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参考人(
前川春雄君) 大変膨大な
公債が
発行されることになりまして、金融市場に対する影響が、特にこれを消化いたします金融機関に対する影響があることは事実でございます。ただ、いまの金融情勢全般について申しますと、本年度かなりの額の
政府資金が前倒しに支払われる。
国債の
発行は、そういうふうに支払われます
政府資金を調達するために
発行されるわけでございますけれ
ども、その
政府資金は、前倒しということを申しましたけれ
ども、あるいは
大蔵省証券によって調達まずしまして支払われるというものもございます。そういうものが回りに回りまして、金融機関の預金になる、そういうものを対象に
国債が
発行されていくわけでございます。そういうことから、
資金の大体の見当をつけますると、昨年度は年度間を通じまして
資金が不足でございました。六千数百億であったと思いますが、不足でございました。本年度は、そういうふうな、いま申し上げましたような大きな
政府支払いがございまするので、全体の
資金は先ほ
どもちょっと申し上げましたけれ
ども、不足には少なくともならない。とんとんか若干余るかもしれないという
状態であろうかというふうに思います。一方
資金需要の方でございまするが、
経済活動は御承知のように現在
余り活発でございません。そういう
意味で、こういう不況対策と申しまするか、景気刺激対策がとられているわけでございまするが、
企業の
資金需要はいまのところそれほど大きく強いものではございません。
企業経済活動が前向きの
資金需要ではなしに、後ろ向きの
資金需要と申しまするか、滞貨
資金であるとか、そういうものの
資金需要というものがあることは事実でございまするけれ
ども、積極的に
経済が拡大していくのに必要な
資金需要、新たな増産
資金であるとか、あるいは人件費であるとか、そういうものの
資金需要はそれほどまだ大きくないわけでございます。そういう
意味から申しまして、いまの金融情勢全体、これは決して緩んではおりませんけれ
ども、非常に逼迫しておるという
状態では必ずしもないわけでございます。それで、いま申し上げましたように、
資金の循環から申しますると、前倒しに、しかも
支払い先行で
政府資金が支払われてまいりまするので、その
資金が還流いたしてまいりまするのに対応して
国債が
発行されるという順序になりまするから、本年度につきましては、いまの
国債の消化がそれほど困難であるというふうには思っておりません。ただ、先ほ
ども申し上げましたように、
資金が支払われまするのと、それからそれが集まって還流してまいりまする金融機関は、地域により、あるいは金融機関の種別によって必ずしも同じところへ返ってくるわけではございませんので、そこにそごがあることは事実でございます。自然にそういう事態になり得ると思いますが、そういう問題につきましては、あるいは一時的の金融的な困難であるということでございますれば、私
どもの金融政策としてそういうそごをならしていくというのは金融政策の目的でございまするので、そういう調節は十分に念を入れてやってまいりたいというふうに
考えております。
それから、十二月の金融情勢につきまして、どういうことになっておるか、どういう
措置をとったかというお話がございました。季節的に十二月は
日本では大量の銀行券が出る月でございます。そういう銀行券が預金の
支払いとか、あるいは
企業の
支払いというような形で出ていくわけでございまするが、そういう銀行券が
発行されまするのを、何らか金融をしなければいけないわけでございます。
日本銀行の
バランスシートから申しますると、負債の面に銀行券が出ておりまするから、資産の面で何か対応するものがございませんと、その銀行券の増発を賄えないわけでございます。そういう
意味におきまして、
日本銀行が資産の面でというのは、あるいは貸し出しをするとか、あるいはオペレーションをするとかいうようなことが主なものでございます。ことしの十二月の
資金不足は、
国債の
発行額が、実はいま御
審議願っておりまする
特例法による
国債の
発行額が決まっておりませんものでございまするから、全体の
資金不足が幾らになるかということは、その
国債の
発行額、
発行いたしますればそれだけ
政府資金が引き揚げになりまするから、不足がそれだけ多くなるわけでございます、一般金融市場の。それでその
国債の
発行額が幾らになるかわかりませんので、それを除きました残りの不足額だけでも、一兆六千億ぐらいの不足になるはずでございます。昨年は十二月中の不足が、これは
国債の
発行、もちろん
発行されまして、七百億でございましたが、
発行されましたが、それを合わせまして不足額が約一兆一千億でございました。したがいまして、本年度この十二月は
国債の
発行を
考えませんでも、昨年の不足より大きいという
状態になるわけでございます。これに、
国債の
発行額の不足が加わりまするので、まあどのくらいになりまするか、かなり、二兆か、わかりませんが、そういうふうな不足になると思います。これに対処いたしまして、私
どもがまずすでにとりました処置は、債券の買いオペレーションをいたしました。これは十二月の初めでございまするが、額面六千億の債券の買いオペレーションをいたしました。これは大部分
国債でございます。政保債はほんのわずかしかございません。そういう
資金の供給をいたしましたのがまず第一でございます。
それからもう
一つ、これは直接の
日本銀行の
資金供給ではございませんけれ
ども、十一月の十九日から準備預金の率を引き下げたわけでございます。これは十一月の十六日以降実施になりますわけでございまするが、その分に相当する
資金が
日本銀行の準備預金に積み上がっておりましたのが、それだけ積む必要がなくなりまするから、市中銀行に返されるわけでございます。その分が約五千二百億くらいでございますか、ございます。それで、残りは
日本銀行の貸し出しか、あるいは短期の手形の買いオペレーション、こういうもので賄っていくわけでございます。これは十二月から一月にかけますとまたこれ
資金が逆になりまするものですから、全部を債券の買いオペレーション、買い切りでいたしまするよりも、短期の金融でつなぐということの方が適当な分もございまするので、その辺は市中の金融市場の
状況を見まして、あるいは貸し出しでやるか、あるいは手形の買いオペレーションでやるか、そのときどきの
日本銀行の営業局の判断でしております。大体そういうことで十二月の金融は賄いたいというふうに
考えております。