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1975-12-11 第76回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十一日(木曜日)    午前十時六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         二木 謙吾君     理 事                 稲嶺 一郎君                 秦野  章君                 増原 恵吉君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 糸山英太郎君                 木内 四郎君                 中山 太郎君                 亘  四郎君                 田中寿美子君                 田  英夫君                 松永 忠二君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 田淵 哲也君    国務大臣        外 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        外務大臣官房長  大河原良雄君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省経済局長  宮崎 弘道君        外務省経済局次        長        野村  豊君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        運輸省海運局長  後藤 茂也君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        環境庁水質保全        局企画課長    西村 純幸君        法務大臣官房参        事官       井関  浩君        外務省情報文化        局文化事業部参        事官       木島 鋭男君        水産庁研究開発        部漁場保全課長  森川  貫君        海上保安庁警備        救難部海上公害        課長       佐藤 弘毅君     —————————————   本日会議に付した案件 ○海上航行船舶所有者責任制限に関する国  際条約締結について承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付) ○油による汚染損害についての民事責任に関する  国際条約締結について承認を求めるの件(内  閣提出衆議院送付) ○油による汚染損害補償のための国際基金の設  立に関する国際条約(千九百六十九年の油によ  る汚染損害についての民事責任に関する国際条  約の補足)の締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (国際経済協力会議に関する件)  (フォード米大統領の新太平洋ドクトリンに関  する件)  (外務省婦人職員地位向上に関する件)  (インドネシア学術調査団に関する件)  (覇権問題に関する件)  (朝鮮問題に関する件)     —————————————
  2. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約締結について承認を求めるの件  油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約締結について承認を求めるの件  油による汚染損害補償のための国際基金の設立に関する国際条約(約千九百六十九年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約補足)の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)  以上三件を便宜上一括して議題といたします。  三件につきましては前回趣旨説明を聴取いたしましたので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは答弁も簡潔にお願いしたいと思います。  この三つ条約について、現在世界各国加盟状況はどうか。
  4. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) お答え申し上げます。  第一番目の船主責任制限条約につきましては、現在二十七カ国が加盟しております。  民事責任条約につきましては十八カ国が参加しております。  最後国際基金条約は六カ国が参加しております。
  5. 塩出啓典

    塩出啓典君 船主責任制限条約は採択されて十八年もたっているわけでありますが、わが国加盟しなかった理由は何か。
  6. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 御指摘のように、船主責任条約昭和三十二年にでき上がったものでございますが、これは内容といたしまして、御承知のように、船主責任制限金額主義によって統一をしようという趣旨条約でございまして、わが国国内法委付主義というものをとっております。したがいまして、その間の調整というものは国内法改正というものによらざるを得ないわけでございますが、当時、戦後におきまして日本船舶業界というものは戦争損害というものをこうむりました結果、非常に弱体であったというようなことがございまして、国内法において委付主義から金額主義に変えるという措置がなかなかむずかしく、調整に手間取ったということでございます。したがいまして、今日に至るまで御承認を得る、参加をしようということにはならなかったわけでございます。
  7. 塩出啓典

    塩出啓典君 船主債務不履行やあるいは不法行為責任を賠償できず、委付主義によって処理した件数は大体どの程度、何件の事故のうち何件ぐらいが委付主義で処理されてきたのか、その数字だけ。
  8. 井関浩

    説明員井関浩君) 委付をされますと、船舶登記について委付登記がされることになっておりますが、私ども委付登記件数を調べますと、一年に一件、二件というごくわずかな数字が示されております。
  9. 塩出啓典

    塩出啓典君 実際の事故件数はもっと多いわけでしょう。その中で委付で処理されたのが一件ということで、全体の件数は何件ぐらいなんですか、推定して。
  10. 井関浩

    説明員井関浩君) 事故件数数字として出ておりますけれども、そのうちの損害賠償責任を負う件数というのは私ども正確に把握しておりません。
  11. 塩出啓典

    塩出啓典君 事故件数は、大体年間どれぐらい。
  12. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) 直接委付に関連して事故がどうであったか、あるいは賠償関係がどうであったかという正確な資料は持ち合わせておりませんけれども、私どもの手元に過去五年間の日本PIが取り扱いました事故件数、あるいはPI支払いました賠償額という資料がございますが、それによりますと、過去五年間の取り扱い件数は七千四百三十四件。この一件当たりの支払い額は……
  13. 塩出啓典

    塩出啓典君 それはいい、件数だけでいい。  そうしますと、この委付主義というのは商法六百九十条、これは明治三十二年から存在をしているもので、いまのお話からみますと、実に委付主義というものは現状に合わない、世界の趨勢に反するものであった、これを明治三十二年以来と言えばもう七十数カ年です。しかも、委付主義改正がおくれたために船主責任制限条約への加盟もおくれてきたわけですけれども、こういう点はわれわれは非常に海運業界の圧力に負けて、法務省としては怠慢ではなかったのか、私はそういうふうに感ずるんですが、その点はどうなんですか。
  14. 井関浩

    説明員井関浩君) 御指摘のように、委付主義を決めました商法明治三十二年の法律でございます。その後、船舶所有者責任制限するいろんな方式が各国でとられております。これは海運業国際化とともに、国際的に統一しようという動きが出てきたわけでございますが、つきましては、一九二四年でしたかに、一遍条約ができたわけでございます。それに対応するように、わが国でもいろいろ作業をしていたようでございますけれども、その条約は結局ごく少数の国しか加盟しなくて、それほど実効的なものでなかったという経緯がございます。その後、戦争に突入いたしまして、ただいま外務省からもお話がありましたように、海運業界が大変困っている状況が続いた、それでようやく昭和四十二年でございましたか、運輸省等からこの立法化が要請されたわけでございます。  当時、たまたま私どもの方で持っております法制審議会は、商法改正作業に全力を挙げておりました関係で立案がおくれたようなわけでございます。
  15. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは、今回この三条約わが国加盟をすることについて関連業界海運業界あるいはタンカー業界石油業界PI保険等保険業界、そういうところはどういう意向なのか、これも賛成とか反対とか、簡単でいいですから。
  16. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) まず、全般の傾向でございますが、ただいまお話し申し上げましたように、五七年条約国内法化につきましては、かつて日本船主賛成でなかったという時期がございました。しかし、今日におきましては、六九年油濁条約及び七一年基金条約を含めまして、こういった油濁損害というものを国際的に同じ基準で対処するということが当然であるという基本的な考え方から、五七年条約も含めまして賛成であるというのが基本的な海運業界立場だと承知しております。石油保険全体につきましても、すでに現実の問題としてはここで掲げられておりますような保険制度が事実上行われているという事情もございまして、基本的に反対ではないという態度でございます。
  17. 塩出啓典

    塩出啓典君 国際基金条約は、発効見通しはいつごろと見ていますか。
  18. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) この条約は、第四十条の規定にもございますとおり、少なくとも八カ国が批准書受諾書承認書または加入書事務局長に寄託していることと、それからもう一つは、この条約締約国におきまして拠出をしなければならない立場にありますものが、前暦年中に総量少なくとも七億五千万トンの油を受け取ったという情報事務局長が確認した後九十日で発効することになっております。現在のところ、まだ六カ国しか締約国になっておりません。最近の調査によりますと、油の主要報入国でありますところのイギリス、西独、米国、イタリア、オランダ、ベルギーなどが近々批准するという意向を示しておるようでございますので、そういった国々が締約国になりますと、近い将来この条約発効することになると思います。
  19. 塩出啓典

    塩出啓典君 この条約加盟をしている国と加盟をしていない国があるわけですけれども加盟している国同士——加盟している国が加盟している国に損害を与えた場合はこれはいいわけですけれども加盟していない国の船が加盟をしている国に損害を与えた場合、逆の場合もあると思うのですけれどもそういう場合はこの条約適用はどうなるのですか。
  20. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) お答え申し上げます。  いろいろケースがありますし、三つの条件についてそれぞれ若干異なっていると思いますが、まず第一番に船主責任制限条約の場合でございますけれども、この条約の非加盟国の船が事故を起こしたというような場合に、仮にその事故日本で起こった、日本は御承認を得てこの条約加盟国であるというような場合に、その非加盟国の船の船主日本の法廷において責任制限を主張できるかどうかということになると思いますが、その場合にはこの船主責任条約の第七条でございますが、「各締約国は、非締約国に対しこの条約利益の全部若しくは一部を与えず、又は」云々と、「船舶がいずれの締約国の旗をも掲げていない場合に、この条約利益の全部若しくは一部を与えない権利を有する。」というふうに決めてございまして、非締約国の船、船主というものにこの条約利益、すなわち、この条約の定める責任制限を主張できるかどうかはそれぞれの国の判断にゆだねているわけでございます。日本の場合には、現在、国内法が今国会提出してあるわけでございますが、船舶所有者等責任制限に関する法律案には、これも船籍によって区別をしておりませんで、また、船の何と申しますか、締約国国籍というものによっても区別はしてないということでございますので、日本の場合には非締約国の船も、船主責任制限の主張ができるということになると思うわけでございます。  次に、民事責任条約でございますけれども民事責任条約は第二条におきまして、「この条約は、締約国領域において生ずる汚染損害及び」「防止措置についてのみ適用する。」というふうに決められているわけでございまして、この場合には汚染損害事故というものが締約国領域でありさえすれば、その汚染損害を引き起こした船の国籍というものは問わないということになっております。したがいまして、非締約国船籍を有する船舶についてもこの民事責任条約適用になるということでございます。  基金条約でございますが、これは二つの場合に分かれるわけでございますが、まず第一に、加盟国でない国の船籍を有します船舶の場合でございますが、この基金から船舶所有者損害賠償責任をさらに補てんするというようなことをこの基金条約で定めているわけでございますが、それにつきましては、この条約の第三条二項の規定によりまして、この条約締約国船籍を有します船が民事責任条約、つまり二番目の民事責任条約国領域で起こった汚染損害について適用されるということになっているわけでございまして、これもやはり二番目の民事責任条約の場合と同じように、汚染事故が起こったという場所をもって基準といたしておりまして、非締約国船籍を有しております船舶につきましては、この汚染事故の場合の船舶所有者に対する補てんというものは適用がないということになっているわけでございます。それから被害者もこの場合基金補償の対象になっているわけでございますが、これは非締約国の国民の場合でも、もしその事故締約国領域において生じます限りにおきましては、当然この基金による補償を受けるということでございまして、被害者国籍による差別はございません。  以上が、一口に取りまとめて申し上げましたが、この三条約適用関係でございます。
  21. 塩出啓典

    塩出啓典君 それからこの条約加盟をいたし、この基金条約発効をするようになりますと、いわゆる被害を与えた場合、それに対して基金から補てんをされる、そういうことになってまいりますと、いままでならば保険で払っていたものがその金額だけ払わなくてすむようになるわけですから、当然PI保険等保険料も変わってくる、安くなるんではないかと思うわけです。その点はどうなっていますか。
  22. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) 結論から申しますと、この新しい制度に移行した後に、PI保険保険料率がどうなるかということについてははっきりした、上がるだろう、あるいは下がるだろうという明確なる見通しは立てられませんで、いずれ大差ない線におさまるのではないかということがお答えの骨子でございます。現在PI関係者は、新しい料率というものを変えるべきかどうかを含めて検討しておると聞いておりますけれども、新しい線は出ておりません。理屈の上から申しますと、ただいまお話しのように、限度額が法定されるわけでございますので、その点から見て料率は下がってもいいのではないかという算術があるかもしれません。他方では、やはりこの同じ法律無過失責任制度というものがはっきり導入されるわけでございまして、その点から言えば上げてもいいという算術もあるかと思います。いずれにせよ、PIは一種のクラブでございますから、一時何がしか上げるなり下げるなりしてみましても、実際にこの新しい制度のもとでその後いかなる支払いがなされるかということで長期的にはこの数字が決まるものだと思います。さしあたっては、結論は最初に申し上げましたようにはっきりしない、余り大差ない線に決まるのではないかというのが見通しでございます。
  23. 塩出啓典

    塩出啓典君 この責任制限金額は、やはり物価がどんどん上がってくれば当然物価にスライドして上げていかなければならないと思うわけですが、そういう条項はないように思うわけですけれども、今後これはどうなりますか。やはり物価が上がってくれば当然この責任制限金額というものも上げていかなければ被害者の方は守られないようになると思うのです。その点はどうなっていますか、これも簡単に。
  24. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) この三条約におきましては、一応金フランということで定めているわけでございまして、特に物価に見合うスライド制というものを規定しておりませんので、その点はもし非常な物価変動貨幣価値変動というものがございました場合に改めて考えなければならない問題であろうと思います。
  25. 塩出啓典

    塩出啓典君 国際基金にはいわゆる免責条項があって、戦争とか動乱あるいは軍艦政府の非商業的役務に使用されている船舶から油が排出されたための被害あるいは損害タンカー事故によって生じたということを証明できない場合、そういう場合は国際基金免責をされる、そういうときはもう払わなくてよろしい、こういうようになっておるわけでありますが、そういう場合はどうなるのか、被害者は泣き寝入りになるのか、特にあわせて、わが国においては油のたれ流しによる漁業被害というのは非常に多発をして、決して減ってはいないと思うのでありますが、その中でいわゆる原因がわからない場合が非常に、ときどきある。何年か前にも日本海で油がだれかが捨てまして島根県の沖に大被害を与えるとか、こういうような事件が多いわけですけれども、そういう場合はどうなるのか、どうなっておるのか、これは国内法国際基金条約立場、両方から説明してもらいたいと思います。
  26. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) 御指摘のように、国際基金に請求をいたしましても、補てんをしない場合というのが条約に定められております。戦争、内乱その他のそういったことによって生じた場合、軍艦または国により所有されもしくは運航される船舶事故が発生した場合、最後原因者がはっきりしてない場合という考え方でございます。この戦争云々は、これはこの種の条約なり法規なりというものに関する一般的な考え方がここでも適用されておるというふうに承知しております。  また、国云々の問題は、これは国の処理に任せられるということかと思いますが、御指摘原因不明云々の問題は、これはやはりここで申します加害者というものがはっきりしている場合の責任関係について、条約なりあるいはこれに関連する制度なりというものが今回新たに取り決められようとしているわけでございまして、いわば別個の問題かと思います。  御指摘のように、日本におきましては、このような原因者不明の油濁損害というものが現実にいろいろとございまして、いま御審議いただいております条約考え方とは一応別に、それはそれとして、いろいろと検討されておることは御承知のとおりでございます。その点につきましては、ことしの二月ございましたか……。
  27. 塩出啓典

    塩出啓典君 これはそのためにわざわざきょう水産庁から来ているからそちらで答えてもらわぬと……
  28. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) その漁業救済基金につきましては、水産庁から御説明いただきたいと思います。
  29. 森川貫

    説明員森川貫君) ただいま御指摘のございました国内的な問題としての問題でございますが、原因者不明の油濁によります漁業被害対策につきましては、近年漁業被害が多く発生している現状にかんがみまして、運輸省環境庁等関係省庁と協議し、関係都道府県、経団連あるいは漁業者団体協力を得まして、ことしの三月、暫定対策といたしまして、原因者不明の油濁による漁業被害救済する財団法人漁場油濁被害救済基金を設立しております。同年四月から、同基金によりまして原因者不明の油濁により被害を受けました漁業者救済事業を開始さしておりますが、同基金によります救済事業は、原因者不明の油濁により汚染されました漁具、漁船、漁獲物等損害及び漁場油濁による休業の損害等に対しまして救済金を交付する。また、原因者不明の油濁による漁場汚染の防除、清掃費を助成するものでございます。  なお、本基金は二年間の暫定措置でございますので、現在関係省庁と協議しつつ、今後の制度化につきまして検討中でございます。
  30. 塩出啓典

    塩出啓典君 時間がありませんのであと省略しまして、ちょっときょうは海運局長もお見えでございますので、本四架橋に関する、いわゆる海運業界に対する打撃を与えるという問題について二、三お聞きしておきたいと思うんであります。外務大臣もお越しですけれども条約の方は何も質問なくて申しわけないんですが、これはまあひとつ……。  先般、大三島を着工するということで、運輸省あるいは建設省被害を受ける船に対していろいろ覚書のような文書を出しているようでありますが、いわゆる橋ができることによって被害を受ける船舶の問題について、運輸省あるいは建設省文書では、調査会調査促進を図る、旅客船問題調査会促進を図るとありますが、これは大体いつごろまでに完了する目標であるのか。簡単に、いつまでとか、期限は決まってないとか、そういう答えだけでいいです。
  31. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) 御指摘調査会調査結論は、公団の方から、三月までには全部できるだろう、部分的にはその前にも結論を出したいというふうに聞いております。
  32. 塩出啓典

    塩出啓典君 調査会調査結果等を参考にする、こういうように文書にありますね、旅客船協会に出した文書の中に。この調査会調査結果等という「等」の中には、旅客船協会提出本四架橋の影響による旅客船事業対策要綱も重要な資料として尊重するということも含むのかどうか。
  33. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) 含みます。
  34. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから、建設大臣あるいは運輸大臣の十月三十一日の予算会委員会答弁、これはまあ旅客船協会に回答しているわけでありますが、その中で、雇用問題等に取り組む、この「等」の中には損失補償というような救済措置も、これはもちろん今後検討すべき問題ではありますけれども、そういうものも当然検討課題の中には含まれていると解釈していいわけですね。
  35. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) 御指摘関係業界救済といったようなことを含めまして検討するということは当然だと理解しております。
  36. 塩出啓典

    塩出啓典君 特に私は、船の立場である海運局長の見解として、いわゆる漁業の場合には漁業権というものがあって実際いろいろな補償がされているわけであります。ところが航路の場合は、いままでの架橋の場合は全く補償はされてないわけです。わずかの涙金が出されているぐらいであります。しかし、現実に橋ができて困るのは、魚の方は橋ができても海が広いわけですからこっちでとればいいわけですね、本当言えばこんなことを言えば漁業組合怒るかもしれませんけれども。ところが船というのは、実際に橋ができばれもう操業できない。また、本四架橋のように何年完成するとなれば、いまから船員はなかなか若い人は集まらないし、あるいは新しく安全のために設備投資もなかなか——何年か先になって船がなくなればもう要らなくなる、そういう熱意もなくなってくる。そうしてきますと、やはり航行の安全という点からこれは非常な不合理な、心配な点があると思うんです。そういう意味で、やはり架橋による海運業界損失というものが実除に受忍できない程度のものであるならば、これは当然やはり補償をして心配のないような措置をするということが非常に必要ではないか。これにはいろいろな関係業界反対するでしょうけれども、いやしくも海運局長というのは船舶業立場に立ち、そうしてお客さんの安全輸送というものに責任ある立場にあるわけですから、そういう意味で当然新しい立法措置も必要になってくると思うんです。これは立法国会がやるわけですから、海運局長にやれというんじゃありませんけれども海運局長としてもそういう方向に立って努力をする決意があるのかどうか。これあなたにやれというんじゃないけれども、努力をするかどう、このことだけ聞いておきます。
  37. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) 御指摘のように、海運局長立場にございます者は、ただいまいろいろと御指摘になりましたような、本四問に橋ができることによって事実上いろいろな被害をこうむる、現在そこの旅客定期船事業を行っている人、あるいはその上で関連して働いている人の苦しみ、悩みというものを伺う上で、各役所のいろんな立場の者の中で最も第一線で身近にそれを伺う立場にある者だと承知しております。  御指摘のように、この問題につきましてはすでに大臣が総合的な対策検討するというふうにおしやっておられます。またさらに、先ほど魚云々のお話がございましたけれども、公共事業の遂行に伴っていろいろな権利というものをどういうふうに考えていくかということにつきましては、個々の役所のそれぞれの立場というものをいろいろと検討し合いまして、国としても総合的な対策というものが立てらるべきものだと承知しております。  私は、最初に申し上げましたように、役所の中では最も身近にその人たちの苦労、苦しみというものを聞く立場にあるということを自覚いたしまして、大臣がすでにお示しになっている方向にのっとりまして最善の努力をいたすつもりでございます。
  38. 塩出啓典

    塩出啓典君 やっぱり大臣よりもあなたの方がより近いわけだから、大臣の言うとおりやっておるんじゃだめなんですよ。大臣を動かしていくのが窓口なんだから。大臣になるといろいろほかの関係もあって政治的に配慮しなければいかぬけども、そういう意味で、これは私は決してむちゃなことじゃないと思うんです。現実法律がないから補償できないというんでは法律つくればいいんですからね。  やはり、瀬戸内海においても今日まで長年にわたって営々として庶民の足としてがんばってきたわけですから、それがもう橋ができたから、はいそれまでよというんじゃ余りにかわいそうですし、そういう人たちが安心して最後まで仕事に励めるような、そういう法律体系というものをつくるために、われわれも努力しますけれども、やっぱり一番関係のある海運局長がもっともっと真剣になってそういうおざなりの答弁じゃなしに、本当に旅客船業者の気持ちをやっぱり人間的にくみ取って、そういう立場でひとつやってもらいたいということなんです。もう一回答弁してもらっても余り期待のできる答弁なさそうですけれども、まあしかし最後ですから、御答弁いただきたい。
  39. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) ただいまの先生のお言葉を身にしみて承知いたしました。渾身の努力をいたすことをお約束申し上げます。
  40. 立木洋

    ○立木洋君 海上航行船舶所有者責任制限に対する国際条約は、一九五七年ブラッセル第十回会議で成立した。その当時は日本政府としては棄権されたわけですが、先ほど話も出ましたけれども、十八年間、今日までおくれてきておるという事情について、伊達さんの方から国内法の充実という問題が提起されておりますけれども、海運界の特殊事情というふうなことも問題であったんではないでしょうか。海運局長、どうですか。
  41. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) 先ほど外務省から御説明ございましたが、確かに五七年条約が採択された時点におきましては、日本海運業界はこの条約を直ちに日本国が批准するということにはきわめて消極的な状態であったということは事実でございます。それは五七年と申せば、昭和に引き直せば昭和三十二年でございます。戦後の日本の海運がいわば国の助成を得ていろんな復興の緒についたところでございます。また、当時海運市況は朝鮮動乱以後非常に不況の時期を迎えておりまして、昭和三十二年当時の日本海運というものは、量的にも質的にも、さらに経理的にも非常に異常なる状態にあったということは申せるかと思います。そういった事情のもとで、直ちに国際的なトン数を基準にした金額責任主義に移行するということにつきまして、日本海運業界が非常に消極的であったという事情は、そういった背景があるわけでございます。  先ほどさらに法務省から御説明がございましたように、昭和四十二年でございましたか、運輸省の方から法務省の方にこの条約の批准並びに関連する国内法の整備についてお願いしたいということを申しておりますけれども、いま私が御説明申し上げましたような日本海運業界の消極的な態度というものは、昭和四十二年ごろに法務省に運輸省が批准の準備についてお願いをした時点におきましてはほぼ解消した。逆に申せば、御承知のように、昭和三十九年に大型外航船舶につきましては例の集約合同をやりました。その後の日本の海運というものは比較的順調に発展してまいりました。それらの会社の経営というものも、もちろんいろんな問題でございますけれども世界的な他の国との標準比較におきましても突拍子もなく悪いという状態から脱去しておった、そういう時点が昭和四十二年という時点であるというふうに理解されます。  現在では、先ほども御説明申し上げましたように、これらの制度というものは、すでに保険その他の制度でもって日本船主も事実上こういったものを前提にした各種の私的な保険制度というものの中に組み込まれておりまして、これでもって経営がどうこうというような意識は全くないものと承知しております。
  42. 立木洋

    ○立木洋君 制度としては確かにいままでとっておった委付主義よりも金額責任主義の方が合理的だというふうに考えられると思うんですが、しかし、問題は金額ですね。これは物損がトン当たり一千フランで、人損がトン当り三千百フランというふうになっているわけですが、これは決められた当時としては妥当な金額であったというふうに考えられますけれども、もうすでに十八年間たった。そうすると、現在の時点で見ますと、この絶対額というのはきわめて低いんではないかというふうに考えられますけれども、その点いかがでしょうか。伊達さん、いかがですか。
  43. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) わが国が現在適用しております委付主義のもとでは、船価の変動でございますとか、船舶の新しい古いということによって被害者の受ける補償額が不安定である、そういう意味から金額主義ということは、先ほど先生も御指摘になりましたように、非常に合理的なものであるということは言えると思います。ただ、確かに責任制限額というものが現在の日本の国内で行われております他の損害賠償というものよりも低いということは事実であると思いますけれども、それもやはりPI保険でございますとかということによって実際上船主の側が責任制限を主張することなく補てん——被害者の保護に万全を期すということを心がけるというふうに聞いておりまして、実際に問題が起こった場合には、この法文の規定、この条約規定による賠償額より以上の補償被害者に払われるようになるであろうというふうに私ども承知しております。
  44. 立木洋

    ○立木洋君 十八年前の平均船価と現在の平均船価はどれくらい上昇していますか。
  45. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) 円なりドルなり、つまり金でない単位ではかりましたところで、そうでございますね、はっきりしたデータはいま持ち合わせませんが、トン当たり二倍強かと思います。
  46. 立木洋

    ○立木洋君 やはりさっき伊達さんが言われたけれども、船価はそういうふうに上がっているわけですね。実際に物価が上昇しておる。そうしていま世界の趨勢というのは、こういう、たとえば人命に損害を与える危険が生じたような場合の補償というのは、たとえば航空の関係にしても、いろいろな交通の関係にしても、どんどんその補償額というのは上昇している、上げられているという状態にあるわけですが、この条約の中では物価によるスライドというのが規定されていないわけで、十八年前に規定された金額からいえばきわめてやはり絶対額が低くなっているという事実は認めなければならないんじゃないかと思うんですよ。ですから、外務省考え方としては、やはり当然人命を尊重し、物損なども完全に補償されるような方向に日本政府としては積極的に提唱していく、そういうようなお考えがあるのかないのか、大臣、一言お答えいただきたい。
  47. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) おっしゃいますとおり、十八年たちますといろいろ事情が変わることは確かにございます。それで事故の態様によりましては、これじゃ被害者に対する補償が不十分ではないかという声が各国の間でももうすでに出ておりまして、IMCO、政府間海事協議機関というのがございますけれども、その委員会でもって、法律委員会ですでに実は二回にわたってこの条約改正問題について審議が行われているわけでございます。今後さらにその審議を続けまして明年の終わりころに、場合によりましてはその条約改正会議が開かれることになるかもしれません。そういうコンテクストにおいていろいろこの問題も議論されるんではないかと思いますが、まだ現在の段階では責任限度額を幾らにするかというような具体的な改正案は出ておりませんけれども、そういう方向に向かっているということでございます。
  48. 立木洋

    ○立木洋君 一言で大臣結構ですから、やはりそういう人命を尊重するというふうな、十分に損害補償できるような、事故が起こらないのが一番いいわけですが、そういう問題に関して改正が行われるような時点で、それをまた待つのではなくて、日本政府としてはどういう態度で臨んでいかれるのか、その点だけお尋ねしておきたいと思います。
  49. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど国連局長からお答えを申し上げましたような動きが関係各国にもあるようでございますし、わが国の場合、確かに一般的に国の経済力と申しますか、かなり上がってまいっております等々から考えまして、現状をさらに改善しなければならないし、し得る余地があるのではないかというふうに考えます。
  50. 立木洋

    ○立木洋君 次に、環境庁の方おいでになっていますか——わが国の周辺の海洋汚染状況、発生件数、去年のデータでも結構ですが、どれぐらいあって、その排出源、種類、発生の原因等々について、簡単に経過を説明していただきたいです。
  51. 西村純幸

    説明員(西村純幸君) 日本近海におきます海洋の汚染状況につきましては、実は外航タンカーなどから排出されますバラスト水とかビルジなどの廃油によるものが主でございますが、実はそれらに関しましては海上保安庁の方で四十六年から調査をやっておりまして、そちらの方からの資料を入手しておりますのでありますけれども、すぐにお答えいたしかねるんでございますけれども、ちょっと時間いただけますれば。
  52. 立木洋

    ○立木洋君 結構です、私の方で聞いておりますから。  お聞きしたところでは、四十九年度の場合に海洋汚染の発生件数が二千三百六十六件あるというふうにお聞きしておりますし、これは昭和四十年に比べて五倍強の発生件数になって大変なものだ。その種類についてもお聞きしたら、四十九年度の実績では油によるものが千九百八十五件、全体の八四%を占めている。船舶によるもので五一%、千二百十四件というふうになっているわけです。それで原因不明のものが九百五件で全体の三八・三%を占めています。大変な原因不明のものがあるわけですが、先ほどもこの点で問題が出ておりましたけれども、つまり油を流した船舶が不明の場合、原因者不明の場合、汚濁の損害についての賠償の対象になるのかどうなのか。そしてその補償程度が実際上どの程度充当されているのか、そこら辺はどうでしょう。
  53. 後藤茂也

    政府委員後藤茂也君) 先ほども御説明申し上げましたけれども、ただいま御審議いただいております条約並びにこれに関連する国内法、これは加害者がはっきりしておるものの責任に関連する条約なり法律なりございまして、原因者が不明の場合の救済補償の問題は一応別個の問題かと思いますけれども、したがいまして、ただいまのこの条約との関連で申し上げますならば、原因者不明の場合には補償の道はないということでございます。  漁業被害につきましての基金のことにつきましては、先ほど水産庁から御説明のあったとおりでございます。
  54. 立木洋

    ○立木洋君 その点どうもまだはっきりしないのですけれども……。  次に、海洋汚染わが国の周辺で行われている件数について見た場合に、外国船の場合と日本船の場合との比率はどんなふうになっておりますか。
  55. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 四十九年におきます外国船舶による海洋汚染の発生件数は三百六十六件でございます。全船舶に対します比率は三〇%を占めております。
  56. 立木洋

    ○立木洋君 外国船がですか。
  57. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) はい。
  58. 立木洋

    ○立木洋君 海上保安庁の資料によれば、以前汚染の中心は日本船だったけれども、外国船によるケースの発生率というのが非常にふえておる、日本船の八・五倍に達しておるというのが四十九年度の実績で出ておりますけれども、そういうことですね。
  59. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) さようでございます。
  60. 立木洋

    ○立木洋君 それでは、昨年の十月にロンドンで開かれました海洋汚染防止のための国際会議について、問題になりました旗国主義と沿岸国主義の問題について、汚染防止の問題に関連する責任の問題について、これについて日本政府はどういうふうな態度をとったんでしょうか。
  61. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) わが国といたしましては、公海上の海洋におきます船の国際法違反行為というものに対しての取り締まりというのは伝統的に旗国が行うべきである、これは世界の大多数の国が採用している原則でございまして、わが国としても根本的には旗国主義ということで方針を定めているわけでございます。ただ、現実の問題といたしまして、ただいま先生が御指摘になりました国際会議のほかにも、汚染問題というものは海洋法会議におきましても問題となっておるところでございまして、そこでやはり沿岸国が若干なりとも海洋汚染というものに対しての権限を領海よりもさらに広い幅にわたって持ちたいという要求が沿岸国側から出ているわけでございまして、沿岸国は、当然のことながら沿岸国の法令というものをそこにまで及ぼして航行船舶を規制しようという考え方がございます。これは程度の問題でございまして、余りにも国内法というものが国際法といいますか国際的な基準というものを離れまして厳しいものになれば国際航行というものを阻害する要因になりかねないということことがございますので、なるべく、妥協でございますけれども、旗国主義を原則としつつ、他方におきまして沿岸国の要望にも沿い得るような解決策を見出したいということで各国が努力をしているわけでございまして、わが国もその努力に対しては反対ではございませんで、むしろ協力をしているわけでございます。  問題は、やはり国際基準というものが沿岸国によって守られていくということは一つの条件として、その条件が受け入れられるのであるならば、ある程度沿岸国の管轄というものを認めてもよろしいのではないかということでございまして、基本は旗国主義ということでやっていきたいというのが日本政府立場でございます。
  62. 立木洋

    ○立木洋君 旗国主義が大勢だというふうに言われましたけれども、先進諸国の中では旗国主義というのは大勢を占めているということはそのとおりだと思うんですが、実際の状況を見ますと、船が出て行って、遠く離れた外国の沖で汚染が発生したというふうな場合、やはり旗国主義といってもなかなか実態がわからないし、取り締まりも十分にいかないし、その補償についてもなかなか行き届かないというふうな状態で、処理される件数というものはきわめて少なくなる。実際には沿岸国の利益が守られないというふうな状態があって、いわゆる発展途上国その他の国々ではそういう問題に対するきわめて強い要望が出されている。やはり沿岸国主義を中心としながらその権利を認めるべきであるというふうな希望というものが強く出されてきていると思うのですが、日本の場合でも、いわゆる先進国であり海洋国であるわけですが、一方ではこういう外国船によって日本の沿岸、海洋に汚染が発生する状態というのが日本船の八・五倍にものぼるというようなことになってくると、これは相当考えないと日本の沿岸が外国船によって大変荒らされるというふうな事態は今後ますます激しくなる。だから、それは妥協点を見出すべきであるというふうなお話でありますけれども、その点についてはもう少し日本政府としては強く主張してもいいんではないでしょうか。
  63. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 確かに先生の御指摘のとおりでございまして、私の先ほどの御説明の中に一点落ちておりましたのは、日本も島国、国といたしまして海に囲まれておる、その意味におきましては、後進国だけがこの沿岸国主義を主張する、利点を独占するわけじゃございませんで、日本もある程度日本の周辺を取り巻きます海洋の保護といいますか、環境保全ということに関しては関心があるわけでございまして、したがいまして、旗国主義を原則としつつも、やはり沿岸国の管轄というものもある程度及ぼしていくことが必要ではなかろうかというふうにその点からも考えているわけでございます。
  64. 立木洋

    ○立木洋君 日本外務省考え方として常に感じる点があるわけですが、いわゆる国際会議での大勢の流れの中で日本ではどういうふうにしていこうか、こういうふうに考えていく考え方というのが非常にあるんではないか、日本日本としての利益のある立場からやはり積極的に主張し、それが国際的にはどういうふうな結論を得るかどうかは別としながらも、日本としてはこういうふうな点を考えてこういうふうに主張する、それが国際会議の中で認められるかどうかということは別の問題だけれども、しかし、日本としてみずからの権利を主張しないで、大勢がどうなっていくかということによって自分としてはその中で適当な形で処置していくというふうな態度というものは、私は余り適当ではない。これはいま言われた島国であって外国船が来て汚染件数が発生する、日本の沿岸が大変な汚染の状態になるということになっていくと、水産資源の問題にしても、その他にしても、大変な事態が起こってくるわけです。ですから、こういう汚染の問題に関しても、旗国主義という問題と沿岸国主義との折衷をとるというだけではなくて、いわゆる会議の中でも問題に出ておりました汚染防止ゾーンなんかの問題等々もやはり積極的に見解を述べていくというふうなことも、一面では私は必要ではないかと思うのです。  これは別の問題になりますけれども、たとえば海洋法会議で十二海里の問題も何回か問題になりましたし、その場合の日本政府立場としては、国際的な趨勢が領海が十二海里である。その場合に世界の趨勢が決まってから日本もどうするかというふうにする。しかし日本としては十二海里にするのかどうなのか。やはり積極的に主張して国際会議の中での合意点を見出していくというふうな努力をすべきであって、そういう国際会議に臨むあり方としては、やはり今後考える点もあるのではないかと思うのですが、まず最切に、その汚染防止ゾーンなんかの問題についての考え方ももうちょっと聞かしていただきたいわけです。
  65. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 汚染防止ゾーンについてでございますが、これは海洋法会議でも問題となっているところでございまして、先生のお言葉はございましたが、汚染防止ゾーンをひとつつくろうではないかということは会議におきましても日本側が主張しているところでございまして、先生よく御承知のように、しているところでございます。  ただ、この汚染防止ゾーンにおきます旗国主義とか沿岸国主義ということにつきましては、これはやはり処罰の対象となるいわゆる刑事管轄権のことが論じられているわけでございまして、その場合の補償と申しますか、損害事故に対する、被害者に対する補償というような問題は、これはもうそれぞれの国の民事的な救済手段によるということで、会議での対象となっていないわけでございます。会議におきまして旗国主義であるとか沿岸国主義であるとかという場合には、処罰をするのがどこにするかということが主たる議論の対象となっているわけでございまして、その場合でございますと、日本はやはり、先進国もそうでございますが、むやみな国内法をつくられてその適用を受けた過酷な処罰を受けるようなことでは困るし、また、むやみな基準、非常に厳格過ぎる基準をつくられては困るという立場があるわけでございます。日本は、決して、その汚染防止ゾーンそのものに反対しているわけではございませんけれども、したがって、その場合に汚染防止ゾーンにおきまして、ある沿岸国の汚染防止ゾーンというものが決まりました場合に、そこで日本船が——どこの船でもよろしゅうございますが、仮に日本船といたしますと、日本船が汚染をしたということになる、しかも国際的な基準に違反するような汚染をしたということになりますれば、旗国主義と申しますのは、、その際、それを確かめた沿岸国はそれを停船したり調べたりするのはもちろんその沿岸国がやることは何もかまわないわけでございまして、ただ、それを処罰する際にはやはり旗国において行うので、沿岸国から旗国に通報をしてもらって、その船が旗国に戻ってきた際に旗国が処罰するということでやりたいというのが旗国主義の考え方であるわけでございます。そこのところが、汚染防止ゾーンをどのような範囲で、どのような基準に基づいて認めるかどうかということと関連して議論されているところでございます。
  66. 立木洋

    ○立木洋君 最後になるわけですが、しかし、現実に旗国主義で処置するといっても、なかなか現実にうまくいっていないという現状があるわけですから、やはり海洋国として日本の沿岸海洋の汚染の状態を完全に防止していく、この点では環境庁なども大分意見があるようでありますから、そういう点積極的に意見を受けとめて国際会議での態度、あり方というものはやはり改善していく必要があるのではないかと思うのでありますが、その点で最後に一言大臣にお答えいただけたらありがたいのですけれども国際会議日本政府代表として臨まれる場合に、先ほど私は海洋法会議の問題を例に引き合いに出したわけですが、いろいろ多くの会議に大臣出席されて大変経験を積まれているから私から言うのはあれかもしれませんが、少なくとも世界の大勢がどう動くかということの中で、最も日本立場として無理のないところに位置づけるという場合だけではなくて、少なくとも日本としてはこういうふうに考える、日本のそういう海洋汚染の問題だとかその他の領海の問題にしてもそうですが、やはりそれを積極的に主張し、それが国際会議の中で一致点が見出せるかどうかは別としても、積極的に主張しつつ、そして国際会議の中でのイニシアを発揮していくというふうな姿勢が私はもう一面では必要ではないだろうかというふうに考えるわけですけれども、その点についての大臣の見解を最後にお聞きして終わりたいと思います。
  67. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) まず、あることについて国際会議が開かれるという場合に、会議がまとまることがわが国の国益になるのか、るあいはまとまらない方が国益になるのかという問題が最初にあるわけでございます。まとまらない方が国益になると判断する場合があり得るわけですが、一般に、概してわが国がその会議に入っていこうとする場合には、まとまる方がともかく国益になると判断する場合でございます。その場合に、わが国国際的な地位が非常に上がってまいりましたので、ことに経済関係会議でございますと、大体、ヨーロッパがECという形になってまいりましたから、単位で数えますと、まあわが国とアメリカとECと、ちょうど三本の柱のような、ことに経済問題ではそういう立場になる場合が多くなってまいりました。そういう意味では、実は比較的国民各位がそれほど親しくは御存じないことであるかもしれませんが、国際会議における、ことに経済関係国際会議におけるわが国責任というのは重くなってまいっております。そういうことは私ども常に意識もし、また、そのように自戒もいたしておるわけでございます。したがって、まとまる方がいいというふうに考えましたときに、わが国がそのためにやはり努力をしなければならない一つの大きな柱に最近はなってまいっておるというふうに思います。その中で、しかし、日本としては日本自身の国益に一番——少し平らな言葉で申せば一番得をする方法は何かということを常に考えていくということになるわけでありまして、これはそういうふうに考えておるつもりでございます。  ただ、そういう場合にどういう段階でどういう主張をすることが一番日本にとっていわば得になるか、全体を壊さずに一番得になる方法はどういう段階でどういうことかと、何を言うことかというのは、その都度その都度、これは会議の性格、全体の流れ、全体の流れとわが国立場との距離というようなもので違っておりますので、そのときどきに判断をしてまいったつもりでありますし、今後もしてまいるつもりでございます。  確かに立木委員の言われるような問題が、わが国の発言力が大きくなってまいればまいるほど、最近はそういう場合が多くなっておりまして、何もわが国だけが飛び離れた立場をとることを恐れているわけではございません。しかし、全体としてまとまる方が大きな国益に沿うと考えました場合には、ある程度、まあ十言いたいものは七つぐらいのところかなという見当をつけなきゃならない場合もしばしばございます。ここ何年かの例を見まして、そのような国際会議わが国がきわめて不利だという結論を受諾してまとめて帰った例はないように私どもは思いますけれども、ただいま言われましたようなことは常に気をつけてまいるつもりでございます。
  68. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですからこれより直ちに採決に入ります。  まず、海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約締結について承認を求める件を問題に供します。本件に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  69. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約締結について承認を求めるの件及び、油による汚染損害補償のための国際基金の設立に関する国際条約(千九百六十九年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約補足)の締結について承認を求めるの件、両件を二括して問題に供します。両件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  70. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 全会一致と認めます。よって、両件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、三件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     —————————————
  72. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 次に国際情勢等に関する調査を議題とし、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  73. 戸叶武

    戸叶武君 宮澤外務大臣は十二月十六日から十八日まで三日間、フランスで開かれる国際経済協力会議に間もなく出席のために日本を出発するのですが、この問題に関しては先般も政府の御意見を承っておるのでありますが、なお、この際四点ほどの問題点を特に官澤外務大臣にお尋したいと思います。  宮澤さんは、今日の世界は新しい秩序を求めつつ変動の過程にあるという現実の客観的認識については私たちと共通なものを持って降ります。私は、この現実の共通認識の上に立って一九七三年十月の石油ショック後の変化、これに世界各国がそれぞれの立場から対応してまいりましたが、中東石油資源国の石油値上げ攻勢によって、その後二年間に石油の値段が四倍も値上がりしたのが事実であります。この物価全体に及ぼすところの石油を中心とする変動に対して、先進国の消費国だけでなく 発展途上国において石油資源を持たない国にも大きな私は衝撃を与えていると思うのであります。この問題が今度はきわめて具体的、現実的に話し合いが進められるのだと思いますが、パリ郊外のランブイエ主要六カ国首脳会議における国際経済協力の方向づけは、通貨、為替の安定の基本的な合意を得た点において相当の成果がありましたが、今回出席する会議においてどのような成果を期待しているか、それをきわめて端的に承りたいと思います。
  74. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) このたびパリで開かれることになりました国際経済協力会議に何を期待しているかというお尋ねでございますが、私といたしましては、この会議が開かれるに至りましたきわめて長い経緯、昨年の二月ごろ、消費国がワシントンに集まりましたころからの長い経緯がございます。ともかく、消費国側もいわゆる対決という姿勢だけでは事態の解決はできないということにほぼ意見がまとまってまいったわけでございますが、それにもかかわらず、このたびの会議を開きますような気持ちでいたしました準備会議というものが、一ぺんは失敗に終わったというような経緯もございますので、ここで初めて二十七カ国の三つのタイプに属する国が閣僚を送って一堂に会すわけでございますから、ともかく会議がまず成立をするということが最も大切なことであろうと思います。  次に、会議が成立をいたしまして、あらかじめ準備の段階で定めました四つの委員会が発足をするということ、その四つの委員会に閣僚会議が今後いたすべき作業についての指針、マンデートをみんな合意の上で与えることができて、そして四つの委員会が活動を開始する、そういうところまで今回は持っていきたい、まだ幾つか実は未確定要素がございますために、そこまでいけるかどうかということにかなりの努力を要するのではないかと存じますが、今回そこまで持っていけまして、四つの委員会がマンデートを得て活動を開始する、そして一定期間に閣僚会議にその報告をするというような足並みが、消費国、産油国及び非産油の発展途上国の間でそろいましたら、今回の会議のまず第一の目的は達することになろうと思っております。
  75. 戸叶武

    戸叶武君 石油ショック以来の二年間の国際的な経済会議は、それぞれの足取りをもって私は前進してきたのが事実であると思います。今回の会議は、来年一月に開かれるジャマイカのIMF暫定委員会の討議を経て、国際的な了解事項へ持ち込むものと思われますが、このジャマイカにおける会議に、具体的にはいわゆる通貨の安定を目指しての固定相場制を主張するフランスと変動相場制を固執した米国との妥協、話し合いが、歩み寄りがさきの会合においてなされた、それを受けての前進でありますから、石油ショックをめぐって揺すぶられてきたこの経済界の変動を安定させて、その上に立って為替相場の安定に努力して、いわゆる貿易の発展というものを期待されなければならないのですが、それに対する見通しはどうでしょうか。
  76. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの御指摘の問題は、主として先般のランブイエ会議の前後におきまして見られました発展についてのお尋ねでございました。  そこで、ランブイエ会議の前後に一応まとまりました点は、御説明の便宜上二つに分けて申し上げた方がよろしいかと思います。  第一点は、今後各国間の為替がいわゆるスペキュレーション等々、不規則な動きによって乱高下をすることを防ぎますために関係各国が従来よりも密接に連絡を取り合い、必要があればおのおのの国が必要と考える措置をとってそのような乱高下を防ごうではないかという、いわば紳士協定とも申すべき合意でございます。このことは、今後の為替相場の乱高下を防ぎ、安定化を図る意味意味のある協力の紳士協定であろうと思います。  他方、それとの関連ももちろんございますが、この際、外国為替というものが固定相場を本則とすべきかあるいは変動相場を本則とすべきかという、まあ従来主として米仏間で行われておりました論争をたな上げと申しますか、終止符と申しますか、一応ともかくそのままにして、ジャマイカのIMFの暫定会議におきましていわゆる変動相場というもの、従来はIMFのたてまえの上ではごくごく変則的なものとしか認められておりません変動相場というものにも認知を与えよう、こういう二つのことがランブイエ会議の前後にほぼまとまりました合意でございます。  前者は、これはいつからでも行い得ることでございますが、後者は、IMFの規約の改正を必要とすると思われますので、一月にそれを確認をいたさなければならないことになると思います。  これらのことは、一応現実に行われておりますところのヨーロッパのいわゆるスネークとドルとの関係、あるいはわが国の円とドルとの関係等々、現実にいままで行われてまいりましたことを、さらに緊密な協力のもとに、しかもIMFの規約にもそのようなものとして認知をして進めていこうというのでございますので、従来に比べまして、国際為替の安定にかなり貢献をするのではないかというふうに考えております。
  77. 戸叶武

    戸叶武君 この石油ショック以後の国際的ないろいろな集いというものを目まぐるしく変わり、ネコの目のように変わっているというふうに見るのでなくて、やはりお互いに各国が苦悩しながら、一歩一歩前進しようとする努力の中に、変動期における歴史の歩みというものが世界的視野でやはりなされている、世界史の中における画期的な一つの私は外交の動きだと思うのです。それをやはりわれわれがはだで感じて、自国の利益を擁護するだけでなく、世界と共同の責任を持つという理念をここではっきり受けとめなければ、日本の外交というものは外交技術に堕してしまって、本当の意味の経綸というものがなくなってしまうと思うのです。  そこで、一番いま具体的な問題で世界を揺すぶっているのは、石油ショック以後におけるエネルギーの問題と、もう一つは食糧の問題であります。防衛の問題あるいは核兵器の制限の問題ももちろんありますけれども、いま当面している問題というものは、日常生活、経済生活に密着している石油と食糧が、いわゆる単なる戦略物資という以上に重要な政治を動かす課題になっているということに対する認識をやはりはっきりと持たないと、私は、日本というものが世界の潮流からおくれていってしまうと思うんであります。  たとえば石油の問題でありますが、この前の会議において三木さんは相当張り切って、要するに発展途上国、特に東南アジアを含めてのこの人たちに何らかの具体的希望を与えなけりゃならぬというあせりと、また腹案を持って臨んだが、それはほとんど空発に終わった。おそらくはむなしさを感じたでしょう。しかし、一番基本的なものはやはり通貨の安定であります。そういう点においてフランスとアメリカとの合意というものは、単なる通貨、為替面における合意だけでなくて、今後の国際政治の中に経済の問題から大きな貢献をした。そういう点において、一九三三年のロンドン世界経済会議の失敗から見れば、私は大きな世界の物の考え方の前進を意味していると思うんです。  そこで、この石油の問題でありますが、今回の会合においては、先進国の消費国だけでなく、やはり原油生産国及び発展途上国で石油を持たない国、それぞれの悩みがそこに出されると思うのでありますが、具体的にそこではどういう問題が一番重点的に取り扱われるのですか。
  78. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先進国の側にも問題のとらえ方に実は二つの面があるわけでございまして、一つは、とにかく長いこと、一九七三年の十月以前、いわゆる一ドルとか二ドルとかいう価格で石油をいわば買いたたいておったということについて産油国がこのように反発をしたことは理解ができる。彼らとしては、自分たちの有限な資源が枯渇する前に工業化を図りたいと考えていることはもっともではないかというふうに考える立場がございます。国によりましてこれは濃淡がございますけれどもわが国などはその点についてかなり深い理解を持っておる国と申してもよろしいのではないかと思います。  他方でしかし、その結果として過去二年、非常に消費国が困難をいたしましたことも、これも事実でございますから、今後このような波乱を繰り返したくないと考えることにも無理からぬところがございます。そのような点を強調する、これにも非常に濃淡がございまして、国によって多少の相違がございます。先進国は、概して申しますとそのような二つの、いわば多少相反する面もあるような濃淡の立場をおのおの持っておるわけでございますが、ともかくしかし、対決によってはこの問題は解決できないということがわかりましたがゆえに、このたびの産消国会議にまでたどりつけたわけでございます。その精神は私は大切にいたさないといけないと思います。  これに対しまして産油国側は、先ほど申しましたような有限な資源の枯渇以前に工業化を図りたいというもっともと思われます主張との関連で工業製品の価格、あるいは場合によりましては食糧を含めてもよろしいと思いますが、それがインフレートする限りにおいて、石油の価格がそれとスライドをするのでなければ、自分たちの保有する外貨が事実上目減りをする、あるいは自分たちがこれから売ろうとしている資源の価値が事実上目減りをする心配があるということから、工業製品価格と石油資源、あるいはその他の一次産品との何かの価格上の関連、その一番はっきりした主張はインデクセーションというような主張になるわけでございますが、そのような立場を基本的に持っております。及び、現在すでに彼らが保有するに至りました外貨そのものの目減りも、これも何かの形で補償をしてほしいという主張もまたあるわけでございます。それは主として産油国の立場でございますが、非産油の発展途上国も自分たちの産出するところの一次産品が、工業製品の価格がインフレートすることによって事実上それに何かの形でスライドしない限りは、自分たちの経済力が相対的には落ちていくという主張でございますから、そこで、その間にも何かのインデクセーションを求めるというような動きになってきておるわけでありまして、それらのことが、先ほど申し上げました四つの委員会のおのおのにおいて、消費国、産油国、非産油の発展途上国の間で、これから一定の期間の間に問題についての答案を書きまして、それを閣僚会議に上げてくる。そういうための最初の幕あきがこのたびの閣僚会議になるというふうに考えておるわけでございます。
  79. 戸叶武

    戸叶武君 芝居でも幕あけというのはきわめて大切でありますが、第二次世界大戦を世界経済会議の失敗によって食いとめることができなかったというあのロンドン会議の苦い経験の上に立って、今度もフランスのジスカールデスタン氏のリードのもとにあのような成果が一応上げられたのでありますが、あの成果の上に立って、来年の大統領選挙もあることですが、フォード米大統領は新太平洋宣言を発しましたが、やはりあの中の具体的な問題の中に、たとえば石油の問題でも、石油は中国から相当産出されるのだから、日本は中国と石油問題に対しては密接に結びつくであろうというような予測を具体的に出しておりますが、この日本石油政策というものも一つの具体的な問題を中心として世界の大消費国として注目されておるのでありますが、日本石油はいままでアメリカに頼り、あるいは中東に頼り、それから今度中国と結びつく、また石油産出国として隣にソ連もある、こういうような石油問題をめぐっても日本の結びつきの問題が世界の非常な注目をいま浴びているのが事実でありますが、外務大臣は、この石油問題をめぐっての外交の展開というものを今後どういうふうに考えておりますか。
  80. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 本来、わが国石油政策の基本の一つに、供給源をなるべく集中せずに世界各地に求める、拡散をしておいた方がいいという考え方が伝統的にございまして、そのことは私は正しいと考えておりますが、ことに一九七三年の十月以来、いわゆるOPECの動きが活発になりまして以来、やはり日本としてはなるべく、できるだけ広く可能な地方に供給源を求めておくことが望ましいということがますますはっきりいたしてまいったと思っております。それに加えまして、世界どの国であれ、新しく石油資源が開発されますことは、それだけ供給量が総体としてはふえることになるわけでございますから、石油の需給から申しますと、消費国であるわが国にはそのことは自然有利であると考えるべきであろうと思います  したがいまして、そういう背景の中で、ことに中国とわが国とは今後ますます友好を進めるべき関係にあり、また、中国自身が新しく開発された石油資源、さらにこれからも開発されるであろう石油資源に相当の重点を置いて考えておることが明らかでございますから、日中間の石油の貿易が増大いたしますことは両国の利益にかなうことであろうと考えております。  具体的な問題といたしましては、そのような中国の石油、現在まで供給され、あるいは最近の将来に供給されようとしております大慶油田の石油の輸出が、沸騰点の問題であるとか、あるいはパラフィンの含有量であるとかいう点で、わが国の精製設備にそのままそっくり合わないというような問題はないわけではございません。しかし、この点はわが国の設備に多少の変更を加えればよろしいのでありますから、将来供給量がふえていくということが望ましい——望ましいと考えますが、望ましいとすれば、それに伴うわが国側の受け入れの体制というものが一つあろうと存します。  他方で、短期的にはそのような中国の油質と似ておりますインドネシアからの輸入との競合問題が、これは不況に伴ってでございますが、ただいまちょっと起こりかけておる。この点には注意をしなければならないと思っておりますが、そういうような背景のもとに、概して申しまして、私は日本と中国との間に何かの形で石油についての多少長期的な話し合いでもまとまるのであれば、それは両国のために基本的には結構なことではないか、そういう話がまだ具体化をするというところまではまいっておりませんけれども、方向としては私は歓迎すべきことではないかというふうに存じております。
  81. 戸叶武

    戸叶武君 石油をめぐって、ソ連の方ではすでに日本との結びつきをずいぶん焦ったが、現実において中国と日本との結びつきの方が急速に今日具体化されている状態ですが、日本とソ連との関係は、日本政府は財界任せの動きをいままでしていたようでありますが、現状においてはどのようになっておりますか。
  82. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 日本とソ連との経済協力関係につきまして、ことに天然資源をめぐりましては財界の関心がここ十年近く非常に高うございまして、しかし、政府は任せておったというわけではございませんで、財界の相談を受けながら、必要な政府関係機関の資金的な援助等々は在来からいたしてまいっております。したがいまして、そういうベースの上で天然ガスの探鉱でありますとか、あるいは石炭でありますとかいうようなものについては、主として東部を中心に具体的に協力関係が進んでおりますし、また、木材、パルプ関係でも具体的に成果を上げつつございます。それに関連いたしまして、港の造成構築につきましても、わが国が手伝いをいたしたような経緯もございます。  ただ、いわれておりました西シベリアのいわゆるチュメニ関係の開発は非常に膨大な資金量が要りますことと、いろいろ将来に不確かな要因が余りにも多いというようなことから、わが国の経済界自身が事実上話を中断をして今日に及んでおるというのがほぼ大まかに申しまして現状でございます。
  83. 戸叶武

    戸叶武君 いま、日中平和友好条約がとうに結ばるべき性質のものであるが結ばれないでいるのは、覇権問題をめぐっての一つの中国の考え方日本政府考え方とが合意に到達してないからだということでありますが、政府も、この問題に対しては慎重過ぎるほど慎重な態度を持しておりますけれども、この間、フォード米大統領と中国側との会談においては、おのおのの考え方に違いはあるけれども、お互いの立場を理解する点にまで到達したかのような報告が後でなされておりますが、それに対して日本では、日本の受けとめ方はアメリカと同じような覇権問題に対する考え方だということを外務大臣は述べておりますけれども、アメリカと同じだと言っても、アメリカと日本とにはニュアンスの違いがあると思いますが、日本と同じ面と、アメリカと日本との違う面を具体的に示してもらいたいと思います。
  84. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) アメリカの外交政策とわが国の外交政策とが最も基本的に違っております点は、やはりおのおのの憲法から出ておると存じます。  すなわち、米国の外交政策の最も大きな柱は、米ソのデタントの推進ということであろうと思いますが、これはよく戸叶委員が御承知のように、力の均衡ということを基本の哲学にして核戦争の危険を減らしていこうという考え方でございます。そのような意味では、わが国はそういう軍事力を持たないということが憲法の基本の精神であり、国民のコンセンサスでございますから、そのような形での平和というものはわが国としては考えておりませんし、また、実現ができる性格のものでもない。文字どおり、わが国としては軍備らしい軍備を持たずにすべての国と対話を進め、友好を進めようという立場でございますから、この点は、米国の外交政策とわが国の外交政策がおのずから異なっております。これが一番大きな違いではないかと思いますが、もとより、その米国とわが国は安全保障条約を結んでおりますので、この両国は一番近い関係にあることは申し上げるまでもございませんが、平和のそういう維持の基本的な仕組みというものが違っておるということは申し上げてよろしいかと思います。  覇権問題について類似点を見出しておるのはどの点かということにつききして、先般のキッシンジャー氏の訪中、あるいは今般のフォード、キッシンジャー氏等の訪中を通じまして、米国と中国との間には、ソ連をデタントの相手として米国が信頼し得るかどうかということについての基本的な見方の違いは、これはそれとして、おのおのが認めて存在をしておるようですが、それにもかかわらず、いわゆる覇権主義に反対するという点に関して、おのおのの国の政策から、おのおのの国とも覇権を求めず、また覇権を求めるような試みに反対をするという点、並びに覇権を求める試みに反対をするというのは、世界全体どこの地域にもこれは通用すべき、適用されるべき考え方である、こういうふうに覇権問題について両国間に議論が行われておるように私は思いますので、その二点については、わが国が考えておる覇権主義の考え方と共通点があるのではないかというふうに、先般国会で申し上げたような次第でございます。
  85. 戸叶武

    戸叶武君 石油問題とともに、食糧の問題が戦略物資としてアメリカの外交の表面に出てきたのは、すでに数年前からのことでありますが、現実において、いまアメリカとソ連との関係において、ソ連が一九七一年のあの災害の後において最大のやはり不作の状況にあって、アメリカから大量の小麦なり飼料を買う、この問題はすでに両者の合意に到達したようですが、最近は輸送の問題で、アメリカの船を使うかソ連の船を使うか。アメリカ自身としては、海上軍事力を強化してきたソ連というものに対する警戒心があるし、アメリカとしては、伝統的に、日本に食糧援助のときにおいても日本の船は使わずにアメリカの船を使うという、この伝統的な考え方があるのが、それがぶつかって、この小麦の輸送に対してもいま問題になっている。  もう一つは、宮澤大臣が言っているように、核兵器、核戦争の危険をなくさせるための歩み寄りをしようとしている米ソ両国が、拡散防止条約の批准を一面においてアメリカは積極的に求めていながらも、アメリカはソ連のせい、ソ連はアメリカのせいのようで、おのおの覇権を維持すべく、アメリカ、ソ連以外の国に対しては拡散防止条約の批准を要請しているけれども、自国における軍事力というものを、力の外交の上に立って弱めることにはがえんじないという面があり、それを何とか打開しなければならないというのが、ことしの末におけるアメリカとソ連の会談というふうにこぎつけているように見えましたが、これも一月に延びたということでありますが、その間の事情はどういうふうに日本外務省は見ておりますか。
  86. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま御指摘になりましたのは、SALTの第二段階の見通しをどう考えるかということに関してと承りました。  私が聞いております限りでは、両国ともSALTの交渉をさらに進めなければならないという最終的な政治的な意思はあるというふうに考えられます。ただ両国とも、いわゆる軍当局から言えば、あまりに妥協を進めていくことは、お互いにお互いの軍は自分の国の安全体制を危くするという、職責上そういう考え方を当然しやすいものでございますから、歩み寄れる限度というものについては、両国とも内部においては政治と軍事との調和が図られなければならないという問題は、これは私は両国とも持っておると存じます。  それで、ただいまの段階は、これはもうよく戸叶委員が御承知のことでございますけれども、いわゆるソ連側におけるバックファイアと呼ばれるところの兵器、アメリカが開発いたしましたクルージングミサイルと言われるところの兵器、これが核兵器運搬の手段に果たして属するものであるか属さないものであるか、属すると仮にした場合に、その間について数量上のどのような協定が可能であるかといったようなことをめぐっての問題が、最終段階の一番むずかしい問題であるというふうに承知をいたしております。その間に、過去にできました協定についての違反があったとかなかったとかいうことについて、米国内にいろいろな議論がございますことも、これは米国側の一つの最近の事情になっておるわけでございますが、最近聞いております話では、先ほど申し上げましたその最終の問題について、何かの最終的な妥結を図りたいというふうな動きがございますわけですが、それが先ほど御指摘になりました、場合によっては年を越さなければ十分な準備ができないのではないかということになっておるわけでございまして、最終的にそのような政治的な決断が両国ができるかできないかというところに問題はかかっておるように見ております。
  87. 戸叶武

    戸叶武君 SALTIIに関する考え方及び米ソ両国が開発しつつある新兵器の問題にまで及ぶこのデタントの方向づけに対して、政治家が非常に苦悩していることはわかります。あのソ連のブレジネフの怪奇と思われるような言動でも、ライシャワーと軍部の指導者との対立においても、それを乗り越えて世界の政治家が、各国の政治家がどうやって平和をもたらしていくかといういま苦悩の時代だと思いますが、それを見てもわかりますように、表面に言っていることと動きとの中には、なかなか大きなギャップもあると思いますが、ただ、ソ連にしてもアメリカにしても、最高中枢部にいる人たちの考え方の中には、執念という以上に何か貫くものが私はあると思われるのです。それから見ると、三木さんの構想は非常にいいが、何か貫く精神がない、これは政治力の弱さから来ているんでしょうが、政治は、いま三木さんなり永井道雄君の苦悩の悲劇を見ているとわかるんですけれども、やはり高い理想を持つと同時に、現実の政治は力に依存しなけりゃならない。その力のコントロールをどういうふうにしてそこにユニティをつくるか、これが新しい政治家の一つの私はステーツマンシップだと思うのです。絵にかいたぼたもちでは腹がふくれない。やはり非常に生臭いものであるけれども、生臭さの中にやはり若干栄養分もあって、見場だけでなくて、国のため人類のためになるようなことを世界は求めているんじゃないかと思いまして、一つの事例ですが、すべて石油なりあるいは食糧なり、あるいは兵器をなるたけ抑えていくなり、特に勝った国の悲劇はいつでも軍部を抑えられないで政治が埋没してしまうんです。これはフランス革命の鬼っ子であるナポレオンのあれを見てもわかるし、日本の悲劇を見てもわかるし、ドイツの悲劇を見てもわかるし、いま軍部に振り回されて一番困るのはアメリカと私はソ連とあるいは中国かとも思うんですが、それぞれの政治家は見識を持ってやはり軍部を抑えて、そして平和の方向へ方向づけようという努力が表面に出ている言動とは別に私は底流にあると思いますので、そういう点においてむずかしい段階に、激動変革の時代に東西南北の十字路の中に立たせられているんですが、どうも宮澤さんじゃ迷子になる心配はないようですから、せっかく努力して、その中に一つの何かのユニティを求めていっていただかれんことを期待して、私の質問はこれで打ち切ります。
  88. 田中寿美子

    田中寿美子君 私、きょうは一つは外務関係女性職員、それから女性外交官の進出対策について一点。それからもう一点は、外務行政に関連して。それから第三点目にインドネシアの学術調査団に関連して、この三つのことをお尋ねしたいと思います。  実は、ことしは国際婦人年で大変大臣を悩ませたんですが、きょう自民党の大鷹さんも御一緒に質問しようということを話し合っておりましたが、御病気になられましたので、私が代表して質問を申し上げます。  国際婦人年は終わりになってまいりましたが、昨日、多分四十一民間の婦人団体の代表が宮澤大臣にお目にかかったと思います。あのときの決議をもって、大会の決議をもって申し入れをしたはずでございますが、その中の一つは、これは二院クラブの市川房枝議員が予算委員会で外務大臣にも質問し、またこの外務委員会でも自民党の秦野議員がなさったと思いますが、女性の外交官というのは大変進出しにくい、一番しにくい部門の一つである。これはやっぱりこれまでの日本の女性の社会的進出の経過からいって大変むずかしかったんですけれども、しかしもはや国際的な経験を相当に積んできた資格のある人たちもあるので、大臣の手で政治的な任命を民間の人から、たとえば、公使とか大使とかいうものは先進諸国だけじゃなくて、発展途上国にも女性の公使や大使がおりますので、そういうことをしてはいかがですかという質問でございました。外務大臣検討してみるというふうにおっしゃっておりましたが、昨日の皆さんからのお申し入れに対して外務大臣はどのようにお答えになりましたでしょうか。
  89. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 昨日、そのような点について市川議員外何人かの方々からお話がございまして、私としましては、実は最近ひとつ検討をするように具体的な問題について事務当局に申しておる件がございますということを申し上げました。この点は、実りますか実りませんか、適当なお方をうまく私どもは探すことができて御承諾をいただけるかいただけないかというような未知数が多くございますけれども、少なくともいろいろなことを考えまして、できるものならば実現をしたいという件を一件具体的に検討を事務当局にしてもらっておるということを申し上げました。
  90. 田中寿美子

    田中寿美子君 それは大変耳寄りなことで、私どもやはり外国に参りましたり、外国の方々とおつき合いしましても、女性の外交官が相当いらっしゃるわけですね。ですから日本でも、まず、公使なり大使なりに一人でも政治的任命をしていただきますと大変大きな励ましになると思います。  外務省から資料をいただきましたけれども、やっぱり外交官試験に女性がまず受けている者がいない。合格している者が三十二年に一人あったままでずっとありませんですね。このこと自体は、私は女性の側の意欲も少ないかもしれないけれども、大変困難を伴うということもあると思います。それで正規のルートで外交官として自然に公使、大使にまでも上っていくというのには相当な暇がかかると思います。しかし、政治的任命というのは女性に限りません。これは後で外務行政についても触れたいと思うんですが、民間から適当な人があったらそういう者を入れていくということは、日本の外交にもっと新しい血を入れていくことになると思いますし、今日の、特に国際婦人年の課題というのは十年計画でございますから、十年間の間にどのくらい外交の面でも女性を抜てきしていくかというようなことは大変大事なことだと思いますので、いまのお話では、すでに具体的にそういう検討をしていらっしゃる人物があるということですから、大いに期待しておりますので、外務省当局なんかの中からそういうことに反対が出ませんように、ひとつがんばっていただきたいと思います。  それから、この問題は質問いたしませんけれども国際婦人年の行動計画の中並びにILOの六十回総会でILO条約第百十一号、それから行動計画の中でこの間批准案を通しました百二号、さらに、労働婦人たちが、非常に要望しております母性保護の百三号、こういうものを推し進めていく力、窓口は外務省でございますので、このことについても婦人団体から要望したと思います。このことについてはきょうはやめておきますけれども、宮澤外相ぜひ、これは直接所管の省は違いますけれども、常に頭に置いていただいて、批准の済んだものに対しては国内法がそれに追いつくように、特に女性に関する部分がおくれておりますので、それをお願いしたいと思いますし、今後まだ批准が済んでいない、特に百十一号、百三号などは先進諸国が進めているものでざいますから、ぜひ日本もそういうふうにしていただきたいということを要望しておきます。  今度は一般の外務省の女性職員のことなんですが、これはいただきました表で見て中級の外務省職員というのは相当いるわけですね。これは官房長かどなたかにお尋ねするわけですが、女性の職員というのは圧倒的に二等理事官とか三等書記官とか、それから領事、副領事が少しおりますですね。一体中級職員というのはどのあたりまでいけるものなのかということですね。つまり、最終的にはどこまで終着駅があるのか。領事とか、あるいはそれ以上のところまでいくのか、いけるのか。絶対にそれ以上に登用できないものなのかということですね。その辺説明していただきたいのと、ついでに時間があれですから、語研というのですね、語学研修職員ですか、これは何という名前になるのか知りませんが、この人たちの職務、そしてこの人たちの身分はどのあたりまでいくのかということを御説明いただきたいと思うのですが。
  91. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 最初の御質問は、女性職員で現在外へ出ている外交官が理事官あるいは領事、副領事というふうなことで、比較的上級のポストがないじゃないか、こういうことであったと思いますが、昨日お届けいたしました資料をごらんいただきますとわかりますように、中級並びに語学研修試験の出身者で在外に出ております女性職員の現在一番上の肩書きは二等書記官でございますが、このほかにも語研出身以外の職員で女性の一等書記官が外に出ております。現在外へ出ております、あるいは将来出てまいります女性の職員が中級もしくは語研職員で語研の合格者であります場合に、一等書記官、参事官、さらには進んで公使、場合によりましてはさらに進んで大使という道は開かれておるわけでございますし、また、その間におきまして領事事務に従事いたします場合には副領事、領事、さらに進んで総領事というふうな道は開かれておるわけであります。一般的に申しまして、中級の職員は外務省に入ってまいりまして、一般事務をゼネラリストという形で中堅の職員として外務省の仕事を実施してもらうということになっておりますし、語学研修生試験の合格者は語学の専門家として、その語学の専門的知識を活用しながらその地域の専門官としての仕事をしてもらう、こういうことになっているわけでございます。現に語学研修生試験を合格いたしましてスペイン語の専門官あるいはアラビア語の専門官という形で外務省の経歴を長く経ました人が、それぞれ大使として活躍している例があるわけでございます。
  92. 田中寿美子

    田中寿美子君 時間の倹約のために外務行政の面も触れながら一緒にお尋ねいたしますが、語学研修生から採用されて外地にいる方もいるわけでしょう。私どもよく現地でお世話になるのはそういう方が多いと思うのですが、そういう大使館とか総領事館にいられる語学の達者な、そしてその地域の事情に大変大使館や総領事館の中では詳しい方々がいるわけですが、そういう方々が大変望みなくいるという場合が多いんですね。そうじゃなくて、いまの話ですと、そういう方々ももっとどんどん昇進していく道があるということですか、これは男女通じてですか。
  93. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 昇進につきましては、男女を問わず、一般的な方針といたしまして、できるだけ適材適所ということを心がけてまいっているつもりでございますが、従来、中級もしくは語学研修生出身の職員の間に、人事上先に対する見通しあるいは待遇に対する不満というものがとかくありがちであったということは否定できない点でございますが、昨年来省内におきまして、外務省の機能強化という見地から、いろんな角度から検討を進めてまいりました。その一環としまして、すでに具体的に人事登用という制度を実施いたしております。この登用によりまして中級、語研の職員が上級職として扱われる道を開きましたし、また、初級その他資格のない人を中級職員として登用するという道を開いておりますので、今後ともその方向での努力を引き続いてやってまいりたいというふうに考えております。
  94. 田中寿美子

    田中寿美子君 いわゆる国民外交を推進していくために、外務省、外務行政に新しい血を導入せよというようなアピールが外務省の職組から出されましたね。それから官房長の報告も出まして、いまのように、今後もっと国内の事情にもよく精通しているようにしなければいけないし、それから他官庁からも人事の交流をしていく必要がある。民間からも学者とかジャーナリストだとか、あるいは専門家なんかを入れるようにというようなことが言われておりますし、それからキャリア組ばっかりが上の方に上がっていくんじゃなくて、ノンキャリアの人たちのことも十分考えてという要望があり、また、それに対する対応があるといういまお言葉だったんじゃないかと思いますが、具体的にそれでは五十年度にどのようにそういうノンキャリア、あるいは民間から、あるいは他省から採用したという事実がございますでしょうか。
  95. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 五十年度の初め、つまりことしの四月に省内で登用制度の最切の適用といたしまして上級職以外の人間を二名上級職として扱うように登用をいたしたわけでございますが、五十一年度におきましても引き続いてその登用を実施すべく、現在具体的な手続を始めております。適当な人材を簡抜するという趣旨で、この数も逐次ふやしていきたいというふうに考えております。  なお、民間と言いますか、外務省以外からできるだけ優秀な人材を省内に吸収するという考え方から、五十年度におきましては今日までに民間企業、報道界、国際機関、こういうところからすでに二十名の人材を中途採用いたしまして、これらの人が将来の幹部職員として育っていくことを大いに期待いたしております。また、このような民間だけではなくして、よその省庁からも外務省に身を投じてもらうという人を入れたいということで、具体的な措置をとっております。
  96. 田中寿美子

    田中寿美子君 そういうことは非常に大事なことだと思うんですね。いままで何となく外交というのは一般の国民生活と離れたところにあるかのような感じを与えていましたけれども、それではとてもやれない。  特に、ことし国際婦人年のときに大変私どもがやかましく言って、国際婦人年のメキシコ大会に人を送る際の人選のことやなんかも文句を言ったり、それからあそこで採択された世界行動計画の実施に関して民間の意見を聞くべきであるというふうなことも非常に厳しく申し上げました結果でしょうか、外務省としては初めて民間の婦人団体の人たちを呼んだレセプションをしてくださって、こういうことはもう珍しいことだということでございました。そういうことが実は非常に大事でして、私の感想でございます。  この間の政府主催の国際婦人年の婦人問題会議のときにパネルがございましたし、それから外国から来られたシピラさんやゲルバーさんのスピーチがあったんですが、その通訳をしていらっしゃった方、恐らくあれは外務省の方ではないかと思いますが、それとか、それからIPUのときに見えたのもそうですし、これは大変語学研修で上手に、きれいにまとめなさいますけれども、実は魂が入っていない。つまり、シピラさんやゲルバーさんが非常に力を入れているところがずっと抜けてしまう、きれいにまとめてあるけれども。ということは、婦人問題や婦人運動を知らないとか、いま当面そこでディスカスされる問題の中身を知らないということだと思うんです。これは私は何も外務省の職員を非難するつもりで言っているのではなくて、いまおっしゃられているようなことが外務官僚が内政音痴だなんて言われないように、たとえば、そういう専門的に語学をやる人もそれぞれ国内の問題にタッチできるような交流が必要なんじゃないか。だから、他官庁からや民間から入ること、それから職組のアピールの中にあるように、他の官庁へも本省の人たちは出ていくとか、そういったようなこともして、実際の国内の国民の生活の動きをキャッチしているというようなふうにしませんと、大事な交流が本物にならないうらみがあるというふうに思うものですから、特にそのことを申し上げて、職組のアピールが言っておりますところの外務省のこれまでの閉鎖主義、秘密主義というような、そういうものを取っ払っていってしまうということ、これ大臣当然のことだと思うんですけれども、今後さらにそれは具体的に推し進めていただきたいんですがどうなんですか。
  97. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 確かにおっしゃるような問題が私はあると思っておりまして、決して外部に対して閉鎖的でない、あるいは女性に対して差別的でないというふうに、これは外務省の幹部そのとおり思っている、うそを申し上げているんでは私はないと思いますけれども、長年の集積でございますから、決してうそを申し上げているつもりでなくても、案外別のことをやってみたらああそうだったかというようなこともしばしばこれはあり得るわけでございますから、思い切って少し現実にやってみてはどうか、それによって新しく私どもがいろいろ発見することもあろうと思っておりまして、できるだけそういうふうに、場合によっては多少乱暴なというような——いままでの観念からすれば——ことがあり得るかもしれないと思いますけれども、やはりそれぐらいにしてやってみてはどうかと思いまして、省内でそういうことを考えてもらっておるわけでございます。
  98. 田中寿美子

    田中寿美子君 ぜひそういう勇気を持ってやっていただきたいんです。  私は去年、ロサンゼルスで副領事をしていらっしゃる女性の方にお世話になりましたが、大変ぴちぴちと、これが外務省関係の人かと思うように元気なおもしろい女性だったんですね。ですから、ああいう方はどんどん動かして、多少冒険でもやっていただきたいということを要望いたしておきます。  次に、インドネシアの学術調査団のことについて、私お尋ねしたいと思います。経済協力関係のことはたくさんお尋ねしたいことがありますが、今回は時間がありません、別の機会にさしていただきますが、私、実はインドネシアに少なからず関係がございますが、きょうお尋ねいたしますのは、文部省の学術調査団としてインドネシアに派遣している調査団の中の特定の方のお名前、これは報告書を出していらっしゃいますから出してもいいと思いますが、天理大学の倉田勇さん、この方の報告書の中にインドネシアのビザが非常におくれて取れない、調査の日程がちゃんと七四年、去年の夏に実態調査に入るべきところを、ビザがおくれてことしの二月三日にようやく出た、一体これはどういうことなんだろうという疑問を抱いているわけなんです。私、これ誤解がないように申し上げますが、倉田さんから頼まれたわけでも何でもありません。ただこの倉田さんとは、五六年に私がインドネシアに参りましたとき以来のおつき合いでございまして、この方は文化人類学者で、特に私が興味を持っておりますスマトラの中部の高原地帯のミナンカバウの母系社会の調査に入られた方でございますために、ずっとこの方の報告書をいただいているわけなんです。  最近いただいたものの中に、昨年の夏入るべき調査がことしの二月三日までビザが取れなくて、とうとう年度末のぎりぎりに文部省の出した学術調査団の研究費で行った。八つの学術調査団が七四年度には出ているんだけれども、一体どうしてこのようにビザがおくれたのかということについて非常な疑問を持つ、もちろんビザは相手国が出すものでございますけれども、しかし、こっち側の立場から問題はなかったかどうかということを疑問を持っているわけなんですが、いかでしょうか、その点は。
  99. 木島鋭男

    説明員(木島鋭男君) いまインドネシア政府の査証がおくれたという御質問がございましたが、先生がすでに御承知のとおり、インドネシア政府には学術研究許可という制度がございまして、インドネシアにおいて学術研究調査を行います場合には、日本人の研究者はこちらの東京にありますインドネシア大使館を通じてインドネシアの学術研究会議に申請をいたしまして許可申請を受ける、これは六カ月以上前に許可申請を出すようにということが義務づけられております。学術研究会議はそれを受けまして、審査して、最終的には入国管理局であるとか関係官庁、その研究地域の対象となっております州の知事などの意見を聞きまして、差し支えないということであれば在京大使館を通じまして学術研究許可、それに引き続きまして学術ビザを発給するという制度を行っております。  たまたまいま一つの、これは天理大の倉田教授のお話がございましたけれども、倉田教授の調査団は小スンダ列島に関する文化人類学調査団ということで、一行四名の方の許可を願い出ておりまして、ほかの方は出たのに対して、倉田教授一人が遅かったという理由はわれわれもつまびらかにできないのでございますけれども、私どもにそのお話がございましたのは四十九年の十二月でございまして、私どもとしては在京大使館と話しましたところ、五十年の一月二十一日付で査証がおりておりまして、十二月から一月の間だけをとりますれば、インドネシア大使館としてはかなり便宜を図ってくれたということではないと考えております。
  100. 田中寿美子

    田中寿美子君 倉田さんの報告書の中で、八つの学術調査団が行っているけれども、どうもそれぞれ相当ある意味では国内の場合にも反省点はないか、ずさんな送り方をしていはしないかという点が一つ言われているわけです。先に行った者が何かそういう先方にとって必ずしも歓迎すべき者でなかった場合に後の者がおくらされていくという、そういうことがあったのじゃないか、こっち側の反省点があるんではないか。もっとそれならば、これは倉田さんの行かれたのは琉大の馬淵東一さんが団長なわけで、一緒に本当は行くべきものなんですね。それがこういうふうになって、こちら側の積極性が不足していはしないかということが一点言われております。  それからまた、その学術調査団を送る場合に三カ月とか四カ月とかいう費用を出し、期限をつけた調査団ですね。そのことは社会調査、特に人類学的な調査というのは、その土地の人たちになじみ、その土地の言葉に慣れ、そして相手の信頼を受けないとなかなか調査はできないわけです。だからそんな短い期間ではなくて、もっと長い期間が必要であるというようなこと、これはアメリカなんかコーネル大学の大調査団が入っていて、非常に長い期間をかけていい調査をしている、それに比べると細切れの感があるので、そういう点についても反省すべきことがあるんじゃないか。だから日本がインドネシアの調査にお金を出している、これも協力の一つでございますね、経済協力の一つじゃないでしょうか。そういうのに対して使い方がどうだろうかという点も指摘されておりますが、予ての辺はどうお考えになりますか。
  101. 木島鋭男

    説明員(木島鋭男君) ただいまの報告書は実は拝見いたしておりませんので、先生から伺った限りについてお答えさせていただきたいと思いますが、その際、最初の方のわれわれの積極的な介入が少なかったのではないかという御意味だと思うますけれども、私どもの方としてはそう言ってはなんでございますけれども、低開発国の場合相当な事務的な時間がかかる、それを考慮してもなおかつ異常にかかるという事態がございますれば、積極的に話をするつもりでおります。  先ほども申し上げましたとおり、私どもにお話をいただきましたのが昨年の十二月になってからでございましたので、非常に結果的には異常に長いことになったかというふうに考えます。  第二番目の問題は、これは恐らく研究費の配分というようなことも考慮された上でそういう期限になっていると思いますが、これは直接私どもの問題ではないわけでございますけれども、基本的には、いま田中先生から御指摘があったようなことではないかと思います。
  102. 田中寿美子

    田中寿美子君 要するに、外務省の方の落ち度じゃないということ。これは、確かに学術調査団ですから、文部省の責任であった。それで文部省の方からやってくれていると思って待っていたんではないかと思いますね。だからこちらの側の反省点というのは、これは私は、文部省の方にも反省点が大いにあると思います。  それから国立大学の教授には公用旅券が出ます。私立大学の教授には一般旅券、同じ調査団なら、文部省の学術調査の費用を出して送くる調査団なら公用にしてあげてもいいんではないかという点、それは外務省で考えられないことですか。つまり、どこの国でも公用旅券の方が発しやすいですね。ビザをとるときには。そういう点もあるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  103. 木島鋭男

    説明員(木島鋭男君) 外務省には公用旅券の発給に関する内規がございまして、それぞれの場合に内規に応じて発給されております。したがって、先生がいま御指摘のような手段をとるといたしますれば、例外なり特別な場合を想定するということになるかと思いますが、私ども査証自体をやっておりませんけれども、従来の内規にも照らして、しかも合理的な基準を見出したいというふうに考えております。
  104. 田中寿美子

    田中寿美子君 一つの調査団で、国からお金をもらって出ていくもので、一緒に行動する者は同じような扱いを受けられるように、ぜひ今後御考えていただきたいのです。  それで大臣、日本の経済協力のあり方について、インドネシアに関してもずいぶんいろいろ問題はあると思うのです。東南アジア全部あると思う。インドネシアの場合、賠償の留学生二千名を受け入れましたね。これにはいろいろインドネシアの人たちから言えば文句がございました。せっかく協力してお金を出すのに、出し方にいろいろ問題があると思うのですが、そこで倉田教授の報告の中に、日本の文化紹介に、インドネシアで映画、座頭市を持っていっている。それも大変人気があって皆見るそうですけれども、しかし、本当の日本紹介にならないような、そういった種類の映画がいっているというようなことについては、もっと考慮をすべきことではないか。もちろんPR映画も持っていっていらっしゃると思いますが、劇映画を選ぶ場合にも、現代の日本がよく理解されるような文化的な配慮が必要なんじゃないかということ。それから、日本からインドネシアに学術調査に行く者はたくさんあっても、インドネシアから日本調査に来るというようなことがないということも一つの向こうの学者たちの持っている不平にもなっている。  それから、田中前総理が行かれたときのあの反日的なデモのことに関連して、ここにちょっとこういうことを言っておられる、乙の言葉は私は参考にすべきだと思いますので、ちょっと読んでみますと、「因みに一九三〇年代の当時のバタビヤ(ジャカルタ)には日本人は現在の三倍近くいたが、企業は小規模であり余り問題がなかった。そして小売り商人として自然に人々と交際していたのであり、極めてのんびりしたものとされていたが、しかし、現在は商取引の規模が拡大し経済活動が激しくなってきて、インドネシアにあっては全く異常な雰囲気であるあのヌサンタラビルに生活をしている友人知人のことが何か不自然に思えてきます。あそこに働らく各企業として商売上の機密をもち合うものならばもっと町中にちらばってOfficeを構え、各個人は自分の責任で隣人たちと交際していくべき時が来ていると考えます。軍備を放棄した日本人らしく、現地語の修得は当然のこと、もっと普通の日常生活をしてみてはと考えます。」ということを述べていられるわけですね。日本の経済協力とか、それから経済進出の問題になりますが、巨大なヌサンタラビルがそびえていて、そうして日本の経済力を誇示しているというような中で、インドネシアの人々の受ける感じというものを、今後の日本の経済進出、あるいは経済協力の形あるいは学術的な文化的な交流の上から非常に問題があると思われますので、今後はその辺を十分考えた対策日本の外交として必要ではないかというように思うのですが、その点の外務大臣の御感想を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  105. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 実はたまたま数年前に、私自身外務省から委嘱を受けまして、文化ミッションといいますか、ただいま田中委員の御指摘のような問題を調べますために、団長ということでインドネシアに参りまして、そのときにどのような文化交流が一番望ましいか、望まれるか、二つは必ずしも一緒ではないわけでございますけれども——というようなことを、現地でインドネシア側のお役人ばかりでなくて、その方の関係の人と大分議論をいたしました。確かにそのときに現地で一番望まれるものといえば、恐らく座頭市の映画と空手の先生であろうということを言われたわけでございます。そういうことも、ですから私は悪いことではないと思いましたけれども、望ましいものというのはまたあるわけであって、こちらの基準で物を考えたばかりでもいけませんでしょうが、やはり少しずつ望ましいものもやっていかなければならないのじゃないかというような、まあ大変常識的な結論でございましたけれども、そういうことがございましたので、ただいまおっしゃることは私なりに理解をしております。たとえ当初関心を寄せる人が少のうございましても、われわれがいいと思うものをやはり出していくというような努力を放棄すべきではないというふうに私も考えております。
  106. 田中寿美子

    田中寿美子君 もっと芸術的な文化映画を必要だということ、劇映画をね。
  107. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) そういうふうに私どもも考えまして、大変にむずかしい問題だと思いますのは、ちょっとやそっとのものならば少女歌劇のようなものの方がもてるというような答えが返ってまいりまして、その辺のところは、私は非常にむずかしい問題だと思ってまいりましたが、やはり望まれるものと望ましいものというのは、だんだんに望ましいものというものを、われわれが見て一級のものというものをするように努力をしなければならないのではないかと思います。  それから、向こうからこちらに文化調査に来たという希望があることも私も聞きまして、そういう道も開かなければならないと思っていますが、最後の問題につきましては、これはたまたま私どもの所見が、と言っては少し大げさですけれども、インドネシアに限らずですが、現地に赴任をする、新しく赴任をする人々、できればその家族に、何週間かの出かける前の研修を日本でするべきではないかという提言を当時いたしまして、これは幸いにしてある程度そのようなことが行われるようになりまして、御本人を、まず言葉ばかりでなく、土地の歴史であるとか文化であるとかということについて一定の期間研修をして、次にできれば奥さんにもそういうものを研修を受けてもらうということで、始めましたらば、非非に行く人が進んでその研修を受けたがるそうでございますので、その辺からやはり始めなければならないということで、ようやくそういうことは実現するに至りました。そういう努力は続けてまいらなければならないというふうに考えております。
  108. 田中寿美子

    田中寿美子君 最後に要望です。  インドネシアには、今年度ですが、来年度になりますか、アサハン計画など莫大な経済協力もしますわけですね。日本とインドネシアの合弁会社が立てられていくということで、まあ東南アジアの中で日本が大変目をつけているところだと思うのですが、そういう意味では十分先方の国民の意思を大事にしなければいけないということと、それから学術調査団のことで一言…。  日本は年度主義で、年度内に費用を消化しなければいけないというようなことで、だから三、四カ月に限ってあわてて出してしまうというようなことがあるようですが、年度をまたいで、経済協力基金なんというのはしょっちゃう次の年度に繰り越しているわけですね。ですから、そういうことができるように考えていただききたいということを要望をしておきます。
  109. 塩出啓典

    塩出啓典君 それではちょっと、一昨日の外務委員会は非常に時間がありませんで中途半端に終わりましたので、その関連した問題で二、三、確認を含めてお尋ねしておきたいと思います。  一昨日の委員会での米中会談における覇権問題についてのお話、それを宮澤外務大臣はこの委員会で話をされましたが、   〔委員長退席、理事増原恵吉君着席〕 さらに、さきの国連総会で喬冠華中国外相に日本立場を四つの点について話をされた。そのときに、この四点に対して中国の外相は理解はしてくれたが賛同ではなかった、こういうように予算委員会で矢追委員に答弁をしておるわけでありますが、この四つの点と今回の米中会談の話等を踏まえまして、われわれの感じとしては、やはり日中平和友好条約締結への条件は一歩前進したんではないか、問題が対立点の解決の方向に一歩前進したんではないか、こういうような感じを宮澤外務大臣答弁から感じたわけでありますが、外務大臣御自身としてはどういう感じを持たれているのか。
  110. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 失追委員に、賛同を得たとは申し上げられませんけれども、詳しく話しましたので考え方の理解はしてくれたのではないかと思うということを申し上げました。一般的な考え方としてあなたの言っていることは理解ができると言います場合と、それならば、それを具体的に文字の上で表現をしようということの間には、場合により国によりまして、かなり距離があるということが私はあり得るだろうと思うのでございます。そういうこともございますので、確かにニューヨークで会談をいたしました結果、お互いの考えていることはお互いに理解が深まったとまでは私は申し上げて間違いがないと思いますが、具体的にそれをどのように表現するかということになりますと、確かに私どもの場合、中国の立場というものもいろいろあるでありましょうし、また、わが国の国内におけるいわゆるコンセンサスというものが生まれ得るかどうかという両方の問題を持っておりますので、一般論として話をしております場合と、これは終局的に目指すものは条約でございますから、現実に文字にしていかなければならないという場合のその距離というもの、この辺のところがどのぐらいな距離であろうかということを、私自身、国の内外の受けとめ方をとつおいつ実は注意深くもう少し知りたいと考えておるところでございます。
  111. 塩出啓典

    塩出啓典君 いま言われましたように、一般的な原則と実際に条約をつくるということには確かに開きがあると思いますが、しかし、それを進めていくには、まず最初にそういう一般的な原則において一致をということが一番大事なことでありまして、そこができれば、あと結論は時間はかかっても見通しはつくわけですね。そういう意味で、四項目を見ると、まことにこれはもう妥当なことであって、決して日本立場は無理なことではない、私はそう思うわけなんですが、四項目の中で外務大臣としては一番中国が賛同しにくいといいますか、そういうのは、やはりその四項目のうちのどれでございますか。
  112. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) これは実はニュヨークの会談のときに、私が意識してこれはネゴシエーションではありませんということで、そういう了解の上にお互いに長いこと話をいたしましたので、ただいまのお尋ねに的確にどうもお答えをすることがむずかしゅうございまして、先方としてもネゴシエーションでないものでございますから、イエス、ノーを一々求めるというような話し合いになっておりませんので、ちょっと何ともただいまの段階で申し上げにくうございます。
  113. 塩出啓典

    塩出啓典君 中国が要求しているのは、ソ連という言葉を中へ入れろとか、そういうことは決して要望はしてないわけでしょう。そこまでは言ってないわけでしょう。それもはっきりしないわけでしょう。
  114. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) まあ、仮にソ連という言葉を条約の中に入れろという中国の主張であれば、それは日本側として事柄の性質上賛同ができない種類のことであるという程度には、私はニューヨークの会談で理解を得ておるのではないかと、これは私だけの考えでございますが、私はそう思っておりますけれども
  115. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは、結局中国側の気持ちも正直言ってまだよくわからない、そういう段階と考えていいわけですね。
  116. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) さようでございます。中国の今年制定されました憲法にも覇権主義反対ということは言っておりますし、また、ソ連についての中国の考え方はたびたびの公の機会にかなりはっきり表明されておりますから、したがいまして、この点が中国にとって軽々しく扱える問題でないということは、私も私なりに理解をいたしておりますので、先ほどのお尋ねに対して、そういうことであれば日本側として賛同できないことは中国としては少なくとも理解はしておるであろうと私は存じますと申し上げましたんですが、中国としては、しかし、この問題はいわば国の存亡をかけたような問題ということになっておるのございましょうから、わが国考え方とはかなりそこは違っておるということは、こちらもある程度は考えておかなければならないと思います。
  117. 塩出啓典

    塩出啓典君 だから、一昨日の委員会でありましたように、この覇権問題について中国がどういう考え方をとるか、たとえばソ連を指すとしてもですね。これはまあ中国の立場でありますし、日本は特定の国を指さない、これもやはり日本立場でございますし、したがって中国が、いわゆる田中さんが行ったときの共同声明にはソ連という言葉は入ってないわけですね。それと同じ内容のものがあったとしても、その解釈において日本にソ連を指しているように解釈をしろということは、もう明らかなこれは中国の内政干渉であって、やはり中国の今日までのいわゆる平和五原則の姿勢からいってそういうことは筋が通らない、決してそういうむちゃなことは言うわけがない、そういう意味でわれわれは先ほども申しましたように、日中平和友好条約をつくるに当たっての根本的な考え方というものはそう開きのあるものではない、こういうように私は思うわけですけれども外務大臣はその点どうでしょう。
  118. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 中国の対ソ観というものは、先ほど申しましたように、われわれとは大変に違っており、しかも、それが中国にとっては最も重大な問題の一つである。最も重大な問題の中で最重要なものであろうということは、これはお互いにそれはそれとして私どもにも理解ができるわけでございますから、先ほど私の申しましたこと、あるいはただいま塩出委員の言われましたようなことはそれといたしまして、ここから先は中国の考え方次第でございますが、日本側のそのような考え方と中国側の考え方の開きにもかかわらず、この際条約を結ぶことが両国の国益に合致するのであるか、あるいは、そういう困難が存在するのであれば、もともと共同声明という最高の規範がすでに両国で合意されているのであるから、この際そこのところを、いわば立場に合わない妥協をしてまで条約をつくるよりは、ゆっくり時間をかけてはいいではないかというような考え方が支配をするのか、この後者を私は余り強調をして申し上げるつもりはないのでございますけれども、ニューヨークにおける会談の中にはそのような部分もございましたので、したがいまして、その辺が中国の判断の分かれるところの一つの要素ではないか——これは私の推察でございますが——とも思ったりしております。
  119. 塩出啓典

    塩出啓典君 わかりました。  それから、先ほども国内のコンセンサスを得ることは非常に大事である、これはもちろん外交を進めていく上においては必要なことだと思いますが、さきに話しましたわが国の四つの方針と申しますか、こういうものは私は日本国民のコンセンサスも十分得られるものである、そのように思うわけですけど、外務大臣はどう考えておりますか。
  120. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この点も少し詰めて考えてまいりますと、私の申し上げた限りでは大方の賛同を得られるのではないかと私は考えておるんでございますけれども、それを具体的に文字に表現をいたしました場合に、それについてさて私の申し上げたようなことが十分にそこに表現されておるというふうに大方がお考えになるのか、   〔理事増原恵吉君退席、委員長着席〕 あるいは、これはそのようなことにはなっていないではないかということに考えられるのかという、そういうことがまた現実に文字になりました場合の受け取り方という問題があろうと思います。その辺のところも少し詰めて考えなければならないと思っております。
  121. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは将来のことでございますが、もしその機運ができて、あるいはやはり日中平和友好条約締結した方がいいということで、締結する前には当然やはりソ連に対しても十分な説明を行わなければいけないんじゃないか。その場合に、将来ソ連との平和条約をつくるときにも、当然わが国としては同じような覇権条項を入れることは何ら差し支えない、それをもって、決してわが国はこの項目は特定のソ連を指しているんではないということをやっぱり理解させる上においてもそういうことはぼくは必要なんじゃないか。これは将来の問題でございますけれども、そういう点は外務大臣はどう考えていますか。
  122. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この点は、三木総理大臣が国会に対しまして、しばしば、いわゆる覇権条項というものは、自分は平和を維持し増進するための基本的な原則の一つであると考えるという答弁をしておられまして、私どもはその指針のもとにこの覇権条項というものを考えておるわけでございますから、論理といたしましては、平和維持増進のための一般原則であれば、これはどこへ行ってどの国と合意をし合っても差し支えのない筋合いのものであろうと存じます。そのような希望が具体的に先方から提示されるかどうかということは別といたしまして、本来、特定の第三国に対し、あるいは特定の第三国を意識して考えられている考え方ではないと思いますので、したがいまして、普遍的な性格を持っているものであろうというふうに考えます。
  123. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから、フォード大統領の演説の第五点で、アジアの平和は未解決の政治紛争の解決にかかっているという信念を述べ、その具体例の一つとして朝鮮半島における緊張緩和の重要性を挙げているわけでありますが、同時に、韓国を協議の場から排除しようとするいかなる試みにも反対し続けるであろうと、こういうことをフォードは述べておるわけでございますが、このことは、今日まで米国と北朝鮮の間には正式な国と国との会談というか、そういうものはないにしても、米国の政治家あるいは民間人、そういうものも北朝鮮にはすでにたびたび訪問をし、接触もしていると思うんですけれども、キッシンジャーにも宮澤外相もその後会われておるわけでありますが、そういう点の感触から見て、この韓国を協議の場から排除しようとする試みに反対するということは、今日まで続いてきた米国と北朝鮮とのそういう接触というものもやらないということなのか。それは当然続けていくけれども、まあ何か国交を回復する場合に韓国の了解なしにやるようなことはしないという、そういう程度意味のものなのか、この点われわれが非常に理解に苦しむ、判断に苦しむわけですが、その点はどうなんですか。
  124. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この点につきましてはキッシンジャー国務長官が私に何度か言っておられることでございますが、いろいろうわさや報道はあるけれども、米国は北鮮と接触をしたことはないという由でございます、それは政府政府という意味でございますが。その意味は、ことにこのような環境になりますと、この大統領の演説にも述べられておりますように、直接に韓国を抜きにしてそのような接触をすることは韓国に対する非常な信義の背反になるというふうに考えておるからでありまして、したがって韓国を含めて三者が、あるいはそれより多くがという接触でございましたら、私は恐らく米国は拒否をすることはなかろうというふうに考えております。
  125. 塩出啓典

    塩出啓典君 まあ私はやはりけんかの仲裁というのは、これは南北の対立をけんかという言葉はよくないかもしれませんが、両方と仲裁する人がやっぱり人間的な信頼関係があって仲裁というのはできるんじゃないかと思うんです。そういう意味で、いま言ったように韓国をのけて米国と北朝鮮とのつながり、これはよくないにしても、しかし南北が同じテーブルに着く一つの段階として、やはり米国は北朝鮮と接触をするということは必要なんじゃないか。現段階の南北の対立というものは、さきの共同声明あるいは南北赤十字会談とか、そういうものもだんだん後退をして、実際いまのままいけば南北の話し合いの機運というものはますます遠のいていく。そういう現実を考えるときに、いま言われたようなアメリカの姿勢では南北の自主的な平和統一への道は非常に遠い、まさに膠着状態と言わざるを得ない、私はそういうように思うんですけれども、その点どう考えていますか。
  126. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 段階としてというようなことが何かありはしないか、やりようが、というようなことを私どもなりにいろいろ考えてみたこともございますし、国連の事務総長等を煩わすことはできないであろうかとか、いろいろ私どもなりに考えたり試みたりしたことがございますけれども、ただいままでのところ成功をいたしておりません。  これは私の申し上げることに、お聞きようによっては、お立場によっては、御異存がおありの方もいらっしゃると思いますけれども、いずれにしても朝鮮半島の問題、朝鮮半島の平和を追求しようという試みの中で、韓国とは話をしないという態度というのは、少し私は北鮮がかたくな過ぎはしないか。韓国自身は結構ですと言っておりますから、どうもこの点については北鮮が少しかたくな過ぎはしないかというふうに私は考えておりまして、その点は再考を求めたいところだというふうに私は思っております。もし、この問題でだれが一番頑迷であるかということを現段階で申すならば、やはり北鮮の立場が少しかたくな過ぎはしないかというのが、私のこれは偽らざる感じでございます。
  127. 塩出啓典

    塩出啓典君 そこで、私はいまアメリカのことを話をしたわけですけれども、しかし、実際言えば日本はもっと近いわけです。しかも、最近は人の往来にいたしましても、北朝鮮との往来もかなりふえてきている。たとえば在日朝鮮人のいわゆる北朝鮮への帰国、あるいは再入国の許可件数等もかなり急速に、ほとんどもう自由に行けるような状態にまできておる。また北朝鮮の貿易を見ましても、日本の貿易、最近はちょっと落ちてきているようですけれども非常に拡大をして、アメリカなんかよりははるかに日本の方に関係が深いわけです。そういう意味で、日本がやはり朝鮮の自主的、平和的な統一に果たすべき務めというものは、過去のいきさつから考えても、そういうものは私は当然これは人道的立場からもあるんじゃないかと思うんです。いまのことには私は外務大臣も異存はないと思うんですけれども、そのことも伺っておきます。  いま言われたように、朝鮮民主主義人民共和国の姿勢がかたくなであるとここで幾ら外務大臣が発言をしても向こうの態度は改まらぬわけでありまして、やっぱりそのためには、わが国も朝鮮民主主義人民共和国と国交を持つということが必要なんじゃないか。外務大臣はいままでよく朝鮮の平和のためには平和のバランスというものを保っていかなくちゃならぬ、こういうことを言われていると思うんです。だから米軍は撤退しちゃいかぬということを。これは一応与えてそのことは正しいとしても、北朝鮮と日本とが国交を持つということは平和のバランスを崩すことにはならないんじゃないか。別にそちらの方にわが国がたくさんの兵器を輸出するとか、そういうことじゃないわけですから。そういう意味で、日本がやはり南のみならず北とも国交を正常化すべきではないか。世界でも両方承認している国はもう四十ぐらいあると聞いておるわけですけれども、それはやっぱり私は世界の趨勢じゃないかと思うわけです。その点はどう考えてますか。
  128. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) これが一つの大きな問題でありますことは否定すべくもないところでございますけれども、やはり、わが国が朝鮮半島に及ぼす影響力というものは非常に大きなものでございますので、遠い国が考えるように、この問題はなかなか安易に考えられない面がございまして、したがって、いまとしては人的、文化的あるいは経済的な交流を深めていくという程度にとどめなければならない。先々何とかして南北の対話が再開されて、そして客観情勢がわが国を動きやすい立場に展開していくということは非常に望ましいことだと思っておるんでございますけれども、いまとしては、なかなか塩出委員の言われるようなところにわが国としては行き得ないというふうに考えております。
  129. 塩出啓典

    塩出啓典君 まあ私は、やはり日本政府が朝鮮民主主義人民共和国とそういうつながりを深めていく、国交を持つ方向に進むということについては、もちろんいろいろな障害、またいろんな反対はやっぱりあると思うんです。しかし、いま外務大臣言われたような方向で、やはり南北の話し合いが進んで、それでわが国が北朝鮮と交渉するのに何ら抵抗がないような機運を待っておったんでは、これはいつのことになるかわからないし、日本政府として朝鮮の南北の平和的統一を促進していこうというその責任においては余りにも無責任過ぎるんじゃなかろうか、少々の抵抗があっても、もちろんその抵抗はできるだけないようにやっていかなければいかぬと思いますけれども、方向としては、やはり南北の話し合いを促進するためには、日本はいま南とはつながりがあるわけですから、北ともやはりつながりをもっと深めていかなければいけない、こういう方向は必要性は認めますか。
  130. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど申しましたような人の行き来でありますとか、貿易でありますとか、文化スポーツ、学術等々、そういうものの接触が厚くなり深くなるということ自身は、私は結構なことだと思っております
  131. 塩出啓典

    塩出啓典君 そういう民間の交流が進むことは非常にいいけれども政府政府の間の接触が進むということはよくないということなんですか。
  132. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 結局、わが国の国益の総体から考えるべき問題だと思っておるわけでございまして、そのことが韓国とわが国との関係に与える影響、あるいは東南アジア全体の平和の構図に与える影響等々いろいろ考えますと、現在そのようなことをいたしますことは、私はわが国の国益の総合から考えますれば、国益に寄与しないというふうにやはり判断をいたします。
  133. 塩出啓典

    塩出啓典君 時間参りましたので、最後に私は要望したいわけですけれども、もちろん国益ということは大事だと思いますが、国益もやはり近視眼的に見た国益と、長い見通しの上に立った国益と必ずしも私は一致しない場合があるんじゃないかと思うんです。そういう点から言えば、政治家はやはり企業家とは違って、高い、長い見通しの上に立った国益を求めて、そのためにやはり近いところの国益を損なうような問題があれば、できるだけそういう問題が少なくなるように努力をしていくという気持ちがなければ——いま言ったように余りにも目前の国益というものにこだわっておったんでは、私は長い将来に対して国の方針を誤っていくんじゃないか。一時的には多少の抵抗があってもやっぱり筋の通った行き方をしていかなければいけない。われわれは、北と政府間の交渉を深めていけということは、決して南を敵視していけということでもなければ、さらに東南アジアの国々を敵視していくわけじゃないわけですから、やはりいまアメリカにしても中国とソ連と両方に接触しているし、こういう形は私は非常に必要なんじゃないかと思う。そういう意味で、ひとつ外務大臣としても、長い立場に立った国益は何かということを考えて対処していただきたいと思います。私は国交を早く正常化する方向に努力をしていただきたい、このことを要望いたしまして、もう時間ですから、あとのことはまた次の機会にいたしたいと思います。
  134. 立木洋

    ○立木洋君 きょうはやはり対朝鮮政策の問題についてお伺いしたいんですが、御承知のように、国連総会で朝鮮民主主義人民共和国の立場を支持する決議案が初めて通過したわけですが、この新しい状況のもとで、いまお話がありましたけれども、いろいろなことを大臣お考えになっていると思いますが、長期的な展望に立って今後日本政府としてはどういう朝鮮政策を展開していかれるおつもりなのか。それから短期的には、当面はどういうふうな対朝鮮政策、これは南北を含めてですが、どういうふうな政策をおとりになるのか、その基本的な点をお伺いしたいと思います。
  135. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 長期的に考えますならば、少なくとも南北が一度はそのように、一九七二年に考えましたように、本当に両者の対話が進んで、平和のうちに統合されるということ、これがやはり何と申しましても望ましいことであるというふうに思っております。それが長期的に考えますれば最善の解決策であると思っておりますが、それに至らざる期間、そのことが当面できないというような場合に、南北おのおのの間の抗争状態がやんで、たとえば関係国による南北のクロス承認というようなことがしばしば話題になるわけでございますが、そのようなことは最善の解決策ではないにしても次善の策としては考えるべきではないかというふうに思っておりまして、国連などにおける表決を見ましても、もとより最善の策が最も望ましいことは明らかでしょうが、次善の策というものも世界の、国連の大勢というものは考えるべきではないかというふうに、あの国連の決議というものはそういうことを意味しているのではなかろうかと私は思っておるわけでございます。さしずめ、もっともっと短期にどこからその問題に入っていくかと言えば、やはり言い古されたことではあっても、南北間の、あるいはよその国を含めても一向に構わぬことでございますが、対話というものがこの問題について開かれるということではなかろうかと思います
  136. 立木洋

    ○立木洋君 国連総会において朝鮮民主主義人民共和国の立場を支持する決議案が通過するというふうなことが、十年前の時代で見るならば考えられなかった。まあ十年という長期間をとらなくても、短期的に見てもこういう事態にまでなるとはなかなか考えられなかった状態があったと思うのですが、しかし、こういうふうに変わってきた。いままでの外務委員会の場でも、大臣何回かお答えになっておりますけれども、やはり民族自決の流れというのが大きな流れになってきておる。そうすると、たとえばアメリカの対朝鮮政策という問題を見ても、一九七〇年以降、アメリカの対朝鮮政策というのも私は一定の変化が出てきた。これは以前は朝鮮民主主義人民共和国をきつく言えば敵視する、変わった言葉で言えば、あるいは無視すると言ってもいいですが、そういうふうな状態があった。そうして可能ならば南の政権による北の統一というふうな考え方があったとまで言い切ってもいいかもしれませんが、しかし、状況がだんだん変わってくる中でいまアメリカが考えているのは、南北二つの朝鮮というふうな考え方になってきた。北とも、いろいろな条件はつけておりますけれども、たとえば話し合いというふうな問題、あるいはクロス承認の問題を持ち出してきたり、いろいろなそういう条件が変化をしてきていますね。こういう変化を見てみますと、こういう状態というのはやはりいつまでも続かないと思うのです。そういうアメリカのいわゆる対朝鮮政策の変化について大臣はどういうふうにお考えになっておるのか。
  137. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) いま立木委員が後段でおっしゃいましたようなことが、恐らく過去何年かにおけるアメリカの考え方に近いものではなかろうかと思います。
  138. 立木洋

    ○立木洋君 まあ長期的にでも短期的にでも結構ですが、アメリカの対朝鮮政策と日本のいわゆる対朝鮮政策というのは完全に一致したものなのかどうか、あるいは異なっている点があるとすればどういう点での違いがあるのか、その点についてはいかがでしょう。
  139. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 基本的に南北が平和的に統一される状態が最も望ましい、次に、しかしどうしてもそれができないようであればクロス承認のような事態もやむを得ぬのではないか、そういう大筋の考え方は私は日米でそんなに開きはないと存じますが、ただ、アメリカの場合には韓国と安全保障の条約を結び、かつ、アメリカの軍隊を相当韓国に置いておりますので、その点になりますと、日韓の関係と米韓の関係は違った面を持っておると思います。
  140. 立木洋

    ○立木洋君 先ほどの話に戻りますけれども、こういう状態というのはやはりいつまでも続かなくて、何らかの形で打開の道が切り開かれ、事態は進展するだろうというふうに思うのです。たとえば米中関係の問題にしましても、あるいは日中関係の問題にしましても、大変長期間かかりましたが日中国交回復する。これは自民党の政府の手によって行われたわけですから、そういう事態というのは過去は考えられなかった。だけれども、そういう問題を考えてみますと、朝鮮に対するいろいろな対応の仕方というのも変化していく、いまのままではなくて、必ず変わっていくというふうに考えられるわけです。  アメリカの政策との違いの点で言えば、いま言われましたけれども、長期的には、私たちの言葉で言えば、あるいは朝鮮の民族の悲願としておる自主的、平和的な統一というふうな主張ですが、短期的には、短期的にといいますか、違いの点では、たとえばアメリカと韓国の間では米韓相互防衛条約日本の場合にはそういう軍事的な関係というものはない。そういう違う点から、私は日本政府として違ったアプローチの仕方が朝鮮問題についてもあってはいいんではないかとういふうに考えるんですが、その点はどうでしょうか。
  141. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) これはいろいろ御批判はあることは存じておりますけれどもわが国が、たとえば韓国に対してはことにさようでございますが、武器というようなものの輸出をしない、あるいは経済協力の面でできるだけ民生の安定と向上というようなところに主眼を置いていくというようなやり方をいたしておりますが、米韓のその面における関係はかなり違った性格のものになっておるといったようなことでもおわかりいただけますように、現実には、場合によりまして違ったアプローチをいたしておるわけでございます。
  142. 立木洋

    ○立木洋君 具体的にその辺もう少しお話しいただきたいんですけれども、違ったアプローチの内容について。
  143. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) たとえば、米韓には米国から韓国に対する軍事援助というようなものもございますと思いますし、また武器兵器の供給といったようなものも相当ございます。また、恐らくはアメリカのいろいろな経済的な援助にしても、その中には国防産業の基盤を強化するといったような性格のものも当然私は入っておるものと存じますが、わが国の場合には一切そういったような種類の経済援助、経済協力関係は排除をするという立場をずっと続けておりまして、私どものいたしております経済援助はそういうものにはかかわらないような形で行われつつあるということは、事実の問題として申し上げられることだと思います。
  144. 立木洋

    ○立木洋君 私は、やはり二つの点で問題があるのではないかというふうに感じるわけですが、一つの点では、先ほど大臣が言われました、長期的に言うならば話し合いによって平和的に問題が解決されていく、そういうことが望ましいということを述べられましたけれども、しかし、実際にいまアメリカが行っておる対韓政策、これは米韓相互防衛条約に基づいておるというふうに言っておりますが、実際には日米安保条約との関係において日米首脳会談後あらわれてきている事態を見ますと、朝鮮の事態を平和的な話し合いの方向で進めるという動きとこれは相反する動きがきわめて強くなってきておる、こういうふうに私たちは考えているわけであります。  この間も、外務委員会で大臣に私お尋ねしたわけですが、たとえば、アメリカの核先制使用の発言の問題にしても、あるいは核配備を韓国に対して行っている問題にしても、より積極的に朝鮮の有事の場合には即刻支援するというふうな態度表明が去る八月ですか、米韓防衛協議会ですか、等の共同声明の中でも述べられておりますし、また、日本の基地の利用の仕方にしても、沖縄では朝鮮に対する戦闘を予想した軍事訓練——以前の場合は、たとえばベトナム戦争が起こっている時代ではクリーク作戦だとかあるいはジャングル作戦だとか、そういうものが想定された訓練が行われていましたが、現在の沖縄で米軍が行っている訓練というのはそういう状態でなくなってきている。つまり上陸作戦、あるいは戦車の出撃作戦等々という軍事訓練の内容自体が変わってきた。そういう問題を考えると、これはきわめて朝鮮での有事の際を想定した訓練というのが米軍で日本の基地の中で行われている。それに対する日本政府の対応の仕方と申しますと、先日記者会見でしたか、坂田防衛庁長官が述べられた補給のための自由使用、これは衆議院の内閣委員会で大分山崎局長さんが歯どめをされたようでありますけれども、これは私は重要な発言だと思います。また、衆議院で同じく官澤外務大臣が述べられた発言にしても、B52の有事の際の出撃の場合はイエスということもあり得るんではないかと思われるような発言も私は新聞紙上で見たわけですが、そういうふうに考えてみると、平和的な話し合いを志向すると言いながら、それを望むと言いながら、実際上進んでおる事態というのはそれに反する事態が進んでおるんではないか。この点、大臣は先般はそういう軍事訓練の問題については、一つは有事の際の対応として考えられるし、もう一つは抑止力という面で考えられる。二つの点を申されましたけれども、私は平和的な話し合いを考えるならば、そういう日本の態度というのは誤まりではないかというふうに思うんですけれども、朝鮮政策に対する長期的な展望に立って、いまとっておる態度というのはどういうふうに大臣お考えになるんですか。
  145. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) これは立木委員のごらんになっていらっしゃる立場と私の考えております立場があるいは同じでないかもしれないと思いますが、要するに、たとえばこれはまず米韓だけの関係を考えてみます、安保条約のことを、日米のことをしばらくおきまして。  韓国に駐留する米軍が北を侵略する意図、そのような韓国政府の意図を支援する、そのために用いられるということになりますれば、これは当然私は指弾されるべきことであろうと思います。逆に、韓国が侵略を受けるというような危険に対処しているのであれば、これは米国、韓国の意思の一致したところとして米韓条約があることについて私どもは口を差しはさむべきでない。でございますから、侵略の意図というものが韓国側に存在するのか、北側に存在するのか、あるいは両者ともに存在しないのかといったようなことの、これはいずれとも証拠立てることの困難な種類の問題でございましょうけれども、そういうことに私はやはり関係をするのではないかと思います。  それから、日米安保条約とそれとの関連におきましては、わが国におきます米軍がわが国の平和と安全、これはどう考えましても朝鮮半島の平和安全とはやはり関係の深いものでございますが、そういうわが国の自衛、わが国の平和と安全を保つという立場から施設・区域を利用するということは、これは基本的に私は安保条約の精神でもありますし、国益に沿うものであるというふうに考えるわけでございます。
  146. 立木洋

    ○立木洋君 南が北を侵略するのか、北が南を侵略するのか判断ができないお話ですが、仮に南が北を侵略しない、アメリカが北まで攻めていくという意思がないんだというふうに言われるならば、そうするならばよけいこういう軍事訓練というのは私は必要ではない。ましてや、いまの時期にますます強めるというのもこれは適当ではない、長期の展望に立つならば。ましてや、北側から南に侵略しないということを再々朝鮮民主主義人民共和国の首脳も述べておるわけですし、それも明確にやはり政府の手で確かめてみるというふうなことも行うべきではないだろうか。そして、そういう状態がないならば、こういう過度な軍事訓練を日本の基地内において行なわれるというふうなことについては、少なくともそうさせない方向に、日本政府としてはいわゆる相手に刺激を与えるような状態というのはなくすということが平和的な話し合いに進んでいく問題になるんではないか。一方では一生懸命軍事訓練やり、刃物を隠しておいて話し合いをしようと言ったって、これは応じられることではない。ですから、そういうふうな考えはできないものでしょうか。
  147. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 世界のすべての国が自分の国は平和を愛好する、他人を侵略するようなことはしないと言っておるわけでございますが、しかし、現実には紛争が起こっておるわけでございますから、ただ言っておるということだけを信用するわけにはいかないというのがわれわれの過去における今日までの経験ではないかと思うわけでございます。そうなりますと、わが国としましても、憲法の前文にもありますような事態が今日世界にそのとおり出現したとはやはり残念ながら思いにくいので、万一の場合に備えておかなければならないということは国としては考えなければならないというふうに私どもは思うわけでございます。
  148. 立木洋

    ○立木洋君 これは先ほども話が出ましたけれども、アメリカの意向日本政府が従っていくということではなしに、朝鮮というのは日本の隣国ですから、より積極的な日本がアプローチをとって、そして朝鮮民主主義人民共和国とも接触をして、こういうふうないわゆる紛争に進むような事態が起こらないような努力ということができないものかどうか。日本政府が平和的な話し合いの方向に願っておるというならば、いまのような過度の刺激を与えるような状態をつくり出すのに協力するのではなしに、そういう事態にならない方向に努力をする、朝鮮民主主義人民共和国とも接触をするとかいう方向で、よく相手の意向も確かめてみて、政府直接みずからというふうなことも考えられないか、その点はいかがですか。
  149. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど塩出委員に申し上げましたように、わが国として北鮮を国家として承認することは、現在の場合、わが国の総合的な国益には合わないというふうに私どもは判断しておりますということを申し上げました。他方で、いろいろな意味でのその他の接触というものは、これは決して退けられるべきものではなく、接触が厚みを増していくということは政府としても決して悪いことと思っていないということも申し上げました。また、世界、ことに国連等々の場におきましては、外交官の間におけるいろいろな接触ということは、これは可能なわけでございます。決して不可能なわけではない。ただ、国と国としてということになってまいりますと、先ほど塩出委員に申し上げましたように、私はいま北鮮を国家として承認することはわが国の総合的な国益にプラスでないというふうに考えるわけでございます。
  150. 立木洋

    ○立木洋君 それはもう繰り返しその立場については大臣からお聞きしておりますから、その政府考え方は、それを私たちの見解がどうであるかは別にして、知っておるわけですけれども、つまり、私たちは当然朝鮮民主主義人民共和国を承認すべきであるという考えですが、いまの状況でできないとしても、いわゆる政府間での接触、外交官の接触、公式、非公式を問わず可能性があり得るというのであるならば、いわゆる日本考え方も相手に述べ、相手の考えも聞くというふうなことについては、いままではそういう接触はあったんでしょうか。また、今後行う予定というか、考えがおありなのかどうか、可能性の問題ではなくして、現実ではどうか。
  151. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 国連などでは、私ども非常に注意はいたしておりますけれども、たとえば国連の総長あるいは国連の職員というような人たちは中立的な立場を持っておる人たちでございますから、それに対してわれわれの考えを申し述べ、その人を通じてまた北鮮なら北鮮の考えを聞くというようなことは、これは現実にいたす場合がございます。また、今後もいたすことが私はあろうかと思いますが、なかなかしかし、そのような努力というものが具体的な実を結ばないということも、実は先ほど申し上げたとおりでございます。
  152. 立木洋

    ○立木洋君 それは、アメリカの対朝鮮政策に同調しておるというふうな状態ではやはりむずかしいことだろうと思います、私たちの考えとしては。  で、先ほど大臣お答えになりましたけれども、いま朝鮮民主主義人民共和国と国交を樹立するというのは国益に沿わないというふうに判断されておる。そうすると、朝鮮民主主義人民共和国との国交を樹立できる条件といいますか、どういうふうな状態のもとならば政府としては国交樹立が可能だというふうにお考えになっておるか、その点伺いたい。
  153. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど、最善の策ではないにしても、クロス承認というふうなことがいろいろ議論されておりますということを申し上げましたけれども、これなども一つの対応になり得る。これは抽象的に申し上げておるわけでございますから、いつ、どういうことでそういうことが起こる、あるいは起こりそうだというふうには申し上げがたいわけでございますけれども、そういうような考え方は私は一つの考え方であろうと思います。
  154. 立木洋

    ○立木洋君 最後に、先ほども言いましたけれども、対朝鮮政策を日本政府がいまのような状態のまま続いていくということは、これは歴史の流れから見ると最終的に取り残される。日中関係などでもあらわれましたけれども、最も近い隣国である朝鮮との関係においてやはり日本が最終的に取り残されるというふうな状態は、私は何としても避けなければならない。少なくとも、先ほど言われた長期的な見通しを、平和的な話し合いという方向で進むことを望んでおられるならば、そういう方向に日本政府としてのやはり積極的な努力をいまの段階から積み重ねていくということが私は必要であろうと思うのです。  当面の政策としては、より具体的な内容については十分お聞きすることができなかったわけですが、そういう点を踏まえながら、やはり朝鮮政策に対しての今後の対応ということを私は十分に考えていただきたい。そうしないと、日本の外交というものはいつも取り残されてしまって、アメリカについていくという形で、いつも過ちを犯すというふうな結果にならないとも私は限らないと思うのです。今度の国連総会における朝鮮民主主義人民共和国の立場を支持するという決議というものは、今後のそういう方向を示している一つの内容ではないだろうか、まあ大臣は別の考えを持っておられるかもしれませんけれども。そういう点で、今後の展望について政府が具体的にそういう努力をして内容でさらに大臣の方で述べておきたい点がありましたら、お聞きして、私の質問は終わりたいと思います。
  155. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) このたびの国連総会の場におきましても、私どもなりにいろいろな努力をいたしました。それは必ずしもアメリカが希望していることそのものと同じではない。わが国独自の立場からいろいろいたしてみましたけれども、実を結びませんでした、ただいままでのところ。しかし、やはりこの南北の対話というものを、ことにああいう決議案などが出ておりますような機会に、何かの形でそういう場をつくっていかなければならないというふうに私どもは依然として考えておりまして、そういう努力は今後とも続けていきたいと思っております。
  156. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 本件についての質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十五分散会