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佐藤観樹君 私は、
日本社会党を代表して、再び
酒税法改正案及び
製造たばこ定価法の
改正案に、強い抗議を込めて、反対
討論を行います。
私は、去る五月の六日、この
議場で、社会的不公平の是正を唱える三木内閣が、逆に不公平を拡大する
法案をごり押しすることは、三木内閣の公約自体、実は口先だけのものであったことを証明するにほかならないと、鋭く批判をいたしました。また、
国民のために何一つ公約を実行しない三木内閣は、夏の朝露のごとくただ消え去るのが運命とも予言をし、さらに、参議院段階でも公共料金値上げ反対の集中砲火を浴び、この悪法がついえ去ることを期待すると述べました。
結果はどうだったでしょうか。七月四日の夜十二時になっても、酒、たばこの値上げ
法案は、
社会党を中心とする
野党の激しい抵抗の中で、参議院を通過しなかったのであります。そして、このような
法案を再
提出した三木内閣の運命は、いまや風前のともしびになっているのであります。
議員諸君、七月五日、すなわち値上げ
法案が廃案になった翌日、選挙区に帰られて、選挙民はどのような反応を示したでしょうか。少なくとも私は、凱旋将軍のごとく称賛の歓迎の中で温かく迎え入れられたのであります。(
拍手)
国民はなお、預貯金金利を上回る物価高の中で、疲れたからちょっと一服、夕げにちょっと一杯と心を休めたいと思っているのに、たばこは四八%、酒は二二%の値上げでは、とてもたまったものではありません。
政府、特に担当の
大平大蔵大臣は、この値上げ二法が
国会で廃案になったという厳粛なる事実を、もっと厳しく考え直すべきであったのであります。前
国会廃案になった
法案を、施行期日だけを変えてそのまま提案をしてくる、この政治的なセンスが、
国会を一カ月余も
混乱をさせ、きょうはちょうど二十五日でございますから、会期は来月の二十四日まで、余すところ一カ月にも満たなくなった今日、いまだに参議院を通過させる見通しすら立たない状態ではありませんか。
大平さん、あなたは心の中でこう言っているでしょう、酒、たばこの値上げ
法案は、すでに五十年度の当初予算に織り込み済みなんだと。しかし、この五十年度の予算自体が、十七兆三千億円の税収見込みが、何とぞの二三%にも当たる三兆八千八百億も歳入欠陥になるという、前代未聞の予算であったのであります。いまや、五十年度予算の前提が狂ってきたのですから、補正予算の編成時に、もう一度考え直す必要があったのです。たとえ十二月の一日から値上げができたとしましても、たばこで八百余億の増、酒で二百七十億の増、合計千百億程度の増収であります。これぐらいの財源は、後で述べますように、
政府にやる気さえあれば幾らでも取れるのです。
さらに、三木首相は、独禁法を今
国会に
提出しない
理由として、参議院で廃案になったことを挙げています。独禁法は、廃案になったから
提出をしない、値上げ
法案は、廃案になっても、施行日だけを変えてそのまま
提出してくる、こんな理屈に合わないことが
国会を堂々とまかり通っていいのでしょうか。(
拍手)
さらにです、九月九日には共済年金法など生活関連の
法案を早々と閣議決定をしておきながら
提出せずにおいて、値上げ
法案のみを
提出してくる。この政治的なセンスは、とてもわれわれの常識では理解できません。
国民はこんなことを望んでいたのでしょうか。
ここに新聞の投書が一つございます。披露させていただきたいと思います。これは私の地元の中日新聞の十月の十一日でございますが、六十七歳の、いまや無職になられた愛知県瀬戸市、私の選挙区ではございませんが、芝田緑さんという方の投書がございます。これは皆さんと一緒に私は考えてみなければいけないと思うのです。題名は「早く年金法改正を 空転
国会 たまらぬ巻き添え」こういう題でございます。
九月には年金法が改正され、八月にさかの
ぼって実施されると聞いていましたが、九月に
なって、それは
国会で値上げ
法案の巻き添えで
流れてしまったと言われたときには、全くがっ
かりしてしまいました。なんのために値上げ法
案と、年金法が一緒にたたきつぶされなければ
ならないのか。
かつて新聞にあったように、月収百万とか聞
く代議士先生
たちにはわからないと思うが、私た
ち年金生活者は、月々乏しい金で生きているの
です。それも在職期間四十年近く、毎月給料か
ら、かなりの額を天引きされて積み立ててきた
金である。その年金も、今の高卒初任給にも満
たない額で一家生きてゆかねばならない。
昭和
激動の乱世を生き抜いて、老いてこの始末であ
る。なぜ年金法
改正案まで巻き添えにしなけれ
ばならないのか。
しかし今度の
国会もまた、値上げ
法案を最初
に出して
混乱させている。どうして年金法など
重要法案を先に出して、福祉優先
国会にしてく
れないのだろうか。また今度も流されてしまっ
たら、年金法の改正はいつになるやら。単独可
決だとか、
野党の一斉帰郷だとか、
国会の空転
が恐ろしい。
政府、
野党の諸先生、今度こそ年
金生活者必死の訴えを流さないで下さい。
こういう切々とした投書が、何も中日新聞に限らず、各所に出ているわけであります。私
たちが主張したように、始めから年金法その他生活関連
法案を出しておれば、このような投書は出なかったはずであります。
私は、
昭和四十四年十二月、
国会に出てから、三代の内閣で五人の大蔵大臣に、
大蔵委員会を通して論争をしてまいりました。
佐藤内閣末期の
水田三喜男氏、
田中内閣の
植木庚子郎氏、亡くなられた愛知揆一氏、
福田赴夫氏、そして現在三木内閣の
大平正芳氏、この五人であります。そして、
社会党の大蔵部会の評価は、
大平さんはこの五人の大蔵大臣のうち下から二番目、それも三位とは大きく水のあいた四位でございます。第一位がだれで、第五位がだれか、ここでは申し上げません。
私
たちと政策が違うのは当然でありますが、大蔵大臣は、まず日本丸の船長として、激しく揺れ動く経済に対して、的確な見通しを持たなければなりません。しかし、御存じのように有史以来の歳入欠陥をもたらしたのであります。また、私
たちと政策論争をやっていて、
野党といえども、必ず建設的な提案、
自民党内閣でも取り上げることができることがあるはずであります。特に
社会党は数々の具体的な提案をしているのですから、それを幾らかでも取り入れ、政治を前進させていこう、行政に反映させていこう、こういう姿勢がなければ、議院内閣制の大臣は勤まりません。
本来、政治は行政の上をいくべきなのであって、官僚の言うとおり
国会で答えているなら、
政治家は必要ありません。政権をとろうとする
大平大蔵大臣なら、もう少し現状の政治を見回し、いま日本経済が何を必要としているのか、
国民生活に何が必要なのかを十分考えて、経済
運営をすべきであります。
前
国会、廃案になった酒、たばこの値上げ
法案を、日付だけ変えて
提出してきた
大平蔵相の政治的センスを疑うとともに、このような
議会の
意思を無視してごり押ししてくる本
法案に、まず強く反対するものであります。(
拍手)
次に、三木首相は、十月六日の記者会見で、「政権を担当する党としては、人気とりだけはできず、
国民に不人気なこともやらなければならない」と語っています。いま、政治に必要なのは、「
国民に不人気な」ではなく、この言葉を、「財界に不人気な」「大企業にも不人気な」に直すべきであります。よしんば、首相が言うように値上げ
法案を
国民に押しつけるなら、十分
国民に納得がいくものでなければならないはずであります。
前
国会でも述べましたように、第一に、本当に酒、たばこの値上げ以外に、ほかに財源はないのでしょうか。私
たちが去る九月十八日、
武藤山治
議員の質問の形で提案をいたしましたように、
法律を改正しなくても増収できる項目は幾らでもございます。
先ほど
山田議員からお話がございましたように、金融機関の貸し倒れ引当金の千分の十を、当初大蔵省が考えておりました千分の五に引き下げるだけで二千六百億の増収、機械などの償却資産の耐用年数も、政令、省令の改正で増収することができますので、たとえば、一律一五%年数を延長しただけで三千億程度の増収は見込めるのであります。十二月から酒、たばこの値上げができたといたしましても千百億程度の増収でございますから、これと比べてみますと、
国民に不人気なことをやるのではなく、ひとつ、大企業に不人気なこともやってみたらいかがでございましょうか。(
拍手)
第二に、間接税の逆進性の問題です。本院でも、予算
委員会でも、所得金額の一番少ない第一分位の人々の実質所得が減っている問題が、大きくクローズアップされてきました。第一分位の人
たちでもたばこを吸うし、酒は飲むんです。こういう人
たちからもさらに税金を取り上げることが現在の政治の使命なのでしょうか。所得の低い人ほど相対的に重くかかる間接税を、このような所得格差が開いていく時期に強化すべきことでしょうか。答えは断じてノーであります。
第三に、物価との関連です。
政府は、すでに物価指数に織り込み済みと言っておりますが、成人の八割、三千七百万人が吸うたばこを値上げするということは、心理的な波及効果ははかり知れないものがあります。
しかも、どうしても納得できない第四の点は、専売公社が超黒字だということであります。四十九年度の益金は六千七百八十億円……