○
松浦利尚君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
提案のありました
昭和五十
年度の
公債の
発行の
特例に関する
法律案について、
反対の立場から幾つかの
問題点を指摘し、
政府の明確な
答弁を求めます。(
拍手)
その前に、
政府が二兆二千九百億の
赤字公債を
発行しなければならない事態になりながらも、なお
国民に対して
経済見通し、
政策の
誤りを反省する
気持ちのないことを、大変残念に思います。
昨年、一昨年の急激な
物価上昇に関して、
政府には全く
責任がなく、また、今回の
不況が長期にわたったことにも
責任がないとする
政府、
三木総理の姿に、
国民は失望を通り越して、失笑すら感じています。
政府は、肝心の
経済が
国民のため望ましい方向に進むと宣伝はするが、そのときどきにスケープゴートをつくり上げて、そのせいにしておくやり方に
国民は苦しめられ続けてきたのであります。
昭和四十八年以来の
狂乱物価、
インフレが、
石油危機、
食糧危機に便乗した
大手商社を初めとする大企業の
独占的地位を利用した
投機活動によってもたらされ、いま
インフレを克服するとして、戦後最大の
不況という代償を
国民は払わされています。加えて、本年の春闘にこだわった
三木内閣の姿勢が、よけいに
政策転換のテンポをおくらせてしまったことは否定できません。
現に、
昭和五十
年度予算の裏づけとなる
主要経済指標は、
昭和五十
年度名目成長率は対前
年度比一五・九%、
実質成長率四・三%程度とし、
物価については
卸売物価年度上昇率七・七%、
消費者物価年度上昇率九・九%等を挙げていますが、
消費者物価目標を除くほかは、ことごとく
補正予算案提出とともに改正せざるを得ない
情勢をつくり出してしまったではありませんか。
その結果、いままた厳しい現実として
巨額の
赤字公債発行という形で
国民にツケが回ってきました。このことは、過去の
対応策が適切でなかったことを示す重大な結果なのであります。
三木総理、あなたは
政府自身の
経済見通しを誤った結果が、後世代の
国民の
負担増大につながる
巨額の
赤字公債の
発行につながった今日でも、なお反省する
気持ちの一毛だにないと断言されますか。多弁を弄せず、反省している、いない、あなたはそのいずれを
国民に対する
答弁として選ばれるのか、しかと承りたいと存じます。(
拍手)
さらに、四十九年十二月二十五日、
経済審審会計画推進委員会から出された「
経済社会基本計画フォローアップ 昭和四十九
年度報告」は「
物価目標を早期に達成するために
引締政策を
強化するとすれば、一桁
台物価上昇率の
目標はかなり早く達成することができようが、
雇用情勢の悪化や倒産の続発といった
経済社会の混乱が著しくなることが予想され、また
投資意欲も冷えきり、
中期的潜在成長能力を
設備能力の面から大幅に引き下げてしまうおそれなしとしない。」また、この逆の場合をも指摘しながら、極端な
政策を避けるため「急激な総
需要抑制策による
調整によって短期間に
物価を安定させようとすることには問題があり、
調整期間の長さについて多少余裕をもって考えておくことも必要」だと指摘をしておるのでありますが、
経済見通しに
誤りなし、
経済政策に
誤りなしと強気の
答弁に終始なさる副
総理、
昭和五十
年度の
物価と
経済成長の
指標は、初めから
同時達成は無理だったのではないのですか。
指標のとおりなら今日の深刻な
不況はなかったはずであります。
一月二十四日に発表した「五十
年度経済見通しと
経済運営の
基本的態度」は、
仮谷発言ではありませんが、いいかげんな
政府の
指標だったのでありますか。
経済担当副
総理からもぜひお聞かせをいただきたいと存じます。
また、従来から
大蔵大臣は、
国債の
利払い償還が
財政硬直化をもたらす一因となってきたと強調し、
国債整理基金特会は五十
年度三兆八千億に上り、蔵相自身、五十
年度予算では
国債の
発行を極力抑え、当初
予算に対する依存率を前年比一二・六%から九・四%まで低下させたと
財政演説で述べておられます。それだけに、あなたは、建設
国債の枠を超えて
赤字公債を
発行し、
公債依存率を二六・三%にも高められることは耐えられないはずであります。
あなたは四月十五日、すでに
歳入欠陥を予知して非常事態宣言を発しておられますが、五十
年度予算審議の段階では野党の質問にも言を左右して明らかにせず、
予算通過後半年を
経過した今日、前代未聞の税収見込み違いから、
巨額の
赤字公債発行に踏み切らざるを得ない
大蔵大臣としての
財政運営の
責任はないのですか。あなたからも
責任の所在を明らかにしていただきたいと存じます。
また、私は、このことは、ひとり大平
大蔵大臣の
責任というより、
三木内閣全体の
責任だと思うのでありますが、
財政担当の
大蔵大臣からも明確にお答えいただきたいと思うのであります。(
拍手)
また、
昭和四十二
年度にまとめられた
財政制度
審議会の答申は、
公債依存率は五%以下に引き下げることを
目標とすべきだとしていますが、あなたは望ましい依存率は何%だと思っておられるのですか。また、その
目標を達成させる方針は、いつわれわれに明らかになさるのか、承りたいと存ずるのであります。
次いで、具体的なことについてお尋ねをしてまいります。
現行
財政法は、第四条第一項において、「国の
歳出は、
公債又は借入金以外の
歳入を以て、その
財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の
財源については、
国会の議決を経た
金額の範囲内で、
公債を
発行し又は借入金をなすことができる。」としているとおり、本来、建設
公債自体も例外
規定なのでありますが、今日までの
経過を見ますと、実質的に例外のはずの
赤字公債であっても、公共事業費の範囲内であれば建設
公債として
発行してきたわけでありまして、建設
公債と
赤字公債との区別は、名称だけで、実質的に変わりはないと思いますが、
大蔵大臣の考え方をお聞かせいただきたいと存じます。
同時に、今後低成長下で
歳入が大幅に
減少することが予想され、
財政を従来と同じ発想で運営するならば、
赤字公債はますます累積することは間違いないと思います。現在の
公債発行残高は、十兆に達しました。一度
予算に組み込まれた
公債は、麻薬のように
予算からはずせず、七月二十一日の
財政審中間
報告を待つまでもなく、五十五
年度末の普通
国債残高は、およそ四十兆から六十一兆に達することも予想されると言われております。
このような多額の
国債発行は、
財政の
健全性と節度を失わしめるばかりでなく、わが国
経済に大きな
インフレ要因を持ち込むことになると考えざるを得ません。したがって、特定
財源の一般
財源への振りかえや、好況のときの増収を景気
調整準備金としてプールするなど、
財政運営を抜本的に改める必要があると存じますが、大臣のお考え方をお尋ねをいたします。
また、建設
公債自体も、今日まで安易に
発行され過ぎたのではないでしょうか。この際、建設
公債のあり方についても、将来のために検討しておく必要があると思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。
さらに、悪性
インフレ防止の意味で、
財政法第五条は日銀による
公債の引き受けを禁止していますが、現実的には、
発行後一年を経た
公債は、日銀の買いオペレーションの対象となり、間接的な日銀引き受けの抜け道をつくり出しています。日銀の買いオペ機能を活用すれば、大量
発行を合法的にスムーズにできる道を開くことになりはしないでしょうか。現に大蔵省は、金融機関の手持ち
公債を日銀に買い上げさせ、市中金融機関に余裕を持たせる方法をとりつつあると聞きますが、事実ですか。事実とすれば、日銀直接引き受けと同じことになりはしないのか。通貨膨張、
インフレの危険はないのか。また、本年だけはという
気持ちが、結果的に、将来にわたって便乗的な
歳出増をも要求する
赤字公債乱発という重大な禍根を残しはしないか。そのために、日銀買いオペについて一層の
法律的制約を厳しくする方針はないのか、お尋ねをいたします。
また、日銀の買いオペ機能によらずして、十一月以降毎月六千億近くの
公債を市中消化することはそう簡単ではないと思いますが、どのような方法を考えているのですか。また、金融市場に
圧迫が加わり、本来の業務である企業や個人に対する融資をふやせないばかりか、公社債市場では金融債、事業債の増発は不可能になりはしないか。また、
地方債計画四兆二千億及び特別会計債等の消化が困難になり、
地方自治体行政を阻害しはしないか。また、
国債とともに
地方債、政保債を含めた公共債
発行のルールをこの際確立しなければならないと思いますが、大蔵、自治両大臣から明らかにしていただきたいと存じます。
さらに、償還は十年全額現金償還と言われていますが、あなたは、一般会計剰余金は全額を
国債整理基金特会に繰り入れる、毎
年度の
予算でも同会計に新たな繰り入れを行うと言っておられますが、今後も
赤字公債の
発行が予定されている
状況下で、利払いと償還に追われ、ツケを後世代に回し、
財政硬直化、他の
財政需要の
圧迫要因となりはしないか。他方、市中消化、特に個人消化を活発にするため、短期高利の貯蓄
国債を
発行すべきだという意見もありますが、大臣の御意見を承りたいと存じます。
同時に、五十
年度に生じた高額の税収不足の後遺症は相当長期的なものになり、一般会計は、かなりの長期にわたって
赤字公債に依存せざるを得なくなるのではないでしょうか。五十一
年度は、当初
予算から
赤字公債発行が前提となると思いますが、
大蔵大臣の
赤字公債発行予想額をお示しいただきたいと存じます。
同時にこの際、償還
財源、利子負担軽減
措置などの
国債の管理
政策の確立を明らかにするとともに、償還計画をわれわれに向かって明示していただきたいと存じます。
次いで、副
総理にお尋ねしますが、第四次公定歩合の引き下げと、十六日予定の預金準備率の引き下げに伴うコールレート七%台引き下げが、ある程度の企業への貸し出し増を伴い、第四次
不況対策とともに、来年三月ごろには通貨供給量が対前年比で一八%以上に急増し、公共料金の相次ぐ引き上げと重なり、五十一
年度半ばから再び
物価上昇のおそれはないのですか。
また、あなたが
大蔵大臣当時の
昭和四十年、初めて
赤字公債発行にわが国は戦後踏み切ったのでありますが、対前年比四・六%程度の
物価が六・四%に上昇し、
物価引き上げに一役買ったことを記憶しておるのでありますが、今回も
物価上昇の一因となりはしないのか、お聞かせいただきたいと存じます。
いずれにいたしましても、補正後は
国債発行残高約十六兆と、税収の十七兆とほぼ変わらないものになり、
日本の
財政は、借金
財政という底なしの沼に足を引きずり込まれかねない
情勢にあります。いま大切なことは、第一に、
財政支出の削減と再検討が必要だということであります。公共事業費は、産業基盤投資の整理と抑制、防衛費の思い切った削減、また、
予算の三分の一を占めている各種補助金を整理する方針はないのか、お聞かせをいただきたいと存じます。
第二に、わが党の赤松、武藤代議士の代表質問にも示したとおり、この際、税制を思い切って抜本的に改める必要があるということであります。
年度内増税が可能な政令
部分を、なぜ
大蔵大臣は断行しなかったのでありますか。九月、十月から、わずかに千分の〇・五ずつ引き下げはいたしましたが、
貸し倒れ引当金繰り入れ千分の十の積み立てから千分の五に変更する課税や、減価償却資産耐用年数の大企業のものだけ一五%圧縮、一千万以上高額所得者への付加税等を、なぜあなたはやらなかったのですか。
予算通過後に、税収不足が非常事態宣言を発しなければならないぐらい明らかであったにかかわらず、なぜ手をつけなかったのでありますか。手をつけなかった理由だけ
国民の前に明らかにしていただきたいと存ずるのであります。(
拍手)
一方、税制改正の方向として
租税特別
措置法の見直し、利子配当優遇を改めて総合課税に、法人所有の土地評価益税、富裕税の新設を断行する
気持ちはありませんか。
また、新
財源として、大衆課税
強化になる付加価値税を意図しているといううわさがありますが、事実なのか、これまたお尋ねをいたします。
同時に、本年の
地方財政の混乱から見ても、福祉
財政充実の観点から見ても、
地方財政の拡充が重要であります。五十一年以降、自主課税権の
強化、制限税率の撤廃ないし幅の拡大、
交付税率の引き上げ等、
地方自治体の自主的な決定が行われる保証を与えるべきだと思うのでありますが、五十三年からと言わず、五十一
年度から実施するお
気持ちがあるのかどうか、大蔵、自治両大臣の方針をお聞かせいただきます。
以上、幾つかの意見を入れて質問しましたが、
財政制度
審議会は、その中間
報告として、現下の
財政危機は、単に
経済の激変のみによるものではなく、従来の
財政運営と無関係ではあり得ない。これまでの
経済の高度成長を前提とした
財政運営の
問題点が、
経済の激しい変動を契機として表面にあらわれて出たものと考える。したがって、この機会に従来の
財政運営を改めて見直し、再検討まることが、現下の
財政危機を克服するためにも、さらには、今後に予想される安定成長下で
財政が
国民の負託に適切にこたえていくためにも、強く求められていると指摘をしています。
いまこそ、
財政支出の効率的使用という立場から、支出の洗い直しや所得税の不公平、大企業優遇税制の是正による増収などを直ちにやるべきだと思います。今後の
財政がどのような構造をとり、
財政支出がいかなるバランスをとるかなどを明確にさせていくためにも、三年ないし五年の中期
財政計画を策定する必要があると思うのでありますが、
三木総理の御見解を求めたいと存じます。
三木総理、安易な
国債発行が、やがて借金の重荷を軽くする手軽な手段として、将来
政府が借金に苦しんだあげく、
財政を膨張させながら
インフレを進めていくという誘惑に駆られないという保証はないではありませんか。
しかも、高度
経済成長のつめ跡は、いまなお深刻な環境破壊と過密過疎、農業の衰退、人間疎外、地域格差拡大、
社会保障、福祉の立ちおくれ、不均衡は、いまや
日本列島全体を覆い、
国民の生活を不安に陥れています。これらの不均衡是正を
財政の
基本政策に置かない限り、
日本経済の立ち直りは必ず行き詰まることを
三木総理は知るべきであります。
最後に、「過ちて改めざる、これを過ちと言う」という言葉を
政府・自民党に献じて、私の質問を終わりたいと存じます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣三木武夫君
登壇〕