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1975-12-16 第76回国会 参議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十六日(火曜日)    午前十時五十七分開会     —————————————    委員異動  十一月二十一日     辞任         補欠選任      対馬 孝且君     野田  哲君  十一月二十二日     辞任         補欠選任      寺下 岩蔵君     青木 一男君  十二月四日     辞任         補欠選任      戸塚 進也君     藤田 正明君  十二月九日     辞任         補欠選任      上條 勝久君     細川 護煕君      宮田  輝君     迫水 久常君      野田  哲君     浜本 万三君  十二月十日     辞任         補欠選任      浜本 万三君     野田  哲君      迫水 久常君     宮田  輝君  十二月十五日     辞任         補欠選任      細川 護煕君     上條 勝久君  十二月十六日     辞任         補欠選任      柳田桃太郎君     青井 政美君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         桧垣徳太郎君     理 事                 山崎 五郎君                 吉田  実君                 辻  一彦君                 鈴木 一弘君                 栗林 卓司君     委 員                 青井 政美君                 青木 一男君                 上條 勝久君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 中西 一郎君                 鳩山威一郎君                 藤川 一秋君                 宮田  輝君                 大塚  喬君                 寺田 熊雄君                 野田  哲君                 野々山一三君                 吉田忠三郎君                 矢追 秀彦君                 近藤 忠孝君                 渡辺  武君                 野末 陳平君    国務大臣        大蔵大臣     大平 正芳君    政府委員        大蔵政務次官   梶木 又三君        大蔵大臣官房審        議官       山内  宏君        大蔵省主計局次        長        高橋  元君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  松川 道哉君        大蔵省証券局長  岩瀬 義郎君        大蔵省銀行局長  田辺 博通君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十年度公債発行特例に関する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十一月二十二日、寺下岩蔵君が委員辞任され、その補欠として青木一男君が選任されました。  また去る四日、戸塚進也君が委員辞任され、その補欠として藤田正明君が選任されました。  本日、柳田桃太郎君が委員辞任され、その補欠として青井政美君が選任されました。     —————————————
  3. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 審査に入る前に、一言委員長として申し上げます。  去る十一月二十日の大蔵委員会における事態は委員会運営の本旨にかんがみ、はなはだ遺憾なことでありました。責任者としてここに陳謝の意を表します。委員長として今後委員会審議を円滑かつ十分に行うため、委員各位の御理解と御協力を得て公正な委員会運営を行います。     —————————————
  4. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 昭和五十年度公債発行特例に関する法律案議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。大平大蔵大臣
  5. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま議題となりました昭和五十年度公債発行特例に関する法律案につきまして、その提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  昭和五十年度におきましては、景気停滞等により、租税及び印紙収入並びに専売納付金が、当初予算に比べ大幅に減少すると見込まれる状況にあります。  現下の経済情勢にかんがみ、租税収入等減少を補い、五十年度予算の円滑な執行を図るためには、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほかに、特例公債発行できることとする等の措置を講ずる必要があります。  このため、昭和五十年度特例措置として、昭和五十年度公債発行特例に関する法律案を提出する次第であります。  以下、この法律案内容について御説明申し上げます。  まず、昭和五十年度補正予算において見込まれる租税及び印紙収入並びに専売納付金減少を補うため、予算をもって国会議決を経た金額の範囲内で、特例公債発行することができることといたしております。  次に、租税収入等減少を補うという特例公債性格にかんがみ、租税収入実績等により発行額の調整を図るため、この法律に基づく公債発行は、昭和五十年度出納整理期限である昭和五十一年五月三十一日までの間、行うことができることとし、あわせて、この期間発行する特例公債に係る収入は、昭和五十年度所属の歳入とすることといたしております。  また、この法律規定に基づき特例公債発行限度額について国会議決を経ようとするときは、その償還計画国会に提出しなければならないことといたしております。  なお、この法律に基づいて発行される公債も、少額国債の利子の非課税制度の適用を受けることができるよう措置することといたしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますよう御願い申し上げます。
  6. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 野田哲

    野田哲君 まず私は、大蔵大臣公債政策基本的な性格について伺っておきたいと思います。  国に必要な資金調達をする方法として、言うまでもなく第一は租税収入、それから事業収入、そして公債という三つの分野に分かれているわけでありますが、この租税収入公債の場合には性格的に非常な違いを持っており、しかも、相互に非常な関連を持っております。租税基本的な特徴といたしましては、政府として必要な資金調達をするために個人、法人の実質所得資産を公権力によって強制的に削減をすると、こういうことにあると思うんです。同時にそれは、財政年度主義によって納付された租税がその年度において予算を通じて国民はどのような公共サービスを受けることができるか、あるいはまた、国民としてそれを知り得ることができるわけであります。また、議会審議を通じて間接的ではありますけれども租税のあり方の是非について、あるいはその租税によってどのような公共サービスが国を通じて提供をされるか、その是非について意思表示をすることができるわけであります。これが財政民主主義基本であると思うんです。ところが公債の場合には、当該年度においては国民は何らの資産提供を要求されることはない。しかし、その年度に受けた公共サービス負担未来納税者負担転嫁をされる、後々の国民納税として転嫁をされる、こういう特徴を持っていると思うんです。このことは非常に重要な矛盾を持つことになると思うんです。端的に言えば、今年度政策に必要な金を、現在参政権も持っていない、そして将来の所得の予測もつかない、現在高等学校へ行っている生徒あるいは中学生とか小学生、こういう人たちの将来の負担をいま課することになると思うんです。私は、公債という政策については、租税との関係においてはそういうふうに理解をしておるわけでありますけれども、この公債政策基本的な持っている性格についてまず大蔵大臣の所見を伺っておきたいと思うんです。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり、租税その他普通の歳入の場合、今日の国民が今日の必要に応じて負担する性格を持っておりまして、そうした普通歳入によりまして財政が賄われてまいることが財政の本然の姿であると思うのであります。しかるに、公債の場合は、まさに御指摘のように将来の国民負担において今日のわれわれがその歳出の便益を受けるわけでございますので、これは財政の本来の姿であってしかるべきものとは思いません。野田さんの御指摘のとおり考えております。ただ、今日、租税その他普通の歳入によりまして財政を賄ってまいる方法をとった場合におきまして、今日の経済を支え、あるいは雇用状態を支えてまいるということを、中央、地方を通じての行財政の水準を支えることが今日の状況に照らしてむずかしいという場合におきまして、やむを得ず一時公債政策を採用さしていただくということは、やむを得ない方途として財政当局として考えてしかるべきことであろうと思いますが、しかしそれは、本来の歳入方途でないわけでございますので、これには厳重な各種の歯どめを加えた上で実行さしていただき、そしてそれが、そういった状態からなるべく早く脱却する方途もあわせて財政運営基本にとってまいるという前提で公債政策は採択されるべきものと私は思います。
  9. 野田哲

    野田哲君 重ねて公債の財務的な性格について伺っておきたいと思うんです。  先ほど述べましたように、公債の場合には租税先取りという性格を持っております。しかし、公債収入の場合には租税収入と非常に根本的に違う性格を持っておると思うんです。  まず第一に、租税の場合には無償であり強制的である、こういう性格を持っている。公債の場合には有償であり任意的な性格を持っておる、そのために資金調達が非常に安易に行われる、こういう性格を持っていると思うんです。  それから第二番目には、租税の場合には、その性格から短期巨額収入調達をすることは非常にむずかしい。公債の場合には、任意であるがために短期巨額収入調達でき得る。そのためにしばしばこれが安易に運用される傾向にあって、戦争中は戦費の調達にしばしばこの方法が用いられたし、また、わが国の場合でも諸外国の場合でも、景気刺激策にしばしばこの制度が利用されてきておるところであります。  三つ目には、公債租税先取り、前取りという性格を持っているために、国民負担を非常に長期にわたって分担させるという性格を持っていると思うんです。そしてまた、この負担を階層間の負担関係についても変化をさせるということができるという性格を持っていると思うんです。つまり、現在必要な資金調達する場合に、税によって調達をしようとする場合には、高額所得者低額所得者の場合の税の負担割合、これは現行税制度によって行っていくしかないと思うんです。ところが、これを公債による場合には長期にわたって国民負担を分担させるわけでありますから、現在の税制度による国民負担割合とは、これを将来変化をさして負担をさせるということが手段、方法として可能だと思うんです。こういう性格を持っておると思うんです。  それから四つ目には、租税の場合には、民間消費貯蓄と両方を減少させるという性格を持っておりますが、公債の場合には、民間貯蓄だけを削減させる、こういう性格を持っておると思うんです。しかし個人消費のほとんど期待できない、そのほとんどを市中金融機関から調達をしなければならない。そして一年後には白眼の買いオペレーションということになってくると、通貨の過度の膨張という問題を当然招いてくる。インフレの進行と、こういう別の要素が加わってくると思うんです。こういうふうに公債の場合と租税の場合とでは、その性格に非常な違いがあるのではないか、こういうふうに思うんです。で、先ほど大蔵大臣は、本来のあるべき姿ではないけれども、一定の歯どめをしながらやむを得ずこういう方法をとらざるを得ない、こういうふうに言われたわけでありますけれども、将来的にはいま言ったように、やはりこれを公債という形でいま必要な資金調達をして、将来これを国民負担に分担をさせるということになってきた場合には、これを租税による場合と公債による場合と、国民負担性格も非常な違いが出てくると思うんです。そういう租税公債の場合の性格の違い、こういう点について大蔵大臣はどういうふうに認識をされているか、その点を引き続いて伺いたいと思うんです。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり、公債の場合と租税の場合、納税者気持ち、あるいは公債に応募した者の気持ちには大変な相違がございまするし、またこれを、この歳入を得る政府の側におきましても、仰せのとおり租税の場合よりも公債の場合安易につきやすい傾向があるということも御指摘のとおりだと思います。また今日の負担未来に残すわけでございますから、今日の国民所得構成と将来における構成変化が見られるわけでございますので、所得の税を通じての再配分は公債という撹乱要素が入ってまいりまして、今日定かに、今日の租税政策で見通せられるようなものではないこともまた御指摘のとおりだと思います。さらにこれは消費に対する関係から申しましても、また大きくはインフレーションとの関係におきましても、確かに税の場合と公債の場合におきましては非常な相違がありますことは野田さんの御指摘のとおりだと思うのであります。したがいまして公債政策は、そういうやすきにつきやすい傾向が伏在しておるだけに、よほどの注意を加えてまいらなければならぬことは申すまでもないことだと思うのでありまして、まさにあなたの言われる税との性格相違というものを踏まえてから、公債政策の立案と遂行に当たるということでなければいけないと存ずるのでございまして、御指摘の点につきましては、全く私ども同感に存じまするし、そういうことを十分念頭に置きまして、公債政策運営に当たらなければならぬと考えます。
  11. 野田哲

    野田哲君 先ほど来の私の租税公債性格の違いということ、そして公債の場合には税の先取りという性格を持っており、それを後々に長期にわたって国民負担分散をさせていく、負担分散をさせていく、こういう性格を持っているとするなれば、当然この発行計画に当たって償還計画というものが具体的に明らかにされなければ妥当性を欠いてくる、国民には十分な納得を得ることができない、こういうふうに思うわけであります。昨日の本会議での質問の中でも償還計画について全く具体的な内容が提示をされていない、お答えになっていない、こういうふうになっておりますので、この際大蔵大臣からこの償還計画についての具体策、これをどう考えておられるのか、この点をまず伺っておきたいと思います。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) きのう本会議大塚委員を初め本院の先生方からの御質疑を受けた中で、いま野田さんが御指摘になられる償還計画ということが今日の場合あいまいである、確立していないという御指摘があったのであります。そこで、やや形式的なことにわたって恐縮でございますけれども、私が申し上げたのは、償還計画というのは今度われわれが発行しようとする、御承認を得たならば発行さしていただこうとしておる公債は十年満期の公債でございます。したがって、十年たてばこれは償還するわけでございますので、昭和六十年に、そして一括して発行するわけでございますから、分割して償還するという仕組みになっていないわけでございます。一括して発行して、一括して償還するんでございますから、償還計画というのは昭和六十年に現金償還いたしますということが一番正確な答えになるわけなんでございます。ところが、皆さんのおっしゃる意味はそうではなくて、その場合に、償還財源積み立てというか、用意というか、留保というか、そういうものが年次別にどのように政府は用意されるのかという意味償還計画という言葉を使われておるように思うのでございまして、私どもが言っている償還計画言葉の使い方がちょっと変わっていますので、その点ちょっと御理解得ておきたいと思うのでございます。それは償還財源をどのように年次別に考えるかということでございまして、いまの御質問はそのように受け取ってお答えいたしたいと思います。  それで、私どもそれを、これは六十年に全額償還をするという場合におきまして、まず考えられますことは、そのときに借りかえて返すということも可能なんでございますけれども衆議院で私どもがお答え申し上げてまいりましたように、私どもこの公債特例公債でございまして、なるべく早く償還し尽くしたいと、そして特例公債から早く脱却したいと存じておりまするので、この公債は借りかえいたしませんということを申し上げておるわけです。したがって、補正予算説明におきましても、建設公債の場合には借りかえということが書いてございますけれども、今度の場合は書いてございません。それは借りかえしないということでございますので、そういたしますと、どうしても昭和六十年までには耳をそろえてそれだけの金の償還財源を用意しなきゃならぬわけでございます。  そこで政府は、そのために、まず減債制度として現在ございまする百分の一・六の定率積み立てというのがございますが、それはそれとしてまず充てます。それから第二に、剰余金——普通建設公債の場合におきましては二分の一を国債整理基金特別会計繰り入れるということになっておりますけれども特例債償還までは剰余金全額繰り入れるということにいたしたいと存じておるのでございます。それから第三に、これが一番大きなアイテムでございますけれども、必要に応じて予算繰り入れをいたしますということを言っているわけでございまして、この三つ方法によりまして償還財源国債整理基金特別会計積み立てておきまして、六十年の償還に事欠かないようにいたしたいと考えております。  問題は、第一の定率繰り入れば問題ないわけでございますけれども、第二の剰余金でございますが、特例公債を出さなきゃならないようなときに剰余金が出るような財政でないわけでございますので、これを発行する、特例公債発行している間は私は剰余金に期待はできないと考えます。だから、特例公債を出さなくなったときから、第二の全額繰り入れば働いていくべきものと考えております。  それから第二の問題は、第三に申し上げましたこの予算繰り入れでございますが、この予算繰り入れが、皆さんがおっしゃるのは、ちゃんとこのような計画積み立てておいて、六十年には心配ないように、償還財源はちゃんとこのように積み立てられるから心配ないということを明かし、証明しなさいという趣旨だろうと思うのでございます。そこが、政府の方で申し上げておりますのは、そういうことにいたすためには、これから先の財政展望というよりは財政計画が、六十年までの間の計画が立っていなければならぬわけでございまして、それでこれだけの償還財源を何年度にはこれだけこの公債償還財源整理基金特別会計繰り入れますということをお約束しなければならぬわけでございますが、そうなりますと、財政計画というものが立たなければなりませんが、実のところ、両院で私が御説明申し上げておりますように、内外の状況が非常に流動的でございますので、いま来年度予算の姿がまだはっきりつかめないような状況でございますが、十年先までの財政計画を持って繰り入れ年次表というようなものまで用意せよと言われてもそれはちょっとかたしを強いる、それができれば非常に幸せのことでございますけれども、それは非常にむずかしゅうございまするので、それは勘弁してくださいと、それでいま言った三つ繰り入れ方法によりまして、必要な資金は、償還財源積み立てていくようにすることを財政運営のもう基本の、体を張った原則としてわれわれは当たるのでございますから、その点は政府を御信頼いただけますまいかということを衆議院からずっとお願いをしてきておるのでございますが、いまだにまだわかったと言っていただいていないのでございます。  そこで、私はきのう大塚さんにお答え申し上げたのは、しかしそんな繰り言ばかり暗い表情で話しとってもいけませんので、これはやっぱり計画と言わなくても、展望というようなものは政府としてもできるだけ考えてみる必要があろうと、で、五十一年度を起点といたしまして、政府もいろいろの長期計画をいま企画庁を中心に考えておるわけでございますから、それは財政を外してそんなことは考えられないわけでございまするので、かたがたそういう長期計画とその関連も考えながら、財政計画とまでまいらんけれども一つ展望というようなものをできるだけ長期計画策案との関連も考えながらひとつ工夫してみたいと存じておりますが、これはしばらく時間をかしていただきたいと、漸次そういったものをやり遂げて御審議をいただくようにしたいものという意味の御返事をきのう申し上げたわけでございます。  大変長くなりましたけれども、考え方といたしましては、償還計画償還財源積み立てということとはちょっと話が違うということ、償還財源につきましては、いま申し上げましたように、三つ方法をいま考えておると、それの数字的な計画はむずかしいが、展望というようなものにつきましてはできるだけまあひとつ考えてみたいと考えておりますということをとりあえずのお答えとしておきたいと思います。
  13. 大塚喬

    大塚喬君 ただいまの野田議員質問関連してお尋ねをいたします。  きのう、利も償還計画について本会議大蔵大臣総理お尋ねをしたところですが、大変言葉の上で説明あったことは、おっしゃる意味のことはわかります。しかし、具体的な内容で、ことしこの特例債発行するものは二兆二千九百億円、これを昭和六十年度に支払いをすると、こういうことになっておるわけですね。その償還のための特別会計、これにどう財源積み立てていくかという、そこのところが一つ懸念になるわけですが、(1)の年度当初の国債の一・六%の定率繰り入れ、これは必ずやると、それから二番目の剰余金の二分の一はこの特例債発行する期間は、それは無理だと、第三は予算繰り入れと、こういう三つの柱で償還をするんだという言葉大臣答弁をされておるわけですが、二兆二千九百億円の特例債を十年間で返済しなければならない義務を負うわけですから、その財源積み立て計画というものも十年間に一体どれだけの額を三つの柱でそれぞれ繰り入れていくと、特別会計に。だけれども、その一年間分の二千二百九十億円、それを昭和五十一年度もその三つ柱——当分の間は二つだけになるだろうと思うのですが、それで償還財源積み立てするんだと、その一年間の三つ合計が二千二百九十億になるのかどうか、あるいはそういうのを一切、ずっと昭和五十九年までは一切積み立てもしておかないで、三木総理がやっている間は後の者に責任をかぶせて、自分は一つ財源をそこへ積み立てておかない。大平さんが大蔵大臣やっている間は、大変いま窮屈だから、そういうふうなことはやらないという方針なのか。毎年その返還財源については十分の一の二千二百九十億円を、三つの、ともかく合計としてずっと特別会計積み立てていくのかどうか、そこのところがひとつはっきりしないわけです。そこのところを大臣から明確に答弁をいただきたいと思うわけであります。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国債大塚先生も御案内のように、国の信用が土台になって発行されるものでございます。内国債であれ外国債であれ、日本国の信用を背景にして発行されるものでございます。日本国の信用というのは、私から申し上げてはなんでございますけれども、私は相当高い信用を持っておると思うのでございます。たとえば、戦後初めてポンド債、ポンド建ての外債の借りかえをロンドンの市場でやったことが十年ほど前にございましたけれども、どの程度これは応募があるかと思って、私どもも、私、当時外務大臣をしておったわけでございますけれども、皆興味を持って推移を見ておりましたら、二十八倍の応募があったわけでございます、ニューヨークの市場、フランクフルトの市場、ロンドンの市場を通じまして。私は、第一流のやはり信用を持った国でございますので、六十年に私どもが完済いたしますということ、そういう計画を狂わしたことが全然ないんです、明治、大正、昭和をかけましてね、日本の政府というのは。だから、そういう高い信用を享受しているわけでございますが、わが大蔵省が、六十年には、これは耳をそろえて現金償還いたします、借りかえを行わずに、という不退転の決意をしたことは、もう釐毫も疑うことなく御信頼いただきたいと思うんです。世界中がそれを信頼してくれると思うんですよ。それで大塚さんもぼくは内心御信頼をいただいておると思うんでございますけれども、ただしかし、国会議員のお立場といたしまして、二兆二千九百億というような大金でございまするし、年別にすれば、その十分の一ずつは少なくとも積み立てておかなければいけないじゃないかという御注意はよくわかるわけでございます。ところがそれをやるためには、これはもうこの際、これだけの、ことし出した特例債償還財源でございますといって別建てにいたしまして積み立てていくということが、不可能ではございませんが、従来そういうことをしないで、われわれは減債制度を持ち、いままでこれを運用して高い信用を享受してきたわけでございますので、今度の場合もそれでひとつ御承認をいただきたいというのが、われわれのお願いなんでございます。しかし、巨額国債になりますし、また特例交付国債でございますから在来のやり方ではいけないということで、剰余金全額繰り入れ、それから借りかえもしない、それから予算繰り入れ方法も考えておりますということを、特に国会にお約束を申し上げたわけなんでございます。それで、まず私は御信用をいただきたいと思うんでございますが、それだけでもなかなかいままでの論議を通じまして御信用いただけませんので、きのうあなたにお答え申し上げましたように、また財政展望というような問題につきまして、これから先相当長期にわたって日本の財政はどういうような、ひとつ姿をもって推移していくものであろうかということを御審議の材料として差し上げるようにしなければなるまいと考えておるわけでございます。と申しますのは、早い話が、たとえば東京電力が社債を出すときに、五百億の社債をかりに出す場合に、おまえさんの方は、これ毎年毎年これだけの積み立てをやっておるかなんて聞く人はだれもいないんです、東京電力でさえ。日本国は東京電力より信用があるはずなんですね。東京電力の場合は毎年毎年おまえの方はどれだけの電力の収入があって、どれだけの人件費を払って、どれだけの燃料を払ってこういう収益状況になって、これからこれだけの社債のその償還財源を積んでおくから、それだからおまえの社債は買ってやろうなんというんじゃないんです。東京電力というのを、木川田さんが率いるあの電力というのは、あれはそれだけ信用して皆が買っておるのですよ。ところが日本国の場合は、東京電力よりずっと高い信用があるんだけれども、これだけの財力がないと、これは発行することはどうかと言われるのは、いささか日本国に対して酷じゃないかということなんでございます。恐らく私は、だからあなたは、この国債発行という技術的な問題でなくて、日本国の財政自体については、こういうたくさん公債も出しているが、大平君、これは将来どうなるんだろうかというような、つまり国会議員としての財政論を、財政展望という点についての関心を持たれているがゆえに、皆さんも同様であろうと思うんですけれども、だから、それについての財政論議を、ぼくは衆議院でもずっとやってきたんだけども財政論議なんですね。公債発行償還なんということは、社債の発行、金融債の発行よりずっと簡便にあってしかるべきだと思うんです。金融債や社債がいろいろな償還財源積み立てがどういうように行われておるかなんという点、だれもそんなこと求めておられない。国に対して求められるというのは、ぼくはおかしいと思うんだけども、それはともかくとして、国会でそれが問題になるというのは、財政が将来どうなるんだろうかということ、全体としての国会の御論議だろうと思いますので、そういう意味では私もよく理解ができますので、いま非常に流動的で、内外の状況が非常に不安定なときでございますから、的確な材料、数字を出せといったって、それは無理でございます、しかし、できるだけ展望というようなものができないかというような点について、せっかく勉強しています、それで御審議に供したいということを申し上げておるんでございましょうが、御理解を賜れば大変幸せだと思っています。
  15. 大塚喬

    大塚喬君 いま大臣から答弁いただいて、その日本の国債は大変信用あるんだと、そのとおりだと思います。それから、昭和六十年に必ず返す、踏み倒しはしない、こういうおっしゃることもわかりました。  で、いま東京電力の社債の例を引いて、大臣答えをされたわけですが、私はそれは大変筋違いと申しますか、国会審議について、大蔵大臣ともあろう、大平さんともあろう方が、そういう論議をここに引き合いに出されるということは、大変迷惑で、当を得ない私は説明のようにお受けをいたしました。首を振っていらっしゃるようですが、私は率直にそう思います。なぜかと申しますと、この特例債発行ですね、ことしは二兆二千九百億円です。ですが来年は、新聞の報道などでは七兆円、そしておとといかの新聞に出ておりました大平派の会合では、大蔵大臣に十兆円の国債を出せ、こういうことを進言するというような、そういう報道も拝見いたしたところであります。そうしますと、来年も赤字だ、この国会特例債審議をお願いいたします、再来年も赤字だ、また特例債審議をお願いいたします、再再来年もお願いします、こういうことになって、六十兆円から七十兆円もの国債が累増を見込まれる、こういう状態になったときに、この国会審議責任として、ことしは二兆二千九百億円だけれども、ともかく三つ特別会計積み立て基本として一年間に十分の一の二千二百九十億円をその三つの窓口から積み立てていってこそ、初めてことしの二兆二千九百億円については、この国会審議国民にその責任を負った形の審議ができるわけだと思うわけです。で、大臣はさっきの三つの柱のうちのいわゆる剰余金の二分の一繰り入れば、この特例債発行する間はそこの繰り入れをやめる。そうすると、(1)の年度当初の国債総額の一・六%の額を繰り入れる分と、(3)の予算から入る分と、この二つの方法大臣が当分の間はその基金を考えられておる。しかしながら、その計画が最後の五年間に二兆二千九百億円の元金を一挙に積み立てるものやら、あるいは昭和六十年度になって、それまではこの二兆二千九百億円分の返還の資金を全然考えないでおいて、信用しろ、信用しろと言っておいて、そして六十年度になって二兆二千九百億円、それだけならばまだ問題が少ないと思うわけですが、これから毎年のようにこの特例債発行が繰り返される、こういう状態の中でいま大臣がおっしゃったような答弁では、われわれがここでこの法案の審議について責任を持った審議を、ともかく後代にツケを回すわけです。その後代にツケを回すのに、それらの人が元金も金利もどうなっているのか、全然わからない、こういうような審議の仕方は国会審議としてはとるべきものではないと私は考えて、重ねてこれらについて、ともかく年度別に、どういう方法三つ方法のうちのどの方法でも、いろいろそのときによって方法はありましょうけれども、割合はありましょうけれども、原則として二千二百九十億円の返還資金だけははっきりと確保するんだ、こういうことをやっぱり国民に明示をすべきだと私は思います。重ねて大臣答弁をお願いいたします。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御趣旨はよくわかりますけれども、二千二百九十億円を積むということは、少なくともこの特例債発行しておる間積むんであれば、特例債にさらにそれだけの金を多く発行させていただいて、またこっちに積み立てるということになるんです。つまり、だからそうなるとするなら、特例債を減らした方がいいんですから、特例債発行している間は、予算繰り入れとか、あるいは剰余金全額繰り入れるとかいうふうなことは私はそれに期待を持つことは非常にむずかしいということを先ほども申したわけでございまして、特例債から脱却した暁で剰余金全額繰り入れとか、あるいは予算繰り入れとかいう方法で満期までの間には償還財源はつくりますというのがいま政府が申し上げておるところでございます。ことしから早速二千二百九十億円ちゃんと積んでおけと言うんなら、いま私どももうぎりぎり最小限度の特例債発行をお願いしているわけでございまして、大塚さんの言われることだったら、また二千二百九十億円特例債をふやしまして発行さしていただいて、そいつをまたそれより二千二百九十億円を積む——国債整理基金特別会計の方へ繰り入れるというようにしないといかぬわけでございますが、それはむだなことじゃないかということで、そういうことはいたしていないのであります。いずれにいたしましても、国全体の予算といたしましては、ことしも一兆円ばかりの国債費というものを予算の中で国債の利子と、それから元金の償還財源として歳出に計上さしていただいておるわけでございます。財政運営全体といたしまして借りかえは行わずに、六十年までにはきちんと満額現金で償還できるようにいたしますということを日本政府がともかく厳粛にお約束をいたしておるわけなんでございますから、それは危ないじゃないかなんておっしゃらぬで、そこは信頼していただかなければ、恐らく私は、もう全世界だれも信用してくれると思うんですがね。そういうことはごくあたりまえのやり方じゃないかと思うんでございまして、ただ、冒頭に申しましたように、しかしとんなにたくさんの特例債を出さないといかぬということはよくないことでございますし、またことしばかりでなく、来年も相当の特例債に依存せにやならぬということでございまするし、したがって、日本の財政全体としてあなたが国会議員のお立場でいろいろ御心配をいただくということは私は非常に当然なことでございまするので、財政運営の問題として将来の展望についていろいろ御心配になられることにつきましてはよく理解できるわけでございます。その御心配にこたえて、できるだけわれわれも将来の展望はクリアにしていくように努力をして御審議にこたえなけりゃならぬと考えておるわけでございます。償還計画につきましてはあらましそういう考えでおることでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  17. 大塚喬

    大塚喬君 大臣のまあ苦しい答弁ですが、その考え方というのは大変綱渡りのような危険なものがあろうと思います。  で、来年度はともかく、私きのうも申し上げましたように、利子の支払いだけで一兆八千億。そして大臣答弁の中には特例債発行する期限というものの見通しが全然考えられておらない。仮にこれが三年続くのやら五年続くのやら、あるいは場合によって七年も八年も続くような、そういう事態は国家のために大変不幸なことですけれども、ないということには、いまの大臣答弁からはいつまで続くというまことに明確な答弁が考えられないわけであります。で、いま大蔵大臣の所信として、公債発行はこの一両年度にとめると、こういうようなお話があって、その後はその二兆二千九百億円について均等に、七年なら七年で基金を積み立てて、特別会計積み立てしておく、これを返還の基金に当てると、こういうようなお話でもあれば、そこで話がわかるわけですけれども、全然盲めっぽうな、いつまで特例債が続くのか、その間は基金の積み立てばしないと、こういうようなお考えでは危なくて審議にならないじゃないですか。どうなんです、これは。そのほかにも後、来年以降の特例債がずっと入ってくるわけですから、最後にいって、みんな最後のどん詰まりへいっちゃってもう償還間違いなく踏み倒しをしないで払いますと、こう言っておったって、現実には支払いができないんじゃないんですか。どうなんです、これは。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 特例債発行中は、特例債をできるだけ少なくしなけりゃいけませんので、特例債償還に必要な積立金まで特例債によって調達するということはいたさないというのが政府の方針でございます。  第二の問題は、今後特例債はいつまで発行するかというめどはまだはっきりしないじゃないかと、仰せのとおりでございますけれども、五十一年度、いまちょうど予算の編成中でございますけれども、五十一年度は大変残念ながらまだ経済の立ち直りが十分でございませんで、思うような歳入が期待できないわけでございまして、明年は依然として私は相当巨額特例債に依存せざるを得ないと考えております。しかし、ことしやや経済展望も内外若干明るさを加えてきておりますが、歳入というのは若干それからずっとこうタイムラグを置いて出てまいりますので、私は五十二年度から少なくとも特例債を減らすという方向はとれるのではないかと思っておりますが、どういう金額になるかというようなところまでまだ国会に対して申し上げる自信はないわけでございます。いずれにせよ経済あっての財政でございますので、とりあえずいま財政といたしまして経済の立ち直り、経済の回復を財政の力で図りまして、それで将来の歳入を培う基礎をつくっていかなければならぬわけでございまして、なるべく早く特例債からの脱却の日を迎えたいということで精いっぱい努力をしておるところでございます。そんなに長く御心配をかけるつもりはないわけでございますが、正確にいつからいつまで、どれだけということになりますと、国会での御質疑でございますので、自信を持って申し上げる数字が固まらないとなかなかお答えできませんのでございますけれども、方向としてはそういう方向で努力をいたしておるところでございます。
  19. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 関連。  大臣ね、いまつまり国会責任を持って答えられるようなものがないと、こうおっしゃいますね。ですけれども、この国会は会期中に何とかかんとか、こう言ってね、会期終わった後に五十年度予算編成と、こう言っているわけでしょう。あなたがおっしゃったかおっしゃらないかは別として、新聞紙上で七兆か八兆円を来年度やっぱり赤字公債を見込まなければ五十一年度予算歳入の見込みが立たない、こういうことが言われているわけでしょう。そうしますとね、かなり大蔵省ではこれは煮詰めていることになりますよ。いまの二兆三千億の赤字公債発行と来年度の赤字公債発行と、これは無関係じゃないわけですよ。ですからね、せっかくいまここで特例審議中ですからね。それはラウンドナンバーまではっきり申し上げろとは言いませんけれども、来年度はどうなるのか、来年度でしからば赤字公債一切発行しなくてもよくなるのかどうか、こういう点だってやっぱり明らかにしないと、これは審議できないんじゃないですか。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) だから、いま申し上げましたように、経済の立ち直りがはかばかしくございません。生産、出荷が若干回復の足取りを見せてまいりましたけれども、これが歳入にどう響いてまいりますか、ずいぶん後にならないと出てまいらないわけでございますので、来年の予想といたしましては、今年度の当初予算でわれわれが見積もりました歳入予想額を相当下回った歳入しか来年度においては期待できないのではないかとわれわれは考えております。したがって、吉田さんが御指摘になりましたように、相当巨額公債に依存せざるを得ないわけでございます。ことし二兆二千九百億の特例債をお願いしなければならなかったわけでございますけれども、来年度はこれより少ない公債で済ましたいといろいろ努力をしてみておりますけれども、非常に至難な状況でございますことを御報告申し上げておきたいと思います。ただ経済の回復が来年において相当期待できるわけでございますので、明後年からはこの特例債発行額は減額していくことが私は可能でなかろうかと考えております。
  21. 野田哲

    野田哲君 いまいろいろ説明があったわけでありますけれども、これは全く核心に触れた国民が納得するようなお答えになっていないと思うんですよ。大平大蔵大臣は、日本国を信じなさい、私を信じなさい、こう言われるわけでありますけれども、これは二兆とか三兆とかで、だれも国民は日本国がつぶれるとは思っていないのです。問題は、これが将来国民にどういう負担になって振りかかってくるか、これが不明確だから、そこのところを一番知りたいわけなんです。ことしの場合で言えば、今回の特例公債二兆二千九百億、それにこの建設国債の追加一兆一千九百億ですか、今度の補正予算で三兆四千八百億円という新たな国債発行を予定をされているわけですから、今年度だけで五兆円を超しておるわけですね。そしてしかもいま大塚さん、吉田さんの方からも言われたように、新聞ですでに昭和五十一年度については七兆円を超えるものが予定をされているということが報道されておる、あるいは大平派の会合もあった。それから通産大臣は十兆円以上、こう言っておるわけでしょう。そうすると、五十年度と五十一年度で、いま新聞に報道されているような形が実際行われるとすれば、十数兆円ということになってくるわけでしょう、二年度で。これは国民一人当たりにすれば十万円を超える金額になるわけです。四人家族とすれば、四十万円ないし五十万円のものが将来国民負担という形で決定されるわけなんでしょう。いろいろいまこの償還財源についての三つ方法説明ありましたけれども、しょせんはこれはやはり国民租税という形で負担をするわけですよ。私、先ほど公債税制度との関連についての性格というものを大臣にも指摘をして、伺って、そのことについてお答えがあったわけです。これが租税で、いまどういう租税をもってこの必要財源に充てるかということで税法を審議するのであれば、それなりに国民は自分にこういう負担がかかってくるということがわかるわけでありますけれども、いま特例公債という形で、将来国民にどういう負担になってかかってくるかということがかいもくわからない状態の中で、日本を信じなさい、大蔵大臣が体を張るから信じなさいと言ったって、これは国民は信じるわけにいかないんですよ。ですから、いま大塚さんなり吉田さんからもそれぞれ指摘があったように、一番問題はこれからの財政がどうなるかということを心配をするわけであります。大臣自身も財政展望を持ちたい、そのためには時間をかしてもらいたい、こう言われておるわけですよ。ですから、私どもはやはり財政展望、そして年次別償還財源をどう十年間の間に準備をしていくのか。そのためには一体国民の税負担はどうなるのか。こういう点をここで具体的に明らかにされなければ、私たちが安易に金額だけ、ああ、さようでございますか、それだけの金額が今年度必要なんですかということで、これを簡単に通しても、国民にはそれによって新たな大きな負担が残されるわけなんですから、その点をやはり国会審議の場で十分解明をしておくことが、この大蔵委員会での審議の任務であると思うのですよ。そこのところをもっと具体的に説明がなければ、そこから先の審議が進まれないのじゃないですか。こういう点を私は大蔵大臣に聞きたいのです。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せになること、一々ごもっともなんでございまして、私もそのとおり考えております。ただ今日の場合、公債をこれだけ、こういう姿で発行することが是か非か、もし発行しないで済ますことができれば、これは一つの大きな選択の、そういう選択の可能性がございますならば、それは確かにりっぱな選択だと思います。けれども、今日それではそういうことを、経済状況を考えてみた場合に、歳入歳出にわたりまして、非常にラジカルな改革を施して、歳入については増税を、歳出については思い切った削減をというようなことがいまやれるかというと、私はそういう時期でないと思うのでございまして、したがって、政府の選択は公債を出すことがいいか悪いかという選択の問題ではなくて、これは、この際は公債を出さざるを得ないという判断をいたしたわけでございます。それが第一点でございます。  第二点は、しかしながら、しかしそれは異例中の異例の措置でございますし、こんな状態をいつまでも続けておってはいけませんので、できるだけ早く公債から、こういう姿の公債から脱却した財政を考えなければならぬわけでございます。仰せのとおり、これは将来国民負担にかかるわけでございます。したがって、これから脱却をするにはどうすべきかという、これからの展望を開いていかなければならぬわけでございます。したがって政府は、それでは何を、どういうことをやっているかということでございますが、第一に、来年それでは歳入についてどういうことを心組んでいるかというと、先ほど申しましたように、思い切った増税を考えて公債を減らすということができないという経済状況でございますが、しかし、経済がもっと立ち直ってまいりますと、本来やはり新しい財源経済に求めなければならぬ時期がくると思うのでございます。そういう時期に備えて現行税制にどういう不都合があるか、どういう不公正がまだ残っておるかというような点を洗いざらい一遍見直しておかなければ、次の財源を考えるにいたしましても、国民の御納得が得られないのではないか、そういう意味租税特別措置を中心といたしまして、いま洗い直しをいたしておるという点が第一点でございます。  それから第二点は、これは将来の税で払わにゃいかぬわけでございますが、国民のいまの税負担は、どのぐらいが適正なものであるかという基本問題につきまして税制調査会で御審議を願っておるわけでございます。どういう税金をどうするかというような問題までまだ御相談をいたしてないわけでございますけれども、現在、昭和四十八年の数字でございますけれども租税負担率、日本の場合は一九・二%、アメリカの場合は二八・五%、英国の場合は三九・六%、ドイツの場合二九・五%、フランスの場合二七・四%、こういう先進国の中で私は日本は一番低い状態にございまするし、社会保険の負担も一番低い状態でございます。ございますが、しかしこういった点、もう一度権威のある学者などに御検討をいただいておく必要があると存じて、この公債政策から早く脱却するには新しい財源をどの程度どういう方面に求むべきかという場合の基本問題として、租税負担率はどうあるべきかという点をまず十分の検討を願っておくというのが、いまわれわれがなすべき仕事ではなかろうかと考えておるわけでございます。これもこういう公債政策から早く脱却したいための用意をいろいろ考えておかなければならぬと存じておるからでございます。  それから第二の問題は歳出でございますが、今日中央、地方を通じての行政、財政の水準を福祉を初めといたしまして落とすべきでないと、歳入から考えますとうんとがまんしてもらわなけりゃならぬ状況でございますけれども、そういうことをいたすべきではないと存じて、私ども歳入の大きな欠陥にかかわりませず、中央、地方の財政計画はそのまま実行いたしておることも野田さんの御案内のとおりでございます。しかし、こういう財政事情があるし、こういう過大な公債に依存しておる財政であることは忘れてはならぬわけなんでございまして、歳出面につきましても相当厳しい洗い直しをいたさなければならないわけでございます。ことしの補正で五百三十九億円の節約をいたしたわけでございますが、これも例年の倍程度の行政経費の節約をお願いいたしたわけでございます。  それから、新規にいまからいろいろ御計画を各省からも要求されておるわけでございますけれども、私どもといたしましては新しい政策を実行する場合には、相当このスクラップ・アンド・ビルドと申しますか、古いものをおやめになられてひとつ出直してみてくれぬかという相談をいまいろいろいたしておるわけでございまして、歳出面をできるだけ切り詰めてまいるという努力もあわせていたしておる状況でございます。これとても全部公債政策からの脱却を図らなければならないことでございまするし、いろいろ問題がありまする公共料金につきましても、適正な水準において利用者の負担を求めております。これにはいろいろな御批判もあるし、抵抗もあるわけでございますけれども、これもやはり公債政策から一日も早く脱却しなければならぬために考えておることでございますので、一連の財政政策的努力というものは、すべてあなたの言われる公債政策からの脱却の用意をいたしておる、また今後もそうでなければならぬと私は考えておるわけでございます。それには相当のいまからのタイミングがかかるわけでございますけれども、その間私どもの努力の経過は逐一国会の方の御審議を通じて明らかにさしていただきたいと考えております。
  23. 野田哲

    野田哲君 もう一つ簡単に。  いま、何回も大蔵大臣から説明があったわけでありますけれども、これはやはり抽象的であって、まあ償還計画は先ほど十年たてば耳をそろえて償還するんだということですから、これは償還財源をどう充当していくか、こういうことについての一番問題になるところについての説明にはなっていないと思うんです。  そこで、端的に私は伺いますけれども衆議院大蔵委員会でやはりこの問題がいろいろ議論をされた、そのときに大蔵大臣は、十一月十五日ごろにはこの償還の具体的な計画といいますか見通し、こういうものについて明示をするというふうに答えておられるというふうに聞いているわけなんですが、その点はいかがなんですか。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私、そういうことを申した記憶がないわけでございますけれども、なおよく調べてみたいと思いますが……。
  25. 野田哲

    野田哲君 私の方も調べてみます。
  26. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 午前の質疑はこの程度とし、一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十六分休憩      —————・—————    午後一時二十分開会
  27. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  昭和五十年度公債発行特例に関する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次発言を願います。
  28. 野田哲

    野田哲君 午前中の審議で、いわゆる俗に言う償還計画大臣の言う償還計画という、その十年たったときに耳をそろえて返すという、そういう意味償還計画ではなくて、俗に言ういわゆる償還計画、どういう財源をもってどういう計画で十年後に払う用意をされるかというこの問題について、私、それから大塚委員吉田委員からそれぞれ質問を行ったわけですが、どうしても納得のいく答えが出てこないわけなんで、これはちょっと私どもとしても、この点が明確にならなければこれを了解をすると、こういうことにはどうしてもならないわけです。その点についてはさらに引き続いてわが党各委員から質問が行われることになると思うのです。  そこで、この償還計画にかかわる問題として、別の角度から大臣お尋ねをいたしたいと思うのです。きのうの毎日新聞の夕刊、そしてけさの毎日新聞の朝刊に昭和五十一年度予算編成方針というものがすでに発表されているわけでありますが、昭和五十一年度の税収見込み、これはどういうぐあいになっているわけですか。この点をまず伺いたいと思います。
  29. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) ただいま鋭意作業中でございますが、私どもとしてもちょっと困っておりまするのは、経済企画庁の方の経済見通しがいまだに確定的な数字が参っておりません。その意味で最終的に積み上げを行いますのに、なお数日を必要とするだろうという感じでおります。  非常に大ざっぱな感じだけ申し上げて恐縮でございますが、本年度の補正後の税収が御承知の十三兆四千億でございます。これに対して来年度ある程度の増加はこれは見込まれると思いますけれども、恐らく十五兆台に乗って、そこからどれくらいになるか、その辺は恐縮でございますが、もう少し企画庁の方の数字を見ませんと何とも申し上げられないというのが現状でございます。
  30. 野田哲

    野田哲君 昭和五十一年度公債発行予定額について毎日新聞で報道しておりますが、国債の依存度は二九・九%、七兆二千四百億円台、この国債については個人消化のために中期債、こういうようなことも考慮する、かなり具体的に報道されているわけでありますが、この報道は大体大蔵省でいま進めておる予算編成作業としてはそういうふうに理解をしていいのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  31. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいま御指摘のございました中期債の点につきましては、去る補正予算審議の際の予算委員会、あるいは本法案を御審議いただきました際の衆議院大蔵委員会などの議論において、個人の消化についてもう少し種々大蔵省としても検討すべきではないかという点の御指摘がございました。私ども現在の日本の金融市場のあり方、そしてまた個人の金融資産の持ち方などから考えますと、現在の公債の出し方が最もこれに適合したあり方であるという考えは持っておりますが、しかしながら、これでもって何もあと新たなことを考えないというわけにはいかないであろう、何かないかということで内々検討をいたしておるのは事実でございます。ただ新聞報道のように、いかにもこれがもう決まったかのごとく、あるいはこれのみが唯一の案であるかのごとく書かれておりますが、その点につきましては、私どもの真意といささか異なるところがございます。私どもは可能性の一つとしてこれを検討いたしております。したがいまして、またこの可能性が、これをやることやらないことも含めての可能性の検討でございますので、ただいま御質問にございましたように、五十一年度予算においてこれをやるかどうかという点につきましてはまだ結論を出すに至っておりません。
  32. 野田哲

    野田哲君 私が聞いているのは、この中期債という形をとるのかどうかという、そのことを中心に聞いているんではないんです。公債発行額について二九・九%、三〇%以内にとどめると、これを限度にすると、金額としては七兆二千億円程度、こういう報道がされている、この程度のことはやはり予定をされていると、こういうふうに考えていいのかどうかと、公債発行計画について伺っているんです。
  33. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 先ほど主税局長からお答え申し上げましたように、税収がまだ確定をするに至っておりませんので、したがいまして、歳出と歳入との差額であるところの公債収入について、いまいかほどの金額になるかということにつきましては、確たる数字を申し上げるあれがないわけでございます。ただ午前中の先生の御質問にお答えして大臣から申し上げましたように、来年度については歳出を極力圧縮して公債を減らしたい、公債の金額を圧縮はしたい、しかしながら、ことしの補正後の公債に比べてふえざるを得ないという御答弁がありました。私どもとしてもいま予算大蔵原案の最終の仕上げをやっておりますので、その点を念頭に置いて作業を進めてまいりたいと考えております。
  34. 野田哲

    野田哲君 いま経済見通しがまだ未定であるということで、最終的には大蔵省としてもまだ固まっていない、こういう説明があったわけですが、しかし公にされているのは、二十二日には大蔵省の原案を内示をすると、そして年内編成を行うと、こういうことは公にされているわけですね。二十二日に大蔵省の原案を固めて内示をするということになれば、これはもうあと四、五日しかないわけでしょう。そこで、経済企画庁の経済見通しがまだ定まっていないからということでは、私は日程的に見てどうしても納得をすることはできないんです。この点はどうなんですか。
  35. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 先ほど申し上げましたように、私どもとしてもやや困惑をいたしておるわけでございまして、通常でございますれば、いまごろには多少動くにしても、ほほこの辺かという見通しが非公式に私どもの間では議論し得るのでございますが、率直なところ企画庁内部でまだかなりの幅で動き得るという連絡をもらっておりますもんですから、確定するのになお数日を要するというふうに申し上げるしかないというのが現在の正直な現状なんでございます。
  36. 野田哲

    野田哲君 そうすると、十二月二十二日に大蔵原案を決定をして、各省に内示をして、年内に編成を行う、この日程は、これはさらにずれ込む、こういうことになるわけですか。その点どうなんですか。
  37. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 税収の立場から申し上げますれば、数字をもらいまして、徹夜をしましてでも時間に間に合うようにいたしたい。二十二日に間に合うように必ず来るだろうという前提でおります。
  38. 野田哲

    野田哲君 税収の立場だけではなくて、予算編成全体の日程としてこれは大臣に伺いたいのですが、いま発表されておる、公にされておる二十二日大蔵原案決定そうして内示そして年内編成、この日程はこのとおり進める、こういうことでいいわけですか。
  39. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府といたしましては、ただいまのところ、その計画を崩していないわけでございまして、国会が会期内に御審議を終えていただいて、二十二日には内示の運びにいたしたいというところで、省内で準備をいま進めておるところでございます。
  40. 野田哲

    野田哲君 十一月の二十五日に、きのうの本会議でも大臣質問をしたところですが、税制調査会に税制の検討項目を提示をした、こういうことが報道されています。検討項目、九項目ぐらいあったように私も承知をしているのですが、この税制調査会に検討項目を提示した問題については、これは昭和五十一年度分に限ってのものなのか、あるいはある程度中期的あるいは長期的な検討課題も含まれでいるのか、この点を伺いたいのでございます。
  41. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 十一月の二十五日に税制調査会の総会がございまして、そこへ、ただいま野田委員指摘の主要検討課題、たしかそういう名前であったと思いますが、という項目だけを書きましたものを御提示申し上げまして、これは、五十一年度税制改正に際しまして、総会として総ざらい的な意味で御議論を願いたいという趣旨でお出ししたものでございます。五十一年度改正に関するものでございます。
  42. 野田哲

    野田哲君 この税制調査会の総会に、いま説明のあった五十一年分としてこの検討項目を提示された。この提示に対しては、結論はもう出たわけでございますか、その点いかがですか。
  43. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 日程的に申し上げることから始めさしていただきたいのでございますが、その次が十二月二日に総会がございました。それから九日にやはり総会がございました。その九日の総会で臨時小委員会というものをつくっていただきました。臨時小委員会が先週の金曜日に一度お集まりいただきまして、きょうまた総会が二時からございます。なぜこういうことを申し上げるかと申しますと、二十二日内示という日程に合わせていただきたいというお願いをしておりまして、今週末、遅くとも来週早々には税制調査会としての御答申をいただきたい。つきましては、五十一年度関連する問題についての総ざらい的な御審議をお始めいただきたいというのが二十五日でございました。二十五日に各項目についていろいろの御議論が出ております。さらに、二日、九日というふうに御議論いただきまして、総会での御議論を受けまして臨時小委員会で答申案の取りまとめに入るという、これはいわば例年どおりのやり方でございます。総会でこういう総括的な御討議を願います場合には、各項目につきまして、当然のことながら賛否両論がいろいろございます。臨時小委員会でこれを受けまして、最終的にどちらかの方向に議論をまとめていっていただくということになるわけでございます。したがいまして、税制調査会の審議は、税制調査会のお決めになりました規則で非公開とされておりまするので、個別にどういう御意見が出たかということを私から申し上げるわけにまいりませんけれども、なお一、二回の臨時小委員会の御審議を経ますれば、方向は集約されてくるものと、そのように御了解いただきたい。いまの段階では、まだ各項目に、いずれにつきましても、はっきりとこれはこうするという御結論が出ておるわけではございません。
  44. 野田哲

    野田哲君 いま説明のあったような日程で、この二十二日に大蔵原案決定内示、そして年内編成、こういう予算編成の日程に対して、いまの税制調査会の総会なり小委員会の日程で、これは間に合うわけですかどうかんですか。
  45. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 間に合わせていただきたいというお願いをしておりますし、申し上げましたように今週中と申しますのは二十日まででございます。あるいは来週早々と申しますと二十二日。そこで御答申をいただければこれは間に合うというふうに考えております。
  46. 野田哲

    野田哲君 まだそこで結論が出ていないということであれば、それはさておきまして、きのうの本会議大蔵大臣は各党の質問答えた中で、今後の税制の問題あるいは今年度の問題を含めて、特に今年度の場合、所得税あるいは法人税の増税を考えるような経済状態、環境には置かれていない、こういう意味のことを答えておられます。そしてまた、一般的な減税については今日の財政状態では考えられる余裕が与えられているとは思えない。こういうむずかしい言い回し方で答えておられるわけです。しかし、現実に公債発行額は年々累増という、少なくとも今年、来年度累増という形になっているわけでありますから、したがってこれを償還していく方途としては、大蔵大臣がきのう言われたような形で、所得税あるいは法人税の増徴はなかなかいま考えられない。こういうことであれば、私どもとしてこれは勘ぐりかもわかりませんけれども、この償還財源としては、どうしてもそこには新たな税源が予定をされているのではないか、こういうふうに推察をせざるを得ないわけであります。特に十一月二十五日の税調に向けての検討項目、これを提示をしたことについて、やはり今度の税調に対する検討項目の提示の裏には、最後の新税といわれている付加価値税、これを制度化していくための戦略というものが隠されているのではないか、こういう報道がされているわけであります。こういう点について将来この公債に対する償還財源として新たな税源というものを予定されているのかどうか。特に懸念されるのは、付加価値税というものについてきのうの大蔵大臣の本会議でのお答えは、どうも私どもとしては歯切れがよくない、いまはまだというふうなことで。まあもともと大蔵大臣はいつの場合でも余り歯切れはいい方ではないんですけれども、そのくだりについては特にきのうは歯切れが悪かったように私も聞いておったわけですが、そのあたりの考え方はいかがなものですか。
  47. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 大臣からお答え申し上げる前に、現在税制調査会にどのようなお願いをしておるかということをまず申し上げたいと思います。  これは大臣もいろいろの機会に国会で御答弁申し上げておりますとおり、いまの段階は、五十一年度の税制改正につきましての答申について私どもの考えております日程に間に合うように御答申をいただきたいと、そこに集中していただいております。ただ、これと並行いたしまして、今後の租税負担率の問題を御議論願いたいということを申しておりまして、これは企画庁で経済審議会にお願いしておりますいわゆる新しい中期経済計画との関連で、税制調査会としても今後五年ぐらいを展望して租税負担率のあり方を御論議願いたいということをお願いしておるわけでございます。これは最終結論を得まするのは、やはり中期計画と同様に三月末ぐらいであろうと思いますけれども、中間的には、中期計画の方の概要というごく簡単なものが今月中に出るようでございますので、それに合わせまして税制調査会としても一応中間的な御判断を願うということを予定いたしております。租税負担率につきましてまだ結論出たわけではございませんけれども、恐らくある程度今後五年間に上昇することはやむを得ないというお答えが出てくるのではないかと、これは私の個人の感じでございます。結論が出たわけではございません。  そういう御議論を経ました上で、ある程度租税負担率が上がらざるを得ないとした場合に、それは果たして、今後景気の回復に伴いまして自然増収が予定されるわけでございましょうから、それによってカバーできるものかどうか、つまり全く減税しないと、自然増収はみんな歳入源に使うというような計算をたとえばいたしてみまして、それでカバーできるかどうかということも御論議願わなくてはいけませんし、万一、景気の見通しにそのまま乗って計算してみて、やはりそれでは不足するということになりますれば、何らかの新しい財源補てんを御議論願わざるを得ないかもしれないということを私としては感じております。これもくどくて恐縮ですが、まだ結論が出ておる問題ではございません。したがって、そういう御審議を十分時間を経てお願いしまして、やはり何らかの新しい負担国民に納得していただかざるを得ないということになりました場合に、そこから、それではどこに負担していただくか、所得課税であるのか、資産課税であるのか、消費課税であるのかという御議論にやっと入っていける。その場合に、やはり所得課税に依存するとすればどこまでいけるのか、消費課税に依存する場合はどういう問題があるかということを十分御議論願う。しかもその十分の吟味を経ました上で、これはやはり私個人的な気持ちとしましては、事務当局が決めるというようなものでなくて、そういうあらゆる吟味を経て国民皆さんに選択していただくという性質のものだと考えておりますので、いまの段階で、何年かに一般消費税、あるいはよく付加価値税と言われておりますが、そういうものを導入せざるを得ないという結論を持っているわけではございません。ただ、そういう検討の過程がもし予想されるといたしますと、新しく負担を求める場合には、それは所得であるのか、資産であるのか、消費であるのかというときに、消費に対する課税としてやはりEC諸国であれだけ大きな税収を持ち、定着しておる付加価値税というものを、これを検討の課題から全く外してしまう、これは検討にすら値しないということにはならないだろうと思います。その意味で将来の検討の課題としては大きな課目の一つであるし、繰り返し申し上げますが、いまの段階でそれはやむを得ないとか、いつごろから入れなくちゃいけないとか、そういう予断を持っておるわけではございません。
  48. 野田哲

    野田哲君 そういたしますと、付加価値税については、これから負担率をどうあるべきかということ、この答えが出た上でやむを得ないという形になることが予想される。そこからこの負担率を引き上げていく場合に、それを所得を対象にするものか資産を対象にするものか、あるいは消費を対象にするものか、そういう形で検討する。この消費を対象にする場合には付加価値税という税目については検討課題から外してしまうというようなことではない、検討課題の中に含まれている、こういうことなんですね、繰り返して申し上げますが。
  49. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) そのとおりです。
  50. 野田哲

    野田哲君 引き続いて公債の問題についての具体的な状態について伺いたいと思うんですが、昭和四十九年度末までの国債発行残高、これが現在どういう状態になっているのか、あわせて、その中で民間保有残高は大体どれぐらいの金額になっているのか、この点を伺いたいと思います。
  51. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 昭和四十九年度末、すなわち五十年三月末におきまして、普通の国債、いわゆる四十年以降発行されております国債の残高は総計九兆六千五百八十四億円でございます。そのうち市中金融機関が保有しておりますものが一兆九千五十二億円でございます。日本銀行が保有いたしておりますものが二兆八千九百三十一億円でございます。政府が保有いたしておりますもの、これはほとんどが運用部でございますが、これが四兆一千二百三十九億円でございます。その他のものが個人その他が保有しております。
  52. 野田哲

    野田哲君 現在提案をされている特例国債、これについての——もしこれが決定された場合、月別の発行金額、これをどういうふうに予定されているのか、これを具体的に聞かしてもらいたい。
  53. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) お願いいたしております財政法特例に基づいて発行されます国債は、収入金の表示で二兆二千九百億円でございます。通常二兆二千九百億円と申しておりますが、これは国の手取りになる収入金のベースでございます。そこで、これをシンジケート団と話をいたしますときには額面に引き直しまして、と申しますのは、額面百円につき収入金が少し少ない金額で出るものでございますから、額面に引き直して話をいたしますが、この前提として現在の発行条件のままで来年の三月末まで推移すると仮定いたして計算いたしますと、額面で二兆三千百九十億円に相なります。  そこで、この月々の発行額でございますが、これから年度末までは今月も入れまして四カ月でございます。その間、これをある月に集中させるというようなことになりますと、これが起債市場に対しましても相当の圧迫になる可能性があるものでございますから、そのときどきの金融の情勢であるとか、その他諸般の情勢をシ団とも協議しながら決めてまいることになろうかと思います。そこで、実は衆議院大蔵委員会であったかと思いますが、ただいまと同じようなお尋ねがございまして、そこで、月々の発行額はそういったことでシ団と協議して決めていくんだが、十二月はどうするんだというお尋ねがございまして、十二月といたしましては、これから年度末までの資金需要を見ますれば、五、六千億の国債発行いたしたい。そのうち、建設国債の残額がございますから、それを差し引いたものをお願いいたしたいと思っておりますということをお答えいたしております。その後、いろいろ情勢が変わり、月日がたってまいりましたので、現在の段階では五千億円程度、これはすでに発行いたしました財政法四条に基づくものを含めまして五千億円程度をお願いいたしたいと考えております。一月から三月までの月割りの額につきましては、これは後日また改めてシ団とお話をいたさなければいけないと思っております。
  54. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 ちょっと関連して。  松川君ね、いま野田君に対する答えた数字ですが、若干ぼくたちが調べた計数とちょっと違うような気がするんですがね。それで、これは計数のとり方、そんなに国債発行残高ですから変わるはずがないと思うんですが、国債発行したのは福田さんが大蔵大臣のときですね。そのときの、四十一年の一月からですね。日銀の保有国債額というのは九千三百億円でしょう。これが五十年の五月には四兆八千五百七十七億というふうになっているんですがな。それから全国銀行等が、これは市中銀行ですが、これが二百八十三億のものが、五十年の四月、一兆七千四百五十五億円、それからいま質問に出なかったが、問題のこの資金運用部資金長期国債保有額ですね、これがいまの、当時八百八十億が、三兆九千百三十八億と、こういうことに私どもの調査ではなっているんですが、ちょっといま野田君に答えた数字はかなり下回った数字になっていますね、この相違点を明らかにしてもらいたい。
  55. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいま吉田委員の御指摘になりましたのは、あるいは国債の総額ではなかろうかと思います。一番端的に違いますところは、短期国債も含まれておることであろうかと思います。と申しますのは、たとえば大蔵省証券であるとか食糧証券であるとか、そういう短期のものは比較的日銀の保有の数字が多うございます。私がただいま野田委員の御質問にお答えいたします冒頭に、いわゆる新規国債ということを申し上げましたのは、これは十年もの、かつては七年ものでございましたが、それがその後十年ものに条件が変わっておりますが、その種のものの国債の保有残高、これがただいま御質問の主眼であろうと思いましたので、その金額にしぼって御説明いたしました。その違いであろうかと思います。
  56. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そうしますとこの理解は、短期ものを含めた場合、ぼくが申し上げた数字は間違いないかどうか。これは後で非常に国債発行していくことについてわれわれ知っておかなきゃならぬですからな。
  57. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ちょっと手元に古い数字がございませんので、御都合のために最近の時点で申し上げさしていただきますと、五十年三月末の姿で日銀が持っております国債の総額は五兆四千五百八十三億円となっております。その中に、ただいま触れました短期証券が二兆四千七百三十四億円あるとか、その他の基金証券であるとか、そういった種類の国債が若干入っております。
  58. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そうしますと、若干そこでもう狂いがあるんですよね。もっとも四月と五月では一カ月間動きますからね、そういうことになりますが、そこで、一番直近の日銀の保有高、それから市中銀行の保有高、それから資金運用部資金長期の保有高、これを分類いたしまして、短期とそれからいま野田君が質問をした趣旨国債と分類いたしまして、資料を求めたい。
  59. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいま吉田委員の御指摘の点、至急調査いたしまして、若干時間をかしていただきました上で御説明さしていただきたいと思います。
  60. 野田哲

    野田哲君 先ほどのこの説明によりますと、この月別の発行計画、この説明によりますと、十二月の五千億円、それから一月から三月、これはシンジケート団と引き続いて協議をする、こういうことだったわけですが、そうすると、はっきりさしておきたいと思うことは、この今度の特例法案この二条では四月分、五月分についても昭和五十年度分とすると、こうなっているわけでありますけれども、四月、五月については発行は予定されていない、こういうふうに理解をしていいわけですか。
  61. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) あるいは主計局の方、すなわちこの法律の主管の局から御答弁するのが筋かとも思いますが、国債を実際に私どもでやっておりますので、御説明させていただきます。  ここに四月、五月にも発行できるようにという規定を置きましたのは、実はこのようにして財政法特例まで設けて国債発行しなければいけないというときに、国債発行したけれども相当額以上の剰余金が出てきたと、若干の事務上の細かいミスまたは端数的なものは仕方がないと思いますが、相当額以上の剰余金が出てきたということであれば、あるいは片一方で国債を出しながら、片一方で剰余金を出すのはいかがかという御批判が出ようかということを私ども考えた次第でございます。そこで、三月に発行するのが通常の年度内の最終の発行になりますが、三月に幾ら発行するかというのは、慣行といたしまして二月の末にシ団と話をいたします。そのときに、年度内の税収がどれだけあるかというのは、特に申告所得税等を中心といたしまして、三月の税収が幾らになるか定かでない面がございます。若干のアローアンスがございます。そういうことであれば、そのときには入るであろうもののうち、若干安全度を見込んで下目のものを三月に発行していく。そこでもって剰余金が出ないように配慮すべきではないか。  しかし、それから月が進んでまいりまして三月の末近くなりますと、もう少しそこの幅がはっきりいたしてまいります。そして最後には、ことしの経験でございますと、四月に入りましてから若干の日にちをけみした後に、最終的に三月三十一日までの税収が確定するわけでございます。そういうことになれば、三月の末にもう一度お集まりいただいて、収納見込みのうち確実に近い部分、それによって入らないことが明らかになってきた部分、この部分を四月に出し、さらに最終的な調整を五月に出す国債で調整しようではないか、そういう意味で、言うなれば国庫の運営におきまする出納整理期間のような考え方を持ちまして、四月、五月にも出せるようにという規定をお願いしておる次第でございます。したがいまして、私どもシ団との話し合いにおきましては、当初から四月に相当のものを出す、五月に相当のものを出すということを頭に置いて話をいたすわけではございませんで、通常の不足額は三月までの発行に係る国債によって金繰りをつけるんだと、こういう考えで処理いたすつもりでございます。
  62. 野田哲

    野田哲君 そういたしますと、たてまえとしてはこの三月までということで、四月、五月については安全度を確保するための、言うならば予備的という言葉が適切かどうかわかりませんが、安全度のためにその期間をとってある、こういうふうに理解をしていいわけですか。
  63. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 御趣旨はそのとおりでございまして、言うなれば、出納整理期間的な考え方に基づく規定であると御了承いただきたいと思います。
  64. 野田哲

    野田哲君 いまの話のありました国債民間引き受けの場合のシンジケート団、これとの話し合いを進めていくということですが、金融機関別にこの引き受けのシェアを予定されていると思うんです。都市銀行とかあるいは長期信用銀行とか、地方銀行とか、その他信託、相互銀行、信用金庫、農林中金、保険会社、証券、こういうふうないろいろな分類があるわけですが、この金融機関別のこのシェアを、予定されておるものがあれば、これを示してもらいたいと思います。
  65. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) このシェアは、一応のめどはございますが、これは永久に変わらないものではございませんで、ときどき見直しをして動いてきております。そこで、最近のシェアでございます、たとえば、一年間まとめて決まっております四十九年度のシェアについて御説明さしていただきますれば、シ団の引き受けましたものを一〇〇といたしまして、都市銀行が三九・一、長期信用銀行が九・四、地方銀行が一八・〇、信託銀行が五・五、相互銀行が四・〇、全国信用金庫連合会が四・五、農林中央金庫は四・〇、生命保険会社が四・五、損害保険会社が一・〇、証券会社が一〇・〇、締めて一〇〇・〇でございます。ただし、五十年度になりまして、特に最近、国債の額がふえてまいりましたので、その中で証券会社のシェアが減っております。これは個人の場合には総額がふえたからといって、急にそれに対応して多額のものを買っていただくことがなかなかむずかしいということでございまして、四月から十一月まで、先月までのシェアを同様に申し上げますと、総額一〇〇に対しまして、都市銀行が四〇・八、長期信用銀行が九・八、地方銀行が一八・八、信託銀行が五・七、相互銀行が四・二、全国信用金庫連合会が四・七、農林中央金庫が四・二、生命保険会社が四・七、損害保険会社が一・〇、証券会社が六・〇と、このようになっております。すなわち証券会社の減りました分を、大体比例的にほかの金融機関が引き受けておるというのが実情でございます。
  66. 野田哲

    野田哲君 いま説明があったそれぞれのこのシェアについて、これは資料として提出をしていただきたい、こう思うのですが、いかがですか。
  67. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 承知いたしました。
  68. 野田哲

    野田哲君 建設国債の問題について伺いたいと思います。  財政法四条ただし書きのいわゆるこの建設国債、これとこの赤字国債との区分が非常にあいまいになってきているんではないか、こういうふうに思うんです。で、財政法四条ただし書きによっての出資金、貸付金とともに公共事業に充当する資金国債発行による調達を例外として認めてきたのは、これがやはり投下資本の回収性を持っている、こういうことだと思うんです。したがって、国債による公共事業というものは経常の勘定とは明白に区別された、資本勘定における投資的な支出に相当するものでなければならない、こういうふうに思うんです。  ところが、この建設国債構成を見ると、毎年、その他の施設費という項目がありますね、建設国債の中に。そして、このその他の施設費という項目が、昭和四十一年当初は一〇%程度であったものが最近は非常にこのその他の施設費の構成比がふえていると思うんです。  そこで、お聞きしたい第一点は、昭和四十一年度以降の建設国債の中に占めるその他の施設費の金額並びに構成比を、まあ金額はともかくとして構成比を、わかっておればちょっと示してもらいたいと思います。
  69. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 財政法四条一項ただし書きで、公債の使途は公共事業費、出資金及び貸付金の財源に充てるということに定まっておりまして、公共事業費の範囲につきましては、予算総則で国会の御承認をいただくというたてまえでございます。そのことは、いま野田先生からもお話がございましたように、公共事業費の範囲は、建設的、投資的な経費、すなわち経費支出見合いが国の資産になるということでありますので、したがいまして、その内容につきましてはきわめて厳格に考えております。  いまお話しの公債対象経費のうち、その他施設費の割合というものを逐年、ちょっといま計数はございませんが、四十一年と五十年を例にとって申し上げますと、公債対象経費が全体で、四十一年に七千六百五十億円、五十年にはその四倍になりまして三兆五百二十四億円となっています。その他の施設費は、四十一年に一〇・四%を占める七百九十五億円でございましたが、五十年度では一六・六%に当たる五千七十五億円、こうなっております。
  70. 野田哲

    野田哲君 いま説明のあったその他施設費、昭和五十年度で一六・六%、当初に比較をして毎年ずっと、一時四十五年、六年ごろ減少しておりますけれども、それ以外はずっともうふえ続けてきているわけで、このその他の施設費という問題について、昭和五十年度の場合、いま説明のあった構成比で、この中には具体的にはどういうものが含まれているのか、主な項目だけでもわかれば挙げてもらいたいと思います。
  71. 高橋元

    政府委員(高橋元君) その他施設費の合計は、ただいま申し上げましたように五千七十五億円でございますが、最も大きなものは公立文教施設整備費、小中学校の校舎の建設費の補助でございます。これが二千七十四億でございます。次に大きなものが国立学校、これは大学その他の国の学校でございますが、これの施設整備費が六百六十六億。それから社会福祉施設の整備費。これが五百三十億。その他百億円以上の項目で申し上げますと、官庁営繕が百九十一億円、研究所が百三億円、このようになっております。
  72. 野田哲

    野田哲君 これ、大蔵大臣に伺いたいのですが、建設国債という中に、年々比率がふえている。昭和五十年度では一六・六%もその他の施設費というのが含まれておって、その内容をいま承りますと、この公立文教あるいは国立学校、それから社会福祉、官庁営繕、こういう経費が建設国債の中へ含まれておるわけですね。公立学校の建設とか官庁営繕費というようなものが、これが建設国債の中へ含まれる性格のものかどうか、私はこれは大変疑わしいと思うのです。明らかにこれは財政法四条ただし書きの精神に反しているのじゃないかと思うのです。官庁の営繕費とか国立の大学の施設費とか、あるいは文教の施設費とか、これは明らかに建設国債の範囲を逸脱しているんじゃないかと思うのですが、この点はどうお考えになりますか。
  73. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 官庁営繕費、社会福祉施設費、これらは本来建設的または投資的な経費であるという意味で、公共事業費と同じ性質を持っているということで、四十一年度に本格的な公債政策を導入いたしましたときから公共事業費の範囲に加えて、公債対象経費となし得るということで御説明を申し上げておるわけでございます。
  74. 野田哲

    野田哲君 いままでどういう説明があったか、私は聞いておりませんけれども、官庁営繕費が投資的経費というのはどういう理解にわれわれはすればいいんですか。これはどうしたって常識的には納得ができないんじゃないかと思うのですが。
  75. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 官庁営繕と申しますのは官庁の事務庁舎の建設費でございますから、したがいまして、修理的な経費という意味ではなくて、本来、建設的、投資的な経費でございます。そのようなものが公共事業の施設の投資と同じように、やはり国にとって投資的な支出である、経費見合いの資産があり、その資産が将来にわたって国民経済を潤す所得ないし財を生んでくる、こういうことに着目をして、公債発行以来、そのような取り扱いをいたしているわけでございます。
  76. 野田哲

    野田哲君 あなたはそういう説明ですけれども、これはやはり財政法四条ただし書きの趣旨、私どもはどうもあいまいになっているんじゃないかと思うんです。  で、これは主計局よりも大臣に重ねて伺いたいわけですけれども、建設国債という中へこういう性格のものまでが安易に求めていっていいのかどうか。営繕費についても投資的経費だということは、これは私は、いままでどういう説明があったかわかりませんけれども、どうも理解に苦しむ説明だと思います。これはどうですか、大臣
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 突然のお尋ねで、私もどういう的確なお答えができるかどうかいぶかるものですが、財政法の精神に照らしてどのようなものを包含すべきかということで、野田さんの立論も一つの私は確かに傾聴に値する御議論だと思います。また主計局の議論も、確かにそれだけの投資が現にあり、それだけの物件が現在いたしておるわけでございますので、そういう解釈も成り立たないわけではないと思います。しかしまた同時に、目に見えないものでも、教育は最大の投資とも言われますから、目に見えない教育費でございましても、建設的な投資でないとも言えないわけでございます。したがって、どこまで含めるかという問題はその人の主観によりましていろいろ考え方があろうかと思います。したがって、あなたの言われる御主張も非常に健全な考え方として確かに傾聴に値すると思いますが、ただいま政府がとっておる解釈も私は間違いではないと、こう思います。
  78. 野田哲

    野田哲君 それは大平蔵相学説として承っておきます。  もう一つ、建設国債について、これは資料として、膨大にわたると思いますので、この説明はきょうはいいですから、資料として請求をしたいと思うんですが、昭和四十年以降の建設国債制度がとられて以来の出資金についてのこの各年度の出資対象先と金額、これを資料として提出をしていただきたい、こう考えるんですが、いかがですか。
  79. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 調製の上、後刻提出させていただきます。
  80. 野田哲

    野田哲君 国債発行についていままで財政制度審議会あるいは金融制度調査会などから何回か答申や報告、建議等が出されていると思います、昭和四十年以降、それぞれの財政制度審議会や金融制度調査会等の国債問題についての答申、報告、建議等それぞれ御説明をいただきたいと思います。
  81. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 本件につきましても、あるいは財政審議会につきましては主計局、金融制度調査会につきましては銀行局長の方から御説明するのが筋かとも思いますが、私が手元に持っております資料で御説明申し上げますと、昭和四十年の十一月の一日、財政制度審議会が中間報告を出しておりまして、その中に国債の市中消化についての個所がございます。それからまた、金融制度調査会につきましては、昭和四十年十一月八日、国債発行に伴う金融制度のあり方につきましての答申がございまして、この中に国債市中公募の原則の確立堅持という節がございますし、さらに発行方式という個所がございます。
  82. 野田哲

    野田哲君 それ以外にはありませんか。
  83. 田辺博通

    政府委員(田辺博通君) 金融制度調査会が特に国債発行について触れました点について、それ以外にちょっと私いま記憶がございませんが、全国銀行連合会がことしの大量な追加発行というようなことに直面しまして、意見と申しますか、要望といいますか、そういうものを出しております。
  84. 野田哲

    野田哲君 昭和四十二年の十二月に財政制度審議会の報告として発行量の限度について報告をしたものがあると思います。それから、昭和四十八年の十二月に財政制度審議会が国際的な視野から見た建議を行っている。これがあると思うんですが、これは御承知ではないわけですか。
  85. 高橋元

    政府委員(高橋元君) いま手元に報告を持っておりませんので、いま至急取り調べさせておりまするが、四十二年にありましたのは、公債依存度を将来にわたって下げていく、それによって将来五%の公債依存度にすべきだということがその基本であったというふうに承知しております。四十二年の財政制度審議会の答申は、国際的な視野に立って、従来の五%というものの一応達成したわけでございますが、四十六年の補正で景気政策の観点からそれをやや緩めると申しますか、弾力的な公債政策というものを志向した答申であったというふうに記憶いたしております。  なお、その答申の本文をもちまして後ほど正確にお答えさせていただきます。
  86. 野田哲

    野田哲君 私の承知をしておるところでは、昭和四十二年十二月の財政制度審議会の報告といたしましては「公債政策を弾力的に行なうためには、現在の公債依存度を極力引き下げていかなければならないが、このことは、健全にして弾力性に富む財政にとって不可欠の前提である。  従って公債依存度は、ここ数年の間に五%以下に引き下げることを目標とすべきである」と、こういうふうに発行量の限度について答申をされている、こういうふうに承知をしているわけです。それから、昭和四十八年の財政制度審議会のこれは建議という形で「公私部門間の資源配分の適正化の観点から社会資本整備のために公債発行する必要は認められるものの、昭和四十六年度補正予算以降の公債依存度は、国際的にみればかなり高い水準に達しており、」、「公債依存度は極力引き下げる必要がある。」、こういうふうになっていると思うんですが、そういうことで間違いはございませんか、いかがですか。
  87. 高橋元

    政府委員(高橋元君) いま野田委員指摘のとおりでございます。
  88. 野田哲

    野田哲君 そういたしますと、大蔵大臣、これらの財政制度審議会とか、あるいは金融制度調査会等々の答申やら建議、これが何回か出されているわけでありますが、共通をしておることは市中消化の原則ということ、もう一つ発行の限度額、これを極力抑えること、こういう点が共通をしていると思うんです。今回の最近の公債政策、全くこれはこれらの審議会、調査会等の建議や答申を無視されているわけです。あなた方は、都合のいい、たとえばこの間の一つの例が専門委員懇談会、スト権問題、都合のいいものは得たり賢しとすぐとらの子を得たように、これによってということで口実にされるが、都合の悪い審議会や調査会の答申は全く馬耳東風という形で聞き流しておられる、こういうふうに思えてならないわけであります。これらの財政制度審議会や金融制度調査会の報告や建議、これを大蔵大臣は一体どういうふうに受けとめておられますですか。
  89. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 先ほど引用いたしました金融制度調査会の答申、二点あると申し上げましたが、その二点につきましては、私どもその意見に沿って実施いたしております。  すなわち、第一点の「国債市中公募の原則の確立堅持」という点につきましては、調査会の御意見は、「国際発行に対する金融面からの歯どめとして、国債は、先進諸国の例にならい、日本銀行引受けでなく、市中公募により市場の消化能力からみて無理のない範囲で、発行するという原則を確立堅持することが必要である。なお、金融調節の観点からしても、両者の間にその目標達成上きわめて大きな差異があることにも注目すべきである。」。  これが第一点であり、第二点は「発行方式」についてでございますが、「国債発行方式としては、シンジケート団引受け方式がもっとも有効かつ望ましく、シ団による国債の円滑な消化を図るためには、多方面の金融機関をそのメンバーに加える等の配慮が必要である。」。  ただいま読み上げましたのは金融制度調査会の意見の全文でございます。少なくともこの金融制度調査会の意見に関します限りは、私どもその線に沿って実施いたしております。
  90. 野田哲

    野田哲君 それはね、市中消化ということについては、確かにそれはその線に沿ってやっておられると思います。問題は、それぞれ何回か出されておる発行限度額の問題、これについては全く無視されている。こういう点について私は大蔵大臣の見解を承りたいと思います。
  91. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 審議会の建議、御答申、尊重すべきものと思います。発行限度の問題、これは依存率の姿で出されておりますけれども、五%程度というのはあの当時先進諸国が大体五%程度の依存率でありましたこととの関連におきましてそういった建議がなされたものと思いますけれども、私どもその建議を待つまでもなく、国債の依存ということは、冒頭において野田さんの言われたように、公債依存というのは安きにつきやすい性質のものでございますので、極力抑えていかなければならない。これは公債政策の鉄則だと思うのでございます。ところが最近、そうは言うものの一〇%内外を維持して、ようやっと一〇%を割りかけたとたんにまた大きく後退いたしまして二十数%になり、さらに後退しようとするようなぶざまなことになっておるじゃないかという御指摘であろうと思うのでございます。これは御案内のような異常な経済の事態でございまするので、こういう事態に対しましてやむを得ず異例の措置をとっておるわけでございます。これが常態であってはならないことでございます。さればこそ、こういう状態からの早急な脱却を財政運営基本にしてまいるという方針は、衆参両院を通じまして政府がかねがね申し上げてきておるところでございます。こういった異常な事態は早く脱却いたしまして、そういったノーマルな状態に早く返さなければならぬと私は考えております。
  92. 野田哲

    野田哲君 国際的な比較から昭和四十八年十二月の財政審議会の建議では見ておられるわけです。非常に国際的に見れば高い水準にある、こういうふうな指摘があってその方面からも国債依存度を極力引き下げろと、こういう指摘があるわけです。  そこで、大平大蔵大臣も先ほど先進国六カ国会議、あのお城の中の会議へ行かれたそうでありますが、それらの国々と比較をした資料、ことしの八月ごろに大蔵省で財政危機の問題点という形で国債制度についての国際的な比較をされたものが発行されていたと思います。この国際比較の状態、これを説明をしていただきたいと思います。
  93. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 主要国の財政収支の中で公債、これをどのように把握するかということでございますが、歳入、歳出の差額がまあ、歳出に占めますところの割合ということで考えてみますと、アメリカの場合七五年で、つまり今年でございますが、一三・四%の公債依存度、それからイギリスは同じ七五年でまあ当初八・九と見ておりましたのが一四・五、ドイツは一六・六と見ておりましたのが八月補正後で二五・三、フランスは九月の補正後で公債を出すことになりまして一三・四、かように承知しております。
  94. 野田哲

    野田哲君 ドイツの場合補正で非常に高くなっておりますが、それ以外はせいぜい一三%ないし一四%、日本の場合には結局補正によって二六・四%、こういう高い水準になっているということが具体的な国際比較の中で明らかになっているわけですけれども、これについても、これは大蔵省の統計資料で出ておるわけですが、あわせてもう一回資料として提供していただきたいと思います。  そこで、重ねて国際的な視野からの質問を行いたいと思うんですが、昭和四十五年度以降のこれらの主要国における国債所有者調べ、これはやはり大蔵省が調査されたものですか、もしわかっておればこの概要を説明してもらいたいと思います。わかりませんか。
  95. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) それぞれの国につきまして最も新しい時点のパーセンテージで申し上げます。  アメリカにおきましては政府が二九・一%、中央銀行が一六・九%、金融機関が二・七%、海外が一一・七%、その他が三〇・一%でございます。イギリスにおきましては政府と中央銀行との区分が定かではございませんが、この両者を合計いたしまして一九七二年度末で二七・九%、金融機関が二九・三%、海外が一三・四%、その他が二九・三%でございます。西独におきましては一九七三年の数字でございますが、政府が四・七%、中央銀行が六・七%、金融機関が六三・一%、海外が一・二%、その他が二四・二%でございます。フランスにつきましては一九七三年度末の数字でございますが、政府が〇・七%、中央銀行が七・一%、金融機関は二・二%、その次に、海外とその他が分けられておりませんが、八九・九%と、このような所有の構成比になっております。
  96. 野田哲

    野田哲君 この構成比によると非常に違いがあるわけですね。特徴的なのは、その他の所有というところの構成比が非常な違いがあるわけです。それから政府の所有にも非常な違いがあるわけですが、こういう点で構成比の非常な違い、特にその他のところの構成比が非常に違うというのは、これは国債の管理体制、それぞれの、日本の場合とこれらの国々との間に何か管理体制に理由があるのかどうか、この点もしわかれば説明してもらいたいと思います。
  97. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいまその他という区分で申し上げましたのは、大体が個人が主ではなかろうかと思います。そして御指摘のように、フランスの場合に全体の八九・九%がその他ないし海外に区分できないところに入っておるというのは、恐らく個人の持ち分が非常に多いのではないかと思います。  それから、こういった計数を外国と比較いたしますときに、私どもが一番その比較に悩む問題は、日本におきます郵便貯金と外国におきます貯蓄国債制度との関係でございます。たとえばアメリカの例をとって申し上げますと、アメリカにもかつては郵便貯金という制度がございましたが種々の事情からこれは廃止されております。そのかわりに貯蓄債券というのが出ておりまして、これはちょうど日本の郵便貯金のように、国の信用を背景にいたしまして庶民の金融をお預かりするという形での債券が出ております。これが最近の数字で発行残高が二とおりございますが、五年もので割引で出しておりますシリーズが円価換算約十七兆円、それから十年もので利付債を出しておりますが、これが円価換算約二兆三千億円、こういったものが出ております。ただいま申し上げましたような計数を御説明いたします場合に、外国の計数はこういったものが入っておるのではないかと思われますので、特にその他の欄、個人を主にしているとすれば、その面での調整をした上でなければ比較がむずかしいのではないかと思っております。
  98. 野田哲

    野田哲君 大蔵大臣ね、いま所有別の構成比を説明があったわけですが、その特徴は、日本の場合はその他の所有、つまり個人所有が欧米先進国と比較をして圧倒的にこれは低いわけです。大平大臣は午前中の説明で、日本の政府ぐらい信頼をされているところはないんだと、国債制度関連して。圧倒的な信頼を寄せられておるような説明があったわけです。とにもかくにも大平大蔵大臣を信じなさいと、こういうことで、私が体を張っているんだから信じなさい、こういう説明があったわけです。償還計画などは全く具体的に示されないで、とにかく信じなさいと、日本ぐらい信用されているところはないんだと、こう言われたわけですが、この比較をされている先進国と言われて、この間パリの郊外でいろいろ協議をされておられたあの国々ですよ、構成比を見ると、個人所有は諸外国に比べて圧倒的に低いということは、つまりこれは、この数字は、日本の国民は余り国債に対して魅力を持っていない、こういうことの証左ではないかと思うんですが、この点はどういうふうに大蔵大臣としては受けとめておられますか、いまの構成比を見て、この点いかがですか。
  99. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいまの点につきまして一つ基本的なことは、わが国におきます個人の金融資産の持ち方が外国と著しく異なっておる点ではなかろうかと思います。それは、日銀の調べでございますが、四十九年末における個人の金融資産、これが合計百四十一兆あることになっておりますが、この中のパーセンテージで見ますと、有価証券に回っておりますのは一一・四%にしかすぎない。この有価証券の中には国債、地方債、公社債、金融債、株式、投資信託、こういったもの全部入っておりますが、これがわすか一一・四%にしかすぎないと。一番大きいシェアを占めておりますのが定期性の預金でございまして、これが四九・四%となっております。これは日本の場合、金融資産を持ちますと、どういう形で持つのを一番好むかという持ち方の態度になるわけでございますが、外国の場合にはある程度たまってまいりますと、この定期性の預金から有価証券に移っていくという傾向が見られまして、そのために外国の同種の統計をとりますと、個人の持っております金融資産の総額の中で、有価証券の占める比率は非常に高い数字になっております。たとえば一九七三年末の数字をとりますと、米国においては四三・五%であり、イギリスにおいては三三・一%、これが有価証券という数字になっております。したがいまして、わが国の場合に国債をストレートに個人に持っていただくというのが、個人の金融資産の持ち方の好みと比べましてなかなかむずかしい、そこで、それぞれ定期性の預貯金を持っておられる金融機関を通じて間接に個人に持っていただくという形式をわが国としてはとらざるを得ない、その結果がこの国債の保有高の統計では、日本の場合に個人なりその他のところに非常に低く出ておるということでございます。
  100. 野田哲

    野田哲君 いまの見方はかなり私は見解の違いを持っている。確かにいま言われたように、日本の場合には金融資産についての一番大きいシェアというのは定期性の預金ということになっている、これはそのとおりだと思います。ただこの場合には、定期性の預金ということのシェアが非常に大きいというのは、これはそれだけ日本の国民の場合には拘束された預金を持たざるを得ないということだと思うんですよ。住宅の資金を借りた場合にも定期性の預金を持たなければ貸してもらえないとか、あるいは法人の場合にも、一週間ばかり前に日本経済新聞がトップで大きく報道したように非常に拘束——金融機関からやむを得ず拘束された預金を持たざるを得ない、これがやはりその構成比となってあらわれている、私はこう思うわけなんですが、いずれにしてもいまの局長の説明あるいは国際比較の場合でいっても、国債個人消費というのはこれはもう非常に日本の場合には限られていると、こういう認識を持たなければいけないんじゃないかと、こういうふうに思うんですね。したがって、そうすると公債発行の原則というのがそこから大きく私はやはり崩れてくる。市中消化というのは結局は、先ほど言われたシンジケート団によってこのシェアで割り当てられて、結局はこの一年後には日銀の買いオペ、こういう形の性格で流れていくんじゃないか。で、これはいかに大蔵大臣がインフレは刺激しないとか、きのうも福田経済企画庁長官もバランスさえしっかりしておればインフレの心配はないんだと、こういうことを大蔵大臣とともどもに強調されていたけれども、この実態からすれば当然これは一年後には全部日銀の買いオペという形で通貨の非常な増発、こういうふうにならざるを得ないんじゃないか、これは資料でもはっきり、いま言われた統計の資料でも示していると思うんです。こういう点から、その面での懸念というものはやはり依然としてぬぐうことはできないと思うんです。これについて、これは大蔵大臣、特にどういう見解をお持ちなのか、具体的に伺いたいと思います。
  101. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) せっかくの御意見でございますけれども、拘束性預金というものが日本の固有の体質であって、それが今日個人所有がこんなに少ない結果を招いておるという推理の仕方ですけれども、やや牽強付会のような感じが私いたします。何となれば、日本は、郵便貯金なんか別に拘束性の貯金ではございませんけれども、これが二十一兆もあるわけでございますので、ただ、直接の金融資産、債券類を持つよりは預貯金という姿を選好するという民族であるということをいま理財局長は御説明申し上げたわけです。ただ、野田さんが言われるように、その預金の中に拘束性の預金の比率が高いということは私も認めますけれども、逆にそれが今日あるような金融資産の所有の形態を規制しておる根因であるというようには私は、せっかくの御意見ですけれども、賛成いたしかねるものでございます。  ただ、もう一つつけ加えますと、しかし拘束性預金というようなものは悪い傾向ではございますけれども、日本の事業資本の構成がどうも借入金が多いということもこれ特徴でございまして、わずかの資本で、大半を借り入れに仰いで経営に当たるということでございます。したがって、そういうオーバーボローイングな傾向が拘束性と併存するということを激化しておるひとつの原因ではなかろうかと思うのでございます。日本人の、何と申しますか、そういう一面において非常にバイタリティーの強いところでございますけれども、一面においてそういう冒険的なところ、いい面もあるし悪い面もあると思いますけれども、そういったことが拘束性預金の一つの素因をつくっておるのではなかろうかと思うのであります。いずれにいたしましても、それが金融資産の所有形態をつくり上げるところの根本の要因になっておるという評価は私は少し過当ではなかろうかという感じがいたします。
  102. 野田哲

    野田哲君 この問題については、私はさらに議論があるわけですが今回はおきまして、もう一つの資料について伺いたいと思うんですが、大蔵省が出しておられる国債統計年報というんですか、これがありますね、それから日銀が出している経済統計月報、こういうのがあるわけですが、それに国債残高とGNPの推移を示したものがあったと思うんですけれども、もしここで資料をお持ちであれば昭和四十一年以降の国債の対GNP比、これを簡単に説明をしていただきたいし、あわせてこれは資料として提供してもらいたい。こういうふうに思います。
  103. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 国債の残高とただいまGNPという御指摘でございましたが、国民所得であればいま手元にございますので説明が可能でございます。  四十年度から申し上げますと、四十年度二・九%、四十一年度四・八%、四十二年度六・一%、四十三年度六・四%、四十四年度六・三%、四十五年度六・二%、四十六年度七・二%、四十七年度八・六%、四十八年度九・二%。ただいま手元の資料でそこまでの数字が入っております。
  104. 野田哲

    野田哲君 四十九年、五十年——五十年は推定ということになると思いますが、これはわかりませんか。
  105. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 四十九年度につきましては、実はまだGNPであれ、国民所得であれ、最終の数字が出てないのでございます。したがいまして、ただいまの数字と対応したような精度のものは御説明できないのでございますが、手元に、今度はGNPで恐縮でございますが、GNP分の長期債務残高ということでただいまの速報値でもって計算いたしましたものをとりますれば、八・六%という数字がございます。速報値と申しますか、実績見込みでございます。
  106. 野田哲

    野田哲君 時間が余りございませんので、もう残りが少ないので結論的に質問いたしたいと思います。  いろいろいま午前、午後大蔵省の考え方を伺ったわけでありますけれども、この現在の国債残高、そしてさらにこれからいま予定をされている国債発行高、そしてさらに昭和五十一年度に、不確定ということでありましたけれども、報道されているところ、予測されるところとしては七兆円を超える国債発行、こういうことになると見込まれているわけですね。そういたしますと、国債残高については二十兆円をはるかに超える、こういうことになるんだと思うのです。きのうの本会議での大平大蔵大臣あるいは福田経済企画庁長官、それぞれ質問答えて、この国債の増発がインフレを高進する危険性を質問者それぞれ指摘されたことに対して、バランスさえ取れていればインフレの心配はない、問題はバランスの問題なんだ、こういう強気な発言をされているわけでありますけれども昭和五十年度公債の依存度が二六・三%、昭和五十一年度では、新聞の伝えるところでは三〇%を限度にすると、そこで二九・九%、七兆円幾ら、こういうように報道されているわけであります。これは異常な公債の依存度だと思うのですね。公債の残高が二十兆円を超えるということは、年間の総予算額に匹敵をする状態国債残高ということになると思うのです。個人の家計で言えば、一年間の総所得の金額を借金をする、こういう状態になるわけで、とてもこれは個人の場合で言えば一年間の総所得を借金しようとしたって、これはどこも貸してくれるところはない。相当なこれは担保を入れなければ貸してくれない。それだけの巨額な年間総予算に匹敵するようなものが国債残高ということになろうとしておるわけであります。これについて午前中から午後にかけて何回も、当然こういう状態になってきた場合には償還計画、いわゆる償還計画ですね、これが具体的になければ、やはりどうしても私たちは国民に対して納得のいく説明をすることはできないと思うのです。こういう状態が一体財政の上から言ってバランスのとれた状態と言えるかどうか。これは当然、何回も大蔵大臣はアブノーマルな状態を早くノーマルな状態に返したい、こう言われておるわけで、アブノーマルだという点については大蔵大臣の認識もそうだと思うのです。そういうふうに年間の予算総額に匹敵するような状態国債残高を持つような状態になる。これに対してなぜこれほどまでの国債残高を持つにもかかわらず償還計画が明示できないのか。これは午前中からの議論の引き続きなんですけれども、重ねて私はやはりこれを大蔵大臣指摘をして、これに対する考え方を伺わなければ、どうしても納得をすることはできないので、もう一回、これはもっと具体的な内容を明示をされる意思はないのかどうか。そして、もう少し時間をかしてもらいたい、こういう午前中のお答えがあったわけでありますけれども、一体もう少し時間をかせというのは、いつごろになればどういう形で明示をされるのか。もうこの問題を審議をする会期は後わずかになっているわけなんです。会期を終わって、この問題の審議が終わってから明示をされても全くこれは意味がないことになるんですが、いつ、これは時間をかせということであれば、示されるのか、この点を重ねて伺いたいと思います。
  107. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど、先進諸国に比べてわが国の財政公債依存率が異常に高い。これはドイツも高いですけれども、なおわが方が高い。その他の国々は十数%であるということでございますが、これは今度の資源危機、国際経済の危機でヒットされた割合というのは私は日本が一番ひどかったと思うんです。御案内のように、資源のない国でございまするし、そういう国であればあるだけに、今度の経済危機に最も広く深くさらされたわけでございますので、こういう非常に激しい打撃を受けたわが国といたしまして、それだけの歳入欠陥を来したということも御理解いただけると思いますし、またわが国の税制が所得税、法人税中心の、景気に非常に敏感なひとつの構成を持っておりまして、したがって、そういった関係からも欧米諸国に比べまして歳入不足がひどかったということも御理解いただけると思うんでございます。したがって、この程度はまさによその国に比べても非常に異常であったということでございますので、したがって、これを克服してノーマルな状態に返るにつきましても、それだけの時間を与えていただかなければ克服できないようなひどい打撃であったということと、そしてそれだけ、そういう大きな激しい打撃でありましたがゆえに、いまそのさなかにおきまして展望を明らかにして、将来の財政計画を提示申し上げるということが非常に至難な状況にありますことも、あわせて御理解がいただけるのではないかと私は思うのであります。しかし、それは私どもが当然の権利として国会に対して求められる性質のものではないこともよく承知をいたしておるわけでございます。非常に困難でございますけれども、先ほども答え申し上げましたように、可能な限りいろんな前提を置いていろんな試算を試みてでも、やはりこういう前提で試算をしてみればこういうことになりますと、こういう前提でこういう方法展望を求めてみればこうなりますということを、いろいろ苦心してつくり上げてみまして、御審議の参考にお願いしたいものだと思っておるわけでございます。  しからばそれはいつごろかということでございますが、ちょうど予算編成を前にいたしまして、企画庁を中心にいま長期計画なるものが検討を急がれておるわけでございまして、それには当然なこととして、非常に大きなフレームでございますけれども財政の枠組みも一応想定されておるわけでございます。そういった関連も踏まえて、明五十一年度予算の御審議をいただく段階になりましたならば、それまでにはそういった材料を駆使いたしまして、できるだけわれわれの手で解明し得る限りの展望はつくり上げて御審議をいただきたいものだと思うわけでございます。政府国会との関係は不断に続いておるわけでございまして、ここ数日でもって御縁が切れるわけでは決してないわけでございますので、末長くひとつ御指導をいただかなければならぬわけでございます。さように心得ております。
  108. 大塚喬

    大塚喬君 関連。  いまずっと真摯な野田委員質問が続いて、やっぱり詰まるところその償還計画の問題にどうしても落ちつかざるを得ない。で、先ほどからの答弁をお聞きしておって、償還計画のめどは立たないと、償還計画国会に提出しなければならないと、こういうことであって、それはその二つの定率繰り入れ予算繰り入れと、こういうことの三つ方法だというだけで終始をされる。いろいろの試算というか、そういう方法があるということなんですが、そういうものをいままでになぜつくってこの国会審議に資料として提出させないのか、大変私は大蔵当局は怠慢であったと断ぜざるを得ません。それから、これで審議をしてこの法案を通せと。赤字だ。国債だ。それから、何人かのきのうの本会議での質問、ただいま野田議員からも質問ありましたように、それじゃもう結局その落ち行く先は付加価値税だと、いろいろ付加価値税についても逃げを打って混迷に隠しておるような感じをするのですが、国民だれもがそういう心配を持っておると思うわけであります。で、付加価値税というのは、きのうもちょっと触れましたけれども所得の再配分という機能を逆行させるし、インフレを増進させるし、大衆課税であるし、大変私どもは危険な税制の改革に踏み切るような、そういう懸念を持っておるものですからお尋ねをいたしておるわけでございます。幾つかの資料、これはもう大蔵当局が誠意をもってつくった資料だと、こういう資料をやっぱりこういう仮定で、前提でやったらこうだった、こういう前提でやったらこうだったと、こういう幾つかのそういう償還計画に関する資料の提出をしていただかない限り、この法案の審議はこれ以上私は前進しないものと考えるわけであります。ですから、どういうことがあってもこの委員会の開会中に、そういうただし書きをつけていただいて結構ですから、そういう償還計画のこれは試算だと、こういうことでも結構ですから、ひとつ何が何でも提出をしていただきますように、野田委員質問、要望と同じように、私もぜひひとつお願いを申し上げたいと存じます。
  109. 野田哲

    野田哲君 予定された時間がもうほとんどなくなりましたので、最後に私は、これは大蔵省に苦言を呈して終わりたいと思うんです。  大蔵省は、国債問題について最近ずっと新聞、週刊誌等にPRのページを設けて大々的にやっておられるわけですね。いろいろ学者諸先生との対談とか、それからその他スポット的な広告をやっておられる。これを見ると、生活の繁栄をもたらす国債だとか、生活向上のための国債だとかというようなこういう広告をやっておられる。これは私は誇大広告だと思うのですよ。上げ底の広告だと思うのですよ。大蔵省だから公正取引委員会が何らの指摘をしないからそれで済んでいるかもわかりませんけれども、何があれが生活繁栄の国債ですか、何が生活向上の国債ですか、こんな誇大広告で国民を惑わしてもらっては困ると思うのですよ。一人当たり十万円も二十万円も借金をかぶされるのが今度の国債の実態なんです。それを繁栄を約束するような広告をされて国民を惑わしてもらっては困ると思うのです。これは何としても慎んでもらわなければならないと思うのです。この点だけ指摘をして私はあと二、三分ありますけれども、私の質問を終わります。
  110. 辻一彦

    ○辻一彦君 答弁の前に。いま大塚委員から資料要求があったのですが、それが出せるかどうなのか、確認してもらいたい。
  111. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま御提出できるものにつきましては、大塚委員の御要請に応じて提出いたしますが、ずっと後年度にわたりましての財政展望ということにつきましては、先ほど申しましたように相当時間をかけて材料を駆使してやらなければならぬ性格のものでございますので、詳細な展望につきましては、ただいま会期中に、この委員会開会中にという御要請にはなかなか応じ切れないと思いますけれども、それは後日の御審議のために、先ほど申しましたような通常国会の御審議を願うまでにはつくり上げてまいりたいと思います。ただいまの衆議院段階の御審議を通じてございましたもの等を整備いたしまして提出できるものは提出いたします。
  112. 辻一彦

    ○辻一彦君 大塚委員から、全部の展望について詳細なものはそれはなかなかむずかしいとは思うが、今日試算し得る可能な範囲の資料を提出されたいと、こういうことですが、これはできるんですか。
  113. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) かしこまりました。
  114. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 理事会において協議することがございますので、約十分間休憩をいたします。    午後三時十四分休憩      —————・—————    午後四時十五分開会
  115. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  昭和五十年度公債発行特例に関する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  116. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 初めに五十一年度予算編成と赤字国債の問題についてお伺いをします。  先ほど来も五十一年度予算についてはまだいろいろ調整がつかないということで、具体的なお話はございませんでしたけれども、昨日の本会議答弁あるいはまたいままでの審議を通じて、相当の赤字国債発行はやむを得ないと、こういうふうなことは明らかであると思います。  そこで、お伺いしたいのは、今回の赤字国債は、この法案にも出ておりますように、予算成立後に生じた予想外の税収などの減少となっております。また四十年度の赤字国債の場合も、予算成立後に生じた税収減の補てんと、こういうことに言われておるわけです。そうしますと、五十一年度当初予算から赤字国債発行ということになりますと、特例法を恐らくまた出さなければならないと思いますが、その場合はどういうふうなことになりますか。
  117. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 五十一年度予算の姿というのは、午前中にも主税局長から申し上げましたように、まだ税収が最終的に固まっておりませんので、具体的な数字をもってお話しすることはできないわけでございますが、そこで、本年度の補正後よりも公債発行額は恐らくふえることになるのではないかというふうに考えられております。しかしながら、私どもといたしましても、予算編成の最終段階になりますので、極力その圧縮に努めておるわけでございますが、いずれにいたしましても四条公債の範囲で公債発行を賄うことができない場合、その場合には新しく財政法の例外規定を立法いたしまして、法案の御審議をお願いいたすことになるというふうに考えます。
  118. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私の聞いているのは、特例公債を出さなければなりませんけれども、いま審議されている法案の第一条では、「五十年度の一般会計補正予算において見込まれる租税及び印紙収入並びに専売納付金減少を補うため、」と、こうなっているわけですね。当初予算から特例公債を出さなければならぬ場合はどういうようなものになるのか、条文が。その辺は性格論と勘案して、非常に私問題になるのじゃないかと思いますのでお聞きしておるわけです。この点いかがですか。
  119. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 五十一年度特例法をどのような形で立法いたしますかは、これから財政制度審議会などの御意見も伺いながら検討してまいりたいと思っておりますので、いま五十一年度特例公債発行権限をどのような形式の条文でお願いをいたすかということについては、まだ固まった考え方を持っておりません。
  120. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私がいまこれを問題にしたいのは、要するに五十年度当初から赤字国債発行はやむを得ない、しかもかなり大きなものであるということ、それに対してやはり歯どめをしていかなければならぬと思うわけですよ、いまも言われましたけれども。で、その場合、今回の場合は「補うため、」と、あくまで補完的なものであるわけですね。また四十年の場合にも税収源の補てんであった。だから、五十年度当初から来た場合は補てんの程度にとどまるのか。私はとどまらないと思うわけです。その場合は、ただ単に赤字国債が補てんということからもっと積極的な意味が出てくるのではないか、こう考えるわけなんですが、その点はいかがですか。
  121. 高橋元

    政府委員(高橋元君) それは今後作成いたします五十一年度予算性格とも関連いたす問題でございますが、五十一年度特例公債法の内容、形式につきまして、現在、先ほども申し上げましたように、鋭意、財政制度審議会にもお諮りをして検討を進めていく段階でございますので、この段階で御答弁をすることは御容赦をいただきたい、かように思います。
  122. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それではその歯どめですね、いま言った赤字国債発行の歯どめというものはどう考えますか、来年度の場合。
  123. 高橋元

    政府委員(高橋元君) それは公債の来年度お願いをいたします発行額そのものをどのようにするかということと関連をして検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  124. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあ、いまある程度は無理かと思いますけれども、私また後続いて質問をしてまいりますけれども、今後の財政運営を考えた場合には、ある程度の線がもう出されていなければならないと思うわけです。その前に一言だけお伺いしたいのは、建設国債の枠を五十一年度には拡大をされる方針なのかどうか。自動車重量税相当分あるいはガソリン税等、この辺の変更の意図はおありになるのか、その点をお伺いいたします。
  125. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 建設公債発行の枠につきましては、先ほども野田委員にお答えをいたしましたが、公共事業費、その他の施設費——その他の施設費の範囲と申しますのは、四十一年の国債発行以来、これは社会福祉施設費及び官庁営繕費を四十七年に追加いたしましたほか、変更はしておりません。したがいまして、それは総体の投資的経費の予算の中の伸びによって変わってくると思うのでございますが、ただし、いまお示しのありました特定財源をどのように考慮するかという問題につきましては、これは揮発油税相当額、それから自動車重量税のうち、国の収入相当額というものを考慮に入れまして現在検討中でございます。
  126. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、来年度から相当大変な状況になるということ、私は私なりにいろいろ試算をしたわけですけれども、歳出規模、聞くところによると二十四兆円と言われておりますけれども、二十四兆円にした場合、これは仮にケースワンとしまして、歳出の伸び率が四十一年度から四十七年度の平均伸び率が一七・七%です、歳出が、それを入れまして、税収がGNPの伸び率二〇%、弾性値一・五にして税収の伸び率が三〇%。そういたしますと、五十一年度は七兆円の歳入欠陥になるわけですね。このままでいったとして、まあ私の単純な計算ですが、昭和五十五年度で税収の規模が歳出の規模をようやく二兆円上回る、こういうことなんですね。で、それ以下になりますと、もう全部いわゆる赤字財政ということになってしまいます。現在の景気状況から考えて、非常にこれからの見通し、いわゆる高度成長から安定成長、低成長と言われておりますので、そうなりますと、ずっとこの赤字財政が恒常化してくる。そうすると、これはまあ後の償還計画とも関係をしてきますけれども、どうしてもこれからの日本の財政は、いままではどちらかというと公債を抱いた財政、こういうふうに言ってこられましたけれども公債に抱かれたといいますか、公債にのまれたというか、そういうふうな財政変化せざるを得ないと思うのです。大蔵大臣、このような状況を、いろいろ大蔵省でも計算をしておられると思いますけれども、この中にあって、実際公債というものがどういうふうになっていくのか。昭和五十二年度あたりで返すなんというのは私は無理だと思いますし、十年かかって返せばいいという答弁がきのうも出ておりましたけれども、じゃ十年後までに果たしてきれいに返せるようなめどが立つのかどうか。これは資料もちゃんとお渡ししてありますので、恐らくごらんになっているかと思いますけれども、将来の財政展望も含めて、国債がどういうふうなものになっていくのか、どうお考えでいるかお伺いしたいと思います。
  127. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 五十一年度以降の財政がどのような形のものになるか、それにつきましては、私どもは、大臣からも繰り返し御答弁を申し上げておりますように、経費を極力抑制し、歳入についても充実を図って、現在のような財政体質を改善をして、財政基盤と申しますか、健全性の確保を図ってまいりたいということで考えておりますが、経済の五十年度、それから五十一年度にも予想されるところの落ち込みというものはかなり大きいわけでございますし、今後の景気回復過程というものもまだしかとつかめないということでございます。長期経済見通しにつきましても、経済企画庁で現在検討を進めておられるという段階でございます。したがいまして、大臣からもお答えをいたしておりますように、財政の体質を直し、基盤を強化するという点の努力につきましては、私どもとして十二分にいたしてまいるということでございますが、計数をもって将来の姿をどうお示しするかということになりますと、いま直ちにお答えができない状況でございます。
  128. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 矢追さんが展望されておりまするように、五十一年度はことしに引き続いて相当高度の公債依存財政にならざるを得ないと私どもも考えておるわけでございます。これは経済の回復が五十一年度の段階において十分期待できない、歳入面で期待できないわけでございますので、そうならざるを得ないと考えておりますけれども、五十一年度におきまして、歳入、歳出両面にわたりましていろいろな検討を十分遂げて、五十二年度以降への準備段階の年にいたしたいと存じておるわけでございまして、五十二年度以降の長期財政施策の用意をいたさなければならぬ年だと考えておるわけでございます。そして、できるだけ早く公債財政からの脱却、とりわけ特例公債からの脱却を図らなければならぬと考えております。ただ、遺憾ながらそれがいつの段階ということがまだ定かに展望がききません状況でございますので、いま的確にお答えできないという状況でございますが、そういう方向への努力をいまじみちに積み重ねておる段階でございます。
  129. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま大蔵大臣特例公債からの脱却をした財政ということを前々からも言っておられますけれども、それが私はいま言ったようなことで非常に長年月——仮に経済成長というものがかなりのパーセンテージをもってようやく、この試算でいきますと二〇%をやって、そして五十五年でようやく黒になるということなんですね。それは望めない数ですから、とうていGNPの伸び率を一五%にすると五十五年でも十六兆円も赤字が出るようになっているんです。それから、たとえGNPの伸び率を二〇%にしても歳出の伸び率いかんによってはこれまた赤字になるというふうな試算をしているわけですから、ここで特例公債からの脱却ということはもちろんやらなければなりませんけれども、それを補うためにいまのままではいかない。結局、先ほども出ておりました付加価値税の導入とか、いろんな増税というものを図ってこれをなくしていくような方向しかないんじゃないか。歳出を抑えることは非常にむずかしいと思います。そうすると、歳入をふやすことしかない。となると、そういうふうなことになってきやしないか。すでに五十二年度から付加価値税の導入までちらほら言われておるわけですから、そうなった場合に果たして今後赤字公債特例公債からの脱却を言ってはおられますけれども、具体的に、じゃ何をもってそれをしていくのか。結局、増税ということにならざるを得ないのじゃないかと、そんな気がするんですけれども、その辺はいかがですか。
  130. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 先刻野田委員にもお答え申し上げたことの繰り返しになろうかと思いますが、計数的にはっきりすることがなかなかいまできませんけれども、いわば一つの予測といたしまして五年間を通じてみて歳出、歳入の姿をあわせて考えた場合に歳出の抑制に最大限の努力をする、社会保険料とか、公共料金とかいうものの適正化も図るということをしながらも、なおいまのシステムのほかに新しい負担を求めるということについて納税者の皆様の納得を求めざるを得ないかもしれないということをおそれておるわけでございます。ただ、それがいつの時期にどの程度の大きさのものかということはまだ計量的にわからないし、ただそういうことを将来そういう危険があると申しますか、そういうやむを得ざる選択を求めなくちゃいけないとすれば、その前段階として、まず税の立場で五年間にどの程度までの租税負担率の上昇をがまんしていただけるのか、やむを得ないと考えるのか。その角度からの検討が税の側としては、まず必要ではないかというふうに考えまして、いま税制調査会に作業をお願いいたしておる。もちろん、税の立場から申せば、歳出はできるだけ縮減してほしいわけでございますから、増税をしないで済めばそれにこしたことはない。しかし、まさしくおっしゃるように、経済全体のバランスの中で歳出の伸びというものはある程度ないといけないということとかみ合わせて、全体の絵の中で租税負担率をどう考えていただくか、そういうことをいまお願いしておるわけでございます。
  131. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 具体的なお話が出てきませんので次に移りますけれども償還計画、これも非常に何度も問題になって、結局年別、年賦償還というふうなことは全然期待ができなかったわけです。また百分の一・六という定率繰り入れについても、問題があるとは私の質問に対しても大臣答えいただいたんですが、じゃ、具体的にどの辺の率がいいのかということについては、これまた明らかにされておりませんし、また剰余金繰り入れば、たしか五十一年度剰余金はゼロになるということであります。そういたしますと、後この償還を実際きちんとやっていく場合、この補足説明にあります第三番目の「国債整理基金特別会計法第二条ノ三の規定に基づく必要に応じて行う予算繰入れを財源として行う予定」と、これをやられるのか、それとも景気の回復を待って、税収がかなり出てきて、そして剰余金なりがかなりできることをこの十年間で期待をされておるのか、その辺をどうされようとしておるのか、一つずつお答えをいただきたいんですがね。まず、一・六をどのような方向で見直すのか。剰余金はなくなりますので、それを今後期待をされるのかどうか。そのためにはかなり景気が回復しなきゃいかぬと思います。三番の予算繰り入れにしても、これまた大きな問題があるわけです。その辺はどういうふうに技術的にお考えになっていますか、お伺いしたいと思います。
  132. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 百分の一・六の定率繰り入れば、昭和四十二年の国債整理基金特別会計法の改正の際に、財政制度審議会をお煩わして一年にわたって御審議をいただいて決まった率でございます。この率と申しますのは、国債発行対象経費見合いの資産耐用年数というものをいろいろ計測いたしまして、永久資産である土地ないし出資、それと減価償却資産の平均の耐用年数、また国民所得計算上のそういった社会資本の減耗の取り扱いというものを総合的に勘案して六十年というふうに定めておりまして、その後毎年度見直しをしておりますが、この六十年を変更をするということになっておらないわけでございます。したがいまして、一・六の定率繰り入れというものは総合的な減債制度の基礎として私どもとしては今後とも継続をいたしていかなければならないというふうに考えております。  第二番目の剰余金の二分の一以上の繰り入れでございますが、これは衆議院、参議院の両方の段階を通じまして大臣から申し上げておりますように、特例公債発行期間中は剰余金全額繰り入れるということにいたしておりますが、この特例公債法の御審議をお願いしております法案の二条にもありますように、特例公債の特殊性ということを考えますと、超過発行がないように極力出納整理期間発行という形でそれを調整をしてまいりたい。したがいまして、当面大きな剰余金が発生してまいるということは余り期待できないわけですし、またこういう経済情勢のもとで期待することは適当でないわけでございましょうが、こういった点につきまして今後の経済の推移によって、それはある程度の剰余金が出る場合もありましょうが、これを計画的に事前に償還財源として当て込んでおくということは適当でないというふうに思います。  そうなりますと、三番目の御指摘予算繰り入れをもって六十年に現在お願いいたしております二兆二千九百億円の特例公債全額償還をするということをいたさねば、またそういう措置を考えなければならないわけでございます。これは特例公債発行という体制から財政体質を改善いたしまして、脱却をした暁に充実をしてまいりたい。それによって六十年に特例公債全額の現金償還をいたしたいというのが繰り返し申し上げております私どもの考え方でございます。
  133. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま言われていることは、確かにずっと言われておりますけれども、それで果たしてできるのかどうかということが非常に私たちの心配するところです。しかも、先ほど言いましたような計算まで出して、非常に大変な状況だと、そういった中でどうしていくのかということを伺っておるわけでして、いまの答弁だけではなかなか納得ができないわけです。  その中で、まず第一番目の一・六の問題についてもいま続けると言われましたが、大臣は十一月七日の本院予算委員会の私の質問に対して、「あれは建設公債関連しての着想から出てきた率じゃないかと思います。六十年間の消却の試算が見合いとしてあるというたてまえでつくられた率であろうと思います。したがって、特例公債に当てはめていきまする率といたしましては、仰せのとおり妥当なものとは考えません。」とはっきり言われておるわけです。ところがいま次長はこのままいくと言われたんですが、その辺はどうですか。
  134. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 外貨債、それから戦前債、それらを含めまして、四条公債特例公債、総合的な減債基金制度というものを確立することによりまして、それによって公債発行に対する政府の姿勢というものを明らかにするというのがこの減債制度趣旨でもあり、機能でもございます。したがいまして、総合的な減債基金という意味で、その最も大きな部分でありますところの四条公債の対象見合い資産の耐用年数ということを頭に置いて決めました一・六という割合を維持することは妥当であるというふうに考えておる次第でございます。
  135. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私が本会議で申し上げた趣旨は、百分の一・六という率が出てまいりました遠猷は恐らくいま矢追さんが読み上げられたような趣旨のことであろうと思うわけでございます。  それから第二に、それが妥当でないということを申し上げたのは、六十年でちょうどその定率繰り入れされた償還財源が満たされて、そして完全に償還ができるようなぐあいに公債発行されておるわけじゃございませんので、これだけでは妥当ではあるまいということでございます。そういう趣旨で申し上げたわけで、したがって、これにつけ加えて、いろいろな場合でも、予算特別会計繰り入れ政府は自由を持っておるわけでございますので、それからまた借りかえによって調達するというようなこともやってきておるわけでございますが、今度の場合は借りかえというのはやらない。したがって、第三のいわゆる必要に応じて予算繰り入れをやるということを書いてある趣旨のものは、六十年までには必ずその方法によりまして繰り入れが行われて償還が行われるということを政府が約束をいたしておるわけでございまして、大変危ないというわけではなくて、必ずこれは払うわけなんで、払わなけりゃ大変なんでございまして、その点は政府がいま御説明申し上げておるような趣旨で満額償還に支障がないようにいたしますということになっておりますので、その点はそういう意味で御理解を賜わりたいと思います。
  136. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 だからいま、返せるからいいんだと、必ず返しますと、こう大臣ずうっと主張し続けられておるわけですね、本会議でも、きのうもですね。心配ないから、安心せいと、こうおっしゃいますけれども心配があるからお聞きしておるわけでしてね、具体的にその問題まで提示して言っているわけで、じゃ、そう言うなら、私がさっきも言ったように、来年度からいわゆる赤字国債というものが完全に予算の中に組まれてきている。赤字に抱かれた財政——これやわらかく言ってですよ。私は、赤字公債にのまれた財政と、こう言いたいぐらいなんです、本当は。遠慮して抱かれたと言っているのです。そういうふうな中で、特にいまの三番なんかできるのかということですよ。何か五十五年あたりになれば相当景気回復でもして税収がふえるならいいけれども、それも非常にこれからの展望としてはむつかしい。そうなると、先ほどの主税局長のように、結局増税をする。果たして増税をしたからといって、またそれだけ税収がふえるのかどうか。また逆に、税がずっとふえることによって景気の問題も無関係じゃありませんから、その辺とのかみ合わせどうなってくるのか、これもまたわからない。この前の四十年のときは幸いその後高度成長ということがあって非常にうまく返すことができたわけですけれども、今度はそう簡単にはいかない。それが心配だから伺っているわけでして、だから、この償還計画表というものはお話にならないと思う。衆議院でも問題になり、また参議院でも予算委員会等でも議題になったのはそこにあるわけですから、ここでもう少しやはりはっきりとした展望をおっしゃっていただかなければ、われわれとしては納得できない。それは確かに先のことはわかりませんよ。特に政治はあしたがわからぬと言われておるような状況もありますので。しかし、ある程度の見通しがなければ、これは十年先のことはわかるかと、来年のことだって鬼が笑うんじゃないかと言われたらそれまでですけれども、もう少し具体的な線というものを出していただかないと、そうでなくてもこの補足説明だけではわれわれは納得してないんですよ、この償還計画表というのは。その辺をもう少しお伺いしたい。
  137. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 六十年に満期が来ましたら払わなければならぬ法律上の責任を持つわけなんです。払わぬというわけにはいかないんです、これは。払うことができないのでございますなんて言えないんですからね、政府は。そういうことなんでございますので、払うことができるかできないかという問題じゃないんです。これは払わなければいかぬわけなんでございます。したがって、払える予算を組んで責任を、義務を果たさなければならぬのが政府なんでございます。そこで百分の一・六の定率繰り入れというのは、毎年の予算におきましてどんな場合でも、つまり特例公債発行中でございましても、必ずこれだけは定率繰り入れいたしますと、つまり予算の場合に各費目の軽重、緩急を判断いたしまして選択する場合におきまして、これは減債基金といたしましてこれだけは定額の繰り入れを必ずするということになっておるわけでございまして、したがって、それに従って予算編成するわけでございます。それで十年満期でございますから足らないことは明らかでございます。したがって、剰余金全額繰り入れましょうと、これもしかし特例債発行中は剰余金をできるだけ出さぬようにいたしますので、それには大きな期待は持てないわけでございますから、したがって、第三のアイテムでございまする必要に応じて予算上の繰り入れをするということになっておりますが、その条項によりまして政府は六十年の満期に支払うに必要な予算をちゃんと組んでいかなければならない、それで義務を果たさなければいかぬわけなんでございます。で、そのようにいたすつもりでございます。で、それは義務費でございますから、もうどんなことがありましても政府はそれを組まなければならぬ責任があるわけでございます。矢追さんのおっしゃるのは、おまえはそう言うけれども、それは年次別にその数は、何年には幾ら何年には幾らと大体償還財源積み立てというもののもくろみを示してもらわないと安心ができないということ、一応常識的に私わかります。わかりますけれども、そういうことをやるには、毎年の予算に、まず第一に、その公債償還財源積み立てというのは、先ほど大塚さんがいみじくも指摘されたように、十分の一だけはもう頭からとっておけよという非常に手がたい思想ですね。だからそれも一つの考え方だと思うのです。それはもうあらかじめ、これは予算を編成する場合に、義務費だから、六十年には払わにゃいかぬのだからこれだけはまず積み立てておけよと、こういうお気持ちはわかりますが、財政の立場では、その場合そういう経費の使い方をすべきか、それともその金は特例債をより少なく、特例債発行しなけりゃならぬ段階ではできるだけ少なくするように配慮するか、それとも、その年にはより必要度の高い歳出目的があるかもしれませんから、そこらあたりの判断は政府にお任せをいただいて私はしかるべきじゃないかと思うのでございまして、いずれにいたしましても、六十年の満期返済までには耳をそろえてちゃんとやらなけりゃならぬので、もうやらないというわけにはいかないわけなんですから、そういう予算を組んでちゃんと払わなけりゃならぬ立場に政府はあるわけでございますので、払えないかもしれないぞということでは決してないということ、これはもう申すまでもないことと思いますけれども、御理解をいただきたいと思います。
  138. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうなると私、これ大臣お渡ししておりますからごらんになっているかもわかりませんけれど、こういうふうに私は私なりに計算してみたんですけれども、それではこの補足説明の注の2にありますように、予算繰り入れ特例公債に依存しない財政を実現した後に昭和六十年度に円滑に現金で返すと書いてありますね。じゃ、その特例公債に依存しない財政の実現が果たしてどの辺で可能なのか。このままいきますとちょいと可能じゃないわけですね。まあ私五十五年までしか計算してませんけれど。これまでに何かやるわけですか。何かが起こるのかやるのが。いま言った増税をやるのか、あるいはもうばさっと福祉予算なんかを削っちまうのか、何かやらないとこれできないんですよね。大臣それは必ず返さなきゃならぬからと、ようわかるのですが、そのためには大体長期展望——じゃ、大蔵省として聞きますけれども、こういう試算もされていると思うのですよね。成長率はどの辺でどうだ、赤字国債を返すためにはこうだという、やっぱりある程度の見通しがあって、それで経企庁と折衝されると思うのですけれども、その辺のある程度の青写真といいますか、そういうのを聞かなければ議論が進まぬわけですよね。ただ返します返します、任しといてくれというわけにはいかぬと、こういうことです。そういう計算はいろいろ試算されていますか、実際に。税収の伸びはどうなるのか、歳出の伸びはどうするのか、これはやっぱりいま私は大きな時代の転換期だと思うのですね。オイルショックが起こってもう一年以上たったわけですよ。本当はもうことしあたりから——だから私は予算委員会で再々言ってきたのは、五十年度はどうするんですか、五十一年度はどうするんですか、いや調整だ調整だと、またこれ五十一年度調整なんですよ。五十二年度はまた五十二年度になったら調整だと言われるような気がしてならぬですよ。しかし、長期経済計画を立てると政府は言われていますけれども、最近は計画じゃないんですよ。展望に変わったんですよ。計画から展望ということは後へ下がっているわけですよ。それじゃ国民の立場から言って、果たして日本の財政これパンクしてしまうんじゃないかという非常に不安が出てくるわけです。その辺である程度の私は、実際先のことはわかりません。しかし、こうこうこうで毎年何ぼ返せというようなことを出さなくてもいいんです、私は。それだけの税収が伸びるためにはこうするんだと、あるいは景気はこういうふうな形で回復されるような努力、ガイドラインといいますか、出すんだと。歳出はこういくんだと、だからこの特例国債に依存しない財政が実現するんだと、さもなくば仮に今度はこういうことをやめて、もう赤字公債というものはこうやってもう恒常化するんだから、むしろ建設国債と赤字国債なんか分けないでもう一本化してしまって、そしてもうやむを得ないからこういう赤字財政でもうちょっといくんだというように大転換をされるのか、その辺はどうかと聞いているんです。
  139. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 若干の想定を置きましていままでいろいろ試算をいたしましたもの、先ほど辻理事からもお話がございました資料は差し上げて御審議いただきたいと思いますが、これはあくまでもまだきわめて大きながんじきで掃くようなデッサンでございまして、そんなことではなかなか皆さん御満足をいただけないので、もう少し歳出面にわたりまして長期計画との関連も見ながら若干彫りの深い展望ができないもんだろうかということにつきましては、しばらく時間をかしていただきたいとお願いをいたしたところでございます。しかし、矢追さん非常に御性急でございまして、いまこれは相当日本の経済重体なんでございまして、この病人に対して、いつ立って歩むんだということなんでございますが、いまとにかくこの病人を回復させまして、これが活力を回復いたしましてどれだけの、まあわれわれが頼むところは、この経済がよくなってどれだけの歳入を確保願えるかということでございますので、とりあえずまずこの経済をよくすることにいま全力を挙げておるわけでございますから、五十一年度は本当はもっともっと歳入が欲しいわけでございますけれども、もうのどから手が出るほど欲しいんでございますけれども、何としてもこの病人は治さないかぬ。でございますから、来年は増税はもういたさないということを決心いたしておるわけでございますが、しかし、あなたがおっしゃるように、こういう公債特例債に依存するような状態から早く脱却するためにはそのための用意をしてかからないけませんから、ここに病人が寝ておるけれども、しかし、いずれ治るだろうというようなことではいけないわけなんでございまして、来年は、したがって次の歳入を考える場合の準備の地ならしだけはやっておかないけないというわけで、たびたびお答え申し上げておりますように、特別措置を中心にいたしまして、いま洗い直しをやっておりますと、それから新たな財源を求めるお願い、先ほど主税局長が申しましたように、国民にお願いをしなけりゃならぬ時期がくるかもしれませんが、その場合に、十分検討すべきものは検討しておかないけないというわけで、そういう租税負担率等の基本問題はいまのうちに検討をしておこうということで、すでに税調でもお願いして審議を始めていただいておるわけでございます。したがって、歳出の調整、歳入の調整を加えながら一日も早く特例公債から脱却した財政の姿にしようといたしておるわけでございまして、ただそれが何年度からというお約束がいまできないだけなんでございまして、それをどうしてももう示せと、こうあなたおっしゃるんですけれども、そこはお互いの信頼じゃないかと思うのでございますが、私ども六十年にこれが借りかえなくて払うという、満期を一括してお払い申し上げますという約束をするにつきましては、もう不退転の決意をいたして、それを財政運営基本に置いて、歳入歳出に真剣に取り組んでおるわけでございます。だんだんと明らかになってまいりますに従って御審議をいただかなけりゃならぬと思いますけれども、いまの段階におきまして私どもが申し上げられますことは、いままで御答弁申し上げておるようなラインで毎年必要に応じて予算繰り入れというような方法を構えてございますということと、歳入歳出両面にわたりまして真剣な検討に入っておりますということ、そして経済が一日も早くよくなるようなことにいまベストを尽くしておるわけでございます。  で、五十一年度の思い切った増税を、本来ならば財政の姿だったらやりたいところでございますけれども、一般的な増税なんというのはやらないと、ただ若干の特別措置等で手直し的なものは考えながら、次の新しい財源を求める場合の地ならしをどのようにして模索していくかという用意をいまいたしておるわけでございますので、そのあたりのところは政府の意のあるところをおくみ取りいただきたいと思います。
  140. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの大臣のお話を伺ってますと、五十一年度予算の編成は、とにかくいまの病人を治すことがまず第一眼目だと。ということは景気刺激ということであろうかと思いますけれども、そのために増税はしない。ところが、まあいろいろ言われておりますのは、一つは公共料金の問題、増税には直接はならなくても、国民から見れば増税と同じようなものが入ってくる、それで一つはいわゆる歳出を抑えるといいますか、歳入をふやすというふうなことを考えておられると思います。で、その場合ですね、果たして今度は景気刺激ということから考えた場合、ただ公共事業費さえふやせばそれでいいような時代が私はもう余り来ないような気がするんです、いままでと違いますからね、状況が。その場合、いま病人を治すことを主体に置くと言われたのは何を意味されておるのか、それをお伺いしたいんです。といいますのは、「今後の財政運営」という「(参考)」の中に、「新規の政策については原則として既存のものとのスクラップ・アンド・ビルドにより対処する方針のもとに、極力予算規模の圧縮に努める」と、こういうふうになっていますね。それといまの病気治すことの間ですね、どういうふうな関係なのか、ちょっと矛盾するような気もないでもないんですけれども、その点はいかがですか。
  141. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま、歳出に必要な歳入が上がらない経済財政なんでございます。本来ならば歳入歳出が均衡がとれる状態にあることが健康体なんでございますけれども、いまのように巨額歳入の落ち込みがあるということでございますが、その状態を直ちに直すことができない、体質を改善し、体質を強化していかなければそれは直らぬわけでございますので、私の言う病気であるという意味は、そういう経済の体質の改善、経済景気の回復、そういう状態を早く招来しなければならぬと思うのであります。そのために政府は何をやってるかと申しますと、去年からことしにかけまして、歳出はともかく計画どおり実行いたしておるわけでございますが、またそうしないと経済が栄養失調に陥るわけでございますので、歳出は計画どおりやると、歳入は大変な落ち込みであるというところで、今度公債論が出てきた、公債政策が出てまいったわけでございまして、こういうアブノーマルな状態はなるべく早く脱却しなければならぬと考えておるわけでございます。それで来年度といたしましては、早くそれを直したいわけでございますけれども、来年はまだこの状態を続けなきゃならぬという年であろうと、歳入の増強というような点に手を染めるべき段階ではないと考えておるわけでございまして、体質の改善強化にもう一年これ努力してみるという年ではなかろうかと思っておるわけでございます。で、そのためには二つの問題、経常的な経費につきましては、こういうときだからむだがあって——歳出は予定どおり実行してよろしいということは必ずしもむだを容認するという意味では決してないわけでございます、行政経費につきましては極力節約節減を図らなければならぬ。それから新規の政策的な要求というような点は、もしあればどうぞスクラップ・アンド・ビルドで原則としてお願いしたいということで、歳出の全体の分量をそんなに減らすということは私はできない年ではなかろうかと思っておるわけでございます。しかし、景気の回復を図るということにつきましては、やはり財政に——経済自体の自律的な反転力が弱いわけでございますので、財政がこの際しょってやらなきゃならぬという意味で、ここ一、二年抑えてまいっておりました公共事業費を若干ふやすという措置をこの補正予算からやらしていただいておるわけでございまして、来年度の、五十一年度予算編成におきましてもこの点は今日の経済状況にかんがみまして引き続き考えていかなけりゃならぬ課題ではなかろうかと思っております。
  142. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあ五十一年度予算——最後にもう一言お伺いしますが、いまのいろんな説明だと、結局まあ景気回復ということぐらいしか目玉がないような気がするんですけど。この間新聞の囲みには、体じゅう目玉だという話も出ておりましたですよね、お読みになったかどうかしりませんが。私は、来年度予算非常に厳しいので、何も目玉をつくって国民に宣伝するより、むしろ現在の厳しい状況と、その中において国民はこれぐらいはしんぼうしてもらいたいと、この点についてはこういうふうにしますと、やっぱり理解をきちんと求めなきゃいかぬと思いますね。そういう意味で来年度予算の最大の国民にきちんと希望を与える、そういったものは何とお考えですか。値上げだけ理解をしてもらうというんじゃ私困ると思いますが、その点ちょっと一言伺っておきます。
  143. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) やっぱり国民に希望を持っていただく政治でなけりゃならぬという御趣旨は私もよくわかります。また同時に、それはまじめな意味におきまして事実を踏まえた誠実なやり方でなけりゃならぬということも仰せのとおりだと思うのであります。先ほど申しましたように、今度の資源危機から起こりましたこの世界的な規模の経済危機でございましたけれども、そしてそれは日本が最大の打撃を受けた国であったわけでございますけれども、しかしいち早くこの事態にわが国が対応できて、経済がようやくマイナス成長から脱却して、他の先進諸国に先んじて成長の、緩慢でございますけれども成長過程に踏み込むことができておるということは、国民に希望と自信を持っていただいて差し支えないことではないかと思うのであります。この足取りをもっと着実なものにしなければならぬと思うのでありまして、そのために政府は、いままでやってまいりました諸計画というようなものは根底を変えることなく継続してまいりまするし、福祉政策にいたしましても、教育その他の政策にいたしましても、われわれは後退することなく前進を図ってまいりまするし、総需要抑制策の犠牲を受けてここ一両年大変抑制いたしておりました公共事業の面も相当程度増加いたしまして、景気の回復に寄与することができるというような状況をつくり出しまして、国民に自信と希望を持っていただく年にいたしたいものと考えますし、またそれはできることだと私ども考えております。
  144. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、先ほども議論が出ておりましたし、また昨日も本会議で鈴木委員の方から質問もありましたんですが、出納整理期間中の国債発行について、まずこれは財政法の違反にならないのかどうか。というのは、財政法第十一条の年度区分の原則、それから十二条の年度独立の原則、この辺の否定につながるのではないか、削除できないのかどうか、もし削除した場合はどういう弊害が起こると考えておられるか、その点をまとめてお伺いしたい。
  145. 高橋元

    政府委員(高橋元君) お示しの今回の法案の第二条でございますが、この二条を置きました趣旨は申し上げるまでもございませんが、五十年度特例公債予算編成後に生じた税収の減少を補う目的で発行されるものである。そういう非常に特殊な性格を持っておりますので、したがいまして、特例公債発行しながら剰余金を発生させるという事態を避ける必要がある、そのために考えた制度でございます。と申しますのは、三月に通常でありますれば公債発行を終わるわけでございますが、その三月の公債は、二月の末にシンジケート団と契約をいたして発行するわけでございます。その段階で、これはかなり幅を持っております税収というのが、十二月決算以降の法人税収であり、また三月の土地譲渡所得を含むところの申告所得税でございます。そういう税収につきましては二月の段階ではっきり見通しがつきがたい。そこで、今後税収が補正予算で見込まれる税収を上回ってまいりますことがあります場合、その場合に特例公債が超過発行されるという事態が起こり得る。そのために税収の実績を見ながら、これは四月の末ぐらいまでかかるわけでございますが、出納整理期間内に発行したい、こういう例外をお認めいただきたいというのがこの法律でございます。そこで、これがいまお話しのございますように、財政法の十二条なり十一条に触れることはないかというお話でございます。財政法の十一条では、国の会計年度は御承知のとおり四月一日から三月三十一日までであるというふうに規定されております。ところが、四月から三月までと定められました国の歳入歳出というものは現金主義でございますから、したがいまして、そういうものの歳入歳出を最終的に処理をいたしますために、決算期というものを、出納完結期限というものを別に設けております。それが会計法の一条で定められておりますところの七月三十一日の会計年度の完結の時期でございます。したがいまして、七月三十一日までに収納または支出の事務が終わるように、すべての歳入歳出の細かい仕事というものを打ち切っていくわけでございます。その範囲で予決令で四、五月の出納整理期間内の歳入歳出を政令で帰属を決めていくというたてまえでございます。先ほど申し上げましたように、特例公債につきましてこの第二条を入れまして御審議をお願いいたします趣旨は、特例公債発行しながら剰余金を出すことを極力避けたいという意図でございますので、いま申し上げましたように財政法の会計年度の原則というものを乱さない限度でこの規定を置かせていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  146. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの御答弁で、一つ財政法の第十一条、第十二条に触れない理由として、現金による歳入歳出を言われましたが、それはそれでいいんですか。やっぱり国債歳入に入らぬのですか、現金でないからいいというようなお話ですか、その点はどうですか。
  147. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 私の御答弁が若干言葉が足りなかったかと思いますが、歳入歳出は、財政法の二条にございますように、すべて現金の収納または支出を言っておるわけでございますから、財政法歳入歳出と申しますときには、これは現金主義でございます。したがいまして、いま先生からお話がございましたように、国債の収納は現金でないから四、五月でいいのかという点はそうじゃございません。四、五月に現金で入ってまいります国債のかわり金を前年度歳入に受け入れるということをこの法律をもってお決めいただいて、そのような処理をさせていただくということが全体のこの制度趣旨から見てもかなっておりますし、また財政法上大原則の変更ではないということを御説明した次第でございます。
  148. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 その原則に反しないと言われますか、先ほど最後の方でも言われましたね、たくさんの剰余金が出ないためにこれをやるのだと。もし仮に、それでは税収が見込んでいるより多い場合、あるいは少ない場合がありますよね。まあ多い場合は減らすわけですけれども、少ない場合は後でふやすということになるのでしょうけれども、それではその幅といいますか、範囲というもの、本来のこの精神を踏みにじらない程度ならいいという、それは金額なのか、処理の仕方なのか、その点はどうなんですか。
  149. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 先ほど御答弁申し上げましたように、この出納整理期間発行規定は、繰り返しになりますが、国債の超過発行を避けるという趣旨規定でございます。したがいまして、二月、三月、その辺になりましてどのような微調整が必要かということにつきまして現在の段階では見通しができませんので、したがいまして、いまの段階で国債の四、五月発行というものの価格を確定はいたしておらないわけでございます。
  150. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 だから、仮にその三月三十一日までにした場合、どういう後の処理に具体的に困るのですか。私はそう困らないように思うのですけども、たとえある程度見込みが違っても、その次の年度で処理をすればいいのではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  151. 高橋元

    政府委員(高橋元君) その趣旨につきましては、繰り返しでございますが、五十年度歳入として仮にこの特例公債を必要額以上に発行してしまった場合、そういう事態が起こりました場合に、その剰余金は五十二年度以降、通常五十三年度国債整理財源に入るということでございまして、五十二年度でその分を調整するという余地はないわけでございます。そのようなことを避けますために、つまり金利を払いまして特例公債発行し、しかも、その全体が剰余金になるということを避けるためにこの規定を置いておるわけでございます。
  152. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間が来ましたので、次に、あと二、三簡単にお伺いして終わりますけれども国債の引き受けのシェアが一〇%の原則をまあ証券の場合六%に引き下げが行われたわけですが、これで個人消化一〇%の原則は事実上崩れるということになるわけですけれども、この辺について、今後ともこういうふうな方向でいかれるのか、やはり一〇%の堅持が大事なのか、その辺はどのようにお考えになるか、またどういう状況が来ればこの場合そうされるのか、また来年度予算の中で大幅の国債発行が言われている場合に、非常にまあ証券の方の一〇%維持が困難と言われておりますが、この辺の見通しをお願いします。
  153. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 証券の持っております一〇%のシェアは主として個人の消化に充てられるものでございます。また一部いわゆる機関投資家と呼ばれるグループがございまして、これは金融機関でない、または制度上債券の引き受けができないということでシンジケート団には入っておらないけれども、証券会社から国債を買うことができると、そういった機関に対します販売部分を含めての数字でございます。しかしながら、くどいことではございますが、大部分は個人である。そういうことになりますと、この個人国債の消化能力というのは、ある意味で金額的にジャンプしていくことはなかなかむずかしいという面がございます。たとえば本年度に入りましてからの月別の証券会社が扱いました金額を申し上げますと、四月、五月は百五十億円でございましたが、六月、七月、八月はこれが百八十億円にふえておる、九月、十月は二百二十億円にふえておる、十一月は二百六十億円にふえておる、そして十二月はすでに手配をいたしております財政法四条のただし書きによる通常の国債の分だけで三百億円、そしてまた御審議をいただいております特例法がもし御承認いただけますれば、そこでまたプラスアルファのものが証券会社のさばくことができる金額と、こういうことに相なってまいります。と申しますことは、金額的には逐次累増いたしておりますし、また個人国債に対する関心がどのように高まってきたかというのを仮にその成長度合いで見ますと相当早いテンポで上がってきてはおります。ただ遺憾なことに国債発行額自体がそれを上回って早いスピードで大きくなってまいりましたものでございますから、パーセンテージがただいま御指摘のように落ちておるというのが実情でございます。  そういたしますと、これから先どうなるかということでございますが、私ども国債国民の金融資産保有の一つの形態として安全であり、そしてまたほかの預金や貯金と比べれば有利なものであるということを国民によく認識していただき、そしてまた国債が出ますときに個人の消化が多ければ多いだけわれわれが憂慮いたしておりますインフレというものに対する心配も少なくて済む、こういったいろいろな事情がございますので、徐々にふやしていくつもりはいたしております。しかし、来年度国債がどの程度の金額になるか、これにもよりますが、いきなりまた率で一〇%を個人が消化しろというぐあいに頭から押しつけていくことは若干むずかしいのではなかろうか、個人の消化を実額でだんだん上げていって、将来は再び過去のラインであった一〇%の線に持っていきたい、このように考えております。
  154. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは、いわゆるシ団の新規加入ですがね、これは当然お考えになっていると思います。たとえば商工中金あるいは農協というふうなものを入れるのかどうか、その辺の今後いわゆるシ団加入ですね、考えておられる具体的な機関及びそれに対する加入の可能性、これが一つ。  それから、時間がありませんのであとまとめて伺いますが、中期国債ですね、この発行が新聞等で言われておるわけですが、これについてまあ反発もかなり出ております。これの実現をどうしてもされるのか、あるいは見合わされるのか、その辺の見通しをお伺いしたいと思います。  それから、あとの問題はまた次の機会に譲りたいと思いますので、一応本日のところはそれで終わりたいと思います。
  155. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 御指摘の第一点、シンジケート団に対して新規加入について検討しておるか、またその見通しいかんということでございます。この点につきましてただいま御例示としてお挙げになりました商工中金あるいは農協、こういったところは私どもいろいろ制度的な点その他を検討いたしましたが、なかなかむずかしいようでございます。と申しますのは、商工中金でございますと、シンジケート団に加入するということは国債を引き受けるという行為になるわけでございますが、債券を引き受けることができるような規定が商工中金の根拠法の中に入っておりません。その意味で引き受けということに直接参画するのはむずかしいんではなかろうか、すなわちシンジケート団に入るのはむずかしいのではなかろうかという解釈を持っております。また農協を例示されましたが、これにつきましては協同組合は組合員のためにするという大原則がございまして、これも債券の引き受け行為が組合員のための仕事になるのかどうか、その点につきまして法律的に疑義がございますのと、また農協のグループはある意味ではそれを代表いたしまして農林中金が入っておるという現実がございます。その両方の面からこれもなかなかむずかしいのではないか。私ども思いつくままにいろいろシンジケート団の拡大につきましていろいろ法的な根拠その他を調べておりますが、現在のところ具体的にこの機関投資家であればシ団の中に正式なメンバーとして入ってもいいんではないかという具体例はまだ見つかっておりません。  第二の御指摘の点でございますが、新聞紙上その他で中期債といって報道されておる新しい種類の国債についてでございます。この点は先刻も他の委員の御質問に対して御説明申し上げましたが、私ども日本の債券市場、金融市場の状況並びに個人の金融資産保有の形態、その志向などを考えますと、現在の方法でもいいのではないかという考えが基本的にはございます。しかしながら、先ほどの質問にもございましたように、個人消化の割合が減ってきておる、額はふえてはおるけれども割合が減ってきておる、こういう事実を踏まえまして、さらに大蔵当局としても個人消化のためにいろいろ検討すべきではないかという御意見も他の委員会の席上で承っております。その意味で私ども真剣に何かないかということで検討しておりまして、いまのところ他の種類のものよりは一番ふさわしいものとして頭の中にございますのは、ただいま御指摘になりました中期債でございます。ただ、これを現実に実施いたしますにはいろいろの関連する問題がございますので、私ども正式にこれをやろうと決めた段階ではなくて、いまこれに伴う問題を種々検討しておる段階でございます。
  156. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、予算委員会あるいはきのうの本会議などでこの赤字公債の問題についていろいろ伺いましたけれども政府側の答弁を聞けば聞くほど納得できない点が、改めて伺わなければならない点がたくさんふえてきておるというのが実情であります。  で、まず最初に財政法との関係の問題を伺いたいと思いますが、財政法四条、五条、これが戦争中のこの赤字公債乱発による戦費の調達、そしてまたそれが原因となった悪性インフレの爆発ということに対する深刻な反省の上に立って戦後の健全財政主義を基本として据えたいという意味を持った規定ではないかというふうに考えておりますが、この点についての大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。特に、大蔵大臣御自身はもとよりですが、いまの政府がこの健全財政主義の基本を踏まえた財政運営を今後やっていかれるおつもりがあるかどうか、この点もあわせて伺いたいと思います。
  157. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 戦費の調達公債との関係につきましては、渡辺さん御指摘のような悪夢がわれわれの脳裏を消え去らないわけでございます。したがって、公債政策というものは、私はそれ自体悪だとは思いませんけれども、これの運用いかんによりましては非常な害毒を流すことになりかねないと存ずるのであります。したがいまして今度の公債政策運営におきましても、その点につきましては十分戒めてかからなければならぬと心得ております。ただいま、しかしながら、日本の経済状況、先ほども説明をいたしましたように、巨額歳入欠陥に苦しんでおるわけでございます。これを増税で賄うということないしは歳出の大幅な削減において賄うというようなことが適切でない以上は、公債政策によってこの危機を克服しなければならないし、その方がベターであると考えておるわけでございます。また、インフレとの関係におきましても、デフレギャップが相当大きく現在する以上、公債発行が直ちにインフレにつながるとは私ども考えていないわけでございます。したがって、今日御提案申し上げておるような特例債発行は、今日の状況のもとにおきまして私どもは新しい選択であると考えております。しかし、公債政策はもろ刃の剣でございまして、運用のいかんによりまして非常に害毒を流すおそれがあることは十分戒めて、その運営に慎重を期して、健全財政への復帰をできるだけ早く図らなければならないことは、当然の責任と考えております。
  158. 渡辺武

    ○渡辺武君 少しくどいようですけれども、四条について幾つかの点を伺いたいと思うんです。第四条は「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」というふうにはっきり言い切っているわけですね。このことは、別の言葉で言えば、公債発行というのは、これは原則的には認められていないと——原則的にはということを申します。認められていないというふうに解釈すべきものだと思いますが、どうですか。
  159. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりです。
  160. 渡辺武

    ○渡辺武君 もちろん、このただし書きに「但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会議決を経た金額の範囲内で、公債発行し又は借入金をなすことができる。」と、いわゆる建設公債規定がただし書きの中に入っているわけですね。私は、このただし書きがあっても、建設公債というものは、これはできるだけ節度を持ってやるべきだというふうに法の全体の趣旨からして解釈すべきものじゃないかというふうに考えます。また同時に、つまり財政法で認めている発行できる公債というのは、建設公債にこのただし書きで特定されているというふうに考えますが、その点どうですか。
  161. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり心得ております。
  162. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、赤字公債発行というのは財政法では認められていないというふうに理解できると思いますが、どうですか。
  163. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 財政法で認められていないからこそ、特例法をお願いいたしておるわけでございます。
  164. 渡辺武

    ○渡辺武君 先ほど恐らく言い間違えたんだろうと思いますが、大臣じゃないんですけれども政府委員の方の中で、財政法の例外措置として赤字公債を出すことにしましたと、財政法の例外規定としてという表現で答弁された方があるんです。私は、これは根本から間違っている立場じゃないかというふうに思いますが、どうですか。
  165. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 先ほど私が他の委員にお答えをして申し上げたときに、あるいはそういう表現を使ったかと思いますが、それは財政法第四条の公債発行し得る場合というのが、公共事業費、貸付金、出資金ということに限定されておりますが、今回の特例公債はそのような使途に充てられるものではなくて、歳入の税収の不足を補てんするために発行されるものである。したがって、財政法第四条に規定しておる国債の使途に当たらないと、そういう意味で御答弁いたしたわけでございます。
  166. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、財政法の例外規定という表現は間違ってますね。財政法には、特例公債出していいということは一言も書いてない。もし多少でも書いてあれば、例外措置として財政法の例外規定ということになるでしょうが、しかし、財政法には発行できる公債建設公債だというふうに特定されている。その点をはっきりさしていただかないと、根本が間違ってくると思うんですね。その点、どうですか。
  167. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 財政法の例外として法律をもって規定をつくっていただくと、そういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  168. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、大臣になお伺いますけれども、これは、この私持っているのは財政小六法ですけれども、この四条の前に「公債及び借入金財源による歳出支弁の制限」というふうに書いてあります。いま私伺ったのは、公債または借入金等歳入の問題についての制限の点を伺いましたけれども、その点に制約がある以上、財源的な制約がある以上、歳出についても厳しいやはりこの抑制的な措置といいますか、少なくとも放漫財政であってはいけない、野放図な支出をやっちゃいかぬという趣旨がやはりこの中に含まれているんじゃないかと思いますが、どうですか。
  169. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 当然のことと考えております。
  170. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、財政法がそういう立場をとっておるのにもかかわらず、特例法で赤字公債を出すということになりますと、おのずからこの健全財政主義の原則を逸脱していく。平たく言えば、四条、五条で健全財政ということをきちっと基本を定めているのにもかかわらず、そのとめ金を外して、そうして放漫財政の方向への道を開く、その口火になりはしないかというふうに思いますけれども、どうですか。
  171. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) したがって、政府は、財政法に穴をあけるというようなことを国会にお願いをいたしておるわけではないわけでございます。すなわち、特例公債発行、赤字公債発行ということができるように、財政法の改正をお願いするというのも一つの手段かもしれません。しかし、そういうことは、あなたがおっしゃるように、財政法の原則を崩すことに通ずることになりかねませんので、そういうことはお願いしないことにいたしまして、別個の法律で、しかも、それを一年限りの法律といたしまして特例法の立法をお願いいたしておるところでございます。五十年度だけの、しかも、五十年度だけに適用される法律として、目的を限って、金額を限ってお願いしておる。非常に厳格に考えておるゆえんのものは、あなたがおっしゃるように、財政法の原則をむやみに崩すというようなことのないようにしなけりゃならぬと考えておるからでございます。
  172. 渡辺武

    ○渡辺武君 法的には別の法律をもって出したと、しかも、それは一年こっきりのことだと、だから、健全財政主義の原則を崩すことにはならぬという御趣旨の御答弁だったと思いますけれども、私は、抽象論を頭に置いて伺っているんじゃないんです。過去の事実を考えてみますと、昭和四十年に戦後最初の特例法による赤字公債発行された。ところが、その赤字公債発行された翌年から、大量の建設公債が常習的に発行されるようになってきた。いまここに数字がありますが、昭和四十年に約二千億円の赤字公債発行された。四十一年には六千六百五十六億円の建設公債発行された。その後一貫して公債のとだえた年はない、ずっと出されました。四十五年の景気のいいときに若干金額も三千四百七十二億円に下がりましたけれども、四十六年からはもう一兆円を超えて、そうして、ことしは五兆五千億、赤字公債含めてです。莫大な公債発行が累積されてきている。その公債の累積額も、これも恐らく今年度予定どおりに公債全額発行されれば、十五兆一千九百四十一億円という莫大な数字に達する見込みになっているわけですね。しかもですよ、いま大臣公債は悪だと考えないとおっしゃった。しかし、私は、この公債発行が、公債発行対象経費、これとの関係で見ますと、昭和四十五年ごろは三一・四%、対象経費に対する建設公債発行の割合ですよ。三一・四%でしたけれども、四十六年が七二・五%、四十七年は八七・五%、四十八年がちょっと下がって五九・二%になりましたが、四十九年度は六八・五%、そうして五十年度補正後の数字をとって見ますと、約九三・八%、ほとんど目いっぱいという状態になってきている。しかも、この四十年ごろから財政規模の膨張というのは非常に急テンポで進んでまいりました。この間、景気の悪い年もありましたが、しかし、日本経済は高度成長の路線に乗っておって、国際的に見れば、ずいぶん好景気の国だというふうに見られた状態だったと私は思うんです。西ドイツなんかは、これは御承知のように、景気のいいときには、過剰流動性を吸収するために特別な公債発行した、あるいはまた一定規模以上の大企業や大きな資産家に対して特別な税金を課した、そしてその収入は、景気のいい年には使わないで留保しておく、そして景気の悪いときにその費用を使うというような考慮まで払っている。しかし、わが国の場合は、そうした例は一回もない。景気がよければいいで、建設公債を組んで、そして財政を膨張させる。そしていまは、大臣おっしゃっているように、不景気だ、支出を削るのはよろしくないということで、また建設公債目いっぱい組んだ上に赤字公債まで組んで、そうして財政の膨張を支えようとしている。私はこれは、戦後の財政史の中で、昭和四十年の赤字公債発行というのが一つの口火になって、日本の放漫財政、膨張財政の路線が大きく切り開かれたのだというふうに見て差し支えないんじゃないかと思う。いま不況を理由にして二兆三千億円の赤字公債発行しようとしている。しかしこの赤字公債が、恐らく今後の日本の財政財政節度を大きく破っていって、とめどもない財政破綻の道に日本経済を引き込むんじゃないかということを恐れます。この点についてどう思われますか。
  173. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国において財政体質の硬直化が問題になりましたのは、中央、地方を通じまして久しくございます。渡辺さんおっしゃるように、好況のときは歳出を控え、不況のときは財政が出動するという、財政が弾力性を確保しておるということは望ましいことでございます。私も、あなたのおっしゃるように、日本の過去の財政史を回顧して、そういう意味で、弾力性を常に保持する体質を用心深く堅持しておるべきであったと思うのであります。その点、毎年毎年順調な成長に支えられておりましたので、そういう努力が十分でなかったということに対しましては、私は私なりに反省すべきものと考えております。  ただ一点、あなたの御所見で、今日こういう特例債の形で巨額公債をお願いすることが是か非かという段になりますと、私はそれにもかかわらず、この段階におきましては、やはりこういう措置を講じまして、この経済のむずかしい困難な局面を克服してまいるという必要があると思うのでございまして、政府がこういうことをお願いしておることは間違っていないと思うのであります。ただ、今後それでは特例債から脱却して健全な財政への復帰ができた段階におきまして、財政体質の改善ということを忘れていいかというと、そうではないのでありまして、その点につきましては、過去の経験にもかんがみまして、十分な反省を加えながら、用心深い財政運営を通じて、常に体質の改善を図ってまいるということが大切であると、またそうしなければならぬものと私は思います。
  174. 渡辺武

    ○渡辺武君 私が、今後非常に危険な状態になるんじゃないかということを申し上げている一つの根本的な理由は、これは率直に言いまして、自民党が大企業本位の政党だということです。そして昭和四十年の赤字公債発行のときにも、政府は、これは臨時緊急の措置だということを盛んに強調されました。今度もこういう不況の際で、歳入欠陥も非常に激しい折であるからやむを得ないんだということを盛んに強調しておられる。しかし、この間の予算委員会で、一体その臨時緊急の措置というのをだれが判定するんですかというふうに伺ったら、それは国会が判定することだという御答弁総理大臣からありました。しかし、国会が判定すると言っても、私どもは、この赤字公債は反対。賛成しているのは自由民主党。つまり政府・自民党が、臨時緊急の措置だと認めさえずれば、この赤字公債というのはいつでも発行できるという仕組みになっている。大企業は、不況対策として赤字公債発行も、これはあえてやって公共事業の大幅な拡張を図れというような要求がきたときに、やはり政府としてはその要求を基本的に受け入れていくという方向で節約すべき歳出も節減しないで、赤字公債を組んで財源を賄っていくという道を私は当然とるだろうと思う。その点はどうでしょうか。
  175. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 自由民主党は、両院を通じて多数の議席を与えられておりますが、だからといって、おごった気持ちは毛頭持っていないわけであります。特例債発行というようなことにつきましても、先ほど私が申し上げましたように、財政法の改正、財政法に穴をあけるというようなことはいたしていないのでありまして、戦々恐々としてこの事態に対処いたしておるわけでございます。  それから、あなたはこれを通じて公共事業等をふやして大企業に奉仕するのではないかという、そういう歌をしょっちゅう私は聞いておるわけでございますけれども、私どもはそんなことは考えていないわけでございます。予算を現にお調べいただきましても、社会保障であれ教育費であれ、そういった点につきましては大胆にふやしてきておるわけでございますけれども、公共事業につきましてはここずいぶん抑制をいたしてきております。また、公共事業の中身もずいぶん変えてまいりまして、生活本位な中身にだんだん改善してきておるわけでございますので、どうも色めがねでごらんにならぬように、実態をごらんいただいて、評価すべきところは評価して、共産党さんもですよ、この点は評価するなら評価するというように素直にひとつ私は見ていただきたいと思うのであります。私どもは、大企業に奉仕するためにあるわけじゃないのでありまして、これは余りに非礼なことじゃないかと私は思うのであります。毎日、毎日それを、大企業と親米ですか、結局結論をそこに持っていかぬともう御承知にならぬような、議論をそういう鋳型にはめられてしまったのでは自由な討議はできないんじゃないかと、そういう感を深くすることは大変に残念に思います。
  176. 渡辺武

    ○渡辺武君 私も大臣その他自由民主党の方から同じような歌を何回も伺っております。  具体的に伺いましょう。十二月の十二日の日ですね。経団連を初めとする経済団体十団体が、来年度予算編成についての経済政策運営に関する緊急意見ですか、というものを発表しております。私これはまあ新聞でしか見てありませんけれども、その中でですね、当面の経済政策の焦点を、不況からの脱出に集中し、これを強力に推進することであるということをまず初めの方で大いに強調しておる。ところで、来年度予算の編成ですけれども、けさの新聞によりますと、大蔵省は予算の骨格を固めたという記事が出ております。真偽のほどはわかりません。しかしどうでしょうか。大蔵省が来年度予算の編成について、景気政策、これを重点として考えているというふうに新聞などにはよく書かれておりますけれども、その辺どんなふうにお考えですか。
  177. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 経済をめぐる内外の状況は、低成長と申しますか、そういう条件のもとにわれわれは入ってきたわけでございますので、そういう中におきましてわれわれの財政はどういう姿であっていいかということをまず考えなければならぬと存じまして、予算編成に当たりましては、そういう環境の変化というものについて、われわれはまず十分な検討を遂げながら当たっておるわけでございます。  第二に、今日の経済は、たびたび申し上げておりますように、深刻な不況から脱却するに至っておりません。ピーク時の経済活動水準から比較いたしますと、異常な落ち込みでございまするわけでございますが、去年の秋ごろの水準から比較いたしましても、なお依然としてまだ低位に経済活動が抑えられておるわけでございます。したがって、私どもといたしましては雇用を維持し、経済の活動をノーマルな水準にできるだけ持っていかなければなりませんが、先ほど申しましたように、経済自体に自律回復力というものが十分でないわけでございますので、財政の役割り、これはそんなに財政の力を過大視するものではございませんけれども、こういうときに財政がどういう、どれだけ寄与ができるかと、国民の期待は、財界ばかりじゃございません、各方面から非常に強い期待が財政に寄せられておるわけでございますが、私ども財政がしからば果たしてこういう状況のもとでどれだけそういう期待にこたえられるかどうかという点は十分考えて、経済をノーマルな状態に回復するために何ができ何ができないか、そういう点をよく見きわめて予算の編成に当たらなければならぬと鋭意いま検討をいたしておるところでございます。
  178. 渡辺武

    ○渡辺武君 私、ここにですね、十一月十一日の衆議院の本会議でのこの特例公債についての速記録を持っておりますが、内閣総理大臣はですね、「経済政策は、インフレと不況を両方とも解決をするということが経済政策である」とおっしゃりながら、「物価も鎮静の傾向に入り、そこで本格的な景気対策に乗り出した」と、こういうふうに言っておられる。経済企画庁長官も、「二刀流の構え」でいくというのですね。そうして、いまはインフレも鎮静してきたので右手にその不況退治の刀を持って、左手の方はもうこのインフレ退治の刀でいいんだと、こういうことを言っておる。つまり、きき腕で持っておる刀は不況退治だということですよ。不況重点、不況対策重点、これが現在の三木内閣の政策だ、経済政策だという趣旨のことだと理解できる。来年度予算も不況対策重点の予算、これを編成するおつもりだろうと思うのですが、どうですか。
  179. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、経済の正常な回復を図りまして、雇用を維持してまいり、経済活動の水準を維持してまいるということは当然のことだと思うんでございます。あなたの言う不況対策と、総理その他のおっしゃっておる不況対策というのはそういう私は意味だろうと思いますし、私どもも当然今日、政府が心得なきゃならぬことは、そういうことではなかろうかと思っておりますし、来年の予算もそういう意味経済の回復という点には思いをいたさなければならぬことは当然の責任であろうと思っております。
  180. 渡辺武

    ○渡辺武君 そこで、経済団体十団体の要望としては、この後の不況対策重点の予算の規模、前年度当初予算比で一五%近くまで拡大して欲しい、五十一年度予算の規模。   〔委員長退席、理事山崎五郎君着席〕 こういうことを要望しています、一般会計の規模です。どのくらいに大蔵省としては考えておられますか。
  181. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いろんな点、目下鋭意検討を重ねておるわけでございまして、まだ計数的にどれだけのフレームにしてまいりますかという点につきましては、まだ歳入歳出とも固まっておりませんので、お答え申し上げる段階ではございません。
  182. 渡辺武

    ○渡辺武君 けさの新聞によりますと、大蔵省の予算の骨格なるものの記事の中で、五十一年度は本年度当初に比べて一三%台の伸びを考えておるということが書かれてあります。その辺を考えておられるかどうか。  それから、もう一点ついでに伺いますけれども、その経済団体十団体の要望では、公共事業関係費を本年度補正予算比二〇%近く増額するということを要望しているようです。これは、当初予算に比べると約三七%の増加になるだろうというふうに言われている。ところが、この大蔵省の予算骨格という記事の中には、「公共事業関係費を今年度当初比二〇%強の三兆五千億円弱とする」というふうに記事が書かれております。こんなところを考えておられるのではないかと思いますけれども、どうですか。
  183. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、まだ検討中でございまして、そういうふうな数字が固まっておるわけではございませんので、いろんな観測記事が流れておるようでございますが、一々それについて答えることはできません。
  184. 渡辺武

    ○渡辺武君 公共事業費が予算の総枠の伸びを超えるということは考えておられますか。
  185. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 総枠……
  186. 渡辺武

    ○渡辺武君 仮に予算の規模が一三%ふえる。しかし、公共事業費はそれよりもっと伸び率が高いというふうに考えておられるんじゃないですか。かなり公共事業費は伸ばそうというお考えになっているんじゃないでしょうか。
  187. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどお答え申し上げておるとおり、まだ決まっていない、検討中なんでございますから、いま各費目につきまして数字をもってお答えするということは差し控えさしていただきたいと思います。   〔理事山崎五郎君退席、委員長着席〕
  188. 渡辺武

    ○渡辺武君 しかし、先ほどの御答弁ずっと伺っていますと、公共事業費の伸びを抑えてきたので、この辺で直さなければならぬということも言っておられたでしょう。そこまで言われるなら、概略のめどくらいはおっしゃっていただいてもいいじゃないですか。
  189. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 公共事業費も考えなければならぬと思っていますけれども、どの程度考えられるかということにつきましては、まだ申し上げられる段階ではございません。
  190. 渡辺武

    ○渡辺武君 それから、来年度も赤字公債を含んで、かなり多額の公債発行しなければならぬというふうな趣旨のことを言われましたが、その辺の規模はどのくらいに考えておられますか。
  191. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだ歳入歳出とも検討中でございまして、フレームらしいものもまだできておりませんので、ここで大体こういう見当になるだろうというようなことを申し上げられる段階ではございません。ただ、先ほど主税局長も申し上げましたように、歳入がことしの当初予算で私どもが見込みました税収のようには多く期待できないだろうということは言えるのではなかろうかということは、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、それからまた、企画庁の方の経済見通し作業の方もまだ詰まっておりませんので、いろんなデータがそろいまして歳入を固めてまいらなけりゃならぬわけでございますので、そういうようなこともまだできていない段階で、この見当になりますというようなことを申し上げるのは、いささか軽率のそしりを免れないと思いますので、御勘弁をいただきたいと思います。
  192. 渡辺武

    ○渡辺武君 関連して、もう一つだけ伺いますけれども、この経済十団体の緊急意見書ですね、これ、もうお読みになったと思いますけれども、大体これについてはどういうふうな御意見でしょうか。
  193. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 経済団体ばかりではございません。地方からも、各種の、福祉団体からも、労働団体からも、いろんな団体からもたくさん御要求がございます。御要求されることは自由でございます。したがって、そういった点は私どもといたしまして、いろいろ参考にいたしまして、いま歳出の査定にかかっておるわけでございまして、一つ一つの団体の御希望につきまして、まだお答えができる答えがまだ固まっていないわけでございますので、その点は御勘弁をいただきたいと思います。
  194. 渡辺武

    ○渡辺武君 大臣自身経団連の土光会長に会われて、この意見書についての見解を述べられたんじゃないですか。どうですか。
  195. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 見解、私は一般的な考え方を述べたわけでございまして、意見書に対してのお答えを申し上げたわけでは決してございません。
  196. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がないからそのくらいにしておきますけれども、私が申し上げたいのは、五十一年度の当初予算を組む段階から、五十年度を上回る公債発行規模になるだろう、赤字公債も出さざるを得ないんだということをおっしゃっている。そこのところなんですよ。しかも、その理由景気対策をやらなきゃならぬのだということですね。あの昭和四十年の赤字公債を出したときも、当初予算を編成した後で歳入欠陥の問題が出てきて、そうして補正予算特例公債を出した。ことしもそうですよね。ことし特例公債を出すに当たって政府が何を強調しているか。もう当初予算は組まれました、歳出を余り削るわけにはいきません、だから足りない分は公債発行で賄わさしてくれ、こう言っておるわけです。ところが、今回は違うのですよ。歳出を抑制をしようと思えば抑制できる。それにもかかわらず、当初から景気対策を名目に恐らく公共事業費もずいぶん伸ばすだろうと思う。かなり膨張した予算を組もう、そのための財源として赤字公債発行ということを考えておられる。ここには赤字公債発行財政節度を失わしつつあるという最も有力な証拠があるんじゃないかと思う。この点どう思われますか。
  197. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今日の経済状況は、たびたび申し上げておりますように、一般的な増税がお願いできるような状態でもないと、といって財政の事情は減税するような余裕はないということでございます。歳出の方につきましては、こういう財政事情でございますので、できるだけ節減を図らなければならぬわけでございますけれども経済状況がこういう状況でございますので、政策的な経費につきまして思い切った削減を考えられるというような状況ではないという判断を持っておるわけでございます。したがって、この際といたしましては、やむなく特例債発行をお認めいただくという異例の措置をお願いいたしておるわけでございまして、しかし、これはあくまでも異例の措置でございまして、経済の回復等を通じまして、こういう状況からなるべく早く脱却する方途を探求して健全財政への道に復帰しなければならぬと政府はせっかく考えております。
  198. 渡辺武

    ○渡辺武君 最後に一言だけ伺いますが、ここに私持っておりますのは十月三日の読売新聞。ここには「赤字国債の条件」ということでシンポジウムが行われた記録が書かれております。ここに財政制度審議会の会長の桜田さんが出席しておられる。そうしてこういうことを言っておられる。「中間報告は大甘だ。」——「中間報告」というのは財政制度審議会の中間報告。大臣も御承知のように、昭和五十五年度には、五十年度歳入欠陥が三兆円の場合に恐らく公債の累積残高が六十兆円を超えるだろうというようなショッキングな推計をしたその中間報告、これは大甘だというんです。そうして、しばらく言われた後で、「国債が今年度は六兆円、地方債が二兆円で、来年度はもっと多くなるだろう。十兆円でもかまわない。それより五十一、二年でカタをつけて、貿易依存度の高い日本が世界的な低成長時代に見合う財政運営を早く確立する必要がある。このためには、国債残高が三十−四十兆円になることを恐れる必要はない。高度成長による税の大幅な自然増収が望めないとすれば、今後の財政国債に依存しなければやっていけない。」、こういうことを言っているんですよ。大臣は、できるだけ早く健全財政に戻りたいと言う。しかし、財政制度審議会の会長さんが、来年度はもっと多くなるだろう、十兆円でも構わない、公債がなきゃやっていけないんだ、こういうことをシンポジウムの席で言い放っている。一体、こういう人を財政制度審議会の会長さんなどに据えておいて健全財政なるものに復帰できますか。その点どう思われます。
  199. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 桜田会長は私ども尊敬する先輩でございます。人を批判する場合は、その言われたことを正確に調べました上でやらなければならぬわけでございますが、恐らく、言われた趣旨は、ことしとか来年というような年は公債に依存せざるを得ないであろうという御趣旨のことだと思うんでございますけれども、なるべく早く特例公債から脱却せなけりゃならぬということは健全財政の鉄則でございまして、私といたしましては、その鉄則には忠実に施策をしていきたいと考えております。
  200. 渡辺武

    ○渡辺武君 桜田さんは日経連の会長ですね、財界の大御所といわれる方です。こういう方が政府の重要な財政制度審議会の会長さんをやっておられる。そうしてまあ大臣がいまちょっと言われましたが、五十一、二年で片をつけろ、そのためには来年度は十兆円の公債出したって構わないのだと、こういうことですね。国債残高が三十——四十兆になることを恐れる必要はない、むちゃだと思うんですよ。まさにそれを恐れなきゃならぬ。それを恐れるがゆえに健全財政を真剣になって考えなきゃならぬという、その時期にこういうことを言っておられる。私は、これは財界の要望を代表した意見だろうというふうに思いますが、こういう方を財政制度審議会の会長さんに据えておくと、当然そこから打ち出される答申なるものは、財界の意見をよく反映したものになるんじゃないか、そう思いますけれども、その点どう思われますか。
  201. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) いまお示しになりましたものは、実は私もメンバーとして参加しておったシンポジウムだろうと思います。そこで、私も大分古いことになりましたので記憶が定かではございませんが、桜田さんが強調なさっておったのは、そこで、こういうことになっては大変だから、たとえばGNPの何%とか、そういった国債発行の限度の歯どめを検討すべきではないかということの枕でおっしゃったんじゃないかと私は記憶しておるんでございますが、そこで、私は私なりの意見を申し上げましたら、結局それは模範生の答弁だなということで笑われたというくだりがあります。あるいは編集でその辺が前後しておるかもしれません。したがいまして、私、ただいまの渡辺先生の御指摘をわきで伺っておりまして、桜田さんの御意見が必ずしもその部分だけとれば真意のとおり伝わっていないのではないかという感じがいたしましたので、まあそのシンポジウムに出席しておった一人として、若干記憶なのであやふやな点もございますが一言申し上げさしていただきます。
  202. 渡辺武

    ○渡辺武君 あなたが模範生だなあと言ってほめられたのかひやかされたのか、記事で読みましたよ。しかし、この記事に関する限りは、桜田会長は国債に依存しなければやっていけないのだ今後も、ということを言っている。別に、国債を全然出すべきでないというような立場は私どもとりません。とりませんけれども、少なくともいま国債発行が大きな問題になっているときに、こういうような、放言とまああえて言いますけれどもね、事、責任のある立場にある人が言う、これは私は考えなければならぬ問題だと思いますよ。こういう方を大臣どうですか、こうした重要な審議会の会長に据えるということは適切じゃないのじゃないですか。
  203. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大変高邁な御見識を持って、非常に熱心に財政制度審議会の運営をやっていただいておりますので、大変私は感謝いたしておるわけでございます。
  204. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 現在が大変異常な状況にあることはいまさら申し上げるまでもないわけでございますし、この状況が長く続きますと、日本の財政経済も崩壊の危機にさらされると思いますから、これを今後どうやっていくかということが至上課題であろうかと思います。ただそれをお伺いする前に、当面、目先、十二月を考えてみると、一体どうなのだろうかと、そこまでの心配をしなければいけない状況だという話も伺っております。で、これは大蔵省がお出しになった資料だと思いますけれども、「特例法の早期成立を必要とする理由」という一枚紙の最後に、「十二月に特例公債発行することが不可能となれば、月末には国庫の資金繰りに支障を生ずる惧れもある。」という記事もあるわけでありますが、この間の事情について御説明をいただきたいと思います。
  205. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいま御指摘になりました資料のそこのくだりは、私ども心配しておることを率直に文字にいたしたものでございます。実は、国庫の資金繰りは財政資金の効率的な運用ということで私どもが一本で取りまとめてその運営に当たっております。そしてこの対民間の収支であるとか国庫の中の資金繰りであるとか、こういったことは常時できるだけ正確な数字を把握しながら、そしてあるいは金融政策の資料にいたしましたり、あるいはまた国庫の中の資金のやりくりの判断の資料にいたしておるわけでございます。しかしながら、項目が数万にわたりますので、現実の問題といたしましては、ごく直近のことは各機関なり各特別会計から聴取して実施いたしますが、通常ある月の見通しということになりますと、過去の経験率を使いまして、そしてマクロで計算をいたしまして、ある月にはどうなるかということを検討してその対策を考えておる次第でございます。  で、これは衆議院大蔵委員会でも御質問ございましたので、当時の時点、すなわち今月の初めに見込みました数字を率直に御説明申し上げて、私どもがなぜここで資金繰りに支障を生ずるおそれがあるという心配をしているのかということを御説明いたしましたが、現在でもその気持ちに変わりはございません。これを少し具体的に申し上げますと、ただいまマクロのときには過去の経験率と申し上げましたが、その中で歳出におきましては季節的な支出であり、しかも、ある程度その金額が把握できる食管会計を除きましたほかのもの全部につき、また歳入におきましては、三月に出てまいります個人の申告所得税、これが特別な動きをするものでございますから、これを除く。この二つの要素を除きまして一般会計の支出、収入、この両方をめどをつけますと、歳出において約二兆八千億であり、歳入において約一兆六千億、差し引き一般会計としては十二月中に一兆二千億足りなくなるのではないか。それからまた、数多くございます特別会計につきましては、合計いたしまして約七千億足りなくなるのではないか。そういうことで国庫の資金繰りを見ますと一兆九千億足りなくなるわけでございますが、その中で財政法四条の国債の枠の残りがございましたので、これを全部十二月中に出すということにいたしますと二千六百億出ることになりますので、差し引き十二月中には資金不足が一兆六千四百億になるのではないかと、このような見積もりを立てた次第でございます。で、これを十一月の末、すなわち十二月初めの大蔵省証券の発行高約六千八百九十億円でございますが、これを足しますと、合計いたしまして、大蔵省証券を発行して賄わなければいけない資金の不足額が二兆三千二百九十億円になるということで、これでは限度額を補正予算でせっかく二兆二千億円まで上げていただきましたが、そこを突破するのではないか。その意味でこの資金繰りに支障を生ずるおそれがある。したがって、十二月中にできるだけ早い機会に特例国債によってできるだけのことはしたい、すなわち、市中の金融その他から考えまして無理のない程度のもの、約二千四百億円程度を発行させていただきたい、こういうことを考えておったのでございます。それからただいままで約二週間ほどの日時がたってきております。その間の推移を見ますと、若干支出の方が出が遅いという感じがいたしております。その意味で、十二月の初めに心配しておったときといまとでは、ほんの心持ち気持ちは違ってきておりますが、しかしながら、十二月というのは、人件費であるとか、各種の補助金であるとか、あるいは各種の公共事業費の支払いであるとか、これが年末にかけて殺到をいたします。その意味で、例年のことでございますが、十二月は、初めに租税収入がわりあい入ってまいります。これは、卸案内のとおり、九月決算の法人がわりあい多いものでございますから、それに関係する法人税が入ってくる。そこで若干中が落ちまして、月末へかけて支出が急上昇するというパターンをとっておりますので、現在でも多少緩和したかなという印象は持っておりますが、下手をすると十二月の末に資金繰りに支障を生ずるおそれというのはまだあるという心配をいたしております。
  206. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうしますと、話を簡単に縮めていくと、十二月の当初お出しになった見込みでは、特例公債を仮に発行しないとすると十二月に千二百九十億円足らなくなるかもしれない。以降の推移で若干ちょっとうまくいくかなという感じはあるものの不安感は全く同じである、こう理解してよろしいですか。
  207. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 御指摘のとおりでございます。
  208. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこでお伺いしたいんですが、お示しの数字をもとにして考えるとして、この千二百九十億円足らなくなるというのは、これもし本当に足らなくなったら、どういう対応の仕方があるわけでございますか。
  209. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいまの御質問は非常にむずかしい条件を付して仮定の問題でございますので、私どもとしてもお答えがしにくいのでございますが、その辺は、私どもといたしましても、できるだけ万一の場合でも支障を生ずることのないよう、歳出に当たっておりますものの中に今月から来月へ繰り延ばしてもいいものがあるのかどうか、その辺を今月の初めに心がけて注意しておくように内々の指示をいたしておるところでございます。
  210. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 財政資金の支出を見る場合に、こういう整理が普通かどうかわかりませんけれども、対民間収支と対日銀収支に分けて、合わせたものが政府預金収支である、こういう見方をするようであります。で、いまお示しの千二百九十億円というのが、対民間収支とか対日銀収支とかというばらばらのものではなくて、いわば政府預金収支としてそれだけの赤が出るのだ。もし仮にそういうことになりますと、いろいろやりくり算段はしたとしても相当容易ならざる赤字であるということになると思いますが、そういう性格の赤字でございますか。
  211. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 民間との取引関係ないしは金融事情を見ますときの対民間収支と国庫の資金繰りで一番大きい違いは、運用部資金でございます。郵便貯金がなされますと郵便局から郵便特会を通じて運用部資金に入ってまいりますが、これは通常の国庫の資金繰りからは外れて、別のものとして扱われております。したがいまして、国庫対民間の収支で相当金が上がってきておるじゃないかという場合でも、税金が上がってまいります場合と郵便貯金が上がってまいります場合では違いまして、ここに郵便貯金があるから一般会計の支出に充てるというぐあいにはまいらない。そこが一番大きい違いでございます。
  212. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 重ねてお尋ねしますと、対民間収支、対日銀収支ということになると資金運用部等も入ってくると思いますが、その線でいけば、対民間収支という面で国庫の収支を見ていくと、先ほどの赤字が想定される、大まかにそう理解してよろしいですか。
  213. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 御指摘のとおりでございます。
  214. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それで、立ち入ってお伺いをしたいわけですけれども、一般会計として十二月に二兆八千億円出るであろう。これはなかなか積み上げてみるということはむずかしいから、過去の経験則から想定をしているんだというお話でございますけれども、こういう問題についてどう考えたらいいんだろうかということでお伺いをするわけですけれども、その通常の経験則から予測を超えるような事態が仮にあった場合、ないとは絶対に言えないと思います、で、特例法案の成り行きいかんによってはやりくり算段の一つもして、千二百九十億円の赤字をどうしようかというせっぱ詰まったものを考える場合に、従来の経験則から十二月は二兆八千億だけでございますということで済むんだろうか、げたとして相当のいわば異常値に対する準備というものを考えておかないといけないんじゃないか、この点はいかがでございますか。
  215. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) その点は御指摘のとおりでございまして、私どもも、げたと申しますか、アローアンスと申しますか、そういったものはどうしても必要でございます。国庫全体としては数兆円に上がる金額のものを、しかも、数多い支出官または資金前渡官吏、そういったところを通じて歳入歳出の仕事をいたしておりますので、その意味で、または特別会計特別会計なりに支払いの元請高を自分のところへ置いておかなければいけないという事情もございます。そういったことを勘案いたしますと、御指摘のように、ある程度の金額はキャッシュとして手元に置いておかなければいけないものが必要でございます。
  216. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そのキャッシュとして置いておく金額というのは、法律に従って財政の運用をされるわけでありますから、郵便貯金で上がってきたから、あれを横目ににらんでというわけにもいかないんだろうと思います。そこで、先ほどの対民間収支の面で、十二月は一応千二百九十億円の赤であるというお話がありましたが、不可測の事態も含めて考えるとすると、本当はそれだけではなくて、よほどのものを持っていないと、額はわかりませんが、政府として、財政当局者としては大変心配なんだということはありませんか。
  217. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいま御指摘のようなアローアンスは、これは資金の動きの激しいときには必要な量がよけいになります。資金の動きが少ないときは比較的少なくて済むと、そういう性格を持っております。その意味でも、十二月の特に末というのは資金の動きが激しいときでございますので、私どもとしても通常のときよりは少しよけい目の手元のゆとりを持ってなければいけないんではないかと、このように考えております。そこで、私ども毎日毎日の国庫金の出入りを見ておるわけでございますが、その数字を見ます限り、どうも予定されておった金の出方が少し遅いような印象を持っておりますので、先ほど若干緩んだかなという気持ちを申し上げました。しかし、これが出足が少し遅くなっただけであって年末にがたっとやはり予定したどおりのものが出るのか、それともこの出足の遅さが来年の一月、二月までかかって、出足が遅いままの姿でなだれ込んでいくのか、これによって事情は大きく違ってこようと思います。もし後者であれば、この年末に支障がなくいくわけでございますが、前者であって年末にかけての支払いがやはり相当のものが出てくると、先ほどお示しいたしました数字の中でたとえば特別会計は収支の差額で申し上げておりますから、そういった点も勘案しますと、相当の金額が出ていく可能性はございます。その意味で、国庫金の支出の最終の責任者は、大臣の次の責任者として、私自身としてはやはり相当のアローアンスを持ってないと心が落ちつかないというのが実情でございます。
  218. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そのアローアンスの問題なんですが、いろいろ見積もり過程の中でもそれを見ているという部分が確かにあるんでございます。これもいわばその辺のところがかっちりと見通せるぐらいなら、余り苦労がないわけでありますが、なかなかそうはいかない。万が一を考えながら、そのときに支障がないようにとすると、先ほどのある前提を持った数字とはいいながら、千二百九十億円だけ足をはみ出してしまう。まかり間違ってこの特例法がどうかなった日にはえらいことだとなるわけです。そのときに、じゃ、どういうやりくりがあるかというと、私の理解が間違っておればお直しいただきたいんですが、とにかく赤字が出ちゃったと、何とか財源対策をしろと言われても、財政法の五条で、これはまことに希有なことですが、日銀引き受けの公債、借入金が決めておりますが、これは国会議決が要る。第七条で、大蔵省証券、一時借入金の規定がありますが、これも国会議決が要ります。第九条、国の財産を処分するかということも、また法律に基づく場合を除くほかこれを支払い手段として使用してはならない。がんじがらめが現行の財政法だと思うんです。その意味で、将来非常に不可測の部分が多いんだということを考えると、恐らく内心はそうだと思いますが、よほど心配にならなければおかしいのではあるまいか。そこでもちろん心配なんだとおっしゃるかもしれませんが、その辺のところで、この年の瀬の大詰めになって審議をしているわけですけれども、不可測の場合にどういう準備を政府として持っていたらいいかということも含めて本当はもっと明確にお示しいただいた方が審議をしているわれわれとしても大変楽なんだと思いますが、重ねての質問になりますが、いかがでしょう。
  219. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいま栗林委員が、こういう方法法律でとめられておる、こういう方法もとめられておると、いろいろ例示がございました。私どもといたしましても、何らかの方法で、ただいまお示しのような方法あるいはこれに似たものが許されておるのであれば、その辺の心配を私としてもしなくて済むわけでございます。それからまた、私は責任者でございますから、先ほども申し上げましたとおり、若干のアローアンスを見込みながら運営していかなければいけないと思っております。その意味で、この法案が万一のことになったときにどうするかと言われましても、私としてはそういう事態が起こらないように私なりの努力をし、そしてまたこの国会の御審議がスムーズに行くように、私どもの方でできることがあれば資料でも何でも御提出したいという態度で本日まで推移しておる次第でございます。
  220. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 重ねて伺いますが、万が一のことを考えながらいろいろ繰り延べられる費用があるまいかという検討もしているということでございましたけれども、十二月の歳出の中で大きいものは公共事業費とあるいは人件費等であるということと、いま求められている不況対策ということを重ねて考えますと、何を繰り延べということが、どういう会計処理になるかわかりませんが、本当はそういう万が一ではなくて、私はもっと大蔵省がこういう問題に対して説得力を持たなければいけないんじゃないかと思いますので、先ほどの繰り延べどうこうということも、不況対策との見合いでどんな位置づけになっているのか、念のために伺っておきます。
  221. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 不況対策との関係で申し上げますれば、先刻も他の委員に御説明いたしましたように、この特例法に基づいて発行の権限を付与される国債の金額が非常に多額でございます。それを短期間に市中で消化するということになりますと、思わざるところに思わないトラブルが起こる可能性もなしとしない。私どもはその点も非常に心配いたしておりまして、先ほど御指摘のございました、私どもが簡単に取りまとめた「特例法の早期成立を必要とする理由」の第三番目のパラグラフにも、もしこういったものがおくれまして、金融市場の動向にかかわりなく短期間国債発行するということになりますと、民間の金融、特に中小企業金融にも支障を生ずるおそれもあるのではないかと。その点からも非常に心配をいたしておる次第でございます。繰り返しになりますが、市中で円滑に消化をいたしますためには、特に末端の金融機関の窓口の職員に至るまで、これはこういうことで動いてきておるということをよく理解していただきまして、この窓口におけるトラブルなり何なりを少なくしなければいけない。できるだけの平準化された形でのこの国債の消化というのが、他の企業金融であるとか、あるいは社債の発行であるとか、そういった面に対するインパクトもなだらかなものにする。その意味で十二月にもこの特例法による国債発行されるということが望ましいということを感じております。そしてまたこれは御案内のことと思いますが、役所の仕事は十二月二十八日が御用納めの日でございまして、そこででき得べくんばそれまでに金が入っておって、そのいろいろな支払いの原資として動くことが好ましいわけでございます。そういたしますと、いまから月末まで何日あるということよりも、二十八日の日まで何日あるかということを頭に置きながら仕事を進めていかなければいけない。しかも、これは幸か不幸か、たまたまことしは十二月二十八日が日曜でございまして、十二月二十七日までにいろんなことをしなければいけない。そういうことになれば、本日から数えてあと指を折るほどの日にちしかないもんでございますから、その市中消化の期間が一日でも長ければそれだけ末端でのトラブルも少ない、円滑な国債消化ができる。そういう意味で一日も早くこの法律が御承認をいただければということを私は切望しておる次第でございます。
  222. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 市中金融も十二月、年の暮れは大変な繁忙期だと思います。で、特例公債を十二月に幾ら出すかというのは、おおむね五千億前後というお答えが先ほどありましたから、従来の四条公債の残り二千六百億を除いた二千四百億前後を出していきたい、こういうことだと思うんです。で、二十八日が日曜日だから二十七日で指折り数えてとおっしゃいますが、一日でも多ければいいというほど楽な市中金融なんだと。常識的に考えて、どの程度の期間が本来はあるべきなのか、この点はいかがですか。
  223. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) たびたびこの委員会でも問題になっております個人消化ということを考えますれば、常識的なスケジュールは三週間でございます。財政法四条ただし書に基づく国債も実は先月の末に契約をいたしまして、一日から募集を開始してこの二十日に入金いたします。しかしながら、今回のようなこういう事情のもとではそういうノーマルな手続がなかなかとりにくい、そうなりますと、個人消化の割合はどうしても減ってくるだろうと思います。それならば一日でもいいじゃないかという極端な場合にはそういう御意見もあろうかと思いますけれども、片一方で国債を引き受ける金融機関といたしましては、何日にどうするということを頭に置きましていろいろ資金繰りを立てております。年末に資金を必要とする企業の中にも、あるいは何日から何日までという企業もございましょうし、そういった観点から見れば、できるだけ早くこのスケジュールをみんなにお示しして、そして円滑な引き受けをしていただきたいというのが私どもの希望でございます。
  224. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 もともと十二月に公債を多額に発行するということ自体が、民間に対してずいぶん御迷惑なことではなかったか。
  225. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) その点は経済は生きておりますので非常にむずかしい要素がございます。と申しますのは、一つは、対民間収支で見ますと、十二月は払い超になる時期でございます。しかも、御案内のとおり日銀券の発行高は非常に高くなる月でございます。ということは、財政では払い超が大きくありながら、資金需給はどちらかというと締まる月でございます。そういうことで十二月は従来であれば、どちらかというと、いわば金額を少なくする、そのような配慮をしてきております。ただいまの特例債にいたしましても、一月以降残ります金額が、仮に十二月にただいま御指摘の金額を発行いたしますとしても、月平均約六千億円になります。これは十二月より多い金額でございます。その意味でも、十二月から年度末へかけての全体の資金の動きを見ながら、私どもは、シ団と相談してでき得べくんば合計五千億という金額で十二月を処理いたしたいと考えております。
  226. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 とにかく十二月に、大変資金が詰まるときに、あえて五千億という四条公債特例公債合わせて出さなければいけないというのは、一月以降三カ月で出していく額を考えると、どうしても十二月にそれだけ出さざるを得ないという経過もあったんだろうと思います。それぞれ市中金融機関といえども金融機関であるわけですし、その市中金融の向こう側にはたくさんの中小企業があるということを考えますと、まことに考えさせられる点が多々あると言わざるを得ないと思います。まあこれはこれで一応問題をおきまして。  その先の一、二、三はまあよろしいとして、四月、五月の問題について一点だけお伺いをしておきたいと思うんですが、先ほどたしか一月から三月発行した公債に対して超過的に発行する場合、正確なことは覚えておりませんけれども、四月、五月にそれを超えて公債発行する場合があるとして四月、五月まで発行期間を延ばしたんだという御説明だったと思いますが、この間についてもう少し御説明いただきたいと思います。
  227. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 四、五月発行、出納整理期間発行規定でございますが、これは二月に最終的に三月分の公債発行額を決めるわけでございますが、シ団との契約をいたします際に、不確定な税収の要因でかなり大きな問題が二つございます。それは、三月の土地の譲渡所得を含む確定申告の下落、それからもう一つは、十二月以降の決算の法人税収、こういうことになると思います。それはかなり大きなロットであろうかと思いますので、税収の見積もり等かなり正確になされてはおるわけでございますけれども、現実にこれから経済が推移してまいります際に、それが二月末時点では正確に見通し得ないということが起こり得る、その場合に、税収の減少を埋めるために発行をいたす今回の特例公債でございますから、特例公債が税収の減少分を超えて発行されるという形になりますと、特例公債発行しながら剰余金をつくってしまうということになりますので、それを避けるために四、五月にその出納整理期間発行規定を設けていただいて、それによって運用操作よろしきを得たいという趣旨で申し上げたわけでございます。
  228. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 これは二通り見ようと思えば見えるわけですけれども、二兆二千九百億を三月までに目いっぱい発行はいたしますと、三月決算を含めてふたをあけてみたら、いや、なかなかのものでございました、赤字決算を現在財政法許しておりませんから、したがって、調整を四月、五月、の公債発行にゆだねたい、こうなりますと、そこで第二次補正をするかしないかということと結びついてくると思うのであります。ですから、実はそこを聞きたいんですが、二兆二千九百億という枠は、それを上回ることはまあ万々ないと、こういう御判断だということでございますか。
  229. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 二兆二千九百億円と申しますか、五兆四千八百億と申しますか、それを上回ることは万々ないというためには税収が補正後の税収をほほ確保できるということが金額的には一番大きいわけでございます。十月末までの累計で見ますと、御承知のとおり前年比で九一二・七%の税収でございます。補正のベースは九二・二%でございますから、十月末では若干のアローアンスがまだ残っておるわけでございますが、十一月末がまだあと十日ぐらいたちませんと正確にはわかりません。わかりませんが、私どもが日銀日報などからできる限りの推計をいたしてみますと、恐らく十一月末では九三%、若干下へ落ちまして九二・八とか、そのまわりの累計になるんではないかと。なお若干のアローアンスが九二・二%に対しましてあるという意味は、補正を組みました後で九月決算までの姿はほほ補正で見込んだような姿で推移しておる。補正を見込みましたときに非常に予測がむずかしくて、私が心配しておりました要素三つございます。  一つは九月決算、一つは年末のボーナス、もう一つは三月の申告所得税でございます。その三つの非常にオーダーの大きい心配の中で、最初の一つは、何とかまあ補正の見込み程度でとまったようでございます、落ち方が。で、年末ボーナスはどうも新聞によりますと余り強気に見られない。したがって、残るかぎは三月の申告所得税でございますが、その意味心配は決して消えておりません。消えておりませんけれども、十一月末までの姿で今後推移してくれますれば、税収の面から見ますと二次補正を組むところまで追い込まれないで何とか五十年度はできると、いまなら申し上げられるんではないかと。ただ、やはり今後の金額のオーダーが非常に大きゅうございますから、たとえば年末ボーナスが響く一月の源泉所得税というのは約八千億ベースであるとか、あるいは一月決算が入る三月末の金額というのは、失礼いたしました。十二月決算が入る二月末の金額は一兆を超えておるとか、三月は今年度で申しますれば一兆三千というオーダーの月が後ろに控えておりますので、いま確定的にもう絶対大丈夫ということはとうてい申し上げられない。ただ、心配一つは消えたというようにお聞き取りいただきたいと思います。
  230. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 とにかくいまの財政法が赤字決算を全く許していないわけだから、その意味で出たとこ勝負で第二次補正の可能性もまたあると言えると思いますけれども、その点について別に深入りはしません。  ただ最後に一つだけ、いま補正時点で見込んだ想定と比べて実態との見合いが大変むずかしいんだというお話に対して一つだけお伺いしたいのは、当初予算補正予算を比べて大幅に落ち込んだわけです。所得税、法人税の落ち込みが一番大きかった。それを念頭に置きながら、これだけの赤字公債をどうやってこれから消化していくのかという不安感がわれわれの側に起こるわけです。実は補正予算で見込んだあの大幅な落ち込みそのものが余りに異常値だったんじゃないか、あそこから上に回復することは本当は案外早いので、それを含めながら五十一年、五十二年度財政展望もできるんではあるまいかという気も実はしないではない。で、これから来年度予算編成作業に当然取りかかっていくと思いますけれども、当初予算で法人税の場合、当初所得率を九五%ということで計算をされました。これが大幅な赤字発生ということで七五に落とされた、それがいま御説明のように大方大体そんなところで実態は歩いているらしいという御説明だったと思うのですが、来年度展望する場合に、この七五というのはどれぐらいになっていくのか、またどれぐらいになっていくだろうという見通しがいつごろわれわれは知ることができるんだろうか、この点を最後にお伺いしたいと思います。
  231. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) ただいまのお話は非常に一番予測のむずかしいところなんでございます。ただ抽象的にいま申し上げられますのは、所得率の概念は対前年比の概念でございますから、五十年度に対して五十一年度所得率が下がるだろうか上がるだろうかという意味で申し上げますと、私は上がるんだろうと思います、所得率は。ただどの程度上がるかというのは、やはりけさほど野田委員に申し上げましたように、生産をどの程度の伸びで見てくるかに非常に大きく依存いたします。物価よりもむしろ生産の方に依存するというのがどうも経験的な私どもの感じでございます。生産がある程度伸びると見込まれる状態のもとでは、もちろん経済見通しと法人税収の見通しはかなりのタイムラグがございますけれども、したがって、ある意味では半分近くもう勝負がついておりますけれども、今後の予想の生産がある程度上がります場合には、所得率という表現では五〇対五一は一〇〇を上回ってもおかしくないんだろうと思います。  ただ、もう一つむずかしい問題は、そういうものはいわば経常利益ベースと申しますか、そういう計算になるわけでございます。したがって、九月決算が新聞紙上に言われた経常利益の落ち込みであれば、とうていいま申し上げたような十一月税収にはならない。それが十一月税収は補正で見込んだ程度に落ち方がとまっておるというのは、いわば経常で落ちちゃったのを、たとえば株を売ったり、土地を売ったりしてぎりぎり配当をするということで、そっちが申告に移ってくるわけです。したがって、今度は水面下から戻りますときには、経常の所得率がある程度上がってきましても、いわば株を売らずに済んだというところでとまってしまうかもしれないんで、その両方をかみ合わせて考えないといけないということで、いずれにしましても、しかし、そう言っておりましても、間に合うように積算しなくちゃいけないわけでございますから、最後の決め手はどうも生産をどの程度に見て、そのときに私どもが従来の経験から、いま申し上げました二つの要素をどうかみ合わせて見込むかということになろうかと思います。
  232. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 本日の質疑はこの程度とします。  本日はこれにて散会いたします。   午後六時五十六分散会      —————・—————