努力中でございます。  第二の問題でございますが、これについては、例の社会福祉施設職員の労働基準法が守れる、守れないという問題から出てきたものでございまして、したがいまして、昭和五十年度予算の折衝の過程におきまして、一万五千名を充足するならば一応労基法違反は解消できるというふうな合意に達しましたものですから、五十年度予算では六千名の定員を入れることができて、すでに予算化をいたしているわけであります。そうなりますると、あと九千名でございますが、これについては私どもは非常に重要な課題でございます。やはり社会福祉施設職員が国の基準において労基法が守られないなどということはまことに遺憾なことでございますので、明年度はこれをぜひ解消いたすべく、もうあと九千名の増員については予算要求を起こしているところでございまして、私どもとしては明年度予算、御案内のとおり相当窮屈なところでございますが、これは何とかいたさなければならないということで、かたい決意をもって財政当局にお願いをし、今後折衝に入ろうというふうに思っている次第であります。
  229. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 見通しはいかがでしょうか。
  230. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) これは見通しというのは財政当局との折衝でございますから、いまここでもって結論を申すことは時期が早いと思いますが、私どもとしては国会で砦さんに申し上げたことでもありますし、事柄の性質上このようなことを便々と続けておくということはよくないと思いますので、私はこの予算実現を最重点の項目にいたして折衝をいたしたい。そうするならば、私はある程度の成果が得られるものと期待はいたしております。
  231. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大蔵大臣、いかがでしょうか。
  232. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 概算要求がございまして、目下鋭意検討いたしておるところでございます。
  233. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 もう一遍総理の、社会福祉は私の最重点施策だという御答弁を思い起こしていただきたいわけです。もうすでに昨年度、大蔵と厚生との間に合意ができたというふうに厚生大臣が本会議で御答弁になったわけですね。それがいま、最福祉重点の一環であるそれが合意ができたということを本会議で公然とおっしゃったことが、総理、できないことはないでしょう。総理の指導性をこの際発揮してくださったらどうでしょうか。
  234. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) その経緯等もよく聞きまして、これは予算編成の場合に解決をいたします。
  235. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 社会福祉施設の職員の増員の問題は、いまの厚生大臣と総理の御決意で、これは私は必ず実現するものと信じますけれども、厚生大臣、いまの二万円の老齢福祉年金の問題はあなたの御決意はどうなんでしょうか。
  236. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 私としては、福祉年金の給付水準というものはこれ以上これから先なお伸ばしたいという強い希望を持っております。しかし、何しろこれについては現在の制度というものはすべてを一般会計に依存するという制度でございまして、したがいまして、相当の多額の一般会計支出というものを今日の御時世で望むべくもないという情勢でありますし、もともと私は、財政方式の切りかえ、これは単に福年だけの問題ではございません、年金すべてについて財政方式をこの際やはり見直さなければいけないというのが私の就任当初からの信念でもございますので、したがいまして、そうしたことをめぐりましていま鋭意検討をいたしているところでございますが、しかし大変複雑多岐にわたって、やってみますると非常に複雑多岐にわたる作業であるわけであります。いま先生、五十一年ということをおっしゃいましたが、私、あの答弁の速記をごらんになると、決して日限を限っての御答弁ではなかったはずでございますが、しかし、こうしたことについてはこれを急いでやる必要があろうと思いますので、できるだけ早くやろうというふうに思いまして、いろいろと省内を督励をして今日作業をいたしているというのが今日の段階でございます。
  237. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは昭和五十年二月二十二日付の衆議院予算委員会会議録第十九号、これの四十三ページですが、公明党の大橋委員が「あなたは、ベストではないけれども大変参考になる、五十一年度には二万円を実施する、こういうふうに見ていいですね。」という問いをしておりますね。それに対してあなたは「二万円の方は、私は必ず実施をいたしたいというふうに思っております。」と、こう言って、年限はやっぱり切ってありますが。
  238. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) いま先生がお読みになったとおり、大橋君は年限を区切って言っているわけでございますが、私の方は年限を区切って御答弁申し上げていないことは、いま先生お読みのとおりでございます。しかし、こうしたやりとりのいきさつがあるものですから、私としてはできる限り早くそうした線を実現をいたさなければならないというふうに思って、いろいろと努力をいたしているところでございます。
  239. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 厚生大臣の御答弁は、これは裁判所だったらとうてい通りませんよ。「五十一年度には二万円を実施する、こういうふうに見ていいですね。」という質問で、答えがそれをすぐ受けて「二万円の方は、私は必ず実施をいたしたいというふうに思っております。」というのですからね。否定しない限りは肯定したと見られてしまいますよ。いかがでしょう。
  240. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) まあ、おとりになる側でいろんなニュアンスでおとりになるだろうと思いますが、私の真意はそういうことであったわけであります。二万円というのは、つまり私の目標でありまして、したがってこれをできる限り早く実現をいたしたいということであったわけでありますが、その部分をのいていろいろと世間のうわさが出たものですから、私も実は驚きまして、何としてもこれは速やかにやらにゃならぬということで非常に作業を急ぐようにいたしまして、いろいろといまやっているわけであります。
  241. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それでは厚生大臣、いつまでに二万円年金を実現したいとあなたは決意していらっしゃいます。
  242. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) いま作業中でございますが、皆さん御承知のとおり、今日の時期でございますので、私は、できるだけ早くいたしましてもやはりまだ若干の時日がかかるだろうというふうに思っているわけであります。
  243. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 五十一年度にはどうです。
  244. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 五十一年は私は間に合うまいというふうに今日思っておりますが、できるだけ早い機会にということで、できれば五十二年にも何とかならないものかというふうに思って、いろいろと督励をしているのが今日の現況でございます。
  245. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それは大変大問題ですよ。これは今後の政治問題だと思いますけれども、あんまりこの問題だけに質問することできませんので次へ移りますが、次は防衛庁長官にお尋ねします。  大体いまの国際情勢のもとでは、私は、ある日突然に元冦のような敵襲があるというようなことはとうてい考えられないと思っております。ですから、防衛庁長官がおっしゃる、抵抗精神とか防衛意識というものがまだ国民の間に眠っているとおっしゃるのは、これはもうそれだけの理由があるわけですね。ですから私は、こういう財政難のときには防衛費をできるだけ削って、高福祉社会の建設の方に財源を回さなければいけないと考えております。あなたは平時防衛力の構想をこの間打ち出されましたけれども、これはどの程度の財政支出を年次的に予想するものでしょうか。
  246. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 大体GNPの一%以内というふうに考えております。
  247. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そういう抽象的なことを求めているわけじゃないんです。あなたはいま現に五十一年度の予算も請求していらっしゃるでしょう。ですから、そういう年次的な財政支出計画をお尋ねしているんです、構想を。
  248. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 五十一年度の概算要求は一兆五千億でございます。ポスト四次防につきましてはまだこれからでございますから、いま作業を命じたばかりでございますから。来年度の五十一年度の予算要求は一兆五千億ということでございます。
  249. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 防衛庁長官、わかりますけれどもね、防衛費というのは継続的なものでしょう。ある程度の将来の計画を予想しなければ成り立ちませんわね。だからその大体の構想を承りたいんです。
  250. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) おっしゃるとおりに継続的なものでございますし、特に艦船とか、あるいは飛行機を導入いたすにいたしましても、かなり年月がかかるわけでございます。でございますから、長期的な整備計画というものをお示しして、そして積み重ねていかなきゃいけないというのは御指摘のとおりだと思っております。  それでございますから、いま、四次防が来年で終わるわけで、そして五十二年度から新しい防衛整備計画というものが始まるわけで、それをどういうふうにするか、ちょうどいま経済が安定経済へ入ってきた。いままでのような高度経済成長は望めない。その中においてどうやっていくかということは、これは大問題だと思うんです。それから、著しく民生を圧迫するような防衛費の増大というものはやはり慎まなきゃならない。あるいは他国に脅威を与えるようなものであってもならない。しかし、年月はかかるけれども、国の安全、国民一人一人の生存と自由にかかわる問題だから、これは着実に整備をしていかなきゃならぬ責任と義務がやはりあるということで、いませっかく長官指示をいたしたばかりのところでございまして、来年の三月まで大体作業が終わりまして、その案を見まして、そして国防会議にかけまして実質審議を行って、たとえば外交的側面から、あるいはまた民生安定、つまり福祉その他との関連においてこれを見ていただく。単に防衛庁だけの考え方でなくて、民生安定、福祉、そういうことを踏まえたもろもろの施策の中で防衛費というものはどうあるべきか、大蔵大臣もおられます、経済企画庁長官もおられます、あるいはまた総理大臣がこれを司会をされるわけでございますから、したがいまして、国防会議というものにおいて実質審議をしていただくということでございます。  長官指示の構想につきましては、近く国防会議にお願いをして御説明を申し上げたいというふうに考えております。
  251. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最後に建設大臣にお尋ねしたいんですがね。道路整備五カ年計画とか、あるいは下水道、住宅建設、それから治山治水など、こういう事業は法律で継続的に計画的に実施していらっしゃるわけですね。その実施というものは、この不況下の財政のもとでも円滑に行われておるんでしょうか。また今後はどうなるんでしょうか。とかく財政難のときには一般公共事業というのは削られますね。それに対して建設大臣はどんなふうに考えていらっしゃるのか、ちょっと伺いたいんですが。
  252. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 公共関係投資が従来景気調整の有力な一つの手段であったということは、確かに御指摘のとおりだと思うんですよ。しかし私は、公共事業というのは立ちおくれた社会資本の整備や国土保全あるいは国民生活の充実といったきわめて重要な使命を持っておると思うのです。したがいまして、その使命を達成していくためには、やはり長期的な視野に立って、そして安定した計画遂行ということを考えることが一番大事ではないかと思って、そういう方向で私どもは実は努力をいたしておるわけであります。  それから長期計画の問題……
  253. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 実施が円滑に行われておるんでしょうか。
  254. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) はい。実は長期五カ年計画が、本年度、五十年度で一応終わって、そして明年度から計画を立てなければならないものもありますし、まだ計画中のものもございますが、率直に申し上げまして、数字を申し上げて恐縮でありますけれども、道路は三年目で達成率が四五%です、五十年度末で。治水は四年目であります。五カ年計画のうちの四年目で七一%達成、大体見通しであります。下水道が五年目で、今年で最後で来年新計画を立てますが、これは大体最初の規模も小さかったわけですけれども、これは一〇〇%いっております。それから都市公園とかいった計画がありますが、これは大体、これも四年目であります、まだ一年残しておりますが、それで七一%程度。交通安全施設の計画、五カ年計画、これは共管であります。ほかの省との共管でありますけれども、これは大体一〇〇%、五年目でいっております。それから住宅でありますが、これも本年五年目で来年からさらに新しい計画を立てるんでありますけれども、これは金融公庫その他を全部合わして八七%程度でありまして、中には、公団は非常に低い六三%ぐらい、それから公営住宅ですか、これは七一%余りで、全体的には目標達成いたしておりません。いろいろ隘路がございますから、その隘路を是正しながら第三期を考えたいと思っております。  大体以上のような経過でございます。
  255. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大蔵大臣、財政ですね、これはまあ単年度主義をとっておりますが、いまのような好況時には大盤振る舞いをする、不況時には極力締めて赤字公債を発行するというような場当たりなことではいけないという議論は最近非常に強いですね。財政の中期計画をつくれという声が非常に強いんですが、いかがでしょう。
  256. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いずれの時代におきましても、財政当局としても予算は単年度でございますけれども、ある程度の将来の展望考えながら予算を編成してきたと思います。それは、あなたがおっしゃるように、過去におきまして相当歳入が潤沢であったときに大盤振る舞いをしたという御批判はありますけれども、それはこういう高度成長が相当期間続くであろうという一つ展望を持っておったと思うんです。で、あながちそれは責めることはできないと思いますけれども、いまにして思えば、それは相当無理があったということは御指摘のとおりだと思うんです。それで、したがって、今日それに関する反省から、あなたの言う中期計画を持つべきじゃないかという議論が国会の内外にありますことは御指摘のとおりでございます。で、私もそういう考え方は堅実な考え方として評価したいと思いまするし、できたらそうしたいと思いますけれども、当面は特例公債をお願いせにゃいかぬようなときでございますので、大変変動が激しいときでございますので、確実な中期計画を立てるには余りにも不確定要素が多いときでございます。しかしながら、何とかできるだけの展望を広く切り開いていかなければならぬとは思いますけれども政府としては、言うところの中期計画というものはこういう姿で御提示申し上げますということを、いまだお約束できるまでの用意はございませんが、そういう問題意識は常に持ち続けて検討をいたしておると御理解をいただきたいと思います。
  257. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは大蔵大臣、いつも不確定要素が多いということをおっしゃって、それを盾になさるんですけれども、これは学者の間で、ローリングシステムをとることによって十分克服できるという議論が強いですね。それから御承知のように西ドイツの経済安定法では、それを義務づけていますね。そういうことから考えますと、やはり真剣に考えて、頭の中には、大体部内にはあるということを聞いているんですが、外に発表するものがないんだというんですが、ひとつ、もっと真剣に考えて踏み切られたらどうでしょうか。できないことはないでしょう。
  258. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) こうすれば後年度、どうなるかということは絶えず財政当局がやっていることなんでございます。それはあなたがおっしゃるように、まだ外に出すというほどの自信はないけれども、いつもそういう展望は頭に置いてやっておるわけでございます。  それから西ドイツの例でございますけれども、西ドイツのような場合は非常に豊富な外貨準備もございまするし、相当長期にわたって財政が約束をいたしましても、それを支えるだけの基盤を持っておるとも思うんでございます。日本の場合は、その点はまだ西ドイツに比べて、ひ弱であるということは争えないと思うんでございます。検討はいたします。絶えず検討はいたしておるわけでございますけれども、天下に示すに足る中期計画というようなものをまだ御提示申し上げる自信はない、正直に申して、まだないということでございます。
  259. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは経済企画庁長官にお尋ねしたいんですが、経済計画というのは大体中期的な五年くらいを予想して立てられていますね。この中に財政計画を全く考慮せずにやるというんじゃなくて、やはり中期的な財政計画はある程度盛り込んで経済計画を立てるということはできないでしょうか。私はそれがあるべき姿だと思いますが、いかがでしょうか。
  260. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 財政となりますと、これはまず前提として経済がどうなるかということになってくるわけです。それで、これは経済と申しましても、なかなか私は展望はいまむずかしい環境だと、こういうふうに見ておるんです。  そこで、従来は、基本といたしまして何%成長と、こういうような考え方をとっておりますが、いまこの段階で将来五カ年を見まして大体このとおりにいきそうだというような前提の何%成長というのは、これは非常に立てにくいんです。ですから、成長ということを考えるにいたしましても、何%ないし何%というくらいのゆとりのある考え方に基づいて経済全体の見通しを立てなきゃならぬかなあと、こういうふうに思っておるわけです。そういう経済情勢というものを背景として、さあ財政をどうするか、こういう問題になりますが、そういう中において、財政、特に支出面ですね、これにつきましては、私はかなりの希望的な見通しという意味においての展望は立て得ると思うんですが、今度財源を一体どうするんだと、こういうことになると、いまとにかく赤字公債、いわゆる特例公債ですね、これをたくさん多額に抱えておる。さらに建設公債、これもよほどこれは多額なものが出ることが予想されておる。そういうことで、そういう歳入面の処置を一体どうするかという展望は、なかなかこれはむずかしいじゃないかと思います。しかし私は、いまお話がありますように、ある程度の展望ぐらいなものは持っておった方がいいと思うんです。計画という表現で呼ばれるほどのものはとてもこれはむずかしいんじゃないか、そんなような感じがしますが、まあ努力いたしまして展望ぐらいのものはひとつ持つべきかなあと、いまそう考えておる、頭を去来しておると、そういう段階でございます。
  261. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは、いま展望のお話が出ましたが、オランダでもそういう財政支出の見通しなどについて、やっぱり何か制度があるようですね、慣行ですか。だから、大蔵大臣、これが計画だというようなものでなくても結構ですから、展望だけでもやはり国民の前に提示して、コンセンサスを得る一つの手段とするというようなことを考えていいんじゃないでしょうかね。ただ、その場その場のことに追われて、ドイツの国民性と日本の国民性の違いもあるでしょうけれども、余りにも計画性がなさ過ぎると思いますがね、どうでしょうか。
  262. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 財政は一つ計画経済なんでございまして、政府が立てるもくろみなんでございまして、それは、今年度こういう予算を組みましたと、そうすると、一定の条件で来年はどうなるかということをずっと繰り広げて展望をつくることはできると思います。そして、われわれは一つの計表を見る場合に、これは後年度どうなるかということを必ず見ていっておるわけなんでございまして、丹念に見ておるわけでございますので、そういったことはどういうように説明いたしますか、予算の説明の場合に展望を含めて御説明申し上げて理解を深めるということについては努力をしていかなければならぬことであろうと思います。
  263. 松永忠二

    松永忠二君 関連。  いま財政計画と経済計画の問題について寺田委員が尋ねている。私は寺田委員の意見はもっともだと思うわけです。特に経済の方では見通しを立てているわけだ。ことしの五十年度までに二・一%の経済成長を確保したい、そうして五十一年だって大体その経済の安定を図りたい、そうしてまたその後の経済成長というのは大体六%台、まあいま言うとおり幅を見るとしても、そういうものをやりたいということは、これは経済担当の大臣が常に主張しているし、言っているところだと私は思うんです。したがって、この経済の見通しに基づいて財政の計画を立てることは私は当然だと思うのです。したがって、五十一年度についてもある程度この経済の見通しとかみ合った財政の展望なり考え方というのが国会に明らかになるということは、私はこういう時期だけに当然大蔵大臣の責任だと思うんです。特にこの経済計画については、御承知のとおり、すでに政府の方でも十二月までには大体中間報告をまとめ、三月までには経済計画を立てていくということを言っているわけなんです。したがって、私は大蔵大臣に聞きたいのは、この経済計画が決まったらば、それに基づいて財政の計画なり展望というものを明らかにするという決意があるのかどうなのか。  私は、いま国民がどうしてもいまの段階でも、展望とも称するようなものを明らかにしてほしいと、特に来年度赤字国債がどの程度出るだろうか、どのくらい赤字国債が続いていかにゃいけないだろうか、こういうようなことについて国民は期待をしているし、あるいはまたこういう中で、一体福祉抑制と言っているけれども、福祉関係の予算は、さっきから話の出ている国民所得の給付率からどの程度確保することを目標としつついくだろうか、こういうようなことについて国民は知りたがっている。われわれ自身も知りたいわけです。そういうふうな点から考えて、ある程度経済の見通しを立てて明らかにしているいまの段階で、それに基づく短期的な展望も出されるし、また来年三月に経済の計画が明確に確立されれば、当然それに基づいて大蔵大臣は財政の計画なり展望を明らかにする決意だというぐらいのことは明らかにしなければ、経済と財政のかみ合ったいわゆる内閣としての統一的な政策はそこに欠けてくるんじゃないですか。経済演説の中にはそういう展望があるのに、財政演説の中にそれとかみ合った展望がないことは、一つの欠陥だと私たちは思っているわけです。そういう点について寺田委員がいま具体的に指摘をしていると思うので、私のお聞きしたいのは、いわゆる政府として経済計画が明確になれば、それに基づく財政の計画なり展望を明らかにする決意であるのかどうなのか。大蔵大臣のその決意を、お考え方を再度ひとつお聞かせをいただきたい。
  264. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それは松永さんに申し上げるまでもなく、これまでも政府は経済の見通しを立てまして、それをベースにいたしまして歳入の見積もりを立てて予算を編成してまいっておるわけでございます。したがって、政府の立てる経済見通しと財政は不離一体の関係で今日まで来ているわけでございます。来年におきましても同様な手順は踏んでいかなければならぬと思います。  で、あなたが言われるのは、それではなくて、いま企画庁の方で経済計画、つまりいろいろな五十一年度、いま検討しておるところの長期計画、そういったものと財政との関係がどうなっていくのかという展望をもっと明らかにすべきじゃないかと、そういうことだろうと思うんでございます。私は、それは仰せのとおり、よくその点は理解できるわけでございますが、私が恐れますのは、あらかじめ企画庁の方で今度お立てになるところの計画というようなものが、いま稲田さんがおっしゃったように、ある幅を持って相当将来の変化に耐えるだけのものでございますならば大変結構だと思うんでございますけれども、えてして日本人というのは、そこで数字が出ますと、もうそれはたとえば道路計画、あるいは何の計画にいたしましても、これはミニマムだ、これ以上はもう下がれない、財政がどうあっても、これはどうしても確保せなければならぬと、非常に硬直性を生み出すものになりはしないかという点を財政当局としては非常に恐れるので、ある程度やっぱり弾力を持った、幅を持ったものが私はほしいと思うんでございます。そういうものでございますならば、それと財政とのかみ合わせば、この幅の中で概略の展望が読み取れるようなぐあいにできるのではないかというように感じるのでございます。要は、このように相当硬直化が進んだ財政でございますので、なおさら硬直化の度合いが進むというようなことは、これは耐えられないことでございますので、われわれとしては相当弾力性を持って事態に対処する用意がないといけないじゃないかという配慮がいつもあるものでございますから、どうも申し上げることがお気に召さぬようでございますけれども、気持ちはおわかりいただきたいと思います。
  265. 松永忠二

    松永忠二君 私は、ふだんのときなら大蔵大臣の説明は納得いたします。要するに、一度計画を立てるとそれが一つのミニマム的なものになってしまって、これをやらぬのはけしからぬというような言い方になることも私は日本の中にあると思うんであります。ただしかし、高度経済成長から安定経済成長に移っていくこと、そういうことを考えているわけです。しかも中央、地方の財政はいまや財政的危機に瀕して、予算の中の二六%を国民の借金で賄っていかなきゃできない状態に陥っているときに、少なくもそのある幅を持った数字的なものを示すことによって、政府の決意も責任も新たになると私は思うんであります。やはり私たちは、余りに数字的なものを出して、それの責任を追及することが恐ろしい、また、そういうことを追及し過ぎる風潮のあることも事実だと私は思うけれども、そういうことを恐れないで、私もいままで申しましたように、経済政策に見誤りがあったから財政的な欠陥が出たことは、これは結果としてそうだ。しかし、財政の、経済の計画を立てるならば、それとかみ合った財政計画を立てて、それが失敗したからといって、これは大蔵大臣だけの私は責任ではないと思う。内閣そのものの責任として追及をさるべき筋合いのものである。いまのこの時期にこそ、比較的明らかにしつつある経済計画、しかも今度は五カ年の展望をもって相当明確にしようとしているんだから、それとかみ合う財政計画を立てて国民の決意を促し、協力を求めるというような政府の態度を私は強く要求をいたしまして、主張を述べておきたいと思うわけであります。
  266. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私がなぜこういうことをお尋ねするかと言いますと、総理は、おれの内閣のときの重点施策はこうなんだと、これはやっぱりどうしても実現するんでこれだけの金が要るんだという構想を大胆に打ち出さない。それから大蔵大臣の方は、余り構想を打ち出されると、それがもう既定のものとなって硬直化すると、何かそれを戦々恐々と恐れてしまうというようなことでは、いま一般行政費を削ると言っても、これは大したことはできないでしょう。そうすれば、将来の重点的な支出がこれだけあるんだと、歳入は何年はどのくらい見込まれると、それでは足りないからこれは公債でやるとか、あるいは担税力のある人にそれをかぶせていくとかいうような構想はそこから生まれるわけでしょう。その場その場でやっていたんじゃとても賄い切れないでしょう。また公債に依存せざるを得ないですね。だから、もっと計画的にやってほしいということを申し上げているわけですよ。あなたは、何か発表するとそれが既定のものになって、違ったらしかられるというようなことを言いますけれども、ただ、経済企画庁の方が経済成長率が実質が四・三%だと言った、それが二・二になり、また最近はもっと下がるようになってきても、発表しないよりはまだ私は国民はいいと思いますよ。恐れて何も言わないよりは、自分の信念を吐露していくことがむしろ政治家としてあるべき姿じゃないでしょうかね。だから私は、これはそういう見地から申し上げておるわけです。  それで、大蔵大臣、一体既定経費を削ると言っても限度がありましょう。それから税の自然増収も多く見込まれないということになると、今度は税収をふやしていく、歳入をふやしていく道をどこに求めようとしていらっしゃるんですか。
  267. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いまの経済状況というのは、一般的なたとえば法人税とか、あるいは所得税とかいうものの増税を大きく考えられる時期じゃないと思うんです。しかし、いまあなたがいみじくもおっしゃったように、歳出需要というのはなかなか根強いものがある。歳入面で、いま申しますように、一般的な増収の道がないとすれば、極度の公債に頼らざるを得ないというのがいまの実情なんでございますが、そういうことを繰り返しておるというわけにはいけないということでございまして、いつの日か国民に理解をいただいて、新たな歳入を確保することについて相談に乗ってもらわなければいかぬ時期が来るだろうと思うんです。  ところが、それにつきましては、たびたびここで申し上げておりますように、現行税制で、たとえば特別措置を初めといたしまして、いろいろなまだ、毎年見直しておりますけれども、なお不公正なものが残ってやしないか、そういった点を十分洗ってみるということ。歳入、歳出面におきましても、なかなかあなたがおっしゃるように切り込んでいくということは非常にむずかしいことでございますけれども、精いっぱいやるということがいま出面私どもの仕事じゃないか。そういうことをやった上で、しかもこれだけどうしても足らないから当面公債をお願いする、しかし、この段階からはひとつ税制のこういう姿の改革に相談に乗ってもらうという手順になっていくんじゃないかと思いますが、私は、来年度はそういう意味で、前段階というか、準備段階というか、現行歳入、歳出全体にわたりましてもう一度厳しく見直してみる、それで次へのステップの地ならしをするという年ではないか、そういう年にしたいといま考えております。
  268. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 依然として、不公平な税制を是正してみて、なおかつ足りなければそのときになってまた考えるんだという、やっぱり場当たり主義ですわね。まあしかし、それでも何にもやらぬよりはましですけれどもね。しかし、そうおっしゃるあなたの不公平是正、それから、現在担税力のある者に負担してもらうという面でいま一番典型的なものは、やはり銀行の貸し倒れ引当金の問題なんですよ。これは現実の損失、それから消却したものと、それから積み立てたものと、その比ですね。これはちょっと主税局長でいいですから説明していただきたい。
  269. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 私どもで四十八年度分と四十九年度分につきまして調査をいたしました結果によりますと、金融保険業の貸し倒れ率は、千分比で申し上げますが、四十八年度が〇・一、四十九年度は〇・二でございます。現行の繰入率は一〇でございますが、夏に政令を改正いたしまして、八まで漸進的に下げることにいたしております。製造業は、四十八年度が二・五、四十九年度が二・〇、これに対しまして現行の繰入率は一五でございます。卸・小売業は、四十八年度四・八、四十九年度四・四、これに対しまして組入率は二〇でございます。割賦小売業は、四十八年度四・五、四十九年度九・八、これに対する繰入率は二五でございます。その他の事業——これはその他の全産業をカバーするわけでございますが、四十八年度が二・八、四十九年度二・四、これに対して繰入率一二でございます。
  270. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 主税局長ね、私がお尋ねしたのは主として金融機関なんですよ。ですから、都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫、これについて述べていただきたいんですが。
  271. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) これは銀行局の調べでございますが、四十九年度について申し上げますと、四十九年度、都市銀行が千分率で〇・〇二、地方銀行が〇・〇五、相互銀行が〇・三二、信用金庫が〇・四七となっております。
  272. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大臣、それですから、結局都市銀行などは現実の貸し出し消却と比べますと、積立金の非課税部分というのは実際の五百倍になっているんですよ、千分の十ですから。ところが、実際は千分の〇・〇二だというのですからね、五百倍ですよ。なぜ金融機関に実際の五百倍の恩典を与えなけりゃいけないんでしょうか。これはもう早急に是正すべきですよ。不公平もきわまるでしょう、どうでしょう。大蔵大臣、大臣の政治的な節操の問題ですよ。
  273. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) あなたのおっしゃるとおり、計数的に実績から申しますと、仰せのとおりでございます。ただ、そこで御注意いただきたいと思いますのは、この率は個々の金融機関に適用される率なんでございます。したがいまして、特定の金融機関に思わざる貸し倒れが発生いたした場合に、その全体の金融機関がめんどうを見るというわけにはいかないわけでございまして、その金融機関がそれに対して対応措置を講ずるだけの力を持っていなければならぬわけでございます。そういう事態はいつ起こるかわからない事態なんでございまして、つまり、金融機関全体でなくて、個々の金融機関に与えられておる限度であるということをまず御理解いただきたいと思います。  それから、第二でございますけれども、今日幸いに、寺田さんがおっしゃるように、いままで実績が非常に少なかったことは非常に幸せであったと思うんです。もしこれが実績と積立引当金の留保とが接近しておるというようなことになると、これはゆゆしい問題になってくると思うんでございます。こいねがわくは、相当低位で推移していくことを私どもは望まなければいかぬと思います。しかし、こういうように乖離があること自体をいつまでもそのままほっておいてはいけないというわけで、四十七年以来ずっと詰めてまいりまして、千分の十五から今日八まで詰めてまいり、八を実現した後でまた五まで相談し直すんだということにいたしておるわけでございますので、私どもといたしましては、漸進的に逐次安全度を児ながら詰めていこうという態度をとっておるわけでございます。いろんな御批判があろうかと思いますけれども、相当な程度の速度で是正を図りつつあるということは御理解を願いたいものと思います。
  274. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 もう全然不適切なスピードなんですよね。現実に個々の銀行が大変な貸付金の焦げつきができて大損害をこうむったというような事例はないでしょう。私どもの之しい経験でも、大体銀行は全部完全な担保をとっておりますよ。しかも、時価よりははるかに低い評価で債務者の資産を評価して抵当権をくっつけていますから、考えられないんですよ。そういう実例があったら言ってください、不用意に大損審をこうむったというような。こういう現実の実績値の五百倍もの恩典を与えて、それを何年がかりでゆっくりやりましょうというようなことでは、とても国民は納得しませんよ。総理大臣、銀行にこんなにも優遇の措置を与えて、そして献金を受けられる。ですから、総理大臣、絶対に献金を受けても方針は曲げないとか、行政を曲げることはしないとおっしゃるけれども、こんなにも特典を銀行に与えて、そして献金を受けるということになれば、これは国民が疑惑を持つのは当然じゃないでしょうか。総理大臣、あなたは不公平の是正ということを看板に揚げられましたね。どういうふうにお考えになりますか。
  275. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) したがって、大蔵大臣がお答えしておりますように、漸進的にこの問題は改革していこうということで政府は改革を進めておることは御承知のとおりでございます。献金とは、これはもう全然関係がございません。私はそういうことは顧慮しない。
  276. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、大蔵大臣、何年ぐらいで実際との乖理を埋めていくおつもりですか。
  277. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 御質問の御趣旨は、将来においては実績率と同じ引き当て率とすべきだという点を含んでおるように思いますけれども、私どもは、やはり貸し倒れ引当金というのは評価性引当金でございますので、実績に対してある程度のアローアンスはとっておいたほうがいいのではないかという考え方をとっております。現に諸外国の例に見ましても、やはり特に金融保険業につきましては、何らかの概算率で引き当てを認めているという制度の方が多いようでございます。したがいまして、将来の到達点が千分の五でいいかどうかという問題は、千分の五になりますときに改めて研究いたしますけれども、実績に近づけてしまうという考え方は必ずしもとっておりません。
  278. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ある程度のアローアンスを認めてほしいというのは、これは私は合理的だと思うのですよ。だけれども、五百倍ものこの積立金を認める必要はないでしょう、実際の。だから、それを千分の五にするか、千分の二にするか一にするかということは別として、かりに主税局長、これを千分の一に下げたとしますか、どの程度の増収が得られますか。
  279. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) お尋ねは金融保険業のところだと思いますので、非常に大ざっぱに申し上げまして、現存の引き当てが一兆五千ぐらいになろうかと思います。したがって、それを九割削減するわけでございますから、一兆三千五百億が一気に戻ってまいりますので、それに四割の法人税といたしますと、五千四百五十億でございますか、五千四百五十億ぐらいの増収という計算が一応出てまいります。ただ、正確な統計は二年ぐらいたたないと出ませんけれども、四十八年度の金融保険業の納めてくだすっている税額が五千億弱であろうかと思います。その後伸びておりましょうから、現在ではおそらく五千五、六百億かもしれません。したがって、いま納めていただいている税金とほぼ同額を一挙に納めていただくということは、これはなかなか現実問題としては無理ではないかという感じはいたします。
  280. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 こういう未曾有の歳入欠陥を生じた時ですから、これがどのぐらいの期間継続するだろうかというような見通しを立てて、かなり思い切った歳入増加の道を求めないと、担税力のある階層に求めていかないと、いつまでも赤字公債に頼ったり、酒、たばこのわずかな増収を大衆にかぶせようとしたりして、それではとうてい国民は納得しないわけですよ。その不公平を片方に置いておいて大衆に負担をかぶせようとするから、公共料金の引き上げにしたって、酒、たばこの値上げにしたって、これはなかなかわれわれが納得できないわけですよ。それから医師の診療報酬の課税の特例もそうでしょう。これは税調の方で答申をしているのを、あなた方はこれをほおかぶりしていらっしゃるんですからね。どうでしょう、大蔵大臣、そういう点の決意がおありなんでしょうか。
  281. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、こういう財政危機、文字どおり財政危機でございます。したがって、貸し倒れ引当金、金融機関につきまして四十九年度に千分の十三から千分の十にカットしたわけでございますが、さらにこの機会に、ことしになりまして、年度途中でございましたけれども、千分の八にまで切り込んでいったわけでございます。私どもといたしましては、鋭意これを詰める方向に努力をいたしておるわけでございまして、千分の八までまいりました段階で、もう一度千分の五にする段取りを考えてみたいと思っておるわけです。
  282. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いつごろやられますか。
  283. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは毎年毎年〇・五ずつ下げていっておるわけですから、この八までいった段階で、その次のステップを考えてみるということにしたいと思っています。
  284. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そんな不公平をいつまでも温存して緩やかなテンポでやっていこうということでは、大衆は酒、たばこの値上げにいたしましても、とうてい受け入れがたいんじゃないでしょうか。いま大蔵大臣は医師の診療報酬の課税特例についてはお答えになりませんでしたね。そういう一連の不公平なものをまず全部やめて、それから国民に、これだけはどうしても足りないんだということをお訴えにならないと納得できないと思いますがね。総理いかがでしょう。
  285. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いやでもおうでもこの歳入の見直しはいたさなければなりませんので、こういう問題も当然その一環として、今後漸進的に改革を加えてまいりますが、いまここでどういうところまでやるんだということは申し上げられませんが、見直さなければならぬ一つの問題であるということは、私もさように考える次第でございます。
  286. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 くどいようですが、もう見直しはできているんですよ。直さなければいけないという結論はもう出ているわけですね。それをどういうテンポでやるか、いつやるかということなんです。大蔵大臣いかがです。
  287. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 一〇%のものを八%にすると。で、そのテンポは毎事業年度に〇・五%ずつ下げていっておるわけでございまして、八%に達した段階で次のステップを考えたいということにいたしておるわけでございまして、金融機関にも、そのときにはまたこちらから申し出ることあるべしということは、金融機関に伝えてあるわけでございます。
  288. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 医師の優遇税制が抜けてます。
  289. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 医師の優遇税制。
  290. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これはすでに、寺田先生おっしゃるように、税制調査会からの御答申もございまするわけでございますので、次の社会保険診療の改定のときに特別措置についても考えるということになっておるわけでございます。
  291. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いつまでたっても同じことの繰り返しですが、そういう大企業寄りの姿勢をおとりになる限りは、それはいつまでたっても国民の協力というものは得られないと思いますよ。国会の中でもそんな不公平を片方の方に置いておいて、そして大衆負担を増す方途に賛成してくれと言ったって、それはちょっと無理じゃないでしょうかね。ですから、それはもう一遍真剣に考えて、問題はいつやるかということですからね。それからもっとテンポを早めることができるかどうかの問題ですからね。再度総理大臣と大蔵大臣の決意をお聞きしたいと思います。
  292. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもは、これ、大企業擁護というような気持ちでやっておるわけじゃないわけでございます。金融機関といたしましては、それだけの社会的な責任を持って機能を果たしておるわけでございまして、それだけの留保金を持ちまして、それを踏み台にいたしまして貸し出しを実行いたしておりまして、これが金融機関の役職員がそのためにぜいたくをしておるというようなものではないのでありまして、今度の金利の引き下げにつきましても、金融機関が異常なスピードでいま引き下げに協力をいただいておるわけでございまして、これは国民に還元をいたしておるわけでございますので、その点は金融機関の利益のために私どもはこれをやっておるわけでは決してない。こういう制度でございますので、この制度の改変ということにつきましては漸進的な行き方を考えておるということでございますので、その点御理解をいただきたいと思います。
  293. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 先ほど申し上げておりますように、これは漸進的に改革を加えてまいりたいと思っております。
  294. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 医師の診療報酬はどうでしょうか。
  295. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 医師の診療報酬については、寺田君も、あれはどういういきさつでああいう医師の優遇措置が行われたかという経過はよく御存じでございましょうから、やはり診療報酬の改定とこのあれは結びついておるわけでございますから、そういう機会を通じてこの問題の解決を図りたいと考えております。
  296. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それをいつなさるんですか。その時期をお伺いしている。
  297. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、診療報酬の改定、そういうものとにらみ合わせて、この問題は解決をしたいという考えでございます。
  298. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これはいつまで続けておるわけにもいきません。依然として私は国民の協力を得られないような政治姿勢だと思いますけれども、これは国民の批判にまつことにして、次の問題に移ります。  国債の増発が五兆を超えるというわけですが、これがインフレを刺激しないかということが大体常識的に考えられますけれども、これについて大蔵大臣、経済企画庁長官、日銀総裁、三者の御意見をそれぞれ承りたいと思います。
  299. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 発行される国債が経済とのバランスがとれた規模のものであり、そしてそれが市中で円滑に消化される限りにおきまして、インフレを将来招くものであるとは考えません。
  300. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大蔵大臣と同意見でございます。
  301. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 現在のように、民間部門における投資の不足が大変顕著でありますようなときに、国債の増発によって公共部門の投資をふやすということは、経済の水準を維持する上においてむしろ必要なことかとも存ずるわけでございまして、それが直ちにインフレに通ずるとは存じません。もちろん、赤字公債そのものは決して好ましいことではございませんので、今後の財政運用に当たりましては極力速やかに赤字公債から脱却していただくように努力をしなければならないとは存じますが、今年の置かれておる経済環境のもとにおきましては、直ちにそれがインフレに通ずるとは存じません。  ただ一つ、私どもが気をつけなければならないと思いますのは、国債の増発がマネーサプライの増加をもたらすわけでございます。ことしの環境のもとにおきましては、民間資金の需要もそれほど大きくはございませんので、直ちにそれが急激なマネーサプライの増大をもたらすとは存じませんですが、もし今後景気が非常によくなってまいりますときにマネーサプライがどんどん増加していくというようなことになりますと、四十七、八年、六、七年のような事態も招きかねないわけでございまして、私どもといたしましては、マネーサプライの動向と景気の動向、物価の動向、この三つを慎重に見比べながら、今後の施策、運営の上において誤りなきを期したいと思っておる次第でございます。
  302. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私は、日銀総裁のそういうお見通しはきわめて結構だと思うんですよ。大蔵大臣と経済企画庁長官の御答弁は、恐らく今年度限りのことを考えていらっしゃるからそういうことをおっしゃるんだろうと思うんですよ。なるほど今年度は、大蔵省の圧力と日銀の持つ金融的な圧力で消化さして、どうにか国債も消化できるでしょうし、民間の資金需要もそれほど強くないですから、マネーサプライの増大というものはそれほど恐れることはないかもしれません。しかし、五十一年度も恐らく最小限度六兆円の国債発行を予想せられているんでしょう。それから五十二年度でもこれはわかりませんね。だから、そういう長期、中期の見通しをとれば、インフレを刺激する可能性というものは十分考えられるでしょう。  大蔵大臣にお尋ねしますが、この間の財政制度審議会の中間報告が五十年の七月二十一日にありましたね。それによって今後どの程度の——まあ一定の仮説を前提にしてのことですけど、赤字国債がふえていくかという試算をしていますね。御存じですね。その結論をちょっと、大臣でなくても結構ですから、担当の局長に説明していただきたいと思います。
  303. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) 御指摘のとおり、財政制度審議会の試算でございますが、非常に一定の仮説を置いたものでございます。たとえばGNPが一二%とか、あるいは予算伸び率その他もそういうものにスライドさせていく、それから現行制度を変更しない、減税も増税もないと、非常に特定の仮説を置いた数字でございますが、いま寺田委員の御指摘のことしの税収の三兆八千八百億円の落ち込みをもとにいたしまして、五十五年の断面計算をやってみますと、その際の公債発行額は十四兆二千億、そのときの財政規模が四十二兆でございますので、国公債依存度が三三・七%、そのときの公債の、普通国債の残高が七十兆二百億、こういうような姿になるわけでございます。
  304. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ですから、これは局長がおっしゃったように、いろいろ仮説を置いての試算ではありますけれども、これはしかし仮説というのは決して全く架空のものじゃありませんからね。経済成長名目一二%というような前提にしましても。だから、大臣がおっしゃるように、特段に歳入の増徴を図るような政策を打ち出さない限りはこういうことになるという、これは仮説と言ってもわりあい現実性の強いものですね。それによって見ても五十五年には国債が七十兆になるという試算になるんですよ。こういうことを考えますと、インフレにはなりませんというような単純な結論が持てるんでしょうかね。どうでしょう。これは両大臣にお願いします。
  305. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 前々から申し上げているんですが、まあ公債を発行する、そういうことになれば、発行しないときよりも、それに比べるとそれだけ物の需要を喚起するわけです。その物の需要、これは財政ばかりじゃありません、ほかにも、国民の消費でありますとか、あるいは設備投資の需要でありますとか、輸出のための需要でありますとか、そういうものがありますが、それらと総合いたしまして、これが物の需給、これの均衡がとれておる、こういう限りにおきまして、インフレにつながるということにはならない。これはまあ基本的にそういうことになるわけです。ただ、それは前提といたしまして、その公債が完全に消化されるかどうか、こういう問題なんです。消化のもとは何だと言いますれば、これは貯蓄あるいはその国債を個人が買うか、こういうことです。その発行されたものが完全に消化される、消化されるということは、財政以外の他の要因においてそれだけ物の需要が減少する、こういうことでございまするから、そういう完全消化ということが実現される限りにおきましてはこれはインフレの危険はない、こういうんですが、その貯蓄なり国債を消化する、これは大変な苦心の存するところであります。その辺につきましては、これはもう全力を挙げてそれが実現されるようにしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  306. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大蔵大臣いかがですか。
  307. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 副総理の申し上げたとおりです。
  308. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 日銀総裁いかがですか。日銀総裁の御意見はいかがです。
  309. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 本年度の問題については先ほど申し上げたとおりでございますが、長い将来にわたる問題としては、そのときどきの経済情勢いかんにかかるわけでございますので、全体としてインフレーションにならぬようにという財政金融政策の運用が特に必要になってくるのではないかと思います。国債の増発すなわち直ちにインフレということではないのでございまして、それがインフレになるかならぬかはそのときの経済情勢いかんにかかっておるわけでございます。その辺をよく検討しながら慎重に財政金融政策を運営することによってインフレを回避していかなければならないと存じております。
  310. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 しかし、七十兆もの国債が発行されるということになった場合、それが民間の金融機関が大部分ですね、現在。完全に消化されるというふうに自信が白銀総裁おありですか。
  311. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 本年度の場合、短期間に三兆五千億の国債が増発されるわけでございまして、その消化はかなりの負担になりますことは、これはもう否定できないと存じます。しかし、本年度はいままでの経済の推移が財政支出の先行型とでも申しましょうか、政府資金の支払い超過の累積によりまして、金融市場としては余剰ぎみに推移いたしておるわけでございますし、また、国債のかわり金はそれが直ちに支出となって放出される、それがまた大部分は金融機関の預金になって吸収されるというような循環を繰り返すわけでございますので、そしてまた、ことしは民間資金需要もそれほど強調ではない状態でございますので、私はマネーフローの問題として考えますれば、三兆五千億の国債の消化はできるというふうに考えております。  ただ問題は、国債の発行をそれによる政府支出との間のタイムラグがどうしても起こりますし、それからまた、国債を引き受けた金融機関に引き受けた額だけの資金が還流するわけではございません。金融機関の業態別ないしは金融機関別にちぐはぐが起こるわけでございますので、その辺から産業資金の供給にヒッチが起こらないようにという魚の配慮が必要になってくるわけでございます。その意味で、私どもは年末というような資金繁忙時ないしは金融機関の業態別の資金の出し入れの調整に今後特に意を用いて、金融界全体として波乱が起こらないようにということを心がけていかなければならないと思っておる次第でございます。
  312. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 総理にお尋ねしますが、いまこういう国債を、私どもが銀行の友人などに聞きますと、非常に苦しがっているわけですよ、この引き受けについて。これは総理、いま国債が国民に歓迎されておると思われますか、いやがられていると思われますか、どちらです。
  313. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあやむを得ないだろうなあと、こういう感じだろうと思います。(笑声)
  314. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 金融機関のキャップは、皆これは事実上強制だと言いますよ、私どもにはね。歓迎してないわけですよ。それから、できるだけ自由な流通市場を設けてほしい、歓迎できる条件にしてほしいということを一致して言いますね。で、大蔵大臣、今度は金利が少し下がりましたね。国債の金利はそれほど下がらない、だから事業債や、金融債なんかとの利幅というものは多少縮まったわけでしょう。いまの条件でいいと思われるでしょうかね。これは大蔵大臣と日銀総裁にお尋ねします。
  315. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 金融機関等が余り歓迎していないじゃないかという御指摘ですけれども、われわれが品物を買う場合に、欲しい欲しいと言うて買う人はいないんです。やっぱり売り主の方が、これはいい品物ですからどうぞ買いませんかという場合に、それでは重い腰を上げて買ってみようかというのが世の常だろうと思うんです。で、国債につきましても、私も寺田さんの言われることがわからぬわけじゃありませんけれども、皆さんが国債をいやがっておるというように一概に断定できないんじゃないかというように思います。  それから今日、国債の利回りは、他の長期の利子との調整を考えながら決めたわけでございますけれども、仰せのとおり微調整にとどめさしていただいたわけでございますので、この条件で御協力がいただけるのではないかと私は期待し、かつ確信をいたしております。
  316. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) いまの情勢で国債の増発のやむを得ないことは金融機関としてもよく理解しておる次第でございまして、すでにシ団といたしまして約三兆円の引き受けに協力することについて承諾をいたしておるような次第でございます。ただ、発行条件につきましては市中の自主性をできるだけ尊重していただくようにというような要望を持っておったのでございましたが、先般来発行者側と引き受け側との間の話し合いで、どうやらいいところに落ちついたようでございまして、その条件での引き受けには協力することにやぶさかでないということだと存じます。
  317. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大蔵大臣の御答弁はいかに大蔵大臣が現実の庶民の心情を理解してないかということの全く有力な証左ですよ。国民は押しつけられてきらいな物を買いませんよ。そんなもんじゃありませんよ。また買う資力もありません、きらいな物を。好きな物さえ買えないものが、きらいな物をどうして買います。そんな気持ちで一国の財政なり税制を左右されては困りますよ。いやな物を買うのは、それは大平さん、あなたが押しつけられていつも買ってるからじゃないですか。国民がどうしてそんなに、なけなしの金を使っていやな物を買いますか。だから、国債だって一般大衆がなかなかこれを引き受けないでしょう、消化しないでしょう。根本的にあなた認識を改めてもらわなければ困りますよ、そういう認識では。いま私は証券会社の友人なんかに尋ねてみても、もう日銀総裁は完全に消化の見通しがついたとおっしゃるが、証券会社は大体一万円の積立貯金をして個人に売るのに一生懸命で、いままでの国債を消化するので精いっぱいですと、これ以上はできませんと言っていますよ。認識が甘いですよ。どうですか、大蔵大臣と日銀総裁。
  318. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ただいまの条件で満足です、結構ですとは言わぬだろうと思うのです。やはり私ども、国債発行当局側に、発行条件にいたしましても、その他いろいろ配慮を国民は求め、市場は求めておると思うのでございます。したがって、いまの国債に対する態度は、一概に国債がきらいであるということと断定できないと私が申し上げたのは、一面、国債を御用金というような思想ではだめですよと、やはりリーズナブルな条件というようなものを考え、市場も整備していただかないといけないのじゃないかという、そういう注文を私どもの政策当局に国民は寄せておるというように私は理解いたしておるのでございまして、あなたの言われることに二つの意味があると、皆きらいと断定してしまうわけにいかぬじゃないかと申し上げておるのです。
  319. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 従来、純粋の個人消化として証券会社扱いになっておりましたものが一割ございました。それをどうするかという問題はあるようでございます。何しろ三兆五千億も短期間に増発されるわけでございますので、いままでどおり一割を証券会社が分担して個人にはめ込むことができるかどうかという問題だと存じます。その辺のところはシ団の中で引き受けシェアをこれから相談の上決定されるということになるはずでございます。
  320. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 おそらく証券会社のシェアはずっと減ると思いますよ。もう個人消化はこれ以上は不可能だということを言ってますからね。それはいいでしょう。この間、大蔵大臣も日銀総裁も地方銀行大会においでになりましたね。あのときに地方銀行がどういう要望をこの国債の問題に出したか、御記憶ですか。
  321. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいま御指摘の地銀大会そのものでどういう要望があったかは私つまびらかにいたしておりませんが、地銀協会の方からかねて言ってきておりますことは、財政政策としてインフレ抑制のために何か歯どめが要るのではないかとか、あるいは資金運用部の引き受けをふやしてもらえないかとか、あるいはシンジケート団の構成メンバーを拡大してくれないかとか、あるいは発行条件を市場の自主性を尊重してくれないかとか、あるいは国債のオペレーションに当たりまして価格を改善してくれないかとか、その他準備版金への国債の組み入れであるとか、いろいろのことを言ってきております。
  322. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私どもは地方自治体の責任を持ったことがありますから、地方銀行の希望もわかるんですが、やはりインフレを心配しているのと、もう少し地方債に国家の資金を注いでくれないかと、地方債の消化のためにそんなことを言ってますね。それからまあ、市場の実勢に即応したものにしてほしいということ。それから預金準備率を引き下げてほしいということを言ってますね。先ほどインフレのおそれが全くないと言ったけれども、実務家は非常に懸念しているわけですよ。それから民間の金融を圧迫する。企業がもういま後ろ向きの資金を非常に要求してますね。それから住宅ローンも非常に国民の要望が強いですが、大量の国債を引き受けることによって、そういう民間資金に対する圧迫はないかというようなこともあります。そういうことに対して大蔵大臣と日銀総裁、それから地方債の消化にもっと国家資金を提供してもらえないかという問題で自治大臣、それぞれの御意見を伺いたいと思います。
  323. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど日銀総裁からもお話がございましたように、マクロ的に見ますと上半期も下半期も大変な財政資金の散布超過の状況でございますので、国債の消化から見まして、私は資金的に非常に窮屈であるというようには見ておりません。しかし、金融機関によりましては、あるいは時期的にはヒッチが起こらないとは限らないということも日本銀行総裁が言われたとおりだと心得ておるわけでございます。したがって、地銀の希望にもございましたように、ひとり国債ばかりでなく、その他の政保債、あるいは地方公共団体に対する地方債の消化にいたしましても、資金運用部資金でもって引き受けるというようなことには鋭意努力をいたしておるところでございます。それからまた条件につきましても、先ほど申しましたように、全体として一応金利は引き下げておる最中でございますけれども、国債につきましては微調整にとどめておるわけでございまして、御要望の線には私ども鋭意応じて施策をいたしておる次第でございます。
  324. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 先ほど国債について申し上げましたのでございますが、地方債につきましても同じような問題でございまして、いままでのところ金融市場も余剰ぎみに推移してきておりますし、また、公債なり地方債なりによって吸収されました資金は直ちに放出されて、それが預金として還元してくるという次第でもございますので、マクロ的には産業資金を逼迫させるというようなことにはならないわけでございますが、ミクロ的には、時期別に、あるいは金融機関の業態別に、あるいは金融機関別にいろいろ資金の過不足が起こってくるわけでございまして、その辺をどう調整するか、それが私どもの金融調整の任務であると存ずる次第でございます。今後、年末にかけまして、またその以後におきましてもそういったような問題の処理に遺憾なきを期しまして、金融界全体として波乱なく、また景気の回復のために必要な資金の供給にも事欠かないように金融機関に協力を求めていきたいと思っておる次第であります。
  325. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 預金準備率の引き下げはどうですか。
  326. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) けさほどもお答え申し上げましたが、いろいろ検討しておる段階でございまして、いずれ引き下げる時期も参ろうかと存じますが、いまのところはまだ何も決めておりません。
  327. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。  御指摘のように、この問題はなかなかわれわれにとって重要でございますので、大蔵省とよく交渉をいたしまして、できるだけ政府資金をもって多く充ててもらうようにということで交渉いたしたんでありますが、結果におきましては、一兆六百三十二億円のうちで二千億円は政府資金、それから残りの二千三百億円については金利負担をするという形で話をつけたわけであります。  それから、今度の補正予算につきましても二千六十六億円の地方の負担があります。そのうちの千七百億円は、これは政府資金で持ってもらうということにいたしまして、いずれにしても益金調達能力の弱いところにこういう金は全部振り向けることにいたしまして、そして、資金調達能力があるところでもばらつきがありますから、あるいは非常に困るところも起こり得ると思うんです。そういうときには、あらかじめといいますか、なるべく早く連絡をさせて、大蔵、自治でもってよく連絡をして、そして大蔵省の協力を得、これは大蔵省としては日銀その他の機関を通じて、あるいは銀行局がやってくれるものと思いますけれども、そういうような措置をとって、そうして地方が困らないようにするということで話し合いをつけておるわけでございます。
  328. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 日銀総裁ね、大量の国債、地方債の引き受けによって、都銀も地方銀行も民間資金に圧迫がいくというようなことのおそれはないと思われますか。それから、住宅ローンについて、もうちょっと貸し付けの中のシェアをふやしたらいいと思うんですがね、その点はどう考えられますか。
  329. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 本年度は、上半期、金融市場としては約五千億の資金余剰でございました。昨年は逆に一兆四千億の不足でございました。上半期に関する限りは、ことしは金融市場が大変余剰ぎみに推移しておるということでございます。十月も約五千億ぐらいの余剰ぎみでございまして、十一月も、国債の発行を別といたしますれば、一兆七千億ぐらいの余剰ということでございまして、金融市場全体として余剰ぎみに推移しておる。  それはなぜかと申しますと、財政支出が先行いたしておるわけでございます。たとえば大蔵省証券の発行等によるものもその一部でございますが、政府の支払い超過が先に進みまして金融市場が余剰ぎみに推移しておる。そういうときにおける国債発行でございますし、また国債の発行はかわり金がそのまま政府に入っちゃって出てこないというわけじゃないわけでございまして、歳出となって出てくるわけでございます。これはごく一部の現金として滞留するものを除いては金融機関に返ってくるわけでございますので、資金の流れといたしましては、民間資金、産業資金を圧迫をしないで済むという、そういうマクロ的な計算になるわけでございます。ただし、これはマクロの話でございまして、ミクロ的には国債の発行と実際の歳出との間に時間のずれがございますので、特に年末等のごとき時期には大変資金が不足するとか金融市場が逼迫するということもございましょう。また、金融機関別に、国債を引き受けました金融機関と歳出によって預金が集まってくる金融機関との間にずれがございまして、金融機関の業態別あるいは金融機関別には資金のポジションが大変違ってくる、あるものは大変逼迫し、あるものは余剰になる、そういったような状態が起こるわけでございまして、それを余っておるところから足りないところへうまく回すようにしなければいけませんし、それでもなお金融市場全体として足りないものは日本銀行の信用供与によって調整していく、調節していくわけでございまして、そういう金融市場の調節という面で今後いろいろな問題が起こってくると思います。私どもといたしましては、そういう面に万全を期しまして、金融市場全体として波乱がなく推移しまするように、そしてまた、必要な民間資金、産業資金の逼迫を招くことのないように、金融調節の上において万全を期していきたいと申し上げておるわけでございます。
  330. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 住宅ローンの枠はどうですか。
  331. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 住宅ローンにつきましては、ことしになりましてから都銀を初め各金融機関の熱意は大変盛り上がってまいりまして、昨年までは総貸出量の一〇%ぐらいということでございましたが、その後はたしか一二%ぐらいまで増額をされておるように記憶いたしております。今後も住宅資金の供給につきましては引き続き力を入れていただくように金融機関に協力を求めるつもりでおります。
  332. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは銀行局長の方では金融機関に対して住宅ローンの貸出枠をもっと広げるようにする気持ちはないでしょうかね。これはまあ赤字財政でも、それによって政府が大衆の生活、住生活の向上のためにそれだけ努力しているんだということになると、またまたこれ、国民の理解を得る上に違いますからね。もっと私は、たとえば労金なんかは住宅ローンの貸出枠は全体の七五%というところもあるのですよ。だから、一〇%とか一二%なんというのは決して多くないんです。どうでしょう。
  333. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 先生のおっしゃるとおり、住宅ローンに対する資金の需要は非常に強いものがございまして、午前中も御答弁申し上げましたけれども、これに対応して銀行側も、一ころに比べまして、やはり将来の経営体制といいますか、営業の非常に重要な部分と見て、そちらの方に熱意を傾けているわけでございまして、たとえば四十七年の初めには、全体の貸出残高のうちに占める住宅ローンの貸出残高のシェアは全国銀行で一・九%でございましたけれども、漸次それがふえておりまして、ことしの六月末には五・三%というようなシェアになっております。いまお話がありましたように、期中の増加額、貸し出しの増加額のうちに占めるシェアは一五%を超えているような状態でございますから、この残高は順調に伸びていくと、こう思っております。なお、銀行局といたしましても、住宅ローンに対して十分な配慮を用いるように指導を続けてまいりたいと思っております。
  334. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最後に、日銀総裁、細かいことですが——まあ細かくもないかもしれない、地銀の要求は熾烈なんですが、やはり預金準備率は引き下げる方向に持っていきたいという気持ちはおありですか。あなた、公定歩合のときでも、考えてない、考えてない言うて、またぱっとやったりしますからね、正直なところをおっしゃってください。
  335. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 先ほども申し上げましたが、目下事務当局でいろんな場合の案を検討しておるのは事実でございます。いずれ引き下げに踏み切る時期も参ろうかと存じますが、今日ただいまのところはまだ決めておりません。
  336. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 近い将来と見ていいですか。
  337. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) この年末の金融繁忙時には間に合わせたいと思っておる次第でございます。
  338. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 次は、スト権の問題に移りたいと思いますが、専売、国鉄、電電など、これは国営ないし公社の経営形態をとる国は文明国の中でもかなり多いわけですね。しかし、ストライキを禁止している国はないと思うのですよ。労働大臣いかがですか。
  339. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。  きのうも御質問がありましたけれども、における国鉄、郵便事業等の職員のストライキ権の取り扱いにつきましては、それぞれの国の伝統とか、あるいは経営形態、さらにまた労使の関係の実情を反映してそれぞれ違っております。わが国と同様に、国鉄、郵便事業等のストライキを禁止している国は、アメリカの郵便事業等、西ドイツもこれに近いと、こう聞いております。一応ストライキ権を認めた上で、ストライキによる事業の停滞が日常生活、国民経済に及ぼす影響を最小限度にとどめるために特別の措置を講じている国としては、イギリス、フランス等があると、こう聞いております。
  340. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 西ドイツは禁止規定はないですよ。それから日本特殊性は、やはり憲法上勤労者のストライキ権の保障規定があるということですね。アメリカには憲法上の規定はないですからね。そこに載然たる差があるわけです。あなたとしては、やはり三公社の従業員に対してスト権を認めるべきだという方向で模索していらっしゃいますか。その必然性、合理性についてあなたの御意見を伺いたい。
  341. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) この問題につきましては、先生御案内のように、ただいま関係閣僚協の中における専門委員懇談会で鋭意検討を精力的に続けているときでありますから、私の個人的意見を述べることは差し控えさしていただきたいと思います。
  342. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大臣としての意見です、個人的意見じゃない。大臣としての意見を求めている。個人的な意見は求めてない。
  343. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 個人並びに大臣としては、なおさらのことでございます。
  344. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 微妙な段階でありますからして、余り労働大臣をこれ以上追及するのもなんですが、ここで一つ問題があるのは、ストライキ権を付与する条件としてこの三公社の事業を民営化すべきであるというような提案をする人があります。これはまあ田中前総理がちょっとそういうことに触れたこともあります。われわれは、やはり国有財産の払い下げとか信濃川河川敷の問題とかでああいう悪名を流した方ですからして、これは利権のにおいがするというふうに考えておるわけです。それから、そういう考え方は現実的でもありませんし、単に営利を目的とする団体ではなく、これはやはり国民に対するサービスの提供ということが大きな任務になっておりますから、こういう民営化などという考えは入れるべきでないと思いますけれども、これについて専売公社総裁それから国鉄総裁、電電公社総裁の順序で御所見を承りたいと思います。
  345. 泉美之松

    説明員(泉美之松君) 専売公社といたしましては、現在の公社制度を経営形態としてどういうふうに直すかということについては国の政策判断の問題であると思っておりますが、公社自身としてどういうふうに考えるかというお尋ねでございますから、公社としての考え方を申し上げさしていただきますが、私どもとしては、現在のたばこ専売制度が七十一年の歴史を持っております。塩の専売制度が同じく七十年の歴史を持っておるのであります。で、白紙の上に絵をかくのでございましたら、こういったたばこの事業というものをこういった公共企業体でやらなければならないということは必ずしもないと存じます。諸外国の中でも、民営でたばこをつくっている国もあれば、専売制度にしておる国もあるわけでありますから、そういう点はそれぞれの国の事情によって決まることだと思うのでありますが、わが日本におきましては、先ほど申し上げましたような七十一年に及ぶ歴史を持っておりますし、それから現在公社制度で消費者に対するサービスも円滑にまいっておると思うのでございまして、これを公社制度を廃止しなきゃならぬという理由はないように思いますし、それからもし専売制度を廃止するということでありますと、それは単にストライキ権という問題、見地からだけでなしに、広い見地から根本的に検討していただかなければならない問題であるというふうに思います。  また現実に現在の公社を民営に移すといたしますと、その際に、いろいろな問題が生ずるわけであります。一つは、現在の公社財産の評価、民営に移す場合に評価していくわけですが、その問題。あるいは民営企業としてこれが引き受ける人がおるかどうかという問題。さらには現在の公社一社でありますが、それを民営にする場合に一社にするのか数社にするのか、独占禁止法の関係で一社ということにはいろいろ問題もあろうかと思います。数社にすると外国資本が参加するといった問題もございます。それから葉たばこ耕作者が不安に思う問題であるとか、あるいは公社の職員が不安に思う問題、こういったいろんな問題がありますので、そういった広い問題としてお考えいただかなければならない、このように思っております。
  346. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答え申し上げます。  国鉄の経営形態がいかにあるべきかということに関しましては、これまでもしばしば取り上げられてきたところでございますが、基本的には、公共性、企業性を兼ね備えた国鉄の使命、役割りを達成するのにはどのような経営形態がよいのかということから議論されてきたところでございます。なるほど民営企業における能率性であるとか自主性であるとか弾力性といった側面につきましては参考とすべき点も多々あると存ぜられますが、仮に国鉄経営を民営とした場合、採算制が強調される結果、営利性の高い部門の重視、不採算路線や不採算サービスの徹底した切り捨て、営利的観点からのみの投資といった弊害が生ずるおそれがございます。また、分割して民営にするという考えもございますが、全国的なネットワークを分制することからくる非能率性、利用者の御不便などの問題がさらにつけ加わることが予想されます。以上のようなことを考えますと、国鉄を民営とした場合には、国民生活の基盤として将来にわたってバランスのとれた輸送サービスを提供するという国鉄本来の使命の達成が困難になるんではないかと存ぜられます。  以上のような観点から、公共企業体としての現体制のもとで民営の長所を生かしつつ公共的な観点を十分配慮し、真の公共企業体として自主的、能率的な運営が行われることが望ましいと私ども考えております。
  347. 米澤滋

    説明員(米澤滋君) お答えいたします。  まず最初に、結論から申し上げますと、私は電電公社の経営につきましては現在の公共企業体の経営が一番いいんじゃないかと思います。これは一つは、昭和二十七年に公社が発足いたしましたときは電話が百四十万でありましたが、いますでに三千万になりました。電話は二十倍以上になっております。それから職員の数はこの間二倍でありまして、生産性は十倍上がっている。また、技術におきましても世界の最高レベルでありますし、これまで十分経営がうまくいったと。公社経営のときに二つの大きな目標がございました。一つは全国を自動即時化するという目標、もう一つは電話の申し込み積滞をなくなすという、この二つの目標がございましたが、これはもう自動化はすでに九九%になりますし、それから積滞ももう二、三年のうちには完全に積滞がなくなると、こういうことであります。今後につきまして考えましても、私はやはり公社の自主性を高める、自主的な経営をもっと高めることによって、もっと合理的な経営ができるのではないかと、このように思います。
  348. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 お三方の御意見の表明を承りますと、やはり現在の公社制度を存続すべきであるという結論にあることは、これは大体間違いないと思いますね。  この際、総理に特にお伺いしたいんですけれども、ストライキ権の何か交換条件として民営論を持ち出すというようなことは、これはもう論外なんですね。これは衆議院で私どもの友人である奥野議員がたしかこういう意見を述べられたですがね。これは、利潤の分配が労働組合の主張する対象だというような御意見だったんですが、そうじゃないんで、いまの日本の憲法下では、憲法二十五条の生活権の保障というところから出発しているということは、これは最高裁判所の判例でもはっきりと出ているわけですね。だから憲法的な規定に基づいて最低限度の文化的な生活を保障するというところから、いまの団結権、団体交渉権、団体行動権というのが出ております。だから、そんなとんでもない議論に耳を傾けることなくして、十分いまの三公社の総裁の意見を踏まえて、合理的な解決に達せられるように切に希望しておきますが、総理のこれに対する、簡単でよろしいから御決意を。
  349. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 公共企業体の経営形態、いろいろ議論があるわけです。それは当事者能力というような面からもそういうものが出てくるわけですが、政府は民営移管は考えておりません。
  350. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 終わります。
  351. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして寺田熊雄君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  352. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 桑名義治君。(拍手)
  353. 桑名義治

    桑名義治君 三木総理就任当時の公約はことごとく空手形になってしまったわけでございますが、昨日の三木質問における大企業の政治献金におきましても言えると思います。  そこで、独占禁止法問題でございますけれども、前国会で衆議院において全会一致で通過をいたしました法案をなぜ今回提出しなかったのか、再度お尋ねしておきたいと思います。
  354. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 桑名君の、三木内閣の公約ことごとく不履行だという言は、承服いたしません。ほとんど私は言った公約は実行されつつある。ただ、独禁法については、これは前回衆議院を全会一致で通過いたしたのでありますが、独禁法の改正ですね、参議院で御審議をいただかないままに廃案になったわけで、出直さなければならぬということになったわけでございます。  私は自由経済体制を守りたいと考えておる。そのためには、やはり自由競争の公正なルールが要るという論者です、私は。その考えは変わったわけではない。しかし、この国会というものを考えてみると、実際もう一刻も早い補正予算の通過というものを私は望んでいるんですよ。電報なんかもいっぱい来るわけですね、各地から。地方の自治体自身でも、これはもう一日も早く補正予算が国会を通過されることを望んでおるわけです。問題がしぼられておるわけですね。これは世間、新聞などでは視界ゼロなどと言って、実際私どもそういうことはあり得ないと信じています。これはフランスなども同じような——この閥、九月の九日ですかね、やっぱり景気対策をやっておる。酒、たばこの値上げもその中に入ってました。四日間ぐらいでやっぱり国会は終わっているのですからね。これはもう不況対策のようなものは早く審議を終わるということが、それは反対、賛成、結構ですが、非常にこれは国民の声ですよ。そういう意味で今回はこういう重要なしぼった問題ですからね。それは酒、たばこにしても、これはやっぱり財政関連法策ですから。そういうことでしぼったことを目標にした臨時国会で、独禁法のような経済基本に関係する審議をお願いすることはかえって——緊急を要するんですからね、この不況対策は。審議の支障を来しては私はならぬという配慮があったわけです。これは通常国会の議題にしたい。  そういうことでございますから、いま自民党の中でいろいろこの問題について調整を加えておるわけでございますから、そういうことでこれを、まあ予定でおりに通らなかったことは私責められてしかるべきだと思いますが、公約をこれはもう全部、三木内閣というものは公約というものはその場限りだという言だけは私は承服できない。明らかにしておきます。
  355. 桑名義治

    桑名義治君 独禁法の問題につきましては、衆議院で全会一致で通過をしたという事柄は、国民の意識というのは、自民党の中ではもうむしろまとまっているんだという、そういう認識を持ってしかるべきだと思うんです。そういう立場から言いますと、これ最後は総理の指導性にかかっていたんじゃないかと、こういうふうに考えるわけです。そういった立場から考えると、今回の臨時国会でも提出しても、決して他の重要法案に差し支えがなかったんではないか、こういういわゆる論理が立つのは、これは当然のことだと思いますが、もう一度お願いします。
  356. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私はこの国会は問題をしぼりたいと、こういうふうに考える。問題をしぼりたい。この不況対策、これに関連する財政法案、これにしぼりたい。それは、この問題は経済の基本に関係するんですから、早いにこしたことはありませんよ、しかし、この不況対策とか財政関連法案というほど緊急性というものがないとは言えませんけれども、通常国会で経済の基本に関係するからこれを御審議を願っても、これはやむを得ないんじゃないか、御理解を願えるんじゃないか。そういうことで自民党としていま党内において、これは経済の基本に関係するからいろんな議論もあることは事実ですよ。しかしやっぱり、自民党はああいうことを決定して衆議院で出したわけですから桑名君の言われることはよくわかります。しかし、これを通常国会の議題とする以上はひとつもう一遍党内でよく調整をして、今度出ても余り議論のないようにしたいということでいまやっておるわけでございまして、臨時国会の目的からして、経済の基本に関係するものは通常国会にいたしましても御理解を願えるという私の判断からでございます。
  357. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、公取委員長にお尋ねをするわけでございますが、今国会で野党が共同して独占禁止法案を提出をしていますが、この法案についてどのような見解をお持ちでございますか。
  358. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 私が改めて申すまでもなく、野党共同提案になるものは、前国会で衆議院を全会一致で通過したものと全く同一の内容のものでございます。このもとは、自民党の特別調査会におきまして、政府提案になる以前に相当長時間をかけて十分吟味された、その結果国会へ提出になりまして、さらに全党一致で修正可決を見たものでありますから、私どもとしては参議院においてもそれが速やかに通過することを願っておったのでありますが、まあそれがうまくいきませんでした。この点はもう私が申し上げることでありません。私どもの気持ちとしては、野党共同提案になったといういきさつについては、そのよしあしということは私申し上げたくありません。しかし、とにかく内容的には前国会で全会一致で衆議院を通過したという内容のものでございますので、何らかの形で、何の形でもあれ与党も御賛成におなりになれば、これは参議院も通ることが可能でございますので、私どもの立場から申せば、できるだけ速やかに通過が実現することを切に希望してやまないものであります。
  359. 桑名義治

    桑名義治君 公取委員長はいまお聞きのとおりの意見を吐かれたわけでございますが、自民党の総裁として野党案をどのようにお思いでございますか。
  360. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは国会の問題でございますから、国会で一つの審議をして処置をしてもらいたい。衆議院において全会一致で議決をされたという事態は、私もこれは十分に事実として尊重されなければならぬと思っております。
  361. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、総理は自民党案については自民党の中で調整中というふうにお答えを常になさっておられるわけでございますが、どの点を調整されているのか、具体的にお示し願いたいと思います。
  362. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 先ほど申し上げますように、これは通常国会の問題として取り上げようというわけでございますから、この機会に全般についてわれわれが常によりよい法案をと考えることは当然でございますから、全般についてどの問題を特にということでございませんが、独禁法の改正全般について自民党として検討を加えておるということでございます。
  363. 桑名義治

    桑名義治君 先ほど申し上げましたように、国前会におきましては衆議院では全会一致です。そして今回の臨時国会では調整をしなければ出せないというんですから、調整部分はわずかだろうと思うんです。全体として調整しなければならない、そういう総論的なことを私お聞きしているわけではなくて、どの点が問題なのかということをお聞きしているわけです。
  364. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 自民党としても衆議院で全会一致で議決をされたという事態は尊重されなければなりませんが、いま言ったように通常国会の議題にしたい、臨時国会は問題をしぼりたいというわけですから、その機会に自民党というものが全般的にこの問題を十分議論をするということは、政党としてあり得ることだと考えております。
  365. 桑名義治

    桑名義治君 この点について総務長官、どうですか。
  366. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) お答えいたします。  前国会におきまして政府案を提案をいたしました際には、政府といたしまして最良の案という考え方提案をいたしましたところ、衆議院の段階において修正を見、そして参議院では御承知のとおり廃案になったわけでございます。私ども担当者といたしましては、この改正案が自由かつ公正な経済の運営というものを強化する意味において意義あるものであるというふうに考えているのでございますけれども、先ほど来総理からお話のように、自由民主党内においてその内容につき現在調整中でございます。したがいまして、その行方を見守りながら政府としての態度を決めていかなければならないと、さよう考えているのでございます。
  367. 桑名義治

    桑名義治君 どこが問題になっているかということを聞いているんですよ。
  368. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 数回にわたりましてこの会合が開かれておるということは伺っておりますけれども、私は直接出席はいたしておりませんので、いろいろな御意見は出ておることと思いますが、具体的には承知をいたしておりません。
  369. 桑名義治

    桑名義治君 では、次の問題に移りたいと思います。  公取委は鋼材値上げで任意調査をしたと言われておりますが、通産大臣は四十条の調査は行き過ぎであるというようにおっしゃっているようでございますけれども、この点について通産大臣並びに公取委員長の御答弁を願いたいと思います。
  370. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 鋼材の値上げの背景について簡単に申し上げますと、昨年からことしの初めにかけまして、原料である鉄鉱石、石炭は大変値上がりをしたわけでありますけれども、輸出が好調で、大体国内価格の二倍ないし三倍という非常に高い価格で数量が激増したわけでございます。そういうことのために、国内価格は低い水準で推移いたしましたけれども、鉄鋼会社の経営は比較的よかった、こういうことでございますけれども、ことしの初めになりまして、世界的な不況の影響を受けまして輸出が非常に減りました。価格もいっときに比べまして暴落をしたわけでございます。そういう関係で急速に鉄鋼会社の経営が悪くなりまして、ことしの初め以降どうしても相当幅の値上げをしたい、値上げをしないと経営がもたないと、こういう強い要請がございましたけれども、鉄鋼の国民経済全体に与える影響が非常に大きいということを考慮いたしまして、できるだけ延ばすようにと、こういうふうに要請をいたしまして延ばさしておったわけでございますが、去る七月一日からいよいよ販売先と交渉を開始いたしまして、御案内のようなところに落ちついたわけでございます。  この鋼材の価格は、御案内と思いますけれども、ある程度長期的にユーザーと決めるものと、それから店頭で売っておるものと二つございます。長期的に決めるものは、これはコスト計算を参考といたしまして、そして一定期間価格を据え置く、こういう契約でございます。それから店頭の場合は、メーカーといたしましては希望的な価格は出しますけれども、需給で決まりますから、なかなかそう思うようにはいかない。こういう二種類になっております。現在、店頭の価格は非常に安い水準にあると言ってもいいと思います。それからなお、ユーザーと比較的長期の契約をしております価格は、これは若干上がりましたけれども、なお国際水準から見ますと、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリーの各国と比較いたしますと、非常に安い水準にあります。各品種とも全部おしなべて各国に比べまして非常に安い水準にある、こういうことが言えると思います。そういうことで、なお現在、鉄鋼業者の経営状態は相当大幅な赤字が続いておる。そういうことから、なお引き続いて三千円の値上げを年末ごろまでに達成をしたいと、こういうことで交渉しておるようでございます。  なお、この問題につきまして、公取委員会が独自の権限で調査をしておられるということを聞いておりますけれども、これは公取委員会の権限でおやりになることでございますから、通達者としては、それに対して意見を申し上げる筋合いではございません。
  371. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 鉄鋼にも大ざっぱに分けて二種類ございます。そのうち、いわゆる高炉メーカーの一貫メーカーでございますね、その製品の価格の問題、これが実は余りにも同調的であった。七月の七日ごろに一社が九千八百円という線を出しまして、それと余り違わない価格が次々と、まあ要望価格が出されましたが、その後、結局は煮詰めたところでは、鉄鋼メーカーの中の有力一社と自動車メーカー、これはトヨタ自動車と申し上げた方がよろしいでしょう。それとはまあお互いを代表して決めたような形になっておるのです。でありますから、本来は造船用の厚板と自動車用の冷延コイルと申しますが、薄板でございますですね、それとは値段に差があるのでございますが、決まった場合の値上げ幅はすべてこれ一応今回は六千八百円で、九月出荷分からこれを適用しております。その場合の、一社が決めた価格に他社が直ちに全部追随した——追随したというのか、協調したというのか、上げ幅は全く同じでございます。そういうことは、価格の決定のあり方としては、いかにこれがひもつき長期のものでありましてもきわめて不自然なあり方である。私どもは、これは以前は管理価格とこういうものは言っております。これはアメリカから始まった言葉でございます。まさにそれに該当するのではないだろうかということで、双方から任意で事情調査を行っておるわけでございまして、まだその調査の結果がまとまっておりません。  したがいまして、いまの段階では、まだこれは任意でやっておりますし、どうこういう方向を示唆するような、私どもの将来とるべき手段についてとやかくいまお答え申し上げることはできません。できませんが、われわれとしてはどうしても事情は一応承っておく必要があるのではないか。そうでないと、こういうことが今後も例となって行われていくということは、いわゆる市場原理に基づく価格の形成とは縁の遠いものになってしまいます。そういうことでありますので、独禁政策上無視することはできない。どういう措置をとるかはまた別途の問題でございます。
  372. 桑名義治

    桑名義治君 いまの公取委員長の御発言に対して、通産大臣、どのようにお考えでございますか。
  373. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 鉄鋼の場合、高炉メーカーと平電炉メーカーの場合は価格形成が非常に違うわけです。たとえば高炉メーカーの場合は鉄鉱石、石炭、全部外国から長期の契約をいたしまして、そうして一定の価格を決める。でありますから、ある程度のコスト計算ができまして、原料が上がればその影響は当然受けますけれども、一定の期間はこの価格水準を維持することができる、こういうことが可能であります。平電炉メーカーの場合は、御案内のように、くず鉄が原料でございますから、一〇〇%動いておる、こう言っても過言ではありません。したがって、平電炉メーカーと、それから高炉メーカーの価格形成には根本的に違いがある、こういうことがあると思います。  そこで、いま公取委員長の方からいろいろお話がございましたが、高炉メーカーの場合は設備も全く一緒である。それから原料なども共同購入しておる、鉄鉱石、石炭。原料の価格も全く同一である。こういうことでございますから、やはりどうしても同じような条件になるわけですね。だから、一社がプライスメーカーといいますか、そういう形で妥結いたしますと他がやっぱりそれにフォローする、こういうことは寡占業界にありましては私は別に不思議なことではないと、こういうふうに考えておるわけでございますが、しかし、公取委員会としては別途の判断から御調査になっておると思いますが、これに対しては私の方からは別に意見を申し上げる筋合いではございません。
  374. 桑名義治

    桑名義治君 鉄鋼値上げの問題についてはこれで終わりたいと思います。  次に、現在大変にちまたで問題になっております塩ビモノマーの問題についてお尋ねをしておきたいと思います。  塩ビモノマーは、日本におきましては昭和十六年から生産をされておりますが、四十二年には前年の六万三千トンから急激に百三十四万五千トンという、二十倍以上の生産高になっているわけでございますが、これはどういう理由に基づいているのか、まず伺っておきたいと思います。
  375. 矢野俊比古

    政府委員矢野俊比古君) ただいま御指摘のように、私どもの統計で見ましても、昭和三十二年で六千二百トンのものが四十九年で百六十七万トンというようなモノマーの生産でございます。これはほとんどがいわば塩ビのポリマー、いわば塩ビの樹脂製品に向けられるわけでございますが、これは非常にいろいろな加工がしやすいということで、硬質あるいは軟質、あるいは電線のケーブルというような、用途が非常に広いものでございますから、非常に当初の予想に比べて急増したという実情にあると思います。
  376. 桑名義治

    桑名義治君 そうしますと、世界における塩ビモノマーの生産高の上位になっているというふうに聞きますが、上位五位までの内容をお知らせ願いたい。
  377. 矢野俊比古

    政府委員矢野俊比古君) 昭和四十八年で申し上げますと、アメリカが二百五万三千トン、日本が百三十一万八千トン、これは実は塩ビの樹脂生産でございます。それから西ドイツが百二十九万トン、それからイタリアが七十二万トン、フランスが六十五万というのが上位の五国でございます。これは各国の塩ビの、いわゆるビニル樹脂生産の要するに生産ということ、製品というところでとらえております。
  378. 桑名義治

    桑名義治君 四十九年度の最近の資料を御説明願えると思いましたところが、四十八年度ということでございます。ここら辺にも一つの取り組みの姿勢があるんじゃないかと私は思います。  そこで、化学年鑑には、昭和四十九年三月末の時点の十八社三十二工場のおのおのの生産能力が記載をされておりますけれども、労働省の資料には二十二社三十六工場となっております。その全工場の生産量を工場別に発表してくれませんか。
  379. 矢野俊比古

    政府委員矢野俊比古君) 生産統計として私どもが各事業所からそういう統計はとってございますが、統計法のたてまえで、いわば個票の公表ができませんので、この点はひとつ御遠慮させていただきたいと思います。
  380. 桑名義治

    桑名義治君 そこがまず私は問題だと思います。問題だと思うんです。化学年鑑にはちゃんと載っているんですよ。そして、化学年鑑の中には、四十九年三月末通産省調査と載っているんですよ。どうしてこれは出せないんですか。本に出して、なぜ国会に出せないんですか。そういうところがまず問題なんですよ。なぜ出せないんですか。年鑑に出して、どうして国会に出せないんですか。調査の段階で何回も何回も要求したけれども、全然出さないじゃないですか。いま自民党の理事の方から話がありましたよ、そんな資料は出してもらっとけって。出さないんだ。
  381. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 発言は立って願います。
  382. 矢野俊比古

    政府委員矢野俊比古君) 工業年鑑という編集の実態は私どもは存じませんけれども、それは恐らく私どもとして、いろいろ各企業が工業会その他で集めてきたものを一応監修というような形で処理をしたのではないかと思いますが、化学工業年鑑自身の内容を私も存じておりませんので、その点大変申しわけないことでございますけれども、ここで申し上げるわけにいかないわけでございます。
  383. 桑名義治

    桑名義治君 大臣、どうですか。何でそんなに隠さなきゃならぬのです。
  384. 矢野俊比古

    政府委員矢野俊比古君) 統計法上のたてまえから公表できないというものでございますので、私の口からはいまここでお答えできないわけでございます。
  385. 桑名義治

    桑名義治君 いま私、大臣の意見聞いたんです。化学年鑑に発表ができて、国会でなぜできないのか、そこを明確にしてくださいよ。
  386. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いま政府委員が答弁しておりますが、その法律の内容を私も一回よく調べまして、法律上そういうことになっておるのかどうか、よく調べましてから御返事を申し上げたいと思います。
  387. 桑名義治

    桑名義治君 総理ね、化学年鑑の中に統計上の数字が全部出ているのに、どうして国会に出せないんですか。法律で発表できなければ化学年鑑に発表できない。化学年鑑にもし発表した人がおるとするならば、これは機密漏洩になりますよ。法律違反になりますよ。どうですか、その点。
  388. 矢野俊比古

    政府委員矢野俊比古君) いま先生御指摘の、化学工業年鑑の通産省調査というのがどういうことかよく調べまして御報告をさせていただきたいと思います。
  389. 桑名義治

    桑名義治君 もう局長はいいですよ、大臣の答弁です。
  390. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  391. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  ただいまの件に関しては、先ほど通産大臣の答弁のように、関係の法規なりあるいはまた、通産省調査というふうになっておるそうですが、そういうことを改めて確認した上でまた報告をする、なかなか結論が出ないようですから、そういうことでひとつ御質疑をお進め願いたい。
  392. 桑名義治

    桑名義治君 塩ビモノマーの強烈な毒によりまして、多くの被害者が存在することが最近明らかになったわけでございます。そこで、一九七五年の一月の世界における塩ビモノマーの被害者、特にがんと一般的に言われる肉腫についての状況をまず説明をしてもらいたいと思います。
  393. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) お答え申し上げます。  いま御指摘の塩ビによる肝血管肉腫の患者が初めて世界で発見されましたのは、昨年の一月アメリカにおいてであります。そこで三名出ました。それから国際的に非常に重要な問題になりましたた。その後、現在までに各国で三十八名の該当者が出ておるというふうに伺っております。最近日本でもその疑いがきわめて濃いと思われる患者が、三井東圧からその症例が出たわけでございます。
  394. 桑名義治

    桑名義治君 いま説明がありましたように、世界では三十八名、そのうちの生存者が四名、三十四名の人が亡くなっているというのが五一年の一月末現在のデータでございます。  そこで、先刻労働省の方に私は資料要求をしました。モノマーによる労働者の労災補償状況を通卸してほしい、こういうことで資料要求をしましたら、わずか三名出てまいりました。こんなに軽微なものでございましょうか。先ほどの統計の中にもありますように、日本の塩ビモノマーの生産高というのは世界で二番目なんです。アメリカが一位でございますけれども、この一位のアメリカが約十七人です。日本は現在のところ、この労働省のデータではわずかに三名、これも死亡者ということになってくると全然ゼロになっているわけです。申請している人は何人かおります。こういうような把握である以上は、この塩ビに対する取り組みがどういうものであったかということを私は端的にあらわしているんではないか、こういうふうに思うわけでございますが、最近、以前死亡した人の実態というものも明らかになったわけでございますが、この被害状況について、肉腫はもちろんのこと、指端骨溶解症を含めて報告をしてもらいたいと思います。
  395. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 塩ビの関係で現在までに明確に指端骨溶解症、あるいは最近問題になっております肝血管肉腫と関係のあると言われております門脈圧高進症、こういう形での労災認定は、済みましたものがいま御指摘のとおり三名でございます。ただ、その後労災申請が出てまいっておりまして、現在、三井東圧の名古屋工業所からなお死亡者二名を含む三名が申請手続をしております。そのほかに、本日の朝刊にも報道をせられておりますが、なお四名の死亡者が労災申請をするということでございまして、私どもも地方の現地の局に問い合わせましたところ、まだ受理はしていないけれども、そういう動きがあるという返事でございましたので、その点では十名ということに相なるわけでございます。
  396. 桑名義治

    桑名義治君 労働省のいまのお話ではわずか十名ということでございますが、そんなものではないと思います。最近の各新聞が報道している内容を集約しても百名に近い人員になるんではないかと、こういうふうに言われておるわけでございますが、いずれにしましても、この問題は労働省はもう少し真剣に取り組んでいかなければならないと思います。これは本気になって取り組む姿勢があるかどうか、総理の御意見をまず伺っておきたいと思います。  総理、その前にこれをちょっとごらんいただきたいと思うんです。これは下の方が今度のがんで亡くなった方の肝臓の写真です。上が普通の肝臓の写真でございます。それだけ大きく肥大して、しかも点々があるところが、がんでございます。それは名古屋大学からもらってきたものでございます。
  397. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 塩ビのモノマーなどの被害というものは、非常に勤労者の生命、健康に影響を与える問題でございますから、政府としてもこういうものが殺虫剤なんかに使用されることは、昨年の六月でしたか、製造、販売を禁止する、それを回収するように努める等、一般の塩ビについては従業員に対しての健康診断をやるし、また、それに対して応急の措置が早くとれるようなことも検討いたしておるわけで、この問題は政府としても塩ビによる被害というものに対しては重視しておるわけでございます。
  398. 桑名義治

    桑名義治君 ただ単なる重視だけではわれわれは納得しがたいわけでございますが、では、いまから具体的に質問を続けていきたいと思います。  まず、労働省に対して。先日の三十日に労災補償の適用申請を出しております三井東圧名古屋工場の三人、森、佐藤、田中、この三民の認定はどうしますか。二人はもう亡くなっているわけでございますが。
  399. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) お答え申し上げます。  ただいまお挙げになりました三名につきましては、先ほど申し上げましたように申請が出ておりまして受理をいたしておるわけでございます。そこで、これらにつきましては、わが国でも非常にまだ発症例の少ないことでありますので、それぞれ本省レベルにおきまして専門家会議で十分検討を加えなければなりませんけれども、ただ従来、最初にお挙げになりました三名につきましては、申請がありまして、すべて労災認定をいたしているわけでございます。それから先般亡くなられました森さんにつきましても、主治医の所見その他から見まして、私どももきわめて業務上との関連が強いと見ております。しかし、いずれにしましても最終的な決定は専門家の意見を聞いて行いたいと思っております。なお他の二名につきましても十分内容を検討いたしまして処置をいたしたいというふうに思っております。
  400. 桑名義治

    桑名義治君 検討いたしましてと言うが、亡くなった方に対してはもうすでに因果関係というのは非常に調査はむずかしいわけでございますけれども、その点についてはどういうふうにお考えなのか。それから日信化学武生工場で十年前に亡くなった三好登さん、日本ゼオン高岡工場に働いて八年前に亡くなった大井芳一さん、さらに三井東圧名古屋工場で働いた森正雄さん、こういった方々に対してはどういうふうにお考えでございますか。
  401. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 御指摘のように、大変古い時代の死亡者につきましては、カルテその他の資料を検討するのに苦労を要するわけでございます。しかし、何せ先ほども申し上げましたように、肝血管肉腫というものが世界的に確定いたしましたのがここ近々一年のことであります。労働省といたしましては、去年の一月にその問題がアメリカに発生しまして、すぐに専門家をアメリカに派遣して、その後の応急の措置、あるいは労災につきましても先ほど申し上げたようなできるだけの努力を重ねておるわけでございます。いまお挙げになりましたような問題につきましても、私どもとしては単に申請者の出されたデータのみに頼ることなく、客観的に専門家の意見を十分伺いまして、できるだけ真相を明らかにして手落ちのないような措置を講じたいと思います。  それから後でお挙げになりました方々につきましても、そういう情報を私どもも入手いたしておりますが、今後手続がとられることと思っております。その上でやはり同じような考え方で処置をいたしたいと思います。
  402. 桑名義治

    桑名義治君 そういうなまぬるい御答弁ではわれわれは納得しかねるわけですよ。実際にいま挙げた方々は重合がまの中で仕事をなさっておられた方々なんですから。そしてしかも、もう少しカルテを調べてなんか言っても、その当時のカルテの中では因果関係は出てきませんよ、実際は。そこから辺をどういうふうに考えられますか。大臣、これはもう政治的判断になりますよ。どうですか。
  403. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 石油危機のときに私たちは塩ビ塩ビという話を聞いたわけです。それほどまでに石油から塩ビというものがつくられて、それが世界で二番目。私は労働省というのはやっぱり先取りをやらなきゃならぬ。偶然でございますが、いま御批判いただいておるわけですが、昭和四十四年に日本世界の衛生学会をやったときに、学者が集まったときに、塩ビからそういう危険性があるということが報告されたので、直ちに先生がいまおっしゃった重合器のかまの中に入って行く場合には重装備して入れというふうな指示をしたり、四十九年にアメリカで塩ビのがんの人が亡くなったような話を聞いたから、早速三カ月後に坂部という労働衛生研究所の部長をやって、それから業界の諸君、徹底的にいろんな保全措置、予防措置をおやりになったことは先生も御承知おきだろうと思います。  そして、これはとにかく二十年ぐらい入ってようやく出てくるんですね。アメリカも、だから二十年ですね。日本の塩ビ産業というのは二十年おくれて発達している。ですから、その潜伏したのがようやくいま出てきたことですから、私はせんだってこういう話が出た後に塩ビ協会の会長などを労働省で呼んで、そして話をしたことは、退職者も徹低的に追求、そしてまたそういう故障のあるような方々を全部洗い出すことというふうな姿勢をとっているわけでありまして、産業のために犠牲になった方々は非常にお気の毒なことをいたしましたが、いまから先は、よその国でもたくさん出ておりますが、そんなことを出さないように、いままでも先取りしたような形でありますが、結果としてこうなったことは非常に残念でございますが、いまから先のことについては懸命にひとつ疑問のないようにやってまいりたいと、こう思っております。
  404. 桑名義治

    桑名義治君 労働大臣、いまのお話は私の質問に答えていませんよ。前に亡くなっていらっしゃる方がいま明らかになったんだから、その人たちの労災をどうしますかと、こう聞いているわけですよ。そのためには政治的判断が要るがなと。
  405. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) これは労働省といたしますと、こういう事件のあったときですから、従来のカルテをかれこれ見まして、権威のある専門家の方々、坂部さんも入っておりますが、こういう方々によって検討していただきまして、それぞれの処置をとって万全を期したいと、こう思っております。
  406. 桑名義治

    桑名義治君 それは先ほど申し上げましたように、前に亡くなった方ですからデータ、カルテがあるかないかもわかりません、十年前の問題ですから。ただ、そこで重合がまで働いておったというこの事実だけはあるわけですよ。だから、その点どんなに慎重にと言ったって、医学的には因果関係が証明できない場合がある。その場合どうしますかと、こう聞いているわけです。
  407. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 直ちに、医者じゃありませんからどうこうということをすぐこの場で言われませんけれども、そうした因果関係を調べながらも、こういう大事なときでありますから、万全の措置を講ずるように考えてまいりたい、こう思っております。
  408. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 関連。  さっきから専門家と相談してとか、いろいろおっしゃっておりますけれども、これだけの大問題であるし、大臣は先ほど来労働省の方としては先取りをしてきたと、そう言われるなら、もっと具体的なきちんとした機関なり研究班というふうなものをきちんとつくって、それでやらなければ何の意味もないし、ただやりますだけではいけない。いま言われた過去のことをどうするのか。データがない、追跡調査もなかなか大変ですけれども、どこまで可能なのか。やはりきちんとしたことをやらなければ、ただ専門家とか、専門家といったっていろいろあるわけでして、どういうふうなメンバーでどういうふうにするのか、その点まできちんとお答えいただきたいと思います。
  409. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 確かに非常に古い時代の案件でございますと、なかなかデータがないわけでございますが、最小限、死亡の場合には各法務局に死亡診断書が残っておりまして、そういうものをできるだけ私ども集めるという努力もいたしておるわけでございます。しかしながら、先ほどからお答えいたしておりますように、いままで申請がありました件につきましてはすべて労災の業務上の認定をいたしておるわけでございます。ただいまもお話がありましたように、重合がまの中の清掃というようなことでありますれば、非常に高濃度の暴露ということが予想されるわけでございますから、そういった点も十分考慮に入れまして、専門家によって検討をしていただきたいというふうに私どもも思っておるわけでございます。  なお、先ほど大臣も申し上げましたように、こういった塩ビモノマー、それから先般出ました六価クロムその他、最近職業性のがんというものは非常に重要な問題に国際的にもなっております。そこで、労働省におきましても、そういった予防的な面で職業がんの専門委員会というものをつくっております。それと同時に、業務上外の認定に関する職業がんの専門家会議というものも専門家を集めてつくっております。それから塩ビにつきましては、特に先ほどから名前の出ております坂部博士、それから名古屋のときに非常に担当されました稲垣さんなども参考人として入っていただくような、小人数の専門家会議もあわせて持っているようなわけでございまして、そういった場面におきまして、十分いまお話のございましたような点を検討いたしまして、その決定をいたしたいというふうに思っているわけでございます。
  410. 桑名義治

    桑名義治君 いまの答弁ではまだまだ私は了解をいたしません。  そこでまた具体的な問題から入っていきたいと思います。労働省は塩ビモノマーに関しての行政指導を行ったのは昭和四十五年の初めであったと思いますが、その内容及びそれに至る経緯を説明願いたい。
  411. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) お答え申し上げます。  先ほども大臣から申し上げましたように、昭和四十四年にたまたま東京で国際労働衛生会議が開かれました。そしてその席で、この塩化ビニルモノマーによる指端骨溶解症という問題が初めて取り上げられて、大変ショッキングなことであったわけでございます。そのときに私どもは、それに基づきまして直ちに「塩化ビニルモノマー取扱い作業の管理指針」という、こういうものを塩ビ協会につくらせまして各工場に徹底をいたしました。その後さらに、四十五年の十一月に塩ビの障害予防についてということで通牒を出したわけでございます。その一連の措置の内容は、保護具の問題でございますとか、あるいは重合かん内の清掃の作業手順の問題でございますとか、あるいは救急処置の問題でありますとか、教育訓練の問題でありますとか、健康診断の問題でありますとか、そういうものを指示してまいったわけでございます。  なお、その後四十九年の一月に肝血管肉腫の問題が出ましてから、さらに昨年の六月には緊急措置の通達を出しまして、抑制濃度、これを従来のものからずっと下げる、五〇PPm以下に下げるというようなこと、あるいは作業環境の測定、管理区域の明示、排ガスの処理、特別教育、健康診断等々の指示をいたしました。さらに、その後一年たちまして、ことしの六月には……
  412. 桑名義治

    桑名義治君 局長ね、私が尋ねているのは、四十五年の初めの指導までの経過をお尋ねしたわけですよ。
  413. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) はい、失礼いたしました。そういうことで逐次やってまいっております。
  414. 桑名義治

    桑名義治君 四十五年の通達でございますが、私もここに手元にあるわけです。この手元にあるのは「重合構内作業はできるだけ行わないように工夫すること。」、「入缶時は、労働衛生保護具を着用すること。」、「健康診断を実施すること。」、これだけです。三項目です。あなたはずいぶん細かい指示をしたように言われておりますが、四十五年度の指示はわずか三項目ですよ。どういう内容で健康診断をやらなければならないというのは、その後の問題なんです、どうですか、その点は。
  415. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 最初の段階でございますので、先ほど申し上げました塩ビ協会にまず自主的な管理指針をつくらせまして、それをつけて通達を流しておりますので、通達の文面はいまお挙げになりましたように非常に簡明でございますが、この管理指針の中にはかなり具体的ないろんな措置が書いてあるわけでございます。いまおっしゃいました健康診断につきましても、たとえば、就業時並びに一年以内ごとに一回定期的に次のことをやれというようなことで、いろんな、問診でありますとか、尿の検査でありますとか、手指のエックス線の検査でありますとか、GOT、GPTによる血液検査でありますとか、そういうようなものを織り込んだものを当時持たしておるわけでございます。
  416. 桑名義治

    桑名義治君 四十五年の指示はあなたがおっしゃったような指示じゃない。三項目なんです。だから、私はまずこれに対する出発の姿勢は、ずいぶん先取りをしたというお話でございますけれども、現実は非常にこういう簡明な事柄。第一重合がまに入るなと言ったって、これはあなた仕事で入れますよ。そこら辺がね、まず出発が非常に甘かったということを最初に私は指摘しておきたいと思います。  さらに、この通達が出た後までも、今日まで重合がまの清掃は続けられているわけです、現実は。そうして考えると、これは清掃するなと言う方が無理じゃないですか。この工場が存在する以上、この製品をつくる以上、重合がまの清掃はやるなと言ったってこれは無理な話ですよ。だから、こういうできない指示を出したってだめですよ。それから健康診断の問題にしましても、また後ほどこの問題については詰めたいと思います。  とにかく、先ほどもお話しをしましたように、昭和四十七年の六月には作業員三人が重合がまの中で倒れるという事故が発生しております。これは当然ですね、入るなと言ってもこれは入ったわけです。これはしようがない、仕事ですから。そういうふうになるわけですが、要するに、工業会に対して行った行政通達は全く実施されていなかったということが私は言われるんじゃないかと思う。しかも、いま申し上げた昭和四十五年の指示は、それぞれの会社企業に直接指示をしたのではなくて、工業会に指示をしたんでしょう。どうなんですか。
  417. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) お答え申し上げます。  各業界に対する指導のやり方にはいろんな方法がございまして、確かにこの最初の四十五年のやり方は、まず塩ビ協会自身で管理指針をつくってほしいということでそれをつくってもらいまして、その徹底を図ったわけでございます。しかしながら、この塩化ビニール協会、この関係は大変自主的な規制が徹底をいたしておりまして、後ほど出てまいりますが、この管理濃度の測定基準なども、塩ビ協会それから化学労協と私どもと三者で相寄りまして、意見の一致したところで濃度を決めるというふうな協力を常にやってまいっておるわけでございますから、協会を通じてやったから徹底しないということには必ずしもならないと思うわけでございます。
  418. 桑名義治

    桑名義治君 だから、そのために何回も何回も同じことが続いているじゃないですか。四十五年に出しておりながら、四十七年の六月まで、ときには作業員が三人重合がまで倒れている。その後ずうっと四年間野放し状態で、今日こういう病状がぱっと出てきたんじゃないですか。そう認識せざるを得ないじゃないですか。どうですか。追跡調査しましたか。
  419. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) まあそういう指針が十分徹底したかどうかという点については個別に問題がないわけではないと思いますけれども、そのときも、先ほど大臣もちょっとお触れになりましたように、従来非常に裸に近いような状態で入っていたものを非常に重装備をするとか、あるいは重合がまの清掃そのものをジェット噴射式にするとか、いろんな改善を積み重ねてきておるわけでございます。  そこで、この職業がんでございますが、クロムのときでもそうでございますけれども、非常に遅発性疾病とでもいいますか、十年、二十年たちまして発症するというのが特徴でございまして、したがいまして、いま強調されております四十五年から四十七年のときの問題というよりも、もっとむしろその前のときの重合がまの作業というものが非常に大きな原因になっているんじゃなかろうか。したがって、まだこれからも発症例がある程度出ざるを得ないという点は大変私どもも心配をいたしておるわけでございます。
  420. 桑名義治

    桑名義治君 いみじくもいま局長からお話がありましたように、実際に指示はしたけれどもその追跡調査はしてない、やりっぱなしということになる。国際労働衛生会議が四十四年の九月二十二日に東京で行われた。そのときに非常に心配だったと、こういう指端骨溶解症という障害が起こるということで。だから四十五年の初めに労働省から三つの指示を出したと。なぜもう少し徹底した指示を出さないのですか。そこら辺にいままでのいわゆる公害というか、あるいは労災関係の労働省の取り組む姿勢が私は端的にあらわれているんではないか、こういうふうに思うわけです。  そこで、四十九年の六月十一日に各企業に出した塩ビ工業会の健康診断暫定基準、これに関しても問診を中心にしたもの。しかも、さらに同年の六月二十四日に労働省が出した健康診断に関する通達、これも全く塩ビ工業会と同じ内容なんですね、ほとんど。そうすると、労働省は何を、あるいは厚生省は一体何をやってきたのかと、こう言わざるを得ないわけですが、そういう労働省としての指導性というものがほとんどうかがわれない、こういうふうに言わざるを得ないわけですが、どうですか。
  421. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 職業病の防遏という問題は、私ども行政官庁の指導にも大いに責任がございますけれども、何と申しましても数多くの工場、多数の労働者の問題でございますから、現場において一番よく知っておられる労使の取り組みということが何より大切でございます。安全衛生法におきましても、安全衛生委員会などでは半数の委員は労働組合の推薦でなければならないという規定があるほどでございます。そこで、こういった問題につきましても、塩ビ協会あるいは関係の労働組合、この場合は化学労協、太田薫さんが委員長でございます。そういうものと私どもと三者でこの対策を推進していくということがむしろ非常に効果的ではなかろうかということでやったわけでございまして、したがいまして、私どもの指針とこういったところの指針とがマッチをいたしておりますが、それゆえに指導性がないという御批判でございますけれども、それは私どもはそうではない、非常に関係者の御協力を得てやっているというつもりでございます。
  422. 桑名義治

    桑名義治君 そういう物の言い方は責任回避というものなんですよ。もう少し労働省が、こういうふうないわゆる労災関係についてはあなた方がむしろ責任を持って指導していくことが、これが最も大事なことじゃないですか。工業会の方が現場だからよく知っているからというような物の言い方、これは私たちは納得できませんよ。実際にもう一遍振り返ってみたらどうですか。  日本で塩ビモノマーが昭和十六年に生産されて以来三十四年になる。諸外国に患者が出てから十年目、そして日本で塩ビモノマーの急性中毒による死亡者が出てからもうやはり十年、さらに四十四年の九月に東京でICOH、国際労働衛生会議が行われ、塩ビの毒性が発表されてから六年たっている。それでこの間、ことしの六月の二十日に出された健康診断に関する通達を含めてわずか三回ばかり出しているわけですが、通達を三回ばかり出している。  しかし、これは稲垣先生の言をお借りすると、いままでの労働省の、あるいは塩ビ工業会のこの健康診断の中身だけでは因果関係は出てこない。それと同時に病人のいわゆる発見はできないと、こういうふうに言っているわけです。いわゆる色素沈着を見るBCP検査、アイソトープ使用による肝脾シンチグラムの検査が一次健診に採用されない以上はなかなか患者は発見することができないと、こう言われているわけです。おたくの方の通達の内容見たら、ほとんど問診が中心です。そうすると、こんなことでこういう病気がわかるわけがない。一次健診で見つかるわけはありませんよ。これはいろいろな現場の問題があります。いろんな問題がある。だけれども、もう少し真剣に、皆さん方が先ほどのような経過を踏まえながら真剣に取り組むならば、このような重大な事態を招かないで済んだのではないかと、こう言わざるを得ないと思うのですが。どうですか、これ、大臣にお伺いしたい。
  423. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 内容にお触れになりましたので、その点をお答え申し上げます。  健康診断項目ができるだけ客観的に科学的に十分なものであるということが必要なことは仰せのとおりでございます。ただ、私どもの通達等に挙げております一次健診、二次健診の内容も必ずしも問診だけではございませんで、GOT、GPT等々が一次健診にもありますし、二次健診にはいろんな詳しい検査がございます。  いまお挙げになりました名古最大学の稲垣医師の提言でございますが、稲垣先生は、先ほども私申し上げましたように、私ども専門家会議にもしょっちゅう来ていただいておりましてよく連絡がとれておりますが、確かに非常に画期的な御意見を提言していらっしゃいます。ただ、私どもBSPを使いませんのは、精度が非常に高い検査方法であるということは承知をいたしておりますが、ショックを起こすというような危険性も指摘されておりまして、したがいまして、名古屋大学のように非常に設備の完備した、しかも専門家が行われる場合はいいんですけれども、私どもの規則でいわば一般的に強制する検査方法としては必ずしも適当ではないというふうに私ども考えておりまして、そこを入れていなかったわけでございます。それからシンチグラムにつきましても、やはり精度は高いんですけれども、一般化されておりません。大変むずかしい検査でございまして、処理能力が要るということから一次健診には入れておりませんが、二次健診において実施することにいたしておるわけでございます。
  424. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) そういう御病気になり、あるいは亡くなった方は本当にお気の毒だと思いますが、こうしたときにでもなお塩ビ関係の工場労働者は数千人おられると思うのです。ですから、こういう国会での御議論、それをまた一つの大きな反省の材料として万全を期してまいりたいと、こう思っております。
  425. 桑名義治

    桑名義治君 そういうようになかなか発見しがたいわけです。過去に亡くなった方々に対してはまた当然これは追跡調査をやっていただかなきゃならないわけでございますが、亡くなった方に対して、昔のカルテの上から発見することはまた非常にむずかしい。そこで、先ほどお尋ねしたように、そういうふうな医学的な因果関係が明快にならなくても、重合がまで何年という長い間働いていた、そうしてこういう病状で亡くなったという、そういう事実関係の上から労災に認定ができますか、政治的に。それを尋ねているんです。
  426. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 桑名さんのおっしゃったようなことも含めて、そういうときの資料にしたいとこう思っております。
  427. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、次の問題に移りたいと思いますが、企業の姿勢にも、私は先ほどの局長の話じゃないけれども、問題があると思います。これは私は否定しません。  そこで、今回の三井東圧からたくさんの患者が出たということは、これはたまたま名古屋大学病院の稲垣先生に健診を依頼したために発生した問題だと思うんですよ。そこで三井東圧名古屋工場、ここで私はさっき要求した資料が欲しかったわけです。企業の中を見てみますと、三井東圧化学というもの、名古屋工場というのは四十九年の三月では六万トンのいわゆる生産量です。業界で第十三位です。第一位は鹿島塩ビモノマー、ここは三十二万トンの生産量を誇っておるわけです。こういうように、決してこの三井東圧化学というのは大きな工場でもなければ、むしろ下位の方なんです。しかも歴史的にも非常に浅いんです。そうすると、こういうような莫大な生産量を誇っているような大きな会社においてはまだまだ潜在的な病人がたくさんいるんじゃないか、こういうふうに私は考えているわけでございますが、この問題に対して、政府はすぐに企業に対し専門医の健診を塩ビ関係者に受けるように徹底した指導をすべきだと思いますが、どうですか。
  428. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 直ちに健康診断の徹底をやるようにいたしましょう。
  429. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、ここでお願いをしたいことは、追跡調査はいつごろをめどにやられますか。
  430. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) お答え申し上げます。  先ほどの九月に出しました最終の通達で各企業で改めて健康診断をやってもらっておりまして、それからまた、協会に対してもできるだけ退職者、下請等も含めて改めて健康診断をやる、追跡調査をやるという指示をいたしております。そこで、健康診断による結果は十月末に集まる予定でございます。まだ若干集まりが悪うございますが、督促をいたしまして集計をしたいと思っております。それから退職者の中で特に亡くなられた一方、これについては徹底的な追跡調査をやりたい思っておりまして、できれば年内に何とかして結果を得たいというふうに思っておる次第であります。
  431. 桑名義治

    桑名義治君 ここで特にまた問題にしたいのは、各企業に対していわゆる追跡調査なりあるいはまた身体検査なりをするというお話でございますが、先ほど申し上げましたように、この因果関係をはかるためには、いまの労働省のいわゆる診断の基準では、あるいは工業会の診断の基準ではとうてい因果関係が出てこない、病人の発見はむずかしい、こういうふうに言われているわけでございますので、ここでこういう医学専門によるプロジニクトチームを編成して各従業員に対する診断をする必要があると思いますけれども、この点大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  432. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) お答え申し上げます。  先ほど診断基準につきまして内容について申し上げましたけれども、確かに先生御指摘のように、いまの診断基準がもう絶対にこれでいいと私ども思っているわけではございません。むしろ、非常に新しい疾病でありますので、解明はさらに進めなければなりませんし、それから医学の方面の進歩も日進月歩であります。そういう意味で、稲垣先生の御提案も含めて今後内容についてもさらに検討をいたしたい。  それからいま御提案専門家のチームの問題でございますが、先ほど申し上げましたように、予防面につきましても、あるいは補償面につきましても、特に塩ビそのものにつきましても各界の権威者を集めて専門家会議は持っておりますが、なお、さらに効果を上げるためにこれを総合的に、それからさらにまた新しい方々も含めてというようなことで効果が上がりますれば、そういう方法も考えられる。十分御提案の趣旨を考えてやりたいと思います。
  433. 桑名義治

    桑名義治君 ここで総理に御意見を伺っておきたいと思うのですが、これはきょうの夕刊でございますけれども、「全国各地の労基局がまとめたところでは、東洋曹達」云々と、あるいはまた三井東圧、三菱モンサント化学、あるいは日本ゼオン、こういったところの従業員の中で肝炎あるいは肝臓障害、あるいは急性中毒死、こういった事例を合わせると数目に上るのではないか、こういうことが報道されているわけです。こういう非常に重大な問題を巻き起こしたわけでございます。そこで、総理としてのこの問題に対する行政指導、姿勢をどのようにおとりになるのか、これを最後にお聞きをして、この問題は終わりにしておきたいと思います。
  434. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 一つには企業の社会的責任、これは通産省などを通じて徹底をさす必要がある。どうしてもこれからの企業というものは公害防止というものに対して熱意を持ち、従業員はもとより地域住民の生命、健康を守るということを企業経営の基礎に置かないと、これからやっぱり国民の理解、支持を得た企業にはならないでしょう。それが一つ。  もう一つは、やはり労働省などにおいても、いろんな新しい物質が出てくるわけですからね、厚生省も関連すると思うのです。新規ないろんな物質に対しての、まあ衛生試験所などにおいてやってはおるんですけれども、もう少しこれは徹底する必要があるでしょうね、新規の物質に対して。それからまた各事業場に対しての、労働省などがこの従業員の健康を守るということに対して、今後この工場の健康診断であるとか、あるいはまた規制の措置であるとか、こういうものに対して一層今後この点に対しては力を入れていく私は必要がある。企業、従業員、またこれに対する新しい物質に対しての検査制度、こういうものがやっぱり総合的に強化される必要があると考えます。
  435. 桑名義治

    桑名義治君 塩ビの食品包装あるいは容器、こういった問題について先進諸国ではどういうふうな措置をとられておるか、まずお伺いします。
  436. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) お答えいたします。  現在容器そのものについての規制ということにつきましては、アメリカのFDAがこれを規制したらどうかという提案をいたしているという状況と聞いております。
  437. 桑名義治

    桑名義治君 アメリカのFDAはまだ規制はしておりませんか。
  438. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) 九月三日にこれを規制したらどうかという提案、プロポーザルをいたしまして、その後六十日間各界のコメントを聞く猶予期間ということで、そのコメントを聞いているという段階と聞いております。
  439. 桑名義治

    桑名義治君 日本の規制状況はどうですか。
  440. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) 現在のところ特に規定はいたしておりません。
  441. 桑名義治

    桑名義治君 厚生省は塩ビの容器の塩ビモノマーの含有量の調査、これはいつ行いましたか。データを教えてください。
  442. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) 厚生省が国立の衛生試験所につきまして、アメリカのFDAの勧告もございまして、その後に衛生試験所で調査いたしておりましたが、現在のところ、ちょっとその日にちは覚えておりませんが、このたしか九月の末か十月の初めというときに行ったと記憶しています。
  443. 桑名義治

    桑名義治君 そのデータを公表してください。
  444. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) 衛生試験所で行いましたのは、たしか十五内外だったと思いますが、その十五内外の検体につきまして検査をいたしましたのが、先ほどの時点において検査した検体でございます。
  445. 桑名義治

    桑名義治君 その中身を、どうだったか。
  446. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) 中身でございますが、それは衛生試験所で、市販をしておりますしょうゆ、油等につきまして、しょうゆ、油の容器につきまして検査をいたしました。
  447. 桑名義治

    桑名義治君 分析結果を聞いているんじゃないですか。
  448. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) その国立衛生試験所の検査の結果でございますが、そこでは容器はすべて一PPm以下の塩ビモノマーの含有量でございまして、その食品の中からは塩ビモノマーは検出されなかったという結果でございます。
  449. 桑名義治

    桑名義治君 私もいわゆるデータは持っているわけですが、全く一緒なんですよね、工業会と国立衛生試験所のデータが。いわゆる検出せずですよね。ところが、東京都が十月の十一日に調査の中間発表をしております。この中間発表によりますと、これは八十八検体の中で十七が、いわゆるモノマーが容器の中からも検出をされたというデータが出ております。しかも、多いのはしょうゆの容器から一二四PPm、この場合は食品の中にも〇・二PPm入っております。同じくしょうゆの検体の中から一〇八PPm、これもいわゆる食品の中から〇・〇五PPm、あるいは食用油の中からも二・六PPm、四・六PPm、三・五PPm、こういうふうに十七検体、ソースのびんからも全部が出ております。ところが、おたくたちのいわゆるデータというのは、工業会のデータやあるいは国立衛生試験所のデータというのはみんなゼロなんです。どうなんですか、これ。
  450. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) 先ほど申しましたように、国立衛生試験所が私どもと話をいたしまして自発的にまず探してやった検体からは出ておらなかったわけでございますが、その後東京都からいま先生がおっしゃいましたようなそういうデータがあるということを伺いまして、さらにその東京都の研究所で調べました、どのようなメーカーのどのようなものであるかという銘柄を確認いたしまして、それと同じようなものを国立の衛生試験所でもクロスチェックをするということで、現在衛生試験所に依頼をしているという状況でございます。
  451. 桑名義治

    桑名義治君 国立衛生試験所の中では、実際にはゼロということになっておりますけれども、しかし東京都のデータではこういうデータが出ているわけです。この問題について大臣、どのようにお考えですか。
  452. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 東京都の行いました検体と国立衛生試験所で行いました検体との間に違いがあるようでございます。一般的に申しまして、この塩ビ樹脂の容器の製品が古いものほど実はモノマーが出るということでございまして、恐らくその差はそうした容器の製造の古いもの、新しいものという差からそういう結果が出たものというふうにわれわれは推察をいたしております。
  453. 桑名義治

    桑名義治君 まあその論議を一歩譲りまして私は論議を進めたいと思いますが、そうすると、古いものはずっといまから先、放置しますか。早急にこれは回収しなければならなくなりますが、どうですか、その点は。
  454. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 古いものにつきましては業界が自主的にこれを回収するということでございますが、これについて厚生省といたしましてもこれを督励をいたしたいというふうに考えております。
  455. 桑名義治

    桑名義治君 そういう甘い考え方だからだめなんですよ。回収の指示をしているから、だから大丈夫だという考え方がまずいんですよ。実際に東京都から出ている資料を、いまも申し上げましたように、材質の中から一二四PPmなんてとんでもない数値ですよ。しかも、その中に〇・二PPmのいわゆる塩ビモノマーが溶け込んでいるというのが現実に出ているんですから。これがあっちこっちにまだあるということは当然考えられるでしょう。だから、そうなってくれば古い検体だから出たと言うなら、古い検体は全部回収してくださいよ。
  456. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、現在出たというのは相当古い時点において製造されたもので、先ほどの数の上から申しますと、実際に出回っているものほとんどすべては新しいものであるというふうに聞いております。そういうことでございますので、現在残っているものは非常に少ないのではないかというふうに考えます。なお、この問題につきまして、厚生省といたしまして容器の規格基準というものをできるだけ早く設定するということによりまして、これに対処いたしたいというふうに考えております。
  457. 桑名義治

    桑名義治君 さっきから言っているように、古い容器には製造年月日は書いてありませんよ、こういう容器は。東京都は古いやつばかりよってやったのですか。あなたの論理からいくとそうなりますよ。
  458. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) 先ほど申し上げましたように、最初の第一回の衛生試験所の検査の中で出てこなかったというのは、通常そこらにあるということで探してきた検体を検査したものでございます。で、現在東京都の方で問題になったということでクロスチェックをしておるわけでございますが、非常に数が少ない、なかなか見つからないものであるというので、なかなか全部探されないといったような状態に現在あるわけでございますが、できるだけ探してクロスチェックをするということをいまいたしておるわけでございます。
  459. 桑名義治

    桑名義治君 とにかくあいまいなあれですよ。東京都は八十八の検体を調べているのですから、その中の十七という比率は高いですよ。わずかな数があるんじゃないですよ。相当数まだ出回っているということにつながりますよ。どうですか。
  460. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) 先生おっしゃるとおりでございまして、そういうことでございますので、業界としてはできるだけこういうものは出回らないようにということで、現在自主的に回収をいたしておるということで、私どももそれをできるだけ応援するという形にいたしておるわけでございます。
  461. 桑名義治

    桑名義治君 じゃあ、どういうふうに応援するか、教えてください。
  462. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) 衛生試験所を通じまして現在調べておるわけでございますが、その中から出るものがございましたならば、それはどこのメーカーのものか、それからどこのびんを製造したメーカーであるか、さらに、そのびんを製造するびんメーカーがいつそれを仕入れたものであるか、あるいはそれがどこから供給されたものであるかというルートを全部明らかにいたしまして、そういう点からその回収ができるようにしたいというふうに考えております。
  463. 桑名義治

    桑名義治君 先ほどから人体に対する影響、あるいはまたこの容器から検出されるいわゆる塩ビ、こういう危険性をはらんだものでございますので、私は早急に厚生省としてはこの基準値を決めるべきだと。これはどうですか。    〔委員長退席、理事柳田桃太郎君着席〕
  464. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 今日の問題にかんがみまして、私どもとしてはこの基準値をできるだけ速やかに決めたいというふうに考えております。
  465. 桑名義治

    桑名義治君 では次に、塩ビに関係しましてさらにまだ質問を続けていきたいと思います。  四十九年の六月五日に厚生省の薬務局長から各都道府県の衛生部の方に、スプレーの、いわゆる殺虫剤の回収の通知を出しておりますが、その経過を説明していただきたいと思います。
  466. 上村一

    政府委員(上村一君) 昨年の一月、アメリカで塩化ビニルのモノマーからポリマーをつくる過程でがんが発生した、そういうことからアメリカの方で、去年の四月でございますか、塩化ビニルモノマーを含有するスプレー式の殺虫剤の製造、販売の中止をしたわけでございます。そういう情報を、私ども四月下旬から五月上旬に得たものでございますから、そういう情報に並行いたしまして、在外公館を通じて資料提供を求めまして、そして中央薬事審議会で審議をいたしました結果、六月一日、回収を指示したものでございます。現在、毎月各メーカーからその保管状況を報告を求めておるわけでございますが、十一月一日現在で約二千万本でございます。
  467. 桑名義治

    桑名義治君 塩ビモノマー入りの殺虫剤は、量がどのくらいになると危険物の対象になるんですか、これは消防庁の方。
  468. 佐々木喜久治

    政府委員佐々木喜久治君) 殺虫剤はおおむね灯油に溶解されまして使用されますので、これの危険物の規制の対象になりますのは五百リッターからでございます。
  469. 桑名義治

    桑名義治君 そうしますと、その保管状況はどういうふうになっておりましたか。
  470. 佐々木喜久治

    政府委員佐々木喜久治君) 昨年の六月に塩ビモノマー入りの殺虫剤の回収が厚生省から指示をされましたので、消防庁といたしましては、危険物の保安という観点から、昨年の十一月十八日付をもちまして全国の消防機関に、塩ビモノマーを含有する回収エアゾールの貯蔵の実態を調査させたのでありますが、これが昨年の十二月二十日現在におきまして、貯蔵の事業所数が三十七、そのうち許可施設に貯蔵しておるものが三十三、無許可の施設に貯蔵しておるものが十六、こういう貯蔵施設の状況でございまして、このエアゾールの本数は、許可施設に約六百五十万本、それから無許可施設に貯蔵しておりましたものが約四百七十万本、合計で約千百二十万本ということになっております。したがいまして、この無許可施設についての貯蔵につきましては、直ちに必要な指示をさしております。
  471. 桑名義治

    桑名義治君 四十九年の十二月に不法投棄した例があると聞いておりますけれども、その事実関係を説明してもらいたい。
  472. 佐々木喜久治

    政府委員佐々木喜久治君) 消防機関の方で調査をいたしましたのは、千葉県の業者が塩化ビニルモノマーのエアゾールを捨てたというような情報がございまして、これについて調査をいたしたのでございますが、千葉県の市川市におきまして、このエアゾールを貯蔵しております業者が二社あったわけであります。そのうちの一社は倉庫業者でございまして、これは許可施設内に貯蔵しておりましたので、これは適法な貯蔵で約二十四万本貯蔵しておったわけでありますが、もう一社につきましては無許可施設に貯蔵をするというような内容でございましたので、これは直ちにその貯蔵についての指示をいたしたわけであります。これにつきまして、この業者が必要な貯蔵エアゾールを横浜市の業者に転送をしたということがございまして、さらに横浜市につきまして調査をいたしたのでありますが、この業者は千葉県の業者から約三万本、これは両方の証言が合っておりますが、約三万本保管を依頼をされておりまして、この三万本のエアゾールにつきましては、工場内でガスを抜いて残った原液を千葉県の業者に転送したと、こういう事例がございました。したがいまして、エアゾールにつきましては、この業者についての保管の実績はなかったわけであります。
  473. 桑名義治

    桑名義治君 いまの消防庁のお話によりますと、エアゾール容器の貯蔵本数の約半数は、これは無許可の貯蔵庫の中に納められておった、あるいはまた不法投棄した、そういう事実があったと。工場の中で抜いたというんですから、これはちょっと私としては常識的には考えられない本数が抜かれておるわけです。この問題についてはどういうふうにお考えになりますか、厚生省としては。これは消防庁の問題じゃなくて厚生省に聞きたい。
  474. 上村一

    政府委員(上村一君) いま六十カ所に保管されておるわけでございます。それで、御指摘になったような事実はございます。これは一つは石油が入っておりますから消防法で規制を受ける。一方、塩ビが入っておりますので、販売を禁止した。それで、二千万本あるわけでございます。で、私ども、まず消防法の規定を守って倉庫できちんと保管をしてもらいたいということは口をやかましく指導はしておるわけでございます。そうして、毎月その状況の報告もとっておるわけでございますが、こういった事例があったことは非常に残念だというふうに考えております。
  475. 桑名義治

    桑名義治君 そこでちょっとお聞きしたいのは、消防庁が確認した数ですね、これは十一月現在では一千百万本と、こういうふうに言われているわけです。厚生省はこの時点ではどの程度の本数、何本だけ掌握しておられましたか。
  476. 上村一

    政府委員(上村一君) 四十九年の九月三十日現在で千四百七十五万本、それから十一月三十日現在で千九百二万本でございます。
  477. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、消防庁が確認した数は一千百万本、そうして厚生省がいわゆる確認をしておる数が一千九百二万本。そうすると約八百万本が、どこか行方不明ということですよ。これはどうですか、どうなっているんですか。
  478. 上村一

    政府委員(上村一君) 私ども毎月確認しておりますので、いま医薬品あるいは医薬部外品である塩ビのスプレー殺虫剤というのは約二千万本、確かにございます。
  479. 桑名義治

    桑名義治君 ところが、消防庁が確認した数は一千百万本じゃないですか。どんなに誓ったって、あなたの方はただ報告を受けているだけです。消防庁は現実に現地に行って見ているんですよ。そうして、これだけの約八百万本という数が行方不明です。先ほど確認しましたように、過去に不法投棄した場所があるわけですから、じゃ、この八百万本というのは不法投棄したと考えられていいですか、どうですか。
  480. 上村一

    政府委員(上村一君) ことしの十月三十一日現在におきまして、さらに県の方にも立ち入りさせて調べました数が二千万本でございますから、不法投棄をされたというふうなことはないというふうに考えております。
  481. 桑名義治

    桑名義治君 じゃ、どこにあるんですか。そんなことで納得しませんよ。八百万本、絶体出てこない、あなたの答弁から。
  482. 上村一

    政府委員(上村一君) いや、これは六十の倉庫の所在地も全部確認しておるわけでございます。したがいまして、これは消防庁の方からあるいは御答弁があるべきかとも思いますけれども、消防庁で把握されましたのは消防法の規制との関係のある本数を規制されましたので、少量の貯蔵というところまでについては、そういったずれがあるんじゃないかというふうに思うわけでございます。私どもその二千万本というのは確かにあるというふうに確信いたしております。
  483. 桑名義治

    桑名義治君 じゃ消防庁の方から。
  484. 佐々木喜久治

    政府委員佐々木喜久治君) 消防庁の調査は、先ほど申し上げましたように、昭和四十九年の十二月二十日現在におきまして全国の消防機関が現地に、倉庫に立ち入り調査をいたしまして調べた数字でございます。
  485. 桑名義治

    桑名義治君 全然話が合わないじゃないですか。
  486. 上村一

    政府委員(上村一君) ちょっと先ほど言葉が足りなかったと思いますが、ちょうどこの塩ビの殺虫剤の回収をいたしましたのは六月でございます、回収の指示をいたしましたのは。これ夏場の商品でございますから、すでに流通の段階に相当入ってきている。そこで、毎月報告をとりますと月を追ってふえてきておるわけでございますね。先ほどお話しになったように、消防庁がお調べになったのは昨年の十二月、私がいま申し上げましたのはことしの十月の末でございます。それまでに二千万本流通の段階から回収されてきた。と申しますのは、一つは、これを貯蔵する倉庫にも限度があるものでございますから、ある場合には流通の段階の倉庫でとめておいてほしいというふうな指導したこともございまして、それが次第次第に回収されて現在の二千万本になった。これがほぼ尽きたものだというふうに考えておるわけでございます。
  487. 桑名義治

    桑名義治君 じゃあ、厚生省ではどことどことどこに野積みになっているか、あるいは保管してあるか、わかっていますか。そこまで責任を持たなきゃなりませんよ、そういう答弁するなら。
  488. 上村一

    政府委員(上村一君) これは十二の県、それから三十一のメーカー、六十の倉庫、場所、全部把握しております。資料要求がございまして差し上げたと思いますが。
  489. 桑名義治

    桑名義治君 冗談言いなさんな、あんた。はっきり言ってくださいよ。わからないから聞いているんじゃないの。何が資料来ていますか。来ていませんよ。
  490. 上村一

    政府委員(上村一君) これ、どうしましょう、全部六十カ所読み上げましょうか。
  491. 桑名義治

    桑名義治君 読み上げなさい。
  492. 柳田桃太郎

    ○理事(柳田桃太郎君) ちょっと待ってください。それを差し上げて。
  493. 上村一

    政府委員(上村一君) それじゃ、改めましてお届けするということでいかがでございましょうか。
  494. 桑名義治

    桑名義治君 いま出してください。
  495. 柳田桃太郎

    ○理事(柳田桃太郎君) いま差し上げなさい。
  496. 上村一

    政府委員(上村一君) いま私一部しか持っておりませんで、これは答弁するときに要るだろうと思います。
  497. 柳田桃太郎

    ○理事(柳田桃太郎君) 至急に持ってきてやってください。
  498. 上村一

    政府委員(上村一君) それでは至急に差し上げるようにいたしたいと思います。
  499. 桑名義治

    桑名義治君 約八百万本の問題につきましては、これは紛失の問題については納得しません。これは後ほどまた追及していきたいと思います。  で、この危険物を放置しておく問題について、業者は大変に困っているわけですよ。厚生省はこの処理方法をどういうふうに考えておられますか。
  500. 上村一

    政府委員(上村一君) 昨年の六月から業界で対策協議会をつくりまして、安全で効率的な処理方法を検討しました。同時に、厚生省でも科学技術庁にお願いしまして、研究費の援助を受けていろいろ検討したわけでございます。その過程で出てまいりましたのが三つございました。一つは塩素化法というものでございます。一つは水中燃焼法というものでございます。もう一つは低温蒸留法というものでございますが、現在いろいろ検討いたしました結果、最初の二つ、塩素化法と水中燃焼法、これが安全でかつ無害な処理が行えるんじゃないかということで、この方法で処理をするということで目下準備中でございます。
  501. 桑名義治

    桑名義治君 その二つの方法はもうすでに決定をしているわけでございますか。
  502. 上村一

    政府委員(上村一君) ほぼ決定をしているというふうにお考えいただいていいと思います。
  503. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、次にお尋ねをしたいわけでございますが、先ほど申し上げたように莫大な数でございますので、それぞれの業界では保管に困っております。それで、中小企業的な工場もたくさんある関係で、そのためにこれをストップされたことで一億あるいは五億、いままで黒字だったのが赤字に転落したという会社も出ておるわけです。しかも、これを今度は処理をする場合には、またこの処理費がかかるということで非常に会社はいま困っているわけです。その点を考えますと、やはり倉庫の問題やその他の問題がありますので、建設的な融資の問題や貸し付けの問題や、あるいはまた技術開発を早急にやっていかなければならない、こういうふうに私は思うわけでございますが、この点についてはどういうようにお考えですか。
  504. 上村一

    政府委員(上村一君) まず、回収をいたしましたときに、中小企業庁の方にお願いをいたしまして、零細企業につきましては融資等をお願いしたわけでございます。それから、こういった処理をする場合に、処理会社に対して、これは産業廃棄物の処理ということになると思うのでございますが、何らかの融資の措置が講ぜられるように努力をしたいというふうに考えておるわけでございます。
  505. 桑名義治

    桑名義治君 通産省、どうですか、この点は。
  506. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) これの対策に必要な資金等は、設備等につきましては開発銀行、あるいはまた中小企業関係のものにつきましては政府系の三機関がございますから、それぞれ適当な方法で融資をあっせんをしたいと思います。
  507. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、もう一遍厚生省にお尋ねしたいわけですが、もう一遍確認です。この処理法の二つの方法についてはどの会社にもまだ指示はしておりませんね。
  508. 上村一

    政府委員(上村一君) 先ほど申し上げましたようにメーカーの団体が協議会をつくりまして、それから私どもの方で科学技術庁にお願いをしまして、出しました研究費の研究の成果も踏まえて、どういう方法がいいか選びましたのが二つの方法でございまして、この二つの方法について、それぞれの会社がやり方を選ぶわけでございます。私の方が、ある会社はこれにしなさい、この会社はこの方法にしなさいということを申し上げておるわけじゃございません。
  509. 桑名義治

    桑名義治君 その二つの処理方法ならばよろしいということですね。それは指示していますか。
  510. 上村一

    政府委員(上村一君) 何と申しますか、業界の団体がそういった方法についていろいろ検討しました結果、さっき申し上げた三つの方法があるけれども、塩素化法と水中燃焼法が一番いいという結論になったわけでございます。
  511. 桑名義治

    桑名義治君 この方法については厚生省は責任が持てますか。
  512. 上村一

    政府委員(上村一君) 責任が持てると申しますか、こういった処理システムを開発する場合に、プラントからの二次公爵が出ないようにやるとか、それから処理作業に従事する人たちが安全であるというふうなこと、それから可能な限り作業の工程がクローズされるという点について十分われわれも検討したつもりでございますので、こういった処理というのは初めてでございますから、完全に自信があるかと問われますと少々答えづろうございますけれども、目下で一番いい方法じゃないかというふうに考えております。
  513. 桑名義治

    桑名義治君 私がなぜこういうふうにしつこく確認を取ったかというと、株式会社ケー・アンド・エルという会社があるわけですが、これは厚生省のお墨つきといって二十社とすでに契約を取り決めているわけです。そして三分の一の前金を取っている事実があるわけです。したがってこれを確認しているわけです。
  514. 上村一

    政府委員(上村一君) これはメーカー側と、それから処理をする二つの方法がございますから二つの会社ということになるわけでございますが、処理をするに当たって、全部の会社がまだ契約をしたわけじゃございませんが、一部の会社が契約に入っている。その場合に、私ども聞いておりますところでは、処理費用の三分の一をあらかじめ払うという事実があるということは承知いたしております。
  515. 桑名義治

    桑名義治君 したがって、こういう処理会社と厚生省のお墨つきということでこういう契約を三十社が結んでおる、ケー・アンド・エルという会社とですね。したがって、この方法が最善であるかということをあなた方はチェックができるか、責任がとれるかと言うんですよ。回収だけやらして、後の処理は責任がとれぬと言うのじゃいけないでしょう、厚生省としても。
  516. 上村一

    政府委員(上村一君) 何と申しますか、さっき申し上げましたように、研究費も出して、そして研究をして、いまのところ最善であると考えられる方法を選んだわけでございます。ただ、そのケー・アンド・エルについて、これがベストであって、これに厚生省がお墨つきを与えたという事実はございません。ただ、そのメーカーの間で選ばれた方法が二つあるということでございます。
  517. 桑名義治

    桑名義治君 だから厚生省、これ責任持てるかと言っているんじゃないですか。何回言ったらいいんですか。
  518. 上村一

    政府委員(上村一君) いや、厚生省の責任と言われます場合に、薬務行政としての厚生省の責任というのは、塩ビの入った殺虫剤を市場からなくすことにあるわけでございます。そして、そういった有害物質を持っておる、有害物質の入っておる製品を処理するというのは、私、一次的にはメーカーの責任であるというふうに考えます。
  519. 桑名義治

    桑名義治君 あなたのところでストップして、回収命令を出したんだから、処理方法はあなたのところで指示しなきゃならないでしょう。
  520. 上村一

    政府委員(上村一君) 回収をしましたのは、とにかく危険だから回収をしたわけですね。とにかく、処理の方法がまだわからないけれども、緊急に回収しなければならないということで回収したわけでございます。そうして、いま申し上げた二つの方法は、厚生省としてもいい方法であるというふうに考えております。
  521. 桑名義治

    桑名義治君 まずいずれにしましても、まだ処理方法が明快にならない。しかも、このケー・アンド・エルという会社が言っているいわゆる工場の敷地には、調査の結果、これはまだ工場も何も建ってない。しかも商行為が行われているというような事実関係まで明らかになっているわけですから、この点までも目を光らして、今後この行政に責任を持って当たっていただきたい。これを要望しておきたいと思います。  さっきの懸案問題をお願いします。
  522. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 御要求の資料につきましては、設備能力のことと思いますが、なお調査中でございますので、その結果につきましては、検討の上であらためて御報告したいと思います。
  523. 桑名義治

    桑名義治君 次に、私鉄十四社が再び値上げ申請に踏み切ったわけでございますが、この問題について運輸大臣はどのようにお考えになるか。あるいはまた物価抑制という立場から経企庁長官はどのようにお考えになるか。
  524. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 私鉄十四社が運賃改定の申請をいたしておりまして、いま運輸審議会で審査をいたしております。四十七年に申請をいたしたものを、昨年の七月に運輸審議会から運輸大臣に答申がございまして、平均いたしまして二八%の運賃改定が適当であるという答申が昨年七月に出ました。その答申の際に、そのときの検討の中に昨年の春のベースアップ、それから昨年の電気料金の改定、こういうものは含まれていない。したがって、そういうただし書きで答申がございまして二八%の運賃改定をやったわけでございますが、当時からこの二つの要因がそのままになっておりまして、すでに昨年七月にスタートいたしましたときから、それらの要因で大体五百億に近い赤字が予想されておったわけでございます。その後、ことしに入りまして、物価の高騰あるいはことしのベースアップ等によりましてその赤字がさらにふえてまいりました。それらを考慮いたしまして、私鉄の方では先般、本年運賃申請をいたしたということで、現在運輸審議会で検討をいたしておるのでございます。
  525. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ運輸省の方から正式な話は聞いておりませんが、大体様子はわかっております。それから判断しますと、どうも私鉄運賃の改定はこの際やむを得ないのじゃないか。ただ、その上げ幅につきましては適正にしなけりゃならぬ。それからその上げるタイミングにつきまして、これも物価政策上慎重な配慮をしなけりゃならぬ、そういうふうに考えております。
  526. 桑名義治

    桑名義治君 今回の値上げの内容を見てみますと、京成が最高の四〇・六%、これは普通でございますが、阪急が最低の一七・一%。非常に上げ率の高いところは不動産事業に大きく手を出しているところ。しかも上げ率の非常に低いところは、これは七割以上に依存をしている近鉄、阪急等は値上げ幅が十四社中最も低い、こうなっております。そうすると、不動産のツケ、これが全部私鉄のいわゆる値上げにはね返ってきたんだ、こういうように国民は疑惑を持っておりますが、この点どういうふうにお考えになりますか。
  527. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 私鉄はそれぞれ傍糸事業をやっておるわけでございます。そこで、いまお話しのような点があってはいけないということで、運輸省といたしましては、今回の運賃申請の内容につきましては厳重に審査、検討を現在やっておるわけでございますが、特にいまお話しのように、不動産事業その他のツケが私鉄の運賃の中に入ってきておったんではいけないということから、経費の内容を査定いたします場合に、そういった利子でございますとか、あるいは配当、そういったものは鉄道の資産に一定の率を掛けまして、その範囲内でくくってしまう、こういうことで査定をいたしておりますので、そういった他の傍糸事業のしりが私鉄の運賃改定の方に入らないように厳重にその辺は検討をいたしておるのでございます。  なお、十四社のうち、いまお話しのように非常に申請ではアップ率の間に差がございますが、これは私鉄それぞれの経営の内容、現在までのいろんな差がそういうふうになっておるわけでございまして、そのとおりに認可をするわけではございませんので、いま申し上げましたような査定の仕方をやりまして、そして最終的な運賃をいかにすべきかということをきめたい、かように思っておるわけでございます。
  528. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、私鉄の四十九年度決算における鉄道部門の収入不足というのが六百十三億になっておるわけですね、一応、この書類を見てみますと。ところが、完全に鉄道部門の分を見てみますと、約二億しかなっていないわけですよ。いわゆる会社の総合支出の分で六百十三億、こういう計上の仕方をしております。したがって、金利を見てみますと、一兆八千三百億円になる、こういうふうに言われておりますが、そこでこの一兆八千三百億円に上る借入金の金利を、それぞれの部門のいわゆる固定資産の割合に応じて掛けている。そのために鉄道部門が非常に大きくかぶっていかなければならないような状況になったのではないか、こういうような疑問がたくさんあるわけでございますが、その点どうですか。
  529. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 申請は、そういうふうなやり方で計算をして申請をいたしておりますが、これを審査、査定いたします場合に、いま私が申し上げましたような方法で査定をいたしておりますので、そういった申請の内容はその点で排除されるようになっております。
  530. 桑名義治

    桑名義治君 そうしますと、今後、私鉄経営の一部でもいろいろと論議をされておりますが、統一経理基準の設定を急ぐということでございますか、決めるということでございますか。
  531. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 経費の査定の基準というものは、いま一例を申し上げましたけれども、そういうふうに各項目について一応の基準をつくって、これは従来ともそうでございますが、毎回査定をいたしておるわけでございます。
  532. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、この私鉄の経営についてのあり方というものがいろいろと論議をされているわけですね、実際に。で、その生い立ちから見てみましても、最初は不動産業から始まって鉄道業になった。あるいはまた、その鉄道業がまたさらに不動産業になっていったというような、こういういきさつがあるわけです。そういったところからこういう国民の疑問が大きくふくれ上がっていることは私は事実だろうと思います。そこで、開発利益の問題にしましても、土地を買った、そこに鉄道を延長させた、そのためにその土地が上がった。そうなってくれば、当然この利益金というものは鉄道の方に回すべきではないか。そうしてその中で赤字を補てんしていくとするならば、いわゆる運賃値上げというものは最小限度におさめることができるんじゃないかという、こういう議論がいまあるわけでございますが、この点についてはどうですか。
  533. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 詳細なことは事務当局の方から申し上げると思いますが、いまお話のように、その鉄道事業あるがゆえにあるところの傍系事業で利益が上がったというふうなもの、確かにあるわけでございます。そういうものはそういう査定の際に、やはり鉄道の方の利益として何がしかを査定するというふうなやり方をしておりますが、詳細は事務当局から申し上げます。
  534. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 開発利益の還元の問題でございますが、初めから鉄道を引くというような場合には開発利益の還元という問題があるわけでございますけれども、現在の私鉄の場合に、新しい新線を引くということは非常に例が少ないわけでございまして、したがいまして、直接開発利益を運賃査定の際に織り込むということは現在いたしていないわけでございます。
  535. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、まだまだ国民の私鉄に対するいわゆる不信というものはたくさんあるわけです。たとえば、これは資料を出してもらいたいと思ったのですが、私の方から申し上げますが、いわゆる系列会社に対する出資、貸付金、また株式、証券の投資、こういったものが非常に莫大になっておるわけですね。実際に見てもわかりますが、たとえば東急の分を挙げてみますと、関係会社の投資額が二百八十七億円、それから同じように貸し付けが百十一億円、それから債務保証、この保証金が一千六十億円、こういうふうにして計二千四百四十二億円という莫大な数が上がっておるわけです。これは各社とも同じような傾向になっておるわけです。これだけ莫大ないわゆる関係会社に投資をし、あるいは証券を買っている。こういう事実関係の中から、果たして赤字赤字と言っているけれども、上げなければならないのかと、こういう不満が国民の中には充満しているわけですが、この点はどういうふうに解釈しますか。
  536. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 私鉄が傍系会社等に融資あるいは貸し付けをするということは、事実行われておるわけでございます。で、法律のたてまえが、私鉄は鉄道事業以外にその鉄道事業の経営に悪影響を及ぼさない限りいおいてはいろいろな事業をして差しつかえないということになっておりますので、われわれといたしましては、そういう場合に、それが鉄道の経営に悪影響を及ぼす、つまりそれが運賃へはね返って利用者によけいな負担をかけるということがあってはならない、こういうふうに考えまして、そのけじめをきちんとするために運賃の査定のときに、先ほど申し上げましたような厳重な一つの標準をつくりながら査定をいたして、その悪影響を断つというふうに努力をいたしておりますが、これは今後ともさらに厳重にやっていきたいと思います。
  537. 桑名義治

    桑名義治君 さらに、国民のいわゆる不信の一つは、莫大な土地を持っているということ、不動産を持っているということです。関連会社の出資は十四社で合計で、不動産会社、デパートでは七百七社、千三百二十七億円に達しているわけでございますが、土地の場合も実際は膨大な土地を、不動産を持っているわけです。これは全部、十四社を込みにしてございますが、六千七百七十一億九千四百万円、これも時価のいわゆる買い上げ相場ということで、現在の評価価額で評価したお金ではないのです。そういうように、莫大な土地を持っている。いろいろな部面に投資をしている。しかも、このデータを見てみますと、ほとんどの会社が関連会社に貸し付けても担保も何も取っていない。しかも低利の利子になっている。こういうことになれば、当然こういったときに投資をしたお金、あるいは上がった利益をそういうものに一切合財投資をして、赤字になれば、さて赤字だからどうぞ運賃を値上げをしてください、こういうふうにわれわれにツケを回すのだ、こういう論理をみんな展開しているわけですが、その点はどうですか。
  538. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 私鉄が不動産にいろいろと投資をいたしておるわけでございますが、いままでの実情を申し上げますと、不動産で非常に利益が上がった期間が長かったものですから、むしろ、それによって私鉄そのものの経営としては、かえって助かっておったというのが事実でございますが、最近のように土地が逆になってまいりましたので、そういう場合に、そのツケを運賃の方へはね返らしてはいかぬと、かように考えておりまして、先ほど申し上げたような厳重な査定方法をやっておるわけでございますが、なお、そういう関連会社に無担保あるいは無利子で融資をしておるという事実もあるわけでございますので、    〔理事柳田桃太郎君退席、委員長着席〕 これらがやはり私鉄の経営に悪い影響、ひいてはそれが旅客へはね返ってくることのないように、厳重に運賃のときの査定もいたし、平素の指導もいたしたい、これを続けていきたいと思っております。
  539. 桑名義治

    桑名義治君 私はこれは単なる指導だけではなくて、先ほども申し上げましたように、いわゆる基準を設けなければならない。こうしてこそ初めて経理内容が明らかになり、こういう明快な理由でもって私鉄の運賃の値上げはぜひお願いをしなければならぬという、国民が納得できるような内容で初めて運賃の値上げというものは承認され得るべきものでなかろうか、こういうふうに考えるわけです。そういった意味からも、いまから先は運輸省としては積極的にこの問題には取り組んで、明快な経理と、そうしてだれにでも説明ができる経理内容、そういう基準の設定を急いでいただきたい、これをお願いしたいと思うんですが、どうでしょうか。
  540. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 鉄道経営は、申すまでもございませんが、非常に公共性の強い事業でございますし、利用者に対して低廉なサービスを提供するということも必要なことでございます。そういう観点から考えましても、お話しのように、そういう点につきましては厳重な基準をつくって、旅客に迷惑のかからないように今後とも考えていきたいと思いますし、また、現在の鉄道法等がかなり古い鉄道法でございますので、今後、改正というふうな場合には、そういう点も十分に検討いたしまして、改正をする場合には新しい法律にいたすように努力をいたしたいと、かように考えております。
  541. 桑名義治

    桑名義治君 時間がございませんので非常に走りでやったわけでございますが、次の問題もちょっと触れておきたいのは、いわゆる残存機雷によると推定されるしゅんせつ船の事故について、何件か御説明を願いたい。
  542. 竹内良夫

    政府委員(竹内良夫君) わが国の海域におきまして、一般の航行船舶は非常に安全になっているということでございますけれども、実は港湾等の海域のどろの中に機雷がある場合がございます。こういうときにおきましては、たとえば港湾工事でしゅんせつをする、そのときにはどろの中を掘りますので、その際に触雷いたしまして事故が起きるということが、現在までに昭和三十二年以降、七カ所においてそういう災害が起きております。
  543. 桑名義治

    桑名義治君 その七カ所の中で、昭和四十七年の五月、昭和四十七年の七月、これは新潟港と北九州港でございますが、この事故については、新潟の方は死亡者二名、負傷者四十二名、それから北九州港の四十七年の七月の分については負傷者四名。これはともに公判中でございます。この内容はいまどういうふうになっていますか。
  544. 竹内良夫

    政府委員(竹内良夫君) 昭和四十七年五月に新潟港におきまして、これは直轄、国がみずから事業をしておりますしゅんせつ船が沈没したわけでございますが、これにつきましては、国家公務員災害補償法を適用いたしましてそれぞれ補償をしているわけでございます。なおまた、沈没した船に対しましては修理を完成しているわけでございますけれども、現在、遺族並びに実際の被災者から国家賠償法第一条による損害請求の訴訟が行われ、現在公判中でございます。  それから北九州港におきまして四十七年七月に、これはやはり直轄の仕事でございますけれども、三井不動産株式会社に請け負わした工事におきましてやはり触雷してございます。これに対しましては、修理、改造といたしましては保険を、いわゆる水雷保険、この形で改造を完成しておりますけれども、また人身の災害に対しましては、船員保険あるいは傷害保険をもちましてこれを一応補償をしております。ただ、この際には、安全管理について、要するに、しゅんせつ船の事故が発生する前によく探査したかどうかというふうなことにつきまして、いわゆる安全管理について刑事事件として現在公判中でございます。
  545. 桑名義治

    桑名義治君 戦後もう数十年たってこのような状況では、安全航海もできませんし、あるいはまたそれぞれの港の出入りも不安におののいている。あるいは埋め立て工事をやる場合、あるいは港の整備をする場合には不安におののきながらやらなければならない。しかもまた、漁民も心配しながら操業をするというような状況下にあるわけでございます。  これは五十年の十月の二十三日、東京湾の富津沖にイペリットがまた発見をされた。そして漁民がまた非常に傷害を起こしているという事件がございます。この問題について、漁業補償等についてはどのようにお考えになっているか。  そしてもう一つ、ここに私、写真を持ってきているわけでございます。これは水中写真でございますが、これは北九州の若松沖に藍島というのがございますが、その近くに白洲灯台という灯台があります。その灯台の付近には岩礁があります。これは横幅が約二キロ、それから縦線が一キロというような岩礁があるわけですが、その岩礁から実は機雷、それから魚雷、そういうたぐいがこういうふうにたくさんまだ存在しているということがわかった。これらは早急に掃海をしていただきたいと思いますが、これはどうですか、この点については。
  546. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 私ども海上自衛隊におきましては、機雷並びに海中におきます爆発物の処理が任務になっておりますので、それぞれの所管の行政庁等から御連絡をいただきました際には、当方の能力の及ぶ限りにおいてその処理に当たるということをやっておりますので、私ども寡聞にしてただいまの先生の御指摘の点についてはまだ承知をしておりませんので、海上自衛隊によく連絡をとりまして、しかるべく措置をさせたいというふうに考えております。
  547. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 漁業の操業安全のために、いま局長も答弁いたしましたように、各省庁で協力をして掃海作業を実施していかなければならないと思いますが、お話のありましたイペリット弾等に関して、漁民の所得が不安のために減少しているが、この減収補償をすべきじゃないかという御意見でございますが、まだ千葉県から具体的な報告は受けてないわけでございますが、減収補償につきましては、過去、銚子沖のイペリットかん等の問題の際にも補償したという例はないわけでありますが、千葉県とも協議をいたしまして、これは慎重にかつ誠意を持って対処してまいりたいと思います。
  548. 桑名義治

    桑名義治君 先ほど申し上げましたように、まだまだあちらこちらにこういった戦争の残骸が残っております。早急にこれは再度調査をし、処理をすべきだと、こういうふうに要望したいと思いますが、最後に総理の御意見を伺っておきたいと思います。
  549. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 桑名君の言うとおりに私も考えます。
  550. 桑名義治

    桑名義治君 終わります。
  551. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして桑名義治君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  552. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 渡辺武君。
  553. 渡辺武

    ○渡辺武君 政府は、今回赤字公債を含む大量の公債の発行をしました。財政の公債依存率二六・三%、公債の発行残高十五兆一千億円という数字であります。ところで、財政制度審議会の中間報告を見ますと、今年度の歳入欠陥三兆円と仮定して、五年後には公債の発行高約十六兆円、公債の残高六十一兆円になるだろうというショッキングな数字を発表しているわけであります。この計算の根拠など、その内容をまず説明していただきたいと思います。
  554. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) これは一定の計算を置いたわけでございまして、五十年度から五十五年度までの毎年度の名目GNP伸び率を一二%と、こう置いているわけでございます。歳入につきましては、いま渡辺委員が御指摘のとおり、五十年の税収不足が一兆、二兆、三兆の三つの場合を仮定しているわけでございます。なお、五十一年度以降の租税弾性値でございますが、一・二と仮定いたしまして、五十一年度以降五十五年度までは減税は行わない、こういう前提でございます。  なお、歳出でございますが、社会保障とか恩給関係費、これは現行制度を前提として、これを単純に延長するということでございます。それで、まずその中身でございますが、年金及び恩給につきましては、名目GNP伸び率及び受給者の増加率、これは物量増でございますが、人員増でございます。これを用いまして、医療費につきましては国民医療費の伸びにスライドするものと想定いたしまして、それで、国民医療費の対GNP伸び率に対する弾性値は一・二と、これは過去の傾向値をとっているわけでございます。  なお、その他でございますが、名目GNP伸び率と同率の伸び率を想定いたしております。国債費につきましては、この一兆、二兆、三兆の歳入欠陥に伴いまして、償還費として一・六の定率繰り入れとか、あるいは予算繰り入れその他を予定して計算しているわけでございます。  なお、上記のものを除くその他の経費につきましては、名目GNPとニュートラル、こういう計算のもとに行った計算でございます。
  555. 渡辺武

    ○渡辺武君 その名目GNPの伸び率を一二%にして、税の弾性値を一・二にしたと、これはどういう根拠ですか。
  556. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) GNP伸び率が過去におきましてはいろいろな姿を示しているわけでございます。それで従来の、四十年度から四十九年度までの税収のGNP弾性値は一・三八でございますが、当時のGNP伸び率が御承知のとおり、四十年からの十年間は一七・一と、こういうことでございまして、実は歳入当局では、これからの安定成長に入りますと一・二というような弾性値を認めないというような見解もあるわけでございますが、一応一・二というものをとったわけでございます。
  557. 渡辺武

    ○渡辺武君 GNPの伸び率は。
  558. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) GNPの伸び率は、これはまたいろいろむずかしい問題があるわけでございますが、実は経済審議会のフォローアップで大体実質の成長率五・五ないし七というようなところで、それに名目物価上昇率その他を勘案しまして一二と。それからやはり民間機関などでいろいろ名目伸び率をとっておるところを見ますと一二という数字も多いので、仮にとった数字でございます。
  559. 渡辺武

    ○渡辺武君 今年度の歳入欠陥を仮に四兆円にした場合も計算してあると思いますが、それもお話しいただきたい。  それから実際は三兆五千億が歳入欠陥ですね。この場合はどういうふうになるのか。
  560. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) 歳入欠陥四兆でございますが、いま渡辺委員の御質問のとおり、税収欠陥三兆八千八百、それに税外で専売納付金等で出ておるので四兆という形になりますが、現実の落ち込みをもとにいたしまして五十五年度の断面図を出しますと、五十五年度の公債発行額は約十四兆二千と、そのときの財政規模が四十二兆でございます。したがいまして、公債依存度が三三・七%、そのときの普通国債残高が七十兆二百でございまして、財制審の中間答申でありました歳入欠陥三兆のときの公債残高六十兆より十兆ふえるという結果——仮定でございます。なお、これは当然のことでございますが、財制審は、こういう姿にならないようにという意味の試算でございます。
  561. 渡辺武

    ○渡辺武君 三兆五千億でしょう、ことしは、実際。その場合はどうですか。
  562. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) 実際は四兆でございます。三兆八千八百億にさらに専売納付金等の不足がありまして四兆を超えております。
  563. 渡辺武

    ○渡辺武君 そういう計算ですか。  大蔵大臣に伺いたいんですが、いまの数字は幾つかの仮定の上に立っているということは事実ですけれども、しかし全然架空のものとも思われないです、いまの説明を聞きますと。国民はみんな私は心配していると思うのですけれども、この問題について今後の財政の見通しをどう考えておられるか伺いたい。
  564. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま申し上げましたような想定で計算してまいりますと、昭和五十五年度におきまして公債の発行残高は七十兆を超えると、依存率が三三%を超えるというようなことになるわけでございます。したがって、そういう事態を招来しないためにわれわれは何を考えたらいいかと、歳出面においてどう考え、何を工夫したらいいか、歳入面でどういう工夫をしなければならぬかということが私どもの課題でございます。したがって、本委員会において申し上げておりますように、歳入歳出につきましてより厳しい感度をもちましてまず見直すことが当面私どもの任務でありまして、鋭意そのことに努力をいたしておる最中でございます。
  565. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、努力内容はもうたびたび伺っていますがね。五年先、七十兆の公債残高と。大変なショッキングですよね。その辺についてどんな見通しを持っていらっしゃるか。
  566. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) まかり間違ってもそういう事態を招いては困るということでございますので、そういう事態を招来しないために何をすべきかということ、何をしてはいけないかということをいま鋭意検討いたしておるということを申し上げておるわけでございます。
  567. 渡辺武

    ○渡辺武君 とにかく、無視できない非常に重大な事態にいま立っているということは、私は明らかだと思うんですね。  そこで総理大臣に伺いたいんですけれども政府は今度特例法による赤字公債を出しました。その前に、ちょっと質問が走りましたけれども、財政法の四条、五条ですね、これの立法の精神をどういうふうに考えていらっしゃるか、まずそれから伺いたいと思います。
  568. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 申すまでもなく、財政法の四条は公債発行、借入金の制限に関する立法であります。第五条は日本銀行等の借入金の制限に関する立法であって、その立法の精神は、健全財政というものを維持していくために公債発行、借入金、あるいは公債発行の条件に制限を加えたものだと考えます。
  569. 渡辺武

    ○渡辺武君 その健全財政というものの中身はどうですか。
  570. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 均衡のとれた財政ということでございますから、いわゆる歳入歳出にバランスをできるだけとるということが健全財政だと思います。
  571. 渡辺武

    ○渡辺武君 二度と戦争を起こさないために赤字公債の発行ができないようにする、あるいはインフレーションが起こらないようにするというような趣旨は入っておりませんか。
  572. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは財政というものが景気調整の役割りを持っていますから、インフレを起こさないことには——もう歳入歳出がちょうどバランスしなければならぬというのじゃなくして公債発行の場合も無論規定してあるわけですが、その場合には、その公債発行がインフレの、要因にならないようにということも健全財政の中には含んでおるということでございます。
  573. 渡辺武

    ○渡辺武君 戦争はどうですか。
  574. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 戦争というのは渡辺さんはお考えになっておるかしれませんが、私は戦争のことは考えておりません。
  575. 渡辺武

    ○渡辺武君 総理大臣、とんちんかんな答弁をされちゃ困りますね。私、ここに平井平治という方の書かれた「財政法逐條解説」という本を持っております。これは、この財政法が制定された昭和二十三年の四月からわずか三カ月後の七月に発行された本です。当時大蔵省の主計局に勤められた方で、大体この財政法について政府の立場を説明したものだと言われております。この中に、四条についてこういうことを言っております。「第四條は健全財政を堅持して行くと同時に、財政を通じて戦争危険の防止を狙いとしてみる規定である」こうはっきり書かれている。特に二ページ飛んだ後に、こういうことが書かれている。「戦争危険の防止については、戦争と公債が如何に密接不離の關係にあるかは、各國の歴史を繙くまでもなく、我が國の歴史を観ても公債なくして戦争の計画遂行の不可能であったことを考察すれば明らかである、」「公債のないところに戦争はないと斷言し得るのである、從って、本條は又憲法の戦争放棄の規定を裏書保證せんとするものであるともいい得る。」とはっきり書かれております。  それからまたインフレーションについても、「我が國の財政が昭和七年以來所謂赤字財政の連續によって今日のインフレーションの重大なる原因をなしていることは事實である。従って健全財政でないことも又認めざるを得ない。而して此の間常に公債収入が歳入の重要な地位を占めていたのである。」「以上これ等の事實と、理論とを重視して健全財政の根本原則として定めたものが本條第一項本文である。」。いま総理大臣はインフレーションについて触れられた。戦争のことについてどうですか、ここで言われている。
  576. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは恐らく戦前の軍事インフレ、この反省のもとに書かれたものだと思う。そのときとは、今日は日本は戦争をしないわけですから、防衛、日本の国を侵略するようなものがあった場合に戦うけれども、戦前の場合とは憲法あるいは日本の外交政策、もうすべてが平和国家としての骨組みの上にできておるんですから、再び戦前のような、いわゆる軍事費の増大を公債であがなっていくというようなそういうことはあり得ない、起こしてはならぬもの、だと考えております。
  577. 渡辺武

    ○渡辺武君 それが四条の精神だということですか。
  578. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 四条の精神というのは平和国家というわけですから、昔のような、その書いた著者はそういう戦前のことがあったんでしょうが、四条というものの規定が戦争を防止するための——まあ、渡辺さん、推理が非常に御発達でございましょうから……
  579. 渡辺武

    ○渡辺武君 推理じゃない。ちゃんとこれに書いてあるから、読んであげたでしょう。
  580. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そういうことで、いろんな、原因が、いわゆる健全財政を害するようなことの内容というものも間接にあるのかもしれませんが、とにかく四条の規定というものは、公債発行あるいはまた借入金に対してのやはり一つの節度を求めた規定だと私は思っております。
  581. 渡辺武

    ○渡辺武君 今回、特例法で赤字公債を出しましたが、これは財政法第四条違反だと思いますが、どうですか。
  582. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 財政法四条の規定が適用できませんから、特例法を出して、これは立法機関の御審議にゆだねておるわけでございます。
  583. 渡辺武

    ○渡辺武君 財政法四条というのは、これは財政についての基本法ですね。まあ、いわば財政についての憲法だと言って差し支えない。それを外れて別の法律で出す、そういうことができますか。また、どういう場合に一体そういうことができるんですか。
  584. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 財政法の四条というものは、もうこれは一切ほかのことは何にもこの規定以外のことに対してはやってはならぬという、すべての手を政府が縛ったものだとは私は思っていないわけです。今回の場合においても、政府がしばしば申し上げておるように、インフレというものを、この公債発行によってインフレの要因にせないような最善の努力をすると言っておるわけでございますから、財政法の四条が、特例法のごときような立法を絶対にできないという規定だとは私は思わない。
  585. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、特例の場合ならできるということですか。
  586. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは新たなる立法を必要とする、立法府のやはり議決を必要とすると考えております。
  587. 渡辺武

    ○渡辺武君 四十年の特例法による赤字公債が出された。
  588. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 静粛に願います。
  589. 渡辺武

    ○渡辺武君 そのときに、当時、いまここにいらっしゃる福田さん、大蔵大臣でおられたけれども、臨時緊急の措置なんだということを言われました。今度もそういう措置なんですか。
  590. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおりでございます。
  591. 渡辺武

    ○渡辺武君 国会の議決をもって公債を出すことのできる範囲というのは、財政法第四条のただし書きでいわゆる建設公債だというふうにはっきり規定されておりますね。だとすれば、特例法が国会の議決を経ればそれ以外の公債も出せるんだというのは、四条違反じゃないですか。いや、総理大臣に伺っている。
  592. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 四条は、渡辺さんおっしゃるとおり、建設公債以外の公債の発行は認めていないわけでございます。さればこそ、総理がおっしゃるように、新たな立法をお願いしておるわけです。
  593. 渡辺武

    ○渡辺武君 総理大臣、どうですか。
  594. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私が前に言ったのもそういうことで、今回特例法を出して、国権の最高機関である国会の御審議を得て、この審議を促進してもらいたいと願っておるわけでございます。
  595. 渡辺武

    ○渡辺武君 財政法は、国会の議決をもって出せるものは内容を特定しているんです。それ以外のものについては何の規定もないんです。何の規定もないのにあなた方は出そうとしている。財政法のどこに特例法で赤字公債を出していい、臨時緊急の場合なら出していいと書いてありますか。言ってください。
  596. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 財政法にございませんから、特例法をお願いしておるわけです。
  597. 渡辺武

    ○渡辺武君 財政法を変えて、臨時緊急の場合ならば赤字公債出していいんだという規定が入ってるならば、私はあなた方の言うことに納得します。しかし、いまの財政法にはそういうケースは書かれていない。つまり許されていないんですよ。それをあえてして出すというのは、これは財政法違反じゃないですか。それとも財政法を変えるつもりがあるんですか。
  598. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仮にあなたの立場をとられるとしますと、ただいま五十年度の歳入は三兆九千億に近い歳入欠陥が予想されるわけでございます。だとしますと、特例公債を出さないといたしますと、二兆三千億ばかりの歳出をカットするか、歳入を別な方法で確保するかしなければならぬわけでございますが、本件につきましては、たびたび申し上げておるように、いま二兆数千億の増税をお願いするような経済状況ではございません。また、今日のように経済が落ち込んだ段階におきまして、中央地方を通じての政府のもくろみを二兆円以上カットするなどということは、私は国民の幸せに通ずるものではないと思うのでございます。したがって、非常に異例な措置でございますけれども、財政法の特例の法律を国会にお願いいたしまして、その発行をお許しをいただこうといたしておるわけでございます。
  599. 渡辺武

    ○渡辺武君 財政問題の憲法と言われる財政法を、一時の政策上、財政上の都合で踏みにじることは私は許されないと思うんです。  ところで、いま緊急の場合、異例の場合とおっしゃったけれども、そういう場合というのはだれが決めるのですか、そういう場合だという認定は。
  600. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国会の判断を政府が求めておるわけです。
  601. 渡辺武

    ○渡辺武君 国会の判断といっても、結局のところ多数党である自民党の判断ということになるんでしょう。だとすれば、自民党が異例の事態だと、あるいはまた臨時緊急の事態だというふうに認定すれば、今後も毎年特例法による赤字公債が出せると、こういうことになりますか。大蔵大臣は来年も出すと言っている。さっきのように、五年先には公債の累積残高七十兆円超えるだろうというような状態だと、これもあなた事実上認めた。どういうことになりますか。
  602. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 本年度におきましては、予想いたしました歳入が得られませんので、その欠陥を補てんするために特例公債を発行いたしましてそれを埋めさしていただこうということで、特例債の発行をお願いしておるわけです。来年の場合におきまして、来年度予算編成の結果がどうなりますか。仮に特例公債をお願いするといたしましても、その場合の理由は、どういう事情で出さなけりゃならなくなりますか、具体的に検討した上で国会の判断を求めにゃならぬわけでございますので、ただいまからその場合を予想いたしまして私がいま申し上げるわけにはまいりません。
  603. 渡辺武

    ○渡辺武君 財政法には決めてないけれども、臨時緊急の場合なら出せるんだ、異常の場合なら出せるんだとおっしゃる。その論理からすれば、自民党、多数党がこれが臨時緊急の場合だ、異常な場合だというふうに判断すれば国会の議決を得られるわけだから、これから先も、毎年毎年でも、特例法による赤字公債を出せるということになるんじゃないですか。そういうことですか。
  604. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それじゃ、渡辺さんにひとつ御理解いただきたいのは、財政法を仮に改正いたしまして、特例、いま私どもが意図しているような公債が出せる道を開くということも、私は国会の判断でできないことではないと思うんです。しかしながら、政府はそういうことをお願いしないわけでございます。これは異例中の異例でございますので、毎年毎年具体的なケースとして、ぎりぎり詰めたところこれだけはどうしてもお願いせにゃならぬというところだけを、国会の判断を求めてお許しをいただこうといたしておるわけでございまして、政府の意のあるところはあなたといえども御理解をいただきたいと思います。
  605. 渡辺武

    ○渡辺武君 結局、そういう事態になれば出せるということでしょう。どうですか。
  606. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国会の判断によることでございます。
  607. 渡辺武

    ○渡辺武君 それじゃ、たとえばここに戦争が起こったと。アメリカがアジアで侵略戦争を起こして、日本がそれに引き込まれたと。その場合も臨時緊急の場合、異常な場合だということで、国会の議決があれば赤字公債出せるということですか。総理大臣、答弁していただきたい。——いや、総理大臣に伺っているんだ。
  608. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私が申し上げておるのは、ことしこういう予想いたしました歳入が得られそうにございませんので、その欠陥を補てんさせていただくために特例債の発行をお願いしておるということでございます。で、これは財政法というものを改正してお願いすることができるが、そういう道はとらないと。で、財政法の特例の法律を出して御判断をいただいておるということでございますが、これはすでに先例として何回もこういう先例はあるわけでございまして、今日ただいまこれが最初の例ではないことも、またあわせて御理解をいただきたいと思います。
  609. 渡辺武

    ○渡辺武君 答弁になってませんよ。私の聞いたことに答えてない。総理大臣、どうですか。
  610. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 財政法の改正も一部に意見があったんですけど、私もそれは賛成できない。それはやっぱり毎回国会の判断を仰ぐべきものである。財政法四条はそういう発行を規定してないわけですから、そういうことで国会の審議にゆだねようということでございます。また、戦争のある場合という、仮定としては論理が少し飛躍し過ぎると私は思います。
  611. 渡辺武

    ○渡辺武君 論理が飛躍してやしない。論理的に、戦争が起こったときに国会の議決があれば赤字公債を出せるのかと伺っている。端的に答えていただきたい。
  612. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 戦争というものが、先ほど申したように日本に戦争が起こるとは思ってないわけで、それを次々に仮定の場合をこう考えて、いたずらに国民に不安を与えることは私はよろしくない。やっぱり国会が、財政法四条によらない特例公債を発行する場合には国会の判断にゆだねるべきである、そして国会の審議を待つべきであるということで、この場合あの場合と言って、いろんな場合を仮定してここで私がお答えするということは適当でないと思う。
  613. 渡辺武

    ○渡辺武君 私の伺ったことに答えてくださいよ。
  614. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 返答しております。
  615. 渡辺武

    ○渡辺武君 戦争が起こる可能性があるかどうかということを聞いているんじゃない。ちゃんと答えてください。伺ったことに答えてください。
  616. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は戦争というようなことは考えていないんですから、そういうことで財政法のこの特例法の審議に、戦争というものを仮定してそうしてその場合はどうだというようなことは、こういうことを私は答えることは適当でないと。日本に戦争が起こるとは思ってないのですから、だから、思ってないことを、戦争の場合を仮定してそれでこの第四条の解釈に対してそういうふうにまで拡大していろいろ解釈して私が答えるということは、この場合適当であるとは私は思わないのでございます。
  617. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 渡辺君、発言はお立ちを願います。
  618. 渡辺武

    ○渡辺武君 あなたは、議員の質問が適当であるかないかなんて物言いつけるつもりですか。何言ってるんだ。ちゃんと質問したことに答えなきい。ちゃんと答えなさい。そんな答弁満足できない。重要問題だ、これは。
  619. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、渡辺君の質問が不適当だと言っているんじゃないんですよ。ここで戦争というものを考えてないわけです、政府は。四条というものを戦争と結びつけてここで私がお答えすることは適当でないと言うので、渡辺君の質問に対して批評を何も加えておるわけではないわけでございます。
  620. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連。
  621. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 岩間君。
  622. 渡辺武

    ○渡辺武君 あなたが戦争を考えているかどうかを伺っているんじゃないんです。論理から言えば、戦争の場合も出せるということになるんじゃないかということを聞いているんだ。どうするかということを聞いているんだ。率直に答えなさい。
  623. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 発言者を指名しております。渡辺君、お静かに願います。
  624. 岩間正男

    ○岩間正男君 仮定のことには答えられないという形で、これには答えていない。これはおかしいですよ。何のために自衛隊を持って、わざわざ有事の場合をこれを想定して絶えず論議しているじゃないですか。しかも、この問題は、今後の日本の財政をどうするかという問題はこれは平和と関連があると、こういう点はこれは先ほどの文献でも明らかになっている問題だ。そうしてそういう事態について、将来のことを考えて論議をしておくということが、国会論議の中で最も重要な課題です。ところが、それについて、先の見通しのもとにそのような危険の場合に対して未然の処置をとる、これは当然の国会議員の任務だから、この任務を遂行するためにいまそのような質問をしている。これに対してあなたが、総理が答えられないなどというのは、全く国会論議のいままでのあり方から言ってもおかしい。そういうようなやり方で、いまのような答弁を否定することは許されないことなんです。したがって、当然これは質問者の質問に対してはっきり答弁することを要求します。
  625. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は今回の御審議を願うについて、戦争という場合を、戦争というものの論議、その場合の論議というものを、この特例法の改正に対して、そこまで私はいろいろ渡辺君が仮定の場合を並べて、いろいろこの場合あの場合ということに、ことに戦争というような場合を想定して、私は起こり得ないと考えておるんですから、それだのにかかわらず、ここで私がそれにお答えをすることは適当だとは思わないと、こういうことですから、適当だとは思わないというふうに答えるということは、これはやはり私にそれだけの自由というものは与えてもらわないと私は困る。
  626. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 岩間君、簡単に願います。
  627. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理はおかしいことを言われましたが、あなたはこの問題を提案するときに、戦争ということを想定しないで出したと言う。しかし、あなたの想定の範囲内で論議せなきゃならないなどという国会論議は、それはないわけでしょう。そうでしょう。われわれはあらゆる事態を考え、そうしてこれに対して万全の措置をこれは考えるというのは当然だ。これをやらない政党はむしろおかしいので、だからあなたの範囲内の提案の中で戦争の問題を考えていなかった、だからこんな論議はできない、これに答弁ができないというのは、これは総理失格になりますよ、そんなばかなことを言っては。国会論議に対しては当然のことでありますから、この場合どうなんだと、これを渡辺委員は質問しているんですから、これに対して当然総理は答弁すべきであります。
  628. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 財政の欠陥が生じて他にこれを補っていく方法がない、そういうことで、その財政の歳入の欠陥に対して措置を緊急にとる必要があるということで、今回の提案をいたしたわけで、戦争と結びつけてこの提案をいたしたわけではないわけでございます。今年度の財政欠陥に、歳入欠陥に対する処置として、こういう処置をお願いをしたいということで御審議を願っておるわけでございます。
  629. 渡辺武

    ○渡辺武君 総理大臣、答弁逃げるからもう一回重ねて私の質問をはっきり申します。  いまあなた方は、財政法を改正しなくても特別な場合で国会が議決すれば特例法で赤字公債出せるんだと言うから、それなら戦争のような場合、そういう特別な場合、歳入のない、軍事費うんとかかる、そういう場合にも、国会が議決したら赤字公債出せるのかと伺っている。憲法六十三条ですか、総理大臣出席して答弁する義務がある。はっきり答弁しなさい。——総理大臣
  630. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ちょっと露払いの答弁をお許しいただきたいと思います。  実は今度御審議をお願いしておる特例法は、いま総理大臣が仰せになりましたように、五十年度の歳入の欠陥補てんのためにお願いをいたしているわけでございます。五十一年度とか、それ以降のことは全然書いてないわけです。五十年度の歳入欠陥の補てんのために特例公債を発行するということについての御審議を願っておるわけなんでございます。それで、補正予算では二兆二千九百億の特例債の発行を限ってお願いしておるわけでございます。したがって、あなたのおっしゃるようなことと全然関係がないことなんでございます。私が申し上げておるのは、五十一年度以降どうするかということにつきましては、それぞれの年度におきまして非常に念査いたしまして、異例中の異例のことをお願いする以上は十分念査いたしまして、金額も限り目的も限定いたしまして、それで、これだけ国会の御判断を求めるというように政府は出したいということでございますので、財政法の改正ではなくて、年度限りの特別の措置について個別の判断を求めるというようにやってきているわけでございますので、五十一年度以降のことにつきましては、その都度その都度御判断をいただかにゃいかぬと思います。  たまたま戦争の話になったわけでございますけれども、戦争につきましては、政府はそういうことは頭にないということでございます。
  631. 渡辺武

    ○渡辺武君 そんな答弁、満足できない。総理大臣、はっきり答弁してください。私の伺ったことに答弁してください。そんなことを伺っているんじゃないんだ。
  632. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私に何遍答弁を要求されましても、これは今年度の歳入欠陥を補てんするために特例公債を出すよりほかにはないんだと。これで、財政法四条の規定にはそういう規定はないから、別に立法府の御判断を仰ぎたいということで、戦争ということを頭に置いて今度特例法を出すというものではないわけでございますから、ここで問題を戦争の場合どうだということで、頭にないことを私がここでいろんな仮定を設けてお答えをすることは適当でないのではないかと、こう言うんですから、渡辺君もこれは御理解を願わなければ……。
  633. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、そんな答弁、それじゃ答弁になりませんよ。だめです。あなたの頭の中に戦争という問題があるかどうかということを伺っているんじゃない。
  634. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 発言はお立ちを願います。発言は時間に入れますよ。質問をお続け願います。
  635. 渡辺武

    ○渡辺武君 答弁にならぬじゃないですか。
  636. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 総理、大蔵大臣からそれぞれ答弁をいたしております。続いて発言を願います。
  637. 渡辺武

    ○渡辺武君 答弁にならぬですよ、これは。こんなごまかし答弁で、この重大な問題を答弁回避するというのはひきょうですよ。それで総理大臣勤まりますか。国会をばかにするのもはなはだしいですよ。この問題は、私は満足しません。いずれ後ほど、機会を見て徹低的にこれは追及したいと思う。  次に、やはり総理大臣と、それから福田経済企画庁長官と、大平大臣と、日本銀行総裁に伺いたい。いま、財政法第四条、健全財政主義だと言われた。ところが、それにもかかわらず特例法をもって赤字公債をどんどん出すという状態になっている。今度のように、大量の公債をことしも来年も恐らく出すでしょう。インフレの危険が十分にあると思う。そのインフレの危険に対してどう歯どめをつけるのか、伺いたい。
  638. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ただいま渡辺さんも御案内のように、需給のギャップが大変激しい一面にデフレの現象が鋭角的に出ておる経済状況であることは御案内のとおりでございまして、十五兆と言われ、二十兆と言われるギャップがあると言われておるわけでございます。そこで、今度、政府が第四次の景気対策を講じまして、約三兆円——三兆一千億程度の需要の喚起を図るために、予算あるいは、財投等におきまして特別な措置を講じておるわけでございます。  そいう状況でございますので、ただいまの経済状況から申しますと、政府が予算を、支出をふやしましても、それがギャップを埋める、一部を埋める程度にすぎないわけでございますので、これはインフレを招来するものとは考えておりません。  公債の発行につきましては、毎々申し上げておりますように、そういう経済と財政とのバランスというものを常に念頭に置いてやらなきゃならぬことは、私どもも心得ておるつもりでございます。しかし、発行いたしました以上は、これはどうしても市中で円滑に消化をしていただかなけりゃならぬと思っておるわけでございまして、それにつきまして、臨時国会前に、すでにシンジケート団にも了解を得て御協力を約されておるわけでございまして、私どもといたしましては、この円滑な消化がただいまの金融状況でできない相談ではないと考えておるわけでございまして、市中消化を円滑にやることを通じまして、インフレをいささかも招来することのないように十分配慮してまいらなければなりませんし、また、そういうことがやれるものと確信をいたしております。
  639. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大蔵大臣の答弁と全く同じ所見でございます。
  640. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 本年度の場合は、マクロ的に申しまして、民間部門における投資不足を公共部門における投資の拡大によって補うわけでございまして、投資、貯蓄のバランスはそれによって維持される。もし、この赤字公債を出さないで、歳出の削減ないしは増税等によってまかなうということになりますと、むしろデフレ的な影響を持つような経済の状態なのでございまして、本年度に関する限りインフレの危険はないものと私は考えております。
  641. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、インフレの歯どめをどうつけるのかと伺っているのです。ことし起こるかどうかということを伺っているのじゃないのです。
  642. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 私どもに関する限りは、この国債の増発によりまして起こってまいりまするマネーサプライの増加が問題でございますが、それを始終トレースしつつ、物価の状況景気状況などとも総合的に勘案しながら、それに対処していくということになるわけでございまして、しかし、そのマネーサプライの増加も企業の手元流動性の拡充という面もございますので、若干の増加はやむを得ない面もあろうかと存ずるわけでございます。  要するに、本年度に関する限りはインフレの危険がなく、しかも単年度限りの赤字公債の法律を出しておられるわけでございまして、借りかえはしないという歯どめもつけておられるわけでございますので、その辺につきましても懸念はないものと考えております。
  643. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 大蔵大臣、副総理、日銀総裁のような考え方でございます。
  644. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま、市中消化をすれば大丈夫だというような趣旨として伺ったのですけれども、そうですか。その市中消化をすればインフレは起こらないというのは、どういう理由ですか。
  645. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) すでに民間で蓄積されておる中で公債の消化をお願いするわけでございますので、原理的にインフレが起こるはずはございません。
  646. 渡辺武

    ○渡辺武君 それじゃ、その市中消化について伺いたいと思います。  追加公債は三兆五千億ですね。この三兆五千億をこれから半年ばかりの間に消化しなければならぬ。そのほかに、地方債もずいぶんことしは出るでしょう。政府債も出る。鉄道債も、電電債も出るんです。大量の公債がことし消化されなければならぬと、こういうことになっているんですね。本当に消化の見通しありますか。どうですか。ついでに対策も言ってください。
  647. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 本年度内に発行されます国債、地方債その他のいわゆる公共債の総額は、当初予算では、国債の二兆、地方債の二兆八千三百五十億等々を含めまして六兆六千九百五十億円でございまして、このうち、民間で四兆五千六百五十億円を消化していただくという予定をいたしておりました。それが、その後の追加が国債で三兆四千八百億、地方債で一兆三千八百億等で、合計四兆九千七百億でございます。このうち、一部政府資金をもって引き受けますものがございますので、民間資金にお願いするものは四兆一千八百億円でございます。したがいまして、本年度の発行の総額は十一兆六千六百五十億円で、そのうち民間資金にお願いする分が八兆七千四百五十億円と、このように相なっております。  この消化につきましては、全体の資金需給、こういったものを、日銀なり企画庁なりといろいろ御相談もいたしながらやっておりますが、ことしのいろいろの、たとえば預金の伸び方であるとか、あるいは貸出金の伸び方であるとか、そういったものが、先刻来御説明のございましたように、投資意欲が少ない等々の事情がございまして、この程度のものを消化するのに困難はないという判断をいたしております。
  648. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう少しそれじゃ具体的に伺いたいと思いますが、この追加公債ですね、引受シンジケート団といろいろ交渉しているようですが、割り当てはどんなふうになりますか。
  649. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 本日の段階で、まだ最終的な割り当てが決まったという連絡をシンジケート団から受けておりません。ただいまシンジケート団の幹事が中心になりまして、その割り当てを検討中でございます。
  650. 渡辺武

    ○渡辺武君 いままではどのくらいの率でやっていたんですか。それぞれ個人消化分とか、あるいは市中金融機関引受分とか、資金運用部引受分とか、今度はどんなふうな見通しになりますか。
  651. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) このシェアは、四十年度に初めて戦後のいわゆる国債が発行されましてから本日まで、必ずしも一定ではございません。最近の例でございますと、合計一〇〇%のうち、大口を申し上げますと、都市銀行が三九・一%、地方銀行が一八%、長期信用銀行が九・四%、信託銀行が五・五%等々がございまして、さらに、一〇%が証券会社を通じて主として個人に消化されておりまして、合計一〇〇%に相なっております。
  652. 渡辺武

    ○渡辺武君 資金運用部は。
  653. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 資金運用部が引き受けます分は、そのときどきの情勢によりまして変わっておりますので、ただいま申し上げました比率は、これは引受シンジケート団の中の引受割合でございます。
  654. 渡辺武

    ○渡辺武君 どのくらいの見通しですかと言うの、今度。
  655. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ことしの発行されます国債の中で、合計八千四百億円が運用部の引き受けに相なります。
  656. 渡辺武

    ○渡辺武君 公債の発行条件ですね、ほかの金利とのいろいろ競合関係どもあって、金利上どういう措置とりましたか。
  657. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 発行条件は、実は昨日改定いたしました。十月債までにつきましては、クーポンレートが八・〇%、発行金額が九十八円二十五銭で、したがいまして、利回りが八・三二〇%でございましたが、十一月分から、クーポンレートはそのままにいたしまして、発行価格を九十八円七十五銭と、そういうことにいたしました。したがいまして、その結果、利回りといたしましては八・二二七%と相なることになります。
  658. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、ほかの金利はどうですか。その関係を言ってください。(「座ってやると質問が記録に残らぬぞ」と呼ぶ者あり)いやいや、だってね、質問しているんだから、それを答えてもらわなきゃ困るんです。
  659. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 類似の、国債と比較されます証券類についての発行条件を御説明申し上げます。  長期信用機関が出しております利付きの金融債でございますが、クーポンレートが八・八%、発行価格が百円ということで、利回りは八・八%になります。これは十月分の条件でございます。さらに、AA格の事業債につきましては、クーポンレートが九・二%、発行価格が九十九円でございますので、利回りは九・三九三%となっております。
  660. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは、今度そうなったということですか。質問したことにはっきり答えてください。それは今度そうなったということですか。
  661. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) どうも言葉が足りなくて申しわけございませんでした。これは、十月分に対応するものでございます。そして、現在検討されておりますところでは、利付金融債につきましては十一月もこのままでいくと、十二月になりましてからこのクーポンレートを〇・五%下げようという形でただいま検討が行われております。それから、AA格の事業債につきましては、これは十一月にクーポンレートを九・〇%、発行価格を九十九円五十銭ということで、利回りを九・〇九五%にしようといたしております。ただ、この分につきましては、現在の長期金利の低下の傾向を踏まえまして、十二月にもう一度改定をするということを考えております。
  662. 渡辺武

    ○渡辺武君 公債消化のために、ほかの長期金利もずっと下げてきているという実情がわかったわけですが、さて次に、個人消化、あるいは大蔵省資金運用部の引き受け、これは一番インフレの可能性が少ないと言われている。その個人消化の見通し、それからまた、この資金運用部の引き受けの見通し、これを言ってください。
  663. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 資金運用部の引き受けにつきましては、先ほど御説明いたしましたとおりでございます。  個人消化の見通しにつきましては、先ほど、前には一〇%を証券会社を通じてさばいておったと申し上げましたが、今回量がふえましたので、これの消化はなかなかむずかしい。先ほどシンジケート団と話し合い中であると申し上げましたが、これはそのうちの問題の一つが、この個人消化にどのぐらいが期待できるかということが問題になっておるようでございます。
  664. 渡辺武

    ○渡辺武君 個人消化については、郵便貯金の金利と、そして公債のこの応募者利回りと、この辺の関係が非常に重要だと思うのですね。その辺はどうなさいます。
  665. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 郵便貯金で、国債と比較します場合には、どちらかと申しますと、いわゆる定額貯金、長目のものでございますが、この金利が一番比較しやすいかと思います。これは今回の金利の改定によりまして、期間によって金利が変わりますが、一番長くなりましたときには七・〇%というのが郵便貯金の金利でございます。したがいまして、先ほど申し上げました八・二二七という今回の新しい国債の条件、これは郵便貯金よりはまだ魅力が非常に高いものであると、このように了解いたしております。
  666. 渡辺武

    ○渡辺武君 国民が預貯金金利については非常に大きな反対をやっている。ところが、まさにいま聞いてみれば、公債の消化を個人消化させる、その条件をつくるために郵便貯金の金利を引き下げたというふうにしか受け取れない。この点どうですか。けしからぬですよ。
  667. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 郵便貯金は、資金運用部を通じまして、各種の政府の金融機関ないし各種の政府の事業の原資として活用されております。この活用しておるいろいろな金融機関等の貸出金利でございますが、これが過去二、三年の間に、インフレ的な要素が非常に強い時代に、預託金利も上がる、貸出金利も上がるということで非常に高いところへ来ております。このままでいきますと、政府関係の金融機関が果たしておる役割り、また、政府関係機関の実行しております仕事のコストが非常に高いものについてまいります。したがいまして、全体の金利水準を見直すという今日の要請に基づきまして、そのためにも一番もとのコストである郵便貯金の金利、これは、この上がる前の水準に一歩近づけようという配慮でなされましたものと了解いたしております。したがいまして、これは国債のためにことさらにやったものでございません。
  668. 渡辺武

    ○渡辺武君 国債を発行させるためには、それと競合する長期金利も下げなきゃならぬ。ところが、それを下げるためには預貯金金利を下げなきゃならぬ、結局国債消化のためだということになるんじゃないですか、どうですか。
  669. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 先ほども申し上げましたとおり、全体の金利水準の見直しということで行われましたものでございます。したがいまして、郵便貯金の金利だけを引き下げたわけではございませんで、他方、銀行の預金金利、こういったものも全体の見直しが行われておる次第でございます。
  670. 渡辺武

    ○渡辺武君 まあこの辺で次に移りますがね。大蔵省資金運用部ですね、これは余裕資金、大分枯渇しているという話聞きました。今度のこの補正予算で、税収、地方交付税の落ち込みというのもあって、かなりたくさんな金を出さなきゃならぬと、新しい公債も引き受けなきゃならぬと、いろいろやっているそうでありますけれども、どういうふうな実情で、どんな処理をやっているのか伺いたい。
  671. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 資金運用部資金でございますが、ことしの三月末、すなわち四十九年度末に、総計三十四兆八千二百八十二億円ございまして、この中の構成といたしましては、長期国債が四兆一千億円、短期国債が六千億円、長期性の短期運用をしておりますものが一兆二千億円などございますが、最大のものはいわゆる財政投融資という形を通じましていろいろ運用されておりますものが約二十八兆ございます、ただいま申し上げました中で、長期国債の中には、あるいは、先刻来御議論のございますように、国債が発行されますときに引き受けたものもございますが、その他の分は、余裕資金の運用として日銀から売り戻し条件つきで買い取ったものもございますし、また、この短期国債の六千億円というのは大体余裕資金の運用として持っておるものでございます。  また、ただいまお尋ねの、今回の財政投融資、そしてまた資金運用部資金の追加でございますが、これは三兆円弱になります。このうち、私どものめどでは、約一兆円は、ことし当初予定いたしておりました郵便貯金の増加予定額を上回る増加額、また、その他特別会計のいろいろな金を預かっておりますから、こういったもの、すなわちフローでもって賄うことができるのではなかろうか。  そういたしますと、あと二兆円足りないわけでございますが、この分につきましては、手元にございます余裕資金、これを日銀から売り戻し約款つきで買い戻したものにつきましてはまた日銀に引き取ってもらうというようなことで換金化いたしまして、これを所要の向きに使いたいと思っております。
  672. 渡辺武

    ○渡辺武君 二兆円の手持ち国債を日銀に売り戻さなければならぬという事態になってきていると、来年はどうなりますか。相当窮屈になるんじゃないですか。
  673. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 来年のことになりますと、今年度のフローの増加がどのぐらいになるかということがまず問題でございます。私どもの方は、あるいは税金とか、他のものと違いまして、計量ないし予測の非常にむずかしいもの、国民からお預かりしているものでございますから、予測がむずかしい部分がございます。それが一つ影響がございます。そしてまた今度は、来年度中に郵便貯金なりその他の原資としてふえるものがどのぐらいあるか。これは今年度より多くなるのではなかろうかと期待はいたしておりますが、もう少し様子を見なければ確たることは申し上げられません。しかし、来年度にふえる財源もございます。ただ、手持ちのストックは、これはもう二兆円使いましたので、余りゆとりのない状態に立ち至っておるというのが実情でございます。
  674. 渡辺武

    ○渡辺武君 なかなか大変な事態になっているということがわかるわけですけれども、それじゃ、大体発行額の約七割を従来市中金融機関に引き受けさせてきたわけですが、この消化の見通し、これをおっしゃっていただきたい。
  675. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 一つには、本年度の財政の散超が非常に大きくある。これが非常に大きな原因になりまして、市中の資金需給関係、これをいろいろな角度から試算してみますと、相当のゆとりがあるというふうに考えております。その意味で、マクロに見ます限り、この国債ないし他の公共債の消化も可能であろうというのが私ども考えでございます。  ただ、たびたび御議論がございますように、たとえば財政の払い超であれば、これが入ってまいります金融機関と、それから現実に国債ないし他の公共債を引き受ける金融機関と、この間に必ずしも一致しない面がございます。その意味で資金の偏在の問題が起ころうかと思います。この点につきましては、日銀ともよく御相談いたしまして、金融上のヒッチが起こらないように、そしてまた、私どもの銀行局を通じまして各金融機関にも御協力をお願いするように手配をいたしておるところでございます。
  676. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま、財政の払い超が大分あったので市中金融機関の引き受けはできそうだと。その財政の払い超ですね、今年度上半期どのくらいの払い超で、下半期はどのくらいの見通しですか。
  677. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 上半期におきます払い超は、最近における景気停滞などを反映いたしまして税収が減ったというような事情がございまして、結局八千四百九億円の払い超になっております。それから、現在の時点で下半期を見ますと、これも国債を発行しながらまいりましても、結局のところ約八千億円程度の散超。したがって、年度間全体では約一兆六千億の払い超になるのではないかと考えております。
  678. 渡辺武

    ○渡辺武君 下半期八千億の払い超といっても、十月から十二月までと、それから来年の一月から三月まで、これは払い超と揚げ超の逆になる期間だと思いますが、その辺の見通しどうですか。
  679. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 御指摘のように、秋口九、十、十一というようなところは非常に払い超の大きい時期でございます。そしてまた、年が明けました後というのは揚げ超の大きい時期でございまして、御指摘のように、下半期でも、第三・四半期におきましては約二兆円ないしそれを超える払い超の姿になるんではなかろうか。そうして来年の第一・四半期にその相当部分がまた戻ってくる、一兆二千とか、そんなものが戻ってくるということで、差し引き八千億円程度の払い超になるものと見ております。
  680. 渡辺武

    ○渡辺武君 歳入欠陥が三兆五千億円もあって、どうしてそんなに払い超ができるんですか。大蔵省証券を出してやっているわけですか。
  681. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 大蔵省証券は、御案内のとおり年度間の資金の不足を調整するものでございますから、年度間を通じましての財政資金の払い超とか、揚げ超とかという場合には中立的になります。基本的には、たとえば前の年の剰余金を食うとか、そういったものが払い超の要因になっております。
  682. 渡辺武

    ○渡辺武君 つまり、いままで税収があんまりないと、しかも、支払いの方はどんどんどんどん景気刺激のためやっているわけでしょう。どこからその金つけてきたかと、こう言うんだ、八千億の上半期払い超だというのは。それは大蔵省証券を出して賄ったんですかと伺っている。
  683. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 確かに税収が入ってまいりませんので、私どもといたしまして、国庫の金のやりくりのために大蔵省証券というのを発行いたしております。これは年度間では返済されなければならないものでございますから、先ほど年度間を通ずる払い超、揚げ超の議論には中立だと申し上げましたが、現在までの段階では、短期の証券である大蔵省証券に相当依存しておることは事実でございます。
  684. 渡辺武

    ○渡辺武君 大蔵省証券、当初予算で一兆円組んで、今度の補正予算では二兆二千億にふやしたのだね。相当これは大蔵省証券を出して金融上の手当てをつけていると見なきゃならぬ。これは日本銀行引き受けで出すものですね。
  685. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 大蔵省証券につきましては、公募によってもよいし、日本銀行の引き受けによってもよいことと法律的にはされております。現実の問題といたしましては、最近出しておりますものは日本銀行の引き受けによって処理をいたしております。
  686. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは日本銀行総裁に伺いたいんですけれども、総裁、この市中消化促進のためにどんなふうな金融政策とっていらっしゃるか伺いたい。
  687. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 先ほど申し上げましたのでございますが、マネーフローの関係では、ことしは資金が余剰ぎみに推移いたしておりますし、国債の発行かわり金が歳出となってまた金融機関に還流してくるというようなことを考えますと、金融機関のつじつまは合うわけでございまして、消化に困難であるというような事態でもあるまいと存じます。ただその間、時期的なギャップとか、あるいは金融機関別に国債の引受額と預金の集まる額との間にギャップがあったりなんかいたしまして、個々の金融機関別には資金ポジションにもいろいろ区々な状態が起こり得ますわけでございます。それともう一つは、この国債の発行と資金の還流との間の時期的なギャップもございますし、そういうことにつきまして、私ども金融調節をやって、全体の金融市場が円滑に推移するようにということを心がけていかなくちゃならぬわけでございますが、そういう全体の金融市場が波乱なく推移するように適宜金融調節を加えることによりまして国債の消化の円滑化が期せられる、マクロ的にはそういうことだと思います。  もう一つは、金融の繁閑のときどきの事情に応じて国債の発行額もあんばいしていただきたいということも必要かと思いますし、もう一つは、やはり発行条件が市中の実勢にできるだけ即したものであるようにということだと思うわけでございまして、その点につきましては、先ほど理財局長の答弁のように、すでに新しい発行条件も決まっておることでございますので、あの条件でよろしいんじゃないかと思っております。私どもといたしましては、国債を抱えた今後の金融市場の推移をできるだけ円滑に推移させるべく、金融調整に万全を期したいと考えておる次第であります。
  688. 渡辺武

    ○渡辺武君 具体的には、十二月は金融繁忙期だと思うのですね。例年、手形の買い入れなども相当やる。この十二月にも相当やるのじゃないかと思います。それからまた、公債などの買いオペですね、これも相当考えていらっしゃるんじゃないか。それから預金準備率を引き下げるという話も新聞などに出ております。この辺どうですか。
  689. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 十二月は例年資金不足の時期でございまして、昨年は一兆一千四百億の不足でございました。ことしはどうなりますか。先ほども御質問にお答えいたしましたが、今後の国債の発行状況その他にもよることでございますので、的確な予測はできませんが、昨年よりは資金不足額が大きくなるのではないかと思っております。そういう情勢に対処しまして、例年やっていることでございますが、貸し出し、あるいは手形の買い入れ、あるいは国債オペ等いろいろな手段を構じまして、金融市場全体が波乱なく推移いたしますように金融調整を行ってまいりたいと思っております。  なお、預金準備率はそのときどきの情勢に応じてあんばいすべきものではないと思いますが、公定歩合四回にわたる引き下げにもかかわりませず、そのまま据え置いてまいっておりますので、今後、年末にかけての資金繁忙期に際しまして若干その率を引き下げることも検討いたしておりますが、まだ決定はいたしておりません。
  690. 渡辺武

    ○渡辺武君 市中消化がインフレの歯どめだとおっしゃった。そこで、その市中消化の条件をいろいろ具体的に伺ったんです。ところが、これじゃインフレの歯どめになるどころか、インフレの条件を蓄積していると言わなきゃならぬじゃないですか。政府が大蔵省証券を日本銀行引き受けで発行して、そうして大量の金をばらまいている。それからまた、日本銀行は十二月の金融繁忙期と称して、手形も買い入れます、買いオペもしばらくやってなかったから今度やります、預金準備率も引き下げると、つまり信用を大幅に膨張している。これはすぐにインフレーション高進となるかどうか、これは議論の外として、やっぱり通貨を増発されてマネーサプライをふやしてインフレの要因をつくっているということになるんじゃないですか、どうですか。
  691. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 年度末にはいろんな資金需要が競合をいたしますので、どうしても金融市場としては資金不足に陥るわけでございます。その資金不足を私どもが貸し出しその他によって調整しませんと、月給も払えなくなりますし、いろんな面で国民経済の動きがストップするわけでございます。そこで私どもといたしましては、金融市場の調節を通じて必要な資金を供給しておるわけでございますが、これは年末一時のことでございまして、年が明けますればどんどん還収になっていくわけでございます。したがいまして、年末にいろいろな金融調節手段を講ずるということがそのまま通貨供給量の恒常的増加ということにつながるわけではございません。金融市場の情勢に応じて、年が明けますればだんだんに回収していかれるわけでございますので、それをもって直ちにインフレであると断ずるわけにはまいらないと思うわけでございます。
  692. 渡辺武

    ○渡辺武君 あなたのところの調査局長の伊藤豊輝さんという人が十月十三日の日本経済新聞に論文を書いていらっしゃる。それを見ますと、ことしあたりはまだ大丈夫だろうという趣旨が書いてあって、その後で「現在の国債消化方法のもとで、本年度のみならず来年度以降も、年々巨額の国債発行が続けられていけば、必要以上に拡張的な金融効果をもたらすおそれがあることに十分留意すべきである。」と書いてある。これは別の言葉で言えばインフレの危険が非常に大きいということです。あなた、これ認めますか。これから、経済企画庁長官の言葉によれば、下半期は実質成長率六%だと言う。だんだん景気は上向いていくだろうと言う。いまは資金需要はなくても景気回復過程で資金需要が出てくる。莫大な公債を抱え込んでいるんですよね。そうしましたら、一年たてばこれは日本銀行の買いオペの対象になるわけだから、日本銀行に持ち込んだり、あるいはまた日本銀行が、いまおっしゃった論理で、金融逼迫をそのままにしておけば大変だ、だから信用つけるんだと、その論理でますます信用つければマネーサプライはふえて、そうしてインフレ高進ということになるおそれは十分あるんじゃないでしょうか。
  693. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) マネーサプライ、いわゆるM2でございますが、昨年の十月の対前年同期比率一〇・六がボトムでございまして、その後は少しずつふえてまいりまして、今日では一三%ぐらいのところへまいっております。これは引き締め時における窮迫した企業の手元流動性がだんだんによくなっておることにも伴うものでございまして、一概に不可ともできないような程度の増加であると存じます。今後国債が増発されますと、それは確かにマネーサプライの増加の要因になっていくわけでございますが、今日産業資金の需要はそれほど旺盛であるわけではございませんし、金融機関が貸出競争等の挙に出ません限りは、そんなにマネーサプライが一挙に増加するというようなことではないだろうと私どもは見ております。まあ若干の手元流動性の増強によるマネーサプライの増加は起こるかもしれませんが、その程度のことでございますれば、さしたる弊害もなかろうかと存ずるわけでございます。  しかし、私は、だからと言って先々手放しで楽観しているわけではございません。もし景気がどんどんどんどんよくなってくるに伴って、このマネーサプライが四十六、七年ごろにございましたように二〇%を超え三〇%に近づくというようなことになりますと、これはまたそこに新たなインフレの要因が生まれるというわけでございますので、私どもといたしましては、今後ともこのマネーサプライの数字の動き方を注意深く兄守り、他方におきましては物価の動向、景気状況等を見比べながら、もし必要がある場合にはマネーサプライの増加にチェックをかけ得るような政策姿勢もとっていかなければならぬと思っておるわけでございまして、その辺が私どものこれからの大変重要な任務であると考えておる次第であります。
  694. 渡辺武

    ○渡辺武君 それはかなり厳しい慎重な態度をとってもらわなけりゃ危いですよ、これは。  そこで、これは総理大臣と大蔵大臣に伺いたいんですけれども、先ほど財政法四条、五条のことを伺いましたが、特に第五条は、これは公債の日銀引受発行というのは禁止している。ところが、いまずっと伺ってみますと、大蔵省証券はまず日本銀行へ持ち込んでお金をつくっておいて、ばらまいて公債消化させる。それから日本銀行も事実上信用を膨張さして、そうして公債消化の条件をつくる。これは結局第五条で禁止した日銀引受発行と事実上変わらないことを——全く同じだと言いませんよ。事実上変わらないことをやっていくことになるんじゃないですか。これは第五条の根本精神を踏みにじっていることだと思いますが、どうですか。
  695. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど理財局長からお話し申し上げましたように、蔵券——大蔵省証券は、年度内に発行いたしましても年度内に支払わなければならないものでございますから、日本銀行から借りようとどこから借りようと、それは関係ないわけなんでございます。  問題は第二段の方、後段の方の問題だと思うんでございます。公債がふえまして、一年たちました既発債をどんどん日本銀行に持ち込んで、日本銀行の買いオペの対象にしてもらうというようなことが無制限に行われるということになりますならば、あなたが御心配のような事態が起こらないわけではないわけですけれども日本銀行は適正な通貨を供給する責任を持って信用調整をやられているわけでございまして、マネーサプライにつきましては、先ほど総裁からもお話がありましたように、非常に慎重な態度で終始するわけでございますので、万々そういう心配は私はないものと思うのであります。
  696. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 大蔵大臣のように私も考えております。
  697. 渡辺武

    ○渡辺武君 いままでインフレの最大の歯どめは財政法四条、五条だったのです。これをこうして事実上のもう歯どめを取っ払ったも等しいようなことを皆さんおやりになっている。市中消化は大丈夫か、いや大丈夫だと言うからいろいろ伺ったら、その市中消化そのものも、インフレの歯どめになるどころか、インフレの要因を蓄積しているということが明らかになった。大変なことですよ、これは。こういう状態では、通貨価値の安定を基本任務としている日本銀行の私は役割りは非常に大きいと思う。  そこで伺いたいんです。西ドイツの中央銀行がが、いまお話の出たマネーサプライの目標値を定めて、そうしてこの範囲で通貨、金融の調整をやるという措置をとって、かなり成功的にやっておるわけですね。こういうやり方を採用されるおつもりがあるかどうか伺いたい。
  698. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 西ドイツの場合は、御承知のように、通貨供給の目途を対前年同期比八%というようなことに置いております。その場合、その対象になりますのは民間に流通しております現金通貨と銀行の準備預金ということでございますが、この八%を公表いたしましたのは昨年からでございますが、そこには多分に所得政策的な意味も含まれておるように感じられるわけでございますが、その辺が西ドイツの特殊事情であろうかと思うわけでございます。私どもも、昨今、このマネーサプライの動向を大変気にし、反省の資料にいたしておりますが、私はいま直ちにマネーサプライの具体的な特定な数字を、金融政策の基準に、ターゲットにするということにつきましてはちゅうちょをいたしておる次第でございます。  と申しますのは、まあ言ってみれば、望ましい実質成長プラス容認し得る物価騰貴の率というようなことが理論的には言われるんでございますけれども、その望ましき成長とは何か、容認し得る物価の騰貴率とは何か、これがもういろんな議論があるわけでございまして、なかなかコンセンサスが得られませんし、仮にコンセンサスが得られたといたしましても、具体的な特定なターゲッドになりましたマネーサプライを守ることによって、具体的にそういう望ましき成長ないしは容認し得る物価騰貴が達成せられるかどうか、その辺にまだ実体経済とマネーサプライとの間の関係に不安定な要素が多々残っておるようでございまして、今日ただいま、すぐにこれを金融政策のターゲットにすることにつきましては消極的に考えております。それよりは、先ほども申し上げましたように過去のマネーサプライの数字を常時フォローし、一般経済情勢、特に景気あるいは物価の動向等とも見比べながら、試行錯誤的に反省すべきときは反省していくというやり方が現実に即しておるのではないかと考えておる次第でございまして、直ちにマネーサプライの具体的な数字を政策のターゲットにすることは考えておりません。
  699. 渡辺武

    ○渡辺武君 私、この夏ブンデスバンクの理事のシュレジンジャーという人に会いましたら、聞きましたところが、開口一番、いまの西ドイツの消費者物価指数の上昇率ですね、当時約六%くらいだったと思う。非常に不満だと言う。もっと消費者物価指数の上昇を抑えなきゃならぬ、このためにマネーサプライの目標値を定めて、その範囲で金融や通貨を調整する、国債の発行もその範囲で抑える、これが非常に有効だということをるる言っておりましたよ。特にいまのような、日本のようなこの不況下のインフレという異常な状態では、私はやっぱり、いまのような御答弁じゃ満足できないと思うんです。どうしても始める必要があると思いますが、どうですか。
  700. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) マネーサプライを政策のターゲットにいたしておりますのは、西ドイツだけではございません。アメリカでもそうでございます。アメリカでは五ないし七・五%ということで、これはM1でございますが、やっておるわけでございますが、それらの国の事例は、もちろん私どもといたしましても大変参考になるわけでございまして、実際の運営がどうなっておるか等々につきましては今後とも研究をしていきたいと思っておりますが、直ちにそういう発想を日本に採用し得るかということになりますと、先ほど申し上げましたように、今日ではまだそこまで踏み切るのは自信がございません。
  701. 渡辺武

    ○渡辺武君 そのインフレの高進の今後おそれがあるということについては、あなたも十分御存じのことだと思うのですね。ところがそれにもかかわらず、十二月には積極的に信用を膨張さして公債消化の条件をつくると言う。私は、日本の中央銀行というのは余りに政府迎合的だと思う。それが一番私は問題だと思うんです。いま、なかなかマネーサプライの問題について消極的な態度だとおっしゃいましたけれども、しかし、ブンデスバンクは、これは御承知のように、私の会ったときもシュレジンジャー氏は開口一番言いましたよ。中央銀行の政府からの独立性が一番大事だということを言っている。余りに日本銀行はそれがなさ過ぎるんじゃないかと思うのですね。だから、公債の発行についても、まず中央銀行が公債の消化についてもう最大の権限持っていて、中央銀行がだめだと言えば公債発行できないような形になっているんです。そのくらいインフレを抑えるということを重視しているんです。この中央銀行の権限、政府からの独立性、もう少し意欲を燃やしていただきたいと思うが、その点どうですか。
  702. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 通貨価値を守り抜く、インフレとはあくまでも闘っていくというその闘志におきましては、私も西ドイツ・クラーゼン総裁に決してひけをとるものではございません。具体的に、年末のような時期になりまして、もしこの信用調節を怠りますと、現実に現金を必要とする方々がたとえば銀行に行っても預金が出せないといったような問題が起こるわけでございますので、その辺の金融市場の調節はこれはどうしてもやっていかなければならぬわけでございます。しかし同時に、インフレーションを絶対防止するという意味におきましては、先ほど来申し上げておりますように、マネーサプライの動向も注意したいと思いますし、今後とも十分留意して努力してまいるつもりでございますので、その辺は御安心いただきたいと存じます。
  703. 渡辺武

    ○渡辺武君 安心しろと言われましたから、今後その推移を見守っていきたいと思います。  次の質問に移りますが、先ほども申しましたように、国債だけではなくして地方債、政保債、それから鉄道債、電電債、たくさんの公債が発行される。今年度は一体総額でどのくらいになるか、これをお答えいただきたい。
  704. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 先ほど国債、地方債その他と申し上げましたが、その中にはただいま御指摘の国鉄であるとか、電電とか入っておりまして、先ほど申し上げました公共債の合計十一兆六千六百五十億円の中にはこの金額が入っております。
  705. 渡辺武

    ○渡辺武君 地方債は、ことし消化できる見通しはありますか。
  706. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。  地方債の問題につきましては、前々申し上げておるところでございますけれども、われわれとしては、いわゆる資金獲得の力を持っておらない、そういうような余力の少ないような市町村については財投資金でこれを充てるということにいたします。それからその他の分につきましては、これは縁故債ということになりますが、縁故債になりますというと、地域により銀行によってばらつきができることは、あなたも御承知のとおりであります。そういう場合においては、大蔵省とよく相談をいたしまして、その問題の解決をし、ちゃんとそれが応募できるような措置をとることに話し合いをいたしておるわけでございます。
  707. 渡辺武

    ○渡辺武君 まあほかの閣僚が顔を並べているのでその程度の答弁だろうというふうに考えましたけれども、とにかく、十一兆六千億円もの公債が出される、大変なことですよね。金融市場に対するいろいろなインパクトも大変だと思うんです。私は、こんな大量なものを出すのだったら、それに応じて、やはり今年度の日本銀行、政府も含めて、民間金融機関も含めての公債消化のための、何といいますか、資金の需給計画をつくるべきだと思う。その点どうですか。
  708. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 本年度の資金需要計画はいま検討しています。ただ、預金の伸びをどう見るか、貸し出しをどういう程度に見るか、なかなか、いろいろ議論がありまして、まだ国会に御披露するような段階まで来ていないのですが、なお検討いたしてみたいと、かように考えます。
  709. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう時間がなくなりましたので簡単にやりますが、いま言ったようないろんな債券、これ大まかに計算してみますと、その残高が大体五十三兆円になるんですよ。たとえば、仮に金利をうんと内輪に見積もって七%としましても、金利が一年間に三兆七千億円程度になる。大変な金をこれは金利としてそれぞれ払っていく。これはやがては税金となって、あるいは公共料金の引き上げとなって国民にはね返ってくる。そうして、さっきも話がありましたが、五年先には国債だけで七十兆、残高。大変なことですよ。財政破綻の道だ、重税とインフレの道だと言って差し支えない。こういう問題についての、どういうふうに解決するのか、その根本的な政策、これを総理大臣と大蔵大臣に伺いたい。
  710. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) まず、今日の異常な経済の状況を健全なものに、早く活力あるものにしなければならぬわけでございます。財政もそのための役割りを果たさなければならぬわけでございます。そういうことでございまするので、半面大変な歳入の欠陥でございますけれども、まず経済の立て直しをここしばらくの間鋭意やりまして、活力ある、力のある経済を打ち立てなけりゃならぬと心得ておるわけでございます。そうすることによって、財政もまた、それから栄養をもちまして財政自体の立て直しを図るということになろうかと思うのでありまして、当面異常な財政危機でございますけれども、私どもといたしましては、そういう手順で手がたくひとつこの危機に対処して、国民の期待にこたえなけりゃならぬと思っております。
  711. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 大蔵大臣の申しまするように、やはり景気の回復ということによって日本の経済というものを正常な形に返すことが前提であると、こういうことで大蔵大臣と同じように考えております。
  712. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして渡辺武君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後九時八分散会