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1975-09-18 第76回国会 衆議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年九月十八日(木曜日)     —————————————  議事日程 第三号   昭和五十年九月十八日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑     午後一時六分開議
  2. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑
  3. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。赤松勇君。     〔赤松勇登壇
  4. 赤松勇

    赤松勇君 私は、日本社会党を代表し、三木内閣総理大臣所信表明演説に対し、緊急かつ主要な国民的課題について質疑を行い、問題の所在を明らかにしたいと思うものであります。(拍手)  日本経済は、いまインフレ不況同時進行の激化というきわめて異常な危機的状態に置かれており、現在の国民生活だけでなくて、将来にわたっても大きな不安に陥れられているのであります。ここまで危機を深め不安を増大させてきた原因は一体何であるか、また、その責任者はだれであるか、まずそのことを明らかにしたいのであります。  申すまでもなく、その原因は紛れもなく自民党内閣経済政策の重大な失敗によるものであり、その責任者は明らかに自民党政府そのものであります。  三木首相は、臨時国会に臨む当初の態度として、この経済見通し誤り失敗について国民にわびる態度を表明するつもりだと報ぜられておりましたが、直前になって自民党首脳有力閣僚反対に会って、ほおかぶりを決め込むに至りました。  高度成長政策を強行し、一挙に二けたの狂乱物価インフレを引き起こし、公害の激増、国土の破壊、そして、ついには教育や人心の荒廃すらもたらしたその責任を、わが党は不問に付することは断じて許すことができません。(拍手)  しかも、そのことが、自民党を支えておる大資本、大企業側からも強い批判が高まると、今度は一転して、総需要抑制という政策に転換し、しゃにむに労働者賃金抑圧に狂奔し、春闘を一三%に、農民生産者米価は一四・四%に抑え込んで、景気を極度に冷却させ、その結果、個人消費が大幅に落ち込み、中小企業倒産が相続き、ついには興人などの大型不況倒産すら引き起こした責任は、まことに重大と言わなければなりません。(拍手)  これに対してとった三木内閣対策はどうか。小刻みの公定歩合引き下げ公共事業費の繰り上げというパターンの景気対策を第三次にわたって打ち出してまいりましたが、ほとんどその効果がなかったことは、現実経済状況国民生活実情が明らかにこれを示しています。  総理は、みずからの責任をたな上げにしたまま、われわれに政治休戦を呼びかけているけれども、これは、責任を回避し国民批判を封じるという虫のよい態度であって、断じて許すことはできません。  もし真剣な態度で真に政治休戦を求めるならば、少なくとも、国民が強く反対しているところの酒、たばこ、郵便料金値上げ法案の再提出を取りやめ、国民が強く望んでいる独禁法改正案提出してその成立を図り、かつ、景気対策補正予算については、野党要求を取り入れて修正することを明確に表明すべきであります。これがすなわち対話協調政治であります。三木首相にその用意があるかどうか、これをお伺いしたいのであります。(拍手)  三木総理は、対話協調、話し合いの政治を述べながら、実際の政治行動はこれと全く反対態度に終始してまいりました。  さきの国会でも、わが党の成田委員長代表質問に対し、予算修正要求を拒否し、大企業租税特別措置改革を含む法人税制大幅改革土地増価税地方財源の充実など、経済構造的改革をも含む予算組み替え案に対して、一顧だにも与えない頑迷な態度をとってまいったのであります。これが果たして対話協調政治でありましょうか。もしあの際、虚心にわれわれの提案に耳を傾け、これを取り入れる雅量を示しておれば、今日のごとき経済危機を招かずに済んだはずであります。  私は、総理とは、終戦後の国会から三十年間議員生活をともにしてまいりました。常々私は、三木さんは保守政治家の中でも筋を通す人であると尊敬してまいりました。しかし、対話協調をモットーとしながら、野党委員長のきわめて建設的な提案を一蹴する態度は、口と腹とが違っていることをみずからここに暴露したものと言わざるを得ません。(拍手)  政府は、早期に臨時国会を召集する理由として、経済危機突破のためだと言いながら、危機に当面する経済見通しについて、担当の大蔵大臣が説明しようともせず、あるいは補正予算提出も後回しにして、一体われわれに何を審議してくれというのでありましょうか。これはバットを使わずに野球をやれというのと同じではないですか。みずから議会の子と称しながら、議会をないがしろにし、国民を愚弄するものであって、あなたのやり方は断じて許すわけにはまいりません。  また、昨日発表された第四次不況対策は、国民要求とはほど遠いものであり、依然として大資本、大企業中心景気対策となっております。  政府は、当然行うべき政策的努力を行わずに、インフレにつながる安易な大幅赤字国債前提として、公定歩合引き下げ大型プロジェクト公共事業等目玉商品としているけれども、これは端的に言えば、列島改造高度成長政策に後戻りすることになる危険があるのであります。ことしの経済白書でも指摘しているとおり、三木内閣は、はっきりと列島改造を否定し、これと訣別し、高度成長政策にも別れを告げたはずであります。  政府は、三兆円の需要創出効果をねらって、一兆五千億円に上る公共事業費追加、二兆円に及ぶ財政追加支出を決定したと言うが、その内容は、相も変わらず大企業向けの上から下への景気対策であり、当然、再びインフレーション狂乱物価を招かなかったら奇跡と言うほかはないのであります。  三木総理は、物価が鎮静化したから今度は景気対策だと言うが、国民要求は、景気インフレかの二者択一ではなく、不況インフレも同時に解決せよというのが至上命令であるのであります。したがって、一けたの公約を果たし得なかったらいかなる責任をとるつもりか、これをこの場で明らかにしていただきたい。  高度成長インフレ政策で大企業に莫大な利益をもたらした反面、労働者中小企業農民にはインフレの波で生活破壊、その上、総需要抑制労働者には賃金抑制農民には低米価豊作貧乏中小企業インフレ倒産に追い込まれております。要するに、冷やしたり暖めたりするたびごとに、そのあらしをまともにかぶるのは中小企業であり、農民であり、労働者であり、一般国民大衆であります。(拍手)  その上、大企業のための公定歩合引き下げ理由一般預貯金金利引き下げるというに至っては、寒さにふるえている子の上着をはがすような冷酷な仕打ちであり、憤激を覚えるのはひとりわれわれだけではありません。(拍手)  日本勤労者は勤勉で貯蓄性向が高いと言われておりますが、それは政府を信頼して貯金しているわけではありません。まさにその逆であり、将来の生活不安からインフレ目減り承知で貯金してきたのであります。その目減り補償も放置した政府が利子を引き下げるとは、三木総理は冷血動物かと問われてもやむを得ないのであります。せめて、この機会に歩積み両建てをやめると同時に、国民勤労性貯金郵便貯金などは金利据え置き措置をとるのが血の通った真の政治ではないでしょうか。  中小企業者農民労働者は、ともに戦後の日本再建の担い手として孜々営々として働いてまいったのであります。しかし、その報いは、高度成長経済の中ではインフレ倒産に泣き、また、大企業圧迫出血受注も余儀なくされ、経営不振でまじめな経営者一家心中に追い詰められるという悲惨な例が後を絶ちません。しかもその上、再びこれらの人々の犠牲の上に大企業本位大型景気対策を進めるというのでは、失望を通り越して、われわれが怒りを覚えるのは当然であります。  政府はこの際、当然の責任として、中小企業のための特別な金融税制制度約束すると同時に、倒産防止のため、下請関係の抜本的な改革、特に今日中小企業が大資本圧迫に悩んでおりまして、中小企業事業分野確保法制化は、わが党が国会提出し、十年間中小企業のためにがんばってまいりました法律でありまして、そのほか、中小企業経営安定基金制度の確立など、これに対応する行政機構整備とともに急ぐべきであると思うのでありますが、このことについて総理はいかにお考えでありますか。(拍手)  中小企業と並んでの犠牲者農民であります。  政府は、高度成長政策によって減反政策をとって農民犠牲にしてまいりました。農民はいま、農業を続けるために出かせぎに出るという生活を強いられております。高い肥料、高い農薬、高い農機具を押しつけられ、生産物は安く買いたたかれているからであります。農林省は、最近、減反政策によって八郎潟その他で稲の青田刈りを強制させ、農民の手でこれを焼かせるという冷酷な措置を行っております。日米会談によって食糧安定輸入が保証されたなどと喜んでいるけれども、全く農民無視政策であります。年間二千万トンもの食糧を輸入するのが安定した農業政策と言えるでありましょうか。わが党の専門家の計算によれば、五年から十年の計画主要食糧九〇%の自給率達成は可能だとの結論が出ております。政府がその気になって政策を実行すれば、農民のための農業政策が実施できるのであります。食糧までアメリカのかさの下に入ることなく、食糧自給計画を直ちに始めることを要求し、首相所信を聞きたいと思います。(拍手)  次に、地方財政の問題に触れておきます。  不況対策は、上からの景気対策ではなく、たとえば公共事業ならば、地方財政欠陥優先的に補い、公営住宅の建設、環境整備事業公害防止、災害の防止対策など、生活に直結した地方自治体事業から施行するという下からの景気回復を図る方針に切りかえるべきであります。  不況の結果、国税三税の落ち込みにより、三兆六千億に上ると言われる財政欠陥を生じ、地方財政に大きなしわ寄せが行われようとしていますが、政府は、むしろこれを利用して人件費攻撃を強め、すでに地方財政計画に盛られた地方交付税も減額して、人事院勧告に基づく給与改定に必要な財政措置も行わないという圧力をかけていますが、これは許すことのできない暴挙と言わなければなりません。いまこそ、中央地方を通ずる税財源とその再配分を行って、抜本的に地方財政改革を図る方針のもとに、当面、緊急に交付税率改定特別起債などの措置により、財政の窮状を打開するのが当然と考えるが、政府はいかなる用意があるのか、この機会にこれを明確に答えていただきたいと思います。(拍手)  次に、赤字公債について一言触れておきます。  景気対策目玉として、大幅な赤字公債発行を柱としていますが、補正予算及び公債発行計画内容を具体的に明らかにしておりません。現在でも国債残高十兆円、このまま推移をすれば、五年後には六十兆円を超過すると言われているとき、市中消化日銀引き受けへの歯どめ措置、厳格な減債計画などを抜きにした安易な借金財政は、必然的に悪性インフレーションを引き起こし、取り返しのつかない新たなる経済危機を招来することは火を見るより明らかであります。  三木首相が言うように、国民全体の協力でこの危機を切り抜けるというならば、まず、高度成長下で不当に収益を上げ、資本を蓄積し続けてきた金融資本、大商社、土地成金などに、より多くの協力をその方面に求めるのが当然でありましょう。貸し倒れ準備金退職引当金特別償却交際費など、不当に過大な控除や留保などを認めている租税特別措置法抜本的改廃、少なくとも先進国並み実効税率を引き上げ、累進課税制とする法人税改正大口土地保有に対する土地増価課税富裕税の創設などによって、富と所得の再配分財源確保同時解決を図ることが、赤字国債発行よりも、まずとるべき財政経済政策基本と信じますが、総理はいかにお考えでありましょうか。(拍手)  次に、政府福祉政策をただしておきたいのであります。  総理府統計によっても、六十五歳以上の高齢者は八百七十五万人となり、昭和百年には五人に一人が六十五歳以上という高齢者社会が来ると予想されています。このためには、何よりも老後の生活保障年金制度改革が緊急の課題であります。ライフサイクル計画でうたっている年金賦課方式へ早急に移行すべきであり、いますぐにでも生活できる年金、少なくとも無拠出の老齢福祉年金で一人四万円の物価スライド年金を実施すべきであります。現在十兆円以上と言われている、そして毎年一兆四千億も余裕金を出している厚生年金積立金等の運用でも、当面の財政措置は十分実施可能であります。したがって、即時この年金問題に政府は手をつけるべきであります。  革新自治体を初め地方自治体が、三割自治の中で苦心苦心を重ねて行ってきた福祉対策を、福祉ばらまきなどと言って、あたかもむだ使いのごとく批判するのは見当違いもはなはだしいのであります。政府はみずからの責任としてこれを体系化し、充実していくことが、本来政府責任ではないでありましょうか。  国民基本的人権を保障する上で、当面緊急な課題一つは、雇用問題と公務員及び公共企業体職員労働基本権の問題であります。  政府失業統計は、実情をあらわさないでたらめなものでありますが、四十万人に上る大学卒業者を含め、来年の就職問題は重大な社会問題であります。企業の大半は、不況理由に、新規不採用または手控えの方針で、しかも、有名校のみという露骨な差別的態度を示している企業も数多く見られるのであります。  ライフサイクル計画人材独占禁止法構想を出している総理は、これらの差別、さらには女子労働者、パートタイマーの労働差別などについていかなる考えを持っておられるか。また、政府としていかなる指導をしようとしているのか。また、雇用対策として、雇用を保障し、失業防止するためにいかなる対策を実施しようとしておるのか。この際、これを明らかにしていただきたいと思います。  次に、労働基本権の問題についてお尋ねいたします。  政府は、三公社現業のスト権問題について、七四年春闘収拾の際合意した五項目について、この秋にも結論を出すということを労働側約束をしました。  この際お聞きしたいのは、その態度に変わりはないか、これを明らかにしていただきたい。  今日までの閣僚協議会専門委員会運営を見ますと、われわれは多くの疑問を持たざるを得ません。合意項目の四項中には、「随時労働側意見を聞く」とあるにもかかわらず、今日まで意見を聞いたのはわずか二回であります。しかも、そのうちの一回は、公労協基本的な態度を聞いただけであります。ほとんど労働側に対しては誠意ある折衝あるいは説得をしておりません。  また、三公社現業当局は、公務員制度審議会答申どおり労使関係の改善を図るには、当局側当事者能力組合側のスト権回復問題の解決が先決であり、急務であると考えているにもかかわらず、関係閣僚協議会当局側意見を聞こうともせず、放置しているのは一体何ゆえであるか。こうしたやり方は明らかに片手落ちではないか。政府閣僚協議会専門委員会の公平な運営を図るべきだと思うが、これについての所信を承りたいと思います。特に、この秋、公労協の諸君がこの問題についてきわめて重大な関心と決意を持っておりますので、この際、責任ある答弁を三木総理にお願いをいたします。(拍手)  次に、三木内閣の最近の外交問題についてただしたいと存じます。  三木総理は、先般の日米首脳会談での共同声明で、「韓国の安全は朝鮮半島平和維持に緊要であり、朝鮮半島平和維持日本を含む東アジアの平和と安全に必要である」という新韓国条項を確認しております。宮澤外相の見解によれば、これは佐藤内閣時代韓国条項を再確認した上での条項だと説明され、明らかにこれは範囲の拡大であり、質的な強化であり、軍事的危険への一歩を踏み込んだものであります。  一体、三木総理は、朝鮮民主主義人民共和国韓国及び日本に対していかなる軍事的脅威を与えておるか、また、与える可能性があると考えておるか、それを具体的にこの際お示しをいただきたいと思います。  また、今回の日韓閣僚会議日米会談の新韓国条項日韓両国で確認し、これに基づく大幅な対韓経済援助を永続することを確約しているが、これは朴ファッショ政権に手をかして緊張をつくり出し、明らかにアジアの平和に脅威を与える危険な外交政策であります。韓国側から五億ドルの借款供与要求されたとの報道もありますが、今後政府は、具体的に援助を永続的に行うのかどうか、これも明らかにしていただきたいと思います。  日本政府は、ベトナム戦以後のつくられた緊張政策によって、アメリカアジア支配戦略の片棒を担ぎ、日本の主権を侵害した金大中事件をあいまいに葬りながら、朴軍事ファッショ政権援助という誤った政策をとり続けてまいりました。この政策は、直ちに日本国民のためにやめるべきであります。真にアジア人民の立場に立ち、朝鮮の自主的平和統一方針を支持し、韓国における国連軍の解体及び一切の外国軍隊撤退要求に賛成し、朝鮮民主主義人民共和国承認方針を示すべきであります。  この前提に立って、朝鮮民主主義人民共和国との各種の交流を自由にし、これを活発化し、松生丸事件の教訓にかんがみ、漁業協定その他の各種協定を積み重ねていく努力をこの際行うべきでありますが、三木総理所信を明らかにしていただきたいと思います。(拍手発言する者あり)  さらに、日中友好平和条約締結は七十五国会の重要な公約一つでありましたが、自民党内部の一部の反対に会って実現しておりませんが、今後いかなる方針で取り組むつもりなのか、これを明らかにしていただきたい。一説によると、十一月のフォード米大統領北京訪問後に、情勢を見て腹を決めるつもりだとうわさされておりますが、もしそうだとすれば、三木首相年来の外交的信念にもとり、余りにも自主性のない態度と思うのであります。  いずれにしても、日中平和条約締結こそは、三木政権歴史的評価を決定づける課題でもあり、この問題についてはいかなる所信を持っていらっしゃるか、この際、明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)  最後に、三木内閣政治姿勢についてただしたいと思います。  言うまでもなく、経済分野だけでなく、政治の側面でも、社会、文化の面でも、戦後三十年、安保から二十年、いまや日本は、重大な歴史の流れの中で一大転換期に立っているのであります。この歴史的背景の中で、現実には不況対策の名のもとに国民生活犠牲にし、大企業中心経済財政政策をとっているけれども、これは明らかな誤りであります。  今日、日本国が当面している重大な問題は、この大企業中心財政経済政策を依然としてとり続けるのか、それとも、富と所得の格差を是正し、不公平を正すために、経済の仕組み、産業の構造にまでメスを入れて、国民生活優先の、国民大衆本位経済社会改革を追求するのか、二つに一つの選択を求められており、勇断をもってこの命題に対処しなければならない段階に達しておると思うのであります。(拍手)  しかし、三木首相の最近の政治行動には、公約をいささかもこれを実行する良心もなく、国民の猛反対を押し切って靖国神社参拝を行うなどのファッショ政治地ならし的態度を示し、まことに心もとなく、危険に感ずるものであります。  三木内閣の誕生は、田中内閣不祥事件と、高度成長経済政策失敗に体制的な危機を感じた日本独占資本支配者たちが、政権たらい回しを承認したのであって、国民の洗礼は三木内閣はいまだ受けていないのであります。  この事実からも、一日も早く国会を解散して信を問うのが、議会制民主主義の当然の道であると思うが、総理はいかにお考えになりますか。(拍手三木総理政治信念国会解散についての確固たる所信を伺いたいと思います。  全般にわたる私の質問に対し、不満な点があれば再質問を留保し、私の代表質問を終わりたいと思います。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫登壇
  5. 三木武夫

    内閣総理大臣三木武夫君) ただいま赤松勇君からいろいろ御質問をいただきました。御批判は御批判として承りますが、承服いたしかねる点も多々ありますので、率直にお答えをいたしたいと思います。  まず第一に、インフレ不況同時進行というものについて、三木内閣責任自民党内閣責任を追及されましたが、赤松君も御承知のように、インフレ不況同時進行は、一昨年の秋の石油ショックによって、世界的にインフレが起こっておる、そのインフレを抑えるために、各国とも総需要抑制政策をとっておる、そういうことのために、世界各国ともこれは共通現象であります。日本だけの現象ではない。また、今日の国際経済というものが、それほど相互の関係というものが非常に密接に結びついてきたという証拠である。だから、このインフレ不況同時進行を、スタグフレーションを、自民党責任である、自民党内閣責任であると断じられましても、これは、これだけの世界的現象で、各国先進工業国共通の悩みを悩んでおるわけでありますから、その責任を追及されることは、当たっていないと私は考えるわけでございます。(拍手発言する者あり)  三木内閣経済政策について、私は国民の理解も得ておきたいと思うわけですが、私が組閣いたしました昨年の十二月、日本卸売物価の去年一年の上昇率は三一・三%でした。消費者物価は二四・五%という異常なものであったわけです。国民はまず物価の安定を求めた。私はよく覚えている。社会党成田委員長も、質問演説に立たれて、やはり今日必要なことは、物価安定を最優先にすべきである、経済刺激政策などをとっては、どうして物価を一けた台にできるのだと言って、物価安定政策に対する非常な激励の言葉を私はいまだによく覚えておるわけです。  だから、その当時における国民のいわゆるコンセンサスは、物価を安定さすということであった。この国民合意に基づいて、三木内閣物価安定というものを最優先課題として今日までやってきた。そして、今年の三月末には物価を一五%以下にするという、当時としては大胆な約束をしたわけです。いまは、その当時の明年三月というのは今年の三月でありますが、その目的は達成されて、いまや明年の三月、年度末までには一けた台にするという目標に向かって努力をしておるわけであります。八月の卸売物価は前年比〇・七であり、消費者物価は東京で一〇・七%で、だんだんと一けた台に近づいてまいりました。  これで、やはり物価を鎮静させたということに対してわれわれの政策目標というものは達成できましたので、この物価鎮静を踏まえて、今回は思い切った総合景気対策を打ち出したのであります。そして、いまは景気回復に乗り出した。物価を安定さすことは、国民の、もうすべてのこれが合意の最優先課題であったわけですから、その課題に取り組んで、物価を鎮静さして、その見通しを立てて今回は景気対策に乗り出したわけでありますから、三木内閣経済政策というものは、誤ってはいないとかたく信じておるわけでございます。(拍手)  また、政治休戦に対して、発言についていろいろ御批判がありましたが、私も、みずから議会の子と称しておるわけでありますから、国会で建設的な発言を封ずるなどということを、私みずからが考えるはずはないのであります。私が考えたことは、やはり国会において、いかに厳しく、いかに激しく建設的な議論があっても、これはもう大歓迎であります。しかし、私が言わんとしたことは、簡単明瞭なんです。  すなわち、何でも反対反対のための反対、足を引っ張ることをねらう反対、こうしたことが許されるほど現在の情勢というものは安易なものではない。また、議会民主政治はそういう中からは育っていかない。そういうことで、このことを各政党にも訴えをしたかったのが私の発言の真意であります。どうか赤松君、誤解のないようにお願いしたいのでございます。  それから、独禁法の改正についてお話がございましたが、独禁法の改正は、衆議院で全会一致で可決されましたが、会期末の事情で、御承知のごとく、審議がされないままで参議院で廃案となりました。したがって、今国会のごとく、当面緊急を要する重要案件を抱えた国会で、独禁法の改正のごとき、参議院の通過には相当の曲折が予想される案件にいきなり取り組んで他の緊急案件の審議に支障を来すようなことがあってはならぬと考えて、ただいま自民党内で再調整中であります。  しかし、ここで申し上げておきたいことは、自由経済に公正なルールを確立することが必要である、この私の所信はいささかも変わっておらないということを申し上げておきたいのであります。  次に、第四次不況対策についていろいろ御質問がございましたが、すなわち、一昨日の私の所信表明演説に沿うて、昨日経済閣僚会議で決定を見たわけです。  その内容は、財政面の処置、公共事業の推進とか、住宅建設の促進とか、あるいはまた公害防止関連融資の促進とか、また、赤松君が非常に重視されました中小企業に対する処置であるとか、貿易面の処置であるとか、雇用面の措置であるとか、こういう総合的な景気対策を含んでおるわけでございまして、そして、予算、財投の追加措置などにより、その事業の規模は大体一兆五千億円を上回り、これに中小企業向けの融資の措置などを加えれば二兆円程度となり、需要の創出効果は三兆円程度と見込んでおるわけでございます。こういうことで、景気はやはり次第に順調な回復をいたすものと考えております。  それから、赤字国債のことをいろいろ御質問がございましたが、補正予算は現在編成を急いでおります。早く国会に出すことが好ましいわけでありますから、編成を急いでおる。まだ具体的なことは申し上げられないわけでございますが、主たる内容としては、税収の減額とその補充、人事院勧告の実施に伴う給与費の増加、公共事業費追加、義務的経費の不足の補てん等が主たるものでありまして、本年度は三兆円を相当上回る税収不足が予想されており、巨額の国債追加発行を必要とすると考えております。具体的な額はまだ確定していないが、いわゆる建設国債のほかに、特例法による国債の発行が必要になってまいります。  公共事業追加内容についても、目下検討を急いでおりますが、しかし、取り上げる事業は、その緊急性、施行能力、経済効果等を検討して、適正な配分を図ってまいりたいと思っております。また大型プロジェクトについては、赤松君御指摘のような高度経済成長に逆戻りをすることを意図するものでは絶対にございません。  それから、政府景気対策は大企業向けであって、再びインフレ狂乱物価を招くおそれがあるという御指摘でございますが、景気対策の実施に当たっては、われわれも物価の動向には今後とも細心の注意を払って、機動的な、あるいは弾力的な運営を図っていく次第でございます。やはりインフレを抑えなければ、景気刺激と言っても意味をなさないわけであります。そういうことで、物価の動向に対しては今後とも十分な注意を払ってまいります。  また、消費者物価上昇率にしましても、できるだけ早く一けた台にするという目標について全力を挙げて取り組んでいるところであって、万難を排して実現したい。  できなかったら責任をどうとるかというお話でございましたが、責任をとるというようなことを考えるよりかは、ぜひともこれを実現さしたいということで努力をしておるものと御理解を願いたいのでございます。  また、国債の発行については、新しいインフレ要因とならぬよう、慎重に行う考えでございます。  また、インフレ下の公定歩合引き下げと同時に、いろいろな貯金の金利を引き下げるようなことは不合理ではないかというようなお話がございましたが、御指摘の歩積み両建てについては、今回の第四次不況対策でも自粛の徹底を図っていきたい。  また、消費者物価が大幅に上昇しているもとでの零細な個人預金者の立場は、赤松君の言われる点も理解できますが、すなわち、過去三回公定歩合引き下げられた場合にも、預金金利は据え置いてきたわけでございます。ただ、今日のような不況が深刻化してきた情勢のもとでは、経済全体の安定と雇用確保をするために、どうしても全体の金利水準を引き下げることが適当であり、預金金利の引き下げもやむを得ないと考えておるわけでございます。しかし、今後福祉預金などについては特別の配慮をいたす考えでございます。  それから、中小企業というものについて、いろいろ御懸念の御発言がございました。  私もやはり日本中小企業日本の産業に占める位置から考えて、中小企業の安定なくして日本経済の安定はない、これは赤松君と考え方は全く同感でございます。そういうことで、第四次の不況対策でも中小企業に対しては特別の配慮をいたしたわけでございます。中小企業金融の円滑化であるとか、信用保証の促進であるとか、連鎖倒産防止とか、あるいは下請関係改革とか事業分野確保等については、現行の制度を積極的に活用して適切な指導を行って、中小企業不況のしわ寄せが参ることのないような配慮をいたしたいと思うわけでございます。  また、食糧問題について、社会党は九〇%の国内食糧の自給計画を持っておるというお話でございます。われわれも、やはり国内の生産体制を整備して、できる限り日本農業の自給力の向上を図りたいと考えております。  食糧は、これは人間生活基本に関する重要な物資でありますから、そういう自給力の向上を図りたいと思いますが、しかし、わが国の限られた土地とか気候、風土などからして、飼料穀物とか大豆などについて、これを全部自給ということはできません。海外に依存せざるを得ないことが現実でありますから、これら輸入作物の輸入の安定化を推進するということも、やはり自給率の向上とあわせてこれは必要なことだと考えておりますので、これに対してせっかく努力いたしておることは、赤松君御承知のとおりでございます。  それから、地方財政に対してのいろいろな御懸念が言われましたが、地方財政も、国の財政とともに困難な状態になっておることは、われわれも十分承知しておるわけでございます。したがって、第四次不況対策公共事業等追加に伴って、地方負担については、地方財政の現状にかんがみまして所要の措置を講ずることにして、その具体的な内容は、まだ関係各省において検討を進めておりますが、何らかの所要の措置を講ずることは、これは間違いがございません。しかし、地方財政の面においても、いろいろと財政の運用については節度を持ってもらわなければならぬことは申すまでもないわけでございます。  それから、税制について根本的なメスを入れるべきだというお話がございました。  税負担の公平については、これからは従来にも増して一層厳しく配慮していく考えでございます。租税特別措置法についても、今後見直してまいります。また、いまいろいろ御指摘のあった法人税の累進税率の導入とか、土地の再評価、富裕税の創設は、いま政府考えてはおりません。しかし、税負担の公平化というものについては、今後一層配慮をいたすわけでございます。  また、年金賦課方式考えろというお話でございましたが、確かに賦課方式については一つの検討の時期であると考えますので、今後は十分研究してまいりたい。  私も、御承知のごとく総合福祉生涯計画、ライフサイクルと言っておりますが、こういうものを打ち出して、いま自民党あるいは政府においても検討をいただいておるわけでございますが、単に金のあるときは福祉をする、金のないときは福祉ができぬということでは、福祉優先という政策に背きます。また、それは実際財源のない場合にはやむを得ないわけでありますから、私は、もう少し福祉というものを、全生涯を通じて、総福祉という見地から日本福祉政策を見直してみたい、そして、単に年金とかというばかりでなしに、生まれてから死ぬまでの全生涯を通じて福祉政策というものを考えてみたい。こういうことで総合福祉生涯計画というものを長期のビジョンとして打ち出したわけでございますが、まだ検討の段階でございますので、ここで申し上げられる段階ではございません。  それから、公共企業体のスト権の問題については、政府としては、この問題の結論をこの秋までに出したいということで、できる限り努力をいたしたいと考えております。また、その専門委員会の懇談会では、労働側意見も四回にわたって聴取いたしました。各組合の意見も、細かい内容まで文書にとって各委員に配付されておるわけでございますが、今後はできる限り組合の意見もこれは聴取することに努力をしてみたいと思います。  また、との専門委員会の運営が公正公平に運営されていかなければならぬということは、お説のとおりでございます。いまは公正公平に運営されており、問題はないと考えますが、今後とも公平公正な運営には十分な配慮をいたす次第でございます。  また、日米会談について、佐藤・ニクソン共同声明による韓国条項の問題の御質問がございました。  佐藤・ニクソンの共同声明は、ちょうど沖繩返還のときだったので、沖繩の返還に伴って、沖繩の基地の有効利用ということが問題であるし、それだから有事にどう備えるかということが主たる関心事であったわけです。  しかし、私が参りましたのは、六年たっておるわけであります。今回の日米首脳会談は、どのようにして有事を起こさせないようにするかということが主たる関心事であった、そういうことでありますから、韓国の問題にしても、韓国というものの安全は朝鮮半島全体の安定と密接に結びついておることは、もう言うまでもないことでございますから、われわれとしては、朝鮮半島全体の安定した環境づくりが必要である、朝鮮半島全体の安定した環境づくりが韓国の安全のためにも必要である、こういう広い視野に立って、今度の表現は、正確に説明したのが今回の日米の新聞発表であります。何も別に事新しいことを申したわけでございませんし、また、これによって、赤松君が御懸念になるような安保の拡大強化などというものを意図したことは全くないということを申し上げておきたいのでございます。  また、南北の朝鮮の両民族が自主的に、平和的に話し合って統一されることは、両民族の悲願であり、隣国の日本としてもそれを期待するところであります。  そういうことでありますから、赤松君の御指摘のように、北鮮をいますぐ承認するというようなことは考えておりませんが、それはなぜかと言えば、国際情勢というものは、一遍に急激に変えることは、かえって国際関係の不安化を導くことになりかねない場合がございますので、北鮮の場合も、所信表明演説中にも述べましたごとく、経済とか文化とか人物の交流を一歩一歩積み上げて、相互の理解を深めてまいる努力をいたしたいと考えておる次第でございます。  また、日中の関係について、日中平和友好条約を早期に結ぶべきではないかという御質問でございましたが、私も全くそのように考えておるわけです。  日中の平和友好条約の大目的は、日中両国が子々孫々に至る揺るぎない友好関係の基礎を確立するということにあるわけです。いま、交渉の核心は、覇権反対ということをどう取り扱うということにあるわけでございますが、覇権反対は、普遍的な平和原則の一つであると私は考えるわけです。問題の核心に戻して、大目的に沿うよう妥結を急ぎたいと考えておるわけでありまして、アメリカの大統領が訪中するまでそれを待つというような、アメリカの大統領の訪中とは何らの関係はございません。  また、私の政治姿勢についていろいろ御指摘がございましたが、いま赤松君の御質問の中にもありましたごとく、日本は大きな転換期にあると私も思うわけです。また、私は、日本議会制民主主義は大きな試練期に立っていると考えます。果たして、今日の議会制民主主義が、いろいろ問題が複雑になってきておるこの世界の中で、いろんな当面する諸問題を賢明に処理する能力というものを持っているかどうかということが問われておる。これは世界的にそういう傾向であります。だから、この国会においても、こうして与野党が厳しく対立をしているわけでございますが、議会制民主主義を守るということについては、お互いに共同の責任を分担しておると私は思うのです。これは守らなければならぬわけですから。いま、いろいろファッショ化の方向へ進むのではないかというわけでございますが、赤松君御承知のように、私の三十数年に及ぶ過去の政治経歴はそういう日本政治の傾向と闘ってきた歴史である、私の歴史は。したがって、その私がファッショ政治の方向に向かって日本を導くなどということは、断じてないことを明らかにしておきます。(拍手)  また、解散ということについていろいろお話がございましたが、やはり国民の洗礼を受けるというようなお話でございます。それは民主主義のルールでございますが、赤松君ごらんになっても、これだけの難問題の山積しておるときに、この問題を処理するということが、国民三木内閣に対する大きな一つの要望であると考えますので、私の頭の中には、いま解散ということは一つもないということを申し上げておきたいと思います。(拍手発言する者あり)
  6. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 赤松勇君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。赤松勇君。     〔赤松勇登壇
  7. 赤松勇

    赤松勇君 答弁漏れもありますし、また答弁に不満な点がありますので、再質問いたします。  その前に、ちょっと総理のために申し上げておきますけれども、さっき「朝鮮両民族」とおっしゃいました。これはぜひ議事録を訂正なさる必要があると思います。  それから、「北鮮」「北鮮」という言葉を使っていらっしゃいますが、北鮮という国はないのです。朝鮮民主主義人民共和国と正確に使っていただきたい。  私は、総理にお尋ねしたのは、補正予算内容を具体的に示しなさい、こういうことを要求しておるけれども、その補正予算内容というものが具体的に示されていない。一体、この補正予算によって物価は何%になるか、中小企業農民労働者生活がどうなるか、こういう補正予算に関するあなたの構想、それに対する答弁がないので、ぜひ答弁をしていただきたい。  それから、もう一つは、赤字公債について、現在十兆円、たちまち五年後には六十兆円を超える。こういう大型の借金財政を行うというには、その中身が国民にはっきり示されないと、国民は納得しません。したがって、これがインフレにならないという保証を具体的に説明してもらいたい。  また、この赤字国債が市中消化日銀引き受けはどうなるのか、返済計画はどうなるのか、この点についても具体的に説明をしてもらいたい。  大蔵大臣には、補正予算も出さないような大蔵大臣には答弁の資格がありませんから、大蔵大臣、要りません。総理大臣から答弁してください。(発言する者あり)  それから、独禁法の問題について、目下党内調整を急いでいらっしゃるようでありますけれども、この独禁法は、御承知のように、皆さんも、五党全員でもって賛成して衆議院を通した法案なんです。そうして、全国の消費者は熱烈にこの法案の成立を待っています。これは野党、与党を含めて、五党が満場一致で衆議院を通した。これが再提出できないのは、野党側に責任があるのではなく、その辺にいらっしゃる自民党の議員諸君の内部の調整がきかないからです。(拍手発言する者あり)  そこで、総理として、あるいは総裁として、もっとリーダーシップを発揮して党内情勢をまとめて、速やかにこの国会に御提案なさい。提案するかしないか、それを明らかにしてもらいたい。  それから、さっき野党が足を引っ張るというようなことをおっしゃいましたけれども、これは大変不見識な発言です。  私どもは、前の国会におきましても、言うべきことは言い、また協力すべきことは協力してきた。足を引っ張っておるのは、野党でなくて、この諸君、自民党の諸君じゃないですか。あなたの足を引っ張っておるのは、自民党の派閥じゃないか。これを混同して、いまのような御答弁は、大変不満であります。この際、御訂正を願いたい。取り消しなさい。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫登壇
  8. 三木武夫

    内閣総理大臣三木武夫君) 公債の発行につきましては、当然、償還の計画、そのことが新しいインフレの要因にならぬような歯どめ、あるいはまた、いろいろ市中消化がしやすいような条件、いろいろと配慮しなければならぬことは当然でございますが、それは補正予算提出の場合に、また、公債発行なども国会の御承認を得なければならぬ案件になりますから、その場合に詳細申し述べたいと思います。  第二点の韓国の場合も、私は、韓国というのは大韓民国と言わなければならぬのを韓国と言っておるので、朝鮮民主主義人民共和国の場合も、これをまあ北鮮と、こういうふうに言っておるわけでございます。また、そのことは、やはり正式な名前を両方言うことが適当かもしれませんが、そういうことをいままで申してきたわけでございます。  また最後に、足を引っ張るということは、これは何も野党について言ったわけでないので、野党とか与党とかいうわけではないのです。各政党として、皆がやはり建設的な論議をして、そうして、反対のための反対はやめようではないかということが政治休戦の意義だったということを言ったので、特に何らかのケースを、与党とか野党とか、そういうケースを考えて言ったのではなくして、この時局に対する政党の配慮として、やはりそういうことが必要だと一般的に申したので、特にどうという政党を頭の中に意識して申したわけではないわけでございます。(発言する者あり)     —————————————
  9. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 内田常雄君。     〔内田常雄君登壇
  10. 内田常雄

    ○内田常雄君 私は、自由民主党を代表して、三木内閣総理大臣所信表明演説に関連し、意見を交えながら、政府に対して若干の質問を行うものであります。(拍手)  三木内閣総理大臣は、所信表明演説の冒頭において、重大局面にある日本経済の現状認識を述べられました。私は、その時局認識において総理大臣と見解を異にするものではありません。すなわち、物価政府の一貫した政策努力国民協力と隠忍とによって狂乱状態がおさまり、すでに鎮静の方向をたどっておりますことは、総理の述べられたとおりであります。  わが国の卸売物価は、いまでは世界じゅうの優等生になっております。消費者物価も、総理の言明されるとおり、明年三月を待たずに公約の一けた実現が可能の見込みになってまいりましたことも、そのとおりだと思います。こうした物価鎮静への政府政策努力は高く評価されてよいと思います。  ただ、この際、私が、政府の見解を承っておきたいととは、いまの公共料金や一部の基礎物資の価格の中には、本来あるべき地位が回復されておらずに、いわゆるコスト逆ざやの問題がそのまま残されているものもありまして、このままでは経済運営のメカニズムが崩壊する心配はないかということであります。この問題は、今後の物価問題の厄介な火種でありますとともに、財政経済運営の上からも看過できない課題ではないかと考えるものであります。  こうした物価鎮静の反面、日本経済は自律反転の機会がつかめず、設備投資や個人消費は笛吹けど踊らずで、伸び悩んでおり、輸出もまた縮小傾向を続けておりまして、不況の長期化、雇用の深刻化は、世界経済とその軌を一にして差し迫った情勢にありますことも、総理大臣の認識されるとおりであります。  こうした情勢の上に立って、われわれ自由民主党は、すでに、財政政策を主軸に、金融対策をも織り込んだ総合的な不況対策基本方針を決定しておりますことは、三木総理の御承知のとおりであります。この党基本方針を基盤に、政府においても、このたび積極的な景気振興の具体策を打ち出す決意を総理大臣みずからが表明されましたことは、国民の期待はまことに大きいものがあります。われわれは、政府が腰を据えてこれを敏速果敢に実行に移されることを強く要望するものであります。  そこで私は、まず、総理大臣の表明された今回の積極的な景気対策につきまして、そのあり方と進め方に関して、若干のポイントを挙げてお尋ねいたします。  ポイントの第一は、今度の景気対策がねらう不況回復への効果と将来の日本経済への展望であります。  今回の対策は、不況の現在の断面に対処して、その落ち込んでいるものを埋めて、その上に景気の自律反転へのはずみをつくろうとするものでありましょうから、まずその規模と内容とに多くの期待が寄せられていることは当然でありますが、しかし、そればかりではなく、国民や産業界が期待しているものは、明年度以後の日本経済の姿、つまり今後の産業活動と国民生活への展望、そして、それに至る段階が明らかにされることであります。  これまでが実証するように、経済社会の先の姿が見えなければ笛吹けど踊らずでありますから、民間設備が動き出すはずはなく、国民個人個人の生活設計も立たないわけでありまして、消費需要の回復を期待することも無理ということになりましょう。むずかしい課題ですが、政府の所見を伺い得れば幸いであります。  第二のポイントとして私が強調したいのは、不況対策の重点が大企業や鉱工業に偏るべきではなくて、中小企業と農林水産業などの第一次産業に対しても特段の配慮がなされなければならないということであります。(拍手)  この点は、昨日発表されました政府不況対策を見て私は安心いたしましたが、大企業は当然に大雇用産業でもあって、年々の日本の人口の増加に伴う雇用増加を支えるものでありますから、これを等閑視するものではありませんが、一方、昨年来、不況による倒産件数の九九%が中小企業であることからも明らかなように、中小企業は最も抵抗力が弱く、不況のしわ寄せを受けやすいのでありますから、不況時の中小企業対策にはきめ細かい施策が適切に講じられなければなりません。  農林水産業と農山漁村は、わが国の今後の産業構造政策社会構造政策の上からその重要性が再認識を迫られているものでありまして、したがって、今回の不況対策に伴う補正予算財政投融資の追加対象の選択に当たっても、特別の配慮が加えられなければなりません。土を離れる国家民族は滅亡、崩壊し、土を離れる文化、文明は砂上の楼閣であると申しても過言ではないと私は思います。中小企業と農山漁村の重視は、御承知のように、わが党の伝統的政策であります。改めて総理大臣の指導方針を承りたいと存じます。(拍手)  ポイントの第三として、地方団体の財政危機に対する政府援助について確認を求めたいと思います。理由や説明は省略いたします。  その一つは、国税収入の激減に起因する地方交付税交付金の欠陥は、その全額を、国の交付税特別会計の操作によって補てんすべしということであります。  その二は、不況による地方税収入の落ち込みについては、地方債の増枠を認めて、その資金の調達についても、国が協力してめんどうを見るということであります。  その三は、今回の政府不況対策による公共事業追加などに基づく地方団体の新規の負担についても、国において特別の協力措置を講ずべしということ、以上の三点であります。  以上の三つは、わが党がすでに基本方針においても打ち出している方向であります。この機会政府の確認を求めるものであります。(拍手)  ポイントの第四は、金融面からの不況対策、なかんずく、金利引き下げの問題についてであります。  とのことは総理大臣の所信表明演説においても触れられておるのでありますが、預貯金利子の問題など、なかなか難問のありますことも想像にかたくはありません。私はいまここで、これらの問題について多く触れることはいたしませんが、ただ一つだけ、公定歩合の問題について政府の見解を承っておきたいと思います。  私どもが不審に思うことは、公定歩合の問題はいつも政府が避けて通っているように見えることであります。公定歩合引き下げは四月以降三回にわたって行われていますが、これまた、政府の三回にわたる景気対策の決定よりもいつもその時期がずらされておりまして、不況対策の総合的、一体的運営からは、いわば別建ての形であって、そのために不況対策効果を半減させておると思います。  そもそも公定歩合政策は、金利政策全体を誘導する最大の政策手段ではないでしょうか。それにもかかわらず、総理大臣の景気対策演説の中においても、公定歩合の問題は一言も触れられておりません。公定歩合決定についての最高政策は、政府には責任も権限もないのでしょうか。それは伝統的に内閣の外にある聖域として認められ、いわば四権分立のようなたてまえがとられているということでありましょうかといった疑問が、私ではありませんが、国民の中にわいているということを申し上げておきます。政府の見解をお示しいただければ幸いであります。  第五のポイントは、景気政策における国際的配慮についてであります。  今日、わが国の不況が、わが国単独のものではなく、世界各国経済の動きとシンクロナイズされ、国際的協調と世界的な規模での解決を必要とするものであることは申すまでもありません。このことも、三木総理演説の中において随所に取り上げられておりました。私は総理大臣の正しい認識と前向きの姿勢を高く評価するものであります。  ただ、私が強調しておきたいことは、先進諸国との協力確保ももちろん大切でありますが、特にわが国に期待する多くの発展途上国に対する経済協力と技術協力、これらの諸国からの一次産品など特産物の輸入問題などをも含めて、世界貿易を拡大する有効にして具体的な措置が積極的に講じられなければならないということであります。いろいろ言うだけで、もたもたしていたのでは、かえってわが国の国際的姿勢が疑われ、信を世界に失するようなことがあってはならないと、老婆心ながら杞憂を抱くものであります。総理考えをもう一つ突っ込んでお示しいただければ幸いであります。  さて、私はここで、総理大臣も言及されました財政危機に関連する大幅な国債の追加発行の問題について触れたいと思います。  巨額の国債を財源とする財政の姿は、もちろん平常の場合においては健全財政の姿ではないでしょう。しかし、いまの場合、何が国債による歳入補てんを必要とするに至ったかといえば、それは言うまでもなく、深刻な長期不況による経済規模の落ち込みであります。この場合、歳出の規模を歳入欠陥に合わせて削減するとすれば、経済不況はさらに輪をかけて深刻となりましょう。さればといって、その歳入欠陥の全部を不況の最中に新規の増税で補うようなことをすれば、これまた企業活動や国民生活圧迫するばかりではなく、それでなくても萎縮している国民経済の全体の規模をさらに小さくするだけで、不況対策に逆行することになりましょう。  だとすれば、私は、いまの場合の国債は、在来の概念による赤字公債とか、建設公債の観念をもって律すべきものではなくて、日本経済における物資や雇用の供給力以下にいま落ち込んでしまった総需要の不足分を補充する機能、つまり、このままではどうにもならないいまのデフレギャップを埋め合わせる刺激となる財政機能を持つものでありまして、まあ、わかりやすい言葉を使えば、「世直し国債」というニックネームをつけて呼ばれてもよいものではないかと思うものであります。(拍手)  戦時中の戦時国債とは全く機能も性格も違うものであります。もちろん、その追加発行の幅が問題となります。その幅がデフレギャップを超える場合にはインフレ要因を生ずることにもなりますので、無計画財政赤字のたれ流しを国債発行によって無条件に処理すべきでないことはもちろんであります。要は、経済政策全体の中で、その規模、発行の方法など、これも総理が述べられましたように、十分慎重にして、かつ計画的に行わるべきことを私からも政府に要請いたすものであります。  一部の人々の主張のように、不況対策と同義語である雇用対策推進の必要性を強調しながら、しかし、その財源については、酒、たばこなどの既定計画による値上げを初め、増税には反対、国債にも反対と言うだけでは全く無責任で、説得力のない主張以外の何物でもないと思います。(拍手)  以上の私の考え方に対する政府意見を求めます。  私は、三木総理大臣の所信表明演説で述べられたとおり、福田副総理経済企画庁長官、大平大蔵大臣など、実力経済閣僚がこうした経済財政処理の問題について、過去の手法にとらわれないで、創造的かつ大胆な発想をもって、最も困難な今日の事態に対処されんことを衷心より期待するものであります。(拍手)  次に、私は、外交と安全保障の問題について、国民の願いと国民の憂えにつながる二つの事柄を申し述べ、総理大臣の信念と御所懐を承っておきたいと思います。  その一つは、北方領土にかかわる問題であります。  総理大臣と外務大臣は、それぞれの所信表明演説において、アジアの安定のためには、日米、日中と並んで日ソ間の友好関係が重要であることを強調されております。私も同じ考えに立つものであります。しかしながら、日ソ間に真の相互信頼に基づく安定した善隣関係を確立するためには、国民の感情としても、はたまた物の条理としても、北方四島が返還されて、これを前提として、ソ連との間に平和条約が締結されることが何よりも必要であります。対ソ交渉がすでに二十年にもなりますと、率直に申して、この問題の決着のために、時には思いつきやいろいろの雑音が総理大臣のお耳にも入ることもあると思います。われわれの耳にも入ってまいります。しかしながら、私がここで強調したいことは、事を急ぐの余りに、悔いを千載に残すようなことがあってはならないということでありまして、これが国民の願いであります。  第二の点は、わが国の安全保障に関する国民の自覚についてであります。  ベトナム以後、アジアの諸民族の間には大きな動きのうねりがあります。アジアばかりではなく、世界じゅうのいろいろの地域において連鎖反応的に政治的動揺が見られています。こうした中で、アジアと世界の視点が、いまや朝鮮半島における南北の厳しい対峙に集中されているのが現状であります。  このことは、総理大臣と外務大臣の演説においても述べられたとおり、南北問題への対応と朝鮮半島の安定のためには、わが国の外交的努力が要請されることはもちろんでありますが、それはそれとして、いまや、わが国自体の安全保障と平和の基本問題について、原点に立ち返って、真剣な自覚と反省が必要とされるときに来ているのではないでしょうか。皮肉な見方をすれば、中ソ両勢力の厳しい対立と牽制の力学関係が、これまで、結果において朝鮮半島における南北の均衡とわが国の平和を保障していたと言えるかもしれません。しかし、こうした環境条件が常にいつまでも存在するものとは限らないことをこれまでの歴史に即して思うときに、私は、自国の存立のための安全保障の問題について、為政者も国民も、これまでのように漫然とデタントといった表見的の緊張緩和の空気だけを頼りに、他人事のように考えて過ごしていけるものではないことを、背筋に冷たく感ずるものがあります。国民とともに憂慮なきあたわざることを表明して、次の問題に移ります。(拍手)  次の問題に移ります前に、この機会をかりて、先般の北朝鮮近海における松生丸の拿捕事件について、一言政府にただしておきます。  事の真相については、帰国した船長の口からも、負傷した二人の船員がいまだ北鮮に残されているという事情もありましてか、明確な説明が控えられているようでありますが、政府としては、この真相をどのように理解しているかということが一つ、もう一つは、今後このような不幸の事件の発生を防止して、日本漁民を保護するためにも、政府は今後どのような方針を構想しているかということであります。国民の何となくもやもやした気持ちをすっきりさせるためにも、この機会政府のお答えを求めておきます。(拍手)  最近、国民が最も衝撃を受け、怒りを抱いている出来事は、マレーシアの首都クアラルンプールにおける日本赤軍の引き起こした事件であります。このことは総理所信表明演説においても触れられていますが、そればかりではありません。  最近、国内において相次ぐ爆弾事件の頻発について、国民は腹の底からの怒りを感じ、また不安の念を禁じ得ないのであります。過激派同士の内ゲバ事件による白昼の街頭殺傷事件が依然として後を絶たないことについても同様であります。法治国家といわれるわが国において、このような出来事が続発していることは、これがこのまま進んだ場合には、国民の怒りと不安は、政治に対する不満と不信にもつながるものでありまして、真に憂慮に耐えません。  このような過激犯罪続発の背後には一体何があるのか、深く考えさせられるものがあります。それは、戦後における教育のあり方の欠陥、履き違えた自由主義、社会共同の責任を忘れた個人主義的風潮のびまん、またこれを放置し、許容する社会的、政治的土壌の存在など、いろいろの原因があることに深く思いをいたさなければなりません。が、それと同時に、取り締まり法規にも不備があって、この種の犯罪防止に対応できないような欠陥があるのではないかとも思います。  そこで、私は、次の三点について総理の見解と所信をただそうとするものであります。  第一、この種の事件頻発に対して、政府の認識をより明確に述べてください。  第二、クアラルンプール事件における国内の拘束犯人の釈放など、政府のとったいわゆる超法規的措置については、総理のお話のとおり異例の緊急措置であることは、これを了解するにやぶさかではありませんが、犯人の不法の要求に屈したことは、いかにも残念であり、国民の中にはなお政府措置に対して釈然たり得ないものもありますので、この点、もう一度納得のいく御説明を願いたいと存じます。  第三には、これらの犯罪に対する今後の真剣な対策について述べてください。  これに関して、もしこうした特別犯罪に対処すべき現行法規に不備と欠陥が認められるならば、私ども立法府にある者も、関係法規の整備のために協力を惜しむものではありません。  この種犯罪の防止と犯罪者の取り扱いに関する国際的協力の問題ともあわせて、政府の所見を求めます。  最後に、私は、衆議院の解散問題について、総理大臣の所信を確かめて、私の質問を終わります。  端的に申して、私は、今日の未曾有の経済的、財政危機と国際的、社会的危局の中にあって、衆議院の解散によって政治の空白をつくるべきではなく、いまこそ、国会政府もこれらの難問題に全力を挙げて取り組むことこそが、今日の最大の政治課題であるとする三木総理大臣の所信と言明は当然のことであり、これこそが、国民に対する為政者の義務と責任であると思うものであります。こうした時代に、政治家の責任を忘れて、いたずらに衆議院の解散を呼号し、選挙運動に狂奔する者は、国民の公敵でありましょう。  私は、三木総理大臣に対して、この問題についての総理大臣としての信念と真意は、あなたのたびたびの言明のとおり、いささかも変わりはないかどうか、この議場において明確にされんことを厳粛に求めて、私の代表質問を終わるものであります。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫登壇
  11. 三木武夫

    内閣総理大臣三木武夫君) 内田君の御質問にお答えをいたします。  内田君の第一問は、公共料金や基礎物資の価格の逆ざやをそのままに置いておいたのでは、価格メカニズムの崩壊が憂慮されるという御指摘でございます。  公共料金についても、安ければ安いほどよいというものでは、私は、社会的な公平というものは期しがたい。使う者、あるいはまたそれを利用する者、それと、利用しない者、使わない者と同じということでは、公平ではないと思うわけでございます。だから、それを利用したり使ったりする人に、ある程度の負担を願うということは、当然のことだと思うわけでございます。企業においても、コスト割れの状態をいつまでも放置しておいてよいというわけはない。しかし、現在の物価情勢から、公共料金も、あるいはまたその他の物資についても、価格を一斉に引き上げるということは大問題を提起いたしますので、政府は、公共料金につきましても、今年度は、酒、たばこ、郵便など、これだけに抑えたのです。また、企業においても、できる限り自粛して、漸次、内田君の御指摘のような新価格体系に移行してまいりたいと考えておるわけでございます。  第二に、今回の景気対策の規模と、それがねらう不況回復への効果という御質問でございました。  内田君御承知のように、公共事業や住宅対策などで一兆五千億円を上回る規模の事業追加して、これに中小企業向け融資の措置を加えますと、合計おおむね二兆円程度となりますから、これを需要創出の効果としては三兆円程度と見込んでおるわけでございます。この措置を講ずることによりまして、五十年度わが国経済の下期は、年率に直しますと、六%程度の順調な回復軌道に乗るものと見込んでおる次第でございますから、この景気対策によって、景気は順調な回復の足取りをたどるものと考えております。  それから、今回の景気対策によって、日本経済、産業活動、国民生活の展望というお話でございましたが、いま申したように、年率に延ばせば、下期は六%の成長を回復すると見込むわけです。しかし、そのことは、再び日本高度成長に戻るということではないわけで、資源とか環境とかいう、それに戻るべき条件は、すべて失われたわけです。だから、新しい正常な安定成長の軌道にこれは返すということで、その軌道に乗るものと考えるわけでございます。どうか企業の経営も、国民生活も、かつての高度成長の夢を追うことなく、安定成長の時代に適応するよう求めたいのであります。  また、日本経済の長期的な展望は、それに至る過程について、新しく経済社会計画で明らかにしていく考えでございます。とにかく、この一、二年が調整過程であり、物価安定を図りつつ需要を拡大することによって、景気の停滞を克服していきたいという、なかなかむずかしい時代ではありますが、しかし、その過程はどうしても通らなければならぬ過程だと考えております。  また次に、不況対策が大企業に偏るべきではなく、中小企業とか、農林水産業の第一次産業に対して十分な配慮を加えよという御指摘であったが、全く内田君と同じような意見でございます。  これは景気対策が大企業に偏るということでは、国民の期待に背くわけでございますから、第四次の総合景気対策の中にも、中小企業金融の円滑化とか、あるいは中小企業対策を大きな柱といたしておるばかりでなしに、農業については、農業の基盤整備や、あるいは漁業の整備などを追加する予定でございます。農漁業について配慮をいたします。  また、不況対策についても、全体として産業別、地域別不況の状態など、雇用の状態ともにらみ合わせて、きめ細かく配慮をいたしていく所存でございます。内田君の御注意はまことにごもっともな御注意だと考えております。  それから、地方財政危機についていろいろ御指摘がございました。  われわれも、五十年度の地方財政は、地方交付税が大幅に減額されたわけでございますから、地方税の多額の減収が生ずることが見込まれております。この減収を補てんする措置をしなければ、動きがつかぬわけでありますから、現在、最終的に政府部内で検討を行っておりますが、いずれにしろ、地方財政の運用に支障を生じないような適切な措置を講ずることをお約束いたします。  景気対策のための公共事業追加に伴う地方負担分については、事業の円滑な実施ができるよう、所要の財政措置を講ずる考えでございます。  次に、公定歩合の金利政策というものについて、政府が余り傍観的過ぎるではないかという御指摘でございました。  公定歩合操作は、日本銀行法によって日本銀行の政策委員会の所管事項と決められておるわけで、日本銀行法にあるわけであります。したがって、政府としては、日本銀行と常時、緊密な意思の疎通を図っており、政府の施策と公定歩合政策とが矛盾をしないように運用されるような配慮を常に加えておる次第でございます。  また、景気対策における国際的配慮という御指摘がございました。  これはまことに適切な御指摘でありまして、世界各国とも深刻な不況に直面しておるわけでございますが、とりわけ、発展途上国などに対しても、これはやはり世界の経済が安定しなければ、非常な打撃を受けるわけでございます。われわれとしても、これからの世界の最重要問題は南北問題であるという認識の上に立ちまして、これからの諸国の経済協力、技術協力などに対しても、困難な中においても、できるだけのことをいたしますと同時に、輸出所得の安定化、第一次産品などの輸出所得補償というような問題が世界的に大きな問題になって、私も先般ワシントンにおいて、ロメ協定のような第一次産品の輸出所得補償というものを世界的規模で考える時期ではないかという提案を行ったわけでございますが、こういう点も十分な検討をいたしまして、そして低開発諸国の経済発展に寄与していきたいと思っております。  また次には、大幅な国債発行について、その性格や規模、発行方法について、どういうふうに考えておるかというお話でございました。  本年度において税収減を補てんするため、及び景気の浮揚、災害復旧のために行う公共投資の追加に充てるために、多額の国債の追加発行をせざるを得ない、こう考えております。  また、国債増発の規模については、現在、補正予算の編成の過程で検討をしております。この場合、財政法の四条に基づくいわゆる建設国債のほかに、特例法による国債の発行を必要と考えております。また、発行方法については慎重を期し、従来どおり市中消化によりたいと考えております。  今回の国債を、内田君は「世直し国債」と、「世直し」という言葉を使われましたが、われわれも景気立て直しの国債であると言うことができると思うわけでございます。この発行ができなければ、増税ということが必要になってきて、増税をやりますれば、一層景気は悪化するわけでございまして、増税にも国債発行にも反対、こう言われたのでは、日本経済景気回復の軌道に一体どう乗せるのかということの方法はないわけでございます。やはり私どもとしては、これはそういう方法では、景気対策をとる方法が何にもないという結果に陥るわけでございまして、私たちは、そういう考えに立っておりません。  また、北方領土の問題についてどう取り組むかというお話でございましたが、内田君と全く同感で、北方の領土問題については、歯舞、色丹、国後、択捉の北方四島は、わが国固有の領土である、こういう一貫した立場を堅持しておるわけでございまして、その返還の実現を期して平和条約を締結すべく、今後もこれはしんぼう強く交渉をしていく考えでございます。  次に、わが国の存立のために、安全保障と平和の基本問題について政府はどう考えているかという、非常に重要な問題の御質問がございました。  一国の存立のために、安全保障の問題はやはり最重要な課題である。わが国の安全保障と平和の基本について、私の考え方は、一つには、憲法の枠内で国力相応の自衛力を持たなければならぬということが一つであります。  第二は、しかし今日は、一国の力だけでは国を防衛することができない時代である。集団安全保障の時代である。したがって、国連憲章によっての集団安全保障、すなわち、日本は日米安保条約というものを維持していきたいということである。  次には、有事を起こさせない国際環境づくりを積極的に努力しなければいかぬ。有事になってどうするかというよりかは、有事を起こさせないための国際環境づくりということが非常に大切である、このために積極的な努力をしなければならぬ。  次には、日本の安全保障について国内の世論が分裂していることは、まことに遺憾である。こういう国は、先進諸国の中においては非常に珍しい状態でございます。まあ、ないと言ってもいいかもしれない。だから、やはりこの問題については、国民的なコンセンサスをつくることが必要だと私は思う。  だから、国会内に安全保障の特別委員会のごときものを設置して、国会内においても議論の場を持つことが私は必要だと思います。そうすることによって、この国論の分裂というものに対して、何らかのコンセンサスづくりに貢献ができる、私は、日本の安全保障と平和の基本問題について、こういう考え方を持っておるものでございます。  次に、北鮮の、松生丸のことについていろいろ御質問がございましたが、まだ政府は真相を究明中でございます。はなはだ遺憾な事件でございますから、今後そういう事件の再発を防がなければならぬということで、いろいろ万般の対策を講じてまいりたい考えでございます。  次に、クアラルンプールの事件についていろいろ御質問がございました。  私は、所信表明でも述べたごとく、犯人の不法な要求を通させたということは、法治国家として異例のことであり、まことに残念に思っておるわけでございます。ワシントンで深夜その報告を受けて考え抜いたのです。何かいい方法はないかと。しかし、五十三人に及ぶ人命を救うということ以外に、あの場合に方法がないという判断によって、そういう指示をいたしたわけでございます。いろいろ国民の方々にも、私も残念に思うし、釈然たらざるものがおありのことだと思うが、しかし、他に方法はと考えた場合に、あれ以外に、残念ながら方法がなかったということが事実でございます。御理解を得ておきたいと思うわけでございます。  しかし、このクアラルンプール事件とか爆弾事件等、こういう事件が起こりますことは、何ら関係のない人を脅迫し、また関係のない人を殺傷するというわけでございますから、これほど人間として卑劣な行為はないわけで、これに対しては十分な取り締まりをしなければならぬことは言うまでもございませんし、また、国内の過激集団が国際舞台に出て行けないようにチェックすることを厳格にしなければいかぬと考えております。  また、国際協力が必要でございますから、国連その他の場で、各国ともこの問題については相談をいたしておるわけでございます。  しかし、私は、また一方において、人間の心の持ち方というものがいま問われているのではないか。自分の主張以外は認めない、自分の主張以外は全部拒否、自分の主張を通すためには、暴力も含めて、いかなる手段もとるというこの考え方というものが、私は世の中を非常に険悪なものにしておると思うわけでございます。  だから、われわれは、市民生活の中においても、政治においても、こういう風潮を是正して、社会全体に、私がかねがね申しておるように、対話協調でいくという風潮をつくることが必要である、私はこう考えておるものでございます。(拍手)  それから、衆議院の解散問題について私の所信をお聞きになりましたが、私は全く内田君と同じように考える。この問題が山積しておるときに、政治の空白をつくることを国民が望んでおるとは思わないのですよ。  したがって、私は、解散ということは、頭の中に、一隅にも何にもない、そういうことでございますから、どうか、これは内田君もそのように御理解を願いたいのでございます。  それから、赤松君の再質問に対して答弁漏れがございまして、失礼をいたしたわけでございます。  また、その際に、朝鮮両民族と言ったが、これは私の誤りでございます。朝鮮民族の統一、両民族という言葉を使ったとすれば、適当でない、朝鮮民族の統一でございます。  それから、赤松君は、独禁法のことについてどうするのかということでございますが、自民党の再調整がつきますならば、国会提出することは明らかでございます。(拍手)     —————————————
  12. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 武藤山治君。     〔武藤山治君登壇〕     〔議長退席、副議長着席〕
  13. 武藤山治

    ○武藤山治君 私は、不況で操業低下、倒産失業、就職難、さらにインフレ物価高のもとで苦しみ悩んでいる国民大衆の声と心情をくみ取り、日本社会党を代表して、自民党三木内閣の施政方針及び現下の政府の施策について、当面の国内経済財政金融の問題にしぼり、提言を交え、内閣の見解を伺いたいと思います。(拍手)  一昨日の三木総理の施政方針演説を聞いて、多くの国民は安心しましたか。確信のない、具体性のない財政金融政策には失望したのではないでしょうか。国際経済は大変なんだ、困難なんだ、難局だぞ、一、二年しんぼうしてくれとこぼし話、泣き言めいた表現が多過ぎたのであります。(拍手)  国民が聞きたいのは、原因や泣き言ではない。政府がいつ、何を、こうするから、結果はこうなるだろう、だから国民の皆さん安心してください、協力してくださいということを国民は聞きたいのであります。それが聞けなかったのは、まことに残念でなりません。  私は、具体的に伺いますから、総理も具体的に明確に答えてください。(「立ってやれ」と呼ぶ者あり)立っておるから台を持って参れ。やじは弁論の華と言うが、それはやじではない。  本年一月二十七日、当本会議で、成田委員長質問に答え、三木総理は、五十年度予算は、現在の条件のもとにおいて最善の予算であると答えました。また、当日、自民党松野政調会長は、代表質問の中で、五十年度予算は健全財政を堅持したと言えます。と自画自賛をいたしました。いまでも総理、五十年度予算は最善の予算だと思いますか。健全財政だと言えますか。  目下、大蔵省の見通しでは、三兆五、六千億円の税収欠陥になるだろうと言われている。この税収不足の原因は、雨や雪が降る自然現象ではないのです。政府経済見通しが誤ったところにあります。  税収の積算は、経済見通しの数字を基礎にはじき出すのです。たとえば、源泉所得税の税収見積もりは、昭和五十年度に雇用は一%ふえる、給与総額で前年比一八%増加すると見込んで源泉所得税の積算をいたしておるのであります。もちろん、政府経済見通しの中で、五十年度の個人消費支出は一八・四%ふえると経済見通し政府責任で発表したじゃありませんか。  ところが、春闘の結果は、この見通しよりはるかに低い、全産業では二一%以下の給与上昇にとどまったのであります。そのため、源泉所得税は三千億円を上回る歳入不足、税収全体で三兆五、六千億円の税収不足となったことは、重大な過ちじゃありませんか。  総理は、先ほど、政策に間違いはなかった、失敗はなかったと言いますけれども、この私のただいまの説明を見ても、いまだ間違いはなかったと言い張るのですか。この見通しの過ちの責任はだれにあるのでしょうか。財政担当責任大臣である大平さんでしょうか。総理から経済運営を任された福田さんの責任ですか。それとも、大福戦争の意見の調整や補強なりを怠った三木総理自身の責任ですか。(拍手発言する者あり)私は内閣の統一見解を求めたいのであります。そうでないという片岡君のやじ、しからばコンピューターの責任とでも言いたいのか。(拍手)  次に、財政欠陥の処理を年度内増税と歳出削減でやらないのは、政府の怠慢であります。二月、三月の段階ですでに歳入欠陥が莫大に生ずるだろうということはほぼ判明していたのでありますから、通常国会で速やかに真相を明らかにし、税制と歳出の見直しをやり、大改革に着手すべきではなかったのですか。それが健全財政主義というものではないのですか。  われわれは、不公正是正の具体化のために税制の大改革を提言し、税制改正案も正式に通常国会提案をしました。この提案は、赤字国債を発行しなくとも、具体的に、税制改正によって今日の財政危機を乗り切ることが可能であることを、国会を通じて責任をもって証明をしたのであります。(拍手)  その一つは、金融機関、保険会社の貸し倒れ引当金は貸し金総額の千分の十、大商社の卸売業は千分の二十となっている。金融機関の引当金総額は一兆一千億円を超えております。この千分の十を千分の五にして課税をすれば、それだけでも約二千六百億円の増徴となります。これは法律事項ではありません。したがって、年度内に実行しようと思うなら、直ちに政府はできるのです。三木内閣はこの制度を、千分の十を千分の八にしよう、しかもそれを二、三年間で徐々に少々改善をして、本年度の年度内増税わずか二百六、七十億円にとどめようというのです。これは一体どうしたことか。政治献金の見返りかと、国民はいら立ちを感じているのであります。(拍手政府の見解を求めます。  第二に、減価償却資産の耐用年数も法律事項ではありません。したがって、年度内増税が可能であります。もし今日の耐用年数を一五%、一律短縮をした場合、資本金一億円以上の法人に課税しただけでも、三千億円程度の増収は確実であります。なぜ政府はやらないのか。  第三は、金融機関以外の引当金が今日二兆四千四百六十二億円程度あります。特別修繕引当金、退職給与引当金、製品保証引当金等々の課税強化についても、年度内に政府がやろうと思えば実行できるのであります。これを企業に支障のない範囲内で課税をしても、私の試算によれば、三千億ぐらいは優に徴税できるのであります。なぜ政府はそのような努力をしないのか。  第四は、年所得一千万以上の者が昭和四十九年度で日本にはどのくらいいるか。給与所得者で四万人、事業所得者で二十五万人程度で、所得総額は約七兆円であります。これらの高額所得者は、年間三百万や四百万の所得者と比較しては、かなりストックも増加し、生活にも余裕があるはずであります。これら高額所得者に一〇%の所得税の付加税を掛けると、概算しても一千三百億円の増収となるのであります。  わが党は、この高額所得者に対する一〇%の付加税を、社会保障基金という新しい制度をつくって、生活の苦しい非納税者約一千万人の人々に税の還付をしようという考え方であります。社会保険料、国民保険税、これらの低所得者階層に対して、その一部をこの基金によって肩がわりをしようという新しい制度を提案するのであります。  このことにより、上から下へ所得の再分配を行い、さらに低所得者の生活防衛、福祉優先、なお需要喚起にもなるという名案ではないでしょうか。自民党政府に果たしてこれらの決断ができるか、総理の見解を伺いたい。(拍手)  五番目には、いよいよ来年度の財政編成期を迎え、政府は大変頭を痛めているようであります。これから検討しなければならぬ幾つかの財政問題があります。  その一つに、配当所得者は四人家族構成で今日四百五万円まで所得税は全然かかりません配当優遇措置になっている今日のこの事態を、本則である累進課税に改めるならば、これだけで五百億の税収は即座に実現するのであります。  第六に、成田委員長が一月二十七日に本会議で提言している土地再評価税、もしくは土地増価税あるいは富裕税についても検討しなければなりません。  土地ブームによる地価上昇、インフレによる評価増、すなわち土地の含み益は膨大なものであり、民間の調査と国土庁の国土利用白書の土地調査結果をもとに試算をしてみますると、資本金一億円以上の法人の含み益は、四十八年度末で帳簿価格と時価との差が約九十五兆円の巨額になる、これが担保力となり、信用拡大につながっていることは御承知のとおりであります。この九十五兆円、たな卸し資産を除いた土地資産に課税を五%したとしても、四兆七千五百億円の増税ができます。  第七番目に、まだまだ租税特別措置、準備金、交際費、法人間配当の非課税、これらの課税適正化をすべきものがたくさんあります。これを改廃すれば、優に一兆円の税収は十分あるとわれわれは計算をいたしておるのであります。大法人は、国の援助がなくても心配はありません。中小企業農業のように弱い、小さい、競争力の乏しいものにのみ、国家の補助や助成の特別措置が必要なのであります。(拍手)  自民党政府は、まずこれらの数々の税制改革を断行し、不公正の是正を実現し、なおかつ、歳入が不足したからという状況ならば、これから無理やり国会でたばこ、酒の増税をしようとしている今日の三木内閣、いま私が提案をしたような数々の不公正是正を断行した後に、酒、たばこの増税をどうしてもと国民に頼むならば、また話は別である。しかし、政府は、それらの努力を怠り、安易な増税を大衆課税に求めることは断じて納得できません。(拍手)  さらに、安易に赤字国債で歳入欠陥をことごとく埋めようとする姿勢は、健全財政、均衡財政の見地からも承認できません。年度内増税で国債発行はストップする必要があります。政府はわれわれの主張に真剣に取り組む意思があるかどうか。総理経済に弱いと評されているが、この常識論には答えてもらわねばなりません。(拍手)  また、歳出削減、圧縮の努力もまだまだ足りないと思います。  歳出を膨張させるかつての各種の長期計画、港湾五カ年計画だ、道路十カ年計画だ、高度成長経済の遺物である長期計画がまだ十六本もある。福田副総理はこれは一時眠らしておくとは言ったが、それに対応する新たなるものはまだ提示されていない。各省はこれに基づいて予算要求をする。大平さんがねじりはち巻きでこれをとめようとしても、そういう一つの基礎の計画があるから、大義名分になって、予算はますます膨張するのです。いまこそ、歳出の圧縮、大削減を断行するためには、これらの長期計画改定を急がなければならぬと思いますが、このままずるずると明年も同じ轍を踏むのかどうか、総理の決意のほどを伺いたいのであります。(拍手)  次に、国債問題であります。  わが国は、第二次世界大戦中国債の発行が累増し、戦後のインフレーションを起こし、旧円封鎖、新円切りかえの大手術を行った。われわれはあの苦々しい経験を忘れてはなりません。通貨増発、信用膨張がもたらす混乱を防止しなければならないと決意したはずであります。そのため、わが国は、戦後昭和四十年まで約二十年間国債の発行を禁じ、歴代政府も節度ある健全財政を堅持してきました。  ところが、皮肉にも、昭和四十年、時の大蔵大臣福田さんのときに、ついに長期国債の発行に踏み切り、四十年度は千九百七十二億円の発行であったが、ついに四十六年度は一兆一千八百余億円、四十九年度は二兆一千六百億円と、雪だるま式に国債発行は増加し、本年六月末の累積十兆五千六百六十億円の巨額になったのであります。さらに、今国会で国債を三兆円か三兆六千億円か、いまだ補正予算を出しませんからわかりませんが、三兆六千億にも及ばんとする増発にいまや追い込まれようとしているのであります。五十年度だけで五兆六千億以上の借金財政になり、本年度末には国債残高十六兆となる見込みであります。国民の大多数の人々が不安に思うのは当然ではありませんか。  財政法第五条は、日銀引き受けによる国債発行を禁止しております。その理由は、日銀券の乱発によるインフレ防止するためであります。ところが、自民党政府は、発行と同時に日銀が引き受けなければいいんだと詭弁を弄して、歯どめなき国債発行を続けました。  国民の皆さん、現在の十兆五千億余の国債はだれが持っているとお考えですか。日本銀行がその三四%以上を保有し、金融機関が二〇%、個人保有は一〇%にすぎないのです。残りは大蔵省資金運用部が保有をしている実情であります。この銀行保有の二〇%、約二兆円は昨年発行のものだから、本年度間もなく、またまた日銀に引き受けさせることは間違いありません。しかも、本年度国債五兆五、六千億円も発行するのですから、日銀のマネーサプライは激増し、信用拡大、通貨膨張は必至の勢いであります。明年度からまたまた物価戦争となり、日本国民生活は右に左に不安定に動揺させられる結果になりそうであります。  日本銀行法第二十二条で、日銀は国債の「引受ヲ為スコトヲ得」と定められているから、発行後一年経過した国債は引き受けても、法律に反しないと主張しているのが自民党政府です。第二十条によるオペレーションの対象に国債が含まれているではないかと反論するのですが、日銀法は一体いつできた法律ですか。昭和十七年二月、まさに戦争中の遺物なのです。われわれが通貨価値安定のための日銀法の改正を主張しているのは当然ではないでしょうか。(拍手)  三木総理、赤字国債の発行という歴史措置をあなたの政府のときに断行するのですが、後世の史家が三木内閣をどう評価するかを十分反省して、信用膨張、インフレに通じない歯どめ、節度、限度、条件を検討し、個人保有に徹底した措置がとれると国民の前に約束できますか。うそをつくと、来年はばれますよ。  大蔵大臣日銀引き受けを禁止して、個人消化に徹する国債発行をするのか、従来と同じ方式で発行するのか、個人に魅力ある利回りで個人保有に値する短期国債にするのか。その内容を明確にしてください。従来の制度のまま国債発行を続ければ、明年度後半からインフレを刺激し、また物価騰貴を引き起こす要因となると思うが、物価担当大臣、副総理、福田さんの見解を聞きたい。(拍手)  ここまで財政が紊乱すると、経済安定法とか、あるいは財政再建法というような新しい制度を確立しないと、単年度財政主義だけで果たして処理し切れるのかどうかという重大な問題に逢着していると思います。この財政危機三木内閣はどう克服するのか、その展望を示してほしい。  国債発行インフレ刺激要因が増大するのに加えて、本年九月一日から消費者米価が一九%上がり、私鉄運賃も三〇%引き上げ申請が行われ、はたまた、国民の総意によって通過しなかった酒、たばこの増税をまた提案をし、郵便料金も引き上げをしようとしている。鉄鋼初め工業製品のカルテルあるいは値上げの動き等々、物価動向は必ずしも安定していない。明年度は国鉄運賃、電話料金など、メジロ押しの公共料金引き上げ、これで不況対策の行き過ぎがあれば、直ちに物価にはね返る危険があります。これらの物価上昇要因について、その限度をどう見るか、国債発行とあわせて、その見解を伺いたい。  不況対策地方財政の問題も重大な問題であります。  先月二十二日、私は大蔵委員会で質疑を行い、第三次不況対策効果について大平さんにただしました。公共事業七〇%上期執行目標は、当時五二・八%の進捗率でありました。昭和四十七年の同期が五四・四%だったことと比較し、本年はテンポが遅いと指摘をしたのであります。その原因は何でしょう。すなわち、地方自治体財政が極端に困窮し、地方の負担である三分の一あるいは四分の一の自治体負担を受け入れる財源がないからであります。本年度の地方財政計画では、公共事業の総額は三兆六千二百十二億円です。これに対する地方負担額は一兆三千九百四十七億円に上ります。さらに、国直轄の道路、河川、港湾、失対などの公共事業で、当然国がやるべき仕事を地方自治団体が負担をさせられる額が二千四百九十八億円あります。これらの公共事業消化のためには、地方財政で合計一兆二千八百四十五億円という膨大な負担をしなければならない仕組みです。政府は今国会補正予算を組み、地方自治団体への交付税減収分おおよそ九千億円程度かと思いますが、その九千億円程度の約九〇%ぐらいを大蔵省資金運用部で貸し付けようという計画の模様であります。  地方自治体は本年度すでに七兆八千億円の起債、借金であります。七兆八千億円の地方自治団体の借金に加えて、またまた地方交付税の減収分を借金で賄おうとしているのが三木内閣の姿勢であります。地方財政はいよいよ硬直をし、住民の期待に応じられなくなることは明白であります。  また、国直轄事業への自治体負担二千四百九十八億円はどうすればよいと考えているのか。この際、国直轄公共事業に対する地元負担は廃止すべきだ。全国知事会は負担金納入拒否を決めたようでもあります。政府の明快な方針を聞きたい。  なお、地方自治体は従来、税収の伸び、すなわち自然増収が年約六、七千億円ありました。本年度はそれがゼロであります。地方財政計画に組み入れられてない定員外の職員、臨機職員、福祉サービス、これらの支出はことごとく地方自治体は不可能になります。政府はこれを放置しておくのか。今回行った景気浮揚のための公共事業費三千億円の追加について、地方自治団体に負担をかけないように執行すべきだ。政府態度を明確にしてください。  財政投融資による約四千億円の公共事業費のうち、大型プロジェクト千二百億を計画しているということを昨日政府は決めたようであります。この千二百億の大型プロジェクトを高速自動車道や新幹線、これらの大型に使うことをわれわれは中止せよと要求をいたします。そうして、住宅、生活環境整備、教育施設、福祉関係にこれらの金を重点的に使えと要求をいたします。そして、そのことは、全国に公平公正に均てんするような資金の流れをつくると思うのであります。約四千億円の財投支出予定内容は一体どういう内容なのか、昨日の閣僚会議において恐らく討議をしたと思いますので、補正予算の出ていない現段階においては、本議場を通じて政府質問をする以外に手がありません。明らかにしてください。  交付税減収分約九千億円を借入金で埋めると決めるようだが、決めるのか決めないのか。元利償還は当然国がやるべきと思うが、地方自治体に負担をさせるのか、国が正式にカバーをするのか。地方自治体の財源強化こそ住民福祉に通ずる最も肝心な予算であります。地方財政が疲弊こんぱいをすれば、生活環境の整備も住民の福利増進も空念仏に終わるのであります。この際、政府は思い切って交付税の引き上げ、第二交付税の創設を早急に実現すべきであります。  さらに、金融政策について伺いたいと思います。  経済物価問題だけではないのであります。資本主義経済の成功か失敗かのバロメーターは、完全雇用が達成され、さらに、物価が低いところで安定しているかどうかなのであります。完全雇用が破綻し、求人倍率は〇・五八くらいでしょう。物価は一〇%以上の上昇でしょう。これでも経済政策失敗していないと言い張るのか。国民に陳謝しない内閣の責任ある統一見解を承りたい。(拍手)  水田三喜男元大蔵大臣は、派閥研修会で政策の後手後手を批判しております。引き締め解除もまず金融政策から適時適切に断行すべきだったが、政府はタイミングを失し、後手後手の後追い政策しかできなかった、政府は、財界首脳の強力な陳情を受け、不況対策財政でやる態度を決めたが、適当でない、年度内波及効果を期待することのできない財政措置を国債発行で大騒ぎをするのは問題であります。と水田さんは批判をしておるのであります。  政府は、日銀と打ち合わせ済みで、近々に公定歩合引き下げを行うようであるが、七・五%をどの程度引き下げるのか。引き下げによる需要効果はどの程度と見ているのか。さらに、引き下げは、単に大企業の金利負担を軽くするだけで、需要には回らないのではないかと思うが、それらの目的や効果を明らかにしてください。(拍手)  今度公定歩合引き下げる際には、預金金利も引き下げるということを日銀総裁と大蔵大臣は協議した模様であるが、零細な預金者がようやくためたわずかな貯金を一%引き下げようということを聞いて、国民は全くあきれ返っているのが私は真相だと思います。  それもそのはずです。昨年十月には消費者物価は年間二五・五%上昇、卸売物価は、二月には三七%という異常上昇でございました。上がれば上がりっぱなしで、物価はもとに戻らなかった。そのころ預金金利は、銀行一年物定期で七・七五%、郵便定期は七・五%だったから、消費者物価と比較をすると、年一八%も目減りした。逆に、企業への貸出金利は平均九%台だったから、卸売物価上昇と比較すると、約二〇%以上の借り得になっている。預金者大衆は一八%も目減り損、借入金の多額にある大法人は二〇%の得をした。まさに対照的ではありませんか。物価が上がったときに、預金金利も目いっぱい上がったのならがっかりもしないが、預金金利は物価に連動しない仕組みだ。もし預金金利を公定歩合に連動させる方法を考えるならば、法人預金と個人預金を分離し、法人預金だけ引き下げ措置をとるのが当然ではないか。(拍手)  しかも大手銀行は、昨年五百億または六百億円も利益を出している。大銀行や大法人に利益を得させるために、低い預金金利を押しつけられていることになる。国民の皆さんは、自民党はしょせん庶民大衆の味方ではない、あきらめよう、いまこそ政治革新に目を向け、制度、構造改革に英知とバイタリティーを傾けることが、国民大衆の判断の分かれ道であると私は思うのであります。(拍手)  本年三月末の個人預金総額は百二十八兆三千四百四十七億円あります。年七・五%の金利がつけば、国民のふところに九兆六千二百五十八億円の預金収入があります。それを一%引き下げ、六・五%にされると八兆三千四百二十四億円になります。すなわち、預金金利一%引き下げられると、個人預金者だけで一兆二千八百三十四億円の損をしたことになるのです。一億人の預金者と見て計算すると、一人年間十二万八千円の被害をこうむることになります。だから、この方法を安易に選んではいけないのであります。個人預金の金利の引き下げ社会党反対をする理由は、ここにあるのであります。国民の皆さんはどう思いますか。  コールレートが高過ぎる。これでは貸出金利は下がらない。銀行間の貸借であるコールレートは公定歩合より低きに位置するのが、正常な金融のあるべき姿なのであります。わが国はどうか。預金金利を引き下げようとするならば、このコールレートをまず下げるべきではないでしょうか。本年六月のコールレートの水準は一〇・五%から一一%、七月は一一%、公定歩合と比較して余りにも高過ぎるのではないか。これらに改善の手を加えないで、預金金利引き下げを先行させる自民党政府の弱い者いじめは承認できません。  大蔵大臣、コールレート引き下げの指導を思い切ってすべきだと思うが、どうするか。見通しと見解を明らかにしてほしい。(拍手)  次に、財政による不況対策として、一般会計から四千億円支出増を考えているようだ。また、財政投融資計画追加で、景気対策費は三千七百億円ぐらいになり、合わせて約八千億円程度の景気刺激策であります。財界首脳が政府にハッパをかけた威勢から見ると、意外な数字となりそうであります。それもそのはずであります……
  14. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 武藤君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  15. 武藤山治

    ○武藤山治君(続) わかりました。簡単に結論をいたします。  われわれは、したがって、この景気対策の中で、政府大型プロジェクトに一千二百億円を使うことをやめ、これを地方自治団体の財源に補てんし、公共事業費が一〇〇%スムーズに消化できるための財源に回せと要求をいたします。  時間でありますから、残念ながら割愛をいたしますけれども、今日、完全失業者の数は、ピーク時の三月、百十二万人から毎月減少し、八月末の失業者は八十七万人と発表されております。しかし、この数字にはパートタイマー、内職、家内工業、出かせぎ者などが含まれていないのであります。これらの潜在失業者は一体どのくらいになるのか。もちろん、完全雇用のためには経済活動が活発化しなければならないが、政策失敗失業者が異常に多くなったのであるから、政府としては、抜本的対策を確立する責任がある。西ドイツは再就職まで失業給付を行っているが、失業保険給付率を引き上げ、給付日数を再就職まで延長すべきであります。  さらに、最近、企業倒産により退職金、社内預金、賃金など未払い労働者債権が生じ、トラブルを起こしている。この際、国による労働者債権立てかえ払い制度を確立すべきであります。政府の所見を伺います。  中小企業の問題も、今日、一月から六月までに銀行取引停止処分を受けた個人、企業は二万三千三百六十六件、これは中小の零細業者です。資本金百万以上の企業で六千件が倒産をした。六カ月で三万件がつぶれているのです。自由経済だ、つぶれるのは自己責任だと自由経済論者は言うかもしれない。しかし、政府の総需要抑制資本主義経済犠牲者だ。中小企業に対して……
  16. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 武藤君、申し合わせの時間が過ぎましたから、簡単に願います。
  17. 武藤山治

    ○武藤山治君(続) 融資額をふやしても、担保力がないため融資を受けられない実情にある。政府は根本的な対策を立てるべきであると強く要求して、時間の催告が参りましたから、党を代表しての私の質問はこれで終わりますが、政府は、口先だけではなくて、一億国民の前に信頼される政治の姿勢を責任をもって明らかにすることを要求して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫登壇
  18. 三木武夫

    内閣総理大臣三木武夫君) 武藤君の御質問にお答えをいたします。  政府経済政策誤りという点の御指摘でございました。  経済政策の選択は、私は、物価安定と不況克服をどちらに重点を置くかということが政府の選択という問題であったと思うのですが、政府は、物価の安定を最重点に置いて、物価を鎮静することに専念をしたわけでございましたが、その効果があらわれてきたことによって不況対策を今回とったというわけでありますから、政府政策選択には誤りはなかったと考えております。  ただ、税収の不足という問題が起こってきたわけでございますが、これは、経済が予想以上の停滞をしたという結果でありますが、経済というものが大きく変動する時期には、税収不足の場合ばかりでなしに、非常に、自然増収の名で呼ばれておるように、税収が予定以上にふえる場合がある。税収の過不足を生ずることはあり得ることで、やむを得ない面も私はあると思うのでございます。  いずれの工業先進国においても大幅な財政赤字が出ておることは、武藤君御承知のとおりでございます。したがって、このことが政府経済政策誤りだというふうには認識していないわけでございます。  それから、歳出の削減と年度内の増税で国債発行をストップすべきだという御提案でございますが、現下の経済情勢にかんがみまして、政府は、一般的な歳出の削減は行いませんが、事務費等行政経費についてはできるだけ節減をしていきたいと考えております。  また、こういうときに歳入面で一般的な増税を行うことは適当であるとは思っておりません。しかし、税制面で、歳入確保のため可能の限りは努力をしております。その意味で、先般政令の処置が可能な金融機関等の貸し倒れ引当金の繰入率の引き下げを行ったことは、武藤君御承知のとおりでございます。  以上のような努力を払って、国債の追加発行をできるだけ圧縮をしたいと考えております。  次に、公共事業についていろいろお話があって、長期計画などを土台にした予算要求によって予算がふくれるばかりではないかというお話、抜本的な見通しが必要だという御指摘でございます。  公共事業というものは、事の性質からして、長期計画を立てなければならぬものでございますが、各年度ごとに、時々の経済財政事情に応じて弾力的に行っておるわけでございまして、今後の公共投資の規模については、現在策定作業中の新経済計画において改めて検討をしてみたいと考えております。  それから次に、多額の国債発行が非常にインフレの要因にならないかという御懸念でございますが、今日のごとく需給のギャップがかなり大きい現状からして、インフレにならないよう金融政策を適切に運用さえすれば、そういう心配はないと考えるわけでございます。  また、政府は、景気の回復の過程で物価が再び急騰することのないよう、物価の動向には今後とも細心の注意を払ってまいる考えであって、年度末には一けた台にするという目標は、万難を排して達成をしたいと念願をしておるわけでございます。  また、日銀法の安易な買いオペを禁止すべきだという御提案でございましたが、日本銀行がオペレーション政策などによって金融調整を行うに際して、通貨の価値の安定というものを旨とせなければならぬわけでございますから、適正な通貨の供給というものに対して、そういう通貨価値の安定を旨として適正な通貨供給の調節に努めることは、どうも日本銀行法のもとでは当然の使命であり、安易な買いオペレーションが行われる懸念はないと考える問題でございます。これは法律の問題よりも、運用の問題であると考えておるわけでございます。  また、武藤君は西ドイツのごとき経済安定法というものをこの際つくることが必要なのではないかというお話でございます。  財政のあり方を長期的に考えるべきであるという御指摘は、まことに有意義な御指摘だと思いますが、現行の財政制度の基本にかかわる問題でありますから、これは今後の検討にゆだねなければなりません。  また、国の直轄公共事業地方財政の負担については廃止すべきではないかというお話でございましたが、公共事業の財源を国と地方がどのように負担するかは、地元の受益の程度など、種々の事情を勘案して合理的に決めるべきものであると考えております。だから、国の直轄事業にも現在地方負担を求めておりますが、これを廃止するということになりますと、公共事業に関する国と地方の負担区分の基本にかかわる問題であり、これは慎重な研究を必要とすると思っております。  また、地方財政の援護のために、第二交付税制度というものを新設すべきではないかという御提案があったと思いますが、地方の財源は、地方税を充実するとともに、現行の地方交付税制度を適切に運用することによって確保できると考えておりますので、さらに第二の交付税を設ける考えは持っておりません。  とにかく、地方交付税の減収補てんのためには、具体的な措置をとらなければならぬことは御指摘のとおりでございますから、いま検討中であって、いずれにしても、地方財政運営に支障を生ずることのないよう、適切な措置を講ずる考えでございます。  それから、預金金利の引き下げというものは、庶民大衆の無視に通ずるというような御指摘でございますが、景気を着実に回復させて、雇用の安定を図るということは、今日大変重要なことでございまして、そういう目的のために、全般的な金利水準の低下を図ることが必要であると考えております。その引き下げ幅は、いままだ未定でありますが、預金の金利等も引き下げを実施することが必要な時期になっていると考えておる次第でございます。  それから、公営住宅の家賃のことをいろいろ御指摘になり、国有地の積極的な利用というものが必要であるということでございましたが、これは公営住宅、公団住宅などについて、現下の住宅問題の実情に照らして、公的な需要との関連なども考えまして、国有地の活用を図っていきたいと考えております。  それから、政府考えておる完全雇用という状態についていろいろ御質問がございました。  完全雇用というのは、一般に職を求める人たちが容易に仕事を見出すことができるという状態を指すわけでございますが、現下の雇用情勢は、武藤君御承知のとおり、きわめて厳しいが、第四次の景気対策によって相当の効果が上がることを期待しておりますから、景気の回復を待って、雇用情勢というものが今日のような状態ではなくなるものと期待をしております。  新春の、来春でありますが、学校卒の就職がいろいろ憂慮されるという問題についても、雇用問題を解決するということが必要であると考えておる次第でございます。  御質問が多岐にわたっておりましたので、大体お答えをしたと思いますが、もし質問に漏れたものがございましたら、関係閣僚からお答えをいたす次第でございます。(拍手)     〔国務大臣福田赳夫君登壇
  19. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私に対しましては、政府不況対策として多額の公債の発行考えておる、これは危険ではないか、来年は物価戦争というようなことになるのじゃないか、所見を述べよ、こういうことでございます。  私は、公債の発行というものはそう安易には考えておりません。非常に慎重にやるべきである、そういう考えです。  ただ、公債悪という考え方はとっておりません。公債を頭からこれを排撃するという考え方ではない。つまり、経済インフレ化するとか、混乱するとか、それが公債とどういう関係があるか、こういうことを考えてみますと、経済が安定するということは、経済全体としての需給が均衡がとれておる、そういうこと、また、個別物資につきましての均衡がとれておるということ、これが基本である。公債を発行し、需要を刺激いたしましても、国民経済全体の均衡がとれておればインフレにはならない。  ただ、公債を発行する場合に、非常に警戒を要しますのは、これを注意を怠りますと、この発行の結果、過剰流動性をもたらす、その過剰流動性がはからざる需要を巻き起こす、そこで需給の均衡を失う、こういうことになる。  したがいまして、公債の発行自体、それ自体は私は排撃をいたしませんけれども、その規模、並びに、それがいかにして国民に消化されるか、そういう点につきましては細心の注意を払わなければならない、さように考えます。  なお、関連いたしまして、今回の不況対策の結果、物価はどうなんだ、こういうお話でございます。  私はその点も配意しておるのです。今回、不況対策をとりまするけれども、その結果、物価を混乱させたのでは、これは日本経済として元も子もなくなる、こういうことである。したがいまして、今度、不況対策はとりましたけれども、この実行に当たりましては、物価の状況を厳しく見詰めて、緩急よろしきを得なければならない、その運用に当たりまして、弾力的な構えでやっていかなければならぬ、さように考えまして、物価も、それから景気も、つまりインフレのない繁栄、それを目指してやっていきたい、それを実現いたしたい、かように考えております。(拍手)     〔国務大臣大平正芳君登壇
  20. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 財政危機に臨みまして、武藤さんから、税収をこういう方法で徴収すべきではないかという御提案がございました。  たとえば、金融機関の貸し倒れ引当金の問題とか、大企業の減価償却年限の圧縮でございますとか、あるいは高額所得者の重税、あるいは配当課税の総合でございますとか、土地再評価税の設定とか、そういったことを御提案になりましたけれども、これはすでに大蔵委員会におきまして、私とあなたの間におきましても論戦を何度か交わした問題でございます。したがって、この機会に、繰り返すのはいかがかと思いますけれども、せっかくの御質問でございますので、要点だけ申し上げたいと思います。  第一の貸し倒れ引当金の問題でございますが、金融機関は、ただいままで千分の十の貸し倒れ引当金の引き当てを認めてまいりましたことは御指摘のとおりでございます。武藤さんは、それを千分の五にしてはどうかという御提案でございました。政府もそういう考え方で金融機関と交渉いたしまして、千分の五をまだ譲っておるわけではございませんけれども、とりあえずの目標といたしまして、千分の八までにつきましては、金融機関の同意を取りつけておる次第でございます。  減価償却でございますが、これは釈迦に説法でございますが、資産の経済価値の陳腐化の度合いに応じて減価償却年度は決まるわけでございますので、そういった基礎条件に変化がない限り、十五年に一律にやってはどうかという御提案には、直ちに賛成するわけにはまいりません。  高額所得者の重税の問題でございますが、武藤さんも御承知のように、わが国の所得税の減税は、基礎控除の引き上げという姿において鋭意やってまいりまして、ただいま百八十三万円という、各国に例を見ないほど非課税限度が高くなっておりますことは、大変幸せだと思っております。したがって、その間、高額所得者につきましては何ら減税措置を講じていないのでございまして、各国との税制上の比較をやってまいりまして、わが国の高額所得者は比較的重税を負担していただいておるわけでございまして、いま政府は、高額所得者を千万円以上というあなたの御指摘でございますが、千万円以上の高額所得者に一〇%の重税を考えるという立場をとっておりません。  それから、配当優遇課税をやめて総合にすべきじゃないかということも、これは長い懸案でございます。これはこの利子、配当の源泉につきまして徹底した掌握が行政能力で可能でございますならば、直ちにそれは実行できるわけでございますけれども、ただいまそこまで政府は自信がございませんので、選択課税の税率をとりあえず二五%を三〇%に引き上げることをお認めいただきまして、来年一月から実行いたすことにしておりますことは御案内のとおりでございますが、あなたが御指摘のように、総合課税にすることは、私どももそれを道標にいたしまして、今後も努力を続けてまいるつもりであります。  土地再評価税でございますが、これは、いま実現していない、収益を生まない状態において課税するわけでございますから、税率がそんなに高い税率になり得ないことは、武藤さんも御理解いただけると思います。法人税より高い税率でなければ意味がないわけでございますが、もし収益性を持たない土地の再評価税として、法人税より高い税金をかけられないというようなことでございまするならば、この税制の意味は全然ないんじゃないかと私は考えておるわけでございまして、直ちに御提案に賛成するわけにはまいりません。  第二の問題は、特例公債とその消化についての御質問でございました。  これは、いま福田副総理からもお答えがございましたけれども、私どもといたしまして、特例公債を出さなければならぬということは大変残念なことでございまするし、これを出すにつきましては、よほどの用意がなければならないし、よほどの努力を重ねないと御理解を得られないと存じまして、鋭意、いまこの規模、それから条件等につきまして検討を重ねておるところでございます。金融情勢、他の公社債とのバランス等を考えまして、市中消化ができますように極力努力してまいるつもりでございますが、この成案が得られますならば、また御審議を願うことにいたしたいと考えております。  第三の、今度の不況対策公共事業追加内容でございますが、大きなプロジェクトに偏向いたしまして、生活環境施設等が閑却されていやしないかというような御指摘であったと思いますけれども、私どもといたしましては、事業の緊急度、工事能力、経済効果等を十分はかりながらプロジェクトを選定したつもりでございまして、御指摘のように大きなプロジェクトもございますけれども、水源対策、国土の保全、農業基盤の整備生活環境施設の整備等、適切な配分考えております。  それから、最後に金利の問題でございます。  金利をいま全体としてその水準を引き下げるように努力することを目標にいたしまして、努力をいたしておるわけでございますが、これは御案内のように、二年前から総需要抑制策の一環といたしまして、政策的に金利を引き上げてまいったわけでございます。総需要抑制策がその任務を終えて、むしろ景気を刺激しなければならないような状況になってまいりました場合に、金利を引き下げるということは当然のわれわれの任務であるわけでございまして、そういう方向に鋭意努力してまいりたいと思います。  御指摘のコールレートにいたしましても、ピーク時には一三・五%ぐらいの水準でございましたが、今日九・五%ぐらいに下がっております。今後も資金の緩急に応じて、資金の過剰な時期を迎えるわけでございますので、さらに低下を見るものと私は考えております。(拍手)     〔国務大臣河本敏夫君登壇
  21. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 最近の中小企業の現状から考えて、その金融対策を十分配慮していくように、こういう趣旨の御質問でございます。  政府の現在とっております中小企業対策は、第一に、中小企業に仕事の量を確保するための対策、それから第二が金融対策で、この二本立てで進めておりますが、特に金融面では、今回四千八百億円を追加いたしました。この結果、中小企業の三機関の貸し出しの枠は、年初の分と合わせまして約三兆円になります。現在の貸し出しの状況から考えまして、これで十分であると考えておりますが、万が一不足するようなことがございましたならば、そのときにおきまして適切な対策をとる所存でございます。  また、中小企業の現状から考えまして、三機関に対しましては、中小企業の個別企業の現状に即しまして、返済猶予につきまして、弾力的に相談に乗るように、こういう指導をしてまいりました。今回の第四次の対策の実施に当たりましても、さらに一層この返済猶予の面につきましても、弾力的に行うように指導を徹底してまいりたいと存じます。(拍手)      ————◇—————
  22. 羽田孜

    ○羽田孜君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明十九日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
  23. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 羽田孜君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時七分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣 福田  一君         国 務 大 臣 井出一太郎君         国 務 大 臣 植木 光教君         国 務 大 臣 小沢 辰男君         国 務 大 臣 金丸  信君         国 務 大 臣 佐々木義武君         国 務 大 臣 坂田 道太君         国 務 大 臣 福田 赳夫君         国 務 大 臣 松澤 雄藏君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省条約局長 松永 信雄君      ————◇—————