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国務大臣(
宮澤喜一君)
わが国は、伝統的に領海三海里ということで今日に及んでおるわけでございますが、たまたま海洋法
会議におきまして、いわば新しい海のレジームをつくろうということで長いこと
議論が行われておるわけでございます。この
議論の過程におきまして、今後国際的な領海の幅、あるいはただいまちょっと御
指摘のありました国際海峡といったようなものの性格、それから経済水域といったようなものをどういう範囲でどのような性格を帯びたものとして認めるか、海底資源をどうするか、あるいはまた、いわゆる群島理論といったようなものをどのように
現実に扱うか、大陸だなもさようでございますが、たくさんの問題が
議論になりまして、そうして
各国の利害が当然のことながらふくそういたしますから、最終的に海洋法
会議が総合的な結論を出すまでは
各国は自分に都合のいいところだけを先取りをするというようなことはなるべく差し控えてほしいという海洋法
会議の議長の要望が、先般ジュネーブ
会議において行われたわけでございます。これはよく理解のできることでありまして、
各国の
議論の中の自分の都合のいいところだけをとってしまいますと、利害
調整をして最後に大きな法典をつくり上げるということはしょせん不可能になりますから、議長がそのような憂慮を要望の形で表明されたのは至極もっともなことでありまして、
わが国としてもしたがいまして、できることであれば海洋法
会議が全体としてまとまった
段階において、ただいまのような問題も処理してまいりたいと考えてまいったわけです。これが基本的には
政府がこの問題について踏み切りを今日までいたしておりません一番大きな理由でございます。しかし、あと副次的な理由として申しますれば、いわゆる国際海峡というようなものが、これはまだ海洋法ができておりませんから法的な位置づけを持っていないわけですけれども、恐らくそのようなものができましたときには、
わが国の中に生まれるであろう国際海峡、
わが国の周辺に生まれるであろう国際海峡、それにどのような
わが国が権利と
義務を持つか、また今度は、
わが国の船舶が外国にできるであろう国際海峡の通過についてどのような権利と
義務を持つか、そういったような点がございます。そういうこともございまして、できるならば海洋法
会議の帰結を待ちたいと
政府としては考えてまいりました。
たまたましかし、ソ連の漁船の
わが国の周辺への出漁ということが今年もかなり国民の注意を集めるようになり、
関係漁民には相当これを問題視する向きが多くなってまいりましたから、基本的な
政府の
立場は先ほど申し上げたとおりでございますが、何かの処置が可能であろうかどうであろうかということについて、内閣官房を中心に
関係各省の意見
調整をいたしてみたいと考えまして、ただいまそのような作業を始めておるところでございます。