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福田(赳)
国務大臣 賃金問題には政府は介入しない、これはもう
中村さんもよく御承知のとおりでありますから、私が賃金はどの辺の水準がいいのだなんということを申し上げますと、これは大変問題になると思います。政府の態度として妥当でない、こういうふうに
考えますので、賃金水準は申し上げません。
しかし、ことしはとにかく世界じゅうがもう総落ち込みです。先進諸国どの国をとりましてもみんな赤字である。けさのパリ電報、新聞にも掲載されておりますが、プラスであるという国は諸外国
一つもないのです。その中でわが国がとにかく二%台のプラス成長だ。これは名目にすると九%台になってくるわけでありますが、そういう
状態です。
それはなぜそういうことになっておるのだ。名目アベレージの成長ですね、これが九%台だというときに、消費が非常に大きな役割りをしているのです。消費が一五%がらみの伸びを示しておる。それから政府の第一次、第二次、第三次、第四次、この財政施策、これがやはり一五%程度の伸びを示しておる。これが支えとなって、世界
不況の影響を受けて輸出が伸びないあるいはそれとも関連をとりながら
設備投資が非常な不振の
状態である、それを補って、そしてとにかく
経済活動全体としては三月以降生産も伸びる、出荷も伸びる、稼働率も上がってくる、そういうことを背景としてプラス成長ということになっているので、個人消費が沈滞沈滞と言いますが、私は伸び悩みだとは思うのですよ、しかし、沈滞あるいは非常な沈衰の
状態だというふうな
状態ではないのです。
私は、
経済全体が発展過程に乗りまして、そして自然に個人消費というものが伸びること、これはそのようになることを期待しておりますけれ
ども、ここで何らかの個人消費を刺激します施策をとってさらに個人消費を伸ばすという
考え方は、これは非常に
考えてみなければならぬ、
考え方である、そういうふうに思うのです。
個人消費を伸ばす手とすると減税ということになりましょう。さあ、減税をするといえば財源が要る。一兆円の財源が要るのです。その一兆円の財源を使って景気という局面から見ると、何がいいかというと、それは個人消費、そういうことを刺激するという意味での減税。それじゃなくて、直接物財の需要を喚起する、直接労働の需要を喚起する。いま雇用問題も大事です。そういう上に大きな効力を持つ
公共投資、
住宅だとか下水道でありますとか道路でありますとか農山村の諸事業でありますとか、そういう
ところに使う方がどのくらい
効果的であるかということを
考えてみますと、選択の結果はおのずから明らかである。ましていま大変な赤字公債を出さなければならぬ。五兆五千億円の公債です。これをどうやって一体消化するのかと言いますれば、これは個人の貯蓄、これにまつほかないのです。国民が公債を買ってくれる、真接買う
方法もありましょうし、あるいは銀行に預金してその銀行が買うという
方法もありましょうが、要するに、これは個人の貯蓄以外に道はないのでございますから、その個人の貯蓄と相反するような方向のこの消費の奨励、刺激という
考え方、これはそんな踏ん切り方はなかなかできないのですよ。
そういう意味において、政治家といたしましては、減税なんというのはぜひやりたい、そういう気持ちはありますけれ
ども、本当に国家のことを
考え、どういう道が正しいかということを
考えますと、気分的なことでこの問題の決着をつけるわけにはいかない。本当に真剣に
考えて、そしてこの道こそは今日大事な道だということで私として
考えますと、これは減税はいまやる時期ではない、そういう
見解でございます。