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1975-12-11 第76回国会 参議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十一日(木曜日)    午前十時十三分開会     ―――――――――――――    委員異動  十一月二十日     辞任         補欠選任      青井 政美君     迫水 久常君  十一月二十一日     辞任         補欠選任      迫水 久常君     青井 政美君  十一月二十五日     辞任         補欠選任      大島 友治君     松岡 克由君  十二月四日     辞任         補欠選任      高橋雄之助君     福岡日出麿君      相沢 武彦君     桑名 義治君  十二月八日     辞任         補欠選任      福岡日出麿君     高橋雄之助君      桑名 義治君     相沢 武彦君  十二月九日     辞任         補欠選任      向井 長年君     中沢伊登子君  十二月十日     辞任         補欠選任      中沢伊登子君     向井 長年君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         佐藤  隆君     理 事                 小林 国司君                 高橋雄之助君                 川村 清一君                 神沢  浄君                 原田  立君     委 員                 青井 政美君                 岩上 妙子君                久次米健太郎君                 鈴木 省吾君                 初村滝一郎君                 平泉  渉君                 松岡 克由君                 山内 一郎君                 工藤 良平君                 栗原 俊夫君                 志苫  裕君                 鶴園 哲夫君                 相沢 武彦君                 小笠原貞子君                 向井 長年君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農 林 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        農林大臣官房長  森  整治君        農林省農林経済        局長       吉岡  裕君        農林省構造改善        局長       岡安  誠君        農林省農蚕園芸        局長       澤邊  守君        農林省畜産局長  大場 敏彦君        農林省食品流通        局長       今村 宣夫君        林野庁長官    松形 祐堯君        林野庁林政部長  犬伏 孝治君        水産庁長官    内村 良英君        特許庁長官    齋藤 英雄君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○農林水産政策に関する調査  (当面の農林水産行政に関する件)     ―――――――――――――
  2. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十一月二十五日、大島友治君が委員辞任され、その補欠として松岡克由君が選任されました。  また、去る四日、高橋雄之助君が委員辞任され、その補欠として福岡日出麿君が選任されました。  また去る八日、福岡日出麿君が委員辞任され、その補欠として高橋雄之助君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動によりまして、理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事高橋雄之助君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 農林水産政策に関する調査のうち、当面の農林水産行政に関する件を議題といたします。  これより本件の質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 一昨日の新聞報道によりますと、農業基本法政府自民党の方で根本的に改正をすると、そういう報道が行われております。で、この間の通常国会でもそうですが、農業基本法というのが大きな、たくさんの問題でデッドロックに乗り上げているし、あるいは農業基本法そのものがいまの政策ともそぐわない面が出ているから、したがって全面的に改正すべきではないかという論議を行いましたときに、大臣は、農業基本法は堅持していくんだと、こういうお話であったわけです。しかし、新聞報道によりますというと、全面改正だと、その検討をするんだ、というふうに載っておりますけれども、大臣はどのように考えていらっしゃるのか。あるいは、もし変更になるんだとすれば、まあ大臣考え方と違ってくるわけですけれども、その変わった理由ですね、そういうものについて伺いたい。
  7. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先日の新聞報道につきましては、私はその場にいなかったわけでございますから、何とも申し上げようがないわけでございますが、私といたしましては、かねてから申し上げておりましたように、農業基本法につきましては、これは農政基本的考え方が広い角度から織り込まれておるいわば農政憲法であるというふうに考えております。また、その基本的な考え方は、現在においても十分適合性を持ったものであるとも考えておるわけでございますが、しかしその運用面につきましては、その時代社会経済情勢に応じまして具体的施策展開していく必要があることは申すまでもないわけで、現に政府は、農業基本法に基づきまする「農産物の需要と生産長期見通し」において、農産物自給力の向上を政策目標として掲げ、また農政審議会――これは農業基本法によってできた審議会でございますが、その建議、これは「食糧問題の展望食糧政策方向」という建議がございますが、この建議方向に沿って今後の政策を打ち出しておるところでございまして、またその政策方向につきましては内閣で開催した国民食糧会議におきましても国民的合意が得られつつあるものというふうに考えております。したがって、農林省としては目下この政策内容を盛り込んだ明年度予算が編成できるように全力を傾注しておるところでございまして、したがって、特に農業基本法改正する必要があるものとは考えていないわけでございます。
  8. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この報道は私も新聞だけで見るわけですから、大臣がちょうどそこに出席なさっていらっしゃらなかったという話は聞いております。   〔委員長退席理事高橋雄之助君着席〕 ですが、これを見ますとそうでないですね。政府自民党が八日にこういう決定をしたという。しかも中身も非常に具体的でありまして、そのための特別委員会自民党の中につくる、来年の一月の総理施政方針演説の中にその具体的な内容を織り込むというような報道まで行われてるわけです。ですが私は、いま大臣がおっしゃった昭和六十年を目標にいたしました「生産と需給の見通し」それからその後建議として出ました「食糧政策展望」これはもうすでに農基法からはるかに逸脱してると私は考えておるわけなんです。ちっとも、この逸脱を始めましたのは一あの法律に基づいて閣議決定で公表いたしました「長期見通し」というのは三十七年と四十三年と二つです。その二つ農業基本法の趣旨に合ってると言っていいと思うんです。ですが、四十五年と四十七年と二つの「農林省試案」というのが出ております。これは発表されておりますけれども閣議決定になってない、それはもうすでにはみ出してるんですね。明らかにはみ出してる。で、今度の六十年の「長期見通し」なんというのも完全にはみ出してます、農基法から言えば。そう見なければならぬのじゃないかと私は思うんです。  で、もっと私は申し上げたいんでありますけれども、この間の繰り返しになりますが、特にこの間の十月に、五年ごとに行います農業センサス、これが発表になっております。で、三十六年からあの法律は制定されたわけですが、三十五年にセンサスが行われております。そして今度の五十年――五年ごとにやっておりますが、五十年と、この十五年をとってみまして、農家数が六百五万戸あったやつが四百九十五万戸と、一八%減っておるわけですね。ところが、専業農家が何と七〇%以上減っておるわけですよ。農家数が減るということは、これは資本主義社会の中にあっては当然であります。しかし、農家数は一八%減ったが、専業農家は実に七〇%以上減ると、これはもう異常な事態ですよ、と言わなきゃならぬと思いますね。で、兼業農家は約六〇%増加――第二種兼業ですね、六〇%増加してるわけですよ。まあひどい話ですよ、これは。そう思いますがね。で、まあ三十五年当時、専業農家というのは農家戸数の中の四割七分、ちょうど半分ぐらいが専業農家だったです。いまは一二%です。四分の一になっちゃった。まあいろいろ申し上げたい点はありますけれども、自立経営農家というのはその数はどんどん減っている。これは目標になっておったわけですし、農業基本法のまた原動力になっておったわけです。ですが、この数というのはどんどん減少しています。比率そのものが減少しているんです。まあ農業所得というのも、農家所得の中に占めている割合というのは、三十五年は五二、三%ですよ。ですから、まず農家というのは農業で食っているという考え方があったんですけど、いまは三二%ぐらい。もっと割っているでしょう。三分の一を割っちまっているという状態になっていますよね。その結果が、まあ総合農政という米退治農政が行われまして――まあ米退治の問題にいたしましても、ミカンの問題にいたしましても、有効に使うという面から失敗ですよ、これは。そして、まあ自給率があのように大敗退をするということは、これはやはり農業基本法というのが失敗をしたといいますか、もう完全に失敗をしたということを示しているんじゃないでしょうかね。総合自給率が三十五年に御存じのように九〇%だった。それがいまは七一%に下がってしまった。最も重要視される穀物自給率というのが八三%が四一%に下がっている。だから、農林省大豆を入れておりませんが、大豆穀物ですよ、大豆を入れておりませんが、入れますと三〇%という異常な事態ですよ。それは私は農業基本法というもののやはり失敗だと思う。  で、今度の四十七年の農林省試案、それから六十年の公表いたしましたこの「長期見通し」を入れますと、小麦大麦も、それから麦類を積極的に増産をする、あるいは農用地面積もふやしていく、大豆、なたねもふやしていくという、あるいは農地利用率も高めていくという方針を出されましたことは、これは従来の農業基本法から言えば完全なこれは転換です。ですから私は、農業基本法というのを、方向はともかくといたしまして、十五年運営してきたこの農業基本法というものを全面的にここに見直して、そして改正する必要があるというふうに思っております。大臣は堅持されると言いますが、確かにそれは農業基本法の中で、主張としてはいい面もたくさん含まれています。そしてまた実績もこれは否定し得べからざるものがあります。基盤整備の問題にいたしましても、圃場整備の問題にいたしましても、主産地形成の問題にいたしましても、あるいは農業技術の発展の問題にいたしましても、これは評価すべきものはあると思っております。しかし、基本においてこの農業基本法というものは、これは失敗をした、間違っているというふうに私は思っているわけです。その意味で、私は、全面的に改正するという考え方を出されたこと、そのことはいいことだと私は考えておるわけですけれども、大臣は、どうもそうじゃないと。おれは、やっぱりあれは憲法みたいなもので、これを堅持していくんだ、というお話ですけれども、ですから、もしそういうことで進み始めますとこれは困りますね、これは。まあ今度の予算、あるいは六十年の「長期見通し」あるいは「建議」あの線に沿って進めていくということは、これはもう農業基本法から大きく逸脱していくということだと思うんです。大臣のひとつ考え方をお聞きしたいと思う。
  9. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 報道によると政府与党ということになっておりますが、政府が入るということになると、政府農政責任者である私が入らなければならないわけでございますが、私は相談も受けてもおりませんし、そういう話も聞いてないわけでございますから、政府としてはこの農業基本法改正問題については関知してないということでございます。そしてまた農業基本法につきましては、これは先ほどから申し上げましたように、その基本的な考え方というものはいまも私は変わらない、適合性を持っておると思うわけであります。  いま自立経営問題をおっしゃったわけでありますが、確かに自立経営農家というものは激減をしてきて今日になっておることは事実でありますし、農業基本法の指向するような方向には進んでないわけでございますが、しかし、これは農業のやはり基本的な方向として今後努力目標としてわれわれが努力をしていかなきゃならぬ課題であることは当然であろうと思うわけでございます。  また、情勢も、農業を取り巻く諸情勢客観情勢というのは非常に変化をしたことも事実であると思います。これは農業基本法制定以来の目まぐるしい変化というものは想像以上のものがあったわけでございますが、しかし、そういう中にあっていま大事なことはこの農業基本法基本的な考え方を持ちながら、そうした新しいまた移り動くところの情勢に対応した適切な施策を積極的に講じていくことじゃないかと、私はそういうふうに思っておりますし、今回総合食糧政策展開と称してわれわれが集大成をいたしまして世に問いましたこの政策というものもそれを指向するわけでございます。したがって私は、まず、政府与党として現実問題で農政を考えていただくということになると、まず、やっぱり来年度予算においてこの総合食糧政策展開の位置づけを明確に打ち出す、この方が先決問題じゃないかということを私は主張しているわけでございます。  農業基本法についていろいろと細部に検討すれば問題があることも事実でありましょう。が、基本的にはその精神は変わってないと思うし、その農業基本法基本的な考え方の中にあって、時代移り変わりに応じた新しい政策をわれわれは打ち出しておるわけですから、この打ち出された政策の裏づけをまず予算の面で現実的にやらなきゃ意味がないわけで、私はその重要性を主張して今日に至っておるわけでございまして、いまこの段階において、したがって基本的に農業基本法というものを変えていかなきゃならないというふうにはどうしても考えられないわけであります。
  10. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、総合食糧政策展開されるということ、それから、今度の五十一年度の予算を獲得することについて全力を尽くす、あるいは六十年を目標にいたしました長期目標、これの達成のために努力をなさると、それは結構なことだと思うのです。ただし、そういうことを進めていかれるということは、これはもう農業基本法から大きく逸脱しているのだ、逸脱しつつあるのだというふうに言っていいのじゃないでしょうか。どうも農林省、少しばかり忠実じゃないじゃないかな、農業基本法について。大臣に対する補佐がよくない、その意味で。  農業基本法のやっぱり具体的な内容というのは閣議決定で公表しております。農業基本法に基づいて発表しておりますあの長期目標に示されていると思うのですよ。ですから、三十七年、四十三年と二回公表しています。それを見ますと、大麦はどんどん減ることになってるのです。それから小麦もどんどん減ることになってる。さらに大豆もどんどん減ることになっているのですよ。なたねもそうです。それから農用地面積も減ることになってる。それから農地利用率も減ることになってるのですよ。これは当然だと思うのです、農業基本法から言えば。ところが、四十五年になって、四十七年と、農林省試案として出しているそれは、公表としてはない、発表している。それに長期目標があります。それを見ますともうはっきり変わっているのですよ。大麦を三倍にふやそうとか、二倍にふやそうという案を出しているのですから、大豆を二倍にふやそうという案を出しているのですから、十年間に。農地面積もふやすという、利用率もふやすという方針を出しているのです。で、今度のこの長期目標もそうでしょう。この六十年を目当てにした長期目標だって、大豆もなたねも、それから大麦小麦もふやすと言っている。そして農用地面積もふやすと言っている。あるいは農地利用率も高めていくと、こういう目標を掲げているわけです。それはもう農業基本法とは非常に違ったものになっている。ここら辺で私はちっとばかり合点がいかぬわけです。ですから、これは、私は、大臣に慎重にひとつ御検討いただきたいと思います。農林省もまた、何か農業基本法なんか忘れているのじゃないかと私は思うのですけどね。ぼくらの方はまじめに受け取っておるものですから、正直な方ですからまじめに受け取って見ておるわけですからね。  私、一覧表持ってきている。ちゃんと比較して見ておるのです。非常に変わっているのですよ、四十七年と四十五年のやつ。全然違うんです。大豆を二倍にふやそう、三倍にふやすと言っているんですよ。大麦もそうですよ、二倍半にふやそうと。もう四十七年に発表しているんです、これは農林省試案ですけれどもね。ですから、もっと農業基本法というものの本質を、書かれている文句だけじゃなくて――何か心いい風が吹くような文句がたくさん並んでおりますけれども、もっとその中身大臣の方としても御検討いただきたい。農林省としてもこれは知っているはずですからね、言われてみてはっとしたのかもしらぬけれども。と思うけれども御検討をいただきたいというふうに思います。  そこで、もう少し中に入りまして、あの新聞発表を見ますと、自由民主党の中に特別委員会をつくって、そして来年の一月の総理大臣施政方針演説の中に、中身を明確にするという報道をされているわけです。そういうふうにいくだろうと思うのです私は。(「農林大臣が知らぬじゃ仕方がない」と呼ぶ者あり)いや、もう大臣が進めていらっしゃることが農業基本法をはみ出しているわけですから――もう完全にはみ出しているんですよ。(「来年までには大臣かわるかもしれぬ」と呼ぶ者あり)そのときは知らぬとおっしゃるかもしれませんけれども、それは別として、一応そういう方向に動き得るように思います。   〔理事高橋雄之助君退席委員長着席〕 それで取り上げ方が非常に安直なんですね、私はどうも総選挙目当てじゃないかという気がしてしようがない。大臣はそれをいやがっていらっしゃるんだろうと思う。この農業基本法をつくるときには法律に基づきまして調査会をつくったわけです。そして大変慎重に、あれは二年近かったと思うんですが、各界の代表が会って非常に研究――まさに研究調査ですよ。そしてあの草案をつくって、で、これが政府が受け入れて法律案として出てきたわけです。それを改正すると言う、しかも確かにいまの情勢、これからの情勢を踏まえた場合に、これはそういう改正の時期に来ていると。しかし、その安直なやり方は困る。選挙目当てみたいな、何かここでまた幻想を振りまくような、ぱっぱっと出しちゃったような形でやられたんじゃこれはまた農民を愚弄することになる。農業者を愚弄することになると私は思いますよ。ですから改正するなら、これはやはり調査会というようなものを設けて、その中には生産者消費者という代表が十分入った中でこれは真剣に論議してもらいたいと私は思います。これは大臣は入ってなかったと言うんですから、おれは知らない、と言えばそれだけの話ですけれども、しかしこれだけ各新聞報道したんですから、知らぬじゃ済まない、これは。所管している大臣としての見解をお聞きしたい。
  11. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま鶴園委員がおっしゃいましたが、農業基本法というのはもう本当に三年間ぐらいかかって非常に、外国、まあ西独の農業基本法等研究しながらもう大変、各般各層意見を集約してでき上がった法律でございまして、おっしゃるように、ですから安易にこれは改正するとかなんとかいうことを言うべきじゃないと私は思うんです。やはりこれはあらゆる情勢というものを真剣に検討して非常に慎重に、こういう問題に取り組んでいくときは対処しないと……。あくまでもこれは基本法で、私が申し上げますように農業憲法だと思っておりますから、そういう慎重さというのは私は大事なことじゃないかと思っているわけでございます。したがって、政府与党としてそういうことを打ち出そうということになるならば、これはもう農林大臣意見も十分聞いていただかなければ、政府与党としてのそういう考え方になるはずはないわけでございますが、私は、いまおっしゃったように、まずこの問題を取り扱うという場合には、いまおっしゃったように安易さというものだけは絶対に避けなければならないというふうに考えておるわけでございます。  それから、農業基本法以後の今日までの農政、いろいろと批判があると思いますが、それは果たして、農業基本法そのものが悪かったから、というふうなことで片づけられる問題かどうかというふうに私は思っております。そういうこともやはり今日十分考えなければならぬと思うわけでございます。確かに農業の体質が相当脆弱化してきておる、農業基本法の指向する方向には必ずしも進んでない面もあったことは事実でございましょう。そういう面を、ただ農業基本法にこれは問題がある、というふうに考えるということもどうであろうかというふうな気がするわけで、こういう点ももう少しわれわれはその後の移り変わりというものを慎重に検討して、その上に立って物を言うべきであろうというふうに思っておるわけでございます。したがって、今回の与党でそういう御発言があったということは、私は、農政というものは重要だと、食糧問題はですね。ただ、農政の問題というよりは国政の重要課題だと。だから五十一年度予算に対して大いにやれという、いわば応援演説と言いますか、そういうふうな気持ちに感じてむしろ受け取っておるわけでございます。で、基本法についてどうだ、こうだということになると、私も政府責任者でございますから私の意見も聞いていただいて、慎重の上にも慎重な上に立って、これは農民全体の今後のやはりあり方というものにもつながっていくわけでございますから、また農業基本的なあり方につながっていくわけでございますから、慎重に十分各方面の意見を聞いて方向づけはしていただかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  12. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 もう一問で終わりますけれども、この問題は私は、大臣のおっしゃった面も確かにあると思います。運用の面について、そのときの条件、四囲をめぐる条件の中で運用する場合に問題があったという点もあると思います。ですが、そういう農業基本法農政というものは、これは何と言いましても大変に評判の悪いしろものなんです。どんな立場から言っても評判が悪い。ですから、ここでやはりイメージチェンジを図るという点も考えていらっしゃるだろうと思います。実際しかし、農政に携わっていらっしゃる大臣の立場から言えばおっしゃるような考え方はあると思います、私も認めたいと思います。ですが、どうもやっぱり三木総理のこのリップサービスと言いますか、また例のくせが出たんじゃないかという感じがしますが、しかし確かにこういう形で進んでいくと思いますね。どんどん空洞化していくだろうと思う、急速に空洞化したようなものに移っていくだろうと思う。そうしてそれは総選挙目当てだと。全く安直に、何か所信表明演説、施政方針演説の中に並べたくて、そしてそういうような――どうにもならぬですね、これ。しかしこれはまた改めまして論議をしなければならない問題だというふうに思っております。  次の、第二番目の問題ですけれども、第二番目の問題は、国有林の経営形態の問題につきましてお尋ねをしたいわけです。これは公企体等の閣僚協議会のところに設けられておりました専門懇が、十一月の二十六日に意見書を出したわけですが、その意見書の中に、国有林の経営形態について大変重大な意見を述べておるわけです。ですから、私どもの農林水産委員会としまして、また私自身も、この問題についてはこれはもうしょっちゅう問題になってきた問題ですし、歴史的な問題でもございますので、まあ、こんなところで、専門懇なんかでちょこちょこっとやられたのでは、大変迷惑するわけです。というような私は感じを持っている、失礼な言い方かもしれませんですけれども。三公社五現業の全体の経営形態について論議しようというのですから、こういうことになるのかもしれませんが、大変迷惑至極だという感じを持っております。そこで、この点についてお尋ねをしたいわけです。  その前に、この十一月の十九日に衆議院の農林水産委員会が開かれまして、その席上でわが党の芳賀貢議員が二点についてお尋ねをしていますが、その一点は、この経営形態の問題につきましてお尋ねをしているわけです。で、それに対しまして林野庁長官が答弁をしておられます。もちろん大臣が締めくくって答弁をしていらっしゃる。林野庁長官のこの日の答弁によりますと、ことしの一月十六日にこの専門懇に林野庁長官が出席をして、そしていろんな点について意見を述べた。その中の大きな一つに、林業経営の、国有林野の経営形態について述べておった、ということになって説明をしております。で、民営論、公社論、または分割論の問題について、いずれも問題があると。で、林野庁としては、現在の特別会計の方式を踏まえて、これを原則にして、その欠陥を是正する方向でいくことが望ましい、こういう意見を述べたと。そして情勢は厳しいが、こういう考え方で各方面の理解を得るために努力をしたい。こういう林野庁長官の発言です。で、同じ日の農林大臣の発言は、四十七年の十二月の二十二日、林政審議会の答申を踏まえて、国有林野の使命を果たすには、いまの林野特別会計を原則にして欠点を是正をしていくという方向でいきたい、それが望ましい。こういうまあ発言をしていらっしゃるわけです。  そこで、もとへ戻りまして、その後に出ました、十一月の二十六日出ましたこの意見書の中で、分割論が出ておるわけですね。行政と事業――作業といいますか、作業部門を分割するという考え方が出ているわけです。これについて、大臣、どういう考え方でおられるのか、伺いたいんです。
  13. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまいろいろ御指摘がございましたが、私の考え方は終始一貫して今日も変わっておりません。国有林野事業の経営形態につきましては、いまお話がございましたように、十一月十九日の衆議院の農林水産委員会考え方を述べましたとおりに、昭和四十七年の林政審議会の答申に従って、これは林政審議会は、御案内のように一年有半にわたりまして慎重審議を行った結果、行われた答申であります。したがって、この答申の線に従って、現行の特別会計方式を基本に、その欠点を是正する方向によることが適当であると考えておりまして、これは今日もその考えに変わりはないわけでございます。このたびの政府基本方針によりまして、政府全体として、三公社五現業等の経営のあり方等につきまして検討をされることにはなったわけでございます。これもそのとおりでございますが、私は、今後政府全体として、この三公社五現業等の経営のあり方について検討がされる中にあって、いま申し上げました私の考え、これは農林省としての考えでございますが、この考えを述べながら、意見を述べながら、政府の最終的な結論が妥当な方向で出されるように対処してまいりたいということでございます。
  14. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 昭和四十年に中央森林審議会が答申を出しまして、で、このとき出ましたのが分割論だったわけですね、行政と事業の分割というのを出したわけですが、しかし、その後急速に変わってきて、国有林の持っております経済的機能というものと、それから国有林の持っておる公益的機能というもの――水資源の問題であるとか、あるいは自然環境の形成、保全というような、あるいは国民の保養というような立場から、非常に公益的機能というものが急速に高まってきて、そして、この経済機能というものと公益的機能というものを総合的に一体として運営すべきであるという考え方は、今日もう国民の合意を得ているものだと私ども思っているわけです。ところが、十年前の話がぶり返してきたわけです。迷惑至極だと言いたいんですけれども、まあ意見そのものが十年前に立ち返ったような考え方ですから、経営形態の問題についても、また十年前の話が浮かび上がってきたんだろうと思うのです。専門懇の中身を見ますというと、大変年輩の人が多うございまして、十年前のことを昨日のように覚えていらっしゃるのかもしれません、名誉教授ばかりですから、中に出ているのが。ですから困るわけですよね。変わってきているんですから。ですから私は、どうかひとついま大臣がおっしゃったように、「終始一貫」というふうにおっしゃいましたこれは、もうこの十年のことを考えますと、終始一貫だと言っていいと思います。終始一貫やはり林政審が答申をいたしましたように、林野特別会計といういまの方式を原則に踏まえて、そして欠陥を是正していくという方向で今後ともこの経営形態の問題についてはひとつ善処を要望しておきたいと思います。先ほどの農業基本法については、終始一貫しなくてもいいんですけれども、これは合意を得ておるわけですから。林業の問題、国有林の問題については、ぜひこういうことで努力を願いたいと思っています。  林業の問題はこれで終わりまして、次に、これはいまいろいろなたくさんの問題がありまして、国会が、農林水産委員会が今度で二回目しかないものですから、かねがね言おうと思っていることがみんな言えないで、ぶったまっちゃって、うっせきしておるわけですよ。時間が一時間半ということで、大変短いわけなんですが、いろいろ言いたいことが山ほどあって、まあ一つを取り上げましても、一つ一つが大きな課題なんですけれども、時間がありませんので、要点だけを伺いたいと思うのです。  一つは、まず十月に価格が決まりましたカンショ、同じく価格が決まりましたビートとサトウキビ、それからいま非常に問題になっております養蚕、それとお茶、それと水産業のカツオ・マグロ。水産の問題につきましては後ほど川村委員の方からございますので、私は問題をごく限りまして、具体的な問題としてこの水産の問題について伺いたいと思います。  まず、カンショでありますが、これは決まりましてから初めての質問になるわけですけれども、この基準価格が一俵七百四十七円と決まりまして、指導価格は千五十円と決まったわけですが、その差額は三百四円です。この差額について、政府の方で十億持つということになっております。一俵に直しますと、三十円です。ですから、引きますと、まだ二百七十四円という差があるわけですが、そこでこの千五十円という原料価格で、原料イモの価格ででん粉をつくりますと、大体十四万二千円と見られている。いまコーンスターチは六万五、六千円だと思いますが、差があるわけです。大変差がありまして、大まかに言って、十四万と六万という差があるわけです。それで、まあ三十円程度のものは持っていただけるわけですが、持つわけですけれども、大変差がありまして、それで無税の抱き合わせの問題あるいは一〇%の関税などの問題、それから一応二次関税としましてのほぼ二〇%の問題、これを上積みしましても、これはとても十四万台のカンショでん粉にはまだ差がある、これは異常な事態なんです。それで、でん粉業者、これは農協もそうでありますが、農協のでん粉業工場、それから民間のでん粉工場、これが買うのに非常に二の足を踏むわけです。それは当然だと思うんです。それから二次加工の人たちが見向きもしなくなってしまう、これでは。そこで、でん粉が売れないということになってきますというと、これは農協にいたしましても、あるいはでん粉業者にいたしましても、これは買わないということになってくる。これではとても買えないということになりますと、この千五十円という指導価格は完全に宙に浮いてしまう。ですから、これについていろいろ局長の方でも努力をしていらっしゃるわけであります。検討していらっしゃいますが、どうなさるおつもりなのか。でん粉の需要というものが、このでん粉がはけていかなければ千五十円という価格というものは全然保証できない。全く保証できないという私は深刻な事態だと思っております。ひとつ局長のお考えをお聞きしたい。
  15. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) お話しのように、昭和四十九年から基準価格のほかに指導価格ということにいたしまして、四十九年は基準価格は六百八十四円であったものが千円という指導価格にいたしたわけであります。これは御存じのとおり、ああいう状況でございましたものですから、砂糖も高いし、ブドウ糖、水あめも売れていくということで、そういう環境のもとで千円という指導価格が行われたわけでございますが、本年度におきましては七百四十七円の基準価格で千五十円という指導価格を設けたわけであります。ところが、昨年とさま変わりをいたしまして砂糖も非常に安うございますし、したがって水あめ、ブドウ糖もなかなか消化はむずかしいという状況にございますものですから、お話しのように高い原料いもを使いましたでん粉が売れていくのかどうかということについては非常に困難な事態に当面をいたしておるわけでございます。  そこで、私たちとしましては、一つは、先ほどの糖化用につきましては無税の、コーンスターチ用のトウモロコシの無税の抱き合わせをいたしておるわけでございますが、この抱き合わせの比率を現在一対三・六六と、国内産のでん粉とみつで三トンという関係に相なっておりますが、この抱き合わせ比率を適正に今後考えていきたいというふうなものが第一点でございます。それから、一般用のコーンスターチが大体半期で十七万トン程度の政令枠を設けておりますが、これにつきましての発券を適正に行っていくということが第二点でございます。それが、そういう関税割り当て制度の適正な運営によって対処をしてまいるつもりでおりますが、なおまた関税等の問題もございますので、その辺につきましても現在検討をいたしておりますがなかなか、これは非常にむずかしいという問題を含んでおるところでございます。
  16. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これ、局長が一生懸命努力していらっしゃる。この間も行ってみたら、一生懸命会議中でありまして、熱心にやっていらっしゃるわけでありますが、これは何せ、特産物中の特産物みたいな形になっているわけですね。北海道の馬でんもありますけれども、これを加えますと、ですから、余り一生懸命やってもらえないような感じがしているわけです、これは後でも伺いますけれども。ですから、いまおっしゃったような形で一体、千五十円という指導価格というのは守れるのかどうか。大変なことになるんじゃないかと私は思うんです。これは守れないということになりますと――これはもう守れないというのかな、でん粉業者なり、農協なりやらないですよ。大変な論争の末、大変な論議の末にとにかく千五十円でつくったでん粉というのが何とか売れるような、そういう環境をつくるんだという約束といいますか、そういう中で始まっておるわけです。ところがどうもこれは事態が進むに従いましてこれはもう非常に困難だというふうに見なければならぬのじゃないか。局長がおっしゃるような、いま三点ほどお挙げになりましたが、それでいけるのかどうかという点をはっきりしてもらわないと、これ農家は困るわけです。もちろん、農協も困りますし、でん粉業者も困ります。これは時間があるともっと論議したいのですけれども、どうなのかという点を伺います。
  17. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) つくったでん粉は売れていくような環境をつくらなければいけませんことは当然でございます。馬でんにつきましては、政府が大体五万トン程度を買い上げをすることによって消化をしていけると思っております。  問題はカンでんでありますが、カンでんは御存じのとおり、糖化用が大部分でございますから、砂糖の価格が安定をするということが基本でございます。これはほかの手段、方法よりも一番大事なことでございまして、糖価が何とか安定をするような状況に持っていかなければいけないと思っております。ただ、残念なことにと申しますか、国際糖価は現在百五十ポンド台に落ち込んでおるわけでございまして、一年前の四百ポンド、五百ポンドというところから見ますと、格段の低い水準でございます。それから同時に、在庫を非常に精糖業者が非常にたくさん持っておるものでございますから、なかなか糖価が安定する状況にございません。いろいろ買いつけの契約履行を延ばすというふうな、ポーストポンと言っておりますが、そういう形での輸入の何といいますか、引き延ばしあるいはまた国内における糖価の安定の努力ということをいたしているわけでございますが、そういう需給事情にありますものですから、糖価は次第に下がってくるというのが現状であります。したがいまして、基本的にはやはり糖価の安定を図るということと同時に、いま私が申し上げましたような三点につきましての検討努力を重ねまして、できましたでん粉が消化されるように努めてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  18. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この問題は、きょう第一次の質問にいたしておきたいと思います。  次に、もう一つ、でん粉を抱えている大きな問題は、水質規制の問題です。農林省としましてもいろいろ今日まで努力をしてこられました。しかし、水質汚濁防止法の適用が来年の六月から行われることになります、御存じのとおりですよ。いまは暫定措置でやっております。暫定基準でやっておりますが、来年の六月からは十五分の一くらい、あるいは十八分の一くらいに抑えなければならぬことになる。そこで、農林省は、北海道と鹿児島と二つの農協の工場を指定をして研究してもらいました。しかし、これは大変ですね、で、いま県も農協もそうですが、来年から実施するのを、完全実施といいますか、をひとつ延ばしてもらいたい、暫定基準でいってもらいたい。そうしてその間にもっと安くてできるような施設というものをひとつさらに検討していただきたいというような意見になってきておるのです。もし、いまのような形でこれを実施するということになりますというと、これはまたトン当たり一万円上積みしなければならない。でん粉トン当たり一万円上積みしないと施設はできない。これはでん粉工場は御承知のとおり、簡単な施設になっておりまして、大部分は野天にあるわけです。一部が、その建物が変わった施設になっておる。そこへ工場みたいな施設をつくらなければならない。水質を規制するための施設をつくらなきゃならない。七千万かかる、八千万かかるといわれている。そういうものをつくりますと、ますます、いま申し上げましたでん粉の値段の上にトン当たり一万円というものを加えなきゃならぬというような事態になるわけですね。ですから、その問題について、これからどういうふうに対処していこうとしていらっしゃるのか、伺いたいわけなんです。
  19. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 御指摘のように、一般基準への移行に対応いたしますために、各企業といたしましても排水貯留池をつくった するように、いろいろ地元の立地条件に応じて排水処理対策の確立を急いでおるわけでございまして、国におきましても四十八年から無公害の製造方法の開発に関する研究というのをいたしまして、新製造方式の開発の可能性でありますとか、あるいは公害物質の再利用でありますとか、あるいは低コスト処理技術の可能性等について実験事業を実施いたしてきたわけでございますが、なかなか、御指摘のとおりカンショでん粉等につきましてそういう横型遠心分離機方式と申しますか、そういう方式についての成果がどの程度上がるかということにつきまして早急に結論を得たい、得るようにいたしておるわけでございますが、企業の零細性等を考えますと、現段階では私は、来年六月に一般基準に移行することはきわめてむずかしいと思っております。したがいまして、本件の扱いにつきましては関係方面とも十分協議をいたして検討をとり進めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  20. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま局長から御答弁いただきましたように、やはり六月からこれを実施に踏み切っていくということは大変困難だと思いますですね。ですから、ぜひいまお話のように大変困難だという立場から関係各方面との折衝を進めていただきたいと思っております。  私は、この問題を取り上げましたのはもうこれは一昨年になるわけです。それ以来これを論議しております。森さんが局長のときですから。それからやっているわけなんですが、そのときから大変な問題なんです、これは。おっしゃったように研究も進めてこられましたし、実験も進めてこられました。大変、非常に困難であるという事態でありますから、ぜひひとつ局長のおっしゃるような方向で御努力をいただきたいと思っております。  そこで、結論としてもう一点伺いたいのは、一体原料いもというもの、カンショについてどういうこれから措置をされようとしていらっしゃるのか、伺いたいわけです。  それで、数字的に言いますと三十四年の数字ですが――三十五年でもいいんですけれども、三十四年の数字というのが、ちょうど作付面積が三十六万ヘクタールあったわけですね。それがいま六万ヘクタールと、六分の一に減っているわけです。六分の一に減りまして、生産量は四分の一というふうに減ってきたわけです。大変な勢いで減ってきているわけです。崩れるように減ってきたわけですね。小麦と匹敵するでしょう。小麦大豆ですね、と全く同じですね。まあ小麦より小さいですがね。小麦は真っ正面から攻撃を受けましたからね。ですが、このカンショも、いま申し上げましたように、十五年の間に六分の一に減っちまうという勢いで崩壊してきたわけです。いま六万ヘクタールというふうになっているんです。それがでん粉として見ました場合に、三十四年に七十七万トンあった、これは全体のでん粉としては。その中でカンショでん粉が五十二万トン。非常に大きな地位を占めておった。それがいまでん粉百万、それに対してカンショでん粉九万トン。これまた非常に減っちゃった。非常な勢いで減っちゃった。そのかわりにコーンスターチ、これが一万六千トンであったものが、いまやこれが七十万トンになっておるわけですね。こういう経過から言いまして、いま実際カンショをつくっている農家の人たちが考えていること、これは一体原料いもというものはこれから農林省はどうするおつもりでしょうか、ということです。つぶしていかれるつもりですか。全然なくするつもりですか。そういう方向へ行かざるを得ないですね。つくっている者はわかっていますから、次から次へなくなっちゃっていますから。そこで、どうなさるおつもりであるのか。長期見通しによりますと、約六割ぐらいに減ることになってますね、これからさらに六割。六割を割っておりますが、長期見通しではさらにこれが半分近くなる。五七%になるわけですね。半分近くになるという長期見通しを立てていらっしゃる。それでいいのかどうか。どうなさるおつもりか。よく小麦は安楽死とか大豆は安楽死というふうに言われました。これも安楽死か。なたね安楽死しちまったと言ってもいいくらいです。これも安楽死かと。まあ、なたね、大豆小麦大麦、息を吹き返そうとしているわけですね。大いに結構な話です。ですが、このいもはどうなるのか伺います。
  21. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) カンショの作付面積につきましては、御指摘のように、ずうっと近年減ってきたわけでございますが、四十九年の価格を制限としたということもございまして、五十年には面積が六万八千七百ヘクタールというふうにふえてきております。また、カンショのでん粉そのものも、ことしは十万トン程度の生産になるのではないかと思っております。しかしながら、私の考えまするに、いもカンショからほかのものに移るということはやはり、たとえばカンショから野菜に移るということは、これは決して悲しむべきことではございませんで、むしろそういうふうになっていかなければならないものであろうというふうに思っております。しかしながら、どうしてもそう急にそういうことはできない。たとえば基盤整備が進まないために、そういうふうにはならないという地域がやっぱり相当残るわけであります。ある一定期間相当残っていく。あるいはまたそれをしか、つくらざるを得ないという地域もございます。そういうわけでございますので、私、先般鹿児島県の知事と相談をいたしましたわけでございますが、そういう地域、要するに地域分担と言いますか、そういう地域の確定と言いますか、そういう地域を押さえまして、そこにどういうふうに工場を配置をしていくかという地域と工場配置の関係、それからカンショの原料価格、カンショの価格とでん粉のコストの関係、両方踏まえました計画を策定をして、それを踏まえて今後のカンショ及びカンショにつきましての対策を講じていくべきものであろうというふうに考えております。したがいまして、そういう考え方で今後カンショをつくらざるを得ない、あるいは当分の間カンショをつくっていくという地域につきましての生産の対策とあわせて価格対策を考えていく必要があるというふうに考えておる次第でございます。
  22. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 だから、局長答弁をされたわけですが、賢明な答弁のような感じがしましたですが、これはやっぱり賢明なものを少しはいで論議をしなきゃならない段階にきておると思うんです。これは改めてやりたいと思います。  ただ、三十六万ヘクタールあったものが六万ヘクタールに減ってきた、崩れるように減ってきた、十五年の間にですね。そのかわりコーンスがまさにわがもの顔に怒濤のように日本に入ってきたわけです。ですが、いま残っているところは、これはもうしゃにむに残ったという感じですね。どんどん押し流されようとする情勢の中でしがみついたという感じですよ。私は、なたねにいたしましても、いま五千ヘクタールですよね。ないと同じです。かつては三十万ヘクタール超しておった。これもしがみついた。全く怒濤のように流されたが、がちっとしがみついたですね、これは。それをいま今度は二千円、一俵二千円ですよ、奨励金を出してやろうということなんですがね。いいことです、これは。しかし、大変ですな。一遍けたくっちゃって、怒濤に押し流して、やっとつま先で立っとったですね、これ。肉牛もそうですよ。怒濤のように崩れたんです、これ。鹿児島なんか牛を飼っておって、いまごろ牛を飼ってるところと、なたねをつくっているところと、麦をつくっているところは一番おくれた農業だといって農林省が五、六年前言っておったですよ。ただ、それはしがみつかざるを得なかったんです。これはもう流されようというものが、しがみついたですな、つめでこうやっと。それが、いま肉牛もこれからの畜産の花形になろうというような話なんです、結構な話です、これ。なたねもそうなってこなければいかぬですね、これ。ですが、それはいささか駄弁に陥りますので、ぜひひとつこの問題については局長の方でも努力をされたいと思っております。  大臣、ちょっとばかり地域的な問題ですから大臣にお伺いしなかったんですが、そういうことがあるということを御理解をいただいて、ひとつ御努力を願いたいと思います。  次に、あと四十分、三十五分ぐらいになりましたが、次に今度はお茶。これがまた輸入がふえましてどうにもならぬです、これ。お茶は御承知のように五、六年前までは千トンぐらい入っておったんです、主として台湾茶。これは四十八年が一番ピークになるんですが、一万二千八百トンとなったですね、ちょうど十二倍ぐらいにふえたですね、輸入が。もうまいっちゃったです、これ。そしてこの台湾茶が――まあ農林省も、それから県も、農協もそうですが、できるだけいい品質のお茶をつくろうということで大変努力してきている。いま言う品質にいたしましても、それから肥培管理にいたしましてもですが、そこへ台湾茶というものががさっと出てきて、それをブレンドされちゃうわけです。二割ブレンドしますと全部に入っちまうんです、日本の生産茶に。もう一割ブレンドしただけで全部入るんじゃないですか。だって一万二千トンといいますと、日本の茶というのは、荒茶は十万トンぐらいの生産ですからね。これに一万二千トンの、一二%ぐらいのものが入ってきているんです。一割ブレンドしますと全部ブレンドしてしまうというようになっちゃうですね、品質がどうだこうだ言いながら。鹿児島なんかも大変な振興地域です、日本一の振興地域になりました。鹿児島茶の中には台湾茶が入っているということですよ、と言うと、台湾に近いから恐らく鹿児島へどんどん台湾茶が入っているんじゃないかと。調べてみましたら相当入っています。輸入量の一割近く入っています。それで、鹿児島のお茶には台湾茶が入っている、というようなことで大変声望を落としちまうというようなことですね。ですから、これだけの輸入が――最初は一%ぐらいであった、五、六年前までは一%だったわけです。それがこういうふうに一割二分も入ってくると、去年、四十九年は一応そういう大変急速に輸入がでかくなったものですから、去年は相当抑えられております。これはだぶついたです。ところがしかし、五十年はほぼ四十八年のピークと同じぐらいになるだろうというふうに言って差し支えないと思います。ですから、ポンカンの問題もタンカンの問題もありますが、もう、がしゃがしゃにやられちゃうんですね、輸入によって。お茶もこういうことで、ばかすかこういうふうにむやみやたらに輸入してきますと、これは品質の問題もそうですが、農家にとってはえらい問題ですよ。どこで問題にしているんですか、これ。この輸入についてどうなさるおつもりなのか伺いたいです。
  23. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにいまお話のように、茶につきましては輸入量が非常にふえております。この輸入量の急増によりまして、国内の茶の生産農家への影響は非常にあるわけでございますので、これを何としても緩和をするために、昭和五十年度から茶の生産流通安定対策事業を御案内のように実施をしてきたわけでありまして、そして国内の需給動向に即応した秩序のある輸入が図られるよう関係団体を指導して今日に至っておるわけでございます。が、なお海外におけるところの対日輸出を指向した緑茶の生産を極力抑制をするために、日本輸出入銀行等の開発投資を抑制するよう、関係省庁の協力を要請したところでございます。これは、茶の生産につきましては、私も外国を回ってみまして、日本の生産者といいますか、日本の関係者が外国で茶の生産を行っておる、そしてそこで生産をして日本に輸出をしておるという面もあるわけでございますので、そうした関係につきましては、輸出入銀行の開発投資ということになるわけでございますから、これを極力抑制するように努力もいたしております。今後ともこれらの措置を講ずるとともに、茶の生産の合理化を図ることによりまして、国内の茶の生産農家の経営の安定に努めてまいりたいと思っておるわけでございまして、茶の輸入の増加、急増ということは、国内における茶の生産農家を非常に混乱をさせる、茶の生産を混乱させることになりますから、輸入の面について抑制をし、秩序のある輸入をさせるとともに、また茶の生産体制の合理化等も図って、何としても経営の安定化を図ってまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  24. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま大臣がおっしゃいましたように、急速にふえてきたわけですよ。四十三年はいま申しましたように千トンぐらいだった。それが四十八年にはわずか五、六年の間に十二倍ふえちまったですね、一万二千トンと。日本茶の中に占めている割合が一二%を超すという形になっちゃったわけですね。ですから、非常に困るわけです。これ、開発輸出をやっておるわけですよ。商社というのは諸悪の根源だというが、そういう面は確かにありますね。もう農民わかってきていますよ、台湾でやっていますからわかっているわけです。こういうことが次から次に起こってくるわけですね。後で問題にします韓国のマグロもそうですね、ひどいものです。これ、むちゃくちゃと言ってもいいぐらいです。ですからもう少し、いま局長のおっしゃるように、厳しくやってもらいたいと思うんですね。まさに日本の茶を撹乱するためにばかすか輸入してくる、これは困ると思うんですね、こういうやり方は。ですから、ぜひ努力をしてもらいたいと思います。  それから、台湾茶の入ったものは明示するようにしたらどうなんですかね。公取が通達を出していますね、通達というのか要望。通達というより要請ですね。そんなものじゃ、これは処理つかないですね。ですから、今後このお茶について台湾茶が入ったものは、台湾茶が入ったというふうにしてもらうと、はっきりするんですけれども、せっかく農家努力し、製品のいいものをつくるために非常に努力する、品評会も開いてやる、――全国品評会もやる、県の品評会もやるということで、大変な努力をしているわけですよ。そういう中に台湾茶がどんどん入ってきて、そして混入しちまって日本茶のようにして売り出すというような形になったのじゃ、これは浮かばれないですね、農民は。ですから、台湾茶の入ったものはきちっと明示するというような、公取のこういうような要請のような形のものでは効果はなしと言っていますが、そういう点について局長ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  25. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 輸入茶の原産地表示につきましては、私の方も茶業団体を通じまして指導をしておりますけれども、まだ十分守られておらない、徹底しておらないという面がありますので、さらに一層徹底するように指導を強化してまいりたいと、こう思います。
  26. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これはどうにもならない問題で、どうにもならないというより、これはぜひ解決をしてもらいませんといかないですね。茶については、紅茶で農林省は大失敗しておるわけですから。これはもう十年前の話ですが、私は国会に出ましたときに、五カ年計画を立てて大変な意気込みでしたよ。私の鹿児島なんかも真に受けましてね、正直なもんだから。真に受けちゃって紅茶をつくっちゃった。ところがたちまち、五年もたたぬうちですよ。だって、翌年自由化されたのですから、どんどん入ってきた。ですから、もうもうあわを食っちゃって、私の県なんか、紅茶の木を引っこかす、補助金出して引っこかしちゃったですよ。五年で完全に失敗だったですね。いままたお茶がこんなことをやられますと、これは似たような形に、類似したような形に追い込まれてきますわ。ですから、大臣にも答弁をいただいたわけですが、局長もこの間局長になられたばっかりですから、ひとつ緊急に勉強をなさって、がっちりやってもらいたいですね、これ。  あと二十分ぐらいになりました、三十分ぐらいになりましたので、これでひとつお茶を終わりまして、今度はあの生糸ですね、生糸について。  この間生糸それから絹業者の決起大会が開かれました。十月の何日でしたですか、えらいですね。生糸の一元輸入というのは、これははっきりしております。したがいまして、生糸の輸入量としては前年に比べまして半分ぐらいに抑えられた。しかし、撚糸ですね、これは四十倍にふえましたね、去年よりも。これ、三万七千俵ですわ、生糸に直しまして。いまは生糸の三万七千というのが輸入されているんです。四十倍にふえちゃった、一挙にですね。もう大変ですわ、これ。そこへもってきて今度は絹織物か約八割ふえている。きのうは、鹿児島の大島つむぎの人たちが大挙して来られまして、大蔵省、通産省あるいは農林省に行かれたかもしれません。何せえらい輸入ですわ、これ、韓国から。韓国は、つむぎを着ているんじゃないですね、日本に輸出をするためにやっているわけです。まあ大変ですわ。四万反入っていると言うんですけれども、年間四十万人の観光客があるんです。飛行機の中で、韓国の大島つむぎというのは、こうじゃ、こうじゃと言って飛行機の中で配るというんです。四十万人の中の一割の人がみやげに買ったとしますと、これだけで四万反です、四万俵ですよ。二割の人が買いますと八万俵というのが入ってきます、大変なものですよ。ですから、生糸の一元輸入というものは、確かに守られてきて効果をおさめていると言っていい。ですが、かわりに、いま言いましたような撚糸が入ってくると、四十倍もふえるとか、さらに織物が――絹織物というものは、これはもう大変なものだろうと思うんです、私は。そのことは、結局日本の養蚕業というものに対して非常に大きな打撃を与える、絹業に対して非常に大きな影響を与える。だから、養蚕業も、絹業もまさに崩壊の危機と言っても過言じゃないんじゃないでしょうか。これはやっぱり韓国のマグロと、いま韓国のつむぎみたようなものですよ。撚糸も絹撚糸も同じです、これ。お茶もそうです。まだ、ぞろぞろ挙げてもいいんですが、みんなそうです。と言っていいでしょう。ですから、この一元輸入というのは完全に空洞化しちゃうんです、これ。いま、だから生糸の輸入は抑えておりますけれども、実際上は生糸に換算いたしまして大変な量が入っているんですよ、三倍ぐらいじゃないでしょうかことしは、去年の。ですから、この問題について生糸の一元化というのは、確かに輸入の一元化というのはあるんだけれども、完全に空洞化しているんじゃないか。どうこれについて取り組んでいらっしゃるか、取り組む考え方なのかどうかという点ですね。
  27. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) ただいま御指摘がございましたように、生糸は最近の世界的な需給事情が過剰になってきておる、わが国も景気後退に伴いまして消費が減っておるというような事情がございまして、現在生糸の一元輸入措置によりまして輸入の秩序等を図っておるわけでございますが、生糸は抑えられるものの、撚糸、絹撚糸あるいは絹織物という形で輸入が非常にふえておる。御指摘がございましたように、撚糸につきましては昨年と比べて一月――十月の期間をとりまして四十倍、韓国からは百二十七倍入ってきておる。撚糸は大部分が韓国でございます。織物は一八%ふえておる。これは中国がかなり多いということで、中国と韓国の両輸出国からわが国に対して一元輸入措置以外の絹撚糸あるいは絹織物という形で輸入が非常にふえてきておる。これが織物業者あるいは撚糸業者を圧迫するということだけにとどまらず、生糸の需給あるいは現在の価格安定制度、その一環といたしまして一元輸入措置を空洞化するおそれがある。したがいまして、現在蚕糸事業団が六万俵弱の在庫を持っておりますが、これが円滑に放出できない。こういうような事態で養蚕農家あるいは製糸関係者も非常に心配をしておる。こういうことでございますので、私どもといたしましては、やはり生糸だけやってもだめだと、絹撚糸あるいは織物等、総合的に輸入の秩序化を図る必要があるという考えで現在恒久的な安定対策を検討いたしておるわけでございます。  御承知のように、絹撚糸、絹織物は農林省所管ではございませんで、通産省所管ということでございますので、通産省とよく御相談をしながらやっておるわけでございますが、とりあえずの措置といたしましては、通産省におきまして絹撚糸につきましては韓国と交渉いたしまして、韓国側から見た輸出の自主規制をやらせるということで、九月二十日から一カ月間はとりあえず月に二千俵ということにしたわけでございますが、その後交渉しておりますけれども、まだ数字の歩み寄りができないというようなことで、事実上は輸入数量はかなり減ってきております。純織物につきましても、問題になる裏生地あるいは羽二重等につきましては、中国からの輸入が多いわけでございますが、これも事前承認制度によりまして通産省が国内の輸入業者を指導して輸入の数量を調整しておる。こういうことを当面やっておりますけれども、これはやはり恒久的に安定的な仕組みとして、生糸を含めて総合的にできるような仕組みを早急につくらなければいけないということで現在関係省と鋭意検討をしております。早急にそのような制度を確立したいという考えでおります。
  28. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 羽二重は中国から入ってきますが、これは承認制になっておりますから、規制の仕方は十分あるわけです。ところが、韓国から来るつむぎという関係、これは韓国は着ておるんじゃないのですから。中国は羽二重着ているのですから。韓国は日本に輸出するためにつくっておるのです。着てないのです。全く日本に輸出するためにつくっておる。それがいま申し上げましたように――これは通産省の所管ですか、しかし与える影響は農家に直接与えてくるわけですから、大きな影響を与えてくるわけです。いま撚糸が、おっしゃったように韓国からは百二十何倍というふうにふえている、去年に比べまして。大変なものですよ。織物は先ほど申し上げましたように、観光客が持ってくる織物というものは大変なものです、これ。数字がつかめていませんですけれども、大変なものだと思うんですよ。ですから、やはり生糸の輸入の一元化ということによって規制をしている。しかし撚糸としてあるいは織物として、これまた私のよく使う言葉ですが、怒濤のように入ってきておるわけです。文字どおり怒濤のようです、これ、もう全部。だからその中でこれは何とかしなきゃならない。ですから、ぜひいま局長がおっしゃったような方向でさらにこれはひとつやってもらいたいというふうに申し上げておきたいと思っております。きょう問題を提起したというところでひとつ努力を願いたいと思います。  次に、同じく韓国――どうも日本政府は韓国に弱いですね。次にマグロですが、これはこの間の通常国会水産庁長官に大分申し上げました。なお、議員立法で規制をする、ある意味では禁止的な規制をやれるような法律改正になった。ただ、あのとき問題になりましたように、マグロを指定するかどうか政令で決めることになっておって、政令でお決めにならない。そういうことで結局四万五千トンというものが入ってくるというふうになりまして、来年は六万トンか七万トンという話が出ております。  この間、長官が韓国に行かれたということを新聞で見ました。業界紙によりますと詳細に報道もされております。これどうなさるおつもりなのかか。外国では、外国船が、これは外国ですから外国船が日本の港にどんどん直接水揚げするというようなことはないんじゃないんですか。ですから、これはどうなさるおつもりなのか。この間行かれましたときの話というのはどうなっているのか。六万トンから七万トンというふうに言われております。それを超すものについては二五%とか三〇%の関税というような話を持っていかれたけれども、しかし韓国は絶対反対だと。韓国の水域からひとつ日本船を締め出そうというような話も出ている。あるいは向こうの言葉で言えば接敵海域、まあ特別海域――ほとんど公海ですけれども、そこから日本船をどうだこうだという話も業界紙など報道しております。どういう話をなさっていらっしゃるのか、これを聞きたい。
  29. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 先生御指摘のように、韓国からのマグロの輸入は非常にふえたわけでございます。特に、今年は韓国がこれまで輸出しておりましたアメリカの市場が非常にマグロの消費がふるわないということで、韓国側の対米輸出の不振等もございまして、これがわが国の輸入増加に著しい影響を与えまして、今年の春以降マグロの価格の低落になり、大きな社会問題になったことは御指摘のとおりでございます。その結果、外国人漁業規制法の改正等もあったわけでございますが、政府といたしましては、あくまでこういった問題は韓国側との話し合いの結果で解決したいという立場から、御案内のように、今年夏、四万五千トンに韓国側が自主規制するということで合意が成立いたしまして、以後この自主規制措置が実施されているわけでございます。  そこで、明年以降マグロの輸入をどうするかという問題は、現在、漁業経営の中で一番苦しい立場にございますマグロ漁業経営の安定と密接な関連を有しているわけでございます。しかしながら、マグロの場合は昭和三十六年からすでに自由化されておりまして、これを割り当て制に戻すというようなことはとてもできないわけでございます。したがいまして、現在のガットとかあるいはわが国の自由貿易を推進するというような、わが国の立場等々も考えまして、関税割り当て制度をとって、一応韓国及びほかの国、外国からの輸入についてチェックができるような制度をつくりたいということを考えたわけでございますが、これにつきましては、現在のわが国のいろんなやり方からいきますと、関税割り当て制度をとる場合には、主たる供給国との話がついていないとなかなか事務が進められないという問題があるわけでございます。と申しますのは、韓国もガットのメンバーでございますから、一応ガットの提訴その他の問題もございますので、韓国側に話をしなきゃならぬということもあって、実は先月その話をしに行ったわけでございます。ところが、私が行きましたときに、韓国側でもこの問題が、韓国の国会で非常に大きな問題になっておりまして、四万五千トンの自主規制というのはガット違反じゃないかとか、あるいは韓国側の水産庁は非常に弱腰であるとか、向こうの水産庁長官も――水産庁長でございますが、非常に苦しい立場にあるというようなところに私、行ったわけでございます。そういった国内事情もある上に、さらに先生から御指摘がございましたように、いろいろな貿易上の問題が日韓の間にございますので、マグロで関税割り当て制度をとると、これが他の制度に波及するということも向こうは心配したことと、さらに水産庁長の言い分では、この問題はどうも自分だけでは片づけることはできないと。韓国側としても、たとえば通産省だとか企画院だとかいろんなところに話さなければならない。とても、いもそれをのめるような状況にないというところから、向こうは、関税割り当て制度をとれば、それはもう当然ガット上の問題にするというようなことを言ったわけでございます。  そういったことがございまして、私どもといたしましても、関税割り当て制度を現実問題として進めることができないという判断に立っているわけでございますが、と言って、これを放置しておくわけにはいかないということから、現在貿易自由化の方向に逆行しない範囲内でマグロの輸入に関する国内体制を整備したいと考えて、関係方面と鋭意話し合いをしているところでございます。  と同時に、韓国側もこれ以上の漁獲努力はふやさない、船は一切ふやさない、それから日本市場におけるマグロ価格の安定が韓国の漁業にとっても非常に大事だと。と申しますのは、韓国のマグロ漁業というものはほとんど輸出産業でございますので、そういうこともよくわかっておる。したがって、今後日本市場における価格の安定のためには水揚げ調整その他大いに協力する。特に明年の一-三月は非常にマグロの価格が低迷するおそれがあるので、そういった場合には、こっちはもう水揚げを非常に抑制して日本の価格安定には協力するというようなことも言っておりますので、そうした措置等もあわせながら国内体制の整備を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、対米市場の話でございますが、ことしの券はトン当たり六百ドルぐらいでございましたビンチョウの価格が、最近では千ドルを超えておるというようなことで、韓国の対米輸出もかなり最近出てきておるのではないかと思われますので、数量的にことしのようなことはないというようなことを向こうも言っております。さらに向こうも国内でかん詰めをつくるとか、いろんなことを言っておりますので、数量的にはことしを上回るようなことはないのではないかというふうに観測されますけれども、いずれにいたしましても、そういった情勢を考えながらマグロ漁業の経営の安定のために遺憾のないような措置をとらなければならぬというふうに考えて、いまいろいろに検討しておるところでございます。
  30. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 日本のマグロ船は一万六千くらいあるのですかね、それを二割スクラップするというような形で日本のマグロの構造改善を進める、という形にある意味では追い込まれておるというふうに言わなければならぬと思うのですよ、韓国のために。韓国のためにと言っていいですね。食うわけじゃないですから、日本のために輸出するのですから、日本のためにとっておるのですからね。そのために日本の船を二割削減する、そのための融資もする、ある程度の補助金も出すというような形で構造改善をしながら日本の数そのものも抑えていくという形に追い込まれてきておる。これもどうも、茶やら、でん粉やら、麦やらと同じような形にこれはなっちまって、どうも韓国の水産庁の長官は大変弱腰だという話だったが、日本の水産庁長官農林大臣もちょっと韓国に弱腰じゃないですかね、これ。こんな状態に追い込まれて、これは資源の問題もありますけれども、マグロにつきましては。ですけれども、やはり一番大きな原因は、これは何といいましても、韓国の非常に急激な輸出が最も根本的な原因だと思うのですよ。ですから、いま二割を削減されるその構造改善が円滑に進められるためにも、これはどうしてもある程度の規制をしなければならないとわれわれは思っているわけなのですけれどもどうなんですか。
  31. 内村良英

    政府委員(内村良英君) ただいま先生から御指摘のあったような問題も踏まえて、必要な輸入体制の整備を図らなければならぬというふうに考えておりますけれども、現在日本はガットのメンバーであり、韓国もガットのメンバーであるというようなところから、残念ながらこれを割り当て制に戻すというようなことはとてもできない。そこで、いまの日本が置かれているいろんな状況の中でまあぎりぎりと申しますか、の措置はとらなければならないというふうに考えているわけでございます。
  32. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 あと五分くらいになりましたですね。そこで最後にカツオですが、カツオが四十九年が大変な不況の年だったわけですね。ことし私がこの委員会で水産庁長官お話をしましたときに、カツオの価格はことしは少しはよくなるのじゃないかというようなお話だったのですけれどもね。しかし五十年になって、今日になってみて、価格は依然として低迷ですわ。そこへ持ってきて油の大きな問題がある、魚価は低迷をする、そして今度はおまけに不漁である、魚はとれない。ですから、大変な、いまカツオというのは不況にありますね。  ですから、この問題について、まあこれはいろんな理由がありますが、一つは油代ですね。これは後ほど川村さんの方からも質疑があると思いますが、私はこの油を調べてみましたら、漁業支出の中に占めている油の割合というのは、これは、四十七年から四十九年にかけて約三倍になっているわけですね。ですから、一五%ぐらい、四十九年度で。まだまとまっていませんですが、農林省の統計は。ほぼ推定すると一五%と言って差し支えないと思うんです。ところが、その主体をなします二百トンから五百トンのカツオ船というやつ、小さいやつは近海でとっていますからね、御承知のように。二百トンから五百トンというやが主体をなしている、これは遠洋漁業です。この油の消費というのはもっとも高いですね。統計上もこれが主体になって出ております。あとはちっちゃいのを二、三隻しか調査していませんが、この二百トンから五百トンという船については二十何隻という調査をしています。これが主体をなしています、圧倒的主体ですこれは。その油の消費量というのは高いですね。平均では、いま言いましたように一五%ぐらいです、四十九年度で。ですが、二百トンから五百トンという形になりますというと、これはいま言いましたように圧倒的主力になる、その油代というのはうんと高いですね。二〇%をはるかに超すんじゃないでしょうか。これは四十八年の数字が出ております。それで四十八年は五・六%です。ですが、この二百トンから五百トンという数字で出しますというと八・九という数字になっていますね。高いです、非常に高いです。ですから、この間私も通常国会で質問しましたときに、水産庁長官は一割から一割五分だというお話でしたですが、平均としての数字はそういうことが言える。ですが、主体をなすこの二百トンから五百トンという形になりますと、そんな数字じゃない、もっと非常に高い。  それで、この油代については、この間の農林中金の機関誌の中にも――機関誌といいますか、農林中金の本の中に出ましたように、全漁連ですか、これが欧州各国に出張いたしまして具体的な調査をしてきていますね、油について。どういう形に各国がやっているかと。値上がり分の半分について国が援助しているというようなことも詳細に調査してきていますね。また配賦の仕方等々についても、農林中金のこの間の水産特集号に資料として出ています、詳しく出ています。そういうことを見ますというと、これはやはり油代について考える必要があるんじゃないか、融資だけじゃなくて、補助をするという形を速やかに検討する必要があるというふうに思いますですね、それが一つ。  もう一つ、底引きとかなんとかいうのは、えさ代は要らぬわけですが、カツオはえさ代が要るわけです。この油代とえさ代と比べてみますというと、油代よりもえさ代が高いのです。この農林省の平均数字では油代よりちょっと低いことになっていますが、二百トンから五百トンというこの主力をなす船は、油代よりもえさ代の方がはるかに高い。そのえさが、生きた魚を持っていくわけですね、そのえさが南に行くうちに三割死んだ、四割死んじまった、へい死してしまったということで、もうえさがないものですから、帰ってくる。つろうにもつれないですから、帰ってくるという形になっているのも御承知のとおりです。このえさが非常にへい死率が高くなっているということについて、どういうふうに検討を進めていらっしゃるのか。いま言ったように油よりも高いです、はるかに高い。具体的に数字を申し上げてもいいですよ。ですが申しません、油よりもはるかにえさ代というものは高い。  それからもう一つ、このえさの南の基地をつくってもらいたいという考え方が非常に強く出ております。御存じのとおりです。これはそうですよよ、こっちから、えさを持っていって、生きた魚を大量なものを持っていって、そのうちへい死もする、弱りもするということになるわけでしょう。その間にえさもやらなきやならぬということになってくる。それよりも、向こうで、向こうにおる生きたイワシならイワシをとって、それで一本釣りをやるということがはるかにいいことはわかっている。したがって、南にそういう基地をつくってもらいたいという考え方が出ている。御存じのとおりです。しかし日本政府は御承知のとおり無償供与を盛んにやっているんですよ。インドネシアに対して、あるいはアフリカの国に対して、あるいは今度十月の、この間の閣議決定によりますというと、最近豪州から独立しましたパプア・ニューギニアに対しましても六億六千万という無償援助をすることになっている。漁業に対する無償援助、それによって漁業をしやすいようにしていきたいということだろうと思うんです。ですから、日本の大企業というのは向こうに、もう合弁会社をつくっている。そこでえさとってやっている。で、あるいは漁連なりあるいは漁協の、あるいはその他の中小の漁業というものは、えさをこっちから持っていってやらなければならない。そのうちにへい死してしまう。へい死率が高くなっている。向こうへ行ったってえさは買えるか、買えないかわからないという状態で行かなければならぬという状態ですね。そういう問題についてどういうふうに考えていらっしゃるのか。大漁業資本というのはもう向こうで合弁会社をつくってやっているんですよ。ですから、今度六億六千万というような援助をなさった、パプア・ニューギニアに対して。それが、そういうものの恩恵というものは、これは本当の漁連なり自営船なり中小の漁業者というものは受けていないんじゃないか、という疑惑を非常に強く持っている、今度詳細に調べますけれども。大きな企業は、向こうでもう現地の資本と一緒になってですね、まあ現地の資本と一緒になってというよりも、むしろ向こうへ行って合弁会社をつくっている。基地になっている。そういう点についての考え方を聞きたい、以上の点ですね。
  33. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 最初に、燃油の補助金の問題でございます。  ただいま先生から御指摘がございましたように、燃油が三倍になっているということで、それによって漁業経営が非常に苦しくなっていることはもう御指摘のとおりでございます。そこで、全漁連の調査の話が出ましたけれども、西欧諸国、まあイギリス、フランス等では石油ショックの直後に漁業用燃油につきまして補助金出したことも事実でございます。ただ、この問題につきましてわが国の水産業界が非常に強く希望しておりますことの背景には、やはり漁価の安定に対して十分な施策がないというところに原因があるわけでございます。そこで、昨年の石油ショック直後の漁民大会、これは五月にあったわけでございますが、そのときには先生御案内のように、いわゆる魚価安定事業団をつくって農畜産物並みの価格安定をやってくれという希望が出たわけでございます。これにつきましては、技術的ないろんな問題もあってなかなかできないというようなところで、五十年度から調整保管を中心とする価格対策をとっておるわけでございますが、それで一応価格対策が始まっているわけでございます。ところが、それでは不十分だと、だから価格の方でできないなら経費の方で見てくれと、まあ、ヨーロッパでそれをやっているんじゃないかというようなところから、ことしの春以降燃油に対する助成という問題が非常に強く出てきたわけでございます。ところが、この問題はなかなかいろんな問題がございます。まず第一の問題といたしまして、日本政府のこういった産業政策としての助成政策の中で、経費に対して直接助成しているという前例がございません。それから、漁業に対しまして石油補助金が認められるならば価格政策のない他の施設園芸とか農業関係、あるいは海運、陸上輸送等へも見なければならないという問題も起こるのではないかという問題、それから、使用量に応じて補助するというようなやり方をとりますと、これに膨大な事務量がかかりまして、果たしてそういうことが現実的であるかどうかという事務上の問題。それから、えさにつきましてはいろいろな対策がとられたわけでございますけれども、えさの場合には価格の変動がございますので、その中で調整するということができますが、現在の石油価格というものはOPECを中心とする動きから見ればこれはもう下がることないんじゃないかと。そうなりますと、今後ずうっと永久に補助金出していかなければならないというような問題があること。それから、大体日本の漁業用の燃油の五分の一はいわゆる大手企業が使っているわけでございます。これは配当等も十分やっておりますし、そういったものに対して直接的な補助をすることがどうかとか、いろんな問題がございまして、政府部内でもいろいろ検討したわけでございます。そこで、現在のところ、そういった手法よりも、漁業経営の安定なり価格安定の方に力を入れた方がやはり漁業政策としては本筋じゃないかというような観点に立って、来年度予算の編成も絡み現在、鋭意問題を検討中でございます。  それから次に、カツオ漁業につきまして、えさが途中で死ぬという問題でございます。特にこの問題はことしの六月以降非常にへい死率が高くなりまして、カツオ漁業の大きな問題になったわけでございます。と申しますのは、船によりましてはえさを積んで漁場に着いたら全部死んでいた、全く漁業ができなかったというようなケースもございます。そういうようなことで非常に大きな問題でございますので、水産庁におきましても、ことしの秋に大学、県の水産試験場、それから国の水研及び関係の業者が集まりまして、数回にわたりましてこの原因究明等を行ったわけでございます。その結果、まあ結論的に申しますと、やはり直接的な原因は、ことしの非常な高水温にあったんじゃないかということが言われるわけでございますが、そういった事態を考えまして、えさ場及び船上におけるえさの蓄積についての環境の密度、とにかく余りたくさん入れますと、どうしてもへい死がふえるというようなことがございますので、密度の問題、それからえさの与え方、それから魚病の病気の予防の問題、さらに病気が出た場合の治療等に関する管理の指標をつくりまして、それを関係業界に対して指導しているところでございます。最近ではもう余りへい死がなくなっている。これは水温が低くなってきたということもございまして、ということで、この問題、来年以降またどうなるかわかりませんので、そういったことも十分考えながら業界を指導していかなきゃならないというふうに思っております。  それからさらに、それならばもう国内でえさを求めないで、カツオ漁業というのは相当海外に出ていくわけだから、どっか南方水域あたりで、えさ場を見つけて、そこでえさを調達するというふうにした方が合理的なんじゃないかという御指摘がございます。この点につきましては、確かにそのような点もございますので、実は昭和四十六年度以降、海洋水産資源開発センターが中心になりまして、カツオのえさの魚の開発調査をやってきているわけでございます。四十六年、四十七年、四十八年はニューカレドニア地域でありまして、四十九年はポナペであるとか、五十年はトラック、パラオ等でやっているわけでございますが、残念ながら今日までのところ豊富なえさ場が見つかっておりません。そこで私どもといたしましては、今後ともこういった面について努力を重ねまして、そこで、いいえさ場が見つかりましたら、それを所管している関係国との間で交渉をしまして、こういったえさ問題の解決には一層の努力をしなければならないというふうに思っておるわけでございます。  そこで、さらに先生から御指摘がございました大手の企業の話でございますが、現在出ているのは十一社ぐらいでございます。そこで漁船の数も非常に小そうございますし、そういった規模であれば、現場のえさで間に合うわけでございますけれども、日本のカツオ漁業全体のえさを南方地域で調達しようとすれば、かなり大きなえさ場を見つけないと調達できない。現場に行ってえさがないということになりますと大問題でございますので、その辺のところは今後えさ場の発見に最善の努力をしなければならないという状況になっておるわけでございます。
  34. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 最後に、時間超過しましたが。私は、水産業というのが今度は総合食糧政策の九項目の中の一項目に入っている。これはまあ水産というものはたん白質源としては非常に重要だ、畜産にまさるものであるという、そういう考え方があって、非常に重大な問題になってきていると思うんです。で、二百海里の問題とか、いろいろありまして、水産業もまた大変な事態にきているわけですね。ですから、水産庁長官は昔から大変なアイデアマンだということが言われているわけですが、どうもちょっとアイディア足らないですね、これ。これは従来の考え方から脱却したアイディアをつくってやっていかないといけないんじゃないかと思いますね。だから、油とえさの問題にしましても、えさについては、これは産業政策としてどうだということをおっしゃったのですが、食管特別会計で約百十五万トンの大麦を持っていますよ。それに対して二百八十億円の金を使ってえさの価格安定に使っている。百十五万トンの大麦をどのようなえさにして、どのような形で使われているかということは御存じだと思うのです。だから、産業政策として飼料代について、資材費について援助を行っていないなんてことはないんじゃないですか。私は、水産庁は、ここでアイディアをもっと発揮して、従来のような考え方ではなくて、もっと新しい発想に立って進めていく必要があるんじゃないかと思う。水産庁の予算というのは千二百億ぐらいしかないのだ、その中で港を五百何港つくっちゃってあとはないぞ、油をどうしろ、と言ったって、そんなものはありはしない、というような話で水産政策というものをやられたのでは、これはこれから困るのじゃないかという考え方を私は持っておりますが、ぜひ発想を新たにして、従来のような考え方ではなくてて、大きくやってもらいたいと思いますがね。この油の問題についてもそうですよ。外国がやっておって日本がやれないというはずはないですよ。えさをやっておるわけですよ、二百八十億使っています。価格差だけではないんですよ、御存じのとおりでしょう。水産庁長官も食糧庁の次長をやられたのですから御存じでしょう。そういう意味で大いにがんばってもらいたいと思いますね。  要望をいたしまして終わります。
  35. 川村清一

    ○川村清一君 それでは時間の関係で余りくどくど申し上げないで、大事なところだけ申し上げますのでお答えをいただきたいと思います。  私が問題にしますのは、御承知のように十二月の九日、日本武道館で全国漁民大会が、約一万名漁民の代表が集まって開催されましたことは御承知のことと思います。これは現在直面しておるわが国の漁業の危機を突破するという意図のもとに集まった大集会でございまして、各政党の代表も出ております。そこで、漁民の代表から切々として現在の漁業経営が抱えておる窮状を訴えられたわけでございます。私は、ここで漁業経営者の窮状をくどくど申し上げなくても、行政の責任者である農林大臣水産庁長官はよく御存じのことと思いますので、説明は省略いたしますが、この大会で決議されました項目は大別して五つございます。第一は、ただいま鶴園委員から御発言のありました、漁業用燃油価格差補給措置を実現されたいということ。  第二番目は、抜本的魚価格安定対策を確立してほしいということ。  第三番目には、漁業経営維持安定資金制度を確立されたいということ。  四番目は、沿岸漁場整備開発を積極的に推進してほしいということ。  最後に五番目でございますが、領海十二海里を即時宣言をしてくれ、ということに尽きると思うわけでございます。  そこで私は、この五つの項目について政府当局の御見解をお尋ねしたいわけでございますが、第一の漁業用燃油価格差補給措置を実現してほしいというこの要望につきましては、鶴園委員から質問がございまして、長官の御答弁があったわけでございますが、いまのお話にもありましたように、この石油が、一昨年の石油ショックによって約三倍にはね上がった、この三倍に燃油がはね上がったことが現在の漁業経営の赤字をつくっておる最大の要因でございます。沿岸、沖合い、遠洋、すべての漁業経営者は全部赤字を背負っております。その赤字分は何かというと、つまりA重油が三倍にはね上がった、その格差が赤字になっておる、こう言っても言い過ぎではないと思うわけでございます。石油は上がったが魚価は低迷を続けておる。結局、コストをカバーするだけの魚価の上昇がないために赤字になって背負っておるわけでございます。したがいまして、漁業経営者がこの分をひとつ政府の財政でもって補給してもらいたいという要望はこれは妥当な意見であると私どもは判断しておるわけであります。鶴園委員からのお話もございましたが、このことは何も日本の漁業者だけが要求しておることではなくて、水産庁の長官の御答弁にありましたように、西欧諸国においては、石油ショック以後とっておる処置でございますし、わが国の基幹産業である農業、いわゆる畜産行政の中においても、えさが上がった、その分については政府が何らかの財政処置をとってその畜産生産を支えておる、これは実態でございます。こういうような例があるわけでございますから、政府がやってしかるべきじゃないか。当然やるべきではないかと私は考えるわけであります。  で、いろいろ調査してみますというと、これは沿岸、沖合い、遠洋、この漁業経営が使用しておる燃油の量は五百八十万キロリッターと、こう言われております。で、漁業者の要求は、五百八十万キロリッターのうち一キロ当たり二万円上がった、したがってこの二万円の二分の一の一万円を補助してくれと、そうすると五百八十万キロでございますので、総額で五百八十億、何とかならないかと、これが漁業者の要求であるわけでございます。そのできない理由は、何とかかんとかいま長官が言われておりましたが、これよりもいわゆる漁業安定施策の方が大事なんだと、また漁業者も、全漁連等はそれを要望しておる、こういう御答弁でございますが、魚価安定を確立するということ、その施策を強力に実施してもらうこと、これは長年のわが国の漁業者の大きな希望であります。願いであります。また要求でありました。しかし、今日までの施策というものは、なるほど調整保管事業等やっておりますが、お茶を濁した程度で何も抜本的なこれは施策にはなっておらない。おらないからこういう問題が起きてくるわけであります。したがいまして、いま政府が考えておる、そうして明年度予算としてこれを実現してほしいということで大蔵に要求しておるその問題と絡めて、この燃油の対策ともう一つ魚価安定対策について大臣なり長官から詳しくひとつ御説明を願いたいと思います。
  36. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまお話がございましたように燃油の高騰が、最近の漁業の経営の悪化の最大の原因とも言えます。確かにそのとおりだと思うわけであります。したがって、そういう点に配慮いたしまして、昨年度につきましては、先ほど長官も述べましたように、低利の漁業経営安定資金、いわゆる石油資金を融通するとともに、さらに本年度におきましては、この資金の償還延長措置を講じてまいったわけでございます。一方、漁業団体は、漁業用燃油の値上がりに対しまして、直接補助金を出すようにという非常に強い要請をしてまいっております。先日の武道館における大会、一万人集まったということでありますが、これもいかに漁業経営が苦しいか、同時にまた、燃油の補助に対して非常に強い盛り上がりを見せているかということの証左にもなっておるということであろうと思いますが、この補助金を出すということにつきましては、確かに外国にはその例があるわけであります。これはもうそのとおりでございますが、しかしわが国においてこれを補助金を出すということは、これは私はいろいろの角度から検討してみたわけでありますけれども、率直に言いまして、現在の行政手法といいますか、行政ベースでは困難であるというふうに考えざるを得ないわけであります。  したがって、政府として考えられるこの燃油対策も含めた総合対策として考えられる対策としては、魚価の安定対策あるいはまた経営の安定対策を積極的に推進をしていく、こういうことにならざるを得ないわけでございまして、たとえば非常に不振に陥っている漁業経営の立て直しを図るための固定化負債の借りかえのための経営維持安定資金の創設、あるいはまた構造改善の促進等からなる漁業経営安定対策の実施、さらにまた魚価の安定を図るための水産物調整保管事業の拡大強化、こういうことで、漁業の総合的な経営安定を図っていかざるを得ないということで、いま申し上げましたような点に立って概算要求等をいま財政当局にいたしておりまして、何としても魚価安定とそして経営改善のためのわれわれの考え方基本方針を来年度の予算にはぜひとも実現をさせたいという考えを持っておるわけであります。
  37. 川村清一

    ○川村清一君 ただいまの大臣の御答弁は、西欧諸国では確かにやっておる国がある、しかし、わが国においては行政ベースではなかなか困難であると、こういうような御意見てございます。私考えるに、先ほど鶴園委員からも話がありましたが、漁業というもののとらえ方、日本の経済における水産業の位置づけというものを、政府はどういうふうに考えておるのかということについて大きな疑問を持たざるを得ない。私は、農業と同じいわゆる日本の食糧産業である。日本民族の生きるためにいわゆる生活のエネルギーを与える、活動のエネルギーを与えるいわゆる食糧を生産し、供給する産業である、農業と全く同じである。こういう基本的な考えのもとに経済の中に位置づけておるならば、私はできないことはないと思うのであります。たとえば農業の、いわゆる食糧である小麦生産、あるいは大豆生産、この生産を振興するために生産奨励費というものをつけているではありませんか。お米に対してでもつけているではありませんか。燃料に補助金を出すということは、ほかの産業、いわゆる自動車も燃料を使っておりますし、工業も燃料を使っているわけですから、燃料を使っている部分に全部これを補助金を出さなければならないのではないかという、そういう論理になりますと、めんどうになってくると思うわけであります。しかし、少なくともこの動物たん白質の半分、いわゆる畜産は五〇%、水産は五〇%、フィフテー・フィフティーの動物性たん白資源を生産しておる漁業というものを考えるならば、何らかの名目でやることが可能ではないか。私は、だからといって大手企業のいわゆる大水産会社にまでそういうものをせいというようなことを言っておるものではないんであります。少なくとも、中小零細漁業者の経営安定のためというよりも、むしろ食糧生産奨励という意味においてやってしかるべきではないかと私は考えているのですが、その辺いかがなもんでしょうか。  それから、そういう金がないということを大蔵あたりが言うとするならば、この膨大な石油を輸入しておるその関税が、大臣これは御承知だと思うんですが、石炭及び石油特別会計に入っているわけですね、関税が。両方合わせると約一千五百億ぐらいの関税歳入があるわけであります。で、石炭関係の方で約一千億、石油関係の方で約五百億ぐらいの金を使っておるわけです。石油を輸入してそれだけの関税が入ってきておるんです。その金なんかをこちらの方に若干回すことぐらいは、これは行政ベースではできないかもしれないけれども、これは政治において、いわゆる政治家である農林大臣の考えと努力によっては全然、実現不可能だということには相ならぬと思うのでありますが、この辺のお考えはいかがなものでしょうか。
  38. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにいま川村委員がおっしゃいましたように、この漁業の振興、漁業経営の安定ということは、わが国のこれから進めていかなきゃならない総合食糧政策の重要なる一環として私たちは位置づけしなけりゃならぬ、それに対応する予算化等も図っていかなきゃならないわけでございまして、したがって、非常に今後の総合食糧政策の一環として私たちは漁業問題を重視をいたしておるわけでございます。そうした中で、漁業経営が非常に厳しい。まあその厳しい原因は燃油にあるということですから、ストレートに考えれば、燃油に補助金を出すということは一つの方法であるわけでございます。しかし、今日の段階におきまして、私も実は何とかできないもんだろうかということで――何もほうっておいたわけではないんで、何とかこれはできないものだろうかということで、各方面とも接触をし、もちろん財政当局にも打診をして努力をいたしたわけでございますけれども、今日の行政のベースにおいては、われわれがこれを果敢に打ち出してやったとしても、非常に壁が厚くて玉砕をせざるを得ないという判断をせざるを得ない状況でございましたので、これはいわば行政ベースでは解決はできない。いまおっしゃるように、一つの政治ベースといいますか、そういう点であるということならば、一つの私は方向でもあろうかと思うわけでございますが、私が主管をしておるところの農林省のいわゆる行政ベースではなかなかこれは壁が厚くて、どうも突破できないということから、われわれとしては、とにかくできる範囲の行政ベースで、可能な限りのやはり施策を来年度予算でこれは行わなきゃならないということで、いわば方向転換したといいますか、行政ベースで可能な限りの努力をするということで、魚価安定対策と漁業の経営対策を含めた総合的な施策の中で新しい予算要求等を行ったわけでございます。  ですから、われわれの行うところの魚価安定のための対策の強化とか、あるいはまた経営維持安定資金の創設等でもって、これはその補助金を出すと同じような漁業経営の安定に完全に結びついていくことであろうとは、なかなかこれは判断がむずかしいわけでございます。しかし、少なくともわれわれの進める施策を今後とも強力に発展をさせていけば、来年度を起点として発展をさせていけば、私は今後の総合食糧政策の推進における漁業の位置づけというものを強化することはできるというふうに判断をしておるわけであります。
  39. 川村清一

    ○川村清一君 行政ベースではなかなか困難であることは私も承知で意見を申し上げておるんで、したがって大臣の政治力に期待しておるわけでありますが、その大臣がそういう御答弁では、これはできないわけでございまして、まあいずれこれは総理大臣にでも言わなければ処置ないと考えております。  そこで、行政ベースでできる程度のことはやっておるということでございますが、それについてひとつお尋ねしますが、これは長官の方からお答えをいただきますが、要求されておる予算、概算要求を拝見しますというと、燃油対策特別事業を起こす。これは直接漁民に助成するのではなくして、何とか石油の上がった分を少しでもカバーする意味において漁業協同組合に事業をやらせる。その総事業量は八十億。で、漁業協同組合が八十億の融資を受けて事業をやるわけでありますが、それに対して政府は利子補給をする。その額が大体十九億七千万ほど。そうすると合計百億程度の金になるわけでありまして、この金でもって漁業協同組合が事業をやって、その事業によって幾分なりとも、これは直接ではありませんが、間接的に魚価に対して援助をする、こういうような構想のようでございますが、一体いま考えられているその事業によって効果があるものかどうか、その点長官の御見解をこの際お尋ねしておきたいと思います。
  40. 内村良英

    政府委員(内村良英君) ただいま御指摘がございました漁業用燃油対策特別助成事業、これはいま御指摘のような予算要求をしているわけでございますが、この中の事業といたしまして私どもが考えておりますのは、まず省燃油型漁船の建造促進事業に助成したい。それから、今後の特に沿岸漁業の場合には、燃油の節約というような意味から、集団的に漁場探索の線を出すというようなことも考えられますので、そういったものについてそういった事業を促進するようなことをやりたい。それから、現在A重油を使っておりますけれども、私どもの専門家の指摘によりますと、外国のように軽油を使った方がエンジンが長持ちして経済的なんだという話もございますので、燃油をA重油から軽油に切りかえるというようなことをやる場合には、それに対して助成したい。それからさらに、系統でやっております油の供給事業についての施設補助をやって、その面から油の価格を安くするようなことにしたいというようなことを考えて、メニュー方式の事業で考えているわけでございますが、私どもといたしましては、今後わが国の漁業の大きな問題として省燃油型の船をつくっていかなければいけないんじゃないか。専門家の指摘によりますと、現在の船型を変えて、まあエンジン等も多少変えなきゃいかぬわけでございますけれども、そうすれば同じ馬力を出すのに油の消費が七割ぐらいで済むというようなことで専門家に指摘をされておるわけでございます。これは、現在のわが国の漁船は非常に、燃料が十年ぐらいほとんど上がらなかったというような、オイルショック以前の状況もございまして、かなり燃油をたくさん使って漁業をやるというようなかっこうになっておりますので、それを何とか省燃油型にしなきゃならないんじゃないかということ。それから、ただいま申しましたけれども、沿岸漁業等につきましては、みんなが魚を探しに行くんじゃなくて、ある特定な船を漁場探索に出すというようなかっこうで、生産の組織化と申しますか、そういったことも燃油の節約の方面から進めなければならぬのじゃないか、というようなことをやる場合にいろいろ助成をしたいというふうに考えておりまして、そういった面から、数字的にそれじゃこれはどれぐらいの効果があるかということは、これはなかなか測定困難でございますが、そういった方向で対策を進めていけば、かなりの燃油節約的な効果が出てくるのではないかというふうに考えております。
  41. 川村清一

    ○川村清一君 いまいろいろ御説明ありましたが、それについて一々私がまた意見を申し上げる時間がありませんので、それはそれなりに聞いておきますが、いまのような施策では、要するに、これは間接的な効果というものをねらっておるわけでありまして、漁民のふところの方に直接は何も入ってこないわけであります。したがって、漁民の期待には絶対、何も沿ってないということでありますので、まあなかなか漁民の方々は納得しないだろうと思います。それから、いまいろいろ説明されたその効果が、百億の金を使うわけでありますが、その百億の金の効果がどのくらいあらわれてくるものか私は非常に疑問に思います。しかし、それはそれなりにひとつ聞いておきたいと思います。  次にお尋ねしたいのは、結局、石油に対する助成はできないが、魚価安定対策に力を入れてやっていくんだと、いわゆる魚価が安定すればその石油の上がった分はカバーできるんだと、また、漁民はそれを期待しておるんだというような御答弁でありましたので、それが本当にできるならこれにこしたことはありません。  そこで、明年度魚価安定対策としてどういうような施策をなされようとしておられるのか、これを明確にひとつしていただきたいと思います。
  42. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 昭和五十年度から系統の行います調整保管に助成するというような形で魚価対策を始めたわけでございますが、五十一年度はこれを大幅に拡充したいというふうに考えておるわけでございます。そこで、まず最初に多獲性魚でございますが、これにつきまして今年の調整保管の対象とする数量は三万四千トンでございます。これをまあ四万トンに上げる。それからノリにつきましては六億枚を七億一千枚にする。ワカメにつきましては、五十年の千二百トンを倍以上の二千六百トンにする。それから今年北海道でやりまして非常にまあスケソウ等の価格安定に役立ったということで評価されておるわけでございますが、すり身の調整保管につきましては一万七千五百トンであったわけでございますが、これを倍の三万五千トンにすると。それからさらに品目をふやしまして、加工用原魚につきまして約二万四千トン。それからカツオ、ビンチョウ、これも現在非常に問題でございますので、一万五千トン。それから魚粉、魚かす――わが国の場合には多獲性魚が魚粉、魚かすになっておるケースが非常に多いものでございますから、単に魚についてやる以外に、そういった加工品も調整保管をやって価格の安定を図るという意味で、魚粉、魚かす、それからただいま申しました加工用原魚等につきましても調整保管をやるというようなことで五十年度の予算は七億五千万円であったわけでございますが、五十一年度は予算の伸びは大体一五%に抑えろということを言われたわけでございますが、こういった経費につきましては倍以上の十六億一千万円という予算要求をしているところでございます。
  43. 川村清一

    ○川村清一君 ただいまのようなお考えでは、全くそれはもう上べだけであって、かゆいところに手の届かない施策だと私は断ぜざるを得ません。  そもそも、水産物調整保管事業というのは、ただいまのお話にもありましたように、昭和五十年度から始まった事業でございまして、この予算をとるためには、実は北海道の漁連が、このすり身の価格を安定するためにはぜひこういう施策をとってもらいたいと、そういう要求等がありまして、実は私も北海道出身の水産関係議員の一人として、先頭に立っていろいろ政府などにも働きかけ、これが実現いたしまして、わずか七億五千万ほどの予算を実現していただいて、この事業をやったわけであります。  で、ことしは、この予算を倍ちょっと、十六億程度にふやしまして、ただいまお話がありましたように、多獲性魚あるいはノリ、ワカメ、すり身、加工用原魚、カツオ、ビンナガ、魚粉、魚かす、これまで広げて価格安定策をとろうという、こういうお考えのようでございます。しかしながら、わずか十六億ほどの金を使ってこの事業をやったといたしましても、先ほど私が申し上げましたように、燃油の三倍上昇によって経営が全部赤字である。したがいまして、五百八十万キロリットルの上がった分の半分、総額で五百八十億、これを何とか補助してもらいたいというのが全国漁民の切なる願いです。だが、それは行政ベースではできませんと、したがいまして、行政ベースでできる事業によってそれをカバーすると、こういう大臣の御答弁。しからば、それに要する予算は幾らか。わずか十六億。五百八十億が十六億で一体どう始末できますか。本当につま先をちょっとかく程度のものじゃございませんか。そこで、漁民の方々は、抜本的な魚価安定対策をとってくれと、こう言っているんです。これが抜本的ですか。少なくとも、もしも政府が抜本的にやるとするならば、魚価のいわゆる価格安定基金のようなものでもつくって、それでやる。  これは私も経験があるんですが、昭和三十六年に北海道では、もうサンマがとれてとれてどうにもしようがないくらいサンマがとれたんです。そのサンマの価格を何とか安定してほしいということで、当時私は北海道議会の議員もやっておりましたが、道議会で決議をし、道漁連も相当の出資をするというかっこうで中央に持ち上げてきて、そこで、中央で政府も出資していただき、全漁連も出資していただき、各県の漁連なども応分の出資をしていただいて魚価安定基金というものをつくったんです。ところが、皮肉なもので、昭和三十六年にはそのようにとれたサンマが、三十七年、三十八年とどんどん減ってきて、せっかく基金はつくったものの、基金から金を出して安定をする事業に使ったのはたった一年で、そして昭和四十二年か四十三年、私はそのときは参議院の農林水産委員会におりましたが、この基金を清算してしまった。ずいぶん反対したけれども、とうとうこれはなくしてしまった。残っておったら、あれを足がかりにして、そしてこの基金をつくることができたと思うのであります。そのくらいの構想を持つというんなら話もわかる。こんな調整保管事業で一体できますか、できると思いますか、大臣は。根本的に改めるならば、抜本的にそういう制度をつくるならば、社会党が考え、社会党も提案しております事業団方式によって、そして政府はその特定水産物は買い上げるというような、そういう政策をとっていくならば抜本的なこれは安定対策と言えるが、こんなことでは、お茶を濁したようなこんな対策ではできません。はっきり申し上げておきます。そんなことで漁民は納得しませんよ。  そういう考えのもとに、こんな十六億程度の予算でもってこんな事業をやるというんではなくて、もっと広大な考え方に変えて大蔵に対して折衝する用意があるかどうか、明確にひとつお答えいただきたい。
  44. 内村良英

    政府委員(内村良英君) ただいま先生から魚価安定事業団をつくって農畜産物並みにやれというお話があったわけでございます。実はその点は、先ほども申しましたけれども、昨年の五月の漁民大会のときに、その話が大きなスローガンとして出まして、私どもも、当事のオイルショック以後の漁業の状態から、何とかこれができないかということでいろいろ検討したわけでございます。その結果、いろいろ事務的に検討いたしました結果、水産物につきましては、先生御案内のように、鮮度等の問題からなかなか規格の設定ができない。政府が買い入れるというような場合には、やはり畜産物を見ましても、規格が必要でございますけれども、そういう規格ができない。たとえば同じ目方のマグロが中央市場へ行ってみますと値段が十倍ぐらいのものもあるというようなことで、なかなか規格ができないというようなことがあるわけでございます。それから、漁業操業の実態から見まして、個々の魚種について生産費を把握することはなかなかむずかしい。買い入れるということになりますと、どういう価格で買い入れるかということになりますので、その場合に、農畜産物の場合には、やはり生産費が基礎になっているわけでございますが、類似のことがなかなかできないというようなことで、技術的な要因によって直ちに農畜産物並みの価格政策がとれないというところから実は五十年の調整保管を始めたわけでございます。そこで、私どもといたしましても、できれば農畜産物並みの事業団構想と申しますか、直接政府が介入するような価格政策が水産物にとっても望ましいと思っております。常にそのように思っております。しかしながら、なかなか現実はそうはいかないので、まず系統の調整保管というものを育成をしながら、いろいろな技術的な問題について問題点を解明していく、それを拡充していきまして、最後は農畜産物並みの価格政策をとりたいということで鋭意努力しているところでございます。  そこで、私ども、こういった問題に関連していろいろほかの農産物を勉強してみましても、やはり畜産物等の場合にも、そういう調整保管からずうっと積み上げてきまして、そこで今日のような制度ができているというような歴史もございますので、私どもといたしましてはこの調整保管の育成を図りながらそういったところに最後は持っていきたいと思って、鋭意努力しているわけでございまして、決して初めからそういった構想を否定してかかっているわけではないわけでございます。  それから、さらに昭和三十六年につくりました魚価安定基金のお話が出ましたけれども、あれはサンマについて生産調整と結びつけまして、それで生産調整をした場合の交付金を交付するとか、それから価格調整の問題も入っていたわけでございます。それが御指摘のようにサンマがとれなくなりまして要らなくなってしまったというところから解消したという歴史があることは御指摘のとおりでございます。私どもも、ある段階ではああいった構想もまた取り入れなければならぬ時期がくるのじゃないかということでそういうことも考えておりますけれども、現在のいろいろな魚種の状況を見ますと、一気にそこまでもいけないというような問題もございますので、行く行くはああいった過程が一つの段階として必要じゃないかというふうに考えておりますわけで、決して現在の調整保管でこれが十分であるとはゆめゆめ思っておりません。ただいろいろな情勢から見まして、現在のところ調整保管に対する助成が最も現実的な措置であるということでやっておるわけでございまして、今後この事業をいろいろな形で発展させていきながら、水産物の価格についての安定対策をとらなければならぬということはもう先生御指摘のとおりでございまして、私どもも同様に考えておるわけでございます。
  45. 川村清一

    ○川村清一君 それでは、漁民大会の決議の第三項目であります漁業経営維持安定資金制度を確立してほしいという、この問題についてお尋ねしますが、御承知のように漁業経営は大変な問題に直面しております。漁家が全部この固定化された負債を持ってまいっておるわけであります。その固定化負債をしょった原因はまず何と言いましても公害によって海が汚染されてしまった、赤潮、それから水銀、PCBこういったことによってせっかく魚をとっても売ることはできない、休魚が続いておる。それを救済する意味において政府政策融資の道をとった、漁民の方々はその制度に乗って借り入れられるだけお金を借りた。もちろん経営のまずさもあるでしょうけれども、赤字の上に自己資金が足りないのですから、もう借りるにいいだけ借りてしまったわけです。船をつくるについても、着業資金にしても。そこでこの固定負債をしょってしまって償還ができない、どうにもならないというのが現在の漁家経営の実態であろうと思うわけであります。そこでこの負債を何とか整理してもらいたい、そのためには低利の長期資金制度をつくって切りかえてもらいたい、借りかえをさせてもらいたい、こういう願いがあるわけです。  これも私どもは北海道でやったことがありますが、御案内のように、日本海沿岸はこれはニシンが漁業の主体でございまして、そのニシン漁業のためにたくさん借金をしょってしまった、どの漁業協同組合も。ところが、昭和二十九年をピークにしてニシンが来なくなった、全部赤字を抱えて大変な目に遭ったわけです。その固定負債を整理するために道としても条例などをつくって負債整理をいたしましたし、国の力もおかりしたわけで、解決いたしましたが、現在の日本の漁業経営が全部いま私が申し上げたような状態にあるわけであります。  固定負債は幾らかということで全漁連あたりに当たって聞いてみますというと、約一千億あるというわけであります。この一千億の負債を何とか解消しない限り再生産できないわけであります。そこでこの漁民大会の決議になって政府当局にもいろいろ陳情されると思うのでありますが、政府の方もこたえて五十一年度予算にそれを盛っておるようでありますが、その内容等についてひとつ御説明を願いたいと思います。
  46. 内村良英

    政府委員(内村良英君) ただいま先生から御指摘のように、固定化債務が経営を圧迫していることは御指摘のとおりでございます。そこで私どもといたしましては、こういった固定化債務の整理のための経営安定資金制度を設けたいということを考えまして、現在五十一年度予算で要求をしているわけでございます。そこでその考え方でございますが、経営維持安定資金の内容といたしまして融資機関は系統その他の金融機関、それからこの制度は二年ないし三年でやろうと思いまして、一千億の負債のうちの初年度として六百億を考えているわけでございます。それから融資条件は金利五%でございまして、償還期限は七年、うち据え置きが二年ということで、対象になるものは三千トン以下かつ三百人以下のいわゆる中小漁業者ということを考えているわけでございます。これはもちろん現在予算要求中の条件でございまして、今後五十一年度予算折衝の段階においてこれが実現するよう最善の努力を尽くすつもりでございます。と同時に、こういった融資制度をとります場合に、先生御指摘のように、今日漁業者が非常にたくさん借金を持っておるというようなことで受信能力があるかどうかという問題もございますので、現在の金融の保証制度につきましても財政面から大きくてこ入れするような措置をとらなきゃならないということで、それに関連する予算も要求しているところでございます。
  47. 川村清一

    ○川村清一君 その施策はぜひ実現されますように、大蔵はなかなか渋いと思いますが、大蔵折衝を強力にやってぜひ実現してほしいと思うわけであります。  そこで、この問題について若干意見を申し上げておきたいのでありますが、ただいまの長官の御説明にもありましたように、末端金利が五%、そうすると、九・五%のうち末端金利が五%ですから四・五%、この四・五%のうちの三分の二は国が利子補給をするというようなお考えのようですが、一・五%は都道府県がそれを背負うというかっこうになるわけです。私が心配するのは、いまや国の財政も大変だが、地方自治体財政というのはそれ以上に大変な段階に来ておることは御承知のとおりであります。したがって、都道府県にこの一・五%の金利を負担してもらわなければ末端金利は五%にならないわけであります。このことを非常に心配しておるのだが、これに対する見通し、またそれを実現させるように強力な指導体制をとれるかどうか。  それからもう一点、償還期限七年、これは少し短か過ぎはいたしませんか。農業のこの固定化負債整理のために私どもはずいぶん国に、こういう委員会でも発言したり、また農林省に折衝したりいたしまして、自創資金に切りかえてもらったのです。ところが、自創資金は御案内のように二十年です。七年というこの償遮期限、これで漁家の抱えている固定負債を償還するということはこれは非常にめんどうだと思う。少なくとも二十年ぐらいにすべきじゃないかと思うのですがいかがですか。
  48. 内村良英

    政府委員(内村良英君) まず最初に、この金融措置が地方財政逼迫の折から県の負担部分が負担できないのではないかというのではないかという点でございます。この融資制度の創設につきましては私ども、関係の県、漁業者から非常に陳情を受けております。その場合におきましても、別に地方財政の点から、とても県の負担は持てないという話は、この問題については出ておりません。ほかの問題について最近の県財政から、たとえば漁港をつくったりする場合の地元負担の問題、あるいは沿岸漁場整備の地元負担の問題でいろいろな問題が出ておりますけれども、この融資制度につきましては、持てないということは、余り陳情も聞いておりませんし、昨年の漁業経営安定特別資金制度、ただいま大臣から御答弁のございました昨年の石油資金の場合にも、これはまあ関係の県がみんな持ってくれましたので、やはり県といたしましても、沿岸漁業というようなものは地域産業として、地元の住民なり地域と密接な関係のある産業でございますから、ある程度の金利負担というものは当然持ってくれるのではないかというふうに考えております。  それから融資期間が短いのじゃないか、もっと長くすべきじゃないかということでございますが、先生も御案内のように、漁業にも公庫資金で沿岸漁業経営安定資金というのがございます。これは自創資金に匹敵するものでございまして、これは償還期限が二十年になっております。ただ、融資限度が六十万というようなことで非常に低いわけでございますけれども、そういった金融制度等もございますので、この制度をつくる場合には、そういった金融制度との調整も問題になるわけでございます。そこで私どもといたしましては、この種の制度として、七年というのは大体適正なところじゃないか。そこでそれでもどうしてもできないというような場合には、この公庫資金とのつなぎをどうするかとか、その場合においては、公庫資金の融資枠をもっと広げるとかいうようなことを考えていけば対策は立つので、この種の資金としては七年というのは大体いっぱいいっぱいのところで限度ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  49. 川村清一

    ○川村清一君 それじゃ、七年でもって償還不可能の場合は、二十年の公庫資金と結びつけて何とか処理していくというただいまの御答弁をまあそのとおり受けて、この問題については承知いたしました。強力にひとつ実施していただきたいということを要望いたします。  それからもう一点、沿岸漁場の整備開発を推進してもらいたいというこの決議でありますが、これは沿岸漁場整備開発法ですか、この法律ができましたにもかかわらず、五十年度はこれは大蔵が予算を認めないので流れたわけです。五十一年度から始まる、こういう事業でございますが、端的にお聞きしますが、この五十一年度から何年間の、まあこれはこういう事業は皆一次計画、二次計画というのがありますが、第一次計画というのは五十一年から何年間の計画なのか、総事業量はどのくらいを計画されておるのか、そして初年度の五十一年度ではどのくらいの事業量を行う予定なのか、その点について御説明をお願いします。
  50. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 私どもといたしましても、この漁場整備の事業の緊急性にかんがみまして、ぜひ五十一年度から公共事業として実施したいということで、現在、鋭意関係方面と話しているわけでございます。そこで公共事業について計画をつくるかどうかということにつきましては、この漁場保全だけではなしに、ほかの問題とも関連して現在検討されております。したがいまして、何年になるかとか、そういう点につきましても、この種の場合には五年、七年、十年、というようなことが考えられるわけでございますけれども、そういった今後の財政事情等とも絡んでまいりますので、現実的に措置するために、五年、七年、十年というようなものをにらみながら、どれがいいか、この種の事業に合うかということを考えながら決めなければならない。それから事業の額につきましては、昨年、県からいろいろ聞きまして、その積み上げた場合には、五年間で二千億ぐらい事業をしたい、これは地元の負担能力その他から見まして、そういうような計画がございます。そこで今後におきましては、今後の財政事情その他とも関連いたしまして、この漁場整備の事業の推進に遺憾のないような計画をつくりたいと思って現在鋭意検討しているところでございます。
  51. 川村清一

    ○川村清一君 時間がありませんので、これで最後でございますが、私、聞くところによりますというと、この事業は五年計画か、六年計画になるらしく、しかも総事業量は二千億程度を考えておるというふうにいま聞いておるわけであります。この問題は大臣、よくお聞きいただきたいのですが、この前の委員会で私、相当時間をかけて水産一般の問題で議論いたしました。そうして最後のこのまとめといたしまして、ポスト海洋法を考えてみるならば、これはもう遠洋漁業からだんだん締め出されて、じり貧になるのは当然である。これはそう見なければならない。だとすれば、今後のわが国の動物たん白食糧の生産のためには、この沿岸漁業の開発にこそ、もう金に糸目をつけないで、全力を挙げて開発推進していかなければならないということを申し上げ、大臣も同感であるというお答えをいただいたわけであります。  ところが、この程度の事業で果たしてできるのかどうか。恐らく五年計画で二千億なんていったところで、初年度は六十四億とこう聞いておるんですが、これは五年いったってですね、いままでの日本の公共事業の長期計画の進捗率から考えていって、五年計画で五年過ぎたって、せいぜい六〇%か七〇%いけばいいところで、漁港なんかもそうですね。ひどいのになるというと三〇%ぐらいで終わっちゃうわけですよ。総事業量二千億といったところで、五年計画で初年度で六十四億ぐらいならば、せいぜいまあ四百億か五百億いったらいいぐらいのものでないでしょうか。  そういうことを考えますと、一体、今後沿岸漁業はどうなるのかという問題だけでなくして、遠洋から締め出されて四百五十万トンの動物性たん白食糧がなくなったときに、これをカバーするために沿岸漁業を開発していくと、どんなに沿岸漁業に力を入れても、せいぜい百万トンがいわゆる限界、ということを大臣もおっしゃったではありませんか。四百五十万トン減って、そして百万トン増産したところで、差し引き三百五十万トン足りないんだ。この三百五十万トン足りなくなった動物性たん白資源を何で補うか。畜産でやれますか。それでなくても、いまの畜産だって、えさがなくてどうもならないのに、これから三百五十万トンの豚肉や牛肉をつくるなんていうことは、これはもう不可能でしょう。そう考えるならば、何としても、この事業に最大の力を入れていかなければならない。にもかかわらず、こんなことでどうですか。だから予算をふやさなければいけない。いつまでたっても農林省予算の五%が水産庁の予算である。こんなことでどうなるかということを私は申し上げている。ことしは千二百億。仮に昭和五十一年が千五百億ぐらいにふえたところで、その半分以上は漁港の公共事業費に取られてしまうことになれば、水産一般に使う金は七百億ぐらいの程度のものでしょう。こんなことで何ができますか。少なくとも、現在のこの食糧の状態から考えてみるならば、倍の三百億ぐらいの予算を水産庁が持たなければこの問題は解決しないということを私は申し上げたいのです。これに対する大臣の御答弁をしかとお聞きしたいことが一つと、その次に、漁民大会の決議は、領海十二海里、即時宣言ということでありますが、この問題については私は何回も申し上げておりますし、農林大臣の御答弁は聞いておりますし、その答弁は農林大臣としての限界の答弁だと思いますから、きょうはそれについては触れませんが、ひとつ農林大臣は宮澤、頑迷固陋の宮澤外務大臣を説得して、一日も早くそれが実現するようにひとつ努力していただきたいということを私は要望して、これできっぱり時間になりましたので終わりたいと思います。
  52. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今後の食糧問題を考えるときに、沿岸漁業の振興あるいは沿岸漁場の開発、発展ということは非常に重大な緊急な課題でございます。したがって、われわれとしても、来年度を起点といたしまして沿岸漁場開発の長期計画をぜひとも策定をしなければならない。これは法律も通っておるわけでありますから、策定をしなければならないというふうな決意でおるわけでございますが、この長期計画につきましては、国全体の各長期計画との調整等もありまして、いまいろいろと交渉を進めておる段階でございますが、その中にあって、来年度の予算は非常に少ないというふうな、いまの要求と言いますか、われわれの考えているのに対して予算は非常に少ないということでございますが、私たちとしては、今後二十二日から予算編成に入るわけでございますから、この重要性は十分認識をして、その上に立って積極的な姿勢で最大限の努力をする決意でございます。  それから、領海十二海里問題につきましては、宮澤外務大臣も相当積極的な発言をしておられるわけでございますので、さらに私もこれに力を得て、領海十二海里が一日も早く実現できるような方向政府の調整に努めたいと思っておるわけであります。
  53. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、これにて休憩をいたします。  午後は二時から再開いたします。    午後零時五十五分休憩      ―――――・―――――    午後二時五分開会   〔理事高橋雄之助君委員長席に着く〕
  54. 高橋雄之助

    理事高橋雄之助君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  55. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 私は、俗に言う植物特許、これについて特許庁並びに農林省の農産園芸局長ですかに質問をいたします。  去る十一月の十四日の新聞に、特許庁は、従来言われておる植物特許というものをこれから積極的に取り扱うというんですか、というような方針で、その審査基準というものを新聞発表されました。しかも従来もし特許出願でもあったならば、あのブドウの巨峰とか米のコシヒカリなんかも特許になったはずだと。こういうような、新聞で伝えられるような姿勢をお示しになりましたが、いままでは、この工業所有権法逐条解説――特許庁で印刷されているようですが、これによりますと、植物特許というものはもう特許しないんだということを、行政方針ですか、取り扱い方針として決定しておるわけでございますね。これを読みますと「特許を受けることができる発明は反復継続性のあるものでなければならないとされている。」、そして途中略しますが、「特許を受け得る発明は反復継続性のあるものでなければならない点は争いがない。このような前提において考えた場合、植物については現在のところ反復継続的に同一の品種を栽培することはむずかしく、特許を受けることができない。」、こういうふうにちゃんとあなたの方の解説に書いてある。それから高裁の審査官ですか、そういう方の本なんかを見てもやはり植物特許は現在の特許法では無理だ。あるいは学術書なんかを読みましても、そういうことが書いてあるわけですけれども、今回それを取り扱うようにしようとしたそのいきさつというものは、どういういきさつなんですか、まずその点を特許庁から伺いたいと思います。
  56. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) お答えいたします。  最初に、ただいま具体的に御指摘がございました工業所有権法逐条解説、これの二十九条の解説のところに、いま先生お読みいただきましたような「植物については現在のところ反復継続的に同一の品種を栽培することはむずかしく、特許を受けることができない。」と書いてあることは事実でございます。  それで、実はこの点につきましては、この逐条解説を書きました時点についてちょっとお話を申し上げなければいけないのでございますが、と申しますのは現行法の基礎になっておりますのは大正十年法を改正いたしまして、昭和三十四年に大改正が行われました。その大改正が行われましたときに、この逐条解説は全部書き改めたわけでございます。で、したがいまして、その三十四年の一番最初の序のところに、三十四年四月とかなんとかという序がついてございますけれども、そのときの認識で書きましたのがこの書いてある内容でございまして、したがいまして「植物については現在のところ」というふうに書いてあります。  それで、この意味は、三十四年当時におきましては、出願書の中にあります明細書から判断をいたしますと、反復的に同一の品種を裁培することはむずかしいというふうな認識があったわけでございます。したがいまして、こういうふうに書いてありまして、その後二十九条関係の実は改正がございませんでしたので、これがそのまま残っておりました。この点皆様方にあるいは誤解を受けるような書き方であったのかもしれないと思いまして、もし誤解でございましたらば、その点はおわびをいたしまして、「現在のところ」というのは、そういう意味であることを御了解をいただきたいと存じます。  それからいまお話がございましたように、いわゆる学説等がどうであろうかというお話もちょっとございましたのですが、学説につきましては、これはいろんな本にいわゆる積極説、消極説と両方ございます。それで最近におきましては、やや積極説の方が有力ではございますけれども、もちろん消極説も依然としてございます。それは事実でございます。したがいまして、この点についてはいろいろ議論があるということはお話のとおりでございますが、一応私どもの方のこれに対します基本的な考え方を申し上げまして、それから経緯を申し上げたいと存じます。  私どもの方の基本的な考え方は、現在これは一般的でございますけれども、発明として認識ができるもの、これにつきましては特許要件を備えておる限り、あるいは不特許事由がない――不特許事由は三十二条に不特許事由を並べてありますが、不特許事由がない限りは審査官は出願を受け付けまして審査をする義務がございます。したがいまして、その場合に審査官が判断をいたしまして、もし拒絶すべき理由がなければ出願公告をしなければならないという、これは明文の規定がございます。したがいまして、それから異議申し立てがあった結果、異議申し立てがない、あるいは異議申し立てが、理由がなりませんならば特許査定をする、こういう順序になるわけでございます。で、現在の法制におきましては、いまの植物等につきましては、不特許事由になっておりません。したがいまして審査官は出願を受け付けてこれを審査をしなければいけない義務がございます。判断をしなければいけない義務がございます。その場合に、現在の明細書その他で判断をいたします場合に、それが発明として認識できるかできないかというその審査官の判断の問題にかかわるわけでございます。で、私ども従来、したがいまして法律そのものとしましては、これは当然受け付けて審査をしなければいけない立場に立っております。それからなお従来三十四年当時はそうでございましたけれども、その後逐次いろいろな方法等でございますけれども、三十七年、四十三年、四十七年等に、数件ずつではございますけれども、各種の植物に関する特許がございます。それで、しかしながら現在のところ明細書の不備、記載の不備その他によりまして新品種そのものについての出願で、特許すべきような内容のものはございませんでした。したがってこれは微生物その他にはございますけれども、それ以外のものには特許をしてないという内容でございます。  それからなお経緯でございますけれども、これの経緯を簡単に申し上げます。と言いますのはなぜああいう、いままでそんなことだったら改めて発表することないじゃないか、という恐らく御疑問をお持ちだろうと思いますので、経緯を申し上げますと、実は私どもの方は、そういうふうな法律の構成でございますからして、当然出願があれば受け付けて審査をしなければいけない立場にございます。したがいましてそれにつきましては、そういう方針でいままでやってまいりましたけれども、ことしの二月に衆議院の予算委員会の分科会におきまして某先生から質問がございまして、おまえ、特許法のどこに、植物を特許しない、と書いてあるか、という非常にきつい質問がございました。それから逐次始まりまして、明細書の不備その他いろいろなことを申し上げたのでございますけれども、結局おまえの方のPRが足りないのだと、こういうことで決めつけられまして、そのときは、通産大臣もおられましたけれども、私と通産大臣を並べまして、おまえたちの努力が足りない、おまえたちのPRが足りない、だからこういうことになっているんだ。したがってこれを大々的にPRしろと。こういうふうな最後の結びでございまして、私どももまあ、そのとき、うちの大臣は、具体的方法について至急検討いたしまして、というふうな答弁を申し上げましたのですが、私も同趣旨の実は答弁を申し上げました。そういう経緯がございましたので、私どもとしてもまことにそれはPR不足、まことに不明の至りであると、こういうふうに思いまして、その前からいろいろ実は準備といいますか、研究はいろいろしておりましたけれども、なお慎重を期しましてしばらくの間、実は統一的な基準というものは発表いたしませんでした。その間にもちろんそういう出願はございましたけれども発表しませんでした。  しかしながら、もう少しありていに申し上げますと、いろいろ国会も開会をされておりますし、いたしますので、私の方もいつまでもそのPRをしないでおくということは、そういう経緯から言いましてまことに怠慢の至りである、怠慢のそしりを免れない。こういうことでございますので、その点につきましては急遽取りまとめて発表するようにということで、従来研究いたしておりましたものを実は取りまとめまして発表したということでございます。これは特許庁は審査官が一応審査をする第一義的な責任を持っております。持っておりますが、それぞれの案件につきましてばらばらの判断を下すということは、これは法的安定からいってもいかがであろうかということもありまして、ある程度の出願がまとまって出るような事態になりました場合には、産業別にそれぞれ審査基準というのをかなり出しております。実はそれの一つでございまして、従来の産業別基準の一つとしてこの新しい審査基準を発表をしたという、そういう次第でございます。
  57. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 いま聞きますと、国会で質問があり、PRが足りないんではないか、と言われたから、こういう基準を決めてPRをした、というような経緯だということでございますが、基本的に、植物特許というものをいままであなた方の方では、この特許法では無理だというふうにお考え、あるいは学説等においても、この法律にはちょっとなじまない、こういう意見があるということはいまお話しのとおりですね。それを、質問があり答弁したから、こうしたんだ、というようなお話ですけれども、大体、植物特許そのものの本質からいって、この特許法でやれる、拒む理由がないから出てくれば審査しなければならないんだ、こういうようなお考えですけれども、審査してみて本当に、いままで方法はあるようでございますけれども、物そのものについて特許をするような物がたくさんあり、またそうしなきゃならないというようにあなた方考えたんですか、どうなんですか。
  58. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 法律のたてまえはいま申し上げたとおりでございまして、その法律のたてまえと申しますか、法律の規定に従いまして私ども行動する義務があろうかと存じますが、そういうことでいままできたわけでございます。で、実はこの三十四年にできました新特許法といいます特許法では……
  59. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 簡単にやってください、時間がない。
  60. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 従来、大正十年法におきましては、「新規ナル工業的発明ヲ為シタル者ハ其ノ発明ニ付特許ヲ受クルコトヲ得」という、そういう規定でございました。この「工業的発明」というのは、実はパリ条約にありますフランス語の訳なんでございますけれども、従来からこれはいわゆる工業――インダストリーという狭義のものでなくて広いものであるということは定説でございます。したがいまして、私どもの方は、三十四年改正いたしますときに、これを産業上利用される発明というふうに表現を改めまして実態と表現をぴったりさせた。こういう経緯がございます。それからパリ条約の一条の二、三項にも同様に、工業所有権というのはこういう解釈であるという明文の規定がございます。それ等から判断をいたしまして、私どもの方は、この特許法自身につきまして、いわゆる産業上利用することができる発明については、特許要件ができれば特許はすることができる、こういうふうな解釈でございます。
  61. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 諸外国で特許法でやっている例はたくさんありますか。
  62. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 諸外国ではいろいろ法制がございますが、例を挙げて申し上げますと、特許法と新品種保護法と両方でやっているのもございますし、片方だけのものもございますけど、まず片方だけのものを申し上げますとイタリア、ルーマニア……
  63. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 それはどっちの方ですか、特許法で……
  64. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) はあ、特許法だけでやっていますのがイタリア、ルーマニア、ハンガリー、キューバ、韓国、ソ連等でございまして、それから両方やっている国は、スペイン、アメリカ、ドイツ、フランス等でございます。それから新品種保護法だけでやっている国は、イギリス、オランダ、デンマーク、スウェーデン。――スイスも多分そうだろうと思いますけれども、その程度でございます。
  65. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 どうも時間がないんで、この点だけやっていたって一時間ぐらいかかりますから、これはもっと議論したいんですけれども前に進みます。ただ、特許庁でもいろいろ取り扱いについて何年かは検討されたように聞いております。その点の御努力に対しては私も敬意を表するわけでございますが、しかし実際これをやるというようになるといろいろ影響が出てまいると思います。いままでは何件か特許した例があるようですけど、これは方法についての特許ですから、それほど問題がなかったと思いますけれども、今度あの基準によって審査などをして、物にまで及ぶということになった場合には、これはいろいろ影響が出てまいると思いますけれども、これは全植物、全農産物にも一様に扱うつもりですか。
  66. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 簡単にということで簡単に。さようでございます。
  67. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 そうなりますと、これはなかなか大変な問題で、植物全体、それから植物といっても、その植物の種なら種というんではなくて全部のあれに及ぶわけですな、体全体に、植物の。
  68. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) これはちょっと簡単になかなか説明することむずかしいんですが、ちょっと時間をいただきまして説明いたしますが、実際は特許権がどこまで及ぶか及ばないかというのは、特許法、特許の侵害訴訟の場合に裁判所が判断をする問題でございます。しかしながら、行政庁としましては、特許法の解釈なり運用なりを第一義的に責任を持っているのは特許庁でございますから、したがいましてそういう立場で御説明を申し上げたいと存じます。  われわれといたしましては、いわゆる新品種特許権を取った人がありまして、それと全く無関係に、その後においてその同じ品種を栽培したりなんかした場合には、これは当然特許権の侵害になります。これは特許権があるから当然だと思います。  それから二番目に、特許権を持っている人からそれを、たとえば種子を販売を受けた、それからそれをさらによそへ売ったと、最後に農民の方が自分で栽培されたり採取されたりする。こういう段階を考えました場合には、これは二つありまして、一つは、販売する場合に、契約も何も――その契約はあっても、その点に関しての何ら意思表示がなくして売った場合、その場合には、これはこの人からさらにこちらへ売る場合、それから農民が使われる場合、これは私どもの方では、暗黙の実施許諾の意思表示があったというふうに考えておりまして、したがって特許権が及ばないと考えております。それから契約がありました場合には、その契約に従ってこの人は契約上の義務を守る立場にございますので、したがいまして、その契約に違反してもしこれを、よそへ売った場合には、この人は権利侵害になります。そういうふうにいろいろ個々の例で大分違うと思うんでございますけれども、通常の取引の場合には、当然第二者に売り、第三者に売ることは、これは通常の商取引で、慣習で普通あるわけでございますから、その場合には、したがって、この人がしかも何ら意思表示をしなかった場合には、第三者にこの人が売る場合には、これは権利侵害にはならないというのが私どもの解釈でございます。
  69. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 特許法あんまりわかりませんけれども、工業製品ですと、できたものそれ自体しかないですな。そこで、特許権というんですか、保護料というようなのは取られていますね。ところが、農産物の場合は、たとえば種とか苗とか、こういうものを、苗木屋とか種屋がやる場合には、それは払わなきゃならないかもしれない。しかし農産物は、それ自体が今度は自己増殖というやつをやるわけですね。種はまた種、それから二代も三代もとれる。あるいは果物なら毎年毎年実がなる。そういう場合に、種屋から農家が種を買って、そして今度その種を自分のうちで使おうとする。そのとき、またそこでその特許権とかなんとかという権利が及びますか。
  70. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) ただいまの場合、私が申し上げました例の特許権者から種を譲り受けて、それをさらに農民が譲り受ける、買いまして、それを販売された。こういうふうな場合というふうに考えました場合には、こちらに、その第三者の買いました、要するに卸業者としましょうか、その人に対して特許権者が何ら意思表示をしていない場合には、こちらの人が、どういうふうにされようと、それは権利が及ばないというふうに私どもは考えています。
  71. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 意思表示すれば無限に及びますか。
  72. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) その場合に、その意思表示というのは外部にわかるはっきりした意思表示、たとえば契約書でございますが、なければいけませんけれども、その場合に、意思表示をしました場合、この人が権利侵害になります。第二者が権利侵害になります。
  73. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 時間がないんで進みますけれど、果物なんかでもそういう例が出てくると思いますね。なった果物を一々農家が市場に出す場合に、特許料を払わなきゃならぬということになると、これは大変なことになります。そういう問題が十分解明されていない。そう要求されたとき断わる条文も基礎もない、そういうような状態じゃないかと思うんですね。そうなりますと、農業政策上非常に重大な問題が私は起きてくるんではないかと思う。  長官の答弁長過ぎて、もう時間がなくなりますから、こっちの考え方だけ言いますけれども、植物特許を扱うというその基本に、まずやっぱり学説だってまだ一致しておりませんから、やらないという、やれないんだという説もある。そこへ持ってきて、いまやった場合に、そういった農業政策上大変な困難が起きてくるかもしれません。予想されないことありませんね。  それからもう時間ないから答弁要らずに、こっちの考えをやりますけれども、審査する場合、特許庁では書類審査といっていますね。しかし農産物の場合、この農産物はこういう病気に強いんだ、こういう害虫に強いんだ、あるいはでん粉が多いんだとか、あるいはこの桃なりリンゴは糖分が多いんだ、というような場合、書類審査だけではたしてできるのか。裁培したりあるいはまた分析したりしなきゃいけない。そういう場合に、特許庁でこういう問題やれるのかどうか。そういう点からいって――もう答弁要りませんよ、あなた答弁長くて困るから。そういう点からいって、これはやっぱり無理ですよ。非常に御努力されて、しかし申請されれば拒む理由はないからやっぱり扱う部面はあるでしょう。あるでしょうけれども、これは特許法の第一条か何かにそういうものを特許して産業振興を図るというような、第一条がありますね。あるが、産業を混乱させてまでやるんじゃ、これは法の運用を誤っていると思いますね。ですから、その辺のことはよくお考えいただいて、ただ、法のたてまえからいって、申請されたもの拒むわけにいかないというのであれば、その辺を考えながらひとつ運用を十分慎重にやっていただかなければならないんではないかと思います。  そこへ持ってきて今度は、現実問題として、特許庁へ出て特許になるものは、おそらく新しい品種ができたうちで、保護してもらいたいという中で、五%か一〇%ではないかと思いますね。そのほか、特許庁でやれない突然変異であるとか、あるいはりっぱなものが育種方法によってできたけれども、反復継続性とか可能性というものが薄いから特許にならないというようなものも出てくると思います。が、そういうものを入れる、品物そのものはりっぱなものができた。これは何とか保護してそして農業生産の向上のために役立てなきゃならぬという保護すべきものが私はたくさんあると思うんです。そういうことで、新品種保護法というものをつくらなきゃならない。世界の趨勢もそうなる。国内においてもそういう要望のあらわれがあるということを特許庁は御存じですか。
  74. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 答弁が長いというおしかりをこうむりましたので簡単に一言ずつ答えます。  さっきの第一点、書面審査の点は、実はアメリカ、イタリア、スペイン、キューバ、韓国等は全部書面審査でございます。それだけでおしまいにしておきます。  それから二番目に、いまお話がございました突然変異の問題ですけれども、突然変異の問題は、人工的な突然変異は私どもはこれは特許権の範囲になり得るというふうに実は考えております。自然的突然変異の場合には、これは方法によってなるかならないか、要するに、明細書、クレームの書き方によってこれは決定できるんじゃないかと思います。  それから三番目に、いま世界の趨勢云々というお話がございました。これは、現在新品種保護に関する国際条約が六カ国において設けられていることは事実でございます。しかしながら、この六カ国の条約の内容につきましては、いまの書面審査云々の点、存続期間の点等各種のいろいろ問題がございまして、したがいまして現在入っておりますのはいわばスウェーデンと中部ヨーロッパの六カ国だけでございます。いわゆるややリージョナルなといいますか、リージョナルというと言い過ぎかもしれませんが、そういう気がする条約でございます。これを拡大するためにいろいろ会議を開いております。開いておりますが、いま、先ほど申し上げましたいろんな問題点がありますので、実は拡大できないんでございます。したがって、これは条約自身がいずれいろいろ検討された末、もう少しほかの国にも合うような内容になる可能性があるんじゃなかろうかと、私どもは考えております。
  75. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 いまの特許法で全部扱えると思っておりますか、どうですか。こういうもの扱えないんでしょう。
  76. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 先ほど申し上げましたような点で、もちろん反復可能性がないものにつきましては、これは特許法では取り扱えません。これは確かでございます。それ以外のものにつきましては、それが審査官がそう発明と認定できるものにつきましてはこれは取り扱えるということのように考えております。
  77. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 現実問題として、新しい品種ができて、それを保護してもらいたいという品種の中で、特許法に乗り得るものは、先ほど申し上げましたように、五%か一〇%じゃないかと思うが、それ以下かもしれませんね。そうすると、どうしてもこれから日本の農業生産性向上をするためには、りっぱな品種をつくっていくことが一つの大きな重要な仕事、しかもこれは官民総力を挙げてやっていかなきゃならない仕事です。しかし、やったのに対して何らの報いがないということでは、民間の意欲等もわいてまいりませんから、そこで当然新品種保護法を制定してもらいたい、こういう運動があるわけでございますね。それは知っているんでしょうね、それは。しかも、それを農林省でもやろうとしていることは御存じでしょうね。
  78. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 植物特許法制定促進協議会という非常にりっぱな団体がありまして、そこで各種いろんな御意見を述べられたことは私どもも存じております。  それから農林省で過去数年間、これに対して研究をされておることも私は存じております。
  79. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 そういうことを知っているとすればね、特許庁はこの間発表したその審査基準、あるいはこれから扱おうとする特許に対して慎重に、しかもまた、この育種家なりあるいは農業生産全部の向上を図るという意味からも、そういうものとの摩擦をないようにしてもらわなきゃ困りますね。ですから、まあおたくはおたくの方の法律でおやりになることもそれは結構、また必要な部面もありましょう。しかし同時に国政全般から考えて十分そういう方面と連絡をとって、協調してやってもらわなきゃならないと思いますが、これについてはどういう考えですか。
  80. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) ただいま御指摘がありましたとおりに私ども考えております。したがいまして、まあ私どもの方のたてまえはもちろんいまお話し申し上げたとおりでございますが、関係省におきましていろいろ御意見があればそれを、建設的な御意見は十分私の方としても意見を交換いたしまして前向きに解決をいたしたいと存じております。
  81. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 「あれば」でなくてね、農林省はその方の一番大きな関係省なんですからね。積極的にひとつ連絡してね、トラブルのないようにしていただきたい、かように考えます。時間がありませんから、もう何ですけれども……。  それで、農林省ですが、ようやく新品種保護法というものに取り組まれているようでございますが、特許庁はどっちかというと、私の通俗的な言葉で失礼ですけれども、ちょっと勇み足だったんじゃないかと思うのです。農林省の方は、仕切り時間一ぱいになって、行司が軍配返したのにも立ち上がらなかった。こういうことで、実はこういうことにもなったんではないかと思いますけれども、これからの農業生産性向上のために、ひとつこの新品種保護法というものを積極的に取り上げて、急速に制定してまいるという考えありますか。
  82. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 時間もございませんので簡潔にお答えいたしますと、まあ農産物農業の新品種、これはもちろん生命があって自己増殖するという点で、工業製品とは全く違う性質を持っておりますので、その権利の及ぶ範囲、あるいは先ほどちょっとお話にございました自然突然変異による新品種の育成も保護するとか、あるいは農業政策あるいは食糧政策との調整をとるという意味で対象植物も限定すべきである。たとえば米麦等の主要農産物については、このような保護の対象にするかどうかというのは非常に慎重を要するというように考えております。あるいは保護の権利の期間その他ですね、たくさんあるわけですが、いろいろ問題があるように思います。で、私どもといたしましては、やはり植物新品種を保護する新しい制度を別途につくるべきであるというような考えを持っておりますが、今後検討をいたしましてそのような方向努力したいと思います。  なお、先ほど長官の方からお答えございましたように、まあ世界の大勢は、私どもの判断によりますと、やはり独立の体系で別途のものとしてできておるというように見ておるわけでございますが、まあ特許法と植物に関する保護の制度と併用されている場合、あるいは特許法でやっている場合も、仮に特許法でやっている場合も、やっぱり植物の場合は特定の規定を設けてやっている。こういうようなことで、実質的には別扱いの部分が非常に多いということでございますので、先ほどの新品種保護に関する国際条約に加入して国際交流を深めるというのが一つのねらいでございますので、そのためにも現行特許法でやっておっては交流が進まないというような点もございますのでで、私どもとしては、まあ今後通産省と相談しながら別途の体系のものを確立する必要があるのはないかという方向努力をしたいと思っております。
  83. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 委員長、これでやめますから、一つ結論だけ。  どうぞひとつ農林省も積極的に取り組んでいただいて、十分特許庁とも連絡、協議の上いい法律を、ひとつお互いにトラブルのない法律をつくっていただきたいと思います。  せっかく大臣が来てますから大臣に、この問題についての所信を伺いたいのでありますけれども、日本の農政、大体行政機関が小手先ばかりやるものだから、なかなかうまくいかない点があるのじゃないかというふうに私は常に考えております。いまの米の問題にしたって、もっと農地というものをほかの作物を取り入れ、そして米と同じような収益、所得のあるような作物を適当に水田の中に取り入れ、しかも土地の地力維持というような点からしても輪作等を取り入れて、しかも、そのためにはやはり科学技術というものを基礎にしていかなければ、麦が足りなくなった。補助金をやる、何をやるというような程度では、私は、なかなか根本的に解決しないと思う。そういう点からいって科学技術というものを振興させていくためには、やはりこういう新品種等に取り組んでやっている機関を、もっとやりがいのあるような、あるいは民間の活力等も生かすようなことが必要だと思います。その意味から言っても、私は農林省はこれは少し遅かったと思うんです、新品種保護法をつくるのが。幸いことしは予算等も要求しているようですから、これを取って、ひとつ積極的にやる考えが大臣にあるかどうかを大臣に伺って、その答弁によってはあれですけれども、答弁によってはこれで質問終わります。
  84. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今日まで農業生産生産性が非常に向上してきたという原因としては、あるいは農薬、肥料の進歩であるとか、機械化だとか、あるいはまた、農家の意欲はもちろんその中心でございますが、いろいろとそういう原因があるわけですが、そういう中にあって、やはり技術の進歩というものが非常に大きなウエートを占めておったと思います。ことしは米につきましても史上最大の反収でございますが、これについても、やはり品種改良といった技術の進歩が着実に実を結んで、これが定着してきたというふうに私は受け取っておるわけでございます。したがって、技術をさらに高めていく、あるいはまた技術、そうした技術の保護をするということは、これからの農政の面においても非常に大事なことであると思います。したがって、いま局長も答弁をいたしましたような、新しい品種の保護のための法的な整備をするということも私は必要ではないかと思うわけでございます。これらにつきましては、関係省庁とも十分緊密な連絡をとって、農業はやはり農業で非常に特殊な面があるわけでございますから、そうした特殊な面も十分理解を求めて、そして、さらに食糧を確保するという基本的な政治の課題に向かって、意欲をもって進んでいけるような体制を進めてまいりたい、こういうふうに考えるわけであります。
  85. 原田立

    ○原田立君 私は、時間がわずかでありますので、どうか答弁も簡潔に要領を得て御答弁願いたいと思います。一番最初にスト権問題に関する問題を若干、それから、その後に青田狩り干拓問題、こういう問題をやりたいと思いますので、簡潔な御答弁をいただきたいと思います。  まず最初に、国有林野事業の経営形態についてお伺いいたします。この形営形態については、各方面から種々議論されているところでありますが、かつては国有林開放問題、あるいは公社化等の意見もありました。しかし、昭和四十七年十二月の林政審議会の答申の中には公社化、また民営化という内容はない。林政審議会昭和四十七年の十二月の答申にはなかった公社化、あるいは民営化ということについては、これをどういうふうにお考えでしょうか。
  86. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 国有林野事業の経営形態につきまして、これまで、そのときどきの社会情勢等も反映しまして、各種審議会意見等の中でいろいろな考え方が示されておるわけでありますが、このことにつきましては、農林省としては昭和四十七年の林政審議会の答申の線に沿って、現行の特別会計方式を基本にその欠点を是正する方向によることが適当であると考えておるわけでございますが、このたびの政府基本方針によりまして、政府全体として三公社五現業等の経営のあり方等について検討をされることになったわけでございますので、その中にあって、農林省としての先ほど申し上げました意見を述べながら、妥当な方向政府の結論が出されるように対処してまいるというのが私の考え方でございます。
  87. 原田立

    ○原田立君 いまも大臣お触れになりましたけれども、先のスト権問題での専門懇の意見書の中では、国有林野については分離処理との方向が打ち出されておるわけでありますけれども、林業基本法第四条等から見て、国有林野の使命を全うしていくには、今後の経営形態は、専門懇で言うようないわゆる分離処理であるとかあるいは民営論であるとかいうようなことでは、第四条の基本方針、目的に沿わないじゃないか、目的を達成することはできないじゃないか、むずかしいじゃないか、こう思いますがどうですか。
  88. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 経営形態に関する私の考え方は、先ほど御答弁を申し上げましたように、林政審議会の線に沿って特別会計制度を維持しながらその欠陥を改めていく、改善をしていくという方向が、国有林事業のあり方としては正しい方向であるというふうに考えておるわけであります。
  89. 原田立

    ○原田立君 改善も結構なんです。だけれども、林政審の出した報告は昭和四十七年です。専門懇はついにこの間、五十年。わずか、たった三年で基本方針がくるくる変わったんじゃ、ネコの目農政というふうに言われてしまうことになりはしませんか。林政審議会は、国有国営または国有請負と、こういうふうに言っているわけでありますが、この意見大臣はどういうふうに……。
  90. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それは、専門懇は最近の意見書でございますが、そうしてそれを受けて、政府声明にも述べておりますように、三公社五現業としての全体を検討をしながら結論を出していくというわけでありますから、その中にあって、農林省としては、これは、もう林政審の答申の方向で、私がしばしば述べてまいりましたような方向でこれから結論を出していく。政府が全体的に結論を出していく方向の中で私たちの考えを述べながら妥当な結論が生まれるように努力していきたいということでありますから、ちっとも矛盾していないと思います。
  91. 原田立

    ○原田立君 それは矛盾しているんですよ。  小野座長が出した報告書によれば、中のこまごましたことは別にして、アルコール専売、林野の中の保安業務等については民営か民営に準じた経営形態に改めるのが妥当との考えを小野座長は言っているわけです。こうなると、これは分離方式です。だけれども、昭和四十七年の林政審議会の答申は国有国営である、こう言っているんです。そこに大きな隔たりがあるわけです。そこのところを私は問題にして言っているのですよ。だから、大いに違うじゃないですか。
  92. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、これは、私は全然違わないと思うんですがね。  専門懇の意見書の具体的提言の「経営形態等について」という中で、いろいろありますが、「その経営管理についての国の関与や経営の自主性のあり方について変更を加えるべきかについて専門的機関の手によって検討を行うこととする。」、こういうことですから、これはいまから検討するわけですから、国全体として検討しなければならぬ問題ですから、そういう中に農林省――私の考え方を述べながら妥当な結論に持っていきたいということであります。
  93. 原田立

    ○原田立君 そうすると、先ほど大臣お触れになりましたけれども、昭和四十七年の林政審の答申、この線に沿って今後も進めていきたいと、これが農林省の考えである。これは確認してよろしいですか。
  94. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 政府全体として、三公社五現業についての経営のあり方については政府全体として、これはもう政府としての結論としてこれから検討を進めていくということを決めておるわけですから、そういう中で農林省としては林政審の答申を重んじながら、これはもう一年半にわたってやったわけでありますし、現在までもそういう方向で来て――改善を加えながら来ておるわけですから、この特別会計制度を基本にして改善を加える、欠陥を正していく。こういう方向に私としては努力を進めてまいりたいと、こういうことです。
  95. 原田立

    ○原田立君 専門懇の意見書では、保安林やあるいは治山事業と植林、伐採等を分離し得るとの意見でありますが、林地、林木等は別々に切り離しての事業としては考えられないのではないかと思うのでありますが、この点どうお考えでしょうか。
  96. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) お答え申し上げます。  森林というのは、御承知のとおり、木材生産機能と公益的機能と両方あるわけでございますが、これを確保いたしますためには、活力のある森林資源というものを常に維持培養しておくということが大事なことでございまして、そのためにはやはり森林の管理経営というのが前提となるわけでございます。したがって、森林の育成というのは御承知のように四十年、五十年とかかるわけでございますので、民間においても借地いたしまして林業を営むという形態はほとんどございません。したがって、国有林につきましても、この土地と立木を分けてというようなことはとる必要はないんじゃないかと、このように考えておるわけでございます。
  97. 原田立

    ○原田立君 それなら結構なんです。専門懇の意見とは大分食い違った前進した御意見なんだが、それはそれで尊重しましょう。  それから木材需給見通しについてお伺いしたい。  現在、海外からの輸入木材が全需要の六〇%以上を占めているわけでありますが、一方、国有林材は一一%にしかすぎない。非常に少ない。林業基本法四条には「価格の安定に貢献」する云々とうたわれておりますが、わずか一一%ぐらいでは十分な対策ができないのではないか。保安、治山事業とあわせて環境保護の点からも増植にもっともっと力を入れることは当然のことでありながら、なお一層予算面についても思い切った措置を図るべきであると思いますが、その点はいかがですか。
  98. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) その御意見のとおりでございまして、先ほど申し上げましたように、林木育成というのは四十年、五十年という長期にかかるわけでございまして、したがって、長期的な計画に従った伐採、植林ということでございます。そういたしますと、それに必要な資金というのは、林産物の販売とか、そういう収入を中心といたしておりますけれども、過去における持ち越し現金、言うなれば貯金でございます、そういうものを充てているということもございますし、また、資金事情によりましては資金運用部資金の借り入れ、そういうことまでいたしまして資金を投入して、りっぱな森林をつくり立てていこうということで経営したいと思っておるわけでございます。
  99. 原田立

    ○原田立君 前もって言っておかなかったですけれども、じゃ、過去十年間にわたって予算がどのぐらいずつふえていったか、また現在、林野庁として国有林の増殖についてどうしてもこれだけのものはほしいという、そういう希望、そういうものはいかがですか。
  100. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) お答え申し上げます。  五十年度予算が約三千二百六十億というようなことになっておりますが、これが約十年前の四十年を取りますと一千十六億ということでございますので、大体三倍強という伸ばし方をいたしておるわけでございます。
  101. 原田立

    ○原田立君 それでいいのかどうかというのですよ。
  102. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 現在、私ども必要な伐採あるいは造林につきましてのこのような歳出予算というものでまかなってきておりますけれども、今後の見通しといたしまして、戦後値えました木がまだ伐採時期に来てないというようなこと等がございまして、今後木材の現在のような市況あるいは自然保護等による伐採量の減、これは収入源の大部分でございますから、そういう減に基づきます収支のアンバランスというのが出てまいります。したがって、五十一年度予算につきましては運用部資金の借り入れというようなこと等を計画いたしておりまして、そういう面で穴埋めしながら、そうして投資を続けていく。なお、一般的な赤字ということではございませんで、山では森林資源はできている。ただ、これが伐採時期にまだ到達していない、こういうことでございます。
  103. 原田立

    ○原田立君 私の聞いていることにきちっとした答えじゃないけれども、先に進めましょう。  大臣、これは林野庁長官の方でいいんでしょうかね。――また大臣にもお伺いしたい。三木総理は衆参の社会労働委員会等において、公共企業体にスト権を与えれば国民生活に重大な影響を与えることになると、こういうふうに言っているわけでありますけれども、国有林野について見ればどのような影響があるのか、この点をお答え願いたい。
  104. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 国有林野事業につきまして現在スト権の問題がいろいろ議論されておるわけでございますけれども、国有林野事業というのは国の事業として行われておるものでございまして、その事業の継続は、最終的には、あるいは先ほど申し上げました借入金とか、あるいは一般会計を導入するとかいうようなことで国民の負担においてなされる仕組みになっておるわけでございます。したがって、このスト権問題につきましては、きわめて重要な御指摘のような問題でございまして、さきの政府基本方針に示されておりますとおりに、今後、政府としてできるだけ早急に結論を出すべく検討されることになっておるのでございまして、いまここで意見を申し上げるということは差し控えさしていただきたいのであります。
  105. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま林野庁長官が申し上げたとおりでありまして、スト権につきましては総理大臣も言えないわけでございますから、私が言える立場にないわけでありまして、閣議決定の線に沿って早急に結論を出すということであります。
  106. 原田立

    ○原田立君 長官勘違いしていますよ、あなたは。私は、三木さんがそう言っていると、これに対して、じゃ国有林野の関係の方々にはどのような影響が実際あらわれるんですかと、こう聞いているのですよ。こうしなさい、ああしなさいなんという話はしているんじゃないのです。
  107. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) どのような影響ということでございますが、先ほど申し上げましたように大変に重要な問題でございますので、政府全体として検討されるべき問題ではございますけれども、現在、国有林野が国土の二割を占め、あるいは森林面積の三割を占めておる。しかも脊梁山脈、保安林あるいは国立公園とか大変大事な森林を管理いたしておるわけでございます。したがってストすることによるいろいろな影響というものがどのような面であらわれてくるのか、その辺私どもも十分な検討を、これからしなくてはならないということで、いろいろ問題点は整理しつつ政府全体としての結論にまつということで考えているわけであります。
  108. 原田立

    ○原田立君 非常に不満足な答えでありますけれども、次に進めます。  秋田県の八郎潟を初め、熊本県の横島、滋賀県の津田内湖、新潟県の魚野川東部に起きた稲のいわゆる青刈り問題について事件の経緯及び措置について簡単に御説明願いたい。
  109. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) いま御指摘の八郎潟とか、横島、津田内湖、魚野川等の地区におきまして発生いたしました青刈り問題の経緯でございますが、これはそもそも昭和四十四年から米の過剰問題が深刻になりまして、開田抑制措置というものがとられてきたものでございます。この開田抑制措置は本来開田計画ということで発足いたしました事業につきまして関係者の了解を得まして、これを開畑計画に変更をするというようなこととして開田抑制措置がとられてきたのでございます。先ほど挙げました地区につきましては、いずれもこの開田抑制措置の対象の地区であったのでございますけれども、約束に反しまして、畑作物をつくるべき農地に水稲をつくったということで問題になったわけでございます。私どもは、やはり開田抑制措置の実効を確保するために、また、他地区との公平を確保するためにぜひこれはやめてもらいたいというような指導をいたしたわけでございますが、その結果青刈りということが実施されたというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。
  110. 原田立

    ○原田立君 私も現地調査をしておりますが、まさに生産農家の方々は、悲痛なやりきれない気持ちであり、このような農林省の措置に対して、ますます農政に対する不信、反感を高めるばかりでなく、一般消費者に対しても、農家に対する悪影響を与えるにすぎないと思うんであります。二度とこのような問題を起こすべきではないと思う。どうしてこのような問題が発生したのか、この点はいかがですか。
  111. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) このような青刈りの事態が発生したという原因は、それぞれ地区によりまして事情が異なるとは思いますけれども、   〔理事高橋雄之助君退席委員長着席〕 大体いずれの地区におきましても、その関係する農家は従来から水田をつくっていた、だから水稲の方がつくりやすいというような従来の営農上の経験から、水稲をつくらせてもらいたいという意欲が強かったということ。それから現状におきましては、やはり水稲によって米を生産した方がほかの農作物をつくるよりも収益が高いというようなことから、みずから約束したにもかかわらず、米をつくるに至ったというふうに考えております。私ども反省しなきゃなりませんのは、あらかじめ約束をしまして、水稲はつくらない、他の農産物をつくるというようなことになっておったのでございますけれども、なぜそういうようなことをしていただく必要性があるか、また、当初いろいろ稲作のための準備をする段階におきましても、われわれの考え方を末端まで周知徹底を図るということにおいて多少欠けていたのではないかというふうに考えているわけでございます。そこで、私どもといたしましては、来年度におきましては、そういうようなことのないようにあらかじめこういうような事情を末端まで周知徹底させたいというふうにも考えておりますし、また、それぞれの農家の畑作営農につきましての営農計画の樹立に当たりましては、あらかじめ御相談があれば十分に指導をするというようなこと、また具体的な圃場につきまして若干の改良工事を施す必要があるならば、必要最小限度の改良工事は、できれば来年の農作物の作付までに間に合わせるというようなこともいたしまして、来年はこういう事態の発生を未然に防止をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  112. 原田立

    ○原田立君 今回の四地域とも、いわゆる国営干拓や開発によって行われたところでありますが、事業当初の計画はただいま局長も話があったように、すべて水田としての計画であり、それが途中で生産調整に絡んで畑作に強硬転換させられたところであります。当然事業も水田計画であるばかりか、諸条件も畑作に不向きのところもあるわけであります。このような農地に畑作を強要させ、問題を起こさせたことは、これはやっぱり農林省の責任だと思うんです。このような農政をし続ける限り、ますます農家生産意欲をなくし、農政不信はつのるばかりであろうと私は思うのであります。来年はこんなことはないようにするという、ただいま局長の答弁ですけれども、再度御答弁いただきたいと思います。
  113. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 干拓地一般につきましては、従来から干陸した後におきましては水稲をつくるというのが普通でございました。しかし、そういうところに水稲しかできないかというと多少、これはちょっと言い過ぎであろうと、やはり干拓地というものは、非常に優良な農地ができるということは、水稲だけではなくて、ほかの農作物をつくるにも非常に好適であるというふうに言った方がよろしかろうというように思います。ただ、従来から水稲の方がつくりやすい、現状におきましても、先ほど申しましたとおり、他の農作物に比べまして、収益性も高いということから、水稲をつくりたいという意欲が一般にあることはこれは否定はできません。ただ、やはり昭和四十四年以来、また現状も続いておりますけれども、米の過剰化傾向というものは解消されておりません。そこで、私どもは今後やはり干拓を含めまして、農用地の開発を進める場合、水稲をつくるということを目的にして農用地を開発することはこれは不可能であろう。片っ方で米の過剰化傾向に対処しまして水田の総合利用対策というものを来年度から新たに始めようという時期でございます。そういうときに、国が金をかけまして水稲をつくるための農用地を造成をするということは、これはやはり行政として多少混乱があるというふうに考えます。  やはりわれわれとしましては、現状におきまして農用地を造成する場合には、やはり現在不足している農作物、これをつくっていただくということが常道であろうということで、これは昭和四十四年以来続けてまいります開田抑制措置は今後とも続けたいというふうに思っております。ただ、ことしのような混乱が起きることは私どもの希望するところではないわけでございますので、来年はことしのような混乱が起きた経験にかんがみまして、そういうようなことの起きないように、事前に十分手を打って、ああいうような混乱が起きないように指導いたしたいというふうに考えております。
  114. 原田立

    ○原田立君 八郎潟を例に考えた場合、日本農業のモデル地区として、農林省がこの八郎潟を日本農業の希望の星とさえ考えて、約八百五十億円もの国費をつぎ込んでつくった干拓地であります。ところが、ことしのような青刈り問題が発生した。当初計画の稲作一本から、四十二年には米の生産過剰、四十四年からはいわゆる減反政策の、米作一本から田畑混合へと、計画変更がなされたわけでありますが、また稲作面積決定についても、非常にあいまいな点がある。基準通達一から四に、なお稲と畑作物の作付は当分の間おおむね同程度とする、とあるように、期間は当分の間、耕作面積はおおむね同程度、これが八郎潟新農村建設事業団の基本計画であります。私は、今回の青刈り問題の原因は、さきに指摘した目まぐるしく変わる農政と指導のあいまいさにその大きな原因、要因があり、その責任は政府にあると私は思うのであります。で、このような問題は、二度と繰り返してはならないと同時に、生産意欲を損なうような政策はとるべきではないと強く指摘したい、大臣の責任ある答弁をいただきたい。
  115. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ことし青刈りをしなければならなかったということにつきましては、大変遺憾なことであったと思います。青刈りをされた農家の方々の心情を思うときに、大変お気の毒にも思うわけでございますが、しかし、なぜこういうことになったかということについては、いまも局長が申し上げましたように、開田抑制措置をとっておるということで、大半の農家の方々は、これを守っていただいておるわけでありまして、ほんの一部の方々がこれを守らないで、最終的には青刈りをせざるを得ないような結果になったわけでございまして、開田抑制措置を続けていく限りは、この国の方向として示しておるところの米以外の農作物をやっぱりつくっていただかなければならぬわけであります。その間に、行政的な指導の面において欠くるところがあった、そういうことならばこれは十分反省をして、来年からはこういうふうな事態を何回も繰り返すということは、やはりお話のように農政不信にもつながっていくわけですから、こういうことのないように十分に指導を強化していきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  116. 原田立

    ○原田立君 次に、県住宅供給公社が不動産業者を仲介にして、農用地区域内の農地を買収した仮登記をしている事実があるわけですが、もちろん御承知だろうと思いますが、改めて指摘するならば、千葉県茂原市の山崎、芦網地区は、昨年の六月二十九日に農用地区域の指定を受けた優良農用地区域でありますが、しかも昭和四十一年第一次構造改善事業による水田の土地改良が行われ、また三十九年には果樹農業振興特別措置法によりミカン園の造成が進められる等、多額の公共投資がなされている優秀な農用地でもあるわけでありますが、この公共投資を受けている優良農用地区域を、千葉県住宅供給公社は単独で地権者と売買契約を進め、その大半を買収済みだという事実がありますが、この責任は市また県の不明朗な行政にあることとはいえ、農林省当局の行政姿勢にこそ根本的な責任があると私は思うが、この点についていかがですか。
  117. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) いま御指摘の千葉県茂原市大字山崎の地区内で、千葉県の住宅供給公社が住宅団地の造成事業用としまして土地を買収している、その土地の中には、農振法に基づく農用地区域が入っておるし、また御指摘のとおり、すでに構造改善事業が行われておるところ、また果樹園の経営改善資金によって果樹園が造成されたところが入っているというふうなことの陳情がありました。私ども県に照会をいたしまして、その内容につきまして現在確認をいたしておりますが、千葉県としましては、やはり住宅供給公社がこのような土地についての確保をしている段階におきまして、その中の一部については農地転用が認められないところが入っているから、これは転用申請があってもだめである。もしそのような買収をすれば、現状回復命令も出さなきゃならないというようなことを、すでに千葉県としては注意をいたしているというふうに私どもも聞いております。そこで、私どもとしましては、その後この供給公社がどのような措置をとっているか、引き続き千葉県を通じまして厳重に監督をすると同時に、もし違法な措置があれば、法に照らしまして厳重な措置を講じたいと、かように考えておるわけでございます。
  118. 原田立

    ○原田立君 茂原市におけるこの問題について、農林省は県に対してどのような行政指導を具体的に行ったか。ただいまの話では、確認をとったという程度のことのようでありますれども、具体的な行政指導はどういうことを行ったか。  また、このような問題は全国に多発しているんじゃないかと心配する。地元の要請があった場合、農用地区域の指定を除き宅地等の利用を認める方向なのかどうか、基本的な見解、これはいかがですか。先ほどの局長の答弁では、うそじゃないと、もうそんなことはやっちゃいかぬぞと、こういうふうに言う、というように千葉県は言っているということでありますけれども、あわせてお伺いしたいと思います。
  119. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 私どもとしましては、先ほど申し上げましたとおり、やはり、どうも住宅供給公社の土地の確保の方法につきまして農地法上問題があると。特に、その対象となっている土地の中には、先ほど申し上げましたとおり、農振法の区域の中の農用地区域も入っていたり、すでに補助事業をやっているところも入っておるので、そういうところでは当然農地法上転用は認められない。ということは、住宅供給公社が、住宅団地造成事業をすることができないんだ、ということをしばしば私どもは千葉県に言っているわけでございます。そこで、千葉県としましても当然そういう方針を了知しまして、千葉県の監督下にあるこの住宅供給公社に対しましてそのことをすでに指摘をし、さらに、現状どういうことになっておるかということを現在、千葉県は住宅供給公社に照会をいたしておる。そこで、私どもの方も、県に対しましてその結果を知らせるように、それからさらに農地法上違法な行為があるならば、それは法に照らして適切な措置をとるように、ということもすでに指示してございますので、県もそういうつもりであるということの回答を得ているわけでございます。  全国各地にそういうことがあるかということでございますけれども、絶無であるとは考えておりませんけれども、そのようなものがたくさんあるとは私どもは必ずしも考えておりません。私どもはやはり優良農地は確保するという方針でございまするので、転用するために農振法の区域を変更したり農用地区域を変更するということは私どもは考えておりません。むしろ、農振法の区域なり農用地区域を変更する必要がある、その結果、外れたところがほかに利用されるということはあるにいたしましても、みずからへこむというような指導をしておるわけでもございませんし、このようなことがあってはならないというふうに考えておるわけであります。
  120. 相沢武彦

    相沢武彦君 きょうの持ち時間三十分でございますので答弁も簡潔にひとつお願いいたします。  最初に農林大臣にお尋ねいたしますが、来年度予算の編成期に入っているわけでありますが、五十一年度の農林関係予算に対して大臣はどういう基本姿勢と決意で取り組んでおられるのかお伺いしたい。
  121. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 最近における世界的な食糧事情の変化等から国民食糧の安定的供給を確保することは国政の基本的な課題であり、国内生産体制を整備し、わが国農業自給力の向上を図ることを基本として各般にわたるところの総合的な食糧政策を積極的に推進していかなければならないというのが私の基本的な立場でございます。こうした考え方に立ってただいま概算要求をいたしておるわけでございますが、その概算要求につきましても、農業基盤整備等農林公共事業の推進、水田の総合利用、裏作利用増進等による麦飼料作物等の生産対策の強化、輸入の安定化と備蓄対策、農産物価格政策の充実、漁業経営安定対策を中心とした総合的な水産対策などを重点といたしまして、また、森林の多角的機能に対する要請に対応した林業施策の充実を含め所要の予算を要求しておるところでございます。今後の予算編成に当たりましては、以上のような考え方に立って施策展開に必要な予算の獲得に努めてまいりたいと考えております。
  122. 相沢武彦

    相沢武彦君 非常に大変な仕事でありますし、特に、いま国民的にこの食糧に対しての関心度も高まっております。ここで農林省が本気になって恒久的な農政の確立、農林漁業の確立を図らなければならないと、こういう立場でありまして、わが党も政府に対する予算の申し入れを行いますが、どうか、概算要求を全額達成されますように、われわれもバックアップいたしまして闘いますので、ひとつがんばっていただきたいと思います。特に、最近における物価高や総需要抑制政策によって土地基盤整備というのが非常におくれているわけですけれども、水田、畑地、草地含めまして土地改良の長期計画、こういうものがおくれてきますと、いまのまま推移すると完全実施というものは非常にずれ込むのではないかと思うわけです。食糧自給度の向上を図るという立場から言ってもこういうことではとうてい望めないわけでありまして、この土地改良投資の実質ベースが落ち込まないように特に予算折衝に当たって力を入れるべきであったと思いますけれども、来年度の農業基盤整備について大臣見通しどのようにお持ちになっていますか。
  123. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これからの農政を進めていく場合において最も重要な一つは、基盤整備を進めるということでございます。いまお話がございましたように基盤整備事業につきましては、たとえば新土地改良十カ年計画にいたしましても進捗度が非常におくれておることは事実でございます。したがって、総合政策を推進するに当たりましては、この進度を早めていくということは大変に大事なことでございますので、来年度予算の要求に当たりましても、われわれは基盤整備を中心とする公共事業関係の予算につきましては三〇%近くの五十年度対比増を求めておるわけでございますが、この公共事業につきましては各省との並びの問題もあってなかなか困難な点があることは事実でございますし、今日の財政情勢からもきわめて厳しい事態にあるわけでございますが、しかし私たちとしては、基盤整備は非常に大事でございますから、特にこの点には重点を置いて積極的にわれわれの求めておる予算獲得には努力をしたいと思います。また同時に、公共事業を進捗するための一つの方法として財政投融資を活用するということも考えておるわけでありますが、こうした方法も実現できるように努力を重ねてまいりたいと思うわけであります。
  124. 相沢武彦

    相沢武彦君 本州-四国架橋の一本目のルートがいよいよ着工だと聞いておりますけれども、ああいった工事等も必要性あるとは思いますけれども、この農業基盤整備だけは、金額は上がっても実質ベースが落ちるということではならないと思うんでして、草地関係の土地改良なんかは、昨年度で四十三年度ベースというようなことが言われていますが、ぜひこれはもう実質ベースを挽回して促進できるようにひとつ農林省もうんと力を入れてやっていただきたいと思います。  次に漁業予算のことについて若干お尋ねしますが、農林予算全体に対する昨年度の漁業予算は五%台となっていましたが、明年度は一体どの程度になるんですか。
  125. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 基本的に来年度予算に対する私たちの対処する方向をまず申し述べさしていただきますが、まず当面緊急を要する漁業経営の安定を図るための対策の推進、あるいは沿岸漁場の整備、開発と栽培漁場の推進、水産物の価格安定と流通加工の近代化、漁港施設等の整備、国際協力による海外漁場の確保と新漁場の開発等の諸施策を強力に展開すべく現在予算の要求をいたしておるわけでございます。水産は特に非常に厳しい環境にあるわけでございますので、そういう中にあっていま申し上げました諸点については特段に力を注いでまいりたいと思います。数字につきましては長官から申し述べさせます。
  126. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 五十一年度の農林関係の予算要求の総額は二兆五千億でございまして、水産庁の五十一年度の要求額は千五百十七億でございます。
  127. 相沢武彦

    相沢武彦君 どっちにしても、五%をいくかいかないかの程度でないかと思っているんですが、水産物もやはり国民食糧を確保するための重要産業としてこれは位置づけられなければならない。ですから、本当は農林省という省名も農林水産省であるべきだったと思うんです。大臣は就任のとき、攻める農政をやるとおっしゃっているんですが、そのとき頭の中には漁業のことあったんですか。農政という中には、農林大臣としての立場ですから漁業のこともあったと思うんですけれども、実際この予算配分なんか見ますと非常に少ないわけです。長官――水産庁長官ですが、全体予算の五%程度で肩身は広くないと思うんですが、その辺いかがなんですか。本当は将来、予算の割合をどの程度占めるべきであると平常お考えでございますか。
  128. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もちろん私は農林大臣でございますが、水産もこの中に入っておるわけでございまして、本来これは農林水産大臣でなければならぬわけでございます。特に水産は国際的にも非常に規制が厳しくなっておる、海洋法会議によっても経済水域二百海里というのが一つの方向としてもう打ち出されてきておる。結論は出ないでも各国ともそういう方向で各国独自に決定をしておるというふうな情勢になっておるわけで非常に厳しいわけであります。それだけに、水産には力を入れていかなきゃならぬ。そういう見地から、総合食糧政策展開の中にあってもわれわれは食糧政策の一環としての水産の振興というものを大きく打ち出しておるわけでございます。したがって、今後ともこの水産の振興に当たりましては特段の力を入れることは当然私の責任であると、こういうふうに考えるわけであります。
  129. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 先生も御案内のとおり、五十一年度の予算編成に関する政府の中の方針は、前年度に比べて一五%アップというような方針が決まっていたわけでございます。その中で水産庁の概算要求は三一%アップになっておりますので、伸び率から見れば、農林省の中でも私どもの同僚が、非常によく水産の予算を考えてくれているということが言えるわけでございます。ただ、残念なことに、もとが小さいものでございますから、なかなか大きくならないというところに私どもの悩みがあるわけでございます。
  130. 相沢武彦

    相沢武彦君 いま大臣は、総合食糧確保ということでいろいろ施策をお講じになっているとおっしゃっていますが、やはり総合食糧といいますと、農産物、畜産物含まりますが、それに水産物、両方ですから、今後総合食糧として米並びに畜産、果実、そして水産物と、やはり農政の中で同等の格づけというものが行われなければならないし、また特に危機を招いている漁業に対する積極的な基本施策というものが確立されなければならない。そういう立場から、報道によりますと、与党の農林部会で、来年度には農業基本法の改革案に着手したいというような、そういうことも報道されているわけですけれども、この際わが党は、漁業経営安定強化のために漁業基本法の制定を提唱しているわけでございます。で、やはり漁業に対してもこの際、海洋法会議との絡みもあるし、経済水域二百海里というものに対する今後の対処、そういったものを含めまして、やはり漁業基本法というものを制定すべきではないか、こう思いますが、その点大臣どのようにお考えになっていますか。
  131. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 漁業につきましては総合食糧政策の一環として私たちは非常に重要視をいたしております。現在の漁業の水揚げは千百万トンでございますが、厳しい情勢の中にあっても、何としてもこれを維持し、そして発展をさせなければならないというのが私の基本的な考え方でございます。そのためには、予算等についても特に力を入れなきゃならぬわけでございますが、まあ、いま世界の情勢が非常に動いておるわけでございますし、またわが国の沿岸をめぐるところの情勢等もきわめて流動的であるわけでございます。そういう問題を十分見きわめた上で、この漁業問題については、私たちは抜本的な一つの方向を考えるということも当然われわれは検討していかなきゃならない、そういう事態が来つつあると。ただ、非常に流動的なこの事態がどういうふうに移っていくか、たとえば海洋法の問題につきましても、アメリカなんかも、もう上下両院で経済水域二百海里を一方的に決議をする、こういうふうな状態になっておるわけであります。それが世界的にどういう方向に移っていくのかということも見きわめつつ、そういう中にあってわれわれの抜本方向というものを研究をしていかなきゃならない、そういうふうにも考えるわけであります。
  132. 相沢武彦

    相沢武彦君 水産物価格の安定対策、先ほど川村委員の質問に対する答弁でいろいろ承っておるんですけれども、いわゆる関係団体の人たちが要求している、要望している畜産事業団並みの魚価安定事業団構想、これは非常にいろいろ技術的にむずかしい。こういうことから調整保管を、この予算をふやして推し進めていく、そういうことで将来畜産事業団並みにしていきたいという構想なんだとこういうことでございますけれども、一体どれぐらいの期間かかってやろうとするのか、その実現までに。それまでの間に、いままでも、大体年三%ぐらいは漁業就業者というのは減っているわけですけれども、このまま放置するともっと激減するんでないかと思いますが、いまの政府のやり方でもって果たして、それまで漁民がしんぼうしながらやっていくという見通しなのか、その辺どのように考えていますか。
  133. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 漁価安定につきましては、先ほど川村先生の御質問にもお答えいたしましたように、われわれといたしましても、漁価安定事業団のようなかっこうで農畜産物並みの価格政策ができることは理想であるというふうに考えておるわけでございます。ところが、いろいろな問題からなかなかそこまでやれないということで、五十年度から新たに漁業者団体が行います水産物の調整保管について助成をするということで第一歩を踏み出したわけでございます。  そこで、それの究極的な目標が魚価安定事業団のようなかっこうに持っていくことになるなら、どのぐらいかかるかという御質問だと思いますけれども、これにつきましては、やはり現実的に積み上げていきまして、畜産物の場合には同じような構想で進んで、今日の事業団の価格制度ができるまで十年ぐらいかかっているわけでございますが、それよりももっと早いスピードで、それにいけるようなかっこうで物事を運んでいかなきゃならぬというふうには考えておりますけれども、ここで、それじゃ何年でそういうものをつくるのかということについては、まだ的確な年数を申し上げられるようなところまでは詰まっていないわけでございます。いずれにいたしましても、魚価の安定ということは非常に大事な問題でございますから、そのときどきの情勢に合わして現実的に対応しながら、そういった魚価安定事業団ができるような方向へ持っていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  134. 相沢武彦

    相沢武彦君 漁業者が一番漁業経営に圧迫を感じ、そして痛手をこうむっている直接の原因は、やはり漁業用燃油価格の上昇だと思うんです。約三倍になっているわけですね。いま魚価安定の対策が完全に実施されるまで相当年月がかかるだろうという見所しですから、それまでじっと黙ってたんじゃ、みんなもうやっていけなくなっちゃう。そういったことで、ここで漁業経営者の定定のためのカンフル剤といいますか、そういったことで漁民の人たちは、漁業用燃油価格差の補給措置というものを要求をされていると思うわけです。ですから、これも時限的な緊急措置として、これは先ほども御答弁ありましたように、なかなか行政ベースではむずかしいというわけでありますから、ひとつ大臣、政治ベースへ持ち込んで、何としても何らかの形で直接一般漁業者にこれが支給される、そういう形で実現をされるというように持っていく努力をされるつもりはございませんか。
  135. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 燃油の補給金につきましては、先ほども御答弁申し上げましたけれどど、なかなかこれは行政ベースではむずかしいわけでございます。実は石油ショックのとき五百四十億の融資を行ったわけでありますが、その際も補則金という形でできないだろうかということでいろいろとその検討を加えたわけでございますが、結局、融資以外にないというようなことで融資になったわけでありまして、その融資も今回償還の繰り延べ等も行っておるわけでございます。今回もこの問題につきましては、われわれとしてはもちろん漁業者の窮状というのはよくわかっておるわけでございますが、何とかしたいわけでございますが、行政努力ではなかなかむずかしいという大きな壁があるわけでございます。したがって、魚価安定対策、あるいは経営政善対策等に力を入れまして、そうした総合政策によって何とか漁業者の経営の安定というものを図っていきたいということで力を尽くしておる段階でございます。
  136. 相沢武彦

    相沢武彦君 先ほどの川村委員に対する御答弁の中で、燃油対策の特別助成事業というものをやられるということです。このうちの省燃油型の造船事業というものをやるそうでありますが、漁業就業者のうち六四%が自営漁業就業者で、漁業経営体の九五%が沿岸漁業が占めて、しかも経営体は小規模の家族経営によるものがほとんどだと、こういう実情でありますから、実際に油が高くなってなかなか、漁に行くんだって、魚価は安いし、かえって漁に出た方が損してしまう、赤字だということで困っていらっしゃる。で、本当にその小規模の家族的な経営をやっている漁業者の場合、こういう省燃油型造船事業の費用を受けて改造してやっていこうなんという力のある人はもう本当にごく少数に限られてしまうし、また今年度の予算で一体どれくらいの人たちがそれで該当するのか、ごく少数であろうと思います。なかなか救済にならないわけですね。そういった点で、いま大臣からいろいろ御答弁ありましたけれども、ひとつこれはあきらめないで、何らかの形でこの漁業者の窮状を救済できるような措置を考え、取り組んでいただきたいことを要望しておきます。  次に、肉牛対策について残った時間で若干お尋ねをしていきたいと思いますが、四月十五日に畜安法の一部改正に伴って、指定食肉制度に指定された牛肉の価格及び供給の安定化が期待されていたわけですけれども、改正後実際に法の運用がどうなっているのかという点に焦点を置いて質問をしたいと思います。  最近また牛肉の価格が高騰を来たしております。昨年は卸値で千円前後だったものが、八月に入ってから上昇し始めて、十月に入って畜安法で決められた和牛の安定上限価格千五百十八円、これを超える高値をつけられておるようでございます。牛肉の価格が上昇してきた原因を考えますと、世界の食糧需給の逼迫や石油ショックに続く不況によって需要が激減した。そうして価格の大幅な低落、そこで農家は飼料は高いし製品は安いということで非常に苦しみ、経営が不安定なためにやむを得ず、親牛や子牛までも食いつぶしてしまう。こういうことから供給減退、こういうことが起こって、これが価格上昇の大きな原因になっていると、こういうふうに思われているわけですね。しかしせっかく牛肉価格安定制度ができて、上限価格あるいは下限価格というものを設けて安定した供給を確保されるという制度ができたわけですから、これが運用されなきゃ国民食糧としての安定供給は望めないわけですから。農林省としては畜安法改正運用についてどういうような対策を実施されているのか、簡単でいいですからお答えください。
  137. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 畜安法を改正をいたしまして、価格安定制度をつくったわけでございます。これは生産者または消費者の皆さん方も、この安定制度につきましては大きな期待をかけておられると思うわけでございます。したがって、われわれはこの価格安定制度を維特しながらこれらの御期待にこたえていかなきゃならぬわけでございますが、残念ながらいま相沢委員から御指摘のございましたようないろいろの原因もございまして、八月以降安定上位価格を超えて高騰をしておるわけでございます。したがって、そのために、本年の六月には、昨年二月以来停止をしておりました輸入割り当てを再開したのに引き続きまして、逐次輸入の割り当てを行ってきており、現在までに合計五万トン、相当な量でありますが、五万トンの輸入割り当てを行ったわけであります。同時にまた、需給に見合った輸入牛肉の計画的放出も進めております。特に年末にかけましては消費者向けに安価な輸入牛肉を特別販売する措置を講じておることは御承知のとおりでございますが、そういうふうなことによって牛肉価格の安定に努めておるわけでございます。が、さらに今後とも需給の動向を見きわめつつ、時期を失することなく必要量については輸入の割り当ての追加を行いまして牛肉価格の安定に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。  私たちは、とにかく牛肉の価格が高騰することに対しては、輸入割り当てを行うことによって何とか押えて、上位安定価格の中に押さえ込みたいわけでございますが、同時に、生産者の立場というのもあるわけでございますし、前回一挙に輸入して大暴落をしたというふうな例もあるわけで、そういう生産者の立場というものも考慮しながら、そういうことを見きわめながら、十分これは慎重に臨まなきゃならぬわけであります。が、現在までのところでは、そうした輸入の割り当てを増加しながらもなかなか上位安定価格を下回らないという面は出ておりますが、これから年末から来年の初めにかけてについてはさらに新しい割り当て等については検討をしながら何とかこの安定制度を守り、信頼にこたえていかなきゃならぬ。こういうふうに考えているわけであります。
  138. 相沢武彦

    相沢武彦君 畜安法が出されたときに修正案が出されまして、第七条で、「政府は、牛肉の輸入については、この法律の規定による牛肉の価格の安定を図るため、畜産振興事業団がその目的に従って一元的な運営機能を有効に発揮することができるよう措置するものとする。」と、この条文は非常に意義のあるもので、今後基本的な輸入の方針を打ち出したという意味で注目されてきたわけでありますが、これに基づいて農林省は民貿との関係調整をどのようにしていく方針が、その点を御説明願いたい。
  139. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) いま御指摘になりましたように、法の七条で、事業団が一元的な運営機能を有効に発揮できるように措置する、こういう規定が、国会での御修正で入っているわけであります。私どもといたしましては、事業団の買い入れの運営につきましては、その方針に沿って現在運営しております。つまり原則として事業団がそのほとんどの大部分を輸入する、取り扱うという形で対応しております。今年度に入りましてから、先ほど大臣が申し上げましたように、五万トンの輸入割り当てをいたしたわけでございますが、そのうち事業団が扱っておりますのは四万七千四百トン、民貿が五%未満の二千四百トン、こういった状況でございます。民貿につきまして主として取り扱っておりますのは冷凍肉と――御存じかと思いますが、それから冷蔵肉とございますが、この冷蔵肉はこれはいわば生鮮的なものでございますから、そういうものは民貿的な機能を有効に使った方がその目的にも合致するだろう。こういう意味で主としてそういうものを対象に民貿を使っているということでございます。
  140. 相沢武彦

    相沢武彦君 新聞等で発表されているのを見ますと、輸入牛肉について、さきの畜安法の改正以後、いまもお話しのように民貿は五%程度、非常に少なくなっておるわけです。そうしますと、畜産事業団がほとんど一手に引き受けるわけでありますが、時価で市場に売り渡すようになったので非常に大きな利益を上げているというようなこと、まあそう言われているんですが、その中身について御説明をいただきたいと思うんです。政府の方もこの利益をやはり畜産振興のために還元しなきゃならないということで、いろいろ考えられていらっしゃると思うんですが、その利益金の使途についてやはり資料等を委員会に出されてそのチェックも審議するというのが筋じゃないかと思いますが、その点についての御答弁をいただきたい。  それからもう一点は、牛肉の輸入は、先ほど大臣御答弁のように、調整的にどうしても必要な場合が当然起きてくる。ところが、そのやり方をちょっと間違えますと、非常に大変なことが起きてくるわけでございまして、大幅な輸入をやっていきなりまたストップしてしまうというと、非常に対外国にも迷惑をかけるし、大きな反響を呼び、日本にも悪影響があるわけでして、今後十分慎重に処理をせなきゃならないと思うんですが、今後輸入についてのそういった運用方針、これをどういうふうに考えるか。この二つの点だけお尋ねして終わりたいと思います。
  141. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) まず畜産事業団に発生する利益金といいますか、そういったものの中身はどうかというお尋ねでございますが、これは御承知のとおり、事業団は、会計年度を単位として企業会計原則で会計処理しておりますから、年度途中で正確な数字は申し上げられないわけでございます。しかし、現在までの数字を、単に買い入れ、売り渡しを完了した分につきまして、買い入れ価格と売り渡し価格というものを相殺してみるという形で計算いたしますと、冷凍肉では約五十三億円、それから冷蔵肉の場合が約十三億円、合計六十六億円というような価格の差益が現在では見込まれているという状況でございます。これは、御承知かと思いますが、事業団は海外では時価で買うわけであります。それから国内では御承知のとおり、市場でせり売り等によって時価で売るという形になりますから、その差額がそういった形で益金として発生する。非常に多いという御指摘があるいはあろうかと思いますが、たまたま現在は海外の市況が非常に安うございまして、世界的な不況のあおりを受けまして、ひところの通常の相場の約三分の一ぐらいに買い上げの相場が下がっている。それから、これはまあ私どもいばれた柄ではありませんが、国内の相場が逆に高い、こういったことになっておりますので、いわば谷底とてっぺんというかっこうで、そういうような差益が出ている。こういった状況でございます。これはもちろん逐次海外の相場も上がってきておりますし、今後われわれの努力によりまして国内相場も冷やすということで、この相場はいつまでも続くような状態ではないというふうに思っているわけであります。  それからこの使途につきましては、もちろんこれは事業団が勝手に使うということではございませんで、ガラス張りの中で経理は明らかにしまして、使途も公表すべきものと思っております。現実には、四十九年度におきましては生産者対策あるいは流通の合理化という形で、あるいは四十八年、四十九年ということで使途を、これは別途畜産局長の諮問機関として管理委員会という組織をつくりまして、そこで民間の方々にも御参集願いましていろいろ御批判を仰ぎながら決めている。こういうことでございまして、もちろんその使途は決めましたら公表するつもりではございます。  それから今後の輸入の方式につきましては、これは輸出国の方の立場からすれば、できるだけこま切れではなく、長く、たとえば上期なら上期一本に、あるいは下期なら下期一本にという、そういう発表がお望みだろうと思うのであります。しかし、それは私はできるだけそういう方向にできるだけ早く持っていった方がいいとは思っておりますけれども、御承知のとおり、ただいま二、三年の畜産危機の過程の中で、生産者が非常に痛手を受けた、その傷が回復し切れないというような過程でございますので、それから過去において一遍に輸入の発表をしたためにどっと下がったという痛い、苦い経験もございますが、そこのところは注意深く現在輸入の発表をしていきたいと思っておるわけでございます。しかし、安定の取引という点からすれば、できるだけ長期の見通しを立ててやった方がいいというふうには思っているわけであります。
  142. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 きょうは、初めにスト権問題について、それから軽種馬問題、りんごのフラン病の問題、そして時間が許せばコドリンガの問題についてお伺いしたいと思います。  一番最初に、この間の公共企業体等関係閣僚協議会専門委員懇談会の意見書の問題なんですけれども、その中で、「国有林野事業について考えれば、保安林や治山事業にかかる行政的事務分野を除き、植林や伐採等の作業部門はこれを分離して、新しい経営形態に移行することが必要であるという意見が多かった。」というふうになっていました。これの考え方をちょっと見ますと、これは全く木材供給という経済機能だけを考えたもので、国土保全や水源涵養というような点を無視したもので、私たちとしては、これは容認できるものではないと、こう考えているわけです。先ほど大臣、林野庁の長官からもこれに対する見解、ちょっとお出しになりましたけれども、こういう意見が具体的に専門懇では多かったというような点から、現在、農林省として、また林野庁として民営移管構想というようなものを現実のものとして考えていらっしゃるのかどうか、その点についてお二人からまずお伺いしたいと思います。
  143. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) ただいま専門懇についての御指摘でございますが、私ども、先ほど大臣からもちょっとお答え申し上げましたようなことで、林政審議会の答申に沿って現行の特別会計方式を基本に、その欠点を是正する方向によることが適当であると私どもは考えておるわけでございまして、現在、そのような検討をされた経緯は、いろいろな経営形態もございますので、事務当局とすればいろいろな公社の問題とか、あるいは事業団構想とか、それぞれございました経緯がございますので、いろいろ検討はいたしたのでございますが、林政審の答申というのはそういうことではなくて、現在の特別会計方式と、こういうことでございます。
  144. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 政府決定によりまして、三公社五現業の経営のあり方につきましては政府全体としてこれから検討を進めるわけでございますが、その中にあって、農林省としては、いま林野庁長官が申し上げましたように、林政審の答申にもありますような特別会計制度を維持しながら、その欠点を補っていくという方向でその考え方を述べながら、政府全体の決定の中にあって妥当な方向が出るように対処していきたいということでございます。
  145. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私に言わせますと、林野庁長官というのはその専門の関係者でいらっしゃる。また、農林大臣というのもやっぱり専門の立場で見ていらっしゃる。その方々の御意見は、いままでどおり林政審の答申のように特別会計を維持しながらやっていきたいと言っていらっしゃる。そうしたら、公共企業体等関係閣僚協議会専門委員懇談会なんて何が専門なんだろうと思いましたね。本当に専門家の立場で実際にやっていらっしゃる皆さんが、これはそうだと思えるのと全然反対みたいな立場で、こういうのが専門委員会というような立場でこれ出されてきていると、ちょっと私、この専門委員懇談会というものがちょっとおかしいなと言わざるを得ないわけなんですけれども、そういう立場でいらっしゃることはわかったわけでひとつよかったと思います。  それから、もう一つ。先ほどの質問の中にあったんですけれども、ストライキをされるといろいろ迷惑をかける。具体的にどんな迷惑がかかるのかということについて、大変お答えしにくかったんでしょうけれども、長官の方がお答えを具体的に出されていなかったわけです。国鉄の場合だったら、実際に乗る人が乗れなくなっちゃうというような具体的な結果というものが出てくるわけですけれども、林野の労働者がストライキをやったというような場合に、いままで毎日毎日山をずっと回っていたというようなことがどの程度あったのか。じゃ、具体的に、ストライキをやったらどういうように直接に国民に影響を与えるかというようなことから考えてみれば、私たちとしては、そういうような大きな、国民に迷惑をかけるなんていうことでは言えないものではないかと思うわけなんです。  そこで、スト権の問題なんですけれども、これも何度も言われておりますように、終戦後の憲法によって当然三年間はあったわけですね。そうして、これは、基本的に二十八条の憲法に保障された権利としてあったのが、御承知のようなマッカーサーの一片の書簡でもって取り上げられるということになったわけです。そうして、高等裁判所の結果はこうだ、ああだと言われるけれども、たとえば、裁判所の結果を見ても、高裁でこういう結果になったなんという全農林の事件なんかでも、この事件を見ても、それまでは下級裁判でいい判決が出てきている、そうして最高裁でもいい判決が出だした。そういう中で裁判官をかえていますね。裁判官をかえて、そうしていわゆる権力者に都合のいいような判決が出させられたと私たちは見ているわけです。しかも、その判決の票数を見ると、有罪が八と無罪が七と、たった一票、その一票は前に裁判官を入れかえたという中でこのストは違憲だというようなことになってきている。こういういきさつ、いろいろとそちらの立場でも、ものの考え方というのは違うかもしれませんけれども、やっぱり、ここで大事な問題は、スト権というのは、単に労働者だけの問題ではなくて、国の民主主義の根本に関する問題であるという立場で、私たちは当然の権利だというふうに主張してきたわけなんですね。  国有林事業の当事業としての林野庁長官なんかも、この問題について一体どう考えておられるかということを簡単にお答えをいただきたいと思います。
  146. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 国有林野事業の中でストが行われた場合にどのような影響があるんだ、こういうことが前提でございますが、国有林は、国土の二割、全森林面積の三割を占めておるという広大な面積でございますし、しかも国土の脊梁地帯に主として分布いたしております関係から、保安林なりあるいは国定・国立公園とか、自然保護上も大事な山あるいは水源林でもある、と。そういう面積が約八百万ヘクタールのうちの過半を占めているわけでございます。そのような大事な土地の機能あるいは立木の持っている機能というようなことがございまして、これらを適正に管理するというのが国有林野の仕事でございます。ただ、その中でストが、たとえば一日、二日行われたという場合に、国鉄とかあるいは電話、交通がとまるとか電話が通じないとか、極端に身近な問題として影響を与えるということは私どもは少ない、こう思っております。  ただ、このスト自体は違法である、こういうことは前提でございますけれども、そのように一日、二日というような影響は少ないと見ておるわけでございます。  ただ、ただいま御指摘ございましたように、これを、スト権の制度としてこの問題をとらえた場合は、ただ国有林野事業ということだけでなしに、政府全体として、これは当然広い視野からあるいはもっと高度な検討がなされるべきものだと、かように考えておるわけでございます。
  147. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ具体的に、林野においていままでどれくらいの懲戒処分が出たかということを見ますと、一九五六年から一九七五年八月までで、解雇、免職を含めて総数が十九万三千二百六十二人という莫大な数に上っているわけです。これらの過去の処分については実損回復ということも要求しているし、当然なことだと思うし、また立法をきちっとされるまでの過渡的な期間は、処分は行わないというふうに私は約束をしていただきたいと思うわけですけれども、無理でしょうか。御見解をお伺いしたい。
  148. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 現在の法体系におきまして違法なストであるということでございまして、従来から私どもそのストの規模、態様等に即しまして総合的判断をいたしましてこのような処分をいたしておるところでございます。今後もこの法的な、法律に基づきました処分というものは厳正にやはり行わるべきものだと思っておるわけでございます。
  149. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 じゃあ、これで時間もあんまりとってられませんので、次の軽種馬の問題に移りたいと思います。  軽種馬の問題はいろいろいままで私何回か現地へ入って調査もしてまいりました。特に北海道の場合、日高地域ですけれども、この日高地域では全国生産の七〇%を占めているわけです。軽種馬生産農家というものが全農家に占める割合というのが四十八年には三四・六%を占める、全農家の三分の一以上を占めているということです。また生産額でいっても四十八年が二百十四億八千百万円だった。そのうち軽種馬の生産額というのが百二十二億二千三百万円、実に生産額からいうと五六・九%という大きな額を占めているわけなんです。こういうこの日高地域における非常に大きな重要産業としての軽種馬なんですけれども、ここが御承知のようにいま過剰生産に悩んでおります。まあつくれば売れるという時代は終わりました。そして日高軽種馬農協で調査したのを見ますと、昭和四十九年のサラ系で千五百頭が過剰になっているということなんです。で、国内で必要な絶対量がどれくらいなのかといいますと、サラ系で五千五百、アラブ系で三千、合計八千五百でございます。ところが四十九年の生産で見ていきますと、合計いたしますと一万九百七十三頭、五十年――ことしの推定見込みでいいますと一万二千五百七十九頭、大変な過剰が見込まれるということになってまいります。この過剰が具体的にはどういうことになってあらわれるかというので、これをまた調べてみますと、ことしの八月、明け二歳馬の夏競りが浦河と静内で行われたわけですけれども、売却率が実に二〇%台に落ちてしまっています。四十八年には五〇%台だったわけです。価格の方も大変下がっております。四十八年には一頭三千六百万から二千万というようなのが出ていたわけですけれども、今回調べますと千五百万円台がわずか二頭しか出ないというように大変な過剰が価格の問題として、また売れ行きの問題としても出てきている。また、たまたまきのうはちょっと新聞投書を見ましたら、こういった中で余った馬はどうしようもないということで、年末、正月の豚肉がわりに馬が売られていく。馬一頭が十万円というような、泣くにも泣けないような状態になっている。これは大変、ここで言ってますと簡単な言葉でございますけれども、現地でこれを主にしている生産農家にとっては非常に深刻な問題になっているわけです。こういうような深刻な過剰状態になったというような原因ですね、これが一体なぜこういうことになったんだろうか、ここから考えなければいけないわけですけれども、大臣としてはこういう過剰というものがどこから起こったというふうにお考えになられるか、そのことについてお答えいただきたい。
  150. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 過剰の原因ですから事務的に私からお答え申し上げます。  軽種馬は、いま御指摘にありましたように過剰な傾向になっておりますが、この原因といたしましては、生産が近年の競馬の伸展に伴って逐年増加してきた――競馬の伸展をいうことは結局高度経済成長に支えられておったわけでありますが、生産が伸展してきた。一方、需要の方は、競馬の規模を拡大するわけにいきません。これは三十六年に長沼答申という答申をいただいておりまして、いわゆるギャンブリングスポーツの規模は余り拡大しないようにする、むしろ現状に凍結する。こういった趣旨の御答申がありましたので、競馬開催の回数とか、あるいは開催の日数とか、あるいはレースの数だとか、そういったことにつきまして制限があります。そういう意味で、ただむやみやたらに需要の規模を拡大するわけにはいかない。こういった制約がありますので、そういった面から需要の方は一方近年は停滞している。こういった関係からやはり過剰傾向が出てきているということだろうと私どもは思っておるわけであります。
  151. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういう大変な過剰な中で苦しんでいる、そうして一方、その地域においては非常に大きな生産の役目を果たしているという中で、この閥も大臣おっしゃっていましたけれども、本気になってこの軽種馬農家というものを農業として位置づけられるのかどうか。農業として本当に位置づけられるなら、この深刻な事態に対して一体どういうような対策を考えていただけるのか、大臣の立場で農業に対するこの軽種馬産業の位置づけと、具体的にそれを位置づけるとおっしゃるならばどういうふうな対策を考えておられるかお伺いしたいと思います。
  152. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに軽種馬は生産過剰の状況にあるわけでございますが、この生産過剰の状況に対して、国としては、生産者団体に対しまして生産の自粛を指導しておるところでありますが、また産地におきましては生産者の自主的かつ組織的な生産調整の動きも出てきつつあるというふうに聞いておるわけでございます。したがって、その動向を見守りながら関係方面の意見を聞いて所要の対策について検討をしていかなければならない。やはりこの生産者対策というのは、これはもうお答えもしておるわけでございますが、生産者農民でございますから、そういう意味における、農業の中における軽種馬生産という位置づけをしながら具体的にこの生産者が安定経営ができるような方向に持っていかなければならないというふうに考えておるわけであります。
  153. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 先ほど、過剰の要因ということを簡単におっしゃったわけですけれども、いろいろ複雑で、しかも非常に重要な問題が含まれていると思うのです。いま大臣がこの問題について、生産者の方にも生産自粛を求めているとおっしゃっていましたけれども、求められるまでもなく、生産者農民にとっては過剰で苦しんでいるのだから、自分たちでどうやってその生産を自粛してこれを解決していくかということを具体的にもちろん取り上げているわけですね。それを具体的に日高の軽種馬農協というのがまとめておりまして、それは第一には、退厩馬が牧場へ無差別にどんどん返されていく、これがある限り過剰生産は食いとめられないと、これ第一に挙げています。第二の問題としては、農家ではなくて、農外資本の進出、そうして規模拡大ということが過剰生産の原因になっている。第三には、輸入牝馬の増加、現在は少なくなっているという数字が示されておりますけれども、輸入牝馬が何百頭という数で出てきたという問題。そうして第四番目に、これは昭和四十六年以来、米の生産調整が行われました。そうしてその辺が水田の農家であったのが、生産調整が行われたために転業になったわけです。それからまた、あるいは休耕地への飼料作物の作付奨励による水田農家の軽種馬飼育が増加した、こういうような大体四つの原因が出てきているわけです。  ここで重要なことは、この原因になった問題というのは、決して農民個人の問題ではなくて、まさに農政基本的な問題がこの背景にあるということ、特に四十六年以来の米の生産調整、このことが大きく過剰生産の原因になっているというふうに言わざるを得ないわけです。それは決して私が政治的に言うのではなくて、この四十六年の米の生産調整以来、どういうふうにふえてきたかというのを数字的に調べてみました。  これも日高の軽種馬飼育の戸数を調べたんですけれども、昭和四十五年には千七百八戸です。四十六年が千八百三十七戸、四十七年が千八百七十四、四十八年、千九百十九戸とこうふえているわけです。そのふえ方を調べてみますと、四十五年から四十八年にふえているのが一一二・二%ですから一二・二%ふえたということになるわけなんですけれども、いつふえたかというその時期を考えますと、四十五年と四十六年、つまり生産調整が行われた四十六年――四十五年、四十六年のところで、このふえた半分以上というのがここでふえてきているということが数字的にも見てはっきりしているわけです。そして、今度また、日高の農家全体における軽種馬農家の割合を調べてみますと、四十年には一五・二%だったのが、四十八年には三四・六%、全体として全国的には農家戸数が減っている中で、軽種馬農家と育成農家というものが非常に増加してきた。こういう数字を見ますと、これは明らかに国の施策による結果ということを言わざるを得ない。で、非常に、当事者たちは深刻に自主的な生産調整を検討しているわけです。  先ほど大臣も、自粛を求めると一緒に政府としてもその自粛に対していろいろ対策を検討するといわれておりますけれども、私が聞いたりしたところでは、輸入関税についてこれが来年も引き続いて存続するという点だとか、退厩手当、牧場に返る分は少なくするというようなこともおっしゃったし、それからまた空胎馬についての税金も考えるというようなこともちょっと、ちらっとおっしゃったような気がいたします。いま具体的に言われた対策というのは、非常に消極的な対策でしかない。この生産過剰で苦しんでいるこの人たちに対して、本当に積極的と言えるか。実際に、この人たちに役立つような具体的な政策というものが、そのほかにあるんだろうか、ないんだろうか。こういうふうにほうっておかれるからこそ、いつでも軽種馬の問題が言われるときには、おれたちの軽種馬は一体農業として認めているのかどうかということで問題になる。それで冒頭農業についての位置づけということを申し上げたわけなんです。この過剰生産で深刻に悩んでいるこの問題について農業と位置づけられるならば、具体的にどういう政策、処遇というものを、対処の方法というものを考えておられるのか、このことを具体的に提案していただきたい。考えていることを出していただきたい。
  154. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) いろいろな御指摘があったわけであります。順序は逆になりますが、現在の過剰の原因は生産調整が大きく作用しているんじゃないだろうかという御指摘があったわけでありますが、私どもは必ずしもそのようには考えておりません。いま御指摘になりました馬産地でありまする日高支庁、北海道の日高支庁管内を例にしてみますと、生産調整は約二千ヘクタールが飼料作物に転換されている。もちろんその中には軽種馬の生産にかかわったものは当然あるわけでございますけれども、軽種馬の飼養戸数なりあるいは頭数の増加傾向というものは米の生産調整が開始された以降は、むしろ鈍化しているんじゃないだろうかというふうに思っているわけであります。いろいろ先ほど先生、数字を御指摘になりましたけれども、たとえば日高地方の馬の飼養状況を見てみますと、四十年はこれは軽種でありますけれども、千二百十一戸、それから四十五年が千七百八戸、それから四十八年が千九百十七戸で増加はしておりますけれども、年率といたしましては、四十年から四十五年が七・一%という増加傾向に対しまして、生産調整開始後はむしろ三・九というぐあいに鈍化しております。それから、繁殖牝馬の頭数にいたしましても、四十から四十五年が一二・五%という増加率に対しまして、もちろん増加はいたしておりますけれども、一〇・一%というぐあいに、年率は必ずしも増加はしていない。鈍化の傾向にあるということでありますから、生産調整そのもの自身が軽種馬の過剰生産の原因である、というのは直ちに言いがたいのじゃないだろうかというふうに思っているわけであります。  それから、いろいろ日高の農協、生産者組織でいまの過剰の状態を解消するための対策というものを、先生いま御指摘になりましたが、私どももそのように思っているわけであります。たとえば、退厩馬の制限の問題だとか、あるいは農外資本の規模拡大の問題だとか、それから輸入牝馬の増大の問題だとか、そういった問題を解消しなきゃならないという点につきましては、これは私どももそのように思っておりますし、それぞれたとえば輸入牝馬の問題につきましては、これも御指摘がありましたように、輸入関税措置の存続という形で国内生産者の保護を図っておったり、あるいは退厩馬の制限につきましても、促進につきましてもいろいろ償金面その他の点におきまして手当てはできておるというようなことでございまして、いろいろ手はずは打っておりますけれども、やはり基本的には生産を需要に見合ったような形で安定的に形づくっていく、そういった形で生産を調整するということがやはり根本的な対処の方法ではないかと思うわけであります。それにつきましては、先ほど大臣から御答弁ございましたように、私どもといたしましては、つとに北海道庁を通じ、あるいは直接に農協等に対しまして安定生産の履行を呼びかけているわけでありますけれども、生産調整というのは、一言で言いましてもなかなか容易ならぬことでありまして、なかなかそれが実行できていないというような状況であります。  幸いにしてといいますか、現在の苦しい実態が反映されたわけでありますけれども、地元の生産者組織の方におきましても、生産調整の動きが最近非常に高まってきております。それから道庁の方でも、この生産者あるいは生産者団体の方々からも御要望をいろいろ聞くという体制も逐次整えてあるように聞いておりますので、そういった具体的な動きをにらみ合わせながらも私どもといたしましては、生産調整を具体的にどう進めるかということにつきまして、これは具体的な検討を進めていきたいと思っておるわけであります。
  155. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 具体的に検討を進めていただかなければならないわけなんですけれども、時期を延ばされると、結局苦しみのまんまで長いこと過ぎてしまわなければならないわけなんですね。実際に生産調整をするというようなときに何が必要かというような、いろいろあるかもしれないけれども、具体的な問題もたくさんあろうかと思うのです。それをまた後で出しますけれども、まずその本当にいま大変だという中で、どんなになっているかというのがよくわかっていただけてないのじゃないかと思うのです。私も行って見ていると、馬なんて、走っているのはかっこういいですし、広々とした牧場で、実にいいながめで、その生活がどんなに深刻だというのがわかっていただけてないと思うのです。  一々こうみんなというわけにいきませんけれども、調べさしていただきました。浦河の、たとえばAさんとしておきますと、飼養頭数は十頭なんです。今年売却が三頭です。負債は二千万、年末赤字返済が一千万、払えないためにトラックなどの売却、それから農機具を農協で処分されて、このままでいくと土地と馬を手放して離農せざるを得ないというようなのがこれAさんの場合でした。それからもう一つ、Bさんのうちを訪ねてみますと、飼養頭数十頭です。うち八頭は預託馬です。これは千葉の馬主さんが倒産したから、馬が他人の手に渡って、秋の送金分が百五十万円こなかったという事情もあったわけです。負債は一千三百万でした。年末返済は、と聞いたら、五百万――現在のところ二百万あるが、返済のめどがつかぬ、こういうような状態なんですね。  こういうような大変なのがどこに集まっているかというと、繁殖牝馬五頭以下、飼養頭数は十頭前後という中小農家にひどくあらわれてきているわけなんです。大きいところは大きいなりに道があるわけですけれども、この中小農家というのは、いま言ったようにAさんの場合も、Bさんの場合も深刻なんです。この深刻な中小農家というのがどれくらいあるかというと、これは四十八年の数字で出してみましたが、千百八十六戸ある。これは六六・五%を占めているというような中で、本当に不況をもろにここのところはかぶっているというような状態だった。そして、農家の方も大変だというようなことだけかと思ったら、今度、これは借りているから、借りている借り先の農協の経営状態というのが、またこれ非常に悪化しているということなんですね。  これは名前は出してほしくないということなので出しませんけれども、日高管内のある農協の経営状態を調べてみました。組合員数は三百人です。農家の貸し付けが十九億八千万円あります。内訳をしますと、短期貸し付けが十二億、長期貸し付けが四・四億、近代化資金が二・三億、公庫資金が〇・二七億というわけですね。そのほかに購買やスタンドなどが農家に貸しているという分が七・四億ある。こういうように、直接貸し付けと購買、スタンドなんかから貸しているというのを合わせますと二十七億二千万円という貸し付けになって、この単位農協というのは、これは大変なことになるわけですね。信連からの借り入れは十二億八千万ということだったわけです。  ここでいろいろな手があろうかと思いますけれども、問題は、この年末を控えての金融の問題になってくるわけなんですね。いま借りているいろいろな借金、制度資金の年賦償還を一時たな上げして延期してもらいたいと、これがもういまの問題として非常に真剣に訴えられていました。そのためには、信連等からの相当の資金手当てをすべきであるということが考えられなければならないわけですけれども、とにかくその制度資金をたな上げしてほしいということと、それからもう一つは、繰り延べた人にも、資金繰りに困っている人にも種付け代とか、えさ代とか、資材購入などのいわゆる運転資金の引き続き貸し付けをお願いしたいと。もう貸し付けてあげない、というところまできているわけなんです。そうなると、もうどうしようもなくなるというのです。こういうことについていますぐ打ってもらえる手としては、金融問題でやっていただきたい、というような切実な要請なわけなんですけれども、こういう問題について適切な御配慮、御指導というものをいただきたいと思うんですが、その点いかがでございますか。
  156. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 確かに日高地方に限ったわけではありませんが、軽種の生産農家の経営条件が悪くなっているということは私どもいろいろ聞いております。先ほど先生から御指摘のありましたように、取引価格にいたしましても、最低のものは十一万円というようなものが、極端なものが出現しておりますし、平均的に見ましても五年前の取引価格と現在の取引価格と余り変わっていないと、こういう状況でございますから、かなり生産農家の経営問題があるということは私どもも農協の方々からも聞いております。  ただ、いま御指摘になりました負債整理の問題とか、あるいは運転資金の融資の問題、こういった問題につきましては北海道でもいろいろ検討は進められてきております。その状況も今後聴取したいと思いますけれども、聴取して対応はもちろんしていきたいと思っておりますけれども、具体的な資金の融通につきましては、これは個々の生産農家の経営事情はいろいろまちまちでありますから、農協等が、個々の経営事情に即しました経営の安定計画といったものにつきましての指導をお願いいたしまして、それに基づいて対応するということを基本とすべきではないかと思っているわけであります。もちろん、農林省といたしましては必要に応じて関係団体に指導もするつもりであります。現に私ども畜産局からも、すでに日高地方等に軽種馬の実態を視察するために職員を派遣することを決定してございますので、あわせて御報告いたしておきます。
  157. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 北海道としてもこれは地元の問題なわけですから、道と北農中央会、日高支庁、軽種馬農協の四者でこれらの負債、年末資金繰りというようなものについて話し合って協議するということでございましたけれども、やっぱり、農林省としても、中央の立場としても、こういう農家の、いまいまの問題について何らかの適切な措置をとってやってほしい、そういうことについての御援助をお願いしたいと思うわけです。これはいまいまの問題なんですね。  それからもう一つは、長期対策なわけです。これはやっぱり何といっても、長期低利の負債を整理できる制度を導入してほしいということでございます。いろいろ近代化資金というようなものもあっても、たとえば、草地改良とか農地、農器具等についてだけで、総合的な資金を借り入れるというような立場で、特に軽種馬農家が軽種馬農家の立場で借りられるというような制度資金の道というのがないわけですね。だから、牛も一緒に入れて草地改良造成というようなことでその枠を借りるというようなことで、本当に軽種馬農家というものを農政の中に位置づけていただけるならば――位置づけるとおっしゃってくだすったんだから、長期的な問題として、いま言ったような軽種馬農家が借りれるような、そういう制度というものを真剣に考えていただきたいということなんです。このことについて御検討いただけますでしょうか。
  158. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 旧債の借りかえという場合にはなかなか対応がむずかしいと思います。いま御指摘になりましたように、近代化資金につきましては、軽種馬の生産農家に対してはもちろん道は開いているわけであります。たとえば、軽種を含む家畜の導入あるいは農作業の機械化の問題、そういったことで、いわば農業関係の生産施設の整備拡充といった前向きの資金というものにはめんどうをみているという形でございますが、ただ、旧来の負債を借りかえるということにつきましては近代化資金というものは想定しておりませんので、直ちにこれで対応するということはちょっとお答えしにくいかと思っております。旧債の借りかえ、そういった問題につきましては、結局、問題となる農家の経営状況がどうであるか、負債の状況がどうであるか、そういったことをしさいに点検して、そしてあるいは道庁の意見もよく聞いてみてよく判断していきたいとかように考えておるわけでありますので、今後の検討課題にさしていただきたいと思うわけであります。
  159. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ぜひ御検討いただきたいと思います。  それから、具体的にこの余った馬の処置、これは当然、馬を淘汰していかなければならないわけですけれども、その淘汰するといっても、ただ殺しちゃえなんというわけにはいかない。そうすると、淘汰された馬に対して一定額の国としての助成、補償を出すというような考え方はお持ちになっていないか。今後考えていただけるかという問題です。  それから中央競馬会としても、まあ、馬があっての競馬でございますから、中央競馬会においても、この過剰生産に悩む問題について何らかの手を打つことが必要だというような御指導をいただけないかどうか、その点についてのお考えを伺いたいと思います。
  160. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 淘汰馬に対して何らかの形で助成といいますか、援助が必要じゃないか、こういう御指摘でございますが、生産調整を効果的に実施するに当たりましては、全体の飼養者が共同して繁殖の牝馬の飼養制限をする。そうすると、そこに違反者があってはいけないというような問題がございますが、そういったことでなければ実効が上がらない。要するに、組織として一致団結するというようなことが大事でございますので、その辺が果たしてできるかどうかということが大きなかぎであろうと私らは思っておるわけであります。それから後、単に補助するだけで問題解決するわけではございませんので、いろいろその助成するに当たりましても、その飼養規模に、先ほど申し上げましたように大から小からございますから、それを淘汰するということになりますれば、勢い、やはり質の悪いものから淘汰するということになりますと、ただ単純にそれだけの原理を適用いたしますと零細規模の農家だけが泣いてしまうということになりかねないわけでありますから、そのやり方等につきましてはかなり慎重な配慮が必要じゃないかと思っておるわけであります。それから、先ほど申し上げましたように、淘汰をかなり効果的にするためには、全農家が、単にいま持っている馬を淘汰するというような消極的な対応だけではなしに、今後、やはり飼養規模をある一定の段階で抑えてしまうというような、そういった対応が必要でございますから、そういったことが組織的にできるかどうかといった点の吟味もその前提として考えておかなきゃならない。こういった問題もありますので、かなりむずかしい問題ではあろうかと思いますけれども、この問題につきましては、先ほど再三お答えしておりますように、道庁あるいは生産者組織ともよく相談いたしまして今後の課題にしていきたいと思っておるわけであります。  それから中央競馬会の方でも援助なんかをすべきではないかと、こういう御指摘でございますが、中央競馬会は本来的な業務として直ちに軽種馬生産農家の救済というとこまでは業務の内容としては手が及ばないわけでありますけれども、しかしかなり実際問題として競争馬の育成とか競馬の健全な発展という過程からいろいろ密接な関連を持っていることは事実でございますから、具体的な対応はやはりしておりますし、今後もしていくべきであろうと思っておるわけであります。具体的に申し上げますれば、先ほど先生が御指摘になりましたように低質馬の早期退役の促進の問題だとか、そういったことにつきましても対応はしておりますし、あるいは質の悪い牝馬を産地へ還元することの抑制策につきましてもいろいろ見舞い金等の増額で対応はいたしております。それから競馬の規模をやたらにふやすわけにいきませんけれども、しかし厩舎数の制限がございます。それをやたらに撤廃するわけにはいかないわけでありますが、実際問題として、運用としてある一定の預託頭数の制限緩和という形で収容力を拡大する、こういった努力は競馬会は競馬会なりにしているわけでありますから、そういった努力は今後競馬会に対しましても従来よりさらに積極的にするように私どもは指導いたしたいと思っているわけであります。
  161. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私もこれやってみて本当に大変だなと思いました。一つの問題で解決つくわけじゃありませんで、生産から、それから今度金融の問題から競馬にもからんでまいります。で、お伺いしようと思っても金融の――きのうも一体どうなっちゃうんだなんて話したんですけれども、制度資金のたな上げの問題でお伺いしたいと思ったら、経済局の金融課かなと思ったら、これは畜産局の方だと、窓口がいっぱいあるわけですね。それで、いままで御答弁いただいていろいろ検討したいというようなことがあったわけなんですけれども、こういう軽種馬の問題についてこうあるべきだ、こういうところが問題だ、こういうところを調査しなければいけない、というような全体の軽種馬問題について検討なさるというようなときには、そういう機構みたいなものができるんですか、それ。みんなそれぞれ検討しろなんと言っといたままで、一体どの課で、どういうところまでいっているかというのがわからないと、実際これから長期的ないろいろな方針も考えていただかなきゃならないそんなときに……。どこが窓口になって、どこどこ、どこどこが入って、そして軽種馬対策の委員会みたいなものがあるのかどうか、できるのかどうか。今後も、これ一回で済みませんので、いろいろお世話になると思いますが、その辺のところどうなっているんでございましょうか。
  162. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 軽種馬の生産農家の対策は当然畜産局が対応すべききものだと思っております。私の方の課にも競馬監督課がございますし、それから家畜生産課という課もございますから、そういったセクションが中心になってこの問題については対応していきたいと思っておるわけでございます。
  163. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ、おたくの窓口でいろいろ今度よろしくお願いします。これ、大臣の方に陳情書というので、ぜひ緊急にお願いしたいということでしたから、この席お借りして済みません。ぜひ御配慮いただきたいと思います。それじゃ軽種馬については時間が来ますので、これで終わらしていただいて、あとの問題にいきたいと思います。  次は、リンゴのフラン病の問題でお伺いさせていただきたいと思うわけです。  北海道リンゴといいますとどうしても青森、長野というようなところが頭にきまして、生産は全国第五位ということになって、北海道と言えば、米作に酪農にそれから畑作と、果樹というものが全然陰に隠れてしまっているわけです。それで私も、質問する場合にも、やっぱり米作とかの質問が先になっちゃって、果樹――リンゴの問題ではきょうが初めてじゃないかと思うわけなんですけれども、こういうような状態の中で、北海道のリンゴ生産というものをどういうふうにそれこそ位置づけて考えていただけるのかということをちょっとまず最初にお伺いしたい。  そして続きまして、そのリンゴがいまフラン病で大変ひどくなっているわけですね。このフラン病というのが全国各地に比べましてもう全然すごいわけです、北海道の場合は。作付面積が三千八十七ヘクタールのうち発生面積が二千三百八十ヘクタール、つまり八〇%近くがフラン病に罹病している。青森だとかあっちの方は非常にフラン病と騒がれているのよくわかっていたんだけれども、実質には北海道が八〇%近くというような、ほかの県と比べられないくらい大変なことになっているわけです。そして今度、新規でその対策の予算というものがつけられたということは大変私たちにとってうれしいことで、農家の皆さんも非常にこれに期待していらっしゃるわけなんです。しかし三億円強と、一歩前進だけれども、これでどの程度解決できるのかなということが、大変いい政策でつけていただいたものですからまたそこで心配が出てまいりました。改植しなければならないところが三百七十五ヘクタール、削り取りのところが一千三十五ヘクタール、そして合計千四百十ヘクタールでございますね。ところが、発生面積というものが約一万二千ヘクタール。こういうことになりますと、単純に考えると十年近く考えられる。説明伺いますと四年間で五千五百ヘクタールというふうに考えていけば大体四年間で済むんだろうというふうな御説明をいただいたわけですけれども、フラン病というの私も本当に実際行ってみてつくづくわかったんですけれども非常に感染しやすいということやら、それから改植しても成木になるころ、またうつっている。削り取りというのもしょっちゅうやって、徹底的にやってなかったらだめなんですね、あれ。ちょっと休んだらだめになるというようなことから、これで効果的にこれが解決できるものだろうかと。もう本当に新規でつけていただいたんだけれども、もっと思い切ってやる必要があるんじゃないかというふうにも痛切に考えられたわけですが、これらの点についての御見解を伺いたいと思います。
  164. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) リンゴはわが国の落葉果樹の中では一番面積の大きい果樹であるわけでございますが、近年生産がやや停滞傾向にある、その辺の関係もありまして、このため今後ミカンなどと違いましてさらに生産をふやさなければいけないという考えを農林省としては持っておるわけでございます。北海道はリンゴの産地としてもかなり古いところでございまして、気象的にもリンゴの栽培には適するという条件にあるわけでございますが、現在北海道のリンゴの作付面積、栽培面積は全国の減り方以上に減っておるということでございまして、私どもの把握しておりますところでは三千四百ヘクタールぐらい――五十年でございますが。四十六年には四千七百とかなり大きな減り方を示しておるわけでございますが、果樹の中では北海道としては第一位ということでございますので、先ほど申しました全国的な需給の見通しからいたしましてもさらに生産をふやしたいというふうに考えております。が、どうしてこんなに北海道減ったんだということ、いろいろございますけれども、腐らん病が寒地性の病気でございますので特に北海道に多いということもございますが、御承知のように、札幌とか、小樽とか、わりと都市に近いところに比較的産地が立地をしておるということがございまして、都市化の進展、宅地化あるいは工場化、工場敷地にもなるとかいうようなこともあり、端的に申し上げますと、意欲がほかの地域ほどないということは率直に言わざるを得ないんじゃないかというふうに思いますので、私どもといたしましては、今後、道庁とも御相談しながら生産対策を積極的に進めてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  そこで腐らん病の話でございますが、これは先ほどちょっと触れましたように、これは寒地性の病気でございますので、全国的に寒冷地のリンゴ栽培地において発生をして増加の傾向があるわけですが、北海道の場合で見ますと、これは換算でございますが、作付面積に、べた一面に病気にかかるわけではございませんけれども、それを面積に換算いたしますと、五十年に二千三百八十ヘクタールということで、作付面積に対しまして七七%ということで圧倒的に発生面積率が高いわけでございます。お隣りの青森県あたりは二三・五%という点で、全国的にも大体その程度――二七・五でございますので、北海道の場合、発生面積率が非常に高いということでございます。これは特に寒いところに発生しやすいという面もございますし、また北海道におきましては四十二年の暴風雪害、四十五年の同じく暴風雪害、それから集中豪雨と、災害によって樹枝が損傷した、樹勢が低下したというようなことも、特に北海道で多く発生をしておるということの原因の一つかと思います。私どもといたしましては、北海道に限らず、腐らん病対策として四十七年、四十八年に特殊病害虫緊急防除費補助金という中で薬剤費の補助をいたしまして、防除の推進を図ってきたわけですが、なかなか退治できないということでございます。  防除の方法といたしましては、削り取り――病患部の削り取りとか、あるいはその部分へ薬剤を塗るとか、冬期あるいは春期等に薬剤を散布するとか、あるいは耕種的な方法といたしましては特に罹病激甚な地はやっぱり抜き取り――伐採して抜き取って焼却をするというようなことをやらないとなかなか根絶できないということでございますので、先ほど言われましたように、来年度予算で約三億円ばかりの要求を現在しておるわけでございます。これは個々の農家がなかなか、やれといいましても、熱心な農家はいいですけれども、それほど意欲のない農家はなかなかやらないということでございますので、地域ぐるみでただいま申し上げましたような対策を講ずるということにしておるわけでございます。  そこでもう一つお尋ねの、これで完全にできるのか、発生面積から見てこの程度のことでできるのかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、一定の基準を設けまして激甚な面積、たとえば腐らん病の発生率が三〇%以上で、腐らん病を主因とする改植を一ヘクタール以上要るようなところはこれは改植をやっちゃう。それ以下のところでかなり被害率が高いというところは、削り取りというようなやり方を個々の木についてやるというようなやり方をして、お尋ねのように、御指摘のように、四年間で五千六百ヘクタールぐらいやりたいと思います。それ以下のものは自力でやっていただくということも含めて徹底をしてやれば、この程度でかなり成果が上げられるんじゃないかと、こういうふうに思います。
  165. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 五十分までなんで、きょうは時間厳守をしなきゃ怒られる日なんでございますので、御協力いただきたいと思います。  あと三つ、四つなんですけれども、済みませんん、イエスかノーかで簡単にお願いしたいと思います。皆抜かします。  事業内容で具体的な問題伺いますけれども、大体四年くらいで継続してというふうに、予算上では四年となっても、一地域では単年度の事業ですね。四年同じところができるというわけにはいかない。そうしますと、削っても、次の年削るということの補助が出ないでそのままになると、またこれ出てくるわけですからね。だから、その一地域で考えた場合にも、せめて一年ずつでなくて二、三年の事業としてほしいということについて希望があるんですけれども、これについてどうなのかということを簡単に……。  もう三つぐらい一緒に言っちゃってお答え願うようにした方がいいですかね。
  166. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) そうしてください。
  167. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 はい。それじゃその問題。いまの問題忘れないでください。  その問題と、それからもう一つ、二番目は、採択基準の問題なんですけれども、いま局長おっしゃったように、罹病率が三〇%、そうして一ヘクタールまとめて改植というようなことになっているわけなんですけれども、こういうふうに三〇%以上というふうになりますと、逆にフラン病が蔓延してそれまでにならなければ対象にならないというような矛盾も出てくるというようなことから、これは大変むずかしいと思うんですけれども、基準の取り方。産地の実情ですね、実際の実情や、それから罹病の状況等、できるだけそこのところの運用を弾力的に運用できるようにお願いしたい、弾力的な運用を配慮するということにしていただきたいというのが二点目。  それから三点目については、この融資は年四・五%で、五年据え置き、ミカンと回しになっているわけですけれども、リンゴの場合、改植して成木になるまでやっぱり七年ぐらいはどうしても要る。そうすると、どうしてもその七年というものがもたされないと困るということなので、その趣旨からいっても、据え置きを五年のところを七年までにしてほしいということですね。このことについて、あと抜かしますが、そのことについてお答えていただきたい。  それからコドリンガの問題で一言だけ大臣から伺いたいんですけれども、いま来ていらっしゃいますね、シモンズ米農務省野菜果実国際市場課長というのが来ていらっしゃるということですが……。コドリンガのことでまだはっきりしていない、検疫の問題で、いまのところはまだ解禁になっていないということで、非常に圧力をかけられているという状態みたいに見えるんだけれども、大臣としては向こうで、大豆や飼料作物を安定的に輸入するかわかりにサクランボはいいよ、というようなことをおっしゃらなくても、顔でにっこりなすったかどうか。そういうことが絶対ないと、心配ないとおっしゃるかどうか。大臣の口からそこのところ最後にはっきり言っていただいて終わりたいと思いますので、よろしくお願いします。
  168. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 答弁は簡単に。
  169. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 削り取りについて毎年ということですが、病害虫の防除は、やはり果樹農家の場合は、特に自力でやるということがまず大事だと思います。したがいまして、一回、一年そういうことをやって実績があれば後は自分でやっていただきたいと、こういうのがわれわれの考えでございます。  それから、採択基準三ヘクタールにつきましても同じような考えで、小さな面積についてはこれまた自力でやっていただく。われわれとしては技術的な指導、援助はやりますので、そういうことを期待しておりますが、まあ弾力的にという点は、実行上はよく考えたいと思っております。  それから利子補給の七年につきましては、リンゴは御承知のように、矮化栽培、密植栽培で、このごろは実がなるまで期間が非常に短縮になっておりますので、そういうのをまた奨励しておりますし、生産団体もそれは結構な技術だということで努力をしておりますので、そういうことも考えていま五年と。従来ならば七年ぐらいあるいは必要かもしれませんが、そういう栽培技術の変化も考えながら五年といたしておるわけでございます。
  170. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私がアメリカを訪問した際に、米国から、サクランボのコドリンガの問題につきまして早期解決について要請があったことは事実でございますが、この問題につきましては、これは何らの約束もいたしておりません。これは政治的に解決できる問題じゃないわけでございまして、この問題は植物防疫上の問題でございますので、現在、日米両国の専門家の間で技術的に検討を行っておるわけでございます。
  171. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ちょっと、二分残っているから、ちょっと残した二分だけで――ごめんなさい。有効利用させてください。済みません。  確認させていただきたいんですけれども、改植という場合ですね、皆伐ではなくて、一本一本についても事業対象になるということは確認してよろしゅうございますかということですね。  それからもう一つ、改値した場合の融資について来年度予算要求に織り込まれているわけですけれども、これは低位生産園再開発等促進事業以外の自力で改植した場合にも対象として含まれるというふうに私たちは考えられるんですけれども、それも当然のことだということで確認してよろしゅうございますか。それだけ。
  172. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 一本一本の場合の三〇%以上一ヘクタールという基準が該当する場合には運用で考えていきたいと思っております。これは予算の取りぐあいにもよりますけれども、そういう考えでおります。  それから利子補給は、この事業だけではなしに、老木園の改植ということもあわせてやりたいと思っておりますので、それだけではない、腐らん病対策だけではないというふうに考えております。
  173. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 はい、わかりました。満額取ってください。
  174. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 日本の農政全体の立場から、重大な問題をいっぱい抱えておるわけでありますが、それを濃縮した形で沖縄もまたいっぱい抱えておるわけであります。時間がきわめて短いですので、私は一つ一つについて十分掘り下げていく時間がありませんので、特に前回の十一月十八日の農水委員会で質疑した問題と関連をして、時間がある限り続けてまいりたいと思います。  まず第一点は、輸入牛肉についての問題でありますが、政府調査したところによると、悪影響を与えるとは思わないという、こういうことでありましたので、それじゃそれはそれとして、私は私の立場で調査をいたしますと、まあ一応あのときに問答いたしましたので、私調査いたしました。その結果によりますと、過去の輸入実績、四十七年度は四千三百三十トンの割り当てに対して実績は三千三百十五トン、四十八年度は六千四百五十五トンの割り当てに対して実績は四千四百八十四トン、四十九年は五千六百五十トンの割り当てに対して実績は四千一百七十九トン、このように過去三カ年における実績は割り当てよりも下回っておるということであります。ところが、五十年度、本年度は二千四百トンの割り当てに対して五千五百四十トン、しかも、これは十月末で昨年の実績を大幅に上回っておる、こういう実情。さらに、牛肉は昨年より三五%上回っておることに対して、ことしの豚肉の消費量は二〇%落ち込んでおる、これが私の調査であります。したがって、きょうここでどっちが正しいか、どっちがどうというふうに比較検討しながらするこれは、私はきょうは差し控えたいと思います。一応、私の調査の結果はこうであると。これはまたいつかの機会に煮詰めてまいりたいと思います。  そこで私は、こういう深刻な実態を踏まえて、去る十二月四日に、畜産振興対策協議会の委員会が沖縄で開かれております。   〔委員長退席理事高橋雄之助君着席〕 そこでの問題点が、沖縄だけ特別割り当てされている輸入牛肉は、本土並み程度に移行させる、これを再確認いたしております。  第二点は、復帰対策要綱による特別輸入は、去る五月一日付で改正された畜安法の施行に伴い法的に根拠が消滅しておるのではないかという、こういう見解が出されております。  第三点は、本土では畜産事業団が輸入牛肉の九二%を握り、残り八%を民間貿易に輸入さして事業団で上限、下限の価格コントロールができる仕組みになっておる。で、沖縄では一〇〇%民間業者が輸入権を持って、その量も価格もその形成が不明確で、公的機関では全くコントロールができない、これが沖縄の実情であります。もちろん、これは復帰特別措置のあの時点でいろいろ配慮された結果でありますが、現状においては、現時点においては、このような片手落ちが出てきておる。前の委員会でも、両方の消費者生産者のこの調整を、行政指導の上からも十分やると、こういうことでありましたが、これについて。以上のこの三つの点についてどのようにいま考えておられるか、またどういう行政指導をなさろうとしておられるのであるか、まずこのことをお聞きいたします。
  175. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 沖縄に対しまする牛肉は特別割り当て制度をとっているわけでございますが、これはまあ御承知のとおり、沖縄の本土復帰に伴いまして輸入制度は一遍に変更してしまって、そのために県民生活に影響が出てくるということを緩和するためにとられた特例措置で、閣議決定で行っているものでございます。沖縄の特別枠が民貿扱いになっているために、県内生産を圧迫しているという事実は、私どもはそうは承知していないわけでありますが、これをいま御指摘のように、意見がありましたように、多府県と同様に畜産振興事業団の一元的な取り扱いとするということにつきましては、沖縄県の県民生活とか、あるいは食肉流通の実態等から見て直ちには困難じゃないかというふうに判断しているわけです。もちろんこの問題につきましては、消費者なりあるいは生産者なり沖縄県民の意向というものが基本的には左右する事柄でございますから、私どもといたしましては、ここの中央で、こうだ、というふうに一かつしてきめつけたような態度はとりたくないわけでありますけれども、いずれにいたしましても、そういったただいま御指摘のありましたような問題についての扱いにつきましては、地元の沖縄県を初めといたしまして、関係の諸機関の御意向を十分参照して、十分御意見を聞きながら、この問題については調整していきたいと思っているわけであります。もちろん、民貿におきましても、県民、県内の生産者との調整という意味で、たとえば余り価格が低過ぎるような場合には、調整金をとって対応するというような考え方もあるいは沖縄ではおありだというふうに、検討中だというふうにも聞いておりますので、よくそういった点につきましても――片方消費者の保護という立場もございますし、非常にその辺はむずかしい問題ではありますが、いずれにいたしましても、県の御意向というものをよく尊重して対処していきたいと思っておるわけであります。
  176. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの問題につきましては、結論としては、いわゆる特別措置法というものは、三十年近い格差がそのまま右へならへされたんじゃ大変なことになる、不利であると、こういう立場から配慮された措置法であるわけなんです。   〔理事高橋雄之助君退席委員長着席〕 ところが、できるならば一日も早く本土法に右へならへすることがいいわけなんですね。そういうことで、この五カ年を待たずして早く適用してほしいという面もあるし、また五カ年ではまだまだ追いつかないから延ばしてほしいという問題点もあるわけなんですね。それをいまいろいろと取り上げて検討しておる最中であると思うのですが、そういうことも、基本的にはいわゆる業者自体が、生産者自体が一日も早く本土法を適用してほしいという、こういう要望に対しては、むしろ政府としては前向きでこれにこたえていくということはいいことであり、また当然そうあるべきだと思うのですが、いかがですか。大臣どうですか、いまの基本的な問題。
  177. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま局長が申し上げましたように、特別枠を早く外した方がいいのか悪いのか、これは沖縄の消費者の立場もあります。また、生産者の立場もあるわけでありますが、現在のところでわれわれに入った、われわれがつかんだ情勢では、この特別枠を設定することによって沖縄の生産に悪い影響は必ずしも起こっていないということでありますし、また沖縄県庁からのいろいろな連絡によってもそういうことであります。まあ喜屋武さんは沖縄で与党の立場にあるわけでございますから、沖縄県庁を通じてのわれわれが聞いている情勢と、いまの喜屋武委員お話とは多少食い違っているようにも思っているわけで、まあしかし、これは非常に大事な沖縄県民生活全体に非常な影響のある問題でございますから、さらに沖縄の各方面の意見を十分慎重に判断をしながらこれに対処してまいりたいと、こういうふうに思うわけです。
  178. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いま大臣は、与党の立場ということをおっしゃいましたが、そういうことにとらわれずに、いわゆる県民の利益、国民の利益を守っていくという、こういう私は基本的な姿勢を持って、各それぞれの業者に耳を傾けていくということが最も大事であると思うのですが、与党の立場というと与党ベースでいくべきであると、こうお考えになっておられるのですか、いかがですか。
  179. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、そういうことで言ったのではなくて、県の方からわれわれがいろいろと連絡を受けているのは、いま喜屋武委員の、ここで御指摘されているような方向とは必ずしも一致していないわけですよ。ですから、県庁とも密接な連絡を持っておられるわけでしょうから、県の判断というのは喜屋武委員は一番よく御承知だと私は思うわけですが、われわれはそういう点について判断に迷うわけなんです。ただ、県だけの判断ではないわけで、全体的な、やっぱり沖縄県民全体の立場というものを十分判断してやらなきゃならぬわけですけれど、そういう点でまだまだ慎重に私は対処していかなきゃならぬと、こういうふうに思っているわけです。
  180. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そこで、私が申し上げたいことは、結局、行政当局の立場も尊重されぬといけませんが、もっと大事なことは、実際にその生産者の、その当事者の声をまた聞くという、両方調査をして慎重を期していくという、この謙虚な行政指導の態度、調査の態度が私は最も大事であると思うわけですね。こう一方ペースでいくということ、そういったかみ合わない面も出てくるわけでありますから、やっぱりそれぞれの立場からの言い分があるわけですから、そのようにひとつもっともっと行政指導を、公平にひとつ謙虚に臨んでいただくよう要望いたしたいと思います。  それでは時間がありませんので、第二問に移りたいと思います。  いままた問題になっておりますのは、この含みつ糖の問題であります、含みつ糖。県の糖業振興対策推進協議会が十二月一日に持たれておりますが、この含蜜糖保護対策協議会というのがまたこの協議会の中で持たれておりますが、「この沖縄の含みつ糖について生産地域を指定して、そして分みつ糖に準じて早急に保護を制定し、サトウキビ生産農家の所得と含みつ糖価格の安定を図ってほしい、」と、二番目に「含みつ糖生産地域はまあ生産基盤、工場の規模とかが零細な条件下にあるために基盤の拡充強化を図るとともに、工場の近代化に必要な助成措置を講じなければいけない。」と、三番目には「外国産分みつ糖並びに国内産再製糖は供給過剰にならぬよう行政指導を強化すること。」と、こういうことを集約してこの協議会でまとめられておるのでありますが、御承知のとおり、沖縄の農家の所得は本土農家に比較して六三%にすぎない、非常に低い所得である。その中で、さらに離島の、このいわゆる離島といいますと含みつ糖が主であります。この対策はさらに実情が深刻でありますが、そこで従来は御案内のとおり、原料代支払いは、補給金でカバーをしてやっとまあ維持をして今日までやってきたのでありますが、その価格差の補給金制度を来年度で打ち切るというまあ農林省方針らしい。こういうことで非常に心配をし、非常におびえておるようでありますが、そのことのまず信憑をお尋ねをして、もしそうだとするなら、これは非常に重大な問題でありますので、その制度をぜひ続けてほしい。打ち切ってもらってはいけない。さらに法制化をして保護をする必要がある、こう私は要求し、そのうわさが単なるうわさであれば結構でありますが、打ち切る方針であるということを聞いて非常にあわてふためいておるのが実情でありますので、それに対する御見解をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  181. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 含みつ糖価格差補給金は、第二次分の沖縄復帰対策要綱によりまして「当分の間、」「措置」するということに相なっております。現在の五十年の補給金総額は大体四億五千百万円で、国がその三分の二を負担することに相なっておりますが、これをまあきび代に直していきますと、大体一万一千円ぐらいのきび代に相なるわけでございます。したがいまして、一万六千百円のきび代のうち、補給金部分にかかわるということになりますと、一万一千円ぐらいが補給金にかかわっているというふうな計算に相なるわけであります。しかし、離島におきましては、きび以外につくれないし、それを分みつするわけにもまいりませんので、分みつ糖の現状でありますとか、あるいは御指摘のような分みつ糖しかつくれないという、そういう離島振興という観点から、補助の打ち切りにはいろいろの問題が私はあると思っております。ただ、しかし先ほど申し上げましたように、一万六千百円のきび代の中で、補助金にかかるものが一万一千円であるというふうな状態をいつまでも続けていけるかどうかという問題については、なお非常な問題を含んでおるのではないかというふうに思っております。したがいまして、離島対策の見地も含めまして、総合的に勘案の上、沖縄開発庁その他の関係機関とも緊密な連絡をとりつつ、今後の対策を十分検討いたしたいと、かように考えておる次第でございます。
  182. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ちょっともう一遍確認しておきたいと思いますが、まあ現地の要求といたしましては、いままでもいろいろと問題はあったが、原料代支払い補給金について、たとえばトン当たり去年は五万二千円でしたですかね、でまあカバーしたと。ところが、前期の二倍――去年は五万二千円で、今度は十万円以上にその補給金を必要とすると、こういう要望もいたしておるわけでありますが、結論的にはこう受けとめてよろしゅうございますか。この補給金の問題につきましては、打ち切るようなことはない、そして恒久的な保護措置の必要があると訴えておるわけでありますが、それに対しては単に農政の立場から、きびだけを、含みつ糖だけを云々というのではなく、離島振興、僻地振興の一環としてこの問題も含めて検討して、心配のないようにしていく。いわゆる離島振興開発の一環としてこの問題も検討していく、こういうことなんですね。
  183. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 私の方としましては、五十年、五十一年――まあ来年度をすぐ、これを五十年度でどうする、こうするというふうには思っておりません。五十一年度も所要の措置を講ずる必要があると思いますが、まあ「当分の間」というのをどの程度と考えるかということは、いろいろ議論のあるところでございまして、したがいまして、今後の問題としましては、早く言いますと五十二年度以降の問題としては、先ほど申し上げましたように離島振興の観点をも含めましていろいろな対策を検討してまいりたいと、かような趣旨でございます。
  184. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ぜひひとつ、この離島振興全体の分野に立ってこの問題も検討していただいて、その趣旨に沿うようにひとつがんばってもらうよう要望いたしておきます。  それでは、それと、いまののと関連がありまするが、例のサトウキビの問題につきましては、最低トン当たり二万一千円を要求したにもかかわらず、トン当たり一万六千百円と、こういうことになったわけなんですが、この点は去年一万五千円になったということで不満足ながらも一応、再生産意欲を高めつつあったということは事実なんです。そういうやさきに、一万六千百円というのは、いろんな情勢から集約いたしましてどうも不満である、こういうことでいま現地では、これに対する抗議なんかも村議会で決議したところもある状態であるわけですが、去年はそういうことがなかったのです。それだけことしは不満であるという一つのあらわれだと思うんです。  ところで、向こう三年間で十五億円をめどに国庫支出する、こういうことが決まったわけでありますが、そこで、第一点は、向こう三カ年ということは、いつからいつまで、何年度から何年度までを意味するのであるか。それから、その十五億円は、生産者の強い要望は価格に上積みすべきであると、また、私もそれを強く主張いたすわけであります。価格に上積みしてほしいと、こう要望いたします。  この二つの点、向こう三カ年というこの向こう三カ年は、いつからいつまでかということと、そして生産価格に上積みしてほしいというこの要望に対してどのようにお考えであるか、それをお尋ねしたいと思います。
  185. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 十五億円の支出の仕方につきましては、現在なお検討中でございますけれども、生産の合理化、近代化に役立つような事業に使えるようにしたい。たとえて申し上げれば、新植の促進、あるいは病害虫の防除、あるいは省力化を図るための機械の導入というようなことに、そういうような事業を実施するのに役立たせるような使い方をしたいというように考えております。これは価格の上積みというわけにはまいりませんが、この考え方が出ましたときのいきさつ等も考えまして、なるべく幅広く栽培農家に行き渡るようなやり方で事業を実施していただくということを考えております。なお、これを政府部内で決めました際には、明年度から三カ年ということを一応考えておりますが、今年度の予算で実施可能ならば、今年度に一部は繰り上げて実施することも検討したいと思っております。
  186. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 じゃ、この問題につきましてはぜひひとつ、私もそれを要望を申し上げたいと思っております。ぜひ今年度の予算でそれを出発さしていただきたい。このことを要望いたします。  それから、上積みということがむずかしいと、こうおっしゃるのですが、これはもう再考の余地がないのであるか、再検討の余地がないのであるかどうか、その点いかがですか。
  187. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 価格の上積みということにはまいらないというふうに考えておりますが、先ほどお答えしましたように、なるべく広く全生産者に行き渡るような事業を実施していただけるようなやり方で、いわば選択的に、やりいいような種目が選べるというような補助の仕方を考えて、なるべく普遍的に行き渡るような支出の仕方を、補助の仕方を検討をしておるところでございます。
  188. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 価格に上積みしていただけば、本当に再生産意欲をさらに爆発さして一生懸命にやる、私はこう思いまして、それを強く重ねて要望いたしておきます。  それでは次に、第四問に移ります。第四問はパインの問題であります。パイナップルの問題であります。沖縄県産のパイナップルの優先消化と二十万ケースの外割り発行に踏み切ったことに対しては、いままでもいろいろ論ぜられたのです。ところが、やっぱり生産者には非常に不安がまだございます、ということを一応申し上げまして、第一点は、沖縄県産の消化のため、輸入業者に県産品との抱き合わせ販売の行政指導をしていただくならば、さらにその不安の一端が消えて安心をするのではないか、こう思いますが、そのことが無理であるとお考えであるのであるか。無理ということであれば、それはどういう理由であるのか、そういった点ひとつお聞きしたいということ。  第二点は、パイナップルの消化の方法につきましては、冷凍パインとかいろいろ関連もあるわけですが、今回一貫して強調されたことに、濃縮ジュースの問題がございます。濃縮ジュースですね。そこで、現地でも非常にやっきになってそのジュース工場を建設しよう、こういう意欲があるわけなんです。それに対して六〇%の国庫補助を県議会としても決議要求をいたしておりますが、その点についてひとつお伺いいたしたいと思います。
  189. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 輸入パインかん詰めと沖縄県産のパインかん詰めの抱き合わせ販売を行政指導をやることによりまして、沖縄県産のパインかん詰めの消化を促進することができないか、というお考えでございますが、一つの考え方かと思いますけれども、沖縄県産のパイナップルかん詰めの取り扱い商社は、現在二十一社あるわけでございますが、この中には、輸入関係を全然やっておらないという商社がございます。さらにまた、グローバル品の輸入かん詰めの割り当てを受けて輸入しております商社が約六十社ちょっと上回るようですが、六十社以上あるわけですが、そのうち四十社程度は、約四十社は、これは沖縄関係のものは全然扱っておらないというような実情でございますので、御提案のございますような、輸入かん詰めの輸入をするものが、沖縄かん詰めを抱き合わせで買わなければいけないというようなことにいたしますと、流通が非常に混乱をする、また業者としては非常に困るというようなことが出てまいりますので、現段階で直ちにそのような案を実施するというのは非常に困難であるというように考えております。  それからジュース工場の御質問でございますが、御指摘のように、現在来年度予算編成に絡んでそのようなことを検討いたしております。一応要求段階で六〇%補助ということで、工場の建設予算を、補助を要求しておるわけでございますが、六〇%は非常に高率な補助で、われわれとしては沖縄の特殊事情、その中におきますパイン産業の特殊事情、そのジュース工場建設によりますパインジュースの消費拡大というのは、沖縄パイン産業の今後の発展のために非常に重要なポイントになるということを考えまして、できるだけ高率にしたいというふうに考えて努力をしたいと思っております。
  190. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 喜屋武君、簡単にして下さい。
  191. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 はい。それでは最後に、沖縄の、いま当面抱えている最も深刻な問題、いわゆる失業対策の問題であります。この失業対策と第一次産業――これはまあ第二次産業との関連もいろいろあるわけでございます。特に第一次産業とこの沖縄の失業対策、これはもう深刻であるということは御存じだと思います。総理府統計局発表によりましても、全国平均は一・九%で百三万人、沖縄県は六%、二万四千人、まさに全国平均の三倍の失業率になっております。これは、いろいろ要因はありますが、軍雇用者の一方的な解雇、あるいは海洋博関連における解雇、あるいはそれに関連した企業倒産の解雇、こういうものがもう輪に輪をかけて本土の三倍にもなっておるわけであります。この問題は、あるいは労働省その他の省も関係あるわけでありますけれども、特にこの機会に農林大臣にも、この沖縄における失業の実態と、雇用問題はもう深刻中の深刻な問題である、こういうことを私は強調いたしておきます。調査によると、五%以上の失業率の社会は暴動の起こる要因を持っておるとも言われております。そこからいろいろな社会悪がいろいろな形であらわれてくるのもこれは当然だと思います。まさに沖縄はその類例のない世界一とも言いたいほどの失業率を持っておるという、こういう中で、ひとつ大臣としてその問題をどうとらえ、どう解決していこうと思っておられるかということを最後におっしゃっていただきたいということ。  それから一つは、答弁が漏れておりました問題。これは後で答えていただいて結構でありますが、この復帰対策要綱による特別輸入が、五月一日付で改正された畜安法の施行に伴って法的根拠が消滅しておるのではないかという疑問が、見解が沖縄にあるわけなんですね。そのことが法的に根拠があるのかないのか、私も十分によくわかりませんのでそのことを、きょうでなくても結構ですから、一応問題として提示しておきますから、御検討願いたいということを重ねて申し上げて……。それから、県産のこの今期の製造分の代理店引き取り分――これはパイナップルでありますよ。代理店引き取りの計画は順調に行っておるか、心配ないか、このことを念を押して、大臣から、私の先ほどの質問と、これに対する御見解を承って、終わりたいと思います。
  192. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま、日本全体が不況であり、失業問題も深刻になっておるわけでございます。したがって、まあ政府としても第四次景気対策を実施をいたしておるわけでございますが、なかなかこれによっても景気回復がはかばかしくいかないという状態にあるわけでありまして、もちろんその中にあって、沖縄はまた沖縄のいまお話のありましたような特別な事情もあって、深刻な状況にあるのではないかと思うわけであります。この不況対策、失業対策等はこれは政府全体として取り組んでいかなければならない大きな問題でございますが、農林省としては、第四次不況対策の中にあっても、公共事業につきましては、特に基盤整備等も積極的に推進することになっておるわけでありますし、来年度も公共事業を推進することによって景気回復を図ろうという大きな方針を立てておるわけでございますが、そういう中にありましてこの沖縄につきましては、基盤整備等も本土と比べると遅れておるわけでございます。政府としても、これまでそれに対しては特に力を注いでまいりましたが、来年度予算等におきましても、農林省のできる基盤整備の充実等によるところの景気の回復等には特に力を注いでまいりたいと、こういうふうに思っておるわけであります。
  193. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) パインの引き取りは、年内四十ないし五十万ケースでございますが、十一月末で四十三万五千まで行っておりますので、順調にいくと思っております。
  194. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時二十六分散会      ―――――・―――――