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1975-11-01 第76回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月一日(土曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員の異動  十月三十一日     辞任         補欠選任      神沢  浄君     工藤 良平君  十一月一日     辞任         補欠選任      対馬 孝且君     辻  一彦君      佐々木静子君     川村 清一君      上田耕一郎君     安武 洋子君      木島 則夫君     田渕 哲也君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大谷藤之助君     理 事                 岩動 道行君                 中山 太郎君                 矢野  登君                 柳田桃太郎君                 松永 忠二君                 宮之原貞光君                 岩間 正男君                 向井 長年君     委 員                 安孫子藤吉君                 井上 吉夫君                 石破 二朗君                 遠藤  要君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 源田  実君                 斎藤栄三郎君                 坂野 重信君                 中村 太郎君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 最上  進君                 森下  泰君                 八木 一郎君                 吉田  実君                 上田  哲君                 小野  明君                 川村 清一君                 工藤 良平君                 佐々木静子君                 対馬 孝且君                 辻  一彦君                 鶴園 哲夫君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 野口 忠夫君                 太田 淳夫君                 桑名 義治君                 三木 忠雄君                 須藤 五郎君                 安武 洋子君                 渡辺  武君                 木島 則夫君                 田渕 哲也君                 下村  泰君    国務大臣        内閣総理大臣   三木 武夫君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        法 務 大 臣  稻葉  修君        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        文 部 大 臣  永井 道雄君        厚 生 大 臣  田中 正巳君        農 林 大 臣  安倍晋太郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  木村 睦男君        郵 政 大 臣  村上  勇君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣  仮谷 忠男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      福田  一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 井出一太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       植木 光教君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       松澤 雄藏君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       佐々木義武君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  小沢 辰男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  金丸  信君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        職員局長     中村  博君        警察庁刑事局長  土金 賢三君        警察庁警備局長  三井  脩君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁総合        計画局長     小島 英敏君        科学技術庁原子        力局長      生田 豊朗君        科学技術庁原子        力局次長     半澤 治雄君        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁企画調整        局長       柳瀬 孝吉君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       堀川 春彦君        法務省刑事局長  安原 美穂君        外務大臣官房長  大河原良雄君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵大臣官房審        議官       佐上 武弘君        大蔵省主計局長  吉瀬 維哉君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  松川 道哉君        大蔵省銀行局長  田辺 博通君        農林大臣官房長  森  整治君        農林省構造改善        局長       岡安  誠君        食糧庁長官   大河原太一郎君        林野庁長官    松形 祐堯君        水産庁長官    内村 良英君        資源エネルギー        庁長官      増田  実君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        井上  力君        中小企業庁長官  齋藤 太一君        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 正雄君    説明員        外務大臣官房領        事移住部長    越智 啓介君        日本国有鉄道総        裁        藤井松太郎君    参考人        日本銀行総裁   森永貞一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)(内  閣提出、衆議院送付) ○昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  補正予算案審査のため、本日、日本銀行総裁森永貞一郎君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 昭和五十年度一般会計補正予算  昭和五十年度特別会計補正予算  昭和五十年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑を行います。工藤良平君。
  5. 工藤良平

    工藤良平君 私は、宮之原委員経済問題に対する質問について少し掘り下げてみたいと思うのでありますが、先日総理所信表明、それから委員会におきましても御説明ございましたが、今日の不況のよって来った原因、その点についてもう少し私たちは踏み込んでみる必要があるのではないかと思いますので、その点についてもう少し詳しく総理の御見解を伺いたいと思います。
  6. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 経済政策としては、インフレを抑えながら不況をもたらさないということを目標にすべきである。だから、二者択一というわけにはいかぬ。両面作戦をとらなきゃならぬ。しかし、そのときの経済情勢を見て、どちらにアクセントをつけるかということは、これは政策の選択として重要である。  ちょうど三木内閣出発したときは、工藤君も御承知のように、これはもう異常な物価高の中に出発をして、国会を開いても、物価抑制ということが野党の皆さんも皆もう質問演説中心基調でありました。国民の声もそうであった。政府もそうだと考えている。そうして総需要抑制政策をとって物価を鎮静化さなければ日本経済はもう破綻する、そういう非常な日本経済の危機の中に三木内閣出発をしたわけです。したがって、物価というものを最重点に置いていた。しかし、不況というものはこれはそのことを絶えず頭に置かなければなりませんから、第一次、第二次、第三次と、二月、三月、六月と不況対策を講じてきたわけです。  しかし、何分にも日本経済、戦後初めてですからね、成長率マイナス成長になった。こういう事態であったために、政府の施策というものが、経済回復の足取りというものは非常におそかった。しかし、それだからといって物価問題を犠牲にするわけにはいかない。そうして、政府物価に対する約束というものは、全部政府の約束した目標に対しては達成してきたわけですね。全般の傾向というものは、だんだん鎮静の傾向に傾いてきておるという見通しをつけて、本格的に補正予算を組んで不況対策に乗り出していって、御審議の促進をお願いをしておる次第でございます。その間の経済政策大筋というものに対しては、私はこういう政策をとる以外には方法はなかった、個々にはいろいろありましょうけれども、大筋において誤った経済政策運営はしていない、こう考えておる次第でございます。
  7. 工藤良平

    工藤良平君 いつも総理はそうおっしゃるわけです。大筋については誤りはなかったと言う。誤りはなかったけれども、大変な長期の不況に陥っているということ、これは原因があるからであります。その原因国民の前に明らかにしなければ原因の除去ができないわけです。したがって、私は現在のマイナス成長というものは、前年の異常な成長に比較してマイナスということであって、全体的なレベルから言いますと決して低いものではないと私は解釈しているわけですが、その点、四十七年、八年、九年と行ってきた財政政策経済政策誤りはなかったのか、その点をもう少し明確にしていただきたいと思う。
  8. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 四十七、八年、まあ過剰流動性と言われるときの経済政策処置というものには、今後の政策運営に大きな反省をすべきものが私はあると思いますね、これに対して。いまの経済政策というものは、どこの国も同じようにインフレ不況という、スタグフレーションというのは初めての経験ですからね、それだけに非常にこの経済政策かじ取りはむずかしいことは事実だし、その上に国際的な要因というものもあるわけです。国内においても国民消費あるいは設備投資財政面からの問題もありますが、一方において日本経済というものが貿易というものから受ける影響力というものは非常に多い。どこもかしこも世界が、世界だって予期しなかったでしょう。アメリカのごときも、今年度の一−三月というのば一一・四%ですか、とにかくアメリカのこんな落ち込んだことはほとんど例のないことですからね。世界もまた予期しない国際的な不況に悩まされておるわけです。そのことは日本輸出貿易の上にも影響しますからね。  だから、日本国内要因ばかりであれば、もう少し解決の方法というものに対してはいろいろ考える余地はあるんですけれども、国際的な影響をまともに日本は受ける。しかも、原材料というのはいろいろ輸入をして製品を売るわけですから、原材料の場合においても資源ナショナリズムというような声が起こって高くなってくるし、また、世界的不況の上からいって輸出のマーケットが非常にふるわない。そういうこともあって非常に現段階における経済政策かじ取りはむずかしい。過去については工藤君の言われるように、いろいろ政府経済政策というのは、私はいつも政府のやっておることは少しも反省余地がないなどと私は強弁するつもりはありません。やはりいろいろ過去のことは反省をしながら、将来においてそういう過ちを繰り返さないという、これだけの謙虚さがなければ今日の経済政策運営できない。しかし、現在とっておる政策というものは、大筋においてはこれ以外にとる道はないのではないか。それは通常国会臨時国会速記録をごらんになれば、皆、野党はこんなときに景気の刺激なんかしちゃいけぬぞと、まず物価を抑えよということが基調であったわけですね。われわれの感覚もそうであったわけです。そういうことで考えております。
  9. 工藤良平

    工藤良平君 総理は同じことを繰り返して——。私はもう少しわかりやすくそこらを、いわゆる四十七年から四十九年にかけての異常な、世界的に驚異的な経済成長率を示したわけでしょう。そんな極端が起こったときには、経済の原則としてまた極端な不況が起こってくるということは、これは一般通念として国際的にも私たちが理解するところでしょう。したがって、そういうような極端な振幅を起こした日本のこの経済政策財政政策誤りというものをもう少し明確にしなさい、それが必要じゃないですか。そうしないと、どんなに不況対策不況対策と言ってみたところで実効が上がらないわけでしょう。その点をもう少し明確に、予算的な面、財政投融資あるいは日銀の通貨量の問題、そういう点から明らかにしてください。
  10. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私の反省は、あれだけの過剰流動性が起こって、金融が緩和されて、それが皆土地の騰貴なんかも呼んだわけですからね。金融を緩和して、それは金利のつく金ですからじっと持っておるわけにはいかない。それが不動産投資などに向いて、そういう過剰流動性に対する処置というものが経済政策の上で大きな反省材料である。  その他財政投融資とかいろいろの点については、私よりも福田企画庁長官からお答えをいたします。
  11. 工藤良平

    工藤良平君 総理としてこの基本的な問題をしっかりわきまえておかなければ、田中さんのような失敗を起こすわけでしょう。ですから、私はその点はあなたが明確に自分政治信念として、政治信条として明らかにしておかなければ、大蔵大臣だって経済企画庁長官だって、だれだってできないじゃないですか。その点を私は明確にしていただきたいということを言っているわけです。
  12. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まだ昭和四十七年、四十八年というようなものは、これは高度経済成長に結びつけられる客観的条件があったわけですからね。いまは、もう一遍そういう状態を再燃してはいけないぞという工藤君の御主張でございますが、そういう条件はすべて失われたんだと。そうでしょう、資源の問題をとらえたところで、また環境問題だって一段と厳しくなるし。だから、日本客観情勢も大きく変化を来したし、国民価値観にも変化がありますわね。そんなに高度経済成長世界と覇を競うようなことは望まない。もう少し量的な拡大よりも質的な充実国民は望んできておるわけですね。  そういういろいろな変化が、もう一遍これを繰り返そうとしても繰り返し得ない、そういう条件が起こってきておるので、政府経済政策としてこれからとろうとする政策は、安定した適正成長に結びつけようというのですから、いままでの時代のように、しばらく不況時代を過ごせば高度経済に結びつく時代ではないんですから、政府はそういういろいろな客観情勢変化と過去における経済政策反省の上にも立って、日本がもう少し成長の速度を落として、そのかわりに、いま工藤君の御指摘のように、景気が一遍に上がったり下がったりするような景気変動の幅をできるだけ縮めて、安定した経済に持っていこうという政策に切りかえておるわけですね。そういうことでございますから、何も政府が、昔のような経済にもう一遍返る危険があるとも私は思わない。そういうことの危険といったって、そういう条件可能性はありませんよ。そういうことで、そういう方向でやはり経済政策の大きな軌道の修正を行いつつある。それは過去におけるいろいろな反省もその中には加わっておるし、客観情勢変化もあるんだというのが私の考え方でございます。
  13. 工藤良平

    工藤良平君 総理、私はもう少しそれじゃお聞きしましょう。財政役割りというものは、一体どういうことを任務としておりますか。
  14. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 財政役割りというものは、これは政府がいろいろな政策を実施していく上の財政本来の役割りの上に、やはり景気調整役割りも私はある。今日のように国民消費の態度というものが堅実になり、また、これだけの稼働率指数も、副総理がしばしば言っておるように八三%というこういう状態で、なかなか設備投資も起こってこない。輸出というものも世界的不況の余波で不振である。こういうときに日本景気回復に対する財政役割りというものは非常にある。日常の財政本来の意義の上に、やはり景気調整への役割りというものも財政は持っているというふうに考えております。
  15. 工藤良平

    工藤良平君 私から申し上げましょう。これは大蔵省から出ております「日本財政」、この中に詳しく書いてありますけれども、財政役割りというのは、資源配分調整、所得の再分配、経済安定化、適度の成長率の維持、こういうことが主たる目的だと言われているわけです。したがって、これが今日、過去四、五年間の日本財政金融すべての問題をながめてみると大変大きな問題が出てきている。成長が異常な状態を続けているときに、財政的にも金融的にもすべてノーズロースで、物価上昇と異常な経済成長というものを許してきたというところに今日の不況の深刻さがあるということを私は指摘をしてきているわけですが、そういう点について、総理がきちんと自分の胸の中にそういう基本をわきまえて指示をしていかなければ大変な誤りを犯すわけです。あなたがいかに、いやこの前来た道は繰り返しませんとみんなにおっしゃってみても、現実に経済はそう動いていっているわけでしょう。それを私は指摘をしているわけです。  もう少し申し上げますならば、たとえば好況期には増税あるいは需要抑制財政の縮小ということが一つのパターンとして出てこなければなりません。今日のような不況期には、逆に減税、そして需要増、そして財政の増というものが初めて均衡ある成長というものを遂げていくわけでしょう。こういう点について、あなたがきちんとわきまえていなきゃならぬということを指摘をしているわけですが、その点についてはどうですか。これは大蔵大臣、副総理にもお聞きをしたいと思うんです。
  16. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私どももさように考えまして、こうしてこの時点における財政役割りというものを考えて、いわゆる今回の補正予算などもそういう見地から生まれておるわけですけれども、それは過去においてのいろんな、工藤君の御指摘のようなことは私は反省材料になると思いますね、これは。反省材料になる。しかし、今日もう一遍また繰り返すと言っても、もう高度経済成長に返ることはありません。返り得ないですよ、この道は。これはもう返ると言ったって、その高度経済成長を支えた諸条件はすべて失なわれておると見なければならない。そこで、やっぱりこれが日本の大きなこれからの経済政策の転換の支点である。もう一遍返そうと願っても返れるものではないし、また返そうと願うこと自体、それは今日の国民の求めておるものはそういう量的の拡大ではない。いろいろこの委員会で御質問のあったような、むしろ生活の内容に対しての質的な充実国民は望んでいる。だからそういう点から、再び返ろうとしておるわけでもないし、その夢を政府は追うものでもないわけです。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 自由経済体制の中では、これはどうしても景気循環というものがあると思うんです。わが国経済成長過程に入った。これは岸内閣から池田内閣佐藤内閣、そういうふうに続いてきておりますが、大体一、二年不況が続くと二、三年の好況、二、三年の好況の後でまた一、二年の不況と、そういうふうになっている。そこで、好況になりますとどうしても物価が上がる傾向を持つわけです。それから特に国際収支が悪化する、こういうことで、そこで引き締め政策がとられる。そこで財政金融が機能いたして効果を上げまして、その任務が終わるというころになるとまた経済は常態に戻りまして活況を呈する。活況を呈すると、また国際収支が悪化する、物価が上がる、こういうことで締めにかかる、こういうことでありますが、私は、そういう中でいわゆる高度成長期、十三年間ですね、これはわりあいによくやってきたと思うんです。十三年間、国際収支が破綻を来すというようなことはない。それから物価も、卸売物価はずっと横ばいで来ておる。  ところが、四十七年の下半期から変調が出てきておるんです。卸売物価が初めて上がってくる。国際収支は、秋にはあれだけの黒字を残したわが国国際収支が大変な逆調に転じ、その後一年間で百三十億ドルの赤字を露呈する、こういうことになる。そういうことになったゆえんは何であるかというような点は、私は深く反省して、再びああいうことを繰り返しちゃならぬ。とにかく、勢いは余ってあの地価の暴騰となる、物価石油ショックの以前においてすでに卸売物価が二〇%を上回る、こういうことになってきておるわけであります。  つまり、今日のこの事態の根源というものは国内的にも一つあったのです。ずっとあって、卸売物価はとにかく一昨年の十月で二〇%一年間に上がる、また国際収支は百三十億ドルの赤字を露呈する、こういうような状態にあった。そこへ、非常に国内的に問題をはらんでおるその時期に石油ショックと、こうきたものだから、往復打撃をこうむるというような状態になり今日に至ったので、そういうような過去の経験は深くこれは反省しなければならぬと思います。そういう反省の上に立って今後は過ちのない成長政策をとらなければならぬ。そういう際に、何といっても財政金融、これ、がっちりと握りまして、そうして誤りなきを期していく、こういうことが私は基本である。工藤さんのおっしゃる基本的な考え方、全く同感でございます。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま総理、副総理からお話がございましたが、若干それに私からも補足して申し上げますと、工藤さんがおっしゃる財政役割りは、原理的にはあなたのおっしゃるとおりだと思います。問題は、そういう財政の機能が円滑に働く体質をわが国財政が持っておったかどうかということだと思うのでございます。これはわが国財政ばかりでなく、世界的な傾向でございますけれども、非常に体質が硬直化してまいりまして、経済好況不況にかかわりませず、それに対する対応の弾力性を欠いておることは、わが国ばかりに見られる現象でなくて、高度先進国全体が持っておる病弊でございます。したがって、賃金にいたしましても、雇用にいたしましても、金利にいたしましても、弾力性を持っていないわけでございまするので、あなたがおっしゃるように、今日のような資源の制約、環境の制約、技術革新が余り伸びない、通貨が不安だというような環境のもとにおきまして、前広に財政政策といたしましては十分対応した姿勢をまずもってとっておかなければならなかったわけでございますが、それが行われなかったことはあなたが御指摘のとおりだと思うのでございます。  しかし、事態に対しまして、政府といたしましては、ともかく対処していかなければなりませんので、総需要抑制策という一連の政策を実行いたしまして、物価抑制を中核にした政策を実行してまいりました。これは非常な無理なことでございまして、不況をさらに深刻にしたということは御指摘のとおりでございますけれども、それ以外にやる道がなかったわけでございまして、曲がりなりに物価が一応の小康状態を呈しましたので、経済に力をつけなければならぬ、新たな均衡を回復せにゃならぬということで、景気対策に手を染めたというのがいまの段階でございます。それにはそれなりに財政役割りを果たしてまいらなければならぬということでやっておるわけでございまして、いま財政のやっておる役割りというのは非常な無理をいたしておるわけでございますが、それは本来、体質が硬直化いたしておる財政であるだけに無理を強いられておるわけでございまして、これをどのように柔軟な体質を取り戻すかということがわれわれに課せられた基本的な課題であろうと私は考えております。
  19. 工藤良平

    工藤良平君 大蔵大臣にもう少しその点をお聞きをいたしたいと思いますけれども、もちろんこれは福田大蔵大臣も関係をすると思いますけれども、四十七年、八年、九年の、私これにこだわりますけれども、大型の当初予算を組み、さらに増収に伴って大型の補正を組む、それでもなおかつ増収が出る、こういう状態が二、三年続きましたですね。この点については数字的に大蔵大臣としてもお認めになりますか。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございます。
  21. 工藤良平

    工藤良平君 具体的に、それではどの程度四十七年、八年あたりに自然増収、最終的に決算をした段階で出ているか、御存じですか。
  22. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) お答えいたします。  税収における当初予算に対しまする決算額の増加額は、四十七年度が、対当初予算でございますが、九千二百十六億円、四十八年度は二兆二千八百六十九億円でございます。ただ、補正後に比べますると、四十七年度は六千三百九十六億円、四十八年度は七千七百八十九億円となっております。
  23. 工藤良平

    工藤良平君 いまお話しのように、当初予算もほとんど二〇%を超して伸びてきた、増収は上がってきた。補正を組んだけれどもなおかつ増収が上がってきた。おまけに建設国債はぐんぐんふえていった。日銀の流動性はますます大きくなっていくというか、貨幣の供給量はふえていく。こういう状態で、これはインフレが起こらざるを得ない。それと比較して、いまが悪いからと、こういう議論になりますと、国民の側からしてみれば、景気のいいときにはしっかり企業はもうけて、悪いときには悪い悪いと言って、結局は失業やあるいは賃金を抑えるという形になるじゃないかという率直な不満というのが出てくるわけですね。それをうまく調整をしていくというのが私は財政の本来のあるべき姿だ。それが判断を誤りあるいは手当てがおくれることによって、大変な迷惑を受けるのは国民だということを私たちは知らなきゃならぬ。その点を、総理以下いま御答弁のありました三人の皆さん方は、はっきりとこの段階で認めるかどうか。認めた上において今日の不況対策をどうするかということを私は考える必要があると思いますから、その点について、ひとつこれを締めくくる意味において明確な御見解をいただきたいと思います。
  24. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 経済政策のあとを振り返ってみれば、工藤君の御指摘のような諸点は、政府反省すべき材料だと私は考えます。
  25. 工藤良平

    工藤良平君 そこで、さっき総理は再び高度成長ということはあり得ないだろう、そういう条件はないと、こうおっしゃいました。しかし、現在の経済を動かす人たちにとっては、やはり高度成長というものは、みんなにもちろんこれが均衡にであれば、それは私どもに潤うわけでありますから、それはいいことです。必ずしも低成長がいいということではありません。ただ、それは均衡のある、さっき申し上げましたように経済の発展というのが非常に大事であるということは私が申し上げるまでもないと思うんですが、そこで、今日のこの不況のよって来った一番大きな原因については先ほどお話がありましたけれども、たとえば具体的に申し上げますと、今回興人という大企業が倒産をいたしました。これは土地に手を出したということが一つの原因であるとも言われているんですけれども、この点については、現在倒産をして会社更生法の適用を受けている企業の中に、そういう類似のものがたくさんあるかどうか、ちょっと傾向だけでもいいですからお聞かせいただきたいと思います。
  26. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 倒産問題につきましては、私どもも常時審議いたしておりますので、ただいまの御質問に対しまして、私どもの見ました所見を申し上げますと、興人の場合にはまさにおっしゃるようなことが致命的であったと存じます。そのほかにも、大口の倒産ではございませんが、不動産投資の過大か、ないしはゴルフ場等への野方図な進出計画等の破綻というようなケースが比較的多いのが実情でございます。
  27. 工藤良平

    工藤良平君 この問題はちょっと大臣の関係もありますから、すぐ後でもう一遍質問いたしますけれども、今日この会社更生法の適用などを受けまして企業の再建が行われている企業はたくさんございます。私も雇用の安定という立場から、あるいは地方の経済の安定という立場から、会社更生法の適用によって企業が立ち直るということを望んでおります。そういうことは非常に大事だと思います。ただ、その過程の中で一つ問題になってまいりますのは、ややもいたしますとそういう企業は公害問題を抱えているという企業が大変多いようでありますけれども、そういう点について基本的に私たちとしてどう考えていったらいいのか、抽象的でありますけれども、まずお聞きをいたしたいと思います。
  28. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 倒産をいたしまして、会社更生法の適用を受けた会社等が公害問題を抱えている場合、まず会社自体に、現在更生法の適用を受けている現時点においては力がないわけでございますので、この点はできるだけ私ども、公害防止事業団なりあるいは開発銀行なりの適用を考えまして、手助けをしていかなきゃいかぬのじゃないだろうか。おっしゃるように、会社が力がない、公害はそのままでいいというわけにいきませんので、そういういま申し上げたような姿勢で県ともよく相談をし、あるいはまたその地域の実情に応じてできるだけの配慮をして、公害は公害対策として並行してやはり何らかの解決の道というものを求めていかなきゃいかぬのじゃないかと思います。  ただ、一般論としてはそう言いますけれども、企業の置かれた場所によりまして、公害防止計画ができ上がっており地域指定がなっておるところでございますと、事業者負担法の適用というものははっきりしておりますけれども、そうでない地区については事業者負担法の適用ができませんので、やはりケース・バイ・ケースで考えていかなきゃいかぬと思います。いま、たまたまお話がありました興人の問題等については、やはり何次かの公害防止計画を適用すべき地域の指定等を考えますと同時に、一方、会社の更生の状況等を見まして、できるだけ私どももひとつ公害の関係の防止対策が円滑にいきますように、十分ひとつ配慮をして考えていくようにいたしたいと、かように考えます。
  29. 工藤良平

    工藤良平君 高度成長の場合もそうですが、異常な高度成長が続きますと、必ずそこには副次的に公害というものが起こってまいります。拡大をしてまいります。したがって、そのための対策というものは非常に大切でありまして、三木総理もかつて長官のときにそういうことを主張しておりました。しかし、私はその被害を受ける漁民あるいは農民、地域住民、こういう人たちは、それが健康、生命にかかわる問題でありますから、会社更生法を適用されて企業の再建を私たちは本当にやらなきゃならぬ、しかし一方、それでは公害が出ることをたな上げできるかというと、これもまた猶予のできない問題でありますから、そういう点の調和を行政的に図るということは私は非常に緊急の課題だと思うわけでありまして、そういった意味からこれは総理の御見解をぜひお聞きをいたしたいわけですけれども、私はPPPの原則は当然貫いていかなきゃなりませんけれども、時期的にこういうときに、しかもたまたまそれが会社更生法の適用で再建をしているという企業であれば、それに肩がわりをすべき何物かがないと、その再建も支障を来すでしょうし、また地域住民の方からすると被害がさらに大きくなっていく、持続するということになりますから、これもゆるがせにできないという観点から、それはどうしたらいいのか、政府としての御見解をひとつ聞きたいと思います。
  30. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま工藤君の言われるように、生命、健康というものは第一であります。結局、生命の維持発展というものが政治の目標であるわけです。しかし、そのためには企業というものに対しても、生命を維持発展しながら企業をどうして伸ばしていくか、私はこれからの企業の競争というものはそういうことになると思うんです。だから、やっぱり公害防止の投資というものはこれから大きなウエートを占めてくる。現にそういう傾向があるわけです。その場合に、PPPの原則というものは、私はやはり貫きたい。それを外しますと、これはもう収拾つかなくなってくるわけで、厳しく企業責任というものは追及されるということが経営者のモラルとしてなければならぬわけですから、そういう汚染者負担の原則というものは貫きたい。まあ事実上いろんな問題が起こりましょうけれども、その原則を外して考えるという考え方はとらないんです。それに対して、そういう貫けないような場合というものに対していろんな配慮は要りますけれども、原則としてはこれを崩す考えはないということでございます。
  31. 工藤良平

    工藤良平君 私も原則を崩すべきでないというのはそのとおりです。しかし、一時、たとえば会社再建のために努力している、それと同時に公害対策もたな上げをするというわけにはまいらないわけです。したがって、その間PPPの原則を貫きながら、さて対策としてどうしてあげるかということをもう少し明確にしていただきたい。
  32. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) だから、その汚染者負担の原則は崩しませんけれども、公害防止などの継続的に事業をやっていかなければならぬ、そういうものに対しては、政府としてPPPの原則だから公害防止の事業に対しても政府がおれは知らぬぞということはよくない。これは政府がそのことはやはり協力をすべきだという考え方で、そういう方針でわれわれはやろうと考えておるわけでございます。
  33. 工藤良平

    工藤良平君 その点については、ぜひそういう形で御努力をいただきたいと思います。  そこで、またもとに戻りますけれども、非常に大きな深刻な不況に陥った。しかも、その中で、やはり土地投機に手を出したということが原因でかなり倒産をした部分が、さっきの日銀の総裁のお話じゃありませんけれども、あるわけです。これはさっき三人とも、その点の財政金融政策の行き過ぎ、誤りについてはお認めになりましたから、私はあえてこれ以上追及しませんけれども、しかし、そういうようなことを再び繰り返してはいけない。そのための財政金融政策というものが私は非常に大事だと思っているわけですが、その点については今後なお厳密な、厳しい対処をお願いをいたしたい、こういうように考えているわけですが、その点。
  34. 対馬孝且

    対馬孝且君 関連。  運輸大臣に質問いたします。  北海道における室蘭の道南バス事件に関しまして、政府の行政的な指導のあり方につきまして明確に見解を問います。  これは御案内のとおり、昭和四十五年から社長が六人もかわるというきわめて放漫経営の会社であります。しかも、これに対しましては、札幌元陸運部長である根本敬三氏を道南会社に取締役として運輸省は入れております。しかもその後、四十八年の十月には、根本氏は社長に就任をいたしているのであります。ところが、今日の事態を招きました。現在、なお常駐監査役としてこの道南バスにとどまっておるのであります。負債額三十四億円、しかもその後、小倉元社長、現亀田社長が、九月の十日、二十日に、社長二人とも札幌地検に逮捕されるという、きわめて異常な社会的事件が発生をいたしました。これに対しまして、現地の住民は一日十万人の足が奪われ、しかも労務者は賃金が遅欠配、退職金総額が一億一千万、しかも燃料手当すらこの寒さを控えて与えられていないというのがこの会社の実態であります。  そこで私は、運輸大臣として、少なくとも陸運局の行政に携わった者が社長に就任をして現在特別監査役でおりながら、再三にわたる特別行政指導に対して何らの手も打っていないといった問題はどういうことなのか。これは明らかに企業と癒着をしておるのか。さもなければ道庁に任せるのか。いま一億円なければ、燃料手当あるいはこれに関連する三十八の中小企業が倒産をする寸前にあると言われているのであります。いま道庁は、これに対しまして何らかの措置をしなければならないと言っています。これに対して政府は一体どういう行政指導と責任を持ってこの道南バス政策に対処しようとするのか、この見解をお伺いをいたします。
  35. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) お答えいたします。  室蘭バスの経営が非常に放漫に流れて、いま御指摘のような事態に立ち至っておることは非常に私も遺憾に思っております。問題を起こしました社長が、バス事業以外の事業に手を出しまして、その事業の失敗からそういうふうなことになっておるということでございます。しかし、一方におきましてバス事業という公共的な使命を継続していかなければならない責任があるわけでございますので、運輸省といたしましても出先の陸運局長を指導いたしまして、陸運局長が主になってこれが善後策についていろいろと努力をいたしておるところでございます。  また、お示しのお話の中にありました元陸運局の自動車部長が室蘭バスに入って社長をしておった、そのとおりでございますが、この事件が起きましたのは、その根本君が社長のときではございませんので、現在問題を起こしておる社長は別の社長であったわけでございますが、根本君時代にこれらの問題につきましてもそういう心配があったかどうか、そういう点もつまびらかにいたしておりませんけれども、根本君自身は、いまお話しのように、たしか監査役に残っておるんではないかと思いますが、こういう人たちも会社の中におりまして、この善後策にいま腐心をいたしておるように聞いておりますが、なお詳細なことは事務当局の方は十分知っておると思いますし、その話を聞きまして、いわゆる公共的使命に支障のないように、バスの運行そのものについては万全を期するように指導をしながら会社をどういうふうにして立ち直らすかということについても陸運局をして十分指導をさせていきたい、かように考えております。
  36. 対馬孝且

    対馬孝且君 いまの運輸大臣のお答えでは私は納得いきません。なぜかならば、根本社長時代ではなかったと言ったって、現実に元小倉社長時代においては、根本前社長は非常駐の形でこの会社に関連をしているからであります。しかも、亀田社長時代は明らかに常駐監査役であります。この中にあって、しかも私は運輸省の指導が納得できないというのは、もちろん手形を乱発をして、土地のブローカーと手を組んで、多額の道南バスの十六億七千二百八十万円という手形が乱発をされている。土地ブローカーを使って約三億二千八百万円の金が、これまた道南の手形が乱発をされている。こういった問題を常任監査役は知らないというわけはないではありませんか。更迭をするなら——現在の社長、専務までは解任をしましたけれども、当時の常任監査役初め役員は全部残っているではありませんか。そういう意味で、私はまさに黒い霧と言わなければなりません。この点、もう一回納得する回答を願います。  さらに総理大臣にお伺いします。三木総理にお伺いしたいことは、この問題に関連をいたしまして、自民党の三池信代議士が九月十二日の毎日の朝刊、北海道新聞の九月十一日の朝刊、故南條徳男代議土と三池信代議士の紹介によってこの逮捕された小倉社長が実は社長に就任をいたしておるわけであります。しかも、この三池信代議士は当時運輸委員長という職権の場にございました。しかも、この小倉社長との関係がありまして、その後道南バスの手形が五千万円、三池信代議士に支払われているという疑いがあるということを札幌地検が明らかにしております。したがって、近く三池信氏について参考人として事情聴取をするということも明らかにされております。  こういった問題について、総理、少なくてもあなたがクリーン三木という清潔を訴えるならば、まず国民に対して、しかも道民の足がいま奪われようとしている事態で、政府は進んでこういった問題を解明して、国民の疑惑のない、住民の過疎バス対策や、そして足を守ることが当然しなければならない問題であると思うのであります。また、政治家としてのモラルの問題も私は求められると思うのであります。こういう意味で、三木総理に対しましてこの問題に対する基本的な姿勢のあり方についてお伺いをいたします。
  37. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) いまの事件が起こりましたときに、根本君が監督役であったと思いますが、監督役であったといたしますれば監査役としての責任は当然あることを私は否定するものではございません。ただ、非常に残念に思いますのは、私も根本君という人柄をよく知っておりますが、あの君がずうっと社長をやっておれば今日のようなことはなかったんじゃないかということを考えて実は悔やまれてならないわけでございます。そういう意味で申し上げたことでございます。
  38. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 三池代議士は私もよく知っておりますが、そういう不正なことをする人ではないと思いますが、ここでいま個人の三池代議士という名前が持ち出されて、本人の名誉に関係いたすことでございますから、私はよくこの問題を調査をいたします。
  39. 対馬孝且

    対馬孝且君 もう一問。
  40. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) もうこの辺で——簡単に、一言。
  41. 対馬孝且

    対馬孝且君 それでは、いまの調査をするということでありますから、これは徹底的にひとつ調査内容を明らかにして、運輸委員会の場でこの真相を明確に、調査の結果を明確にしてもらいたい、運輸委員会で徹底的に追及いたしてまいりたいことを申し上げまして、総理考え方をもう一度、この調査内容を明らかにすることを確認したいと思います。
  42. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 本人にもよくこういう問題が提起されたことを伝えまして、そして本人の話も聞き、その真相をしかるべき場所において明らかにいたします。
  43. 工藤良平

    工藤良平君 それでは議論をもとに戻してまいります。  福田総理にお伺いいたしますけれども、福田総理は先般のこの委員会でも、現在の不況対策を進めるためには需給ギャップを縮めなければいけない、こういうお話がありましたが、その点についてもう少し説明していただきたい。
  44. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国経済は、経済全体といたしますと、つまりマクロ的に見ますと、上昇過程にいまあるわけです。傾向として、ことしの三月以降、生産もふえる、出荷もふえる、また操業度も上がる、こういうような状態でございます。まあ世界各国ともことしはマイナス成長だという中において、わが国は低い比率ではありまするけれども、プラス成長という上半期の実績を残し、下半期はさらにそれが上昇すると、こういうことなんです。ところが、わが国におきましては、不況感というものが非常に経済界の間に強いわけであります。各国に比べまして、不況感の強さ、これは際立っておるわけです。  それはなぜかということを考えてみるわけです。私は、確かにそういうことがあり得ると思う。それは、わが国におきましては経済がだんだんと上昇過程には全体とすると転じてはおるものの、企業の操業度というものがまだ好ましい水準というところまで来ておらないのです。ことしの三月が底でありまして、これが四十五年度を基準としたいわゆる稼働率指数、この稼働率指数というのはいろいろこれは誤解も生む種になるんですが、本当の操業度というのは、これは大体学者あるいは研究家等の間におきましては、それにさらに〇・九くらい掛けたもの、実際の操業度は。そういう性格のものだというふうに言われておりますが、わが国におきまして操業度を測定する資料といたしましては稼働率指数しか実はないんです。そういう性格の稼働率指数が、とにかく三月底の七七である。それがだんだんと上がってまいりまして、八月には八三というところまで来ておるのです。  ところが、望ましい操業度は一体どのくらいだということを企業稼働率から見ますと大体九五、財界なんかには一〇〇くらいはほしいのだと言いますが、私どもは大体九五くらいだろうと、こういうふうに見ておるのです。それが九五のところまでとにかくいかなければならぬものが、いま八三というところで低迷しておる。そうすると、そのことは、かなりのこれは設備の過剰があり、また人員の過剰があるということを示すものです。わが国におきましては、そういう状態のもとにおきまして、いわゆる終身雇用体制だというので企業内に過剰人員を抱えておる、大方の企業が。それから過剰設備に対しましては、外国におきましては自己資本ですから金利負担という問題が起こらない。わが国におきましては金利負担という問題が起こる。  そこで、人件費負担、金利負担というものが個々の企業につきましてはその経理を非常に圧迫する。そこで収益状態が改善をなかなかされない。これがいわゆる不況感というか、ミクロ不況と言われるものの実体である、こういうふうにとらえておりまして、どうしても景気を回復する、そのねらいとしてはマクロの数字というものに満足するわけにいかない。個々の企業のそういう状態を改善しなければならぬ。それにはやはり操業度の改善というものを必要とする。操業度を改善するには一体どうするかというと、最終需要をふやすほかはない。最終需要をふやす手段、これはいま今日の事態においては財政が中心にならざるを得ない。金融の働きもそれはありますよ、ありまするけれども、主力は財政、これに待たざるを得ない、こういうことで、いま補正予算のこの御審議なんかをお願いしておる、こういう状況でございます。
  45. 工藤良平

    工藤良平君 いまお話がありましたが、現在の需給ギャップを狭めるという対策が非常に必要だ、そういう過程の中で特に企業の稼働率を高める、九〇%とか、あるいは一〇〇%とかというお話があるわけですけれども、そういたしますと、いまお話がありましたように、特に四十八年の後半引き締めに入った。しかし、設備投資は非常に急速にその後も伸びていっているわけですね。これは日銀の調査月報によりましても、大体一四〇から一五〇という指数で伸びた。それを今度は稼働率一〇〇%という状態になってしまいますと、再び過剰生産ということが起こると私は思うのですが、その点については副総理としてはどういうようにお考えになりますか。
  46. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま需給ギャップが大きい、いま申し上げたとおりでございます。つまり、過剰設備がある。そこで、仮に金融政策を緩和いたしましても、なかなか企業の方では設備の増設というような状態に移らないんです。そういうことを現に反映いたしまして、ことしなんかはかなり伸びるだろうと当初は見ておったものの、逆にこれが昨年度の水準よりは引っ込むと、こういうような状態でありまして、そういう需給ギャップがかなりまだ開いておるという、そういう状態下におきましては、これは経済がある程度成長発展いたしましても、その需給がもう詰まってフルになったという、あるいはそれに近接した事態になるというまではなかなかこの設備投資は起こらないであろうと、こういうふうに考え、今回の景気対策におきましても設備投資への期待というものは余り持たぬと、そういう状況でございます。
  47. 工藤良平

    工藤良平君 しかし、一方においては、今日行った第四次不況対策あるいは公定歩合の引き下げ、これについては不十分だと、第五次をやりなさいということが企業側の方からかなり強く出てきておるわけですね、そういうものとの関連はどうお考えですか。
  48. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今度の第四次不況対策をとりましても、企業の操業度というと、これは望ましい水準、つまり先ほど申し上げました九五とまではいかないんです。やっとこさっとこ九〇まで来年の三月時点にいくかいかないかという状態でありまして、したがって、企業といたしましてはなお収支の苦しい状態が続くであろうと、そういう状態が改善されるのは来年一年ぐらいかかるんじゃないか、来年度一年ぐらいは。つまり、来年度一年かかって、仮に来年六%成長をしましたという前提をとりますと、大体九五稼働率指数というのがいきそうでございますが、そこまでとにかくまだいかない今日の段階であり、いまこの時点におきましては、八月にとって見ると八三だと、こういう状態ですから、企業は苦しい。ですから、政府がいろいろやる、やってもあれじゃ足らぬじゃないかという声も起こる。それは私は理解はできまするけれども、しかし、今回の対策は、とにかく下半期におきましては実質で六%の成長が期待できると、こういうような状態でありまして、これがいろんな関係で対策の実施がおくれるというようなことがあると多少ずれ込みというものもありますけれども、いま一生懸命になってあの計画が早急に実施されるように努力しておりますので、私は第五次対策ということを今日考える必要はないと、こういうふうに考えております。
  49. 工藤良平

    工藤良平君 先般の第四次不況対策を見ますと、大型プロジェクトを中心にした不況対策が中心になっているという批判がありました。それは局部的に新たな設備投資というものを誘発していくのではないか、そうすると、それがさらに波及的に設備投資拡大をしていくというようなことが非常に心配をされるわけで、そういう意味からいたしますと、いまおっしゃるように、第五次不況対策というものは相当慎重にして、これはやらないという厳しい態度で臨む必要がある。そういたしますと、あと、じゃ何の道が残るのかということになると、これは国内需給を高めることによって循環をよくしていくということになってくると思うんですが、そういう点については基本的にどのようにお考えですか。
  50. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 最終需要要因とすると、申し上げるまでもありませんけれども、個人消費ですね。次いで設備投資需要、それから次いで政府、地方公共団体を含めての財貨サービスの需要、さらに輸出需要と、大きく言うとその四つであります。住宅なんかいろいろやりますけれども、大きく言うとその四つに分かれると思う。  ところが、個人消費は落ち込み落ち込みと言われまするけれども、これはそういう状態じゃないんです。伸びは鈍化しておる。しかし、今日この時点でとにかく昨年に比べて一五%ふえているんですよ。ことし第四次対策をとったその後における名目成長率はどのくらいになるかというと一〇%です。平均が一〇%という中で個人消費はとにかく一五、六%ふえる、こういうような状態であります。決してそう引っ込んでいるわけじゃない。そういう状態の中で、さらに個人消費を刺激してこれを増大するかというと、私は本会議でも申し上げたわけでありますが、これはいま節約というムードが出てきておる。これは、資源有限時代という時代において、資源小国たるわが国とすると、どうしても国も企業も、また家庭もそういう方向をたどらなきゃならぬ。そういういい傾向が出てきておるその中で、これをまたひっくり返すというようなことをしたら、これはとんでもないことになるという考え方が一つあるんです。  それからもう一つは、多額の国債が発行される。この国債の管理ということについては大変心配をしておるわけですが、その国債管理政策上一番大事な問題は何かと言えば、国債が完全に消化されるということです。消化ということは国民がそれを買うということなんですよ。直接買うか、あるいは銀行に預金をして、そして銀行がその国債を買うか、その以外にないんです。そういうことを考えますと、金はお使いください、その方がいいんですというような政策は、これはとれない。  それからもう一つある。もう一つありますのは、減税をするということになりますれば、これはどうしたって減税の財源が要るんですよ。同じ財源を使ってほかに道がないかというとほかに道があるんです。減税によって個人消費をと言えば、仮に一兆円の金を使って一兆円の減税をする、そうしますれば一兆円ぐらいの購買力効果しか出てこない、あるいはそれより引っ込むかもしれません。貯蓄という方に回るかもしらぬ。ところが、公共事業に同じ財源を使うということになれば何倍かの効果を生ずるわけなんです。いま第四次対策で、公共事業を中心として一兆六千億円の財政措置を講じます。その財政波及効果をいわゆる三兆円と見るのですが、減税でそれをやろう、それだけの効果を生ぜしめようとすると、これはまあ三兆円以上の財源が要る。これはいまの財政事情ではとても許されない。こういう問題もありますので、個人消費に最終需要の喚起を求めるというのは、これは私は、いまわが日本の立場とすると非常に邪道ではないか、そういうふうに考えておるわけなんです。しかし、個人消費の力は、そういう刺激的な特別の工夫をせぬでも、経済が安定するということになれば、先々経済国民は不安を持たぬという状態になりますれば、これはだんだんとまた正常化してくるに違いない、その自然の推移にまつ。こういう考え方が妥当であろうと、こういうふうに考えておるんです。  設備投資を刺激する方法があるかというと、これは公害だとか安全投資でありますとか、あるいはボトルネック産業でありますとか、そういう投資はこれは起こってくる。また起こす必要がある。ところが、一般的に設備過剰の状態で、従来の景気循環時のように設備投資景気を起こす力にするというのはこれは期待はそうは持てない。輸出はどうかと、これはアメリカ景気の見通しの問題がありますが、アメリカが、言われるとおりよくなれば改善するいい機会になりまするけれども、世界全体としましてそう即効薬的にわが国景気を刺激するというわけにもいかぬ。そうすると、残された道はどうしても財政になっちゃうんです。財政は非常にいま苦しい状態ですけれども、しかし、経済あっての財政じゃないかと考えるんです。経済景気浮揚のきっかけをつくるための役割り、これはどうしても財政にまつほかはないというふうに考えまして補正予算の御審議をお願いすると、こういうことになっておる次第でございます。
  51. 工藤良平

    工藤良平君 私は、さっきからお話がありましたように、四十八年にこの総需要抑制対策が進められてまいりました。しかし、その後引き続いて過剰な設備投資がずっと行われていったと、こういうようなことから、現在のこの生産能力の急激な増加というものは、不況時の相対的な過剰ではなくて構造的な絶対的過剰の局面に入っているのではないか、こういう御意見もかなり出てきているようであります。そういたしますと、これは長期的な、副総理がよく言われるマクロ的な対策というものが必要ではないのか、こういうようにも私は考えるわけですけれども、この不況時においてもですね、その点についてはどうでしょうか。
  52. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま、当面三カ年の調整期間だというので、異常な今日の経済の克服、つまり不況インフレの同時解決という問題に取り組んでおるわけでありますが、政府といたしましては、そういう努力を今日しておるその間におきましても、その問題が解決された後のわが国経済のあるべき姿というものを考え、それに向かって今日の臨時的緊急の諸施策の成果をつなげていくということを考えざるを得ない。ですから、いま政府の方では検討しておるんですが、さて、この不況インフレを克服した後の経済路線というものをどうするか。そこでいま経済審議会の方にも御検討を御依頼しておるんですが、五十一年度を初年度とする五カ年の中期計画、それから国土総合開発につきましては十カ年の展望、こういうものを早急につくろう、こういう努力をいたしておる最中でございまして、この新しい路線というものはまだ具体的には結論は得ておりませんけれども、成長の速度はいままでのような一〇%を超えるというような状態じゃない、かなり低目のものにする必要がある。しかし、同時に、その内容につきましても、いままでのような成長優先という考え方じゃない、これは生活優先という方向へ大転換をしなければならぬだろう、こういうふうに考え、ただいま鋭意作業を進めておるという段階でございます。
  53. 工藤良平

    工藤良平君 この点に関連をいたしまして、大蔵大臣にもひとつお聞きいたしたいわけですけれども、さっき私は財政運営の問題から、好況時、不況時における対策について申し上げました。私、先日資料をいただいたわけですけれども、会社臨時特別税という制度を非常に好況のときにつくりました。これが一体どの程度徴収になったか、ちょっとお知らせをいただきたい。
  54. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 本年度当初予算におきましては、会社臨時特別税の税収を二千六十億円と見込んでおりましたが、その後、御承知のとおり、法人収益が急激に減少いたしましたので、それにつれまして会社臨時特別税もかなりの減収になると見込まれます。補正予算におきましては、当初に比べまして九百十億円の減を計上いたしておりますので、差し引き、ただいまの見込みでは五十年度の税収額は一千百五十億円と見込んでおります。
  55. 工藤良平

    工藤良平君 私どもは、この会社臨時特別税につきましては、もっと大幅な財源になるであろうと実は期待をしておったのでありますけれども、現実はなかなかそうはなっていない。もちろん、これは税の優遇措置等がありまして大幅なことが期待できなかったと思うのでありますが、しかし、本来財政のあるべき姿として、好況時に私たちが資産を積み上げておくということが次の対策のために非常に必要だと思います。したがって、現在の財政運営上からいたしますと、非常に今回の赤字国債の発行によりまして償還が大変な問題になってくると思います。非常に困難な状態がまいっておりますけれども、しかし、さっき副総理も申しておりましたように、マクロ的な長期的な展望の上に立つならば、好況時にむしろ私たちが次のいろいろな対策のために積み立てをしておくということが必要ではないのか、こういうふうに実は思うわけでありまして、そういう点から、景気調整のための積立金を義務づける、こういうことが今回の不況を通じて私ども非常に痛切に感じられるわけですけれども、その点についての御見解を聞かしていただきたいと思います。   〔委員長退席、理事中山太郎君着席〕
  56. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) もっともでございまして、複数年度にわたりましての財政調整ということにつきましては、私も仰せのような必要を感じるのであります。それで、これまでも好況時におきましてそういった意味で積み立てが行われておったといたしますならば、今日の財政危機の突破に際しましても大変助かったであろうと思いますけれども、当時といたしましては、こういう恵まれた条件がまだ相当続くであろうという想定のもとで歳入も歳出も編成されて実行いたしたわけでございまして、一概にそれを責めるわけにはまいりませんけれども、いまにして見れば、あなたが仰せのような用意があればよかったということは私も同感でございます。  しからば、これから先どうするかという問題でございますが、将来の財政政策の課題としてそういう調整基金というようなものを考えるということは、確かに検討の課題だと思います。ただ当面、特例公債をお願いせにゃならぬようなときでございますので、一銭一厘たりとも特例公債を少なくせなけりゃならぬということが当面の私どもの責任でございますので、この特例公債を発行しておる間はそういう余地はないと思うのでございます。これから脱却ができました段階以降におきましての財政政策の課題として、仰せのような問題にどう対処するかは篤と検討に値する課題であると思っております。
  57. 工藤良平

    工藤良平君 この点については、総理もぜひ十分な御検討をしていただきたいと思います。  それでは、さらに私は不況対策についてお伺いしてまいりたいと思いますが、さっき副総理は、個人消費につきましては大体横ばい程度である、極端な個人消費の刺激というものはしなくていいんではないかというお話がございました。しかし、今回のこの不況を見ますと、非常に深刻であり長期であるというような状態であります。特に大型倒産等を初めといたしまして、労働者にとりましては首切りあるいは一時帰休という問題が非常に起こりました。したがって、この労働者対策につきまして私たちは非常により深刻な問題が提起されていると思っているんですが、この点については、労働大臣、現在の失業状態あるいは雇用の状態等につきましてひとつ御説明をしていただきたいと思います。   〔理事中山太郎君退席、委員長着席〕
  58. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) こうした景気対策をやっていただきますそういうことの効果を期待しているものでありますが、何さま、いまスタグフレーションと雇用の問題というのは大変な問題でございます。現在、失業率が一・八%、九十八万人ということでございますが、これを、三月以降生産がいささかずっと上がってはきておりますけれども、こうした景気対策によってこれの向上を私たちは期待しているところであります。  その他の失業対策については、いろいろ万全の措置を講ずべく懸命にやっておるところであります。
  59. 工藤良平

    工藤良平君 そこで、具体的にお聞きいたしますが、失業保険給付金につきましては今回かなりの補正が行われておりますが、雇用調整給付金につきましては補正が行われていなくて、当初の百四十二億にとどまっておるようですが、これはどうなっているか、御説明をいただきたいと思います。
  60. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。  雇用調整給付金は、御承知のとおり、四月の雇用保険法の中に、雇用調整給付金制度を設けまして、これが、当初私たちの方は予算といたしまして大体百四十二億円予定しておったのでありますが、当初予想したよりも景気が停滞しておりましたので、この支給決定金額を増加して、現在予備費を充てまして二百一億円、こういう形になっているところであります。
  61. 工藤良平

    工藤良平君 それじゃ、もう少しお聞きしてまいりましょう。  これが法制化されまして、四十九年実施することになりましたが、その後、四十九年度中にはどのようなかっこうで処理されておりますか。
  62. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 給付金制度につきましては、こうした雇用、失業情勢のときでございますから、非常に評価をされまして、失業者を出さないということで、これの効果が今日まで大体事業所数で三万五千事業所に出しております。このうち、中小企業には三万三千事業所で九五%、そしてこれによる休業延べ日数が千四百八十万日、このうち中小企業は九百五十万日で六四%、中小企業に重点を置いていることは、中小企業の場合には三分の二、いわゆる大企業の場合には二分の一ということでございます。そして支給決定金額、従来は、決定しましたのは三百十九億円で、このうち中小企業には二百九億で六五%、こうなっておりまして、現在業種別で見ますというと、ただいまのような景気の停滞の気味でございますから、金属製品製造業、一般機械製造業、鉄鋼業、電気機械器具製造業、木材木製品製造業の順となっているわけであります。
  63. 工藤良平

    工藤良平君 私がお聞きいたしましたのは、四十九年度に五十五億一千六百万円の予算が実行されているわけですが、これは当時の予算書を見ますと、予算項目としては上がっていないわけですが、どのような処理をなさっていらっしゃるのかということでございます。
  64. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) お答えいたします。  雇用保険法が昨年十二月末に成立いたしまして、これは当初予定は四月一日からの施行になっておりましたが、雇用調整給付金制度に関しましては一月一日から繰り上げ施行ということに相なりました。したがいまして、いま御指摘になりました五十五億円につきましては、旧失業保険法によります特別会計の中で福祉施設費がございます。この福祉施設費をもって充当いたしております。
  65. 工藤良平

    工藤良平君 この法案の審議の際に、当然これは予算の伴う法律として予算計上がなされてしかるべきではなかったかと私は思いますが、その点についてはどのように解釈したらよろしゅうございますか。
  66. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) この法律施行は、ただいま申し上げましたとおり、本年の四月一日からということに相なっておりましたのが、国会審議の過程で雇用調整給付金制度に関する限り一月一日からと、こういう修正が行われました。したがいまして、それに必要な予算五十五億円につきましては、当時の旧失業保険法のいわゆる福祉施設費という予算がございます。この予算をもって充てることに相なったわけでございます。
  67. 工藤良平

    工藤良平君 それは閣議決定をいたしているわけですか。
  68. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) これは本年度の予算におきましても、いわゆる旧失業保険法時代の福祉施設費と同じ雇用改善事業費になっておりまして、共通の費目でございますので、その費目から充当いたしたわけでございます。
  69. 工藤良平

    工藤良平君 移流用の関係については問題になりませんか。
  70. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) そういう関係には相なっておりません。
  71. 工藤良平

    工藤良平君 それでは、本年度のこの補正の際に、予備費に三百四十何億かを計上いたしておりますけれども、これの使途について明らかにしていただきたいと思います。
  72. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 本年度の雇用調整給付金関係につきましては、先ほど大臣からお答えがございましたように、当初百四十二億を計上いたしておりましたが、景気の停滞長期化に伴いまして支出が増加いたしてまいりました。したがいまして、八月十五日の閣議決定におきまして二百一億円の追加計上をいたしております。したがいまして、今後この雇用調整給付金の支出の見込みでございますが、大体六月あたりがピークでございまして、それから漸次減少の傾向をたどっております。この予備費の流用によりまして今後十分賄っていけるんではないかというふうに考えております。
  73. 工藤良平

    工藤良平君 いま、予備費の流用によって行うということですが、すでにそういうことが予測をされているとするならば、当然今回のこの補正予算の中に、具体的に項目の中に私は明示すべきが本来の財政運営上の問題ではないかと思いますが、その点についての御見解を聞きたいと思います。
  74. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 当初、本年度予算計上いたします際には百四十二億円という予算額を計上いたしまして、ほぼこれで十分ではないかという見通しを持っておりましたが、先ほど大臣のお答えのように、景気停滞によりましてこの雇用調整給付金の支出が非常にかさんでまいりました。したがいまして、八月十五日に閣議決定で、今後の支出見込みを立てまして、二百一億円を追加したわけでございます。合計三百四十三億円をただいま予算計上いたしておるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、景気調整も大体底をついてまいりまして、今後そう大幅な支出増になるとは考えておりませんので、現在計上しております予算がもし今後不足するというようなことがございますれば、既定経費の移流用等によりまして十分賄い得ると私どもは考えておる次第でございます。
  75. 工藤良平

    工藤良平君 それでは具体的にもう少しお伺いいたします。  この補正予算の予算書によりますと、補正予定といたしまして予備費に三百四十四億三千九百万円というのが計上されておりますが、いまお話を聞きますと、二百一億円を閣議で決定をして予備費で流用するということが決められたと、合計三百四十三億円で運営をする、こういうことでございますけれども、それではその二百一億円をこの三百四十四億円から差し引きますと残りがまだ予備費に残るわけですが、これは何にお使いになるおつもりですか。
  76. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 今回の補正で計上いたして御審議をお願いしておりまするのは、雇用保険法によります失業給付の経費でございます。したがいまして、三百四十数億円の予備費に計上いたしております分は、今後失業給付に充当いたします金額として補正に計上してございますが、一応私どもは五十年度の下半期の失業給付の見込み額を計算いたしまして、なお、今後失業給付が増加することも考えられますので、そういったものに充てるために一応予備費に計上いたしたわけでございまして、これをもって十分今年度中の給付金を賄い得ると私ども考えております。
  77. 工藤良平

    工藤良平君 そんなことになっていますか。失業給付金が完全に補正の項目の中に入っているわけでしょう。三百四十四億円というのは予備費に直接入っている。しかも、予定損益計算書を見ますと、それはどういうことになっていますか。もう少し明らかにして下さい。
  78. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) ただいま御指摘になりました項目は、雇用改善事業費が五百八十四億八千八百万円、これに対しまして予備費使用が三百八十七億三千五百万円。このうち、先ほど御説明申し上げました雇用調整給付金に充当いしたました予備費の流用額が二百一億円ということでございます。そのことを御指摘になりましたかと思いますが、合計いたしますと、この雇用改善事業費の予備費流用の結果、当初予算五百八十四億八千八百万円に対しまして九百七十一億八千六百万円、こういうことに相なっておりますが、この点の御指摘かと思います。
  79. 工藤良平

    工藤良平君 さっきは、私が聞いたときにはこうおっしゃったじゃないですか。失業給付金の今後の不足分が出るかもわからないから三百四十何億というのは組みましたとおっしゃったでしょう。おかしいじゃないですか。
  80. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 失業給付費につきましては、当初予算が四千五百七億一千万円、それに対しまして今回補正によりまして六千六十五億八千二百万円と、こういうことに相なっておりまして、三百四十四億円を予備費に計上いたした。これは失業給付の万一の今後の不足分として計上いたした、こういうことでございます。
  81. 工藤良平

    工藤良平君 わからないですね。  それでは失業給付金の予定損益計算書は、金額は幾らになっていますか。
  82. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 今年度の失業給付の支出状況でございますが、本年度四月から九月までに、当初予算ただいま申し上げました額のうちから三千三百四十五億円を支出いたしております。したがいまして、十月以降、下半期に六千六十六億円からこの三千三百四十五億円を差し引きました残りが今後の支出見込み額でございます。
  83. 工藤良平

    工藤良平君 それじゃもう少し。これ時間取ってもったいないのですが、三百四十四億三千九百万円というのを何と何と何に使うからこれを予備費として計上したのか。これがそっくりそのまま消えているわけです。その点を明らかにしてください。
  84. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) ただいま申し上げましたように、今年度下期の失業給付の支出見込み額を計上いたしたわけでございますが、御承知のように、今年度失業情勢は的確な判断はなかなか困難でございます。私どもといたしましては、この補正予算が計上されます機会に十分な見込みを立てておりますが、なお来年、年を越しまして一−三月例年給付増が若干見込まれます。そういうものに対しまして十分な手当てができるように予備費を計上いたしたわけでございます。
  85. 工藤良平

    工藤良平君 納得できませんね。
  86. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 私も細かい突き合わした数字についてはなかなか理解し、先生の御理解いただくようなわけにいきませんけれども、失業保険を雇用保険に直しまして、一つは一月から早速、雇用保険の中に雇用調整給付金の分だけは一月から直ちに実行せよということで取り組んだ姿、そしてそれが、いささかでも失業を出さないということにいまそれが役に立っている。そしてそれが、当初百億ぐらいの予算でございましたけれども、こういうところであるから、閣議にもかけまして、その枠をまず三百八十億ぐらいにふやした、私はいまの時代においては、私たちの労働省は雇用保険関係の大事なことを扱っておりますから、数字については具体的に直ちにこの場において御説明できないようなふうなかっこうでございますけれども、そうした大事な失業関係のことをやることですから、こうしたときには社会的不安の起こらないようにいろんな手当てをしようというところでやっている気持ちを御理解いただきまして、数字的な積み合わせはひとつよく御理解をいただくような機会をつくっていただきたいと思います。
  87. 工藤良平

    工藤良平君 いや、私が申し上げているのは、千三百三十五億という予備費がまだあるわけでしょう。厳然としてあるわけですね、この特別会計の中に。それに、あえて三百四十四億三千九百万円というものをここに補正として組んだということは、この使い方というのが、ほぼどこに何を使うということが明らかになっているんじゃないかと私は思うんです。閣議で決定したものは二百一億ということですから、これから見込みのものについては当然補正の各項目の中に計上してしかるべきではないか、明らかにすべきじゃないか。当然のことじゃないですか。私はこれ、わかりませんから、そのことを聞いているわけです。
  88. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 御指摘ございましたように、当初予算におきましては予備費を千三百三十五億計上いたしております。その中から現在までにすでに予備費を流用いたしましたものが五月二十三日の閣議決定で就職支度金の支出に伴いまして百八十七億、それから先ほど申し上げました雇用調整給付金の支出増に伴います流用が二百一億、合計三百八十八億の予備費流用をいたしております。したがいまして、当初予算千三百三十五億の予備費のうち残が九百四十七億ございますが、ただいま申し上げましたように、下期の、今年度後半の失業給付の見込みを立てまして今回補正予算を計上いたしておりますが、なお、見込み違い等も従来ともございますので、万が一に備えまして、当初計上いたしました予備費相当程度のものを予備費として保留したいということで三百四十四億を予備費に計上いたしたわけでございます。
  89. 工藤良平

    工藤良平君 まだ私、釈然としませんので、これは休憩中でも……。数字はもう少しわかりやすくしていただかないと、わざわざ予備費として追加額に出てきているわけですから、その点はひとつ委員長、お取り計らいいただきたいと思います。
  90. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) じゃ、長谷川労働大臣、後刻時間をとられて、数字の調整を十分納得いくようにお願いしたいと思います。
  91. 工藤良平

    工藤良平君 それでは、この問題はまた後ほど出てきた段階で午後に譲りたいと思いますが、これは大蔵大臣にお聞きしてまいりたいと思います。  今回の赤字公債の発行に当たりまして、民間引き受けを初めといたしまして、この引き受けの問題についてはどのようにお考えになっていますか。
  92. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 民間消化をお願いしたいと存じまして、金融機関、生保、保険会社、それから証券会社等でシンジケート団を結成していただきまして、そういう方々によく説明、了承を得まして消化を図っていただく、お話をいたしましてすでに了解得ておるわけでございます。
  93. 工藤良平

    工藤良平君 そのために、この引き受け機関におきましてはかなり公債の引き受け条件の改善をということが言われておりますが、この点についてはどうでしょう。改定する考え方はありますか。
  94. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 国債の条件につきましては、各国の例を見ましても、それぞれの国の金融市場の構成その他の事情によっていろいろ差はございますが、国債と一般の民間の事業債との間に若干の格差があるのは事実でございます。ただ、過去におきましてその幅がある程度の範囲でありましたものが、四十九年の一月の例をとりますと、国債と事業債との間に一・一七%の差があり、それが十月には一・二八%と開いたというような事情がございまして、これを改めてほしい、国債と事業債との間の格差があり過ぎるという要望が非常に強く出てまいりました。私ども、今回長期資金も含めまして、金利水準全体の見直しをいまやっておりますが、この機会にこの格差をできるだけ小さくしてほしいという要望がシンジケート団の方からも出ております。そこで、私どもも、多量の国債を発行することでもあり、その点を考慮に入れてこれからの話し合いを進めたいと思っております。
  95. 工藤良平

    工藤良平君 そういたしますと、引き受け条件については若干の改正——改正というのはできるだけ有利にというように理解をしてよろしいわけですか。
  96. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 他の債券類その他と比べまして現在のような格差があっては少し大き過ぎる、その意味で、先生のお言葉の有利という意味がそういう意味でございますれば、比較的に有利にしたいという方向で話し合いを進めております。
  97. 工藤良平

    工藤良平君 そこで、私、これは素人ですからわかりませんけれども、これは素人なりに考えてみますと——会社臨時特別税の一覧表をいただきました。上位五十社をいただいたんです。ところが、この中で銀行が十七ばかり含まれているわけです。あるいはまた、銀行、金融機関の利益率を見ましても、かなりの利益率を示している。こういう状態の中で、なおかつそういう条件を与えていかなければならないのか。どうせこれは償還は私どもの税金から賄っていくわけですけれども、その点について大蔵大臣並びに日銀総裁の御見解を聞きたいと思います。
  98. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもの立場といたしましては、公私の各種債券が円滑に消化されまして、資本の調達が円滑にまいる状況をつくることが根本だと思うのでございます。ただいままで、いま御指摘のように公債の条件というものは必ずしも市場側におきましては満足すべきものでなかったということでございまして、それを若干改善しようという機運になっておりまするわけでございますが、これは引き受け側の経理状態がどうであるかということではなくて、そういう債券類の消化を円滑に図ってまいって、資本の調達を順便にしてまいるということが目的でやっておることでございます。引き受ける側の経営状態というものについての評価、それに対する対策、そういったものはまた別な観点から取り上げるべきものと思います。
  99. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 金融機関の収益状況でございますが、最近、総資金利ざやは逐次減少いたしておりまして、収益は逐次減少の傾向にございますものの、ほかの企業に比べれば比較的余裕があるということは御指摘のとおりだと存じます。しかし、この点につきましては、昨年の九月に預貯金利子を引き上げましたその影響並びにことしの四月から三回にわたりまして公定歩合を引き下げました、それに伴う貸し出し金利の低下、その影響がフルにあらわれますのには少し時間がかかるわけでございまして、私どもの見通しでは、来年の上期ごろから影響が深刻に出てくるのではないか、その辺もあわせて考えますと、今後金融機関の収益は相当悪化することは否めない状態にあるわけでございまして、その意味で、資金コストとの関係で国債の発行条件をどうするかという問題が出てくるわけでございます。  それに加うるに、国債につきましてはできるだけ個人消化を図っていかなければならないわけでございまして、それにつきましては、公社債市場の実勢金利と余り遊離した発行条件でございますと、国債市場も育ってまいりませんし、消化にも無理を来すというようなことがございまして、そのようなことから発行条件につきまして相対的にほかのものよりも引き下げ幅を少なくしてくださいという要請が引き受け側にあったわけでございますが、私どもといたしましては、それも無理からぬことだと存じておるわけでございまして、先ほど理財局長から方針につきましてお答えがございましたが、大体お答えございましたような方針で落ち着くのがこの際としては妥当ではないかと思っておる次第でございます。  なお、金融機関につきましても、不況下、できるだけ協力していかなければならないわけでございまして、特に今回は預金金利も引き下げた上で一%の公定歩合の引き下げを実施したわけでございますので、今後さらに貸し出し金利を格段に引き下げていく努力を決して惜しんではならないということはそのとおりでございます。私どももその点につきましては指導に万全を期したいと思っております。
  100. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 午後一時まで休憩いたします。   午前十一時五十六分休憩      —————・—————   午後一時八分開会
  101. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、工藤君の質疑を行います。工藤君。
  102. 工藤良平

    工藤良平君 先ほどの労働省の件についてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  103. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 午前中の工藤先生の御質問に対しまして、私のお答えが不十分でございましたので、改めてお答え申し上げます。  当初、本年度予算に計上いたしました労働保険特別会計の雇用勘定の予備費は千三百三十五億ございました。それにさらに今回の補正予算におきまして三百四十四億を計上いたしておりますが、実は、この千三百三十五億の予備費の中から、本年当初就職支度金で全く予期しなかった支出増が百八十七億円ございました。五月二十三日に閣議決定で、予備費から百八十七億円を流用計上いたしております。それと、八月十五日に雇用調整給付金の予算といたしまして、当初の百四十二億に対しまして支出増によりまして二百一億円を予備費から流用いたしております。差し引き、当初千三百三十五億のうち三百八十八億円を予備費から流用、使用いたしておりますので、これに対しまして今回の補正で当初計上いたしました予備費程度のものを計上いたすために三百四十四億円を予備費に追加計上いたしたわけでございます。予備費といたしましては、旧失業保険制度、あるいは新しい雇用保険法の執行上、通常二カ月分程度の予備費を計上いたしておくと、こういう慣例になっておりますので、したがいまして、当初計上された予備費程度のものを予備費として保留したい、こういうことでございます。
  104. 工藤良平

    工藤良平君 いま御説明がございましたが、全く予測をしなかった就職支度金について百数十億というお金が閣議決定で支出をされているというようなお話でございまして、全体的に私としてはまだ小まめな数字合わせをしたいと思いますし、いま直ちにこの点について了解をするということではなくて、問題を持ち越しまして、一応報告だけを聞いて、後ほどこの委員会終了までの間にもう少し数字的に詰めたいと思いますから、そういうことで、その問題は保留をしておきます。  それでは、先ほどの公債の問題についてもう少しお聞きしてまいりたいと思いますが、さっき消化のための条件につきましては若干配慮する余地があるということでありまして、私の考え方を申し上げました。それと同時に、この際全体的な金利体系の見直しをやったらどうかという御意見がかなりあるようでございますが、この点について大蔵大臣の御見解を聞きたいと思います。
  105. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございます。政府におきましても、今度の第四次景気対策の一環といたしまして、貸出金利、預貯金金利全体にわたりまして、金利水準の引き下げを目途といたしましての調整をいたすことにいたしたわけでございます。  それで、いま御指摘の長期金利につきましては、そのラインに沿いましてせっかく検討中でございまして、長期貸出プライムレートの引き下げ、その他金融債、事業債、国債等の金利をどの程度にするかということにつきまして、せっかく検討いたしておりまして、近く成案を見ることになっております。
  106. 工藤良平

    工藤良平君 この際問題になりますのは、やはり金利の弾力的な運用と申しますか、たとえば金融機関の最低機関と申すとちょっと語弊がありますけれども、たとえば信用金庫等の問題について対策を講じなければ、自由化いたしましても問題が起こるのではないかと思いますが、その点についてはどうでしょうか。
  107. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、金融機関にはその機能別にいろいろございまするし、規模から申しましても大小いろいろございますので、それぞれの営んでおる機能が円滑にまいりますことは、当然金利政策の策定の上におきまして考えておかなければならぬことと私も考えております。
  108. 工藤良平

    工藤良平君 さらにもう一点は、現在の金利の決定方式ですね。政府あるいは日銀によるかなり厳しい規制、そのことに対して独禁法上からも抵触するのではないかという御意見があるようですが、その点についてはどうでしょうか。
  109. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 現在、金利についての規制は、御承知のとおり、預金金利について金利調整審議会の議を経て日本銀行政策委員会が最高限度を決めるということになっておりまして、これは臨時金利調整法に基づく法的な手続でございまして、その点に関する限りは独禁法上の問題はないと心得ております。
  110. 工藤良平

    工藤良平君 それでは次に、公債の償還計画、特に今回の赤字国債に対する償還計画について、もうすでに衆議院では御説明があったようですけれども、概略御説明いただきたいと思います。
  111. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 補正予算案には、今度お願いします特例法に基づく特例公債は十年満期といたしまして、昭和六十年に償還するという計画表を添付いたしてあるわけでございます。その表の備考に説明を響いてございまして、この償還財源調達のために借りかえはやらないということを明記いたしておるわけでございます。なお政府としては、この特例公債を発行している間は前年度剰余金の全額を国債整理基金特別会計に繰り入れるということを約束いたしておるわけでございます。なお償還財源は、そのほかに毎年予算繰り入れができるという、予算繰り入れをいたしますということをいたしておるわけでございます。したがって、償還は六十年に全額現金償還いたすわけでございますけれども、これに要する財源は、いま申しましたような方法で特例会計に積み立てておくということになりまして、借りかえによらずに全額六十年に完済してしまうという計画で進む予定でございます。
  112. 工藤良平

    工藤良平君 赤字国債が本年度限りであれば、この十年の間に現金償還をするということはあるいは可能かもわかりませんけれども、現在の不況状態からいたしまして、さっき総理もお話がありましたが、高度成長はあり得ないということを言われているわけですが、そういたしますと、来年以降もさらに赤字国債を発行していかなきゃならぬのじゃないかと思いますが、その点についてはどうですか。
  113. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 目下大蔵省におきまして、来年度の予算編成につきまして各般のデータを収集いたしまして勉強をいたしておるところでございますが、仰せのように来年度の予算に当たりまして、いわゆる特例法に基づく公債の発行をなおお願いしなければならない事態になると私は考えておりますけれども、その金額がどの程度になるかというようなことはまだ責任を持ってお答え申し上げる用意はないわけでございまして、いま鋭意検討いたしておるところでございます。
  114. 工藤良平

    工藤良平君 すでに五十一年の予算編成の段階に入りますので、その予測というものは私はきわめて大きな問題だろうと思います。したがって、五十一年度も赤字国債を発行するという状況判断が成り立ちますと、これからの償還計画というものは相当大幅に私は狂ってくるのではないかと、こういうように思いますが、先日衆議院に提出をいたしました償還計画というものは間違いなくその程度でよろしいのかどうか。
  115. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今度の特例法案をお願いして、これをお認めいただいて発行いたしまする特例法による公債は二兆二千九百億でございますが、これの償還計画表を添付して、これについてこういう方針で償還財源は特別会計に繰り入れてまいりますということを申し上げておるわけでございます。明年度以降の問題につきましては、改めて根っこから公債を発行する場合におきましては、法律をまず国会に出しまして御了承を得なければなりませんし、それに伴いましてもろもろの償還に関する政府の方針なるものを明確にしていかにゃいかぬと思いますけれども、いま御審議いただいておりますのは、二兆二千九百億に限りましてこういうことでまいりたいということを申し上げておるわけでございます。
  116. 工藤良平

    工藤良平君 いずれにいたしましても、この赤字公債の償還につきましては、国民の税負担の中から賄っていくということになるわけでありますが、すでにその償還のために大蔵省の内部におきましては、付加価値税の導入ということが考えられておるということが新聞で報道されておりますが、その点についてはどうでしょう。
  117. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 先般衆議院に提出いたしました償還計画の補足説明の中におきまして、今後の財政運営考え方の歳入面について、今後経済の情勢の推移に応じて新規財源の検討にも着手すると、たしかそういう表現で入っておったと思いますが、ただいま御質問の付加価値税というのは、西欧諸国で実施されておりますが、わが国ではもちろん非常に新しい税になるわけでございまして、ただいまのところ、これを大蔵省が導入することを決めたというような事実はございません。
  118. 工藤良平

    工藤良平君 決めたと私は聞いているわけじゃなくて、そういう検討を始めたということが出ておるわけで、その点の経緯、現在の状態を聞いているわけです。
  119. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 昨日、宮之原委員の御質問にもお答えいたしましたが、ただいま私どもから政府の税制調査会にお願いいたしておりますのは、当面いわゆる租税特別措置について全面的な見直しをお願いしておるわけでございます。  その次に、現在私どもが考えております作業日程といたしましては、ことしの暮れまでに経済審議会の方で、今後の恐らく五年間でございましょうが、新しい経済計画を策定される。そのせめて概略についてでも十二月中に世に問いたいという作業が進んでおるように了解しておりますが、その中の一つの重要な柱が、昨日斎藤委員の御質問にございました租税負担率の問題でございます。租税負担率につきまして、経済計画上の需要供給面のバランス、財政収支のバランス、財政国民経済におけるウエートという総合的な面からの検討を経済審議会でおやりになっておるわけでございますが、税制当局といたしましては、これを負担能力と申しますか、これから五年間国民にどの程度の租税負担を求めなくてはいかぬか、がまんしていただかなくてはならぬかということを税制調査会の側からひとつ取り上げて御議論を願いたいと、それが第一の作業だというふうに考えておりまして、これにつきましては、税制調査会の中に学者だけを集めました基礎問題小委員会というのをつくっていただきまして、近く討議を始めていただく予定でございます。  したがいまして、作業としてまずそれがございまして、一応租税負担率がどの程度まで上がることがやむを得ないかということについての税調としての御論議を経て、経済計画の中で政府としての考え方が表に出ましたその上で、さて、しからばそのような負担の増加は一体どういう種類の税目で求めたらいいのだろうか、それが経済計画との整合性がどうなるだろうかという作業をその次にやっていただくというような手順を考えておりますので、ただいま申し上げました新税のいかなる税目が検討の対象になるかというのは、いまの私の説明のいわばもう少し先の方の段階で取り上げられる、現段階で大蔵省がこの検討に着手しておるということは必ずしも事実に即していないと、そのように御了解いただきたいと思います。
  120. 工藤良平

    工藤良平君 この問題はただ単に付加価値税だけの問題ではなくて、これは私どもが再三指摘をしてまいりましたように、富裕税あるいは国税三税の中の累進課税の率ですね、さらに優遇措置としての医師税、医師課税の問題、それから分離課税の問題こういう問題がずいぶん提起をされているわけですが、この際、その問題もあわせて十分なる検討がなされるのかどうか。検討はしますけれども、できませんというのがいままでの実態だったわけですけれども、いずれ重税によってこれを補てんをしていかなきゃならぬということになるのですが、それは税の公平の原則という立場を貫いて検討がなされるべきだと私は思いますけれども、その点についての基本的な見解を大臣に伺っておきたいと思います。
  121. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま主税局長からお話しを申し上げましたように、まず第一に租税特別措置を中心といたしまして、その全面的な見直しを税制調査会にお願いしておるわけでございます。で、これは毎年々々見直してまいりましたけれども、いま工藤さんおっしゃるとおり、税制上の不公正、こういう状況になってまいりますと、これをもう一遍深く掘り下げて検討しておかないといけないわけでございますので、まずそれに着手しておるわけでございます。そういうことをしないと、それで十分の理解の地ならしをしておかないと、次の負担率をどの程度に持っていくかとか、あるいはさらにそれを具体化するためにどういう新税を起こすとか、増税をお願いするとかいうようなことの話にはならぬと思うのでございまして、仰せのとおり、まずそういういまわれわれの当面しておる税制、現行税制の中の不公正がどこにどういう姿で伏在しておるかという点について十分な解明をまずやるということに、いま重点を置いた作業をいたしておるということでございます。
  122. 工藤良平

    工藤良平君 さっきも私触れましたように、今日までの経済運営というのが、主として民間設備投資主導型の経済運営であったと思いますけれども、これからは特に財政主導型の経済運営というものに相当力点が置かれていかなければならないということが言われておりますし、そういたしますと、その財政主導型の中心になる収入の面については、かなり私は踏み込んだ、しかも積極的な緊急を要する事項ではないかと思いますし、そういう点からいたしまして、先般来からもずっとこれは私どもが申し上げておりますような税の優遇措置の問題については、ぜひ早急な洗い直しというものをやっていただきたいということを再度申し上げておきたいと思います。その点についてもう一度。
  123. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのように心得て、まずその見直し、洗い直しということを十分やり遂げたいと考えておりまして、その上で次の税政策、租税政策というものを考えてみたいと思っておるわけです。
  124. 工藤良平

    工藤良平君 少しくどいようですけれども、五十一年に、さっきお話しのように赤字国債を発行しなければならないという情勢判断が成り立つとするならば、やはりそれに並行して私は当然この検討がなされるべきだ、早急な事項だと思いますので、その点についてもう一度。
  125. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりの問題意識を持ってやっておるつもりです。
  126. 工藤良平

    工藤良平君 それでは次にもう一点お伺いいたしますが、建設国債、今日まで、さっき私が指摘しましたように、景気のいいときにかなり大幅な建設国債を発行してまいりました。もちろん、長期的な財政運営の中で、私その意図も十分に承知をいたします。承知をいたしますが、ただその中で、本来一般会計から負担をすべきものあるいは非常に景気の刺激になるようなもの、こういうことが若干あるのではないかという点が少し気になります。したがって、具体的でありますけれども、たとえば輸出入銀行等に貸し付けをいたしております資金、こういう点については一体どういうような使途に使われているか。開発銀行、輸出入銀行の問題について御説明いただきたいと思います。
  127. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいまの例にお挙げになりました輸出入銀行に財政が関与いたしておりますのは、主として財政投融資の形を通じて関与いたしております。そして、それがどの程度どういう形で関与しておりますかということは、予算を御審議いただきます際に、予算の説明及び財政投融資説明という活版印刷刷りの印刷物をもって御説明いたしておるところでございます。
  128. 工藤良平

    工藤良平君 それはわかっているわけです。建設国債から出ておりませんか。
  129. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) 工藤委員すでに御承知のとおり、公共事業出資金、貸付金等の財源でございますが、建設国債から出しております。
  130. 工藤良平

    工藤良平君 出ているわけですね。
  131. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) はい。
  132. 工藤良平

    工藤良平君 おかしいじゃないですか。政府同士でちょっと違うじゃないですか。  いまおっしゃるように、建設国債の中からも両銀行に出ているようでありますけれども、私は昨年の三月の決算委員会でもこの点をいろいろと追及をしてまいりまして、輸出入銀行や開発銀行に行っているけれども、その先どこに使われているかということがどうも明らかでない、明確になっていない、その点を国会に明らかにすべきだということを言ってまいりました。私は個人的には若干の部分はいただきましたけれども、それを公開すべきだと思いますが、その点について御見解を聞きます。
  133. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 輸出入銀行や開発銀行、その他政府関係の各種の金融機関が、中小公庫等がございますことは御存じのとおりでございますが、それぞれの業務方法に従いまして御案内のような貸し出しに運用をしているわけでございますから、その全体と申しますと非常に詳細多岐にわたるわけでございまして、どういうぐあいにとお聞きになられれば、それはそれぞれの政府関係金融機関の法律政令等に基づきました業務の範囲に応じて融資をやっておると、こう申し上げるほかございません。
  134. 工藤良平

    工藤良平君 大変答弁がうまいわけですが、たとえば輸出入銀行からどこどこの企業に貸付残が幾らあるかという明細書を出せと私が要求をした場合に、国会に提出をされますか。
  135. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) これはやはり輸出入銀行も独立の政府の関係の金融機関でございますので、その個別の取引の内容、その相手先等まで国会に提出するというのはいかがかと思っております。
  136. 工藤良平

    工藤良平君 政府全額出資の銀行から民間に貸されているわけです。それが有効に、国民的な視野に立って、だれが見てもこれは正しいという運営の仕方であれば問題はないのでありますけれども、非常に物価の上昇の原因になったという商社やそういうところに大量の資金が流れているということになっているわけですから、その点は私どもとしては知りたいわけです。当然国民の、これはこの前やりました知る権利と私は思いますが、その点について、どうもあいまいですから、もう少し明確にしていただきたい。
  137. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) たとえば輸出入銀行にいたしますと、輸出金融、輸入金融あるいは海外投資に関係する金融その他、法律に決められておりますので、その目的、態様別のおおよその貸出額、配分、これは構いません。ただ、御指摘になりましたように、どこそこの企業にどれだけというようなのは、ちょっと差し控えるべきではないかと思っております。
  138. 工藤良平

  139. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府機関の立法をもちまして設立いたしまして、それに総裁以下の機関を任命いたしまして、法律の定めるところによって仕事をさせておるわけでございます。その場合、どこまでそういう機関の判断にゆだねるべきか、そしてどこまでわれわれが干渉をすべきかという問題は、確かに一つの問題点だと思うのでございます。私どもといたしましては、できるだけ政府関係機関の総裁あるいは理事長以下の役職員の立場、責任を尊重いたしまして、それが定められた基準準則に従いまして責任をもって仕事をしていただくということが望ましいと思います。したがって、一つ一つの案件につきまして掘り下げてまいるということは必ずしも適切ではないと思うのでありますけれども、案件の性質によりまして、どうしても究明しておかなければならぬということがございますならば、行政府と立法府の間で御相談申し上げてその措置を決めていくことにやぶさかではございません。
  140. 工藤良平

    工藤良平君 まだ私大変不満ですが、先ほどから申し上げましたように、大変な国債を出す。それは当然税金で私どもが払っていかなきゃならぬというときに、貸し付けられている国の資金がどう使われているかという、しかも財投は、予算の半分に匹敵する十兆円を超えているわけです。重要な問題ですから私はそう言っている。たとえば、それでは五百億以上貸付残がある企業について公開するというようなことは約束できますか。
  141. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 公表云々の問題じゃなくて、国会に御報告するかどうかという問題ですね。
  142. 工藤良平

    工藤良平君 正式に。
  143. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その問題は工藤さんからいま初めて提起された問題でございますので、承りましてひとつ検討さしていただきます。
  144. 工藤良平

    工藤良平君 もう少しはっきりさしてくださいよ。なぜ公開できないのか、それは何に使ったかということは言わないにしてもですね。もう少し答弁を明確にしてください。
  145. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 別に隠し立てするつもりは毛頭ないんです。ただ、そういうことをやることの是非ということにつきまして行政府として考えさせてもらいたい。それに絡んでメリットもあればデメリットもあるかもしれませんから、私がいま、とっさに軽率に答えて抜き差しならぬことになってもいけませんので、ちょっと検討の余裕を与えていただきたいということでございます。
  146. 工藤良平

    工藤良平君 私は個人的にはいただいているわけです。しかしこれは、公開の席で明らかにするということを私は資料をいただく際の条件としていただいておりますから、あえて公表してないわけですけれども、当然、私はみんなの前に明らかにしていいんじゃないかと。そういう方向で検討いただけますか。
  147. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ともかく、その話を伺ったんですから、それを私どもの方で一遍検討さしていただきまして……。正直にまたお答えいたしますから、政府はどこにも逃げ隠れいたしませんから。
  148. 工藤良平

    工藤良平君 これは予算委員会の終了までに結論を出していただけますか。
  149. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのように努力します。
  150. 工藤良平

    工藤良平君 それでは期待いたします。  それでは、最後の項目の農業問題に入りたいと思いますけれども、総理は先般来から、食糧自給率を高める、そのための農業政策をやります、基盤整備を進めますというお話がありましたが、この点について、総理の言う一体基盤整備を強化をするというのはどういうことを含んでいるのか、もう少しひとつ具体的に御説明いただきたい。
  151. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私の食糧政策に対しての基本的な考え方は、やはり食糧を皆自給自足ということはできるわけではないわけですが、しかし、いかにも日本の穀物の自給率は低い。これは少し高めていかなければならぬ。それには米の裏作という意味で、麦というようなものがやっぱり重点になるでしょう。飼料作物もあるでしょう、大豆などもあるかもしらぬ。まあ麦。そういう自給率は高めていくけれども、やっぱり食糧の自給自足というのはできるわけではない。そうなってくると、必要なことは、平時においてはそういうような形で安定的な海外の輸入を確保していく。しかし、食糧というものに対しては潜在生産力というものを培養しておく必要がある。そこで、重要になってくるのは土地の基盤整備である。土地のいろんな必要に応じて、潜在的な生産力を培養するために土地の基盤を整備して、いろいろ灌漑排水その他土地改良、いずれにしても土地基盤の整備というものは生産に対する一番基本になるのではないか。そういう意味で、今度の補正予算にも土地基盤整備費をつけておるのですね、かなりの金額を計上しておるわけですね。  そういうことで、そういう生産の基盤、それから工藤君がいろいろ御指摘になっておった農業の協業化というものは、いろんな制約はあるけれども進めていかなければいかぬですね。いろいろ農林省でも、安倍農林大臣からもっと詳しく説明を補足してもらってもいいんですが、協業化できるような条件を整備していこうとしているのは、余りにも一人の耕作反別が狭いですから、だから農業というものの能率ある運営ができないですからね。協業化というものは、やはり協同組合なんかももう少し生産協同組合的な方向にもっと力を入れていかなければならぬ。そういう意味で、農業生産体制の整備、それからまたいま言った土地の基盤整備、その基本、それから穀物の自給力の向上。  農業というものは、農村が豊かになるということは自然も保護されるといううらはらになりますし、農村を豊かにするということは国の安定の基礎になりますからね。そういう意味で、農業というものをもっと魅力のあるものにするために、そういう生産体制、生産の基盤、そういうものを整備しながら、価格政策というものもあるでしょうね、大きくは。価格の安定ということ、農業所得の安定が要るわけです。そういうことで、次の農業の担い手というものができていくような、そういう一つの農業の担い手の育成ということもこれは考えなければならぬ。私よりもあなたの方が詳しいかもしれぬですが、基本的には農業政策に対する私の考え方はこういう考えでございます。まだ説明が足りなければ農林大臣が補足いたすことにいたします。
  152. 工藤良平

    工藤良平君 非常に通り一遍の食糧自給論が三木総理の場合には出てくるわけですが、私はここで非常に古い原則論を引き出して総理にひとつ御見解を伺いたいと思いますが、私は農業を考える場合に、現在の国民総生産あるいは国民生活が非常に高まってきているという状態の中で、農業の今日的な役割りというのはいまさら申し上げるまでもないわけですけれども、ただ、農業の場合には収穫逓減の法則というその点の影響が非常に大きい。したがって、基本的に農業というものを考える場合に、その収穫逓減の法則をどう踏まえて私たちが対策をするかということが今日の段階では非常に大事だと思うのですが、その点についての御見解を聞きたい。
  153. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は非常に興味を持って、何か農薬などを使わないで多収穫を上げたという新聞記事なんか、まだよく話は聞いておりませんが、何かこう次第次第に地力というものは衰えていく傾向がありますから、いわゆる逓減の法則というものはそれは頭に入れて考えなければ……。けれども、やっぱりそれをどういうふうにして補っていくかということは一つの研究の課題だと思いますね。
  154. 工藤良平

    工藤良平君 どうも総理、あまりよくわかってないようですが、ひとつ農林大臣、そこら辺を説明してあげてください。
  155. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 収穫逓減の法則というのは、一般的に一定の土地から得られる収穫は、その土地に投下されるところの労働や資本の量が増大をするに従って増加するわけですが、単位の労働や資本の増大に伴う収穫の増加が次第に減少する。ですから、労働や資本の量が増大をするに従って、ある一定のところまでは増大をするが、その一定の線を超えると逓減をしていく、こういうことが言えるのじゃないか、これが一つの農業の法則とも言えるのじゃないかと私も思います。
  156. 工藤良平

    工藤良平君 いまの説明じゃどうも十分じゃありませんけれども、時間がありませんから私はもうわかったものとして進めます。  総理、いいですか、六百万ヘクタールというものを基準にして基盤整備をやるやると言ってみても、いまおっしゃるように、六百万ヘクタールに一の力を入れて百できる、二の力を入れたら二百になる、三を入れたら三百になるということにはならない。それは逓減をしていくのだ。したがって、この六百万というものを八百万にし、一千万にしなければ日本の食糧自給率は確保できないという原則がここで出てくるのだと、それを総理の頭にしっかり置いていただきたいということを私は申し上げたい。それがないと、どんなに基盤整備をやりますやりますと言ってみたところで、予算に出てくるものは年々後退をするということになるわけですから、その点を頭に入れてほしいということを申し上げる。その点御理解できますか。
  157. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、だから農林省においても農地のいろんな拡張計画というものは常に持っておるわけですから、当然そういうことを頭に入れて農業政策をやっておるわけですね。
  158. 工藤良平

    工藤良平君 私は、各論よりもこれが大事だと思っているわけですから。したがって、今度の補正について私は不満でありますけれども、五十一年さらに引き続いて、後ほどお伺いいたしますけれども、長期的な土地改良事業等につきましては思い切った施策をやらなければ、食糧自給率は年々低下しているわけですから、国民生活の向上に追いつかれないわけです。ですから、私はあえてこの古い言葉を出して総理にひとつしっかり胸に入れていただきたい。これは大蔵大臣もみんなそうです。よろしゅうございますね。  それではお伺いいたしますが、そこで自給率を高めるために土地改良十カ年計画を出しています。この進捗率はどうですか。
  159. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 土地改良十カ年計画は、昭和四十七年から始まっておるわけでございますが、その進捗率は、最近の総需要抑制ということでずいぶんおくれておるというのが現状でございまして、現在では一五・五%という段階でございます。
  160. 工藤良平

    工藤良平君 この点については、他の省の五カ年計画とかあるいは十カ年計画というそのものと比較をして遜色ございませんか。
  161. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 大体、他の公共事業関係一般と比較して平均的な状況じゃないかと思います。おくれておる点も平均的じゃないかと思います。
  162. 工藤良平

    工藤良平君 いま大臣おっしゃいましたけれども、おくれていることも平均的ということ。全体的におくれているわけですね。五カ年で済むものが七カ年、十カ年かかるというのがいまの土地改良事業の実態なんです。そこで、この点を改善をするためにどうするかということをぜひ真剣に考えていただきたい。それは受け入れ側にも問題ありましょうけれども、やはり積極的な国の農政の推進が私は必要だと、このように思うわけで、この点については大蔵大臣どうですか、積極的にこれから進めていただけますか。
  163. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 非常に日本人は活力に富んだ民族でございまして、御要求が非常に大きいわけです。したがって、財源に比べまして、計画を何とか掲上して、まず調査費で掲上しておいて、翌年から本格化するのだというような例が非常に多うございまして、どうしても進捗率がままならぬことは御指摘のとおりでございます。しかし、これは政府が進んでしりをたたかなければ動かないような民族と違いまして、その点は、ある意味においてはありがたいことだと思います。財政当局といたしましても、これは農業基盤の計画ばかりではございませんで、農業政策全般にわたりまして鋭意、自給力の向上という点を指向した農林省の政策には極力御協力申し上げていくつもりです。
  164. 工藤良平

    工藤良平君 農業の場合には、私が申し上げるまでもなく、経済効果が出てくるのが非常に遅いわけです。ここで一年、二年、三年おくれることは、将来にわたって十年、十五年たったときに大変大きな問題を残すから私はこのことを主張しているわけです。先般農林省の方から五十一年以降の食糧増産対策等が出されておりましたけれども、その中に、財政投融資の導入、あるいはこれは地方債等につきましても起債を大幅に認めていただいて基盤整備等については推進をする必要があるのではないか、こういうように私は考えるのですが、その点についての御見解を伺いたいと思います。
  165. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどお話がございましたように、新土地改良計画にいたしましても一五・五%という非常に低い進捗率でありまして、これから昭和六十年までの間に、いま農林省としては八十六万ヘクタールの新しい農地を造成したい、新土地改良計画によれば五十七年までに七十万ヘクタールを造成したいということでありますけれども、いまの状況でいきますと、今後一八・五%ずつ毎年予算の増加を行っていかなければ完成できないわけでございまして、とうてい十カ年間で所要の目的は果たせないというようなおくれでございますので、いまお話しのように、やはり食糧の自給体制を確立をしていくというための生産体制の整備という面から、これまでのおくれを取り戻して、十カ年間で期成の目的を達成するには、やはり公共事業費の投入とともに、財政投融資によるところの資金を使う、特別会計制度を活用するといいますか、そういうことでやっていけば、進捗率はうんと早めることができるのじゃないかというふうにいま考えておりまして、そういう点を今後ともひとつ政府間で何とか実現をする方向で努力をしてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  166. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 財政投融資の使途別分類のここ数年来の経過を見てみますと、農林漁業に割愛いたしました資金は絶対額においては相当ふえておりますけれども、構成比から見ると、むしろダウンしておるということでございます。したがって、この点につきましては、生活重点と申しますか、従来、基幹産業等に主力が注がれておったのが、だんだんと生活重点に力点を移行さしつつあるわけでございまして、農業基盤、中小企業その他とともに、今後この構成比の向上という点にもっと配慮しなけりゃならぬと思っております。
  167. 工藤良平

    工藤良平君 いまお話しのように非常におくれておりますし、ここでいささかのちゅうちょがあるということになりますと大変な問題が起こりますから、ぜひ積極的に進めていただきたいと思いますが、それと同時に、この農業に対する今回の不況影響、これは私は非常に深刻だと思いますが、その点、農林省どのように理解しておりますか。
  168. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 農業関係におきましても、やはり出かせぎをした人たちが郷里に帰って職を失っておるというふうな状況もあるわけでございまして、そういう点から、第四次不況対策の中においても、農林漁業関係の不況対策として公共事業七百三億を今回の補正予算に組んでおるわけでございますが、私はこの農林漁業関係のいわゆる公共事業を推進をすることによって、まあ農林漁業関係の場合は仕事が主として中小企業が中心でございますから、農林漁業関係の中小企業も相当効果が出てくるであろうし、また労務費の割合が基盤整備等においては非常に高いわけでございますから、この事業を推進することによって労務対策といいますか、雇用対策の面においても不況対策の一環として大きく前進するのではないだろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。これはただ単に補正予算だけの問題でなくて、今後も、五十一年度のいわゆる本予算におきましても、そういう面から大きく取り上げていただきたいものだというふうに考えておるわけであります。
  169. 工藤良平

    工藤良平君 これは大蔵大臣総理に最後に御決意をいただきたいわけですけれども、いまお話しのように、この不況の農業に対する影響というのは、特に農外収入の場合に非常に大きいわけです。したがって、ある程度人間が、外に出た人が帰って来ているこの時期に、私は救農土木的な意味も含めて、土地改良事業等を中心にして大々的な農村対策をやる必要があるのではないかと思いますから、大蔵大臣総理大臣、その点のひとつ決意のほどをお伺いしておきたいと思います。
  170. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) したがいまして、今度の四次景気対策におきましても、農業基盤の整備につきまして配慮を加えたわけでございまして、今後もこの点につきましては特に配慮を加えてまいるつもりでございます。
  171. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 農業というものに対しては、今後こういう財政難の折においてもできるだけの配慮をいたしていきたいと思っております。
  172. 工藤良平

    工藤良平君 どうも大変心細いわけですけれども、ひとつしっかり大きな声でがんばっていただきたいと思います。  それでは、十月の二十三日に日ソ漁業操業協定が締結をされまして、すでにそれぞれの対策が講じられておると思いますが、ただ、現在北海道の漁民等問題がなお残っておるようでございますが、この点についての外務大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
  173. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 協定の批准について御承認を得ましたので、協定は発効をいたしました。今年春以来、農林大臣、水産庁当局、また私どももいろいろ努力を微力ながらいたしまして、ソ連との操業に関しますいろいろな話し合いをいたしてまいりました。  私どもの承知しておりますところでは、ただいまソ連の出漁はございますけれども、距岸、沿岸を離れますこと十五、六海里、あるいはそれより外であるというふうに承知をいたしております。無論それでもいろいろ紛議が起こる気配はございまして、十分注意はしておりますけれども、十二海里の中に入るというようなことはただいままでのところないというふうに水産庁当局から承っております。しかし、とかく間違いの起こりやすいことでございますから、今年春以来ソ連といろいろ話してまいりましたことについて、十分その結果が守られますように私どもとしてなお注意を怠っておらないところでございます。
  174. 川村清一

    川村清一君 関連。  ただいま富津外務大別の御答弁を開いて、私は非常に腹を立てている。日ソ漁業操業協定ができてから十二海里以内にソ連船が入っておらない、皆十六、七海里でやっておる、水産庁からそういう御説明を聞いておりますと。それはとんでもない御答弁であります。この点につきまして安倍農林大臣から後ではっきりお答えをいただきたい。  そもそもこの協定は、六月七日にイシコフ漁業大臣が来朝されて調印されたものであります。しかし、残念ながら第七十五国会があのような終末であったので、これが批准されないまま流れまして、改めてこの七十六臨時国会で批准されて十月の二十三日に発効しております。しかしながら、両国間において話し合いで一歩前進したと言いながら、実態はちっとも解決されておりません。十二海里どころか、六海里、七海里のところにソ連の大船団が入ってきて操業して、沿岸の漁民の漁業に大きな被害を与えております。でありますから、北海道における沿岸の漁民は、操業しても漁具、漁網を切断されるといったようなことで損害を受けるので、現在は漁に出ることができないで皆休漁しておる、これが実態であります。このことにつきましては、きのう三十一日、北海道の沿岸漁業協同組合の代表の方々が三十名ほど上京されて、外務省あるいは農林省に切々な陳情をなされておるわけであります。大臣がそれを知らないなんてとんでもない話であります。  私は、この問題の解決は残念ながら本協定だけでは解決しない、少なくとも領海十二海里を宣言しない限りにおいて解決しないと確信しております。領海十二海里を宣言しても完全にこのトラブルを防止することはできません。しかしながら、現在まで起きておるこのトラブルの七割から八割程度は解決する。でありますから、ぜひ早くこの領海十二海里を宣言してほしいというのがわれわれの主張であります。私は、少なくともこの参議院に籍を置いてから十年間、この問題と取り組んで、あるいは本会議においてあるいは農林水産委員会において、あるいはこの予算委員会においてこの問題を主張し続けてまいっておるのであります。かつて元佐藤総理大臣のときに、漁業白書の質問で本会議の演壇に立ったときに、この問題を取り上げて佐藤総理大臣の御見解をただしました。佐藤総理は、いまどき領海三海里なんということは適当でない、したがって領海の幅を広げるように事務当局に検討を命じておる、こういう御答弁をなさっております。いまは亡き愛知外務大臣もそのときに、領海は六海里、その外側にさらに専管水域六海里、十二海里の幅をつくるように検討しておるという答弁をなさっておるのであります。しかしながら、十年たって今日、まだこの問題は解決しておりません。  この春の農林水産委員会において、安倍農林大臣が確かに、ジュネーブにおける国連海洋法会議が終わったならば、わが国も領海十二海里を宣言するように各省庁と協議してやります、こうはつきり答弁なさっておったのであります。私どもはそれを信じて喜んでおった。沿岸の住民の皆さんも非常に喜んでおった。しかしながら、ジュネーブの海洋法会議が終わっても、一向に前向きでこの問題解決のために当たっておらない。しかも腹が立ってしなうがないのは、外務大臣が反対しておる。
  175. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡潔に願います。
  176. 川村清一

    川村清一君 私は先般の沖繩及び北方領土問題対策特別委員会において、宮澤外務大臣に対してこの見解をただしました。宮澤外務大臣は私を納得させるような理由を明確に言わない。そうして反対しておる。
  177. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡潔に願います。
  178. 川村清一

    川村清一君 領海十二海里を実現しない限りにおいてこの問題は解決しないのです。  そこで私は伺いたい。この際、安倍農林大臣、宮澤外務大臣、それぞれの立場でこの問題に対する御見解を明らかにしていただきたいし、さらに三木総理大臣にお伺いします。総理大臣は……
  179. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡潔に願います。
  180. 川村清一

    川村清一君 少なくとも農林大臣が委員会で発言したこと、元総理大臣が本会議で発言したこと、これに対しては現在の総理大臣は責任があると思います。そこで最高の責任者の三木総理大臣から明確にひとつお答え願いたい。これで第一問を終わります。
  181. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまの川村委員の御発言でございますが、私も最近におけるソ連の南下船団の情勢等につきましては詳細に聞いておるわけであります。確かに昨日も漁業組合の人たちが上京してソ連の大使館に抗議に行かれたこと、同時にまた水産庁にもおいでになったわけでございます。  二十三日にようやく協定が発効をいたしまして、われわれもほっとしたわけでございますが、その後の情勢を見ますと、大体ソ連の漁船団は十二海里から外において操業しておるという状況でございます。いまお話がありましたように、十二海里から以内に入っておる船団もあるわけでございますが、これは操業しないで漂泊をしておるというふうに私は聞いておるわけでありまして、主として十二海里から外で操業をしておる。そうして、その間には確かに被害も出ておるわけであります。協定が発効しておりますから、この被害が協定違反であるということになれば、これは直ちにソ連に対して厳重に抗議をしなければならない、措置を講じなければならないということで、現在調査をいたしておるわけでございます。ことしはソ連の漁船団は、私が聞いておる範囲では、昨年よりもたくさん来ておるということでございますが、全体的には十二海里から外で操業しておるというのがおおむねの状況でございまして、その点については私もずいぶん苦労いたしましたが、日ソ間で日ソの漁業協力を進めていくためにはやはりトラブルを起こすまいという約束をしまして、ソ連側もそれでは自粛しようと、公海の操業は自由である、しかし自分達は日ソ間の漁業協力という立場から自粛をしようということでソ連は言ってきておりまして、そういう面で、昨年に比べまして私は多少自粛はしておるというふうに全体的な情勢を聞きまして判断をいたしておるわけではございますけれども、しかし協定違反、せっかくの協定ができましたので、今後とも協定違反が起これば、この協定違反に対しては厳重に抗議を申し入れ、措置を講じなければならないのは当然であると思うわけでございます。  同時に、いま十二海里のお話が出たわけでございます。私も前回の国会におきまして川村委員指摘のとおり申し上げたわけでありまして、ああしたようにソ連の漁船団が毎年九月ごろから南下をして参りまして、そして北海道だけではなくて、本州の太平洋洋の一帯を十二海里から中に入る、回って。そしてわが国の沿岸漁業がせっかく築き上げた漁業の資源というものに非常な打撃を与える、また国内で規制しておるところの漁業規制区域内にも入ってきて、そしていろいろな被害を与えておる、こういう状態を見るとき、もはやもう三海里では日本の沿岸というものは守られない。やはりソ連も十二海里でございます。世界の過半数がもう領海十二海里でございますから、やはり日本の場合も十二海里にすべきではないだろうか。いままでは遠洋漁業という立場から見て十二海里というものはすべきでないという判断が強かったわけでございますが、今日では、わが国の遠洋漁業関係におきましても三海里を主張する論拠というものは事実上なくなってきたわけでありますから、遠洋漁業の面から見ても支障はない。まして沿岸漁業を守るという面からは、むしろこれは積極的に十二海里にすべきである。ですから、水産の立場としては、私はあくまでこれは十二海里に一日も早くなることをこいねがっておるわけでございますが、しかし、これはただ農林大臣としての私の判断だけでできる問題でもないわけでございまして、やはり政府間における調整を要する問題がここにあるわけでございます。その調整を目下進めておるのが今日の状態でございます。  同時にまた、海洋法につきましても、実は前回の国会で申し上げましたが、領海問題がやはり海洋法の一つの議題になっておりますが、経済水域の問題は解決しないとしても、領海問題については、少なくともジュネーブ会議において一つの方向が打ち出せるというふうに私は考えておったわけでございますが、残念ながら、ジュネーブ会議においてはこの領海問題もはっきりした結論を出すに至らず、そして来年に持ち越した、こういう状態でございます。したがって、海洋法会議のそうした問題、さらに政府間の調整の問題がございまして、今日まだその方向を明らかにし得ないという事態でございますが、私としては十二海里というものが一日も早く実現のできるように、今後とも最大の努力を払ってまいりたいという考えでございます。
  182. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 政府は、十二海里に持っていきたいというのは方針です。ただ、いまこの領海の問題というのは、経済水域の問題も含めて、それだけでなしに、全般の問題が国際的に討議をされておるわけですから、しかも、各国によって領海が違うということも非常に不都合が生じますので、できれば全体としてこの領海というものが国際会議で決められるということが好ましいわけですから、そういう海洋法の会議で全般として領海問題を解決したいというのが政府の方針でございまして、十二海里へ持っていこうということは政府基本的な考え方であることを明らかにしておきます。
  183. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま総理大臣あるいは農林大臣からお答えになったとおりのことなのでございまが、一つには、海洋法会議との関連がございまして、国によりましてすでに二百海里の経済水域、漁業専管水域と称しておるところもあるわけでございますが、そのような一方的な宣言をした国、あるいはするかと思われる国などがございます。そうなりますと、海洋法会議でわが国の国益を最大に実現をしたいという立場から申しますと、そのような一方的宣言はやはり海洋法会議との関連で問題ではないかと、わが国からそのような国に注意を喚起をしておるところでございますが、実はその問題のほかに、いわゆる国際海峡という問題が御承知のように出てまいるわけでありまして、この点は、わが国が国際海峡を通ります立場と、それから他国がわが国のそのような国際海峡を通る立場といったようなものが二つございますわけであります。  したがって、この問題につきましては、水産庁はもとよりでありますけれども、運輸省それから海上保安庁、防衛庁、外務省、各省庁が関係をいたしておりまして、基本的には総理の言われたとおりであるわけでございますけれども、そういう海洋法との関連、あるいは各省庁が持っておりますこの問題についてのそれぞれの立場というものを調整いたしませんと、政府として最終的な決定をすることができない、そういう調整をしなければならないという問題があるわけでございます。
  184. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡潔に願います。
  185. 川村清一

    川村清一君 関連ですから、簡単に、一言やって終わりますが、農林大臣、外務大臣、総理大臣、お三方からそれぞれ御答弁を承りましたが、納得できません。  総理大臣に最後にお聞きします。結論。来年の三月ニューヨークにおける国連海洋法会議が終わるまで、つまり経済水域二百海里、関連して領海十二海里、この決定されるまで日本政府は、基本線はわかりましたが、十二海里宣言はしないのか、しないならしないと、この国会国民にはっきり言っていただきたい。そして、いま北海道の太平洋岸はスケソウの盛漁期であります。そのために、ソ連船が沿岸近くへ来て被害を与えておるので漁に出れない、休漁しておるということは、漁民にとっての生活権を奪うことであります。これを心得て十二海里宣言をしないのか、明らかにしていただきたいし、もう一点、日本の漁業法あるいは農林省告示、こういったもので、たとえば底びき禁止区域を設定したり、あるいは漁業法に基づいて共同漁業権の設定をしておる。沿岸漁民の宝であります。ここへソ連のトロール船が入ってきて、根こそぎ底をひくということは、資源を守るという点から、漁民の生活を守るという点からきわめて重大な問題だと思うが、こういう点も考慮して、わかって、それでも来年三月ニューヨーク会議が終わるまで十二海里宣言はしないとおっしゃるのか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  186. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 川村君の言われますことは私もよく理解できます。しかし、私はやはりいまの海洋法会議で経済水域の問題も出てきておりまして、これは一つの国際的ルールですから、各国がこの問題について一つのルールが国際的に確立されることが好ましいという考え方は私は変わらぬですけれども、いま沿岸の漁民の現在の立場等もわかりますから、各省庁間でこの問題は、やらぬと私はここで申し上げるよりも、何かこの問題に対して、その前においても日本の立場からいろいろの角度から検討して、どうせそこへ持っていきたいという考え方はあるわけですから、そういうことが実施できるかどうかということを少し検討さしていただきたいと思います。
  187. 工藤良平

    工藤良平君 それでは、私は最後に農業問題の締めくくりとして少し御意見を申し上げて、総理から簡単に御意見をいただきたいと思います。  御承知のように、稲の青田刈りの問題が起こっております。これはもちろん、稲を植えたものと植えなかったものという、いまの生産調整に入っている段階で、農林省の権威という点についてはあるいはそういうことかもわかりませんけれども、しかし、私は耕してつくる百姓が、自分の暮らしを守るために自分の土地への植えつけを考えていくということは、これは当然の理だと思います。しかも、不況のしわ寄せが来ているときに、私はそれは農民のもっともな事柄だと思うわけです。しかも、いまの日本経済成長影響というものは、逆に食糧自給率を低下させる上で達成をされてきた、いわば穀つぶし経済であったとまで酷評されているわけであります。したがって、そういう意味からいたしまして、私はこの稲の青田刈りは、その精神を踏襲し続ける農政にすぎないのではないかということを非常に憂慮をしている一人でありまして、そういった意味から、耕してつくる百姓の心を大事にするという農政への軌道修正、こういうものがない限り真に農業見直し論というものは実現できない、こういうふうに私は思うわけでありまして、その点について、先ほど申し上げましたように、行政に、農政に手抜かりがあってはいけないということを十分肝に銘じてこれからの農政を進めていただきたい、こういうことを最後に申し上げて、総理の御見解を聞いて終わりたいと思います。
  188. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 工藤君の言われる農民の心を心として農政というものをやっていかなければいかぬということは、全く同感でございます。そういう見地に立って今後の農政を進めてまいりたいと考えます。
  189. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして工藤良平君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  190. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) この際、宮澤外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。宮澤外務大臣。
  191. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昨日の上田委員の御質問並びに関連質問に関しまして申し上げます。  衆議院の予算委員会における小林委員の御発言を予算委員長がもっともと思われまして、善処方を政府に御要望になりましたので、政府としては、予算委員会における審議の経過を詳細に韓国側に伝えるにとどまらず、この問題について韓国側と誠意をもって話をするということがお約束を忠実に履行することであると考えております。韓国側との話の結果につきましては、御報告を申し上げることにいたしたいと存じます。
  192. 松永忠二

    松永忠二君 議事進行。  政府は、金東雲を出頭させる権限がない、私が金東雲の出頭を約束できるはずはないと本委員会でも外相は明言しているのに、責任をもって要望を実現するようお約束いたしますとの外相の発言は誤りであり、適切ではないと私は思います。また、外務大臣は、金東雲の出席の要請を行い、出頭できるよう努力することを約束をしたことについては、本委員会でも繰り返し述べているところであります。したがって、新聞に伝えられているように、金元書記官の再入国を要請するつもりはない、国会の要望を韓国に伝えることを約束しただけだとの言葉は、外相の真意とは異なるものであって、誤りであると私は考えます。したがって、いまの外相の答弁は私たちとしては了解ができません。  しかし、衆議院の予算委員会は、三十日に緊急の理事懇談会を開いた上で、委員長の決意はどうかと質問をしたところが、外務大臣の答弁は委員長の発言に対して答えたものである、立法府と行政府の問題で、立法府に対する挑戦になるので、私としては断固として譲らず解決をするが、そのためにも慎重に調査して、その結果をさらに理事会に諮りますので、しばらく時間をかしてほしいという発言があった。時間のめどはどうかと言ったところが、めどは連休明けと、こう答弁をされたことを私たちも聞いております。  したがいまして、本問題についての審議は、この調査の結果やその後の様子等も見た上で審議をすることが適当だと私は考えます。したがいまして、この審議は後刻に譲ってほしい、そういう方向で議事を進めるように要望をいたします。
  193. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 委員長、了承いたしました。     —————————————
  194. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 引き続き質疑を行います。秦野章君。(拍手)
  195. 秦野章

    ○秦野章君 去る八月の四日に起きましたクアラルンプール事件につきまして、私は結果的にはあるいはやむを得なかったと、そういう措置であったと思うのでございますけれども、その扱い方あるいはまたこの事件を処理した過程に若干の疑義がございますので、二、三お尋ねをしたいと思うのでございますが、最初に、いわゆるこの超法規的な措置の経過というものを御説明願いたいと思います。
  196. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 秦野さんにお答えいたします。  このクアラルンプール事件の発生後、政府といたしましては、三木内閣総理大臣が、ちょうど渡米中でございましたので、直ちに報告をいたし、その指示に基づいて内閣に、私が本部長となって対策本部を設置するとともに、福田臨時総理大臣以下関係閣僚を中心に対策を協議いたしました。対策を進めるに当たっては、人命尊重を第一義として、人質救出について有効な方策を種々検討したのでありますが、適切な方策も見出せない上に、人質の生命がきわめて危険な緊急の事態となり、マレーシア政府の協力要請もありまして、ついに犯人の要求に応ずることもやむを得ないということで、閣議においてその旨を決定したわけであります。この決定に基づき釈放手続、日航特別機の準備、護送等必要な処置をとったのでございます。  このようにして政府のとった処置により、人質全員が無事救出されたことは不幸中の幸いであったと思っておりますが、これによって犯人たちの不法な要求を通させたことはまことに残念であります。そしてその間におきまして、関係者一同は非常に苦悩に満ちた実に残念な気持ちのもとに、焦慮しながらこの三日、四日間というものを過ごした。これは私、自分の体験から申しましても、その間まことに残念な結果と相なったが、まあけだし緊急避難的にやむを得ない措置ではなかったかと、かように存ずる次第でございます。
  197. 秦野章

    ○秦野章君 いわゆる超法規の措置であったというふうに出ているわけでございますけれども、そういった解釈といいますか、そういう点について法務大臣からお答えいただきたいと思います。
  198. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 政府のとったいわゆる超法規的な措置とは、法的性格としてどういうものであるかというお尋ねのようでございますが、これ、私が思いますに、五名の釈放手続をとらせることにいたしましたにつきましては、現行法上こういうような場合にはどういう手続で、どういうふうに釈放せいというふうな実定法がありません。異常かつ緊急な事態であります。そういう場面でございますから、人質とされた者の生命の安全を図るため他にとるべき手段がなく、まことにやむを得なかったということは、やはり緊急避難理論、そういう法理に基づくものと法務省としては考えております。法的秩序全体から見て条理上許容されると。ああいう背景がなく、そういう背景を全然切り離して、この釈放自体、それ自体を現行法に照らして考えれば、まさに現行法と別なことをやってあるわけですから違法じゃないかと、こういうことになろうかと思いますが、   〔委員長退席、理事柳田桃太郎君着席〕 そういう国際性を踏まえた、人命の現に危殆に瀕しているものを救うというような、そういうせっぱ詰まった場面に対処する措置としては条理上許容されてしかるべきもの、したがって、わが国の法秩序を曲げたものと、こう断定するわけにはまいらぬのではないかという考え方であります。
  199. 秦野章

    ○秦野章君 やむを得なかったとか、あるいは条理上とかという、そういう問題で私はお尋ねをしておるのじゃなくて、未決勾留の場合に釈放するときには、裁判官の判決がなければ釈放できないわけですね。それから勾留の執行停止だとか保釈だとか、そういったことも法定の条件がなければ釈放できないようになっている。しかしながら、今度の場合はそういう法定の条件を満たすようなやり方では技術的に無理だった、だから手続面における超法規というのか、超実定法であったと、こういうふうに法務省は解釈されているのかどうか、再確認でございますけれども。
  200. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) いまお挙げになりましたように、現行法上、裁判所を経由しないで法務省独自というか、検察の立場で独自にというか、そういうやり方をしたことにつきましては、これはやっぱり高度の政治的判断、統治行為理論というようなことで考えております。それはああいう国際性を持ったいろいろな外国で起きた犯罪について、これにどう対処するか、その釈放手続を許容する裁判所の判断には少しなじみにくいものではないかという判断に基づいて検察独自のやり方々した、こういうふうに御理解願いたいと思いますし、現行実定法の手続を踏まないという点につきましては、緊急避難論的理論構成をしておるというふうに御了解願いたいと思います。
  201. 秦野章

    ○秦野章君 要するに、手続の実定法というものを超えた、言うならば超法規だということはわかるのですけれども、ただ、その中で一つ、裁判所というものは独立をしているから、そうしてまたこのことは非常に貴重なことなんで、裁判所に持ち込んでどういう判決が出たかわかりませんけれども、その可能性というものは当然検討されたと思うのでございますが、裁判所もこのごろは公害問題や何かでは超法規的判決もするわけですが、行政権だけで独走というのか、やってしまったということを考えたときに、私は裁判所にやっぱり持ち込むということについては当然論議もされたであろうし、そういうことによってこの超法規の正当性といいますか、そういったようなものを確保する道はあったかどうか。
  202. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 対策本部におきまして、当然御指摘の点につきましては議論がありました。議論がなければ不思議なわけで、いけないわけですね。裁判所に相談せずに行政権の独断でそういう措置をとるわけですから、これは大きく言えば三権分立の紛淆にもなるわけでございますから。しかし、そういう点をも超越して高度の政治的判断を下すべきものだと、裁判所もそういうことを持ってこられても、いろいろいまこのどういう状態にクアラルンプールであるのか、マレーシア政府から強い要求も、しばしば時間刻みに、分刻みにやってくる、で、目の前に日米首脳会談が控えておるというような関係、しかも、占拠されているのはアメリカの大使館である、それから、多くの人質になっているのは外国人であるというような関係について裁判所の判断になじむかどうかということも考え、大きな高度の統治行為理論としての政治判断を下したというふうに、これは御批判もあろうかと思いますけれども、先生のような御批判もあろうかと思いますけれども、行政府の責任においていたしたことでございます。  したがって、われわれの判断はそうでございますけれども、国全体から見て、これが正当づけられるものであるかどうか、それは国民主権でありますから国民の判断するところ、したがって国民の代表たる国会の判断するところと考えて、総理大臣から今国会の冒頭においてこれを御報告申し上げ、御理解を得たいと、こういう態度を三木内閣としてはとり続けてきている。わが法務省も、そういうことを一貫してやってきている次第であります。
  203. 秦野章

    ○秦野章君 少し法律論から答弁がずれていささか残念なんですけれどもね、法制局長官にちょっとお尋ねしますが、これはいわゆる超実定法というケースであると私も思うんだけれども、内閣がこのようなことを決定する権限の根拠は何でございますか。
  204. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 内閣は、憲法第六十五条によって行政権を行っております。その内閣の職権といたしましては、憲法第七十三条において、一般行政事務の外、左に掲げる職務を行うという規定がございますが、内閣といたしましては、この一般行政事務の一つとして今回の措置を決定し、内閣の決定といたしましては、このような、先ほど来法務大臣から申し上げましたような、いわゆる超法規的な緊急避難的な異例な措置でございますので、内閣として方針を決定して、本来は法務大臣の職責に属する事項でございまするけれども、内閣において閣議決定をもって方針を決定して、その方針に基づいて法務大臣が措置をとるという姿をとったわけでございます。
  205. 秦野章

    ○秦野章君 私はいまの法制局長官、まあ法制局長官は法律のトップの立場でございますけれども、ちょっと私は意見が違うのでございます。この内閣の、憲法六十五条「行政権は、内閣に属する。」これもはっきりしておる。それから内閣の権限が七十三条で決まっておることもはっきりしておるわけでございますが、この七十三条の内閣の職務ということの中では、一、二、三、四、五、六と、六つ権限を掲げて、これは代表的な「法律を誠實に執行し、國務を総理すること。」「外交関係を處理すること。」以下条約の問題、予算の問題等掲げておるわけですけれども、「他の一般行政事務」というものがあるわけですね。いま法制局長官は、「他の一般行政事務」ということで閣議決定をしたと、こうおっしゃいますけれども、「他の一般行政事務」ということの中に超法規の仕事が入りますか。もう一遍御答弁してください。
  206. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) この憲法第七十三条で内閣の職務を列挙いたしておりまするが、これは内閣の職務の範囲を規定したものでございまして、その職務がいかに行われるかということについてはまた別の問題でございます。超法規的措置であるとか、異例の緊急措置であるという説明をいたしておりますのは、内閣としてそのようなことをとらざるを得ないような緊急避難でございまするから、緊急避難としてそういう措置をとらざるを得ないという情勢にあったためにとったことでございまして、職務の種類といたしましては、この第七十三条の一般行政事務であるというふうに申し上げたわけでございます。
  207. 秦野章

    ○秦野章君 そうすると、この「他の一般行政事務」という中に超法規が入るというお答えでございますが、しからば、超法規の仕事以外に「他の  一般行政事務」とはどういうことでございますか。
  208. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 超法規的な事務が、この一般行政事務に入ると申し上げたわけではございません。今度の措置のように、外国の在外公館において、日本赤軍派と称するゲリラがあらわれて、そこで、まことに不当な要求でございまするけれども、日本政府に対していわば脅迫のような要求を提出して、その要求の内容といたしましては、日本の刑事施設に収監されてある未決または既決の被疑者または犯人を釈放しろという不当な要求があった。その要求に対して日本政府としていかなる措置をとるか、あるいはこれを拒否して人質の生命を危うくすることも一つの対応でございましょうし、また今度の結果のように、その要求に応じて五人の者の釈放——釈放と申しますか、解き放すことを決定するということもその一つの措置でございましょう。また、第三の選択もあったかもしれませんが、内閣としてはそのような措置をとったわけでございます。  そういう措置をとることは一般行政事務であるということでございまして、いわゆる超法規的措置といわれますものがこの一般行政事務に入るということを申しておるわけではございません。この一号から七号に掲げてあることは、これはもちろんみんなすべて実定法に基づいて行われることがほとんど確実でございましょうし、一般行政事務につきましても、当然法治国でございまする以上は実定法に基づいて行われることが、一万中の九千九百九十九までは確実であろうと思います。今回の措置も、何年に一遍しかあらわれないような全く異例の緊急措置でございまして、そのような異例の緊急措置だから、一般行政事務に入るというような御理解を賜ることは、はなはだ困ることでございまして、一般行政事務としてそのような措置をしたというだけのことでございまして、その措置の根拠と申しますか、源というのは、緊急避難の法理と同じような一般法理に基づいて、やむを得ず緊急避難としてとった措置であるという説明でございます。
  209. 秦野章

    ○秦野章君 一般行政事務でやったと、こう言うのだから、一般行政事務に今度の超法規にかかる扱いを裁いたということでしょう、一般行政事務のこの権限でおやりになったと言うのだから。  それで私の解釈は、どうも三百代言的な理屈になっていると思うのですよ、政府の考えは。この内閣の職権自体が超法規ではないのかと。何となれば、つまり判事の令状がなくては釈放できないものも釈放せねばならぬ、法定条件があるものも法定条件を無視して釈放せなければならぬという緊急な行為であることはわかるのだけれども、その緊急な行為は、まさにさっき申し上げたように、この手続法の実定、法秩序を超えているのですよ。実定、秩序を超えているのだけれども、内閣の方は閣議決定で、内閣の職権があった。内閣の職権というものにそういう超法規的なものをやる職権なんかあるわけないですよ。法は予想していないのですよ、憲法とか法律は、あのような事例を。まさに超法規とは憲法、法律を超えたものなんだ。だから、内閣が閣議決定をするとか、内閣の権限にそういうことがあるんだということは、私は政府の解釈が間違いだと思うのですよ。いま一遍答弁して下さい。
  210. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 実定法に根拠がないということからいたしまするならば、内閣の職権でもなければ法務大臣の職権でもない。また、現実に身柄を解き放ちました刑務所長なり拘置所長の権限でもないことは仰せられるとおりでございます。ただ、こういうような措置をどこがとるかと申しまするならば、現在の日本国憲法の定めております三権分立のもとにおいては、現在被告人あるいは受刑者として刑事施設に抑留されている、抑留と申しますか、拘束をされておる者が片方におるわけでございます。他方、クアラルンプールにおいて五十数名の人質が拘束をされて、その人質の生命が危うくなっている。その人質の生命を救うためには一定の被告人または受刑者の身柄を解き放てという要求を受けたのはまたこの日本政府、もちろん行政府でございます。とすれば、行政府がこの一般行政事務に属するものとしてそういうことを処理せざるを得ない立場にあることもまたおわかりいただけると思います。  その意味で、いまの三権分立のもとにおいては、こういう事柄を処理することは行政府、つまり内閣、また直接には法務大臣の所管事項でございますから、法務大臣の所管事項として法務大臣がそのような措置をとるということが、いまの憲法の三権の配分の考え方にふさわしいものであろうということで処理をしたということでございまして、内閣にはこの緊急異例の措置をとる権限がもともとあるというような説明をいたしておるわけではございません。
  211. 秦野章

    ○秦野章君 私は内閣の職権にはないと思うんですよ。ないけれども、内閣というものは日本にあるんだから、内閣が、職権にはないけれども、やはり内閣が緊急行為をさばかにゃならぬという内閣の職権の超法規だと、そう理解するほかはないんじゃないのか。といいますのは、日本国憲法は御承知のとおり緊急事態に対する条項というものは全然ございませんし、   〔理事柳田桃太郎君退席、委員長着席〕 そしてまた英米法のように、憲法とか行政法を要するに解釈するようなものじゃなくて、いうならば成文法主義ですよね、日本は。成文法でぴしっと解釈して、ちょぼっと間違っても憲法違反と、こういう国なんです、日本は。そういうことで、この超法規のことを憲法や法律が書いてあるわけがないんですよ。内閣だって予想してないんですよ。なぜそれを内閣が閣議決定だとか、内閣に一般行政事務で職務があったんだなんて、そういう本来の制度というものをゆがめて適用するという考え方に私はいささか抵抗を感ずるし、なぜそういうことを私が言うかというと、超法規というものは一体どういうことなんだという認識ですね。  憲法も法律も予想してない、しかし、こういうことが起きて、こういうことをやらなきゃならぬという事態があって、私も先ほど来申し上げるように、結果というものはこれはしようがない、やむを得なかったと言っているんですから。しかし、その扱い方について、いま私は法制局長官のお話を聞いても、どうも無理にくっつけているという感じがする点は、あくまでも私は考えが違うんですけれども、法律論はちょっと残念だけれども、要するに内閣というものはさばかなきゃならぬ。三権分立は確かにそりゃそうなんです。内閣がやらないで国会がやるわけにはいかない。しかし、内閣の職権としてはそういうものは本来決めてないんだ、だから職権自体が超法規なんだと言わなきゃつじつまが私は合わぬと思うんですよ。そこまで踏み込んだときに初めてこの超法規といわれるこの事件の重さといいますか、理解というものができるんだ、こう私は思うんですが、これ、いかがでしょう。
  212. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 秦野委員のおっしゃること、よく理解いたしております。内閣の職権として憲法なり、あるいは内閣法なり、あるいはさらに下っては国家行政組織法等でいろいろの職権が規定されておる。それはもうあくまで実定法を前提にしたものであるという理解は当然であろうと思います。その意味では今度の措置は現在の内閣の職権に属するものではなくて、まさに超法規的と申しますか、超異例の措置として内閣が行ったものであるというふうに理解することも、これまた一つの当然の帰結であろうと思います。
  213. 秦野章

    ○秦野章君 そういうことなら私もはっきりしてよかったんですけれども、あと行政的な取り扱いという問題について少しただしてみたいと思うんですが、今度の取り扱いというものが、確かに関係者の方々はいろいろ苦悩に満ちてお扱いになったろうと察するし、その労を多とするものでございますけれども、ちょっと右から左にさばき過ぎた、いかにも国家というものがプレハブのような感じになったという印象を受けるわけでございます。  私は、国家というものはあくまでも重量感があることをもってよしとするものではございません。力を過信するということは時に過ちを犯すものでありますけれども、それにしても国際協調の中にも、国家の独立と安全、そういうものを保持するためにはできるだけの可能性を追求する、また、そのための国家の責任というものを過小評価すべきではないと思うのでございます。そういう観点に立って、一、二申し上げますと、八月四日の午後に発生をしたわけでございます。その後いわゆる閣議決定があって、四日の午後に発生して、五日の未明にはもう仙台の刑務所から一人の被疑者はのこのこと出て行った、釈放した。実にこれは不法な脅迫というものに対していかにも素直ではないかという感じがするのでございます。しかも、リビアが受け入れを承諾したのは実に七日でございます。そういう点について、これはやっぱりやむを得ないのだ、やっぱり緊急措置だというようなことで説明をされるのか、その点ちょっと御説明を願いたいと思います。
  214. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 当時私が三木総理のお留守をしておったんです。それで、私があの日のそういう事件が起こったことをキャッチしたのは午後四時ごろでありましたか、直ちに井出官房長官と相談しまして、午後五時過ぎに対策本部をつくる、井出官房長官がその本部長である、こういうことにし、関係者が総理官邸に参集して、そして何とか、これは交渉というのですか、この間に妥当な解決の余地はないかということを発見することに努めたんです。  ところが、ゲリラ側は無条件に引き渡せと、こういうことを主張してやまないわけであります。その間いろいろいきさつがありましたが、ついに午後八時ごろになりますと、九時半と言っていましたかな、九時半までに日本政府から要求に応ずるという、イエスという返答がないと九時半には最初の処刑者を出す、処刑を執行しますと、こういうことがあったわけです。その間わずか一時間半なんです。この間にずいぶん関係者は頭をしぼって協議したんですが、九時半という要請に応じないで、そしてあるいはさらに遷延しながら交渉の余地があるかもしれない。しかし万一、言うがごとく九時半に処刑をされたら一体どういうことになるのだろうか、そういうことも考えておかなければいかぬ。  そこで、受入地が一体あるのであろうか、あるいは飛行機の機長ですね、それが見つかるのであろうかとか、いろいろ問題はあるんです。問題はあるがそれはひとつ後のことにする。一応イエスという返答をして、処刑が始まることをこれを阻止することが妥当であろうと、こういう判断に到達し、そして閣議の決定を経ようと、こういうことにしたわけでありまして、犯人の要求というものがとにかく条件闘争じゃないんです。もうイエスかノーかということであり、しかも最初の処刑が一時間半後に始まる、こういう緊急な事態なんだと。  そこで、政府考え方としては、受け入れ国の問題あり、あるいは飛行機の上空通過承認の問題あり、あるいは犯人が飛行機に乗り込む、その際に携行する武器の問題がある。あるいは一体、そういう飛行機をわが国が提供する、提供するその飛行機の機長を引き受ける人があるかどうかと、そういうようないろんな問題があるんですが、それは後へ延ばして、場合によると、日本政府は原則的にはイエスとは言った、言ったけれども、実際それが応諾できないんだという状況になるかもしらぬ、そういうことも期待しながら、一応とにかく最初の処刑、九時三十分の不幸な事態にならぬようにという決断をしたわけでありまして、その決断が早かったか遅かったか、そういう評価の問題は残るかと、こういうふうに思いますけれども、当時の状態としてはそういう緊迫した状態にあったということを御理解願いたいと、かように存じます。
  215. 秦野章

    ○秦野章君 犯人の要請とおっしゃいますが、言ったことに対して、その釈放を受け入れる方向で検討するぞという回答をいち早くなさったということ自体、私はもう全く文句の言いようがないと思うんです。それはそれでいいですよ。しかし、同時に、受け入れる方向で検討するという返事を直ちになさったことは非常にいいんだけれども、恐らく——ここでちょっとお尋ねしたいのは、マレーシア政府が、先ほど官房長官のお話ですと、早くやってくれやってくれと言って催促が来たというお話でございますが、お互いに独立国家でございます。マレーシア事件はマレーシアが裁くべき責任の事件であり、日本の釈放は日本政府が自主的な判断で釈放する事件で、これがお互いの内政というか、主権国家の普通の状態ですね。それに対してどの程度の要請があったのか。こういう事件が起きましたよと、そして犯人はこう言っていますという事実の告知なのか、釈放してくれ釈放してくれというわが内政に対するしきりなる要請であるのか、その辺のところをちょっといま少しはっきり教えていただきたいんです。
  216. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) その間の消息でございますが、向こうからその要請が来たと、それに単純に応ずるというのではなくして、その間にはやはり幾度かのやりとりはあったわけでございます。  いま副総理から申し上げましたように、経過的に申しますと、当日の十九時三十五分、イエスかノーかと、こういう返答を求めるべく突きつけられておったのであります。その間、須磨大使とも接触を持ち、またマレーシア政府のラザク首相は、七名の者をともかくクアラルンプールへ連れてきて、そして交渉をするようにという主張がされておる連絡もございました。それやこれやの経過を踏まえまして、あるいは少しくそこが安直にというふうな御批判だろうと思います。あるいは私、ある雑誌の論文などにもそういう御意見が出ておるのを見ましたが、しかし、あの際、何としましても犯人らは目の当たり時間を切って処刑をするんだと、こういうことを言い続けておりました次第であって、万やむを得なかったという感じがいたしております。その間の事情を若干申し上げた次第であります。
  217. 秦野章

    ○秦野章君 釈放の要求といいますか、そういうものに対して、その方向で検討するという、そういう返事をマレーシアは受けながらも、恐らくその裏で何とかうまくさばけないだろうかという非常な苦心をマレーシア政府はしておったと思うのでございます。それに対応してわが方が、やはり返事はして釈放せにゃならぬという、しかし間にいろいろとまた苦心があった、あらなきやまたおかしい、おありになったと思うのでございますけれども、このマレーシアの日本に対して要請をしたその裏で、マレーシア政府自身がどのような苦心をしたかという問題についてはおわかりになってますか。
  218. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 当時、私、総理大臣のお供をしましてワシントンに参っておりましたので、本件を最初から処理をいたしトリポリまで参りました越智領事移住部長がおりますので、お答えを申し上げます。
  219. 越智啓介

    説明員(越智啓介君) お答え申します。  マレーシア政府としては、先ほどございましたように、八月四日事件発生後、直ちに総理府においてラザク首相の主宰のもとに対策会議を開いております。これは大体日本時間の午後五時から開いております。わが方の在マレーシア須磨大使もマレーシア側の要請に基づいてこれに出席しております。また、マレーシア政府政策本部が事件が発生したAIAビルディングの一階に設置されたわけでありますが、当初マニカバサガム通信大臣、これが対策本部長でございましたけれども、直ちにガザリ内務大臣に切りかわりまして、内務大臣みずから陣頭指揮をしておりました。それから事件対策の陣頭指揮をとって、直接犯人側との交渉もほとんどこのガザリ内務大臣がやっておりました。それで私参ったときも、すでにときどき総理から電話はかかるし、副総理総理の名代だといってこの対策本部にあらわれて、盛んに士気を鼓舞しておった次第であります。  それからまた、犯人との話し合いの点について、当初犯人側は自分たちの要求というものを徹頭徹尾一方的に押しつけるわけでありますが、第一に言いましたのが、刑務所にいる西川、戸平、坂東、坂口、松田、松浦、佐々木と七名をまず釈放して、JALのDC8—62型に乗せて連れてこい、それで、それにわれわれも乗るんだ、パイロットは三人だけだと。日本政府のデッドラインは、先ほど副総理の言ったとおり、この時間以内にイエスかノーかを言わなければ四時間後には最初の犠牲者を殺す、最初の犠牲者の名前は一時間後に発表する、日本政府はそれに応ずるかどうか、これをまず決めろ、その後にマレーシア政府とわれわれは話すと、この態度で一貫しておったわけであります。  そこでマレーシア側は、この間犯人との話し合いに非常に苦労して、時間をかせぐためにいろいろやっておりました。まず、その回答期限というものを二時間延長する。それから犯人側に捕らえられている人質のうち婦人、子供をまず放せと。いろいろやったんですが、なかなかこれが日本政府が飛行機を出すということを決定するまでは実現しませんでした。それで結局、人質は八月六日の早朝、やっと九人釈放されたわけです。その間犯人は全然、女、子供が帰っても、強硬な態度を崩しません。あくまで赤軍メンバーの釈放と日航機の提供が決定した後、初めてマレーシア側には犯人の行き先について言うと。その間マレーシア側がいろいろなだめすかせて、どこへ行きたいんだとか言うんですが、絶対に言わない。  それから、この決定が結局行われたのが深夜だったわけですが、次にマレーシア側がやったことは、受け入れ国を探すこと。これもガザリ内務大臣、陣頭に立って精力的に行いました。ところが、ほとんどの国はみんなノーであります。もちろん私もマレーシアから日本政府に対してお願いして、早く受け入れ国を見つけてくれと必死になって両国政府でやったわけですが、どこもノーであります。結局、最後にリビアにオーケーが出たのも、このマレーシアのガザリ内務大臣が最後的に自分で向こうの大臣と電話で連絡して決めたわけであります。一番この決め手になりましたのが、後でわれわれ聞かされたところによりますと、ラザク総理からの親電と、福田総理からの親電と、これが、一度リビアは実は外交ルートを通じて拒否してきているわけです。通過もいかぬ、受け入れもいかぬと。それをひっくり返したのは、あくまでこのラザク総理の強い要請、福田総理の強い要請、それからガザリ内相の精力的なアプローチと、これで結局一度決定した内容を、日本及びマレーシアとの友好関係という見地から最高のレベルでやむを得ずひっくり返したんだと、こういうことを言っております。  次に……。
  220. 秦野章

    ○秦野章君 そこまで聞いてない。聞いていることだけ答えてくれ。  私がいま聞いているのは、いち早く釈放の方向でやりますよという返事をしたのは大変いいことだと思うんですよね。ただしかし、その返事をしながら、こちら側ではもう少し脂汗かくような問題があったんではないかということ。つまりマレーシア政府は、そういう回答を受けても、一生懸命人質も救いたい、犯人も逮捕したいという魅力をしたであろう。その時間かせぎの間のわが方側の対応が、やっぱりどうあったろうかというところに多少の問題がある。といいますのは、そもそも脅迫みたいなものは、どっちみち殺すぞなんとこう言うわけでございますが、そういうことにあんまり素直でないということがいいというのが一つの常識であろうと思うんですよ。しかし、そこにはリスクもあるから、その間非常に苦心をされるのは当然でありますけれども、もうその点はこれでやめまして、行政的な対応の中で、これは法務大臣でも刑事局長でも結構でございますが、検察庁法第十四条を準用して法務大臣は検事総長を指揮して釈放したというふうに発表されておりましたが、そういう解釈でございますか。
  221. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 結論から申しますと、そうではございません。そういう解釈ではございません。今回の検事総長を指揮してその手続を行わせたものでありますけれども、このような手続は、実定法には定めはありません。検察庁法第十四条はそういう手続きを決めたものではないと私は思うのでございます。ただ、検察官は公訴を行い、裁判の執行を監督する職責を有するものでありますね。今回の事件は現に裁判係属中の被告人、あるいは刑の執行中の服役者、その身柄を釈放する内容のものでありますね。ですから、このような検察官本来の事務と密接に関連をいたしますので、その手続の適正を期するため検察官を関与させることがより相当であると考え、検事総長に指揮したわけであって、直接刑務所の所長にやればいいじゃないか、検事総長を通すことは指揮権の発動みたいで誤解を生ずるのではないかということに対しては、以上のような見解を持っておりますことを申し上げます。
  222. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 大臣のお答えになりましたことを、僭越ながらやや補足して申し上げさせていただきます。  ただいま秦野委員のお尋ねは、今回の法務大臣の検事総長に対する指揮が検察庁法十四条との関係においてどういう関係にあるのかというお尋ねでございまして、先ほど大臣が申されましたように、本来このようないわゆる超実定法的と申しますか、私は超法規的というよりは超実定法的というのが先ほどの法制局長官のお答えに即した解釈かと思いますが、超実定法的な措置を講ずること、つまり裁判所の保釈とかあるいは勾留の執行停止とかいうような、勾留の取り消しとかいうようなことでなくして、勾留中の犯人を釈放するというようなこと、あるいは刑の執行を停止すべき刑事訴訟法に定めた事由はないのに刑の執行を停止するというようなことは、本来検察庁法が予定する検察本来の事務ではございませんので、検察庁法十四条は本来の検察の事務に関する法務大臣の指揮権を規定しておるものでございますから、明らかに法務大臣の検事総長に対する指揮は検察庁法十四条そのものを適用したものではないということは明白でございますが、先ほど大臣も申されましたように、公訴を行うとか、あるいは裁判の執行を監督するということは検察の本来の事務でございまして、今回も超法規的、超実定法的ではございますが、公訴中の犯人を釈放するというようなことは、いま申し上げた検察本来の事務と密接に関連いたしますので、そういう意味におきまして検事総長を通じて指揮をするのが相当であるということで、いわば手続的にはそのものではございませんが、検察庁法十四条に準じた手続によりまして検事総長を指揮したということでございます。
  223. 秦野章

    ○秦野章君 その辺の問題でちょっと疑義がありますのは、検事総長というものを、ふだん釈放とかそういう仕事をやっているから、そういうルートでやったんだという御説明でございますけれども、この検事総長という地位は、言うならば法を守る立場ですね。そして身分も保証されているし、司法権ではないけれども、これはやはり政治からきわめて中立、公正な立場にこれを堅持しなきゃならぬという重要なポストでございます。だから、こういう不法な釈放といったような方向に手をかすことは余り好ましくないと思うんですよ。検事総長というこの系統を使わなければ釈放みたいな、——大したことはないんですよ、釈放なんということは。こういうことができないはずはない。私は日本の法秩序を守っていくという観点、そういう大局から見たときに、釈放という実務を検察という公益の代表、法を守る立場、そういうものと取引するような考え方にはいささか疑義がある、こう思うんですが、いかがでございましょうか。
  224. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) あなたのお説はまことにごもっともな点があるわけですね。ただ、そういう厳正な立場にあるものの手を汚さぬで、どろは法務大臣がかぶって、直接刑務所長に命じて釈放手続をとったらいいじゃないかと、ああいう……
  225. 秦野章

    ○秦野章君 そんなこと言っていませんよ。
  226. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) そうして行政府の責任においてやって、準司法的な立場の者に余り迷惑をかけない方がいいじゃないかという御質問じゃないですか。
  227. 秦野章

    ○秦野章君 そりゃそうですよ。
  228. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) それはごもっともな点がございます。けれども、先ほど言いましたように、犯人の釈放ということは、へみたいなものじゃないんです。これは重大な問題なんです。ですから、やはり正確に行われるように、正確に向こうまで届けて、きちんと目的を達せられるような手続をきちんととっていかないと、こんな重大なことをやって結果が実を結ばなかったなんといったら、それこそ重大な責任でございますから、その手続の正確を期する意味におきまして、その手続になれておるというか、手続を本務とする、従来の任務としておる検事総長を通じてやった方がより正確に行われると判断してやむを得ずそういうことをやりました。
  229. 秦野章

    ○秦野章君 私はへみたいなことだとは思わないんだけれども、法務省にはいわゆる矯正局という刑務所系統の役所があるわけですね。矯正局、刑務所という行政ルールがあるわけです、行政の組織があるわけです。矯正局の役人さんは、これは検事さんですよ、みんな。だから、釈放事務なんということは矯正局の系統で何ぼでもできるんですよ、これは。できるんですよ、どうせ超法規なんだから。だから、検察庁法、検事総長という、そういう言うならば法を守る立場というものをわざわざ使わなくても、要するに矯正局には検事はいっぱいいる。釈放の事務がわからないなんて、大臣、それはね、下の方を御存じないんだよ。これは何ぼでもできるんですよ、そんなことは。矯正局、刑務所に超法規の行政命令を出せば、超法規の、言うならば法務大臣の行政命令です。一種の行政命令的なことをお出しになれば、へみたいじゃないけれども、これはできるんですよ。  私は、それは当然だと思うんです、そういうふうにやった方がいいのは。つまり政治路線、内閣でもって決めたと、私は内閣の職権も超法規だと思っているんだけれども、とにかく決めたと、しょうがないから。そっちの政治路線で法務大臣もやらなきゃならいんだから、法務大臣も行政命令でもって矯正局から刑務所とさあっと流せば、そうすると、裁判所は横でじっと司法権の独立が侵されはせぬかと見ているわけです。検事総長も、残念だと言って見ている。この姿がやっぱり大事なんですよ。私はそう思うんです。そういうふうな日本のやはり国内の法秩序を確保するなんということは、今度は生血が出なかったから大変犠牲なき事件のごとき印象を受けているけれども、これは大間違いなんです、ものすごい犠牲ある事件であるということだけは考えなきゃならぬ。釈放の五人は二十二人も人を殺しているでしょう。そしてまた国際的に野放しになるんですから、よその国にも迷惑をかけるというようなことを考えると、生血は出なかったけれども、これはきわめて重大な事件で法秩序の破壊である、大きな打撃であるということに対して、検事総長を巻き込まない方がいいんだ、検事総長というものはそういうことをやらない方がよかったんだと、私はそう思うんです。そういうふうな意味で私は申し上げて、検事総長を使わなきゃできなかったなんて、そんなばかなことは私は絶対ないと思うんですよ。刑事局長、いかがですか、これ。
  230. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) いま先生のおっしゃることよくわかるんですがね。ただ、私は、これは法務省内にも犯人の釈放になれているやつがいるじゃないか、それを使えばいいのに、司法権に準ずるような立場にある、半ば神聖にしておくべき、きれいにしておくべき者の手を汚させたのは法務大臣としてよくない措置だぞということについては、ごもっともな点があると思っているんです、私。ただ、事は非常に重大だから念には念を入れて、正確な適正な手続を踏んで釈放しないと、ちょっと手続でも間違うというと困るがなと、こういう気がしたんです。何といいますかな、自分の責任において独自で矯正局長を使ってやるべきことを検察庁を道連れにしてともに手を汚そうなんて、そんなことを考えているんじゃないんです。そんなことではありません。そういう点は御理解願いたいと思うんですが、それはあなたのおっしゃるとおり、釈放するか、釈放を拒否して、そうして人質を犠牲にしてもやむを得ぬという——それは日本の憲法を、法秩序を維持する法治国家を堅持するというのには、もう少し自分で責任を負うてきちっとやったらいいじゃないか、人の手をかりなくてもいいじゃないかということですけれども、手続を慎重の上にも慎重を期したいと、こういうふうにあの当時思ったことだけは申し上げておきたい。そして、その点についてなお御不満があるようですから、刑事局長が専門家ですからお聞き願いたいと思います。
  231. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 秦野先生御指摘のとおり、検察権というものは司法権に準ずるものであり、その一翼を担うという観点から言いまして、司法権と同じように独立を尊重していただくお気持ちはまことにありがたいわけでございますが、一面において検察権の行使は行政権の一部でございまして、その行使については内閣を通じて国会に責任を持つというものでございます。そこで検察庁法の十四条というものがございまして、法務大臣は個々の事件の処分については検事総長だけを指揮できるということになっているのは、その兼ね合いの問題として司法的な利益と行政上の行政権としての責任、政治の問題との兼ね合いがそこではかられておるということは、もう釈迦に説法でございまして申すまでもないわけでありまするが、今回の問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、決して究極的には法秩序に反することをしているのではない、究極的には条理に照らして違法ではないことをやったという法務大臣の御判断のもとに、違法でないことについて検察、検事総長を指揮したものであるという意味で、違法、不当なことを検事総長に指揮したものではないわけでございますし、また十四条に準じました以上は、検事総長はその指揮を受けました場合に、やはり検察庁法十四条に準じてその当、不当を判断する自由をお持ちになったという意味において、むしろ検察の独立を尊重した形で指揮がなされたとも言えるわけでございます。  それから、先ほど大臣の申されましたように、本来身柄の釈放をする、指揮をするということは、常に検察官の指揮をもってやっておるわけでございまして、刑務所は直接検察官の指揮によって常に釈放するというのが通常の事務の流れでもございますので、その事務の流れに準じて手続の適正を期するために検察官をして関与せしめた。しかるがゆえに、今回釈放いたしましたのも、クアラルンプールにおいて釈放したのでございまして、万一の場合においては、先ほど秦野先生おっしゃったように、釈放しなくても済むかもしれぬという最後まで望みを託してクアラルンプールまで検察官が犯人たちを、勾留中の被告人や既決囚を連れていって、そこで万やむを得ぬということで釈放したということにもあらわれておりますように、こういう検察官を関与せしめることによって手続の適正と判断の適正を期することを期したということでございまして、どうかその点は、検察を尊重していただく点はありがとうございますが、そういう事情であったということも御理解をいただきたいと、かように思います。
  232. 秦野章

    ○秦野章君 私は多少まだ理解ができない。これは最後までできないと思うのですけれども、検事総長が不法なことをやったなんて言っちゃいませんよ、これは超法規としてやらなきゃならぬという政治路線でおやりになったんだから。そうじゃなくて、常識的な見方として、世間的な見方として、とにかく不法な原因によって国家の政治がこういう方向で動いた。そういう方向にやっぱり法を守る立場というものは動かなくてもできるんだ。あなたは検事が釈放の事務をやっているから、それはなれていた方がいいというお話だけれども、矯正局に検事の経験者はいっぱいいるんだから、その系統でちゃんとできたであろうし、その系統でやるべきだったというふうに私は思います。これは見解の相違になりますけれども。  さて、総理に。ワシントンにいらっしゃって人命第一でもって処理しろというような御指示でもって指示されたそのことは、結果として妥当であったと私も思うんですよ。ただ、ここで考えなくちゃならぬのは、先ほど来申し上げるように、扱いの問題、考え方の問題で、やっぱりプロセスというものを充実するという考え方をどうしてもしていかないとこの重さがわからないという感じがするんですよね、事柄の。何遍も繰り返されるというおそれだってないことはない。  マルコス大統領がフィリピンのあの例のシージャックのときに、全陣頭指揮で活躍をして人命も救出をしたし犯人も逮捕したという事例がことしあったわけであります。あそこまでいけば大変いいのだけれども、日本の場合はそういうことはできなかったかと思うのでございます。しかし、あの教訓というものは、フィリピンには恐らく再犯というものが多分起きないかもしれないのですよね。かなり防ぐことに効果があったと思うんですよ。  それからスウェーデンのストックホルムの西独大使館にゲリラが襲撃をして、十二人の西独大使館員を人質にして、そして西独赤軍たち二十六人の釈放を要求した。この事件のときにシュミット首相は、御承知のとおりゲリラの言うことを聞かなかった。その結果、自爆といいますか、爆薬を独人たちが仕掛けて、犯人は一人死んだけれども、あとは逮捕された。抑留された者も二人ぐらい犠牲者がございましたが、しかし、そういう事件が国際的にあったわけでございますが、いずれのスタイルがいいか、これは国情も違うしケース・バイ・ケースで違いますから、簡単な比較はもちろんできないのでございますけれども、人命の尊重という問題は当然のことなんだけれども、しかし日本のゲリラの場合でも、五人は二十二人も人を殺しているという、かつて人命を非常に尊重しなかった連中でもあるし、これがまた再び放たれて人命尊重に非常に危惧を残しておる。  人命尊重第一、これは人命尊重第一なんだけれども、人命というものが最高絶対の価値であるならば、人類がつくった価値というものは一切滅びるわけですね。芸術も、あるいはまた人間もやっぱり国家のために死んだ人間もおるし、レジスタンスで死んだ人間も人類の中にいっぱいおるし、日々の職業でも命をかけなければ勤まらぬという仕事もあるわけでございます。つまり、人命より重い利益というものもあるというのが私は当然の価値観といいますか、そういう問題だと思うわけで、これはもう当然のことだと思うのでございますが、今後の問題等に関して総理はどのような決意をされていらっしゃるか、この点をお尋ねしたいと思います。
  233. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 秦野君のいろいろ御質問、事の重大性ということは私もよくわかるわけでございます。いまでも私はあの措置に対してみずから問いかける気持ちですよ。いま国というものの処置のあり方として非常に責任を感じておるわけですが、しかし、あの場合としてやはりそれ以外の選択はなかったという私は判断に立ったわけでございまして、これは実定法の上にもああいう場合を予定したわけでないですからね、異常な事態であって。それに対して政府としては説明を持たなければならぬから、いままで説明をしておるけれども、根本はやっぱり法はそういう場合を予定してなかったということですよね。そこに非常な苦悩があったわけですね、その選択が。  そこで、これからの処置でありますが、こういうことの再発を防ぐためには、これは暴力によって自分の目的を達成しようという、こういう犯罪というものは取り締まりを通じて防いでいかなければならない。そういうものに対して取り締まるべき現行の法規などもいろいろ検討してみる必要がある。未然にこういうことを防ぐための取り締まりの面があるでしょう。一方、考えてみると、これは国際的背景を持つものでございますから、こういうものを防いでいくためには、これは日本ばかりの問題でもない。どこの国でもこういう問題が、いろいろ国によって、その場のケースによって処置の仕方には一定の法則があるとは思いませんけれども、各国ともそういう場合の判断というのは苦悩に満ちた判断であったと思うんです。そういう点で国際的な協力、この問題は国連でも問題になるし、フォード大統領との私の会談のときにも、こういう問題をどうして防いでいくかという話は話題になったわけでございます。これで、いろんな場において国際協力というものについて日本自身も提案もしたこともございますし、今後これはあらゆるこういう問題を論ずることがふさわしい国際会議の場においてこの問題は取り上げて、国際協力というものをやらなければならぬ問題だと思うわけでございます。
  234. 秦野章

    ○秦野章君 この事件の経過から若干の教訓といいますか、言うならば超法規という、つまり憲法、法律を超えた措置をしなければならなかった、これはもうやむを得なかった、しかし、そのことはまさに行政権の範囲だけの問題だというのが一つあろうと思うんです。さらに御参考に申し上げますと、ドイツでは、これは拒否したんですけれども、拒否する前に総理大臣は各党の党首と国会における議員団長全部、各野党の議員団長全部を総理官邸に集めて、そうして各州の首相、まあ知事、連邦制だから首相ですね、これも全部集めて、五時間ぐらいの間に相談をして、こういうことでやろうということでパルメ総理自分で電話してさばいたというあれがあるんです。  今度は野党も全然質問もないし、余り問題はないのだろうと思うんですけれども、ただこの超法規というのは、要するに憲法、法律にないことをやったんだということでは行政権としては全能のスタイルですから、これはやっぱり事後において国会の追認といいますか、クアラルンプール事件承認に関する件が一本要ると思うのですよ、私は。それがやっぱり立憲政治の一つのたてまえじゃないかというふうに思うわけです。総理国会の演説で報告をされました。これも一つの御配慮であったとは思うんですけれども、しかし、この超法規の行政権全能の姿勢というものは、非常にこれは実は三権分立の議論の中では重大なことなんですね。  今度はこれは一つの先例になった。憲法発布以来、恐らく戦前もなかった。明治憲法以後なかったと思うんですよ。それは明治憲法のときにはいろいろの手段もあった。しかし、これは非常に重大な先例になるんですよ、社会的事件としてはかなりいまは無風なんだけれども。そういう意味においても、先例というものはそのときよくても後で、後々に至って悪用されるという、そういう危険も歴史というものは示しておるわけであります、超法規、超実定法というものについてはね。それはリベラルな三木さんが、そんな後で危ないことをするとはだれも思っちゃいませんよ。思っちゃいませんけれども、やっぱり超法規というものは、三権分立、立憲主義秩序というものを考えたときに——事後においてでいいんですよ、これは。やむを得ないんです。各国憲法でも緊急事態を決めている立法は、全部事後において国会の承認をとるようになっておりますね。あるいはまた、英米法系では最高裁判所の判決を求めるような方向になっている。つまり三権があって、一権だけで初めからしまいまで突っ走る、そういう体制はないわけでございます。その意味において、国会は国権の最高機関ということになっていますから、これは私は、本当は国会の事後における承認が必要だ、それが正しいんだ。いまは問題はなかったけれども、一つの先例になるんだというふうに私は思うわけでございます。  それと、いま一つは内閣の責任でございます。内閣の責任は憲法六十六条で国会に対して連帯の責任がある。これは一般的責任論でありましょう。しかし、こういうきわめて異例に属することは、その事件事件でやはり正当性を確保し、責任も解除せにゃならぬというふうに思うのでございますが、この点について総理はどのように思われますか。
  235. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も秦野君の言われるように、事の重さというものに対していろんな配慮を加えまして、国会の御報告、国権の最高機関である国会に対して特に所信表明演説の中に国会の理解を求めるということを申したわけです。確かに国会の承認を受けるべきだという御意見もありましょうし、そういう意見も現にあったわけですが、そういう私の判断で国会の報告をして御了承を求めるというような形をとったわけでございますが、これは確かに事柄の重大性から考えまして、いろんな御意見が、御批判があると思います。まあ私の判断でああいう形をとったわけでございます。これに対しては、やはり内閣として十分な責任を感じておる次第でございます。
  236. 秦野章

    ○秦野章君 これもまあ教訓と言えば何ですけれども、外務大臣はお留守で大変お気の毒だったと思うんですけれども、リビアですね、リビアにやいのやいのと言って入れてもらった。そうすると、やっぱり日本人もいろんな人がいますから、入れてもらっておきながら、あんな凶悪なやつを受け取ったと言って文句を言っているといういろんな投書や何かも大使館にあるという新聞記事も出ているんですよ。これはリビアに対してあれを頼んで受け入れてくれたんだから、これに対してはやはり国として政府としてそれだけの姿勢というものを表現しなきゃならぬ、こう思うんです。  かつて私は思い出すのは、イスラエルのテルアビブ空港の事件のときに、政府はいち早くお金を持って特使を派遣して謝罪に行きましたね。あれは政府とか国家の行動と関係なかった。日本人がやった。日本人は日本代表じゃない。日本という国籍にいた一人の人間がああいう悪いことをした。政府の直ちに責任というふうなものではない。それにもかかわらず、特使をお金を持って派遣していった。今度は、リビアにはあれだけ頼んで悪いのを入れてもらった、しようがない、入れてもらったというようなことであるにかかわらず、私はちょっとリビアに対して姿勢が国家としてアンバランスじゃないかという感じがするんだけれども、その辺について外務省のある役人さんに、リビアにどのくらい、どういう姿勢をとったか、謝罪、何というか、お礼というか、そういうこと々やったか、場合によったら特使を派遣したっていいんだ、イスラエルさえやったじゃないか、イスラエルは、日本政府とか国家の行為と関係ないんですよ、あれは。ところが、リビアの方は日本政府が頼んだんだ。そのアンバランスがおかしいじゃないかと言ったら、きょとんとしているんだ、外務省のある役人は。おかしいんだ、そういうところが。こういうことでは、アラブ外交とかアジア外交とかをやっていく感覚としては私はおかしいと思うんですよ。やっぱりお世話になった、御迷惑をかけましたという姿勢を出して、そして事後のいろいろの御協力も賜るというようなのが国際関係の姿勢であり、われわれはいささか大国意識があり過ぎるのかもしれませんが、これはやっぱり反省せにゃならぬというふうに私はこの間外務省の人と話して思ったんですけれども、一体リビアに対してどういう姿勢というものかという点についてちょっと御意見を承りたい。
  237. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 仰せられる点はごもっともであると思います。ちょうど私が不在でございましたので、事件が処理されました際、私のかわりに政務次官がリビア大使館を訪問いたしまして、御配意に対して日本政府を代表して深甚の謝意を表する旨を実はリビア大使館に対して述べましたわけでございまして、いろいろ事柄の経緯上、リビアとしても人道的な見地からのみ、しかも当初の意思に反して受け入れを承諾をされたということもかなり微妙な問題でございましたから、そういうことも考えつつ、ただいまのような方法をとりまして、日本政府の謝意を表明をしたようなことであったわけでございます。
  238. 秦野章

    ○秦野章君 さらに教訓といいますか、二、三、時間がないからちょっと簡単に答弁していただきたいのですけれども、超法規と言いながら旅券法の適用とか何とかという、これもおかしいと思うのだけれども、そういう問題もあったわけですが、それはともかくとして、旅券法が、日本人でもって海外に旅行している者が悪いことを、不法なことをした、犯罪を犯したという場合にも、返納命令がなければ、返納命令でもってその旅券を取り返すというようなことでなければ失効できないというのがいまの旅券法ですけれども、これはやっぱり現に旅券を持って歩いている者に返納命令を、よこせとは言えませんから、そういう者は外国におる者でも旅券を失効させるというそういう法的な改正が要るというのが、われわれのかねがねの党内その他で主張しておったことでございます。それを今度どうやられるのか。  それからいま一つは、いささか外交官受難の時代のような感じがするのですけれども、外交官が職務を遂行するに当たって一身上の危険が、生命身体に害があったときに、これを普通の公務員災害の補償じゃなくして、ほかの公安の職員なんかは五割増しとか何とかあるのですから、そういう方向でこの際、法改正というか、規定の改正を、法改正をおやりになったらどうかという点。  それから三つ目には国際犯罪の捜査協力ですね。これについては非常に態勢が鈍い。よその国から逮捕してくれと言ってきたときに、こっちはおいそれとできない。ところが、こっちは向こう様に対してやってくれ、やってくれというようなこと、それじゃできないわけですよね。まずみずからの姿勢を確立することによって初めてできる。そういう点についていろいろ前々から私は役所の方には注文を出しておりますが、その後の経過をここでお話しを願いたいと思います。関係の答弁を……。
  239. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 最初の二点を私から申し上げます。  旅券法にいろいろ問題があるということは従来からいろいろ言われておりまして、これをいかに改正すべきか、あるいはすべきでないかというような点の一つに、ただいま秦野委員の仰せられた問題がございます。海外に出ておりますときに納付命令を実際送達することができないのでございますから、そういたしますと、公示をすることによって、これを行うということが考えられるわけでございまして、そのようなことを旅券法を改めるべきか否かという問題の一つとしてただいま検討をいたしております。  それから外務公務員のいわゆる災害補償の点でございますが、これも御指摘のように、国家公務員災害補償法の中に、外務公務員については特例を人事院規則によって設け得るという規定はございますわけであります、在外職員等につきまして。また、なお警察官等につきましても類似の規定がございまして、これにつきましては人事院規則が定められております。そうしていわゆる百分の五十までというような規則が人事院から出されておりますが、外務公務員、在外職員等につきましては、その人事院規則が定められておりません。定め得ることになっておりますが定められておりませんので、この点につきましても、類似のことにかんがみまして、人事院に規則を、基本になります法律はございますので、定めることを検討していただきたいと考えておるところでございます。
  240. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 第二の点について、私の関連でもございますのでお答えを申し上げたいと思います。  外務公務員につきましては、ただいま外務大臣からもお答えになりましたように、公務災害等がありました場合に、一般の公務員とは違った取り扱いをしなければならない場面もあるのではないかということで、法律上特例規定を設け得るような道が開かれておるわけでございます。ただ、通常の場合、いままでの経験では一般の公務員と同様のことをやって何らの差し支えがないという事態が続いておったわけであります。ただ最近のような、いま御指摘になりましたような外務公務員受難の時代と申しますか、特に身がわりの人質になるというような事態が起きてまいりますと、警察官等と同じように、やっぱり高度の生命身体に対する危険というものが明白に予想せられるという事態が出てまいっておるわけでございます。こういう点から見ますると、これは警察官等と何らそこに相違を設けるべきいわれもございませんので、それらの点につきましては、この間の場合は幸い災害というところにまではいかなかったのでございますけれども、今後のことを考えますると、それに対応する体制を整えておくということも必要であると思います。すでに法律上も規定がございますものでありますので、それらを前提といたしまして、外務省その他関係方面とも十分に協議をいたしまして、善処いたしたい、かように考えます。
  241. 土金賢三

    政府委員土金賢三君) 第三の点についてお答え申し上げますが、仰せのとおり、国際犯罪の捜査は国際手配が非常に必要でございますが、これにつきましては、ICPOにそういう手配制度がございまして、それに乗っかる手配制度、手配を出しまして依頼しているわけでございます。去る十月に行われましたICPOの第四十四回の総会、ブエノスアイレスで行われたわけでございますが、この席上におきましても、日本代表からこういった手配者を日本に連れ戻すために協力を願いたいということを訴えました次第でございますが、ただ、秦野議員の仰せのとおり、この手配というものは相互主義というのが原則になっておりますので、わが国の国際捜査協力の態勢、自分の国の姿勢を正すということが必要でございます。それにつきまして関係法令の改正等困難な問題もありますので、関係先進国の先例を参考にしつつ、関係省庁、特に法務省に対しまして関係法令の改正につきまして特段の御協力を要請するなど鋭意その点について目下努力中でございます。
  242. 秦野章

    ○秦野章君 時間がありませんから、あと国家の安全に関連して、原子力関係の問題でちょっとお尋ねをしたいと思うんです。  核物質の平和利用がだんだん進む、そしてまたこれは進めにゃならぬ、そういう情勢であることは、これは日本だけでないわけであります。いま話題になっているリビアでも、石油が出るリビアでも原子力発電をソビエトから輸入したとか、ブラジルが西独から何ぼ原子力発電機を購入したとかいう記事が出るような時代ですから、日本だって当然そういう方向に行かざるを得ないわけです。しかし、同時にそのことは、非常にあっちこっちに核物質が散らばって危険をもたらすということも事実で、こういう関係について私も実は現場をいろいろ見せてもらったりして、現地は現地なりにかなり安全という問題に努力はしているわけでございますけれども、何といってもこの核物質の人間に対する一種の驚くべき毒性といいますか、そういったような問題でございますから、安全の問題については旧来の安全対策、安全に関するたとえば通産なら電気事業法とか、そういう従来の安全の法律なり基準では間に合わない。私はもうつくづくそのことを感じたんだけれども、通産大臣、科学技術庁、原子力規制の法がございますね、そういう問題について何かおやりになっているかどうか。  それから、時間もないから一遍に外務大臣にお尋ねしますけれども、核物質が、そういうふうに日本も平和利用でいまプルトニウムが七百キロぐらいあるということですね。安全の問題が非常に重要になってきているけれども、これ意外とその認識が低いかもしらぬ。総理、プルトニウム一握りを貯水池にぶっ込めば何十万の人間が死ぬんですよ。そういう非常に危険な面がある。しかしながら、核物質なくしてエネルギー問題は解決しないという事態ですね。  そこで、最初に外務大臣に、そういった国際環境——キッシンジャーも九月の国連総会で一つの提案をしましたね、そういう国際環境、それを受けてわが国における通産なり科学技術庁なりの姿勢、それをちょっとお尋ねしたいと思う。
  243. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、いわゆる核物質に対する防護——フィジカル・プロテクションと申しておりますが——につきましてキッシンジャーが国連総会でも話をいたしましたが、御承知のような、先般行われましたNPTの再検討会議でございますが、わが国も出たあの会議でございますが、この最終宣言におきましても、国際取り決めが必要であるということが指摘をされました。で、IAEAでは、わが国も入りまして、この二、三年ほどでございますが、この問題につきまして基準の案を検討しておりまして、今年九月にそれができ上がりました。したがいまして、いわゆるフィジカル・プロテクションについて国際的な取り決めが行われる方向の研究が、一応基準案ができておるわけでございます。したがいまして、そのような国際取り決めの場としてIAEA、国際原子力機関などを使いますことが適当なのではないか。わが国としては前向きの姿勢で臨みたいというふうに考えております。国際的にも、ことにアメリカ、カナダ等におきましてそういう主張が強くなっております。
  244. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 核燃料物質が兵器に転用される場合にはこれは大変なことになりますので、この方はわが国では御承知のように非核三原則等で絶対にやらぬことになっておりますが、お話しの平和利用面においてそういう危険性がないのかという問題でございまして、これはいま外務大臣からお話ございましたように、使用あるいは保管あるいは輸送中等において盗難あるいは妨害等に遭ってそれが紛失したと、それが悪用されたという、そういう危険性がないのかと、それに対してまた国内でどういう措置をとっておるかという問題が御承知のように大変問題になっております、国際的にも。いまお話ございましたように、国際間で一応専門家が集まりまして、基準と申しますか、勧告のようなものが一応出まして、それぞれの国情に応じてそれを参照して国内の警備体制を整備しろということになっております。わが方はそれに先立ちまして原子炉等規制法、ずいぶん昔できた法律でございますけれども、私どもつくった法律でございまして、これに基づきまして、いま申しました使用あるいは保管あるいは輸送中等の盗難、その他の保安関係に対しては十分措置はしておるつもりでございます。ただ、それだけで十分かと申しますと、お話のように、だんだん範囲が広まってきますし、核物質防護問題に関する関係各省連絡会議というのをつくりまして、警察庁、科学技術庁、外務省、通産省、運輸省等の首脳部が集まりまして、ただいま、いままでで不備な点はないか、あるいはいままでの法規等を新しい情勢に応じて改正する個所はないか、あるいはいま申しました国際機関の勧告が出たわけでございますから、それにさらに照らして、もっと整備する必要はありはせぬだろうかという点をせっかくただいま検討中でございます。
  245. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 核物質をいかに安全に管理するかという問題につきましては、いま佐々木長官からお述べになったとおりでございますが、最近は国際的な動きも先ほど来のお話のように大分県体化してまいりましたので、現在の法律をさらに整備していく必要があるのではないかと、こういうふうに考えておりますが、国際的な動きをもう少し見ながら進めてまいりたいと考えております。
  246. 中山太郎

    ○中山太郎君 関連。  いま秦野委員からウランの管理の問題で御質問があって、いろいろと通産大臣、科学技術庁長官からお話がありましたが、私どもが得ているニュースでは、アメリカにおいては、原爆三十発分、倉庫あるいは工場からこれが紛失をしておると、あるいはヨーロッパでは二十発分の原爆相当量のプルトニウムが流出しておるということが常識化してきている。こういうふうな問題が国際社会で発生してくる中で、われわれの国において都市ゲリラというものがアメリカ同様発生してきておりますけれども、最近の傾向から見て、一人の人間が持つ破壊力というものがゲリラの場合においては非常に大きくなっておる。たとえば三菱重工の爆破事件にしても、小さなポリバケツによってたくさんの人が殺される。将来われわれとして注意をしておかなければならないのは、ウランジャックの問題である。こういうことについての政府考え方というものはどういうふうにお考えか、これについてのお考えをひとつ述べていただきたい。
  247. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) いま申しました核燃料物質の使用、保管、輸送等において、そういう盗難等あるいは妨害等に遭わぬようにどういう整備をすべきかという問題は大変重要な問題でございまして、ただ幸いわが国では、原子力を始めました二十年前、初期からこの保安問題あるいは安全問題に対しては非常に神経を使いまして、またしばしば国会でもこの問題に対して大変重要な問題だということで討論もあり、おのずからその方に、他国に見ない整備状況をしておったんではないかと私は実は思っております。したがいまして、わが国におきましては、いまお話しのプルトニウムとかあるいは濃縮ウラン、トリウム等は、全部どこにどれほど保管しておるかということはもう明確に記録もし、また、それに対する保護も与えておりますので、ただいままでのところは幸いにそういう盗難等はございません。  それから、いまやっている具体的な保護はどういうふうにやっているかと申しますと、まず、そういう問題が起きたときに治安当局に対する通報連絡、そういうシステムを遅滞なくやるためにどうしたらよろしいか、あるいは特にいまのプルトニウムやなんかを保管している個所が重要でございますから、二十四時間警備システムをどういうふうに確立したらよろしいか、あるいは全体の、たとえば再処理工場等に入るのにその管理をどうするか、それから特にその保管個所に対して、これの管理は非常に厳重をきわめなければいかぬわけですから、そういう問題に対する管理をどうするとか、あるいは施設の防護さく、あるいはその入るためのかぎ等をどうするとか、さらに深く話しますといろいろ何かぐあい悪い点もあると思いますけれども、いずれにいたしましても、現在までで私どもでできる範囲のことはただいましているとおりでございます。ただ、さっき申しましたように、国際的に、もちろん日本からも参りましたが、ウィーンの原子力機関でずいぶん丹念にできました基準のようなものが先月できまして届きましたので、それをテキストにして、わが国の法規その他いままでの警備状況で十分かどうか、さらに検討を加えているところでございます。
  248. 中山太郎

    ○中山太郎君 私が科学技術庁長官に特に申し上げておきたいことは、この問題が、こういうふうな質問が出てくると、えてして日本の専門分野にいない学者どもが、またこの原子力発電の反対にこういう話を利用するおそれがある。そこで、科学技術庁としては、アメリカの原子力委員会で公表しておる一年間に原子炉の事故で何人死んでおるか、あるいは落雷で何人死んでおるか、あるいは交通事故で何人死んでおるか、あるいはまた水泳中に幾ら溺死しておるか、これ全部私どもは調べてみると、原子炉で死亡した人は一人もいない。ただし、飛行機事故では年間何千人も死んでおる、落雷では何百人か死んでおる、火事でも五千何百人か死んでおるはずです。こういうふうな一つの事例を明確に日本国民全部にわかるように説明をしながら、一方においては、このウランジャックに対する政府の強固な姿勢というものを示していかないと、これからさらに石油の値段が上がってくると予測される中で、日本の原子力開発というものは、住民の無意識な反対によって、また一部の扇動する人たちの手によって、大変な国家の、民族の将来に影響する問題が発生してくると私は非常に心配をしております。そういう点については、所管の大臣として全力を挙げてやはりこの国民全体に理解を求める行動をされる意思があるかどうか。これが一つの大きな問題点である。  もう一つは、国内にあるいわゆる核物質の管理については万全の措置をとっておるとおっしゃっておりますけれども、私ども外国へ旅行してみると、税関では非常に厳重なウランに対するチェックシステムがとられておる。日本の場合は一体これはどうなっておるか、恐らくわれわれの国にこういう問題が発生するとすれば、いわゆる税関を通ってくる密輸入されるウラン物質である、こういうことも考えて、やはり相当な配慮をする必要が今後あろう。こういうことについて、ひとつ最後に締めくくりでこの問題についての御見解を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  249. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 前段の御質問でございますけれども、注意と申しますか、これは御承知のように、米国のAECが三年ばかりかかりまして学者その他を動員して、特に軽水炉を中心にして、その災害、いわゆる重大事故の可能性いかん、確率いかんという問題を、まだ起こってない事故に対しての確率でございますから、大変これ、いままでの感じからいくとむずかしいのでありますけれども、特に宇宙開発に使いましたシステムとか、あるいはいまの参謀本部で使っておるシステム等を参照して確率をずいぶん長い間研究した結果、いまお話しのように、極端に言えばこれほど安全なものはないということになっておるのでございます。ただ、これをどうして国内にもう少し宣伝せぬのだというお話でございまして、いろいろ私どもといたしましてできるだけの宣伝はしているつもりでございますけれども、なかなかまだ徹底しているというところまでまいりませんので、その一つの原因は、少し話が長くなりますけれども、安全というものに対する、いわば重大事故というものに対する問題と軽微な故障と混合して日本で扱う傾向がございまして、非常に実は一般的な認識がまだ十分じゃないのですけれども、今後ともできるだけ詰めるつもりでございます。  それから、税関の問題は、いままで輸入しているのは相当の大きい量でございまして、各個人が忍ばして持ってくるというのは、これは自分自体が大変困るわけでございまして、自分の健康問題にもなりますから、そういうことでなしに、やはり船等で来たものをどういうふうに税関で調べるかという問題かと思います。そういう点は万全を期して、盗難その他ないようにということでやっているつもりでございます。
  250. 秦野章

    ○秦野章君 通産あるいは科学技術庁の関係で、まあ念押しみたいな話ですけれども、電気事業法と、それから原子炉等規制法ですね、この規定は明らかにもう時代おくれですよ、私見たんです、全部。と言うのは、これは、要するに、放射線防護とか従業員の安全とかという角度なんですよね。外部からの侵略、核ジャックとか、まあ何か国際テロみたいな、そういうものに対しては予想もしなかった時代にできたものですから、これはやっぱりどうしたって、国際的なガイドライン等もあるようでございますけれども、ぜひひとつ前向きに検討していただきたい。  それから総理に、これ、非常に重大な問題です。このことを含めて、原子力行政の問題については、例の原子力行政懇談会がいろいろ検討されておるし、有沢私案というのもこの間新聞で見ましたけれども、やっぱりこれ、中央機構を、いま各省いろんな役所に関係するんですよね。そういう意味において、国防会議じゃありませんけれども、やっぱり何か中央がぴしっとこの問題を統括するような仕組みを配慮する必要が絶対にあると思う。これはまあ恐らくあの懇談会でもそのような結論が出ると思うんですけれども、その点について総理の見解を承っておきたいと思います。
  251. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 秦野君と同じように、私はやはり、新しいエネルギーが開発される時期はありましょう、核融合のごとき。しかし、まあそれまでの間、やっぱり原子力の発電に依存せなければ日本としてはならぬわけでございますから、原子力に対する安全性の確保というものは、これはもういろんな機構の上においても、秦野君の御指摘のように、いろいろばらばらになっているようなことをできるだけ機能を一元化するようにしまして、国民が安全性に対して疑いを持たぬように持っていくことが一番大事で、有沢委員会もそういうふうな見地からいろんな改革案を出しておるわけで、これは特に内閣として非常に大きな問題の一つだという問題の意識を持っておるわけでございます。また、フィジカル・プロテクションの問題は、これは世界的にも大変なこと、日本のはまだプルトニウムなんかの保有量が少ないにしても、これだけ原子力の平和利用というものが国際的にも非常に発達してきますと、大問題でございますから、日本自身としても、少ないとはいえ、これは大変なことでございますから、こういう保管というものには、いままでも気を使っておりますが、一段とこれには留意をいたしますとともに、いま関税などで、税関を通って忍ばして持って来る場合も、それは配慮すべきじゃないかということも考えられるケースでもございますし、これについては万全の策を講じてまいるようにいたしたいと思うわけでございます。
  252. 秦野章

    ○秦野章君 最後に国鉄の問題をちょっとお尋ねしたいんでございますが、スト権問題が何かこう追い込められてきたというのか、煮詰まってきたというのか、政府も早急に解決しなければいかぬということをおっしゃっておるわけでございますが、総理は、国鉄総裁の諮問機関の国鉄再建委員会ですか、諮問委員会があって、総裁に対する答申なんですけれども、桜田さんが委員長でやったあの内容を総理はどのように評価されますか。
  253. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私、もう国鉄の再建というものは大問題であると、これはもう累積赤字が三兆円にもなり、借入金の残高が今年度末では六、七兆円になるわけですが、これはもう私企業だったら大変なことでありますから、国鉄というものは、これ、国民の足でありますから、国鉄の健全な経営ということは大問題の一つで、十月でありましたか、桜田武君を委員長として、総裁の諮問機関としての再建案というのを、私は非常に詳しく調べたわけでございます。その内容についても非常に示唆に富むものがあるし、スト権の問題なども、そのときの国鉄総裁に対する御答申は、スト権に対しては、与える場合、与えない場合と、こう両方併記しましてね、これはやっぱり別の機関で検討すべきだという、結論を出していないわけでございます。しかし、やっぱり給与の問題というものがそれにも関係するわけでありますから、まあ給与などに対しては、また運賃の問題とも関係するので、受益者負担の原則を貫いていかなきゃならぬ。そのためには、法定主義というものに対して抜本的改善を加えるべきだというような内容もございましたし、あるいは赤字路線に対しての、赤字路線を国鉄から開放せよと、まあ幹線以外の累積赤字は国が肩がわりせよといって、なかなかこれはすぐに賛否は申し上げられないですが、検討すべき一つの示唆を与えておる点だと受け取っておる次第でございます。
  254. 秦野章

    ○秦野章君 この現状というものをどう見るかということ、これはだれでもわかるように、大変当事者能力がないわけですね。そしてスト権を持たない組合が、春闘だ何だと言うてほかの組合を巻き込んで、ゼネストのような闘争をやって、そしてまあ結局公労委の仲裁裁定の手続を経て問題は決着する、こういうことを、三十九年からぶっ続けに同じようなことをやってきたわけです。賃金は民間賃上げベースに追随して、結局、考えてみれば自主性も合理性もない、そのとき勝負の、言うならば、無責任状態みたいなかっこうになってきたわけです。その間、やっぱり違法ストだから、始まりもおしまいもさっぱりわからないで、スト中止だといったって、中止がはっきり収拾できない。そういうような、そしてまあ列車に、よくわれわれの会合でも出るんですけれども、列車にペンキ塗りたくったり、それからまた、ビラを張りめぐらすといったような違法が放置されてきた、これが現状なんです。これに対して規律をどう与えるかという問題ですわね。再建問題と関連なきスト権は私もないと思うんだけれども、一体、再建問題というのは、何遍も出ちゃ何遍も崩れてきた。これはもう歴代政治の大変な責任でもあるし、言うならば、ある意味で怠慢であったと言わざるを得ない。こういう問題について、しかし、スト権だけがこう煮詰まってきちゃって、再建問題が果たしてうまいこといくのかと、私は何か物が逆さまなような感じがする。この間、まだ政治的にスト権問題は何とも政治問題だと言っているときに、国鉄総裁は、まあ条件つきの付与をという意見を出された。いささかまあ開き直った感がするんだけれども、どうせ開き直るなら、総裁ね、再建問題をなぜやらないのか。長年にわたってほったらかしておいて何だと、大体六兆円も借金をして、そしてがんじがらめに法定主義だ、やれ何だといって縛られて、当事者能力がないということはやっぱりこれはまずいわけだ。そっちを片づけないで、スト権だけを先に片づけたって、問題の本質の片づけにはならぬと私は思うんですよ。それ、どうごらんになりますか。
  255. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答え申し上げます。  国鉄の財政が危機に瀕しているのは御指摘のとおりでございまして、これからの脱却をどうするかということになりますと、財政基盤を強化するより手がないということでございまして、財政基盤が強化されて、国鉄当事者が、当事者の能力を持って、労使の問題を話し合いの場で積極的に自主的に解決し得るという道が開けないと、労使の間の近代化が行われないということば申し上げるまでもないことでございまして、御指摘のように、財政が再建されるということはきわめて重要である、それによって当事者能力は高められるということを祈念いたしておる次第であります。
  256. 秦野章

    ○秦野章君 当事者能力がないということと、管理者能力が云々ということをよく言われるんだけれども、この当事者能力と管理者能力というものが一体無関係であろうかという私は疑義を持つ。これは私も警備その他で現場でこう見ておって、とにかくまあ非常に労働運動とは思えないことがいっぱい行われる。それに対して警察権がどうのこうのじゃ、そうてきぱきとはいきませんよ、違法状態でも。しかし、この管理能力というものはあることはある。あるんだけれども、当事者能力がないようなところにはなかなか管理者能力といってもうまくいかないのかどうか、その辺ひとつ具体的に説明してもらいたいと思います。
  257. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答えします。  私どもは、国民から負託された安全正確な輸送を果たす、そのためにはその業務全般にわたりまして厳密な厳格な規律保持が必要であるというふうに考えまして、管理者の努力を積み上げて現在に至っている次第であります。私は就任以来、くまなく全国を回りまして現場第一線の諸君を激励し、また折あるごとに手紙あるいは訓示などをもちまして規律のある明るい現場を確立しようという指令を出しておる次第でありまして、今後もこれを続けるつもりでございます。数年前、御承知のマル生挫折といった不幸な事件がございまして、現場が荒廃したことも事実でございますけれども、いま述べたような管理者能力を高めるという努力の積み重ねによりまして、最近におきましては管理者も勇気をもって立ち上がり、職場も漸次明るい方向に向かっておるということも事実でございます。  で、先ほど御指摘の車両、駅舎の落書き、ビラ、これはもとより正当な組合活動を逸脱したものでございまして、公共物を私物化するという行為でございまして、国民の国鉄としてまことに遺憾にたえないところでございます。これにつきましては、組合に対しましても再三反省を促しますが、一部にはゲリラ的な行動、夜中にゲリラ的に出てきてやるといったようなことの絶えないということはまことに遺憾でございますが、今後ともこれを厳重に処分するというようなことによってこういうものを防いでいこう、かように考えております。御指摘の当事者能力と管理者能力とはどうなんだという議論になりますが、国鉄の財政再建、経営基盤が確立するという意味におきましてこの両者は密接不可分である、かように考えるわけであります。すなわち、国鉄財政が再建され、経営基盤の確立は、当局の、つまりわれわれの当事者能力を強化して、当局が労働問題にその話し合いの場で自主的、弾力的に対処することが可能になる。また、問題の話し合いによって平和的に解決を促進することとも相なる。また、国鉄財政再建経営基盤の確立が確固たる国鉄の将来の目標を明示することになりまして、管理者に自信と使命感を持って管理に当たる勇気を生み出さす、また、四十万の諸君に経営に対する信頼と業務意欲の向上を促すことに相なる。こういう意味合いにおきまして、先生の御指摘になられました当事者能力、管理者能力、両者は不可分の関係にある、私はかように考えております。
  258. 秦野章

    ○秦野章君 再建の具体的な進捗状況はどうなっていますか、再建問題についての、政府として。
  259. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 三十九年以来の赤字、累積負債、まあ大変なものでございまして、御承知のとおりであります。そこで、四十四年、四十八年、二回にわたりまして相当な内容の再建計画をつくったのでございますが、これも中途で挫折した。で、この際はそれらを踏まえまして、本当に実現のできる再建計画をつくっていこうと、これには予算と密接な関係がございますので、来年度、つまり五十一年度の予算の中に再建計画の中身の実現を図るための予算要求をしようということで、時間的めどをそこに置いて現在再建計画を進めておる、時期等について申し上げれば、そういうことでございます。内容のことでございますれば、また御説明申し上げます。
  260. 秦野章

    ○秦野章君 最後に総理に。  やっぱりスト権問題と再建問題というのは、確かにこれはもう一括というのか、むしろ再建が先決事項だというぐらいの意気込みでないと、この政治課題は片づかないと思うんですね。まあ五十一年度予算でどの程度芽を吹くのか知らぬけれども、とにかく逆さまな議論だと、いまの話は。スト権問題もこれは片づけなければしょうがないでしょう、これ。しかし同時に、再建問題をたなに置いてスト権だけ解決しても、果たして国民が納得し、労使が納得し、みんながしょうがないなと言ってある程度がまんもするといったような状況で解決するかどうか、はなはだ疑問であります。そういう意味において、逆さまにならぬように、そういう非常に政治課題としては大問題だというふうに思うのですが、いま運輸大臣は五十一年の予算で多少芽を出したい、かっこうつけたいとおっしゃっているのだけれども、総理の御見識はいかがですか、これ。スト権問題というのは十一月いっぱいというようなお話があるのだけれども、それと関連していかがでございますか。
  261. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 先ほど申したように、累積赤字が三兆円、借入金が年度末には六兆円、六、七兆円もという状態——まあ六兆円を超えるかもしれない、借入金の残高、これは大変な事態ですから、そういうことで運輸大臣にも、私は木村運輸大臣が就任したときに一番彼に強力に言った。国鉄の再建というものに運輸大臣は取り組んでもらいたいということを彼に強く要請をしたわけでございますが、いままでも再建計画を何遍立てても、これ、何回もつくりましたけれども、実際通らないので、実現可能な再建案というものを検討しておるということですが、この問題はやはり国鉄のスト権というものにも非常に関連が私はあると。むしろ、国鉄の再建というものも——スト権の問題も労働の基本権として重要ですが、再建問題というものはもっとやっぱりこれを大きく取り上げなければならぬし、また、スト権の場合は当事者能力というものを無視することができませんからね、当事者能力。そういうことで、やはり再建問題というものは全然もうたな上げするというわけにはいかない。まあしかし、再建問題が片づくまではこの問題は処理せないということは、前内閣からのいろんな経緯もございますし、そういうわけにはいきませんが、いろいろ現段階におけるどういう段階、現在の段階におけるいろんな諸情勢というものも判断の中に入れなければならぬわけですね。そういうことで、いま懇談会でいろいろ検討しておるものもある。それが一つの大方の意見がまとまりましたら、政府の方で、閣僚協議会で、これはいろんな諸情勢を頭に入れながらこの問題に対して結論を出したいと鋭意努力をいたしておる次第でございます。
  262. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして秦野章君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次回は十一月四日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散会      —————・—————