○野口忠夫君 私は、
日本社会党及び公明党を代表して、ただいま議題となりました
昭和五十
年度における
地方交付税及び
地方債の
特例に関する
法律案に対する修正案につきまして、提案理由及びその概要を御
説明申し上げます。
御
承知のとおり、不況とインフレは
地方財政の上にもきわめて深刻な影響を及ぼすに至っており、法人
関係税を中心とする
地方税の収入見込み額は、本
年度の当初見込み額に対し、一兆六百三十二億円も減収すると推定されております。また、
国税三税の収入見込み額が減少することに伴い、
地方交付税交付金も当初
予算計上額に対し、約一兆一千五億円の落ち込みを生ずることが見込まれているのであります。一方、
自治体においては、
地方公務員の給与改定や第四次不況対策等による新たな
財政需要に迫られており、当初計上額に対する落ち込み額はもちろんのこと、落ち込み率においても、
昭和四十
年度及び四十六
年度を大幅に上回り、いまや戦後最大の
財政危機に直面しているのであります。
このように
地方財政が危機に直面することとなったのは、引き続く不況とインフレに起因しているのでありますが、その根本的な
原因としては、歴代自民党
政府が、住民福祉の充実や生活
基盤の整備よりも、産業
基盤の整備など中央集権化のもとに大企業優先の高度
経済成長政策を推進してきたことによるものであります。そのため
自治体においては、過疎過密、公害その他の対策に伴う膨大な
財政需要を引き起こすことになりましたが、これに対し国が十分な自主
財源を付与しなかったことによるものであります。
さらに重大な問題は、今日の
地方財政の危機を契機として、単に
財政上の問題だけではなく、自民党
政府のもとにおいて
地方自治そのものの危機をも迎えていることであります。
われわれは、このような
地方財政の危機を打開し、
自治体の自主的な行政
運営を
確保するため、当面の緊急対策を講ずるとともに、
昭和五十一
年度以降の
地方財政の長期的な
見通しに立って、抜本的な恒久対策を講ずべきことを
政府に要求してきたのであります。
しかしながら、今回の自民党
政府の
地方財政対策によりますと、
地方交付税の減収対策としては、
地方交付税率の三二%は依然として据え置かれたままになっており、国の一般会計の
負担としては、わずかに臨時
地方特例交付金二百二十億円の
措置を講じたにすぎず、その大部分は、後
年度における償還のための
財源措置を講じないまま、その全額を資金運用部資金の借り入れに依存しているのであります。また、
地方税の減収補てんのための
地方債については、
政府資金の引き受けは一九%
程度で、利子
負担の軽減を含めても約四〇%
程度であって、今後の償還のための
財源については何らその対策を講じてはいないのであります。さらに加えて、第四次不況対策としての
公共事業等の追加に伴う
地方負担についても、全額、
地方債に依存しているにすぎません。
しかも、これらの
地方財政対策は、あくまで
地方財政計画ベースに基づく
措置でありまして、
地方財政計画を上回る
現実の
自治体の
財政需要の実態は全く無視されているのであります。
以上のような自民党
政府の
地方財政に基づく
政府案では、今日の
地方財政危機の打開どころか、後
年度においても
地方財政を一層深刻な危機に追いやることは明白であります。
したがいまして、この際、
地方交付税率の
引き上げ措置等を含め、恒久的な一般
財源の充実
強化を図り、もって
地方財政の危機を打開し、
自治の発展を図るため、本修正案を提出した次第であります。
次に本修正案の概要について御
説明申し上げます。
第一は、最近における
地方行
財政需要の増大に
対処するため、
昭和四十一
年度以来、据え置かれてきた
地方交付税率の現行三二%を三五%に
引き上げることとしております。
これによる
昭和五十
年度の
地方交付税の増加額は三千百一億四千万円となりますが、この額については、
昭和五十
年度に限り、
交付税特別会計において資金運用部資金から借り入れることとし、その元利償還については、
昭和五十一
年度において、国の一般会計の
負担で償還することにしております。
第二は、最近の
地方財政の危機的
状況を緊急に改善するため、
昭和五十
年度から同五十二
年度までの間に限り、
国税三税の八%に
相当する額をもって第二
地方交付税を創設することとしております。
その内容は、第一種
交付税と第二種
交付税に区分し、それぞれ第二
地方交付税総額の二分の一の額としております。
また、その配分についてでありますが、第一種
交付税については、人口一人当たり、九百九十六円、面積一平方キロメートル当たり二十七万七千三百五十五円を単位
金額として、すべての都道府県及び市町村に対して
交付することとしております。
第二種
交付税については、前前
年度の決算における民生費の額千円につき百三十五円、同じく決算における単独普通建設事業費の額千円につき九十六円を単位
金額として
交付団体に対して
交付することとしております。
なお、
昭和五十
年度の第二
地方交付税の総額は、八千二百七十億四千万円となりますが、この額については、本
年度に限り、
交付税特別会計において資金運用部資金から借り入れることとし、その元利については、
昭和五十一
年度において国の一般会計の
負担で償還することとしております。
第三は、
昭和五十
年度における異常な
歳入不足等による
地方財政の窮状に着目するとともに、不況対策としての各種の
財政支出の増大などに
対処するため、
交付団体に対して、
昭和五十
年度に限り、国の一般会計の
負担で、臨時
地方特例交付金七百八十一億円を
交付することとしております。なお、この配分については政令に委任することとしております。
第四は、この修正案により、
昭和五十
年度における普通
交付税の額と第二
交付税の額の合算額が、改正前の現行
地方交付税法による当初算定の普通
交付税の額に満たない
地方団体に対して、その満たない額を、
昭和五十
年度に限り、臨時
地方財政交付金を
交付することとしております。
なお、この臨時
地方財政交付金は、約一千億円と見込まれますが、これは国の一般会計で
負担することとし、その
交付に必要な事項は
自治省令で定めることとしております。
第五は、都の
特例について改善することとしております。すなわち、都の基準
財政収入額及び基準
財政需要額の算定に当たっては、特別区の存する区域を市とみなした場合に得られる基準
財政収入額及び基準
財政需要額を加算する
特例を廃止し、特別区の存する区域を市とみなして都とは別に算定することといたしております。なお、その結果、都に
交付される特別区の普通
交付税について、都は、その額を都区分
財政調整
交付金の
財源に充てるものといたしております。
第六は、
昭和五十
年度に限り、
自治体の
財政運営に支障が生ずることがないようにするため、
地方財政法第五条第一項ただし書きの規定による
地方債を起こしてもなおその
財源に不足を生ずる場合には、その不足額に充てるため、
地方財政法第五条の規定にかかわらず、
地方債を起こすことができることとしております。
なお、
政府は、
地方税の減収補てんに伴う
地方債については、
政府資金でその八割以上を引き受けるべきであります。
以上が本修正案の提案理由とその概要であります。
何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決なされますようお願い申し上げます。