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成田知巳君 私は、
日本社会党、
日本共産党・革新共同及び公明党を代表し、ただいま議題となりました
三木内閣不信任決議案の趣旨説明をいたします。(拍手)
まず、
決議案文を朗読いたします。
本院は、
三木内閣を信任せず。
右決議する。
〔拍手〕
私は、昭和四十八年九月、本議場で、
田中内閣不信任案の
提案理由説明の際、冒頭、「
内閣誕生以来、今日まで一年有半を経過いたしましたが、各種の
世論調査の示すように、
田中内閣ほど国民の支持が短期間のうちに急激に低下した内閣はございません。」と述べましたが、
三木内閣は、その成立以来わずか一年で、
各種世論調査の結果は、
田中内閣同様、国民の支持が短期間に、かつ急激に低下していることを示しておるのであります。(拍手)
特に、公労協、地公労のスト権問題で、総理の不決断と統治能力のなさを目の当たり見せつけられた国民の
三木内閣に対する批判と不信感は、一層強まっております。(拍手)
御承知のように、
田中内閣は、
世論調査での支持率が激減した後間もなく崩壊いたしましたが、
三木内閣も、
田中内閣と同様、近く退陣する運命をこの
世論調査は暗示するものだと言わなければなりません。(拍手)
三木総理は、民意はすでに自分から去っている、国民は一日も早い
三木内閣の退陣を求めているということを察知されて、本決議案の採決を待たず内閣総辞職を決意されることが、議会の子と称する
三木総理に与えられた道だと考えるものでございます。(拍手)
三木内閣不信任の理由については、お手元に配付の文書に記載のとおりでありますが、以下、私は、具体的事実に即し、順を追うて不信任の理由を明らかにし、同僚各位のこぞっての御賛同をいただきたいと存じます。
人の値打ちは、その人が何を言ったからではなく、何をしたか、また、何をしようとしているかによって判断すべきだと言われているように、政治家の値打ちも、その人の言葉ではなく、その行為により判断されるべきであります。すなわち、
三木内閣の評価は、
三木総理の美辞麗句で飾られたいわゆる公約ではなくして、
三木内閣がこの一年間何をしたかによって決定されるべきであります。
三木総理は、最初の所信表明で、政治は力の対決ではなく、対話と協調によって進めるべきだと強調されました。その言葉に多くの国民が拍手を送ったことは、
総理自身よく御承知のとおりでありますが、この国民の善意の期待と共感を無残にも打ち破ったのは総理御自身であり、そのことは、総理が裸の王様でない限りすでにお気づきのことだと考えるものであります。(拍手)
総理、あなたは五十年度
予算案編成を終えられたとき、この予算案は不備であるとみずから認められ、
大蔵大臣に至っては、予算案はできたが、自分の気持ちは鉛のように重たいと言われたことを御記憶だと思います。みずからも不備と認めるその予算案を、私たち野党の道理にかなった合理的な修正要求を拒否して、ごり押しに押し通したのが
三木内閣と
自由民主党であります。まさに、多数を頼んだ力の対決であり、これを対話と協調の政治と言えるでしょうか。
しかも、その五十年度予算が施行されてから一カ月もたたないうちに、
経済見通しの大きな誤り、深刻な不況による税収の大幅不足を政府みずから認めざるを得なくなったのであります。
三木総理は、戦時中から国会に議席を有し、今日に至ったことをよく口にされますが、もし今度のように大きく
経済見通しを誤れば、その政府は、当時でも直ちに総辞職したであろうことは、
三木総理よく御承知のことだと考えるものであります。(拍手)
ところが、
三木内閣と
自由民主党は、厚顔にも、みずからの失政はこれをたな上げして、今国会で国民が強く反対する酒、たばこ、
郵便料金値上げ法案をしゃにむに成立させようとして、
強行採決に次ぐ
強行採決を行い、この
値上げ法案と
赤字国債大量発行の
財政特例法案の成立を企図して、
衆議院規則を無視してまで会期の大幅延長を強行したのであります。まさに問答無用、総理の言う力の
対決そのものであり、対話と協調の看板を掲げながら、対話と協調をみずから否定し、
議会制民主主義破壊の
政治反動を推し進めているのが
三木内閣だと言わなければなりません。(拍手)
これが、われわれが
三木内閣を信任せず、その退陣を求める第一の理由でございます。
三木総理は、
重要政策の一つに、
インフレと不況からの脱却、そのための
基本的経済政策の転換を公約として掲げられました。総理は、口を開けば
インフレは鎮静したと、いかにも物価はすでに安定したかのように宣伝されておりますが、ここに、
三木総理一流の言葉のごまかしがあるのであります。
政府は、ことし三月の
消費者物価の上昇を、昨年三月比で一四%の上昇に抑えることができた、来年三月は、ことし三月に比して九・九%に抑えると言っていますが、その基準とされた昨年三月は、一昨年三月に比較して二四%という異例な物価高を示しており、したがって、政府の言うように、来年三月、九・九%高に抑え得たとしても、この三年間に物価は実に五三%の上昇を見るということであり、これで物価は鎮静した、政府の
物価政策は成功したなどと言うのは、国民を欺き、愚弄するものだと言わなければなりません。(拍手)もし、総理が本当に物価は鎮静したなどと考えておられるならば、経済に弱いを通り越して、経済に無知であることを、みずから表明するものでございます。(拍手)
三木内閣は、税収不足と不況対策を理由に、経済のかじ取りを大きく変え、確たる償還計画も立てずに、無責任にも赤字公債の大量発行を行おうとしております。
言うまでもなく、公債は政府の借金でありますが、その借金は、
三木総理や
大蔵大臣が払ってくれるわけではございません。ツケは国民に回ってくるのであり、国民は、将来重い税金を払って、この借金を払わなければなりません。現に、来年度、政府は、所得税の調整減税さえ見送るとのことでありますが、それでは、
インフレの今日、実質的な増税になることは明らかだと言わなければなりません。(拍手)
中小企業に対しては、営業が赤字のときでも税金を取る、かの悪名高い
付加価値税、農民に対しては、一般農地の
固定資産税の大幅な
引き上げを、さらには、
自動車関係諸税や住民税の
引き上げなど、軒並みに一斉増税を行おうとしているではありませんか。すでに
公債発行残高は十兆円に達しております。公債は麻薬と同じです。一度飲めば、やめられません。公債は次々と発行され、
雪だるま式にふえ続けていくことは、世界各国の財政史の示すところであります。(拍手)
財政審議会中間報告によっても、五十五年度末の公債残高は六十兆円を超えると見られておるではありませんか。まさに公債を抱えた財政ではなくて、公債に抱えられた亡国財政となり、国民を塗炭の苦しみに陥れる
悪性インフレを招来しないと、だれが保証することができるでしょうか。(拍手)
それだけではありません。
景気浮揚のためと称し、政府は、
公債発行に備えて
銀行貸出金利を引き下げましたが、これに連動させ、銀行の預金金利を引き下げ、さらに、銀行預金とは性格を異にする大衆の零細な貯金である
郵便貯金金利さえ、庶民の強い反対を押し切って、大幅に引き下げたのであります。
高度経済成長下の
インフレで、銀行からの借入金が事実上大幅に切り下げられ、大量のいわゆる
債務者利得を得たのは大企業であります。いままた、
景気浮揚のためと称して貸出金利が下げられることで利得するのも、同じ大企業であります。これに反し、
インフレ下で所得と貯金の実質減価で苦しめられ、
景気浮揚政策のもとで
預貯金金利を大幅に引き下げられ、ダブルパンチを受けているのが一般庶民であります。これが総理の言う不公正是正の政策の実体だということであります。(拍手)
総理、あなたはさきの通常国会で、
自由主義経済でもルールの確立が必要だと言われて、
独禁法改正案を提出されましたが、御承知のように、衆議院では、独占価格、管理価格を厳しく規制するわが
党修正案が
与野党一致で可決されたのであります。その
独禁法改正案をなぜ今国会に再提出することに反対されたのか、国民は全く理解に苦しんでおります。総理は、果たしてみずからに恥じることなく行動しておられるのかどうか。総理の政治家としての信念、節操に疑問を抱くのは、私一人ではないと思うのであります。(拍手)
総理も御承知のように、経済企画庁は、
経済白書で、現在の深刻な不況は激しい
インフレのもたらしたものである、したがって、
インフレをなくさない限り景気を回復することはできないし、社会的不公正を改めることもできないと言っておりますが、この点に関する限りでは正しい指摘だと思います。このことから、次の二つのことを結論づけることができると思います。
その第一は、財界の圧力のもとに、
産業基盤整備を中心とした
公共事業投資で
景気浮揚を図ろうとする
三木内閣の
経済政策は、すでに破綻した
高度経済成長政策の道を再び歩もうとするものであり、その道が日本列島を公害列島と化し、激しい
インフレを再燃させ、スタグフレーションの矛盾を深めて、この日本の山河と
日本経済を救いがたい
危機的状況に陥れることは明らかだと言わなければなりません。
高度経済成長の時代は終わった、安定成長へ切りかえるときが来たと繰り返し主張されたのは、総理御自身ではなかったでしょうか。総理の今日とりつつある
経済政策は、まさに食言、公約違反の最たるものだと言わなければなりません。(拍手)
その第二は、激しい
インフレの結果、
実質個人消費支出が激減し、生産力と
国内購買力の大きなギャップを生じたことが、今日の深刻な不況を招来したものであるとの正しい理解に立つならば、
個人消費支出の増大による
国内購買力の拡大を図ることこそ、
国民生活を守り、真に不況を打開する道であるということであります。
そのためには、第二次産業、特に大企業優先の
経済成長のパターンから、農林漁業、石炭業等の第一次産業を国の基幹産業として位置づけ、思い切った国家投資を行うことであります。
生活基盤整備のための治山治水、上下水道、学校、住宅、生活道路を中心にした
公共事業の拡大、雇用対策、社会福祉、文教費の充実、
地方行財政の
根本的改革を行い、労働者、農民の所得の
引き上げ、全国一律最賃制の実施、
中小零細企業の経営安定のための思い切った施策と大幅な所得減税をいまこそ断行すべきときだと考えるのであります。そのために、大企業や土地成金、
インフレ利得者、
高額所得者に与えている税法上の優遇措置を撤廃し、防衛予算を圧縮するなど根本的な税、財政、金融の構造改革を行うべきであります。(拍手)
しかるに、
三木内閣は、口では不況と
インフレの克服、
基本的経済政策の転換、不公正の是正を唱えながら、その行うところは、
インフレには総需要抑制、不況には景気刺激という陳腐な
経験主義に基づく
腰だめ政策に終始し、不況を深刻化させ、
インフレを再燃させるという、これまでの大
企業中心の
経済成長政策を踏襲して、大量の失業者群と
中小企業の破産、倒産をもたらし、社会的不公正を一層拡大し、
日本経済の危機を激化させているのであります。特に、この大
企業中心の
景気浮揚政策が、
金権政治こそ
日本政治の腐敗の根源であると主張してきた
三木総理の手によって、財界からの自民党への
政治献金再開と時を同じゅうして進められておることは重大であり、見逃すわけにはまいりません。(拍手)
財界からの
政治資金提供で大企業に有利な政策が決められるとするならば、企業と政治の癒着は一段と強められ、議会制度は財界と自民党の支配を合理化する道具に化してしまうでありましょう。これは
議会制民主主義の破壊につながるものであり、断じて許すわけにはまいりません。(拍手)
このような
三木内閣の存在を一日許すことは、それだけ日本の
政治経済に大きな禍根を残し、
国民生活にはかり知れない困難と不幸をもたらすことは疑う余地もありません。
これが、
三木内閣を信任せず、その退陣を求める第二の理由であります。(拍手)
三木総理は、
施政方針演説で、低成長時代における
福祉政策の重要性を指摘されて、そのための
地方行政の占める役割りについて次のように述べておられます。「量的拡大の時代から福祉重視の質的充実の時代へ転換するため、
地方行政の果たす役割りは一層大となり、自主的で責任ある
地方行政を実現するため、
地方行財政のあり方を全面的に見直す必要がある」と。総理、その言やまことによしであります。しかし、あなたがこの一年間行ってきた
地方自治体対策は、いわゆる
財政硬直化を理由にした
福祉行政見直し論や、
人件費攻撃によって、
福祉行政の主体としての自治体の存在を、総理みずからの手で圧殺するような危険な方向をひた走りに走っておるのであります。(拍手)
言うまでもなく、今日の
地方財政の危機は、三割自治の名で呼ばれるように、自治体を中央政府の下請機関としてきた今日までの
地方行財政の
制度的矛盾が、これまた政府の政策破綻から来た不況と
インフレの激化で一挙に噴出した結果であり、それ以外の何物でもございません。(拍手)したがって、自主的で責任ある
地方行財政を実現するためには、所得税などの地方移譲による自主財源の拡充、大企業の
社会的負担の強化、
地方交付税の増額と配分の民主化、超過負担の廃止、国の委任事務の整理を断行すべきであり、これこそ、総理の言う
地方行財政の
根本的見直しであり、洗い直しであると考えるのであります。(拍手)
みずからの公約と政策の失敗はたなに上げ、
地方自治体に責任のすべてを転嫁して
自治体攻撃に血道を上げ、自治から官治、分権から集権へと危険な道を突き進んでいるのが
三木内閣であります。
このような
地方自治破壊の政府がこれ以上存続することを、われわれは、
地方自治を守り、日本の
民主主義を守る立場から、絶対に許すわけにはまいりません。(拍手)
これが、
三木内閣を信任せず、その退陣を求める第三の理由であります。
以上、内政面における
三木内閣の施政の跡を取り上げ、不信任の理由を明らかにしてまいりましたが、次に、
外交政策について、
三木内閣不信任の根拠を明らかにします。
総理は、
善隣友好が
わが国外交の重要な柱であると
施政方針演説で強調され、そのためにも、
日中共同声明をさらに進め、ことしは日中間に
平和友好の条約を締結して、子々孫々にわたる日中永遠の
友好関係の基礎を固める年にしたいと述べておられるのであります。国民の圧倒的多数は、この総理の言葉を歓迎し、その実現の一日も早いことを心から願って今日に参りました。
しかし、この国民の期待は裏切られ、ことしもあと二週間足らずとなった今日、
平和友好条約の締結交渉は何ら前進を見ていないではありませんか。
申すまでもなく、一昨年九月の
日中共同声明は、
両国政府首脳の責任ある公的約束であります。この
共同声明に基づく
日中友好条約が締結できないというに至っては、
三木総理の
善隣友好の外交とは一体何を言うのか、疑問なきを得ません。
三木内閣のもとで国民待望の
日中平和友好条約の早期締結が困難になっていることは、まことに両国人民にとり不幸なことだと言わなければなりません。
総理は、
日米首脳会談で安保条約の長期堅持を強調され、
アメリカの
アジア戦略に従って韓国条項を再確認し、
日米韓運命共同体をつくり上げ、
朝鮮民主主義人民共和国敵視の政策を今日一段と強めておられます。
国の主権と人権を侵した
金大中事件を不明朗きわまる
政治的解決でうやむやのうちに葬り去り、
朴ファッショ政権との政治的、
経済的癒着を強めつつあります。
特に許しがたいことは、
アメリカの前国防長官が、朝鮮に紛争が起きたとき、
朝鮮民主主義人民共和国の心臓部をたたくため、核攻撃もあえて辞せずとの発言をしたとき、
三木内閣は、これに抗議するどころか、米軍の韓国駐留を支持し、さらに、米軍の核抑止力は日本の安全に対し重要な寄与を行うものであると
共同新聞発表で正式に確認し、
アメリカの核政策を支持しておるということであります。
言うまでもなく、唯一の被爆国民であるわれわれ日本人のすべては、原爆許すまじと、かたく心に誓っております。にもかかわらず、一瞬のうちに数十万のとうとい同胞の生命を奪ったその
アメリカの核で日本を守ってもらうという総理の考えは、日本人の国民感情、心情から言っても、とうてい許すことはできないと考えるものであります。(拍手)
総理自身、あらゆる国の核実験に反対する
国会決議に賛成しておられるはずであります。その総理が、
アメリカの核で守ってもらうとか、いや、核のかさに入れなければ承知しないと、声を大にして主張すべきだなどと言っておられるのは、核絶対否定の
国会決議の精神をじゅうりんするものであり、それでも、われこそはすぐれた
議会制民主主義者なりと自画自賛される総理の厚顔さにあきれ入るのは、私一人ではないと思うのであります。(拍手)
かかる内閣の存在は、日本の平和と安全を危うくし、アジアの隣国との真の
友好親善を進めていく上に、はかり知れない悪影響をもたらすことは必至であります。
これが、
三木内閣を信任せず、その退陣を求める第四の理由であります。(拍手)
最後に、私は、本議場を通しまして国民の皆さん方に訴えたいことがございます。
三木総理は、
ランブイエ会議の成果を吹聴しておられますが、この会議は、病める
資本主義諸国が相寄り、不況と
インフレから脱出するための方策を検討し合ったものであり、結果は、総論では一致したが、各論に当たる
具体的政策では何一つ妥結を見ることができませんでした。かつて世界恐慌の際、一九三三年に行われた
ロンドン会議は決裂したが、今回は総論にしろ、意見の一致を見たことは成功だったと総理は強弁されておりますが、われわれが見逃してならないのは、たとえ総論にしろ、決裂することが許されないほどに、今日、
世界資本主義諸国の
体制的矛盾が激化しておるという事実であります。もちろん、日本もその例外ではございません。
総理は、本国会で、「
日本経済は、いまだかつて経験したことのない複雑にして困難な局面に立っている」と述べて、事態の重大性を指摘されておりますが、
三木内閣と自民党は、この
体制的危機にまで発展しつつある今日の危機を、
国民的立場からではなく、相変わらず大企業の立場から打開しようとして必死になっているのであります。
国民が強く反対している酒、たばこ、
郵便料金値上げを初め、国鉄、
電信電話料金等公共料金の一斉値上げ、大量の赤字国債の発行など、大衆収奪と本格的な
インフレ政策を強行しようとしておるのもそのためであります。しかし、この反
国民的政策は、
経済危機の打開どころか、ますます
日本経済の矛盾を拡大再生産し、これに対する勤労国民の強い反撃を呼び起こすことは必至だと言わなければなりません。(拍手)
自民党も、
三木内閣も、このことをよく承知しております。だから、自衛隊の増強や、国民の生活のすみずみまでも規制する刑法の
全面的改悪、小選挙区法の実施、天皇や
三木総理の
靖国神社参拝で憲法違反の
靖国神社法制定の既成事実をつくるなど、
政治反動の道を着々推し進めておるのであります。(拍手)
特に、政府・自民党は、労働者の立ち上がりを警戒し、
労働者階級の分断と差別の政策、
労働運動弾圧の政策に狂弄いたしております。今回の
ストライキ権問題に対する政府・自民党の対応の仕方は、このことを露骨に示しておるのであります。(拍手)
公労協、
地公労労働者を中心にしたストは整然と決行されました。労働組合の諸君も私たちも、ストの
国民生活に及ぼす影響を考え、
スト回避のために、条理を尽くして政府と折衝してまいったことは御承知のとおりであります。(発言する者あり)ストと処分の悪循環を断ち切るとの
総理言明、これを受けた
労働大臣の国会答弁、さらには、
使用者代表である三公社総裁による、条件つきにしろ、スト権を付与すべきだとの国会証言からいっても、細かい条件は別として、スト権を与えるという
基本的態度を総理が言明することが
スト回避の唯一の道であり、これが政府の
政治責任であることを強く主張してまいったのであります。(拍手)
しかるに、総理は、自民党内の派閥の思惑で縛られ、責のように沈黙し、保身のためには、政治家としてのリーダーシップを発揮しない方が得策とお考えになったのか、何らの政治決断もしないままじんぜん日を経過し、ついにスト突入という事態を総理みずからの手でつくったのであります。(拍手)
行政の
最高責任者として、この最低限度の任務さえ果たし得なかった総理の責任はまことに重大であり、この一事だけでも、総理の座からおりるべきだと考えるものであります。(拍手)
言うまでもなく、労働者の
ストライキ権は、労働者の生存権であり、個人の尊厳を保障する、何人といえども奪うことのできぬ基本的な権利であります。だからこそ、先般の
先進国首脳会談に参加した各国でも、経営形態とは関係なく、争議権が保障されておるのであります。
イギリス、フランスにおいては、公共部門の労働者についても、警察官などの例外を除き、民間と同様の争議権が認められております。イタリアでは、一九七四年に、公務員にも全面的に争議権を保障する法律が制定され、西ドイツでも、すべての
国有国営事業で雇員及び労務者の争議権は保障されておるのであります。
アメリカでさえ、ペンシルバニアなど大州で公務員に争議権を認めており、この傾向は世界的にますます強くなりつつあります。
三木総理が、かつて党首をしておられた
国民協同党も、昭和二十三年、
吉田内閣のもとでスト権を奪う現行法が制定されるとき、このような過渡的、一時的な
国辱的法律が撤廃される日の来ることを切望するとの見解を明らかにしていることを、総理も御承知と考えるのであります。
いかに自民党内における総理の
政治基盤が弱いとはいえ、憲法の保障する
基本的権利であるスト権問題を、今回の政府声明に見られるように、政策問題、いや、治安対策にすりかえて、活として恥じようとしない
三木総理の憲法無視の態度は、絶対に許すわけにはまいりません。(拍手)
総理はまた、
施政方針演説において、教育の重要性を説かれ、教育を本来あるべき場に引き戻し、政争圏外の静かな場に移すために、その
環境づくりとして、あえて政党人でない永井氏を
文部大臣に起用したと演説されております。
その
永井文部大臣が、自由で民主的な教育をこいねがう全国の父母と教職員の反対を押し切り、政府・自民党の意を受けて、主任の制度化を強行しようとしております。
幾ら文部大臣が、主任は
中間管理職でなく教育指導の担当者であると弁解しても、主任問題の
歴史的経過から見ても、その制度化の真のねらいが、差別と選別、上の命令に下服すとの
職務職階制の導入であり、教育への国家権力の介入を強めようとするものであることは、疑う余地もございません。(拍手)主任問題についての文部当局の見解が大きく揺れ動いておること自体、本問題の政治的背景が何であるかを示しており、特に、だれの目にも明らかなように、自民党の圧力で文部省人事の更迭が行われたことは、教育を政党の不当な支配下に置き、党利党略の具に供するものであって、憲法と教育基本法に対する、これほどあからさまな挑戦はないと言わなければなりません。(拍手)
国民に法を守れとお説教しながら、みずから憲法を無視し、法律をじゅうりんしているのが、
三木内閣、自民党の諸君であります。(拍手)
以上、述べましたことで明らかなように、力の政治に傾斜し、不公正拡大の政策を強行し、不況と
インフレを一層激化させ、平和と
民主主義、
国民生活向上の憲法秩序を破壊しようとする
三木内閣の退陣を求める声は、いまや天の声、地の声、人の声となっております。
総理に、議会人としての晩節を全うしたいという気持ちが、もしおありならば、不信任決議を待たず、みずから退陣することを、いまこの議場で明らかにすべきであることを最後に申し上げまして、
三木内閣不信任の提案理由の説明を終わります。(拍手)
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