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国務大臣(
大平正芳君)
仰せになること、一々ごもっともなんでございまして、私もそのとおり考えております。ただ今日の場合、
公債をこれだけ、こういう姿で
発行することが是か非か、もし
発行しないで済ますことができれば、これは
一つの大きな選択の、そういう選択の可能性がございますならば、それは確かにりっぱな選択だと思います。けれ
ども、今日それではそういうことを、
経済の
状況を考えてみた場合に、
歳入歳出にわたりまして、非常にラジカルな改革を施して、
歳入については増税を、歳出については思い切った削減をというようなことがいまやれるかというと、私はそういう時期でないと思うのでございまして、したがって、
政府の選択は
公債を出すことがいいか悪いかという選択の問題ではなくて、これは、この際は
公債を出さざるを得ないという判断をいたしたわけでございます。それが第一点でございます。
第二点は、しかしながら、しかしそれは異例中の異例の
措置でございますし、こんな
状態をいつまでも続けておってはいけませんので、できるだけ早く
公債から、こういう姿の
公債から脱却した
財政を考えなければならぬわけでございます。
仰せのとおり、これは将来
国民の
負担にかかるわけでございます。したがって、これから脱却をするにはどうすべきかという、これからの
展望を開いていかなければならぬわけでございます。したがって
政府は、それでは何を、どういうことをやっているかということでございますが、第一に、来年それでは
歳入についてどういうことを心組んでいるかというと、先ほど申しましたように、思い切った増税を考えて
公債を減らすということができないという
経済の
状況でございますが、しかし、
経済がもっと立ち直ってまいりますと、本来やはり新しい
財源を
経済に求めなければならぬ時期がくると思うのでございます。そういう時期に備えて現行税制にどういう不都合があるか、どういう不公正がまだ残っておるかというような点を洗いざらい一遍見直しておかなければ、次の
財源を考えるにいたしましても、
国民の御納得が得られないのではないか、そういう
意味で
租税特別
措置を中心といたしまして、いま洗い直しをいたしておるという点が第一点でございます。
それから第二点は、これは将来の税で払わにゃいかぬわけでございますが、
国民のいまの税
負担は、どのぐらいが適正なものであるかという
基本問題につきまして税制調査会で御
審議を願っておるわけでございます。どういう税金をどうするかというような問題までまだ御相談をいたしてないわけでございますけれ
ども、現在、
昭和四十八年の数字でございますけれ
ども、
租税負担率、日本の場合は一九・二%、アメリカの場合は二八・五%、英国の場合は三九・六%、ドイツの場合二九・五%、フランスの場合二七・四%、こういう先進国の中で私は日本は一番低い
状態にございまするし、社会保険の
負担も一番低い
状態でございます。ございますが、しかしこういった点、もう一度権威のある学者などに御検討をいただいておく必要があると存じて、この
公債政策から早く脱却するには新しい
財源をどの程度どういう方面に求むべきかという場合の
基本問題として、
租税負担率はどうあるべきかという点をまず十分の検討を願っておくというのが、いまわれわれがなすべき仕事ではなかろうかと考えておるわけでございます。これもこういう
公債政策から早く脱却したいための用意をいろいろ考えておかなければならぬと存じておるからでございます。
それから第二の問題は歳出でございますが、今日中央、地方を通じての行政、
財政の水準を福祉を初めといたしまして落とすべきでないと、
歳入から考えますとうんとがまんしてもらわなけりゃならぬ
状況でございますけれ
ども、そういうことをいたすべきではないと存じて、私
ども歳入の大きな欠陥にかかわりませず、中央、地方の
財政計画はそのまま実行いたしておることも
野田さんの御案内のとおりでございます。しかし、こういう
財政事情があるし、こういう過大な
公債に依存しておる
財政であることは忘れてはならぬわけなんでございまして、歳出面につきましても相当厳しい洗い直しをいたさなければならないわけでございます。ことしの補正で五百三十九億円の節約をいたしたわけでございますが、これも例年の倍程度の行政経費の節約をお願いいたしたわけでございます。
それから、新規にいまからいろいろ御
計画を各省からも要求されておるわけでございますけれ
ども、私
どもといたしましては新しい
政策を実行する場合には、相当このスクラップ・アンド・ビルドと申しますか、古いものをおやめになられてひとつ出直してみてくれぬかという相談をいまいろいろいたしておるわけでございまして、歳出面をできるだけ切り詰めてまいるという努力もあわせていたしておる
状況でございます。これとても全部
公債政策からの脱却を図らなければならないことでございまするし、いろいろ問題がありまする公共料金につきましても、適正な水準において利用者の
負担を求めております。これにはいろいろな御批判もあるし、抵抗もあるわけでございますけれ
ども、これもやはり
公債政策から一日も早く脱却しなければならぬために考えておることでございますので、一連の
財政政策的努力というものは、すべてあなたの言われる
公債政策からの脱却の用意をいたしておる、また今後もそうでなければならぬと私は考えておるわけでございます。それには相当のいまからのタイミングがかかるわけでございますけれ
ども、その間私
どもの努力の経過は逐一
国会の方の御
審議を通じて明らかにさしていただきたいと考えております。