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1975-12-09 第76回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月九日(火曜日)    午前十時十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         二木 謙吾君     理 事                 稲嶺 一郎君                 秦野  章君                 増原 恵吉君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 糸山英太郎君                 大鷹 淑子君                 木内 四郎君                 中山 太郎君                 亘  四郎君                 田中寿美子君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 松永 忠二君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 田渕 哲也君    国務大臣        外 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        外務大臣官房長  大河原良雄君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省経済局長  宮崎 弘道君        外務省経済局次        長        野村  豊君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        外務省アジア局        中国課長     藤田 公郎君        外務省経済協力        局外務参事官   梁井 新一君        厚生省援護局庶        務課長      柴  義康君        農林大臣官房参        事官       山田 岸雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦  貿易規約及び食糧援助規約有効期間の再延長  に関する議定書締結について承認を求めるの  件(内閣提出) ○海上航行船舶所有者責任制限に関する国  際条約締結について承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付) ○油による汚染損害についての民事責任に関する  国際条約締結について承認を求めるの件(内  閣提出衆議院送付) ○油による汚染損害の補償のための国際基金の設  立に関する国際条約(千九百六十九年の油によ  る汚染損害についての民事責任に関する国際条  約の補足)の締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員の給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (国際経済協力会議に関する件)  (フォード米大統領の新太平洋ドクトリンに関  する件)  (核積載艦領海通過事前協議に関する件)     —————————————
  2. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の再延長に関する議定書締結について承認を求めるの件(本院先議)を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行います。質疑のある方ば順次発言を願います。
  3. 戸叶武

    ○戸叶武君 この小麦及び食糧に関する協定は、事新しいことではないのですが、問題は、前の時代と今日の時代とでは情勢食糧問題に関する限り非常に変わってきたと思うのです。これはエネルギー資源の問題が石油ショック以来大きな政治課題になったと同じく、アメリカではすでに一九七一年代からこの食糧問題を戦略物資として取り扱ってきているのでありますが、現実において、石油ショックに次いで今日ではこの食糧の問題というものが重要な政治課題になりつつあると思うんです。  そこでこの協定に際しまして、経済の問題に対して宮澤さんは特に明るい方でありますが、どういう点に問題点があるという受けとめ方を政府側ではしておるのか、その点を承りたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘のように、一九五〇年代、六〇年代にかけまして、ただいま戸叶委員が仰せられましたように、食糧、ことに小麦はいわゆる買い手市場であったと申し上げることができると思います。またその期間は、アメリカが膨大な余剰農産物を抱えておった時代でもございます。したがいまして、その時代には、買い手市場でありますがゆえに、小麦につきましてもいわゆる経済条項といったようなものが入りやすい時代であったというふうに考えるわけでございます。  しかしその後、ことに最近になりまして需給関係供給側の体制、それから需要の増加というようなことから、かつてのような買い手市場というありさまはかなりの変化をしつつあるというふうに考えております。今後、食糧、ことに小麦国際的な需給状況がどうなるであろうかということは、いろいろ未確定要素を含んでおると思いますけれども、少なくとも、かつての米国余剰農産物時代は去りましたし、また、米国内における作付制限といったようなものも撤廃をされるに至りました。したがいまして、今年あたり米国自身相当の膨大な供給力を持つに至ったわけでございますが、他方で、米国以外の、ことに最近伝えられておりますところは、御承知のように、ソ連における農産物不作というようなこともございまして、一般的に今後の食糧、ことに小麦需給状況がどうなるであろうかということは、少なくとも不確定要因相当多いと申し上げて間違いがないのではなかろうかと存じます。かつてのように、これは恒常的に供給過剰である、買い手市場であるというふうに考えるわけにはいかない。将来の長い見通しは不確定要素があるけれども、五〇年代、六〇年代のように考えるわけにはいかないというのが現在の穀物、ことに小麦をめぐります国際環境ではなかろうかと存じます。  そういう意味におきまして、戸叶委員の言われましたように、この協定背景というものは過去二十年間に相当変化をしたことは確かでございます。現実には、したがいまして、一九七一年以来経済条項というものが協定から欠けるということになったわけでございますが、それにもかかわりませず、私どもこの再延長に関する議定書の御承認を得たいと考えておりますのは、そうではありましても、なお経済条項というものをもう一度盛り込むことが、その可性能というものは常に探求すべきであるということ、それからまた、この小麦理事会におきまして、そのような問題についての各国間あるいは専門家間の意見の交換が可能であるということ、また各国からのいろいろ情報資料等の入手もできるといったような意味で、かつてのような経済条項を持っておる協定では現在ございませんけれども、長年そのようなことでできましたそういう協議あるいは情報交換の場というようなものはやはり大切なものであろうというふうに考えておりまして、将来のことも考えつつ今回御承認を得たい、かように考えでおるわけでございます。
  5. 戸叶武

    ○戸叶武君 外務大臣が分析しているとおり、戦後における食糧問題というものは大きく分けて三段階ぐらいに屈曲しておるのであります。  国破れて山河ありと言われているように、農業生産重点を置いている国は、戦争に破れてもその復興は戦後において非常に早いのであります。これは日本においてもまだ農業的な基盤というものが崩壊していなかったから、戦後における復興力というものは農業が一番早かったと思います。アメリカのように、土壌的に豊かな土壌であり広大な土地を持っている国においては、すぐに余剰農産物ができて、それをはくのにもてあましたような状態であったのでありますが、この数年間における天然災害、もう一つは、ソ連のように工業重点を置いていつの間にか農業が荒廃し、官僚的な指導だけでは、イデオロギーだけでは農業生産というものが高まってこない、近代化もなされてない、それに天候災害があった、そういう幾つかの要因のもとにあのような農業面における挫折があったのでありまして、それによって特にソ連中国、広い範囲内における不作というものが、アメリカがいままではくことが困難と思われた余剰農産物を全部はき出してしまったばかりでなく、三年ほど前に大豆ショック日本が受けたように、年越しのときに豆も買えない、いきなり四倍の高値になったというような、石油ショック以前における大豆ショックがあったように、非常に需給関係の中に大きな変化が出てきたのでありまして、そういう点でアメリカ石油もまだ持っている、農業生産もあなたが指摘したように、作付制限土地を解除するならばさらに生産が上回るというような状態の中に、発展途上国においても非常にプリミティブなナショナリズムが興こって、そこにはいろいろなトラブルが起き、荒廃が起きておった。ベトナムにおいてもアメリカのあの間違った政策によってずいぶん農業生産もだめになってしまった。そういうような背景のもとに、アメリカはいつの間にかエネルギー資源の問題と食糧の問題と、もう一つは核を中心とした軍事力、この三つを持っていれば鬼に金棒という形において、今日アメリカの威力を復興させてきたのは事実だと思うんです。  そういうところで非常に私は危険を感ずるのは、日本食糧政策の中に自主性というものがないんです。きょうあたりになると、選挙が間近かになると農民に都合のいいようなことを打ち出す癖がありますが、あれほど米をつくるなと言っていても米はつくられる。そういうときに、今度は何か大変農民が飛びつくような政策を打ち出して、はっきりしたようなしてないような、学校給食も大幅に米飯化、いろいろなことが急速に行われると、大体アメリカから小麦は余り買わなくて済むようになるんです。政府のやっている、財界の、自分たちの品物を売るために、食糧ぐらい、アメリカからえさぐらいは買ってやらなければ自動車ミシンもなんて、いまミシンは余り大したことないでしょうが、電気用品も売れない、そういう国際分業政策の上に立って日本農業を荒廃させたものは日本農林官僚自民党です、財界と癒着した。これが一体どっち向いて走るのか今度わからないような政策、これは何というか、あいのこ政策混血政策ですが、これを打ち出してきたんですけれども、一体国際社会に、これからいろんな会合に出ていくんでしょうが、発展途上国において餓死者も出している、そういうところに小麦だけじゃなくて、アジア諸国やアフリカなんかは米でも間に合うんです。そういうふうなのに一々アメリカから小麦を買ってそれを援助物資に充てるなんという方式よりは、やはり日本の米を学校給食だけじゃなく、送ってやっても結構間に合うんです。そういうことに対して、これは農林大臣の領域まで侵すことになるけど、まあ宮澤さんは三刀流くらいの達人だから、そこいらの調整をどういうふうに政府はやっていくつもりですか。国際会議に出た以上は、農林大臣だ何だというんでなくて、この問題が総合的に絡みついて通貨、為替の問題にまで関連して、全部入ってくると思うんです。三木さんのような総論専門ビジョン係なら別ですが、これから行く国際会議は各論の時代に入るんで、具体的問題と取り組んでいかなければならないと思うんですが、そういうことに対して宮澤さんはどう考えているか。宮澤さんで足りない点は専門家農林省も来ているでしょうから、農林省はこっちを向いて走る、通産省はあっちを向いて走る、外務省は真ん中をよろめいて走るでは、これは日本の外交というものはめちゃめちゃになると思うんですが、どうでしょうか。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは私から有権的にいろいろ申し上げることは必ずしも適当でない種類の問題を多く含んでおりますけれども、過去二十年ぐらいのわが国のいろいろ経済政策を反省いたします場合に、いわゆる所得倍増計画というものの発想が、わが国農業をどのように位置づけるかということについて必ずしも十分でなかったということは、当時からそういう議論がございましたけれども、やはりいまになっても問題にしなければならないところではないかと思います。  当時考えられておりましたことは、もう戸叶委員もよく御承知のように、農村における潜在的な労働力、次三男対策というようなことがいわれた時代でもございます。それに対して、わが国工業化によって職場を与えるという考え方、と同時に、わが国経済全体が農業工業、あるいは都会と農村という間に格差を生じないことが必要でありますから、逐年生産者米価というものを上げることによって格差の大きくならないような政策をとってまいった。また、その結果として農村相当購買力が生じまして、それが耐久消費財への需要になり、わが国工業基盤が拡大をし、具体的に申せば、電気器具にしましても自動車にいたしましても国際競争力を得て輸出が可能になった。このことは、当時わが国消費人口の三分の一を占めておりました農村購買力を持つに至ったということが非常に大きく寄与していたことは事実でありますし、また、そのためにわが国全体として国内の大きな所得格差というものが地域的にも農工間にも生ぜずに今日まで進んでくることができたというところまでは評価をしていいのではないかというふうに考えております。  他方で、当時わが国農業政策は、いわゆる自立経営農家百万戸育成というような、これはこれとして十分に意味のあったことでございますが、その間に兼業農家というものをどのように扱うべきかということについて、あるいは無理な注文かもしれませんが、はっきりしたビジョンを立てないまま、それらの農家も、仮に農業所得が十分でなくても農外所得というものが増大をすれば、これは農業ではなくとも農家としての生計は十分にやっていけるというような、一応そういうような考え方から、片方で自立経営農家育成には十分な配慮を払いながら、兼業農家というものについての十分なビジョンを欠いたままわが国工業化が進行したということになろうと存じます。  その結果、わが国食糧自給率、ことに麦の場合にさようでございますが、非常に低下をいたしました。   〔委員長退席理事増原恵吉着席〕米は十分に自給をしておりますけれども、それ以外の穀物については、飼料を含めまして自給率が非常に低下をいたしたということが大体今日までの私は経緯であると思います。  それを戸叶委員は言われたわけでございますけれども、あえて私がもう一点つけ加えさせていただくといたしますならば、その間に価格の問題というものが私はあったと思うわけでございます。すなわち、消費者立場からいえば、なるべく低廉な価格食糧供給を受けるということ自身消費者にとって非常な利益でございますから、自由化をせずにわが国でそれらの食糧飼料を仮に自給をいたしたといたしますと、それは国際比価では相当高いものについたであろうということは容易に想像ができます。わが国農業の一般的な生産性米国あたりの、あるいはカナダ、オーストラリアあたり生産性相当に異なりますから、したがいまして、そういう観点からいえば、いわゆる自由化政策を推進をしてまいったということは、最終消費者立場からいえば意味のあったことである。こういうことを一言つけ加えましても、それ自身は私は誤りでないと思うわけでございます。  しかし、いまの段階になりまして、冒頭にお話もあり、私も申し上げましたように、世界食糧需給状況相当の不確定要素をはらむということになりまして、過去二十何年問われわれのやってきたこの政策というものをもう一度考え直さなければならないのではないかという議論相当国内に強くなっておりますことは御指摘のとおりでございます。冒頭に申し上げましたように、この問題について私が有権的に、かくあるべしということを申し上げる立場にはございませんけれども、過去の経緯を考え、現在われわれのおります状況を見ますと、ただいま申し上げたようなことはまず客観的な評価として申し上げても誤りでないのではないかというふうに思っております。
  7. 戸叶武

    ○戸叶武君 大臣が問題にしている価格政策というものが農業政策の中にも非常に重視されなければならないのに、これが農業基本法をつくったときにおいても、西ドイツでつくった農業基本法の良心的なものと比較すると、一大欠陥を内在させたのは、主要農畜産物価格の安定を期しての価格政策というものが抜かれていたのです。いまのインチキ建築業者やり方と同じく手抜きをしてしまったのです。農政においてやはり政府財政支出を少なくさせるために米にだけしぼって価格政策を行ったところに、米をつくらなければ金が入らない、麦をつくっていたのではとても割りに合わない、麦をつくるのをやめろといわなくても、戦後において一応もっともらしく農業基本法をつくったときに、経済全体における総合的な観察のできない農林官僚中心として、政府の圧力によるものでありましょうが、日本農政はつぶれてしまったのです。かたわになってしまったのです。そのとおり今日かたわの状態のもとに農村は荒廃している。百姓やっていたんでは食っていけない、出かせぎ以外にない。結局炭鉱に行くなり、地下鉄工事に来るなり、出かせぎ、いまのトルコの民衆が六十万ECの国々に流れ込んでいるように、東北の農民のほとんどは農外収入を求めて家庭を離れてそこへ流れ込んでいかなければならない、こういう悲劇ができてきているんです。だから日本の体質の中にはアンシャンレジームがいまだに崩れず、山林財閥は遺存し、土地成金は続出するというような病的構造になっておるから、何だか保守党を支持していれば金持ちになったような錯覚を持って、そうして社会主義的な、社会主義の中にもずいぶんあわて者があるから、それで不信用な状態政権に近づくことができないのですが、このところで私は本当に農業問題をして農民が目覚めてくると思うんです。  あなたは特に金融の問題には詳しいですけれども、フランス基盤の強いのは官僚が堕落してない点と、もう一つは、やはり中産階級がプチブルジョアなどというんじゃなくして、手にすきを持って働く自営農民というものの基盤がやはりがっちりとあることです。それから金のむだ遣いをしていないことです。パリのようなところは特殊なところとして、農村においては堅実な一つ基盤がつくられているのです。日本ではそれがなくなっていますよ。われわれは中産階級擁護論じゃない。問題は土地を愛し、生産に対して、労働に対して汗を流して報酬を求めるというだけの勤勉な気風というものが、浮薄なこの高度経済成長政策の中において、ばくちと麻薬と土地ブローカーと、そういうものが横行するような昭和元禄——徳川時代元禄時代でも、最も悪性なメタンガスの発生する基盤をつくってしまった。私は、ここで食糧問題を中心として本当に真剣に今度は考え方を直さないと、日本には実際資源がないと言っているが、昔から豊葦原の瑞穂の国といわれて、天候がいいし、台風が雨を持ってくるし、米をつくり、あるいはその他の作物をつくってもその基盤はあったのです。ところが人間が荒廃させられちゃったのです。基盤がぶち壊されているのです。いまになってから今度はわけのわからないことをやり出しているけれども、御承知のように、農業基本法ができたときのドイツ食糧農林大臣リビックでしたが、リビックに対してアデナウワーが言っているのは、高度経済成長によって成長率は高くなるし所得は多くなる重化学工業部門と違って、第一次産業に従事している農民というものは、農業成長力も低いし所得も低い、このアンバランスを是正しないと国民経済というものが荒廃してしまう。あの哲学のないエアハルトは調子に乗って、ドイツ経済の奇跡などと言っておだてられているが、あんなやり方は今後のドイツ、将来のドイツに対して不幸をもたらす結果の危険があるというので、あの農業基本法政府責任において足腰の弱い農業を助けるためにつくり上げた基本的な政策です。   〔理事増原恵吉退席委員長着席〕 そのまねをしているけれども、哲学のない日本官僚のつくりあげた農業政策は、大地から遊離し、農民の心を傷つけ、そうして今日のような退廃を導いてきたのであって、こういう罪は、一池田さん、田中さん、下村治君だけの罪じゃなくて、この日本政治日本の優秀な官僚の中に、やはり百姓とともに苦しみ、悩み、その苦悩の中から哲学を生むというものを持っていないところがこのような政治の崩壊を導いたのだと私は思うのです。  われわれは、農業政策において二宮尊徳勤倹貯蓄だけを教えこまれたけれども、フランスでも御承知のように近代資本主義の発展する前における政治の場において、国の基盤を高めるために重農主義が、国の政策としては、経済政策のセオリーとしては、マーカンチリズム以上に私は大きな役割りをしたと思うのです。そういうものの芽がヨーロッパ社会にはある。だからこそこの基盤というものにゆるぎがないし、官僚の秀才が投機的に政治世界なんかにのこのこ出てこない。そうして国のために最も良心的な一つの貢献をしている。  日本でいま一番堕落しているのは、自民党は官公労の労働組合の幹部を攻撃しているけれども、日本を本当に痛めつけているのは大蔵官僚並びに通産官僚です。この権力と金とが癒着した堕落というものが、柳澤や田沼意次の悪政以上に今日のこの退廃を生んでいるので、これから誘発するのは何かということを、この二、三年の間に思い知るときが必ず私は来ると思う。それは本当に血盟団や五・一五や二・二六よりももっと物すごい形において人民の力によって政治を奪還しなければならぬという非常に根強い運動の根源になると思うのです。この抵抗運動をいまますます助長させているのが、今日における人権の当然の基本的なストライキ権の確保ですらも、あれを与えたら何やるかわからないという、気違いに刃物のようなつもりで抑えつけようとする、この非近代的な政治のあり方、労働者を敵とし、農民を滅ぼし、あとへ何が残るのか。こういう点において、これは漫然として、われわれはこの問題をいますぐにどうこうと言うんじゃないけれども、このマンネリズムから脱却するために、平地に乱を起こすわけじゃないが、もう少しわれわれが農業政策に対して挑戦しないと——昔の小作人組合基盤としての闘争と違う。生産に従事する全農民がこの生産の場から浮かされてしまった。農村では農協官僚がばっこしている。役所と農協と、しかも行政と、中央政権独占資本と結びついた働かない層の収奪が日本を混迷に陥れている。私はこの問題に対して、本当に単なるその場限りの仕事でなくて、農業問題をもっと深く考えてもらいたい。  ヨーロッパにおいて、イギリスのウィルソンが、あれほど食糧自給力がなかったイギリス日本よりも食糧自給力がはるかについているじゃありませんか。なぜそれをやったか。日本よりひどくゴルフ場ができちゃったのです。あのアメリカ横断鉄道ができたときにアメリカから穀物が安く入ってきた。四割ぐらいでもって入る。小麦をつくったのじゃどうしようもない。フランダースの一帯と、あのオランダなりデンマークなりイギリスにおいて、百姓なんかやっているのはばかじゃなきゃやっていけないという時代があって、結局は農村におけるまじめな農民は、日本のこの二十年間のあり方と同じように都市へ都市へと流れ出してきてしまった。農村で働くやつがいなくなった。そこに囲いができた。イギリスでマルキシズムがなかなか入らなかったのは、土地社会主義が根を張ったというのは、あの産業革命の外から見ると繁栄期と言われているときに、中は空洞化されてきたのだ。愛着すべき土地から、アイルランドの小作人だけじゃなく、農奴的な小作人だけじゃなく、イギリスにおいても農村が荒廃していってしまってゴルフ場なんかできたのだ。日本がいまあれよりひどい。  私が四十四年ほど前にイギリスに行ったときに、あの文学者の正宗白鳥という半分ニヒリスチックな皮肉な文明評論家でしたが、彼が、なるほどイギリスには土地が広いからゴルフをやるようなところがいっぱいあるのだという皮相な見方をしましたが、そうじゃないんだ。あのゴルフ場へ行ってごらんなさい。昔はみんな小麦をつくったところですよ。小麦をつくったのじゃやっていけないのでゴルフ場になった。日本だってそうです。しかし、一度こういうことができたら、イギリスでは大変な努力で、戦争中の苦悩から食糧自給体制をつくらなければ危ないというので、いま自給率を高めていったのじゃないですか。容易なことじゃないです。私は西ドイツにおいても、リビック食糧基本法の前にフォンゼクト、敗戦後におけるドイツの軍部の鬼才です。ヒトラーに倒されましたが、彼は、ドイツが戦争に軍事力で破れたのじゃない、共産主義のイデオロギーで破れたのでもない、国民の生活を安定すべき食糧問題をおろそかにしたことがドイツの崩壊を招いたのだ。この見方が必ずしも当たってないかしれないが、彼はドイツ再建の基本問題として食糧問題と真っ当に取り組んだのです。カウツキーの農業問題よりも、イデオロギーは違うが、フォンゼクトのドイツ再建の基本問題はわれわれに教えるところは非常にあるのです。彼には彼なりに、軍部の鬼才であったが、ヒトラーのようなはったりもなかった、もっとまともにドイツの大地と取っ組んだんです。日本官僚の中にも、私は大学の試験答案の秀才だけじゃなく、民族の苦悩を掘り下げて、その苦悩の中から解答を導くような良心的な者が私は出てくると思う。保守党の政治家からも出てこなければならないと思うのです。  そういう意味において私は、まあ宮澤さんなんか最も良心的な官僚出身ですが、ここいらでひとつ、もう農林官僚に物言ったって手に負えない。局長ぐらいになれば代議士に出ることか参議院へ出ることきりか考えていないのだから、こういう手合いを相手に私は物は余り言いたくない。本当に日本のいま働く労働者農民の苦悩というものを代表して、国民経済の中で、働けばわれわれの生活の中にも将来があるというビジョン——ビジョンじゃない、本当の方向づけをやらなくちゃだめだ。そういう意味において私はこの問題をかりて、かりてというか、これをたたき台としてあえて私は——政治は具体的事実を中心として問題を展開しないと、抽象論では聞いてくれないから、横道の議論のように思われるかもしれないが、田中正造が直訴したような気持ちで、真っすぐの気持ちで、私はあえていま政権を握っている政府に、もっと食糧問題に対して、他産業との調整の問題、成長力所得の問題、生活の安定の問題、そういうものをひっくるめて私はこの辺でやってもらわないと、外交は外交だ、農政農政だ、通産、あるいは通貨、為替はこっちだ、みんなノミの頭、ノミのきんたまを研究するような専門家ばかり多くなって、全体の人間の尊厳を中心に物を考える政治がなくなったことに対してどこからかやはり難癖をつけないと、本当の物を考える層がなくなってしまうんじゃないか。ぼくはやはり東畑博士とか小倉武一君なんかにも大きな期待を持ったんだが、やっぱり人間としてはスマートで知性人であるけれども、どろんこにならない人間は、しょせん民衆の憤りというものを胸の中に息吹のように通わせない人は問題に対する明快な解答をもたらすきっかけをつくってくれないと思うので、これはよけいなことのように思うかもしれないけど、どうぞパリに行くと、フランスはハイカラのように見えるが、パリを一たび出たときに、リヨンに出たって違う、農村地帯に出たときに、あの堅実な汚されていない農村があるということを見て、古い城に入るのもいいし、あるいはパリのモードの中に酔うのもいいが、たまにはとにかく田舎を見て、フランス人のアメリカ人にも追従しない根性、通貨の問題でも、為替の問題でも、妥協はした、闘って調整はした。日本のように何でも乗っかりましょうで、アメリカ様々の上へ乗っかり専門だと、いつの間にか馬がはねてどこかへ吹っ飛ばされていく危険性もあるから、乗っかり専門の外交、あるいは農業政策食糧政策、そういうものをよして、日本世界に貢献するためにも何から始めなければならないか、この問題をひとつ、これは宮澤さんあたりが音頭を取る以外に、ほかの連中は次期政権をめぐってがつがつ——あなたはその次ぐらいだろうから、多少ゆとりのある人からそういう問題をやはり考えてもらわないと考えてくれる人がないから、あえてこういう問題を粗野な形でぶつけるんですから、ひとつあなたは受けとめてください。お答えを願います。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いまおっしゃいましたことは、簡単にお答えすることはむしろ不謹慎であるかと私は思いますが、いわゆる経済性であるとかあるいは国際比価であるとか、そういうことでわが国農業というものを割り切っていける限度はどこまでであるかというようなことは、いろいろ考えなければならない問題があると思います。ことにそれが、農村の変貌によってわれわれの心の問題にどういう影響を与えるかということにまでなりますと、これは経済外の問題であるが、しかし、実際には完全雇用とか工業化とかいうことが人の心を変えるということはもう明らかでありますから、そういう問題をも含んでおると思うのであります。恐らく農政というものに従事しておられる方々、これは役人諸君を当然含めまして、これは常にいま戸叶委員の言われるような問答を心の中で繰り返しておられるに違いないのでありますから、この人たちが決していま言われましたいろいろな点に留意していなかった、あるいは無視しておったということでは私はないであろうと思います。その点はこの人たちの名誉のために私はそういうふうに申し上げなければならないと思いますが、しかし、何分にも提起された問題は非常に大きな問題でありますので、おっしゃいましたことは十分私自身も反省の資料として考えさせていただきたいと思います。  ただいまここで何か簡単なお答えを申し上げることは、かえって不謹慎のように思いますので、それだけ申し上げておきます。
  9. 戸叶武

    ○戸叶武君 時間をオーバーしちゃいけませんからこれでとどめますが、このごろはフォードやキッシンジャーあたり中国へ行ってずいぶん問題を掘り下げて腹を割って話したが、コミュニケは発表しないそうだけれど、私は大きな声で質問やりっぱなしで、答えはきょう求めなくても、心通ずるならば、宮澤さんのような人が一片の良心を持って受けとめてくれれば、必ずそれで花が咲くと、人がいいから自分だけで早合点して、これで私は質問を打ち切ることにします。
  10. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは余り時間もございませんので、できるだけ簡単に御答弁をお願いしたいと思います。  この小麦協定につきましては、新協定案がまとまらずに、いわゆる経済条項、すなわち、小麦価格及びこれに関連する権利義務規定、そういうものがないままに一九七一年の協定を再延長しているわけでありますが、新しい協定をつくるためにどのような機会が持たれ、どういう理由でまとまらなかったのか、これを簡単に要点だけ御説明願いたいと思います。
  11. 野村豊

    政府委員(野村豊君) ただいま御指摘ございましたとおり、七一年のこの協定経済条項ができませんでした理由は、その小麦価格の規定のあり方等につきまして主要輸出国間等でいろいろ合意が得られなかったというようなことがあった次第でございます。しかしながら、先ほど大臣の申されましたとおり、経済条項はございませんけれども、新しい協定を準備しようということがうたわれておりまして、規約の二十一条の中におきまして経済条項を含む新たな協定の準備を行う、もし成算のある交渉が可能である場合には、UNCTADの事務局長に対しその交渉のための会議を招集することを要請することが定められておるわけでございます。  その後、いま御指摘のございましたとおり、この協定の参加国はこの新しい協定の準備には携わってまいったわけでございますけれども、七一年の協定有効期間中におきましては、特に御承知のとおり、ソ連穀物の大量買い付けというような問題がございましたり、そのために国際貿易の非常な不安定な問題がございました。あるいはまた、国際通貨の不安定とかインフレ問題とか石油問題等もございまして、その当時は当面の小麦市況の検討に追われまして、新しい協定の検討には十分手が回らなかったわけでございます。しかしながら、最近に至りまして、特に新しい協定を準備しようということになりまして、本年の二月になりまして小麦理事会の下にさらに準備グループができたわけでございまして、本年に入りまして三月と五月、九月の三回にわたりましてそういった準備会合が開かれておるということでございまして、とにかく新しい協定をつくろうというふうな準備がいま進みつつあるというのが現状でございます。
  12. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 アメリカ経済条項を入れることに非常に反対をしておる、このように聞いておるわけですけれども、アメリカが反対をする真意はどこにあるのか。
  13. 野村豊

    政府委員(野村豊君) ただいま経済条項を盛り込むことにアメリカが反対であるというふうにおっしゃったようでございますけれども、アメリカもいわゆる経済条項を盛り込むことに反対ということを言っておるわけではございません。ただ、先ほど大臣がおっしゃいましたとおり、小麦協定を取り巻くこの種の市況というものが非常に五〇年代、六〇年代から変わってきておるということは事実であるわけでございます。したがいまして、アメリカのいまの考え方によりますれば、従来の価格中心としたような協定ということよりも、むしろそういった価格帯を中心として輸出国、輸入国の権利義務関係を明示的に規定するということよりも、むしろ生産とか供給等の数量的なものを中心とするようなものを通じまして何か協定をつくってみたらどうであろうかというふうな考え方を示しておるわけでございまして、経済条項は全然ない、あるいはまたそれに反対しておるという趣旨のものではございません。
  14. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、いま言われました生産供給あるいは備蓄、こういうような問題と価格の問題、これは決して別のものではなくして、ある程度価格の安定がなければ生産意欲もないし、そういうことで両方とも大事なもので、決してこれは対立するものではないように考えるわけですが、政府は今後この新価格協定、新協定をつくるに当たりましてどういう考えで臨むのか、私は、いま言ったように、価格生産というものは対立するものではなしに、両方相まっていくものである、そうなければならない、こう考えるわけですけれどもね。
  15. 野村豊

    政府委員(野村豊君) 私たちも、いま先生の御指摘になりましたような考えでいまやっておるわけでございます。  御承知のとおり、新しい協定の検討に当たりましては、先ほど申し上げましたとおり、小麦需給状況というものが、かつての過剰から非常にいま均衡状態に入ってきておるということでございまして、在庫とか備蓄といった要素も従来と違って、やはり新しい協定一つの要素になることも考えてはどうだろうかというふうな意識が非常に参加国の間ではもちろん高まっておることは事実であるわけでございます。しかしながら、わが国のように大量の穀物、特に小麦を輸入しておるわけでございまして、かつまた、その備蓄の設定というふうな問題のみをもちまして需給、価格の安定を期し得るかということになりますれば、非常に疑問を持っておるわけでございまして、ただいま先生の御指摘にありましたとおり、やはり備蓄、あるいはまたその価格というものをまちまして供給の安定というものを図っていくというのが筋ではなかろうかというふうにわれわれも考えております。
  16. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 キッシンジャー構想、さらに今年の九月二十九、三十日の両日ロンドンで開かれました新協定準備グループ第三回の会合で米国は新たなる提案をしたと聞いておるわけですが、その内容を簡単に説明願いたい。また、それに対する日本考え方はどうなのか、これを承っておきます。
  17. 野村豊

    政府委員(野村豊君) いまお話のございましたとおり、小麦準備グループの第三回の会合が九月の二十九日に開かれたわけでございます。この会合におきまして、アメリカは備蓄を主体といたします提案を行ったわけでございます。その内容は、穀物供給の不足時におきまして、特に供給価格の安定を図るために国別の保有の形で何か備蓄を持とうという提案であるわけでございます。具体的には、小麦二千五百万トン、米五百万トン、計三千万トンを備蓄しようという考え方に立っておりまして、この三千万トンという量は通常のいわゆる在庫というものの上積みになるわけでございます。また、この三千万トンをどういうふうにして各国で分担するかということにつきましては、各国小麦の貿易量あるいはまたその財政能力、あるいはまたその生産能力、生産というようなものも考慮いたしましてやるわけでございます。かつまた、いま申し上げました三千万トンの備蓄をどういうふうにして積み増すか、あるいはまたはそれを放出するかということにつきましては、その生産の見通しと在庫の水準というものを基準といたしまして、一種の数量トリガーとわれわれは言っておりますけれども、具体的な数量という一つの基準をつくりまして、それをもとにしまして備蓄を積み増したり放出をいたしたりしようというふうなことも考えております。かつまた、開発途上国に対しましては、特に先進国側も何らかの備蓄のための援助といいますか、協力もしたらどうだろうかというふうなことも言っておるわけでございます。  このアメリカの提案につきましては、必ずしもアメリカの中でも十分固まったものではないというふうに聞いておりますし、かつまた、いま申し上げた数字あるいは仕組みというものも、まだ一種の試みといいますか、試行の域を出ておらないというふうに聞いておるわけでございまして、各国ともこれに対しましてはいろいろコメントは行っておりまして、かつまた、いろいろその問題等の解明ということに当たっておるわけでございます。わが国といたしましては、やはりこのアメリカの提案は備蓄問題を検討するための一つの素材とはなり得るかもしれません、しかしながら、いま申し上げたいろいろな備蓄の積み増し、放出の基準となるデータといいますか、資料その他の選択については合理的なものにした方がいい、かつまた、やはりその食糧の援助問題、開発途上国の問題は、むしろこういう問題は切り離したらどうだろうかというふうな考え方もございますし、さらに基本的には、先ほど申し上げましたとおり、この備蓄という問題だけで、数量的に国際小麦価格の安定、あるいはまた貿易の拡大、あるいは安定ということを図ることば必ずしも十分ではないんではなかろうかということで、やはり価格あるいは供給の確保ということをも織り込むべきではなかろうかということを主張しておるわけでございまして、その日本考え方につきましては、カナダとか豪州とか欧州共同体等も同じような考え方にあるというふうにわれわれ承知しておる次第でございます。
  18. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 新しい協定についての今後の見通し、最近は食糧をめぐる国連の会議も非常に南北対決の場となりつつある、こういうように感じておるわけでありますが、そういう中で、この新協定も早くまとまらなければ非常に世界人類にとって残念なことではないかと思うわけですが、見通しを外務省としてはどう感じているのか。まとまりそうなのか、なかなか時間がかかるのか、その点はどうなんですか。
  19. 野村豊

    政府委員(野村豊君) 現在のところ、いま新協定の成立の見通しにつきまして、明確な判断といいますか、予測を述べることは非常にむずかしいというふうな事情にあるわけでございます。先ほど申し上げましたとおり、小麦の新しい協定の準備作業グループが三回まだ会っただけでございまして、今後もまだ会う予定にはなっておるわけでございます。  しかしながら、この全体的な新しい小麦協定規約というものができるためには、やはり小麦の全体の需給状況、あるいはまた、たとえばいま申しました仮に価格帯というものを織り込めれば、そういう価格帯の幅とか基準とか、あるいはまた基準となるべき小麦とか、そういったいろいろな問題が交渉のマターになるわけでございます。かつまた、その交渉のタイミング等につきましても、若干ヨーロッパ共同体等とアメリカとの考え方も違っておるわけでございまして、いずれにいたしましても、非常にいろいろな要素が絡み合っておりまして、新協定の成立がいつかということは、いまの段階におきましては申し上げることは非常にむずかしいかと存じます。ただ、来年の六月に小麦理事会が開かれるわけでございまして、そのときまでにこの準備グループの作業を踏まえまして新しい協定の成立への可能性があるかどうかということもさらに検討されるというふうな状況になっておるということでございます。  かつまた、先ほどこの問題が南北の対立というふうなことをおっしゃいましたわけでございますけれども、御承知のとおり、この小麦の問題は通常のいわゆる一次産品問題とは少し様相を異にしておりまして、どちらかといえば、生産国というものはいわゆる先進国が多いわけでございまして、そういった意味小麦協定の中には余りそういった意味の南北の対立というふうな関係のことは余り出てまいらないのじゃないかというふうに考えております。  もちろん、この小麦協定の一体をなしておりますところの食糧援助という問題がございまして、この食糧援助につきましてはわれわれ日本を含めまして先進工業国も参加しておるわけでございまして、そういう考え方には今後とも積極的に進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  20. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 もう少し答弁を簡潔にひとつお願いいたしたいと思います。  米ソ穀物協定が先般結ばれたわけでありますが、どう評価しているのか、わが国に対する影響はどうなのか。さらに、先般ソ連の発表によりますと、本年度ははなはだしい不作状況であるように聞いておるわけでありますが、その状況はどうなのか、わが国食糧輸入、小麦の輸入等には影響はないのかどうか。またソ連は、米ソ穀物協定では上限が決まっていると思うわけでありますが、ソ連政府食糧需給は心配がないのかどうか、そのあたり外務省の見通しをお聞きしたい。
  21. 野村豊

    政府委員(野村豊君) 従来、ソ連世界穀物市場におきまして突発的な大量買い付けを行ってまいったわけでございまして、そういった意味世界穀物貿易の撹乱的な要因となっておったということが指摘されておるわけでございます。そのソ連が、最大の輸出国であるアメリカとの間で今回穀物協定締結されましたことは、ソ連穀物買い付けの不安定性を除去する、かつまた、世界穀物貿易全体の安定に寄与するものであり、伝統的な輸入国であるわが国にとりましても穀物市場の不安定性が軽減されるというふうに考えるわけでございまして、そういった意味からわが国にとりましても全体的には好ましい影響があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。  先ほどございましたとおり、その後、ソ連穀物生産は本年は異常な天候によりまして相当落ち込んでおるということでございます。ことしのソ連穀物生産は、大体小麦理事会の資料によりますと一億三千八百万ないし一億六千万トンぐらいでございまして、これは昨年の実績の一億九千五百六十万トンに比べて相当減っておるということであるわけでございまして、特に、ソ連は本年度の穀物生産見通しを二億一千五百九十万トンというふうな大きな数字を掲げておりましたわけでございまして、それに比べれば相当な落ち込みであるわけでございます。  これに対しまして、いま申し上げましたアメリカの場合では、アメリカ穀物生産はことしは非常に豊作に恵まれておるわけでございまして、特に小麦につきましては五千八百二十万トン、前年比一九%くらいの増産になっておるわけでございまして、ソ連は大体年間六百万トン来年から買うということになっているわけでございますけれども、この程度のものであれば十分吸収し得るのではないかということでなかろうかというふうに考えております。
  22. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わが国の輸入には支障はない、そう考えていいわけですね。
  23. 野村豊

    政府委員(野村豊君) そのように私たちも考えておる次第でございます。  特に、先般御承知のとおり八月十二日に安倍農林大臣アメリカを訪問されまして、バッツ農務長官との間でいろいろ日本小麦飼料穀物、大豆の需給見通しというものにつきまして合意に達しまして、特にアメリカは、わが国が伝統的な輸入国であるということを非常に強調しておるわけでございまして、日本供給には十分努力するということを言っておる次第でございまして、そういった意味からも、わが国供給には不安がないというふうに考えております。
  24. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ただいまお話のありました日米の小麦協定というものが結ばれたわけでありますが、一方では国際小麦協定もあり、また米ソ穀物協定もあるわけですけれども、一つはこういう二国間の協定国際小麦協定の中で優先的に履行されるということは間違いないのかどうか、あるいは国際小麦協定と二国間の協定というものは全然競合しないものなのかどうか、そのあたりはどうなっておりますか。
  25. 野村豊

    政府委員(野村豊君) いまおっしゃいました二国間の取り決めと小麦協定との関係でございますけれども、従来小麦協定がございましたときにも、やはり同じような主要輸出国と輸入国との間でこの種の取り決めないし契約は存在していたわけでございまして、したがいまして、この協定と米ソ穀物協定との間には特に相反することはないし、矛盾はないというふうにわれわれ考えておりますし、かつまた、その後ソ連も新しい穀物協定の準備と言いますか、作成には参加しておるわけでございます。  わが国の場合に、いま申し上げました安倍農林大臣とバッツ農務長官との間におきますところの合意というものは、わが国の年間の数量目標というものを申し上げまして、それにつきましてアメリカ側がこれを十分尊重するということを言っておるわけでございます。もちろんそういった意味で、特に全体的な小麦協定との関係では何ら矛盾はございませんけれども、かつまた、これは二国間におきまして日本側の要望は十分尊重し、供給を確保するということはすでに申し上げたとおりでございまして、十分その点は心配なかろうと思っております。
  26. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 経済条項を欠いた小麦協定は余り意味がないように思うわけですが、大体どういう点でこの協定国際小麦市場の安定に役立っているのか、単なる情報交換とかそういうことだけなのか、それ以外に何か小麦協定各国に最低これだけは生産しなければならないとか、そういう権限はないように思うんですが、その点はどうなんですか。
  27. 野村豊

    政府委員(野村豊君) いまおっしゃいましたとおり、経済条項のない現在のもとにおきましては、権利義務関係はございません。したがいまして、基本的には情報交換であるわけでございます。しかしながら、この情報交換というものは国際小麦の動き、生産、需給、フレート、その他細かい資料にもわたるわけでございまして、かつまた、この小麦理事会の資料というものはFAOその他の場におきましてもきわめて精度、確度の高いものというふうにわれわれ非常な称賛を受けているように聞いておるわけでございます。そういったいろいろの小麦理事会を通ずる情報、あるいはまた、小麦理事会に参加いたします関係国の間のいろいろな情報交換というようなものによりまして、それがわが国のいろいろな食糧庁とか農林省小麦買い付けの一つの重要な参考資料となるわけでございまして、そういった意味から経済条項によるところの直接的な効果はもたらしませんけれども、やはりわが国食糧政策というものを樹立する上におきまして非常に有益な資料となっておる。それが同時に国際小麦貿易の安定に資しておるというふうに考えておる次第でございます。
  28. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この小麦協定の第一条「目的」には、食糧確保をするということがうたわれていないわけですけれども、これはどういうわけですか。
  29. 野村豊

    政府委員(野村豊君) いま御指摘のとおり、小麦協定の第一条の「目的」には、四九年当時の小麦協定の「目的」にございますところの、「公正なかつ安定した価格で、加盟輸入国に小麦及び小麦粉の供給を確保する」というふうな趣旨のことが書いてはございません。と申しますのは、先ほど来申し上げておりますとおり、経済条項を欠いておるわけでございまして、いま申し上げたような目的を実現するための法的手段というものがなかったからでございます。したがいまして、現在の小麦協定におきましては、第二十一条の規定におきまして同じ文言を入れておるわけでございまして、そういった「公正なかつ安定した価格で、加盟輸入国に小麦及び小麦粉を確保する」云々というふうな趣旨のことが一つの新しい経済条項を含んだ協定の目的として含まれておるというふうなことでございます。
  30. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほどもお話がありましたように、世界食糧事情がやはり食糧を確保するということに大きな問題が移っている点を考えるならば、この国際小麦協定の第一条の目的にも食糧を確保するという大目的がうたわれる必要があるんではないか、これは外務大臣にお答えいただきたいと思うわけですが、今後日本政府として、やはり小麦協定もそういう食糧確保という大きな目的に沿うような形に、そういう線で備蓄なり価格なり、そういうものに進んでいくべきじゃないか、こういうことを提案する考えはないかどうかですね。
  31. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現在の協定経済条項がないということに関連があるわけでございますけれども、ある意味で非常にフェアな商品協定というのは、需要側と供給側両方に将来に向かっての多少の不安がある場合に一番成立しやすい。買い手が圧倒的に買い手相場であると考えますときには経済条項というのはつくりにくうございますし、また、売り手が圧倒的に売り手相場であると考えるときにも、これも経済条項は入りにくいわけであります。経済条項がこの数年落ちておりますのは、やはり私は基本的にそういうことが原因になっておると考えています。  他方で、わが国の国益から申しますと、結局必要なときに最も安く品物が手に入るということが、これは多少利己的にお聞き取りになるかもしれませんが、基本的にはそれは国益であるということになるわけでありますので、もう少しそれを先まで申しますと、そのためにはやはり供給側も安定していなければそういうことにはならぬではないか、安定のためには備蓄ということもある程度考えるべきではないか、いろいろな要素が出てまいりますけれども、基本的には、ほしいときに安くいい物が入ればいいというのがわが国のような輸入国としての国益にならざるを得ないと思いますので、経済条項が入るような状況というものが出てまいりますと、この第一条の書き方なんかもおのずからそれで違ってくるのではないだろうか。ただいまおっしゃいましたようなことは、多少供給に不安があるという状況の反映になるかと思いますが、余りそういうことが強く出ますと、需要国としては幾らか不利な立場になるということもございますので、経済条項が可能になりましたような状況においてこの第一条をどう書くかということをやはり決めていかなければならないのではないかと思います。
  32. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 アメリカを初め、生産国は食糧をいわゆる戦略物資と見て、そういう立場から故意に作付面積を減らしたり、そういうようなことがあっては非常に困るわけです。そういうことをさせないようにすることは、現協定では可能であるのかどうか。そういうことはこの協定とは全然関係ない、それは各国の主体的な判断に任せられてどうしようもないものなのか。
  33. 野村豊

    政府委員(野村豊君) 現在御承知のように、アメリカ作付制限をしておりませんし、かつまた、先般来世界食糧会議その他がございまして、生産国の食糧増大ということが非常にうたわれておるわけでございます。したがいまして、この小麦協定自身から直接的に作付制限をするなとか、しちゃいかぬというふうな考え方は、そのものを義務として書き入れるということはかなりむずかしいかと思いますけれども、協定の目的といたしまして、そういった趣旨の原則、ものを協定の目的の中に入れるというふうなことはあるいは可能かというふうにわれわれは存じておるわけでございまして、かつまた、そういうことが望ましいというふうにわれわれも考えております。
  34. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは外務大臣にお尋ねしますが、米国はそういう食糧を、いわゆる食糧というのは一番大事なものですから、それを一つ戦略物資と見て、食糧世界をリードしていく。それが余り変な方向にいくときに心配なわけですが、そういう心配がないのかどうか。日本としては、そういう問題についてはやはり人道的立場に立ってアメリカはやってもらわぬといかぬと思いますが、そういう点どうなんですか。
  35. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一部にそういう議論がないとは私は申し上げませんけれども、実は、アメリカ自身農業生産あるいは販売の仕組みというものが全く自由経済になっておりまして、それがこの数年間アメリカ生産あるいは価格の乱高下を招いた一つの原因でもあるわけですが、そういう仕組みになっておりますから、政府が一定の目的でそれをコントロールしようというようなことは非常にできにくくなっております。そればかりでなく、アメリカ生産者の立場から言いますと、作付制限を解除したこともありまして、将来の需要について実は不安を持っておる部分があるわけでございます。これは需要者の方から言いますと、供給が大丈夫であろうかというふうに考える向きが多いわけですが、供給者の方から言いますと、作付制限をやめてしまってまで将来相当需要が継続するであろうかというようなことを農民は、比較的米国では考えやすい。したがいまして、米ソの協定ができましたときなんかにも、農民立場から言うと必ずしも歓迎でないというような要素があったりしたわけでございますから、その辺のアメリカの仕組み、それから生産、販売に関する仕組み、輸出に関する仕組み及び生産者の心理を考えますと、まずそういうことは実現が実際上むずかしい。一部にそういう議論がありましても、そういうことにはならないのではないかというふうに私どもは考えています。
  36. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから本協定食糧援助規約による開発途上国への食糧援助はどのような効果を上げているのか、ECが目標に達していないのはなぜか、また日本は七四、七五年度は目標に達していない、これはどういうわけか。
  37. 梁井新一

    説明員(梁井新一君) お答え申し上げます。  わが国食糧援助規約に基づきます義務は二十二万五千トンの小麦でございますけれども、わが国は、開発途上国の食糧問題の解決はやはり農業生産性の向上にあるということで、規約に留保を付しまして米及び農業物資で供与をしております。各国に供与をしておりますけれども、食糧不足の状況にかんがみまして、わが方の供与先からは非常に感謝されておるというような実情でございます。  ただいま先生から日本の供与状況は十分じゃないじゃないかという御質問ございましたけれども、七四年、七五年度につきましては、その後フィリピン、ホンジュラス等に供与いたしまして、近く千百三十万ドルに達する予定でございます。  それからECにつきましては、ECの年間拠出量は百二十八万トンでございますけれども、全体のシェアの三〇%を占めておりまして、ECが特にこのシェアを下回っておるということは聞いておりません。
  38. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 日本の援助の内容は、売り渡しか贈与か信用供与か、どういう内容ですか。
  39. 梁井新一

    説明員(梁井新一君) 贈与でございます。
  40. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 全部贈与ね。  昨年の世界食糧会議における事務局報告によると、アジア、共産圏を除いて約四億人が栄養失調と言う。人道的立易から日本は積極的な役割りを果たすべきでありますが、これは外務大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは先ほどちょうどお尋ねのございました食糧援助というものに関係をいたしておるわけでありまして、わが国食糧援助をいたしておりますのもそういう立場でございますが、同時に、農業開発基金等の構想で述べられておりますように、開発途上国が自分の努力によって、金融は国際的に安い物を貸すことにいたしまして、自分の努力で進めていくというようなことも、これもわが国はやはり農業開発基金のようなものに拠金をいたしまして進めていくべきだと思います。
  42. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 農林省もせっかくお越しいただきましたので、あんまり時間がございませんので聞きませんけれども、現在の小麦自給率は幾らであるのか、それから政府自給率を高めるために小麦を植えつけた場合には補助を出したり、こういう施策を数年前からやってきているわけですが、結果は出ているのかどうか、実際に自給率は上がったのかどうか、そこの結論を聞きたいんです。
  43. 山田岸雄

    説明員(山田岸雄君) いまお尋ねの小麦自給率でございますが、四十八年におきましては三・七%ぐらいに低下しておったわけでございますけれど、四十九年度以降生産奨励金、それから麦作のモデル団地奨励金、こういうふうなものを出しまして、四十九年におきましては四%台ということで一応下げどまりまして、今年の作付見通しでは五%ぐらいにはいくんではないか、このように一応考えております。
  44. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃ十年後の目標は何ぼになっていますか。十年後じゃなくても五十四年ですか、あの十年計画の。
  45. 山田岸雄

    説明員(山田岸雄君) 生産見通しで六十年度見通しをしておりますけれど、それによりますと、小麦にありましては九%まで上げていこう、このように考えております。
  46. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わかりました。  それから、あとわずかですが、昨年のローマにおける世界食糧理事会主催の関連の会議で、いわゆる国際農業開発基金構想というものが合意をされたように聞いておるわけでありますが、この内容及びわが国のこの国際農業開発基金構想に対する考え方、これを説明願いたいと思います。
  47. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 農業開発国際基金は、開発途上国におきます農業の開発、とりわけ食糧の増産のための低利資金または無償の資金の供与を目的としております。これは昨年の世界食糧会議におきまして、産油国を中心とする国々から実は提案がございました。わが国は、その段階からこの構想には原則的に賛成の立場をとりまして、世界食糧会議でこの設立に関する決議が採択されました後、数回にわたりましてこれに対する関心を有する国々で会合を持ったわけでありますが、そのいずれにも積極的に参加しまして、この基金の協定等の作業にも加わっております。わが国としましては、もちろんこれに原加盟国として応分の拠出を行うということを考えておりますが、これはもちろん無条件にはせ参じて参加するということではございませんで、当初の話にありましたとおり、産油諸国も応分の拠出を行う、それから開発途上国、先進国のいずれにとりましても十分受諾のできるような条件が整いますことを見きわめた上でこれに原加盟国として参加していきたい、かように考えておる次第であります。
  48. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これはやっぱり応分の拠出をせにゃいかぬわけで、金が要るわけですが、これは大蔵省はこの考え方には外務省ほど積極的でないということはないのかどうか、もう拠出は終わったんですか。出すという方針が決まったのか、このあたりはどうなんですか。
  49. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) この基金はまだもちろん発足しておりません。来年の初めにもう一度関心国会議がございまして、そこででき得れば基金協定の内容を固めて、その上で二月あるいは三月ごろかもしれませんが、全権会議を開いて基金協定を採択するという段取りになると思われます。その全権会議の席上で、日本としてできれば何がしの拠出を行うという意図表明を行いたいと思います。まだその段階まではいっておりませんので、今後基金協定の内容の固まりぐあいをよく見つつ、財政当局とも十分協議しながら方針を決めてまいることになると思います。
  50. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まだわが国政府の方針として、これを拠出するという方向にはあっても、最終的には決定は外務大臣まだなされていないわけですね。——わかりました。  最後に、やはり食糧問題は、肝心なことは発展途上国自身食糧増産をして、自国の需給を安定させるという自助努力、みずから助ける努力が一番肝心である、そのために先進国や産油国は協力をすべきである、これはまあわが国の姿勢もそういうところにあるんではないかと思うんですが、この点ちょっと確認しておきたいと思います。
  51. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたとおり、いわゆるKR援助、食糧援助というものもわが国としてはやってまいりましたし、しなければならないことですが、基本は発展途上国が自分で食糧増産をしていってくれるということでございますので、それを助けてまいらなければならない。したがいまして、農業開発基金といったようなものはそれを目的といたしますから、わが国としても応分の負担はいたさなければならないと考えておりますので、方向としては塩出委員の言われましたように考えております。
  52. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わが国のこれら発展途上国に対する経済協力は、今日まで工業優先で農業軽視の傾向がある、このように言われておるわけでありますが、実績はどうなのかですね。
  53. 梁井新一

    説明員(梁井新一君) お答え申し上げます。  先生のおっしゃるとおり、わが国経済協力につきましては、開発途上国からの要請が、勢い工業化を図るという観点から、工業ないし産業基盤に関する要請が多かったために、わが国の援助もその方面が多かったことは事実でございますけれども、ただ、農業関係の援助も各国と比較いたしますと少なくはございませんで、統計によりますと、DAC諸国の七三年度の農業関係の資金協力の実績を見ますと、DAC諸国総額が約六億一千六百万ドル中、日本は八千七百万ドルでございまして、アメリカ、西独、カナダに次いで第四位ということであります。全体の一四%でございます。
  54. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に、やはりいままではどちらかというと途上国からもそういう農業に対する要望が非常に少ないために、どうしても経済成長あるいは工業の発展という要望が強いためにそちらの方に経済協力も重点が置かれてきた、こういうようないまのお話でございますが、もちろん、わが国経済協力の姿勢としてそういう国々の要望に沿うことも大事ですけれども、さらに、わが国経済協力に対する一つの理念と申しますか、そういうものもやはり当然あっていいんじゃないか。そういう立場から、今後の経済協力にはもっといわゆる農業関係、それぞれの国が一番大きな食糧問題を自発的に解決できるような意味での経済協力というものをもっと強化すべきではないか。それをただ向こうで開発輸入をしていくとか、そういう日本中心の考えではなしに、本当にその国の食糧自給率を安定させ、その国の力をつけさせる意味での経済協力を強化すべきだ、私はそういう意見でございますが、それについての外務大臣の見解を承って終わりたいと思います。
  55. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはおっしゃるとおりだと思っております。御指摘のように、両方に実は事情がございまして、発展途上国の指導者からいいますと、何といっても農業というものは効果があらわれるのが遅い、目につきにくいというようなことから、目につきやすい即効的なものを希望したがる傾向がございます。わが国の方もまた、その方が経済協力がしやすいと申しますか、金の動きも早いもんでありますからそういう傾きがございますが、何といっても、発展途上国が本当に国づくりをしていくとすれば、やはり農業から始めて中小企業をその上に立ててということでなければならないわけでして、相手国の主権を侵すという意味ではありませんけれども、そのようなことは機会があればやはり発展途上国に私どもからも自分たちの経験にもかんがみて話していく、そういう農業経済協力というもののウエートを大きくしていくというのが本筋であろうというふうに考えます。
  56. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の再延長に関する議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に御賛成の方は挙手をお願いいたします。   〔賛成者挙手〕
  57. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     —————————————
  59. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約締結について承認を求めるの件  油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約締結について承認を求めるの件  油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約(千九百六十九年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の補足)の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)  以上三件を便宜上一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。宮澤外務大臣
  60. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  船舶所有者責任につきましては、各国とも伝統的に責任制限の制度を採用してきましたが、その方式は国によって異なっており、統一条約の必要性がつとに指摘されておりました。一九二四年の海上航行船舶所有者責任制限に関するある規則の統一のための国際条約はこの統一化を促進するものでありましたが、責任制限の方式として複雑である等の欠陥が指摘されたため、船主責任制限制度の再検討の機運が生じ、より合理的な新条約の作成が望まれるに至りました。これを受けまして一九五七年ブラッセルで第十回海事法外交会議が開催され、わが国を含む三十二カ国の代表による審議の結果、同年十月十日金額責任主義による船主責任制限を定めた海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約が作成されたわけであります。  この条約は、第七十五回国会に提出されましたが、審査未了となったものであります。  この条約は、海上航行船舶所有者責任制限制度として、事故ごとに責任を定め、トン数に応じ一定の割合で算出される金額に責任制限することができることを定めるものであります。わが国の商法は船舶所有者責任制限について委付主義をとっておりますが、この委付の制度につきましては、近代化された海運の現状にそぐわないとして従来から問題点指摘されておりまして、海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約が定めている金額主義による責任制限の制度は、責任制限の方式としてより合理的であり、かつ、船舶事故から生じた被害について妥当な救済を図るものであると考えられます。  多くの海運国がすでにこの条約締結国となっている事実を考慮いたします場合、主要海運国の一つであるわが国がこの条約に参加することによりまして、海商法の国際的な統一を促進することが期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  一九六七年三月英仏の近海で起きた大型タンカー、トリー・キャニオン号の海難及び油による汚染事故を契機といたしまして、政府間海事協議機関においてタンカー等がもたらす油による汚染損害についての民事責任に関する法的な問題を検討し、これを国際条約化する作業を進めてきました結果、一九六九年五月その最終草案が作成され、同年十一月ブラッセルにおいて開催されました海洋汚染損害に関する国際法律会議におきまして、わが国を含む四十八カ国の代表による審議の結果、同月二十九日、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約が採択されました。  この条約は、第七十五回国会に提出されましたが、審査未了となったものであります。  この条約は、タンカーからの油の流出または排出による汚染損害の被害者に対し適正な賠償が行われることを確保するための統一的な国際的規則及び手続を定めるものであります。わが国がこの条約の締約国となりますことは、わが国の領域において汚染損害が生じた際の被害者の保護に役立つのみならず、わが国世界有数のタンカー保有国である事実にかんがみまして国際協力増進の見地からもきわめて望ましいと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約(千九百六十九年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の補足)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。一九六九年十一月二十九日にブラッセルにおいて油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約が採択されましたところ、その際、同条約を補足するため、同条約に基づいて支払われる賠償が不十分である場合に汚染損害の被害者に対して補足的な補償を行うこと、及び、同条約によってタンカーの所有者に課される経済的な負担を一部肩がわりすることを目的とする国際補償基金を設立すべきであることが、決議されました。これに基づき、その後、政府間海事協議機関においてこれを国際条約化する作業が進められた結果、一九七一年十一月にブラッセルで開催された油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する会議において、十二月十八日に本件国際条約が採択されました。  この条約は、第七十五回国会に提出されましたが、審査未了となったものであります。  この条約は、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の補足として、タンカーからの油の流出または排出による汚染損害の被害者に十分な補償を行い、かつ、タンカーの所有者に課される経済的な負担を軽減することを確保するための国際基金を設立し、また、かかる目的の達成のため、同基金が、各締約国において海上を輸送された油を受け取る者から、拠出金を徴収することを定めるものであります。  わが国がこの条約の締約国となりますことは、わが国の領域において汚染損害が生じた際の被害者及びタンカーの所有者の保護に役立つのみならず、わが国世界有数のタンカー保有国であり、また、世界有数の石油輸入国である事実にかんがみまして、国際協力増進の見地からもきわめて望ましいと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  61. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 以上をもって三件の説明は終わりました。  質疑は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  62. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 次に、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案衆議院送付)を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。宮澤外務大臣
  63. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を申し上げます。  この法律案におきましては、パプア・ニューギニアが先般九月十六日独立したことに伴い、同国の首都ポート・モレスビーに大使館を設置し、同大使館に勤務する職員の在勤手当の基準額を定めるとともに、同地に引き続き存置する在ポート・モレスビー日本国総領事館の国名をオーストラリアよりパプア・ニューギニアに改めるものであります。  パプア・ニューギニアの独立につきましては、国連も一貫して積極的立場をとってきており、わが国も国連等の場を通じ、これを支持してきており、同国の独立と同時にこれを承認したところであります。わが国とパプア・ニューギニアとの間の経済等諸分野における緊密な関係を踏まえ、かつ、わが国のアジア・大洋州外交を積極的に進めるとの見地からも同国にわが国の大使館を早急に設置する必要がありますので本法案により所要の措置を講ずるものであります。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  64. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 以上をもって本案の説明は終わりました。質疑は午後行うことといたします。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      —————・—————    午後一時二十分開会
  65. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) ただいまから、外務委員会を再開いたします。  午前に引き続き、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  66. 戸叶武

    ○戸叶武君 パプア・ニューギニアの独立に対して、国連を通じてわが国は積極的に協力してきたということでありますが、具体的にはそれはどういう形において独立に協力してまいったのでしょうか。
  67. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 御存じのとおり、パプア・ニューギニアは豪州の属領である部分と国連の信託統治地域である部分と、この二つから成っておりまして、豪州から七三年に自治権、本年三月には外交、国防権をそれぞれ委譲されて、独立への道を歩いてまいったわけでございます。  この間、私どもといたしましても、国連での本年九月十六日の独立目標という決議、これを全面的に支持してまいりまして、国連外におきましても、パプア・ニューギニア政府のこういう動き、豪州政府のこれを支援する動きというものを全面的に支持してまいった次第でございます。なお、九月十六日に予定のとおりパプア・ニューギニアが独立いたしました際には、わが方は特派大使を派遣してこの祝典に参加をいたし、同日にパプア・ニューギニアの独立を承認するという措置をとって外交関係も樹立したわけでございます。
  68. 戸叶武

    ○戸叶武君 これから日本がアジア・太平洋時代においてアメリカと協力し、また中国ソ連とも協調してアジア・アフリカ地域における発展途上国の健やかな発展に協力していくということは非常に重要な役割りだと思うのです。特にパプア・ニューギニアに対しては日本は大きな責任を持たなければならないのでありまして、私は、ちょうどパプアの酋長の子供さん、青年と四カ月二十年ほど前インド旅行しましたが、本当に溶け合って話してみると、日本人にモンゴル以上に似たところが非常にあるのに私は驚いたのでありますが、ああいうジャングルの中に原始的な生活をしてはおっても、骨相学的にもなかなかやはりりっぱな骨相を持っているし、近代化が健やかに発展するならば、私は驚くべき進歩を成し遂げるんじゃないかと考えているんですが、日本のいままでの外交というのは大国本位の外交に傾いて、自分が各国から学んで、そして追いつき追い越そうということで懸命にきましたが、これからは、やはり発展途上国の人たちに対して本当の愛情を持ち、積極的にこの進歩発展に貢献すべきだと思うのであります。いま、この独立に際して大使館を総領事館から設定すること及び通貨の問題その他においても豪州とも話し合って独立国にふさわしい体制をつくり上げようとしているんだと思いますが、今後において、大使館は建てた、さて日本はここの国に何を貢献するかという問題に対してどのような構想を持っておられるのですか。
  69. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 直接、パプア・ニューギニアとの間におきましては、まずこちらで御承認を得まして大使館を開設する、それから経済問題では貿易の拡大を図る、経済の協力の関係におきましては、従来から相当の額のわが方の投資もございます、現在懸案になっている幾つかの案件もございます、こういうものにつきまして現地側と十分協力をして両国間の経済関係の発展を図る、漁業におきましても協力関係を進めていく。なお、その際、やはりオーストラリアとパプア・ニューギニアとの関係も独立後といえども相当深いものもございますので、オーストラリアとの協力関係もパプア・ニューギニアのために進めていくというような基本的な考え方を持っております。
  70. 戸叶武

    ○戸叶武君 貿易関係並びに投資関係において、具体的にどんなような状態になっておりますか。
  71. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 昨年の日本とパプア・ニューギニアとの間の貿易はわが方の入超になっておりますが、総額が二億六千万米ドルでございます。これはパプア・ニューギニアの貿易相手としては第一位に位する状況にございます。それから投資の関係では、現在、わが国のパプア・ニューギニアに対する投資の総額が推定約八千三百万ドルに達しております。
  72. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本でもいま考古学が発達して古代史の研究が盛んでありますが、たとえば、関東地区の私の実家のそばの大谷石の出るところの発掘でも、いわゆる人食い人種と言われていた人種の発掘がなされておりますが、そういうものがわりあいに研究されてないんですけれども、人食い人種というと何かこわいものに見えるが必ずしもそうではなくて、骨相学的にパプア・ニューギニアの人たちのあごが発達していたり、いろいろな点においてそういうふうにも見られてきておりますけれども、たとえば、アメリカ日本人の俳優で一番もてたのは早川雪洲ですが、房州のあの地帯というものはパプア・ニューギニアの人たちの骨相学と非常に似た点を持っておるのでありまして、人類学的に日本では文字を中心として物を追求する悪い癖がありますけれども、ほかの国の文化人類学者としては、ニューギニアの研究というものは——これは私の方じゃ田中さんなんかが本職の方だが、やはりアメリカの人類学者、女性の人類学者でもあの地帯を文化人類学の宝庫のように見ておるのが事実であります。そういう点において、私は、なかなか意思力の強い、それから仁義を心得ている民族のように思っているんです。私も四カ月の一緒の生活をやって、これは侍だわいという感じを受けたほど、人に恥ずかしい、卑しいやつだと見られない自分たちの生活態度を保持する民族だと思いまして、ジャングルで育ってそして近代化の波の中にさらされてくるんですが、私は導きようによってはパプア・ニューギニアというものはアフリカ諸国における諸独立国家の人たち以上にすばらしい発展をするんじゃないかというふうに期待しております。これを今後において日本の人類学者もあの卑弥呼論争や耶馬台論争みたいな中にだけ埋没しないで、世界的視野でやはり今後の物を見る眼を養っていく上においても、また、一つ発展途上国の小さな国をこれだけすばらしく育てたという実績をつくる上においても、そういう具体的事実以外に世界の人々を、抽象的なつづり方教室みたいな文句言っていたって人は引きつけないんですから、それだけの芽がすでに育っているんならば、さらにその上に具体的にはどういう点に重点を置いて問題を発展させ、あるいは教育の問題で、あるいは医療の問題で、あるいは手工芸の面で、あそこの彫刻類でも世界の民芸品の中においては私はエキゾチックであると同時に非常に素朴であるがすばらしいものを持っている。それから木の繊維に対する感覚なんというのは日本民族以上にやはり繊細な感覚を持って彫り物や何かにも取っ組んでいると思うんですが、そういう点で何か小さな問題でも重点的に、どういうところからこのハンドワークの技術でも何でも発展させようというふうに考えているんでしょか。
  73. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) パプア・ニューギニアと日本との関係は、戦争中からいろいろな関係がございましたが、特に今後のパプア・ニューギニアの発展にとって、先生御指摘のとおり、向こうの地場にある、潜在的にもあるいろいろな技術というものを発達させる。そのために日本として貢献できるものは極力できる限りの御協力を申し上げるという基本的な考え方でございまして、たとえば、とりあえず私どもの方で手をつけました一つの例は漁業訓練センターがございます。これは実は十一月二十八日にこのセンターの設置に関する取り決めができまして、パプア・ニューギニアの漁業訓練についてわが方としてでき得る限りの協力をしようということで無償協力というものを行いました。これが具体的な措置の一つの例でございます。
  74. 戸叶武

    ○戸叶武君 結構な試みだと思うんです。そういうふうに、まあこれは一つの事例ですが、関東における商船関係の技術者を養成するんでは館山に県立ですか、船乗りの技術者を養成する学校があります。しかし、漁船を対象としてやったんだからといってなかなか一流会社で採ってくれない。二十で一等機関士の国家試験を通ってもなかなか商船三井なんかでは採ってくれそうもない。学校の校長や教頭が頼みに行っても会ってもくれないというので、私は友人関係のつき合いをたどって入れてみたら、やはりすばらしい成果を上げているんです。別にパプアの子孫だとは断定しませんけれども。  あの早川雪洲の出たあたりの館山付近というものは古代神話の宝庫であって、九州の海人族の神話があそこの安房部族の中には残っておって、明治の天才画家の青木繁が「わだつみのいろこの宮」を描いたのも、あの海岸の魅力、それからあの魚とりの凱歌を上げて引き揚げてくる情景並びに海人族の子孫と思われる福田たねのぎらぎらした目、ああいうものに魅力を感じてあの天才的な画家の創造が躍動して、福田蘭童なんかも残したんでしたが、いずれにしても私は、日本においては朝鮮関係だけを重視しているけれども、黒潮民族です。島国です、イギリスと同じく。イギリスの民族構成が、やはりわれわれはバイキングの子孫だということを豪語していますが、大西洋におけるバイキングはイギリスであり、スカンジナビアからあるいはデンマークから、あるいはゲルマン、ノルマン、いろんな形においてあすこへ入っていったんですが、日本だってそんな柳田さんが言っているように、琉球からだけ来た、海上の道は琉球だとか、あるいは稲作は朝鮮を経て来なければならないとかというんじゃなくって、私は、黒潮の流れの速度というのはプランクトンを生むのも拒むほどの速度だし、やはり海流に乗じあるいは季節風に便乗し、潮流の流れに沿うて太平洋の諸民族が日本には入ってきていた。特に東北の最近における血液検査でO型が圧倒的に多い、これなんか見ても単なるモンゴル、A型の多い朝鮮、あるいはイラン民族の騎馬民族の流れだということだけで断定できないものがあると思うんです。  そういう点において、いま中近東においてイランやイラクは石油が発見されたからという形をきっかけで、古代バビロニアの文化なり何なりというものが再び日の目を見て、また新しい新興国をつくろうとしておりますが、日本はやはりそういう意味において一種の多民族国家です。多民族国家であると同時に豊葦原の瑞穂の国というふうに衣食住の生活が古代において安定したからここに民族というものが、ヨーロッパにおける非常に血で血を洗うような争いよりは私は安定した形における民族形成をしたんだと思うんです。そういう形において、アジアにおいて原始的状態で取り残されてきたミクロネシアやニューギニア方面における諸民族というものを、いままでのような日本がやってもだめだ、アメリカがやってもだめだという中途半端なやり方じゃなくって、心を込めて近代化のために努める、いまのようなそういう技術指導機関なりあるいは文化センターなり、あるいはハンドワークの一つの訓練所なり、そういうものを外務省——何といっても外務省は予算が少なくって、大使館というのにしても、役所ばかりして、そこに二、三人冷めたい秀才がいたんじゃとても民族交流には役に立たない。少しばかなやつでもいいから、本当に民族に愛情を傾けられるような人間をそのブランチとして、教会だ病院だというところだけじゃないんで、そういう文化センターといっても、そののところにふさわしいような文化センターをつくって、そして私は、その国を段階的に、急激に変化させることはできないんだけれども、そういうものをやはりバラエティに富んだ施策をやってもらいたい。一番官僚的な教育なり外交なりの大きな失敗は、面一的なそしておもしろみのない、繁文縟礼的なことが多い。そうじゃなくって、歌を歌ったり踊ったり、たらふくおいしい物を食べたり、そういうふうな生きがいを感じるような愉快な一つの私は民族育成政策というものをやっていくことが一番いいんじゃないかと思うが、これは宮澤さんあたりがやっぱりもっと踏ん張って考えてもらいたいと思うんですが、どうでしょうか、大臣。パプアなんか絶好の場所ですよ。
  75. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かにパプア・ニューギニアなどはそういう意味国内にもいろいろそれは部族間の問題等々はございましょうけれども、私どもが西欧的なアプローチ、いわゆる西欧的なと申し上げますが、というよりは、向こうの生活の中に入って行って、一緒に文化センターのようなものでもつくり上げていくというような、そういうアプローチが非常に大事でありますし、また受け入れられるのではないかということは私もそう思います。それは確かにいわゆる外交官といままで考えられているような仕事と多少異質でありまして、文化的な興味を持った人たちを中心につくり上げていきますれば成功する公算が多いと考えますので、こういう国に対してはこれからの協力の仕方、つき合いの仕方、ひとつ新しい工夫が要るのではないか、またそういう人材を探してくるというふうなことが大事ではないか、確かにそのように考えます。
  76. 戸叶武

    ○戸叶武君 たとえばイギリスの上院なんかには変わり者が多くて、永井道雄君と大学問題の研究をしてたときにも、永井道雄君が、戸叶さん、イギリスの上院議員というのは奇人が多くて、とにかくイギリス帝国主義の属国でいじめられた国々が独立すると、真っ先に行って祝賀を述べるような変わり者のじいさんがいる、何にも与えるんじゃないけれども、イギリス人の上院議員が来て、われわれの先祖をずいぶんいじめたんだが、いやあ独立できておめでとうと声ひとつかけられただけでもすばらしいやっぱり一つのあれだと。これは大鷹さんとか田中さんあたりが行ってちょっとやはりやってごらんなさい。それは変な外交官よりは向こうは感激すると思うんです。冗談じゃなくて、本当に私は、田中さんなんかも初めおっかなくて、どうもマルキストで厳しい人じゃないかと思ったらそうじゃなくて、アメリカへ行ってやっぱり文化人類学者のミードに会ってから、学門の幅の広さというものをずいぶん私は身をもって感じたんだと思うんですが、この正月あたりはあっちの方へ旅行に出かけるということですけれども、今度はそういう意味において男で手に負えないような世界は、やはりことしは婦人年間だそうですが、女の大使ぐらいはどんどん宮澤さんならつくれるんだから、なかなか言っても応じないかもしれないけれども、そこらは三木さんあたりは口説きの名人だから、何かもっと変わった外交面においてあっと言わせるようなことをやらないと、大体おもしろみがなけりゃ、人はおもしろいものなら見るなといってものぞきにくるのが習性だから、そういう外交の中においてもいままでのマンネリ的な外交を打破して、そしてそこに定着できないんなら、ときどきでもそういう各界の、たとえば篤農家であろうが、技術者であろうが、語学なんかできなくてもその人に従ってまねしていけばいい、彫刻家でもこの人に従っていけばいいというような人をやるような試みをやって、ひとつ宮澤さんあたり思い切ってそういうのをやってみたらどうなんですか。やはりあっと驚く為五郎というけれども、やらなければだれも驚くやつはいないんだから、ひとつやることが一番だと思うんですが、余り時間をとると後の今度は大切な方の質問をやれないから、この辺で私はとめたいと思いますけれども、どうぞこの外交というものが、外務官僚大蔵官僚というのが一番秀才ということになっているが、秀才というのは少し魅力がないですからね。だから魅力のある秀才を今後つくってもらいたいということと異色のある人事、着想、そういうものを外交面で生かしてもらいたい。  そうでないと、きょうなんかでも宮澤さんが引っ張りだこで、実際誤解されて、きのうあたりは、何だか漁業何とか大会の陳情を許さないんじゃないかというけれども、参議院の方の途中で衆議院の方へもってこい、定例日に、あるいは陳情だからこれだけ一部と、細切れ質問しかできないような状態にしちゃうと参議院の面目はなくなるんで、そのことだけをがんばっても、決して意地悪をしてほかの人に門戸を封鎖するという意味はないんですが、もう少し談笑の中に天下の大事が語れるような、いまの揚げ足取りみたいなことばっかりやっている日本の国会の風情というのは、これはもう変質者の形相があるんで、その変質的形相から脱して、やっぱり天下のことを談笑の中に語り合えるような、少なくとも外交の問題において、今後の経済技術協力の問題においてしないと、みんなが窮屈になっちゃって、何かしゃっちょこばっちゃって動きがとれなくなるんじゃないかと思うんですが、どうぞそういう意味において、この小さな国に対する愛情ほど一番その民族の心にも体にもしみ通るんです。私、この間モンゴルの建国の日に行ってさびしく感じたのは、国会議員は二、三人でしょうかね、だれもお客が来ないんで本当に大使がさびしそうだったが、幸い私が大使を社会党の参議院議員の人と間違ってあいさつしたんで向こうでびっくりしたんだが、日本人にモンゴルの人はよく似ているわいと思ったんですが、これはパプアにおいてもきっとそういう人がいっぱいあると思うんですけれども、やはり小さな国ほど親切というものが身にしみるんだと思うから、そういう金の多寡よりも、親切に人をやっぱり導き出すというふうな外交の一つの試験場にしていただかれんことを、モデルの場所にしていただかれんことをお願いする次第でございます。これは質問じゃなくお願いですが、ひとつやってください。これで私は終わります。
  77. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それではパプア・ニューギニアについてはすでに六カ国が大使館を設置しておると聞いておるわけでありますが、六カ国はどこどこなのか。  日本が非常におくれておるので、これは早く大使館を設置しなければいけない、このように御説明を聞いておるわけでありますが、そのおくれるということはどういう外交的な影響があるのか、これを御説明いただきたい。
  78. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) パプア・ニューギニアの首都のポート・モレスビーには、独立の前には豪州、イギリス、ニュージーランドが弁務官事務所、それからアメリカ、フィリピン、インドネシア及び日本が総領事官を設けておりました。独立と同時に、わが国を除きます六カ国、すなわち豪州、英国、ニュージーランドが弁務官事務所を高等弁務官府に改め、またアメリカ、フィリピン、インドネシアがそれぞれ従来の総領事館を大使館に昇格いたしたわけでございます。  わが国のパプア・ニューギニアにおける大使館の設置がおくれました場合にどういうふうな外交上の問題が生じるか、こういう御質問でございましたが、先ほど欧亜局長から御答弁ございましたように、パプア・ニューギニアにとりましてわが国は最大の貿易の相手国でございまして、特にわが国との関係の緊密化を非常に深く期待しているということは、従来からのいろんな形での接触できわめて明白でございます。したがいまして、このようにパプア・ニューギニアにとりまして非常に大きな期待が寄せられており、また貿易上も最も大きな相手国であります日本が、従来わが国と肩を並べて弁務官事務所なり総領事館を設置しておりました国がいずれも大使館もしくは高等弁務官府を設けたに対しまして、わが国がいままでどおり総領事館のままでいるということにつきましては、非常にパプア・ニューギニアが失望する。また多くの感情的な挫折感といいますか、感情的な失望というものも生じるということでございますので、先ほど来御議論いただいておりますようなパプア・ニューギニアというこの地域での大きな将来性を持っております国に対しまして、わが国がこの国を重視すればするほど、なるべく早急に大使館を開設いたしたい、こういう考え方でございます。
  79. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いまのお話でありますと、何カ国かはもう直ちに大使館を設置した、こういう点はどうなんですか、私はよく知りませんけれども、大使館の設置というものが非常に速やかに行われる国と——わが国は決してこれはサボっておるわけじゃなくて、所定の手続を経て、われわれは衆議院から送られてすぐ審議しておるわけですけれども、そういう点に、この場合はやはり制度的に国会の決議とかそういうものと関係なしに設置するとか、こういうようになっておるわけなんですか、これは参考までに。
  80. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 大使館の設置につきまして、それぞれの国がそれぞれの憲法上の手続を持っておるわけでございますが、わが国の場合には大使館の設置は法律事項になっておるということに比べまして、先ほど申し上げましたような国におきましては、それぞれ行政府責任において大使館の開設ができるというふうな機動性を持っておるという点が違っているかと存じます。  わが国の場合にも、もちろん緊急の必要がございます場合には法律によらずして設置という道が開かれておりますが、パプア・ニューギニアが独立いたしましたのが九月十六日でございますし、国会開会中のことでございますので、成規の手続に従いまして法律改正による設置をお願いしておると、こういう状況でございます。
  81. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ひとつそういう点はよくパプア・ニューギニアにも話していただいて、日本国に対して失望しないように、これは制度の違いがあるわけだから、その点ひとつよく御努力いただきたいと思います。  それから、この内容を見ますと、いままでの総領事館もやはり総領事館という名称を残していく、大使館と総領事館が併存のようになっているように私理解をしておるわけでありますが、大使館と総領事館併存といっても、人員はいままでのままでありますし、大使館があれば何も総領事館がなくても大使館としていろいろな、これには遺骨収集とかそういうことを書いておりますが、併存にせなければならない理由はどこにあるのですか。
  82. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 現在ポート・モレスビーにございます総領事館の領事管轄区域がパプア・ニューギニア地域と英領ソロモン群島と二つに分かれてございます。英領ソロモン群島につきましては、第二次大戦によります戦死没者の遺骨の収集等のためにこの地域を訪問いたします日本人の数が非常にふえておるというふうなこともございまして、ソロモン群島と一番近い距離にあります在ポート・モレスビーの総領事館をして兼轄せしめてきた経緯があるわけでございます。このために、現在のポート・モレスビーの総領事館は、パプア・ニューギニア地域を領事管轄するためには、オーストラリア政府とそれからパプア・ニューギニア政府に対して発出した委任状と、ソロモン群島を領事管轄するために英国女王に発出した委任状と、それぞれに基づく二つの認可状を持っているわけでございます。パプア・ニューギニアに大使館が開設されまして後も、いま申し上げましたようなソロモン群島に対する領事事務は依然として残るわけでございますので、引き続いて英国の女王の認可状を得て領事事務をいたしますためには、英領ソロモン群島を領事管轄して、その事務を処理するために大使館と併存して兼館の形で英国女王に対する認可状を下付し得る総領事館を設置する、存置するという必要があるという特殊な事情に基づくものでございます。しかしながら、大使館開設の上は、現在の総領事館の館員がそのまま大使館員としての発令を受けることになりますので、いわば大使館員兼総領事館員という形で大使館事務並びに英領ソロモン群島に対する領事事務を、領事管轄を行う、こういうことに相なるわけでございます。
  83. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうしますと、このソロモン群島に関する委任状——委任状とおっしゃいましたかね、これはたとえばパプア・ニューギニアの大使館が、いま総領事館が出しておるわけですけれども、これを大使館が改めて出せば別に総領事館がなくてもいいものなのか。そういうものは、大使館はもうパプア・ニューギニアの大使館といえばその国内だけに限って、その国外まで行く場合には、これは総領事館しかそういう委任状は出せないような形になっているんですか。これどうなんですか。
  84. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) パプア・ニューギニアに置かれます大使館の管轄区域はパプア・ニューギニア国に限られるわけでございます。別途英領ソロモン群島に対する領事管轄がございますので、その分に対して併存される総領事、在ポート・モレスビー総領事館がその事務を行う。そのために委任状を発し、英国女王の認可状を発出してもらうと、こういうことになっているわけでございます。
  85. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると、そういう認可状というのは大使館ではだめなわけですね。私が言うのは、パプア・ニューギニアの大使館がそのままならばパプア・ニューギニアを管轄するわけですね。それが改めて英国に出して委任状をもらえば、大使館の仕事としてソロモン群島も領事、いわゆるそういう仕事はできないのかどうかという問題。
  86. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) パプア・ニューギニアに置かれます大使館の大使はパプア・ニューギニアに対する信任状をいただいて派遣されるわけでございますが、英領ソロモン群島に対する領事管轄を行いますためには別途委任状の発出を得てイギリス女王の認可状を発出してもらう、こういう形になります。
  87. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わかりました。だから結局、それはできないこともないけれども、いままでずっともう一回委任状をもらっておるわけだから、出直すのもあれだから形の上としては兼館に、併存にすると、このように理解していいわけですね。
  88. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 国際法の上で領事館が領事事務を行いますためには接受国からの認可状を必要とするということになっておりますので、認可状を発給してもらうために派遣国から委任状が発給されるということになりますので、今回併存される総領事館は、領事事務を行うという意味におきまして国際法の慣行に従う委任状を発出され、認可状をもらう、こういうことになるわけであります。
  89. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この国の経済政策は、自立経済達成の見地から外資導入、資源開発に対して政府管理を強めつつあると、このように聞いておるわけでありますが、政府管理を強めつつあるということは、できるだけいろいろな資源開発あるいは外資導入を国有化の比率を高めていこうということではないかと思うのでありますが、これはどういう形としてあらわれているのか。それとわが国への影響はどうなのか。その点はどうでしょうか。
  90. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) パプア・ニューギニアが独立いたしまして、やはり今後の経済発展を図る上において、一方において依然として外資が必要であるという必要は認めておるようでございます。他方において、ただ外資が入ってくる場合も、自国の経済社会機構というものに余り大きな衝撃を与えるかっこうでは困るという二つの考慮を調整する、そういう仕組みについてパプア・ニューギニア政府の中でもいろいろと検討され続けておる状況でございますが、外資につきましてもこの二つの要請をどうやって調整するか、一種の試行錯誤のような過程がいま続いておると思います。特に、パプア・ニューギニアの場合はいろいろ異なった民族もおりますので、そういう各地域の要請というものもあわせて考慮せねばならない。こうした調整を図るために中央政府がいろいろ苦労をされておるようでございますので、これを一概に政府管理が非常に強いとか、あるいは弱いとかというふうには言い切れない。いわばその調整過程がいま対外的にも対内的にも行われているというふうに私どもは見ております。
  91. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そのことからわが国に対して特に問題になるということは別にないんですね。
  92. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 従来のわが国の投資の場合に、たとえばあそこは銅が大きな輸出産物でございますが、そういうものに対しての日本の出資なり、そういうものは比較的まあ社会的なインパクトが限定されておりますが、わりあいに社会的なインパクトがあるような投資につきましては、パプア・ニューギニア政府との十分な話し合いということが必要になっておりますし、そうしたパプア・ニューギニアの政策の検討過程に私ども日本側としても現地の事情を十分考慮をし、両方の利益になる形での調整というのが必要な場合も起きておると思います。
  93. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わかりました。  日本との貿易では、日本がかなりの入超になっておるようでありますが、私のいただいた資料には、パプア・ニューギニア全体としての輸出入の品目は書いてあるわけですが、特に日本からの輸出、輸入の内容は何なのか。日本へは非常に銅鉱石が主力のようでありますが、今後この輸出入のアンバランスについては日本政府としてはどういう方向を考えているのか、この点簡単にお答え願います。
  94. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 先ほど戸叶先生の御質問に対して両国間の貿易総額が約二億六千万ドルと申し上げましたが、これは七三年の数字でございます。私ども持っております七四年の数字でございますと、両方の貿易の総額は往復を合わせまして約三億七千万ドルにふえております。ただ、日本の輸入が二億九千万ドル、輸出が七千五百万ドルということで、約二億ドル以上の入超になっております。品目から申しますと、日本の輸入が、これは七四年の統計でございますが、銅鉱石が二億三千三百万ドル、次はコプラ二千二百万ドル、木材一千万ドル等々でございます。日本の輸出で大きなのは自動車等の輸送機械が一千八百万ドル、加工した魚介類が七百万ドル、電気機械四百万ドル等々でございます。  それで、この貿易のバランスでございますが、ちょうど銅鉱石二億三千万ドル、ほぼこれを除いた部分が輸出入がバランスしておるような感じでございます。銅鉱石につきましては、向こうの最大輸出品目でもあり、日本需要もあるということで、やや特殊な品目でございます。それ以外の貿易品目につきましては、今後とも往復ともに伸ばしていきたいというふうに考えておりますが、いずれにせよ、基本的に二国間の貿易バランスを厳格に考えるという日本側の立場でないことは先生御存じのとおりでございます。
  95. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 特にパプア・ニューギニアのわが国に対する要望というものはあるのかどうか、どういう傾向にあるのか、日本に何を期待しているのか。
  96. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) まず最初、申し上げるまでもなく、日本側が大使館を正式に開設してくれること、これを現地は非常に首を長くして待っております。  それから次に経済関係では、貿易を往復とも拡大したいという強い希望を持っております。ただ向こう側も当然バランスの問題というのは申しておりません。  それから経済協力、技術協力関係では非常にわが国に対する期待は強うございまして、先ほど申し上げましたように、漁業訓練についてはすでにセンターを設置する措置をとりまして、先方にも高く評価されております。それ以外にもプラリ川の開発計画とか、あるいはマダン地区の造林計画というような、かなり大きなプロジェクトについての日本側の資本、技術的な協力というもの、あるいは現地の各種の技術をさらに発展させる部門について日本側の協力がほしいという要望は潜在的に非常に強うございます。ただしその場合、パプア・ニューギニア側のいろいろの政策というものも十分考えてほしいということもあわせて強い要望として私ども承知しておるところでございます。
  97. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 一九七四年三月現在でわが国の同国への投資は八千三百五十八万ドル程度と聞いておるわけですけれども、この投資というのは銅鉱山の開発に対する投資が主力なのか、それ以外にどういうものに投資をしているのか、内容はどうなんでしょうか。
  98. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 個々の業種についての詳しい数字はただいま持ち合わせておりませんが、そのほかに林業、それから漁業についても合弁の漁業がございます。それからパームオイルの開発、水産加工といった分野にわが国の投資が行われていると承知しております。
  99. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に、専門家の派遣あるいは向こうの研修員の受け入れ等の状況はどうなのか、——じゃあそれはいいです。もう時間ないですから、これはあとで別に文書でもいただきたい。  最後に一つ外務大臣としては、このパプア・ニューギニアという国に対して、今後特にこういうことに力を入れてやっていきたいという考えがございましたら、それをお述べいただいて……。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはちょっと申しようによっては差し出がましいことにお聞き取りになるかもしれません、そういう意味で申すのではないわけでございますけれども、何分にも、パプアとニューギニアという二つの部分が一つの国をつくり上げたわけでございますし、地形的にも相当複雑で、かつ部族の数が非常にたくさんございますようでございます。そうしてまあ言語としては、一応ピジンという言語が共通の言語だということにはなっておりますけれども、必ずしもそれが非常に広く行われているわけでもないというように承知しておりますから、一つの国として争いなく育ってもらうということが実は大事なことではないだろうか、それは外部からとやかく本来申すべきことではないと思いますけれども、中がせっかく独立をいたしましたのに、またもめごとがあるというようなことではだれのためにもならないことでございますので、そのことをできる限りわれわれ心がけるのが第一ではないかというふうに思います。  その次に、生活水準というものはしたがいまして決して高くないし、国全体の一つの国としての共通意識というものも高くないわけでございますから、何かそういうことに役立つような仕事をわれわれとしてできるだけ心がけていくことがこの新しい独立国のためになるのではないかというふうに思っております。現在、わが国でも幾つかの企業が進出しておりますが、いままでのところ摩擦は起こしておらないようですが、ともしますと、この新独立国自身がそういう不安定な要因をまだ持っておりますから、そういうことに過って企業が巻き込まれるというようなことをやはりひとつ注意していくべきだと思います。  それから、別途先ほど戸叶委員が言われましたことは、やはり私は大事なことだと思いますので、何かそういういままでわれわれに未知であったところの文化、風習を持っている人たちとわが国、国民、出先はもちろんでありますが、本当に融和していけるような、そういう面のことをひとつ心がけていくべきではないか、そんなようなことを考えております。
  101. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 やっぱり文化交流なんかを推進していくということですね。
  102. 立木洋

    ○立木洋君 この法律案に関連して二、三お尋ねしたいのですが、外務省並びに在外公館の仕事として海外邦人の保護という仕事があるように法案にも書かれてあるわけですけれども、戦後三十年たちまして、いま中国に残っている在留邦人、日中国交回復を契機としまして親捜しあるいは兄弟を捜すというふうな要望の手紙がいろいろ来ていると思うんです。ここらあたりの事情については大臣も御承知かと思いますが、戦後の大変混乱した状況の中で、戦争の被災を避けるために中国におった日本人が大量に避難をしなければならない。その場合に、足手まといになるからということで自分の子供を山の中に残して逃げるだとか、あるいは全然見も知らない中国人に子供を託して避難をする、いろいろな事情で親子ばらばら、兄弟ばらばらになるというふうな状態があったわけです。そういうことから、日中国交回復されて、そのとき赤ちゃんの人がすでに三十数歳になっているわけですが、そういう人たちが自分が日本人であるということがわかり、そして自分の親に会いたい、兄弟に会いたい、こういう要望を持つということは当然のことでありますし、こういう事態が起こっているというわけですが、これは戦争の性格がどうであるかというふうな問題ではなしに、こういう事態について外務大臣としてどのようにお考えになるのか、お尋ねしたいと思うのです。
  103. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 恐縮でございますが、事実関係を中国課長から御説明をさしていただきます。
  104. 藤田公郎

    説明員(藤田公郎君) ただいま御提起になりました問題につきましては、大体日本におられます親族の方から届け出がございました、先生のおっしゃいましたような中国に恐らく残ったであろうという孤児の数が約二千五百名ということになっております。これは一九四五年八月当時十三歳前後以下で両親と生別または死別した孤児数という形で厚生省当局で把握しておられる数でございます。  先生おっしゃいましたように、特に日中両国の国交が正常化しまして、大使館が開設されまして以降、在日の親族ないしは縁者の方からの御照会、それから中国に残ったお子さんがもう成長して、自分がどうも日本人の子供であるらしい、ないしは子供であるということから大使館の方に照会をしてこられる数というのが非常に多うございまして、現在まで依頼されました件数が両方合わせまして約四百四十件ございます。そのうち判明したものが二百九十件という数字になっております。
  105. 立木洋

    ○立木洋君 今後ともそういう件数はふえてくるのではないかというふうに私は思うわけですが、先ほど言われました十三歳以下が二千五百名というふうに言われたのは、どういう資料に基づいて調べられたのか。
  106. 藤田公郎

    説明員(藤田公郎君) 在日の親族の方から届け出のあったものだけでございます。
  107. 立木洋

    ○立木洋君 こういう要請があった問題に関して、いままではどういうふうな手続あるいはどういうふうな対応の仕方をして処理をされてこられたのか。
  108. 藤田公郎

    説明員(藤田公郎君) 二つに分けますと、在日の親族の方ないしはお知り合いの方からの御照会がございます場合には、直接厚生省なり外務省に照会してこられる場合ですとか、それから都道府県を通じて御照会になる場合があるわけでございますけれども、これらはすべて在北京の大使館を通じまして中国政府に、わかっております具体的な事実関係をできるだけ詳細に書きまして照会をいたしております。それから中国におりますお子さん自体、もう成長しておられますけれども、そういう方々からの御照会は、直接日本の方に手紙が来る場合もございますけれども、大使館に参りましたお手紙はそれを外務省を経由しまして厚生省にお伝えしまして、厚生省の方で、たとえば都道府県を通じますとかいろいろの方法で調査をしてくだすっております。
  109. 立木洋

    ○立木洋君 これは効果があるのはやはりテレビだとか何かで放映するということのあれがあるのですが、そういうことを依頼してそういう方法もとっているわけですか、あるいは全然別個に行なわれているのかどうか。
  110. 藤田公郎

    説明員(藤田公郎君) 厚生省当局で、本年に入りましてから、三月十三日、六月十三日、十月八日の三回にわたりまして新聞、テレビ等で公開調査をして下さっております。
  111. 立木洋

    ○立木洋君 この調査を中国側にも依頼してやって、その仕事というのは順調に進んで、中国側も協力的にやってくれているわけですね。
  112. 藤田公郎

    説明員(藤田公郎君) 中国側もきわめて協力的でございまして、一例を申し上げますと、つい先月でございますけれども、これは先生御指摘の孤児の問題に限りませず、一般的に中国に残っております邦人が約五千名ぐらいおりますけれども、そういう方々の帰国の手続の説明ですとか、それにあわせまして、孤児ないし中国に残られたお子さんの身元照会の方法などを説明しますために、大使館員が、中国の東北地方でございますけれども、ここに比較的多く在留邦人がおりますので、そちらに、四カ所ばかり重点的な市を回りまして、中国側がその近辺に居住しております邦人を呼び集めてくれて、座談会形式で大使館員との懇談会を行って、いろいろこちら側からも御説明し、かつ、在留邦人の方々の帰国の手続の説明ですとか、それから日本人の子供らしいと見られるこういう人がいるんだという御照会を受けたり、そういう活動もいたしております。いまのは一例でございます。
  113. 立木洋

    ○立木洋君 幸いにして家族と会えたりして日本に帰国してきた。聞くところによりますと、帰ってきて一番困るのは、一つは言葉の問題である。だけど、日本ではそういう一定の年齢になって日本語を習得するのに学校の設備だとかその他についてもなかなか十分にいかない。また、生活を立てていく上では中国と全く環境が違いますから、いろいろな苦労があるというふうな問題等が出されているわけですが、こういう問題に関しては、もちろん厚生省の方も関係があるんではないかと思いますけれども、政府の方としてはどういうふうな援助といいますか、どういうような協力でこの人たちが自分たちの生活がやれるように、また日本語を十分に身につけることができるような、そういう面での協力をどういうふうに行われているのか、その点はどうでしょうか。
  114. 藤田公郎

    説明員(藤田公郎君) この席に厚生省の主管課長もお見えでございますので、詳細は厚生省からお答えをいただいた方がいいかと思いますが、先生も御指摘のように、邦人の方々が日本に帰られた後の不満とか注文とか、そういうものを申し出てこられる場合ですとか、それから日本に帰られてからまた再び中国に戻られた方もあるわけですけれども、そういう方々のお話を伺いますと、やはりそういう面でのお世話は都道府県によってかなり差があるということを大分指摘しておられるようです。都道府県によりましては、非常に行き届いたそういう面でのお世話をしてくださっているところがあるように伺っております。
  115. 柴義康

    説明員(柴義康君) 御指摘の問題は、確かに私どもとしても大変苦慮しておるところでございまして、文部省当局とも御相談をいたしまして、まあ教育の問題ということでお願いはいたしておるわけでございますが、生活の問題は、まず生活保護法の適用を受けまして、そちらの方でまず生活の方のめんどうは見ているわけでございますけれども、言葉の問題は確かに中国語から日本語を教えるといったような学校は現在日本には東京に二校、夜間中学であるだけでございます。したがいまして、地方の方にお帰りになられました方々は、先に中国から引き揚げられた方々と、市町村なり都道府県が中に入りまして、個別に教育をいたしているというのが実態でございます。
  116. 立木洋

    ○立木洋君 事情をお聞きになって大臣も大体おわかりになったのじゃないかと思いますけれども、三十年間親兄弟離れ離れになって、そしてやっと親や兄弟と会える。日本に帰ってきていまから生活する。まあいろいろ困難があるわけですが、こういう親捜しの問題に関しても、もっと政府としても積極的に、届けられたからということでなしに、いろいろ調べればまだあるわけですし、私も中国におったときに相当の人々を知っておりますが、また日本の友人でも、自分の兄弟がまだ残っていて全然わからない。外務省にはまだ届けに行っていないというふうな人もいます。そういう協力を進めるということと同時に、幸いにして親兄弟が日本におられて帰ってきた人たちが、日本人として言葉も十分に使えるようになり、生活を立て直していけるように政府としても積極的に協力をしていただきたいというふうに考えるわけですが、もちろんこれは外務省だけがどうこうするという問題でなくて、関係省庁とも相談しなければならない問題だと思いますけれども、その点についての大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  117. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほども事務当局の方から御説明を申し上げておりましたが、テレビを使います方法はかなり有効のようでありまして、これはローカルでもいたしております。それによって親を確認するというようなことがかなり効果があるようでございますし、また中国側も、先ほどもお聞き取り願いましたように、地方でわが国の大使館員との懇談会のようなもので情報収集なども手伝ってくれるということでありますので、できるだけそういう事実関係を確かめるということが大事であろうと思います。  その次にございますのが教育の問題でございますが、これもできるだけ関係各省協力をしまして、日本に帰りましてから困る期間の少ないようにいたさなければならないと思います。
  118. 立木洋

    ○立木洋君 それからもう一つ、これはいろいろ不幸な事情があったにしろ、まあ生存しておる方々の場合はこういうことなんですが、しかし、不幸にして亡くなった人がいるわけです。これは戦後いろいろ伝染病があったり、病気があったりして相当な人々が死んだわけですが、そういう人々については親兄弟の手で山の中に葬るだとか、埋葬するだとかという形で、正式なお墓を建てるというかっこうではなしに埋葬をしたという事例もたくさんあるわけですが、そういう家族の方々が、日中国父回復したのだから、せめて自分の親の遺骨を日本に持って帰ってきて、自分の家族の墓に祭りたいというふうな希望を持っている人もきわめて多いというふうに聞いておりますし、また、向こうできちっとお墓に埋葬できた方々の場合には、可能ならば墓参をしたいというふうな希望もあるわけですが、こういう問題については外務省当局の方、あるいは厚生省としてもどういうふうに対応されておられるのか、その辺の事情を聞かせていただきたいと思います。
  119. 藤田公郎

    説明員(藤田公郎君) これも先生十分御承知だと思いますけれども、国交正常化直後でございましたけれども、四十八年の六月に、当時の厚生政務次官を団長にしまして官民の代表団が中国に参りまして、そのときまでに中国側の紅十字会で集めておいてくれました邦人の遺骨八百九十九柱を引き取って、日本に持ち帰った次第でございます。それで、いまおっしゃいましたその他の遺骨の収集ですとか、日本人墓地の所在の問題等につきましても、引き揚げて来られた方々の報告ですとか、それから先ほど申し上げましたように、東北地方に出張しました途次などにできるだけ所在の確認等に努力はしているんでございますけれども、御承知のように、第二次大戦の末期から、その後内戦等々を経まして、非常に中国全体の社会政治情勢変化が大きかったものでございますから、墓地の所在、現状等の調査がきわめて困難でございまして、中国側もそういう趣旨のことを説明している次第でございます。先ほど申し上げました四十八年の六月に引き渡しを受けました八百九十九柱の遺骨の収集に際しましても、中国側は、これらの遺骨の発掘に際しては一部の建物を取り壊したりして収集に努めたんだというような説明もいたしておりました。  それから墓参の問題につきましては、やはり御遺族の方々の感情とともに、過去の不幸な戦争に対する中国側の国民感情というものもやはり十分考慮する必要があると思われますし、昨年九月に訪中されました日本の国会からの議員団の方々が同じ問題を中国側との間で提起されましたのに対しまして、中国側は、こういう中国の国民感情という点から言いまして、やはり今後前向きに進んでいきたい、過去の不幸なことはなるべく思い出させないようにしてもらいたいというような発言をして、かなり消極的な態度を示したというふうに伺っております。
  120. 立木洋

    ○立木洋君 中国側が述べている意図というのもわかるわけですし、また、日本の遺族の人たちが考えていることも決してそのまま放置しておいてよいという問題でもないわけですし、墓地の確認といいましても、これはなかなか大変なわけです。  私も、戦後向こうにおって覚えておりますけれども、亡くなった方を火葬して埋めた場所がどこだったかはっきりとわかるかと言ったって、何の山か山の名前がわからない、山のどこらあたりに埋めたのかもよくはっきりしない、現に自分が行ってみないと確認できないというふうな個所というのがたくさんあるんですよ。これは先ほど言われた八百九十九柱の方々は幸いにしてわかりやすい地点であったとか、その他の事情で確認されてこういう結果になったんだろうと思いますけれども、なかなか、自分がずっと住んでおった地点で亡くなった親族を埋葬したということではなしに、移動しておる途中で不幸に遭って死んだ家族の人を埋葬したと、だからどこであるかというのは本当はわからないんですね。ですから、現に自分が行って確認しないとわかりにくいという問題もあるわけですし、そういう複雑な問題もあるので、ここらあたりは遺族の方々の意見もよく聞きながら、適切な形で中国側とも折衝していただいて、可能な形でこういう問題も解決していけるように努力をしていただきたいというふうに私は考えるわけですが、その点は大臣……。
  121. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) お話しの趣旨はよくわかりましたし、ごもっともなことだと思いますので、中国側ともいろいろ話をいたしながら努力をいたしたいと思います。
  122. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  123. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましてはこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  125. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題とし、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  126. 戸叶武

    ○戸叶武君 宮澤外務大臣は、来たる十二月十六日から十八日まで三日間、フランスで開かれる国際経済協力会議出席のため、十四日に出発し二十日までフランスに滞留するということでありますが、この会議は、先月催されたパリ郊外のランブイエの主要先進国首脳会議を総論とするならば、具体的な各論に入っていく会議と思うのであります。  今年四月の国際経済協力会議の準備会議では、石油問題を中心とする石油対策の対話から南北問題全般の対話の場となったが、しかし、このときはこの石油合同会議というものは大体失敗に終わったのだと思います。この失敗の後を受けての産油国と消費国、発展途上国と先進国とが歩み寄りを見せて、それによって先月中旬に第二回の準備会議が開かれ、十二月の会議開催までこぎつけたんだと思いますが、石油ショック以来の大きな課題である産油国と消費国、発展途上国と先進国との対話、これは大切なことでありますが、今回の国際経済協力会議によってそれがどの程度まで前進することができるか、その見通しをまず承りたいと思います。
  127. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま戸叶委員の御指摘のような長い経緯を経まして、ようやく国際経済協力会議が開かれることになったわけでございますが、これにつきましては、先般の準備会合の際に幾つかの合意がございまして、その合意点を閣僚の会議にかけるということになることになろうと思います。  それらの主な点を申し上げますと、消費国側、産油国側、それから非産油の発展途上国側等々の協議の結果、四つの委員会をこの協力会議のもとに設ける、それらはおのおのエネルギー、一次産品、開発、金融の四つでございますが、設けることが決定をいたしましたら、その委員会にどのようなことをどのようにして審議をするかといういわゆるマンデート、指針を与えまして、そして審議の段取りに必要な決定を行うということがさしずめこのたびの会議の目的になろうと存じます。  ただそれに先立ちまして、このたびの会議の参加国を一応二十七カ国ということに準備会議ではなっておりまして、先進国側は八カ国ということがとにかく曲がりなりにも内々では合意を見たわけでございますけれども、それ以外の産油国、発展途上国側が果たして十九カ国で十分に話がまとまるものであるか、あるいはさらにふやしたいという希望を持っておるのであるかというような問題それ自身がこの経済協力会議の閣僚会議そのものに出てくる可能性もございますし、それからこの四つの委員会の構成、委員会の議長等々をどのようにするかといったようなこともございます。  非常にスムーズにいきます場合には、このたびの会議でこれらの四つの委員会がマンデートをもらいまして、指針をもらいまして、発足をして一定の期間内に結論あるいは暫定的な結論を出してそれを閣僚会議に報告をするという作業に入れるところまで決定をいたしたい、こういうのが主な目的でございます。   〔委員長退席理事増原恵吉着席
  128. 戸叶武

    ○戸叶武君 国際経済協力会議への参加国は二十七カ国、そのうち先進国は七カ国ということですが、新聞には八カ国というのも見えておりますが、七カ国というのはどことどこですか。
  129. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 八カ国でございます。わが国、EC、アメリカ、そのほかに、これはまだ正式に決定を実はいたしておらないわけでございますけれども、いろいろ取りさたをされておる国といたしましては、カナダ、スウェーデン、スイス、スペイン、オーストラリア、それからまだノルウェーでありますとかオーストリアでありますとか、最終的にただいま申し上げました中からと申しますか、大体ただいまのあたりの八カ国ということになると存じます。
  130. 戸叶武

    ○戸叶武君 イタリアは除外されているんですか。
  131. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は一応ECということなんでございますけれども、御承知のように、イギリスの問題などがそこへちょっと関係をいたしてまいりまして、ECが一応代表するわけでございますが、構成国がなおある程度の発言をし得るその範囲はどうかというような問題が残っております、イタリーがECのメンバーということでございます。
  132. 戸叶武

    ○戸叶武君 英国は北海油田の成功によって産油国になったのだから、ECの中に一括されるのでなくて独自な単独出席を要求しているということでありますが、その問題は調整はできているんですか。
  133. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは担当局長が参りますともう少し詳しく申し上げられるんでございますが、私の存じております限りで、ほぼ十二月の最初のEC理事会において調整ができたように聞いております。  その内容は、一応代表するものはECであるけれども、EC構成の二カ国についてはECの与えたマンデート、指針に違反しない限りある程度発言をすることを認めるということのようでありまして、その二カ国というのは、実際上は、ただいま御指摘のような立場にあります英国と、それから来年ECの当番国になりますルクセンブルグというような妥協がほぼできたというふうに承知をいたしております。
  134. 戸叶武

    ○戸叶武君 その参加国二十七カ国のうちに、いわゆる産油国と非産油途上国とがあると思いますが、産油国と非産油途上国の国数はどうなっておりますか。
  135. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 恐縮でございますが、政府委員が間もなく参りますので、その点だけ御質問から御留保をお願いをしたいと思います。   〔理事増原恵吉退席委員長着席
  136. 戸叶武

    ○戸叶武君 OPECの産油国側における十月からの原油値上げ以来、非産油途上国は産油国離れの動きを見せているというが、その調整は可能と見ておりますか。
  137. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいままでのところ、そのようないろいろなうわさあるいは情報というようなものはときどき耳にいたしますけれども、このたびの会議を迎えるに当たりましては、いわゆるOPEC諸国と非産油の発展途上国とは一つの共通の団結をまだ保っておる、概してそのように考えておりまして、内面ではいろいろな点があるいはあるであろうと想像はできますけれども、ただいまのところそういう乱れは見えておらないように存じます。  ただいま、十九カ国の産油国とそうでないものがどういうふうに分かれるかというお尋ねでございましたので、政府委員からその点申し上げます。
  138. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) この十九カ国のメンバーにつきましては、一応、ニューヨークにおきます各国の話し合いで顔ぶれが決まったというふうに承知しておりますが、なお、実は十九カ国側ではさらに議席をふやしてほしいという要望もあるやに聞いておるわけでございます。  十九カ国のうち産油国は、すでに加盟と申しますか、準備会以降出席いたしております四カ国、つまり、サウジアラビア、イラン、アルジェリア、ベネズエラに加えまして、アフリカグループからナイジェリア、アジアグループからインドネシア、イラク、こういったような国が出るということが予想されますので、いまのところ七カ国が産油国であって、残りの十二カ国が非産油発展途上国と一応分けて考えてもよろしいかと存じます。
  139. 戸叶武

    ○戸叶武君 三木首相は、ランブイエ会議で南北問題での日本の提言を行っておりましたが、あの段階においてはそれは実りあるものとならなかったが、今後に問題がまたこれは取り上げられると思うんでありますけれども、そこで日本政府としては、あの際においても開発援助の拡大、輸出所得補償方式など前向きな具体的提案をするというような気配を見せましたが、今度の会議ではそういう具体的な提案をするのでしょうか。
  140. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は、先ほど四つの委員会が設けられることになったということを申し上げたわけでございますが、それが決定いたします過程におきまして、ただいまのような問題が発展途上国側からはもちろん、先進国側からも出ておりまして、そしていろいろ曲折がございましたが、四つの委員会が設けられることになりました。  そこでこの委員会にこのたびの閣僚会議が具体的にどのようなマンデートを、指針を与えるかというようなことにただいまのことは関係を当然いたしてまいると思いますし、また、委員会として仮に指針を与えられませんでも、独自に意見を持ち出すということも自由であるわけでございますから、この委員会の討議が進むに従いまして、ただいまのような問題は当然に出てまいることと思います。その際わが国といたしましては、三木総理大臣がしばしば国会にも申し上げ、ランブイエでも述べましたような、そういう基本的な方針を持って対処していきたいと考えております。
  141. 戸叶武

    ○戸叶武君 四つの委員会というのは一次産品、開発、金融、もう一つは何ですか。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) エネルギーでございます。
  143. 戸叶武

    ○戸叶武君 エネルギーですね。  ランブイエの先進六カ国会議では総論といいましても、問題は二つのところに重点が置かれたと思います。当面している問題としては、短期的な景気対策を中心としての貿易の問題、もう一つは長期的な通貨制度のあり方についての模索であったと思いますが、日本は南北問題で張り切っていたようですが、そのわりあいには実りあるものは得られなかったと思います。出番はこれからだと思うんですが、世界の景気回復をめぐる貿易の問題、それから通貨、為替の安定の問題、こういう問題があそこではぐっと具体的に出てまいり、特にランブイエ会議の成果というものはアメリカフランスとの対立していた通貨、為替に対する考え方があるところまで話し合いによって接近したというところに一つの大きな成果が認められておるんですが、どの程度に接近したのか。古城の中における密談によって、実際は実りあるものになっているとは言いながらも非常にアメリカの発言、フランスの発言においてニュアンスの違うところもありますが、第三者的な立場から見て、宮澤さんはわりあいに公平に物を見る人でありますが、どういうふうな実りを得たという判定ができるでしょうか。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまのお尋ねは通貨の問題に関してでございます。長い間、主としてアメリカフランスとの間で、通貨というものが本来固定レートを好ましいとするかあるいは変動相場的なものをよしとするかという議論がございましたし、その点はさらには通貨における金の役割りはいかにあるべきかというようなことにも関連をいたしておったと思います。  先般、ランブイエの会議の成果と考えられますことは、来年の一月にジャマイカのキングストンで国際通貨基金のための会議がございますが、これに間に合わせますために、ただいまのような論争に一応の妥協点を見出そうということ、そういう努力が実を結んだと申し上げてよろしいかと思います。すなわち、将来、為替の不必要な乱高下を防ぎますために関係各国情報交換を密接にし合い、非常の場合にはお互いに協調した対策を講じようというような意味での、これは協定と申すほどのことではございませんが、そのような話し合いというものがほぼ、主として米仏間で論争に終止符を一応打とう、基本問題は基本問題として将来に延ばしまして、そういう合意が事実上でき上がったということではなかろうかと思います。ただ、さらにそれをIMFの規約の変更というところへ持ち込みますためには、米仏だけでなくその他の国の合意が要るわけでございます。  もともと、論争は主として米仏間にあったことでございましたから、その点について多年の論争は一応この際さておきまして、現実のそういうとるべき方法についてほぼ合意があったということ、なお、それに関連いたしまして、IMFの所有しております金の一部をどのように処分するか、それをどう使うかというようなことも少し話し合われたように思いますけれども、一月のIMFの会議に対処しての基本的な米仏間の対立点というものが一応解消されたと申しますか、了解に達したという、これをほぼ今回の会議の成果と考えてよろしいのではないかと思いますが、なお、必要がございましたら政府委員から補足をしてもらうことにいたします。
  145. 戸叶武

    ○戸叶武君 通貨の安定の問題、基準通貨の問題、これはブレトンウッズ体制をつくり上げたときにも、イギリスのケインズとアメリカのホワイトの論争において見られるように、ドルが非常に価値が、価格が安定して強かった時代アメリカのペースで問題を引っ張っていったが、この通貨論争は過去約十五年間続いてきたと思います。あるいはフランスが、金融に関してはフランスと言われるほど通貨問題に対しては執拗な一個の考え方を持っておりまして、アメリカと対立してきたことは御承知のとおりでありますが、ドルの不安定に対して、欧州はこれに対処して変動帯をつくったが、問題は大臣が言われるように、上下の変動の幅をなくさせるという現実的な操作によって安定性を保ってきたのが事実だと思いますが、今度の話し合いというものは、金融機関だけの操作でなくて、政府なり中央銀行の介入操作で、ターゲットゾーンの方式で国際通貨制度を固定制と変動制との混血的な為替時代を持つという意味でしょうか、その点をわれわれにももっとわかりやすく説いてもらいたいと思います。
  146. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) 先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、今回のランブイエの会談におきまして通貨に対しまして得られました結論は二つございまして、一つは、これも大臣から申し上げましたように、為替相場の乱高下をなるべく少なくするということでございますが、これはたとえば円とドルとの間ではかなり安定したレートが維持されているのに対しまして、欧州の共同フロートをしておりますいわゆるスネークと申します幾つかの通貨とドルとの間ではかなりの変動が見られまして、それが必ずしも経済の実態を反映していない程度の乱高下もあったわけでございます。そういうことをなるべく防ごうということで、この点はそれぞれの通貨当局、中央銀行であるとかあるいは財務省、大蔵省等の間で連絡を密にする、非常に緊密な連絡をとるということと、それからそれぞれの国の実情に応じたやり方で乱高下の幅を減らすという実際上の措置を講じていくということが一つの妥協点でございます。  もう一つは、これと違いまして、IMFの規定そのものを改正して現在の状況に合ったようなものを設けたいということでございます。御承知のとおり、IMFの体系から申しますと固定相場制度が原則でございまして、フロートというようなものは非常に例外的な場合の一種の緊急避難的なものというふうになっているわけでございます。しかるに、現実世界の主要通貨がフロートしている状況でございますので、この現実を踏まえまして、IMFの規定の中にしかるべき形でこのフロートの問題を組み入れる。それによっていわゆる米仏間のいままで長いこと行われてまいりました一種の哲学的な論争、つまりフロートがいいか固定平価制がいいかという哲学的な論争を一応やめる、終止符を打つということでございまして、後者の方は、これからあるいは十カ国蔵相会議であるとかIMFの暫定委員会であるとか、そういうところでどういうふうにIMFの規定を変えるかということを他のIMF加盟国とも議論いたしまして、その結果、できれば来春にもその具体的な改正条文について合意を得て、IMF条約の改正手続を各国が行いたいという、その方向の第一歩として米仏間で規定の改正についての大枠な合意が得られたということでございます。したがいまして、後者の方は単に米仏間の問題ではございませんで、IMF加盟国全体にわたる問題でございますので、これからその条文をいろんな場で討議していくということでございます。先ほど申しました前者の方は、各国政府ないしは中央銀行間で現実的措置をIMF条約の改正と関係なしにとり得る措置をとって為替相場の乱高下をなるべく少なくするということでございます。この二点について合意が成立した次第でございます。
  147. 戸叶武

    ○戸叶武君 やはりランブイエにおける、古城会議における成果というのは観念的な哲学論争でなくて、あるがままの現実を正確に把握して、その上に立って現実的に調整の可能な線を打ち出したというところにおいて非常に画期的な国際会議の私は役割りを果たしたんじゃないか。会議は踊るじゃなくて、腹を割って話し合えばお互いに了解できるような問題を、相互不信と各国のメンツにとらわれていままで問題が前進しなかった。それを話し合いによって各国のきわめて利害関係が厳しい問題がここまで歩み寄ってきたということは、いままでの国際会議においてない私は前例をつくったんじゃないかと思うんです。まあ日本経済閣僚として亡くなった愛知君や宮澤君はなかなかすぐれた人でありますが、愛知君が死ぬ前にやはり国際会議において苦悩し模索していったのもこの道じゃないかと思うんですが、日本人は主役ではなかった。そして、いま説明されるように、日本の円というのはアメリカのドル圏の中に乗っかっているようなものですから、大体ドルと運命をともにしているんだけれど、それほど危険を感じないで安全帯にあった。しかし、カメの背中か何かに乗っかっていながら人の動きを見ることができた。それと同時に、日本人が一つの観念的な——日本人は哲学という言葉が好きだけど、実際は哲学のない国民で、非常な権威主義的な観念的なオーソリティーというものに弱い国民だが、やっと常識的な国民に、具体的なデータを基礎として現実的な調整というものが一番可能だ、イギリスではコモンセンスというが日本じゃ良識なんという——良識という語はコモンセンスより以下の場合があるが、やはりイギリスの持っているプラクティカル、アメリカのプラグマティズム、そういうような常識というもの、具体的な事実の上に立った積み重ね、お互いの立場を尊重しながら、そこで話し合いによる——妥協という言葉は日本人はきらいだが、やはり妥協なしには調整はできないんで、品のいいようなことばっかりやって相互不信でけんかしているのが日本のいまの政治の悲劇であり国際政治の社会においても悲劇であるが、これはパリの郊外の古城の中で本当に腹を割って話すとこのぐらいの成果が上がるんで、これはまことにこれからの問題は各論のほうは——総論は三木さんに任していてもいいが、総論の三番叟はあの体の軽い三木さんのような人でいいと思いますが、今後のやはり本舞台における勝負というのは緻密に利害関係を相当——何か国のためになるか、国のためだけではなくて、これがどうやって世界のためになるか、先進国と発展途上国との間に合意が成り立つか、そういう多角的な配慮を持って進むんだと思いますが、そういう点において、まあお太鼓をたたくわけじゃないが、宮澤さんあたり失敗するとまたわれわれだからすぐぶつぶつ言いますけれども、一つの大きな役割りの舞台を持っているんじゃないかと思うんです。  そこで、基準レートの問題ですが、基準レートをどうするかというのは今度の話し合いで相当煮詰まるものと思いますが、変動幅は上下一〇%程度に落ちつくんじゃないかという見通しもありますが、その程度と予測してよろしいでしょうか。
  148. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) 先ほど申し上げましたように、経済の実態を反映しないような乱高下の防止策については各国が協力して何とか対処していきましょうという合意はできたわけでございますが、その変動幅を何%以内におさめるというような具体的な合意は、少なくとも現在のところはいまだできておりません。
  149. 戸叶武

    ○戸叶武君 きのうの夕刊、きょうの新聞を見ると、フォード大統領が新太平洋ドクトリン、まあ大統領選挙用の打ち上げ花火でしょうが、いずれにしても中国、インドネシア、フィリピン等を歴訪して、日本軍が真珠湾攻撃をした十二月七日、日本では八日に当たりますが、その日に打ち上げ花火をしましたが、その内容というものは、いままで言ってきたようなことをまとめてはでに表現したものと思いますが、あそこのねらいはどこにあるか。  やはり一つは通貨の安定、為替相場の安定というものによって貿易を促進して、とにかく一、二年の間に景気を回復していこうというところに大きなねらいを持っていると思いますが、六カ国首脳会議で変動相場制を認め、相場の乱高下をなくさせるという合意に到達したということになっておりますが、これによってIMF、国際通貨基金の暫定委員会においてはどのように発展していくというふうな予測ができるでしょうか。
  150. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) 先ほど申し上げましたIMF協定の条文を改正するという問題につきまして、これからジャマイカの委員会までにいろいろ検討が重ねられ、できればジャマイカの委員会に具体的な条文も審議いたしまして、おおよその合意に達するということを目標に話し合いが続けられているわけでございます。現在の段階におきましては果たしてそこまで行き得るかどうか、あるいはまた、どういう形の条文の修正になるかということは必ずしも予測ができないわけでございます。
  151. 戸叶武

    ○戸叶武君 ジャマイカのIMF暫定委員会は来年の一月の幾日ですか。
  152. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) たしか八日ごろと記憶いたしております。
  153. 戸叶武

    ○戸叶武君 時間がオーバーしてはいけませんから、また次の機会にこの続きはお願いしようと思いますが、アメリカではフォード大統領もキッシンジャーも新太平洋ドクトリンの骨子の中において、新聞では日米同盟というようなオーバーな表現までしているほど、アメリカ日本というもの、アメリカが太平洋、アジアの問題に関して、あるいはヨーロッパに対する影響でも日本と緊密に結びついて、そうして新しい体制をつくろうという意気込みが通貨、貿易、具体的にはエネルギーや食糧の問題にまで及んでおりますが、外交防衛の問題にまでこれは及んでいるというふうな私は伏線があると見られておりますので、これはこの次の会議の方が、われわれの予測で議論をやるのよりは具体的に出てきたアメリカ側の本当の真意は何か、その上に立って変な疑心暗鬼をするのじゃなくて、アメリカに対しても中国に対してもソ連に対しても、日本は憶することなくざっくばらんに腹を割ってぶち当たって、そうして国際的な調整をしなけりゃ、もしも朝鮮問題なんかこじれてあそこいらで火を噴いたらあたり迷惑な話なんだから、その辺は人のベースにだけ乗るんじゃなくて、きわめて慎重に、祖国の前途がやはり平和と安全を保ち得るか、世界の平和に貢献でき得るか、われわれの憲法を、精神を守っていけるか、そういうところにやはり思いをはせていってもらいたいと思うのですが、まああなたはハト派ということがはっきりすると三木さん以上にいじめられると思うのですが、いまのような世界の流れに逆行するような動きをやっていて、それが何の愛国にもなりはしない。あの十二月七日を、パール八一バーを忘れるなという言葉をもってフォードが言っているように、日本にかたきをとれというのじゃないが、油断をすると危いぞという警告かもしれませんけれども、日本アメリカに恨みを言うのじゃないが、広島、長崎に投下された人間殺戮の原爆を忘れるなという気持ちは、言葉に出さなくてもわれわれの平和憲法の中ににじみ出ているのです。その気持ちを忘れて、何にもわからない、おっちょこちょいな、タカ派だなんて言って、ハゲタカのような形相をもって、日本に愛国主義者はわれ一人というような形だと、本当に愛国の名によって祖国を波乱に導く危険性があるんで、そろそろ痛いものを忘れた時代に災いが来るのですから、それを心してもう少し堂々と、私は政治家の生命は見識です、身体はたとえ破れてもやはり意欲をもって前進していかれんことを、とにかく三木さんじゃ余りもう言ってもしょうがないから、せめて宮澤さんあたり一つの保守党の中にもこれだけの文明史観と哲学をもって歩む者があるんだという記録をとどめて政治家として進退していかれんことを切に期待して私の質問を終わる次第であります。
  154. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、時間も余りございませんので、答弁の方も簡潔にお願いしたいと思うのですが、まず最初K先般フォード大統領が中国あるいはフィリピン、インドネシアを訪問して、昨日ハワイで新太平洋ドクトリンという名前で発表したわけでございますが、それについて政府はどのような評価をしているのか、この点を伺っておきます。
  155. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはやはりサイゴン徹退後一定の時間が過ぎまして、一つの新しい秩序が、まだ生まれておりませんけれども、生まれる方向に行っておるかと見えるときにアメリカが出しましたこの一つの構想とでも申しますか、そういうものであろうと思っております。  すなわち、米ソのデタントということについて、米中間にはいろいろ議論のあるところではございますけれども、今回フォード大統領が訪中をしたことによって、一応意見は異なるにせよ、これ以上の議論にならない、それはそれなり一つの米中間の友好関係は保たれるという見通しが一つ。それからサイゴン撤退後にいっとき、まあときに米国離れといわれるようなことがあるようにかなり言われたものでありますけれども、現実には確かに多くの国が中国ソ連と従来なかった新しい関係を持つに至りましたが、しかし、結果はソ連中国、そしてアメリカという三つの勢力のバランスの上におのおのの国が自分の国の独立と繁栄を探していきたいというふうに、ほぼまた振り子がそこへ返ってくるような、そういう傾向は確かに見えるに至った、その段階であるということ、そしてまた、インドネシアとフィリピンを訪問をしておのおのとの親善をアメリカが確かめ得たという、わが国とは申すまでもなく昨年のフォード訪日があり、また政治的な出来事ではございませんが、わが国の陛下が訪米をされたというようなこともございまして、日米のきずなというものは、これは恐らくかつてないほど問題の少ない時代になってきている。そういう環境の中で、太平洋地域の勢力均衡というものの中でアメリカの力が一つの基礎であるということ、そして日本との協力関係がその一番大きな柱であるというようなことを基本に置きまして、今回のような一つの、これは何と申しますのでしょうか、構想と申しますのでしょうか、物の考え方の整理とでも申すのでありましょうか、それが今回のいわゆる太平洋ドクトリンといわれておるものの意味であろうと思います。  なお、つけ足して申しますならば、インドシナ半島の国との関係は、アメリカはサイゴンからの撤退が今年の四月の末であったこともありまして、進んで手を差し延べるというような世論にはなっておらないわけでありますけれども、それについてすらも、インドシナ半島の諸国の対応によってはアメリカとしても決していつまでもこれを敵視し続けるものではないと受けとれるような、いわば待ちの姿勢を示したということがもう一つつけ加えて申し上げられることではないかと思います。
  156. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この演説は、米国がアジア・太平洋で緊張を緩和するために積極的に参加する責任がある、こういう考え方を述べる一方では、非常に、たとえば日米の関係にいたしましても軍事力優先の考え方、言うなれば十九世紀から今日までの平和はやはり力と力の対決でなければ保てないとか、そういう意味米国軍事力がそのバランスの上に必要である、こういうような思想が非常に流れているように、それがまあドクトリンの第一点でもないかと思うわけであります。そういう点について政府の考えはどうなのか。  それともう一つは、一九六九年のいわゆるニクソン・ドクトリン、あのときは、たしかアジア諸国に自助の努力を要請をし、米国軍事力はどちらかというと撤退し、そのかわりに東南アジアの諸国の軍事力を増強して、そして力のバランスを保っていく、こういうニクソン・ドクトリンとの違いというものはどういうところにあると感じているのか、この点をお伺いしたいと思います。
  157. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) このたびのフォード大統領の演説も、世界平和というものが勢力均衡の上に成り立っているものである、よし悪しは別としましてそういう性格のものである、ことに米ソのデタントというものが、そのいわば中心の背骨になっておると考えております意味では、塩出委員の言われましたように、いわゆる弱い立場から世界の平和を維持しようというのでないということは、私もそうであろうと思います。ただ、これといわゆるグアム・ドクトリンとの関係で申しますと、グアム・ドクトリンの際には、ベトナム戦争が現実に進行しておったわけでございますが、それについては一つのおさまりがついたわけですし、また、グアム・ドクトリンの当時、一九六九年の当時でございますと、米中間の関係というものは今日のようなものではなかったわけでございます。したがいまして、米中関係が今日のような状態になったということ、それからベトナム戦争がともかくも終了したということ、この二つのことは、アメリカの太平洋地域を見る見方に非常に大きな客観的な変化であることは明らかでありまして、したがいまして、今回のフォード大統領の演説の方が、いわゆる太平洋地域で同盟国とそれに対立する、敵対国と言っては言葉がよくございませんが、アドバーサリーと仮に言わしていただきます、そういうものとが、グアム・ドクトリンでははっきりいたしておりましたけれども、今回の場合にはそういうことでなく、むしろ、仮に体制が違っても平和でいこうではないかという考え方がかなり強く出てきたという点では、情勢変化もさることながら、考え方の違いを示しておるように私は思います。
  158. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 特に、このフォードの演説の中で、日米パートナーシップは米国のアジア戦略の主柱であると、非常に日米友好というものは重要であるということを特に強調しているように思うわけでありますが、それが私たちは非常にアメリカのアジアにおける力と力のその対決において、アメリカの力の一翼を担ってもらいたい、こういうような非常ににおいがたくさんすると言わざるを得ないと思うわけですが、外務大臣としては、この日米友好という点において、アメリカ日本にどういうことを期待してフォード大統領はこういう話をしているのか、そういう点はどう感じておるのか。
  159. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどグアム・ドクトリンとの関連についてお尋ねがあったわけでございますけれども、非常に平らな言葉で申しまして、今度のフォードのいわゆる太平洋ドクトリンでございますか、これはいわゆる平和の姿勢といいますか、平らな言葉でございますけれども、そういうものがかなりグアム・ドクトリンと比べますとはっきり出てきておるのではないかと思います。もとより、その平和ということが全く備えなしに、力なしに維持できるとは考えていない、それは先ほど申し上げたとおりでございますけれども、平和の姿勢、平和の呼びかけであるというふうにグアム・ドクトリンとの対比で考えましても私は誤りでないと思うので、そこでわが国に求められておりますものは、わが国軍事力に期待するということは、これはもともと期待をされる理由もないわけでございますから、そのような、いわゆる対話によってイデオロギーの差を乗り越えていこうというわが国の努力と、いわゆる平和憲法のもとで繁栄しているわが国のあり方、そういうものについて日米の関係というものを非常に大切なものに考える。そういうふうに申し上げてもよろしいのではないかと思います。
  160. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、デタントについて非常に意見の違いがあるわけでありますが、大体、日本政府立場としてはいわゆる米ソのデタントをどう評価しているわけですか。
  161. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) デタントという言葉自身は、本来から言えばヨーロッパドイツ中心に起こった言葉であるかと思いますけれども、いまのお尋ねは発生論的にはその後でありますけれども、米ソのデタントというふうにお尋ねになったものと伺ってお答えをいたしますが、やはり核超大国であるところの米ソの間に核戦争の危険が起こることを徹底的に回避しよう、その危険をなくしていこう、そういう基本の政策だというふうに考えておりまして、そのこと自身わが国の平和を求める平和憲法の趣旨にかなうものであるというふうに考えております。
  162. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回の訪中においても、アメリカとしても一方ではソ連を余り刺激しないように、こういうような配慮もしたと思うわけであります。しかしまた一方では、ソ連に対する中国を初めとする東南アジアの国々の危機感というもの、これもやはりある程度利用をして力のバランスを保っていこう、そしてソ連の南下を防いでいこう、こういうような意図が、二つの考え方が非常にアメリカにもあるんじゃないかと思うのでありますが、それについて外務大臣としてどう考えていらっしゃるか。そういう中にあって、わが国が今後やはりどういう姿勢をとっていくのか、これは私は米中が、日米が余りにもパートナーシップということで、アメリカと仲よくすることはいいわけですけれども、それが一方ではソ連と対決していくような、そういう形での友好になったんでは日本の平和のためによろしくないんではないか。そういう点で、今後日本の姿勢というものが非常に大事になってくると思うんですけれども、そのあたり外務大臣としてはどう考えておられますか。
  163. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 米ソがデタントを進めていくということ、そのこと自身は米中関係の友好にとって決して背馳するものではないというのがキッシンジャー国務長官の考え方でございますし、その点は私どももそうであろうと思うのであります。中国が言っておりますことは、恐らくそれに反対だということではなくて、ソ連というものをデタントの可能な相手として考えておるその考え方は必ずしも信用できないということを中国は言おうとしているのであろうと思いますので、この点は、ですからデタントというものの成功可能性についての議論になるのであろうと思うのであります。恐らくフォード大統領は今回訪中をされて、米ソのデタントが進むことそのものが中国にとって決して非友誼的な結果になるものではない、米中関係を傷つけるものではないということについては、これは何度も説明をしたというふうに申しておりますし、またやがてソ連とSALTの第二段の交渉を米国は再開をするということもはっきり中国には話をしてある、そのこと自身は決して米中間を傷つけるものではないという信念のもとに話をしたと言っておりまして、私はそれはわが国としてもそう考えてよろしいのではないかと思っておるわけです、及び、デタントそのものが進みますことは、したがいまして平和憲法を持ちますわが国としては私は喜ばしいことだと思いますが、ただ、わが国政策米国政策の異なりますところは、米国はそういう力によって、力を維持することによってデタントを実現しようとしておるのに対して、わが国はそのような力を持たないことによって平和を促進していこうとするのでございますから、これはおのずから国の憲法といいますか、国策の基本が違っておるということは申し上げるまでもないことでございます。でございますから、時としてアジア地域におきましても、米国のとろうとしております現実政策と、わが国がとろうといたします現実政策とは違いが出てくるわけでございまして、これはたとえばハノイとの関係などが、ただいまの例で申しますと、その一つでございますが、これはわが国が力によって世界の平和を維持するという憲法なり哲学を持っていないというところから出てきておるのであって、さればと言って、米国ソ連も、あるいはほとんどのすべての国がわが国と違う憲法を持っておるわけでございますから、それらの国々の間で、たとえ力による均衡であろうとも、戦争の危険が少なくなっていくということはわが国の国益にかなうというふうに考えるものであります。
  164. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 その点ひとつ、アメリカと仲よくすることはいいわけですけれども、それが対ソ連のための仲よくなったりそういうことのないように、やはり平和憲法を持つわが国としての独自のそういう道を求めていくべきではないかと思います。  それと、もう時間もあまりないんですけれども、アジアの経済協力のために新しい機構が必要である、こういうことを言っておるわけでありますが、宮澤外務大臣はキッシンジャーとも会われたわけでありますが、具体的にはどういう内容のものなのか。私は、どうもこれが単なる親米政権のてこ入れ、軍事援助中心のおそれもあると思いますし、それともう一つは国連中心、国連にもいろいろそういう経済援助の機構はあるわけです。ところが、最近の国連におけるアメリカの動きを見ておりますと、先般のイスラエルに対する援助中止決議とか、あるいはシオニズム非難決議、そういうものを見ましても、なかなかアメリカ側の言いなりは国連で通らなくなってきた。そういうことで何となく国連を離れて、そうして東南アジアの方に自分の言いなりの聞くようなものばかりをつくる、こういうような傾向になったのでは非常にこれはよろしくないんじゃないかと思います。そういう点をわれわれも心配するわけですけれども、その点についてどう考えておるのかですね。
  165. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) アジアにつきまして、経済協力の構造云々ということの問題ですが、この点、実は昨日私はキッシンジャー国務長官と、いわゆるこの部分についての話をいたしておりませんので、具体的に何を意味いたしますか、必ずしも私ただいま明確でございません。恐らくは、たとえば大西洋憲章というようなものが考えられますときに、ヨーロッパ各国、ことに共同市場、ECにおきましてはいろいろな意味での経済的な連帯関係が生まれつつございます。そういうものは現にある程度もう育っておりまして、その上で大西洋憲章のようなものが考えられておるのに対しまして、アジアにおきましてはそのような経済的な連帯性、基盤というものは御承知のように実はきわめて乏しい、あるいはほとんどいまのところないというような状況でございますから、本来の考え方から、順序から申しますれば、そういう一種の連帯性があって、その上に憲章というようなものが成り立つことの方が自然であろうと思いますが、この場合には憲章という構想が先に立っておりますから、そうなりますと、ベースになるべき経済的なあるいは各国間の連帯性というものが実は未熟である。これはだれでもすぐに指摘をし得るし、認識をしているところでありますから、そこでこういうことをやはり言っておく必要があったのではないか。もう少し具体的に想像いたしますならば、ASEANの国々の間でベトナム以後やはりこういう問題についての認識が少しずつ高まりつつございますから、そこから何かが少しずつでも育っていくことをアメリカとしては希望するし、またそれに協力をしたい。このような意味に解しておけばほぼ私は間違いはないのではないかと想像をいたしておるわけでございます。  それから国連における問題でございますが、これはやはりアメリカ自身として、かつてごく少数であった国連が百四十カ国にもなりまして、それがしかも、グループで投票態度を決めるというようなことになりますと、現実に国連が世界の和解あるいは平和の場として機能しにくくなる、理性的な場でなくなりやすいということをアメリカとしては感じておる。そのことは全く間違いであるというふうに私は思いませんけれども、まあそれらの国々が国連という場でいろいろ経験をして、そうして世界のいろいろな問題の理性的な解決はどういうふうにすべきかということをやはり身につけるのにも時期のかかることでございましょうから、そこをアメリカとしてはもう少し忍耐をもって国連というものを見ていかなければならないというふうに考えております。
  166. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に、今度フォードが参りまして、中国米国はいかなる国の侵略にも反対する、いわゆる覇権問題の反対では完全な意見の一致をみた、こういうふうに新聞等では報道されている点もあったわけですけれども、このように判断をしていいのかどうか。それとわれわれはやっぱり特定の国を付さない覇権反対、これは当然わが国政府もそれを認めておるわけであります。ところが日中平和友好条約の問題では、一つ中国はその相手がソ連であると言っているし、また一つソ連の方は結局それはうちを指しているんだ、両方がそういうことを感じているところがぼくは一つの大きな問題で、なかなか前へ進まない問題じゃないかと思うんです。そこでやはりわれわれとしては、中国かこれをはっきりソ連——特定のソ連ではない、一般論である、そういうことを認めること、両方認めるのが一番いいわけですけれども、しかし、少なくとも日中平和友好条約というのは中国と結ぶわけですから、中国はやはり特定のソ連とかというものを指すものではないということで納得すれば、そこでやはり日中平和友好条約というものはわが国政府としては推進できるのではないか。ソ連がそれを何だかんだと言うのまではどうしようもない問題じゃないか。これは説得はせにゃいかぬけれども、第三国ですから、われわれはやっぱり正しい信念で進めていけば、ソ連のことはその次の段階として納得させるにしても、そこまでは最低の条件ではないかというように思うわけです。それについての見解を承って質問を終わりたいと思います。
  167. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 前回のキッシンジャー訪中及び今回のフォード訪中の中で、いわゆる覇権問題というものが論じられましたところを報道等によって読んでおりますと、私が先般当院の予算委員会におきまして矢追委員に申し上げたこととある程度共通点があるように私は考えております。  その第一は、覇権を求めない、あるいは覇権に反対するということは、アメリカアメリカの外交政策の問題として、中国中国の外交政策の問題として、おのおの当然のことながらそれは一緒ではないのではあるが、おのおのの立場においてそういう考え方を持つ、こういうふうに述べられているようでございます。第二点に、この覇権反対ということは、世界どこにおいてもそのような試みが行われることに反対すべきであるという点、これらの二つの点が前提になっておるように私はこのたびの中国における覇権論議を見ておるわけでございます。  したがいまして、そういう意味から申しますと、これは仮にでございますが、仮に中国が覇権反対によってソ連意味しておるといたしましても、米国自身米国の外交政策考え方として覇権反対ということを言っておるわけでございますから、中国と共同して考え、共同して行動するということは意味していないわけでございますので、仮に中国かそうであるといたしましても——私はそうであると申し上げておるわけではございませんが、そうであるといたしましても、アメリカは何もそれに拘束されておるわけではない。アメリカアメリカの外交政策から一般論として自分は覇権を求めないし、また、どの国の覇権を求めることにも賛成でない、こう言っておるものだと理解をしてよろしいのではないかと思います。その点は、仮にアメリカわが国に置きかえていまのことを申し上げるといたしますなら、先般矢追委員に申し上げましたように、わが国わが国の外交政策として自分から覇権を求めるつもりはないし、また、どのような第三国がそのような試みをすることにもわが国の外交政策として反対である、こういうことになってまいるものと思います。したがって、わが国立場から言って、そのような考え方ソ連の側からそれはソ連意味しておる非友好的な態度であると言われる理由は私はないというふうに考えるわけでありまして、したがいまして、日中平和友好条約が幸いにしてできました暁には、その条項はソ連からそのような誤解を受けるように書かれてはなりませんし、またそういうようなものであってはならない、この点は十分にソ連にも第三者的になるほどという説明ができるものでなければならないと考えております。
  168. 立木洋

    ○立木洋君 去る七日に行われましたフォード大統領の新太平洋ドクトリンに関してのお考えはいまお聞きしたわけですが、これと関連しまして、フォード大統領が訪中の前に会われましたし、また、キッシンジャー長官が訪中後外務大臣お会いになったと思うのですが、この席上では、やはり新太平洋ドクトリンに関連したような問題が出されたのかどうなのか、あるいは、もしか出されたとしたならば、その場合には日本政府としてはどういうふうな対応をされたのか、お聞きしたいと思います。
  169. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) フォード大統領が訪中される前に、キッシンジャー国務長官が一人で訪中をしたわけでございますが、そのときに前後会いました際、十二月七日にホノルルにおいてフォード大統領が演説をする予定である。そしてそれは、アメリカの太平洋についての外交政策について述べるつもりであるという程度のことは私はたしか聞いたように思います。それから昨日は、この演説が行われる時間的にはあるいは前だったのかと思いますが、ホノルルにおいてする演説については、日米のきずなというものがやはりアメリカの太平洋政策の基本であるということを大統領が述べることになっておるという意味のことはキッシンジャー国務長官が言っておりました。それを除きましては、別段相談というようなものを受けておりません。
  170. 立木洋

    ○立木洋君 キッシンジャー長官と今度お会いになって、いまの質問で出されておりましたけれども、日中平和友好条約締結との関連で何らかの新たな感触を得たのかどうなのか、大臣として。
  171. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、日中平和友好条約の問題は日中両国の二国間の問題でございますから、第三国にその話をする必要もないし、また、別段のそれについてのアドバイスを求める必要もないと考えておりますので、これにつきましては一切話をいたしておりません。
  172. 立木洋

    ○立木洋君 いや、相談をされたかどうかということでなくて、米中の話し合いがなされたその内容についてもいろいろ向こう側が述べられただろうと思うのですが、その話をお聞きになって、大臣自身が日中平和友好条約締結の問題について何らかの新たな感触があったかどうかということ……。
  173. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、先ほど塩出委員に申し上げたことに一部関連をいたしますけれども、アメリカが考えておる、あるいはこのたび論じられ、あるいは上海コミュニケで発表されましたいわゆる覇権条項というものが、アメリカアメリカの国策として、中国中国の国策としてという考え方に立っておるということについては、わが国の場合と同じ立場であるようであるというような感触は持っております。
  174. 立木洋

    ○立木洋君 このドクトリンの問題に関して先ほど大臣がお話しになっておりましたように、アメリカとしては力を基礎にしてデタントを望んでおる、日本としてはそうではない立場から平和を追求する、そういう点に違いがあるというふうにお話しになったと思うのですが、八月の日米首脳会談以後の状況を見ていると、いろいろとやはり好ましくない事態が起こっているように私たちは感じているわけです。  一つは、大臣承知のように、伊江島で核模擬爆弾の投下訓練が昨年七月にありましたけれども、それからずっとなかった。海洋博が開催されておるそのただ中で今日また核模擬爆弾の投下訓練が再開された。それから沖繩にB52が飛来したという点についても、三年間ほとんど飛来がなかった。それが今回立て続けに二回十五機ですか、飛来してきたというふうな事態もありますし、また、沖繩に駐留しておる米軍が来年韓国で演習を行うというふうなことも報道されておる。こういうふうに、私たちが平和を求めるという観点から見るならばきわめて好ましくない事態が起こっておるというふうに感じておるわけです。去る十一月三日の日、私たちが調査したところによりますと、沖繩の嘉手納基地で、午前十一時十五分から午後四時三十五分まで五時間二十分の期間に嘉手納の飛行場から飛び立ち、あるいは着陸した、離着陸した米軍の飛行機というのが全部で十九機種、そして延べ百十三機離着陸しているわけです。これは嘉手納の飛行場が最高に使用された事態に匹敵する離着陸の数なんです。これほど沖繩の基地というのがいま非常に使用されているというふうな状態なんですが、こういうふうな一連の状態に関して大臣としてはどのようにお考えになっておられるのか、先ほどの大臣の答弁もありましたので。
  175. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 米国が平和維持ということを自分の力を持つことによって、軍事力を持つことによって平和を保とうと考えておると思われるのに対して、わが国の憲法、わが国政策はそのようなものではございませんと申し上げました意味は、わが国がそのような力、軍事力を持つことによって他国に影響を与えるというようなことはわが国政策ではございませんと申し上げておるのでありまして、わが国自身の平和と安全が脅かされるということは、これはわが国にとってはきわめて重大なことでございますから、そのようなことがないようにという精神のもとに日米安保条約が結ばれておる、私どもはそういうふうに考えております。そしてわれわれは、わが国の自衛と安全というために、この安保条約のもとに施設・区域を在日米軍に使用させることを許しておるということでございます。したがいまして、わが国の自衛と安全を保つ意味でそのような基地が使われるということは、安保条約の本来の目的にかなっておるというふうに私どもは考えております。現実の問題として、仮にわが国の周辺で戦乱が起こるというようなことになりますれば、これはわが国の自衛と安全に密接に連関をいたしますから、そのような危険は未然に防ぐということがわが国自身の自衛と安全のためであるというふうに考えておるわけでございます。いわゆる沖繩基地の使用等につきまして、しばしば立木委員からもそういうお尋ねがございますが、これは、それがわが国の自衛と安全のためであるという観点から私どもはそういうことを認めておりますし、また、認める必要があるというふうに考えておりますので、私は十一月三日に具体的に起こった事態は存じませんけれども、そのことが、わが国が力によって、わが国自身の力によって、あるいはわが国に駐留を認められておる米軍の力によって世界の平和と安全に力で影響を与えようというふうな意図から出たものではない、わが国自身の自衛と安全を守るという意図から出たものであるというふうに申し上げることができると思います。
  176. 立木洋

    ○立木洋君 いま大臣がお話しになった日本の平和と安全を脅かされるというふうな事態、これについてはもちろん十分な関心を持たなければならないということはもう当然でありますし、それは安保条約によって守られるという考え方政府の見解としてはそのように述べられるだろうと思うんですが、しかし、こういうふうな大変な訓練が現実に行われている。とするならば、いま日本が何らかの形で日本の平和と安全が脅かされており、それに対応する必要があるのかどうなのかという点についての御認識はどうなんでしょう。
  177. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 米軍がわが国の施設・区域を利用するということについては、私はわが国の平和と安全にとって、強いて分けますれば二つの、二様の意味があると思うのであります。すなわち、現実に平和と安全が脅かされる場合にそれらの施設・区域が利用されるという場合と、そのような危険を未然に防止するためのいわば抑止力としてわが国の施設・区域が利用される場合、両方があると思うのでありまして、わが国の周辺にわが国の平和と安全を脅かすような戦乱が起こらないように、そのいわば抑止力としてわが国の施設・区域が利用されることもまたわが国の自衛と平和と安全のために貢献をするというふうに考えております。
  178. 立木洋

    ○立木洋君 先ほどのお話に戻りますけれども、これは大臣が直接ごらんになったわけじゃないといま言われましたが、もちろんそのとおりですが、十一月三日の日に延べ百十三機が離着陸したというもののうちで最高の機種といいますのはF4ファントムです。第一八戦術戦闘航空団、御承知のようにこれは伊江島などで核模擬爆弾の投下訓練を行っている機種であります。これが四十七機、四二%、嘉手納の基地からの離着陸が最高に多かった機種であります。これは第五空軍のガリガン司令官が述べておりますけれども、戦術的打撃力は、この第五空軍のうち第一八戦術戦闘航空団というのは五〇%戦術的打撃力を持っておると言われるものであり、核を積載して投下を行うことのできる飛行機なわけです。これが最大に訓練を行っておるということがこの間の調査でも明らかになったわけですが、核模擬爆弾の投下訓練を現実に伊江島で行っているということと関連して見るならば、やはりアメリカの意図としては沖繩を核基地化していく、そういうふうな考え方があるというふうには考えられないでしょうか。
  179. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 核基地化というお言葉の意味が本来ならば正確に定義されるべきでありましょうけれども、わが国が非核三原則を持っておりますことは御承知のとおりでありますし、事前協議の制度も御承知のとおりでございますから、沖繩に核兵器が持ち込まれる、置かれるということはいまの状態においてないということは申し上げてよろしいと思います。  私の申し上げたいのは、米ソばかりではございません、わが国以外のほとんどの国が軍備を持ち、しかもそれを強大にしようと考えておる現在の世の中において、戦争が起こることのないように、戦争が起こらないようにという意味で、わが国におります米軍がいわゆるデターレントとして、抑止力としてのいろいろな訓練をするということは、現実に抑止の力として働いておるというふうに私どもは考えておりますから、ただいまの沖繩の基地が米軍の飛行機の発着にしばしば使われる、仮にファントムでございましょうとも、そのこと自身は私はやはりわが国の平和と安全というものを守るための抑止的な力として働いておると考えて、世界の現勢から見まして間違いがないというふうに私はやはり考えます。
  180. 立木洋

    ○立木洋君 去る五日の日に、米下院軍事委員会のロバート・レゲット議員が、日本から国連に参りました民間の代表団に対してこの核の問題について述べているわけですが、米軍の爆撃機や艦艇が核を積んでいることについて、これは公然の秘密であり常識である、日本への核兵器の持ち込みは当然のこととして受け取られているというふうに述べているわけですが、これは一般的な確信として述べたというふうに本人は申しておりますけれども、これは非常に重要なことだというふうに思いますが、この点についてはどのようにお考えになっておられますか。
  181. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どのように言われましたかをまだ私ども正確に発言の記録について確かめておりませんが、仮にそのようなことを言われたといたしましても、私どもは米国責任のある政府当局からそうでないということを聞いておりますし、また、このたび衆議院の予算委員会から訪米をされた予算委員長自身も、伝えられるところによれば、米国の国会議員の何人かの人々もわが国米国とのいわゆる事前協議の制度、わが国民の核兵器に対する感情を十分に理解しておるということを聞いておられるようでございますので、ただいまのような発言がどのようなものであるか、これは知っておく必要が私あると思っておりますけれども、であるからと申して、従来私どもが米国責任ある当局から聞いておったことを疑わなければならない理由にはならないと思っております。
  182. 立木洋

    ○立木洋君 このことに関連して若干私が知り得た状況をちょっとお話ししておきますと、これは十二月六日の午後一時NHKのニュースで行われたわけですが、これは民間の代表団がレゲット議員からそういう話を聞いたということで、NHKの支局が地元カリフォルニアの事務所で電話のインタビューを行って、それに応じたレゲット議員が述べたことについて、民間の代表団にこの発言をした事実はそのとおりであるということを認めて、原子力潜水艦、航空母艦が港に入る際、核兵器を持たずに入るのは奇跡な考えであり、核兵器を積める艦船が核兵器を積んでいることは常識である。横須賀を母港とする空母ミッドウェーについても詳しいことは知らないが一般的に言って核はあると思う、というふうにNHKのワシントン支局のインタビューに対しても述べているわけです。その後、これについてレゲット議員が核兵器が日本にあるという点については否定された。その否定された報道というのはワシントンの日本大使館を通じて流されたニュースであるというふうになっているわけですね。そして、現在レゲット議員というのはこの問題に関するインタビューには応じない、避ける、報道関係者のインタビューは避けるというふうな動きがあるという問題があるわけです。これは非常に私は奇妙だと思うのです。本人が自分で考えていることを述べた。そして報道機関からさらに確認されたところがそのとおり間違いない。その後、ワシントンの日本大使館を通じてそれを否定するようなニュースが流された、本人がそう否定したという。これはやはり奇妙だというふうに私は考えるのですが、その辺の事情は大臣はもちろん確かめておられないからお答えにならないかもしれないけれども、やはりそれが事実だとすれば奇妙ではないでしょうか。
  183. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはいずれにいたしましても、レゲットという議員がどう思っているのかということがわかりませんとわからぬことでございますが、仮にどう思っておるといたしましても、そのことの持っている意味は、私どもは先ほど申しましたような理由からそれほど重視をすべきものとは思っていないというふうに申し上げておきたいと思います。  これはしかし、御本人が言っておられると伝えられるところがいろいろに矛盾をしておりますので、現実にどう言われたのか、どう思っておられるのか、ただいまのところ私もはっきりいたしておりません。
  184. 立木洋

    ○立木洋君 そこらあたりの事情については明らかにしていただいて、はっきりさしていただきたいと思いますが、それはよろしいでしょうか。
  185. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは機会を見まして、レゲット議員がどう考えておられるのか、あるいはどう言われたのかということは私ども知っておきたいと思います。
  186. 立木洋

    ○立木洋君 去る六月十八日でしたか、衆議院の外務委員会で共産党の松本議員が大臣に質問されたのを私も傍聴して聞いたわけですが、あのときに松本議員が核持ち込みの問題に関連して、通過は核持ち込みにあらずと、単に通過だというふうにアメリカが考えているのではないかという問題を繰り返し質問された、そのときに大臣が、「あるいはそうであったかもしれません」、「そうでないかもしれない、それは実際はわかりません。」というふうに述べられた。過去にそのようなアメリカ側の解釈であったかもしれないというものを認められたのに続いて、しかし政府としては昨年末の見解をアメリカ側にも周知さしてあるので、仮に過去においてそういう疑いがあったとしても、現在はありません、というお答えをされたと思うのですが、ここで非常に大切なことなのでもう一度確認しておきたいわけですが、この昨年末の核持ち込みの問題に関する統一見解をアメリカ側に周知さしたというお話ですが、これは十二月二十五日、参議院の内閣委員会で述べられた統一見解じゃないかというふうに思うんですが、これをどのような形でアメリカ側に周知さしたのか、その辺のいきさつについてお聞かせいただきたいと思います。
  187. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) ただいま御指摘になられました統一見解は、たしか内閣委員会において十二月に宮澤外務大臣から発言されました統一見解のことだろうと思います。これにつきましては、御承知のごとくアメリカ政府も関心をいろいろ持っておりますし、在京の大使館とも随時連絡しているわけでございます。国会においてこういう論議が行われましたときに、当然のことながら、在京のアメリカ大使館からいろいろ尋ねてまいりますし、私どもり万からもいろいろ説明するわけでございまして、ああいう国会における論議、特にこの場合は統一見解になるわけでございますけれども、政府の見解として発表されているということについては十分アメリカ側にも説明してあると私は了解しております。
  188. 立木洋

    ○立木洋君 この統一見解については、核持ち込みが行われる場合はすべて事前協議が行われることになっているというふうに述べられているわけです。あのとき問題になりましたのは通過の問題だと思うんです。この中には、通過が核持ち込みに入るのかどうかということが明記されていない。明記されていない点について、アメリカ側に核持ち込みの中に通過が入るということについては明確に述べられたのかどうなのか。その点は、松永さんが直接お話されたのですか、そうでなければあれですが。
  189. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま当時の書類が出てまいりましたので。  昨年の十二月二十五日に私が参議院内閣委員会で申し上げました「ポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦によるわが領海の通航は、領海条約第十四条4にいう無害通航とは認めず、したがって、原則としてこれを許可しない権利を留保するとの立場には変更はない。」、そしてその後に、領海通航の核持ち込みはすべて事前協議が行われる、こう申し上げておるわけでありまして、この点はアメリカ側に十分説明をいたしてございます。
  190. 立木洋

    ○立木洋君 大臣の言われたことはわかるんです。いままで領海条約の十四条による無害通航とは認めないということについては、以前はそういう誤解もあっただろう、三木さんが外務大臣のときにはそういう答弁をした、しかしそれは訂正された、この公海条約との関係では訂正されたということは政府も述べられているからこの点ははっきりしていると思うんですが、問題は日米安保条約第六条にかかわる事前協議の問題です。この第六条にかかわる場合に事前協議にかかるのかどうなのか、安保条約の問題で。それについて、つまり核持ち込みが行われる問題が論議になった時点で、通過が入るのかどうかということが盛んに議論になったわけです。その場合に、政府としては本当に安保条約で行わなければならない事前協議の問題に関連して、いわゆる通過が核持ち込みに入り、通過の場合でもこれは事前協議にかかるんだということをアメリカ側に提示したのかしないのかという問題なんです。
  191. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この十二月二十五日に申し上げました後段におきまして、「米国軍艦は、」一般的には日米安保条約のもとに「自由にわが領海通航を行なうことを認められているところ、核の持ち込みが行なわれる場合はすべて事前協議が行なわれることとなる。」と申し上げております。これは、領海であります以上それが滞留であろうと通航であろうと、わが国のいわば領海でございますから、核を持っておれば核の持ち込みになる、したがって、事前協議が行われるべきものであるということはアメリカ側は十分承知をいたしております。
  192. 立木洋

    ○立木洋君 今度衆議院の予算委員会が訪米して、この問題に関連していろいろ何か聞いておるようでありますけれども、この場合も、この問題に関連して述べている点を見てみますと、ストラットン議員が、これも同じく下院の軍事委員会の議員ですが、どのようなことが核持ち込みに当たるかは条約解釈の問題で、日米両政府が話し合うべきことだというふうに述べているわけですね。ですから私は、通過が核持ち込みに当たるということを日本側が正式に米側に通告をして、そしてアメリカ側も確かに通過は核持ち込みに当たるというふうに述べた事実があるのかないのか。六月に参議院の予算委員会ですか、公明党の矢追議員が質問されたときにも、最終的には、アメリカ政府と私との間で三十五年の藤山・マッカーサー口頭了解というものをもう一度検討しまして再確認をしたということになっておりますと、変更する必要がなかったという点で合意したということを大臣が述べられているわけですが、この場合でも、通過の問題というのが明確にされないんですね。通過が核持ち込みに入るということを日本政府が明確に米側に述べて、その見解を述べて、アメリカ側がそれを確認したのかどうなのか、この事実関係だけはっきりさしておいていただきたい。
  193. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は、領海というのはわが国でございますから、わが国に核を持ち込むことは事前協議であるということになれば、仮にそれが通過でありましょうと、どういうゆっくりしたスピードで滞留に近いものでありましょうと、わが国に入るということはもうだれが考えましても明らかでございまして、その場合もいけませんよということについて、いやその場合はいいはずだという論理は私はないのだと思います。
  194. 立木洋

    ○立木洋君 もう一点だけ。  こういう問題になりましたのは、かって三木さんが外務大臣のときに、いわゆる一時通過は核持ち込みではないということをはっきり述べたことがあるわけです。そのことを二十回にもわたって国会の中で三木外務大臣が答弁されている。だからそういう認識というのは当時日本アメリカ政府間にはあったと思うんです。それから以後、通過は核持ち込みに入るんだという見解を日本政府がとったならば、やはりそれを明確にアメリカ側に通告してアメリカ側がそういうことを了承していないと、いわゆる法的には拘束力がないわけなんです。日本側が一方的にそう考えておる。核持ち込みという概念については日本政府アメリカ政府との考え方が違って、いわゆる核持ち込みは事前協議に当たる、だけれど内容が両政府のとり方で玉虫色になっておってということでは、拘束力が何もない。事前協議は事実上空文化されてしまうということになるだろうという点に問題点があるわけです。だからアメリカ側にそのことを明確に述べて、アメリカ側がそれを確約した事実があるのかないのかということをはっきりさせることが国会の審議の経過から見て私は重要だと思う。
  195. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) ただいま言及されました、三木外務大臣当時の、核を積載しての領海の通航は認められるという答弁があったと。その当時は日米両国政府ともそういうふうに考えていたんじゃないかというお話でございますが、この問題は、当時領海の無害通航に関連しまして、これはですから何もアメリカの軍艦と限らずに、一般論としまして、外国の軍艦が核を積載して日本の領海を無害通航をして通ることが認められるかどうかという観点から論議されたものでございます。これは御承知のごとく、昭和四十三年に領海に関する条約日本が加入いたしましたときに国会で論議が行われまして、そのときに無害通航に関する政府統一見解というものが出されまして、先ほど外務大臣が読み上げられましたような、常時核装備を有する外国軍艦によるわが領海の通航は無害と認めないという政府の統一見解が出されたわけでございます。こういう領海の無害通航に関する日本政府の見解につきましては、アメリカ政府も十分承知しております。
  196. 立木洋

    ○立木洋君 これで最後にします、済みませんどうも。  この議論もう何回もいままで繰り返してきたわけですが、どうもつぼを得たような御答弁がいただけなくて大変遺憾なわけですが、先ほど宮澤外務大臣も言われましたように、六月十八日衆議院の委員会で、アメリカ側がかつてそういうふうに考えておったかもしれない、しかしそうでないかもしれない、実際はどうかしれないと、こういう答弁になっているわけですよ。そうすると、かつては通航が、通過が核持ち込みに入らないというふうにアメリカが考えておったかもしれないし、そうでないかもしれないし、実際はどうであったかわからないという答弁なんですから、そうするとそれから以後無害航行の問題で、領海条約の問題とは別にして、いわゆる安保条約事前協議にかけるということを、これはもう大変論議されてきている問題ですから、アメリカ側が通過の場合でも事前協議にかけなければならないという責任が、義務があるわけです。そのことが安保条約の内容として米側に明確にされていると、繰り返し説明を申し上げましたというけれども、だからいつの時期に、通過が核持ち込みに入るということを明確に提示したのはいつなのか、安保条約の問題で。そして、それに対してアメリカが確約したのはいつなのか。だれが確約したのか。その事実がはっきりしないで、いままで何回も申しましたというだけでは、これは国会の議論としては私はやっぱり信用できなくなると思うんです。その点だけ最後にお答えいただいて、明確にいつ、だれが、どこで確約できたのかはっきりしなければ引き続いて私は質問する、きょうはもう時間がありませんからこれで終わります。
  197. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはしかし、おかしいと思いますのは、まあ非常に平たい言葉で申しますれば、このかきねの中へは入っちゃいけませんということを言うときに、私は入ったけども歩いて通ったんだからいいだろうというような話は、これはもともと通らぬわけでございまして、入っていかぬものは入っていかぬということに私はとどまると思います。
  198. 立木洋

    ○立木洋君 これはいつ、どこで、どういう時期にどう述べてアメリカ側がいつ確約したのかということがやっぱり明確にならない限り、この問題は私ははっきりしないと思うので、この問題に関連する質問は留保して次の機会に質問をすることにしたいと思います。
  199. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 本件についての質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十三分散会      —————・—————