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国務大臣(
大平正芳君)
歳入の
見積もりというのは二つの大きな素材から作業をいたしておるわけでございます。
一つは、過去の各
税目の
収納実績をフォローして将来の展望を
予測するということが
一つでございます。もう
一つは、
経済の成長をどう見るかということで、たとえば
雇用所得が一番太い
財源でございますけれ
ども、そういったものがどのような推移をたどるであろうかというようなこと等、つまり、
経済の将来の
見通しをベースにして、それに税の
弾性値を当てはめまして
収入を見積もるというやり方をやってまいっておるわけでございます。去年の場合は前者の方、すなわち
昭和四十九
年度の各
税目の
収入実績は、各毎月毎月の
実績は比較的順調に推移してきたわけでございます。ことしの一月の
収納実績をごらんいただきましても、特に大きな
異変をそこに発見することができないように順調に進んできたわけでございます。もっとも、私
どもは去年の下半期は相当
景気は冷え込むであろう、
収入は相当減るであろうということで
見積もりを立てたわけでございます。すでに
見積もり自体が低かったわけでございますけれ
ども、それに対しまして大きな
異変が起こりましたのは三月の
確定申告、そしてその三月の
決算、法人の
決算等から顕著な
落ち込みがあらわになってまいったわけでございます。
そういった全国の
収税官庁のものが私の手元に集まってまいりますのは一カ月以上たたなければ正確な
数字が来ないわけでございます。しかし、何となく相当な
落ち込みになるのではないかという
予感は確かにあったんです。
参議院の
予算の最終の御
審議の
段階においてあったわけでございます。しかし、いいかげんな推定で
参議院の
予算委員会に御報告するなどということは非常に私は不謹慎だと思いまして、そのことはそういう
予感は現実にありましたけれ
ども、はっきりと
数字的につかめるまでは国会で申し上げるべきでないと、これは私の信念ですから、そういうことであったわけでございますが、四月二日に
予算が成立しまして、それからしばらくたちまして方々の
抜き調査をやりました結果が出てまいりまして、これじゃえらいことになるというので、若干の、
財政が非常に大事なえらい局面を迎えたということに対して
大蔵省としても一段と緊張した姿勢でやらにゃいかぬということで、四月十五日に閣議で初めて事の実際を御報告するというようなことにいたしたわけでございます。
そういう事実の経過が
一つありましたことを御了解いただきたいことと、もう
一つ御了解いただきたいのは、そういう相当な
落ち込みになってきたと思いましたけれ
ども、しかし、私は
歳出はここで調整しちゃいかぬと思ったんです。つまり、
中央地方を通じましてここでわれわれはえらい
歳入の
落ち込みがあるから
歳出を調整していく、節約を思い切って進めるというようなことをやりますと、これはさなきだに
景気が落ち込んでおる
状態でございますのに、それに拍車をかけることになって
経済不安、雇用不安を招くおそれがありますので、これは絶対そういうことをしちゃいかぬということでございますので、この
予算は何としてもこのまま成立させてもらわなければいかぬ、そして
成立予算はそのまま実行させてもらおうと、私はそういうかたい
決意をしたわけでございます。
したがって、そういう
状態があるのに、いかにも白々しく振る舞ったのはけしからん言うて、ずいぶん
参議院からでも先般来おしかりを受けたわけでございますけれ
ども、私はそういうことであの時期対処させていただいたわけでございまして、別に他意はないのであります。