○茜ケ久保重光君 私は、
日本社会党を
代表いたしまして、ただいま
趣旨説明のありました
郵便法の一部を改正する
法律案に対し、郵便料金値上げ絶対反対の
立場から、
三木総理並びに
関係大臣に若干の
質問をいたします。
〔
議長退席、副
議長着席〕
そもそも、郵便料金値上げ
法案は、さきの
通常国会において、
国民世論の強い反撃と野党各党の一致した反対とにより廃案となったのであります。にもかかわらず、その後何らの
反省や検討を加えることもなく、それと全く同一
内容の
法案をおくめんもなく再提出することは、これはまさに
国民世論に真っ向から挑戦するものであります。しかも、
衆議院においては実質上何らの
審査もいたしておりません。
委員会は
審査のないまま、自民党単独で強行突破いたしました。
議会制民主主義のルールを無視し、あえて強引に本院に送付したいきさつからも、われわれは本案には絶対反対するものであります。
まず
最初にお伺いいたしたいことは、
国民最大関心事である物価問題に対する
政府の政治姿勢についてであります。
政府は、消費者物価上昇率一けた台抑制の目標がほぼ達成できるという見通しから、物価鎮静は定着化しつつあり、今後は安心して不況対策に取り組めるという
認識に立っているようでありますが、これは
国民生活の実感から全く遊離した感覚と言わざるを得ません。安定した物価水準とは、少なくとも上昇率が預金金利を下回るものでなければならないにもかかわらず、
国民の汗の結晶である預貯金の実質価値が日々確実に目減りしつつあるという
現状は何ら解消しないのでございます。それのみならず、特に不況対策という大義名分のもとに、庶民の零細な貯蓄の集積である郵便貯金までも含めて今回行われた大幅な預貯金金利の引き下げは、
国民大衆に一方的な
犠牲を強いるものであり、これによって目減り幅はさらに拡大するでありましょう。
しかも、今後物価上昇をもたらすであろう各種要因は山積をいたしております。すなわち、一次生産品の国際市況がじり高になりつつあるという海外物価からの影響、石油製品の値上げを口実とする各産業の製品値上げ、さらに大量の赤字国債が発行されるとするならば、それに伴う財政インフレの
危険性等々、まさにインフレ要因はメジロ押しであります。このような
状況の中で、
政府は今回の値上げ三
法案に続いて、さらに
国鉄運賃、私鉄運賃、国立大学授業料、電報電話料金など一連の公共料金の値上げを策しているのであります。
一方において預貯金金利を大幅に引き下げ、片や公共料金を一斉に大幅に引き上げるという、このような政治姿勢は、
国民大衆にとってまさに踏んだりけったりの悪政であると断ぜざるを得ません。
政府は、来年度のなるべく早い機会に消費者物価上昇率を定期預金の金利以下に抑えるという目標を掲げておりますが、いかなる
根拠と、またどのような道順を経てその目標を達成しようとするのでありましょうか。われわれはまず公共料金の値上げをストップし、
政府みずからが物価安定への強い姿勢を示すことなくしてはこの目標達成は不可能であると
考えるのであります。総理並びに副総理たる経済企画庁長官から、物価抑制と公共料金値上げとの
関係について明確な御
答弁をお願いいたします。
次にお伺いいたしたいことは、今回のような大幅料金値上げを
提案するからには、その以前において事業改善のための最大限の経営努力がなされなければならないと思うのであります。郵政省はその努力を怠っているのではないかという点であります。郵政事業には改善すべき点が多々あります。ここでは最も基本的な二点をその具体例として指摘したいと思っております。
その第一は、現在の郵政事業は、事業の長期的展望はおろか、事業の
あり方についてすら何ら確たる理念を持たないということであります。かつて郵便事業が、明治初年の創業以来、幾多諸先輩の英知と努力により、世界に誇るに足る輝かしい歩みを続けてきたことについては衷心より敬意を表するにやぶさかでございません。しかしながら、最近における社会情勢の急激な変化は郵便事業を取り巻く環境を一変させ、特に電話その他の高速度通信手段の急速な発展は、郵便事業の社会的使命にまで重大な変化をもたらしつつあります。
さきの全逓信労働組合全国大会においては、このような情勢を踏まえ、創業以来の迅速、安全、確実という郵便の三大モットーをあえて爼上にのせ、安全と確実を基調とする新時代にふさわしい郵便の
あり方という方向を強く打ち出しております。しかるに、郵政当局は、今日なお明治以来の伝統の上にあぐらをかき、従来の惰性により、赤字になれば値上げをすればそれで済むんだというような安易な経営姿勢を変えておりません。これは、
国民から郵便事業を負託されている経営
責任者としてまことに無
責任と言わざるを得ないのであります。
この際、まず、情報化時代における郵便の新たな使命と事業の
あり方を明確にし、郵便事業の将来展望を
国民の前に明示することこそ先決だと
考えますが、郵政大臣の御所見をお聞かせ願いたいと思います。
次に、第二の点としては、現在の郵政事業における最大の
問題点である小規模な郵便局の運営を近代化、合理化すること、すなわち、郵政事業の恥部とも言うべき前近代的な特定郵便局制度を根本的に改革することであります。
わが党が多年にわたり一貫してこの制度の撤廃を主張しているにもかかわらず、戦前の封建的制度の遺物である特定郵便局は現在その数約一万七千局に及んでおり、さらに年々増加している
状況でございます。
この制度の弊害の根源は、局長が私有局舎を提供することでありまして、そのため、局長任用について必然的に不明朗かつ不透明な人事が派生をし、ひいてはそれが特定局の職場を陰うつなものにし、職員の勤労意欲を喪失させ、能率の低下をもたらす最大の原因となっていることは論をまたないところであります。
また一方、この制度は経営面から見てもきわめて不経済な制度でありまして、郵政事業の財政を悪化させる大きな要因となっているのであります。すなわち、局員二、三名を管理するために高給の管理職である郵便局長をあまねく配置するというこの制度が、経営的に見てはなはだ不経済であることは何人も否定できないところでございます。すでに
行政管理庁においてもこのことを重視し、去る三十二年の勧告において、普通局の分局あるいは出張所等の制度を活用してこの不合理を是正すべきであることを強く指摘しているのでございます。これほど特定郵便局は現在の郵政事業全般にとって非常な重荷になっているのでございます。われわれは、さきの
通常国会における
郵便法審議の際にも、この問題を強く追及し、特定局制度をめぐる不
合理性は改めて明確にされたのでありますが、郵政省はこの制度の改革には全く熱意を示さず、手をこまねているのでございます。料金値上げを
国民に訴える以上は、経営全般にわたって現代社会に即応した最も合理的な制度を実現することこそ経営者としての当然の
責務であると思うのでありますが、郵政事業における非
合理性の最たるものである特定郵便局制度の改革について郵政大臣のお
考えをこの際はっきりお聞かせいただきたいのでございます。
次に、郵政
審議会の
あり方についてお伺いいたします。
われわれは、憲法及び財政法に定める財政民主主義の原則に基づき、郵便料金の決定はすべて国会の場においてなされなければならないと主張しているのでありますが、
政府は、前回の
郵便法改正において、われわれの強い反対を押し切って、第三種郵便物等の料金の決定を省令に委任することといたしたのでございます。そしてその際、国会にかわる民意反映機関としての郵政
審議会へ諮問することを法定したのでありますが、現在の郵政
審議会には、国会にかわって利用者たる
国民の利益を
代表するような機能は全くありません。形式的には民主的な
行政体制を擬制しながら、実質は公共料金の決定を行
政府の恣意にゆだねたも同然と断ぜざるを得ないのであります。すなわち、
委員の構成を見ても、労働者
代表や消費者
代表と見られる人々はきわめて少数で、元郵政、大蔵官僚や財界
代表と見られる人々が主体であり、しかも、その
審議は非公開で行われているのであります。前回の
郵便法改正の際に、逓信
委員会においては、附帯決議まで付して郵政
審議会の抜本的機能強化を強く要請し、
政府もその実行をかたく約束されたのでありますが、その後どのような改革がなされたのでありましょうか。重ねて申しますと、郵政
審議会の機構は名実ともに利用者である
国民の
代表としてふさわしいものにすべきであり、また、
審議についても公開の原則を確立すべきであると
考えますが、郵政大臣から明確な御
答弁をお願いいたします。
次は、
政府が従来の経済成長、産業優先の政策から
国民福祉優先の政策へと転換を図ろうとするならば、郵便料金についてもまた福祉優先指向の料金制度を設けるべきではないかということであります。特に今回の大幅料金値上げ案は、経済的負担能力の低い身体
障害者やその団体等に非常に大きな衝撃を与えており、これらの人々からの請願が多数国会に提出されたことは郵政大臣も十分御承知だと思います。
政府が弱者救済を標榜されるならば、郵便料金制度の面においても、恵まれない人々に対する手厚い配慮が当然なされなければならないと思うのであります。
政府は、
通常国会における
審議の過程において、弱者救済対策をも含め、第三種郵便物等の省令料金の値上げ案については再検討する
考えがあることを示唆されたのでありますが、この点についてその後どのような検討がなされ、どのような結論をお出しになったのか、この際、明確かつ具体的にお示しを願いたいと思うのであります。
最後にお伺いいたしたいことは、郵政省における労使
関係の
抜本的改善についてであります。
郵政事業は、人なくして事業なしという典型的な労働集約型の事業であるだけに、正常な労使
関係の確立こそ、まさに経営の基本であると信ずるものであります。しかるに、かねてから指摘しておりますように、十数年にわたる郵政省の労働組合弾圧政策により荒廃の極に達した郵政労使
関係は、ここ一、二年やや改善の兆しが見られつつあるとはいえ、いまだに根強い労使の相互不信が払拭されず、他の事業に例を見ないような陰惨な職場が各所に見られることはまことに遺憾でございます。
このような状態が続く限り、いかに郵便料金を値上げいたしましても、事業財政の改善を図ったとしても、本来の使命である正常な郵便サービスを提供することはできません。
国民に、いわゆる約束した郵便サービスをスムーズにするためには、郵便業務の正常な運行を確保するために、何をおいても労使
関係の
抜本的改善が不可欠であります。そのためには、郵政省は従来の行きがかりを捨てて、労使の信頼
関係回復のため、
責任ある諸
施策を積極的に推進すべきことは言うまでもありません。それと同時に、近代的労使
関係確立のためには、まず憲法で
保障をされている労働基本権、すなわちスト権を完全に付与することこそ先決でありましょう。
最近、この問題について、
国鉄初め三公社当局がかなり前向きの姿勢を……