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1975-11-19 第76回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十九日(水曜日)    午前十時十分開会     —————————————    委員の異動  十一月十九日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     橋本  敦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤田  進君     理 事                 森下  泰君                 山内 一郎君                 栗原 俊夫君                 内田 善利君     委 員                 青木 一男君                 菅野 儀作君                 藤井 丙午君                 宮田  輝君                 神沢  浄君                 浜本 万三君                 福間 知之君                 小平 芳平君                 近藤 忠孝君                 橋本  敦君                 三治 重信君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  小沢 辰男君    政府委員        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁企画調整        局長       柳瀬 孝吉君        環境庁企画調整        局環境保健部長  野津  聖君        環境庁自然保護        局長       信澤  清君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       堀川 春彦君        厚生省環境衛生        局長       松浦十四郎君        厚生省環境衛生        局水道環境部長  山下 眞臣君        労働省労働基準        局安全衛生部長  中西 正雄君    説明員        厚生省公衆衛生        局結核成人病課        長        本田  正君        厚生省環境衛生        局水道環境部水        道整備課長    国川 建二君        厚生省医務局国        立病院課長    浅野 一雄君        通商産業省基礎        産業局製鉄課長  島田  仁君        通商産業省基礎        産業局非鉄金属        課長       福原 元一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (環境庁及び厚生省に係る汚職事件に関する  件)  (六価クロム及び塩化ビニルによる環境汚染・  職業病の実態とその対策に関する件)     —————————————
  2. 藤田進

    委員長藤田進君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 神沢浄

    神沢浄君 私は先に質問の趣意を申し上げておきたいと思うんですが、まあこのところ新聞報道などによりますと、わずか一カ月内外くらいの間に、はなはだ遺憾なことですけれども環境行政部門とか、あるいは厚生行政分野というようなところで汚職容疑事件というのが続出をしているわけなんですね。私が調べてみたところによりますと、まず環境庁内部、それからこれは政府の直接関係ではもちろんないわけですけれども、広く環境行政分野ということになりますと、東京都に出て、千葉県に出て、千葉市に出て、川崎市に出て、茨城県の鹿島町に出て、また東京都の江東区に出ておる。驚くべき数の汚職容疑事件が続いているわけなんですが、内容的に見ますと、事件としてはむしろちゃちな事件とでもいうようなものでありまして、これはすべて贈収賄、こういうことになっておるようですが、環境庁の場合は委託分析手抜きをそれで黙認をしておると。それから、自治体の場合はほとんどこれはもう測定器の納入に便宜を与えた。中には欠陥器材が納入されておるというような内容もあるようであります。東京都の江東区などにおいては公害防止工場の認定に便宜を与えている。こういうようなことですけれども、表面へ出ておるのは、贈収賄金額などは百万以内みたいなものでありまして、むしろただそれだけについて見れば、ほとんどちゃちな事件ばかりということになると思うんですが、私がこの問題を取り上げて論議をしてみたいと思っておりますのは、この事件の中の個人的な追及だとか、あるいは事件内部におけるところの細部にわたっての追及だとかというようなことではありません。私はこれをこう見てみまして、調べていくうちに非常に恐ろしいくらいの、少しオーバーに言ったら戦慄、はだえにアワを生ずるような気持ちにならざるを得なかったのは、御承知のとおりこれはみんな国民にとりましては一番それこそかけがえのない大切な命と健康にすべて関連をしておる分野というわけなんですね。私どもが安心して行政に任しておったといたしましても、肝心なところでもってこういうようなことが行われている。これはわれわれの健康や命を脅かすような大気の問題にしても、水の問題にしても、こういうことになってきたんだったら、これはもう政治を信頼するわけにはまいらないし、同時に、この不安感もとよりのこと、政治全体に対する不信感というものをこれはもう引き起こさざるを得ない。これは大変重大な問題だというふうに考えざるを得ませんでした。  そこで、実はこれは環境行政分野ではありませんが、たまたま時を同じうして、がんセンター汚職容疑事件発生をしておるわけであります。考えてみますと、これもまたやっぱりわれわれ国民の命、健康にかかわる大変重要な領域であることは共通をいたしているわけでありますから、この際厚生省にはちょっと御迷惑かもしれませんけれども、一緒にひとつ取り上げさしていただくことにしたわけであります。  そこで、私はこの問題を調べていくに従って、先ほどもちょっと申し上げたように、事件そのものというのは、これはまあさほどのことでないにいたしましても、こういう事件がどうしてこんなにほとんど続出するように、続出しているか。これはやっぱりそういう条件があるから、あるいはそういう、容易に事件発生するような背景があるからこういうことになってくるのでありまして、むしろ私ども国会というような分野でもってこれは論議をしてみなきゃならぬのは、その汚職事件発生の土台になっておるところの問題ですね、背景になっておるところのそういう条件、こういうようなものこそひとつ私どもとしてはこれはもう当然国会責任としても取り上げなければならないのではないか、こう考えたものですから、私はこの問題をひとつ取り上げさしてもらいたいと、こう思ったわけであります。  そこで、まずは環境庁及び厚生省からお尋ねをして論議に入りたいと思うのですが、それぞれ把握をされておる現在の事件内容ですね、あるいは事件性格、こういうようなものを先にひとつ御説明をいただきたいと思います。  ただ自治体は、これは国の直接の責任領域ではないことは私も承知をいたしておりますから、しかし環境行政というこういう大きな立場に立てば、これは環境庁自治体事件だからといって、まさか不問に付してしまっておるわけにもまいらぬだろうと思いますので、自治体の問題につきましては、これは事件性格だけでいいと思います。一応まず環境庁の方から御説明をいただきたい。
  4. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) いま先生の御指摘になった点は、非常に私、大気保全局長責任あるものとして遺憾に思っております。おわび申し上げます。  いまの概要につきまして簡単に御説明申し上げます。  まず最初は、環境庁大気保全局企画課新谷光三という気象専門官でございますが、十月十一日に収賄容疑で逮捕されまして、その事実は、一つは本年の春、私用でアメリカに旅行をしたときに二十八万七千何がしのこの旅行クーポン券委託している業者から贈られたという問題と、もう一つは、この旅行の最中に現金二百ドルを贈られた。この二つの理由によるものでございます。十一月一日に起訴されております。相手は公害気象研究所社長の金満と申す者でございます。この公害気象研究所に対しましては、四十七年以降環境庁光化学スモッグ等調査研究実施委託をしてきた団体でございます。まあ、その手抜き云々ということのお話がございましたが、私どもはさようなことは起こるわけがないと存じておりますが、やはりそういう疑いのかかった以上は徹底的にこれを調べるということで、現在環境庁の中で委託調査の資料の原表すべての照合をいたしましてやっておりますが、契約条件実施というところにつきましては、いままで調べた範囲内では違ったものがないということでございますが、内容のチャートをどう読んでいるかというような点につきましては、専門家の助言を得て、現在やっている最中でございますので、それが全部完了いたしましたら報告をいたしたいと思います。  そのほかは地方自治体のものでございまして、私ども新聞によって知っているだけでございまして、詳細のことを申すことは能力はございませんが、東京都の公害研究所研究室の副参審をしております中野という方につきまして、やはり疑惑がかかりまして、そしてこの人は、私どもがいま知っている範囲内におきましては、十一月十五日に処分保留で釈放されたというぐあいに聞いておりますが、その後の問題については存じません。  それから千葉県の公害研究所研究室長をしている大道という人でございますが、十月二十五日に逮捕されまして、十一月十五日に起訴されております。これにつきましても詳細は存じませんが、機器購入等に絡んで収賄があったのではないかということが言われております。  もう一つは、千葉市の公害センター所長の箭内という人ですが、この件につきましても十月二十五日に逮捕されまして、十一月十五日に起訴されておりますが、これは機器購入に絡んで収賄があったのではないかという疑いであるというぐあいに聞いておりますが、事実は私どもはよく存じません。その東京千葉と、千葉県と千葉市、これが第二次でございまして、第三次のケースといたしまして川崎市の前公害監視センター所長がやはり機器購入に絡みまして、機器メーカーの紀本電子計測というところの社長から収賄をしたという疑いもとに、十一月十日に逮捕されております。  それから、同じく茨城県の鹿島町の大川という前公害課長、それから生井沢という前公害対策主任がともに十一月十二日に逮捕されておりまして、これは水質関係機器と聞いておりますが、ちょっと会社の名前は、私よく存じませんが、「科電」と書いてありますが、そこから機器購入に絡んで収賄をしたという疑いもとに逮捕されております。以上でございます。
  5. 神沢浄

    神沢浄君 厚生省
  6. 浅野一雄

    説明員浅野一雄君) 国立がんセンターを直轄している主管課長といたしまして、こういう問題を引き起こしたことに対しまして深くおわび申し上げます。  いま先生指摘のこの事件概要性格でございますけれども、大きく二つに分かれるかと存じます。  一つは医薬品の購入に関します贈収賄事件でございます。で、簡単に申し上げますと、国立がんセンター薬剤科長と副薬剤科長、それから製剤主任の三人の薬剤師がその地位を利用して、薬剤購入便宜を与えたということで逮捕された事件でございます。それから、もちろんこの問題に関しましては、われわれいろいろ現在検討しております。まあ購入手続き等には問題はなかったかと思いますが、一つポストに長くこの薬剤師がいたというところに問題があろうかということで、十分反省している次第でございます。  もう一つ治験薬の取り扱いについてでございます。この二番目の治験薬の問題につきましては、司直の手で調べられましたが、贈収賄事件としては特に立件されませんでしたが、社会を騒がしたという点において、先生の御指摘のとおりだと思います。この治験薬の問題につきましては、いわゆる新薬開発の途中におきまして臨床試験を行わなければなりませんが、それは国立病院のみならず、各病院で行われているわけでございますが、特にがんセンターにおきましては、私の口から申し上げるのはどうかと思いますが、日本におけるがん研究ではトップクラスの病院でございますので、そういうふうな関係で、いろいろの制がん剤治験委託を受けたというふうなことに端を発しまして、まあ非常にその件数も多いと、また委託費金額も多いというふうなことから、われわれといたしましては、会計法上は問題がなかったと思っておりますけれども、個人の恣意が働いたと申しますか、個人的な管理下に置かれていたというふうなことで非常に問題があったと思っております。  まあ、この二つの問題につきましては、一つ贈収賄事件一つ贈収賄事件ではございませんが、国立がんセンターとしては、非常に複雑に絡んだ問題として、われわれ十分反省している次第でございます。
  7. 神沢浄

    神沢浄君 私が調べてみました点といまの御説明と、大体まあ符合をしているわけなんですが、私ももちろん、新聞報道などでもって知り得たものをもとにしまして、直接捜査に当たっておる警察等からの情報なども求めました。したがって、ある程度のものは把握をいたしておるわけでありまして、その上に立って申し上げているわけなんですが、冒頭触れましたように、事件はいま御説明があったようなことに相違ないと思います。しかし、たとえば環境庁の方からまいりますと、環境行政の中でもって、この辺が私は一番お互いに考えなきゃならない大切なところだと、こう思うのですが、それこそ、何といいますか、この種の不祥事件がきわめて発生しやすいような危険な要因というものが存在しておることが事実だというふうに考えられます。たとえば、公害行政というようなものが、新しい日本の、特に重要な行政課題としていま出てきておる。それにつれて、いわばこういう言い方が適当かどうか存じませんけれども、それにかかわるところの、いわゆる公害産業というのが、いままあ非常に大きくなってきているわけであります。これは新聞報道等に基づいてのことでありまして、大変いまのところ一般経済面は不況になって、どんな仕事も伸び悩んでいるわけなんですが、この中にあって、この公害産業といいますか、この部面仕事というのは相当の、これは伸びを示しておるということのようでありますが、しかし、その中へ入ってみますと、まあ公害という限られた分野ですから、したがって、その業者の間の競争というのは非常に激しいものがありまして、そういう激しい競争というのは、これは業者利潤追求立場で行いますから、もちろんときに手段、方法を選ばぬようなことに展開をしていくおそれは多分にあるわけなんですよ。それと同時に、中にはまだまだ、この新しい市場を業者の側でもって開拓するために、この研究員というか、技術者というか、公害行政部門関係のそういう立場人たちまで巻き込んで、たとえば何か一つの新しい規制が行われるとすれば、それにとって必要な測定のための機械もつくって売り込むこともできる、こういうようなことなんです。だから分析をしてみますと、まず、本庁の、その環境庁あたり業者研究員の癒着が行われて、何か一つの新たな方針なり計画というようなものがきまる、そうするとそれに基づいて自治体環境行政というのは左右される、そうするとそこへ入り込んで——今度の事件というやつは、やっぱりそういう一つのパターンになっていると思うのですよ。これはもう大変恐ろしいことだと考えられるわけです。だから、ただ単に、ほかの行政分野におけるような監視監督という程度のものでは、これは防ぎ切れぬのではないかというようなことをひとつこれは考えざるを得ないところだと思うわけなんですが、大体、これも新聞報道もとにして私もそれぞれの関係などに照会をしてみたんですけれども環境庁では御存じかどうかしりませんが、いまもう業者仲間の中では一つの新しい言葉が生まれてきておる。えさまきとか塩まきとかいうことを言うんだそうであります。これはどういうことかというと、研究者とか、あるいは技術者とかいう立場人たちは、これは、われわれなどとは違いまして、やっぱり技術面、あるいは研究面というものに非常に大きな興味を持ち、そういうことを自分の生き方の中でもって人生の本意みたいに考えておられる方が多いというわけでありますから、何か、しょせんは研究部面の国の金が足らないというようなことも一つのこれは要因になっているわけですが、やっぱり業者の方からちょっと誘いがかかって、こういうことの研究のために金を出してもいいからやってみてくれないかというようなことになると、乗るんですね、これは。容易に乗りやすい条件というものが、事情というものがあるようですね。それをえさまきとか塩まきとかいうような言葉で言っているらしいですが、まずいわばまきえのようなことをしまして、そうすると研究者が乗ってくる。これは、最初は善意なものであって、決して研究員人たちであっても犯意などがあってやっているわけじゃないだろうと思います。しかし、それへ乗り込んできますと、そこにはやっぱりひとつの関係が生まれてくる。やがてはそういうものが発展をしてまいりますと、抜き差しならないようないわゆる業者側に抱え込まれてしまう研究員立場というものができてくるわけです。今度の事件の中身を見ますとみんなそういうものが一つ事情になっているようであります。そういう状況を放置していたんでは、これは、私は将来末恐ろしいことになってしまうと思うんですよ。これはもう環境庁としても、このような状況については何かひとつ今後防止するための対策というものをこれは考えてもらわなければならないことだと思うんです。  それからもう一つは、いわばこれも国の金が足らないからというふうなところに原因もあるわけでしょうけれども下請け——国自体が、環境庁自体ができませんから、それぞれ、研究所とか、その種のところへ委託研究をするわけですね。分析委託などをするわけです。そういうようなことは、これはいやおうなしに、やっぱりその業者といいますか、仕事をやっておるところと、それから環境庁におけるところの研究者との間にもうかなり密着した関係というものがこれは生じやすいわけであります。そういうような点があると思います。  それからもう一つ環境庁の今度の事件の中では、何かやっぱり人事管理上の問題というものが一つはあるんじゃないかという感じがいたします。一般事務職と違って、技術部面ですから、なかなか新陳代謝もむずかしいだろうとは思いますけれども、しかも、技術職というような仕事内容というものは一般事務職なんかからはわかりませんから、なかなか口を差しはさむこともむずかしい。というようなことになりますと、一人の技術者が相当長期にわたって同じポストにおる。はたからは、特別な専門のことだけにわからないし、口もはさめない。というようなことになりますと、これはいやおうなしに、何といいますか、実力者的存在を自然につくり上げてしまう。監視監督もできないような存在というものをつくり上げてしまう。こういうようなことが私は調査をしながらわかってきたわけなんですが、こんな状態がこのままさらに続いていくというようなことになりますと、これはとても、この種の事件を今後防止していこうといったって、私は無理じゃないかと思うんですよ。そうすると、国民の側からするとどういうことになるかというと、自分の大切な命、健康の問題をゆだねておる環境行政というものがとんでもないところでもってどうも信頼できないような姿にむしばまれていってしまうなんというようなことではこれは大変なことでございまして、そういうような点について、今度の事件を契機として環境庁としてはかなりしさいに検討されているのかどうなのか。同時に、今後の対策をどういうようにしていこうというようなことに真剣に取り組まれておられるのかどうなのか。その辺を私はしっかりとお聞きをしておきたいと、こう思うわけなんです。それぞれ、局長さんたちからで結構ですけれども、後からひとつ大臣からも、これは、ただ単に、そういう行政技術面だけの問題ではなくて、私は、国民に本当に安心してもらうためにも、その辺をしっかりとこれはひとつお聞きをしなきゃならぬと、こう思うわけなんです。
  8. 金子太郎

    政府委員金子太郎君) ただいま先生から御指摘いただきました順序と逆の順序になりますが、最初人事管理上の問題点につきまして、次に委託調査問題点につきまして、最後に機器購入問題点につきまして御答弁申し上げたいと思います。  環境庁は、四年前に公害問題が非常に重大化した折に設立されまして、職員一同使命感に燃えて一生懸命問題に取り組んでまいったわけでございますが、また、当時といたしましては、行政としてはかなりの大わざをふるってやってきたと思いますが、その間人事管理上の非行防止などの管理体制整備することに手抜かりがあったという点については、私どもまことに申しわけないと思っておりますし、その点を率直に改めるように目下努力いたしておるところであります。また同時に、発足当時から四年経過しております間に、職員の間にも心の緩みというものが発生していたのではないか。そういう点についても深く反省いたしておるところでございます。  それで、委託調査についてでございますが、御承知のとおり、環境庁事業費予算は持っておりませんで、仕事のほとんど全部が調査調整などの職務、それから各種の基準を策定する職務でございます。したがいまして、環境庁職員業者と直接接触する場というのは委託調査にしぼられてまいるわけであります。この委託調査民間委託額が四十九年度は約百四十件もございました。金額にしても数億円を上回るという状態でございますので、この委託調査に問題が起きるとすればここから起きるのではないかということは実は私どももかねがね心配いたしておったところでございます。ただ、この委託調査につきましては、御承知のとおり、環境庁は大きな問題につきましては、それぞれ専門家を集めた専門委員会というのを設けておりまして、委託調査を設定する段階から専門家がやって関与してくださる。そして、調査段階においても環境庁職員及び専門家調査に立ち会い、あるいは入っていくというケースもしばしばございます。また、調査の結果が出てまいりますれば、それを分析し評価するという仕事もエキスパートを集めた専門委員会でやってくださる。これが環境庁の現在の仕事やり方でございまして、そのこと自体についてもいろいろ御批判がありまして、目下国立公害研究所整備を急いでいるという状態にございますが、そういうことでございますので、委託調査について担当官がオールマイティーであって担当官以外にはよくわからないという状態は原則としてないというふうに私どもはいまでも考えております。今後、この点について、委託調査で問題が起きたわけでございますから、なお問題が起きないような精緻な仕組みを考えていかなければならないと思っておりますけれども、事実はそういうやり方でやってきていて、その間不祥事件が起きたという経緯でございます。  また、機器購入に関しましては事業費予算を持っておりませんので、環境庁は直接機器購入するということはほとんどございません。ただ、公害研究所整備されてまいりますと、国立公害研では相当量機器購入するということになりますので、そのときには先生指摘のような問題が起こり得るわけでございますから、そういうことが起こらないような仕組みを考えなければいけないのではないか。購入に当たっては一担当者あるいは一研究者の意見ですべてが決まるようなことがあってはならないと思いますし、また自治体で起きております機器購入関係事件を見ておりましても、新しい機器の開発即購入と、こういうことになるところに大きな問題点があるようでございますので、その辺の予防システムというようなものを考えていかなければならないと思っております。  私ども環境庁発足いたしまして四年を経過いたしましたが、その間まだ子飼いといいますか、環境庁で採用して環境庁で育った人間がまだ四年生までしかおりませんので、それ以外の職員は全部各省庁から出向ということになっております。また、環境庁仕事の特殊性といたしまして、ある一つ分野専門家だけで職員構成ができるのではなくて、むしろ逆に非常に多くの分野専門家を集めないと環境行政ができない。現在環境庁に在籍しております職員の職種は国家公務員分類で二十七職種でございます。特定の職種の専門家が多数いるという状態は望むべくしても不可能に近いという状態でありますし、また出向していただいている官庁の数は十六官庁に及んでおります。ほとんど全官庁の七割ぐらいのところから出向していただいていると、こういう状態にございまして、職員の平均在籍期間も一年七カ月ということで、むしろ平均としては短い。たまたま事件を起こしました本人は発足以来環境庁におりまして、非常に仕事もできたものですし、仕事自体も熱心だったものですから、重宝であるということでついつい四年有余在籍していたと、こういう事情でございますが、業者と接触するポストに非常に長く職員を配置するということには問題があるということは申すまでもありませんので、今後はそういうポストについては三年以内ということで人事をやると、そのために若干仕事の上の能率が悪くなってもやむを得ないと、こういうふうに考えております。  その他、私どもといたしましては、こういう不祥事件が二度と起きないようないろいろな内部的な人事管理上の制度の整備というものを図っておりますが、今後もこういう事件が二度と起きませんようにできるだけの努力をしてまいりたいと思っております。
  9. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) 私の在任中にどうもこういうような不祥事が起きましてまことに遺憾でございまして、私の最高責任者としての責任を痛感をいたしておるところでございます。  私はやはり、このまず原因を考えてみますると、業務の運営、人事管理等について確かに欠ける点があったと思います。先生も御承知のように、この気象関係調査というのは、大体これは財団法人としての気象協会とそれから株式会社の形をとっておりますただいま問題になっております公害気象研究所というもの、二つしかない。しかも、気象協会ではどうしてもできないことをこの公害気象研究所というものがやっておるわけでございまして、したがって気象関係の観測調査ということについては、競争相手がないいわば独占的な技術と能力を持っておったわけです。したがって、先ほど先生がおっしゃったように、いろいろ細かい会社が一ぱいあって、何とか環境庁に食い入って、そして仕事をとらなきゃいかぬという競争の中からこういう問題が贈賄という形で起きてきたんではないと私は思っているわけです。ただ、やはり気象の専門官が四年もずうっとおりまして、それ以外にはこのことがわかりません。また、それらの調査業務の委託という場合に専門家である当人以外には実は口をはさむ余地がなかったという点で、警察の調べを詳細に聞いてないものですから、どういう意図を持って贈賄が行われたかよくわかりませんけれども、どうも私どもは考えますと、何もそこまでして仕事をとらなきゃいかぬような、たとえば当該本人が何か新しく計画をして、仕事になるようなものをどんどん計画をし、予算をとっていくというようなことでございますと、あるいはその本人にできるだけサービスをしておけば仕事がふえていくんだということがあったかもしれませんけれども、大体気象関係調査というのは、私どもは、その本人が決めるんじゃなくて、むしろ別のところでこういう必要に基づいてこういう調査をやろうというようなことが出てくるものでございますから、そう新しい需要を開拓する責任者でもないような気もいたしますので、要はやはり四年間おりまして、そこ以外にはない、非常にそこと専門的に連絡をとっておったということで、非常にそこになれが生まれてきたんではないかと思うんでございますが、いずれにいたしましても、気象専門官というものは、交代するにも本人のまた地位や役所のいろいろランクから言いまして交流ができない、そんなこともございましたので、非常に特殊なものとして四年半もおったわけでございまして、これらの点がございますけれども、しかし内容として、業務運営、人事管理等についてもっともっと慎重でいろいろ配慮をしておかなければいけなかったのじゃないかという非常な反省をいたしておるわけでございます。私、先生もおっしゃいましたように、環境行政はやっぱり国民の信頼性が全くなくなってはどうにもなりません。したがって、こういうような事件を契機にして——一番おそれることは、事件事件でありますが、その結果、調査の結果のいただきましたそのデータがもし間違っておったり、あるいは改ざんされたり、あるいは足らなかったり、正しい委託に応ずる内容でなかった場合には、これはそれに基づいていろいろ議論しておったわれわれもまさに重大な行政上の欠陥になってくるわけでございますから、先ほど局長言いましたように、私はこの点を一番心配しまして専門家にお願いをしまして詳細に調べていただいているわけでございます。現在のところまでは一応そういうようなおそれはございませんが、なお細かい点に当たって年内には全部整理を終わって、この点の事実究明を急いでいきたいと思っております。今後、調査委託業務ということについては、何かこういう気象関係のものは、気象協会とも相談してみたのですが、とうていできないと、こう言うものですから、さりとてこの調査の必要性はどうしてもございますので、何か公の関与をするような、たとえば財団法人とか、あるいは特殊法人はいまの行政整理の世の中でそう新しくつくるわけにいきませんけれども、全くただ純粋の企業体だけでない仕組みで、何か科学者の参加も得て、正確なデータがとり得るような方途をあわせていま研究をいたしておるところでございます。いずれにいたしましても大変遺憾な事件でございましたので、深く反省をして、今後これを一つの私どもいい経験と言いますか、大変言葉は悪いんでございますが、それをもとに改善の方途を真剣に講じてまいりたいと思っております。
  10. 神沢浄

    神沢浄君 まあいろいろ論議したい点もあるんですけれども、時間がもうなくなりかけてきているものですから、また機会を求めたいと思います。  次に厚生省ですが、端的に申し上げますが、これはまた表面に出た事件なんというのはそれは何といいますか、ちょっと品性低劣な一部の者が、誤った立身出世主義みたいなことでもってしでかしたことのように思います。しかし、これも私、調べてみましたらそんなことではなくて、もっとそれこそ重大な問題がひそんでおるというようなことをこれは気がつかざるを得なかったんですがね。これは毎日新聞の報道ですが、がんセンの副院長という人がこういうことを言っているわけですね。ちょっと読んでみます。   調べに対して木村副院長は、治験の費用名目で金を受け取り、一部を研究費に、残りを出張の費用、忘年会、新年会の費用、またその二次会の遊興費に使っていたことを認めたが、自分個人の家計や飲み食いには使っていないと供述。また1自分の知る限りでは現在の預金残高である千六百万円の数十倍の金が業者から治験費用の名目で病院に渡っており、その額は多分三億円を超えている2医局を運営する裏金が要るので、治験費用の名目で製薬会社の協力を受けた3こうしたことは全国の国、公立病院どこでも慣習になっており、年間三十億円が製薬会社から国、公立病院に流れているはず——と供述、  こう書いてあります。さらにその副院長の談話として、   木村副院長は六月夜、毎日新聞記者との会見に応じ、治験費の使い方やメーカーからの援助がなければ医局のスムーズな運営ができない点などを次のように語った。   治験費は実験器具の購入や病理実験の助手、アルバイトへの謝礼に使ったり、医師の出張費、外国から有名な研究者が来た時の接待費などに使った。われわれは治験費を研究補助費と考えている。もちろん、治験活動は日常の医師活動をしながらできるのだから、特別の費用がかかるわけではない。   だから国の研究費で治験費をまかなうこともできるわけだが、今度は医局の運営費が足りなくなる。たとえば、研究会を毎週のように開いて必要な医師を講師に頼むが、その講師の宿泊代や飲食代が足りないという状態だ。捜査二課は、この治験費の受渡しが汚職の温床だといっている。確かに金銭面でルーズになりがちで疑惑を呼んだことは反省しているが、我々の方からワイロを取るつもりで要求したことはない。善意のメーカーが我々の研究を援助してくれる程度に考えている。  こういう談話が出ているんですね。これは私率直のところ警察にも尋ねてみました。まあ金額なんかの点については必ずしもこのとおりに警察でも押えているではないようです。しかし、大体いま副院長が言っておるようなことが実態であることは警察でも認めているようであります。こうなりますと、まず第一に指摘をしなければならぬのは公私の混同ですね。出張費なんというのは、これは公のものだろうと思いますよ。それから、何か聞くところによると、病院の運営でもって何か臨時雇いなんかして、その臨時雇いの賃金なんかまで業者から出ている金でもって払っている。一方においては、忘年会の費用や遊興飲食にも使われている。けじめが全然ないわけなんですね。しかも、この談話でもってまず感じられることは、そういう善悪の認識とか、大体罪の意識というようなものが全然これはないんですね。こういうことがここで書いてあるように全国の国公立病院においてはどこでももう慣習化されて行われておると言うに至っては、これは容易ならないことだと思います。何か私などの聞いたところでは、これだけの問題でなしに、たとえばいま言い値でもって薬を買っておるのは国公立病院であって、他の私立あるいは開業医などにおいては、かなり薬の購入なんかについても適正な価格を業者に認めさせて買っておる。国公立病院では言い値でもって薬を買うものですから、端的な言い方をすると、その分がこういう治験費というような名目でもって病院へ返ってくる。返ってきた金がこういうふうな使い方をされておる。表へ出た事件なんというものは、こんなものはきわめて微々たるものですけれども、まずこういうような実態というものを、これはこの際ひとつ厚生省としては本当に真剣に改善是正に取り組んでもらわなければ——あるいはとてもそういうことはいまの厚生省なんかでは、昔から象牙の塔なんという言葉があるとおり、学者だとかこういった特殊の部門に対しては口がきけないというようなことがあってそのままになってきておるのかどうかわかりませんけれども、それはこの際、本当にメスを入れてもらわなければどうにもならぬですよ。繰り返すようですけれども、これは国民の側からすれば、要りもしない薬も買わされたり治療もさせられたりということにもなりかねないわけでありまして、しかも公私の名分がはっきりしないなどという状態がさらに今後も続いていくなんということになりましたら、これは容易ならぬことだろうと、こう思うんでありまして、いろいろ調べたこともありますが、時間がないものですから一番重大だと思われる点を一つ取り上げて、これは今後厚生省としてはどうしていかれるのかという点をお聞きしておきたいと、こう思います。
  11. 浅野一雄

    説明員浅野一雄君) 言いわけがましくなるかもしれませんが、国立がんセンター性格というのをもう先生御存じのとおりだと思うんでございますけれども、先ほど申し上げましたように日本で一、二を争うがんの臨床研究をやっているところでございます。したがいまして、医師にいたしましても、薬剤師にいたしましても、かなりのレベルの人が集まってきております。また、それらの技術屋の総合力を発揮することによりまして、日本がんの医療並びに研究の推進ということが行われているというふうな従来自負があったわけでございます。で、その自負が今度逆にその自件を引き起こしたとわれわれは考えておる次第でございます。で、いま先生おっしゃいました木村副院長でございますけれども、木村さんは、白血病という血液の病気がございますが、これは血液のがんと言われております、これの日本的な学者でございます。世界的にも有名な人でございます。そういうふうなことで、治験一つにしましても木村さんのところにいろいろ集まってくるというふうな事態がある、また学者の卵もたくさん集まってくるというふうなことから、非常に世帯が大きくなっていたわけでございます。これはがんセンターのみならず日本的に、大学もまたほかの病院研究者、臨床家もみんな木村先生の教えを請うというふうなことがございました。その関係で、百人近い弟子が学位を取ったり、またそういうふうな関係で、講演会に木村さんが呼ばれたり、原稿を帯いたりというふうなこともございまして、そのあたりのいわば私的な金も、また公的な研究費もごっちゃにしていたという点に問題があったわけでございます。警察の調べを終わって帰ってきました段階で、われわれ厚生省の医務局の幹部が木村さんからいろいろお話を聞きましたが、どの程度警察で話をしたのか、われわれには何か隠しているのかその点わかりませんが、われわれが聞き出した範囲におきましては、決して飲み食いに使ったりというふうなことはないようでございます。ということで、いろいろ通帳その他メモ等調べてみましたが、製薬メーカーからいただいた金につきましては、実験器具、またそれに必要な人件費というものは私は当然の支出だと思いますが、いわゆる実費的なもので消費しておりまして、余りむだ遣いと申しますか、それ以外のものには使っていないように思われました。ただ、いま申し上げましたように私的な金もかなり入っておりますので、それが一つの通帳で個人的に管理されていたというところに疑惑が生じたんだろうと思いますので、即刻その点につきましては、私的なものと公的なものを分けるように指示いたしまして、現在作業中でございます。そういうふうなことでございまして、先生指摘のとおり公私混淆と言われるのはそのあたりに問題があっただろう、特に金の管理の点でそういうふうな知識に乏しい一人の医師が管理したというふうなところに問題がございますので、今後の問題といたしましては、これを公的な場でやっていく。がんセンターといえどもと申しますか、がんセンターといたしましては、従来、治験薬の取り扱いにつきましては薬剤委員会の中に治験薬取扱小委員会というものを置きまして、技術的には十分な検討をしておりましたが、残念ながら会計上の問題で不備があったという点をわれわれは反省しておりますので、それを今後、会計的にも全部その治験薬取扱小委員会で公的に、ガラス張りにしていくというふうなことで、現在、今週じゅうにでもその制度を固めたいというふうに考えている次第でございます。  最後に先生指摘の、ほかの国立病院並びに公立病院——公立病院のことは私はわかりませんが、ほかの国立病院を調べてみましても、がんセンターのようなことはございませんで、もちろん取り扱い件数も少うございますけれども、薬剤委員会を設けまして、そこで薬の内容等につきましても十分チェックし、また金の管理につきましても、事務官も入りまして、十分に管理されているという実態をつかんでおります。しかし、そういうふうな誤解を生じた現段階におきましては、全国立病院を通じて、今後こういうことが起こらないように、十分な指導体制を敷きたいというふうに考えている次第でございます。
  12. 神沢浄

    神沢浄君 最後に一問だけ。時間がありませんから、問題は私の調べた範囲においても、もっと幾つもいろいろのことがあります。いずれまたそれは機会を求めたいと思います。  私は、最後に大臣にちょっとお尋ねをして終わりたいと、こう思うのですが、環境庁の長官というお立場もあるでしょうけれども、国務大臣というひとつお立場でお聞きをしておきたいとこう思うのですが、いまの厚生省のお答えなども、これは絞切り型の答え方でもって、いわば表面的な問題にただ触れておるにすぎません。環境庁のお答えも大体同様に感じます。  私が特に問題として提起をいたそうと思いましたのは、最初から申し上げておりますように、表面へ出たその事件の動向などというようなことではありません。中へ入ってみますと、環境庁の場合であろうとも、ことに厚生省領域などにおきましては、これはこの種の不祥事件というようなものが、もう易々として発生してくるような背景と雰囲気というものを持っている点だと思うわけであります。ことに、時間が足りませんから論議もできずにだめですが、確かにこれはいまの治験費などという問題は、こんなものでは済ましておいてはならぬことでありまして、いまもちょっと言われておりましたが、この際ひとつはっきりとメスを入れていただいて、国民のサイドから安心して任せておけるような医療行政を確立してもらわなければならぬと思うのです。いわゆる行政としてのルールを——これはルールないですよ。もうまるっきり公私の境目がないんですよ、中へこう入っていろいろ調べてみると。これは大変なことだと思うのです。これはひとつそのルールをはっきりと、これを機会にぜひひとつ確立するために真剣にお取り組みを願いたい。これは閣議の問題になっておられるかどうかは存じませんけれども、できましたら私は閣議あたりでもってやっぱり取り上げて、そうしてほんとうに今後国民の命、健康にかかわるような重大な行政部門である環境医療というようなこういう面については、安心できるようなひとつルール確立に御決意を賜りたいとこう思うわけであります。その点についてちょっと大臣の御所見を伺って終わりたいと思います。
  13. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) 私どものほうの問題は、当然委託調査の問題をもっとはっきり一つの制度的なものにいたしまして、今後個人の恣意がそこに入ってこないような仕組みを考えるということが大事だと思いますので、この点は省内で必ず実施していきたいと思っております。  それから治験費の問題でございますが、私は厚生大臣によく本日の御所見を伝えまして、十分よく検討していただくようにいたしたいと思います。
  14. 浜本万三

    ○浜本万三君 私は、きょうは六師クロム、塩化ビニルによる職業病と環境汚染の問題について質問をいたしたいというふうに思います。  最近、六価クロムと塩ビモノマーなどによる職業病の問題と環境汚染の問題が、社会の大きな問題になっておることは御承知のとおりであります。それで私は、もちろんその原因と責任は明らかにしていかなきゃならぬというふうに思っておるのですが、同時に将来このようなものが再び起きないように、関係法規の改正にも早急に着手していかなければならないのではないかと、そういう立場できょうはお尋ねをしてみたいというふうに思います。  職業病とか、それから環境汚染の原因をずっと探ってみますと、いずれも職場の生産関係にその源があるということはもう御承知のとおりであります。  で、なぜこんな問題が起きるんだろうかということを、私なりにいろいろ考えてみますと、三つ問題があるように思います。  一つは、もちろんそこで働く労働者の皆さんの安全衛生に関する意識というものが十分でないということもあると思います。  それから第二は、企業が生産第一主義の立場で生産をやられるために、労働者の働く環境や安全衛生に関する対策が全く不十分である。  それから第三は、これを監督指導する監督行政に問題がありはしないかというふうに思う次第です。  そこで、そうなりますと、どうしても第一の職業病問題に対して現状を把握し、法改正に向けての具体的な対策を講じなければならないというふうに思います。  したがって、まず最初にお尋ねをいたしたいと思いますのは、職業病関係に関する事柄でございます。  これはまあ労働省の方にお尋ねをするんですが、六価クロムと塩ビモノマーなどの生産関係につきましては、これは時間をとりますので質問を省略いたしますから、その結果いま具体的に把握されておりますところの死亡者であるとか、あるいは職業病患者などについて実態を把握しておられましたならば、お聞かせをいただきたいと思います。
  15. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 現在労働省では、六価クロム、塩化ビニルによります被災者の保護の万全を期するために、特に退職者の追跡調査を重点的に実施中でございますが、現在までに把握されました被災状況を申し上げます。  まず第一に、クロム精錬工場でございますが、これは閉鎖工場も含めまして八工場ございますが、調査対象となりました作業労働者の総数は約二千二百名でございます。そのうち現在従事している者は九百四十名、それから退職者約手二百名でございますが、その調査の結果、死亡しております方が百三十三名おります。その中で肺がんによって亡くなられた方が三十一名、そのうち二十四人の方が労災申請をしておりまして、うち二十一人が業務上の疾病死亡としてすでに認定済みでございます。  それから、その他の疾病で亡くなられた方が百二名ございますが、そのうち八人が労災申請をいたしておりまして、現在、業務上、外につきまして検討中でございます。  それから次は、現在療養している方でございますが、三百三十人おります。そのうち肺がんによる方が六名、そのうちの五名の方が労災申請をしておりまして、この五名すべてを業務上の疾病として認定をいたしております。  その他の疾病で療養中の方が十一名おりまして、労災申請者十名、うち八名がすでに認定済みでございます。  それから鼻中隔せん孔の方が三百十三名。労災申請は、そのうち百四十八名中海をされておりまして、そのうち五十四名がすでに認定済みでございます。  それから次は、クロムメッキ工場等における状況でございますが、これは実は本年の九月に全国一斉に監督実施いたしまして、三千二百十五の事業場を監督いたしておりまして、そこで働く労働者約一万八千でございます。で、これらの人についての健康診断の結果から見ますと、有所見者として鼻中隔せん孔百二十九名が発見されております。  それから皮膚潰瘍が十六名、皮膚炎九十七名、その他としまして、たとえば鼻炎等——鼻の中の炎症ですね、そういうものを患っている方が三音十一名把握されております。  なお、先ほど申し上げましたように、退職者等につきましても現在追跡中でございまして、それぞれ地方の監督署等に労災申請がなされつつありますので、それをいま集計しているところでございます。  それから次は塩化ビニル関係でございますが、塩化ビニル関係労働者は約一万おりますが、その中で特に塩化ビニルによる汚染によって健康診断を要する方が約五千名おります。で、すでに四千九百五十一名について健康診断を実施いたしておりますが、その結果を見ますと、異常なしが四千九百十五名、それから要観察が十八名でございまして、療養を要するという者は現在ゼロでございます。そのほかに死亡者で労災申請している者が六名ございますが、これは肝血管肉腫あるいは門脈圧高進症等でございますが、六名の方が労災申請しておりまして、現在業務上、外につきまして専門家会議等によって検討中でございます。それから療養中の方は、労災申請されましたのが四名でございまして、そのうち三名はすでに業務上疾病として認定をいたしております。また、退職者につきましては、現在追跡中でございます。  以上でございます。
  16. 浜本万三

    ○浜本万三君 いま伺いますと、相当数は調査をされ、健康診断を行われまして、認定すべきものは認定をなさっておられるんですが、まだ認定をしていなくて、いわゆるお話しの専門家会議等で結論を出す人というのも相当あるというふうに伺っておるわけなんでございますが、その結論の出る見通しなどについてはどのようになっておりましょうか。
  17. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 調査につきましては、いまのところおよその見通しとして、年内に一応完了いたしたいと思っております。で、その後労災申請が順次なされるわけでございますが、それらについて専門家会議によって業務上、外の疾病であるかどうかということにつきまして検討するわけでございますから、その最終的結果がいつごろ出るかは実はまだはっきり予測はつきませんが、認定作業はできるだけ急がなければならないのは当然でございまして、できることなら本年度内に一応の認定を済ませたいと考えております。
  18. 浜本万三

    ○浜本万三君 いずれにいたしましても、職場で死亡し、ないしは重大な障害を受けたわけです。いわば、まあ戦場で言えば、戦場で重要な傷害を受けたわけなんでございますから、したがってすでに救済をされた者と救済をされていない者、つまり認定をされた者と認定されていない者がいつまでも放置されますと、結局その労働者は悲惨な状態が続くことになりまするし、労働行政に対する不信も非常に強まってくるというふうに思うわけです。したがって、年度内には結論を出すということなんでございますが、すでに相当数の参考にすべき事件があるわけでございますから、その速度を速めて早く結論を出されるように希望したいと思いますが、いかがでしょうか。
  19. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) おっしゃるとおり、できるだけ早く結論を出すように努力いたしたいと思います。
  20. 浜本万三

    ○浜本万三君 六価クロムと塩ビによる死亡者ないし職業病が今日非常に大きな問題を醸しておる原因は、労働行政の立ちおくれにあるのではないか、こういう師持ちもするわけでございます。たとえば、六価クロムの問題について申し上げますと、六価クロムの問題は、すでに昭和三十四年には労働省も関係をされまして、相当数の職業病が発生しておるということがもう明らかになっておるわけでございます。  と申しますのは、「クロム酸塩製造作業についての調査」というので、国立公衆衛生院労働衛生学部の鈴木さん、石川さん、広川さん、労働省としては東京労働基準局衛生課の皆川さん、一盛病院の一盛さん、そういう方が参加をされまして、職業病ではないかという疑いを持っておられるわけでございます。塩ビの問題にいたしましても、これまた相当以前から職業病ではないかという疑いが持たれておったわけでございます。したがって、その当初から労働省が、これは重要な問題として、この問題に対して労働衛生上の観点から企業を指導し、労働者を指導しておったならば、この種問題は発生していなかったんではないか、こういう気がするわけでございます。特に六価クロムも、塩ビも、いずれもその潜伏期間が長いという実情もございますので、したがって、早期に職業病として労働省が早く重要な関心を持ってその対策を講じておれば、こういう問題は起きなかったんではないか、むしろそのことは労働行政の手抜かりではないかと、こういうことが言われておるわけです。また、一部新聞によりましても、日本化学工業の小松川工場におきましては、四十二年から四十九年までの間に十数回にわたって立ち入り検査がされておりますけれども、周囲の状況の変化があるにもかかわらず、依然としてこの問題を取り上げなかった、これも明らかにその労働行政の失態ではないかということが述べられておるわけなんでございますが、それらの事情を考えまして、労働省としては後追い行政になったきらいはないか、現在の時点でその点についての反省があればお尋ねをいたしたいと思います。
  21. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 労働省としましては、そのときどきに必要と思われる対策は一応論じてきたつもりでございますけれども、結果的に今日のような事態を招きましたことにつきましては、まことに遺憾に思っている次第でございます。労働省では従来から、この労働災害防止を労働基準行政の最重点といたしまして、特に有害物を取り扱うような事業場につきましては、毎年集中的に監督指導を実施しておりますほか、特に問題のある事業場につきましては、特別指導事業場としまして年間を通じて重点的に監督指導を行っているわけでございます。まあしかし、一方近時におきます生産技術の急速な進歩に伴いまして有害物質を取り扱う事業場もその数が次第にふえてきておりますし、それらの事業場の把握あるいは物質ごとの発散抑制の措置状況等、関係事業の職場環境の整備改善についての監督指導に努めているわけでございますけれども、必ずしも十分でないのは御指摘のとおりでございます。今後におきましては、労働衛生専門官あるいは労働基準監察監督官の増員、研修あるいは測定機器整備など、監督指導体制の整備強化を図るとともに、この有害物質を取り扱う事業場をさらに強力に監督指導をいたしまして、これらの事業場に働く労働者の保護に万全を期したいと考えているところでございます。
  22. 浜本万三

    ○浜本万三君 いまのお答えの中で監督体制の確立というお話がございましたんですが、私一体監督体制がどうなっておるかということもあわせて調べてみますと、こういう状態では安全衛生に関する監督はできないのじゃないかという認識を持ったわけでございます。労働省の資料によりますと、昭和二十三年に五十万の事業場、それを監督する監督官が二千四百八十一名、五十年度は監督対象工場が二百九十一万で、わずかに監督官が三千四十人というふうに発表をされておるわけでございます。監督体制を強化して、というふうにおっしゃいますけれども、これではもう一工場を監督するのにこれは十年たっても行けない。日進月歩、日本の化学産業が進歩しておる中で、十年たって一回も監督ができないということでは、十分な監督行政とは言えないわけでございます。まあ、そういうところにこういう結果が生まれておるんではないかということを反省してみますと、監督官の数と監督体制という問題は、これは厳しく反省さるべきものではないか。その反省の上に立って今後さらに監督行政を強化される意思があれば具体的に答えてもらいたいと思います。
  23. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) いま御指摘の事業者数あるいは監督官の数につきましては御指摘のとおりでございます。まあ公務員の全般的な定数削減という流れの中で、監督官につきましては、いま御指摘のありましたように、二十三年には二千四百であったものが現在三千名を超えているということは、まあそのときどきに、といいますか、ほとんど毎年監督官の増員は図られているわけでございますが、何と申しましても、御指摘のとおり、全事業場を監督するとすれば十年もかかるという数字になっていることは事実でございまして、もちろん監督は重点的に、特に重点対象を選びまして監督をしておりますので、問題のある事業場については年に何回かにわたって監督するということも行っているのでございますが、何といいましても御指摘のように監督官の数が十分であるとは私どもも考えていないわけでございまして、今後ともその増員につきましては努力をいたしたいと考えております。
  24. 浜本万三

    ○浜本万三君 監督体制の強化につきましてはさらに期待をいたしたいというふうに思います。  次の問題は、この事件の反省から、相当年数がたって、そして初めて救済をされるということでは、まさに企業の方は、かつて生産に協力した労働者に対しても何ら責任を感じていないし、また社会的にも大きな罪悪を犯したということになるんですが、企業はこれらの責任に対して一体どのような考え方を持っていらっしゃるのでしょうか。もし労働省の方で把握をしておればお答え願いたいと思います。
  25. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 最近まあ私どもが企業経営者の方たち、あるいは消費者団体の方等といろいろ安全衛生出題につきまして話している中で感じますのは、特に最近は安全衛生の問題、働く人の生命と健康の問題は企業経営の中で非常に重要な問題であるというか、むしろそれを確保することは基礎的な条件であるという考え方を持ってきているといいますか、持っているというふうに実は感じているわけでございまして、たとえば本年日経連におきましても、日経連としての安全衛生活動方針を決定をいたしております。これは一年余りにわたって特別委員会を設けて経営者としていかに今後さらにこの問題について力を入れるべきか、取り組むべきかということを検討した結果、具体的な活動方針として決定をし、そうして総会にそれを披露しております。その他、私ども最近特にそういった企業経営者の労働災害防止についての企業責任というものを従来と比べますと非常に深刻に考えてきているということを感じております。
  26. 浜本万三

    ○浜本万三君 犠牲者に対する対策といたしまして最近新聞に出ておりましたのは、日本化学工業の元従業員で組織いたします被害者の会というのが十一月六日に基準局長に面会をいたしまして、労働行政の怠慢の反省を求め、かつ被害者救済のあらゆる措置を講じ、またその具体的解決のために会との話し合いを要求されておるということが新聞で報道されておるのですが、これに対しまして労働省としてはどういう態度をもっていらっしゃるのでしょうか。
  27. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 働く人の安全衛生の問題、生命と健康に関する問題は、やはりその当事者である労働者にとっては最も関心の深いといいますか、重要な問題でございますので、この災害の予防なり補償面につきましては、私ども行政としましても、その御意見を十分聞くということが非常に重要なことだと実は感じているわけでございまして、予防、補償面等を通じまして関係労働者、労働組合の御意見を十分積極的に伺っていきたいと考えております。
  28. 浜本万三

    ○浜本万三君 いずれにしましても、これは社会的な犠牲者なんですから、十分会の方から意見を聞いたり、積極的に話し合いを続けられまして早急に問題の解決を図っていただくように要望いたしたいと思うわけです。  その次にお尋ねをいたしたいと思いますのは、職業病の認定のあり方について、どうも後追い行政のような気がしてなりませんのでお尋ねをいたしたいと思うわけです。  最近の職業病の状態、特徴といいましょうか、これは労働省が発行されておりますしおりのその項を見ましてもよくわかるのですが、昭和三十年代はいわゆる直接目で見てよくわかる障害が非常に多かった。たとえば皮膚病障害であるとか、がん障害であるとか、そういうものが非常に多かったというふうに言われておるのですが、最近は職業病の姿が変わりまして、腰椎とか、頸肩腕障害とか、あるいは先ほどの化学産業における職業病であるとかいうように、なかなか判明しにくいものがたくさん発生をしておるわけでございます。だから、しおりで言っておられますように、必ずしも労働災害が漸減傾向にあるということはぼくは言えないんじゃないかというふうに思っておるわけでございます。しかも、今回のような事件が起きますと、早く職業病として認定をして労働者を救済しない限り、その労働者はもう浮かばれないと、こういうことになると思うんです。ところで、その職業病の認定等を拝見いたしますと、職場の仕事との因果関係と、それからもう一つ疫学的な立証がない限り職業病として認定されない。そういう結果、非常におくれるとか、あるいは仕事の上で亡くなっても救済されないというような不都合が起きておると思うんです。したがって、この種のむずかしい職業病の認定に該当する被害者の皆さんは、結局労働省に救済を求める期待が薄くなりますので、公害病患者のように市民連動とか、つまり自分たちの力で問題を解決していこうという気持ちが非常に強くなっておるというふうに思うんです。これは、せっかくの労災制度があっても、そういう動きが強くなればなるほど救済してないという証拠を示すもので、はなはだ遺憾であるというふうに思うわけであります。私は、その原因を考えてみますと、結局労働省が認定をする場合に、余りにも医学的な見地というものを高くその資料に置かれようとしておるところに問題があるんじゃないか。だから労働省の認定の姿というものと労働福祉の間が分離されておるような気がしてならないわけなんです。本来ならば、医学と労働福祉の間を労働省、労働行政がつないであげないと早く問題の解決はできないというふうに思っておるわけです。最近、医学界の方でも、そういう意味におきまして、何か状況証拠医学的なその立場に立ってはどうかという話が出ておるらしいんですが、現在の労働省の職業病認定のあり方について反省をし、相当大幅に労働者を救済するという立場に立って改められる意思はございませんでしょうか。
  29. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 被災者の保護を図るに当たりましては、何と言いましても基本的な方針としまして、できるだけ早く業務上の認定をするということが必要であることは、もう先生おっしゃるとおりでございまして、私どももそのような方針で問題の処理を図っているわけでございます。ただ、この職業性疾病につきましては、いま御指摘のようにいろいろ問題もございます。特に、その疾病の発生と業務との因果関係の判断に高度の医学的な知識を必要とする場合も少なくございませんし、また労働者の疎明に過大な負担もかけてはならないということもございますので、経験則上、因果関係の判明している疾病につきましては、専門家の御意見によっていわゆる認定基準というものをつくって、それに該当すればと言いますか、この基準に基づいて迅速に、かつ適正に認定を図るということをしているわけでございます。しかしながら、労災請求事案のうちには認定基準によりがたいようなものもございますし、こういうものにつきましては、その労働者の作業態様とか、有害物質の暴露条件あるいは既往症等の調査、さらには医学的な鑑別診断等を行いまして、可能な限り因果関係の早期解決に努めるという方法で処理をいたしているわけでございます。これによってもなお処理しがたいという事案もございますし、そういう場合にはさらに専門家の御意見を求めまして、必要があれば疫学調査をするとか、あるいは動物実験をするということによりまして労働者保護に欠けることのないように万全を期してまいりたいと考えているわけでございまして、疫学調査というのは、実はほかの手段ではどうしてもわからないと、判断がつかないという場合のいわば最後の手段でございまして、一般的には、申し上げましたように、できるだけ認定基準により、あるいは個別に十分調査をして因果関係を明らかにするということに努めているわけでございます。
  30. 浜本万三

    ○浜本万三君 そうおっしゃいますが、ぼくが最近私の郷里の広島で直面した事件でも二つあるんですが、これはそちらにお話しておりませんが申しますと、たとえば三交替勤務の労働者が作業中に狭心症で亡くなった、仕事との因果関係がないというのでいまだに救済をされていない、あるいはガソリンスタンドの労働者が、ガソリンを配給中に自動車の中で、これも心不全か何かで亡くなっても救済をされない、そういう実態があるわけです。要するに、職場で実際倒れても、亡くなっても救済をされないという実態があるわけです。これが、今日の仕事との因果関係がないということで労働省が認定をしていない大きな条件になっておるわけなんですが、そういうふうに幾つも、労働者が実際職場で非常に職業病との関係が不明確な中で、倒れてもなかなか救済されないというところに問題があるわけなんでございますから、そういう点をもう少しやっぱり労働者の立場になって親切に早く取り上げて欲しいというのが私の希望なんでございます。  この問題はその程度にしまして、次の問題は、実はやっぱり職業病も、公害も、その源は職場にある、職場の安全衛生というものが非常に問題になるんだということを一番最初に申し上げたんですが、そんなわけで、私は幾つも労働安全衛生法を改正すべきではないかという意見を持っておるんです。きょうは時間がございませんので具体的に申すことができないんですが、またいずれ改めて申し上げることにいたしまして、例示はすでに申し上げておるんでございますが、まず今日の反省の上に立って不備な労働安全衛生法の条文を改正する意図があるのかないのか。私は早急にやるべきだと思うんですけれども、意図があるかないか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  31. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 労働災害は全般としましては順調に減少をしておりまして、特にここ数年来大幅な減少を見ておるわけでございますが、先ほど御指摘がありましたように、職業性疾病につきましては、最近の六価クロムあるいは塩化ビニル問題に見られますように、新しい疾病が次々に発生しまして、社会的に大問題になり、また被災労働者にとりましては大変な問題だと私ども感じているわけでございまして、これらの職業性疾病対策につきまして、一体現状でいいかどうかということにつきましては、私どもも十分検討しなければいけないと考えております。その検討の結果によって、それを一体どうするか、安全衛生法の改正というものに関連してくるのか、あるいはどうするかということにつきましては今後の問題として、とにかく職業性疾病対策につきましては現状で十分でないということにつきましては、私どもそのように感じておるわけでございまして、十分今後検討を進めていきたいと考えております。
  32. 浜本万三

    ○浜本万三君 早急に法改正までをひとつ検討の対象にしていただきまして早く作業を進めてもらいたいということを希望したいと思います。  その次にお尋ねをいたしたいのは、環境被害の状態なんでございますが、これは厚生省環境庁の方から、いまどうなっておるかと、どういう点が問題なのかと、そうしてその問題に対する今日までとっておいでになりました対策などにつきましてお尋ねをいたしたいと思います。どちらからでも結構です。
  33. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 大気保全の分野からの問題を先に申し上げます。  大気保全の分野におきましては、いま御指摘のありましたクロムとか、塩化ビニルというような有害な物質というものにつきましては、大体スケジュールを決めて、このような物質が危なくなって問題になるのではないかという見当を私どもはつけまして、そしてその物質につきましての調査を進めておるところでございます。  で、被害の点でございますが、これは後でまた環境保健部長の方からお話があると思いますが、私どもは汚染の方の把握をするということを一つの基本にいたしまして、全国的に国設の大気汚染測定網というのを設けておりますし、また特定の地域に非常に濃密な調査をするということをいたしておりまして、そこで粉じんの中の細かな解析をいたしております。全体で、この四十八年以降三十五種類の物質をやっておりまして、その中にクロムは当然入っております。そういうことで、全国の汚染の分布というものは非常に細かくわれわれは把握しております。  それから塩化ビニルにつきましては、これは昨年アメリカで問題になりまして直ちに文献収集を行うとともに、塩化ビニル測定方法が非常にむずかしいという問題がございまして、そのほか有機塩素系の物質の分離がなかなか困難であるという問題がございましたので、早速大気中にどの程度あるかということで測定する方法を確立しようということで、四十九年度にはこの分析測定方法の調査検討ということをいたしまして、その成果につきましては、ことしの大気汚染の学会にも公表されておりますが、その成果の検証を兼ねるとともに、今年度はさらに広い範囲調査をする、来年度最終的な本格的な規制に結びつく調査をするという形になっております。  そういうことで、クロムにつきましては、私ども大気汚染測定調査データに関する限りにおきましては、ソ連で言っておる環境基準よりもはるかに下の数字であるということで、大気の方では問題はないと思っておりますし、塩ビの方につきましては、まだ測定分析の検討材料のものでございますが、PPmというようなオーダーは一切出ておりません。PPbというような問題でございまして、これはまだ確定した議論のできない数字でございますが、今年度の検証と全国調査によって最終的にはっきりいたしたいと、このように思っております。
  34. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) 六価クロム関係の環境への影響の調査の件でございますが、これは大別いたしまして、私の方の所管しております水質への影響の問題、それから、その他六価クロム化合物のかつて生産をしましたそういう成分を含む鉱滓の処理に関連いたしまして、それが環境に影響ある問題という二つになろうかと思います。それで、水質汚濁防止法によりまして六価クロムを含む排水については規制を受けております。したがいまして、これは府県のあるいは関係市の監視体制を導入いたしまして、毎年この六価クロムを含む排出物が規制基準に合っているかどうかということを調べております。昨年の例では、私ども六価クロム関係関係で、基準違反で改善命令を出しましたのが百七件ございました。まあ、この改善命令を出すに至らなくても、どうも出すおそれがあるというようなことでの指導もあわせて加えております。これの数値は昨年のものについては明確でございませんが、そういうものも入れまして工場、事業場からの排水の中に六価クロムがまじらないように、基準値を超えないようにということを指導しておるわけでございます。  それから次に、六価クロム化合物を製造しておる工場の関係から出てきます鉱滓の関係の処理が環境に影響を与えるという問題がございます。これが本年の八月以降大変大きな問題として各方面で論議を呼んだわけでございますが、これはかなり古くから重クロム酸ソーダ等の六価クロム化合物を製造しておる工場がございまして、現時点では日本電工の徳島工場、日本化学工業の徳山工場、この二工場でしか生産されておりませんが、それ以前にはほかの場所で他の工場が生産をしておりました。そういうところでの製造過程から出てまいります鉱津をどういうふうに処理をするか、その処理が適切でございませんと問題が出てくるわけでございまして、現在操業中の二工場につきましては、それぞれの府県で周辺に対する影響、環境を調べております。これは、鉱滓は廃棄物処理法によりまして処分の基準が決められておりますから、その基準に従って無害化をするなり、適切な方法で現在の処理は行われておるというふうに思っておるわけでございますが、問題は、過去にそういった六価クロム化合物が生産をされまして、そして現在の廃棄物処理法の現行法の規制によることなく処理をされたものが相当数あるわけでございます。私ども、廃棄物処理法以前に処理をされたもので何らかの有効な前処理もなしに処理されたものが約七十五万トン余あるものというふうに——これはもう少し実数があるいは多いかも存じませんが、関係の都道府県からの報告を徴しまして現在までに判明しております数量はそういう数量を把握をしておるわけでございまして、これも埋め立てられました場所が全国でかなり多くの場所に散らばっております。しかし、主要なものでわかっておりますものは全部追跡をいたしまして、そして現況がどうなっておるかということを調べてもらっておるわけでございますが、その上で、東京都なり、あるいは北海道なりというような、そういう関係の府県におきまして、その周辺に対します、たとえば浸透水が汚染された状況で浸出をしていないかどうか。粉じんの状況はどうか、こういうようなことを急遽調べることにいたしまして、八月に関係の府県の担当者を招集した会議を持ちまして、そしてそのことを指示をして、現在実行に当たってもらっておるわけでございます。  なおまた、こういった問題につきましては適切な事後処理を図るという問題もございますので、そこには相当の技術的な問題もかなり含まれております。したがいまして、環境庁といたしましては、技術問題の検討の委員会を専門の有識者によって開いていただきまして、そして事後処理をどうするかという問題について目下検討し、詰めている最中でございますが、さしあたり先ほど申し上げました環境調査やり方というものについて一つの指針が必要であろうということから、これは環境調査の要領というような形で指針をつくって関係の向きに通達をしてございます。  なお、六価クロムの鉱滓の状況は、各地方、府県、場所によりましていろいろ千差万別でございますので、現地に即応した最も適切な対応をすることが必要でございます。そういうような意味で、私どもといたしましては、なおそこに技術的に検討すべき問題が相当多く残されておる、こういう認識に立ちまして、先ほど申しました技術検討委員会に検討をわずらわしておるわけでございまして、何とか各地域の事後処理の最も適当な共通の指針と、方法というようなものをつくって、これを指導の指針にする。そういうものができれば、それをまたもとにいたしまして、各地域、地域のそれぞれの場所の実情に応じた処理の仕方を現地に即してやっていただくというふうに考えております。
  35. 野津聖

    政府委員(野津聖君) これらの大気、あるいは水等によって汚染をされました状況もとにおきまして、地域の住民の健康がどのようになるかということが非常に大事な問題ではないかというふうに考えております。  クロムにつきましては、過去におきまして井戸水の汚染、あるいは煙突からの粉じん、あるいは投棄されました鉱油、これらのものによります健康被害の調査実施いたしてきたわけでございますけれども、今回の問題を中心といたしまして、現在北海道栗山地区、千葉県市川市、東京江東区、江戸川区、それから広島県竹原市、これらの地域におきまして健康調査実施をいたしておりますが、基本的には汚染の状態ということが非常に大事なことになってくるわけでございますので、汚染の状態というものもあわせながら検討を進めているところでございます。  また、塩ビモノマーにつきましては、大気中の問題につきましては大気保全局長から申し上げたとおりでございますが、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の施行に伴いまして、この既存化学物質の点検の一環といたしまして、現在この塩ビモノマーにつきましての環境汚染の実態を調査するということを考えておりますが、先ほどお話ございましたように、非常に微量な場合に一体どのようにしてこれを分析し、的確な数値をつかむかということは非常にむずかしい問題になっておりますけれども、鋭意その線で分析法等につきまして現在検討を進めておるところでございます。
  36. 浜本万三

    ○浜本万三君 いま厚生省環境庁から現在の講じておる対策につきましてお話がございましたのですが、私の希望としましては、早く調査を完了していただきまして、できれば汚染地区として指定をしていただきまして所定の救済ができるように希望をしたいと思うわけでございます。  なお、先ほど汚染経路の一つに、排煙から大気へ流れる場合の問題が出ましたのですが、この大気への排出を規制する——これは塩ビモノマーに限ってでございますが、まだ基準がないように思うのですが、この基準につきましてはいつごろおつくりになられるのか、その点お尋ねしたいと思います。
  37. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 塩ビモノマーにつきましては、先ほど御説明申し上げましたように今年度の調査と来年度の調査で完了するということでございますので、来年度の調査の結果を待って大気汚染防止法で有害物質として指定して排出基準を設けるかどうかということを検討いたしたいと思います。ただ、排出基準に至るまでにも、やはり行政指導としてこれだけのことはしなければいけないという問題があれば、その点につきましては基準を待つまでもなくやりたいということを考えております。
  38. 浜本万三

    ○浜本万三君 時間がないのでちょっと急いで次に移りたいと思うのですが、産業廃棄物の処理の実態というのを伺ってみますと、何か企業自体で処理をされておるのが非常に少なくて、その処理はほとんど処理業者委託をしておる、しかもその処理業者は、何と申しましょうか、やみの業者だというような話を聞いておりまして、したがって不法投棄が非常に多い。そこに産業廃棄物の処理をする場合に大きな問題があるということが言われておるわけなんですが、その実態とその対策についてございましたら答弁をいただきたいと思います。
  39. 山下眞臣

    政府委員(山下眞臣君) 現在、私どもの推計によりますと全国の産業廃棄物はおおむね三億二千万トン程度ではなかろうかと思っております。これの処理の方法としては、法律にもございますように、事業者みずから処理すること、あるいは許可された処理業者委託すること、あるいは都道府県、市町村が公共関与で処理する場合等がございますが、非常に新しい行政でございまして、必ずしもすべてが適正にうまくいっているということではございませんと思われる節がございまして、実は警察庁の四十九年度の統計によりましても相当な違反件数が産業廃棄物の処理関係で出ておるわけでございます。私どもといたしましては、そういった実態にかんがみまして常に各都道府県を指導いたしておるわけでございますが、この六価クロム問題が起こりまして、実は九月にも全国の産廃主管課長を集めまして、特に処理業者につきましての研修、指導の徹底、特に無許可の業者等につきましてこれの発見に努めまして、力のあるものについては正規の手続をとったきちっとした許可業者になるようにいたしますとともに、悪質なものにつきましてはびしびし告発をしていって指導を徹底するようにいたしてもらいたい、こういう指導をいたしておるわけでございます。
  40. 浜本万三

    ○浜本万三君 私の結論的な考え方を申し上げまして、再度厚生省からの答弁をいただくと同時に環境庁長官の決意を伺いたいというふうに思うんですが、結局現行の産業廃棄物の処理法にやっぱり問題があるんじゃないかというように思うんです。と申しますのは、現在の法律で見ますと、事業者が産業廃棄物の処理、処分を、さっき申しましたように第三者に委託をいたしまして、委託を受けた業者が不法投棄をしておる、その場合、事業者責任が全く問われない。だから、有害廃棄物というのが事実上野放しになっておるという実情がございます。それから処理業者に違法投棄などの違反がありましても、現行法の処分は営業停止、許可の取り消しにとどまっておりまして、処分地の原状回復をさせることができないというザル法になっておると思います。さらにまた、現行法では産業廃棄物を出す事業者の最終責任追及されていないということになっておると思います。これは、やっぱり改善をしていきますためには、産業廃棄物を出しておる企業、運搬処理業者の報告義務を強化させることと、それから違反処理が明らかになった場合には企業の連座制をやはり明らかにしていかなきゃならぬ。業者に対する原状回復義務、さらには運搬処理業者の許可基準を強化する、こういうことが当面緊急な問題ではないかというふうに思っておるんですが、それに対して厚生省からのお答えと、環境庁長官も国務大臣として関係のひとつ大臣にそういう趣旨のことを話して、この改正に向けてくださる意思があるかないか、決意を伺いたいと思います。
  41. 山下眞臣

    政府委員(山下眞臣君) 実は、この夏問題が起こりまして、直ちに厚生大臣からも、現在の制度についての御指摘が各方面から出ておる点を考えてみると検討すべき事項が非常にあるではないか、ひとつ改正をするという方向で検討を始めろと、こういう御指示をいただきまして、九月に私どものこの問題の専門の審議会に諮問をいたしまして、現在専門委員会において鋭意検討中であるわけでございます。希望といたしましては、年内に御答申をいただきまして、所要の改正に向かっての作業を進めてまいりたいと、こう思っております。内容的には、ただいま専門委員会におきまして鋭意検討中でございまして、いろいろの意見がございますし、かつまた法理論といたしましてもきわめてむずかしいものを含んでいるものもございます。したがいまして、現段階におきまして結論的なことを申し上げるわけにはまいりませんけれども、いずれにいたしましても不備はこれを改めなきゃならないという考え方で厚生省は取り組んでおる次第でございます。
  42. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) 産業廃棄物の所管は厚生大臣でございますが、実は閣議で六価クロム問題が起こりましてから総理も非常に心配をされまして、他省庁に関係する問題、通産省あるいは運輸省あるいは建設省等いろいろございますので、環境庁で中心になって何とかまとめてみたらどうだという御指示もございまして、私のところで現在各省の連絡協議会を持ちまして大体終局に近づいております。いろんな問題点の整理をやりまして、法律改正上の問題点なり、あるいはまた最終処分地の確保等の方途をいかにするか、あるいは処理業者の問題等いろいろ検討願っておりまして、私どもがまとめ役でございますので、それが協議会の結論を近く出しまして、関係それぞれの各省庁で実現をしてもらおうと思っておるわけでございます。結局、確かに法律の不備な点がある、いま厚生省の方から言われたとおりでございます。それから、最終処分地等についての問題、困難性、中間処理技術等のおくれ、あるいは処理業者の体制の不備、こういうような点がございますので、これからとしては、どうしても厚生省で法律改正を進めてもらいまして、責任の明確化なり、あるいはその他処理業者等の監督上の問題等十分ひとつやっていただかなければいかぬわけでございますが、まあ何と言っても、やっぱり処分地というもの、処理の仕方というものが非常に大事になってくると思うのです。そういう意味におきましては、やはり自治体、公共団体と国の方で協力をしていかなければいかぬのではないだろうか、過般も知事会議でそういうような意見も出ました。これらをめぐってどういうようなやり方をしたらいいか等十分検討して、ただ責任追及するだけでは、実際上処分地の確保がむずかしいために、先生指摘のような事例が起こってくるわけでございますので、これらの点についても十分自治省とも相談をしまして何らかの方途をひとつ見出していかなければいかぬだろう。  以上申し上げましたような考え方を持っているわけでございますが、いずれにいたしましても、何とか次の通常国会には厚生省で法律体系を整備していただきたいと、かように考えて、また必要な金融財政上の措置もとらすように、私としては直接の所管ではありませんが、これを放置いたしますと環境上の大きな問題になりますので、それぞれの関係大国に御要望いたしまして善処していきたいと思います。
  43. 浜本万三

    ○浜本万三君 もう一つ、最後に伺うのですが、例の塩ビモノマーの食品容器の問題が最近新聞等で問題になっておるようなんでございますが、その毒性の信憑性という問題が大きな問題になっておるのですが、最近の新聞によると、東京都の衛生研究所調査したところによると、いわゆる五分の一以上が制限値を超えておったとか、それに対して厚生省は、いやそういう毒性は検出されなかったとかいう問題がございます。やっぱり、日常これを使用しておる国民立場から言えば、非常に心配なことになりますので、本当にその実態はどうなのかということについて厚生省からお答えをいただきたいと思います。
  44. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) ただいま先生指摘の塩ビの食品容器でございますが、最初厚生省が国立の衛生試験所で試験をいたしまして、町で売られております塩ビの食品容器につきまして、どのくらいのモノマーが容器の中に含まれているかということを検査いたしましたところ、十一検体につきましてすべて一PPm以下でございました。容器の中に含まれる塩ビモノマーの含有量が一PPm以下でございますと、食品の中には溶出しないということがこれはモデルの実験をやっておりますので、わかっております。  そういう状況でございましたが、その後、東京都におきまして八十八検体の食品容器の検査をいたしました。その中で、八十八検体のうち十七検体につきましては、一PPm以上のモノマーがその容器の中に含まれていたということが発表されております。さらに、同時にそのうち五検体につきましては食品の中に移行しているということが発表になっております。  私どもといたしましては、直ちにその後国立の衛生試験所にまた依頼いたしまして、東京都の方で出た容器というのは一体どういうふうなルートの——ルートと申しますか、たとえば銘柄とかあるいは製造した場所とかいうことをチェックいたしましてそれと合わせる、クロスチェックのような形で、また国立衛生試験所におきまして数をふやしまして、さらにクロスチェックをやっているというのが現在の実情でございます。  いずれにいたしましても、古い時点においてつくられました容器において塩ビのモノマーが含有量が多いということはわかっております。現在、最近製造されております塩ビの容器につきましては、塩ビ食品衛生協会という協会がございまして、その協会が自主的にチェックをいたしまして、食品の容器はすべて一PPm以下のモノマー含有量のものしかつくらないということで、協会の方で自主的に規制をしておりまして、さらにすでにびんメーカーの方へいった古いものについては自主的に回収するということをいたしておるわけでございます。これは大変結構なことだと私どもは考えておりますが、さらに私どもといたしましては、できるだけ早い機会に塩ビの容器の基準をつくるということをいたしまして、そういうようなことの心配がないようにという対策を立てたいということを考えております。
  45. 浜本万三

    ○浜本万三君 最後に希望を申し上げまして私の質問を終わりたいと思うんです。  いまのお話のように規制が一PPm以下でなくちゃならぬということはわかるんですが、しかし、われわれの心配から言いますと、はたして一PPm以下で本当に安全なのかどうかという点もこれは不明でございます。したがって、早急にたとえば動物実験で発生の試験をやるとか、あるいは催奇形成試験などをやるとかいうふうにいたしまして、その毒性の問題について十分調査をする必要もあるというふうに思います。また、食品中に含まれて胃腸から吸収された場合、大気から肺を通じて吸収した場合、いろいろ条件が違うと思うのでございますが、そういう点についても調査をする必要があるというふうに思うんです。だから、早急にそういう点を、さっきの話ではまだ研究をしてという話でございますが、調査研究をなさいまして、食品容器でそういう非常に国民に不安を与えるようなものは、製造、使用中止をさせるとかいうような対策を講じていただくように強く希望をいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  46. 藤田進

    委員長藤田進君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十七分休憩      —————・—————    午後一時二十八分開会
  47. 藤田進

    委員長藤田進君) 公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。委員の異動について報告いたします。  本日、近藤忠孝君が委員を辞任され、その補欠として橋本敦君が選任されました。  休憩前に引き続き、調査を進めます。質疑のある方は順次御発言願います。
  48. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は長野県にある昭和電工塩尻工場の従業員の労働災害、それから周辺の環境汚染、それから周辺の環境汚染による健康被害等について質問をいたします。  この塩尻工場の問題はすでに何回か私は当委員会で取り上げてまいりましたし、またきょうもこうした一地域の、一工場の公害問題を取り上げるという趣旨は、それは被害者同盟あるいは信州大学その他の調査研究が発表されますとすぐ会社から反論が出るわけです。それで、反論が出る、そうこうしているうちにだんだん会社も一部を認めるというようなことをもう数年にわたって繰り返してきております。したがいまして、今回、この現時点でどういうことが問題かという点を取り上げたいと考えます。  四十七年八月には、信州大学医学部公衆衛生学教室で周辺住民の健康被害調査実施いたしております。それから、四十九年四月から秋にかけまして、同じく信州大学の学生が中心となりまして、第一には健康被害と昭和電工の公害との因果関係について、第二にはアルカリろ紙法による大気汚染の測定、第三には降下ばいじんの測定、こうしたことを実施いたしまして、結果としては、たとえば、健康被害については慢性気管支炎、気管支ぜんそくあるいは結核などが他の農村部に比べて二、三倍の高率になっているというような発表、あるいは大気汚染、降下ばいじんについても有意差ありという報告をしております。こういう熱心な被害者同盟の運動、あるいは信州大学等による公害調査があるにもかかわらず、この間行政は何をやったか、行政はただ見ていたのか、何か被害者救済のためのお手伝いをしたのか、それとももみ消しみたいなことをやったのか、行政は何をやったかということについて初めに御説明いただきたい。
  49. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) いま先生から御指摘のございました昭和電工の塩尻工場に対して行政は何をしておったかという点でございますが、まず第一に、この法律上塩尻の工場に規制がかかったのはいつかということでございますが、これは去る四十五年の公害国会大気汚染防止法が改正されまして、それによって四十六年の六月二十四日からこの法律が適用されまして、塩尻工場の発生施設に対しては大気汚染防止法による排出基準がかかったということが一点ございます。それ以前には県として独自の調査はいたしておりませんでした。また、いまお話の中にもございましたが、環境庁にもお見えになりまして、私自身、前の環境保健部長のポストのときにこの方々にお会いいたしたわけでございますが、私どもはことしの初めに長野県に対しまして早速連絡をいたしまして、地元でこのような問題があるということの陳情を受けておると、いろいろいままでの調査の資料もあると、やはり、もう少しこれに対して積極的に対応すべきでないのかということを申しまして、これを受けまして現地の塩尻市では大気汚染の調査委員会というのを設けて対策を検討し始めたというのが、今年の春の段階のことでございます。現在までのところ、私どもの方におきましては、ことしの春以降でございますが、まず初めに、昭和電工自身が、私の環境保健部長のときに参りまして、そのときに前の被害者の方々のお話は、いろいろ肺がんやバナジウムという問題をおっしゃっておったんですが、いろいろ工程を見ると、これはクロムがあるじゃないか、むしろこのクロムの問題をちゃんと注意しなければいけないというようなことを申しており、そのことを県の方に早速申したわけでございます。  以上が、大体行政として対応してきたことです。
  50. 小平芳平

    ○小平芳平君 その間においても会社側としては従業員に被害はないと、したがって環境に被害があるわけはないということをこの被害者同盟の方に対して再々言っていたというふうにお聞きしております。したがって、果たして従業員に被害があったかなかったか、これは労働省から具体的に御説明いただきたい。これも労働省に対してはもう何カ月も前から私要請しておったわけですが、特にこのじん肺等の健康被害が発生しているのかいないのか、いるならばどの程度発生しているかということを要請しているんですが、いまだに返答がないから、きょうこの席でわかっていることは全部発表していただきたい。御承知と思いますが、周辺の財産被害に対しては、物損と言っておりますが、物的損害に対しては四十八年五月二十五日に補償協定が成立をして補償をしているわけです。過去の分を、物損に対する補償をしているわけですが、果たして健康被害があるかないかということに対して、まず第一の会社側の主張としては、工場内には被害がないと言っていたように聞いておりますが、どうなったでしょうか。
  51. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 粉じん作業従事者のじん肺関係につきましては、昭和四十年に管理二の者が十名出ております。それから四十四年が管理二が六名。四十五年には同じく管理二が四名と管理三が一名、それから下請で管理四——管理四といいますと療養を要する程度の重いじん肺、いわゆるじん肺患者になるわけでございますが、じん肺患者が一名。それから四十六年には管理二が四名、管理三が一名。四十八年が管理二が四名、管理三が一名。それから四十九年に管理二が二名、それから下請で管理四が一名。それから五十年には管理二が一名。  以上でございます。
  52. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうすると、現時点の合計を言ってください。
  53. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) いま申し上げましたのは、管理二の者につきましては毎年じん肺健康診断をやることになっておりますので、現時点におけるじん肺患者といいますのは、管理二の者が一名、そのほかに管理四の者が、療養中の者が一、名、それと本工で二名と下請で一名の三名、これが現状でございます。
  54. 小平芳平

    ○小平芳平君 以上がじん肺ですね。じん肺の認定患者ですね。
  55. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) そうです。
  56. 小平芳平

    ○小平芳平君 そのほかはいかがですか。
  57. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 先ほど問題になりましたクロムの点につきましては、ことし、元請、下請合わせまして健康診断を実施いたしておりますけれども、所見のありました者が一名、ぜんそくでございます。これは元請の方で出ております。下請はございません。それからコールタール関係でございますが、四十八年から五十年の健康診断の結果を見ますと、元請、下請ともに所見者はございません。また電離放射線の関係もございますが、四十三年から五十年にわたる健康診断の結果を見ますと、有所見者なしとなっております。  以上でございます。
  58. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、労働省として判断した場合に、これだけのじん肺患者が発生しているということはよほど注意しなくちゃならない工場だというふうに判断されますか、どうですか。
  59. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 注意しなければならない工場だと考えておりまして、従来から指導をやっているわけでございます。  なお、先ほど申し上げましたように、毎年四名、五名の患者が過去に発見されておりますが、これは毎年毎年同じ人が健康診断を受けて、その結果が出ているわけでございますから、新たに発見された患者数ではございません。
  60. 小平芳平

    ○小平芳平君 管理二の方ももっと多いように私はあるところから聞いておりましたが、まあ労働省の数字を信用いたして、次へ質問をしてまいりたい。  それで、この元従業員の方、あるいはもうすでに亡くなられた従業員の遺族の方からも、ずいぶんこのじん肺あるいはがん、各種のがんによってうちの主人は亡くなった、あるいは現にがんで大変に療養中、あるいは亡くなったという、そういう訴えが被害者同盟のところへ次から次にといま入っているわけです。ですから、労働省としても、じん肺に対する経過は以上だということですが、元従業員を含めてもっと精密な調査をやる必要がある、このように思いませんか。
  61. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 先ほども指摘ありましたように、被害者同盟の発表があるたびに会社側がそれに対して反論をしていると。そして、おそらく中身は相当違うということだったろうと思うのでございますが、そういう状況でございますから、労働省としても、先生おっしゃるように、この点については確認をする必要があるというふうに考えておりまして、実は先般、十月の二十日に本省の宮野じん肺審査医を現地に派遣いたしまして、これは医者でございますけれども専門的な見地から調査をし、指導してきております。もちろん被害者同盟の三浦さんにもお会いいたしましていろいろ聞いております。また会社側からも事情を聴取しております。そこで、問題はやはりすでに退職された方々の亡くなった方、その死因が何であるかということが一番問題だろうと思います。会社の方では、現在までのところは本工については退職者についても調べているようでございますけれども、下請については必ずしも把握調査がされていないというところが一番問題だろうということを感じまして、下請も含めて退職者について追跡調査をするように、しかも死因についても遺族の了解を得て、法務局に——ついて調査をするようにという指示をいたしておりまして、その結果が出ましたら私どもの方で内容をチェックをいたしたい、このように考えております。
  62. 小平芳平

    ○小平芳平君 では、次に通産君に伺いますが、この工場では、いま非常に社会問題として問題提起されているクロムですね、このクロムが従業員の健康被害に、あるいは環境被害に及ぼした影響、これは通産省は生産工程の上からどのように把握しておられますか。
  63. 島田仁

    説明員(島田仁君) この昭電塩尻工場は昭和四十五年までフェロクロムの生産をやっておりましたけれども、それ以降この生産を中止しておりまして、現在は金属のシリコンと、それから研摩材、研削材というのですか、それをやっております。したがって、現在においては、この汚染源になるようなクロムについての生産は一切やっておりません。したがって、現在問題になってるものは昭和四十五年に至るまでの間のものかと思います。
  64. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、私の質問はまさしくそのことを問題にしているのであって、そのフェロクロムはいつから製造を開始して、どういう工程なるがゆえにどういう粉じんが飛散したか。といいますのは、被害者同盟の発表によっても、これは会社自体の発表によっても、昭和四十二、三年が問題なんです。昭和四十二、三年にがんが多発しているということが問題の焦点なんです。ですから、いまありませんで済まされることじゃないのです。
  65. 島田仁

    説明員(島田仁君) 生産を始めましたのは昭和十九年からでして、四十五年までにフェロクロム、いろんな品種がございますが、その生産量合計で十三万六千トン程度が生産されました。で、いまの大気汚染の関係、いろんな、そういう整備されたのが昭和四十六年でして、それ以前の問題とそれ以後の問題と分けますと、この工場の問題になってるのはそれ以前の問題でして、われわれの方でもその当時の指導ということはちょっとなかったように聞いております。
  66. 小平芳平

    ○小平芳平君 そのフェロクロムの生産にしましても、過去の——これは現在の会社の紹介です、概況です。たしかこれには昭和十九年からとなっておりますが、過去のこちらの方によりますと、昭和九年になっておりますね。それが一つ。  それから、三価クロムが製造過程において、開放炉によって三価が六価になる。そして、その六価の粉じんが周辺に舞い落ちた。これは石灰を反応させるという工程がここに出ておるようですが、そうすれば三価が六価に変わるということはもう常識だと、こう言われているのですが、その二点、どうですか。
  67. 島田仁

    説明員(島田仁君) 工場が始まったのはこの十九年以前でして、戦争中にフェロクロム精錬を始めたというふうに私どもも聞いておりますので、いまの昭和九年からフェロクロムという形でやっていたという点はちょっと正確に私いまここでお答えできません。  それから、次の三価、六価クロムの問題ですけれども、現在フェロクロムの生産、日本で方々の工場でやっておりますけれども、現在フェロクロムの開放炉による粉じん発生の中で三価のクロムが六価になるという点は、まだはっきりと確認はされておりません。私の方は、そういうことはおそらくないのではないかと思っております。実際、粉じんというのはスラグですね、精錬の過程で出てくるスラグの細かくなったものと考えていただければいいと思いますけれども、フェロクロムのスラグからの六価クロムの検出というのはほとんどない状態でございます。
  68. 小平芳平

    ○小平芳平君 昭和九年に製造開始したのはクロムシリサイド。そうすると、最近のにはクロムシリサイドというのがわざわざ抜いてある。それから、六価に変わるということは、きわめてはっきりした私は技術者の報告書として——いまその報告書をぼくは持っておりませんけれども、聞いておりますが、あなたは本当に六価は全く出ない、こういうふうに言い切りますか。
  69. 島田仁

    説明員(島田仁君) まず、前者の昭和九年以降の問題、もしあれでしたら調査してお答えしたいと思います。いまここであいまいのままでお答えできないと思います。  それから、六価クロムに絶対なるかならないかと言われますと、私いまここで絶対発生しないとは個人的にも申し上げられないので、ちょっとこの点は非常に科学的な問題でありますので、個人的な意見は差し控えさしていただきますが、この点については客観的な調査あるいは学術的な研究の結果というのを待つ以外にないのではないかと思います。
  70. 小平芳平

    ○小平芳平君 これ、向こうに見せてください。(資料を手渡す)ちゃんとここに紹介に載っているのだ、にやにやしているのじゃなくて。  それから、今後の学術の学問的研究といったって、いつまで待っているのですか。昭和四十二、三年のことをいま問題にしているのに、今後の問題というのは、じゃ、いつ出るのですか。
  71. 島田仁

    説明員(島田仁君) いまの「塩尻工場の概況」に「昭和九年十二月クロームシリサイド製造開始」と出ておりますので、これは会社の方の資料としては正しいのかもしれません。こちらの資料には出ていないわけですね、昭和九年……。これは私の方でいまここで答えられる問題ではありませんので調査してお答えしたいと思います。それでよろしゅうございますか。  それから、いまの三価、六価の問題は、現実に方々でいま問題になっておりますので、調査が進んでいるのではないかと思います。実は、私の方その担当ではございませんので、ちょっといまここで私のところから正確なお答えできませんが、その点についても、もし私の方で調査せいということであれば調査してお答えいたします。
  72. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、通産省がわからないなら環境庁に伺うことになるか、ソ連で、この昭和電工と同じ工程でフェロクロムの製造をした、そのフェロクロムの製造過程で六価クロムあるいは三、四ベンツピレンが検出された、十五年間にわたる調査の結果、がんが多発した、特に原料係、電極係、蒸留係、こうした作業に従事している労働者にがんが多発した、こういう報告があるのを御存じですか。通産省は御存じですか。
  73. 島田仁

    説明員(島田仁君) いま申し上げましたように、私どもその方の担当ではございませんので、私自体がいまちょっと聞いて、その調査結果について知っておりません。
  74. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 少なくとも、私どもの方に、去年いたした委託研究の中でソ連のそのレポートは入っておりません。
  75. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちょっといまぼくの言ったとおりですか、ちょっと内容を……。
  76. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) いま先生の御指摘のあったソ連のフェロクロムの製造工場の周辺でそのような問題があったということにつきましては、クロム関連の、われわれが集めました文献の中にはまだ入っておりませんでした。
  77. 小平芳平

    ○小平芳平君 入ってない。
  78. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) はい。
  79. 小平芳平

    ○小平芳平君 これは私もロシア語がわかりませんので、あるところでいま翻訳中であって、それでいま持っておりませんが、通産省は、私は関係じゃないと言う、じゃあ、何の関係できょう出てきているんですか。——で、じゃあ環境庁は、三価クロムが安全かどうかという点についてはどうですか。
  80. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 六価クロムの健康に対します障害につきましては、急性障害あるいは慢性障害といわれて、いろいろと言われておるわけでございますけれども、現在のところ、三価のクロムが水溶性でないという面もございまして、直ちに毒性については云々されないという意見もございますけれども、逆に申しまして、発がん性の問題などにつきましても、三価のクロムにもあるのではないかというふうな学者の意見も出ておるわけでございます。
  81. 小平芳平

    ○小平芳平君 ことしの十月三十日、岡山大学名誉教授の小林純博士が現地で発表された、工場周辺の民家の雨どいから採取された降下ばいじんの中から、八万PPmのクロムが検出された。土壌中の重金属を、クロムについて見ますと、対照地区と汚染地区を比較した場合に、対照地区が六〇ないし八〇PPmに対して、平出地区で二三〇〇PPm、桔梗ケ原で一八〇〇PPmと、こういうふうにクロムが検出されているということは、よほどこの工場から出たに違いない。これはもう断定して差し支えないでしょう、いかがですか。
  82. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) いまお話のございました八万PPmの件、私は新聞で拝見いたしまして、後、長野県に照会してみました。それによりますと、正式の報告とはまだなってないようなんですが、四十六年に被害者同盟の人が、この雨どいから採取して保管をしていたものを分析したら、そういう数字になったという話であるというぐあいに承っております。まだ、正式の報告はございません。これは現在塩尻の工場周辺の調査につきまして、岡山大学と、信州大学と昭和電工の三者のクロスチェックの分析をしておるということでございますので、その分析の結果を待って私ども判断いたしたいと思いますが、御指摘のように八万PPmという問題があるとしますと、パーセンテージに直しますと、八%でございます。これは川崎等の降下ばいじんと比べますと数百倍のオーダーであるということでございまして、どこの場所でとられたものかは存じませんが、四十五年までは全部野放しにそのダストを出しているということはかなり関係していると考えるのが普通の推理ではないかと思います。
  83. 小平芳平

    ○小平芳平君 その岡大、信州大のクロスチェックも、あるいは会社も分析しているんですがね、会社もすでに発表した。会社の発表も八万というのはありませんが、小林博士の分析と、傾向としては同じだというふうにお聞きになっていますか。
  84. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 承知いたしておりません。
  85. 小平芳平

    ○小平芳平君 いない。
  86. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) いたしておりません。
  87. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃあ新聞に出たのをごらんになっていないですか。
  88. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) いま御指摘ございましたが、私の不注意で見落としているのかも存じませんが、私は昭和電工がそれと別の数字を言ったということにつきましては、承知をいたしておりません。
  89. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃあ会社は、その土壌分析は発表しましたか、しませんか。
  90. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) 土壌分析の結果については聞いておりません。会社の土壌分析の結果というものについては承知をいたしておりません。私ども、いままで土壌の成分の中に含まれる重金属の問題について承知をしておりますのは、長野県が昭和四十五年度におきまして砒素、アルミニウム、カドミウム、銅、ニッケル、鉛、亜鉛についての土壌の分析調査を行い、その結果を公表し、その結果については承知をしております。  それからなお、岡山大の小林名誉教授の御発表になった数値は、これは新聞を通じて承知をしております。
  91. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 先ほど私が申し上げましたのは誤っておりましたので、訂正をさしていただきます。  昭和電工が工場周辺を測定したというものにつきまして、私は不注意でちょっと見落としておりましたが、工場周辺の大気中のクロムの粉じん量というものにつきましては、昭和電工が出しておるのは存じておりますが、といのダストをとってそれを分析した数字というものにつきましては、私ども承知をしておらない、こういうことでございます。
  92. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、私が八万とは別だと言ったでしょう。これが会社の数値です。まあ、いいです。  それから、この小林教授の発表で、ニッケルが対照地区に比べて倍近く検出されておりますが、ニッケルの健康被害についてはどう把握しておられますか。
  93. 野津聖

    政府委員(野津聖君) ニッケルの健康被害の問題でございますが、従来は、先ほどもお話ございましたように、いわゆる労働環境におきます金属ニッケルと、それからニッケル化合物の健康に対します影響という形での有害性が知られておりまして、金属ニッケルの粉末あるいは可溶性のニッケル化合物が皮膚障害を、ニッケルメッキ、ニッケル精錬、ニッケル鉱山などの作業、産業職場で招いているという問題がございます。それから、ニッケルによりますこの皮膚障害につきましては、皮膚、粘膜に対します刺激性があるわけでございまして、初期にはニッケル掻痒、かゆみが生じまして、次いで皮膚炎となりまして、これが拡大するころには、いわゆるニッケルアレルギーというような形になりまして、ほんのわずかな接触によりましても皮膚障害を起こすようになると言われております。ただ、金属ニッケルとか不溶性のニッケル化合物につきましては、傾向的にはほとんど体内に吸収されないということになっておりまして、毒性につきましては弱いと言われておるわけでございます。また可溶性のニッケルの場合は、多量に摂取いたしますと、目まい、嘔吐、急性胃腸炎などを起こすというふうに言われておりますけれども、毒性につきましてはそれほど強くないというふうに言われておるわけでございます。また粉末状の金属ニッケルあるいは酸化ニッケルの暴露を受けますと、急性症状あるいは慢性症状いずれの場合にも肺炎のような症状が起こるというふうに言われておるわけでございます。  以上、簡単に毒性につきまして概要の御説明を申し上げました。
  94. 小平芳平

    ○小平芳平君 がんとの関係はどうですか。
  95. 野津聖

    政府委員(野津聖君) ただいま述べたところでございますが、現在の段階では、直接の発がん性につきましての労働環境等におきましての知見というものは、私の方に手持ちとして入っておらないという状況でございます。
  96. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ調べてください。  それからベリリウムというのはどうですか。これも小林教授の分析では出てきておりますが、また労働科学研究所の佐野辰雄博士の発表された新聞の記事を見ましても、がんのこのベリリウムが問題だというふうになっておりますが、いかがですか。
  97. 野津聖

    政府委員(野津聖君) ベリリウムにつきましては、一種の急性症状あるいは亜急性の症状というものもあるわけでございますが、粉じんの吸入が長く続きました場合に、慢性中毒といたしまして、しつっこいせき、呼吸困難というふうな呼吸器の障害が起こるというふうに言われております。また肺組織に対します各種の病変が起こりまして慢性の肺肉芽腫等が起こるというふうに言われておるわけでございます。
  98. 小平芳平

    ○小平芳平君 以上そういうように、クロム、ベリリウム等の有毒物質を含んだその廃滓を昭和電工はどこへどれだけ捨てたのですか。
  99. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) 産業廃棄物は厚生省でやっているので、厚生省が来ておりませんので……。
  100. 小平芳平

    ○小平芳平君 産業廃棄物は、きのう私が社労委員会でいろいろな問題点指摘したのですが、それはいまここで質問しても、厚生省はいても答えられないのです、市自体がわからないと言うのですから。どれだけのものをどれほど谷間へほうり出したか、肝心の塩尻市でもつかみようがない。それについての環境汚染がどこまで及んでいるか、これなども恐らく市もつかんでいないでしょう。しかし一番新しく私がお聞きした点では、その廃滓の中から、会社側も、六価クロムがわずかながら検出されているというふうに言っているそうですが、これはもう厚生省よりも環境庁がそういうことを把握していなくちゃ——環境の問題ですよ、六価クロムが廃滓から検出されているということなら。それはいかがですか。
  101. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) この昭和電工の廃滓の中から六価クロムが検出されたということについては、実はまだ聞いておりませんので、こういう事実があるとすれば、県庁を通じ、あるいは他の適当な方法を通じまして調査をしてみたいと思います。
  102. 小平芳平

    ○小平芳平君 小沢長官、それは厚生省の問題だと言っていないで、環境の問題ですよ、環境の。これから捨てにいくという問題じゃないんです。これから捨てにいくとなったら、厚生省とか保健所とかいうところが問題でしょうが、すでに何十年にわたって捨てで、そしてそれがどこへどれだけ捨ててあるかもつかみようがない。それじゃ環境汚染がどうなっているかもつかみようがない。じゃ困るじゃないですか。いかがですか。
  103. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) 産業廃棄物による環境影響につきましては、これは確かに十分把握しなきゃいけませんから、したがって、先ほど局長がちょっと申し上げましたように、たしか今年の春、そういう同盟の方々からのいろいろな問題提起がございましたので、県に至急指示をいたしまして、それで県の指導で塩尻市でいま大気汚染環境対策調査委員会というのができたわけであります。ここで土壌汚染等も含めまして広範に調査を、検討さしておりますので、私どもできるだけ指導をいたしまして、必要なら係官も派遣して早急にひとつ実態の把握に努めたい、かように考えます。
  104. 小平芳平

    ○小平芳平君 あのときは被害者同盟の方は小沢長官に面会を求めて、私も伺ったんですが、なかなか会ってくれないわけだ。で、当時橋本部長が話を聞いて、そして確かに県も市も環境庁から指示を受け、いまの対策委員会ですか、それもでき、確かに進んだことは私もまた被害者同盟の方も認めております。わかっております。わかっておりますが、いかんせん、この数年にわたる調査発表、それに対する会社の反論、そればっかり繰り返してきているんですね。ですから、ずっと工場内の被害者はどうだったか、そして環境はどうだったかということを私は本当に——環境庁がじん肺の認定までははっきりしたわけですから、ですから工場内に被害者はないということはないわけですから、今度は環境問題として一体どうこれから調査を進めるか、確かに係官を派遣することも一つありましょうし、これは本当に本気になって取り組んでいただかないと困るんですが、いかがですか。
  105. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) おっしゃるように、真剣に取り組んでまいります。
  106. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうします。
  107. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) やはりこの大気汚染環境対策調査委員会をどうしても指導いたしまして、ここを中心にしまして全面的にいろいろ予想される地域の土壌問題なり、その他できるだけひとつ調査をやっていくということと、それから先ほど言いました岡山大、信州大、塩尻工場の三者でクロスチェックをやっておりますので、同一検体についてもやっておりますから、それらの結果が近くまとまるように聞いております。したがって、そういうような点を総合しまして県にもよく指導いたしまして、まず実態把握調査の徹底を期して、それから対策を講じてまいりたい、かように考えております。
  108. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう一つ、具体的に実態把握のためのどういう調査をされますか。
  109. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 私の方で担当いたしております住民の健康の問題でございますが、これにつきましては、もう先生御案内のとおり、四十五年、先ほどもございましたように四十五年以来信州大学、また松本保健所、結核予防会、塩尻市、これらの方々によります健康の調査が行われてきておりまして、やはり工場周辺地域におきます健康被害というものは、特に呼吸器の症状につきまして有意の差があるというふうな結論の発表も行われているわけでございます。また、これは長野県におきましても、昭和四十七年から五カ年計画という形で工場周辺地域と塩尻市、それから市街化地域といたしまして長野市、農村地区として白馬村の三地区を選びまして、これに対します健康調査実施すると同時に、やはり環境、大気の汚染の調査、先ほど御指摘ございましたように硫黄酸化物、窒素酸化物その他粒子状物質の調査もあわせて行っておりまして、一応この四十七年から四十九年までの三カ年間のまとめを現在信州大学の方に委託しておられるそうでございまして、この結果につきましては今年末までにまとめられるというふうにも聞いております。したがいまして、前の御調査の結果につきましても私どもいただいておるわけでございますし、また、この結果につきましてもまとめができ上がりました段階で手に入れることにいたしまして、これらをまとめまして必要によって県の方に十分な指導を行ってまいりたいというふうに考えております。
  110. 小平芳平

    ○小平芳平君 健康調査ですね、それから大気汚染の調査も必要だと思うんですね。これは確かに会社の公害防止設備もやってこられたと思います、ずっとですね。ここ数年やってこられたと思いますが、いまなおそうした降下ばいじんが出ている。それから先ほどの廃棄物と水質ですね、これは山の谷合いに捨てておりますから、そうした面も調査していただきたい。やはり長官、そういうふうに全体的に必要だと思うんですが、よろしいですか。
  111. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) 大気調査ももちろんなお念を入れてしなきゃいかぬと思いますが、御承知のとおり、先生も一番よく御案内でございますけれども、最近はばいじんの排出基準等がつくられまして、焙焼炉にしても乾燥炉にしてももう問題のない排出基準を守っていただいておりますから、あるいは私どもの国設の測定局の平均のクロム粉じん量の検査あるいは塩尻市の降下ばいじんの経年度のいろんな比較等から見ましても、やはり廃棄物並びに土壌関係のものを徹底的にやるのが本筋だろうと思うのでございます。なおしかし、念には念を入れて大気測定ももちろんやっていかなきゃいかぬと思いますが、そういう意味で大変おくれておって恐縮でございますが、それぞれの県や市の調査委員会等十分督励いたしまして実態の把握に努めていきたいと思っております。
  112. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生省では——特にこの周辺の桔梗ケ原という地区では一部の住民は雨水をといからタンクへ入れて飲料水に使っていたということは、井戸水が汚染されている、井戸はめったに使えないというところからそういうことを、雨水を飲料水に使っていたということがあります。で、いまはそういうことはもうやめておりますが、一番粉じんの出ていた時代はきわめて問題だったんです。そして、この桔梗ケ原地区でも皮膚病、がんあるいは原因不明の病気が多かったというふうに報告されておりますが、そうした点、厚生省調査したことありますか。
  113. 国川建二

    説明員(国川建二君) 桔梗ケ原地区におきます飲料水の問題でございますが、先生もおっしゃいましたように、塩尻市上水道の給水区域になっておるわけでございますが、この水道ができましたのは昭和三十六年五月以降でございます。その後はこの水道の水を飲料水に供給して使っているわけでございますが、その以前におきましては、当該地域がその桔梗ヶ原地区の部落の大体三割から四割ぐらいの戸数の人が雨水をといで集めまして使っていたと、残りの人たちはいわゆる深井戸を使っていたというように報告を受けているわけでございます。で、現在私の水道整備課といたしまして、後段でおっしゃいました健康との関係等につきましては、現在のところまだ調査はいたしておりません。
  114. 小平芳平

    ○小平芳平君 もうこれで終わりますが、環境庁長官ですね、先ほど来の御答弁で従来よりもきちっと進めてまいるということですね。それは大気汚染あるいは水質の問題等含め健康調査を進めてくださると思いますが、周辺地域の健康調査については、いろんないきさつがありまして、で、被害者同盟としては全く納得のいかない経過で中止になったというようないきさつもあるわけです。そういうことを言ってもすぐまた反撃するでしょうけれども、ですから今回は間違いなく実施していただきたい。実施するについても、どういう取り組みで健康被害の調査を進めるか、なかなかこれ特殊な環境汚染による健康被害となりますと、それなりの取り組みが大事なんですから、そういう点ひとつ研究し、取り組む体制については研究するとともに、必ず実施していただきたい、以上です。
  115. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) 健康調査につきまして同盟の方々といいますか、住民の方と市の当局と若干トラブルがあったことは、担当者も皆承知いたしております。そこで、その際には市当局にも指導をいたしたわけでございますが、十分協力をしていただかないと、環境庁自身が実施部隊を持っておりませんので、よくひとつ納得のいくような、協力を得るような方法を話し合いによって十分とりまして、医師会等の協力も得まして、できるだけひとつ支障のない形で進めてまいりたいと、かように考えます。
  116. 小平芳平

    ○小平芳平君 いやね、住民は協力しないなんて一言も言ってないわけです。ですから、何かのところでばっとある時点に中止になったわけです。ですから、特にがん発生についても被害者同盟と会社の食い違いがあるわけです。しかし相当数の人が昭和四十二、三年をピークとして亡くなっていることも事実なんです。そういう点も含め、被害者の方々は協力しないどころか、もう被害者同盟の会長のところへ、こういう事例もある、ああいう事例もあると盛んに訴えてきている、さあどうかしてくれというときなんです。ただ、いままで行われなかったのは、どうしてそういうふうに行われなかったか、それは被害者の責任じゃないんです。全く別のところで取りやめちゃったわけです。そういうことがあってはおかしいと、納得できない。ですから、必ず実施することが一つと、もう一つは、そうした専門家による実施をしていただきたい。
  117. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 健康調査という問題は、御指摘ございましたように、非常に重要な問題でございます。したがいまして、これの実施のプランニングあるいは実施方法等につきまして、当然これを担当する者、あるいは本健康調査を受けられる方々に十分な理解を持っていただくことも必要でございます。また、ただいまいろいろと御指摘ございましたように、相当な環境汚染というようなものに対します健康被害に対します関心度というものも非常に大事なことであろうかと思います。従来から行われてきました健康調査が何らかの理由で中止になったということは非常に残念なことでもございますので、十分長野県さらには塩尻市に対しまして、十分その辺を詰めて、完全な健康調査ができるような体制に持っていくように、十分な指導を行ってまいりたいと考えております。
  118. 小平芳平

    ○小平芳平君 結構です。
  119. 橋本敦

    橋本敦君 私はまず第一の問題として、環境庁長官に、いま大きな問題になっております大気保全局の汚職問題をめぐって若干お尋ねをさしていただきたいと、こう思っております。この問題については、すでに長官もきわめて遺憾であるという意を表明をされ、今後このようなことが起こらないように厳正な人事処置その他、適正な処置をおとりになるということをお約束になっておられるわけですが、まず第一点私が環境庁にお伺いしたいことは、このような重大な汚職事件について、この専門気象官がたびたび飲み食いの贈賄を受ける、あるいは外国まで旅行に招待をされる、こういった事態が明らかになっているわけですが、この贈賄をした目的が那辺にあったかについて、捜査当局から何らか調査の結果報告をお受けになっておられますかどうか、その点はいかがでしょうか。
  120. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) いまの御質問のございました、どういうわけで贈賄を受けたのかということについて、捜査当局から私ども特別にいろいろな話は承っておりません。
  121. 橋本敦

    橋本敦君 これは一つには環境庁からの委託業務を——これは年々ふえてきておりますが、これをさらに増大さしたいという利益的な要求もあったかもしれません。あるいはまたその他、いわゆるこの調査に関連をして便宜を図ってもらいたいという要求があったかもしれません。いずれにしても、環境行政の中で、このような汚職によって適正な環境行政がゆがめられるという事態があっては、これは国民立場からしてゆゆしい問題になってくる。だから、したがって、その点については環境庁は今後このような事故が発生しないことを期すると同時に、この起こった事件について、原因と背景、そうして、それが那辺に贈賄の目的があったか、これはやっぱり正確につかむ必要があると思うし、そのことを捜査機関と協力をして明らかにつかまなければならない義務があると私は思いますが、その点いかがお考えでしょうか。
  122. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) 捜査中はやはり警察の方でもそういう点の詳しいことは公表いたしません。まだ起訴をされまして、検事局でなおやはり若干捜査の段階でもございますので、一段落いたしましたところで、私どもはその点の将来の参考になるいろいろな助言を警察当局から得たいと、さように考えております。
  123. 橋本敦

    橋本敦君 一段落したところで助言を得たいということも結構です。なるべく早く将来の戒めとするためにも処置をされるのが妥当だと私は思っております。  ところで、長官にお伺いしたいのは、このような汚職事件に関連をして、私が一番心配をするのは国民の疑惑であります。政治不信であります。一つの問題は、環境庁のこれまで出されておる委託費が果たして適正に使われているかどうかということに対する疑惑が当然起こってまいります。まずこの点についてお伺いしたいと思うのですが、私どもが資料としていただいた資料によりますと、大気保全局調査研究委託状況は、環境庁が発足して四十九年度に至るまで総計百六十四件、七億九千六十四万二千円、約八億円という莫大な数字に上っております。そのうち問題の公害気象研究所委託した費用は、五十年度分も入れますと八件で九千三十四万七千円、こういうようにいただいた資料から計算しておりますが、この数字はほぼ間違いございませんか。
  124. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 間違いございません。
  125. 橋本敦

    橋本敦君 そこで環境庁長官お伺いしたいのですが、これだけ国民の税金から国民の健康を守るために莫大な委託調査費が支出をされている、この委託調査費の支出と使途、その具体的内容について、法律上環境庁が帳簿立入検査その他の監査をする権限が環境庁にありますか、ありませんか。
  126. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 監査の問題につきましては、委託契約の規定の中に監査をするという条項を入れてやっていこうというぐあいに考えておるわけでございます。
  127. 橋本敦

    橋本敦君 私の質問に率直に答えていただきます。環境庁設置法その他の法律によって、法律上の権限として監査権限があるというようにはなっていないと、これがまず前提ですね。そのことをまず確かめたいんです。
  128. 金子太郎

    政府委員金子太郎君) 法律にそのような明文の規定はございませんが、契約によってそういう監査をやり得るようにするというのが筋道だと思います。
  129. 橋本敦

    橋本敦君 ですから、まあ国の行政全般にかかわる問題ですが、要するに莫大な委託費が支出をされても、法律上の権限で直接の監査権限がないために、委託契約の中に監査に関する契約を入れることを通じてしか監査権限が発生しないという状況になっておる、これが一つ問題があるわけですね。そして、その委託契約の中に——たとえば公害気象研究所に私が指摘をした今年までの八件九千万円の委託費が支払われることになりますが、公害研究所との委託契約の中に、具体的にどのような監査を含む契約内容が決められていますか。
  130. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 委託契約の中には、第八条として、「甲は、必要があると認めたときは、委託事業の実施状況委託費の使途、その他必要な事項について報告を求め、または実地に調査することができるものとする。」という形になっております。
  131. 橋本敦

    橋本敦君 それはいままでの契約全部に、一件ごと全部に入っておりますか。過去のですよ、これまでの。
  132. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 従来の委託調査の中には、全部これは入っております。私、いま読み上げましたのは四十八年のものでございまして、四十九年度からは、第十二条というところに、「甲は定期または随時に、乙が行う委託事業に関して報告を求め帳簿書類を閲覧し、その他委託業務全般にわたり質問または、監査を行い必要に応じて資料の提出を求めることができるものとする。この場合乙はその調査を拒み妨げまたは報告を怠ってはならない。」ということを絶対条件としているわけです。
  133. 橋本敦

    橋本敦君 そういう契約内容にしているということの問題は、これは契約上そのような取り決めがあるということですか。だから具体的に国家が制定した根拠法に基づく法律上の権限で監査権限があるというわけではないですね、契約上そういう権限を受託者、つまり委託を受ける者が環境庁に対して契約上承認をしている、これにすぎません。だから、したがって、その契約に違背した場合、環境庁としてはとり得る処置がありますか。
  134. 金子太郎

    政府委員金子太郎君) 当該契約を取り消すことができます。
  135. 橋本敦

    橋本敦君 契約違背を理由に契約を取り消すというのが民法原則からも契約原則からも当然でしょう。私は契約を取り消すことを要求しているのではなくて、厳密な、徹底した監査が必ずなし得るという強力な法的権限が多額の国家費用を支出される場合には要るんだと、それが当事者間の、監査を受ける者と監査をしようという者との契約内容だけにしかないという問題は、これは委託費用を国家の立場で厳正に監査する上で、一つの不備をもたらすのではないか、そのことを心配しているのです。その契約で十分足りると、聞かなければ契約解除したらよろしいのだと、それじゃ大気汚染関係研究調査はどうなります、ストップしてしまいます。私はそういう契約を取り消すということが目的ではなくて、もっと厳密な監査ができるというような何らかの法的処置を、これをつくる必要があるというお考えは長官、ありませんか。官房長で結構です。
  136. 金子太郎

    政府委員金子太郎君) 先にお答えさせていただきますが、本件につきましては、財政、会計関係の法令制度全体を通じまして、そういう規定を法律に入れることが実益があるかどうか、またその必要性があるかどうかという点が問題であろうかと思いますが、いずれにいたしましても環境庁だけで判断する問題を超えておりまして、本件につきましては会計、財政法令を担当しております大蔵省の方と相談してみないと、にわかに結論の出ない問題だと思います。現在の契約によって十分な監査ができないという実態があれば、そういう法令改正が必要かと思いますが、私どもは、こういうような失態を生じましたのは、その規定が不十分であったからではなくて、その前に私どもの方にいろいろな手抜かりがあったというふうに理解をしております。
  137. 橋本敦

    橋本敦君 聞くところによりますと、環境庁内部でも大臣訓令で環境庁委託事務取り扱い要領、こういったものを定めて、その契約に基づく監査、それを適正に行うための書式、様式、方式、そういったものを整備したいというようなお考えもあるやに聞いておるのですが、その点は官房長いかがですか。
  138. 金子太郎

    政府委員金子太郎君) ただいま先生言われましたように、そういうものを整備することがまず制度的に必要であると考えておりますと同時に、それだけでは実態の改善を図るためには十分ではございませんので、むしろ委託先が委託調査を受けるに足るしっかりした機構を備えているというものであることが必要ではないか。たとえば委託調査を受けるものが内部的なクロスチェックというようなことを十分やる、そのためには委託調査費が多少高くなってもやむを得ない、こういうようなことも考えなければならないと思っておりますし、また大臣にも指示を受けていることでございますが、委託調査先が民間企業では、いかにクロスチェックなどの内部チェックシステムを整備してもそれでも心もとないというようなケースも十分あり得るので、そういう場合には委託先を公的な性格の強いもの、すなわち営利企業でないようなところにする、必要があればそういうものの設立ないし育成を図るということを検討しろという指示を大臣から受けておりまして、内部的にそういうことも検討しているところでございます。
  139. 橋本敦

    橋本敦君 要するに委託費の厳正な監査についての取り組みについては、契約に基づき、いまおっしゃったような方向でさらに深めていくというとに伺っておきますが、問題の公害気象研究所ですね、ここに対してこれまで八件委託をされておりますが、これについて、先ほどの契約に基づいて厳密な会計監査を何回やったか、やった結果がどうであったか、資料は環境庁にありますか。
  140. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 契約に基づいて立入検査までいたしたことはなかったというぐあいに私は報告を受けておりますが、精算の段階におきまして詳細にチェックをしているということを従来は実行いたしております。
  141. 橋本敦

    橋本敦君 問題はそこなんです。精算の段階ならば、全く書類審査だけです。したがって、それだけで監査が十分であるということではないから、契約の中で立入調査、立入検査までできるという環境庁は契約を結んでおられる、そういう立入調査公害気象研究所にいままで一回もやってなかったという問題は、このような汚職事件発生をした現時点で考えて、監査に十分を期したとは言えないと私は言わなければならないと思うのです。そうお考えになられませんか。いかがでしょうか。
  142. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) いま御指摘のあった趣旨はもっともなことでございまして、今後適正を期したいと思います。
  143. 橋本敦

    橋本敦君 この点はいまからでもおそくない。捜査機関等の協力も要りますが、厳正な調査をする必要があると私は思います。なぜなら、新聞報道でも、公害データに霧——まさに霧という問題で疑惑が寄せられておりまして、手抜き調査をやったのではないかという報道すら流れているわけです。たとえば観測気球を五回飛ばしたという、そういう精算報告だが、実際は二回しか飛ばしてないということがあったかもしれない、そういう報道がなされているときは、大胆、まさにその契約に基づいて監査ができるのですよ。立入調査を厳密にやって国民の疑惑を晴らす、これはやっぱり部下に命じて直ちにおやりになるというのがこの疑惑を晴らす環境庁の姿勢ではありませんか。いかがでしょうか。
  144. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) その点はもう早速やっております。それで、近く——大体十一月いっぱいをめどにしておったのですが、少し——いろいろ書類だけじゃなくて、現実にいろいろな調査もしなきゃいけませんですから、それから細かい伝票を全部総ざらえしなきゃいけませんので、ちょっとあとやっぱり一カ月近くかかるのじゃないかと思いますが、もうすでにやっております。これは捜査当局と関係なく、私ども調査委託をした結果がいままで何回か——承知のように、九千万円ございますので、それぞれのデータがもしそこに正確でないものがあったりしては大変なものですから、それがわかり次第全部公表するつもりでございます。
  145. 橋本敦

    橋本敦君 いま、そうしますと、従前立入調査をやってなかったことはこれは反省をした上で、いま行っている調査の結果は環境庁長官は公表するということですが、これは間違いありませんね。
  146. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) 間違いありません。
  147. 橋本敦

    橋本敦君 そこでもう一つ、この委託費の厳正な使途、それから国による監督が制度的に十分でないということを私は一つ指摘したんですけれども、もう一つこれをめぐって国民が持つ疑惑は、たとえば分析化学研究所の問題でも、私どもの不破書記局長が提起をして問題になっておるわけです。データが改ざんされた、こんな疑いがあっては大変なことです。果たしてそういう疑いがあるのかないのか、こういうことも今度の汚職事件に関連して、一部新聞ではそういう疑いがないとは言えないという向きの報道があった。私はそれを読みまして、これは大変なことである、これはやっぱり国民の命にかかわる問題として、環境庁がこの点についても厳正を期さなければならない、こう思いますが、その考えは大臣も御承認願うと思うのですが、具体的処置として、私は公害気象研究所委託を受けた問題について報告書を提出しておりますが、その基礎になったデータ、なまデータ、これはやっぱり大臣が責任を持って当委員会に公表なさる、そうしてその結果疑いがないならないということを明らかにするという責任があろうかと私は思いますが、そのお考えはいかがでしょう。
  148. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 大臣がお答えになります前に事務的にひとつお答え申し上げます。  二つ大きく分けて問題がございまして、一つは契約どおりきっちり実行しているか否かというところであります。これは契約の細かな事項のケースを全部チェックいたしまして、そして報告書との照合、実施の台帳との照合をいたしましたが、その点につきましては手抜きはございません。  もう一点は誤りがあるかどうかということでございまして、この誤りの中に、起こり得る誤りというのは、どうしても人がやる場合に一部転記ミスがあるとか、そういうものは中にわずかばかりながらこれは起こります。それも抜き取りの検査をいたしております。それからもう一つの誤りといいますのは、故意にねじ曲げたかあるいはそれを改ざんしたかという問題でございます。その点につきましては、個々の台帳とその記録をずっと照合をいたしておるだけではございませんで、チャートがございますから、そのチャートを専門家がずっとレビューをする。そしてそれと報告書と原票とを合わせるということを現在いたしております。実はこれも膨大な資料でございます。とうていここに全部持ってくるというようなものでございませんが、私どもは厳正にチェックをいたしまして、その結果が出ましたならばそれは当然公表をいたすということであります。
  149. 橋本敦

    橋本敦君 いま大胆お話があったようなことですが、私はやっぱり厳正なチェックを環境庁内部でおやりになるということも当然ですが、そのチェックをするということの材料になる基礎データ、なまデータですね、これはやっぱりチェックをした結果の公表と同時に、それを添えて発表して初めてこれは厳正な適正なものが国民の目から見て確保されると、こう思うんです。だから、そういういまチェックの結果は発表するというお話ですが、その際に基礎データ、なまデータ、これは必要な範囲においてともに発表するということはお約束いただけますか。
  150. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) これももう一つ申し上げますが、実は一つの報告書でこれぐらいございます。そのまた原票というのは猛烈になりますので、いまおっしゃる公表と申しますのはどういう程度のことまでの御要望か存じませんが、私どもはどんな報告書があるか見せてくれと要望された場合には、部数が非常に少なくございますので、お貸しはしております。ですから、それは見られるようになっております。それでまた返していただくというふうになっております。しかし、個々の原票の何万、十万を超える細かなものを、全部それを出すということはこれはとうてい不可能なことでございまして、そこにつきましてはどういうような状態でどうこうしたということにつきましての厳正な公表をいたすと、このような意味であるなら私どもはもうそういう形で処理をいたしたいというぐあいに考えております。
  151. 橋本敦

    橋本敦君 わかりました。  それでは、たとえば調査のために環境庁に行ってその資料を閲覧さしてもらって、そして膨大な基礎資料も閲覧をして、独自に検討するという機会を国会の場で、必要な議員があればその機会を与えるということについてはやぶさかでないと、こういう意味に理解してよろしいですか。
  152. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) どこまでそのたくさんの資料が見られるかという問題は別にしまして、基本的考え方は私たちは何らやましいことをいたしておりませんので、調査した結果につきましてははっきりいたしておきます。こういう感じでございます。
  153. 橋本敦

    橋本敦君 それではお話をそういうことで全面的に公開の原則の立場に立って厳正に処理するというように一応伺っておきたいと思います。これはいま私が指摘をした委託費の問題を実際の調査の結果、これが厳正なものであるということをこの機会に環境庁が明確にして国民の疑惑を晴らす責任があるという立場で申し上げたわけです。それはそういう立場で努力するというお約束をいただいたので、次の質問に移りたいと思います。  次は、通産省関係の質問ということになります。  ことしの九月に、東京の葛飾にある愛国鍍金工業というところで六価クロム問題が大変に問題になりました。具体的に言いますと、この工場であき地に約十トンもの六価クロム、これの汚泥が堆積をされており、従業員中四人がいわゆる鼻中隔せん孔症そして加えて近所に遊んでいた子供たち、その子供たちの数人までが鼻血を出すという症状で大変なショックを親に与えているという事件があった。これが東京都議会でも区議会でも問題になったんですが、こういう事件があったということは通産当局まず御存じでしょうか。
  154. 福原元一

    説明員(福原元一君) 承知しております。
  155. 橋本敦

    橋本敦君 ところで、この会社には三菱商事工作機械株式会社からいわゆるクロム酸廃液処理法に基づく機械が販売をされ、それが使用されていたのですが、そのことも通産省御存じでしょうか。
  156. 福原元一

    説明員(福原元一君) お尋ねの件については連絡を受けておりません。
  157. 橋本敦

    橋本敦君 そうですか。それでは答弁資料としてコピーをお渡ししますので、これを見ながら御答弁を願いたいと思います。(資料を手渡す)この会社には代金三百七十五万円でデルタ式クロム酸廃液処理装置が、いま私が指摘をいたしました三菱商事工作機械株式会社からこれが販売をされたのであります。ところで、その三菱商事工作機械株式会社とはどういう会社かということをまず明らかにしておきたいと思うのですが、お手元にダイヤモンド社会社要覧がありますのでちょっとごらんをいただきますと、三菱商事工作機械は四十六年に設立をされまして、資本金のところを見ていただきますと、資本金額二億円、そしてこの株式は三菱商事が九〇%、三菱重工業が一〇%、つまり一〇〇%三菱の会社であるということが会社要覧によって明らかであります。  ところで、この会社がこの機械を愛国鍍金に売りました場合、どういうように売ったかという問題ですが、このクロム酸廃液処理法のパンフレットをごらんくださいますか、三菱がつくったパンフレット。これをあけていただきまして、右のページの一番下をごらんいただきますと、こう書いてあります。「デルタ式に依り排出するスラッジは、当社の集中集積場に集積されます。」と、こう書てあります。つまり、これによって三菱が汚泥を集中的に三菱の処理場に集中してもらえるということで安心して業者はこの機械を買うことになります。  次に、契約書をごらんください。この契約書は愛国鍍金と三菱との契約でございますが、これの第七条をごらんいただきますと、「スラッジの引取り」として、「乙」——つまり三菱です。「乙はデルタクロム液及び装置使用により排出したるスラッジに限り引取るものとする。」、こう書いてあります。だから宣伝パンフレットでも、三菱集積場に汚泥を集積しますと。この機械を売る契約でも具体的に、三菱がこの機械から出るスラッジについては引き取りますと、こういう契約をしている。これがはっきりしております。  ところで問題は、まず第一点は、この三菱がそれじゃどこの会社にこのスラッジの引き取りを委託をさしたかということですが、搬出伝票というのがそこにございますね、搬出伝票。これを見てください。この搬出伝票によりますと、これは昭和四十八年五月八日付の伝票ですが、大型車十四台でもって搬出をして愛国鍍金に搬出伝票を納めていますね。搬出をした会社がここに書いてある日本サニテイション株式会社でございます。そこで、この日本サニテイション株式会社は、産業廃棄物処理業者名簿で調べてみます。この名簿で調べてみますと、中にございます。ございますが、問題なのは、この日本サニテイション株式会社が許可を受けましたのが昭和五十年ということが明らかであります。昭和五十年。これはこの名簿をごらんいただけばわかります。ということは、四十七年、三菱が機械を売って、そして自分の指定する業者自分の集中汚泥処理場に運ばせますと、こう約束をして業者を指定してやらしたこの業者が、何とその当時産業廃棄物処理の許可を得ていない無許可の業者であったという事実が明白なんですよ。明白なんです。こういうことは許せますか。無許可の業者が廃棄物処理、これを運搬いたしますと。いまの法律で、通産省、どうなっておりますか。——責任問われますか問われませんかだけで結構です。
  158. 福原元一

    説明員(福原元一君) 問われると思いますが、これは通産省の所管でございませんので、明確な御返事いたしかねます。
  159. 橋本敦

    橋本敦君 はい、わかりました。明らかに法違反として、産業廃棄物処理法違反として責任を問われる。違法なことを三菱ともあろう大会社が指示しているという問題です。これが第一点です。こういうことは絶対に大企業、大会社として許しちゃならぬことです。  それから二つ目の問題は、すでにこの事件は、御存じのように、この愛国鍍金は倒産をしました。労働者も、公害は受けるわ、倒産で苦しんでいますわ。問題なのは、約十トンに上るスラッジ、これが野積みにされたのが工場の中へ積み込まれ、そのまま置かれている。これは何を意味するか。これはまさに三菱がこの契約に違反をして、この契約第七条に違反をして、そうしてこのスラッジの引き取りを誠実に契約どおり行っていないから、十トン野積みになって子供まで被害を受けているという事実なんです。明らかに契約違反。そのために労働者、住民が損害を受けている。こういう三菱、大企業のやり方について通産省はどうお考えでしょう。
  160. 福原元一

    説明員(福原元一君) 私どもといたしましては、産業廃棄物の処理につきましては、生じますスラッジにつきましては、共同処理、あるいは回収業者による回収、それからさらには最近では資源の再利用という意味を含めまして、精錬企業にも呼びかけましてこれらの引き取り、再精錬ということを指導してまいっております。
  161. 橋本敦

    橋本敦君 抽象的な指導の御方針ではなくて、私が具体的に指摘をした、明らかに契約に違反をしておる。もう一つは、明らかに法律に違反をすることを示唆しておる。許可を受けてない業者にやらしておる。言ってみれば産業廃棄物処理法違反の共犯ですよ。言ってみればこれによって公害発生している。これはまさに十トン山積みにして契約どおり引き取っていないという三菱の契約不履行からくる損害発生を指しておる。いいですか。愛国鍍金の責任に帰するわけにいかぬです、この問題は。愛国鍍金だけじゃないです。このような大企業が契約に違反して自分の品物を売り込む。そして公害発生させる。呼んで早速注意すべきじゃないですか。私が指摘した事実が本当にそのとおりかどうか。このまま三菱ほうっておいていいですか。お考えいかがでしょう。
  162. 福原元一

    説明員(福原元一君) 早速所管局に連絡いたしまして注意をするように申し伝えます。
  163. 橋本敦

    橋本敦君 注意すると同時に、この契約に責任を持ってそのスラッジを処理させなきゃだめですよ。野積みになって子供が鼻血まで出している。こういうことを厳しく取り締まらないと、大企業は勝手なことを言ってパンフレットでいいことを書いて機械を売りつける。中小企業はまいっちゃうんです。早速呼びつけて注意してほしい。その結果またいずれ御報告をお願いしたいと思います。  そして、こういう問題が起こるということで、今度は環境庁長官お話を聞いていただいたと思うんですが、このクロム問題が起こりまして、いろいろと御苦心なさっていることは、新聞報道でも委員会答弁でも私ども承知をいたしておりますが、一つの問題は、これは厚生省が中心になって新しく立法改正、これも行うという方向で御検討だというように伺っております。そこで、具体的にどうしてこれをやっていくかという問題を提記する中で、私はいま指摘をしたメッキ工場の町工場、それからこれを処理する運搬業者、そこらの規制を厳しくするというだけでは足らないと、こういうことに関連をして、大企業が内分は運搬しませんから廃棄物処理法の直接の責任は食いません。そういう立場でまさにこの法がざる法、抜け穴法であると言われている問題もそこにあるんですが、このような違法なスラッジの放置もしくは契約違反、こういうことを大企業がやった場合に、それをも厳しく取り締まる方向での法改正、これも要るのではないかという事例として私は指摘をしたのです。この点について環境庁長官のお考えはいかがでしょうか。
  164. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) ただいまお述べになりました事例を産業廃棄物の関係の法律に照らして考えますと、やっぱり第一次的な法の責任者はメッキの会社であると思いますね。そうでなければ機械を売り込んだ者に責任追及する法律のやり方というものは、なかなかないと思うんです、その会社は産業廃棄物との関係はないんですから。問題は契約の問題でございますから、民法上のその会社と三菱との今度は責任問題になるだろうと思うんです。そういうふうに法律上やっぱり考えていきませんと、これはなかなか主管は厚生大臣ですから、今後法律改正点でどこまで追及して強く規制をしていくかということは、いまたまたまそういう事例が出ましたので、そういう問題が世の中に一般的に非常に行われているということで、そこまで取り締まらないと、個々の事例は別ですよ、ですが、そうでないとこの産業廃棄物の処理の効果が上がってこないというようなことであれば、当然何らかの方途を考えてみなきゃいかぬとは思いますけれども、機械を売り込むためにおまえさんの方で出した廃棄物はおれの方で責任を持ってやるよというようなことの内部契約ですね、会社との。それまで一体産業廃棄物の法律で責任追及するような法構成ができるかどうか、これはなかなか相当問題があるだろうと思うんですよ。私は法律の専門家ではありませんけれども、したがって、いまお伺いして一番の問題は、結局処理業者の明確な、先ほどお話を聞いていますと、まだ免許をとっていないときの問題のようでございます。したがって、処理業者の適正な法的な規制と責任追及と、それからそれに対する指導、育成ということがまず第一だと思います。  それから根本的にはやはり廃棄物を処理する処理場というものの確保がどうもあいまいだから、またそれの非常な困難性があるものですから、そういう事態が起こってくるわけでございますので、したがって、これは私どもは連絡協議会をやって私の方からひとつ厚生省にそこまで、あるいは自治省と相談の上で、会社の責任責任といって追及して法的な規制をやってみても、実際は効果が上がらなければ意味ないものですから、効果を上げるためには処理場確保の難問題をどうやって国なり公共団体なりが一部力をかしながら解決してやるかという方途も、あわせて重要な点じゃないかということで問題を提起いたしております。実はもう近く大体連絡協議会の任務を終えますので、ここでまとめましたものを厚生省の方へ提示をいたしまして、厚生省でいま産業廃棄物の法改正の懇談会をやっておりますので、その参考にもしていただいてやっていただきたいと思っておりますが、その中にそういうような措置をひとつ十分とるように要望したいと、かように考えていま整理中でございます。
  165. 橋本敦

    橋本敦君 いま大臣がおっしゃった関係協議会は何度か開かれていると思うんです。大体めどとしてこの関係協議会が近く終了するというお話ですけれども、いつごろ終了して大体関係協議会の主な意見としては、このような意見を中心にして、そうして法改正への方向をサゼスチョンするということになりますのか、その点いま大臣が明らかにしていただける範囲で、めどとそれから内容の方向ですね、これをおっしゃっていただけないでしょうか。
  166. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) 私は今週中くらい、少なくとも月末をめどにしておったわけでございますんで、できましたら——実は二十一日まで毎日国会なものですから、ちょっとその時間が、今週中にまとめができますかどうかわかりませんが、少なくとも今月中にはまとめまして、厚生省にひとつ提示をしたい。連絡協議会ですから、各省の担当者も集まっておりますんで、大体そこで合意できたものが要ります。ただ、具体的に細かく指示をするというのは、私どものこの連絡協議会の任務でありませんので、厚生省がまた責任者として考えられるまあ方向というものを出していきたいと思っておるわけでございます。  なお内容について、もし大体いままで話題になりました点等の詳しいことが必要でございましたら担当局長からお答えさせます。
  167. 橋本敦

    橋本敦君 項目だけでも局長からお願いします。
  168. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) 各省連絡協議会で検討している内容の問題でございますが、一つは長官もおっしゃいましたように、厚生省で産業廃棄物の関係等も含めて廃棄物処理法の改正を検討中でございまするので、そういう関係を考慮をして、現行の廃棄物処理法の不備なところを早急に改めるべきであると、そういう角度から見て、まあ大きく問題になりますのは、一つは産業廃棄物の処理の実態、こういったものが明確でないと、それがために、たとえば有害物を含む産業廃棄物についていろいろ問題が起こってきたような場合の対処が迅速的確になかなかとり得ないという問題がございますので、そういった実情把握行政庁ができるだけ明確にやるようなことを何らか工夫すべきではないか。  それからもう一つは、やっぱりあくまでも事業者責任の原則に立ちつつも、事業者、それから処理業者というのがございます、その関係がだんだんと複雑になってまいるわけでありまして、それらの責任関係をより明確にし、かつ適正な処理を確実にやってもらうというような意味での法規制を何らか工夫する点がないかと、こういったことが法改正の問題のもう一つの検討の大きな方向であろうというふうに思っております。
  169. 橋本敦

    橋本敦君 私どもの赤旗でも、全国鍍金工業組合連合会、中小企業団体の皆さんの要望が報道されておるんですが、大臣もおっしゃった処理場ですね、これを国の資金と方策でひとつつくり上げてほしいという要望が非常に強い。まあ大臣もこの点は大事な問題だと、こうおっしゃっておりますので、今後の御検討を願いたいと思うんですが、もう一つ中小業者の皆さんが言っているのは、やっぱりメッキ工業という小さな町の零細工場が多いものですから、大企業の横暴なりやり方を規制してほしいという意見が非常に強いんです。で、私が先ほど指摘した問題でも、大臣は、それは契約上の問題だからというようにおっしゃいました。なるほどそのとおりです。実際起こった事態を、大臣、考えますと、子供が被害を受けております。子供がクロム禍の被害を受けているということで、両親はだれに損害賠償請求するか、愛国鍍金に請求する。これは倒産しております。また理論的に、愛国鍍金は倒産しても、うちの会社のこのスラッジはこの契約によって三菱が取りに来てくれない、そのことが悪いんです。三菱に責任があります、こういう抗弁もあり得ます、理論的の。そうですね。そういたしますと、やっぱりこのような公害発生する、住民健康に重大な被害を及ぼす大問題になっているクロム禍の問題を、これをやっぱり規制するということになれば、大企業がこれにかかわっている場合では、それがおっしゃっている民法上の契約だと、こう言うけれども、こういう民法上の契約を結んだ場合には、それを厳正に親会社が処理するという指導なり、そういうたてまえを明確にしていただくという必要が少なくとも私はあると思うんですよ。そういうお考えを関係協議会の中でも反映していただくということをお約束いただけませんか。
  170. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) いまの場合、その中小企業が倒産したという場合ですね、これはちょっとやはり確かに契約の相手方にさかのぼって追及をしていきませんとやりようがないわけですから、それは私は一つの考え方として、法律上の問題かどうかはいまちょっと検討しないとわかりませんが、この責任ある、法的に責任ある者が倒産をした場合に、そこから出た公害なりあるいは産業廃棄物の処理のあれが他にいろいろな悪影響を及ぼすという場合には、これはその責任者が倒産したからといって放置はできませんよ。そういう点は何らかの方法で——これは一般公害問題でも同じ、たとえば興人がいま更生法適用を受けて再建をしておりますが、もし再建できなくてこれがつぶれたという場合に、それじゃ大分のあの佐伯湾のヘドロ対策を放置できるかというとこれはできないわけでございますから、その点は、これは一般的な公害対策事業としての問題で県なり国なりが関与してやらなければいかぬと思いますし、個個の問題として私はそれはもちろん放置できない問題ですから、何らかの始末ができるようなことを考えていかなければいかぬと思います。この点は法律上の規制としてそこまでさかのぼり得るものかどうかあれでございますが、第二次責任としてそういうものは当然その考えに入れて対策を講じていかなきゃいかぬだろう、あるいは行政指導を強くやるか、法的な何かそういう面の取っかかりができるか、これは研究すべきであろうと考えております。
  171. 橋本敦

    橋本敦君 最後に。いま言った御検討をお願いしますが、たとえば四日市訴訟でも、各企業の共同不法行為責任ということが裁判上理論問題として明らかになっております。私はこれは具体的な三菱の契約に基づく共同不法行為、これが構成し得るような問題として提起したんですから、だから、大臣は法的規制としてはむずかしい問題もあるとおっしゃいましたが、今後ともやっぱり大企業のこういう問題に対する犠牲を下請中小企業に負わせないという立場で環境保全を徹底していくという検討も徹底して御研究願いますように私の立場で要望して質問を終わらしていただきます。
  172. 三治重信

    ○三治重信君 最初にクロムの職業病の問題で一つお伺いいたしますが、読売新聞のこの調査で、クロムによるこの肺がんの死者が二十八人というようなのが新聞に出ておりましたんですが、現在このクロム禍による肺がんの死亡者またはその肺がんの患者であるというふうに労働省が把握されておられる人員はいかがでございますか。
  173. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 現在クロム製錬工場における肺がん発生状況等につきましては最終的に確認がなされておりますが、それにつきまして申し上げますと、クロム作業従事労働者の数は二千名余りでございますが、これは退職者千二百名を含んでおります。現在従業者は九百四十人でございます。この中で死亡者が百三十三人ございますが、そのうち肺がんで亡くなられた方が三十一名おります。そのうちの二十四人が労災申請をしております。その二十四名の中の二十一名はすでに業務上の死亡、肺がんとして認定済みでございます。その他の疾病による死亡者百二人のうち八人が業務上の死亡として申請がなされておりますが、これにつきましては現在業務上かどうか、業務との因果関係について調査を行っている段階でございます。それから調査いたしましたこれらの人のうち三百三十人が現在療養中でございますが、そのうちの六名が肺がんでございまして、そのうちの五人が労災申請をしております。この五人いずれもが業務上の疾病として認定されております。その他の疾病十一人のうちの十人がクロムによる疾病として労災申請がされておりまして、そのうち八名が認定済みと。それから鼻中隔せん孔につきましては……。それからあとメッキ工場につきましては、現在全国的に調査を進めている段階でございます。
  174. 三治重信

    ○三治重信君 この中で、この肺がんということで亡くなられた方というのは、いま御報告があった三十一名の方は、いままで労働省の方で労災思考として認めたのが二十四名ということなんですが、そういうのは、これは三十一名肺がんで死亡したという申請かあって、そのうちで業務上の肺がんとして認定したのが二十四名と、こういうことですか。肺がんで亡くなられた方がね、調査したというのは、労働省に申請されたものの数かどうか。
  175. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 肺がんで亡くなられた方は三十一名でございますが、クロムによる肺がんとして労災申請されたのはそのうちの二十四名でございます。そして、そのうちの二十一名がすでに業務上の死亡として認定済みでございまして、残りの三名についてはいま検討中でございます。
  176. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、三十一名のうち二十四名がクロムで、そのほかの七名はクロム以外の肺がんだと、こう考えていいわけですか。
  177. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) これは申請がなされていないということで、その中にはクロムとの因果関係もともとないということで申請されていないというものもございましょうし、たとえばクロム作業に従事した期間が非常に短いというような人もありますし、そういうことで因果関係がこれはないと一般のお医者さんでも判断できる場合もありますから、そういうものは申請されてこないということも考えられるわけでございます。また、申請がおくれているというものもあるだろうと思います。
  178. 三治重信

    ○三治重信君 ちょっとわからぬですが、そうすると三十一名はどういうふうにして把握した三十一名なんですか。このクロムの精錬の関係で肺がんの死亡者が三十一名という説明、ちょっと納得できません。
  179. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) これはクロム精練工場の労働者二千百七十九名について、退職者千二百名余り含めまして調査したもののうちで肺がんで亡くなった方が三十一名あったということでございます。
  180. 三治重信

    ○三治重信君 そこで長官がお帰りになるので、急いでおられるので、ちょっと質問厚生省へ飛ばしますが、厚生省、お見えになっておりますか。——で、非常に初歩的な質問で申しわけないんですが、非常に職業病またはいろいろこれからの問題で私はこのがんという病名をやられるときにはその関係者は非常にショックを受けるだろうと思うんですが、厚生省の方で、いわゆるがんというものの病気で亡くなられた方というものが、そういう原因別に、がんというものはどういう原因で亡くなるという原因別の死亡者の割合というようなものやなんかがわかりませんか。あるいは、厚生省の方で、がんというのはどういう病気によって亡くなられているのが多いんだと、正確な割合はわからぬにしても、年間、がんというのが肺とか胃とか、いろいろの部面で亡くなられるわけなんですが、そのまた原因別というんですか、肺とか胃、そういうような区別というのがわかるか。それが、あるいは一般的な原因といいますか、そういう原因別に、どういうふうに分類されておられるか。一般的ながんで亡くなられる方の現在の状況を簡単に説明してください。
  181. 本田正

    説明員(本田正君) がんの死亡の問題は現在の非常に深刻な問題でございまして、日本人が現在昭和四十九年に七十一万人死亡している中で、がんによる死亡は十三万三千七百二名となっております。これ、いろいろの死因別に見てみますと、高血圧、脳卒中系に次ぎまして死亡の第二位を占めているわけでございます。この中でいろいろのがんの種類がございますが、一番多いのは胃がんでございます。これが十三万三千七百二名の中の、四十九年でございますが、五万三百八十二名、こういうふうになっております。それから二番目が肺がんでございます。これが一万二千七百十四名でございます。そのほか肝臓がんが約一万名。それから乳がん、これは主として女性だけでございますが、男性も若干ございますが、これが三千八十名。それから子宮がんが六千百四十二名。それから食道がんというのが五千二百九名。その他いろんながんがあるわけでございますが、たとえば白血病というのもがんでございますけれども三千九百六十二名。こういうふうに相なっておりまして、その中でも胃がんとそれから肺がんというのが非常に多くなっております。  このいろんながんで死亡しているわけでございますが、この中で、じゃあ一体どういう職業の人がそれによって死んでいるかということは、残念ながら人口動態統計ではわかりません。つまり、職業病的な観点から見た場合には残念ながらわかっておりません。  それから一方、がんの原因ということにつきましては、いろいろ現在これだという原因が残念ながらわかっておりません。したがって、いろんな分野における研究が進められておりまして、あるいは化学物質なのか、あるいはウイルスなのか、いろんな立場研究が進められているのが現状でございます。
  182. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、これは統計ですから、医者からがんだと言われて、申請されて死亡診断書に書かれたのががんだと、こういうことだろうと思うのですが、じゃあまたその問題も関連のやつ後で継ぎますが、どうもちょっとちぐはぐになって申しわけないのですが、環境庁長官がお帰りになるものですから、きょうは要望的というのか私の、こういう職業病と一般の死亡との関連の問題について見解と、また御意見を一、二伺っておきたいと思うのですが、今度クロム禍で肺がんの問題が出てきた。現地におりますと、こういうがんというので新聞に出てくると地域では非常にショックを受ける、その従業員ばかりでなくてその付近から。そういう問題について、非常に何と申しますか一部報道の行き過ぎもあるのではないかと思われるのですが、また、そういうショッキングな病気を聞くと付近の住民も非常に騒ぐ、こういうことでございます。したがって、これがことに職業病とか公害病と、こう言われると非常なショックを受けることになるわけなんです。今度のクロムによる職業病のやつは、これは非常に対象の従業者が限られておりますからまだしも、しかし、それでも名古屋の場合に肺がん患者が出たということだけで付近の住民は大変な恐怖におびえて何調査しろ、これこう、どうかというようなことになるわけです。そういうようなことを考えますと、やはりこの公害病、職業柄の関係——職業病と公害病といままで区別されておったのですが、これからだんだん工場の中と外は非常に類似的に考えられるようになってくるだろうと思うんです。したがって、こういういわゆるショッキングな問題が出た場合に対する、長官が一般の住民の非常な不安に対して、本当にそういうことは特殊な事例というんですか、発生割合というものが非常に少ないし、そういうものははっきり調査なり、専門家の意見を、実態を見たそういうものの判断を得た上で、何と申しますか考えていくべきことで、そういう事件があったから、すぐみんな付近の住民も従業員も全部もう肺がんにかかる可能性がいかにもあるんじゃないかと、こういうような問題について何かひとつ対処していかぬと、非常にそういう事実をいろいろ摘発をし、またそういう問題が、患者やまたいろいろ事件が起きた場合に国なり地方公共団体が対処するということは非常に重要なことですけれども、その対処は住民に結末が出るまで非常に大きなショックを与える、こういうことでございます。したがって、こういう問題について長官が環境庁の見解として事実は事実として探求していくんだけれども、不安、動揺というものをどうして静めていくか、またそういうものに対する方法の対策というものをぜひ考えてほしいと思うんですが、非常に抽象的なことになって申しわけないんですが、何かお考えのことがありましたら。
  183. 小沢辰男

    ○国務大臣(小沢辰男君) おっしゃるように、たとえば三井更正でああいうような従業員に事件があったということになりますと、その付近の方々もう非常な心配をされるわけで、したがって付近の一般住民に環境影響があってはいかぬし、またそのために健康の被害、健康の公害による被害というものがあってはいかぬわけでありますが、また、ないのに非常な不安を与えるということも、これはやはり確かにいけないことでございますので、やっぱり私どもは正確な科学的な調査をやりまして、それであなた方の工場付近の環境はこういう状況でございます、したがって問題はないとか、あるいは若干この程度基準以上のところがあるが、したがって健康調査をしてみますよと。してみた結果、実は健康に影響するような状態でありません、早速この環境汚染をしている現状をこういうような手だてで直していきます、したがってその点は心配がないとか、まあやっぱり科学的な調査とあれをはっきりやりまして、それを公表して、そして正しい認識を持ってもらって、全体にまた安心もし、協力もしていただきたいと思っております。  最近でも実はいろんな方面から、たとえば公害防止地域に指定をされた、その公害防止地域に指定されたがゆえに、どうもそこで対策をとってもらうのはありがたいが、たとえばその地域からは嫁さんをもらっちゃいかぬぞとか、そういうようなことまで何かあるということを聞きまして、私どもはやっぱり、国民の健康を守る立場で地域指定というものは十分必要な場合にはやっていかなきゃいかぬのですが、同時に、一般の人の啓発も十分やっていきまして、そういう何といいますか、全く非科学的なことが一般国民の生活に悪い影響をもたらさないような十分な啓発というものも同時にやっていかなきゃいかぬなということを感じているわけでございます。人の健康を守っていくわれわれの立場としてはできるだけ厳しく臨みますが、同時に、その結果、科学的な判断を十分よく理解していただいて、そして必要な対策をとるものはとるが、同時に、その他の人は十分ひとつ安心していただくような啓発をやっていかなきゃいかぬというふうに考えておるわけでございます。
  184. 三治重信

    ○三治重信君 最終的に御意見を伺おうと思ったやつが先になってしまうものですから、どうもちぐばぐ的な感じになって申しわけないんですが、いまおっしゃったように、地域にいたしますと、マスコミで言われた地域は、子供たちも、おまえのおやじはあそこでやっている、肺がんだというようなことを言われて、子供が泣いて帰ってくる。それから、あっちからお嫁さんもらうなとかいうようなことが非常にささやかれている。こういうのはマスコミに出てこないわけなんです。したがって非常に公害対策それから職業病対策、これは本当に高度成長の一つのうみでございますけれども、これを取らなければいかぬけれども、それが出たからといって、出たそれに対してまた脅かされた住民が非常に不安を覚える。こういうことで、ひとつぜひ今度そういういろいろな問題を騒がれた現地を見てみたり、名もなき人の声を聞く、むしろそちらに対する不安、住民に対するおびえというものの方も非常に配属していただかないといかぬ。そのPPmというのがよくわからぬし、それから患者側は二人出た、五人出た、それからまだあと被疑者が十何人出た、こういうことだけでいわゆる自分も類推的になってしまう。だから、これを何とか、実際、もしも汚染してそういう患者が出るにしても、何万人の中で確率が何人だとか、何かもう少し——患者の絶対数だけがぱっと出る。しかし、その汚染度によって考えられるそれだけの一般調査もやって、そういう公害病なり職業病が出るにしてもそれは何万分の一だとか何千分の一が大体常識の線で、そんなにみんな、どれもこれもかかるものではないんだと、常識上ですね。そういうようなことももう少し何か一般的にわかりやすい手だてをぜひとっていただきたいと思うんです。この点を長官に特別要望いたしまして、どうぞお引き取りください。ありがとうございました。  じゃ、その次、最初へ戻りまして、職業病の関係をやるのですが、従来、労働省で何と申しますか、産業安全衛生関係いわゆる労災、産業の労働衛生関係で職業病の問題をやってきたわけなんですが、これは産業によって次々と新しい問題が出てきて、それに対する解明に追われておって、先取りというところまでなかなかいかぬのが現状じゃないかと思うのですが、こういう職業病に対して基本的な研究をやっている体制といいますか、その専門家の養成というような問題について、たしか労働衛生研究所をつくってそのものに対処したわけなんですが、現在こういうふうに公害病とともに、戦後の高度成長によって新しい産業が十分検討されていない中で、職業病の対策というものはなかなか専門家が得られなくて、細部にわたって、各方面にわたっていないと思うんですが、こういう現在の職業病に対する基準局または安全衛生部の労働衛生の職業病に対する対策の展開の仕方を概略的に御説明いただきたいと思うんです。
  185. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 先生指摘のとおり、労働災害防止のうちでも職業病対策はおくれているといいますか、現状になかなか対応できないでいるわけでございますが、こういう情勢にかんがみまして、労働省では、実は労働安全衛生法制定当時からそのギャップを埋めるべくいろいろ努力をしているわけでございます。たとえば、一つは労働省が産業医科大学を創設して、産業医の養成をみずからやろうというのもその一つでございますし、また、研究所の拡充につきましても、もう現在ある労働衛生研究所ではなかなか対応できないということで、現在産業医学総合研究所を建設中でございまして、来年春には開設できるかと思いますが、相当大幅な内容的な拡充、充実が図られると存じます。また一方では健康診断体制を整備するための健診センターを労災病院に付設するということも毎年一、二カ所ずつ進めております。それから本年の八月には労働衛生検査センター、これは有害物質の事前検査をするという施設でございます。まあ安全衛生法では事業者に事前に化学物質についての毒性を確認して必要な予防措置をとるように義務づけておりますけれども、実際はなかなか中小企業等がみずからの力でそれを実施することができませんので、国が検査センターを設けてそこで化学物質の事前チェックをするということ、そのための施設を設けすでに開設をいたしているわけでございます。等々、労働衛生面、職業病対策についてはいろいろと施策を講じているんではございますけれども、まだなかなか現状に対応できないのが実態でございます。今後ともその充実に力を入れてまいりたいと、かように考えております。
  186. 三治重信

    ○三治重信君 それで、先ほどの肺がんのはクロムの製造過程なわけなんですが、問題は、一番多い中小零細企業によるメッキとか、染色等の工場でクロムを使っている。これについてはまだ十分把握がないようなんですけれども、これの職業病対策としてどういう対策をとろうとされるのか。まあ、いまの私が知っている限りにおいては、汚水処理の対策と、その工場内の空気の清浄化対策と、こういうふうに認識しているわけなんですが、このいずれも、ことに汚水処理の対策で中小企業はそういう対応できる——対応というのか、指導をしていって、改善命令だけでこういう職業病の対策として改善できる見込みですか。いろいろこの間の調査結果のやつは拝見したわけなんですが、今後の改善命令を出していく場合の処理の改善の進め方ですね。
  187. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 先般、メッキ工場等を中心にしました全国一斉監督実施いたしました結果によりますと、やはり施設的な欠陥が非常に多いわけでございます。先生指摘の職場環境、この換気を正常化するとか、あるいは汚水の処理施設というようなものについてやはり問題がございます。まあしかし何といいましても、職業性疾病を防止するためには職場環境を改善するということが大事でございます。ところが、一般的に設備を、職場環境を改善するには多額の資金が必要でございます。中小企業におきましては、なかなかそれらの資金を確保するということができないために改善がおくれているというところに一つの大きな問題があるわけでございます。このため労働省では、安全衛生法制定を機会に長期かつ低利の資金を貸し付ける労働安全融資制度等の制度を設けまして、これら中小企業に対する金融上の援助を行っております。  現在融資制度には二種類ございまして、一つは、いま申しました安全衛生法制定と同時にできました環境改善のための融資でございまして、労働安全衛生融資と称しておりますが、五十年度の貸付枠が八十二億円でございます。  いま申し上げたのは環境を総合的に改善するための資金でございますが、もう一つの種類は、安全衛生専用機器整備のための、たとえば安全装置だとか、あるいは衛生関係では局所換気装置というような安全衛生専用機器整備するための資金として、産業安全衛生施設等特別融資制度がございます。これは昭和三十何年ですか、もうずいぶん前からできておりますが、これにつきましては、中小企業金融公庫の五十年度の貸付枠として四百二十億円ございます。これは公害の貸し付けを含めております。それから国民金融公庫では五十年度三十五億円。このような特別の融資制度があるわけでございまして、特に最近のように職業性疾病の問題が大きくクローズアップされておりますのにかんがみまして、これらの融資の活用によりましてさらに積極的に施設設備の改善を進めまして、健康な産業環境が形成されるよう一層指導してまいりたい、かように考えております。
  188. 三治重信

    ○三治重信君 その次に、塩ビモノマーのやつが最近できてきたわけですが、この塩ビモノマーによる——窯の中で融合さすときの窯の後掃除ですか、融合さした後のその窯の掃除のところの濃度の問題によって、この塩ビモノマーによる肝臓障害が非常に出ていて、最近改善されたと、こう言っているわけですが、これの肝臓障害による患者といいますか、これは死亡災害というのは余りないわけですか。相当死亡災害も出ているわけですか。
  189. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 塩ビモノマーによります死亡災害でございますが、現在労災申請をされている者が六名ございます。この六名につきましては、業務との因果関係を現在検討中でございます。それから療養中の者が四名。これは門脈圧高進症等でございますけれども、四名おりますが、そのうち三名が業務上の疾病であるとして補償を受けております。
  190. 三治重信

    ○三治重信君 この窯の濃度規制によって今後は大体こういう問題が起きないようになっているという見解ですか、それともまだこういうものについての実態がよくわからないという状況ですか。
  191. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 今後はまず大丈夫だと考えております。実は従来この塩ビモノマーは比較的毒性の低い物質と考えられていたのでございますが、昭和四十四年に東京で開催されました国際労働衛生会議におきまして塩ビモノマーによる指端骨溶解症の報告がされまして、労働省では四十五年に塩化ビニール工業協会に対しまして、重合槽内の作業を行うときには構内の濃度を五〇〇ppm以下にするように指導をいたしました。さらに昨年、アメリカで初めて肝臓の血管肉腫が発生したという報告を受けましたので、六月には緊急通達を出しまして、従来の五〇〇ppmの十分の一の五〇ppm、できるだけ低い濃度に下げるようにという強い指導を行ったわけでございます。さらに本年六月に至りまして、専門家の意見に基づいて、重合槽内の作業に従事する濃度、作業に関する管理濃度を五ppm以下にするようにという指導をするとともに、十月に特定化学物質等障害予防規則を改正をいたしまして、これを規則でいう健康障害を受けるおそれのない濃度の目安とすることといたしたのでございます。五ppmで大丈夫かということでございますが、この点につきましては、実は現在は窯に入る必要のある回数というものが非常に減っております。一般、通常は高圧水で窯を清掃して二十回に一回ぐらいしか入らなくてもよくなっているということと、一回の清掃作業時間が十分ないし三十分であるという短時間で、月に一人当たり二十回程度しか入らなくてもいいというようなのが現状でございますので、五ppmでまず今後は血管肉腫等の障害が発生しないものと考えております。
  192. 三治重信

    ○三治重信君 これに関連して、工場外の大気汚染の問題が出ておるんですが、いま労働省の方は工場内の問題で塩ビモノマーの汚染度を非常に引き上げて五ppm以内にした。まあ相当工場の外へもこういうものが拡散されているというか、そういう徴候があるんですか。また調査実績、また大気汚染中の基準が決められているんですか。
  193. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 工場外に対しまして工場の中の塩化ビニールモノマーが出ておるかということでございますが、私どもはちょうど四十九年度におきまして測定法を確立をするという、これは純粋に研究的な目的でやっておるのがございまして、その測定法が大体確立しました。で、そのときに出た数字がまだ最終的に全体の問題を論ずるには至りませんが、すべて工場の外においてはppbオーダーか、あるいは発見できないという数字のものであったということでございます。これはテストの数字でございますので余りそれを振り回すわけにもまいりませんが、アメリカが測定したのではごくわずかの、九十何%まではppm以下であったと書いておりますが、日本のこれは、テストのものはすべて工場外ではppbオーダーあるいは発見できずというところでございます。
  194. 三治重信

    ○三治重信君 その点ですね、非常に名古屋でも騒いでおりますので、役所の方はその点は言ってあるのだということがあるかもわかりませんけれども、時に触れ常にそういう問題が出た場合に工場外は大丈夫なんだと、環境庁基準では。また暫定的に調査をしても実際の数字はこれぐらいだというようなので、余り何と申しますか、工場内で最近は一人でもいろいろな患者が出ると外も同じように出るのじゃないかと、こういうようなことで非常に住民の不安を増すという点を配慮していただきたいと思うのです。  それから最近これと関連して、またその以前からも若干問題になっていたのですが、合成洗剤や農薬関係の製造工場でも何と申しますか、この職業病、いわゆる関係従事者の職業病があるんじゃないかというのが言われているわけですが、この部面においては、こういうクロムや塩ビモノマーと同じようにいま問題になりつつあるのですか、どうか。
  195. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 農薬工場につきましてはやはり問題のある物質が相当あるようでございます。特に除草剤、殺中剤、殺菌剤に用いる農薬製造工場については問題があると存じます。で、農薬の生体に対する有害な作用としましては、接触性皮膚炎、結膜・角膜炎等の局所刺激作用がありますし、時としては中毒とかアレルギー反応があると言われているわけでございます。そこで、化学物質の取り扱いについては十分注意を要するわけでございまして、労働省では、これらの製造作業に従事する労働者がその化学物質に暴露されないように、原材料のうちの一定のもの、たとえば蓚化メチルとか砒酸鉛ですね、それからホルマリンとかクレゾールあるいはベンゼンというようなものにつきましては、特定化学物質等障害予防規則なり、あるいは有機溶剤中毒予防規則、または鉛中毒予防規則等におきまして作業環境の測定、その結果に基づく環境の改善、これは具体的な濃度基準を決めておりますけれども、それから健康診断の実施とか、あるいは洗浄設備なり、更衣設備の設置等について規制をし、障害の防止に努めているところでございます。
  196. 三治重信

    ○三治重信君 それで、そうすると農薬工場の関係は、一般の、以前から有毒物質による職業病の発生予防を重点的に指導されてい、また態勢も整えておられるようなんですが、この合成洗剤に最近学校給食調理人が大阪では労災認定の患者になっていると、こういうような記事を最近拝見したわけなんですが、こういう合成洗剤を学校給食なり、あるいは一般の調理や何かで相当洗浄とか——食器や食品の洗浄なんかに使うことを義務づけているような体制にあるからこういうふうな労災認定が行われるということですか。
  197. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 御指摘の、この洗剤による恐らく皮膚障害か何かだと思うんでございますが、果たしてそれが合成洗剤によるものかどうかということについては実は私この問題聞いておりませんのでここで申し上げられませんが、まあ使用方法を誤るというようなことになれば皮膚障害を起こすというようなことも一応考えられるんではなかろうかと思われます。
  198. 三治重信

    ○三治重信君 これね、調べていたらこの十一月の十四日の新聞に出ているんです。これは各、朝日も中日もほかの新聞にも出ておりましたし、それでほかの何といいますか、職業病関係を調べているときに私はつい最近の問題として非常に討論されているということでやったんですから、ひとつ注意をしていただきたいと思うんですが、いずれにしてもこの職業、そういう問題が新しく出てまいりますのについて、ひとつ先ほどお話あったように労働衛生関係の問題を単に健康ばかりでなくて、新しく公害病と職業病と非常に密接に関連をして、双方に何といいますか、一般的にこれが出ますと分け隔てなくその地域や関係者に非常なショックを与えることになるわけです。したがって昔のような職業病、いわゆる工場内の従業員だけの職業病だからということでなくて、やはり公害病と一般地域の住民にも非常にこういう問題が出てくると、まあ関連して不安を与える、またはそれが非常に心理的にもまた地域の行政にも影響するということを考えて今後この職業病や労働衛生問題を取り扱っていただきたいと思うんです。どうかひとうそういう意味において職業病の関係は従来と変わって、私はひとつ、外郭団体でやっている労働災害防止協会にもひとつ各業界に働きかけて、そうしてそういういろいろの職業病対策について問題点を検討さすような対策を積極的にとらすようなことをやらしたらどうかと思うんですが、労働災害防止協会は従来ともいわゆる業界の自主的な災害防止の活動をすると、こういうことで政府からこういう安全衛生の問題を常に工場や事業場や経営者が政府から監督されるというだけで、受け身にやるんではなくしてみずからこういう問題を処理をし、そして積極的に予防対策をとっていくんだと、こういう趣旨で発足しているわけなんです。この問題について、したがって安全関係は非常によく進められているわけなんですが、この職業病を中心として衛生関係もさらに力を入れていく対策をひとつ考えてもらいたいと思います。どうぞひとつその点よろしくお願いを申し上げます。  最後にひとつ労働省に。こういうふうに職業病にかかられた患者さんですね、いわゆる重症患者で入院されている方は手当てを受けていられるからこれは医者に任してよいわけですが、いわゆる職業病に、入院までに至らぬ、あるいは職業病にかかった人の、また職業病の出る職場における健康管理をどういうふうに今後対策を進めていかれる考えかお聞きしたい。
  199. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 職業病対策としましては、まあ予防のほかに健康管理、それから疾病、被災者の治療なり補償の問題、さらには社会復帰等の問題があるわけでございますが、御指摘の健康管理の面につきましては必ずしも現在十分の対策がとられているとは私ども考えていないわけでございますが、まあいろいろ健康対策実施はいたしております。特に昭和四十七年に労働安全衛生法が制定されまして、予防措置の充実を図ると同時に健康管理対策も強化したわけでございます。すなわち、一定の有害業務を行う屋内作業場につきましては、作業環境の測定を行って環境の改善を図らせるとともに、健康診断につきましては特に一般健康診断のほかに、有害業務に従事する労働者に対しましては特別の項目の健康診断を実施しまして、その結果に基づいて必要な場合には作業転換をさせるとか、あるいは時間短縮とか、また人によっては療養というような適切な措置を講じさせることにしているわけでございます。そのほか、この健康管理対策を徹底させるためには、何といいましてもまず第一に健康診断を適確に実施する機関を養成していくということが重要な点でございますので、この点につきましては労災病院に健康診断センターを順次付設してきております。また健康診断機関あるいは作業環境測定機関の育成も、融資なりあるいは助成、補助金制度等を活用いたしまして、その育成に努めているところでございます。また不幸にして職業性疾病にかかった労働者につきましては、何よりも早期に適切な治療を行うことが重要でございますので、全国に三十四ございます労災病院等の活用によりまして適切な治療が行われるように努めているところでございますが、今後さらにそれらの充実に努めてまいりたい、かように考えております。
  200. 三治重信

    ○三治重信君 では最後に一つ。このメッキの工場の排水や排気等、それから合成洗剤のいろいろ家庭並びに工場から、いろいろのまあ食品、食堂やなんかから流れるやつによっての水や大気の汚染の関係なんですが、これを下水に取るか、入れていくか、あるいはそれを直接川へ流さしていかぬとこういうものの対策はできないと、こういう意見に非常に学者が——学者はむしろ下水へ入れるなと、そして各、そういうことに水は直接河川へ流す対策をやらぬと、そういう汚水処理の、ことに重金属なんか含んだり、この中は非常にまずいのではないか。先日も六価クロムを下水道へ流してということで、名古屋でも大問題になったわけですが、こういう問題に対して環境庁として今後こういう下水道の問題と関連して、非常に工場排水並びに家庭の排水でも、町の排水の中で非常に悪い職業病に関連するような問題の排水を規制していく場合について、どちらをとろうとしておられるのかという問題を一つと、合成洗剤の問題は非常によく新聞で騒がれているわけですが、この実態について環境庁としては合成洗剤、これは非常に一般の家庭の主婦も使っておりますし、先ほど言ったように学校の給食の問題でも何か大変、職業病はその一部なんですけれども、非常に使われている、廃止しろとかいうような問題が出ている、こういう問題に対するいまの現在のところの考え方をひとつお聞きして私の、質問を終わります。
  201. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) 合成洗剤の問題と、それから六価クロム等有害重金属の問題と二つあったように存じますが、その重金属の問題につきましてメッキ工場等から排水されるものをまあ都市下水路のようなものに入れていくのがいいのか、あるいは公共用水域に入れていくのがいいのかということは、これは私ども都市下水路みたいなものに入りましても結局最終は水の形のものですとどこかの公共用水域に排出をされてくると、その途中でとにかくいずれにしてもカットをして公共用水域が水質として有害金属によって汚染をされていないような状況をつくる必要があるということで、基本的には私はもう排水のもとのところで排水基準を守ってもらうというのが大変重要だと思います。しかし、下水の整備ももちろんやむを得ず下水の方に入れなければならないというようなのがたとえば大阪市などの現状を見てみますとございます。下水の整備はどうしても適確にやっていただくということが必要でございまして、そういう角度から私どもも建設省に対しまして下水の整備は重点的にやってほしいということを申し上げているわけでございますが、しかし、何と申しましてもまあ下水の整備一般家庭の雑排水などの排水をどういうふうに処理するかということに非常に大きくかかわっておるんじゃないかと思います。この家庭から出てきます生活排水の中にも環境保全上いろいろと問題のあるものがございます。そういう角度から見てまいりました場合に、やはりかなりウエートがあって、今後の重要問題というのは、ただいま先生が御指摘になりました合成洗剤の問題じゃないかというふうに思うわけでございます。で、この合成洗剤は水質との関係で申し上げますと、一つには、まあ直接的に健康がどうだこうだという問題よりも、昨今はこの合成洗剤の中に含まれておりますところの燐分、これがいろいろの作用をもたらすわけでございまして、御案内のように瀬戸内方面その他の海域で赤潮が大変多発をしてくるような傾向がございますけれども、それの原因の一つにやはり合成洗剤と申しますか、それがかなりのウエートはあると思いますが、家庭排水から出ますところの排水の中に含まれておる燐分、これがかなり影響しておるのではないかというふうに言われておりまして、したがいまして基本的には家庭排水から出てまいりますその排水の中の燐分をできるだけ少なくしていく、こういう政策をできるだけ強力に私ども関係各省にお願いをしまして推進をするということが大変必要であると同時に、下水の面におきましては燐の処理はなかなか困難でございます。建設省といたしましても下水の二次処理ばかりにとどまらず高度の三次処理もやっていくという取り組みの姿勢を見せております。まあ一遍にはいかぬとは思いますが、できるだけこの面にも力を入れていただいて、そして三次処理をしていただくと同時に、この燐が何とか家庭から出てくるものは少なくなると同時に、途中のいろいろの施設処理によって何とか少なくできるというような方途を、これは技術的にもなかなかむずかしい点もございまして、相当学者の知見を集積し、今後また新たな分野研究していかなければならぬ面が多々あると思いますが、そういう点にも取っ組んでいかなければならぬというふうに考えておる次第でございます。
  202. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) この合成洗剤の先生指摘の健康に関する、たとえば手の荒れとかあるいはそのほかの無性があるのではないかということでございますが、これは昭和三十七年に総合的な研究をいたしました結果、通常の家庭で使うような濃度で使った場合にはいわゆる手荒れというのは起きないであろう、それが大体〇・二%以下でありますれば通常の状態でございますと手荒れなど起きないであろう、こういうふうな研究結果が出ておるわけでございます。それを踏まえまして現在家庭用品品質表示法という法律がございまして、その法律に基づきまして、家庭でお使いになる洗剤につきましてはこれこれのパーセントでお使いください、なおこれで手が荒れるようなことが起こったならばその後こういうふうな手の手入れをしてくださいということを表示してございます。それからまた同時に洗浄剤の使用基準というのを定めておりまして、これでもいわゆる合成洗剤を使う場合には〇・一%以下の溶液にして洗浄する、それからさらにいわゆる普通の石けんでございますが、その普通の石けんの場合は〇・五%以下にしてこれを溶いて使用するということで、合成洗剤であればいろいろな問題があるという方々には普通のいわゆる石けんというものをお使いいただくというように洗浄剤の使用基準を定めておるわけでございます。なお、さらにそういった問題についてまだいろいろと先生おっしゃいますようにいろいろな心配があるということが最近言われておりますので、昨年度から本年度にかけまして慢性毒性あるいは催奇性という問題について現在研究をさらに続行しているという状況でございます。
  203. 藤田進

    委員長藤田進君) 本日の調査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十七分散会      —————・—————