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工藤参考人 全国消費者団体連絡会代表粋事の
工藤でございます。
今日の
私鉄運賃の
値上げに対して私たち
全国消費者団体連絡会は一貫して反対をし、そして
鉄道そのものをどうか
利用者本位のものにしてもらいたい、こういう形で、八月二十九日の
申請の前からこういう
要請を
運輸省あるいは
関係各社に対して続けてまいったわけであります。不幸にして今日
値上げが
認可をされたわけでありますけれ
ども、この間にわたって
運輸省に対する
要請などを行いましたので、それを通じて
運輸省と
問題点でかみ合った点さらに今後の解決にまたなければならない点それぞれありますので、そういった点を申し上げたいと思います。
第一は、
私鉄というものを見る場合に、
運輸省は一貫して最も狭い意味での
鉄道部門ということを取り上げてきたのがこれまでの姿勢であります。
鉄道というのを考える場合に、御存じのように、今日、
私鉄は、たとえばきょうお見えの京成電鉄をとってみますと、四十九
年度の営業
収入中の各部門の占める割合を見ますと、四十九
年度の上期では
鉄道部門は二六・九、下期も二六・九、不動産部門が四八・七、その他が二四・四、こういうふうになっていますし、東武
鉄道の場合でも、四十九
年度上期が
鉄道部門四一・五、不動産が三二・七、その他が二五・八、全体を見ましても、
鉄道部門がその他の部門に比べて
収入が多い
私鉄は近鉄、阪急、阪神、それから小田急がありますが、その他はいずれも
鉄道部門以外の
収入が多い、こういう
実態であります。
こうしてみますと、
鉄道というものを見る場合に、不動産部門あるいは観光部門その他の部門と
鉄道部門とを果たして切り離して見ることができるのかどうなのか。現実の上に立ってみますと、これは私はできない。また、沿革的に見ても、
鉄道とその他の
兼業部門との
関係というものは切り離しがたく結びついて、相互依存の上に発展をしてきたという歴史があるわけでありまして、これを切り離して見るというのは、会計上を見ましても、有価証券報告書などを見ましても、これはそういうふうな形態になっていない。
鉄道会社の、一法人でありますから、その法人の中の一つの部にしかすぎないわけでありまして、税法上から見ても会計上から見ても、どの部門から見ても、
鉄道部門だけを切り離して論ずることはない。ただ
運賃の
値上げのときだけ
鉄道部門のみを切り離して論ずるというのが、
利用者から見て全く不可解な点であります。いわばベニスの商人でありませんけれ
ども、血を一滴たらさずに肉一ポンドよこせ、こういう論理に似ているわけでありまして、実際できない。これは
私鉄自身にお尋ねをいたしましても、たとえば
鉄道建設のために借りたお金が実際は不動産の買い占めに回っているというようなことがあります。また、人事の面で見ても、
鉄道部門の部長がいらしゃいますけれ
ども、やはり近鉄なり京成電鉄なりの
社長さんであって、全体を管理監督をされている。組織上、人事上、財政上、あらゆる面から見て一つの法人である。そうしてまた対外的に見ましても、その一法人が関連
企業に対して莫大な投資、融資等をやっているという形で、
鉄道部門を切り離してみるということに対して大変無理があるということを
運輸省と再三にわたって話をしてきたわけであります。
問題になりますのは、
鉄道部門の損益。こういったような場合に、先ほどの御
説明のように六百十三億の赤字が生じた。しかし、これはいわゆる営業外費用、各関連事業部門に共通したたとえば
支払い利息、こういったものを各事業部門の投下固定資産に案分して割り振りをするということで、こういった莫大な赤字が発生するわけであります。ですから、私たちが
承知し得る範囲の
資料としては、株主総会に提出する営業報告書あるいは大蔵省に提出する有価証券報告書、こういったものがあるわけですが、これを見る限り、どう見ても
鉄道部門は全体としては赤字ではない。特に五十年の上期の決算
内容を昨日
運輸省からいただきましたけれ
ども、これなどを見ますと、十四社で九十六億二千百万の黒字を計上しているわけです。赤字は東武、京成、東急、南海、西鉄でありまして、その他は黒字であります。こういう形でありますが、そういうせっかく
鉄道部門で上げた収益、これに対して営業外費用を固定資産に応じて案分をする、こういう方式をつまり便宜的にとらざるを得ない。私は、この
兼業部門との
関係がやはりすっきりしないと、
私鉄問題についての損益は論じられないのじゃないか。きわめて便宜的に論じてきた、その便宜的な方法についても大変問題があります。
御存じのように、投下した固定資産という場合に、全事業の固定資産の中に、従来は含めませんでしたけれ
ども、今日では分譲土地を含めております。それから
鉄道部門の中には建設仮勘定、建設中の資産を含めているわけです。全事業固定資産の中に占める
鉄道部門の固定資産は幾らか、こういうふうに営業外費用を割り振っていくわけでありますから、分母に来る全事業固定資産プラス分譲土地建物、この分譲土地建物は、帳簿価格、取得価格でありますから、大変安いわけです。たとえば小田急の例をとりますと、町田市で持っている小田急の土地は、一平米当たり七千五百円程度で評価をしているわけであります。坪当たり、三・三倍でありますから、二万数千円ということになりますが、こういう土地は現実にはないわけです。これを分母に持ってきますから、
鉄道部門にかかってくる利息の
負担率が大変高くなる。さらに分子に来る建設仮勘定、建設中の資産というのは、御存じのように、現在では
物価騰貴、建設資材などが値上がりしていますから、時価もいいところでありまして、大変高いものになっております。分子を大きく分母を小さくしますから、結局
負担をする割合が大きくなる。こういうことで、しかも、この建設仮勘定、
鉄道部門の固定資産、前提となる固定資産そのものが、どこまでが
鉄道部門の固定資産なのかということが非常に明確でない。
たとえば、先般
運輸省立ち会いのもとで西武
鉄道の西武新宿駅に参りまして、西武本社からも専務に立ち会っていただいて見たのです。あそこには西武新宿のターミナルに駅ビルが建っております。二百一億の総工費だという。地下四階、地上二十四階。聞いてみますと、
鉄道で使うものは一階、せいぜい二階、八階までは賃貸ビル、それから九階以上はプリンスホテル。この二十四階建てのビルで二百一億の総工費がかかりますが、このうちで
鉄道部門に十七億七千二百万を
負担してもらう、こういうわけであります。なぜ
鉄道部門にそういうものをかけるのか。二百一億のビルは何のためにつくったのか。目的的にものを考えてみますと、プリンスホテルをつくり、賃貸ビルをつくるために
鉄道を足場にしただけの話でありまして、
鉄道をつくるために上のプリンスホテルや賃貸ビルをつくったのではない。これはもう常識であります。それなのに
鉄道部門には十七億七千二百万の
負担をかけている、こういうやり方をするわけですよ。さらに、既存のものといたしましては、池袋駅あるいは新宿駅などは
私鉄と
国鉄が入り乱れて、財産区分が一体どうなっているのかわかりません。
こういうように、一つの会社の中でも、一
企業の中でも
鉄道部門とその他の部門が鮮明に峻別できない。また、他の
事業者との
関係においても、今日
鉄道の固定資産というものがどれだけあるのかというのを
運輸省は恐らく調べたことがないだろうと思います。これは
私鉄が申告したものにのっとってやっているんだと思いますけれ
ども、これらは全面的に洗い直しをしなければ、
鉄道とは一体何なのかということがはっきりしない。しないままで議論を今日にしてきているわけであります。
鉄道というものがはっきりしないままに赤字、黒字を論じてきているというのが今日までの問題なんで、この際そういった点をきちんとするように
運輸省にも
要請をしてまいりましたが、
運輸大臣はこの前にお会いしましたときでは、そういう方向で
努力をしようということでありますから、そういう点をきちんとする。
兼業部門をやることがいいか悪いかという以前に、
鉄道部門の赤字、黒字を論じるのならば、
鉄道部門を鮮明な形で出してみていただきたいということが第一点であります。
そこで、これまで
運輸省がとってきた方式によって問題になる点を申し上げなければならないと思います。
一つは、先ほど
岡田参考人からもありましたが、事業報酬方式であります。この事業報酬方式は電力やガスでもこういうふうな形がとられているわけでありまして、いわゆる
支払い利息や
配当金を
運賃の原価の中に算入をするということでありまして、一般の民間会計にはあり得ないことであります。ことしの会計学会が六月に長崎大学でありましたけれ
ども、その学会の中でも、このレートベース方式は不当であるというような
意見が出ております。学会でそういうことが言われると同時に、われわれ
利用者から見ますと、四十九
年度実績を見ますと、
支出総計が三千八百七十三億、そのうちで事業報酬、
支払い利息、
配当所要額等が、きょう手元にいただきました
資料によりますと、六百六億ありますから、一六・二の割合です。つまり百円の中で十六円二十銭が
支払い利息と
配当金というのが四十九
年度実績であります。今度
値上げの
運賃の原価を見ましても、大体十五円六十三銭くらいが利息と
配当金になっているわけであります。これに事業報酬制度というものをとる場合には、
公共料金でありますから、一定の法令の根拠や算定基準が明確でなければならないということもわれわれ主張してまいりました。これは電力の場合は電気事業法の十九条、ガスにつきましてはガス事業法の十七条に、一応適正な原価に適正な利潤を加えたものを総括原価とするという法令があるわけでありますが、
私鉄の場合には、地方
鉄道法にはそういうことはありません。
運輸大臣にお尋ねいたしましたら、大臣は、これは法律が古いからだ、こうおっしゃるのでありますけれ
ども、法律が古いからないというのではやはり納得ができないわけでありまして、ないままに
昭和三十七年以降事業報酬方式をとっているわけであります。だとするならば、法律がなければ法律を改正するなり、あるいはまたその基準を明確にしなければならない、根拠を明確にしていただかなければならないということも強く
要請をしてまいっております。今回の査定におきましては、事業報酬率を八%にするということが書いてあります。これは電気やガスについて参考にしたというふうなことを聞いていますけれ
ども、御存じのように、ガスや電力は
兼業部門を持たない公益事業であります。ですから、これは参考にすべきではない。莫大な
兼業部門を持っている
私鉄は
私鉄なりの事業報酬のあり方を特別に、国
会議員の諸
先生方もお入りいただきまして、そういう場をつくっていただきたい。そうでなければ、法律の根拠もない、何となく電気やガスがやっているからというようなさじかげんで事業報酬を認めるというようなやり方では、われわれは納得ができないわけであります。
さらに問題になりますのは、こういった
支払い利息が発生する根拠は莫大な借入金であります。きょうお見えの京成、京浜両社は、
大手私鉄の中でも金融機関の支配が一番高いわけであります。お手元に差し上げました消団連の
資料にも詳しく書いておきましたけれ
ども、生命保険会社や銀行が六〇%以上株を持っておられるわけであります。こういったところから莫大な投資をしていただいておると同時に、借入金をしているわけです。今日生保や銀行は、大株主であると同時に大口債権者でもあるわけでありますが、こういったところから借り入れた資金で
輸送力増強計画などを進められるわけであります。
問題なのは、こういった
輸送力増強計画をされておるわけでありますが、これができ上がった段階で、これだけの費用がかかったから
利用者にこれだけの
負担をしてくれろということを今日まで言われてきているわけでありますが、一つ大事なことは、
計画をつくる事前の段階でこれを
国民の前に明らかにしていただいて、どれくらいの費用になるのか、それはだれに
負担をさせるのかということを明確にしていただかないと、できてしまってから借金のしりぬぐいを
利用者にさせるというような形ではまずいのではないか、こういった点も言っているわけです。
さらに、この資金の使い方並びに財源でありますけれ
ども、たとえば金利コストの安い
政府関係資金を借りられて、それが
鉄道建設に使われるのではなくて、本来
鉄道建設に使われなければならない資金が土地の買い占めなどに回っているということも聞いています。この点については、
鉄道財団抵当法といったもので借りた金は事前には
運輸省がチェックをするけれ
ども、事後にはこの金が一体どのように使われたかをチェックする制度がないのだということを実は聞いているわけです。これではしり抜けになるわけでありまして、お金に色分けがつかないということを
理由にして流用されていくということも聞いておりますけれ
ども、これは重大な問題であろうと思っております。こういった点で、
兼業部門との
関係が大変重要でありますし、その辺を識別する制度なりシステムをぜひともつくり上げていただきたいと思うわけであります。
最後に、私は、今日、
鉄道は全事業的に見るべきだ、将来、政策的に
鉄道だけが独立するような段階になりましてからは別でありますけれ
ども、現在では
兼業部門を含めて一つの
企業として損益
状況、
経営状態を見るべきだ、またそうせざるを得ない現状にあるというふうに思うわけであります。そういう観点で見ますと、今日の
私鉄は、先ほ
ども申し上げましたが、十四社だけで関連
企業七百九社持っておりまして、これに対して
投資額が千三百二十六億六千万、貸付金が三百七十五社に対して千七百五十四億六千万、債務保証が八千八百四十五億一千万、その他の有価証券
投資額が千百三十三億四千万、販売用土地建物は帳簿価格で六千七百七十一億、保有土地の面積だけで二億平方メートル、後楽園球場の一万五千倍の土地を保有されているわけであります。こういうふうな投融資をやっているわけでありますから、
利用者から見た場合に、決して
私鉄が赤手であるというようなことは考えられないわけであります。この点については
運輸省が査定に際して若干開発利益をこちらに回せというような御指示はされたようでありますけれ
ども、まだ実りあるものというふうには必ずしも言えないと思っております。われわれはこれを反
国民的投資、特に土地ブームのときには莫大な土地を買い占めて、そして
物価騰貴を進めた張本人の一人が
私鉄資本であるというふうに思っておるわけでありまして、この辺にメスを入れなければ、
私鉄の
経営状想については
国民の前に公開されたというふうには言えませんし、また、こういった遊休土地を、今日地方自治体の財政が大変困っていますが、こういうところを公共用地として学校建設や病院や公共住宅の建設に
政府が保証されて適正な価格で放出をされる、それこそが
私鉄資本が
利用者本位、
国民本位のものに一歩前進する道ではないだろうか、このように思うわけであります。
以上をもちまして
参考人としての公述を終わります。