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1975-12-11 第76回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十一日(木曜日)    午前十時三十四分開会     —————————————    委員異動  十二月十一日     辞任         補欠選任      河田 賢治君     小巻 敏雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         加藤 武徳君     理 事                 世耕 政隆君                 林  ゆう君                 上田  哲君                 片岡 勝治君     委 員                 岡田  広君                 源田  実君                 戸塚 進也君                 中村 太郎君                 八木 一郎君                 山本茂一郎君                 秦   豊君                 藤田  進君                 太田 淳夫君                 峯山 昭範君                 小巻 敏雄君                 内藤  功君    国務大臣        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       植木 光教君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       佐々木義武君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長      渡部 周治君        内閣総理大臣官        房同和対策室長  今泉 昭雄君        行政管理庁行政        管理局長     小田村四郎君        科学審議官    福永  博君        科学技術庁長官        官房長      小山  実君        科学技術庁原子        力局長      生田 豊朗君        科学技術庁原子        力局次長     山野 正登君        科学技術庁原子        力局次長     半澤 治雄君        外務省条約局長  松永 信雄君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        内閣官房内閣審        議官       安仁屋政彦君        行政管理庁行政        管理局管理官   山本 貞雄君        法務省人権擁護        局調査課長    宮本 喜光君        資源エネルギー        庁公益事業部計        画課長      柴田 益男君        運輸省船舶局首        席船舶検査官   謝敷 宗登君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  本日、河田賢治君が委員を辞任され、その補欠として小巻敏雄君が選任されました。     —————————————
  3. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。佐々木科学技術庁長官
  4. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 科学技術庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  原子力開発利用は、現下のエネルギー問題に対処してわが国エネルギー安定供給確保するため、大きな役割りを果たすものであり、政府としては、その推進努力してきたところであります。  しかしながら、その安全性については、必ずしも国民から万全の信頼を得ているとは言いがたい状況にあります。政府は、原子力平和利用推進に当たっては、まず第一に、その安全性確保のために万全を期し、国民理解協力を得なければならないと考えております。このため、研究開発安全規制とを同一の局で行っている現行の原子力行政体制の中から、原子力安全規制等原子力安全確保に関する機能を分離、独立させ、これを強化することにより、安全確保の明確な責任体制を確立することがぜひとも必要と考えるものであります。  なお、これとあわせて、安全を確保するために必要な試験研究等についても、抜本的な強化を図り、安全の確保に万全を期したいと考えております。この法律案は、このような観点から、現在の原子力局事務のうち、核燃料物質及び原子炉に関する規制に関する事務原子力利用に伴う障害防止に関する事務等原子力安全規制に関するものを分離し、これを一体的かつ効率力処理する体制として、新たに原子力安全局を設置するとともに、その所掌事務を定めようとするものであります。  なお、これらの改正とあわせて、科学審議官の定数を三人以内から一人に減じ、原子力局次長二人を廃止して原子力安定局次長一人を置くため、所要の改正を行っております。  以上がこの法律案提案理由及び要旨であります。原子力の安全の確保重要性について、皆様の深い御理解をいただき、何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
  5. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 以上で説明は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 秦豊

    秦豊君 それでは、私は、総理府所管の事項につきまして、ぜひとも植木総務長官に伺っておきたい問題が引き起こされています。  長官つとにもう御存じだとは思いますが、念のために。内容は、ごく最近、全国五千六百ヵ所の被差別部落所在地新旧二つ地名で示して、おまけにそれぞれの世帯数職業などを詳細に記載した「人事特殊部落地名総鑑」」なる本が、対象として全国の大企業などの人事担当者をねらって集中的に、しかも極秘で販売されていた事実があります。B5版、六百十ぺ−ジ、価格三万円となっているわけですけれども、その内容を見ると、新旧で大字、小字まで含めた詳細な地名所在地ごと世帯数職業ども記載されています。なかなか詳細なものです。  これについてはすでに各日刊ジャーナリズムがかなり大きな扱いをしておりますし、これは朝日新聞の記事ですけれども、かなり反応と世論が鋭く盛り上がっているわけですが、これについて部落解放同盟の大阪府連合会上田卓三委員長によると、これは公然とした差別の助長である。公然とした文書、言動上の差別はいまや姿をひそめていたと思っていたけれども、今回のこの「総鑑」のような露骨な差別には怒り以上のものを感じる。何代もさかのぼって出身をあばいて差別をしようとする資料が公然と販売され、現実にそれを各大企業上場会社等人事担当者が買っているという現状は、まだまだ企業自体が被差別部落出身者を明らかに差別をしている、そういう固定観念を変えていない、締め出すような姿勢であることの何よりの証拠じゃないだろうか、このような本の発行自体水平社創立以来の解放運動史上でもかつて例を見ないほど悪質きわまる行為である。差別が生き続け、しかもそれが非常に悪質巧妙北している具体的な証拠でもある。このように上田委員長は述べています。  そこで、総務長官に伺いたいんですけれども、この件についてはつとに御存じですね。
  7. 植木光教

    国務大臣植木光教君) いま御指摘の「特殊部落地名総鑑」が発行されましたことにつきましては、私も承知いたしておりまして、これは部落差別を拡大助長する悪質なものでありましてまことに遺憾なことであるというふうに、私考えております。
  8. 秦豊

    秦豊君 そういうふうにまともに受け取っていらっしゃる姿勢が大変私好ましいと思う、当然だとも思うわけですけれども、いまのように所管担当大臣として確かに遺憾という言葉が即座に出ることは常識的な反応だと思います。しかし、特にこの委員会での私に対する答弁というものにアクセントをつけて、このようなことはまことに好ましくない、今後再び惹起されてはならないという意味合いで、特別に総務長官談話を公表されるというおつもりはありませんか。
  9. 植木光教

    国務大臣植木光教君) ただいまこの問題につきまして、私はいろいろな措置につきまして指示をいたしているところでありまして、すでに十二月九日のあの新聞に報道されました当日、同和対策室におきまして、関係省庁担当者にお集まりをいただいて、適切な措置をとるように協力方を依頼いたしました。また、本日は同和対策協議会幹事会を開催することにいたしております。このような重大な問題でございますから、これが二度と起こらないように対処をしてまいりたいと存じております。  当面の対策といたしましては、本冊子を回収して焼却することが大切であります。また発行者及び購入した企業に対しまして、人権侵犯事件としての処理を行うべきであると考えます。  第三番目には、本日の同対協の幹事会において結論を得たいと考えておりますが、企業者団体及び地方公共団体に対しまして、各省連名によりましてこのようなことが再び起こらないように通達を出したいと、こういう考え方でございます。いずれにいたしましても、総理府といたしましては重大な問題だという認識を深く持っておりますので、二度とかかる事件が起こらないようにいたしたいというのが私の信念でございます。
  10. 秦豊

    秦豊君 一つ一つ妥当な処置だと思うんです。私自身は、不用意というか、このような差別を行った者についての処罰などを考える、そういう立場にはないんです。けれども、今度の事件はなぜ許せないかというと、営利のために、差別を拡大するために、きわめて意図的な刊行物であるという問題点がある。また政府は、営利のために差別を行う者に対して、法的に言えば何らこれは規制対象にならないという見解を、まあ伝え聞くところによれば法務省の一部などが持っているように仄聞しています。しかし、仮にこのようなケースが行政上のどの接点にも引っかからない、全然チェックできない、歯どめがないとなると、たとえば植木さんや歴代の総務長官が、私どもの目から見ると不十分だがあなた方なりの範囲の善意の中で同和対策を進めている、その行政の足元をいわば掘り崩すようなことになりかねない。私は意外に、意外というより当然ですが、この問題というのは重要な意味合いを持っていると思うんですね、壬申戸籍ではないけれども。  そこで、確かにきょう連絡会議を開かれる、発表もされる。一応報道はされるでしょう。しかし、こういうふうな営利のために差別を拡大するというふうな業者、個人に対して行政は全く無力なのか、あるいは何らかの措置をとれないとすれば大変問題だと私は感じているんですけれども同和対策空洞化を恐れる立場から、総務長官から、行政上どのような措置が可能か、あるいはそれを目指して考えているのかどうか、その辺をもあわせて伺っておきたいと思う。
  11. 植木光教

    国務大臣植木光教君) ただいま秦委員が御指摘になりましたように、営利目的といたしましたこのような事業は最も悪質でございます。憲法上保障されました基本的人権にかかわる差別問題全般が問題でございますけれども、特にこのように営利目的とした事件は最も悪質であると私は考えております。この事案の事実関係につきましては法務省ですでに調査中でございます。したがいまして、法務省として一体この調査の結果に基づいてどのような措置をせられるかということを私どもも注目をいたしているところでございまして、とりあえず、先ほど申し上げましたように「地名総鑑」の焼却をさせたいと存じます。これにつきましては、発行者本人はもとよりでございますが、総理府法務省関係職員立ち会いのもとでこれを行いたい。すでに御承知かと存じますが、まだ売却されたものは少数でございまして、ほとんどが保存をされておる状況でございますから、とりあえずこの焼却をいたしたいと、こういうふうに考えております。
  12. 秦豊

    秦豊君 この「総鑑」のセールス用に刷られたチラシのようなものを見ますと、こんなことを書いてあります。「部落問題の抜本的な解決策がない現状では、八鹿高校事件のような事は企業においても起こり得ないとは断言できません。」などというきわめて刺激的な表現があるわけです。このようなことは、やっぱり藩閥政権以来非常に根強い差別意識一つの反映なんだけれども、一部政治勢力差別キャンペーン等によってもこれは助長されているということが考えることのできる、やはり国民の中にまだまだびまんし、まだまだ潜在し、何か折に触れて顕在をするという差別意識の私は表現だと思うんです。したがって、このようなこと一つ一つをわれわれは見過ごしてはいけない、こういう立場に私は少なくとも立ちます。また、言いかえれば、このような表現を許すということは、せっかく努力をされているではありましょうけれども、まだまだ政府側国民啓発するための努力が足りないのではないか、私はそう言わざるを得ない。その一点については植木長官どのようにお答えになりますか。
  13. 植木光教

    国務大臣植木光教君) ただいま秦委員指摘のとおりでございます。この差別意識の一掃のために私ども同和対策事業特別措置法及び同和対策長期計画基本といたしまして諸事業を進めておりまして、その中で物的な施設の充実と並行いたしまして意識の問題が重要でございますから、したがって、その点につきましては「まず隗より始めよ」でございまして、国家公務員に対する同和問題の研修を行っておるところでございますし、また、一般国民に対しまして同和問題講演会を主催をするのに対しまして私どもは助成をいたしております。国民理解協力がなくては同和問題の解決はあり得ないというのが同対審考え方であり、また特別措置法にも明らかにされているところでございますから、したがって、そういう認識を強く持ちまして啓蒙活動についても今後その充実に努める所存でございます。  なお、総理府同和対策室に計上をせられております啓蒙予算充実をさらに図ってまいりたいと存じますし、総理府広報室におきましても、この問題のために、たとえば同対審答申の十年を記念をいたしまして、特別にこの問題についての啓蒙番組を組んで放送をしたというようなこともございます。あるいはパンフレットをつくっているというようなこともございます。労働省におきましても、雇用主に対する啓蒙指導費を組みまして指導をしているところでございますが、いずれにいたしましても、いま御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましては、政府啓蒙啓発活動地方自治団体と一体となりまして強力に進めてまいりたいと存じております。
  14. 秦豊

    秦豊君 同対審答申にいま間接的にお触れになったわけですが、国民啓発する義務というのは確かに政府側行政義務だと。で、いまおっしゃったようなことに関連して、今年度の予算では具体的に幾ら計上されているんですか。具体的にどんなことをなすっておりますか。
  15. 植木光教

    国務大臣植木光教君) 先ほど申し上げました同和問題の国家公務員研修費が百七十万円でございます。また、同和問題後援会委託費として七百七十五万円でございます。それから、労働省が組んでおりますのが雇用主に対する啓蒙指導費でございまして、九百九十五万円でございます。その他法務省啓蒙活動費を組んでおられると承知をいたしております。さらに、先ほど申し上げましたように、総理府広報室の持っております中で随時啓蒙活動を行っているというのが現状でございます。
  16. 秦豊

    秦豊君 ざっと伺いましても各省庁にまたがって概算二千万足らず、これは啓蒙活動費としてはまさに二階から目薬の感もあって非常に微少だという印象をぬぐえません。とりあえず、今後長官行政責任において、あなたの見識の中で、たとえば来年度予算編成期にいまありますけれども明年度予算等から、予算を大幅に増額をして、腰を据えた取り組みをするんだというお気持ちがおありかどうか、予算に関連して伺っておきたい。
  17. 植木光教

    国務大臣植木光教君) ただいま五十一年度の予算でございますけれども、たとえば公務員に対する研修費といたしまして、七百七十五万でございましたものを約五千万円要求をいたしております。1失礼いたしました。同和問題の啓蒙活動費全体といたしまして約五千三百万円を要求をいたしております。そのうちに国家公務員に対する研修費等が含まれているのでございます。
  18. 秦豊

    秦豊君 十一時から長官の所用がおありのようですから、それを尊重したいと思いますが、最後にあなたに対する要望として、きょう一連の打ち合わせが終わった後は、できれば総務長官談話というふうな形式をも具体的に考えていただきたい。これは私の要望です。長官の方はこれで解放して差し上げたいと思います。
  19. 植木光教

    国務大臣植木光教君) 総務長官談話を発表いたしますように協議をいたします。
  20. 秦豊

    秦豊君 わかりました。  この問題に関連しまして法務省側に伺いたいと思います。法務省はいまこの事件については人権侵犯事件として調査中ですか。
  21. 宮本喜光

    説明員宮本喜光君) 御指摘のとおり、この事件については現在東京法務局において人権侵犯事件として調査中でございます。
  22. 秦豊

    秦豊君 念のために事実関係の確認という意味を含めて伺っておきたいんですが、印刷部数、それから販売実績、それから本の回収焼却についてはいまどの段階までまいっておりますか。
  23. 宮本喜光

    説明員宮本喜光君) 印刷部数は「地名総鑑」が四百部でございます。このうち五部売却されておりました。それから出版案内書が一千部印刷されております。これが約八百部発送をされております。このうち、本人が保管していたものは全部昨日までに任意提出という形で受けまして、現在東京法務局で保管中でございます。ですから、その分については他に散逸するおそれはなかろうというふうに考えております。案内書の方については、案内書送付先がかなり多くなっておりますし、どこに発送したのか必ずしもつかめておりませんので、現在それについては発送先調査中でございます。それについても順次回収して焼却するという予定にしております。現在回収してあるものについては全部焼却するという予定でございます。それについては本人も了承しておりますし、先ほど総務長官お話しのように、関係各省の係官が立ち会いの上で全部焼却をするという予定でございます。
  24. 秦豊

    秦豊君 法務省サイドとしてはこれからですけれども出版をした企業印刷所、それから発行人等指導については、なるほど私自身もこれは認識はしておりますが、法的にははなはだもってあいまいもことしていて接点がないだろうとは思いますけれども法務省の感覚から見ると、どのようになさるおつもりですか。またどのようなことが可能でしょう。
  25. 宮本喜光

    説明員宮本喜光君) 私どもの方といたしましては、強制権限がございませんので、もっぱら自由人権思想普及高揚という立場啓発活動を行う、説得による啓発活動でございます。したがいまして、この事件についても発行者印刷所購入者等については厳重に説得をし、啓発をして、二度とこのようなことのないように対処してまいりたいというふうに思います。それから、単に買ったとか発行したとかいう人たちだけではなくして、少なくとも案内書送付を受けたようなところに対しても、これはとんでもないことなんである、十分今後注意してほしいということも啓発する予定でございます。それから、事件処理段階にまいりましたらば、これは私どもとして何らかの方法で一般的に啓発をしたいというふうに考えております。
  26. 秦豊

    秦豊君 この原稿はどうなっているんでしょうね、オリジナルの。それから本の内容からしますと、一々手書きとはとても考えられない。やはり官公庁作成文書を使った形跡、可能性、これを私は疑っています。それについてはどうお考えになりますか。
  27. 宮本喜光

    説明員宮本喜光君) 印刷原稿につきましては、印刷所から納付を受けた際に本人回収をしまして焼却したというふうに述べております。  それから、出所の関係でございますけれども、私ども官公庁資料としてすぐ思い浮かべるのは、昭和四十六年に行われた総理府全国調査がございますけれども、これと同一かどうかということを確認いたしましたところが、地区数世帯数その他の記載欄の点から考えまして、かなりな相違がございます。したがいまして、四十六年調査がそのまま流れて使われたということではなかろうかというふうに現在のところ考えております。
  28. 秦豊

    秦豊君 資料はやはり官庁関係から入手したのではないかという心証をぬぐえないんですよ。いまのところ総理府ではないと、こう明言をしているんですが、だとすればおたく官庁法務省なのか自治省なのか、疑わしい官庁はあるんですよ。もちろん他の官庁のことに言及することは避けようとなさるんですけれども調査課長はどう考えていらっしゃいますか。
  29. 宮本喜光

    説明員宮本喜光君) 私どもの方といたしましては、昭和四十六年の総理府調査以外にさしあたっての官庁資料ということは思い浮かべなかったものですから、それとの対比で先ほど申し上げたようなことになっているということを申し上げているわけでございます。
  30. 秦豊

    秦豊君 この版元というか、発行人なんですけれども企業防衛懇話会理事長京極某という人物なんですけれども、これは解同大阪府連の調査によると、姫路生まれでたしか三十六歳、総会屋の名簿を出して売ったり、そんな男なんです。その男が、およそ四百部で割引制度でも三万円で総額一千万を超えるような本を、あなた方のチェックに遭うといとも簡単に焼却する、潔い、気前がいいということは、普通の経済常識ではこれは考えられないわけですね。むしろ強力なオーナー、スポンサーがいてやらせられたのか、背後組織というような言葉を使うとやや大仰になるやもしれないが、この男のいわゆる裁量でできるような金額じゃないわけです、いままでの彼の経済活動からすると。そうすると、その背後関係というか、そういうものについても法務当局としては一応お調べの対象にされていますか。
  31. 宮本喜光

    説明員宮本喜光君) その点を含めて調査中でございます。
  32. 秦豊

    秦豊君 いま私が時間をはしょって問題点だけをピックアップしましても、大変広がりのある問題、大事な問題だと思うんですよ。所管がまたがっていますね。今後はどこの官庁責任を持って、中心となってこの問題を追及されるのか。やっぱり調査、捜査という関連があるからおたく中心になるわけですか。
  33. 宮本喜光

    説明員宮本喜光君) 人権侵犯事件としての調査処理は私どもの方で担当するということになっております。これについては調査処理だけではなくして、啓発の問題がございますので、その点については関係省庁協力をしてやっていきたいというふうに考えております。それについては、先ほど総務長官のお話のとおり、総理府の同対室が中心となっていま協議中でございます。
  34. 秦豊

    秦豊君 この項については最後の質問にしますが、今泉対策室長いらっしゃいますか。  あなたから、すでに長官には伺いましたけれども、今後この種事件に取り組む決意、あるいは再発をあくまで防ぎとめるというふうな意味を込めて、対策室長としての総合的な考え方最後に伺ってこの問題については閉じたいと思います。
  35. 今泉昭雄

    政府委員今泉昭雄君) 先ほど総務長官からお答えいたしましたとおり、この種事件の二度と起こらないように、私どもといたしましては、人権侵犯事件簿調査につきましては法務省所管でございますが、その他やはり二度と起こらないように関係団体への通知、啓発指導あるいは国民一般へのマスコミ等を活用します啓蒙等を活発に行いたい。この点につきまして、私どもの部屋を中心といたしまして、関係各省相集まりまして協議いたしてまいりたい、このように思っております。
  36. 秦豊

    秦豊君 佐々木長官、お待たせをしたわけですが、あなたの方から先ほど提案理由説明があった問題に移りたいと思います。  佐々木長官に伺う前に、あえて通産の皆さんから確かめたおきたいやや緊要な問題がありますので、それを確かめておいてから本論に移りたいと思います。  柴田課長に伺いますけれども、東北電力の女川原子力発電所ですが、電気事業法に基づく「電気工作物の設置及び事業の開始の義務」に関連をして伺いたいのです。この設置の許可というのは、これは四十五年の十二月十日というふうに私ども調査ではなっていますが、間違いありませんか。
  37. 柴田益男

    説明員(柴田益男君) 先生おっしゃるとおりに、四十五年の十二月十日でございます。
  38. 秦豊

    秦豊君 この法律によると、許可の年限、期限というのは五ヵ年間ですか。
  39. 柴田益男

    説明員(柴田益男君) さようでございます。
  40. 秦豊

    秦豊君 そうすると、去る十二月の五日に、さらに五十四年の八月九日まで、これは言いかえれば四年八ヵ月になると思いますが、四年八ヵ月許可を延長した事実がありますか。
  41. 柴田益男

    説明員(柴田益男君) 御説のとおり、四年八ヵ月の延長を許可いたしました。
  42. 秦豊

    秦豊君 この女川ですけれども、これまで三回も、一回、二回じゃなくて三回も運転開始時期を延期しているんです。私ども調査ではそうなんですが、非常にこれは希有なことなんですよ。一回ぐらいの原発はざらにあるんです。三回も延ばし延ばし延ばしてやっている原発というのは非常に珍しい。そうなっている原因はどのように把握されていますか。
  43. 柴田益男

    説明員(柴田益男君) 女川原子力発電所の運開時期の件でございますが、四十五年の十二月に第一回の許可がありまして、五年の期間を定めたわけでございますけれども、今回二回目の延長がございまして、対役所の関係、許認可の関係では二回目の延長でございます。内部の検討の段階では、運開時期についてあるいは検討が行われたかもしれませんけれども、役所サイドの許認可の関係につきましては今回二回目でございます。  今回延長の申請が出てまいりました理由について検討いたしましたところ、地元の漁業組合の同意をまだ十分得ていない、今後折衝して近く得られる見通しであるということでございましたので延長を許可いたした次第でございます。
  44. 秦豊

    秦豊君 大変気楽におっしゃっていますけれどもね、問題を含んでいるのですよ。電源開発促進法による電源開発調整審議会、いわゆる略称で電調審と呼ばれているようですが、そこの実績によりますと、いままでの原発というのは許可を出すときにはすでに漁業補償等については話し合いがついている、ついているという事実を踏まえて許可するのです。そうなんですよ。いまあなた五ヵ年間の期限が切れる、このときにもう漁民の反対が熾烈なんです。現実に私どもの仲間が調べに行ったのだけれども、十二月七日のたしか日曜だったと思うが、その日にもあなたの言われた三つの町にまたがる漁業協同組合の働く人々が数百人反対集会をしているくらいなんです。反対運動というのはますます輪が広がっているのですよ。手軽なものじゃないのですよ。電調審の実績では、私の申し上げたように補償が終わっているものについて許可を出すのです。女川はその手続を踏んでいない。これは大変問題なんです。なぜ女川の場合にそのようなことを承知の上で性急に認めたのか、行政行為としてはいかにもずさんだという印象を私は持っているが、どうなんですか。
  45. 柴田益男

    説明員(柴田益男君) 電調審での審査の基準なりあるいは当省でやっております電気事業法八条の認可の基準は、社会情勢に応じて変容してきているわけでございまして、四十五年当時におきましては、電調審あるいは電気事業法の八条の認可は、地元の宮城県あるいは地元の女川町あるいは牡鹿町の誘致決議あるいは原子力発電所を建設するための海象調査に対する漁業組合の同意、そういうことを念頭に置きまして電調審なり八条許可が行われたわけでございまして、四十七年以降につきましては、地元の意向を十分尊重して、大勢が固まったところで許可すべきだろうというふうに運用もきつくしてまいりました。現段階におきましては、計画が確実に実行されるということについての確証を得た場合にこれを認可することでやっておるわけでございます。  本件につきましては、その後の報告によりますと、地元の四つの漁協のうち三つの漁協、女川漁業協同組合を除く三つの漁協につきましては同意の文書をとっているようでございます。女川漁協につきましては、関係の地元の漁民の方の三分の二の同意を得ているということで、漁業権消滅についての一応規則上の要件を満たしておるということを聞いておりますので、それに従いまして延長許可をいたした次第でございます。
  46. 秦豊

    秦豊君 それがおかしいのですよ。大体通産というのは企業側に甘いのはこれはもうあなた方のくせなんですよ。抜きがたい牢固としたこれは弊風だと思うのだけれども、五年たっていまごろ三つの漁協の応諾書というのをとった、それを認識したから延長を認めてやった。五年たっているのですよ、あなた。五年前に許可をすべきでなかったものを認めていたから今日このていたらくになっている。そもそも原発については許可が大変甘いという、もう実にこれは生き生きした例なんです。  それでは伺いますけれども、いままで女川原発というのは、どんな工事が終わっているんですか。
  47. 柴田益男

    説明員(柴田益男君) 工事の面につきましては、地元との同意が実質的に得られるまで工事を進めないということで、われわれは現在いずれの工事も行われていない、そのような報告を受けております。
  48. 秦豊

    秦豊君 だから、つまりあなた方はすべて企業側の自己規制というか、自主管理というか、非常に企業側を信用し過ぎているんだ。私ども調査では送水管の工事しか終わっていないんですよ、送水管ですよ。原子炉本体とかそんなのは全くお話にならない。そんなのは影も形もない。送水管というものしか終わっていない。いままであなた方の行政裁量の中では、許可の中では、いろいろな原発が工事が大体おくれるでしょう、周辺住民の反対が強いから。そうすると、既成事実で見切り発車しちゃうわけだ。ぱっと進めてにっちもさつちもいかなくなって通産省に泣きつく。あなた方は物わかりがいいから、企業に言われるとノーと言ったためしはかつて一度もない。そうして期限延長を認める、許可を延ばすというのがあなた方の姿勢なんです。それはゆっくりいまから議論しますけれども、期限延長の先例としてはどんなのがありますか、ほかの原発を引用してもらって。大体幾ばくかの工事が進んでいるものについて許可を与えてきたのが先例じゃないですか。女川みたいに送水管の工事しか終わっていないだけの、まるで海とも山ともわからないようなものをさっとまた四年八ヵ月延ばすというようなケースは、これはかつてなかったんじゃありませんか、どうなんですか。
  49. 柴田益男

    説明員(柴田益男君) 延長許可は数十件ございまして、個別の内容は十分承知しておりませんが、工事の進捗状況の有無にかかわらず延長の理由によってそれを許可をしてきているところでございます。
  50. 秦豊

    秦豊君 あのね、まあだんだんあなたの権限を越えるようなテーマになるかもしれませんけれども、核原料物質、核燃料物質及び原子炉規制に関する法律というのがありますね。あなた方にとっては非常に基本的な法律だと思うんですけれども、その第三十三条によりますと「内閣総理大臣は、原子炉設置者が正当な理由がないのに、総理府令で定める期間内に原子炉の運転を開始せず、又は引き続き一年以上その運転を休止したときは、」「許可を取り消すことができる。」と、こういう重大な条項があるんです。女川の場合はまさにそれに該当するわけであって、五年たってようやく周辺漁民の応諾書がとれつつあると言うが、それは一部のボスなんです。若者たち、中堅以下はなおかつ非常に激しい運動をやっているんですよ。あんなものをあなた方見せられて、ああそうですが、じゃ許可与えるからさあやりなさい、青信号だといっても動きませんよ、実態は。それがいま現地の条件なんです。五年間だらだら、あなた方が無作為にというか、ずさんに許可を与えた。果たせるかなわれわれが指摘したとおり五年たっても稼働はおろか送水管の工事しか終わっていない。漁業補償の話は煮詰まっていないですよ、課長。漁民の応諾書というのは一部のボスの者に政治的談合によってとったものにすぎない。あなた方のチェックは非常に甘いんです。非常に企業側に近づき過ぎているんです。私の読んだ第三十三条、これはまさに女川の場合はそれに該当するんじゃありませんか。もっと厳しいチェックをして、もっと厳粛に立ち向かわなければならぬとぼくは思うんですよ、この種の問題については。どうなんですか。
  51. 柴田益男

    説明員(柴田益男君) 原子炉規制法の関係は科学技術庁さんの方でございますので、私の方からは差し控えさせていただきますが、現地の漁業組合との関係につきましては、先ほど申しましたように現地の四つの漁業協同組合のうち、寄磯、前網、鮫ノ浦、これにつきましては同意の仮の協定書を結んでおります。女川漁業協同組合につきましては、発電所が設置される地先の、地元の方の三分の二の同意を文書でとっておるということでございますので、間もなく現地の全員の同意が得られて工事が進み得るというふうに判断したわけでございます。
  52. 秦豊

    秦豊君 佐々木長官にこの点はぜひ確めておきたいんですが、私と通産省側とのやりとりはお聞きのとおりです。繰り返しません。しかし、女川原発の今度の許可延長については、私はもうお聞き取りのような立場認識を持っています。したがって、明らかに第三十三条に抵触をする、むしろこの条項を発動するというような一種の取り決めをすることによって、政府側がいかに原子力行政については安全性を重視しているかということが宣明できると思うんだが、女川問題についての佐々木長官のお話はこの項でぜひとも伺っておきたい、見解を。そう思います。
  53. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 御指摘のように、女川の原発は四十五年の十二月に原子炉規制法二十三条の内閣総理大臣の設置許可を行っておるわけでございますが、ただいま通産省の方から御説明がございましたように、現在まで建設着工がおくれておりますのは、一部の漁協に反対があるために、同意を得て着工しようということでおくれてきたというふうに承知いたしているわけでございまして、その後、最近の状況でございますが、県当局等の指導もございまして、県あるいは女川町関係者等の話し合いの場が設けられるというふうにも聞いておりますので、私どもはこの設置許可を取り消す必要はないというふうに考えております。
  54. 秦豊

    秦豊君 それでは質問を進めます。  まず内閣の審議官——安仁屋さん、いらっしゃいますね。あなたに確めておきたいことが二、三あります。例の原子力行政懇談会なんですけれども、先日総評の酒井代表が辞任をいたしました。もちろん運営について重大な疑義と不満があったためであります。御存じのとおりです。それ以後の運営というのは一体どうなっているのか、働く者の目が行政懇から欠け落ちたということについて、あなた方はやはり痛みを感じていると思う。運営がかなり障害を受けているんじゃありませんか、この点はどうですか。
  55. 安仁屋政彦

    説明員安仁屋政彦君) 酒井委員の辞任の件について簡単に申し上げますと、十月九日に開かれました第十五回の会合の冒頭に、酒井委員は辞任を申し出られたわけでございます。その際、委員が言われました辞任の理由といたしましては、まず第一に、この懇談会ではこれまで主として原子力行政機構が論議されているが、その間における政府原子力行政を見ると反省の色が不十分であり、国民の不安は解消されていない。第二点としまして、したがって、自分がそういう懇談会に参加していることは、このような政府姿勢に不満を持っている人たちの運動の障害となっている。そういう二つの理由を挙げて辞意を表明されたわけでございます。これに対しまして座長の有沢委員から、突然の辞任申し出があり驚いているが、直接その理由を説明されたことは結構であると、しかしこの懇談会では、これから具体的に審議に入る段階でもございますので、できれば総評等の関係方面を説得しても残留してもらいたいと考えているが、どうしても御本人が辞任するということであればやむを得ない、こういう趣旨の御発言があったわけでございます。こういった事態に対しまして、政府といたしましては、この懇談会におきましては広く国民各層の代表者を得て審議を進めたいという考えでございますので、有沢座長とも相談の上、できれば酒井委員自身の翻意が望ましいと、しかしどうしても固いようであれば、労働界の代表として引き続き後任委員を送っていただけるよう総評あるいは中立労連等、関係方面にもお願いしてまいりましたが、最終的には後任を得るということはむずかしい事態になったわけでございます。  確かに先生おっしゃるとおり、この懇談会としましては、広い関係各界からの御意見がいただきたい、そういう趣旨でございますので、非常に酒井委員がやめられたことにつきましては残念だと考えておりますが、以上のような理由であきらめざるを得ないという事態になったわけでございます。  で、労働界の代表としましては、電労連から出ておられます青木委員が現在入っておられまして積極的に審議に参加していただいておりますし、まあ酒井委員からも辞任される前に自分の意見というものはこういうものであるということにつきましては意見書というものをいただいておりますので、審議に当たりましてはこういったものも十分反映されるというふうに私どもとしては考えております。
  56. 秦豊

    秦豊君 以下は一括してお答えをいただきたい、簡潔でいいですから、  どのあたりまで行政懇の話し合いは煮詰まっているのか、どのような反省を踏まえているか、いつごろまでに行政懇としての意見の取りまとめ、これは答申という言葉が妥当するかどうかよくわかりませんが、要するに意見書ですね、いつごろをめどにされているのか、またどんな頻度で開いているのか、いまの焦点は何か、これをあわせてお答えいただきたい。
  57. 安仁屋政彦

    説明員安仁屋政彦君) 三月に懇談会を始めましてから、現在までにすでに二十一回の懇談会を開いております。最初は、まず原子力行政現状から入りまして委員の先生方に勉強をしていただきまして、その間自由討議等もございましたけれども、十月九日の第十五回の懇談会におきまして、それまでの懇談会の討議等を踏まえまして、有沢座長がたたき台と申しますか、今後の審議のたたき台として有沢私案というものをまとめられまして懇談会に出されたわけでございます。現在それをめぐりまして議論が重ねられておりますが、大きな点といたしましては、原子力委員会、現在は一つでございますが、有沢私案にもございますが、これを二分しまして、開発規制、大ざっぱに申しますと開発規制というのは別の委員会で所掌させた方がいいんではないかというような提案がございます。さらには、現在基本設計の段階につきましては科学技術庁が安全規制についての審査を行いまして、事業段階に入りますと通産省、あるいは船でございますと運輸省という省庁が担当するようになっておりますが、そういったものを、原子炉の性格と申しますか、そういったものに応じまして一貫して規制する方がいいんではないかというような御意見もございまして、その点につきまして活発な議論が行われているわけでございます。  で、この懇談会の見通しといたしましては、先ほど申し上げましたように、かなり密度の濃い懇談会を開催しておりまして、精力的にやっておりますが、いま申し上げたような点につきましても、委員の皆様の目指している方向が必ずしも一つではございませんで、まだかなり議論がされるんではないかという気がしております。また、現在までに重要な問題という認識はされておりますが、十分討議されておりません原子力行政についての地方公共団体のあり方、そういった点もございますので、まだ少し時間がかかるのではないか。しかし、当初予定しておりました発足から一年以内、それまでは行かずに、できるだけ早い機会に結論と申しますか、先生方の大筋の方向が示されるということを私どもとしては期待している次第でございます。
  58. 秦豊

    秦豊君 行政懇ですね、どんな反省を踏まえていまやっているのかという一番肝心な点が抜けています。補ってください。
  59. 安仁屋政彦

    説明員安仁屋政彦君) やはり原子力開発を進めていく場合に一番問題になるのは国民の健康と安全を守るということである、その基本的な点に立脚しまして議論は進められておるわけでございます。
  60. 秦豊

    秦豊君 佐々木長官、私と科技庁長官としての長官のお立場は、恐らく論議すればするほど平行線という苦い認識に到達すると思うんですよ。東と西ほどの隔たりがあるでしょう。私は、冒頭に私の原子力行政観というか、私の総論をじっくり述べますから、それについてあなたの総論を伺っておいてデテールに入りたいと思います。  私のこれは認識なんですけれども、日本の原子力行政には幾つかの特徴が明らかであります。まず、安全確保よりは開発推進に性急である。それから、基礎研究の積み重ねよりは、いとも安易な輸入とあるいは応用にもたれかかっている姿勢が目立ち過ぎる。それから三つ目の特徴としては、開発規制というのは、これは二律背反でしょう、さっき審議官も言われたけれども。二律背反の上に十数年間あえてあぐらをかいてきた。さらに論点を拾えば、いわゆるこの原子力三原則に言われている「自主」、これはもう早くもついえ去っている。または「民主」というものも、はなはだ私によれば怪しい、民主的ではない。「公開」、これはどうだ、三原則の。公開は、昭和四十八年の五月からできました原子力公開資料室程度、あのようなちょこっとした機構をつくって、わが国の原子力行政は風通しがいいと、こんなに明るいですよ、公開されていますよと、あれをショーウインドーにしている。しかしそれはショーウインドーでしかない。アクセサリーにしかすぎない。こういうふうな姿勢が目立っていると思います。  言うまでもないことですけれども昭和三十年の例の原子力三法、原子力基本法、委員会設置法、総理府設置法の一部改正等々以来、そのときに一番肝心な中枢をなすべく役割りを与えられた原子力委員会、これをどうするかがもう最大の眼目であり論点であったことは繰り返すまでもないと思います。また、いま現実の原子力行政が混乱をしている遠因もまたそこにある。あのときの処理は明らかに間違っていたという認識を私持っております。当初は、一時有力であって現実に閣議の決定まで見ていたいわゆる行政委員会方式ですね、原子力委員会行政委員会方式にすべきじゃないかということは、実は自民党の反対でつぶされたんですよ。これはもう歴史上の事実です。そうして現在の諮問委員会形式に明らかに大幅に後退した。ここに現在の原子力行政が集約力がなくていたずらに分散化傾向をとり、リーダーシップも見識も発揮できない一番大きな機構上の理由がそこにあると私は思う。そしてもう一つ、科学技術庁の長官がこの原子力委員長を兼ねていらっしゃいますね。兼務制にした。このことは原子力委員会自体の独立性というか、あるいは独自性を著しく薄めたし、また現実の運営の中では専属のスタッフ、いわゆる事務局というのを持っていないんだから、科学技術庁の原子力局に勢いおんぶするのは当然の成り行きでしょう。したがって、この原子力委員会というのは、いまの行政の機構の中では、確かに総理大臣の諮問機関として位置づけられてはいる、しかしそれは本当に機構図の線がつながっているというだけであって、実体性というか、実効性は何らないという認識を私は持っています。何らないか、ほとんどそれに当たらない。で、私自身の意見では、やっぱり強力で独立性を堅持した原子力委員会を創設しなかったのは、やはり核開発先進国と日本との間にある技術的なギャップというか、そういうものについての認識が甘かった。事態を甘く見てかかった。初めから核先進国への依存をのみ考えた結果ではないだろうか、こう思います。で、平和利用技術の自主的な開発などは、当初からなるほど唱えられてはいた。しかしそれは、かなり以上に実態としては自主開発、自主技術と言ったってそれはお題目にすぎなかった。本格的には構想をしなかったと言わざるを得ません。  特にこの科学技術庁長官原子力委員長を兼務しているために、少なくとも数年先を見通した先見性、持続性あるいはこの計画全体の遂行、進行についての総合的な点検、安定した施策を保障する裏づけが乏しいわけです。なぜかと言いますと、科学技術庁長官いうのは内閣改造のたびにどんどんかわっていく。念のために調べてみたら佐々木長官は実に二十三人目の長官ではないかと私の調査ではなります。だから、三十一年の宇田さんから始まってわりと大物閣僚のなったこともある。正力さんとか三木さんとか——現総理、中曽根さんとか、あるいは佐藤榮作さんとか愛知さんとか、いろんな人、二階堂氏も鍋島氏もなったことがある。しかし、少なくとも言い得ることは、もう実に頻繁なサイクルで長官のいすが受け継がれていく。したがって行政の一貫性が生まれにくい。持続的なチェックがおろそかにされている、こういう欠陥を露呈しています。現実に、あの「むつ」問題、これこそ日本の原子力行政欠陥の最大の象徴だと思うんだけれども、「むつ」の問題の処理に当たりました森山長官の例に徴しましても、あの方はわずかに在任一年未満ですよ、一年です一一年の比較的理解度の少ない森山長官が拙速主義にはやったということがどれほど問題をゆがめてしまったかはかり知れません。強引な拙速主義が災いをした。一年しかポストを汚さないのに、いすに座っていないのに、強引に方向をねじ曲げたこの責任はきわめて大きいと言わざるを得ません。  もちろん兼務制について私は何も全面否定しているわけじゃないんですよ。なぜかといいますと、マイナスばかりじゃない。いわゆる私の申し上げた大物長官のときにはがばっと力を発揮して大蔵なんかを揺さぶって、そして人員や予算の獲得とか、あるいは政策目標の実現などの面では威力を発揮したケースも散見されます。まれにはあります。しかし、日本の原子力行政二十年、少なくとも二十年の歩みの中では、この原子力委員会の機構上の限界というものと弱体ぶりがいつも問題になってきた。問題にされながら一向に改善されなかったという恐るべき実態があります。現在のこの原子力委員会の機構では、産業界の開発至上主義というか、前のめり、つま先立った実に不安定な姿勢、この独走を押しとどめることはできません。いまの原子力委員会の機構をどう、運営をどう変えてもそれはむなしいと思います。だから、私はこのあたりに原子力行政混乱、行き詰まりの大きな禍根があるというふうに認識をしておりますけれども、佐々木長官の御見解はいかがでしょう。
  61. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) ただいま御指摘になられました諸点は、そのものずばり、全部にわたりまして反省材料になっているわけでございまして、したがって、先ほど御指摘ございました有沢委員会は、そういう実態を踏まえましてただいま行政改革の案をつくっているわけでございます。ただ、そういう際でございまして、私どもは批判される立場でございますから、自分の所見をこの際述べるのは大変僣越でもあり、また時宜にそぐわないものかと存じますけれども、しかし、せっかくの御質問でもございますし、相当激しい批判でもございますので、私自体から自分の所見をお述べしたいと思います。決してこれが有沢委員会の意見でも何でもないということをおくみ取りの上お聞き取り願いたいのですが、第一点は開発推進の性急問題でございます。余りに開発に急になり過ぎたんではないか。この点は一つは当たっております。一つは当たってないと思います。と申しますのは、二十年前私は初代の原子力局長をやっておりまして、当時の様子をよく知っておりますが、当時から、日本の明治以来のこの種の産業の態度は、ややもすると外国から無批判に輸入して、そうして育てていったじゃないか、今度は新しい技術で非常に人類史的な大きい意味を持っている問題だから、この過去の苦い経験を踏んまえて、ひとつ今度こそは基礎からしっかり築いていこうじゃないかというので、当時、湯川あるいは藤岡というふうな、日本では、あるいは世界的な原子物理の大家の人が委員になっておりましたから、特にそういう主張が激しかった。ですから、御承知と思いますけれども、初期の段階では基礎研究の面に非常に力を入れたことは御承知のとおりかと存じます。  しかし、その後軽水炉が出てまいりまして、これが実用になるのだと、ペイするのだといったようなことから、従来の古い、何と申しますか、日本の慣習と申しますか、そういう面がまたやはり出てまいりまして、そして軽水炉の安全性に対する基礎的な研究を十分しないで日本に輸入したというこの事実は私は否めないのじゃないかと思います。ただ、現在はほうっておりますかと言いますと、そうでなしに、軽水炉の安全という解釈もいろいろございますけれども、しかし、これに関しましては原子力研究所あるいは電力会社あるいはメーカー、官庁名で言いますと、通産はもちろんのこと、原子力委員会も、わが科学技術庁、全部総力を挙げてこの三年くらい前からこの問題に実は真剣に取っ組んでおります。私は、いまもう重大事故というものは起こり得ないということは明瞭でございますけれども、しかし、そうじゃなくて小さい故障みたいなものは起きているわけですから、そういうものすらあってはやはり国民の信頼をつなぐゆえんではございませんので、そういうふうなものも根絶しようというので、ただいま、いま申しましたような総力を挙げまして検討中でございます。大変遅まきじゃないかというおしかりをこうむるのは、これは甘んじて受けなければいかぬと思いますけれども、しかし、そういう点はないように一生懸命ただいま検討中だということを御理解いただきたいと思います。  それから、基礎研究と応用の問題は、ただいまお話ししたので大体ダブっておると思いますので、そのことは回答は省きたいと思います。  それから三番目の、開発規制を分離しろ、開発をしておる機関が規制もあわせてやるということはけしからぬじゃないか、ややもすれば開発に急の余り安全規制の方を犠牲にするんじゃないかと、こういう議論がございまして、御承知のように、アメリカはことしから規制委員会一本に変えまして原子力委員会というものは廃止した。日本も同じような状況にございますので、海外の状況とも合わせまして、この際、苦い経験を反省しながら開発規制を分断したらどうだろうと、この意見は確かに傾聴に値する問題でございまして、現実の面から言いますとそうした方が理論としてはすっきりすると思います。ただ、そこに一つ問題がございますのは、原子炉原子力開発というのは何ぞやと言いますと、いろいろな、熱効率のエフィシェンシーを上げるという問題がございます、取り出すための。ございますけれども原子炉の一番の特性というのは、いかに安全であるかというそれを確保するのが原子炉の実態でございまして、したがって、小さい故障が大きい事故につながらぬようにあらゆる近代操作を独立的に、しかも、それもまた一切そういう大きい事故につながらぬようにというのでやっているのが実は原子炉でございまして、したがって、開発ということ自体が実は規制につながる問題でございまして、研究開発を抜きにしてただ規制しろと、検査、監査を厳重にするというだけでは問題が片づかないのでありまして、問題はむしろ、検査、監査の問題もありますけれども、その根底にあるハードウエアとしての原子炉自体をいかに安全につくるかという、そのことが根本でございまして、したがって、開発規制というものを切り離して考えるのは大変当を得ない問題じゃなかろうかと。アメリカでも現状はああいうふうに分断してみましたけれども、やはりその問題がひっかかってきて、大変実はその後苦しんでいるようにも聞いております。したがって、単純に開発規制は一緒に混在さしてはいかぬというその議論は、そのまま原子力に当てはまるかといいますと、これはなかなか議論のあるところだと思います。したがって、いまこういう点をせっかく踏まえて有沢機関で検討していると思いますし、単に行政機構の継ぎはぎといいますか、の問題でなくて、そこにそういう大きい問題がございますから、そういう点を踏んまえまして私はいろいろ検討してみなきゃならぬかと思います。  それから三原則でございまして、これは「自主」の問題は、冒頭の説明に申し上げましたように、あくまでもわが国では自分の力で開発したいというのが当初から念願でありまして、したがって、ただいまファーストブリーダーとかあるいは核融合とかあるいはATRとかいったような、新しい進歩した技術の面のものは自分で開発をし、したがって基礎研究からあるいは原型炉、応用炉まで、ずっと一貫して自分の力でいまやっているわけでございまして、そういう点では私は決して自主の精神にいまの日本の原子力開発というものは反していないというふうに実は考えております。ただ、たまたま、いまの軽水炉の問題では、経過的に必ずしもそう言われぬような一つ段階があったということは、これは否めない事実であろうと思います。基本的な方針あるいは方向は、自主開発という線を決してゆがめていないと私は考えております。  それから「民主」の問題でございますけれども、民主は、私どものあの基本法をつくるときの解釈では、むしろ従来の官庁的な行き方でなくて、広く学界あるいは民間等の知識経験も加味して、そして開発行政を進め得た、あるいは規制行政を進め得たというところに民主の意義があって、したがって、原子力委員会の生まれた根本はこの原則から私はきていると思います。したがって、原子力委員会基本法の精神を受けてできたものでありまして、御承知のように、これはもうほとんど全員と言ってもいいほど、いま申しましたように民間の皆さんが、日本でこれぞと思う大家の人がお集まりになって、そして役所の方ではまだ経験者がおらなかったわけですから、それを指導して今日の段階まできたというふうに見られますので、その原子力委員会現状が強いか弱いかといったような問題は別にいたしまして、精神は私は崩していないというふうに実は考えております。  それから、最後のこの「公開」でございますけれども、公開は、御承知のように大変これが一番実はここで言っている本題でございまして、ですから、この問題に関しては、研究成果の公開であって、研究の課程のものまで公開するというのはこれまたおかしな話で、それから、あるいは商業機密まで侵してこれを公開するということになりますと、これは特許法その他、何のことだかわかりませんから、こういう点はやはりこの範囲からは逸脱しますよと、こういうふうにしております。主として、この公開の原則がどうしてできたかという根本は、軍事転用を公開という面で監視しようじゃないかという、いわば平和担保の一つの原則でなかろうかと私は解決しております。したがってこの面も、決していままでの原子力行政はそれを逸脱しておったということは言えないんじゃなかろうかと思っております。  それから最後の、原子力委員会をなぜ行政委員会にしなかったのかと、これはごもっともな議論で、いまでもこの議論が繰り返してあるわけでございます。これはアメリカのような原子力委員会にすれば一番よろしゅうございます。しかし、当時私の記憶では、私は第一回の海外原子力調査団に加わりまして、主としてこういう行政機構あるいは財政等どういうかっこうで運用しているか調べてきたものでございますから、いま記憶をたどってみますと、日本ではまず一番この原子力委員会行政委員会にするときに困難なのは、この民主という原則を生かそうとすれば、日本の一番の学界なり財界の大家を呼んでこなければいかぬ。たとえば石川一郎さんなんて初期の委員ですけれども、経団連の会長だったわけですから日本の一番のファーストですね、事業・家としては。そういう人を呼んできたわけですから。ところが、当時の給与規程というものは全然これは官吏は安くて、いまは皆さんのおかげで大変よくなりましたけれども、その該当する給与などをやったって来ないんですよ、これは。それからまた、専門に行政委員会となりますと、やっぱり専属の委員が多くならなくてはいかぬという立場にございまして、そうしますと、いい人であればあるほどそれに専門にかかるというわけにはいかぬという、そういう点もございましてなかなか実は難渋いたしました。しからば、単なる総理の諮問機関でよろしいかというと、それもおかしいということで、いろいろあんばいいたしまして、あの規定にありますように、実は性格は形式的にはあくまでも諮問機関であるけれども、実質的には行政機関的な性格を持ち得るように、言うなれば権力よりは権威をうんと持たすべきだというふうにして、権威を持ってこの機関が言うのであれば、たとえ諮問機関であっても実質的には政府の各行政機関を納得させ得るんじゃないかというふうな実は仕組みにしてあるつもりでございます。  それから、委員長長官を兼ねるというのはおかしいじゃないかと。これも非常に議論のあるところで、いま有沢機関で議論していると思います。ただ、私の解釈では、御承知のように憲法は内閣責任制をとっておりますから、内閣にあらざる人が決議をし決めて、内閣各行政府を拘束するということは、これはまことに二重行政になりますので、いろいろ過去に苦い経験を踏んだことがございます。したがって、その弊を避けるとすれば、あるいはまた原子力委員会の決議して決めたことを各省に行政的に拘束力を持たそうとすれば——持たさなければまた意味がないわけでございますから、持たそうとすれば、やはり閣僚の一員である大臣がその長になって、そして閣議でそれを決めまして各省の行政機構を拘束するというのがいまの憲法上のたてまえからいってよろしいんじゃないかということで、実は委員長長官にしたという経過があるように記憶してございます。  スタッフの充実の件でございますけれども、これは御承知のように、後で御審議いただくかと思いますが、今度の安全局をつくった場合にはそういう点も加味して、内容を強化、充実するというのも、責任の明確化と同時にわれわれに課された問題でございますから、その点も兼ねまして過去を反省しつつ内容充実したいというつもりでございます。
  62. 秦豊

    秦豊君 ちょっと私自身の観点を変えまして、原子力行政の欠陥度というのを見てみたいと思うんですが、やっぱり、いまの長官のおっしゃり方はそれなりに伺っておきましたけれども、日本の原子力開発研究行政というものに、私は依然としてやはり大きな欠陥、限界があると。それをこう考えてみたいんですけれどもね、私なりに。そうしますと、いろんな機能ですね、いろんな目標、目的と言いかえてもいいですけれども、こういうものが私自身の見方ではいたずらに分散、分離されたことにその大きな原因がありはしないか。たとえてみますと、ずらっと羅列すると時間がかかるけれども、日本原子力開発事業団、これがあるかと思えば放射線医学総合研究所があるし、それから四十二年に動燃の方に行ってしまったけれども原子燃料公社をつくったこともある。動力炉・核燃料開発事業団、核物質管理センター、それで今度は日本原子力研究所等々、いろんなものが次々につくられてきた。しかし、それは一元化されたもので集中されたものであり、総合されたものじゃなくて、ばらばらに散らばされて分散化したと、これは一体いかなる判断に基づいたのか、これが一番ぼくがわからない点です。  それから、いまの体制では各種の研究開発組織というのはおたく原子力局の管轄に置かれていますね、機構上ぴしっと線が垂直に下がっているわけだ。ところが、原子力委員会の方とのつながりというのは、こう線が曲がってやや間接的というか、有機的なつながりが欠け落ちてはいないのかと、これによる矛盾や障害というのは原子力行政上のやっぱり一つ問題点ではないかと思いますが、いかがですか。
  63. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) いろんな機関をつくって責任が分散しておるじゃないかという御指摘でございまして、その点も私は全部あなたの御指摘が正しいとは言えませんけれども、また間違っているとも言えないというふうに感じます。本来であれば、やはりいまの原子力局などは二十年たちますから、もっともっと内容充実して、そうしていまの御批判に耐え得るような体制を整えるのが私は先決ではなかったかと思います。しかし、御承知のように、なかなかいまの人員をふやす、機構を整備するというのは至難のわざでございまして、したがって、責任ある体制行政機関でとるのも一つの道でありますけれども、しかし、それを監督さえしていけば、まず行政機関でなくてもその業務は遂行できるんじゃなかろうかと、またその方が研究等じっくりやれる面を加味すればかえって妥当じゃなかろうかと思うようなものは、おっしゃるようにいろいろ機関をつくりましてそれにお任せしたわけでございますけれども、さっきお話のありました原子力研究所あるいは燃料公社、これは動燃になって変わっておりますけれども、それから放射線医学研究所、こういう面は、これはむしろ官庁よりは独自の機関でやった方がその使命を達成するのによかろうと。事業団も、特殊なやっぱり初期の実験船の段階でございますから、事業団という形式でこれをつくったらいいんじゃないか。それから管理センターでございますけれども、これはいろんな核物質等の管理をするのにいろんな問題がございまして、役所だけで手の届かぬ部分もございますので、そういう民間の機関にひとつ原子炉に詳しい人たちに参画していただいて、そうして管理していったらいいんじゃないかということでつくったものでございますけれども、総じて、総体的に総括いたしますと、お話しのように、やはり私は原子力局というものが日本の原子力行政中心であるとすれば、行政として充実する面はもっともっと充実してよかったんじゃないか。二十年の科学技術庁で、私が局長をやったころからそれほど大きい機関にもなっておりませんで、というような実は感じがいたしました。  それから、二番目の原子力局委員会の問題でございますが、これは私自体が原子力委員長でございまして、原子力局はまた科学技術庁に属する部局でございますから、両面から監視、監督、指揮できるわけでございますが、しかし、技術庁長官としての、行政府本来の、いわゆる民主的ならざる行政府としての監督と、やはり民主的に運営する面の委員会事務局としての原子力局に対する扱いというものは、おのずから私は違うものじゃなかろうかと。まあ端的に言えば、原子力委員会科学技術庁原子力局がただいまその事務局でありますけれども、さればといって、通産の原子力関係行政、あるいは各省でやっている原子力行政に対して全然ノータッチかというとそういうわけにはいきません。それはやはり、事務局は科学技術庁にありますけれども範囲は各省にまたがっております。そしてそれを統轄するというふうに御理解いただけると大変ありがたいと思います。
  64. 秦豊

    秦豊君 昭和四十二年の十月に新設されました動力炉・核燃料開発事業団、これについて伺っておきたいのですが、この現状と将来ですね、当初の目標どおりこの自主開発については手ごたえのある展望が開けつつあるのかどうか、あるいはいろいろやってみた、やろうともしてみた、ところがどうもやはり確信がゆらいで、またぞろ核先進国からの技術導入の方向をもうすでに模索をしているのか、あるいは自主開発可能とすればいつごろが目途になっているのか、これはどうなんですか。
  65. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 動力炉・核燃料開発事業団の使命は二つございまして、一つは新型の技術的に進んだ、あるいはプルトニウム、天燃ウラン等、いわば国産資源的なものを使用できる、そういう炉を開発しようという使命と、もう一つは、燃料の処理と申しますか、再処理とかあるいは濃縮ウランとかあるいは廃棄物の処理とかいったような、いわば燃料サイクルの責任個所としてそれをどういうふうにやっていくか、二つの任務があると思います。  前者に関しましては、ただいまの段階では、先ほど申しましたようにATRにいたしましても、あるいはファーストブリーダーにいたしましても、これは予定のコースで進めてございまして、決して海外からただいまの段階で技術を導入するとかなんとかいった予定はございません。後者に関しましては、これはなかなか範囲も広うございますし、それから物によっては民間に任したらいいじゃないかといったようなものもございまして、非常にむずかしい問題でございますけれども、しかし、不十分ではございますけれども、ただいま一生懸命海外のウランの開発をしたり、あるいは濃縮ウランの処理に関して海外の機関とどういうふうな共同操作をとるかといったような問題とか、あるいは御承知のように再処理、ただいま非常に問題になっております使用済み燃料からプルトニウムを取り出す、そういうものをただいま実験中でございますので、こういう点を将来どうするかといったような問題に対しては、この動燃の役割りというものは非常に大きいものでございまして、まあ極端に言えば原子力開発の一番の心臓部と言っても私差し支えなかろうというふうに考えておりまして、お説のように、海外の技術を単に植えつけるというのじゃなくて、みずから開発して日本の資源賦存状況と申しますか、そういうもの等に合う型のものをただいま進めつつあるというふうに御理解いただければ大変ありがたいと思います。
  66. 秦豊

    秦豊君 では、めどは具体的には明言できる段階じゃないと、まだまだ漠然もことしているというふうに理解せざるを得ないわけですね。
  67. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 少なくともATRとファーストブリーダーに関しましては、実力でただいまやっておりまして、よそのものを輸入しようというような考えはございません。
  68. 秦豊

    秦豊君 理事からの御連絡では、正十二時に一たん打ち切るということを言われておりますので、次の質問に移るとまたぎますので、一応これでとめて、午後は原子力船「むつ」の問題等について科技庁長官ほか皆さんに伺いたいと思います。
  69. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  70. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは速記を起こしてください。  午前中の質疑はこの程度にいたしまして、暫時休憩をし、午後一時から再開いたします。    正午休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  71. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題として質疑を行います。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  72. 秦豊

    秦豊君 それでは、午前中に続きまして科技庁長官にちょっと幾つかの具体的な点について持ち時間いっぱい伺ってみたいと、こう思います。  午前中、会議の冒頭で長官が朗読された提案理由説明の中に「その安全性については、必ずしも国民から万全の信頼を得ているとは言いがたい状況にあります。」ということを、きわめて素直に表明されています。その場合、長官の言われた安全性とはどの点をお指しになっているのか。もう一つは、万全の信頼を得ていないという素直な自己批判というのは結構だけれども、そうなっている理由をどうお考えなのか、それを伺っておきたい。
  73. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 安全に対する解釈ですけれども、軍事的な面の、安全という面もありますし、あるいは平和利用そのものにおける安全、そういう問題もございますが、主として私はいま国民が心配しておるのは、前者の方はもうそういうことはないわけでございますから、後者の平和利用における安全性の問題じゃなかろうかと思います。で、その平和利用の安全の場合に、これもいろいろ国民の中にはまだ理解のできない点がございまして、一番プリミティブな点は、爆弾のように原子炉というものは破裂したりするんじゃなかろうかというような素朴な疑問を持っておる方もございます。こういう点はしかし大分解消いたしまして、むしろ原子炉の重大事故あるいは仮想事故と申すような、原子炉以外の住民、第三者、あるいは環境を汚染するような、そういう事故がありはしないかという心配が一つ。それからもう一つは故障です。そういう重大事故までいかない前に放射線が出たといったような故障を事故と考える方もおる。そこで普通考えておるのは、そういう単なる故障、機械の故障であって、炉をとめて修理すれば直る、当然まあ何の機械でも欠陥というのはあるような、そういうものが非常にいま多い。非常にと言っちゃおかしいけれども、そういう故障がわりあいにあるわけですから、それに対して、それを理解をしておれば、まあ余り心配せぬでもいいとは思いますけれども、どうもしかし、それと第二段目に申しました重大事故とが同じようなものじゃないかというふうな、まあ理解の、不足と申しますか、そういうような点があるやに考えられまして、これはいまの少なくとも軽水炉に関しては理解が違う、そういう重大事故とか仮想事故というものはほとんどもう何億分の一というふうな確率で、ほとんどない、あり得ないと考える。しかし、故障はいま日本でも動いている発電炉はしばしば起こしますので修理、点検をしているわけですが、それに対して、しからばただ故障が起きた、それは何でもないことじゃないかと言えるかというと、私はそうは思いませんので、やっぱり国民から見ますれば、これは信頼に対する一つのマイナスになるわけでございますから、故障というのはやっぱりないようにして、そして信頼度をつなぐというのが万全の策でございますから、ただいまの段階では、むしろ故障を起こさないような、たとえば材質をどうするとかあるいは継ぎ目をどうするとか、あるいは中に入れる薬品の性質を従来より変えるとかいったような、そういう問題が一番実は重要になっております。万全の信頼という点は、私ごくもう大ざっぱに話せばそういうことじゃなかろうかと。人によってはもう爆発するんじゃないかという危険を感じる人もいるし、うんと理解した人は、もうむしろ故障を直せばいいじゃないかという大変理解を持った方もございまして、そういった点を国民の皆様によく理解させるためには、私ども努力をしておりますけれども、やっぱり相当時間がかかるんじゃないかというふうに実は考えております。
  74. 秦豊

    秦豊君 原子力行政懇談会ですね、午前中も触れましたけれども、これは言うまでもなくあなた方は努力をなすっているけれども、まだまだ十全ではない、足りない。これは国民の側に責任があるんじゃなくてあなた方に責任が主体的に存する、こう言うべきだと思うんですけれども、したがって基本的なあり方をもっと考え直そうじゃないかと、やや立ちどまって原子力行政を振り返ろうと、これが趣旨ですよね。  そこで、私は具体的な、きわめてまた象徴的な問題として原子力船「むつ」の問題に入っていきたいと思うのです。「むつ」は何を象徴しているか、日本の原子力行政のいわゆる至らなさ、欠陥、これを象徴ではなくて具象していると思う。そこで具体的なことなんですけれども、いわゆる大山報告書というのがございますね、あれについては害うまでもなく科技庁は被告的な追及を受けている当事者だから言い方はわかったようなものだけれども、大山報告書を引用しながら長官の回答を得ておきたい。  大山報告書を見ますと、たとえば三十二ページには、「放射線防護についての専門家は含まれたが、遮蔽設計の専門家と評価された人はいなかった」と、こういう指摘があるし、「したがって、審査の実態についても、申請された原子炉安全性について、申請者側の計算を再計算によって確認することなどは事実上困離であり、」、事実上困難であり、「いうならば、高名で多忙な学者、研究者にこのような実務的な作業を委ねること自体に無理があると言わざるを得ない。」、さらに「この結果、審議内容は往々にして、結果に対する責任と役割の限界をあいまいにしたまま、無難な結論が採用される恐れがある。そこで、この審査と現実的な設計との間には、工学的・技術的空げき(隙)の存在する可能性が考えられる。」、非常にこう抑えた筆致で淡々と述べていますけれども、私がいま引用した大山報告書のこの指摘、これは一体長官の価値観の中で、判断基準の中では、いまの指摘は当を得ているのかあるいは全く的外れなのか、傾聴する値もないのか、無視していいものなのか、それともずばっと問題点指摘したものなのか、謙虚に聞くべきか、この辺はどういうふうに受けとめていらっしゃいますか。
  75. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) ただいま先生の御質問になりました大山委員会報告書の三十二ぺ−ジのところでございますが、これは改めて申し上げるまでもございませんが、安全審査のやり方と申しますか、どういうスタッフがどういうやり方で安全審査をやっているかという点に触れた問題でございまして、この報告書は「むつ」の安全審査を対象に取り上げておりますが、ただいま先生が御指摘になりました点は必ずしも「むつ」だけではございません。安全審査全般につきましての問題点であろうと考えております。したがいまして、全般の問題としてお答えさしていただきたいと思いますが、この点についてどういう印象かというお尋ねでございますけれども、率直に申しまして、私はある程度核心をついていると思いますけれども、必ずしもこのとおりではないというように考えております。核心をついていると申しますのは、この安全審査のやり方でございますけれども、この「高名で多忙な学者」云々というような指摘もございますように、いわば大学あるいは研究所に在籍しております専門家の力をかりまして安全審査をやっていく点が非常に多うございます。これはなぜかと申しますと、従来、原子炉を初めといたしまして原子力関係施設にかなり研究開発的な段階が多かったためにこの専門家の知識をかりる点が多かった、必要であったという点が一点でございます。それからもう一点は、現在の官庁におきまして、その原子力といいますいわば一番先端的な科学に属します分野の専門、家を急速に整備することにかなり困難さがあるという点もございますので、この二点から、現在でもなお科学技術庁の安全審査におきましても、あるいは通産省の審査あるいは検査におきまして、学者、専門家の協力を得ている点がかなり多うございます。で、これを現在審議をいたしております原子力行政懇談会におきましては、先般有沢先生がお書きになりました有沢私案におきまして、いわゆるダブルチェックの形に将来切りかえるべきであるという御指摘がございまして、これはどういうことかと申しますと、まず行政庁におきまして単独で安全審査を行う、その審査結果報告書を有沢私案におきます原子力規制委員会におきましてダブルチェックをするという、そのダブルチェックを行うことによってさらに信頼性を高めるという御提案がございます。私ども将来の方向としましてこのダブルチェックに持っていくことがぜひ必要だというふうに考えておりますので、最近数年間、鋭意専門官の充実を図っておりまして、最近二年間ほどで原子力局の安全審査を担当します専門官の数が七、八倍にふえております。今後とも増員する予定でございます。通産省におきましても同様にこの専門官の増員をいたしておりますので、段階的にこのダブルチェックに近づけていくということによりまして、この大山委員会の報告あるいは先生の御質問に対しましてこたえていくという体制を現在準備しているわけでございます。  もう一点は、その遮蔽の専門家がいなかったのではないかというような御質問でございますが、これは私どもは必ずしもそう考えないわけでございまして、この安全審査におきます基本設計の段階におきましては、この遮蔽の専門家というものは必ずしもおりませんでも安全審査の結果としては十分であると考えておりますし、むしろ今回放射線漏れを起こしました具体的な遮蔽の問題におきましては、原子炉のほかの部分の構造との関連が非常に密接でございますので、むしろ詳細設計以降の段階で遮蔽の問題が出てきた。で、事実その詳細設計以降の段階におきまして遮蔽が不十分であったために放射線漏れを起こしたというふうに考えておりますので、以上総括いたしますと、この大山委員会指摘は、確かに私どもといたしまして傾聴に値する点も多うございますけれども、必ずしもこのとおりではないと、かように考えております。
  76. 秦豊

    秦豊君 まあ原子力局長や長官はそういう日本語でしか私に対応しない、それはそういう立場なんだからね。だけれども、専門家が果たしてこの安全審査会をどう見ているかという具体的な指摘がありますのでひとつ引用したいのだけれども、つまり伏見康治さんですね、言うまでもなく原子力学会の会長でもあるし、第一、原子力安全審査のメンバーです。つまり直接関係者です。この伏見さんがどう言っているか、つい先月「現代化学」という雑誌に所見を発表された。興味があったから引いてみますと、この安全審査に関連してですよ、自分で技術的に検討できる人員を持っていなかった、原子力コードを理解する人員にも欠けていた、今回の放射線のストリーミングなどは中性子物理学を知っている立場から言えばまあ常識です、事業団には中性子物理学の常識を持っている人がいない。こういうふうな、あなた方にしてみればかんにさわってむきになりそうなずばっとした意見を提示しているわけですよ。私は何も、こういう意見がたまたま一つ、二つあるから安全審査が疑惑の目を持って見られているというふうな即断とは結びつけない。結びつけないけれども、いまや科学界では定評なんです。日本の安全審査がいかにずさんかということについては定評なんです。第三者の目は覚めている。したがって、私たちは安全審査のありよう自体を基本的に考え直すべきではないか、謙虚に顧みるべきではないかと、こういう立場に立つわけです。  で、安全審査の現状には必ずしもあなた方は満足していないでしょう。だからこそ、さまざまな行政懇とかあるいは有沢私案待ちという状態があるわけです。私は「むつ」の問題に関して言えば、内閣総理大臣のこれは許可になっているのですね。総理の許可の前提になっている安全審査会の審査が十全でない、危なっかしいと、こういう認識をぬぐえません、これは。この問題だけについてあと何時側やっても恐らくそうでしょう。結末は見えている。だから私は、「むつ」というあれが船であるか何であるか、法的にはかなりあいまいな存在だと思うけれども、「むつ」に対する許可ですね、この許可そのものが私、効力に疑いを持たざるを得ない。十全な審査ではなかった、不十分な審査から生まれたオーケーの結論は、したがって不適法だと、こういう認識を持っている。したがって、私は「むつ」の許可そのものについて適法性を否定する。再検討する、頭をさます、こういうことがこの問題の基本点ではないかと思うのだがどうですか。
  77. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) ただいま御指摘の点でございますけれども、私どもが考えておりますのは、安全審査が不十分であったということではございませんで、この大山委員会の報告書あるいはその後の国会での御質問に御答えいたしましたことでも申し上げている次第でございますが、いわゆる狭い意味の安全審査、すなわち原子力委員会及び科学技術庁の行います狭い意味の安全審査と、その後の詳細設計の審査あるいは工事検査に至りますその間に実は連続性に不十分な点があったという点が私ども認識でございます。したがいまして、ただいま先生が御指摘になりましたように、私どもは安全審査が不十分であったとも考えませんし、安全審査が不十分であったから原子炉の設計許可を取り消すのが妥当であるというようにも考えないわけでございます。むしろ問題点といたしまして、現在有沢先生が座長をしておられます原子力行政懇談会でもこの安全審査のやり方が問題の中心になっておりますが、そこでたびたびこの安全審査の一貫性を維持すべきだという問題が提起されまして、いまそういう方向に結論がまとまろうとしているわけでございますけれども、これはまさにこの「むつ」の経験から出たものでございまして、この基本設計の安全審査と、それ以降の審査、検査の段階とにまさにギャップが生じまして、ギャップが生じるようなことでございますと、先生御指摘のように広い意味の安全審査全体として問題が出るわけでございます。その点を今後改めるべきだというふうに考えておりますのが私ども考え方でございます。
  78. 秦豊

    秦豊君 そうおっしゃるなら、やっぱり少しごりごりと、あなた方が厳守しなければならない法を踏まえながら少しごりごりあなたに聞いてみたいと思う。  つまり、日本原子力開発事業団に関する一連の法律がありますね、これを踏まえますよ。そうしますと、これについても大山さんの報告書はたとえばこう言っているんですよ。四十二ぺ−ジなんだけれども、「事業団の原子力開発に関する技術能力については、」「自ら・三体的に開発するのではなく、協力を得てまとめるという方向にあり、人事もそのような線で行われたことにも今回の問題の遠因を求めることができる。」、これが一つ重要なんですよ、実は。しっかり聞いてもらいたいんですが、それから、その次に五十四ぺ−ジのところを見ると、「事業団の開発責任者としての在り方に問題がある。」「あたかも事務処理機関のようにも見える形で発足した問題の根源があったと考えざるを得ない。」、この私が引用した二つの指摘は大変重要である。なぜならば、この事業団の能力が事務処理機関のように見える形で発足をしたり、見切り発車をしたり、それから、みずから主体的に開発するんじゃなくて協力を得てまとめるような存在であるならば、法律上非常に疑義があるんじゃないかという基本的な問題を提示します。なぜならば、この原子炉規制法の二十四条をちょっと見ていただきたい。二十四条一項の三号です。これには内閣総理大臣が許可を与える基準というのをちゃんと明記しているでしょう。つまり、「その者に原子炉を設置するために必要な技術的能力及び整理的基礎があり、かつ、原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があること。」、こう明記しているじゃありませんか。ところが、事業団はことごとくこの踏まえるべき最も基本的な資格を満たしていない。これはあなた方みずからがどんなに強弁しようとも、事業団というのは大山報告という一種の専門家の報告としてずばっとそれを指摘しているんですよ。それならば、原子炉規制法二十四条一項に明白に、正面から違反をするというありようになっているんじゃありませんか、どうなんですか、これは。
  79. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) ただいまの点でございますけれども、この二十四条には確かに先生御指摘のような規定がございます。ただ、この規定を先生がただいま御指摘になりましたような読み方をいたしますと、電力会社が発電用の原子炉を設置いたします場合、これは電力会社といたしまして当然のことでございますけれども原子炉を設計し、あるいは原子炉を製作するという能力がないわけでございます。ある電力会社がある型の原子炉を設置しようとする場合には、もちろん電力会社で炉そのものの種類あるいは容量その他を検討いたしますけれども、その発注は原子炉メーカーにするわけでございまして、その発注を受けました原子炉メーカーが製作し、据えつけるということでございます。これと、この原子力事業団のこの原子炉——船用原子炉の場合と私は同じだと考えるわけでございまして、確かに原子炉の設置者は原子力事業団でございますけれども原子炉のメーカーは三菱原子力工業と三菱重工でございます。この点は電力会社と同じ関係でございますので、私はこの二十四条の規定に違反するとは考えないわけでございますが、ただ、この大山委員会の報告書におきましてただいま先生御指摘の二点が書いてございますのも、確かに全く間違っていないと私どもは考えておりません。どこが違ってまずかったかということを申し上げますと、これは原子力開発事業団と原子炉の設計者及び製作者でございました三菱原子力工業及び三菱重工業、その間の技術情報の交換あるいは全体の設計思想の統一、そういうような連絡調整の体制が必ずしも十分ではなかったのではなかろうかというように考えております。この点は私ども認識でございまして、そういう限りにおきましてこの大山委員会の報告書は確かに的を射たものであろう、かように考えております。
  80. 秦豊

    秦豊君 それではこういう点はどうなんですか。そうおっしゃるならば、事業団の技術的能力、一番基本、肝心かなめですね。これは「むつ」の事故以来どんなふうに具体的に——願望じゃないのですよ、目標じゃないんですよ、具体的にどうチェックされ、どう改められているのか。もしも、何ら改善の跡がないというならば、事業団が行おうとしている遮蔽設計の変更姿勢、あるいはいま盛んに佐世保をねらっているようだが、あるいはその他の地点かもしれない、同時並行にうかがっているかもしれない、そういう審査においても、依然として私が踏まえる二十四条第一項三号というのは満たされないことになりますよ、どうなんですか。
  81. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) その点につきましては、先生御承知のように、この「むつ」の事件が起きました後におきまして、原子力開発事業団の首脳部の人事を刷新いたしまして、理事長以下全員の入れかえをしたわけでございます。特に、問題の技術の点につきましては、専門家を二人担当の理事として導入いたしまして、そのうちの一名は原子力研究所の原子炉安全研究を担当いたしておりました理事の方を特にお願いいたしまして、原子力開発事業団の原子炉担当の理事になっていただきました。それからもう一人は、石川島播磨重工におきまして船体の安全問題あるいは船体の改修の専門家をしておりました方を、これもお願いをいたしまして原子力開発事業団の理事になっていただきました。あとその他理事長以下陣容も一新したわけでございますが、ただいま御指摘の技術陣につきましては、そういうことでまず理事の格段の充実をいたしましたし、それに伴いまして、部長クラス以下のスタッフにつきましても広く人材を集めまして格段に強化いたしております。
  82. 秦豊

    秦豊君 ちょっとお願いですがね。持ち時間が大変急迫しつつあるので、懇切は大歓迎だが、簡潔というポイントもお忘れにならないように。  次に、遮蔽設計の変更の問題です。皆さんのかかわりのむつ放射線しゃへい技術検討委員会、これ結論はどうなったんですか。
  83. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 十一月の二十五日に第一次報告という報告が出ております。で、それによりまして原子力事業団のつくりました総点検、改修計画は妥当であり、安全に点検改修ができるという、かような結論になっております。
  84. 秦豊

    秦豊君 この遮蔽設計の変更をするんだったら、これは二十三条二項五号、二十六条だったら一項ですね、これで変更申請と許可をしなきゃならぬでしょう。そうすると、審査、それから許可、この見通しなんだけれども、二、三年ぐらいはかかるんじゃないですか。
  85. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 総点検と改修に約三年というように考えております。したがいまして、完成するまでに三年でございますが、その途中で当然安全審査が入ってまいりますので、それを入れましてまあ三年と考えておりますが、先生御指摘のとおり二、三年ということだろうと思います。
  86. 秦豊

    秦豊君 やっぱり安全審査会がやるのですね、今度も。現在のような安全審査会で果たして信頼できるのか。それから遮蔽設計の専門家はいまは用意されているのか。それから有沢私案ですけれども、当然、有沢私案であれば原子力規制委員会がこれを担当するはずなんですよね、まだこれは構想の段階だからわからないが。私の言いたいのは、いまの安全審査では危なっかしい、信頼できません、だから将来考えられる機関、つまり有沢構想であれば原子力規制委員会、こういうふうなものが満たされるのをまって、そうして十全な審査をするべきじゃないか。それまで踏みとどまったらどうか。たとえばスウェーデンの場合のように、核モラトリアムということを断行した、あの総理が。そうでしょう。スウェーデンにおける原子力発電について鋭い批判が飛んだ、危惧は大きくなった、ふくれ上がった、反対運動は激化した。どうしたかというと、皆さんとは全く正反対の決断をしたんですよ。わかりました、まず開発をとめましょうとブレーキをかけたのですよ。皆さんはアクセルばかり踏んでいる。とめてないんです。スウェーデンはぱっと核モラトリアムという英断をとった。そうして世論に対して積極的に働きかけた。もちろんどんどん資料を公開した。みごとなぼくは英断だと思う。そういうふうなことを考えられないのですか。
  87. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 先生の御指摘ではございますけれども、私どもはこの「むつ」の安全審査におきまして、先ほど御答弁申し上げましたように問題があったということは認める次第でございますが、そうだからと申しまして、現在の安全審査全般に非常に欠陥がある、あるいは不十分であるというようには考えておりません。ただ、より合理的にそれを進めるにはどうしたらいいかということで原子力行政懇談会の検討が進められてはおりますけれども、私どもは現在の安全審査が非常に不十分であり、安全が確保されていないというようには考えないわけでございますので、今後とも運用は改善してまいりますが、原子力行政懇談会の結論が出るまでモラトリアムを行うということは考えておりません。
  88. 秦豊

    秦豊君 そういうお答えでしょうね。  遮蔽設計の変更を許可しますね、あなたは三年とおっしゃった。大体ぼくもそう思っています。しかし、その許可をした後に事故が起こったらこの種の事故はもう一回でも取り返しがつかない。起こったらおしまいだという厳しい認識をする必要があると思う。したがって、あなた方にいまここで事故を起こさぬ保証があるかと言ったら、鋭意努力します、最大限がんばります、こんな日本語しか返ってこないから、これは質問にしない。質問にしないけれども、それじゃいまむつですね、むつ市、船じゃない方、むつ市というのはあれですか、法的には「むつ」の定係港、母港なんですか何ですか、あそこは。
  89. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 現在「むつ」の定係港は大湊港でございます。大湊港の所在しておりますところがむつ市でございます。
  90. 秦豊

    秦豊君 そのとおりですね。そこで、付帯陸上施設敷地内の原子炉、これはいまどんな措置をおとりになっているんですか。いつつぶしたのですか。それともつぶすというのはベトンのようなもので厳重に塗り込めるという状態をつぶすというのか、あるいはもっとほかの補強措置をとっているのか。それで十全なのか、安全なのか、この点どうですか。
  91. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) まず原子炉でございますけれども、これは冷態停止の形をとります。つまり、完全にとまっている形をとりまして、しかも制御棒の駆動装置のかぎを青森県知事に預けてございます。したがいまして、制御棒が動かせませんので、そのかぎを使わない限りは原子炉が再び動き始めることはないわけでございます。  それから、陸上施設につきまして、使用済み燃料を入れる予定でつくっておりましたプールがございますが、このプールは埋め立てまして使えない状態にしてございます。それから、燃料を取り出します、あるいは交換しますときに使いますクレーンがございますが、このクレーンのかぎも同様に青森県知事に保管をお願いしておりますので、クレーンも使えない状態でございます。したがいまして、原子炉その他陸上施設はございますが現在は全く使えない状態になっております。なお、使えない状態でございましても、一応原子炉原子力関係施設がございますので、その環境放射能の測定につきましては、昨年の四者協定に基づきまして、青森県、むつ市、青森県漁連と、この三者の推薦の学者を中心といたしまして、その三者の職員も入りまして監視委員会が設置されておりまして環境放射能の監視をいたしておりますが、現在まで全く異常はございません。
  92. 秦豊

    秦豊君 結局あれでしょう。「むつ」という、船かどうか、これは議論の存するところだが、「むつ」には母港というのはないわけですよね、付属施設が現在存在しないわけですから。そうでしょう。そうしますとまた問題になるのですよ。あなた方は非常に上手にこの法律をくぐり抜けていくものだから、こっちは野党でチェックする方だから一々厳密にやりたいわけですよ。あなた方はここでもおかしなことをやっているのです。たとえば母港が存在しない、付属施設を持っていない船というのはこれは幽霊船なんですよ。漂流物なんですよ。それで原子炉規制法の二十二条の二項五号というのがあるでしょう。「原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備」として、申請をし許可された当初の要件を満たさなくなっている。そうでしょう。これは二十六条一項によって、それならばそういう状態変更を申請しなければならぬ事由なんですよ。そうでしょう。それが合法的な措置というものなんだけれども、あなた方はその許可をとっているのですか。許可は現在おりているのですか。
  93. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) これはただいま申し上げましたような措置をとりました直後、昨年の十月二十三日付をもちまして、付帯陸上施設の変更にかかわる設置許可変更申請書が提出されておりまして、それに基づきまして審査を行いまして、十月三十一日に許可をいたしております。
  94. 秦豊

    秦豊君 それで、新しい母港について、いわゆる母港ですね、定係港という言葉もあるからちょっと混乱があるようだが、一般的マスコミ用語的に言って母港と言いましょう。新しい母港について伺いたいのだけれども、ごく最近の話ですが、辻市長がいらっしゃる佐世保という町がありますが、この地元から要請があって、とにかく事を性急にやってもらっては困るというニュアンスで、特に年末年始のセールスに影響のあるようなことはしてほしくない、これ以上波風は望ましくないという意味の要請が来ているわけですよ。あなた方は依然として、伝えられているように佐世保母港化ということにこだわっているのですか。それともほかの場所を同時並行で何か検討していらっしゃるのですか、どうなんですか。
  95. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) ダイレクトにすぐ母港ということを考えておりません。そうじゃなくて大山報告、お話ございましたように修理総点検をしなさい、そうすればりっぱな船になります、それは実験船としてすべき常識だ、こういうふうになっていますから、修理点検をすべきだというのでずっと計画を進めまして、お話しのように十一月になりましてレビューの結論が出まして、事務的には安全の問題あるいは修理点検の計画ができたわけですから、その修理点検をどこでやるかというのが一番問題でございまして、修理点検をまず先にして、健全な体、健全な船にして、その上で母港というふうにした方が母港を受ける側としても安心じゃなかろうか、そういうふうに考えますので、まず母港を選定する前に修理点検をしようということで、たまたまその際、佐世保の市長さんが私の方で修理点検を引き受けてもよろしいというふうな、公式の申し出はないのですけれども、お話が新聞等に出ておりますし、私ども、もしそうであれば大変ありがたいことだ、修理点検の計画が済んで事務的な手順が済みましたら、今後はどう現地と話し合いを進めるかという段階になりますので、近くと申しますか、政治的な配慮を加えつつ、政府で決めたからといってどうなるものでもなし、やはり現地の状況等よくしんしゃくしつつ、現地でも納得するような行き方で問題を処理した方が万事円満にいくと思いまして、今後はそういう過程を経るつもりでただいま検討中でございます。
  96. 秦豊

    秦豊君 まあせっかくのお答えだけれども恐らく円満にはまいりますまい。  で、念のためにこれは伺っておきますが、佐世保は修理点検とおっしゃるからまあまあ。この段階は。しかし、仮に新しい母港を設定するときには、これを定めるべき法律というのは、この場合二十三条二項五号とか、二十六条による変更申請あるいは許可が当然必要になりますね。そうですね。その場合はやっぱり二、三年というのが常識的な目途ですか、どうですか。
  97. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 具体的にどこの地点にどういう施設を設けるかという計画ができまして、それから申請が出されるわけでございます。で、この申請に基づきまして安全審査を行いますが、通常約一年、早くて半年余りかかるわけでございますので、そのいわゆる安全審査だけでかなりの時間を要するかと思います。この安全審査が完了いたしました後建設にかかるわけでございますが、それ以降におきましても各種の審査あるいは検査が続くことはほかの施設と同じでございますので、全体を通計いたしますと相当の期間に相なろうかと思います。
  98. 秦豊

    秦豊君 こういうことを言いたいですね。そこまでお二人から答弁を得ましても、やはり私自身の原初的なというか、当初からの疑いというのは晴れない、懸念も薄まらない、残念なことですけれどもね。  「むつ」にはしかし、いまは母港というものがない状態ですね、これはあなた方も否定しない。母港がない船、漂流物だ、あれは。漂流物というのは許可の要件を満たさない。つまり違法な存在だというのが私のとらえ方です。違法です。それから「むつ」を所管する事業団、これは私が再三指摘したように技術的能力に欠ける。これは設置の基準を満たさない。これも違法である。ことごとく違法である。違法の積み重ねの上にいま原子力行政がある、こう思うのです。それから遮蔽設計の変更許可についても、見通しがもたつくし審査能力自体にもまだまだ、何というか懸念がつきまとう。審査能力に疑問がある。それから、長官せっかくおっしゃったけれども、円満はとんでもない。もう母港化なんというのは大変な政治問題、社会問題、市民運動の対象です。これはもう目途がたたない。  これらの理由によって、私は「むつ」を一たん処理することがいま必要だと思う。処理する。ぼくの意見による処理というのは何かというと、一たん原子炉と船体をばらす、分離する、これが一つの方法。暴論だというふうな顔しないで聞いてくださいよ、私の意見なんだから。それで原子炉と船体を一たん分離するか、廃船という措置をとるか、あるいは陸上実験の段階にあえて差し戻すべきではないか。それが、あなた方がよくお使いになる言葉を使えば安全性、信頼性という面から、私は非現実のようでいて実は国民の信頼を博する最も妥当なぼくは解決策であると思う。ところが、それにしてもいまの日本の技術水準からして、仮に私の意見どおりであれば原子炉と船体を分離するんですけれども、これはその設備を持った港がないでしょう、わが国には。その場合は、アメリカに曳航して行ってウエスチングハウスかなんかの技術を借りて分離するんですか、それはどうなんですか。  いま私が述べたことに総括的に、また一番最後のところには具体的に答えてください。
  99. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 先生の御意見の、つまり原子力船「むつ」から原子炉を外しまして、原子炉を陸上に置いてさらに実験を続けたらどうかという御意見でございます。実は昨年原子力船「むつ」が放射線漏れを起こしました後、その処理につきまして、私ども事務当局、これは科学技術庁と運輸省と共同で、そのことの現実的であるか否かは別にいたしまして理論的に考えられるあらゆることを一応全部検討したわけでございます。その検討いたしました中に、ただいま先生御指摘のように「むつ」から原子炉を外しまして、これを陸上の実験炉として実験を続けたらどうかということもずいぶん詰めて検討いたしました。大山委員会におきましても同様のことも検討の対象になったわけでございますけれども、先生御承知のように、私どもの検討の結果も、大山委員会のこの報告書に書いてございますのも、そういう必要はないのであって、現在のように船に原子炉を搭載した状態で適切な改修を施すことによって十分今後の開発に耐えるものであるということでございます。これは大山委員会の結論も、私ども事務当局の結論も同様でございますので、一応検討はいたしましたけれども、そういう案は採択しなかった次第でございます。  なお、最後の御質問の点でございますが、仮にその原子炉を取り外すということにいたしました場合を想定いたしますと、これはアメリカに持って行く必要はございません。本来、日本で原子炉を製作し船に載せたものでございますので、それと逆の工程を経れば当然外すことは可能でございますので、万一そういうことがございましても、これは日本の国内で適切な港あるいは港湾施設さえあれば可能でございます。
  100. 秦豊

    秦豊君 そうすると、いま日本でその技術的能力を持っているのは三菱グループですか。
  101. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) この加圧水型の原子炉をつくっておりますのは三菱重工でございますので、三菱重工が一番適当ということになろうかと思います。
  102. 秦豊

    秦豊君 原子炉規制法の問題にはきょうはあえて触れません。時間がかなり窮屈なようですから、多くの部分を次回に譲ります。  いま、私は午前中から引き続き長官と、午後は局長その他の皆さんの答弁、応酬をしてきたわけですけれども、そうはあなた方おっしゃいますけれどもね、いまのような一〇〇%に近く技術は導入するんだという路線では、一番基本的な、国民の皆さんの関心度の鋭い信頼性とか安全性とか、あるいは実証性ですね、実証性などはすべて極端に言えば海の向こう、あなた任せじゃありませんか。それはもちろん三菱がつくりました。本元はどこにあるか、ウエスチングハウスへ行って聞いてください。多くの原発の故障についても、ときどき、炉心の問題なんかは向こうのハイレベルの技術者が来て処理しなきゃどうもできない、炉心がひん曲がっている事故もあった等々、日本でわからないのは全部海の向こうですよ。向こうから飛んでこなきゃわからない事故が多いんです。しかも、いろんな事故に共通性があるんです。日本の技術はその程度でしかまだないの。しかも、そのように停滞している原因は、あなた方の言う、私が午前中から指摘してやまなかった自主開発技術能力、この育成強化に怠慢であったがためなんですよ。何でも海の向こうです。あの原潜の問題とは少し違うけれども、原潜の場合も、アメリカ海軍はアメリカの司令官が安全と言っているから安全なんです。若干のモニタリング。ポストを横須賀の海に沈めてみたところで十全のチェックがなされているとは蓄えないような状態があるでしょう。それとは多少次元が違うけれども、私は日本のあなた方のなすっている原子力行政の中においては、私の言った三つの信頼性、安全性あるいは実証性などはすべてあなた任せにすぎない。しかも、今後といえども急速に改善される方途、目途、見込み、これはないと思う。しかし、やっぱりいまからでも遅くないという言葉はこういうときに使う言葉であって、いまからでも遅くないから、佐々木長官は今度は規制開発をちょっとこうしていじくってみたり、安全局をわれわれに提案をしようとしている。しかし私は、そんな小手先のものでは、これはびほう策というのが一番妥当するんです、皆さんのなさろうとすることは。失礼ですけどね、きめつけるのは。ぼくの価値観ではびほう策、小手先にすぎないと思います。基本が揺らいでいるからです。基本のとらえ方がずれているからです。そう言わざるを得ない。しかし私はやっぱり行政責任において国民の皆さんに十分な理解を得なければならないというならば——やっぱり開発一至上主義というか、あるいはあくまで既定方針の四千九百万キロワットを目指して進めというふうなあなた方の姿勢では産業界にのみ傾く。しかし、あくまでその路線を進めようと思えば、私は信頼性、安全性、実証性というものを、具体的にどうすれば、どこをどうとらえれば、どこをどう改善すればそれが高まるのかということはあなた方が負うべき厳粛な行政義務です。そういうことを指摘しなきゃならぬと思う。最低限度の義務といってもよろしいじゃないでしょうか。  それで、これについて原子力委員会の環境・安全専門部会というセクションの報告書がありますね。これにこんなことを書いてあるわけです。「原子炉安全確保の要請に対する現行体制問題点」、「第五章まとめ」というところを見ると、「原子力にまつわる「安全」についての国民的合意がない」ということを嘆き、それについてあなた方政府側の格段の努力を求めているという個所があるんです。あるんですよ。それについて、さらに同じ報告書の四項を見ると、いまや——いまやですよ、いままでも欠陥があったとして、いまや「安壷に関する新しいフイロソフイの確立」ということが必要である。新しい哲学が求められている、新しい行政の視点が求められている、こういうことが指摘されている。私の質問の最後に、新しいフィロソフィーとは一体何か、安全についての。これは原子力行政のベテランでいらっしゃる長官の当然答弁を求めておきたい、どうなんですか。
  103. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 先ほどもお話ししたと思っておりますが、原子炉安全性に関しまして、特にただいま問題になっておりますのは軽水炉でございまして、軽水炉に関しましては、重大事故とかあるいは仮想事故というものはもうほとんどあり得ないということは、去年の秋に、軽水炉を開発し育て上げました米国の原子力委員会が、三年ばかり学者を動員してつくりましたラスムッセン報告というものに明瞭であります。したがって、重大事故等は私は恐らく考えられぬというふうに思っておりますけれども、ただ、現実には故障はしばしば起きまして、海外では余り問題にならない、言うなれば単なる故障を修理する問題として扱っているのに、わが方ではやはり日本の特殊な原子力風土と申しますか、そういう小さい故障でも大変大きい問題に扱っておりますので、故障が小さいからそんなものは構わぬでもいいんだという考え方は、これは私やっぱり間違いでございまして、わが国の風土を考えながら、そういう小さい故障でも起こらぬように英知を集めて安全なものにするのが私どもの任務だと思いまして、ただいまはその故障を、材料とか、あるいは継ぎ目とか、その他いま起きている故障の原因、はほとんどまあ集中的にわかってきておりますので、そういう点に全力を注いで、そういう故障すらないようにひとつやろうじゃないかということでただいませっかく努力中でございます。  フィロソフィーとなりますと天変深い言葉になりまして、それに対するお答えがまことに通俗的なお答えで恐縮でございますけれども、現実はそうなっておりますので、小さい問題ではございますがただいま一生懸命努力している最中でございます。
  104. 秦豊

    秦豊君 確かに長官自身がおっしゃったように、フィロソフィーではなくて、フィロソフィーを手探りしているがいまだ及ばざること遠しと、きわめて行政的なお答えであったと思います。  きょうは安全審査の問題だけでもうすでに時間が満了しつつありますので、一応きょうは終わりますけれども、次回に多くの部分をぜひ残したいと思います。  たとえば、つい先日、放射性廃棄物をリーベン・フィッシャー号で日本からイギリスに送りました。送ったら放射性物質が漏れた。大きな問題になって日本に打ち返されたが、なぜか日本での扱いはやや小さかった。しかし、イギリスの国内ではかなりシリアスな反応を引き起こしている。こんなものはもう受けるべきではないというふうな論調まで飛び出している。この、たとえば再処理の問題、廃棄物の処理の問題等も、あなた方が提案されたいわゆる機構改革の根底をなす原子力行政上の大きな問題点ですけれども、きょうはそれに触れるいとまがありません。次回に譲る、なお質問を留保、残しておくという条件で、一応きれいに短時に終わりたいと思います。  以上で終わります。
  105. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 それでは、引き続いて長官初め行管、それから総理府審議官、若干のお尋ねをさしていただきます。  最初に長官に。これはもうまことに申し上げるべきことではないかもしれませんが、政治的な最高判断の責任者として一言お伺いいたしておきます。これはもうわが国民の総意でもあるばかりでなく、原子力基本法に基づいて、わが国で原子力というものを利用する場合はもっぱら平和的に利用する。これはもう伺うまでもないと思うのでございますが、これについての長官の御見解、一瞬承っておきたいと思います。
  106. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 原子力基本法に明瞭に「原子力研究開発及び利用は、平和の目的に限り、」というふうに、これがもう日本の原子力開発の大前提でございますので、その趣旨を現実にどう生かすかという点を踏んまえまして、私ども原子力をやりました当初から最重点に実はこの面に注意をして進んできた次第でございます。具体的な方法いかんと申し上げればまた申し上げますけれども
  107. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 それでは、今度の原子力安全局というものを新設されるに至った、提案されるに至った最も大きなねらい、これについて一言伺いたいと同時に、この安全局というものを新設することによってのメリット。これはいままでは原子力局というのがあったわけですが、とれが二つに分かれるということによって、当然これは行政上に相当大きなメリットがなければいけないわけでございます。そのメリットを科学技術庁としてはどのような点に最も力点を置いて考えていらっしゃるか。
  108. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 先ほど来しばしば御議論と申しますか、御質問がございますように、抜本的な改正というのはただいま有沢機関で検討中でございますのでそれにゆだねるといたしまして、ただ、その結論が出、それが法律化し、あるいは予算化し、現実の行政として定着するまでには相当私は時間がかかるものだと思います。したがいまして、それまでそれでは放置するかと。そういうわけにまいりませんので、とりあえずと申しますか、こういう原子力安全局をつくりまして、そして、一つは安全審査、研究等の機能を強化するということ、それからもう一つ責任体制を明確にしようと、いままでも明確ではあったんでございますけれども、しかしより一層明確にしようというのが趣旨でございまして、あわせて申しますと、大変世論的な傾向の多い、開発の機関が即規制も兼ねるということは矛盾してやしないか、という要請にもこたえるんじゃなかろうかというふうに実は考えております。  で、その内容は、そういうことございますので原子炉あるいは燃料等の安全をいかに確保するかという問題が一つ。それからもう一つは核拡散防止条約で、ただいま批准を皆様にお願いしておりますが、あれが批准された暁には、いままで国連機関自身が主になって検査しておりましたものが、今度わが国が検査の主体になりますので、それに備えましてわが国の国内査察機構と申しますか、そういう人員を整催したい。それから、最近大変世界的に問題になってきました、盗難等が仮にあって、そして人類に非常に大きい迷惑を及ぼすような事態になっては大変だという、その保管管理を厳重にすべきだという大変新しい問題が出てまいりました。そういう面も兼ねてこの局でひとつ扱っていきたい、一元的に扱っていきたいというふうに実は考えてございます。
  109. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 行管いらっしゃいますか。——まあ行管も内閣委員会所管でございまして、たびたび行管からお伺いすることは、機構新設はもう一切まかりならぬと、これからはむしろ簡素化の方向にいくんだ、しかも、もし新しくつくるというならスクラップ・アンド・ビルドでやれと、こういうことを私どもはたびたび伺っておるわけでございます。また、その方向がある面では正しかろうというふうに私は思っております。その中にあって、特にこの原子力安全局というものだけは特別に行管がこれを認めたというような経過があるわけでございますが、これはやはり、先ほど来大臣もお話しのような、国民的に見て原子力というものがこれから重要であるけれども、その安全という問題はさらにまた重大である。こういうことに対して、行管がもう政府レベルで、最高の政治判断でこれをお認めになった、こういうふうに考えてよろしいか、すなわち、行管が特にこれを必要と認めた理由についてお尋ねしたい。
  110. 山本貞雄

    説明員山本貞雄君) ただいま先生御指摘のとおり、原子力利用推進は非常に重要な行政なわけでございます。その中でも、原子力利用に関する安全確保体制の整備ということは喫緊の重要事でございますので、各省庁の機構の新設は厳に抑制するという予算編成方針の例外措置といたしまして、科学技術庁に原子力安全局の設置を認めたわけでございます。しかしながら、総需要抑制下におきまして機構の膨張抑制方針というのは、これは従来政府が一貫してとってまいった方針でございますので、純増で認めることは適当ではないということで、その新設に対応するスクラップ措置といたしまして、科学技術庁の行政機構を慎重に吟味した結果、庁に置かれております科学審議官三名のうち二名廃止、同時に、原子力局に置かれております次長二名の一名を廃止する。そうすることによって全体の膨張の抑制を図ってまいった次第でございます。
  111. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 行管御苦労さまでした。  ただいま行管からもお話があったわけでございますが、諸外国の、特にこの原子力問題について先進国と言われている諸外国のこの種のいわゆる機構、こういうものはどうなっておりますか。まあ今回新しくわが国がつくるわけでございますから、そうすぐ先進国にこの安全問題が追いつくということについてはなかなかむずかしかろうと思いますけれども、その諸外国の例、そして、それに比して今回新設を予定されているこの安全局との差異といいますか、今後もやはりこれはせっかくつくったからには充実をしていかなくちゃいかぬと思うんです。そういう面も含めてひとつお聞かせ願いたい。
  112. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 諸外国の原子力関係行政機構でございますけれども、これはそれぞれの国の行政機構全般を反映いたしましてさまざまでございます。たとえば、原子力の一番先進国でございますアメリカでございますが、これは従来原子力委員会、これは日本で言う行政委員会でございますが、これがございまして一元的に処理いたしておりました。それが先生御承知のように原子力規制委員会、いわゆるNRCでございますが、それとエネルギー技術開発庁、とERDAと申しておりますけれども、この二つに分かれまして、いわゆる規制開発の分離を行ったわけでございます。これが、今日わが国におきましてもいろいろ議論されております開発規制の分離のいわば草分けのようなものだと考えております。  それからフランスでございますが、これは原子力が国営でございますので、国の原子力庁におきましてすべてのことをいたしております。  それからドイツでございますが、これは原子炉規制を主として州政府に権限を委譲いたしております。基本的なところは連邦政府規制いたしまして、実施は州政府でございます。さらにドイツの特徴といたしまして、安全審査、基本的な安全審査につきましては、特殊法人と申しますよりも、日本で申しますとちょうど財団法人のようなものに当たるかと思いますが、検査協会のようなものをつくりまして、そこに相当の資金を集中いたしまして、民間の学識経験者をそこに集めまして、その機関に委託する形によりまして安全審査をいたしております。  かような次第でございまして、国それぞれ特徴があるわけでございますが、概して申しますと、アメリカを先頭にいたしまして、開発規制を同じ機関でやるよりもむしろ分離した方がいいのではないかという傾向が最近かなり強うございますので、その一つの具体化といたしまして、原子力局におきましてもこれを二つに分離いたしまして、新たに原子力、安全局を設けたいと、かように考えております。
  113. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 長官、この国会というところはなかなかうるさいところだとお思いになるかもしれませんが、法律のできる前に何か事前準備をやるとしかられるが、法律ができてしまって、もたもたしていればまたしかられる。まことにどうも、私も議員の一人として矛盾を感ずるところもあるわけですが、しかし、今国会でこの安全局が認められたということになりますと、きょうも報道人の方が見えておりますが、国民的に非常にこれに対する期待といいますか、そういうものは非常に大きいと思うのです。これに対して、前国会流れた、そして今国会ぎりぎりということによるわけですけれども、もしうまくいけば。やはりそれが決まれば、速やかにひとつ考えていらっしゃった機構というものを整備されるべきだ、また本来の職務がその安全局というものを活用して活発に活動すべきだ、こういうやはりまた世論の目というものがあると思うのです。その準備体制といいますか、その自信のほどを伺っておきたいと思います。
  114. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 実はこの安全局を分離するという案が去年のちょうどいまごろ起きました際、地方の原子力発電を設置する県当局あるいは市町村等では、政府原子炉安全性に関する立証を、単にソフトウエアと申しますか、口頭であるいは作文で、これは大丈夫でございますと言うだけでは困りますと。この際、思い切ってその責任体制はこうだということを具体的に示しなさい。その第一歩として、こういう安全局のようなものをつくって政府の決心のほどを見せてもらいたいというのが非常に強い実は世論でございまして、その要望にこたえるのも一つの理由でございました。したがいまして、これができませんと大変に、過去一年間、私経験を振り返ってみますと、あの安全局すらまだできぬのかという非難と申しますか、大変強うございまして、行政を進める上に難渋いたしたのでございますけれども、そういう意味も含んでおりますので、皆様のお力添えで御承認をいただければ、お言葉どおり全力を挙げましてその充実にかかりたい所存でございます。
  115. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 先ほど来大臣から重ねてこの責任体制というお言葉が出ているわけでございます。秦委員からこの安全審査の問題ということについて非常な克明なお尋ねがあった。同時に、お話のとおり、この責任体制がいままでとかく不明確であったということが、また「むつ」の問題にしましてもそのほかいろいろな問題のときにたびたび世論の話題にもなった。そこで、この安全局ができますと、大臣もお話しのとおり、責任体制というものがこれによって確立したと、こういうふうに私どもは解釈いたしたいのでございます。もう少しその辺について、具体的な点を含めまして明快にしていただきたいと思います。
  116. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 現在の法制のままでも責任体制は明確でございまして、それは原子力委員長であり科学技術庁長官であることは間違いございません。ですから、最終的な責任者はだれであるかということはいままではっきりしておったわけですから、この安全局ができるとできぬとにかかわらずそれは明確でございますけれども、しかし、それにしてもさらにその面を明確にする意味で、その安全局ができますればそういう責任の所在もさらに具体的に明確になるのじゃないかという意味でございます。
  117. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 先ほど秦委員からもお話がございましたので二番せんじになってはいけませんから、お話のなかった分で結構でございますが、審議官いらっしゃいますね。  先ほど御答弁なさった点は結構でございますから、要するに十一月に何かこれは一応の結論が出るというふうな方向で作業が進められておったというふうに、これは私の間違いかもしれませんが伺うのでございますが、現在の進行状況といいますか、そういう点、特に、おくれているとすればそのおくれている問題点等がありましたら明らかにしていただきたい。ということと同時に、これはひとつ長官の方にお尋ねしたいのでございますが、当然のことながらこの報告が近々出されるということになれば、やはりこれを尊重して、同時にまた、対処の仕方を考えていかなくちゃならぬと思うんでございますが、その辺の御所信のほどをあわせてお尋ねしたい。
  118. 安仁屋政彦

    説明員安仁屋政彦君) 原子力行政懇談会はことしの三月に発足したわけですが、そのときに、大体どの時点ぐらいで大筋のところを出すかという点が問題になったわけですが、正直非常にむずかしい問題でもございまして、いついつまでにということは決まらなかったわけでございます。しかしそのときに、早ければ五十一年度の予算に反映させて実施するという意味で、十一月ごろ、しかし問題の複雑性あるいは困難性を考えるともう少しかかる、しかし余り遷延しても困るということで、遅くともおおむね一年以内にはめどをつけたい、こんな考え方でスタートしたわけでございます。過去に二十一回ばかり懇談をしておりますが、先ほどちょっと御説明しましたように、原子力委員会二分論から、その二分した場合の所掌事務をどうするか、あるいは事務局をどうするか、委員長はどういった方を当てたらよいか、また安全審査を各省庁が一貫してやるのがいいか、そういう非常にむずかしい問題に逢着しまして、なかなか議論が進展しておらないわけでございます。しかし、委員の皆様方も、やはりできるだけ早い機会に大筋を出して、その方向で政府努力してもらいたい、そういう気持ちは非常に強うございますので、おおむね一年という最終の目標よりは少し早目に大筋の方向が出る、そのように私どもとしては期待しております。
  119. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 先ほどもお話し申し上げましたように、有沢機関と私どもの方の関係は、批判される方でございますので一切発言は慎んでおりまして、向こうの独自の見解で答案を出していただくことはありがたいことだと思っております。ただ、この安全局自体がその結論を出すに際して大変邪魔だ、障害になるということでありますれば、これはいまやるのは大変めんどうだと思いますけれども、そういう話は一向聞きませんし、別に、これが先走って先に充実するということはかえって今後の安全審査体制をつくる上においてもベターだというふうな理解をしておりますので、有沢機関の結論が出る前でも措置をしたいという、ふうに考えてございます。特に、核防条約等をやる場合に、参議院側でも特にそういう御主張の方が多いようでございますが、国連からこちらで受けて自己査察をする場合に、査察員が日本で充実できるのかという御非難が多うございまして、それではそういうことが一切もう有沢機関の結論が出なければどうにも進めないということではこれはまた大変因りますので、そういう点も兼ねまして、これがすでに先行するということ自体が障害にならぬというふうに理解しておりますので、お願いする次第でございます。
  120. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 審議官、ありがとうございました。  そこで長官に、原子力問題に関する国民世論ということについて少しお考えをお尋ねしたいのでございますが、実は科学技術庁へ国民世論についてどのように調査していらっしゃるかということを伺いましたところが、的確なその資料は出たんでございます。出たんでございますが、これが昭和四十四年なんでございますね。非常に、月にロケットが飛ぶこの時代にしては、余りにも原子力問題について国民の動向というものを調査されるのにどうも手ぬるいのではないか、こういう私率直な感じがするのでございます。  そこで、原子力安全局が設置されますれば、当然のこと、国民がどのように原子力について感じておるかということ、もちろん、安全性という問題が何をおいても一番重要だということについては、これはもう何党何派を問わす論を待たないと思う。そういう問題等についても、国民に正しい原子力についての理解を持ってもらわなければ、何が安全で何がどうなのかということがわからないような状態で、ただ何となくおっかないものであるとかどうであるとかというようなことで、盲が象にさわるようなことを言っていてはしようがないと思うのです。そこで、いかがでしょうか、まずこうした調査、こういうものを、この際科学技術庁としてももう少し積極的に、せめて一年に一度ぐらいは役所としてもやる。もちろんそれは専門的な機関に委託するということもあり得るでしょうけれども予算的にも考えて相当大規模にやる。そのくらいのことをこの安全局ができた機会に長官として御所信をいただきたいと思うことと同時に、もう少し原子力とは何かというものについての、国民大衆にわかりやすいような広報、PRというものを行う必要があるんじゃなかろうか。ごく一部の専門家しかわからないような用語を使ったり、むずかしい説明では国民はわからないわけです。しかし、現実に住民の住んでいるすぐ前に原子力発電所もどんどんできてくるという現状なんですね。  これを拝見いたしますと、昭和四十四年ですから非常に古いんですけれども原子力の問題について、たとえば原子力そのものについて理解をしているかということに対しては、理解しているというのが半分ぐらいで、全く何にもわからない、チンプンカンプンでわからないという人が国民の半分いるというようなこれは資料が出ているわけですね。これでは、これから原子力発電だ、原子力船だ、エネルギーだといろんな問題が出てきたとき、果たして国民理解と納得が得られるかどうか非常に疑問な点もあります。  大変長く申し上げて恐縮でございましたが、要は、一点目はもっとわかりやすい広報、安全性を含めた原子力についての理解、これを深めるための努力をなすっていくべきではないかということ。もう一点は、この種の調査等を、もっとやはり科学技術庁として前向きに真剣に取り組んで実施されるというお気持ちがないかどうか、お伺いいたします。
  121. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 戸塚先生の御指摘のとおりでございまして、私どもも全く同じように考えております。差し上げました資料昭和四十四年で、古いもので大変恐縮でございますけれども、実はその後も世論調査をいたしておりまして、まだ最終の結果がまとまりませんので古いものを差し上げたかと思います。この点はおわび申し上げます。今後とも、世論の把握がまず第一でございますので、十分それを進めてまいりたいというように考えております。  それから、非常にわかりにくいというお話でございますが、これも全く同感でございまして、実は私も原子力行政をいま担当しておりますが、もともと原子力の技術の専門家ではございませんので、専門的な用語、非常にわかりにくい用語をむずかしく使いますと、いかに原子力というのは国民に受け入れられないかということを私自身も感じておりますので、今後とも十分注意いたしまして、十分わかりやすく、身近な問題として原子力国民の皆様に考えていただくような方向で努力してまいりたい、かように考えております。
  122. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 長官、お聞きのとおりなんですがね。四十四年以後のやつはまだまとまらないと。もちろんそれは最近おやりになったんでしょう。しかしやはり、さっき申し上げたとおり、月にロケットが飛ぶ時代でございますから、そう一年も二年もかけてまとめておったんじゃこれはまた時代におくれます。どうでしょうか、安全局ができたことを機会にしまして、せめて一年に一回はこういう原子力の問題についての国民の世論というものを役所としてひとつ調査をすると、こういったような御見解はいかがでしょう。
  123. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 大変結構だと思います。ぜひやらしてもらいたいと思います。ただ、最近出てきています議論の中で大変注目しなければならぬと思いますのは、いまの世論調査のことももちろんでございますけれども、いま一つは、小学校教育で、初等教育から、遅いようでございますけれども理解を深めるというのが一番早道じゃないかという議論もございまして、文部省といろいろ相談してみたいと実は思っております。
  124. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 ただいま長官のおっしゃったこと、大賛成でございまして、やはり、ただ恐ろしい恐ろしいだけでなくて正しい理解を小さいころから教育しておく。非常に結構だと思いますからぜひやっていただきたいと思います。  そこで、使用済みの燃料の再処理とか、放射性の廃棄物の処理、処分のシステム等について伺いたかったんでございますが、先ほど秦委員からこの次の委員会でゆっくりやりますというお話でございましたから、私がやってしまっては申しわけありませんし、時間もありませんから、これについては、ひとつ政府の施策というものをさらに推進していただきたいと、そのことだけをお願いしておいて、次に進みたいと思います。  そこで、長官、安全局の問題とは直接にはかかわり合ってはいませんけれども、最近、石油ショックというものがありまして以来、特に石油資源、石油というものが果たして何年もつであろうかというような、そういう議論の中でこの原子力という問題、核融合、さらにまた、たとえば地熱だとか、太陽熱であるだとか、いろいろそういう各種の新しいエネルギーに対して開発に取り組もうというような真剣な意欲というものが見え始めております。これはもう私たちの孫子の代を考えてみましたら、むしろ遅きに失するというくらいの気持ちであるわけでございますが、その中でも、特にこの核融合という問題につきましては、今後強力な推進をする必要があると思うんでございます。そこでまあ長官の、このエネルギー問題という問題を踏まえまして、いま申し上げましたような核融合であるだとか、その他地熱であるとかございますけれども、そういう諸般の、最近熱心に開発していこうと、こう取り組んでいる姿勢について、長官はどうお考えになり、その中でも特に何を一番重点的に推進されようとしておるのか、その辺について御見解を承っておきたいと思います。
  125. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) お説のように油の問題が、量のみならず、価格面が大変な暴騰と申しますか、いわば市場価格なしに、政治的な価格というふうな状況になってまいりましたので、これにのみ将来長く頼っていくということは、大変日本のように多量な石油を消費する国にとっては重大な問題だと存じます。そこで、クリーンエナージーと申しますが、環境汚染等の何ら心配なしに、しかも資源としても無限であるというふうなエネルギー資源があれば、これは一番万全なわけですけれども、そのためには、お話のございました核融合とか、あるいは太陽熱とかいうものが考えられます。しかし、これは、特に核融合などによりましては、やはりいまから三十年後くらいを目標にやる以外に、いま非常に力を入れてやっていますけれども、順を追って進めてまいりますとそういう足取りに実はなってしまいますので、結局、それじゃその間、何に頼るかというのが大変問題だと思います。ここ二十何年、三十年くらいの問、一体何に頼っていったらよろしいか、となりますと、いまのように地熱の問題あるいは石炭の再処理と申しますか、処理の問題とか、あるいはオイルシェールその他いろいろございますけれども、しかしやはり日本としては、核分裂による原子力発電が一番いいんじゃなかろうかと、幾多の申し上げましたように利点がざいます。欠点もございますけれども、利点がございまして、これをやるのが日本としては、一番よろしかろう。特に増殖炉等が完成してまいりますれば、プルトニウム自体を燃料にできますので、これはいまの軽水炉で燃やしました燃料が、また再度国産の燃料に変わって使っていけるわけでございますので、まあ純国産と言われる意味はそういう意味かと存じますけれども、いずれにしても、エネルギー資源のない日本が独自のまた資源を持つわけでございますから、そういう意味も兼ねまして、私は原子力発電というものはやっぱり重く考えていく使命があろうかというふうに実は思っております。
  126. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 それでは先ほど「むつ」の問題が秦委員からも出されたわけでござ一いますが、私からもちょっと伺っておきたいと思います。  まず、現在の「むつ」の状態でございますけれども、伺うところによりますと、制御棒等に、あるいはクレーン等にかぎをしっかりかけて、もう絶対何百分の一でも事故はないと、こういうような万全の策をしておるというふうに伺ってはおるのでございますが、しかし、やっぱりそこに船があれば何かその周辺は心配であるというような、そういう関係者の心配もあろうと思います。こういう点については十分な、百万分の一の心配もなくても、さらにまたその周辺の調査等は十分に行っておるのかどうか、最近の状況について少し承りたいと思います。
  127. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 「むつ」の周辺の状況でございますが、昨年「むつ」が漂流いたしまして入港いたしましたときのいわゆる四者協定という協定がございまして、その協定の中の一項目といたしまして、周辺の環境、特に環境放射能を監視いたしますために政府は参加しないわけでございます。地元だけで、青森県、むつ市、青森県漁連、この三春によりまして監視委員会を設置して周辺を監視するということになっておりまして、これは田島英三先生が監視委員会委員長ございまして、すでに設立されまして監視を続けております。現在まで全く異常はございません。
  128. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 そこで、この「むつ」の運営に当たっております日本原子力開発事業団、これが来年の三月でございますか、一応期限切れといいますか、どうするかということをやはりしっかりしなければならぬときになっているというふうに伺っておりますが、衆議院の方でも、これについてはひとつ延長するというような御答弁も出ているように伺っております。同時に、それが間違いない事実であるかということと同時に、さらにやはり機構の問題やあるいはまた運営の方法について考えていかなければならぬところがあるのではないかとも思うのでございますが、その点について科学技術庁、どのようにお考えになっていらっしゃるか。
  129. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) まず事業団法でございますが、ただいま先生御指摘のとおりでございまして、明年の三月三十一日で期限が切れるわけでございます。しかし、この「むつ」の開発は今後とも継続する計画でございますので、まず事業団法を改正いたしまして、それを延長いたさねばなりませんので、次の通常国会に事業団法の改正を提案いたしたいと思っております。その折にまた御審議いただくと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  機構、人員につきましては、すでにそれに先立ちまして、先ほども秦先生の御質問に御答弁申し上げましたように、理事長以下の幹部の陣容を一新いたしまして、非常に強力な陣容にいたしました。あと特に技術関係中心にいたしまして、中の部、課その他の組織も若干の手直しをいたしまして、その辺の専門家のスタッフの充実も十分いたしております。今後ともさらに充実する予定でございますが、そういうことで強化いたしてまいりたいというように考えております。
  130. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 先ほど秦委員から佐世保市の問題が出されました。私どもは私どもなりに、また新聞やそのほかいろいろな報道機関等を通じまして、この佐世保市の問題につきましては、私どもなりにまた関心も持っているわけでございます。科学技術庁としてのお考え、もちろんこれはこれからのお話し合い、折衝といろいろあるわけでございますから、当然その結果を待たなければ結論は出ないのでございますが、いまのお考えとしては、この佐世保港を一体どのような性格のものにお使いになろうとしておるのか。それから、その二年六ヵ月後に、協定では新しい母港を選定をして措置をいたしますということになっているわけでございますね、これは長官としても、そのような方向で当然努力されていらっしゃると思うのでございますが、佐世保だけでなくて、ほかのまた新しい母港といいますか、いろいろの角度から検討しなければならぬ問題だと思うのです。そこらについてはどういうふうになっておるのか。二年六ヵ月後にはきちんとするというお約束は当然守られると思いますけれども、その問題も含めましてひとつ政府のお考えを伺っておきたいと思います。
  131. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 先ほどもお答え申し上げたのでございますが、佐世保はとりあえず「むつ」なり原子力船を修理、総点検する港としては大変適格条件を持った港だと考えております。幸い現地の市長さん初め受け入れてもよろしいという意向があるやに承知しておりますので、こちらの方で修理点検の計画できましたから、事務的にはできましたから、安全だということも明瞭になりましたので、今後現地の情勢、意向等を勘案しながら円満にこの問題を片づけたい。したがいまして、いつどういうふうにアプローチしていくかといったような問題はこれからでございます。  それから母港の問題は、先ほど申しましたように、修理点検が済んで二印か三年くらいかかりますから、これが完全なものだということになりますれば、それであれば私どもも受け入れてもいいというところも出てくるかもしれません。したがいまして、その問の情勢を考えながら決めていきたいと思います。  二年半の青森の現地との協短でございますけれども、これは「むつ」という、早く言いますと現物を、二年半を目途としてほかへ移してもらいたいという話になっておりますので、修理点検で移すのはわずかでございましょうから、その協定は守れるものというふうに考えております。
  132. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 これは科学技術庁の局長さんで結構でございますが、いま長官からもちょっとお話がございましたが、別に市とか県とかそういう特別の行政機関でなくても、ある団体であるとか、ある何か地域の一つの集団的なもの、そういうところから、場合によってはうちへもひとつ母港で検討してみてくれないかとか、これはあくまでも非公式なものであろうと思いますが、そういう声は全然ございませんか。私は何かいろいろあちこちへ行きますとそういう母港を研究してみたいだなんてことを、真剣に私に頼んだわけではありませんが、研究してみたいなんて声も大分あるのですが、全国的にはいかがですか。
  133. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) ただいま先生がおっしゃいましたように、たとえば地方自治体の議会で決議をいたしましたとか、あるいはその議会の議長と申しますか、市長さんなり知事さんなりあるいは町村長さんなりという方が正式の意向を表明されたとか、そういうものはほかにはないわけでございますが、先生の御質問にございましたように、あるグループ、その地元のあるグループで原子力船「むつ」の母港として考えてもらえないだろうかというようなお話は実は相当の数ございます。で、それがどこかということはちょっと申し上げるのはお許しいただきたいと思いますけれども、数にして相当ございますし、最近でもまた新しいところがいろいろぼつぼつお話がございます。
  134. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 では時間も間もなく参りますから、最後に二つ伺って質問終わります。  一点は、東海村、各種の原子力研究あるいは開発等の機関が集まっているわけでございますが、あそこだけでというのは、やはり将来的にも原子力問題全般を見ますと必ずしも十分かというと十分でなかろうというふうにも思うのでございます。したがいまして、科学技術庁としても、今後他の地域にもこうした研究施設なり、お考えではなかろうか、開発施設等についてお考えではなかろうかと思うのでございますが、将来の拡充計画、御構想で差し支えのない範囲でひとつ明らかにしていただきたい。
  135. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 具体的な計画、具体的な地点はまだないわけでございますが、方向を御説明さしていただきますと、まず第一は、先ほど先生の御質問にもございました核融合でございます。この核融合のただいま計画中の大型の設備、あるいはそれに続きます設備をどこに建設するかという、この辺が問題でございまして、ただいまその用地につきましていろいろ検討を進めている段階でございます。それからもう一つはウラン濃縮でございます。これは現在パイロットプラントのもう一つ前の段階まで行っているわけでございますが、今後パイロットプラントをつくり、さらに商業プラントをつくるということになってまいりますとやはり相当の用地が必要でございます。それから新型動力炉の方でございますが、これは新型転換炉、ATRの原型炉、それから高速増殖炉の実験炉、これはもう完成間近でございますが、次の高速増殖炉の原型炉が一応予定した地点はございますが、まだ地元との完全な話し合いがまとまりませんのでやや難航いたしております。今後高速増殖炉の実証炉あるいはATRの実証炉というようなものをつくる段階になってまいりますと、また新しい設備が必要になってこようかと思います。  あと原子力研究関係の特に安全研究でございますが、現在のところ、あの敷地内で新しい設備を増設いたしておりますけれども、今後非常に規模をふやしてまいりますと、先生御指摘のようにまた新しいサイトが必要になってこようかと考えております。
  136. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 では最後に、長官に五十一年度の予算、いよいよもう間もなく編成になるわけでございますが、これを前にいたしまして、特に原子力等を中心にいたしました予算の重点的な御所信、まあ私は、先ほど来お話がありました核融合等につきましては、これはやっぱり何としても将来私たちの国家が千年も一万年も十万年もずうっと繁栄するというには、こうしたやはり未来の問題についても、もちろん原子力安全確保その他関係予算についても当然でございますが、やはり核融合等の新しい時代の予算というものも十分前向きに取っていただかなきゃいかぬと思うんです。さようなことも含めまして、非常に長官は紳士的な、いまの大臣の中でも最も温厚で私は尊敬している大臣でございます。しかし、何しろ例の全体の何%で抑えますということがあるようでございますから、大臣がごりっぱな方で大蔵省の説得力があってもなかなかそこにむずかしいという面もあろうと思います。しかし私は、原子力やこの種の問題につきましては、いままでは全くその予算の基礎がなかったのでございますから、これから始まるのでございますから、いまの安全問題を含めまして当然前向きな、何%で抑制するというその範囲を超えても高度の政治折衝で長官がやはり獲得されるという必要があろうかと思うのでございます。その辺の御所信、御決意のほどを伺いまして、及ばずながら私ども関係委員会の一人といたしまして、長官の御決意を伺っておけば応援はやぶさかでありませんのでひとつ確固たる御答弁をいただきたい。
  137. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 五十一年度予算におきましては、お話しのように核触合予算は今年度も最重点でございましたが、日本の国運をかけた問題でございますので、これは最重点にいたしたいと思います。また、安全研究は主として軽水炉の問題が重要でございますけれども、先ほど来お話ございましたように、単に審査、検査の体制をどうという以前にハードウエアそのものが安全であればいいわけでございますから、その研究をいま原子力研究所が中心になってやっておりますけれども、思い切って重視したいと思います。同時に、やっぱり人でございますから、原子力関係の科学者、技術者の養成確保をどうするか、従来も非常に力を入れてきたんですけれども、やっぱりこうなってまいりますとまだまだこれじゃいけませんので、人員の養成確保ということが大変重要な事項になってくると思います。まあこういうふうにしぼりますと、わしの方はどうしたんだといってこれ怒られることになりますけれども、最重点ということになりますと私はそういう点になろうかと思います。
  138. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 終わります。
  139. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、科学技術庁の設置法の一部を改正する法律案の審査に当たりまして二、三質問したいと思います。  今回の法案そのものの改正は、非常に簡潔なわかりやすい私は法案であろうと思います。しかし、その背景に含まれた問題は非常に重要な問題が多々あります。したがいまして、これはすでに先ほど委員長の方からもお話がございましたように、連合審査等も含めましてこれから審議が行われると思いますが、きょうは私はその前提としまして、二、三質問をしたいと思います。  特にこれは先ほどから質問ございましたように、原子力船「むつ」の問題だけじゃないんですけれども、先般のあの石油危機以来、これは日本だけじゃないんですけれども、世界各国でエネルギーという問題が大きな問題になっております。それぞれそのエネルギーをどういうぐあいにして供給するか、あるいは自主的に安定的に供給できるようにするかというのが非常に重要な問題でありますし、またその原子力依存をする、そういうふうな依存度も各国とも高まってきておるように私は思います。そういうふうな中で特にわが国は資源も非常に少ないわけです。したがって、この原子力開発という問題は非常に私は重要な問題であると、こういうふうな認識を持っております。したがって、初めにわが国におけるこのエネルギー政策、中でも原子力エネルギーという問題を、総合的なエネルギー政策の中で大臣はどういうふうに位置づけをされていらっしゃるか、この点について初めにお伺いしておきます。
  140. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) ただいま内閣におきまして、総合エネルギー閣僚会議というのがございまして、私もそのメンバーの一人でございます。日本の総合的なエネルギー対策をどうするかという点を中心にずいぶんピッチを上げまして、熱心にただいままで検討してまいりました。近く結論を得ると思いますけれども、その中で原子力はいかなる地位を占めておるかと申し上げますと、これは本来でありますれば、たとえばフランス、イタリー等、日本同様油のない国でございますから、一〇〇%原子力発電に切りかえつつございまして、今後の発電は挙げて原子力発電にということで思い切った踏み切り方をしておりますが、日本も、できますればそういう方向が一番望ましいのでありますけれども、なかなか、先ほど来御議論がございましたように、希望は持っておりましても現実的にむずかしい問題がございまして、その中で特にむずかしいのは立地問題、またその根本は安全問題になってくるわけでございますけれども、なかなか思うように進みません。したがいまして、大体十年後二五%程度を目標にいたしまして六千万キロワットの発電を考えておったんですけれども現状ではなかなか六千万キロワットというのは無理だということで、四千九百万キロワットという線に大体ただいま落ちつきまして、それを目指して今後原子力発電をしたいということで、全体の地位から申しますと、いま申しましたようなウエートで進みつつございます。
  141. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 確かに大臣がおっしゃるように、世界各国で油のない国は一〇〇%原子力エネルギーに切りかえつつある国もある。そういうような中で、日本も本当は油が全くない国でございますから、当然これはこういうふうに切りかえることができれば一番いいわけですけれども、それに至るにはいろんな問題があります。これは私は、大臣、何といいましても国民の信頼というか、国民が本当に安心して任せるという行政的なかちっとしたものがなけりゃいかぬわけですね。そういうような意味で、私はやっぱり現在の原子力行政の中の一番問題は、技術の問題とか、そういうふうな問題については当委員会は専門の委員会ではございません。それぞれ科学技術特別委員会があるわけですからそちらの方で審議していただくとしまして、こちらは特に国家行政組織というものを扱っている委員会でございますから、そういう面からきょう私は話をしたいと思うんですけれども、やっぱり政府原子力行政というものが本当にしっかりしていないと、政府に対する不信あるいは原子力行政というものに対する不信というものが高まってくる。今後、大田がいまおっしゃった、十年後の六千万キロワットが四千九百万キロワットに減ったと言いましても、その四千九百万キロワットすら今後の情勢によっては危うくなるということにもなりかねないわけでございますから、政府のいわゆる原子力行政が本当に信頼に足るような、あるいは国民から十分信頼されるような行政というものをぱちっと行うということが非常に重大になってくるわけです。  そこで、この原子力行政のあり方という問題について大臣はどうお考えなのか、現在の点でどういうふうな問題点があるのか、ただ単に原子力安全局をつくればいいという問題それだけじゃないと私は思うんですね、将来の点も含めまして。これらの点については、特に私は本当は原子力行政の体系そのもの全体を洗い直す方がいいんじゃないかという考えも持っているわけですけれども、大臣は現在どういうふうにお考えか、その点をお伺いしたいと思います。
  142. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) いませっかく有沢機関がこの問題を検討中なのに、私からかくあるべしという話をするのは大変当を得たことではなかろうと思います。しかし、御質問でございますので、私自体はどう考えるんだということでありますれば、私はやはり、根本は原子力基本法、厳然たる基本法が、まあ世界に冠たると言ったら語弊があるかもしれませんが、これほどの基本法はなかろうと思います。したがいまして、この基本法を基礎にして、あの中に含まれている平和の利用なり、あるいはそれを進める上においては三原則なりいろいろございますから、特にそれをまた進める中心機関としての原子力委員会等を強化いたしまして、そして国の進路というものを誤らぬようにしていくことが一番重要なことだと思います。同時に、いま申しましたように、エネルギー問題に対して非常な大きいウエートを持っているわけでございますから、これに関しましては現在の軽水炉を進めるのみならず、新型転換炉あるいは増殖炉、核融合等の新型炉を今後とも進めなければいけませんでしょうし、また同時に、原子力の一番特徴であります燃料サイクル面を、もっといまよりも充実した形で、官民責任を持ってこの完遂に当たるというふうなことがぜひとも必要だと存じます。いろいろなされなければならないことはたくさんございますけれども、しかし、大筋でどういう点が問題かと申しますとそういうことになると思います。  その中で、特にエネルギー問題で、船あるいは電力に使う原子炉、特にただいまの段階では軽水炉でございますけれども、この安全性自体が非常にこの数年間問題の焦点になっておりますので、二、三年前から国を挙げて安全性解決にいま努力中でございまして、今後も気を緩めずにこの問題の解決に当たりたいと存じます。それが完全に信頼を回復する段階になってまいりますれば、おのずから立地問題等も解決してくるだろうと考えられますので、現段階としては特にその点に重点を置いて進めたいというふうに考えております。
  143. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣も、先般の「むつ」の問題等がありまして非常に苦労していらっしゃると思います。そこで、いま大臣のお話ございました、有沢機関が検討しておるということでございますが、この検討を待って——やっぱり私も先ほどからいろいろ考えているんですけれども、特にいま問題になっております安全性の問題もそうですけれども原子力行政ということを私は先ほどから一生懸命言うておるわけですが、この原子力行政の全般的な見直しというものについては、いま大臣がおっしゃった有沢さんの結論といいますか、答申といいますか、そういうものを待って検討したいということでございますか。
  144. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 先ほどお話がございましたように、原子力開発研究と安全サイドの規制部面とが同居しておったのでは、どうも開発の方にウエートを置いて安全規制の方がおろそかになるんじゃないかという非難がありまして、もう一つは、海外から実用炉と称するものを輸入して実際やってみますといろんな故障が起こる。それはもう安全に対する研究なり実証が用意不足なことが原因でそうなっておるんじゃないかといったような非難があることは御承知のとおりでございまして、そういう点にこたえるためには、何といっても私は原子力の安全に対する研究開発というのが根本であると思うのでありまして、それがなければ、幾ら審査、検査をしても、不完全なものは何ぼしても同じでありますから、まず根本は、ハードウエアそのものずばり、これが安全だというふうにすれば問題はないわけでございますから、ですから、まず一番重要なのは、その点をどうするかという問題が一番根本でありまして、第二番目は、それを、国民が安心できるようにレッテルを張って、これで大丈夫ですよと言えば国民が安心できるような審査、検査の公的機関が充実をしておれば、これまた国民としても安心できるわけでございます。もう一つは、これを国民理解さすためにどういうことが必要か。理解協力が必要なわけでございますから、このPRなり、先ほどお話がありましたように教育の問題、いろいろな面で御理解、御支持を得るようにだんだん持っていかなければなりません。そういう点を考えますと、有沢機関で出す結論もいずれそういう点を中心にして根本的な対策ども出てくると思いますけれども、単に機構をああするこうするという問題ではなくて根本的にそういう問題が中心になって出てくると思います。しかし、それが出て、さらにこれを予算化し、法律化して、そして実際、行政として定着するということになりますと、相当これは先になると私は思います。したがってそれまで邪魔になるものであれば別でございますけれども、先に充実するものは充実しておいても、それと阻害なしにその線に乗っていけるということであればいいんじゃなかろうかと思いましで、原子力局を分けまして、そして原子力安全局原子力局というふうにして開発規制の分野を二つに分けて、安全サイドの充実と、それから責任体制をさらに明確化するということをやったのが今度の措置でございます。
  145. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 結局、大臣のおっしゃっていることは私はよくわかるわけです。要するに、研究開発という問題と安全性という問題と一緒にやっておると非常にむずかしい。したがって、その研究開発の方に引きずられてしまって安全性の方がおろそかになってはいかぬから、研究開発研究開発の部門、それから安全性研究という部門は安全性研究という部門、両方をはっきり機構的にも分けて、充実するものは充実しておきたい。で、いずれ有沢さんの機関からの答申なりあるいはその結論も出て、あるいは予算化され、あるいは法律化されるであろうけれども、それは大分先のことになる。だから、それまでできるだけのことはしておこうというのが今回の改正だと、こういうことでございますか。
  146. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) はい。
  147. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、そういうことだということですから、そこで私は問題の核心に入ってまいりたいと思います。  まず、この有沢機関とか有沢何とかというのがありますが、これは何ですか。
  148. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 「むつ」問題以来、大山報告等にも御指摘ございましたように、二十年間原子力行政が過ぎてきたわけですけれども、客観的にいろんな変化を来していることは事実でございます。そういう現実を踏まえて、もう一遍原子力行政そのものをひとつ根本的に再検討してみたらどうだろうかと、こういう案がございまして、そのためには現在の原子力委員会そのものをどうするかという問題が基本の問題になりますので、現在の原子力委員会にそれをゆだねるのは当を得ない措置じゃなかろうかと。そうだとすれば、内閣に別の検討機関を置いて、そしてその機関で、現在の原子力委員会も含めてこれの改革案というものを考えた方がいいんじゃないかというのでできたのが通常有沢機関と称する原子力行政懇談会でございますか、というものでございます。
  149. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これはどういう法律に基づいてできた懇談会でございますか。
  150. 渡部周治

    政府委員(渡部周治君) お答え申し上げます。  原子力行政懇談会は、昭和五十年二月二十五日の閣議口頭了解に基づいて設置された総理大臣の私的諮問機関でございます。
  151. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは、閣議口頭了解事項で設置された原子力行政懇談会と言うんですがね。要するに、そんなことをして決めていいという法律、どこにあるのですか、そういう懇談会をこういうようにしてスタートしていいという。これは、たとえば簡単に申し上げますと、国家行政組織法第八条、これは政府の付属機関なりその他の機関です。その他の機関というのはその他一切の機関ということになりますね。これらのものは、「第三条の各行政機関には、前条の内部部局の外、法律の定める所掌事務の範囲内で、特に必要がある場合においては、法律の定めるところにより、審議会又は協議会」その他いろいろありますが、「その他の機関を置くことができる。」、これはすべて法律の定めるところによらなければいけないことになっている。これは一体どういう機関なんですか。
  152. 渡部周治

    政府委員(渡部周治君) お答え申し上げます。  行政組織法八条に言う「審議会」というのは、もちろん法律に基づきまして設けられた審議会でございますが、この懇談会はその八条に言う「審議会」と違いまして、行政機関が当面する問題につきまして関係各界のいろいろな方々の御意見を参考にいたしながら行政を進めていくという意味で、まあそういう意見を聴取するために設けております懇談会というようなものでございまして、この種懇談会につきましては、原子力行政懇談会以外にも日常一般に行われておる問題でございます。
  153. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あなた、日常一般にと言いますが、法律に基づかないこういう付属機関がもし政府にあるとすれば、全部これは国家行政組織法違反の団体ですよ、あなた。いま長官は、原子力行政全般を再検討していただくために——現在の原子力委員会というのはこれは八条機関です。そうでしょう。現在の原子力委員会というのは八条機関です。その原子力委員会も含めて、今後原子力行政をどうしていくかということを検討する委員会、懇談会というのが有沢機関であるということを、大臣はいまおっしゃった。であるならば、それが日常行われているというのは日常どんなのがあるのですか。日常そういうふうなことが行われているとすればどんなのがあるのですか。あなた、そういうふうなことが日常行われているとすれば、三木内閣のもとでやっているそういうようなのは全部日常法律を犯してやっているんですか、あなた方そういう軽い考えでこの原子力行政懇談会というのをつくっているんですか。その答申が、しかも政府の重要な政策決定、あるいは今後の原子力行政を左右するような重要な問題を検討しておるんです。国家行政組織法で、私たちが内閣委員会で検討した原子力委員会をなくしようとしているのです。あった方がいいか、なくなった方がいいかそれはわかりません。その善悪は別にして、私たちは国家行政組織法で、原子力委員会をここで設置法で審議しているわけです。その審議した原子力委員会をどうするかということまで検討しようという委員会ですよ。それが簡単に法律に基づかないで勝手につくったなんて言われたんじゃ困ります。どうですか。
  154. 渡部周治

    政府委員(渡部周治君) お答えの言葉が足らなかったかもわかりませんが、私の申し上げました趣旨は、行政機関が当面する問題につきまして、関係各界の意見を承るというのは日常一般に行われておるということを申し上げたわけでございます。この懇談会もそういう趣旨で、内閣といたしまして、この原子力行政を進めていく上に、国民各界の方の御意見を承りたいという趣旨で設けられたものでございます。そういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  155. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 原子力行政についての各界の意見を聞く。各界の意見を聞くんなら、だれが聞くんですか、まず。だれが聞いているんですか、政府のだれが聞いているんですか。
  156. 渡部周治

    政府委員(渡部周治君) 内閣総理大臣が依頼して、その御意見を承っておるわけでございます。
  157. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 内閣総理大臣はその会合に何回出ているのですか、現在まで二十一回開かれたと聞いておりますが。
  158. 渡部周治

    政府委員(渡部周治君) 内閣総理大臣は最初に御出席になられまして、その席上で、この懇談会が設けられました趣旨を述べられました上で、本問題は内閣の重要施策の一つと考えられますので、委員の方々に御自由に御発議いただきまして、御意見を拝聴さしていただきたい、こういうことを申されておられます。
  159. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 であるならば、少なくとも意見を聞くだけなら、答申なんていうものは、あるいはまた、まとめなんていうものは、結論なんていうものは出るわけないですな、どうです。
  160. 渡部周治

    政府委員(渡部周治君) これはあくまでも政府の方としまして、特に問題を諮問いたしましてその答申を求めておるという趣旨のものではございません。この懇談会は座長に有沢先生になっていただきまして、座長が随時招集をされまして懇談をされておられるわけでございます。それがどういうかっこうで意見がまとまりますか、まとまると申しますか、意見があれしますか、われわれとしましては時々刻々の御意見を拝聴しておるわけでございますが、最終的にどのようになるか、これはすべて座長を初めとする懇談会の皆様の決定に従うわけでございます。
  161. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 であるならば八条機関とどこが違うのですか。全く同じじゃないですか、やっていることは。
  162. 渡部周治

    政府委員(渡部周治君) 八条機関はあくまでも合議機関としてそのものの意思が公の権威をもって表示されるわけでございますが、これはそのようなものではございませんので、各出席者の方々の意見の表明または意見の交換といったようなかっこうで、政府が意見をお聞きするということでございます。ただ、意見がどういうかっこうになりますか、その形式が一つの意見書というようなものにまとまるのかどうか、それらはすべてこの懇談会の皆様方の会議の進め方によるわけでございます。
  163. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そんな詭弁は通りませんよ。朝からきょうの内閣委員会で有沢委員会答申という問題、あるいは意見書という問題、あるいはその結論という問題、何遍出ていると思います。あなたがいま言った言葉は、行政管理局長が通達した通達の内容じゃないですか。審議会と懇談会はこう違うと、あなたは局長が出した通達を読んでいるだけじゃありませんか。現実の問題としては、これは第八条に言う審議会と全く同じ役目を果たしておるじゃありませんか。なぜかならば、大臣を初め科学技術庁の各局長も、すべて答申を待ち望んでいるんじゃありませんか、現実に。答申が出るのを待っているじゃありませんか。先ほどから答弁何回もあったじゃありませんか。先ほど意見書がいつごろ出るのかという質問に、できるだけ早く結論をまとめ大筋の方向を出したいというのがあなたの方の審議官の答弁でした。それから始まって、有沢委員会基本的な改正案をつくっている、その改正案をできるだけ早く出したいとか、そのほか、先ほどからいっぱい書いていましたけれどもずいぶんありますよ。原子力行政の抜本的な改正については有沢委員会で現在検討中ですと、その結論が出次第——これは大臣の答弁ですよ、出次第、早ければ十一月ごろ、五十一年の予算に間に合わせるとか、およそ一年をめどにとかいうような、そういうようなことから始まっている。先ほどのあなたの答弁は、審議会と懇談会はどういうぐあいに違うのかという局長の通達を読んだだけじゃないですか。懇談会というのは「出席者の意見の表明又は意見の交換の場であるにすぎない」、このとおり読んでいる。ですから、ただ単に出席者の意見の表明、愚見の交換の場だと、こんなことをあなた有沢機関の皆さんに言ってみなさい。そんなこと考えていないですよ。本当に日本の将来の原子力行政をどうするかということを真剣に考えてやっているんじゃありませんか、みんな議論を。そうでしょう。それをあなた、有沢先生初めそういうふうに熱心に議論している人たちのことを、あなたは出席者の意見の表明または意見の交換の場であるにすぎない、こう言ったんですよ。そんなものなら、大臣がその意見を五十一年度の予算に反映させる、今度の原子力局をつくるのも、有沢機関の結論が出てからじゃ間に合わない。できるだけ早くできるだけのことはやろう、やるだけのことはやろう、つくらなければいかぬのは早いところつくっておこう、原子力局を。大臣、こうおっしゃっているのです。そして、有沢機関から出た結論については、予算化できるものは予算化して、そして法律化していくということになるとちょっと遅くなる、だから今回の法案を先にやってもらいたいというのが大臣の趣旨じゃないですか。  そうすると、あなた方の考えと大塩の考えと、また現実にこの原子力委員会人たちの考えとはまるきり違いますよ。私は、こういうふうな国家行政組織法に反するようなやり方は納得できませんよ。あなたが何と言おうと、私は一昨日の内閣委員会でもこの同じ問題を取り上げたんですが、防衛を考える会というのをここで議論したんですけれども、全く考え方が同じじゃないですか。管理局長、あなたこの間の内閣委員会で私的懇談会が四十一あると言いました。どこの省庁に幾つずつあるのですか、一遍言ってみなさい。
  164. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) ただいま急いで調べたものでございますが、各省から報告を受けましたものにつきまして申し上げますと、内閣が一つ、それから総理府本府三、公正取引委員会二、防衛庁一、経済企画庁二、科学技術庁四、環境庁一、文部省三、厚生省五、農林省二、通商産業省五、運輸省一、郵政省一、労働省八、建設省一、自治省一、以上でございます。
  165. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう私が言いますけれども、こういうふうな私的諮問機関というのは、いまあなたがおっしゃった四十一の私的諮問機関は、あなた方の資料によりますと昭和三十四年にスタートしたのが一件、四十三年が一件、四十四年二件、四十五年二件、四十六年三件、四十七年三件、四十八年十一件、四十九年七件、五十年十一件、こうなっています。これは結局四十八、四十九、五十と毎年ふえています。これはもっと端的に言いますと、本来ならばこの原子力行政懇談会も総理府の本府の設置法の改正によってちゃんとすべきじゃないですか。これだけ重要なものであるならば当然法律として出すべきですよ。ちなみに総理府には現在法律に基づいたこういうふうな諮問機関というのは幾つあるんですか。
  166. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) 審議会の設置数は、これは本府だけでございませんが、総理府外局を含めまして、総理府におきまして七十でございます。
  167. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 七十もあるんじゃないですか、総理府だけでも。そんなにたくさんある審議会というか、そういうふうな懇談会みたいな、研究会みたいなものも含まれますね、当然私はこういうふうな重要なものについては、そういう法律の改正をして、あるいは改正しないまでもちゃんと法律として出して、そして当内閣委員会審議をして今後の原子力行政の重要な問題について検討するという姿勢がなければ、一体何のためのこういうふうな原子力懇談会であるのかわからぬじゃないですか。  私は委員長、この問題は非常に重要な問題ですから、私はこの問題は本当に総理大臣に出席してもらってきちっとこの問題についての答弁をいただきたいと思いますよ。そうでないと、私はこの問題は納得できませんよ。これはね、審議室長、この問題が問題になったのは御存じのとおり昭和三十六年です。もうこのころから相当問題になっている。当時は池田総理大臣。当時閣議決定して発足した暴力犯罪防止対策懇談会というのがある。これも同じです。この原子力懇談会と同じです、内容的には。当時の非常に重要な問題で閣議決定をして、そして問題になった。そして問題になったそしてこれを法律として出さないのは一体どういうことなんだということで相当問題になって、この内閣委員会でも議論をしたあげく、その最後段階での池田総理が答弁したその答弁はこんな答弁です。最後に池田総理は、「今問題になっておりまする暴力防止懇談会これは答申をするようになると思いますが、これは法律にいたしたいと思います。」、そして労働問題懇談会、「これは意思決定して答申しておると聞きましたが、これは今後そういうことのないようにしなければいけません。」「それでなければ、廃止するのにやぶさかではございません。」というのが池田総理の答弁です。現実にこういうふうなのは国家行政組織法から言いましてもこれは確実に違反をしておるんです。これは私が言うのは、この原子力行政懇談会はいろんな意見を聞くんだと、個人の意見を聞くんだと、こうおっしゃっていますね、当然私は意見を聞くことについては何らぐずぐず言うておるのじゃない。いや聞けばいいのです。たとえば総評の代表を呼んで聞く、そしてまたいろんなところの代表を呼んで聞く、それはいいのです。ところが実際にはあなたも御存知じのとおり、この有沢委員会というのは、有沢委員会とか有沢機関という言葉がこの委員会でも何回も出てまいりました。もう機関になっているのですよ。一人一人の意見を聞くなんという段階は通り過ぎている。しかもこういうふうなのはちゃんと委員の名簿まできちっとそろっておる。これは要するに一人一人のあれじゃなくて、原子力行政懇談会委員の名簿なんです。こういうようになっているということは、ただ単にこれは意見を聞くための名簿と違うのです、これは。有沢さんが委員の皆さんに連絡するために連絡網できておるでしょう。いわゆる第八条機関に言う審議会と全く内容的に変わらないんです。法の網をくぐっておるだけじゃないですか。そういうふうな意味では、私はこれは何と言おうとこの問題については現在のやり方では納得できない。いろいろ言いましたがどうお考えです。
  168. 渡部周治

    政府委員(渡部周治君) 審議会と懇談会につきましては、従来から国会でそういう御議論があったことはわれわれも承知いたしております。この問題については私からお答えするよりも、あるいは行管の方からお答えなさる方がいいのかと思いますが、こういう懇談会等行政運営上の会合の開催につきましては種々御注意がございまして、そういうものにのっとりまして政府としましては運用をいたしておるつもりでございます。  なお、この原子力行政懇談会は、確かに原子力行政基本的なあり方を検討するという非常に重要な問題の御懇談をなさっておられるわけでございますけれども、これはあくまでもわれわれといたしましては、先ほど来御説明申し上げておりますように、行政機関として各界有識者の御意見を承るという八条機関でない、いわゆる懇談会としてわれわれは運営をし、その趣旨に沿って審議を進めていただいておるところでございます。  なお、御指摘のところにつきましては、われわれとしましても今後そういう点を十分肝に銘じながら運用さしていただきたいと、かように思っております。
  169. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私はあなたの答弁では納得できませんね。あなたは強引に八条にはかからない懇談会だと。八条にかからない懇談会というのは根本的にはないのですよ、本当を言えば。厳密に言えばないのです。国家行政組織法の八条を一遍読んで見なさい、あなた。ちゃんと読んで見なさい、一遍。八条を読んでわかるでしょう。原子力行政懇談会というのはこれは何なんですか、一体。どういう位置づけをするのですか、あなたは。
  170. 渡部周治

    政府委員(渡部周治君) あくまでも懇談会でございます。
  171. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや懇談会というのは法律的に何だと言うのですよ。懇談会であろうと何であろうと、ここには懇談会という名前がないから懇談会とあなた方はごまかしているのかもしれませんけれどもね。これは「審議会又は協議会」と、こう書いてありますがね、その下には「試験所、研究所、文教施設、医療施設その他の機関」と全部なっておるわけです。どういう名前であろうと実体は「その他の機関」じゃないか。第八条に言う「機関」であることには間違いないんじゃないですか。これは委員長、この問題を解決しないとだめですよ。
  172. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) いろいろ先生から御指摘がございましたとおり、懇談会といえども、その運営のやり方等によりましては非常に審議会等と紛らわしくなる点がございますことは、御指摘のとおりでございます。ただ、この原子力行政の懇談会を内閣におきまして設けられました趣旨は、ただいま審議室長から申し上げましたとおり、非常に複雑かつ高度に専門的な問題でございますところの原子力行政の問題につきまして、民間におられます有識の方々のこの問題についての御意見を率直はお伺いいたしたい、そうして、かつ、その先生方相互の御意見の交換によりまして、さらにそれらの御意見というものがますます政府にとって有益なものとなるのであれば大変政府としてもありがたいというような趣旨で懇談会という形式を設けたわけでございまして、これは懇談会に御出席になります先生方の相互の意見の交換、そうしてその相互の意見の交換によりまして、あるいは一つの御意見というものにまとまるかもしれませんし、あるいはまとまらないかもしれませんが、その相互の御意見の交換ということが非常に重要な点であると私は考える次第でございます。
  173. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 わが内閣委員会で国家行政組織法という問題について、本当にこの二、三年本格的議論が行われなかったのは私は非常に残念だと思っています。その証拠に、この私的懇談会も、従来からいろいろあったのがだんだん整理がされておった。ところが、最近非常に多くなっているんじゃないか。ことに五十年度は十一件もできている。四十九年は七件、四十八年十一件。四十七年より前は全部三件ぐらいで終わっている、現在残っている分で言えばですよ。こういうふうな点を考えたって、行政管理庁は最近非常にやり方がおかしい。私は納得できない。  さらに、ただ意見の交換で、そして何というか、出席者が意見を表明する、合議機関じゃない、こうあなたはいまおっしゃっていますけれども、現実に原子力委員会をどうするか、「むつ」を含めて今後どうするかという重要な問題に取り組んでおるわけです。私は何もこれ、いかぬ言うているんじゃないんですよ。皆さんの意見を尊重してやるのはあたりまえだと言っているんです。どうして国家行政組織法に基づいてきちっと設置法で法律を出して、ちゃんとしてやらないかと言うんです。ちゃんと筋を通してどうしてやらないんだと。そうでないと、みんなやみからやみに葬られていくんじゃないですか。目の層かないところで議論をされ、目の届かないところで結論が出ていく。そういうふうなことになりかねないから、きちっと法律に基づいてやるべきだと言っているんじゃないですか。  現実にいま大臣が、先ほどからいろいろ社会党の議員さんも質問がございました、自民党の議員さんも質問ございましたよ。その答弁の中で出てきた一つ一つの、その有沢委員会に対する内容、期待というものは、あなた方が言う意見の交換の場であるにすぎない——あなたの意見はそういうことですよ、違うの。あなたの文章のとおり私は読んでいるんですよ、これ。「意見の表明又は意見の交換の場であるにすぎないのであります。」というのがあなたの通達じゃないですか。そんなことを行政問題懇談会の皆さんに言ってみなさい。みんなやめる言いますよ。私はそんないいかげんなことじゃ納得できませんね。もう少しやっぱりこういうふうな問題については、前々から問題になっておるわけですから、政府がこの行政懇談会についてはこれは将来法律にいたしますと、こういうふうな答弁が出てこない限りこの問題は進めることはできませんよ。  そうでないと、原子力行政基本的な問題がうやむやのうちに、いいかげんのうちに——大臣も有沢委員会に遠慮しながら物を言っているんです、わが内閣委員会に来ての答弁がですよ。先ほどの大臣の答弁なんか見てみなさい。有沢委員会に遠慮しながら、いま私はこういうことを言う立場じゃございませんがといって言っているんです。ただ単にそういうふうな八条機関でも何でもないものなら、そんなことに遠慮せぬと大臣の意見をばんばん述べればいいんです。ところが、現実に大臣はこの有沢委員会の意見というものを非常に尊重し、その結論を期待し、遠慮しいしい言うているんです、もうすでに。ということは、この懇談会というのはただ単なる私的な懇談会じゃなくて、少なくとも私は国家行政組織法の八条に言う「その他の機関」に当たるんじゃないか、こう言っているんです。違うんですか。どこが違うんですか。
  174. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) 懇談会といういわゆる私的な会合にする方が適当であるか、あるいは審議会という一つ行政機関であった方がよろしいかという問題は、これはいろいろその問題につきましての政策判断によるべきことであろうかと思うわけでございます。ただいま御指摘のございました原子力行政懇談会について、私が懇談会とされた趣旨として承っておりますところは、非常にこの問題は複雑でございますし、またむずかしい問題でございます。で、これを国家行政組織法上の審議会ということにいたしますと、審議会としての意思決定をしなければなりません。懇談会の場合には必ずしもその必要はないわけでございまして、各先生方の御意見がいろいろあるものをまとめられるということで終わるわけでございまして、このようなむずかしい問題につきまして、一つ審議会としての意思決定をしていただくよりも、懇談会で自由な御意見の御表明をいただいた方が適当であると、こういう判断をされたものと私は承知しておるわけでございます。
  175. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 おかしい、おかしい。あなたね、こういうところへ来て間違ったことを言っちゃいかぬ。審議会は意思決定をする、懇談会はしなくてもいい。では審議会は全部意思決定をしないといけないんですか。そんなことないでしょう。審議会だって意思がまとまらなきゃ、乙論、丙論いっぱい並べて書いてあるんじゃないですか。そうでしょう。審議会は全部同じ意見に意思統一、賛成反対を決めてぱちっとやるんじゃないでしょう。甲論、乙論、丙論併記、多数意見、少数意見いっぱい書いてあるのもあるんじゃないですか、現実に。そういう答申が出たのがいっぱいあるじゃないですか、現実に。そうでしょう。今度の場合だって同じじゃないですか。私は実態が現実にそうなっていると言っているんです。そんなおかしな答弁じゃ私納得できませんよ。  実は委員長、この問題は本当に私は理事会で検討してもらいたいと思いますね。それで、私の持ち時間もうこれで終わりますから、あと同僚議員がやらないといけませんので、これ以上続いてできませんけれども、この問題は非常に私は今後の原子力行政の重要な問題ですし、しかも当内閣委員会で過去にも議論をされて、総理の出席まで見てやった問題です。これは今回だけじゃなくて、一昨日も防衛を考える会というのでやりましたけれども、現実にこういうふうな行政管理庁初め国家行政組織法を完全に守らないといけない役所が、そういう非常に何というか、いいかげんな考え方行政運営をやっているきらいがある、あるいは疑いを持たれる。まあ少なくとも私は違反とは言わなくても、違反の疑いがあるという、現実にそういうふうな姿があるわけです。この問題についてはきょう私は自分の持ち時間が終わりましたから一応保留しますけれども、ぜひともこの問題については次回のこの内閣委員会には総理も出席をしていただいて、少なくとも前の昭和三十六年のとき、当時の池田総理は現実に出ているわけです。総理がそういう発言を現実にしておりますね。ですから、そういう点から考えてみましても、私は今後の問題としても、特に原子力行政の重要な問題でありますから、特にそういうような観点からこの問題にも取り組んでいただきたい、御検討をいただきたい。  以上申し述べて、私は保留のまま同僚委員に譲ります。
  176. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、私はただいま議題になっております設置法の一部を改正する法律案、これについて二、三質問させていただきたいと思います。  最初に、先ほど長官から、核防条約と安全局の設置の問題につきまして関連性があるようにお話ありましたが、その点についてまず再度お聞きしたいと思います。
  177. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 御承知のように、わが国のいままでの原子力の進め方は、燃料資源もあるいは原子力の機器等も、米国、英国、カナダ、フランス、豪州、ドイツ等との相互条約に基づきまして、国連機関の軍事転用をしないという査察、いわば保障条項を担保にいたしましていままで援助を受けておるわけでございます。そこで、国連機関は大体おおむね月二人、二十日くらいの平均で現実に現在査察をしております。ところが、その査察は大変シビアなものでございまして、日本の業界等で、いまの相互条約に基づく査察条項のままで締められるのでは日本の将来の原子力開発は思いやられる、何とかしてもう少し、せめてユーラトム並みぐらいの緩和した条件にできないものだろうかということで、その緩和条項等、この二国条約に基づく、相互条約に基づく査察にあらずして、核防条約に基づく査察協定条項を審議する場が上にできましたので、批准以前に調印を済ませばその会議にわが国も出席できるということでございましたので、大分いろいろ問題ございましたが、政府として調印して、批准はそれはまだしてないわけですけれども、ウィーンに人を配し、機関に人が入りまして、そしてわが方の主張をずいぶん丹念に長年主張してきまして、ことしの二月でございましたか、一月でございましたか、ともかく第五次の派遣でほぼわが国の主張どおりの査察条項ができたわけでございます。  それによりますと、いままでは国連機関が査察をしておった、主体が向こうでございますけれども、今度は日本自体で主体性を持って自分で査察をする。国連機関は、オブザーバーと言われますけれども、それに側面的に参加をして見ましょうという、そういう主客転倒した条件になり、あるいは査察の内容、時期、あるいは秘密の保持等に関しまして、非常にわが国としては有利な条件になって、ユーラトム並みと言っても差し支えない条件になってまいりました。  したがって、これであればわが方としても平和利用の面ではまずまずということで、御承知のように批准の案を出したんですが、さてそうなりますと、わが方で査察員等が充実しておるかどうか、話し合いはできてもわが国が主体になってやるだけの実力がなければ困るじゃないか、こういう議論がずいぶんありまして、国会でも実は大変この問題が問題になったことは御承知のとおりでございます。私どもはこれに対して、準備は十分あります、ただし、批准した場合には人員的な増加もできますし、この安全局ができまして、そういう安全サイドの専門にやる機関をつくりますから、どうぞひとつその点をしんしゃくの上NPT条約を批准しよう、こういう話で来ていることが実は現在経過でございまして、そういう意味を兼ねて、安全局とNPTの批准とは大変実は関連の深い問題でございます。
  178. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、きょうは外務省の条約局長においでいただいておりますが、時間の都合で限られてございますので、先に質問させていただきたいと思います。  政府は核防条約を国会に提出をしておりますが、現在衆議院で継続審議中です。公明党としては、すでに質疑も終了しておりますので、すみやかに批准すべきだ、このように考えておりますが、政府はまだ批准しようとしておりませんが、この核防条約について政府はどのように考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  179. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 現在国会において御審議いただいております核不拡散条約につきましては、政府といたしましては一日も速やかに御審議を終了していただき、御賛成を得て、批准の手続を進めたいと考えております。
  180. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この条約批准についての条件として、自民党側ではアメリカの核のかさによる安全保障を一つの条件にしている、こういうふうに私たちも考えておりますけれども、この核のかさと非核三原則、これは矛盾するものであるかどうか、どのようにお考えになっておられるか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  181. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 非核三原則と申しますのは、核をつくらない、持たない、また持ち込みを認めないということであろうと理解をいたしております。いゆわる核のかさによって日本の安全保障を確保するというためには、わが国自身が核を持つあるいはつくるということは論外でございますけれども、持ち込みも認めないという非核三原則のもとにおいて、何ら矛盾することはないという考えでございます。
  182. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ただいま矛盾するものではないというお答えでございましたが、そうしますと、この非核三原則、木村前外務大臣は国是であるとも言われましたが、この非核三原則を核のかさのために改悪するようなことはないと思いますが、いかがですか。
  183. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) ただいま御指摘ありましたごとく、核の持ち込みを認めないという原則を含めまして非核三原則はわが国の基本方針と申しますか、基本政策であろうと思います。この基本政策を政府といたしましては、三木総理もたびたび言明しておられますごとく、遵守していくべきであるということを考えておるわけでございまして、核のかさの問題のために非核三原則を破るという考えは、政府としては毛頭持っていないわけでございます。
  184. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうしますと、いまお答えのように、核のかさのために非核三原則はこれは改悪することはない、こういうことですね。間違いございませんね。  昨日の衆議院外務委員会におきまして、局長はこういうような趣旨のことをお話しになっているようですが、よろしいですか。海洋法会議の結論以前に領海十二海里を実施するにしても、海洋法会議での日本の主張と矛盾するところがあってはならない、こういうような大旨でございますが、これは一方的に宣言をした場合でも国際海峡の自由航行を認めざるを得ない、こういうお考えを示されたのかどうか。また、核を積んだ艦船の自由航行をやむを得ず認める、そういう非核三原則の適用除外もあり得るというような、そういう判断でこういうことを述べられたのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思うのですが。
  185. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) ただいまの問題は、昨日衆議院の外務委員会において御質問があったわけでございます。そのときにも申し上げてはございますけれども政府は従来、領海十二海里の問題につきましては海洋法会議の結論を待って実施したという意向、方針であったわけでございますけれども、最近における日本近海におけるソ連漁船の操業に端を発しまして、領海十二海里を早急に実施してもらいたいという要望が国内において非常に強く高まっております。その現状を踏まえまして、従来は海洋法会議の結了しますのを待って実施したいという方針でございましたけれども、そういう国内の事情にかんがみ、海洋法会議の決着を待たずに領海十二海里問題について検討を始め、できるだけ速やかに結論を出したいということで、現在、各関係省庁の間で鋭意検討を進めているわけでございます。したがいまして、ただいまお尋ねがございました国際海峡の取り扱いについてどうするかということについては、まだ検討の結論が出ておりませんし、まだ方針も何ら決定されていないというのが現状でございます。
  186. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうしますと、先ほどのあれにもう一遍戻りますが、あなたのお答えになった答弁の中で、独自の判断で十二海里を宣言した場合、非核三原則の例外も考慮の中にあると。こういうことは私は核のかさのために非核三原則の一角を崩すことになるじゃないか、私はこのように判断するわけですが、その点もう一度御答弁願いたいと思います。
  187. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) その点は昨日の外務委員会におきまして、海洋法会議との関連において御質問がございましたので、海洋法会議においては、いわゆる領海十二海里によって生じてまいります国際海峡において船舶の航行をどうするかという通航問題をめぐっていろいろな論議が行われているわけでございます。アメリカ及びソ連は、国際海峡においては自由な通航が保障されなければならないという非常に強い立場をとっていることは御承知のとおりでございます。で、わが国といたしましては、わが国が資源の大部分を海外の供給源に依存しております。また、貿易立国としてわが国自身の生存を確保するという基本的な立場がございます。この立場から考え、まして、国益全体の観点から、わが国としては国際海峡においては一般領海におけるよりもより自由な通航が確保されることが望ましいという立場で、この海洋法会議に臨んでいるわけでございます。で、そのことを実は昨日御説明申し上げたわけでございまして、領海をその海洋法会議の結果を待たないで検討をするという場合に、国際海峡の取り扱いをどうするかということにつきましては、その海洋法会議における趨勢、私ども立場というものもやはり頭の中に入れて考慮はしなければならない、検討はしなければならないいうことを申し上げたわけでございます。
  188. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうしますと、国際海峡についての定義というのは、これは明確になっているのかどうか、お聞きしたと思います。
  189. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 一般的には国際交通に使用されている海峡ということであろうと思います。ただ、国際海峡自身におきまして明確な定義がこの海洋法会議においてどういうふうになされるかということ自体、まだ実は海洋法会議の結論が出ておりませんので、今日この段階において明確に申し上げるということはできないと思います。
  190. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうすると、いまはまだ明確にできない。衆議院の外務委員会でも問題になりましたのは津軽海峡の問題が問題になっておりましたが、津軽海峡については戦前では日本の内水とすべきじゃないか、こういう意見もありました。津軽海峡について、政府としてはこれは国際海峡として認識をされているのかどうか、お聞きしたいと思います。
  191. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 現在海洋法会議において論議されております国際海峡の問題という観点から見ますと、わが国周辺におきましては、津軽海峡でありますとか、対馬海峡でありますとか、あるいは宗谷海峡、こういった海峡が国際海峡に該当するであろうと考えております。
  192. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうしますと、国際海峡であると認識をされているといまお話がありましたね。津軽海峡をそういう国際海峡であるという認識をされるとなりますと、いわゆるあなた方の議論されているそのことは、国是である非核三原則の一角を崩してアメリカの核艦船を通そうという、その理由づけ以外にないと、このように思いますが、いかがですか。
  193. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 非核三原則を変更する、あるいは修正するということを私ども立場において申すべき筋合いのものじゃ毛頭ないということは、私自身十分心得ているつもりでございます。ただ、現実の問題といたしましては津軽海峡は年間約一万隻の外国船舶があそこを往来しておりますから、これは国際海峡でないというふうに認識することは非常に困難であろうと考えております。
  194. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 防衛庁の丸山局長が衆議院外務委員会、米国の艦船が津軽海峡を締め出されたとしても大きな影響はない、こういうことを述べておられます。そういう軍事専門家の防衛庁が問題にならないと、こう言っているわけですから、外務省としても一日も早く沿岸漁民の生活保護のために領海十二海里を宣言すべきじゃないかと、こう思いますけれども、その点いかがでしょう。
  195. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) ただいま御言及になりました防衛局長の答弁は、私どもは、防衛庁として現在自衛隊がとっておりますわが国の防衛体制の実施上、領海が十二海里になっても支障はないという答弁であったと了解しております。  この領海十二海里問題につきましては、先ほど来申し上げております国際海峡に関する問題のほかに、いろいろと法律上の問題がたくさんあるわけでございまして、これらにつきましては、現在、内閣官房副長官のもとにおいて関係省庁間で鋭意検討を進めている段階でございます。現在は法律的な問題点をできるだけ早く詰めるということで鋭意検討を進めておりますけれども、私どもといたしましては、でき得る限り速やかにその結論を出して、方針を決定するようにしたいというふうに考えております。
  196. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうしますと、法制化する方向というふうにちょっと新聞に報道されましたけれども、そういう方向に持っていくということですか。
  197. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 領海十二海里を実施いたしますにつきましては、国際法上の問題と国内法上の問題と二面からの検討が必要であると考えております。  国際法上の問題といたしましては、私ども、いま現在の段階ではすでに領海十二海里を実施している国が五十四ヵ国に上っておりまする現状から見まして、対外的な関係において日本が十二海里の実施に踏み切った場合に、日本に対してそのこと自体について抗議を申し出てくるというようなことはないというふうに考えております。したがいまして、国際法上の問題として重大な支障がそこで出てくるとは考えておりません。  他方、国内法の問題といたしまして、いわゆる政府限りで行います宣言でもって領海を三海里から十二海里に拡大することができるか、あるいは国内法の制定が必要であるかという点を、まさしくいま実は詰めている段階でございまして、その詰めている作業の過程におきましては、法律を制定する必要があるんではないかという意見が出ているというのが現状でございます。しかし、この点につきまして、まだ結論が出ているわけではございません。
  198. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 実際しかし、あれですね、日本の水産界全体の声として、領海十二海里を早期に宣言すべきだという声が上がっているわけです。したがいまして、国際海洋法会議等でいろいろとそれは論議されてはおりますけれども、その結論を待たずに外務省として領海十二海里というものを宣言すべきじゃないか、早急に。そして、その後に国際海洋法会議で決まりましたことは順次それに従っていけばいいんじゃないかと、このように思うわけですが、その点どうですか。
  199. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 先ほど申しましたように、対外的な関係においては、領海十二海里をわが国が一方的に実施することは可能な段階に現在はあると思います。しかしながら、国内法の問題はこれとは異なる次元の問題でございまして、仮定の問題でございますけれども、仮に十二海里の領海を設定した場合に、そこには日本の法令が適用範囲がそこまで広がるということでございます。したがって、その法令の実施が確保されるだけの取り締まりが行われなければならなくなってまいりますから、そこで国内法上の手当てが必要ではないかという議論が出てくるわけでございます。この検討を待たずに領海を一方的に、たとえば宣言というような形で実施することは、結局は実を、内容を伴わない宣言ということになりますので、非常に大きなやはり国内法上の困難があるというふうに思います。ただこの点も、先ほども申しましたように現在問題点を詰めている段階でございまして、まだ結論が出ているわけではございません。私どもとしましては、できるだけ速やかにこの検討を終えて結論を出したというふうに考えておるわけでございます。
  200. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 結局、私たちは、そこでいろんな法律的にこのようなことを詰めていく、それでだんだん時期をかせぎますね、その間に国際海洋法会議でもって領海十二海里がこれは決定された。そうなりますと、今度はたとえば津軽海峡にしましても、国際法の枠の中でそれは決定されたのだからということで、国際海峡として津軽海峡を認められてしまう。そういうことによって非核三原則は、先ほどのお話では絶対改悪しないと言っていますけれども、そういう面からどんどんとなし崩しに崩されていくのじゃないか、こういう心配をするわけです。そこで先ほどちょっとお聞きしたんですけれどもね。ですから、そういう国内法のいろんな詰めということもあるかもしれませんけれども、いろんな国民の生活という立場も考えて、早急にこれは宣言すべきだと私は思います。  たとえば、この国際法会議でもって領海十二海里と国際海峡の自由航行という問題が両方とも論議されてまいりますと、同時に、経済水域二百海里という問題もこれは一括されて討議されてくると思います。その場合政府としまして、この経済水域二百海里というものが一括決定された場合には、経済水域二百海里という問題についてどのように対処されるのか、お聞きしたいと思います。
  201. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 御承知のごとく、海洋法会議ではいろいろと非常に多くの海洋に関する法秩序についての問題が論議されているわけでございますけれども、なかんずくその中で領海十二海里の問題、国際海峡の通航問題、それから経済水域の問題というものがパッケージディールという形で論議されているわけでございます。  経済水域につきましては、世界の大勢といたしまして、これを設定するという方向に進んでおりますので、私どもといたしましてもその情勢を踏まえた上で、経済水域が設定されました場合に、わが国の水産上の利益が最大限に確保できるようにできるだけの努力をすべきであるという考えのもとに、実は海洋法会議でいろいろな国とも折衝をいたし、非公式に協議を重ねているわけでございます。経済水域に関する海洋法の条約の態様がどういうことになるか、まだこれから大いに論議されるわけでございますので、いまの段階でまだ最終的な結論が出ているわけではございません。ただ、私どもとしては、現在まで日本の遠洋漁業が非常に広く行われてきておりますから、その遠洋漁業が今後も継続して行われるように、それに支障がないように経済水域の規定というものが合意されるべきであるというふうな考え方で対処しているわけでございます。
  202. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 最後にもう一曹だけ。  そうしますと、海洋法会議で決定された場合には経済水域二百海里を日本としては認める、認めざるを得ないということでございますか。
  203. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 先ほど申しましたように、世界の大勢が二百海里を設定するという方向にございますから、そのことを踏まえた上で、私どもとしては日本の遠洋漁業の利益が最大限に守られる方向で対処するという考えで現在対応しているわけでございます。
  204. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 まず、長官にお伺いをしたいのですけれども、本法案の審議の中で、長官は衆議院の審議あるいは本委員会のさきの質問者に対する答弁の中で、この法案を出すことは、これは今日置かれた問題について政府責任を果たしていく一つのステップである、抜本的な問題は追って解決しなければならぬし、その責任を感じておるというふうに説明をしてこられていると思うわけです。それは間違いありませんですね。
  205. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) そのとおりでございます。
  206. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 そこでお伺いをするのでありますけれども、ただいま提出されている法案が、その抜本的な改善の必要と、さまざま言われております、深刻な反省、再検討というふうにも言われているわけでございますけれども、それを具体的に行政責任措置をしていく間に果たしてステップの役割りを果たすのか、それともその間の空白の状況に対して、これが逆にマイナスの役割りを果たすのかということが問われるところだというような観点で、ひとつ政策の根本からお伺いをしなければならぬと思うわけであります。  まず、本法案の提出において、やはり冒頭に、この提案の趣旨の説明では、日本のエネルギー問題の中で原子力発電の比重の重さ、原子力開発の比重の重さが述べられておるわけであります。そして、そのことに従前に立てられた計画に従って、すでに四年後の二千四百万キロワットの計画あるいは十年後の六千万キロワットの計画、そして十五年後、一九九〇年には一億キロワットというようなことも私どもは聞いてまいったわけでありますけれども、そういう観点を貫いていくためには、現在のこの安全体制では障害が大きくてやっていけない。これが一つの要素になり、まあ抜本的な改革というようなことも述べられるようになておるわけですけれども、一方、かなり多くの故障という状況の中で、この計画自身に対しては従前どおり進めていくという考えで、一方安全強化の措置を急がれるということであるのか、その計画についてまずお伺いをしておきたいと思います。
  207. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 先ほども詳しく繰り返して御説明申し上げましたが、いまの油の状況等を考えて、日本の将来のエネルギーを充足していくためには原子力発電というものが非常に重要になってくることは御承知のとおりでございます。できればもう全部原子力に切りかえたいぐらいのところでございますけれども、実際問題としてそうはいっていない。いままでの十ヵ年に大体六千万キロという希望も、現在では恐らく無理だろうということで四千九百万キロワットに大体目標を下げるつもりでございます。なぜかと申しますと、立地がなかなかできません。非常に立地を獲得するのに困難を来しまして計画がおくれた状況でございます。なぜ立地ができないか、いろいろ原因ありますけれども、やっぱり根本は軽水炉に対する安全性が、そのもの自体にも故障等がありますから信頼性がまだ国民の中にない、あるいは国民自体に対するPRも足らないといったような状況から、政府の思うようには進まないということが私は非常に大きい問題だと思います。したがいまして、まず安全をどうして確保し、国民にその理解を求めて御支持をいただくかという問題が当面急を要する問題と考えますので、先ほど御説明いたしましたように、根本的な改革を待つ前に、それとは重複しない、背馳しないという考えのもとに、原子力局を二つに分けまして安全局をつくるということに踏み切った次第でございます。
  208. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 まあ繰り返しお尋ねをしたわけで、これは再三従来から念を押してきておるところでありますが、いま、六千万キロワットの計画を二割ばかり手直しをして四千九百万キロワットにする、こういうことでありますが、果たしてそういう状況の中で、今度法案自身にも書いておるように、国民政府に万全の信頼を寄せるとは言いがたいという状態に対して、開発の計画の進行と、そして安全の体制の強化前進というものがつり合いを回復するものであるかどうか。すでに年次計画の入ったプログラムに従って進める開発と、これに対して跛行的に非常に偏った姿でおくれておった安全体制の強化の進行とが、これがつり合いを回復するものかどうか、ここに問題があると思うわけであります。政府の方からいただいた資料によって見ましても、ちょうどいまから五年後、もはや四年後と言っていいわけでありますけれども、この開発量の予測について日本とアメリカを比較してみますと、アメリカは大体日本の二・五倍というようなところであろう。日本が二千四百万キロワットの計画を持っているのに対して、建設中あるいは計画中のものも合わせてこの年度には六千万キロワットに達するとこういうふうに挙げておるわけでありますけれども、それに対して配置をされているこの安全体制としての原子力規制の数、こういうものには非常に大きな違いがある。まあ大ざっぱに言えば、この開発目標は、日米で比較をして二倍と三倍の間ぐらいであるけれども、安全のために割かれておるこの措置というのは、まあ十倍には至らないけれどもそれに近いギャップがある。まあ六千万キロワットというアメリカが一九八〇年に達するというレベルに行った、日本はその五年後には六千万キロワットと、五年の差で追いつくような計画を開発としては立てた。こういう状況であるなら、少なくとも十倍近い安全体制の強化を日本においてもその間に行っていくのでなければ、そのつり合いというのはとれないというふうに見るのが、これが当然の見方ではなかろうか。今日、政府が抜本改正について、この懇談会を設けいろいろ諮問をするというような問題ですね。また同時に、これを憂える国民として、これについて多くの議論が出ておる。わが党も、すでに原子力行政についての六項目の提言の中で、特に安全体制の整備については述べておるところでありますけれども、そういう点の中から開発計画がある以上、それにつり合うだけの少なくとも安全規制の計画を政府がみずから持たなければならぬ。これについての姿勢の転換というのは、その部分に向けて政府から責任ある態度を示されなければならぬと思うのであります。それに対して政府が出されておる答えは二つ、抜本的改正は懇談会に一任をしてその結論を待ってやる。その定着は早くとも三、四年かかる。三、四年と言えば、もうすでに二千四百万キロワットというのの上がりの年に近いわけですけれども、それだけかかるから、その間には安全局の設置でもってその間の空白をカバーしていくと、こういうふうに提起をされておるわけであります。この問題、一体どこまでのレベルに、日本のこの開発と安全とのつり合いを持っていくのかという、政府のみずからの責任を持って出してくるプランというのは、まあ皆無に近いと言ってはどう言われるかわかりませんが、そういうふうに言わざるを得ないと思うわけであります。その点について一言聞いた上で、この法律案審議に入っていきたいと思います。
  209. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 原子力発電は、御承知のように、世界で進めておりますのは三種類でございまして、原子炉は、英国型、カナダ、米国の軽水炉、ほとんど大部分は軽水炉でございます。で、いまのお話でございますけれども、世界でただいま軽水炉で発電をし、あるいは建設中のものを合わせますと四百数十基に及んでおります。日本も軽水炉でございます。お話しのように米国は、いまの御数字は私ちょっと違うと思うのでございますけれども、今後新しい計画では二億八千万キロワット、十ヵ年、膨大な原子力発電を軽水炉で……
  210. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 これは政府資料ですよ。
  211. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 軽水炉で予定であるように承知しております。フランス、イタリーは油を全部原子力発電に切りかえる。同じ炉でございます、同じ炉で。先般ブルガリアの科学大臣が見えまして、おたくの方は原子力発電やっていますか、軽水炉で一基やっています、二基目をただいま建設中です。安全問題等で住民の不安−とかトラブルがございますか、そんなものは全然ございませんと。私、詳しいことは承知していませんけれども、ソ連からも日本の軽水炉の、全部ではございませんけれども、大変優秀だということで、ただいま発注商機が来ておるようにも承知してございます。  私は、日本の軽水炉そのものは決して——安全という理解の仕方でございますけれども、いわゆる重大事故あるいは仮想事故というような公衆に迷惑をかけ、あるいは環境を汚染するということはあり得ないというふうに理解しておりますし、各国でも一遍もいままで起きたことはないんですから、そういう面では安心してやっていいのじゃなかろうか。ただ、小さい故障はございます、故障はございます。しかし、各国ではそういう故障が起きても、炉をとめてそれを修理してまた運転していくのでありますから、別に大して問題にしておりません。日本は、ただ残念ながら日本の特殊な原子力風土で、同じ軽水炉を使いながら、そういうわずかの故障も非常に重大な問題として扱われることは御承知のとおりでございます。したがいまして、そういうことが原因してなかなか立地というものは困難でございます。恐らく世界で日本だけだと私は言っても過言でなかろうかと思います。これほどシビアな国は。しかし、それは悪いいいの善悪の問題を言っているのじゃなくて、私はそれでも、せめてそういう小さい故障でも、これは国民が日本の国民性として原子力に対する不安感あるいは不信、それが抜けないのでございますから、そういう故障すら起こさぬようにすべきじゃなかろうかということで、数年前から国を挙げてそういう小さい故障も起こさないようにということで、ただいま一生懸命検討中でございます。  先ほどのお話でございますけれども、さっき午前から繰り返し私申し上げますのは、安全の問題は審査、検査がどうだという問題もあります。ありますけれども、その後の事態が、ハードウエアとして安全であれば審査、検査しなくても本当は安全なわけでございまして、審査、検査は、これは安全でございますよという証明でございます。したがって、まず根本は、その軽水炉が小さい故障すら起こさぬように安全なものにつくるということが根本でありまして、そこにいま国の精力を集中している最中でございます。私は、日ならずしてこれはもう完成するものと確信していますけれども、そういう状況でございますので、私どもといたしましては、そういう安全の研究を一体どうしたらよろしいか、それから審査、検査の責任体制、一貫性というものをどうしたらよろしいか、あるいはそれを国民に御理解いただくにはどうしたらよろしいか、そういう問題を踏んまえまして、大きい原子力委員会をどうする、原子力基本法あるいは原子力委員会法、それにまつわるいろんな諸法をいじる前に、まず現在の状況からいたしまして、できるだけその安全のサイドというものをいま申しましたような多方面にわたって進めるべきだと思いますので、とりあえず抜本的な改正をするに先立って、それと背馳しないという確信を持ちまして、こういう安全局をつくろうじゃないかということになったわけでございます。
  212. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私が尋ねておったのは、その開発目標に対して、安全のためにどれだけの行政的な措置がとられておるか、例をあなた方の出した資料によって、アメリカの安全規制体制と日本の安全規制体制とで、質量ともに大きなギャップがある。このギャップをこの際埋める決意で進むのかどうか、それについて計画があるのかどうかという質問をしたわけですが、その質問には答えないで、再び開発の必要について演説をされておるわけであります。それは、従来から言われておった基本姿勢そのままに開発の必要について演説をして、現状のままで、安全については少なくとも発電に関しては問題ないんだという態度を繰り返されておるのであって、つまり間接に、アメリカがやっておるレベルの水準に日本が到達をするというような考えはさらさらない、いまの状況を、基本でおくれた国民認識をPRすればよいのだというような、前森山長官などから繰り返し聞かされた姿勢を踏襲されておると聞き取るよりほかにないわけであります。  ところが、今度の法律案提案理由説明、これについては、「国民から万全の信頼を得ているとは言いがたい」という、こういう文言をつけ加えて、安全優先のポーズでこれは提出をされておるわけであります。むしろその点では前法案、局設置法の前に七十二国会で出された部の設置法の方が率直にその記述をされておったのではないかと思うわけであります。部の設置法においては、まず開発を至上命令としてこのことを記述した上に、その開発の前提として安全確保が必要だと、つまり障害を除去するために安全確保をやっていくということ、そして関係業務を一体的に効率的に進めていくというような観点で部の設置法が提起をされておりましたが、今回はそれと趣を異にして、安全優先ということをうたい、そして今日までの行政に深刻な反省、再検討をする、あるいは抜本的改正の第一歩であるといろいろ述べてこられたのでありますけれども、事、開発計画と政府が進めていくべきこの安全体制の強化とのつり合いについて質問をした限りでは、長官は、これは現状このままで何ら差し支えないという答弁をされておるのであって、こういう状況は、言を左右にするものと申しますが、法案を通すためには安全優先のポーズをとり、腹のうちは、実際には現状のままで、どのようにしていわば現状を温存して進もうかという姿勢をみずから語るものだと言わなければならないと思うのであります。  特に資料についても、みずから出した資料について答えをされないわけですけれども、アメリカと日本の水準差の問題については、みずから出したこの資料でありますが、二千四百万キロワットの目標に対して、日本ではこれについて職員数二百十五人を置いており、アメリカは六千万キロワットの開発昂予測に対して、現に当たっておる者が千百八十六名である。このような数字で、こういうギャップ、これについて少なくともアメリカの水準に接近をするというような目標を持ち、この強化をしていこうという考え方はないわけなんですか、あるわけなんですか。そのことをもう一遍念を押しておきたいと思います。
  213. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 私の説明がまずかったか、あるいは質問の核心に触れなかったのはおわびいたしますけれども、私の申したかったのは、検査あるいは審査の人員の多寡というだけではなくて、安全の根本は、いかに研究を進めてハードウエアを完全にするかという、そこにあるということをまず説明したわけであります。あなたの御説明は、アメリカの規制委員会の所要人員と日本を比べると非常にプアーじゃないか、こういう御指摘のようでございますけれども、アメリカの方は平時の発電ばかりではくて、軍事のものもたくさんあるわけでございますから、そういう安全の問題もございましょうし、それから、日本の方は審査、検査はこの安全局だけでございませんのでございまして、発電になりまして細部の実際の検査、工事中の検査とか、あるいは詳細設計とかいったものは通産省が各ブランチをもちまして、深くやっておるわけでございますから、そういうものを全部合わせますと、決して私は数においてのバランスはそんなに違っていないのじゃないかというふうな感じがいたします。  ただ、いままでのままでそれじゃいいのかと言いますと、しばしば繰り返しましたように、いままでのままではいけませんので、やはりこの開発安全規制との体制は一応分けたらいいじゃないか。分けるに際しては、安全の審査の機能、あるいは核武装等に対する査察、要員の確保、あるいは盗難その他危険に対しての安全の確保、そういった全体を構えまして、同じ平和利用でありましてもそういう問題がたくさんございますから、そういう点も踏んまえて、この際原子力安全局というものをつくって、そして内容充実責任体制を明確化しようと、こういう趣旨でございますので御理解いただきたいと思います。
  214. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 現実に対応する数字として政府資料で挙げられたものを見ても、まさに今日の日本の体制というのは、開発予測量に対する比率で対応させて勘定してみても、アメリカの方が五・五倍、日本の方は五・五分の一というような状況に置かれ、今度十六人ばかり新年度で増員をしたとしても、それが五・五二倍から五・一三倍にまで下がるというような数字であって、長官が根拠もなくそういうことを言われるのは、これは国民を愚弄するものだ。とにもかくにも数年間の抜本改正を行い得ない空白期を、これを十数人の増員一本で国民を瞞着をして、困難があってダウンさせるにしても六千万キロワットを四千九百万キロワットぐらいに下げて、そのまま暴走的開発優先を進めようとするものだと、こう言わざるを得ないわけであります。  ここで抜本的改正のイメージについて長官にお伺いをしても、この点はお答えにならないわけでありますけれども、こういう状況の中で、改正の第一歩として出したと言われる今回の法律案ですね。ところが、これは「むつ」の事故その他の以前に、前内閣、前長官のもとで出されてきておった部の設置法と今回出された局の設置法とが具体的にどれだけ違うのか。私はこれを対応して読んでみるのですけれども提案理由が違っておること、提案理由の言い方が、開発優先からいわば安全優先にPRが変わっておる以外に、内容を検討するとほとんど違いはないわけであります。その点においても、むつの市長と八県の知事がいままでのままでは政府の言うままについていけないというので、いわば出戻りのと申しますか、古いものに対して化粧直しをして、国民を欺瞞をして時をかせぐというふうに見ざるを得ないと思うのですけれども、どこか違っておるところがあるわけですか。
  215. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 一昨年私どもが考えまして、昨年の国会に御提出申し上げました安全部の設置の構想と今回の原子力安全局の設置構想でございますけれども、根本的に違いますところは、前回の安全部の構想は、これはもう当然でございますが、原子力局という組織の中の一つの部といたしまして安全を管掌する部を設けるということでございまして、原子力局という一つの組織の中の一部でございます。今回の安全局は、原子力局を二つに分けまして、主として開発を担当いたします原子力局と安全を専管いたします安全局と二つに分けたわけでございます。この点が一番の大きな相違点でございまして、先ほど来御説明申し上げておりますような開発安全規制の分離という思想を非常に明確にあらわした点で、安全部の構想と安全局の構想とは根本的に違っていると考えております。
  216. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 実際には形の手直しをしたとしても、たとえば大山委員会の報告書が指摘をしておるような根本問題を処理する能力が生まれてこようとはとうてい考えることができない。何としても根本は、原子力委員会の権能と、そしてそれについての実力をつけていくということ以外にないと思うわけですけれども、その観点からいって、小手先の手直しだというふうに専門家も言えば多くの新聞論調でも言っておるところであり、みずからも抜本改正までの手直しとか第一歩とか、しないよりはする方がよいとかいうふうに提案者みずからが言っておるほどのものであります。むしろ、この新案と旧案というものがほぼ内容的に一致しており、部の新設にしろ局の独立にしろ、これはむしろ数年前から言われておった原子力委員会の中などにおける定数増の要求、これが容易に入れられなかったのを、この際に、この世論の中で一面では定数増を局の分離によってとっていく、古証文をこの際にとっていくのとあわせて、これを利用して、よくわからない国民を瞞着をするというふうに見ざるを得ないのではなかろうかと思うわけです。これらの問題は、衆議院の中で瀬崎議員が原子力委員会のメモ等を挙げて具体的に追及をしておるところであります。  ここで聞くわけですけれども、どうしてもこういう状況で懇談会の結論待ちということで、いわば懇談会を設けて一面時をかせぎ、そして今度懇談会がよしんば結論を出した後でも数年間の空白の時期が続く。その間、開発計画の立地困難等の中で、行政の力をかりて開発を進めていく上で国民を納得させる方法として、いわば中身のない法律案を出しているのだ、こう言わなければならないわけである以上、ここで何としてもこの委員会審議するためには、直接にこの委員会が抜本的な問題と、開発規制のバランスの問題を直接審議をする必要があると考えられるわけであります。すでに有沢私案については衆議院の方で資料提出要求に応じて、いろいろ問題があったけれども出された。私も拝見をしております。これとあわせて、この対案と申しますか、田島案なりあるいは向坊、松井案、あるいは電労連の意見というようなものも伝え聞くところであります。これらの問題ですね、政府が全体の開発規制の問題についてプランを出さない以上、この法案審議に当たっては、どうしても本委員会の任務としてこれらの問題をつぶさに調べて、あるいは参考人招致をして直接に問題点を聞き取って、これを審議していかなければならないと考えるわけであります。特に、ここでお願いをするわけでありますけれども、有沢私案ばかりでなく、田島、向坊あるいは電労連等の愚見についても私の方に入手ができる措置をとっていただけるかどうかお伺いをいたします。
  217. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 有沢私案につきましては、衆議院にも御提出申し上げておりますし、当然御提出申し上げます。  電労連の提言につきましては、電労連の御意見を伺ってみまして、電労連の御同意を得ましたら御提出申し上げようかと思います。あと田島先生あるいは向坊先生の案でございますが、これは審議の途中のメモでございまして、その都度内容の変わったものがいろいろ出されておりまして、あるいは一応こういうものを書いてみたけれどもまた審議の途中で変わったとか、非常に経過的なものでございますので、一応お書きになりました田島先生なり向坊先生なりの御意見は伺いますが、そういう性格のものでございますので、お出しするのはむずかしいかと考えますが、一応そのお書きになった先生方の御意見を伺ってみたいと思います。
  218. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 有沢私案については私も見せていただいたわけでありますが、原子力委員会原子力規制委員会とに二つに分ける。しかしながら、その中で規制委員長原子力委員を兼務をして、一体性というのか、つながりをつくっていく。一面では、審査の一貫性を規制委員会が把握をして、そして基本設計から詳細設計、運転に至るまでチェックをしていく、その点で各省に割拠をしておるこの体制を一元化するというようなものであって、むしろ有沢私案こそ、現時点の各省庁にわたる問題の抜本改正を時間をかけて処理をする前に、緊急にこれに対して対応するためのいわば当面の案というふうに私には読み取れるわけでありますし、問題点認識においては一致をするとしても、むしろ過渡期的な当面の案というふうに読める。他の諸先生方の意見は、それらについて、むしろ各省のなわ張りにメスを入れるために、もう少しこの際懇談会の結論を前進したものにしようというような観点からの意見だとか新聞その他でべっ見をしておるわけであります。  私としては、すでにこの提言の中でも申しておりますように、どうしても現在の原子力委員会の機能と体制を抜本的に改めて、原子力委員会というものは諮問委員会ではなく、行政権限ある委員会として指導監督権限を持たなければならぬ。あるいは開発から規制まで、開発規制との両面を握るばかりでなく、これの審査研究についてもこれはかかわるものでなければならぬ。委員構成、常勤のスタッフ、機関の独自の体制というようなものは、少なくとも現にアメリカが達しておる程度の水準は目指して強化をしなければならぬというような意見を持っておりますし、その観点から見て、私どもとしては、いま出されておるこの私案程度のものこそ、むしろ過渡期的な、いわば抜本案と今日の状況をつなぐ位置づけを果たすのではないかと、こういうふうにも見るわけであります。  こういうような意味合いからながめますと、ここで少なくとも数ヵ月後には出されるであろうところの結論ですね、その結論は果たして一本にまとまったものになるか、幾つかの意見を併記されたものになるのか、これを非常に早い時期に具体的に制度化をし、法的に定着をしていかなければならぬ。それに対して、今日の体制のままでも開発を進めることには支障がないと、一面でそういうふうにされる長官の今日の政治姿勢等からすれば、この法律案が通ることは、そういう当面の手直しと、そして抜本的な変革案についてプログラムをつくっていく上からマイナスの役割りを果たす、こういうふうな評価をせざるを得ないと思うわけであります。  その点で、いたずらにこの法律案の通過を図るのではなくて、次回すでに連合審査が予定をされているわけでありますけれども、この中で、有沢先生あるいは田島先生、これを参考人として招致をして、そして審査をするというようなことも私は必要だと考えるわけであります。また資料の提出についても、いまできるだけのことをやってみようという話もありましたけれども、これについて委員長、ひとつこれらの措置をとっていただくようにお願いしたいと思うわけですが、どうでしょう。
  219. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  220. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こしてください。
  221. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私は、特にこの席においては、一方で根本的な反省と言い抜本改正のことを言いながら、開発は従来どおりに進めていくという政治姿勢、そのこと自身を問題にしたいと思うわけであります。すでに「むつ」の事故については言われるところでありますが、まだ参議院においては、最近大きく問題になっておるところの使用済み核燃料の再処理に関する動燃の問題等も、なお一回も委員会審議を通じて取り上げられていないわけであります。しかし、再処理問題の前進なくして、それと結びつくことなくして、このさまざまな今日の十年計画もしくは十五年計画というものの前進はない。これは結びついたものとして企画をされ進められておると思うわけでありますが、その点はどうなんですか。
  222. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 原子力発電の開発計画と再処理関係でございますけれども、先生御承知の動燃事業団の東海再処理施設がただいま試運転中でございまして、順調に参りますと、近い将来に営業運転が開始できるわけでございます。これで処理できます使用済み燃料が、発電規模にいたしまして約七百万キロワット分になろうかと思います。で、その次のいわゆる第二再処理工場というものにつきましては、現在電力業界を中心にいたしまして国内に第二再処理工場、これは相当の規模を持ったものになろうかと思いますけれども、これの建設の準備と申しますか、いま調査段階でございますが、再処理準備会という組織をつくりまして検討中でございます。ただ再処理施設、特に第二再処理工場のような大型のものになってまいりますと、その建設の準備に相当時間がかかるわけでございます。いわゆるリードタイムが長いということでございますので、その間若干の時間的なギャップが発生してまいります。これにつきましては、海外の再処理施設に再処理の委託をするという方向で進めておりまして、現在も英国あるいはフランスに対しまして再処理の契約をしておりますし、特に最近は英国の燃料公社、BNFLでございますが、そこが新しい再処理施設を建設するに当たりましてわが国と提携をしてはどうだろうかという提案がございまして、これも電力業界がただいま交渉中でございます。政府といたしましても、なるべくその契約が妥結するように応援をするつもりでございますが、以上申し上げましたような形で開発規模に見合った再処理は当然できる、かように考えております。
  223. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 次第に臨海地域に電力会社の原子力発電所がふえておるという状況の中では、私は特にここでお聞きしたいと思うのは、四国電力の伊方発電所なんかにかかわる問題でありますが、特に使用済み燃料の運搬の問題が出てきておるわけであります。この使用済み核燃料の運搬について、大体いまこれの安全規制はどういうふうに行われておるのか、この点について運輸省の方にお伺いをしておきたいと思います。
  224. 謝敷宗登

    説明員(謝敷宗登君) お答えを申し上げます。  使用済み核燃料の輸送につきましては、一般的には核原料物質、核燃料物質及び原子炉規制に関する法律、いわゆる規制法によりまして規制が行われておりますが、そのほかに船舶による海上輸送につきましては、運輸省が所管しております船舶安全法に基づきます危険物船舶運送及び貯蔵規則という省令がございますが、この省令によりまして、容器の標札の方法あるいは船内にある者の放射線防護、荷役後の汚染の検査等の規制に加えまして、収納する容器の強度、収納方法、荷役方法等について特に運輸大臣の指示を受けなければならないということにしております。このほか船積みの際には船舶検査官によります検査を義務づけて、輸送の規制を行っておる次第でございます。
  225. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 この船舶輸送について、一般の危険物等の取り扱いや運送自身についてはこれが適用されておって、特に放射性物質であること、これはキャスク等の問題を除いては、特に運搬上に法的な根拠はないということなんですか。
  226. 謝敷宗登

    説明員(謝敷宗登君) 私、省略をいたしましたが、危険物船舶運送及び貯蔵規則の中で、特に放射性物質につきましては第六節で特記してありまして、いまその六節の内容を申し上げた次第でございます。
  227. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 たとえば新しく発電所を立地する場合に、これが使用済み核燃料の運搬に関しては、太平洋を走る場合もあればその他のところを走る場合もある。具体的には伊方の問題なんかについては、これが住民に知られれば知られるだけ、二千万キュリーというような物すごい使用済み核燃料を収納した船舶がどこを通るのかというのが大きく問題になっておる。それらの問題について、発電所とすればこれは利潤を中心に考えていって、規制のないものはこれは自由に選んでいくということになるわけですね。これらの問題については運輸省ではどういうふうに規制をするわけですか、航路等の問題については。
  228. 謝敷宗登

    説明員(謝敷宗登君) 具体的に危険物船舶運送及び貯蔵規則によりまして、使用済み核燃料の転送につきましては、各電力会社とも、先ほどお話のありましたように、たとえばイギリスでございますとか、そういうところの再処理施設に輸送しておりますので、この内容については十分各電力会社とも知っておるかと思います。  先生いま御指摘の四国電力の伊方の問題につきましては、私ども建設中ということは聞いておりますが、輸送が具体化いたしますのは燃料交換をする時期というふうに考えられますが、まだ先の問題であるということで、現時点では私どもとしては具体的な輸送計画あるいは使用船舶等についての説明は受けておりません。しかし、実際に申請が出てくる段階になりますと、船積み港、それから寄港する港あるいは荷揚げする港というのが申請書の中に入ってございまして、現在、したがってどういう経路で運ばれるか可否を論ずる段階ではございませんが、具体的に転送計画が決まりました段階関係省庁とも十分協議の上で、安全な転送が確保できるふうに措置を講じていきたいと、こう考えております。
  229. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 申請書が出た段階で検討する、いま特段に現実問題でないから何も決めておらぬ、こういうことですね。  ひとつこれは科技庁の方にお伺いをするわけですけれども、伊方の原発の使用済み核燃料は動燃の方に持っていくというような状況で認可をされておるというふうに聞いておるわけですが、そうですが。
  230. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 使用済み燃料の処分の方法につきましては、いまお話しのように動燃事業団に送って再処理を行わせる。もし動燃事業団で再処理できない場合には海外において再処理を行い、回収されたプルトニウムをわが国に持ち帰るという内容で許可しておるわけです。
  231. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 認可条件として、大体使用済み核燃料は最終的には東海村に運ばれる、こういう予定で事が進んでおるというわけですけれども、そうすれば、当然、船舶に積んで運んでいくことになる。これがどこを通るかという問題になるわけですけれども、これが瀬戸内海を通過して東へ航路をとって、そして淡路島のわきを抜けて紀淡海峡を通って紀伊水道へ出、太平洋に出るというような、こういう道筋を通るのが普通のあそこからであれば航路になっておるわけですけれども、そういう問題が起こってくるとなりますと、一つは瀬戸内というのはいま公害の海になっておりますし、船舶の衝突事故等もかなりの頻度になっておると思うわけですけれども、非常にこれは危険の高いものになるのではなかろうか。これについて、いまこういう使用済み核燃料等を積んだ船舶が瀬戸内を通っていいのか悪いのか、こういうようなことについてはチェックをする体制なり、あるいは規則とか基準とか、あるいは今日時点での見解とか、そういうものは運輸省にあるのかないのか、これをひとつ聞いておきたいと思います。
  232. 謝敷宗登

    説明員(謝敷宗登君) 従来は使用済み燃料の海上輸送は、先ほどから申し上げておりますように、外国の再処理工場に運ばれますので、すべて外海経由であったわけでございます。したがいまして、まだ使用済み核燃料の運搬船が瀬戸内海を通過することの可否については、現段階では、先ほど申し上げておりますとおり、具体的な計画が決まり申請がなされておりませんので検討しておりませんが、運輸省としましては、使用する船舶が一般船であるか、あるいは特殊な専用船であるか、あるいはまた一回の輸送量がどのくらいの規模のものであるか、輸送方法がどうなっているかというような点等の具体的内容を勘案しまして、安全な輸送ができるように検討して必要な措置をし、指示を与えてまいりたい、こう考えております。
  233. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 一口で言えば、いまでは瀬戸内海を通ることについて、制度的にこれをノーと言うようになっていないわけですね。よいとも悪いとも言えない、こういうことになるわけですか。
  234. 謝敷宗登

    説明員(謝敷宗登君) 先ほど申し上げたのを繰り返すようでございますが、一回当たりの輸送量がどの程度の規模のものになり、どんなコンテナで運ばれるか、こういったものが具体的に検討されました段階で、私どもとしては内容については検討したい、こう考えております。
  235. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 莫大な発電量を原子力に期待をして、いまから先も十年、十五年の間に臨海に多数の発電所を建設をする、そういう計画が立っていて、当然予想される船舶運送についての基準のようなものがなくて、その場当たりになっておるということが問題だと思うんですが、そうなってくれば、現在企業サイドとして一番経済効率のいい道でこの問題を考えていくというのはあたりまえのことだということになりませんか、どうでしょうね。
  236. 謝敷宗登

    説明員(謝敷宗登君) 私どもは、従来・臨海各発電所、これは先ほど申し上げましたとおり外海に面しておるわけでございますが、そういったところの発電所の輸送計画自身を見ておりましても、非常に特殊な貨物でございますので、輸送の安全については万全の策を立て、かつ私どもとして十分審査をした上必要な指示をしております。問題の伊方が瀬戸内海航路だけしか通れない立地条件でありますれば、いま先生のおっしゃったような問題が出てまいりますが、ほかの航路も考えられるわけでございますので、具体的にはどういう輸送方法をするかという問題について御相談があれば、私ども運輸大臣の指示権限がございますので、制度的には討検できるかと思います。
  237. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 結局のところ、いま現実に幾つかの発電所がつくられていく過程で瀬戸内にかかったところに発電所が建設されて、これの使用済み核燃料輸送の問題が具体的に迫ってきておるわけですね。しかし、お伺いしたところでは、これをチェックする責任のある運輸省の中では具体的な問題待ちということで、いまのところは結論がない。常識で考えて船舶の危険度の高い、事件の起こりやすい瀬戸内、そして水島事件一つを見ても、その一つの起こした事故の被害が広範な地域に重大な様相で及んでいくというような地域、そういうところを通らせないように、基準なり規則がこういう状況下ではでき上がっているというのがレベルとして常識だろうと思うけれども、それに対してほとんど空白で、いわばブランクだと思わざるを得ない。これについて、こういう問題がいわば安全審査委員会の審査対象にもなっていないというような点、科技庁の方ではどう考えられるのか、聞いておきたいですね。
  238. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 先生の御指摘もありましたように、原子力発電といいますのは、ただ電気を起こせばいいということではございませんで、核燃料の確保から始まりまして、発電、さらに使用済みの燃料の輸送、再処理、再処理後の廃棄物の処理、そういうものを一貫して、つまり核燃料サイクルというものを一括して考えなければいけないというのが私ども基本的な考え方でございます。したがいまして、核燃料サイクルというものを基本にいたしまして整合性のとれた計画で推進していくのが当然でございまして、これは原子炉規制法の許可条件といたしましても、計画的遂行ということが一つの要件になっておりますが、これがそういうことを一つの反映しているものだと考えます。したがいまして、先ほども半澤次長から答弁いたしましたように、原子炉の設置許可をいたします場合には、再処理の方途が確立していることを条件にいたしておりますので、発電はするけれども、そこで使った使用済み燃料の再処理をどうするかわからないという状況では、私ども原子炉の設置許可をいたしておりません。  輸送の問題につきましては、先ほど来運輸省から御説明がありましたように、動燃の再処理工場が営業運転に入りまして、これはまだしばらく時間がかかると思いますが、そこに持ち込むためにはどうしたらよろしいかという問題をただいま総合的に検討いたしておりまして、そのためには、動燃の、円処理工場に持ち込みます場合の使用済み燃料を積みおろす港の整備、それから国内輸送をいたします船の建造、それからただいま先生御指摘の航路の決定、そういうことも総合的に決定しなければいけないわけでございまして、十分そういう点は考慮いたしまして、ただいま運輸省その他とも御相談をしながら総合的に対策を進めている段階でございます。
  239. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 これが実際必要になるころまでには総合的な対策の答えを出すというふうなことを言われているわけですか、そういうことですね。  現地の人たちとか国民から見れば、電力会社が営業運転を開始をして、いままで安全とそれから経営とが矛盾した場合には、安全を優先させたことがないというふうに国民は考えておるわけであります。現時点の計画の中では、電力会社は明らかにこの使用済み核燃料は、別に禁止の規定がないのだから、あそこは瀬戸内側にありますけれども、遠距離の豊後水道の方の航路をとらず、瀬戸内を通って、そうして経済的効率のいい方向で東海村へ燃料を運ぶのだというふうな計画を持っておるようであります。これらの問題について御存じかどうか。  三日前に、あそこでは伊方原発の問題についていま裁判の係争中であって、四国電力は、周りの敷地内のところに存在をしておる住民の財産物件に対して撤去を求めるような仮処分申請をしておるわけですね。周辺の監視区域の中にある立ち木に対して撤去を求めておるこの裁判の中で、電力側は、弁護人の質問に対して、当然これは瀬戸内を東へ運びますということを述べておるわけであります。これが今日の電力会社の考える常識であるわけですね。そうして日本の原子力発電、これを含む事業をやる人たち考え方になっておって、これを有効にチェックする法律は、少なくとも初めから計画を立てるときにそういう私どもから考えて非常識なことは出てこないというふうな状況にはならない。企業側の認識がそういうものであるということが実態である、これが明らかになったと思うわけです。弁護士の質問に対して、使用済み核燃料の船舶運搬はどっちへ行きますか、瀬戸内海を通ります、こう言っているわけです。瀬戸内海、東に行くのか、西へ行くのか、東へ行きます。小豆島のあたりを通っていくのですか、ずっとそう行きますというので、紀伊水道をということになったら何か気がついたのか、その辺から余り行く先を言わなくなっているのですけれども、小豆島でとまられて動かなくなれば、これはとんでもないことですし、引き返せば二遍通るわけですから、当然東の方へ回っていく。こういうレベルが今日の六千万キロワットもしくは四千九百万キロワットの開発計画、これを実行していく人たちのレベルであるということを考えてみると、どうしてもはなはだしく跛行的に安全審査体制がおくれていると言わざるを得ないんじゃないでしょうか。果たして四国電力のこの説明というのは、現時点ではそれなりに正当だというふうにお考えになるのかどうか、運輸省いかがですか。
  240. 謝敷宗登

    説明員(謝敷宗登君) いま先生御指摘内容につきまして、それが、会社として計画を立てて、具体的に量とか使用船舶を決めた上で立てられた計画かどうか、私存じませんが、従来、輸送につきまして経験のある電力会社は、かなり前広に輸送の方法につきまして計画を立て、具体的な内容を持って相談に来ております。私どもは、したがいまして、いま具体的にどういう船を使い、どのぐらいの使用済み燃料を一回に運ぶというようなことの報告があり、かつ、それについての可否の検討ということでありましたら、具体的に計画を示していただきまして可否を検討させていただきたい、こう考えております。
  241. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 時間も来ておりますから、もう終わりたいと思うんですけれども、あなたの答弁では、いま電力会社が瀬戸内を通ると言ったりしても、そのこと自身が間違っておるというようなことは言えないと言われているんですか。あなたの考えとしてはそれが適当であるかどうか、再度聞いておきたいですね。
  242. 謝敷宗登

    説明員(謝敷宗登君) 先生最初に御指摘のとおり、瀬戸内海につきましてはかなり海上輸送がふくそうしておりますので、ほかに方法がある場合には余り適当でない、こういうふうに考えております。失礼しました。適当ではないと考えております。
  243. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 明らかにほかに道はあるんですから、あなたの考えとしていまの時点で意見を聞かれるなら、それは不適当だと、こう答えられたと聞いて帰っていいですね。ほかに方法あるじゃないですか、道は袋小路じゃないですよ、あそこは。どうですか。
  244. 謝敷宗登

    説明員(謝敷宗登君) 何回も繰り返すようでございますが、使用する船舶、それから一回の輸送量について常識的ないままでの輸送の方法であればという前提でお答えをいたします。
  245. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 ほかに道があるなら、そっちをとる方が望ましいというのが当然の考え方だと言われているわけですね。  それではその件は終わりますが、いまのこの問題を挙げたのは、必ずしも裁判になっておる問題をこの委員会でどうこうしようと思って挙げておるわけではないのです。この四国電力という会社は、裁判になったもとは、この周辺監視区域の中にある具体的な個人の財産物件、立ち木を、次第に建設が進行していく中で追い出しをかけて、撤去を求めて、仮処分申請をしておるわけですね。住民はどうしても納得をしないわけですね。それは、この周辺は絶対に安全で心配のない無害なところだと、こうずっと宣伝をしてきて、ここへ認可をもらって建設を始めて、そうしてこの周辺にある物件というのは、これは撤去しなければ危険だとは言わないんですけれども、強権をもって撤去させるんだと言ってきておるので、どうしても納得をしないという状況が出ております。  多かれ少なかれ、こういう状況開発が進められていく。それに見合うところの抜本改正案というのは、これは数年間のブランクがある。そうしてこれについては、いままでしばしば懇談会が時間かせぎに使われて、その結論というのはネグレクトされてきた。こういう状況を考えてみますというと、この状況の中で引き続いて開発計画の進行と、そうして安全規制の強化というもののバランスは、国民的にどうしても大きく追求をされなければならぬ。そういう観点から見て、今回の出されておるところのこの法律改正案は、そういう必要な措置をこれらの小手先の細工でいわば欺瞞隠蔽をして、むしろ事柄の真の解決を妨げるものだというふうに見ざるを得ない。その点、特に問題を明らかにするために、引き続いて資料の提出を求め、懇談会等の意見も深めていくということによって、それらの問題を引き続いて審議をしてきたい、こういう考えを述べまして質問を終わります。
  246. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会