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1975-12-16 第76回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十六日(火曜日)    午前十時二十三分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         二木 謙吾君     理 事                 稲嶺 一郎君                 秦野  章君                 増原 恵吉君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 糸山英太郎君                 大鷹 淑子君                 木内 四郎君                 中山 太郎君                 亘  四郎君                 田中寿美子君                 田  英夫君                 松永 忠二君                 黒柳  明君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 田渕 哲也君    国務大臣        外務大臣臨時代        理        三木 武夫君    政府委員        外務政務次官   羽田野忠文君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アジア局        次長       大森 誠一君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省経済局次        長        野村  豊君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        水産庁長官    内村 良英君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○日本国中華人民共和国との間の漁業に関する  協定締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  日本国中華人民共和国との間の漁業に関する協定締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。羽田野外務政務次官
  3. 羽田野忠文

    政府委員羽田野忠文君) ただいま議題となりました日本国中華人民共和国との間の漁業に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和四十七年九月の日中国交正常化の際に発出された共同声明第九項において、日中両政府間において貿易、海運、航空、漁業等事項に関する協定締結を目的として交渉を行うことに合意いたしましたが、このうち、わが国中華人民共和国との間の漁業に関する協定締結するため、昭和四十九年五月以来東京及び北京で交渉を行いました結果、本年八月十五日に東京において、わが方宮澤外務大臣先方陳楚駐日大使との間でこの協定の署名を行った次第であります。  この協定は、本文八カ条並びに附属書I及びIIから成り、さらに、附属書Iの一部の規定に関する交換公文が付属しております。協定内容としては、協定が適用される水域両国がとるべき保存措置、取り締まり及び違反事件の処理、操業秩序の維持、海難救助及び緊急避難共同委員会の設置及び任務等事項について定めております。  黄海東海における漁業操業につきましては、昭和三十年六月に日中双方関係者の間において民間漁業協定締結され、それ以来二十年間にわたり数次民間漁業協定によって規制が行われてまいりましたところ、昭和四十七年九月の日中国交正常化の際の共同声明に基づき、この民間漁業協定を考慮しつつ、ただいま申し上げましたような内容を盛り込んだ漁業協定交渉政府間で行ってまいりました結果、このたび両政府間で最終的な合意をみたものであります。この協定締結は、関係水域における両国漁業操業をより安定した基礎の上に置くことに寄与するものと期待されます。なお、本協定締結されることによって、日中共同声明において締結のための交渉合意されたいわゆる実務協定締結は、すべて完了することになり、これによって今後の日中関係がさらに発展するための基礎が築かれるものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 次に補足説明を聴取いたします。伊達条約参事官
  5. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) ただいま外務政務次官から協定内容につきまして提案理由として御説明申し上げましたとおりでございますが、補足といたしまして、黄海東海におきますわが国漁業状況について、簡単に御説明申し上げます。  わが国にとりましては、この協定対象といたしております東海黄海主要漁場一つでございまして、これらの水域におきます底びき網及びまき網漁業による年間漁獲量は約五十万トンに上り、これはわが国漁業による総漁獲量の約五%に当たっております。また、この水域に常時出漁しております漁民の数は約一万人に上っております。主要な漁獲対象タチウオシログチキグチハモ、ヒラメ、カレイ、イカ、エビ、サバアジ等でございます。  この東海黄海におきます漁業につきましては、一九五五年、戦後最初の民間漁業協定日中両国関係者の間で成立しまして以来、今日まで数次にわたる民間協定によって規律されてきた次第でございますが、政府間協定のための交渉が昨年五月に開始されまして以来、この民間協定は二度にわたって延長をされまして、現在有効な民間協定は、御承知のように、本月二十二日まで効力を存続することになっております。  中国側は、すでに本政府間協定効力発生のために国内法上必要とされる手続を完了したということを最近わが国に通報越してきておりますので、幸いに民間協定効力が終了する本月二十二日までに、ただいま御審議をいただいておりますこの政府間協定に対して国会の御承認を得て発効の手続を完了することができますれば、日中両国間の漁業関係政府間の協定による安定した法的基礎を与えられまして、より着実な発展を遂げていくものと考える次第でございます。何とぞよろしくお願いいたします。
  6. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 以上をもって本件説明は終わりました。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 田英夫

    田英夫君 ただいま政務次官から御説明がありましたように、この漁業協定をもっていわゆる実務協定がすべて完了することになるわけでありまして、日中間で残りますのは、最も基本的な問題である日中平和友好条約締結するという問題が残るだけになるわけでありますが、そこで、日中平和友好条約政府としてはどういうふうに考えておられるのか、これを伺いたいところでありますけれども最高責任者である三木総理がきょう午後の委員会には出席をされるそうでありますから、この問題はその機会に譲ることにした方がいいかと思います。  ただ、一方的に私の考えを申し上げれば、いまここまで、実務協定がすべて完了するという状態にまでなって、なおかつ平和友好条約締結できないでいるその原因というのは、実にささいなことではないかという気がしております。問題点はすべて浮き彫りにされているわけでありますし、いわゆる覇権という問題についての取り扱いだけが最後に残った印象でありますけれども、これとても、双方考え方に非常に大きな隔たりがあるという問題ではありませんから、これを一つの壁のように考えてそこで行きどまっているというのは、明らかにむしろ不信感というものが障害になっている。技術的な問題あるいは交渉上の問題ということではなくて、不信感原因があるとしか思えませんが、外務省で作成されたと報道された「覇権問題について」という文書新聞にも出されました。その中には明らかに、覇権問題を言わない者は日中間友好を語り得ないと主張せんばかりのありさまであるという言い方で中国を非難して、かかる態度はみずからの主張を他に押しつける大国主義覇権主義と受け取られかねず、日中友好関係上きわめて憂慮すべきことであると言わねばならないという文書が巷間伝わっております。作成者もだれも書いてないのでありますが、外務省周辺から流れ出ていることは事実であります。  こうしたことが、外務省の否定にもかかわらず、外務省周辺から出ていることが事実であるとすれば、中国側に対しても抜きがたい不信感を与えていることも、これまた事実であります。私の手元に外務省から届けられたときにメモがついてきて、これは外務省がつくったものではない、民間レベル訪中団一つがみずからの訪中準備のために新聞雑誌等に掲載されている本問題に関する論調を整理したものだというふうにメモをつけて届けられましたけれども内容は、民間訪中団というものがこんなものをつくるはずはないのであります。つまり、民間中国をいま訪問する人たちというのは、中国に敵意を持っている人たちが訪問するという事例はまずあり得ないのでありますから、このように中国覇権主義と決めつけるようなそういう文書をみずからつくって自分たち中国に行くということはあり得ない。こういう問題についても、実は三木総理初め外務大臣も御出席のところで基本的な問題として伺いたいところでありますが、先ほど申し上げたように、この問題は後に譲りたいと思います。  技術的な問題にまず入りたいと思いますが、私は漁業は全く素人でありますから教えていただきたいのですが、いま伊達参事官補足説明の中にもありましたが、もう少し詳しく、この協定関係をする海域での漁業種類漁獲される魚種ですね、まき網とか、あるいはフグならはえなわとか、そういう意味種類と魚の種類を教えていただきたいと思います。
  8. 内村良英

    政府委員内村良英君) 本協定対象となる漁場黄海東海でございまして、黄海東海におきますわが国の主たる漁業は、以西底びき網漁業、大中型まき網漁業でございまして、そのほか、いわゆる本協定漁業資源保存措置対象とはならない漁業といたしまして、沖合い底びき網漁業フグアマダイ等はえなわ、底魚の一本釣りイカ釣り大目流し――大目流しというのは非常に網目の大きな流し網でございますが、大目流し刺し網等がございます。  四十九年の操業隻数及び漁獲量は、大体次のようになっております。  以西底びきの隻数は五百十六隻、漁獲高が二十一万八千トン、それから大中型まき網は六十三統、漁獲量は四十万一千トンでございます。そのほか沖合い底びきは百十四隻、漁獲量一万四千トン、はえなわが五百二十隻、漁獲量一万九千トン、底一本釣りが百十六隻で四千トン、これは非常に小さい漁船でございます。イカ釣りが二千隻で四千トン、刺し網が四十四隻で千トン、それから大目流しが三十二隻で千トンということで、隻数といたしまして大小合わせまして約千六百隻、それから漁獲量が四十九年の場合には六十六万二千トンになっております。これは年によって多少漁獲量にはフレがございます。  それから、どういう魚をとっているかということでございますが、キグチシログチ、フウセイ、ニベ、タチウオハモ、ホウボウ、タイショウエビ、イカ等魚種が底びき漁業の主たる魚種でございまして、まき網漁業の場合には、マサバアジ――サバアジというようなものがまき網漁業のおもな魚種になっております。
  9. 田英夫

    田英夫君 ほとんど、特殊な魚を除いて日本人が食する大部分の魚が対象のようでありますけれども、その漁獲をしている漁業当事者は、たとえば大きな企業、何々水産というような大きな企業と、あるいは単独で行くような本当の中小の小というようなことに分けますとどういう比率になるか、正確な比率でなくても結構ですが、大体のところどのくらいの比率になるか教えていただきたい。数字がなければ大体で結構です。
  10. 内村良英

    政府委員内村良英君) ちょっと数字を持ち合わせておりませんので、大体の感じでございますけれども以西底びき、まき網漁業につきまして、もちろん大洋、日水等大手会社以西底びきをやっております。それから、大中型まき網につきましては、主として中小漁業がやっておるわけでございます。漁獲高で申しますと、これは量で見るか価格で見るかという問題がまたあるので非常にむずかしいわけでございます。大体三割ぐらいが大手漁獲で、あとの七割は中小漁獲というふうに考えていただいていいんじゃないかと思います。
  11. 田英夫

    田英夫君 大変初歩的な質問ですけれども、今回の政府間の協定ができたことによって、従来の民間協定の当時に比べて、漁獲高一つ基準にしてもいいですが、日本側として一体どういう影響が出るのか、減るのかふえるのか、まあふえるということはないと思いますが、その辺の状況はどうですか、見通しは。
  12. 内村良英

    政府委員内村良英君) 民間協定と今般の政府間協定と比べますと、規制の態様はほとんど変わりがございません。若干強化された面がございますけれども、特に漁獲量に大きな影響を与えるような規制の強化というものは全くございません。
  13. 田英夫

    田英夫君 今回の協定でも軍事警戒区域とか作戦区域とかいうところは従来と同じなわけですから余り大きな影響はないと思いますが、ひとつ馬力制限の線がはっきり出てまいりましたが、六百馬力と六百六十馬力という線が引かれた結果、さっきちょっと実は伺ったのはそのためなんですが、当然のこととして馬力制限が加えられればその分だけ、中小漁業者は大きい船を持ってないというのが常識でありましょうから、いま大手が三割と言われましたけれども、それがさらに影響を受けて減るのか、あるいは六百馬力あるいは六百六十という線で分けてもそんなに大きな影響はなくて、比率としては同じになるのか、その辺はどうでしょうか。
  14. 内村良英

    政府委員内村良英君) 日中漁業協定の調印時におきまして六百馬力を超える許可船は二そうびきで八十四隻、一そうびきで四隻、合計八十八隻が六百馬力以上の能力を持っておったわけでございます。このうち、大部分の船につきましては機関換装によりまして六百馬力以下とすることができますので、実質的には余り影響がございません。  そこで、十一月一日現在では、六百馬力規制措置によって影響を受ける許可船はすでにもう大部分の船が機関換装を行っておりますので十三隻、このうち二そうびきが九隻、一そうびきが四隻影響を受けるわけでございます。  そこで、この船は大部分のものがいわゆる大手水産会社の船でございますけれども漁獲高にはそう影響がないというふうに考えていただいていいんじゃないかと思います。
  15. 田英夫

    田英夫君 いま長官が言われた機関に手を加えて馬力を落とすということでありますけれども、それは当然中国側との了解ができていると考えられますけれども、それでいいですか。
  16. 内村良英

    政府委員内村良英君) 中国側にももちろん話してございますし、エンジンを封印いたしまして常にそれを検査するということで、違反がないように指導するわけでございます。
  17. 田英夫

    田英夫君 この点は、馬力制限をするということによって、実は中小漁業関係者はこれでわれわれの方が有利になると一時喜んでいた空気もあったわけでありますが、結果的にはいま長官がお答えのとおり、従来とほとんど変わりがないということになるわけで、この辺のところにどういう影響が出るのか、後でちょっと朝鮮との問題を伺いたいんですけれども日中漁業協定締結については政府もきわめて御熱心でありましたし、民間のそうした関係者の間でも非常に早期締結という動きがあった、これは当然のことでありますけれども、いいことでありますけれども、その結果が今日の結果を早く招くことができたということにもなるかもしれません。朝鮮の問題は後で伺いますけれども、その辺の空気が、大手がかんでいて、しかもその大手は不利にならないという結果の御答弁を、いまここで私はひとつ大切なものとして伺っておきたかったわけであります。  次の問題ですけれども、海の問題については海洋法会議が非常に問題になって、海峡の問題でも領海の問題でも、さまざまな問題にこれが関係をしてくるわけでありますから、ニューヨークで来年開かれます海洋法会議の結果を待たないとなかなか解決をしないということがたくさん出てくるわけですけれども、この日中漁業協定関係する限り、もし二百海里の経済水域というものが海洋法会議で国際的に決定をいたしました場合には、この協定にどういう影響が出るというふうにお考えですか。
  18. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 海洋法会議におきまして、現在、先生もおっしゃいましたように、二百海里の経済水域ということが議論されて、それがもはや大勢になりつつあるということは事実でございまして、それがこの協定にどういう影響があるかという御質問でございますが、当然のことながら、もし経済水域ということになりますれば、ただいまこの協定を結びます際に前提となっている東海黄海公海部分、オープンシーというものが中国または日本経済水域に含まれることになるわけでございまして、その点になりますれば、あるいは両国間においてその間の調整をし、さらに話し合いをし、協定の改定ということも考えられるわけでございます。  ただ、ここで申し上げておきたいことは、やはり日中両国がこの日中双方漁業規制するという意味におきましてお互いに合意をしたこの措置というものが、二百海里になったからといって直ちにそれが失効するというような性質のものではございませんで、やはり両国間での話し合いの問題になっていく、そのように考えております。
  19. 田英夫

    田英夫君 当然そうだと思うんですが、私の伺いたいのは、二百海里の線を引いてみると双方に相互にかなり大きくクロスしてダブるわけだと思います。これは日中間に限りませんで、世界的にそういう事態がいろいろな場面で起こると、漁業に限らずですね。大陸だなの問題も当然一つの大きな要素として海洋法会議で範囲の決定が決められなくちゃならないと思いますが、そうなりますと、海底の資源の問題についてもダブる。いま問題になっている日韓大陸だな協定地域というのはまさに中国朝鮮――両朝鮮ですね、日本と三つ、ある意味では、政権で言えば四つの主張がダブるということになると思いますが、この日中漁業の場合も非常にかなり大幅にダブりますし、今回の規制対象水域というようなところもダブってくる。この場合に予想されますのは、どういうふうな措置をするのか、にもかかわらず、この区域はこのままでいけるということも一つ方法だろうと思います。予想される方法としては世界的にどういうことになりますか。
  20. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 二百海里の経済水域国際法典の一部に取り入れられまして、それが国際法の原則ということになってまいりますれば、当然のことながら、従来公海部分であったところがそれぞれ分割をされていくことになると思います。ただ、なかなか広い海域でございますので、たとえそれが法典化されましても、直ちに分割のラインが引けるというわけのものでもございませんから、若干の時間的な経過というものは当然のことながら必要であろうと思います。日中間におきましては、話し合いによりまして、この協定をそのまま存続させるということもございましょうし、あるいは両国間で話し合いまして経済水域についての境界線というものを引くという話を行うことも考えられるわけでございます。ただいま私どもが申し上げられますことは、海洋法会議で一応二百海里ということで議論はされているわけでございますが、その境界線、相対位するないしは相隣接する国の境界線をどうするかということに関しましては、明確な基準というものがはっきりと出てきておらない、どのように決まるかは今後の問題である、そのように承知しております。日本側といたしましては、等距離中間線というものによって引かれるべきものであろうということが海洋法会議においてとっている日本側の立場でございます。
  21. 田英夫

    田英夫君 それに関連して水産庁に伺いたいんですが、この二百海里の経済水域という問題は、日本漁業にとってもちろん言うまでもなく大変大きな影響を与えることになるわけですけれども、これが世界的に実施されますと、日本漁獲高水産庁としてはどのくらいの影響を受けるというふうに計算しておられますか。
  22. 内村良英

    政府委員内村良英君) 現在、わが国漁獲高は約一千万トンでございます。そのうち外国の距岸二百海里の中でとっておるのが大体四百五十万トン、そのうち三百六、七十万トンは北洋ということになっております。
  23. 田英夫

    田英夫君 そうなりますと、その二百海里も、わが方から、北洋の場合もそうですし、いわんや中南米あるいはアフリカ沖というようなところになりますと、これはもうこちらは何の主張をする根拠もなくなって立ち入れないということになるわけでありますから、そうなりますと、今回の対象海域というような場面は、漁獲量は全体からすればそう多くはないわけでありますけれども、この地域でも減るということは非常に大きな影響と言わざるを得ない。水産庁としては当然、現在のこの協定海域現状どおりというふうにお考えと思いますが、そういう主張をされると思いますが、その点はいかがでしょうか。
  24. 内村良英

    政府委員内村良英君) 二百海里の経済水域ができました場合に、それにどう対応するかということでございますが、私どもといたしましては、関係国と、二国間あるいは三国間等の協議をやりまして、極力日本の過去の漁業実績のある漁場についてはその漁場を維持するように努力したい、こう思っているわけでございます。特に、ただいま申しましたように、四百五十万トンのうちの非常に大きな割合が北洋でございます。そうなりますと、日ソ日米あるいは日米加というような交渉が非常に大事になってくるわけでございまして、ソ連、アメリカとは過去終戦後ずっと密接な漁業上の関係を持っておりますので、交渉を続けていけば、一ぺんに排除されるというようなことはないんではないか。ただ、いろいろな意味規制が非常に強化されてくるということは避けられない現実ではないかと思っております。  それから開発途上国等につきましては、わが国経済協力というようなものも考えながら、極力外国の二百海里の中でとらしてもらうということがいいかどうかわかりませんけれども、とらしてもらうようなかっこうにしなければならぬというふうに考えております。  それから東海黄海につきましても、中国と話しまして、できるだけこの協定を保持していくというような形で、日本漁業漁場を確保をしたいというふうに考えておるわけでございます。
  25. 田英夫

    田英夫君 この二百海里の問題は、日本漁業体質自体に大変大きな影響を与えることになると思いますが、これは専門委員会もあることでありますから、いずれそういうところの論議にということでお任せをしたいと思います。  次に移りますが、軍事作戦区域、つまり台湾周辺の問題ですけれども、現在も、民間協定の時代もこの区域については警告と言いますか、勧告と言いますか、そういう状態にあったと思います。今回も、この地域については中国側から危険だという意味勧告が出ているわけですが、実際には日本漁船はこの海域、ノース二十七度以南も操業しているということだと思いますが、それはそう考えてよろしいですか。
  26. 内村良英

    政府委員内村良英君) 主としてまき網漁業があの海域操業しています。
  27. 田英夫

    田英夫君 この点は、今後この協定ができましても、条文上は禁止ではないということですから、そのままの状態が続くというふうに考えていいわけでしょうか。
  28. 内村良英

    政府委員内村良英君) 私どもといたしましては、重要な漁場でございますので、わが国まき網漁業はなお操業を続けるというふうに考えております。
  29. 田英夫

    田英夫君 これは朝鮮の問題と関連するのですけれども、相手側が危険だといっている。しかし、その区域が有力な漁場であるということだと、やはり水産庁の側として、政府の側として立ち入って操業をすることを認めている、こういう態度になるわけで、確かに公海上に特定の区域を設けて、そこに立ち入ってはならないということを主張するということは不当だ。これは国際法的にも言えることだとは思いますけれども、実際問題として危険だという地域日本の漁民が立ち入っていいものかどうかという考え方も一方であると思うのです。この辺のところを政府としてどういうふうにお考えになっているか、基本的な態度ですね。
  30. 内村良英

    政府委員内村良英君) まず基本原則といたしまして、今日のところ公海漁業は自由であるという国際法の原則があるわけでございます。したがいまして、私どもは公海についての漁業の制限というのは、まず第一に資源的な理由から関係国話し合いまして制限を加えなければならぬという場合には、これはもう当然制限を加えなければならぬ。しかし、これもあくまで条約なり協定なりに基づいてやっていくべきものであるというふうに考えております。それから危険な海域、特に沿岸国の一方的な措置によりまして拿捕される、国際法違反であっても拿捕されるおそれのある海域等につきましては、水産庁としてはそういう海域にはなるべく立ち寄らないようにした方がいいというような指導はしておりますけれども、絶対行ってはいかぬということはいっておりません。現に、北鮮の海域につきましては、前からいろいろ注意しておりましたけれども、松生丸事件が起きましたので、かなり詳細な注意事項関係漁業者にやっております。しかし、あくまで公海の漁業でございますので、これについて国が一方的な制限措置をとるということはやっておりません。
  31. 田英夫

    田英夫君 そこで、その朝鮮の問題に入るわけなんですけれども、松生丸事件という大変不幸な事態が起きまして、改めてこの海域操業が注目をされたわけですけれども、従来から実はあの海域でもいろいろ事件が日本漁船との関係では起きていると思いますが、その歴史的な過去の事実を把握しておられましたら教えていただきたい。
  32. 内村良英

    政府委員内村良英君) 過去の事例でございますが、北鮮側に拿捕された事件といたしましては、昭和三十一年に三件五隻、昭和三十五年に一件二隻、昭和三十七年に一件二隻、昭和四十七年に一件、昭和四十八年に一件、計七件十一隻という拿捕された船がございます。  そこで、どうなったかということでございますが、船体及び人員、いずれも全員釈放されております。一番短かいものは六日間、一番長いもので三十四日で釈放されております。
  33. 田英夫

    田英夫君 実は中国の場合も、当初、一九四九年に中華人民共和国が発足して以来、中国沿岸に出漁した日本漁船の拿捕事件というのが相次いで起きていたと思いますが、その当時の、民間協定が成立してそういう事件がなくなるまでの概数をつかんでおられましたら教えていただきたいと思います。
  34. 内村良英

    政府委員内村良英君) 中国に拿捕された件数でございますが、昭和二十五年に船体が五、乗組員が五十四人、それから二十六年に船体が五十五、乗組員が六百七十一人、昭和二十七年に四十六隻五百四十四人、二十八年に二十四隻三百十一人、二十九年に二十八隻三百二十九人、民間協定が発足しました三十年が一隻十人になっております。その後、長崎国旗事件で民間協定が中断された時期がございます。その昭和三十三年には二十隻二百四十五人、三十五年に一隻十二人拿捕されておりまして、三十八年からまた民間協定が復活しております。その後拿捕された事件といたしましては、四十年に一隻九人というのがございます。  以上でございます。
  35. 田英夫

    田英夫君 いまのお答えで明白なとおり、日中間民間協定ができる以前は非常に多かった。これは朝鮮に比べて出漁漁船の数も問題にならないくらい多いわけでありますから当然ですけれども、非常に多かった。民間協定ができてほとんどなくなって、そしてまた、長崎の国旗事件で協定が無効になったときにふえている。これが復活して、民間協定が復活してまたほとんどない、一隻しかないという実績が示すとおり、民間協定締結することによって日本の漁民は安心してその地域操業ができるということはもう証明済みと思います。  そこで、政務次官に伺いたいのですが、松生丸事件という不幸な事件が起きたこの現在の状況の中で朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮との間に民間漁業協定締結すべきであるという声が起こっておりますし、現に社会党の赤松副委員長を団長とする代表団がことしの八月ですか九月ですか、朝鮮を訪問したときにこの問題が話し合われております。私も、つい二週間ほど前に参りましたときに、朝鮮側とこの問題について意見を交換してまいりましたが、政府としてはこの民間協定締結という問題についてどういうふうにお考えですか。
  36. 羽田野忠文

    政府委員羽田野忠文君) 北朝鮮との民間漁業協定締結という問題につきましては、これは単に安全操業の見地からだけでなくして、いろんな問題がございますので、慎重に検討したいということを考えております。しかし、わが国民間漁業団体が北朝鮮水域における安全操業というものを確立するために民間漁業協定を結びたいということでいろんな話を進めていかれるという場合に、政府としてはそれを妨害するというような考えは全く持っておりません。
  37. 田英夫

    田英夫君 実は、先ほど私が中国との問題で申し上げたように、過去において中国との間に民間漁業協定締結をされた当時の経緯を振り返って調べてみますと、もちろん民間協定でありますから政府が直接表に出られたという事実はありませんけれども政府側もきわめて熱心に民間協定締結のために働かれたと思います。また、たとえば高碕達之助さんが行かれたり、自民党の中国との話し合い一つのパイプになっておられた方々が行かれるというようなことを通じまして、民間協定締結というムードもつくられました。また、民間協定締結のための交渉をされた方々は、必ず政府と接触をした上で中国側と話し合っておられたことは事実だと思います。その熱意に比べて、なぜか北朝鮮との話し合いということについては、いままさに羽田野政務次官がお答えになった、言葉じりをとらえるわけじゃありませんが、邪魔はいたしませんというお答えにあらわれているような態度なんですね。これが私は大変不思議で仕方がないのですけれども、改めてその辺をどういうふうにお考えか、伺いたいと思います。
  38. 羽田野忠文

    政府委員羽田野忠文君) 北朝鮮わが国との地理的な関係また歴史的な関係、そしてわが国漁業者があの北朝鮮の沖合いで現実に漁業を行い、今後とも行わなきゃならないという関係は、これはもう厳たる事実でございますし、そういう事実行為がある以上、その漁業操業者が安全漁業をするという状態というものをつくり出すということはきわめて私は好ましいことだと思っております。ただ、これが政府が主導型でやるのかあるいは民間が主導型でやるのかという問題でございまして、これはあくまで民間漁業協定でございますので、やはり民間の意思、民間の動きというものを尊重し、その動きでやっていただくべきものであって、政府の方が先に出たりするような性格のものではないというふうに考えております。
  39. 田英夫

    田英夫君 それは当然だと思います。中国の場合も民間協定でありますから、当然そういうことで行われたわけでありますけれども、しかし、先ほど申し上げたように、陰では政府はきわめて熱心にその締結に協力をされたといいますか、ある意味では援助をされたと思います。それは当然のことであって、中国の場合の民間協定内容を見ましても、今回の政府間協定内容と基本的にはそんなに変わっていないものがすでに民間協定の形でできたということは、政府がこれに関与していなければ実は民間協定というものも締結できないはずであります。たとえば中国との場合でも、緊急避難の港というような問題になりますと、向こう側の港については中国民間というものはなくて政府でありますから、向こうが指定をする。そうすると、日本緊急避難港につきましての指定というのはこれは政府、特に水産庁なり海上保安庁なりという関係のところとの話し合いがなければ、民間の人がこの港にいざというときには逃げ込んでくださいということを言えるはずはないのでありますから、そういう意味政府との了解の接触、これがあったのは当然だと思います。これが民間協定というものだと思いますが、朝鮮の場合でもそういうことがあり得るのでありますから、そういうことからすれば、北朝鮮との間に民間協定締結しようということが実際に起こった場合に、政府はどういうふうに関与されるおつもりか。
  40. 羽田野忠文

    政府委員羽田野忠文君) これは民間でこういう漁業協定の必要性、どういう内容民間漁業協定締結するかという構想、相手方の話し合いというものが進んで、そしてその話し合いの段階、しかもその内容において政府が関与せなければならないこと、あるいは政府がそれについて意思決定をせなければならないこと、こういう問題が出てくればその時点において判断すべきことである。いまこういう問題が出てくればこうするということで、現在申し上げるべきことではないのじゃないかというふうに考えております。
  41. 田英夫

    田英夫君 それはすでに問題が起こっているわけなんです。松生丸事件という大変不幸な事件が起こっているんです。   〔委員長退席、理事増原恵吉君着席〕 そして領海侵犯であるかないかということで双方の意見が真っ向から違っている。私も、銃撃をして三人の人が亡くなるというその事実、これはまことに残念なことであり、そこまで過剰に警戒をされなくともいいじゃないか、こういう気持ちがすることは事実でありますが、問題は、ああいう事件をなくすことだと思うのです。早急になくさなくちゃいかぬわけですね。きょうもあの海域にやはり出ていると思います。だからその実態が、交渉が始まったら政府がどの程度関与したらいいかという問題じゃないと思うのですよ。  そこで水産庁に伺いたいのですが、現在北朝鮮沿岸海域操業をしている日本漁業者というのは大体どのくらいの数がどういうものをとっているか、先ほどの中国と同じような意味で伺いたい。
  42. 内村良英

    政府委員内村良英君) 北鮮の海域操業しております船は、フグはえなわが多いわけでございます。隻数にいたしますと、先ほど日中の関係の御質問に対して東海黄海漁業について申し上げましたように、東海黄海においてはえなわ漁業は五百二十隻出ておりますが、延べ五百隻ぐらいの船が操業しているというふうに思います。
  43. 田英夫

    田英夫君 フグはえなわ漁というのは、これはほとんどがいわゆる中小漁業者と思いますが、そう考えてよろしいですか。
  44. 内村良英

    政府委員内村良英君) 山口県を中心とし佐賀県、福岡県の中小漁業者というふうにお考えいただいていいと思います。
  45. 田英夫

    田英夫君 いまのお答えのとおり、山口、まさに安倍農林大臣の地元の人たちが多いわけなんですけれども、こういうのは勘ぐりかもしれませんけれども、なぜか、日中民間協定ができました当時に比べて、いま松生丸事件という不幸な事態が起こっているにもかかわらず、北朝鮮との間の民間漁業協定締結について熱意がない、盛り上がらない。この原因をいろいろ私なりに考えてみますと、一つは、さっきからこだわっているんですけれども中国の場合は大企業操業がかなりある、そして大きな組織として民間の組織ができてそれが交渉の中心になっている、政府も熱心にそれに支援をされた。ところが北朝鮮沿岸の場合は、フグはえなわという、まあ漁獲種類も限られているし、そしてそれが中小、むしろ小である、大きな共同の組織もできていない、こういうことがあるんではないかと思いますが、そういうことであってはならない。そんなことのために人の命が失われてはならないのであって、これは人の命が失われる問題は民間協定だけの問題ではありません、朝鮮側の問題にも問題はあるわけですけれども、そこのところはどうでしょう、そういうのは勘ぐりですか。
  46. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先ほどの数字の点でございますが、フグはえなわ自体は二百四十四隻でございますので、その船が出ているというふうにお考えいただいたらいいと思います。訂正いたします。  そこで、そういったフグはえなわ漁業というのは、どちらかと申しますと船も小さい、一番大きな船で百トンぐらいでございまして、大部分が三十トンから五十トンの船でございまして、非常にわが国漁業の中では中小漁業でございます。そこで、その海域に出漁している人々が全国黄海東海南シナ海沿岸出漁者協議会というものをつくっております。それのメンバーでございますが、これは西日本関係県の漁連の会長等がメンバーになっておりましてそのような協議会ができておるわけでございます。この協議会が中心になりまして、漁業の世界ではいろいろ今般の松生丸事件を、北鮮との民間協定をどうするかということを中心に協議していたわけでございますが、いろんな問題があるということも漁業者の人々も考えているようでございまして、なお慎重に検討中ではないか。直接政府に、やるからすぐ援助してくれというような接触はいまのところまだございません。
  47. 田英夫

    田英夫君 日本と韓国との間の漁業関係はどういう形になっておりますか、教えていただきたい。
  48. 内村良英

    政府委員内村良英君) 日本と韓国の間には日韓漁業協定がございまして、漁業上のいろいろな調整措置をとっております。  そこで、出漁隻数でございますけれども以西底びき、まき網等その共同規制水域操業しておりますし、さらに、西日本の零細な漁船千隻以上がその海域操業しているということで、率直に申しまして北鮮水域よりも韓国の沿岸水域操業がはるかに大きいというのが現実でございます。
  49. 田英夫

    田英夫君 大体こう輪郭が出てきたという気がするんですね。日中の場合は非常に大きい。そうなりますと、体制の違いを乗り越えて、民間協定を結ぶことに政府もきわめて熱心に推進をされた。その結果、不幸な拿捕事件というようなものはほとんどなくなった。そうして世界、特にアジアの情勢の変化の中で日中国交回復ということになっていったわけですけれども、今度は韓国の場合は、日本と韓国との、まあ自民党――政府関係でありますけれども、非常に密接であって、そして北朝鮮に比べて漁獲は非常に多い。当然のこととして、日韓漁業協定ができて詳細な取り決めが行われている、共同の操業区域もできている、こういう状態の中で二百数十隻、四十四隻と言われましたが、その人たちだけが取り残されて危険に身をさらしながら操業をしているという事実です。そういうものの背後に政治があっていいかどうかということですよ。ここのところを政府はお考えいただきたい。現に松生丸事件というものが起きて人の命が失われているときに、それでいいのか。いまも水産庁長官のお答えにあったように、その関係者はこぞっていま民間協定を結ぶ方向で協議を進めているときに、政府の熱意が足りないんじゃないだろうか。ここのところを伺いたいわけです。  むしろ私は、もう一つの勘ぐりを言えば、つまり、日本朝鮮との間の民間漁業協定を結ぶことに対してきわめて盛り上がらない、熱がないもう一つ原因は、韓国に対する不必要な配慮だと。ここでもまた朴政権に対する不必要な配慮が出てきている。金大中事件その他もう何度かここで申し上げましたけれども漁業の面に至ってもなお不当な配慮がある、こう言わざるを得ない。たとえば技術的に私のような素人が考えても、金日成主席が日本船なら撃たなかったと言った言葉の意味考えただけでも、それなら日本船であるという表示をはっきりするようにしたらいいじゃないか、こう考えるのがあたりまえじゃないですか。民間漁業協定を結ぶとなったら、一番先に素人でもそういうことを考えると思います。船腹に大きな日の丸をかくとか、何かそういう方法考えてもいいんじゃないですか。あるいは領海侵犯の問題について、北朝鮮の領海十二海里だそうでありますけれども双方の言い分違っている。これは突っ込んでいくとどういうことになりますか。自民党の中には北澤先生を小委員長にして、調査の委員会ができているそうでありますけれども、本当に突っ込んでいったらとんでもない結果がわかっていってしまうんじゃないかという気がいたします。しかし、そのことは余り私は触れたくありませんけれども、やっぱり領海侵犯だったという結果が出たときにどうなりますか。そのときになって、あわててふたをしてみても仕方がないのでありまして、要はそれよりもああいう事件が起きないようにすることじゃないですか。どうですか。民間協定結ぶとしたら、専門の皆さんがおられるのだから、どういう協定を結んだらああいう不幸な事件が起きないと思われますか、当然そういう指導があっていいと思いますけれども
  50. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先ほども御答弁申し上げましたけれども水産庁といたしましては九月の十九日に、これまでもそのような指導をしていたわけでございますが、一層そういった指導を強化するような指導通達を関係漁業者に出したわけでございます。  その中に、これまでもやっておりましたけれども、一層はっきりさせるために、ただいまお話のございました、できるだけ大きく鮮明な日の丸を船に用意すること、それから船体に日の丸を少なくとも直径六十センチ以上のものを表示して日本漁船であるということが明確に識別できるようにすること、それからブリッジを黄銅色に塗装すること、これは前から指導していたわけでございますが、それを一層励行してほしいという通達を出したわけでございます。その他、北鮮の領海につきましては、はっきり十二海里であるということはわかりませんけれども、十二海里の範囲内に立ち入らないように、さらに、あの辺の海域について日本側で持っております海図は戦前のものしかないわけでございます。その後どういうふうに変わっているかわかりませんので、若干アローアンスを見るようにとか、それから北鮮の警備艇が接近してきた場合にはよく信号等を把握いたしまして、向こうが停船命令をかけてきたときには、たとえ公海上であっても一応停船して極力摩擦を生じないようにしろとか、いろいろな指導をしておりますし、さらに、できれば集団的に操業いたしまして、その中でいろいろ指導する船をつくれとか、いろんなことをやっておるわけでございます。まあ私どもといたしましては、こういった措置が守られれば、必ずしも民間協定がなくても紛争は一応避けられるんじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  51. 田英夫

    田英夫君 私も先日北朝鮮に行って、向こうの人たちと話し合ったときに、この問題当然対象にいたしました。赤松代表団のときにも出たわけでありますけれども中国の場合もそうでありますけれども朝鮮も社会主義国でありますから、民間協定の場合でも、向こうから出てくるのはつまり政府漁業関係者ということになるわけです。したがって、向こうは日本政府の保証がある民間協定でなければならない、こういう表現をしているわけでありますけれども、この日本政府の保証というのをどういうふうに受け取っておられますか。このことはもう御存じと思います、当然。
  52. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 北朝鮮の当局の方で民間協定を結んだ場合に、日本政府の保証が必要であるという趣旨のことを言われているということは、私ども新聞報道等を通じまして承知いたしております。ただ、北朝鮮側が言っている政府の保証というのは一体具体的に何を考えているのか、そういう点について詳細を承知いたしておりませんので、コメントは差し控えたいと存じております。
  53. 田英夫

    田英夫君 そこのところがはっきりしないと、実は民間協定を結ぶことすらできないおそれがあるわけですよ、向こうがそう言っている以上。ですから、政府に熱意があれば、当然その問題についてお調べになる方法はあるわけです。そういうことすらなさらない。この辺に政府民間協定を結ぶことに対して、中国の場合に比べてきわめて熱意がないということがあらわれていると言われても仕方がないじゃないですか。赤松さんが行かれたのはたしか九月でしたか、もうずいぶんだっているんですね。しかし、政府からこの問題について聞かれたこともない。私も帰ってきてから二週間たちますけれども、私が話し合ってきたということを想像されることは当然だろうと思いますけれども、どんな話があったかということを非公式にもお聞きになろうともしない。まあこういう公の席ですから、私は北朝鮮側が言っている言葉をここで一つ一つ政府に申し上げる立場にありませんから、この場で申し上げることは控えますけれども政府の保証ということを言うのがむしろ当然だと思いますよ。そればさっき言いましたように、民間漁業者が行って緊急避難の港を名前をあげて、それは一体政府が了承しているのですかと、こう向こうが聞くのはあたりまえですから、北朝鮮の場合は、向こうの船が日本のそばまで来て緊急避難せざるを得ないということはほとんどないかもしれません。しかし、中国の場合でも、結果的には向こうのはほとんどなくてこっちがあったという実績でも、なおかつ一応相互的に緊急避難の港は指定したわけですから、北朝鮮の場合でもそういうことが起こり得るでしょう。その場合に、山口県やなんかの漁業代表が行ってそういう話をしても、それは政府はいいですかと、こういうことになるのはあたりまえじゃないですか。それが政府の保証じゃないですか。ですから民間漁業代表が行くときには、そういう意味の話しは水産庁なり外務省なりあるいは海上保安庁なりとしていかなければ話にならぬわけですよ。当然そのときには政府は何らかのお答えをなさざるを得ない。まあわれわれの計画では、三月ないし四月にはそうした漁業代表の方に行っていただこうということも考えているわけですけれども、これは一つの警告として、いまのような状態では再び松生丸事件のような不幸な事件が起きても、それは政府の熱意の不足であると言われても仕方がない、こういうことを申し上げて、時間が来たから質問を終わります。
  54. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それではまず第一に、民間漁業協定の期限が十二月二十二日と聞いております。もしそれまでに日中漁業協定についてわが国の国会が承認をしなかった場合はどういう支障が出るのか、簡単に御説明を願いたい。
  55. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 二十二日に御承知のように民間協定が切れることとなっているわけでございまして、   〔理事増原恵吉君退席、委員長着席〕 それまでにこの政府間協定が発効できないということになりますと、日中間漁業というものは、民間協定もなく政府間協定もないという、いわゆる無協定状態になるわけでございます。しかし、私ども政府といたしましては、こういうような無協定の事態が生ずるということは好ましくございませんので、この協定が二十二日前に発効するように、国会の速やかな御承認をお願いしている次第でございまして、万一御質問のような事態が生じました場合には、民間協定の取り扱いの問題も含めまして、善後策について、また中国側と改めて協議する必要があるわけでございますけれども、そのような事態は政府といたしましてはぜひとも避けたいというふうに考えているわけでございます。
  56. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この協定関係するわが国漁業関係者は、主として西日本と聞いておりますが、どの県にわたっているのか。漁船数あるいは人員、漁獲高、これはどの程度ですか。これも簡単に御説明ください。
  57. 内村良英

    政府委員内村良英君) 主な県は長崎県、福岡県、山口県、佐賀県、島根県でございます。  船の隻数を申し上げますと、長崎県が以西底びきが二百六十四隻、まき網が四十五統、その他の漁船が百三十二隻。福岡県が以西底びきが百五十隻、まき網が四統、その他が十七隻。山口県が以西底びきが九十六隻、まき網が十一統、その他の漁船が四百三隻。佐賀県がまき網が五統、その他が四十三隻、島根県は以西、まき網はございませんで、その他の漁船が三十二隻というふうになっております。その他の県は合計で以西底びきが六隻、まき網が二統、その他が百七十隻と、こういう数字になっておりまして、長崎、福岡、山口が非常に大きな関係県でございます。
  58. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 全部合わせて漁獲高は年間どれくらいでございますか。わが国の全漁獲高のうちの何%ぐらいを占めているのか。
  59. 内村良英

    政府委員内村良英君) 四十九年の数字で申しますと、漁獲量は六十六万二千トンでございます。わが国漁獲高は約一千万トンでございますから、六・六%弱ということになっております。
  60. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 漁業関係者はこの協定内容に満足しているのかどうか。交渉中において特に業界が要望していたところはどこか。そのうち協定内容に入らなかったものはあるのかどうか。
  61. 内村良英

    政府委員内村良英君) 民間協定が約二十年の歴史を有しておりますので、交渉が始まります前に関係漁業者から要望があった点は、とにかく民間協定によって二十年間安定的な漁業ができている、したがって、協定内容民間協定を大幅に変更するものであっては困るということを関係の業界の要望として出されていたわけでございます。そこで、私どももそういった現実というものは尊重せざるを得ませんので、それを頭に置きながら交渉をいたしました結果、ほぼ民間協定と同じような内容協定、その後の資源状態の変化等によりまして若干規制が強化された面もございますけれども、また規制が多少は緩和と申しますか、ややわが方に有利になったような点もございまして、関係漁業者としては、本協定に大体満足しているというふうに私ども思っておりますし、したがって、早期発効を非常に強く望んでいるわけでございます。
  62. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 タイショウエビ関係についてはややきつい内容である、こういうことをちょっと聞いたのですけれども、これはどういうことなんですか。
  63. 内村良英

    政府委員内村良英君) これは休漁区というものが民間協定の場合にもあったわけでございますけれども、休漁区の規制措置が大体民間協定のときと、まあ期間が多少違っておりますけれども、同じでございまして、タイショウエビの漁獲にそれほど大きな影響を与えるものとは思っておりません。ただ、タイショウエビは年によって非常に資源状態が違いまして、昨年は非常によかったわけでございますが、ただいままでのところ、ことしは余りよくないというようなことを聞いておりますけれども、そう大きく今度の協定によってタイショウエビの漁獲影響があるというふうには考えておりません。
  64. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ちょっとこの協定を見ますと、いわゆる機船底びき網漁業まき網漁業ですか、これについてのいろいろ制限があるようですけれども、いまのお話では、その他の船もかなりたくさんあるようですけれど、その他の船というのは大体どういう制限を受けるようになるのですか。
  65. 内村良英

    政府委員内村良英君) 直接規制対象になりますのは、ただいまお話のございましたように、以西底びき網漁業及びまき網漁業対象になります。その他の、はえなわその他につきましては規制はございません。ただ、この協定で決まっておりますいわゆる軍事警戒ラインの中につきましては、資源上の理由でその他の漁業も入れないというようなこともございますし、機船底びき禁止海域の以西の水域では機船底びき、まき網ができないということがありますが、その他の漁業につきましては、特段のいわゆる休漁区とかあるいはその他の規制はないわけでございます。
  66. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうしますと、結局いま申しましたような以西底びきあるいはまき網以外は、この第一条1に(1)(2)(3)という線がありますね、この線の――もちろんこれは日本政府合意はしてない点もあるわけですけれども、一応その範囲内で漁業をするということで、それ以外の制限はない、こう考えていいわけですね。
  67. 内村良英

    政府委員内村良英君) その他の漁業については特段の規制はないわけであります。
  68. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 外務省にお伺いしますが、これが国会で承認された後、発効までの手続はどうなりますか。
  69. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 国会の御承認を得られますれば、直ちに発効をするための手続、すなわち、この協定の第八条でございますか、それぞれの国の国内法上の手続を終わりましたという通知をお互いに交換するということによってその日に発効することになっております。したがいまして、日本側といたしましては、国会の御承認を得次第、中国側とそのような通告の交換をいたしたい、このように考えているわけでございます。
  70. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうしますと、中国の方も、相手のあることですけれども日本政府が、たとえばあすの本会議で採決をした場合、発効するのはいつになるんですか。その間もうすぐできるんですか。
  71. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 先ほども田先生の御質問の際にお答えしましたように、中国側は実際上国内法上の手続を了しておりまして、いつでも先ほど申した通告の交換をする用意があるというふうに申し越しておりますので、日本側もその通告の準備も大体整っているようでございますので、時を移さず発効させたい。いつというふうにはなかなか申し上げられませんけれども、おっしゃいますように、明日本会議で御承認をいただいて、国会の御承認を得たという御承認手続が完了するということになりますれば、二十二日の民間協定の切れる前には発効させることができる、このように考えております。
  72. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 第一条の1に、「次に規定する黄海東海水域(領海部分を除く。)とする。」と、この「領海部分を除く。」というのはどういうことなのか。中国側の領海を指すのか、日本側の領海を指すのか、簡単に……。
  73. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 中国日本両方含めまして、特に中国日本と限定しているわけでもございません。すなわち、一般国際法上領海と考えられるところは除いている、すなわち、公海部分のみを対象としているのだということを明らかにしたものでございます。
  74. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 現実にはしかし、中国の領海はこの範囲の中には入っていないわけですから、実際の面から考えれば、この「領海部分を除く。」ということが適用されるのはわが国の領海だけである、こう判断していいわけですか。
  75. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 実際問題としてということでございますが、わが国は、先ほども先生が御質問の中に言われましたように、軍事警戒ラインというものでございますとか、ないしは機船底びき網漁業禁止ラインと称せられます線は、中国国内法上の一方的な線として日本側は認めていないわけでございまして、たてまえの問題としては、両方の領海に適用があるというふうに考えている次第でございます。
  76. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この第一条の2に、「この協定のいかなる規定も、海洋に関する管轄権についての両締約国のそれぞれの立場を害するものとみなしてはならない。」と、ちょっとわかりにくいのですが、これは簡単に言ってどういうことなんですか。
  77. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 確かに「海洋に関する管轄権」という言葉は、若干耳なれない言葉でございます。一般の漁業条約におきましては、締約国の領海の範囲が漁業管轄権に直接関連する事柄を規定することが多いものですから、このような条約が当該締約国、条約の締約国の領海の範囲でございますとか、ないしは漁業管轄権に関する立場を害するものでないというようなことを念のために規定するのが通例でございます。この協定の第一条の2につきましても同じ趣旨で規定したものでございまして、ただ、今回の交渉の過程で、領海の範囲でございますとか、あるいは漁業管轄権についてだけではなく、念のためにこれらの問題に関してより広く一般的な規定を設けたいというような趣旨の提案が中国側にございましたので、「海洋に関する管轄権」という非常に一般的な表現でこれに応じたという次第でございます。したがって、「海洋に関する管轄権」と申しましても、主として領海の範囲及び漁業管轄権の問題を指すものでございまして、従来の日本締結しております漁業協定における同様の趣旨と変わりがあるものではございません。
  78. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 第二条では、「附属書Iに規定する措置をとる。」ことが義務づけられているわけでありますが、機船底びき網漁業は六百馬力以上のものは馬力規制線より西に入ってはならぬ、これはたしか両国の船が規制されると聞いておるわけでありますが、大体日本の場合また中国の場合は、この規制を受けるのは何隻中何隻か。
  79. 内村良英

    政府委員内村良英君) 日中漁業協定の調印時におきまして、六百馬力を超える許可船は二そうびきで八十四隻、一そうびきで四隻、計八十八隻であったわけでございますが、このうち大部分の船につきましては機関換装によりまして六百馬力以下にすることができるわけでございまして、十一月一日現在では六百馬力規制措置によって影響を受ける許可船は十三隻、二そうびきが二隻、一そうびきが四隻となっております。なお、中国側でございますが、中国漁船の現状については必ずしも詳細がわかっておりません。向こうがデータを出してまいりませんのでわかっておりませんが、隻数は余りないのではないかというふうに考えております。
  80. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから保護区における隻数制限等はわが国漁業に支障はないのかどうか、これは民間協定のときと内容は同じなのかどうか、簡単に。
  81. 内村良英

    政府委員内村良英君) 以西底びき網漁業におきましては、三つの保護区について隻数制限が設けられたわけでございますが、従来の操業隻数等の漁業の実態から見て、わが国漁業に支障は生じないものというふうに考えております。これらの三つの保護区の設定は、民間協定で設けておりました保護措置にほほ同じでございますから、その意味からも余り影響はないわけでございます。  一方、機船のまき網漁業でございますが、民間協定のときには操業可能な区域が二分され、それぞれに隻数制限があったわけでございますが、今回の政府協定では、この二つの区域を合体いたしまして一つ区域として隻数制限を定めたものでございます。この措置は、まき網漁業の実態から見て、民間協定内容よりもわが国まき網漁業操業上有利になったものというふうに考えております。
  82. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 第三条では、協定を誠実に遵守するという責任を定めておるわけでありますが、わが国はどういう方法協定を守らせるのか。
  83. 内村良英

    政府委員内村良英君) 水産庁といたしましては、本協定資源保護措置が遵守されるように、すでに漁業法に基づく所要の規制措置の準備を完了しております。本協定の発効と同時に施行したいと思っております。さらに、具体的な取り締まりでございますが、これにつきましても、監視船の増強をすでに補正予算で御承認をいただいておりますので、隻数を増強すると同時に、本協定の遵守については関係業界を十分指導したいというふうに考えております。
  84. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この点はやはり日本政府としても、わが国漁船が十分協定を誠実に守るようによく指導してほしい、このことを要望しておきます。  それから、日中漁業共同委員会はいつつくるのか、どういう人物を任命するのか、任命はどこがするのか、御説明願いたい。
  85. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) この共同委員会につきましては、日中漁業協定が発効しましたならば、適当な時期に中国側と話し合って、この構成等について、あるいは会議の開催等につき話し合いに入りたいと考えております。  なお、共同委員会日本側委員三名の構成につきましては、日ソ漁業委員会等の先例を参考として決めたいと考えておりますが、人選については、黄海東海における漁業問題及び日中問題に精通して、日中漁業共同委員会の委員としての任務遂行の能力がある人を、慎重考慮の上任命したいと考えております。また、これらの委員は、日中両国それぞれの政府が任命することとなっております。
  86. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、先ほど田委員からも質問のありましたわが国と北朝鮮との漁業協定の問題でございますが、非常に業界としても余り熱意がないんではないか、こういうような意見もちょっと聞いておるわけでありますが、この北朝鮮との漁業協定締結するということについての業界の考え、あるいは水産庁考えはどうなのか。
  87. 内村良英

    政府委員内村良英君) 北朝鮮との民間漁業協定につきましては、あの海域の出漁者協議会というものがございまして、これは主として漁連の関係者、出漁している漁業者がつくっている協議会でございますが、正確には全国黄海東海南シナ海沿岸出漁者協議会という協議会が、これは四十九年にできております。その協議会が中心になっていろいろ検討しているように聞いておりますが、今日までのところ、水産庁に対して直接的な接触はございません。  なお、私ども業界の方々からいろいろ話を伺うチャンスがあるわけでございますけれども、やはり水産業界としては、単に北朝鮮との関係だけじゃなくて、全般の黄海東海における漁業のことを考えながら考えなきゃならぬというようなことを言っております。なお、詳細はいまだ正式な接触がございませんのでわかりません。水産庁といたしましては、これはまあ人道上の問題も絡んでおるわけでございますから、二度と松生丸事件のようなことが起こらないようにいろいろ業界を指導しております。私どもといたしましては、私どもの指導を業界が忠実に守れば再び松生丸事件のような事件を繰り返すということは避けられるというふうに思っておりますけれども、なお、民間がそのような動きをいたしました場合に、政府としてこれを妨げるようなことは全くございません。
  88. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま接触がないと言ったのは、水産庁とこういう出漁協議会との間に接触がないということなんですか。
  89. 内村良英

    政府委員内村良英君) そのとおりでございます。
  90. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは私が聞いている範囲では、たとえば日本と北朝鮮の間にそういう民間漁業協定のようなものを結ぶと、結局ある面ではいろいろな制限を受ける。そうすると、いまの方が自由に制限を受けないで漁ができて、多少の危険はあるけれども、まあその方がうまみがあるといいますか、こういうようなニュアンスであるように聞いておるわけですけれども、こういう問題について担当の水産庁が非常に接触がないというのはどういうことなんですか。水産庁というのはあらゆる漁業関係者とは接触を持って、やっぱり彼らの意見も聞き、要望も聞き、また指導していくのがぼくは水産庁の務めじゃないかと思うんですがね。何となくこの問題は余り政府は深入りしないでよきにはからえというような、こういう感じがするんですが、その点どうなんですか、業界の希望というものは。
  91. 内村良英

    政府委員内村良英君) 接触がないと申しましたのは、民間協定を結ぶからひとつ政府もよろしく援助をしてほしいというような、いわゆる公式の申し出がないという意味でございます。もちろん水産庁でございますから、関係水産業界の方方とは接触する機会が多いわけでございまして、ただいま先生のおっしゃったような意見、あるいは何といっても北鮮と韓国というものを比べた場合に、わが国漁業操業海域は韓国の沿岸の方がはるかに多いとか、いろんな意見は私どもの耳に入ってまいります。しかし、関係の団体から民間協定をひとつやるからよろしく頼むというような意味の接触は全くまだ受けておりません。
  92. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、業界としても現実に魚をとって、よりたくさんの収入を上げていかにゃいけない、そういう現実の問題はあると思うんですけれども、まあしかし、もっと大きな立場から考えていけば、やはり北朝鮮とも願わくはきちっとした漁業協定を結んで、そして資源の保護という大きな立場においてお互いにやはり自粛せにゃいかぬ点もあると思いますし、そういう点で外務省にしても水産庁にいたしましても、まあこれは業界がその気がないのに無理やり進めるわけにはいかぬかもしれぬけれども、しかし、いまお話がありましたように、彼らが民間漁業協定を結ぶようになれば妨害はしないというような、そういうことではなしに、彼らがもっと大きな立場に立って、北朝鮮とも民間漁業協定を結んでいくように、そういう方向にぼくは指導をすべきではないか、これは長官と羽田野次官の意見を聞いておきたいと思います。
  93. 羽田野忠文

    政府委員羽田野忠文君) これもあくまで民間漁業協定でございますので、第一義的には民間漁業団体の主体制というものを尊重していかなきゃならぬと思います。民間漁業団体の方でそういうことを希望し、そういう作業が相当進んでいくというような状況でございますれば、その状況に従って政府としてもそれに対応していくという考え方でございます。
  94. 内村良英

    政府委員内村良英君) 水産庁といたしましても、いま外務政務次官から御答弁もございましたように、民間と十分接触しながら現実的に対処しなきゃならない、かように考えております。
  95. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 だから私がいま言ったのは、将来のビジョンというか、やはりわが国としては願わくは北朝鮮とも漁業協定が結べる方向に、そのためにはやはり業界がもっと組織化されていくということもあるでしょう、あるいは韓国との間の刺激のないような、そういう処置もとらなくてはならぬでしょう。そういうことも全部せずにやれというんじゃないわけで、そういうことを一つ一つ解決をしながら、将来の方向としてはやはり民間漁業協定、さらには、これはもうその次には国交も正常化して当然政府間の漁業協定が結べるような、そういう方向に進むのがあたりまえであって、何もいますぐやれとは言わぬけれども、そういう方向に努力をしていくという姿勢はなければいけないんじゃないか、それは別に異存はないでしょう。文句ありますか、僕の意見に対して。
  96. 羽田野忠文

    政府委員羽田野忠文君) 先生おっしゃるように、これは時間的な経過はいまおっしゃったとおりでありますが、そういうような方向に進むことはきわめて望ましいことだと思っております。
  97. 内村良英

    政府委員内村良英君) 私も、これは人道問題等も場合によっては関係してくる問題でございますから、そういったことを十分念頭に置いて、わが国漁業者の利益を守るために最善を尽くさなきゃならぬと常々思っておりますので、そういった精神で現実的に対処したいと思います。
  98. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、ちょっと十二海里の問題についてお尋ねしておきたいわけでありますが、今日までの当委員会における外務大臣の答弁等では、いわゆる海洋法会議の結論が出るまではわが国は十二海里宣言を待つという答弁であったわけでありますが、最近の他の委員会、あるいは漁業関係者との会見等においては、いままでの姿勢を改めて、もっと早く、海洋法会議の結論が出るまでに十二海里の宣言をするという方向に転換をしたように理解をしているわけでありますが、それでいいのかどうか。簡単に、イエスかノーでいいわけだ。
  99. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 従来の政府の立場といたしましては、海洋法会議の結論が出るまではひとつ待ってみようということが主たる考えでございまして、そのような観点からこの問題を検討いたしてきたわけでございますけれども、どうも海洋法会議において合意が早急に成立するかどうか、必ずしも明白でない。片やまた、関係の沿岸漁民の利益が十分に保護される必要があるという現状にかんがみまして、海洋法会議の結論を待たずに領海十二海里ということができるかどうかということをただいま検討中であるということでございまして、方針の変更というふうにはっきりと申し上げられるほどの方針の変更ではないんでございますけれども、しかし、そういうことが可能かどうかということを検討しているという段階でございます。
  100. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 なるほど、そうすると十二海里の宣言を海洋法会議の結論を待つ前に、そのように決めることができるかどうかということを検討を開始した、そういうことで十二海里を宣言することを決めたのじゃない、検討を決めたのだと……。
  101. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) そのとおりでございます。
  102. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 さきの海洋法会議の最後に、アメラシンゲ議長が一方的措置をとらないよう要請をした。いままで外務大臣はアメラシンゲの最後の.この要請によって、海洋法会議の結論出るまでやらないのだ、こういう話だったわけですけど、私の知る限りでは、深海底の探査とか、あるいは開発などの海底資源を先進国が先取りすることを慎めという意味であって、十二海里宣言するのを待ってくれという意味ではない。私はそういう意味では、外務大臣の当委員会における発言は訂正すべきではないか。もし、外務省当局としてそれに異論があるならば、アメラシンゲ議長の海洋法会議の最後のステートメントを資料として提出してもらいたい、これどうですか。
  103. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 御指摘のように、アメラシンゲ議長のステートメントとして会議の議事録に残るような形でやったものといたしましては、深海海底の、何といいますか、宣言をするようなことを一方的にすべきではないというふうに言っているわけでございまして、これは開発途上国グループの要望がございましてそのようなアピールと申しますか、議長のステートメントという形で議長が行ったわけでございまして、その主眼が確かに深海海底資源開発にあったことは十分推察されるわけでございますけれども、一般的に各国が一方的措置をとらないようにアピールしたものというふうに受けとめられております。  かたがた、今月の十二日-先週の金曜日でございますが、国連総会におきましても、次回の会期を明年三月からニューヨークで開催することを決定する決議が採択されたわけでございますが、その際にも、やはりアメラシンゲ議長から一方的措置を自制しろというアピール、これはジュネーブ会議で行った、先生のいま言及なさったアピールでございますが、それを引用しながら、再び一方的な措置を自制してほしいということを繰り返して述べますとともに、海洋に関する一方的な管轄権の拡張はその理由がいかに必要やむを得ないものであろうとも、他国による同じような行動を招くこととなるか、あるいはそのような同じような行動をとる口実を他国に与えることになるのだということで、一般的に発言をしているわけでございまして、従来の外務大臣の御答弁もそのような趣旨から申し上げているわけでございまして、単に議長のステートメントだけを取り上げたものではないというふうに了解していただきとうございます。
  104. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは、議長のさきの海洋法会議の最後のステートメント、いまお話のありました、先般の国連総会でのその演説、これは資料として、別に大したものではないけれども、一応決着つける意味で、後で提出をしてもらいたい。これはいいですか。まあなければ仕方がない。
  105. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) ジュネーブ会期における議長のステートメントのテキスト、これは差し上げることができると思います。ただいま私が申し上げました先週の十二日におけるアメラシンゲ議長の発言、これはまだテキストが到達しておりませんので、来てから差し上げたいというふうに思っております。
  106. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それではもう時間がございませんので、この点はまた後日に譲りたいと思いますが、ちょっとお伺いしておきたいのは、この十二海里移行に伴い、国内の関係法の整備とか新たな立法、こういうものはどういうものが必要であるのか、どういうものが関係しているのか、それを簡単に説明してもらいたい。
  107. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) まさに先生の御質問の点にはっきりとお答え申すことができない現状でございまして、ただいま、どのような国内法手続が必要であるかどうか、果たして必要なのかどうか、そこの点を検討している最中でございまして、まだ関係省庁との協議におきましてそのような結論に到達しておりません。そのような状況でございます。
  108. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わが国が十二海里宣言をした場合に、国際的にはどういう反響を予想しているのか、これも検討中ですか。
  109. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 海洋法会議で二百海里の問題でございますとか、それから国際海峡の新たな制度というようなものとの一括の交渉の過程におきまして、領海十二海里ということも新たな国際法として採用しようという話になっているわけでございますので、日本が、やはりただいまの時点におきまして十二海里領海というものを宣言いたしましたといたしますれば、そのような海洋法会議における順調な各国の協力というものの足並みを乱すというような反響はあるかと思います。ただ、国際法的に申しますれば、確立した慣習国際法としては領海三海里であるということではございますけれども、現在、領海十二海里を採用している国も五十数カ国にわたっている現状にかんがみまして、日本が領海十二海里にしたということについて、各国から国際法上の違反であるというような非難を招くような反響は出ないであろう、そのように考えております。
  110. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 軍事的な問題は別として、漁業の点から見て水産庁長官どうなんですか。わが国が十二海里にした場合、一番関係あるのはソ連じゃないかと思うのですが、ソ連の漁業関係者、ソ連政府の感触はどうなんですか。余り問題なく、これはわが国が決めればソ連に相談することもないかもしれぬけれども、外交というものはそういうものじゃなくて、できるだけ円満にやった方がいい。その点の感触はどうなのか。
  111. 内村良英

    政府委員内村良英君) 漁業関係者の間から十二海里の領海宣言をしてほしいという要望が非常に強く出ていることは、やはり最近の日本の近海におけるソ連漁船操業が契機になっているということは確実でございまして、その意味でソ連と一番密接な関連があるということは漁業上は言えるわけでございます。  そこで、わが国が十二海里の領海宣言をやった場合に、ソ連の出方がどうなるかということについては、これは非常にお答えしにくい問題でございますが、ただ、ソ連はもうすでに領海十二海里ということになっておりますので、自分たちの方は十二海里で、日本が十二海里をやった場合に、それについていろいろなクレームをつけてくるということはまず余りないのではないかと思われますけれども、ソ連のことでございますから、確信を持っていろいろ御答弁できる問題ではございません。
  112. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは最後に、これからの問題は聞いてもなかなかお答えがしにくいようでございますので、さきの海洋法会議においては、いわゆる国際海峡をどうするかという問題がかなり論議されたと聞いておるわけであります。米ソは自由通航権が認められることが新海洋法条約の成立の絶対の条件である。それに対して海峡国側は、非常に開発途上国の一般的支持を背景に強硬姿勢と聞いておるわけでありますが、わが国は、この海洋法会議においては国際海峡の問題についてどういう主張をしてきたのか、また、今後海洋法会議ではどういう結論になりそうなのか、これは外務省としてどういう予測を立てておるのか。最近は、非常に国連においてもなかなかアメリカの言うことも通らないような状態になってきておりますので、そのあたりをどのように予想しているのか、これを伺いたい。
  113. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 先生も御承知のように、海峡の自由な通航ということについて海洋法会議で議論が行われているわけでございますが、先進海運国といたしましては、やはりアメリカ、ソ連と同様の立場で自由な通航というものを主張しており、海峡沿岸国、どちらかと言えば発展開発途上国はそれに対して少し異論があるという状況であるわけでございます。日本の立場といたしましては、やはり日本は世界有数の海運国であるという立場から、一般領海よりはより自由な進航というものが望ましいという立場をとっているわけでございます。  今後の見通しということでございますが、なかなか見通しを申し上げるのは、いまむずかしい問題になっておりまして、私からはっきりと断定的に申し上げることはできませんけれども、一応ジュネーブ会期の最後にできました単一草案という、これも各国の議論がそこに合意してでき上がった草案ではございませんが、一応たたき台として、この次の会期への足がかりとして単一草案というものがつくられたわけですが、その単一草案では、一定の航路分離帯というようなものを設定してそこに自由な通航を認めようというような趣旨の規定になっておりまして、今後このような単一草案の考え方を中心にしてさらに議論が続けられていくのではないかというふうに見ております。  ただ、海洋法会議におきます米ソの自由通航に対する立場というのは非常に強いものでございますので、海洋法を成立させるという前提に立って考えますれば、やはり米ソ並びに主要海運国の考えているより自由な通航制度というものが認められるであろうということが私ども考えているところでございます。
  114. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に一言、もう時間が参りましたのでこれで終わりますが、やはり一つの問題は非核三原則をどうするかということです。こういうことがあるわけでありますが、どうも外務省はっきりしないようですけれども、しかし、私はやはり海峡の問題は国際会議でもいろいろ決められてくると思うんですけれどもわが国の世界で初の被爆国であるという立場、そういうことも考えて、わが国の領海についての核の通過もこれは断じて認めない、この主張はやはり世界に対するわが国の独自の宣言として、外務省としても断じてそれは守ってもらわなくては困る。このことは、また後日論議をしていかなければいかぬ問題だと思いますけれども、そのことを要望いたしまして質問を終わります。
  115. 立木洋

    ○立木洋君 日中漁業協定交渉が長引いたという点については、話を聞いて大体内容についてはわかっているわけですが、一般的に言って、公海上で一定の水域にラインを引いてその水域へ入ることを禁止するというふうなことは、これは好ましいことではないというふうに私も考えるわけですが、それに対して政府がどういう措置をとったかということもお聞きしておるわけですけれども中国が軍事警戒ラインを引いた経緯、それをどういうふうに考え、その事実をどういうふうに判断されておるのか、その辺について説明してください。
  116. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 日中漁業協定交渉の過程におきまして、中国側がわが方に説明したところによれば、この軍事警戒ラインというものは、一九五一年に中国の国防上の安全のために設けられた線であって、この線を越えて西側水域に入る外国の船は中国関係当局の許可を要する、許可なしには入ることができない、こういう規定を定めたという説明でございます。  なお、この軍事警戒ラインの規制というものは、第三国については、外国については、いずれの国についても等しく適用されるものである、かような説明がございました。  交渉過程において、わが方からさらに詳細な関係規定等の提出を求めたのでありますが、中国側は、これは中国の国防にかかわる事項であるということで、先ほど申し上げました以上の詳しい説明は先方は避けていたのが実情でございます。
  117. 立木洋

    ○立木洋君 機船底びき網漁業の禁止区域というのがつくられて、そこに、先ほど来お話を伺っていますと、民間漁業協定当時から比べて後退したというふうな内容のものではないというふうなことはまあ大体わかったわけですが、参考としていただいた中には、台湾周辺水域の問題、作戦状態にあるというふうな問題から、この水域に入って操業するならば、それから生ずる結果については当該漁船みずからが責任を負うというふうに中国側が述べている。宮澤外相のあれによりますと、中国側の「立場を認めることはできないとの日本国政府の立場を留保する。」という書簡、そういう書簡が交換されているわけですが、事実上台湾水域でもし事故が起こった場合、これは物損であっても、あるいはこういうことは好ましいことではもちろんないわけですが、人命にかかわるような事態が起こった場合には、日本政府としてはそれに対してどういうふうな措置をするお考えなのか、その辺をお聞きしておきたいと思います。
  118. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 実際に事故が起こった場合でございまして、御質問の場合には恐らくこれは中華人民共和国政府側の作為または不作為、つまり何らかの責任を生ずるような事故が起こった場合だと思うわけでございますが、そのような場合には、やはり一般国際法上の不法行為による損害といたしまして、まず第一義的には民事的な損害賠償の問題が生ずると思いますが、もしそれが中国側の受け入れるところとならない、中国側がいかなる救済措置もしないということになりますれば、これは政府レベルにおける日中間交渉ということになると考えられます。したがって、そこにおいて友好的な決着がつけられるということになると思います。
  119. 立木洋

    ○立木洋君 こういう文書が交換されている以上、なかなか折衝してもむずかしいということがあり得るのではないかと思うのです。結論的には、そういう問題に対して日本政府としては、そういう損害を、いかなる事態で起こるかわかりませんけれども、受けた漁船等に対して何らかの救済措置を行うような考え方をお持ちなのかどうか、その辺は。
  120. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) ただいまのところ、そのような場合における日本漁船の損害に対して、政府が補償ないし補てんをするということは考えておりません。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 これは前々から問題になったのですが、ちょっと話を変えますけれども日ソ間で十月の二十三日に発効した沿岸漁業操業協定ですか、これが発効されてからすでに五十数日間たっておるわけですけれども、聞くところによると、大分ソ連漁船団による事故が起こっておるという話を聞いておるわけですが、今日までの間に被害件数はどれぐらいで、金額にしたら大体どれくらいの金額に相当する被害が起こっているのか、その点についてお答えいただきたい。
  122. 内村良英

    政府委員内村良英君) 十月二十三日に協定が発効したわけでございますが、協定発効後、十二月一日現在までに報告がございました事故は七十九件、千七百八十三万円でございます。なお、御参考までに昨年の同期の数字をとってみますと、百八件、八千四十五万円となっておりますので、額はかなり減ってきているということは言えると思います。件数ももちろん減ってきております。
  123. 立木洋

    ○立木洋君 今回起こっている被害というのは、大体どういう水域で起こっておるわけですか。十二海里以内なのか、あるいはどういう水域で起こっているのか、そのあたりはどうですか。
  124. 内村良英

    政府委員内村良英君) 十二海里の中のものもございますが、大部分が十二海里のあたりというふうにお考えいただいていいんじゃないかと思います。  それからなお海域でございますが、ほとんど北海道でございまして、三陸沖等はございません。
  125. 立木洋

    ○立木洋君 協定が発効して一定程度件数も減って、被害の金額も少なくなってはいるわけですけれども、漁民の方々にとってみれば、相当これによって被害がなくなるのではないかというふうに考えられておったけれども、実際にはやはり依然としてこういう事故が続いておる。こういう事故が続いておるという原因、どうしてこういうふうな事故が続いているのか、そういう点についてはどのように考えておられるでしょうか。
  126. 内村良英

    政府委員内村良英君) 協定ができまして、ただいま申しましたように、数は減っておりますけれども、事故が続いている、その原因は何であるかということでございますが、実際問題といたしまして一番大きい事牧は、わが方の刺し網がソ連船によって切られたという事故が一番事故のケースとしては多いわけでございます。これにつきましては、夜間灯火をつけるようにいろいろ補助金等も出しまして、わが方としても措置をとっておりますけれども、完全にまだ全部つけ切ってない。したがって、夜間のソ連の操業日本の網がひっかかるというようなケースがあるのではないか。それから、向こうの船はスタントローラーと申しまして、底びきでは非常に大きな二千トン、三千トンの船でございます。それが操業する場合に、どうも不注意でわが方の網に注意を払っていないというようなこともあって、向こうの不注意ということもあるんではないかというふうに考えております。
  127. 立木洋

    ○立木洋君 あの協定の中に書かれてあるように、漁具、漁船等には標識あるいは標識灯をつけるということになっているわけですが、お話を聞きますと、まだ全部つけ切っていないというふうなお話ですが、これはそんなにつけるのにやっぱり時間がかかるものでしょうか。向こう側の不注意も一方ではある、一方ではそういう標識等まだつけてないことで起こっていることもあり得るというふうに考えるとするならば、もっと急いで標識、標識灯をつけてこういう事態が起こらないようにする、そういう点ではもっと早急にそういう措置はすべきではないかと思うんですが、その点はどうなっておりましょう。
  128. 内村良英

    政府委員内村良英君) 水産庁といたしましては補助金等も出しまして、協定発効前から標識をつける、特に夜間の灯火をつけるということを指導してきているわけでございますけれども、残念ながら全部についているかと申しますと、まだついていないところがあるということでございます。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 どれくらいまだついていないんですか。
  130. 内村良英

    政府委員内村良英君) 海域によって若干違いますけれども、昨年非常に問題を起こしました襟裳の西の水域についてはかなりついております。ただ、襟裳の東の水域と申しますか、あの辺についてはまだついてないところがかなりあるという報告を受けております。  そこで、私どもといたしましては、すでに関係官を現地に派遣いたしまして指導したり、いろんなことをやっておりますけれども、至急体制が整備するようにしなければならぬ、これは協定でそういうことになっておるわけでございますから、それで指導しているところでございます。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 これはその点、標識、標識灯なんかについては、ひとつ早急につけるように積極的に指導していただいて、こういう事故が繰り返して起こらないように十分にやっていただきたいと思うわけですが、漁連の関係の方々のお話なんかを聞きますと、やはり何といっても領海十二海里宣言を行ってきちっとした規制がとれるような状態になるということが最も望ましいし、そうならない限り、先ほどのお話でも十二海里以内というのは少ないけれども、十二海里周辺が非常に多い、大多数であるというふうなことになれば、領海十二海里宣言ということがきわめて重要なことになるだろうというふうに思いますけれども、その点で、水産庁の方では積極的に外務省等にも意見を出して話し合いを、先ほど検討中だというふうに言われましたけれども、話は進めているわけですか。
  132. 内村良英

    政府委員内村良英君) 水産庁といたしましては、日本漁業者の立場から十二海里の領海宣言が一日も早くできることを希望しております。ただ、これ自体につきましては、単に漁業だけじゃなくて、その他の問題もいろいろございますので、政府部内においても検討しておりますし、私どもといたしましてもそれに参加させていただいているわけでございます。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 領海十二海里の問題については後でまたお尋ねすることにしまして、北海道での事故が非常に多いという問題と関連して、歯舞、色丹、国後、択捉周辺でいわゆるソ連に拿捕された事件、これがまた最近多くなってきておる。昨年十一月までには二十二隻だったのが、ことしに入って三十一隻と一・四倍にふえたというふうに件数がふえておりますし、さらには、不幸にして十一月十一日と同二十日ですか、それぞれ拿捕された船が、拿捕行為によって沈没して乗組員合わせて四人が死亡するというふうな事件が発生しておる。これはソ連が拿捕した行為によって沈没事故が四十四年八月以来六年ぶりであるというふうな事態になってきているわけですが、こういうふうになっておることは非常に重要なことだと思うんですけれども、最近の北方四島周辺で拿捕された件数と被害の状況、最近のデータがあればちょっとお知らせいただきたい。
  134. 内村良英

    政府委員内村良英君) 北方海域におけるソ連による拿捕漁船の件数でございますけれども、ちょっと四十八年から数字を申しますと、四十八年は二十五隻、乗組員が百八十六人、四十九年が漁船三十三隻、関係の乗組員が二百四十六人、本年は今日まで四十一隻、二百八十六人、確かに数がふえております。
  135. 立木洋

    ○立木洋君 この間の真盛丸というんですか、これの事故で外務省はソ連政府に詳細な事実関係の報告と生存者の即時釈放を要求したというふうな報道を聞いているわけですが、その結果はどういうふうになっているでしょうか。第十真盛丸の事件ですけれども
  136. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 先生御指摘の事件につきましては、わが方から、ソ連の通報を得てすぐソ連側に対して正確な事実の通報と、それからまだ生存している方、これの早期日本への返還ということを要求しております。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 まだその結果は来てないわけですか。
  138. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 事実関係につきましては、一応ソ連側からのとりあえずの説明はございました。重ねて私どもの方から詳細な事実関係を求めております。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 こういう拿捕行為によって沈没して漁民の方が亡くなるという、非常に不幸な事件なわけですが、先ほど水産庁長官のお話によれば、年々やはり拿捕件数、拿捕された人の数、ずっとふえてきているわけですが、こういうふうにふえている原因、どういう点にこういうふうにふえてきているのか、この原因などについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  140. 内村良英

    政府委員内村良英君) その原因がどうかという点は非常にデリケートな点でございますけれども漁業の面から見ておりますと、やはりあの辺の資源状態がかなり悪くなってきておるわけです。したがって、漁業者がどうしても領海ぎりぎりのあたりで操業することになるというようなことが、かなり件数がふえている原因ではないかと思いまして、そういった面から、従来どおり余り領海のそばには入らないように指導しておりますけれども、やはり漁師というのは魚をとるということで夢中になってやるケースが多いものでございますから、ときどき領海まで入ってしまうというふうなケースが最近起こっているわけでございます。
  141. 立木洋

    ○立木洋君 たとえば、漁業資源が減ったという点では、ウニなんかが非常に少なくなって、遠くまで足を伸ばさなければならないというふうな問題等、私も聞いておりますけれども、やっぱり漁獲を上げるために十二海里内に入ってしまって、いざソ連船が来たときにもう逃げ出せないというふうなことなんかも新聞で報道されておりますけれども、こういう問題については、あれはいつでしたか、三十八年でしたか、コンブ協定が結ばれてから比較的順調に操業がされるようになった、民間協定ですけれども。そういうふうな事例もあるわけですし、やはりこの北方四島周辺におけるいわゆるソ連側との十分な話し合いをして、操業が行えるような、そういうふうな話し合いを進めるという話も聞いているんですが、こういう点についてはどういうふうなんでしょうか、現状は。
  142. 内村良英

    政府委員内村良英君) 北方水域における安全操業の問題につきましては、先生御案内のように、日ソ間の大きな懸案として、すでに過去において何回か交渉が行われているわけでございます。その際、両者の意見が必ずしも合致しないということで、遺憾ながら今日まで結論を得るに至っていないわけでございます。
  143. 立木洋

    ○立木洋君 その内容をちょっと説明してくれませんか。
  144. 内村良英

    政府委員内村良英君) 一番最近のこの問題につきましては、四十八年十月、田中総理が訪ソされました際に、対象水域を四島周辺とすることにつきソ連側と合意を得ることに努められたわけでございますが、合意に達せず、双方の担当大臣間で引き続き協議するということになったわけでございます。さらにそれを受けまして、当時の櫻内農林大臣が訪ソされまして、対象水域について四島周辺にするという主張をされたわけでございますけれども、ソ連側はそれに同意しないということで結論を得るに至っていないという状況になっているわけでございます。その他、取り締まりの措置についての問題、あるいは何らかの対応措置漁船の寄港の問題等、細かい問題等もいろいろ意見の違いがございまして、今日まで合意を見ていないということになっておりますが、最大の問題は対象水域の問題というふうに存じております。
  145. 立木洋

    ○立木洋君 来年の一月にグロムイコ外相が来日するという報道があるわけですが、もしか来日するならば、その時点で外相間においても四島周辺における操業問題に関して当然話し合いを行ったらいいと私は思うのですが、その点について外務省の方としてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  146. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) ただいま水産庁長官から御説明がありました日ソ間の話し合いを受けまして、ことしの一月、宮澤大臣がモスコーに行かれた際にも、他の問題のほかに、北方水域における安全操業の問題をソ連側に促進方を促しておられます。そうした背景もございますし、一月にグロムイコ外務大臣が訪日するということになりました際には、この問題を重ねて取り上げたいという方向で、ただいま私どもの内部で検討しております。
  147. 立木洋

    ○立木洋君 この問題もやはり私は外務省の方としても非常に重視して、先ほど言われましたように、毎年そういう拿捕事件というのがふえているわけですし、そういう人命にかかわるような事態が起こったわけですから、この問題、そういう事態が再び起こらないようにソ連政府との間の話し合いを十分に行って、そして四島周辺における操業協定が実現できるように努力をしていただきたいということを要望しておきたいと思うのです。  それから、韓国との関係の問題ですが、去る十月の二十八日ですか、いわゆる韓国政府黄海に設けておる特定の水域での日本漁船操業をほぼ全面的に中止してほしいという申し入れがあった、外務省としてはその場で即座に拒否をされたというふうなことを聞いているわけですが、彼らが申し入れてきた主張の根拠、それからどういうふうな趣旨の申し入れがあったのか、それをどういう点で外務省としては拒否をしたのか、その辺の内容についてちょっと御説明をいただきたい。
  148. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 韓国政府は、漁業者操業と船舶の航海の安全を期するため自国の漁船に対して黄海及び日本海の一部海域を特定海域として、そこへの入域を制限する措置をとっております。  韓国側は十月十一日に、在韓日本大使館に対しまして、全く非公式に、この海域日本漁船が頻繁に入漁もしくは通航しているけれども、これを自粛するように行政指導を行ってもらえないかという趣旨の申し越しがありました。  この韓国側の要望に対しましては、十月二十八日に、わが方の在韓国大使館から、わが方としては、韓国側の事情は理解できなくはないけれども本件は公海の自由に関連する問題であって、特定海域において日韓漁業協定に基づく制約を受けることがあるほかは、この海域は通常の公海であるとの立場から対処せざるを得ず、一般的にわが国漁船の同海域への入域自粛を求める韓国側の要望には応じられないという趣旨の回答を行った次第でございます。
  149. 立木洋

    ○立木洋君 この時点の報道ですけれども、いわゆる韓国政府、韓国の国会で水産業法を改正する、そして内外漁船漁獲の制限や臨検を強化する方針をとるのではないかというふうな報道があったわけですが、韓国の国会ではこの水産業法というのが通ったのかどうなのか、それからそれの内容についてどういうふうな内容のものなのか、もしかわかっておられたら。業者の中では、今後ますます規制が強まってくる動きが出てくるのではないかというふうに心配する向きもあるので、その点について知っておられたら答えていただきたいと思います。
  150. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 韓国の中にそのような動きが一部にあるということは聞いておりますけれども、ただいままでのところ、具体的な措置がとられたということは承知いたしておりません。
  151. 内村良英

    政府委員内村良英君) その漁業法の改正は、現在韓国国会において審議中の模様でございます。そこで私どもが聞いているのでは、二十二日に韓国の国会が終わる。それまで審議が続く。現在提出されている法案の中には、直接的に外国船を排除するというふうな規定は含まれていないというふうに聞いておりますけれども、なお詳細は確認しておりません。
  152. 立木洋

    ○立木洋君 今後そういうふうな特定水域に基づくいわゆる入域を断ってくるというふうな事態については、やはり毅然とした態度で対処していただきたいと思いますし、それからこの問題との関連で、先ほど出ておりました日本朝鮮民主主義人民共和国の民間漁業協定の問題ですが、韓国のそういう規制が強まってくる、つまり北側とそういう漁業協定民間であっても結ぶというふうなことに政府が協力的な態度をとるならば、南からのいわゆるしっぺ返しといいますか、こういうことが出てくるのではないかということを考えて、北との関係民間漁業協定の促進を政府としては手控えるというふうなことはないわけですか。
  153. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) この点につきましては、先ほど政務次官からお答えがございましたように、やはり基本的にはわが国関係漁民の主体的な発意というものが基本になるというふうに考えておるわけでございまして、その点についてそういう具体的な動きがあって政府関係当局に接触が行われた場合にはそれについて検討する、これが政府の基本的な立場でございます。
  154. 立木洋

    ○立木洋君 ですからやはり日本漁業、漁民の利益、ひいては国民の利益になるわけですが、南北朝鮮が分断しておるという事態の中でそういう問題をかけひきの道具に使うというふうなことがないように、十分な利益が保障されるような態度をいずれの場合にもきちっととっていくということが私は必要ではないかというふうに考えるわけです。そういうふうなことにならないように今後ともやっていただきたいということだけを述べておきたいと思います。  あとの質問に関しては、午後、三木外相代理に直接行いたい内容なので、午前中はこれだけにしておきます。
  155. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) これにて休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ―――――・―――――    午後二時三十分再開
  156. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  午前に引き続き、日中漁業協定議題とし、質疑を行います。
  157. 戸叶武

    戸叶武君 日中漁業協定が上がれば、これで大体日中平和友好条約のほとんどすべての条件が具備したと思われるのであります。私は、この問題を最終的に論議するに当たって、いま日中平和友好条約並びに日ソ平和条約の締結というものが非常に予定よりもおくれておりますが、これは非常に政府として慎重な態度で取り組んでいるからだと思うのでありますが、この機会に、三木首相が宮澤外相代理として出席されたのを機会に、当面している外交の重要問題としての日中平和友好条約にかかわる覇権問題と、日ソ平和条約のやはり問題点の北方領土の返還の問題に対して、四、五点この機会に御質問することにいたします。  私は、覇権問題とこの北方領土の問題、これはいままでほとんど各面から検討され尽くされまして、国民的合意に近いものも定着しておると思うのであります。日中平和友好条約を結ぶに当たって政府はソ連にも気がねをし、また、日ソ平和条約を結ぶのに当たってソ連の主張というのにも一応耳を傾けているという態度で前進がおくれているのでありますが、日中平和友好条約の後に日ソ平和条約とは真っ向に取り組まなければならないのでありますから、まず、日中平和友好条約は年内にもこれは本来ならばまとめ上げるべき性質のものであります。それが今日のようにおくれておるのは、この覇権問題をめぐっての中国側の国家体制と日本の国家体制とは違う、そのニュアンスの違いもあるでしょうが、そういう点から、お互いに基本的な意見は相通ずるものがあっても、条文化する点において問題点が少し残っているような印象を一般に与えておりますが、問題は、もう三木首相が踏み切ればいいんじゃないかというふうな声すらも一般からかかっておりますが、その間の事情を、三木首相にひとつ承りたいと思います。
  158. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 戸叶さんの御指摘のように、われわれとしても日中平和友好条約はできるだけ速やかに締結をして、日中永遠の友好関係基礎を固めるべきであるという考え方で中国との間に交渉を続けておるわけです。ただしかし、まあ日中というものは歴史的に見ても不幸な時期もありましたけれども、非常にどの国とも比較にならぬぐらいの深い関係があるわけですから、どうかこの条約が子々孫々にわたる日中友好基礎を固めるような条約でなければならぬ、そのために両国が心から納得するような形で条約を結ぶことが必要である。そういうことで、御指摘になった覇権問題というのが、共同声明の中にある覇権の問題というものが、この問題を両国間でお互いに完全に理解し合っておることが必要である。そういう点で宮澤外相と喬外交部長と国連総会の機会に前後十時間も話をして、中国の立場も日本はよく理解をすることができた、日本の立場も、従来もそういう話し合った機会があったわけですが、外相レベルで話し合ったのは今回が初めてです。前後十時間ぐらいの時間を話し合って、日本考え方というものも中国に従来から伝えてありますが、一層時間をかけて説明をして、中国の理解も一段と深まったものだと私は思います。  それで、この覇権問題に対する日本の基本的な考え方は、覇権反対というものはわれわれも賛成でございます。しかし、その覇権反対というのが、単にアジア・太平洋地域のみならず、世界のどこにおいても覇権を確立するということは平和の原則に反する、だから一般的な平和原則であるということが一つ、また、あらかじめ第三国を予定して、そういうことを念頭に置いて覇権というものを考えるのではない。また、このことが日中両国が共同の何かのアクションをとることを意味するものではない。また、言うまでもないことですけれども、国連憲章の枠内のものである。こういうことが日本覇権というもの、覇権条項に対する基本的な考え方で、この考え方が両国の理解を得られるとするならば、私は日中平和友好条約締結に対して大きな支障があるとは思わない。  しかし、各国とも外交政策というものを持っておるわけですから、中国日本の外交政策が一致するわけではないわけです。そういう違ったいろんな国の条件のもとで、両方がこういう問題に対して理解をし合うということでないと、条約を締結してそのことがまたいろいろ問題を起こすということであっては、これはやはり両国友好関係基礎を、永遠の基礎を築きたいという趣旨にも反しますから、こういうことで中国側日本の言い分というものは、十時間もかけたんですから、よく説明をして、分析していると思いますよ、いま中国も。日本側も、やはり一段と中国の言い分に対して理解を深めるところがあって、そうして両方が相手の立場というものの理解が一段と深まったので、ここでやはり理解が一致すれば案外に早いと思います。  そういうことが現在の段階で、われわれはできるだけ早く締結をしたい。しかし、その締結するについては、これは短期間のものでないんですから、永遠の和解といいますか、永遠の友好関係の確立の基礎を築きたいということですから、両国が本当に理解し合うようなものにしたい、多少の時間がかかってもその方がこの条約の性質からして好ましいということで、今日、日中の平和友好条約締結はそういう段階にあるわけでございます。
  159. 戸叶武

    戸叶武君 覇権とは何ぞやという問題に対して、やはり日本側中国側との覇権問題をめぐる解釈においてニュアンスが若干違う点があるのは事実だと思います。いま三木首相から政府の立場を明確にお聞きすることができましたが、中国では、御承知のように、本年一月に発表された新憲法でも超大国の覇権主義に反対しなければならないという覇権反対を国是として打ち出しております。問題点は、日中平和友好条約にその覇権問題がどういうふうに取り扱われるかの問題と思いますが、周恩来首相の政府活動報告によると、「「米ソ両超大国の世界覇権の争奪」」「1両超大国の覇権反対 2日本など先進諸国を第二世界とし、これを味方につける 3革命的勢力としての第三世界を支援する」、これが中国外交の基本方針であるというふうに説明しております。これは革命の党としての中国の戦術、戦略までここにはにじみ出ているのがわかります。三木首相としては、いままでの外交上における平和条約のあり方というものは、高い次元の上に立って、そしていま三木首相が言われたように、国連憲章なり、また日本の平和憲法なり、そういう枠内において中立、自主、平和の外交を展開しなければならないという理念の上に立っているんだと思いますが、そこに同じような基本的には考え方が流れておっても、意欲の点において、また受けとめている感情の点において、そこにはギャップが若干あるのはやむを得ないと思いますが、この歩み寄りの問題ですが、十時間もかけて国連総会で日本中国外務大臣が話し合って、あるところまで真意を一あるところまでというよりは、より率直に腹を割って話し合ったんだから、立場は若干違う点があるが、お互いの立場を尊重するような相通ずるものがそこに若干日を置けば生まれてくるんじゃないか、ずいぶんしんぼう強い話ですが、その後どういうふうにそれが発展して具体化されてきたでしょうか。
  160. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私は、各国とも外交政策というものは一致するということはあり得ない、皆国益を踏まえてやっておるわけですから。しかし、お互いにその国の立場というものを理解し合うということは必要でしょう。日本の場合は、いま言われましたように、日本の外交政策、日本の憲法もありましょうし、国連憲章ということも国際的に言えばある。そういう枠内で考えますと、いま言ったようなことが日本のこの問題に対する政府の態度であるということは、戸叶さんお考えになってもっともだとお思いになると思いますから、こういうことで中国側においても日本の立場というものにいまいろいろ検討を加えておるわけでございましょう。  そういうことで、まだ両外交最高責任者の会談後の反響というものは出てないわけですが、これはもうその一点、いまの問題だけが相互に理解することができますならば、平和友好条約締結というものは案外に早く締結を見ることになるようになるのではないかと期待をするわけです。われわれも、この共同声明の中に入った覇権反対ということは、いささかもこれに対して日本考え方が後退したりはしていないのですから、覇権反対結構である、しかし、覇権というものに対する日本の立場からの考え方はこういう考え方であるということを申しておるわけでございますから、この点について日中間の理解は得られなければならぬと私ども考えておるわけでございます。
  161. 戸叶武

    戸叶武君 中国覇権反対を外交文書に打ち出したのは一九七二年二月の米中上海コミュニケ、続いて同じ年の九月二十九日の日中共同声明からでありますが、この歴史的な経過を踏まえて、そうして日中平和友好条約に成文化することを求めているのだと私は思いますが、米中上海コミュニケにおいても、また日中共同声明においても、覇権問題というのが堂々と取り扱われ、またそれをお互いに理解し合っているのに、どうして日中平和友好条約にその精神を発展して取り入れることをむずかしく考えているのだろうか、そういうところに中国側はややもすればかたくななところがあります。それは中国のいいところですが、ある意味においては欠点のところもあります。日本ではどうもすぐ変わりやすい、相手の顔を見て変わるような傾向の弱点がありますが、中国はやはり思い詰めた一貫した精神というものを持っておって、それをきょうだい同士だからわかるだろうという形で思い詰めるから、前には共産党と、きょうだいとでもあのようなけんかにもなったりしましたが、一九五九年の浅沼君のアメリカ帝国主義は日中共同の敵であるという声明も、よく冷静にあの演説の文を読めば何ら一向差し支えないことであり、特に野党の打ち出すあれとしては堂々たるものであるが、当時の一般は、日本の社会党がいつ共産党になったのか、中国共産党と同じ共同闘争でアメリカを敵とするのかという形でえらくびっくりして、そのときのしりぬぐいには私が一九六〇年の国慶節に安保条約阻止国民会議訪中代表団の団長として行きまして、日中共同声明を出すまでに三日間もほとんど寝ずにいろいろ意見を交わしたことがありますから、容易ならぬ苦労があると思いますけれども、今度の成田君の御苦労も察せられる面がありますが、政府となるとなかなかわれわれ野党の人とまた違った外交文書その他において慎重さを図らないと、という点があるので、幾らか慎重過ぎるような面もあると思いますが、問題点はどこに率直に言って三木さん、あると思いますか。
  162. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私は、共同声明というものを、田中前総理が行かれて日中間の国交正常化をした共同声明を後退するという意図が日本にあってはいけない、いささかも後退さすという意図があっては、これは共同声明によって日中の国交正常化が行われたんですから、そういうことがあってはいけない。しかし、何か覇権問題というものが世間で論じられて、国内においてもいろいろな論議を呼んだことから、何か中国側にも共同声明を後退さすんじゃないかというような、多少の誤解が生じたんではないかというような気もするのですが、それはいささかもないです。ただ、日本というものの、日本自身の外交政策というものの一つの原則がありますから、こういうものを踏まえて、日本覇権というものに対してこういう解釈をするということでありますから、それはもう覇権反対ということは日本も賛成ですから、とにかく強権によって他国に自分の意思を押しつけるようなことが平和に背くことは明らかですから、しかし、それに対しての、日本自身の外交政策から割り出された覇権に対する解釈というものは当然にあってしかるべきで、そのことが、日本の真意を中国側もよく宮澤外相との会談を通じていろいろ理解を深めたと思いますから、何とかこの問題は両国民が納得のするような形で、後へ何かいろいろ疑問の余地を残さないようにして早く平和友好条約締結したいものだ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  163. 戸叶武

    戸叶武君 覇権問題を条約に文章化する段階の取り扱いにおいて、日中共同声明の第六項と第七項が問題になっておりますが、第六項は相互不可侵、内政不干渉などの平和諸原則で、これは問題になっていない。  問題は、第七項が問題の覇権条項ですが、この覇権条項に対する中国側の喬冠華外相と日本の宮澤外相との十時間の話し合いにおいて、日本の見解を十分述べ尽くしたと宮澤さんの報告でしたが、それによると、第一に、覇権反対が特定の第三国に対するものではない。第二に、同条項によって日中両国が具体的な共同行動をするものでない。第三に、国連憲章の精神に反しない。第四に、国交正常化の際の日中共同声明では、アジア・太平洋地域覇権主義反対をうたっているが、覇権反対は特にこの地域に限らないはずだ。まあ先ほど三木さんが言ったとおりですが、という認識を述べている。  にもかかわらず、喬外相は、明快に宮澤外相の意のあるところがわかったという表現はしていないので、その後、あなたの方の小坂善太郎元外相が十月三日に北京の人民大会堂で鄧小平中国副首相と会談した折にも、鄧さんは、外交は小手先の技術でなく、政治家が政治的判断に立って行うべきだというような発言をしているところを見ても、もっと中国側の苦悩というものを理解して、日本は腹を割って一緒にこの条約を締結してくれていいんじゃないかという言外の意味がそこには含まれていると思うんです。  また、十月六日に日中友好協会代表団の団長の楚図南氏があなたに陳楚大使と一緒にお目にかかったときに、三木首相の答弁が、これは新聞によることですから、どういうふうな表現をされたかきょう改めて聞くんですが、三木さんは軽く、どうも雑音が多くて問題が横道にそれてしまったんですというふうなゆとりのある、ユーモア的な表現で答えたということですが、その雑音の実態は何ですか。
  164. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) この覇権問題というのは、いろいろと新聞紙上で取り上げられまして、雑音と言ったかどうか、いろいろな論議を呼んだという意味で言ったわけで、よく覚えておりませんけれども、いろんな意見がこの問題を中心にして起こって、そのことが何か日中平和友好条約というものに対して、非常に皆がこの問題を横道にそれるような危険もあるというようなことを私は言ったんだと思うんですが、どういう表現をしたのかちょっと……。
  165. 戸叶武

    戸叶武君 一国の総理大臣として、やっぱり低い声で言わなけりゃならないほどこれはむずかしい問題で、具体的に言うと当たりさわりがあるから、なかなか三木さん的なソフトな表現で雑音と片づけたんでしょうが、そのときに、孫平化君かだれかが、日本ではうるさいうるさいといわれている新幹線の騒音ですらも騒音対策が進んでいるということですがと言ってつぶやいたということですが、その後、雑音の方は私は具体的に当たりさわりがあるようですから追及しませんが、あるいは自民党内における台湾ロビー、コリアンロビー、あるいはソ連の横やりと、いろいろな形が取りざたされておりますが、いずれにしても、そういう騒音は大体少なくとも党内ではおさまったという認定にまで到達しているのでしょうか。
  166. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) これは大事な問題ですからね、自民党でも。自民党がこの問題に対していろいろいま論議を呼ぶようなことは、戸叶さんがごらんになっても何も出ておりませんし、宮澤外務大臣が喬冠華外務部長と話をして、そして両方が理解を深めるということに対して、自民党はこれに対して何も異存は聞いてないわけでございます。
  167. 戸叶武

    戸叶武君 私がこういう問題の質問をするのは、前の三木さんの姿勢だと私はこんなやぼな質問はしないのです。しかし、スト権ストの問題であっても、三木さんは大体各新聞の社説、われわれが考えているような線の良識で考えていたと思っても、やはり党ベースで問題を泥をかぶって言わなければならないというハムレット的な性格の面がありますので、私はやはり政治家の、三木さんのそれが長所であり欠点だと思いますが、たとえば解散の問題でも、明らかに解散権は内閣総理大臣にあるのだが、あなたは伝家の宝刀も全部取り上げられてしまって、党ベースでこれは締めつけられているのも事実であります。いわんや、外交権は政府にあるのですが、それすらも党の体質によって揺すぶられている。これは三木さんだけじゃないのです。アメリカのフォード大統領でもソビエトロシアの書記長でも、やはり自分と違うような意見でも、論文なんか出ると、それに一応同調したかのような形をしなければ、その背後における軍部なり何なりと摩擦を無用に生じちゃ大変だという形でこれは揺れているし、やっとフォードが大統領選挙を前にしてフォードベースの閣僚の立て直しをやったということにもなっておりますが、まだ三木さんはそこまでは力がついてないように思うんで、そこのところを心配して私は物を申したんですが、これ以上は追及しません。  そこで問題は、今度はソ連の方ですが、中ソ論争というものは、私は長い間これは追求してまいりましたが、ソ連に行ってもだれも中ソ論争の真相というものは、ミコヤンでもスースロフでも、あるいは前のフルシチョフのような放言居士でも話してくれなかった。やはりユーゴスラビアのチトーと、チトーの古戦場のバルカンの方の山岳地帯の彼の別邸に行ったときに、彼は簡単にそれは領土問題だと言っております。  私はこの領土問題というものは、ソ連はどうも簡単に考えているけど、取った方はさように考えていないが、取られた方はやっぱり自分の手を切られたり足を切られたような、本物の深刻な痛みというのが民族の中にしみ込んでいるので、領土問題というものをヤルタ協定――ヤルタ協定は明らかに戦時中の軍事秘密協定ですから、ルーズベルト、スターリン、チャーチル三者で、ヘスが舞台回しをしてやったと言われていることですが、ああいう領土の問題というものは次の平和条約には必ず暗礁に乗り上げるので、ベルサイユ講和会議のときには御承知のようにウッドロー・ウイルソンが、われわれは民主主義を守るために海を越えていままで他国に干渉しまいとしたモンロー主義的な考え方を持っていたが、青年を犠牲に供してヨーロッパの荒廃を救ったんだ。それなのに、一九一五年のロンドン秘密協定があるというので、イタリアに、北ア及びいまのユーゴスラビアの地域に近いあの地域がほしいからというので、それをやるようなことはできないといって拒否し、しかも、国祭法の新しい理念として、次の平和条約というものは戦争に勝った国が敗れた国をさいなむというのでなく、やはり勝った負けたでなく、次の平和を保障すべきょうな条件を具備していくことが平和条約の原則でなければならない。在来の国際法学者の古い観念から離脱する、脱皮はすでにベルサイユ体制のときから模索されたんです、現実はなかなかさようにはいかなかったけれども。  戦後三十年間、じっと日本国民は日本国民自身の責任じゃなく、軍部、官僚の責任ですけれども、国民を挙げて忍耐強く、ソ連みずからがやはり革命外交をレーニンが提唱した国なんだから、自分自身が率先してこの領土問題を解決して、日本が要求するというんじゃなくても解決してくれるものとわれわれは大きな期待を持っていた。それはやはり、アメリカでもソ連でも超大国といわれるゆえんのものは、戦争に勝った国ほど軍部が政治の背後における圧力となってなかなか政治家の思うとおりにいかないところに、今度フォードのような、あなたと同じような議会の子というような人が、ベテランがシュレジンジャーを罷免さしたのは、やはり中国日本と仲よくするばかりでなく、ソ連とも無用な摩擦を起こしては本当にこの緊張緩和の実績は上げられないという考え方を持って断行した人事の変更であって、キッシンジャーの陰謀とかだれかのあれだとか新聞で取りざたされるものよりはもっと深く、もう戦争や暴力革命によって世界を変えることはできないんだという理念の上に立ってやったことだと思うんです。三木さんはフォードさんよりもフランスの大統領に近いほどのグローバルな感覚を持っているお方なんで、フォードがやれたことを三木さんがやれないというんじゃ、これはほとほと三木さんは頼りないという形になりますが、私はやはり、各国の利害を代表して一国の総理大臣になっているんだから、共産主義国家と社会主義国家と資本主義国家とを問わず、その国の国民の合意を得ることなしには外交はなかなか前進できないと思うんですが、私は中国にも言うべきことは言い、ソ連にも言うべきことは――今度来るでしょうから、グロムイコさんもじっとしていられないので一月には来るようですが、率直に言って、もっと私は、大事をとるのもいいけれども、やはりイエス、ノーをはっきりしなければ、ああそう、じゃ通じない場合があるんです。これは天皇みたいな方なら別ですけれども、象徴ですから。やはりフォードが率直に言ったら、政治家というのはイエスかノーか、余りぼかしてしまってはわかんないところがあるので、三木さんはその辺の関係、タイミングを考えているんでしょうが、グロムイコさんでも来て、それから話し合った上でなければ日中平和友好条約締結までは前進できないというふうに配慮しているんでしょうか。
  168. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) まあ最初のことを少し、私の立場に同情的の発言がいろいろございましたけれども、私は雑音というのは、私の立場というもの、私らの物の考え方が必ずしも正直に伝わっていない、そういう点があるからちょっと申し上げておきたいと思います。  ストの問題のときでも、強かったのは私が強いんですよ、これは。それは戸叶さんも知られておるように、私はやはり日本の議会政治が形骸化されていくことを私の目で見ておる一人なんです。そういうことからして、ああいうストによって、大衆のストという、違法ストという圧力で、そして重大な問題がそれに回答する形で決められるということならば、もう議会政治というものは私は要らぬと思う、これはね。だから私は柔軟な、やっぱり政治は対話と協調と言うのも、政治は柔軟な姿勢が必要であると、こう考えている、私自身も。自分の信念に触れたときに、私はそれと妥協して三木内閣を続けさそうという意見を持ってないんですよ。あの問題はやっぱり私の信念に触れる。議会制民主主義というものを維持発展を図ってきたのが私の政治家としての歴史なんですから、それに反しますから、ああいうストを打って三木総理の決断だと言うことに対して私が妥協をするということは、これはもう議会政治の自殺行為です。そういう意味で、私自身はやっぱりああいう形で物が片づいていくというなら、議会政治というもの、議会の手続というものは要らないわけですから、重大な問題で、そういう点で私はそれに妥協しない、党よりも強かったかもしれぬ、この点は。私自身がやっぱり日本の議会政治というものを目で見た一人であるから。したがって、自分は何か条件づきでストを認めようと思っておったのに、党の圧力によって私が屈したということは全然ない。そういう私の信念まで曲げて私は三木内閣を維持しようとは思ってないんですから、そういうことでそれは一点。  それからもう一つは、戸叶さん……。
  169. 戸叶武

    戸叶武君 また、後で質問しますから。ストはストップでいいです。
  170. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) ストだけでいいですかな、何かあなた、いろいろ御同情ある発言があったんで答えておかなきゃならぬ。
  171. 戸叶武

    戸叶武君 後で質問しますから。  いま私はスト権の問題で論争には入るまいと思います。しかし、私も新聞記者出身ですが、新聞の社説を見ればわかりますように、三木さんに期待したのは、むずかしい問題だが、やはりストに入らないで問題を解決するだけのゆとりは労働組合も持っていたと思うんです。労働組合のリーダーは強硬論に走るのはやむを得ません。三木さんだけじゃなく野党のリーダーも見識をもって、ストに入らないでスト権を獲得し、スト権を獲得してもストを乱発しないで済むような対処の仕方をなすのが本当のステーツマンシップであるということを、私は社会党の中でも堂々と、除名されてもやはりこの問題は言うという形で努力しますと、私だけではない、多くの人が考えています。しかしながら、私はあなたが六先進国会議の一番理解者として西欧諸国に互して行きながら、ストライキ権を与えない日本のこの惨めさを考えてみたならば、民主的基盤を築かないところに民主主義の実りがあるというふうに錯覚するのは思い上がったエリート的な考え方です。そこが私は、三木さんというとかあっとくるんです。それは三木さんが一つのりっぱな三十六年の年輪を持っている。しかし、庶民の苦悩の中に入って庶民とともに悩めばああいう思い上がった考え方はできない。敵もない、味方もないという無念無想の気持ちを持たないで一国の総理大臣を務めている、裁判官のような冷たさが三木さんの怜悧さにつきまとっているところに私はいやな面がある。  たとえば、この前の国会においても、拡散防止条約の批准の問題で、私は真っ向から批准すべしという見解で、個人的見解ですが、外交防衛の会でも、外務部会でも、党内では、それでなければわれわれの外交はできない。政府に中立平和の外交をやれと言うのにも迫力がなくなるじゃないかと言っても、中央執行委員会決定というので、また無理押しすると、たびたび除名されてもみっともないからよしましたが、力の限り努力したら、やっと、頑冥不霊とむなしさを感ずるような党の体質の中でも、やっぱりアメリカを見てきたり、方々を見てくると、ちゃんと中央執行委員会で今度は批准の方に傾いたというふうにくるじゃありませんか。三木さんほどの執念の人、執拗さを持っている人がなぜもっと粘って、あれだけの、ストライキをやれば国民の反感を買う、そうすれば労働組合の連中の出鼻がくじける、こっちの選挙にはこれが有利だと、中曽根戦法は、巌流島におけるところの佐々木小次郎の強剣です。ああいうような武蔵に敗れたあの力の政治、巌流島の佐々木小次郎のようなやり方で政治をやるならば、そこには私は必ず不幸な激発が累積してくると思うんです。無用な対立が助長されてくるんです。対話というのは、対話をできるような雰囲気をつくったときでなければ対話はできないじゃないですか。  イギリスの、いやこれはぼくは三木さんだけに説教されちゃかなわないから、ああいうストライキの問題を出さなけりゃ食らいつかなかったんだけれども、本当に三木さんにむなしさを感じる。三木さんは、やはり国際的な水準からしていろいろな問題があるが、拡散防止条約の批准はやむを得ないだろうという、知性としては持っているんです。持っていながら自民党の青嵐会といったかな、何か、タカかトンビか知らぬが、そういうものにかみつかれちゃ大変だ、党内がおさまらぬ。そうなると、やっぱりこれは大事の前の小事だから、堪忍袋の緒を締めてって、何か神崎與五郎が馬方丑五郎にいじめられるような形で腰くだけになっちまう。だけど、勝ち負けもありますよ。それも現実政治だけど、やはり三木さんが特異な政治家なんだ、日本で。私は口で言うだけでなく、中道政治というのは右に揺れ左に揺れ、激浪に揺すぶられながら貫いていく精神というものがなけりゃだめなんじゃないか。  あのフランスにおけるドゴールは、政治家としてはあなたから見ればずっとマイナスです。しかしながら、ミスターフランスと言われるような、あの日本のいまよりもひどいように小党分立で、政治責任を持つ者がなく、政治家の中に祖国のためにリーダーシップをとり得るやつがない。泥をかぶるやつがない。死ぬのがいやなやつばっかりだというときに、死を覚悟して祖国の紊乱を何とか取りとめようというところに、ドゴールに、やはり私はルネ・キャピタンなりあるいはその他の知性人が集まって、フランスの議会主義の危機を救ったんだと思います。私は自分の恩師のハロルド・ラスキの「デモクラシーの危機」の名著よりも、あのルネ・キャピタンのフランスの現状を見つめての「議会政治の危機」の名著の方がはるかに打たれるのです。苦悩が深かったから。あなたが議会民主政治の危機を説きながらも、危機の中にどれだけあなたが傷つきながら後退だけしているだけであって、貫くものをそこにしない。しかも、それをスト権の問題を引用してやるなんていうのはもってのほかです。日本の今後におけるプロレタリア全体を敵としていけば、保守党はいわゆる一般中小企業なり一般サラリーマンというものの票もこっちに来るというような、そういう駆け引きと打算からすれば成功かもしれないが、そんないやしい気持ちで政治をやられているならば、あなたは日本のファシストよりもこわいです。三木内閣というおかしげな中間政治家が出て、哲学のない、歴史に対する見通しを持たない、前向きだと言いながらしり丸出しの政治家が存在したといういやな記録が後に残ると思うのです。三木さんのために私は惜しいと思うのです。  そういう意味において、私が押しつけるわけにいかない。しかし、私は中国に行っても、本当に人民大会堂で、日本の安保条約を結ぶ前に、日本を敵視してアメリカと日本が軍事条約を結ぶという想定のもとに中ソ友好同盟条約の軍事条項を受け入れているじゃないか。これを廃棄するというのを明文化さなければ、日中共同声明に私は調印しない。団長だから、ほかの人が言うことを聞かない場合でも、龍を描けばその目玉が調印しない以上は魂が入っていないじゃないかといって、私は野党の、一在野の政治家にすぎない。しかし、それをすらも中国で調印してくれた。一国の政権を握っていながらも中国の苦悩がどんなに深いものであるかはその一事を見てもわかるのであって、中国の立場に、あるいはベトナムの立場に置かれないで、長い間植民地主義的な残虐の体験の中からにじみ出た民族運動と日本の今日の民主主義を語るそれとは違うのです。  そういう点において、日本日本の立場を守るべきです。守るべきだけれど、満腔のやはり同情をもって中国の言うこと、立場にも理解を示せば、中国が言外の意味がわからないはずはないです。文章だけでなく言外の意味、「地下三千尺の水の心たれか知る」、これがわかるのは東洋の哲学じゃないですか。物を言うだけ、かっこうがいいところだけじゃなくて、憂いを共にするならばその琴線に触れないということはないのです。どうぞ三木さんは、いわゆる外務省の秀才がそろっているけれども、形式外交に堕さないで本当に魂の外交をやってもらいたい。  それと同時に、やはりソ連といえども敵視する必要はない。フォードがあれほどのあれでも、あなたと同じく議会政治家としての年輪に物を言わせて結構やっているじゃないですか。私はアメリカと日本とどっちが進んだ外交をやれるかの競争をやってみれば、アメリカだってだんだん三木さんの影響でよい方へ傾いてくるかもしれない。そうすると、三木さんはなかなか見切りがつけられない、やっぱり相当なものだというように私は出てくるんじゃないかと思うんだが、この半年、いまからだからことしじゅうにというのは無理だけど、この半年、一年が――あと二十五年たてば二十一世紀です。一九九九年になった後、ノートルダムの予言だと世界は滅びるということですが、私は楽観主義者だから二千年たてば天国か到来すると思っているんです。どうぞ三木さん、われわれを地獄へ落とさない方に傾いて、ハトだかとかタカだとか言いませんが、苦悩はわかりますけれども、どうぞ労働者を全部敵とするような考え方は中曽根さんあたりにまかせて、あなたはその方から足を洗って、もう少し話のわかる政治家になってもらいたい。それが日本を救う。対立激化の方向へ踏ん張っていくというならそれもいいでしょう。これはやむを得ない、やっぱり狂乱怒濤の中なんだから、そのときはあなたのような小舟はどこかに吹っ飛んでしまって、みじんも影形もなくなってしまいますよ。後に残るのは志だけです。そういう意味において、どうも三木さんに説教されちゃったもので、ずっとがまんしてきたんだけれど、やはり私ば、宮澤さんもいい人だし、感覚はあるし、そしてランブイエの会議だって、あなたの感覚というものはやはりフランスの大統領に負けないだけの感覚、わき役を務めたけれども、先を読んで、やはりいろいろの点において南北の調整、少なくともアジアにおけるところの中国で言う第三世界、発展途上国の人たちに先進国は責任を持たなきゃならない。大平さんとその辺はずいぶん違ったようですが、その意図はよくわかります。どうぞ、細い綱を渡るアクロバティックな軽わざ師にならないで、やはり一つの太い線を日本の外交の中に私はつくってもらいたい。あなたのデリカシーはわかるけれども、デリカシーだけでは物は決まらないんじゃないかと思いますが、そういう点で私は平沢君なんかも尊敬しています。しかし、その平沢君だってしょせん外交評論家で、大衆とともに苦悩しないから、国民的合意が得られないようなものをひょっと、何とかして、中国だけでなく、ソ連も敵視しないでうまくやっていくのにはこの辺だという、あれだけの侍があれだけの、三木さんの意を受けたわけじゃないが、三木さんの意を受けたような誤解を受けるような焦り方をやりますが、ソ連や中国と外交をやるときには息を長く吸って、粘り強くやって、その点じゃ三木さんなかなか達人ですからいいですが、もう少しはかどれるようにしてもらいたいと思うんですが、そういう点、まあ二、三点私最後にあなたから決意と御意見を承りたい。
  172. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) きょうはストの問題を言うわけではなかったんですけれども、ちょっと私の立場について、いろいろ戸叶さんの立場から観測され、事実と違っておったから私は言ったんで、私は何も一般の勤労者を敵にしてそういう政権がやっていける日本でないことはもう百も承知なんです。ただ一点、日本の議会制民主主義というものは維持したい。その一つのプリンシプルに触れた場合にだけ私は非常に強く、非常にかたくなになるのですよ、その原則というのに。そうでなければ、戸叶さんともいろいろ意見の一致するようなことも多いと思いますよ。しかし、その一点だけは、この原則というものを崩したならば、日本の政治体制というのは崩れてくるということ。前だって、日本の議会制民主主義が崩れたときというのは、最初はちょっとしたことであったんですが、そういうことになったわけですから、その点だけで、ほかのことは戸叶さんが御心配になるような、何か権力主義的な政治をやって、日本の国をそういう方向に引っ張っていこうという考え方はない。むしろそういう考え方に私は反対をする立場にあるわけですが、いまのストの問題については、そういう懸念があったから私は強く出たわけでございます。勤労者の生活の向上発展を図るということはこれから政治が目指さなければならぬことですから、これに対して反勤労者的な立場なんということを言われる政治ができるわけはないわけです。  いろいろお話しになったんですが、やはり戸叶さんの考え方ということで、どうか社会党の人たちにもあなたの考え方が全般に行き渡るようなことになっていただくと、非常に政党政治はやりやすい面が私はあると思う。戸叶さんの御健闘も願っておくわけでございます。  それから、日中の問題については日中の話ですから、グロムイコ外相が来たからといって私はソ連と日中の問題を話し合う考えはないんですよ。これはもう日中間の問題ですから、グロムイコ外相が一月に来られるであろうというような――まだ具体的には決まっておりませんが、それはやはりソ連の了解を得なければならぬ性質のものではない、日中間の問題であります。そういうふうに考えておるわけでございまして、日中の平和友好条約は、相当時間もかかって、両国の理解の上に立って締結ができるだけ早くできることをわれわれも望んでおるわけでございます。ことさらにこれをぐずぐずと延ばす意図など全然ないわけでございます。
  173. 戸叶武

    戸叶武君 私はもう議会政治の、あなたは議会の子になり私は議会の鬼になろうと考えております。私らは地位や何かを求めていないが、やはり十歳のときまで感化を受けた田中正造翁の精神というものが全身に焼きついております。九月五日に私は「湯川博士と田中正造翁の悲願」という文を朝日新聞の論壇に書きましたけれども、私は最高の知性人と見られる湯川さんでも田中正造翁でも、現実政治から飛躍するかもしれませんけれども、人が人を殺すような殺戮の修羅の世界をなくしなけりゃいけない。全世界の軍備を撤廃しなけりゃいけないという形で田中正造翁は最後に自分の道をたどったんで、一番自由民権のはしりの人です。尊王の志士として出流騒動の若いときに入った生き残りです。その伝統があってあれだけの抵抗の精神を示したんですが、いまは抵抗だけでなく、世界のユニティを図らなければならないときです。  私と三木さんの立場の違いで、三木さんに一つだけお願いするのは、庶民の憂い、やはり庶民とともに泥んこになってもがいていくその気持ち、もっとエリートの観念が強く見られる聖徳太子のただ一つの偉さというものは、維摩経の中における梵の哲学、凡人の哲学を学びとって、あれほどの賢人政治家であるが、彼自身はやはり普通一般の人と話し合って、そうして普通一般の人で話がそれで決まったらそれに従おうじゃないか。自分が必ずしも賢でなく、相手が愚でないんだということまで言って、自分をむちうって、当時における民主的な文化的な基盤のないところに基盤をつくり上げようと努力したが、むなしいかな、世間はこけだと言って嘆いて死んでいったと言うから、そのところだけをとって四十九か何かで死んだやつを、未完成な人間に思うかもしれないが、われわれはいま議会政治の中にいて火あぶりの刑に遭っているようです。こんな状態で、こんなばかな金がかかって、ずうずうしいやつだけがのさばって、まともなやつは政界に来っこない、こんなところで政治を論じていたらこっぱずかしい。帰りに私は円タクに乗るとみんな罵声を浴びせかけます。それを受けていかなくちゃならない。私は三木さんは、本当にイギリスの選挙見て帰ってきたとき、金のかからない選挙がよいと思っているのでなくて、戦後においては公営で、私のワイフなんか五万円でやってたです。それは十回以上、二十六年勤めましたけれども、もうああいうことはできません。とてもまともな人が政界に入れなくなったです。このことを考えて、小手先の細工だけでは私はいまの政治は救えない。三木さんがいかに神様になっても、何か強行採決した人を、若い酒屋の若だんなが、議会で、やはりあなたはキリストだなどと言うけれども、ユダよりもひどいキリストのような、十字架にかけられるよりもひどい目に遭ったと思いますが、ああいう言い論が、チンピラ言論が平気でされている国会で、ともに私は天下を語るかと思うと悲しくなる。それが体質からにじみ出てきているんですよ。これはあなた容易な仕事じゃありませんよ。内政において、外交において、もう少し私はだれか――私も沈黙をしばらく守ってたんで、国会で戸叶武と言わないで戸叶里子なんて呼ばれてまいったですが、やっぱり女房も、あなたいつまであんな情けないところで苦しんでいるんかと言って、早くあの世へなんて言って来ているかもしれませんが、全くこれは、「里子君慈母観音よ武我れ 多気志不動ぞたじろぎはせじ」、私は鬼になっていきます。どうぞそういう意味において、議会の子、もう少しひるまないでいってもらいたい。  これで私の質問は閉じます。
  174. 秦野章

    ○秦野章君 衆議院の外務委員会だったと思いますけれども宮澤外務大臣の答えで、総理が東南アの訪問をどう考えているのかということについては、ASEAN首脳会議の済んだ二月以後にというようなニュアンスの答弁があったわけでございますけれども、非常に大きな国際会議を経て、特にヨーロッパ首脳会談なんかで貿易拡大その他、三木さんの場合には南北問題の発言もおありになったようだし、組閣一年たって考えてみると、フォード大統領も北京の帰りに歴訪されましたね。それからゆうべの夕刊でしたか、豪州のフレーザーも組閣早々、日本とか中国を訪問するという記事も出ておりましたが、東南ア訪問について総理はどのようなめどでお考えになっておられますか。
  175. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私は、やはり日本アジア諸国というものとの間に常に緊密な連絡をとって相互の理解を深めていくことが必要である。今度の六カ国の首脳会議においても、従来、西欧の諸国ばかりの首脳会議であったわけですが、初めてアジアから加わったわけです。
  176. 秦野章

    ○秦野章君 ちょっとすみませんが、時間がないので端的に。みると、日本アジアというものに対して、将来もっともっとアジアとの結びつきを強化しなけりゃならぬ。そのためには、一度アジア各国を訪問をしたいという私は希望を持っておるんですが、御承知のように、国会がこういうふうな状態で、のべつ国会が開かれておるような状態ですから、国会の関係もございますから、まあ国会の一応終わったような場合でないと、いま国会中にアジア諸国を回るという日程は組めるわけのものでもございませんから、国会の審議が終わった後でないと実現をしないと思っております。
  177. 秦野章

    ○秦野章君 通常国会が終わった後という大体めどでございますか。
  178. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いまのところは、大分先のことになりますから、具体的な予定は組んでおりませんけれども、来年はやっぱりアジアの首脳部と会うような機会を持ちたいと、来年は。
  179. 秦野章

    ○秦野章君 いまお話しのようなことで、当然訪問されるというスケジュールが出てくると思うわけですけれども、二十一世紀は南北問題だというふうな御発言も総理にはございました。この間のヨーロッパ首脳会談でも御発言があったようでございますけれども、例のワシントンのプレスクラブの発言も、新ロメ協定のような発想で国際協力というもの、多国間の国際協力を進めにゃいかぬといったようなこともわれわれも聞いておるわけでございますが、一方国連のUNCTADの決議事項なんかを見ても、南北問題というのは、大きな流れでいけば援助から貿易へという方向に流れていくべきであるという提言もあるんですけれども、総理、きょう外務大臣兼務の立場でございますけれども日本にとって一体南北問題というのは具体的にどういうことをやっていくんだということでございますか。これを率直な具体的なところをひとつお聞きしたいと思います。
  180. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 日本アジアの一員の立場、地理的に見てそういう関係にあるわけですから、近隣諸国というものに対しては重視しなければならぬ。アジアばかりでもない、発展途上国というのはアフリカもあるし、中南米もあるわけですが、しかし、何としても日本アジアというものが地理的に見ても一番近い国々ですから、そういう国々の経済的な自立あるいは社会的な開発、そういうものをやっぱり日本が助けていく、あるいは技術、あるいは資金、あるいは貿易の拡大とか、そういうものを通じてその国が経済的に安定をしないと政治的な安定というのはなかなか達成できませんからね。そういう面で日本がそういう国々の経済的自立を助けていくということだと思います。
  181. 秦野章

    ○秦野章君 総論はよくわかりましたけれども、いままでもそういうことは何遍も繰り返されてきたわけです。そして日本政府間援助、まだ〇・三%にもいかぬようなことではありますけれども、とにかくそういった援助もやるし、民間経済協力というものもいろいろ問題はあるけれどもやってきたわけで、総論的なやってきたことに対するいまおっしゃるようなことじゃなくて、もっと具体的に何か新しい構想というものをお持ちなんでございますか。
  182. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) それはたとえばインドネシアでも、最近日本がアサハンダムなんかにも大きなナショナルプロジェクトとか、インドネシアとしても非常な将来に夢をつないでいるプロジェクトですからね。そういうふうなこれからやっぱりナショナルプロジェクトのようなものが出た場合に対して日本がそういう民間政府一体となって協力するという問題がいろいろな国に出てくると思うのです。  それから一つは、技術協力というような面はやはりこれから力を入れていかなきゃならぬ。従来もやっておるけれども、もう少しやっぱり技術協力。それからいま言われた貿易というものを日本が世界各国とも賛成であるというわけで、今後いろいろな国際会議を通じて具体化されてくるんでしょうけれども、貿易というものの、輸出所得が安定するような、ロメ協定のようなものをもっとグローバルな協定として、そして一次産品なんかの輸出が、所得を安定さすような仕組みということも必要でしょう。そういういろいろな、その国の経済的に安定していくような方向、あるいは世界的に開発が進んでいくような方面に対して、日本はいままで貿易という面から、日本の貿易拡大というものが非常に高度経済成長期には一番中心になっていたわけですけれども、これからはその国の立場に立って、その国の経済的発展を図るようなために、縁の下の力持ちのような気持ちで、その国の経済的な発展の基礎を築くということに日本がいろいろな面で、その国の事情によっていろいろ違うと思いますけれども、親身の世話をすることだと思います。
  183. 秦野章

    ○秦野章君 総理はどういうふうにお考えになりますか。私は南北問題について新しい何と言いますか、これから大いにやっていこうという新しい心意気をもって臨まれる場合に、一番大事なことは、技術もやりたい、いろんな開発もやりたいということもさることながら、基本的には日本の高度経済を支えてきた、いわば発展途上国の資源日本が買いあさったり、あるいはいわゆる経済進出の名においていろいろ不評を買った面があるんですよね。この傷跡を治すということが第一義的なものじゃなかろうか。このことを――南北問題を総理は御熱心のようだけれども、言うならば新しいスタートの前提条件とも言うべき認識を持って考えないといけないんじゃないかというふうに思うんですよ。  それで、まあ高度成長の裏側にあった一つの傷跡みたいなものというふうに私は申し上げましたけれども、これはそう言えばアジアだけでもないんですけれども、さしあたってアジアが手近でございますけれども、要するに、そういうしわ寄せが発展途上国にいっていることは事実です。そして世界を挙げて不況の嵐の中に立って、特に、たとえば一次産品なんかは田中内閣が歴訪したときには、おいつくれつくれ、おれが買ってやる、こういう方向で日本企業も政治も動いたことは事実でございます。しかし、いま不況の嵐の中で買ってやれないですよね。そして、つくれつくれと言ってつくらせたけれども買えないといったような状況が、一次産品の輸出への依存度の高い発展途上国においては大変な痛手になっているということも御存じだと思うんです。あのフィリピンにしてもインドネシアにしてもパプア、ニューギニアにしても、価格ベースでいくならば五〇%割ってるところがあるわけですよね。  しかし、これは日本に全然責任がないであろうか。石油ならバルブをひねれば出たり入ったり、たくさん出たり、締めたりすればあるんだけれども、こういう労働というものをそこに定着させて、労働中心にした仕事というものをやっていくような、そういう資源というものについて、いまのような状況になったことについて、一体はたして日本はけろっとして、そういうものは知らぬふりして新しい南北問題のスタートだ、新ロメ協定だのやれ商品協定だの言っても、私はそういった発展途上国は納得しないだろう、また信頼というものがつなげないだろう、信頼しないから不信の上乗せになっちゃうじゃないかという感じがしますので、この点については総理は一体どのように、その問題を何とかやっぱりある程度片をつける芽を出してからでないと、総理が東南アジアを歴訪されたって相手にされませんよ。私は、マルコス大統領が大変厳重な抗議を日本に申し込んでいるということも聞いたし、マレーシアもそうでございましょう。いろいろ文句が出ているわけですよ。苦しい事情はわかるけれども、われわれの苦しいときに日本アジアの親方だと言いながら何もやってくれないではないか、やっぱり白人の世界の人間かという見方をされておるということも、回ってきた人の話を聞けば全く事実です。この出発点において、私は政府企業任せであってはこれはなかなかできない。なぜならば、企業というのはやっぱりもうけるときはもうけるけれども、不況になって損をしたときにどうせいこうせいと言ったってできない。言うならば企業責任というものにはなかなか限界がある。そういう意味で、私はいままでと違った、ただ技術協力だ、やれプロジェクトの開発をやっていくんだというような線を拡大するということを、依然としてそういった問題をなおざりにして続けていくということについては大変問題があると思うのですが、この点について総理の御認識いかがですか。
  184. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) それはいままでの点は反発を買っているような例があったんで、田中前総理の行かれたときにああいう事件が起こったり、国内政治の問題もあったでしょう。だから、東南アジアに対しても日本経済協力、技術協力というものに対しては一つの反省期であると思います。従来のような日本の貿易の拡大というようなもので一それも必要ですけれども、相手国の立場に立って考えてあげるという態度、これは必要だと思いますね。そういうことがないと、日本は経済的に何か侵略してくるような感じを持たすような海外進出はいけませんからね。  そこで、やはり私は輸出の所得補償方式というようなものが必要だと考えるのは、アジアならアジアとしての一次産品の鉱産物なんかの、たとえばすずならすずという問題に対して、これはいま言ったように非常に国際価格が上がったり下がったりして不安定ですから、これに対して所得が安定するような、所得補償方式のようなものができるならば、一次産品の輸出というものは非常に安定しますからね。そういうものがやっぱり国際的な規模でできなければならぬ、各国ともこういうことに対しては皆その必要をランブイエの会議でも認め合って、これはいろんな国際的な場で具体化されていると思うんです。
  185. 秦野章

    ○秦野章君 どうも御答弁が、これからの価格協定的な発想なり、あるいは輸出所得をある程度補償するといったような方向での、それは結構だと思うのです。そういう多国間協力を進めていくというのは、まさにいまのパリの国際経済協力会議なんかの発想から必ず出てくるわけです。  それで、日本は一次産品についてはいわば議長の立場をとったという報道もあるわけでございますから、いよいよ責任が重いんだけれども、しかし、問題はこれからの問題と、スタートに当たって日本日本の責任というものをいま少し自覚をして、やっぱり問題を片づける方向に努力をしないと、どんな新しい発想をこれからやろうと言ったってうまくいかないと思うのですよ、信用していませんから。  そういう意味において、私はここでひとつ食糧の問題については、言うならば経済戦略物資的な扱いで備蓄をひとつ考えようという具体的な政府内の報道も起きてきたようでございます。石油についてはできましたね。それで日本は経済戦略的な物資、つまり経済戦略的な安全保障といいますか、軍事的な安全保障も結構だけれども、それにもまさって経済戦略的な安全保障的な角度を持って、特に経済戦略上の物資というものについては開発途上国の資源国とスムーズな関係というものを持っていかない限り、言うならば長期に立って見たときに日本は非常に不安定なんですよ、不安だと思うんですよ、いまは、きょうはいいけれども日本の政治なり外交なりというものは、どっちかと言ったら大変目先だけのことをやってきているから、やっぱり中長期の立場に立って見たときには大変不安定だ。たとえば開発途上国に資源がある、非鉄金属にしても、いまおっしゃったゴムやすずにしてもある、そういうものは安心して見ていられませんよね、ということもあり得るわけですよ。石油もそうだし、まあ資源カルテル的な傾向だって出てくるわけでございますから、そういう意味においては、私は一つは、要するに開発途上国の資源という問題、資源荒らしをやったことについての反省だけじゃだめですよ。反省したらいいといって、反省を具体化しなきゃだめだ。そういうことが一つと、いま一つは、日本が、戦略物資なんですから、これに対しては、買えるときには買うけれども、買いたくないときにも買ってやるというぐらいの恒久的な制度というか、方式というものを採用しない限り、戦略物資としての位置づけはできてないと思うんですね。だから、私は食糧問題について備蓄の問題をある程度考えるということはいいことだし、石油もある程度できた。ところが、石油と食糧だけであろうか、日本の産業経済を支える品物が幾つかあるはずだ。そういうものについては、この際開発途上国に対する一つの姿勢から言って、そして日本側は自由経済だから企業がやれといっても企業だけじゃできない。好況のときはできるかもしれぬが、好況のときはやらないですよ、企業というのは、金もうけるだけで。だからもうけたときには取り上げて、できないときには政府もバックアップをして、ストックの問題、蓄積の問題、あるいは輸銀の融資の問題、そういうものをこういう苦しいときに具体化をしていくという一歩を踏み出さないと、南北問題というものは私は片がつかないと思うんですよ。その点総理いかがですか。
  186. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) それは言われたように、やはり石油、食糧ばかりでないですね。いろいろ、たとえば銅の問題にしてもそうです。ある程度そういう物資に対しては日本も備蓄するということが考えられてしかるべきだと思いますね。何もかもというわけにはいかぬですけれども、重立ったものに対して、非常にやっぱりそれが向こうは売れなくて困っておるようなもの、日本は将来考えたらそういう物資が必要であるというようなものに対しては、この際やっぱりそれを日本がストックするというような、そういうことも伴わなければ、一次産品というような、こういう不況期においてはもうみんな困っておることは事実ですからね、急場の救済にはならぬと思う。
  187. 秦野章

    ○秦野章君 私は、経済戦略物資と言いましたけれども、アメリカの議会あたりでは、言うならば本当の戦略物資ですね、すずみたいなもの、これはまあ二十万トンぐらい蓄えているという話があるけれども日本ではやっぱり経済戦略的な備蓄といいますか、そういうものをある程度備えていくということが長期に立った場合には絶対必要だと思うんですけれども、そういった考え方、これを一つのセキュリティーという角度でにらむべきだと思うんですが、いかがですか。
  188. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 何もかもというわけにはいかぬけれども、ある物資に対してはそういう考え方というものはやっぱり日本のためにもなるでしょうし、ことに発展途上国の一つの所得の安定というものに対しても役立つ、やはりこれから取り上げていかなきゃならぬ政策の一つだということには、私もそう思います。
  189. 秦野章

    ○秦野章君 ロメ協定、新ロメ協定の方向というのも一つの国際協力の線、それもどうぞおやりになっていただいたらいいと思うんですけれども、しかし、いろいろ聞いてみると、やっぱりロメ協定も旧植民地とEC諸国みたいな関係があって、開発途上国一般がこれに賛成しているかどうかは、はなはだ疑問なんですよね。私はしかし、ロメ協定、商品協定、そういうものをある程度選択をしておやりになるということはいいんだけれども、重ねて私は最後に一つお願い――私の意見として、総理にどういうふうにお考えになるか。  私はね、南北問題の言うならばこの前提条件を整理しないと、新しい南北問題のいま申し上げたような国際的ないろんなルールを開発していこうとしてもうまくいかないだろうと、前提条件だと。いままで日本はちょっと悪いことしてきたんだ、それを片づけなきゃだめだ。それを反省とかなんとか精神論じゃなくて、具体的にやはりそうしないと、総理が東南アジアを歴訪したってこれ大して向こうは歓迎しないと思うんですよ。歓迎するどころじゃなくて、田中総理がジャカルタでひどい目に遭ったけれども、ああいうことになるおそれが私は多分にあると思うんで、この点を最後に申し上げて、総理のこういった日本の、つまり資源を持った言うならば開発途上国と、それからまた加工産業であるだけの先進国の日本との、資源問題の流通をもっとなだらかにしていくし、また日本が経済戦略的にこの問題を考えていくということについての、まあひとつ総理の最後の締めくくりの決意のほどを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  190. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私は、一番必要なことは相手国の立場に立って物を考えるということでしょう。いままでは自分の、高度経済成長期の拡大、貿易の拡大、生産の拡大ということでもそういった形で進出しとったわけです。そこにはいま御指摘のようないろんな弊害も起こってきておるわけですから、今後はだから一つ一つの国というものの立場に立って日本が、――国によったらまあどういう面で助けるかという助け方も違いますが、やはりその国というものの立場に立って日本が物を考える、それだけのやっぱり日本の雅量というものがないと、いままでのようにもう貿易を伸ばすということだけでは、いま言ったような反発が起ってくると思う。そういう点で、まあ一国一国の事情というものに対してもう少し親身になって考えることだと。また、いまそういう場合になってきたら日本がいろいろ重要物資を、いま要らなくても日本が買って、そしてそれを備蓄しておくというようなことも考えられていい物資もあるでしょうね。
  191. 黒柳明

    ○黒柳明君 日中間実務協定が実質的にこれでめどがつくわけですけれども政府の精力的な交渉にもかかわらず正常化以来三年、決して早いとは言えないと思いますね。まだその後にはいま論議がありました平和友好条約、全くペンディングになってる、暗礁に乗り上げてる、まあこういうことです。  そこで私、まず聞きたいのは、事務当局でいいですけれども、先般の日ソ漁業協定、これも三年前に補償がさかのぼるということで、国会での承認が急を要したわけであります。それから約一カ月を経ようとするわけですが、実際のこの漁業協定批准後今日まで、この調停委員会の設置、メンバーの決定、それから事件の処理ないしは現実にソ連漁船団が日本漁獲に対して妨害的なものを行っていないかどうか、現状、そこらについてひとつまず説明してください。
  192. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 去る十月二十三日に日ソ漁業操業協定が発効したわけでございますが、その後その協定に基づいて、この協定で決められました漁業損害賠償請求処理委員会が、日本側東京とソ連側モスコーと、この二カ所に設置される予定になっております。東京側のこの委員会の委員、それからモスコーにおける日本側の委員、それぞれ二名はすでに任命の手続を終えました。ソ連側の委員の任命をただいま待っておる段階でございます。したがいまして、こういう委員会の組織が整いますと、委員会の活動が始まるというのがただいまの状況でございます。  なお、漁業協定発効後の日ソ間の漁業の紛争あるいは事故という点につきましては、事実関係について水産庁の方から御説明させていただきたいと思います。
  193. 内村良英

    政府委員内村良英君) 十月二十三日に日ソ漁業協定が発効して以降の被害でございますが、七十九件、千七百八十三万円になっております。  なお、参考までに昨年同期、すなわち十月二十三日から十二月一日までの被害額を申し上げますと、昨年の場合には被害件数百八件、被害金額八千四十五万円となっておりますので、被害額自体は昨年に比べかなり減っておりますし、件数も約七割ぐらいに減少しておるわけでございます。
  194. 黒柳明

    ○黒柳明君 以降、協定承認の以降。
  195. 内村良英

    政府委員内村良英君) 協定承認以降でございます。十月二十三日に協定が発効いたしましたので、ただいま申し上げました数字協定発効以降の数字でございます。
  196. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはあれですか、水産庁でまとめて外務省の方の外交交渉――いまのその委員会に上がっているんですか。上がってないですね、当然、委員が決まってないから。総理、こういう現状を御存じですか。
  197. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いや、私はこういう点まで存じませんけれども
  198. 黒柳明

    ○黒柳明君 それでいい、まずそこまで。知らなきゃだめじゃないですか。この臨時国会延長になりましたでしょう、ここにいらっしゃる先生方は知っているんです、どれだけこれが三年前賠償、当然私たちはこれは反対の態度じゃありませんよ。政府の態度に問題があると言うんですよ。あの大幅延長、これについて問題があった――これはいいでしょう。その直前に参議院でわずか二、三十分の質疑承認、批准。いいですよ、問題なんですから。現にソ連船団にいじめられている漁業組合の人から陳情を受けました、われわれも。二十分だろうが一分だろうが結構です。その後の政府の処理、まあこれは日本は決めました、ソ連が決めてない、しょうがないじゃないですかでは済まされないでしょう。  さらにきょうは、外務大臣、これだけ重要な案件を抱えてどこかへ行っちゃっているんじゃないですか。行っていること自体私は悪いと言っていませんよ。当然です。日本外交が国際的にむしろもっともっと飛躍して、接触して、対話してもらいたい。結構です。だけれども予備段階、準備を一回、二回重ねて本会議に持ち込んだいまのパリでの会議ですよ、当然二十日までこれは臨時国会が延長して日中漁業協定が来るであろうぐらいのことはもう当然予測されているんでしょう。そうでしょう。そのときに外務大臣がいない、総理が出てきた。結構ですよ。しかし同じようにまたあわただしい、早くやってくれ、早くやってくれ。やりますよ。やるならばそれらしく政府が態度をはっきりしなさいよ。事後処理きちっとしなければどうしようもないじゃないですか。今日また紛争が続いているんじゃないですか。大量の漁業船団が三陸沖から千葉県沖、どうしようもないじゃないですか。それを処理するため、さらに三年にさかのぼって時効があるから早く、こういうことだったんでしょう。三年にさかのぼる、結構ですよ。しかしながら、現状において早くそれを処理することも必要じゃないですか、この協定批准のためには、日ソ漁業問題解決のためには。事後の処理、ソ連側だと、こういうことでしょうがないんだと、こうでしょう、どうです。  聞くところによると、その現場における事件を処理するための手続の書類すらもまだできているんだかできてないんだか。そういうことも、まあ総理大臣忙しいですからね、なかなか御存じないでしょう。しかしながら、こういう重要な問題を国会審議するならば、たばこ吸うことも結構、コーヒー飲むことも結構、ふん反り返って説明することも結構、真摯な態度でやらなければだめです。私は厳しい、そういうことには。いいですか。もっときちっと真摯な態度で、その中にやはり自分の政治に取り組むまじめさというものが出てくるのですよ。何にも知らないでなぜ臨むのですか。少なくとも説明を受けてきたか、こういうことの説明を。日ソ漁業協定締結後どういう問題がどこにどう潜在して、その事務処理がどういうふうに進んでいるか、説明を受けてきましたか。総理大臣、イエスか、ノーか。もう時間が限られているので、こんなこと初めから言いたくない。
  199. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 詳細に私自身が説明を受けたわけではないのですが、きょうは……。
  200. 黒柳明

    ○黒柳明君 説明受けてない、結構です。
  201. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) きょうはいろいろ……。
  202. 黒柳明

    ○黒柳明君 結構です。説明受けてこないですね。だめじゃないですか、そんな態度じゃ。
  203. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 日ソ間のいまの紛争についての詳細な説明は私は……。
  204. 黒柳明

    ○黒柳明君 受けてこない。だからだめじゃないですか。日中漁業協定だって、いまの国会での参議院の外務委員会でのやりとり、ここは結構ですよ、総理大臣が関知するところじゃない。そういう状況もやはり知ってもらわなければ困るのです。そして私が要望したいのは、どんどん上げますよ、取り組みますよ、精力的に、関係者のために、困っている人のために。政府の態度がその事後処理をきちっとやらなかったら、ここで精力的に取り組んで審議したってしようがないじゃないですか、ここの点なんです、総理大臣。ですから知らなかった、説明も聞かなかった。関係当局じゃ一生懸命やっているのだと思いますよ。しかし、現実においてきょうの朝刊の某新聞、読みましたか。この日ソ漁業協定後の一つ問題点、イエスかノーか、結構、それで。  長いのだよ、あなたの答弁。だからこれだけ、私も気が長い方ですけれども、イエスかノーかで。読みましたか、某新聞のこの問題。
  205. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いや、あの……。
  206. 黒柳明

    ○黒柳明君 読んでない、結構、ノー。  ぼくもちょっと気が長い方だけれどもね、総理大臣みたいに要らない答弁するからどうもぼくも短気になっちゃうのです。総理大臣の責任ですよ、これは。問題がまだある、現実において。そういう問題がありながら、また日中漁業協定早く上げろと、この政府の根幹の姿勢に私はもうちょっと考え直す点があるんじゃなかろうか、考え直してもらいたい。その政治の最高責任者である総理が、まずその点をひとつ勉強して、事情を聴取してもらって、打つべき手は打ってくださいよ。ソ連のメンバー出てこなかったら、幾らこちらで批准したって承認したって問題は解決して上がってこないじゃないですか。そうでしょう。民間レベルの相談だから政府関知しないというようなこと言えないじゃないですか、どうですか。ここでひとつ発言してください。
  207. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) それは勉強いたします。私もいろいろな問題すべて知っておるわけではないが、これは重大な問題でありますからよく勉強いたします。
  208. 黒柳明

    ○黒柳明君 すべて知っているわけじゃない、重要だなんて、そこが一言多いのですよ。すべて知っているわけじゃないから勉強しますというところで、戸叶先生のあの言葉がわかったかということになる。いまわかってないです。重要な問題だから勉強しなければだめじゃないですか。そういうことです。  そこで、私、先般の外務委員会でこの事件詳しくは論じられませんでしたけれども、総理も当然御存じのとおり、ソ連に外務大臣が抗議すると、こういう問題が全くペンディングになっているのです。これば現実の問題としたらやはり総理大臣、きちっと抗議の姿勢を示し、現実にやはり抗議しなければならないじゃないですか。外務大臣、まだやってないみたいですよ。どうですか。
  209. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 当然にそれは協定違反した事項は抗議すべきものですよ。
  210. 黒柳明

    ○黒柳明君 いま水産庁長官が七十九件、昨年より少ないです、少なくなってあたりまえ、ゼロになってあたりまえなんです。そうでしょう。それがあるということは現実に抗議しなければいけない。外務省まだ抗議してないでしょう。これ、イエスかノーか。してませんね。
  211. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 協定違反の事実関係につきましては、水産庁から御連絡受けて私どもがソ連側に申し出る。この委員会を通ずるという形になると思います。
  212. 内村良英

    政府委員内村良英君) 協定違反の事実につきましては当然抗議すべきでございます。現在まだ漁期中でございますので、その被害の実態を取りまとめて、しかるべくルートを通じて当然抗議しなければならないと思います。
  213. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうよ、総理大臣。水産庁だ、当然抗議すべきだ。だからぼくはこういうものを与野党一緒になって一生懸命やる、結構なの。だけれども政府が手をきちんと打たなければ何のための承認ですか、何のための政府ですか、意味ないじゃないですか、そんなことじゃ。水産庁が握っている。いや、水産庁が抗議するんだ、とんでもない。当然外務省がやる。それを総理大臣が勉強もしてこない。これだけの重要な案件を審議する。しかも、この立法の方は行政の方から早くやってくれ、早くやってくれと。やりますよ。行政の方が何にも手を打ってない。どうですか、総理大臣、この現状。これじゃ、日中漁業協定だって必ずしも何にもなくて国会の承認をするという案件じゃないですよ。問題があったからこそ三年もかかったんじゃないですか。さらにその問題がどうにも手がつかない。まあいいや、そっちの方はまた……。総理大臣どうですか、抗議してないのよ。外務大臣も抗議しますと言ったって、抗議してないじゃないですか。国会で答弁しただけで何にもやってない。総理大臣、すぐソ連の大使を呼んで、この問題については厳重に抗議しなさい。どうですか。
  214. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) これはやっぱり具体的な問題でございますから、協定違反は抗議すべき原則ですから、これに従って処置をとるように私からも厳重に申します。
  215. 黒柳明

    ○黒柳明君 それを外務大臣が言われたんです。やらなかったんです。なぜかならば、それを補佐する局長水産庁だなんということをおっしゃっているから。だからそれを、総理がここにいらっしゃったんだ。外務大臣代理なんて失礼な言葉ですよ。しょうがない、そういうルールですから。総理大臣として、政治の最高の責任者、これだけやっぱり立法府が一生懸命にやっているんですから、さっきだからちょこっと言ったの。参議院での先回の日ソ漁業協定の問題、いま日中漁業問題に対して取り組む姿勢を言ったんだ、簡単に。そんなものじゃないですよ。もっといろいろあるんですよ、事情は。簡単に言ったんだ。どうです、もっと具体的に発言したら。外務大臣と同じことを言ってたんじゃ、また同じじゃないですか。もっと具体的に――私はそんなことは手続上あたりまえじゃないですか。ソ連大使を呼んで、それでこういう具体的な問題が上がっていると、七十九件、何千万の実害がある、これに対して何をやっているんだと、早く速やかにその委員会の二名のメンバーをモスクワも日本も設定しなさいと、問題を上げなさいと、それじゃなきゃ解決しませんでしょうと、公明党の黒柳に怒られたと、こういうことを。どうですか、最後は余分ですけれども、どうですか、総理大臣。
  216. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いやそれはこっちは手続をできるだけ早く踏ますようにいたします。
  217. 黒柳明

    ○黒柳明君 いつできますか。
  218. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 日本側の委員任命の手続は済んだわけですが……。
  219. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃないよ、その手続じゃないさ。
  220. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) ソ連側に対しましては、かねて督促をしております。
  221. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、いま言っているのはトロヤノフスキー大使を喚問する、呼ぶと、それで抗議の手続ということですよ。
  222. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) ソ連漁船にかかわる事故につきましては、協定違反の事実、これについてはソ連側に抗議を行うという方針であることはかねてと同様でございます。
  223. 黒柳明

    ○黒柳明君 だからさ、総理大臣が、事実があったんだからすぐ呼ぶと、速やかに手続とるというんだから、手続すぐとりゃいいじゃないか、電話一本かけりゃいいじゃないですか、申しわけない、来てもらいたいと。すぐできるんでしょう。すぐやりますか。
  224. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 協定違反の事実につきましては、関係方面とよく確認をして、その上で措置をとりたいと思っております。
  225. 黒柳明

    ○黒柳明君 水産庁長官、どうもはっきりしないな。確認しなきゃだめだって、外務省は。確認しなきゃ処置とれない。どういうことなんですか、水産庁
  226. 内村良英

    政府委員内村良英君) 現在、ソ連漁船操業は漁期中でございます。私どもといたしましては、漁期中ある時期を切りまして、そこで被害をまとめて抗議すべきものであるというふうに考えております。
  227. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはいまはその時期じゃないというの。
  228. 内村良英

    政府委員内村良英君) いや、いま現在漁期中でございます。
  229. 黒柳明

    ○黒柳明君 時期だというんでしょう。
  230. 内村良英

    政府委員内村良英君) ですから、漁期中でございますので、被害が刻々起こっているわけでございます。そこで、幾つかの段階に切って抗議すべきものであるというふうに思いますし、さらに、被害の実態につきましても十分精査してやらなきゃならぬという面もございますので、そういった面をまとめて抗議すべきだと思います。
  231. 黒柳明

    ○黒柳明君 委員長、これは重大問題。ぼくのところに大挙して漁業組合が押しかけています。これ処理しなければだめです、この場ではっきりしなければ。漁期中だから処理しなきゃだめだ。実害も握っている。外務省の方は何とかそれに対して調べなきゃだめだと、総理大臣は速やかに手続したらやると、みんなてんでんばらばら。これは速やかに――これはもうここにいらっしゃる方は完全に道理的にはわかっているんじゃないですか。処理してください、委員長から。だめだ、これじゃ。
  232. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 速やかにひとつ……。
  233. 黒柳明

    ○黒柳明君 速やかにひとつといったってだめなんだよ。速やかにいかないんだよ、これよ。(「確認に時間かかるのかね」と呼ぶ者あり)いや、確認はしてあるわけですよ。漁期中ですから、どんどん入っているんです、実害は。(「確認しているの」と呼ぶ者あり)
  234. 内村良英

    政府委員内村良英君) ソ連の漁船わが国の沿岸における操業は、十月ごろから始まりまして、大体四、五月ごろまで続くわけでございます。したがいまして、私どもはこの協定も発効いたしましたし、その損害賠償請求処理委員会の委員は、私どもが承知しているところでは、日本側の委員は任命されましたし、ソ連側の委員も今月中には発令の予定と聞いております。したがいまして、水産庁といたしましては、発効後本年内の事故は数字をまとめまして、直ちに外交チャンネルを通じてソ連に抗議すると同時に、具体的な問題につきましては、この損害賠償請求処理委員会の発足後直ちに審議をしてもらうというような手順で考えるべき性質の問題と思っております。
  235. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) しかるべく早くお願いします。
  236. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、そうじゃないんだよ。しかるべく早くといったって、外務省の方が調べなきゃわからないと言っている。こっちはちゃんと実害を握っている。
  237. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 大体調べはついている。
  238. 黒柳明

    ○黒柳明君 だからさ、大体じゃないですか。外務省の方へ何とか言ってくださいよ、委員長。それじゃなかったら進まないじゃないか。総理大臣も速やかに手続とりたいというんですから。
  239. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) ただいまの水産庁側からの御説明にございましたように、私ども水産庁関係方面と十分協力、連絡をして、でき得る限り、まず第一に委員会も発足させ、協定違反関係の事実についてはソ連側に抗議すべきものは抗議するという措置をとりたいと考えております。
  240. 黒柳明

    ○黒柳明君 何を言っているんですか、何を。いま漁業期で、いま実害をこうむっている。そのために漁業協定日ソ漁業協定は早くやってくれろというんで、ばっとわずかの時間でやったんですよ、実害を少なくするために、三年前の補償期間というものを無効にならないように。いまの日中漁業協定だって、そんなに性格は変わりないんですよ。何にも手を打ってないじゃないですか、外務省として。話し合いをしてなんてのんびりしている。何をやっていたんですか、いままで一カ月間。いま現在どんどん実害が発生しているんじゃないですか。水産庁で握っているんですか、数字を。何そんなにのんびりしたこと言ってんの。責任問題じゃないですか、これ。総理大臣どうします、とんでもない話ですよ。何のための国会審議ですか、それじゃ。行政がそんな怠慢じゃだめじゃないですか。勉強してきませんでした、聞いてきませんでした、勉強します、そんななまやさしいもんじゃないですよ。こんな国会審議は、そんな――三陸の、福島の、千葉の、銚子の、石巻の漁業組合に聞こえたら大変なことになりますよ、総理大臣。もう最高責任者の答弁です。何だと思っている。
  241. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) だから言っているでしょう。やはり迅速にこの問題は外務省でやっぱり手続をとって……。
  242. 黒柳明

    ○黒柳明君 いつまでにやりますか、それじゃ。だから言っているって、いつまでにやる。
  243. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) それは行政に任しておいてください。
  244. 黒柳明

    ○黒柳明君 行政に任すんじゃない。お互いに食い違っているんじゃないか。
  245. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いや、だからできるだけ早くと言っているんですから……。
  246. 黒柳明

    ○黒柳明君 何を言っているんだ、その態度は。こちらが一生懸命言っているのに、何だ、いまの態度は。委員長、問題だ、これ。とんでもない。こちらが一生懸命に苦しんでいる人のために言っているのに、いまの態度は何だ、あの態度は。
  247. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) あなたの言うことはわかるんですよ。よくわかる。
  248. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかるならいままでなぜやってないんだ。
  249. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) だから、できるだけ……。
  250. 黒柳明

    ○黒柳明君 なぜやってないんだ。なぜやってないんだ、いままで。
  251. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) そのことに対しては、いま言ったように……。
  252. 黒柳明

    ○黒柳明君 いままでやっていないで、できるだけ早くなんて、そんな抽象的な答弁で済まされるのか。問題だよ、そんなことは。いままでやっていて、それが不備だったら早くやると、こうなるんじゃないか。何にもやっていない。実害が起こっている。しかもまた、重要な日中の漁業協定審議している。早くやってくれ。結構ですよ。何にも行政の方が実際的に手打ってないんです。何だ、いまの態度は。問題ですよ、委員長、これは。何だ、あの態度は。(「直ちにやるというのだから、やってもらおうじゃないか。」と呼ぶ者あり)  二つあります。直ちにやるなら二つある。いいですか、現場において実害が起こっている、その問題、すぐ調査しなさい。すぐそれに対して報告求めて、それに対して、一つはソ連大使に抗議しなさい。当然二つの段階あるでしょう。直ちにやるめどを言いなさい、それじゃ。直ちにそれじゃ、十日も前に外務大臣がもう言ってんです、国会で。何もやってないじゃないですか。――いいですよ、総理が来てるんだから。政務次官の出る幕じゃない。何言ってんだ。もう直ちに、速やかに、本当だったらいますぐ電話かけさせなきゃだめです、そんなことは。外務大臣だって直ちにやると言ってんですよ、十日前に。何もやってないじゃないですか。怠けてんですよ。知らないんですよ、現場のことを。お役所仕事だ。だめですよ、これじゃ。もう委員会がやっぱり不信を買いますよ、こんなことじゃ。現場のこと知らないんですよ。
  253. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 黒柳君、こういうことなんですね。違反の事実というものを確認するのは水産庁が確認して、そして外務省にそれに対して報告をし、それで外務省がこれに対してソ連に協定違反の事実があれば抗議するという手続になっておるわけです。これを漁民の立場なんかから考えれば、黒柳君の言われるとおりでしょう。だからできるだけもう少しそれを、言われてみれば少しのんびりし過ぎているという御非難はあり得ると思います。だからこれからは水産庁で把握した違反事項を迅速に外務省に報告して、そうして外務省違反事実を確認したら直ちにソ連に対して抗議すべきものはすると、このことは責任持ってやらせます、これは。
  254. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、外務大臣がすでにそれを国会で発言している。やっていないからこそなお言うのです。いいですか、一両日にこの問題はきちっと手を打ちますね、一両日に。――できるよ、そんなことは。ますます被害がふえますよ。
  255. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 黒柳君、こういうことでどうですかね。いままでは水産庁考え方は漁期が、全部の漁期が終わってから、まとめて外務省協定違反事件に対しては抗議するという形だったのですが、それを一遍にまとめるまでもなしに区切ったらどうだと、十一月までの被害というものに対して、それをまとめて協定違反は抗議する、こういうことの手続きを、まあきょうあすと、一両日ということにもお約束ということはなかなかむずかしいでしょうが、できるだけそれを、いま言ったような十一月で区切って協定違反は抗議をする、そういうことで御理解を願いたいと思います。
  256. 黒柳明

    ○黒柳明君 ぼくは何も相談される立場じゃないですからね、それは勝手にやることはやってくださいよ。ごりっぱですよ、三木内閣の姿勢は。  水産庁長官、時期はいつでも区切れるわけでしょう。四月までで区切って実害をなんて必要ないわけでしょう。さようならきょう、あしたならあしたでもいいわけでしょう。できるでしょう、それは。
  257. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先ほど申し上げましたように、漁期を幾つかに区切って抗議をすることは可能でございます。ただ、現実問題として、まだ損害賠償処理委員会が発足しておりませんから、それが発足すればもうそこで具体的に審議ができるということになりますので、水産庁といたしましては、協定発足後の被害につきまして、まず年内のものをまとめて抗議する、そこで来年の初めには損害賠償処理委員会ができるでしょうから、そこで過去のものにさかのぼってずっと審議をしていただくということを考えていたわけでございますが、技術的に十一月末までの事故について抗議をするということは可能でございますが、水産庁といたしましては、やはり損害賠償処理委員会の発足等の状況とも見合わせながらやった方が現実的ではないかというふうに考えていたわけでございます。
  258. 黒柳明

    ○黒柳明君 二十三日批准されて十六日まで七十九件、そうでしょう、一日平均二、三件起こっているんでしょう。長くなれば長くなるほど実害はふえているんじゃないですか。そんなばかな、小学校みたいなこの計算、もうどこから出てくるのか、漁期は幾らでも区切ってどんどんあれして――そのために国会で承認したんじゃないですか。ソ連側のメンバーが出てこない。現実的には上げたって処理できない。わかります。ソ連側に督促しなさいよ。きょうあしたあたりメンバーが出てくるだろうという感触も得ています、こちらは。至急にそれをかけて解決しなさいよ。解決じゃないんですよ。解決のための批准じゃないんじゃないですか。起させないことでしょう、まず第一、起こった問題解決するよりも、総理大臣。そうでしょう。そのための協定でしょう。それを、起こったものを解決しようじゃないかなんという頭でいまいるなんていうことはおかしいじゃないですか、行政の方が。そういう問題を起こさないために相互の理解をしたわけじゃないですか。どうですか、総理大臣。
  259. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) それはそのとおり。
  260. 黒柳明

    ○黒柳明君 いまの考えが違うじゃないですか、起こったものを処理すればいいんだ。反対じゃないか。
  261. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 目的は起こらないようにすることですが、たまたま起こった問題は処理しなければならない。
  262. 黒柳明

    ○黒柳明君 そんなことあたりまえです、起こった問題の処理。だけど、根本はいままで多発していたのを起こさないための協定でしょうということです。そうじゃないですか。
  263. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) そのとおり。
  264. 黒柳明

    ○黒柳明君 そのとおり、たった一遍だ、いい返事したの。そのとおりならば、そのとおりの方向に早く外務省外務大臣代理、総理総裁、総理大臣として直ちに速やかに手を打ってもらいたい。これはまあ重ねてですから、やると言うんですから、これは一両日にうまくない、めどなんか立てろといったって無理なことかもわかりません。早く速やかにやってもらえることを私は要望します。  そこで、もう時間が――がたがたしちゃった。先ほど日中平和友好条約について総理大臣の答弁いろいろ聞いておりました。どうですか、宮澤・喬外務長官との国連における話、あの話で完全に日本側からこの平和友好条約の問題については中国側にボールは投げられたんだと、こういう認識ですか、総理。完全に中国側の返事待ちなんだという認識ですか。どうでしょう。
  265. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いや、そうだと言いませんね。ボールを向こうへ投げたと言わないで、ボールは日中間で、これから日本側としてもいろいろとやはり日本側考えておる考え方でみんなの理解も求めなきゃならぬし、ボールを中国に投げたというふうには私は考えない。
  266. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほどの答弁の中には、この問題についてもう十時間も話し合ったし、日本の意見は述べたから向こうから返事が来るでしょうとはっきりおっしゃったですよ、総理。
  267. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 向こうもやっぱりいろいろ分析をしておるし、それはどの点まで完全に理解されたかどうかはわかりません。しかし、理解は深まったことは事実です。日本もまた中国側の立場というものに対していろいろと理解する点が多かったわけですから、したがって、両方のひとつの、日本日本とし、中国中国としてその会談を踏まえていろいろと検討しておるときでしょうから、そういう両方が、ボールがどちらにあるというふうに私は考えない。両方側にボールがあるといえばあるということでございましょう。ボールを中国へ投げて、それの中国の返事を待つというふうにもこの交渉を断定することは無理だと思っています。
  268. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、中国にボールを投げたんじゃない、十分に理解ができたと思う、こういう理解。そうすると、この次に、しかしながら、宮澤外務大臣の弁を借りると、いままでは交渉の再開が数週間、これがついせんだっては数カ月と、こういうふうに発言しているわけです、見通しは。そうなると、どうなんですか、向こうからの返事を待つ、これも一つだと思いますね。何か、理解が深まったんだから来るかもわからない。だけども、必ずしもこちらが返事待ちでもない、総理大臣の発言。そうすると、こちらとしても返事を待っているのみじゃないとするならば、何かさらにアクションを起こすという可能性もあるわけですね、いま総理の発言の中には。それに対してはどうですか。
  269. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いま中国側としても、国内でもいろいろ諸外国からの重要な会談も続いておるようですし、そういうことで、これがアクションといいますか、両方が理解を深めたところで、そしてどういう形に次の段階はなりますか、理解は深まったことは事実です。それが完全な理解をしたかどうかということはまだよくわからない。しかし、理解を深めたんですから、こういう深まったという条件のもとで、中国側のアクションの場合もあるでしょうし、日本側のアクションの場合もあるでしょうから、何らかやっぱり両方がその会談を踏まえて、検討を終えた段階で何らかの進展があるものと期待をしておるわけでございます。
  270. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間が来ました、最後に一問だけ、済みませんね。  外務大臣が十時間もかけて話し合った中においても、喬外務大臣は、あんたの解釈というものを押しつけられたんでは世論を分裂させると、こういう反発もあったことは間違いない。だから理解は深めたんだか、あるいは反発したんだか、それすらもわかりませんよ。そうなると、まして外務大臣交渉再開を数週間と言っていたのが数カ月と言うからには、実務者の最高の外務大臣の感触としてこれは相当時間かかるなと、こういう感触での発言でしょう。そうなると、もう残されたのはトップ会談しかないですよ。田中前総理は三年前行かれた。情勢は違いますよ。だけど、先ほど総理大臣の答弁の中には大した問題じゃないと、そうだと思います、日本にとっては。中国とソ連との問題で大した問題になっている。だけど、三年前の、正常化以前の、言うまでもなく台湾の処理の問題、日本軍国主義の復活の問題、もういろんな問題が山積していて、あれこそ大した問題どころじゃなくて、大した問題だらけだったんでしょう。全く日中の両国間の意見なんというのは対立で、少なくとも事前にいろんな革新団体、野党レベルの交渉があった。条件は違う、雰囲気は違う。しかしながら、大したことがない、そういう問題。しかも相当理解も進んでいる。もう一歩のとこならば、確かに日本が中ソに対して気も使わなきゃなんない現実の政治問題もある。中ソの非常に厳しい、シビアな対決もある。だけれども、三年前のあの田中前総理が、なぜあそこの、全く対立する両国間の問題を解決したか。いろんな客観情勢、あるいは先行する努力、それにプラス、やっぱりとどめを刺したのは首脳会談ではなかったかと、私は私なりにこう判断するし、そういう国際政治評論家の意見も多い。現場の人の意見も。やっぱりこれ以上、外務大臣の感触、あるいは発言を見ますと、また私は私なりにもうトップ会談しかないんじゃなかろうか、こういう感触を強くするんです。それが、まあそのうち何とかなるやと、時間待ちだと言うならば、これは国際環境だって変わっていきます。その間に何が生まれるかわかりません、可能性あります。   〔委員長退席、理事増原恵吉君着席〕 ただし、そんなものを待つ姿勢の三木内閣ではないと、私こう思うんですが、私のこの感触が間違っているか合っているか、あるいは総理の意見をお伺いして、最後の質問にします。
  271. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いま外務大臣でせっかく交渉を始めたんですから、この推移を見守って、どういうことにするかということを決めたい。いま首脳会談というものを予定しておるわけではございませんが、せっかく外務大臣がああやって交渉を始めておるんですから、この交渉の推移というものを私は見守りたいという心境でございます。
  272. 立木洋

    ○立木洋君 総理、いま黒柳委員が質問されまして、日ソ間で沿岸操業協定が結ばれてから、十月の二十三日から今日まで実際の被害というのが七十九件、一千七百八十三万ですか、大変な被害がやはり引き続いて出てきている。先ほど水産庁の方にお伺いしますと、被害が出てきているというのは十二海里周辺が一番多い。漁民の方々の中では、やはり日本の領海十二海里宣言をやってもらわないとどうしても困るという声が非常に高まっておるということは総理も御存じだろうと思いますが、報道によりますと、去る九日の日に政府・自民党も含めて、領海十二海里を海洋法会議以前にも宣言するという問題を含めて検討されておるというふうな報道がありましたけれども、この十二海里領海宣言についてどういうふうな見通しになっているのか。いつごろそういうふうにされる予定なのか。その点について最初にお伺いしたいと思います。
  273. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) まあ漁民のいろんなトラブルが起こっておる、そういう立場から考えたら十二海里の宣言を早くすればいいではないかという立場はよく理解できるわけでありますが、この国際海峡に対して、やはり日本の船舶が国際海峡を通過する場合もあるし、また、外国の船舶が日本の国際海峡を通過する場合もある。一方において海洋法上のいろいろな諸問題があるわけですから、そういう漁民の利益を守るという見地からと海洋法上の諸問題というもので、非常に緊急な問題として関係各省のもとでいま検討をしておる最中でございます。
  274. 立木洋

    ○立木洋君 ですから、海洋法会議の結論を待たなくても、それ以前に十二海里宣言を行うこともあり得るという立場で検討されておるわけですか。
  275. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) そういうことも含めて検討しておるわけでございます。
  276. 立木洋

    ○立木洋君 それは、いまの実情をお聞きになって総理も十分おわかりだろうと思いますけれども、やはりそれらの問題も十分に検討された上でなければならないということもありましょうけれども、一刻も速やかに宣言を行って、そうして関係国にそれを通告して、こういう実害が起こらないようにするということはやはり私は重要だと思うので、特に速やかに進めるように、この点は強く要望しておきたいと思うんです。  それとの関係で一番問題になってくるのが、やはり十二海里宣言をした場合に、津軽海峡など国際海峡を含めて七十二カ所の海峡、水路が公海ではなくなるという問題が起こってくるわけですね。これはいままでも国会の論議の中でも何回か繰り返されたわけですけれども、そうした場合に、アメリカの核積載艦がそういう国際海峡を通過する場合の問題というのが当然問題になってくる。  総理は、いままでも非核三原則はいかなる場合でも必ず守るというふうに言われているわけですが、十二海里領海宣言を行う時点に立って、この核積載艦の通過の問題に対してどういうふうにお考えになっているのか、その点伺っておきたい。
  277. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 海洋法会議では、やはり国際海峡の航行制度に対して問題になったわけです。これをどうするか、国際海峡に対しての航行というものをどう考えるか、そういうことでいろいろな案も出たわけです。   〔理事増原恵吉君退席、委員長着席〕 これは必ず海洋法会議において問題になると思います。国際海峡における航行というものに対してどういうふうにそれを制度化していくかということは大問題の一つだと思うんです。日本の場合も、結局はそういう国際的な合意というものが、日本がこれを考える場合の前提になるわけで、実際から言えば、海洋法会議でこの問題も決着がついてやるということが日本としては一番問題の解決のためには非常に好ましい形ですけれども、立木君も黒柳君も、いまいろいろと漁民の実情というものをお話しになりまして、そういう面もあって、それで政府が、各省がいま検討しておるところですよ、この問題は。そういう問題がなければ、海洋法会議の結果でやれば、どうせやっぱり国際的合意日本も従わなければならぬわけですけれども、漁民の問題というものがあるから、緊急な問題として検討をしておるということでございます。
  278. 立木洋

    ○立木洋君 この問題について、先般宮澤外相が、国際海峡の問題との関連において、非核三原則を守るかどうかという問題に関して、現状より悪くはしないというふうな発言をされているわけです。三木総理も、権限の及ぶ範囲で当然守るという、きわめて含みのあるような答弁をされているわけですけれども、つまり国際海峡という場合に、国際会議での決め方にもいろいろかかわってくるでしょうけれども、そうした場合には非核三原則を当然国際海峡で守らなければならない立場を日本政府は貫くが、いわゆる他の処理をする、つまり特別の措置を行うこともあり得るというような含みもあるわけですか。
  279. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いや、国際海峡に対して、国際的な取り決めというものがどういうことになるか、いままでの海洋法会議でも大問題になった一つですから、日本とすればこういうことで国際的な合意ができた場合には、それを前提として対処せざるを得ない。だからそういうものが、国際法会議がまだこれからの課題ですから、しかし、いま十二海里の宣言をしてもらいたいという漁民の立場というものもよくわかりますから、そういう点で政府がこの問題も含めて、海洋法の問題も含めて漁民の立場、海洋法のいろいろの関係、こういうものをひっくるめていま検討しておるということで、その結果にわれわれは待ちたいと思っておるわけです。
  280. 立木洋

    ○立木洋君 先日の外務委員会で、私、宮澤外相にもお尋ねしたわけですけれども、つまり国際会議でどういうふうに決まっていくかという推移を見て日本政府としてどういう態度をとるかということも一つ方法だろう。しかし、少なくとも日本政府としては、その会議に臨む場合にどういう主張をするのか、やはり日本としては日本としての考えが当然なければならないでしょうし、いわゆる国際的な会議の結論を待ってそれに押し流されるというふうな形で、自主性のないような態度ではなくて、やはり日本側としても当然主張すべきことは主張して、そして国際会議合意が得られれば、その点でどう対処するかということは当然別な問題になるでしょうが、つまりそれ以前の政府としての考え方、ですから、政府としてはそういう国際海峡や海洋法会議、この領海十二海里を宣言した場合に、いわゆる国際海峡の問題に関連して核通過などの問題もあるわけです。これはアメリカなども強く国際海峡の自由航行を要求しているわけですから、そういうふうな問題との関連において、日本政府としてはつまり特例的な措置をもそういう場合はあり得るというふうな含みを持っているのかどうかという点なんですね。
  281. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 若干技術的な点がございますので、私から申し上げます。  従来から御説明申し上げておりますように、海洋法会議に対する日本政府の基本的な方針につきましては、御承知のごとく、国際海峡の通航問題についてはアメリカ、ソ連及び先進海運国の多数がこれに同調しておりますけれども、国際海峡については自由な通航が保障されるべきであるということを強く主張しているわけでございます。他方、これに対する主張といたしまして一部の海峡沿岸国から自由通航は認められないという主張がなされているわけでございます。その両極端の間にいろんな主張、論議が繰り広げられているというのが海洋法会議の実態でございます。  これに対して日本政府といたしましては、わが国資源の大部分を海外の供給源に仰いでいる、依存しているという実情及び貿易立国、海運立国という立場がございまするので、国際海峡の通航については、一般領海における通航に比してより自由な通航が望ましいというのが基本的な立場でございます。  この国際海峡の通航問題については、ことしのジュネーブの会議では結論が出なかったわけでございますけれども、最終日に各国に配付されました単一草案においては、一定の航路帯のもとに、一定の航路帯を設けて、その航路帯の中では自由な通航を認めるという案が実は配付されております。しかし、これは配付されただけでございますので、来年三月に開かれます海洋法会議でさらに検討をされる、論議されるということになるかと思います。大勢としては、その配付された案を中心としてコンセンサスが成立するような努力がおそらく相当なされるだろうとは思っています。しかし、どうなるかということについて言えば、まだ確たる見通しは得ていないというのが現状でございます。
  282. 立木洋

    ○立木洋君 海洋法会議でいろいろ議論になっているという点はわかるわけですが、それに対して日本政府としては、国際海峡に一定の自由航路を設ける等々の問題もあるわけですけれども、それについて日本政府としての考え方はどうですかということなんです。配付されているわけですからね。
  283. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 日本の場合は、一般の領海よりももう少し自由な航行が認めらるべきだという、原則的にはそういう考えなんです。日本自身もやっぱりいろいろ国際海峡を通過するわけですからね。そういうことで日本会議に臨んでおるわけです。これは各国ともいろいろ意見のあるところで、最終に出された一つの領海内に、国際海峡についてはある航路を設けてそこを自由航行するような考え方という案もいま出されたと言われておるわけですが、このことは将来の海洋法会議の結果に待たなければ、日本がいまどういうことにきまるんだろうかということは、この段階では予測がむずかしいわけです。
  284. 立木洋

    ○立木洋君 どうも明確ではないんですけれども、国際海峡の場合、そういうふうな特例を設けることもあり得るというふうな話のようにも聞けますし、そうでないようにも聞けるわけですが、しかし、日本が被爆国としてやはり非核三原則を貫き通すということは、総理も繰り返しおっしゃっておったし、これは三木内閣としてのいわゆる主張である、これは貫き通すということですから、そういう問題にならないようにやはり努力することは私は必要だと思うんですが、この問題については、さらに引き続いて次の機会に質問したいと思います。  それと関連してアメリカの核積載艦船が日本の領海を通過する場合ですね。通過したことはないというお話ですが、通過してはならないという、つまり法的に言ってアメリカが通過する場合には事前協議にかけなければならないという根拠、そういう考え方をアメリカ政府自身が明確に持っておるのかどうか、法的に。
  285. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) これも以前から再々御説明申し上げておりますとおり、安保条約の第六条の実施に関する交換公文において、一定の事項については事前協議の対象とするという日米間の約束があるわけでございます。その中の装備の重要な変更というものについては、核弾頭、中長距離ミサイル及びそれらの基地の建設ということに了解がなされているわけでございます。したがいまして、核兵器の持ち込みがすべて事前協議の対象になっておるということについては、これはもう間違いなく明らかなところでございます。  そこで、いま御指摘になられました領海を通過する核積載艦についてはどうかという点につきましては、これはまた再々申し上げておりますけれども、核兵器の持ち込みが行われます場合には、それが領海の通過だろうと一時立ち寄りだろうと問わず、すべての場合について事前協議の対象になるということはきわめて明白に実は申し上げているわけでございます。昨年十二月に出されました統一見解においてもそのことば明白に申し上げているところでございまして、私どもはそれについては日米間にも何ら了解の食い違いはないというふうに考えております。
  286. 立木洋

    ○立木洋君 せっかく三木総理にお忙しい中出てきていただいているんですから、総理自身にお答えいただきたい。松永条約局長の話はいやというほど私聞いておりまして、どうも松永さんでは話が通じないようですから、少なくとも三木総理に答えていただきたいんです。  それで、結局法的な根拠というのは安保の六条だというふうに言われるわけですけれども、それは藤山・マックの口頭了解事項によって、核持ち込みの場合には事前協議にかかるというようなことになるわけですけれども、これは藤山・マックの口頭了解事項というのは一九五八年から六〇年、安保を結ばれる事前にいろいろ話し合いをされてきた。それが結局、あれは昭和三十三年から三十五年ですか、それが国会の論議の中で必要になって、昭和四十三年の四月二十五日に国会の場に藤山・マッカーサーの口頭了解事項というのが出されてきた。  当時、三木総理は外相をされておって、一時通過の問題に関してはこれは持ち込みに入らないということを繰り返し述べられておる。そしてその後、いわゆる領海条約十四条との関係で、これは一時持ち込みも一時通過もいわゆる無害航行ではないという形で、領海条約との関係では訂正されたということについては何回も聞いているからわかるわけですが、この藤山・マッカーサーの口頭了解事項の中で、いわゆる安保条約の事前協議の対象になる。通過の場合も事前協議の対象になるという形で明確にされたのかどうか。その点について、当時外相をやっておられて一時通過は持ち込みには入らないということを言明されておったわけですから、その点についてちょっとお答えをいただきたい。
  287. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) この点については、アメリカ側にも日本がよく説明をして、アメリカもこの点については了解をしておるものと考えております。
  288. 立木洋

    ○立木洋君 通過が核持ち込みに入るということについて、アメリカ側に説明をしてアメリカ側も十分了解をしてもらっておるとおっしゃるならば、いつの時点でどういうふうに説明をされたのか、お答えいただきたい。
  289. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) これも前に申し上げましたけれども、たとえば国会における論議は繰り返しアメリカも関心を持ってフォローしているわけでございます。私どももたびたび機会があるときに説明をしているわけでございます。  そこで具体的に申し上げますと、先ほど御指摘になられました昭和四十三年の統一見解でございますとか、あるいは昨年十二月に行われました統一見解につきまして、アメリカは十分それを承知しているかという御質問だと思いますけれども、これらについては、アメリカ側に私どもたびたび説明いたしておりますから、十分アメリカは承知しております。
  290. 立木洋

    ○立木洋君 もうそれは何回も松永さんから聞いているんですよ。総理からお聞きしたいのです。  いわゆる領海条約の問題に関して言いますと、たとえばアメリカ以外の軍艦が日本の領海を通過する、これはもう無害航行じゃないわけでしょう。
  291. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) これも昭和四十三年に統一見解が出ておりますけれども、ポラリスその他の常備の核積載艦……
  292. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカ以外の国です。
  293. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 一般論といたしまして、領海通航は無害とは認めないという立場をとっているわけでございます。
  294. 立木洋

    ○立木洋君 一般の軍艦もですね。  結局、いわゆる法的にアメリカとの関係で言うならば、アメリカは日米安保条約を日本と結んでおるわけですから、ですからアメリカの軍艦というのは日本の基地内には来ることができるわけですね。一々通告しなくても、核を積んでいない軍艦の場合はどんどん入ってくることができるわけです。ただ問題になったのが、核通過の問題をめぐって問題になってきた。そうすると、これで安保条約があって事前協議にかけなければならない、事前協議にかけるのはアメリカ側だ、言うならばアメリカ側が、まず領海を一時通過する場合でも事前協議にかけなければならないということを安保条約との関係で法的にアメリカ側が明確にしてなければならないし、さらに、そのことに関して日本側が、当然事前協議に通過の場合でもかかるんだという安保条約の法的根拠に基づいてアメリカ側との明確な取り決めがなければならない。ところが、いままでの場合に関しては全部領海条約の問題で処理されているんですね。安保条約で事前協議にかかるという、いわゆる法的な根拠が明確にアメリカ側と約束されているのかどうなのかという点では、いままで外務大臣にしても松永条約局長にしても、それは領海条約でやっているんですから問題ありませんという一点張りなんです。この点、どういうふうに考えたらいいのか、総理にお尋ねしたいのですが。
  295. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 一般国際法上の問題として、領海通航をする場合には、外国の軍艦は無害通航権を持っておるわけでございます。ただし、先ほど申し上げましたごとく、常時核装備を搭載している軍艦の通航は無害と認めないという日本政府の立場がございますから、一般国際法上の問題として外国軍艦――それに該当する外国軍艦が日本を通航する場合は無害通航権を主張できない。したがって、日本政府の事前の許可を求めなければならないということになるわけでございます。  日米間におきましては、それに加えて安保条約及びその安保条約のもとにおける事前協議制度という日米両国政府間の約束があるわけでございまして、核兵器を持ち込む場合には、すべての場合について事前協議が行われるという条約上の約束がなされているわけでございますから、私どもは核兵器の持ち込みが行われる場合には、それが通過であろうと一時立ち寄りであろうと、必ず事前協議が行われるべきものであると考えているわけでございます。
  296. 立木洋

    ○立木洋君 その点については、もう条約局長とはやり尽くした感があるんですよ。それで、やはり三木総理がその点ももう少し検討していただいて、御自身でやっぱり答えていただけるようにしていただきたいのですが……。  結局、領海条約で無害航行権を主張して、だめだということになれば通告してくるわけですね。これは安保条約で言う事前協議とはやはり違うと思うのですよ。やはりきちっと安保条約の法的な根拠として事前協議にかけなければならないのだ。いわゆるアメリカの軍艦というのは基地にいつでも入ってくることができるわけですから、そういう点も明確にしておかなければならないというのが私たちの考え方なわけですね。それがいままで常にあいまいだった。この点については時間がありませんから、もうこれ以上あれですから、次の機会には、また三木総理が外相代理になられることがあるかどうかしりませんけれども、あったときには、また外務委員会で――なかったときには予算委員会でもお尋ねしますから、三木総理自身がひとつお答えになっていただくように……。前回、一時通過の場合でも、それは核持ち込みに入らないのだ、ひょろひょろっと入ってきた場合でも、一々言いよったら、そんなことあんた大変ですよと言われているのですから。それをやっぱり安保条約に基づいて、今日ではどうなったのかということを総理自身から明確にしていただく、そういう機会を得たいわけですから、十分に、先ほど黒柳委員も言われたように、十分勉強していただいて、そして直接お答えいただきたいと思います。  最後に、もう時間がありませんから、これは別の問題になりますが、一つお尋ねしておきたい。  対朝鮮政策の問題で、三木総理も何回か述べられて、長期的な見通しで言うならば、朝鮮が平和的な話し合いで問題を解決していくことが一番望ましいというふうなことは何回か聞いたわけですけれども、宮澤外相も先日そういうふうなお話をされていました。当面、ではどうするのかという問題については、宮澤外相はクロス承認という形ができるならば、それが一番望ましいだろうというお話もあったわけだが、しかし、御承知のように、クロス承認するというふうなことは、これは現実的に可能性がきわめてないということも、これはまた事実だろうと思うのです。そうすると、先般のいわゆる国連総会で行われた、朝鮮問題をめぐって朝鮮民主主義人民共和国の立場を支持する決議案が初めて国連で通過をしたという事態でありますし、ましてや、朝鮮半島というのは日本の隣ですから、これは重大な関心を持つということは、立場の違いがあってもそれは当然でしょうし、そうすると、当面朝鮮半島に対してどういう政策をとられるのが最も現実的で、そして平和的な話し合いの方向に行くというふうにお考えになっているのか、いままでのままでは、やはり国連の現状から見ても、朝鮮問題に対して日本政府が策がないというふうなことになるだろうと思うので、そのあたりの点、先ほどの核通過の問題で述べたい点がおありでしたらそれも述べていただいて結構ですが、最後に対朝鮮政策に対して当面日本政府がどういう態度、政策をおとりになるつもりなのか、その点具体的に述べていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  297. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 核の通過の問題については、格別条約局長と違った意見を持っておるわけではありません。だから、御質問なさることは結構ですけれども、別な見解を持っておるものではないわけです。  朝鮮半島の問題については、私はこういうふうに思うのです。朝鮮民族の悲願はやはり南北の統一にあると思うのです。しかし、それがすぐに平和的統一ができないこともこれは現実です。いまのところでは、南北朝鮮が平和的に共存していくような環境をつくることが、やはり今日としては現実に一番即しておる。そういうためにクロス承認というようなものができることも一つ考え方かもしれませんが、これは北朝鮮がこういうことは望んでいないんですから、だからなかなか現実性はないですよ、これは。そういうことですから、やはり南北が現実に別れておるこの状況、不幸なことだけれどもすぐに統一ができぬとするならば、この現状でできるだけ朝鮮半島における緊張を緩和さす、そして平和的に共存していくような状態をつくり出すために、国際的にも、そういう国際的環境をつくるために努力をしていくということが一番現実的ではないかというふうに考えておるわけです。日本の場合も、そういうふうに南北が一時は話し合った場面もあるわけですが、いま中断されて、今日ではなかなか再開がむずかしいわけですけれども、私は各国の人たちが来るたびに、何かもう一遍南北の対話が行われたような状態に返れないのかという話をするわけです。南北自体でもそういうふうな環境をつくることに努力をすることが朝鮮半島の安定に通ずると思うし、また、朝鮮半島といろいろな関係を持つ諸国が、そういうふうな空気に持っていけるような国際環境をつくることに努力をすることが必要である、大ざっぱに言えばこういうふうに考えておるわけです。いま現実的に大きな急激な変化を朝鮮半島にもたらすことが朝鮮半島の安定には役立たないのではないか、むしろやっぱり緊張を呼ぶのではないかというふうに考えておるわけです。
  298. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  日本国中華人民共和国との間の漁業に関する協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  299. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時九分散会      ―――――・―――――