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1975-11-13 第76回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十三日(木曜日)    午前十時十七分開会     —————————————    委員異動  十月二十二日     辞任         補欠選任       木島 則夫君    田渕 哲也君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         二木 謙吾君     理 事                 稲嶺 一郎君                 増原 恵吉君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 糸山英太郎君                 大鷹 淑子君                 木内 四郎君                 田中寿美子君                 田  英夫君                 塩出 啓典君                 立木  洋君    国務大臣        外 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省経済局次        長        野村  豊君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        水産庁次長    佐々木輝夫君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局外        事課長      大高 時男君        法務省入国管理        局入国審査課長  小林 俊二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障最低基準に関する条約(第百二号)  の締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦  貿易規約及び食糧援助規約有効期間の再延長  に関する議定書締結について承認を求めるの  件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (松生丸事件に関する件)  (朝鮮問題に関する件)  (先進国首脳会議に関する件)  (金大中事件等に関する件)  (在日米軍の移動に関する件)  (B52米軍機の沖繩飛来問題に関する件)     —————————————
  2. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十月二十二日、木島則夫君が委員を辞任され、その補欠として田渕哲也君が選任されました。     —————————————
  3. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 社会保障最低基準に関する条約(第百二号)の締結について承認を求めるの件  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の再延長に関する議定書締結について承認を求めるの件(いずれも本院先議)  両件を一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。宮澤外務大臣
  4. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました社会保障最低基準に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九五二年に国際労働機関の第三十五回総会で採択されたもので、その内容は、医療、傷病給付失業給付老齢給付業務災害給付家族給付母性給付廃疾給付及び遺族給付の九部門社会保障給付について、給付事由保護対象者範囲給付内容資格期間支給期間等について最低基準規定したもので、この条約を批准する加盟国は、失業給付老齢給付業務災害給付廃疾給付及び遺族給付のうち少なくとも一部門を含む三部門について義務を受諾することとなっておりまして、わが国は、この条約の批准に当たり、傷病給付失業給付老齢給付及び業務災害給付の四部門について義務を受諾することといたしたく、これらの部の規定趣旨は、わが国におきましては、主として健康保険法雇用保険法厚生年金保険法労働者災害補償保険法及びこれらに基づく政省令により充足されているところでありますが、この条約締結することは、わが国における社会保障制度の発展及び社会保障の分野における国際協力のため、有意義と考えられます。  この条約は、第七十五回国会に提出してその締結について承認を求めましたが、審査未了となったものであります。  なお、当面義務を受諾しないその他の部につきましては、諸条件の成熟を待って受諾することが適当であると認められる時期が参りましたならば、随時、条約第四条1の規定に基づき政府において当該部義務を受諾する通告を行うこととしたい考えであります。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の再延長に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  一九七一年の国際小麦協定は、本年六月三十日まで有効期間延長されていましたが、この議定書は、同協定有効期間をさらに一年間再延長するもので、一九七五年二月ロンドンで開催された関係国政府間会議において採択されたものであります。  一九七一年の国際小麦協定は、小麦貿易規約食糧援助規約との二部から成っており、小麦貿易規約は、従前の国際小麦協定に比し、価格帯供給保証等のいわゆる経済条項を欠いておりますが、小麦の市況の安定化のため加盟国情報交換、協議を行うことなどを規定し、食糧援助規約は、開発途上にある国に対する食糧援助について規定しております。この議定書は、この両規約内容に変更を加えることなく、その有効期間を一年間再延長することを定めており、小麦貿易規約有効期間の再延長に関する議定書食糧援助規約有効期間の再延長に関する議定書との二部から成っております。  この議定書締結することは、小麦貿易に関する国際協力の促進が期待されること、開発途上にある国の食糧問題の解決に貢献することとなることなどの見地から、わが国にとり有益であると考えられます。なおわが国としては、食糧援助規約有効期間の再延長に関する議定書に基づく食糧援助を米または農業物資で行う方針であるので同議定書にその旨の留保を付しました。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 以上をもって両件の説明は終わりました。  質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  6. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 宮澤外務大臣から発言を求められておりますのでこれを許します。宮澤外務大臣
  7. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 主要国首脳会議の開催並びにそれに出席いたしますことにつきまして、一言ごあいさつをお許しいただきたいと思います。  来る十五日から十七日まで、パリ郊外におきまして主要国首脳会議が開催され、わが国から総理大臣大蔵大臣並びに私が出席をいたしたいと考えております。今晩出発をいたしまして十八日夜帰国予定でございます。  この会議は、御承知のとおり、最初にフランスのジスカールデスタン大統領が提唱いたしたものでございますが、現在世界各国が共通に関心を有する経済の諸問題を討議することを目的にいたしております。しかし、六カ国の首脳会合をいたしまして、いわば二、三日間起居をともにするということでございますので、これらの問題に限らず、いろいろな問題が自由に討議をされる機会になるのではないかと考えております。  なお、このたびの会議につきましては、わが国アジアの国としてはただ一国出席を要請されておりますので、かねてアジア主要国に対しまして、この会議わが国としていかなる心構えで臨むべきか意見があればぜひ聞かせてほしいということを、在外公館を通じて意見を求めておりました。概して申しますと、このような会議に即効的な効果は期待しないけれども、長期に見て大きな効果を期待したい。アジアの国、おのおの立場は、事情は違うわけでございますが、の直面している問題、それについての希望等わが国からもよくこの会議において紹介をし、議論をしてほしい。概してそのような反響をアジアの国々から受けておりますので、そのような点につきましても十分に努めたいと考えております。  そのようなことで、今晩から十八日の夕刻まで出張をさせていただきますので、御審議にいろいろ御迷惑をおかけすることは恐縮でございますが、何とぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。(拍手)     —————————————
  8. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 国際情勢等に関する調査議題といたします。  これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 最初に、松生丸事件で負傷した乗組員二人があす十四日帰国予定ですが、そこで、まずこの質問から伺います。  事件発生の九月二日からきょうまで、政府はどのような外交努力をなされたのか、具体的に簡単に説明してください。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 九月二日に事件発生いたしましてから、政府としては、主として日本赤十字及び朝鮮赤十字のラインを通じまして接触を開始いたしまして、結果といたしまして、糸山委員承知のように、遺体及び健康である乗組員が先に帰ってまいりましたわけでございます。それは九月十四日でございます。負傷者二名につきまして先方は治療をするということで、その問題につきましても何度か両赤十字の間で接触をいたしてまいりました。結局、先方は全治を待って送還をするということで、十月の末日までには送還を始められる予定であるというようなことでございました。現実に十月の末日に、十月の三十日にピョンヤンを出発いたしまして元山から乗船をするということでありました。十一月七日に元山港を出発した模様でありますが、途中で荒天のため清津港に一時避難をした。そしてただいま御指摘のように、十四日には衣浦港に到着の予定をもってただいま航行中であります。  で、主としてと申し上げました。わが国北鮮との間には国交はございませんので、全部を日赤、朝赤のルートに頼ったわけではございません。ある程度、でき得る接触はそれ以外でもいたさなかったわけではございませんが、主としては赤十字ルートによったわけでございます。
  11. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 私は、松生丸事件に関して、日本外交には残念ながら行動力が欠けていたのではないか、いま大臣がおっしゃったとおり、日赤日赤にという言葉が非常にはやっておりまして、私は、たとえば日本赤軍によるあのクアラルンプール事件では、政府人命尊重立場からあのような超法規的な措置をすぐとりました。また、シンガポール事件のときも、犯人が日本犬ということで外務省から局長クラスが早速現地に飛んでいったではありませんか。人命に関する限り、今回の松生丸事件も全く同じはずだと思うのです。朝鮮半島は、まあ簡単に言えば日本のすぐ隣です。東京から仮に飛行機で行けば二時間ぐらいで行ける近い国なのに、どうして隣の国に行くのにスピーディーな行動がとれなかったのか。ただ国交がない、国交がないということだけでもって人命尊重日赤に任したとか、そういうような答弁だとぼくはちょっと残念なんです。日本外務省というのはもっと積極的な行動力があってもいいんじゃないか。もしかしたら、そうした行動について何かプレッシャーがかかったんじゃないか、あるいはブレーキがかかったんじゃないかという疑問を持つんですが、いかがですか。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この事件が起こりましたときに、最初に私ども関心を持ちました一つの点は、この事件について北鮮当局がどのような見方をしておるのか、つまり全部が北鮮当局意思によっていわば起こされ、そして処理されてきたのか、あるいは何か偶発的なと申しますか、必ずしも北鮮当局意思によらない——これはいろんなケースがあり得ると思いますが、意思によらないで事件が起こったのであるかということについて、今後の解決等を占うためにもそこを知っておきたい、最初にそのことに一つ関心を私ども持ったわけでありますが、先方から、この事件が不幸なことであったというような意思表示があり、さらにその後になりまして、アメリカの船あるいは韓国の船であると考えてこういう経緯になった、日本船と知っておったらばこういうことにはならなかったであろうというような説明がなされるに及びまして、まず、本件北鮮当局の当初からの企図あるは意思に基づくものではなかったのであろうという推定をいたしました。その後、見舞い金が支払われたというようなことからも今日私どもはそう考えておるわけでございますが、したがいまして、その点が比較的早い段階で推測ができましたので、家族あるいは遺族等の気持ちはよくわかっておりながら、北鮮当局処置というものを、善後処置についてはまず信頼をしてもいいのではなかろうかというふうに考えたわけでございます。  御指摘のように、国交がございますともっとしっかりした的確な処置がとれたであろうということは御指摘のとおりであろうと思います。国交がないという範囲において、私どももそれなりの接触を第三国でいたすことはいたしたわけでございますが、結果といたしましては、主として赤十字中心に連絡をする結果になったわけでございます。  なお、その間何かの圧力、プレッシャーのようなものがあったかというお尋ねもございましたが、そのようなことは一切ございませんでした。
  13. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 松生丸北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国領海を一体侵したのか侵さないのか、なぜ銃撃を受けたのか、そういった点を含めて、この事件はいまだに事実関係がはっきりしていないようです。十一月八日の一部夕刊紙は、あす帰国する二人の乗組員が平壌で記者会見したとき、松生丸北朝鮮領海を侵した、再三の停船命令を無視し逃げたので銃撃を受けたと語ったことを新聞では報道をしました。このような事実関係について、わが国はただすべき点はただす、あるいは通すべき点は通すという毅然たる態度が、あるいは姿勢が一番必要じゃないかと私は思います。大臣いかがですか。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのように考えております。
  15. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 そうなりますと、事件真相解明について具体的にどうされるのか。国際法で、公海条約第二十三条によれば、領海侵犯があったときは追跡権威嚇射撃権というのは認められていますが、射殺するということは特に認められておりません。私は、射殺するということは権利のオーバーな行使じゃないかと思います。いかがですか。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 本件につきましての事実関係解明、それについての解釈、それについてわが国がどのような態度に出るべきかということにつきましては、私ども内々では実はいろいろに検討をいたしておりますが、負傷いたしました二人が衣浦港に無事帰還をいたしました段階を待ちまして、事件解明、処理というものに着手をいたしたい、こう考えております。
  17. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ここで確約とっておきますが、二人が明日帰国します。一部の報道関係なんかでも、大分洗脳されたんじゃないかといううわさもありますけれども大臣あるいは外務省水産庁、各省が徹底的にこの事件真相解明に努めていただくことをお約束できますか。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 当然そうしなければならないと思っております。
  19. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 水産庁がお見えになっていると思いますが、水産庁に伺います。  一体、今回の事件でこういうことが起きましたけれども水産庁行政指導を徹底的にいたしているのか。あるいは特に韓国朝鮮のあの付近は非常に魚がとれます。そういうために領海に入ってしまったとか、いろいろと事件が多いと思いますが、相手国から停船命令を受けたときにすぐ停船するように厳重に注意をしているのか、その点を伺いたいのです。
  20. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) わが国は、従来から領海等の一方的な拡大は認めないという立場はとっておりますけれども、事実問題として、今回のような事故が起きることを未然に防止することも非常に大事なことでございますので、水産庁として、従来からそういうおそれのある海域に出漁する漁業者中心にしましたいろんな漁業団体会合等の際に、最近のわれわれが入手しています情報を十分伝えて、こういう事故が起きないようにという指導を再三繰り返しいままでやってまいりました。しかし、今回九月に松生丸事件現実発生をいたしましたので、再度そういった点について注意を喚起し、事故が再度起きないようにという態度で、一般的に各都道府県及び漁業団体を通じて注意文書をもって喚起しますと同時に、特に北朝鮮付近に出漁いたします漁業者対象にいたしまして、まあ日本漁船であるということが明確にわかるように、たとえば日の丸の大きさについても十分遠くから見えるような大きさにするということ、それからブリッジを黄褐色に塗るというようなこと、それから操業する場合にも集団で操業をして、位置を確認しながら操業しなさいというような指導をしますと同時に、さっきお尋ねのございました停船の問題でございますけれども公海上であってもこういう相手国沿岸警備艇等が来て、国際的に取り決めております信号で停船を求めてきた場合には、事故が起きないようにするために停船して向こうの方の検査等にも応じなさいということをわれわれとしては指導いたしております。
  21. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 まあ水産庁のお答え満足しません。文書でなんかでやるんじゃなくて、私は、趣味がたまたま船を非常に好きですから、御存じのとおり海へ出るとなかなかわかりません。領海がどうのこうの、なかなかわからない、潮の流れでもって船が流されることもあるんですから。もう少し厳しい行政指導をしてくれないと、第二、第三の松生丸事件というのが起きると私は考えます。  そして私の調べでは、昭和三十一年以来北朝鮮による日本漁船員銃撃拿捕連行事件が計三十三件も発生しているんです。それなのに外務省はこれまで一度も北朝鮮に対して抗議などの外交処置をとっていなかったと伝えた新聞もあります。これは一体事実なのか。もし抗議をしたことがあるならばその具体的な説明をお願いします。
  22. 中江要介

    政府委員中江要介君) ただいま糸山議員の御指摘になりましたように、昭和三十一年以降北朝鮮側拿捕銃撃あるいは追撃された事件というものは確かにございましたが、私どもの知っております限りでの件数は、拿捕件数が七件、十一隻、銃撃あるいは追撃された事件が十七件、二十二隻というふうになっております。いずれの場合も、拿捕された場合ですと最短期間は六日、一番長くて一月余りということで、船体、人員、いずれも釈放されておりまして、その間の事情について、政府として改めて北朝鮮側に何らかの措置をとることについては、その必要を認めない状況で解決されたというふうに受けとめております。銃撃、追撃の方は、これは実際の負傷者発生はただの一件でございますが、その場合は、船長の意向もございまして、政府としては特別の措置をとる必要を認めないということで終わっております。
  23. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 松生丸帰国してからまたゆっくり伺いますが、私は、朝鮮半島に対する基本的な考え方として、日本北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国との改善を図らないで今後の朝鮮半島政策はあり得ないという考えを持っています。たとえば、ニクソン訪中のときのように、一夜明けたらフォード訪朝といったようなことがないように——私はかなりニュースを聞いております。政府朝鮮半島全体の政策修正、恐らくフォード訪朝なんということがもし起きた場合は非常に困るので、朝鮮半島全体の政策修正を求めます。  新聞報道によると、外務大臣南北対話再開のためにワルトハイム国連事務総長日本あっせんを依頼することも考えているといった要旨のコメントをされております。しかし私は、南北平和的統一のために日本はみずから可能な限りの外交努力をすることが必要だと思います。つまり、みずから自分で何も努力しないで第三者にあっせんを依頼しても、それは全く逆じゃないでしょうか。具体的に伺います。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 北鮮わが国関係というのは、ただいま糸山委員が言われましたように、実は非常にむずかしい問題をいろいろに含んでおりまして、確かに問題なしとしないわけでございます。従来、私ども考え方は、朝鮮半島わが国との関係は、わが国も非常にいろいろ影響を受けておりますけれども、何分にもわが国の与える影響が非常に大きい、世界どの国よりもあるいは大きいのではないかと思われるぐらいな関係でございます。  そうして、一九五三年の休戦協定以来、ともかくも平和が朝鮮半島に保たれてきた、その基盤は必ずしも確固たるものではない。しかし、ともかく大きな災いに至らずに二十年余り経過してきたというのが今日までのいきさつでございますが、したがって、わが国北鮮とは年とともに人の往来経済往来、あるいは文化的な行き来などをいたしております。いたしておりますが、北鮮承認する、あるいは外交的に深い関係に入るということが朝鮮半島における平和が決して確固たる不動のものの上に立ってはいない、かなり不安定なまま二十何年を経過してきているという経緯もございまして、わが国が動くことによってそのバランスを不幸な方向に崩すということは、よほど気をつけないといけないという、政府としてはかなり用心深い立場をとりまして今日に及んでおるわけでございます。  しかしながら、おっしゃいますように、そこに問題なしとしないわけでありまして、今回の国連軍解体決議に関しまして、私どもがやはり対話の開始に向かって国連努力は向けられるべきであると考え、そしておっしゃいますように、ワルトハイム事務総長に、私どもとして必要な努力はいろいろにいたしますが、やはり国連においてそういうことを考えていただくのが一つ問題点ではないだろうかというふうに申しておりますのも、実はそういう国際の場を通じてこの問題についての解決を進めていくということが、一番、わが国としてはしかるべき方策ではないだろうかという考えに実は基づくものでございます。  わが国が何らの努力をせずに人任せにしておるというわけではございませんで、容易に御想像がいただけることと思いますが、現在、韓国における北鮮に対する国民感情というものはかなり激しいものがございます。また、北鮮韓国の現政権を相手にしないということを言っておりますことも御承知のとおりでございますから、したがいまして、その間にわが国がこの問題の解決にどのような貢献をどのような方法でするかということについては、かなり注意をしていたしませんと、結果が建設的な結果にならないというようなことがございまして腐心をいたしておるような次第でございます。
  25. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 では伺いますが、国連事務総長へのあっせん依頼は実現の可能性があるのですか。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今日は十三日でございますが、ただいまのところ、いわゆるせんだって第一委員会で可決されました二つの決議案総会議題になりますのは、恐らく後一週間ぐらいのうちではないだろうかと想像をいたします。したがって、第一委員会の結末以来、いろいろに努力を今日までいたしてまいりましたが、ただいまのところ、余り勇気づけられるような進展はないというのが事実でございます。
  27. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 南北平和的統一のために日本が果たせる役割りとは一体何ですか。
  28. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、やはり一九七二年の七月の南北両者の対話再開の声明、あのときの精神にできるだけ両者の関係を近づけていくという努力ではないかと思います。
  29. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 余り満足しませんけれども、次に進みます、時間がありませんから。  韓国わが国とが友好協力関係をさらに一層深めていくことは当然です。私は、韓国日本にとって大事な国だと思います。韓国の一層の発展のためには、たとえば民生安定に役立つプロジェクトに関しては、積極的にわが国経済的な援助を続けることが必要だと私は思います。もちろん、軍事的補強につながるようなプロジェクトは困りますが、しかし、同時に北との交流、対話の面でも日本は大胆な発想を打ち出し、行動することがあっていいんだと思います。与党の議員がこんなことを言うのはおかしい、田先生があちらにいらっしゃいますけれども、私はかなり厳しいことを言います。この点に関して、三木総理も所信表明の演説の中ではそうしたいという意味のコミットをしております。しかし、私はそれにしては現状は余りにもスローモーじゃないかという印象を強く感じます。なぜもっと隣の国の韓国あるいは北朝鮮のことですから、なぜスピーディーにもっとできないのか。私は激しく動き続ける国際情勢を見るにつけてそう感じてなりません。  そこで大臣松生丸事件の教訓を生かすために、政府が保証する民間漁業協定を結ぶ気持ちはありますか。ずばり答えてください。
  30. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 北鮮との間に国交がございません現状におきまして、何かのことを政府が保証するということは、筋道としては私は通らないのではないであろうかというふうに考えております、ただいまの段階では。
  31. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 私としましては、政府が便宜を計らってくれないと、民間同士ではますます私はいつまでたっても漁業協定というのは結ばれないのじゃないかと考えるので、政府が、もちろん国交ないのはわかっておりますけれども、何かのチャンスを与えてあげるとか、何か努力をしてあげるというような気持ちがあってほしいと思うんですけれども、いかがですか。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は、その問題につきましては、民間漁業協定というような議論がいっときございましたが、民間漁業者におきましても総合的な利害の判定をしなければならない、と申しますことは、あそこもいい漁場でございますけれども韓国側も非常にいい漁場でございまして、したがって、民間漁業協定を結ぶことによって、それが他の漁場あるいは他の国にどのような影響を与えるかということも当然民間としてはいろいろに細かく検討しておられるように私は存じております。今日までのところ、民間の漁業協定を結ぼうという動きが正式に私どもに照会されたことは実はございませんで、その点はいろいろ民間において検討しておられる最中ではないかというふうに観察をしておるわけでございます。もちろん、民間におかれてそれが関連漁業者の利益になるという判断をされて、そうしてそういう協定を結ぶということに進まれることは、私ども、もとより何にも異存はございませんけれども、ただいまのところ、そういう動きにはまだなってきていないように承知をしております。
  33. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ちょっといま大臣の答弁、ぼくは納得しません。もちろん、水産庁もいらっしゃいますから、漁業者の話をもっと伺って、北朝鮮の中でとれる魚というものはどんなものかということももう少し研究してみると、その点はぼくはいまの答弁はちょっとおかしいんじゃないかと思いますけれども、これはまあお調べください。  次の問題です。日朝間の貿易発展のために平壌に貿易事務所、貿易代表部を設ける考えはございますか。
  34. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は、この問題につきましては、これも民間の努力の結果でございますけれども、ある程度両者間で見本市のようなものをやろうかという動きがいっときあったわけでございますが、いろいろな事情でそれがさたやみといいますか、延期というような形になっておりまして、これについてもいろいろ複雑な事情があるように存じます。
  35. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 貿易拡大の意味から、たとえば北朝鮮に対して輸銀、輸出入銀行の資金使用を認めるなど、幅のある運用を考えていないのか。私は、たしかこれは新聞報道だと思いますが、木村前外務大臣は、キッシンジャー米国国務長官との会談の中で、前向きに考えているという考えがあったということを新聞報道したことがあります。それが宮澤外務大臣になってからむしろ後退しているのではないか、そういうことが考えられるのですがいかがですか。
  36. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 北朝鮮に対する輸出について輸銀のファイナンスというものはどうなっておるかというお尋ねでございますが、現実にファイナンスが行われております。たまたま北鮮側の支払い状況がいっとき困難であると伝えられまして、多少その間保険関係にリスクを生じたというような事情はございますけれども北鮮に対して輸銀の使用を禁止しておるというようなことはございません。
  37. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 そうすると、前向きであるということはよろしいんですね。
  38. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現実にそのようなことが行われております。
  39. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 次は文化に入りますが、文化交流を進める意味から、たとえば新聞記者の交換のようなことは考えていませんか。
  40. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国報道機関の関係者が北鮮にすでに何度か入っておりますし、また、ただいまも入るいろいろな計画があるようでございまして、政府としてそれに反対をする理由は別段ございません。
  41. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 間違いないんですね。
  42. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 間違いありません。
  43. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 きょう法務省が来ていらっしゃいますか。——法務省来ていませんね。これは後でまた法務省の見解が違うなんということがないように、外務大臣と法務省との絡みもあると思いますので、これは前向きにしていただきたいと思います。  外務大臣は、キッシンジャー米国国務長官による米中南北の四者会談提唱をどのように評価されますか。
  44. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、もとから申しますと、わが国が提唱をしておる考え方なんでございまして、そういうことができることが望ましいというのがわが国立場であります。
  45. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 この四者会談を、中国とソ連は冷ややかな態度を見せていますが、どうお考えですか。
  46. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのように伝えられております。恐らくこれは、想像いたしますと、北鮮をめぐっての中ソのいろいろ影響力に関しての思惑、あるいはその間にあって北鮮がどのような路線を選ぶかというようなことに関係があるのであろうというふうに考えておりまして、中国自身は、自分は他の国の内政には干渉をしないという立場説明をしておるように聞いております。
  47. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 キッシンジャー米国国務長官と、日本役割りについても当然外務大臣は話し合っておられると思いますが、一体何を話されましたか。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いまの朝鮮半島の問題に関しまして、私は、いわゆる国連の第一委員会決議案が議論をされております段階から、決議案を通す通さないということは実はそれ自身では大した意味のないことであって、要は関係者が対話を開くことである。その方がむしろ大事なのであるということを終始申してまいったわけでございます。
  49. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 そうすると、日本に何か要求をされましたか、キッシンジャー長官。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 日本に何か要請があったかという……、と申しますよりは、私の方から、日本としてはそう考える、米国としてもそういう努力をされるべきではないかということを終始言ってまいっておるわけでございます。
  51. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 じゃ、宮澤外務大臣は何か提案をなされたと思いますが、日本はどうしたらよいと思いますか。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私の考えでは、朝鮮半島の問題というのを韓国を抜きにして恒久的に解決をしようという主張は、これはだれがする主張であっても無理である、そういうことを基本に考えております。と同時に、この韓国朝鮮半島の事態というのは関係者の対話がなければ片づかないので、国連決議案を採択したり議論したりすることでは解決にならない、そういう考えを持っております。
  53. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 そうすると、十分話し合いはされたと私は解釈いたしますが、間違っても米朝の頭越し外交というようなことはないということを確約していただけますか。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国わが国の国益に従ってこの問題を処理すればいいのでありますから、他国がどうしようとそれは勝手でございますけれども、したがって、私はそういうことを別に気にしようとは思いませんけれども、ただいまの判断からいたしますと、そのようなことは起こらないのであろうと考えています。
  55. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 日米中ソによる南北のクロス承認の時期はすでに来ているのではないかと私は考えます。この点について、米中ソの三国に折衝する考えはありませんか。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 理想的には一九七二年の南北対話の精神になっておりますように、両者が平和的に統一をするというのが私は理想だと思いますけれども、ベストが得られないならばベターとしては、ただいまのようなことは一つの私は考えではないかと思うんでございます、いわゆるクロス承認でございますが。しかし、ただいまの段階でそれについての最大の支障は、北鮮側がそのような事態を好まないということを公にしている点ではないかと思います。
  57. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 私の考えにしておきますが、大臣も非常に答えにくいと思いますが、日本がリーダーシップをとって中ソに韓国承認させるように呼びかけるようなお考えをぼくは持ってほしいと、そう考えております。これは私だけの意見にしておきます。  この際、念のため伺います。政府北朝鮮との国交正常化をどうお考えですか。ずばり答えて結構です。
  58. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは冒頭のお尋ねに対して申し上げましたように、わが国がこの地域に持っております影響力が非常に大きゅうございますので、過去二十年半保たれておる休戦、平和状態が必ずしも確固たる基礎の上に立ってないだけに、わが国としてはよほど慎重に処理をしなければならないというふうに考えております。
  59. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 たしか木村前外務大臣が九月の国連特別総会にお出かけのとき、ニューヨークで開かれた日本国連大使主催のパーティーに六百人もの各国大公使が招かれました。その中に北朝鮮の代表は招かれていなかったという新聞報道があります。これは外務省の方でもって故意に呼ばなかったんですか。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっと事実関係を存じております者がただいまおりませんので、後刻申し上げます。
  61. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 おかしいですね。こんな問題が事実関係がわからないなんてこと、ぼくは考えられないんですが、外務省知らないんですか。この国連大使が招待するということに関して。
  62. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私の承知しております限りでは、あの木村代表が催されたパーティーにどの範囲を招請するかということが検討されましたときに、日本国交のない国の代表を、あるいは、この場合オブザーバーでございますので、さらに別の考慮がございますが、どういうふうに扱うかということを慎重に検討しましたところ、日本政府の対北朝鮮政策というものの全般から判断いたしまして、あの時点では日本外交関係承認関係のない国の、しかもオブザーバーを呼ぶということについては、慎重であるべきであるという意見に基づいて招請されなかったというふうに承知しております。
  63. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 もう一つお尋ねします。  外務大臣は、たしか大臣の訓令として、北朝鮮国交のある国では日本の大公使は北朝鮮の代表と交流してもよい、パーティーに呼んでも呼ばれてもよいという内容を指示していると私の情報では聞いておりますが、これは事実ですか。
  64. 中江要介

    政府委員中江要介君) 糸山委員も御承知のように、北朝鮮国連の専門機関を初めとして幾つかの政府間機関のメンバーになっております現状におきましては、従来の北朝鮮との接触要領というものには修正を加えるべき点があるということで、時々刻々の状況の変化に応じて私どもは検討しておる問題でございます。北朝鮮の代表との接触につきましても、これが国家を代表する大使あるいは正式の政府代表というような場合と、そうでない館員の場合、あるいはまた、その接触の場面がそういった国際機関の活動のための接触である場合、いろいろの態様がございますので、きめ細かい状況に応じた接触要領というものは、常時在外公館に訓令しております。
  65. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 訓令はあったんですか、なかったんですか。
  66. 中江要介

    政府委員中江要介君) これはかねがね訓令はございます。
  67. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 この問題についてはいつごろですか、北朝鮮の問題について訓令が出たのは。
  68. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは、正確に記憶いたしませんが、ずいぶん前からそういった訓令はございまして、状況に応じてそれが修正されている、こういうふうに御了解いただければ正確かと思います。
  69. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 事実関係がまだはっきりわかってないので、国連大使が招待したかしないかということについて、後ほど外務省から回答があると思いますが、もし訓令を出しているにもかかわらず、この間の国連のパーティーにおいて北朝鮮に対して招待しなかったという、確かにオブザーバーですが、その点に関しての答弁もいただけませんし、その点に関しては、もし訓令があった場合は外務大臣の訓令を聞けなかったと私は見ているんですけど、その点いかがですか。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、もとから申せば、余りそういうことをむずかしく考えない方がいいだろうという考えを実は持っておるわけでございますが、たまたま、いまお話しになりました九月の木村代表が参りましたときの状況と申しますのは、国連の第一委員会におきまして、国連軍解体の問題について両方の決議が実はかなり激しく争うということがはっきりしておりますそういう段階で、両決議がグループとも、わが国は片方の決議の共同提案者でございますから、かなり激しい多数派工作を実はすでにやりつつあった段階でございます。したがいまして、ただいま言われましたようなことは、それなりの意味があるということは私にわかりますが、恐らくそのことは、それならば韓国代表はそのレセプションには出席をしないということを私どもとしては当然前提にして物を考えなければなりません。そうなりますと、決議案との関連がどうなるかということも考えておかなければならないという、いろいろな恐らく配慮があったであろうということは御想像いただけるのではないかと思います。
  71. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 最後に、時間がございませんし、また、大臣お出かけのときでございますから、簡単にお願いしておきますが、いまの答弁あるいは質問についてまだ納得もいたしませんし、たくさん資料がございますけど、これは留保させていただきまして、帰国されてからゆっくりお伺いしたいと思います。  そうして最後に、皆さんにお願いしますが、イデオロギーの違いとか、党利党略のためにこの外務委員会が、大切な委員会が開かれないということは非常に残念でたまりません。どうか外交に関しては非常に国際的動きが激しいので、どんどん外務委員会を開いていただくことを切にお願いいたしまして、私の初質問を終わります。ありがとうございました。
  72. 戸叶武

    戸叶武君 糸山委員の御高説ごもっともですが、とにかく国会の正常化を目指して、国会の民主酌運営がなされなければならないのにもかかわらず、強行採決というようなことがなされたことによって乱れてしまったので、それが波及したのですから、みずからを顧みて他を言ってもらいたいと、こう考えるのであります。  ところで、私は、この朝鮮の問題は専門家である田君その他の人たちから、さらに経験並びにいろんな接触を通じて掘り下げられると思いますので、とりあえず、今晩パリに三木首相とお立ちになる宮澤外相に御質問したいのでありますが、宮澤さんは三木さんと、この前のアメリカとは違って、十分対話を深めて、一致点を見出してこの会議には臨むのだと思いますが、この先進六カ国の首脳会議というものには世界全体が注目を払っていると思うのであります。この会議は、明らかに現在の世界経済並びに政治の行き詰まり打開を目指しての先進国首脳者の話し合いの会だと思いますが、こういう試みがすでに一九二九年、三〇年の世界経済恐慌、三二年の金融恐慌のあのあらしの頂点において、一九三三年、いまから四十二年前に六十七カ国が参加して開かれた国際経済首脳会議世界経済の危機打開をテーマとする点において今回と類似しておるのでありますが、あの会議は、全くその意図に反して完全失敗して、ナチの攻勢によって第二次世界戦争を誘発するきっかけにもなったのでありますが、あのときの場合と今度の場合とは大分違いますが、これをどのように受けとめて参加に踏み切ったのか。  三木さんは相当の情熱を傾けて、世界の中における日本、グローバルな形において問題を解決しなければ何も解決できないという信念で行動されると思いますが、あなたはこの会議を通じて、景気回復、貿易、通貨、エネルギー、食糧南北及び東西問題等の当面の諸問題が、自由な討議を通じて打開可能かどうか、その見通しに対して、まず、あなたの御見解を承りたいと思います。
  73. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私がこいねがっておりますところは、かつて、第二次大戦後、いわゆるブレトンウッズ体制のもとに、主として先進工業国を中心といたしまして、世界の通貨秩序、貿易秩序等々が生まれたわけでございましたが、この体制は御承知のように、数年前に崩壊をしたまま、これにかわるべき体制なり秩序が生まれていないというのが現状であろうと思います。したがいまして、戦後の世界経済史から申しますと、このたびの会議一つの契機となってそのようなものが生まれるということであれば、これは歴史的な意味を持つものであろうと考えます。ただ、申し上げるまでもなく、第二次大戦後の体制は先進工業国を中心考えられたものでありますが、現在では、いわゆる産油国、あるいはまた、非産油の発展途上国等々が世界の有力な構成メンバーになっておることは何人も認めざるを得ないところでございますから、新しい体制はそれらの諸国をも含んだものでなければならない。したがいまして、このたびの会議そのものは先進工業国だけの集まりでございますけれども、たまたま十二月には世界経済協力会議という場でそれらの各国が一堂に集まるということでもございますので、そういうこととの連関において、やはり今度の会議の意義を考えるべきではないであろうか。  この成否ということにつきましては、各国首脳会議のそのような意義、すなわち、現在の世界経済危機がお互いの真の協力がなければ解決できない、自分だけは怠けておってもだれかがやるであろうといったようなことでは解決できないという認識を文字どおり持たれるかどうかということ、及び、そういう認識を持たれたといたしまして、おのおのの国をそのようなコンセンサスに持っていけるかどうか、そういったようなことに私は成否のかぎがかかるというふうに考えております。
  74. 戸叶武

    戸叶武君 六カ国の中において、フランス、西ドイツ、アメリカ日本というようなところは、特に重要な責任を持たなければならない立場に置かれております。そこで、この打開の問題について苦悩し、模索し、そこから新しい体制をつくり出すための十二月の世界経済会議までのブリッジの役割りをしようという企ては、一つの試みとしてごもっともだと思うのでありますが、この会議では各国首脳が率直な見解を披瀝して、それによって問題を煮詰めていくことだと思うのであります。苦悩なくして、模索がなくして、哲学なり新しい活路というものを見出すことはできないのですが、その中で三木さんは、わが国経済大国でありながら資源小国であるという事実認識の上に立って、それと同時にアジアから参加した唯一の国という立場から、いまあなたもそうおっしゃいましたが、広くコンセンサスを求めようというふうな努力をされると思います。  ところで、宮澤外相に承りたいのですが、三木さんの外交は三木さんの個人プレーもあるし、あなたとはアメリカにおいても若干のギャップはありますが、この提案内容というものを大体見るところ、キッシンジャー構想に便乗と言うと失礼ですが、同乗して、パートナーシップを発揮して、貿易の面を担当する発言がなされるということでありますが、貿易の面の発言の骨子はどういうふうなところにあるのでしょうか。
  75. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 問題を貿易という面にお限りになりましたので、それについて申し上げますと一つ加盟国——加盟国と申しますか、会議参加国の間で、いわゆる一方的な輸入制限といったようなものは慎もうではないかということ、これについての合意を得たいと考えております。これにつきましては、OECDはすでに二回にわたりまして一般的なそのような合意があるわけでございますが、各国ともその後、経済情勢がだんだん困難になるに従いまして、なかなかその合意を文字どおり守り切れないような傾向も見えておりますので、この際、この先進工業国の間でその点を確認をしておきたいという点が一点。さらに、東京でその口火を切りましたいわゆるガットの多角的貿易交渉を、できるならば目標の日を置いて、それまでに促進完結をしようではないかといったようなことについて提言をいたしたいと考えております。
  76. 戸叶武

    戸叶武君 自由貿易の原則の確立、一方的な輸入制限についてこれをなくさせるように努力しようという考え、また、ガットで合意を得たような発展途上国に対する大幅拡大の問題あるいは東西交流の拡大の問題これはココム規制と関連があると思いますが、それで開発途上国援助の大幅拡大というのは、八〇年までに現在の三倍に拡大するというようなことも伝えられておりますが、そういう具体的な線が出ておるのでありますか。
  77. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国の対外援助、あるいは対外援助の中で占める政府援助の割合、あるいは援助の態様等につきまして、いわゆる国際的な目標にわが国が達していないということはまことに残念なことでございます。一つは、わが国のGNPの成長が非常に速かったということにも関係がございますけれども、まだ目標に及ばないということにつきましては、わが国自身の問題として努力を続けていかなければならないと考えております。しかし、具体的に何年までにどこまでということは、ことに昨今の財政事情もございますので、非常に明快な合意が政府部内にあるというわけではございません。一般的にできるだけふやしていかなければならないという合意はございますけれども、目標値をいつまでに達しようというような具体的明快な合意があるとまでは実は申し上げられないのが現状でございます。
  78. 戸叶武

    戸叶武君 まあ、三木さんは非常に張り切っているが、大平さんは大分渋い、あなたはその中間ぐらいのところでしょうが、三人三様で、これは三木内閣の一つの性格で非常にバラエティーに富んでいると思いますが、アメリカでも少し馬脚を出しましたが、パリで恥をかくとさっぱり今度は三木内閣にいいことはないと思いますんで、どうぞ心して、城の中へ閉じこもって密室会議だそうですから、ほかへ漏れることはないでしょうけれども、秘密というほど漏れやすいものはないんで、そこいらは本当に腹を割って十分一致した行動をとってもらいたい。  次にもっと具体的な問題で、南北問題とも関連ありますが、アジアにおけるところの大部分の国が発展途上国でありまして、貧乏国でありますが、その貧乏国の農業開発国際基金の問題でありますけれどもアジア諸国の農業部門への援助を強化するために設立が予定されている、これもキッシンジャー構想の一つでありますが、農業開発国際基金に対して六千万ドルほど拠出することに定まったと新聞は伝えておりますが、果たしてそうかどうか。この農業開発国際基金は、昨年十一月の世界食糧会議で、農業国の食糧生産援助のため合計十二億ドル各国は出資して設立するということが決まっておりますが、特に、西ドイツは最近五千二百万ドルの出資に踏み切っております。そうした意味において、まあ西ドイツと調子を合わせなければならないというようなところで、若干それを上回った金を出すことに決めたのかどうか、その辺のことを、ひとつあなたは詳しいと思いますが承りたいと思います。
  79. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま御指摘のような経緯の中で農業開発基金が議論をされておるわけでございます。わが国としましては、応分の拠金をしなければならないことは政府部内で合意がございますが、それにつきまして、当初から言われており、予定されておりますように、産油国が半分は拠出をするということを申しておりますわけでございますので、その点が一点と、それから基金の方針等の決定の機構、仕組みの中で、拠出をしない国と拠出をしておる国との発言権をどのように考えるべきかといったような、一、二随伴をしておる問題がございますので、それらの点がはっきりいたしました段階わが国の拠出額を申し出たいと考えております。その時期は、来年の一月あるいは二月という時期が一番適当なときであろうと思っておりますが、たまたま総理大臣が今度このような会議に臨まれますので、ある程度、総理大臣御自身が腹構えをおつくりになれるようにということで、せんだって来各省で議論をいたしてまいったわけでございます。ただいまのところ、先ほど申しましたような条件が成就をするという前提のもとに、わが国として応分の拠出をしなければならないというところまでは政府部内に合意がございますが、具体的な金額につきましてまだプレッジをする段階でもございませんし、最終決定に至ったわけでもございません。
  80. 戸叶武

    戸叶武君 第一次世界大戦が終わってから後のベルサイユ体制の崩壊、その後における一九三三年の国際経済首脳会議の失敗、そういうものを受けとめ、その流れの中に第二次世界戦争への突入となったのですが、第二次世界戦争の終末期におけるやはり国際会議の中におけるヤルタ体制が、皆遠慮してこの問題に触れていないけれども、何といっても戦勝国になったアメリカ、ソ連、イギリスの首脳者が一九四五年二月十一日における戦時中の軍事謀略協定としてのヤルタ協定によって、世界が大体ヤルタ体制で、お互いに同床異夢の形において今日まで世界を支配してきた。しかし、その支配能力というものはなくなってきた。そういう意味において、これは資本主義体制ばかりでなくて、共産主義国における一枚板も亀裂を生じ、各国のやっぱり利益追求を主として世界はなかなかむずかしい段階に来ていると思うんです。この会議は、十二月の国際会議の前ぶれとして、ヤルタ会議におけるルーズベルト、チャーチル、スターリン首脳会議と違って、今度は民主主義国家群における六カ国、傷ついているイタリア及び行き悩んでいるイギリスをも抱えての会議でありますが、明らかにこの会議は、世界の新しい秩序を、民主主義国家群だけでなく、やはり東と西との対話南北のこの険しい亀裂に対する調整、そういうものをも配慮しての会議とならざるを得ないと思うんで、これは三木さんが評価している以上に歴史的な私は国際会議だと思うんです。それに選ばれて御三人の方が行くんですが、どうぞこの会議に、あなたのように思慮の深い人もあるし、三木さんのように夢の多い人もあるし、大平さんのようにちゃっかりした人もいますし、そういう三人三様の考えがあっていいですが、本当に腹を割って、次期政権をどうとろうかなんてえげつない、つまらない考えを捨てて、何が日本のために世界のためになるか、外交というものはかくのごときものであるというような範を、特にその点においては宮澤さんの役割りは大きいと思いますんで、そこいらの、どうもアメリカからこの前帰ってきたときはいろんな雑音が出たり、平沢君の提案が出たり、いろいろごちゃごちゃしましたけれども、もう少しすっきりとした形で、日本はこの道を行くんだ、少なくとも宮澤さんはこう考えているんだということを出発に際して一言、私たちも心配で心配で見ちゃいられませんから、やはり行くのに際して決意のほどをひとつお示しを願いたいと思います。
  81. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 会議の持ちます歴史的な意味につきましては、私の私見として、先ほど申し上げましたように私としては考えておるわけでございます。また、ただいま御指摘もありましたように、先進工業国だけで新しい体制をつくれる時代でないことはもうきわめて明らかでございますから、十二月の世界経済協力会議に臨む先進国側の前向きの態度というものをやはりこのたびのランブイエの会議でも出してもらいたいものだ、出すべきものであろうというふうに考えております。その中には、産油国側あるいは非産油の発展途上国、いわゆる南北問題等々、ただいま御指摘のような問題はたくさんあるわけでございますので、どの一国が手を抜きましても問題の解決はできない、みんなが共通の意識を持ち共同して当たらなければならないということを、首脳の方々にもこの際十分に認識をしていただき、また、そのような方針で関係各国を指導していただくような、そういう結果が生まれますことを、私どもとしてもそのために努力をいたさなければならないと思っております。重要な意味を持ちます会議でございますので、最善を尽くしてまいりたいと思っております。
  82. 田英夫

    ○田英夫君 先日、社会党の代表団が十八年ぶりにアメリカに参りました。私もその一員で行ったわけでありますが、そのときのアメリカの各界の人たちとの話し合い、二百人を超える人たちと話し合ったわけでありますから、安保問題あるいは核の問題、朝鮮の問題日米間の経済あるいは世界の資源エネルギーの問題にまで及びました。そうした印象の中からも、あるいはその後ヨーロッパ、中東など回りました印象からも、いま世界が大きく転換をしつつあるということ、いまお話が出ました六カ国首脳会議もその一つのあらわれと思いますが、したがって、この外務委員会を舞台にして衆参の委員会で、政府とそして与野党含めた議会との間で日本の進路について真剣に話し合わなくちゃいかぬ、進路を誤ってはならないということを改めて痛感をいたします。そういう意味から、この際外務大臣お尋ねをし、あるいは議論をしておかなければならない問題が山積をしていると思いますが、何分にもきょうは時間が大変短いので、朝鮮の問題に限りましてお尋ねをしていきたいと思います。  いま申し上げたアメリカでの話し合いも、全体の時間のほぼ半分は実は朝鮮問題での討議でありまして、私ども社会党とアメリカ政府あるいは議会の人たちなどとの間にはまだまだ大きな意見の隔たりがあることは事実でありますけれども、しかし、たとえばシュレジンジャー前国防長官との話し合いの中で、シュレジンジャー長官は、彼が朝鮮において核を使うこともあり得ると、こういう発言をしたことを明快に取り消しまして、いまや北からの危険はきわめて少ないと思うということをはっきりと述べております。朝鮮半島に対するアメリカ政府、そして特に議会の考え方は大きく転換しつつあると思いますが、外務大臣のお考えはいかがでしょうか。
  83. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先般、社会党の訪米団が、政府のみならず国会、言論界等々各方面と接触をされまして非常に有益な成果を上げられたということを私どもも存じておりますし、また、その結果をいろいろ承ることによって私どもも裨益をいたしております。  朝鮮半島の問題が現状のままで安定的なものである、あるいはいつまでもこのままでいいというふうには、恐らくアメリカの有識者の多くは考えていないであろうという御指摘は、私もそうであろうと思います。
  84. 田英夫

    ○田英夫君 にもかかわらず、そうした中でやはりアメリカはみずからの政策に悩んでいるというのが私は本当のところじゃないだろうか。  たとえば、ハビブ国務次官補との会談の中で、アメリカ政府朝鮮政策の基本方針という形で四つの点を彼は挙げました。一つは、朝鮮で戦争が再発することを絶対に防止しなければならない。二番目に、韓国に対する防衛の約束は絶対に維持する。三番目に、朝鮮半島の緊張緩和を目標とし、南北の間に対話が再開されることを努力する。四番目に、社会主義諸国が韓国との関係を改善をするならばアメリカは北との関係を改善することを考える。以上の四点でありますけれども、これに対して私どもは、一と三の点については全く意見が一致しました。つまり、戦争があってはならない。南北対話が復活すること。ところが、これに対して二と四は矛盾するじゃないかということを指摘したのであります。つまり、韓国への軍事援助、そしていわゆるクロス承認的な考え、これはしかも承認という言葉は使わずに、関係の改善という微妙な言葉を使っているわけでありますけれども、この四つの基本方針に対する日本政府のお考えはいかがですか。
  85. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは非常に広範な問題を四つにおまとめになりましたので、一つ一つについて日本政府考えを申し上げるとすれば、非常に長くもかかりますし、また、慎重でなければならないと思いますが、まず、朝鮮半島に戦争が再発しては困るということは、これは私どももとより考えております。  それから、韓国の防衛についてのアメリカのコミットメント、米韓条約が存在をしておるわけでございますが、これとの関連では、総理大臣がフォード大統領との共同声明で言われましたように、朝鮮半島全体の安定平和というものについてわれわれとしては深い関心を持っておるということ、そうしていわゆる計算違い、ミスカルキュレーションに起因して平和が乱されるということはやはり避けなければならないというふうに第二点については考えております。  第三点につきましては、これはもう申し上げますとおり、私どもも、先ほどから申し上げましたとおり、そのとおり考えております。  第四点でございますが、いわゆるクロス承認という考え方につきまして、私どもはそれは問題の最善の解決の方法ではない。やはり最善の解決の方法は、両者の七二年の七月の声明に見られますような平和的な統一であろうと存じますが、最善ではなくともベターなもので両方とも満足をするというような環境になってまいりますれば、クロス承認というようなことは私は一つ考え方ではなかろうかと思っております。
  86. 田英夫

    ○田英夫君 大臣おっしゃったとおり、この問題ももっともっと突っ込んで意見の交換をしなければならないと思いますし、また、単に議論だけではなくて、政府がこれから朝鮮問題に対処なさる上で、私ども意見がそれに加わることによってよりいい方向に進むならば、そういう意味の対話を大いに続けなければいけないと思います。しかし、時間がありませんので、やや具体的な問題についてお尋ねをいたします。  問題の金大中事件について、あるいはそれにまつわる金東雲元一等書記官の問題について、衆参の予算委員会でも問題があったわけでありますけれども政府は、金大中事件は依然として捜査が続いているし、金大中事件そのものは解決していない、金東雲の問題については、七月二十二日の口上書で解決をした、こういうふうにお考えになっているというふうに受け取っていいんでしょうか。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる金東雲事件につきましては、両国の捜査当局の所見が一致しなかったということでございますが、これにつきまして、わが国の捜査当局の立場は、今後新しく発見されるかもしれない状況証拠等々によって新たな確信を得た場合には、もとより本件はそれで終結をしたわけではない、捜査当局はなお捜査に鋭意努力を続けるという立場でございます。外交的には、私ども韓国が再三にわたって調査を行い、公訴を維持するに足りるだけの証拠を集め得なかったということから不起訴にしたということ、このことについては、これは独立国の、それも純司法的な決定でございますから、それはそれとしてわれわれも認識せざるを得まいと、他方で金東雲氏を懲戒免官としたということは、行政としては重い措置をとった。しかもその理由として、金東雲氏の東京における行動が公務員の品位を疑わしめるものであったというような理由を挙げておるわけでございますので、行政当局としては、なし得る最善をしたものというふうに私どもは判断をいたしておるわけでございます。
  88. 田英夫

    ○田英夫君 そうしますと、金大中事件は捜査が続いている、こういうふうに考えていいわけですか。
  89. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる金大中氏の問題につきましては、一昨年の十一月に韓国総理大臣が遺憾の意を表するため訪日をされて以来、金大中氏は現在選挙違反の嫌疑をもって公判が係属中でございますが、それがきれいになりました際に、韓国市民一般に与えられておる自由、出入国を含めてそのような自由を差別なしに一般市民並みのものは与えるということが韓国わが国に対する言明になっておりまして、その点は今年の夏も確認をされておりますので、私どもとしては、そのような韓国の言明が文字どおり事実となって実行される時を待つ、いわゆる公判の終了を待つという態度でございます。
  90. 田英夫

    ○田英夫君 そこで伺いますが、入管の方がおいでになっておると思いますが、ことしの七月十五日に韓国の金敬仁氏、これは金大中事件が起きましたときに金大中氏と一緒におりました、まさに事件のときにそこにいた韓国の国会議員であります。この人が七月十五日に来日をして八月五日に帰国をした。その間、ヒルトンホテルに宿泊をしていたという事実がありますが、この点は、つまり入国し出国したということを入管では知っておられますか。
  91. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 私ども、すなわち法務省入国管理局で保管しております記録によりますれば、韓国人金敬仁という人物が、七月十五日に入国し、八月三日に出国しております。連絡先は東京プリンスホテルとなっております。
  92. 田英夫

    ○田英夫君 警察はこの点はつかんでおられたでしょうか。
  93. 大高時男

    説明員(大高時男君) 警察は、金敬仁氏が入国した事実につきましては、十月の末になってこれを知りました。その後、調査をしましたところ、金敬仁氏は、先ほど入管の小林課長がお話しになりましたような経緯で入国されておるようでございますが、東京におきましては、七月の二十九日から八月の三日の間、東京プリンスホテルに泊っておられたということを後になって知っております。
  94. 田英夫

    ○田英夫君 この金敬仁氏の問題は、金大中事件が起きました直後に、重要な参考人として出頭を求めて取り調べというか、事情聴取すべきであるということが問題になった人であることは言うまでもないわけで、金大中事件の捜査が続いている以上は、同氏の来日の機会に、警察としては当然捜査をされなければならないと思いますが、それはお認めになりますか。
  95. 大高時男

    説明員(大高時男君) ただいま田先生の方から御指摘がございましたように、私どもとしては、従来から、やはり本件捜査につきましては、当時現場におられた方々から直接話を伺いたいというのが基本的な方針でございました。私どもも、前もって承知しておれば、当然事情をお伺いすべきであると思います。またしたであろうというふうに考えます。
  96. 田英夫

    ○田英夫君 いまのお答えではっきりおわかりのとおり、日本政府は、金大中事件を捜査していると言いながら、同じ政府の中の入管がこの人物の入国出国を知っていながら、警察はそれを二カ月もたってから初めて知られている、いまになって、知っていれば捜査を、事情を聞くんだったと、こういうことで本当に金大中事件の捜査を真剣に考えているんだろうかということを、これはだれが見てもそう考えざるを得ない事情だと思います。この点は、もうこれ以上申し上げる必要はないと思いますから、この事実、いまのお二人のお言葉で、答弁ではっきりしていると思います。  もう一つ伺いたいのは、今月、十一月の六日の韓国の国会の司法委員会で、新民党の李宅敦議員が質問したのに対して、黄山徳法務長官が答弁をしているんですが、それは金大中氏自身の問題についてであります。そして韓国政府、つまり法務当局としては、選挙違反の裁判が終われば出国が自由ということはない、法務省の見解は懲役にすべきだ、こういうことを答弁をしております。また、私が得ている別の情報によりますと、金大中氏は一年ないし二年の実刑を課せられる可能性がきわめて強い、求刑は御存じのとおり五年でありますが、一年ないし二年の実刑、つまり収監をされるわけであります。そうなりますと、裁判が終われば自由になるという韓国政府の言い方、裁判が結末がつけば一般人並みの自由が確保される、こういうふうに韓国政府との間で七三年十一月一日に話し合いができたということ、つまり一般人並みになるというのは、懲役が終わって出てきてからということになるんじゃないですか。この辺は外務省はどういうふうにお考えになっておりますか。
  97. 中江要介

    政府委員中江要介君) この点は、先ほど大臣もおっしゃいましたように、金大中という韓国人が、韓国の選挙法違反容疑で取り調べを受けて裁判が進行中であるということは、これは韓国の主権行為でございますので、大臣がしばしばおっしゃっておられますように、きれいになるということの意味は、その韓国のすべての手続が終わって、その結果がどうなるかということはわれわれが予測すべき問題ではない。しかし、すべてがきれいになった暁には、一般韓国人並みに自由であるということに着目して事態の推移を見ているということでございまして、韓国の裁判の結果について種々憶測することは、私どもといたしましてはやっていない、こういうことでございます。
  98. 田英夫

    ○田英夫君 いまの中江アジア局長のお答えでこれもはっきりしたと思います。つまり、政府が従来、裁判が終われば自由になると韓国政府が言っているから、それを前提にして、その時期に金大中氏の再来日が実現するんだというふうに日本国民に対して、私どもに対して言ってこられたことは、実はそれは韓国政府態度がいまやはっきりしてきて、懲役という実刑を科せられた後にならなければ金大中氏は自由にならないんだ。しかも、ここまで言っては言い過ぎかもしれませんが、韓国では一年、二年の刑に処せられた人が突然刑務所の中で自殺をするという事件が起きているわけです。これが自殺であるかどうかもきわめてわからないわけでありますけれども、そうした運命になりかねないということにいま金大中氏が直面をしているということを私は非常に憂慮しているということをこの際表明をしておきたいと思います。  もう一つ伺いたいんですが、それは在日韓国大使館に朴載京という参事官が現在勤務しておられることを、私も最近外務省からいただいたディプロマティックリストで確認をしておりますが、これは間違いありませんね、外交官リストで。
  99. 中江要介

    政府委員中江要介君) 間違いございません。
  100. 田英夫

    ○田英夫君 すでにこれ、一部の報道機関で報道されておりますから御存じかと思いますが、この人物が、最近、在日本朝鮮人民主化促進連盟中央常任委員会という名前で、ここにあります朝鮮文字のパンフレットを、在日朝鮮人あるいは韓国人の人たちのところに配っているその組織の中心人物であるということが確認をされています。すでにことしの一月からつい先日の十一月までに五つ出ております。この黄色いのが一番最近のものであって、いずれもこれは声明というふうになっていて、一番最初の第一号だけが宣言ということになっております。主な内容は、朝鮮総連が分裂をした、そして在日朝鮮人の人たちの中で金日成主席に対する批判が強まっているというようなことを書いているわけでありますけれども、もちろんその内容は事実無根であります、われわれの調査では。明らかに朝鮮総連の破壊を目指した文書だというふうに考えざるを得ないのでありますが、さらにそれをやっている人物をいろいろ調べてみますと、この朴載京参事官を中心にいたしまして、印刷をした場所もわかっておりますが、神奈川県相模原市の堀川印刷所というところです。この社長は堀川清治こと成大厦という、元在日韓国大使館に勤務をした人物であります。これも外国人登録証ではっきり確認をされているところであります。  時間がありませんから、私の方から事実関係だけを全部申し上げますけれども、さらにこれに、現在高輪のマンションに住んでいる大原光成という日本名の安某、韓国人の名前が安という人ですが、この人物も絡んでおる。そしてこの人たちが十月末には新橋駅前の明文堂という文房具店で、韓国人の人がやっているところですが、この封筒を買っております。それも目撃者がおりますし、調べたところ確認をされている。さらに、十一月に入りまして四八五一、四八五九という、四八というのは韓国大使館の車の外交官ナンバーでありますが、外交官ナンバーの車を使って世田谷の駒沢など、都内数カ所のポストに早朝この封筒に入れたこの黄色いものを投げ入れて歩いている。このナンバーの車は通常朴参事官が使っているものであるということで、いずれもこれは目撃者がおります。こういう事実を政府としてどういうふうにお考えになるのか。朴載京という人物は、実はこの外務委員会で名前が出るのは初めてではありませんで、中江局長も当時アジア局の参事官で御存じと思いますが、一昨年、金大中事件が起きます前に、沢本三次さんの事件に関連をして沢本三次さんの家族を自宅まで行って調べた。外交官がこういうことをしてもいいのだろうか、これは日本の国内で外国の政府の人間が捜査活動をするというのは国権の侵害ではないかという意味のことを私がお尋ねしたことがあります。その人物が、金大中事件の直後にいつの間にか姿を消して、ことしの三月二十日に再び日本に赴任をして、赴任というか一時帰国をしておったのがまた来日をいたしまして、現在こういう活動をしているということでありますが、外交特権を持った外交官が日本に合法的に居住をして、そしてそこでその人たちがつくっている組織、つまり朝鮮総連というものを虚偽の宣伝文書をばらまいて破壊工作をやるというようなことは許されるものなのかどうか、お答えだけいただきたい。
  101. 中江要介

    政府委員中江要介君) ただいま田委員の御紹介になりましたようなことは、私どももある一つ新聞報道としては承知いたしましたけれども、客観的な事実としては、外務省としては何ら承知しておりませんので、具体的にどう判断するかということについては、いまの段階ではお答えできない、こういうことでございます。
  102. 田英夫

    ○田英夫君 時間が過ぎてしまったようであります。この問題は、またさらに、私ども調査も進めますし、これは法律に違反するという問題では実はありません、はっきり申し上げて。日本の法律に触れるという問題ではないわけでありますけれども外交官という立場の人がそういうことをやっていいかどうか。そして最終的には私どもは、すでに二度にわたって同一人物がそういう活動をしているということであるならば、これは好ましからざる外交官ということで退去をしていただかなければならないというふうに考えますが、この点については、また改めてこの委員会で御質問することにいたします。
  103. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 外務大臣は、きょうから先進国首脳会議に出発をされるわけでありますが、きょうはそういう関係で非常に時間も限られておりますので、質問通告をしていることはやめまして、この首脳会議のことについて、二、三質問をして終わりたいと思います。  日本を初め、世界的に非常に未曽有の困難に直面をしている現在、私たちもこの先進国首脳会議が何らかの意味で成果をおさめることを心から期待をしておるわけでありますが、この会議に臨むに当たりまして外務大臣としてどのような意義を考えておるのか、重ねて質問したいと思います。
  104. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど戸叶委員にも申し上げたことでございますが、私といたしましては、すでに崩壊したブレトンウッズの諸制度が、それにかわるべきものをいま模索しつつ新しいものが生まれていない。今度の会議だけでそれが生まれるとはとうてい考えられませんけれども、しかし、これから世界経済協力会議等に話がつながってまいりまして、その結果として先進工業国ばかりでない発展途上国あるいは産油国等々を含めた新しい経済秩序というものが生まれるための最初の契機になるならばこれは非常に意義のあるものであろう。願わくはそういうものになってほしいし、わが国としてもそういうふうに努力をすべきであると実は考えておるわけでございます。
  105. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほど外務大臣から、この会議に臨むに当たりまして、アジアの諸国の要望と申しますか、そういうものを在外公館を通していろいろお聞きをしたと、こういう話でございますが、アジア諸国はこの先進国首脳会議について、具体的にどういうことを要望しているのか、あるいは非常にこういう会議を歓迎をしているのかどうか、そのあたりはどうなんでしょうか。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもの知り得た限りでは、一般的に会議を歓迎しているように判断をしたしております。そうして一番共通なことは、多くのアジア各国が世界不況のもとに非常に苦しんでおりますので、したがって、今回の会議によって先進工業国が世界不況からの回復を共同で努力をしてくれるならば、直接自分たちの利益につながる、その点の期待が一番大きいようでございます。  次に、いわゆるこれらの国の多くが一次産品による輸出所得が不安定であるということを悩んでおりますので、それについての安定化が図られることは望ましいということ、あるいは農業開発援助等々も歓迎をするというような意見が概して見られるわけでございますが、また国によりましては、これは多少発展段階の高い国でございますが、援助よりもむしろ貿易、自分たちの輸出したい物が障壁なしに有利な条件で輸出ができるような環境というものの方が望ましいというような主張の国もございまして、これはおのおのの国の発展段階を反映したものと考えてよろしいのではないかと思います。概して、今度の会議を歓迎という雰囲気のように存じます。
  107. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 昨日の新聞で見たわけでございますが、キッシンジャー長官が、この先進国首脳会議で終わるんではなしに、閣僚級の定期協議の場を設けるとか、以下三項目の提案をしておるわけでありますが、特に、同会議の後を受けて参加国による閣僚級の定期協議の場を今後設けて続けていく、こういう問題については、外務大臣としてはどう考えているのか。   〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕
  108. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私も、報道ではその点を承知いたしたわけでございますけれども、どういう発想でキッシンジャー氏が考えておられますか、直接実は聞いてみたいと思っておるわけでございます。と申しますのは、各国の景気政策の調整につきましては、たとえばOECDの中では特別な委員会がございまして、御承知のように、非常に密接に連絡をしつつございます。その中で特にこの六カ国を選んでというのも、これも私は一つ考え方であろうと存じますが、もう一つ、そのもとには各国の首脳の間に、多少の不便はあっても、おのおのの国の経済政策をお互いに調整し合おう、あるいはコーディネートしょうというはっきりした意思と、それを実行に移すための国民的な合意が各国にあることが前提でなければ、経済閣僚が集まりましても、なかなか所期の目的を達しにくいであろう、いろいろな条件、あるいは与えられた環境といったようなものがいろいろに考えられるわけでございます。そういうようなものが全部熟しておりますと、確かにキッシンジャー氏の言っておられるようなことは有意義であろうと思うんでございますが、果たして実効を上げ得るものかどうかということを、もう少し直接に提案を聞いて、私の思うことも申すつもりでございますけれども、できれば目的を有効に果たし得るようなものにしてまいらなければならないというふうに思います。
  109. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、大臣最初話されましたように、今回このように首脳会議が開かれるということは、すぐ何らかの結果が出るとかそういうことではなしに、いまや各国とも国際的な協力なくして生きていけない、そういう時代を迎えたわけですから、そういう意味においてこのような首脳会議が開かれる、そうしていろいろな問題について腹蔵なく話し合える、こういうことができるということが非常に大事ではないか、そういう意味で、しかし、ただ何か先進国とあとの発展途上国、あるいは先進国でもこの首脳会議に来ていない国もあるわけですけれども、そういうところに一つのみぞがあってはならぬわけであって、あくまでもこの先進国首脳会議というものは、地球人と申しますか、やはり地球全体の人類の立場に立つ会議でなければならぬ、これはもう先進国と発展途上国との対立のようなことになっては意味がないんではないか、私はそのことを強く要望しておきたいわけですけれども大臣の見解はどうでしょうか。   〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕
  110. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点はきわめてごもっともであり、また大切な点だと思います。したがいまして、私がこのたびの首脳会議を十二月に開かれます国際経済協力会議との連関でとらえるべきだ、少なくともその連関を大事に考えておくべきだと申し上げておりますのも、そのような趣旨からでございます。
  111. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 こういう首脳会議は、いまもう飛行機で行けば非常に距離も近いわけです。したがって、今後はたとえば東南アジアの諸国との首脳会議とか、これは何もトップだけではなしに、国民レベルの交流も必要であると思うんですけれども、やはり今後こういうトップの交流も頻繁に行うべきである。特に、日本アジアからただ一国参加するわけですけれどもアジアの諸国とも今後こういう形での交流を深めていくように推進していくべきである、私はそう思うんですけれどもう、外務大臣はどうお考えでいらっしゃいますか。
  112. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) アジア各国が、何と申しましてもわが国にとりましては一番大切な地域でございますから、それらの国々と首脳間の意見の交流を常に図るということはきわめて大切なことであると思います。それのために、このような首脳会議が最もいい方法であるか、あるいはいわゆるバイラテラルな関係がいい方法であるのか。また、首脳会議というようなものも、本来でありますと十分な準備をいたしまして、その上で開く方が概して効果が大きいわけでございますが、時としてはこのように、いわゆる事務方の準備を重ねませんで、むしろ首脳が上からひとつしっかりやれと言っておのおのの国の政府指導していくのも、時としては私は有効であろうかと考えます。アジアの国々とはやはり相対の関係、その他東南アジア開発閣僚会議のようなものもございますし、いろいろな方法でやはり意思の疎通を図っていくことは大切だと思います。
  113. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、今回の議題の中のいわゆる南北問題について、政府開発援助のいわゆるGNPに占める割合を外務省としては〇・三五%に引き上げる、こういう具体的な数字を出したけども、大蔵省の予算の方の関係でそういうはっきりした目標は出さぬ方がいいということで非常に抽象的な発言になった、こういうように聞いておるわけでありますが、そのことは事実なのかどうか、それともう一つは、やはりこの開発援助の内容と申しますか、質の問題ですね。私は、この開発援助もとかく今日までは産業基盤整備とか、そういうようなところに重点が置かれてきたわけですけれども、今後は、たとえば住宅の建設とか、民生安定に役立つものにやはり重点を置いていく、こういう大きな質の転換をしなければならないときが来ているんじゃないかと思うんでありますが、そういう点についてはどう考えているのか。
  114. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一般に、援助につきまして第一は援助の総額でございます。第二は、その中で政府援助の占めるべき割合、これはただいま塩出委員のおっしゃいましたように、いわゆる貿易あるいは企業投資といったような民間の関係でなく、インフラストラクチュア等々をも含むものでございますけれども政府援助が全体の援助でどのぐらいの割合を占めるか。第三に援助の条件、いわゆる質でございますが、寛大なものであるか、あるいは非常にきついものであるかといったような、幾つかの判断の基準があるわけでございまして、いずれをとりましても、わが国の場合十分ではないということは政府も十分認識をしております。  そこで、ある程度の目標年次を設け、そしてどこまでそれを持っていくというようなことは、できることであれば望ましいことでございますけれども、何分にもこのような財政状態になっておりますので、いまそれを具体的に年次を立ててはっきりさせるということが困難だという財政当局の主張も、これも理解のできるところでございますので、私どもとしては、今回の会議などがことに契機になりまして、いわゆる対外援助というものが決して人様のためだけのものではないという国民的な合意というものがもう少し育ってまいりまして、そうして国際水準にやがて近づいていくというために努力をしなければならないと思っております。現在の状態が不満足であって改善しなければならないという点につきましては、政府部内には十分の合意がございますが、いつまでにどこへということについては、現在の財政上、いまそれを確定しにくいと財政当局が考えることも理解のできることではないかと思っております。
  115. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 もちろん、そういういろいろな情勢の変化はあるんですけど、努力目標というんですか、やっぱりただやりますというよりも、大体この程度の目標でやる、こういう努力目標ぐらい示さないと日本の誠意は余り認められないというか、先進国としても無責任であるように思うのです。その点、努力目標ぐらいは出す考えはあるのかどうか。簡単でいいです。
  116. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもとしては、頭の中にあそこまでいきたいということは当然行政としては考えておりますが、これを政府で決定いたしますと、将来の予算というものをある意味で拘束をするということにこれはなってまいりますので、そこまでいくのはどうかというようなことを先だっても議論いたしたところでございます。
  117. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、やはりいまの世界的な不況とインフレの同時解決、あるいはまた資源の問題、まあこういう点を考えるときに、発想の転換と申しますか、いままでと同じような考えではなかなか解決していかないのじゃないか、こういうような点から、やはり私は、今回の議題経済問題に限られておりますけれども、たとえば最もむだなものは軍備じゃないかと思うのです。そういう軍備をもっと縮小していくとか、あるいはソ連あるいはアメリカが年間何十億ドルの武器輸出をしている、これはもうアメリカ、ソ連のみならずヨーロッパの国々も中近東あたりへそういう武器の輸出もしておるわけでありますが、こういうような問題について、そういう武器輸出をやめるように発言をする考えはないかどうか。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私が冒頭にごあいさつを申し上げましたときに、経済問題に限らず云々と申し上げましたのは、首脳間で広く政治の問題についても議論があることであろうということを考えまして申し上げたわけでございます。ただいまのいわゆる武器の輸出といったような問題も、わが国立場から考えますと決して好ましいこととは思われませんし、また、経済的に見ますれば、これはきわめて非生産的な金の使い方であると申さざるを得ません。ただ、お気付きのように、このたびの会議がいわゆる西側と申しますか、民主主義市場経済の国の主要国であるということがございまして、ただいまの武器というような話になりますと、ある意味でいまの世界の力のバランスから申しますと、これは東西間の問題に非常にかかわっているわけでございますから、どの辺までその点についての議論が深まるかは多少問題があろうと思うのでございます。
  119. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に、やはり核防条約の問題でこれはいろいろ問題になる場合もあるのじゃないかと思うのですけど、日本政府としては、まだ核防条約批准もしていない。また、今国会も批准をする、提出をすると言っておったのが、何となくもう次の国会のようになってきておるわけです。そういう点で、外務大臣としてはどういう姿勢で、この核防条約をどうするのか、はっきりした態度をしなければならないのじゃないかと思います。それがどうなのか。これだけ伺っておきます。
  120. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 核防条約につきましては、前国会以来の経緯から、ただいま衆議院の外務委員会で継続審議をお願いをいたしております。それにつきまして、最近にも政府態度について多少御疑念を抱かれる向きもございまして、一昨晩三木総理大臣と最終的に打ち合わせをいたしておりますが、総理大臣の所信は従来から変わっておりませんで、できるだけ早く国会において批准のための御承認を得たいということ、来国会でと、総理大臣が今国会でなくと申し上げた意味ではなく、今国会はいろいろ財政等々の法案に御集中を願っておるということも存じておりますので、遅くとも来国会にはということを申し上げたのであって、早期に御承認を得たいという気持ちは変わっていないというふうに、総理大臣は再度それを確認しておられますので、私どもとしてはそのように考え、また、対外的にも聞かれればそのように所信を述べたいと思っております。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 大臣も御承知のように、朝鮮半島の問題というのは国際的にも重要な焦点の一つになっておるわけです。それをめぐって、日本政府がそれにどう対応していくのかということが注目されておるところだと思うのです。  それで、その問題に関連してお尋ねしたいのですが、去る十日の日に、いわゆる韓国の国防相が、米韓連合軍に含まれる米軍は左韓米軍のみでなく、日本、グアムなどに駐留する米軍全体が含まれる、こういう発言がされておりますけれども、この点について大臣、どのようにお考えでしょうか。
  122. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは新聞報道を読みましたのですが、どうも私としてはどのようなことを考えて言われたのか言われないのか、全くはっきりわからぬ報道でございまして、あえてコメントを申し上げる必要はないのではないかと思います。
  123. 立木洋

    ○立木洋君 これ自体でしたらまあ大臣そのように言われるだろうと思うのですけれども、去る十一月四日の日、大臣が予算委員会で内藤議員の質問に答えて、在日米軍が米韓条約に基づき韓国に移動することは日米安保条約から離れた問題で関知しないと、こういう発言をされておるのですね。これも聞くまでもなく大臣が述べられた言葉ですから。今回、米韓連合軍の指揮下に在日米軍が入るということになるならば、朝鮮半島の情勢に在日米軍の動向がきわめて大きく左右されるというふうな問題になることは私は明らかだと思うのですが、この発言というのは、私は大臣が述べられた発言ときわめて関連があることだと思うのですけれども大臣が述べられた発言と関連してどのようにお考えですか。
  124. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) いまお話のありました米韓統合司令部の問題というのは、大臣も申されましたように単なる報道でございまして、また、どういうコンテクストで言われたのかわれわれも全くわからないわけでございます。この点につきましては、そういう報道の次第にもかんがみまして、在韓大使館を通じて詳細を聞いておりますけれども、われわれの承知しております限りにおいては、これは単なる構想にすぎないというふうに聞いております。いずれにいたしましても、そういう司令部が仮に将来できるとしても、それがそのまま日本にある米軍を指揮するなんていうことは考えられないことでございます。
  125. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ大臣、十一月四日に述べられた大臣の御発言の真意ですね、もう少し砕いて説明していただけませんか。つまり、在日米軍が米韓条約に基づき韓国に移動することは日米安保条約から離れた問題で関知しないというふうに述べられた大臣の真意ですね。
  126. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 恐らくあのときの御質問の想定は、在日米軍というものがおりますが、それが配置がえになる、配転をして、そうして米韓条約に基づく在韓米軍になることはあり得ないかとおっしゃれば、これは私はあり得ることだと思うわけでございます。その場合に、韓国軍と在韓米軍が共同演習をするということも、これも恐らくもうきわめてあり得ることであろう。しかし、それは安保条約の適用の問題ではないと存じますと、こう申し上げたわけでございます。
  127. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、移動に関しては日米安保条約の問題から離れた問題だから関知しないという意味だとするならば、在日米軍韓国の情勢に応じていろいろな意味で移動することは、これは自由だというふうに判断していいわけですか。
  128. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 日本におります米軍が配置転換によって韓国に行くということは、そのこと自身は事前協議の対象ではございませんし、自由であろうと存じます。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 いろいろな意味におけるですよ、いろいろな意味における自由、移動。もう少し砕いて述べますけれども、十月二十八日に外務大臣は衆議院の予算委員会でこういう発言をされているわけですね。国連憲章に基づく米軍の行動範囲は武力攻撃に対するものである限り極東及び極東周辺に限定されるものではない、こういうふうにも述べられておるわけですね。そうすると、仮に有事の場合に在日米軍朝鮮民主主義人民共和国の内部にも移動し得るということがあり得ると、これは米韓条約に基づく米軍の行動であって日米安保条約上は関知しない、それも自由である、こういうふうにも解釈されるのではないでしょうか。その点はいかがです、大臣
  130. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 在日の米軍が日本を出ていく態様にはいろいろあると思います。普通の移動の場合には事前協議の対象にならないということは大臣が言われたとおりであります。しかし、在日米軍が作戦行動に従事することを目的として日本の基地を使って出ていく場合には、これは事前協議の対象となるのは当然であります。そして、その在日米軍が出ていく目的は、当然極東の平和と安全を守るためであります。ただ、その行動する範囲は必ずしも極東の範囲には限られないということでございます。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 これは大変重大な問題だと思うのです。いま局長が普通の移動と作戦行動における移動と言って言葉の上で区別された。しかし、マヤゲス号事件の場合には、あれは事実上作戦に行った行動ではなかったのですか、一時途中で駐留したとは言いますけれども。しかし、そういう問題の普通の移動と作戦行動における移動というのはだれが判断するのですか。日本政府としてチェックする機能があるのですか。そういうことができないならば、日米安保条約を離れた問題で、いわゆる米韓条約に基づく米軍の日本からの移動というのは関知しないということは、自由にいつでも行けるということを意味しているのじゃないですか。事前協議全くないということと同じですよ。大臣いかがです。
  132. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) マヤゲス号のときは、あの時点におきましてはまだアメリカにとっても事態ははっきりしていないのでありまして、とりあえず海兵隊一個大隊をタイのウタパオ基地に移動さしたわけであります。その場合のわれわれとしての判断としましても、その当時の情勢から見てこれは移動であるというふうに考えて何ら異議を申し立てることもなかったわけでございます。したがいまして、結局、移動であるか、いわば直接戦闘を目的とする出動であるかということは、その部隊の動き方といいますか、態様というもの、あるいは命令を受けておるか、あるいはその後の行動というものを判断してわれわれは十分判断できるものと思います。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 どうも局長大臣になられたようでありますけれども、ひとつ大臣に。  大臣が先ほど十一月の四日の日に発言された内容というのは、私はきわめて重要な問題だと思うのですよ。在日米軍が米韓条約に基づいて韓国に移動する。移動というのは普通の移動もあり、作戦行動への移動もあり、いろいろな移動がある。この場合に、移動するのは米韓条約に基づいて在日米軍が移動するんだから日米安保条約から離れた問題で日本政府は関知しないんだと言ったら、事前協議の問題もあり得ないし、自由にいつでも出動できる、こういうことに結論はなると思うのです。だから、私はこの問題についての十一月四日の宮澤外相の発言がどこに真意があるかということをさっきお尋ねしたわけですけれども、これはきわめて重大な問題を含んでおる発言だというふうに大臣自身お考えになりませんか。
  134. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういう誤解があるといけませんので、私が配置転換……。
  135. 立木洋

    ○立木洋君 いや、誤解じゃないですよ。
  136. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 配置転換ということをあの当時から答弁で申し上げておるわけであります。すなわち、わが国から直接の戦闘行動に発進をするという場合には、これはもう事前協議の対象になるということは立木委員もよく御承知のとおり、明らかなことでございます。それから、いわゆる普通の移動という言葉ははっきりいたしませんから、それで私がわざわざ配置転換と申し上げましたのは、日本におります米軍が配置転換によって韓国に移動するということは、これは安保条約の適用の問題ではないと、こう申し上げておるわけです。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 これまた水かけ論になるわけですが、さらに少し話を進めて、この間B52が沖繩に来ましたですね。八日の日に来て十日ですか、帰ったわけですけれども、四十七年の七月に、当時の大平外相がインガソル駐日大使との会談をされたときに、B52の沖繩の立ち寄りの問題については真にやむを得ない場合に限定する、そしてアメリカの大使も厳重に緊急の場合に限るというふうに述べておられるわけですが、今回のB52の嘉手納飛来はこういう真にやむを得ない場合だとか、厳重に緊急の場合といわれるのに相当するわけですか。相当するとしたらどういう状態であったのかということについて。
  138. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 仰せのとおり、アメリカ側は真にやむを得ない場合に限るということを申しておるわけでございまして、まあその典型的な例が台風避難というふうな場合でございます。今回の場合も、台風がグアムを襲うという可能性があったので、米側としてもやむを得ずB52十五機を沖繩の嘉手納に移動さしたわけでございます。しかし、これは台風が去りましたので十日には直ちに退去いたしました次第でございます。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 台風避難という場合、いわゆるどの程度の台風が厳重に緊急の場合というふうに想定されるのですか。次の質問もありますからちょっとはっきりさしておいていただきたいんです。台風が起こればどんな場合でも避難して結構だという意味ですか。
  140. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) ちょっと一般的にお答え申し上げるのは非常にむずかしいわけでございますが……
  141. 立木洋

    ○立木洋君 具体的で結構です。
  142. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 今回の場合、われわれの承知しておる限りで申し上げますと、グアム島にあります米軍の合同台風センターの七日の午後九時現在の予報によりますと、グアム島の東方四百五十キロの海上に台風十九号がいた。その台風が西北西に進むにつれてグアム島は二十四時間以内に台風の勢力圏内に入って強い風雨の影響を受けることは予想されていた。そういうことでありまして、これについては日本の気象庁もおおむね同様の予想を行っていたということでございます。そして、この強い風雨というのは、その当時の予想としては、二十四時間後に中心五十五ノットの風速を持つ台風が百七十五海里以内で三十ノット以上の風速になると予想されていたそうであります。
  143. 立木洋

    ○立木洋君 沖繩が返還されてから嘉手納にB52が飛来したのは一九七二年四回ありました。その後三年間全然なかったわけです。また今回飛来してきた、こういう形になっているわけです。七二年に四回飛来してきた当時の状況というのは、あの当時がどういう状況であったかということをお尋ねするとまた時間がかかりますから、七二年の後半、あれはB52がベトナムに大変な爆撃があった時期でした。これはもうだれが言うまでもなくはっきりしている事実ですね。それから三年間の間グアム島を通過する台風が一回もなかったのか。四回もあった。その四回の台風というのは今回の台風より規模が大きいのです。しかし、日本には避難しなかった。そして今度また台風だといって避難してきた。ところが、いまの状況というのは御承知のように朝鮮半島の問題が重大な問題になっている時期です。そして米韓統合第一軍団の軍団長が発言しているわけですが、B52を含めて、北朝鮮からのあれがあるならば、反撃すれば九日間で主要戦力をせん滅することができる、こういうことを述べている時期です。こういう時期にB52が、三年間台風があっても飛んでこなかったのに、今回また台風避難だといって飛んできた、こういうことになると、これはただ単に台風の影響ではなくて、政治的な台風じゃないですか。台風が現にグアム島に直撃したときでも来なかった、直撃しなくても来るということになるような、どういう条件の場合にそんなら本当に真にやむを得ないといって日本政府は認めるのか。その判断はアメリカ任せだと、そういうふうに言われても仕方がないんじゃないですか。山崎大臣ではなくて、宮澤外務大臣にひとつ。
  144. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 事実の問題でございますから、ちょっと私から最初申し上げさしていただきたいんですが、四十七年十月以降台風がグアムの近くで発生したことは、それはございます。しかし、台風が発生したことだけで直ちにB52が避難するわけではないわけでございまして、やはりグアム島を直撃する可能性があるような場合に避難するわけでございます。その四十七年十月以降今日までに、今回の場合を除いてやはり一回は避難しておるようでございますが、このときは沖繩には来ないでほかのところに行ったようでございます。
  145. 立木洋

    ○立木洋君 それじゃもう時間がありませんから、今後の日本政府の対応の仕方をお聞きしておきたいんですが、日本に、嘉手納にB52が駐留するというふうなことは日本政府としては絶対に認めないのかどうなのか、これが一点。それから今後B52が来て一時駐留、一時的に来て訓練を行うというふうなことは認めるのかどうなのか。第三点は、今後そういうような一時飛来するような場合に、日本政府としてはどういう態度をとるのか。今後とも認めるのか。認めるとしたら認める場合の基準はどういう基準で認めるのか。その三点について大臣に、最後ぐらいひとつ一言。
  146. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府委員からお答え申し上げます。
  147. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) かねてからアメリカも申しておりますように、B52に対する日本国民の感情というものは十分承知しておって、台風避難など真にやむを得ない場合以外はB52を日本に飛来させることはしないということを言っておるわけでございます。したがいまして、平常の状態においてそういうB52が日本に配置されるようなこはないものとわれわれは了解しております。
  148. 立木洋

    ○立木洋君 この問題については、一番最初に問題提起しましたように、日本の平和と安全という問題ときわめて重要なかかわり合いがありますし、ベトナムの事態を考えた場合でも、B52が嘉手納に飛来してきたという時期はきわめて重要な時期だったということを考えてみると、B52の嘉手納飛来というのは決して偶然ではないんですよ。台風だけの問題ではなくて、あらゆる問題が総合されて米軍がとっておる行動だというふうに判断することは、これは政治に携わっておる者なら容易に察しがつくことだと思うんです。そういう意味で、この問題に関しては、この間、沖繩の屋良知事が十一日の日に駐日米大使にこの問題について話しに行ったところが、今後ともB52が沖繩に着陸しないということは言えない、着陸することもあり得るだろうというふうな答弁をしているわけですが、この問題については、私は日本政府としてはやはり毅然とした態度をとるべきだし、先ほどの十一月四日の宮澤外相の発言から見ても、これは重大な問題ですから、朝鮮半島との関連においても、この問題については今後さらに引き続いて明確にしていただきたいし、委員会でも取り上げていくということを述べておきます。  それからもう一つ、どうしても大臣が御発言されないそうでありますから、大臣、PLOの事務所を東京に開く、設置するという問題に関して、いままで何回か国会内でも議論されてきましたし、政府としても大体よろしいという前向きの発言をなされているように私たちは考えておるわけですが、結局、PLOの事務所をつくるというふうになれば日本政府としては歓迎するというふうに考えていいわけですか。
  149. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国は、憲法のもとで非常に大きな自由が国民にも与えられておりますし、わが国に参ります外人にも与えられておるわけでございまして、したがって、PLOが東京に事務所を開くというふうなことはその自由、与えられました自由のうちの問題である。政府が許すとか認可するとかいう問題ではなくて、わが国の憲法は十分にその点の自由は与えておるというわけでございます。
  150. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がなくなったんですが、もう一つ。  それじゃつくってもよろしいというのは、決して日本政府としてはつくるなら勝手につくりなさい、自由ですよ、だけど、日本政府としては歓迎するわけじゃありませんよと、そういうふうに解釈していいですか。
  151. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いえいえ、そうではございませんで、体制の……
  152. 立木洋

    ○立木洋君 歓迎すると言って悪いですか。
  153. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 体制の違う方々におわかりにくいかもしれませんので……
  154. 立木洋

    ○立木洋君 体制は私も一緒ですよ。
  155. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いえ、おわかりにくいと申しましたのは、あちらの方におわかりにくいのかもしれないので、いまのように申しますといかにもそっけないと聞こえるならば、そういう意味ではございませんで、全く自由でございますから、それでもいろいろ御不案内なことでもあれば喜んで御相談には応じます。
  156. 立木洋

    ○立木洋君 喜んで御相談に……
  157. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) このくらいのことは申し上げてもちっとも差し支えないんです。
  158. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 本件質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後零時四十二分散会      —————・—————