○横山
委員 きょう私は裁判の遅延の問題につきまして、関連した
一つの事案を取り上げまして、最高裁あるいは
政府、実は日弁連の御意見を伺いたいわけでありますが、それはどうもうまくいきそうもございませんが、御両所の御意見を伺いたいと思います。
裁判の遅延問題につきましての最近の
判決で注目すべき
判決がたくさんございます。しかもその
判決は、時間を経るに従って、憲法三十七条について具体的な
判断を高田
事件でいたしました。きわめて画期的な
判決だと思います。
しかし、翻って最高裁
昭和二十三年十二月二十二日の大法廷の
判決は、
裁判の迅速を保障する憲法第三七条第一項に違反するかしないかは、更に諸般の
事情を究明した上でなければ、にわかに断定することができない。ところで、いま、
本件の裁判が迅速を缺き憲法の条規に違反したものと仮定して、その結果はどうなるであろうか。裁判の遅延が担当裁判官の責に帰すべき事由による場合には、その裁判官は、
司法行政上その他の責を問われることのあるべきことは当然であろう。しかし、裁判に迅速を缺いた違法があるからといって、第二審
判決を破棄すべきものとすれば、差戻すの外はない。しかし、そうしたならば、裁判の進行は更に一層阻害されて、憲法の保障はいよいよ裏切られる矛盾を生ずるであろう。それ故裁判が迅速を缺き憲法第三七条第一項に違反したとしても、それは
判決に影響を及ぼさないことが明らかであるから、上告の理由とすることができないものと解さなければならない。
これが二十三年の
判決であります。要するに、この中で二つのことが言われておる。裁判官は
司法行政上その他の責任を問われるのは当然だということが
一つ、もう
一つは、この
段階では差し戻せばそれだけ時間がかかるから、被告に対して気の毒だから実質的に差し戻したって
意味がないではないかということであります。
その次が高田
事件であります。高田
事件はもう有名でありますから多くを申しませんが、少なくともこの
判決は画期的なものでありまして、憲法三十七条は単に訓示的に述べたのでなくて、これは具体的に強行法規であるという立場に立ちました。これについての論告その他についてはずいぶんたくさんございますが、もう御存じのことでありますから、ここでは一応省略をいたします。
この高田
事件の
判決、次いで今度は五十年八月六日における最高裁の
判決であります。この
判決で四年間の審理中断がわずか一票の差で合憲となりました。この
判決は、裁判官岸盛一氏の補足意見、裁判官下田武三氏の反対意見、裁判官團藤重光氏の反対意見、二人の少数意見があるわけでありますが、いずれにしても、高田
判決の後を受けて、最高
裁判所でわずか一票の差で、四年間の審理中断が合憲かあるいは違憲かというところに峠を
一つつくったということが言えるかと思います。
また、本年十一月二十八日、大須訴訟で名古屋地裁が、迅速よりも慎重性という点でしりぞけました
判決の理由の中で、可知裁判長は、「遅延かどうかは期間の長短だけでなく、諸
事情を総合的に
判断しなければならず、迅速性より慎重性が重視される場合がある。集団公安
事件のような巨大訴訟では統一組の審理が分離組にも影響するなど、
裁判所の訴訟指揮に違法性はなかった」まあ集団公安
事件のような問題につきましては、高田
事件におきましても
判決で少し触れておるわけで、高田
判決におきましても画一的な立場ではなくて、いろいろな
状況をも総合的に
判断をしなければならぬと言っていることは言うまでもありません。
しかし、いずれにしても、訴訟の遅延というものがかくも具体的に裁判で憲法三十七条を盾にして争われるようになり、しかもそれについて具体的にそれが強行法規であるというたてまえのもとで争われておるということは、もはや放置することのできない問題だと私は思うのであります。
その放置することができないという
意味はどういう
意味かと言いますと、これらの
判決の中で言われておる諸問題、たとえば
裁判所側に問題がある、
裁判所の人員が不足である、あるいはまた機構が複雑である、設備が足らない。
裁判所側にある問題、弁護士を含む被告側にある問題、それらを通じてなおかついろいろな客観的な条件というものは一体解決ができないものであるかどうかという点について、裁判がこれから出るのを任していくわけにはもはやいかなくなった、私はそう
判断するわけであります。
これらの憲法三十七条は強行法規であるという説を正しくとらえるならば、最高裁は何をしなければならないか、
政府はどういうことをこれにこたえなければならないかという点について十分な措置をすべきである。これがきょう私が申し上げたい一番の焦点なのでありますが、
法務大臣はいかにお
考えですか。