○最上進君 私は、自由民主党を代表いたしまして、
郵便法の一部を改正する
法律案につきまして、原案に賛成、修正案に対して反対の意を表するものであります。
御承知のとおり、
郵便財政は、昭和四十六年度以来据え置かれてまいりました現行
郵便料金のもとで、人件費の著しい上界により
郵便料金の全収入をもってしても人件費さえ賄い切れないという
実情にあります。これは昭和四十八年の石油ショック後の異常な経済情勢のもとで物価安定が政府の最優先課題とされたことに伴いまして、四十九年度中の料金引上げが見送られたことと加えて、同年度にかつてない大幅な給与改定が行われたことに起因するものでございまして、このままいきますと、五十一年度末におきましては総額赤字約七千億円にも上ると予想されております。
料金の改定につきましては、いまなお政党や国民の中に物価費定のために
郵便料金など一連の公共料金を引き上げることはこれを見送るべきであるという主張がございます。しかし、これ以上現行料金を据え置きますと、いずれまた改定する場合の上げ幅をさらに大きくすることになります。かえって国民の日常生活や社会経済活動に大きな支障と混乱を与えることは明らかであります。そして最近では、各国とも公共料金は時の経済状勢などに即応いたしまして小刻みに引き上げる傾向が強いようです。わが国におきましても、物価政策上、過度に公共料金を抑制するというような非合理な政策はとられるべきではないと考えるわけであります。
次に、
郵便事業は公共性が強いとの観点からいたしまして、その赤字は一般会計すなわち国民の税金をもって補てんすべきであるとの主張がございます。しかし、年間百三十二億通の
郵便需要のうち、その八割を超える百億通以上が企業などの出すいわゆる
業務用通信であるという利用実態に照らしまして、国民の税金をもって
郵便事業の赤字を賄うことは妥当性を欠くものであるということを言わざるを得ないのであります。また、
郵便事業の赤字は人件費を中心とする経常経費を賄い得ないことによって生ずるのでありますから、これを一般会計負担といたしますと、必ずやこれが恒常的負担として財政の硬直化に拍車をかける結果になると思います。したがいまして一般会計で行うべき義務教育やあるいは社会保障の充実など国の諸施策を圧迫いたしますし、国民の税負担を重くすることになるのは明白であります。また、安易に一般会計に依存することになりますと
事業の自生性は損なわれますし、
職員の経営
意欲を減退させるおそれもあります。
郵便事業の将来のためにも私はとるべき方策ではないと思うのであります。したがいまして
郵便法第三条にありますとおり、
郵便財政は収支相償の
原則を基本といたしまして、
郵便事業財政の収入の不足は独立採算制のたてまえのもとに、利用者が利用度に応じて負担することが妥当な
方法であると考えます。
次に、
郵便の赤字は
郵便貯金や簡易生命保険のいわゆる黒字分をもってこれを補てんすべきであるとの主張がございます。しかし、これはご承知のとおり
郵便貯金や簡易生命保険というものは独立した特別会計になっておりますし、資金経理も明確に
運営されているところでありまして、簡易生命保険
事業で生じた利益というものはあくまでも保険契約者に還元されるべきものでございます。また、その利益を
郵便事業の赤字補てんに回すということは全く筋違いであると考えます。特に簡易生命保険につきましては、現在、民間生命保険と完全に競合いたしますことを考えますときに、その利益を
郵便事業の赤字補てんに回す余裕などないことは理解できるところであります。また、
郵便貯金
事業につきましても、その収入はいわゆる資金運用部から受け入れる預託利子でありますから、貯金利子や
事業運営費の支払い分のほかに余剰を期待することは困難でありまして、現に昨年末の
郵便貯金会計は欠損状態にありますし、
郵便財政の赤字補てんに活用し得るものではございません。
次に、料金値上げの前に、もっと
事業経営の機械化あるいは近代化を図るように努力すべきという御意見があります。まことにごもっともでありますけれども、政府
当局も種々努力しておりますし、世界に先駆けてのいわゆる
郵便番号自動読取
区分機の開発あるいは小包や大型
郵便物の大規模集中
処理局の建設など、いわゆる機械化、近代化は国際的にもかなりの高水準と認められているところでございます。しかし、本来、
郵便の
仕事はその大
部分が人手に頼らなければならないところでありますし、機械化のメリットを早急に期待することも困難であります。
以上、申し述べました理由によりまして、この際、与党といたしまして料金の引上げはやむを得ないところと考えまして原案に賛成するものであります。
また、原案による料金改定を行いましても、なお平年度におきまして
郵便収支の均衡を確保するということは困難と認められるわけでありますから、原案をさらに後退させております修正案には反対せざるを得ないのであります。
なお、私は、この際、政府
当局に対しまして二、三点要望しておきます。
まず第一点は、第三種、第四極につきましては、その社会的影響を考えて、大幅な引上げは避けていただきたいということであります。
第二点は、国民意識の多様化やあるいは情報通信手段の高度化に伴いまして
郵便の果たすべき役割りというものも刻々変わってきているはずでありますので、長期的視野に立ちまして
事業の将来展望を明らかにしていただきたいと思います。
次に、国民はひとしく安定した
郵便送達を望んでおります。先日の公労協ストにおける
郵便物滞貨などはまさに国民の信頼感を失墜させるものでありますから、この際、全
職員が
郵便事業に課せられた社会的責任を自覚して、国民の信頼を回復するよう全力を尽くしていただきたいと思うのであります。
以上をもって私の原案に賛成、修正案に反対の討論といたします。