○
政府委員(橋本道夫君) 第一の問題でございますが、厳し過ぎるかどうかということでございます。これは、
アメリカが年平均〇・〇五PPmというのを決めておりまして、それに対して日本の数字が一日平均〇・〇二PPmというのを決めております。で、この両方の数字を、年平均と一日平均になっておりますので、これを、日本の一日平均のものを年平均に直してみると、どれぐらいな数字であるかということで見るのが比較的わかりやすい機械的な
方法ではないかということでございますが、日本の環境基準の判断で九八%値のところがこの〇・〇二PPmとするということでございますので、そういうことで、日本の環境基準を年平均に直しますと九八%値というところへいきますと、大体年平均〇・〇一PPmという数字になります。そういうことで、〇・〇一PPmと〇・〇五PPmというものを全く細かなせんさくを抜きにしまして機械的に比べますと五分の一の厳しい条件に日本があるということは、これは事実でございます。七倍と言っておられる方は〇・〇二PPmが九九・九%値としてとった場合には大体七倍に近くなると、そういう計算も成り立ちますが、国の環境基準は九八%値としてとっておりますので七倍ということではございません。
次に、厳しいかということでございますが、数字の条件だけではこれはなかなかむずかしいことでございまして、
アメリカの環境基準は
大気清浄化法によりまして、まず三年以内に達成するということが
一つの基本になっております。どうしても達成できない場合に二年だけの猶予が認められるということでございます。そういうことで
アメリカの環境基準は達成
目標ということでは日本と同じでございますけれ
ども、日本のように、かなり長期の期間の中でこれを達成するというような性質のものではございません。この点は、
アメリカの上院におきまして、
アメリカの次官が国
会議員の質問に対して、日本の環境基準と
アメリカの環境基準とは法的性格が異なっておるということを答えております。そういう点におきまして、日本の方が長期
目標であるという点につきましては、そういう意味では、厳しさは日本のは数字だけを見ると厳しいようであるが、それほどの厳しさではないという見方も一方にはあり得るわけでございます。そういうことで、日本の環境基準は厳しいかと言われますと、世界一厳しくございます。これだけは間違いございません。非常に厳しい条件でございます。ただ
アメリカの数字に比べて、安易に七倍ということで厳しさを比較することは決して正しい方向ではないということでございます。
それから次には、あいまいではないかという議論でございます。
大気汚染の分野におきまして化学的根拠がないということでございますが、これは化学的根拠に不確定性が高いということは事実でございます。これは日本も
アメリカも同様でございます。日本だけがとりわけて不確定性が高いわけではございません。完全に確定性
——相当な確定性があるというのは、水俣を二回繰り返したりあるいは四日市のような
汚染、あるいは日本全国に非常な
汚染をたくさん起こして、そして、それによって疫学データのはっきりしたものを得られるというときにのみ得られる話でございまして、そういうものに比べますと、確かに不確定性は高いということでございます。しかしながら動物実験のデータということでいきますと、日本の判断の材料になりました動物実験の成績は国際的にも評価をされております。また
アメリカも同様の成績を持っております。そういう意味で動物実験の成績の方からはそう不確定性が異常に高いというものではございません。医学の水準で受け入れられるものでございます。疫学の成績ということになりますと、これは
汚染の程度とそれに対応して住民の間でどのような疾病の有症が見られるかというような、化学的に厳密な意味での量効果反応を見ているものではございません。
汚染水準に対する、暴露してどのような反応があるかというような見方でございますので、一般の実験学者から見ますと、あるいは理工学の人から見ますと、非常にラフに見えるということは事実でございますが、疫学によってやはり見当をつけるということは行政の
一つのやり方でございます。その点におきまして、日本のNO2の疫学データといいますものは、SO2が十数年に積み重ねられたのに比べまして、日本のものは四十五年以降の数年間のものと、四十五年以前の既存のごくわずかの
使用し得るデータに基づいておるということで、不確定性はSO2よりは高うございますが、しかし、決してどういいますか化学的ではないというようなものではございません。不確定性が高い、あるいはやり方にラフな点があるという議論はございましょうが、
アメリカの疫学
調査と比べましても、厳密な化学論争をすれば、いずれの側においても同等の不確定性があるということでございます。そういうことで、環境基準としては政策的に割り切った数字が日本の環境基準であるというのが
環境庁としての見解でございます。