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政府委員(齋藤英雄君) お答えいたします。
最初に、ただいま具体的に御指摘がございました工業所有権法逐条解説、これの二十九条の解説のところに、いま先生お読みいただきましたような「植物については現在のところ反復継続的に同一の品種を栽培することはむずかしく、特許を受けることができない。」と書いてあることは事実でございます。
それで、実はこの点につきましては、この逐条解説を書きました時点についてちょっと
お話を申し上げなければいけないのでございますが、と申しますのは現行法の基礎になっておりますのは大正十年法を
改正いたしまして、
昭和三十四年に大
改正が行われました。その大
改正が行われましたときに、この逐条解説は全部書き改めたわけでございます。で、したがいまして、その三十四年の一番最初の序のところに、三十四年四月とかなんとかという序がついてございますけれども、そのときの認識で書きましたのがこの書いてある
内容でございまして、したがいまして「植物については現在のところ」というふうに書いてあります。
それで、この
意味は、三十四年当時におきましては、出願書の中にあります明細書から判断をいたしますと、反復的に同一の品種を裁培することはむずかしいというふうな認識があったわけでございます。したがいまして、こういうふうに書いてありまして、その後二十九条関係の実は
改正がございませんでしたので、これがそのまま残っておりました。この点皆様方にあるいは誤解を受けるような書き方であったのかもしれないと思いまして、もし誤解でございましたらば、その点はおわびをいたしまして、「現在のところ」というのは、そういう
意味であることを御了解をいただきたいと存じます。
それからいま
お話がございましたように、いわゆる学説等がどうであろうかという
お話もちょっとございましたのですが、学説につきましては、これはいろんな本にいわゆる積極説、消極説と両方ございます。それで最近におきましては、やや積極説の方が有力ではございますけれども、もちろん消極説も依然としてございます。それは事実でございます。したがいまして、この点についてはいろいろ議論があるということは
お話のとおりでございますが、一応私どもの方のこれに対します
基本的な
考え方を申し上げまして、それから経緯を申し上げたいと存じます。
私どもの方の
基本的な
考え方は、現在これは一般的でございますけれども、発明として認識ができるもの、これにつきましては特許要件を備えておる限り、あるいは不特許事由がない――不特許事由は三十二条に不特許事由を並べてありますが、不特許事由がない限りは審査官は出願を受け付けまして審査をする義務がございます。したがいまして、その場合に審査官が判断をいたしまして、もし拒絶すべき理由がなければ出願公告をしなければならないという、これは明文の規定がございます。したがいまして、それから
異議申し立てがあった結果、
異議申し立てがない、あるいは
異議申し立てが、理由がなりませんならば特許査定をする、こういう順序になるわけでございます。で、現在の法制におきましては、いまの植物等につきましては、不特許事由になっておりません。したがいまして審査官は出願を受け付けてこれを審査をしなければいけない義務がございます。判断をしなければいけない義務がございます。その場合に、現在の明細書その他で判断をいたします場合に、それが発明として認識できるかできないかというその審査官の判断の問題にかかわるわけでございます。で、私ども従来、したがいまして
法律そのものとしましては、これは当然受け付けて審査をしなければいけない立場に立っております。それからなお従来三十四年当時はそうでございましたけれども、その後逐次いろいろな方法等でございますけれども、三十七年、四十三年、四十七年等に、数件ずつではございますけれども、各種の植物に関する特許がございます。それで、しかしながら現在のところ明細書の不備、記載の不備その他によりまして新品種そのものについての出願で、特許すべきような
内容のものはございませんでした。したがってこれは微生物その他にはございますけれども、それ以外のものには特許をしてないという
内容でございます。
それからなお経緯でございますけれども、これの経緯を簡単に申し上げます。と言いますのはなぜああいう、いままでそんなことだったら改めて
発表することないじゃないか、という恐らく御疑問をお持ちだろうと思いますので、経緯を申し上げますと、実は私どもの方は、そういうふうな
法律の構成でございますからして、当然出願があれば受け付けて審査をしなければいけない立場にございます。したがいましてそれにつきましては、そういう
方針でいままでやってまいりましたけれども、ことしの二月に衆議院の
予算委員会の分科会におきまして某先生から質問がございまして、おまえ、特許法のどこに、植物を特許しない、と書いてあるか、という非常にきつい質問がございました。それから逐次始まりまして、明細書の不備その他いろいろなことを申し上げたのでございますけれども、結局おまえの方のPRが足りないのだと、こういうことで決めつけられまして、そのときは、通産
大臣もおられましたけれども、私と通産
大臣を並べまして、おまえたちの
努力が足りない、おまえたちのPRが足りない、だからこういうことになっているんだ。したがってこれを大々的にPRしろと。こういうふうな最後の結びでございまして、私どももまあ、そのとき、うちの
大臣は、具体的方法について至急
検討いたしまして、というふうな答弁を申し上げましたのですが、私も同趣旨の実は答弁を申し上げました。そういう経緯がございましたので、私どもとしてもまことにそれはPR不足、まことに不明の至りであると、こういうふうに思いまして、その前からいろいろ実は準備といいますか、
研究はいろいろしておりましたけれども、なお慎重を期しましてしばらくの間、実は統一的な基準というものは
発表いたしませんでした。その間にもちろんそういう出願はございましたけれども
発表しませんでした。
しかしながら、もう少しありていに申し上げますと、いろいろ国会も開会をされておりますし、いたしますので、私の方もいつまでもそのPRをしないでおくということは、そういう経緯から言いましてまことに怠慢の至りである、怠慢のそしりを免れない。こういうことでございますので、その点につきましては急遽取りまとめて
発表するようにということで、従来
研究いたしておりましたものを実は取りまとめまして
発表したということでございます。これは特許庁は審査官が一応審査をする第一義的な責任を持っております。持っておりますが、それぞれの案件につきましてばらばらの判断を下すということは、これは法的安定からいってもいかがであろうかということもありまして、ある程度の出願がまとまって出るような
事態になりました場合には、産業別にそれぞれ審査基準というのをかなり出しております。実はそれの一つでございまして、従来の産業別基準の一つとしてこの新しい審査基準を
発表をしたという、そういう次第でございます。