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1975-12-18 第76回国会 参議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十八日(木曜日)    午前十時二十七分開会     —————————————    委員異動  十二月十七日     辞任         補欠選任      青井 政美君     柳田桃太郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         桧垣徳太郎君     理 事                 山崎 五郎君                 吉田  実君                 辻  一彦君                 鈴木 一弘君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 上條 勝久君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 中西 一郎君                 鳩山威一郎君                 藤川 一秋君                 宮田  輝君                 柳田桃太郎君                 大塚  喬君                 寺田 熊雄君                 野田  哲君                 野々山一三君                 吉田忠三郎君                 矢追 秀彦君                 近藤 忠孝君                 渡辺  武君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  大平 正芳君    政府委員        行政管理庁行政        管理局長     小田村四郎君        経済企画庁総合        計画局長     小島 英敏君        大蔵政務次官   梶木 又三君        大蔵大臣官房審        議官       戸田 嘉徳君        大蔵省主計局次        長        高橋  元君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  松川 道哉君        大蔵省証券局長  岩瀬 義郎君        大蔵省銀行局長  田辺 博通君        大蔵省国際金融        局次長      旦  弘昌君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        経済企画庁長官        官房参事官    額田 毅也君    参考人        日本銀行総裁  前川 春雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十年度の公債発行特例に関する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十七日、青井政美君が委員を辞任され、その補欠として柳田桃太郎君が選任されました。     —————————————
  3. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十年度の公債発行特例に関する法律案の審査のため、本日は、日本銀行総裁前川春雄君を、明十九日には、全国銀行協会連合会会長板倉譲治君、全国地方銀行協会会長氏家栄一君、公社債引受協会会長村田宗忠君、中央大学教授岩波一寛君及び成城大学教授池田浩太郎君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認めさよう決定いたします。     —————————————
  5. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 昭和五十年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 野末陳平

    野末陳平君 大蔵大臣にお伺いしますが、財政あり方というものが国債発行によって根本的に変わってきて、三分の一をもう国債依存しなければならないと、これが長期にわたるかどうか、それはわかりませんが、短期の例外的なあり方にしても、これはやはり国民了承を得るために解散をして国民に信を問うというほどの大きな問題だと私は思うんですが、この点について大臣の認識はいかがでしょう。
  7. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいまの状況は、御指摘のように大変内外の情勢が流動的でございまするし、大きな変化を経験いたしておる時代でございます。そして、そういう時代の影響を最も深刻に受けておりますのが日本経済であろうと思うのであります。したがって、日本経済は長い深刻な不況の中であえいでおるわけでございます。だから私といたしましては、この段階におきましては解散——これに対する財政措置経済措置等をひっ提げて国民意見を問うということも、確かに一つの民主的なお考えだと思いますけれども、まずなすべきことは、この当面の危機に対しましてやるべきことをなし遂げて、一応早急になさねばならないことをやっておく必要があると思うんです。そしてしかる後、長い展望に立って日本向こうべき方途を国民に提示して信を問うという手順にいくのが、私はより妥当な方法ではないかと考えておるわけでございまして、いま政府のやっておりますことは、当面まず機を移さずやらなければならないことをやっておると御理解をいただきたいと思います。
  8. 野末陳平

    野末陳平君 政府として当面なさねばならないことはあるでしょうが、その中でこの国債発行に関して言いますと、今後どういうような形で財政バランスめどをつけていくのかという心づもりのようなもの、長期財政計画といいますか、その辺がいままでの質疑で何かはっきりしてないように私には思えたのですが、いまのところ何年先ぐらいまでの財政計画をお持ちになった上で今度の特例公債などに踏み切られたか、その点を。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 財政経済あっての財政でございます。経済回復いたしまして、その活力を取り戻してまいりまして、財政に対して必要にして十分な栄養を与え得る状況にならなければ、財政の方でいかに力んでみましても、これはできない相談でございます。したがって、まずいまなすべきことは経済の早期な回復でございます。その場合、これはもとより内外の諸条件を整えて、そして国民がこの危機に際してそれぞれの立場から御努力をいただかなけりゃならぬわけでございますけれども、その経済回復をいたすために、財政は何をなすべきであるか、何をなすべきでないかということがまず問われるわけでございまして、当面なさなきゃならぬことの中に、私はそういう意味財政経済回復への役割りがあると思います。で、そのために、政府がやっておりますように、こういう危局でございますから、減税もいたしませんけれども増税も原則としてしないという姿勢をまずとって、暫定的には公債発行をもって財政歳入の充足を図るという措置をいまいたしておるわけでございます。そして、そういう措置を通じまして、経済が力を取り戻す、活力を取り戻すという時期をなるべく早めたいということがいまわれわれがやっておることでございます。  しからば、それがいつまでに回復して、そしてその取り戻した活力をもって財政をいつまでにはノーマルな状態に、健全な状態に取り戻し得るかというお尋ねでございますが、まず、ことし、来年、経済回復に全力を挙げねばならぬ年であると考えるわけでございます。したがって、ことし、来年は財政が犠牲になりまして、第一義的に経済回復を図るという年であると思います。したがって、ことし、来年は公債財源依存する度合いが一番高い段階ではなかろうかと考えております。再来年までこういう状態を続けるというようなことは私はいけないのではないかと思うのであります。再来年からは公債に対する依存率、とりわけ特例公債に対する依存は、再来年からは低下さしていくという決意で対処しなければならぬのじゃないかと思っております。  再来年からそういう漸減の方向に持ってまいりまして、さてしからば、いつ特例債などから脱却ができる状態になるかというお尋ねでございますけれども、その点につきましてはまだ確たる時限を申し上げられる自信がないわけでございまして、今日申し上げられることは、できるだけ早く脱却すべくベストを尽くしますということ、そして、そういう過程におきまして野末さんの言われるような展望をできるだけ早く明らかにするように努力をしてまいりたいということをいまの段階では申し上げることで御了承をいただきたいと思います。
  10. 野末陳平

    野末陳平君 経済あっての財政ですから、財政の面から経済回復を図るのがいまの政府の仕事であって、できるだけ早く脱却したい、その時点である程度めどがついてから財政計画をということだと思いますけれども、しかし、それにしても、やはり、いつもできるだけ早くというような、あるいはそういう決意でいるんだというんだと、ちょっと大蔵省としても、国民の側から見て余りにも頼りないと私は思うのです。  そこで、やはり長期的な財政計画をこういうふうにつくったということを一日も早く国民に示すということが必要なんですね。ですから時期を、いつごろまでにそれを示すのか、やっぱり大事なことだと思うのですよ。西ドイツでも、やはりそういうふうにして、公債依存度をここまで落とすと、これは大体何年先であるというふうなことを国民に約束している。こういうことはやはり一日も早い方がいい。その点で、もう少し具体的に、できるだけというふうなことじゃなくて、いつまでをめど長期財政計画を立てて示せるのだという点で、もう少し具体的なお答えをいただけませんか。
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 財政制度審議会は、いま野末さんが御心配になるようなことを御心配になられていまして、将来の財政展望を明らかにする一つの接近といたしまして、二、三の仮定を置いて、昭和五十五年までの財政の足取りがこういう仮定試算をしてみると、こういうことになるという試算を出してみろということでございまして、政府はそれを出して、そして、それも国会に御報告いたしたことでございます。これは、政府はそのとおりやるという意味じゃなくて、そういう仮定に基づいて試算するとそういう結果になる、その結果はわれわれとしては受け入れがたいようなことでございますから、したがって、こういうことにならぬように、これから財政運営というのはよほど歳入歳出両面にわたって周到な対応を考えないといけないぞという意味におきまして、政府財政運営策を引き出す意味での試算でございました。衆議院段階でさらにその試算のやり方についてもっと別な方法試算してみるとどうなるかという御注文がございました。それはそれとしてまた提出いたしたわけでございますが、いかように計算してみましても、やはり財政審でやりましたのと同工異曲でありまして、やはりそういう前提によって計算、試算いたしたような状況での財政運営が行われておりますとえらいことになるという警告資料にはなったと思うんでございます。本院に参りまして大塚委員からさらに具体的なものがないか、試算がないかという御指摘がございましたので、その後政府も別なまた柱を立てまして試算をやってみておるわけでございます。しかしこれとても、やはりこういう経済成長がこの程度であり、租税弾性値がこの程度であると仮定いたしますならば、財政の構造がこういうことでございますならば、何年度には公債発行額はこれだけになり、公債の累積がこれだけになるということに、結局やや違った柱を置いて計算してみますと、結果が若干違いますけれども、いずれにせよ、総体として、これは、これからの財政運営大変気をつけないとえらいことになるぞという警告的な資料になると思うのであります。したがって、いま野末さんの言われる財政展望というものにつきましては、そういう警告を踏まえて今度政府の新しい長期計画なんかも参考にしながら、現実にわれわれがやるべき財政政策の骨組みというようなものを御提示できるようなぐあいにいたさなければ、第二段階意味のある資料はできないのではないかと思いますので、それには相当時間がかかりますのでということは、この前の委員会でも御説明申し上げておいたわけでございます。したがって、仰せの御趣旨はよくわかりますので、今日の段階はいろいろな試算をおいての一つ警告的な展望をつくってみたわけでございますけれども、これからはそれではいけない。それを鏡にして具体的に財政計画といたしましてはこういう方向に持っていかないと、歳入歳出にわたってこういうことをやっていかないと、公債からの脱却という糸口が出て来ないということになりますので、それは多少時間をちょうだいいたしましてつくってみたいと考えておるわけでございますが、きょうそれを提示せよと言われても、大変残念でございますが、それはできませんので、この間大塚委員から御質疑がありました点につきましては、きょうの午後御提出申し上げたいと考えております。
  12. 野末陳平

    野末陳平君 まあ、今度の特例公債ですけれども、やはりいままでの質疑でも出ましたが、償還計画が明らかでないこととか、発行総量規制がないということだとか、いろいろ問題点はあろうかと思います。しかし、これからの歳入不足を補っていくに、やはり国債は当然限度があるわけですから、私はやはり増税の問題は当然出てくる。また、ある程度増税もやむを得ないというふうに考えているんですけれども大臣は来年度はいろいろなこういう状況だから増税余りお願いできないというお答えでしたね、いままで。再来年度になりますともうこれはやむを得ないから増税だというふうに受け取ってよろしいですか。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ことしとか来年とかいう年は経済が非常に疲れておる年でございまするし、もしそれに増税をお願いいたしますとさらに疲労を増すばかりでなく、雇用の不安でございますとか、さらにそれが経済の不安、それがさらに社会の不安というふうに発展しかねない状況だと思うのです。したがって、私どもはどうもことし、来年一般的な増税——所得税だ、法人税だという基本的な税目について一般的な増税をお願いするような段階ではないと考えておりますことはあなたの御指摘のとおりでございます。  そこで前々から申し上げておりますように、税制調査会にお願いしておりますことは、まず現行税制で次の新しい財源国民にどういう姿でお願いすることになるにいたしましても、現行財政制度の中で不都合が残っているか残ってないか、それは十分たたいておかなければいけない、畳のほこりを全部一遍出していろいろやってみましたが、現行税制にはもうともかくいま増収を図るような余地はもうこれ以上余りはございませんということがまず国民によって確認していただく必要があると思います。第二は、わが国におきましてはどのぐらいの租税負担考えられてしかるべきか、これは諸外国に比べて、先進国に比べてずっとまだ低目でありますことは私は非常に幸いだと思っておりまするし、いままでの自由民主党政府はそういう意味での政治も私は評価してもらいたいと思うのです。先進諸国に比べて圧倒的に租税負担率が低いわけでございますし、社会保険料負担も低いわけでございます。これはわれわれは誇っていいことだと思いますけれども、しかし、それだから直ちにわれわれの方はこれだけの増税をお願いいたしますと提案するほどまだ乱暴であっちゃいけないんで、いま税制調査会で学者の方々にお願いをいたしまして、文字どおり基本問題小委員会というものをつくっていただいて、そして日本租税負担率をいろんな角度から検討していただいて、どういう程度考えられてしかるべきかというような点の一遍御検討をいただいて、それでそういった状況を踏まえた上で、あなたの言う次の増税についての立案考えるのが、私は政治の順序じゃないかと考えておるわけでございます。ことし、来年はそういう年でありたいと思っておりますが、再来年、それではそれに乗っかってどのぐらいのことを考えておるかということはまだ基礎の地ならしをいまやっているところでございますので、再来年以降の税制改革について構想を述べるなんていうことはまだできないわけでございます。事前のいろいろな準備をいたしておるときでございますので、それができまして、それを踏まえた上で慎重な立案の上、御審議をいただかなければならぬと考えております。
  14. 野末陳平

    野末陳平君 いまお話に出ました租税負担率の問題ですけれども前回委員会でも大臣は要するに先進六カ国の中でと数字をお並べになりまして、確かに数字の面から見ると、日本は非常に低いと言っていいかどうかわかりませんが、かなり低いと、で私もこの租税負担率はもう少し高くなってもいいんではないかとは思っています。しかし、大臣個人として、あるいは大蔵省としては、この租税負担率を大体どの線まで持っていくのが数字的にいま二十以下になっていますが、どの線まで持っていくのが適正であると考えておられるか、まあ税調の方に諮っているとは別に、当局がどういうめどをつけているか、これは大事だと思うのですね。これなくしていかなる答え税調から出ても意味がありません。大臣としてはどうでしょう。租税負担率、どの線までがというお考えでしょうか、はっきりした数字でもってお示しいただきたい。  それから、その負担率まで大体何年をめどに持っていきたいと、経済回復その他ありましょうが、はっきりした答えがいただけるかどうかわかりませんが、その辺、具体的なことを教えてほしいですがね。
  15. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ただいま大臣申し上げましたとおりの作業が続いております。経済企画庁の方の、当委員会でも前に申し上げました新しい中期計画の非常に粗っぽいデッサンのようなものは、恐らくあと一週間ぐらいで公にされるのではないかと思います。その非常に粗っぽいデッサンに即した程度のものは、税制調査会でもだんだんと御審議が詰まってきております。数字的に申し上げるのは、ちょっと向こうの公表がまだでございますので、本日は差し控えさしていただきたいのでございますが、感じといたしまして、今後の五年間に非常に負担率上昇を高くいたしますと、逆に経済の伸びが縮まってきて、成長速度が鈍るという関連もございます。さればといって負担率をそのままにいたしますと、実質成長が大きくなり過ぎて、資源面での制約が出てきてパンクするということもございます。したがいまして、結論としては、ある程度租税負担率上昇という結果が導き出されてくる。そのある程度というのはどれぐらいなんだと、いま言えと、こういう御指摘だと思うのですが、あと一週間ぐらいで非常に粗っぽい一つの見当は出てくるであろう。ただ、感じといたしましては、前回の五カ年計画のときに、五カ年間で三%ポイント程度上昇はやむを得なかろうということが、前回中期計画では言われておりました。今回の中期計画でも、それと余り大きく違ったものにはなりそうもございません。
  16. 野末陳平

    野末陳平君 ということは、やはり先進六カ国の中では低いんだということになると思うんですがね。じゃ、少なくも二五%まではいかないということですね、三%というのにこだわりますと。
  17. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 余り抽象的なことばかり申し上げてもいかがかと思って、前回とそう大きく違わないだろうというふうに申し上げたわけでございまして、三という数字がいま決まっておるということではないというのは、くどくて恐縮ですが念を押さしていただきたい。  もう一つ租税負担率を上げることが目標なのではなくて、中期的に見ますと、いわば従来に比べて成長のスピードが鈍るだろう。それは資源とか、そのほか、くどく申し上げませんが、いろんな制約要因があって鈍らざるを得ないだろう。その場合に、従来の高い成長というのは、相対的に申し上げますと企業設備投資と輸出が引っ張っている。したがって今後は、設備投資が、牽引力が相対的に減るのだろう。ということは、逆に申しますと個人消費個人住宅財政というもののウエートが相対的にいままでよりは高くなる。そういう経済の姿になりそうだ。財政シェアが相対的に高くなるということは、それを支える租税負担率がいまよりも若干上がらざるを得ない。租税負担率を上げることの方が目標ではない。全体のバランスをいろいろかいてみて、やはり財政としてこれくらいのシェアでないと、全体の経済運営がうまくいかないということであるならば、それを支える租税負担率というものはいまのままではうまくいかない、そういう問題であると御理解いただきたいと思います。
  18. 野末陳平

    野末陳平君 どうもはっきり教えていただけないのはやむを得ないと思いますが、ぼくの時間がどうもちょっとなくなってきましたので、目先のことに問題を移そうと思うんですが、歳末はどこでも、家庭でも苦しいと思いますけれども、国の台所も苦しいだろうと思います。仮に、いま審議中のこの特例公債発行が何かの事業で不可能になった場合に、一体十二月には国庫はどのくらいの金が足りないのか、それをお答えいただきたい。
  19. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 確かに国も家計なり企業の経営なりと同じように、十二月は金繰りが逼迫いたします。ただ、国の場合に、家計なり企業なりと違いますことは、その支払いが数万にわたる窓口を通じて、あるいは一般会計から、あるいは特別会計から各種の支払いが行われ、また収入が上がるわけでございまして、この見通しを的確に把握することはむずかしい問題が一つございます。いかにして私ども見通しをしているかというのは、先日、栗林委員にもお答えいたしましたので、その詳細は省略をいたしますが、仮に現在私どもが見込んでいるままの姿でいくといたしますと、四条国債の残りの二千六百億円をすでに発行する手続を進めておりまして、これが二十日に入ってまいりますので、これも入るという前提をいたしました上で見ますと、十二月中に資金国庫として不足する額は約一兆六千四百億円であろうかと思っております。これに対しまして、この金繰りをする方法として、国庫の一次的な資金不足を補うために大蔵省証券発行ということが認められておるわけでございます。そしてまた、その最高限度額が、過日の補正予算をもちまして二兆二千億円に引き上げられておることは御案内のとおりでございます。ただ、十二月に入ります前に、十一月末までの資金不足に充当いたしますために、すでに発行されました大蔵省証券が十一月末で六千八百九十億円ございますので、これにただいまの見積もりを加えますと 十二月のピーク時、これは恐らく月末近くになると思いますが、ピーク時における大蔵省証券発行して金繰りをつけなければいけない資金不足の額は二兆三千二百九十億円程度になろうかと思います。そういたしますと、もし、この特例債発行についてお許しが出ませんでこのままいたしますと、この二兆三千億が二兆二千億を超えておりまするので、この部分について金繰りができなくなる。金額で申し上げますと千二百九十億円程度であろうかと思います。そこで、私どもといたしましては、ぜひこの法案についてお許しをいただいて、月内に約二千四百億円程度収入があるような国債発行させていただけないかということをお願いいたしておる次第でございます。
  20. 野末陳平

    野末陳平君 そうしますと、約千三百億という金が、この特例公債が出なかった場合には赤字、これは一時的ないわゆる破産ですか、そういうふうなことになるんですか。つまり一切のあれはできなくなるわけですね、これだけ金が足りないから。そうしますと、その場合に疑問に思うんですが、千二百九十億、これを、特例公債認められれば大丈夫である。しかし認められなかったらだめである。大臣には非常に縁起の悪い話になって申しわけないけれども、もし何かの事情でこれが不可能だった、その場合には千三百億というのは大体どこから出すんですか、その点についても法律的な問題、経済的な問題あると思いますけれども
  21. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 法律的に申し上げますと、大蔵省国庫資金を調達いたします手段は、ただいま御説明申し上げました大蔵省証券発行する以外には、このような短期的資金繰りを調整する方法は認められておりません。そこで私どもは、この資金の不足がどういうふうになるか、もしこれが現実のものとして起こるようなことがあれば、実際の経済に支障を生じない範囲内でその支払いの時期を調節するとか、そういうことが可能かどうかということを月初来念頭に置きまして、この支出の推移を見守っております。最近私ども見ております感じでは、この十二月の資金繰りとして見込みましたもの、これはマクロの計算でやっておりますので、もちろん若干の誤差が出てまいります。このときの各種の支出、収入の累計額、この内訳はわからないんでございますが、その合計が日銀を通じまして報告が参ります。これから見ますと、支出のスピードが初めに考えたよりは若干遅日ではなかろうかということで、この資金不足状態につきまして少し緩和されたかなという感じを現在の段階で持っております。しかしながら、この支出のスピードがおくれているというのが、一体、絶対額が少なくて済むようになるためにその額が減っておるのか、それともずっとおくれて、御案内のとおりに今月の月末は年末でございますから、その年末のときにざっと出てくるのか、その辺がまだ定かではございません。と申しますのは、十二月に巨額の支払いがございますが、これらはあるいは公共事業の支払いでございましたり、あるいは補助金の支払いでございましたり、そういうものがたくさんあるわけでございます。これらのものは、いずれもその金を受け取る側から立ちますと、年内にどうしてももらいたいという希望の非常に強い種類のものでございますので、あるいは年末近くになってから急激に支出のスピードが増していくのか、その辺について懸念を持ちながら見守っておる次第でございます。
  22. 野末陳平

    野末陳平君 そうしますと、そういう場合、もう大蔵省の証券は発行が大体できないわけですね。そうしたら、もし仮にそういう支払いを延ばせなかった場合、その金は出てくるんですか。どこかから出てくるんですか。それが聞きたかったんですが。
  23. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 新たな金を持ってきてそこに充てる手段というのは、ただいま御説明申し上げましたとおり許されてないものでございます。そういたしますと、現実としてできることは何かと申しますと、現実の支払いのうち年内に支払いを必ずしも済ませなくてもいいものがあるかどうか、もしそういうものがあれば、その分を頭に置きながら現実の国庫金の収支事務を進めてもらいたい、こういう考えを持っておる次第でございます。
  24. 野末陳平

    野末陳平君 そうすると、支払いが延ばせないものが多かった場合は、これはやっぱり一時的には、それは年末だから払えなくなっちゃうわけですね。そういう場合、いままではなかったんだと思うんですが、そういうことが、大臣、今後起こり得るかどうか知りません。それから今回も、仮定の話をしているわけですけれども、やはりそういう不測の事態ということが幾らかでも考えられるというときに対処する方法は、大蔵省としては常にこれから考えなきゃならぬと思うんですがいかがでしょうか。
  25. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) たびたび申し上げておりますとおり、ただいま野末委員指摘のような事態が起こることは決して好ましいことではございません。そこで、対処する方法があるかないかという問題でございますが、私どもとしましては、現在御審議をいただいておりますこの公債特例に関する法律、これを一日も早く御審議の上、結論を出していただきまして、それによって金繰りをつける、これが最も望ましい姿ではなかろうかと思います。  なお、一言つけ加えさせていただくならば、この法律が今月内に通りまして、これが動き出すということが、ひいては一月以降の国債発行に当たりましても、月間に消化すべき額をなだらかにするという意味においてもその効果があるわけでございまして、これがおくれればおくれるほど年度内に予定された国債額を消化する上に金融市場により大きな負担をかける、そしてまた、その金融市場の窓口ではこれが思わざるトラブルを起こす可能性がふえてくるんではないかという心配をしておりますので、ただいま御指摘国庫金の収支の問題とあわせて、この法案はぜひ一日も早く結論をお出しいただきたいと切望しておる次第でございます。
  26. 野末陳平

    野末陳平君 だから私はちょっと意外というか驚いたわけですけれども、非常に薄氷を踏むような資金繰りをやっている感じなんですな。つまり、この法律が通れば大丈夫、通らなかったらだめなんだということなんですが、しかし、前回の国会もハプニングがあって大臣もかなり困ったと思いますが、酒とたばこにしたってああいうことはあり得るわけですよ。ここまできて、もうどうなるかわからないとなれば、やはり、そういう不測の事態に対する何か配慮をして、政治的配慮をしておかなければいけなかったんじゃないかと思いますね。しかし、ここまできてそれも無理なんでしょうが、私はこれ過ぎたことを言ってもしようがありませんがね。この十二月初めにボーナスなんかばっと出しちゃっている。ああいうのやっぱりよくないと思うのですよ。大体そちらだって一カ月の見通しを立てればこの特例公債は絶対に成立するとは言えなかったわけで、それは成立を期待しているにしても、もし万一何かの事情でということを考えたら、よその民間企業はもうボーナスはどうのと言って、出ないとかいろいろ言われているときに、いち早くぱっと出しちゃったということが、この辺で幾らか不安をもたらしている原因になっているのじゃないかと、そう思うのですよ、大臣。だから、いまにして言うなれば、あんな形でボーナスを出すなんというのは、やはり大蔵省としては国庫を預かる責任ある立場としてはちょっと軽率じゃなかったかなと、やはり政治的センスがちょっと雑ではなかったかなと思うのです。その結果、これが通れば問題ないでしょう、通らなかったらやはりみっともない事態が起こるということですね。どうなんでしょうか。過去のことを言って、ボーナスがなんと言うのもいやですが、やはりこの場合少し早く出し過ぎたので、もうちょっと慎重に財政運営をしておいてもよかったかなと思いますが、大臣
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本国の憲法は、政府財政運営の便法を認めていないわけでございまして、いま理財局長が説明申し上げたとおり、この特例法が通らぬ事態になりますと、支払い不能が一部に起こることでございますが、それを避ける権能は政府にないわけでございます。しかし、日本の憲法は、国会が良識ある判断をされ、行動をとられるということの期待の上に日本の憲法はできておると思いますので、万々そういうことは私はないものと考えております。
  28. 野末陳平

    野末陳平君 憲法の話が出ましたから、最後にちょっとつけ加えておきますけれども、いかにも大臣は良識ある行為をとってほしいと言って、何かいかにも野党を皮肉るみたいなことを言いますがね、それだけじゃないですよ。それだけの良識の問題とは別に、天変地異じゃないけれども、何かの事情で国会が開かれない、すると、国会の議決がないから、憲法にとらわれて何もできないということもあるわけですから、必ずしもその良識をということをそこで持ち出すというのは、私は、大臣考え方がいかにも野党がうまくやってくれないからと、良識にあらざる行為をとるから何か変な事態が起きるんだと言わんばかりですが、それは間違いだと思うのです。むしろ、そういうこともいろいろな事態が予測されるので、常に財政運営を細かい配慮をしておかなかったからいけなかったと、いままではそういうことありませんでしたけれども、今後はやはりそうしなければいけないんだと思うのです。  で、時間も来ましたので私もう終わりますが、やはり最後にお願いしたいことは、租税負担率の問題はさておいても、この長期財政展望、こういう計画でこういうふうにするのだという具体的なことを国民に示さないと、この間からの質疑で六十年償還すると、東京電力信用するなら国はもっと信用があるはずだと、こう言っておられますが、あれはずいぶんいいかげんなことで、経企庁の見通しにしたって狂うし、やはり経済というのはなかなかそんな見通しどおりいかないわけでしょう。政府を信用しろと言われても、その辺がやはり具体的な裏づけを見せていただかないことには信用し切れない面もあると思うのです。一日も早く財政計画を示して、それによって国民にしっかりと約束をすることが次に大事なことだと思います。  私は終わります。
  29. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 赤字国債償還計画ですね、これは償還財源計画だというふうに大臣はおっしゃる。私も、それはそのとおりだと思うんです。財源計画というものは、詰めていきますと、具体的には剰余金が出まして赤字国債を出さなくても済むような財政状想になれば、一般財源を減債基金特別会計の中に注入していくということが可能になりますね。そういう状態がいつ来るかというのは経済見通しの問題なんだと思いますが、そういう状態をつくり出すための努力ができないか。たとえば、不急不要の歳出を削るとか、繰り延べるとか、あるいは歳入面で新たな財源をつくり出すとか、一般的な増税をするならするとか、公共料金を引き上げるとか、社会保険料の増徴を図るとか、考えとしてはいろいろ考えられましょう。それらは経済界の状況にもかかわり合いがありますし、財政による景気刺激策とも関連しております。同時に、インフレの危険も考えなきゃいけません。そういうような考慮のもとに、まず歳出の削減の問題に関して、最初によく言われるのは、行政経費を節減するということですね。これ一番真っ先にだれでも指折るんですけれども、具体的にはどういうものがあるのか。かけ声だけに終わるんじゃないかということも考えられるわけですね。  そこで、当面の主管者である行政管理庁の行政管理局長お尋ねするわけですが、あなたは、五十年七月二十一日の財政審の中間報告を読んだと思うんですがね、それによりますと、行政コストの節減というアイテムが設けられていますね。まず、これをお読みになったことがあるかどうか、それをちょっとおっしゃってください。
  30. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) 拝見しております。
  31. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 その実現について行管庁としては何らか年次的な計画をお持ちかどうか、まず、それをお伺いしたい。
  32. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) この財政制度審議会の報告も拝見しておりますし、また、本年四月には行政監理委員会から当面の行政改革に関する課題と方針という御提言をいただいております。それに基づきまして当面財政危機に対してとるべき方策と長期的に検討していくべき方策と、この二つが分かれて御提言をいただいておるわけでございますけれども、さしあたり当面の財政危機に対しまして、一つは定員管理の問題、それからそのほか特殊法人の整理、合理化あるいは補助金の整理と、そういうような問題につきまして行政管理庁といたしましても検討をし、財政当局とも協議の上、できるだけこれを実現してまいりたいと、こういうことでいま事務を進めている次第でございます。
  33. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そういう多少の具体性はあるけれども、行政監理委員会の提言があって、長期的な視野から財政的な貢献をするような方策を考えろと、多少の具体性はあるけれども、それによって何らか具体的な方策というものを見出しているのかどうか、そういうことをお伺いしたいんですがね。それより、たとえばこれは五十年十二月十六日の日経新聞によりますと、自民党の委員会が特殊法人を統廃合して行財政費三兆円以上節減するんだと、まあこの意気込みはまことに壮とするに足るわけだけれどね、これなども一つのやっぱり具体的な提言であることはあなたもおわかりになると思うんですよ。当面の主管者が何らの具体的な構想なりプランを持たないというのはおかしいんだけれども、あなた、この新聞記事はお読みになりましたか。
  34. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) 新聞記事は読みました。これは、自民党の方でいろいろ御検討いただいていることと思って読んだわけでございます。  行政管理庁といたしましては、先ほども申し上げましたように、まず行政経費の節減ということにつきましては、定員問題が何より重要な問題であるというふうに考えておりまして、行政監理委員会からさらに中間的な御提言をいただいて、本年の七月二十九日に定員の削減計画を繰り上げる、こういう閣議決定をいただいております。で、来年度の予算編成に際しましても、機構、定員の膨張は厳に抑制する、こういう立場に立ってただいま大蔵省とも協議を重ねておる段階でございます。そのほか、先ほど申し上げましたように、特殊法人の合理化あるいは補助金の整理等につきましてもいま努力をしておると、こういう段階でございます。
  35. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 あなたのおっしゃる、その定員の削減を繰り上げるとか、あるいは特殊法人を整理するとか、それからもう一つ、何とおっしゃったかね。
  36. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) 補助金でございます。
  37. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 補助金の整理とか、そういうものをまあどういうふうにして、これが歳出の削減にどの程度役立つのか、そういう試算をなさっておられますか。
  38. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) まあ、そういうような合理化が財政上どの程度の金額になるかという問題は、やはり財政当局でないと詳細な計数というものははじけないわけでございまして、私どもといたしましては、それを側面的に推進させていただきたいということでやっておりまして、その結果どれくらいの金額になるかということは、これは予算折衝の結果にもよることでございますし、ただいまのところ計数的なものは持っておりません。
  39. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 だけれども、主務官庁だからね、自分のやっていることがどの程度の予算の削減をもたらすのか、どの程度財政的な寄与をもたらすかというようなことの大まかなことぐらいはわからないと、それはもう一切財政当局の所管で私は全くあずかり知りませんというのは、少し、どういうのかな、勉強が足りないんじゃないかな。どうだろうか、全然わからないわけ。自分の所管のことは大体経費がどのくらいかという大ざっぱなところは皆つかんでいるはずなんです。全然わかりませんというのは、ちょっと不勉強じゃないだろうか。どうです。
  40. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) 行政管理庁は、国家行政組織におきます機構、定員等を所管しておりますので、直接それが財政上どの程度の金額になるかということは実はタッチしておらないわけでございます。ただ、定員の面で仮に例をとりまして申し上げますというと、四十三年以来第一次、第二次、第三次の定員削減計画を実施いたしまして、四十三年から五十年度までに、現業を含めまして約九万八千人の定員削減を実施しておるわけでございます。それをその平均給与で掛けまして計算すれば概数は出てくるかと思いますけれども、そこまでのところは私どもとしてはやっていないということでございます。
  41. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私のお尋ねしているのは、過去においてあなた方がどれだけ削減したかというようなことでなくて、いまこの未曾有の財政難の時代に、まあ歳出の削減ということは一応だれでも考えるわけで、そのときには、何人もまず指を折るのは不急不要の歳出を削るということでしょう。ことに、行政経費を節減するということがよくもうすぐ言われるから、その辺の主管庁としてはどういう構想を持っているかということをお尋ねしたので、まあ定員削減もわかったけれども、補助金の整理というようなことは、それじゃ、具体的には何か成案を持っていらっしゃるのですか。
  42. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) 補助金の問題につきましては、私どもの方の行政監察局におきまして第一・四半期にその監察を実施いたしまして、その結果、たとえば長期間非常に長く固定しておる奨励的な補助金であるとか、あるいは補助効果を達成したものであるとか、あるいはきわめて零細で、その補助金交付にかかる経費が非常に高くかかるというようなものであるとか、そういうようなものにつきまして調査をいたしまして、これらを整理すべくただいま財政当局の方と協議をしておる段階でございます。これは具体的には、予算編成の段階で最終的な結論が出るわけでございまして、そのときになれば、大体どういうような結果になるかということが判明するかと思います。ただいまそのような段階になっています。
  43. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私がお尋ねしているのは、そういうその単年度主義をあなた方がとるからこういう財政難を生ずるので、だから、大蔵大臣にも前々から財政計画なり財政的な展望を持ってほしい、示してほしいということを大蔵当局にはお願いしておるわけですが、各省庁とも単年度主義に埋没してしまって、ことし予算が決まりましたらわかりますというようなことじゃ計画性がないわけだね。補助金の整理をいたしますとか、特殊法人を整理いたしますとか、行政経費をできるだけ削減するように努力しますと言ったって、その場その場の単年度主義じゃ、これやっぱりだめなんで、将来を、少なくももう三年や四年は展望した計画を持っているかどうかと言ってお尋ねしているわけです。それはないと聞いていいわけだな、それじゃ、どうですか。
  44. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) 長期の問題といたしまして検討すべき課題というものは、先ほど申し上げました行政監理委員会から御提言をいただいておりますけれども、それは今後の検討いかんによりまして、またあるいは計画的に決定されるものもございましょうし、あるいは単年度で実現できるものもあるかと思いますけれども、そういう長期計画的なものを現在持っておるかという御質問でございますれば、それはないわけでございます。
  45. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 まあ、いまないものは出せ出せと言ってもしようがないから、それはやっぱりあなた方も自分の所管に関してはそう単年度主義に埋没しないで、ある程度展望なり計画というものを持って仕事をしなきゃいかぬと思いますよ。自民党の、これは行財政改革特別委員会か、政党の委員会でさえもこの際こういうふうな計画的なものを打ち出しているんだから、主務官庁が全然ないなんていうのは恥ずかしいことと思わなければいけませんよ。  それから、この自民党の計画をあなたお読みになったとおっしゃいましたが、廃止する対象法人としていろいろこう挙げていますがね、京浜外貿埠頭公団とか、阪神外貿埠頭公団ですか、電力用炭販売株式会社、日本硫安輸出株式会社、日本航空機製造株式会社、八郎潟新農村建設事業団、これを廃止対象法人のリストに挙げているというふうに報道されているのですけれども、そういうものも御検討になったことがありますか。
  46. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) ただいま検討中でございます。
  47. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、ここに特殊法人の役員を減らすという件が載っております。「一律二割削減(百六十五人)を実施する」というようなことがあります。こういうことは、私も、実は公団なんかに行きまして、ちょっと役員が多過ぎるのじゃないかと、みんな新聞を読んでのんびりやっているというような印象を、これはまあ受けたことがあるのですけれども、あなた方もお考えになったことありますか、いままでに。
  48. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) 役員の数につきましては、私どもは、その特殊法人が設立される際におきまして、各省からの御協議をいただいて審査はいたしております。で、これが多過ぎるかどうかという問題になりますと、その後の実態をよく調査しないとわからないわけでございまして、また、削減するということに仮になりました場合には、これは人事上の運用でできるわけでございますので、ただいまのところ、その問題について検討をしたとか、あるいは調査をしたとかということはございません。
  49. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは行管庁との約束で十一時半までには絶対やめていただきたいということですから、これでやめますけれども、まあ少し私どもの目から見まして、単年度主義に埋没して、目先のことだけに追われて、少し勉強が不十分なように思うのですが、よくこれから御検討くださるように要望しておきます。次は、おととい大蔵大臣が野田委員の質問に答えられまして、財政の中期的な展望経済計画の中において考えてもらっている、それは三月までに国会に提出したいというようなことをお答えになりました。これは、私も十一月五日の予算委員会大臣にいろいろお願いをしたわけですね。大臣もそのときに、「予算の説明の場合に展望を含めて御説明申し上げて理解を深めるということについては努力をしていかなければならぬことであろうと思います。」、こういうお答えをなさっていらっしゃる。そういう意味で、百尺竿頭一歩を進められましてそれをやるということもおっしゃった。私は非常に結構だと思います。それから経済計画の中に財政計画を含ませるべきだということもそのとき私大いに主張して、そのとき経企庁長官は、ある程度展望ぐらいは持った方がいいと思うんです。「まあ努力いたしまして展望ぐらいのものはひとつ持つべきかなあと、いまそう考えておる、頭を去来しておると、そういう段階でございます。」と答弁されました。それがいま、一昨日の大蔵大臣の御答弁では、具体的に取り上げられて、経済計画の中に財政計画も検討していただいております、経済審議会で租税負担率も検討してもらっておりますというような御答弁があったので、私としてはまあ非常に満足しているわけなんですが、そのことに関連して、ちょっと経済企画庁の担当の局長小島さんいらっしゃってますね。
  50. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) はい。
  51. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ちょっとお伺いしたいわけですが、中期経済計画が十九日の経済審議会で決定して二十日に発表する段取りになっているということを聞いてますが、これは間違いないですか。
  52. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 経済審議会が済みました段階で発表する予定にいたしております。
  53. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 経済審議会というのは十九日、あしたあるわけですか。
  54. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) その予定でございます。
  55. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そのやっぱり計画中には、おととい大臣がちょっとお触れになったように 財政計画デッサンなり、あるいは展望なり、そういうものが入っておりますか。
  56. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 前に福田大臣がそのようにお答えいたしましたのは、これは、政府として財政展望考える必要があるんじゃないかということでございまして、必ずしも計画の中に財政計画あるいは財政展望を含めるという趣旨ではなかったわけでございます。それで、私の方の本計画は来年の春ごろ確定することになりますので、この段階にはマクロの財政バランス等、これは先ほど主税局長も言われましたように、私どもの方はモデルを中心にして非常にラフなデッサンでございますので、大まかなものは固めたいと思っております。その前に大蔵省の方で、いろいろ財政展望をおつくりになる前提として、企画庁の方で成長率の見通し等は大蔵省の方にお示しして作業していくということになるかと思います。
  57. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、ですから、その中間報告はあしたの経済審議会で決まるとおっしゃるんだから、その中に大まかな財政計画デッサンというのが描かれているかどうかということをお尋ねしておるわけです。
  58. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 近日中に発表になります概案の中には財政に関しましてそういうデッサンは入っておりません。主として成長率とか物価とか国際収支とか、そういう数字が中心でございまして、財政の関係はやはり来年度の見通しがどうなるかということ、それからもう一つは、やはり財政面の関係は、企業収益とか、そういう非常にやはり一般の生産とか何かに比べますと見通しのつきにくいものをもとにしてやらなきゃいけませんので、概案段階ではどうも自信のあるデッサンがなかなかかき切れないものでございますから、概案段階には入っていないわけでございます。
  59. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それじゃ、まああなたのおっしゃる経済の実情に深くかかわり合いを持っておるというその経済成長率の問題ですね。これは中間報告で大体五年間一応見通していらっしゃるんですか。
  60. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) そのとおりでございます。
  61. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大体どの程度見通しておられるのか。その成長率の点、ちょっと具体的におっしゃっていただきたい。
  62. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 経済審議会済みますまではどうも数字を申し上げることは大変避けたいんでございますけれども、せっかくのお尋ねでございますので、いま大体固まりつつあるということで御了承いただきたいと思いますが、五年間の平均といたしまして六%強の成長率、その辺を考えているわけでございます。
  63. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 当面、われわれも非常に関心を持っていることは、この不況がいつごろになったら回復するか、雇用問題に関連して一番痛切に感じているわけですが、福田さんはまあ来年三月には製造工業の稼働率が九〇%台でしたかな、回復するというようなことをおっしゃってますね、国会の答弁でしばしば言っておられる。それをどういうふうにあなた方は予測されたのか。ちょっとその点お伺いしたいんですが、これは調整局長の方がいいのかもしれませんが、あなたの当面中間報告にそれ当然載るんでしょうから、大体でよろしいから。
  64. 額田毅也

    説明員(額田毅也君) 本年の経済見通しを改定いたしました際に、先ほど御質問がございましたように五十一年の三月末の稼働率、これは九〇%に近いものになるのではなかろうか。で、御承知のように、稼働率というのは、生産能力と実際の操業との関係でございますから、生産能力がふえますと稼働率というのは落ちてまいります。生産量がそのままで操業率を高めますと稼働率が上がる、こういう相対的なものでございますが、この十月の稼働率が大体八三強くらいの稼働率でございます。したがいまして、当初見通しましたときには九〇近い線を考えております。御承知のように、その後十−十二月期、現在進行中の期でございますが、若干景気が停滞ぎみでございます。したがいまして、少し景気のテンポがずれたかなという感じを私ども持っております。しかしながら、総体といたしまして、本年度の経済成長率は改定見通しのときに申し上げました二・二%は達成できる、こういうふうに考えておる次第でございます。
  65. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いまの経済計画の中でこういう点は全然考えませんでしたか。いつごろまでになれば赤字国債発行しないで済むような財政環境というか経済環境というか、そういうものになるかというような点は検討しませんでしたか。
  66. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 先ほどお答え申しましたように、私どもの方の財政バランスは非常にラフなデッサンでございますので、なかなかいつごろからという線を明確に出すようなことは不可能でございまして、ただ、概案の中ではやはり計画期間中のなるべく早い時期に特例公債依存しないような経済に持っていくんだということを言っているわけでございます。
  67. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そういう努力財政的な施策あるいは金融的な施策などを講じて実現していきたいと、こういうことですか、あなたの御答弁は。
  68. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) そのとおりでございます。
  69. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、そういう財政的な施策とかあるいは金融的な施策、そのほかにもいろいろ貿易その他に関連して、あるいは消費刺激の減税なんていうものも考慮になるんでしょうが、どういうような施策を一応考慮されたんでしょうか、経済企画庁としては。
  70. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) やはりさしあたりは来年度に関しまして非常に苦しい情勢の中でございますけれども財政面でできるだけの努力をしていただいて景気浮揚の要因になっていただくということが一つのファクターでございます。それからもう一つは、やはり世界経済の動きというものが、これは日本経済は非常に世界経済依存するところ大きうございまして、その意味では非常に大きな影響があるわけでございますけれども、幸いにして世界景気の動きというものが最近ようやく回復過程に入ったことは大体はっきりしてまいりまして、アメリカ経済を筆頭にかなり上向きの動きを示しつつございます。これが日本の来年度以降の経済情勢に非常にいい影響を与えるということが期待されるわけでございます。  それからもう一つ、やはり非常に大きな景気浮揚要因としては、設備投資があるわけでございますけれども、これはどうも現在まだ、先ほどのお話にもございましたように、操業率が非常に低くて、企業の投資意欲というものもなかなか出てまいりませんので、さしあたりはどうも余り期待できないのではないだろうか。しかし、来年の後半以降、再来年にかけましては、必ずある程度設備投資についての動意が出てまいる、これが景気上昇の力になり得るというふうに考えております。
  71. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうするとあれですね、アメリカの景気の立ち直りと、来年の後半期におけるわが国企業設備投資の増加というようなことに景気回復の最大のモメントというのを求めておられるようにもとれるけれども、その全般のあなたのお話を伺うと、できるだけ財政的にも景気浮揚策をとってもらいたいというようなこともおっしゃるわけで、われわれとして特に知りたいのは、財政的な景気浮揚策の問題として、経済企画庁考えていらっしゃるものというのはどういうものなんでしょうか、具体的に。
  72. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 直接は調整局の主管でございますけれども、やはり政府の投資支出というものを、これはまあ日本社会資本の現状が外国に比べましても非常に劣っているということもございますので、財政の許します限り経常支出ではなくて資本支出の面で利用を図っていただくということを期待いたしておるわけでございます。  あとは、先ほど申し忘れましたが、やはり住宅につきましても、これはGNE上、国民総支出の上のウエートはそう大きくはございませんけれども、やはり波及効果も大きゅうございますので、住宅投資について景気浮揚の要因に期待できるのじゃないかというふうに考えております。
  73. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 まあ、やっぱり公共事業を中心に考えていらっしゃるようですね。その公共事業の中では、あなたのおっしゃる意味、勘違いしているかもしれませんが、社会資本の充実というのは生活関連のいろいろな工業施設がありますが、そういうことなんでしょうね。それから住宅を考えていらっしゃる。ただ、そういう場合に、公団やなんかがやる場合には自治体の負担がないんですけれども、自治体の仕事としてそれをかぶせていくと、自治体自体の負担金の問題が出てきますが、そういう点はどういうふうに考えていらっしゃるんでしょうか。主として公団関係のことを考えていらっしゃるのか。それから減税については全然考慮なさらなかったのか。いま経企庁の方の後でまた。
  74. 額田毅也

    説明員(額田毅也君) 御質問にお答えいたします前に、現在の政府支出というものが国民総生産——GNPに占めます比率というのが約二割、その二割のまた半分強がいわゆる政府の資本支出である、こういうことになっております。そういう点から見まして、やはり二割の構成比を持ちますものが、国民総生産の動きには相当の大きい力を持つと、こういうことから、計画局長がお話しいたしましたように、その中で特に波及効果の大きい政府の資本支出というものが、できるだけ財政当局の御配慮によってふえることが、成長一つは高める原因になろうかと思います。  もう一つは、波及効果の大きいやはり住宅投資、これも現在のような経済情勢では景気の回復というものを支える一つの要因になろう、こういう御説明を局長が申し上げたわけでございます。その際に、御指摘のように中央・地方という問題がございます。私ども直接その財政的側面については、企画庁といたしましては、国民総生産上の、要するに効果というものを中心に考えますので、財政面でどのような施策が必要であるかという点までは私どもは及んでおりません。ただ申し上げますように、そういう構成比を持っておりますものが伸びていくことが好ましいと、こういうふうに考えておるというふうにお答えさしていただきたいと思います。
  75. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、先ほど野末さんもちょっと御質問になりましたけれども、これは十二月十七日の日経を見ますと、ちょうど経済審議会の審議の中で、租税負担率についてのある程度見通しを出されたような報道があります。これは一昨日の大蔵大臣の御答弁の中にもちょっとそれに触れておられたわけですけれども、この点については、計画局長、大体やはりある程度の提言というものをこの中間報告の中に持っておられるのですか、どうでしょう。
  76. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 先日新聞に出ましたのは、企画庁の発表したものでございませんで、やはり経済審議会の議を経ましてから発表いたします概案の中にやはりある程度租税負担率の引き上げが必要じゃないかという線は出しております。
  77. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それじゃ、具体的な数字は出しておられないわけですか。
  78. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) ラウンドの数字を使っております。
  79. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 もちろん、社会保険料負担率とか、あるいは公共料金の問題とか、そういうことも触れていらっしゃるのですか。
  80. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 社会保険料負担につきましては、やはりラウンドの数字を出してございますが、公共料金につきましては、そういうことではございませんで、一般原則に触れております。
  81. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 その数字はいま正確なものは発表できないだろうけれども、大体検討したこの周辺の数字というものは、いまあなた答弁できるでしょう。
  82. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) やはり経済審議会で現在作業中でございますので、きょうの段階で具体的な数字をお示しすることはお許しいただきたいと思います。
  83. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 具体的な数字は発表できないにしても、ある程度国民負担を増さなければいけないというそういう結論になっておるようだけれども、それは間違いないでしょう。
  84. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) そのとおりでございます。
  85. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それでは、計画局長は何か御用事がおありというから、約束だからこんなところで結構です。  次に、国債の問題に入りますけれども、この十二月に発行予定の国債については、すでにある程度御答弁がありました。ただ、五千億という数字が出たのですけれども、また事務的に問い合わせると、六千億というような数字も出るんです。この特例法——どうなるかわからぬけれども、一応通るという仮定をした場合に、もう少しそれを前提にした正確な数字は出ないんでしょうかね。
  86. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 十二月に出します国債のうちの一部は、先刻御説明申し上げましたとおり四条国債でございまして、一部が特例法による国債でございます。そこで、特例法による国債がどの程度出せるかということでございますが、私ども十一月の末から十二月の初めごろの段階におきましては、両方を合計して六千億程度だったらいいんじゃないか、最低五千億は出さしていただきたいという考えを持っておりまして、この考えは他の委員会でも御質問にお答えいたしたことがございます。その後この法案の御審議が本日まで及んでおるわけでございますが、本日に至っておるということは、残りの日が少ないということでございますので、できればもう少し多くと思っておりましたが、そこまでお願いできないんじゃなかろうかと、残りの日が少なければ、やはり最低の私どもが希望する限度、すなわち、一月以降に余りしこりを残さない程度のものをお願いせざるを得ないという考えになりつつございます。そうなりますと、五千億をお願いしたいということでございまして、すでに発行いたしました額のうちの差額の分をこの特例法によって発行いたしたいと、このように考えております。
  87. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 次に、この国債の消化につきましてよく言われるのは、国債には流通市場がないということですね、これをもっと整備しなければいかぬと、いまのところはないに等しいということなんですけれども、一体、国債の売買が取引所を通るのと、あるいは証券会社の店頭で売買されるのとどのぐらいな数字になるのか、まずそれを明らかにしてください。
  88. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 大ざっぱに申しまして一割程度が取引所の取引でございまして、あとの九割が店頭取引ということになります。
  89. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それちょっと数字を……。
  90. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) はい。四十九年で申し上げますと、取引所取引が六・四%でございます。それから店頭取引が九三・六%でございます。  五十年に入りましてからの一月から十月まで申し上げますと、取引所取引が九・九%、約一割でございます。それから店頭取引が九〇.一%となっております。
  91. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それで額は、金額。
  92. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 五十年のいま申し上げましたのに対応いたします数字は、取引所取引が百一億、店頭取引が九百十五億でございます。合わせまして千十六億。
  93. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 四十九年は。
  94. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 取引所取引が九十四億でございます。店頭取引が千三百七十一億、合わせまして千四百六十五億でございます。
  95. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) ただいまの数字その他事実関係はそのとおりでございますが、一言補足させていただきたいと思います。それは、私がたびたび御答弁申し上げておりますとおり、債券というのはまだ日本の場合になじみが相当少のうございます。ただいまのように取引所取引が非常に少ないのは、国債に限りませんで、たとえば、地方債を例にとりますと、四十九年度は取引所取引が八億七千万円に対して店頭取引が七千五百四十四億であるとか、それから一般の事業債につきましても取引所取引は百五十六億でございますが、これに対しまして店頭取引は六千百五十一億円、このように債券市場全体の性格として取引所取引がまだ発達の段階が少ないということを一言補足させていただきたいと思います。
  96. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それで、この取引所の取引については何か金額的な制限があるというようなことも聞いておりますが、その点どうでしょうか。
  97. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国債の取引所の取引は、市場に上場されておりますのは発行後六カ月以後の国債でございますが、市場に集中義務をかけておりまして、ことしの十月までは集中義務の範囲を百万円から四百万円までというふうにいたしておりましたが、これを十月から売買手法を改めまして、百万円から一千万円までの集中義務をかけたわけでございます。ただ、取引所の取引は整数単位で取引いたしておりますから、たとえば、百十万円というような取引とか、あるいは百五十万円というような取引の場合には百万円の、いわゆる整数の取引だけを市場に集中いたしまして、端数のものは店頭にゆだねております。ただ、売買されますところの基準はあくまでも取引所の市場で形成されました価格によっておりますので、それはいわゆる取引の値をつける場合の便宜的な仕分けでございますけれども、一応そういう形で処理をいたしております。
  98. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そういうふうに取引所の取引の額を制限するというのはどういう理由に基づくのでしょうか。
  99. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国債の取引というのはほかに市場が、市場というか、相場が立っておりませんで、いわゆる国債の流通市場というのはここ一本でございますので、たとえば銀行と日本銀行との間の取引にいたしましても、取引所価格を基準にしております。したがいまして、その取引の手法はできるだけ全銘柄を集中するということと、それから取引につきましてはなるべく簡便に迅速に処理されるというようなことを目途といたしておりますので、そういう整数の取引を市場に集中いたしまして、それの価格を基準にいたしまして店頭買いでも同じ値段でもって処理する、こういう取引の仕方を従来からとっておるわけでございます。
  100. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そういう質問じゃなくて、なぜ取引所での取引をそういうふうな制約を設けたのかという、その理由を伺っているわけです。それはまあ午後で結構ですから、よくわかるようにしてください。
  101. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後零時五十分まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      —————・—————    午後一時開会
  102. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  昭和五十年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。前川総裁には御多忙のところ、本法案の審査のため本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  103. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 先ほど国債の流通市場の整備のことでお尋ねをいたしまして、証券局長の御答弁、ちょっと不満だったものですから、さらに詳細をお伺いしたいと思います。
  104. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 午前中の寺田先生の御質問に十分お答えできませんで大変失礼いたしました。  なぜあの取引所の取引に値幅の制限があるのかという御質問であったかと思いますが、これは取引所のボンドの取引というものは、まあ店頭取引の方が大体多いものでございますから、取引所における取引というのは、取引価格の基準を決めるということに一応意味がございます。したがいまして、アメリカでもやはり日本と同じような売買の手法のやり方をとっておりまして、やはり千ドル単位で整数倍の取引で九千ドルまでを限度としておる、それ以上の取引になりますと、実はそれは取引所で扱ってもよろしいわけでございますけれども一つはそれは、かなり金額が大きくなるということで、それに対しての出合いがつきにくいということから、たまたまその大口の場合、売りがありましたような場合に、それによって非常に値が乱高下するというようなことがあってはいかぬというような配慮があったようでございます。  それから一つは、大型の売買というのは、恐らくそういうボンドホールダーも、両方の、その他いろんなことが熟達しておるというふうなことを前提にいたしますと、市場にかけなくてもその自分の持っておる物の処分というものに対しての判断というものが、相当時期的に的確につかめるんじゃないかというようなことから、むしろ大型の取引を制限をするということによって、そのボンドの基準価格というものを形成させる、形成しやすいような場をつくっていくということにねらいがあるということでございまして、たまたま日本国債もそういうような手法をとっておりまして、やはり百万円からの整数倍ということで取引をいたしておる。これが十月まで四百万円までの限度でございましたが、今度の大量発行下に備えまして、一千万円まで値幅を上げたということでございます。先生の御質問は恐らく値幅を制限して、そこで取引所に集中させると言いながら、実はそういうものが抜けているじゃないかというような御質問かと思いますが、ちなみに株式のように、これは全取引を市場に集中するというような場合にでも、これはいま日本の取引所におきましても千株単位ということになっておりますので、下の方の、そのまた端数の株は、これはその取引の中に乗せておりません。したがいまして、整数倍という面におきましては、取引所におけるその取引、先ほど午前中も申し上げましたように取引の円滑化を図るための一つのやり方でございます。
  105. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、現在国債の流通価格か下落しますと証券会社が買い支えをしているようですね。それはどういう理由に基づくのでしょうか。
  106. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) これは買い支えと申しますか、そういう、先生がおっしゃったような言葉ではないんでございますけれども、取引所におきまして、やはり一つ国債の取引というのはわりに一日の取引高が少ないわけでございます。そこで、その一時的な大量の売りがあったりなんかいたしますと、市場をそのままにいたしておきますと価格が暴落するというようなことがございます。国債というのは、やはりどこの国でもそうでございますが、やはり国の信用というものを背景にいたしております関係もございまして、本来ならば、これはよその国では、あるいは国が直接みずから買い支えに回るというようなことも、制度としてあるところもございますが、わが国におきましては、やはり国債の投資家という、その投資家が換金をしたいというときに、最初に買った値段より非常に低い、キャピタルロスが出てしまうというようなことがあるのはやはり避けたいという、そういうものが一般的な、何といいますか、取引の中におきまして、そういう観念が一応流通いたしておりまして、取引所におきましてそういう取引を、大口の売りがあったような場合に暴落しないように、これは一時証券会社がそれに買い向かいまして、そして買いました上において時間をかけて証券会社が売っていくという形をとっておるわけでございます。こういたしませんと、ときによって価格が極端に下落するというようなことになりますと、国債の信用といいますか、やはり国が出しておりますだけにその点について慎重にならざるを得ない。いまのところ幸いにして日本国債の売買高あるいは流通量が現在のような状況でございますから、いままでのところでは先生の御指摘のような、まあ私どもから言いますと協調買いという形を認めておるわけでございます。ただ、流通市場というものを本当に育てていくためにそれでいいかとうかという問題は これはこれから大量発行が始まっていく段階におきまして、かなりやはり私どもとしても神経を使っていかにゃいかぬところだし、またそれに対していままでのような協調買いのやり方がいいかどうかという点も、もちろん検討はいたしておるわけでございますが、ねらいは何かいかにも価格に対して一つの作為的なように、その目的は何であろうかという点につきましては、いま私が申し上げたような乱高下をなるべく避けたいと、こういう国債投資家に対しての一つの配慮だということでございます。
  107. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 現在国債の実勢価格はどの程度になっておりますか、最近発行されたものでも結構ですが。  それから、利回りですね、実際の。それがどのぐらいになっておりますか。
  108. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) これは、発行の銘柄はずいぶんたくさんございます、国債は。したがいまして、期近物と、それから最長期物とではかなり動きが違いますので、いま一番長い、八分国債の一番長いのでとってみますと、十二月の十五日の率は八・五二%でございます。
  109. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 価格は幾らなんでしょう。
  110. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 九十七円三十銭でございます。
  111. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうなんでしょうね、結局一般の利付金融債やAA格の事業債などと比べて魅力が少ないというところにそういう無理があるんじゃないでしょうか。だからその点を根本的に見直していかないと、やはり自由な流通市場をつくって、そして売れて価格が乱高下しないという状態はなくならないんじゃないでしょうかね、その点どうでしょうか。
  112. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 御指摘のように、債券はいろんな条件が市場の価格を形成する場合に出てくるわけでございます。したがいまして、国債の場合に、たとえば事業債といまおっしゃいましたが、比較した場合に、たとえば国債には別枠非課税の制度があるとか。あるいは国債担保金融を受けられるとかいう便利がありますし、発行主体が国と会社でございますから違うとか、あるいはまた日本銀行のオペの対象になるとかならないとかというようないろいろなものを背景にしょっておりますので、それが現在の金利というものが一体妥当なのかどうかということを判断するのは非常にむずかしいわけでございます。ただ、この前の十一月に長期金利の改定に伴いまして、債券金利の改定がございました際に、その前には大体約一%ほど事業債と国債との間の開きがあったわけでございます、利回りで。それは今回の改定によりまして、大体改定幅が事業債でございますと十年もののAA格債で言いますと、下げ幅が〇・四九九%、約〇・五%下げました。国債の場合にはそれが〇・〇九三%でございますから、約〇・一%でございます。したがいまして、従来一%の開きがございました格差はかなり縮まっておるわけでございます。そのように、国債につきましては、やはり大量発行下におけるいわゆる国債の条件というものを他の債券に比べて有利にしていくということを一応この改定の中に配慮されておるわけでございまして、だんだんにその市場に対して魅力のある国債というのに近づけていかなければならないという点は私ども考えておりますが、今回の改定におきましても、そういうことが実は加わったと私ども考えております。
  113. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 利率を上げると、公債費がかさむということをおそれたのだろうと思いますけれども、ことに証券会社で現実に売りさばいている人の間では、まだやはり不満が残っているようですね。この点、日銀の副総裁はどんなふうにお考えでしょうか。
  114. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 国債の条件につきましては、これだけ大量の国債発行され、市中に消化されてまいりまするので、それがインフレにつながらないという点から申しますると、発行条件は市場の実勢に沿ったものであるということが必要だろうと私も思っております。ただ、現在の条件か果たして実勢から離れておるかどうかという点につきましては、そのときどきの金融情勢等によっても非常に違いますし、それから発行されるということに対する投資家の態度ということによっても違いまするので、現在の発行条件が市場条件の実勢から言って著しく離れているというふうには考えておりません。
  115. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうしますと、国債の完全消化、これはまあこの年度だけじゃなくして、後でまた大臣にも伺わなければいけませんが、来年度の国債発行は七兆二千億に達すると言われておるのですが、いまの点は日銀副総裁、そういう来年度の展望も含めてお考えになりますか、やはり、考慮すべき時期が来るかもしれないというふうにお考えになりますか、どうでしょうか。
  116. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 明年度の国債発行額につきましては、ただいまお話のございました七兆二千億とかいう数字、私どもは聞いておりまするけれども、まだ予算案ができておりませんときに、果たしてそうなるかどうか、それを前提にはなかなか私どもも判断しにくいわけでございます。国債の消化の問題は、今度の年度につきましても、かなり大量であることは当然そういうふうに判断されるわけでございます。これが果たして消化できるかどうか、この点につきましてはいま私どもの判断では、今年度は全体の金融市場の資金がとんとんか、あるいは若干余るかもしれない、これは大幅な政府支払いがございまするので、全体にそういうふうになるわけでございまするけれども、そういうことから申しますると、金融市場には著しく資金逼迫の状態ではない、大体マクロで見ますると、時間的なタイムラグはあるかもしれませんが、量的には消化できるのではないかというふうな感じを持っております。それから市中金融の面で、企業資金需要というものが、いまの経済情勢を反映いたしまして、必ずしも強くございません。そういう意味から申しまして、金融機関に対する資金需要もそれほど強くないものでございまするからそういう点でこれだけの、今年度につきましても、かなり大量の国債であることは当然でございまするけれども、まず消化はできるのではないかというふうに考えております。ただ、いま申し上げましたように、全体の計数ではそうなりまするけれども、金融機関の種類によっては、あるいはまた地域的にも時期的にも、資金支払いと、それから国債発行による資金の吸い上げとの間にずれが生ずることは当然でございまするので、個別の問題といたしましては、いろいろ問題も起ころうかと思います。ただその問題は、金融の問題でございまするので、私ども日本銀行といたしましては、できるだけそういう点に摩擦がないように、金融調節をやってまいりたいというふうに思っております。
  117. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私はかなり、来年度を展望しますと、完全消化には大変努力が要るという感じがするわけです。だから大蔵省も、いまかなり新聞紙上などを活用されてPRしていらっしゃいますね、国債の問題で。この間も広告で、これは大臣とそれから東京大学の貝塚さんですか、それと富士銀行の松沢さん、三人の対談みたいなものを出しておられました。そのねらいはどこにあるのでしょうね、こういうPRの。
  118. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 国債につきましてPRをいたしておるのは事実でございますが、これは実は最近急に始めたわけではございませんで、ことしもそして去年も国債整理基金におきまして、広報のための経費をとって継続的にやっておるものでございます。これだけやりましてもなかなか債券自体に国民がなじみが少ない、国債にもなじみが少ないということで、国債が果たしておる重要な役割りにもかかわらずなかなかその辺に御理解がいただけないものでございますから、今回のように国債が大規模に増発されるということになりますと、やはり改めてその辺の御理解を国民の皆様に持っていただかなければいけないんではないかと、このように考えまして、私どもも、たとえば総理府が国の政策に関する広報の予算を持っておりますが、そことも連携を保ちながら積極的にPRをやっておりますし、あるいはたとえば先生お気づきのことと思いますが、証券会社すなわち国債を直接個人消化するのにはめ込んでおります当事者である証券会社も、大手筋はテレビであれ新聞であれいろいろ国債の宣伝をいたしております。また日本銀行に貯蓄増強委員会というのがございまして、貯蓄推進運動をやっているわけでございますが、ここも従来の貯蓄の形に加えて国債というものについて国民の理解をもっと得るようにということでPRをやっております。そのようにして各種のチャンネルを通じて国債の持っておる重要な役割りにつき国民の関心を呼びさまして、そしてこの国債の市中消化の中でも特に重要な役割りを果たす個人消化を伸ばしてまいりたい、このように考えて、ただいま積極的にこれと取り組んでおる次第でございます。
  119. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そういう個人消化を推進する、促進するんだということになりますと、私もかなり自分の周囲を見てみたんですが、この期間がいまの十年のものを、たとえば五年にすると、中期国債ですね。これは家内が、個人的なことを言うて非常に恐縮ですが、私これなら買うわと、こう言ったんですね。私はもう放任しているんですけれども。ところがそれが実現しない。まあ一部の金融機関の反対があるということなんですが、いま大臣ね、これ私は予算委員会でも大臣に質問しました、三木さんにも。いま国民国債を歓迎していると思うかという御質問をしたわけですね。大臣非常に当意即妙で、しかし、なかなか苦しい答弁をされましたが、大臣自身はこの国債に魅力を感じておられますか、御自身、どうですか。
  120. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本の金融資産は御案内のように預貯金が圧倒的に多いわけでございますし、私も個人の場合恐縮でございますけれども、預貯金は多少ございますけれども、債券類というのは余り御縁がないわけでございます。だけれども、こういうことでよろしいかという反省を持っていることは正直に言って事実でございます。資本市場がいまのようにまだ未発達の状態である、債券市場に至っては、本当にまだ国債の市場なんかないわけでございますので、こういう近代経済国がこういう状態であっていいかということが一つ反省としてございます。  それから、その場合、諸外国の場合は債券類が比較的親しみやすいものとしてあるということでございますが、わが国の場合は国債の顔を見たこともないという人が非常に多いんじゃないかと思いまするので、したがって、これが何とか国民の台所に近づいていく方法がないものだろうかという工夫を、市場の整備と、それから国民のもっと親しめる金融資産として成長するようにすべきじゃないかということをいま真剣に私は考えている一つのこれは課題でございます。寺田さんの奥さんも買っていただけるそうでございますけれども、私どももこれを漸次自分の金融資産として愛好するようなぐあいに自分自身もやってまいらなければいかぬと考えております。いかにもいまのあり方がいびつだと思います。
  121. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、国債発行をせられる本家本元の大蔵大臣も現時点では国債はまだ買っていらっしゃらないわけですね。
  122. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 戦時中は国債の顔を見たことがあるんですけれども、自分も持ったことがあるんでございますけれども、戦後まだ残念ながら持っていないわけであります。
  123. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 本家本元の大蔵大臣がお買いにならぬのですから、私はまだ国民に買えといってPRしても絶対無理だと思うんですよね。だからこれはやっぱり大蔵大臣、本当に国債国民に買ってもらおうと思いましたら、大蔵大臣が閣議に発議されまして、総理大臣以下大臣は少なくも率先して買うというような意気込みがないと、とても国民が買うというような状態にならぬと思うんですが、どうでしょうか、そういうことをなさるお考えないですか。
  124. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 実は寺田委員の御疑問のようなところ私どもも痛感いたしまして、大蔵省の幹部会で私どもはどうすべきかということを議論したことかございます。これはあいにくのことに大臣が臨席されないで、事務次官が主宰してやる会議でございまして、各局長それから官房の課長が集まる会合でございますが、そこで私どもも、外にいろいろPRしていることでもあり、またわれわれが率先してそういうことをやらなければいけないんじゃなかろうか、また他方、私ども公務員はこれは給与が必ずしもゆとりがたくさんあるというわけでもございません。そうしますと、大蔵省の職員に買ってくれとPRする、またそれが幹部職員だけに買ってくれというPRをするということであっても、家計とのやりくりその他の事情があって買いにくいこともあろうかということで、御案内のように一万円ずつ国債の一部ずつを買って積み立てていくという制度がございます。これを大蔵省の中の職員に活発に利用してもらう方法はないだろうかという話題も出まして、相当数の幹部職員はそれぞれ国債をお求めになったことと思いますし、また直接自分が独力で買う力のまだない職員は、これから、いま官房を通じていろいろ検討し実施に移そうと思っておりますが、積み立て式の国債の購入というようなこともやらなければいかぬということで手続を進めております。その意味大蔵省の職員も真剣になってこの国債の個人消化に取り組んでおるということを御承知おきいただきたいと思います。
  125. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 日銀副総裁はいかがですか。
  126. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 私自身はまだ実は持っておりませんが、私の家内は持っております。
  127. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大蔵大臣いかがですか、閣議にそれを御発議になっては。
  128. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 率先して閣僚にもお願いしなければなりませんし、先般閣議で選挙法の改正がございましたときに、供託の場合公債を活用していただくというようなこともいたしたわけでございまして、今後これをわれわれ実生活の中でどのように位づけてまいりますか、活用してまいりますか、広く考えていかなければならぬ課題だと思っております。早速閣僚諸君にはぜひお願いしたいものと思っております。
  129. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ちょっと順序が少し乱れて恐縮なんですが、国債の問題はさらにまた後でもう一遍お尋ねすることにして。  今度大蔵大臣お尋ねしたいのは、一昨日野田委員大塚委員の御質問に対しまして、まあ国の信用力を非常に強調されて、国債は十年後には返さなければならないものである、だから必ずそれは義務なんだから返すんだ、信用してほしいと、こうおっしゃいましたね。まあ私ははしなくも池田さんが、経済のことは池田にお任せくださいと、こう言っているのを思い出したのですけれどもね。まあ無条件でお任せするというわけにはいかぬわけですよね、これ。池田さんの高度経済成長政策も非常に行き過ぎて、日本の自然も壊れたし、インフレも招いたし、評価は必ずしもよくないと思うのですがね。結局借りかえはいたしませんということで大臣はおっしゃいましたね。その保証はどこにあるのでしょうね、借りかえはしないという保証は。これはやっぱり法的なものなんですか。それともそういう信念の表明、こういうふうに受け取ったらいいんでしょうか。どうなんでしょうか。
  130. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 経済のことは私に任してくださいというような大胆な自信は私にございません。私はただ公債支払いは、利子の支払い法律上の義務である、これは政府としてはやらなけりゃならぬ義務でございます、のっぴきならぬ義務でございますということをきわめて率直に申し上げただけのことでございまして、だれが大蔵大臣でございましても、そう申し上げるに違いないと思います。それは事実なんですから。  それから第二の問題でございますが、御質問で、その借りかえの問題でございますが、国債の管理は政府の責任でございますので、借りかえをするしないは政府に与えられた権限内のことだと考えております。そういう与えられた権限の内で国債管理上ただいま政府は、今回発行する特例債につきましては、しかし借りかえはいたさないつもりでございますということを国会にお約束したわけでございますから、この約束はいたした以上はたがえてはいかぬと思っております。
  131. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、政治的な責任を伴う政策の表明ということになりますね。それ以上の何物でもないわけで、どうでしょうか。
  132. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) なお申し上げますならば、補正予算に添付いたしました償還計画表に説明書きがございます。で、普通の四条債の場合におきましては借りかえのことに触れてございますけれども特例債の場合には借りかえということは書いてないわけでございます。これは事務当局からこの点につきましての説明ちょっとさせます。
  133. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 今回発行をお願いいたしております特例公債発行額の議決をいただきますに際しまして、予算委員会というか、予算に添付して公債償還計画表というのを御提出したわけでございますが、その説明欄というところに、ちょっと読ませていただきますと、「上記の「昭和五十年度の公債発行特例に関する法律(仮称)の規定により発行を予定する公債償還計画表」に記載されている昭和六十年度の償還額二兆二千九百億円については、毎年度国債整理基金に繰り入れる前年度首国債総額の百分の一・六相当額の財源、「財政法」第六条に基づき若しくは必要に応じ予算の定めるところにより同基金に繰り入れる財源により償還を行う予定である。なお、状況によっては、期限前償還又は買入消却を行う場合がある。」、こうなっております。ただいま私が読み上げました説明欄に、たとえば本年の当初予算で発行をいたしておりますところの四条債でございますと、「若しくは必要に応じ予算の定めるところにより同基金に繰り入れる財源」の次に「「国債整理基金特別会計法」第五条」により借りかえのために発行される公債収入金という字が入っておりますが、特例公債でございますから、先ほど大臣から御表明のありましたとおり借りかえをしないという意図を明らかにするためにその文言を削除しております。その文言を書かないで……
  134. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 その文言というのはどの文言。
  135. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 借りかえに関する文言でございます。それを書いておらないということでございます。
  136. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、どうなりますかね。剰余金も結局、大臣は全額、これは財政法上の規定は半額以上ということになっていますが、剰余金を全額繰り入れますと、一般会計に。ことにそれは恐らく国債整理基金の中に具体的には入るという意味だと思うんですが、それもやっぱり法律的な根拠は大臣ないわけでしょう。これもやはり大臣政治責任を伴う政策の表明と受け取るほかないわけでしょう。
  137. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 御指摘のとおり財政法の第六条には「各会計年度において歳入歳出の決算上剰余を生じた場合においては、当該剰余金のうち、二分の一を下らない金額は、他の法律によるものの外、これを剰余金を生じた年度の翌翌年度までに、公債又は借入金の償還財源に充てなければならない。」という規定がございます。御指摘のように、法定では剰余金の二分の一を下らない金額、すなわち二分の一以上を償還財源に繰り入れるということになっています。大臣からお答えがありましたように、この国会でこの法律またはこの法律に基づきます発行額の御決議をいただきますに際しまして、特例公債発行期間中は剰余金の全額を国債整理基金に繰り入れるということを申し上げてありますが、それはこの法律の規定に基づきますところの政策の表明ということであろうと思います。
  138. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 だから、結局大臣ね、あなたのおっしゃるのは、大臣ともあろう人物が国会でこうはっきりと約束したんだから、間違いないと、こういうことになるわけでしょう。だけど、まあ大臣が国会で約束したから必ずそれが実現されるもんでないということは、われわれいままで幾多の政治的な事件で見ておるわけですね。大臣が約束したら絶対実現するんだというような簡単なもんじゃないと思うのですね。ことに財政審試算のような状態が続いていった場合、これはもう果たして本当に返せるだろうかという懸念がもうどうしてもそれは消しがたいものがありますね。返さなきゃならぬものだけれども、それをまた返すために赤字公債発行せざるを得ないというような事態もないとは言い切れないのじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  139. 大塚喬

    大塚喬君 ちょっと関連して。  寺田委員の質問に関連してお尋ねをしますが、いまその財政審の一兆円赤字、二兆円赤字、三兆円赤字ということで試算をされたもの、それが現実には、その一番多い三兆円よりも赤字が多い、こういうことで、これが累積されていった場合に、一体返済というものがどうなんだろうというのが私どもの脳裏から離れないわけです。酒もたばこも、これは大変私どもいけない法案だと思っておりますが、将来を見通した場合には、酒、たばこなどというものよりははるかにこの財特法は危険な国民に大きな迷惑をかける法律である。そうなったときに、最後は大臣がここで信用してくれ、借りかえはしない、こういうことをおっしゃっても、にっちもさっちもいかなくなった、とどのつまりはやむを得ず借りかえでございます、こういう事態にならない保証は何にもない。そういうことを今度国債の売れ行きやなんかのことで先ほども心配な話がありましたけれども、その事情をちょっとでも知れば、やっぱりそういうことになりかねないと思うのです。ですから、いまの問題は、ひとつ大臣の信用してくれというだけの話ではなくて、前回償還計画、償還財源というものに大きく関連するわけですが、そこのところをひとつ大臣が私どもにも納得できるような、そういう御答弁をぜひちょうだいいたしたいと思います。
  140. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大変御心配をいただいて恐縮するんですけれども、私が大蔵大臣としてお答え申し上げておりますことは、自由民主党とその政府政治責任を背負っての話でございます。国会に対してもとより政府は責任を持っておるわけでございまして、国会に対してお約束をいたしましたことをたがえるというようなことでは、大塚さんばかりでなく、国会はそう寛容であられないと思うのであります。したがって、国会に対して全的な政治責任を負った立場におきまして私は申し上げておるんだということで、大平正芳個人がたまたま大蔵大臣をやっておりまして、私を信頼してくださいなんていうことを申し上げておるわけでは決してないわけでございます。  それから第二に、払えるという保証がどうも見込みが立ちそうにないという観測、御意見でございますけれども、私がたびたび申し上げておるように、これは払わにゃならぬわけなんでございますが、どういう歳出を詰めてでも、どのように増収を別の方法で図りましても、法律上の義務を果たせられないような日本政府日本国があっちゃ困るわけなんでございますので、これは払うわけなんでございまして、あなたの主観的な御心配、あなた主観的に御心配のようですけれども、そんなことしたら大変なんです。そういうことはしない、できないわけなんでございまして、その点はきのう、おとついから私もいろいろ声を大きくして申し上げておるわけで、きわめてあたりまえなことを私は申し上げておるつもりでございます。しかし、大塚さんの言われること、そしてまた寺田さんの御心配になられておりますことは、だから財政あり方としての健全財政ということは、こういうことでやれるかやれないかという意味お尋ねだと、国債の債務を償還するかしないかというようなこと、これはやらなければならぬこと決まっておるわけなんでありまして、そういう御議論ではなくて、こういうことを大平君やっておるようだけれども、これは日本の国の財政として不健全なことになりはしないか。健全性からの脱却がおくれはしないか。それのめどがはっきりしないじゃないかという意味の御批判として私は受けとめて、そしてそれに対しましてきのうからお答えを申し上げておりますことをまず御了解いただきたいと思うのでありまして、それにつきましては、私は大塚さんは端的にこれは悪法である、心配だと、酒、たばこもいやな法律だったけれどもこれもよくないということでございますけれども、薬というものは効かなければ薬にならぬわけなんでございまして、大変相当有毒的なものでないと薬にならぬわけであります。つまり相当良薬は口に苦しといわれるわけでございまして、こういう特例法をお願いするということはよくよくでございまして、こういうことを通じて、これだけの薬を盛って、それでいま大変落ち込みました経済活力を取り戻そうという薬なんでございまして、したがって、これによりまして経済活力をつけて、そしてそれから十分栄養をしぼり取って、健全な財政に返そうということなんでございます。逆に、こういうことをしないでおきますと、経済の停滞は際限なく続くし、雇用の不安は続くし、それが経済不安、社会不安を起こしかねないことになるわけでございまするので、そういうことは避けなければならぬために、非常に口に苦い良薬でございますけれども、この際ひとつ盛らしていただきたいということを御相談申し上げて、卑近な例で言いますと、そういうつもりなんでございますので、どうぞひとつその点は御理解を願いたいと思います。
  141. 大塚喬

    大塚喬君 いま、大変御高説を拝聴いたしたわけですが、私はどうもまだ釈然といたしません。良薬ということで口に苦し、まあ苦い薬だと思うのですが、私は良薬というよりはアヘンというもの、そういうものじゃないかという気がいたします。で、一時しのぎにこういうことに走ると、その結果は後々の後遺症が、とんでもないことが続いて衰弱死という、中毒死というような、そういうことになりかねない心配が強いわけです。主観ということでおっしゃられるが、確かに私の主観ですが、それは単に私一個人の心配ではないと、こう私は信じております。で、そこのところをまあ良薬だから飲めと、飲めと言われても、先ほど寺田委員の質問に関連をして、一体良薬だという保証、それから後借りかえ債を起こさないというような、そういう事項を大臣がここで口頭で答弁をいただいたことで、政府・自民党その責任でやるんだから信用しろということであっても、戦争中のあの戦時国債で受けた国民の被害、こういう悪夢が依然としてありますし、そういうところについては、やっぱり政府自体がもっと明確な責任を明らかにすべきであると、私はそういう感じがいたします。先ほどの寺田委員の質問と関連して、もう一度ひとつ重ねて大臣の答弁をお願いしたいと思います。
  142. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま言われる意味はよくわかります。公債というものはイージーに流れやすいものでございます。おとついも野田委員からもいろいろ御指摘がございましたように、税金によって歳入を確保するということは大変骨が折れるけれども公債発行して歳入を得るというふうなことは比較的にやさしいことでございますので、まあこれになれやすい、めんどうなことをするよりは公債に頼るというようになりやすいものでございます。したがって、あなたの言われる、これに中毒してしまっていくと日本財政の体質をこわしてしまうと思うんです。ですから、その点は大塚さんが御心配のとおり私ども心配をいたしておるわけでございますので、まず第一に、この特例公債というようなものをしょっちゅう発行してはならないという意味で、戒めの意味におきまして、まさに特例債発行に関する法律を単行法としてお願いをいたしておるわけでございます。しかも、それは五十年度だけのものをお願いしておるわけでございます。必要な都度必要な限度におきまして、目的を限りまして国会の御承認をその都度得てやるんだということでございまして、財政法に例外規定を設けまして、必要な場合には政府はいつでもそれに依存ができるようなイージーな姿勢はまずとっていないつもりでございます。今後もとらないつもりでおるわけでございます。  それから、これはできるだけ早くお返ししなけりゃならぬと、十年満期債にいたしまして、その間借りかえも行わずに六十年には満額返済したいということで計画をいたしておるわけでございまして、途中で借りかえてこの特例債の上であぐらをかこうなんという考えは毛頭持っていないわけでございます。そして寺田さんは、政府決意はわかるけれども、それは国会で言うだけじゃだめじゃないかというような——国会で申し上げることは大変な約束でございます、それだけの政治責任を背負ってのお約束でございますということをいま申し上げておるところでございます。そのようにお約束いたしました以上は、第三に、政府は非常に厳しい財政運営をとらなければならぬことなんでございます。したがって、衆議院の段階以来公債発行償還計画に関する補足説明ということで、十月二十九日に衆議院に提出いたしました政府の補足説明は、今後の財政政策を進めていく場合におきまして、このような厳しい姿勢をとるつもりでございますということでございますので、これは一つ一つ、きわめて文章は簡単でございますけれども財政当局にとりましては大変な重い責任を伴う声明でございます。それはとりもなおさず、いま大塚さんが言われた点を憂慮するからでございます。私ども、だれよりもまず特例公債に対する警戒は私自身と大蔵省がまず一番警戒してかからにゃいかぬ責任があると存ずるのでございまして、そういう厳しい姿勢で対処するということを国会に対して厳粛にお約束をしておるんだということでございます。第四に、それではそれだけの財政上の、財政計画上のもくろみを、展望を明らかにして納得いくようにやらなければならぬじゃないかということ、衆議院段階でもそういう御要望がございましたし、参議院におきましても同様にあなたを初め、皆様からお話をいただいておるわけでございます。  そこで、現在できておる試算試算として差し上げますけれども、これはあくまでも前提を置いた一つ試算であるということと、この試算は何ら政府財政運営努力というようなことにかかわりなく、一応、前提を置いて試算をしてみるとこうなりますということでございまして、これ、ほうっておいたらこういうえらい結果になるから、こういうことにならないためにはどうするかということが、われわれの任務になるわけでございます。したがって、財政運営の厳しい姿勢をとって、しかじかの事態にならぬようにわれわれは注意してまいりますということまで申し上げておるわけでございます。しからば、その姿はどういう姿になるかということでございますが、それは、ただいまそういうことを数字で固めて申し上げるまでになっていませんし、それは恐らく毎年毎年の予算をもって御審議いただくことになると思いますけれども財政の将来の展望という姿においては、何らか御審議参考になるようなものはできるだけ、若干の時間をちょうだいしてやった上で、御審議の際の参考にしなけりゃならぬじゃないかということをせんだって来申し上げておるところでございます。
  143. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大臣のおっしゃることに私は偽りがあるということは全然考えません。ただ、まあ、名医でいらっしゃる大平大蔵大臣が、十年後に依然として財政担当の大臣であるということは保証はないでしょう。このごろ、欠席判決で言っちゃ非常に悪いですが、三木さんの株も大分下落していますし、大平さんはポスト三木の一角を、まあ、ねらっていると言っちゃ大変失礼ですけれども、擬せられている人でしょう。あるいはそういうことになるかもしれませんが、それにしても、十年後にどうかということは保証は全くありません。そのときにあなたは野に下っておられるかもしれません。だから、あなたがお約束になったからといって、われわれは安心できないのはそういうところにあるわけです。これは来年のことだと言えば——大臣政治的にお約束になったということはかなり重みがありますけれども、そういう状態にないんですから、だから、依然として十年後になるほどこれは返すべき法律的な義務がありますから、返還の公債費というものは予算の中に盛るんでしょう。しかし、盛ったって財源がない場合には、やはりその財源というものは特例公債発行して獲得するということにならぬとは限らぬでしょう。また特例公債でなくても、来年は建設公債が三兆七千億ですか、にもなるというんですから、建設公債をうんと発行してそれで財源を、公共事業一切の財源を賄うというような財政構造になるかもわかりません。それは結局やっぱり借りかえと経済的には少しも変わらないんです。それを私は申し上げておるんですね。だから、結局、大臣、あなたのおっしゃることもわかるけれども、確実な保証はございませんということはお認めになるでしょう。
  144. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大変恐縮ですけれども、問いただして恐縮ですけれども、借りかえについてでございますか。
  145. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 借りかえと実質的には同じじゃないかということですよ。つまり、公債費を予算には盛ると、しかし、全体の財源がないからやっぱり赤字公債発行する、あるいは建設公債をうんと発行して予算を賄うということになると、実質的には借りかえと変わらぬじゃありませんかということです。
  146. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは御懸念の点はわからないわけではないんです。ないけれども、私とそして大蔵省は、そういう約束を国会にいたして、国債管理に当たりましてはそういう固い決意で当たりますということを国会で約束をいたしておるわけでございますので、これはいいかげんな約束でないので、政治責任を背負った約束でございますということを申し上げておるんで、同じ政治家である寺田さんであれば、よしわかったと、こう見ていただきたいと思うのでございまして、私どもこれを国会を切り抜けるためにそういうことを申し上げておるわけではないので、初めから、国会の御審議が始まる前からもうそういう方針を内外にはっきりさせて臨んでおるわけでございますので、その点はみじんもお疑いにならないようにひとつ私はお願いしたいものと思います。
  147. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 くどいようですがね、大臣、それはあなたのそういう政治的な約束というのは十年後の内閣を拘束すると思いますか。全然それは拘束力もないでしょうし、それからまた実際上ないそでは振れませんからね。なかったらやっぱりそれはなるわけですよ。だから、私の申し上げることには何らの保証というものは、確実な保証はございませんということに帰着するんじゃないでしょうか。そのことだけ御答弁いただいて結構です。
  148. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのときの政治情勢、政治勢力がどういう状態にあるかは、それは仰せのとおりわかりません。わかりませんけれども財政当局というものは私はあると思うのでございまして、財政当局が財政運営の厳しい態度から割り出した運営の基本方針というものは、そう簡単に変えるわけにはいかないんじゃないかと。そういう借りかえをしないでこれが返せられるだけの財政運営ということについて、私の後に続く財政当局はその期待にこたえてくれるに違いないと確信いたします。
  149. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうもそういう保証がないことは結論としては何人にもわかってますからね。大臣に無理に言ってくれといっても無理でしょうから、この程度にいたします。  それから、大蔵大臣は一昨日矢追議員の御質問に対しまして、一般的な増税はいたさない決意でありますと、一部の手直しはいたしますというふうにお答えになってますね。これはいわゆる所得税、法人税の一般的増税はしないという意味でおっしゃったんだろうと思うんですが、自動車関係税制の改正がいま非常にやかましいわけですよ。自民党の税調が、一律三〇%の増税を、これは村山君がやっている何か税調のそういう特別な委員会があるようですね、それが中間報告をしたという記事があるんです。ですから、自動車関係の増税というのは、現実にいまや立案寸前という状態にあるというふうにこれは伺ってよろしいですか。
  150. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 前回寺田委員の御質問にお答えいたしまして、たまたま今度二年前の増税の期限が到来いたしますので、その期限到来の機会にそのまま延長をお願いすることになるのか、あるいは延長の機会に若干の負担の増加をお願いすることになるのか、これから税制調査会に御審議を願うことになろうと思いますということを申し上げた記憶がございます。それ以後税制調査会の方に本件を提示いたしました。税制調査会は、財政当局として若干の負担の増が欲しいと、増加をがまんしていただきたい、増収が欲しいんですということは、それはそれでわからぬではない、しかし、現在そういうことは可能であるのか、適当であるのかということについて関係省の意見を聞きたいということでございまして、総会をまる一回使いまして、資源エネルギー庁、これは石油の関係でございます。それから通産省の機械情報産業局、これは自動車産業を所管いたしております。それから建設省の道路局、これは道路財源のことであります。道路整備の見通しの問題。それから運輸省の自動車局、これは自動車の運輸を見ておる、製造でなくて運輸の方を見ておるわけでございます。それから公害防止の費用に社会負担の一部を回してほしいというかねてからの、現に行われておりますが、その関連で環境庁の官房長、それぞれ来ていただきまして、それぞれの立場からの御意見をいただきました。それ以後二回ぐらいそのテーマにつきまして御論議が出ておりまして、ただいまの状況は、ある程度負担の増加はこれはがまんしていただけるんではないかという意見がほぼ大勢のように見受けられますが、一部には、現在のような情勢では自動車関係税の増税は見送るべきだという御意見の方もございますので、現在は、臨時小委員会におきまして答申をつくるときにその大勢に従うのか、一部の御意見をどう扱うのかということを御論議願っておると。仮に増税をがまんしていただくという結論が出る場合に、その幅はどの程度のものがよろしいかというのは、もう少し時間がかがるというのが現状でございます。  それから、御質問の中に、自民党の部会なり小委員会でいろいろな案があるようだという点がございましたが、これは自民党の方のことでございますので、私からお答えするのは差し控えさしていただきたいと思います。
  151. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大臣の御決意はいかがですか。
  152. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一般的な所得税、法人税等の増税は御遠慮しなければなるまいと。しかし一般的な所得税、法人税等の減税もまたお願いできるような財政状況でないという判断を持っておるということは、前々から申し上げておるとおりです。しからば、現行税制にわたりまして選択的に部分的に若干の増収が可能なものにつきまして、経済状況から照らしましてそれが可能であるということでございますならば、どんなに、必ずしも巨額の歳入でなくても確保させていただきたいということは、党の方にも政府の方にもそれぞれの税調の方にお願いをいたしてありまするし、主税局にもそういうラインに沿って検討をするように命じてあるわけでございます。ちょうど、いま御説明がありましたように、両調査会ともほとんど最終的な段階に近づいてきておるようでございます。したがって一遠からずお考えをお示しいただけるのではないかと期待いたしておりますので、今日の段階で私から具体的に云々という意見を申し上げるということは非礼だと思いますので、ここもそんなに時間がかかるわけじゃございませんで、しばらく税調の御判断が出るのを待たしていただきたいと思っております。
  153. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 また元に戻って、主税局長にお尋ねするわけですが、主税局長のお話で、もう大体そういう方向に固まっているとおっしゃるのは、税調の大勢が自動車関係の税の、あなたの表現で言うと、さらに延長するということになりますか、それからその率をアップするというのもやむを得ないんじゃないかという方向に固まっていると、そういうことで伺っていいわけですね。
  154. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 仰せのとおりでございまして、暫定増税の期限を延長して、同時に増税の幅をいまよりも若干ふやすという方向については、大勢としてやむを得ないだろうという御意見、一部に単純に延長しろという御意見がまだ残っておりますが、大勢としては増税をして延長という方向でほぼまとまりつつある。ただ、その幅はどの程度が適当かという問題については、まだ結論が出ておらないというのが現状でございます。
  155. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、交際費課税の強化についても本会議でお尋ねしたんですが、三木さんも大体そういう方向で進むということを御答弁になっていらっしゃるんですが、その点は主税局長、いまどんなふうな作業の状態ですか。
  156. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 交際費課税はかねてから、逐年課税が強化されてきておりますので、これをさらに強化するかどうか、消極的な御意見もかなりございます。ございますが、租税特別措置を全面的に見直すこの機会に、もう一度交際費についても若干の規制の強化、税による規制の強化を考えてもいいんではないかという御議論もかなり強い。その場合に、寺田委員御承知のとおり、税の方である限度を超えればそれを課税対象にするわけで、それが一社当たり四百万円でございます。それから資本金の千分の一を超えた部分、これを対象にするわけでございます。それから第三に、四百万円それから千分の一を上回る部分のいま七五%を課税対象にしているわけでございます。で、その四百万円と千分の一と七五%という、その三つのやり方のどこを直して課税を強化するかということが議論の対象になるわけでございますが、どの部分をやるかというところについて、まだ具体的に方向が出ているわけではございません。また、課税強化そのものについて、自動車関係税の場合ほどくっきりと、ことしはやった方がいいと、あるいはやってもやむを得ないというほどくっきりとまとまってきておるという感じでもございません。しかし、いずれにしてももう余り時間がございませんので、予算編成の日程に間に合いますように、何らかの結論を出さなくてはならないと思っております。
  157. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、これは新聞辞令ですが、会社臨時特別税ですね、これはもう延長しないと、今年度——来年の三月三十一日限りでもう自動的に廃止になるという結論になったと報ぜられているんですけれども、全部の新聞じゃないけど、これはどうです、もう結論出ましたか。
  158. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 会社臨時特別税の創設の経緯はもうよく御承知のとおりでございますから、延長とか廃止とかいう取り上げ方が若干おかしいと申しますか、要するに提案理由説明とか法律の内容とかいうものから見ますと、これを単に延長するという話ではないんだと私は考えます。したがって、同じものを同じように今後一年なり二年税負担を求めるのであれば、それは違う提案理由の、しかし、仕組みは同じ税を提案しなくてはおかしい。つまり、単純に条文の一部分を、来年の五十一年の二月決算までと書いてあるから、それを部分的にたとえば五十三年の二月決算までと直せばそれでいいのかと、そういう延長するとかなんとかいう話ではないと思うんです、本質が。したがって、いまの仕組みと同じ仕組みで、しかし、別の理由で税を提案するのか、あるいはそういうことをしなければ、もう法律の提案理由から見ても、法律の書き方から見ても、いわば自然になくなってしまう。自然になくなってしまうという方を廃止と、こう新聞は報道しておるわけです。それからそれにかわる新しい税を違う理由で、同じ仕組みかどうかはわかりませんが、提案することを延長と、こう言っておるわけです。という性質の問題でございますので、私どもとしてはいまの会社臨時特別税とほぼ同じ負担のものを、ほぼ同じ仕組みで、いまの税と違う理由で御提案するというつもりは、いまのところございません。
  159. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、物価調整減税を含めて所得税の減税は実施しないということを決めたという報道が最近なされましたけれども、これはそういうふうに伺っていいですか。これは、大臣でも主税局長でもどちらでもよろしいですが。
  160. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) これは、税制調査会は議事が非公開になっておりますので、どう申し上げたらいいのか。ただまあ税調の御論議を受けての私のいま持っております感じとしてお受け取りいただけば幸いでございますが、臨時小委員会で所得税の減税につきまして、景気調整のための減税の是非、それから景気調整はさておき、物価調整減税を必要とするかしないかの御論議を時間をかけてやっていただきましたが、そのいずれも五十一年度は行わないということで御納得を得られるであろうというのが、臨時小委員会での大勢のように考えます。総会で、再度御審議はあると思います。
  161. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 恐らく、小委員会の大勢が承認に傾いているということになりますと、総会も同様だと思いますけれども、そうなりますと、本年度のベースアップというものが実際上は何十%かの効果を失いますね。どうなんでしょうか。その点は、御考慮にならぬのですか。
  162. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ベースアップがございまして、それから物価がある程度上がるという状況のもとで現行税制がそのまま維持されますと、手取りの増加額の実質分が物価分だけ食われてしまう、手取りの増加額の実質分が物価分だけ食われてしまうという点を御指摘になっているんだと思いますが、それは理屈としてはそういうことが言えると私は思います。ただ、だからどうしても毎年そこをカバーすることをしなくてはならぬのかということの御議論につきましては、現在の負担の水準、最近における物価の落ちつき方から見まして、五十一年はどうしても予想される程度の物価に応じた課税最低限の引き上げをやらなくては、負担が重くなり過ぎるという状況ではないという御判断がいまの臨時小委員会の大勢でございます。そう申し上げればよろしいと思います。
  163. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 物価調整減税をしなければならないほど負担が重過ぎるというそのいまの御答弁、それは結局どういうことなのかな、ベースアップによる所得増というものがいまの物価の騰貴によって目減りすることは間違いないと。しかし、それはがまんしてもらうほかはないということなんでしょうか。どうなんでしょうか。
  164. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) いままでの高度成長期、非常に多額の自然増収がございまして、累年の減税が行われている。累年の減税を内容的に見れば、それは物価調整以上の実質的な減税が積み重なってきております。したがって、課税最低限も、大臣がしばしば申し上げておりますように、先進諸国の中でいわば一番高い、負担としては一番低い、そういうところへいまきておる。これはいままで一生懸命やってきた物価調整プラス実質の減税の結果で、そこへきておるんで、その水準をいまスタートにして、今後予想される物価調整をことしどうしてもやらなくては負担にたえられないかといって問いかけてみれば、それはがまんしていただけるんではなかろうかと、そういう御議論でございます。
  165. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 まあ徴税当局の気持ちとしてはわかるけれども、つまり私がいつも言っている、かなり将来を展望して計画を立てろということを、今度逆に、いままで過去にさかのぼってうんと減税してやっているんだから、今度はそれを考えて、ことしはがまんしろと、こういう恩典を過去にさかのぼらせたということがどうも余り感心しないんだけれども、それは主税局長、結局がまんしてもらうほかはない、こういう結論になるように思いますけれども、せっかくの公務員のベースアップのメリットというものがその分だけ失われたという事実は、これは単年度になるけれども、昔の過去のやつを考えないで。そういう点は、これは間違いないでしょうね。どういうふうにあなた考え、見ておられますか。
  166. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) それはいずれ通常国会で大変な御議論になると思いますので、計数的にまた整備いたしまして、お答えをすべき問題だろうと思います。ただ、どういう年を基準にとりましても、ある基準の年からいままでの物価の動きと、課税最低限の上がり方と比較するというような方法を使いますれば、やはりいままで物価調整以上に実質的な減税が行われてきたということは、これは言えると思います。
  167. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、昔にさかのぼらないで……。
  168. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) そこで、しかしそれは実質減税いままでやってきたんだから、そこをスタート台にして、この先の物価分ももう一遍調整する方がいいんじゃないかということになれば、それは必ずやらねばいかぬという問題ではなくて、やることが適当かどうかという一種の政策論になるんだろうと。必ずやらなくてはいかぬという問題ではない、負担の水準としましては。私はそのように考えております。
  169. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 主税当局だけの視野から見ると、これはなるほどそうなんだけれども、公務員の場合は、あなた方御存じのように、ストライキ権というものを剥脱する代償として代償措置を認めているわけです。それは公務員のベースアップ、人勧のようなああいう制度があるから、だから許されるのだというのがいままでの政府の答弁でもあるし、最高裁の判例でもあるわけです。だからかなり、そんな目減りした場合にがまんしてもらうとか、まあまあそれはしてもしなくてもいいものですというような単純な議論ではないわけです。やっぱりそれは代償措置としての目的を達しているかどうかということに関連してくると思う。だからそのことを考えないで、主税局だけの論点でいくと、大平大蔵大臣は、スト権の問題の閣僚協議会の御一人であって、いまの代償措置が崩れちゃった、せっかくの人勧の勧告によるものが物価のあれによって目減りしてしまうのだ、それは知りません、がまんしてくださいというのでは、代償措置というスト権を奪ったあなた方の論理の一番の突っかい棒が外されてくる。その点はどういうふうに考えますか。やっぱり物価調整減税しなければいけないということになると思うのだけれどもどうですか。
  170. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) せっかくの御意見でございますけれども、私はそういうように考えません。代償措置は、寺田さんがおっしゃるようにスト権を奪った代償は人事院制度であると思いますが、人事院制度を通じまして政府は民間給与と公務員給与とのバランスを維持するということを通じて代償を与えることを行っておるわけでございまして、物価が調整減税とは全然別個の問題と私は考えております。
  171. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それは大変な認識不足で、民間給与とのバランスをとるというのは、単に人勧を導き出す上の一つのテクニックなんですよね。そうじゃなくて、やっぱりこれは少し最高裁判例などを勉強していただきたいけれども、憲法二十五条の文化的な最低限度の生活を保障するという生活権の保障の規定がありますね。そこから出ているわけですね。そこでやはり文化的な最低限度の生活を営む、そういう生活権を保障するためにスト権が認められている。だからスト権があるのだけれども、しかし代償措置がある場合には、それを剥脱しても構わないじゃないかという論理でいままで政府も最高裁もきているので、民間給与とのバランスをとればいいのだというものじゃないでしょう。民間給与がきわめて低かったら公務員の給与もやはり低くなりますからね。それは必ずしも民間給与と一緒になったから生活権が保障されたということになりませんよ、これは当然でしょう。だから本来それはいかにあるべきかという問題、生活を保障するためにはどの程度の給与がしかるべきかというところから結論が出るので、民間給与のバランスを盛んにテクニックとして用いるものだから、大臣そんなふうにお考えになるけれども、それはとんでもないお考え違いです。どうですか。
  172. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ちょっと言葉が足らないかもしれませんけれども、つまり人事院という制度が設けられて、そして人事院が五%以上の給与の変動があったときは勧告するということになっていますから、その勧告がございました場合それを政府が尊重していくということで、私は代償——つまりあなたか言われる公務員に対する代償が保証されておると思うのでございます。物価調整減税がそれにかかわりを持つという論理は私はちょっと理解ができないのです。
  173. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 だって当然政府は、人事院は生活権を保障するためには、たとえば八%なら八%のアップをしなければだめだと認めて、ああよろしいというので政府が応諾してそれを実現したわけですから、それが何ぞしらぬ、その年度は物価騰貴でそのメリットが半分になっちゃった、四%になっちゃったというのであれば、それは明らかに人勧による生活権保障という代償措置の効果が半減したことになりますからね。だからそれはやはり何らかの措置を講じなきゃいかぬのじゃないか、それにはいままで物価調整減税というメトーデがいわゆるとられてきたと、だからそれを当然やったら——やれることなんですからね。一番簡単にやれることなんですから、やったらいかがかと言ってお尋ねしているわけです。
  174. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) またそれは主税局長だけの論理だというおしかりを受けるかもしれませんが、大臣お答えしておりますように、給与というものはそれは名目値で決まるものであると、名目値で決まった給与の伸びが物価とにらみ合わせたら実質幾らになるか、それは公務員だけの問題ではなくて民間給与でも同じ問題であろうと思います。給与が名目的に上がったときに物価も上がったと、したがって、それはすべて何らかの意味で給与の目減り分を政府の政策で補償するのかということを、私はそれはまだ確立された原則ではないように考えます、民間、公務員を通じまして。しかし、それを考えるとして物価調整減税というのは一つの助けにはなりますでしょう。しかし、あらゆる給与所得者についてそういうことを政府が何かやるというなら減税ではだめだと私は思います。それは税金を納めていらっしゃらない方がたくさんおられるわけですから、給与所得者に。その方々は調整減税という方法はきかないわけですから。ですから給与の実質保障のために調整減税を必ずやるべきなんだという御論旨には私はちょっと承服いたしかねますが。
  175. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いまのあなたの、民間給与を受けている人々も同じことじゃありませんかと、目減りの問題はね。それはいわゆる代償措置に関係ないじゃないかと、それはそのとおりなんですね。それは社会的公正の問題だと思うんですよ。ただ私は公務員の給与に関連して言えば、それはやはり、代償措置の一角は実質的に崩れちゃったと、名目、あなたは給与というのは名目ですと言うけれども、そうあってはならないわけです。名目であるならば、あなた何も物価が上がったからといって、物価が上がったことによる目減りなんてことを考慮しなければ、直すそもそも必要がないんだから。やっぱり名目を直すというのは、それはやっぱり実質的な価値が下がったから名目を改めていくわけだ。そうでしょう。ベースアップというのはそういう意味でしょう。だからやはり目減りがあったという、その目減りはやはり政府のなし得る手段でそれを補わなければ、政府が一枚看板にしている代償措置というものは実質的に崩れちゃう。これは主税局長ではちょっと無理なところだからやっぱり大臣、もう一遍。
  176. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) どうも寺田さんが御主張されること、よく私に理解できないんです、非常に残念でございますけれども。私は人事院勧告は課税権まで含めて勧告をすべき性質のものではないと思うんでございまして、勧告された、名目給与というものが勧告されるわけでございますので、それをどのように政府が対応いたしますか、それに対しまして政府がこれを尊重して実行いたしますならば、その限りにおきまして保障は実現したとすなおに読みとるべきじゃないかと思いまして、そこに物価調整減税なるものを介入させると御議論は私は混迷してくる、私はちょっと理解しかねます。
  177. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それはまあひとつ予算委員会でまた論議することにして、時間がないから他に移りましょう。まあ大臣もひとつ御勉強になられることを希望しておきます。  それから、先ほどから一応新聞辞令を基礎に論じておったのですが、もうそろそろ、あれでしょう、お答えいただいてもいいんでしょう。来年度の国債発行予定額、そのうち建設国債がどれだけで、赤字特例債がどれぐらいかと、大体の見通しはもうおっしゃっていただいていいでしょう。これは大臣でも、主計局次長でも。
  178. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 昨日も主税局長から御答弁がありましたが、申し上げましたことでございますが、税収が経済見通しとの関係でまだ確定をいたしておりません。私どもいま歳出予算の最終の査定を急いでおりますが、この歳出予算の最終の規模と歳入の規模と両方から決まってくることでございますので、現段階国債発行額が幾らになるか、また公共事業費その他投資的経費に関連した四条債がそのうち幾らかということを明確な数字をもってお答えをする段階にないのでございます。御了承いただきたいと思います。
  179. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 だけど、もう大体それは、明確な何千何百万までは出ないかもしれないが、大体の見当はつくんでしょう。たとえば七兆円を上回るとか、七兆円まではいきませんとかいう程度のことは大体見当はおつきになると思う。それは何も言ったから、あなたの言質とってどうこうというんじゃないから、大体の見通しをおっしゃってごらんなさい。
  180. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 繰り返しでございますが、いまのところ税収の見込みが決まりませんと、私どももいままさに寺田先生のおっしゃいましたその部分がそもそも明確にいたしかねておるわけでございます。
  181. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 税収の見通しというのは、主計局次長、大体見当ついておるんでしょう、あなた。だから、いろいろなことでいま施策を考えたり苦心したりしているんで、そうそのあなた方が試算、いままで試算をしてきたものが動くものじゃないでしょう。だから、あなた方がいままで大体この程度というふうにして歳入の予定を組んでこられた、それを基準にしてよろしい。それが動く、多少動いたってそれはたかだか千億か二千億の動きでしょう。それまで動かぬかもしれない。だからどうですか、大臣、そんな余り秘密主義をとらずに、もう新聞辞令で出ているんだから、そこまでお隠しにならぬでいいでしょう。
  182. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 公債発行予定額に対する御質問でございますが、まだ相当の不確定要素がございまして正確にお答えできる段階じゃございませんことは、いま事務当局から申し上げたとおりでございます。けれども、ことし、五十年度における公債発行額を相当上回る発行額になりそうでございます。七兆円を切ると、しかも七兆円を切り込むということもなかなか至難なわざと考えております。
  183. 大塚喬

    大塚喬君 どうもこの審議に関して大臣以下各局長の態度が、率直に言わしてもらえば、まじめじゃないという感じをいたします。新聞などには、どこからこういう数字が出ておるのか、来年度はともかく国債、赤字国債を含めて七兆二千億と、二九・九%と、そういう具体的な数字が出ておって、そのうち赤字国債は三兆七千億だというようなことがもうしばしば報道されて、知らない、つんぼさじきに置かれているのはこの大蔵委員会国民の人は、ああ七兆二千億円も国債出るのか、赤字国債が今度は三兆七千億かと、こういうことを知っているのに、この一番肝心な大蔵委員会審議に関係当局の責任者がそういう無責任な答弁をされたのでは審議にならないと思うのです。で、いま寺田委員がおっしゃるように、最後に行ってみて若干の変更があったと、これはまだ決まらない、発表されない予算ですから当然そういうことになるだろうと思うんですが、そういうことまで一切口をぬぐって、知りません、存じませんというようなことでは大変私は遺憾だと思います。ひとつそこらのところを明確に誠意を尽くしたやっぱり答弁をいただけますようにお願いいたします。
  184. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 少し新聞にちらほら見えておりまする予算上の計数でございますが、これが私どもの方で発表した、あるいは私どもの方で漏らしたというものでございますならば、大塚委員仰せになったようなおしかりは受けなけりゃならぬと思うんでございますが、私ども正直に申しまして、たくさんの記者諸君が大蔵省にも詰めておられるわけでございますけれども、大変お親しく願っておりますけれども、しかし、決して計数に及んだ覚えはないわけです。で、新聞社の方でいろいろ観測的に記事をつくられておるようでございますが、新聞の編集に対して私ども介入する立場でないわけでございますので、その点はどなたが大蔵省をおあずかりになられても同じであろうと思うんでございます。そういう立場であるということは御了承いただきたいと思います。  それから、第二の点でございますが、国会に対して非常に不まじめであるとか、国会に対して資料の提出あるいは事実の御報告等が十分でないということでございますのに、外に対して政府がそうでないというんでございますならば、これまたおしかりを受けなけりゃならぬと思うんでございますけれども、国会に対して、私ども国会の御審議というものに対していいかげんな数字をもって応対しちゃならぬと考えてとりますので、ところが政府というのは、御承知のように、御案内のようにまあ大変膨大な組織があるわけでございますし、政府の意思決定にはいろんな手順を経なければならぬ筋合いでございますが、したがって、政府の意思、意見を言えという場合におきましては、これは最終的に閣議で決まりました場合、責任を持った数字しか申し上げられないわけでございます。したがって、申し上げられる場合は、いろいろな前提で申し上げにゃならぬ場合が多いことも御案内のとおりでございまして、国会に対してはいやしくも正確でない数字、また自信の持てない数字、責任の持てない数字は申し上げちゃならぬし、それは国会に対して責任を持つ政府の態度じゃないわけでございますので、その点はどの機関に対してよりは国会に対してもう最高の私ども注意を払っているつもりなんでございます。国会に対して非常に不まじめであるなんということは毛頭ございませんことを御了承いただきたいと思うんでございます。予算の数字でございまして、大体のしかし見当というものはできるだけ申し上げるようにこれからも努めてまいりたいと思いますけれども、私どもの立場というものについてはそれなりの御理解を賜っておきたいと思います。
  185. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 まあ大臣が、来年度の公債発行額が七兆円を切ることは至難のように思うということをおっしゃった。それはいまの時点では、大臣としてはかなり明らかにし得る程度のものを明らかにしたというふうに私は了解するわけですから、それはそれでよろしいです。  次は、今度国債消化の見通しで日銀副総裁お尋ねをしますが、これはまあ金融市場が余剰ぎみであるとか、政府資金支払い超過の状態にあるとか、いろいろまあ新聞報道があります。どういうふうにいまの金融情勢を見ていらっしゃるのか。それから十二月に日銀が考えておられる金融調節の具体的な方法ですね、買いオペとか手形の買い付けとか、そういうものを含めて詳細に御説明いただきたいと思いますが。
  186. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 大変膨大な公債発行されることになりまして、金融市場に対する影響が、特にこれを消化いたします金融機関に対する影響があることは事実でございます。ただ、いまの金融情勢全般について申しますと、本年度かなりの額の政府資金が前倒しに支払われる。国債発行は、そういうふうに支払われます政府資金を調達するために発行されるわけでございますけれども、その政府資金は、前倒しということを申しましたけれども、あるいは大蔵省証券によって調達まずしまして支払われるというものもございます。そういうものが回りに回りまして、金融機関の預金になる、そういうものを対象に国債発行されていくわけでございます。そういうことから、資金の大体の見当をつけますると、昨年度は年度間を通じまして資金が不足でございました。六千数百億であったと思いますが、不足でございました。本年度は、そういうふうな、いま申し上げましたような大きな政府支払いがございまするので、全体の資金は先ほどもちょっと申し上げましたけれども、不足には少なくともならない。とんとんか若干余るかもしれないという状態であろうかというふうに思います。一方資金需要の方でございまするが、経済活動は御承知のように現在余り活発でございません。そういう意味で、こういう不況対策と申しまするか、景気刺激対策がとられているわけでございまするが、企業資金需要はいまのところそれほど大きく強いものではございません。企業経済活動が前向きの資金需要ではなしに、後ろ向きの資金需要と申しまするか、滞貨資金であるとか、そういうものの資金需要というものがあることは事実でございまするけれども、積極的に経済が拡大していくのに必要な資金需要、新たな増産資金であるとか、あるいは人件費であるとか、そういうものの資金需要はそれほどまだ大きくないわけでございます。そういう意味から申しまして、いまの金融情勢全体、これは決して緩んではおりませんけれども、非常に逼迫しておるという状態では必ずしもないわけでございます。それで、いま申し上げましたように、資金の循環から申しますると、前倒しに、しかも支払い先行で政府資金が支払われてまいりまするので、その資金が還流いたしてまいりまするのに対応して国債発行されるという順序になりまするから、本年度につきましては、いまの国債の消化がそれほど困難であるというふうには思っておりません。ただ、先ほども申し上げましたように、資金が支払われまするのと、それからそれが集まって還流してまいりまする金融機関は、地域により、あるいは金融機関の種別によって必ずしも同じところへ返ってくるわけではございませんので、そこにそごがあることは事実でございます。自然にそういう事態になり得ると思いますが、そういう問題につきましては、あるいは一時的の金融的な困難であるということでございますれば、私どもの金融政策としてそういうそごをならしていくというのは金融政策の目的でございまするので、そういう調節は十分に念を入れてやってまいりたいというふうに考えております。  それから、十二月の金融情勢につきまして、どういうことになっておるか、どういう措置をとったかというお話がございました。季節的に十二月は日本では大量の銀行券が出る月でございます。そういう銀行券が預金の支払いとか、あるいは企業支払いというような形で出ていくわけでございまするが、そういう銀行券が発行されまするのを、何らか金融をしなければいけないわけでございます。日本銀行バランスシートから申しますると、負債の面に銀行券が出ておりまするから、資産の面で何か対応するものがございませんと、その銀行券の増発を賄えないわけでございます。そういう意味におきまして、日本銀行が資産の面でというのは、あるいは貸し出しをするとか、あるいはオペレーションをするとかいうようなことが主なものでございます。ことしの十二月の資金不足は、国債発行額が、実はいま御審議願っておりまする特例法による国債発行額が決まっておりませんものでございまするから、全体の資金不足が幾らになるかということは、その国債発行額発行いたしますればそれだけ政府資金が引き揚げになりまするから、不足がそれだけ多くなるわけでございます、一般金融市場の。それでその国債発行額が幾らになるかわかりませんので、それを除きました残りの不足額だけでも、一兆六千億ぐらいの不足になるはずでございます。昨年は十二月中の不足が、これは国債発行、もちろん発行されまして、七百億でございましたが、発行されましたが、それを合わせまして不足額が約一兆一千億でございました。したがいまして、本年度この十二月は国債発行考えませんでも、昨年の不足より大きいという状態になるわけでございます。これに、国債発行額の不足が加わりまするので、まあどのくらいになりまするか、かなり、二兆か、わかりませんが、そういうふうな不足になると思います。これに対処いたしまして、私どもがまずすでにとりました処置は、債券の買いオペレーションをいたしました。これは十二月の初めでございまするが、額面六千億の債券の買いオペレーションをいたしました。これは大部分国債でございます。政保債はほんのわずかしかございません。そういう資金の供給をいたしましたのがまず第一でございます。  それからもう一つ、これは直接の日本銀行資金供給ではございませんけれども、十一月の十九日から準備預金の率を引き下げたわけでございます。これは十一月の十六日以降実施になりますわけでございまするが、その分に相当する資金日本銀行の準備預金に積み上がっておりましたのが、それだけ積む必要がなくなりまするから、市中銀行に返されるわけでございます。その分が約五千二百億くらいでございますか、ございます。それで、残りは日本銀行の貸し出しか、あるいは短期の手形の買いオペレーション、こういうもので賄っていくわけでございます。これは十二月から一月にかけますとまたこれ資金が逆になりまするものですから、全部を債券の買いオペレーション、買い切りでいたしまするよりも、短期の金融でつなぐということの方が適当な分もございまするので、その辺は市中の金融市場の状況を見まして、あるいは貸し出しでやるか、あるいは手形の買いオペレーションでやるか、そのときどきの日本銀行の営業局の判断でしております。大体そういうことで十二月の金融は賄いたいというふうに考えております。
  187. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 先ほど個人消化の問題で、大臣や日銀副総裁にいろいろお尋ねしましたね。私は、大臣がお買いになる、日銀の総裁がお買いになる、そういうことの宣伝効果ということもかなりあると思うのですが、よく言われる国債を郵便局の窓口で売ったらどうかというような議論がありますね。都銀の窓口で売るという点は、何か預金を奪うのでいやだというような動きがあると聞いたのですが、そういう郵便局の窓口で売るということもやっぱり貯金を奪うということになるかもしれませんけれどもね。しかし、最もダイレクトに個人消化を促進するという点には役立つわけですが、そういう点の考慮はまだなされてないでしょうかね、どうでしょう。
  188. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 国債発行いたしますときに、その消化形態といたしまして、たとえば引き受けの形でいくとか、あるいは売り出し発行の形でいくとか、いろいろな形がございます。たとえば、かつての戦時中の国債の一部は郵便局で売り出し発行をいたしております。あるいは外国におきまして貯蓄国債は郵便局とか学校であるとか、そういうところで売り出すという形もとられております。このいろいろな国債発行形態を考えますと、売り出し発行の場合には、確かに広く国民各層の方々がそれを買いやすくなる、その意味で非常な便宜がございます。他方どれだけ売れるのかわからない、そしてまたお買いになる方が、かりに比較的資産に恵まれてない方であるとすれば、それをまたすぐ買い戻してほしいというような御要望が出るかもしれない。そういったことで、各種の国債の売り出しないし発行形態の中で何が適当かというのが一つの問題でございます。  そこで四十年に国債発行されるようになりましたときに、その間の事情につき、金融制度調査会にもいろいろ御相談いたしましてとられております形態が現在のような形態でございまして、すなわち一応全体につきお引き受けいただく、そしてそのうち証券会社の分につきましては、これは引き受けではございますが、さらにそれを第三者に、募集と申しますか、第三者に売る、そしてもし売れ残ったらばこれは証券会社が引き受けるという形にいたしております。これが現在のような国債発行いたしまして、その発行者である国の立場から見て、一番安定的に原資を確保することができる方法だということで、金融制度調査会もその方法がよろしかろうということで本日に至っております。ところで最近のようにだんだん国債がふえる、そしてまた広く国民各層にこういうものを持っていただくということになれば、確かに寺田先生御指摘のように、あるいは銀行で売り出すとか、あるいは郵便局でも売るとか、まあいろいろなことが考えられるわけでございます。その場合にひとつ郵便局につきましては、先日もこの委員会で御説明したかと存じますが、国家の信用を背景として個人の金融資産を預かる形として、日本には郵便貯金の制度が定着いたしております。しかもその中で、定額貯金すなわち定期的なものであり、かつ預託期間が長ければ金利が上がっていくという種類の貯金がございまして、これはある種の外国の貯蓄債券と非常に似ている形でございます。その点で郵便局へ客として来られる国民の方が、どういう形で国債をお持ちいただくかということになりますと、これは現在の制度では郵便貯金をしていただくという方がよろしいのではないかというふうに考えております。また銀行でということになりますと、これは御案内のことかと存じますが、日本で銀行の業務と証券の業務と、その間にどこで線を引くかという議論が長い間行われておりまして、たとえば欧州でございますと、銀行も証券業を営むことができる。しかし、これは弊害があるからというので、アメリカでは銀行業務と証券業務を切り離しております。そこで、日本が戦後証券業に関するいろいろな法体系をつくりますときに、この点も議論になりまして、現在の法律ではアメリカ式に証券業と金融業とはきっぱりとその境目をつけておくということになっています。ただし国債につきましては、これを法律の上ではこの種の商品といいますか、国債は信用が非常に高いものであるから、証券会社が扱っても銀行が扱ってもいいだろうということで、法律的にはいよいよの場合には、どちらもやれるようになっておりますが、現実の問題として過去における数々の経緯を踏まえまして、現在は銀行は国債を扱わないということで、証券会社だけがこれを扱うようにして今日に至っております。そこでそれは制度としてそうだけれども、いまのように大きくなるんであれば、もう一回見直してもいいんではないかという御意見があろうかと思います。この点は現在の金融制度の根幹にもちょっと影響してまいりますので、どうしてもというときには考えなければいけないかもしれませんが、現在の段階ではそこまで考えなくても、考えられる方法すなわち証券会社経由の方法でもっと個人消化を伸ばしていく努力をすべきであろう、このように私ども考えております。
  189. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 手数料の問題は、更改する、改めるという点は問題になっていませんか。簡単でよろしい。
  190. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 結論を先に申し上げますと、現在のところ変える考えは持っておりません。と申しますのは、これも百円につき五十五銭という手数料が決まっておりますが、そのうちの五十銭はみんなが平等に配分する。そして五銭分は特別手数料としてシ団の中で相談して特に御苦労なさった向きにお配りするという体制をとっておりますので、特に改める必要はいまのところないと考えております。
  191. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最後に、日銀副総裁にちょっとお尋ねしますが、日銀総裁が予算委員会で御答弁になったときに、インフレとの関係を非常に質問されたわけですね。そのときに、今年度に関する限りはインフレの心配はございませんという、今年度に関する限りはという非常に強調しているわけですよ。ところが来年度も、いま大臣が御答弁になったように七兆円を切ることは至難のわざというような状態になって、まず大臣が言われるんだから、七兆円以上の国債発行されるということはほぼ確実だと見通されるわけですね。それでどうだろうかな、これやっぱりインフレの心配があるんじゃないだろうか。それからマネーサプライの推移が——M2でよろしい、M2が、日銀総裁は予算委員会で盛んに対前年度比何%という比を非常に強調されたわけですね。七兆円出すとしてマネーサプライが一体どの程度の増加を来すんだろうか。そういう点、二つの的を置いてちょっと述べていただきたいと思います。
  192. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 森永総裁が予算委員会でお述べになったことを私直接聞いておりませんけれども、恐らくは、明年度の国債発行額がまだわかりませんのに、いろいろ消化の状況等について日本銀行として申し上げることは適当でないというふうに判断されたのだと思います。そのインフレになるかならないかという問題は、一つには、発行枠がそのときの経済規模その他から見て妥当であるかどうかということが一つあると思いますが、その額につきましては、先ほど来お話がありまするように、まだ来年度の見当がついておりません。それがインフレにどういうふうにつながっていくかという場合に、一つは、それだけ発行されまして、政府の支出が行われまして、それだけ物資に対する需要がふえるわけでございますが、需要インフレになるかどうかという問題が一つあろうかと思います。これはいまのようなGNPの需給ギャップが大きいときに、果たしてすぐそういうふうな需要インフレになるかどうかという問題につきましては、いろいろ議論のあるところだと思いますが、まず需給ギャップがあるという前提から考えますると、需要増によるインフレというのは、時期的に非常にかたまったりすれば別でございまするけれども、そういう点は余り問題はないのじゃないかというふうに思いますが、もう一つ資金がマネーサプライに回ってまいりまする場合に、マネーサプライがそれだけふえてまいるわけでございますが、そのときにマネーサプライはどの程度のマネーサプライがあればいいのかということは問題がございます。いろいろまだ数字的には、計数的になかなかとらえにくい問題でございます。一つ言えることは、マネーサプライが急激にふえますると、それが何カ月か、あるいは一年たちますか、一定のタイムラグを置いて物価にもいろいろ影響を及ぼしてくる可能性があるということだけは言えるんだろうと思います。それで明年になりまして、このマネーサプライをふやします要因は、政府資金だけではなしに、政府支払いだけではなしに、市中金融機関の貸し出し、あるいは対外取引、輸出が主でございまするが、そういうものによっても非常に大きく影響されてくるわけでございます。そういう意味から、マネーサプライがどういうルートから、政府支払いだけでございません、民間金融機関の貸し出し、この信用創造で新しい貸し出しが行われますると、それによる影響というのはかなり出てくるわけでございます。マネーサプライ、いわゆるMと申しまするか、銀行券の残高と市中金融機関の定期預金を含めた分、これが余り急激にふえないようにするということが必要なことであろうというふうに思います。先ほど申し上げましたように、適正なマネーサプライの増加率というものが幾らかということにつきましてはいろいろまだ議論がございます。また仮に適正だということについてある程度意見の集約ができたといたしましても、そういうマネーサプライの状況のもとで一体果たして経済成長なり物価なりが安定的な状況を示すかどうかということもまだこれは証明されてはおりません。ただ一つ言えることは、先ほども申しましたように、私どもとしましてはマネーサプライが余り急激にふえないようにしなきゃいけない。それは先ほど申しましたような政府支払い、それから民間金融機関の貸し出しと、あるいはそのときに行われておりまする対外的な取引、外国との取引、そういうものの影響がどういうふうに出ておるかということを見ながら考えていくべきことであろうと、金融政策はそういう中でマネーサプライが余りふえないように考えていくべきではないかというふうに考えております。
  193. 辻一彦

    ○辻一彦君 国債問題に関連して副総裁大臣に一点伺いたいと思います。  それは国債発行される。そこへ金融資本のいろいろな圧迫があると思うんですが、その中で地方債が出る、事業債が出る、中小企業の金融というものが一番最後に圧迫を受けるんじゃないか、逼迫してくるんじゃないか、こういう懸念が非常にあります。そこで、十一月五日の予算委員会でもその点に若干触れて御質問したんですが、そのときにそういう状況の中で最後に中小企業が金を借りる。ところがそれに対して歩積み両建てが行われて、実効金利が下がるといいますか、非常に有効に使われていかないという、こういう問題がある。そこで銀行局長が厳重な監視をするということを答弁しておりました。しかし、つい先日ある新聞の報ずるところでは、かなり大規模な企業への拘束預金の実態を調べた結果では、ほとんどの企業に対して拘束預金の実態がある。特に大企業の方は、これは私は預金拘束を受けても何とかしのげる場合もあろうと思いますが、中小企業の場合は死活の問題になると思います。その点で現在の各銀行における預金拘束の実態をどういうふうに考えておられるか。それに対して、これは日銀ではない、都市銀行の問題でありますが、そういう状況をどうお考えになるか。この点をひとつお伺いをいたしたいと思います。  それから、大蔵大臣には、予算委員会のあの大臣並びに局長答弁に基づいて歩積み両建てを監視をする、抑えるためどういう措置が具体的にとられておるか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  194. 戸田嘉徳

    政府委員(戸田嘉徳君) いまの御質問でございますけれども、まず最初に、せんだって新聞に大きく発表されました拘束預金、私どもも非常にふだん知悉しております数字とかなりかけ離れておりますので、早速に、あそこに名前の出ておりました企業につきまして実は調査をいたしてみましたところ、そのすべてのものが私どもとしては銀行から言われて拘束預金をしておるんだ、ああいう預金をしているんじゃない、これは自分らとしては、通常の取引高の何割というのを預金として持っておくというのが企業活動の通常であります。したがいまして、それを定期預金にするという場合、あるいはある程度は当座性の預金にしておく、そういうことでやっておりますので決して銀行から言われたわけではございません。こういうことを答えております。またある企業は、まあこれは数は限定されておりましたが、むしろ自分らがこの定期性の預金をそういう場合にしようと思うと、最近は大蔵省がうるさいから定期預金はやめてくれと。こういうようなことで、かえってちょっとそういうところは不便を感じたことすらある。かようなことを言っております。したがいまして、あの新聞がどういうような手だてで調査いたしたのかよくわかりませんが、私どもとしては常々国会の方に御報告申し上げておりますように、拘束預金というのは逐次減少いたしておると確信いたしております。ただこの拘束預金というのはなかなかいわゆる通知をいたした拘束というのははっきりいたしておりますが、通常問題になりますのは、拘束でないはずなのに、非常に出しにくいというような、そういう灰色がかったといいますか、そういう部門だろうと思います。そういう点につきましては、私どもとして絶えずあらゆる機会を通じまして、特に中小企業等につきましては、いまおっしゃいましたように非常に自分の預金が拘束され、正式の拘束でないにもかかわらず使いがたい、これは非常に不都合であるということで強く指導いたしております。実はその手段の一つといたしまして、新年——来月から生かすことになるかと思いますが、とりあえず全銀においてはポスターを店頭に掲げさせまして、拘束預金というのはおたくの方にちゃんと通知をいたします——拘束の通知ですね、その通知か行ってない預金というのは、これは自由にお使いできる貯金でございます。したがって、そういうような点で何か御疑問があったらいつでもこういうところに御相談くださいということで、店内の苦情係といいますか、そういうようなものを設けまして、あるいはその銀行だけでありますとなかなか行きづらい、ふだん顔を見て行きづらいという方もあると思いますので、そういうのは銀行協会の方にも行ける、またそれでも解決がしないような場合には、これは財務局等にもおいで願うというような、そういう一つのPRといいますか、そういう形で御本人からの苦情を直接に解消していくという形の施策もひとつ取り入れてまいるつもりでおります。文言は多少違うかもしれませんが、そういう趣旨のポスターを張らすということでございます。なお従前のようないろんな形の指導でございますね、これも引き続きあらゆる機会をとらえてやってまいりたいと思います。
  195. 辻一彦

    ○辻一彦君 もう一問伺いますが、まあ拘束預金を、拘束を受けていますかと聞いて、はい受けていますという企業はなかなか銀行との関係において私はそうないと思うのですよ。   〔委員長退席、理事山崎五郎君着席〕 それはよほど力があって、金融のことを心配しなくてもいいとかいうなら別ですが、普通、銀行と企業の関係から言えば、なかなか言いたいことがあっても言えないという場合が多いと思います。だからそういう形で大蔵省が問い合わされて、それでもって拘束預金というものがないというように実態的に判断していいのかどうか、私ちょっと疑問に思いますが、この点いかがですか。
  196. 戸田嘉徳

    政府委員(戸田嘉徳君) いま申された御疑義といいますか、それはもっともな点があると思います。したがいまして、実は調査をいたしたのは非常にあそこに書かれておりました大きな企業、それらは口々に私どもは銀行などはこわくございませんと、決して銀行が言ったからとてするものでもございませんし、私どもの都合でやっております。これはいわゆる超一流の企業でございますので、その点は私ども信頼してよろしいかと思っております。ただ全体的に見まして、特に中小企業等につきましては、これは先生のおっしゃるような無言の、何といいますか遠慮というようなものもあるかと思います。そういう点はいろんな手段を尽くして、いま申したポスターもその一つでございますけれども、いろんな形でやはりこれは気を長く、少しづつ改善を着実に粘り強くやっていくしかないんじゃないか。おっしゃいますように、たとえばこれは絶対に御本人の承諾を得たものであります、そういう文書があればいいと言えばそういう文書をまた書かすかもしれない、こういうお疑いを受けると思いますね。ですから、それはもう粘り強くいろんな角度から少しずつ着実に改善をしていく。いままでこの国会に御報告いたしております数字も少しずつではありますが、着実に下がってきております。   〔理事山崎五郎君退席、委員長着席〕 そういう点で私どもはやはりこれについては率直に言って特効薬はない、したがって、いろんな角度でいま申したようにそういう努力を私どももし、金融機関も反省を重ねて少しずつ改善していっていただく、どうもこの正攻法しかないんじゃないか、かように考えてなお今後も努力を続けてまいりたい、かように思っております。
  197. 辻一彦

    ○辻一彦君 最後に。銀行はこわくない企業を調べてみても、この問題もやっぱり、本質といいますか、問題点はつかめないと思うんですよ。銀行がこわいという、そういう企業がどう拘束預金等の実態があるか、私は調べられるならこの実態をもっとよくうかんでほしいと思います。関連ですから、時間はもうきておりますから、その点についてはこれ以上申しませんが、機会をまた改めて伺いたいと思います。  最後に、副総裁とそれから大臣の方から、これはいろいろ努力をしてもなかなか後を絶たないと言いますか、むずかしい問題ですが、歩積み両建てに対する対策の決意の一端を一言伺って終わります。
  198. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 日本銀行は公定歩合を下げてまいりましたし、それに伴って市中銀行の貸し出し金利が下がる筋合いでございまするが、拘束預金というようなものがありますれば、実効金利は一向に下がらないというわけでございまするので、私どもは公定歩合を下げ、標準金利——市中の貸し出し金利を下げてまいりまする過程におきましても、実効金利をあくまでも下げるということが目的だということを金融機関に対して強く指導しているつもりでおります。現に、本日も午前中、地方銀行との毎朝の定例の懇談会がございまして、私どもの方から改めてその点については強く要望しておきました。そういう意味で、こういう拘束預金というものがあることによる、拘束預金そのものの是非はもちろんでございますが、善悪はもちろんでございまするが、実効金利が下がらないということは、金利を引き下げてまいりました金融政策の目的を達成することはできないわけでございまするから、これは強くそういう指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  199. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いわゆる拘束性預金の問題につきましては、大蔵省として鋭意努力をいたしておりますが、近年、漸次着実な改善をたどる方向にあると思います。また金融機関別に見ましても、そういう傾向が顕著に見えます。しかし、いま事務の方からも申し上げましたように、粘り強くこの問題に対処して実効が上がるようにしてまいらなければならぬと思います。で、各銀行に比較的地位の高い、あるいは常務級、専務級の責任者を指定いたしまして、この問題の改善の推進に当たっていただいておるわけでございますけれども、今後も一層精力的に努力をしてまいるつもりであります。
  200. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 一つだけ最後にお尋ねしますが、いま国債の増発、地方債の増発が非常に民間資金を圧迫しまして、それで十二月は事業債が相当売れ残るのじゃないかというような報道がありますね、そういうおそれはないんですか、もしそれがあれば、またそれが経済回復を一層おくらすことになるんじゃないだろうか、その点はどうなんですか、最後にその点だけ。
  201. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 御承知のように事業債は民間の資金調達の大きなパイプでございますが、国債の大量発行下において、そういう民間資金調達のパイプが狭まることがないようにということは、私ども年度初めからそういう指導をいたしてきておりまして、この五十年度は昨年度に比べまして大体月ベースで倍以上の事業債が出ております。それで、十一月になりまして、いまの御質問のことでございますが、たまたまこれは売り出しの時期が少しずれました、金利の改定等がおくれましたために。したがいまして、最初募集の段階では時間的な出おくれがあったのでありますが、締め切りのときに若干の売れ残りが出たと。しかし、それは月末までの間に全部消化されておるということでございまして、国債の大量発行下において事業債がいわゆるクラウディングアウトになっておるというような事実はございません。
  202. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 初めに大蔵大臣と日銀副総裁にお伺いしたいのは、公定歩合の引き下げ、それから預金準備率の引き下げが行われましたが、これに対して現在どれだけの効果が出ておるのか、その点まずお伺いします。
  203. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 御承知のように公定歩合は四月から四回にわたって累計二・五%引き下げました。それに伴いまして市中の貸し出し金利、市中銀行の標準金利もそれだけ下がったわけでございます。それから金融政策措置の第二といたしまして、預金準備率の引き下げを十一月の十六日から実施しております。これは必ずしも市中銀行の貸し出し金利の低下ということをねらったものではございませんけれども、それに間接的には関連する問題でございましょう。これによりまして、企業の金利負担の軽減があったことは当然であろうと思いますが、それがどの程度景気を盛り上げておるかということの数字的な、計数的な効果というものはちょっと計算しにくいわけでございまするが、いずれにいたしましても、貸し出し金利の面で累計二・五%の引き下げがあったということは、企業の収益には非常に大きな影響を持ったものと考えております。
  204. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま計数的にその効果が出ないと言われておりますが、現実として景気についてはマクロ的にはある程度よくなりつつあると言われておりますが、御承知のように部門においてはかなり相当深刻であります。しかも来年度の予算等も、ここでもずっと議論されてまいりましたが、果たして景気回復までいくのかどうか、非常に疑問視をされておるわけです。予想以上に冷えておることが現実であります。したがって、第五次の引き下げということもかなり議論されてきておるわけです。これについては日銀として、また大蔵省としてはどう考えておられるのか、また第四次の引き下げがタイミングとしては遅かったのではないか、そういう議論がありますので、そういう点から考えて第五次の引き下げということが検討されておるのかどうか、その点はいかがですか。
  205. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 第五次の公定歩合の引き下げを考えておるかどうかという御質問でございましたが、私どものいまの立場、考え方といたしましては、第四次の対策、それに伴う不況対策と、それから公定歩合の引き下げを含めました金融面からの措置、この効果がどういうふうに出てくるかということを見きわめるのが必要な時期であろうというふうに考えておりまして、現在のところこれに続きまする第五次の公定歩合の引き下げということは考えておりません。  また、いままでの施策がおくれたではないか、したがって第五次の対策が必要ではないかというお話でございまするが、私どもそのときどきの状況に応じまして最善と、最適と思われる措置をとってきておるつもりでございます。現在のところはこれに続く追加的な措置考えておりません。
  206. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 景気回復の足取りが必ずしも順調ではないじゃないかという御指摘でございますが、確かに生産、出荷の状況を見ておりますと、この春以来増加の足取りを保っておりますが、しかし、輸出でございますとか、最終需要でございますとか、そういった点につきましては低迷状態が続いております。とりわけ雇用状態は必ずしもよくない状況でございますことは御案内のとおりであります。したがって、こう見る限りにおきまして、足取りそれ自体は、矢追さん御指摘のように、必ずしも順調にまいっておるとは言えないと思うのであります。しかし、今日まで講じました経済施策が支えとなりまして、経済の異常な落ち込みを招来することなぐ、ともかく若干上向いた傾向をたどるに至っておりますことは間違いないと思うのであります。  第四次景気対策がまだ奏効——効果を奏していないじゃないかという御指摘でございますけれども、あれは九月十七日に決められたものでございますけれども、それに伴う一連の、たとえば金利の引き下げは約一カ月かかったわけでございますし、十一月の上旬になりまして初めて予算が成立するというようなことになりまして、いま副総裁が抑せになりましたとおり、この効果をいま判定できるような段階ではないと思うのでありまして、また十二月県会において地方における公共事業についての予算が決まるというような手順になってきておりまするので、今日までこれの効果が出ていないというのは、私はそういう準備の段階であるからだと思うのであります。一応そういう用意が皆できてまいりましたので、第四・四半期にはそれなりの成果、効果を生むものと判断いたしておるわけでございます。  したがって、結論として、いま第五次対策を考えるつもりは政府にございません。近く予算の編成が行われますので、この予算編成を景気回復にしむけてまいる意味におきまして最善の努力をいたしたいと考えておる以外、第五次景気対策というようなものをいま構想いたしておるわけではございません。
  207. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 先ほども十二月の資金の問題についていろいろ質問がありましたが、先ほど六千億円ですか、買いオペレーションをやると言われましたですね、これで十分に足りるのかどうか、一説によりますと、一兆円ぐらい買ってもらわないとだめだというふうな、あるんですけれども国債をですね、その点はいかがですか、六千億で十分でございますか。
  208. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 先ほども申し上げましたように、不足資金は非常に大量に上りますが、そのうち金融調節、それだけ、それに見合うものはどうしても日本銀行の信用をそこへつけ加えませんと、この銀行券の増発が賄えないわけでございまするので、何らかの形で日本銀行の信用の追加をいたします。ただ、そのいたします形は、あるいは債券の買いオペレーションであるとか、あるいは手形の買いオペレーションであるとか、貸し出しであるとかということでいたしまするが、債券の買いオペレーションにつきましては、幾らやらなければ不足だというようなものでございません。大体その年度間の根になる資金、銀行券の増発というものに対しては恒常的に日本銀行の信用がふえてまいらなければなりませんので、その点も勘案して債券の買いオペレーションを実行するわけでございます。そういう点から日本銀行の信用供与の一つの手段としてやっておりまするので、それに不足する分はほかの信用供与手段、先ほど申し上げました手形の買いオペレーションもございますし、貸し出し等、そういうものでいたしまするので、債券の買いオペレーションの金額が六千億では足りないでしょうということは、必ずしもそういうふうな声を私どもは聞いておらないわけでございます。現に金融機関側からは銀行——相互、信金も含めてでございますけれども、今度の買いオペレーションについては大体予想したとおりだというような感じの反応を受けておるわけでございます。
  209. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に大蔵省にお伺いをいたしますが、今年度補正後では国債発行額の中で運用部の方では八千四百億円、そして市中消化が四兆六千四百億円となりまして、七九%からそのシェアが八五%に市中消化が上がった、こういうことになると思うのですが、まず数字はこれでよいのかどうか。それからこのシェアがこのようにふえることは妥当であるのかどうか、その辺はどうですか。
  210. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 今年度の国債が当初の発行予定額二兆円でありましたことは御案内のとおりでございまして、このときの市中消化の予定額が一兆五千八百億円でございました。それが追加発行三兆四千八百億、そのうち三兆六百億円が市中消化ということでございますので、合計いたしますと今年度発行額五兆四千八百億円で、うち市中消化が四兆六千四百億円、このように相なっております。そこで、これを比率で計算いたしますと、確かに御指摘のように市中消化、すなわち運用部以外で消化する分がふえてきております。このパーセントがどの程度がいいのかということはこれは一概に客観的な数字で、そして経済の諸情勢、それからまた運用部にそれぞれの時点において期待されております役割り、また運用部の状況、そういった各種の条件をもとに考えて決められなければならないものであろうかと思います。今年度の合計いたしました八千四百億円の運用部引き受けというのは大体国債発行総額の一五%程度になっておろうかと思いますが、これは四十年以来発行してまいりました国債の平均運用部引き受け率と申しますか、平均いたしたものと大体合っておりますけれども、この程度のことは現在のような経済情勢下にあっては恐らく最もモデレートな率ではあるまいか、このようなことを頭に置きながら、追加額の発行に当たりまして市中といろいろ御相談して、ただいま申し上げましたような計数に落ちついた次第でございます。
  211. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 日銀副総裁はどう思われますか、この市中消化が八五%という率が上がったことですね。来年度の問題もありますので、まずお伺いしておきます。
  212. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 市中の消化額が少なければ少ないほど金融機関の負担が少なくなりまするから、その点から言えば少ない方がいいわけでございまするが、一方運用部の資金状況ということも当然勘案していかなければならない問題でございまするので、この点につきましては、本年度についてはやむを得ない比率ではないかというふうに考えております。
  213. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまやむを得ない比率ということを言われましたが、次に、来年度予算の中で国債が七兆円とか言われておるわけです。そうしますと、仮に市中消化が七兆円の場合だと六兆二千億程度になると考えられます。そうしますと、月平均五千億円の市中消化になるわけですけれども、この辺の数字が出てきて一まあ来年のことはなかなかわかりませんけれども、日銀としては月平均五千億程度の市中消化というのは可能になるとお考えですか。この点はいかがですか。
  214. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 先ほどから申し上げておりまするように、来年度幾ら、どれくらい国債発行されまするか、ちょっと私どもがそれを前提に置いて考えます計数がわかりませんので、それからまた、来年度全体の予算規模がどういうことになるかということから、全体の金融市場の資金需給の見込みが出てくるわけでございます。そういう意味で、来年の四月から始まりまする年度の全体の資金需給の状況がどうなるかという点につきましては、私どもまだ実はそういう計算をしておらないわけでございます。五千億ということで消化はどうかというお話でございました。いま申し上げましたような一切の前提ということを別にいたしまして、五千億が消化できるかどうかというのは、そのときの金融機関の資金状況、あるいは民間の資金需要がどの程度の強さになっておるか、あるいは海外関係、これは貿易関係でございまするが、そういうものの資金需要がどういうふうになっておるかということをあわせませんと、なかなか判断いたしにくいものでございまするので、いま私がこの席で五千億は大丈夫だ、あるいは困難だということを申し上げるのはちょっと時期尚早だというふうに考えております。
  215. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) ただいまの日銀副総裁の御説明に一言付言さしていただきたいと思います。  それは、先ほどの御説明で私は、五十年度の年度間の計数を御説明いたしました。これは御案内のとおり、本年度の当初予算では国債発行額が相当少な目に見込まれておった——結果的に見ると少な目に見込まれておったのでございますが、これが後半に至って急に増加いたしたわけでございます。そこで、市中消化予定額、先ほども四兆六千四百億円と申し上げましたが、これを上半期と下半期に分けて見ますと、上半期の実績が一兆三千四百十八億円でございます。したがいまして、これを残を下期で全部さばくといたしますと三兆二千九百八十二億円、これがことしの下半期に予定されておる市中消化の金額でございます。このことから申しますると、現在の状況、これが相当厳しいような印象をお持ちの向きが多くて、これが来年になって国債がさらにふえればもっとひどくなるんではないかと御心配の向きもあろうかと思います。しかし、これを半年刻みでとってみますと、いまの数字が大体三兆三千億でございますから、まあ年度間に直せば、算術的に計算するのよしあしは別といたしまして、平年度的に見ますと約六兆六千億という市中消化に対応するような数字であるということでございますので、その点もお含みおきいただきたいと存じます。
  216. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ということは、五千億程度は可能だと、こういうことに、そういう見通しを立てておられるわけですか。
  217. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 議論の前提となります国債発行の額そのものが先刻来御議論のございましたようにまだ未定でございます。その意味で、どこまでどういうふうに市中消化をお願いしなければいけないかということが正確な計数をもってまだ当席でお話しできないのはもちろんのこと、市中のシ団とも詰めた話し合いができない状態でございます。しかしながら私が申し上げたいのは、ことしの五兆四千八百億がどの程度までふえればどうかという御判断をいただきます際に、本年は上半期と下半期がかくのごとく大きく数字が違っておりましたので、この下半期のベースへ至る、上がってくるプロセスにおける苦痛は大きかったけれども、来年はある程度の計数であれば本年の下半期のレベルと大差のないところでいくんではないか、そうすれば金融市場と国債発行ということの絡み合いの程度も大体いまと同じような推移をたどるのではないかという感じを持っておるということを率直に申し上げた次第でございます。
  218. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあかなり楽観的な見方だと思うんです。来年度予算どうなるか、まだここで言えないにしても、いろいろ大体の輪郭は出てきておるわけでして、やはり景気刺激ということはかなり考えられておりますし、そのための大型の公共事業等も出てくると、まあそういうふうなことになってきます。また、地方の財政等の問題を考えますと、非常にそういうふうな楽観ではいかないんじゃないかと、こう思うわけです。その点、来年度予算が、ことしはこういうふうにきたけれども、来年はもうちょっと私はことしの予算よりはもっと景気刺激型のものになると思うわけです。そうした場合、果たしてこれができるのかどうか、それが一点と、それから運用部での引き受けが来年度これも厳しい中でいろいろやらなくちゃならぬわけですけれども、どの辺まで可能性があるのか、いま一五%ということを大体平均言われましたけどね、一五%というのはやれるのかどうか、その点はいかがですか。
  219. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 御質問の第一点、すなわち国債が相当多量にわたってある程度の期間続くことになると、景気の面からも心配があるんではないかという点であったかと承知いたしますが、その点につきましては、景気に対してどういうふうに働くか、景気を浮揚させるように、刺激させるように働くか、またはこれを過熱させる程度までいくかどうかということは、ひとり金融的な側面からのみとらえることには私ども抵抗を感ずる次第でございます。すなわち、本年度の国債にいたしましても、これがあるいはインフレ的ではないかという御議論が相当あったわけでございますが、現在なお一部の方々からはさらに不況対策を強くしてはどうかという御意見が出るほど景気回復の足取りが遅い、すなわち、実物経済の方の側面からの追いつき方がまだ遅いわけでございます。この辺のことにつきましては来年度いっぱいを見まして、景気の成り行きがどうなるか、そしてまた生産なり雇用なり、そういったものにどういう影響があるかということを総合的に考えながら判断さるべきことではなかろうかと思います。  次に第二点の、来年度の国債発行に当たって運用部としてどれだけのものをどうするかという御質問でございます。この点につきましては私ども運用部といたしましても、最も大きな資金の使途ではございます財政投融資計画その他種々の要因につきまして現在まだ検討中でございます。したがいまして、私どもといたしましては、なるべく過去の経緯を尊重しながら運用部としてもこの国債の一端をお引き受けするのが適切である——たびたび申し上げておりますように、現在の日本のような金融制度では、国債を直接個人にお持ち願える部分が限度があるとすれば、その部分はやはり郵便貯金で集まったものにつきましても相当程度のものを運用部がお引き受けすることが適当であるという考え方を持っておりますので、そのようにしてこれから来年度の運用部がどのようになるか、または財政投融資計画がどのようになるか、この辺を考え合わせながら決めてまいりたいと思っております。
  220. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 はっきりしたお答えはいただけないのですが、傾向としてはその運用部の資金は苦しくなると、こう見てよろしいですか、来年度はさらに。
  221. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 運用部の資金は、御案内のとおり非常に受動的にお預かりする金が主でございます。大宗をなします郵便貯金ももちろんでございますが、あるいは厚生年金であるとか国民年金であるとか、そういったものも受動的にお預かりするお金でございます。したがいまして、この伸びというのは、この制度の動き方やその他の事情にも左右されますが、一方では郵便貯金はある程度の伸びは期待できようかと思いますが、たとえば、国民年金というようなものにつきましてはだんだん制度が成熟化してまいりますと、お預かりするものと、それからまた年金会計から出てまいりますものと、このバランスがだんだん近づいてまいります。ある意味では、ある時点にまいりますと、そこからの新たな預託金が期待できないような段階が近づいてこようかと思います。その意味で、財源的にも過去のような急成長が期待できなくなるようなことになりはすまいかということを私どもは懸念いたしながら見守っておるところでございます。また他方、この使途におきましても、国債が相当量大きく出てまいりますと、これをやはり運用部としてもお引き受けをいたさざるを得ない。またその他いろいろの要因がございまして、これらもいずれも急速に膨張しておる財政需要でございます。これに対して、需要の増加速度が速いだけに、私どもこれにどう対応するか非常に苦心のあるところでございますが、基本的には、これを使っておりますのはお預かりしておる金でございまして、金利をつけてお返ししなきゃいけないものであると、そういうたてまえから申しますれば、そこで財政投融資計画なり、運用部の運用としてやれることにはある意味での限界がございます。この辺をよくわきまえながら、五十一年度の最終的な詰めを現在急いでおる段階でございます。
  222. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間がありませんので、少し国債の議論から違う問題で恐縮ですが、日銀の副総裁がお見えですのでちょっとお伺いしたいのですが、最近の外貨の問題で、円安ドル高傾向が出てきております。で、現在の為替市場の動きというものをどのように見ておられるのか。またこういった円安ドル高傾向が続いてきた場合、日銀としてこれからの介入のあり方はどういう方向でいかれるのか。  さらに年が明けますとジャマイカでIMFがございますが、これに臨まれる態度、大蔵大臣にもこれはお答えいただきたいと思いますが、大蔵大臣が行かれるようになるか、予算編成の場合によっては日銀の総裁が行かれるというふうな話も漏れ承っておりますけれども、この辺を含めましてお答えをいただきたいと思います。
  223. 前川春雄

    参考人前川春雄君) さきの東京におきます為替市場の動きは、いま矢追先生からお話しのように円安傾向が続いておるわけでございます。これは必ずしも日本だけのことではございませんで、西欧市場におきましても最近はドルが強い状態が続いております。アメリカの経済回復というのが一つの原因であることは間違いございませんが、アメリカの国際収支もよくなっておりますが、それ以外に、資本市場の面で、金利がアメリカの方がちょっと高くなったり安くなったりすることによるドルに対する信認あるいは買い需要というものがふえるということがございます。日本におけるこの円安状況は、世界的なドル高というよりも、日本の国際収支の現状を反映しておるところがあろうかというふうに思います。先行きの輸出の見通しにつきましては、若干の先行指標では明るい面が出ておりまするが、現在進行中の国際収支はそれほどよい状態ではございません。そういうことを反映いたしまして円安の状況が続いておるわけでございます。  この市場の状況に対しまして介入をどういうふうにするのかということにつきましては、この介入の基本的な考え方は、円の相場の水準をこの辺まで持っていこうというあらかじめ考えられました目標値を想定してそれに対応して介入するというのではございませんで、介入は、むしろ、そういうふうな実勢には逆らわずに、その日その日の取引が余りそう大きく浮動しないようにそれをならすという意味で介入をしておるわけでございます。したがいまして、この円安の状況経済の実態面あるいは国際収支の実態面、そういうものを反映いたしまして、円安である場合には、強いてそれに抵抗して円高にするというようなことはしないでおるわけでございます。  為替相場を総体的に安定さしていこうじゃないかという話は、御承知のように——これは大蔵省からお話しいただく方がいいと思いますが、ランブイエの会議以来そういうことが先進国の間で議論されておるわけでございます。ただ、これも、一つ目標相場というものを頭に置いてそれに介入してそこへ近づけるというのではなしに、それぞれの介入はそれぞれの国の自主的な立場からの介入をいたします。介入の主たる目的は、大きな変動をならしていくということに目的があるわけでございます。ランブイエの会議でも、為替相場がもし不安定であるとするならば、それは相場制度にあるよりも、むしろ経済の実態が安定してないから、国の間の経済力あるいはインフレ率あるいは成長力、そういうものがバランスをされておれば、為替はその反映でございまするから、自然に安定していくのではないかという議論がまだ強く議論されておるわけでございます。したがいまして、そういう経済の実態面の安定ということ、あるいは調和ということを離れまして相場だけどこかでくぎづけにするという考え方は出てきておりません。そういう意味から、大きな相場の変動をならしていくと、そのためにお互いにもう少し協調して、インフォーメーション——情報も交換し合おうじゃないかというような話が進行中であるというふうに理解しております。  ジャマイカの問題は、そういうふうな為替の実態面の安定、相場の安定ということもあるかもしれませんが、それよりむしろ為替相場制度、IMF協定の改正の問題あるいは金の公定価格が廃止されまするので、それに伴う協定改正の問題、そういうことが起こりました以後中央銀行の金取り引きなりなんなりをどうするかという問題が主として会議の中心議題になるのではないかと想像しております。ただこれは、むしろ大蔵省の方からお答えいただくことが適当な問題ではないかというふうに考えております。
  224. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 為替市場の問題につきましてはいま副総裁からお話がございましたので重複を避けたいと思います。  ジャマイカにおける暫定委員会への展望でございますが、いまIMFにおきまして問題が幾つかございます。一つは、IMFの増資問題、第二はIMF手持ちの金の処分と、それから後進国援助問題、それを処分を通じての後進国援助の推進をする問題、それからIMFの協定改正問題等々ございますが、総じて申しますと、わが国が従来考えておりまするし、わが国が踏襲いたしておりまする政策と背馳する方向には行っていませんので、わが国の考えておる方向にすべての問題が進んでまいっておりますので問題はないと考えております。  協定の改正の問題にいたしましても、いま協定に認知されていない変動相場制を協定で認知しようということでございます。現在すでに生きて働いておる変動相場制というものを私生児の姿でおかずに協定に載せようということでございますので、そういうことで米仏間にもコンセンサスができたようでございますし、より安定した相場を維持してまいるためにそれぞれ通貨当局が適時適切に介入いたしまして、ひどいフラクチュエーションを起こさぬようにしようじゃないかということでございます。これは現に日本政府日本銀行がやっていることでございまして、われわれはいまやっておりまする政策を変えることでもございませんし、今日問題になっていることにつきましては日本政府として支障があるのではございませんので、世界の通貨、経済の安定のために日本政府といたしましてもこれがまとまって、より高い安定をもたらすような方向に応分の貢献をしなければならぬと考えております。
  225. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 日銀副総裁がおいでですからひとつ伺っていきたいのですが、現在の財政法第五条の、すべて公債発行については、日本銀行にこれを引き受けさしてはならない、日銀引き受けの禁止の条項がございます。これは言えば、いわゆる無制限に国債発行ができないということが一つの大きな原則としてこの条項があり、それが歯どめになっているんじゃないかというふうに考えられるんですけれども、その点ひとつまず伺いたいと思います。
  226. 前川春雄

    参考人前川春雄君) ただいま御質問がございましたように、国債発行の歯どめの一つとして日銀引き受けを禁ずる点と建設公債に限るという点とがあると思います。特に市中消化を原則とするという問題は、逆に申しますれば日銀引き受けはいけないわけでございますが、それは国債の無制限な、無制限と申しますか、野放図な発行に対する歯どめの一つ考えております。
  227. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そこで伺いたいのですけれども、しかしやはり、日銀としては確かに国債をじかに引き受けておりません。ですが、一年たった国債については、現実一年以上経過すればこれが買いオペレーションの対象になってくる。こういうことから考えますと、何か歯どめが私は緩んでいる感じがしてなりませんが、この国債を日銀が一年以上経過したものは引き受けてもよいという、これは何によって決められているのでしょうか。
  228. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 日本銀行はいま先ほども十二月の債券のオペレーションを六千億したと申し上げましたが、国債を大部分買い入れたわけでございます。そのときにはこの国債も公募一年を経過したものに限って買い入れているわけでございまするが、その趣旨は、この財政法の日銀の国債引き受けということにつながらないという点から、そういう制限を課しておるわけでございます。それで、なぜそれでは一年ならいいのだという御質問だと思います。これは別にその一年ならいい、二年の——一年以下はいけないという規定があるわけではございません。ただ一年以内、発行後一年以内のものを直ちに金融機関から買うということは、日銀の国債引き受けに非常に近いものだというふうに考えられまするので、そういう点から一年という期間を置いているわけでございます。日本銀行成長通貨、まあ通貨の銀行券の発行高、流通高というものは毎年経済の規模が拡大するに伴いまして、この発行高はふえていくわけでございます。この発行高は日本銀行バランスシート上は負債の部に立っておりまするので、それに見合う資産といたしまして貸し出しでやるか、あるいは債券、手形のオペレーションでやるかいろいろの方法がございます。それが資産の部に載るわけでございます。それでいまいわゆる成長通貨と申しますか、経済の規模が拡大するのに伴って必要とする銀行券の発行高の増加でございまするが、その増加を日銀の貸し出しではなしに、債券のオペレーションでやるという一つの方針を立てております。これは貸し出しにいたしまするとだんだん貸し出しの残高がふえていく。これがいろいろ議論されまするオーバーローン、つまり銀行の方はそれを日本銀行から借りますから、オーバーボローイング、そういうふうな形に無制限になってまいりまするので、貸し出しは日本銀行といたしましては金融政策の手段としては一時的な資金需要に応ずるためにそれを使う。成長通貨、いわゆる根になる銀行券の発行増加に見合うものは債券のオペレーションで主としてやるということにしておるわけでございます。債券のオペレーションでいたしまするときに、その債券の対象を何にするかということになりますると、いま現在国債と政保債に限っておるわけでございまするが、先ほど申し上げましたように、十二月につきましても六千億の買いオペレーションをいたしましたが、その大部分が国債でございます。政保債はほんのわずかしか希望はございません。そういうわけで、やはり国債を売りたい。また日本銀行国債をまず第一に考えるのが当然だろうと思いまするが、そういうふうに国債の買い入れというものが成長通貨を賄うために必要だということになってまいります。そのときに、そういう考え方、そういう必要性と日銀の引き受けを禁ずる法律との調和をどこでとるかということから、一年未満のものはいかにも日銀の直接引き受けと非常に似通っている。それではせめて一年たった後のものを買い入れの対象にしようということで行っておるわけでございます。
  229. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 確かにいまおっしゃる理屈はわかりますけれども、実際としては一年たっても二年たっても国債である性格には変わりがないだろうと思うのですね。そういう点で、じかでないからいいということだけでいるのか、その辺がよくわからないんですが、いまの答弁をそのままうのみにしたとして、一体そういう規定はどこで決められたんでしょうか。話によると、昭和四十二年の一月に日本銀行の政策委員会でつくられて、六分半利国債について発行後一年以上経過したものについて買いオペレーションができるということが内規で決められた、こういうことなんですが、その点の経過についてちょっとお伺いしたい。
  230. 前川春雄

    参考人前川春雄君) これは、ただいまお話にもございましたように、日本銀行の内部で決めておることでございます。オペレーションの債券売買の対象を決めることは、日本銀行の政策委員会の権限に属することでございまして、政策委員会の決定で一年未満のものを買い入れの対象から外しておるわけでございます。
  231. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それは六分半利の国債ですね。そうすると、七分利あるいは四分の三ですか、そういう利の国債についてはどうなっておりましょうか。
  232. 前川春雄

    参考人前川春雄君) このときの政策委員会の決定といたしまして、一年未満の国債を買い入れの対象から外すということになっておりまするので、その後発行された分につきましても同じように扱っております。
  233. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 この内規の決められたものをひとつぜひ見せていただきたい。これは資料が欲しいと思うんでございますが、提出できましょうか。
  234. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 債券のその当時、その当時と申しますると四十二年の一月の二十日でございますが、政策委員会の決定で債券の売買要領というものを決めておるわけでございます。それでそのときに、発行後一年以内のものを除くということにしてあるわけでございまするが、この決定は昭和四十二年の日本銀行政策委員会から国会に対しまして報告をしておりまするが、その報告書の中に書いてございます。
  235. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 この四十二年の決定は、いわゆる建設国債を対象に考えられたんだと思うのですね。今回のこの特例国債の場合にはそれとは区別してやらなければいけないんではないかと思うのですけれども、どういうものでしょうか。
  236. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 国債の歯どめという点から申しまして、建設国債と日銀引き受けの禁止と、この二つの大きな柱があると思いまするので、そういう意味から申しますれば、建設国債ということを前提考えたということであろうかと思いますが、いまの状況でその特例、ここで御審議願っておりまする建設公債以外の国債につきまして発行がやむを得ないということになりますれば、このオペレーションの対象といたしましては、これを区別する理由はないのではないかというふうに考えております。
  237. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 今回の特例国債は、建設国債と違って資産の裏づけがないわけですね。やはり片っ方はそういう点ではあるという点で、建設国債に比べれば特例国債は不健全な国債だという、極端な言い方でございますけれどもなるわけでございます。そういうのを買いオペの対象に今後しようという、そのこと自体が何か私は危険な感じがあるのですけれども、やはりそういう不健全と定義してはいけないかもしれませんけれども、そういうものについてのオペレーションというのはやはり買いオペですか、これは本来非常な今度は金額にも上ってまいりますので、インフレーションの誘因にもなりかねない。そういう点でぜひこれはとめてほしいというふうに思うのですけれども、その点。
  238. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 赤字国債特例国債と申しまするか、これが不健全なものであるかどうかということにつきましては、先ほど来いろいろここで御議論がございまするが、償還の確実性という点につきましては変わりはないものであろうというふうに考えます。  また第二の御質問がございました赤字国債がだんだんふえていく場合には、日本銀行の買い入れもふえるのではないかというような御趣旨の御質問だったと理解いたします。これは日本銀行の買い入れ自体は、幾ら買うかということは、日本銀行成長通貨を賄いまするためにどの程度買うかということを自主的に決めるわけでございまして、これはまたその通貨の成長を増加していきまする状況に応じて、その部分の幾らかを買うわけでございます。これを日本銀行がいろいろの条件をあわせ考えまして金額を自主的に決定いたしまするので、仮にこの特例公債発行額がふえましても、その発行額とは関係なしにオペレーションの金額を日本銀行は決定するわけでございます。
  239. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それで、いまのお話の判断、そういうようにたとえこれは大量の特例国債が出たからと言ってオペレーションの額というものはそれによって右左されるものではないという、それはわかりました。それでは、そういった、どういうようにするという判断は、恐らく現在の操業度であるとか、景気の状況であるとか、そういうことからも判断をされるんであろうと私は思います。そういう点の配慮がなければインフレになったり、あるいは逆にいけば投資効果をうんと抑える投資抑制になっていったり、両面が出てくると思いますので、そういう判断はどういうようになされるわけでございますか。
  240. 前川春雄

    参考人前川春雄君) いまの御指摘の点が金融政策の最大の眼目でございまして、そのときどきの経済の実態に応じましてどの程度の信用を供与する、あるいは銀行券の発行を許容していくか、これは、大きく申しますると、先ほど来話が出ておりました全体のマネーサプライと申しますか、金融機関の預金総額、それに銀行券の流通高、これが余りかけ離れないように、余りとっぴにふえないようにしていくということが日本銀行に課せられた金融政策、金融調節といたしまして一番重要なことであろうと思います。ふえ過ぎるようなときには引き締め政策というものをやらなければいけませんし、そういう場合にはオペレーションの金額もしたがって自然に減らしていくという必要が起きてくると思います。逆の場合には逆でございまするが、その辺が金融政策として一番常にわれわれが考えておるわけでございまするが、そのときに、数量的にこうなったらこうだということの決まりはございません。それぞれのそのときの状況に応じました日本銀行の判断で金融調節をしておるということでございます。
  241. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 操業率が低い、極端に低ければ、国債発行があり、それを、時価の引き受けでないにしても、一年たったものも大量に日銀が引き受けても、操業率が低下していればクッションがありますけれども、そうでなくなってくればクッションがなくなってインフレになってくるだろう、そういう感じがします。その点の操業率を大体どのぐらいをお考えでございましょうか。
  242. 前川春雄

    参考人前川春雄君) いま操業率とおっしゃいましたけれども、全体の民間の経済活動の状況であろうというふうに私は考えますが、それが金融面では企業資金需要として出てくるわけでございます。で、銀行、金融機関に対しまして企業から新しい資金需要がふえてくる。いま操業度の低い現状では、資金需要はやや後ろ向きのもの、あるいは滞貨資金とかいうようなものが多いかと思いますが、もし経済活動がまた盛り返してまいりましたときには、企業から新しい資金需要が出てくるわけでございます。そういうときに、そういうふうな資金需要が出てまいりますれば、市中銀行はそれに貸し応じなければいけないわけでございまするが、そういうふうに貸し応じますと、これは回り回って銀行券の増発にもだんだんなっていくわけでございますし、またそれが回り回りまして市中金融機関の預金の増加にもなってまいります。それがマネーサプライの増加になりまするので、そういう全体の状況を判断いたしまして金融調節をするわけでございまするが、操業度がどのくらいというふうなめどでなしに、全体の経済活動の動きに応じてその都度必要と判断されるものを金融調節として信用供与をしていくということでございます。
  243. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 昭和四十二年度末の全国銀行の預金高が二十四兆二千六百八十一億円、それで国債発行額が七千九十四億円、その比率を見ると二・九%、今回は四十九年末の預金高が八十二兆八千八百二十億円ですから、五十年度末はそれよりふえてくるだろう、九十兆を超えるかもしれませんし、ならないかもわかりませんが。そうすると、国債発行額の五兆四千八百億円というものと比較すると、その比率が、四十二年のときは二・九、今回は六%ということになってきます。それは、現在の金融情勢とか、景気とかあるいは国債状況、こういった関係が八年間、少しは動いたかもしれませんが、めちゃくちゃに大きく変わったというわけじゃないかもしれませんけれども、この状況だけ見ると変わったとしか言えません。そうすると、これからさらに五十一年度七兆円以上、先ほど、七兆二千億建設国債特例国債合わせて予算になるんではないかという論議がされておりましたが、それ以上、七兆円以上のものが出るというふうになりますというと、これは一体どの程度が限界なのかということになってきます。つまり、国債の市中消化の限界は一体どこになるだろうかということがこれから先問題になってくると思うんです。その点について、日本銀行としては副総裁どう考えますか。
  244. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 金融機関の国債や市中消化につきましては、非常に、いまの状況でこれ限界がどのパーセンテージで、どうなれば限界があるかということは、判定はしにくい問題であろうというふうに思います。一番の問題は、先ほど来私が申し上げておりまする市中の民間の資金需要というものが起きてまいりましたときに、それに応ずることは非常に因難な状況になってきたという場合に、そういう限界に近くなったということが言えるのであろうというふうに思います。ただ、もしそういうふうに企業資金需要、通常の一般の資金需要が起きてまいりましたというときは、全体の経済活動が非常に盛り返して、景況が回復してきておるときでございまするので、そういうときには自然国債発行額というものは少なくなってよい筋合いであろうと思います。そうなるかどうかはわかりませんが、いまの国債発行というものは、景気刺激ということが非常に大きな眼目になっておりまするので、そういう民間の資金需要がふえてきて金融機関が国債の消化が困難であるというときには、恐らく国債発行の必要額というものが減ってくる筋合いであろうと、その点のバランス財政と金融面とのバランスをどういうふうに図っていくかという問題ではなかろうかというふうに思います。
  245. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 じゃ、時間がなくなりまして最後になりますが、日銀副総裁への最後ですが、買いオペ対象国債、まあ先ほどから発行後一年以上と伺っておりますけれども昭和四十年度から四十八年度までこれを調べてみると、金融機関の引き受けた国債の総額は五兆八千四百五十九億円、そのうちの九四%の五兆四千八百六十七億円が買いオペレーション対象として日銀が買い入れております。そういうことの実績から考えますと、ことし、今回は一年間で五兆四千八百億、約五兆円と見ていいですが、その中の約五兆円が金融機関が引き受けると、まあこうしてもですよ、日銀の買い入れを一年経過したらもうそれの九十何%ということになると、まあ大量に今後は引き受けなきゃならない。いままでの例から見ると大変なものを今後は引き受けなきゃならないというふうな感じになるんではないか。それがことし一年の問題ではないとすれば、来年五十一年度の国債発行両方を考えていきますと、二年間にわたると、いままでの五、六年分を買いオペの対象として引き受けざるを得なくなってくるんではないかという、そういう危惧を持つわけでございますが、その点についてはどうでしょうか。
  246. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 先ほど申し上げましたように、日本銀行が債券のオペレーションをいたしまする金額の上限は成長通貨の上限でございまして、それ以上は買う必要がないわけでございます。また日本銀行は買う意向も持っておりません。いま銀行券の発行高約十兆でございますか、ぐらいでございますが、一年間に仮に一〇%ふえるといたしますと一兆でございます。そのくらい、それが成長通貨の限界というふうに考えられるわけでございまして、これは大ざっぱな数字の見当だけ申し上げておりますので、一兆買うかどうかは別でございますが、そういう意味から申しますると、五兆の国債が出たものをすぐその九十何%買うということには われわれもするつもりがございませんし、そういうふうにはならないというふうに思っております。
  247. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最初に、国債の償還問題についてお伺いいたします。  国債整理基金特別会計法という法律がありますが、この第二条第二項、ここで定額の繰り入れを規定していますが、ここで言う国債に赤字国債も含れまるでしょうか。
  248. 高橋元

    政府委員(高橋元君) そのとおりでございます。
  249. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうしますと、赤字国債の場合にもこの規定によって毎年一・六%ずつ元金償還のために繰り入れる、こういうことですね。
  250. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 二条の二項のいわゆる定率繰り入れの対象から外れますものは、この法律にもありますように、短期証券、借入金、一時借入金及び割賦の方法をもって償還する交付国債、これ以外のものは全部対象と相なります。
  251. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから、赤字国債の場合も一・六%ということですね。  そこで、この一・六%とした根拠ですが、これはどういうことでしょうか。これは主として建設国債について一・六ということで説明されると思うんですけれども、その根拠を御説明いただきたい。
  252. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 昭和四十二年に国債整理基金特別会計法を改正をして現行の減債基金制度というものを確立したわけでございますが、その際、長期にわたって財政制度審議会その他、関係の方面で審議をしていただきまして、その結果、国債発行下の財政における姿勢を正すという意味で、国債について定率繰り入れという制度を充実をするということになったわけであります。その従前、一万分の百十六というような率がございまして、これが三分の一になったときもございますし、停止されたときもございますけれども、そういう繰り入れでありましたものを百分の一・六に充実をする必要がある。その論拠といたしましては、いま近藤先生もおっしゃいますように、当時、財政法の四条のただし書きの国債、いわゆる四条債、これによって建設されますところの公共事業その他の公債対象の見合い資産というものの耐用年数を考えまして、それが税法上の耐用年数または国民所得計算上の耐用年数と申しますか、取りかえ年数と申しますか、そういうもの、それからその中に投資なり出資なりという永久資産が含まれているその割合というようなものを勘案いたしまして、大体六十年と、で、全部現金償還をするというめどを立てまして百分の一・六という率にしたわけでございます。ただしこの率は、先ほども申し上げましたように、戦前債それから外貨債その他についても等しく適用に相なる、そういう意味で総合的な減債基金の根幹になる制度という意味で、繰り返しになりますが、公債発行下の財政の秩序を保つと、そういう趣旨で設けたものでございます。
  253. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いまも御説明のとおり、結局、公共施設等の耐用年数というのは、これはもう合理的な根拠だと思いますし、それからこの当時には財政法上は建設国債しかない、要するに赤字国債ないわけですね。だから、それなどはもともと考えようがなかったわけです。ですから、私、ここでお伺いしたいのは、このように六十年という耐用年数、それを返していく一定の合理的根拠がある、これと同じような赤字国債の場合の返済の率ですね、これがあってしかるべきだと思うんですけれども、この点いかがですか。
  254. 高橋元

    政府委員(高橋元君) その点は、たびたび大臣からも御答弁申し上げておりますように、この今回お願いをいたしております特例公債というものにつきましては、十年という期間をもって発行されるわけでございますが、償還期に借りかえをしないという形になっております。先ほどの六十年の大体耐用年数見合いでやっております定率繰り入れというものは、この国債が大体六十分の現在でございますと十ずつ五回借りかえられる、最終的に六十年目に全部現金で償還されるということを想定したものでございますが、特例公債の場合には、満期に全額現金で償還をするということを、これは固くお約束を申し上げているわけでございます。それに従いまして、定率繰り入れは、先ほども申し上げましたように、国債整理基金制度の根幹をなすものでございますからそのままといたしまして、それを補完するものとして剰余金を、財政法六条の二分の一を下らぎるというところを全額繰り入れる。それから特例公債から脱却しました暁に、そのときの予算の事情に応じて予算繰り入れをもって補強をいたすと、そういうことで臨みたいというのが、私どもが繰り返し申し上げておる方針でございます。
  255. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 剰余金の問題とさらに財政繰り入れの問題は、また別に聞きます。  私がいまお聞きしておるのは、建設国債の場合の六十年といういわば見合うものがあるわけです。ですから、単に口約束だけじゃなくて、一応国民も安心して一・六というこの率で見ておるわけですね。ところが、赤字国債の場合には全然ないわけでしょう。ですから、全然見合うものがないこの赤字国債において、建設国債においては一・六%認めたような合理的な根拠を持った率、これが決められるべきだと思うんですけれども、そういう点全然議論もなかったのか、考えてもいなかったのか、この点いかがですか。
  256. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 弁済基金は、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、総合的な国債残高に対して一定の割合で資金を繰り入れてまいる。そのほかに剰余金なり予算繰り入れなりというものをもって補強をいたしまして、総体としての国債発行の秩序を保ちながら確実に償還をいたすと、こういう制度でございます。したがいまして、建設国債の場合でも、見合いになっておりますところの資産を処分してこれをお返しするという意味では毛頭ありませんので、あくまで国債の返済の基礎になっておりますものは、国として確実に法律または発行の契約によって負っております債務を償還をするという、その確実性でございます、そういう意味から申しますと、建設公債の場合も、今回お願いをいたしております特例公債法に基づく特例公債の場合も、償還の確実性においては全く異なるものではないということが言えると思います。
  257. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 償還の確実性という点からいけば、これは十分の一であるべきです。そうでしょう。そうすれば国民も安心するんです。ところが、そうでなくて、やはり依然として同じ一・六%。そうしますと、全然安心できないわけです。いまの説明では、剰余金とか財政繰り入れとかあると言うんですが、では実際今後剰余金が出ると思うのかどうか。これはきわめて不確定なものだと思うんです。いままでのような高度成長のもとでは、実は見込めたわけですね。しかし、そのような高度成長を見込めないことは、だれの目にも明らかです。そうしますと、まず額も特定できない、それからまたほとんど期待できないようなものにまず頼るのかどうか、この状況についてどうですか。
  258. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 御指摘のように、特例公債発行下の財政で剰余金を巨額に出すということは、これは望ましくないことは申すまでもないわけでありまして、したがいまして、今回お願いしております法律につきましても出納整理期間発行という二条の規定をお願いしまして、それによって剰余金の発生を極小にしたいというふうに考えております。しかしながら、何分にも二十数兆という予算でございますので、その中に歳出の不用によって生ずる摩擦的な剰余金というものもございましょう。したがいまして、全く剰余金が出ないかというと、そういうことはないと思いますけれども、ただし剰余金にいままでほど大きく期待することはない。それは特例公債発行下ではそういうことが言えると思います。
  259. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いまの答弁では、まず剰余金は期待できないということですが、では次の財政繰り入れですね、この点のまず問題は、いま税収不足なんです。さらにその中で赤字公債を出さなければいかぬという、こういう財政の中から、どうして財政繰り入れができるのか、この点明快に御答弁いただきたいと思うんです。
  260. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 今朝来、大臣からもお答えを申し上げておりますように、特例公債というものが毎年、毎年ぎりぎりに予算を歳入歳出ともに詰めてみた上で毎年特例の立法をもってお願いをすべき例外的な性質のものである。したがいまして、財政当局といたしましては、このような公債発行からできるだけ早く脱却をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。そうなりました場合に、脱却をいたしました場合に、予算をもって毎年の財政状況も見ながら満期までに確実に全額を償還するように予算をもって繰り入れをいたしていくということを申し上げている次第でございます。
  261. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大臣、この問題も剰余金の問題と同じだと思うんですよ。具体的に保証が全然ないし、可能性もないんですけれども、ただ口で幾ら返す返すと言いましても、実際には一・六%しか繰り入れしないで、本来ならば一〇%繰り入れすべきなんですよ。それをどうして返すと言えるのか、その点どうですか、おわかりになっているでしょうか。
  262. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 私から一言御説明さしていただきたいと思うんです。というのは、減債基金は、これの対象となります債券の発行者に対する信用の度合いによりまして、必要とされたり必要とされなかったりすることがあり得るわけでございます。たとえばヨーロッパの市場におきましても、私企業が社債を出しますときには、減債基金の設置を義務づけられる場合がございます。しかしながら、こういった国でも、国が出します国債につきまして日本のような総合的な減債基金制度を設けている国はないのでございます。かつてフランスにおきまして減債自治金庫というのがございましたが、これも一九五八年以降存在しておりませんし、またアメリカにも戦前の法律で残っておるのはございますが、これは現在全然ファンクションいたしておりません。その意味で、日本国債の裏づけとして国債整理基金という制度があり、これに対しましてどれだけのものを入れていくということが法定されておりますことは、一方で過去の経験、戦中の経験があって、その悪い印象を払拭するために、そういう制度が残っておるんだと思いますし、一方ではその必要はないけれども、諸外国の例と比べて日本国の信用が劣るとは思われないけれども、そういう制度を設けることによって多くの国債をお買いになる方に安心感を与える、そういう制度だろうと思うんです。  そこで、そこへ幾ら入れなければいけないかということでございますが、かつてアメリカで制度がございましたときも、これが理屈の上から何%でなきゃいけないとか、はっきり決まった理論的根拠があって定められたものであるとは理解いたしておりません。そこで、現在日本がそれでは六十分の一に当たる百分の一・六ずつをなぜ入れておるのか、これはただいま主計局次長から御説明がありましたようなことで、この対象となっておる国債の種類にはそういう入れ方がふさわしいだろうということで入れておるわけでございます。ところで、ただいま御議論になっております特例法による国債、これはこの赤字が発生してきたゆえんのものを考えますと、ほかの場合とちょっと違います。そこでこれに対応するには何がいいか。ただいま御議論がございましたように、いま直ちに剰余金が出たり、また予算繰り入れをたくさんできるという可能性があるとは思えませんけれども、これが存在しております十年間の間にはそういう情勢もくるだろう。そこで百分の一・六という普通の四条国債に定められております率はそのまま使いながら、将来余分が出てきたときにはこれを優先してこの減債基金として積み立てていくという計算方法をとっておるわけでございます。裏返して申しますれば、この国債が発生したような事情を頭に置いて考えますと、ここでいたずらに算術的な繰り入れ率とか、そういったものをもって対処する方が賢明なのか、それともただいま御提案いたしておりますような方法で対処するのが賢明なのか、その辺の判断の問題にかかろうかと思いますが、私どもは現在御提案しているようなことでこの減債基金を積み立てていく、そうして西欧の先進国にも現在見られないようなこの減債基金の制度、これを十分に活用しながら国民の皆様に安心感を持っていただきたい、このように考えておる次第でございます。
  263. 渡辺武

    ○渡辺武君 関連。  ちょっと関連で質問したいんですが、いま近藤議員が質問しましたように、減債基金の特別会計法では定率繰り入れだということをはっきり定めているわけですね。そうして建設公債については百分の一・六という定率の繰り入れになっている。これは景気の変動がどうであろうと、財政事情がどうであろうと、法に基づいて必ずやらなきゃならぬ、そういうものですな。そうしてその根拠となるものは、これは大体耐用年限六十年だから、だから一年間でやってみれば百分の一・六という数字が出るという合理的な根拠があるのですね。私は、建設公債に関する限りは、百分の一・六という定率繰り入れは、これはそのとおり行われていると見て差しつかえないと思う。しかし、いまの赤字公債は十年間で必ず全部返しますと、借りかえはいたしませんと政府言っているんでしょう。だとすれば、十年間に毎年定率繰り入れ、これをやらなければ特別会計法の規定に違反するじゃないですか。そうでしょう。その点どう思いますか。
  264. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 先ほどもお答え申し上げたことでございますが、国債整理基金特別会計法二条二項の定率繰り入れ額は、前年度首の国債総額、すなわち国債の種類を問わず、その国債総額の百分の一・六ということにしております。その決めました趣旨は先ほど申し上げましたが、これはもちろん建設公債についてその対象になる見合い資産の償却年数を頭に置いたものではございますけれども、それのみをもって償還をいたすということではないわけで、いま申し上げておりますような他の方法を併用して確実に償還をしていくということでございます。
  265. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうじゃないんですよ。いまも近藤委員の質問ではっきりしたのは、これは剰余金がどのくらい出るか、不確定だ。そうでしょう。それからまた財政繰り入れだって今後どのくらいの額になるのか、これまた不確定だ。そういう不確定なものに依存してやるんじゃなくて、定率で繰り入れなさいというのが特別会計法の趣旨ですよ。そうでしょう。だとすれば、建設公債での定率繰り入れではなくして、十年間のこの特例公債、これの定率繰り入れをやらなければ、特別会計法の規定に忠実であるとは言えないじゃないですか。ほかの委員からこの繰り入れの償還の計画について出せ出せという要求があった。伺っていると大臣は、何分にも来年度の経済見通しさえわからぬ、あるいはまた予算の編成もまだこの方針が決まっていない、いわんや将来十年間においておやと、こういう答弁をされている。私はこんなばかな答弁ないと思う。建設公債の場合は、来年度の予算規模がどうであろうと、景気がどうであろうと、必ず百分の一・六を繰り入れなきゃならぬということでやっているでしょう。だとすれば、来年度の予算規模がどうだとか、景気の状態がどうだとか、経済見通しがどうだとか、そんなことは問題外ですよ。この十年間の期間の特例公債、これについての定率償還の計画を国会に提出しなければ、これは償還計画の提出ということにはなりませんよ。その点どう思いますか。私はそういう資料を提出すべきだと思いますよ。要求します。どうですか。
  266. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう資料を出すにつきましては、これから十年間の展望に立ちまして財政計画というものを数字的に持たなけりゃならぬわけでございまして、それはとうていいま、不確定要素の多い状況のもとではそういうことはできないわけでございますということを御説明申し上げたわけです。それができるような経済情勢でございますならば特例債を出すような非常措置は必要でないわけでございまして、私どもはいま苦心いたしておりますのは、早くこの経済の危局から脱却する場合に非常の措置を講じて、できるだけ早くこの状態から脱却してノーマルな状態に返って、将来の展望につきましても、数字的にある程度明確にできるような状況を早くつくらなければいかぬということをいま考えておりますことを御理解いただきたいと思います。
  267. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大蔵大臣、建設国債の場合はどんな財政規模であれ、経済情勢であれ、一・六%という定率で返していきますと、返していけるんです。ところが、赤字国債十年で返すんでしょう。しかも、返すのは年間一・六%ですから、十年間たってこれは一六%。そのほかに剰余金も期待できない。ましてや財政繰り入れも期待できないということになると、結局一六%しかないんじゃないかと思うんですよ。そこで、今度はどうしても返すと大臣おっしゃるとしますと、あとはそのなめの赤字公債をもう一度発行する。これは大臣はやらないと言っているんですが、借りかえと同じなんです。この点どうですか。
  268. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 歳出の問題、歳入としてどういう新しい財源を求めるか、それから経済回復を通じてどのような増収を期待するか、これから先政府として鋭意努力してまいりまして、六十年に全額完済できる状況をつくり上げるべく考えておるわけでございます。計算をいたしますと、定率繰り入れ、十年たつと百分の十六になることはあなたの仰せのとおりなんでございます。それは減債制度といたしまして、好況、不況にかかわりませず、そういう減債制度を日本財政は持っておるという、ノーマルな場合における日本財政一つのルールでございますので、それは崩してはならぬと考えておるわけでございます。しかし、日本財政も生き物でございまして、内外状況によりまして異常な事態を招来しないという保証はないわけでございます。今回たまたま世界的規模の変化を身に受けまして、大きな打撃を受けたわけでございまして、これに対しましての異例な措置をいま講じようといたしておるわけでございまして、この状態から早く脱却いたしまして、そういうノーマルな状態に早く返ろうというためのいま努力をいたしておるわけでございます。したがって、平時におけるところの財政の減債制度というものを、この場合そのまま機械的に適用いたしまして、十年満期債でございますから、十分の一ずつ積み立てるということでございますならば、まず第一に第一年度からそれだけの積み立てをしなければいけませんが、そうだとすると、私はむしろそういう道を選ばずに、そういう積み立てをする金がありましたならば、特例債発行額を減らします。その方が財政としては当然の常道だと思うんでございます。そういう事態でございますので、そういう方法によらないで、この非常事態を切り抜けようといたしております。しかし、それにいたしましても、この問題、この特例債の償還につきましては、皆さんいろいろ御心配の向きもございまするし、財政当局としてもそれに対応した用意がなければなりませんので、定率繰り入れのほかに、第二、第三の方法を講じてあるわけでございまするし、かたがたまた借りかえもこの公債につきましては行わないということを言明いたしておるわけでございます。いわば財政運営の姿勢といたしまして、そういう厳しい姿勢をとることによって、この事態を切り抜けよう、またその真剣な姿勢を御理解いただくようにいたしたいということで、せっかく努力をいたしておるところでございます。
  269. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 もう一回お伺いいたします。  大臣は十年間にはかない期待をしておるようですけれども、その間、剰余金もほとんど出なかった、そしてこの十年間に財政から繰り入れるべきものも出なかったとなった場合、道は二つしかありませんね。一つは、もう一度そのための赤字公債を出すか、あるいは付加価値税、いずれかです。そうなった場合に、そのとき大臣はまたそのための赤字公債を出すことを考えなきゃいかぬと思うんですけれども、どうですか。
  270. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あなたは大きな問題を拾象してしまわれておりますが、この十年間に私どもまず日本経済の実態の体質の改善強化を通じまして、太く歳入の確保を図ることを考えておるわけなんでございます。このままで落ち込んだ状態がずっと続いていって、何もいいことがなくて、要ることばかりであってというようなことは考えていないわけであります。そういうことをやるわけにはいかないので、そういうことがないように持っていくために、この特例債による財源もまた有用に活用しようといたしておるわけでございます。
  271. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この点も大臣の期待どおりなかなかいかぬという計算が出ておるのです。財政制度審議会の中間報告によりますと、今年度の歳入欠陥三兆円と仮定して、昭和五十五年には公債発行高十二兆円、そして国債の残高は六十一兆円に達するだろう、こういう計算が現にありますね。これは予算委員会における渡辺委員の質問では、実際本年度の歳入欠陥を基礎にして考えたならば七十兆円になるだろう、こういう計算も出ております。となりますと、ますます財政が硬直化して、なかなか大臣の期待するようなものは出てこない、こういう状況にあるのじゃないかと思います。  そこでこの問題もう少し詰めるために、これは資料を御提出いただきたいのですが、いま申し上げた今年度の歳入欠陥三兆円と仮定した場合のこの計算の基礎となる毎年度、ですから五十一年、五十二年ですね、五十二年に至る毎年度の国債発行予想額、それからその年々の財政規模、その中における国債依存度、それから国債種、そしてその国債のそれぞれの年の残高、この点について明らかにしてもらいたいと思います。
  272. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 財政制度審議会の中間報告の中の主眼と申しますのは、ちょうど経済が打撃を受けて財政が落ち込みました五十年度の財政の値というものを出発点といたしまして、過去の傾向値を用いて、定率的に歳入歳出をそれぞれ伸ばしてみた、その場合にどういう望ましくない事態になるかということに対する非常に大胆な仮定に基づく警告であるというふうに私どもは受け取っております。そういう事態を起こさないように、私どもとしては歳入歳出両面について努力をしてまいるという必要があることは申すまでもないわけであります。その点は大臣から先ほど来申し上げておるわけでございますが、したがって、五十一年度以降毎年度、たとえばいまおっしゃいますような財政の規模、それから公債の残高というものを定率で出すということにつきましては、これは計算にかなり手間をとることはとるわけでございますが、それにしても現在の状況をもとにした単純な延長ということでございますので、御容赦をいただきたいというふうに考えます。それらの点をより現実的に中期的な経済見通しに即して幾つかの仮定を置いて見通しをつくってみるという作業につきましては、これは時間をかけて検討して、また来たるべき国会にお出しをするということに考えております。
  273. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いまの答弁は資料は計算すれば可能だし、あるけれども出さぬということですか。
  274. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 相当時間がかかりますので間に合いかねるということと、そういう数字そのものを、何といいますか、前提として財政の議論をしていただくということに私どもとしては疑問を持っておるということでございますが。
  275. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いまの発言はちょっとこれは問題だと思うんですよ。あなたの方は問題だと思いましても、こちらは必要があるからこれは要求しているんです。現に、計算すりゃ可能だと言うし、また現にこれはもう数字あると思うんです。
  276. 高橋元

    政府委員(高橋元君) これは各種の想定を置きました試算をやっていきます場合に、かなり複雑な計算が要りますので、私もいまその中間の数字を全く持っておりませんので、五十五年の数字財政審で作業をしてつくりまして、そのほか若干弾性値それから成長率を変えました、想定を変えました計算を五十五年についてやっておりますが、一々の年度についてやっていくことはまたかなりの日数を要するかと思います。
  277. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 「週刊金融財政事情」十月十三日号というのがあります。これによりますと、昭和五十一年以降五十五年までの「国債発行額の実績と予想」ということで、ちゃんと出ておるんですよ。この執筆者は山一証券の後藤猛という人です。民間ができましてどうして大蔵省できないんでしょうか。大体もうできておるのを隠しておるんじゃないですか。
  278. 高橋元

    政府委員(高橋元君) その御執筆になりました方が、どういう想定ではじかれたか私どもはわからないわけでございますが、大蔵省といたしましてはそういう推算を現在持っておりませんし、またその計算を再現をしていきますのにかなり時間を要するということでございます。
  279. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この資料によりますと、「五十年度以降の予想は五十年七月の財政審議会資料による。」と、ちゃんとなっておるんです。それが大蔵省ができぬというのは大変おかしいと思うんです。また、理屈から考えましても、五年後の計算が全部できちゃいまして、そうしてその途中の一年、一年ができないというのも、これおかしいんです。納得できないんです。財政は五年規模じゃなくて、これは一年規模でしょう。一年単位でしょう。五十一年がまずあり、それが基礎になって次の五十二年があるんですよ。そうしてやがて五十五年にいくんです。いきなり五十五年だけ出てきまして、そうして五十一年は時間がかかるというんじゃこれは全く説明にならぬです。納得いくように説明してください。
  280. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 私の申し上げようが、十分御説明が行き届いてないのかもしれませんが、私どもはこれを五十五年の姿を想定するものとして計算式をつくりまして、五十五年の姿をつくっておるわけでございます。中間の形になりますと、毎年度、毎年度あの中に幾つかの計算前提がございまして、計算を入れていくことになりますので、その段階で各年の数値というものをはじきますのに相当に手間を要します。
  281. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから、五年間計算したと同じようにこれは出せるんじゃないでしょうか。現に、民間で出しておるんですから。どうして出せないのか。納得できません、これ。
  282. 高橋元

    政府委員(高橋元君) その論文を私拝見しておりませんが、「金融財政事情」に書かれた方の計算方式がどういうものであるか、私どもはちょっと想像ができませんけれども、私どもとしてそういう計算を再現いたしますとしますと、これはかなりの手間を要するということを申し上げておるわけでございます。
  283. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 手間を要するって、どれくらい要するのですか。私の方で資料要求したのはきのうないし一昨日程度ですね。どれくらい要しますか。
  284. 高橋元

    政府委員(高橋元君) いま聞きましたところでは、計算に数日を要するかということでございます。
  285. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この点の資料は、あなたがどう思うかは別といたしまして、今回の赤字公債が将来どれほど日本経済国民に影響を及ぼすのかということをわれわれが検討するに必要なんですよ。ですから要求しておるのです。その点はぜひ忘れないようにしてもらいたいと思うのです。  そこで、じゃ、同じく資料要求ですが、先ほどは本年度の歳入欠陥は三兆円でしたが、これを四兆円、要するにまあ実際の欠陥ですね、歳入欠陥、今年の。とした場合の五十一年度の国債発行予想額等々ですね。先ほど申し上げた数字、これはどうですか。これは計算もうできていますか。
  286. 高橋元

    政府委員(高橋元君) ちょっといま手元に持ち合わせておりませんが、本年の歳入欠陥を三兆九千億としまして、五十五年度にどうなるかという計数につきましては、まあ先回、予算委員会の際に主計局長が申し上げておったかと思いますが、その数字はございます。しかし、いまお示しのように、五十一年度以降こう毎年というようなことでございますと、私が先ほど来申し上げておりますように、改めて計算を行わなければなりませんので、時間を要するわけでございます。
  287. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、その点の資料もあわせて提出を要求いたします。  そこで、いまの今年度の歳入欠陥四兆円と計算した場合の昭和五十五年度の国債残額、これは七十兆円になりますね。これは前回予算委員会ですでに明らかです。そして財政規模は四十二兆円、国債発行額は約十四兆円という数字になっております。  そこで一つお伺いしたいのは、この年の国債費これはどれくらいになる見込みでしょう。
  288. 高橋元

    政府委員(高橋元君) ちょっと近藤委員の御注文にぴっしゃりはまっていないかもしれませんですが、財政審試算の三兆円原資で五十五年度に六十一兆円という想定がございます。その計算を用いまして、まあ急遽やりましたので本当の試算でございますが、国債の利率等、まあよくわからない点もございますけれども、過去と同じ利率であるという想定を置きますと、国債費はおよそ四兆六千億くらいになるかということでございます。
  289. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まあ、いまの数字を見ましても、財政硬直化というものは目に見えておると思うわけです。  そこで、次の質問に入りますが、いままでの大臣の答弁でも、財源の調達を安易に国債依存するようなことがあっては大変だと、こういったことを再三言っておられます。で、ことしは仕方がないので何とか認めてもらいたいと、こういうことでありますが、これ、先ほど来各委員から質問に出ておりますように、来年度の国債発行額は七兆二千億円台になる、こういうことであります。そうなりますと、この七兆二千億円台というのは、先ほど私が問題にしました、将来、昭和五十五年に六十一兆円の国債残額があると、この計算によった場合ですね、五十一年度の予想額は六兆七千億円です。これは後藤氏の計算によりますと、そうしますと、すでにもう来年度で、予想額をはるかに超えた国債発行になろう。となりますと、五年後にはすでに計算されているような六十一兆円とか七十兆円じゃなくて、もっと大きな数字になるのじゃないか。まず第一年度そうなんですから。この点、どうお考えになりますか。
  290. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 財政審試算というのは、たびたび申し上げておりますように、幾つかの想定を置いたあくまでも試算でございます。こういう想定を置いて、経済成長をこのように見る、租税弾性値はこのように見るという等々の試算を置いて計算すればこういうことになるということでございます。その間、それと変わった事情の変化あるいは政府の政策、そういったことは加味されていないわけでございます。それで、われわれは一応全然意思が加わらない客観的な試算というものが出たら、それを見まして今日の置かれた客観的な事態というものを考え政府の主体的にどういう政策をこの時点で行うか、行わないか、行うとすればどの程度行うかというようなことを決めて、そして現実の施策をやってまいるわけでございますので、必ずそれとデビエイトすると申しますか、その試算と離れた姿になるのが現実の姿であろうと思うのであります。あるときには大きく振れる場合もありましょうし、努力によりまして大いに内輪になってまいる年もございましょうし、私ども来年の場合におきましては景気の落ち込みが非常に大きいし、回復への足取りは必ずしもスムーズじゃございませんので、大変いま予算の編成に苦慮いたしておるわけでございますが、この段階を突破いたしまして経済回復の軌道に乗ってまいりました場合、そして政府歳入歳出全体を通ずるところの財政政策努力が続けられてまいった場合におきまして、日本財政は健全なベースに復帰してくるということを期待いたしておりますし、またそうしなければならぬと思いますし、またそれはできるに違いないと確信いたしておるわけでございます。そういう意味財政審試算というのは、あくまでも一つ試算でございます。一つ警告的な試算でございます。そう御評価いただきたいということを前々から申し上げておるわけでございます。さように受け取っていただきたいと思います。
  291. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 確かに試算警告だと思います。ですから、実際の数字との間に違いが出るのは当たりまえだと思うのですが、問題は警告との関係で見ますと、警告の線なんだから、その線を超えるなと、それほど重大な線だと思うのです。ところが、現実は大臣の先ほどの答弁によっても、来年度の国債発行は七兆円を切ることは至難だというわけですから、現実に警戒線を突破しているんです。これはもう危険水域ですね。その事態を実際にどうお考えになるのかということなんです。  そこで、お伺いしたいのは、本年度の場合の赤字公債、これは実際予算決まった後予測が違ったと、こういう説明です。ずいぶんそれはおかしい面ありますけれども、それはそれで一応受け取っておきますけれども、来年度は本年とはちょっと事情が違うと思うのです。もともと歳入不足が明らかだ、赤字公債出さなきゃならないという、こういう事態の中で、しかも、予算の規模をふくらませるという、こういう事態になっていますと、しかも、その場合の国債発行額が警戒線を突破してしまうと、こうなりますと、本当にこれ大丈夫なんだろうか、この警戒線が、五年後の警戒線がもっともっと大きな大変なものになってしまうのではないか、超えてしまうのではないか、こう心配なんです。この点で大臣どうお考えになっていま予算を編成されておるのか、御答弁いただきたいと思います。
  292. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たびたび申し上げておるように、来年、五十一年度という時期は大きな増税をお願いする年じゃないということをたびたび申し上げておるわけでございます。財政バランス回復するためには、経済に対しましてそれだけの歳入を期待して、財政バランスを取り戻すようにしなけりゃならぬわけでございますが、五十一年度はそういうことはすべきでないと申し上げておるわけでございます。しかし、五十二年度以後そういうことをしないとは言っていないわけなんでございます。五十一年度はそういうことはしないと、そういうことをすべき年じゃないということでございますから、現実の施策というのは、そのときの客観情勢におきまして一つ仮定を設けて試算いたしましたものと左右に相当デビエートするということは先ほど申したじゃございませんでしょうか。したがって私は、そういうことはあり得るということを申し上げたわけでございます。で、政府の政策的な努力経済回復と相まちまして漸次健全財政に持ち込んでいくんだと、またそれはいけるんだ、いかなけりゃならぬのだということを、その確信を持ちまして事態の処理に当たっておるわけでございます。
  293. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 来年度の予算の中身は、反省したはずの高度成長型になっておるということで強い批判がありますが、時間の関係でその点はきょうは入りません。次回の委員会でこの点はさらにお伺いしたいと思います。  日銀副総裁がおいでになっておるので一、二お伺いしたいんですが、まずアメリカの状況です。大量の国債発行が恒常化しているアメリカでは、その大量の国債発行が金融市場に過重な負担を与えて多くの障害が発生しているというぐあいに聞いておりますけれども、その実情を御存じでしたらば教えていただきたいと思います。
  294. 前川春雄

    参考人前川春雄君) アメリカでは、御承知のように国債、債券は全部市場で消化、売り出されておるわけでございますが、企業資金需要との競合があるというふうに聞いております。よく新聞でクラウディングアウトという言葉で表現されておるようでございまするが、市中企業の出します社債、それと国債が競合いたしまして、消化、そのときどきの状況では困難が生じておるということは聞いております。
  295. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 たとえば、公定歩合などとの関係で国債自身が投機の対象になるというようなこととか、あるいは短期債という流動資産が投機的な買い占めなどに動き出しているとか、こんな話を聞いておるんですけれども、その辺の状況は御存じないかどうか。
  296. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 金融調節をアメリカでは短期資金で調節しております。オープン・マーケット・オペレーションと申します、公開市場政策と申しますか、そういう短期のいわゆるTB——トレジュアリービル、大蔵省証券でございますか、それを売ったり買ったりしながら短期資金の調節をする、それによってコールレートの調節を図っていくと、それが金融調節の主な手段になっておることはよく存じております。しかし、投機の対象になっておるということは私ちょっと聞いておりません。
  297. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 終わります。
  298. 渡辺武

    ○渡辺武君 前川総裁に伺いたいと思うのです。  私、さきの予算委員会で森永総裁に対して西ドイツその他の国ですでに実施に移されているマネーサプライの規制措置ですね、これをわが国でも採用したらどうだろうかという意見を申し上げました。このマネーサプライ規制措置と申しますのは、もうすでに御存じのとおりでありまして、西ドイツなどの例を申しますと、実質GNPの伸び率に許容できる消費者物価の伸び率をプラスして、その範囲に現金通貨あるいは預金通貨などの伸びを抑えていく、そうしてこの規制目標を達成するために公定歩合政策とか、あるいはオペレーション政策だとか、特に公債発行やその消化というようなものもその枠内で処理するという政策でございます。いま大量の公債発行、やがてはこれがインフレーションの高進の重要な原因になるんじゃないかとみんな心配しております。そういう状態のもとで、すでにほかの国で実施に移しているこのマネーサプライに対する規制措置ですね、森永総裁はいまのところそのつもりはないという御答弁だったんですけれども、一体なぜ採用できないのか、その点を伺いたいと思うんです。
  299. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 西独で中央銀行通貨残高という、これは先生おっしゃいまするように、その裏にはマネーサプライがございまするが、西独が一応八%の増加目標値を決めておりまするのは、ドイツのブンデスバンクにございまする銀行券の発行高と、それから市中銀行の準備預金、これの総額でございまするが、準備預金の後ろには預金がございまするから、間接的にはそういうものに関連がある、マネーサプライに関連がございます。これを八%という目標値をつくっておることは承知しております。恐らく森永総裁からお答えいたしたと思うのでございまするが、望ましい目標値を決めまするときに、どういうふうな考え方でやるかということが第一でございます。いまお話がございました望ましい成長率、それに許容し得る物価上昇率、これは一つ考え方であろうと思います。OECDでもそういう考え方をとったらどうかという議論が出たことはございまするけれども、まだ各国の間で、それではそれでやろうというところまでの意見の集約はできておらないわけでございまするが、ひとつそういうことを考えまするときに、一番むずかしいのは、まず望ましい成長率、あるいは許容できる物価上昇率、こういうものを、これは見方によって非常に違う判断が下され得るものでございます。したがいまして、そういうものに対するコンセンサスは一般の方々から賛同を受ける率がなかなか困難であろうということが第一でございますが、仮にそういうものができたといたしましても、そのときどきの経済状況あるいは物価、経済活動というものが望ましい状態でおさまるかどうかということにつきましては、またこれは別の問題がございます。果たしてそうなるのかどうか。現にドイツの場合で当てはめましても、御承知のように経済成長率はいまドイツは非常に少なくてマイナスになっているような状態でございまするが、そういうそのときどきにいまのような目標率を変えることが適当かどうか、そういうことはなかなか困難なようでございます。そういうことは技術的にはそういう問題もございまするが、もう一つどもがなぜそういう目標値を立てることにちゅうちょしておるかということは、果たしてそういうマネーサプライの増加率の目標値を、仮にある一つの数値というものを考えましたときに、それと実体経済の動きあるいは物価の動きというものとの間に安定的な関係があるということがまだ確立しておりません。非常に長い期間とりましてマネーサプライが大きくなりますると、それが何カ月かある一定の期間のラグを置きまして、それが物価なりなんなりに影響してくるということはあるようでございます。現に日本でも四十六年、四十七年当時非常にマネーサプライがふえまして、それと、その後の物価騰貴というものには何ほどかの関連があったというふうに考えられます。したがいまして、私どものいまの立場から申しますると、マネーサプライの目標値を決めて、それを機械的に守っていくということが果たしていまわれわれがやっておりまする実体経済関係を見ながら、その都度金融政策をやっていくということとうまくはまるかどうか、その辺についてまだ確信を持てない状態でございます。  ただ、マネーサプライは、いまの状況を申し上げますると、昨年の九月か、十月にボトムに達しまして、前年比一〇・六でございましたか、増加というところが底になりまして、それからだんだんだんだんふえてきております。ある程度、昨年はかなり急激な引き締めをやりましたから、企業の手元流動性も圧縮されておりましたので、流動性を回復しようという意図が働いておることは当然だと思います。またそういう状態をわれわれそう危険視しておるわけではございません。ある程度財政支出というものが続きますると、マネーサプライはふえる傾向にあると思います。私ども一番の問題にしておりまするのは、こういうマネーサプライの増加が急激にふえるということは一非常に問題があろうと思います。それからマネーサプライの増加原因というのは、財政ばかりじゃございません、市中銀行の、金融機関の融資活動、これがシェアとしては大きい要素でございます。そのほかに対外取引というものがございまするので、その辺の割り振り、あるいは企業資金需要というのもあわせて考えていかなければいけないというふうには考えておりまするけれども、現在のところは、いま申し上げましたような理由から、目標値を決めて、それを機械的にやるということにどうもまだ数字的にも確立した関係がない、あるのかもしれませんが、まだ私どもとしてはそれだけの自信がないということでございます。
  300. 渡辺武

    ○渡辺武君 西ドイツもそうだろうと思うのです。特にアメリカやイギリスの場合はまだかなり試行錯誤的なところがあるということは私も承知しております。しかし、これは一つの技術の問題であって、やろうと思えばそういう試行錯誤を積み重ねながらもそういう方向には前進できる。ところで、いまおっしゃったコンセンサスの問題です。たとえば、政府は毎年経済見通しというのを発表しております。これには実質成長率、名目成長率あるいは消費者物価の上昇率等々が一応の政府内部のコンセンサスをもって発表されておる。私どもはこの政府見通しについて別にこれに同意を与えた記憶もないし、今後もこれについていろいろ批判的な立場で検討したいと思っておりますけれども、しかし、日本の支配層が、この政府見通しで一応のコンセンサスを得るという可能性は私はあると思うのです。ところで、そういう点から見てみますと、わが国の消費者物価指数の上昇率、これは政府の当初見通しよりもはるかにこれを超えてきているというのが私は実情だと思うんです。もちろん、経済成長率そのものも大きな乖離を示しております。特に消費者物価指数の乖離は大きいと思うんです。とりわけ昭和四十四、五年ごろからこの乖離が非常に大きくなってまいりまして、数字は詳しく申しません。私はこの一つの原因、いろいろ原因はあろうと思うわけです。一つの重要な原因は、やはりこの間の通貨供給量、日本の場合で言えばM2で見てみますと、実質成長率はもとより、経済の名目成長率をさえはるかに超えて通貨の供給が行われているというところに一つの大きな原因があるんじゃないか。御承知のようにいまの銀行券は不換銀行券、そしてまた預金通貨もこれを基軸にして評価が行われるという状況だと思うんですね。金と兌換できない紙幣同然のものが、経済成長率以前に大量に供給されるということになれば、通貨の面からの物価上昇、つまりインフレーションという問題は当然私は起こってくると思う。理論的にそうだと思う。しかし同時に、日本銀行は、通貨価値の安定ということを主要な任務とする機関だと思うんですね。したがって、その責任を点検するという意味からも、この通貨面からの要因というのは十分重視しなければならぬと思うんです。どうですか、その点どう思われますか。
  301. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 日本銀行は、通貨価値の安定を確保するということは最大の職能でございますので、いまお話のございました点、通貨価値の安定を図るにはどうすればいいのか、マネーサプライについてもいろいろ私は問題点を申し上げましたけれども日本銀行といたしまして決して無関心ではございません。十分に関心を払っているところでございます。ただ繰り返すようでございますけれども、現在までのわれわれのいろいろ過去からのデータを調べましたあれによりますると、目標値をいまここで決めて、それを機械的にやるということには、ちょっと私自信がございませんので、十分内部では検討を続けておりまするけれども、そういう状況であるということを御判断いただき、御理解いただきたいと思います。
  302. 渡辺武

    ○渡辺武君 くどいようですが、私はいまのわが国での公債大量発行に伴うインフレーションの高進の危険はきわめて大きいと思うのです。したがって、こういう条件のもとでどういうふうにインフレの歯止めをつけるかということは、私は、政府の責任でもあるけれども、同時にやはり日本銀行も重大な責任を負っていただかなければならぬと思うのです。先ほど前川さんおっしゃいましたけれども、やっぱり昭和四十六、七年のあの外貨の急速な流入、これを原因とする外為会計の払い超、四十六年、七年で私の記憶だと合計六兆円を超えたのではないかと思います。その当時、私は当時の日本銀行総裁に、この国会で、こんな通貨の急増があった場合は大変なことになるでしょう、だから日本銀行当局としても、たとえば預金準備率引き上げ等々の措置を講じないとならぬじゃないですかと繰り返し申し上げましたが、その措置はとっていただけなかった。そうして私は、昭和四十八、九年のあの物価狂乱、これがこの過剰流動性を基礎にして起こったのだ、これは否定できない事実じゃないかと思うのですね。そういう意味からしても、通貨面からの物価の上昇、通貨価値の下落これに伴うインフレーションの高進、これは重要視していただきたいと思う。研究するとおっしゃいましたけれども、イギリスのように目標値を発表していない、西ドイツのように目標値を発表している場合もあれば、イギリスのように目標値は内部的につくっているらしいけれども公表しないという措置でもいいんですよ。とにかくやはり何らかの政策的な目標を定めて、そうして当面の金融調整もその方向に沿ってやるというくらいのことはできませんか、どうでしょう。
  303. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 先ほど申し上げましたように、内部的にこの問題に決して無関心ではございません。十分日本銀行の責任として、このマネーサプライの問題は、日本銀行が当面いたしている金融政策の量的な管理、これはおっしゃいますように世界各国中央銀行は皆取り組んでおる問題でありますので、私ども日本銀行もこの問題について当然取り組んでおると考えております。ただ、その内容から、いまの現在の段階では、それではこうだというところまでは申し上げかねるわけでございます。
  304. 渡辺武

    ○渡辺武君 目標値という意味でなくて、たとえば何といいますか、現在どの程度のM2の増加率ならば適切だというふうに考えていらっしゃいますか。たとえば、先日発表された政府経済見通し改定案ですね、これによれば今年度の実質GNPの伸び率は二・二%だと、消費者物価指数の伸び率は一〇・五%、平均で。年度内九・九%、こういう目標が出ているんですが、M2はどのくらいに考えていらっしゃいますか。
  305. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 先生のおっしゃいますその望ましい成長率、許容できるかというので、Mといいますか、マネーサプライを判断すべきだという考え方がまだ確立されていると思っておりません。現にそういう計数ではじきましても、各国の実際の計数は非常に違うわけでございまするので、いまお話の成長率あるいは物価をそのまま足してこの辺だということがそういう計算からはなかなか出にくいと思うわけでございます。私どもはやはりいままでのM2の動きの傾向を見ながら、それが大きく乖離するというところに問題があるんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。それによって、私どもM2がどのくらいになるかということの将来の見通しというのは、これなかなかうまく出ないわけでございますから、試行錯誤を続けながら、そういう作業をだんだんりっぱなものにしていきたいと、われわれの考え方も整理してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  306. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、いま不況で、本当なら物価が下がるはずのところ、これが不況下のインフレということでまだ物価は上がり続けている、この一つの重要な原因も、やはりいまのマネーサプライがこの不況下にも一〇%以上、特に最近の状態を見てみますと、これはあなたのところから伺った数字ですけれども、かなりふえ始めてきている、そこに一つの原因があると思うんですね。しかし、何よりも私申し上げたいのは、繰り返し申しますよ。大量の公債発行によってインフレ高進の危険性というのはきわめて差し迫った問題だと思う。いまは不況下ですから表へあらわれないでしょう。しかし、やがて景気回復とともにインフレーションというのは私は顕在化していく可能性があると思う。こうしてほかの国でもすでに実施に移されているようなインフレ対策の一つであるマネーサプライ規制ということの採用にも消極的だと、まあ積極的のようですけれどもまだそこまではいかぬということですかな。そうだとしますと、国民は一体日本銀行にインフレの歯どめという点で何を期待したらいいんでしょうか。そのときどきの政策ではなくして、具体的にどういう機構を考えていらっしゃいますか、インフレの歯どめとして。その点を伺いたい。
  307. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 日本銀行がいまいろいろの金融調節手段、金融政策を使いまするときに、基礎となる判断の資料といたしましては、もちろんそのときの景気あるいは物価、そういうものが当然大きなかぎになることは、いままでの公定歩合の引き下げをごらんになってもおわかりいただけると思います。私どもの方も物価の安定の大枠を崩さないということを常に眼目に置きながら公定歩合の引き下げについてもやってきたつもりでおります。そのためにいろいろ判断が遅過ぎるとか、あるいは小刻みに過ぎるというような非難も受けましたけれども、しかし、われわれが考えておりまする政策の眼目、大きな目標といたしましては、物価安定の大枠を決して崩さないようにしようということを目標にしておりまするので、日本銀行は決して物価というものを軽視しているというふうにはぜひお考えいただかないようにお願いしたいと思います。  それから、その実際の歯どめはどうするのかということでございまするが、その量的な規制、つまりいま私どもが金融調節手段としてとっております一つ方法に窓口規制というのがございます。市中銀行の貸し出しに対して、ある一定の金額以上は貸し出しを認めないというやり方をとっておるわけでございます。あの貸し出し窓口規制ということも、結局はマネーサプライ、市中金融の信用創造をある一定のところでとめようという趣旨から来ておるわけでございますので、そういう意味で、われわれはマネーサプライというものに、財政もそうでございますが、やっぱり市中銀行の方の信用創造というものに一定の歯どめをつくりたいという考え方を強く持っておる、その点御了承願いたいと思います。
  308. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、やっぱりその点が不安なんですよ。一定の政策目標があるのですね、通貨価値安定あるいはインフレ防止の。そしてその政策目標を達成するために窓口規制等々を運用していくというならば、これは話がわかる。しかし、いま伺ったところによると、そしていままでの日本銀行のやってきたところを見ますと、政策目標としては大企業の高度成長のための成長資金を賄うのだということが中心に置かれて、物価の方は相対的に下位に置かれておると思うんですね。物価を重視するといっても、消費者物価指数よりも、卸売物価指数の方を重視するという状況だったと思うんです。そして事実上の金融調整は、いわば対症療法的な方向でやられてきたというところに問題があるんじゃないかと思うんですね。その点不安なんです。だから、マネーサプライ規制というインフレ抑制のある種の政策ですね、西ドイツなどでは私はかなりの効果を上げていると思うのです。こういうものをやっぱり持って臨む必要があるんじゃないかと思うんです。  現実の問題なでを若干伺いたいと思うんですけれども、先ほど御答弁のあった十二月の日本銀行の金融調整のことですね。私は、これはやはり将来のインフレ要因を蓄積しているやり方ではないかというふうに思います。たとえば、こういうことでしょう。いまおっしゃった、大体公債発行が十二月にどのくらいになるかわからないから、したがって、公債発行分を除いて考えてみると、資金不足は一兆六千億円くらいだ、こうおっしゃった。公債発行があればあるいは二兆円を超えるかもわからない、こういう御趣旨ですね。もし公債発行があって、二兆円の資金不足が出たと。これについては日銀はやっぱりしりぬぐってやらなければいかぬでしょう。その点どうですか。
  309. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 資金不足が出ると申しまするのは、金融市場として資金不足が出るということでございまして、金融機関に資金不足が出るということではございません。全体の資金不足が出る。つまり、銀行券が増発されますから、それに対応する信用の供与をいたしませんと銀行券が出ない。というのは、ボーナスも払えない、預金の支払いもできないということになるわけでございます。十二月の銀行券が出ますのは、ボーナスなり、年末の決済なりのためにみんながその預金を引き出して銀行券を持っていくためにそういうことが起こるわけでございまするから、それに対応する日本銀行の信用の供与ということをいたしませんと、銀行預金の支払いがとまるということになりかねないわけでございまするので、そのしりと申しますか、金融市場全体の不足をそれだけ補っていくと、こういう意味でございます。
  310. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  311. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記を起こして。  前川総裁にごあいさつの機会を失いましては失礼になりますので、ここで一言お礼を申し上げます。本日は御多忙中、本委員会に御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただきありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  暫時休憩いたします。    午後五時四十四分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕