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1975-10-31 第76回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十月三十一日(金曜日)    午前十時三分開会     ―――――――――――――    委員の異動  十月三十日     辞任         補欠選任      中村 太郎君     遠藤  要君      工藤 良平君     神沢  浄君  十月三十一日     辞任         補欠選任      熊谷太三郎君     斎藤栄三郎君      夏目 忠雄君     中村 太郎君      辻  一彦君     対馬 孝且君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         大谷藤之助君     理 事                 岩動 道行君                 中山 太郎君                 矢野  登君                 柳田桃太郎君                 松永 忠二君                 宮之原貞光君                 矢追 秀彦君                 岩間 正男君                 向井 長年君     委 員                 安孫子藤吉君                 井上 吉夫君                 石破 二朗君                 遠藤  要君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 黒住 忠行君                 源田  実君                 斎藤栄三郎君                 坂野 重信君                 玉置 和郎君                 中村 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 最上  進君                 森下  泰君                 八木 一郎君                 吉田  実君                 上田  哲君                 小野  明君                 神沢  浄君                 佐々木静子君                 対馬 孝且君                 辻  一彦君                 鶴園 哲夫君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 野口 忠夫君                 太田 淳夫君                 桑名 義治君                 三木 忠雄君                 上田耕一郎君                 須藤 五郎君                 渡辺  武君                 木島 則夫君                 下村  泰君    国務大臣        内閣総理大臣   三木 武夫君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        法 務 大 臣  稻葉  修君        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        文 部 大 臣  永井 道雄君        厚 生 大 臣  田中 正巳君        農 林 大 臣  安倍晋太郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  木村 睦男君        郵 政 大 臣  村上  勇君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣  仮谷 忠男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      福田  一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 井出一太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       植木 光教君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       松澤 雄藏君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       佐々木義武君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  小沢 辰男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  金丸  信君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        内閣総理大臣官        房交通安全対策        室長       竹岡 勝美君        内閣総理大臣官        房広報室長兼内        閣官房内閣広報        室長       閑  忠雄君        行政管理庁長官        官房審議官    川島 鉄男君        防衛庁参事官   伊藤 圭一君        防衛庁参事官   平井 啓一君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁長官官房        長        玉木 清司君        防衛庁防衛局長  丸山  昮君        防衛庁人事教育        局長       今泉 正隆君        防衛庁衛生局長  萩島 武夫君        防衛庁経理局長  亘理  彰君        防衛庁装備局長  江口 裕通君        防衛施設庁施設        部長       銅崎 富司君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁物価        局長       喜多村治雄君        経済企画庁総合        計画局長     小島 英敏君        経済企画庁調査        局長       宮崎  勇君        環境庁企画調整        局長       柳瀬 孝吉君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        沖繩開発庁総務        局長       山田  滋君        沖繩開発庁振興        局長       井上 幸夫君        国土庁計画・調        整局長      下河辺 淳君        法務省入国管理        局長       影井 梅夫君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省中近東ア        フリカ局長    中村 輝彦君        外務省経済局長  宮崎 弘道君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵省主計局長  吉瀬 維哉君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  松川 道哉君        大蔵省証券局長  岩瀬 義郎君        大蔵省銀行局長  田辺 博通君        大蔵省国際金融        局長       藤岡眞佐夫君        文部省大学局長  井内慶次郎君        文部省学術国際        局長       木田  宏君        厚生大臣官房長  宮嶋  剛君        厚生省医務局長  石丸 隆治君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        農林大臣官房長  森  整治君        農林省農林経済        局長       吉岡  裕君        通商産業審議官  天谷 直弘君        通商産業省通商        政策局長     橋本 利一君        通商産業省貿易        局長       岸田 文武君        通商産業省産業        政策局長     和田 敏信君        通商産業省機械        情報産業局長   熊谷 善二君        通商産業省生活        産業局長     野口 一郎君        資源エネルギー        庁長官      増田  実君        中小企業庁長官  齋藤 太一君        運輸大臣官房審        議官       中村 四郎君        運輸省海運局長  後藤 茂也君        運輸省船舶局長  内田  守君        運輸省港湾局長  竹内 良夫君        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君        運輸省自動車局        長        高橋 寿夫君        運輸省航空局長  中村 大造君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        建設大臣官房長  高橋 弘篤君        建設省道路局長  井上  孝君        建設省住宅局長  山岡 一男君        建設省住宅局参        事官       救仁郷 斉君        自治大臣官房審        議官       石見 隆三君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 正雄君    説明員        日本国有鉄道総        裁        藤井松太郎君    参考人        住宅金融公庫総        裁        淺村  廉君        日本銀行総裁   森永貞一郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)(内  閣提出、衆議院送付) ○昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  補正予算案審査のため、本日、住宅金融公庫総裁淺村廉君及び日本銀行総裁森永貞一郎君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 昭和五十年度一般会計補正予算  昭和五十年度特別会計補正予算  昭和五十年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。  これより前回に引き続き、黒住君の質疑を行います。黒住君。
  5. 黒住忠行

    黒住忠行君 今般の国連総会第一委員会におきまして表決がございました。この表決の点につきまして、総理の御見解を承りたいと思います。
  6. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 昨日の決議日本イギリスアメリカ共同提案が可決をされたわけですが、アルジェリアの朝鮮問題に対する決議案もこれは国連において議決をされたわけで、両方二つ決議案国連で通ったわけですが、両方が共通しておることは、南北の対話をひとつ促進するということでございますが、その間に大きな二つ決議案の違いは、日本アメリカイギリスなんかの共同提案は、やはり韓国も入れて本当に当事者を入れた話し合いということでございますが、アルジェリア決議案には韓国というものは除かれているわけです。そういう一つの根本的な違いがあるわけで、こういう二つ決議案というものが国連において議決をされるということは不自然なことでありますから、朝鮮問題の処理として何らかのこれに対して、両方決議案一つの大きな目標としておるところは一緒でありますから、朝鮮半島における平和と安定の仕組みというものを考えていこうということは、両方決議案とも同じようなことをねらっておる、その方法論において違いがあるわけですから、何らかの両方決議案に対する一つ解決案というものが国連においていろいろ勘考されるものだと、こういう国連動きに対してわれわれもこれに協力していきたいと考えておるわけでございます。願いは、いかにして朝鮮半島の平和と安定を維持していくかという大きな目的に向かって日本協力をしていきたいと考えております。
  7. 黒住忠行

    黒住忠行君 次は、国連大学でございますが、国連大学は東京に本部が設置されるということで、四十九年度から二千万ドルずつ五ヵ年拠出ということになっております。招致国である日本としましては、この際、本年度予算に計上してあるところのわが国拠出金を速やかに支出いたしまして、そして他の国々の協力を促すというふうにすべきだと思いますけれども、総理の御見解を承りたいと思います。
  8. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国連大学は、日本もこれを熱心に誘致いたしまして、国連大学日本に設置されるということは大変意義のあることでございますから、各国協力を得て日本の責任は必ず果たしていく覚悟でございます。
  9. 岩動道行

    岩動道行君 関連。  外交問題について若干の関連質問をさせていただきたいと思います。  最近のレバノン内戦状態というものは、中東の和平、安定についても非常に大きな問題があると思いまするが、これらの状況についての見通しなども伺いたいと思います。非常にベイルートという、企業あるいは情報機能、さらにまた日本大使館活動も制約をされ、大使は籠城しているといったような状況にあると伺っておりまするし、そのような中において、このベイルートの位置というものをどのように今後考えていくべきか、そして今後の日本中東の拠点としての場所をどういうふうに考えていくべきかといったようなことをひとつ伺っておきたいと思います。  さらにまた、日本人の生命財産等についてはどのような処置をとっておられるかということでございます。  なお、レバノンのこのような内戦状態については、PLOが調停の間に立って停戦協定もできたというような報道もございまするが、果たしてこれがどのような効果を持つかという問題、そしてまた、われわれはPLO地位の問題、そして前国会においても総理からもPLO地位についての確たるお考えが示されたのでありまするが、その後、PLO代表者が何人か日本に参りました。その間において、これらのPLO事務所等をどのような地位において政府としてはお考えになっていかれるのか。このような点についてこの際伺っておきたいと思います。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) レバノン情勢について関連の御質問でございまして、政府委員が実は参っておりませんので、私から概略を御説明申し上げることにいたします。  御承知のように、従来ベイルートを、わが国のことに出先は経済活動あるいは政治情報の収集の中心として考えてまいりました。が、ベイルート中心紛争が続いております。原因は、御承知のとおりモスレムとキリスト教徒との間の宗教問題に相当関連をいたしておりまして、また、PLOというものもいろんな意味関連がある形でございます。  戦闘行為と申しますか、撃ち合いは数日続き、あることでおさまり、またしかし偶発的なことで再発するというようなことを今日まで繰り返しておりまして、最近におきましては、市の中心部にあります邦人にはなじみの深いホテルなどにも戦火が及ぶに至りました。その間の情報は、わが国杉浦大使から逐一報告をされておりまして、杉浦大使所見によりますと、今後ベイルートが、従来果たしておった先ほど申し上げましたような役割りを回復することは当分むずかしいと考える向きが、わが国ばかりでなく、各国情報機関あるいは商業活動代表者等にも多く、したがって、そういう活動中心としての将来というものについては、ある程度先を見て、活動ベイルートからよそへ移すという動きはずっと続いておるようでございます。  ただ、しかしながら、杉浦大使所見によりますと、戦火そのものはほぼベイルートその周辺に限られておって、レバノン全体というわけではない。したがって、目先の生命財産についての大きな危険があるとは必ずしも考えていない。それよりもしかし、将来このベイルートというものがそういう機能を当分回復することはないであろうということとの関連において、商社等々に対しましてなるべく早く退去することが望ましいのではないかという判断を大使はいたしております。したがいまして、在留邦人に対してはそのようなことも非公式には伝え、また、在留邦人ベイルートにおける状況につきましては大使館調査をし、報告を求めておるというような現状のようでございます。  最近になりましてPLOがいわば仲介と申しますか、その間に立ちまして、そのような紛争を中止しようではないかという動きがございまして、昨日あたり関係者が一、二近づいておるという情報がございました。それが真実であることを祈っておりますけれども、過去におきましても、岩動議員が御承知のように、そういう動きが実を結んだかのごとくにして、また数日して壊れるということの繰り返しでございますので、確たるその点見通しを申し上げることができない状況でございます。  なお、大使館機能でございますが、ただいま申し上げましたように、大使館そのものはただいままでのところ、先ほど申し上げました報告を送ってまいり、あるいは在留邦人の消息について調査をし、あるいは勧告をするなどのことをなおいたしておりますので、機能をいたしておる。したがって、大使館そのものを閉鎖する、あるいは引き揚げるというようなことはただいま考える必要のある段階ではないように考えております。  次に、PLOの問題でございますが、これにつきましては、今年に入りましてからPLO代表と称せられる幾つかの筋からいろいろな働きかけがあり、また国会議員の方々におかれましても、いろいろな意味でこの問題の解決にいろんな筋からお骨折りを願っておるわけでございます。その中で、ただいまの段階になりましてほぼわかりましたことは、過日来訪をしましたエル・フート氏が、結果としてはアラファト議長との信頼すべきコミュニケーションのルートになっておられるらしいということでございます。エル・フート氏に対しましては、私どもPLOの問題についての日本側所見を私自身会いましてお伝えをしてございます。この点はアラファト議長にも伝わっておるということが、先般アラファト議長に会見されました国会議員のお方からの情報によりまして私ども確認し得たわけでございます。  わが国の立場を申しますと、わが国としてはPLOをパレスチニアンスを代表するスポークスマンであるということを認めておるということ、したがって、PLOわが国に人を派遣されて事務所を開かれるということは、その御希望があるならば、一般旅券を持って入国審査を受けて入国をされて、そして事務所を開かれるということについて政府は何らの異議を持つものではない。その場合、そのような個人及びそのような事務所は、他の外国人に与えられておるのと同じような権利と自由を持つ、わが憲法のもとでの権利義務を差別なく有するということ、もとよりそのような活動わが国の法令に違反し、あるいは安寧秩序を害するというものであっては困るわけでございますけれども、そうでない限りにおいて、憲法のもとに外国人一般に保障された自由、保護というものは受ける、こういう趣旨のことをお伝えをしてございまして、この点はアラファト議長承知をしておられるように存じます。ただいままでのところ、そのような条件のもとに事務所を開きたい、開くという意思表示を受けてはおりませんけれども、そういうことであれば、ただいま申し上げましたような条件のもとに政府は対処をしてまいる用意があるということでございます。
  11. 黒住忠行

    黒住忠行君 次に、経済情勢に対処しての点をテーマにしてお伺いしたいと思います。  これまでの日本経済は、国民の勤勉、そして技術力、安い海外資源設備投資拡大輸出拡大等高度成長を遂げてきたのでございますけれども、石油ショック、環境問題、海外市場低迷等によりまして、総需要抑制から安定成長に向かわなければならなくなってまいりました。戦後最大の不況に見舞われておると言っても過言ではございません。GNPに対応するGNE、個人消費支出は五〇ないし五五%、民間設備投資が二〇ないし二五%、そして政府資本支出、あるいは経常収入二〇%、また住宅が七、八%、こういうふうな負担であると思います。  順次それに従いましてお聞きしたいと思いますが、まず、わが国貿易におきましては、本年度の五月からついに前年の同期を下回る、すなわちマイナス四・四%というふうになっております。今後の世界貿易と、そしてわが国輸出見通しにつきまして、副総理、そして通産大臣にお伺いしたいと思います。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまの世界経済状態は、これは私ども本当に予測しなかったくらいな深刻な落ち込み状態であります。ことしを展望して見ますと、これはインフレがありますのでそれを捨象して考えますと、昨年に比べて一〇%ぐらいの落ち込みがあるのじゃあるまいかとも予想されるような状態です。そういう中でわが国輸出努力をしておる、そういう状態でございまするけれども、それにいたしましても、わが国もまた世界経済の影響を受けなければならぬ。こういうことで、最近の実績はただいま御指摘のあったとおりでございます。  ただ、世界経済を支える大きな力は何と申しましてもアメリカ景気です。アメリカ景気がことしの上半期は大変なマイナス状態でありましたが、いろいろ施策も講ぜられたのでありまして、それに伴いまして下期はかなりのマイナス落ち込み、これの取り戻しが行われる、こういうふうに見ておるのでありまして、上半期に比べましてアメリカ経済成長はどのくらいになるか。これはアメリカ当局は大体実質で七ないし八%ぐらいな成長が見られるであろう、こういうふうに言われておるのであります。そういうことがもし実現されますと、これは世界景気にも好影響があり、世界貿易もまた回復の過程に向かう、こういうふうに見ておるわけでありますが、そういうことがあれば格別私はわが国輸出状態改善される、こういうふうに見ますが、とにかく逐次世界貿易改善に向かうのじゃないかというふうには想像されます。  そういう中でわが国輸出、これは年度全体とすると昨年の水準よりもやや下回るというような状態になりますが、上半期に比べますると若干の改善を見るであろうと、こういうふうな見解でございます。
  13. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 最近の貿易現状を簡単に申し上げますと、輸出の方は大体七-九月期が底でなかったかと思います。十月から、少しではありますが上昇に転じておると思います。  ただ、先ほど副総理からお話がございましたように、今後はアメリカ経済も急上昇に変わっておるようでございますし、それから来月の中旬には首脳会談も開かれる。この貿易問題が非常に大きな議題として取り上げられる、こういうことでもございますので、そういう動きにだんだんと即応いたしまして日本輸出貿易もよくなるのではないか、こう思っております。ただ、そういうふうな対外的な動きだけに頼るわけにはいきませんので、国内におきましても、輸出保険の弾力的な運用であるとか、あるいはまた輸出入銀行の資金の枠をふやす、延べ払いの枠をふやす、こういうふうにいろいろと工夫をしておりますが、今後はやはり輸出貿易を伸ばすためには、国ごと、それから業種ごと、あるいはまたプロジェクトごとにいろいろきめの細かい配慮を払っていく必要があるのではないかと、こう思っております。  また一面、輸入の方におきましても相当減っておりまして、特に一次産品を輸出する国々、東南アジア各国に対しては大変迷惑をかけておりますので、一次産品の輸入の増加ということに対して特別の措置も講じております。縮小均衡にならないようにいろいろ工夫をしておるところでございますが、今後はだんだんとよくなっていくのではないかと、かように期待をいたしております。
  14. 黒住忠行

    黒住忠行君 次は個人消費支出でございますが、過去二十年にわたりまして個人消費支出は着実に伸びてまいりましたが、現在不振でございまして、今後この動向をどう見るかという問題でございます。所得減税、景気回復、税収回復、そして家計の租税負担増を防ぐという考え方もあるようでございますけれども、しかしながら、これは使い捨て消費の再現あるいは財政の体質の悪化につながるということで、減税はすべきでないという説がございます。私は消費回復というものは、やはり使い捨てというふうな観念でなくして、着実な、堅実なものでなければならない、かように考えますけれども、副総理の御見解を承りたいと思います。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大変大事な問題だと思いますが、まさに私は黒住さんのおっしゃるとおりだと考えます。これはいま資源有限時代という時代である。その間におけるわが国経済をどういうふうに運営していくかということを考えますと、非常に慎重でなければならぬと思うんです。一たん石油の輸入が途絶するというようなことがあったら一体どうするんだ。あるいは石油ばかりじゃありません。いろんな資源につきまして、資源有限時代に応じましていろんな動きが出てくるということを考えなければならぬ。そういう中でわが国が、高度成長下における、つくりましょう、使いましょう、捨てましょうというような、そういう風潮でいって一体いいのかということを考えますときに、これは国の諸政策につきまして、もう国も企業も家庭もみんな思いを新たにしなけりゃならぬと、こういうふうに考えるわけであります。  そういう中で国民の消費に対してどういう考え方をとりますか。私は最近、消費が停滞しておる停滞しておるというふうなことを言われますが、確かにこれはいままでの勢いから見ますと鈍化をしております。その伸びが鈍化しておる。しかし、鈍化しておるというけれども、なお今日この不況だ不況だという中で、この経済を支えている力は一体何だ。世界じゅうがマイナス成長の時代にわが日本がプラス成長だ。それを支えておる要素というのは、これは政府が第一次、第二次、第三次の対策をやった、その政府支出ですよ。それからもう一つは消費、これが落ち込んだとは申しながら――これは経済見通しよりは落ち込んでおる。あの当時は一八%と見た、いまは一五%です。この政府支出と個人消費のその強い伸びというものがいま日本経済を支えておるわけです。そう設備投資だとか輸出だとか、そういうようなものと同じような状態ではないのであります。  いずれにいたしましても、そういう状態下の個人消費の中に見られるものは、一昨日、国民生活白書を企画庁では発表しております。あの白書でも見られるように、どうも資源有限時代だなあ、われわれの生活もいままでを反省しなければならぬなあという空気は、私は確かに出てきておるということを看取するんです。この傾向というものは非常に大事な傾向だ。これこそはディスカレッジしちゃいかぬ。これはむしろ大事に育て上げなければならぬだろうと、こういうふうに考えておるのでありまして、私は経済政策全面の見直しをしなければならぬけれども、その中におきまして国民の消費、これにつきましては健全な消費性向というものはこれを正しくとらえ、そうしてこれを育てはぐくんでいくべきときにきておる、こういうふうな見解でございます。
  16. 黒住忠行

    黒住忠行君 個人消費につきましてはよくわかりました。  次に、設備投資の面でございますけれども、経営者は将来に対する明るい展望というものが持てない。いわゆる水面下の操業にあえいでおるというふうな状況では設備拡張の意欲が生じないわけでございますが、これが長期にわたって継続しますと、わが国の国際経済力は低下する。今後の成長にも影響する事態となるのでございます。景気が次第に回復するに伴いまして、いわゆる需給が逼迫するおそれのある部門、鉄でありますとか石油関係、化学製品、木材等を中心とする部門におきまして、計画的に生産力の増強を図る必要が考えられるのではないか。米国におきますところの投資税額控除制度、あるいは西独の投資補助金制度、こういうふうなものがございますけれども、いま申し上げました点、すなわち生産力増強、設備投資の点でございますけれども、これにつきまして副総理から御所見を承りたいと存じます。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 御指摘の点も私はまことにごもっともなことだと思うんです。いま設備投資が大変な落ち込みを示しまして、これが輸出とともにわが国経済成長を妨げておる、こういう状態です。その中で設備投資をどう見るか。いま産業界におきましては設備過剰の状態にあるんです。そこで、総体的に申しますと、そういう状態にある産業に対しまして設備投資、活発にこれが強化されるということ、これはなかなか期待しがたいんです。  しかし、いま御指摘のように、この状態をほうっておきますと大変な事態が起こる。起こるというのは、私が一番心配するのは、先進国に比べましてわが国輸出状態が非常にいままでよかった。よかったゆえんのものは、わが国が戦争によりまして産業諸施設を焼き払われた。そしてその廃墟の中からわが国の産業というものは立ち上がったわけです。ですから、前の戦争中あるいは戦争前から同じ設備を使っておる他の国に比べますると、わが国の設備というものは近代化、合理化された設備である。そこで非常にわが国の産業というものは生産性が高い産業であったわけでありますが、しかしながら、いま設備投資が停滞をするということになると、諸外国だって一生懸命に産業の近代化、合理化を努力する、その中において立ちおくれを見せる。そこで国際経済力を、競争力を失うという事態になるかならないか、その辺が非常に心配なんです。  ですから、早く操業度を向上し、民間の設備投資が活発になるような、そういう状態をつくり上げなきゃならぬ、こういうふうに思いますが、しかし、そういう中におきましても、ただいま特に御指摘のありました先の需給という問題を考えまして、そして先行的にあらかじめ設備の拡張をやっていかなきゃならぬという産業もあるわけです。あるいは公害投資、あるいは安全投資、これも時代の要求としてやらなきゃならぬ問題もある。そういう特殊なものにつきましては、設備過剰の状態の中におきましても特に配慮をしていかなければならぬ、そういうつもりでやっております。
  18. 黒住忠行

    黒住忠行君 それでは次は、GNEの大きな一翼を担いますところの住宅関係でございますが、建設省の場合、今回の不況対策におきましては事業規模で約七〇%、国費で約六・九%、財投では約二八・九%というふうに相当大きなウエートを占めております。で、住宅関係、道路関係というふうなものが大きいわけでございますけれども、これを有効適切に実施していかなければならない。どのような方針で対処されるかというのが第一点でございます。  それから第二点は、第三期の住宅建設五カ年計画の構想、これは八百六十万戸ということが言われておるようでございますけれども、住宅におきましても量から質への転換を期しておるのでございます。この場合におきまして、経済成長との関係をどう見るか、そうして環境整備、土地の開発、あるいは既成市街地の再開発、そして交通機関、学校、病院、ガス、上下水道の建設、そして商店街の整備、いろいろと考慮すべき点が多いわけでございますが、この住宅の建設の五カ年計画構想、あるいはそのお考え方につきまして建設大臣の御所見を承りたいと思います。
  19. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) まず、不況対策事業と公共事業の追加分についてお答えをいたします。  追加事業としては、事業の緊急性、景気対策としての有効性の観点から、住宅対策、災害復旧、下水道、道路整備、ダムといったような事業を計上いたしておりまして、事業規模は一兆一千億、国費が二千八百億、財投が四千億ということになっております。事業については年度内の完全消化を図ることに全力を挙げて努力をする。特にこの際は積雪寒冷地域の事業について特別の配慮をいたしたい、こういうふうに思っております。第二点は、工事の発注に当たっては、中小建設業者の受注機会の確保について特に配慮をいたしたいと思っております。第三点は事業の地域別配分でありますが、これは緊急度あるいは当初事業の進捗状況等を勘案しまして、全国的に行き渡るものにしたいと思って努力を続けておるわけであります。  住宅建設の五カ年計画でありますが、基本的な方針は、御説のとおりに量よりも質に重点を置いてまいりたいと思っておりますし、最低の居住水準以下のものをぜひ解消するために、明年度からの計画を進めていきたいと思っております。それから建設の促進と並行して、供給体制を充実していきたいというのが重点の第二であります。それと、第二期計画で目標の達成率が十分でなかった、いわゆる目標に達しなかった公営住宅、大都市地域の賃貸住宅等には、一層の積極的な努力をいたさなければならない、隘路打開に努めなければならぬ、かように考えております。  建設戸数は、公的資金によるものが三百八十四五尺それから民間自力建設によるものが四百七十六万戸、計八百六十万戸を第三次五カ年計画で考えておるわけであります。  なお、住宅関係の今後のもう一つの問題点は、低成長下の持ち家というのがあるのですが、これは場合によれば若干低下することも考えられますが、逆に地価が安定をし、建築費も安定をいたしてまいりますと増加というものも期待されるわけでありまして、これは需要に応じて考えていかなければならぬと思っております。  なお、大都市地域の住宅供給は、先ほども申し上げましたように、私どもは特に重点を置いて考えたいと思っておりますが、中高層といった面も考えておりますが、しかし、これだけではやはり非常に実際問題として無理がありますので、そういう面を配慮をしながら、金融公庫やあるいは税制等の優遇措置も講じながら、特に大都市地域の賃貸住宅には努力をいたしてまいりたい、こういうのが私どもの住宅建設に対する考え方であります。  以上であります。
  20. 黒住忠行

    黒住忠行君 八丈島で災害がございました。そのような罹災の場合、住宅災害に対しましてどのような措置を講じられておるか、承りたいと思います。
  21. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 八丈島の災害は、特に風害による住宅が大変な災害を受けておるのでありまして、そういう意味において住宅の復旧、災害住宅の建設、そういった面で全力を挙げておるわけであります。これは担当者も派遣をいたしまして調査をいたしておるわけでありますが、特に公営住住等の建設の問題あるいは復旧の問題、それから公庫から貸し付けの場合の従来の貸し付け規模のさらに拡大の問題、あるいは利子補給の問題、そういった面をあわせまして、これはさきの五号、六号台風にも大変な被害を受けた地域もございますから、そういうものとも均衡をとりながら、ぜひ全力を挙げて努力をいたしたいと、かように存じております。
  22. 黒住忠行

    黒住忠行君 次に、建設大臣と運輸大臣に承りたいと思いますが、本州四国連絡橋、近く着工の運びに至りました。架橋によるところの地域住民の利便の増大あるいは地域経済の発展に大変貢献するところがあると思います。その完成の早からんことを期待するものでございます。ただこの場合、従来本州-四国間の連絡の動脈として、また離島との唯一の足として定期船、定期航路事業というものが重大な役割りを果たしてまいったのでございますが、架橋の結果によりましては事業の縮小あるいは廃止というふうな深刻な打撃を受けるものと考えられるのでございます。これらの輸送機関としての公共性から橋の供用のときまで継続運航をしなければならないというふうなことでございますし、事業の転換あるいは従業者の就業確保等の大きな制約を受けることとなろうと思う次第でございます。このような事態に対します対策につきまして、建設大臣、運輸大臣の御見解か承りたいと思います。
  23. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) お答えをいたします。  本四連絡橋の関係で旅客の定期航路事業や関係船員などの雇用問題等は、これは当然誠意を持って取り組まなければならぬ問題と考えております。現在、建設省と運輸省におきましては、調査会を設けまして調査検討をいたしておるのでありますが、その結果を待ちまして関係行政機関に関する総合的な対策を立てたいと思っております。いずれにいたしましても不安のないように努力をせなければならぬことは当然でありまして、さように努めてまいりたいと思っております。
  24. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) ただいま建設大臣が申しましたとおりでございまして、本四架橋公団の中に、学識経験者等にお願いをいたしまして、こういう問題についての基本的な調査等をやっていただく調査会を設けて、現在そこでいろいろと検討をしていただいておりますので、その検討の結果を得まして、建設省と協議をしながらこれらの対策を講じていきたいと、かように考えております。
  25. 黒住忠行

    黒住忠行君 次の項目は公共投資でございます。補正予算が成立しますれば、速やかに発注されると思うわけでございますけれども、一日も早く事業に移行をする、移せるような特段の努力を必要とすると思うわけでございますけれども、大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
  26. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおり、いま需給のギャップが大きい状況でございまして、急いで公共投資を促進いたしまして需要の喚起を図らなければならぬことは仰せのとおりでございまして、各省庁にお願いいたしまして、契約の促進、支出の促進に極力当たって御期待にこたえなければならぬと思っております。
  27. 黒住忠行

    黒住忠行君 ただいまGNEの各項目につきまして分析をいたしたのでございますが、現在の企業の稼働率指数は八三%でございます。需給のギャップが二十兆とも言われておるわけでございますが、今回景気対策が行われましたが、需給のギャップが二十兆円というふうに言われておりますので、景気対策もまだまだ十分ではないのじゃないかというふうな説もあるわけでございますけれども、私はこの関係につきまして副総理の見方、御見解を承りたいと思います。
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 需給ギャップが十八兆ありますとか、あるいは二十兆ありますとか、多い人になりますと二十五兆ありますとかいうような説、それから、これを少なく見る人は七兆円でありますとか、そういうような数字を挙げる人もありますが、需給ギャップ論というのはこれはなかなかむずかしい議論でありまして、つまり需給ギャップというのは、理論的にはこれは理論GNPと現実GNPとの差であると、こういうことでありますが、特に理論GNPを一体どういうふうに見ますか。つまり設備は一〇〇%使う、それから労働力は八時間労働を多少延ばしまして何時間使うとか、そういうようなことをどういうふうに見るかによって非常に結論が違ってき、そのギャップも七兆円から二十五兆円に及ぶというようなことになるわけですが、そういうことで、現実の問題として需給ギャップが幾らであるかということを算定することは非常にむずかしゅうございます。私、権威を持って幾ら今日あるかということを申し上げることはできません。  しかし、わが国の需給ギャップを測定する有力なる資料として企業稼働率指数というのがあるんです。これがだんだんと下がってまいりまして、ことしの三月が底です。七七。これは四十五年度の操業率を一〇〇としてずっとやってきて七七。そこで、それがだんだん三月以降改善されてまいりまして、八月のものしかまだあらわれておりませんけれども、この八月が八三になってきているのです。今度第四次景気対策をとりまして、そうしてこれをさらに改善する。そうして年度末、来年の三月の時点におきましてはこれを九〇に近いところまでぜひ持っていきたいと、こういうことを考えておるわけです。  さてその九〇というものの評価ですが、そこで実際の操業度は一体どうなのだというと、これはまた望ましい状態だとは考えません。望ましい操業度は、その企業稼働率指数、ただいま申し上げました七七、八三、九〇というのがどこまでいったら望ましい状態かと、こういうことになりますと、いろいろ説があるのですが、九五から、高いことを言う人は一〇〇だというようなことを言いますが、一〇〇になればちょうど四十五年度の水準ということになるのですが、四十五年度というのはかなり経済が過熱した状態のときであります。そういうようなことを考えまして、九五ぐらいの水準というのがまあ大体稼働率指数から言って妥当ではないか、そういう見解が多いので、私も大体そんなようなところじゃないかというふうに考えるわけでありますが、とにかく第四次対策によって九〇近くまで持っていく。そうして大体昭和五十一年度、来年度中には九五というようなところを目標にした施策を行ってみたいと、ただいまはそう考えております。
  29. 黒住忠行

    黒住忠行君 次は中小企業でございますが、不況によるところの中小企業の受ける影響はきわめて深刻でございます。生産、売り上げの減少あるいは倒産等大変でございまして、これらの実情をまず承りたいと思います。  次には、金融対策、信用補完対策、下請対策、官公需確保対策等が実施されてまいりました。第四次の不況対策がとられてまいりました。不況下の中小企業にとりましてその対策の効果が大変期待されるわけでございますし、国民といたしましても最も政府に期待しておるわけでございまして、その点につきます見通し、お考えを承りたい。  第三点は、安定成長下でございます。安定成長経済下におきまして、中小企業の基盤の強化、体質の改善ということを図らなければならないのでございまして、安定成長下における中小企業対策という点、その三点につきまして、通産大臣の御見解を承りたいと思います。
  30. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 中小企業の現状は、一口で言いますと、大体四十五年の水準になお達しかねておるというのがいまの状態だと思います。非常に苦しい状態である。そこで、いろいろ対策を立てておりますが、一つは仕事の量を確保するという対策、それからもう一つは金融対策でございますが、仕事の量を確保するためには、やはり経済全体が回復していくということ、これらが必要でございまして、そのために何回かの景気対策が実施されておるわけでございますけれども、その中でも特に官公需の一定割合を中小企業に回すということに政府も非常に力を入れております。現在は、官公需全体の三三%を中小企業に回そうということで努力をいたしておりますが、九月末現在の模様をいま調査をしておりますので、その状態いかんによれば多少は増加し得る可能性が出てくるかもわかりません。しかし、できるだけ官公需の一定量を中小企業に回すということの方針のもとに努力を続けていくつもりでございます。  金融面につきましては、特に年末を控えておりますので、約四千八百億円という金額を中小企業向けに追加をいたしました。これは政府系の三機関でございますが、民間の金融機関におきましてもできるだけ金額をふやす、こういうことで対策を立てております。それから同時に、前に借りました資金が、不況のために返済期限が来ましても返せない、こういうものに対しましては、その返済につきましては弾力的に相談に乗っていく、こういうことで三機関の指導をいたしております。金融面につきましては十分配慮をいたしまして、まじめに仕事をしておる中小企業が金融のために経営困難を来さないようにできるだけの努力をしたいと思います。たとえば担保などにつきましても、こういう不況になりますと、どうしても低く見がちになりますので、そういう点についてもやっぱり検討の余地があるのではなかろうかと、こう思っております。  それから今後の中小企業のあり方でございますけれども、これまでの高度成長から安定成長に向かうわけでありますので、やはり中小企業も、これまでは国際競争力を確保するという意味からそれに集中して対策を立ててまいりましたけれども、今後は、国際競争力を確保するという対策はもちろん必要でございますけれども、国民生活の安定という面が非常に重視されると思うのです。そういうことから、国民のニーズも非常に多様化してまいると思いますし、その場合には多品種を少量に生産する、こういうふうな業種が新しい分野として私は考えられるのではなかろうかと、こう思いますし、それからまた、国民経済全体においてサービス経済の占める分野が非常に大きくなる、こういう場合には、やはりその分野でも進出の余地があろうかと思います。いずれにいたしましても、新しい角度から中小企業の今後のあり方というものは当然検討していかなければならぬと、かように考えております。
  31. 黒住忠行

    黒住忠行君 さらに、当面する諸問題につきまして二、三御見解を承りたいと思います。  まず貿易関係で、各国に輸入規制、たとえばイギリスとかオーストラリアにおきますところの自動車の輸入規制という問題がございます。次は、わが国の輸入減少。五十年度の上期は前年同期のマイナス一二%となっております。これが逆に今度は発展途上国の経済悪化ということにも関連してくるわけでございまして、経済協力とも関連いたしましてお考えを承りたい。その二点につきまして、まず第一点は通産大臣、第二点は通産大臣と外務大雨から承りたいと思います。
  32. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 輸入の見通しは非常に大きく狂いまして、ことし初め想定をいたしました輸入に比べまして、およそ金額で二割近く減少する、こういう現在の状態でございます。そのために、一次産品を産出する国々、特に東南アジアの国々に対して非常に大きな迷惑をかけております。でありますから、先ほども申し上げましたように、輸入を促進するために、一次産品の輸入のための特別枠を設定するとかいろいろ考慮いたしまして、輸入の減少をできるだけ少なくしていこう、こういうことを努力しておるわけでございます。  また、各国の輸入制限の動き、これはいま御指摘のとおりでございまして、大分顕著なものがございます。その点を私どもは非常に心配しておるわけでございますが、今度の首脳会談におきましても、この貿易問題が私は最大の課題になろうかと思うのです。昭和の初期における世界的な不況の最大の原因が、各国が保護貿易、輸入制限をとったということが一番大きな理由でございますので、不景気になりますと、各国が競って輸入制限措置をとる。こういうことになりますとさらに世界経済が縮小する、悪循環を繰り返す、こういうことになりますので、あくまでこの自由貿易の原則というものを確立するということを、首脳会談のやはり私は最大の課題にすべきであると思いますし、またなるのではないかと、こういうふうにいま考えておるわけでございます。  ただしかし、自由貿易の原則をいろいろ主張いたしましても、やはり各国経済状態が悪いとどうしてもそこへ走りがちでございますので、やはり制限貿易を解消するためには、どうしても各国景気そのものをよくするということが根本的な解決になりますので、やはり世界経済全体の運営をどうするかということ等も今後の大きな私は課題であろうと思いますが、なお、各国ごとに対しましては、それぞれの国に対して強硬に、輸入制限措置をとらないようにということについて厳重に抗議をいたしまして、それぞれ各国ごとに交渉をいたしております。
  33. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御承知のように、昨年並びに今年OECDにおきまして、そのような貿易制限の措置をしないということについて関係国が一つの約束、決議をいたしておるわけでありまして、その点は今年も、プレッジと申しておりますが、再確認をされたわけでございます。首脳会談におきましても当然この点は関係六カ国の間で、したがいまして、OECDのそういう経緯もございますので大筋の合意が見られることは私は恐らく間違いないと存じております。  具体的な問題といたしましては、米国における自動車を中心とする、いわゆるダンピング嫌疑の調査、あるいは米国とECとの間の農産物に関する問題、それからEC、ことに英国の経済運営が非常に困難であるということからくるわが国との貿易関係、それらの問題が個別にはあるわけでございますが、これはやはり個別的な努力で解決をしていくということも必要であろうと存じます。  首脳会談におきまして、大筋においてOECDで合意をしておりますような輸入制限をしないという約束が確認されることは私は可能である、恐らくできるのではないかと存じておりますが、先ほど河本大臣が言われましたように、世界経済全体の景気の振興策というふうなこと、これも首脳会談の議題でございますが、最終的にはやはりそういうところから問題の解決がこなければならないというふうに考えております。
  34. 黒住忠行

    黒住忠行君 福田総理は、新物価体系移行、あるいは新物価水準というようにも言われておりますが、価格改定がありましても一けたの物価目標は達成可能であると言われております。  ここで公共料金の問題でございますが、酒、たばこにおけるように、利用者と一般納税者の費用の分担ということをはっきり一線を画すべきであると思います。また独立採算制、受益者負担の原則を明確にいたしまして、国民の御理解を得なければならないと思う次第でございます。また次にいわゆる公共的事業、政府の認可等によりますところのものがございますけれども、これらのものにつきましても、ただ公共料金を抑制するということだけでは問題は解決しないのでございまして、やはり適正な料金改定ということは必要な措置ではないかと想うわけでございまして、この公共料金問題につきまして、いま申し上げました考え方につきましての御所見を承りたいと思います。
  35. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これもしばしば申し上げているんですが、昨年の一月一日から原油の輸入原価が四倍ないし五倍に引き上がった。それに伴いまして、わが国の諸物資の価格には激変というような大きな影響があったわけであります。民間の物資につきましては大体それに順応した価格が形成されて、まあ例外のものが若干あるかと思いまするけれども、大体原油の値上がりを受けての新しい物価水準というものが出てきておると、こういうふうに見ております。ところが、公共料金につきましては、これは国の物価政策の配慮からこれの改定を差し抑えてきておると、こういうものが多いわけであります。こういうものは逐次新しいそういう事態に即応した形で改定されなければならない、こういうふうに考えておりまして、ことしいわゆる酒、たばこ、郵便料金というものの改定を行うことを今後予定しておるわけでございますが、これから先におきましても、あるいは国鉄で問題がある、あるいは電電公社の料金について問題がある、いろいろあるんです。そういうものの改定もまたこれを逐次行わなけりゃならぬ。しかし、それを行う場合におきましては、いまお話しのように、これは受益者負担、こういう考え方が中心になる。政策上の多少の配慮、これもしなきゃなりませんけれども、中心はどこまでも受益者負担だと、こういうふうに思います。それから上げ幅と、それを上げるタイミングにつきましては、物価、経済、諸般の状況をにらみまして、これを適正に、弾力的に決めていかなきゃならぬと、さような見解でございます。
  36. 黒住忠行

    黒住忠行君 この秋にも倒産あるいは人員整理というあらしが吹きかねない。いま雇用安定の問題は大変重要でございます。特に中高年層、戦後の復興におきまして寝食を忘れて尽くされたのでございますし、また高度成長下にありましても企業の発展のために日夜努力をされたのでございます。ところが、その中高年層の雇用というものが、一般雇用に比べましても大変厳しい状況でございます。現在の景気低迷がさらにこれに拍車をかけておるという状況でございまして、中高年者の雇用対策ということは大変重要だと思います。  そしてまた大学卒業者、来年は三十四万人の学生が就職を希望しているというふうに聞いておりますけれども、これらの人たちが社会に出まして活躍する場と機会を与える、健全なる社会人を育成するという上でもきわめて重要であると思います。  いま申し上げました諸点につきまして、いわゆる雇用安定、雇用問題につきまして労働大臣のお考え、施策について承りたいと思います。
  37. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。  国会で論ぜられているこうした大きなテーマは、世界的にも不況の問題と物価高、さらに雇用、この三つが大きな特徴だと思います。そういう中において、私たちとしますというと、やっぱり近代国家は完全雇用に向かっていくというのが、これは根本理念でございますから、働く能力と意思のある諸君、こういう方々の問題を本当に真剣に考えていくところにこのたびの景気対策もあるわけであります。そういうものなどを期待しながら、漸次時間外の作業が出てきたり、あるいはまた一定のいろんな歯どめができておりまして、なかんずく、いまおっしゃった中高年齢者の諸君は、敗戦後の日本であなたと同じように一生懸命にやってきた大事な方々、そしてまた子供たちを学校を出して一生懸命やってきた方々、ことにいまから先というものはどうしても中高年齢者の社会になりますから、こういう方々の対策については、いまやっている雇用率をもう少し上げるとか、あるいはまた就職転換給付金、これを活用するとか、さらに訓練の制度などを使いまして万全のひとつ対策を立てたい、熱心にそれに向かって邁進したいと、こう思っております。  もう一つは大学卒業生、おっしゃるとおり、ことし三十四万でございます。従来は労働省は大学卒業生のことにつきましては、超完全雇用、高度経済成長の時代には余り関係がありませんでした。しかしながら、こういう非常に不況ということが予想されましたから、大学当局、私立大学、あるいは文部省、あるいは経営者の方々に相談いたしまして、まず十一月一日、あすが選考開始の日でございます。あすの選考開始の模様を私は実は注目しているわけであります。ただしかし、従来私の方で一部、二部上場の百五十社の統計、あるいは私立大学十三大学の就職部のいろんな統計を見ますというと、大体において求人倍率が二・一倍ぐらいになっております。しかし、そういうことからしますというと、大企業、超大企業だけ追っかけないような意識の転換があれば、こういうときに中小企業は大学出もようやく採れるんだというふうな希望もあるようでございまして、私は全体的な見込みからしますというと、来年卒業までには何とかこれはうまくいくのじゃなかろうか。そういうことからしますと、私はあすの選考開始の模様をさらに注目しながら、その後のいろいろなお手伝いを一生懸命やって、こういう学生諸君、四年間しっかり勉強して、しっかりした体を持って人生に取り組もうとする諸君のお手伝いをすることは大事なことだ、こう思っております。
  38. 黒住忠行

    黒住忠行君 次は財政運営、特に国債問題につきまして大蔵大臣の御所見を承りたいと存じます。  まず、これまでの国債の市中消化分の一割は証券会社を通じて一般国民に買ってもらっておるわけでございますが、もし仮にこれから三兆円となりますと、一カ月平均六百億かになると思います。それで、国債の今後の消化問題、可能であるかどうかという問題が常に論じられておりますけれども、私は、これは消化を当然していかなければならない。  その場合に、国債が人気がないというのは、利付金融債や民間会社の社債に比較しまして、発行条件が悪い、国民の投資の対象として魅力が少ないのではないかということが言われております。大蔵大臣は国民に愛される国債と言われておるわけでございますけれども、その国民に愛される国債のお考え方、この場合におきまして、戦前に発行されたことのあります免税国債、あるいは銀行や郵便局の窓口でも売り出せる貯蓄国債というふうなことがございました。それら等を、ひとつ国債の消化につきましての、いまの諸点につきましての御見解を承りたいと思います。
  39. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せられるとおり、ただいままでの発行済みの国債につきましては、約一割が個人消化になっております。今度大量の公債が出た場合におきまして、そういった比率が維持できるかというと、これは大変むずかしいのではないかと思います。もとより、個人の所得が増加し、個人の金融資産が多様化してまいりますに従いまして、個人の国債所有の絶対額はふえていくだろうと思いますけれども、大量の国債がこのたびのように出る場合におきまして、いままでのような消化が個人によって期待できるかというと、大変むずかしいと思います。したがって、よほどの工夫が要ることは御指摘のとおりでございます。  ただ、その場合、特別な公債の様式、種類を考えるか、特別な商品をこの際発案するかということになりますと、私は消極的に考えております。昭和二十七年、八年ごろ貯蓄国債あるいは減税国債を出してまいった経験もございますけれども、そういったことは必ずしも成功いたしませんで、一年間で取りやめになった経験をわれわれは持っておるわけでございます。もし、そういったものをつくりまして、仮に大変公債の消化だけに便益を図るような措置を講じますと、ほかに投資されておった資金が公債の投資にシフトされるにすぎないことになりますので、金融秩序を乱すことになることを恐れるからでございまして、したがって、結論としましては、他の公私の債券と国債との間にリーズナブルなバランスを、条件についてバランスの適正を期するように努力いたしまして、国債が御用金を持っていただくというようなことではなくて、金融市場の中で完熟した商品として取り扱われるような市場の環境をつくらにゃなりませんし、そういう条件をつくってまいらなければいけないのでございまして、ただいま、この間、全体の金利水準の引き下げに関連いたしまして、長期のプライムレートの改定も近いことでございますし、国債につきましてもいろいろ工夫をいたしておりますけれども、現在の利回りというようなものを余り落とさないように工夫してまいらなければならぬのでないかと、いま私ども考えております。
  40. 黒住忠行

    黒住忠行君 要は、魅力ある国債、そして政策的には金融環境の整備と相対的関係にあるのでございまして、国民の理解と協力を得ることが大切であると思います。そして、大蔵大臣が言われます停滞の中から確かな未来を求めるということであると思う次第でございます。  それで、今後の財政運営でございますけれども、安定成長経済になりますとともに福祉国家としての役割りが増大してまいるわけでございまして、そうなりますというと、今後の財政運営というものは非常に大きなむずかしい状態に来ると思う次第でございます。国債の管理政策の確立を含めまして、財政運営につきまして、政府は国民にその立場を明らかにして理解を求めていかなければならないと思う次第でございます。そして、歳入歳出というものにつきましても思い切った処置が必要ではないか。欧米におきましては、不況克服のために赤字債を積極的に活用をしております。また、当面やむを得ない措置と考える次第でございます。  これらの点、そしてまた西独に例がありますように、中期ないし長期の財政計画というものを考える必要があるのではないか。将来の財政運営のそれらの展望につきまして大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  41. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ただいま、戦後幸いにいたしまして内外のいろいろ好条件に恵まれまして、わが国経済が高度な成長を記録できたことは御指摘のとおりでございまして、それからくみ取ることができまする歳入でもって年々歳々順調な成長財政を運営することができたことは、ある意味において幸せであったと思います。ところが、ただいままで、そういう形で年々歳々自然増収の形で期待ができました歳入というものが期待できなくなったばかりか、逆に巨額の減収を記録するというような事態に逢着しておるのが今日私どもが立っておる立場でございます。  そこで、これからの財政運営は全然これまでと違った厳しい態度で臨まなければならぬことは御指摘のとおりでございます。ところが、これまでわれわれが踏襲してまいりました制度、われわれが慣熟してまいりました慣行というものから今日速やかに、きれいさっぱり脱却ができるかというと、そんなに手際よくまいるものではございませんで、歳出の節減というようなことはよほどむずかしい仕事であろうと思いますけれども、これはよほどの決意を持ちまして当たらなければならぬと思いまして、私どもとしては従来の感度ではなくて、より厳しい感度で歳出に伴う政策の選択に当たらなければならぬと考えております。  歳入につきましても、今日のような状況では当然のこととして一般的に大きな増税をお願いしなければならぬ、あるいは公共料金につきましても大幅な改定をお願いしなければならぬというのが実は差し迫った今日の状況でございますけれども、今日の経済はしかく基盤が強い状態でございませんので、むしろ財政の力で経済の力をつけなけりゃならぬような状況でございますので、そういうことが期待できないわけでございます。したがって、歳出の削減は大変むずかしい、歳入の増大も大変むずかしいというような、非常に困難な状況にあります事は仰せのとおりでございます。そこで、歳入につきましては、現行税制を一遍歳出と同様、精細に厳しく見直しまして、そこに不公正がなお残っておるかどうか、そこに増収の道がなお残されておるかどうかというような点をまず見きわめなければならぬと思うのでございまして、そういった作業をやり遂げた後、財政需要に応ずる増収の道について国民と御相談できる立場を政府は獲得できるのではないかと思っておるわけでございまして、当面そういったことに全力を挙げて当たっておるのが今日の状況でございます。  第二に、しかしながら、諸外国にもありますように中期の財政の計画を持つ、あるいは少なくとも展望を持つというような心構えが欲しいじゃないかという御指摘でございました。私どももそうありたいと願うものでございますが、いまのような内外の諸条件がきわめて不安定かつ不確定の要素が多いときに、権威ある計画を立てるということは至難なわざであることは御理解をいただけると思うのでございます。したがって、精いっぱい中長期の展望というようなものを踏まえて、険しい年々の財政運営に当たらなければならぬのではないかと考えておるわけでございます。ただいま赤字の国債をお願いしなきゃならないような状況でございますので、将来に備えての財政調整資金を蓄えるというような余裕はないわけでございますので、西独で見られるような安定基金構想というようなものをやりたくてもやれない状況でありますことは御理解いただけると思うのでございますけれども、中期の展望、少なくとも中期の展望を脳裏に描きながら、先ほど申しましたような厳しい現実でございますので、政府としては真剣な財政運営に当たってまいりたいと考えております。
  42. 黒住忠行

    黒住忠行君 金融政策につきましていろいろ承りたい点がございますけれども、時間の関係等で省略しまして、今後のわが国の資金需要関係等は相当従来のパターンとは変わったことになると思います。先般、公定歩合の引き下げがございましたけれども、追加引き下げの希望が強いようでございます。六%の水準につきまして、日銀総裁、どうお考えでしょうか、承りたいと思います。
  43. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) お答えいたします。  先般、預貯金金利とともに公定歩合を一%引き下げましたのは、経済情勢のこの段階に処しまして、景気の着実なる回復に一層配慮をしなければならないという趣旨においてでございましたが、私どもといたしましては、この措置の効果が政府における第四次不況対策の効果と相まちまして、今後景気の着実なる回復に資することを念願をいたしておる次第でございまして、具体的には預貯金金利も引き下げられたことでございますので、金融機関の貸し出しの実効金利の一層の低下につきまして努力をしていかなければならないと思っておる次第でございます。  さらに公定歩合を引き下げるかどうかというお尋ねでございましたが、私どもといたしましては、そのときどきの経済情勢に即して、公定歩合の問題を初め、あらゆる金融政策を措置すべきものと考えておる次第でございまして、あらかじめスケジュール的に次の引き下げを予定するとか、あるいはこれでもって公定歩合の引き下げは最後であるとか、そういうふうにスケジュール的に予断をもって措置すべき問題ではないと思うわけでございまして、もっぱら今後の経済情勢いかんによって処置すべきものと考えておる次第でございます。ただし、今回の場合は比較的引き下げの幅も大きくて、四次対策との競合の結果に大いに期待したいと存じ、いましばらくの間は腰を落ちつけてこれらの効果を慎重に見守りたいと考えておる次第でございまして、現在のところ、次の公定歩合の引き下げにつきましては全然考えていないということをお答えいたしたいと存じます。
  44. 黒住忠行

    黒住忠行君 いま、財政政策その他につきまして承ってまいりましたが、総理に対しまして、これの締めくくりといたしまして承りたいと思います。自由経済の活力を生かしまして、財政金融政策の総合的運営、これらが相まって不況を克服しなければならない、また克服できるものと確信をいたすものでございますけれども、国民はこれに対して大変期待を持っているわけでございます。この点につきまして総理の御見解を承っておきたいと存じます。
  45. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国民の皆さん方も大変に現在の経済状態というものを御心配になっていられることは黒住君の言われるとおりだと思いますが、一つだけ御理解を願いたいことは、日本はずっと一〇%を超えるような高い成長率というものを戦後続けてきたわけで、一時的、短期的な不況のときもありますけれども、これは世界に類例のない、こういう高い成長率を持った国はないわけですね。そういうものを支えた原因は、資源小国の日本が欲しい資源を、金さえ持っていけば何でも安くどこからでも買えたという、こういう条件があったわけですね。もうそういう条件は失われて、高度経済成長の夢は再び返ってこない。今後は安定した適正な成長の時代に入る。  これは大変な大きな切りかえのときに来ておるわけです。そういうことをするためには、もう、いま黒住君の御指摘になった財政経済の運営についても、あるいはまた労使関係についても、国民生活の面についても、この大きな転換期に対する一つ考え方、生活態度、こういうものの切りかえが行われなければならぬわけですね。  そういうわけでございますから、財政経済の運営についても、従来やっておるようなそのままの惰性を続けていくことはできまい。やはりこれは見直して、そしてできるだけ国の歳出面においても、窮屈な財政の中でやるわけでございますから、いままでのように自然増収が毎年あって、幾らでもいろいろな要請にこたえられた時代は来ないわけですから、やはり厳格な選択というものをしなければならない。できるだけ有効に、その歳出面においても切り詰めていかなければならぬし、歳入面についてもできるだけ歳入というものの確保、公共料金などについても適正な改定が行われなければならぬわけです。一方において、国民の福祉に対する要請というものは強くなってくる、これは当然のことであります。われわれは、やっぱり国民が希望を持って安心して暮らせるような日本をつくろうということが政治の目標ですから、そういうことを考えてみますと、従来のような考え方ではなくして、この大きな転換期の時代に対応した財政経済、あるいはまた国民生活、こういうものの切りかえというものが必要である。これに対して、政府はそういう一つの時代の要請にこたえて、誤りなく財政経済の運営をしなければならぬ強い責任を感じておる次第でございます。
  46. 黒住忠行

    黒住忠行君 次に、運輸交通問題につきまして、エネルギー、空間、環境等の諸制約条件を乗り越えまして、運輸交通が新しい時代に適応してその使命を果たしていかなければならない、いわば運輸交通総合政策の確立ということが必要であると思います。運輸大臣の御所見をお伺いします。
  47. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 総合交通政策という問題は非常にむずかしい問題でございますが、四十六年に臨時総合交通対策閣僚協議会というものが設けられまして、そこで一応の基本線は出ておるわけでございます。地域地域によりまして交通の需要は違うわけでございます。したがって、それぞれに適した交通機関がその特性を発揮しながら、それぞれその使命を分担し、また協力していく、そうして地域社会に貢献し、また国民生活の充実に裨益する、それらを総合いたしまして国全体としての福祉国家を形成するという方向で総合交通政策というものは進むべきであるということでございますが、最近のように環境問題が非常にやかましくなってきておる、あるいはエネルギー資源の節約ということで、従来、鉄道というものがかなり軽視されてまいりましたけれども、省エネルギーという観点から鉄道というものの見直しも起きてきておる、そういうふうな新しい要素が加わってきておるわけでございます。したがいまして、そういう新しい要素を加えまして、ただいま運輸省では運輸政策審議会という諮問機関の中にワーキンググループをつくって、そこで新しい総合交通政策はいかにあるべきかということを現在検討をしてもらっておるところでございますので、近くその結論が出ます。そうすれば、今後の総合交通政策に対する基本的なデータが出ると思いますので、それを参考にいたしまして今後の総合交通政策を立てて実施していきたい、かように考えておる次第でございます。
  48. 黒住忠行

    黒住忠行君 国鉄財政は、すでにしばしば伝えられておりますとおり、年々加速度的に悪化を続けております。赤字の発生額も四十八年度が四千五百億、四十九年度が六千五百億、五十年度に至りましては補正後で八千億円以上。その結果、五十年度末の累積赤字は三兆円を超えて、債務残高も六兆八千億というふうに、いわば破局的とも言うべき状態になりつつあります。国鉄は国と同じだからつぶれることはないだろうとか、親方日の丸とかいうふうなことが言われますけれども、諸外国の実情を見ましても、経営の危機に瀕しまして、ドイツ、イギリス等におきましても思い切った措置がとられているわけでございます。このように、公企業といえども絶対的な存在ではございません。国鉄の現在の状態というのは、真の意味におきまして大変でございます。瀬戸際に立たされていると言っても過言ではございません。総理大臣の国鉄問題に対します御認識、御意見をひとつ承りたいと思います。
  49. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 黒住君の御指摘になりますように、国鉄は、五十年度の末で累積赤字が三兆一千億円ぐらいを予想しております。普通の私企業であれば大変な問題でございます。こういう国鉄の現状を再建せなければ健全な経営というものはできないわけでございますから、運輸大臣がお答えいたしましたように、この問題は真剣に国鉄の再建策というものに取り組んでおるわけでございます。そうなってくると、経営の徹底的な合理化あるいは運賃の水準というものの検討、労使関係というものの正常化、いろいろな問題を含んでおりますから、こういう広範な問題について検討を加えまして、国民の国鉄である、労働組合の国鉄ではない、国民の国鉄であるという趣旨に照らしまして、国鉄本来の使命が達成できるように持っていかなければならぬと考えておる次第でございます。
  50. 黒住忠行

    黒住忠行君 現在、公共企業体等の職員にスト権を付与すべきかどうかにつきまして活発な論議が行われているのでございますが、先般国鉄総裁は、衆議院において、ストの発生を一回でも減らし、国民に及ぼす迷惑を最小限にとめるという観点に立った場合、条件つきでスト権を付与する方がより現実的であるという見解を述べられました。しかし、国民の間には、国鉄の労働組合がいままで行ってきました政治スト、スケジュール・ストという実績から見て、スト権が付与されても果たしてストが減るかどうか、また、条件つきで付与されるとしても、その条件が守られる担保があるかどうかという点に、かなりの疑問があることは否定できないと思います。また、国鉄の場合におきまして、その公共企業体という性格から、労使関係において民間企業のように経済的抑止力が働きがたいという面もあろうかと思うわけでございます。これに対しましては世論が抑止力となるという説もございますが、複雑な労使関係において、世論がその実態を十分理解し、ストの発生を効果的に抑止することが果たして可能であるかどうか問題だという意見もございます。このような考え方につきまして総理大臣の御見解を承りたいと思います。
  51. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国鉄のストの問題は、国民生活に重大な影響を与える問題でありますから、各方面から活発な意見が出ることは当然でございます。また、私もこれを歓迎するものでございます。いま政府の方におきましても、黒住君御承知のように、専門委員懇談会というところで活発にこの問題を中心にして論議が行われておるわけでございます。これは労働問題に対して見識を有する人々の会議でございますから、その意見も踏まえて、閣僚協議会において、いま黒住君の御指摘になった労働組合の実態等も照らして、そしてこれに対する結論を出したいと鋭意努力をいたす所存でございます。
  52. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 関連。  いまの黒住君のことに関連をして、まず国鉄総裁にお伺いを申し上げて、その後にごく簡単に運輸大臣と総理見解を聞きたいと思います。  国鉄総裁、私が聞く三つの問題の前提になるのは、私は、自民党内の数少ないスト権の理解者です。総務会においても私は発言をした。これは労働大臣も知っておるはずです。しかし、私は最近重大なことを発見した。それは、四十一年の十月二十六日、四十四年の四月二日の最高裁の判決。これは、三公社五現業は、一、政治目的を持つ場合、二、暴力の行使、三、社会通念――これは国民生活に重大な障害となる場合のことを言うんです。こういった場合の争議行為の禁止は違憲でないと最高裁が判決をしておることは、あなた御承知のとおりだと思う。そこで、あと三つを聞くんです。  第一に、鉄労がありますね、御承知ですね、鉄労。鉄労が、国鉄の現状を憂えて、労使一体となって生産性向上を当局に持ちかけております。私はりっぱだと思う。しかし、あなたたちは前の磯崎さんのことにこりて、びくびくしておる。生産性向上がなくてはとてもこの問題の解決にならない、国鉄は。それをびくびくびくびくしながらやっておる。それで、井上副総裁なんというのはけしからぬ、あれは。あなた、もっとしっかりせにゃいかぬ。そこで、どこからそういうことが出てくるのかというと、これは、労働組合でもみんな労働組合の憲法ともいうべき綱領がある。その綱領からよって来たのです。ひとつ読みますから。この鉄労の綱領の二番目に、「われわれは、国鉄のもつ企業の重要性を認識し、これが近代化をはかり、建設的な行動を通じて、国民的利益の増進につとめる。」と、こうある。総理、こうなんですよ。りっぱなんだ。「建設的な行動を通じて、国民的利益の増進につとめる。」、組合というのはこうなければいかぬ。特に、「国鉄のもつ企業の重要性を認識し、」ということなんです。私は、こういうふうなこの鉄労の問題について、あなたはどういうふうに評価をするかということを第一に聞きたい。  第二番目に、国労も動労も日本国有鉄道の中の労働組合であることは間違いがない。これはあなたも御承知のとおり。国民皆そう思っておる、国鉄というのだから。それだけに私企業でないですよ。国家的使命を持つものです。ゆえに公共企業体と呼ぶのであります。だから、最高裁の判決、さっき読み返したとおり。それだけに、こういう公共企業体というものは、組合が労働組合であっても政治的には常に中立性を保持すべきなんだ、これは当然のことなんだ。それなのに、いまいろいろ政治ストを組んでおる。そして、公共的な建物を占有をして、ぺたぺたとビラ張ったりして汚しておる。こういうものをやりながら、いろいろとスト権の問題を迫ってくるというやり方について、いいのか悪いのか、この点を第二番目に聞きたい。  それから三番目。いま言った国労、動労の綱領の内容について、あなたは、この最高裁の判決とどういうふうな関連性を持つのか、知っておったら言ってもらいたい。綱領は皆読んでおるのかどうか。以上。  それから、聞いてから、あなたにもう一回聞いて、運輸大臣に聞いて、総理に聞く。どうぞ。
  53. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答えします。  御指摘のように、鉄労の諸君が国鉄の再建、能率向上に非常な御協力を賜っておるということはきわめて高く評価している。しからば動労、国労はどうだということに相なりますと、遺憾ながら御指摘のような状態にございまして、これも歴史と申してはあれでございますけれども、急にこれを方向転換というようなことはわれわれの力じゃ容易じゃございませんけれども、不断の努力をして、しかあるべき方向に曲げようというので努力をいたしておるような状態でございます。  最後に、ああいった政治ストとかなんとかは憲法で非合法であるということを認められておるのを知っておるかというような御質問で、これはわれわれの労働組合のやるべきものは、あくまでも中心は労働条件に関するものが主体になるので、これを政治ストとかなんとかいいますと、これはもう労働組合の組合運動の範疇を逸脱したものである。したがいまして、これを処理するのには、やはり労働組合とかなんとか、雇用関係とかいうものにあらずして、ほかの方法でこれを処理せざるを得ない。これはきわめて残念であり、きわめて憂慮する事態でございますので、私どもも極力力の及ぶ限りこうしたことを防止したい、かように考えている次第でございます。
  54. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 だからあなた、綱領を知っておるのかということを聞いておるのだよ。綱領の。答弁漏れ。
  55. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) 動労のですか。
  56. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 動労と国労の綱領。
  57. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) 知っています。しかし、これらは半分ぐらいは労働条件を向上さそうというので、普通の、いい悪いの議論は別として、綱領としてしかるべきものであるけれども、その後の方の先生が御指摘になっておるのは、これは遺憾ながら労働組合の綱領としては逸脱している、これは政治団体の綱領であると、かように考えております。
  58. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 運輸大臣、総理、彼もやっぱりいま認めた。これは綱領は間違っておるということを認めた。綱領の最後の方は間違っておると。これは政治目的を持ったものだということでしょう、あなた。もう一回答えてください。政治目的を持ったものか持たないものか、それ、あなた答弁しなさい。
  59. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答えします。  その前半においては、これは労働組合の綱領である。後の半分は労働組合の綱領ではございません、こういうことを申し上げた……。
  60. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 それでいいんです、それでいいんです。結局、前半のうたい上げておる綱領は、これは労働組合としてのいろんな条件を労使間においてやっていこうという考え方から出ておる。しかし、私の言うのは、あなたが認めたように、最後の点なんですよ。  ここに、私は国労と動労の綱領の写しを持ってきておる。運輸大臣、それから総理、よくこれ聞いてください。それから関係大臣もぼやっとせぬと、聞いてくださいよ。これはあなたたち国務大臣だから、閣議でこれを最終的に決定せにゃいかぬ。だから、これを読み上げますと、この最後のところに、国労の第十の最後、結びです。「社会主義政党との緊密な協力関係をつくり、すべての民主勢力と共闘を推進しながら闘う。」となっておる。その前提になるのはこの一なんです。一は、「資本主義社会が労働者の搾取をつよめるものである」と規定しておるのです。「資本主義社会が労働者の搾取をつよめる」などと規定しておる。それなら自民党なんというのは、現在の政府は、いわゆる彼らの言うのだったら、働く人を全部搾取しておるということになるんですよ。(「そのとおり」と呼ぶ者あり)そのとおりと言う者はこれはそう考えるか知らぬが、われわれはそう考えない。常に自由民主党もわが政府も、働く人の味方であるという、特にこの長谷川労働大臣なんか出てきて、皆そうですよ。(「ちゃんと見てみろ、そうじゃないか」と呼ぶ者あり)そうじゃない、そうじゃない。この議論がはっきりしないと、次に彼らは働く者が階級なんだという規定をするんですよ。そして労働と資本と対立さしていくというマルクスの古い考え方に立っておるから間違うのだ。  そこで、もう言わない。これ、聞きますが、運輸大臣、あなたに聞く。そこでもう一つ言います。これは動労の綱領の最後にこう書いてある。「われらは反動政治と」――というのはいまの三木さんのことを言うのですよ。そんなことはない。対話と協調をやっておるのだ。「われらは反動政治とその一切の権力を否認し、社会主義政権樹立のために闘う」となっておる。こういう綱領なんですよ。だから、最高裁判決のこれはもうりっぱな違反なんですよ。そういうものに条件つきでスト権を認めたらストがなくなると思うのは、これは私は錯覚だと思う。この綱領を改めてこない限りはなかなかストはなくならない。
  61. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡単に願います。
  62. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 これは大事なことなんだ。これは関連だといったって大事なことなんだ。(「委員長おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)宮之原君何を言っておるか、黙っておれ。(「委員会の申し合わせに反しておるからだよ」と呼ぶ者あり)そんなことはない。  それから、これは運輸大臣……
  63. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡単に願います。
  64. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 それで総理、この問題について的確に答えてもらいたいのは、私はこれは重大な問題だと思う。こういう綱領を掲げておる国労、動労が、条件つきストを与えたからといって、これはなくなるはずはない。いわゆる、社会主義政権というものを樹立するまでは彼らは、目的を、これを外さない限りにおいてはいつまでもやるんですよ。どうだ、皆さんそう思うだろう。
  65. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡潔に願います。
  66. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 ここで自民党の連中、拍手もせぬというのは情ないこっちゃ、おまえたちは。
  67. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡単に願います。
  68. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 本当なんだ。だから、この点は運輸大臣と総理、はっきり答えてくれ。
  69. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 国鉄は、公共企業体という名のごとく、国民のものでございますし、国民の……(発言する者多し)
  70. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 静粛に願います。
  71. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 国民のために運営をしなければならないわけでございます。したがって、管理者もあるいは従業員も、そこには一点の政治的な配慮があってはならないと私は思います、従業員の一人としては。しかも、国民のために運営をしなければならない。いま国鉄が非常に重大な危局に立っておりますときに、私といたしましては、監督者もあるいは従業員も一体となって、どうしてこの国鉄を再建して国民の期待にこたえるかということに専心努力をしてもらわなければならない、いま重要な時期であると考えております。  スト権の問題については、いずれ専門委員懇談会あるいは閣僚協議会で結論が出ますので、それを待つわけでございますが、私はその前提として、やはり百年の国鉄の歴史的使命というものを十分全職員が理解をした上に立って再建に努力していただきたい。私はただそれを願うだけでございますし、また国民の皆様もそれを大いに望んでおられる。私のところへいろんな意見が参ってきておりますが、それらを総括いたしましても、国民の総意として、そういうふうな意見を非常に強く今回の国鉄再建に際して要望されておりますことを申し上げる次第でございます。
  72. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 今日の日本は働く者の力によって築き上げたわけですから、時の政権が勤労者というものに対して何とかして生活を安定し、向上させないかぬと、これは一日たりともそういうことに対して心を配らない日はないわけであります。われわれ自民党は勤労者の政党である。これはただ勤労者というものが、やはり全体のバランスの中で政治は考えていかなければなりませんから、野党の方々と見解は違っても、自民党が勤労者の生活の安定、向上を踏まえた政党であるということは、これはもう申すまでもないわけであります。また、この労働運動というものが、運輸大臣も申しましたごとく、労働条件改善ということが労働運動の目的でありまして、政治を目標にした労働運動というものは労働組合本来の目的を逸脱しておると私も考える次第でございます。  スト権の問題は、先ほどお答えしたごとく、いまは専門委員の懇談会、この審議を経て、閣僚協議会でこの問題に対する結論を出したいということでございます。
  73. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 ちょっと待ってください、ちょっと……。  国鉄総裁、あんたもう一回答弁しなさい。運輸大臣の答弁に基づいて、政治ストを、政治目的を掲げた――あんたは間違っておると言うておるんだから、それをどうするかという答弁をせい。
  74. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 先ほどの答弁でいいんでしょう。
  75. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 その答弁がない限りは、そんなものは協力できぬよ、国鉄の再建なんか協力できない。政治目的を持ったものを、なに協力できるか。(発言する者多し)
  76. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 藤井国鉄総裁、答弁の補足を願います。
  77. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答えします。  先ほどもお答え申しましたように、労働組合の綱領とかなんとか、われわれのタッチする面は労働条件のみでございまして、これを離れて、逸脱した政治綱領のごときものは、これは決して望ましいことでなければ……。われわれは防止するように努力しますけれども、われわれの直接の力の及ばざる面が多々ありまして、私はこれを反対だからどうこうという権限も力もございません。
  78. 黒住忠行

    黒住忠行君 運輸関係につきまして、港湾整備五カ年計画、航空路五カ年計画を初めとする航空対策、あるいはバス等の地方交通の問題、造船の不況の問題等、いろいろ問題がありますけれども、別の機会に譲ります。  また、本年は国際婦人年でございまして――あと二カ月で終わろうとしているものでございますが、婦人問題につきましての政府の施策あるいは今後の所見等と、それからまた、私はさらに、婦人と交通安全活動の問題につきましてもいろいろ承ろうと思っておった次第でございます。たとえば、交通安全母の会等の婦人の交通安全活動というふうな点等につきましても掘り下げて承ろうと思っておりましたけれども、時間の関係で省略さしていただきますが、最後に、総理に、この婦人問題につきまして御所見を承りたいと思います。
  79. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ことしは国際婦人年でもありますので、婦人の地位の向上、その他、婦人問題いろいろございますから、政府の中で、先般婦人問題企画推進本部というものを置きまして、私みずからが本部長になって、しかも、その本部の中に婦人問題の企画推進会議というものを置いて、各方面の意見も徴して、婦人年にふさわしい、日本政府がこれからやっていく、婦人問題に取り組む諸問題に対して、われわれは検討を加えてまいりたいと考えておる次第でございます。
  80. 黒住忠行

    黒住忠行君 以上をもって私の質問を終わります。
  81. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして黒住忠行君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ―――――・―――――    午後一時八分開会
  82. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を再開いたします。午前に引き続き質疑を行います。上田哲君。
  83. 上田哲

    上田哲君 外交問題についてお尋ねをいたします。  私ども社会党は、このほど十八年ぶりのアメリカ訪問を初めといたしまして、イギリス、スウェーデン、イラクあるいはPLOを歴訪してまいりました。私はこれを野党外交だと思っております。野党外交というのは、第一に野党のわれわれもまた相手の国へ行って内閣の悪口を言ってくるのじゃなくて、ナショナルインタレストに立ってその議論を進めてくるということ。第二に、その話し合いに果実があれば持ち帰って、それ以降のわが国の外交政策に大きく資するために、ナショナルコンセンサスに至り得るための大きな議論を進めることだと思っております。この野党外交の考え方、そして、この野党外交の果実がありとすれば、これに対して総理は、大きく胸を開いて御議論をいただく用意がおありと思いますが、いかがでしょうか。
  84. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 最初に、上田委員が江田訪米使節団の一員に加わられてアメリカを訪問されて、帰りに広くお回りになって、非常に相互の理解のために貢献されたことに敬意を表します。ことに、野党第一党の社会党がアメリカとの間に十八年間、対話の時期がなかったということは、私も残念に思っております。その道を開かれたことに敬意を表します。  ただ、その野党外交ということでございますが、現状のままにおいても、上田君おやりになったように、相互の理解を深めるという点に貢献はしてもらえると思いますが、野党外交を実りあるものにするためには、やはり与野党の間に外交の基本姿勢あるいは安全保障、こういう問題に対して意見がばらばらであっては、ナショナルインタレストの上に立った外交という点については、実りあるものになるためには非常なこれはやっぱり障害になるわけですね。少なくとも外交の基本姿勢や安全保障について共通の認識を持って、この基盤の上に立って野党外交というものが展開されるならば、非常に私は野党外交というものは日本外交に貢献すると思いますが、どうもそういう問題がばらばらであるというときには野党外交には限界があると、こういうふうに私は考えておる次第でございます。
  85. 上田哲

    上田哲君 野党外交を私たちはナショナルインタレストに基づいて行ったつもりであります。そして、われわれが得たさまざまな見聞をこの場において大いに議論をする、総理も胸を開いて議論をしていただくことによって、より高いナショナルコンセンサスに至るものだと思うのです。そういう立場で議論ができると私は信ずるのですが、いかがですか。
  86. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、やはり社会党なら社会党という野党第一党がこういう考え方を持っておるという、その相手国との理解の増進にはなりますけれども、いわゆる現実の外交の処理というときに、時の政府との間にまだ共通の認識がないという場合には、おのずから限界がある、だから、でき得べくんば国内においていろいろ話し合いの場を持って、そういうものに対していろいろ意見が違っても、何かもう少し共通の土俵でいろいろお話し合いができるような、そういう基盤の上に立って野党外交が展開されるならば、よほどいまよりも実りの多いものになると、こういうように私は考えておるわけです。
  87. 上田哲

    上田哲君 私たちの意見を率直に、謙虚に聞いて生かそうとする気持ちがおありかと言っているんです。
  88. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そういうたとえば上田君がいろいろ外国においでになるような場合に、上田君に限らず野党の諸君がそういう場合に率直に政府と意見を交わして、政府との間に意思の疎通を図ってお出かけになるということは政府も大歓迎でございます。どうか今後外遊されるような場合には、われわれともお話し合いをする機会を持っていただきたいと願うものでございます。
  89. 上田哲

    上田哲君 外交論ですからすれ違いになりたくないので、じゃ率直に伺っておきます。今回の社会党の野党外交、特に対米外交をどのように評価されていらっしゃいますか。
  90. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカというものと日本との関係を私がいまさら申すまでもないわけで、これはアメリカとの関係を犠牲にしてこういうことがあるからという私は外交はない。日本外交の最もやはり基本的な対象国であることは事実ですね。その間にとにかく社会党との間に話し合いができて、アメリカとの間にいろいろ意見の交換ができたということは、これは非常に相互の理解のために大きな貢献をされたと思います。私は高く評価するものです。それをもう少しこれを実りあるものにするためには、外交の基本的姿勢とか安全保障についてわれわれとの間に共通の一つの認識、そういうものの上に立って話し合いがされるならば、これはもう大変な功績に私はなると思う。いまの場合はやはり相互の理解を深める上において非常に私はよかったと向く評価するものでございます。
  91. 上田哲

    上田哲君 総理、そこなんですよ。実は私たちが出発する前に、安保が議論になるだろうかと心配をしたのです。これは事実。安保堅持のアメリカと安保廃棄のわれわれとが、そのことを言うなら一言で終わるのです。ところが、実際にやってみると、この安保論争が、実感としても初めて具体的で非常にまじめな議論となったということを私は喜んでおるのであります。政界を初め議会あるいは言論界、経済界、労働界、あらゆる分野とあとう限りの議論をいたしました。われわれが歓迎されたというような言葉では私は表現したいとは思っておりません。しかし、少なくともこうした話し合いができたという根底には、アメリカ側のさらに強いニードがあった。この背景は、第一にはやっぱりポストベトナム。これはいかぬのじゃないかと、ポストベトナムです。このアメリカの強烈な認識。もう一つはやはり日本の政情に対する一つの不安定感というものもあったと思うのです。こういう背景の中で、私たちは安保について非常に具体的な、時間が足りないほどの議論ができた。そうして、そういう議論ができたことの背景には、アメリカの外交政策の大きな転換点があるという認識を持ったのでありますが、この二つの点はいかがですか。
  92. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ベトナム戦争が与えたアメリカ外交への教訓といいますか、大変なものがあった。そういうことで、このことがアメリカの外交政策の上に大きな私は影響力を持ってくるものだと考えております。
  93. 上田哲

    上田哲君 アメリカの外交政策が、いま大きな転換点に立っているというアメリカ側の認識、これをどうお考えになりますか。
  94. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 転換期といいますか、やっぱりここらでことにアジア外交などに対しては一つの検討、再検討をしようという段階にあることは事実です。
  95. 上田哲

    上田哲君 わかりました。さきの三木・フォード会談では、その部分はどのような議論になったのでしょうか。
  96. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 三木・フォード会談で一番問題になったのは、アジア全般の問題としては、アジアに対する協力、積極的な協力というものに対して、これはやはり継続していかなければ、やっぱり貧困というものと平和というものとは両立しないですからね。これは考えてみても、世界の一番低所得の階層がたくさん住んでおるのはアジアですから、アジアの問題が解決することということは、これは世界の大半の問題は解決するわけですから、だからアメリカ日本との間にアジア地域における積極的な協力、有効な協力の方法というものは考えていかなければならぬという問題と、もう一つ朝鮮半島における平和、これはどうして平和と安定というものを確保していくか、何としても朝鮮半島における武力の衝突というものは避けなければいかぬ。これはアメリカに対しても米韓条約があるわけですし、日本はこれだけの地理的に考えても近い距離でありますから、非常なまともな影響を日本は受けるわけです。これは全く両者の間にどのようにして朝鮮半島における武力衝突を避けるかということ、朝鮮問題というものはそれに終始したということが話の中心の課題であったわけでございます。
  97. 上田哲

    上田哲君 日米首脳会談、そしてまたそれを受けて三木総理のお考えにおいて、アメリカの外交政策がやはり非常に大きな転換点に立っているという御認識は妥当であろうと思うんです。私ども議論いたしまして、米政府、特に日本とは比較にならないウエートを持っている米議会ですね、あるいは外交評議会でありますとか、トレザイスらのブルッキング研究所、ブレジンスキーが率いるまさに陰の外交委員会といわれるフォーリン・アフェアー・コンスティチューション、こういう人人と話をしてみると、究極的に問題となる一点は、向こうはもちろん安保条約は堅持したいということがある上ですけれども、この安保条約がこのままで継続できるであろうか、こういう不安を持っていると私どもは強く感じました。どのようにお感じでありますか。
  98. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、あえて大転換と言う上田君のことにそのまま乗っていかないのは、それは安保条約の問題をお考えになっておるのかもしれぬと思います。
  99. 上田哲

    上田哲君 いや、そうじゃないんです。
  100. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、いろいろと再検討していこうという時期に入っていると私は言うわけです。安保条約の問題については、これは安保条約というものがアジア・太平洋地域の安定のために有効に作用していますね。中ソもこの安保条約というものに対してはやはりこの事実というものをもう認めておるわけで、アジア諸国においても何かこういまだに、これだけの工業力を持っておるから日本が再び軍事大国になるのではないかという懸念がありますね、核武装したり、軍事大国。そういうことに対してアジアの見方というのは、安保条約をチェックしておるだろう、こういう感じで、非常にそういう考え方というものはアジアの中にある。だから、私はいま安保条約を、この安保条約の骨組みというものをアメリカが変えようという考えというものは持ってもいないし、われわれ自身もやっぱり有効に作用しておる安保条約を、この骨組みを、いろんな運用の面について改善を加えることはあっても、骨組みを変えようという議論がアメリカにあるとは思わないし、またわれわれにもないわけでございます。
  101. 上田哲

    上田哲君 いや、総理、そこは同じなんですよ。アメリカが安保条約の骨組みを変えようと思っているなんていうふうには私たちは見てきませんでした。堅持したいと思っています。ただ問題は、その上に立って、このままで安保の継続がどれぐらい可能なのか、そういうことを懸念して議論をしているということがある、これをどうお考えになっているかということなんです。
  102. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この運用についてはいろいろ工夫をしなければならぬ面がありますけれども、私が言っておるのは骨組みの点で、いろいろな運用の面については改善を加えなければならぬということは、これは日米両方とも絶えず考えていかなければならぬ問題であることは事実です。
  103. 上田哲

    上田哲君 具体的に言いましょう。アメリカ側から共通して出される集中的なわれわれへの質問、非常に熱心なんですよ。非常に熱心な質問は、根本的に言えば二つあって、一つは、向こうは安保は変えたくないですよ、その前提で言っているんですから、変えたいなどと言っていると私は言ってませんよ。安保を変えまいと考えているけれども、インドシナ情勢の大きな転換、これはもう本当にだれでも感じなければならない大きな転換なんですから、この情勢の転換の中で、これまでのようなたとえばアメリカ、ソビエト、そして中国を眺めていくビッグスリーの三極構造の枠組みというものが、どこまでその枠組みとして見ていくことができるのか。もう一つは、その中で日本役割りというのは変わってくるのではないか。こういうところに大体議論は、これは政府というよりも、非常に流れの速い議会ですよ、上院外交委員会あるいは合同シンポジウム、そういう人たちの共通した見解はここにあるんです。アメリカの外交政策を決定していく朝野の人々の、二百人に余る人々の共通的な集中的な感覚がここにあるということをどのように受けとめておられるかということをきちっと伺いたいんです。
  104. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカは同じような価値観を持っておる日本が、アジアの中でやはりほかの国々は日本のような繁栄、安定というものはないわけです。これはやっぱりアメリカの友邦がこれだけの安定と繁栄をもたらしている。これに対していろいろアメリカ協力しておるということは、非常にアメリカ人自身が現在の日本というものを高く評価しておるわけですから、日米安保条約というものが、防衛力というものも上田君ごらんになっても、GNPなんかに比べて、いろいろ国会で御議論もありますけれども、日本は一番、こんなに防衛力というものに対しての支出の少ない国はないです。しかも安保条約というものは戦争するための安保条約でないですね。アメリカ考えておるのは戦争の抑止力としての安保条約ですからね。そういう点で大きな役割りを果たしておる。日本というものに対してアメリカは、いろんなアジアの国々があっても一番やっぱり頼りになるのは日本だという感じですよ、ベトナムが済んでからね。そういうことで日本というものに対してはこれはできるだけのことをしたいということは、もうアメリカ一つの外交政策の基本ですから、そういう意味において、私はアメリカがこう考えておるというのは、私は上田君のように根本的な日米関係を何かこの際変えようというような、そういうアジア外交の再検討ということは、そういうふうな中を含んでおるとは私は思わないのでございます。
  105. 上田哲

    上田哲君 総理、ちょっと深呼吸して気を楽にしてください。いまここでとんでもない落とし穴にはめようという論理で話をしておらぬのです。野党外交を吸収して、胸を開いてナショナルコンセンサスの方向へ高めようじゃないかと、私はこれだけにじり寄っているんですからね。私は何もアメリカ考えが変わったとか、そのことによっていま大きな転換点をわれわれがここで握っておるなんていうことは言っておらぬです。アメリカは安保堅持ですよ。いいですか。だから総理アメリカで、アメリカのアジア外交に変化なしと言われた。それは総理の感覚で、それも希望も含めてそうでしょう。ただ、アジア外交と言うのなら、アジアの大きな変化、力学の変化があったということはこれは認めざるを得ないところですから、このままで同じことができるはずはないですね。そのことに対してアメリカはどうしたらいいのかということをいま真剣に考えていると、これを私たちは読み取ってきたと言っているんです。これは素直に合意されるところではありませんか。
  106. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、アジア政策というものは再検討しておるということを言ったわけです。日本に対するアメリカの姿勢というものは、それが再検討を必要というようには私は受け取っていないんです。上田君の週刊誌などに対する対談も、私は週刊誌は余り読まないけれども、あなたのは読んだわけです。そうして落とし穴に入れようとしているのでないことは十分に知っておるのですけれども、しかし、大事な問題は大事な問題としてお答えしなければなりませんので言っておるので、何も肩を張ったお答えをしておるわけではない。これはわれわれの考え方にだんだん近い同志である、こういう考え方でお話を承っておる。
  107. 上田哲

    上田哲君 質問に答えていただかぬと困るんです。週刊誌の話をされても困る。
  108. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカがアジア政策全般を――一番感じたことは私は二つあると思う。やはり民族自決、この原則というものは、民族の意思に反して押しつけるようなことはこれはもうだめだという民族自決の原則は尊重せなければならぬ。また、その国が何といいますか、世界的な正義というものを実現しようとして、その国がみずから努力しておる、そういうみずからの努力、自助的な努力というものもないとだめだ。外国の援助だけでやっていけるわけはないんです。そういう点で、民族自決という原則の重み、もう一つはやっぱり自助的努力というものの重要性、こういうものが非常にベトナムというものを強くアメリカで感じた問題の中心だろうと考えています。
  109. 上田哲

    上田哲君 ブレジンスキーなんかが主宰する外交評議会等々で、多くの見識者の中での議論等で、まじめにアメリカ考え日本アメリカの友好あるいは利害の共通の基盤の保持、こうした問題の中でもっともっと真剣な議論が出たわけですよ。私たちはそれをまた真剣に聞いてまいりました。そこにあなたと私たちの間に何とかコンセンサスというものが外交論上はないかということを、私は懸命にいま探ろうとしているんです。どうかひとつまじめに考えていただきたい。  だから、たとえばそこに出てきた議論は、これまでのビッグスリーに日本も加わって、ビッグフォアにしないかという提案もありましたよ。これはもう私たちは受け取るところではない。しかし、そのビッグスリーなりビッグフォアなりというのは、これまでのアメリカの冷戦構造を事情の変化に応じて修正してきた基本的な枠組み、こういう考え方です。これは日米韓軍事一体化と言われるようなこういうものにつながる発想、一くくりにすればそういうことになると思います。これに対して中立政策というものがあるだろう。これは当然なカテゴリーです。しかも問題は総理、向こう側の意見、質問の集中度はこっちなんです、中立なんです。中立政策の有効性について、これまでのビッグスリーあるいはビッグフォアの力の均衡のあり方と中立政策のあり方の、どちらに有効性があるかということについて真剣な議論があったんです。アメリカの外交政策を決定する人々の間でこのような真剣な議論があったということについて、私は感銘を受けた。このことについてやはり大いに議論をすべきときではないかということを言いたいんです。
  110. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は中立政策という、どういう日本は立場をとれと上田君は言われますのか、もう少し詳細に承らなけりゃなりませんが、やっぱり日本の立場が中立政策という政策、そういうふうな外交政策をとろうとは私は思わない。これはやはり外交にはいろんな経緯もありますから、そういうものがとれる立場ではない。しかし、中国とソ連と日本アメリカという、そういう四国関係とかいう枠組みの中に日本は入る資格はありませんよ、これは。軍事力からいったってそうでしょう。そういう意味ですから、そういうふうな世界の、何ですか、パワーポリティックス、超大国の仲間入りを日本がしていこうという外交を私はとらないんです。  それはやはり中国との間にもソ連との間にも、これは日本はもう自国を防衛する限度のものでしょう、軍事強国でも何でもないんですから。そういう世界の超大国の仲間入りをしようという考え方はないんですよ、日本は。むしろ平和国家としてやっていこうという道ですから、平和国家である以上は何かこう日本が敵意を持つ国というものをつくっちゃいけませんよ、これは。何かみずから紛争の種を日本がまくようなことはいけませんからね。だから、それはやっぱり私は等距離外交論者ではないんですよ。等距離という、外交を何か物差しではかるような外交はあり得ない。それはいろんな両国の間のやっぱりいままでの外交に対しては厚さもあれば、何ですか、薄さもあるわけですから、したがって、等距離外交というのではないのですが、しかし、どの国に対しても日本が敵意を持たないで平和的につき合っていこうという外交で、世界の超大国のパワーポリティックスの中に日本が入っていくような外交というものはこれは避けなければいかぬ、それだけの資格を持っていない、こういう考え方でございます。
  111. 上田哲

    上田哲君 結構ですよ、それは。世界のパワーポリティックスの中に入っていきたくはないんだというのは大事な原則です。そしてアメリカの問題は、そういう枠組みだけではどこまでいけるのかという不安が現実の問題として議論されているんです。これは抽象論ではないんです。ここを、私は三木さんが半歩前に近づいてこられた感じがしますから、踏み込んでお話をしてみたいと思いますよ。  まさにアメリカの議論をずうっと聞いていると、非常にシンプルなパターンというのが出てくるんです。そのパターンは、第一には、安保廃棄という考え方はイコール反米だろうと言うんです。中立政策というのは、すなわち親中、親ソの別称であろうと言うんです。実にシンプルに、よほどの人々の中からこういう発想が出てきた。三木さんもちょっと似ているような感じがするんですけれども、これはどうですか。
  112. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは私はそうは思いません。たとえばASEAN諸国でも、必ずしもそれが皆反米で、そうして親中、親ソというようなことだとは思いません、ASEAN諸国の例をとっても。そうは思いません。
  113. 上田哲

    上田哲君 私どもはこういう発想に驚いたんですがね。われわれが答えたのはこういうことなんです。よく聞いてください。われわれは、今年当初の衆議院の代表質問で成田委員長が、アメリカとの間に安保ではなくて友好条約、平和友好条約を結びたいということを提起した。そのことに連なってこういうふうに見解を述べてきているんです。われわれが言っている考え方というのは戦時局外中立ではないんだ、戦争を誘発しないようにしようとする平和中立政策なんだ。だから、われわれを取り巻いている超大国が真に戦争を望まないのであるならば、その超大国の利害においてです、お願いではありません、利害において、われわれをその間の緩衝地帯として設定することに合意をさせる、その条約的承認の一つが日米平和友好条約である。また、社会党はソビエトや中国には近親感を持っている。けれども、率直に言いたいが、現在の中国やソビエトの社会の姿をそのまま日本の社会に持ってくることができるとは思っていない。むしろアメリカが大切にしている独立宣言以来の市民的自由というようなものは、これを捨て去るのではなくて、これをもっと発揚させていくような社会をわれわれは考えているんだ。これはまあ冗談に言ったんですけどね、ある日あるとき鶏が鳴いたら一緒に安保廃棄の通告が飛び込んでくるんではないぞと。そんなことを考えているのでは外交はできない。そんなことでその後友好条約が結べるわけはないではないか。われわれはアメリカとの友好を本当に願っているのであって、そういうことからすると、やみくもな安保条約にしがみついているような形と、あるいはわれわれが言っているような平和友好条約の形と、どちらが友好と安定のために有効性があるかということがポイントではないか。われわれはこのように主張してきたのです。この考えについていかがですか。
  114. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 残念ながら、その考え方は私は同意できません。それはなぜかと言えば、私はいまの世界を見てみて、安全保障の体制というものは集団安全保障体制である。どこもかしこもそうですよ。一国だけで自国を防衛するということはできないわけです。やっぱり安保条約も、そういう意味において集団安全保障の一つの形態である。日本が安保条約によって日本の少なくともこれだけの――日本は平和国家として憲法の条章からいっても戦力を持たないわけですから、したがって限界がありますわね、防衛のためだけ。で、世界というものが全く絶対の平和というものが確立してないわけです。政府は国民に、やっぱり日常こうやって活動しておる国民に安心感を与えるということは政府の大きな責任でしょう。核兵器も日本は開発しないんです。核兵器というものは現存するわけですからね。そういう中にあって、日本の安全というものに一つの安心感を与えておるということは、集団安全保障体制というものの持っておる作用の一つだと私は思うんですよ。  だから、安保条約というものを破棄して、そして今度は平和友好だと、私はそういうふうにうまいぐあいに――アメリカとの間に安保条約はもう破棄して今度は平和友好ですかね、そういう条約といっても、それで日米関係というものが、いまのような友好関係がそういうふうなことで維持できるとは私は思わないんですよ、これは。もし将来問題があるとするならば、安保条約の運用について日米間でいろいろ話し合うということは私は必要だと思うんです。この集団安全保障の体制を平和友好条約に切りかえて、そして日米関係が今日のような友好の関係が維持できるという考え方には私は同意できない。それはアメリカのために結んでおるのでないんです。ある意味において日米安保条約は日本の安全のために結んでいるんですからね。だから、何かアメリカのために結んでおるというのでなく日本の安全のためなんで、そういう意味において日本も私は今日の世界情勢の中に必要としておるのですから、これをもうやめてほかの条約に切りかえて、そのことによって日本の安全というものが確保されるという保障、これが一つと、そういう形で日米関係を、そういう形を断ち切って日米の友好関係が継続されるという保障というものは、私にはやっぱり考えられないんですよ。そういう点で、これはもう上田君のお話しになったように、いろいろ対話の場だというので私もそれにできるだけお答えをしなきゃならぬと思っておるんですが、その点については同意はできないのでございます。
  115. 上田哲

    上田哲君 総理アメリカよりおくれていますよ。アメリカよりおくれているんですよ、総理は。――ちょっと隣はだまっていてくださいよ。アメリカはそんなことは考えてないんです。私のいまここで言っているのは、安保条約をここですぐやめて平和条約にしなさいと提案しているんじゃないんですよ、総理アメリカ自身がいまの安保条約の継続を願いつつ、これがどこまで有効性があるかについて真剣な討議をしておるというんです。それが本当じゃありませんか。総理に伺いたいけれども、私は懸命にいま思い切ったことを言ったつもりなんです、かなり。アメリカでも善ってきた。そして、かなり思い切ったことを言ったつもりなんだが、あなたが言われるように、外交についてのコンセンサスを得ようというお気持ちがあるのかないのかをまず聞いておかないと、これは議論が進みません。
  116. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはもう先進国の中で、上田君ごらんになっても、こんなに外交の基本姿勢であるとかあるいはまた安全保障政策で与野党の間に考え方の相違がある政党政治を行っておる国はありません。それだからやりたいんですよ、社会党の間にも。だから社会党の間にもこういう国会の場も一つの場ですし、もう少し野党との間に外交問題というのは話し合って、もう少し共通の場を持つような努力をしないと、これはやっぱり外国から見ても日本の不安定な一つの原因でしょうね。国の基本的政策というものが与野党の間に共通の認識がないということは、日本の政党政治を諸外国から見たときに一番不安定に感ずる点でしょうね。  これはしかし、この国会の論議を通じてなかなか決着がつくと思われませんが、できるだけ私も誠意をもってお答えをしたいと思いますが、どうかこれをただ国会の場だけでなしに、与野党の間でこの問題に対して、たとえば安全保障でも国会委員会を置くべきですよ。置いて、そしてもうちょっと内閣委員会とか予算委員会の場というのじゃなしに、徹底的にこの問題はそういう委員会を置いて話し合うということが、これは今回の場合は上田君も限られた時間ですから、やっぱり安全保障の委員会を置いて、そこでもう徹底的に与野党の間でおやりになるということは、せっかく民社党も公明党もこれは賛成されておるんですから、どうか上田君も社会党を説かれて、これに賛成されて、そうしてやって、外交委員会でもこの参議院で外交の懇談会みたいな形式がありましかね、ああいう制度もいいと思います。こう何かテレビが入って言うのでなしに、もう少し委員同士で外交の懇談会のような場を設けて、どうしてもこれは与野党の責任ですよ。こんなに国の基本的な政策に対しての違いがあるというのでは、そういう政党政治というのは私は不安定だと思います。  だから、これは自民党も努力しますよ。だけど社会党もひとつ、社会党ばかりでなしに、ほかの野党の諸君もこれをやはり御努力を願って、そうしてこの予算委員会の場だけではなしに、継続的に与野党の話し合いができるようなことをつくろうじゃありませんか。絶対に必要ですよ。これだけの安全保障の委員会も与野党の話し合いがなかなか一致しないということは、これはちょっと説明がつかないですね。どうかそういう点で、せっかく訪米もされて非常に外交の考え方、柔軟性をお持ちに上田君なってこられたわけですから、この影響力を、非常にもったいないと思いますよ。あなたのいまの考え方というものはわれわれ聞いても非常に柔軟性を帯びた私は外交姿勢だと思う。そういう考え方をどうか社会党の人々にもよくあなたの影響力を行使して、そうしてそういう易をつくろうじゃないですか。これは実際おかしいですよ。この国会、こういうふうなことで基本的に考え方が違って、そうしてそれが保革伯仲と言われたら言われただけ私はおかしいと思いますね、日本の政党政治は。それだけにわれわれも努力をいたしますが、野党の諸君にもお考えを願いたいと思う次第でございます。
  117. 上田哲

    上田哲君 それでいきましょうよ。何とかして外交問題について一緒の舞台で話ができる、意見が違うのはあたりまえなんだ、その違う意見を何とか共通の素材と方向で議論できるようにしようということを、私はあなたとこういうところへくるまでに十二分使ってしまったんです。私が言いたいのは、ハト派だ、柔軟だとおほめいただいたけれども、三木さんの方がよっぽどタカ派になっているわけですよ。それでいま非常に大事なことは、アメリカの反応は非常に早いんです。たとえばこういう考え方に対して、向こうのお許しを得ているので名前を申し上げてもいい、たとえばマックルーア、ロス、あるいはストラットン、フォーリー、ヤング等々の人たちが、こういう意見が日本にあったということを知らなかったと。政府は何をいままで説明したかと思うけれども、そういうことは向こうでは言ってきませんでしたよ。まさにそういう立場で、たとえばストラットンの言葉は、おれはタカ派中のタカ派なんだけれども、これなら議論が成り立つんだ、ぜひ議論をしようじゃないかと。意見が違うんですよ。われわれが説得したと言っているんじゃありませんよ。いま安保を現時点でやめて友好条約にかえろと、それにイエスと言えと言っているんじゃないんです。こういう並列の議論というのが、こういう場でできなければならないという意向は向こうにも非常に強かった。アメリカと話ができて日本で話ができないことはないじゃないかということについて、総理、どうですか。
  118. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 全く私はそう思いますね。与野党の間で外交防衛問題についてもう少し話し合いをしなければ、上田君の訪米のいろんなことも私自身もある程度は承知しておるんです。非常にいい対話が出たと思います。それはいままでこんな意見があるとは知らなかったというのは、社会党が十八年も行かなかったことにも責任がありますよ、これはね。これは何か毛ぎらいしないで皆話し合って、そのことは、これだけの国民の支持を野党も受けているわけですから、それだから、やっぱりアメリカの理解を深める上に私は貢献をしたと思います。それはアメリカとできて日本でできぬというのはおかしいですから、大いに私はこの問題は本当に国会の会期中だけでなしに、やはり間断ない対話が行われなければ日本のこの政治というのは安定しないですね、こういう状態では。そういう感じを非常に深くして、上田君のお説にはもう満幅の賛意を表する次第でございます。
  119. 上田哲

    上田哲君 いいところへ来ましたよ。それで話をしましょう。  向こうでアメリカの議論というのは、抽象論じゃだめなんだ、きわめて具体論。だから先ほどもああいうことを言ったんだけれども、こういうタカ派中のタカ派だというような人々を中心にして議論を詰めていったときに、二点だった。共通の議論ができる土俵というのは二点だろう。一つは自衛隊だと。われわれはお互い原理は別ですよ、現状において自衛隊をいまのレベルで置いておこう、このことで努力をしようと。それからもう一つは核だと。日本の国民は非核政策をとるということを決意しているんだから、このことについて誠実に努力をする。この二点について双方の努力を共通にする、ここで議論をする、こういうことでは非常に具体的な議論が出てきましたよ。たとえば軍縮局長イークレー、これはSALTのアメリカの首席代表です。われわれが言っている日本中心とする非核武装地帯の設定が将来の問題としては正しいんだと、こういうところまで意見が出てきたんです、総理。こういうテーマでわれわれもまた具体的に、原理は原理として、ここを中心にしながら議論を進めていくということができるのではないかと思うんですが、どうですか。
  120. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 上田委員の、ある週刊誌の中にシュレジンジャーとの会談ですか、核なんかは持ち込もうと思ってないということを非常に強く言われている。何かこう、ここの議論は持ち込んでないかという議論が多いですわね、ここで。だけれども、非常に確信を持たれたというような意味の発言があったように思うんですね。そんなものは、核なんか持ち込もうという考えアメリカに全然ないということで、日本の非核三原則というものをアメリカがこれを侵そうという考え方は持ってないわけですから、そういう意味において、そのアジアならアジアの地域で非核の武装地帯というものがアジアのコンセンサスを得たら、アメリカは何にもこれに反対するものではございませんよ。そういう点で、そういうことはやっぱり各国いろんな複雑な事情もありますから、そういうコンセンサスがアジアで得られるかどうかということは別問題です、考え方としては。われわれも何にも異存のないことでございます。
  121. 上田哲

    上田哲君 まさに御指摘のシュレジンジャー発言というものは、こういう背景のもとに出てきたんですね。シュレジンジャーの言う、以後日本の軍事力増強を求めようとしないという発言、これをどういうふうにお考えになりますか。これは防衛庁長官
  122. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私は、この委員会でも申したと思いますが、やはりポストベトナムからアメリカの対アジア政策、そういうものは非常に慎重にあるいは考えるようになってきたということを申し上げておったわけでございますが、しかもシュレジンジャー会談に臨むに当たりまして、いろいろの議論がございました。かつてシュレジンジャーがGNP三%、そういうものを押しつけてくるんじゃないかと、こういうような議論、これは何もシュレジンジャーだけじゃなくてアメリカの新聞等にも散見されることでありますし、恐らくアメリカの一部にはそういうような考え方があった。あるいはただ乗り論というものも依然としてある。  しかし私は、いろいろ野党の諸君からもお聞きがありましたけれども、あるいは一部のそういうような心配を聞いたわけでございますけれども、ポストベトナムから私はそういうことを、まあ言うなら意思の押しつけみたいなことはやらないというふうに確信をいたしておりまして、で、シュレジンジャーと会いましてもやはりそうでございまして、日本の立場というものをるる私は申し上げました。憲法というものがあるというようなこと、よくそのことは承知をしておるということで、それで私は、現在の四次防が未達成に終わる可能性が出てきておる。しかし、これは非常な油ショック等もある。たとえば護衛艦一つにしても、二百億だったのが四百億ぐらいかかるようになったということもその一つだと。それはよくわかると。ところで、やはり自衛のために必要な最小限度の防衛力というものは基本的にわが国の安全、つまりわが国民一人一人の生存と自由のために持たなければならないと私は思っておるということを申しました。そのことに対しましてシュレジンジャーは、そうだというふうに理解を示したわけでございまして、私はいま上田さんがアメリカにいらっしゃいましてシュレジンジャーともお会いになって、そしてそういうようなことを確認してきていただいたということは非常に私は結構なことだというふうに思います。  私はシュレジンジャーとの会談におきまして、これからはむしろ量というよりも質の充実を考えておる、小規模の攻撃、侵略、それに対しては即応体制を持つのだけれども、しかし、それ以上のものについてはなかなか日本だけで守り得ない、したがって日米安保条約というものが不可欠である、したがってまた日米防衛協力というものが意味があると、こういうふうな話をいたしたわけでございまして、その意味合いにおきましてシュレジンジャーも理解を示したということでございます。
  123. 上田哲

    上田哲君 アメリカまで行ってきて、シュレジンジャーと話してくると防衛庁長官の言うことがよくわかるので、もっとストレートに話ができる状態がほしいとも思いますが、いまの御答弁もわかります。  ポスト四次防ですね、その考え方の中から、大体いま七兆九千から九兆二千億ぐらいのところに持っていくと、こういうことですか。
  124. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 実は十月の二十九日に第二次の長官指示をいたしまして、そうして今後ポスト四次防についてどういうふうに見積もっていくかという、その前提となる構想を発表いたしたわけでございます。数字等につきましては、いま作業を命じたばかりのところでございますから、ここでしかと申し上げる段階ではございません。
  125. 上田哲

    上田哲君 これは安保条約の上からいって、シュレジンジャー等々との話し合いも大体いいということですか。
  126. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 数字の問題は申し上げなかったわけでございますけれども、私の防衛についての考え方、その一つは、とにかく侵略があった場合には抵抗する意思を持つということ、国民一人一人が国を守るという気概を持つということ、これが第一だ。第二番目には、憲法の制約のもとにあっても必要最小限度の防衛力というものはこれを充実し、保持しなければならない。しかし、これは他国に脅威を与えるようなものであってはならない、また、内政面を著しく圧迫するようなものであってはならないと考えておる。つまり過小でもなく過大でもない、そういう防衛力を私は考えておる。それから第三番目には、大規模の攻撃、核の脅威に対して日本を守ることはできないので、この点に関してはどうしても日米安保条約というものが不可欠だ。この三つが一組になって日本の独立と安全というものが保てるというふうに私は考えると、こういう考え方を申したわけでございまして、その意味において日米間の防衛協力というものが必要だということ。そして年一回会談を最高責任者同士持つということ、あるいは安保協議委員会の枠内において新しい機関を設けて防衛協力の問題について話をする、そういう場を持つという、この二点について合意を得たわけでございます。  そういうわけで、その間、私の防衛の考え方につきましてお話をしますと同時に、いま申し上げました現在の四次防計画について積み残しが出るだろう、しかし、そのことについてポスト四次防というものを考えておるが、これはやはりいままで経済成長が非常に高度の中において、またゼロから自衛隊が出発したことにかんがみまして、正面というものに重点を置いて考えてきたけれども、今後はやはりバランスのとれた抗たん性とかあるいは耐久性とか、あるいは後方支援体制、こういうもののバランスのとれた、小じんまりしたけれども反撃力のある質の高い防衛力にしたいんだと。そうしたら、スモール・アンド・ハイ・クオリティーですねと、こう言いました。英語ではそう言うのかなというふうに私は考えたわけでございます。
  127. 上田哲

    上田哲君 ほぼ八兆円というのは、大体有形無形合意の範囲だということですか。
  128. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これは衆議院の段階におきまして、ポスト四次防について社会党の楢崎委員から御質問がございまして、これをたとえば五%成長、あるいは六%成長、それについてGNPの〇・八ということで計算すると一体五カ年ではどうなるんだ、その場合の起算の年は五十一年のベースでやる、あるいはそれの一%にするのはどうだということで、たしか七兆五千億か九兆五千億程度になるということをただ計数的にはじいただけでございます。
  129. 上田哲

    上田哲君 考えが一%を上限ということになりますと、こういうことにならざるを得ないわけですね。
  130. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 一応計算はそういうことになります。
  131. 上田哲

    上田哲君 それ以上になるということもあるわけですか。
  132. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 計算はそのとおりだと思います。
  133. 上田哲

    上田哲君 だから計算はそうだけれども、それ以上になることがあり得るのかと言っているんです。
  134. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) ただいまの大臣の御答弁をちょっと事務的に補足申し上げたいと思います。  先日、衆議院の予算委員会で……
  135. 上田哲

    上田哲君 計算の仕方なんかもういいんだよ。それは聞いたんだから。
  136. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) もう一つは、五%、六%の場合と、それからことしの政府の改定見通しのGNPを前提としておる。それからもう一つは五十年度価格で計算したということでございます。
  137. 上田哲

    上田哲君 そういう説明は要らないんだ。そんな小さな話は要らない、わかっているんだから。
  138. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 一つ五十年度価格で計算すれば先ほどのものです。
  139. 上田哲

    上田哲君 だから、計算では八兆円と言うから、計算はわかっているんだが、計算ではとおっしゃるのは、それ以上になることもあるのかということを聞いているんです。計算の根拠なら私が持っているから見せてやる。
  140. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) それ以上あるのかということは、あると決心しなければできないことだと思います。
  141. 上田哲

    上田哲君 だから決心することもあるのかと聞いているんです。
  142. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) まだ、いま作業を命じているわけでございまして、ポスト四次防につきましてはこれから国防会議にもかけなければなりませんし、来年の八月でございますから、十分ひとつ検討をいたさせてくださるようにお願いを申し上げる次第であります。
  143. 上田哲

    上田哲君 議論がいいところまで来ているので、細かいところで私はこだわりたくないんです。八兆円はびた一文超えるとか超えないとかいう重箱の話をしているのじゃないんです。およそでいいですよ、およそGNP一%というところでいくのかどうかということを聞いているんです。政治的に答えてください。
  144. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これは上田さんもよく御承知のとおりに、物価上昇がどういうふうになるのか、あるいは経済成長というものがどういうふうになるのかというようないろいろの要素が加わるわけでございますから、計算のしようもいろいろあろうかと思います。また実体においてどういうふうな規模にするのかというようなこと、あるいは固定方式にするのか、ローリング方式にするのか、いろいろあるわけでございまして、そういうようなものを十分ひとつ検討をいたしたいというふうに考えております。
  145. 上田哲

    上田哲君 副総理、ローリングバジェットにしようが、五カ年計画にしようが、大体GNP一%というこれまでの政府の政策というところで考えれば、八兆円というのは大体これぐらいの感じになるわけですがね。これからの経済見通し、その上に立つ財政見通しの上からいって、防衛費八兆円というようなものはどういうものでしょうね。
  146. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これからの財政がどうなるか、私は財政が、経済は安定してもことしとにかくこれだけ膨大な赤字ですから、そのしりが相当長引くのじゃないかという感じがするんです。ですから財政処理、この問題は経済が処理されてもまだ後長引く、尾を引くと、こういうふうに見ます。  そういう間におきまして防衛費をどうするかという問題ですが、これはやっぱり国政の中で適正なバランス、こういうものがあると思うんです。それからかねてGNP一%以下と、こういうような一つの目安というものもある。そういう間におきまして内外の状況を見まして、その間において国政全体の中で姿のいいバランスのとれたそういうものにすべきであると、そういうふうに考えております。
  147. 上田哲

    上田哲君 八兆円というのは、その姿のいいというところだというような感覚ですか。
  148. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 何ですか。
  149. 上田哲

    上田哲君 八兆円というのは、つまり一%というのはその姿のいいところだと、大まかな認識ですか。
  150. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一%というのはとにかく天井でありまして、その中においてそのときどきの情勢に応じまして適正なバランスをとる、こういうことじゃないかと思います。
  151. 上田哲

    上田哲君 政府考えは大まかに言ってそういうところだろうと思いますよ。そうしますと防衛庁長官、シュレジンジャー長官がこれ以上の増強を求めずと言ったその線からして、この八兆円というのは上なんですか、下なんですか。
  152. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 計数的に彼が言っているとは私は思っておりません。むしろ日本憲法の制約、言うならば昭和三十二年の国力国情に応じた中において自衛のために必要最小限度の防衛力、われわれがかねがね言っておること、そういうようなことで努力をすることは理解を示したと、こういうことでございます。
  153. 上田哲

    上田哲君 どうも答弁がすっきりしませんけれども、ポイントをしぼりまして、いままで一次防から四次防まで倍、倍、倍で来たわけです。その倍、倍、倍から言うと、八兆円と言ってもちょっとそのケースは落ちるわけです。姿のいい形と言われて、大体のところですから小さな上下は問題にしませんけれども、しかしもう一つの問題というのは、たとえばいまの四次防だって人件費はベースアップでぐーんといく、装備費は四次防が一兆円の積み残しがあるというようなことになってみますと、そういう形でいくと、これは非常に苦しいところだというお考えをお持ちになっているだろうと思う。そうですね。
  154. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 安定経済下におきまして、経済事情あるいは財政事情というものは非常に苦しいというふうには私も承知をいたしております。
  155. 上田哲

    上田哲君 そうしますと、にもかかわらず一%とか八兆円とかいうところで、そちらからすれば抑えるということは、財政上の限界だ、副総理の言葉で言えば上限だということで抑えるのか、情勢そのものがその必要がないからというのでこの辺にするのか、どっちですか。
  156. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私の考えは、国際情勢、デタントということ、しかしこのデタントというのは、やはり米ソあるいは世界のいわゆる緊張緩和という基調、これは変わらない。変わらないけれども、緊張緩和の背後には力の均衡というものがあるということを十分認識しながら私は申し上げておるわけでございますが、しかし今後五年あるいは七、八年というもの、いままで過去五年間のというよりも、六〇年代から世界動きとして緊張緩和の方向に来ておる。対立はあり、あるいは軍事的対決はあっても、なおかつそこの中において平和共存を求めようという世界のこの政治の基調というものは変わらないし、今後も、この五年間を見通すならば、あるいはまたそれから少し先を見通しましても変わらないという一つ考え方、それからまた経済事情はいま福田総理から申し上げたような厳しい経済環境、それからもう一つは、四次防をやってまいりましてどうも少し正面装備のみを重視してきて、むしろ耐久性であるとか、あるいは抗たん性という言葉が非常にわかりにくいのでございますけれども、上田さんは専門家でいらっしゃいますからおわかりいただけると思いますが、あるいは後方支援体制というようなところがいわば均衡を失っている、そういうものもやはり十分バランスしたものにしたいというのが私の考え方の基礎に実はあるわけでございます。それから人員等も抑制していかなきゃならないというようなこと、これが第一次の長官指示で示したことでございます。  この第二次では、平和時における基盤防衛力という考え方、たとえばその中におきまして情報関係、そういうようなものは一〇〇%平時においても維持しなきゃいけない部面である。あるいはまた緊急発進等を行いまするそういう監視体制等も九〇%から一〇〇%ということを考えておりますが、それを若干有事そのものの体制でいいのかどうなのか、あるいは平和時においては多少この点は合理化したことはできないのかというようなこと、あるいはまたその他の部面につきまして、平和時においてはむしろ教育、訓練というようなものに重点を置くべきではなかろうかというようないろいろの問題を、ひとつ四次防を見直すことによってポスト四次防の構想の基礎にしたいから、その見直しをひとつやってもらいたいという今度の第二次の指示に含まれておるわけでございます。  この作業をこれからいたしまして、来年の三月ぐらいをめどにいたしまして大体成案を得て、そしてまたそれを見まして検討し、あるいは国防会議に諮り、最終的に決めていきたいというふうに考えておる次第であります。
  157. 上田哲

    上田哲君 質的転換ですね。
  158. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 質的転換でございます。おっしゃるとおりでございます。
  159. 上田哲

    上田哲君 総理、非常にいま素直なお話がありまして、私はこの項をここで締めたいんです。  つまり、大変はっきりしてまいりましたことは、私はコンセンサスの場を求めたいということを言いたいんですよ。はっきりしてまいりましたことは、われわれには大きなまだ原理上の違いがありますから、それはそれなんです。いまこっちへ来いとか、そういう話をしているのではありません。何とかして外交上のコンセンサス、議論の場をつくりたいということですよ。いまのお話にもありましたように、四次防から五次防へいくところでいま質的に転換なんだという言葉も出てきた。これはもう実態をながめればそのとおりです。しかも、その原因は何なんだと言ったらデタントだ、財政事情ということもあるけれども、しかしデタントだということははっきり出てきている。これはシュレジンジャー長官の言葉を使うなら、朝鮮半島での核のファーストユースはしない、ヨーロッパはまだ何とも言えないけれども、アジアでの核の使用の必要はないということを非常に明快に言い切った。政府とだけ話をするのじゃなくて、野党の第一党と話すことの意義は非常にあるんだと言って、それをすぱっと言い切った。そういうことから言っても、デタントは明らかにここにあるんです。そしてアメリカは軍備の増強を求めないと、もうはっきり言っているわけです。そして質的転換ということが出てきた。こういう状況がいま私たちにとって、われわれの国の安全保障がどういう道をたどるのが一番いいのかということを柔軟に、有効に考えるべきときに来ているだろうと思うんです。無理やりにどっちの土俵に引っ張り込もうというのではない。  さっきから申し上げているこういう状況の中で、二つだ。自衛隊の現状でその増強をとめる。事実上そうなってくるわけです。二つ目は、国民が決意している非核政策の徹底について、いろんな疑惑を持っていますよ、国民は。そういう問題について、この二点を当面私たちの双方の誠実な共通テーマとして追求をしていく。こういう追求する土俵の中で安保と中立、これはもう全然違うんですけれども、この両方の原則というものを大いに闘わしていこうじゃないか、こういう土俵ができるのではないかと私は思う。そのチャンスだと思うのだが、総理、いかがですか。
  160. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 坂田防衛庁長官が申しておるように、これからは質的な充実を図っていく。あるいは自衛隊をだんだん拡大していくという考えではないのだということですね。それから第二の点の非核三原則というものをますます徹底していく。これはやはり日本人の一つの国民的な合意が成立しておるわけでしょう、この問題は。したがって、これはやはり徹底していくということは当然のことでございます。まあ外交の基本姿勢についてはいろいろ差がありますが、こういう点については共通の場というものが持てると私は思います。
  161. 上田哲

    上田哲君 総理としては精いっぱい踏み込んでいただいたと思うんです。総理が信頼される平沢和重さんが、いまや一方にエネルギーを挙げながら、一方はやはり非核政策、軍縮を問うていくべきいまチャンスが来ているのだということも言っておられるわけですね。そういうところへわれわれもひとつ大いに踏み込んで、お互いに向こう側とこちら側の議論ではない具体論で、やはりたとえば核についての疑惑についても、あるいは先ほど来お話があったから、量から質へと言われても、海を重点にするいろんなロジスティックスとかサプライとかの問題というものはありましょうから、これはもうほかでやらなければならぬけれども、それを日本の安全保障の有効性に向けて、少なくとも安保と中立ということを両方でながめながら、どっちかでなければ絶対いけないなどというのではない議論に発展させていく出発点にしたいと思うんです。  そこで次の問題に入ります。  朝鮮問題、きのう国連二つ決議案が並んだのであります。もはやこれは三十八度線上で、たとえば武力的に争うという段階ではない。明らかに国際場裏の中で話し合い以外にはないんだということを認識することになったと思うんです。いかがですか。
  162. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 両決議案の底に流れておる考え方は、南北朝鮮の対話を促進するということであります。
  163. 上田哲

    上田哲君 官房長官の談話によりますと、総会上程前に話し合いで解決すると言われているようですが、どういう話し合いを考えておられるんですか。
  164. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 二つ決議案が成立したわけでありますけれども、よく御存じのように、決議案が成立するということ自体は実は何事も解決していないわけでありまして、いま総理が言われましたように、関係者が話し合いをして、そして朝鮮半島の平和を維持しながら国連軍を解体するのにはどうしたらいいかということでございますから、二つ決議案を言葉の上で一つにまとめるという作業もあながち無意味では私はないと思いますけれども、そういう作業の中で、現実に何ができるかということを探すのが私はやはりより大事だと思うわけでありまして、当事者たちが話し合えということに両方決議案はなっておりますが、その当事者というものの定義が実は多少異なっております。そこらあたりも両方考え合って、必要によりましては仲介する人もあって、そうして当事者が本当に話し合っていくということが決議案を一本にまとめる努力と並行してと申しますか、実体的には前者の方が実体であるわけですが、そういう努力がこれから行われるべきだし、わが国もそれに努めてまいりたいと思っておるわけであります。
  165. 上田哲

    上田哲君 話し合いと言っても、アメリカと一緒になって一方の方に全力で加担したと考えられている日本が、どういう話し合いができるのかという不安を持つわけです。たとえばASEAN諸国、あるいは国名を挙げることはいいかどうかわかりませんけれども、ウガンダとかパナマとか、あるいはタイ、シンガポール、インドネシア、そういう国々の動きなどが、日本がたとえば経済援助というようなものを使いながらいろいろとアメリカ側に、韓国側に工作をしたのじゃないかと言っている人たちもいる。信じたくはないけれども、そういうふうに見られている状況の側にいることは間違いないわけですから、そういう事実、一体どうなのか。あるいは何かの訓令を出されたことがあるか。また、そういう中で実際の対話というのは現実のものとしてはどういうことがあるのか、対話の促進のための努力ですね。その辺についてもう少し突っ込んだ御説明をいただきたい。
  166. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国は、わが国自身が共同提案国になりました決議案の趣旨を説明し、そして賛成を得るために、率直に申しまして外交機能をフルに活用をいたしました。しかし、その際、必ずわが国が忘れずに説明をいたしておりましたことは、決議案の成立も大事であるけれども、結局、もう申し上げるまでもなく、国連軍の解体そのものが安保理事会の問題で実はございますしいたしますから、決議案が通るということも大事だが、やはりその話し合いの場を国連というものが設けるという、そこが大事だということは当初から実は申してまいりまして、そのことが場合によりましてわが方の決議案の推進に差しさわりになるということを韓国から指摘されたことすら実はあるわけでありますけれども、しかし、実体はそうに違いがないではないかということでまいりました。また、私自身が国連の事務総長に対しましても、非公式ではありますけれども、決議案が成立した後、事務総長の努力に待ちたいと考えている点について、あるいはソ連に対してもそうであったわけでありますけれども、しょせんそこに持っていくのがこのことの最後の落ちではないだろうか、結果ではないだろうかということを当初から申してまいりました。で、事実またそういうことになってまいったわけでございます。  ただいま御指摘のように、ASEAN諸国が第三の決議案を用意したこともさようでございます。また、ウガンダ等が昨年の投票態度を幾らか変えましたことも事実である。その間にございますものは、恐らくは一つには、アルジェリア側の決議案が、朝鮮半島の問題を議論するのに現実にある韓国というものを話し合いから全く除外をするという考え方はいかにも現実的ではないではないかという見方が、これはまあ問題に遠い国であればあるほど私は自然に感じたことであろうと思いますので、したがって、その辺も北鮮の側から申せば、とにかく今度の決議案が採決をされて通過をしたわけでありますから、立場というものはかなり国連の中で認められたのであって、いままでの北鮮とは違うのでありますから、そういうことの中で自信を持ってやはりそういう話し合いというものに心を開いて入るべきではないかというふうに考えておりまして、そういう努力をわが国としては続けて、むしろこれから先が実は問題の本質に入るところであるというふうに考えておるわけでございます。
  167. 上田哲

    上田哲君 南はともかく、北が初めてああいう形で可決をされたということが、抗しがたい世界の流れを物語っていると思うんですがね。この時点で両方の話し合いを進める役に立ちたいなんて言ったって、これは波に乗りおくれたというのか、抗しがたい流れを見逃したということの方が問題であって、これは間に合わない。われわれはやっぱりここで、これまでのわれわれの国の朝鮮政策というものを、アメリカの後をついていくという言葉が悪ければ、少なくとも韓国一辺倒のあり方というものを変えるということが先にないと、この話し合いの場をつくっていこうなどということはあり得ないのではないか。七四年の民間投資総額四億ドルであり、あるいは貿易総額四十二億ドルというような数字の中に、何か何となく向こうへ流れ込んでいく、しかも国民の理解とは違うところできずなが結ばれていくということの不安も含めて、いま対韓一辺倒であった外交姿勢を変えるということがやっぱり先にあることが大事ではないか。そしてまたその点において、この決議案二つがこういう形で並ぶについて、日本の果たす役割りを率直に反省するということが同時になければならないと思うんですが、いかがでしょう。
  168. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国は北鮮とは国交を持っておらないわけでございますけれども、人の行き来、あるいは民間の行き来、経済的な行き来は逐年増大してまいったわけであります。もとより韓国とは国交を持っておりますから、両方の関係は濃淡から言えばこれは同じであるとは申せない。それは事実でございますけれども、わが国が何分にも一番諸国の中で朝鮮半島に近いということ、したがって、わが国動きによっては朝鮮半島に相当大きな影響を与えるということもございまして、いまの平和のバランスを崩すことは差し控えなきゃならぬということから今日までの態度をとり続けてまいりました。  したがって、わが国が今回韓国側の決議案を主唱したことはそのとおりでありますけれども、それは一つは、今度の決議案が積極的に国連軍をやはり解体しようということを言っておること、そうしてまたそれとの関連で、あるいはざらにもう少し深い将来への、あの場合にはアレンジメントという言葉を使ってありますけれども、をも含めて関係国が相談をすべきではないかと言っておる点は、確かにわが国と対韓及び対北鮮との関係は濃淡がございますけれども、言っていること自身は、これは北鮮もここまでまいりますれば虚心に理解をしてくれていいのではないだろうか。  わが国は完全に中立的なと申しますか、両方と同じ度合いの関係を持っておったというのでない、片方は承認をしておった、片方は承認をしていないということは、それは言われるとおりでありますけれども、でありますけれども、この決議案が主張しておるところは決して一方的なアン・フェアなことを言っておるのではない。いずれにしても、北鮮側にいたしましてもこの話は話し合いをしていかなければ、しょせんは米国軍が韓国におりますのは二国間の条約の結果でございますから、話し合いをしていかなければ力による以外は事態は解決できないということは、北鮮といえども理解を恐らく間違いなく私はしておるところだと思うので、ただ、いままでのいきさつがございますから、国連でこのように少なくとも北鮮決議案というものが多数で可決されたという段階において、やはりもう少し自信を持って話し合いというものに入るという気持ちを北鮮が持ってもいいのではないだろうか。また、国連総会全体がそういうふうな場を提供するということに私は努力をすべきではないかと思います。
  169. 上田哲

    上田哲君 これまで一方の後押しをしていたわけですからね。この態度を変えなければだめだと言っているんです。これが一つ。少なくともビヘービアとして、これでうまくいったと言って喜んでいる談話を出すような外交官の姿勢というものは変えなきゃならぬでしょう。こういう点はどうですか。
  170. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 片方におきまして、朝鮮半島の問題を韓国を抜きにして解決できるとはわれわれは正直考えないものでありますから、そういう意味で、それは非現実的ではないかと言っておったわれわれの決議案が採択されたことは結構なことだと思っているんですが、しかし、本来この決議案の競争というものが事の本質ではないのでございますから、勝った勝ったと言って喜んでおるという気持ちとも正直言って違うわけでございます。むしろ、仮にわが国決議案だけが通って北鮮案が全く顧みられなかった場合、あるいは逆に、北鮮案だけが通ってわが国決議案が全く顧みられなかった場合というような場合には、話し合いという空気はむしろ生まれがたいのではないだろうか。国連の加盟国全体がいわばああいう形で両方決議案を通したというところに、これは両方が話し合うしかないではないかという全体の世論の重みというものが感じられるような事態になったということは、やはり将来への話し合いの動機をつくることになるのではないかというふうに考えるわけです。
  171. 上田哲

    上田哲君 この状態のままでたとえば北朝鮮側が日本と話し合いをしたいと、日本の態度を理解するということがあり得るでしょうか。あり得るとするならばどうすればいいですか。
  172. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 恐らく、このままでわが国と話し合いを北鮮がするということに私はなってまいらないと思いますし、わが国はまたそれを実は主唱しておるわけではないわけでございます。わが国が最終的な話し合いに入ることがいいかどうかすら実は問題はあろうと思うのです。そうではなくて、国連の当局、まあ事務総長にいたしましても、だれにしてもよろしいわけですが、そういう、この問題について文字どおり第三者的な、中立的な立場をとってきた人が国連という権威のもとにそういう場をつくる仲介をすべきではないか、そのためにわれわれはその舞台裏で働こうではないか、それは北鮮のためとか韓国のためとかいうことでなく、この二つ国連考えが割れておりますときに、これを一つにまとめていくのにはやはり当事者の話し合い以外にないではないかと考えますがゆえに、その仲介を国連当局がすべきではないかという、そういう陰の働きを少なくともわれわれはすべきではないかと、そういうことで当初から実は考えておるわけであります。
  173. 上田哲

    上田哲君 北朝鮮がもっとその気になってくれてもいいではないかという御趣旨の御発言があったから私はそう言ったんですけれどもね。このままでは日本が組みしているということに対しての疑惑がもう残るだろうと、素直にはなれぬだろうという事情をつくったではないかと私は言うんです。まさに中国問題をもう一回同じ形で繰り返すことになりはせぬかと、こう私は言いたいんです。つまり、世界の流れは速いですよ。いままで北朝鮮が国連の上にああいう形を出せなかったときとは違って、明らかにああいう形で可決となってからの国連の空気はがらっと変わります。私は二十六回国連総会に行きまして、中国加盟のときをこの目で見てまいりましたから。がらっと変わるんです。あのときに反対したアメリカ代表ブッシュは、いまは中国の大使になっていますよ。そういう状況アメリカを含めて速いんですよ。このときに日本だけが取り残されるようなことになってはいけないのではないか。だから、これまでの姿勢を変えるべきではないのかということを強く求めるのですが、お考えは変わりませんか。
  174. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 非常に激しい票争いをやったわけでございますし、私どもはわが国決議案を持っておったわけでございますから、北鮮が、日本が自分に対して好意的であったと考えておる理由は、もちろん残念ながらございません。疑いばかりでなくって、実は日本は片っ方の決議案を担いだではないかということは歴然としておりますから、その点は疑いどころではない、実は、はっきり北鮮はそう思っておると思うのでございます。その点をわれわれはここで否定するわけにはまいりませんが、しかし、われわれといえども、われわれの決議案といえども国連軍はやはり引いたらいいんだということを言っておりますことは従来よりは一歩前進でありますし、そうして来年までこの問題はほっておいて、またやればいいんだとも思っていない。やはりここで当事者の話し合いに入るべきではないかと考えておる点は、われわれは確かに片っ方の決議案を主張しましたけれども、それとは別に、客観的な事実あるいは必要として北鮮も感じてくれていいのではないか。私どもは北鮮自身にじかに説得力を持っておるとは、それは思いません、昨日まではそういうふうに行動しておらないんでありますから。そうは思いませんけれども、国連というような、あるいは事務総長というようなものが第三者的な立場からそういう場を設けてくれることにわれわれは努力をしても、これは決して北鮮のためにならないことはないというふうに考えるわけです。  それから最後に言われました点は実は重要な点でございますが、私どもとしては非常に朝鮮半島には影響も受けますけれども、大きな影響力がございますから、南北の問題というのは両者の話し合いによって解決をされることが望ましいと思っているわけでして、そういう両者の話し合いを通じ、あるいはそこに国連が介在しました形で、この問題がそういう場を通じて処理されていく、解決されていくということが、わが国として、これはいかにも自己本位なことを申すように聞こえるかもしれませんけれども、一番国益に合った解決の仕方ではないかという気持ちを実は持っておるわけでございます。
  175. 上田哲

    上田哲君 朝鮮民主主義人民共和国は、きょうの日本国会をながめておると思うのですがね。ぜひ南北の対話交流を進めたいと希望しておられると、その言葉の中には、これまでの日本のやり方というものを変更するという気持ちが含まれていると理解していいですか。
  176. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) つまり、朝鮮半島のありさまが現状のままでいつまでいってもいいというふうにはわれわれは考えていないということ。そうして、最善の解決策がないのならば次善の解決策が図られるべきではないかということについて、われわれは、韓国との関係、北鮮との関係は御指摘のごとくでありますけれども、われわれとして果たせる役割りを果たしたいというふうに考えております。
  177. 上田哲

    上田哲君 総理、若干の変更があったと私は認めますけれども、ぜひひとつ南北朝鮮の話し合い、それを促進するためにはあとう限りの努力をしたいという決意をお持ちでしょうか。
  178. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 朝鮮半島の安定のためには南北が話し合いをしなければこれは解決しません。われわれはやはりそういう国際環境をつくることに努力をすることが必要である、こう考えます。
  179. 上田哲

    上田哲君 たとえば、ここにこういうことがあるのですね。私たちはアメリカに行きまして、ニューヨーク・タイムズ、あるいはワシントン・ポストもそうでしたけれども、特にニューヨーク・タイムズから北朝鮮へ常駐特派員を送りたいと、これについてひとつ力をかしてくれないかということがありました。すでにその接触の努力をしております。最近帰りましてから、アメリカのCBS、放送の方もひとつ一緒にしてくれないかという声も来ています。大変いいことだと思う。私たちはそれを努力したいと思っておりますけれども、たとえばこういうことをどうお考えになり、また方法があったらお手伝いいただけますか。
  180. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカと北鮮との間に、そういうジャーナリストというものが行かれて、そしていろいろな北鮮の実情が紹介されるということは、アメリカと北鮮との理解を深める上に役立つと思いますから賛成であります。
  181. 上田哲

    上田哲君 金東雲氏の出頭を求める衆議院での問題について、荒舩衆議院予算委員長政府との見解に違いがあるようでありますから、御説明をいただきたいと思います。
  182. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 見解の相違はないというふうに考えております。
  183. 上田哲

    上田哲君 委員長の衆議院予算委員会での議事録と、その後の新聞記事における外務省の見解とは違うと私たちは理解せざるを得ません。
  184. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 過般衆議院の予算委員会におきまして、委員長から、長いこと御審議の経緯があったわけでございますけれども、金東雲一等書記官を日本に出頭を要請することがしかるべきであるという審議過程において議論があって、委員長としても国会の審議尊重の立場から、このような要望を実現するように政府に要望すると、こういう御発言がありまして、私は、委員長の御発言でありますから、立法府の一委員会と申しまして――立法府と仮に申し上げますが、申し上げてよろしいんだと思いますが、御意思として韓国側にその要望を申しましょうと、こういうふうに申し上げておるわけでありまして、私は韓国側に立法府のそのような御意思を伝えるつもりでございます。
  185. 田英夫

    ○田英夫君 関連。  いまの外務大臣のお答えは、大変衆議院での速記録に残っている御答弁と趣旨が変わってきているように思います。速記録によりますと、荒舩委員長が、「先ほど小林委員から、金東雲事件に関し、本人の出頭を要請するよう要望がありましたが、私もごもっともな御発言と思いますので、委員長として政府に対し善処方を要望しますが、外務大臣いかがでございますか。」こう聞かれたのに対して、宮澤外務大臣は「政府は、国会の御審議を尊重し、ただいまの委員長の御発言の御趣旨を体し、責任を持って委員長の御要望が実現するようお約束をいたします。」――これは日本語をどう読んでも、本人が出頭することが実現するようにやりましょうと、こういうことを約束されたとしか読み取れませんけれども、改めて本当のところをお答えいただきたいと思います。
  186. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その金東雲書記官がわが国に出頭されることを私がお約束するわけにいかないことは、これはもとよりのことでございます、それは私なり日本政府なりの権限に属することでございませんから。それはもうもとよりきわめて明らかなことで、どなたにも明らかになっておることと思います。したがいまして、私が申し上げましたのは、そのような立法府の御意思を責任を持ちまして韓国側に伝え、善処を要望いたしますと、お約束をいたしますと、こう申し上げておるわけでございます。
  187. 田英夫

    ○田英夫君 これは日本語をどう読んでも、いまのような大臣のお答えにはならないんですよ。しかし、確かに一方で日本韓国ともに犯罪人引渡条約に入っていない、二国間に犯罪人の引き渡しについての協定もない、そういう状態の中で金東雲を犯罪容疑者として出頭をさせ、日本の警察当局が調べるということは要求すること自体できないことは明らかなんですね。これは条約上、協定上そのとおりであります。ところが実際には、これをどう読んでみても、それをやりましょうと、こう約束をされている。しかも衆議院の予算委員会の理事会でのやりとりは、実は外務省からこの宮澤さんの答えの原案が最初に出され、それはいままさに宮澤さんが言われたように、取り次ぎましょうという表現になっていたのを、委員長初め、特に野党の理事から、こういうことでは納得できないという指摘があって、先ほど私が読み上げたような、引き渡しを実現するというふうにどう見ても受け取れる発言になって、公式に速記録に残った、こういうことになりますよ。そうすると、まさに立法府の意思を取り次ぐというのではなくて、実際にはできないことを立法府に約束をしたということになる。これはまさに国会を侮辱したことになるんじゃないんですか。ここのところは、どっちに転んでもこれはおかしいですよ。  そして、実はその日のそういう答えを予算委員会でやった直後に、すでに宮澤さんは新聞記者に対して――実は翌日の新聞が外務省筋あるいは外務省首脳という表現で伝えているのは、ただ取り次ぐだけだということを言っておられる。きのうもまた新聞記者との懇談会の席で、それをまた繰り返して、ただ取り次ぐだけだというふうに害われた。これはおかしいじゃないですか。取り次ぐだけというならば、これはうそを言ったことになりますよ、速記録にはっきり残っている。日本語のできる人ならだれが読んだってこれは犯人を出頭させる、金東雲を出頭させるということを約束した、実現するようお約束しますと言うんですから。これはしっかり答えていただかないと、三木総理大臣、これはまさに立法府と行政府の問題として内閣の責任をとっていただかなければならない問題になりますよ。仮谷発言どころではないですよ。まさに、むしろ仮谷発言がここで実行されたというふうにわれわれは考えざるを得ませんよ。しっかり答弁をしていただきたいと思います。
  188. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 委員長の御要望、私の答えが出るに至りましたいきさつにつきましては、私から申し上げるのは実は御遠慮いたすべきかと思ったのでございますけれども、ただいま田委員から御指摘になりました、まさにそのようないろいろ御協議があったわけでございます。その結果として、そのように事態を収拾することが適当であるというふうに、権威のある国会委員会、理事会においてお考えになったのでありまして、いやしくも国会委員会あるいは理事会が、法律上政府の権限にないことについて政府に約束をさせるということはおやりになるはずがないのでございますから、私はそのような環境において決定いたしましたことを、私どもの権限のあります限り、力のあります限りで努力をするという以外にないものと考えております。
  189. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 田君、簡単に願います。
  190. 田英夫

    ○田英夫君 これはいまのお答えはおかしいですよ。それでは速記録を直しますか、衆議院の予算委員会の。どう考えても、これは日本語としては、本人の出頭を要請するよう要望があったと、委員長のその要望が実現するよう約束をしているというのは、どう見たってこれは日本語でいまのようなことにはなりませんよ。しかも、さっき申し上げたように、権威ある衆議院の予算委員会の理事の皆さんが集まって相談をされて、いま言われたようなことじゃだめだと言って、こういう文章にして、それをしかも読まれたんですね、外務大臣は。どうしてそれならばそのときに、そういうことはできないんだと、こう言われなかったんですか。
  191. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこに至りますまでに、先ほど田委員御自身が言われましたように数時間の経緯がございまして、その経緯の中からそのような文章ができ上がっておりますから、御関係のお方はもとよりその経緯を御存じであります。また仮に御存じありませんでも、日本政府が他国の市民を力でもって日本に連れてくることができるとは、これはどなたもお考えになるはずはないのでありますから、それはもうきわめて明らかなことで、それにもかかわらずそのような文章が適当であるとお考えになりましたのには、その間にとにかく政府は最善を尽くせということに考えるほかはありませんと、したがいまして、政府といたしましては、そのような予算委員会の御趣旨が実現するようにわれわれとして最善を尽くすと、これが国会に対してわれわれが誠実なるゆえんであると、こう考えております。(「ごまかしの答弁するな」「国会軽視だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  192. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 不規則発言を禁じます。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  193. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  ただいまの外務大臣の答弁について納得のいかないという御主張もございますので、重ねて明確に外務大臣から納得のいくような御答弁をお願いいたします。
  194. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま、せんだっての十月二十九日の衆議院予算委員会議事録からの写しをとってまいりましたので、ちょっと読ましていただきます。  荒舩委員長の御発言でございますが、「先ほど小林委員から、金東雲事件に関し、本人の出頭を要請するよう要望がありましたが、私もごもっともな御発言と思いますので、委員長として政府に対し善処方を要望しますが、外務大臣いかがでございますか。」、それに対して私から、「政府は、国会の御審議を尊重し、ただいまの委員長の御発言の御趣旨を体し、責任を持って委員長の御要望が実現するようお約束をいたします。」、これが本件に関する部分でございます。私といたしまして、委員長から出頭を要請するよう要望がございましたので、その要請をいたしますにつきまして責任を持ってお約束をいたしますと、こう申し上げたわけでございます。したがいまして、私としましては、このような立法府の御意思を体しまして、委員長の御要望が実現するように韓国側に対してこの旨を要請をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  195. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 田君、簡単に願います。
  196. 田英夫

    ○田英夫君 いまのお答えは結局衆議院におけるお答えを確認をされたというふうに私どもは受け取らざるを得ないのです。つまり、それは通常の日本語の理解で言えば、金東雲を出頭させる、それが実現するよう約束をするというふうに日本語の上からは受け取らざるを得ないのです。しかし、それは先ほども申し上げたように、条約上、協定上できるはずのないことであります。それを政府として国会に対して約束をされた。これは国会を侮辱したものと受け取らざるを得ない。ところが、そもそもそういう矛盾を引き起こした原因はどこにあるかということをこの際政府の皆様によくお考えいただきたいと思います。そもそも、この七月二十二日に韓国の口上書なるものを口実にして金東雲事件というものは解決をしたというふうに無理やりに持っていかれた、ここにそもそものこのいま問題になっていることの原因があるということをよくお考えいただきたい。日韓閣僚会議を開く前段として、あの問題が解決したということにしなければ日韓閣僚会議が開けないから、それを開きたいために、そして韓国にまた経済援助を続ける、再開する、こういう韓国からの、朴政権からの要望に対して、再びまた黒い疑惑のあると言われている援助を再開するために、つまり日韓閣僚会議を開くという目的のために無理やりに金東雲事件を、日本の捜査当局があらゆる努力をやって、国際的にもう指紋というものは、しかも国会の答弁で治安当局の皆さんが繰り返してこれは確度の高いものだということを答弁をされているほどの指紋が出ているにもかかわらず、この問題は確たる証拠がないという韓国側の治安当局の言い分を一方的にうのみにした、そういう口上書で解決したと称した、そこに問題があるんじゃないんですか。だから、つじつまが合わなくなってしまう。このことを三木総理大臣初め政府の皆さんはよくお考えいただかなければならない。だから、国会を侮辱するような結果になってしまったということをよくお考えいただきたいと思います。改めて、いまの私の発言を踏まえた上で外務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  197. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この件につきましては、わが国の捜査当局の所見韓国の捜査当局の所見が一致をいたしませんで、わが国はそれに対して解明を求めておったわけでございます。一昨年の十一月に、韓国の首相が韓国大統領の親書を持って来日をされ、遺憾の意を表明されたわけですけれども、金東雲書記官の問題についてはなお捜査当局の所見がかくかくであるということで、韓国側は調査を約したわけでございます。しかるところ、昨年の八月十四日になりまして、韓国としては事実を立証するだけの結果にならなかったと捜査を一応打ち切ると言ってこられましたので、わが国からさらにそれに対して、わが国は満足をし得ないという口上書を発出いたしました。韓国は、したがいまして、その後、捜査を継続をいたしたわけでございます。  しかるところ、本年七月二十二日になりまして韓国側から口上書が参りまして、その後も引き続き捜査を継続したけれども、しかし、嫌疑事実を立証するに足る確証を発見し得ずに、このたび不起訴処分とすることになった、しかしながら、この捜査の結果判明したところの本人の東京における言動は、日本警察当局の嫌疑を受けるなど国家公務員としてその資質を欠き、品位にもとるものと認め、公務員職をやめさせたと、このような口上書を韓国側から寄せられたわけでございます。  この段階で、私どもが外交の責任をお預かりしております行政当局として考えましたことは、韓国として公訴を維持するに足るだけの事実を発見し得なかったということであれば、これは韓国の司法あるいは検察というものはおのずから一定の独立の立場を行政から持っておるものであろう、しかもそれは独立国の内部におけることでございますから、遺憾ながらこの点はわが国の検察当局、警察当局の所見と、他の独立国である国の警察、検察当局の所見が一致しないということと考えざるを得ない。さらに、それを第三者的な方法で一致させる方法はないわけでございますから、その点については満足とは申しませんけれども、これ以上独立国の間で捜査当局の所見を一致させる方法はない。したがって、わが国の捜査当局は、なお独自の立場から捜査を続けるといたしまして、韓国側が最終的に公訴を維持し得ないと考えたことについては、それとして、これは終結をせざるを得ないであろう。ただ、他方で、韓国側は行政としてでき得るところの最善の処置をとって本人を懲戒免官をしたということでございますから、それはそれとして韓国側の努力を認めるべきであると、こう考えまして、行政の責任におきましてこの事件について終止符を打つ。もちろん、金大中氏の問題は、これは残っておるわけでございますが、ただいま、これは当面の問題でございませんから省略をいたします。そのような行政の判断につきましては、御批判は虚心に承りますと。しかし、行政としてはさように判断をいたしまして、そして私が訪韓をいたし、やがて九月に閣僚会議が開かれたと、このような経緯でございます。  せんだって、衆議院の予算委員会で御提起のありました問題は、そのような行政当局の判断は、立法府の立場、予算委員会の立場から言えば十全ではない、したがって、金東雲書記官の出頭を求め、さらにわが国において事実の究明を行うべきであると立法府は考える、あるいは予算委員長考える、委員会代表して考えると、こういう政府に対する御要望でございますから、政府といたしましては、立法府がそういうお立場であるということを尊重しつつ、その御要望が実現するように努力をいたしますと、かように申し上げました。その努力をいたすつもりでおるわけでございます。
  198. 上田哲

    上田哲君 これは二つの問題があるんですね。衆議院における荒舩委員長のお取り扱い及びこれを受けた衆議院予算委員会の意向は、呼べなくても構わないから一言向こうへ言えということであろうはずはないわけです。呼べるか呼べないかの事実問題の可能性ではなくて、外交努力としてそのことを政府に求めた。ところが、向こうへ伝達をするということは外交努力ではないんです。なぜ外交努力にならないかといえば、いまるる御説明があったように、質疑の中でも明らかになったように、外交努力はできない外交関係にあるということなんです。そこが問題なんです。  もう一つの問題は、できないことをわかっていながら、たとえば、言い過ぎかもしれないけれども、補正予算の審議に追われて、国会に対してできないことをわかっていながら、いかにも外交努力をするがごとくしてその場をつくろったということであれば、行政府の責任は免れるべくもない。この二つの問題です。  したがって、いま御説明で明らかになった点について言うならば、第一点においては、外交努力としてわれわれはできないのだということをはっきり政府がお認めになる。これまでの経緯においてできなかったのだということを事情を明らかにして陳謝される。そして、それにもかかわらずこのような約束をしたということは間違いであったということを正式に、本院におけると同様に衆議院予算委員会に向けて意思を明らかにされるのであるならば納得をいたします。それ以外ではわれわれは納得する論理を持たないことを、社会党を代表して申し上げます。
  199. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私はこのように理解をいたしております。  先ほど申し上げましたように、行政府としては先ほど御説明したような判断をいたしたわけでございますが、立法府であるところの衆議院予算委員会におきましては、そのような行政府の判断は、立法府の判断するところでは適当でない。したがって、立法府の意思としてはかくかくの努力を行政府はいたすべきであると、こういう御意思表示と承りました。  で、行政府考え方と立法府の考え方が違うことは、これは三権分立の立場からしばしばあり得ることでありまして、私は、立法府のそういう御意思はそれとして尊重いたさなければならないと思います。したがいまして、そのような立法府の御意思を先方にそのとおり伝え、善処方を要望するということは、やはり私どもに課せられた務めであるというふうに考えておるわけでございます。
  200. 松永忠二

    松永忠二君 委員長、議事進行。
  201. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 関連ですな。
  202. 松永忠二

    松永忠二君 はい。  私たちは、別にこれで長い時間をここで費やしてどうこうしようというようなことはありません。議事を進めていくということは非常に必要なことだと思っているわけであります。ただ、しかし、いまの御答弁でも明らかなように、この文章はどう見ても「本人の出頭を要請するように要望がありましたが、私もごもっともな発言と思いますので、委員長として、政府に対し、善処方を要望しますが、外務大臣、いかがでございますか」と、こういうように言われたのに対して「政府は、国会の御審議を尊重し、ただいまの委員長の御発言の御趣旨を体し、責任を持って委員長の御要望が実現するようお約束をいたします。」責任を持って委員長の御要望が実現するようにお約束をする、それは、出頭を要請する小林委員の要望はごもっともだ、それだから委員長としては、政府に対し善処をしなさい、そうしたら、委員長の御趣旨どおり私は委員長の要望が実現するようにお約束をしますと、こう言っているわけであります。しかも、言ったその日の夕方の記者会見では、政府としては金東雲氏の再入国を要請するつもりはない、国会の要望を韓国に伝えることを約束しただけだと、こう言っているわけです。それじゃ言うとおり要請だと言っても、要請すらしないで、ただお伝えをするだけだ。そうしてまた同時に、いまの発言では、こういうことはできないことはわかっているけれども、こういうふうに発言をしたんですと、こういう話である。それでは、できないことがわかっているなら、政府としてはこう考えるが国会の御要望がこうだからと、しっかり付言をすべき筋合いのものであるし、また、この文面は出頭を要請しているのだから、要請をすることは事実しなきゃならないのに、それはただ伝えるだけだと言ったところにも問題が私はあると思う。  そこで、これをいまここでいろいろな質問をし合うということもなかなかできない実情だと私は思うんです。しかも他院のことである。したがって、この処理の仕方をやはり理事会で相談をして、そうして次に進んでいくという方法をしなければ、このまま、いまの外務大臣の答弁をそのままうのみにして次に進んでいくわけにはいきません。したがって私は、先ほどから申し上げているように、これはその処理の仕方をひとつ短時間、とにかく理事で相談をして、そうして皆さんの御納得を得て次に進んでいくという措置をしてほしい、こういうことをいわゆる議事進行として要求をいたします。即刻ひとつ理事会を開くように要望いたします。ただこのままで進むというやり方には絶対納得ができません。(「委員長おかしいじゃないか、議事進行をきのうは取り上げてない」と呼ぶ者あり)
  203. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまのは、関連として委員長は発言を冒頭に許しました。誤解のないように。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  204. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  ただいま上田委員からの重ねての質問がございました。皆さん方に納得を得、明確に了解してもらうために、明日この委員会において外務大臣から答弁を明らかに願いたいと存じますから、御了承願いたいと思います。
  205. 上田哲

    上田哲君 私は、一貫して外交上のコンセンサスを求める議論を展開していたわけでありますが、途中こういうデッドロックがありまして残念であります。ぜひ問題を戻したいと思います。  六カ国首脳会議でありますけれども、これには私たちはいろいろ心配を持っております。しかし、一点にしぼりますけれども、日本総理によって貿易問題にしぼっての基調演説をされるそうでありますけれども、われわれが心配するぎりぎりの一点は、一体消費大国としてのわれわれの国が、こうした言うなれば大国同士の中にのみ伍することによって、世界的なスタグフレーションとは言いながら、資源供給国、開発途上国に対して疑念を受けることになりはしないか、こういう心配であります。総理も南北問題を重視されるそうでありますし、国会をあけて出られるわけでありますから、どうかひとつ国会に対して、どのような方針で特に南北問題、資源国に対する立場を解明されるのかということを篤と承っておきたいと思います。
  206. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 各国の首脳同士がリードオフする問題を準備会議で決めたわけです。貿易を私がリードオフする。それに限らないのですけれども、一応そういうことになっておる。これはやはりこの六カ国というものは自由世界において責任を感じなければならぬ国ですから、この世界的不況というものに対して、景気の回復に協力し合って、それで一日も早くこういう世界経済というものを正常な回復に持っていかなければならぬわけです。そうなってきますると、やっぱり貿易問題というのは重要な問題ですね。日本の場合も、輸出の不振というものが不況に大きな影響をしているわけで、その貿易一つの原則になるものはやっぱり自由貿易の原則、これを不況であるからといって各国に保護貿易的な傾向が出てきて、そうなれば世界経済は縮小均衡のような形になって、不況は脱出できません。  しかし、そこで一つの原則としては自由貿易、価格メカニズムというものが働かなければいかぬですけれども、いわゆる第三世界というのは価格メカニズムに乗らない世界ですから、だから先進工業国の間においては自由貿易の原則が貫かれなければならぬが、第三世界といわれる発展途上国に対しては、関税とかあるいは貿易政策の上において特別な配慮がなされなければならぬ。そうならなければ、発展途上国は自由貿易の原則で貫かれたらいつまでも発展途上国の現状を脱却しにくいですから、だから一つ貿易という場合に、発展途上国というものはその原則の中から別の考え方が私は要ると思う。だから、発展途上国に対する購買力というものをどういうふうにしてつけていくかということの仕組みは、これは首脳会議の大きな議題になる。  日本は、この点についてはいま検討を政府の方としても加えておりますし、各方面の意向も聞きたい。党首会談なんかを私が開きたいというのは、国会の運営というようなことでなしに、こういう問題について野党側の立場もお聞きしたいと私は思うんです。この首脳会議というものは、三木内閣の問題などと考えてないんですよ。これはやっぱり国際社会の中において日本はどういう貢献をできるかという、日本の国際評価に私は関係すると思うんです、この会議は。そういう意味において、一内閣の問題を超える問題である、ある意味においては超党派の課題かもしれないと。そういうことで、まだ申し込んでおりませんが、上田君もどうか応ずるようにひとつお話を願いたいと思うわけでございます。そういうこと以外ないんですよ。考えていない。そういうことで、この貿易問題というものについて、そういう考え方からひとつ日本としての考え方をまとめてみたいと思っております。
  207. 上田哲

    上田哲君 関税と貿易上の特恵ということをおっしゃいましたけれども、これはもう少し突っ込んで御説明願いたい。
  208. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはいろいろな貿易上の障害というものがありますから、これを、やはり日本の国が不況だからといって障害を設けないで、よくて安いものがみな売れるという原則を貫かなければならない。東京ラウンドと言われるああいう取り決めなんかも、実際にこれを積極的に交渉を始めて、これが実現するような努力をするということも、これは一つの大きな問題点だと思います。
  209. 上田哲

    上田哲君 非常に大きな提起だと思うんですが、総理でなくても結構です。その辺もう少し、ただ大国の首脳と並んで写真撮ればいいということではないわけでありますから、野党にも理解をせよと言い、国会をあけると言われるわけですから、そういうところはもう少しくひとつ具体的に御説明をいただきたいと思います。
  210. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま各方面の意見も聞き、政府の中においても、これに対しての日本考え方というものをまとめておる段階でございますから、この場面ではまだこういう考え方で臨むんだというところまで問題が煮詰まっておりませんので、それは御了承を願います。
  211. 上田哲

    上田哲君 党首会談としきりに言われるんだけれども、そういうところを少し具体的に伺いたい。大蔵大臣、外務大臣、それぞれ所見を伺います。
  212. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 問題は、結局ブレトン・ウッズから発しましたところの通貨あるいは貿易等に関する、これはいわば先進国を中心とした制度であったわけでございますが、この制度が崩壊しかかり、一九七一年のいわゆるニクソンショック等々によっていわば崩壊したというふうに考えられます。それにかわる新しい制度がいかなるものであるべきかについて、いま世界が模索をしておるところであると思います。しかもその間に、申し上げるまでもなく、産油国の問題あるいは非産油の発展途上国の問題というものも看過すべからざる問題になってまいりましたから、かつての先進工業国のみを中心にした新しい制度を打ち立てるだけでは足りませんで、そのような先進工業国、産油国、非産油発展途上国、そのすべての人たちの間で新しいシステムをどのようにしてつくり上げるかというのが、いま世界経済が面しております一番大きな問題であると思います。  このたびの首脳会議は先進国の首脳のみでありますけれども、選ばれた問題は、御承知のように、ただいまのような幾つかの問題を含んでおります。したがいまして、先進国首脳がそれらの問題についておのおのの所見を述べ合い、そしてさらにそれが指導方針となって、十二月に予定されております世界経済協力会議というもの、これは全部を含んでおる会議でございますから、それを通じまして新しい、ブレトン・ウッズにかわる、しかも構成員をさらに広げたところの世界の通貨、貿易、資本交流等の制度が生まれる、そのための私は意味合いを担っておる会議であるというふうに理解をしております。
  213. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 関税につきましては、先年、東京において行われましたガットの総会において採択された東京宣言が、ただいま世界での非常にべーシックなコンセプトとして受け入れられていると思うのであります。これは大原則でございますけれども、いま上田さんの御指摘の発展途上国が、この枠組みの中でどのようにみずからの経済の未来を創造してまいるかという場合におきまして、あるいは一次産品の価格の安定をどのように確保してまいるか等々の立場から、ただいまでも商品協定が若干の品目において行われておりますけれども、こういった問題を将来もっと組織的にどのように取り上げるかということは確かに今後の世界の大きな課題でございまして、今回の首脳会議が、まさに取り上げて、その最も基礎的なコンセンサスを探求すべき場面ではないかと私は考えております。
  214. 上田哲

    上田哲君 具体的な提案ということが用意されるわけですか。
  215. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 何らかの日本考え方、提案をいたしたいということで、いま準備を進めておるわけでございます。
  216. 上田哲

    上田哲君 関連して、アメリカ経済ですけれども、副総理を初め関係閣僚からも伺いたいんですが、アメリカ景気回復が伝えられているほどなめらかではない、急回復ではない。これは政府は来年選挙を控えて非常に五%なり七%なりということを言っているわけですけれども、それ以外のところ、経済界の見方も非常にきつい。たとえばニューヨーク・タイムズの編集局長のエーブ・ロゼンホルさんなんかは、はっきり横ばいで、もう実質成長ゼロだというような見解も明らかにしているわけですね。これをどういうふうにごらんになるのか。
  217. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) よその国のことでございますので的確なことは申し上げるわけにはいきませんけれども、私この間、両陛下のお伴をしてアメリカへ行きまして、その合い間にアメリカ経済閣僚の各位とも会いまして意見の交換をしてみます。そうしますと、非常に自信を持った態度で経済閣僚の各位は、いままでは大変な落ち込みだった、しかし、下半期には七ないし八%の成長、これを実現をする、実現できる、こういうふうに言っております。なお、私は別に産業界のリーダー、そういう方たちとも会ってみる。そうしまして、経済閣僚はこうおっしゃる、七、八%と大変自信を持っておっしゃいますが、皆さんどうですか、これ反対の人がありますかと言ったら、みんな賛成だと、そういうふうな見方である。中には、個別の企業によってはいろいろ違いますけれどもね、もっと強い見方をおっしゃる方もある。また、別に金融界の人とこう会ってみますと、まあその数字までいくかどうかわからぬ、しかし、かなり顕著な上昇に転ずるということについては政府見通しのとおりであろう、こういうふうなことを言っております。私は、そういうことを総合すると、数字のことですからこれはどういうふうになるかわかりませんけれども、まあ上昇過程に転ずるということを期待できるんじゃないか。これは私の率直な感じでございます。
  218. 上田哲

    上田哲君 ちなみに伺いますけれども、イギリスもひどいわけでして、たとえばイギリス労働党大会、私たちの目の前で日本のテレビや自動車の輸入制限を議決しているわけです。通産大臣、これはいかがですか。
  219. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 英国の国内におきましては、不況のためにいろんな動きがあるようでございますが、先般向こうから貿易大臣が参りまして、二、三日連続会談をいたしましたが、輸入制限をするとか輸入禁止をするとか、そういう動き政府としてはございません。ただ、自動車などの場合は、ことしの八月まで非常に大量の自動車が英国へ出ましたので、少し秩序ある輸出に変えてもらえないかと、こういうふうな希望がありましたので、その希望の線に沿ってことしの年末に業界同士が話し合いをすることになっておりますが、下半期になりましてから、もうすでに大体上半期の非常な輸出の勢いはとまりまして、大体平常な姿に返っておる状態でございます。そのほか、二、三の品目について問題がありましたが、これも全部一応話し合いで解決をいたしまして、現在トラブルはございません。
  220. 上田哲

    上田哲君 その話を聞いているとたいへんスムーズなんでありますけれども、われわれの実感するところで、アメリカの底入れは夏以降終わったと思いますけれども、言われるように、向こうの政府が言うような形での景気回復が急上昇とは言えないし、先進各国、ジスカールデスタンが提起したころよりは大分変わっていることは事実でありましょうけれども、大きな問題がある。引きずられてもならないことだろうと思います。反対はいたしませんけれども、多くの疑念に答え、特に資源供給国に対する、開発途上国に対する疑念を持たせないような姿勢を特に要望しておきたいと思います。まあ一言伺いますか。
  221. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) このアメリカ景気については、経済指標の上では第三・四半期は一一・二%ですからね、実質成長が。そういう指標を通じては、上向いてきておると見ておるんです。それは、いろいろインフレの問題もあるでしょうから、今後の推移は見守っていかなければならぬし、また、日本輸出に対しても秩序のある輸出をするということは必要で、最近、自動車業界なんかは向こうへ参りまして話はつくということでございます。そういうふうな形で話し合って、節度のある輸出が行われるようなことになることが私は好ましい。日本世界に対してもう自分の国のことばかり考えて何でも売りまくればいいんだというような、そういうふうな国際社会で何かこう異質の国であるというような印象は払拭することが、資源外交のお話もございましたが、それにしてもやっぱりいずれの点においても必要であるということでございます。
  222. 上田哲

    上田哲君 次に、中東問題に入ります。  わが国の外交政策で、中東問題がやっぱり弱いと思います。それは、何としてもパレスチナ問題に対する見方であります。パレスチナ問題を中東からはみ出た問題だというふうに考えるのが間違いであって、まさに、パレスチナ問題とは中東問題を解決する中心の課題である、全アラブの中心に座する問題である、この基礎認識が大事だと思うんです。総理、これは御同意されると思いますが。
  223. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も上田君と同じような考えで、所信表明演説の中にも、イスラエルの占領地区からの撤退、またパレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利の回復、こういうものが一つ中東紛争解決の柱であるということを申し述べたのでございますから、上田君と同じ考えでございます。
  224. 上田哲

    上田哲君 そこまで結構なんでありまして、もう一歩進めて申し上げるが、一九七四年の十月二十八日の御承知のラバト決議、この決議の上に立ってPLOをパレスチナの唯一の代表として認める、この態度を明確にされることが大事だと思うんです。いかがですか。
  225. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国連においてもパレスチナ解放団体を代表するオブザーバーとして認められている。アラブの首脳国会議におきましても唯一の解放団体の機関であると認められましたから、こういう国際的なパレスチナPLOに対する取り扱いというものは、日本もやはりそういう国際的な流れというものは頭に置かなければならぬと考えております。
  226. 上田哲

    上田哲君 くどいようですけれども、PLOをパレスチナの唯一の代表として認めるということでよろしいですか。
  227. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ、そういうふうな考え方のもとに――政府でありませんからね、いま、政府でありません。そういう解放団体、パレスチナを現在代表する機関であると、こう考えております。
  228. 上田哲

    上田哲君 私の申し上げたところでいいわけですね。――大きくうなずいておられますから、その言葉どおりであるというふうに理解をし、これは非常に明快になったと私は理解をいたします。  一昨日、注目の南北朝鮮決議案のときに、同じ国連総会でエジプトのサダト大統領が演説をいたしまして、いま唯一無二の中東和平への機会である、そのためにはPLOを含めてジュネーブ会議を開くべきだということを強調したわけでありまして、これについては同じような御意見をお持ちになりますか。
  229. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) サダト大統領がそのような演説をされたということを承知しておりますし、最終的には先ほど総理が言われましたようにパレスチニアンスの問題、話を除いては中東の最終的な解決はないわけでございますから、最終的にはやはりただいま言われましたような形でなければ基本的な解決はないであろうというふうに私どもも考えております。
  230. 上田哲

    上田哲君 これはパレスチニアンという問題だけではなくて、これは言葉じりでは決してなくて、全アラブの注視の中にあるというところが大事だと思います。特に宮澤外務大臣は数日前、初めての政治ミッションとして日本を訪れましたイラクのハイダー代表と会われて、こういう点もお話し合いになったと思うのでありますが、そのような御認識でありますか。
  231. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもから、パレスチナ問題が中東問題の一番むずかしい部分であり、しかも、これが解決しなければ基本的に問題のすべての解決はないということにつきましては、日本政府の所信として申し述べております。
  232. 上田哲

    上田哲君 パレスチナ問題の解決なくしてアラブの、中東解決なしと、そしてPLOはパレスチナを代表する唯一の代表であるということを御確認になるということは非常に重要なことであります。出発点であります。そのPLO、パレスチナに対する理解というのが非常に、まあ無理はないのですが、難解で遠過ぎる、ここを私たちはしっかりしなきゃならないと思うんです。パレスチナ人というものが持っておるアラブの中の位置づけ、これは資料をお願いしておきましたから御報告いただきたいのですが、たとえば就学率、それから湾岸諸国のパレスチナ人の役割り等について御説明をいただきたいと思います。
  233. 中村輝彦

    政府委員中村輝彦君) ペルシャ湾岸、アラブ湾岸諸国、つまりサウジ、イラク、クウェート、バハレーン、カタール、アラブ諸国連邦、オマーン、こういう湾岸諸国におりますパレスチナ人の数は、もちろん人口統計が正確とは必ずしも言えない面がございますのではっきりはいたしませんけれども、一応公表されておりますところでは十九万六千ぐらい。これは総人口が二千六十八万でございますけれども、そのうち十九万六千がパレスチナ人ということでございます。もっともパレスチナ人全部では、湾岸諸国に限らず、それからまたアラブ諸国に限らず、パレスチナ人全部では大体三百万足らずと言われております。  それからパレスチナ人の就学率と伺っていたのでございますけれども、就学率は、これは国によりましては利用し得る統計がございませんので一部分しかわかりませんけれども、レバノンの分がわかりますが、レバノンでは初等教育に関しましては就学率が全体では一〇〇%以上でございますが、パレスチナ人はその中で就学率九七%、それから中等教育になりますと、全体では四〇%の就学率でございますが、パレスチナ人だけについて言いますと六八%の就学率でございます。  それからシリアについては初等教育、これが全体では八八%の就学率でございますが、パレスチナ人について言いますと九五%の就学率になっております。それから同じくシリアの中等教育に関しましては、全体では三九%なのに対しまして、パレスチナ人の就学率は七七%ということでございます。  その他につきましては、パレスチナ人関係の基礎になるべき統計がございませんので、就学率、はじき出せない状況でございます。
  234. 上田哲

    上田哲君 湾岸諸国の石油の輸入量の調査をお願いしています。通産。
  235. 増田実

    政府委員(増田実君) わが国がアラビア湾岸諸国から入れております石油の総輸入量でございますが、昭和四十九年度の合計は一億八千九百八十八万二千キロリッターということになっております。
  236. 上田哲

    上田哲君 だから、その中での湾岸諸国……
  237. 増田実

    政府委員(増田実君) 各国別ですか。
  238. 上田哲

    上田哲君 いや各国別じゃなくていいですよ。それをまとめて日本の輸入量の中に占めるウエートを聞いている。
  239. 増田実

    政府委員(増田実君) いま四十九年度の湾岸諸国六カ国の合計を申し上げたわけでございますが、日本の総輸入量は二億七千五百八十八万キロリットルでございます。その中で一応六カ国の全輸入に占めておりますパーセンテージを申し上げますと、サウジアラビアの石油がわが国の総輸入量の中の二二・三%、クウェートが九・一%、カタールはわずかでございまして〇・一%、それからアブダビが九・一%、イランが二六・七%、イラクが〇・九%と、こういうことになっております。
  240. 上田哲

    上田哲君 だから、トータルとしては七〇%ぐらいでいいですか。
  241. 増田実

    政府委員(増田実君) トータルとしては八〇%若干切るところになっております。
  242. 上田哲

    上田哲君 八〇%弱ね。
  243. 増田実

    政府委員(増田実君) ちょっと――約七割になっております。
  244. 上田哲

    上田哲君 七〇%ね。
  245. 増田実

    政府委員(増田実君) はい。
  246. 上田哲

    上田哲君 いま御報告いただいたように、パレスチナの占める位置というのは決定的に大きいわけです。はみ出ているわけでは決してない。就学率というのは念のためのデータですけれども、何とこれが普通の倍以上の教育レベルを持っている。そして石油のメインである湾岸諸国にまさに中心的な役割りを果たしている。つまり日本の全石油輸入量の七割はそこから来ているわけです。こういう細かい数字はもう私は申し上げる時間はありませんけれども、決定的な影響力を持っている。しかも、このパレスチナ人がどういう役割りをアラブ諸国の中で果たしているかといえば、サウジアラビアの学校の先生の半分はパレスチナ人です。リビアの半分以上はパレスチナ人です。アラブ諸国の中で大臣が七人、次官が十六人、大使が二十七人、裁判官が三十人、大学教授が百人、日本に駐在しているアラブ関係諸国の大使は十三人ですが、そのうち二人、サウジとヨルダンはパレスチナ人です。これだけパレスチナというのが決定的な影響力を持っている。  私が申し上げたいのは、石油が欲しかったら大事にしろと言っているのではありません。石油がなくなったらネオンが消えるようなことで大騒ぎをする日本人が、このパレスチナと石油の関係について十分な理解を欠いている。石油の物欲しさのために議論をしたいのではありません。しかし、アラブの大義、サダト大統領があれだけ発言をし、フォード大統領にも直接対話をしなさい、それ以外には中東和平の方法はないのだということを言っている。どこで鉄砲が撃たれているかなんという話じゃないのであります。そういう問題が、しかもいま絶対無二のチャンスが来ているという状態に対して、アラブの大義に向かって日本の外交を向けるべきだ。また即物的に言ってもこれだけの影響力があるパレスチナに対して、しっかりした外交態度をとるのは当然な道ではないかと私は思うのであります。この点、ひとつ当然なことではあろうと思いますけれども、三木総理の御感想も承りたいと思います。
  247. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アラブの大義ということは、私が所信表明演説にも申し上げたごとく、パレスチナ人の問題というものはその中の重要な柱をなしておる、そういう点で上田君の認識とは変わりません。
  248. 上田哲

    上田哲君 その御認識を非常に私は尊重したいぎりぎりのところだと思うんですけれども、しかし、問題は、いまそのパレスチナとPLO日本との関係が非常に悪い。これはこちらが考えるのではなくて、向こうの日本に対する態度が非常に厳しいということを、私は先般アラファト議長と会いまして確認をしてまいりました。  私が見るところでは三つの問題があります。第一は、一九七四年十一月二十三日のあのパレスチナ民族の独立などの諸原則を確認する決議案日本は棄権をしたということ。第二には、政府の一九六七年の占領地からイスラエルが撤退することを原則とした考え方。そして第三は、PLOの東京事務所開設についての姿勢であります。さきの二つについてもそうでありますけれども、いま私はこの三点、特に第三点目に集中的な努力をしなければならない重要な時期だと思っております。いかがでしょうか。
  249. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そのとおりにわれわれも考えております。
  250. 上田哲

    上田哲君 東京事務所開設のために全的な努力を傾けるときだということだと理解していいわけですか。
  251. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 政府でありませんから、外交特権ということは与えられません。それ以外の点においては、日本の国法の範囲内においてあらゆる便宜を図るつもりでございます。
  252. 上田哲

    上田哲君 実際にはその何が問題になっているのかというところを、どのように理解されておられるか。
  253. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 本件につきまして、この一年近くの経緯をかんがみますと、PLO代表であると称せられるいろいろな筋からの接触が各方面にございました。政府にも非公式、公式にいろいろございまして、私どもそのどれが正規のいわゆるアラファト議長に直結する方であろうかということがなかなか判定をしがたかったわけであったわけですが、けさほど岩動委員にも申し上げましたように、結局私どもがお会いをしましたエル・フート氏、ベイルート事務所長であられるエル・フート氏が事態を非常に正確に述べられ、また、私どもが申し上げることも正確に受け取って帰られまして、そのことは、承るところによりますとアラファト議長にも伝わっておるということでございました。したがいまして、いままで私どもがどの方にわれわれの考えお伝えしていいかということについて必ずしも明確でなかったということで時間のロスをしたように思いますが、ただいまのところ、先ほど岩動委員に申し上げましたようなわれわれの心構えがほぼアラファト議長に伝わっておると考えております。なお、上田議員が親しくアラファト議長と会談をされまして、それにもかかわらず、なお私どもの真意あるいはさらに考えるべき点があるように、巷間でお書きになったもので承っておりますが、なお私どもに御開示がございますれば、私どもとしての考え方を申し上げたいと存じます。
  254. 上田哲

    上田哲君 結構です。これも私は冒頭から申し上げておりますように、向こうはああいう政治団体でありますから、野党でなければできないところであって、これは野党のどうだということではなくて、国益の点からぜひひとつ政府の外交方針に組み入れていただきたいと思うわけです。  したがって、念のために伺いますけれども、アル・フート、ソラーニ両氏が来てむなしく帰ったわけでありますが、政府PLO側に差し出された回答というものは、フート氏への八月十九日の回答が最後でありますか。
  255. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私自身がエル・フート氏にお会いをいたし、またその前に所管の局長がお会いをしまして、日本側考えはかくかくであるということをお伝えをし、なお間違いがございませんように、それを局長の方からメモでお渡しをしたというふうに承知しておりまして、それが最後のお返事になっておると思います。
  256. 上田哲

    上田哲君 できるなら、その経過とその最後の回答の内容をお知らせいただきたい。
  257. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 重複をいたすようでございますが、それでは申し上げます。  PLOにおかれて代表者わが国事務所を開設されたいという御希望がありました場合に、私どものそれに対します方針は次のようなものでございます。すなわち、一般旅券を所持されてわが国の出入国管理令の規定に従って入国をされ、そうして事務所を開かれるということは、原則として自由でございます。その場合、申すまでもないことですが、わが国の法令に違反するようなこと、あるいは安寧秩序を害するようなことがあってはならないということは申すまでのないことですが、それを除きまして、一般外国人が受けておる自由、権利、保護をわが国憲法法令のもとで受ける。その間差別待遇はいたさない。ほぼそのようなことを申し上げてございます。
  258. 上田哲

    上田哲君 八月十五日にフート氏は外務大臣とお会いになって、それから八月十六日にインフォメーションセンターの提示があって、ここでは話が詰まらなくて、八月十八日まで待って、まあ具体案がなくて、結局十九日に空港で書簡を渡されたと、こういう経過でありましょうか。その辺もう少し詳しく伺いたい。
  259. 中村輝彦

    政府委員中村輝彦君) シャフィーク・エル・フートPLOベイルート事務所長は八月の初めに来日されましたわけでございます。それでエル・フート所長は、外務省の事務当局者、外務大臣に表敬訪問したいということでございまして、私どもの方ではお会いするのは結構だということで、外務大臣がお会いになる前にまず私と話をしたいということで、その前に私がエル・フート氏と私的な会談をいたしました。  その際は、もちろんいろんな話をしたわけでございますけれども、まず、そのPLOのパレスチナ問題に対する考え方というものを説明したいということで説明がございましたし、それについての日本側考え方も聞きたいということで、そういった点を私からもお話しいたしました。それからエル・フート氏の方は、いろんな方が日本から来られるけれども、話の内容が必ずしも同じではなくて、日本の態度というものについて本当のところはなかなかっかみかねているので、直接日本政府考え方を聞きたい、またそのためには今後もPLOの人間が直接日本にいられるようになって、日本側に対して直接自分たちの考え方を伝えるようにしたい、そのためには日本PLO事務所を置きたいと思っておるけれどもということで、いろんな事情を確かめたいというお話がございました。  それに対して、先ほど宮澤大臣から御説明ございましたようなことを私の方から説明いたしまして、その後で、後日宮澤大臣に表敬したいということで宮澤大臣にお会いになりまして、それで先ほどのような一般的な意見の交換がございましたわけでございます。  その後で、さらに私は、エル・フート事務所長の希望もありまして、もう一度お会いいたしまして、これは前の話をお互いに確認し合うようなことで同じようなことを話したわけでございますけれども、そういうことがございまして、それでその後、その話の内容を私信で結構だから確認してくれないかという話がございまして、それで最後に私のエル・フート氏あての私信という形で、前に大臣から御説明ありましたような、つまり私がエル・フート氏と会いましたときに私から御説明しました事務所設置に関する技術的な諸点についての私どもの考え方というものを、その私的書簡の中で確認して渡したということでございます。
  260. 上田哲

    上田哲君 私が聞いたのは、八月十五日宮澤さんに会って、十六日にインフォメーションセンターの提示があって、それから十八日を越えて十九日に書簡を渡したと、こういう経過でいいのかということと、十九日の書簡をできるなら説明してください、中身を出してください、この二つですよ。
  261. 中村輝彦

    政府委員中村輝彦君) インフォメーションセンター云々という言葉ではございませんけれども、日本PLO事務所を設置したいという考え方があるということは、最初から申しておりました。
  262. 上田哲

    上田哲君 いや、こちら側からはどういう事務所という性格づけをしたのかということです。
  263. 中村輝彦

    政府委員中村輝彦君) その点に関しましては、エル・フート氏の方から、自分の方はまだ国家があるわけでもないし、政府でもないので、承認とかあるいは外交特権云々とかというものは求めるつもりは一切ございません、事務所については何の条件も付するつもりもございませんということでございまして、私どもの方は、これは先ほど宮澤大臣から御説明ございましたように、事務所を開設し、かつ事務所運営に当たる人がPLOから来る場合に、一般旅券を持って来られるならば、入国管理法に従って入国を認める用意がございますということでその説明をしたわけでございます。
  264. 上田哲

    上田哲君 という書簡を出したということですね。
  265. 中村輝彦

    政府委員中村輝彦君) それは先ほども申しました書簡の中に確認しております。
  266. 上田哲

    上田哲君 わかりました。  そこで、これは先ほど来総理や外務大臣のお話のように、外交特権を求めないとアラファトははっきりそう申しております。リーズナブルな条件でやりたいんだと。しかもこれはイギリスにもニューヨークにもあるわけでありまして、もう、ないのは日本だけだと言ってもいいような状況なんですから、これをしっかりしたものにしたいということです。だから大綱で言えば、ぜひつくりたい、そして外国並みで、外交特権のないものでひとつぜひ努力をしたいという方針であるというふうに理解していいわけですね。
  267. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 結構です。
  268. 上田哲

    上田哲君 それでは、たとえば現地の大使館が出しているようなインフォメーションセンターの設置というのが書いてあるんです。これではだめだと言っているんです。先ほど、あったら見せてくれということですから、私はいまここに資料がありますので、ぜひお使いをいただきたいと思います。これはアラファト議長から、PLOから私に届いたつい最近の電信であります。「五五二、二五九六九八、パブリック二九一四九LE」これはレバノンです。下にPLO公式記録員のヒモの署名がありまして、これが届いております。これをひとつぜひ読んでいただきたい。  日本語に訳しましたから、それを読みます。PLQ東京事務所の件について十項目あるんです。時間の問題がありますから順番にいきますから、ひとつリーズナブルであるということで御確認いただいていけばいいと思います。けさの与党委員の御発言におけるような言い方ではだめなんだということははっきりしていますから、よく見てください。  「以下はパレスチナ解放機構中央執行委員会ヤセル・アラファト議長日本社会党上田哲参議院議員の間で、去る一九七五年十月七日ベイルートにおいて行なわれた討議の記録である。  (1)双方はこの討議が十分かつ具体的なものであったとの判断に同意し、より速かな事務所開催に至りうるよう日本政府の善処を要望した。  (2) PLOとしては一九七五年八月十九日」――いまの話です。「手交された日本政府の回答をPLOに対する最終的回答とみなすことはできない。」――あれではだめなんです。なぜだめかということは後で出てきます。  (3) 双方はPLOがこれまで一貫して日本政府との円満な了解のもとに、東京事務所の開設に至りうるよう熱望してきたことを確認した。  (4) PLOアラファト議長上田哲議員に対し直接五項目からなる要求を提示した。PLOとしてはこの要求が十分かつすべてであると考える。」  五項目は次のとおりです。  「まず、東京事務所が開設されたあかつきには、事務所にその権威としての公式標示を掲げることが許されること。  第二に、PLO代表はなんらの制限を受けることなく国内旅行が許されること。  第三に、PLO代表には自由な接見の機会が与えられること。  第四に、PLO代表には広報活動が自由に許されること。  第五に、日本政府は東京事務所ならびにPLO代表の安全を保つため適切な措置を講ずること。  (5) PLO上田議員の説明により、第二項、第三項および第四項はその要望が日本の法制に抵触しないことを理解した。したがって第二項、第三項および第四項についてはPLOはその要望を表明し、各項について日本側の了解を求めることによって、合意に達するものと考える。」こういうことでありますから、この五項目のうち、二、三、四はおおむねいいのであります。したがって、あと一項と五項になってくるわけです。  「(6) 第一および五項については、PLO日本政府の再考を求めなければならない。日本政府PLOが外交特権を求めないにしても、PLOが三〇〇万パレスチナ人の上に確立された唯一の統治政体として、これと公式に話し合う意向を表明すべきであり、この点に特に注意を喚起する。」  ここのところなんですけれども、いま日本におりますマンスール代表が何遍か中近東局長等に話をいたしましても、そういう話はできない、あなた方とは十分な話ができないということになっているということが非常に相手側の問題になっております。今後開設が可能になりましたならば、そういう話を、外交特権ではありませんけれども、話をする、外交代表としての立場に準じて話をするということを御確認になるかどうかということがこのポイントであります。いかがでしょうか。
  269. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、その五つの点でございます。  第一は、PLOがそのオフィスをつくって、どのような表示をしてもいいかという点でございますが、ここに「オフィシャルサイン」と書いてございます。この言葉には余り実は私どもこだわらなくていいと思いますので、わが国の法令は言論、旅行、移動等の自由はもうきわめて広範に与えられております、一般外国人に対しましても。したがいまして、どのような看板と申しますか、表示と申しますか、掲げられようとも、私は原則としてそれは自由であろうと思います。  それから、言われましたのは……
  270. 上田哲

    上田哲君 代表として十分に話し合いに応ずるかということです。
  271. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その前に五つのポイントの方からまいりますとしまして、したがって、そのような方が日本国内をどう旅行されようと、だれとお会いになろうと、それももとより自由でございます。  それから、そのようなスタッフに対して一種の安全の保護をしてくれという点が第五でございますね。これはもとより一般外国人でありましょうとも、特別の危険があるという場合にはわが警察当局はそれに対応して保護措置を講じておりますので、この点も特段に私は問題がなかろうと思います。もとより、そのような保護が行動の干渉にわたるということになりますと、これはかえって迷惑になることであろうと思います。それは警察当局の御苦労のあるところだと思いますけれども、何か危険な情報があれば、それはそれなりの処置をとるというのはわが国の警察がふだんやっておられるところだと思います。  そうしますと、残りは……
  272. 上田哲

    上田哲君 外交代表に準じて、ちゃんと話をしてくれということですよ。
  273. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこのところでございますね。「エネー・オフィシャル・ネゴシエーションス」というところでございましょうと思います。これを、政府と外交上の話をするんだと、きちっと言われますと、先ほど総理の言われましたような点に関係が出てまいると思いますが、まず余りそこをきつく言われずに、外務省に行ってときどき話をする、情報交換をするというようなことはよろしいかとおっしゃれば、それは一向に私ども差し支えございません。私どもは公共サービスの機関でもございますから、それは差し支えございませんと申し上げてよろしいと思います。
  274. 上田哲

    上田哲君 たとえば、アラブの十三国の大使が招かれるパーティーには一緒に招くというような慣習が、非常に向こうの礼譲にかかわるわけですよ。
  275. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) むずかしいところだと思います。アラブの大使が主催でレセプションをされまして、私どもがお招きを受ける。その中にこういう方がおられるとしましても私どもは一向にそのことを意に介する気持ちはございません。
  276. 上田哲

    上田哲君 いいです。それでいいです。  そこで問題は、どういうような紋章をつけるかとか、警備をどうするかということの具体論じゃないんです。これはとにかく剣付き鉄砲をつけてくれと言っているのではないんだと言っているんです。問題は、この後に出てきます「PLOはその代表一般旅行者とは区別すべきだとしており、その事務所情報センターや連絡事務所とは考えていない。」、ここなんですよ。パッセンジャーとして入ってくればよろしいというのでは扱いは同じじゃないかということでは、三百万パレスチナの上に立っている立場がない。ここのところを考えて紋章とか警備とかということが出てくるので、実際に何もパトロールを強化してくれと言っているんじゃない。その態度は先ほど総理が認められましたから、私はその中に含めるとして理解をいたします。  そこで問題は、しかし、この点についてPLOが言っておるのは、それについてはっきり意思表示をしてくれと言っておるわけです。「この点についてPLO日本政府からの意思表示を声明、コミュニケのような正式回答の形をもって求めることにこだわるものではない。もし日本政府国会の場で、正式な事務所の設置を歓迎する態度を明らかにし、それを何らかの文書で伝達され」るというなら「それで十分」だというのです。  十番、「最後に、PLOは他国との間にみられる国際的慣習のレベルでこれをすすめるものだが、もし、日本政府が不誠意にこれを見送るならば重大な事態に立ち至らざるを得ないであろう。」。公式記録員の署名であります。  皆さん、ぜひひとつ御理解をいただきたい。いま残っているポイントは、一般旅行者と同じだから、来たいなら来ればいいではないかでは絶対に向こうは来ないのです。このことははっきり言っております。だから、PLOをパレスチナの唯一の代表だとお認めになった、それならばそれに対して、外交特権は求めておりませんから、特別な特権も要りませんから、だからPLOをその立場で十分に尊敬を払って、どうぞインフォーメーションセンターなどというものではなくて正式な事務所をおつくりなさい、こういうことを政府から文書で出してもらうということを総理、御確認いただければ、この問題はきれいに終わるのであります。これがアラファトからの連絡なんです。その一点、ひとつ私はリーズナブルだと思うので、ぜひ御回答をいただきたいと思います。総理お願いします。
  277. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その部分には、日本政府からオフィシャルなレスポンスというようなものを求めているものではない、国会等を通じて日本政府の立場を云々と、こう書いてあるわけでございます。そこで、これはわが国の法制からは、先ほど申しましたように明らかでございますが、そういう事務所をつくられることは自由であって、政府がそれを許可するとか同意するとかいうことはわが国の法制にはないわけでございます。それが多少先方にはおわかりにくい点であろうかと思いますけれども、原則がもともと自由なわけでございます。ですから、私どもがお許しするとかしないとかという問題は実はないわけであって、法令の範囲内であればだれでもそれは憲法でそのような自由は与えられておるということでございます。  そのことを何かドキュメントでこの国会の審議を通じて示せということでございますが、それは、固いことを申すのではありませんが、いままでお答えを申し上げたことでほぼ明らかであろうと思いますから、何かちょっと工夫をすればいいのであって、つまり、外交関係がないわけでございますから、日本政府があて先にあてて正式な書類を出すというわけには、固いことを申すようですが、まいらない。しかし、日本政府考えというものはこの国会の御審議を通じて明らかになっておる。ここまで問題がはっきりしておりますから、何か一つ工夫をすれば事は片づくのではないかという感じがいたしますが、それはまたいずれサゼスチョンでもお持ちでありましたら、私どもは喜んで御相談に応じたいと思います。いまどうしたらいいかということを、これをそのまま拝見しましても、ちょっとすぐには御返事がいたしにくうございますが、いずれにしても日本政府の立場は、いま申し上げましたとおり、きわめて明らかであろうと思います。
  278. 上田哲

    上田哲君 これは重大なんですよ。許可とか認可とか言っていないんです。大事な関係なんですから、正式文書であるとかなんとか、そういう形式を言うのじゃなくて、歓迎するということなんです。正式な事務所です、単なるオフィシャル事務所ですよ。ポリティカルオフィスを設置することを歓迎するということを何らかの文書で向こうに届けるということです。そのことができないで、石油だ何だと言うことはできないんですよ。その一点ができないということでは外交にならぬと思う。総理ひとつ御決断をいただきたい。どんな知恵でも出しますよ、それは。日本の石油がかかっているじゃないですか。
  279. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私が最初に申しましたごとく、国際的なパレスチナ人の立場にかんがみて、そういうふさわしい処分をいたします。いまのお話は、こうして上田委員との間にやりとりもあったものですから、そういう形で何か向こうの方に上田君の御要望にも沿えるような形で、しばらく工夫をさせてください。
  280. 上田哲

    上田哲君 文書ということを、どんな形でもいい、約束してください。
  281. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これだけいろいろ国会でやりとりがあったのですから、その日本政府の意思を伝達する方法については、私が少し工夫をしてみますから、そういうふうでお任せを願いたいと思います。
  282. 上田哲

    上田哲君 プレスリリースでもいいんですよ、どうですか。アラファトはいまベイルートにいませんから、半日で連絡がつきますよ、これがその一つじゃないですか。
  283. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この日本政府の意思が伝わるような工夫をいたします。
  284. 上田哲

    上田哲君 はい、わかりました。そのことと理解をいたします。では、知恵を出せということですからどんな協力でもいたします。国民の問題ですから、ぜひひとつ後刻御検討をいただき、一緒に協力いたしたいと思います。そして総理の答弁は私はそのように理解いたします。  では、後に残します。
  285. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 上田君の残余の質疑は明日に譲ります。     ―――――――――――――
  286. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 次は斎藤栄三郎君。
  287. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 今度の国会は不況対策国会だと言われていますから、問題をそこにしぼって御質問いたしたいと思います。  財政を再建するためには、入るをはかって出るを制するということが根本だろうと思います。そこで、いままでの議論を拝聴しておりますと、入る方についてはずいぶん論議されておりますけれども、出す方については余り論及されておりません。私はぜひこの際、行政の簡素化をやってもらいたい。昭和四十三年から五十年までの間に国家公務員が一万二千人減っただけ。特殊法人は百十二あって依然として横ばい。これが民間企業だったら当然もっと大胆率直に簡素化をして経費の節減を図るだろうと思うんです。そういう意味において、これだけの大きな公債を出すのでありますから、政府がもっと行政の簡素化に熱を入れるべきだと思います。その点についての御意見を拝聴したいと思います。大蔵大臣、お願いいたします。
  288. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 歴代の政府三木内閣ばかりでなく自由民主党政府は、斎藤先生おっしゃるように、機構の簡素化に努めてまいりまして、とりわけ定員管理につきまして厳しい態度をとってまいりまして、行政需要が例年ふえてまいるにかかわりませず、定員をふやすことなく今日までまいりましたことは評価さるべきことであったと思うのでございます。しかしながら、御指摘のように、今日財政がこのように重大な局面を迎えておるわけでございますので、この点におきまして、なお一層の努力が要請されておりますことは御指摘のとおりと思うのでございまして、私どもといたしましても、御趣旨に沿って誠心誠意努力してまいらなきゃならぬと考えております。
  289. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 ことしの四月二日に行政監理委員会の出した報告があります。「今後の行政改革の課題と方針」というのであります。これをぜひひとつ強力に推進して国民の要望に沿っていただきたいんです。ただ単に善処するというだけでは、なかなか国民は国債を買う気持ちになれないだろうと思います。政府がこれだけの努力をするなら、余り有利ではないけれども八分二厘二毛の国債を買おうという気持ちになるだろうと思うんです。でありますから、これについては行政管理庁長官からどういう決意をもってこれを実行なさるか、拝聴したいと思います。   〔委員長退席、理事柳田桃太郎君着席〕
  290. 松澤雄藏

    国務大臣(松澤雄藏君) ただいまの御要請に対しましてお答えしますが、できるだけただいまの問題等に対しまして真剣な気持ちで討議をいたしておりますが、実際の問題といたしましては、極力具体的な方式をもって皆様方にお考えを願いたい、こういう気持ちで真剣になって要望したいというふうな気持ちで現在やっておりますので、この点で御了承していただきたいと、かように思います。
  291. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 どうも答弁が抽象的で、それではいままで発表になっておる新聞発表を一歩も進んでいないのであります。やはりこれを何月何日までにやるんだということを明示していただかないと、わざわざ国会質問する価値はないだろうと思うのです。これはもうすでに新聞に出ておることなんです、四月の二日に。それを、何月の何日までにこの成果をお上げになるかを管理庁長官にもう一回お伺いいたします。
  292. 川島鉄男

    政府委員(川島鉄男君) お答え申し上げます。  行政監理委員会の行政改革に関する提言がございまして、その提言の概要は、内閣機能の強化、この点につきまして法案を国会に提出いたしまして御審議を願っておるところでございますが、このほか国の行政機関の定員管理のあり方、それから特殊法人等の合理化、補助金等の合理化というふうなものを当面やるべき改革ではないかというふうな御意見をちょうだいしております。これにつきましては、それぞれその御意見に基づきまして現在これの改善を図っております。  具体的には、定員管理のあり方ということにつきましては、閣議決定をもちまして、定員削減の三年計画におきまして、第二年度である五十一年度におきましては、定員の削減を総数の三割と予定しておりましたのを四割に繰り上げて削減するというような措置を現に決定されております。その線で行われておるわけでございます。さらには特殊法人等の合理化、これにつきましては、行政管理庁におきましてこの特殊法人の実態というようなものを現在調査いたしております。それからまた補助金についても調査をいたしまして、その結論をできるだけこの五十一年度の予算に反映させるべく、その結論を急いでおるというのが現状でございます。
  293. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 どうもまだ満足できないのですけれどもね、ただ調査研究しているというだけでは。四十三年からやっているお仕事なんでしょう、これ。それがまだ結論が出ないというのじゃ、これは永久に出ないということと同じじゃないんでしょうか。
  294. 川島鉄男

    政府委員(川島鉄男君) 四十三年度から行革をやっておるということは、実は行政管理庁の任務といたしまして当然、毎年そういう努力をいたしております。たとえば特殊法人なんかにいたしましても、行政の要請というもの、要するに行政需要でございますね、これが質的にも量的にも変わってまいりますので、特殊法人を新たに新設したりしておりますが、それは全体的にはその機構が膨張しないようにということで、絶対数がふえないように、たとえば現在百十三の特殊法人がございますけれども、これは四十二年から……
  295. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 百十二と書いてありますね、これは。
  296. 川島鉄男

    政府委員(川島鉄男君) はい。実は、今年度宅地開発公団が発足いたしました。それで百十三になっておりますが、これは四十二年度の総数から一つもふえていないという状況でございます。  で、こういうような改革は日常活動として常に行われておるわけでございまして、いま申し上げましたのは最近のその動きを申し上げましたことでございます。行革は常に行われております。  補助金の整理も再々行っておるわけでございますが、さらに御提言がございましたので、調査能力を持っております行政管理庁の行政監察局におきまして一・四半期に実際の調査を実施いたしました。その結論を目下五十一年度の予算に反映さすべく作業を急いでおるんですということでございまして、その間四十三年度以降何もやっていないでないかということにつきましては、実はそういうことでやっておりますということをちょっと御説明申し上げました。
  297. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 行政監査をやろうと思ったら、まず法令の整理からやっていかなきゃだめじゃないんでしょうか。どんどん法律はつくるけれども、要らなくなったもの、もしくは今日の安定成長下でどうかと思われるような法律がずいぶんあると思うんです。そういうものを整理なさらないとなかなか行政簡素化はできないんだろうと思いますね。  昭和五十年度の補助金が六兆八千億にもなっている。全一般会計の三二%が補助金に使われている。そんなに補助金が使われて一体どれだけの効果があったかということを非常に私疑問に思いますのです。きわめて簡単な一つの例を言うと、たとえば自然休養村は農林省の所管、青年旅行村は運輸省の所管、国民休暇村は環境庁の所管で、七つの省から二十種類に分けて補助金が出ている。私はもっとこれはセクショナリズムをやめて一元化していくならば、もっともっとお役人さんの整理もできるだろうと考えますね。そういう点、もう少し大所高所から判断して納税者の立場をお考えいただくことを要望したいと思いますが、総理いかがなものでしょうか、その点は。
  298. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) こういう機会にやっぱり財政というものは見直さなきゃならぬ。そういう場合に、御指摘になりましたような各省の施策というものがダブりまして、大体の目的というのは同じようなもので、こういう役所のセクショナリズムというものを打破しないと斎藤君の御指摘のような簡素化というものはできませんから、この問題はもういやでもおうでも取り組まなければならぬ大きな問題点である。このことは私も重大問題の一つであると、こう認識いたしまして、この問題は真剣に取り組んでみたいと思っております。
  299. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 三木総理にちょっともう一つお伺いいたしますが、たとえば私はどうかなと思う法律として、動物の保護及び管理に関する法律というのがあります。ペット法であります。ネコやリスが要らなくなったら引き取ってくれということをお役所に頼む、そしたら引き取ると、こういうのですが、一体こういうものまで法律で決める必要があるんでしょうかね。個人の趣味の問題だろうと思う。そんな法律が一つできると、各地方自治体においてはまたそれを処理する役所をつくらなきゃならない。法律ばかりつくって金をふやすことばかり考えて、これを整理することを一つ考えないところに従来の欠陥があったと考えますが、三木総理の御意見はいかがでしょうか。
  300. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) あの動物法は、実際私もそのときのことをうろ覚えに覚えておるのですが、所管省で困ったんです。それは政府の提案でないんです。議員立法としてそれが出されましてね。そういうことで、これは立法府の御協力も得なければならぬものがあると思う、議員立法もあるわけですから。そういうことで、この問題は斎藤君の御指摘のように、次々に法律ができて、それでまた実際に有効にこれが作用してないようなものもそのまま残っておるものがございますから、これもやっぱり見直さなければならぬ問題点だと思います。
  301. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 次に、政府刊行物が少しはんらんし過ぎているんじゃないだろうか。私は議席を得て初めて驚いたことは、毎日のように出版物が投げ込まれてくる。とても読み切れません。そこで、全国官報販売協同組合で調べていただいた資料がここにあります。それによると、定期刊行物が政府関係だけで六百二十六点、随時刊行物が二百三十三点、雑誌が八十三点、九百四十二点のものが出されている。一体並んでおられる大臣諸公がこれを全部読んでおられるだろうか。また、われわれ議員も読んでいるだろうか。ただ単に予算をもらったために出すというような傾向が強いのじゃないだろうか。この近所でもう少し政府刊行物をみずから整理してみたらどうかと思いますが、どうでしょうか、総務長官
  302. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) ただいま斎藤委員から御指摘になりましたとおり、九百四十二点出ております。このほかにも準政府刊行物が出ておりまして、非常に多いではないかとおっしゃいますことは私ども理解できます。しかしながら、これらは年報、雑誌類等でございまして、必ずしも読まれていないというものではございませんで、それぞれの需要があるわけでございます。御承知のとおり、行政の複雑化、多様化に伴いまして、関係者がそれぞれ専門的な知識を得たい、それぞれ行政の推移を的確に把握いたしたいということで活用をせられているという事実はひとつ御理解をいただきたいのでございます。私どもも、この刊行物の中に重複するものがないのかどうかということを丹念に調べておりますが、現在のところ重複しているものはございません。したがいまして、点数におきましては多いのでございますけれども、それぞれの役割りを果たしていると存じます。  ただ、いま御指摘のように、これらを整理するということが必要であるということにつきましては、行政合理化という立場からいたしまして、総理府に置かれております政府刊行物普及協議会という機関がございます。この機関は刊行物を普及するという立場にある機関でございますけれども、いまの御指摘もございますので、これらが必要であるかどうか、整理すべきものはないかどうかという点を含めまして、早急に検討させていただきたいと存じます。
  303. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 ぜひお願いいたします。  大蔵大臣にお伺いいたしますが、徴税機構が私はいま非常にむだが多いと思うのです。戦前だったら地方税は国税付加税で徴収をいたしました。占領軍が参りましてから別にいたしました。理想から言えば確かにそれは別に取った方がいいのかもわかりませんけれども、このような財政緊迫の折でありますから、もっとこれを一元化することをお考えになってみてはどうかと思います。たとえば国税で取って地方税は付加税で取らしていただくということにしてみてはどうかと思いますが、御意見いかがなものでしょうか。
  304. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国全体といたしまして、徴税の資料は国で取り地方自治団体で取るというようなことは重複いたしておりまするので、そういった点はできるだけ簡素化いたしまして、一カ所で取りました資料は共通に使えるということが望ましいし、また事実、そういう事実上の協力関係は逐次確立しつつあると思うのでございます。ただ、行政、徴税機構を簡素化いたしまして、また税制を付加税体制に直すということは、これは地方自治制度との関連もございまして、ここで軽々に私から御返事申し上げるわけにもまいりませんけれども、あなたがいま御指摘になりました、徴税機構が複雑化してまいることに対しまして、これを可能な限り合理化してまいる、簡素化してまいるということについてなお一段の努力をすべきでないかという御指摘に対しましては私も同感に存じます。
  305. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 いままでの大臣の答弁を拝聴しておりますると、どうも余り行政機構簡素化の余地がないように感じられます。これじゃどうにもならないので、少しむちゃだと思われるくらい蛮勇をふるってやっていただきませんと、ニューヨークの二の舞をするんじゃないでしょうか。恐らく十一月の十日にニューヨークは破産するであろうと予想されている。収入が年間五%しかふえないのに、支出の方は一二%ずつふえている。これじゃ、だれがやったってこれは破産するに決まっています。いま日本の国の財政もまさにそれと同じような経過をたどっているんじゃないだろうか。そういう点を考えると、よほど蛮勇をふるって歳出を抑える努力をしていただかないことには、なかなか、赤字公債をことしも出し、来年も出し、毎年続くということになる心配があると思うんです。そこで、従来の考え方からすれば、要らない役所はないんだよと、出版物もみな要るんだよという答弁は、それは私だってそう答えるだろうと思いますけれども、それじゃこのピンチは乗り切れないんで、やはり相当蛮勇をふるって出版物も整理していただかなきゃいけませんし、徴税機構の簡素化も至急やっていただかなきゃいけない。税金を納めるわれわれのふところは一つなんですから、これは地方税、これは国税と分けて持っているわけじゃないんであって、やはりできるだけそういうところの経費の節減をお図りいただくことを要望しておきたいと考えます。  自治大臣にお伺いいたしますが、仮に、そういうことにならぬことを祈りますけれども、ニューヨークの破産がやがて日本の地方自治体にも来るんじゃないだろうかということを懸念いたしますが、万が一そういうことになった場合に、自治大臣はどういう対策を御用意でしょうか。並びにニューヨークの破産が日本経済界にどういう影響がくるとお考えでしょうか。
  306. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。私は、斎藤さんのように経済のことはよくわからないから、あるいは間違ったことを言うかもしれませんが、その節はまた許していただきたいんです。  いまニューヨークの破産がどういう日本経済に影響を及ぼすかということは、これは世界的に見て、ドルの問題に大きく影響するということは外電が常に伝えておるところでありまして、このドルがどう変わって、ドルの価値がどう変化するかということは、これは世界の注目するところであります。これはもうあなたの方がお詳しいことだと思っておるところであります。それから、ニューヨークの破産ということが起きたときにどういう影響があるか、地方財政等についてどういうようなことになるかということにつきましては、これもあなたはもうすでに御存じだと思いますが、ニューヨークは十年前から非常に福祉政策という問題に力を入れてまいりまして、まあ特殊の黒人問題というようなこともございますけれども、また同時に、非常に重税を課するということをしたために、市民、いわゆる担税力を持っておる市民がみな外へ出ていってしまったというような特別の事情もあります。そういう事情もありますけれども、いわゆる入るをはかって出るを制するという考え方がなかったがために、今日のような事態が起きたことも私は事実だと思うのであります。私は、日本の自治体におきましても、今後の問題として、他山の石として十分にこれはわれわれとしても参考にしていかなければならないと思うのであります。  そこで、ニューヨークが破産いたしました場合にどうするかということについては、いまフォードが一つの法律を出さなければいけないんじゃないかということを言っておるわけでありますが、幸いにいたしまして、日本の場合はもうこの法律が実はあるのでございます。というのは、地方公共団体の財政が破綻した場合には、地方財政再建促進特別措置法というのが日本にはございまして、そうして財政再建方策が規定されておりますから、この規定に基づいていわゆる再建団体として指定して、そうして自治省が一定の方針のもとに財政の再建を図ることができる法律がございますので、この法律によって処置をしてまいりたいと、そういう考え方でおるわけであります。
  307. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 三木総理、ちょっとお願いをいたしますが、大変な時局をしょわれるわけで、その御苦労のほどはよくわかりますけれども、私は徳川時代の恩田木工の気持ちを持って総理がこのピンチを乗り切られなければ、とてもこれは乗り切れないんじゃないだろうか。みんな自分のエゴイズムばかり主張して、そうしてなかなか義務の方を果たさない。私は、いま三木総理の御苦労のほどはもうよくわかりますけれども、蛮勇をふるってひとつぜひとも歳出の削減に、総理みずからが号令して削減してくださるようにお願いしたいんです。二十一兆二千八百八十八億の中で五百四十億円ぐらい節約したから節約だなんというんじゃ、私は理屈は通らないだろうと思うんです。少なくともやはり予算の五%とか一割程度を削減する気持ちでやっていただくことを要望して次の問題に移りたい、こう思います。  次は、大蔵大臣にお伺いいたしますが、いまの公債、魅力があるとお考えでしょうか。大変釈迦に説法ですけれども、金利が八%、応募者利回りが八・二二七%、これで魅力があると大蔵大臣はお考えでしょうか。
  308. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 市場の声は、ただいまの条件必ずしも満足すべきものではないというように承知いたしております。
  309. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 それにもかかわらず売らなきゃいけない、これはもう至上命令ですから。これが売れなきゃ景気振興策はとれない。そうなったら、やはり売るためには、証券会社だけに頼まないで、これは銀行、郵便局、あらゆる金融機関にお願いをして個人消化に努力すべきではないだろうかと考えます。私はきわめて簡単な計算を申しますと、三兆五千億の一割が個人消化だといたします。そうすると三千五百億円、それを三千万世帯で消化すれば、一世帯当たり一万二千円の公債を買ってもらえば済むわけなんです。個人消化がむずかしいむずかしいと言っているだけじゃなしに、やはり広く郵便局あるいは金融機関にもお願いすべきじゃないでしょうか。そう言うと、証券界から、それは証券取引法六十五条に抵触すると文句が来るかもわかりませんけれども、その辺は大蔵大臣の腹でとにかく処置しなければ、なかなか公債の消化は、魅力のある公債ではないんですから、国民にこのピンチを乗り切るための協力を求めるという公債だと思いますから、その辺をどうお考えになるかお聞かせいただきたいと思います。
  310. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 国民の大衆に広く一般的に持ってもらうと、こういうことになりますと、そこに一つ問題が起こってまいりますのは、この国債を買った方々が何らかの事情によってこれを現金化したいという事情が起こってまいりましたときにどうするか、その手だてを考えておかなければいけないということでございます。そこで、日本でも戦争の末期ごろやり、また昭和二十七、八年のときにやりました国債がそうでございますし、外国の一般家庭に広く持たれておる貯蓄国債もそうでございますが、一定の年限、たとえば半年ぐらい経過いたしますと、いつでもそれを持ってきてもらえば売り出したところが買いとりますよという、買い取り要求に応ずるという体制をとらなければいけない、このように考えます。そういたしますと、国債は、売る方である国の立場から申しますと、できるだけ安定的なお金であってほしいという要望が一つございます。これに対しまして非常に不安定な、要求があればいつでも買い戻しますよという資金であれば、財政の面からのニーズにその点で難点がございます。したがいまして私どもも、そういうことをするんであれば、額も非常に大きいものでなければいけないし、それからまた国民の立場から見ますと、そういう国債を買うという形ではなくて、日本の場合には別な形の金融資産を通じて国の広い意味の財政に寄与する道が開かれておりますので、そこまで考えないで、現在の国債制度をもとにしてやっていけばいいんではないかと、このように考えております。
  311. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 いまの理財局長の御説明では、従来の考え方から一歩も出ておりません、これは。いままで日本銀行なりあるいは金融機関に一応渡す――戦争中は日銀に渡して日銀引き受けでやった、戦後は金融機関に持たせる。ところが買いオペレーションで日本銀行が買い上げちゃいますから、民間の金融機関に滞留するのはわずか一年だけです。結局、日本銀行が買い上げて見返りに資金を出すということになるから、インフレになりはしないかという心配を持たれるわけであって、やはり私はこれは個人にもっと持っていただくということが本当に大事な点じゃないだろうか。いまの理財局長の御説明では、公債を売却する市場がないと。市場がないということは率直に私も認めますが、これをつくる努力をなさるかどうか、そうして個人が面接自分の金融資産を運用するようにすることが理想じゃないかと考えますが、大蔵大臣いかがなものでしょうか。   〔理事柳田桃太郎君退席、委員長着席〕
  312. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 斎藤先生御案内のこととは存じますが、念のために御説明させていただきます。  日銀がオペレーションをやっておりまして、市中金融機関が持っておりますものを買い上げておるというのは事実でございます。ただ、これは金融機関のロードを軽くするとか、そういう観点でやっておるのではございませんで、経済成長に必要な通貨を供給する。その手段として日銀は、たとえば、利付の金融債であってもいい、政府保証債であってもいい、国債であってもいい、何かを対価として資金を供給しておるわけでございます。したがいまして、そのやり方というのは、市中に資金が過剰になれば今度は逆に国債なり政保債なりを売ってやる……
  313. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 理財局長、その辺はオープン・マーケット・オペレーションの操作、私よくわかっておりますから、その御説明は必要ありません。
  314. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) はい。したがいまして、一年たてば必ず自動的に日銀に入るものだという前提で議論をするのは私ども間違っておるんじゃないかと、このように考えております。
  315. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 やはり私は大事なことは、いままでの日本の間接金融からできるだけ直接金融に切りかえていきませんと、なかなかこれからの公債消化はむずかしいだろうし、金融機関は恐らくオープン・マーケット・オペレーションでやっても市場に売り出すだろうと思うんです。そうすると、公債の価格は乱れてしまいます。値下がりが生ずるんじゃないか。一たんそういう値下がりが生じたら、来年以降の公債を買う人がなくなっちゃうだろうと思うんです。したがって、いまの理財局長の御説明では、私の質問に対する答弁にはならないのでありまして、大事な点は、やはり公債価格を堅持しながら、そうして公債をうまく消化していくにはどうしたらいいかということになると、やはり面接金融の方向へ持っていくことが必要だろうと私は自分の意見を述べたわけであります。いま財界人が心配しているのは、国債を三兆五千億も金融機関に売ると、民間に対する融資が減りやしないだろうか、もしくは、貸してくれと言うと、じゃ公債これだけ持ちなさいと、抱き合わせでやられやしないかということを懸念しておりますが、その点大臣いかがお考えでしょうか。
  316. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 最初の御質問の債券市場の整備の問題、仰せのように値崩れがないように、しかもそれが換金性を持つように、そういう体制を整備せないかぬと思います。残念ながらいまの市場は非常に窮屈でございまして、そういう機能を十分持ってないわけでございまして、これからの問題は、確かにいま御指摘のような機能を市場側に持たすこと、そのために私どもも努力をせにゃならぬ、これからの国債管理政策の一つの課題だと考えております。  それから第二の問題でございますけれども、これはたびたび申し上げておるわけでございますけれども、上半期は八兆四千億ばかりの財政の払い超になっております。しかも、予定どおりの公債を発行した後でそうなっておるわけでございます。下半期をいろいろわれわれ検討いたしておりますけれども、三兆二千億余りの公債を発行いたしましても、ただいまの需給を精細に吟味してみますと、なお八千億ばかりの払い超になるような金融情勢でございます。したがって、マクロで見る限りにおきまして、私はことし発行を予定しておりまする公債の消化に支障があるような市況ではないと思っております。ただし、金融機関によりまして、あるいは時期的には確かにこれだけの大量のものを出しますので問題があろうかと思いますので、その点につきましては周到な対応策が必要だと考えております。したがって、民間で御心配があるように、民間金融を圧迫しやしないかという御懸念は万々ないものと考えておりまするし、そういうことはないように私ども配慮してまいるつもりです。
  317. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 両建て歩積みの問題はもう解決したとお考えでしょうか、大蔵大臣。
  318. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 長い、古くして新しい問題でございまして、依然として解決はいたしておりませんけれども、拘束預金の現状は年とともに改善の方向をたどっておりますことは、われわれの統計が示しておるわけでございまして、相当改善の跡は見られます。しかし、これからなお精力的に改善、努力せにゃいかぬことは当然と心得ております。
  319. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 大蔵大臣、この間私は社会党の藤田進先生と一緒に広島に講演に参りました。約五百人くらいの聴衆が集まっている席上で、これは藤田先生も御臨席のもとで私が聴衆に聞きました。両建て歩積みをまだやっている方は手を挙げてくださいと言ったら、来た人の約一割ぐらいが両建て歩積みをやらされているという回答です。機会あるごとに財界の方に会って聞くと、やはり両建て歩積みというものをやらされている例が非常に多い。大蔵省出版の統計を拝見いたしますと、非常に減っているように載っていますけれども、どうも現実と食い違っているんじゃないだろうか。ですから、もう少し現実に即してやっていただきたい。特に今度公債を出しますと、金融機関としては二つの手を用いると思うのです。公債を持ってください、そうすれば貸しますよとやるか、あるいは、じゃもうちょっと預金をふやしてくれりゃ貸してあげるよという両建てがますます強化される心配があると思います。その点どうぞひとつよく御配慮のほどをお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
  320. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 両建て歩積みの問題をさらに前進的に、前向きに処理したいと思うのは、ただいま大臣から答弁があったとおりでございまして、先ほどの広島での一例などもよくお聞きするところでございますが、私考えますのに、結局拘束しているのか、していないのか、はっきりしない、こういうものがあるようでございます。私どもでは見合い預金と申しまして、担保にしているとか、はっきりしてはいないけれども拘束をしているというものについては、相手方にその旨を通知する。また、この処置をしまして、拘束を解除した場合にはその旨をはっきりしろ、こういう指導をやっております。それが借りている中小企業者の方にはどういうぐあいに受け取られているか。これは公正取引委員会でもってアンケートをとられておる数字も、私どもの方が悉皆調査をした数字とは若干違っておる。この問題がございますので、この辺をどういうぐあいにきちんとしていったらいいかということをいろいろと研究をしております。現在は検査の都度、特に歩積み両建ての報告状況と、それから実際にどうやっているかということとを照らし合わせまして、もし違っていればその調査をやり直して報告をやり直させる。そうして違っておりました場合には厳重な処分をする、こういう体制で臨んでおりますけれども、なおよく工夫したいと思っております。
  321. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 では銀行局長さん、お伺いしますが、仮に大蔵省に、自分は両建て歩積みをやらされているというはがきが行ったら、あなたはどう処置しますか。
  322. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) そういうような通知が参りました場合には、その相手の金融機関に対して、これは時期的の問題がございますが、検査を差し向けるということになると思います。
  323. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 間違いありませんね。
  324. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) はい。
  325. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 検査した結果、明らかに両建て歩積みをやっている場合には、その担当重役を処分しますか、しませんか。
  326. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) これはそのときの問題でございますが、現在、投書等もございまして、それも参考にしながら、普通の検査のときに、特に歩積み両建てについて先ほど御説明しましたような検査をやっておるわけでありますが、これは検査員の人組みの点もございますので、先ほど申しましたように時期的な問題はありますけれども、そういうはがきなり、通知なりが来た場合には、その当該顧客についての取り扱いについて特に見る。  それからそれが間違っておりましたらどうするかということでありますが、これは程度の問題はございますけれども、現在担当者はもちろん、担当の重役についても処分をやっておるところでございます。
  327. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 大臣、官庁統計と実際とは大分食い違っていると思うのです。大変おこがましいことですけれども、両建て歩積みをやっているかどうかということをお役所が聞けば、これは口を緘して語りません。だけれども、私たちのような者が行けば率直に本当のことを教えます。私はあらゆる機会に両建て歩積みの実態調査をやっておりますが、おとといも葛飾区の公会堂で約五百名ぐらいの中小企業の経営者を集めて調べたところが、ちゃんとやはり二割ぐらいの諸君がやっている。これは零細であればあるほど両建て歩積みの程度が激しい。こういう点を考えますと、どうぞひとつ大臣、部下の報告だけで判断なさらないで、できるだけ厳重に両建て歩積みを取り締まるように、特に公債発行に関連してそれが激しくなる傾向があるということを申し上げておきたいと考えるのであります。  これで公債の消化については終えたいと思いますが、大正八年に郵便局で公債を売った経験がございますし、もう大分前のことですけれども、この際、どうでしょうか、もう一回、証券業者だけではなしに取り扱う窓口を拡大するという方向を御研究になっていただくことが望ましいと思いますが、重ねてひとつ大臣にその点だけ御回答をいただきたいと思います。大臣の言葉を承りたいのです。
  328. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ただいま御審議いただいておりまする発行予定の公債の消化につきましては、この予算案提出の前にシンジケート団と内内相談いたしまして、了承を得て協力をいただいておるわけでございます。で、あなたが御指摘のように、ただいままでのやり方で発行を予定いたしております。しかし、これから先、先ほどの市場の整備もあわせまして、いわばどのように公債政策を展開してまいりますか、確かに発売の窓口をどうやっていくか、銀行の窓口の問題もございましはうし、郵便局の問題もございましょうし、これらは検討の課題であると考えます。
  329. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 次の問題に移りたいと思いますが、景気をよくするためにまず私はやらなければならぬことが二つあると思う。一つ輸出の振興だと思います。もう一つは過剰生産をどう調整するかという問題だろうと思うのです。  第一の輸出問題については、この十一月十五日から三日間開かれますパリ会議に、大変御多用のところを三木総理初め御出席くださるので、本当に御苦労さまだと思います。御健闘をお祈りいたしますが、やはりそこで私がぜひお願いしたいことは、為替相場の問題については、至急すぐお決めになっちゃわないで、慎重に見守っていただきたいということです。それは、ジスカールデスタンなんというのは為替のベテランですし、彼の思うとおりのベースでやられたら、これはひどい目に遭っちゃうと思いますから、その点についてはよほど慎重であってほしいと考えます。  それから第二に、いま一次産品を出している国の所得が減っておりますから、その一次産品輸出国の所得補償問題について案を持っていかれないとなかなか話が進まないのじゃないか。もしも何か腹があったら、ここでお話しいただけたら非常に幸せだと思います。いかがでしょう。
  330. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 斎藤君も御承知のように、ロメ協定がございますから、これをもう少しグローバルなものにできないかということで検討を進めておる次第でございます。
  331. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 いま総理のおっしゃったロメ協定というのは、十二品目だけの適用です。で、四十六カ国が加盟している。私は、総理がおっしゃったように、これを拡大して、少なくとも日本の鉱工業生産に必要とするものは全部適用していだく、そうして原材料の備蓄を図りませんと、ある程度まで景気がよくなってまいっても、いま財界人は設備投資をやる意欲がない。その一つの理由は、もう資源の制約があるから、設備は金さえ投ずればできるけれども、原材料を押さえられちゃったらどうにもならぬと、そういう不安を持っておりますから、やはり資源の備蓄という観点と、あわせて一次産品輸出国の所得補償という両面からひとつ十分御研究いただくことをお願いいたします。しかし、三日間で果たしてどれだけ成果が上がるか非常に疑問だと思います。昭和八年、一九三三年のロンドン会議が一カ月半やっても何ら成果が上がらなかった。ちょうど私はそのころ学生でありましたけれども、ロンドン会議というものは非常な期待をかけたけれども、何も成果がたかった。今度も下手するとその二の舞をやるんじゃないかと思いますけれども、どうぞひとつ十全なる御準備のもとに臨まれて、発展途上国の所得補償と日本の重要原材料の備蓄という両面から成果を上げられますようにお願いしたいと思います。  次に、為替の問題はいま触れましたが、どうでしょうか、いま世界的にガットの精神を忘れて、だんだん輸入を制限しようとする傾向があるんじゃないだろうか。先ほどイギリスの自動車の例、あるいはアメリカの自動車の例などが取り上げられましたけれども、やはりこの際首脳会議で、ガットの精神に戻ろう、IMFの精神に戻ろうということを強調していただきたいと思いますが、いかがでしょうか、その点は。
  332. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私もやっぱりそういう必要があるということで、そういう線で考えておる次第でございます。
  333. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 いかがでしょうか、この正式の代表者は三名でいらっしゃるんだそうですが、相当有力なスタッフを連れて行かれまして、十分こちらの意見を述べていただくことを希望しておきたいと思います。この間の平沢問題のようなことがあってはまた困りますけれども、十分総理の意向を受け継いで側面からその根回しができるような有力なる人材を連れて行かれることをぜひひとつお願いしておきたいと思いますね。ただ三人行って、会議で白いテーブルの上で乾杯してくるだけでは非常な私は失望だろうと考えます。
  334. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 乾杯だけでは済まされない会議だと思います。それは何かというと、時がこれだけの世界的不況で、各国とも、やっぱり集まる国々は悩み抜いているのですから、これもやはり景気の回復を図らなければ、これはいまの体制というものにひびが入ることは明らかです。時がそういう時です。いま論じられる、議題になっている問題は、全部国際協力を必要とする問題ですから、こういうことですから、しかし大きな成果が一遍に出るというわけではありませんけれども、次の新しい世界経済の秩序、この仕組みに対して何かの方向を話し合うということは、一遍限りではありませんから非常に大きな意味があると思いますが、一遍に、世界的ないろいろなむずかしい問題ばかりですから、それが三日間の会議で結論が出るというふうに成果を期待されては困りますけれども、こういうふうな形で、もう最高の責任者が寄って問題解決のために協力しようという一つの新しい試みですわね、そういう。このことはやっぱり大いに意味があることで、斎藤さんの御指摘の為替問題などをそこでどうする、こうすると決められる問題でもない。やはりこれは、いま御指摘になったような、専門家なども同行しまして、そういう実際専門家の会議で検討をしなければならぬ問題がたくさんあると思います。したがって、できるだけ有力なスタッフも同行するつもりでございます。
  335. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 福田総理にお伺いいたしますが、私もちょうど八月、九月とアメリカに行っておりました。確かに七月ぐらいからアメリカ景気が上向いておりますし、その波に乗って輸出が伸びております。カラーテレビとか自動車というのは日本国内でも非常に景気がよろしい。でありますから、この景気がずっとこのまま続いてくれることを希望いたしますが、輸出見通しはどのくらいになるとお考えになりますか、対米だけではありません、全体の……。
  336. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、ことしの予算を編成するに当たりまして見通し輸出ですね、これは確かに六百五十億ドルぐらいは見たと思うんです。百億ドルは減りそうだというふうに思うわけですが、ただこれがアメリカ景気なんかが、言われるとおりに着実に回復するということになれば、あるいは若干ふえるかもしらぬ。まあ五百億ドルをやや超える、そんな状態になるんじゃないか、そんなふうに見ております。
  337. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 仮に百億ドル減りますと、円に換算して三兆円で、今度の第四次景気振興策で期待している三兆円とほとんど同じ金額になっちゃいます。でありますから、もちろんこの予算を通していただかなきゃ困りますけれども、同時に大事なことは、もっと輸出振興のために御努力していただきたい。  私は、全く私案でありますけれども、どうでしょうか、各地域別に輸出振興のために使節団でも派遣して、各地域に応じた対策を立ててはどうでしょうか。たとえば、いまECの方からは、日本の方が輸出超過になっている、もっとECの物を買えと言われているし、対米輸出の方はいままでよりもずっと減っちゃっている。各地域によって皆病状が違いますから、各地域別にひとつ使節団でも出して、所期の目標を達成するために、すなわち最初の六百五十億ドルを達成するための努力がこの際望ましいんじゃないかと考えますが、いかがでしょうか。
  338. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 六百億ドルを超える輸出というのは、なかなかいま見通しとして困難だと思います。しかし、輸出につきましては私は努力すれば努力するだけのかいがあると、こういうふうに思います。そういうようなことで、輸出信用の制度の拡充でありますとか、あるいは輸銀の資金の充実でありますとか、まあそういうこともいたしておるわけでございますが、たとえばアラブ諸国ですね、あれなんかは、昨年は実に百三十億ドルの貿易上のマイナスです、わが国は。これなんかに対しましてはかなり工夫をする余地もあると、こういうふうに思います。各地それぞれ特色がありますから、その各地全部に使節団を出すと、こういうことではないと思いまするけれども、場所によりましては使節団も出す、そしてとにかくあらゆる手段を尽くしまして貿易の振興を図る。私はこの貿易というものは非常に大事だと思うんです。いま非常に設備投資が沈滞しておる。こういうことは、設備過剰という状態もあるけれども、もう一つ輸出がいかにももう沈滞している、そういうことで、企業意欲というものに心理的に非常に大きな影響を及ぼしている。そういうことを考えますときに、この輸出というものはこれはかなりわが国景気対策として重要な要素をなすと、こういう認識はこれはぜひ持って立ち臨まなきゃならぬと、こういうふうに考えております。
  339. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 輸出は多々ますます弁ずでありますが、いまの見通しでは六百億ドルは超せないというお見通しなんですね。
  340. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 六百億ドルどころじゃない、五百億ドルを幾ら超えるかと、こういうところが問題点だと、こういうふうに見ております。
  341. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 そうすると、輸出の面からは余り景気の振興を期待できないと考えてよろしゅうございましょうか。
  342. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 輸出は、これは景気対策全局から言いますと、これに多くを期待するというわけにいかないんです。現状というか、いま第四次対策をとった後の状況を概略申し上げますと、政府投資ですね、これは補正予算が成立する、そういうようなことで、名目で一五、六%はふえるだろうと、こういうふうに見ております。これは昨年度に比べましてですよ。それから個人消費、これがまあ昨年度に比べましてやっぱり一五%内外の伸びになるだろうと、こういうふうに見ておりますが、逆に設備投資の方は、これは減るんです。それから輸出の方も、これはそう大きい減り方じゃありませんけれども、見通しに比べると大変な減り方なんですが、昨年の実績に比べるとややこれが減ると、こういう状態でありますので、この輸出の増加にさほどの大きな期待を持つことはできないんだけれども、しかし、輸出ということはこれは心理的にわが業界に非常に大きな影響がある。そういうこともありますので、実質的な影響度から言うと、さほどのことはありませんけれども、しかし、この輸出というもの、これはまあとにかく経済界の士気振興には非常に大きな役割りを演じますので、重要視してまいりたい、かように考えております。
  343. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 福田総理にもう一回お願いいたしますが、じゃ、幸い補正予算が通ると仮定し、公定歩合が十月二十四日から六・五%になったと、こういう条件のもとで、輸出はいまの御説明のとおりだとすると、景気見通しはどうでしょうか。下期の経済成長率六%は実現できるかどうか。  第二は、物価が九・九%で済むかどうか。実はいま東京都の消費者物価指数がきょう発表になったのがあります。それによると、前年同月比で一〇・二%も上がっているので、どうも九・九が危ないんじゃないだろうかという懸念をいたしますが、その点についての福田総理の御意見を拝聴したいと思います。
  344. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、景気の側面から申しますと、この補正予算が成立し、それから公定歩合の引き下げ、それに連動しての貸出金利の引き下げ、そういうものを総合しますと、まあ下半期平均というか、平均いたしまして年率で実質六%の成長、これは私はそういうふうな結果になると、こういうふうに確信をいたしております。  なお、物価につきましては、きょうの発表の東京都区部、これによりますると一〇・二%でしたかな。
  345. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 きょうは一・七%。
  346. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 前年比。
  347. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 一〇・二%。
  348. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは季節的要因が非常に多いんです。野菜が実に五割近く上がっちゃった。こういうようなことが影響いたしましてそういうことになっておりますが、そういう季節的要因を除きますと、大体九%ぐらいな水準でございます、前年同月比。そこで、消費者物価といたしますと、かなり着実な動きをしておる。表面的には一〇・二%だということでありますが、実質的には着実な動きを示しておると、こういうふうに見ておりますので、まあ年度末一けたという水準ですね、目標、これは私は、まあそれは達成したいし、達成できるという確信を持っております。
  349. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 次に、通産大臣にお願いいたしますが、需給のアンバランスが約二十兆円とも言われている。この点はけさから何回かこの席上で話が出まして、二十兆であるか七兆であるか正確な数字はわからないという御意見が出たわけですけれども、私は、この需給のアンバランスを調整するためには、三カ月ぐらいでいいから不況カルテルを認めて、応急対策を立てないと非常な泥沼へ入っちゃうんじゃないだろうか。特に悪いのがセメント、鉄鋼、アルミ、新建材、こういうような業界というのは大変です。特にアルミサッシなんていうのは猛烈なダンピング合戦で、もうつぶれる会社が出るだろうと言われている。そのとき自分だけつぶれるのはつまらないから、旅は道連れだというわけで、ほかの会社まで巻き添えにしちゃおうなんていう不届きな考え方まである。したがって、この際私は、この不況から早く抜け出るためには、やはり期間を三カ月ぐらいに限って、あるいはできれば六カ月ぐらいやれば一番いいんでしょうけれども、不況カルテルを認めて生産調整をやるということが非常に必要ではないかと考えますが、通産大臣いかがでしょうか。
  350. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 全部の産業に一律にそういうことをするということは、これはできないと思います。ただ、産業ごとにやはり需給の関係、それから価格の動向、それから企業の経営状態、こういうものを総合的に勘案してすべきだと思います。そこで、たとえばセメント業界でございますが、これはまあ公取に対する申請の書類が不備であったためにまだ受け付けられておりませんけれども、こういう業種が出てまいりますと、通産省といたしましてもそれが実現いたしますように、不況カルテルが実現いたしますように協力をしていくつもりでございます。
  351. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 通産大臣、どういう業種がありますか。いまはセメントだけをお挙げになりましたが、ほかの業種をひとつお伺いしたい。
  352. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まだセメント以外は出てきておりませんが、繊維の方はことしの上半期三つばかりありましたけれども、これは大体市況が回復いたしまして、もう済んでおります。いま、どの業種ということは申し上げませんけれども、もし出てくるならばその実情をよく調べまして、条件が整っておればそれをバックアップしていくと、こういうつもりでございます。
  353. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 通産大臣に言うと釈迦に説法ですが、昭和四十年の不況のときには、十八の不況カルテルが総合的に動いて比較的早く立ち直ることができた。もちろん、そのときには財政法第四条の特例で二千六百億円の国債をお出しになった。これはまあ福田総理が当時大蔵大臣でやっておられたわけで、やはり金の面と物の面の両方がバランスがとれていかないと景気というのはなかなか立ち直らないんじゃないかと私は考えます。いま不況カルテルをやったからすぐインフレになるだろうなんという議論は私はとらないところで、いまは操業度も低いし、失業者も出ているときなんで、一番大事なことは需給のバランスを速やかにとるためにはどうしたらいいかということを考えるべき段階だと思います。したがって、ぜひひとつ、特に困っている、先ほど列挙したような業種については不況カルテルを御考慮なさることが適当だと考えます。参考までに申し上げたい。返事は入りません。  次に、この不況で一番困っているのは私は中小企業だろうと思うんです。で、この間アメリカへ行って調べましたところが、アメリカは大体一カ月の倒産件数が一千件です。で、日本でも大体企業の倒産は一カ月千件。で、経済力で言うと日本の二倍あるアメリカで、倒産件数が大体両方とも一千件ということは非常に参考になりました。で、なぜ中小企業の倒産が少ないかというと、その一つとしてSCOREの制度がございます。これはもう御存じのとおり、第一線を退任された財界人がワンダラー・サービスで、無報酬で中小企業の経営指導に当たっているわけです。サービス・コア・オブ・リタイアド・エグゼキュティブズと言うんでありますが、そういう制度を日本に取り入れてみたらどうだろう。で、もちろんいままで中小企業の指導のためには経営指導員というのがおられまして、全国八千名配置されておって、十分効果を上げているであろうと確信いたしますが、数多い中には、まだ若くて経験もない、自分が商売に失敗したから経営指導員になったというやつがいるわけで、そういうのに指導されちゃたまらないというのもずいぶんいるわけであります。したがって、そういうのを金を出して雇うことももちろんいいですけど、今日のように財政不如意のときでありますから、SCOREの制度を日本でも取り入れてみてはどうかと思いますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
  354. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いまこの中小企業の経営指導員は七千名でございますが、御案内のように、数が急激にふえました関係で、質が若干低下をいたしております。そこで、今度まあ中小企業大学をつくりまして経営指導員の質的向上を図るために教育をやっていこうということで、いま準備を進めておるわけでございますが、さらに商工会議所や、それから商工会に専門の相談員等がおりまして、別に専門的な立場からやっぱり経営の指導の相談にあずかっております。  そこで、まあアメリカの制度のお話がありましたが、その専門相談員で大体アメリカの制度と同じような効果が上がっておると、こういうふうに理解をしておるわけでございますが、せっかくの御提案でございますので、アメリカの制度等さらに十分に調べまして、必要とあらば日本にも適当な形でさらにそれを導入する方がいいかどうかということにつきまして検討してみたいと思います。
  355. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 中小企業の経営者の中には、あの人の指導を受けたいというような方が非常に多いわけです。名もない、まだ経験も十分でない方が、月給をもらっているから指導するんだというよりは、第一線で活躍しておられた方が、いま第一線を退かれた、その人の知識、その人の経験を利用さしていただきたいという希望もあるわけですから、ぜひともひとつこれを取り上げていただくように要望しておきたいと思うんです。  また、アメリカでそれがうまくいった社会的背景としては、まあ自分のうちにぶらぶらしていると奥さんに煙ったがられる、朝から晩までうちにいると。それより、まあSCOREのメンバーになって出ていけば家庭でも喜ばれるというような背景もありますから、必ずしも日本でそれがうまくいくかどうかということについては確信はありませんけれども、アメリカの中小企業経営指導に非常な効果を上げているのを私は目のあたり見てまいりましたので、御参考までに申し上げるわけです。  次に、アメリカの中小企業対策でぜひとも日本も学びたいと思うものは、もう一つあります。それは、政府の政策転換によって中小企業が非常に困った場合には、転業が完了するまで金融について責任を持つということであります。具体的に申しますと、米ソ対立の時代に中小企業が軍需工場を拡張した。ところが、いま米ソ融和の時代になってきて、その軍需工場が要らなくなった。その場合にどうするかというと、スモール・ビジネス・アドミニストレーション、中小企業庁に申し込みますと、政府の政策転換によって困っているのだからというので、その中小企業が新しい商売ができるまで責任をもって融資を見るんであります。この点私は政府の態度が非常にりっぱだと思います。現在の日本にはその点が欠けているんではないかと考えますが、こういう政策をどうお考えになられましょうか。
  356. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) この中小企業対策は、政府の方でも通産行政の最大の柱にいま考えておるわけでございます。一言で申し上げますと、考えられる制度、方針はすべて取り上げておると、こう申しても過言ではないと思うのでございますが、たとえばいまいろいろお話しになりましたけれども、ドルショック等が起こりましたときには、中小企業に対する対策等を立てまして、事業を転換するに必要な金を出していく、さらにまた特恵対策といたしましてもいろいろな手を打っております。それから先般の国会におきましても中小企業近代化促進法を改正していただきまして、そうして高度成長時代から安定成長に入ったこの時代における中小企業の転換につきましていろいろ対策がとれるようにいたしました。さらに今後は、総合的にそういう問題を検討するために、いま立法の準備もしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、こういう大きな転換期でございますから、政府が積極的にめんどうを見ていく、こういうことはどうしても必要であると、こう思っております。
  357. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 通産大臣、いまのお言葉の中にあった新しい立法を準備しておるとおっしゃいますが、その内容を教えていただきたいと思います。
  358. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 最近、特に軽工業品等の部門におきまして、発展途上国の追い上げによりまして、輸出が非常に伸びがとまりまして減少を見ておる業種等がございます。さらに、日本の国内に輸入がふえてまいりまして、そのために先行きの生産の伸び等が余り見込めないと、こういった業種もございます。また、公害の規制の強化等に伴いまして、この際転業しようかといったようなことを考えておられる業種もあるわけでございます。それから、主として輸入に頼っております事業で、原料がいろんな事情で入手が困難になってきた、こういう業種もございまして、そういった業種に従事しておる中小企業につきまして、さらに発展性のある部門に転換をしたいと、こういうことを希望しておる中小企業者が多数あるわけでございます。こういった方々につきまして、その転換を容易にしますために、転換についての助成を国が金融あるいは税制面でめんどうを見ると、こういったことを内容といたしました立法をいたしたらどうかと、かように考えまして、現在内容につきまして検討を部内でいたしておる段階でございます。
  359. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 それはいつの国会に出せますか。
  360. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 一応私どもの予定といたしましては、来年の通常国会に、できましたらばお願いをいたしたいと考えて準備いたしております。
  361. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 ぜひそれが実現するよう希望しておきます。  実際、この政策転換で高度成長から安定成長になったために、思わざる被害を受けているのが非常に多い。それから発展途上国の追い上げのおもしろい一つの例として、この間、私、付知町という岐阜の山の中へ行きました。いままで木曽ヒノキで、はけの取っ手をつくっておった。その付知町の人たちはその取っ手で生きておった。ところが、このごろばったりと注文がとまっちゃった。何だと調べてみると、台湾の台湾ヒノキでその握り手、取っ手をつくるようになったために、付知町は全然その仕事がなくなっちゃった、こういうようなのが各地でずいぶん聞かれるんであります。いまそれを救う道はない。ぜひひとつ、その法律が早く実現されることを要望しておきたいと思います。ありがとうございました。  通産大臣、もう一回お願いいたします。実は、私は三月二十六日の予算委員会で、当時通産大臣は御臨席なかったんです。福田総理に御質問いたしました。それは、大企業と中小企業の事業分野の調整をやってはどうかという私の質問に対し、福田総理からは、行政指導でやるからよろしいというお答えでありました。そこで、いま通産大臣にお伺いしたいのは、その考え方は全く福田総理と同じであるかどうか。それから、いま漏れ承るところによると、調整官という役人を設けて、それにやらせるんで、立法措置は講じないという動きだといいますが、それで果たして目的が達成できるかどうか。三月二十六日に私が質問してから七カ月たちましたが、その間の行政指導の具体的内容をどの程度やったかをお知らせいただきたいと思います。
  362. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 法律で、どの事業とどの事業には大企業は出ていってはいけないと、こういうことを規定するということは立法技術上非常に大きな困難が伴うんです。それからもう一つは、消費者の立場に立って考えましたときに、新しい技術をやっぱり中小企業にも導入してもらった方がいいと、こういう考えの場合もあると思いますですね。でありますから、やはり法律でそういうことをきめないで、行政指導でこれをやっていくということは大変いいのではないかと、こう思っております。これまでも何回かトラブルがあったんですけれども、一応全部行政指導でこれを片づけてまいりました。現在もまあその考え方に変わりはございません。  三月からただいままでの間のトラブルの処理の問題につきましては齋藤長官から答弁をいたします。
  363. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 最近の大企業の進出に伴います中小企業との分野に関する紛争につきまして行政指導をいたしましたケースといたしましては、一つは豆腐の件でございます。乳業会社が大量生産方式によります豆腐の製造方式を開発をいたしまして、これはAF2という防腐剤が豆腐に使えなくなりましたので、それにかわる殺菌法によりまして、長持ちのする豆腐という技術を開発をしたわけでございます。それで豆腐の製造を始めたわけでございますが、豆腐業界の方では、その規模を極力小さくしてもらって悪影響ないようにしてもらいたいと、こういう希望でございまして、進出をしました大企業の方と、中に農林省に入っていただきまして協議をいたしました結果、一社は製品を、その会社の名前による販売を取りやめることにいたしました。もう一社は、現在以上に設備を増設をいたさないと、こういうふうな了解になっておりまして、さらに中小企業と話し合いを続けるように現在指導をいたしておるところでございます。  もう一件は、もやしを繊維会社が、そのあきました工場を使いまして製造をする、こういうケースがございましたが、これにつきましても行政指導をいたしました結果、現在以上に設備をふやさない、現在やっております栃木県の工場以外に工場はつくらない、それから中小企業の工業組合に加入をいたしまして相協力してやっていくと、こういうふうなことで解決をみております。  そのほかに一、二件、現在行政指導中のものがございます。
  364. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 通産大臣、いま齋藤長官の説明で三月以降のおやりになった仕事については一応わかりました。その御努力を感謝いたしますが、まだまだ、軽印刷とか、クリーニングとか、めがねとか、注射器とか、更生タイヤとか、トラブル中のものはずいぶんあるんであります。そういうものを一体行政指導で全部処理できるかどうか、私は非常にその点は疑問だと考えます。仮に、通産大臣がそうおっしゃって、いや行政指導でやるんだとおっしゃって、仮に、じゃ自民党が党の方針として分野調整の法律をつくるんだとおっしゃった場合に、大臣はどうなさいますか。
  365. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いまそういう動きがあるということは承知しております。で、いまよく話し合っております。
  366. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 では、党がそれを決めたら大臣はそれに従うという御意思ですね。
  367. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 仮定のことには答えられませんので、よく話し合いまして、できるだけいい方法を考えたいと思います。
  368. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 吉田ワンマンと同じような御答弁で、仮定のことには答えられませんとおっしゃいますけれども、もう現に目の前で大企業と中小企業のトラブルが起きているんですから、それは仮定の問題じゃない。それを幾ら通産大臣に話してもわからなければ、もしも党がそういう立法をすると言った場合にどうするかということを聞いているんであって、仮定のことではないと思うんですね。ですから、党が決めれば党の方針に従うのか、それでもおれはいやだとおっしゃるのかということなんです。仮定の問題じゃない、現にトラブルは起きているわけです。
  369. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) したがいまして、その問題につきましては、まあ通産省の考え方をよく説明をいたしまして、何とか行政指導で解決できるということを十分説明をいたしまして、できるだけその方針でやっていただきたい。法律でつくらない、行政指導でやっていく、こういうことでお願いしたいと思っておりますけれども、しかし、政党内閣のことでございますから、党がお決めになればそれに従います。
  370. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 わかりました。  いままでのその分野調整に対する反対論の一つは、自由競争に反する、自由競争をやるから技術の進歩もあるんだと言いますけれども、幾ら資本主義であっても完全なる自由なんというものはないので、上野動物園でライオンのおりの中にウサギを入れて、さあ自由競争だと言われたって、これは自由じゃありません。食われる自由があるだけです。いま、現に大企業と中小企業の経営格差というものは非常に大きくて、それは、とても中小企業が自由に太刀打ちできるものじゃありません。そういう弱いものを守るところに政治の責任があるのであって、ぜひひとつ考えていただきたいと思うのであります。私自身が中小企業の多くの方に接触してみると、行政指導には限界があるということです。それは、たとえば先ほども申しましたのはヤクルトの例だと思うのです、豆腐の例は。ヤクルトは、その豆腐を売ればヤクルトの本体が売れなくなっちゃうから引退しただけの話であって、本体に影響がないと思えば強引にやっていったろうと思うのです。したがって、大事な点は、あれは行政指導のおかげで成功したと思ったら間違いじゃないか。やはり行政指導の裏にあるもの、すなわちヤクルト自身が売れなくなったら困るという配慮から撤退したんだと私は考えます。  その辺はもう見解の相違で、どうでもよろしゅうございますけれども、ぜひともひとつ大臣に、この弱いものを助けるんだと。時限立法でもいい、五年でもいい、六年の時限立法でもいいから、いま当面するトラブルを解決するためにはどうしたらいいかということを真剣に考えていただかなきゃ、三月二十六日から今日までの間に解決しているならその説明で納得いたしますけれども、残念ながら解決しているものはきわめて微々たるものであるということを私は言いたいんです。いかがでしょうか。
  371. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私は、これまでのトラブルは大体解決したと、こう思っております。クリーニングや印刷の問題も出ましたけれども、これも私は大体解決したと思っております。いろいろ例示をされましたけれども、私は十分話し合いをすればこれはわかっていただける問題だと思うんです。大企業がむやみに中小企業の分野に出てくるというようなことはよくないことでございますから、話し合いで私は十分解決できると思っております。  この際申し上げておきたいのは、私どもは中小企業対策ということを非常に重視しておるわけなんです。ただしかし、一面におきまして、消費者の立場あるいは技術の進歩、こういうこと等も考えなければなりませんから、だから総合的に産業政策というものは進めていかなければならぬと、こういう立場に立っていま申し上げましたような意見を言ったわけです。ただしかし、党でお決めになることであればこれはもちろん従います。
  372. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 次の問題は、安定成長に入って非常に困っておりますのは、住宅をどうするかという問題で、いままでは持ち家政策の推進であった。それは私はりっぱに筋が通っていたと思います。毎年のように月給が一割五分とか二割上がりますから、借金しても返せる。しかし、これから安定成長になっちゃって、そんなに月給が上がらないということになると、借りちゃったはいいが返せないということになって、非常なトラブルが予想されると思うんです。そこで、従来の住宅政策はこのままでいいかどうか、再検討してみる必要はないかどうか、いかがでしょうか。建設大臣に御意見を拝聴したいと思います。
  373. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 結局、金融公庫の貸し付けの問題だと思うんです。そういう面で、おっしゃる面も確かにあると思うんですけれども、私どもはそういう面では、貸付限度の拡大の問題あるいは償還期間の延長の問題等、絶えず関係機関と折衝いたしておりまして、だんだんと改善はされてきている。もちろんアメリカのようにいきませんけれども、かなり前進してきておるのでありまして、明年度もそういう計画を立てておりまして、これは建設省一存ではもちろんいかない問題でございますから、関係省庁とも十分相談をしながら前進するように努力をしなきゃならぬ、そういう考え方でおります。
  374. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 建設大臣、じゃもっと具体的に内容に入って教えていただきたいと思いますが、三つになるわけで、一つは、従来のように持ち家政策を推進するかどうか。戦前の日本住宅というのは七割は貸し家だったわけです。現に私なんかも、大学を卒業して十年間は貸し家に住んでいた。大体子供何人生むかという計画が決まって初めて自分の家を持つようになる。それが一番合理的だと思うんですね。家が汚くなったら引っ越しちゃえば一番簡単なんですから。したがって、いままでのような持ち家政策でいくのか、それとも貸し家政策を取り入れていくかどうかということが第一点。  第二点は、住宅ローンの金利が下がったことは事実ですが、民間のローンは、返済期間十年ないし二十年ですと金利は年九%です。これはずいぶん私は高いと思います。二十年間借りといたら三倍返さなければいけない。すなわち千万のものは三千万になっちゃうんですからね。もっとこの点は再検討しなきゃいけないんじゃないだろうか。  それから、返済の期限でありますが、アメリカの場合は三十年、頭金一割ですよ。頭金一割で三十年だったら、日本だって皆住宅を持てると思うんです。その点どうお考えになるか。いまは大体十八年の返済ということですけれども、これを三十年ぐらいにお延ばしになるかどうか、この三点について大臣のお答えを賜りたいと思います。
  375. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 第一点、持ち家か賃貸かという問題でありますが、これはいつも議論されている問題でありますが、持ち家に対する国民の要望も非常に強いわけであって、これは需要にこたえていかなければならぬと思います。さればといって、やはり低所得層の人々には公営、公的住宅を供給するということは当然の役目だと思っております。特に大都会中心にしましてそういう面が非常に隘路があるわけでありますから、そういう隘路を打開をしながら賃貸住宅も推進せなきゃならない。これは需要に応じて考えなければたらない問題。大都会の賃貸住宅については特に重点を置いて考えなければならないというのが基本的な考え方であります。  それから、民間住宅のローンの問題でありますが、これもお説はごもっともであります。たとえば第三期住宅五カ年計画、明年度から立てますが、八百六十万戸の計画の中で民間建築住宅が五五%を占めておるわけでありまして、民間建設が順調にいくかいかないかが住宅計画の大きなポイントになることは申し上げるまでもありません。したがいまして、建設省は、従来から関係当局に対してこのローンの拡大、金利の引き下げ、あるいは償還期限の延長といったようなものについていろいろと努力をいたしておるわけでありますけれども、これもかなり前進はしておりますけれども、一挙にアメリカのように解決はなかなかつかないところに問題点がありまして、これもやはり今後の大きな問題として明年度もさらに積極的に計画的に努力を続けていきたいと、かように存じておるわけであります。
  376. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 建設大臣、金利は一体どれくらいが理想だと思いますか、民間の住宅ローンの金利は。
  377. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) これはいろいろ見方もありましょうけれども、現在住宅金融公庫のローンが、財投に国の方が利子補給をしまして、五・五%でやっておるわけであります。それから民間は大体八ないし九%程度でいっているんじゃないかと思うんでありまして、いま九・三%くらいですか、さらに明年はこれをできる限り引き下げてもらいたいと思って私どもは努力をいたしておるわけでありますが、少なくとも九%台程度のものには――これはこれで十分ではないかもしれませんけれども、一挙にこれ、われわれがここで理想を言ってもなかなか解決がつかない。しかし、住宅金融公庫のローンが利子補給をして五・五%になっておりますから、民間との間に余りにも開きがあるから、できるだけ民間を引き下げてもらうというのが私どもの一つの大きな重点として努力をいたしておるところであります。
  378. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 大体アメリカのサラリーマンは年収の五年分で自分の家が持てるというのが普通です。ところが、日本だったら、サラリーマンは二十年たったって持てやしません。それは、一つの原因というのは、土地が高いということもありますけれども、ローンの金利が高過ぎることですよ。だから私は、やはり利子の補給をやっている政府の方と民間との間に差があっても当然だとおっしゃるかもわからぬけれども、もう少し民間の方を下げさして、これを七%ぐらいまで下げるように指導なさることをぜひともお願いしたいと思うんです。で、いま住宅ローンの貸出残高は五兆四千億円で、貸出総額の中に占める比率はたった五%にすぎない。これでは住宅ローンをやっていると言ったって申しわけにすぎないのであって、やはりもう少しふやしていただいて、住宅が手に入るような内面指導をお願いしたいと思います。いかがなものでしょう。
  379. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) お説のとおりでありまして、そういう方面で努力をいたしてまいります。
  380. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 そうすると言われちゃえば、もう追及のしようがないわけですけれども、じゃ、どうやってなさいますか、具体的に言うと。何年何月ぐらいになったら、その理想というか、七%ぐらいまでになるとお思いになりますか。
  381. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 金融の問題は、率直に申しまして、特に民間ローンは民間の市中銀行が重点でやっておるわけでありまして、これは率直に言って、建設省がいろいろ要望しております。私どもはまず大蔵省に要望をして、大蔵省の銀行局を通して、そして資金枠の拡大等についてもいろいろお力添えをいただいているわけでございまして、そういう関係省庁にわれわれの考え方も十分に主張をして、御協力を得て一体になって進まなきゃならない、かように存じておりますから、御理解いただきたいと思います。
  382. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 安倍農林大臣にお願いいたしますが、私、この間山形県の川西町というところへ参りました。そこの農協で調べてまいったんであります。農民諸君に何が一番困るかと聞いたところが、農機具貧乏だと。これはもう賢明なる大臣だからこれ以上説明する必要はないだろうと思いますが、耐用年数まあ大体五年ないし八年になっている。五年ぐらいたつと必ず故障するようになっている。そのときに部品があればいいんだが、メーカーに聞くともう部品がなくなっていると。そこで私のお願いしたい第一は、やはりもう少し部品をちゃんと保存させるように御指導願いたい。そう言えばきっとメーカーは、いや、ちゃんと保存してますと言うに違いないが、現実に私はいま言った川西町でも聞きました。静岡県の三ケ日町というところに行きました。これはミカンの生産地ですが、そこでも農民諸君の異口同音に言うことは、部品がないために新品を買わざるを得ない、何のために働いているのかわからぬ、五年に一回ずつ新品を買う、それも借金で農協から借りる、だから借金を返し終わったころはまた買うんだと、おれたちは何のために働いているのかわからぬという嘆きを聞きましたが、この点どうお考えになるか、また具体的にどうしてこれを打開するかということです。
  383. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 農業におきまして非常に機械化が進みまして生産性が大変高くなったわけですが、反面、いまおっしゃるように、機械化貧乏といいますか、農家がそれぞれ機械を持ってそれの借金に追われるというふうなこともあることは事実でございます。そういうことで、農林省なんかにしても普及組織なんかを動員いたしまして、無計画な機械の導入等を行わないように指導もいたしておるわけでございますが、同時に、いまお話しのようなやはり耐用年数等につきましても、これは通産省と相談しなけりゃならぬ問題ですが、型式検査というようなことも行っておりますが、もっと耐用年数の確保といった面につきましては、これは通産省とさらに密接な、緊密な連絡をとりながらメーカー等も指導して、耐用年数の確保には今後一層努めていかなきゃならないということを私も痛感をいたしております。
  384. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 安倍農林大臣の回答で大体私もわかるんですけれども、ただ、大臣はそうおっしゃっても、なかなか財界はそのとおりは動きません、それは。どんどんモデルチェンジをやり、部品を交換していかなければ、新しい機械が売れないからです。一年のうちたった一週間ぐらいしか使わない機械のために、実に莫大な投資をしている。ぜひともひとつ部品の互換性ということをやっていただきたい。それは私は、法律で決めなきゃなかなか拘束力がないだろうと思うんです。部品の互換性をつけなければ、いまの農民は幾ら米を高くしたところで農機具屋のために働いているようなものなんで、ぜひともひとつ部品の互換性ということを、通産省とよく御相談の上、決めていただきたい。これが第一です。  それから第二は、農林大臣、普通零細なるものが強いものに対抗するためには共同化とか協業化をやれということは、これはもう定石であります。ところが、いまの農村へ行きますと、昭和三十年代までは共同脱穀をやりました。ところが、いまはそうじゃありません。早く供米を出しちゃって出かせぎに行きたいとか、楽をしたいというようなことから、五反百姓でも自分のところで農機具を持つようになる。農林省の統計を見れば、農機具の普及率は非常に進んだと言って自慢しておられますけれども、実はこれは喜んでいいことではない。共同で使えばいいものを、自分のうちだけで持とうとする。だが、これを農民にいかぬと言うわけにはいかないんでありまして、農民の気持ちはよくわかります。そこで農林省としては、共同化、協業化をもっと強力に推進し、また共同化、協業化をやることが得だというような方向に持っていかなければ、農民はなかなかいまのつらさから抜け出られないと考えますが、御意見いかがでしょうか。
  385. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 初めの部品の互換性の問題ですが、これは通産省におきましても、互換性の高いものについては工業標準化法に基づく規格の設定の推進を図っておられるようでありますが、機械の耐用年数及び部品の在庫年数の延長の問題につきましては、通産省とも十分連絡をとりながら、農業機械の効率的な利用をさらに一層図っていくように、これはもう全力を尽くしたいと思っております。  それから、農業機械につきましては、いまお話がありますように、やっぱりこれを効率的に利用するためには、何としても農業における集団的生産組織といいますか、協業化といいますか、機械銀行などというものもあるわけですが、そうした集団的な利用、活用というものを、これはいま各地で相当進んではおりますが、それをさらに、そういう共同化あるいは協業化、あるいは集団的生産組織の利用という面を、これはいろいろと助成措置等もやらなければなりませんし、融資措置等も強化しながらこれを拡大をしていくということが非常に必要でありますし、政策としても進めておりますが、さらにこの点については鋭意努力を続けていきたいと思っております。
  386. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 今度は三木総理にお伺いいたしますが、大変暗い材料ばかり多いときに総理がライフサイクルということを発言なさって、国民は一級の希望を持ったわけです。ところが、実はただライフサイクルとおっしゃるだけではぴんとこないのでありまして、もしも発表できるような具体的な案があったら、お示しいただきたいと思います。  で、ライフサイクルの考え方なんというのは新しい考え方じゃないんで、どうも変な話ですが、元禄時代の文学者の井原西鶴の誓いた「日本永代蔵」という本の中に、あなたがおっしゃったと同じようなことを言っているのであります。どういうことかと言うと、二十ぐらいまでは親のすねかじって勉強しろ、二十から四十までは一生懸命真っ黒になって働け、四十過ぎたらそれまでかせいだ物は全部社会に還元していけ、それがライフサイクルだと、いまの言葉で言えば言うわけです。私は、そういう考え方は昔からあったんですが、いま三木総理があなたでなければ言えない発想だったと思いますから、ぜひその内容の一端でもいいし、できればもっと詳しく説明していただくことが、この光をもっとでかくするゆえんだと思います。どうぞお願いいたします。
  387. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 斎藤君も御同感だと思いますが、人間の寿命がすっかり延びたですね。だから、人生の各段階でやはり社会的な、経済的な不安をなくするために、何かこう体系的な保障が私は要ると思うんですね、これは。人間の不安をなくするということは、これはやっぱり政治の大きな目標ですからね。しかしそのためにはもうそういう保障というものに対して全部国が出せ、あるいはまた地方公共団体が出せというような、そんなことはできませんよね。どうしたって、やっぱり自動的な努力も伴わなければならない。自助的な努力を伴えるような条件を整える。私は、総合的な社会保障制度というものは、何かこう、スウェーデンやイギリスのものを持ってきて、それをまねというか、それを取り入れるのでなくして、日本的な風土、条件に適合した総合福祉の政策というものを編み出さなければ――これはスウェーデンだってイギリスだっていろいろな批判が起こったですね、ああいう世界的社会保障制度に対して。そういうことで、ひとつそういう考え方で日本的な総合福祉政策というものを打ち出して、そうして皆がもう人生というものは不安はない、皆自分の信念に従って生きがいを求めていけるような社会というものをつくることがわれわれの大きな政治の理想である。そういう構想から、これをいろいろ経済学者や社会学者に話しますと、全くそうだと。われわれのところでそれをどう各論的に骨組みをするかということで、それはまあできなかったわけですね。これに対しては、各論についてはいろいろな批判があると思うのですよ。しかし、物の考え方の基礎はそういうところに出発したわけですね。これから国民に対してもいろいろ――サンタクロースじゃありませんからね、国家は。いろいろな連帯の意識がなければ、おれはおれだと、皆何でももっと公共団体や国がサービスしろというようなことでやっていけるわけがない。やっぱり社会連帯、相互扶助の精神というものがなければこれからの社会は明るくならぬですよ。皆が集団的なエゴを発揮しては、これはもう国はやっていけぬことはわかり切っているのですね、そういうことは。こういうことで、これに対する案はあるわけですからね。それを自民党でも大きな調査会、船田中大先輩なんかがみずから会長になって、いま研究しておるわけですね。政府の中にも各省の連絡会議を置きましてこれを検討している。これ、すぐにという問題でありませんからね。やっぱり大ビジョンですからね。そういうことで、これを一つの具体化していく方向に向かって検討を進めておるという段階でございます。私は、やはり政治が目指す社会はそういう社会であると、これはいろいろ、経済的な困難もありますけれども、何か目指すものがなければ、日本の将来がどうなっていくんだというビジョンを与えずして政治というものは園児に希望を与えることはできませんからね。非常な情熱を感じておる次第でございます。
  388. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 三木総理、そのお考えには賛成ですが、いつぐらいまでにその具体的な案をお知らせ願えますか。
  389. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、斎藤委員もひとつ、私話しますから、委員会に加わってもらいたい。案は出ておるんですよ、すでに案は出ておる。それをひとつ具体的に皆で衆知を集めて検討してもらいたい。たたき台になる案というものはすでに提出済みでございます。
  390. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 日本経済新聞社から出されました「ライフサイクル」という本は、二回私は拝読いたしました。あれが総理のお考えですか。
  391. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 全体として私の考え方に共鳴した若い学者が全体の肉づけをしたものでございます。これはいろいろ私自身にもあの内容については必ずしも賛成しがたい個所もあります。また、各位がごらんになってもそういう点があると思いますが、全体としての骨組みは、私は非常に賛成でございます。
  392. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 最後の問題になりますが、不況で一番いまえらいとばっちりを受けちゃっているのは沖繩の海洋博だろうと思うんです。これは景気がよかったらもっと入ったでありましょう。しかし、当事者の必死の努力にもかかわらず、このままでいけば大変な失敗だろうと思うんです。一体これをどう始末するか。失敗しちゃってから赤字を処理してやるというのではだめなんで、いまどういう手を打ったらもう少し振興できるかということについて、担当の大臣からお知らせをいただきたいと思います。
  393. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 七月の二十日にオープンいたしまして、ちょうど百日ばかり経過したところでございますが、九月の二十七日に調査をいたしましたところ、二百二万人の入場者がございました。当初は、六カ月の間に四百五十万と、こういうふうに想定をいたしておりましたので、大体予定から比べますと約二割減少しておる。この水準のままいきますと、三百六十万ぐらいの入場者しかないということになりますので、先般来、各方面と相談をいたしまして、入場音の数をもう少しふやす方法につきまして、いまいろいろと手を打っておるところでございます。まだ若干の日もありますし、特に、十一月の飛行機などは全部満席のようでございますから、今後の成績に期待をいたしておるところでございます。
  394. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 いかがでしょうか、通産大臣、小学生や中学生に少し、ただで見せてあげて、沖繩の理解を深める、あわせて父兄もついていって勉強してくるというようなことを考えてみませんか。
  395. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 沖繩の中学生、小学生等の入場が非常に少ないものですから、これには若干の理由があるんだと思いますけれども、そういうこと等も含めまして、いまいろいろ対策を立てておるところでございます。
  396. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 結論の方に入りますが、稲田副総理にお伺いいたします。  ドイツが一九六七年に経済安定成長促進法という法律をつくりました。日本でも同じような法律を用意するつもりがあるかどうか、これが第一点です。  それから第二点は、景気がいいときにはばかに調子がいいが、悪くなると青菜に塩になっちゃう。やはり景気がいいときには、ある程度まで積んでおいて、景気調整資金というものでも持っていなければいけないんじゃないか。これ、企業とか個人なら当然やっているんですけれども、国家の場合はそれをやらないで、悪くなったら赤字公債、いいときは大盤振る舞いをするということであっては、納税者がたまらないと思うんです。  その二つについての副総理の御意見をお伺いしたいと思います。
  397. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 戦後、わが国経済が軌道に乗りまして、それからの推移をずっと見ておりますと、大体一、二年の不況、二、三年の好況、そして今日に至っておるわけなんですが、これから先を展望しますと、そういう行き方はよくないと思うんです。景気の山が非常に高い。また、底が非常に低い。その間、国民経済的に非常にロスがある。また同時に貧富の格差、そういうものが拡大してくる。これからの経済というものは、できるだけその山を低く、谷を浅く、できるならば成長の速度というものがそう変化ないように運営していくべきであろうと、こういうふうに思うんですが、景気調整の手段とすると、何といってもこれは財政と金融になってくるわけです。金融につきましてはかなり機動性を持って運営できる、そういう状態ですが、財政はなかなかそういうわけにはいかない。そこに何か工夫の余地があるんじゃないか。いますぐという問題じゃありません。いまは、もうとにかくこの混乱からいかに脱出するか、それで手いっぱいでございまするけれども、その脱出した後において、わが国経済を安定的に運営していくということにつきましては、何か新しい工夫、新しい装備が必要なんじゃないかという気がするんです。  いまお話しの安定基金、こういうことも私は貴重な御提案だと、こういうふうに思います。あるいは諸外国でやっている償却制度に非常に弾力性を持たせるというようなこともあります。景気がよくなるということ――いまは別ですが、平常の状態考えますと、これは設備投資がわあっと行くわけです。それから景気を今度はよくするというためには設備投資を振興させる、これはとにかく景気運営の相当大きな点になると思うんですが、金融がそのために機能するということは、これは当然ですが、同時に財政的にも、たとえば景気調整税制というような形で何かできそうなものだというような感じがしますが、これはいま差し迫った問題でもありませんけれども、これは熱心に検討すべき課題であると、かように考えます。
  398. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 大蔵大臣にお伺いいたしますが、この赤字のときに減税をやれということは大変むちゃだと思われるかもわかりませんけれども、アメリカのやり方をこの間見てまいりまして、アメリカは、いま歳入欠陥が八百億ドルです、約二十四兆。しかも、それで二百二十八億ドルの減税をやっているわけです。私は、不況が長引けばますます赤字公債は大きくなっちゃう、だから、少し従来のオーソドックスな考え方から見れば御批判はあろうと思うけれども、この際ある程度までの減税をお考えになった方が景気立ち直りに速い効果が期待できるのじゃなかろうかと思います。その点が第一点。減税をひとつやってはいかがか。赤字公債を出しているときだからできないだろうというお答えなら、もういままでの答えのとおりですから、質問してもつまらないことですけれども、しかし、いままでの、四次までの景気刺激策ではなかなか立ち上がりがむずかしいんじゃないだろうか。そういう点から見ると、なるたけ早く立ち直らせるためには、この際、欠陥の折であるにもかかわらず、やはり減税というものをお考えいただけるかどうかということを結論的にお話しいただければ結構です。  それから、第二点は、これは日銀総裁にお伺いすべきことであるかもわかりませんが、公定歩合をいままで四回下げましたけれども、私の見るところでは、下げ方が非常に慎重過ぎて、〇・五%ずつ三回下げる、四回目は一%だと、上げるときは一挙に七%から九%ぽんと上げておいて、下げるときはちょびちょびとやっている。ああいうのを二階から目薬と言うんで、はなはだ残念ながら余り効果が期待できなかった。そこで、いま日銀総裁なり大蔵大臣は、すぐ第五次引き下げなんということは口が腐ったって言えないでしょう。だけれども、一体いままでの公定歩合の引き下げの仕方、あれで御満足かどうか、その点について教えていただきたいと思います。
  399. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) アメリカが大胆な減税政策をとっておるという御指摘がございまするし、わが国の国内におきましても、学者その他からそういう御提案があることも承知いたしております。私としては、結論は、残念ながらあなたの御提案にただいま直ちに応諾できないわけでございますけれども、考え方といたしましては、去年とおととし、自由民主党として大胆な二兆円減税というのをやったわけでございまして、去年で一応の完成を見ているわけでございます。その結果、ただいま達しておるところは、諸外国に比べまして低所得層を中心にいたしまして相当大幅な減税が行われておると思うものでございます。それが一点と、それからただいまの状況は、購買力が少ないから消費が少ないという面も確かにあります。ありまするけれども、それよりも消費者が最終需要において慎重であるのは、経済に対する将来の展望が明らかでないというところが、むしろ主たる理由ではないかと私は見ておるわけでございまして、いま減税で最終需要が直ちに刺激できるというようには見ないわけでございまして、減税を仮にやりますと、その大半はやはり蓄積に回る傾向が強いのではないかと見ておるわけでございまして、せっかくの御提案でございまするし、十分吟味せにゃならぬ非常に重要な政策であると思いますけれども、いま直ちにこれに私は同調するわけにはまいらぬと考えております。したがって、間接的な需要策ではございますけれども、ただいま四次景気対策でやっておるような方法がより適切であると考えております。  それから第二の問題でございますが、公定歩合の政策は日本銀行の方の政策委員会の專管でございまして、私どもがとやかく言うべき問題ではございませんでしょうけれども、何事によらず、やはり政策に機動性、弾力性がなけりゃならぬ。せっかくのいいアイデアも、そのタイミングを誤り程度を誤るということでは効果が上がらないという場合が多いわけで、それはもう斎藤さん御指摘のとおりだと思うのでございまして、ただいままでの公定歩合の操作があなたの御要請にぴったり必ずしもいっていないということにつきましては、御批判として十分承って将来の指針といたしたいと思います。
  400. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 重ねて大蔵大臣にお伺いいたしますが、大臣は租税の負担率はどれくらいが適当だとお考えでしょうか。というのは、赤字公債が早くなくなることを希望いたしますけれども、どうも来年度以降において増税が行われるんではなかろうかと国民は心配しているわけです。租税の適正負担率というものは、私は大体国税と地方税合わせて所得の二〇%程度が適正だと思いますが、大臣はどうお考えになるか。また、現在その率になっていると思いますが、これ以上増税する余地があるかどうか。いかがでしょうか。
  401. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 租税の負担率は、租税だけでなくて社会保険料の負担等々も合わせまして考えるべきものと思いますので、一概に何%が適当であるということのお答えは出ないと思うのでございますけれども、ただいま日本状況におきまして、いまあなたが言われた中央、地方を合わせまして二〇%という負担というものは、私は相当剴切な見当ではないかと思います。
  402. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 大臣、まだこれで増税する余地があるとお考えでしょうか、いかがでしょうか、仮に来年度以降において。
  403. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私は、機械的に考えて増税の余地がないとは思いません。思いませんけれども、増税は非常に大きな政治でございまして、納税者に負担に耐えていただかなけりゃなりませんし、各方面の理解と協力を得なけりゃならぬわけでございますので、それをやるにつきましては、ただいま申し上げておりまするように、財政当局としてもやらなければならぬことがいろいろあるわけでございまして、歳入歳出全体にわたりましてやるべきことをなし遂げた後でお願いすべきものと考えております。
  404. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 いまのような財政事情ですから、増税やむなしという気持ちも国民の多くは持つと思いますけれども、それがためにはまず政府みずからが、冒頭に触れたように行政機構を徹底的に簡素化して、自分たちはこれだけの犠牲を払い、これだけの努力をしているんだということをお示しになってからでないと、増税が十分の効果を発揮することはできないのじゃなかろうかと懸念いたします。そういう意味において、最初の議論に戻ってしまいますけれども、従来の考え方で、これも必要なんだ、あれも必要なんだというのじゃなしに、やはり国民にこれ以上の負担をかけるためには、もっと政府みずからが身を持することを厳であって、もっと行政の簡素化に情熱を注いでいただくということを私は結論の第一として要望しておきたいんです。  それから第二は、いま民間の経済団体の一部から、国民経済会議を開いて、今日の難局を打開するために野に遺賢なからしめてはどうだろうという提案があるわけです。この点について私もそういう必要があると思います。この赤い国会のじゅうたんの上だけで議論をしていてお互いにわかったつもりでいても、国民大衆になかなか徹底しないうらみがあると思うんですね。そういう意味において、私は、広く国民経済会議みたいなものを開いて、そこで今日のこの財政の危機を訴えて・そうして政府としてはこういうことをやる、だから国民諸君はこれだけの公債を負担してもらいたいし、これだけの増税にもこたえてもらいたいんだという虚心坦懐な態度が望ましいと思いますが、総理大臣いかがなものでしょうか。
  405. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) こういう経済危機を乗り切るためには国民の理解を得ることが必要で、国民経済会議というような仕組みがいいのか、何か国民の理解――あるいはまた野に遺賢なからしめるという意味もありましょうが、何らかの仕組みは考えてみたいと考えております。
  406. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 それは総理がお考えになっているだけですか、それとも担当大臣に命じておられますか、すでにそういうことは。
  407. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 各方面の意見は、これは労働組合との間にもいろいろな形の会合がございますし、また経済団体等もございますし、中小企業は中小企業、農業は農業ということであるわけでございますが、何かそういうものを総合した仕組みというものは必要だと思われる面もございますから、これはやはりまだ各大臣に検討を指示しておるというわけではございませんが、何かといったらやっておるわけですから、それを総合したような会議体というようなものがこの際あった方が国民の理解を徹底する上にいいかどうかというものは、やはり検討をさしていただきたいと思います。
  408. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 総理のお力をもってすればどんな人でも呼べるわけですから、いろいろな御意見を聞いているであろうと思いますが、しかし、ややもすると御自分のお好みに合った方だけをお呼びになってしまう可能性があるんじゃないだろうか。常に耳に逆らうの言を聞けという菜根譚の言葉ですが、お耳に逆らうような言葉でも率直にお聞きになっていかないと、非常に偏った政策になってしまう心配があると思うんです。そういう意味において、やはり広くいろんな人の御意見をお聞きいただきたい。いわゆる側近政治に終わってはだめだと思いますし、偏った人の意見だけでやられると非常な失敗をするんじゃなかろうかということを私は三木内閣誕生以来の動きを見ておって感ずるわけで、ぜひともひとつ、野に遺賢なからしめるような方法をとってくださることを要望して、結びを申し上げたいと思います。  きょう申し上げたことで、総理いかがでしょうか、斎藤、おまえの意見には反対だというのがあったらひとつ教えていただきたいんですが。
  409. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 斎藤委員のお話、しかも、あなたが自身で足で歩いておられますから、本の上でないわけですから、各地を歩かれて貴重なる経験をお話しになって、統計ばかりでない、ずっと経済の実情というものはこういうふうになっておる面もあるぞということは大変に参考になりました。斎藤委員質問は、われわれとしても大変にありがたく拝聴をいたした次第でございます。敬意を表する次第でございます。
  410. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 同じ自民党員ですから、感謝されてはかえってこちらが恐縮なんでありますけれども、どうぞひとつ、きょう申し上げたことがただしゃべりっ放しだというのではつまりませんし、それから総理だって、貴重な時間をお疲れの中をお聞きくださったわけですから、ぜひひとつ、行政機構の簡素化についてはやるかやらぬか、一つ一つ、一問で答えてください。やりますか、やりませんか。
  411. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは行財政の見直し、簡素化、行政の簡素化というものは、これはもうやらなければならぬ問題でございまして、これはやはり行政管理庁も、そういう答申も出ておるわけですから、そういう線に沿うて実行に移さなければならぬと考えております。
  412. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 大蔵大臣にお伺いしますが、先ほどの公定歩合の問題については、私の意見に大体賛成してくださったと思います。率直に言うと、私は公定歩合を下げることに賛成なんで、もう一回下げなきゃいけないと思うんです。ドイツの公定歩合がいま三・五%、アメリカが六%ですよ。われわれの競争相手はエチオピアやなんかじゃないんで、ドイツとアメリカが競争相手なんです。その競争相手の公定歩合をにらみながら、私は、もう一回下げるようになさることが望ましいんじゃないかと。これは大蔵大臣答えろと言っても、日銀の専管でありますから、ここで答えることはできないでありましょうけれども、どうも金利の負担というのは非常に重い、いま企業は。もう少し公定歩合を率直にお下げになっていただきたいし、下げるならもっと敏速に下げなきゃいけない。出おくれの幽霊みたいに、後からいまごろなぜ来たんだなんという調子で言われるような下げ方じゃだめだと思うんで、なるほど鮮やかだと言われるような公定歩合の下げ方をひとつしていただきたいということを大蔵大臣に要望しておくわけであります。  それから通産大臣に要望しておきたいのは、御意見は、私も商工委員ですから、この一年半よく大臣の御意見を私は拝聴しております。大臣の御意見の九九%まで私は賛成ですけれども、一%だけどうしても賛成できないのは、大臣は事務官の言うことをのんでおって、事業分野の調整は反対だとおっしゃる。そう言わないで、もっと虚心坦懐に中小企業の立場も考えたらどうですか。そうするならばおのずから道は開けると思うんで、もっとやはり時限立法で、五年でいいから中小企業の分野調整をおやりになることが私はこの際中小企業対策の根本だと思うんです。少しぐらい金を出したところで、そんなものは焼け石に水です。いま中小企業が欲しいのは仕事が欲しいのであって、金が欲しいんじゃないのでありますから、通産大臣にこの点を強く要望して、よく今晩寝て考えてくださるようにお願いしまして、私の質問な終えます。(拍手)
  413. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして斎藤栄三郎君の質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十四分散会