運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-10-22 第76回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十月二十二日(水曜日)委員長の指名 で、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  予算審議とその執行に関する調査小委員       倉成  正君    小山 長規君       塩谷 一夫君    竹下  登君       谷垣 專一君    谷川 和穗君       藤井 勝志君    細田 吉藏君       湊  徹郎君    小林  進君       田中 武夫君    楢崎弥之助君       林  百郎君    山田 太郎君       小平  忠君  予算審議とその執行に関する小委員長                 小山 長規君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十年十月二十二日(水曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 塩谷 一夫君    理事 竹下  登君 理事 谷川 和穗君    理事 湊  徹郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       大野 市郎君    奥野 誠亮君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    田中 龍天君       谷垣 專一君    西村 直己君       根本龍太郎君    藤井 勝志君       保利  茂君    細田 吉藏君       前田 正男君    松浦周太郎君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    岡田 春夫君       多賀谷真稔君    楯 兼次郎君       楢崎弥之助君    堀  昌雄君       湯山  勇君    田代 文久君       津金 佑近君    松本 善明君       石田幸四郎君    正木 良明君       佐々木良作君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       水口  昭君         警察庁警備局長 三井  脩君         防衛庁参事官  伊藤 圭一君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       玉木 清司君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局長    小島 英敏君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵大臣官房審         議官      松永 正直君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         国税庁次長   横井 正美君         文部省初等中等         教育局長    今村 武俊君         文部省学術国際         局長      木田  宏君         厚生大臣官房長 宮嶋  剛君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         農林大臣官房長 森  整治君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         林野庁長官   松形 祐堯君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         工業技術院長  松本 敬信君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         郵政省貯金局長 神山 文男君         労働大臣官房審         議官      細野  正君         労働省労政局長 青木勇之助君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治大臣官房審         議官      石見 隆三君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       藤井松太郎君         参  考  人         (日本銀行総裁森永貞一郎君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  板倉 譲治君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十二日  辞任         補欠選任   荒木  宏君     田代 文久君   矢野 絢也君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   石田幸四郎君     矢野 絢也君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号 )      ――――◇―――――
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。正木良明君。
  3. 正木良明

    正木委員 私は、公明党を代表して、本予算委員会総括質問をいたします。  最初に、三木総理所信表明演説に対する代表質問の際の公明党代表浅井並び福田総理大平大蔵大臣経済財政演説に対するわが党の坂井質問、いずれもこの代表質問におきまして触れましたが、一向に三木総理三木内閣の現在までの経済政策についての反省というものが見られないのは非常に残念であると思います。私は、まずこの問題について三木総理所信を伺いたいわけであります。  確かに福田総理が強調なさいますように、一時の狂乱物価時代から比べますと物価鎮静方向に向かっていると思います。しかし、事実それは物価が安定したというよりもなお一〇%台の上昇率を続けているわけでありまして、これから先副総理は相当自信を持って一けた台に、さらには預金利子程度にまでという決意をお述べになっておりますが、これは将来のことではっきりと把握はできないであろうと思います。いずれにしても一〇%程度物価値上がりがある。狂乱物価状態に比べれば鎮静方向であるかもわからないけれども、その物価上昇率はあなどりがたいものがある。さらにはその物価上昇率は、片方において非常な景気の冷え込み、深刻な不況を呼び起こした。この点について、物価政策についてはややいい方向に向かっているのかもわかりませんが、景気対策につきましては、これはもう完全に政策が手おくれであったということは私は明らかに言えると思うのであります。  私たちがこれを問題にするのは、政府が提出いたしました昭和五十年度の当初予算では、実質的な経済成長率は四・三%にいたしましょう、同時にまた勤労者所得増は大体一七%が見込まれる、そういう状態を維持しながらなおかっこの狂乱物価状態を一けた台に来年の三月三十一日、前年比でやりましょうということが一つの国民に対する公約であったし、それに対する政治責任というのは当然生じているものであろうと私は思うのです。そういう意味から言って、いまこの非常に深刻な不況、しかもこれが、インフレのときもそうでございましたが、いずれも弱い層にしわ寄せされていっているということが非常に問題であろうと私は思うのです。今度第四次景気対策をお出しになり、またそれに伴う補正予算を今国会に御提出になっていらっしゃいますけれども、しかしそういう問題を議論する前に、まず政府がそういう意味での政策責任というものを明確にしていただきたいと私は思うのであります。
  4. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 正木君も御承知のように、スタグフレーションという、インフレ不況とが同居しているという、いままでかつて経験したことのない困難な経済情勢をわれわれは迎えておるわけであります。したがって、どこの国の経済政策を見ても、インフレを抑えながら不況を克服するという、やはり二面政策をとらざるを得ない。しかしその国々の情勢によって、どちらにアクセントを置くかということは各国事情による。日本の場合は、御承知のように狂乱物価と言われるような異常な物価高である。その状態をそのまま続けていけば日本経済は破綻である。国民としても何とかやはり物価鎮静してもらいたいということが、国民のすべての願いであったことは御承知のとおりであります。したがって、三木内閣はまず物価鎮静ということにアクセントをつけたわけですね。それを両方中途半端ということになれば、いつまでたってもやはりインフレというものを抑制することはできない。どちらにこのアクセントをつけるかというと、物価アクセントをつけたわけだ。そうしてその結果、総需要抑制政策をとって、政府国民に公約した目標以下に物価鎮静することに成功しておるわけでありまして、来年度の年度末一けた台というものに向かって物価政策を推進しておるわけであります。今日、一応情勢が、正木君も御指摘のように物価鎮静の傾向にあるということを見届けて、今度は景気対策アクセントをつけてきた。いままでは物価鎮静さすといっても景気というものをある程度維持しなければなりませんから、政府は第一次、第二次、第三次と、二月、三月、六月と不況対策を講じて、ある程度のやはり需要の喚起をやったわけでございますが、何分にも日本経済始まって以来、国民総生産がマイナスということは戦後初めての経験だ。〇・六というマイナス状態。したがって、そういうことでありますから、冷え込んでおったために政府が予定しただけの景気回復というものの足取りが遅かった。そこで今度は第四次の不況対策によって、本格的な景気対策というものに乗り出していった。そういうことで、そのときどきの政策の選択というものに大きな誤りはなかった。それはどこの国でも、アメリカの場合を例にとってみましても、アメリカでも今年の第一・四半期を見てみると、GNPマイナス一一%ですからね。もうアメリカの一九二九年のパニック以来のような大きなマイナス、そういうことをアメリカ自身としても予期しなかったに違いない。そういうふうに皆それぞれの国の事情によって、インフレ不況との谷間の細い道を、経済政策というものはやはり周到な経済政策をとらなければなりませんので、非常に困難な道であるけれども、大筋において日本経済政策誤りであったとは政府は考えていないということでございます。
  5. 正木良明

    正木委員 これからの経済政策をどういうふうに展開していくかということの議論でありましたならば、それでも結構だと私は思うのです。確かにいま総理がおっしゃいましたように、四十九年度はマイナス〇・六%のマイナス成長です。そういうことはもうすでに四十九年の予算編成の時期にはやや見通しがついていた。その五十年度の予算編成期に、いわゆる四十九年に、そういう四十九年度はマイナス成長になるであろうという予測がついておった状態の中で予算編成が進められて、しかもその予算編成昭和五十年度の予算は四・三%の実質経済成長率を見込んだわけじゃありませんか。そうして所得の問題もこのようにふえてくるのだということをはっきりと見通したわけではありませんか。したがって、こういう状態が進んでくれば、要するに物価一点集中主義政策をとっていけば、確かに物価の問題は解決するかもわからないけれども、片方には完全失業者百万人、戦後最大中小企業の倒産というような、興人なんという大企業まで倒産しておりますが、こういう状態が起こってくるということは明らかにわかっているわけです。  だから、私はいまこれを初めて言うのではなくて、ことしの六月の予算委員会においてこのことはすでに警告をいたしておるわけでありまして、重大な歳入欠陥が生ずるでありましょう、景気はますます冷え込んでくるでしょう、いまからもう手おくれかもわからないけれども、少なくとも六月の時点からなだらかな景気回復のための施策というものをとっていかないと、恐らくこの経済成長率は確保できないでしょう、もしこれが冷え過ぎた状態の中で景気回復策をやっていくとするならば、これは勢いインフレに転ずる危険性がきわめて強いから、いまからおやりになったらどうですかとお尋ねしたのに対して、福田総理は、予算が始まってからまだ二カ月ですから、これから先どうなっていくかわかりません、だからいまからそれをやろうとする気持ちはありませんと言いながら、なおかつこの景気対策必要性ということを答弁の中でお認めになっています。これは六月の私の質問に対する福田総理答弁でございますが、確かに物価政策最大のものとしてやっていこうというふうにおっしゃっている。「同時にその反面におきまして、景気動きというものが非常に沈滞しておる。それは雇用の問題にも影響してくる。この問題に対しましても手は打たなければならぬかな、こういうふうに考えておるわけでありまして、一方において物価を安定させる、これは非常に大きな政府政策的責任であり、課題である。同時に、景気動きに対しまして、これが冷え過ぎないように、またこれから徐々に回復過程に転ずるようにという施策を講じてまいりたい。」とおっしゃっていますが、実際に第二次、第三次景気対策によって事実上景気回復していないのであります。  そのことは今月の二十一日から二十三日、きのうから開かれた日銀の全国支店長会議でもこのことが問題になって、いままでの景気対策では効力がなかったという結論が出されていることから見ても明らかではありませんか。そういう意味から申しまして、私はそのことをすでに警告しているにもかかわらず、その施策をとらずに、しかもこれは当初皆さん方が、三木内閣として国民に約束したいわゆる経済見通しを確保するための施策をせずに現在まで来たということについてのその責任はやはりお認めになった方がよろしかろう、私はこのように申し上げているわけです。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 先ほども正木君に答弁のときに申し上げましたごとく、やはり物価というものにアクセントをつけながら、景気のある程度の維持ということは当然に考えなければなりませんので、二月、三月、六月と、第一次、第二次、第三次の不況対策をしたわけです。しかし、日本GNPマイナスになったというような、いままでにないようなこういうときで、経済が非常に冷え込んでおっただけに、国際的にもどの国もGNPマイナスという異常な世界的な不況というものが輸出の上においても影響しますし、たとえばいろいろな資源というものに対しても、石油を初めやはり相当な値上がりもあるし、今日のような時代においては、やはりいろんな国際的な影響というものをまともに日本は受ける国でありますから、われわれが考えておったよりもそういう海外要因も加わって、そればかりではないですけれども、考えておったような足取り景気回復しなかった。したがって今度は補正予算を組んで本格的な景気対策に乗り出したということでございます。
  7. 正木良明

    正木委員 ですから私の申し上げているのは、そういう対策政策をおとりになった結果、重大な歳入欠陥が生じて、政府の従来からの見解によりますと、インフレに対して非常に危険性を持った赤字国債すらその穴埋めとして発行しなければならないような状態になってきた。一方これは国だけの問題ではなくて、地方財政にもこの問題が大きく波及をいたしまして、そうしていわゆる国税三税の減収によるところの地方交付税の減、また政府景気対策の手おくれ、不況深刻化によるところの地方税減収、こういうことでもう軒並み地方自治体は赤字団体に転落しつつある。こういう状況を考えてまいりますと、当初五十年度予算において皆さん方国民に向かって説明なさったこととは違う政策をおとりになったということについて、私は責任を感じていただかなければならぬと申しておるわけでございます。一言でいいですからおっしゃってください。
  8. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 経済見通しを立てる場合に、いろんな将来のことを見通してできるだけ正確な経済見通しを立てるということが好ましいことは言うまでもないわけでございます。しかしその間には、日本政策ばかりでなしに海外要因も加わってくるわけですから、非常に正確で経済見通しのとおりに経済運営されるということは、いままでの経験に徴してもなかなかむずかしいことなんですね。  正木君、先進工業国各国とも皆日本以上の歳入欠陥ですね。それはなぜそういうふうになるかというと、やはり世界景気状態というものも皆まともにその国の経済が受けるわけです。だから、いま計画のとおりにいかなかったということに対して、政府は今後はいろいろなことを的確に見通して、できるだけ経済見通しに適応したような経済運営をやるべきであるという御注意に対しては反省いたします。けれども、これをもう経済見通しのとおりに運営をするということは、よほどいろんな、国内ばかりの要因でもないわけでございますから、非常にむずかしいことであるということに対しては御理解を願っておきたいと思うのです。
  9. 正木良明

    正木委員 むずかしいことは認めます。しかし経済見通しというものは当たらないものであるというふうに最初から考えてかかるという考え方に私は反対ですよ。総理どうですか。(三木内閣総理大臣「それはそうだ」と呼ぶ)「それはそうだ」と言っていますから御承認でしょう。確かにむずかしいでしょう。しかし、その予算編成の当初に国民に約束した線に近づけていこうとするための政策努力は当然なされなければならぬのでありまして、それは失敗であったということです。  それともう一つ申し上げておきますが、世界各国が重大な歳入欠陥を生じているのだから、日本歳入欠陥を生じたってしようがないのだというような考え方はやめていただきたいと思いますよ。十数年前でございますが、西ドイツのエアハルト内閣が重大な歳入欠陥を生じたために瓦解しているのであります。そのことから考えれば、そこに当然の政治責任というものが生まれてしかるべきであって、そういう意味から言うと、三木総理は非常にのんきにそこにお座りになっていると言わざるを得ないのであります。  そこで福田総理にお尋ねをいたします。これに関連して、今度の第四次不況対策でございますが、物価が一応鎮静の結果が出たし、その方向が生まれたから、これからひとつ景気対策に力を入れていこうという御意向のようでございます。それは公式に発表されたことであります。そこで、昨日の本委員会質疑応答を通じて福田総理が、遊休設備があるために設備投資を新しくふやしていくということは当面不可能であろう、また輸出も非常に望みがない、したがって、やれることと言えば、日本公共投資が非常におくれている点からいって、公共投資財政的な措置を加えていくことが一番有効であろう。同時にまた、金融面においては公定歩合を引き下げていくということでコストに占めるところの利子の負担を軽くしていこう、こういうお話のようでございまして、その点は私の理解の間違いではありませんね。
  10. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御理解のとおりでございます。
  11. 正木良明

    正木委員 そこで、昨日も問題になりましたが、私は、ここで一番大きな問題として抜けているのは、非常に冷え込み過ぎた個人消費の喚気という問題、政府がこの点については何ら手を打とうといたしておりませんが、これはやはり見逃すわけにいかない政策的措置ではなかろうかと思うのです。経済演説で副総理が、もし故意に個人消費を刺激すると、また再び使い捨て時代に逆戻りするんだというふうな言い方をしていらっしゃるのですが、これはきわめて飛躍した議論であろうと思うのです。その点、こういう飛躍した間をちょっとつないでいただけませんか。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 個人消費は冷え込んでおると言うけれども、そう冷え込んではいないのです。伸び悩みという言葉を私は使っておりますが、一七、八%ぐらいふえるか、こういうふうに経済見通しでは見ておったのですが、実際どのくらいになっておるかというと、一五%まで来ているのです。輸出が非常な不振だ。そういう影響も受けて設備投資がまた沈滞している。大変なマイナスです。両方とも見通しを二割も下回る、こういうような状態でありますが、それにもかかわらず、経済成長がとにかくプラス成長の勢いにある。それはなぜか、こう言いますると、個人消費、これが一五%程度の成長をしておる、伸びを示しておる。それからもう一つは、第二次、第三次の手を打っておる。第一次は昨年度の二月打ったわけですが、これらの影響が出てまいりまして、政府財貨サービス、これがまた一五、六%ふえている。それがプラス成長の要素をなしておるというので、決して個人消費は冷え込んじゃった、こういう状態ではないのです。そういう状態個人消費をここで特に刺激する、それに期待をかけて対策をとる。たとえば減税政策を進めるというようなことをすると一体どうなってくるだろうか。私は二つのことを心配しているのです。  一つは、とにかく日本の国も、世界情勢が変わってくる、全く資源に恵まれない国といたしまして、国もあるいは企業もあるいは家庭も、みんながたたずまいを正さなきゃならぬ、そういうときに来ておる。そういうときに物をもう少し使おうじゃないか、こういう考え方、これは一体どんなものだろうか、こういうふうに思う。  それから同時にもう一つは、当面の財政政策です。これはもう大変な公債を消化しなければならぬ。消化ということは何だと言えば、これは直接公債を国民に買っていただくか、あるいは国民に金融機関に対する貯金をしてもらう。その貯金で公債を消化するというほかないのです。その貯蓄ということ、また公債を消化するということ、これを考えますと、これは消費とうらはらの問題になってくるわけなんであります。消費を刺激する、そういうようなことになったら、公債の消化と真正面から対立をする。こういうことになってくるので、私はここで日本の国が何か急がなければならぬ問題、ふだん考えておって金が調達困難だからというので差し控えておった問題とすれば住宅、あるいは住宅を中心とするところの生活環境の整備、これに問題があるのではないか、そういうとらえ方をいたしまして、あえて個人消費を刺激するという政策はとらず、住宅を中心とする生活関連公共投資をもってひとつこの景気対策を推進しよう、こういう考え方をとったわけであります。
  13. 正木良明

    正木委員 確かに副総理がおっしゃるように平均して一二%から一五%台の伸びはあるようです。ところが副総理個人消費が伸び悩んでいるのは、実は総理府の勤労者家計調査によりますと、平均以下というのは第一分位層、第二分位層、いわゆる非常に低い収入の層はぐんと落ちているのです。第三、第四が約二〇%、第五分位層、これは高額所得者になるわけですが、この辺のクラスになりますと二五・二%、むしろ消費は減らないでどんどんふえておる。しかし低収入者の消費というものは非常な伸び悩みを来たしておるということなんです。  私たちが問題にしたいのは、そういうふうにインフレのときには狂乱物価で、物価値上がりのしわ寄せを受けたのはそういう低収入の人や勤労者以下のいわゆる福祉の該当者の皆さん方であったわけです。企業であれば中小零細企業であったわけです。今度いわゆるデフレ政策、総需要抑制政策によってこの不況の中で生活が困難になっているというのもそういう弱い層の人たちであるということなんです。ですから、この問題をやはりはっきりと御認識をいただかないと、従来の高額所得者、平均以上の収入を持っておる人たちは、副総理がおっしゃるように資源が有限であるから節約しなければいかぬという考え方は全然ないのです。むしろ資源が有限であるから節約しよう、また今後、この不況の問題がどう解決されるかもわからないし、経済生活というものがどういう伸展を示すかわからない、国の社会保障というものもこの不況で従来のように伸びてくるかどうかも不安だというので、自分を守るために支出を節約して貯金をしたり、事実また、物価が上昇したために買いたいものも買えないという状況がこの低所得者層にあるわけであります。ここを、いわゆる個人消費を喚起するという対象のものにこの層をしていかなければならないのではないかということを私どもは主張をいたしておるわけです。  これは非常に素人っぽい言い方でございますけれども、節約ムードが非常に出てきたということは決して悪いとは私は思っていないのですよ。非常に結構なことである。これは副総理と同感なんです。しかしその節約ムードの中で、物価の上昇があって物が買えない、また節約のムードも出ている、だから物を買わない、物を買わなければ物は売れない、売れなければストックがたまるばかり、ましてや生産はできない、生産ができないから不況になる、会社がつぶれる、倒産する、失業、こういうことでしょう。こういう循環でしょう。そうするとやはり、そういういわゆる中小企業や零細企業が生産しておるようなものをどんどん買っていけるような低所得者層の購買力を刺激していくということがどうしても必要なんじゃないかと私は思うのです。  今回の第四次景気対策の中で抜けているこの問題、確かに副総理の御心配の点があるかもわかりません。あるかもわかりませんが、同時に、この問題を見逃して本当の景気対策になるのかどうかというと、大きな柱が一本抜けたままの景気対策でしか結果としては出てこないのではないかというふうに私は思うのです。したがって、きのうも御提案がございましたが、低所得者層の納税者、勤労者に対して減税をやっていく、こういう方法も必要なんじゃないかと私は思うのです。  かつて、こういう質問をいたしましたときに、副総理だったかどなたでありましたか、そうしても全部貯金に回ってしまうのだという言い方をなさった場合がありました。したがって、この見解をもう一度ただしておきたいのは、私が申し上げたように、その低所得者層に対していわゆる個人消費を喚起するような施策というものはどうしてもとれないのか。もう一つは、もしそれをやったとしても実際の個人消費というものは喚起されないで、その金が貯金の方へ回ってしまうという心配があると副総理は御判断になるかどうか。  この二点についてまずお答えをいただきたいと思います。
  14. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、低所得者層の問題、これを景気対策の側面からとらえるのは妥当ではないと思うのです。これは社会政策の見地からとらえるべきものである。つまり、インフレ、デフレ、そういう際には低所得者層に問題を生ずる、特にインフレの際におきましては、低所得者層に対しまして非常に甚大な打撃があるわけなんでございますが、それに対する対策は、これはもう社会政策的立場で考えなければならぬ問題です。現に政府におきましては、五十年度予算でもそういう方面に対しましては十分の配慮をいたしておるわけなんです。経済見通し物価はだんだんと落ちつき、そして来年度末におきましては一けた台になっていくという目標を立てておるわけでありまするけれども、もしその目標が狂いまして物価は逆に上がってしまったというようなことになりますれば、これはまた社会政策的見地において対策を講じなければならぬ、そういうふうに思いますが、消費刺激がいいんだという見地で、この際景気対策としてそういう低所得対策を講ずる、私はこれは考え方としてはこの際としては、どうも承服できない。  いま仮に一億円の財源がある、こういうことにすれば、景気対策という側面からすると公共事業、これをやるのが一番即効的です。減税だとかあるいは低所得者の所得をふやす、これはもう非常に間接的な景気対策でありまして、この一億円、それらの財源が一億円の効果を生ずるかというとそうにはならない、公共事業の方が的確にそういうふうになっていく。  それから、国民所得をふやしても、それは貯蓄に回って景気刺激的な効果はないんじゃないか、こういうふうに私はかつて言ったです。今日もそう思います。それはしかし、全部が全部貯蓄に回ってしまって刺激的な効果がない、こう言っておるわけじゃないのです。一億円の財源がある、それを個人消費の方の対策に回した。こういう際には一億円の効果は生じないのです。これはやはり貯蓄に回る部分が相当出てくる。ところが、公共事業の方に一億円回したということになれば、一億円の、中身のがっちりした効果が生じ、それがさらには波及効果となって、あるいは倍とかなんとかというような効果まで生ずる、こういうことになるんだということを申し上げたわけであります。
  15. 正木良明

    正木委員 副総理の前段のお考え方は、私は決して間違った考え方だとは思いません。それは一つの見識でしょう。要するに、社会保障政策景気対策のために使っちゃならぬ、こういう考え方は私は正しいと思うのです。しかし、私の言っているのはそうではなくて、社会保障政策を進めていく、その社会保障政策を進めるという一つの政策目的を達成する、この一つだけの政策目的達成ではなくて、この上に景気刺激ないしは個人消費を喚起するというその政策も一緒に同時に達成できれば、この政策の方がいいんじゃありませんか。だから私の言っているのは、たとえば基本的な問題として社会保障政策景気対策に使う、したがって、景気の悪いときには社会保障政策をやるけれども、景気がよくなったら社会保障政策をやめてしまうというような、そういう考え方で申し上げているのではないのです。社会保障政策は、おっしゃるとおり本来の姿として進めていかなければなりません、おくれているのですから。同時にその政策遂行が景気刺激という副次的な政策目的を達成できるというならば、これほどいい政策はないじゃありませんか。私はそう考えるのです。したがって、私は高額所得者に減税をしろとか、そんなことを言っているわけじゃない。低額所得者に減税をしていくことがいまの場合必要なんじゃないかということです。それは同時に景気対策にも大きな効果を生じていくことなんです。  また先ほど申し上げた問題を離れても、いま非常に落ち込み、冷え込み過ぎておるこの景気回復するために、臨時的、応急的な措置を講じていくことだって私は必要だと思うのですよ。したがって、副総理、どうですか、減税のほかに低所得者層または福祉該当者に対して何らかの個人消費力、購買力をつけていくような措置というものはとれないものでしょうか。どうでしょう。
  16. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政策全体の体系の中でどうしても社会保障的な施策をやらなければならぬという問題がありますれば、これは景気のいかんにかかわらずやらなければならぬ問題、私はそう思うのです、これはもうそういう必要があれば万難を排してやらなければならぬ、こういうふうに思います。  ただ、いま正木さんがおっしゃるのは、この際、消費を刺激する政策をとったらどうだ、こうおっしゃいますものですから、それは私は理解できない。つまり、いま日本の社会とすると、非常に大事なことはもう政府も、企業も、あるいは国民も全部が省資源、省エネルギー的な考え方、それで大転換をしなければならぬ、そういうときなんです。そのときに消費が美徳論だなんというのをまた復元をするような考え方、これで景気対策をやっていこうなんという考え方をとったら、これは日本の国の将来を大きく誤る、こういうふうに考えるのです。この際、景気対策として消費を刺激する、こういう考え方は私は理解できません。
  17. 正木良明

    正木委員 副総理、私は国民はもっと賢明だと思いますよ。だから、そういう何らかの形で給付が行われて、その給付が個人消費に回ってまた使い捨て時代が来たり、消費が美徳であるというような時代に逆戻りするということは私はないと思います。もともと国民自体の発意によって節約しなければならないというムードが起こったのは、あの石油ショックのときじゃありませんか。あの石油ショックで資源が有限であるということは、もちろんわれわれもそのことを国民に訴えたけれども、国民の方がいち早くそれを察知して、自然な形で自分たちの自主的な判断で節約ムードがずっと広がってきたのじゃありませんか。それくらい国民は賢明なのです。そういう状態になった国民の一つの偉大な見識の上に立って、しかも国民全体、非常に低所得の人たちに対して個人消費を喚起するような形の何らかの施策を講ずるということが、いま副総理がおっしゃるように、消費は美徳であるという考え方に逆戻りしたり、使い捨て時代に逆戻りするということではありません。  先ほども申し上げましたように、いま中小企業が非常に経営が困難です。大企業もそうかもわかりませんが、中小企業は深刻です。だから、中小企業の経営者の皆さん方や従業員の皆さん方と話をいたしますと、こういう融資の方法もある、ああいう融資の方法もあるというふうに説明したって納得しないのです。確かに金を貸してくれることはありがたいけれども、しかし、それはいま死にそうになっているその死ぬ時期を幾らか延ばすだけの話であって、私たちが生き返ることにはならないのですと言う。それはなぜかと言えば、結局仕事がないからだと言うのです。私はかつての高度成長時代に逆戻りするような、そういうことを申し上げているのではないのですよ。そういう追い詰められた中小企業、零細企業、またそこの従業員の心情を考えれば、少なくともいち早く個人消費という問題が政府政策によって刺激をされて、物が売れていく、それでつくっていくことができるという、それが飛躍的に大きく生産量がふえるということではありませんでしょうけれども、そういうことがいま中小零細企業にとっても一番必要なことだから、私は、この個人消費の問題を見落としてはいけないのではないですかとこう申し上げているのです。  建設大臣、今度第四次景気対策で、住宅金融公庫七万戸、この融資の枠をふやします。従来の残りを入れますと、大体十万戸近い、こういうふうに言われておるわけです。この住宅金融公庫の申し込み、今度は先着順で締め切りをせずに抽せんにするということですから、この申込期間は手がつかないでしょう。そうして審査が行われます。そうして契約が行われます。契約が行われると、建設業者と個人は契約をします。着工します。そうして、工事が進んで、要するにむね上げが済まないと金融公庫から六〇%の金は出ないのです。そうして完成して、これが順当にいってようやく残りの四〇%のお金が出るのです。  副総理がおっしゃる景気刺激のために公共事業が必要だ、私は反対ではありません。大賛成です。しかしこのタイムラグ、時間的なずれというものを考えてまいりますと、本当に金が国民の手に渡って、建設業者の手に渡って、また付帯工事業者の手に渡って、また畳だとかいろいろあるでしょう、そこからまたさらに波及効果を及ぼして、そうしてほかの一般の中小企業までその金がいくのにどれだけ期間がかかると思いますか。そんなことで第四次景気対策が本当に、いま目の先に迫ってもう倒産の脅威にさらされておる中小企業や何かに、それは先行きいつかは回ってくるだろうという希望は持てたとしても、いま直ちに自分たちが蘇生する、生き返るための施策にはならぬのです。どうですか、建設大臣。
  18. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 お答えをいたします。  住宅金融公庫は、上期で七万戸やるのでしたが、申し込みが一回に十三万戸も来ましたものですから、下期を五万戸繰り上げて、上期でやるようにしておりました。それが、やはり資金手当てが若干決まらなかったがためにおくれておりましたけれども、今度の補正で二千六百億円という財投ができますので、そういう意味で、上期のものはほとんど貸し付けができると思っております。  確かに、お説のように、実際の貸し付けは、むね上げをして六〇%、完成後四〇%になっておりますから、下期の十万戸今度貸し付けを予定したのですが、これはこの月末までには全部、一切の手続が終わってしまいます。だから、私どもは、資金の用意は十分にできましたから、十一月には、いつ、どういう時期でも希望どおりに貸し付けできる体制をつくっております。  ただ、それかといって、やはりむね上げができなければ無効になるではないかというお説はごもっともでございますけれども、実は住宅金融公庫だけの資金で住宅を建てるのじゃないので、これは自己資金と一緒にして建つわけでありますから、住宅金融公庫からいつでも貸しますという確約ができれば自己資金で建設は始まっていくわけでありまして、そういう意味から考えますと、景気浮揚は必ずしも先生のおっしゃるようなことではない、私どもは、相当推進できる、こういう確信を持っておるわけであります。
  19. 正木良明

    正木委員 仮谷さん、それはきわめて理想的にいっての話なんです。ところが実際は違うのです。  もうしばしば新聞の投書欄に出てまいりますのは、住宅金融公庫から金が出ないために、大工さんがぶらぶらして、金の見通しがつかないから工事が進まぬ、金がきちんと出る方の工事を先にして、自分の家はなかなか進まない、金融公庫の金が遅いという声が非常に高い。もうすでに新しい家の通学区域へ自分の子供の小学校を変えたのに、まだ家が建たないというような、そういう訴えというものが非常にたくさんあるのですよ。  私は、この問題はまた後ほど公共住宅問題でやりますので、これで一応打ち切りますが、このように、副総理、どう考えたって、いま非常に抽象的なお答えをなさいましたけれども、来年の春から夏ごろでないとその金は実際潤ってくるような時期にはならないと私は思いますね。この第四次対策の方ですよ。そう考えてくると、どうしてもいますぐ、もうこの年末を控えて救援の手を待っておる、仕事が欲しい仕事が欲しいと言っておる中小企業、零細企業に対して、やはりその仕事をふやしていくためには、物が売れていくという形を、非常に緩やかな形でもつくっていかなければならぬのじゃないかと私は思うのです。そのための個人消費の刺激というものについて、減税はもう財政的にはできません。しても貯金に回ることが非常に多い。それは貯金に回ることは決して悪いことじゃありませんけれども、多い。だから実際には個人消費という面から見ると非常に効果が薄いというふうにお考えになっているかわかりませんが、副総理、これは厚生大臣も関係があるかわかりませんが、これはやり方として私は一〇〇%いいことであるかどうかわからぬのですが、国でギフトチェックみたいなクーポン券を出しませんか。そうして、私の考えているのは、対象としては生活保護世帯、これは四十九年九月におけるところの世帯数が六十七万二千七百五十一世帯あります。沖繩県を含めて六十八万三千三百十七世帯、そのほか各種福祉年金の受給者、老齢福祉年金四百五万四千百三十五人、障害福祉年金五十万七千五百六人、母子福祉年金七千七百三十九人、準母子福祉年金七十人、老齢特別給付金を給付している方々が五十六万一千人、合計いたしますと五百十三万四百五十人、これに対して先ほど申し上げた生活保護世帯を加えますと、六百六十五万七千六百四十七人なんですが、金額の判断はしていただいていいと思いますが、たとえばいまから六カ月間、毎月千円ずつ、私はお金で渡すことが一番いいと思いますけれども、もしお金で渡して貯金の方に回ってしまうと、景気刺激の、要するに個人消費喚起の効果が上がらないというなら、クーポン券で渡して、これでお好きなものをお買いになってください、そして商店は指定の銀行とか郵便局へそのクーポン券を持っていけばお金にかわる、こういう形で、一時的にしろ個人消費を喚起するというような方向をつけてみませんか。どうでしょう。
  20. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 おっしゃる気持ちはわかるのですよ。わかるのだけれども、景気対策として消費を刺激しなさい、こういうことが正木さんの考え方の中心にある、それが私は理解できないと、こう申し上げておるのです。いま同じ一億円の財源があるということになれば、これは公共事業をやる、起こす、これが景気には直結する問題でありまして、回りくどい個人消費なんという道をとる必要はないのです。しかし、もしこのインフレで、あるいはデフレで低所得者が非常に弱っておるというならば、これは社会政策的な見地でそういう政策をとったらいい、考えたらいい、こういうふうに思うのです。  まあそういう意味で、クーポン制の問題ですが、これはいま決められておるたとえば生活保護費の中でクーポンに一部を変えるということならば、一つの考え方――これは手続が非常にめんどうになりますので、その利害得失につきましては問題があると思います。思いますが、一つの考え方でありましょう。しかし、新たに、まあお使いください、消費を刺激するのです、景気対策のために必要なんですからこのクーポンをお配りいたしますという、そういう考え方、これはまかり間違えますと、やはり私は消費美徳論につながっていく危険がある、こういうふうに考えます。
  21. 正木良明

    正木委員 私は、副総理のお考えの中に、やはり個人消費はそんなに冷え過ぎた状態ではないというお考えがあるんだろうと思うんですね。それは先ほど申し上げたように、繰り返すようになりますが、確かに伸びはあるんです。伸びはあるんですが、その伸びている層と伸びない層とに大きく分かれておる状態があるということなんですね。ですから、もし副総理がそういうふうにおっしゃるならば、それじゃもう飛躍的にどんどんどんどんいわゆる高度成長時代と大して変わらない形で消費が伸びておるようないわゆる高額所得者というものの、これはいわゆる副総理の論理で言うならば、この方には消費は美徳であり、使い捨てをそのまま見逃しているということになってしまうわけです。私は、無理にそっちへ議論を持っていきたくありませんが、だから私が言っていることは、そういう低い層の人たちがいま物も買えない。物も買えないから、小売店や何かも非常に困っている。それを製造している中小企業も困っている。そういうところに刺激をしていくということがどうしてもこの景気対策の中で抜けてはならない柱だと思うんです。だから私は、公共事業を推進されることを決して否定しているわけではありません。特に、国民生活関連の公共事業を推進されることは、非常に適策であると、そのように申し上げているわけです。それは推進しなければならない。しかし、同時にそういう方面も、抜けているところを埋めなければならないのじゃないですか。要するに、個人消費が全然顧みられていないという問題について、これは政策的にお考えにならなければならないのじゃないですかと申し上げているわけです。個人消費一点張りでやっていけというようなことを言っているわけじゃないのです。中心は、国民生活関連の公共事業でしょう。同時に、そういう形でやはり非常にこの物価高の中で、不況の中で困っておる人たちに対する施策というものも同時に考えていくことが必要じゃありませんか。それが同時に個人消費につながれば、いい政策じゃありませんかと申し上げているわけなんです。もう一度、それじゃ。
  22. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 繰り返すようになりますが、もしこのインフレだとかあるいはデフレによって低所得者階層に困った人が出てくる、こういうことであれば、これは社会政策的な見地で、そういう対策をとるべきである、こういうふうに思うんです。いま消費を刺激するのが景気対策としていいんだという考え方から出発しまして、その低所得者層に、ひとつ少しお使いくださいという考え方をとりますと、非常に危険なことになるんじゃないかと思うんです。お使いください、これが景気を誘導することになるんですよ、こういうようなことになり、これはつまり消費を刺激して景気を立て直すという議論になってくるわけであります。ですから、私どもといたしまして、もしこういう経済変動の中で困った人がある、それに対しましては、もしそういう事態があるとするなら、これはそういう立場からこの対策をとるにやぶさかではありません。ありませんけれども、景気対策としてそういう見地からこの際そういう考え方を取り入れるということ、これは私は相当大きな問題を将来に対して投げかけることになるんじゃないか、こういうことを申し上げておるわけであります。
  23. 正木良明

    正木委員 同じことを厚生大臣どうですか。
  24. 田中正巳

    田中国務大臣 社会保障水準の向上は、私どもの最も願うところであります。ただいまの補正予算等における景気浮揚の施策は、要するに政府財貨サービス、なかんずく公共投資を中心にする乗数効果をねらっているわけでございまして、したがいまして、ことに財政がこういう時代でございますので、一般会計予算の四分の一以上を公債に仰ぐというこの状況のときに、資金の効率的運用を図らねばならぬということでございますので、したがってそういう手法にのっとっているものと思います。  ところで、社会保障政策には経済の好不況によってこれを左右し得るものと、し得ないものとがあるというふうに私は考えております。したがいまして、たとえば今日のような状況下において一時的にこれを向上せしめても後日に累を及ぼさないようなものについては、これを施策を向上させることについてはやぶさかではございません。その意味においては、世帯更正資金並びに母子福祉貸付金については、この補正予算ではございませんが、予備費をもって合計六億円程度の追加計上をいたしていただいたわけでございまして、これならば私は後日にいろいろと累を及ぼすことはないと思うのであります。  いま一時的に経済不況であるから、あるいは経済の状況によっていまのようなクーポン券を出すということになりますと、これは一時的な生活保護基準のアップであったり、あるいはまた福祉年金のアップということになりますと、この社会保障政策というものは、一遍歩を進めますとこれが後退ができないというふうな特殊な事情もございますので、こうしたことについては、社会保障制度そのものの特質とも絡み合いまして、慎重にならざるを得ないということだろうと思います。  一般的には、今年度の経済見通しにおける個人消費の伸びというものをオーバーするような傾向が出てきた場合は、われわれはこうしたものについて改訂を加えることについては、大いに積極的にやらねばならぬというふうに認識をいたしております。
  25. 正木良明

    正木委員 まだ副総理は私の言っていることを理解しているようですけれども、厚生大臣は理解していらっしゃらないように思います。私はこれは恒常的な形でやれと言っているのじゃありませんから、当然増経費に含まれるようなものではないのです。要するに、いま直ちに、第四次景気対策が何らかの形で影響が出てくるという時期まで、個人消費の問題を喚起して、景気回復の形というものをとってはどうかという考え方でありますから、六カ月なら六カ月という形でいいわけなんです。  まあこれは議論をいたしましても仕方がありませんし、ちょうど時間も迫ってまいりましたし、この後いろいろお尋ねしたいことは、午後に質問をいたしたいと思います。
  26. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 午後一時より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  27. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正木良明君。
  28. 正木良明

    正木委員 午後、冒頭に総理にお伺いをいたします。  昨日の本委員会における質疑にもございましたが、三木総理が、総理におなりになる前からも非常な熱意を燃やされたし、同時にまた、三木内閣を組閣なさって、総理大臣の地位におつきになってからも非常に努力を傾注された独禁法の改正案でございますが、これは新聞の表現によりますと、一たんは核防条約とともに前国会においては成立の見込みがなかったのを、三木総理がいわゆる人工呼吸をして生き返らせた。その成果が、実はこういう非常に問題を含んだ法律の改正であるにもかかわらず、全党一致で衆議院を通過いたしました。われわれは、参議院のあの状態の中で廃案になってしまったけれども、この臨時国会では必ず再提出されるものであるというふうに期待をいたしておりましたし、それは当然、常識的に考えてあたりまえのことでございますから、期待をいたしておったわけでございますが、提出されなかった。しかも、きのうの答弁では本国会に再提出する御意向がないようでありますが、これを再確認の意味で、この国会にはどうしても再提出しないのかどうか、まずお答えいただきたいと思います。
  29. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 昨日も堀君の御質問に対して答えましたごとく、通常国会を目標にして、自民党で調整をいたしておるわけでございます。
  30. 正木良明

    正木委員 通常国会をめどにというと、次の国会をめどに出すということでございますが、これは必ず出すと理解してよろしいですか。
  31. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 自民党でいま調整中でございますから、私は、自由経済体制を維持していぐために公正なルールが要るという考えは変えておりませんから、そういう運びに持っていきたいと考えております。
  32. 正木良明

    正木委員 これはまたきのうのように平行線になると思いますので、これ以上あれいたしませんが、問題が問題でございますから、ぜひ次期国会には出していただきたいと思います。  さて、それと同時に、私は非常に危惧をいたしておりますのは、自民党内で公正取引委員会の改組について相当な議論が交わされ、しかも、議論方向は改組の方向であるというふうに仄聞をいたしておりますが、この点はいかがでございますか。
  33. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この機会に、経済の基本法でありますから、あらゆる角度から検討をいたそうということで、いろいろな議論は出るでしょうけれども、こうこう、こういう方向で動いておるというところまで議論はいってないわけでございます。
  34. 正木良明

    正木委員 そうはおっしゃいますが、公正取引委員会の改組について自民党内で議論が進められているのは周知の事実であります。総理は、私がことしの二月三日の本予算委員会質問をいたしましたときに、公正取引委員会の機能を弱化させる、弱くするようなことは考えていない、こういうふうにおっしゃいましたし、また五月八日のわが党の近江議員の、将来にわたって公正取引委員会の職権行使の独立性を守るかという質問に対しまして、「公取委員会の職権行使の独立性は非常に重要であり、尊重すべきものと考えており、侵す考えは持っておりません。」このように言明をされております。したがいまして、この予算委員会でも、総理はここで、将来ともに公正取引委員会の改組はしない、このようにお約束をいただけまずか。
  35. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま、この前の国会で私が答弁をいたしました考え方は、私は変わっていない。
  36. 正木良明

    正木委員 そうすると、独禁法の二十八条で「公正取引委員会委員長及び委員は、独立してその職権を行う。」このようになっておりますが、この公正取引委員会委員長国務大臣をもって充てるとか、ないしは、公正取引委員会に対して内閣の、すなわち総理大臣の指揮監督下に置く、要するに指揮監督権を総理大臣に与える、このようなことが具体的に検討の事項になっておるというふうに私どもは承知をいたしておりますが、その点につきましても、従来の公正取引委員会の機能というものを損なわない、弱くしないということをお約束いただけますか。
  37. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 議論はいろいろあるでしょうけれども、公取委としての機能を、これを骨抜きに、弱体化するような考えは持っておりません。
  38. 正木良明

    正木委員 しつこいようですが、もう一度言葉をかえて申し上げます。これは総理のお言葉でございますが、公正取引委員会の職権行使の独立性を侵さない、現状のままの公正取引委員会の職権行使の独立性を尊重する、この点についてもう一度お願いをいたします。
  39. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その考え方は変わっておりません。
  40. 正木良明

    正木委員 結構でした。  それでは次の質問に移りたいと存じます。  午前中の質問にも少し関連がございますが、公共事業中心主義で今次の第四次景気対策が組まれておりますし、補正予算の内容もそのようになっておるわけでございます。このことは、午前中に申し上げましたように、非常に結構なことであります。ただ、私は、いろいろの公共事業がございますが、また必要でない公共事業というのはないだろうと思いますが、そこにはおのずから、その時代時代におけるところの優先順位というものがあってしかるべきであると思います。そういう意味からいって、いま非常におくれておる社会資本、公共投資をふやしていくという意味からいって、しかもそれが、おくれているのが、国民生活関連の公共事業であります、いわゆる公共住宅であるとか、学校であるとか下水道であるとか、保育所であるとかいわゆる福祉施設であるとか、こういうものをまず充実していく、これが同時に景気対策の成果もあわせ上げていくということが非常に重要なことであろうと思います。  そういう意味から申しまして、今回七万戸の住宅金融公庫枠の増加をいたしました。これは私は必ずしも悪いものであるとは思っておりませんが、しかし実際問題として、午前中も申し上げましたように、三百万世帯と言われるところの住宅困窮者のほとんどは、いわゆる自分で家の建てられない人であります。仮にこれが住宅金融公庫から融資を受けられるとしても建てられない。土地がない、銀行ローンも借りられない、そういう状況があるわけであります。したがって、こういうものについては住宅金融公庫の融資も当然行われないわけでありますから、そういうことのできない人たちのためには、どうしても公共住宅としての賃貸住宅中心の施策というものも考えていかなければなりません。これは非常に重要な施策であると思います。ところが、今回の第四次景気対策の中には、この公共住宅、いわゆる地方公共団体が事業主体となって賃貸住宅を建てていくという従来の方式が盛り込まれておりません。しかも、聞くところによると、その進捗率が非常に悪い、このようにも言われておりますが、この点について建設大臣、今回のこの景気対策の中に入らなかったこと、同時にまた今後の賃貸住宅、公共住宅の建設の方針について御説明をいただきたいと思います。
  41. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 今回の景気対策の補正の中に賃貸住宅等が入っていないという御意見でありますが、確かに住宅金融公庫二千六百億は公庫融資として入っております。ただ、日本住宅公団の公団住宅では八百五十億の財投が認められまして、これには賃貸も含まれておることは申し上げるまでもありません。  ただ、少し御説明をさせていただきますと、確かに金融公庫融資の方は非常に需要が旺盛でありますけれども、賃貸住宅の面においては、公的な住宅の面においては進度が非常におくれていることはおっしゃるとおりであります。少し御説明しますと、二期計画も本年で終わりでありますが、公団住宅はこの二期計画を終わって六三・五%が建つ予定であります。公営住宅が七八・七%、こういうふうなことになっております。ただ、公営住宅は大体県や市町村がやっておるわけでありまして、これは一〇〇%二期計画で達成をする県が二十七県ほどあります。それから八〇%以上の県も十二県ほどございますが、ただ東京都の三七%を最低にいたしまして、特に大都市のある府県におきましては非常に進度がおくれておる。そういったことで総体的な平均が七八・七%になったのであります。  この原因は、用地の問題とか建築費の問題とか、関連公共施設の問題とか地方財政の問題とか、いろいろ問題があることは御承知のとおりでありまして、そういう問題を解決つけて公営住宅等を推進していくために、私どもは実はいま腐心をいたしておるわけであります。  その具体的な方法といたしましては、たとえば建築費の問題については、できるだけ単価を実際に応じたものにするということで、今年二回ほど補正をやりまして、これは大体地方の市町村の期待に沿見るようにしたと思っておりますし、それから市町村の公営住宅に関連した公共施設、これが大変な負担になるわけでありまして、これにつきましては全額特別起債を設けて、しかも利子は国で全部補給をするというふうな問題、あるいは市町村の公営住宅ができない場合に県がこれを立てかえをしてやるという制度確立の問題、こういった問題では全力を挙げていま努力をし、だんだんと推進ができておると思っておりますし、公営住宅を進めていくために明年度はさらに、たとえば再開発とか区画整理事業等をやりまして、それによってできる住宅はこれはひとつ買い入れ方式によりまして、どっちかと言えば新しい供給方式を考えていきたい、こういうように思っておりますし、関連公共関係の仕事につきましても、事業の枠の制度をさらに拡大して努力していきたいと思います。また、公団住宅等におきましても、特に地方の団体が、非常に団地お断りといったような問題が出てきております。その大きな原因は、関連公共施設等に特別な負担が要るからでありまして、そういうようなものを公団が立てかえしていく場合においては、大きな規模のものについては十年間無利息で行って、そうして十年後に支払いをしてもらうといったような特別の対策も立てながらいま努力をいたしておるわけであります。  そういうふうなことで、二期計画自体が一〇〇%とても及ばないような実績の状態でありますから、いまこれを不況対策としてすぐ持っていきましても、なかなか地方団体が受け入れてすぐやってもらえるようにはならないと思いまして、実は日本住宅公団でやれるものだけ八百五十億の枠を特別に組んだ、こういうようなわけでありまして、あわせて公庫融資二千六百億というのが今度の不況対策における補正の現況でございます。御理解をいただきたいと存じます。
  42. 正木良明

    正木委員 これは建設大臣、熱意の問題だと私は思うのです。確かにおっしゃるように、地方自治体にはある意味での公共住宅建設についての拒否反応が起こりつつあります。それは、いま御指摘がありましたように、土地の問題が一つ重大な問題です。もう一つは、おっしゃったように関連公共施設の建設の問題がありましょう。同時にまた、行政コストが高くなる。要するに担税能力に比較しての行政のコストが高くつくという問題もありましょう。それぞれの問題があるので、だから無理なのだということで放置できる問題ではないのです。  一つは土地の問題でございますが、考え方によると、国が土地の手当てができない、地方自治体が土地の手当てのできないようなものに、国民が個人で土地の手当てのできるわけのものではないのです、本来。同時にまた、今度は幾らでも申し込みがありますということでございますが、この住宅金融公庫の土地の問題については、このまま推移をいたしますと、これはもう国土庁長官がまたねじりはち巻きで地価の鎮静を図らなければならないような事態が起こる可能性がきわめて強いわけであります。にもかかわらず、こういう点について格別の配意が行われていないというところに私は大きな問題があると思うのです。  土地の問題から申しますと、これは後ほどまた建設大臣に地方財政問題に関連して聞こうと思っておりましたが、大変な公共用地の先行取得分というものが、地方自治体や地方開発公社にもあるわけです。これは全部が全部、それが住宅適地であるかどうかということについては問題がありましょうが、この問題は検討の対象にしているのかどうか。  また、私たちが調べますと、大企業が保有しておるところの土地というものも非常にたくさんありますし、きのうもちょっと触れられましたけれども、私たちが今度私鉄の運賃値上げに絡んで調べますと、いわゆる大手民間鉄道の商品土地の保有量というものも一万九千六百五十八ヘクタール、これは市街化区域、市街化調整区域を含めてでございますが、要するに商品土地でございますから、民間鉄道会社がどうしても必要な土地ではないわけですね。これはいわゆる、言葉を悪く言えば買い占めの土地であるし、よく言えば民鉄の先行取得の土地であるわけなんですが、こういうものもある。こういうものもやはりぼくは検討の対象にしなければならぬのではないかと思うのです。  それと、関連公共施設に非常な経費がかかるというお話でございますが、関連公共施設に過大の経費がかかるということは事実でありましょうが、関連公共施設が地方自治体の大きな経費増につながっていくという問題は、これをなくそうとすればいわゆる住宅は建てられないということになるのです。今回七万戸の公庫住宅にしろ、事実上家が建つとするならば、そこに人間が入るのでありまして、その人間はやはり関連の公共施設を利用するわけでありますから、どうしても関連公共施設の需要というものは当然に起こってくるに違いありませんし、また住宅金融公庫で家をお建てになる方々も、自分の土地というものはそんなにいわゆる都市の中にあるのではないでしょう。恐らくは都市の周辺の、郊外と言われるようなところに土地を求めての住宅でございますから、これはある意味においては集中するわけでありまして、そういう意味から考えると、関連公共施設というものも当然に公庫住宅であっても必要であるということになるわけです。  同時にまた、地方自治体の行政コストの問題にいたしましても、その問題が必ず付随して起こってくるのであって、問題のネックになるのは、要するに超過負担と言われる地方自治体に対する財政的しわ寄せをどうしてなくしていくか。もう一つは、その土地の手当てというものについて建設省がどういうふうに指導し、どういうふうに便宜を与えていくかということの二点に尽きると私は思うのです、大まかに言って。  こういう問題は熱意の問題でありまして、これができないから全部国民個人におっかぶせて住宅を建てさせるのであるというようなやり方を続けている限り、本当の住宅困窮者というものは、しかも低所得の住宅困窮者というものは救われることがないということになるのでありまして、この点についてどうかひとつ真剣な御検討をお願いしたいと思うのです。
  43. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 住宅問題についての正木先生の御意見、ごもっともであります。私どもも実はそれが一番頭痛の種でありまして、金融公庫の融資は、率直に申し上げまして、土地の準備もできて、自己負担のある程度余裕もあって、そして金融公庫の金を貸してくれ、貸したら家が建つと、こういうことで、金を貸す確約をすればある程度進んでいくと思うのですけれども、一番問題は、個人の持ち家よりもむしろ所得の低い人々のためのいわゆる賃貸住宅、公営住宅、これが必要なことは当然であります。私も建設大臣を拝命してから一番住宅問題で頭を悩ましているのはこの問題でありまして、全力を挙げて実はやっておりますが、前段申し上げましたようないろいろな障害がありまして、問題は、その障害を一つ一つ、財政やあるいは政治の面で解決をして、住宅が建てやすいようにするということが前提条件であります。そういう面で、先ほども具体的に少し申し上げたように、努力を実はいたしておるわけであります。  一番大きな問題は、やはりおっしゃるとおり用地、関連公共の問題。特に関連公共の問題は地方公共団体に非常な財政負担をかけるわけでありまして、それで団地お断りといったようなことが出てくるのが大きな障害の一つになっておるわけでありますから、そういう面については、先ほど申し上げましたような特別起債といったようなもの、あるいは補助金率の引き上げの問題、あるいは公共施設関連のいろいろの適用範囲の拡大といったものも、いろいろ現地に即して努力をいたしておるわけであります。たまたま第三期住宅計画が明年度から発足をすることになっており、住宅宅地審議会からも貴重な答申をいただいておりますから、そういうものも参考にしながらいま第三期計画を立てておるわけでありまして、全力を挙げて努力をいたしてまいりたいと思っておりまして、決してこういうものを民間に任してわれわれは素知らぬ顔をしておるというわけじゃありません。私どもは一生懸命この問題と取り組んでいきたいと思っておりますから、今後の御協力もいただきたいと存じます。
  44. 正木良明

    正木委員 大蔵大臣、お聞きのように、建設大臣は一生懸命そういう公共住宅の建設に努力を傾けていきたい、こう言っているわけですね。私とのやりとりの中でおわかりのように、ネックになっておるのは何かというとやはり金です。この問題をやはり大蔵省は、住宅対策の非常に重要な政策であるということからかんがみて、十分な配慮をお願いしたいわけですが、どうですか。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど正木さんおっしゃったように、公共投資時代の変化に応じまして重点の置き方が漸次変わってしかるべきであると仰せになりましたが、そのとおりでございまして、われわれは、公共投資の中身を見ていただきましてもへ漸次力点が生活関連施設の方に移行いたしておりますことは、予算面におきましても財投計画の面におきましても歴然たる傾向がお読み取りいただけると思うのでございます。ことしの予算で申しましても、公共事業全体は、たびたび申し上げますように、総需要抑制のために、物価が上がりますけれども、ノミナルな予算でも増額をいたしてないわけでございますが、住宅政策につきましては、公共住宅におきましても、また住宅金融公庫に対する貸し付けにいたしましても、相当額ふやしてまいったわけでございます。今度の補正に当たりまして、公共住宅の方につきましては、先ほど仮谷大臣がおっしゃったように、住宅公団に対する財投八百五十億を追加いたしたわけでございますが、主として財投の力点は住宅金融公庫に対する貸し付けに置きましたことは御案内のとおりでございます。したがって、われわれは既定計画の遂行におきましても、また今次の景気不況対策の立案とその遂行におきましても、仰せのようなラインで生活関連施設、とりわけ住宅につきましては特に配慮いたしておるつもりでございます。  これに関連いたしまして、土地の取得の問題その他関連した隘路がありますことは承知いたしておるわけでございまして、こういう計画が順便に消化できますように、私どもといたしましては資金の充当につきまして周到な配慮を加えてまいっておるつもりでございますが、なお行き届かないところがございますならば、その点は十分の手当てをしてまいりまして、既定の計画は円滑に消化してまいって期待にこたえなければならぬと考えております。
  46. 正木良明

    正木委員 そんなことはできませんという答えは出せそうにもないわけなんで、それは当然そういうふうにお答えになるでしょう。これはせっかく努力をしてください。  もう時間も余りありませんので、預金金利の問題について、特に貯金金利の問題について、郵政大臣、お願いいたします。  もう多くのことを申し上げるまでもなく、今度の公定歩合の引き下げに伴って預金金利が引き下げられる、それに伴って、いわゆる庶民の貯蓄であると言われておる郵便貯金の金利も引き下げられるらしい。こうなってまいりますと、最初この問題が提起されたときに、郵政省が猛然として、貯金金利を引き下げることについて反対の態度をおとりになった、これは本当に郵政省こそ、郵便料金の値上げを除けば、国民の味方であると私は思ったわけです。ところが、どういう風の吹き回しか、伝えられるところによると、大蔵省の非常に大きな圧力によってらしいですが、やはり市中銀行の金利の引き下げと同調するというような情勢になったようでございますが、当時反対をなさいましたね。このことは、一つ一つ聞くと明らかになるわけなんですが、余りそれをやっていると時間がありませんので、郵政省の見解として貯金局長が九月十八日、自民党の逓信部会において、この貯金金利の引き下げについての見解というものを発表なさっておりますが、その当時の反対意見の尤たるものでございますが、郵政大臣からそれを承りたい。
  47. 村上勇

    ○村上国務大臣 お答えいたします。  第四次不況対策の一環として金利水準の引き下げについて強く要請されたことは御承知のとおりであります。すでにそのことは決定されまして、御承知のように郵便貯金は国民大衆の零細な貯蓄の集積でありますだけに、私どもは、素直にこれについていくわけにいかないというので極力反対してまいったのであります。そのときの気持ちと今日、私は何も変わっておりません。ただ、これは非常に慎重に扱う必要があります。そのために郵政審議会に諮問をいたしたのであります。その郵政審議会の答申を待って、あくまでもこれらの大衆の零細貯蓄を守る意味におきましてでき得る限りの配意をしてまいりたい、かように思っております。
  48. 正木良明

    正木委員 いまもそのお気持ちは変わっていない、しかし万やむを得ない、こういうことですね。  それで、非常にりっぱなことをおっしゃっているのです、郵政省の見解は。これを、御記憶になっていると思いますが、ほかの閣僚の方々にも聞いていただきましょう。「預金金利について」「預金金利のあり方が、国民生活に重大な影響を及ぼすものであることにかんがみ、その決定に当っては、広く各層の意見を取り入れ、慎重な審議を要するが、特に、郵便貯金の金利については、この貯金に内在する特性から、次の各項に十分配意し、国政に対する国民の信頼を確保する必要がある。」次に幾つかの項目がございますが、この項目に十分配意して、国政に対する国民の信頼を確保する必要がある。  第一項ですが、「郵便貯金の利率は、郵便貯金法第十二条により、郵便貯金が国民大衆の利用に供される少額貯蓄の手段であるという特質にかんがみ、預金者の利益を増進し、貯蓄の増強に資するよう十分考慮を払うことを第一義とし、あわせて、一般の金融機関の利率についても配意して定めるものとしており、民間金融機関の貸出金利や、景気対策とすべての点について歩調を合わせるしくみにはなっていない。」郵政省の見解ですよ。いいですか。「民間金融機関の貸出金利や、景気対策とすべての点について歩調を合わせるしくみにはなっていない。」こうお思いになっていますね。――うなずいていらっしゃいますからお思いになっているんでしょう。  第二項「郵便貯金は、その九十九・二パーセントは個人性貯蓄であって、国民の約六十パーセントに利用され、総額二十一兆円を超える預金量を有している。このように多人数、かつ多額の個人性預金を預っている郵便貯金金利の決定に当っては、郵便貯金預金者の利益を損うことのないよう十分な配意と措置を講じる必要がある。」御記憶ですね。――うなずいていらっしゃいます。  第三項「財政金融面からの各種景気刺激方策が考えられるが、預貯金、特に個人性貯蓄の金利引下げ策は、最後に取り上げるべき政策であり、現時点における政策としては必ずしも適切とは言い難い。」御記憶ありますね。――うなずいていらっしゃいます。  第四項「消費者物価上昇率が預金金利を上回つている現在、」目減り問題です。「郵便貯金金利の無条件の引下げは、本来、資産形成を促進するための預貯金の実質的な減価をもたらすのであり、その存在意義と矛盾するものであって、現時点において取るべき措置ではないと考える。」御記憶ありますね。――うなずいていらっしゃいます。  第五項「郵便貯金の預金者は、貸出金利の引下げによる直接の恩恵に浴せず、もつぱら預金金利引下げの影響のみを受けるものである。」うなずいていらっしゃいます。  第六「なお、貸出金利の引下げが景気刺激にどの程度の効果があるのか、金融機関は預金金利を引き下げなければ貸出金利を下げることができない状況か、又、個人の零細預金を金利引下げの対象から外すことはできないか、その方法は検討されたのか等、預金者の疑問に答えるための検討が必要である。」こうおっしゃっています。にもかかわらず、郵政大臣は、どこの圧力か知りませんけれども、郵便貯金金利の引き下げに同意をなさっている。せざるを得ない立場に追い込まれていると言い直してもよろしい。この心境変化の経過を聞かしてください。
  49. 村上勇

    ○村上国務大臣 正木さんのいま御指摘になった点は、私もそう考えてまいったのであります。しかし、先ほど申しましたように、第四次不況対策の一環としてどうしても金利体系を変えなけりゃならぬという政府全体の意向のために、私自身まず思案に余ったと申しますか、郵政審議会にこれを諮問して、そうしてその郵政審議会の結論を待って慎重に考えていきたい、かようなことでございます。
  50. 正木良明

    正木委員 郵政大臣、私は、この郵便貯金金利の引き下げに反対をなさるこの幾つかの項目を拝見いたしまして、私たちの言いたいこと、ひいては郵便貯金に零細な貯蓄を積み重ねて、そうして前途の生活不安等に備えていこうとする人たちの気持ちが代弁されていると思います。そういう意味で私は実にみごとだと思うのです。そういう意味からいって、結果的に、一応反対のアドバルーンだけ上げて反対意思は表明したけれども、結局はだめになってしまったというふうに国民に受け取られることを私は非常に恐れるのです。恐らく、この見解の中でも国政に対する国民の信頼を確保する必要があるから下げてはいかぬのだと言っておりますが、それは同時に、これだけのりっぱな反対の理由があって国民の多くを守ろうとした郵政大臣が、もろくも閣内においていろいろの重圧に耐えかねて、郵便貯金金利の引き下げに同調せざるを得なかったというあなたの個人的心情はよくわかりますよ。同情に値するものがあると思いますが、やはりこれは抵抗しなければならない問題じゃなかったのでしょうか。  大蔵大臣がどうも圧力をかけたといううわさでございますが、どうですか。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国におきまして郵便貯金制度が国民の信頼と支持のもとに発達いたしまして、いま御承知のように二十一兆円にも上る蓄積が行われて社会の有用な方面に活用されておりますことは、御指摘のとおりでございまして、大蔵大臣といたしましてこれは大変ありがたいことでございまして、私の立場で郵便貯金の制度について制肘を加えるなどということがあってならないことは、御指摘を待つまでもないわけでございます。  ただ、ここで二、三、正木先生に御理解を得ておきたいことがございます。  一つは、これは申すまでもないことでございますけれども、金利体系全体は郵便貯金も含めまして一つの体系のもとにございまして、これが大きく変動するということになりますと資金が大きくシフトいたしまして、金融秩序を乱すということになりますので、そういうことのないようにしなければならぬ責任を私は持っておると思うのでございまして、二年前の今日、石油危機以前におきまして、郵便貯金の利子も銀行の預金の利子も、中心の金利が現在と比べまして約一分五厘程度低かったわけでございます。それが今日、一様に一分五厘程度高くなっておるわけでございます。これがなぜ高くなったかと申しますと、御案内のように総需要抑制策のために金融政策を締めてまいりまして、タイト・マネー・ポリシーをとらざるを得なかったために、金利政策がそういう側面から活用された結果でございまして、それが今日、使命を一応果たしてまいりましたので、全部とまでまいらなくても、ある程度これを復元させていただいて差し支えない環境ができてきたのではないかと判断いたしておるわけでございます。  しかも、この金利の改定でございますけれども、現在蓄積されているものの金利を下げるというのではないのでありまして、これから新しく蓄積性預貯金契約が開始されるものについて適用されるものでございまして、われわれは既往の膨大な預金の金利を乱暴にも下げるなどということは毛頭考えておるものでないことを御理解いただきたいと思うのでございます。  それから、私が所管の立場で郵政大臣にお願いいたしましたのは、事こういう環境になってまいり、政府といたしましても不況対策も進めてまいらなければならぬし、それをまた実行できるような環境がだんだん熟してまいりましたので、郵政大臣におかれましても関係方面に御相談を願いたい、私も関係方面に御相談をするつもりでございますということを申し上げたわけでございまして、これは所管の立場で当然の義務でございまして、毛頭圧力を加えるとかいうような性質のものでないことは御了承いただきたいものと思いまして、いま村上さんも私も所定の手続を踏ませていただいておる段階でございます。
  52. 正木良明

    正木委員 最近、これは各議員に配られたと思いますが、貯蓄増強中央委員会が貯蓄に関する世論調査というのをいたしました。これは全部やっていると切りがありませんので一いま大蔵大臣は、いままでのはいままでの利率だから、それはそれでいいじゃないか、これからの分について引き下げるのであるというふうにおっしゃいましたけれども、しかし、この貯蓄性向というのが非常に高まっていることはお認めになると思います。しかも、この中で一つだけ抜いて申しますと、貯蓄目的別の統計からいいますと、病気や不時の災害の備えとしてというのが、昭和四十年には七一・七%だったのが、五十年度には八三・二%になっております。要するに百人のうち八十人まで貯金しているのです。いついかなることがあるかもわからないからというので貯金をしておる。これは、いついかなることがあるかということは、もうこの金利が引き下げられたとたんになくなるわけじゃありませんから今後も続いていくのです。子供の教育費や結婚資金のために昭和四十年、十年前は五〇・二%だったのが、いまは五五・三%になっています、五十年度。土地家屋の購入、新増築、そのためは十年前は二九・四が三〇・二%。これは非常に低いですけれども伸びていることは伸びている。しかも、老後の生活のために、社会保障が充実していないために老後の生活保障が十分でございませんので、老後の生活のためにというのでみずから自衛策として貯金をしていらっしゃる方が、十年前は二九・八%がいまや三八・一%です。しかも、こういうふうに零細な貯蓄を節約の上にひねり出して積み重ねていくというのは、実は郵便貯金の預金者に多いわけなんです。ですから、目減り問題が解決していないどころか、目減りが激しくなるというような状況の中で、しかも零細な個人性の貯蓄であるという乙と、ここにも書いておりますように、こういう人たちは貸出金利が引き下げられたって何の恩恵も受けないのです。ところが、それにつれて自分たちの貯金の金利が引き下げられれば直接に影響を受けていく人なんです。  私は、本当の情の政治というのは、こういうところへ目を向けて、それは政策の体系、また金融の理論の体系から言うと、これは少しは外れることであるかもわかりませんけれども、しかし、こういうところに本当の情というものが政治の上に生かされてこなければならないんじゃないかと思いますよ。総理、どうです。
  53. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 金利水準全体を引き下げようという場合に、郵便貯金は全体の個人貯金の二割ぐらいを占めている、ほかの地方銀行とか農協などの貯金もあって、郵便貯金だけをそのまま据え置くということは、金利全体の体系の中でやはりバランスを失する、そういうことで今回、郵便貯金についても金利水準の引き下げに順応してやはり引き下げてもらおうということになったわけでございますが、むろん大蔵大臣の言ったように、いままでの定額貯金については金利は据え置きである、新規のものについてだけ今後一般の金利水準に従ってもらおうということになったわけでございます。
  54. 正木良明

    正木委員 私、申し上げているのは、郵便貯金だけ特別の扱いをしろと言っているわけではないのです。当然、銀行の預金利子についても、これは引き下げない方がいいわけです。しかし、いわゆる営利目的の銀行がそれができないというなら、せめて郵便貯金だけでもやったらどうなのですかと言っているのです。だから、銀行預金の余利と郵便貯金の金利とこれに差をつけることができない、それなら銀行預金の方も下げないで現状のままにしておけばいいじゃないですか、そのことを申し上げているのです。  と同時に、この後、私は国債管理政策の問題について質問をいたしますが、この中でやはり多額の国債が発行されていく。来年度は全然国債を発行せずに済むというものでもありますまい。そういう状況の中で、いま公社債市場が整備されていなくて市中消化というものが完全に行われていないような状況の中で、やはりそういう庶民の貯蓄をその方に振り向けるということは結局、国民の貯蓄で国債を消化したということと同じことになるわけなんですから、これをふやしていかなければならぬのです。ですから、先ほど私は、個人消費の問題についていろいろと質問をいたしましたが、これは副総理とは意見が合いませんでしたが、しかし私は、私の意見は決して間違ったものじゃないと思っています。そうすると、そういう個人消費を喚起するための政策は、実際上の具体的なことは行わないで、預金金利を引き下げるという形で個人消費を刺激しようとしているのではないか。これは公式に口には出してないけれども、非常に極端な言い方をすると、預金金利や貯金金利を引き下げて、もう貯金するのがばからしい、預金をするのはばからしいから金を使おうというので、個人消費がふえてくるというようなことも予想しているのではないかとまで勘ぐられるのです、この問題は。そうですがと聞けば、そうじゃないと答えるに決まっているから、もう答えは要りませんけれども、しかし庶民はそういうふうに感じますよ。ですから、この問題については十分、庶民の声というものが、決してこういう預金や貯金の金利を引き下げることについて賛成じゃないのだ、大きな不満を三木内閣に対して投げつけているのだということを、しっかりと御記憶をいただきたいと思います。  そこで、国債管理問題に入りたいと思います。  私どもは、国債発行というものについて、これはできるだけ避けなければならぬ手段であるというふうに考えております。それは回り回ってインフレ要因になる可能性がきわめて強いということからです。したがって午前中、国債を発行しなければならないような歳入欠陥を生んだ政治責任を追及したのも実はここにある。そこで、そのために必要なことは、やはり歳入歳出の洗い直しだと私は思うのです。これが私は十分には行われていないというふうに考えます。と同時に、やむを得ず発行されたにしろ、その国債についての償還、また消化、この問題について十分な施策が、歯どめが講じられていなければならないと私は思うのですが、その点大蔵大臣どう思いますか。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、公債は、発行するということになりますと、これはインフレ要因をつくりかねないおそれを持っておるわけでございますので、これを発行するにつきましては国民理解と協力を得なければならぬわけでございます。そのためには、仰せのように歳入歳出にわたりまして彫りの深い見直しを遂げて、国民の御納得を得る努力がまずなされなければならぬことは、正木さんの御指摘のとおりだと思います。同時に、発行するにいたしましても、それの規模をどうするか、その償還についてどのように考えておるかというような点につきましても、また、それがどういう条件で消化をもくろんでおるか、そういった点につきましても、仰せのとおり十分の理解を得るような用意がなければならぬことは御指摘のとおりと思います。
  56. 正木良明

    正木委員 それにしては、私は、歳入歳出の洗い直しの問題が完全にいっているとは思っておりませんが、これはちょっと時間がありませんので、すぐ国債の中へ入ってまいります。  さて、われわれは国債発行については反対でございますが、情勢といたしましては、発行しなければ歳入欠陥の補てんができないという状況に追い込まれております。そういう状況の中で償還計画を明確にしてもらいたいということを、われわれは何回か代表質問の中でも申しましたが、償還計画が一向に明らかになっておりません。この予算書の中に償還計画が出されているわけですが、一枚の紙切れです。一枚の紙切れでも中に書いてあることが重要であれば、それでいいわけでございますが、これだけです。そうしてこの赤字国債についての償還計画については、(説明)の中で「上記の「昭和五十年度の公債の発行の特例に関する法律(仮称)の規定により発行を予定する公債の償還計画表」に記載されている昭和六十年度の償還額二兆二千九百億円については、毎年度国債整理基金に繰り入れる前年度首国債総額の百分の一・六相当額の財源、「財政法」第六条に基づき若しくは必要に応じ予算の定めるところにより同基金に繰り入れる財源により償還を行う予定である。なお、状況によっては、期限前償還又は買入消却を行う場合がある。」それとこういう数字が出ているだけですよ。  いわゆる政府のいままでの説明によると、建設国債と政府の言う特例公債、いわゆる赤字公債とは性質が違いますね。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、建設国債の場合はそれに見合うところの資本、資産が国民経済に残る場合でございまして、特例公債の場合はそれが期待できないわけでございます。
  58. 正木良明

    正木委員 そうすると、強いて言って建設国債の方はまだ赤字国債に比べて罪が軽いということですね。そのことをあなたもやはりおっしゃっています、そのとおり。これは六月の私の質問に対する答えですが、「けれども、一たん公債に依存する癖がつきますと、なかなかこれは是正することは、言うはやすくして行うは非常にむずかしいわけでございますので、極力、公債発行という安易な手段に訴えることのないように、財政運営に注意してまいりたいと思うわけでございまして、万が一、公債に依存しなければならなくなりました場合も、建設公債の範囲内で、そしてその市場消化に無理がないようにやってまいらなければならぬことは当然の責任と思っております。」みごとにおっしゃっております。  ところで、この償還計画で建設国債と赤字公債との違いは、どんなところが違いますか。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 まず第一の相違は、建設公債の場合は借りかえができることになっておりますが、これは借りかえができないわけでございますので、ことしお願いいたしておりまする特例公債は、その所定の期限内に絶対に償還しなければならぬわけでございまして、そこに書いてある趣旨は、いわば政府として背水の陣をしいたわけでございます。  それから第二の違いは、償還財源でございますが、前年度剰余金の半分を国債整理基金特別会計に繰り入れるというのが、いままでの通則でございましたけれども、特例公債発行中は全額繰り入れるということに改めておるわけでございます。そのことはきわめて簡単な表現でございますけれども、私どもとしては、財政政策としては大きな変更になるわけでございます。  それから第三は、毎年償還財源の予算繰り入れを考えながら、できるだけ短期間の間に償還をしていこうという決意をそこに表明いたしておるわけでございまして、六十年度までの償還計画ではございますけれども、それより前にできるだけ返したいという意思をそこに表明いたしたつもりでございます。
  60. 正木良明

    正木委員 大蔵大臣、建設国債と赤字国債の違い、償還計画で見てまいりますと、建設国債は六十年賦で返す。六十年で返す。赤字国債は十年で返します。そして、途中で借りかえはいたしません。これだけの違いですよ。その財源につきましては、いまおっしゃったように、建設国債については剰余金の二分の一を繰り入れるけれども、赤字国債については全額を繰り入れます、こう言っているのです。これの違いがありますね。しかし、剰余金なんか出る当てありますか、実際。昭和五十一年度以降赤字国債を発行しなくても済むような状況になりそうですが。私は、どう考えてもそういうふうにならぬと思いますがね。ということになると、剰余金なんていうのは出てくるわけがないじゃないですか。剰余金を出そうとすれば、剰余金分余分に赤字国債を発行しない限り剰余金なんて出てきませんよ。そうすると、これは二分の一であろうと全額であろうと、今後の国債償還については少なくとも当面の間は同じことだということじゃありませんか。でしょう。そうすると、償還期間が十年か六十年、借りかえするかしないかの違いだけなんです。本当は根本的に違わなければならないのは、一・六%の繰り入れというのは六十年の建設国債について一・六%の繰り入れなら、これが六十を掛ければ九十六になりますから、まあ大体百に近いということになる。ところが、片方は十年じゃありませんか。この計算でいくならば、この償還計画赤字国債については、毎年の償還財源の繰り入れば少なくとも十分の一ずつ繰り入れていかなければならぬと私は思うのですが、どうですか。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたがおっしゃるとおり、剰余金が生じて、それが全額国債整理基金特別会計に繰り入れられるという状態は、特例公債の発行をしなくてもいい事態になってから、それからそこに予定してあります昭和六十年までの間の期間にしか意味がないことでございまして、それまではおっしゃるとおり剰余金が生ずるような状態はない。できるだけこの特例債を少なくしなければならぬわけでございますから、それは正木さんの御指摘のとおりでございます。  いま第二の御質問の、十年間の返済でございますなちば、百分の一・六というものの率は、これは建設公債から割り出された率なんだから特例公債には別な方式を考えないといけないということは、それはあなたのおっしゃること、よく理解できます。ただ、この特例公債が出されておる間は、それにもかかわらず特例公債はできるだけ少なくしなければなりませんので、たとえば明年度私といたしましてはある程度やはり特例公債をお願いせにゃならぬ年度だと思いますけれども、そのときにあなたの言われる新しい方式で償還金額を繰り入れてみましても、それだけは特例公債を減らさなければいかぬということになりますので、第一間にお答えいたしましたような理屈で、その問題は特例債を全部払ってしまって後の相談になるのではないかと思うのでございます。  したがって、前段につきましては仰せのとおりでございますけれども、後段につきましては、初めから特別な方式をとるわけにはまいらぬということは御理解いただきたいと思います。
  62. 正木良明

    正木委員 先ほども申し上げたように、あなたは公債に依存するということはできるだけ避けなければいかぬという御趣旨に変わりないと思いますよ。しかも、ここでこう言っているのですよ。「極力、公債発行という安易な手段に訴えることのないようにしたい」と言っているのですよ。国債発行を安易に出さないというのと、国債発行自体がもう安易な手段だとあなたはおっしゃっているのですよ。しかも建設国債のように、強いて考えて子孫に資産が残るからその子孫に応分の借金を払ってもらってもよかろう、資産が残るのだからという考え方、これは私は全面的に賛成ではありませんが、ある程度うなづけるところもある。しかし赤字国債、これはそういうものじゃないとあなたがいまおっしゃったじゃありませんか。それを安易な手段、というのはどういうことかというと、逆に言うと非常に苦しい立場にみずからを追い込まねばいかぬということです。自分の手を縛れということであります。そのためには、確かにあなたがおっしゃるように、償還財源が十分の一ずつになると大きくなる、その分だけ予算がふくれ上がるからその分をまた国債にというような結果になりかねないという、そういう言い方でしょう、あなたがおっしゃっていたのは。わかりますよ。しかし、それでも十年年賦で発行するところの国債については十年で返していくという計画でなければならぬと私は言っているのです。  しかも非常に重要なことは、この償還計画ではそのための特定の財源を設定していないということです。何らかの形で経済はある程度成長するでしょう、成長すれば税金もふえてくるでしょう、歳出も削って何とか合理化しましょう、そこで出てくる金を償還に充てましょう――特定財源何にも考えていません。要するに今後の経済運営の中で何とかなるだろう式で赤字国債を発行して、しかも六十年年賦の建設国債と同じような百分の一・六の繰り入れしかしないという形で何とかしのいでいこうという、これを安易でないと言ったら何が安易なんですか。私はこれは安易な方法だと思いますよ。もっと自分の手を縛るべきだと私は思うのです。だからこの償還計画は、どうしても十年間に十分の一ずつ償還していくという形にしない限り、政府のいわゆる国債大量発行時代に突入した現在、私は非常に重要な問題を含んでおると思うのです。どうです、もう一度答えてください、特定財源の問題。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 冒頭に正木さんが御警告をされましたように、公債を発行するという前提といたしまして歳入歳出とも厳しく見直さなければならぬという御指摘でございまして、それに私、全くそのとおりだとお答えいたしたわけでございます。  いま特定財源の問題でございますが、歳入を見直しまして、ぎりぎりこれ以上歳入の余地がないというところまで見直して、しかも足らないところを特例公債にお願いするわけでございまするので、もしあなたが言われるように特定の財源が別にあるということでございますならばそれだけ特例公債は少なく発行すべき性質のものと考えるわけなんでございますので、つまり歳入欠陥で、これだけはどうしてももう財源がないので特例公債をお願いするというぎりぎりのことをお願いいたしておるわけでございますので、償還財源について用意がないということにつきましては御理解をいただきたいと思います。
  64. 正木良明

    正木委員 私たちは、あなた方が採用なさいませんでしたけれども、この国債についての返還のための特定財源というのを提案しているのです。それは土地の再評価益税を設定したらどうですかということです。現在、大企業保有の土地が、簿価とそれから時価との差が六十八兆七千七百億円ある。本当なんです、これは。その中で、企業経営に必要なものをというのでその半分を税の対象にしないで除いたとしても、これに一〇%の税金をかける、いわゆる三十四兆三千八百五十億円に対して一〇%かけると三兆四千三百八十五億円の税収が可能なんです。これを一遍に納めろといったって大変ですから、それを十年間年賦で納めさすということになると、これはもう特定財源としてできるのです。一つの方法です、これは。これを言うと、現実にあらわれていない利益だから、こんなものには税金は安くしかかけられないから、国としては売買したときにかけた方が得だというようなお話をいつもなさいますけれども、しかし少なくともそういう特定財源というものをはっきりつくらなければ国債を発行できないのだという手の縛り方をすべきだと私は思うのですよ。これだってやろうと思えばやれることじゃありませんか。もし税金が納められなければ、土地は山ほど要るんだと建設大臣だって言っているんだから、土地で物納してもらえばいいじゃないですか。いろいろの方法はあるのですよ、考えれば。国債発行によって将来起こるであろうインフレを何とか防止しようという大きな歯どめをつけていくということが実は大事なんです。  もう一つ大蔵大臣に聞きますが、とんでもないことを大蔵省は考えていますね。昭和五十年度の公債の発行の特例に関する法律案で、第二条で「公債の発行は、昭和五十一年五月三十一日までの間、」となっていますね。この国債発行だけは昭和五十年度は五月三十一日まで会計年度を延ばすのですか。昭和五十年度の会計年度は歴然として昭和五十一年三月三十一日限りじゃありませんか。それまでに生じた債権債務の整理としてこの二カ月間、五月三十一日までのいわゆる出納整理期間としての出納閉鎖期を五月三十一日に決めただけじゃありませんか。にもかかわらず、五十年度と議決された国債の発行を五十年度の年度が切れて五十一年度に食い込んだ五十一年四月、五月まで発行できるとこの法律はしておりますが、これほど財政民主主義を踏みにじった問題はないと思いますが、どうですか。
  65. 大平正芳

    大平国務大臣 五月三十一日まで御指摘のように出納整理期間になっておるわけでございます。本来ならばあなたのおっしゃるとおり、三月三十一日までの会計年度の間で発行して得た収入をその年度の歳入にするというのが本則だと思います。ただ、この法律でごらんになりますように、この特例公債の発行の目的は歳入の不足を補う、補てんするということが目的なんでございます。しからば、その歳入の不足はいつわかるかということでございますが、これは出納整理期間いっぱいちょうだいしておかないと、たとえば三月十五日の確定申告、私どもの手元にこの結果がわかってまいりますのは相当期間後になってないと把握ができないわけなんでございます。この不足を補うために公債を発行させていただくわけでございますので、出納整理期間にその不足を補う限度において発行させていただいたものは、五十年度の歳入に整理させてもらいたいということなんでございます。きわめてその法律の目的にふさわしいように処理するという趣旨に出たものでございまして、大蔵省として特に悪知恵を働かした覚えは毛頭ないわけです。
  66. 正木良明

    正木委員 悪知恵じゃないならこういうむちゃな方式はやめた方がいいじゃありませんか。少なくとも、昭和五十年度予算に限っては歳入面は十四カ月予算にするというようなとんでもない、自分の足元を崩していくような、いわゆる財政民主主義を崩していくようなこういう状況はやめた方がいいじゃありませんか。  私はなぜこんなうるさく言うかというと、昭和四十九年度、昭和五十年度のあの境目に、昭和四十九年度の出納閉鎖期間中に入った税金を昭和四十九年度の収入にしたでしょう。そういう乙とはいけないじゃありませんかとこの前に予算委員会で私は言ったのです。こういうことが財政民主主義を崩す一つのきっかけになるから、こういう安易なルーズなやり方はやめなさいと言った。それをやめないで、しかも今度は国債において出納閉鎖期間まで国債を発行する。これではこの先どこまで崩れていくかわからないという懸念が私にあるのです。だからこの際やはり三月三十一日でぷつんと切りなさい。あなたはそういうふうな言い方をなさった。恐らくそれも一面の真実かわかりませんが、大部分の真実は、要するに、もし仮にこの補正予算が通って特例法も通ったとして、十一月、十二月、一、二、三、五カ月間でこれだけの巨額の国債を消化する自信がないというところにあるのじゃありませんか。だから二カ月延ばして五月三十一日までの出納閉鎖期間まで国債を発行する、こういうきわめてルーズな便宜的措置を今回の法律で講じようとしている。私はこれは断じて訂正してもらわなければならぬと思いますよ。あの高度成長期、あれだけ税の自然増収があったときにも建設公債は免罪された形でどんどん発行されて、いまや建設公債はあたりまえのものになってしまった。今度はこの特例法さえ出せば、歳入欠陥があれば赤字公債を出せるというような方向へ進もうとしているのです。こういうときによほどの強い歯どめを幾つかかけておかないと、とんでもない、それこそあの財政制度審議会が中間報告で言ったように、五年後には六十兆にもなるような国債を発行しなければならなくなるかもしれないというような危険信号がもう出ている。この国債という問題が国民生活を破壊する重大な問題であると考えてくれば、財政制度審議会が中間報告をしたあれなんか、私に言わせれば、あの事態はもう禁治産的財政と言うべきです。そんな状態へ持っていかないために、政府だけではなくてわれわれも一緒に協力しようとしているのじゃありませんか。そのときにそれを裏切るような、それを崩すようなルーズなやり方は、われわれは国民のために断じて見逃すわけにいかないと思うのです。どうですか。
  67. 大平正芳

    大平国務大臣 したがって、国会に法律案を出しまして、国会の御承認を仰いだ上で処理しようといたしておるわけでございます。  それから、公債が消化できないかもしれぬからこれだけの安全弁を確保しておかなければいかぬなんという気持ちはないわけなんでございます。これは本会議でも御説明申し上げましたとおり、私ども今度相当巨額の公債を市場にお願いせねばならぬわけでございますけれども、その発行計画というようなものを全部消化した暁におきましても金融市場には相当散布資金が残るような金融情勢でございまして、決してこの下半期に公債が消化されないような状態ではないと私は思っております。
  68. 正木良明

    正木委員 本当に時間がなくなってしまいました。それで、聞きたいことがまだたくさんあるのですが、項目的に申し上げますから簡単に答えてください。  一つは市中消化の問題です。  これは非常に重要なことであります。市中消化の原則を堅持しますというようなことは総理大臣も大蔵大臣もしょっちゅうおっしゃいますけれども、しかし本来的に市中消化の原則を堅持できるような状況に日本はないのです。全部銀行が引き受けるという形をとるのです。ないしは資金運用部資金が引き受けるという形になるのです。そうして市中銀行が引き受けた国債は、一年後は日銀の買いオペレーションとなって日銀券の増発につながってくる。だからやはり国民の個人所有という形の本当の意味の市中消化にせなければならぬのですが、そのためにはどうしても公社債市場の整備ということが大前提になるのです。この点について大蔵省はどう考えているかという点が一つ。  もう一つは、やはり個人所有にする、個人が引き取るというためには、いまのように社債と一%も利率が違う――片方は八・三%、片方は大体九・三%の利回りでございますが、一%も違うというような状況ではまずい。公社債市場ができればそこで自然な形で発行条件というものが決まってくるでしょうけれども、公社債市場整備の前提に立って、まだことしの発行条件が決まってないようでありますが、利率については従来の利率をそのまま踏襲されるのかどうかということ、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 まず利率の点につきましては公債、社債、金融債その他のものとのバランスを考えて、消化の支障にならないように工夫していかなければならぬと考えておりまして、ただいま幾らにすると決めているわけじゃございませんで、今後慎重にその点は取り決めていきたいと考えております。  第二の市場の整備は正木さんおっしゃるとおりでございまして、こういう巨大な公債をお願いするにいたしましてはいかにも市場がひ弱でございます。     〔湊委員長代理退席、委員長着席〕 とりわけ換金が容易でないというような状態は決して健全でないわけでございますので、市場体制をどのように強化してまいるかということにつきましてはいろいろ工夫してまいらなければいかぬと思うのでございまして、金融界ともいろいろ相談しながら、仰せのような方向に整備を強めてまいりたいと思っております。
  70. 正木良明

    正木委員 大蔵大臣、もう一点だけ。いわゆる市中銀行が所有しておる既発行債はどれぐらいありますか、政府保証債と国債と。大蔵省でわかりませんか。市中銀行が、要するに昭和四十九年度以前の国債、政府保証債。数字だけでいいです。
  71. 松川道哉

    ○松川政府委員 昭和五十年度六月末におきまして国債の総額十兆五千六百六十億円のうち市中金融機関が二兆六千二百六億円持っております。そのうち、オペの対象になるものが九千八百九十八億円ございます。
  72. 正木良明

    正木委員 政府保証債は――それは国債ですね。
  73. 松川道哉

    ○松川政府委員 ただいまの数字は国債だけでございます。
  74. 正木良明

    正木委員 時間がなくなりまして、日銀総裁それから全銀連会長お出ましをいただいておりますので、質問をはしょりまして直ちに皆さん方の御質問に入りたいと思います。お待たせしまして済みませんでした。  まず、日銀総裁、お願いしたいのですが、一つはきょうの新聞の報道によりますと、日銀全国支店長会議が開かれて、その席上で日銀総裁は、いままでの景気対策ではほとんど効力がない、したがって、第四次の公定歩合の引き下げを考慮しなければならないということを発言なさっているようでございます。まずそういう発言をなさったのかどうか、そういうお考えがあるのかどうか。――ちょっと待ってください、一遍に質問しますから。それが一つ。  もう一つは、もしそうであるとするならば、その時期と引き下げ幅はどのようにお考えになっていらっしゃるかということであります。
  75. 森永貞一郎

    ○森永参考人 支店長会議で発言いたしましたことを正確に申し上げますと、いままで三次にわたりまして公定歩合を引き下げてまいりましたが、景気回復も余りはかばかしくなく、また物価も比較的落ちついておるので、この際一層景気の着実なる回復に配慮しなければならない状態が来ておる、ついては市中貸出金利につきましても一層の低下を促進しなければならないと思うが、それにつきましては預貯金金利の引き下げが前提になる、目下関係各機関におきまして預貯金金利につきましては審議中でございますが、その決着を待ちまして公定歩合につきましても決断をいたしたいということを申しただけでございまして、具体的な時期等については何にも触れておりません。  ただいま時期についてのお尋ねがございましたが、預貯金金利等についての引き下げ問題が決着を見次第できるだけ速やかにということを考えております。幅につきましては、目下まだ決定をいたしておりませんので、この席での答弁を差し控えたいと存じます。
  76. 正木良明

    正木委員 総裁、そうすると、御趣旨はすでに予定されている一%の引き下げのあの分のことをおっしゃっているわけですか。それから、それ以後にさらにということではないのですか。
  77. 森永貞一郎

    ○森永参考人 ただいま問題になっております一%の預貯金利子引き下げの問題の決着を待ってということでございます。それ以上のことは……。
  78. 正木良明

    正木委員 何%になるか、それを聞いた方が早い。
  79. 森永貞一郎

    ○森永参考人 預貯金金利、いろいろございますが……。
  80. 正木良明

    正木委員 預貯金じゃありません。公定歩合です。
  81. 森永貞一郎

    ○森永参考人 公定歩合につきましては、まだ何らの決定をいたしておりません。これは政策委員会の決議事項でございまして、政策委員会に諮りました上で決定をすべき問題でございます。この席ではまだお答えを申し上げる段階でないことを御了承いただきたいと思います。
  82. 正木良明

    正木委員 そして、いま松川理財局長から答弁がございましたが、既発行債で市中銀行が消化しているのが約一兆円近くございます。政府保証債の方はよくわかりませんが、さらに資金運用部資金四兆のうち二兆は日銀の買いオペの対象になるというふうにわれわれは聞いておりますが、いわゆる買いオペの特約がついている分でございますね。この点について日銀の態度はどのようになるかということについて、簡単で結構ですからおっしゃってください。
  83. 森永貞一郎

    ○森永参考人 今後国債が発行されまして、それを市中で消化することにシ団としてもすでに協力する立場にあると宣言しておられるわけでございます。その結果、今後の金融情勢がどういうふうに推移いたしますか、全年度といたしましては資金が特に不足を来すという状態でもないかと存じますが、時期的にあるいは金融機関の種類別に資金の過不足が起こるという問題が起こってまいりますので、それをそのときどきの情勢に応じて調節し、金融全体が円滑に推移するというのが私どもの目的、任務でございますので、その間ただいまお話のございましたような国債オペレーション等も実行するようなことが恐らくは起こってくるのではないかと思っておりますが、それは今後の情勢いかんによることでございます。  なお、資金運用部の資金でございますが、これはいままで資金運用部に資金が余りましたときに余資の運用として持っておられる、そして資金を出さなければならぬときにそれを日銀が買い受けるというようなことは、従来しばしば日常行われておることでございまして、今度の場合資金運用部の資金繰りがいかが相なりますか、詳しいことは承知いたしておりませんが、余資として運用しておりました国債をもともと売り払いました私どもが買い戻すというようなことも恐らくは起こってくるのではないかと思っております。しかし、その辺につきましての金額その他の見通しは現在のところまだ何ら決まっておりません。
  84. 正木良明

    正木委員 じゃ板倉会長、済みません、お願いします。  実は私がお尋ねしたいのは、これは地方財政に関連をして自治大臣等にもお尋ねしようと思っておったことなんですが、その時間がなくなってしまいました。それで私がお聞きしたいのは、相当量の地方債が、政府資金で賄われる分もございますけれども、やはり市中銀行の皆さん方にお願いしなければならぬような情勢があるようであります。そういう意味から言いますと、数字で申しますと、大体地方税減収分として地方債のうち縁故債といいますか民間資金で調達しなければならぬのが八千六百三十二億円、それから第四次不況対策の公共事業の追加等によっての裏負担が三百六十六億円、その他やはりこの第四次以外の公共事業の裏負担が一千百十四億円、合計一兆百十二億円、これがいわゆる地方自治体が縁故債として民間銀行にお願いをしなければならぬ債券の発行額でございます。これの調達がやはりどうしても集中的になってまいりますので、国債の消化、片方には年末融資等の中小企業金融等々の民間資金の需要、こういうものが集中してまいりますときにこの地方債が果たして縁故債として消化できろような体制に全国銀行の方はあるのかどうか、まあ地銀も入るでありましょうけれども、あるのかどうか、この点をお聞きしたいのと、もう一つ重要な問題は、今度は五十年度の補正予算政府の方も大蔵証券だとか一時借入金を一兆円を二兆円にふやすというぐらいで、これはいわゆる運転資金といわれるものですが、これも地方自治体において非常に重要でありまして、その年度中に借りて年度中に返済する一時借入金、いわゆる臨時財政調整資金とか称しておりますが、この運転資金の需要がきわめて大きい。東京近県のある一県を調べてみますと、大体十二月五日ごろに百五十九億七千六百万円ぐらい要るだろう、ピーク時はちょうど十二月の二十六日ごろになって、そのときには二百六十三億二千八百万――一県ですよ、まあこの規模であるかどうかわかりませんけれども、全国的に一時借入金の需要というのはぐっとふえてくる。これはいわゆる職員に対するボーナスの手当等の問題があるのだろうと私は思いますけれども、そういうことで市中銀行にお願いをしなければならない、消化しなければならない資金というものは膨大なものになりますが、この点についてひとつ板倉会長から、そういう市中銀行の側としての準備、心づもりというようなものを御発表いただければと思います。
  85. 板倉譲治

    ○板倉参考人 ただいまの正木先生の地方財政に伴います地方債、それから地方の借入金の問題でございますが、地方財政につきまして国家財政と同じような大きな歳入欠陥が起こってきているということ、しかも地方債が国債と同様にきわめて重要なものであるということは私ども銀行といたしましても十分に了解いたしております。したがいまして、大量の国債と地方債が出てまいるわけでございますが、これがともに円滑に消化されますように、金融機関といたしましても金融御当局に対しまして、金融政策上の運営の面その他発行につきまして発行条件を弾力化していただきたいというようなこと、あるいは流通市場を整備していただきたいというようなこともあわせてお願いを申し上げているところであります。また、私どももそれが実現されることを期待いたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、国債と地方債の大量発行によりまして金融界に及ぼします影響はきわめて大きいのでございますが、当面の国と地方の財政の危機を乗り切りますために銀行といたしましては最大限の御協力を申し上げることが当然の任務であるというふうに考えております。したがいまして、今後とも最大の努力をいたしてまいりたいと存じております。  それからさらに借入金の問題でございますが、借入金の問題につきましても、年末ですとかあるいは年度末におきまして、先生御指摘のとおり税収と支払いのずれが起こりまして、そのために一時的に資金が不足を来すということがしばしばあるわけでございます。この点は私どもとしても十分御事情理解いたしております。また、これは地方公共団体としての本来の使命を果たす上からいってこういう借り入れが必要である、非常に必要な資金であるということは考えておりますので、銀行といたしましてもいままでもできるだけの御協力をいたしてまいったわけであります。  ただ、一方御理解いただきたいと思いますことは、地方公共団体に対します融資が最近膨大な金額になってきているということが一つございます。増加率で申し上げますと、全国銀行の全貸し金の増加率は最近大体年率で一〇%程度でございますが、地方公共団体向けの貸出金は最近では年率で二五%という高い率で増加をいたしております。したがいまして、金融が従来のように逼迫いたしておりましたときには、中小企業貸し出しなどと競合もいたすことになりますので、あるいは御指摘のように地方公共団体の御要求に対して十分おこたえできなかったことがあったかというふうに懸念はいたしております。恐らくことしはこの年末からあるいは来年の年度末にかけまして地方財政が相当窮迫するであろうと思いますので、相当大きな御要求があることは覚悟しております。したがいまして、年末の一般産業あるいは中小企業からの御融資のお申し込みもこれに重なりまして、銀行としても非常に多忙であるわけではございますけれども、この点につきましてはわれわれ十分配慮してまいりたい。特に、地方公共団体の借り入れの申し込みは、学校の建設でございますとかいろいろ公共性の強いものでございますので、銀行といたしましても資金の地元還元という意味もございまして、今後ともできる限りの御協力を申し上げていく所存でございます。  以上お答え申し上げます。
  86. 正木良明

    正木委員 どうかせっかく御努力をお願いいたします。  まだまだたくさん質問を残しておりますが、予定の時間が参りましたので終わりたいと思います。  どうか総理、私はいろいろ御質問申し上げましたが、まず三木内閣の政治姿勢を正して、国民の期待にこたえられるように万全の施策をお願いしたいと思います。  それではこれで質問を終わりたいと思います。(拍手)
  87. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木良作君。
  88. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 経済の混迷がいま国民最大の課題と相なっておりますが、一方、私は政治運営もまたある意味での混迷期に入っておると思います。そしてそのことに対する国民の不安も相当なものがあろうかと思います。御承知のごとく総理の意図とは別に解散問題が語られ、さらにまた、この委員会を通じて最も強く内閣の政治責任問題が迫られております。あわせてまた、総理の党内、閣内におけるリーダーシップ問題もちらちらと話題に上っておるようであります。私はこの委員会を通じまして、外交、防衛並びに経済の各般にわたって総論的な質問を行いたいと思いますが、その背景に内閣自身の政治責任問題、総理のリーダーシップ問題をはっきりと踏まえながら質疑を行っていきたいと思いますので、そのような立場でどうかお答えをいただきたいと思います。  まず、政治責任問題と関連しながら、例のクアラルンプール公館の赤軍ゲリラ占領事件と、これに対してとった政府措置についてまず伺います。  稻葉法務大臣に簡単に経過を伺いたいと思いますが、本件の犯人釈放について、当時、このことを超法規的措置と伝えられておりました。いやしくも法治国家として、超法規などと称する無根拠な釈放措置は許さるべきでないと思いますが、その法的根拠と、釈放指揮系統の実情について簡単に御説明をいただきたい。  あわせて、釈放後犯人はリビア政府に引き渡されたと言われておりますが、この出国は法的にはどう説明される状態であるのか。旅券交付手続が行われたとも言われておりますし、逃亡だともとられておるようであります。現在リビアにおると思われる犯人の身分の法的地位も含めて御説明を承りたいと思います。
  89. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 御質問はただいまのところ四点であろうかと思います。  法的措置をとった手続でございますが、およそ法治国家においては、法秩序の維持は治安の根幹につながる重大な問題であって、国家刑罰権の適正な実現を期することもその重要な機能の一つであるということは申すまでもありません。今回、犯人の不法な要求を終局的には受け入れ、実定法の定めによらずして、現に裁判中の被告人や服役中の既決囚を釈放せざるを得なかったことは、まことに遺憾であり、残念なことであったというほかはありません。  しかしながら、今回の措置は、多数の人質の生命、身体の安全を図るという人道的な見地から、緊急かつ異常な事態のもとにおいて、ほかにとるべき手段もないため、やむを得ず閣議に諮った上でとられた措置であって、国民各位が果たしてこれを理解されるであろうかどうか、私にも疑問が残るわけであります。  その経緯については、事柄の重大性にかんがみ、本国会の冒頭において、特に総理大臣から御報告をいただいたわけであります。  事件の経緯を申し上げますと、本年八月四日午後零時三十分、日本赤軍と称する者五名が在マレーシア・アメリカ合衆国大使館及びスウェーデン大使館に侵入して同所を占拠し、スウェーデン臨時代理大使及び米国領事を含む五十三名を人質にした上、わが国において勾留中の者など七名の釈放等を要求するという事件であります。まことに……(佐々木(良)委員「事実関係は承知していますから」と呼ぶ)  政府は、直ちに内閣官房長官を本部長とする対策本部を設けるとともに、福田臨時総理大臣以下関係閣僚を中心に対策を協議しましたが、人質を救出するための適切な方策が見出せない上、マレーシア政府の強い要請もあり、この際、人命尊重を第一義として犯人の要求に応ずるのもやむを得ないという結論に達し、同日深更、内閣においてその旨を決定いたしました。  そこで、法務大臣私が、右閣議決定に基づき検事総長を指揮し、犯人らの意向に応ずる旨意思表示した五名の釈放手続をとらせることとし、同人らをマレーシアまで護送し、その上、同月六日、同地において釈放しました。  右五名は、その後マレーシア官憲の手により犯人らの手に引き渡され、新たに人質となった外務省幹部など、マレーシア政府高官各二名とともに日本航空特別機で、同月八日、リビア・アラブ共和国トリポリ空港に到着し、犯人ら五名とともに同国官憲の拘束下に入り、同時に、人質となっていた外務省幹部ら四名は釈放されました。  次に、犯人らの要求に応じ、公判中の被告人らを釈放した法的根拠いかんというお問いに対してお答え申し上げますが、今回の措置は、人質とされた者の生命の安全を図るため、純粋に人命尊重という立場から、他にとるべき手段がないため、まことに必要やむを得ない措置として釈放したものでありますが、その措置は、刑事訴訟法等関係法令の定めるところによったものではありません。現行法規には、今回のような緊急の事態における身柄釈放の手続を定めた明文の法規は存在いたしません。緊急の事態において、人命尊重という目的のもとに、行政府すなわち内閣が、その判断と責任において釈放を決定したものであります。この事件の国際性をも含めた大所高所からの政府判断は、法秩序全体としては許容されるという、消極的適法性というか違法性阻却は認められると思うております。  次に、犯人及び釈放した者に対する政府の態度いかん、すなわちリビア政府との関係いかんというお問いに対してお答え申し上げます。  法務省としては、外務省に対し、これらの者の身柄回復のための外交的努力を要請済みであります。この点についての外務省の御措置については外務大臣から御答弁していただくことにいたします。  それから、あとの御質問に、今後このような事案が起きた場合のそれに対処するあらかじめの措置をどうするかということはありませんですね。――それじゃ、以上、御質問に対するお答えを一応お答え申し上げておきます。
  90. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 出国手続。
  91. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 刑事被告人及び収容中の刑事犯罪人の出国手続につきましては、外務省から旅券の交付があったというふうに聞いております。
  92. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 これは外務省ですか、法務省ですか存じませんが、そうすると、いま犯人は旅券を持っておるんでしょうか。
  93. 安原美穂

    ○安原政府委員 お答えいたします。  ただいま大臣が申されましたように、五名の釈放されました者につきましては、外務省から旅券を交付して出国の手続をいたしましたが、これらの五名につきましては、検察官が指揮をいたしまして、マレーシアに護送し、現地で釈放いたしましたが、その釈放する際に、外務大臣からの旅券の返納命令を出していただきまして、検事がその返納を受けて外務省に返還済みでございます。したがって、現在旅券は持っておりません。
  94. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 旅券を持っておらずに外国に行っておるということはどういう状態になるのですか。
  95. 安原美穂

    ○安原政府委員 この点はむしろ在外における邦人の滞在の問題でございますので、外務省からお答えをいただいた方がいいと思いますが、聞くところによりますと、出国をする際に一つの手続を踏むとすれば、やむを得ず釈放した事態ではございましたが、旅券を持たせて国を出させるというのが国内法上の手続であったので旅券を出したということでございまして、あと、私の理解では、これらの五人の者が外国に在留を許されているとすれば、それは旅券によらずして当該国の承諾に基づいて在留をしておるというふうに理解すべきものと思います。
  96. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 その者には逮捕がまだできるのですか。
  97. 安原美穂

    ○安原政府委員 その点は、なお釈放いたしました五名のうち一名の松田というのは、強盗等の罪におきまして懲役八年等の刑の執行中でございましたので、この者につきましてはなお刑の執行が終了いたしておりませんので、わが国の主権の行使できる範囲に入りました場合は刑の執行ができるという状態でございますし、その他四名の者は、勾留を受けて、そして公判手続中でございましたが、これも、これら四名の者につきましては、勾留の裁判はなお効果を継続しておりますので、同じくわが国の主権の行使ができる範囲に入りました場合におきましては、勾留の効果に基づきまして、検察官が指揮をして、なお拘置所に収監できるという状態にあるというふうに理解をいたしております。
  98. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 承りましたように、大変複雑な状態でありますし、大変不安定な状態だと思います。政府自身が旅券を交付して外国に持っていって、そしてそこで釈放して、釈放した途端からそれは再逮捕の対象に相なっておる日本人ということであります。何とも法的な措置としては私は説明のできない状態だと思います。このような不安な状態と、大変超法規的な措置がとられておること。  それから、先ほどの稻葉さんのお答えの中で、私は必ずしもよくわからなかったのでありますが、この釈放は言うならば、かつて吉田内閣のときの犬養法相の指揮権発動といって騒がれたときと同じことだと思いますが、違いますか。
  99. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 犬養法相の検察当局に対する指揮権の発動は、これは適法な検察庁法十四条という根拠があってなされた指揮でございますが、そうして、それは裁量権の範囲内で行われた措置でありまして、今回の場合は全く外交関係やその他緊急な事態とかいうことを切り離して考えれば、そういう指揮は法的根拠のない指揮で、簡単に言えば違法な指揮でございますから、あのときの指揮権の発動には当たらないというふうに思います。
  100. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、あの当時の指揮権は法的根拠をもって行われたが、今回の場合はあのときの法的根拠さえ踏まずに行われたということですね。
  101. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 つまり、検察庁法十四条に基づく法務大臣の検事総長に対する指揮ではありません、こういうことでございます。
  102. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて稻葉さん、伺いますが、いまの決定をされましたのは、先ほどのお話によりますと、福田臨時総理を中心とする閣議でというお話でございました。当時総理アメリカにおられましたが、アメリカ総理のところにも当然に御相談をいただいておるだろうと思いますが、それは形の上ではいずれの総理が中心になってその判断を下されたことになっておりますか。
  103. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま佐々木君の御指摘のように、ちょうどワシントンに着いた深夜でありまして、この報告を受けたわけであります。そして私はいろいろと、この犯人の不法な要求を通す――結果的には通すことになりますので、これはまことに法治国として遺憾なことであるが、あの場合としてほかに何か方法があるであろうかといろいろ思い悩んだのでありますが、五十三名の人命を尊重する以外に方法はない。したがって、内閣に対しては人命尊重を第一義として措置するよう私が指示をしたことは事実でございます。
  104. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 お話によりますと、三木総理の実質的な指示によりまして、留守を預かっておられる福田総理以下の閣議でもって形式的に決定をされて措置された、こういうふうに了解してよろしゅうございますね。
  105. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そのとおり御理解願います。
  106. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、この問題についての三木総理並びに稻葉法相を中心としてとられた措置は、決して違法というほどのものでもないかもしれませんし、やむを得ざる措置という意味では不当だとも言い得なかったと思います。しかし、仮にそうであったといたしましても、政府自身が犯人逃亡に手をかしたという事実は否定することはできますまい。この重大犯人の、言うならば釈放ないし逃亡が国民の不安を助長し、現にその後爆弾事件が続発しておりますし、ために、天皇訪米を中心とする国民の不安と治安当局の警戒は異常なほどであったことを承知いたしております。同時に、私はこのような釈放が治安当局の士気を著しく阻喪せしめたであろうことも容易に想像できます。このような結果をもたらしました責任は、政治的措置そのものに帰せられなければならぬと思います。それをどういうような形で償うべきかというところに政治責任という問題があると思います。したがいまして、行政官吏が法規に触れたとか触れなかったとかという意味での責任のあるなしということとは違いまして、適法かつ妥当な措置であったとしても、現に政治が動くことによって相当大きな国民的な影響と損害を与えたとするならば、その償いはやはり政治としてやらなければならないことだろうと私は思います。ここに政治責任というもののまことに重要な課題があると思います。  先ほど触れましたように、言うまでもありませんけれども、例の二十九年の四月二十一日、吉田内閣の犬養法相によりましてとられたいわゆる指揮権発動というものは、いまのお話によりますと、ともかくあのときには一応の法的根拠をもってその解釈の範囲内で行われたということであります。今回の場合にはそれにもよらず、しかも出国手続から現在の日本人であること間違いない犯人の身分自身もきわめて不明確、きわめて不安定、法の対象の中に入っておるのか、入っておらないのか、わからないような状態に相なっておる。     〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕 これを三木総理、やむを得なかったということだけで全部、言うならば免責になり得るものでしょうか。現実に、先ほど申し上げましたように、あの事件以来爆弾事件は続発していることは事実でございますし、したがって、私はこのような意味で、当時犬養法相は指揮権発動をされたその直後、午前中に発動をされて、午後には辞表を提出されております。あの犬養法相の措置も、あのときの政治情勢を考えるならばまことにやむを得ないものであっただろうと思われます。したがって、そのような判断をされたからこそ犬養法相は、言うならば吉田総理の指示に対して、これに反抗することなく、むしろ受け入れて措置されておいて、しかしながらその措置した後に、法治国家として言うならば法の解釈を逸脱したかもしれない、それによってこうむるべき国民の損害というものに対して償う意味をもって、私はみずからの政治責任を明らかにされたと思います。その意味では、ある意味において私はりっぱだと思います。言いわけをしようと思うならばどういう言いわけでもできるはずであります。しかるに今回の場合、先ほど来三木総理が言われておりまするように、やむを得ざる措置であったということだけのために、どのような結果や不安や、言うならば国民の犠牲的な状態ができておっても仕方がなかったということで免責でき得るものでありましょうか。私は、重ねて三木総理のこういう問題についての政治責任という問題についての御所見を承りたいと思います。
  107. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 法治国家としてはまことに遺憾なことであって、私は今日もみずから問い続けておるわけです。しかし、あの場合に、実定法上の規定がないわけですから、五十三名の人命を犠牲にして法治国家としての筋道を立てろということも、一つの方法かもしれませんが、しかし考えてみてほかには方法はなかったということでとった処置でありますが、これははなはだ遺憾至極なことであるということは申し上げておるとおりであります。  今後の責任として、われわれ内閣として考えなければならぬことは、こういう犯罪というものを再び繰り返さないために、あるいは取り締まりの問題もございましょうし、これは国際的な一つの犯罪の性格を帯びるわけですから、国際的にも協力をして、こういうゲリラのいろいろな、ハイジャックの問題等にも発展いたしますが、こういう問題の根絶を期することにおいて政府責任を果たしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  108. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 政治責任の問題は、先ほど申し上げましたように、行政官の普通の意味での責任問題と私は次元の違うものだと思います。むしろ政治の世界にのみ不文律に存在しておるものでありまして、その意味においては、そのものはそのまま国民信頼の根拠であります。したがいまして、私は、この問題についての政治的な責任という問題は、その配慮が三木政治自身の国民信頼につながるか否かということの一つの基準でもあろうかと思います。そのような意味で、どうかこの問題を見詰められながら、今後にも善処されたいことをお願いいたします。  次に進みます。  民社党は、どこの国家におきましても一番重要な問題とされている外交と防衛の問題が、わが国の国会論議の場では従来必ずしも建設的な取り組みが行われていなかったことに対して、大変残念に思っておるものであります。ベトナム問題を契機にアジアの平和と安全の問題は一つの変革期に入っており、平和外交推進の面からも国の安全という面からも、そのような意味国民的なコンセンサスを得なければならないのでありますから、そのための国会論議が行われ、国民の不安にこたえなければならないと思っております。  そのような意味で、私ども民社党は、この国会の論議に資するために、この夏の休みの期間を利用いたしまして、四班の調査団を派遣し、第一は朝鮮半島に、第二は東南アジアに、さらにソ連にあるいはアメリカにと、実情を調査しながら、アジアの最近の動きに対しておのおのの国々がどのような取り組みをしようとしておるか、その中で日本がどう対処すべきかという問題を探りながら、努力をいたしてまいったわけであります。民社党は政争は水際までという考え方に立っておりまして、政府と同じ土俵の上で相撲をとろうといたしておるのでありますから、そのことを十分御承知いただきながら、これからのこれらの問題に対しまして簡明に率直に、ひとつ国民に答える意味をもってお答えをいただきたいと思います。  まずこの問題の第一に、先ほど申し上げましたが、総理のリーダーシップという問題と関連をいたしながらお伺いいたします。  国会に防衛委員会を設置せよという民社党の主張は十分三木総理は御承知のことであり、党首会談においてもたびたび約束せられ、六月の本予算委員会においても、私が質問をする前にあなた自身がその必要性を強調されて、設置することを努力することを公約的に御発言をいただきました。今国会において民社党は同様にこの問題を衆議院においても提案をいたしまして、そして公明党等の賛同も得られる状態になっておったのにもかわらず、実際は自民党の国会運営の配慮の犠牲となるような形で、まだ設置されておらないことは事実であります。いずれにいたしましても、あれほど明確に必要性を力説され、そしてあなたが主宰しておられる自民党自身に対して、その行動をとらせておられないことは現実でございます。(「やる気がないのだ」と呼ぶ者あり)やる気がないのでありますか、お答えをいただきたいと思います。
  109. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 まあ安保反対であろうが、賛成であろうが、国の安全保障というものは国政の中心の課題でありますから、国会にそういう寒議の場があることが好ましい。まあ民社党年来の主張でもあるし、われわれも賛成であります。自民党もこれは賛成でございます。公明党もこれに対して同調されておる。しかし、他の政党はこの問題に対してまだ賛成の域には達していないわけで、今後これはこういう特別委員会を置くということは各党の賛成を得なければなりませんから、そういう意味で、賛成を得てない党に今後働きかけまして、そしてこれの実現を期したい。自民党は、自民党の党内事情でこれがおくれておるという事実はございません。まだ各党の賛成を得られないということが今日この問題の実現せない本当の原因でございます。
  110. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 各党の賛成を得なければというと、国会の全部の運営はそれならば不可能になりますね。単独審議という形で、あなたの提案の法律を一党でもって決定された、その動きをどう言われますか。さらにまた、もし議会という入れ物というお話が出るのでありまするならば、議長、副議長を初めとする常任委員長等の国会役員の選任について、野党共通の提案もたびたび行われております。自民党だけの方針に従って現在決定されております。いかがお答えになりますか。
  111. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 こういう安全保障という問題については、いろいろと考えの違う党の人たちも入ることが、目的を達成する上において好ましいことは言うまでもないわけであります。したがって、これは法案の審議とは私は性質が違う。いろいろな安全保障の問題に対して異見を持っておる党、そういう党の人たちも参加をして、できるだけ国民的コンセンサスをつくろうということが設置する目的でございますから、一部の党だけということだけでは設置の目的が十分達成できない、そういうことで、これは好ましい形としては各党の賛成を得るということであるためにいままで実現をしないわけでございますが、私はこれは必要であると考えておる。この点は佐々木君と同感でございますので、今後他党への呼びかけというものを積極的に私も努力をいたしまして、また民社党の方としても御協力を願いたい、そして、この実現を期したいと願うものでございます。
  112. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 総理のこの問題に対する感じはたびたび伺っております。にもかかわらず、衆議院において絶対多数を持っておられる自民党自身のリーダーシップがとられておらないがために私は実施されておらないと思います。少なくとも議案審議の場合というお話がありましたけれども、議案の問題でない、いま例に申し上げました議会自身の入れ物の問題についても、言うならば国会役員の問題は、自民党単独で決定されておるわけであります。国会役員を、言うならば自民党の人間を議長に配する、副議長に配するということは、野党の全部が反対しても強行をされるのにかかわらず、委員会を設置して、賛成論者も反対論者も、国民のコンセンサスを得るために論議をしようではないかという入れ物づくりには決してそのようなリーダーシップをとられようとされないこと、大変私は遺憾に思うものであります。しかしながら、この問題も、リーダーシップの一つの例として、今後の、言うなちば善処を要望することにとどめて、先に行きます。  次に、三木内閣の外交方針について伺うわけでありますが、三木内閣の外交方針、格別その姿勢に対しまして、外国紙の特派員の目にもそのように映ったのでありましょうか、日本外交、格別三木内閣の外交は、無目的、無定見にさまよう無方針の外交だという批判があったようであります。これに対して、新聞で拝見いたしますと、宮澤外務大臣は相当痛烈に、この問題に対しては、そんなことはないという意味で反論を加えておられるようであります。しかも、その反論の中心は、軍備のないわが国外交が、どこの国とも事を構えずに、徹底的な話し合いをするということで、それ以外の方法はないではないか、そのような努力をしておる、こういうふうにおっしゃったという記事を、うそか本当か知りませんけれども、新聞紙上拝見をいたしました。しかし、外国新聞特派員の目に映ったのと同様な感じをだんだんと私自身も深めておるのでありますが、三木総理自身はいまどうお考えになっておりましょうか。
  113. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 一新聞がそう言ったからといって、それが私の外交の評価だとは思ってない私のやることに対していろいろな高い評価を与える人たちもたくさんにおる。したがって、私の外交の方針というものが明確を欠くとは私は考えてない。私の外交は、日本の国益を踏まえて、しかもその国益というものが、短期的な考えでなしに、長期的な展望に立って、しかも日本だけというのではなくして、広く世界の中に日本の安全と発展を図っていこうとい点で、いまとっておる外交政策が誤っておるとは私は考えてない
  114. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 総理自身の考え方はそうではありますまいが、しかしながら、外交活動を通じて国際的に目に映っておる状態がさまよっておるように見えるということであります。私は国会におりまして、国会の中におけるあなたの姿勢自身もさまよっておるがごとく感じます。核防条約に対する姿勢は、一体あなたはこれに対してどういう方針で本当に臨まれようとしたのか。その方針が決まっておるならば、なぜ断固としてその方針を貫かれようとされないのか。お答えをいただきたいと思います。
  115. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 しばしば言っておりますように、核防条約は速やかに批准をすべきものである、それが国益に合致するものであると考えますから、現在外務委員会において審議を継続中である核防条約に対して、審議を促進してもらいたい。これは私の願いでございます。
  116. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 三木さん、そうそらぞらしいことを言われても、私も国会議員だ。テレビを通じてこの中をのぞいておられる国民の目には映りますまいけれども、前国会においてはあれほどあなたは積極的にこの問題に取り組もうとされた。しかしながら今国会においては、あるだけで、まだ一回の審議も、言うならば自民党政府からも要求されてもおりませんし、そして行われようとしてはおりません。あなた自身がこの国会における批准手続を捨てた状態であるということは、だれでも判断をしておる。もしそれがあなたがノーと言われるならば、そのことはあなたの頭の中にあるだけでありませんか。この国会中にこの審議手続について促進をされ、この国会中に言うならば批准をされ得る判断をお持ちでございますか。
  117. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 核防条約は継続審議になっておるのですから、当然に審議は促進されなければならぬ。
  118. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 促進されねばならぬということではなく、これに調印をされた継続的な内閣の責任者として、あなた自身はリーダーシップを持って、そのような方針でもって自民党を采配を振って行動をとらせますかということです。御承知のように、継続審議などというものが大した重要な継続になっておらないことは、あなたよく御承知のはずだ。そしてこれは調印が行われたのは五年半前だ。その五年半の間、自民党歴代内閣は、ともかくこれをさまよわせておったことは事実であります。外国の目に、この問題に対する日本政府の方針は一体どういうことか、さまよえる外交と映るのは当然ではございますまいか。そしてあなたはアメリカに行かれた、夏の訪米の際においても、共同声明か共同談話を通じてこの問題に触れられて、そして早期批准手続をとると言明されておる。宮澤外務大臣もまた国連の総会において同様な演説をされておる。私は、外国の目にはそれがそのまま映るかもしれませんけれども、少し内容を知っておる者でありまするならば、ニューヨークタイムズの特派員じゃありませんけれども、一体本気でやろうとしておるのか、していないのか、こういうふうに映るのは当然だと思います。  このような形で、さまよえるという批判がもしお腹がお立ちになるのならば、私は、前国会に提案をされて、そして本気で審議をし、これを成立させようとされたその姿勢を今国会において貫かれんことを要望いたします。
  119. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 当然のことに考えております。
  120. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 善処に期待いたしまして、次に移ります。  私は、似た問題について、朝鮮半島の問題や、さらにまた経済外交問題にも移りたいのでありますが、だんだんと時間が取られてまいりましたので、いわゆる平沢論文という問題を取り上げまして、少し角度の違った意味三木外交のあり方をただしたいと思います。  まず外務当局にお伺いをいたしますが、平沢論文によりますと、日中平和条約交渉の中で尖閣列島問題について、「条約中においては言及することなく棚上げとするとの暗黙の了解に達している」、こういうふうに平沢論文は書いております。外務当局、そのような状態になっておりますかどうか、お答えいただきたいと思います。
  121. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 平沢論文につきましては、その結論とするところに私ども同意いたしかねることはもとよりでございますが、ただいま御指摘の尖閣列島につきましての認識におきましても、私どもと異なった認識、私どもから申しますと誤った認識……(佐々木(良)委員「ちょっと、私の質問点だけにぴたっと答えてくれませんか」と呼ぶ)ただいま申し上げましたとおり、誤った認識でありまして、いわゆるたな上げというような形で日中の条約交渉が行われているという事実はございません。
  122. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 日中間にそのような話し合いで、いま事実上たな上げをされていいという了解はない、こういうことでございますね。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 尖閣列島は、明治二十八年以来わが国の固有の領土となっておりますし、現在、また現にわが国の有効な施政権のもとにございます。したがいまして、交渉におきましてそのような議論が進んでおるということは一切ございません。
  124. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 平沢論文は、さらにこの問題について、日中交渉の尖閣列島のいま指摘したような扱い、これを先例として日ソ交渉にも踏襲されることをソ連が提案しておる。つまり日ソ平和友好条約を締結するためには、言うならば北方領土をたな上げにして、後回しにして、そして締結を急ぐ、決定しよう、こういう方向でやろうではないかとソ連が提案しておると、こう書いてありますけれども、実際にそのような提案がソ連から行われた事実、あるいはそのようなささやきがあったかどうか承りたいと思います。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今年一月、グロムイコ外務大臣と私がこの交渉をいたしました際、あたかも、ただいま御指摘されましたように聞こえることをグロムイコ外務大臣が申したことがございまして、私は、日ソ間の平和条約は北方四島領土問題を処理をするということが前提条件である、したがってそのようなグロムイコ外務大臣の構想には賛同できないということを申しました事実がございます。
  126. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私はこれはまことに重大だと思います。いま宮澤外務大臣からの発言によって、ソ連のグロムイコ外相が似たような感じを持って、提案という段階に至らなくても、そのようなささやきとか、あるいは意思表示をしたようなことが想定されますが、そのことをちゃんと平沢氏は承知をされておって、このような論文になつたものと思わざるを得ません。  私はここで三木総理にお伺いいたしますが、一体平沢さんと三木総理との関係はどういうものなんですか。九月の塚本質問に対しまして、その答弁は無関係ということだけでありましたし、それから北方領土問題に対する従来の方針は変わりがないということだけで、木で鼻をくくったような答弁でございました。しかし、それにしても、訳文がだんだんと出かかっておって、その訳文を目れば見るほど、私は疑いを深めざるを得ないわけであります。  その中には、御承知かもしれませんけれども、あなたの演説自身が引き合いに出されておる。ことし一月の三木総理の施政方針演説において、総理は、いまから三十年間にわたり、シベリアの広大な未開の天然資源の開発を含め、日本とソ連の間で建設的協力を進めることの世界史的意義を強調したが、これは、このような協力、つまり経済協力の方が、領土論争においての言うならば不屈の対立に比して、両国及び世界にとってはるかに重要であることを意味すると平沢論文は断定しております。つまり、あなたの一月の演説をそのまま引用して、この意味はこういうことですよと断定している。このような断定は、私は、よほど近い人でなければ、そして同時にこの問題についても十分話し合いが行われる関係の間柄でなければなし得ないものだと思いますが、ここに改めて、一月の施政方針演説における総理の真意が、いまのような平沢さんの指摘されるような内容まで含んでおったものか、あるいはそれがどういう経由で、どういうふうで平沢さんのそのような解釈となったものか御説明をいただくとともに、重ねて私は、平沢さんとの関係を明らかにしていただきたいと思います。
  127. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 平沢君とは多年の友人でございますが、彼は彼としてのジャーナリストとしての意見を持っておって、私と常に意見が一致をするわけのものではございません。独立の人格を持っておる人間でございます。  私は、北方の領土の問題については、みずから外務大臣として、一九六七年、コスイギン首相初めグロムイコ外相にも四島の一括返還の交渉を強くいたしたわけでございます。そういうことで、この問題の解決は、やはり一括で領土問題というものは処理することが適当であるという考え方が、私はいままで変わったことはない。自分自身が強くそういう折衝をいたしたわけでございます。  したがってまた、いまの演説ということは、私の言ったことはこういうことなんです。シベリア開発というようなことは、これは将来大きな課題である、こういうものに対して日本の協力ということが必要なことは言うまでもない。こう将来を展望すれば、いつまでも四島を返還しないといってこういう領土問題にこだわるよりか、この問題を解決して、そうしてしかも日ソ関係というものを軌道に乗せて、そしてシベリア開発のような大問題に取り組むことが、日ソ関係の将来としてその方がずっと大局的な意義があるのではないか。いつまでも、この四島の問題が解決しなければ日ソ関係というものが――やはり基本的にはこうい・う問題を残しておるわけですから、日ソ関係というものが、根本的に平和条約もなかなか結べないという、こういう四つの島にこだわって――将来の二十一世紀にかけてのシベリア開発というような大きな問題を展望すれば、その判断というものは、四つの島にこだわるということとどちらが利害得失かということはソ連としても判断しなければならぬ。この問題を解決して、もっと大きな未来に対して目を向けることが、ソ連としてもずっとやはり大局的な見地に立つゆえんではないかというのが、私は意図でございます。
  128. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 平沢論文とまさに反対のことですね。平沢論文は、逆にあなたが、日ソ交渉を四島に限らずに、むしろその問題を放棄してもシベリア開発等の共同推進に向かった方がいいという判断を持って話をされておると、こう書いてあるのですよ。現実に書いてある。そしていまあなたは、それとちょうど反対に、ソ連がそういうふうにすべきだと言ったという話。これはえらい話が違う。しかし私は、話が違うとは言いながら、これまでこの国会の論争におきましても、あるいはわれわれとの話の中においても、このような話し合いがなかったと思います。平沢さんとあなたはよほど親しく話されておるに違いない。話したことが逆さまになって書かれておるということは、これはどういうことですか。  もう一つ、私はなお論文の続きだけを言っておきましょう。同論文はさらに、事実こういう方針で三木総理は、「ブレジネフに対し、将来両指導者が会談する時にはともに解決を探求するよう呼びかけた。」と、こう言っております。このことはあたかも、続いて読みますと、三木総理が、北方領土問題をたな上げすることによって日ソ平和条約の締結に踏み切って、そのかわりにシベリア開発等についての日ソ協力の関係を取りつけよう、こういう基本方針を持って、いま暗礁に乗り上げている日ソ平和条約問題の解決を、ブレジネフとの言うならば首脳会談によって切り開こうとしている。何ぼ平明に読んでも、そうしか読めませんよ。そしてしかも、これは「呼びかけた」という言葉になっておる。これは外務省の訳文でありますから、もとの方はここにありますけれども、「呼びかけた」ということになっておるが、これは外務当局は呼びかけた事実はあるのですか。どういう話ですか。またグロムイコとでもお話しになりましたか。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 平沢氏の論文を私ども解釈する立場にはございませんが、かつて中間的なるものということが日ソ間で話題になったことがございまして、それが何を意味するかということを、しばらく私ども外務省としても研究をいたしたことがございます。しかし、これは結局、領土問題というものは一応この際いわば横にたな上げをしておいて、友好関係を深めようということ以外の何ものでもないということがはっきりいたしてまいりましたので、それはわれわれの関心を持てる種類の提案ではないということがかつてございました。しばらく前でございます。あるいはそのことを平沢氏が平沢氏なりに紹介をしたのであろうかと思いますが、それ以外に思い当たるところがございません。
  130. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 いまの話は、三木総理がブレジネフに対して、こういうふうな相談をしようよ、するような状態をつくろうよと呼びかけたと言うのですよ、向こうじゃなくてこっちが。そういう事実があるか。あるいは三木総理の方で外務当局を経ずして何らかの方法で伝えられたことがありますか。
  131. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 トロヤノフスキー・ソ連大使が来るたびに、私は常に、私の持論、やはりこの四つの島の問題を早く解決して、日ソがもっと大局的な見地に立って協力できるような体制をつくろうではないか、それはやはり首脳部にも伝えてほしいということはしばしば言っておるわけであります。私も、佐々木君お考えになっても、今日の状態で、四つの島の返還要求を放棄して平和条約が結べるようなことが、政治家として考えられるでしょうか。だれが考えても、日本は四つの島の返還を求めるということが国民的コンセンサスでしょう。それをやぶから棒にそんなことができるわけはないのであります。そういうことを私が考えるわけがない。私の言わんとするものは、戦後三十年もかかってこの四つの島という問題がいまだに解決しないで、日ソ間に平和条約も結べないという事態は、大局的な利害得失から考えてみたら、これはソ連のプラスになるだろうか。この問題を解決して、そして日ソ間の関係というものを正常な関係に置いて、そしてさらに大きな、シベリア開発もありましょうし、日ソ間の協力関係を進めていくことがソ連としても得策ではないか。そういうことをブレジネフ書記長にも伝えてほしいということは、トロヤノフスキー大使に私がしばしば言う言葉でございます。
  132. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 三木さん、この話の内容をすりかえてはいけません。私は、ここでの話の中は、いまのような北方領土を放棄する方がいいか悪いかなんということを、いまあなたに聞いておるのじゃないのです。よろしいか。あなたも私どもも、日本の国のコンセンサスが、そのように北方領土の放棄なんかはいけないことだということになっておるのにもかかわらず、あなたに最も近いブレーンだと言われる平沢論文は、その逆のことを提案し、しかも、それがあたかもあなたの、日本総理大臣三木武夫の意図であるかのごとき文面になっておるというのですよ。そしてそれをあなたは、これは人のことだから、人格があるのだから知りません、こう言われるが、いま外国にこの雑誌はどんどん出ております。日本でも翻訳されております。私どもが読んだって、国会の中ではたてまえ論ばかり言ってなかなか本当のことを言われない三木総理が、ははあ、やはり自分のブレーンには本当のことを言っているのかな、こういう疑いを抱かざるにはおられない状態だ。あなたはこのくらいのことが――いまのお話の中でも、あなたがいまここで言われる話と、この論文に書かれておる内容と、完全に逆さまになっておる。そのような事実に対して、これまであなたは沈黙を守られておる。私は、日本国の総理として、外国においても、日本国民に対しても、相当な間違いあるいは誤解を受け得る状態に対しては、明確にその誤解を払いのけねばならないと思いますが、いかがでございますか。
  133. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私のことに関していろいろなことをそういう第三者が言う場合において、必ずしも正確に伝えてない場合もしばしばありまして、平沢論文が私の考え方を代弁するというようなことは絶対にあり得ないことでございます。彼は彼としての立場で書いたわけであって、このことについては、私はそういう事実も知りませんでした。フォーリン・アフェアーズに書いたという事実も知らなかったわけですが、自民党の内田議員の本会議質問最初に出まして、そうしてそのときには、北方領土の問題について私の考え方を明確に申し上げたわけであります。その後しばしばこういう質問がございまして、私の態度を明白に申しておるわけで、これが誤解を与えておるとは思いません。国会においてもう再三ですからね。きょうが初めてじゃないのですから。何回も私の考え方というものは述べておるので、そのことが国民の皆さんにも誤解を与えておるとは私は思わない。国会という場において、何遍も何遍も繰り返して私の考え方を述べておるのですから、そのことは御理解を得ておると考えておるわけでございます。
  134. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 政治家の発言というものはなかなか信用されがたいものです。しかも、いいかげん答弁じゃございませんけれども、マスコミの言うならば権威ある機関、それに似た感じを持って言われた場合には、その影響力が甚大でありますことは、よく御承知のところであります。少なくとも日本の中において、普通の雑誌、新聞等で、いまのあなたの意図と全然違ったことをあなたが言っておる、こう書かれた場合には、当然訂正を要求するか、あるいは何らかの方法でその取り消しを要求されるはずだと思います。しかもこの問題は、平沢さんという人があなたのブレーンであり、しかもそのことは相当に公になっている人でありますがゆえに、なおさら、その影響の及ぶところ、その疑いは深まるということであります。考え方によっては、一つのアドバルーンという見方も成り立たないわけではありません。したがって、いまこれほどこの委員会の審議において、明白にこの平沢論文に書かれておることと三木総理の意図とは異なるということが言明されたのならば、いま現にここに書かれた物も発売をされており、外国の中においても読まれており、日本の中においてもばらまかれておるのでありまするから、私は、適切なる方法をもって、その論文の内容のこことこことは私の意図とは異なるということを明確にして、国民や国際的に誤解を解くべきだと思いますが、その措置をとられますか。
  135. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この国会でこれだけしばしば申しておるのですが、そういう誤解があるとするならば、その誤解は解くような方法は考えます。
  136. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて言いますけれども、あなたの考え方がこうだということではなく、平沢論文にこう指摘されておるけれども、平沢論文の指摘と私の意見とは違いますという釈明でなければ、これは意味をなしませんよ。そのような行動をとられますね。
  137. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ここでこうやってテレビの前に立って私がこういうことを言っておることも、そのことの一つの私の行動でございます。そのほかにもいろいろそういう誤解を生じないような方法は、私は考えることにいたします。
  138. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて言いますけれども、週刊誌その他で少しでも間違ったことがあるならば、恐らく政治家の、言うならば一身上の問題であっても、必ず取り消しを要求し、具体的なそれの釈明をするのが普通であります。このような大きな間違いが文書として書かれており、行われておることに対して、この国会を通じてというような言い方は、これは私はナンセンスだと思います。日本国の総理大臣として、総理大臣の意図が明確に曲げられて外国にも国内にも伝えられておる行為に対して、その文書は間違いであるということを言われるのはあたりまえじゃないですか。その措置をとられますか。
  139. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 だから、これがナンセンスだとは思いませんよ、国会の場で言うことが。それがまたその他の方法においても、誤解を生じないような方法は講ずることにいたします。
  140. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて私は、どのような措置がとられるかをはっきりと見きわめながら、この問題は保留して先に行かせていただきます。  いま、国連の場を中心にして、朝鮮半島の問題が国連の言うならば討議の中心課題と相なっておりますが、朝鮮半島の問題はなかなか重要でありますることは、御承知のとおりであります。私は、総理がこれまでたびたび、南北朝鮮の自主的な平和統一が望ましいということを繰り返されておることは承知しておりますし、そのことはまたわれわれの願望でもあり、朝鮮民衆の願いでもあると思います。しかしながら、現実の政治はその逆の傾向をたどろうとしておることは、私は事実だろうと思います。したがいまして、この事態に即しまして、三木総理は、朝鮮半島の緊張緩和という方向を進めるために、今後どのような方針で臨まれ、どのような外交活動を展開されようとしておるのか、三木総理の方針を承りたいと思います。
  141. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、朝鮮半島の現在の一つのバランスといいますか、これはやはり維持することが必要である。急激な変化は朝鮮半島の緊張緩和にはやはり役立たない。そうして七二年の南北共同声明の線に沿うて南北の対話が行われろように、朝鮮半島における環境といいますか、そういうふうな対話が行われるような環境をつくり上げることに対して、日本もまた関係諸国もできるだけ協力をする。そうして朝鮮半島に、誤解に基づくか、あるいはその他の理由によってでも、再び武力衝突が行われるような事態を絶対に避けるということに、われわれが関係諸国と協力して努力をしなければならぬ、こういうふうに考えています。
  142. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そういう方針のために、日本に一番近い一番大事なところです、どのような外交活動を展開されようとされますか。
  143. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国連においては、いま国連軍の解体に伴って二つの決議案、この現段階についての具体的な点については外務大臣から触れますが、何とかして、やはり休戦協定によって維持されておりますから、この一つの骨組みというものは維持したい。そういうことによって、朝鮮半島の現状というもの、このバランスを維持するためには、休戦協定というものを、形はいろいろ違うにしても、あの骨組みを維持していくことがやはり朝鮮の緊張緩和の一つの前提になる。こういう点から、決議案についても、そういう形において、いきなり米軍、国連軍のもとにある軍隊が直ちに撤退するというような、一方の出てきておるような決議案というような形では、急激な変化を与え過ぎますから、現状を維持して、しかもその間に、南北の関係はもちろん、国際的な環境も、できるだけ緊張緩和の国際的環境をつくって、南北の話し合いができるような、そういう雰囲気をつくり上げるために努力をすることが必要である。
  144. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 当面、ともかくも北と南の二つの朝鮮が平和的な形で共存体制をとる、そういういまの状態をなるべく、言うならばやわらかく包みながら、そのような形で統一への道をその中から探っていこうということ、そしてそのために環境づくりをしようではないかということ、その方針は私、賛成であります。したがって、その方針は結構でございますが、その方針に従ってどのような外交活動が展開されるかというところに問題があると思います。  そこで、むしろそれならば宮澤外務大臣にお伺いいたしましょうか。いまの方針に従ってやるといたしましても、これまで、米、中、両朝鮮四カ国会議というキッシンジャー長官の提案について、まず宮澤さんは、この提案を事前に承知されておったのでしょうか、お伺いいたしたいと思います。
  145. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 事前に承知しておりました。
  146. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、拡大会議というものの中に日ソが一緒になって入ろうというお話も、その中に入っておったわけでしょうか。
  147. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私が承知をしておったばかりでなく、わが国として推進しておりましたのは、先ほど佐々木委員が言われましたような、そのようないわゆる対話、わが国の決議案は――この対話に韓国を除外をするということは現実的でないというふうに、先方の決議案を私どもは批判をしておるわけでございますが、いずれにしても、そういう対話以外にこの問題は解決する方法はない。そこで、そのことは、キッシンジャー国務長官に何度も私ども実は申しておるわけでございまして、それがあのような提案になったものと存じます。ただ、その際わが国がいかにすべきかということにつきましては、私は今日まで一言も申したことはございません。
  148. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 わが国がいかにすべきかは一言も申したことはない。わが国がいかにすべきかということに対して、三木総理は指示をされたことがございますか。
  149. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国連では、わが国がこの対話ということを一番最初から推進しておるということは、実はよく知られておりまして、南、北、米、場合によりましてソといったようなことが考えられるわけでございます。あるいは中国もあり得るかもしれません。とにかく、そういう小さな場からなるべく大きな場へ、できるだけそういう環境が馴致されるようにという対話をわが国が従来から推進しておりますことは、これは国連では周知の事実になっておりますけれども、その際、わが国がどうすることがこの対話の環境を熟成させるのにいいかということは、なおしばらく私は推移を見ておる必要があるであろう、こう考えておりますので、わが国がその際、そういう場が現実にできていきますときに、どのような態度をとるべきかについては申したことはございませんが、そういう対話がどうしても必要であるということは、実はわが国が最初から各国に、いわば先に立ちまして説得をしておる点でございます。
  150. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 朝鮮半島の緊張緩和のために四カ国ないしは六カ国会議を開こうではないかというこの構想は、御承知だと思いますが、従来から民社党の根本方針です。そしてたびたび、この方針に従いまして、三木総理にも宮澤外務大臣にも、この方針を伝えて善処を要望いたしております。しかし、その都度はね返ってくるのは、それは言うならば実現不可能な話であろうということでありました。今度はキッシンジャーが言うたから実現可能になったのでしょうか。そしてその方向に向かって努力されるということでしょうか。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、なかなか一足飛びに実現可能であるというふうには、あるいはまいらないかもしれないと思っております。今回この話が一つのチャンスであると考えておりますのは、両方の決議案がございまして、しかも対話という点では両方の決議案に共通項があるわけでございます。共通でない部分は、いわゆるアルジェリア決議案は韓国を排除するということでございますから、それでは私どもは現実の対話ができないではないか。私どもの決議案は、やはり韓国を排除すべきではないというふうに言っておるわけでございますが、ただいまのところ、いわゆるその小さな対話の場、さらに大きな対話の場、いずれの場も、きわめて実現性が高いというところまでは実はまいっておりませんで、このたびの決議案を通じての討論の結果、各国がそれ以外に方法がないということでコンセンサスができ上がることを私どもは願っておりますし、最善の努力をいたしたいと思っておりますけれども、現実にそういう対話の道が開けそうだと申し上げるまでにはまだなっておらないように考えております。
  152. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 この両決議案の、言うならば票争いあるいは先議権争いというものが、むしろ両朝鮮の対立関係をあおる結果にはなりませんか。そしていまの過程の中で、アメリカに追随するだけではなく、日本としていまここで本当にこの問題について行動しようと思うならば、そろそろ独自な行動をしてもいいようなチャンスや可能性や、あるいは配慮しなければならぬ問題が出るのではありますまいか。私どもが素人向きに見ておりましても、言うならば専門家の票の取り合いみたいな、外交専門家同士の話のような気がしてしようがないわけであります。したがいまして、ここまで来ておるというと、たとえば私どもが常識的に見ても共通な面の、国連軍の撤退なら撤退ということだけを単純明快に決議をして、それの運用をめぐってだんだんと話し合いの道を探るとか、アメリカが決めたもの、それにくっついてわあわあと票を取るということではなくて、何かここで、先ほどの緊張緩和の方向に向かって外交努力をしようという際に、一番身近で一番影響力を受けることの多い日本として考えるべきときが来ておるのではないか、チャンスも来つつあるのではないかという感じがいたしますが、そういう、たとえばいまの単独決議案みたいなことをお考えになるようなことはございませんか。あるいは出てくるような見込みはありませんか。
  153. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御質問の御趣旨はよくわかるわけでございますが、ただいまの問題としましては、北側が韓国を交えた対話を拒否しておるという事実がございまして、それの反射を受けまして韓国自身が、この際、いわゆるわが国等の二十八カ国決議案が成立するまでは、余りその対話という面を表に出すのを好まない。これはいろいろ戦術的な考慮もあろうと思いますけれども、そういうことが事実問題としてございますので、私どもとしては、やはり韓国も入らなければ有効な対話はできないということで、国連の多数の同意を得るためにただいまは私どもの決議案の成立を図っておるというのが現在の姿でございますが、その結果として、やはり国連のコンセンサスが、韓国が入らなければ有効な対話ができないではないかということになりますれば、そのことがおのずから北鮮に一つの作用を及ぼすであろうというふうに私どもは期待をいたしておるわけでございます。
  154. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そのようなたてまえ論とは別に、具体的にキッシンジャー長官を中心とする動きが現に始まっておるんじゃないでしょうか。私どもは、そのような感じで日本にも立ち寄られたであろうし、中国にも行かれたであろうし、そういう動きが現実に始まっておるのではないかと思うわけです。そういう動きに対して日本外交は、言うならば常にたてまえ論だけを表面に見るかっこうが強過ぎるのではないかという批判をしておるわけであります。遠いところのことであるならばいざ知らず、朝鮮半島ならば、全然日本の言葉でもそのまま通用するような一番近いところ、しかも一番感覚的に認識の十分なところ、それを、外国人のバタくさい感覚でもってそこをろ過して、日本に初めて輸入されるようなやり方というのはどうでしょうか。私はいまそろそろそういう行動が始まっておるのではないかと思いますけれども、したがって、こういう公の場で言っていいことと悪いことがございましょうから、それはあえて私は聞こうとは思いませんけれども、しかしながら、いまのたてまえ論とは別に、現実に新聞紙面でもそのような動きが開始されておる。そのような意味で私は、今後国連の場におきましても、二つの決議を追い求めるだけではなくて、いまの共通な部分だけを取り上げて単一の決議にでもし、あるいはその決議の今後の処理をめぐって、あるいは処理をしようというところから話し合いを求めていこうという、そのような行動も、日本としてもあり得るし、あるいは配慮しておる人々も日本以外にもあるのではないか、その辺のことを私は申し上げたわけであります。したがいまして、この問題につきましては十分な配慮をお願いすることで先に行きます。  ここで一つお伺いいたしたいと思いますが、この問題に関連をしまして、ソ連のいわゆるアジア安保という構想がございますが、ソ連のアジア安保という構想について、ソ連から日本へ、言うならば提案的なことでもあったことがあるか、あるいはこれに対して日本政府はどういう態度をとられたか伺いたいと思います。
  155. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今年の一月にモスクワで会談をいたしました際に、そのような構想についてグロムイコ外務大臣から非公式に話があったことがございます。それに対しまして、私どもは、まず中国がどのように反応するであろうか、次に北鮮はどのように反応するであろうか、二、三の質問をいたしました。それに対しては、ソ連側は、両方とも賛成であるという答えでない、むしろ逆の答えをしておりました。また、わが国の立場としては、そのような構想が将来考えられるにしても、その前に懸案である領土問題が解決されて平和条約が結ばれなければ次の構想には移れないと自分は考える、ということを答えておいた次第でございます。
  156. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、この夏、先ほど申し上げましたように、民社党の四班の調査団の一つとしてのソ連調査団に参加して、ソ連の政府関係者とこの問題についていろいろと話し合いをやってみました。言うならばこの構想についての方針説明は、だれから聞いても同じようなことであります。しかしながら、この構想が持っておるところの基本的な原則だけを挙げて、それを実現しようとする方法論がないではないか。どういう手だてで、どういう方法で今後その問題を推進しようとするのかという問題を投げっ放しで、話し合うたびに、話はわかった、基本的な考えに一つ一つ反対する理由も見つからないと思う、しかしながら、ヘルシンキ会議と似たようなかっこうでアジアの各国が共同のテーブルに着いてそのような方針を話し合おうという、そのことをやろうとしておるのか。それであるならやれっこないじゃないか。東北アジアには東北アジア、東南アジアには東南アジアのおのおの独自の問題があって、それを中心にして動こうとしておるのだから、したがって、それを一遍にまとめてやろうとしても私は不可能だと思う、そのことはソ連でもよく知っておるはずじゃないか、そのことが可能なまでソ連側はアジアの安全保障という問題に対して具体的な方針と提案はないのか、こう言って詰めました。いろいろな話の段階で、方法論についてもいろいろわれわれは考えておる、そして方法論についてまとまった提案はする段階には行っておらぬけれどもという注釈をつけながら、現在の考えの中で、アジアの全体会議みたいなものだけではなくて、アジアの一定の部分について、一定の地域における特殊な問題を中心として話し合う機会もつくってもいいという感じを持ちながらこの問題に対処しようとしておるのではないかと私は思いました。  たとえば東南アジアでは、御承知のごとく、いま経済開発を中心とした問題が最大の問題でありましょう。そしてこれを中心としておのおの利害が錯綜しておる、外交関係がいろいろと入り乱れておるが、一つのそういう問題を中心として話し合いの突破口を東南アジアでつくってみてもいいのではないか。それならば、同じ意味で東北アジアにおいても似たような問題がある。言うならば朝鮮半島の平和的あるいは緊張緩和という問題をめぐって、その話し合いが行われてもいいではないか。おのおのそのようにアジアにおける地域、地域の一番特徴的な問題を中心として話し合う用意ありや否やというような方法論を探ろうといたしました。それに対して、感触としては、十分にそれらも考えようとしておる姿勢を私は痛感いたしました。  したがいまして、言葉で先ほどのたてまえ論を中心と言った場合には、朝鮮半島の問題に対しても、わかり切った、木で鼻をくくったような答弁しか返ってきません。しかしながら、その奥にひそむものを想像するならば、あるいは推定するならば、いろいろな模索が行われていることを私は痛感をいたしました。そしてその意味において、東北アジアにおいて朝鮮半島問題を中心としても、私は、いま一遍に共同のテーブルに着くことが不可能であっても、似たような状況を今後つくり上げる努力は決して徒労に終わるだけではないのではないかという感じがいたしました。そして、そのような努力がこれまで日本外交によって行われておるのであろうかということを、むしろ私どもは怪しんだぐらいであります。たてまえ論だけが行き過ぎるのでありますならば、私どもの裏道外交みたいな、野党外交みたいなものは、私は余り価値のないことだろうと思いますし、そしてそれならば、いまの国際外交の中では、日本は取り残されざるを得ないのではなかろうか。  大変失礼でありますけれども、三木さんの外交姿勢の中で、私は先ほどブレーンの問題について、平沢氏の名前を挙げてあえて批判をいたしました。しかしながら、三木総理がむしろ、そのような、いまの官僚組織の外に友人を求めながら模索をされようとするその努力に対しては、私はその必要性は感じておるわけであります。そのような意味で、いま宮澤さんは外務大臣という立場で、外務省のスタッフを使いながら懸命の努力をされておると思いますが、その行動の中には、当然にたてまえ論だけではなくて、そういう実質的な、言うならば話し合いやあるいは模索が行われてしかるべきだと思います。そのような方針に立ったときに、宮澤さん自身が今度国連外交の場で相当なロビー活動をされた乙とに対して、私は相当に敬意も表しでいるわけでありますが、そのような意味も含めて、ソ連の動きの中で朝鮮半島に対する動き、それから中国の動きの中で朝鮮半島に対する動き、それらに対しまして、アメリカを通すだけでない、直接な感覚の触れ合いがいま行われておるか、行われる可能性があるか、伺いかいと思います。
  157. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、先ほどの朝鮮半島の平和統一、あるいは対話の問題に関係をするわけでございますが、私どもはかなり早くから、この対話ということを今回の決議案の論議を通して結実させたいと考えておりまして、先般、ソ連のグロムイコ外務大臣に対しましては、そのようなことを私から申しました。詳しいことは、ただいまこれ以上申し上げることもいかがかと存じますが、それに対して、ソ連としては必ずしも拒絶的な反応を示さなかった。何がしかの関心を持っておるというふうに私は受け取ったわけでございますが、そのようなことがございました。  中国とも、朝鮮半島の問題については、過去一年ぐらいの間に話をいたしております。しかし今回は、喬冠華外務大臣と直接には実は私はこの話はあえて申しませんでした。  それから先ほどのアジア安保でございますが、確かに佐々木委員の言われたような面があろうと私は思います。それは私どもも注意して育てていく必要がございますが、他方で欧州安保との対で考えますと、やはりソ連としては、領土関係を現状で固定しようという構想が基本にあるというふうに想像すべきではないかと思います。そういたしますと、それはわが国としては、先ほど御指摘のような理由によりまして受け入れられないことでございますし、恐らくは中国も領土問題をソ連との間に持っておるのではないかと思います。北鮮の場合には、ことに現在の分断された状態認めるわけにいかないという立場でございますので、北鮮としては、もっともっと大きな問題を持っておるということになろうかと思いますので、そういうものとして考えますと、その面でのアジア安保の構想というのは、なかなかわが国としても受け入れがたいし、多くのアジアの国が受け入れにくいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  158. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 アジア安保という構想自身が特別な構想であるとは、私はまだ思っておりません。たとえば内政不干渉原則であるとか、そのようなものを五つか十か並べて、こういう形でひとつ結びつこうではないかということだけでありまして、日本流に考える、言うならば一つのパッケージになってきちっとでき上がった提案のようなものではないと私は考えております。したがいまして、その中身自身も相当に可動的なものでありますし、同時にまた、そのような意味で私は、北鮮なら北鮮の立場はこうであろうからこうであろうという、日本人の大変頭のいいシャープな推理だけでは行えないところに現実外交の動きがある。したがって、そこにたてまえ論とは別な意味で可能性を探ることが大変必要だろう、こう思うわけであります。そのような意味でどうか今後ひとつ御努力をいただきたいと思います。  ただ私は、宮澤さんの、国連ロビーという言葉は失礼かもしれませんが、動きの中の話の中で、軍備を持っておらない日本としては話し合い以外にはないので、その意味で苦しいのだ、したがうて、あっちもこっちもべたべた、べたオールモーション、オールべたモーションみたいに見見て、だけれどもそれは真意ではないのだ、こういうような弁解がましい話があったと私は思います。この問題は私は、下手をすると、日本人自身が考えの根本において考え直さなければならね問題を含んでいるような気がいたします。軍備があろうとなかろうと、他国に対して、どこの国に対しても事を構えず、話し合いによって具体的な問題を処理していこうということのために外交はあるのだと私は思います。したがいまして、現実外交の中で、力の裏づけや、あるいは金の裏づけというものが相当な圧力になることはだれでも承知しておりますけれども、だからというて、その背景がないから行えないというものではないと思います。むしろ私は、これは批判があるかもしれませんけれども、戦前の日本外交においてむしろ武力というものが背景にあり過ぎて、それが目立ち過ぎたところに、威嚇外交的な批判が出た危険があったのではあるまいかと思うわけであります。  同時に、今度三木さんを中心として大変情熱を燃やしておられるようでございますけれども、主要国における首脳者会議というものに対して一つの期待をかけられておるようであります。私は時間があったら触れようと思いましたが、時間がございませんから先行きを急ぎますけれども、やはりこれの一番中心問題は、どのようにして国際協調を果たすかということであり、しかもそれは、一つの課題は南北問題であることは言うをまちません。  ところが、南北問題に対して一番消極的な態度をとった日本外交が、これまで批判の対象であったことを御承知いただきたいと思います。そしていまの宮澤さんの言葉を裏返して言いますと、力がないからこのごろはやりにくい――木村前外務大臣の国連の経済特別委員会における問題の代表演説、これに対する自己批判も含めて、最近日本は外貨事情が悪くなったから、したがって国際協力に対してはなるべく消極的であった方がいいぞとか、言うならばエコノミックアニマルを逆さまに絵にかいたような、そういう発想やそういう牽制が多過ぎるのではあるまいか。逆さまに言いますと、それならば日本経済大国として大変余裕を持った外交事情にあったときに、南北問題に対して、あるいは国際協力に対して、最も積極的な方針が日本の外交の中で打ち出されたかどうか。このときに大変その方針が打ち出されておったけれども、いま金がなくなったのだから、あのときに言ったほどはできないわというなら、話はわかります。しかしながら、日本の外貨事情が一番よく、経済大国として国際的にむしろ脅威の的になっておったころに、南北問題に対して一番迷える態勢の状態であったし、そのような意味で積極的な姿勢をとれなかった。ここに日本外交の根本の配慮すべき問題があると私は思うのです。力がないからということ、あるいは金がなくなったからということではなくて、力も金もなくても、基本的にやらなければならぬ方向に対して最も明確な方針をとって、そして積極的な姿勢をとろう、その姿勢が国際的に映れば、その外交は評価されると思います。そしてその中で、力の限界に応じての協力が応分の協力になるだろうと私は思います。しかしながら、その意味で基本的な姿勢は、逆向きに力がないから、金がないからということじゃなくて、金がなかろうと力がなかろうと、同時にまた、事を構える、構えないにかかわらず、あらゆる国に対して基本的なそのような平和外交を続けようとすることでありますし、いまの南北問題についても、そのような立場から最も積極的な姿勢が従来もとられるべきであった。この反省に立ってのみ今後の外交問題が展開できると私は思います。したがって、首脳者会議に臨まれる方針に対しても、私は、通り一遍のいまのリップサービスのような演説ではなくて、そのような裏づけをはっきりと覚悟に決めて今後の日本外交の路線を打ち立てられたいと思うのであります。御所見を承ります。
  159. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 佐々木君の御指摘のように、これからの二十世紀の後半から二十一世紀にかけて、南北問題をどう調整するかということが世界の平和、繁栄の基本に横たわると思います。日本は何といっても、今日の経済事情をごらんになっても、GNPは大国であるけれども、経済実力というものはまだついてない。国内にもいわゆる公共的な施設、社会資本と言われるものが諸外国に比べて非常な立ちおくれであります。だから、そういう制約はあるけれども、日本の将来の外交というものを考えてみると、この南北問題に対して日本が積極的にやはり寄与していくことだと私は思う。日本はよその国よりも、開発途上国の苦しみというものは、近代的な国家として日も浅いわけですから一番わかるわけですよ。アジアという、こういう社会的にも経済的にも立ちおくれている中に日本は位置しておるわけですから、こういう問題について、金がないときにはないでやむを得ないのですけれども、日本自身が将来どうこの問題に対処していくかという一つの構想は示さなければならぬ時期だと私は思う。そういうふうなことでなければ、いろいろな会議をしても、今度の会議においても、単に一内閣、三木内閣という問題よも、戦後初めてですから、ああいう多面的な国際会議日本が出ていくのは。そういう意味ですから、日本としての一つの、世界日本という国が問われるわけでありますから、この問題に対しては、日本も相当腹を決めてこの会議には臨まなければならぬと私は考えております。
  160. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 三木さんの方針は大体いいんです、いつでも。方針はいいんですけれども、大変失礼な言葉でありますが、それの裏づけが具体的な政治活動、行動となってあらわれがたいところに、常に問題があると私は思うのです。今度の国際会議が重要であればあるほど、大変具体的な内容を今後持たなければならぬことになりますから、私は、どうかそのような形で十分相談をされて、具体的な行動の裏づけを持って対処していただきたいことをお願いいたします。  次に、経済問題に入りたいと思います。  福田総理にお伺いをいたします。  今回の第四次景気対策の実施に伴いまして、五十年度経済見通しの改定見通しを九月に決定されました。その際、各経済指標の修正、改定が行なわれたのにもかかわりませず、いわゆる消費者物価上昇率のみは、一けた、九・九%、変更されておりません。私は、他の経済指標から見て、このままもし推定することが許されるならば、本当は消費者物価上昇率も変更し得る、あるいは八%台にまで落とし得る可能性を持っておったような気がするわけであります。しかしながら、それにもかかわらず、他の数字が全部動いておる、相当に、大幅に動いており、卸売物価もその例外ではありませんが、そのように動いておるのにかかわりませず、この消費者物価上昇率だけは、春約束されたままきちっと動かされません。むしろ私は、いま言いましたように、引き下げることが可能であるような情勢であったかもしれないのに、おろされていないところに、いかなる配慮があるのであろうかと思うわけであります。これは、もし伝えられるように、石油値上げという問題を見込んでおられるならば、どの程度見込んでおられたのか、その辺の事情をお聞かせいただきたいと思います。
  161. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 石油価格の引き上げという問題が仮にありましても、消費者物価に及ぼす影響は零ポイント以下というくらいな状態だろう、こういうふうに思います。そういうミクロ的な見方はしてないのです。大局的に見まして、消費者物価は今月はどうなるでしょうか、恐らく一〇%を切る、こういう状態になるだろうと思う。これから先の動きを考えてみると、これはだんだん冬に向かう、野菜物なんかが一体どうなるかとか、いろいろ動きがあるだろうと思うのです。そういうことを考えまして、消費者物価は、とにかく前々から九・九ということを国民にも申し上げ、国民もこれを期待しておる、その期待にこたえなければならぬ、こういうふうに存じまして、これは据え置きとする、こういう考え方をとったわけです。この据え置きの考え方を乱す要素というものは、私はいま見ておりませんです。大体これでいけるだろう。しかし、これよりそう大きく下げ得るか、こう申し上げますと、これはなかなかそうもいけないような、天気の状態とかいろいろありますから、また、国際価格の問題等、そういうものもありますから、そこも踏ん切りがつかぬ。しかし、とにかく努力をいたしまして一けたにはいたしたいという念願を込めまして据え置き、こういうふうにいたした次第でございます。
  162. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 河本通産大臣にお伺いをいたします。  きのうも話がちょっと出ておりましたが、石油の値上げを契機にいたしまして、石油や海外資源の高騰を受け入れたいわゆる新価格体系というお話がちらちら出ております。この新価格体系ということが、私どうにもわからぬわけでありますが、いま新価格体系という言葉で新聞紙上使われておるものはどういう内容を持っておりまするものか、どうもこの辺の推進力は通産省にあるようでありまするので、お伺いをいたします。
  163. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 新価格体系という言葉は、私はっきりした定義はないと思います。現在使われておりますのは、一昨年の秋に石油が数倍に上がりまして、それを機会に一連の価格の引き上げがあったわけでありますが、なおこの石油の数倍の引き上げに伴う新しい価格体系に乗っていないもの、こういうものが相当残っておるわけでございますが、そういう乗りおくれたものを新しい石油価格に見合うような価格体系に持っていく、こういう趣旨に使われる場合と、それからもう一つは、現在は大部分の企業がいろいろな意味から赤字経営になっておりますが、この赤字経営になっております大部分の企業経営を、逆に大部分を黒字経営に持っていく、そういう意味での新価格体系、こういう場合と二つあると思うのです。でありますから、漠然として使われておる、こういうふうに理解をいたしております。
  164. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 普通の意味で言われておるという理解に立つならば、私は、原材料の高騰がそのまま今度は新価格体系という名前で上乗せされるということのように感じますが、そうではありませんか。
  165. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは非常に大事な問題だと考えます。つまりいま通産大臣が申したように、二つの意味がある。特に産業界なんかでは、新価格体系だ、こういうので、いま操業度が足りない、そういうようなことも原因で赤字になる、何というか、赤字からの脱出口を新価格体系という名のもとに価格改定をすることに求める、こういうような動きがあるわけです。私は、それは妥当ではない、こういうふうな見解でございます。そうじゃなくて、新価格体系と言うと、少しどうも統制経済下のような響きがしますが、新価格水準と言った方があるいは適当かもしれません。この新価格水準というのは、まあ新価格水準に限らず、とにかく価格は生産費と需給、この二つの要因で決まるわけです。その二つの要因の中で、昨年一月とにかく原油の四倍という問題が起こってきたわけです。そこでコストが非常に上がったわけです。製品コストがおしなべて上がってくる。そこで価格上昇という問題が起こってき、さらにそれが需給要因で消されて、そして今日の水準に移行しておるという状態である。こういうふうに私はとらえておるのです。その状態ですね、これは私はそういう状態が妥当である。その状態のもとでどういう問題が起こってくるかというと、操業度が低い、そういうようなことから企業経営が苦しい。そういう問題がありますが、この苦しい、そういう問題の解決は、操業度を上げるということで解決すべきである。それでなければ、これは非常に総合的、一般的な物価高ということになり、価格政策としてきわめて重大な局面に到達するであろう、こういうふうに見ておるのです。  私どもが新価格体系への移行と言っておりますのは、赤字だから、その赤字を消すために値段をつけかえをするんだという意味じゃなくて、たとえば公共料金のごとく、需給とか、あるいはコストとか、そういうものの関係なく石油が四倍になったにかかわらずその価格改定を行わずに来た、それらのものをこの際価格の改定をする、これが新価格体系への移行の問題である、こういうふうな理解でございます。
  166. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 福田総理の指摘のごとくに、この問題は大変重要でありまして、後で触れる問題でありますが、むしろ、これまでの資本主義経済自身のメカニズム、あるいは国際経済のメカニズムにまでさかのぼらなければなりませんし、そして下手をいたしますとそれはそのまま、いま三木総理が言われております南北問題の解決に対する取り組みにまで、私は発展せざるを得ないと思います。原材料の上がった分だけ、その分だけ日本の、あるいは先進工業国のその製品に上乗せするということであるならば、上乗せした製品がそのまままた途上国に売られていくことになります。そうすると、また向こうは同じように上げなければならぬかということで、言うならば、いまの富の再配分を要求し前提することによって変わろうとする動きを、従来のままのやり方で追っかけようとすることになりますから、これは私は、消化不良になって当然に解決できない状態まで持っていってしまうと思うわけです。そのような意味で、この基本的な問題はなかなか重要な問題を含んでおりますから、しばらく後回しにいたしましょう。  しかし、いまの通産並びに企画庁長官のお話によりますと、どうもはっきりしませんけれども、第一次的には、言うならば石油製品の値上げ、逆ざや現象の解消、この問題が一つ。それから、それを直接の原料としている電力、鉄鋼あるいは石油化学というような、基礎資材あるいはエネルギーの値上げの問題。そしてその次には、第三次的には、それらをまた原料としておるところの、その他の言うなちば工業製品の値上げみたいに、大分けにすると三つの分類があるような気がするわけです。そして、新価格体系という言葉一つでくくられるのかどうか知りませんけれども、その中で、少なくとも今年度一けた台と称せられる消費者物価に反映しても大丈夫消化はできると思っておられるのはどの近所まででしょうか、福田総理
  167. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあ若干のそういう石油製品なんかの値上がりがありましても、それらを吸収いたしまして、それで年度末一けたという消費者物価の目標は、これは達成できる、そういうふうに考えております。これは一つ一つの問題から考えているわけじゃないのです。大体マクロ的に検討いたしまして、九・九%、来年の三月末その目標は到達し得る、こういう見解でございます。
  168. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、大体私がいま分類した第二次以降になる、あるいは通産省あたりで予想しておられる第二次以降の値上げ問題は、その値上げ価格は今年度の問題ではなくて、五十一年度、来年度に相当な部分が見込まれなければならない状態になるとお考えでしょうか。
  169. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 たとえばOPECの問題があります。一割の価格引き上げをした。そうしますと、その影響というものは、これは百日後ぐらいな見当で出てくるということでありますから、まあ当面、仮にそういうOPECの値上げに対しまして石油価格の改定措置をした、そういう際におきましても、その影響の出てくるのは、まあ来年早々に出てきますか、あるいはさらに若干ずれますか、というような状態かと思いますが、そういうミクロ的な個々の物資につきましての検討はいたしておりませんが、多少のその程度動きがありましても、それらを吸収して三月末の一けたの目標はこれは到達し得る、こういう結論に到達しておる、さように御理解願います。
  170. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私がいま質問いたしましたのは、今年度の一けた台の話ではなくて、恐らくいまの通産省の考え方の中にある新価格体系の相当な部分は、今年度ではなくて来年度に、言うならば持ち越されるものであろうと考えられる。来年度に持ち越されるその新価格体系と称する値上げ問題を、五十一年度では相当に消化されるつもりか、福田さんにお伺いするわけです。つまりその場合には、あなたの最大の公約は三年間でいまの物価鎮静するということであります。一五%、一〇%以下、五%以下――五%という言葉はありませんけれども、定期預金金利より以下ということであります。したがいまして、この基準になってまいりますと、いま私どもがもう一番心配しておりますのは、今年度末のことではなくて、むしろ五十一年度の経済状態がどうなるかということの方がより配慮の対象にならざるを得ない。こういう意味で、いまの新価格体系問題が提起されればされるほど、五十一年度へのしわ寄せの問題を考慮せざるを得ない。しかもその問題は、公共料金の値上げもまた、同様な意味で五十一年度に集中的に来る可能性も含まれておるからであります。これらを含めて、やはり従来の方針どおり、福田企画庁長官は、三年目五%以下、それで断固として押し通して物価に対する公約は必ず果たすという決意でいま対処されておりましょうか。
  171. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、五十一年度五%以下ということは言ったことはありません。とても五%以下の消費者物価水準なんということは、期待できるような状態じゃありません。定期預金の金利の水準ぐらいを目標にしたい、こういうふうに言ってきたのでありますが、これは、五十一年度の経済見通しを一体どういうふうにするかというその際に、何%ということは数字で明らかにいたしたいと思います。特に御理解願いたいのは、五%と言ったことはない、こういうことは非常に重要なことでありますから、ひとつお願いを申し上げます。  そこで、五十一年度の物価は一体どういうふうなことになるだろうかという問題でありますが、公共料金の問題、また若干の海外からの影響、そういうものがなければ、私はかなり楽な気持ちで対処し得る、こういうふうに見ておるのです。ところが、公共料金、これを逐次改定しなければならぬ。これは非常に重荷になるわけです。そういうようなことを考えますと、やはり来年の三月時点では、年度間上昇率が一けたということの実現がやっとで、その次の一年間、どのくらいの努力ができますか、まあとにかく、私が預金金利水準ということを申し上げましたが、今日は預金金利水準というのは、二年物の預金で八%です。――いま八%だということを言っているのじゃないですよ。ないのでありますが、経済見通しをつくる場合におきましては、相当努力をいたしまして、国民に消費者物価につきまして御安心をいただけるような状態にいたしたい、こういうふうに考えております。
  172. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 五%が大変問題になりまして、定期預金金利水準ということに訂正ということでありますから、それでも結構であります。  問題は、三年間を通じてそのような行動、そのような方針で対処されて、そして三年間で大体水準以下で安定化の方向へ向かう。しかしながら、それでもなお、六月のこの予算委員会で私が指摘いたしましたのは、本当に安定した段階では、本来ならばデノミ的な方法がとられるべきことだろうと思うのですが、それをとる、とらぬにかかわらず、デノミが実施され得るような条件ということを言ったわけであります。その想定のもとに、三年後相当早い期間にそのような状態に持っていきたい。三年後はまさに本格的な安定帯をつくっていきたいという構想でありましたがゆえに、この三年間で基礎的なところまではっきりといく、この姿勢が崩れたら何とも後退をしてしまうということになるわけであります。  したがって私は、決していまの副総理の言葉じりをとらえるわけではありませんけれども、従来の姿勢に対しまして、何だか少し、いろいろな条件があるからいまは今年中やってみるのが精々いっぱいで、その次のものはもうちょっとやってみなければわからぬわい、こういう感じに受け取れますと、私がことしの春から提起しておりますものは、ことしということよりも、一体いつごろにどの程度に安定させようとするかという、言うならば中期的見通しを前提として、それを中心に行いなさい、行いましょうということで、そしてその見込みがついたから――本当はここに問題があるのでありますけれども、その見込みがついたから景気対策に入ろうということでありますから、私はそれを受けて話しておるわけであります。したがいまして、いまの副総理のお話の中でも、五%、定期預金金利水準以下ということに訂正されて結構でありますから、最初の全治三年を、必ず三年で全治させるという方向を確認されながら前進をされていただきたいことをお願いいたします。  次いで、似た立場から大平大蔵大臣にお伺いあいたします。  現在の不況対策の効果自身も、測定もなかなかむずかしいところでありますから、いま苦慮されている最中でありましょうが、いまここで話しておりますような意味で、来年、五十一年度の予算編成というものはなかなかのことだと思います。いまどんな基本的な考えに立っておられるのか、伺いたいわけであります。たとえばこの間の何かの新聞で、伸び率が一〇%程度の抑制型の方針をとりたいというような感じが大蔵省の方針のように述べられたこともあります。しかし、その抑制型という意味は、本当に過熱ということを警戒されておるからであろうか。あるいは財源面からの要請であろうか、いずれにしてもいま方針を締めておくことにしておけば一番安全だというような方針のように受け取れるわけでありますが、果たしていまどういう方針で考えようとされておりますか。来年度の予算編成方針のいまの考え方の基礎について大蔵大臣に伺いたいと思います。
  173. 大平正芳

    大平国務大臣 ことし巨額の公債、とりわけ特例公債までお願いしなければならぬ状況になったわけでございます。したがってこの状態は異常な状態でございます。で、これをできるだけ早い期間に正常な状態に返さなければならぬわけでございます。したがって、先般、財政制度審議会でも試算をされたようでございますけれども、明年度以降におきまして、ある大胆なベースを置きまして、経済が名目一応一二%の成長がある、それで歳入を見積もる、そして歳出につきましては、社会保障につきましては一五%、その他の歳出につきましては一二%、国債につきましては実額というようなラインで計算してみるとどうなるか、社会保障も含めて全部を一二%にした場合にはどうなるかと、いろいろな試算を試みたのでありますが、それは要するに特例公債というものを漸減させてまいりまして、なるべく早くそういう状態から脱却を図るにはどういう態度で歳入歳出を洗い直していかなければならないかという検討を粗ごなし的につけるためであったわけでございます。したがって、私どもといたしましては、ことしはこういうたくさんの公債をお願いするわけでございますが、明年度以降これを漸減さすという基本の方針をとりまして、そのためには、歳入歳出をどのように洗い直していくかということに基本のベースを置いた真剣な財政処理に当たらなければならぬと考えておるわけでございまして、目下各省からの一応の概算要求を受けたわけでございまして、査定にかかったばかりでございます。来年度どの見当になりますかということにつきまして、数字的にいま申し上げる用意はないわけでございますが、おおむね以上のような気持ちで来年度の予算の処理に当たってまいらなければならぬと考えております。
  174. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 歳出の伸び率を一三%程度に抑えましても、安定成長を六%程度だとするならば、それは相当な赤字国債の増加にならざるを得ぬと思います。一二、三%の歳出ということでありますならば、一体産業の成長率はどの程度予想されておるのか。つまり逆にその財源面からの要請で、来年度の経済回復をどの程度の成長率まで期待されておるわけですか、大蔵大臣。
  175. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、来年度の経済見通しというものは、企画庁を中心に政府責任において、予算の編成を前提として作業が行われるわけでございまして、そこで、それが策定されるまで私どもが勝手なことを言えないわけでございますが、私といたしましては、経済が再び高度の成長が期待できるとは考えておりません。上期から下期にかけましてやや上向きの状況に転じたわけでございますが、それが着実に回復の軌道に乗るように期待をいたしておるわけでございまして、そうすることによって、期待できる歳入をどのように厳正な配分をし、そして公債依存の部分をどれだけ削減できるかということが一番眼目になるのではないかと思っております。どの程度の成長かということにつきましては、的確に数字的に御説明申し上げる用意はありませんけれども、いまの回復足取りが確実に軌道に乗るようにということを期待いたしておりまして、高度の成長が再び期待できるとは決して考えていないということの程度で、ひとつきょうはお聞き取りをいただきたいと思います。
  176. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 八%以上の成長が行われた場合には、私は現実に過熱的な現象が起きてくると思います。したがって、八%を超えるような成長は期待もできないし、私はさせてもならぬと思います。そうしますと、いま大蔵大臣の言われるような、来年度はだんだんと赤字公債も減らしていこうということであれば、行き着くところは徹底した税制改正以外にはないということになるのではありますまいか。税制改正に対しては、そのような感じで、言うならば根本的な改正を企図されるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  177. 大平正芳

    大平国務大臣 税制改正と一口に言いますけれども、大変これはむずかしい仕事でございまして、たびたび本委員会でも問題になっておりますように、公債に依存せざるを得ないような財政でございますので、前提として、歳入につきまして、現行税制全体にわたりまして見直すということが要請せられると思うのでございます。とりわけ特別措置を初めといたしまして、全税目にわたりまして丹念に見直して、そこになお増収を期待できるルームがあるかどうか、そういう点は精細に吟味することが一つ前提になると思うのでございまして、来年度、私どもの仕事の力点はむしろそこに置かれるべきではないかと思うのでございまして、そういうことを通じて、次の、あなたの言われる税制改正あるいは増税というようなことを考えなければならぬ乙とになるといたしましても、そういう前提作業が周到に行われていないと、国会を初めといたしまして、国民各層の理解と支持が得られないと思うのでございます。  したがって、仰せのように、展望といたしましては、いずれ税制改正という方向をたどらざるを得ないのではないかと考えておりますが、とりあえず明年度の作業の力点は、現行税制の周到な検討、見直しという中から、できるだけの歳入を確保、どれだけ確保できるかということをまず見きわめる、そして課税の公平が一応そこで確保されておるという信頼を国民に持っていただいた上でないと、税制の改正ということに取りかかれないのではないかと考えております。
  178. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 税制改正そのものを取り上げれば、そのとおりだと思います。問題は、いま大蔵大臣が心配されておりますように、私のいまの質問あるいは配慮の一番中心は、来年度の経済がどのような状態になるか、どのようにすべきかということであります。今年度の下期の景気対策を中心に、大体その配慮のもとに来年度を構想すると、そこからまあまあ安定的成長率の方向が出てこようかと思う。しかしながら、それが六%程度であるならば、それは期待よりもはるかに税収は入ってこないことになりますから、したがって、よほど支出、歳出を縮減せぬ限り、赤字公債の相当な増額は当然ということになってくる。いまお話しのように、歳出を一二%あるいはまあまあ一三%まで圧縮できれば、私は相当なものだと思いますけれども、一三%まで圧縮しましても、しかもそのときに、これまでの現行税制だけでいきますと、私は少なくとも八%の成長率ではなお赤字公債は相当のものだと思うのです。しかも八%の成長率にいけば、もう急速に上がってくることになりますから、安定成長を目指す方向とは違う方向に行く危険性があるというふうに私は警戒をするわけです。  そうしますと、どの税金をどういじってという、そういうこともさることながら、財政責任者として、どれだけの部分を税制収入に期待できるか、その前提に立って初めて、赤字公債の幅、それが出てくるのではなかろうか。その意味で、いままだ税制改正としては、細かいものをどれが公正税制であるかということの吟味中だという、それはそうでありましょう。そうでありましょうけれども、それならばもう現在において、来年度財政においてははっきりと赤字公債分の枠を想定されながら、逆向きに歳出をぎゅっとしぼって、その中で、言うならばより悪化しないということ夢探す以外にはないと思うのです。そして来年、再来年あたりから本格的な増税的税制改正に踏み切る。その初年度ということで、ことしある程度実施するということにならざるを得ないと思う。その辺については、しかし、もうある程度構想がなければならぬのじゃないでしょうか。それをお伺いしておるわけです。したがって、そのことは先ほど福田総理にお伺いいたしました、来年度、五十一年度の消費者物価、それを大体五%がひどければ七、八%でもよろしい、その近所に抑えることが前提になれば、今度は、通産大臣の要求されるところの新価格体系に移行することに対しては、相当な制約が行われざるを得ないと思います。その制約があれば、なおかつ今度は成長に期待する税収がやはり期待し得ないようになってくるのではあるまいか。  その辺の関係は十分に考えられながら配慮されつつあると私は思いますけれども、それはもうそろそろ、一省の中のセクトの中でがちゃがちゃそろばんをはじいているのではなくて、こんなものでも、目の子みたいなものを中心としながら大枠から決めていって、そして細かい作業に入るべきだと思いますから、これはひとつ経済企画庁長官、通産大臣並びに大蔵大臣、その辺でもう大枠か大体の話し合いが私はできておらなければならぬと思う。その構想はまだございませんか。
  179. 大平正芳

    大平国務大臣 来年度私はそんなに高い成長が期待できるとは思いませんし、またそういう高い成長をもたらすような財政政策をやるべきでもないと考えております。しかし、あなたのおっしやるように、非常に低い成長でございますならば、来年度財政というのは大変厳しいものにならざるを得ないことも御指摘のとおりでございます。したがって、来年度の成長をどのあたりに踏ま見て、来年度の公債はどのあたりに抑えていくかという大体の見当を持っていなければならぬじゃないかということでございますが、これは御案内のように、経済の成長につきましては、財政もまた大きな役割りを買うわけでございます。われわれの方の施策いかんによりまして、成長の度合いも物価の水準も変わってくるわけでございますので、仰せのように、経済各省との間に緊密な相談をしなければならぬわけでございますが、まだ政府が閣僚レベルにおきまして相談を申し上げる段階に至っておりません。しかし、あなたがいま言われたような感覚は、私どもも共通に持っておりまするし、われわれの内閣の経済閣僚の皆さんも、そんなに違った感覚でおられるものと私は思いませんので、そういった点につきましては、周到な打ち合わせは遂げてまいりたいと思いますけれども、いまの段階でほぼこういう見当だと申し上げることにつきましては、先ほど申しましたように、まだそういう用意がないことはお許しいただきたいと思います。
  180. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、現在の経済情勢はきわめて深刻、異常な状態だと思います。したがいまして、いま内閣自身が本格的に作業自身にもリーダーシップを発揮しながらまとめていかなければならない状態であって、従来のように、各省別々に積算をしてきて、そしてそれができ上がったところで突き合わせてということでは乗り切れるかどうか、大変私は疑問です。総理を中心として、あるいは経済大臣の責任福田さんでありまするならば、それを中心といたしまして、枠組みの方を先にやりながら、あるいは並行的でも結構ですが、下からの積み上げ、その一番基本を中心にしながら、私はいま、リーダーシップを持った経済運営というのは、まず内閣自身の中に行われなければならぬと思います。そのような意味で、これまでの、各省別々、セクトを中心にして、そうして予算折衝でも、下から下から積み上げて、まだおれの出る番ではないみたいな話の、そういう状態ではなくて、内閣自身が、閣僚級を中心にして大枠を決めながら、そして省内をリーダーシップをとって持っていく、こういう体制でこの切り抜けのために全力を挙げられることを希望いたしたいと思います。(「その日暮らし内閣じゃだめだ」と呼ぶ者あり)いまもやじが出ておりますように、私は心配するのは、新聞紙上を通じてそのような作業過程がちらちら幾らでも出る。それに対する言いわけに追っかけられてしまって、本当の意味経済閣僚の総合的な相談がなかなか行い得ない状態ではないか、こう推察するものでありますから、一層そのことを強く要望するものであります。  次に、四次景気対策を中心にして、われわれが批判しておりましたところの、支出面において、言うならば生活関連投資を中心にしてだんだん置きかえるべし、大型プロジェクト偏重、これはまかりなりませんぞ、それはそのまま産業基盤投資を強化するものであろう、こういう批判に対しまして福田総理は、今度の公共投資の中を見ていただければ、新幹線を中心としたものは大したことじゃありません、いまのような生活投資が相当入っておりますからこうこうだ、こう言われました。私もその内容はそのとおりだと思います。しかしながら、時間もございませんが、この問題に対して二つだけ問題を指摘しまして、そうして今後の配慮を要請いたしたいと思います。  生活関連投資と産業関連投資を中心として、行政投資の全般にわたっての実績分析が自治省の手によって行われて、白書みたいなかっこうで出ておることは御承知のとおり。残念ながらまだ四十八年分しか出ておりません。あれの中を拾いながら判断材料として求めてまいりますと、なかなか重要な問題が出てきておると思います。  その第一点は、生活関連投資の多くの部分が、その事業主体は国ではなくて地方公共団体、しかも市町村を中心としたもの。市町村を中心としたものでありますから、今度の財政危機によって地方財政が一番大きな圧迫をこうむっており、今後交付税等の交付を中心にしてある程度の補いがつくといたしましても、四十八年度にはそのような投資実績は期待するほどにはいき得ないのではあるまいか。したがいまして、公共投資、行政投資全体の枠の中で、四十八年以降だんだんと改善をされてきた産業投資と生活投資とのバランスが、逆にまた生活投資が地方財政の逼迫原因を中心として圧縮されてくる危険についてであります。  御承知のように、従来は四、六ぐらいの割合で産業投資が多かった。それが四十八年度あたりから大体とんとんとなってきた。そのような傾向はもっと助長されなければならないのにかかわらず、この財政危機を中心として、中央のそのような意図とは別に、地方財政の緊迫化問題からそのような結果になることを恐れるものであります。この点を第一点としてずいぶんと御配慮いただきたいし、この問題については今後ひとつ追及をいたしてまいりたいと思います。  第二点は、生活関連投資と言われるけれども、生活関連投資の大部分が都市圏、しかも関東、東海、関西・近畿、この三ブロックを中心として、たぶん生活関連投資の七〇%程度がこの三地域中心に行われておると思います。しかもその三地域の中でも臨海部関係がほとんど大部分を占めており、その三地域の臨海部関係だけで全体の六〇%強になろうとしておる。そういたしますと、生活関連投資というのは、言うならば、日本国民全部のレベルアップ、あるいはそれの救済に充てなければならぬものであるにかかわらず、目下のこれは、都市化現象に伴って、海綿に水が吸い込まれるようなかっこうで、都市問題という大きな問題の中に吸収されてしまっておって、言うならば、国民全体のための、われわれが普通想像するような意味での生活関連投資としての効果を発揮しにくい状態であるのではなかろうか。格別生活関連投資の立ちおくれ地区は、いまの三臨海地域以外全部でありますから、言うならば、その中でも強弱はあったりいたしましても、その三地帯の臨海部だけを取り除いたあとの産業投資と生活投資とのバランスは、私はやはり相当に悪いものだと思うわけです。  そのような意味で、この問題については、新たな政策的な配慮が必要だろうと思います。今後日本経済の展望の中で、安定成長路線は、福田さんは今度の演説で明確に、前国会の六月に私どもが指摘したような意味での、成長率だけのスローダウンではなくて経済体質自身を変革しようと、私どもの言葉は少々違いまするし、内容も相当にアクセントはついておりますけれども、私どもの方向にほとんど近からしめようという意図をもって行われようといたしておりまするがゆえに、その生活関連投資の内容についてもう少し吟味をいただきながら、このアンバランスの是正を図っていただきたいと思います。  時間がありませんから飛びますけれども、その中で、農林大臣、建設大臣、農林省の大部分の投資、建設省の大部分の投資は、いまの配分でいきますと、産業投資という枠の中に入っておるようであります。しかしながら、その中でたとえば道路というものをとってみても、現在の高速道はほとんど産業投資としてみなしていいと思いますが、地方道の立ちおくれや、あるいはその中でも町村道的なもの、それから上流河川、いわゆる治山治水関係、さらに農林省でいきますと農業基盤、格別、圃場整備等の農業基盤、これらは相当にきめの細かい配慮が行われなければ、農林省内部においても、建設省内部においても、直轄の大きな仕事が必ず優先的に頭をもたげてきておりますから、したがって、いまわれわれが経済体質自身の変更を考えながらいまの経済の上向きを考えようとしているこの線に沿って、ひとつ十分に建設省内部、農林省内部において配慮されることが必要だと思います。特にいまの問題について御発言がございましたらいただきたいと思いますが、福田さんよろしゅうございますか。
  181. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 農林省におきましては、現在の食糧の世界的な情勢の中で、食糧の自給力を高めていかなければならないと同時に、いまお話のありましたように、農業地帯における振興発展を図るためにも、やはり思い切った農業投資といいますか、基盤整備を充実していかなければならないことは当然でございますし、その面におきまして、今日までも努力をしておりますが、特にいまお話しのように、地元の要請等に応じましたきめの細かい圃場整備を初めとする基盤整備事業というものを、今後大きな農政の課題として進めていかなければならないというふうに考えております。
  182. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 民社党が竹本質問によって明らかにいたしましたように、私どもは、経済安定の計画化基本法的な構想を持って、相当長期に取り組みながら日本経済体質の変革に向かって努力しようといたしておることについては、御承知のとおりであります。  私どもの認識によりますと、このスタグフレーションという物価不況が同居するこのことに対して、この現象は、インフレーションという現象、あるいは不況という現象が別々に二つあって、合同しているものではないという考え方に立ちます。これが一緒になっておるところに現在の困難があるというふうに考えます。したがいまして、これに対する対策も、従来の方針に従いまして、不況には財政金融からの刺激政策、それからインフレには財政金融の引き締め政策という従来のパターン、これを中心とするだけではこの問題にはなかなか対処できない。これは相矛盾する対策でありますから、対処できがたいと思います。そうしてその根本には、国際的な原材料の騰貴、格別、燃料の強引な高騰というものがありますがゆえに、この原料騰貴をどこで消化するかという、その消化の仕方が経済体質自身の変更を余儀なくする面も大変多いものだと思います。そのような意味で、現在われわれが直面しておるこの状態は、なかなか困難きわまりないものだと私どもは思います。  しかるに三木さん、あなたの所信表明演説において、いまが一番苦しい時期だ、インフレ不況の同居する困難な事態はあと一、二年のしんぼうで切り抜けられるという、私はきわめて安易な発言をせられておることに本当は大きな怒りを感じながら、むしろここにこそ政治責任の中心があるという気がいたします。このような安易な態度が今日の重大な不況をもたらし、そして財政危機をもたらした。このことに対して同僚がたびたび触れておりますから、私はあえて触れませんでしたけれども、こんなものは、きょうここに至らなくても――ことしの前半においても、今度のスタグフレーションという言葉を、あなたもしょっちゅう演説に使われておる。しかるにもかかわらず、この対策については、従来のインフレーションに対する対策不況に対する対策という、本来同居せざるものについての別々の対策だけ、これが頭にあって、そしてそれでやられて大体うまくいくだろうという感じから発想する安易な結論だと私は思います。したがいまして、私は一、二年のしんぼうでこの体質が切り抜けられるような状態ではないと思います。いまお話の中でも、五十一年度、来年度自身の経済計画が立たないのでしょう。物価見通しを強引に福田さんが立てられようとすれば、経済成長はスローダウンしましよう。通産大臣の要望は満たせられないでしょう。そのことは、そのまま財政、大蔵大臣に響いて、大蔵大臣自身がまたまた赤字公債の発行の累積で苦しまなければならぬという矛盾を来年度自身に持っておる。しかもこのことは、再来年度でうまくいく見込みは全然ついておらない。  しかもあなたは、今度の経済問題の大きな原因が国際原因にあるということを指摘されました。国際的な環境がここ一、二年でそんなに好転する見込みがあるとお考えになりますか。アメリカ景気が少し回復するぐらいでありますならば、それによってもたらされる日本景気については、それは少しぐらい戻りましても、日本景気の底の浅さ、そしてその底の浅さを掘り当てようとしたときには、もうすでにインフレーションの危機が迫ってくるという状態が来年でも起こり得ますよ。そのことを恐らく福田総理は考えながら、大変慎重な御答弁をなすっておられると私は思う。したがいまして、根本的にいまの原材料の騰貴を工業製品の製作過程の合理化で消化しなければならなくなってくるという、ここに南北問題の富の配分問題を中心とする深刻な問題の解決が横たわっておるわけだ。この解決に向かって首脳者会議が行われようとするわけです。私はここに、もっともっと根本的な深刻な配慮に立って現在の経済状態を見詰められながら、国際経済に対する対処の仕方、もっと積極的に対処していかなければならぬと思います。同時に、国内に対する対策は、いまの、これまでの資本主義経済経験したことのない状態に対する対処でありますから、一日一日用心深く踏みつけながら前進せざるを得ないと思います。  そのような意味において、所信表明演説で表明されたこの安易な態度こそは、三木総理の今回の経済問題に対する政治責任の根拠だとさえ思うほど私どもは理解しかねるものでありますが、時間がございませんから、御答弁はいただきますまい。どうか、いまの三木内閣だけの問題ではございませんから、十分な配慮をされながら対処されることを要望いたします。(拍手)
  183. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に奥野誠亮君。
  184. 奥野誠亮

    ○奥野委員 私は、若干の私見を交えながら、政府に対しまして所見を求めたいと思います。  まず第一にお伺いしておきたいことは、先ごろ天皇、皇后両陛下は米国訪問の旅を終えて無事御帰国になりました。しかも、日米親善に限りない成果を上げていただきましたことに、国民の一人として深い感謝をささげるものでございます。その陰には、警護その他で御苦労いただいた多くの人たちのあることも考え合わせまして、この成功にひとしおの喜びを感じているものでございます。  両陛下訪米を前にいたしまして、アメリカ国会におきましては、九月二十六日、下院本会議において、さらに九月二十九日、上院本会議において、いずれも全会一致をもって両陛下歓迎の決議がなされました。その決議は、「議会はこの歴史的な初の米国御訪問に際し、天皇、皇后両陛下に米国民の心からの歓迎の気持ちをお伝えします。」という言葉で結ばれておったのでございます。また、両陛下訪米中、アメリカ国民の多数から寄せられました好意も、テレビ中継を通じてつぶさに拝見することができました。昨年十一月、アメリカのフォード大統領が来日されますとき、わが国政党党首の中には、いち早くフォード大統領来日反対を唱えられたことがありましたのに比べまして、さすがにアメリカ国会はりっぱであると感じさせられたものでございます。他国の元首が来日されますときには、たとえ思想、信条を異にしましょうとも、心から温かくお迎えすることが、平和を大切にする国民の基本的な心構えであると信じます。  アメリカ大統領の来日、そしてまた両陛下の訪米によりまして、日米の不幸な関係はすべて完全に決着したものとして、これからはさらに決意を新たにして、力を合わせて世界の諸問題解決に努力していくべきものと考えるわけでございます。そういう意味におきまして、まず総理の御決意を承っておきたいと思います。
  185. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 奥野議員のお述べになりましたように、天皇、皇后両陛下が一週間にわたってアメリカを訪問され、日米友好親善のために歴史的な貢献をされましたことは、皆さんとともに御同慶にたえない次第でございます。アメリカ側としても、今日の日米関係をネバー・ビーン・ベター、こう評しておるわけです。こういう日米関係の緊密な状態はかつてないことであるというふうに現在の日米関係をアメリカ自身も申しておるわけでございます。  日本アメリカとの関係の深さということは、私がここで説くまでもない。しかもまた日米両国は、自由世界の中でGNPで四六%を占めるのですね。貿易で二〇%を占めておるわけです。日米の友好な関係というものは、単に日米両国のためのみならず、日米の協力というものがやはり世界に対しても求められておるわけですね。この日米両国の協力なくして、世界の問題というものはなかなか解決できないわけでありますから、そういう意味において、われわれは日米関係というものを大事にしなければならぬ。ここにおいでになる小林君も、先般アメリカに……(「いないよ」と呼ぶ者あり)いまおいでになりませんが、予算委員小林君も、社会党も、十八年ぶりにアメリカに行かれて、アメリカとの対話を再開されたということは、私は非常にいいことだと思う。反米的な立場というもので、日本の今日の安全、あるいは日本の繁栄というものは考えられないわけでありますから、ただ反米とか親米とかいうようなことで外交問題というものを処理するという態度は、日本のとるべき態度ではない。アメリカ政策に対しても、必ずしも一致せないものがあるでしょう。一致せないところは一致せないとして、やはり相互に理解をし合わなければ、日米関係を犠牲にして、日本の外交というものは私は成り立たない。  そういうわけでございますから、私も八月に訪米をして、日米の相互理解、相互信頼というものに対していささかの貢献をいたしたと私自身も考えておる。さらに天皇、皇后両陛下がおいでになって、日米の真の友好関係というものを歴史的に樹立されたわけでございますから、こういうよい関係を踏まえて、日米関係の相互理解、相互信頼というものをさらに促進していく必要があると考えておる次第でございます。
  186. 奥野誠亮

    ○奥野委員 わが国も幸いにして、今日世界におきまして主要な地位を占めるに至ったと思います。そういう意味におきまして、いま総理が御決意を述べられましたように、アメリカと手をつないで世界のために働くということは、非常に大きな意義を持つものだと考えるわけでございます。  しかしながら、わが国の過去から今日を振り返ってみますと、必ずしも世界においてそれだけの評価を受けていない。むしろエコノミックアニマルなどといった好ましくない批判も受けてまいったわけでございます。主要な地位を占めながらも、それなりに世界における相応な役割りを演じていないじゃないか、ただ利益だけ世界からむさぼっておるのじゃないかという批判から出た点もあるのじゃないだろうか、私はこんな感じがするわけでございます。  わが国は、軍事力をもって世界の秩序維持に何らかの役割りをするということは、不可能なことでございます。それだけにまた、その他の面におきまして、積極的に世界のために貢献をしていかなければならない。同時にまた、積極的にいろいろな建設的な発言もする。やがて、日本の言うことだからもっともだなあという信頼を世界から受けられるような日本の発言にしていきたいな、こういう気持ちも持つわけでございます。お互いに知恵も出していきたいものだ、かように考えるわけでございます。  十一月十五日、パリで主要先進国会議が開かれるわけでございます。それに対して周到な準備をもって臨んでいただきたい。また、日本の発言が世界の進運に何らかの貢献をするように持っていっていただきたいなと心から期待をかけておるわけでございます。  つきましては、それに出席されるに当たりましての総理の抱負をここでお聞かせをいただいておきますとありがたいと思います。
  187. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今日の世界では、一国だけで問題はすべて解決しないですね。通貨、貿易、エネルギー、食糧、けさもしばしばここで議論になった南北問題の解決にしても、日本だけではとてもこういう問題は解決できない。そうなってくると、もう世界の大きな問題はすべて世界の協力によらなければならぬ、こういうときでありますから、その中においても、自由世界の中における先進工業国責任というものはきわめて重い。皆責任はありますけれども、ことに今回集まる六カ国の首脳の持っておる責任というものは非常に重いわけでありますから、いま私が挙げましたような問題が、すべてこの会議においていろいろな角度から議論をされる。そしてその面だけで――これは一回限りでは私はないと思う。始まりである。そしてこういう問題に対して主要先進国が皆協力し合うという体制をつくることは、これはやはり自由世界のためにも相当に歴史的な意義がある。そしてこの問題を率直に話し合って、そしてみんなの協力体制をつくる。だから、こういう問題を解決する一つのアプローチの始まりである。いままでないですからね、そういう会議は。日本としてもそういう多面的な首脳会議に出席するのは初めてである。日本は、日本としてもやはり国際的にいかなる寄与ができるかということを世界的に問われる場面でありますから、今日、自民党はもとより、野党の各位の意見も私は聞いて、衆知を集めて、これからの日本がいかに世界に寄与するかという課題と取り組むための準備を整えて出席をいたしたいと考えておる次第でございます。
  188. 奥野誠亮

    ○奥野委員 おっしゃいますとおりに、まだ時間もあることですから、各方面の意見を聴取されまして、準備を整えてりっぱに日本の役割りを果たしていただきますことを、心から期待を申し上げておきたいと思います。  第二に、国会の問題についてお尋ねいたしたいわけでございます。  私は、与党であるとか、野党であるとか、そういう立場を離れまして、いまの国会の姿、これでいいんだろうかという心配をしているわけでございます。与党、野党みんなが真剣に、いまの国会の姿、これでいいんだろうかということで考えながら、国民から信頼される国会、国権の最高権威と言われるだけの中身を培うようにしたいな、こんな願いを込めてこの問題を取り上げたわけでございます。  今日、国会の現状につきましては、国民の間から多くの疑問が寄せられているわけでございます。新憲法が施行されてもう二十八年になるわけでございますけれども、国会の運営が軌道には乗っておりません。私たち自身も、こんなことでよいのだろうかと、しばしば自分たちの責任めいたものを感じておるわけでございます。それだけに外から見ました場合には、一体国会は何をしているんだろうかという気持ちがもっと強く出るのじゃないだろうかと感ずるわけでございます。非能率なところだなということもあるようでございます。  各国会、大変長い会期を持っておるわけでございまして、ちょっと調べてみましたら、四十六年は六十五、六十六、六十七国会でございまして、二百三十四日開かれておりました。四十七年は、六十八、六十九、七十国会の会期でございますが、百九十九日開かれておりまして、比較的少ないのですが、この年には解散がございまして、そのせいもあろうかと思います。四十八年は七十一国会でございまして、二百八十日開かれておりました。そして四十九、昨年の七十二、七十三、七十四国会の会期でございますが、二百十日開かれておりました。五十年の七十五、七十六国会は、現在までのところで二百六十五日ということになるわけでございます。これだけ国会を開いていかなければ諸問題が片づかなかったんだろうかと言いますと、正直言いまして、空転している時間もかなりあるわけでございます。四十七年には二十日、四十八年には五十六日、四十九年には二十日、五十年には二十六日。一般の会社でありますと、一日空転しただけでも大変な騒ぎになるわけであります。国会でありますから、何だ一日でも四千何百万円じゃないかということで済ませておられるかもしれませんけれども、それでは私は納税者の感情に対しましても相済まないような感じを持つわけでございます。もっと切実さを持ちたいもの、だな、こんな感じもするわけでございます。  同時にまた、国会は審議するところだと思うのでありますけれども、大臣が出席しなかったら審議に入らない、こういうようなこともずいぶんございます。あるいはまた、反対の法案がございますと、その前の法案をまくら法案としてなかなか進めないというようなことにもなるわけでございますし、また、国会が開かれますと、役所の責任者がみんな国会にとられてしまう、行政が停滞をするというような意見もかなりあるようでございます。  私は、自民党の国会対策委員会の副委員長をしております三原君から、しみじみとその気持ちを私に話しかけられたものでございまして、それはどういうことかと言いますと、三原君としては、野党各党を真剣に連絡して回っているのだ、誠心誠意回っているにかかわらず、自分のやっていることを、自社なれ合い、こう言われるのだと、こう言うのであります。そんなつもりはさらさらない、各野党全体に連絡をとるように誠心誠意やっているのだけれども、自社なれ合いと言われるのだ。しかし、国会の分野を見てまいりますと、衆議院におきましては、自民党が二百七十六人、社会党は百十四人、これで三百九十人になるわけであります。これに対しまして、共産党が三十九人、公明党が三十人、民社党が二十人でありますから、八十九人にしかならない。三百九十対八十九と、こういうことになるわけでございます。そこで、共産党や公明党や民社党に参りまして三原君が話しますと、社会党がどう決めているかと、こうまず聞かれるというわけであります。また、こういう状態であるものですから、三原君としましても、野党第一党の社会党に自分としてはまず話しかける、これはあたりまえじゃないだろうか。自分は当然だと思うのだけれども、しかし自社なれ合いということでなかなかまた先へ進んでいかないのだ。まじめな人でありますから、本当に自分の苦衷をしみじみと私に訴えておったわけでございまして、自民党の国会対策委員会の皆さんたちも気の毒だなという感じを、私たちは深く持っているわけでございます。  こういうことでは、国民の皆さんに申しわけないんじゃないか。だれを責めるものでもございません。政治につながっておりますみんなが真剣に考えようじゃないかという気持ちで私はこの問題を取り上げておるわけでございまして、まずこの点についての総理のお気持ちを伺っておきたいと思います。
  189. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま奥野君が御指摘になりましたように、議会制民主主義というものは、世界的に大きな試練を受けていることは事実です。世の中がこんなに複雑になり、また激動の時期に、いろいろ思わぬ事件も起こってくる。これをやはり今日の議会制民主主義というものが迅速にこなしていける能力を持つかどうかということが世界的に問われておる。ある意味においては危機だという言葉を使って警鐘を鳴らす人も、これはアメリカでもヨーロッパでもいる。それはなぜかと言ったならば、やはりいろいろ迅速に問題を処理していかなければならぬですから、そういう場合に、この今日の議会政治というものが、そんなに迅速に処理していける能力を持つかどうかというところに問題があるわけですね。国会は国民の代表でありますから、激しい議論があることは当然だと思う。いろいろ政府も厳しい批判を受けることは、これは当然でありますが、やはり国会がもう少し能率よく問題を処理していく一つの能力を持たなければ、これはなかなか緊急を要する問題は処理しにくいことになるわけで、最近フランスなども、日本と同じような景気対策をやったのですよ。やはり数日間でこの問題を国会は議決しておるのですからね。数日で驚いておる。これはいろいろその間には問題があるけれども、数日間ですからね。一週間かかっていないのです。やはりそういうことが要求されるのですね。  だから私は、これは単に自民党ばかりでないと思うのです。野党もやはり議会制民主主義を守っていく共同の責任者である。だから、自民党をやりつけるということだけで問題は解決するわけではない。やはり共通の運命を背負っているということを野党も知らなければならぬわけです。そういう意味からして、これは与野党の間でもう少し話し合いをしなければならぬ。私もこういう問題を取り上げて適当な機会に党首会談もしたい。  そうでなければ、国民から見ても、国会が開かれても審議も進んでいかない。その理由は、原因はいろいろあるにしても、審議も進んでいかないで、いたずらに国会の会期が過ぎていくということに対して国民は納得しない。これらに対して野党は野党としての言い分があるでしょう。これに対して、われわれもその言い分に対しては耳を傾けなければならぬけれども、この問題は単に一自民党とか社会党の問題でないと思うのです。共通のこれは大きな責任を背負うておる政党でありますから、この問題は私は真剣に取り上げてみたい。今日の国会の現状というものは国民は納得しないと思いますね。したがって、いま奥野君の御指摘のような問題は、これは党首会談の大きな課題として、今日の国会運営というものを、もう一遍、新しい、この激動の時期の社会の要請にこたえられるような議会政治にせなければならぬと私は痛感しておる次第でございます。
  190. 奥野誠亮

    ○奥野委員 自民党総裁として、野党の党首の皆さん方とも話し合っていただけるということは、ぜひやっていただきたいものだ、こう考えておるわけでございます。  で、憲法は私たちを、「全国民を代表する選挙された議員」、こう呼んでおるわけであります。ですから議員は一部の地域や一部の階級を代表する者ではないのであります。しかし、こんな姿では、全国民の代表ではなしに、一部の地域や一部の集団の代表になっているんじゃないんだろうかなと疑問に思うこともずいぶんございます。対話と協調の大切なこと、よくわかるわけでございますが、ルールのない話し合いでは、いつまでたっても結論が生まれてこないんじゃないだろうかという心配を私は抱いているわけであります。ルールのない話し合いではいつまでたっても結論が生まれてこない。ときには、社会観や世界観が違っていますから、対話のかみ合わない場合も出てくるわけでございます。議会制民主政治を生かそうと考えますと、どういたしましてもまず審議に入る、その次には多数決。もちろん一挙に採決に持ち込むなどすべきじゃないと思います。しかし、最後は多数決、その結果は選挙で国民の批判を求める、これが私は議会制民主政治の本来の姿だと考えておるわけでございます。  私たち国会議員は、政策をもって集まり、それぞれ政党に所属していますが、所属する政党を異にしておりましても、別に与党と野党とがいがみ合うことは何にもないのであります。ともに全国民を代表する者といたしまして、国民にとってよい政策は何であるか、与党の者であれ野党の者であれ、これを取り上げて実現して、国民の福祉を充実してまいりますことこそが私たちの責任だ、こう考えておるものでございます。  しかし、ときには、国会が階級闘争の場になっているんじゃないだろうかなと思うこともずいぶんございます。お互いが一部の地域、一部の集団の利益だけで動いてならないことは言うまでもないことでございますけれども、今日の姿から見てまいりますと、議会制民主政治を何か補強する必要が出てくるんじゃないだろうかなというのが私の疑問であります。  たとえば国民投票の制度を設けたらどうか。憲法のたてまえもございますから、国民投票だけで決めるわけにいきません。何か決める場合の参考としてまず国民投票に求める、こういうような手だてもあるのかもしれません。しかし、それも非常に重要な問題でございますから、まず地方自治体で住民投票でそういう仕組みを考えてくる、それから試験してだんだんと国政の場に持ち込めるか持ち込めないかを工夫する、こういうことも私は一つじゃないんだろうかな、こんな感じもするわけでございます。  いずれにいたしましても、国会運営のルールを確立したい。これもなかなか容易ではないだろうと思います。さらには新しい仕組みを工夫していきたい。同時にまた、長年にわたりまして議院運営委員会が議会制度調査会を設けまして検討を続けていただいておりますので、その声も聞いていただいて、議会制民主政治が国民から信頼を失ってしまわないような努力を総理、総裁としてぜひお考えをいただきたい。この点につきまして重ねてお伺いをいたします。
  191. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろな政治の形態がありますけれども、独裁的な政治の形態というものは、私は好ましいとは思わない。国民の自由とか国民の意思というものを反映することを制度的に保障してあるのが議会制民主主義ですから、これをあくまでも守っていかなければならぬ。そのためにいろいろな工夫は私は要ると思いますよ、こういう時代の変化に対して。しかし、いまのような国民投票というようなお話もありましたけれども、そういう新しい工夫をする前に、いまの国会というものを、もう少し、奥野君の言われるように、国会のルールを確立して、軌道に乗せて、なおかっこういう点で制度を改正しなければならぬというようなことで、それはそういう問題を検討してもいいけれども、私は、国会の場というものは、やはり対話と協調というものは捨てない。もし国会というものが、各党が絶対主義で、自分の言うことを聞かなければ審議にも応じないと言ったら、もう国会でないわけです。そんな国会はないわけです。したがって、やはり意見が違っても話し合って問題を処理しなければ――会期というものがあるのですから、会期内に処理しなければならぬ。いつまでも無期限でないのですから、問題を解決できないのですよ。  そういうので、イギリスなんかでも、もうちゃんと議運で審議の日数を決めて、この問題は何日間、何日間と決めて、そうして審議に入って能率を上げて、その日数が来たならば、まだ質問が終わっておろうが終わっておるまいが採決するというような制度をやっておるわけですね。それも一つのわれわれの研究する題目だと思うのです。  だから、何も自民党が力で押し切っていくのでなくして、いろいろな審議は十分に尽くさなければならぬけれども、結末はつけなければならぬ。いつまでたっても責任を持つ政府が提出しておる法案が結末がつかないというようなことでは、これは議会政治というものが国民から疑われても仕方がないわけでございますから、こういう点で野党の諸君と私が真剣にこの問題を話したい。そうでなければ、こんな状態が続くのであれば、議会政治の危機をもたらすことは明らかであると私は憂えておるわけでございます。
  192. 奥野誠亮

    ○奥野委員 国会の二院制度のことにも触れたいと思うわけでございます。他の院のことに口を出しますことは出しづらいわけでありますけれども、いろいろな考え方を持ち寄りながら改革を前進させていかなければならない、こういう意味で許していただきたいわけでございます。  申し上げるまでもなく、わが国の国会は衆議院と参議院の二院制度をとっているわけでございます。だから参議院におきましても、常日ごろ参議院の独自性ということを言っておられます。それは当然のことだ、こう私も考えておるわけでございますけれども、国民の目から見ますと、同じ案件を衆議院でもんだ、これが参議院に行きますと同じ姿でもんでいるのです。全く政党間の対立が繰り返されている。同じことをやっているなら一院でいいじゃないか、二院でやる必要はないじゃないか、こうなってしまうわけでございます。マッカーサーの憲法草案では一院制であったことは御承知のとおりでございまして、日本側の希望によりまして二院制に変えてもらった。基本的な点で変わったのはこの一点であります。基本的な点では、ほかは何も変わっていないのであります。二院制を許してもらった。しかし、マッカーサー司令部では、「選挙された議員」という憲法上の言葉の改正は許しませんでした。したがって、また法律でできる限りの衆議院と参議院の違いをつくったわけでございまして、それが今日の制度であるわけでございます。  そして二院をつくりましたから、二院の関係を規定せざるを得ない。大きな点は内閣総理大臣の指名でございまして、憲法の六十七条におきましては、衆議院の総選挙が行われますと、必ず内閣は総辞職、すぐに国会が内閣総理大臣を指名する。そのときに衆議院と参議院の指名が異なって話がつかぬ場合には「衆議院の議決を国会の議決とする。」こう書かれているわけであります。言いかえれば、衆議院の総選挙は、内閣総理大臣を選び出す選挙でもございます。また、予算や条約につきましても、衆議院と参議院につきましては、若干の違い、衆議院に特別な責任を持たせておるわけでございます。こういうような事情もございますので、衆議院におきましては、常にどうしても政党と政党との間の政策対決、これが浮き彫りになってくるわけであります。私はそれで結構だと思うのであります。ところが参議院には解散という制度はございません。三年ごとに半数改選、したがって落ちついた審議が参議院に期待されているのだ、こう私は考えるわけでございまして、私は常に、参議院というところは国民各界各層の代表、良識の府なんだ、批判の府なんだ、こういう言い方をしておるものでございます。しかし現在は、参議院の議員は皆それぞれの政党に所属しておるわけでございます。しかし私は、参議院の議員の皆さんたちの考え方を余り各政党が拘束しない方がいいのじゃないだろうか、政党には所属しているけれども、自由な立場で参議院の議員の皆さんたちが、おのおのの良識において静かに御審議なさることが参議院にふさわしいのじゃないだろうかという気持ちを持っておるものでございます。  そういう意味で、いま国会で問題になっております酒税法、たばこ定価法の改正法案、それから郵便法の改正法案がどういう経過をたどったかということを、私は昨日調べたのでございます。そうしましたら、酒税法とたばこ法は、ことしの一月三十一日に国会に提出されたわけでございまして、衆議院に三カ月以上ございました。十分な審議を経た上で参議院に送られたわけでございます。参議院に送られましたのは五月六日で、国会は七月四日まであったわけでございますから、約六十日、二カ月参議院にあったわけでございます。参議院において審議されましたのは、大蔵大臣に対する質疑が七日間で三十七時間五十六分、公聴会が四時間五分、大蔵、物価連合審査会が五時間四十三分、合計四十七時間四十四分の審議が行われているわけであります。それでなおかつ流れてしまっているのであります。  さらに郵便法を申し上げますと、一月三十一日に国会に提出されまして、衆議院に三カ月以上あったわけでございまして、十分な審議が行われました。そして議決をして、参議院に五月八日から送られて審議されているわけでございますから、やはり二カ月近く参議院にあったわけでございます。これも濃い審議が行われているわけでございまして、時間だけで申し上げますと三十七時間二十二分という審議が行われたようでございました。しかも廃案になってしまったわけでございます。  こういうようなことに関連いたしまして、私たちがぜひ早く成立させたいと願っておりました恩給法案、これも流れたのであります。傷痍軍人でありますとか、遺家族でありますとか、生存軍人でありますとか、退職公務員でありますとか、こういう人たちの年金を引き上げたかった。そして八月一日から実施したかった。それも流れてしまいました。これらの法案は五月八日に参議院に送られているわけでありますから、やはり二月ぐらい参議院にあったわけであります。また、こんなこともございます。内閣委員会はいつも防衛法案、これを通させないというようなことで、まくら法案――今度まくら法案になりましたのは国家公務員の旅費の改正法案でございまして、これは三月二十八日に参議院に送られておりますから三月たっておるわけでございます。  こういうことを考えてまいりますと、私は本当に問題だなという気持ちを持たざるを得ないのでございまして、これ以上立ち入って私が言うことは若干問題があるかもしれません。しかし、いまよく言われますのは、参議院は保革接近しているという話であります。私はこの言葉がどうも納得できないのであります。同時に、反自民、全野党共闘、これもわからないのであります。自民党を倒して全野党で一つのあるべき社会体制が生まれるならば、私も責任ある態度だと言えます。この社会体制をつぶしてどう持っていくのかということは何もないのに、ただ倒すだけだ、何ら政策を実現させないのだ、これは私は政治家としては責任を持たない姿勢じゃないだろうか。保革接近という言葉は、あるいはマスコミの口の端には乗せやすいものかもしれませんけれども、ただかわればいいのだというだけでは無責任きわまるじゃないか。この社会体制をどうするのだというまず絵を描いて、国民にそれを示して、そして支持を求める、こうでなければならない。いまでは、せっかく国民の幸せを念願しながらわれわれが努力しましても、ただ足を引っ張られるだけで幸せにつながらない。空転している。本当に真剣に考えなければならない時期に来ている、こう思っておるものでございます。  一応簡単で結構でございますので、一言おっしゃっていただきたいと思います。
  193. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 奥野君の御発言、われわれとしてもやはり非常に考えさせられるいろいろ問題点の御指摘であったと思いますが、今日、二院制度というものをとっておるわけです。国民も参議院に対して、良識の府としての参議院を期待しておるわけでございますから、この国民の期待に参議院がこたえていただきたいと願うものでございます。
  194. 奥野誠亮

    ○奥野委員 第三に、スト権の問題について、私の所見を交えながらお考えを伺っておきたいと思います。  この点につきましては、自民党の内部におきましても、いろんな機関を設けて真剣に討議されております。各方面の意見を聞きながら、最終的な結論を誤りのないようにしていただきたい。しかし、ここでは、私の意見を中心に申し上げていきたい、こう思うわけでございます。  私は、自由な民主的な社会であればあるほど、一人一人を大切にしなければなりません。一人一人が自由に行動できるようにしなければなりません。そうであればあるほど、ルールを守るということが大切だと考えておるものでございます。自動車がルールを破って右側を走り出したらたちまち衝突し、自動車の自由通行は禁止しなければならない。そういう意味で、ルールを守るということが自由を守っていくためにも大切なことだ、こう考えておるものでございます。ルールが守られない社会では、ルールの改正自体が意味を持たなくなってしまうのであります。ルールが守られない、そんなルールを改正したってまた守られない、改正自体が意味を持たなくなってしまうわけでございまして、社会の秩序を前進させるためには、まずルールを守る体制をつくるということが先じゃないだろうか、こんな感じを抱いておるものでございます。  ルールの中で最も厳粛なものは国法であります。国鉄その他三公社五現業の組合は、法律でストライキが禁止されております。しかし、たびたびこの法律を破って、現実にはストライキが行われておるわけであります。しかもそのストライキは、給与などにつきまして、本来、交渉を重ねてどうにも話がつかない、やむを得ずこれを行うというものでありますけれども、これまでのストライキの多くは、まず交渉の行われる前から計画的にストライキを決定しております。さらにはまた、給与そのものよりも、本来交渉の対象とならないはずの政治目的のためにストライキを行ったりしていることは、本当に残念なことだと思います。  私はときどき過激派の機関紙を見るのでありますけれども、これは中核の機関紙「前進」でありまして、これを見ておりましたら「カクマル副議長松崎明こそは反革命武装襲撃の首謀者だ」、こう書いてあります。この人は動労東京地方本部の執行委員長なんです。動労の東京地方本部の執行委員長、それが中核からねらわれている。極左の革マルに支配されている組合にスト権を与えることによって、将来政治ストをやめることを期待するなんということはナンセンスじゃないかということを、私はここで指摘しておきたいのであります。  このごろ、スト権奪還という声もかなりございます。そんなこともございまして、ストライキをめぐる新聞記事も非常に多くなっておるわけでございます。新聞紙上には、条件つきでスト権を認めることにしてはどうかという意見もございますし、それには反対だという意見もございます。反対という意見の中にはこういうのがございました。それは本末転倒じゃないか、たとえば最高時速四十キロの時速制限が守られないからといって五十キロに引き上げれば、ドライバーは一層スピードを出して、次には六十キロにしなければならならないだろう、こう言っているわけであります。こんなことを書いてありました。  私は、むしろ、いずれにしても制度を改正し、前進させようとしますためには、法秩序の遵守される社会をつくることが先決だと考えておるものでございます。遵法精神の確立、この重大性についてまず総理の御意見を伺っておきたいと思います。
  195. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 スト権の問題は、これは単に労働権の問題ばかりではなく、国民生活に重大な影響を与えるものでございますから、この問題は、われわれとしてもきわめて慎重な判断をせなければならぬと考えておる問題でございます。
  196. 奥野誠亮

    ○奥野委員 もともとストライキの権能というものは、企業利潤の分配について認められたものでございます。労働者側と使用者側とが対等に話し合えるようにいたしますためにバランスをとって、労働者側にはストライキの権限、使用者側にはロックアウト、作業所閉鎖の権限を与えることに始まったものでございました。しかし、公共部門では作業所閉鎖は大衆を犠牲にすることになりますので、できることではございません。また民間企業の場合には、ストライキが長引いたりたびたび行ったりしますと、信用が低下して利潤も減少いたします。したがって、いつまでも労働者側も使用者側もストライキをやっているわけにはいきません。双方に打撃を与えることになりまして、紛争を妥協に導く経済的な圧力がかかるわけでございます。しかし親方日の丸の公共部門、これはつぶれないのであります。何をしてもつぶれない。国家がつぶれない限りはつぶれないのであります。企業とは違います。親方日の丸の公共部門では、民間の場合のような労使の間で分配の対象となるような企業利潤がないのです。したがってまた、労使双方を妥協に導く経済的な圧力といったものもかかってこないわけでございます。ことに国鉄の場合には、ストが行われますと、大衆はその足のみならず、勤労の権利も奪われるのです。これも基本的人権なんです。自分の労働基本権は守っているつもりかもしれませんけれども、他人のりっぱな基本的人権も奪ってしまうわけでございます。その日の収入も奪われてしまうわけでございます。  私が特に申し上げたいのは、個人の利益のために大衆の利益を犠牲にするという考え方は好ましいものではないということであります。個人の利益のために大衆の利益を犠牲にするというような考え方、これはあたりまえのことだという気持ちは、これは私は捨ててほしいものだな、こういう気持ちを持ちます。  このような事情にありますだけに、これまでもスト権を与えないかわりに、その給与水準を守る方法として公共企業体等労働委員会による仲裁裁定の制度を設けてきたのであります。この制度を通じまして、それ相応に組合員の給与水準が守られてきているのであります。国家公務員、大企業に遜色のないように守られてきているのであります。私はしかし、この代償措置では不満足である、これに工夫や改正を加えろと言われれば、喜んでみんな真剣に研究したらいいと思うのであります。しかし、そんなものはいやなんだ、いやストライキの権限でなければいけないんだ、こういうことになりますと、与えても差し支えないような体制にした上でなければ、与えるべきではないと思います。  そういう意味で、私がどうしても与えなければならないということになるなら、三公社五現業を民営にしなさいと申し上げたい。民営にしなさい、そしてなるべく競争関係をつくりなさい、こう主張したいのであります。私たちは政治に責任を持っております。私たち政治に責任を持つ者は、一部の集団や一部の地域の力に迎合して当面を糊塗することはやさしいのです。集団の力にゆだねて当面を糊塗することはやさしいのです。しかし私たちは、現在の社会のみならず、後に続く人たちのために、将来の社会についても責任を持たなければならないという厳しい立場に立たされているんだということは、常に真剣に考えていかなければならないと考えているわけでございまして、まず、この点についての総理の御意見を伺っておきたいと思います。
  197. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 御指摘のようにこの問題は、われわれとしては、国鉄というものの企業体というものが、奥野君の御指摘のように、民間ならばやはり経済的な圧力がありますけれども、どうしても国の経営に属するわけでございますから、公社という形で責任を国が持つわけですから、どうしても民間のように、余りストライキをやれば、場合によったならばそれが自分の雇用にも関係をしてくるわけですから、そういうふうな圧力がないということは、御指摘のとおりだと思います。それだけに節度が要るわけですね。そういう点はいろいろ考えてみなければならぬ点であるという点は、御指摘のようなことだと思います。
  198. 奥野誠亮

    ○奥野委員 国鉄には組合はたくさんあるのです。主なものは五つだと思いますけれども、その一つが動労、四万三千人を擁しております。この動労は四十六年に暫定綱領をつくっているわけであります。その暫定綱領を基本綱領にしたいということで、この数年毎年討議を繰り返しているわけであります。ことしも八月、高松市におきまして定期大会が持たれまして、討議資料が配られたわけであります。それを見てまいりますと動労の性格がわかっていただけると思います。  この動労の組織綱領委員の中には、私が先ほど申し上げました革マルの副議長松崎明君も、東京地方本部執行委員長として五人の一人に名前を連ねております。綱領には五つ挙げております。私は、時間の関係上、一つだけ申し上げます。「われらは反動政治とその一切の権力を否認し、社会主義政権樹立のために闘う。」これが動労の五つの綱領の一つであります。これは政治団体であります。給与を上げるのじゃなくて、政治団体であります。労働組合の本質を逸脱した政治団体ということになるわけでございまして、スト権は何のために必要としているかということにも絡んでくるわけでございます。  私は時間の関係上、数点だけ拾います。これは「われらは、労働基本権の奪還、基本的人権の確立のために闘う」というところの解説の一部でありますが、「ところでストライキそのものは労働者の解放闘争の一手段にすぎないのですが、実は、このストライキ行動が労働者及び労働者階級にもたらす敵対変革は「ストライキは戦争の学校」といわれるように階級闘争への重要な役割を果すものです。要するにこれらの権利闘争は次へのステップであって、例えばストライキ権そのものが目的化されてはならないです。」ストライキは目的じゃないのです。手段なんです。自分たちの政治目的を達成するための手段なんです。ストライキ権を与えたらストライキがなくなるのじゃないのです。そこはひとつ誤解のないようにお考えをおいていただかなければならないと思います。  さらにもう一カ所申し上げます。これは、「われらは、国内外の労働者の階級的連帯を強化し、その解放のために闘う」ということの解説の一部でありますが、「国家はその合法という名のもとに暴力を行使し、間違っても暖かく労働者を守り迎えるというようなものではないのです。つまり労働者は一様に被抑圧者なのですから、国内の労働者は一つになって国家権力に立ち向うべきであります。これが階級闘争であり、階級的連帯でもあります。」こう述べられております。  さらにまた、「われわれは被搾取者であり、絶え間なき被圧迫者とされていますが、その犯罪人は資本家であります。そして共犯者というより暴力をフル動員してわれわれに襲いかかっている国家権力を一切認めることはできないのです。つまり、否定しっぱなしではなく、主体的な行動の対応として、これを認めないとする思想なのであります。」というふうに書かれているわけであります。  最後にもう一つだけ申し上げてやめますが、「尚われわれはあらゆる闘いに、その鋭さ、あるいは肉迫性をもつことが要求されます。ところでその、鋭さといい、肉迫性というそのもの」、それは「つまり敵階級が、どの程度の痛手として、不安もしくは動揺しているかによって決めることであります。」こう書いておるわけであります。  これは動労のいま討議されている、数年来討議されている基本綱領であるわけでございます。ストライキ権を奪還と言っているのは何のために言っているのか。組合員一人一人の給与を守るために言っているのではないのです。政治目的のために言っているんだということの御理解だけはぜひしていただきたいと思います。  つきましては、運輸大臣にこういう事実を知っておられるかどうかだけ伺っておきたいと思います。
  199. 木村睦男

    ○木村国務大臣 動労、つまり国鉄動力車労働組合の暫定項目、五項目ありますが、その一項目の中にいまお話にありましたとおりのことが載っておることを承知いたしております。
  200. 奥野誠亮

    ○奥野委員 国鉄総裁に来ていただいておるわけであります。私は、国鉄総裁の立場に非常に同情しております。マル生運動がこじれまして、大変荒れた職場になってしまった。これだけ荒れてしまったら、私はちょっとやそっとでは直らない、相当時間をかけて御努力になりませんければ直ろものじゃないと思います。不幸な事態を招いた云のだ。そこにいらっしゃる総裁の立場、私は本当に心から同情しておるものでございます。私がうそを申し上げているわけじゃないんで、これは自分の職員のことでございますから、御承知であるかどうかを伺いたい。  同時に、そういう問題でありますだけに、スト権を与えるとか与えないとか、条件つきで与えるとか与えないとか、そんなことは高度の政治的な判断に属する問題である。きのうもあなたおっしゃっておった。せっかく言っているのに野党の方々から押しつけられておられた。言わしてもらえなかった。私はよく見ております。だから高度の政治的な判断に属するものだと、こう考えるわけでございますが、この点についてだけ伺っておきたいと思います。
  201. 藤井松太郎

    藤井説明員 お答え申し上げます。  昨日はストの問題に関しまして国鉄の見解を申し述べた次第でございますが、この問題は立法政策上の問題でございまして、高度の政治的判断で御決定になるべき問題であるということは御所見と同感でございます。  先ほど来の、お許しを願いまして御答弁申し上げますが、われわれの動労が、本来労使の関係は経済条件の向上に論議すべき問題は限定されているのでございますが、これを逸脱しまして、御指摘のような条項を掲げておるということは、私どもとしては遺憾でございますが、これも、可能な限りにおきまして、これを是正するような努力を傾倒するつもりでございます。
  202. 奥野誠亮

    ○奥野委員 単に綱領を掲げているだけじゃなしに、現実の行動がそうだという意味で私は一、二の例だけ申し上げておきます。私の申し上げたことが違っていれば御訂正く、ださい。  ことし発生いたしました動力車労組の組合員の全動労組合員に対する暴行事件に対しまして、被疑者二人、参考人五人を呼び出した。その呼び出しをかけたことに対する抗議として、三日間のサボタージュストライキが二月の二十六日から二十八日にかけて行われました。順法闘争――順法じやございません、違法闘争です。しかし順法闘争と言っておられる。このために特急、急行が軒並みにおくれまして、最高八時間もおくれております。ことしの二月のことでございます。給与の問題じゃないんです。動力車労組と全動労との闘いであります。さらに、この内容をまた詳しく言いますと刺激しますから、私は言いませんが、そういう政治目的のためにおやりになった。  さらにまた、北陸トンネル事故関係者の起訴に抗議をして、三月二十七日に十二時間ストライキをやっておられます。地元民、旅館業者などから強い不満が出されたことがございました。これは事実でございましょう。間違っていれば言っていただけば結構です。そうでなかったらもう黙っていただいて結構です。
  203. 藤井松太郎

    藤井説明員 お答えします。  御指摘のことは遺憾ながらほぼ事実でございます。
  204. 奥野誠亮

    ○奥野委員 私は昨夜激しいデモに遭いました。その中で「労働基本権を守れ」「ストライキ権奪還」、たれ幕、激しいシュプレヒコール。そんなことから、私はこの席で法制局長官に、私の考えている基本的人権というものについての考え方が違っているかどうかただしておきたいという気持ちになったわけでございます。  憲法にはたくさんな基本的人権というものが規定されております。私は、基本的な人権というものは、社会が発展をしてきて充実してくる、その結果生まれてきたものだ、こう考えておるわけでございますし、さらに私たちはまた、社会を充実させるためには、この基本的人権をもっと洗練したものに仕上げていかなければならない、そういう性格のものじゃないだろうか、こう思っておるのであります。  日本が封建社会から近代社会に入りましてまだ百年余りであります。徳川幕府がつぶれて明治新政府になった。近代政治も歩み出そうとした。百年前、封建社会においては、そんな基本的人権というのはないのです。表現の自由もありません。団結の自由もありません。何もなかったのです。やはり社会が進歩してきて、基本的人権をお互いの知恵でつくり出したのです。これをもっとりっぱなものにしていかなければならない。ただ自分の基本的人権だけを振り回している、これは私はエゴだと思うのです。それが地域のエゴであり、集団のエゴである。今日では地域や集団のエゴが一般人の利益に優先しているのです。地域や集団のエゴのために泣いている国民がたくさんあるのです。私たち政治家は、聞こえない声にも耳を傾けて聞き出していかなければならない、そういう重要な任務を持っているのじゃないか、かように考えるわけであります。だから、憲法の規定の中にも、第十二条には、この基本的人権というものについて、「國民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、國民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と書いてあるわけであります。  私は、公共の福祉だからといって、基本的人権を軽率に、軽々に制限することには反対であります。反対であります。しかし、個人の利益のために大衆の利益を犠牲にして何ら差し支えないとするような態度は避けていかなければならない。この基本的人権をもっとりっぱなものにしながら、潤いのある社会を伸ばしていかなければならない。それがいまの国民のみんなの共同の努力でなければならない、こう考えているものでございまして、私の考え方が間違っているなら、ひとつ法制局長官、御訂正いただきたいと思います。
  205. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいま御指摘の憲法第十二条には、まず「この憲法が國民に保障する自由及び権利は、國民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」と書いてございます。これは憲法第九十七条にもございますように、「この憲法が日本國民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び將來の國民に射し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」そういう崇高な権利でございまするので、この権利は国民自身が絶えざる努力によってこれを保持していかなければいけないということを規定したものでございます。  さらに後段で、「又、國民は、これを濫用してはならないのであって、」とございます。これは、基本的人権の享有は日本国民の憲法で保障された地位でございまするけれども、これを乱用してはならない。これはもう当然のことでございまして、たとえば民法におきましても、これを乱用してはならないということを、新憲法施行の際に行われました改正において明らかにしたところでございます。  また、「常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」ただいま申し上げました乱用をしてはならないという消極的な態度ばかりでなく、積極的に「常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」ということを憲法第十二条は規定したものでございます。
  206. 奥野誠亮

    ○奥野委員 第四に、治安の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  先ごろの日本赤軍によるマレーシア・クアラルンプール人質事件や、天皇御訪米をめぐる極左暴力集団の反対活動には、まことに憂うべきものがございます。ハイジャック事件は、一九七〇年以降昨年四月現在で、全世界において二百三十三件の発生を見ておるわけでございまして、わが国の関係いたしますものも八件と聞いております。ハイジャックを含めての人質をとっての国際事件の根絶を期しますためには、何よりもその事件を成功させないことだと思います。成功させないためには、犯人が逃げ込む聖域をなくさなければならないと考えるものでございます。罪を犯してもつかまらない、罰せられなければ罪はなくならない、こう思うわけでございます。それには、このような犯人をいかなる国においても受け入れない、または厳罰に処する、そういうような国際的合意の確立が望ましいわけであります。大変複雑な社会でありますから簡単なことではございませんが、根気のよい努力を積み上げていくべきではないか、国際世論形成のために積極的な努力を払っていくべきではないかと私は考えているわけであります。そういう意味政府としても御努力になっていると思いますので、どのような努力を払ってこられたか、また、その努力の見通しがどのようなものであるかということを、ここで明らかにしておいていただきたいと思います。
  207. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  実は先般のICPOの会合におきまして、警察庁の刑事局長が出席をいたしまして、そうして、いま御提案になりましたような趣旨の国際会議開いてはどうであろうかということを申し述べたところが、七十二票賛成、それから一票と思いましたが、棄権ということで、これは開くということに決定いたしました。したがって、いま言われた趣旨の問題は、今後前進をさせていくようにわれわれとしてはいたしたいと思うのでありまして、そこにおいて、世界におけるこの非合法な凶悪的な犯人等々をできるだけなくする努力を今後も続けていきたい、かように考えておるところであります。
  208. 奥野誠亮

    ○奥野委員 国家公安委員長から大変明るいお話を伺ってうれしく思うわけでございますが、外務大臣、そのとおり受け取っておってよろしゅうございますか。
  209. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま国家公安委員長がおっしゃいましたような動きがありますことは、非常に私ども勇気づけられておるわけでございますが、実は国連におきましても、御承知のように、この問題は一九七二年ごろから取り上げられておりまして、特定の委員会に付託をされておるわけでございますが、非常に残念なことでございますが、この問題といわゆるアラブの大義という問題がしばしば混雑して議論せられるようになりまして、こういうことが起こるのについては、一種の国際社会的な基本にある一つの問題があるというようなところへいつも議論が入り込みまして、有な決議ができないままで実は今日に至っておるわけでございます。しかし、私ども思いますのに、中東における問題の解決が、少しずつではありますが、進み始めておりますしいたしますから、そういうこととの関連において、そういう違った問題へ落ち込むことなく新しい合意がやがてできてくるのではないかということで、忍耐強くその努力をいたさなければならないと思っておるわけでございます。
  210. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 御意見のことに関しまして、法務省としてお答えを申し上げますが、クアラルンプール事件の後、犯罪の防止及び犯罪人処遇に関する国際会議がジュネーブおいて九月一日から十二日まで行われました。元検事総長の竹内寿平氏を団長としてこの会議に臨みまして、クアラルンプール事件等にかんがみ、これらの犯罪の防止について国際協力の必要性を強くわが国の主張として申し述べまして、大変に反響があったと聞いておりますが、その結論につきましては、刑事局長がおりますから、もし必要であればお答えさせます。
  211. 奥野誠亮

    ○奥野委員 関係各省でぜひ今後とも根気のよい努力を続けていただきまして、国際世論でこの問題を解決できるように御努力をお願いして、それにとどめておきます。  今日、二十五、六年のことでございましたでしょうか、初めて火炎びんが投げられた、自動車が燃える、交番所にほうり込まれる、本当に私たち驚いたものでございましたけれども、このごろは火炎びんくらい平気になってしまいました。極左暴力集団が爆弾まで仕掛けるようになったものでございますから、こんなことでだんだんエスカレートしてくると、私たちの感覚も麻擁してくるのじゃないか、どこかで歯どめをかけてしまわなければ心配だな、こんな気持ちを持っておるところでございます。  そこで、まず事務当局からで結構でございますが、極左暴力集団の爆弾事件、それから内ゲバ殺人事件、これはどうなっているのか、最近の実態について教えてもらいたいし、同時に一般国民にまで被害が及んでおるわけでございます。この点についての御報告をいただいておきたいと思います。
  212. 三井脩

    ○三井政府委員 極左暴力集団によって行われております爆弾事件は、昭和四十四年三月以来現在までに百八十七件発生をし、八百二十五個の爆弾が出現をいたしております。このうち現実に爆発いたしましたのは、件数において約半分の九十九件、爆弾の数におきまして百十七個でございます。これによって生じました人的被害は死者十五人。この十五人の中には犯人自身が四名含まれておりますけれども。さらに負傷者が五百六十六人、このうち警察官が六十名という数字に上っております。  この中で主な事件を一、二申し上げますと、一つは、昨年八月三十日、例の丸の内ビル街での爆破事件でございますが、これは規模において一番大きく、死亡者八人、負傷者三百八十人を出したわけでございまして、これはいずれも一般の人々でございます。二つ目は、ことしに入りましてから、九月四日に横須賀市で爆発いたしました事件でございまして、死亡者五人、このうちに犯人三人が含まれ、一般の人が二人含まれておりますが、さらに負傷者が一般人で八人出ておる、こういうような状況でございます。この種の事件につきましては、警察では全力を挙げて捜査を進めておるわけでございますが、ただいままで百十三件の事件を解決し、三百七十九人の被疑者を逮捕いたしております。  次に内ゲバ事件でございますが、これも昭和四十四年以降今日まで千六百六十四件発生し、これによって死者が四十二人、負傷者が四千百六人出ておるわけでございます。このうち特に本年に入りましてからは、死者十八人、負傷者五百四人という人的被害を出しております。これらの事件につきまして捜査をし、内ゲバのうち殺人に至ったもの、つまり内ゲバ殺人事件は、四十四年以来三十五件でございますが、うち十九件を解決して、被疑者として逮捕いたしました者は三千三百人に上っております。この内ゲバ事件でただいまお尋ねの一般人で巻き添えになって被害を受けた人たち、これは昭和四十八年以降の数字でございますけれども、五十六件で九十八人、うち一名が死亡いたしております。  以上のような状況でございます。
  213. 奥野誠亮

    ○奥野委員 いま報告を伺いまして、大変な数字に上っているなと、文化国家として恥ずかしい感じさえ抱くわけでございます。かつての学園紛争時にまことに多数の火炎びんが飛びました。四十七年に火炎びん取締法が制定されたわけでございまして、それまでに約三万本使われた火炎びんが、それ以後は七百本程度の使用におさまってきたわけであります。そういうことを考えますと、適当な方法が見出されるならば、爆弾の製造、使用などについて立法措置も怠るべきではないと考えるものでございます。今日まで警察当局の努力によりまして相当な検挙を見ておりますこと、これは感謝申し上げますし、今後もぜひひとつ御奮闘をいただきたいものだ。  同時に私は、この種の凶悪な行動を根絶する、それは治安当局だけに任しておくものではなくて、社会全体で努力していかなければ解決しないんじゃないだろうか、こんな気持ちを持っているものでございます。そういう意味で家庭教育、やはり子供を小さいときからしっかりしつけていく。カントの言葉でありますが、小さいときから善悪の判断をしっかり身につけさせなかった子供さんは不幸だ、こんな言葉があるくらいでございます。社会教育の分野におきましては、大きな影響力を持ちますマスコミ、そのマスコミの一部の責任のない評価や解説、慎んでほしいなという気持ちもいたします。学校教育では、よき個人を育てると同時に、よき社会人、よき日本人を育てる配慮ももっと加えてほしいな、こういう気持ちも抱いたりするものでございます。  昨年の十一月に内閣広報室が青年の意識調査をやっているのです。その青年の意識調査の結果は、一つは、いまの青年は権利意識は非常に強い、しかし義務や責任についての観念は乏しい、さらにまた、現在の青年は個人的な生活への関心は深いし、自分の意見は率直に述べる、しかし思いやりがない、社会、公共への関心が少ない、こんなことも書いておったわけでございまして、やはり占領政策の傷跡が残っている面もあるな、こんな気持ちもするわけでございます。  いまも申し上げましたように、そういう傷の深いものがありますだけに、治安当局に問題をゆだねるだけで解決を図ろうとすることは適当ではない。みんなの責任でやりたい。特に犯人の多くは大都市のジャングルの中に埋没して生活しているわけでございますので、爆弾犯人を見つけ出すということも市民の協力なしには困難だと見受けられるわけでございます。したがって、市民が協力できる道を具体的に示して、その具体的な協力の方法の周知徹底を図っていく、こういう姿勢も大切じゃなかろうか、こう思っているわけであります。  また、凶悪な爆弾による犯行によりまして全く無関係な第三者が犠牲者になっているのであります。これら被害者の救済は加害者がすべきものであります。加害者がすべきものでありますが、犯人にはその能力がなかったり、犯人が不明であったりするために、救済は放置されたままになっているわけであります。このような姿を早急に解決しますためには、国において被害者補償制度を打ち立てて、国の責任において救済する方法を早急にとるべきではないか、こんな気持ちを持っているわけであります。  そういうことを踏まえていただきまして、総理から、そしてまた補償の問題につきましては法務大臣、捜査協力の問題につきましては国家公安委員長からお答えをいただければ幸せであります。
  214. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 こういうテロ事件、爆弾事件等に対しては、これは、犯人の取り締まりに対してこれを厳重にするばかりでなく、やはり教育――学校教育あるいは社会教育の場から、暴力はもう絶対に許さないという風潮が世界の風潮の中に強く生まれてくる、これは一つの奥野君の言われるルールの基本ですから、自分の考え方を暴力ででも通すというようなことは、こんな社会的ルールはありませんから、こういう風潮を社会の中に広く盛り上げていくことがきわめて基本的には大事だと思います。  他の問題は閣僚から答えます。
  215. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおり、この種の問題を防いでまいりますには、一般人の協力は最も必要であると私は考えております。警察の力のみをもってしてはとうてい困難でございますので、その意味では今後ともひとつそういう面における努力をさせていただきたいと思いますが、この際、たとえばいま一般国民の協力を得ましてアパートのローラー作戦をやっております。また、居住実態及び不穏動向の把握を初め、爆弾原料となる農薬の販売業者等への協力の呼びかけをいたしております。そうして、その不正流通の防止や、銃砲火薬取扱業者及び大学等に対する厳重な保管を求めておるところでもあります。同時にまた、大学の管理措置の強化や警戒対象の周辺の住民に対して通報体制の確立等に協力を求めておるわけであります。  このように協力を求めておりますが、警察といたしましていま考えておりますことは、塩素酸塩系爆薬、これを発見するための警察犬、これは専用の警察犬をつくらなければいけませんので、その措置をいまとっておるところでございます。  それからもう一つは、この手製爆弾には必ずトラベルウォッチを使っておりますので、通産省に協力を求めまして、このトラベルウォッチにナンバリングを打って、そうしてそれを打つことを業界に協力を求めまして、大体これは協力してくれることになったようでございます。そこで今度はそのナンバリングを打ったのを売る場合に、どこへそういうものが行っているかというようなことをはっきりさせていくこと。また、できれば購入者の氏名その他がわかるようになればいいのです、が、そこまではまだ決まっておりませんけれども、いずれにしても、やはりこれも一般の人たちに対する協力の求め方なんですね。だから、そういう意味で今後ひとつ協力を求めて、そしてこの種の凶悪犯人の根絶を期するように努力をしてまいりたいということでございます。
  216. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 爆弾事件による被害者の国家補償という点につきましては、爆弾事件のみならず暴力によって殺された人、重大な傷害を受けた者、犯人に賠償能力がないというような場合等も含めて、犯罪被害者補償法という法律をつくるべきである、こういうことに法務省は決定いたしまして、その範囲だとか、条件であるとか、そういう点について鋭意検討中でございます。御要望に応ずる方針でやっております。
  217. 奥野誠亮

    ○奥野委員 法務大臣のお話を伺いまして大変明るくなったような気がいたします。もちろん範囲を、対象を広げていただくこと、結構でございます。できる限り早くそういう制度を確立していただきまして、苦しんでおる人たちを救いたいものだ、かように念願するものでございます。  第五に、新しい経済計画について副総理にお願いをいたしたいと思います。  まず最初に、民間の間に、不況についての政府の見方が甘過ぎるのじゃないか、また先行き少し楽観し過ぎてやしないだろうかとか、いろいろな意見があるわけでございます。今度の政府のかなり思い切った提案によりまして、ある程度理解は私はできてきているんじゃないかと思いますけれども、どこにそういう違いがあるか、それをまずここで明らかにしておいていただいて、次に経済計画のことを聞かしていただきたいと思います。
  218. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 民間の財界の中で不況をかこつ声が多い、これは過日本会議でも申し上げたのですが、日本経済は、世界経済がとにかくスタグフレーションで苦しんでおる。その中では、とにかく物価も安定基調に着実に向かっておる。     〔湊委員長代理退席、委員長着席〕 また同時に経済活動も、ことし五十年という年をとってみても、プラス成長になるのはどうもわが日本だけというような状態なんです。  そういう中で、わが財界、民間におきまして不況をかこつ声が多いということは、そういうふうに、マクロ的に見ると経済は上昇過程をずっと動いておるにかかわらず、個々の企業は採算が悪い。それはどこに原因があるかというと、一番大きな原因は、わが日本では、ほかの国と違いまして、企業が終身雇用というか、そういう体制をとっておる。過剰の人員を抱えておる。マクロ的に見るといい状態にずっとなだらかな上昇はしておるのですが、あの石油ショックの打撃が非常に大きかったものですから、まだ望ましい水準まで回復しておらぬ。そこで過剰の設備、過剰の人員を擁しておる。その過剰の人員を擁しておることから、この人件費の負担というのが企業経理を非常に圧迫する。また、もう一つは、過剰の設備に対する金利負担、これがまた企業の経理を圧迫する。そこで、上昇過程にある経済の中であるにかかわらず、一つ一つの企業が非常に重苦しい状態にある、これが実態だろうと思うのです。それからもう一つ、一部には、夢よもう一度というような感じを持っておる方もおられる。あるいは、そうはいかないにしても、石油ショックのあの打撃からの回復、これが簡単に済むという見解を持っておる人ですね。一年たったんだから、あるいは一年半たったんだから、もう二年たとうとしておるんだから、もう回復してもよさそうだという考え方、そういう考え方を持っておる人においては、今日の状態はずいぶん苦痛だろうと思うのです。しかし、あの打撃は非常に深刻なんで、三年はどうしてもかかるんだ、そういう方にとりましては、あとまだ一年半ぐらいかからないとどうも回復しないんだ、しかし回復への過程にはあるということで期待を持ち、正確な判断のもとに行動できる、こういう状態にあるんじゃあるまいか。ざっと言いますと、そんなふうな感じがいたします。
  219. 奥野誠亮

    ○奥野委員 民間にいろいろな見解があるのは当然だと思うのでございます。せっかくぜひ副総理の御努力をいただきたいものだと思います。  今回の不況は従来の景気の波とは違ったものじゃないか、私もそう思っておるわけでございまして、今後のわが国経済世界経済の波を大きくかぶっていく。国際協力というものが一層必要になってくると思います。同時に資源問題が新しく出てきているわけでございますし、資源を保有する第三世界の複雑な動き、これに合わせることになる。それなりに手を打っていかなければならない、こう思うわけでございます。  さらに、国内的にも工場立地が非常に困難になってきているわけであります。同時に、環境保全と両立できる経済成長というようなことを考えていかなければならない。そうなると、輸出構造、これを現在の資源消費型から知識集約型に変えていかなければならないという問題もございましょうし、輸入構造におきましても、工業資源から製品への転換を進めていかなければならない。国際分業の高度化も工夫しなければならない。いろいろな問題があると考えるわけでございます。これと並行しまして、産業構造、これも省資源型に持っていかなければならない、こういう議論もございますし、また国家、民族の将来を考えると、エネルギー問題なり食糧問題なり、いままでのようなわけにいかぬよという問題もかぶってきている、こう思うわけでございます。  そういうもろもろの問題がある中に今度の不況でございます。人間の心理としまして、悪くなるときには、どこまでも悪くなるように思いがちであります。またよくなるときには、どこまでもよくなっていくように誤解しがちでございます。  そう考えてまいりますと、現在経済企画庁で新しい経済計画、これをお進めになっている。やはりなるべく早く今後の経済見通し、どうなっていくのだろうかということの見通しを、国民の前に総合的にお示しになることが大切なことではないだろうか、こう思うわけであります。検討中のことでありますから、お示ししにくい点もあろうと思いますけれども、ある程度国民に、こういう姿になると思うんだよというくらいの絵をかくといいましょうか、お話をいただければ幸いでございます。
  220. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話まことにごもっともなことでございまして、政府におきましても、鋭意新しい情勢のもとにおいての中期計画の策定を進めておるのです。  策定の考え方の基本になりますのは、やはり第一は世界情勢の変化であります。世界情勢が、政治、経済、社会、あらゆる面で変わってきておる。第二次世界大戦が終わってからの世界経済世界政治、これは東西関係といいますか、それが一つの軸になっておるように思うのですが、それが今日までずっと尾を引いております。そこへ六〇年代になると南北関係というものが入ってきておるのです。ところが今度は、七〇年代になりますと、私は産消関係と言っているのですが、資源保有国、資源産出国と資源消費国との利害の対立関係、こういう新しい現象が出てきまして、そういう三つの大きな国際社会における利害対立の線が相絡み合いまして、これからの世界政治、世界社会、世界経済、これは非常に複雑な様相、しかも流動的で、予測非常に困難な状態になっていくのじゃあるまいか、そういうふうに思います。  そういう中で、資源につきましては非常に貧弱なわが国が、どうして安定したたたずまいをなし得るかということになりますと、いままでの考え方を根本的に変えていく必要がある、そういう事態に迫られていると考えるのです。そういう問題。  それからさらに、国内的におきまして、高度成長下でずいぶん経済が拡大され発展されまして、それにつれまして国民の生活水準も上がった。上がったが、今日になってみると、国民の中に、そういう繁栄というか、すばらしい消費生活、それよりもむしろ静かな安定した生活というか、環境という問題を考えるようになり、あるいは自然の破壊というものを嘆くようになり、あるいは経済の成長、発展よりは生活環境の方をとうとしとするような、いわゆる価値観の変化というような傾向も出てきておる。  同時に、いまお話もありましたが、この四つの小さな島の上で、とにかくアメリカに次いで、自由主義諸国の中で第二の工業大国というふうになったんですが、もうこれ以上なかなかそう高度成長で十年間にまた経済規模を二倍にする、三倍にするという、その工業設備を収容する立地条件というものがもうなかなかありません。それも考えなければならぬ。それから、物価の問題につきましても、そういう流動した世界情勢であり、われわれの必要とする原材料がいつどういう変化を示すかもしらぬということで、物価に対する考え方も非常にこれからむずかしさを加える。国際収支はどうかといいますれば、外貨払いの三分の一は石油にこれを用いなければならぬ。したがって、産油国に対しては年間百三十億ドルぐらいの赤字にならざるを得ないという、国際収支の構造的な変化が出てきておる。そういうことにもどういうふうに対処していくかということを考えなければならぬ。そうすると結局、結論は二つにしぼられると思うのです。  一つは、いままでのような高成長、これを期待してはならぬという問題だと思うんです。そこで、適正な成長の速度というものを考えなければならぬ、こういうことになるんです。それをいまいろいろ検討しております。そしていま景気対策をとっておりますが、下半期六%成長、それを次の五十一年度以降の中期計画路線に乗っけていくというふうにいたしたいと思っております。  それからもう一つは、その内容の問題ですね。経済政策の内容の問題になってくる。つまり、これは結局、そういう成長の中におきまして、成長よりは生活重視だ、そういう考え方の内容のものに持っていかなければならぬだろう、こういうふうに思われるんです。  いま、鋭意そういう基本的な考え方で細部の詰めをしておりまするが、年末までに概略案を策定し、昭和五十一年度の予算の編成の重要な資料にいたしたい、さように考えております。
  221. 奥野誠亮

    ○奥野委員 第六に、雇用の安定につきまして、お伺いをしておきたいと思います。  雇用と物価の安定を保持しながら老後の生活に不安のない社会を築き上げていく、それが私たちの任務であると考えておるものでございます。自由経済を続けていきましょうと、計画経済を続けていきましょうと、私はそういう社会を願って努力をしていくことだと考えておるものであります。  幸いにして、物価の安定、大変成果が得られてまいってきておるわけでございますけれども、これからの景気対策に当たりましては、雇用の安定に最大の的を置いて進めてほしいなと願っておるものでございます。現在、完全失業者が九十万内外。しかし、多くの企業はなお余分の人員を抱えておる。いま副総理からお話がございましたように、終身雇用で残業を切る、休業をふやす、頭数はそろえているけれども、もう持ち切れないんだというような企業もずいぶんございます。また、雇用調整交付金の支給されている人員が三十五万人ぐらいいるということも聞いておるわけでございます。求人倍率は、〇・五五でありますから、百人職を求めて五十五人しか職が得られないというようなことでございますし、来年の学卒者の見通しにつきましても、必ずしも心配ないんだというわけにはいかないわけでございます。働きたくても働く場所のない社会はみじめであります。自由経済の中で戦後せっかく達成いたしました完全雇用の社会、これはぜひ維持できるように最善を尽くすべきだと考えるわけでございますし、さらには、定年の延長や心身障害者の雇用の機会の拡大にも、理想を持って努力し続けるべきだと考えております。  わが国の人口は、これからもなお平均して百三十万人ぐらいふえていくと思います。労働力人口で三十万人ぐらいやはりふえ続けていく。この人たちを職につけていきますためには、経済成長率六%という意見もあれば、七%という意見もあるようでございます、人により若干差はあるようでございますが、今回の政府需要拡大施策により、年度末には年率六・二%の成長率になる見込みだということを承っておるわけでございます。私なりに雇用問題に非常に頭を使っているものでございますので、この六%、将来若干雇用問題も明るくなっていくんじゃないかなという希望を託しているところでございます。  ところが、文部省の教職員充実五カ年計画、私の時代につくったものでございますけれども、来年は第三年次になるわけであります。地方財政が苦しいので来年はちょっと待ってくれぬだろうかというようなことが自治省事務当局から言われているという記事が新聞にあったことがございました。来年のようなときにこそ、私は、財政が負担して要員は確保しておかなければならない、人材を求めておくべきだ、こういう考え方をいたしておるものでございます。  これらの雇用の問題につきまして、簡単で結構でございますが、総理、副総理、労働各大臣からお答えをいただければと思います。
  222. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えいたします。  スタグフレーションと雇用不安というのが大変な問題でございます。しかも、先生がおっしゃるように、完全雇用というものは、近代国家としては、これは基本的理念でございます。それに向かって邁進をいたします。  また、いま雇用対策基本計画という、四十八年に計画されたものを見直す場合には、特別に身体障害者、高年齢者の方々の問題について重点を置きたい。いまでもなおかつ、全国の職業安定機関を総動員して、こういうときにこそ一生懸命お手伝いすべきだ、こういう姿勢でやっております。
  223. 奥野誠亮

    ○奥野委員 総理、副総理は遠慮して、次の問題に移らせていただきたいと思います。  第七番目、大蔵大臣に国債の問題についてお伺いしておきたいと思います。  国債発行がインフレーションにつながるなどという心配をされる方もございますが、現状では製造業の稼働率が七五%――副総理はよく八三という指数をお出しになるけれども、これは四十五年の稼働率を一〇〇にした場合の指数だから、稼動率としては七五ぐらいをおっしゃっているのだろう、こう思います。需給ギャップが、人によって計算が違うようでありますが、十五兆とか二十兆とか言っておられる。その中で三兆の今度の需要拡大を行うわけでありますから、こういうことで、操業率の上昇によるコストダウンはあっても、それだけで物価騰貴、インフレにつながるということにはならない、これは私もそう考えておるわけであります。しかし、来年度も今年度とさして変わりはない、むしろ多いぐらいの国債が出ることになるのじゃないだろうか、こう思うわけでございます。大量に出るということになりますと、やっぱり皆さん方インフレにつながるのじゃないか、こう御心配になる気持ちが私にもよくわかるわけでございます。それだけに、精神論だけじゃなしに、経済のメカニズムを尊重して――いまの国債市場、御承知のとおり値づけ市場であります。これを本当のオープンマーケット、流通市場にしていかなければならない。そうなりますと、やはり何といいましても市場実勢に見合った国債の条件を決めていく、これが根本じゃないだろうか。また、そういう姿勢を出していただかなければ、私はなかなか個人消化への気合いが込もってこないのじゃないだろうかな、こうも考えるわけでございますと同時に、インフレにつながるという心配者の気持ちもなかなかぬぐえないのじゃないかな、こんなことを考えているわけでございます。  これまで証券業者を通じて発行額の一〇%を個人消化に向けるという方針をとられてきたわけでありますが、いまはたしか七・五、六%に下がっているのじゃないだろうかな、こんな気持ちも持ちますし、大量発行になりますとその比率がまた下がるのじゃないだろうかな、こうも思うわけであります。申し上げるまでもなく、金融機関に入ったものは、一年たちますと九九・何%は日銀に返っていっている今日の姿でございますだけに、私は心配をするわけであります。ぜひ国債というものを国民貯蓄の中心に据えられるような姿に運用してほしいことを期待するわけであります。国債をそれなりに魅力のあるものにしていかなければならない。発行条件も、現在のように事業債との間に一%以上の差もあるような姿、これはもうやはり御用金思想だとかいうような皮肉な言葉もありますけれども、モダレートなものではないと思います。やはり欧米の国債と事業債との間、何か〇・五%ぐらいの差じゃないだろうかということも聞いておるわけでありますが、そういうことも頭に置かれながら、思い切った姿勢転換をやっていただきたい。これを特に私は希望をしておきたい。  ミニ国債の線上で考えていきますとなかなか踏み切れない。全く違った様相になったんだ。私は、今度の三兆円の需要拡大も、あれだけの大きな税収が減っているのによく思い切られたと思うのです。よく思い切られたその姿勢を、私は国債発行につないでもらいたいな、そして国民貯蓄の基本に据えるような国債に持っていく、国民に魅力のある国債に持っていく、こういう転換をやっていただかなければならないんじゃないだろうかな、私はこう考えておるわけでございます。また国債消化については、まあなかなかいい知恵がないんだろうと思いますけれども、たとえば五年の割引国債というような知恵を出してみるとか、何か知恵がないものだろうかな、こう考えているわけでございます。同時に大量の国債、また同時に地方債も大変なことになります。そうなりますと、中小企業にしわ寄せがいかないような配慮をしていかなければならない。こういう点につきましては十分な御配慮をいただいて、いま私が申し上げました姿勢の転換、これをぜひやっていただきますようにお願いをして、ひとつ御所見を伺っておきたいと思います。
  224. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま仰せのように、デフレギャップが大きくございますときでございますので、国債発行が直ちにインフレにつながるというものではないと、私も奥野さんのように考えておるものでございます。財政におきましても、歳入の不足を補うということでございまして、歳出をうんとふやすために公債を発行するというものではないわけでございますので、財政面からも、金融面からも、インフレを招来するという性質のものではないと思います。しかし、大量の公債をお願いしなければならぬ局面でございますので、この発行につきましてはよほど慎重な用意がなければならぬことは、御指摘のとおりだと思うのでございます。  第一に、その点につきまして、公債市場の整備につきましての御指摘がまずございました。今日は、御指摘のように市場が狭隘でひ弱でございまして、正直に申しまして、こういう巨額の国債を円滑に民間で消化していくということにつきまして、心もとない状態でありますことは御指摘のとおりでございまして、これを強化してまいる、体制を強めてまいるということにつきましては新たな決意で当たれということでございまして、仰せのとおりの決意で私どももいま国債管理政策を固めてまいりたいと思って勉強いたしておるところでございます。  それから第二は条件の問題でございます。私どもは、公社債その他と国債との関連を考えながら、国債だけに有利な条件を設定するわけにはまいらないと思いますけれども、個人消化も含めまして、それが可能になるような条件を用心深く設定してまいらなければならぬと存ずるわけでございまして、そのあたりにつきましても、いませっかく検討をいたしておるところでございます。  いずれにいたしましても、これだけの大きなことをやるわけでございますので、新たな感覚、新たな手法で臨めという御趣旨につきましては、十分御趣旨を体して対処したいと思っております。
  225. 奥野誠亮

    ○奥野委員 思い切った姿勢転換をやるのだというふうにも受け取れましたし、そこまでおっしゃっているのかどうかなと疑問になるようなお言葉であって、はっきりいたしませんが、私の希望だけ申し上げておきます。  日銀転嫁になるんじゃないかという心配を起こさせないようにぜひ持っていってほしい。インフレ懸念を持たせないようなイメージづくり、事業債の実勢を見て国債の発行条件を決める。従来のようなミニ発行の路線の上で考えているんじゃないのだという姿勢をひとつお示しいただくことをお願いだけしておきまして、次の問題に移らしていただきます。  第八、地方債でございます。よく考えていただきたいのは、現在、国民の納めました税金を、府県や市町村で使っているのは七割、国が使っているのは三割。でありますから、国がいろいろな計画をいたしましても、実施は府県、市町村を通じて金が流れていくわけでありますから、不況対策をおやりになっても、国の段階でやっているだけでは、それがそのとおり実現していくかどうかわからないのであります。私は、若干いままでの御努力になっていることがおくれてきている、それは地方財政措置ができていなかったからだ、こう言いたいのであります。国の場合には、税収が減っていましても、どんどん歳出を執行していく。しかし、地方の場合には、税収が減りますと歳出を抑えざるを得ないのです。繰り延べするのです。ですから、今度の計画に当たりましても、地方財政措置が実りますようにお考えをいただきたい。  その場合に、紙の上では地方財政措置、満点なんです。しかし、その財源には縁故債が莫大に入っている。全体を入れますと二兆七千億ぐらいになるでしょう。公募市場で発行しますのは、そのうち千八百億か何かぐらいなのです。だから私は、この間から、日銀総裁森永さんは大変詳しい方だから、縁故債を日銀の適格担保債にとる工夫をひとつしてくださいよ、それでなければこれは消化できませんよ、こう言っておるわけであります。時間の関係もございますので、まず、私がお願いしておる縁故債、これをあえて日銀の適格担保債にとっていただく、このことについてのお考えをお伺いしたい。
  226. 森永貞一郎

    ○森永参考人 地方財政問題の重要性につきましては、私もよく理解をいたしておるつもりでございます。今後、行財政全般にわたり、抜本的な対策が講ぜられることの一日も早いことを望んでおるものでございます。  さしあたりまして今明年、あるいはもう少し続くかもしれませんが、借入金に依存しなければならない金額が大変多い。それも、いまお話しのように、縁故債による部分が大変多いという事情もよくわかっておるつもりでございまして、それまやむを得ないことかと存じます。私どもといたしましては、地方銀行が多いかもしれません、一部の都市銀行も入っておりますが、におきましては、極力その消化に協力をしなければならない。また、私どもといたしましても、地方銀行に対し協力方要請を続けていくつもりでございます。幸いにして、いままでのところ金融市場は資金が余剰ぎみに推移いたしておりまして、なかんずく地方銀行の資金ポジションは良好なのでございまして、そういう状態でございますので、縁故債の消化にできるだけの協力をすることに地方銀行としてもやぶさかではないと存じます。  縁故債を引き受けました結果、資金ポジションが悪くなって、中小企業その他の資金需要を圧迫しないかどうかという問題がございまして、その意味から、縁故債と他の資金需要との間の資金配分をどうするかという問題があるわけでございますが、縁故債で調達いたしました資金は、いずれは地方団体の支出となりまして、銀行預金として返ってくるわけでございますので、全体として考えますれば、資金のつじつまを合わせることは、いろいろむずかしい問題がございますが、不可能なことではない。もちろん、地方債の発行の時期と、それが支出される時期との間にタイムラグがございまして、その間に資金事情が窮迫するとか、あるいは支出の結果、預金が集まってくる金融機関と縁故債を引き受ける金融機関との間にズレが起こりまして、必ず縁故債を引き受けたところに預金が集まるわけではございませんので、金融機関の種類によりましてはヒッチが起こるという問題もあるわけでございますが、それらの問題につきましては、私どもの全機能を挙げまして、金融状態が円滑に推移するよう金融調整を行うにやぶさかでないわけでございまして、地方銀行に対しましては、御相談がございますれば、各支店が親身になって御相談に応ずる、そういうようなことでこの縁故債の消化を促進したいと思っておる次第でございます。  それで、お尋ねの縁故債を担保適格にできないかどうかという点でございますが、御承知のように、貸し出しの場合の担保は日本銀行の信用供与の裏づけになるわけでございまして、健全性ないしは確実性ということを主体にいたしまして、厳重な審査をいたしておるわけでございます。民間の社債等につきましては、その会社の信用度を細かく認定いたしまして、また手形等につきましては、その信用度を厳重に判定いたしております。また社債につきましては発行条件の格づけをいたしておりますが、その格づけから考えて市場性が十分あるというようなものを選んでおるわけでございます。もちろん全部が公募のものに限っております。地方債につきましても、この公募債につきましては、これは当局におかれまして、公募債の発行団体を厳重に限定しておられるわけでございまして、しかも公募ということによりまして市場の洗礼を受けたものでございますので、これはもう市場性は十分でございます。したがいまして、公募債は私どもの担保適格に指定されておるわけでございますが、縁故債となりますと、その辺のところが少し問題が出てくるわけでございます。  もとより縁故債といえども、発行に際しましては自治省の許可が要るわけでございまして、起債の適格性、緊要性ないしは発行団体の財政状態など、自治省におかれまして御審査の上、大蔵省にも御協議の上出しておられるということは承知いたしているのでございますが、肝心の市場性の方が問題ではないかと思うのでございます。いままでの実例、私どもこの際いろいろと勉強いたしましたが、大体の場合が、金融機関との間の相対によって発行が決定せられ、その条件もきわめて多岐にわたっておるのでございまして、市場性の点において、公募債に比べて格段に落ちる点が問題なのでございます。  私どもといたしましては、公社債市場をできるだけ早く拡充いたしまして、公募債として地方の資金が十分に調達せられるように、その方の努力を今後も続けることにつきましては、決して労をいとうものではございませんし、また地方団体におかれましても、公募のできる団体は、公募をいとわず公募していただきたいと思いますし、場合によりましては、公募適格団体の基準を今日より広げていただくことも結構だと存じますが、まずできるだけ公募債をふやすということで資金を調達するということから始めるのが順序ではないか。適格か適格でないかということは、要するに縁故債を持っておりまする地方銀行の資産内容の流動性に関連……
  227. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 森永参考人に申し上げますが、時間が迫っているので、簡略にわかりやすく説明してください。
  228. 森永貞一郎

    ○森永参考人 地方銀行の資産内容の流動性に関連した問題であるわけでございまして、その点に関連いたしましては、地方銀行は担保適格の担保物件をたくさん持っておるわけでございます。万一地方銀行が資金を必要とする場合には、私どもも、その担保を活用して必要なる資金供与をすることにおいてやぶさかではございません。
  229. 奥野誠亮

    ○奥野委員 気を使っていただいておることはわかるのですが、結論は、それではだめだ、こういうことでございます。買いオペくらいで済ませられるなら、私はこんなことをここへ持ち出さないわけであります。  私は同時に、日銀の姿勢につきまして、このごろは変わっているのだろうと思いますけれども、従来からどうも産業資金優先。投資配分もどんどん傾向が変わってきているんだ、生活関連にどんどん向けられるようになってきているんだ、都道府県や市町村の役割りも、民間の資金を使って積極的に仕事をやる、そういう姿勢に変わりつつあるんだ、これは日銀にぜひお考えいただかなければいけないなという感じを持つわけであります。  同時に、日銀の適格担保債になりませんと、銀行が公募をとるときにも担保にならないのです。ですから、公募の担保に使えるくらいのことでもひとつ研究をしていただきたいと思います。  時間の関係もございますので、きょうは残念でございますが、この問題はこのくらいでお願いしておきます。  第九に私は、石油ショックに絡んで大いに日本は考え直すべきではないかという意味で申し上げてみたいと思います。  通産省の課長さんの書かれた「油断」という本がありまして、なかなかよくできておるなと思いました。もっともだなと思うわけでございまして、やはり国家、民族の将来を真剣に考えるなら、保険料の節約なんかしてはだめだ。エネルギー問題とか食糧問題、民族の生活に関係するものについては、それなりにいまから対応策を立てていかなければならないということでございます。アラブの問題なども絡むわけでありますけれども、国益上これが当然だという姿勢は、遠慮なしに貫いていくべきだ。右顧左べんするようなことをしてはいけない。アラブとイスラエルの対決にイスラエルに味方するようなことは避けたらいいでしょう。しかし、国益を踏まえて節約しなければならないんだ、おまえ行って消費国同士でお互いに相談し合わなければならないんだということは、私は積極的におやりになったらいいじゃないか、右顧左べんする必要はない、こんな考え方を持っておるものでございます。  第十に、国連大学に絡む問題でありますが、日本世界の諸問題に積極的に協力をしていく、これが大切だ。それでなくて世界から評価を受けることはできない。信頼を受けることはできない。これだけ主要な地位を占めるようになったんだから、それに応じた世界における役割りをしていかなければならないのではないか、こんな気持ちを非常に強く持っておるものでございます。そういう意味では、大変国連大学という非常にいい協力の材料ができてきているんじゃないか。人類の存続、開発及び福祉という緊急な世界的問題の解決に専念することを目的とする世界的な教育機関のネットワークである国連大学が、四十八年にわが国の希望どおりにこちらに設置されたわけでございます。昨年暮れには、初代の国連大学学長にヘスター・ニョーヨーク大学総長が任命され、着任もされておるわけでございます。ぜひこの国連大学の運用につきまして、資金の面につきましても、あるいはその他の面につきましても、積極的に各国の協力が得られるように御配慮を願っておきたい。  同時に、いま国連大学本部の協定を作業しておられる最中だそうでございまして、いまだにできてないということは残念だと思うのでございますが、多少の障壁を乗り越えて気持ちよく国連大学の関係者がその仕事に取り組めるような体制にしてもらいたいものだと申し上げまして、私の質問を終わっておきたいと思いますが、いま申し上げました点につきまして、簡単にひとつお答えだけをいただいておきたいと思います。
  230. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御静粛に願います。
  231. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいまの国連大学の問題は、奥野先生が文部大臣として御活動のころからの重要な懸案でございまして、私はこれを継承いたしまして、外務省と緊密な連絡をとりながら、わが国が世界に貢献いたしていきます上できわめて重要な機関と考えておりますので、いろいろとこれまでその発展に努力してきた次第でございます。これは財政上の問題もあり、また各地の学者がわが国の本部で活動するという問題もございます。幸いにしてこの九月に発足いたしました。しかしながら、なかなか財政上の問題にはむずかしい点もございます。ところが幸いにいたしまして、この問題に関しましては、国会においてすでに議員懇談会が超党派ででき上がっております。そして超党派の二百名を超える議員懇談会の方々が、アメリカ合衆国の上院における拠金に対する否決がありました際にも、これはアメリカとももっと協力をして強めようということで、わざわざ二人の人をアメリカに送ってそうして日米も協力するし、また他の国も協力するというふうな形でこの問題について御協力をいただいているという状況でございまして、これは全く各党派を超えることであり、また、国会、行政の別なく努力すべきことであり、私は、そういう発展の状況にあってなかなかむずかしいことでありますが、その努力を続けていくということを今後も私たちはやりたいと思っておりますし、終わりに、国会の諸先生方には、今後も御協力をお願い申し上げると同時に、これまでの御協力に感謝の意を表する次第でございます。
  232. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて奥野君の質疑は終了いたしました。  この際、昨日の岡田春夫君の質疑に対し防衛庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。坂田防衛庁長官
  233. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 昨日の岡田さんの御質問に関連しましての資料調査の結果を御報告を申し上げたいと思います。  統幕三登第三九甲二八号というのは、防衛庁の正式文書ではございません。かねて防衛庁が申し上げておりますとおり、日米制服間で行っておりました研究のメモでございます。したがいまして、文書として正規に登録されておりません。当該文書についての簿冊はございません。  統幕三登第三九甲二八号のメモは四十一年二月に焼却しており、岡田議員提出の文書が当該メモであるか否かについては、現時点において確認することはできません。  有事の際において、日米が共通の危険に対処するための総合的な研究は、四十年に、三矢研究――昭和三十八年度統合防衛図上研究でございますが、国会におきまして取り上げられて以来行っておりませんが、統幕、陸・海・空幕は防衛運用上の技術的、専門的な事項について研究を実施してきております。このことは従来からも申し上げておるところでございます。  しかしながら、これらの研究は、制服のレベルの、しかも在日米軍司令部等出先部隊レベルの話し合いでございますし、おのずから限度がございますので、この種の問題を含めまして、安保条約の円滑かつ効果的な運用に資するための日米間の防衛協力の諸問題については、シビリアンたる防衛庁長官がイニシアチブをとりまして、内部部局も参画して、シビリアンコントロールがより一層徹底されたもとで研究、協議を進めるべきものであると考えておる次第であります。  この統幕三登第三九甲二八号というメモは、昭和四十一年の二月にすでに焼却済みでございますが、その経緯は次のとおりでございます。  統幕三登第三九甲二八号及びこれに関連する諸種のメモを含みますが、これは四十一年二月に最終的に焼却をし、焼却にかかわる経緯をまとめたメモを作成いたしました。そのメモは、その後引き継ぎ資料として代々の担当者に引き継がれたのでございますが、その後、外務省公電漏洩事件、四十七年三月二十七日を契機にいたしまして出されました事務次官通達、「秘密文書等の取り扱いについて」、四十七年五月二日、不必要な秘密文書の破棄等に関するもの、これによりまして、その必要性認められなくなった秘密文書等はできるだけ焼却をいたしました。引き継ぎ資料もそのときに焼却されたものの一つでございます。  その後、四十八年六月二十一日の衆議院内閣委員会におきまして、統幕三登第三九甲二八号の存在につき岡田議員より質問がございましたが、当時山中長官は、これを調査することを約し、調査してみたところ、右のような経緯により、これにかかわる一切のメモ等はすでに焼却済みであったが、当時の担当者が焼却した引き継ぎ資料に記載されておりました当該メモの焼却年月を記憶しておりましたので、その旨上司の了承を得まして、内局に報告をいたしたものでございます。  報告を受けました内局担当者は、以上の経緯を了承の上、答弁資料を作成いたしたものでございます。  今回の岡田議員の質問に対する答弁は、この答弁資料に基づきまして統幕三登第三九甲二八号は四十一年二月に焼却したものであると答弁をいたしたのでございます。  また、日米間のメモを焼却するには、アメリカ側の了承を必要とするのではないかというお尋ねでございましたが、当該メモは幕僚間のメモでございますし、日米両国で相談をして廃棄、焼却するようなものではないと承知をいたしております。  以上でございます。
  234. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 防衛庁長官、ちょっと、ただいまの説明を願ったのをコピーして、あしたまでに出せますか。
  235. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 はい、出せます。
  236. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 じゃ、さようお願いいたします。各委員に配付するようにいたします。  岡田君。
  237. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 委員長にもお聞きいただきたいのですが、これだけ長い回答を事前に何ら通告もなし、ここで読んでそのままで終わり、審議のしょうがないですよ。こういう点は、こういう一流の手をお使いになる。いままでの経験では、防衛庁がそういう回答をする前に、必ず理事会か質問の本人に、大体こういうものを出します、こういうことを言った上で出しているわけです。今度の場合、意識的に私にも一言の通告もない、理事会にも全然ない、こういう一流の手を使うのであります。  この点を私申し上げまして、質問いたしてまいりますが……。
  238. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ちください。  私に聞いてもらいたいということですからお答えいたしますが、確かにおっしゃるとおりだと思います。したがって、そういうことを私、考えましたので、あしたまでにコピーして予算委員全員に渡るようにということを通知したわけです。どうぞ御了承願います。
  239. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 委員長の御配慮、非常に私も敬意を表します。それだけに、この記録を見た上で、もっと審議をしなければならない点が出てくるかもしれません。それはその場合において、委員長は適宜お取り計らいをいただきたいと思います。
  240. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 理事会に諮りまして、さよういたします。
  241. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、先ほどのお話をいただくと、まず統幕三登第三九甲二八、これは登録簿にもないとおっしゃるのですが、登録簿の登と書いてあるじゃありませんか。これは登録してないのですか、全然。きのうはあると言っているし、小泉防衛庁長官はあると言っていますよ。これは、登録しないで自由にあれするのなら、何もこんな文書の番号をつける必要ないじゃありませんか。何でこういう文書番号をつけたのですか。これをまずお聞かせいただきたい。
  242. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私からお答え申し上げます。  統幕の統、三、それから登録の登と出ておりますのは、これは正規の登録文書にいたしましても非常に類似しておりますけれども、そういう登録の仕方をいたします。しかしながら、このメモにつきましては、先ほど大臣からも御報告申し上げましたように、正式の文書ではございません。かねがね申し上げておりますように、統幕の制服間で研究をいたしましたメモとして作成されておるものでございまして、便宜的にそのグループの中でこういう番号をつけておったということでございまして、その点についての可否の問題は別にあると思います。ありますが、事実はそのとおりでございます。
  243. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 局長、あなた可否の問題があるというのは、これは公務員法違反だね。執行上、文書課に登録すべき登録案件と類似の、同じような登録番号をつくっておった。統幕会議は、こういう類似の形で、公務員法に公務員としてあらざることをやっていると、こういうことですね。あなたは類似のもの――類似のものと言うのならもう一点伺おう。これに似たような登録番号を出してごらんなさい。あなたの方にあるでしょう。出してごらんなさい。どういう点が類似なんですか。この登録番号というものは勝手につくって、勝手にやったんですか。勝手にやったんなら勝手にやったんだとはっきり言ってください。はっきりしてください。
  244. 丸山昂

    ○丸山政府委員 これはこの研究グールプの中でやったことでございます。(岡田(春)委員「勝手にやったの。承認をとっているの」と呼ぶ)このグールプの中でやっておることでございます。
  245. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ、防衛庁としては承認を与えてはいないし、勝手にやったんだ、こういうものですね。
  246. 丸山昂

    ○丸山政府委員 登録をいたしますのは正式の文書でございます。本件は正式の文書でござ、いませんので、この文書の取り扱いの規定の対象にはなりません。
  247. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは坂田さん、正式の文書でないから、これは勝手に偽造されたものですね。そういうことですね。勝手につくったものでしょう。それが一点。  第二点は、廃棄処分にしているかどうかは、あなた方何でわかったんですか。坂田防衛庁長官、廃棄処分にしたとあなたがおっしゃるのなら、廃棄処分にしたというその根拠を明らかにしてください。私は廃棄しましたと言われたって困る。挙証責任を明らかにしてください。
  248. 丸山昂

    ○丸山政府委員 まず最初の文書の偽造ということでございますが、本件はいわゆるグループの中のメモでございますので、制服間のメモでございますので、いわゆる公文書の偽造その他という対象になるべきものではないというふうに判断をいたします。  それから、なぜ焼却されておったということがわかったかというその経緯でございますが、これはただいま長官が御報告を申し上げましたとおりでございます。
  249. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 納得しません。しかも、これは委員長にもお聞きをいただきたいんだが、昨日、私の質問に関連をして、私もやったんですが、松前・バーンズ協定の問題で楢崎委員から、戦時緊急計画について、自衛隊の要撃準則について、アメリカ太平洋空軍の交戦準則について、並びに現行の共通運用手順、これについても出してもらいたい、こういうことを私たちは要求したんでありますが、これについても一言も触れておらないわけであります。これについては、お出しになるんですか、どうなんですか。
  250. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 この取り決めの全文につきましては、米軍との取り決めでございまして、米軍の了解なしには提出できないのでございます。
  251. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いや、全文を出せと言っているんではないんですよ。戦時緊急計画、要撃準則、交戦規則、運用手順を出せと言っているんです。全文を出せと言っているんじゃないんですよ。これはどうしてお出しにならない。いや坂田さん、あなた答えなさい。長官答えなさい。
  252. 丸山昂

    ○丸山政府委員 まず戦時緊急計画でございますが、これは松前・バーンズ協定が、いわゆる平時の領空侵犯対象について、日米相互間、つまりわが方の航空総隊と在日米軍の第五空軍司令官との間において合意ができたものでございまして、戦時の問題につきましては触れておらないわけでございます。かねがね申し上げてございますように、有事の場合についての取り決めは現在ございません。したがって御提出をすることはできません。  それから、第五空軍の交戦準則でございますが、これは昨日私が申し上げましたとおり、また現在ただいま大臣からも申し上げましたように、アメリカの第五空軍の規則でございますので、先方の了解なしには提出することは困難かと思います。
  253. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いま四つ言ったのに二つしか答えない。いや、ともかく私、時間がなくなりますからね、これは後、速記録なり配付された文書によってまた伺うことにいたします。  昨日私があの資料を出しました。しかし何か無責任な形で出しているのではありません。そこで、私があの資料を出したことを裏づけるために、新たに資料を提出したいと思います。  私がいま出すのは、昨日皆さんに配付いたしましたフライングドラゴン計画についての文書の第二番目、「別紙A 部隊区分および主要戦斗部隊」、この内容を私は架空でやっているのではない。そういう意味で、これを出して、これについても御意見を一緒に承りたい。  これは同じように機密文書であります。「防衛庁統幕会議および在日米軍司令部 日本・東京(昭和三九年八月三日) 統幕三登第三九甲五三」、これは「別紙A 部隊区分および主要戦斗部隊(第二次案)」であります。  「別紙A 部隊区分および主要戦闘部隊中、付録I B表 日本防衛のための初期使用可能の米海軍部隊以降を、別添により差替える。」――「差替える」となっています。そしてその内容は次のページであります。  同じく統幕会議と在日米軍司令部の共同のサインがあって、「別紙A 付録I B表 日本防衛のため初期使用可能の米海軍部隊 計画目的のために、米太平洋軍が使用可能と見積られる下記の兵力が、直接又は間接に日本防衛に寄与する協同防衛作戦を支援するため、どの程度の兵力が使用しうるかは当時の状況による。」  全部読みますと時間がかかりますから、省略をいたしますが、たとえばCVA、攻撃型空母二隻ないし三隻、対潜空母一隻、少し飛ばして、上陸艇用ドック三隻ないし四隻、上陸作戦用ヘリ空母一隻、また攻撃用輸送船、攻撃用貨物輸送船、こういうものを配置すると書いてあるじゃありませんか。  しかも次のページ。「別紙A 付録Ⅱ 主要日本戦闘部隊 1全般」のaは省略して、bを読みます。「以下各表に示される計画兵力の主要な変更は、この計画の有効期間中、所要に応じ修正される。」次のページ、同じくこれは合意されているものであります。「別紙A 付録Ⅱ C表 日本航空部隊 計画目的のために、下記の兵力が日本防衛のため日本の部隊指揮官に使用可能であると見積られる。」  全文を読むのは省略します。戦闘部隊、戦闘・爆撃航空隊、ナイキ大隊、輸送航空団司令部その他、はっきりしているじゃありませんか。  ここではっきりしていることは、このような計画が「有効期間中」云々とまさに合意されて、効力を持っている計画であるというのは明らかではありませんか。また、一番先に「別添により差替える。」これはフライングドラゴンを年次ごとに差しかえることを意味している。もう一度繰り返しましょう。フライングドラゴンという戦時緊急計画はあるのです。私が昨日出しました、そして先ほど御答弁になりました統幕三登第三九甲二八というのは、あれは一言で言うと、三十九年度の改定計画指針であります。ですから、考えられるところは、フライングドラゴンという緊急計画があって、三十九年に改定をした指針であります。四十年にも改定をするし、四十三年にも改定をするし、五十年にも改定をする。そうしてフライングドラゴンは現存するのであります。三十九年の計画指針は破棄をしても、いまは問題にならないのであります。文書は破棄したからといって、ドラゴン計画そのものは残っているのであります。計画それ自身があるということです。あなた一流の答見方は二つです。一つは、廃棄をしましたから何もありません、もう一つは、これは合意ではありません、すり合わせであります、この二つしか逃げ口上はないのです。実態はフライングドラゴン計画があるということであります。この点を明らかにしなさいと言っているのであります。  こういう点について、あなた方はまた言うでしょう、この資料は本物であるかどうかわからないと。答えはもうわかっている。本物であるかどうかわからないのは、私の方は文書を焼却しているから、ないから照合できませんと。あなた方はしかしお考えくださいよ。私の方は出した。違うというなら違うとおっしゃいなさい。違うなら挙証責任を明らかにしなさい。統幕三登第三九甲二八は、類似の登録を書いてあるけれども、本物ではない、こう言う。そんなごまかしではわれわれは納得しませんよ。そんなごまかしのため、なぜそんな番号、名前をつけたのですか。番号をつける必要はないじゃないですか。防衛庁の正式の文書に、登録簿にないとしても、統幕の中の文書にはあるでしょう。統幕の中にあって、廃棄処分をそこでやっているでしょう。廃棄処分をやっていなければ、全部そのまま残っている、生きているということじゃないですか。あなた、この点についてどういう見解をお持ちになるか。
  254. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 これは恐らく前のやっと同じやつだと思うのです。ですからこれは焼却されておって、ございません。
  255. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたお読みになった先ほどの答弁書の中には、五三という、ここにあります統幕三の――もう一度言う。登三九の五三については何にも言っていませんよ、あなた。答弁してないじゃないですか。焼却したとも何にも答えていない。二八だけしか言ってないじゃないですか。これでは私は納得するわけにいきません。私は質問を留保します。
  256. 田中武夫

    田中(武)委員 いまお聞きのように、こういうことでは審議になりません。したがって、自後の質問を留保し、取り扱いを理事会で相談していただく。さらに、いま提出いたしましたこの資料につきましては、一々読み上げますと三十分はこれだけでもかかりますから、そのうち抜粋をして岡田委員は読み上げました。これをひとつ議事録に残すということもあわせてお願いいたしたいと思います。いかがでしょう。
  257. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいま議事進行の御発言がございました。議事録に残すこと結構でございます。  もう一つは、こういう書類を突然出されても、防衛庁長官もよくわからない点もあるかもしれない。それからまた、防衛庁で出した書類を読み上げても、岡田君がそれだけで納得しないと思います。したがいまして、これは両方が幾らやっても一晩じゅうすれ違いで結論は出ないと思いますので、理事会でどういうふうな処理をするか、御相談をいただいて、そうしてもしそこで相談の結果、保留の意味でまた質問をしてもらうというような結論が出ますれば、その際やってもらうということにいたします。
  258. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまの委員長のお計らい、結構でございます。しかし、その結論というか、解決ができるかどうかわかりませんが、その理事会で御相談を願って、再質問というか再々質問は、この補正予算の最終日のいわゆる締めくくり総括以前に行うということでひとつ御了承いただきたい。
  259. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これは理事会で御相談することでありまして、理事会で御相談が一決すれば、そういうことも結構でございますし、また、われわれ聞いておりましても、松前・バーンズ協定がどうだとか、フライングドラゴンがどうだとか、専門家でありませんからさっぱりわかりません。それで、岡田君の質問していることがどういうことであるか、防衛庁長官答弁することがどういうことであるか、私が聞いてもまことにわかりませんから、ひとつ理事会でよく研究いたしまして結論を出すことにいたします。  岡田君の質疑は、理事会で保留の分を協議して、どうするかということを決めます。さよう御承知願います。  これにて本日は終了いたしました。  明二十三日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十九分散会      ――――◇―――――