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1975-12-23 第76回国会 参議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月二十三日(火曜日)    午前十時二十分開会     —————————————    委員異動 十二月十九日     辞任         補欠選任      藤田 正明君     戸塚 進也君 十二月二十三日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     内藤  功君     —————————————   出席者は左のとおり。    委員長          桧垣徳太郎君    理 事                 山崎 五郎君                 吉田  実君                 辻  一彦君                 鈴木 一弘君                 栗林 卓司君    委 員                 青木 一男君                 上條 勝久君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 鳩山威一郎君                 藤川 一秋君                 宮田  輝君                 柳田桃太郎君                 大塚  喬君                 寺田 熊雄君                 野田  哲君                 野々山一三君                 吉田忠三郎君                 矢追 秀彦君                 近藤 忠孝君                 内藤  功君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   三木 武夫君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君    政府委員        経済企画庁総合        計画局長     小島 英敏君        大蔵政務次官   梶木 又三君        大蔵大臣官房審        議官       山内  宏君        大蔵大臣官房審        議官       松永 正直君        大蔵省主計局次        長        田中  敬君        大蔵省主計局次        長        高橋  元君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局次        長        原   徹君        大蔵省証券局長  岩瀬 義郎君        大蔵省銀行局長  田辺 博通君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        大蔵省主計局法        規課長      佐藤  徹君    参考人        日本銀行総裁  前川 春雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十年度公債発行特例に関する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十九日、藤田正明君が委員辞任され、その補欠として戸塚進也君が選任されました。  また、本日、渡辺武君が委員辞任され、その補欠として内藤功君が選任されました。     —————————————
  3. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまの理事会の結果について御報告いたします。  共産党近藤忠孝君、渡辺武君から、昭和五十年度公債発行特例に関する法律案審査に資するため、公聴会を開催する要求が提出されましたが、本日の理事会におきまして、会期が迫っております関係上、時間的に開催は不可能でございますので、今回は公聴会を開催しないということに決定に相なりましたので、御了承をいただきます。     —————————————
  4. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十年度公債発行特例に関する法律案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁前川春雄君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際一言ごあいさつを申し上げます。前川総裁には御多忙のところ、本法案の審査のため再度本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。     —————————————
  6. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 昭和五十年度公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 前回渡辺委員質問が三分残っておりますので、あと二点だけお伺いしたいと思います。  第一点は、前回の副総裁答弁で、マネーサプライ規制はやらないという、こういう答弁がございました。しかし、今後公債発行がだんだん巨大化していくに伴って、どうしてもこの面の歯どめが必要だと思うんです。規制をやらないけれどもマネーサプライの問題について歯どめをするについて具体的にどんなことをお考えか、第一点です。  それから第二点は、ドイツの中央銀行は、政府への中立性が大変強いということは御承知だと思います。それと比べて日銀中立性がどういう条件にあるか、これをもっと改善して、政府に対する日銀中立性をもっと高めるという、こういうお考えはないかどうか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  8. 前川春雄

    参考人前川春雄君) マネーサプライ規制をする考えはないかというお話でございますが、マネーサプライにつきまして、日本銀行といたしましては重大な関心を持っておりますることは前回も申し上げました。ただマネーサプライ増加率と申しますか、増加状況につきまして一定の目標値を決めて、その範囲内にとどめるというやり方につきましては、目標値の決め方、あるいは目標値を決めた場合でも、それが経済の実態あるいは物価との関係が必ずしもまだ安定的であるというふうには判断できない要素もございまするので、目標値を決めてマネーサプライ考えていくということはまだ早い、時期尚早であるし、日本銀行としてはその考え方がございません。  ただ、そのときに歯どめは何かないかという御質問だと思います。マネーサプライ増加につきましては、財政支出ということが一つ要素でございまするが、もう一つの大きな要素といたしましては、市中銀行貸し出し、いわゆる信用創出があるわけでございます。この財政面並びに市中金融機関信用創出、そういう問題につきまして、それがマネーサプライにどういうふうな影響を与えているかということを常時把握し、常時監視していくということが歯どめであろうというふうに思います。私どもマネーサプライにつきましてただ傍観視しておるつもりは毛頭ございません。これが過度に増加するということがいろいろ物価その他に影響を及ぼしますので、そういうことがないようにいたしたいというふうに考えております。  日本銀行中立性について、これを強化する考え方はないかという御質問でございます。日本銀行は、いまその金融政策を遂行してまいりまする間におきまして、日本銀行に与えられました権限の行使につきましては独自に判断し、自主的にこれを決定してまいっております。もちろん金融政策も大きな経済政策の一環でございまするので、その間全く相反するようなことは許されることではございません。大きな経済政策目標範囲において金融政策を十全に行っていくという場合に、日本銀行に与えられました権限を行使する場合に、いまでも十分にそれを自主的に決定できておるというふうに考えております。
  9. 栗林卓司

    栗林卓司君 前回の審議でも同僚議員から質問のあった点でございますけれども公債発行する場合の大きな問題点は、財政資金民間資金競合の問題ではなかろうかと思います。そこで、どういう状態なら競合が起こらないんだろうかと考えてみますと、たとえば、民間手元アイドルバランスが存在している限り、財政赤字による追加的財政資金調達は問題を生じない——いま私が読みましたのは日銀の資料の中から引用しておりますから御異論なかろうかと思いますが、問題はこのアイドルバランスなんですが、なかなか抽象的な概念でございまして、計量的にどれぐらいがアイドルバランスとして実在しているかということをつかむのはなかなかむずかしい。とは言うものの、政策運営に当たって見きわめはつけていかなければならない。そこで、本年度と来年度とおおむね展望しながら、日銀当局として多額赤字公債を含めた公債発行になるわけですから、アイドルバランスとしてどれぐらいあるとごらんになっているか。恐らく今年度について見ますと、財政資金がいわば前倒し支出をされてきたということを前回たしか御説明になったと思いますので、恐らくそれが言葉を変えた今年度のいわば民間におけるアイドルバランスの一面の説明かと思いますけれども、さて来年を展望しながらどういうようなお感じをお持ちになっているのか、ひとつ伺いたいと思います。
  10. 前川春雄

    参考人前川春雄君) ただいまお話のございましたように、アイドルバランスという言葉は余り正確な言葉ではないと思いますし、それが幾らぐらいあるか、またあればいいかということを計量的に計算することもなかなか困難であろうというふうに思います。ただ、今年度の問題につきまして、ただいまお話がございましたように、政府支払い前倒しに行われておったということ、並びに政府支出は大体支払い先行でございます。大蔵省証券なり何なりによりまして、資金を一時的に調達してそれで支払われるという場合が多いわけでございます。国債発行額につきましては、大体月の発行額を平準化いたしまするので、あるいはその月によっては引き揚げの方が多いという場合もあろうかと思いますが、通常の場合は支払いが先行いたします。そういうことから、国債発行に伴う供給資金引き揚げは大体賄える状態になっておると思います。  それから、本年度全体につきまして申しますると、これは主として政府資金支払いがかなり多額に上っておるということを前提にいたしまして、資金に余剰あるいはとんとん、まあ不足は少なくともないというふうに推定されております。昨年度全体をとって見ますると、これは資金不足でございました。六千数百億円の不足がございましたために、なかなか金融面、これは金融引き締めをやっておりましたせいもございまするけれども、なかなかその資金の、金融機関資金手元は苦しかったわけでございますが、本年度政府支払いの進捗ということもございまして、大体そういう不足はない状態であるということでございまするので、国債消化はまず十分できるであろうというふうに考えております。もっともそういう状態になりまする前提一つといたしましては、御質問もございました民間資金需要つまり企業からの資金需要というのが現在のところ、はなはだ低調でございます。そういう意味でこれが競合しない状態になっておりますることも一つの大きな原因でございます。  来年度はどうかという御質問でございます。私どもも来年度がどうなるかということについて非常に関心を持っております。これから政府資金支払い、これは来年度予算がまだ決まりませんので、私どもの方もちょっと計算のしようがないわけでございまするが、問題はやはりそういう状態、ある程度政府支払いがあったときに民間からの資金需要がどの程度にどういう時期にどういう強さで、しかも、どういう金融機関に対して、あるいはほかの資本市場でもよろしゅうございまするが、そういうところに起こるであろうかと、そういう点が一番大きな問題であろうと思います。先ほども申し上げましたマネーサプライと申しまするか、全体の通貨総量というものを考えてまいりまするときに、先ほども申し上げましたように、財政資金によって市中金融機関預金がふえるということだけでなしに、金融機関信用創出貸し出しによってもふえるわけでございますので、この両者を調整と申しまするか、競合いたしませんように調整してまいりまするのが金融政策の一番の眼目であろうかと思います。ただ一つ申せますことは、もし企業民間資金需要が非常に強くなるような状態ということを想像いたしますると、そういう状態経済活動がかなり盛んになっておる状態でございます。そういう経済状況をもし想定いたしますると、あるいは財政面でも自然増収が起こるとかいうようなことがあるかもしれません。そういうときにはそれだけ財政資金民間資金との競合度合いが減ってくるということは考えられるわけでございます。つまり国債発行が極端に、数字的計算だけで申しますれば、それだけ少なくても済むということになり得るわけでございまするので、資金競合はそれだけ計算上は減ってくるということも期待されるわけでございまするが、こういう問題は、全部これからの予算規模なり何なりわかりました上で判断されることでございまするので、ちょっといまの段階で私これ以上のことは申し上げかねておるわけでございます。
  11. 栗林卓司

    栗林卓司君 これは前回のたしか御答弁の中にあったと思いますけれどもマネーサプライについてはなるべくなだらかな変動にしていきたい。急激にこれを変化させることは、物価への影響等を含めて好ましくない問題が出てくるので、なるべくこれはマネーサプライの対前年度伸び率そのもの管理するということはむずかしいとしても、なるべくなだらかにしていきたいというお話であろうと思います。そこで、今後の民間資金需要がどうであろうかを考えますと、マネーサプライ管理をする立場から言えば、片方で財政資金調達が起こっているわけですから、これやっぱり抑えようかということになりますが、これはいまの深刻な不況からの脱出ということを含めて考えますと、なかなか取り得る政策ではないと思います。  そこで、アイドルバランスという言葉は、確かに大変漠然とした概念でございまして、これをもとにして議論をしてはいけないんですが、何がしかの問題を指摘している言葉であることは事実なんです。そこでいま御答弁の中で、何分予算が決まっておりませんのでとございました。財政資金政府が決めることでございますから当然そうなんですが、金融をつかさどる、いわば通貨の安定を任務とする日銀当局として、本当は財政がどんな姿になっていようと、財政資金調達はここまでが枠でございますよと、それを超えますといろんな問題が出ますよというめどはお持ちになる必要があるんではないか。また持ったとしたら、それを財政当局に反映しなければいけないということになるんではないか。ただこれは大変ややこしい問題を抱えてまいりました。そのときに、日銀中立性というのはどうなるんであろうか。財政金融というのがいわばしがらみみたいに絡みついてしまう。これはいけないんだといいながら、そこまで足を踏み込んでいかないと、結局はマネーサプライの放漫な増大をもたらしてくる。この点について今後日銀当局としてどういう構え財政当局に向かっておいでになるか伺いたいと思います。
  12. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 御指摘のように財政金融とは全く相絡み合った二つの部面でございまして、財政がこうだから金融はこうだというだけでなしに、金融面からの要請から財政面でもお考えいただくという必要は起こり得ることであろうと思います。国債消化そのものをとりましても、国債消化されませんと、大規模予算というものは遂行できなくなるわけでございまするから、そういう面でも金融上の要請ということが一つ条件になるということは当然であろうというふうに思います。私ども日本銀行立場といたしまして、いまのような経済情勢のもとで建設公債の枠を超える国債発行ということが行われまするのは、いまの情勢から見ますればやむを得ないことであろうかというふうに考えますが、また同時に、こういう特例国債発行が安易に行われるということはやはり避けなければいけないことであろうというふうに思います。また同時に、国債発行いたしまする場合も、国債消化ということを考えますれば、発行条件その他、発行条件につきましても市場実勢に即応したものであるということが必要であろうと思いまするし、そういう面で私ども日本銀行として考えております点は、その都度財政当局にも一々申し上げておるわけでございます。もちろん財政当局金融当局とは立場が違いまするから、その意見が常に一致するというわけではございません。しかし、お互いに立場を越えて総合的にいまの経済状況経済情勢というものをいかに早く景気の回復をしていくかということを考えますれば、おのずからそこに意見一致点はあるものであるというふうに確信しております。  これからも日本銀行といたしまして、ただいまお話のございましたように、マネーサプライというものが極度に、大幅にふえるということは、昭和四十六、七年時代の経験から見ましても、後に必ずや経済面で悪い影響が出るということをよく認識しておりまするので、このマネーサプライ増加ということが余り大幅にいかないようにするということは、日本銀行として一番考えなければならないところであろうと思います。その面でマネーサプライ増加ということに一番大きな要素になりまするのは、市中貸し出し民間信用創出財政とそれから輸出でございまするが、輸出の面はそれほどいま大きな要素ではございませんけれども財政資金需要民間金融機関信用創出バランスをどうやってとっていくか、それはそのときの経済界要請にいかに順便にマッチしながらインフレを防いで適正な経済成長を図っていくかということに尽きるわけでございまするけれども金融面ではそのときどきの情勢に応じました判断を常に的確にいたしまして、もし財政当局にこういうことをしてほしいということがございますれば、その都度私ども意見は十分に財政当局にも反映させてまいりたいと、そういうふうに考えております。
  13. 栗林卓司

    栗林卓司君 お気持ちはよくわかるんでございますが、ただ望ましい姿から考えますと、日銀当局として、いまの問題にどう主体的に対応するかという場合の、いわば手段というものは自律的な金融メカニズム、それが何かは別として、日銀が主宰し得る手段の分野において本当はしなければいけないのではないかと思いますが、その都度財政当局に申し上げますと、あるいは市中貸し出しについても、そのときどきの経済要請に応じながらという、この構えそのものはそうせざるを得ない状況はわかりますけれども、わかりますが、たとえば日銀当局窓口規制というのは正規金融政策なんだろうか、貸し出しの中に立ち入って決めていくということが正規金融政策なんだろうかということを含めながら、本当は金融制度の中で、ただいまの財政資金調達についても可能な限り自律的に消化できる、自律的に日銀当局としての意向が結果として反映されるような、そういう環境整備というのが同時に必要になるんではないか。恐らくそういった面を含めて市場実勢ということを言われたのではなかろうかと思いますが、そういう点についてもう少し御答弁を補足いただけますか。
  14. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 金融政策を遂行してまいりまする手段といたしまして、金利政策あるいは準備預金政策、こういうものがございますが、そのほかに量的な金融信用創出管理、これは日本では従来から一つの有力な手段になっておったわけでございます。この窓口規制という名で呼ばれておりまするが、金融機関民間貸し出しをいたしまするその量、これにつきまして、引き締め時には、日本銀行としてその量をかなり詰める、縮小していただくということをお願いし、また緩和時にはそういう強度の引き締めということはしないが、その信用創出その全体を管理していくということを現在もやっておるわけでございます。これは日本ばかりではございません、ほかの国でもやっておるところもございますが、それぞれの金融機構特殊性に応じまして、そのやり方はいろいろにございます。しかし、考え方の基本といたしまして、金利政策と量的な管理というものはほかの国でも通常とられる方法であると思います。そういう意味で自動的な一つメカニズムと申しますか、金利市場実勢にまかせておけばそこで自然に調節されるだろうということは、私ども金利実勢を尊重すると、市場実勢を尊重するという意味では、常々そういうことを申しておるわけでございますが、それを全部市場実勢にまかせればうまく調節ができるかどうかということになりますると、ちょっとそれだけではいけない面があるのではないかというふうに考えております。  そういう意味市場実勢だけでなしに、それ以外の方策といたしまして金融面ではある程度市中金融機関信用創出につきましても、私どもの方で管理——管理という言葉は適当でございませんけれども、常にいつでも必要があればそれに対してある程度の私ども意向を反映させる仕組みを残しておくということが、やはりマネーサプライ増加を極端に増加させないためにも必要な方法であろうというふうに考えておりまするので、何と申しますか、一つの自然——自動的に行われるメカニズムというだけでなしに、ある一つの意識を持った管理的な施策ということはやはり必要なのではないかというふうに考えております。またそういうことでマネーサプライというものにつきましても、私どもとしてできるだけそれが実体経済あるいは物価等に悪い影響が出ませぬように管理と申しまするか、よくウォッチしながら必要な施策をとってまいりたいというふうに考えております。
  15. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまの点さらに伺いたいんですが、時間の関係でございますので、一点だけ、これまで伺ってきた中でお尋ねしたいのは、来年度民間資金需要見通しでございますけれども、これは先のことですからなかなかわかりません。わかりませんが、今日の大変低い操業度合い考えながら実体経済回復を見てまいりますと、来年度は、確度は別にして、民間もまた活気が出てくることが期待されると思うんです。そのときに、民間設備資金需要がどうであろうかと考えますと、例の狂乱物価以降、帳簿価額が実質的に下がってまいりました。どの企業でも償却不足状態が目立ってきました。加えて新規投資をするということになりますと、公害対策等も含めていかなければなりませんから、投下資本係数も落ちてきた。それやこれやを絡めて考えますと、来年度後半は民間資金需要というものは、もし望ましい経済回復を踏まえて考えますと、相当増大するのではあるまいかという気がするんですが、この点についてだけ見通しを伺いたいと思います。
  16. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 民間設備投資GNPの統計でも毎期減っております。こういう状態が続くことは必ずしも好ましいことではないというふうに考えますが、御承知のように大きなGNPギャップがございますし、稼働率も低いということでございまするので、公害投資であるとか、あるいは非製造業——電力等設備投資というものは別といたしまして、一般製造業設備投資は現在は全く低迷状態にある。この低迷状態がどういう段階でまた盛り上がってくるかということでございまするが、これはGNPギャップをこれからの毎年の経済成長の過程でどの程度に毎年吸収していくかということにも関連いたします。そういうものが半年や一年で全部吸収されて新しい設備投資が起こるとはちょっと考えられません。ただ、これは業種によっていろいろ違いまするものでございまするから、もし経済状況回復ということがございますれば、業種の一部によってはそういう新しい設備資金投資を必要とする面もあろうかというふうに思います。いまの金融政策で貸出金利をずっと下げてまいりました。こういうものは設備投資を喚起する上においては、金利が安いということは、それだけそういう投資需要を喚起することになろうかと思います。私どもいま申し上げましたように、需給ギャップが現在の程度にありまするのをどの程度、何年ぐらいにわたって吸収してまいりまするか、そういうことによっても違いまするが、業種によってはある部面にはそういう設備投資を少しやっていこうという意欲が起きてくることを景気の回復とともに期待しておるわけでございます。余りに大きい設備投資の意欲が一般的に出るとはちょっと想像されませんが、業種によってはそういうものも出ることを期待しております。
  17. 栗林卓司

    栗林卓司君 では、別な問題について今度伺いたいんですけれども、最近の資金循環の流れを見てまいりますと、公共部門と民間部門の資金不足の割合が大分変わってまいりました。大体四十九年の四−六月以降公共部門の資金不足が増大してまいりました。十−十二月以降は法人企業部門の資金不足を上回ってきている。これが一時的な傾向なんだろうかと考えますと、これからは財政主導型の景気政策をとるんだという政府政策構えを照らしてみると、恐らく今後も続くんであろうと見ざるを得ないようです。  そこで、このことと金融制度がどう絡み合うんだろうか。従来は民間、特に法人部門の資金不足に対応するものとして民間金融機関もそれぞれ整備されてあったわけでございますが、今後は公共部門の資金不足に対する対応が相当の割合でふえてきて、法人企業分は相対的に減ってくる。そうなってくると、資金不足のファイナンスをするやり方も、従来の金融制度を少し変えていくことになりはしまいか。実は、この質問前回参考人でおいでになりました全銀協の会長さんに伺いました。お答えは、一言に縮めて言いますと、銀行としては、国に貸そうが企業に貸そうが同じことでございます。確かにそのお答えなんですけども、しかし、考えてみると、国の側で見てまいりますと、いまみたいに公債市中金融機関に相当多くを引き受けてもらうという、いわば途中で中間利潤がかかるようなやり方じゃなくて、直接マーケットからファイナンスしたい、これがいま昨今話題の個人消化の割合をどう高めるかということだと思うんです。財政資金の効率を考えてみても、一遍預金市中金融機関にある、そこから引き受けてもらうという段階をとるんじゃなくて、直接個人消化の割合をふやす、こうなってまいりますと、中長期の資金調達は今後は大体公共部門が多くなってくるのだという場合に、金融債で調達をして、長信銀の資金調達をするということがどの程度意味合いを持ってくるのか、よく言われるクラウディングアウトも市場に出しますと、事業債等も圧迫をするではないか、金融債が困るという話なんですが、困っても構わぬのじゃないかという極論でも成り立つんじゃないか。その意味で、資金循環の最近の変化と今後の展望を考えますと、いわゆるかきね論をいよいよこれから真っ正面から取り組む、かきねを払いながら、金融構造の抜本的な見直しをしなきゃいかぬのじゃないか、それが今後に対応する道ではないかと思いますが、この点の見解を伺いたいと思います。
  18. 前川春雄

    参考人前川春雄君) おっしゃるとおり、従来の高度成長期におきましては、民間設備投資というものが主導しまして、この高度成長を支えてきたことはおっしゃるとおりでございます。昨年から資金循環の形が変わりまして、公共部門の投資超過というのが非常に多くなってまいりました。したがいまして、民間部門、個人部門の資金の余剰というものが、従来のように法人の資金需要ではなしに、公共部門の資金需要を満たすために使われるようなかっこうにしております。また、これからもそういう状況は続くのではないかと申しますのは、経済成長がいままでの高度成長から変わりまして、低成長ということになりますると、民間企業設備投資が主導して経済を盛り上げていくということはだんだん少なくなるのではないかというふうに考えます。  実は、そのもう一つの問題といたしまして、それでは公共部門の投資超過の資金調達をどうするかというときに、従来のような金融機関を通ずる間接金融でやるか、あるいはいまお話のございました直接金融といいますか、個人消化ということを通じてやるか、これはこれから私どもが当面しなければなりません一番大きな問題であろうと思います。金融制度調査会が大蔵省の中で開かれておりまするが、これもその問題、これから低成長になりましたときに資金循環がどういうふうに変わるか、それによって金融機関の役割りがどういうふうに変わるかということが一つの大きな題目になっております。これは間接金融という方式が、日本で長い間行われてまいりましたので、間接金融の方が優位だという状況、現状をすぐ変えるわけにはなかなかいかないと思います。しかし、一方直接金融と申しますか、国債の場合でもそうでございまするが、個人あるいは機関投資家に直接消化してもらうという方向は、やはり考えていかなければならないことであろうと思います。マネーサプライの点から考えましても、直接消化することによってマネーサプライ増加がそれだけ減らし得る余地もあるわけですから、全部ではございませんけれどもそういう余地もございます。そういう意味で、間接金融から直接金融にどういうテンポで、どういう部面から少しずつ重点を移していくか、これはマーケットの、あるいは債券を出します場合には、これは発行条件の問題になりますし、それから発行条件だけが市場実勢に対応しておればいいというわけではございませんので、公社債市場というものが育成されて、個人が消化いたしましても、それはいつでも処分できるという状況にございませんと、なかなか消化ができませんので、そういう公社債市場というものの育成もあわせて考えていかなければならない問題だろうと思います。  そういう状態がもし、これは一挙にはまいりませんので、時間をかけていくわけでございまするけれども、そういう事態になりましたときに、金融機関の役割りと申しまするか、性格というものが変わっていくということは十分あり得ることだと思います。確かに、金が集まりまして、それはどこへ貸そうと同じだということはございまするけれども、やはりその間、企業に金を貸してそれによってその資金を吸収して、それを回転しながら信用創出が行われるという時代と、公共部門に金を貸すことによって信用創出がそれほど急激には行われないことになるかと思いますが、そういう事態とは、やはり少しは変わってくるのだろうというふうに思います。そういう問題を含めまして、金融制度調査会の題目というのは、そういう点を含めました直接金融、間接金融の問題にまで及ぶ問題ではないかというふうに考えております。
  19. 栗林卓司

    栗林卓司君 十分時間をかけてというお気持ちはわかりますけれども、昨今われわれの最大の悩みは、時間をかけてやりたいという個々の気持ちと別に、経済環境の変化が非常に急ピッチなんだということだと思うのです。その意味で全治三年間、リハビリテーション三年間という政府のスタンスがよかったのかという気もするんですが、それはそれとして、取り巻くさらに大きな経済環境の変化があるわけですから、時間をかけてはわかりますが、急いで真剣に取り組んでいただきたいと思います。  時間がありませんので最後に一問だけ伺いますが、これは縁故債の問題なんですが、地方銀行ですとこれが日本銀行のオペレーションの対象にならぬというのは大変御不満の種であると思いますが、日本銀行としますと、銀行券発行の相手側の資産勘定が何であっても構わぬわけですから、十分な国債さえ市場にあれば国債の買い入れで通貨発行の見合いの勘定整理ができる、縁故債のことまで考える必要はないのだというお立場だろうと思います。私がいま伺いたいのは、そういうことではなくて、担保能力が乏しい縁故債が民間金融機関の大きな資産を構成してくる。これを金融政策の問題として日銀当局がどう判断をされるか、銀行の健全な経営ということを考えますと、縁故債に立ち至る状況は別として、おのずからおまえさん、こういう性格の資産を持ちなさいという判断があってしかるべきじゃないか。じゃ、公募債にしろということになりますと、いま御心配のように、地方債まで含めた公社債市場などというのはとてもいま議論にもなかなかならないような実態ではあるまいか。そこで現状として、地方銀行が縁故債を引き受けざるを得ない、それに対してどのような金融機関にも資産構成として整理と評価づけをしていくのか、その点についての御意見を伺って質問を終わりたいと思います。
  20. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 地方公共団体の縁故債の発行が、これは国の財政と全く軌を一にしまして、地方公共団体も御承知のように非常に財政難のために起債がふえる。それが結局公募債というのは一定の銘柄に限られておりますので、縁故債がふえるという状態になっておりますることは私どもも十分に認識しております。この縁故債を日銀の適格担保にしてほしいというお話が、御要望が方々から出ておりました。私ども、その問題につきましては、地方債の中の公募債は適格担保にしておるわけでございます。その適格担保、これはいまのお話のように地方公共団体の財政をどうするかという問題に実は基本的にあるわけでございまするが、日本銀行立場だけをまず申し上げますと、適格担保にいたしますということは、結局これは日本銀行の資産から申しますれば、銀行券の裏づけになるものでございまするので、これは有価証券ならなんでもいいというわけにまいりません。また、しておらないわけでございます。  それからまた、この適格担保にいたしますときには、日本銀行といたしましては、これを処分するときにはいつでも処分できる状態でないと困るわけでございます。そういう意味から申しますと、公募債というのは市場性、それは公募して一応その市場消化される。そこで市場消化という洗礼を受けておるわけでございます。そういうことで処分可能であるということに当然なるわけでございまするので、これを適格担保にするということは、まあ第一義的にはいいわけです。縁故債ということになりますると、この市場性というものはない。発行される地方公共団体には公募債を出しておられる地方公共団体の縁故債もあるわけでございます。そういう点では信用力は同じものであるかもしれませんが、その縁故債は市場性がない、それでは日本銀行立場から申しますると、適格担保にするにはちょっと要件が欠けるということになるわけでございます。  これが日本銀行からの立場で申し上げたわけでございますが、今度は御質問の、地方公共団体のそういう縁故債というものがたくさん出て、これは主として地方銀行に消化されるが、地方銀行の資産構成上そういうことがいつまでも行われていいのかという御質問だと思います。これはやはりそういつまでもそういうもの——そういうものと言っては申しわけございませんが、縁故債というのは、どうしてもその地方公共団体の金庫を地方金融機関がしておることが往々ございまするので、どうしても安易になる、地方銀行も断りにくい、また平素そういう地方公共団体の預金をたくさん扱っておりまするので、断りにくいということもあろうかと思います。  それから縁故債というのはまあ債券ではございますけれども、電話一本でもう本当に紙、何と申しますか、借用証書、本当の借用証書という形で行われている場合もかなりあるようでございます。こういう点につきましては、やはり地方銀行の資産構成上はそういうことが余り安易に行われることは、私ども適当だと思っておりません。しかし、基本的にはこの問題は、地方公共団体の財政問題になるわけでございまして、ただ地方銀行に、そういうのはおかしいぞ、余り縁故債を、本当の電話一本で引き受けるなということだけではなかなか解決しない問題であろうというふうに思います。そういう点から考えますると、金融当局といたしましては、そういう縁故債が余りふえる、また安易にそういうことがふえることは決して望ましいと思っておりません。ただそういうことを言っただけではなかなか解決しない問題であろうと思いまするので、地方公共団体自体の財政をどうするかということもあわせて関係者が協力いたしませんと、解決しない問題であろうというふうに思っております。縁故債につきましては、そういう意味で、できるだけ信用力と市場性を持つようにしていただきたいと、そういうことは中央銀行立場からお願いしておるわけでございますが、これにはおのずから限度がございまして、全部そういうふうにできるものでもございません。しょせんは程度問題だと思いますが、余り縁故債が手軽に金融できるものでございますから、そういうことで安易な金融方法がとられるということは、中央銀行あるいは地方の金融機関の資産構成上、私どもは適当ではないというふうに考えております。
  21. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 前川総裁に一言お礼を申し上げます。  御多忙中、本委員会に御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただきありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  引き続き、質疑を行います。
  22. 大塚喬

    ○大塚喬君 私は、初めに、不況対策と減税、大型所得減税を中心とする減税政策の実施について、大臣の見解をお尋ねをし、この際、大幅減税、これを提唱いたしたいと考えておるものであります。いままでの論議、赤字だ、国債発行をしろ、不況対策だ、国債発行しろ、こういう風潮が強いように私はどうしても感じてなりません。最近の報道によりますと、アメリカ議会はこの十二月の十七日、不況脱出のため今年度行っておる総額百六十億ドル、これは年間にいたしますと、日本円で四兆八千億になろうかと思うわけでありますが、これをアメリカの議会は個人、法人向けの所得大減税を今後六ヵ月間延長する、そして来年六月末までこの減税を継続するという報道がなされております。政府と議会の間に確執もあるようでありますが、これはインフレ対策ということが議会の方ではその配慮を払われておらない、こういうところから、確執が出ておるようでありますが、両院協議会の決定でありますので、アメリカでは不況対策のための減税が今年に引き続いて来年も実施をされることは確定的であります。この半年間の実施をするということになれば、個人所得税で合計して七十四億ドル、法人税で八十億ドルの減税がなされることになります。現行の税制では、アメリカの場合に、法人税も個人の所得税も、ともに一二%を一律に割り戻す、そのうちの三分の二、百二十億ドルが不況の主因であった消費需要の沈滞に刺激を加えるための個人減税だと、こういうことが明らかにされているわけであります。  なお、フォード大統領は、今年の十月初めに、これよりも個人向けで四十億ドル増、法人向けで三十億ドル増を、総額二百八十億ドルの大幅減税を提唱しておることも新聞で報道されておるところであります。  アメリカでは、このように不況対策に減税、日本では、先ほど申し上げましたように、不況対策だ、赤字国債発行だと、アメリカでは個人消費の拡大を図って景気の刺激を図る、日本では公共事業の拡大を図って景気の回復を図る、まあ私は、この問題について疑問を持ち、一体、アメリカで不況対策ということで、大幅減税が実施をされる。日本では、そういう論議がほとんど行われない。最近は、政府部内、河本通産大臣あるいは永野日本商工会議所会頭等がこういうことを提唱されておるように承知をいたしておるわけですが、残念ながら、昭和五十一年度予算編成に当たって、大蔵省政府部内では、こういう問題について全然考慮が払われないで、予算編成が進行中である。きょうの新聞には予算の骨組みができたというようなことが報道されておるわけでありますが、私は、日本の不況対策、この問題については果敢に所得税の大幅減税、このことを実施すべきだと、こう考えておるわけでございますが、これらの問題について大蔵大臣から、不況対策、所得の大型減税、こういう問題について率直な大蔵大臣の見解を承りたいと存ずるものであります。
  23. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) かねがね申し上げておりますように、わが国は一昨年来の石油危機に象徴される世界経済の異変に直撃されて、最もひどい打撃を受けた国でございます。したがって、いずれの国よりも深刻な不況にあえいでおりますこと、御想像にかたくないところと思うんでございます。そこで、これに対しまして、政府は、去年の補正からことしの本予算にかけまして、御案内のように記録的な赤字が財政に出てまいりました、中央、地方通じて出てまいったわけでございますけれども、まず、その赤字補てんのために、本来の財政手段である増税に訴えなかったわけでございます。この赤字に処して公債に依存する態度を決めたわけでございます。この公債依存率は、御案内のように、ことしの補正後の予算は二六%を超えておるわけでございまして、いずれの先進国よりも高くなっておりますことは御案内のとおりでございます。まず、そういうことで不況に対しまして第一の対応をいたしたわけでございます。  しかし、それよりも何よりも、もっと積極的に減税をやってこれに対応すべきでないかという議論も、国会の内外に根強くありますこと、学界にもございますことを私もよく承知いたしておるわけでございますけれども、これに対しましては、そういう議論は理解できないわけでは決してございませんけれども、すでにわが国におきまして、それに先行いたしまして行われた税制改革におきまして、大幅な所得税減税が行われておるということでございまして、この所得税減税によりまして、わが国の課税限度というものは、どこの国よりも高くなっておるわけでございます。したがって、この財政危機に際しまして、ここしばらく減税をしないという態度を政府が仮にとったといたしましても、国民の理解が得られるであろうと考えておるわけでございます。  それから第三の問題といたしまして、景気対策としての減税政策のメリットでございますけれども、果たして、そのようなことを仮にいたしたとして、それが直ちに景気の回復に有効に働くかという判断でございますけれども、私ども必ずしもそのようには考えていないわけでございます。昭和五十一年度の税制改正に対する税調の御答申、きょういただく予定にいたしておりまする五十一年度の税制改正に関する御答申、きょうの夕方にいただくはずでございますけれども、この中におきましても、政府経済見通しによれば、わが国の経済は徐々に回復するものと見込まれておること、公債市中消化能力には限界があり、景気刺激のための減税に伴って多額公債を追加発行することには問題が多いと思われること、最近における消費者行動の態様からすれば、減税をしても、それによって増加する所得の相当部分が貯蓄に回ることも予想され、その場合には、減税の景気刺激効果は公共事業費支出ほどには期待し得ないと考えること等の理由から、この際は、景気刺激のための大幅減税という考え方はとるべきでないという趣旨が主張されておるわけでございまして、私どももここに示されておる考え方のように、納税いたしておる階層に、減税措置がとられて可処分所得がそれだけふえるということになった場合でも、その相当部分が直ちに消費に回るということは、今日の国民の堅実な消費態度からして容易に期待できないのではないかという判断を持っておるわけでございます。かたがたそういうような理由で今度は減税ということに対しましては国民に理解を得て、この際は取り上げないということにしていただくことにいたすべく諸般の準備をいたしておるところでございます。
  24. 大塚喬

    ○大塚喬君 そうしますと、いまの大蔵大臣の答弁は、減税してもそれは貯蓄の方に回ってしまって景気刺激、消費の増大ということに回らないから、日本ではこの不況対策として減税措置ということは不適当だと、こういう答弁のように承ったわけでありますが、しからば重ねてお尋ねをいたしますが、いままで不況対策ということで第一次から第四次までの不況対策を引き続いて実施をしてまいりました。これでも全然その徴候はないということで、重ねて第五次の不況対策を実施せざるを得ないだろう、こういう政府部内でも声が起きておるように承っておるわけです。  で、これは去る十二日のある新聞の報道で拝見をしたわけですが、こういう言葉が出ておったことを——大変大臣の目の前においてこんなことを申し上げるのは何ですが、新聞に出ておったことですからひとつ率直にお尋ね申し上げますが、ある財界の長老が言うことには「福田も、大平もマクロはわかってもミクロはわからん。三木にいたっては経済オンチだ。」と、こういう新聞の報道がこの十二月十二日になされておりました。いまどんなことをやっても景気の回復が思わしくない。景気の回復、景気がきわめて不況だということで歳入欠陥、財政危機を招来をした。いまこの際にとられるものは因循こそくな従来の手段であってよいと、こういうことには——これはそこまではどなたがお考えいただいても、そういう議論になるほどの、国を挙げてのいま景気回復の重要な課題であろうと考えるわけであります。で、この際思い切ったウルトラCをやったらどうか、こういう論議も出ておるわけであります。先ほど申し上げたように、何ぼ不況対策をやっても全然効果がない、しかも、景気はもう一段底があるだろう、こういうような情勢だということも伝えられておるわけであります。この際に、この不況対策ということになった場合に、総需要を喚起するために個人消費、民間設備投資輸出、公共事業、こういうものもいずれも大きな期待が寄せられない、こういうことになれば、この個人消費へ増加する道は大幅なベースアップをして図るか、あるいは大幅減税で個人消費を伸ばす以外に方法はないじゃないか、しかも、その大幅なベースアップは、七五年春闘に見られたように政府が極端に先頭に立って抑える、このことが第一次公定歩合引き下げをおくらしたことと重複して、重なり合って今日の不況を招来したことは間違いないところであろうと思うわけでありますが、ベースアップができないということになれば、アメリカでやったことが、大幅減税、これがアメリカで実施ができて、どうして日本にこの大幅減税ができないものか。先ほどの大蔵大臣の答弁で、全部減税してもそれは貯蓄に回ってしまって景気刺激にはならない、こういうような答弁でありますが、私は少しいまの答弁だけでは、いま不況の中でどうやってこれを脱出しようかと真剣に考えておる各界、まあ財界や自民党の中にもこういう論議が大変最近強まってきておるということを承知をいたしておるわけでありますが、大蔵大臣の重ねてのひとつ国民にもだれもがわかるように、こういう所得減税は不況対策には日本では不向きなんだ、不適当なんだ、やるべきではないのだ、こういうことを明確にしていただきたいと考えるわけでございます。
  25. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) この不況のためにマクロに見まして経済がもろもろの困難を抱えておること、そしてさらに、ミクロに見ましていろんな問題、深刻な問題を抱えておること私もよく理解しておるつもりでおります。したがって、この事態からどのように回復の軌道に経済を乗せてまいるかということに政府も日夜腐心いたしておるわけでございます。先ほど申しましたように、世界の中で資源危機に対して一番大きな打撃を受けた日本でございますが、いま大塚さんの言われるアメリカでございますが、アメリカは、石油にいたしましても半分はみずからの資源供給力を持っておる国なんです。しかし、アメリカはまだ完全にマイナス成長から脱却しておるとは言えない。この下半期からようやくプラスに転じたということが言われておりまするし、ヨーロッパ各国それぞれ資源供給の足場は日本より強いのでございますけれども、まだ不況の谷間に低迷いたしており、不況対策を講ずること自体が日本より、ずっとおくれておる状況なんでございまして、財界ばかりでなく、国民の各層に政府に対するいろんな不満があることはよく承知しておりますけれども、今日与えられた環境の中、条件の中では、まず先進諸国に比べて不況対策に早目に手を染めることができて、そして五十年度経済から二%を超える成長が記録できておるということは、それなりに私は評価していただきたいと思うんです。よそ様より日本の方が、こう言うと手前みそになりますけれども、若干成績がいいわけなんです。そこで、日本人というのは大体よその国のことはよく言うて自分の国の政府のことは悪く言うくせがあるんですね。これはもうまずいいことはいいとして御評価いただき、悪いことは悪いとして厳しくおしかりをいただかなければいけないのじゃないかと思うのでございますが、それはそれとして、そういう状況でございまするので、私どもそしてこういう大きな痛手を受けた状態からの立ち直りでございますから、相当時間がかかるわけでございますので、まず手がたくこの対応策を講じておるわけでございます。  第四次対策の効果がさっぱり出ないという御指摘でございますが、これは大塚さんからばかりでなく、毎日私ども各方面からおしかりを受けておるわけでございますが、第四次不況対策というのは、実際に決めたのは九月二十七日なんでございます。ところが、それを実行するところの補正予算は十一月初めに本院を通していただいたわけでございます。  それから、金利政策というのは預貯金問題など、約一ヵ月かかったわけでございまするし、ようやくこれが軌道に乗ったのが、ついこの間なんです。ですから、これの効果が出ない、出ないというのはあたりまえです。また出ないはずなんです、これは。これはまだ泳ぎ出したばかりなんですから。それだから、これ、もう少し時間をいろいろ置いてごらんいただかなければ、大塚さんばかりでなく、全日本の識者に私はそれを訴えたいんです。もう少し見ていただかなけりゃ、第四次政策というのは、まだ全然効果が出ていないんじゃないかというのは、少し性急に過ぎやしないかと。この間この御献立がそろいまして、出したばかりなんですから、これが効果が出るのは、年改まって漸次これはそれだけの効果を生んでくると思うんでございます。したがって私は、第五次政策というようなものは、まずこの効果を見てからさしていただけませんかということをお願いいたしておるわけでございます。  それから第三に、所得減税の不況対策としてのメリットをどう考えるか、アメリカでやったことが日本でできないはずがない。シカが越えた鵯越は、馬が越えられないはずがないというふうなことですわね。私は、何もアメリカのまねすることが芸じゃないと思いますよ。日本日本条件に沿った政策をやればいいんで、アメリカのまねをすべきではないと思いますが、日本のベストな政策を選択すべきだと思いますが、このあたりは、少し専門家からそれじゃ説明させます。
  26. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 税制調査会におきましても、景気刺激のための減税という議論と、前回の当委員会で、寺田委員から御質問の出ました物価調整のための減税という議論で、非常に時間をかけて御議論をいただきました。  本日の御質問は、景気刺激のための減税の方でございますが、これにつきましては、アメリカの例も出されました。ドイツの例も出されました。アメリカの場合は、ある程度景気刺激に効果があったという評価を受けている、これも事実のようでございます。いろいろの御議論の中で思いつくままに御披露いたしますと、一つは、減税の大きさでございます。七五年度の個人所得税の減税は百八十億ドルと言われておりますが、アメリカの所得税が大体千百億ドルから千二百億ドルでございますから、まあ、一五%ぐらい、大ざっぱに申しまして——の減税でございます。したがって、日本で換算すれば、仮にまあ六兆円の所得税と考えれば、一五%ならまあ九千億、まずオーダーとしてはそういうもので、経済の大きさが違うわけですから、日本に換算して考えりゃ九千億、まあ大ざっばに言って一兆円ぐらいの減税ということなのかなと。この際一兆円くらいの減税——まあ、もっとお金があれば、二兆円くらいやったらもっといいかもしれないが、一兆円ないし二兆円の減税というのを景気刺激のためにやれば役に立つだろう、それは。やれるかどうか、やることが適当かという御議論をなすったわけでございます。その場合に、やはり財政の姿も当然考えた上で結論を出すべきだ。ところが、五十一年度というのは、どうやら当初からいわゆる四条公債ではとうてい足りない。特例、特別の法律をお願いしてでも、特例公債を抱いて当初からスタートせざるを得ないだろう。その大きさは、なかなかまだ税制調査会での御審議のときにはわかっておりませんでした。最近におきましては、先日大臣がお答えしましたように、どうも七兆円より下回るというのは至難のわざであるという感じでございますから、それだけの大きな歳入の赤字を抱えた財政になる。したがって問題は、その景気刺激のために何かをやるとするときに、たとえば二千億であれ、五千億であれ、それを最も有効に景気刺激のために使うことを考えるべきだ。その意味で公共投資との比較論が出てきておるわけでございます。公共投資と減税とどっちがより効果的だろうか、景気刺激のために——という御議論になるわけでございます。その場合に、従来から申されておりますように、日本のいまの状況は、国民総支出の中の各需要項目を見ますと、個人消費というのは全体の伸び率よりも大きいわけです。財政も大きいわけです。たとえば、これまだ速報の姿でございますが、五十年の四月から六月は、国民総支出が名目で九%ベースでございます。個人消費は一六・八、政府固定資本形成は二三・〇、政府経常購入は二八・七というような姿になっておる。個人消費というのは、伸びが昔ほど出ないということは確かなんですが、需要項目の中では個人消費が落ちたために、全体の伸びが落ちているという姿ではない。もう少し個人消費を上げれば、それは全体の姿も上がるだろうという話であるという点が一つ。  もう一つは、景気刺激効果としまして、貯蓄率が限界的に非常に高い状況のとき、これはなかなか減税額がそのまま景気刺激効果としての需要造出額にならないということが言えるだろう。その場合、貯蓄率を見ますと、日本は二五・六でございまして、ドイツが一四・八でございまして、アメリカが八・一でございますが、したがってアメリカタイプであると、かなり効くのかもしれない。それじゃドイツは効いたんだろうかということで考えてみまして、ドイツの場合は、四十九年の終わりのところで減税がございましたが、減税後四十九年の後半から五十年の前半をながめますと、四半期別で貯蓄率は一五・五から一六・〇、一六・五、一七・〇と上がってきておるわけです。ドイツの場合には、所得税減税は、あれは予定のスケジュールでやった減税でございまして、景気刺激のためにやった減税ではございませんようですが、しかし、予定のスケジュールでやる減税が景気刺激に役に立つだろうという説明がしばしばなされておったのですが、結果的には、あの減税は景気刺激に効果はなかったという評価であると申し上げて差し支えないようでございます。したがって、日本とアメリカとドイツを三つ並べていろいろ議論をしてみると、どうも日本の場合は、個人所得税の減税よりは、同じ金を使うなら、つまり同じ金というのは、そういう金を用意すれば、それはそのまま国債増加につながるという現状でございますから、借金をして景気刺激をする。借金を二千億して景気刺激をするんなら、それは効果のいい方に使った方がいい、それは公共投資の方が効果がいいだろう、そういう御議論なんでございます。したがって、個人所得税の減税が全く役に立たないという御議論ではない、どっちがよりよく役に立つだろうかという御議論でございます。
  27. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  28. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記を起こして。
  29. 大塚喬

    ○大塚喬君 ただいま大臣、それから説明の方から所得減税についての反論をいただいたわけですが、しからばお尋ねをいたしますが、いま赤字国債の審議をしておる、そして来年度赤字国債三兆七千億、建設国債三兆五千億、合計約七兆二千億の国債発行する、これでいまのじり貧から脱出することができますか。それから継続的な赤字国債発行を五十一年度の七兆二千億円の国債発行で、いまの国債発行すればと、その方が効率的だと、こういうことで答弁をいただいたわけですが、これで赤字国債発行は五十一年度をもって打ち切ることができますか。そこのところをひとつもう一度はっきりお聞かせをいただきたいと思います。
  30. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 一両日の間に政府としては明年度経済見通しを立て、それに基づきまして予算の編成にかかるわけでございますが、ただいまわれわれの持っておる見通しといたしましては、明年度経済の実質成長は五、六%の水準で維持できるのではないかと、回復するのではないかということでございますが、その五、六%の成長を達成するには、これを支えている柱をいろいろ吟味しておるわけでございますけれども、われわれがいま作案しようといたしておりまする予算を通じて政府支出がどのように寄与するかという点を考えてみますと、政府支出による資本の形成は相当、十数%になることが期待できるわけでございまして、したがって、他の輸出や最終需要である国民の消費でございますとか、あるいは設備投資、在庫投資なんかいろいろ吟味をいたしておるところでございますけれども、総体といたしまして明るさを増す経済が期待できるのではないかと考えておるわけでございます。しからば、それの結果どういうような、それを土台にして明後年の経済がどのような展望になってまいりますか、要するに歳入がどれだけ期待できて、公債依存、公債がどの程度まで減額することができるかということのお尋ねでございますけれども、まだそこまで私どもの具体的な検討は進んでいないわけでございまして、いまの展望は、明年度経済見通しといたしまして、相当明るい希望が持てる状態になるのではないかと、またそうしなければならないし、またそうできるのではないかということで、いませっかく予算編成の用意をいたしておるところでございます。
  31. 大塚喬

    ○大塚喬君 どうも歯切れが悪いという率直な感じをぬぐえません。それで、いま私どもが審議をしておりますこの公債の論議は、公共投資を強化して景気の回復を図ろうと、こういう考え方が基本になっておると思うわけですが、総需要の喚起ということになって、これはまあ一般的にどなたがお考えいただいても、民間の需要を拡大する、それから民間設備投資を拡大する、輸出を拡大する、さらに公共事業と、まあこういう順序になるということは一般的にどなたもお考えいただいておると思うことであります。で、きょうも、後ほどこれは改めて触れたいわけですが、経済審議会の新経済五ヵ年計画の概要が発表になりました。これによれば、赤字国債発行しないで済むというのは実質成長年六%強が必要だと、こういうようなことが、木川田会長の——首相の諮問機関である経済審議会の答申の内容のようであります。私はどうしてもいまの答弁で、この国民的な要望の強い景気の回復ということが、公債発行して公共事業を拡大して、それで万事済むのかと、こういうことになれば——そして実質六%以上の成長が確保できるのか、それでなければ国債発行はどうしてもやめることができないということになれば、いまの大臣の答弁では、私はどうしてもこの審議に、国民の期待にこたえるような審議というものができないのではないか。実は私ども社会党は、この臨時国会が始まった当初、いまから三ヵ月前に、一人三万円の所得税の戻し税を提案をいたしました。大臣にどういう形でお耳に入っておるか存じませんが、ともかく景気回復ということの重点施策として個人消費を増加させる、こういう必要から三万円の戻し税の問題を提起をいたしたわけでございますが、果たしてこれで一体明年、明後年以降実質六%のそういう成長が確保できるものやら。  で、うわさによれば、大平大蔵大臣は自民党の一領袖、ナンバーワンかナンバーツーか、まあナンバースリー、恐らくまあその辺には入るだろうと思うわけでありますが、そこの力というのは、大蔵省の主税閥が中心になってかたまっておると、他の財界や他の派閥が減税ということで不況対策を進めることには大変警戒心を強めておって、大蔵大臣を擁護するために躍起になっておるんだと、まあこういうようなことを聞くわけでありますが、もしそうだとすれば、これは大変国家のために私は不幸なことであると、まあこういうことすら勘ぐらざるを得ないような気持ちでございます。不況対策、そして今後の日本経済の立て直しに大幅所得減税、このことを重ねて提唱しますとともに、これに関連をいたしまして、いわゆる雇用安定減税——いま御承知のように多くの企業が帰休政策というか、操業を休んで帰しておるわけであります。これらの問題について、大変このことが心理的にも実質的にも不況を深めておるそういう原因になっておるということも事実でありますし、さらに法人税の、いわゆる設備投資の減税の問題、こういう問題もこの大幅減税の際にはきわめて重要であろうと説く経済学者もございます。これらの問題等について、最後にもう一度ひとつ大蔵大臣から、減税政策というのは今後も日本政府としてはとる考えはないのか、もう国情発行政策一本でいくのか、そこらのところについてひとつ明確な答弁をいただきたいと思います。
  32. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) ただいまおっしゃいました中の雇用安定減税とおっしゃいましたところは、恐れ入りますが、もう少し詳しくお教えいただけますればお答えできると思いますが、その設備投資のための減税という議論は、これはございます。ございまして、御議論は、それがいま日本で効くだろうかと、つまり、設備を買ったら税金をまけてあげますということにすると皆さんがこれでは買いましょうということでどんどん機械を買うだろうかと、買ってくれればそれは確かに効くだろう、どうもいまの状態は、いま持っている機械がなかなか一〇〇%動かぬという状態なので、まず需要をつけていまの操業度、よく言われます操業率を上がってこさして、その上でないと、いまの局面では何かやったから機械をどんどん買うというわけにはどうもまいるまいという御議論でございます。もちろん、将来の問題としましては、それは景気調整のための税制として、不況時の税額控除、そのかわり好況時の投資税、これを両方かみ合わして考えるということは、これはやらなくちゃいかぬのかもしれない。ただその場合は、機動的に発動するためには、国会が租税法定主義の枠の中で一体どういうふうに政府に授権してくださるか、どういう条件があれば授権がいただけるのかということを一緒に考えないと、完全にフリーハンドで政府の判断で上げ下げしますというのは恐らくお認めいただけないんではなかろうかという議論をいまいたしております。
  33. 大塚喬

    ○大塚喬君 いまの雇用安定減税、誤解があるといけませんので、重ねてお断りをいたしておきますが、私の申し上げておりますのは、大型所得減税ということが中心で、減税政策をとれという学者の中に、雇用安定減税、それから法人税の新しい設備投資について減税を図れと、こういう論議もあるものですから、あわせてその問題についての大臣のお答えをお願いいたしたわけです。  で、先ほど雇用安定減税ということは、御承知のように、日本の雇用制度というのは終身雇用という形で、いま各企業が一時帰休制というのをとっておるわけです。しかし、現実に企業では、それらの職員に対して給与を支払っておる。一年間に限ってその支払った分の、一年間の給与の四分の一程度を減税措置を図れと、このことが、最近新聞や何かにも主張しておる学者がございます。そういうことが——やっぱり、減税ということをあわせ考えながら、その景気回復を図れという論文があったものですから、所得大幅減税ということを中心にして、あわせてそれらの問題について大臣の見解をお尋ねしたいと、こういうわけです。
  34. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 所得税の大幅減税につきましては、大臣から再度お答えがあるのかもしれませんが、いまおっしゃいましたような御趣旨の雇用安定のための減税ということでございますると、いま伺ったばかりでございますが、私の頭の中ですぐ出てきます姿は、これは法人税の減税、つまり、雇っている企業の方に減税をしてあげてということではないのかなという気がいたしますが、もう少し勉強させていただきたいと思います。
  35. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 将来の減税政策でございますが、将来の減税政策の青写真をいま私ども持っておるわけじゃございません。ただ、経済が着実に発展してまいりまして、減税をいたしましても、所要の財源が確保できるということになることはもとよりわれわれの望むところでございます。しかし、これまでの経験から申しまして、政府予算というものが年々歳々拡大してまいる傾向を持っておりまして、不景気になれば歳出を思い切り下げることができるという性質のものではないと思うのでございます。政府の中央、地方を通じての機能がますます多岐にわたってまいりますので、財政需要というのはますます大きくなってくるんじゃないかと思いますので、経済が非常に、それ以上に順調な発展を遂げて、減税をいたしましても巨額の財政需要が確保できるという事態は、望ましいことでございますけれども、なかなか困難なことでなかろうかと思います。したがって問題は、税制改正に当たりまして、どういう税を選択していくかと、直間の比率をどうするかとか、中央、地方をどうするかとかいうような意味の税制の内部にわたりまして精細な検討、吟味が行われて、税収全体といたしましてはなかなかこれを減らすというようなことはむずかしいと思いますけれども、税制自体は社会経済の変化に即応してできるだけ合理的なものにするような努力は政府としていたさなければならないものと思います。
  36. 大塚喬

    ○大塚喬君 論議がどうもかみ合いませんで、大変残念に思いますが、私は重ねて、この事態に至って景気回復、その抜本的な対策というのは減税対策を考慮せずに実現できないと、こういう感じを強くいたすものでございます。大型所得減税を重ねて提唱し、今後これらの問題について十分な検討をいただくことを強く要請をしてこの問題から次の質問に移らしていただきます。  で、それは前々回の大蔵委員会でお願いをいたしましたいわゆる国債の償還計画表についてお尋ねをいたします。  これに絡んで一、二のお尋ねをいたしますが、建設国債、これは耐用年数を勘案して六十年間に完全償還をすると、こういうものは、負担を託された後世代の人も公共あるいは公共財を利用する機会も当然与えられるわけですから、それらの理屈については私も私なりに受けとめて了解をする、理解を示すことができるわけであります。ところが赤字国債については、それが今年度あるいは明年度消費的な支出に使われてしまう、こういうところから後世代にツケを回して元本とその金利支払いを任せると、こういうことになりますと、やっぱり、前回お話しいたしましたように、償還計画の明細を明らかにして、その中で国民も納得してもらい、この本委員会、本院においても、これらの十分な理解と納得の上に、これらの審議を議了するのが当然の責務であろうと考えるものであります。で、この償還計画については具体的にどういうものが大蔵省から用意をされたのか、ひとつこれを出していただいて、これに基づいて若干の質問をいたしたいと思うわけでございます。
  37. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 償還計画につきましては、この間の委員会におきまして申し上げておりましたとおり、今度御承認を得ますれば発行いたしたいと考えておりまする国債は十年満期の国債でございまして、その国債を分割発行するのではなくて、一括して発行しようといたしているわけでございますので、十年たちました昭和六十年度に全額を一括して償還するという計画でございますという以外に申し上げようがないわけでございます。  問題は、その償還計画を実行いたすにつきまして、その償還財源の用意をどのように展望しておるかということがいま大塚さんの言われた御質問だと思うのでございます。これに対しまして具体的な計画を示せという御要求でございましたけれども政府といたしましてまだ具体的な計画をお示しする用意が残念ながらございません。私がかねがね申し上げておりまするように、これからの十年間の財政の展望を数字的に確定いたしまして、そのうちでこれだけのお金を償還計画として国債整理基金特別会計に積み立ててまいりますということをいたすことは至難のわざでございますので、政府が国会に対してお答え申し上げておりまするものは次のとおりでございます。  すなわち第一は、この償還財源につきましては減債制度の基本にございまする四条公債にも適用されておりまする定率繰り入れの百分の一・六はそのままこの公債にも適用いたします。  それから第二は、この特例債を発行いたしておる間は前年度の剰余金は全額整理基金特別会計に繰り入れることにいたしますということでございます。四条公債の場合は半分以上でございますけれども、それを全額にいたしますということでございます。  それから第三は、必要に応じて予算繰り入れをいたしますということを申し上げております。さらに、この公債の償還につきましては借りかえによって得た財源でこれを償還するということはいたしませんということを申し上げておるわけでございます。  この四つの原則を基本にいたしまして、私ども財政運営の基本にそれを据えて、これが六十年度に支障なく完済される状況をつくり出さなければならぬわけでございますので、そういう決意でこの問題に当たるわけでございますということを御説明申し上げて御理解を得たいと存じておるわけでございます。  ところが、仰せのとおり、確かにこれは年次別に財源をどのように積み立ててまいりますかということに対する数字的な答えにはなっていないわけでございます。私はそれに対して、公債発行とか社債の発行とか、金融債の発行とかいう場合は、そういうことで必要で十分ではないでしょうかということをあわせて申し上げたわけでございます。しかし、国会はそういう技術的な問題以外に、わが国の財政の将来のあり方について御心配をいただいておるわけでございまするし、また、それに対して政府も誠心誠意解明して、国会に責任を持つ政府といたしましては解明に努力しなければならぬことは当然でございますので、償還財源の具体的な積み立てということに直截簡明にお答えすることは至難のわざでございますけれども、今後中期的に日本財政がどういう展望になるだろうかと、いろんな想定を置いた上で、いろんな試算を試みてみるということはやらなければならぬことで、一部、ごくきわめてラフなことはいたしておるわけでございますけれども、もっと精細なものをできるだけつくり上げてみて、御審議に供さなければならぬと考えておりますが、それをするには、相当の時間の余裕をかしていただきたいということを重ねてお願いいたしておるのが、今日の時点における政府立場でございます。
  38. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時十一分開会
  39. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  昭和五十年度公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  40. 大塚喬

    ○大塚喬君 先ほど午前の質問の最後に、償還計画について大臣の答弁がございました。それでどうも納得できませんし、私どもも単に大蔵当局、大蔵大臣を責める、こういうだけで質問をいたしておるのではございません。率直に申し上げて、大蔵大臣は借りる人、私ども国民は貸す方の人ですね。で、いま現在、大蔵大臣、国の借金は、この審議が終われば、十六兆五百二十九億円の国債を持っておるわけです。そして伝えられるところでは、間違いなくそうだと思いますが、七兆二千億円のまた国債をしょい込む。こういうことで、昭和五十五年には六十兆円も七十兆円も国債がたまる。先ほど大臣が答弁いただいたことは、一・六の定率繰り入れはやります、剰余金の二分の一繰り入れは当分やりません、予算繰り入れはやりますと、こういうことで、昭和六十年度に借りかえはいたしませんと、こういうことですが、一体貸す方の立場に立って——いま現在多額の負債を背負っておる。これは個人の例にしてもそうだと思うんです。それで心配ないから、六十年には間違いなく返すから、信用して貸してくれ、国債発行を認めてくれと、こう言われても、それは財源を毎年毎年準備をして、国民に、なるほどこういうことがあるならば——それもやらないと、こういうわけですし、そうなってくると、昭和六十年度、この赤字国債が償還期を迎えたときには、大増税をやるか、あるいは新税を設けるか、あるいは借りかえをやらないと言っても、借りかえをするか、それ以外の方法はないんじゃないですか。私は単にいやがらせで言っておるわけではありません。本当にこれから先膨大な赤字国債発行が継続をされて累積がされていく際に、大臣のそういう答弁だけで、国家の信用があるんだから任せなさい、この法案を通しなさいと、こう言われても、これはやっぱり私どもの責任としては、そういう安易なことでこの国債発行特例を認めるということにはいかないと思うんです。  それからもう一つは、実質成長六%強というようなこと。それでも現実にはこの国債支払いは不可能だと言われているわけでしょう、高度成長ということを認めないと言われておるわけでしょう。そういうときに、いまの大臣の答弁では、償還計画についてはどうもやっぱりいやがらせでなくて私は心配でたまりません。ですから、大増税をやって償還を実現するのか、新税をそれまでの間に創設をして払うのか、そこらのところも含めて、ひとつ大臣の答弁を重ねてお願いをいたします。
  41. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) この前から御答弁申し上げておりますことは、政府の債務でございますので、六十年にはこの償還は法律上の義務として政府がやらなければならぬことでございます。やらないということは、できないというようなことはないのでございまして、どんなことがあってもやらなければならぬという至上命令なんでございます。日本国がある限り心配はないと御承知いただいて間違いないと思います。ただその場合に、それではその償還財源がどういう方法で調弁されるであろうかということでございますが、これは財政運営全体でこたえなければならぬと思います。償還ができる状態政府としてやらなければならぬ責任があるわけでございまして、財政運営がうまくいきませんで償還いたしませんというわけにいかないわけでございます。しかも政府は、借りかえいたしませんということを国会にお約束を申し上げておるわけでございます。ですから、そのことをやらなければいかぬわけでございますが、それではどういう方法においてやるかというと、まず経済が順調に回復いたしまして、豊富な財源が将来確保される、これは増税をやらなくても、また歳出の削減、節減を考えなくても、そういう場合にはできるはずだと思うのでございます。そういう状態が完全には実現しなくて、歳出の節減というものを相当思い切ってやらなければならぬ場合もあるかもしれませんし、またあなたが言われるように、歳入の増強を、税金の増税であれ、その他税外収入の増額であれ、いずれにいたしましても、そういう歳入の増加によって確保するか、またそういった手段の組み合わせを——いろいろな組み合わせの仕方があると思いますけれども、どういう組み合わせになりますか、そのときの財政運営の実態が決定していくと思いますけれども、いずれにいたしましても、そういう方法の組み合わせによりまして政府の義務は果たさなければならぬわけでございます。果たさないということは絶対にできないことでございます。
  42. 大塚喬

    ○大塚喬君 ここで審議をする場合に、私どもはどうしても後世代に責任を果たさないでこの審議が刻々終了に近づくことを非常に残念に思っておるわけです。この問題はごく近日中に五十一年度予算が決まる。その中でも特例法が提案をされる、こういうことでございますので、引き続きもし機会がございましたら、ひとつそれらの問題を重ねてやっぱりとことんまで追及をいたしたいと考えるわけですが、質問の項目が十幾つかあるものですから、三番目の質問にひとつ入らせていただきます。  いま不況によって所得税、法人税が大幅な減収を来し、今年度も二兆二千九百億円、来年度も三兆七千億の赤字国債発行を余儀なくされる、大幅な歳入欠陥ができておるわけでございますが、この問題に関連をして、当然税の不公正是正という問題と、それから歳出についても、その歳出の妥当性、効率性、こういうふうな問題について一回徹底的に洗い直しをすべき段階に来ておるものと考えるわけでございます。  その一つとして、歳出の問題について申し上げますと、まず第一番に、いろいろいままでも指摘がございますが、補助金の洗い直しの問題が大変重要な問題であろうと考えるわけでございます。去る十六日の日経新聞によりますと、自民党の行財政改革特別委員会の「特殊法人等並びに補助金整理小委員会」、小委員長は参議院議員の玉置和郎氏のようでございますが、思い切った改革案を発表なされております。特殊法人を統廃合し、三ヵ年間の計画で三兆円以上を節減する、こういう厳しい内容を明らかにいたしております。私もこれについては大変勇気ある行為であり、高く評価をいたすものでございます。大蔵大臣もこの内容についてはごらんいただき、御承知を願っておると思うわけですが、この問題について大蔵大臣はどのようにお考えでございますか。五十一年度予算編成に当たって、この自民党のいわゆる小委員会の補助金洗い直しの提案についてどのような態度で臨まれておるか、お伺いをいたしたいと存じます。
  43. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 近く政府として予算編成方針を閣議で決めまして、予算の編成に取りかかるわけでございますが、補助金整理につきましては、毎々その合理化につきまして政府として努力をしてきておりますけれども、ことしは御案内のように財政制度審議会からも御答申がございまして、補助金につきましては、その本来の機能が十分果たされていないと認められるもの、少額でございますとか、時代に合わなくなったもの、そういったものを見直して合理化を図るようにという御答申をちょうだいいたしております。これは御答申をいただかなくても毎年政府予算編成に当たりまして、その方針で補助金の整理に努力をいたしておるわけでございます。けれども、一面、また新しい政策需要から申しまして新しい補助金、補助制度、助成の制度等を設けられることがございまして、なかなか後を絶ちませんが、全体としての傾向を見ますと、逐次ふえてきている傾向が看取されるのでございます。そこでもう一度ここで根本的に洗い直して補助金の合理化に努めて歳出の節減に努めなければならぬという方針を確認いたしまして、厳しい態度で来年の予算に取り組みたいと考えております。  特殊法人——公団、公社、事業団等特殊法人の問題でございますけれども、これは毎年ずっと御案内のように新設をまず抑制するということをやってまいったわけでございまして、これは特別会計も含めましてそうでございますけれども、新しくこれをつくるということを極力抑えてまいりまして、もしつくるとすればスクラップ・アンド・ビルドで既存のものを改組するという姿においてやれないかという相談もしてまいりまして、ここ数年そんなに数はふえていないわけでございます。ことしも来年度、五十一年度予算編成に当たりましても、編成方針の中にそのことをうたって厳正に対処するつもりでございますが、さらにこれに積極的に統廃合するということでございますが、そのことは大塚さんのおっしゃるように、確かに勇気ある御提言であると敬意を表するものでございますし、私どももそういうことが行政機能を損なうことなくできますことを期待するものでございますが、よく要求の実態を見まして、できるだけ可能なものはそのような方向で査定に臨みたいものと思っております。
  44. 大塚喬

    ○大塚喬君 この報告によれば、一つは「廃止対象法人」、それから二つは、「民間移行の対象法人」、それから三つ目には、「統合対象法人」、それから四つ目には、「統廃合または政府資金返還の検討対象法人」と四つに分けられております。こういう時期ですから、この問題も五十一年度予算編成の段階できわめて重要な問題であり、真剣に解決のために取り組まなければならないと思うわけであります。  それで、ひとつお伺いをいたしますが、この報告の中には廃止対象法人として京浜外貿埠頭公団、それから阪神外貿埠頭公団、電力用炭販売株式会社、日本硫安輸出株式会社、日本航空機製造株式会社、八郎潟新農村建設事業団、このものが挙げられてございます。この廃止対象法人として自民党の機関から挙げられたそれぞれの法人、これの現在の事業活動の内容について概要お聞かせをいただきたいと思います。
  45. 田中敬

    政府委員(田中敬君) ただいま御披露いただきました廃止対象法人、あるいは整理統合すべき法人という各法人の個別の表というものは、私どもはまだ正式に党の委員会から政府としてはお示しいただいておりません。御報告の本文の方にもそういうことを検討すべきであるということで、その対象はこれこれであるという御決定はいただいておらないものというのが現状と認識いたしております。したがいまして、先生のおっしゃいましたいまの埠頭公団でございますとか、八郎潟公団、それぞれの公団の現実の事業というものにつきましては、私ども予算面で承知している範囲のことはございますけれども、ただいま御指摘になりました法人が廃止対象法人であるという認識にはまだ政府は至っておらないのが現状でございます。
  46. 大塚喬

    ○大塚喬君 その自民党の方からその法人の名簿は受け取っておらないと、こういうことでありますが、予算支出をする際に、主計担当の大蔵当局としては本年度の事業計画、そういうものは当然その該当の法人から提出を受けて予算支出をなさっておるものと思うわけです。で、四十九年度、それから五十年度の事業計画の内容、これを概要で結構ですから、本委員会質疑の間に、ひとつ早急にこの資料の提出をお願いをいたしたいと思います。  それと、問題はこれらの特殊法人というものの性格が高級官僚の天下り先確保、こういうことで、文部、建設、商工、農林、あるいは通産、労働と、こういうような各省にまたがってこういう法人が外郭団体として存在をしておるということも承知をいたしておるわけでございます。いま申し上げました六つの特殊法人についてでございますが、総裁とか理事長とか、これの、特殊法人の役員の前歴も、あわせてひとつ、この委員会の私の質疑の間に至急に作成をして提出をいただきますようにお願いをいたします。  委員長、ひとつ計らってください。
  47. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  48. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記起こして。
  49. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 私ども御指摘の法人名をただいまお聞きしたばかりでございますので、先生からいま御指定の法人名を承りまして至急資料の調製はいたしたいと存じます。ただ後段の御質問の資料の中身でございます各法人の役員の前歴等につきましては、大蔵省として把握してないものが大多数でございますので、これを調べますには若干の時間がかかりますので、事業計画等につきましてはあと一時間半程度あれば御提出できると存じますが、役員の前歴等につきましては、御提出はいたしますが、時間の方は大蔵省だけでできない問題でございますので若干の時間の御猶予をいただきたいと思います。
  50. 大塚喬

    ○大塚喬君 急がして恐縮ですけれども、たった六つの法人ですので、総裁とか理事長とか副総裁とか、こういう限られた内容のものですので、若干の時間があれば御協力をいただいて提出いただけるものではないかと、こう考えるわけです。最大の、ひとつ努力を払って提出をいただきますように重ねて要請を申し上げます。  それから、いまのいわゆる特殊法人の問題に関連をして、大蔵大臣に次のことをお伺いをいたします。  先ごろから地方公務員の給与水準が高いということで、特にさきの地方統一選挙等に関連をして、自民党、政府部内からこのことが強く宣伝をされてまいりました。そのために、現在地方の財政危機ということで、今回のベースアップ等も極端に抑圧される、そういう傾向が出ておるわけでございますが、私は、これに対して、この特殊法人の場合は国家公務員の給与水準よりも約三割高いということが定評でございますね。これは、この特殊法人については国家公務員の給与よりも三割高というのが一般に言われておるわけであります。で、このような特殊法人の、まあ、言われておるだけでございますので、事実のところを確かめたいわけですが、この給与水準は現在どのようになっておるのか。これは予算を査定される担当の方、当然その審査の場合に、査定の場合に、これらのことについても御承知願っておると思いますので、大臣から、その三割高という問題の事実か否かですね。それから具体的には、その他の関係者から給与水準の実態について明らかにしていただきたいと思います。
  51. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 御質問のように、一般的に特殊法人の役員あるいは職員の給与につきましては、普通公務員よりもやや高目であるということは事実でございますが、先生のおっしゃいますように、三割もの格差があるとは承知いたしておりません。私ども承知いたしておりますのは、普通職員におきましては約一〇%——約一割見当のところであろうかと存じます。詳細の水準につきましては、いま私の手元に資料がございませんので、これは御必要であれば資料を取り寄せた上で詳しくお答え申し上げたいと思います。
  52. 大塚喬

    ○大塚喬君 私が指摘をしたいのは、財政難という折に、いたずらに地方公務員の給与が高いと、若干、七%、八%高いというような地方団体もあろうかと思います。しかし、いま一〇%というようなお話をいただきましたが、現実に私どもが、知り合いの人でこういう関係に勤めておる方は公務員よりも三割高だと、こういうことはもう定評でございます。三割ということの中には、あるいはそれに近いところの数字もあろうかと思いますが、大体そういう内容でございます。そういう事実関係を、ひとつこの補助金の問題を検討する際に、その事実をひとつ具体的に明らかにいたしたいと思っておるものですから、これも、この席には間に合わないにしても、役職員のあれやなんかについてはもうわかるわけですから、総裁とか理事長とかの給与に関しては、ひとつ早急にお調べをいただいて、提出をお願いいたします。  それから次に、五十年度の補助金等を調べてみますと、六兆八千億円と言われておるわけでございます。この数字は間違いございませんでしょうね。
  53. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 間違いございません。
  54. 大塚喬

    ○大塚喬君 で、そのうち法律補助が六兆二千億円、予算補助が六千億円と。で、このうち法律補助のものを整理することは法改正を伴うのでむずかしいと、こういうことを聞くわけでございますが、大蔵主計局から出版をされております「補助金便覧」を見ますと、昭和二十一年度から計上をされておる、きわめて古いものもございます。こういうものはすでにそれぞれの省庁あるいは特殊法人、こういうものはすでに既得権化し、それが今度の予算の場合に一律二二%増しと、こういうような予算編成の仕方ではこれらの団体の補助金、こういうふうなものも当然それに伴って一三%増というようなそういう計らいをされることは私は大変困ったことであり、そういう問題についてはこの際ぜひ検討し直すべき問題であろうと、こう考えるわけでございます。  私は、この五十一年度予算編成に当たってこの必要性、その可否の問題、こういうふうな問題についてたくさんありますが、統廃合を要する、あるいは廃止を要する、あるいは民間移行、こういうふうないろいろの特殊法人について当然検討が行われたものと思うわけでありますが、この予算編成の過程における大蔵省の努力というものについてどういうふうな作業をされてきたのか、お伺いをいたしたいと思います。  それから、補助金額を膨張させるということには大変厳しい私ども関心を持っておるわけでありますが、来年度予算編成に当たって大蔵大臣としてどういう基本姿勢でこれらの問題に取り組んでこられたかもひとつあわせて御答弁をいただきたいと思います。
  55. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 補助金の総額につきましては御指摘のとおり約六兆八千億円でございますが、御指摘もありましたように、法律補助金が大部分でございます。特に大きなものといたしましては、この六兆八千億の中には義務教育国庫負担金でございますとか、あるいは公共事業費に関する補助金でございますとか、あるいは生活保護あるいは社会福祉関係の法人等の補助というようなものがございます。  私どもが問題といたしております補助金と申しますものは、いわゆる予算の奨励的な意味での補助金、これらにつきましては、すでに補助金を創立いたしました当時との経済情勢の変化あるいは社会情勢の変化等に伴いまして現在の事情にそぐわないもの、あるいはすでに効果を上げて惰性としてついておるもの、あるいはまた非常に零細であって意味のないものというようなものが今回私どもが最も整理の対象として考えている補助金でございまして、これらにつきましてどの補助金をどういうふうにして倒すということにつきましては、まだ予算の編成過程中でございますし、外部に発表する事態ではございませんけれども、相当個別の補助金に当たってまいりますと、それぞれ歴史的に個別の理由なり、原因を持っておりますので、ある意味で零細補助金あるいは年数を経過したものというようなものにつきましては、何らかこれを一律という形で整理をしてまいりたいということで、補助金の整理には異常な熱意を持って現在予算の編成を進めております。ただ、補助金の総額がそれによって減りますかと申しますと、義務教育の国庫負担金でございますとか、あるいは公共事業費が予算で対前年度ふえるというようなことになりますと、補助金の総額自体はふえざるを得ないと存じます。中身といたしまして、そういう意味のない補助金がどれだけ整理できたかということが予算編成の中身の問題として大事なことであろうと存じております。
  56. 大塚喬

    ○大塚喬君 大臣に重ねてお尋ねいたしますが、この補助金整理の問題について、自民党からもせっかく具体的なこういうことでそれぞれの法人名を挙げて指摘をされました。これに取り組む大臣の覚悟というものを、ひとつ私はこの際ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  57. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 必要あってつくられた制度でございますから、めった切りにしてまいるというわけにはまいりませんけれども、いま主計局の方から申し上げましたような趣旨で厳しく見直してまいりまして、整理すべきものは勇気を持って整理するということで臨んで御期待にこたえなけりゃならぬと思っております。
  58. 大塚喬

    ○大塚喬君 せっかくの機会でございますので、ひとつこの問題については本腰を入れて、国民の納得いくような——で、後でひとつ先ほどの資料が出していただいたら、若干のこれに伴う質問をいたしたいと思いますので、一応委員長にもお含みを願って、これの再質問をひとつ計らっていただけますようにお願いをいたします。  それからもう一つは、財源確保の問題で租税特別措置の洗い直しという問題が大変重要な問題であろうと考えるわけでございます。先般、先月の二十八日でありますが、自民党政調会に対して、税制調査会に対して租税特別措置の廃止、縮小の具体案を提示をされたと、こういう新聞報道がございましたが、五十一年度税制改革において実施する見込みのもの、現在どのような大蔵省としての態度でおりますか。けさの新聞にもちょっと出たようでありますが、改めてひとつこの問題について大蔵省から租税特別措置の取り扱いの問題について、五十一年度どうするのかお聞かせをいただきたいと思います。
  59. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) かねて大臣からお答え申し上げておりますように、五十一年度の税制改正の重点項目としまして、たしか九月、あるいは十月であったかもしれませんが、非常に早い時期から税制調査会に租税特別措置の全面的な見直しをお願いいたしております。  税制調査会では何回か御論議をいただきまして、いわば一つの基本的な方針のようなものをほぼお決めになりました。この方針に基づいてひとつ関係事務当局が具体的にやってみろ、一つ一つは非常に技術的であり、専門的でございますから、税制調査会自身がおやりになるわけではなくて、方針を示すからそれで関係事務当局でやってみろと、どの程度五十一年度にやれるのか、それを報告してくれ、こういうことで進んでおるわけでございます。  本日三時から臨時小委員会、四時から総会でございますが、そこに私どもが御報告をいたします。具体的に五十一年度はここまで整理縮減いたしますということを御報告いたします。その結果につきまして御議論をいただくなり、御質問いただくなり、あるいは評価していただくなり、そういうことを経まして答申が出る。その答申には政府から、事務当局から、税制調査会に言われて作業をして、五十一年度にここまでやりますと、やりたいと思いますという結果の報告を受けた、それを、これは答申ではないんですが、答申の別紙につけましょうというような形になるわけでございます。  したがいまして、まだ臨時小委員会、総会が始まっておりませんので、いま私の方から非常に具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいんでございますが、大体の感じを申し上げますと、廃止する措置が、外貨建て債権を有します際の準備金でございますとか、新技術企業化用機械設備の特別償却でございますとかいうもので、あるいは十一項目御報告することになると思います。  それから税額控除、所得控除につきましては、これはそもそも三、四項目しかないのでございます、そういうやり方の特別措置というのは。法人関係ではそのくらいしかないんですが、これはいずれも廃止ではございませんが、控除率を引き下げたいという御報告をするつもりでございます。三項目、わりあい世間の注目を引いておりますものとしましては、増加試験研究閥の税額控除、技術等海外取引にかかる所得の特別控除、いずれも縮減対象でございます。  それから、特別償却、割り増し償却につきましては、大体いまございますものの三分の一という償却率になっておりますものは四分の一に引き下げる、四分の一になっておるものは五分の一に引き下げるというようなことで、三十項目余り御報告ができると思います。  それから準備金でございますが、準備金が全部で三十ぐらいはあると思いますけれども、今回は繰り入れ率の引き下げという縮減をいたしたいということで、十五項目ぐらい引き下げができると思います。  そのほかに登録免許税関係に七、八項目、これは特別の低い税率を特別措置法で決めておりますものを若干ほかとのバランス考えながら軽減は残すけれども率を上げるというようなやり方で縮減、合理化をやってまいりたいということを考えております。いずれにいたしましても、これは御答申に報告いたしました上で、その評価をいただいて、これでいいとか悪いとかいう評価をいただいて、それで答申に織り込まれて、それを受けとめまして、私どもの方で明日の大蔵原案のときに政府の税制改正大綱に書き込んで、閣議の方にお出しするという手続になりますので、明日のある時間、政府の税制改正大綱として公表するという性質のものでございますので、詳細につきましては、いま私がお答えいたしました程度できょうは御了承いただきたい、明日ある時間に大蔵原案と同時に具体的に発表いたします。
  60. 大塚喬

    ○大塚喬君 いま答弁いただいて、本日の段階でと、こういうお話がございました。しかし、具体的に租税特別措置の廃止十一項目というお答えがあったわけですが、この十一項目については二つほどの説明ではなしに、一応何と何と何ということで、この廃止の十一項目については明らかにしてほしいと思います。  それから、具体的に来年度所得減税が行われないといういま情勢であります。そうなりますと、この租税特別措置というものが不公正是正の見本だと、こう言われておるわけですので、これらの問題についてはひとつどうなんだという幾つかの具体的な質問がございます。微調整増税ということで、自動車税の増税を実現すると、こういうことがひとつ税調の方で考えておられるようですし、医師課税の問題はどんなふうにお考えになっておるのか、そこのところもひとつこの際お聞かせをいただきたいと思います。
  61. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 廃止の十一項目、まずそこでございますが、これは私がいま申し上げたもの以外は非常に、何と申しますか、期限が来たのでやめるというようなものとか、あるいは項目としての中身と申しますか、減収額がさほど大きいものでございませんので、取り立てて申し上げなかったわけでございます。全部を申し上げるのは、先ほど申し上げたような事情でございますので、ちょっといまは勘弁さしていただきたい。たとえば期限が来たからやめますというのは、たとえば沖繩国際海洋博覧会出展準備金、これは沖繩海洋博がなくなるわけですから、これは準備金がなくなるというようなことでございます。  それから、医師課税の問題につきましては、税制調査会で従来の御審議で、昭和五十年度の改正について、社会保険医療との関連も考えながらかなり前進的な答申を出した、ところがそれが実現されていない、遺憾である、五十一年度税制改正では、特別措置の全面見直しをするという時期なんだから、少なくとも前回の答申ぐらいのことはぜひやらないと政府の姿勢が疑われるぞ、早急に具体的なことをやりなさいという御趣旨の答申をきょう受け取ることになろうと思います。
  62. 大塚喬

    ○大塚喬君 その後が聞きたいのです。その後をいま私は質問しているのです。
  63. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 前回の御答申をいただきました後、昭和五十年度の税制改正の要綱——これは要綱と申しますのは閣議決定を経るものでございますが、——におきましては、社会保険診療報酬課税の特例については、次回診療報酬の改訂と同時に実施するということが決定になっております。したがいまして、政府としての現在の基本方針は、いまの閣議決定に示されておる。今回改めていままで実現しないのは遺憾だ、何かの具体的措置をとれという御答申をきょういただくということになりますれば、これを受けまして、政府が五十一年度の税制改正要綱を閣議決定いたしますときに、どういう決定をしていただくかというのはこれからの問題でございますが、前回の決定の御趣旨から考えますれば、それ以後今日まで診療報酬の改訂はございません。これからいつごろ診療報酬の改訂があるのか、それも、どうもこれはまた新聞によればということになってしまうのですが、なかなかこれ、年内には中医協が再開できないということをきのうあたり聞きましたのですが、したがって診療報酬の改訂そのものがもう少し、言われておるよりも先に延びるのかどうか、私直接の担当でございませんのでよくは存じませんが、いずれにしても、診療報酬改訂のことを頭に置きながら、税制改正要綱を五十一年度について閣議で決定していただくときに、何らかの御判断が出てくるというように私は考えております。
  64. 大塚喬

    ○大塚喬君 大臣から、税調の答申を受け取ってどうなさるお考えか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  65. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) これはせっかく権威者によりまして長い期間をかけて精力的に御討議をいただいたものでございまして、私どもはこれを尊重いたしまして、明年度の税制改正に具体化すべく所要の手順を進めてまいりたいと思います。
  66. 大塚喬

    ○大塚喬君 次にひとつ進ませていただきます。   〔委員長退席、理事吉田実君着席〕  いまのいわゆる税の不公正是正という問題ですが、三木内閣になって不公正是正というのを何やったと言ったら、結局手の内あなた見せなさいと言うたら何にもないということになるんじゃないですか。私はそういう受けとめ方をしておるわけです。  そこで具体的に質問をいたしますが、資産性所得と勤労性所得の税負担のあり方、これは前、中橋主税局長との間に論議を何度か重ねてきたところでございますが、配当のみで生活をしておる夫婦子供二人、四人家族の場合に、現在の課税最低限が四百八万円、給与所得者のそれは百八十三万円であります。これについての考え方、配当所得控除が、法人税負担のあり方から、二重課税を回避するためにこうなるのだ、こういういままでの答弁があったことを承知しておるわけですが、これをやっぱりこの際、このような赤字国債発行するときですから、当然財源について税の不公正、こういうことで論議の一番焦点になっておりますこの問題について当然再検討すべき段階にきておるものと考えるわけでございますが、この点について何らか是正をする、そういうお考えがあるかどうか、あるとすれば、具体的にこれを一〇%なり一五%なり削減をする、こういうようなお考えがあるのかないのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  67. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) お示しの数字の夫婦子二人の場合の四百四万九千円、これに対して事業所得者であれば、あるいは給与所得者であれば、それなりの税を、所得税を負担しておられる、はなはだしく不公平ではないかという前々からの御議論でございます。これに対しまして、これはいや法律ですでに法人段階で二百二十万円、住民税入れれば二百六十万円、税を負担しているんだから、そのことを考えれば不公平なものではないんだという議論、これもよく御承知のとおりだと思います。従来から配当控除と、それから法人の受け取り配当が法人税がかからないという問題と、それから法人のもうけの中で、配当に回す分の税率が、留保する分の税率よりも低いという、いわゆる配当軽課という問題と、それぞれこれは不公平であるという御指摘がなされてきております。これに対して、いやそれは不公平なものではなくて、所得税と法人税というものを、同じ所得に二度全然別々にかけていいのかどうか、違う場所で二度かけるとすれば、その間の二重課税を調整しなくてはいけないのではないかという制度の問題なんで、これは特別措置というか、企業優遇とか資産優遇とか、そういうものではないんだ、これはどういう法人税と所得税を持つかという話なんだという角度からの反論と、両方あるわけです。で、税制調査会での全面見直しの御審議に際しましては、私どもはとにかくこちらが勝手に決めちゃうんじゃなくて、いままで国会を初めとして新聞その他を全部当たってみて、これは不公平じゃないかと言われたものを全部まず拾い上げましてお示しする。理屈を言わないで、言われたことがあるということで全部拾い上げる。その上で今回の見直しの対象を分類していくという作業をなさったわけです。  その分類作業の過程で政策税制、これちょっと新しい言葉でございますが、議論が混乱するからひとつ新しい言葉を使おうということで政策税制というものと、政策税制以外のものとに振り分けをなさいました。そのときに、ただいまの御質問の配当控除というのは、これは政策税制以外のものとして扱うということになりました。で、政策税制以外のものにつきましては、もちろんそのままたな上げにするということではないけれども、五十一年度の税制改正では、政策税制の方を取り上げて精力的にやりましょう、政策税制以外のものは今後引き続き、政策税制を整理、合理化するというのとはおのずから違う角度で議論を続けましょうという結論になっております。したがいまして、五十一年度税制改正では、従来不公平であると言われたことは事実あり、しかし、それに対する反論もあるというものとして、法人税の基本的な仕組みに関する制度、逆の言葉で言えば、法人税と所得税の二重課税を調整すべきか否かという税の理論の問題として引き続き検討しよう、したがって、政策税制以外のものとして取り扱うから、今後別の角度で検討するという御答申が本日出ると思います。その意味で、五十一年度改正では具体的に取り上げることにならないと思います。
  68. 大塚喬

    ○大塚喬君 勤労所得と資産性所得とが、先ほど申し上げたように四百八万、それから百八十三万という、こういう大きな差がついているのは、やっぱり私は不公正税制の最も最たるものである、こう考えておるわけでございます。この問題については、ひとつ今後も重ねてこれの公正を確保するための努力を重ねたいと思うわけですが、もう一点、これと同様な趣旨でお尋ねをいたしたいことがあります。  そればマル優、少額貯蓄、これは現行三百万円までは無税でありますね、それと郵便貯蓄、これも三百万円までは無税、それから別枠少額国債の利子、これも非課税で三百万円までは課税対象から外されておる。   〔理事吉田実君退席、委員長着席〕 そのほかにいわゆる勤労者財形貯蓄というものがあって、これは五百万円までは非課税、そうなりますと、私なら私が勤労者として無税の扱いを受ける額は三百万、三百万、三百万。それで私が家内と子供が二人おりますから、そういうことになりますと、四人で四、九、三十六、三千六百万、これは無税の扱いを受けることになりますね。で、私が仮に勤労者財形貯蓄ということに踏み切りますと、合計一軒のうちで四千百万円が無税の取り扱いを受けることになるわけであります。四千百万円の元本について無税の取り扱いを受ける対象は一体どういうものか、こういうことを考えさせられるわけでございますが、日銀の貯蓄に関する世論調査を見ますと、五十年の六月から七月にかけて一世帯の平均の貯蓄というのは二百六十八万円、そしてそのうち預貯金に回っておる分は百七十九万円にすぎません。そうなりますと、一体これの恩恵を受ける対象はどういう人なんだろう、国民の多数が受けられる、そういう優遇措置ではないということは明らかであります。現在先ほど大蔵大臣の答弁にも減税をやっても、それらは預貯金の方に回って不況対策、消費刺激ということにはならない、こういうことがあったわけですが、そういうことをなさる伏線ということにも当然これらの政府の措置というものは道を開いておくものと考えるわけであります。で、この問題について不公正是正という税制の改革の立場から改めて再検討すべき段階にきておるものと考えるわけでありますが、この点について大蔵大臣としてどのようにお考えか、ひとつお聞かせを、率直な見解の表明をいただきたいと思います。
  69. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 本件は、先ほどの分類で申し上げますと、まさしく政策税制でございます。貯蓄奨励のためという政策目的をもって税の公平を犠牲にして設けられているという意味での政策税制として分類されまして御審議をいただきました。前回四十九年度にこの制度をつくりますときに、両院の大蔵委員会でもかなりの御議論があったと承知をしております。そのとき出ました御議論のうち、否定的な見解はまさしくいま大塚委員のおっしゃったように、これを全部フルに利用すると非常に大きな金額になる。これは一部の高額資産家を優遇するものになってしまって、制度本来のねらいとする庶民の貯蓄を、その利子を非課税にしようというところからはみ出してしまうという御見解であったように思います。  一方、これでもいいではないかという方の御見解は、まあ理論的に詰めればそのとおりだ、そのとおりだけれども、やはり実際に預貯金している人は、あっちにもこっちにもということでもないんで、それは国債を買う人もあるかもしれぬが、大体はまあ郵便貯金は近くにちょっとやっておく、あと勤め先の銀行にもちょっと預ける。奥さんは奥さんで別に近くの銀行に預けておくという話になるんじゃないか。そうだとすると、全部集めて幾らというようなことを言わなくても、一つ一つが大体常識的な水準だと。もう少しくどく申しますと、一つやり方が三百万円であるということ、郵便貯金にいくんなら三百万までだ、銀行はまあ自分のうちの近くと勤め先と合わせて三百万円までだと。そのどれを選ぶかは、それはみんなそれぞれ好みがあるでしょう。全部まとめて議論する必要はないんじゃないかという御議論と両方ございました。結論的には御賛同を得て、その制度が四十九年度に実現したわけでございます。今回の税制調査会での御審議でもやはり同じような両方からの御議論が出ました。若干その額が大き過ぎるという点をおっしゃった委員も何人かございます。ただ、さればこの機会にこれを縮めるか。つまりいま郵便貯金なら三百万円までいいことになっているのを、たとえば二百万円というふうに縮めるか、銀行の方も縮めるかというと、そこまでやる必要はあるまい、それは。今後ずるずる広げる必要は全くないけれども、いまこれを積極的に縮めなくてはならないという状態ではないように思うという御意見が大勢を占めまして、本件は、政策税制としての御審議を経ました上で現状維持ということになっております。
  70. 大塚喬

    ○大塚喬君 現状維持ということでまあ考えておられる。私はそのことがやっぱり不公正是正ということをたな上げにして、不公正という税制の見本を存続させるものだ。四千百万円まではともかく頭を使って上手に動けば、高額所得者、高額資産を持っておる人は税金かからないという仕組みになっておると思うんですが、世間一般で資産三分論ということで言われておるわけですが、四千百万の金を持っておる人というのは、実際に資産から言えば一兆円を超えるような全くの高額資産者、所得者であろうと考えるわけであります。これが一つ一つについては三百万円、決して高い額ではございませんが、大所高所から見た場合に明らかに高額所得者優遇、そして不公正税制というものになろうと思うわけであります。こういう問題についてはひとつ私はいまのような後ろ向きの姿勢でなくて、今後ひとつ本気になって取り組んでいただいて、大変いま不況インフレという中で苦しんでおる勤労大衆にも、これらの問題について明朗な気持ちで納税ができますような、そういうことが、それが本当の政治であろうと考えるわけであります。ひとつぜひその件については特段の今後検討、改善を要望いたすものでございます。  それからもう一つは、会社臨時特別税の廃止の問題、これは時限立法で二年間ということで一応まあ終わることになるわけでありますが、その反社会的な行為をした企業、こういうものについて課税が行われるということだったわけですが、なかなかそこもうまくいかなかったように私どもは受けとめておるところでございます。財源不足の際に赤字国債発行すると、こういうような段階に追い込まれておるこの際に、廃止をするというのはまことに残念だという気がするわけであります。この税の対象となる各種の租税特別措置の恩典を受けるこういう大企業、こういうところが多いと思うわけでありますが、この第一条の条文を改正することによって会社臨時特別税を存置することも可能だし、当然いまの時期にはそういう特別の措置があってもしかるべきだと、こう考えるわけでございます。四十九年三月から五十年十二月末までの申告税額は一千八百億円、相当の額になっておるわけであります。公債の減額にも、あるいは所得税減税にも、こういうところにも当然それらが振り向けて使用されることも可能でありますので、この会社臨時特別税の問題について、いま私が提言を申し上げたことについて大臣から決意のほどを承りたいと思います。
  71. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 委員長……。
  72. 大塚喬

    ○大塚喬君 いまの問題は大臣からひとつ。
  73. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 主税局長にまず答弁をさせまして、あとから大臣からも御答弁をいただきたいと思います。
  74. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 新聞では、会社臨時特別税の問題は、延長か廃止かというふうな取り上げ方がなされておりますが、税制調査会での御議論は、これは延長というんではなくて、まさしくおっしゃったように、ある程度企業負担の税収があると、ここに。だから今後、会社臨時特別税の税負担相当額のものを法人企業から負担してもらったらどうだ、いままでどおり。会社臨時特別税にかわるべき新しい税を考えたらどうだという御意見がございました。それが新聞流に言えば延長論でございます。  それから廃止論といいますのは、新しく廃止の法律を出すとかいうふうな話じゃなくて、あれはああいう経緯でできた税だから、企業の臨時、異常な利益を対象にしたいという趣旨でできた税なんだから、これは期限どおりで、当時と経済情勢は変わったんだから、期限どおりでそのまま何もしない、それが廃止論でございます。両方の御議論をいただきました。まず、これにかわるべきものを新たに税として考えるか、新しい税法を出すかという点につきましては、全体といたしましてやはり現在の景気状況企業収益の状況から言えば、これは法人企業に新たに一般的に税負担を求めることは適当でないという御判断でございました。  なぜ私がくどくそれを申し上げるかと申しますと、いまの仕組みの税を改めて政府税調が提案することは適当でないという御判断がその前提にあるわけでございます。いまの税の仕組みはおかしい。それはいろいろ御分析の結果でございます。中小企業も払っておる、中堅企業も払っておる、製造業が半分以上払っておる、これは仕組みとしておかしい。資本効率のいい、努力をしている企業をペナライズする税で、この仕組みはおかしい。しかし千億そこそこの、補正後千億でございますが、税収がそのままなくなるということもそのままやむを得ないと考える必要もないんで、千億そこそこの規模で、いまの仕組みでなくて法人から負担を求めたらどうだという御検討がある、それについてはいまの状況では、そういう一般的な増税は適当ではないという御判断がありました。したがいまして、会社臨時特別税については何もしない、そうすれば当初の立法趣旨のとおり、目的を果たしていわば安楽死をする、それは廃止するということではない、そういうことになっておるわけでございます。
  75. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私は、立法の趣旨に忠実にやりたいと思っております。
  76. 大塚喬

    ○大塚喬君 次に、いわゆる公社債市場の正常化と育成の問題、これはいままでの論議の中にも出たことがございますが、ともかく明年度の公共債、国債、縁故債それから地方債、政府関係機関の縁故債、政府保証債ということで公共債のラッシュが起こるわけであります。その額はどうみても十五兆円を超えるだろうと、こういうことになってきて、これらの整備の問題というのは今後の政策を実行する上に不可欠の要件になろうと思うわけでありますが、これについて具体的に資本市場の正常化と、いままでも何度も言われてまいりましたが、具体的にどういうことをひとつやろうとお考えになるか、大臣から個条書きにこれとこれとこれをやる、そして、市場の整備、育成化を努めると、こういうことについて初めにお聞かせいただきたいと思います。
  77. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 公社債市場の育成とか正常化という問題は、非常に古くて新しい問題でございますが、特に、いまのような国債大量発行下において再びクローズアップしてきたようなことでございますが、私どもといたしましては、これはやはり発行者側にとりましても、それを市場の側といたしましても、信頼をされるような市場というものをつくっていくということで、そこに適正な価格が形成されるということで、初めて市場資金も流れてくるということでございますから、この基本的な考え方というのは従来からもうとってきたわけでございます。したがいまして、たとえば事業債のような例をとってみますと、これはもうすでに私ども見ましてもかなり発達したいい市場ができているというふうに考えております。国債の大量発行下におきまして、そういった問題を考えますと、やはり発行条件なり、あるいは流通の過程におけるいろいろの問題というものをやはり徐々に整備していくということにあるのだと思いまして、これはなかなか一朝一夕に完全な理想的な市場というのはできかねるかもしれませんけれども、いまの状況から見まして、私どもはなるべくいまの国債発行条件、あるいは流通条件というものを、そういった市場に合わして逐次改善していくという以外にはないのではないかと、基本的に考えております。
  78. 大塚喬

    ○大塚喬君 根本にやはり二重金利政策というものが一番やっぱり大きな問題になっておるのじゃないですか、この点については、いまの質問について、どういうふうにお考えになっておりますか。
  79. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 二重金利とおっしゃいますのは、恐らく発行価格と、流通価格の乖離というか、そういう面でおっしゃっていらっしゃるのだと思いますが、これは確かに国債におきましては、現在市場価格というのは、取引所の価格一本でございまして、ほかに値段がついておりません。その市場価格というものは、これは取引所におきまして適正な価格形成が行われておるというふうに承知いたしておりますが、ただ国債というものが持っておりますところの魅力といいますか、条件というものは、やはり国の信用を背景にいたしております。あるいは税制の面における優遇の措置があるとか、あるいは金融を受ける場合の担保金融がつけられるとかというようないろいろな条件がございますので、他の債券と同じような条件で、同じように比べるということは必ずしもできかねるかと思います。ただそういう点を考慮いたしますと、国債を買う人がどこに魅力を感じるか、事業債を買う人がどこに魅力を感じるかということも一つの比較の問題であろうかと思いますが、その点から見て、国債にやや従来から見ますと、私どもが見ておりましたその条件上の魅力というものに対して、受ける側から若干そういう、これは比較対象の問題でございますけれども、やや条件が悪いというようなことがございまして、実際の取引所で形成されております価格は、実際もっと実情から見ると低いのではないかというような議論がいままでもなされておったわけでございます。私どもはやはりこれはこれから先の国債のいわゆる流通市場における健全な、先ほど先生のおっしゃった公社債市場の育成という面から見ましても、やはり徐々にそういうものがなくなっていくということが大切なことと思いますので、これから先の公社債市場の発展のためには、やはり流通機構、あるいは流通金融、その他あるいは取引所における売買手法、そういうものについてやはり将来の市場発展のためにいろいろな工夫をこらしていかなければいかぬというふうに考えておるわけでございます。
  80. 大塚喬

    ○大塚喬君 話が逆に戻って恐縮ですが、国債は五十一年度約七兆二千億円前後、超えるというようなそういうことを耳にいたしております。それから、政府保証債はその際明年度も大体骨格が決まったと拝察をいたしておるわけですが、概算どのぐらいになるのか、政府関係縁故債は一体どのぐらいになるのか、それから明年度の地方債はどのぐらいになるのか、これをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  81. 原徹

    政府委員(原徹君) 来年度国債につきましては、最終的な数字はまだ私どもも主計局からいただいておりませんが、大体七兆前後ということを聞いております。  それから、政府保証債につきましても、ただいま詰めておりますが、これは五十年度が四千六百億程度でございましたが、まあ七千億を超えるのではないかと思います。  政府関係の縁故債、これはこれから財政投融資計画をつくり、予算折衝をいたしまして、その額が決まるわけでございますので、まだ決まっておりません。  それから、地方債につきましても、ただいま自治省と折衝中でございますので、どのぐらいの額になるか、まだ決まっておらない段階でございます。
  82. 大塚喬

    ○大塚喬君 きわめてどうもあいまいな、責任を回避されるような答弁でまことに遺憾であります。で、引き続いて国債の借り入れのあり方についてお尋ねをしたいと思うのですが、その前にひとつ大蔵大臣に、これごらんいただいたでしょうか、週刊朝日の十二月二十六日号、そこの二十二ページに、この間の参考人として出席いただいた三井銀行社長、全国銀行協会会長の板倉譲治氏の「減速経済を生きる財界指導者たち」ということでインタビューが載っております。ここで私の関心を引きとめたのは、「政治献金は社会的な義務だよ」と、こういうことをおっしゃって、政治献金を銀行がやめるつもりはありません。銀行は政治献金を秋から再開しておりますと、こういう趣旨に引き続いて、自民党は一番大きな政党でございますね、勢いそうなりますけれども、大体政党というものは議会制民主主義を支えているわけですから、政党が健全な発展をすることに対しては、その資金協力をするというのは、これは当然なことではないかと思っております、こういう趣旨の発言をされて、以下何度か政治献金、自民党に出すということを明らかにされておるわけです。  で、先日、板倉さんにも私直接お尋ねをいたしたわけですが、応分の献金は当然だという趣旨のお答えが返ってまいりました。で、私は、他の機関が献金をされる、これはまあそのことが是か否かという論議は一応おくにしても、銀行という、国との関係がきわめて深い、社会的な公共性の高い団体が大幅な政治献金を再開をし、自民党に献金をする、こういうことについては国民の一人として大きな疑惑に駆られるわけでございます。特に今度の国債発行ということに関連をし、日銀政府との関係がいよいよ接触が深くなってきております段階にこういうことが公然と行われておる。で、銀行に対する批判、社会的な公正を要求する。それから、こういう献金があったならば、金利の引き下げなり、その他預金者に対してのいろいろの手厚い措置も当然こういう中から考えられてしかるべきだ、こう考えておるわけでありますが、主務大臣、大蔵大臣として、銀行から政治献金を受け取る問題についてどのようなお考えを持っていらっしゃるか、改めてここでひとつ明らかにしてほしいと思います。
  83. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) それは自民党が受け取ることについてですか。銀行、金融機関が出すことについての意見ですか。どっちですか。
  84. 大塚喬

    ○大塚喬君 出すこと、それから自民党が多額の政治献金を銀行から受け取るということについてどのようにお考えでございますか。
  85. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 金融機関は、仰せのように、社会的な責任を持った企業でございます。そういう御自覚を、今日の金融機関の経営者の皆さんはよく自覚されておると思うんでございまして、そういうことを踏まえて応分の政治献金をされるという判断をされたことは、それなりの御判断として傾聴しておきたいと思います。  大蔵大臣、主務大臣としてということでございますが、仰せのように、大蔵省は金融機関を公的に監督指導する立場にあるわけでございます。したがって、金融機関と大蔵省との関係は公正でなければならぬわけでございます。さればこそわれわれは歴代の政府はそういうけじめをちゃんと踏まえて公正な金融機関行政をやってまいったと私は考えておりまするし、今後もやってまいるつもりでございます。そういう立場を崩してはいけないと考えております。自由民主党がどういうところから政治献金を受け取られますか、日本社会党がどういうところから政治献金を受け取られるかにつきまして、私はコメントを差し控えたいと思います。
  86. 大塚喬

    ○大塚喬君 この際このときですから、私はお尋ねをいたしておるわけであります。大臣はそういう献金というものと預金者保護ということが完全に両立するとお考えですか。  それから、さらに重ねて大蔵大臣。これは、政府と銀行協会という関係で監督指導する立場にあられる。そういうことでありますが、大蔵大臣も自民党の党籍をお持ちの大臣であろうと思うわけです。そういう場合に、そういう献金を受け取ってけちなことはない、何ら疑惑はないんだとこうおっしゃっても、国民は果たしてそういうことで、はい、ごもっともでございます。納得いたします。ということで引き下がるかどうかということになれば、国民の疑惑というのは決して晴れない。公正なそういう政府が銀行、金融機関に対して措置を図るということはむずかしいのではないかという、そういう疑惑が依然としてつきまとうと思うわけであります。公正さを確保する、確保できる、こう言うならば、具体的にどういうふうな大臣はお考えでそのことを実現なさるお考えでしょうか。
  87. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 金融機関に対する監督官庁といたしまして、諸法規の命ずるところに従って公正に行政をするという立場を崩してはいけないと思うのであります。したがって、そのことは必要以上に干渉してはいけないということでもあるわけでございます。金融機関の経営者の方々が、自主的に公人として判断されて政治献金をする、その他応分の政治献金を考えられるということについて、そこまで一々監督機関といたしまして干渉すべき性質のものとは考えません。そういうことをすべきでないと私は思います。
  88. 大塚喬

    ○大塚喬君 どうも釈然といたしません。率直にそのことを表明いたします。一円でも金利を引き上げて、預金者保護ということは銀行の当然の責務としてなさるべきであるし、そういうことを考慮せずに、まず政治献金ということは、政治を疑惑の中に押し込むことになるものと、私は、強く指摘をしておきたいと思います。  次に、国債管理のあり方についてお尋ねをいたしますが、国債というものは、国債の残高構成が投資、消費などの支出活動に与える金融効果を通じて経済の安定を図ること。次に、財政国債利子支払いの負担を軽減すること、国債金融証券市場に与える影響等を考慮し、市場の秩序維持に努めること。こう国債管理政策というものは、当然そういうことが考慮されなければならないと考えるわけであります。ところが、わが国の国債管理政策というものがきわめて不明確であり、意識がされないままにどんどん経過をしてきておると思うわけでございます。財政当局として国債発行利回り、これを固定する、こういうお考え。さらに国債管理政策があるかないのかわからないような、そういうことできておると思うわけでありますが、この問題についていま三つ申し上げたわけでありますが、大蔵大臣としてこの国債管理政策というものを今後具体的にどのように進めていかれるお考えか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  89. 原徹

    政府委員(原徹君) 国債発行する側にとりましては、これは財政問題でございますが、引き受ける方から見ると、これは金融問題でございまして、財政金融のまさに接点であるというふうに思います。財政のサイドから申しますと、国債金利負担が、先生おっしゃいますように、非常に高くなることは困るという点がございます。それから引き受ける側にとりましては、やはり引き受けるだけの条件でなければならない、そういうことになってくるわけでございます。したがいまして、まず発行の数量でございますが、やはりこれは従来から財政法のたてまえの建設国債の原則でやってまいったわけでございます。不幸にして特例国債を出すような事態に至りましたが、これはやはりできるだけ早いところで特例国債を出さないような状態にするということが第一の点であろうかと存じます。  それから、第二の発行条件お話でございますが、これは私ども別に固定的に考えておるわけではございません。やはり金融情勢、もちろん財政負担も考えなければなりませんが、金融情勢等も十分考慮して発行条件を決めなければならないと思います。そういう観点に立っておりまして、したがって、せんだって長期金利の改定がございましたが、その際、これから大量発行するというに際しまして非常な微調整、事業債との金利の格差が、先ほど証券局長から若干開き過ぎているのではないかというような御指摘もあったのでございますが、そういうことも考えまして、クーポンレートは据え置きということにいたしたわけでございまして、今後とも発行条件につきましては、市場情勢等を見まして弾力的にやりたいというふうに考えております。
  90. 大塚喬

    ○大塚喬君 依然として疑惑を解明することができませんが、国債発行を取りやめる、それから国債を圧縮することが可能だ、こういうような大変軽い気持ちでの答弁にお聞きしたわけでありますが、一体そういうことが可能なのかどうか、ひとつ重ねていまの問題について、管理政策に関連をしてやっぱりそこが基本になろうと思うものですからお尋ねをいたします。
  91. 原徹

    政府委員(原徹君) 確かに五十年度におきましては五兆四千八百億円、五十一年度におきまして七兆前後というような国債でございます。これを来年度すぐ圧縮するというようなお話を私が申し上げたのではないのでございますが、安易に国債に頼るということは、これはやはりそこがまさに財政の節度の問題でもございますし、国債発行の量的な管理の基本でございます。財政の節度を保って、そして、できるだけ早い時期に特例国債によらなくてもいいような状況にするということが、これがやはり財政の節度の問題でございますが、国債発行の一番の基本であろうかと、そういう点を申し上げたわけでございます。
  92. 大塚喬

    ○大塚喬君 それから、本会議でもお尋ねをいたしたところでございますが、歯どめの問題がやっぱり気がかりです。いままでは建設国債ということで使途が限定をされた。そういうもので国債発行されてまいりました。一応これは論があることはさておいてわかります。これが建設国債に限るということで、公債発行条件が認められてきたわけですから、これが一つ歯どめになっておったと思います。それからもう一つは、市中消化ということが、これが歯どめになってきたわけでありますが、最近の新聞の報道等によれば、何か特別の措置を、オペレーションについて日銀政府考えておる、こういうことが報道されておるわけであります。そうしますと、これは抜け道で、市中消化という原則は買いオペによってすっかりこれは形骸化されてしまう。こういうことになって、一体国債が野放図に、無制限に膨大にふくらんで、そういう危険性が強いこの際に、利子の支払いは国家予算の何%、あるいは国債の残高というものは国家予算の中でどの程度のパーセンテージとか、これは素人の私が考えた歯どめの一例でございますが、何らかそういう国債乱発の歯どめを、この際真剣になって政府も、あるいは議会も考えなければならない時期に到達をいたしておると考えるわけであります。で、いまのままでは先ほどの建設国債市中消化という、こういう問題が全く形骸化しておるわけでございますので、これらについて、大蔵大臣を初め次官あるいは局長、それぞれひとつ、お一人お一人から私はこうすべきだ、まだ政府として方針が決まっておらなくても、個人的な案でも結構ですから、この問題については真摯な論議をこの大蔵委員会で巻き起こすことができますように、それぞれの皆さん方から見解の表明をいただきたいと存じます。
  93. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 国債市中消化の原則は、これは貫かれて今日まで参っておるわけでございまして、この原則は、御承知のとおり財政法によってはっきりと書かれておるわけでございますが、御指摘のオペレーションの問題でございますが、日本銀行通貨金融の調整のために各種の手段を通じまして金融調整をやるわけでございますが、国債を種にして、つまり国債を買ったり、あるいは売ったりして信用の調節を行うことは当然の任務でございます。最近、何か特殊のオペレーションをするやに報道があったようにいま伺いましたけれども、そういうようなことは、特殊のオペレーションというようなことは全然考えていないと思います、日本銀行のことでございますが。あるいはこの十二月の三日でございましたか数千億円の国債の買いオペレーションをやりました。これは新聞報道によりますと、昨年の十二月以来一年ぶりであるというようなことが報道されておりましたけれども、これは御承知のとおり、年末にかけましての資金需給の状態によりまして、それだけの調整をする必要があるということから買いオペをやっておるわけでありまして、これは日銀総裁も、当委員会でいろいろの御質問に応じて答えられておったと思いますけれども国債の買いオペというものは、長期的に見ますと成長通貨の供給手段として使われておるわけでございまして、それは別に国債消化を円滑にするとか、あるいは市中消化の原則を形骸化するとか、そういうようなことではないわけでございまして、また別途の金融調節手段としてそれが用いられている、両方は関係がないことである、このように御理解願いたいと思います。
  94. 原徹

    政府委員(原徹君) ただいまもお話がございましたように、その市中消化の原則、従来は建設国債市中消化、この二本立てでやってまいったわけでございます。私は、現実に市中消化をやる具体的な交渉をやはり引受シ団といたしておりまして、これは実は非常に強い歯どめであろうかと存ずるわけでございます。と申しますのは、やはり毎月毎月発行するにつきまして、引き受け側の資金事情というものは十分考えませんと民間金融を圧迫することになります。したがいまして、引き受け側も、ただ、うちの方がこれだけの額を消化——引き受けてほしいと申して、それで簡単に済む問題でございません。特に多くなればなるほど自分が引き受けた結果によってどういうことになるかということを、金融機関も証券会社も考えなければなりません。で、実際に私ども毎月引受契約をするにつきまして十分そういう事情を考えませんとなりませんから、したがって、実際の問題として市中消化の原則というのは現実の問題として非常に歯どめになっているという点を申し上げたいと思います。
  95. 田中敬

    政府委員(田中敬君) それぞれの意見を申せということでございますので申し上げますが、先生が御指摘になりましたような当該年度における予算におきます国債の依存度、あるいは国債残高の対GNP比、あるいは当該年度予算の中に占める国債費の比率、いろいろの指標があろうかと存じますが、われわれもこの問題を検討するに当たりましていろいろの指標を検討いたしましたが、その指標からは決定的な論理的な歯どめというものはなかなか見出しがたい状況でございます。いま、それぞれが市中消化の原則が非常に大きな歯どめであるということも一つでございますが、また一つには、こうして特例公債発行いたしますにつきましては、その都度特例法というものをお願いいたしまして国会の御審議を得、その発行額を御審議いただくと、このこと自体が非常に一つの大きな歯どめの効果を果たしていくと、国民的な視野で各分野の御意見を承って御審議をいただいて法案の成否を諮っていただくということが一つの大きな歯どめであろうかと、かように考えます。
  96. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) いま各方面から申し上げましたので、特に私から……、蛇足になるかと思いますが、国債は、御承知のように発行いたします場合の財政負担というものがもちろん基本的にはそれが歯どめでございます。それからやはり理想的に言えば、発行条件というのは、余り高くなれば、それが財政負担から見れば重くなるからというので歯どめでございましょうけれども、いまのような大量な国債発行のような場合には、これやはり緊急避難的な色彩を非常に持っておりますので、必ずしも現実に発行条件とかいうものが歯どめになりかねる場合もございますが、たびたびこの委員会で大臣からも御答弁がありましたように、これは特別の国債であるから償還時には全額償還するというようなことというものは、これは将来の財政負担の立場から見れば、やはり一つの抑止力であるというふうに私ども考えております。ただ、出しました国債市中消化ができないような条件であっては困るので、それはまたその大蔵省の中でも発行——実際に、私ども証券局は、市場でそういうものを処理させている方の立場から申しますればできるだけ条件が魅力あるものであるということが望ましい、それはとりもなおさずまた財政負担の立場から見れば、一つの抑止力になるというようなことでございますが、大蔵省全体といたしまして、今度の国債発行は、やはり異常な容易ならぬ事態において発行するものであるから、みんなそれぞれの立場においてやっぱり厳粛な気持ちで臨むということでございまして、これ自身が、大蔵省全体として私は抑止力になっておると考えております。
  97. 梶木又三

    政府委員(梶木又三君) いま各局長からお答えしたのと全く私も気持ちは一緒でございまして、これはもうやむを得なくとった特例公債発行でございます。一日も早く健全な財政運営に戻るべく国民各位の御協力もいただき、われわれも一生懸命がんばると、こういうことで一日も早く健全に戻る。  それから、特例発行に際しましては、いまお話しのとおり、あくまでも市中消化の原則を守って歯どめはきちっとつけると、こういうことに考えておる次第でございます。
  98. 大塚喬

    ○大塚喬君 締めくくりに大臣から……。
  99. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) わが国の金融資産は預貯金が主でございまして、証券類、債券類、そういったものが比較的少ない、直接金融というよりも、資金、資本の調達にいたしましても、直接金融でなくて間接金融方法によっておる、そういう発展の経過があるわけでございます。したがって、大塚さんが言われるように、わが国では資本市場がひ弱いと。とりわけ、公債市場、公共債の市場というのがあってないような状況じゃないかという御指摘はあなたの御指摘のとおりだと思うんです。  そこで、さて、そういう狭隘な市場に大量の公債が出てまいるわけでございますので、仰せのようにいろいろな問題がございまして御心配をいただいておることはよく理解できるところでございます。それだけに、財政当局といたしまして、この公債政策公債管理につきましてはよほどの用意がないといけないということは全く仰せのとおりと心得るわけでございます。したがって、財政立場からこの発行につきましてやすきについてはいけないと。そして、一たん発行したものにつきまして、なるべくこういった過度の依存の状態から脱却するように真剣な財政運営に当たらなければならぬと思います。  それから、金融面におきましては、この健全な消化を図らなければなりませんし、国民の中で公債というものがまだ金融資産として親しまれていない、定着していない状況でございます。これが落ちついた金融資産になってまいるというように公債管理政策公債市場の整備、そういった点は私ども精力的に努力していかなければならない課題だと思います。財政政策から申しましても金融政策から申しましても、この接点にある公債政策というのは、言いかえれば財政政策の成否を決め、金融政策の成否を逆に決める決め手になるようなものじゃないかと思うわけでございます。わが大蔵省といたしましての最大の課題があなたのおっしゃる公債管理政策だと私は存ずるのでございまして、規模をしぼってこの問題には取り組んで御期待にこたえなければならないと考えております。
  100. 大塚喬

    ○大塚喬君 いまそれぞれの懇切な答弁をいただいたわけでありますが、市中消化がそれ自体歯どめだと、私もそのとおりだと思います。しかし現実には、市中消化という問題は、発行後一年を経過すれば買いオペの対象になる。これは抜け道ではないですか。私は抜け道だと思います。それは、一年という一つの期間的なワンクッションを置いて、それから日銀の保有になっておる、こういうことですが、一つ重ねてお尋ねをいたしますが、この一年経過後の国債日銀の保有の割合は、どれだけ日銀の保有になっておりますか、ひとつお尋ねをいたします。  それから、先ほど銀行局長から答弁がありましたけれども、適正な成長通貨の供給手段として買いオペをしておる、こういうことでありました。特別の措置は講じないと。今後、国債の追加発行を容易にするために適正な成長通貨の供給、こういう手段以外にその地ならしをするために、受け入れ体制を整備するために、受け皿をつくるために適正な成長通貨の供給手段という以外に、絶対に国債の買いオペということはやらない、こういうことが断言できるわけですか。
  101. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 一年経過したものについてだけ買いオペの対象にしているというのは、御指摘のとおりでございますが、逆に、一年経過したものはすべて買い入れているというのではございません。今後の状況を、私、想像いたしますると、日銀券の増発率というものは、現在のような規模国債発行増加額と比べますると、はるかに国債発行増加額が多いわけでございますから、いままでは、多くの場合に、一年経過したものにつきましては、日銀が結果的に買い入れたことになっているという、おおよその傾向がございましょうけれども、今後はそのようなことにはならないと思います。つまり、最後に御質問になりました、適正な成長通貨を賄うという範囲内でのオペレーションというものは行われると思いますけれども、特別に通貨を猛烈に増発をするようなオペをやるはずは、これは日本銀行のことでございますけれども、やるはずはないと思います。
  102. 大塚喬

    ○大塚喬君 先ほど答弁の中で、日銀保有、それは買いオペ対象になった額の国債の占める割合ですが、それがもう一つお尋ねすることと一緒に、いま銀行局長のお答えの中で、買いオペの対象になるものを全部日銀が買いオペするわけではない、こうおっしゃったわけですが、私がお尋ねをしているのは、今後、国債消化を容易ならしめるために、適正な成長通貨を供給する、こういう目的以外に、絶対に買いオペをやらない、こういう確約がはっきり示せるわけですか。もしそうだとすれば、そういうものをやっぱりこれは法文なり明記をして、市中消化の原則、公債の乱発を防ぐ一つの歯どめにしたらいかがかということを考えております。  それから、もう一つ先ほど一番最初にこの歯どめの問題でお尋ねをいたしました、総予算の中で、一体国債の残高というものを、最高限度、こういうものとの割合において考える必要はないかという素朴な提言をいたしたわけです。あるいは利子の支払いについて、予算総額の何%を超えてはならないとかというような、こういう単純明快な一つの歯どめというものは考える必要はないのかどうか、そこのところもお聞かせいただきたいと思います。
  103. 原徹

    政府委員(原徹君) 数字の御質問がございましたので、それをまず申し上げますが、これは、五十年の九月でございますが、新規の国債十一兆二千億ばかりございますうちに、市中機関が保有しておるものが三兆一千五百二十五億円、これは二八・一%になります。それから日銀が持っておりますものは、三兆七千六百四十七億円で三三・六%になっております。
  104. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 適正通貨の供給と、買いオペとの関係についての御質問でございますが、先ほどから申し上げておりますように、通貨の供給量を猛烈にふやす、買いオペによって猛烈にふやすというようなことは、日本銀行のことでございますけれども、やるはずはないと思います。ただ、ある一定期間の成長通貨の供給額と、それから買いオペの額とは、正確に申し上げると必ずしも合わないかもしれません。それは一方では買いオペをするときもありますし、また一方では売りオペをするときもあるわけでございます。それといいますのは、ある一定の長期の間の成長通貨というものは、それは出てくるわけでございますけれども、一年の間に、あるいは景気の循環過程におきまして、その長期間の中の短期の変動といたしましては、資金需給にアンバランスが起こってまいります。したがって、そのときに資金の需給状態から見まして、買いオペをすべきときと、また売りオペをすべきときが、それぞれの状態に応じてあるわけでございます。それを全部ならしてみると、長期に考えると、成長通貨を賄う以上の買いオペをやったという結果になるはずはないと、こう申し上げておるわけでございます。
  105. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 国債の利払い費の占める割合、予算に対します比率とか、あるいは残高比率、そういうものを、端的に、何%というものが一つの歯どめになるんではないかという御議論は、確かに形式的には国債依存度を二〇%に今後抑えていくとか、あるいは国債費比率を、一般会計予算に占める比率の中で一割を超えてはならないんだというようなことは、形式的には決め得る問題だろうと存じますけれども、私どもといたしまして、そういう国債費率が高まる、あるいは国債残高が多い、国債依存度が多いということは、一般的に申しまして財政の非常に硬直化要因でございますので、財政の弾力性を持たせるためには、それは低ければ低いほどいいことははっきりいたしております。しかしながら、ただいま直面しております経済情勢のように、やはり一定の経済成長あるいは経済規模を確保し、それによって国民の福祉の充実を図り、あるいは最低の社会資本の充実を図るということになりますと、国債費比率が幾らを超えるから、よってそれだけの財政規模は持てない、財政は、たとえば極端なことを申しますれば、お金がないから、赤字公債も出さないで、生活保護費を半分に切れとか、そういう極端なところまでその議論をやってまいりますと、追い詰められることでございますので、私はそれは低いにこしたことはないけれども、適正な経済規模を維持する、あるいは財政の役割りを果たすためには、そのときどきの経済情勢に応じてある一定の財政規模を持つ、そういう意味では、それらの比率にこだわることなく、国債に依存する事態もやむを得ないんではないかと存じます。そういう意味におきまして、御議論のありました、そういう比率から歯どめをかけるという、比率の論理につきまして、なかなかはっきりした定説を持ちがたいと感じております。
  106. 大塚喬

    ○大塚喬君 いまのあれでは、やっぱり私は歯どめの必要性という立場から提言をしておるわけですので、そういうお考えだというと、歯どめということにはならないものであるという理解しか出てまいりません。  それで、もう一つ、その日銀の保有の割合についてお尋ねをしたわけですが、国債総額の中で、日銀の保有割合がということの質問ではなくて、買いオペの対象になる一年経過もの、その中で、一体、その日銀の保有の割合はどれだけで、何%になるか、こういう質問なんです。そのことが、買いオペの対象ということが、私が、その歯どめということの、市中消化ということの抜け道になっておるじゃないかと、一年間過ぎればもうワンクッションはあるけれども、ともかく一年過ぎたら、何%かわかりませんが、私は大部分日銀の保有になっておると、こういうふうに考えるわけですが、その割合をひとつ聞かせてください。そして本当にこの買いオペというものが有名無実、形骸化されておらないものかどうか、そこのところを明らかにしていただかなければ、これはもうお答えにならないと思います。
  107. 原徹

    政府委員(原徹君) ただいま銀行局長からも答弁がございましたように、買いオペもあれば、売りオペもあるわけでございますし、またオペレーションの中身は、何も国債に限らず、政保債もございますし、手形もございます。いまの御質問、ちょっと、あるいは、数字の点でございますが、御参考までに申しますと、先ほどの五十年九月、十一兆二千出ておると、先ほど市中金融機関は三兆一千五百二十五億であると申しましたが、この三兆一千五百二十五億の中ですでに一年を超えているというものはどれだけあるかと申しますと、一兆二千三百二十一億である、これ御参考になるのかどうかわかりませんが、いま手元にわかる資料ではこういうことが申せるわけでございます。
  108. 大塚喬

    ○大塚喬君 その日銀のいわゆる保有高ですね、それの買いオペの一年経過ものの割合はわかりませんか。
  109. 原徹

    政府委員(原徹君) 日銀が持っているものでございますと、それはほとんどすべてがオペで買い上げたものだろうと思います。したがいまして、それはすべて一年経過後のものを買ったというふうに推定されます。
  110. 大塚喬

    ○大塚喬君 ですから、その割合を、私は大部分そういう期限が過ぎたものは日銀の保有になって、そのかわりに日銀券が発行されて、実質上は一年経過という一つの経過措置が過ぎれば実際は市中消化という原則は崩れて、日銀券が町にはんらんしておるんではないかと、こういう指摘をして心配をいたしておるわけです。市中消化の原則が実質上はそこで崩れておるのではないかと、こういう指摘をいたしておるところでございます。ですから、そこについてはっきりしたお答えをいただきたいと思います。
  111. 原徹

    政府委員(原徹君) 日銀が持っておりますのは三三・六%と申しましたわけでございますから、市中に三兆一千残っているということは、一年たったものがすべて日銀に来ていることではないと、そういう数字になるわけでございます。
  112. 大塚喬

    ○大塚喬君 だから、その割合はどのくらいになるのか。市中消化の原則はここで崩されているんじゃないかと、こういう指摘なんです。
  113. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いまの大塚さんの言われておることは、手段と目的とをかみ分けて御理解いただきたいと思うんですが、日本銀行は、信用政策を実行して適正な通貨の供給をやっておるわけでございますが、一番根本は、日銀がその適正な通貨の供給を誤るか誤らないかが根本なんでございます。適正な通貨の供給の調節をするというのが日本銀行の任務、それが目的なんでございまして、それを国債でやるか政保債でやるか何でやるかということは手段にすぎないわけでございます。たまたまいま三割何ぼの既発国債日本銀行が持っておるというにすぎないことなんでございまして、もしその結果、日本銀行を通じてそれを契機として非常に過大な信用が供与されておるということになっておるんなら、それは確かにあなたの御指摘の点は注意せにゃならぬと思うのでございますけれども、そうでなくて、適正な通貨が供給されておるという限りにおきまして、そのこと自体はとがめられるべき性質のものではないと思うのであります。国債という最も信用度の高いものをオペレーションに使うというのは、日本銀行としてきわめてあたりまえのことと思うのでございます。
  114. 大塚喬

    ○大塚喬君 そこは異議ないな。
  115. 原徹

    政府委員(原徹君) 先ほどの数字は保有の残高で申しましたが、市中が引き受けた累計というのがこれやはり五十年の九月末で九兆八千五百九十ございまして、そのうちオペ対象になるものが七兆七千でございます。で、実際にオペをやったのは幾らかと申しますと五兆七千三百九十一、買いオペの対象で実行いたしましたのが五兆七千三百九十一でございますから、引き受け累計九兆八千五百九十に対しまして買いオペ率というのは五八・二%になるというわけになります。
  116. 大塚喬

    ○大塚喬君 私が調査したのはもう少し多額日銀保有割合になっておるわけですが、理財局次長がおっしゃる数字ですから一応その方をとることにいたしましても、実際に五九%というものは、結果として日銀券になって町に躍り出ているわけですね。買いオペの対象になって日銀が保有しているわけですから、その分の紙幣は出ておる。こういうことになれば、その市中消化という原則は、看板は間違いなく麗々しく掲げておりますけれども、実際はその五九%、六割のものがともかくお札になって出ておるのですから、戦時中の国債発行日銀引き受けと実質上は同じような形に移っているわけでしょう。一年過ぎれば、一年という経過期間はあるけれども、そういうことになる。一生懸命首振っておるが、お札出ていないのですか、ひとつ。
  117. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) もし国債発行していなかったといたしましても、日本銀行としては適正通貨をほかの方法で供給しておったと思うのでありまして、たまたま国債が出ておりましたから、そのオペレーションの対象として国債を選んで、たまたまそれだけいま持っておるというにすぎないわけです。
  118. 大塚喬

    ○大塚喬君 先ほどの補助金の問題が一つ残っておりますが、これは資料を提出いただいて引き続いてひとつ質問さしていただくことにして、一応私の質問はここで終わりとさしていただきます。
  119. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  120. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記を起こして。
  121. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 資料の件につきましては、ただいま到着いたしまして、さしあたり部数が一部しかございませんので、そこでリコピーをとっておる段階でございますので、直ちにそれが済み次第御提出申し上げます。
  122. 大塚喬

    ○大塚喬君 では後ほど少し時間をいただいて質問さしていただきます。
  123. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  124. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記を起こして。
  125. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 初めに、日本銀行から本年の八月二十六日に出されました「米国の赤字財政の現状と問題点」こういうレポートがありますが、これについて若干の質問をしたいと思います。  ここに三点問題点が出ておりますが、その一つは、ケネディ政権下で、赤字の中での大減税という積極財政策がある程度功を奏したことによりまして、財政赤字に対するタブーが弱められ、その後の米国の恒常的な赤字財政へとなっていく点について、わが国の場合も、昭和四十年からの建設国債発行という実質的な赤字財政政策が表面的にある程度の功を奏したという政府の感覚が、その後十年間、ずっと建設国債発行になってきたわけでありますけれども、さらに今回の赤字国債発行によって、仮にまあ景気がある程度回復した場合、この赤字国債——まあ現在は非常に特例ということで毎年やられておりますが、これが仮に毎年毎年赤字国債を出すようなことになってきた場合、やはりこの赤字国債に対するタブー感というものが、やはりアメリカのように弱まってしまうと、そういう可能性があるわけですが、まずその点についてどうお考えになりますか、大臣。
  126. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いわゆる赤字公債建設公債とはいずれも公債でございまするし、いずれも財政政策の上からいって安易にこれに依存してまいることはできないと思いますが、しかしとりわけ、この特例公債、いわゆる赤字公債につきまして、これがマンネリ化すると申しますか、これになれるというようなことは絶対慎まにゃいかぬと思うのであります。今度公債発行いたしますのは、不況であるから公債発行するというんではないんです。言いかえれば、赤字公債を出すか出さぬかの選択の余地が政府にあって、しかし、現在は不況だから、ともかく赤字公債発行を認めてもらおうというんではなくて、思わざる大きな歳入欠陥を招来いたしたわけでございますので、これを埋めるにほかに方法がないからやむを得ずこの際は赤字公債発行さしていただきたいと、しかしこれは、これになれっこになったら大変なので、これはなるべく早くこれから脱却することを財政政策の基本としなければならぬわけでございますと申し上げておるわけでございます。米国の事情は私よくつまびらかにいたしませんけれども、わが国の場合におきましては、いま申し上げたような趣旨で、やむを得ずとらしていただいておる政策でございますことを御理解願いたいと思います。
  127. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま不況であるから出すんじゃないということを言われましたが、もちろんそれはいまのお話のように今年度のものについてはやむを得ない事情により出すわけですが、これは前委員会のときにも私申し上げましたが、それでは五十一年度はどうなのかと、五十一年度の赤字国債というものはこれは出さざるを得ないということは新聞等にもはっきり出ておりますけれども、これはやむを得ざる欠陥とは言えないと思うんですね、当初から組むわけですから。今年度は仮にそういうことは言われても、しかし、それもやはり不況が原因でこういうふうに歳入欠陥ができたわけですから、それを仮に補完すると言っても、やはりそれに対する不況対策はずっと一、二、三、四次と打ってこられましたし、補正予算というものもそういうことも勘案してつくられておるわけですから、やはりそういうものも考えにはある。やむを得ざるだけではないと思うんですが、その点は五十一年度も含めまして、特に五十一年度の赤字国債というのはそれではどういう性格のものなのか、その点重ねた質問になりますが……。
  128. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いま御審議いただいておる五十年度特例公債というのは、政府が予測いたしておりました歳入が予想に反して入ってこないので、いろんな手段を講じますけれども、やむを得ず特例公債発行せざるを得ないという、矢追さんが御指摘になったとおりの理由で発行をお認め願いたいと申し上げておるわけでございます。  五十一年度につきましては、できましたら、こういう状態から一日も早く脱却いたしたいわけでございますので、特例公債を出さなくて済む財政を私どももとより本来望んでおるわけでございますが、この不況が意外に長引いてまいりまして、程度もなかなか深刻でございます。来年経済回復いたしまして、われわれが必要とする財源が経済界からくみ取ることができる、確保することができるという状況はとうてい望めないことがようやく判然としてまいったわけでございます。したがって明年は、しょっぱなから特例債に頼らなければならないと考えておりますが、それはことしのように予想しない歳入の不足ではなくて、明年度経済回復が遅いために初めから歳入を期待することができない、また増税もすることができない、そういう事態であるがゆえにということになると思うのでございます。理由はそれだけの違いでございます。
  129. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあ来年度、その次五十二年度がどうなるかわかりませんけれども、大体いまの——この前も私ちゃんと計数でいろいろな試算をした結果を申し上げたわけですけれども、まあ、これから慢性的な赤字というものが非常に可能性が強いと。大臣はそういうことはないように努力すると言われますが、非常に可能性としては高いわけです。それで、同じレポートの中で、巨額の「国債増発は、結局のところマネーサプライの過大な増加を通じてインフレ高進の原因となり、金融政策に大きな負担をかけることになった。」と、こういうふうに出ておるわけです。そのアメリカでさえも、これだけ、「マネーサプライの過大な増加を通じて」と言われてますけれども国債の依存率というのは一三・六%です。ところがわが国の場合はその倍近い二六・三%でありますし、また来年度は三〇%近い数字と、こういうふうに言われておりますが、この点について、アメリカと比べて、この依存率の高さからいって、かなりインフレの高進になる可能性が十分あると。もしそうでないと言われるなら、アメリカとどういうふうな状況が違って抑えられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  130. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 先ほども大塚先生にお答えしたわけでございますが、単に依存度だけで云云ということは非常にむずかしい議論だろうと存じます。現実にこうした停滞した経済情勢の中で、民間資金需要が非常に少ない状況でございますので、国債消化につきましては、私どもはある一定の限度であれば消化は可能であると存じますし、またその国債によりまして、資金需要の少ない中において公共事業等を興すことによりまして経済の振興を図るということでございますので、依存度がある一定水準より高いから直ちにこれがインフレになるというふうには考えておりません。
  131. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、この前の財政制度審議会の七月の答申、あるいはまた昨日来新聞等に出ておりますこれからの経済計画等を見ましても、大体経済成長率は名目で一二あるいは一三、また来年の予算では五・六の実質成長率と言われておりますが、大体近い線が出ているわけです。で、そういった成長率が実質まあ五ないし五・六、あるいはまあ六%ぐらいになった場合の適正な日銀券の増発率というものはどの程度考えられますか。
  132. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 現金通貨——通貨と名目成長率と申しますか、これとの間にある大きな関係があるということは言えると思います。その関係というのがいわゆるマーシャルのKと称されておりますけれども、ただ、ある一定期間、たとえば明年度の名目成長率一二、三というようなもので、イコール日銀券の発行率もその程度だ、その程度であるべきであるとか、あるいは望ましいとかということは、非常に危険でございまして、つまりマーシャルのK自体がそのときの経済状態、景気の動向その他いろんな要素によりましてふれがございます。したがって、そのふれをどう見るかということになるんでございますけれども、この予測は大変むずかしい問題でございまして、一義的に日銀券の増発率を一三%とか一三・五%とかいうようなぐあいにいまお答えすることはとうてい不可能だと思っております。
  133. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それから、レポートの中にさらに言われております中で、要するにいま財政硬直化現象、こういうことが慢性赤字というものの大きな原因ということが言われております。そういうようなことで、この硬直化打開の問題についてもこれずっと予算委員会等でも議論がされてきておりますが、こういった赤字国債を出し、赤字財政に転落をした今後の予算としてこの硬直化打開ですね、これはどういうふうにお考えになりますか、特に来年度予算から本格的に始まると思いますけれども
  134. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 硬直化の問題というのはひとり財政ばかりじゃなく、いろんな民間企業にもあらゆる組織の中に私はそういう傾向が見られると思うのであります。すなわちいままでやってまいりましたやり方、つまりこれが制度であれ、慣行であれ、そのやり方は事情の変更、事態の変更、条件の変更、環境の変更に応じて柔軟に変えるべきであるのになかなか変えない。そういう習性を人間というのは持っておるわけです。したがって、制度、慣行から脱却するということが非常にむずかしい、本来は非常にむずかしいことでございます。われわれ大体人間非常に保守的な性向を持っておりますので、考え方自体もそういう傾向を持っておるわけでございます。したがって、財政制度の中にそういう既存の制度、慣行がもう非常に深く根を張っておりまして、それを簡単に取り除くなんということは、これは言うべくしてなかなか行われにくいことでございます。したがって、まず私ども考えるのに、このごろ国会の状況を見ておりましても、私どもがささやかながら改革を試みようとすれば、野党にとめられるというようなことがなかなか多いわけなんでございます。だから、この硬直化打開というのは容易なことじゃないんで、そこでまず考えられることは、これ以上硬直化を起こす原因をつくらぬということから始めにゃいかぬのじゃないかと思うんです。  したがって、先ほど大塚さんからも御質問がありました補助金の整理の問題でございますとか、あるいは特殊法人の整理の問題とかいう問題も、それを統合する、改廃するというような問題より前に、新しいものは、まずもうつくらぬということから始めることでなければならぬと思うんです。したがって、われわれの政府におきましては、ここ歴代の政府は定員管理とか機構の管理非常に厳重にやってまいりまして、少なくとも中央に関する限り定員も機構もふえていない、若干減っておるということでございます。地方の方は若干ふえてまいりました。これには中央にも相当責任があることを私は隠しません。けれども、いずれにせよそういう努力がなかったら、これ膨大な組織になっておったと思うのでございます。財政は大変な膨張を来しておったと思うのでございます。したがって、まず矢追さんに対する答えといたしましては、そういう新しい硬直化の芽はつくらないということ、そういうことをやりたい、やるべきであると思うのであります。  それから、その場合新しいものをつくらしてくれ、それじゃ古いものをスクラップして持ってこい、そうしたら認めないものでないというようなことを、ずっと歴代の政府もやってきたわけでございます。スクラップ・アンド・ビルドということで、ことしの予算につきましても、そういうことで新規のものは原則としてだめですよといって各省にお願いしてあるわけです。もしやるなら、古いものをつぶして持ってきてください、それならひとつ吟味しますよというようなことを申し上げているのはその趣旨なんでございます。  それからさらに第二として、本格的に既存の機能が退化したものは退治していかにゃいかぬわけでございまして、そいつはわれわれ勇気を持ってやってまいりたいということは、先ほど大塚さんにもお答えいたしたんでございます。どこまでできますか、私も初めから大きな口をきいておって、おまえ何もできなかったじゃないかなんて言われかねないから、余り大きな口はききたくないんですけれども、少なくとも第二段として、そういうものについても勇敢に取り組んでいくということをやってまいらなければなりません。  それから第三に、財政をやっている場合に、これはもう矢追さんもよく御承知のことと思いますが、いまは大して金かからぬけれども、入れておきなさいと、大した金かからぬじゃありませんかなんという誘惑があるんです。しかし、来年から再来年だんだんよけい銭がかかるんです。ちょっとその場は非常にいいようでございますけれども、後でえらい目に遭うわけなんですよ。ことしも公共事業を除いて、われわれの予算で一兆八千億は当然増なんです。前から約束されておるわけです。もう背負ってしまっている。そういう約束手形を出してしまっているわけですから、そいつは、それはもう硬直化の最大の原因になるわけなんですから、まず来年以降財政負担を伴うような経費はよく見きわめておかないと、うっかり誘惑にのると後でえらい目に遭うんじゃないかと思います。したがって、硬直化問題というのはもう古くして新しい課題でございまして、恐らく財政の歴史がある限り、人類の歴史がある限り、これ硬直化の問題が起きて、硬直化との闘いが続くんじゃないかと思いますが、私はそういう意味で、われわれもまた今度の予算の編成を通じまして、そういう点については特に努力を払って、どこまで成果が上げられるかわかりませんけど、精いっぱいやってみたいと思います。
  135. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあいまの大臣のお話聞きますと、硬直化打開というのは絶対できないような感じに思われるわけです。それでいま来年度予算でできるだけの努力をしたいと言われておりますが、新聞紙上でずっと出てきております来年度予算の全貌といいますか、ある程度の輪郭というものは私たちも見ておりますけれども、果たしてこの中でそれでは硬直化打開のために、いま大臣が言われているような努力があるのかどうか、非常にそうなりますと疑わしくなってくるわけです。むしろそれは福祉関係をぶった切ったり、あるいは老人医療の無料化をやめさせるとか、あるいは初診料を千円にするとか、そういう、いろんなそういうふうなことで、何か国民の負担の上に立った硬直化打開なんじゃないかなというような感じもないでもないわけですが、いま言われた、その五十一年度予算で努力をされるという、じゃ、この点とこの点とこの辺あたりに目をつけてやりたいと、そういう点はいかがですか。
  136. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 私ども予算編成過程において、ある計画、もくろみは持っておりますが、これはただいまから予算編成に入りまして、相手省庁との折衝を要する問題でございますので、具体的にどの補助金、あるいは具体的に従来とってきた、あるいはとられてきた予算措置というもののどれを廃止するということははっきりここで申し上げることは困難でございますが、少なくとも私ども予算編成の心構えとして従来にも増して取り組んでおります問題というものは、一般的な行政経費につきましては、御承知のとおり五十年度の、本年の歳入欠陥の状況にかんがみまして、補正段階におきまして、非常にこれを節約補正減をいたしております。それらの経費につきましては、明年度予算におきましては、この補正減後の姿、少なくとも当初予算よりはふやさないというような措置はぜひとりたいと考えておりますし、あるいはまた、先ほど大臣が申しましたように、新規政策につきましては、古い政策を倒せるものは倒すと、たとえば具体的にどの省のどの予算を倒してというようなことはここでは申し上げかねますが、スクラップ・アンド・ビルドをできるだけやってまいりたいと、あるいは行政部局の新設でございますとか、あるいは定員の増員というものは振りかえによって総定員がふえないようにこれを厳粛に守ってまいるとか、いろいろ従来にも増した厳しいことを考えておりますが、予算編成過程を経る問題でございますので、いまここでどういう姿になるということは申し上げかねます。  それともう一つは、先ほどいろいろ老人医療費云々のお話がございましたが、私どもといたしましては、老人医療費云々の問題は別といたしまして、たとえば国鉄の運賃でございますとか、あるいは社会保険料負担でございますとか、こういうものにつきましては、やはり受益者負担の原則と申しますか、応益負担と申しますか、こういう負担原則に立って乏しい財源の効率的な配分に尽くすべきであるということで、確かに仰せのように、そういう意味の制度の見直しも厳しくやっていきたいと。一般的なことしかお答え申し上げられませんで残念でございますが、編成過程中でございますので、その辺でお許し願いたいと思います。
  137. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは次に、これはけさの新聞ですが、産業計画懇談会が来年度十兆円、ことしも十兆円、含めて二十兆の国債を出してはどうかと、それからまた赤字の企業に対して日銀の融資をしてはどうか、いろんな提言が出ておりますが、これに対してどのようにお考えになりますか。
  138. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) どういうこの際財政政策をとるべきかということにつきまして、いろんな御意見がございますことは、私もよく承知いたしておりまして、いま矢追さんが御紹介になりましたように、十兆円の国債を出して景気の回復を急いでいくべきであるという御意見もございますし、しかし反対に、経済自体には自律的な反転力があるわけであって、財政としてはそんなに公債を出したり、景気刺激策をとるべきじゃない、景気に対しては慎重に中立的立場をとってもらいたいという意見もまた有力な意見があるわけでございます。政府といたしましては、いろんな方面の御意見は十分聞いて吟味をいたしておるわけでございますけれども、十兆円もの公債を出すというようなことはとうてい考えられないことでございます。先ほども申しましたように、公債はやむを得ない限度にどうしても枠をとどめなけりゃならぬと考えておりまするし、また物価とか国際収支とかの関係政府としては十分にらんでおかなければならないことでございますので、私どもはそういった大胆な財政政策をとることにつきましてはにわかに賛成できません。
  139. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうしますと、大臣も再三言われておりますこのこれからの国債発行というものはあくまでも補てんであると、そしてできるだけこれは出さない方向に行くと、積極的な意味は持たせないと、こういう方針と思うわけですけれども、そうしますと、今度はその建設国債の方ですね。これは今後どういうふうになっていくのか。その点はいかがですか。私は来年度からはこの赤字と建設というものの区別というのは非常にもうむずかしくなってくるのではないか、一応法律上はきちんと区別されておって、あくまでも分けていく方針だとは思いますけれども、実質的には何か一緒くたのようになってくる感じを受けるわけです。しかし、財政法の関係でこれは改正や何かできないと言われると思いますけれども、その点、赤字の方はそうやってできるだけ抑える抑えると言いますけれども、建設国債というのはこれからどういうふうになっていくのか、その点はいかがですか。
  140. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 建設国債、赤字国債、いずれも国の借金であることは同じでございます。昭和四十一年から初めて建設国債発行いたしましたときに、公債依存度をたとえば五%以内にすべきであるというような財政制度審議会の御建議もいただいたことがございますし、あるいは昭和四十六年度景気が落ち込みました際には、公債依存度の五%目標というものについて、ややこれを緩和してもよろしいというような趣旨の建議もいただいたことがございます。いずれにいたしましても、借金でございますし公債でございますので、公債依存度を少なくし、財政の弾力性を持たせるということにおきましては、建設公債といえどもこれは減額をしていくべきものだと考えております。特にこの特例公債につきましては、ここ一両年の異常な景気の停滞によりまして、家計も企業も苦しんでおると、そういう中での一つの、景気の回復を図るための一つ経済政策としての判断で出す赤字国債でございますので、このものにつきましては、再三当委員会でも御説明申し上げておりますように、なるべく早い機会にまず赤字国債から脱却する財政になる、次いで建設公債の問題でございますが、これはそのときそのときの社会経済情勢にもよりましょうが、やはりこの建設公債といえども依存度は少なくしていくような財政の方が望ましい姿であると、かように考えております。
  141. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま理想的なことは言われましたが、現実問題としては四十年の赤字国債は返せたにせよ、建設国債というのはその後、ずっと金額的にはふえてきておるわけでして、したがって、今後の見通しは非常に——先ほど来これはもうここでずっと議論されてきましたけれども、大臣はかなり楽観論みたいな気がしてならぬのですよね。その点で、大きなことは言えぬということもおっしゃいましたし、はっきりとしたことも言えぬともおっしゃっておりますけれども、実際これからを、将来を展望した場合、私はそう簡単なものではないと、こう思うんですよ。そういった意味で、来年度予算の編成、それから二年ぐらいしたら返せるというふうな自信がおありのように思いますけれども、ちょっとその辺も大変ではないか。いまの建設国債というのは、かなりだんだんふえていくんじゃないか。特に来年度予算で公共事業の伸びは、二〇%と言われております。これまた相当な伸びになっておるわけですが、大蔵大臣は大分がんばられたけれども、くどかれたみたいな、こう新聞報道によりますと出ておりますが、そうしますと、来年度当初から出す赤字国債、それから建設国債、それがその次もそうなってきますと、さっきのアメリカのようなことに、長期の赤字財政、長期にわたる赤字国債発行、こうなってしまうと思うんですね。その点具体的な歯どめというのは本当にどうされるのか、はっきりしないまま来ているわけですね、この委員会でも。だから、償還計画を明らかにせよと私たちは主張したにもかかわらず、償還計画きょうはついに明らかにされなかった。あの補足説明で終わりと。その後の大臣の答弁でも依然としてはっきりしない状況です。その点重ねてこれからの展望をきちんと述べていただかない限りは、やっぱり私たちはこのやむを得ない国債と言いながら、国民の最後は負担になってかかるわけですから、その点をもう一度——何度も重ねて恐縮ですけれどもお伺いして、質問は次に譲りたいと思います。
  142. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) この際、今後の経済の展望、財政の展望を明らかにいたしまして、御得心がいくような解明を加えてまいるという責任が仰せのように私どもにあるわけでございます。私どももそういうことを明快にやってのけて御協力を得なければならぬと思うのでございますけれども、事態が内外、大変余りにもむずかしい事態でございますので、矢追さんのおっしゃるような展望を明らかにしてまいるには、余りにも不確定要素が多過ぎるわけでございます。したがって、今日内外の状況を踏まえた上で、政府で約束ができるぎりぎりの限界まで、政府は国会に対してお約束を申し上げて御理解を得ようと努力をいたしておるつもりでございます。それがなお国会のお立場から見ますと、不十分であるということはよくわかります。したがって、この問題につきましては、今後の課題といたしまして、逐次材料を整えまして、経済、そしてそれとの関連におきまして財政の展望を、逐次明らかにしながら御審議を願わなければならぬと考えておるわけでございます。  第二に困難な理由は、今日財政政策にしても、経済政策にいたしましても、非常に大胆に弾力的な政策が機動的にとることができればよろしいわけでございますけれども先ほどあなたがいみじくも取り上げられた硬直化問題というのが各方面にわれわれのくびきになっておるわけでございます。財政の場合も、積極財政をとるか、消極財政をとるかという前に、どんなに苦しい場合でも約束手形を落とさにゃいかぬというような荷物を背負っておるわけでございますので、われわれはそういう過去を背負っておるわけでございますから、その重い荷物を背負った立場で今日の事態に対処せにゃならぬという制約を持っておるということを御理解いただきまして、これは政府に御同情をお願いするわけではございませんけれども、現実の場合はそういう制約を受けておるんだということは、少なくとも御理解をしておいていただきたいと思うのでございます。  来年度につきましては、すでに予算も具体的な仕上げの段階に入ってきたわけでございます。残念ながら来年はまだ景気の回復が思わしくございませんし、したがって、赤字公債からの脱却の方向をとるどころか、むしろ依存率が高まるというような傾向にありますことは非常に残念に思いますけれども、しかし、これは今日経済を支え、経済回復の軌道に乗せるためにどうしても通らなければならぬ道だと考えておるわけでございまして、われわれの財政政策を通じまして経済に活路をもたらし、来年は経済活動の水準を引き上げて、そして歳入を確保する道も培うということになり、明後年以降漸次減債政策をとってまいる、公債発行を減らしてまいるような方向にぜひ持っていきたいと考えておる次第でございます。
  143. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、国債の流通市場の整備の問題について少しお伺いをいたしますが、まず、現在の国債引き受け方式を続けていった場合、資金ポジションや適正預証率などの関係から、都市銀行は五十一年度には一兆円、五十二年度には一兆一千億円、五十三年度には一兆三千億円の国債を流通市場で売らざるを得なくなるという意見が出ておりますけれども金融機関の流通市場への売却については今後どんなようにお考えなりますか。
  144. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 今後の国債発行のボリウムにもよることでございますけれども、銀行がシンジケートを組みまして国債消化しました場合におきましては、先ほど来大塚委員から御質問がございましたけれども、一方においては成長通貨の供給源としての買いオペによる流動化というものがございますが、またその他の手段としてはコール等を取り入れる場合の有力な担保になるというようなことでもって、国債を保有しているということは銀行業務上から言いますると、ある種の流動性と申しますか、資金供給力を持っていることになるわけでございます。必ずしもこれを市場に売却しなければ業務ができないということにはならないと思います。  ただ、将来の問題として考えます場合には、国債の流通市場というものが非常にまだ小さくて底が浅い状態でございますので、これの広がりを広くし、また深さを深めるというような育成強化の必要があると思いますが、そういう整備の状況とあわせて一般市中金融機関が、これも市場に売却することが可能なような形を整えるということは必要であろうと思っております。
  145. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大体どれぐらいの目標で整備をおやりになりますか、たとえば五十一年度においてはどれぐらいの整備をやっていらっしゃるか、この点いかがですか。
  146. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 直接所管ではございませんけれども、これは一年後に何千億ぐらいの商いであるとか、何兆円ぐらいの商いであるとかいうようなことを目標としていろいろな施策をするのにはやや不適切でございまして、その市場を広めていくためのいろいろな方策、手段をこれは証券局も同じ目的のために研究をしておるわけでございますけれども、理財局といわず銀行局といわず、全体がそういうような現在の状況よりも一歩でも着実にこれを広げていくというようなことを考えていかなければならないと思っております。
  147. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この国債を自由相場での売買にしたらどうかというような声も一部にあるわけですけれども、この点についてはどうお考えになりますか。
  148. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) これはいままでほとんど市場の売却というものが行われてこなかった状況でございますから、一挙にこれを自由に売却をしてそこで自由な相場をつくるということは、逆に正当な国債に対する相場づくりを妨げることになるのではないかと思います。と申しますのは、金融機関が多くのものを消化しております場合には、そのときどきの金融市場の波、これに大きく影響されて、ともすれば一方通行になる可能性があるわけでございます。一方において売りがあり、一方において買いがあるというような状態でありますると、完全に自由にしても不適切な市場形成が行われるということを心配する必要はないのでございますけれども、現状のままいきなり一挙にそういうようなことをするというのは、適正な市場価格の形成をむしろ妨げるのではないかと、こう考えております。
  149. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これから大量の国債発行になった場合、大蔵省も非常に新聞等でも宣伝をされて、市中消化の中で特に個人の消化というものに努力をされておりますが、いままではどうしても日本人というのは普通の貯金の方に全部回してきたのを、国民の資産保有の形態としての債券というふうなことに少し変わっていくような方向になるかと思いますけれども、そういうことは好ましいことであるのかどうか。非常にそういうふうな割合が大きくなることは好ましくないという考えもあるわけですね。そういった点についてはこれはどういうふうにお考えになっているか、要するに資産形成という面からですね、いかがですか。
  150. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 個人の金融資産というものは、これは国によっていろいろ違いますけれども日本のようにいわゆる先進国型になっておりまするところでは、やはり多様化していくというのが常識であろうかと思います。したがいまして、過去の歴史を振り返ってみましても、かなり戦後日本の国民のニーズも変わってき、多様化しておりますが、それにこたえてやはり金融資産もふえております。したがいまして、国債が今後国民のニーズにこたえて、その多様化された金融資産の中で金融商品として国民のニーズにこたえていくということは十分あり得ることだし、また当然でなかろうかと思います。  ちなみに、いろんな債券ございますけれども、公共債あるいは公社債いろんな分類がございますが、株式等に比べまして最近の国民の金融資産の中で公社債に対する志向というものはきわめて旺盛でございまして、毎年相当の量でふえております。したがいまして、私は国債は十分こういうものにこたえていくべきであるし、またいくであろうと考えております。
  151. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 たしかこの前見せていただいたデータでは九月ごろまでのしかなかったと思いますけれども、かなりいま言われたように、いわゆる国債を個人で買う人がふえてきておりますけれども、しかし、それを買っておる人というのは大体どういうふうな人なのかということを、私も詳しいことは調べておりません、もしお調べになっておればお答えいただきたいんですが、やはりかなりお金のある人が買っておるように思うわけですね。いわゆる庶民というのは果たしてどの程度まで買えるのか。そうなりますと、いわゆる本当の一般に浸透していくというのにはまだかなり時間がかかるような気がするわけですが、その点はいかがですか。
  152. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 預金なり債券というものを国民が持っております場合の、一人当たりどのくらいかとか、一口当たりどのくらいかというのは大変間違う場合がございまして、たとえば郵便貯金の口数と金額とを割ってみました場合と、実際にそのスリーピング口座というのがかなりございますので、なかなかその口座を的確につかまえることはむずかしいわけでございます。したがいまして、国債でも一口当たりでいわゆる単純な計算をいたしてみますと、平均して約十万円以下の少額ということになるわけでございますが、ただ、国債にはいわゆる累積投資というのがございまして、月々の積み立てで買っていくとかいうような小口の投資というものはかなり発達いたしておりまして、大体いわゆる純然たる個人消化であり、主としてサラリーマンの方々がそれに参加しておられるということでございます。したがいまして、これから先もこの累積投資というのは一番国民になじんでいく、いわゆる庶民になじみやすい品物ではないかと考えておりますが、一口当たりの購入額がいまどのくらいかといえば、単純な計算で見ますと約十万円をちょっと切っておるという状況でございます。
  153. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 将来はかなりそれではいわゆる一般の方にも買ってもらえるという自信があるわけですか。
  154. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国債は、御承知のように税制上の優遇もございます。いろいろな利点を持っておりますし、何せ、やっぱり国が発行する一番信用のある債券でございますから、私どもは国民が十分認識してくれれば持ってくれると思います。ただ、非常になじみがいままでは薄かったと思います。したがって、最近はPRにもかなり熱を入れておりまして、私どもはかなり個人が国債の認識を深めてくれれば相当消化はできると考えております。  ただ、個人の消化というのはきょうからあすに倍々というふうに倍にふえていくものではございませんで、やはりじみちな売り方、それからじみちなPR、そういうもので形成していくべきものでございまして、圧倒的な条件等をもって国が売りまくるというような形のものは避けていかなければいけない。究極的には公社債市場の中における国債の信用なり、りっぱな銘柄というものが出てくること、それが一番大切ではないかと考えております。
  155. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 しかし、庶民感情といいますか、大体私も普通の人に聞くと、やっぱり国債というのは十年だからというのが声としては非常に強いですね、長いというのでね。そういった点ではほかの方が得だという感覚が出てくる。そういうことから、この前もこの委員会質問いたしましたが、中期国債という問題が出てきたと思うのです。それは非常に証券界等からの反発があるということで、まだ大蔵省としては態度を決めておられないようですが、そういう点は結局どういうふうにお考えになりますか。もうちょっと、いわゆる国民が得だといいますか、利息としては高いけれどもやっぱり十年というのは長いと。じゃ五年でいくか、しかし、それなれば反発もあると。そういった点で、これを浸透させるという上から考えれば、短期ということもいいなと思うのですけれども、その点はいかがですか。
  156. 原徹

    政府委員(原徹君) 大量国債発行するに際しまして、私どもも個人消化というものについてどう考えるのか。確かに日本金融資産の構成を見ますると、これは貯蓄でございまして、債券の方は、言うなればキャピタルゲインとかロスとかがございます一種の投資でございます。どうも日本のそういう貯蓄を見ますると、セービングと申しますか、貯蓄、そしてそのために金融機関に貯蓄が集まる。で、国債はやはり貯蓄の範囲内で消化をしなきゃならないということになりますと、やはりその金融機関中心の引き受けということでやっていかなきゃならないけれども、そしてまたいま個人消化という点につきましては、従来一割というのを目途にやっておりましたわけでございますが、やはり証券局長が申されますように、じみちに着実にふえていく。それは現実の問題としてじみちに着実にふえております。だから、それでもういいのかということになって、またさらに一工夫要るんじゃないかと、先生の御意見で、中期債というような御意見が国会でもございました。いろいろ十一月から大量発行するに際しまして検討いたしましたわけでございますけれども、一応十一月までには少なくとも検討の結論は出ない。結局、貯蓄国債と申しますと、一つは売り出し発行との関係もございまして、市場性がないというようなものであれば買い取りをしなきゃならないというようなこと、そうしますと、それは財源としてどのぐらい見込めるかという見込み方とか、あるいは五年にしますると財政の負担が重くなるとか、あるいは金利を非常によくすれば、条件を非常によくすればそれは売れることになるかもしれないけれども、これがいわゆる金融情勢にどういう影響を与えるかというようなところ非常に問題がございます。また、その貯蓄国債ということになると、日本では郵便貯金というのがそういうものの機能を果たしているということもございます。そういうことで十一月にやるときには一応見送ったわけでございますが、まださらに一工夫する必要があるんじゃないかということで、ただいまさらに検討を続けている、こういう段階でございますわけでございます。
  157. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  158. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記起こして。
  159. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 今回の特例国債それから前回の補正で増額をされた建設国債、こういうものも結局そのねらいは景気刺激策だろうと思います。その大前提、景気刺激ということになれば、一体どうやって国民の所得をふやすかということが大きな問題だと思います。したがって、景気刺激策の考え方の大前提というものは最終需要をどう起こすか、こういうことが一つあるだろうと思います。きょうの質疑の中でも大幅な最終需要を喚起するためには減税が必要である、こういうことが叫ばれておりますし、自民党内でもこの要求がかなり高まっているということを伺っております、明年度について特に。そういう減税に見合うだけの財源をということで、国債ということが将来考えられるだろうかと、つまり減税国債ということをこれから先お考えになることがあるかどうか。これは非常に景気刺激の問題としては、また国債運用の問題としても大きな問題でございますので、それをまず伺いたいと思うんです。
  160. 山内宏

    政府委員(山内宏君) ただいまの御質問は、景気を刺激するために公債発行いたして減税をやった方が効果的であるのか、あるいは公共投資その他に回すという意味での公債発行した方が景気刺激のために有効であるのかというふうな御質問であろうかというふうに考えるわけでございますが、それに対しまして私どもといたしましては、所得税減税の場合には、これは減税分は一たん個人のポケットに入りました後でその一部が貯蓄に回り、自余の部分が消費に回るという形に相なろうと思いますので、現在のような情勢、特にわが国の貯蓄率を見てみますと、諸外国に比べましても非常に高い状態でございますし、わが国の時系列で見ましても二四%ないし二五%と最近は非常に高まっております状態から見まして、減税の額のうちのかなりの部分が貯蓄に回ってしまうというふうに予想される次第でございます。そういうふうな観点から、私どもといたしましては、公共投資に回した方が、所得税減税に回しますよりも景気刺激効果が大きいし、かつまたその効果の上がり方が即効的であるというふうに判断をいたしておる次第でございます。
  161. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの答弁でそれはわかるんです。国債の国民所得に与えるいわゆる効果、財政効果、そういうものは減税国債という国債によって減税を図るよりも、支出国債として公共投資そのほかの方に回すという政府の財貨サービスの支出増加に向けた方がより効果のあることは定説でございます。しかし、これは政治的な問題の判断だと思うんですね。自民党内で言われている大幅な減税、こういうこともそういうような財政的効果の問題よりも政治的効果の方のことが大きいのじゃないかと思うんです。私どもとすればやはりこれからの最終需要喚起には遠回りかもしれないけれども減税の方にウエートを置く、こういうことがここでは必要だろうと思いますし、前にも私も質問をしております。  そこで、これは政治的な判断の問題ですから大臣にお願いしたいのですが、そういう減税国債のような発想は明年は用いていかないかどうか、その点の考え方をちょっと伺いたいと思います。
  162. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 仰せのように党内にもそういう意見がございますし、世間にもそういう御意見があることは承知いたしておりますが、私ども財政政策の問題として一つの検討に値するテーマだとは思いますけれども、明年度という限られた時点におきましての政策といたしましては、減税国債というようなものを取り上げてまいるという考えはありません。
  163. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次は、国債市中消化の問題ですけれども、それを進めるために二つの方法がある。一つは、いままでの債券を減らしても国債に買いかえていこうというような、こういうふうになれば確かにこれは消化が進むわけでございますが、そうするためには、国債の方が利子が高くほかの債券の方が相対的に利子率が下がったというようにしなきゃならない。これは非常に投資を抑制するタイプになるだろうと。もう一つの行き方は、国債を含めてありとあらゆる債券が非常に魅力的になるというような安定した資産になるような方法に、これはもうすべての有価証券の利子を上げていくということになるわけですけれども、こういう二つの方法があると思うんでありますが、一体、流動性を高めなきゃならないということから、先日の公聴会でも市場実勢に合わせた発行条件をつけろということが言われております。言いかえれば、そういう実勢に合わせた発行条件といえば古い債券はどんどん買いかえていくということでしょう。有利な国債にかえるという意味を含んでいるんだと思いますけれども、そういうような国債を安定した有利な財産とさせる、資産とさして保有させる、そのために、先ほど申し上げた二つの条件からすると、やはり国債だけうんと上げるか、ほかの債券も一緒に上げるか、いろいろ利子のことで考えなきゃならないんですが、どういうように流動性を高めるためにしていこうとお考えですか。
  164. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 債券の金利は、いま先生の御指摘のような前提がございますけれども、なかなかむずかしい議論でございまして、資本市場の中に流れ込んでくる資金、それからそれを受けていく側、これはまたそのときどきによっていろいろ違うわけでございます。たとえば預貯金金利に比べて債券金利の方が有利だという場合に、その資金資本市場の方へ流れてまいります。その逆の場合もあるわけでございますが。また債券市場の中でも債券の金利の差によって移動もございます。したがいまして、それはそのときの客観的な金融環境というものがいろいろ左右させるわけでございますから、一概にこれがどうだと、こういうことは言えないかと思います。ただ、最近の例を申し上げますと、国債等いわゆる長期金利の改定に伴いまして債券金利を最近十一月に動かしましたときの状況は、従来に比べてやはり国債がややもすれば条件が悪いというような、まあ、巷間そういうような意見もございまして、その辺をおもんばかりまして、一般の債券金利を下げますときに、国債の下げ幅をやや軽くして、ほかの債券の金利の下げ幅を大きくするということにおいて、比較的な関係では国債が有利になったというようなことをやって国債の魅力をつけていったということはあるわけでございます。ただ、これはあくまでも相対的な関係でございまして、それを国債を持つ方の側から見ますと、ただ、金利だけの問題ではなくて、国債には国債のやっぱり魅力があるはずだと、いわば税の特典もあるというようなことでございますから、一概に金利だけでは言えない。それからまた一方、国債が余りに出過ぎて民間債が引っ込むというような形は、一方いまのような資金が、民間資金がやはり相当活発に動きますことは、民間資金のパイプをキープしていくということは、やはり景気刺激という面にもつながるものであるはずでございますから、そういう点で事業債、民間債を余りにも条件を悪くしてはいかぬというようなことでございまして、一足す一は二というふうな形にはなかなかなりません。しかしそれはやはり金融全般、もちろん銀行金利も含めまして全般でやはりバランスをとっていくべきであるというふうに考えております。
  165. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまので一つ関連して出てきたんですけれども、いまのお話ですと、利子の問題でも国債だけが優遇されていくような形をとる。これは恐らくほかの債券より移り変わってくるということは当然起きるだろうと思いますので、そういう点が実際どうなのかということと、いま一つは、それだけの問題じゃなくていわゆる税の免除の問題があります。そういう問題があるというお話です。確かにそれは資産としての含みみたいな、優遇みたいなものでございますけれども、これについても現在よりはさらに拡大をしていくとか、地方債と国債というふうにいろいろこうございますから、そのおのおのに付与していくとか、そういうことは考えておられるのかどうか。
  166. 原徹

    政府委員(原徹君) 国債の魅力を高めるためにどうすればいいかということで、私どもも、大量発行するにつきまして、例の非課税限度を上げるべきかどうかということを省内で大分検討をいたしたわけでございますが、やはり税制の問題として特別措置などはなるべく整理していく方向のときに、国債を大量発行するにしても、国が非課税限度を上げるということはやはり適当ではないだろうということで議論の結論が得たわけでございます。  そういうことで、それじゃ税以外に何があるかということになりますと、先ほど来議論のございますように、やはり十年というのは長過ぎるという感じが、個人で買うという方たちにかなりそういう意見もあることは事実でございます。そういう点につきましては十一月までに結論を得られなかったんでありますが、さらにただいま何か一工夫できないかということで検討を続けている段階でございまして、まだ大蔵省としてその結論は出ていない。ただ、先生おっしゃいますように、国債条件を余りよくすれば、これは他の金利バランスとの関係がありまして、金融市場に一種の、こちらの方に、民間資金を圧迫することにもなりかねないし、その辺が非常に、国債はふやさなきゃならないし、しかも、民間金融は圧迫しちゃならないしという、非常にむずかしいと申しますか、点がございますので、それがまたその条件にはね返ってくるものですから、先般も国債金利を微調整と、あの程度のことになるわけでございます。今後ともやはりそれは金融情勢金利バランス考えて、民間資金の圧迫にもならない、しかし国債はふやすと、二律背反的でございますけれども、ひとつ全体バランス考えながら条件は決めていきたい、そういうふうに考えております。
  167. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それじゃ、まとめて二問いたします。  いまので地方債との両方の非課税限度の問題はどんなふうな考え方を持っておるか、これをひとつぜひ伺いたいと思います。  それからいま一つ、これは証券局長の方になるか、まあ理財局になりますかね。株式の場合は、インフレになっても、いわゆる事業収益といいますか、事業実績という、こういうものに基づいて株価というものがある程度市場の趨勢と両方でございますけれども整合されてきている。わりと物価に対しての影響というものの受け方が少ないわけですね、そういうように判断がされます。つまり企業の実績そのほかの本当の実勢に伴うわけです。国債の場合の企業実勢といえば、国のことでございますから、本当に安定していなければならないわけでありますけれども、長年たって物価が上昇をすればいわゆる値打ちが減ってまいります。どうしてもそういう点でそれを排除するということを考えなければいけません。貨幣と同じように国債の価値も相対的に物価上昇とは逆に言えば下がってきますから、やはりその点を調整するためには、物価スライドの国債ということを考えなければ、これから先個人保有をふやそうというふうなことになればなるだけ、私はそういう点の配慮が大事じゃないかというふうに思うんですけれども、いまの申し上げた二つの点、ぜひお答えをいただきたいと思います。
  168. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 御承知のとおり、現在の国債、少額国債の非課税制度といいますのは、建設公債発行されます異常な時期でありましたところの前回の不況期におきまして新たに創設された制度でございまして、その際、そういうふうな事情を勘案をいたしまして、通常の国債あるいは地方債あるいは社債等につきましては、それまでありましたいわゆるマル優——少額貯蓄の非課税制度でございますが、それのほかに上積みといたしまして、国債についてだけ特別にこういう制度を設けたものでございます。現在のところ、私どもといたしましては、その制度が有効にワークをしているというふうに考えますので、御質問の点につきましては、今後といえどもそういう形でやってまいりたいというふうに考えております。
  169. 原徹

    政府委員(原徹君) ただいまお話にございました物価スライドの国債ということでございますが、去年狂乱物価がございましたときにいろいろ物価スライド云々の話が国債に限らずございました。しかし、そういうことがございまして、いろいろ総需要抑制政策をとった結果物価は非常に鎮静化したというのが現在の状況でございます。まあ物価スライド国債というのも、私はどうもあんまりとるべきではないので、やはりそういうものでなくて、一般の金利あるいは年限というような発行条件考えていくべきであるし、それでまあやっていけるのではないかというふうに考えております。
  170. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 地方債の件で、地方債を別枠で私は考えるべきではないかということなんです。その点の御答弁をいただきたかった。地方債は——国債国債の非課税がありますよ、地方債別にしてそうしていくべきではないかと。それはかなり土地等を地方で提供したり、地方公共団体も公共投資として出している人がずいぶんおります、公共事業に。そういうのに対しての手厚いことを考えれば、そういう点もこれは考えなければならないところに来ているだろうということで、そういう理由があるわけでございます。  それからいまの答弁で、いわゆる物価のスライド云々の排除の問題が、発行条件とか新しいのにどんどん切りかえればというような意味答弁だったんですけれども、そういうことでなくやる方法がほかにおありになるのかどうか。実際ずうっと持っていて、買いかえなかった場合には価値が減ってくるわけでございますから、そういう点をどう考えて埋めようとしているのか。その辺のことがないと、これはまずいと思うんですが、その辺いかがでございましょうか。
  171. 山内宏

    政府委員(山内宏君) いまの国債の御質問につきましては、新たに地方債の点につきまして、別に地方債の枠を設けよという御質問でありまするならば、これは先ほどからも御議論に出ておりますように、この際、全体として利子の非課税の枠をふやすのは適当ではあるまいというふうに考えます。現在の枠で、地方債も含めまして各種の預貯金に対する利子の非課税制度としては十分であろうかと考える次第でございます。  なお、現在の国債非課税枠に地方債も含めて考えたらどうかという御質問でありまするならば、これはさらに実態を調査をいたしたいと思いますけれども、現在までのところ、私どもといたしましては既存のマル優制度、いわゆる少額貯蓄非課税制度で十分カバーをしておるんではあるまいかという判断に立っておる次第でございます。
  172. 原徹

    政府委員(原徹君) ただいまのお話は、まあ株については事業の収益を反映すると、あるいは物価の上がる場合に株価も上がるというようなことがあるから、そういう式のことを株との関係において物価スライドみたいなことを考えたらどうだというお話のように承りましたけれども、そうなりますと、それはそもそも、まあ株というのは利益が出るし損も出ると、その程度が債券よりも幅が多いということでございます。だから、キャピタルゲインも大きいけれどもキャピタルロスも大きいと。で、債券については確定利付でございますから、まあインベストメント——投資ではあるわけでございますけれども、そういう意味でキャピタルゲインないしロスの幅というのはおのずから限られてくるということになりまして、しかも、その金利が下がる場合にはキャピタルゲインが出るという理屈になるわけでございます。上がる場合には逆になるということでございますから、今後の話を——これ、どう考えるかによりまするが、私もせんだってボーナスもらって国債を買ったわけでございますが、その買う立場として考えてみますると、私は、これは個人によって違うかもしれませんが、まあ今後の金利水準、十年間でございますが、十年間の金利水準を考えたときに、もっと金利は、多分まあ成長が余り高くないということであれば、いわゆるその投資というのは余り従来よりは多くない、民間資金需要はそれほど多くないということになるはずでございますから、まあ将来のことを考えると金利は低下傾向ではなかろうかというふうな判断をいたしまして私は買ったと。だから、十分ペイすると実は思って買ったわけでございますが、そういうことでございますから、どうも株と一緒にその物価スライドということは考える必要はないんじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  173. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 まず、大臣にお伺いいたしますけれども、この法案がきわめて重大な法案であるという御認識はお持ちでしょうか。
  174. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) さよう心得ております。
  175. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 まあ大臣もお認めになるとおり、この法案の審議は史上最大の赤字国債発行にかかるものでありますし、財政法四条の趣旨を根底から覆すばかりでなくて、今後の日本経済と国民生活に重大な影響をもたらすわけであります。このまま進みますと、五年後には国債発行残額七十兆円、国債発行額十四兆円になりまして、この財政では、先日の参考人の招致の際にもはっきりしましたけれども、よほどのインフレか、世界に例のないよほどの増税以外にないと、こういったことも明らかにされておりますので、したがって、この法案について国会でどのような審議がなされるかということは、この国会審議の歴史の上でも、また日本財政史上にも顕著に残る問題だと思うんです。ところが、いま大変重大な法律違反が行われているわけです。それは、御承知のとおり国会法第五十一条第二項、ここでは総予算及び重要な歳入法案については、前項の公聴会を開かなきゃならないと公聴会の開催を義務づけているわけです。にもかかわらず、この公聴会が衆参両院合わせてついに一度も開催することなく、この法案を議了しようという、こういう状況であります。国会が法無視を行い、憲法で保障された国民の権利を侵害する——公聴会というのは国民の権利ですから。ということは許されないと思うのです。悪法も法なりと、法を守れと、こういうことを言っておったのは、つい最近でも自民党政府だったと思いますけれども、国会法五十一条は悪法ではないと思います。国民主権主義、さらに財政民主主義、さらには健全財政主義を幹とする重大な規定だと思います。悪法を守れと叫ぶ人が、国民のために存在するこの規定を踏みにじって、平然と審議を進めるということは、大変疑問だと思います。  そこで委員長にお伺いいたしますけれども、このような国民主権主義への挑戦だと思うのですが、こういう議会制民主主義に対する重大な侵犯、これに対してひとつ納得のいく御説明をいただきたいと思います。
  176. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) この件につきましては、理事会でも御協議を願ったところでございますが、委員長としての判断は、確かに国会法五十一条に、重要な新しい歳入法案については、これは公聴会を開かなければならないという規定があるわけであります。そういう意味では、今回の法案が重要な歳入法案であると私も思います。したがいまして、公聴会を開くべきケースに当たる。しかしながら、公聴会を開くべしとする要求が出ました時点には、事実上公聴会が成立するような時間的余裕がないわけでございますから、これはそれについて可能な限りの補完措置を講ずる以外にはないということで、先般、参考人の招致を当委員会において議決をいたしたわけであります。でございますので、この五十一条の規定について、その規定どおりの条件を満たしていないということは事実でございますが、事実上不可能な問題を、事実上補完するための努力をしたということで、私はそれをもって本法案が廃案にすべき性質のものであるとは考えていない次第でございます。また、理事会における御見解もそのような見解をとっていない次第でございます。
  177. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 結局公聴会を開かない理由は、時間がないということと、それから参考人招致で補完されたということであります。  しかし、理由はないと思う。というのは、いまの御説明ですと、公聴会の申し出があったのが時間的に間に合わなかったということなんですけれども、しかし、もともとこれは議員の要求によって開くべきものではなくて、五十一条第二項は、要求がなくても開かなければならぬ問題だと思うのです。私どもは、委員長に対して注意喚起のために、時間的には可能な十二月二十日に公聴会開催を正式に文書で要求したわけでもありますし、また経過をごらんいただければおわかりのとおり、その二十日の理事懇談会でも、理事会に切りかえて委員会を緊急に開催してもらいたい、そしてそこで公聴会開催を決定すべきだと求めました。また、昨日の理事懇談会でも、最大の努力を重ねればまだ可能性はあるということを主張したわけであります。しかしいずれも受け入れられなかったわけでありますけれども、これはむしろ私どもが本来やるべきことをやったのではなくて、元来、委員長がやらなければならぬことについてのことをやったのです。ですから、要求が出たのが遅かったというのは全く理由にならないわけであります。現に、私は最小限五日間の期間が必要だというのに、その五日間の期間がまだある。ですから、本当に真剣に努力をすれば可能だったと思います。そういう点では、要求が遅かったというのは全く理由にもなりませんし、またそれを先ほどのような経過で否決されたのは大変遺憾だと思います。また、そういう経過の中で、どうしても不可能だというのであるならば、この法案はもともと審議未了の運命にあったと思うんです。大臣、これはそういう法案であるということをひとつ御認識いただきたいと思います。ですから、これは廃案になるべきものだと思います。  さらに、参考人をもって補完したと申しますけれども、これは参考人は実は国会の方から呼ぶものであって、国民が主権者として積極的に参加する公聴会とは明らかに性格が異なるものだと思います。ですから、これは参考人をもってこれにかえることはできない。これは私、先ほど参議院の法制局に確認しましたところ、公聴会に対してそれを参考人をもってかえることはできない、こういう明快な法解釈が出ております。そういう点では、委員長のいまの御説明は全く納得できないわけでございます。  そういう点では、いわばこの大事な規定を委員長が恣意的な解釈をしたということでありますけれども、この規定も、またいまの参議院の法制局の見解も、ごらんいただければおわかりのとおり、全くそういう恣意的な解釈を入れる余地のないものだと思います。問題は、史上最大の赤字公債発行にかかわる審議に当たって公聴会が不必要だということになりますと、これは今後公聴会を必要とする、そういうような歳入法案というのはまずないのじゃないかと思うんです。これ以上のものはなかなかそうあるものじゃないと思います。こういう前例を認めることは、まさに国会法第五十一条第二項を抹殺するような、そういうことを委員長がなすったんだと私は思うんですが、それについてひとつ明快な御見解を賜りたいと思います。
  178. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 前回の酒、たばこ法案のときには、公聴会を開催するに足る時間的余裕がございまして、これは公聴会を開催をいたしたわけであります。今回の場合は、参考人招致を決定をいたしました前の段階公聴会を開けるかどうかということを理事会において検討いたしましたが、その際にも、再延長以前の日程の中では公聴会の開催は不可能であるということで、理事会におきまして参考人の招致を決定をいたしたわけであります。  で、二十日に御提示になったということでございますが、これは申すまでもなく、委員会において議決をしなければ、委員長、勝手に公聴会の開催を決定するわけにはまいりませんので、二十日の時点におきます段階におきまして、委員会開催の予定というのが実は非常に各党の間で意見の対立がございまして予定されないということでございましたから、これは現実には本日の理事会まで持ち越さざるを得なかったということであります。  そういう時間的余裕がないという場合に、私は公聴会を開かなければならないという国会法五十一条の規定が、私は法案を廃案にすべきほどの強行的な規定であるとは解釈をいたしておりません。この規定の解釈につきましては、いろいろな見解がございましょうが、私は、国会の実際の運用の立場で言えば、弾力的に解釈してしかるべきものと考えております。
  179. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 重要な歳入法案という理解をした以上は、後は規定をごらんいただければわかるとおり、開催しなきゃならぬという、いわば義務づけですね、これがどうしていま言われたような方法で補完できるのか、補完できるという法的根拠が全然明らかでないと思う。委員長はただ補完できると言っているだけでありますけれども、なぜ補完できるのか、そこの御説明がないと、全然納得できないわけなんです。
  180. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) これは五十一条の規定を、私の解釈では、これは法文に明記はしてございませんけれども公聴会が可能な、物理的といいますか、時間的に可能なときには開かなければならないと読むべきであると私は思う。ですから、時間的に公聴会を事実上やることができない場合に、これはそれにかわる審議に資するための参考人の招致というのは、委員会運営の手続上公聴会にかわる補完的な役割りを果たし得るというのが私の解釈でございます。
  181. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 国民の権利に直接かかわらないものでありましたら、そういう解釈の余地もあると思うのです。それも問題だと思うのですけれども。しかし、公聴会というのは、主権者である国民が将来自分の方で税金から国債を返さなきゃいけませんから、直接自分に利害関係がある、だから、国会へ行って意見を述べようという、いわば国民の権利です。ですから、委員長のその行為は、国民の行為を奪ったことになるのですね。参考人とは全然質が違うんですよ。なぜそれができるのか、国民の権利に直接かかわることはこれは強行規定ですよ。そこがなぜいま言った解釈が出てくるのか、もう一度御説明いただきたいと思います。
  182. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 私の見解は、ただいま申し上げましたとおりでありますが、これは私の見解でございますけれども、この考え方に立って委員会の運営を進めるということについては、理事会におきまして一致した意見でございます。委員長の行動はというところは、これは理事会の決定に従って私はやっておるわけでございますから、私の見解が理事会においても理解をされてこの運営をやっておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  183. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 理事会で確認されましても違法なことは違法で、これは決して支持されないと思います。  この問題ばかりやっておってもこれは時間の関係がありますので、残念ながら打ち切らざるを得ませんけれども、私は、これは委員長の勝手な解釈だと、こう考えます。ぜひそこのところは、参考人をもって公聴会にかえるかどうかの解釈は、直接法制局にいまからでもひとつ確認していただきたいと思います。まだ私の質問時間はありますから、その間にひとつぜひその部分について御確認いただきたいということを申し上げて、大臣の方の質問に移りたいと思います。  大臣よろしいですか、いまの議論をお聞きになってもおわかりのとおり、どうもいままで、この法案を通すことを前提にしまして、そしてそのためにどうするか、こういう議論をしてきたのです。国会法五十一条第二項など、現にある審議のやり方方法、ちゃんと法律に決まっている、それに基づいてどう審議するのかじゃなくて、通すのが先になっている。そういうことで今日まで進んできた、安易な議論がなされてきたわけです。その理由は、この法案が重要だというのです。大臣も先ほど言われましたし、それはしばしばいままでもそういう意見は述べられてまいりました。だから、早くせいということでありますけれども、しかし問題は、赤字国債発行の結果によって国民生活にどれほどの影響を与えるかという、こいう問題だと思います。これは、大蔵省の平井平治さんという方が、大分前にお書きになった「財政法逐条解説」、これは昭和二十二年で、当時の大蔵省主計局長の野田卯一さんが序文で大変絶賛している著書でありますけれども、この中でこう書いてあります。「従来のように公債によって戦争を計画したり、インフレーションを招来して大多数の国民を塗炭の苦しみに突きおとしたり、国民の知らぬ間に、煙草の価格や通信費や鉄道運賃が何倍にもなったりすることなどを一切禁止」するんだと、これが新しい財政法の精神だという、こういったことをちゃんと書いてありますね。これが財政法の私は基本だと思うわけです。これをさらに手続的に保障したのが、いま私問題としました国会法第五十一条第二項だと思うのです。まさにこれこそ、国民主権と財政民主主義の基本を守るかどうかという、こういう問題だと思います。こういう点で、今回その大事な、国民が直接公聴会をもって参加するということ、こういう大事なものが欠けたままきわめて重要な法案が通過しようとしている、こういう事態だと思うんです。私は、大変残念なことでありますけれども、こういう手続の欠陥があった以上は、大臣、こういう法案を撤回をする、これが当然だと思いますけれども、いかがでしょうか。
  184. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 国会の御審議の手続は国会の問題でございまして、私が介入すべき問題ではないと思います。私は、この法案は、今日の事態に処して必要欠くべからざる法案と考えておるわけでございまして、撤回するというようなことは毛頭考えておりません。
  185. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 まあ必要欠くべからざるものですから、重要法案として出したんだと思うんですけれども、その重要な法案ですね、大臣の方にすれば、金が入ってくるんだからこれはもう大変貴重な法案だと思うんですけれども、国民にとっては、その影響によってインフレになり、将来税金の中からそれを負担しなければいかぬという、こういうものですね。それが違法に行われたと、先ほどの桧垣委員長の発言を見てもおわかりのとおり、これは元来国会法の第五十一条によって公聴会を開かなければいかぬ事例である。後は勝手な解釈でありますけれども、しかし、それはだれが見ても勝手な解釈であることは間違いないところですよ。となりますと、違法に行われたという事態について一体どうお考えなのか。それは国会の問題だと言って過ごせるものじゃないと思う。国会で違法に行われた法案について、それじゃまずいから出直しをしよう、こういうお考えがないかどうか、これが私の質問です。
  186. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 国会の議事の手続でございまして、これは国会でお決めいただくことで、政府がとやかく言う性質のものではありません。
  187. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私の質問は、その解釈について聞いているのじゃなくて、こういう事態になったので大臣どうお考えかということ、こういう質問なんです。
  188. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 一日も早くこの法律は通していただきたいと思っております。
  189. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 どうも全然かみ合いませんが、そういう法案であるということは十分御認識いただきたいと思います。  そこで、次の質問に入りますけれども国債整理基金特別会計法第二条第四項がございますが、ここに交付国債は第二項から除外しておりますね。第二項というのは一・六定率繰り入れという規定でありますけれども、交付国債の場合にはこれは除外しておるのです。その理由はどういう意味でしょうか。
  190. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 専門の法規課長がおりますので法規課長から答弁させます。
  191. 佐藤徹

    説明員(佐藤徹君) 説明させていただきます。  国債整理基金特別会計法の御指摘の条文、第二条の四項でございますが、これは、現在定率繰り入れ制度を百分の一・六ということでやっておるわけでございますけれども、交付国債と申しますのは、いろいろの種類がございますが、御承知のように非常に特殊な国債でございまして、国債発行して国が収入を得るという目的で出しておる公債ではございません。たとえば遺族債券でありますとか農地債券でありますとか、国債を交付することによって国が債務負担をするという性格の国債でございます。したがいまして、一般に国が歳入目的をもって出す国債と同様に管理をすることには適さないということから、これは定率繰り入れの対象にしないという考え方でこの条文ができているものでございます。
  192. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そういたしますと、国債の種類や内容によってその償還方法が異なると、そういうことになりますね。
  193. 佐藤徹

    説明員(佐藤徹君) 種類や態様によって償還方法が異なるということではなくて、そもそも交付国債と申しますのは、財源調達のために発行された国債ではないわけでございまして、一種の国庫債務負担行為の形態として債券を交付する、そういった種類のものでございまして、一般に財源調達のために発行する国債とは本質的にそこは異なると思いますから、そういう意味で除外をしておるわけでございます。償還方法が異なると、そういった差に着目したわけではございません。
  194. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この点は私の解釈と違いますけれども、問題は、国債によっていろいろと内容等によって当然償還方法が変わるべきだと思うのです。財政法第四条でもともと赤字国債を予定していなかったわけでありますから、いままでの段階での国債整理基金特別会計法第二条二項は、これはその当時存在しておった建設国債の償還、これについて規定したものだと思うわけですね。この点は前回質問して、その合理的根拠は建設国債発行に見合う公共施設等のいわば償還期間ですね。年数です。それには見合うと、こういったことが明らかになったわけでありますが、問題は、赤字国債については、私は、この特別会計法第二条二項ではもともと考えていなかったんではないか。この法律をつくったときにはそれはもともと頭にない段階でつくったんじゃないか。ですから、赤字国債の場合の償還にはもともとこの規定は当てはまらないんじゃないか、こういう考えを持っておるんですけれども、この点いかがですか。
  195. 佐藤徹

    説明員(佐藤徹君) 御指摘の第二条の二項でございますが、これは昭和四十三年に改正されて現在の規定になっているのでございます。で、御指摘のとおり、四十年に特例公債発行されまして、四十一年から現在の財政法第四条公債が出されるようになったわけでございますが、それに伴いまして、従来ございました繰り入れの率等について検討を加えて、この第二条二項の規定に四十三年に改めたわけでございますが、当時存在しておりました公債は、財政法四条に基づく公債のほかに、四十年の特例法に基づきます特例公債、それからさらには戦前と申しますか、現在の財政法施行以前に出されました公債等も残高として残っております。現在も戦前債は残存しておりますが、それらを含めて第二条の二項で国債全体についていっているわけでございます。
  196. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それでは、昭和三十六年四月一日法第五十六号国債整理基金に充てるべき資金の繰り入れの特例に関する法律というのがございますね。ここではこの償還の問題はどうなっておりますでしょうか。
  197. 佐藤徹

    説明員(佐藤徹君) 戦前と申しますか、大正あるいは昭和の初期から減債制度が非常に目まぐるしく変わっておりますが、根幹となります減債制度は、国債残高の万分の百十六を繰り入れるという制度が根幹としてございました。で、ただこの万分の百十六の繰入額につきましては、そのときどきの財政事情によりまして、暫定的に三分の一にするとか、万分の百十六の三分の一でありますとか、あるいは万分の百十六の全部を停止することについて、いろいろな経緯をたどっておりましたが、御指摘の昭和三十六年までは毎年度立法いたしまして、その暫定措置をやっておったわけなんです。万分の百十六の三分の一の繰り入れを停止をしておったわけでございます。三十六年度の御指摘の立法は、これを「当分の間、」ということで、毎年度の立法から当分の間という暫定法に改めた法律をおっしゃっているものと理解しますが、それでよろしゅうございますか。
  198. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この場合の償還は定率繰り入れではなくて、「毎年度予算に定めるところによるものとする。」、こうなっています。この理由はどういうことですか。このように規定した理由です。
  199. 佐藤徹

    説明員(佐藤徹君) 御承知のとおり、昭和三十六年の時点では、国債の残高が非常に少のうございまして、一方、すでに現在の財政法が施行されておりまして、剰余金の二分の一の繰り入れが財政法の六条で規定されております。したがって、剰余金の二分の一の繰り入れをもちまして国債の償還に十分な状況でございます。したがって、万分の百十六の定率繰り入れは停止をいたしまして、残余は剰余金の繰り入れ、それで足らなければ予算繰り入れと、こういうことになるわけでございますが、剰余金繰り入れは、予算の繰り入れの形としては予算繰り入れという形態をとっておりますので、そういうふうに規定したものと理解しております。
  200. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ですから、昭和三十六年の段階では残額が少なかったという一つの事情があったために、「毎年度予算に定めるところによるものとする。」、こういう規定になったと思うんですが、これは具体的に多くなった現在の法律ですね、その段階では頭に置いておったのはやはり建設国債だと思います。六十年で消却されるという、六十年で消却されるということを理由に百分の一・六と、こうしたことは間違いないでしょう。いかがですか。
  201. 佐藤徹

    説明員(佐藤徹君) 前回委員会でも高橋次長からお答えをいたしましたように、現在の減債制度は、四十三年の法改正で構成されたものでございます。その際に、減債制度は全体としては建設国債だけではなくて、総合的な減債制度として構成をする、その財源としては三つの柱を立てると、一つは定率繰り入れ、一つは剰余金繰り入れ、最後は予算繰り入れ。その定率繰り入れの率を決めるに当たりまして、建設公債の対象資産であります公共資産の平均的な耐用年数というのを一つのめどにしたと、こういう事情でございます。
  202. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いままでの答弁でわかるとおり、いままで大変変わってきたわけですね。いつも償還方法が。特に戦前では大変低い万分の百十六のさらに三分の一という、こういう状況だと思うんです。これは言ってみれば、戦争中ですから、これは余り返していなかったんじゃないですか。どんどん借りて戦費につぎ込んだと、こういう特殊な事情があったと思うんです。その後、この昭和三十六年の段階では金額が少ない、それに対応する償還方法だと思うんです。ところが現在はそうではなくて、現在の法律ができた段階では建設国債です。そしてその建設国債に見合う一・六%というのが出てくれば、当然建設国債に対する償還方法、こういう考えが出てくるのは当然じゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
  203. 佐藤徹

    説明員(佐藤徹君) 御質問の趣旨は、特例債が発行されるに伴って現在の総合減債制度が変わるべきではないかという御趣旨かと思いますが、私ども、現在の総合減債制度といいますのは、立法のときから確かに率を考える場合のめどに、建設国債の対象になっております公共資産の耐用年数というものは一つのめどとして考えましたけれども、制度そのものとしては総合減債制度という形をとっておりまするし、定率繰り入れのみではなくて、剰余金繰り入れもございますし、それから予算繰り入れという制度もございます。で、今回特例法を御提案するに当たりましては、その剰余金繰り入れにつきましては、財政法で二分の一を下らざる金額と書かれておりますところを、あえて金額を特例公債償還までは繰り入れるという方針を大臣からも再三申し上げておりますところでございまして、現在の総合減債制度をもって特例公債発行の事態に十分対処できるのではないかというふうに考えております。
  204. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 十分対処できるかどうかは、大臣、先ほどの大塚委員質疑の中でも明らかになりましたけれども、さらに前回の私の質問でもはっきりしたんですが、大体剰余金は期待できないし、ましてや予算繰り入れも、こういう赤字の状況では期待できないとなると、やはりこの定率繰り入れが大変重要な要素だと思うんです。となりますと、私はいまのこの国債整理基金特別会計法では、法の不備があると思うんです。この法の不備を新しい規定によって変えていくという、こういうお気持ちがないかどうか、この点いかがでしょうか。
  205. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 結論から申しますと、そういうつもりもございませんし、そうすべきでないと思います。何となれば、特例発行というのは、こういうことが恒例化するということにはならないような財政の運営を考えにゃなりませんし、特例債依存からなるべく早く脱却しなければならぬということも、財政運営の基本だということを申し上げたわけでございます。特例債の発行ということを前提にするといいますか、そういうものを念頭に置いて減債制度に手をつけるということには私は賛成いたしかねます。
  206. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その点は、今後これは十分検討をして、償還制度を完備するということを私は要求したいと思います。いまの答弁にかかわらず、これはぜひ心にとめておいていただきたいと思います。  そこで次に、これは前回質問の続行になりますけれども前回私の質問では、本年度の歳入欠陥を三兆円とした場合に、五十五年度国債費が四兆六千億円になる、こういう答弁がありました。そこで、この試算によれば、この四兆六千億円のいわば財源ですね、一・六%の繰り入れ以外にどんなものがあるのか、そして一・六%の繰り入れはそのうちどれぐらいの金額を占めるのか、これをひとつお示しいただきたいと思います。  それからもう一つは、償還の内訳として、金利と元金の、それぞれどれほどずつ償還されるという、こういう計算になっておりますか、御答弁いただきたいと思います。
  207. 田中敬

    政府委員(田中敬君) ある大胆な仮定を置きました前提のもとに試算いたしたものが先ほど先生がおっしゃいました数字でございまして、この数字に到達いたしますためには、一般会計の伸び率を単純に五年間平均で引き延ばしてみましたり、それから公共事業費の率あるいは社会保障の伸び率というものも単純に延ばしてみます、また、歳入の、税収入につきましても、単にGNP弾性値だけを根拠といたしまして計算いたしておりますので、いまおっしゃいました四兆数千億というものの国債費というものは計算上出てくるものでございまして、これに対応して、現在発行しております赤字国債をどのように償還していくかという、そのいまの減債制度とのつながりを持つ数字ではございませんので、ここで四兆数千億というものを前提としての減債の資金手当てというものがどういうふうになるかという点につきましては、検討いたしておりません。
  208. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この点は、これは前回も確認されたとおり、一つの警告だったわけですね、一つの試算であり、警告だったんです。それは十分わかるんです。しかし、一応の計算である以上、その中身も当然予測がつくことだと思うんですよ。しかも、これも前回私指摘しましたけれども、来年度国債発行はこの予測警戒線を突破するわけですね、そういう数字になるんです。となりますと、これは単なる警戒線じゃなくて、かなり現実的な、あるいはもっともっと実際はそれを大きく超えてしまうほどのものかもしれない。となりますと、これは実際のどんなぐあいな計算になっていくのかやはりいまから予測し、かつそれに対する警戒を十分しなければいかぬのです。ですから、いまもし計算してなければ、これはぜひとも計算していただきたいと思いますけれども、いかがですか。
  209. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 本年度の歳入欠陥は、すでに三兆八千数百億という欠陥を予定いたしておりますけれども、それに基づきまして五十五年度の姿を描いてみましたということにいたしますと、前回三兆円の前提計算いたしました同じ前提を置きまして計算いたしてみますと、昭和五十五年度におきます公債残高は七十兆円、当該年度におきます公債発行高は十四兆二千億円、公債依存度は三四%、それからその際における歳出規模は四十二兆一千億円というような数字になろうかと思っております。
  210. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いまのお答えは、私がこれからしようと思った問いに対する答えなんですが、ちょっと早かったんですけれども、私が聞いたのは、もう一つ前の三兆円を基礎にした国債費四兆六千四百億円ですね、その内訳をこれは計算して出せないかというのが質問なんですよ。それはどうですか。
  211. 佐藤徹

    説明員(佐藤徹君) 細かい計算の中身ですので、私から御説明さしていただきますが、いろんな仮定を置いて伸び率で出したものでございますので、あの計算の内訳というものは実はないわけでございます。ただ、先生の前回の御質問もありりまして、さらにいろいろ仮定を置きまして、国債費の総額として申し上げました四兆六千億円、これをブレークダウンをいたしてみますと、ただ一つのケースで必ずこういうふうになるというものではございませんが、償還費がおよそ七千五百億円見当、それから利払い費等が三兆八千八百億円見当というケースが一つ考えられる、こういうことでございます。
  212. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 まあ、いまの計算が三兆円を基礎とした場合のいわば最悪の事態であると、いわば警戒線だと、こう承っておきます。  じゃ、どうですか、それに充てる財源の方は、これは計算はしなかったんですか。これも、計算すればやはり出てくるんじゃないですか。
  213. 佐藤徹

    説明員(佐藤徹君) 再々大臣あるいは次長から御答弁申し上げておりますように、財審試算と申しますのは、先生も御指摘のように、単純な直線で、ある前提を置いて単純な直線でやるとそうなってしまうぞと、そうなってはならないんだと、こういう意味合いの試算でございます。したがいまして、そういう形が出たのに対して財源の手当てをどうするかということを考えるのは、まあ考えるにはふさわしくない計算なわけでございます。したがいまして、おっしゃるような財源をどうするかと、こうなったら財源をどうするかということについては、私ども検討いたしておりません。
  214. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私そんなむずかしいことを聞いたんじゃなくて、その四兆六千億円を返していく上で、先ほど法律によって一・六%ですね、これは必ずやるわけでしょう。これをやらぬということはあり得ないですね。となれば、少なくとも一・六%の繰り入れ額はわかるわけです。それさえわからないと言うんじゃ、これはちょっと怠慢過ぎる。
  215. 佐藤徹

    説明員(佐藤徹君) 御承知のとおり、国債整理基金特会法の規定は、前年度首の国債総額の一・六%ということになっております。私どもは、再々これも御説明申し上げておりますように、財審試算は一定の仮定を置きまして伸び率で断面として五十五年の数字だけを計算しておりますので、五十五年度国債残高に対応します繰り入れというのは、五十七年度に出てくるわけでございます。  しからば、五十五年度の狂いはどうなるかといいますと、これは五十三年度国債残高に対応して、数字が、計算だけの話とすれば、出てくるわけです。しかし、五十三年の数字というのは、現実に計算をしておらないのでございます。先日来、五十五年が出ているのだから、途中年次の数字を出せないわけはないだろう、こういうお話ございましたが、確かに、大変な労力を使ってブレークダウンをしていけば出ないことはないと思いますけれども、これはそもそも、財審の試算の持っている目的なり性格が、そういうものを見通したものではございませんので、できればそこの数字は、この段階計算をするのを、試みてはみたのでございますが、現在のところでは自信を持って申し上げられるような数字にはなっていないわけです。
  216. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その問題は、前回の高橋次長の答弁で、数日内にできる、こういう答弁ありました。きょうはちょうど、その数日を五日としますと、ちょうどきょうなんです。ですから、私は、きょうそれが出てきたらそれに基づいてひとつ質問しよう、こう期待しておったのですけれども、出てこない、この点はいかがでしょうか。
  217. 田中敬

    政府委員(田中敬君) お示しするには余りにも自信のない数字でございますが、五十五年度の数字を予測いたしました諸前提が、直線的に、五十年、五十一年という経過をたどっていくという、これも大変大胆な前提でございます。たとえばあすから編成に入ります昭和五十一年度予算の姿は、もうすでにこれと変わったものになることは明らかでございますが、そういうことを前提といたしまして計算いたしてみますと、たとえば明五十一年度におきます公債発行高は、歳出規模は二十四兆四千億円、公債発行高は六兆七千億円——単純な数字だけを申し上げます。五十二年度は歳出規模——途中でございますが、三兆にいたしましょうか、三兆八千億、どちらの数字を使ったらよろしゅうございましょうか、歳入欠陥の前提につきまして……。
  218. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 両方、だけれども、とりあえず現在のやつ……。
  219. 田中敬

    政府委員(田中敬君) じゃ、三兆八千億で計算いたしますと、五十一年度公債発行高は七兆七千億円、歳出規模二十四兆四千億円、五十二年度公債発行高九兆円、歳出規模二十八兆円、五十三年度公債発行高一兆五千億円、歳出規模三十二兆一千億円、五十四年度公債発行高十二兆二千億円、歳出規模三十六兆八千億円、五十五年度公債発行高十四兆二千億円、歳出規模四十二兆一千億円という試算をいたしてみました。
  220. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そのように素直にお答えいただけりゃ大変結構なんですが。  いまの数字ですね、私の方では、要求したのは、三兆円を前提とした場合と、それから今回の三兆八千億円を前提とした場合と、それぞれについて、国債発行予想額、それから財政規模、さらに国債残高、国債費、それぞれについて要求しましたので、これひとつ文書で出していただきたいと思います。と同時に、私、いま急にこれだけの数字聞きましても、これちょっと質問できませんので、これについては質問は留保せざるを得ないということになります。出していただけますか。
  221. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 準備をいたしたいと存じます。
  222. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ということは、出すということですか。
  223. 田中敬

    政府委員(田中敬君) お手元の資料といたして提出いたしたいと存じます。
  224. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それはいつ出してもらえますか。
  225. 田中敬

    政府委員(田中敬君) できるだけ早く作業したいと存じます。
  226. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ちゃんとあるんじゃないですか。
  227. 田中敬

    政府委員(田中敬君) これ、先生の御要求の、細かいブレークダウンをしてございませんので、いま私どもは歳出規模公債発行高を直線的に延ばしただけの数字をつくっておりまして、内部のブレークダウンがしてございませんので、若干の期日をいただきたいと思います。
  228. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私、前回具体的に、議事録をごらんいただければおわかりのとおり、国債発行予想額、財政規模、さらに国債依存度、国債残高、国債費と、具体的に列挙して要求したわけですよ。ですから、それは数字に合うものをつくっていただかなければいかぬし、数日でできたわけですから、これはすぐ大至急出していただかぬと、それは審議に間に合いませんよ。
  229. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 一、二時間のうちに準備できると存じます。
  230. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 じゃ、一、二時間後だそうですから、この問題はこれで留保いたします。  そこで大臣、いままで各委員からの質問に対して国債依存度を含めなきゃいかぬという答弁をしておりますし、そのための措置も具体的に言われました。しかし聞いてみますと、一つは、大幅な歳出の削減、それから二番目は公共料金など受益者負担や社会保険料の引き上げ、三番目には相当の増税、こういうことに帰するわけです。この問題につきましては、前回参考人の岩波一寛氏がこの当委員会でも述べたとおり、もしこのままいけば大変なことになるし、大変なインフレか、あるいは世界に例のないほどの増税かということになります。これはもうだれが見ても明らかなんです。そこで、これは私の前回質問に対する大臣の答弁でも、五十一年は増税はやらぬ、しかし五十二年からは、これはやっぱり増税を示唆した答弁が具体的にありました。となりますと、これは付加価値税じゃないかと、こう思うのですけれども、この点いかがですか。
  231. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 御指摘にございましたように、今後予想されます経済の成長速度のもとにおきましては、従来のような大幅な自然増収は期待できませんので、一方また各種の財政需要の増大を考慮いたしますと、御指摘のように、一般的な増税を必要とされる時期がいずれ近い将来に来るということはある程度覚悟せざるを得ないというふうに私ども考えております。その場合に、いま御指摘のような形で付加価値税を含みますところの一般消費税に依存するのか、あるいはすでにかなりの税体系上高い水準を占めておりますところの直接税にさらに依存をするのか、こういった点につきましては、いずれ近い将来慎重かつ慎剣な検討に入っていかざるを得ないと思います。私どもといたしましても、国民の負担に重大な影響を及ぼす事柄でもございますので、今後税制調査会にお願いをいたしまして十分な検討をお願いいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  232. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そういたしますと、具体的に付加価値税につきましても、現に調査を開始し、いろいろなそれに関連する問題点を研究されていると、こうお伺いしてもよろしいですか。
  233. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 付加価値税につきまして具体的に私どもがすでに検討を開始しておるという事実はございません。将来の問題として選択の一つとして付加価値税を含みますところの一般消費税の問題は出てこようかということを申し上げた次第でございます。
  234. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 じゃ、付加価値税はまた後でお伺いしますけれども、その前提としてお伺いしたいことは、わが国では昭和二十三年に、これは終戦後の混乱の中で手っ取り早く財政需要を満たすものとして売上税が出てまいりました。取引高税が創設されたわけです。これは百分の一の課税率でありましたけれども、これは大変税務署の厳しい課税調査などありまして、国民の不満と怒りが爆発しまして、わずか一年三ヵ月で廃止されたと思うのです。で、今回の付加価値税はいわばこれと似たものです。そこで、先ほど一つの選択として検討しているというのですから、少なくともこういう検討はしていると思うのですけれども、大蔵省としては取引高税導入と、それから廃止の経過、これをどのように総括しているか、いわば反省しているか。やめたわけですからね。  そこで、今後わが国での一般消費税あるいは付加価値税の導入に当たって、このやめた反省の中から教訓とすべきものはなかったかどうか、この点いかがですか。
  235. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 重ねて同じようなこと申し上げて恐縮で、ございますが、現に私どもがすでに検討に入っておるということじゃございませんで、付加価値税も含めまして今後の財政運営いかになしていくか、いかにやっていくかということについての今後における検討課題の一つであろうというふうに申し上げた次第でございます。  第二番目の取引高税の問題につきましては、これは創設の理由はいろいろございますが、一つは、終戦直後のいわゆる終戦処理費あるいは戦災復興費のために財源が非常に多額に必要であるその財源を調達をするというのが一つの目的でございましたわけでございますし、また当時一般的に所得税負担が非常にそういった財政事情を背景といたしまして高かったわけでございますが、その高い所得税負担を軽減をするかわり財源ということとしても考えられたようでございます。  なおまた三番目には、当時の非常に高進をいたしておりましたインフレの状況前提といたしまして、課税の時点と税金の収納の時点とが比較的接近をいたしておりますところのこういった課税態様によって、いま申しましたような比較的大きな税収を得たいということが一つの目的であったと思います。  なお、そういったような目的のために、税源の把握が比較的容易であり、かつ徴収上も便利であるところの印紙納付の形で取引高税は施行され、発足をいたした次第でございます。  しかしながら、この取引高税は印紙納付というやり方をやりまして発足をいたしました結果、納税者にとっては非常になじみの薄い形で、なじみの薄い方式で入っていったということもありまして、心理的な抵抗が非常に強かったという点が一つ。これは後に印紙納付制度を改めまして申告納税の形に移行いたしましたけれども、当時はなお終戦後の混乱の状態の中でございましたので、記帳慣行が十分に慣熟をしていなかったという点もありまして、そういうことも相含めまして納税者の納税心理にマッチしなかったというのが第一点。  それから第二点は、当時のなお非常に多く残存しておりました統制経済、あるいは先ほども申しましたが、一般的に非常に高い所得税の課税水準、そういった非常に厳しい社会環境のもとでこういったものを新しく採用したということ、そういった点が国民の納税環境に十分に溶け込むことができませんで、税制として円滑に定着をすることができなかったというふうに承知をしております。  私どもといたしましては、今後、先ほども申しましたように、いろんな意味での検討を開始をしなければならぬと思いますが、当然御指摘のように従来のいろいろな諸経緯あるいは諸外国のいろいろな経緯、こういったものについては十分の研究を重ねてまいりたいというように考える次第でございます。
  236. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 幾つかの反省点や問題点わかりました。問題は、その中から今後新たな税制を考える場合に、教訓とすべき点はどうであったか、この点いかがでしょうか。
  237. 山内宏

    政府委員(山内宏君) これはいろいろあると存じますが、いずれにいたしましても大きな一般増税をやるというふうなことに仮定をいたしました場合には、その制度を採用いたしますにつきまして十分な国民の皆さんの御納得を得なければなかなかうまくいかないという点に要約されるかと思います。
  238. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 教訓は、納得を得るための手段、いわば事前的なPRとかそういったこと、それくらいでしょうか。内容的にですね、政府にとってはきわめてとりやすいけれども、国民にとっては抵抗があるということですか。それじゃ内容的な教訓はなかったでしょうか。
  239. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 納税対象でありますとか、あるいは税率でありますとか、あるいは課税の仕方と申しますか、課税の仕組みでございますね。そういった点とか、いろいろなそういうような点に関しまして、いま御指摘のように、各種の点について今後研究を加えていかなければなるまいというふうに考えております。
  240. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ですから、その点をもう二年後には、具体的な増税の問題が出てくるわけですから、どんな点が取引高税の反省の結果の教訓で、どんな面を考えなければいけなかったのか、これは付加価値税はさらに内容は似ていますから、性格的にも。となりますと、当然その点が具体的に出てきていいと思うんですよ。そうでなければ国民が納得しようたって納得させることができないはずですけれども、その点いかがですか。
  241. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 一番大きな違いは、恐らく当時の社会情勢並びに経済情報と、今後のそれとの違いであろうかと思います。そういう点では、これは根本的に違いますので、それによって特段に制度の中身についてどういうふうにすれば適当かどうかということにはすぐにはどうも結びつかない感じがいたします。テクニックといたしましての点で申しますと、たとえば先ほど申しましたように、印紙納付が非常に手数がかかったということ、それから国民の納税心理にマッチをしなかったということがあるいはあるのかと思いますし、あるいはまた当時のように、たとえば免税点を一切設けないで、およそすべての物品に全部に一律に一%というのが非常に納税者を多くいたしまして、その間繁雑な感触を与えたといったような点もあろうかと思います。
  242. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これは実際国民の声、特に中小零細業者が一番大きな影響を受けるようですが、さらに消費者が受けますが、その辺の声を聞いてみますと、単に時代の変化、社会情勢の変化だけではなくて、やはりこれから出てくるであろう付加価値税につきましては、中身の面で大変な不満を持っておるわけです。このことをひとつ御認識いただきたいと思うのです。  そこで、付加価値税でありますけれども、いま調査の段階だそうでありますが、具体的に、たとえば外国へ派遣して、いろいろ具体的に調査をしておると思うのですが、いまのところ実際どんな調査をしているのか、この点どうですか。
  243. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 政府として外国へ出かけて行って調査をしたという事例といたしましては、事務官が課税技術についての勉強に行っておるという程度でございます。
  244. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 政府は、みずからはそれだけにしましても、大蔵省から委託をしたものがありましょう。その中身をお聞きしているのです。
  245. 山内宏

    政府委員(山内宏君) たとえば税制調査会から学者に委託をして研究をしていただくというふうな実績はございます。いずれにいたしましても、現在調査をお願いしております中身は、諸外国の制度の内容ということでございます。
  246. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私の手元に提出してもらった大蔵省の資料ですけれども、これによりますと、たとえばこれは四十五年九月十九日から、四十五年十月二十四日まで、欧米諸国の付加価値税について、木下和夫、舘龍一郎、貝塚啓明の報告が恐らく四十五年十二月三十一日と、こういったようなことがありますが、そのほかに西独、フランス、英国ですね、各国に行っておりますね。これは間違いないでしょうね。
  247. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 間違いございません。
  248. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 となりますと、もうすでに昭和四十五年の段階から、四十九年にかけまして、まあかなり詳細な数多くの調査がされたと思うんです。それは全部報告になっています。となりますと、これはもうかなり具体的な形が大蔵省の方にも出てきていると思うのですね。これは聞くところによりますと、大蔵省が取り入れようと考えているのはEC型というものであると、こんな話も聞いておりますけれども、それがEC型の場合、どんなことになりますか。これを具体的に説明した資料などはございますか。
  249. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 政府の作成をしたものとしてはございませんけれども前回の税制調査会の答申にその点については深く触れられております。
  250. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これも大蔵省から提出してもらったものですが、付加価値税の仕組み、前段階税額控除方式、税率一〇%、こういう図があります。で、これは大蔵省でここまで検討されておるということだと思うんですね。これは大蔵省独自につくったものじゃないんですか。
  251. 山内宏

    政府委員(山内宏君) これは、まあEC型付加価値税の中の最も典型的なものを比較的わかりやすく図解をしたものでございまして、作成をしたのは主税局が作成をしたものでございます。
  252. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 すると、やっぱり主税局としてつくったものがあるんじゃないでしょうか。そうでしょう。
  253. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 事柄の事実の認識という意味ではそのとおりでございます。
  254. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 となりますと、最も典型的なものとしてつくって、いわば国民にわかりやすく理解してもらおうという、その一つだと思うんですよ。どうですか。
  255. 山内宏

    政府委員(山内宏君) いずれにいたしましても、租税の負担をかなり重大に変更いたしますものでございますから、国民の皆さんには十分理解を願わなければならないわけでございますけれども、われわれとしては、別にその付加価値税だけを御理解を願おうという立場にあるわけではございませんで、他のいろいろな税制上の手段とあわせまして、その一つとしての御理解をお願いいたしたいという趣旨のものでございます。
  256. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 となりますと、その一つでも二つでも結構ですが、ともかく付加価値税というのはこんなものだということで、国民に理解をさせると、いわばPRするというためにつくったものじゃないでしょうか。どうですか。
  257. 山内宏

    政府委員(山内宏君) いまの段階では、まだわれわれといたしましては積極的にそういったもののPRをするという段階には至っておりません。私ども自身今後いろいろ研究いたさなければなりません。ただEC型の付加価値税というのは、前回税制調査会が取り上げまして以来、世の関心を引きまして、いろいろ質問もございますので、かつまた仕組みが若干、この絵でもごらんいただきますように、口で言いますと複雑でございますので、一見してわかりやすいような形でお答えをするという趣旨の図でございます。
  258. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 一つの、これをこの場でどんな形になるのか、説明してもらえませんか。簡単で結構ですよ。要するにこういう形で、このくらいの税金がかかってくるということ……。
  259. 山内宏

    政府委員(山内宏君) EC型の付加価値税と申しますのは、いわゆる前段階控除方式の付加価値税でございますので、この絵にもございますように、原料の生産者から最終消費者の手元にまで渡ります際に、それぞれの段階での付加価値に対して一定の税率を付加しようというふうなものでございます。でその際に、たとえば第二段目のこの図で申しますと、製品生産者Bの段階でございますと、その製品生産者Bが、次の段階の卸売業者Cに物を売ります場合に、製品の付加価値税税率に相当する金額を徴収をいたしまして、その金額からすでに払われております前段階での付加価値税を差し引いた金額を納税をするというシステムでございます。
  260. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もう時間がないので簡単にまたお願いしたいのですが、第二段目まではわかりました。あと第三段目の卸売業者、第四段目の小売業者、そして最後に最終消費者、こうなるのですね。問題はインフレとの関係で、どれほど国民自体に負担がかかるのかですね、この点ちょっとこれで説明していただけませんか。
  261. 山内宏

    政府委員(山内宏君) インフレとの関連ということになりますと、付加価値税のみでなくて、課税の時期と、それから収納の時期とで差があります税目については、多かれ少なかれその問題が出てこようかと思いますが、付加価値税も、これはそういう意味では賦課、徴収あるいは納税の制度の決め方いかんによって変わってくるものかと思います。
  262. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 インフレとの関係経済学的な説明を求めたのじゃなくて、この図によって実際どれほど、具体的に国民が幾らどんな形で消費者段階では負担することになるのか、その辺を私は聞いておるんです。その点の御説明をいただきたい。
  263. 山内宏

    政府委員(山内宏君) その点につきましてはまだ全くわれわれとしては何の研究もしておりません。と申しますのは、先ほどから申しますように、付加価値税にいくべしという結論は全くまだ出しておりません。議論もしておらないような状態でございますので、その点については全く白紙でございます。
  264. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そういう点じゃなくて、具体的に、これ一番下見ますと、最終消費者と書いてありまして、購入金額四万四千円、そして最終消費者の負担、税額計四千円となってます。こういう図を見て一遍でわかりゃいいんですが、なかなか国民はわかりづらいんです。だから、ここで具体的にこのことがどうしてこういう結果になってくるのか、この辺を具体的にちょっとお伺いしたいと思うんです。
  265. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 単純にEC型の付加価値税が一体どうなっているかという御質問であるといたしますならば、大体こういう絵のような形になってまいると思いますけれども、最終消費者の負担に対して一定割合の付加価値税率が——段階ごとに分割してでございますけれども、集計としてはそういう形の金額が国庫に納められるというものでございます。  ただ、御承知と存じますけれども、ECの場合でも、各国によりまして税率もいろいろまちまちでございますし、それから課税対象から外しております品目につきましてもまちまちでございます。EC型付加価値税と申しましても一様ではございませんので、その辺のところはかなり国情によって差があるというふうに私ども承知をしております。
  266. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 時間が参りましたのでこれ以上お聞きできませんけれども、これはまた別の機会にさらにほかの面でいろんな影響があると思うんですが、その面の現段階の調査の結果もぜひお示しいただきたいと思います。  そこで、大臣最後に、こういう具体的にかなり進んでおりますね。前回の私の質問に対する答弁として、五十一年には増税しないけれども、五十二年以降については増税を示唆しております。大臣の頭の中に付加価値税がかなりのウエートを占めていると思うんですけれども、その辺のお考えをお聞きしたいと思います。
  267. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) この前に申し上げたとおり、税制調査会でも租税特別措置の見直しの問題、一応仕上がりができたわけでございます。これは国会で御審議いただくことになりますが、もう一つの問題は、租税負担率というようなところの御検討をいただいているわけでございます。そこまでお願いいたしてあるわけでございまして、五十一年度の税制改革ということについては、まだ私の脳裏にはこれというデッサンはないんです。
  268. 栗林卓司

    栗林卓司君 きょうの新聞を拝見しますと、来年度予算の内容が出ておりました。その内容の質問は御迷惑だと思いますけれども、ただ、昭和五十二年に赤字公債発行から脱却できるかできないかという見通しの問題として、その限度で、若干触れながらお伺いしたいと思います。  ちょっと数字をまず先に伺いたいんですが、一般会計だけ入ってみますと、五十一年度で十七兆円前後という想定でお伺いしてよろしいでしょうか。また五十一年度の一般会計の予算として二十四兆三千億前後ということでお伺いしてよろしいかどうか。その基礎になる名目経済成長率として一二%前後、私が使いたいのはこの三つだけなんですが、その点についてまずお伺いしたいと思います。
  269. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) おおむね仰せのとおりでございます。
  270. 栗林卓司

    栗林卓司君 そこでお伺いしたいのは、歳入を考えてみますと、五十年度の歳入、一般会計だけです。公債を含めないで大体十五兆四千億円だと思うんです。これが十七兆円といいますと、伸び率が一〇%になる。従来ですと名目成長率がある数字になりますと、それ以上の税収の伸びを期待してまいりました。どれくらいの計数かということは議論があるとしても、それ以上の伸びが期待されてまいりました。ところが、一三%の名目成長率に対して、一般会計の税収の伸びが一〇%前後。歳出の方になりますと、補正後五十年度二十兆八千億円が五十一年度で二十四兆三千億ですから、約一七%前後の伸びになります。歳入の方は名目ほど伸びない、歳出は名目を上回って伸びるというのが今後のもし基調になっていくとすると、これは先ほどの大変前提を置いた数字の議論ではありませんけれども、五十二年度になってもなかなかにこれは赤字公債の脱却ができない。そこで今回は大変慎重に構えられたという面もあると思いますけれども先ほど第四次不況対策は実はこれから効果が出るんですという大臣のお答えもございました。それを含めて考えますと、私は数字のよしあしは議論いたしませんけれども、いまとにかく最低の底にあるだけに、来年の期待値としてやはり名目成長率以下の税収しか見込めないのか、それについてはどのような展望をお持ちでございましょうか。
  271. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 来年度の租税収入につきましては、なお今後予算との間に詰めてまいる数字でございますので、最終的に確定をした数字で申し上げるのは御容赦をいただきたいと思いますが、ただその際に申し上げておきたいことは、一つは、十七兆云々とおっしゃいましたのはこれは税外まで入っておるかと思います。租税収入ではとてもそこまで達しません。租税収入も、おっしゃいますように、どうもGNPの伸びに比べて余りはかばかしい伸びが見込めないだろうというのは御指摘のとおりでございます。一番大きな原因は、法人税が伸び悩むということだろうと思います。その理由といたしましては、大ざっぱに申しまして恐らく二つあるのかと思いますが、その一つは、商法改正に伴いまして一年決算法人が非常に多くなってまいりましたので、その関係で、経済の好転の時期と、それからそれが税収入に反映をしてまいります時期とのタイムギャップが従来よりもかなり長くなってまいっております。その関係で、たとえば五十一年度の前半期に経済が好転いたしたといたしましても、その結果が五十一年度の歳入には法人税としてはなかなか反映をしてまいらない、挙げて五十二年度の歳入にしか上がってこないという点が一つございます。  それからもう一点は、昨今の経済の沈滞が非常に従来に比べて大きい関係で、それを土台といたしまして回復を示したと、こう申しましても、それはGNPには素直に反映をいたしますが、税収には、ある意味での水面下の回復と申しますか、損が比較的減った、あるいは現在でありまするならば土地なり株なりを売ってとにかく利益を出さなければならないような状態が、幾らかでも改善される。まあそれもGNPには響いてまいりますけれども、税収入としては響いてこない。そういった意味でのいわゆる水面下の回復であるという点が第二点。そのような、いま申しましたような二点が恐らく影響すると存じますけれども、法人税ではなかなかはかばかしい回復が見込めない。これが大きな原因となりまして、税収全体としても大きな伸びが見込み得ない状態になろうかというふうに考えております。
  272. 栗林卓司

    栗林卓司君 まあ、今年度の経験を踏まえながらいろいろ展望されておると思いますけれども、ごく平たくこれを実体経済に置き直してみると、景気が回復しても、あるいは法人の赤字が減ってきたとしてもなかなかであるから、法人税収に来年度を展望して、なかなか反映されてこないであろうという見通しが仮に立ったとすると、それで日本の産業はもつんだろうか、税収の見通しとしてはそういう御議論もよくわかります。ただ、ミクロの問題に置き直して考えてまいりますと、それであと一年本当に日本経済はもつんだろうか。ですから、税収の見込みをする場合には、いまの御配慮はよくわかるんです。わかるんだけれども、本当はそれでよろしいのかという気がするわけです。ここで数字を直せ、どうこうなんていう議論を私はしているんではないんですよ。しかも、赤字公債として伝えられておる額が枠として設定されながら、御議論されることも結構でしょう。しかし、実際に幾ら赤字公債を出していくかということになると、これは別な相談に本当はなるんだろうと思うんです、税収を見ながらになるわけですから。  そこで、実は五十二年度の展望を含めて、いまおっしゃったことが五十二年度まで及んでいくんだろうか。法人税収が上がってくる、いまの異常な減収が解消されない限り、赤字公債からわが国財政が脱却することはきわめてむずかしい。その意味で大変むずかしいことをお伺いしているようですが、最近の五十一年度のことはおくとしても、五十二年度にはGNPの名目成長率に対して上回るような税収が期待できると展望されているのかどうか、その点はいかがなものでしょうか。
  273. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 結局は今後予想されます五十一年度経済回復の実績いかんにかかると思いますが、少なくとも現在われわれが想定をいたしておりますような状態経済回復していくといたしまするならば、われわれが五十一年度で苦しんでおりますような水面下の回復ではなくて、その点は五十一年度に対しまして五十二年度の方が環境としてはかなり改善をされるというふうに私どもは期待をいたしております。  それから、タイムギャップの点については同様でございますけれども、やはりそういう意味で、五十年度のこの現在の不況を多く反映をいたしてます五十一年度の歳入に比べまして、五十二年度の歳入の方が法人税としてはより多くを期待をできるんではあるまいかという感じがいたします。
  274. 栗林卓司

    栗林卓司君 将来のことはわからないと言いながら、それが期待できないようでは、もう、もちゃしませんから、それはもう手段を尽くして、やっぱりそういう状態をつくっていかなきゃいかぬというのが、実体経済の問題だろうと思うんですが、そこで若干意見を含めて申し上げますと、たとえば歳入欠陥三兆円を前提にしながら数字をはじいてみるというお話もよくわかりますが、これくらい人を誤解される内容はないんじゃないか。そんな五十五年まで続いてごらんなさい、もちゃしませんよ。なるほど前提を置けばそういう数字が書けるかもしれないけども、そんなことは経済政策としてはあってはいかぬです。ですから、ブレークダウンどころの騒ぎじゃなくて、そうさせないために一体どうしたらいいのか。これを言わないで、五十五年公債発行残高七十兆円ですと言ったら、それはますます国民はおびえるだけです。その意味で慎重な五十一年度の歳入見通しもわかりますが、もう一段の御配慮が私は必要だったのではあるまいかと、この点は意見だけ申し上げておきます。  そこで、今後の経済運営のことも含めながら、若干またお伺いしたいと思うんですけども、とにかく五十一年度の税収見込みでまことにもってGNPの名目成長率ほどもいかないんだ、それほどどうしてこれ景気はよくならないんだろうか。考えてみると、やはり昭和四十六、七、八年ごろから日本経済そのものの成長率がダウンしてきたんじゃないだろうか。実体としてもう高度経済成長の波から外れて、別なトレンドに入ってきたのではないかと思います。なぜこんなことをあえて申し上げるかと言いますと、だから、所得減税をしても効かないという判断につながっているんだ。なぜ昭和四十六年、七年、八年からそういう新しいトレンドに変わったかというと、リードしていく産業がなくなってきちゃっている。カラーテレビにしても何にしても大体普及しちゃって、なかなかそれ以上の需要というのが出てこないという中にあって、これから公共投資を含めながら新しい経済を構築していかれるわけですけども、やはりそれは公共事業を重点に移しながら、従来の産業経済が伸びてきたパターンから離れて、公共事業に重点を移しながら経済を伸ばしていきたい、こういう構えを今後は強めておとりになるんだと思いますが、一応繰り返しになりますが、念のためにこの点伺っておきたいと思います。
  275. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 五十一年度の税制のやり方としては、いまおっしゃるような形をすぐとっていかざるを得まいと思っております。繰り返しになりますが、いまおっしゃいましたように、所得税減税をやりましても、これは恐らくかなりの部分が貯蓄に回って直接消費の方に回っていくということは余り期待できません状態でございますので、この時期におきましてはやはりそういう判断でやっていくしかないというふうなのが私ども考え方でございます。
  276. 栗林卓司

    栗林卓司君 そこで、大臣にお尋ねをしたいんでありますが、公共投資と言いますと、道路港湾等々というものが景気対策を含めて大体中心になってくると思うんです。その公共投資をやったとして、波及効果がどういう産業分野に及ぶかというと、やはり特定産業分野に対してまず波及しながらということでありまして、全経済分野に同様の景気刺激効果を持つというわけではないと思います。したがって、公共事業重点で新しい経済パターンをつくっていくということは、産業構造の転換ということを中に含んだ御議論だと思うんです。大変大蔵大臣の所管から外れたことをお伺いするようで恐縮でございますけれども、そういう経済政策を進めながら、産業構造の転換をしていくとして、雇用の転換が追いついていけるんだろうか、その点についてはどうお考えになりますでしょうか。というのは、世上所得減税が議論されているのは、これは経済分野についてわりあい画一的に効いてくる。ところが、公共事業重点ということになると、どうしてもある限定された産業分野に偏ってくる。次の安定経済成長に対する日本の産業政策として、それは正しいという御議論はあったとして、果たして雇用の転換が効くのか、それを考えますと、再々の御否定でございますけれども、私は、所得減税という話はそう簡単にそれは効かないからだめだということで捨て去っていいんだろうか、以上の所見を含めて御見解を承りたいと思います。
  277. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 今度の予算の眼目として、景気の回復と申しますか、経済回復の軌道に着実に乗せていくためのものにしたいと、そういうことでございまして、その場合、公共投資というものの牽引力に期待をしようという姿勢をとっておりますことは御指摘のとおりでございます。ただそれが栗林さんおっしゃるように、産業構造というようなものを念頭に置いて考えておるかというと、私どもはそんなに、そういう産業構造を念頭に特に置いておるわけじゃございません。何となれば、公共投資といま持ち出しますけれども、ここ二、三年公共投資というのは非常に抑えに抑えてきたわけでございます。それですから、来年の予算におきましてある程度ふやしましても、それは他の財政、他の費目に比べまして総需要抑制政策をとる前をベースにいたしますと、まだとても及ばない状況でございます。それから全体として需給のギャップが大変まだひどい状態でございまして、操業度も低い状況でございますので、ちょっとやそっと公共投資をやってまいりましても産業構造に響くほどの力は私はないと考えております。しかし、この公共投資は、住宅にいたしましても、生活環境の整備にいたしましても、一般の土木建築にいたしましても、あるいは輸出振興の措置にいたしましても、相当広いすそ野を持っておるわけでございまして、特定の産業分野に影響が限局されるという性質のものではなくて、相当広く効果が浸透していくものと期待いたしておるわけでございまして、その点は御指摘のように特定の産業部門に対して跛行的に影響は集中するというようには、私ども考えていないわけでございます。
  278. 栗林卓司

    栗林卓司君 これは、次の国会に引き継いだ議論になってくると思いますけれども、一月、二月の状況を見ながら、機動的な財政運営をしていかなければいけないと思います。またそのときに御意見を伺いたいと思います。  そこで、はなはだ細切れの質問で恐縮ですけれども、実は五十二年度に赤字公債発行から脱却できるかということと絡めて、五十二年度には増税をしなければいけないんではないかという予告編の議論がずいぶんあったように思います。これもいささか予告編に過ぎるんじゃないか。五十一年度、五十二年度、それが第四次不況対策、さらに景気振興の意図を相当色濃く盛った来年度予算ということになってまいりますと、五十二年度まで法人税収がよたよたするようなことを考えるのはよほど不健全な見通しになる。その意味でその赤字補てんという形で増税を恐らく考えておいでにならないだろうか。これは確認の意味でお伺いします。とは言うものの、では福祉全般の歳出をどうやって補うのかという意味で、新しい高福祉、高負担の議論は起こっていいのではあるまいか。その意味で新しく税を、たとえば付加価値税に代表されるように、そういった税をもし議論するとしたら、その赤字の穴埋めというみみっちい議論ではなくて、恐らく見合う新しい福祉政策とのセットになった御提案ではないのではあるまいかと、こう思うのですが、間違っておりますか。
  279. 山内宏

    政府委員(山内宏君) この点は今後の財政需要の伸びいかんにも大きく関連をすることでございますけれども、私どもといたしましては、その辺のところがかなり抑制的に運用されても、かつまた各種の税外収入が相当程度確保されるというふうなことになりましても、あるいは公共料金がある程度の引き上げを見ることになるといたしましても、なおかつ五十二年度予算におきましては、いま御指摘のようなほどには楽観的にはなれないというのが現在の感じでございます。
  280. 栗林卓司

    栗林卓司君 その五十二年度には楽観的になれないというのは、実体経済が五十二年度容易には回復しないだろうという見通しからの御発言でございますか。
  281. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 現在予測をいたしておりまする程度回復の軌道に乗ったといたしましても、五十二年度において単年度で収支が相償うというふうな状態にはとてもなるまいという意味でございます。
  282. 栗林卓司

    栗林卓司君 そうなってまいりますと、五十年度、五十一年度、五十二年度もまたおっしゃったような想定であるということを考えていったときに、国債の償還という問題はよほど深刻になってこないか。なるほどこれは筋道の話としては法律で決めたわけですから日本政府は踏み倒すわけにまいりません。まいらないと言ったって踏み倒さざるを得ない。ですから、五十二年度にそういう想定が立つというんなら、よほど真剣に資料をお出しにならなければいけません。これはもう法律で決めたんですからと言ったって、決めた財政法を突破した議論をいまやっているわけですから、それはだめなんです。いまのいまこれを求めてもとおっしゃるかもしれません。これが、ない物ねだりであることも私はよくわかります。大変失礼ですが、その展望がきくくらいなら、こんな歳入欠陥出しやしなかった。その意味で、大変失礼なことを申し上げておりますがお許しいただいて、痛烈に反省なさりながら、もし五十二年度にその想定が立つんなら、これは実体経済の面で大変なことですよ、実際は。それをお見詰めになりながらこの五十年度、五十一年度、五十二年度、十年償還の約束をどう果たすか。そのときに、国民の皆さんここはしのんでくれ、といつ言うのか、そこまで言わないと、とうてい私は合意が得られない。国民の皆さんに求めるために、じゃ、行政として何をするかという議論も、私は当然なければいけないと思いますので、意見として申し上げておきます。  最後に二点だけ大臣にお尋ねをしたいと思いますけれども、これも同僚議員から経済見通し財政計画をくっつけていただきたいという主張が再再ございました。同じことをお伺いするわけですけれども、実はこれまで政府にお伺いしながらまことに隔靴掻痒の感をした例が多々ございました。その一つで言いますと、たとえば来年度経済見通しについていろいろ経済企画庁から数字が出てまいりました。それが、では税収の見込みとどう絡んでくるかという議論になりますと、経済見通しの中の話はぶつんと切れて、大蔵省にお伺いしてもそれはなかなかだめなんです。ではそういう経済見通しがどうしてできたのかというと、それは公共事業、財政中心の経済運営でございますと、こういうお答えがくるものですから、ではその財源調達をどうするんだというと、それは経済企画庁では余り真剣に考えていただけない。もしそれが税だということになりますと、有効需要との関係で必ずやある議論がなければいけないと思うのですが、それが切れてしまう。経済主管庁が大蔵と経済企画庁と、ミクロでは通産も絡むのかもしれませんが、それをお互いに渡り合っているだけに、なかなかトータルなまとまった議論になってまいりません。しかし、これから増税問題を含めて、乏しい財源をどうするかという議論を恐らく国会はしていかなければいけないと思いますけれども、そのためにも、従来の高度成長期ではばらばらでやってこれたわけですが、経済見通し財政計画をセットにして、もしでき得るならばその裏づけとしての金融政策もセットにした展望を政府はお出しになるべきではないか。同僚議員の従来からの主張と全く同じことを申し上げているわけですが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  283. 山内宏

    政府委員(山内宏君) いまお話しの点につきましては、税制調査会におきましてもすでに専門的な学者の先生方のお集まりをいただきまして基礎問題小委員会というのを設けまして、その段階経済企画庁の目下考えております中期計画とのすり合わせの検討をやっていただいております。すでに中間的には一応の御検討をいただいておりますが、これはまだ総体の税負担をどの程度引き上げるのが適当かという段階にとどまっておりまして、その税負担の中身を一体どういうふうにするのかというのは今後の検討にゆだねられております。ただいま、恐らくもう終わったかと存じますが、本日この委員会と並行いたしまして政府の税制調査会の総会が持たれておりますが、その総会の五十一年度税制改正の答申の背景にも、いま御指摘のありました今後の中期計画との絡み、それに関連をいたします税負担の水準の上昇がどの程度のものであるならば国民として受忍をできるかという関係の事柄が背景に織り込まれた上での御答申をいただけるというふうに期待をいたしております。
  284. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 栗林さんおっしゃるとおりでございまして、経済の企画と私どもの方の財政との間に吻合がなければならぬ、整合性を持たなければいかぬことは当然でございます。経済の企画、経済政策を打ち立てる場合、また経済長期計画を立てる場合におきましても、財政をまた見ないと立てようがないと思います。したがってばらばらにやっておるわけじゃなくて、今日までも非常に緊密に連絡をしてやっておるわけでございます。  ただ、国会からごらんになりますと、何か非常に隔靴掻痒の感がするという感じを持たれておるのは無理ないと思うのでございます。何となれば、国会に出て申し上げる場合は、政府として決まった、責任が持てる数字をなるべく申し上げなければいかぬと思っておりますから、途中ばらばらの、新聞でしょっちゅういろいろな仮定の数字がたくさん出ますから、そこでそういう感じをお持ちになっておることも私もよくわかりますけれども政府一つでございますので、その点はばらばらでやっておるつもりはございません。とりわけこのような緊張した状態になってきておりますので、この将来の展望についての関心もまた非常に高まっておるわけでございますから、その点につきましては御趣旨を体しまして、極力一層の整合性を保つように努力をしていきたいと思います。
  285. 栗林卓司

    栗林卓司君 では最後に一点だけお尋ねしたいんですが、先ほど日銀総裁にお尋ねしたことなんですけれども、時間の関係上大臣の御見解を求められませんでしたので、改めてお伺いしたいと思います。  で、公債発行の個人消化の問題なんですが、直接個人消化どうこうではなくて、国として考えてみますと、間接金融方式なのか、直接金融方式なのかを考えれば財政の効率という面でも直接金融国債金融した方がはるかにいいことは自明の理だろうと思う。一方国債発行によって公社債の市場整備をしなければいけない。前々から言われてまいりましたが、市場が整備されるということは、今度民間法人にとっていいますと、直接金融の道が開けてくるということだと思うのです。というのは、事業債で調達しようと思えば、従来以上にできるということにならないと公社債市場は育ってこないわけですから、そうなってくると、実は国債の個人消化ということを一つの面にしながら、金融制度というのは、従来いろいろあった議論を越えて新しい仕組みというものを求めていかなければいけないのではないのだろうか。先ほど日銀総裁は時間をかげながら慎重に検討いたしたいと、金融制度調査会でも云々ということがございました。それは全般を含めて監督のお立場にある大臣として、かねて懸案でありました。なかなかこれさわることは困難であることはよく承知しております。しかし、この分野に勇気をもって取り組むことがいま一番必要なんではないかと思いますので、御所見を承りたいと思います。
  286. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 前々から資本市場の育成ということ、それから間接金融に偏重、片寄り過ぎた状態は是正しなけりゃならぬという議論は前々からあったわけでございますけれども、それが一向に是正されないばかりか、その度合いがますます強くなってまいるという経過をたどってきたと思うのでございます。  資本市場はそういう状況でございますが、とりわけその中でも公共債の市場なんというのは、大塚先生の御指摘もございましたけれども、全くないに等しい状況でございまして、またそれで今日までやれたわけなんでございます。ところが、今度幸か不幸か、こういう状況が現出してまいりまして、大量の公債を狭隘な市場にお願いをせにゃならぬというようなことになってまいりましたわけでございます。そこで、このことはわが国の金融市場にとっては一つの大きな試練だと思うのでございます。財政政策にとって試練でございますが、同時に金融政策にとっても一大試練でございまして、これをどのように受けとめて消化してまいるか、それはどうしても仰せのように個人消化と一口に言いますが、国債というものが金融資産として国民の経済の中に定着していくということにならないといけないと思うのでございます。したがって、まず市場の整備とか、あるいは条件でございますとかいうことは、金融政策として考えてまいらなければなりませんし、そのことは同時に、一般の民間の資本、資金調達をいわゆるクラウディングアウトするようでは困るし、またほかの公社債、金融債等の消化に支障を来してもいかぬし、そういう中でどのようにそれを設定してまいるかというような点が非常にいま大事になってきたと思います。と同時に、財政政策としてどの程度、どの時期に、どれだけお願いすべきかというこのボリュームの問題、時期の問題、そういった点は、いままでのようなぐあいには安易には考えられなくなってきたと思うのでございます。したがって、先ほど申しましたように、この国債政策は、財政政策にとって一大試練でございますが、金融政策にとりましてもこれ成否を決める一つの試金石のようなものになってきたと思います。御指摘のとおりだと思うのでございまして、私も全省の機能を集中してこの問題にぶつからなければいかぬと、いまひそかに決意をいたしておるところでございます。いろんな角度からこの問題は深くきわめていかなけりゃならぬ課題だと思うわけでございます。国会におかれましても、この問題につきましてはいろいろの御教示を今後いただかなければならぬと思いますけれども政府の方も精いっぱい努力して御審議にはこたえたいと考えております。
  287. 大塚喬

    ○大塚喬君 先ほど財政費の三兆円以上を節減ということで、補助金の整理の問題について質問をいたし、資料の提出を願ったところであります。先ほど申し上げました特殊法人等並びに補助金整理小委員会という自民党の案ですが、その骨子は、一つは、昭和五十一年度は特殊法人等の役員の一律二割削減、その二割という数字が百六十五人、を実施するとともに、新設は一切認めないと。二は、五十二、五十三年度中に現存の特殊法人等の三分の一を統廃合する。三、三兆円に上る政府資金については向こう三ヵ年、五十二ないし五十四年度に総額の三分の一の返還を求めると、こういう趣旨のようであります。で、先ほどどもは大変敬意を表するという言葉を申し上げたわけでございますが、いま国債の審議をいたしております際に、私どもが念頭から離れないことは、不況対策ということをにしきの御旗にして安易な国債政策に走ることを厳に慎めと、その前に歳入歳出の見直しをせよと、こういう立場に立って強く論議を重ねておるところでありますが、いま三つの申し上げました事項については、五十一年度予算の中でどういう決意で大臣が取り組んでおられるのか、そこのところをひとつ明確に決意の表明をいただきたい。  それから、この問題に関連をして私の感じを申し述べますと、四十九年度までは少なくとも国の予算編成、これはいわゆる高度成長、産業優先の予算編成の方針が続けられてきたと思います。そしてこれが五十年度になってこれではまずいと、こういうことで福祉優先の政策にかわってわずか一年、今度はまたまた逆戻りをして五十一年度予算編成については産業優先の予算編成だ、これは明らかに三木内閣の政策、かじ取りが失敗だったということを如実に示しておって、前の方の、四十九年度までの方がよかったと、こういう結果を表明いたしておるものと考えるわけであります。ところが、先ほども三木さんは経済音痴だという評がありますように、まあやっぱりそうなってくると、その中で大蔵大臣を勤めております大蔵大臣の責任というのはきわめて重要なものではないか。で、こういう問題について四十九年度は失敗でした、ブレーキを踏み過ぎてショックであちこち大けがをさせてまことに申しわけありませんでしたと、四十九年度ブレーキ踏んだことは誤りでしたと、こういうことが一言あって私はしかるべきだと思うわけですが、この点についての私の素朴な質問について大臣の見解表明をお聞かせいただきたいと思います。
  288. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 大臣のお答えになります前に、自民党の委員会におきまして御提案のありました特殊法人の整理統廃合問題でございますが、先ほどもお答え申し上げましたとおりに、これは自民党の委員会が総理のところに委員会の結果を御報告になったというところまで承知いたしておりまして、その先のことはまだ政府といたして検討いたしておりません。ただ、あの報告にあります中の特殊法人の新設は認めないと、この点につきましては私どもも、政府といたしましても、来年度予算編成方針といたしまして、新しいものの新設というものは一切いたさない、そういう点におきましては委員会報告と全く一致いたしておりますけれども、たとえば特殊法人の役員の整理でございますとか、あるいはまた特殊法人の、向こう二年でございますか、二年間における統廃合、これにつきましてはまだ政府として方針を決めておらないのが現状でございます。いろいろむずかしい問題も含んでおりますので、今後この問題が正式に政府として検討する時期にまいりましたときに、もっといろいろ細かい点を詰めて検討いたしてみたいと考えております。
  289. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 特殊法人の処理の問題でございますが、新しいものは認めない、それから機能が退化したものをつぶしまして新しく必要になったものをやる、すなわちスクラップ・アンド・ビルドというようなものは場合によって認めることあるべしと、第三に、今日の時代で整理してしかるべきものは勇敢に整理の方向で処理、努力するということは先ほど大塚委員にお答え申し上げたとおりの方針で政府も臨んでまいるつもりでございます。  それから第二の、福祉優先でなくて後退してきた、ぐらついてきたのではないかということでございますが、そういうことはないのであります。今度の近く予算が、私どもの案が内示されまして、それから各省との御相談をいたしまして仕上げてまいるつもりでございますけれども、私どもの原案をごらんになっていただきましても、それから仕上がりができました、メーキャップを終わりました予算をごらんいただきましても、福祉優先の原則は厳として貫かれておると私は確信するのでございます。今日、不況対策で公共投資等がいままで総需要抑制のために抑えられておりましたものを、この五十年度の補正予算以来若干後に戻しておりまするけれども、それは確かに事実でございますけれども、いわゆる福祉予算に比較いたしまして、これを不当に優遇しておるというようなことは全然考えておりません。依然といたしまして福祉優先は厳格に貫かれておるわけでございまして、その点は御安心をいただきたいと思うのでございます。
  290. 大塚喬

    ○大塚喬君 どうもいまのは納得いきませんので、まだ質問の時間を残して一つ後で重ねて質問いたします。
  291. 野末陳平

    ○野末陳平君 大臣にお伺いしますけれども、当面の政治課題として不況とインフレ、どちらも解決すべき大事な問題ですけれども、とりあえずどちらに重点を置いて解決しなきゃならぬとお考えでしょうか、不況とインフレを。
  292. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) どちらもです。つまり、われわれが不況対策をやりましてもインフレの土俵を外すようなことはやっちゃいけないわけでございます。インフレ抑制ということは夢寐だにも忘れちゃならない鉄則なんでございまして、その点は私どもも今度の予算を通じましても貫いておるつもりでございます。  いま御承知のように、大変操業度が落ちて、需給のギャップがひどいときでございますので、今日大きく公債を出して大胆な不況対策を講じなきゃならないのじゃないかという声は非常に強いものがあるのでございますけれども、私ども先ほど申しましたように、物価の点、すなわちインフレの点と、それから国際収支の維持という点は踏み外したら大変でございますので、そういう点を十分考えながら、土俵の大きさというものを考えながら、不況に対応する施策をその限度においてとらしていただいておると御理解をいただきたいと思います。
  293. 野末陳平

    ○野末陳平君 理屈ではどちらもということなんでわかるのですけれども、やはりインフレについてはある程度幾らかでも落ちついてきておる。ここでいま、より必要なのは不況の方に重点を置くことじゃないか。もちろん、土俵は踏み外さない、これは大臣の御答弁のとおりだと思います。しかし、公共事業によって財政でもって景気回復に寄与したいのだと、公共事業にということなんですが、私思うには、公共事業で果たして景気がどの程度回復するのだろうか、大して効果がないんじゃないか。もちろん第四次でだめだから第五次をやれと、そういう意味ではなくて、公共事業に重点を置いただけではこの不況は克服できないというふうに考えるんですが、ほかにもまだいろんなことをやらなきゃいかぬのじゃないか、そう思いますが、どうでしょう。
  294. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いま私どものやっておりますことは、去年の補正予算以来、たびたび申し上げておりますように、大変不況のために財政が記録的な歳入欠陥になりましたと、しかし、経済の水準、財政の水準、行政の水準というものをこの際維持するためには、いま歳出を削減するとか増税するとかいう時期ではないということで、ずっと赤字公債をお願いいたしましてこれに対処しておるゆえんのものは、総体としていまの財政政策の姿勢は、経済を支えるということ、まず景気を振興さす前に経済の落ち込みをともかく支えて、いまの行財政の水準を支え、国民の生活を支え、雇用の不安を来さないように支えるということがまずなさなければならぬことだと心得てやっておるわけでございます。しかし、そういう施策を講じてからの経済の足取りを見ておりますと、なお景気の回復の足取りは依然として遅々として進まないと、若干のマクロ的な改善は見ておりますけれども、なお依然として不況は長引いておるし、雇用関係も決して実質的な改善の顕著な徴候は見えないじゃないかということでございまするので、ことしに入りまして、四次にわたる今度は積極的な不況対策というものを財政金融両面からやらしていただいたわけでございます。で、これは一次、二次、三次というのは漸次浸透してまいりましたけれども先ほど申しましたように、四次はまだ打ち出されたばかりでございまして、この効果をいま測定するのは時期尚早だと私は考えております。  で、今度いま私どもやっておりますことは、来年度予算でございますので、これに引き続きまして、来年度この状況に照らして何をやるべきか、何をやるべきでないかということを今度の予算を通じて答えたいと考えておるわけでございます。それはいま申しました趣旨で不況も克服しながら、インフレを回避しながら、ともかく国民の生活を守り、雇用を維持していくために、いま政府政府の能力において可能なことを精いっぱいやってみようということをいたそうといたしておることは御理解を賜りたいと思います。
  295. 野末陳平

    ○野末陳平君 ただ、この不況というものは、結局消費の冷え込みというものが相当大きな原因になっておるのじゃないかということになっていますね。ですから、さっきから話出てますけれども、公共事業だけで、あるいは財政金融両面にわたって四次にわたる不況対策をしてきたというだけではやはりだめであると、この辺で、まあ同僚議員もみんな減税のことを触れていましたけれども、やはり減税して消費を刺激しなきゃだめじゃないかと思うのです。現に減税するたんびに、これは減税はインフレをあおるからという意見も事実あったわけですから、減税というものはインフレがひどいときには危険かもしれませんが、いまの時点、あれと同じ理屈を言えば、消費の刺激に役立って景気回復の、つまり不況克服のやっぱりかなり大きな力になるんではないか、そう私は思う。で、先ほどからのお答え聞いてますと、要するに減税しても即効性はない、貯金に回っちゃうんだというようなことでしたが、これ貯金に回るったって永久に回るわけじゃないんです。やはり物価の先行きとか、あるいは不況感とかそういうものがあるがゆえに貯蓄にとりあえず回すということで、生活水準を上げたいという気持ちはあるわけですから、ですから、貯蓄に回るから減税は効果はないんだという意見は私は余りにも単純過ぎる。もうちょっと消費心理というものを考えた場合に、減税というものはすぐ貯蓄に回って意味がないという結論は、この場合いまのこういう事態にちょっとうなずけないんですが、どうお考えですか。
  296. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 再々同じようなことを申し上げて恐縮でありますけれども、私ども考えておりますのは、所得税減税やった場合とやらない場合との単純な比較ではなくて、所得税減税をやるか、あるいは減税をやらないで財政投資をやる、財政支出をやるのかという比較の問題でございます。その比較として申しまするならば、やはりその景気の刺激をいたします度合い並びにスピードの点において財政支出の方がまさっているのではないかということを申し上げている次第でございます。
  297. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いま事務の方から話がありましたが、なお私の申し上げた趣旨は、公共投資ばかりじゃございませんで、たとえばことしやっておりますこと、人事院の勧告を完全実施する。これは本来ならばこんな財政のときにはなかなかできない相談なんでございますけれども、これもやっぱりこの際公務員の方々に四月にさかのぼってちゃんと実行するということは、今日の経済を支える不況克服の非常に大きな柱になっておると思うんです。その他私どもがこの財政を通じていろんな人件費、いま申しましたような人件費でございますけれども、料金政策にいたしましても財政が苦しいからいろいろ切り込まなければならぬと。本来ならば財政の原則から言うといろいろ切り込んで節約せにゃならぬことでございますけれども、この際は経済を維持し、いまの経済回復を軌道に乗せなければいかぬという趣旨で私ども公債をお願いしながら、この克服に当たっておるんだということでございまして、何か公共投資だけでエビで鯨を釣るようなことはやってないんです。これはもう全体として施策しておるわけでございまして、公共事業を千億や二千億の金でこの経済どうにもなるものじゃありません。それは全体として私は評価していただきたいと思います。
  298. 野末陳平

    ○野末陳平君 その全体としての中にやはり減税を入れないというのはおかしいと思うんですよ。でもまあこれはどうもすれ違いで、全然共通の言葉がなさそうですから、あえてお聞きしませんけれども、ついでに減税について一言だけお聞きしておきたいんです。減税というのは一体何のためにするのか。いままで大幅減税を何かしてきましたが、一体いままで減税はどういう目的によって大蔵省としてはしてきたんでしょうか。
  299. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 簡単なようで非常にむずかしい御質問なので一言ではお答えしかねるわけでありますけれども、やはり国民の負担能力と片や財政支出の必要性、その両者を両々相にらみ合わせました上で税負担を考えていく。その税負担を考えていきます段階におきまして適当であると認めれば減税をやっていくということだろうと思います。
  300. 野末陳平

    ○野末陳平君 主に国民の負担というところに重点があったと思うんですけれども、しかし、それ以外に負担を軽減するという効果も当然いままで、効果というか、それはねらっていたわけじゃないですけれども、いろんな、何ですか、波及するところがあったと思うんです。まあ、減税を全然しないというならば、私は諸外国の例など聞いたり読んだりしましても、やはり不況になった場合かなり思い切った相当無理な減税までしているというのを見て、やはりある程度われわれの国も見習ってもいいんじゃないか。何でこんなに減税をいやがるのかちょっとわからないんで、結果的に金がないからいやなのかなと思ったりするんですが、もう少し減税についても考えていただきたいと思うわけです。絶対にもうやっぱりあれですか、今回はかたくなに減税をしないという決心を固められたんですか、大臣。
  301. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 減税をして国民の負担を軽減できるようなことにいたしたいと。これは私は減税というのは政治の中で非常に大事な目的の一つだと思うんでございます。で、そういうことをいたす力を持つということのためにいろんなことをやっておるわけでございまして、現在いつももう毎日毎日おやつをくれなければ非常に不親切な御両親だというわけじゃないと思うんですよ。そういうことをやられたら、もう決して私は健全な家庭はできるものじゃないと思うんで、やっぱりできるときに、ちゃんと減税ができるような状態財政を早く回復させにゃいかぬわけでございますから、野末さんに対するお答えは、一口に言うと、減税ができるような財政の体質を早く取り戻したいということのためにことしは減税をしないと、こういうことであります。
  302. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあ何か、国民がお恵みをいただいているような雰囲気で、ちょっとうまくありませんが、そのお答えは。しかしいずれにしても、そうなると、結局私と大臣の話は、鶏が先か卵が先かみたいなことになりますから、減税ができるような体質に早く経済回復してからやると。それは逆で、減税をして、そうして早く経済回復すべきだと私は思うんです。まあどうも聞いてもらえそうもありませんから、この話はやめますが。  ただ、増税の話がさっき出てきた。その増税の前には、当然これは大蔵省の方も不公平税制と言われるような、あるいは不公正と言われますか、いろいろな問題のあるいまの税制を直すんだということですが、残念なのは、毎年話題になる例のお医者さんの特別措置ですが、あれはどうも今度も見送られそうだということを聞いたんですが、あれは本当ですか。
  303. 山内宏

    政府委員(山内宏君) これは毎々これまた御説明をいたしておりますとおり、社会保険診療報酬の改訂ともにらみ合わせまして、今後いかように扱っていくかということを政府としてお決めをいただきたいというふうに考えております。
  304. 野末陳平

    ○野末陳平君 これは毎年その話になるんですよ。要するに診療報酬の引き上げの方が先で、それができたらこの特別措置も考えるというような、直すというようなことなんですが、ぼくはもうここまできたら、それを待っているべきじゃなくて、その引き上げとは別にやはり税として考えるべきだというふうに思うんです。毎年同じ議論言って、結局厚生省の方で、報酬の方でがたがた、つまり結論が出なければ、大蔵省の方も結論は出ないんだと、あなた任せみたいなことばかりいつまで一体続けるのかという気がしまして、もうことしやるなら大蔵省の方から診療報酬きちっと決めてくれと、それでけりをつけるんだという強い姿勢で、来年度の税制改正にこれをのせてこないということは、ぼくは余りにも国民に対して、ちょっとふまじめだと、誠意がなさ過ぎると思うんですね。その点を最後に答えていただきたいと思います。
  305. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 五十年度の税制改正の要綱の際には、「社会保険診療報酬課税の特例措置の改善合理化は、次回診療報酬改訂と同時に実施する。」ということで今日までまいっておる次第でございます。次回診療報酬の改訂がいつ行われますかにつきましては、私どもは専門でございませんのでなお定かにいたしておりません。その時期において改めて検討さしていただくということになろうと思います。
  306. 野末陳平

    ○野末陳平君 結局、大蔵大臣、あちらがいつになるかわからないということでしょう。そういうことでいいのかと思うのです。もちろん診療報酬の問題をそのまま、何ですか、それと無関係にやるというのはむちゃかもしれませんが、そのぐらいのことを決断するのは、いま増税をしたいと思っていらっしゃると思うのですがね、その前の必須条件だと思うのですよ。どうでしょうか。やはり引き上げが次回あるから、そのときに私の方も直しますという態度は捨てて、もう待っていられない、これだけは直すんだという決断を、大臣できませんですか。
  307. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 野末さんの御提言は私もよく理解できます。この問題につきましては、御案内のようにいろんないきさつが、経緯があるわけでございますが、要するに、国民の御納得がいくような措置を政府としては講ずるつもりです。
  308. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあ、納得がいくように、必ず来年度に直してほしいと思います。大蔵大臣を信用して待っていますから。  じゃ、私の質問これで終わります。
  309. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 大塚君の質疑の残り時間は後刻に留保し、午後八時まで休憩いたします。    午後七時二分休憩      —————・—————    午後八時十三分開会
  310. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  昭和五十年度公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  311. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大変な赤字国債発行いたすわけでありますが、これは今年度の二兆九千億だけではなくして、これは大蔵大臣、大平さん、けさのこの新聞を見ますというと、来年度予算の原案固まったということが出ていますね、この総額が二十四兆二千九百億、こういう額になっていますね。先刻も同僚のたしか大塚君だと思いますが、それに対して、税収来年度は一体どのくらい見込めるか、こう聞きましたら、大体十五兆程度と、こう言ってましたね。税外収入もとよりありますが、当然そこで来年度も赤字国債発行していく、こういうことになると思うんです。それが先刻来、各それぞれの同僚の議員から問われまして答えて、はっきりはしませんでしたが、七兆円程度と言われていますと、こういう答え方をしているんです。  そこで、私がこれから聞くことは、ただ単に今度の特例法だけじゃなくって、来年度——先ほど同僚議員からも指摘されましたが、五十二年度、それ以降どうなるか等々を含めまして伺いたい、こう思うんです。なぜ私はこういうことを冒頭に質問するかといいますと、直ちにもうそのツケというのは国民に回ってくるんですね。それからもう一つは、国の財政運営が私はどろ沼に入っていくというような非常にやっぱり危惧の念を持っているんです。ですから、これから漸次聞いていきますが、私は本当に真剣に心から真心込めて国民の負託にこたえなければならぬ、こういう立場質問と、ときには私の提言も交えまして伺いたいと存じますから、答弁もありきたりの答弁じゃなくて、率直な答弁をしてもらいたい、このことを冒頭に私は要請をいたしまして質問をしたいと、こう思うのです。  私は、今度の赤字国債発行というのはきわめて危険なものだと、思っているのです。しかも、いままでにもうすべての野党の質問者は、償還計画というものを尋ねられている。ところが、先ほども大蔵大臣の大平さんは、内外の諸情勢がきわめて困難であるからまだ答えられないと、こういう意味答弁の繰り返しなんですね。まことに私は不見識だと思うのです。なぜかというと、今年の当面いま質疑に入っておりますこの二兆九千億にしても、やみくもで計画なしに国会に起案するものではないと思う。いわんや明年度の、この新聞に出ております二十四兆二千九百億円前後になる予算にも、七兆円を超えるであろうということが、まだはっきりはしていませんけれども、という答え方ながら答えていますね、財政当局が。私は、大蔵省の主計局長あるいは理財局長あるいは税収とも関係ありますから主税局長、いずれもやはりこの二兆九千億のみならず、明年度の七兆円に対しても確固たる根拠を持っていると思う。なぜ一体この委員会にその償還計画を含めた根拠を明らかにされないのか、この点冒頭に私は伺っておきたいと思う。
  312. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 膨大な特例公債発行を御承認いただくにつきましては、御指摘のようにこれは国民の、経済ばかりではなく、国民生活にとって重大な問題であることは、吉田さん御指摘のとおりに私も心得ております。またこのことが財政運営にとりまして非常に重大な出来事であることも御指摘のとおりに心得ております。したがいまして、この発行を国会にお認めを願うにつきましては、それなりの理由を具して国会の御理解を仰がなければならぬことは申すまでもないことでございます。問題は、それに対しまして私ども今日まで終始してまいりましたのは、それは確かに財政運営上の重大な問題でございますと、したがって政府は、こういう方針でこれからの財政運営に当たるつもりでございますと、償還の財源の積み立てにつきましては、こういう方針で対処をいたすつもりでございますと、従来四条公債で採用いたしておりましたような減債制度に甘んずることなく、特別な減債の仕組みを提示いたしまして、忠実にこれを守ることによって償還を可能にするだけの財政的用意をしてまいりますということをお答え申し上げたわけでございます。しかし、いま吉田さんが言われましたように、事柄は財政の問題でございますから、具体的に年次別に数字的に示すべきである、それが提示されないということは大変残念だという御指摘でございます。仰せの趣旨は私もよく理解できるところでございます。それを実行いたしますためには、年次別の向こう十年間にわたる財政計画がなければできないことでございまするし、財政経済の枝でございまするので、経済の展望が固まっていなければできないことでございます。したがって、そのことはまさに御指摘のとおり要請されることは国会といたしまして当然のことでございますけれども、今日内外の状況がこのように動揺の激しい流動期でございまするので、そういった展望の提示につきましては、自信を持って提示するだけの用意がないことはひとつ御理解をいただきたい。しかし、国会の御審議に際しまして、財政ないし経済の展望をできるだけ忠実に提示いたしまして、御審議に応じなけりゃならぬことは当然政府の責任と心得ておりますので、いま作案中の長期計画等も参酌をしながら、しばらく時間をかしていただきまして、通常国会の段階におきまして、可能な限り御審議の資に供するべく、そういった展望をできるだけ明らかにしてまいりたいということを申し上げておる次第でございます。仰せのとおり、大変不十分なことは重々承知いたしておりまするし、吉田委員がおっしゃることは、当然の、国会としての御要請でございますけれども、事態がそのようなことでありますることも、あわせて御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  313. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大平さん、現存の減債制度では、二兆九千億についても、借りかえの制度になっていませんから、建設公債と違いますから。ですから、償還できないということは明らかじゃないですか。そこに特別な減債処理をしていくのだ、ただ私たちに特別な措置をすると言ってみたって、それだけではわかりませんよ。いわんや国民が、これは借金をかわってする結果になるわけですから、国民のサイドから見たら全くわからないのじゃないですか。ですから、いま通常国会でその展望を明らかにしていきたい、こういうことですから、当然、通常国会になりますれば、来年度予算の、新聞紙上で、あなたは明らかにしないのだけれども、七兆二千八百億程度になる、国債の依存度は三〇%ぎりぎりだと、たとえば、この国債の依存度にしても、先進国のアメリカであるとか、フランスであるとか、西ドイツであるとか、あるいは英国であるとかと比較したって、三〇%ぎりぎりなんというところは、どこの国もございません。ですから、私はその議論はさておきましても、余りにも大平さん、不親切なやり方じゃないですか。しかも、いま大臣の答えられた、自信がないと、だからはっきり言えないでは、まことに、国民の側から見たら、この財政の運用というのは不安定なものということになるじゃないですか。このまま国債をどんどん発行し続けていきましたら——私は国を憂うるからですよ、わが国は、財政で沈没してしまうのじゃないですか、こういう不安定な、内容の明らかでないものを続けていくということになれば。この点はどうですか。
  314. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) たびたび本委員会で申し上げておりますように、今度発行について御承認を仰ごうといたしておりまする特例債は、十年満期の公債でございます。そして一括して発行を予定いたしておるものでございます。したがいまして償還は、十年たちました六十年に一括して償還する以外にやり方がないわけでございます。もっとも途中で繰り上げ償還がやれないことはないと思いますけれども、まず、六十年には遅くとも全部耳をそろえて払わなけりゃならない、厳しい法律上の責任を政府が持つわけでございます。これは払えないで済まされるわけではないわけでございまして、国といたしましては、いかなる経費を節減いたしましても、この公債の償還は果たさなければならぬわけでございまして、果たせられないだろうなんと言うておれないわけなんでございます。したがってまた、日本国の信用というものは、内外を通じてきわめて高いものがあることを私は自負いたしておるものでございます。吉田さんの御指摘でございますけれども、内外を通じまして、日本国債の信用あるいは日本政府の保証債の信用というのは、相当高い信用を享受いたしておると思うのでございます。その信用にこたえる意味におきましても、政府はちゃんともくろみどおりこれを償還してまいることでございます。その償還可能なような財政運営をやってまいることでございます。それができない政府ではないと考えております。問題は、また、そういう公債発行するにつきましては、それだけの政府が決意であるということで内外に表明すれば、それで十分だと私は思いますけれども、また市中におきまして社債や金融債を発行する場合でも、そういったことで国民はその会社を信用し、その銀行を信用して社債や金融債に応募いたしておることでございますから、公債に応募していただくはずだと思うのであります。  しかし、吉田さんのおっしゃるのは、たびたび申し上げているように、国会のお立場日本財政の将来について憂いを込めての御心配であろうと思うのでございます。それはまさに仰せのとおり、今後日本財政が迷路に入りまして、内外に信用を失うというようなことがあってはならないということからの御心配であろうと思うのでございます。そのことにつきましては、政府がだれよりも責任があるわけでございまするので、この公債特例債の発行につきまして、その償還財源をどのようにして積み立ててまいるかにつきましても、財政運営の基本の方針といたしまして、衆議院段階以来終始四つの原則を政府は誠実に国会で答えてまいってきておるわけでございます。普通の減債制度で認められている定率繰り入れ、それから剰余金全額の繰り入れ、予算の繰り入れ、さらに借りかえをやらずに償還いたしますという原則を固く守ってまいることを財政運営の基本にしていきますということを、われわれがまさに、政府がまさに責任を負っておる国会にお約束をいたしておるわけでございまするので、私はこいねがわくば、吉田さんのお立場政府を激励し、鞭撻賜りまして、このことがりっぱになし遂げられるように御鞭撻賜われば幸せと思います。
  315. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣も申されましたように、冒頭に私も申し上げましたように、ただ私ども反対せんがための反対だということでいま伺っているわけじゃなくって、いま申し上げているように、政府もとより叱吃、激励、鞭撻の意味を含めて私は伺っているわけなんですけれども、その点を誤解のないようにしていただきたいと思います。  そこで、単純に聞きますが、今度の二兆二千九百億という赤字公債というのは、政府はこの五十年度財政欠陥を乗り切るための策として考えたものだと私は理解するんですがね、この点はどうですか。
  316. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、政府がもくろみました、予想いたしました歳入が経済の停滞のために確保できなかった。しかし一面、歳出の大幅な削減も、あるいは大幅な増税も可能でないという経済状況でございますので、やむなくこういう手段に訴えざるを得なかったことは、この法律そのものにうたってあるとおりでございます。
  317. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そのとおりだと、やむなくそういう挙に出た、こうおっしゃるわけですね。  そこで、やむなくという大平さんのお考えを全く無視しているわけじゃないんですが、それにしても二兆二千九百億、当初発行予定分入れまして合算いたしますと五兆円を超える。そうしますと、国債の依存度が一挙に二六・三%になる、こういうことなんですね。大平さんの側から見ればやむを得ないものだと、こういうお答えですな。しかし、私ども国民のサイドから見ますると、余りにもこの額が大き過ぎて、巨額でありまして、私は驚いているわけですよ。大臣、驚きませんか。平気ですか、これは。
  318. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 確かに空前の巨額に上る特例債の発行でありますことは御指摘のとおりでございます。そのことは私もよく理解しておるつもりでございます。  それから、財政公債依存度、これは四条債も含めましてことしがすでに二六・三%に達しておるということも確かに高いものでございます。ただ先進国に比べまして、既発公債の残高はどの先進国よりもわが国はいままでのところ少のうございます。その国民所得に比べまして半分以上の累積公債を持っておる国が多いわけでございますが、幸いにわが国はまだ身軽でおるわけでございますが、こういうやむを得ない事情で発行いたすわけでございますので、そしてこの発行を通じまして経済回復を早期に図りまして、これから特例債依存という状態を早く脱却していくということをいたしまして、その段階におきまして公債の累積残高がどのぐらいになりますか、それが諸外国に比して決して多くないというようなところにおさめながら、その公債依存から脱却したいということでいま懸命に考えておるところでございます。金額が多いこと、それから依存率の高いことは重々承知いたしているつもりでございます。
  319. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 依存度のことですが、各国とも公債発行についてはある意味においてはやむを得ない措置だとして発行しているのじゃないかと思うのですよ。これは大蔵省の調べで、アメリカは一六・七です。イギリスが一四・五、西ドイツ二五・三、フランスが二二・四、西ドイツの場合ちょっと高いですけれども、この二六・三から見れば非常に低いんですな。いわんや来年度発行予定額というものを見てまいりますと、三〇%ぎりぎりのところだと、大変な国債の依存度になるということになりますね。こういうことが結果的にはこれも同僚議員から口酸っぱくなるほどここで質疑を展開されたんですが、やっぱり財政硬直化の要因になることは否定できないでしょう。ですから、けさのこの報道によりましても、もうすでに国鉄の運賃、電報、電話料金を初め、公共料金の引き上げ、そして特に今年度と違った角度で予算に盛り込まれた、これが新聞の中では大蔵省の原案として特徴的なものだとも書かれているんですね。それから老人医療の有料化、あるいは国立大学の授業料の引き上げ等々も考えていますね。これがそのように実行されてまいりまするならば、国民は国債発行によって直ちにこのツケが回ってくるということと、一つの側面として、こうした社会福祉に連なる関係でも犠牲を強いられる、こういう結果になるわけですよ。非常に私は大きい犠牲だと思うんですがね。この点はどうお考えになっていらっしゃるのですか。私は、こういうような財政国債発行に依存していくことのやり方を強化していくということは、先ほど大臣も申されましたように、経済財政というのは切り離すことはできないと私も思います。思いますが、そういう意味で、将来の経済に、政府の方もたびたび答えているわけでしょう。高成長から低成長に変革せざるを得ないということ、これはいままでそういう答え方をしておりますよね。ですけれども私は、低成長下においても、国民福祉というものは、政治の場でやっぱり重視をしなければならないと思うんです。このことは三木内閣発足当時の公約でもあったと思う、看板でもあったと思う。この点あわせて総理大臣も、大平さんの答えた後に私は見解を示していただきたいと思います。
  320. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) わが国が石油危機に象徴されるような世界の経済危機に、一番激しい打撃を受けた国でございますこと、したがって、不況の程度も非常に激しかったこと、それからわが国の租税体系が所得税や法人税中心にできておりますので、景気に対して非常に敏感な税制でありますることが、非常な大きな歳入欠陥を来したわけでございます。したがって、先進諸国に比べまして、この段階におきまして総体的に巨額の国債発行せざるを得ないような状態になったことは、そういう背景があったことをひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。  それから第二の福祉の問題でございますが、公共料金にいたしましても、社会保障、福祉水準の問題にいたしましても、もしこれが不当に国民にしわ寄せをすると、国民の負担にすべからざるものまでも負担にする、国民の負担に帰するというふうなことをしておると、あるいは諸外国に比べまして非常に高い負担を国民に強いておるというようなことでございまするならば、私は大いにおしかりをこうむってしかるべきだと思うんでございますけれども、低成長時代になり、財源が非常に窮屈な段階に去年から入ってまいりましたけれども政府は、福祉予算には最大の力点を置いてまいったつもりでございます。なるほど公共料金等に一部の是正をやりましたけれども、これは当然やるべきことをやったわけでございまして、決して不当なことを国民に求めておるわけではないのでございます。いま編成をいたそうといたしておる明年度予算におきましても、先ほど同僚の皆さんにお答え申し上げましたように、福祉予算については最大の力点を置いておりますことを数字をもってお示しできると確信をいたしておるわけでございます。福祉は究極において政治の究極の目標でございますので、これをゆめゆめおろそかにするようなことは考えていないわけでございます。公共投資等がいま不況対策の角度から取り上げられておりますけれども、こういったことより何よりも終始福祉関係につきましては十分の配慮をいたしておるつもりでございます。
  321. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 大蔵大臣の答弁にもありましたように、日本ぐらい石油の依存度の高い国はないわけです。いま石炭を掘っておるわけです。そういう点で日本のインフレというものは、これは世界に比較して、三木内閣が出発したときの、狂乱物価と言われる事態が生じて、そういうことで非常に日本経済が打撃を受けたわけです。そして貿易——世界が全体として、まあ不況、去年でも一番大きな、やっぱり輸出でも六百七十億ドルくらいの輸出を予定しておったわけですが、百二十四億ドルも輸出が予想よりいかなかったと、こういうことで、これは三兆円を超えるものですからね、こういう点で、やっぱり税収の不足というようなものも予想外に大きかったわけで、しかし政府は、不公正の是正ということを政治の重点にいたしておりますから、一番不公正なものはインフレである。インフレが世界的不公正の最大なるものである。インフレを抑制しなければならぬということに政策の重点を置いた相当厳しい総需要抑制政策をとったのも、こういう理由からであります。まあ、そういう中にあっても、社会福祉ということには、従来、公共事業というものが社会福祉よりも日本の場合はずっと予算においても、総額においても多かったわけですが、昭和五十年度予算において初めてやはり公共事業を一兆円上回っておる、そういう点で、これはいままでの予算の中においても例を見ない公共事業とのそれだけの格差をつけた。われわれとしてできるだけ社会的不公正の是正ということを、インフレを抑制する、その中におって社会福祉政策というものにかなり重点を置くということで、いままで不公正是正ということに対してのわれわれの考え方をそういう点で政策的に表明しようとしたものでございます。
  322. 辻一彦

    ○辻一彦君 関連。  総理に一点伺います。  いまこれからの経済政策として福祉の問題に触れられていますが、今度の不況というのは非常に深刻であって、これは経済政策のミスによっているということは指摘をいままでされたとおりであると思います。総需要抑制のいわゆる大義を春闘のベースアップを抑えるという点から非常にずらした、こういうことが実質賃金を抑えて消費需要を低下させて、スタグフレーションを一層進展させた、こういう点があろうと思います。  そこで不況克服のためには税負担を軽減をして可処分の所得を増加させる、こういうような道があるにもかかわらず、こういう点をおいて、いま公共投資、しかも本四橋の架橋であるとか、新幹線等々、民生に必ずしも結びつかない点に力を入れておられる。そこで、昭和四十年代の後半に芽生えた産業保護から福祉への政策転換が再び今度の不況対策に、これを克服する、こういうことをきっかけにしてかって歩んだ道へ復帰しようとするのではないかと、こういう懸念も持ちますが、総理は今後の経済財政運営に当たっていずれの道を選択をされようとしておるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  323. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 今度の予算編成にも相当減税をすべきだという声があったわけであります。しかし、いまの政府考えておりますことは、何としても景気を回復せなければいかぬ。雇用問題にも重大なやっぱり不安を与えておる。それには仕事がやっぱりふえなければならぬ。企業においても九月決算などを見てみますと、赤字の会社が非常にふえている。それは日本企業はやはり終身雇用制で、欧米に比べて相当なやっぱりいまの経済規模から見れば過剰な人員を擁している。また自己の事業の資本力というものも弱い。借金でやっておる。金利負担も多いということで、欧米に比べて企業の採算というのは日本が一番悪い。そのことはやっぱり雇用問題に当然に響いてくるわけでございますから、どうしてもこの際は景気を回復せなければいかぬ。そういう景気を回復するという場合に、一つは、減税というものも個人消費の面から景気を刺激することにはなりましょうけれども、どうも景気の刺激策に減税というよりかは、この際——将来においてそういう問題も起こりましょうが、来年度の、五十一年度予算編成の場合は、やはりそれを公共事業に使うことによって景気回復の効果というものを——減税の場合は当然貯蓄に回る部門というものも相当あるわけです。この際はひとつ景気をやっぱり回復しようということに重点を置こう、そういうことで、減税という声もありましたけれども、来年度予算編成には減税ということはとりませんでした。そしてやはり公共事業、住宅、そういうものを中心とした景気の回復というものに重点を置こうという考え方で、まだ決まっておりませんが、そういう考え方のもとに予算の編成が進行をしておるということでございます。
  324. 辻一彦

    ○辻一彦君 私の後の方の質問、いわゆる公共事業に、投資に力を置かれて、四十年の後半の産業保護、福祉政策への転換というものが、二つがあるわけですが、どうも不況対策を契機にまた前の道に帰っていくんじゃないかと、こういう感じがしますが、これからの経済財政の運営についてその二つの道をどうお考えになっておるか、この点をもう一点お伺いしたい。  なお、大きな声でお願いします。ちょっと半分くらいしか聞こえませんので……。
  325. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 福祉ということは、これからの政治が目指さなければならぬ方向であることはこれはだれも異論がないわけです。そういうことですから、福祉が非常にこれから政治からもう後退してしまって、政治本来の福祉社会を建設するという目的がもう埋没してしまったと、そういうことはありません。これはやはりこういう苦しい財政の中においても、できるだけ福祉政策の充実ということには来年度予算においても力を尽くす考えでございます。ただ、景気回復といいますことは、福祉といっても、いままでも十月の統計で失業者が百三万人という、また雇用が無理な過剰な人員を相当企業は抱えておる。それで百三万人の失業者ができておる。この事態というものは政府はやっぱり重視せざるを得ない。そういう見地から、どうしてもこの際はやっぱり景気を回復せなければ、これは企業というばかりじゃないです、雇用問題にも大きく響いてくるという点から、景気回復ということに重点を置いたけれども、そのために福祉政策というものを全く犠牲にして、そして公共事業をつけて景気の回復を図ろうということではない。そういう限られた財政の中においてもできるだけの配慮を来年度予算編成においてもいたす所存でございます。
  326. 大塚喬

    ○大塚喬君 実は私は黙っておろうと思ったわけですが、三木総理の答弁を聞いてどうしてもやっぱり黙っておられません。いままで三木総理が政権を担当されてちょうど一年、で、昨年末に昭和五十年度予算案が発表になりました。三木総理の手で初めて予算が編成をされて明らかにされたわけであります。このときに、四十九年度国債が二兆一千五百億円、これを二兆円に減額をしたということで、大変な手柄のように宣伝をされて五十年度予算審議が始まったわけであります。現実にそれがどうなったかと申しますと、四十九年度末の国債残高は、十二兆五千億円から一挙に今年度末は十六兆五百二十九億円にふえるわけであります。減額をした、それを盛んに三木内閣の手柄のように宣伝をしたわけでありますが、実際は十六兆五百二十九億円にも増額をされた。このことは三木総理が政権を担当されて一年の間に起きた事件であります。それは、つまり三木内閣の財政運営の失敗からこういう事態を引き起こして、先ほど答弁の中ではこれが昭和五十五年度には七十兆円にも達すると、こういう事態を引き起こしたのは、ひとえに三木内閣の責任であろうと私どもははっきりここで指摘をせざるを得ないわけであります。で、まあ率直に言って、それらの責任を、三木内閣、三木総理は何かこう毫もそういうふうなことを感じておらないような、そういう態度で、何か人ごとのような、そういう感じを受けるわけであります。  それから私は、その政治責任については、このような悪法を今後何年も何年も引き続いて赤字国債発行を余儀なくされるような、こういう事態を招いた三木内閣の責任をどうしてもここではっきり国民の前に謝罪をしてもらわなければとてもがまんのならないという、こういう点が一点。  それから、先ほど社会的不公正の是正、これは三木内閣が大変一枚看板にしておったところでございますが、一つ覚えのようにインフレが一番最たるものだと、これだけで済まされる問題ではないと思います。具体的に税制、金融、社会保障、これらの各方面においてどれだけあなたが社会的不公正を是正したのか、税制であったらひとつ示してください。それから金融であったら示してください。社会保障でどれだけの社会的不公正を是正したのか明らかにしていただきたい。私はそのことをやっぱり三木内閣、三木総理の口からはっきりここでお答えをいただきたいと思います。
  327. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 大塚さんの御質問でございますが、われわれもいろいろと責任は感じておるのでございますが、大塚さんも振り返っていただくと、三木内閣が出発をしたときは狂乱物価といわれたわけですからね。だから、社会党の委員長から私は質問を受けたときに、景気のことを考えないで、景気刺激なんかをとらないで、物価安定こそ最重点に置くべきだという激励を成田君から受けた記憶が、私の記憶が誤りなければあるわけです。皆がやっぱり物価安定、物価安定ということが——激励というのは質問演説ですが、そういうふうなことで皆が物価安定ということがあのときの国民的なコンセンサスであったわけですから、どうしてもこれはインフレと不況とが一緒に来ているわけですから、両面作戦を政府はとらざるを得ないわけでありますが、どちらかに政策の重点を置かなければならぬ。物価の安定に重点を置いたことは事実です。すでに第一次、第二次、第三次と、こう不況対策もやっておったことは事実でありますけれども、アクセントはやっぱり物価の安定に置いた。その結果いま満足しているものではないですけれども、インフレは鎮静の傾向にあることは事実ですよね。まだまだこんな消費者物価が一五%を切ったというて、これで自慢のできる状態ではないわけですけれども、そういうことで、大きないろんな見積もりに対してこれはうまく過ちなきを期するということは政府の当然の職務でございますが、何分にもやっぱり石油などが一挙に四倍になるということはいままでなかったことですよ、こういうことは。やはり世界でもどの国でも皆見通しを誤っておるわけですね。どこも見通しどおりであった国は世界に一国もない。だからといって、私は日本はこれで許されるということではないけれども、非常にむずかしい時代でありますから、そのかじ取りとしてインフレを鎮静するということに経済政策の重点を置いた政策が誤りであったとは私は思わない。しかし、いま言ったような国際的不況、貿易だけでもやっぱり一年に日本が見積もったよりも、三兆円を超える輸出の落ち込みもあるというような、こういう世界経済影響もあったんですよね。こういうことで予想外の不況というもののために税収の不足を来し、このことがやっぱり今回これは自慢してお願いしておるんじゃなしに、恐縮をしながらこの特例公債の御審議を願っておるわけでございますが、こういうむずかしい峰伝いの経済政策なんかをとらざるを得ないわけですから、そういう点で大筋に誤ったとは思わぬけれども、こういう税収の見積もりなどに対しては、今後この教訓を、今回のことを教訓として、やはりこれがあらゆる将来というものを予測して、できるだけ見積もりは正確を期さなきゃならない、これはやはり政府の責任だと考えておる次第でございます。
  328. 大塚喬

    ○大塚喬君 不公正是正の答弁は……。前段については全然わからない答弁をいただいたわけですが、後の不公正是正について、税制、金融、社会保障、この面について三木総理が不公正是正ということで何をやったんだと、インフレ退治というのは、これはだれが総理大臣になったって当然の仕事としてやらなくちゃならない。それは、不公正是正ということのあなたの看板を、それで看板どおり偽りございませんと、こういう答弁にはならないと思います。具体的に何を社会保障の問題でやったのか、税制改革の問題で不公正是正は何をやったのか、ひとつ明らかにしていただきたい。
  329. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 三木内閣が不公正是正の見地から行いました施策のあらましを御報告いたしたいと思います。  まず第一税制でございますが、通常国会に御審議をお願いいたしまして、御承認をいただきました特別措置の改正が二つあります。一つは、法人の土地譲渡所得に対する重課の問題が一つでございます。それからもう一つは、利子・配当の源泉選択課税率増を二五%を三〇%に引き上げたことでございます。もとより後者につきましては、大塚さんの属する日本社会党では、総合課税を主張されておることは私もよく承知いたしておるわけでございます。これにつきましては、われわれの内閣といたしましては、まだそれを実行するに足る基礎的資料を掌握するに至っておりませんので、向こう五年間の余裕をいただきまして、この選択税率を高めておきながら、五年間の余裕を得て総合課税への用意をしようといたしておるわけでございます。  第三の問題は、これは既存の税制の中で、行政府の手によりまして金融機関の貸倒引当金の率を引き下げて増収を図ったことでございます。金融政策につきましては、夏以来問題になっておりました大口規制の措置、行政措置を講じてまいりましたが、その後金融が緩和するに従いまして、金利の全体的な低下を図らなければならぬということで、公定歩合の引き下げや預金準備率の引き下げ等一連の金利政策を実行してまいったわけでございます。われわれはきめ細かく、不公正是正ということが政治の根本であることはよく承知いたしておるわけでございますので、日常の行政におきましてもそういった心構えで事に当たっておることはくれぐれも御理解を賜りたいと思います。
  330. 大塚喬

    ○大塚喬君 もう一言。  税制の面でいま大蔵大臣が総理大臣にかわって答弁をいただいたわけですが、実は総理大臣から答弁をお願いしておるわけです。で、いまおっしゃった答弁というのは、大変羊頭狗肉という実態だと思います。たとえば租税特別措置の改正にしても、五年間もあの機会に一挙に大幅に延長する。そして、ごくわずかな手直しをして、これで社会的不公正是正の税制改革をやった。貸倒引当金千分の十、これは千分の五というような、〇・五程度のものでお茶を濁した。そして、それが貸倒引当金の税制を強化したなどという答弁はまことに子供だましな、実際に社会的不公正是正ということの、そういう内容には当たらないと、私は断言をいたします。  それから、具体的なことで社会的保障の中で、何を一体じゃ、社会的不公正是正として実現をいたしましたのか、そこもひとつぜひ明らかにしていただきたい。何もやっておらないじゃないですか。
  331. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) ただいま税制のことで申し述べろということと、金融政策について申し述べろということで、お求めに応じてあらましを御報告申し上げた次第でございますが、先ほど総理からもお話がございましたように、三木内閣の手で編成いたしました五十年度予算は、社会保障の面におきましては、三六%の思い切った引き上げをいたしたわけでございまして、社会保障水準の画期的な改善をいたしたわけでございます。これは年度途中におきまして大変な税収不足であることが判明いたしたわけでございますけれども、七月から実施すべきもの、八月から実施すべきもの、九月から実施すべきもの、十月から実施すべきもの、すべて予定いたしましたスケジュールに従いまして全部実施に移したわけでございます。このことはきわめてあたりまえのことであると言えばそれまでのことでございますけれども、こういう財源難の状態におきまして、政府が苦心して充足いたしましたことでございますので、その点はそれなりに評価をしていただきたいと思います。細かいことを申し上げるわけじゃございませんけれども、これは予算面の施策の一端を申し述べた次第でございます。
  332. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 総理大臣、総理大臣に対して一時間ですから、もう、他党の同僚議員さんに質問していただかなければならぬことになりましたから、よく聞いて、総理大臣は答えないで結構ですよ、何言ってんだかわからぬし、最後になったら黙り込んでさっぱりものを言わなくなったから。総理大臣に聞きません。聞きませんで、大平大臣に聞くんですがね、低成長下においても国民福祉というものは政策的に充実をしていかなければならぬのじゃないかと聞いたら、これは否定しなかった。そこで、政府のいま五十年度予算編成に当たってみて原案か何かとにかく新聞紙上でまだ見ているだけですがね、これで見てみますと、減税をしないと言うんでしょう、減税は。そこで景気対策といいますか景気政策、公共投資とかいろいろなことをやっていますが、減税だって政策的にとられるものですよね。現にアメリカがそれで成功して、来年度も前年度と同額の大幅減税やるんですよね。だから、それは私は議論は後々しますから、いまはしませんが、減税しない。ところが、減税しないということは一般勤労大衆、サラリーマン等には実質的には増税になっているのです、全く減税しないということは。だから、そういうこと。  それから、公共料金を引き上げるというのは、これは受益者負担の原則という思想性がここに貫かれていると思うのですよ。それから福祉は高負担、これもそういう思想が流れていると思うのです。補助金は削減するというのですな。そして、一面今度は大量の国債発行、こういうことになるんでありまして、したがって、国民福祉というものは、否定はしなかったけれども、現実に重視していることにならぬじゃないか。  そこで、具体的に、それを否定しないとするならば、当然財政需要というものは伴ってくるわけですよ。だから、それに対応するように資金的な裏打ちをしなければならぬじゃないんですかと、こういうことを聞いたわけなんです。ですから、そこのところだけ答えられて、その後は私の質問保留いたしまして次の質問者にバトンタッチいたしたいと、こう思っているのです。
  333. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 低成長下においても福祉を重視するということは忘れてはならないぞ、仰せのとおり政府も心得ておりますと答えたわけでございますが、福祉というものは、マイナス成長のもとでも重視せにゃいかぬと思っているんです。低成長下でも高成長のもとでも、あらゆる場合に福祉というものは政治の最重点だと私は心得ておるわけでございます。そのことを付言申し上げておきたいと思います。なのに、政府は減税をしないというのはどうだという……。
  334. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いや、減税はいいんです。資金的な具体的に、つまり財政的な当然需要が伴ってきますから、資金的な裏打ちはどうするか、具体的に。
  335. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) でございますから、そういう福祉水準を落とさない。しかし、本来ならば、大きな歳入に穴があいたわけでございますから、ほうっておいたらそれは当然福祉水準を落とさなければいかぬところを、それを落とさないで、しかもそれを可能な限り引き上げて——このごろ、あなた政府の統計もごらんになっていただきたいと思いますけれども、実質賃金は上昇しているわけでございますから、そういった点を可能にするためには、何としても、あなたがおっしゃるとおり財源をつくらにゃいかぬわけでございますので、財源は特例公債にお願いをしている。それ以外に私はいま新しい財源は求めるべきでないと考えておるわけでございます。
  336. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総理に最初にお伺いしたいのは、明年度予算の性格であります。来年度の一般会計予算先ほどからの質疑でも出ておりますが、どうも伝えられるところでは一四%増、二十四兆二千七百億、こういうように言われており、自民党の要求でさらに増額というように伝えられております。やはりいまの大蔵大臣の答弁から見ても、これは国債発行額予算の増大に伴ってそれだけ増大する、こういうふうに承知せざるを得ないと思います。  そこで、性格の問題について伺いたいのは、公共事業は二〇%以上伸びる。そういうような伸びがあるようですが、特徴として。それに対して三木総理が先ほど答弁でもわかりましたけれども、また二十日の日には田中厚生大臣との協議で、福祉の充実を心から心配していると、私としては福祉を来年度予算の重点項目にしたい、こういうことを言っておられますね。ところが、昨日の財政制度審議会の建議によると、福祉抑制を求めております。各種年金の再検討。給付の一律引き上げというものは、これは強い反省をするべきだというふうに言っているし、福祉の問題でも、給付の増大に伴って受益者負担をふやすべきだとか、医療費の自己負担の引き上げだとか、あるいは公共料金の大幅な引き上げというようなことが建議をされておる。こういうことになると、福祉が、総理の言うような行き方よりむしろ私は後退してくるような感じがしてならない。いまは、いまの水準を下げないようにというお話がありました。だがしかし、福祉は本当は向上させなきゃならないはずです。その点で来年度予算の性格をどういうようになさるおつもりか。
  337. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 先ほども申し述べましたように、やっぱりこの景気の回復というものを最重点に置くと、それは皆さんでも労働組合でも、これは労働組合自身がやっぱり景気回復ということを強く要望しておる。それは雇用というものは不安定にならざるを得ませんからね、景気がいつまでもこういう状態では。それはやっぱり国民の雇用を確保するということは国民の大きな福祉の柱である。そういう点で、公共事業であるとか、住宅であるとか、貿易であるとか、まあ景気回復のやっぱり年にしたいと、そういう点で予算もそういう趣旨に沿うて編成をしたいと思っておりますが、しかし、この福祉というものは、大蔵大臣も答えておりましたように、これからはやはりこの政治の大きな目標というものは、国民福祉の増進ということにあることは、これ何人も否定できない。したがって、こういうときでありますから、その福祉充実ということに対しての伸びというものに対しては制約を受けざるを得ませんが、予算編成の中でこれがきめ細かく充実することは間違いがないことで、これはいままだ編成中でありますから、どういうことに結果的になりますかここではっきり申し上げられませんけれども、しかし、福祉は細かい配慮をいたして、できるだけ、こういう制約された財政のもとにおいても充実をしていこうと考えておるわけでございます。そういう考え方予算の編成に当たりたいということでございます。
  338. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 ひとついまの問題で、公共料金のことを若干私述べました。で、公共料金について財政制度審議会が建議した中に、公共料金や財政負担がかさむ、あるいは費用負担の公平を欠くと、放置しておきゃ一遍にたくさんに上げなきゃならなくなる、だろうということから、かなり大幅な値上げを建議しているようにこの新聞報道では伺うのですが、公共料金の問題は、明年度いろいろうわさをされております、国鉄の運賃だとか。この点はいかがお考えですか。
  339. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 公共料金というものに対して、まあ考え方が、公共料金というものは一つの採算が合わなくても、それはみな一般会計でそれは賄えばいいではないかという御意見もあると思いますが、私どもはそういうこの一つの経営を公共事業がやることに対しては、それは一般会計、これに依存すればいいんだという経営というものに対しては、なかなか経営というものが、健全なやっぱり経営にはならないのではないかと、そういうまあ親方日の丸式の考え方は。したがって、やはりそれを利用する人たちが、その企業を健全に運営できるだけのものは負担をするということがこれは原則だと。公共料金はもう安ければ安いほどいいんだと、残りはやっぱり一般会計で賄うべきだという、そういう方針は私どもはとらないのです。そういう考え方あるでしょう。そういうことで、やはりこう適当な機会に公共料金というものは、いろいろ人件費も上がっていくわけですから、みんなやっぱりその事業が人件費も賄えないような料金ということは、それは国民のサービスだというふうに言われる人もありますが、私はそうは思わない。やはり公共料金を、運営するのにその一つの営業収益で人件費も賄えぬような、それでも安いほどいいんだという考え方は、私どもはとらないのであります。  どこの国でも、この間もランブイエなんかの会議見ましても、郵便料金をイギリスは一年に二回上げている、三月と九月に。これはやはりどこの国でも——労働党内閣ですけれども一年に二回上げた。これはやはりそれを一般会計でやればいいというような、そういう安易な——どうも日本の私ども考え方がかたくななんで、よその国はまあそうでもないとも言えないけれども、よその国もやっぱりそういうふうなことで、来ておったフランスのジスカールデスタンも、西独のシュミットも、酒、たばこをこの間の不況の対策の中にやっぱり上げたということを言っていましたが、どうも世界とも、それがある程度の、そういうことで法律的に決められるような料金であっても、やはり野党の諸君も協力して健全な経営体に持っていこうということがどうも世界の常識なんで、鈴木さんね、だからといって一遍にこの物価の動向も考えないで一斉にとは私は思わない。それはやはり一つのこの全体の物価の動向などもにらみ合わせて、その上げ方には政治的配慮を加えなけりゃならぬが、原則としては利用者が負担をすると、そしてそれで経営を健全なものにすると。そうでないと、経営の合理化といっても、赤字は皆一般会計で負担せよということでは、合理化といっても、何かこう歯どめがありませんから、まあそういうことで考えておりますので、しかし、上げ幅については、これはいろんな経済の動向などもにらみ合わせて配慮を加えますことはいたします。しかし、公共料金は安ければ安いほどいいのだという説はとらないということでございます。
  340. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 非常に答弁が懇切丁寧で長いのでありますけれども、例が、一年に二度上げたところの例などは、幾ら郵便が通過したばかりといいましてもちょっと不見識だと思います。  来年度の国鉄運賃はどうするつもりですか。ただ簡単で結構です。どちらの方向か、上げるのか、上げないのか。
  341. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いま申したように、来年度の国鉄収支などを見ましても、このまま放置すれば普通の営業の収入と人件費で二、三百億赤字なんです。全部の営業収益で人件費に二、三百億足らぬ。私はこういう経営が健全なものだとは思わない。値上げを——それは一遍に国鉄の今日の赤字解消の値上げということは、そういうふうなことはいろいろ配慮しなければなりませんが、ある程度の値上げはやっぱり一つの国民の方々に御負担を願いたいとひそかに思っておるのでございます。
  342. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そこで、実は財政調査会の答申の点でありますが、来年度の税制改正について、この税調の答申、伝えられるところでは、医師課税の強化、租税特別措置廃止が十一、縮小が五十八とか五十九とか言われておりますが、こういうような内容が言われておりますけれども、特にこの税調の答申をどう扱うかということをお伺いしたいのです。  その中で特に申し上げたいのは、医師の課税に対する特例の改正、この問題是正については昨年も答申された。しかし、これが見送られ、今回もまた医師会等の反対で政府、自民党の税制改正大綱には一言も触れないというふうになりそうだ。触れておりません。そういうことでこれは一体どう考えているのか、これはぜひ伺いたい。
  343. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 鈴木さん御存じでしょうけれども、これは昭和二十九年以来のいきさつがあるわけです。そのときには公明党は、二十九年公明党というのは、鈴木さんそのときはまだ結成されていなかったんです。そのときに各党の共同提案でこれは院提案でやっぱり医者の所得税の特例法というのはできたんです。何で、いきさつを私はよく調べてみたんですが、どうも診療費の適正な料金ではないという判断でしょうね。だから、そこで所得税の特例を設けてそれを合理化して、だから、全面的な診療費の改訂があったときには、それはやはり当然にその所得税の特例法は改正されなければならぬわけでありまして、どうも適正診療報酬と、これとは何か単純に不公正是正というだけで解決しない経緯があるのですね。診療費の、診療報酬のやっぱり改正と何か結びついておったようだが、これは各党が、社会党もこの中へ入っておるわけですからね、皆さんは賛成の中に。そういうことですから、これを私はよくそういういきさつと今後の診療費の改訂などともにらみ合わせて国民の納得のいくような解決をしたいと思っておるわけでございますが、そういうにらみ合わせのあるということを、前のいきさつをひとつ鈴木さんにも御理解を願って、国民のこれは納得のいくような解決をしなければならぬ問題の一つだとは考えておる次第でございます。
  344. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 武見医師会会長が、診療報酬は公共料金に準ずるものである、したがって、公共料金並みの大幅引き上げがなければ問題にならないというような声明書が出ておりますが、そういうことからいままでの医師会側の意見では、この医師税制優遇の問題ですが、これについてこの改正は診療報酬改正と一体だと、こういうことがずっと言われておりました。必ずやろうとすれば反対が出る。いまの総理の御答弁からでは、診療報酬の方と一緒にというふうに受け取ったのですけれども、これはともにやっていくような決意でございますか。どこまでも推し進めていきますか。
  345. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) そこで一つ問題点は、どの程度の診療報酬の改正をやるかという点とも結びついておるわけですね。それはもう適正な診療報酬に改訂をしたときにはこれは当然にこの問題は解決されなければならぬ。その診療報酬の改正というものがどういう程度の改正になるかということと関連性を持っておるということは御理解を願いたいのでございます。
  346. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 もう一つ伺いたいのは、自動車関係の税金のことですけれども、この増税が税調答申に出てきております。そこで、いろいろこれは影響があります、時間がありませんので簡単に申し上げたいと思いますけれども、今度、現在でさえも租税収入の中に、総収入に占める自動車関係の税収が五十年度で八%もある、二兆一千九百四十七億円、それが今度は初年度で約三千億円もふえるという案でございます。平年度で六千七百億円、そうなると世界一高い自動車への税負担ということになるわけです。いま国民三人に一人が自動車を持っているという状況ですから、いままでは平均して九万円程度のものが十一万円というようなふうに払わなきゃならなくなってきます。こういう点で大衆課税の強化というふうにわれわれは受け取ってならない。その点についてはどうお考えですか。
  347. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 今日の情勢下においてやむを得ないとは思いますが、私よりも専門家がもう少し御納得のいく説明をいたすことにいたしますので御了承願います。
  348. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 時間の関連がございますので、できるだけ簡単に申し上げたいと思いますが、現在の厳しい財政事情のもとで特例債をできるだけ少なくするためには、自動車関係諸税の負担の増加をお願いいたしたい、そのように考えております。  本日、税制調査会から御答申のありました負担増の幅でございますれば、私どもが非常に粗っぽく試算いたしてみますと、自家用車一台当たりの自動車関係諸税の負担が、現在九万六千六百円程度となっておりますが、これが十一万六千円程度増加するという計算になっておりますから、これはドイツの十二万六千円、フランスの十五万七千円よりもまだ低くて、おっしゃるように、世界一高いということにはなかなかならないと思っております。
  349. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私、自動車関係税と言いましたから、いま言われただけのものでないことはおわかりだと思います。
  350. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 関係諸税全部入れた数字です。
  351. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総理、いまの自動車の普及について、それにかける税は大衆課税と思いますか、どうですか。それだけ一つ伺っておきたいと思います。
  352. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 非常にむずかしい御質問だと思いますが、自動車は今日大変に普及していますから、自動車が普及しておるという意味においては大衆課税という御批判もあると思いますが、しかし、だれもかれもが同じ自動車を使っておるわけでもないわけでございまして、普通大衆課税と言われておる中では多少性質は違うけれども、今日は自動車、これだけ普及しておるのだから、大衆課税でないと私は強弁はいたしませんけれども、普通のいわゆる大衆課税というものの中では、ちょっと性質が違うような面もあると考える次第でございます。
  353. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間がありませんので、簡単にお答えをいただきたいと思います。  一つは、償還計画のことでありますが、この委員会等においてもずっと再三大蔵大臣は、ついに償還計画については明らかにされませんでした。ただ、返さなければならない、非常にそういう強い義務的なお考えは、確かに指摘をされましたが、実際、具体的な数字はついに明らかにされませんでしたし、また、衆議院で出された補足説明以上のものはついに出てこなかったわけです。来年度予算から、私は日本財政も赤字を抱えた、特に国債にのまれた財政が始まるわけです。これを果たして、たとえば向こう五年間の間に景気を完全に回復して返せる総理としては決意と自信とがおありなのかどうか、これがまず第一点。  それからその次には、今度「昭和五十年代前期経済計画概案」、というのが経済審議会の中間報告として出てまいりました。これがこれから政府の方で検討をされて実際の経済計画という形になるかと思いますけれども、果たしてこれで、いままでいろいろ予算委員会等でも議論してまいりましたが、国債の問題も含めましていわゆる安定成長への軟着陸ということが可能なのかどうか、その点が第二番目です。  それから、昭和五十一年度予算も、五十年、五十一年で大体調整をするとずっと政府答弁をしてこられました。果たして五十一年度予算でそういった安定成長への軟着陸への調整が終わるのかどうか。ことしの赤字国債より来年はまたふえるわけですから、それだけで調整ができるのか。  じゃ、五十二年度からは国民が安心して生活のできるような、そういう財政にきちんとなるのかどうか。その三点明解にお答えをいただいて、私の質問を終わります。
  354. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 特例公債については借りかえをすることはしない、十年以内に必ず償還すると大蔵大臣も繰り返しておるわけでございまして、そういうことで、これは償還計画というものは、矢追さんごらんになっても、今日のような世界経済との関連性を持っておりますから、実際に世界景気というものとの影響というのは日本でもやっぱり受けるわけです。まあ、先般もライブイエの会議でみんなが言い合わしたことは、一九七六年、これはやっぱり不況脱出の年にしよう、一九七七年を本格的景気回復の年にしよう、インフレのない、こういうことで皆がやっぱりこれからひとつやろうということで、現にその約束に従って、アメリカも今年は六、七%の経済成長——ことしは恐らくゼロ成長かマイナス一でしょうね、アメリカは。それを来年はやっぱり六、七%まではもっていくということをフォード大統領も確信を持って語っておる。ヨーロッパは皆まあマイナス二でしょうね、平均、各国ともマイナス二の成長。これをOECDの見通しで、この間集まった国では四・五、これくらいの成長は見通せるというのがOECDの見通しですよ。マイナス二から四・五にしても成長である。だから、こういうふうな世界経済というのはやや明るさを取り戻しておるわけでありますから、このことが日本輸出の場合でもGNPのシェアは一四、五%なんですけれども、あれはやっぱり輸出するものは重化学工業の製品であるとか、自動車であるとか、日本経済に対する非常に景気の牽引力が多い品物ですから、これはやっぱりGNPのシェアだけでは言えない。これは日本経済に対して一つの明るい材料ではあるわけですからね、こういうことでこう世界経済はだんだん明るくなってきて、政府は今度これだけの、七兆円ぐらいの公債発行して、そして需要を喚起しようというわけですから、こういうことですから、この効果というものは、私は非常に景気回復の効果を持ってくると思うわけですから、こういうことがやはり償還計画を立てる場合に、非常に不安定な要素があって、いまあやふやなものを国会に、国の最高機関に何かあやふやな不確定要素の多いときに出すことは、それは良心的な態度ではないということで、今回そういうふうなことは出しておらないわけでございますが、しかし、この特例公債はもうこれは必ず十ヵ年以内に償還をするということを繰り返して答弁しておるわけでございますから、そういうことで、こういう経済の大きな変動期に新経済五ヵ年計画——矢追さんも御指摘のあったような、新聞などもこんなときに出す時期じゃないじゃないかというのが、きょうの朝刊にも批判しておる新聞もありましたけれども、しかし、いま御指摘のように、これ先行きどうなるんであろうかという不安も国民にありますから、不明確なものは不明確というもので、現実にそういうことをできるだけ予測して、現時点においてできるだけ明確な指針を与える責任が政府にあるということで、中間報告もいたしたわけでございまして、これは中心になるものは、成長中心から国民の生活中心というものが課題になっておるわけです。雇用の安定、物価の安定、財政危機の打開、あるいは経済の活力維持、こういうことに配慮しながら、そして安定した適正成長の路線に日本経済の路線を切りかえていこうということをねらったわけでございます。これはなかなか容易ならぬと思いますよ、あなたの言われるような軟着陸ができるのかということは容易ならぬけれども、これはどうしてもやらなければならぬ。  それはどうしてかというと、高度経済成長一つ条件というのは失われたんですから、私はこれだけのバイタリティを持ち、適応力を持っておる日本国民ですから、これは政府だけでということでなく、皆さんの野党の諸君の御協力も得て、経済の大きな転換期にこの切りかえを私はやる。これはもう日本はそれだけの適応力を持っていますよ。そういうことで、どうしてもそういう切りかえ、多少の摩擦が起こるでしょうね、短期間の間にこれだけの切りかえをやるんですから。しかし、その摩擦は避けて通れない。できるだけ摩擦を少なくする配慮をしながら、できるだけ軟着陸といいますか、犠牲の少ないような形で適正成長の路線に切りかえていかなければならぬし、いけると、こういう考えでございます。
  355. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いま問題になりました新経済五ヵ年計画の概案であります。これ見てまず驚きますのは、卸売物価の年平均上昇が五%になっております。過去の卸売物価の年上昇率は、昭和四十三年度が〇・六%、四十四年度が二・二%、四十五年度が二・四%、四十六年度はマイナス〇・三%、そして四十七年度三・三%で、狂乱物価のときがこれは二二・六%、四十九年度が二二・四%、五十年度は二・八%になると、こういうことになつています。こうして見てみますと、狂乱物価と言われる四十八年度、それから四十九年度を除いては、五%の上昇率ということはいまだかってなかったほど高い上昇率なんです。それを総理、高い上昇率とお考えにならないか。それから、こういう五%という高い上昇率をもたらす原因は一体何だとお考えになるのか。まずこの点について御答弁いただきたいと思います。
  356. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) やはり日本は御承知のように原材料というものを持ってない国です。そういうものを海外から輸入しなければならぬ。一斉にそういうものが値上がり、ことに石油のごときは非常に大きな問題で、これがやはり需給関係からそういう原料、燃料、材料の値上がりに対して日本の卸売物価は必ずしも適応力を持ったとは言えないのではないか。だから、いままで一%程度の、どこの国を見ても卸売物価一%、一年間。そんなものはほとんど外国にも例がないことであります。余りにも水準というものが低い水準であって、そのことが企業のほとんど決算が軒並み赤字決算であるというような実態もこういうところにも関連がある。したがって、ある程度の卸売物価の上昇というものは、やはり日本経済の健全な運営のためにはやむを得ないものだと考えておる次第でございます。
  357. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 都合が悪くなると声がだんだん小さくなるようですから、でかい声でひとつお願いいたします、でかい声で。  この内容によりますと、消費者物価の方の年平均の伸び率は六%であります。従来の卸売物価安定、消費者物価上昇というパターンから見ますと、どうも両者の関係がちぐはぐな感じがするんですが、この点についての総理のお考えを聞きたいと思います。
  358. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 従来日本のインフレーションは、先進国と比べますと非常に特徴がございまして、おっしゃるように卸売物価は比較的安定しておりまして、消費者物価だけが非常に上がるという形でありまして、これは学者の間でもすでに定説になっておりますけれども、生産性上昇率格差インフレということでございまして、非常にやはり日本の産業構造が二重構造で、生産性の高い部門というものは相当大幅にこの成長率が高いものですから、生産が大幅に伸びて、その結果一人当たりの相当高い名目賃金の支払いが可能だったわけでございます。高い賃金を支払いましても、生産性が高いものですから、それは労働コストの上昇にならない。したがって、生産性の高い部門におきましては物価が上がらなくて、これが卸売物価が安定していた理由でございます。ところが、そういうところで賃金が上がりますと、これは生産性の低い部門の賃金に波及いたしまして、そういうところは中小企業にいたしましても、農林業におきましても、生産性が低いものでございますから、やはりこれは物価の上昇に転嫁せざるを得ないという形で消費者物価が上がってきたわけでございます。で、今後やはり成長率が非常に大幅に下がりますと、いままでのように生産性の高い部門におきましても、賃金の上昇率が従来に比べますとかなり鈍くなることが確実であろうと思います。したがいまして、生産性の高い部門と低い部門の賃金の伸びが、生産性の格差がなくなりますから、賃金の伸びが鈍ることに伴いまして、消費者物価に対しては余り強い影響を与えない形でまいるというのが今後の見通しでございまして、私どものシミュレーションの結果も大体そういうことで出てまいりまして、従来の高度成長下の卸売物価、消費者物価関係とかなりさま変わりの形になるというのが今後の見通しでございます。
  359. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 先ほどの総理の答弁ですと、年平均五%、これは五年間の平均ですから、最初のは一応高いですね。おしまいのころになって四%という数字になるようでありますけれども、これは外国との比較じゃなくて、私が先ほど例を挙げた日本の国内のここ何年間かの比較から言いまして、四十二年度以降比較しましても狂乱物価の時期を除いては一番高いという時期なんですね、一番高い率なんですよ。そういう数字を総理は是認するような答弁でありますけれども、本当にこれこのまま認めるお気持ちでしょうか。
  360. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 従来日本の卸売物価が非常に安定しておりましたのは、一番大きな原因は、輸入品の価格、輸入原材料や食糧の価格が安定していたということでございまして、過去の例で見ましてもほとんど一%ぐらいの上昇にしかなっておらなかったわけでございまして、これがやはりこの間の石油、原油が四倍にもなるという非常に大きな変化がございまして、どうもその後やはり南北問題というものが今後とも尾を引いて、従来の——この間のように一遍に四倍にもなるというようなことはもうないと思いますけれども、やはり石油は従来に比べますとかなり状況が変わってじりじりと上がることは確実だと思います。  それから、石油にやはり触発されまして、ほかの原材料あるいは食糧というものも、どうも従来のように非常に安い価格で日本に入ってくるということが余り期待できないということがございます。これについてはもちろん十分なこの確たる見通しというのはだれもよく立てられないわけでございますけれども、国際経済分科会等で専門家でいろいろ御検討いただいた結果は、やっぱりある程度安全を見越して若干毎年の上昇率というものを覚悟して日本経済の運営をしていく必要があるということで、私どものシミュレーションは、数字は出しておりませんけれども、ある程度毎年の輸入原材料価格が高くなるということを織り込んでおります。これがやはり日本の卸売物価に非常に大きく影響いたしまして、従来に比べますとやや高いものが出てまいる。それに加えまして公害防止、環境関係のコストとか、あるいは生産性が低くなるといいましても、やっぱり名目賃金はこれはある程度上昇せざるを得ませんから、その意味の労働コストの上昇、そういうような要因がいろいろ重なりまして、従来に比べますとある程度高いものを許容せざるを得ないということになっているわけでございます。
  361. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 総理は認めるかどうかですね。
  362. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) まあ五%までいくかどうか、そこまで、あるいはもっと低い水準かもしれませんが、いまの卸売物価の水準というものは、いま言ったような燃料とか原料等が値上がりもありますし、そういうことから、やはりいままでのような水準では卸売物価はいけないと、まあある程度の卸売物価の上昇というものはやむを得ないものがあると、私はずっとこう考えておるわけでございます。
  363. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 先ほどはインフレは社会的不公正の最大のものだと、こうおっしゃいましたけれども、いまの答弁では五%という、日本の従来の傾向からいけば大変高いものをお認めになる、こういう点では国民生活に影響が大変なものだということを指摘せざるを得ません。ですから、これはぜひともこんな高い数字にならないような対処を十分にされるように望みたいと思います。  そこで、国債発行の問題でありますけれども、これはもう総理がお見えになる前に、この委員会で何回も議論された問題です。本年度の歳入欠陥を基礎として試算して、そのまんまいけば五年後には国債残高が七十兆円に、国債発行額十四兆円にも及ぶという、こういう試算がされております。これは大蔵大臣に言わせれば、いわば最高の、一番危険なものだと警告しているのだと、こういう答弁なんですけれども、しかし、実際ですね、来年度国債発行額を見ますとこの危険水域を突破しているのです。しかも、償還計画も明らかにならないとなりますと、やはりこの試算が現実の姿になりやしないかという、こういう心配があるのです。この点、総理いかがですか。
  364. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) さきの物価の問題について、御承知のように六%台に消費者物価は推移するだろうという五ヵ年計画の概要でございますから、国民生活の面については、消費者物価ですから、これは極力低い水準に、これは維持していくということが大きな経済政策目標であると、これだけは誤解のないように願いたいのでございます。インフレ容認論ではないということです。  それからまた、この間の財政制度審議会は、私は一つの警告である、こういうことの、こういう危険性があるからいけませんぞと、財政を担当する者は心せよという警告だと受け取っておるわけです。また事実そういうことに持っていってはなかなか容易ならぬ事態になりますので、今回の、相当来年度予算にも思い切った国の特例公債というものを出して景気の回復を図ろうというのです。そういうことでないと、毎年毎年そういうことを繰り返せば、事実財政制度審議会ですか、そこで指摘されたような点に陥らぬとも限りませんから、そういう点では十分に警戒をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  365. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私が指摘したいのは、すでにその警告の線を、少なくとも来年度は超えているということなんです。その先のことはさっぱりわからないのです。だから心配せざるを得ないわけなんですが、そこで、こういう状況になりますと、これは先回も参考人が見えまして、そこで指摘されたことは、五年後に七十兆円の国債残高があるという、こういう状況になりますと、よほどのインフレか、世界に例のないよほどの増税しかないという指摘なんです。これは当委員会の大蔵大臣の答弁でも、来年度は増税しないけれども五十二年度以降はすることを示唆しておりますね。現実にその中に具体的に付加価値税も話題に上っています。そこで現に、先ほど資料をもって質問したんですが、具体的に大蔵省としては付加価値税の調査を、もうすでに相当以前から、四十五年ごろから始めて、一定の調査が進んでおるようです。  そこでお伺いしたいのは、総理が、この増税のきわめて有力なる一つである付加価値税についてどんな認識をお持ちなのか、付加価値税が具体的にどんな国民に影響を及ぼすのか、この点についての御認識をお聞きしたいと思います。
  366. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 今後は、いま先ほどのいろいろ御質問にもありましたように、国民の生活の充実、福祉の増進ということが政治が追求する目標になるわけです。そうなってくると、やはり相当な負担を伴うわけでございますから、どうしてもやはり国の財政というものは増税をせざるを得ないような事態がくると私は思います。そのときに付加価値税というものを、西欧諸国は、近藤さんよく御存じのように、西欧、どこの国でもみんなやっておるわけですね、付加価値税というものは。そして、これがやっぱり、むしろ直接税よりも付加価値税を中心とした間接税が、フランスなんか六五%ぐらいの間接税のウエートを持っておって、直接税よりもずっとウエートが高い、こういうことでありまして、わりあいにこの付加価値税というものは西欧の社会ではやはり非常な弊害があるというような致命的な非難は受けてないですね。これはひとつ、やっぱり税制として長い間やってきておるわけですから。日本においても、ヨーロッパでいいことが日本の、いろいろ日本の風土もありますから、これはよほど研究はしなけりゃならぬけれども、研究をすべき税制の一つであるとは考えておりますが、いまここで付加価値税に政府が踏み切るという決意をもってこれを検討しておるという段階ではないということでございます。
  367. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 検討を開始しておるようですから、そこでお伺いするんですけれども、総理の認識として具体的にどんな影響があると認識されているのか。たとえば、私どもの理解では、高額所得者も低額所得者も同額の税負担になります。となれば、低額所得者ほど負担率が高くなります。それは、租税の重要な原則である応能負担の原則を大きく崩すことになると思うんですけれども、こういう御認識であるかどうかお伺いしたいと思います。
  368. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 付加価値税というものは中小企業物価、また大衆課税というような面がありますね、これは。そういう点で、しかし、間接税というものはなかなかそれなりにいろんな批判があると思いますよ、間接税は。どの間接税についても。しかし、これがいろんな工夫をしなけりゃならぬ、日本でこれを適用される場合には。しかし、日本では全然問題にならぬというわけにはいかないと思いますから、そういう弊害の点もよく頭に入れながら、この問題は今後慎重に検討いたしてみたいと思います。それは、いま言ったような、近藤さん、恐らくそういう点を御指摘になさるだろうと思いますから、弊害のあることはわれわれも十分に認めるものでございます。
  369. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 弊害を認めるとおっしゃることは、私が言ったように、低額所得者ほど負担率が高くなるという点で不公平である、こういった事実はお認めになるということですね。そうですか。
  370. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 大衆課税としての性質は持ちましょうね、この問題は。
  371. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そして、必要な場合には、そういった状況でもあえてこの税を導入する、そういう可能性もあるということですか。いかがですか。
  372. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 近藤さんからほかにいいこういう税があるという御提案でもあれば、われわれの納得をするようないい税があれば、それは十分検討いたしますけれども政府としては、これは検討すべき税制の一つである、こういうふうに考えているわけでございます。
  373. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いまの答弁を見ますと、いままでより以上に具体的に、税収不足を補う方法として考えている、こう理解せざるを得ません。しかしこれは、いまたった一つ私は指摘したんですけれども、大変な悪税です。ぜひそれはやめるように、思いとどまるように、研究も思いとどまるように私は申し上げたいと思うんです。  時間が来ましたので最後に一つだけ、大蔵大臣と総理にあわせてお伺いしたいんですけれども、けさほど日銀の副総裁が来まして、日銀中立性を保つことが、これは国債発行下のインフレ防止の歯どめの一つになる。一つは、日銀マネーサプライの適正化、一つ日銀中立性——日銀として独自の判断をもって対応していく、このことが必要だという指摘がありました。この点について、大蔵大臣はどうお考えでしょうか。そうしてこれは、やっぱり日銀という国の一つの大変重要な機構の問題でありますので、総理にもお伺いしておきたいと思います。
  374. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 日銀がその金融調節の中枢機関として政府に対して中立性を保持して、その機能を公正に果たしてまいるということは当然のことでございます。こういうように緊張した財政金融状況になってまいればまいるほど、その中立性はいよいよかたく堅持していただく必要があると私は思います。
  375. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) やはり通貨価値の安定ということは、これはもう非常に経済の基本になるわけですから、日銀の持っておるその使命というものは、これはやっぱり非常に重要な使命を持っておりますから、日銀中立性政府は十分に尊重してまいりたいという考えでございます。
  376. 栗林卓司

    栗林卓司君 総理にお伺いします。  総理、この法案の性格、簡単に一言で言いますと、これが通らないと、平たく言うと国は不渡りを出してしまう、国に不渡りを出させるわけにはいかぬから、どうするかという意味では、選択の余地のない法案ということになると思います。それで、民間ですと緊急融資を仰いで辛うじて不渡りは出さないで済んだものの、経営責任はどうかという議論に必ずなると思う。その意味で政治責任ということをお伺いしたいわけですが、これはお伺いしたとしても、御答弁も大体見当がついておりますから、その愚問は改めて言わないとして、とはいうものの、やはり突っ込んだ反省はしなければいけない。  そこで、この財政危機をもたらした原因、この不況はいかなる原因で起こってきたのか、政府経済政策に誤りがなかったかどうか、この点を掘り下げながら私は解明をすべきではないかと思うんです。なぜ失敗したのかという角度から申し上げているんではなくて、これからの対策を考えていく上で、なぜここに立ち至ったかという解明をしなければいけないんではないか。思い起こしますと、かつてニクソンショックのときに大幅な補正予算を組み、大幅な年度予算を組み、当時は経済政策は誤りはなかったと政府は再々言明しておりましたが、後になってあれはどうもまずかったと認めざるを得なかった。それと同じような経過が今度の歳入欠陥をもたらした背景にあるのではないか。これは何も三木内閣だけに求めるのもいささか酷だと思います。本当は四十九年の一−三月以降、前の内閣の責任にかかわる部分も含めて立ち至った経過を反省しながら明らかにすることが今後の対策を考えていく上で大変必要だと思いますけれども、この点についての総理のお考え方と、今後の取り組みをまず伺っておきたいと思います。
  377. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 一番の大きな原因は、これは石油の急激な値上がりだと思います、これは。これはもう日本のような石油にエネルギー源の八〇%を依存して、九九・七%という原油を海外から輸入しておるものは、そういう国は、どこの国でもこんな国はないですからね。みんなやっぱり国内のエネルギー源を持っている。これが四倍に一挙になったということは、日本の思わざる予期しない一つの大きな経済的な打撃を受けることは明らかでありますが、しかし、経済というものもなかなかやっぱり絶えず反省をする必要がある。また、やはり過剰流動性というものの処置というものは反省の私は余地があると思います。そのことがかなりやっぱりインフレの問題とも関連をしておりますから、こういう点は反省をすべきだと思いますが、一番の大きな打撃を与えたものは石油の急激な値上がりである。しかし、今後の経済政策についてもむずかしいことですが、どこの国でもみんな各国とも反省しながら、過ちを、そういう悔いを教訓としながら経済政策をやっているというのが現在の状態だと思います。
  378. 栗林卓司

    栗林卓司君 そのいわゆる石油ショックと言われるエネルギー問題が最大の引き金になったことは事実だと思います。いま私が申し上げているのは、そのオイルショックに対する対応に誤りが、手違いがなかっただろうかという反省を、それはそれとしてする必要がある。大変卑近な例を申し上げるようですけれども、あれを契機にして、たとえば鉱工業生産指数にしても、GNPの動きにしても、大分合わなくなってきた。それを見ながら政府政策を検討するわけですから、そういう大変じみな話も含めながら総体的に反省する必要があるということをここで申し上げておきたいと思います。  時間がありませんから次にまいりますけれども、これまで高度成長期を振り返って考えてみますと、いろんな基本的な問題が指摘はされてまいりましたけれども、大変むずかしい問題だというのでそれは傍らに置きながら、従来の制度の枠組みを生かしながら、その日その日を取り組んできたというのが実情だったと思います。しかし、ここにきて財政危機をどう克服するのかということになりますと、従来いわばそれはむずかしいからということでおいてきた問題にいよいよ正面から取り組まざるを得ないんではないか。  たとえて例を挙げてみますと、補助金、特殊法人の整理の問題があります。あるいは国と地方の財源配分の問題、事務の配分の問題、食管会計の赤字、健保の赤字、公共企業体の経営の問題あるいは金融制度全般の問題、さらには税負担の公平化の問題、これどれをとってみても、これまでなぜ問題として指摘されながら解決ができなかったかと言うと、利害関係のからみが大変に深い。しかも、これを解決することが目下の重要課題だということになりますと、政府としてよほどの覚悟を決めて取り組まなければいけないのではなかろうか。この問題についてどのように取り組んでいかれるのか、実践していかれるのか、総理の決意と姿勢についてお尋ねしておきたいと思います。
  379. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 非常に栗林君のいろいろ御理解のある質問に敬意を表するわけでございます。実際いままでは高度経済成長という中で皆やりくりがついたんですね、安きに、そのときそのときを、まあこれは可能であったですからね、処理してきて、一遍にこれはもうそういうやりくりはつかないところにきて、いま御指摘になった問題すべてがやっぱりこの際に根本的にメスを入れなければならぬ。そのメスを入れるということが、政府が厳しい態度をとらなければ国民に対してもなかなかこの財政経済の危機乗り切りに対して協力を得られないと思います。そういう点で、これはいま御指摘の問題一つ一つに対してもうこう薬張りができないんですからね。ここでやはり腰を据えてこれにメスを入れていきたいという考えでございます。これはいままでは何とかその場をしのいでいけたんですが、いけないんですから、いまは。そういうときに来たという、これは皆さんの御協力も得て、これに対してやはり根本的な解決をするという時期に来たということを全く栗林君と同じような感、これは大変な時期であるという感を深くいたすわけでございます。
  380. 栗林卓司

    栗林卓司君 問題のむずかしさがございますから軽々しく批判はいたしませんけれども、三木総理は同様趣旨のことを最初の施政方針演説でもおっしゃったと思うんです。で、これまた同じように取り組みますということでございますけれども、国民から見てわかるように、しかも、相当の真剣な危機感を持ちながら各位の御協力を求めていきたいということになりますと、見える形で、たとえば中心的な機関をつくるとか、あるいは中期的な計画のプログラムを示すとか、そういうことが一つの取り組む姿勢を示す工夫として私は必要になるんではないかと思いますが、重ねてこの点をお伺いします。
  381. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) まあ、これからの政府一つの中期的な見通しというのは、経済計画などでこれから時間もございますから明らかにしていくわけですが、いま栗林君の御指摘になった問題は、たとえば国鉄の問題にしても、あるいはまた地方財政との関係にしても、実際にいまは国鉄の問題なども取り組んでおるわけでございますが、いまここでその問題を全部このようにして解決するということをまだ申し上げる段階ではないのですけれども、いずれもこのままではやっぱり、ただ従来の惰性ではやっていけない時期が来たので、一つ一つこの際に根本的なメスを入れて問題を処理していこうという決心である、これは、どうせいろいろ国会に対して御審議を願わなければならぬ問題が——国鉄の問題にしても、いまひそかに運賃の値上げもお願いしてもらおうと思っておったと言いますが、そのときにはやっぱり国鉄の再建ということは問題になってくるわけですから、そういう一つ一つの問題をそういう都度御審議を願っていきたい。しかし、いまあなたの言われるとおり、全くもうこう薬張りでは過ごせない時期に来た。すべてがやっぱり根本的にメスを入れなければならぬというその認識は全く同じです。一々の問題については具体的ないろいろ御審議を願う場合において明らかにいたしたいという考えでございます。
  382. 野末陳平

    ○野末陳平君 特例公債に関しましてはやむを得ないというような受け取り方もあると思いますけれども、そうすんなりと思うにはいろいろと問題もあるようで、特に償還計画とか、それから起債の枠を決めてない、歯どめがないというようなそんなこともありますので、そういう点を一日も早く国民の前に明示してほしいとぼくは思います。ただそれと同時に、いよいよさっきから議論になっていますけれども、増税時代に入ってきたかなと思っています。ある程度の増税もやむを得ないとも思いますけれども、ただ増税と一言で言った場合に量と中身の問題が当然これは重要なわけですね。  そこで量の面からまずお聞きしますけれども、おとといですか、大蔵省の方に聞きましたら、租税負担率ですね確かに数字的には日本は先進国より低い、これをどの程度上げるかというようなことで、私は大蔵省が三%ぐらいを上げるのだということをこの場で何となく言ったのですがね、そんな程度で済むと本気で考えているのかどうか、その辺が疑問なんです。ですから、総理の仮に個人的な考えになってもやむを得ないかもしれませんが、一体租税負担率を何年間でどの程度まで上げれば、これからの財政バランスがとれていくと考えておられるのか、具体的に数字でちょっと総理答えてほしいのですが。
  383. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私の記憶に誤りがなければ、国民所得に対する税の負担率は確かに二〇%だと思うのですね。社会保険料を入れても二五%くらいだと私は記憶しておるのですが、これはやはり相当社会保障の進んでおる北欧はもちろんのこと、西欧でも四〇%から五〇%ぐらいの負担の率……。
  384. 野末陳平

    ○野末陳平君 それは社会保険料入れてでしょう。租税負担率だけで言えば……。
  385. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) これはイギリスが四六・二ですね。それから西ドイツの四五・〇、私の言っておったのは社会保険料を入れての場合ですよ。これはいま言ったような四〇%、五〇%になる。  そういうことでわが国の場合は二〇%と……。二一%、二一・三、まあ大体やや済むと……。
  386. 野末陳平

    ○野末陳平君 それはわかってるんです。いまそれをどこまで引き上げていくか……。
  387. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) まあ経済計画の中では三%というものを、程度を今度の経済計画の中には見込んでおる……。
  388. 野末陳平

    ○野末陳平君 じゃ総理もそういうふうに、それで財政バランスが今後とれると……。
  389. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) まあそれはあんまり、こう日本はストックがないですからね、日本の場合は。個人個人のストックが。だから、七千億はそういう点でいろんな、日本の場合は必ずしも西欧並みの租税負担率で公平だとも思わないのですけれども、お互いにもう少し、欧米社会というものはみなストック持っているわけだからね、そういう点で、それ自身は、私も三%程度という経済計画というぐらいが、日本の場合は増税のやっぱり一つの幅かなあと考えておるわけでございます。
  390. 野末陳平

    ○野末陳平君 その程度でおさめてもらえればまだいいじゃないかと思いますがね。そんなもんで済むかどうか非常に不安もありますが、まあそうなら増税にばかり頼らないように、早く経済回復の方も手を打ってほしいんですが、さてその中身ですが、先ほど近藤委員質問のお答えでも予想されるんですが、やはり一般消費税的な、つまり間接税でそこまで引き上げようということと了解してよろしいですか。
  391. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) ただいまの野末委員の御質問の、三%ポイント程度負担率が上昇せざるを得ないかという問題につきましては、何度かこの委員会でお答えしております基礎問題小委員会で、ほぼその程度はやむを得ないという前提で今後考えたらどうだろうかという中間報告が、税制調査会の総会に対して出されております。またその中間報告に際しまして、それが自然増収でカバーし切れない、何らかの新しい負担を必要とするということになる場合には、それは所得課税に求めるのか消費課税に求めるのか、まあ資産課税に求めた場合の収入効果は非常に小そうございますから、大きなものとしては所得課税に求めるのか、消費課税に求めるのか。それはそれぞれについて、それが国民経済の中の需要項目にどういう影響を与えるのか、物価にどういう影響を与えるのか、そういうことを十分吟味した上で、選択の問題として、今後十分議論すべきだろうということが、同時に中間報告されておりますので、今後税制調査会の総会でも、どちら側にどれくらいの負担を求めたらよろしいかという御議論を始めていただく、どちらかに決めておるという状態ではございません。
  392. 野末陳平

    ○野末陳平君 それにしても直間比率なども、やはり間接税を強化しなきゃならないんで、恐らく、いまの所得にいくよりも、消費の方に重点がかかるだろうと思いますよ。  それにしても時間なくなりましたから、総理にちょっとお伺いしますが、自民党の中で、何か負の所得税というのがありますね、マイナスの所得税というあの構想が出ているというのを聞いたんですね。この委員会でも一、二年前からそういうのが出るんですけれども、全く問題にされないわけです。まあ事実、いますぐなんていうことはちよっと考えられないんだろうと思いますが、しかし、その自民党の中で、そういう構想についての議論なり意見なりが出てきたということで、ちょっと驚いたんですが、総理自身はこの構想についてどうお考えなのか。やはりわれわれ減税減税と言いますけれども、減税の恩恵をこうむらない層というのは相当多いわけで、その層に福祉と言っても簡単には手を差し伸べるわけにもいかぬですね。ですから、この負の所得税という構想は、非常に実現はむずかしいにしても画期的なことです。ですから、総理がこれをできれば実現したいと。そのつもりで検討を始めているというのか。ちょっと無理だから、あれはお話程度だというのか、その辺のことを個人的な意見でも結構ですけれども、最後にお願いして質問を終わります。
  393. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) これ、学者の中には、自民党が言い出したというわけでもなしに、そういうことを言う人もおりますが、実際に全国民の所得を把握するということは非常に困難なことですから、まだこう実際にこれを試みてみようとした国はないんですね、どこの国だって。一つ考え方としては、そういう考え方もありそうでしょうが、これを一つの租税の体系の中でこれをこなすということは、これは非常に困難があると思いますね。所得はやっぱり正確に把握せなきゃならぬですからね、一人一人。
  394. 野末陳平

    ○野末陳平君 自民党の方でそういう話出たんですか、出ないの、どっち。
  395. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私は聞かないですけれども、そういう考え方、自民党は常にイマジネーションの発達している人が多いですから、非常ないろんな案が出るんですよ、自民党は……。
  396. 野末陳平

    ○野末陳平君 じゃ、総理の意見
  397. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私はちょっと現実にこれいまこうやって政治を担当しておるんですから、いますぐにこれが実行できるということには私自信がない。所得は把握できるんです。
  398. 野末陳平

    ○野末陳平君 できればしたいですか。
  399. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) もっとほかにもいろんなそういう一つの思想をあらわすようなやり方というのはあると思うのです、そういうことはあると思う。一般的なそういうことなしに、そういうふうなものの考え方というものは、ただ生産の面でそういう考え方を実現するような方法というものは他にも私はあると思う。だから、なるべくひとつの低額の所得者というものに対していろいろと心を配ろうということからきたんで、いまの案はちょっとやっぱり実行が、ほとんど不可能に近いものと考えております。
  400. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 午後十時四十分まで休憩いたします。    午後十時二十六分休憩      —————・—————    午後十時四十九分開会
  401. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから、大蔵委員会を再開いたします。  昭和五十年度公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  402. 大塚喬

    ○大塚喬君 大蔵大臣に簡潔にお答えをいただきたいのですが、いままで審議をしてきた基調というのは、赤字国債発行して公共事業を興し、景気を刺激して日本経済の立て直しを図ろう、こういう基調のもとに論議をされてきたと受けとめておりますが、その点間違いございませんでしょうか。
  403. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 特例公債発行は、歳入欠陥に由来いたしているわけでございますので、直接不況対策のために発行するものではございませんけれども、結果としていま御指摘のようなことに相なると思います。
  404. 大塚喬

    ○大塚喬君 私は、この公共事業に大きな期待を寄せて景気回復の牽引車たらしめよう、機関車たらしめよう、こうお考えになっておる政府施策というのは、実際は機関車どころかトロッコにもならない。で、それは完全に失敗するだろうと、私はそのようにここではっきり大蔵大臣に注意を喚起したいと思います。なぜならば、一つは、御承知のように、公共事業というのは、国の負担分、そして三分の一なり四分の一なりの地方負担分、これが現在は地方財政が窮迫しておったために、いわゆるこれの受け皿、地方の負担分が全然出せない。ですから、公共事業をやろうとしても返上する、そういう地方団体が続出をしておる。それと、最も重大な——私は、最近になって各市町村、県等を回って実際にわかったことでありますが、昭和五十年度は、このような不況の中で県単事業、地方自治団体の単独事業というのが、もうほとんどゼロに近いほどカットをされております。ですから、政府が公共事業だけを強化してやれば景気回復になる、こういうふうなお考えというのは、実際に地方自治団体の単独事業という分が全く落とされておる、こういう計算がいま政府のやっておる施策の中には全く配慮をされておらない。ですから、この景気回復策、赤字公債発行というのは三木内閣の失政に上塗りをする、そういうものであり、私は、この国債法案というのは、これ以上三木内閣が失政を続けないためにも、これは廃案とすべきである、こういう考えを持っておるわけですが、この点について大平大蔵大臣のお答えをいただきたいと思います。  以上です。
  405. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 景気の回復は、政府といたしましては、いろいろな手段考えてやっておるわけでございまして、公共事業だけでもってそれを実現しようといたしておるものでないことは、先ほども申し上げたとおりでございます。しかしながら、公共事業の推進もその一つであることは間違いないわけでございます。ところが、その公共事業は、大塚委員が御指摘のとおり、地方負担、事業者の負担があるわけでございまして、国が予算を計上するだけでもって公共事業を推進されるわけでないことは御指摘のとおりでございます。したがって、そういった関連負担の金融につきましても、それだけの推進に足るだけの用意がなければ推進が十分でないことは、よく政府としても承知いたしておるわけでございまして、御指摘のような心配のないような配慮はいたしてまいるつもりでおります。
  406. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 時間がありませんから、読み上げるようなかっこうになりますけれども質問をしていきたいと思います。ですから、できるだけ、ただ演説するのでなくて、図表で見ると明らかでありますから、図表を私が作製いたしたものがお手元に配付してあると思いますから、そういう点でお答えを願いたいと思います。なお、関係委員の皆さんもこれを参考にしていただければ幸せだと、こう思います。  財源の求め方について大臣は特例債に求める。私は、そうではない財源の求め方の具体的な考えを持っておるわけです。後々申し上げますが、いずれにいたしましても、ただいままでの段々の答弁を聞いておりますと、国債依存というものは、ただ単に五十年度の単年度だけで済む可能性は全くない、大量の国債で財源手当てをするということはこれは不可避である、こういう状態が続くであろうと、こう見ているわけなんです。その証拠に、きょう発表されました不況下の新経済五ヵ年計画、この中にわざわざ国債政策という一項目を起こしておる。この内容も時間ございませんから私はあえて読み上げませんが、この中でも明らかに、過渡期においては特例的措置、赤字公債をとらざるを得ない、こうちゃんと明記しておりますから、恐らくやこの赤字公債発行というものは、私の見方では将来五ヵ年くらいにわたって政府考えているんじゃないか、こう思うんであります。その点の見解、これを求めておきたいと思います。  それから、財政制度審議会の中間報告がここにございます。この報告の中身も、私はもう先刻すでに御案内であろうと思いますから読み上げません。この姿勢でまいりますと、五十五年度において税収が二兆円から三兆円減収になるという指摘をしているんであります。ですから、そういう段階では国債発行額は九兆から十二兆円、この程度になるであろう、こう指摘されています。その結果は、累積国債残高というものが四十九年度末の約十兆から実に五十兆から六十一兆に達するであろうということもここで報告されている。しかも、歳出面の国債費も五十年度当初の一兆円余から四兆円から、あるいは四兆六千億にもなるであろう、こう指摘しています。一番問題にしているのはやはり、したがって、財政をこの発行のために大変に圧迫するものであるということを指摘しているのであります。それに加えて私ども推計してみますると、社会保障費それから恩給にかかわる経費、これは制度の改正を行わないそのままでもこの受給者が増加しておりますことは大臣御承知おきだと思うのであります。ですから、こういうものを単純に計算しても大変なこれは金額になるわけでありまして、一般論としてこの名目成長率と同じくらいの率の増加率になるんだと、こう計算されるわけであります。したがって、大量の国債発行で財源を求めましても、歳出面では新規施策や、あるいは新たな政策というものを導入するということはほとんど不可能だ、こう私は思うんですがね、大臣はどういうふうに考えるかということなんです。  それから、逆に経費の面で縮減を行ってみても、このような巨額な国債発行を必要とせざるを得ないということになりますれば、これはもうとてもじゃないけれども、賄い切れるという状態で私はなくなってくる、こう思う。だからこそわざわざきょう発表したように新五ヵ年計画をつくり上げて、そうしてその中に私は国債発行についての一項目というものを入れたものだと、こう思っているわけなんです。  第一に、赤字国債がこの特例法を設けて、私が一番心配するのは、自由に発行し始めると、これはもう本当に歯どめが私はなかなかきかないものだと思うんです。ここのところが非常に心配なんです。ですから、かねがね皆さんも申したし、私も冒頭に申し上げたように、この償還計画というものはきちんと計画立てられて、これが明らかにならない限りはとても納得ができない。また承服もできない、こういうことになるわけなんです。やがて大臣、将来ですよ、赤字公債発行し続けてまいりますと、これが償還のためのまた赤字公債発行しなきゃならない。こういう私は財政的には悪循環が当然起きてくる、こうまあ見ているわけです。まあ幾つか、このとおり私はもう質問用意しておりますが、時間がございませんから、私はこれは保留せざるを得ないと思うんですね。  そこでこの際、私は大臣に提案をしますから、ぜひひとつ検討してもらいたい。それは、財源を求めるということになりますと、赤字公債もあるでありましょうけれども、やっぱりわが国の税制というものを基本的に私は見直す必要があると思う、このことは、わが党は毎年度ごとに税制改革の方針を明らかにして、政府の税制改革というものを批判してきた、御承知おきのとおり。そうしてこれが結果的にその批判に耳を傾けてこなかったために、今回こんなに巨額の歳入欠陥を引き起こす、歳出の穴埋めをするための目的で、この二兆二千九百億という膨大な赤字公債発行する、そういう結果に私はなったと思うのです。私たちは高額所得者、あるいは資産所得者優遇の措置を是正しろと、こう言い続けてきた。それから、いまの税体系を一口に申し上げますと、資本蓄積優先の法人課税を改定しておくべきだ、これがなされていない、このことも強調してきた。ですから、こういうことについて、私は来年度はぜひひとつ税制改正を方向づけをして実施をすべきだと、こう考える。たとえば私どもがいろいろな資料から要因を求めて試算をしてみているのでありますが、この試算どおりに税制改革をやりますと、赤字公債発行しなくてもよいという結論になるのです。ですから、あえて私は大蔵大臣、英断を持って、こういうときにこそ税制改正をやったらいいと思うんです。  具体的に私は言いますよ。一つは所得税なんです。一千万円以上を超える高額所得者に対して一〇%の付加税を私はかけていいんじゃないか、こう思う。一千万以上の所得者というのは、給与所得者の場合は、昭和四十九年で民間だけで四万人、申告所得者は昭和四十八年で二十五万人いるわけであります。これに対して、ただいま申し上げたような、いいですか、付加税をかけますと約一兆二千億円というものが出てくる推計になりますね、これが一つです。これを提案をいたしておきます。  それから第二は、配当所得課税の特例措置を廃止したらいいんじゃないですか。配当所得者は、夫婦子供二人の場合は、五十年は四百五万円、所得税はかからない。これはもう各党各委員から不公正であるということはいままでに指摘をされてきたわけなんです。これを大蔵大臣、廃止をいたしますと、五百億という財源が出てくるわけであります。これだってやっぱり真剣に考えてみる必要があるんじゃないか、政策的に、まじめにですよ。  それから第三は法人税率ですよ。これは何と言われようとも、いまの政府の法人税に対する制度というものは大企業中心じゃないですか。これは否定できないと思う。ですから、これをやっぱり引き上げていくという方向にならなければ私はいけないと思うんです。こういう不況の中で、財政が逼迫をしたときにこそ、私は財源をやはりこういうところに求めるべきだと思う。中身はたくさんありますけれども言いませんが、これをやりますと大体七千億というものが出てくる。七千億出てきますよ。これはまじめな計数を使ってそういうことになるんです。  それから第四は、法人の配当に対する課税措置をやっぱり廃止していく。これだって新たな財源を求めるためには必要なことだと私は思うのです。これでは大体千七百億くらい財源が求められますよ。  それから、その次は第五になりますけれども、法人間の受け取り配当益金不算入の制度を廃止したらいいと思うのです。これだってですよ、どのくらいの金額になるかというと約三千億になります。  それから、問題の交際費の課税の強化、強化するだけで千三百五十億くらい出てきます。  それから、これもいままで各委員から指摘されてきました貸倒引当金の引当率の引き下げ、これを断行しますと三千三百億出てきます。  それに今度は減価償却資産の耐用年数をちょっと延長すればいい。この措置をとりますと、大平さん、四千億出てきますよ。  有価証券の取引税の引き上げを行えば六百五十億出る。  理由はたくさんここにありますけれども、もう時間がございません。何か二十五分か二十分くらいというようなことを私の方の理事の方から言われておりますから、私はその時間を守りたい、こう思って棒読みしているわけなんです。  それから、広告だって、非常にこれはむずかしいといわれていますけれども、広告費に対する課税を新たに新設したらどうなんですか。検討してみておりますか。検討に値するものじゃないですか。これだって、やりますと、いろんなやり方ありますけれども、最小限度のやり方で試算をしてみますと、一千億出てくるわけです。締めて二兆五千二百億という財源が確保されるわけです。それに問題の、法人の土地再評価をして税金をかける。もちろんこれは個人の土地についてもある一定のそりゃ限度を設けなきゃなりませんけれども、一般論として、これにも税金かけますと、国が二兆四千億、四十八年度の資産再評価をする率を掛けますとこういうことになる。当然これは地方にもまいりますから、地方は七千億入る、こういう財源になるのでありまして、私は特例法に寄りかかるということは、きわめてこれは政府並びに大蔵の財政当局は安易過ぎると思うんです。このことを私は大蔵大臣に提言をしておきたいと思うんです。そして答えてください。
  407. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 税制の中の技術的な側面もございますので、私からまずお答え申し上げます。  所得税の一千万以上の高額所得者に付加税を取ったらどうかという御提案存じておりますが、各国との比較におきますと、現在の日本の所得税は、どの国と比較するかによりますけれども、一千万から三千万ぐらいまでの間に、あるクロスポイントがございまして、それより下は日本の方がほかの国より安い、それより上は日本の方が高いという構造になっておりますので、負担の現状からしまして必ずしもにわかに御賛成申し上げられないということを考えております。企業関係の負担につきまして……。
  408. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 主税局長、あんたに答弁を求めているのじゃなくて、ぼくは大臣に聞いたから……
  409. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 技術的な側面をまず申し上げさせていただきたいと思います。
  410. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣が、これは政策的なものが入っているわけだから政策的に答えてもらえりゃいいよ。
  411. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 国債発行することは、将来の財政に累を及ぼすことになり、国債費は財政の挑発になるので、これに漫然依存することは非常に危険であると、したがって、新たな税源を開拓すべきではないかと、それにつきまして十項目にわたる詳細な御提言があったわけでございます。これにつきましては、いろいろ技術上の検討すべき点があると思いますけれども、税制改革によりまして、負担の公平を期しながら、財源を確保すべきであるという基本的な考え方につきましては、私も吉田先生に同調するものでございます。ただ、このやり方につきましては、それぞれの立場からなお検討を要する問題が多々あることを留保いたさしていただきたいと思いますけれども政府といたしまして、将来の財政の体質を健全にし、強化してまいる上から申しまして、真摯に、税制改正につきまして具体的な建設的な検討に入るべきであるという御提言に対しましては、十分意を体して努力をいたすつもりでございます。
  412. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上をもちまして質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。(「異議なし」「異議あり」「委員長」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  413. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 委員長、まだ、決して私はあんたに混乱させようという意思で言っているわけじゃない。大臣はいま答えられましたが、政策的なものですから、直ちにあなたと私は一致しないわけですよ。ですけれども、私は、高くここで警鐘を鳴らして、あなたに将来にわたって赤字公債発行することについては非常に危険だと、このことを厳重に警告を申し上げまして、私はこの質疑を保留したいと思うんです。まだまだここに、インフレとの関係であるとか、あるいは証券市場をどうするとか、あるいは政府のいま言っているような赤字公債の健全性というもののからくり、この図表をつくり上げたのもそこにあるんでありますが、私はそういう時間がありませんから、質疑を私は、委員長、留保いたしますから……。
  414. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 異議のある方は、二分以内の時間で御意見をお述べいただきたいと思います。
  415. 大塚喬

    ○大塚喬君 質疑打ち切りを委員長が出すというのは全く許されないことだと思います。反対の意見を申し述べて、皆様方のぜひひとつ御協力、御理解をいただきたいと思います。  いままでの審議を通じて、ことしの赤字国債発行を皮切りにして、先ほど答弁でも明らかになりましたように、五十五年度までは継続して赤字国債が増発をされる。しかも、昭和五十五年度には、その国債の総額は十四兆二千億円、そして当時の、その年の総予算の一・七倍にも当たる、そういう借金政策がこれから始まろうとしておるわけであります。まさに悪法中の悪法、しかも、論議が十分に尽くされておらなかったわけですが、地方債、それから政府保証債、政府関係縁故債、こういうものを含めますと、この公共債の総額は少なくとも百数十兆円に達します。しかも、論議の中で明らかになりましたように、何ら、赤字公債をここで断つと、発行を断つという、そういう論議が何ら行われておらなかったわけであります。さらにこの問題は、国債亡国論と私は率直に指摘せざるを得ないわけでありますが、そういう悪法である。  それから第二は、この法案は単年度の問題ではありません。借金政策で後世代の方に、昭和五十年当時の三木内閣、史上最低の無能な内閣、この無能な内閣の失政を、当時、一億なら一億の国民が、何のわけもわからない、何の罪とがもないのに一人頭百五十万も借金を背負わせられて、その借金を税金で払わなくちゃならない。これは、いま私どもが審議をしておることは、後世代の人に対する責任を安易な採決というようなことで決定をいたしますならば、私どものこの責任も後世代の人から強く指摘をされて弁解の余地はないものと考えるわけであります。  良心がある自民党以外の皆さん方は、まだこの審議を打ち切るなどということについては、どなたも絶対反対の立場を明らかにしておると思うわけであります。もしも問答無用というようなそういうお考えがあるとしますならば、採決に至るといたしますならば、これはつくろいだけは審議をしたようなかっこうをしておりますけれども、自民党の独善独裁、ファッショの自民党の本質を国民の前に暴露したもの以外の何物でもないと思います。審議を続けなさい。もし審議ができないと言うんなら、この法案は廃案にしなさい。私は、この質疑打ち切りに絶対反対の態度を表明いたして、委員長初め各位の皆様方のぜひ御協力、御理解をいただきたいと申し上げるものでございます。
  416. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は、いまの委員長質疑を打ち切るに異議ございませんかについては反対の意思を表示したいと思います。といいますのは、まだ私の方も質疑は残っておりますし、いまの吉田委員質問を留保された。このままでいきますと、まだまだ時間はかかると思いますし、十二時まで来てしまったら一たん散会をして十二時一分から始めれば延々続くことは可能でもございますし、時間はそういう意味ではまだ無限にあるような感じでありますので、それを早々に打ち切るというようなふうになってくることが、質疑を終局したものというようにとられることは、非常に遺憾でもあり、非常に残念であります。そういう意味で私どもは反対でございます。
  417. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 質疑打ち切りに絶対反対であります。  第一に審議が尽くされておりません。これは先ほど質疑の中でも委員長に対する私の質問で明らかになったとおり、委員長は国会法第五十一条第二項の公聴会——これが重要な最大法案であることを認めながら公聴会をいたしません。参考人招致をもって補完したということ、これは全く恣意的な解釈です。これはぜひもう私の指摘のとおり法制局に確認していただきたい。確認しましたか。法制局の見解から見ましても絶対これは補完できないんです。こういう違法な採決に入っていきますけれども、こういう採決には絶対加担することができません。第一の理由でございます。  それから第二は、審議の不公平の問題でございます。いま大塚委員の残り時間を超えて吉田委員から質疑がありました。ということは、当然この後に続くのは公明、共産、民社、第二院クラブ、それぞれの時間の差はありましても質疑が保証されておったんです。それが社会党のところで打ち切られたということは、公明党以下各党の質疑の権利が奪われたということです。こういうことはしばしばあります。これは前回の強行採決の際もそこで終わったんです。こういったことは絶対私は認められないと思います。  それから第三は、内容がそれほど重要なものをこういう形で打ち切るということに絶対反対であります。
  418. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議があるようでございますから、改めて採決を行います。  質疑を終局することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕   〔「反対、反対」「審議を続けなさいよ」「まだ時間があるじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  419. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 多数と認めます。よって、質疑は終局することに決定いたしました。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  420. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十年度公債発行特例に関する法律案に対し、反対の意を表明するものであります。  本案は、政府経済政策の失敗によって生じた一般会計の四兆円を超える歳入欠陥を穴埋めするために財政運営の基本法である財政法が禁止している赤字国債特例によってあえて発行しようというものであります。この法案は雪だるま式赤字国債への危険な道を開くものであり、国民にだけ大きな借金を押しつける最大の悪法と言わなくてはなりません。  反対理由の主な点を申し上げます。  その第一は、このような巨額の歳入欠陥が生じたそもそもの原因が、政府経済政策の失敗にあるにもかかわらず、あたかも不況なるがゆえの不可抗力の事態のごとく取りつくろい、この期に及んで赤字国債発行以外に方法がないという開き直りの態度に終始している政府の政治姿勢についてであります。これまでわが党は、ここ両三年、赤字国債発行しなければならないとすれば、中期的な財政計画を提示し、赤字国債発行について国民の理解を得るべきだと主張してまいりましたが、政府は言を左右にしてこれに応じないばかりか、赤字国債償還のための財源計画すら示そうとしないのであります。これは政府の最低限の責務であり、これさえ果たし得ない政府の態度は断じて許すことはできません。  反対理由の第二は、歳入欠陥を補てんする方策として、将来に禍根を残す赤字国債によらなくても、ほかに手段があるということであります。われわれはかねてより、租税特別措置による大企業、高所得層、高資産階層への特権的減免税を根本的に廃止をし、大企業保有の土地再評価を行うことによって税収を確保するという、社会的不公正是正の見地から財源対策を主張してまいりました。しかしながら、来年度以降の租税政策の方向は、このような福祉志向のものでなく、酒、たばこの増税に続く間接税の増税、公共料金の引き上げ等、大衆負担の増加をねらう旧態依然たる産業優先、国民不在の方向であります。税制の根本的改革、冬眠機関への補助金の大幅な整理を行わずして、巨額の赤字国債を累積していくことは、財政の極度の硬直化はもとより、中低所得者層の負担がますます増大していくことにほかならず、国民の容認できないのは明らかであります。  反対理由の第三は野方図な国債発行、特に赤字国債の巨額の発行は、中小企業を未曾有の危機に追い込み、住宅ローンや社会福祉を圧縮する一方、日銀の買いオペによりマネーサプライの急激な増加をもたらし、再び過剰流動性インフレを招く危険があるということであります。政府委員会審査を通じ、われわれが危惧する公債インフレに対する具体的解明を何ら示し得ませんでした。現在はあの狂乱物価の上昇をともかくも脱し得たとはいえ、なお定期預金金利を大幅に上回る物価上昇が続いております。特に今後は、酒、たばこを初めとする公共料金等の軒並みの引き上げにより、さなきだに物価上昇の圧力は日増しに強まっております。  政府がこのような安易な公債依存政策を続けていく限り、再び狂乱物価の再現と財政の完全な破綻、国民大衆の負担の激増をもたらすだけではなく、財政面より日本の民主主義を破壊するものであることを警告して、本案に対する反対討論といたします。終わります。
  421. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 私は、自由民主党を代表いたしまして、昭和五十年度公債発行特例に関する法律案に賛成の意を表明するものであります。  経済活動の停滞、それを反映した財政運営の困難の問題が各国共通の問題として生じてまいっているところでありますが、わが国の財政も、昭和五十年度において、約四兆に及ぶ多額の税収欠陥の発生が次見込まれる状況にあります。  このことは、申すまでもなく財政運営上の重大問題であります。かかる事態に対しては、歳出を削減するか、あるいは大幅な増税をもって対処することが必要でありますが、現在のわが国の経済は残念ながら、これらの策をとることを直ちに是とする状況にはないわけであります。このような経済の実情を踏まえ、可能な限りの歳入歳出の見直しを行いつつ、税収の不足を補い、今日わが国の経済、社会に必要な財政水準を維持する目的で、政府が提案されたこの昭和五十年度公債発行特例に関する法律案につきましては、まことに時宜にかなった適切な措置として賛成の意を表明するものであります。  この公債発行が直ちにインフレを招くという議論がありますが、今日の経済のデフレギャップの大きさを考えると、私はそのような心配は当たらないと考える次第であります。  本年度の税収の落ち込みは巨額であり、これが回復を図るためにはある程度の期間を要することはやむを得ないと思います。しかし、できる限り速やかに経済回復を図るとともに、財政体質の健全性を取り戻すことは、今後の最重要の課題であると考えます。この点に関連し、政府は、この法律に基づいて発行される特例公債の償還については、その全額を満期までに現金償還し、これを借りかえない旨を明らかにしておられますが、私は、これを財政の健全性を速やかに回復しようとする政府財政節度を表明するものとして、高く評価するものであり、その実現のための着実な努力の必要を痛感するものであります。  以上、私は、現在の財政経済状況そしてこれからの財政経済への展望を踏まえつつ考えてみて、今回の昭和五十年度公債発行特例に関する法律案につきましては、今日の事態を踏まえた適切な措置として賛成の意を表明する次第であります。
  422. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は、公明党を代表して、ただいま審議しております昭和五十年度公債発行特例に関する法律案に対して反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、政府経済政策の失敗が国民に不況とインフレという大変な経済的困難を背負わせてしまったことであります。  しかし政府は、この責任を全く放置して、さらに二兆二千九百億円という巨額の赤字国債をこの財政特例法案により発行しようとしております。  一体政府は、低成長経済への移行を言いながら、現在までいかなる低経済成長に対応した経済政策を行ってきたでありましょうか。たとえば歳出の洗い直しも十分行っているとは言えません。  税制においても依然として不公正税制は是正されず、税制調査会答申で指摘された不公正税制さえも見送ってしまっております。  このように低経済成長移行のための当然の処置をなおざりにして、歳入欠陥が生じたから赤字国債発行になったということはまさに怠慢としか言いようがないからであります。  第二の理由は、本年度五兆四千八百億円という巨額の国債発行についてであります。  わが国がいまだかつてなかったような巨額な国債発行が予定されておりますが、その八二%に当たる四兆六千四百億円が市中消化として市中金融機関を中心の保有となってまいりますが、これは、もし景気が回復に向かい、資金需要回復した場合、一年たった後日銀は買いオペにより日銀通貨発行増加をせざるを得ない情勢に追い込まれることが当然予想されます。通貨増発による財政インフレヘの対策について全く何もしていないということになるではありませんか。  第三の反対の理由は、償還計画についてであります。  わが党が一貫して主張してまいりましたこの償還財源計画について、政府は百分の一・六の定率繰り入れは、建設国債の償還財源であり、赤字国債の償還財源としては百分の一・六は妥当でないと、こういうように認めております。では、剰余金の全額繰り入れについてはどうかと見ますと、これも赤字国債発行している間は剰余金は出ないということになり、また最後に予算繰り入れについてもこれは交付国債、出資国債のためのものであり、剰余金と同様に赤字国債発行期間中は赤字国債の財源とはならないということであります。では償還財源の繰り入れが行われるのはいつごろとなるのかという展望も全く示されておりません。  現在国債発行の歯どめは、建設国債市中消化の原則、この二つがともに空洞化し、この償還財源計画が最も有効な歯どめになり得るということから、政府にその計画の提示を要求したのですが、明快な回答はついに得られておりません。その歯どめがないということは、これからのわが国の国債政策において大変危険であるということは申すまでもありません。  以上、財政法の精神無視とか大量の国債発行条件が未熟であり、さらに財政インフレヘの危機あるいは赤字国債の償還財源計画がないといった点からして、私はこの法案に反対して討論を終わります。
  423. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表して、昭和五十年度公債発行特例法案について反対の討論をするものであります。  まず本法案は、日本経済と国民生活に重大かつ深刻な影響を及ぼすものであり、慎重な上にも慎重な審議が必要だったのであります。しかるに、桧垣委員長と自由民主党は、会期がないことを理由に十分審議を尽くさないまま、いま質疑終了としたのであります。特に重大なのは、「総予算及び重要な歳入法案については、前項の公聴会を開かなければならない。」と規定された国会法第五十一条第二項を踏みにじり、衆参両院とも公聴会をついに一度も開かなかったことであります。これは明らかな法律違反であり、国民主権に挑戦し、財政民主主義、健全財政主義を踏みにじる暴挙であり、公聴会の日程がとれない以上、それだけでも本来審議未了、廃案とすべきものなのであります。私はまだ討論、採決の段階に至っていないと考えます。にもかかわらず、ただいま討論に入ったことは、多数の暴挙であると、私は強く抗議するものであります。  第二に、本法案は本年度約四兆円もの未曾有の歳入欠陥を生じたため提出されたのでありますが、これは国民を犠牲にしながら大企業本位の高度成長型税制、財政金融政策を推進してきた歴代自民党政府の責任なのであり、みずからの責任を明確にし、税財政政策を国民本位に転換することこそ先決なのであります。しかるに、その道を選ばず国民に多大の犠牲を強いる赤字国債大量発行の道を選び、あまつさえ、その財源で歳入欠陥の穴埋めをしながら、景気浮揚の名のもとに大企業本位の列島改造型の大型プロジェクト事業を復活させつつあることはとうてい容認できないのであります。  第三に、このようなやり方財政法第四条の健全財政主義の規定に反することはすでにわが党の渡辺議員の質疑を通じて明らかにしてきたところであります。政府は、昭和五十五年度公債発行額十四兆二千億円、公債依存度実に三三・七%、公債残高七十兆二百億円という恐るべき見通しを述べており、審議の過程を通じて明らかになったとおり、それはかなりの可能性を持っており、単なる警告のためのものではないと思います。本法案成立に基づく赤字公債の大量発行はまさにとめどない恒常的な赤字国債発行の道であり、財政破綻をいよいよ深刻にする道であり、とうてい承認することはできないのであります。  第四に、このような赤字国債の大量発行は、すでに先進資本主義国中最悪の状態となっているわが国のインフレを一層激しくし、国民生活を大破綻に追い込むことはいまさら申し述べるまでもありません。本委員会質疑を通じても、その歯どめがないことは明確になったと思うのであります。  第五に、この国債は十年間に償還するとしているのでありますが、国債整理基金特別会計法第二条第二項に基づく定率繰り入れのほか剰余金や予算繰り入れが期待できないことは私の質問を通じても明確になったと思うのであります。結局、現政府の選ぶ道は、赤字国債償還のためさらに赤字国債を大量に発行し、その上国民生活基盤を充実すべき歳出の大幅削減や公共料金等の受益者負担の増大、社会保険料の引き上げ、あるいは国民への厳しい増税の方向でありましょう。そのために政府が景気の変動に関係なく、毎年数兆円以上の税収が期待できる付加価値税を昭和五十二年度に導入しようとしているわけでありますが、これはこの税制が国民を塗炭の苦しみに陥れることが明らかであることからいっても断じて許せないのであります。  以上私は、本法案がその審理に重大な瑕疵があってとうてい成立させるべきものでないと同時に、内容的にも反国民的なものであることを強く指摘いたしまして反対討論を終わります。
  424. 栗林卓司

    栗林卓司君 私は、民社党を代表して、ただいま審議しております昭和五十年度公債発行特例に関する法律案について反対の討論をいたします。  この法律案は、賛成、反対の立場は別として、成立させるか否かの点については、巨額な赤字を放置し得ない以上、選択の余地のないものであります。加えて国庫の出納が二十七日までしか開いていないことを考えると、成立の時期についても時間的な限度があるものと言わざるを得ません。このようなせっぱ詰まった法案を国会に提出する以上、政府財政を破産状態に追いやったことの責任を明らかにすべきであります。  また、今年度はこの法律案によって赤字公債発行されます。来年度もまたやがて提案されるであろう特例法によって赤字公債を予定せざるを得ません。昭和五十二年度特例法が提案されないという約束はありません。したがって、財政法は少なくも両三年にわたって空洞化するということであります。この点についてもなおざりにされてよい問題ではありません。  以上の点につき、政府の政治責任が明確にされなかったこと、これが反対の理由の第一であります。  第二は、財政再建に関する方策を提示し得なかったことであります。財政の危機をもたらした不況の原因も、また財政再建の基本にかかわる問題も、一言で要約すれば実体経済に対する政府の認識のずれであります。その意味政府は、財政再建に関する中期的展望を実体経済の展望に即して提示すべきでありました。  同時に、これからの課題は、従来既存の制度の枠組みを微調整することで問題を消化してきたやり方を抜本的に改めることであります。これはすなわち三木内閣冒頭の施政方針演説において、総理みずからが強調した行財政の基本的な見直しの問題であります。この点につき一年を振り返って見るべきものを見出すことができません。  選択の余地のない法案の処理を決定するに当たって、深い不満の意を表明するとともに、政府の真剣な反省と努力を要求して反対の討論を終わります。
  425. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) これにて討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  昭和五十年度公債発行特例に関する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  426. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 可否同数と認めます。よって、国会法第五十条後段の規定に基づき、委員長において本案に対する可否を決します。  本案については委員長はこれを可決すべきものと決定いたします。  なお、審査報告書の作成については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  427. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後十一時四十二分散会