○湯山
委員 OPECの原油価格引き上げの問題について伺いたいと思います。
総理も、そして
外務大臣も、
総理の所信表明演説において、
外務大臣は
外交方針演説において、このことにお融れになっております。お融れになったというよりも、その演説の具体的なものとしては、一番大きくお取り上げになったというように理解しております。この演説をなさったのが九月の十六日、そして、それから約十日たった九月の二十七日にはOPECの値上げが発表になっております。そこでわずか十日くらいの間に大変大きな変化があったわけでございまして、ちょうど所信表明演説をなさった時点における
状態は一体どういう
状態であったかと申しますと、OPECにおいて値上げをするかどうかということについては、するだろうという意見もありましたし、しないんじゃないかという意見もございました。するだろうという方は、インフレが高進していって、産油国の実質収入がそのために低下してきているというようなこと、そういうことから大幅値上げを要求している国もございましたから、そういう点から言えば、上がるのじゃないかなという観測もありましたし、逆に上がらないのじゃないかという見方もございまして、これは
総理もお触れになっておりますけれども、エジプト、イスラエルの兵力の引き離しの問題、あるいは石油はだぶついてきているというような問題、あるいはサウジアラビアあたりで値上げについては慎重にやるべきだという慎重論もありましたし、イランなどは、早くやってもらわないとというので、ユーロダラーに何か借金を申し込んでいるといったような要素は、これは値上げはないのじゃないかという観測につながっておったと思います。
そこで私どもは、これは非常に重要な問題だと思って、
総理の演説や
外務大臣の演説をお聞きしたわけですが、その演説をお聞きした範囲では、どうも上がらないのじゃないかという立場をとっておられるように感じました。それはどういうことかといいますと、
総理は、かつての石油ショックのときに、アラブの国々へ、特にそういう国々とは、当時副
総理でございましたか、
三木副
総理でなければならないというのでいらっしゃった方で、こちらとのつながりは非常に深い。それからまた
外務大臣は、
外務大臣ではありますけれども、
経済企画庁長官等もなさって、
経済にも明るい方である。しかも非常に慎重な方だということを考えますと、このお二人の演説というものは大体間違いないものだと、こう受け取っておりました。そこで出てまいりましたのは、私が承った範囲では、これは値上げはないと見ておられるなということを感じたわけです。そこで、そう感じた
理由をいま
会議録から申し上げてみたいと思うのです。
三木総理はこういうふうにこの問題についてお述べになっています。「エジプトとイスラエルの間に第二次兵力引き離し協定ができ、
戦争の危険が一歩遠のきましたことは、まことに喜ばしいことであります。」その次です。「石油問題で中東と深いかかわり合いを持つ
日本にとっては、特に歓迎すべき成果であります。」ですから、これはまあうまくいきそうだ。「しかし、他方、原油価格の値上げがOPECで討議されつつあります。輸入石油への依存、エネルギー源としての石油への依存、そのいずれの度合いもきわめて高い
日本としては容易ならざる問題であります。」これはもう当然です。その後「この困難な時期に工業製品と原油価格とが果てしない値上げの追いかけっこをしていたのでは、
世界経済は不況から脱出することができません。」その次に、「私はこの機会に、OPECの産油諸国が、少なくとも、目下開催準備中の産油国と消費国との間の
会議の結論を得るまで、あるいは少なくとも
世界経済が不況から脱出する目途がつくまで値上げ問題を白紙のまま決定を延期するよう強く訴えたいのであります。」これが
総理の演説でした。ここで大変重要になってくるのは、産油国と消費国との間の
会議の結論というものに大変大きな期待をかけておられます。後の、不況が克服されるというのは、これは別に具体的に何ということありませんから、この
会議というものがポイントになってきている。
それを受けて、
宮澤外務大臣の演説はもう少しはっきりいたしております。「原油の価格がこれ以上引き上げられれば、」――「これ以上」という時点は九月十六日です。その時点を指して「これ以上」と私は受け取っております。「これ以上引き上げられれば、
世界経済の低迷
状態が長期化する恐れがあります。この点について産油国の理解を得て、産油国と消費国とが対決ではなく、あくまで対話と協調により相互の繁栄のため調和ある
解決を導き出していくべきであると考えます。」その次です。特に、こういう言葉が使ってあります。「幸い
わが国を含む
関係国の努力により、産油国との対話は近いうちに再開される見込みであります。従来から一貫して産油国との間に調和ある
関係の樹立に努力してまいりました
わが国としては、あくまでもかかる観点からこの対話に積極的に取り組んで行く所存でございます。」と、こう述べておられます。
そうすると
三木総理も、条件は、イスラエルの問題がこういう
状態になったので、いい条件だ、そこで次の
会議を目がけて呼びかけをなさった、強い訴えをなさった。それから
宮澤外務大臣は、やはりこれ以上上がったんじゃ大変だ、そこでこれはとめなければならないが、幸い
日本にはこういう条件がある、それに力を入れてやるんだということですから、特に、最初申し上げましたように、アラブと
総理との特別な御
関係、それから
外務大臣のその御判断からいって、私はこれをお聞きしたときに、ああ何か成算があるんだなということを感じたわけです。
しかし、これから十日もたたないうちに、一〇%の値上げが発表された。この間の
政府の動きも、時間がありませんから詳しく申しませんけれども、石油問題で非常に苦心しておられたのは通産大臣でした。その通産大臣の動きも、九月二十七日のOPECの値上げというようなものは全然頭にも眼中にもなくて、ただ今日逆ざやで起こっておる赤字をどうするかということから、電力会社
関係の働きかけをなさるとか、あるいは生産を抑えるということについて勧奨なさるとか、あるいはまあひょっとすると独禁法違反になりかねないようなガイドラインをつくるというようなことまでおっしゃって、とにかく現在のその時点までの赤字をどうするかで一生懸命であって、それ以後の問題については一向お触れになっていない。これは行動を通してもそういうことになっています。そうすると、一体この演説のときに、九月二十七日のOPECの値上げというものを意識しておられての演説であったのか、それはそうでなかったのか、その点をまず伺いたいと思います。