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野尻参考人 全国燃料協会会長野尻東一、
灯油の問題特に
家庭用灯油につきまして
意見を述べさしていただきます。
まず、
家庭用灯油の
流通経路につきましては、大体十三の
元売り会社がありまして、そこから特約販売店に流れまして、それから
小売商に流れます。その間にまた仲卸商な
ども入るのでありますが、大体そういう経路が一番多いのであります。
で、特約販売店はどういう
企業かと申しますと、大体いままでの燃料問屋、要するに炭問屋であります。そのほかに練炭のメーカー、また
石油の専門店もあります。また商社もあります。それらが特約販売店となりまして
小売商の方へ流します。
小売商には、大体三十三年ごろから炭屋さん、要するに燃料商の木炭が斜陽になりましたので、それにかわって
灯油を
家庭の燃料として販売したということで、大体最初は燃料商が開拓もし、大部分を売っておったのでありますが、その後酒屋さん、荒物屋さん、米屋さんあるいは臨時アルバイト、あるいはガソリンスタンドというものが
小売商として直接
消費者の方に接するようになったわけであります。そしてこの
小売商が十万店以上ありまして、
消費者の間に毛細管のように密接して
配給しているわけであります。このほかにもいろいろな経路はありますが、大体そうなっております。
それから、それでは運搬の方法はどうだということであります。結局、
石油基地、製油所から十キロローリー車で
小売店へ参ります。
小売店で十キロローリー車を全部タンクへとってしまう能力のあるお店は少ない。中にはありますが、少ない。これが一番理想的でありますが、ただしその
小売店が
消費者と至近距離にいなければ何にもならぬということでありますので、なかなかむずかしい。十キロタンクを持っておりましても、その中に二キロ、三キロ残っておりますと十キロ全部はとれないということでありまして、二軒であるいは三軒で分けなければならないというようなことであります。また道路が狭いために十キロローリー車が直接そのタンクのところへ寄れないときは、一度問屋のタンクに入れまして、そしてそれを小分けしてローリー車で分ける。また地下タンクも都心あたりですとなかなか設備が困難でありますので、それがないとドラムかんに二百リットルを入れてこれを持っていくということをやっております。またある
小売店では、十八リットルかんを問屋へ持っていって、それに詰めてもらって、それを持ってきて売っているというようなことであります。御承知のように、
家庭用灯油は冬季大変
需要があります。そして危険物でありますし、流体物でありますので、たくさんの
備蓄はできないので、どうしてもこの輸送が毎日かあるいは一日置きか、あるいは一日に数回もそこのうちへ持っていかなければ間に合わないという
状態であります。
次に、今冬の需給の見通しはどうだ。先ほど長官あるいは石連の
会長から十分間に合うようなお話ですが、われわれ
配給業者としては全部安心するわけにはいかない、こう思います。いままでいつもこの冬の
灯油は間に合うということでありましたが、たびたび間に合わなかったことがある。先ほど五百九十二万キロ、九月末に
在庫ができたと言うけれ
ども、これから先、やはり
需要供給の
関係がありますので、はたして十分にできるかどうか、私は心配するものであります。特に精製会社が
赤字生産をしているという問題がありますので、これを非常に心配するものであります。特に不足したときに最も困るのはわれわれ
流通業者であります。と申しますのは、いつもなくなったとき報道陣が
通産省へいろいろ聞きに行きますと、いままでの歴代の長官は、なに十分間に合っているわけだ、こう言います。それから石連あたりに聞きに行きましても、前年比こうだから足りないわけはないと言うけれ
ども、実際に足りなくて、
消費者と接しているわれわれはいつも困るわけでありまして、どうか、ただ九月末の
在庫が間に合ったから今度は間に合うというような安心した気持ちでやっていかないようにひとつお願いしたい、こう思います。
次に、
流通経費の問題ですが、先ほ
ども全石の副
会長が話されたと思いますが、簡単に申し上げますと、四十八年仕入れが十二円九十銭のとき三百八十円、それから四十九年二十五円三十銭に上がったときこれが六百三円。本年の五十年になりまして二十九円七十銭、このときが六百八十三円、こういう十八リットルの相場が大体できたわけであります。この相場につきましては、あるときは禁止令で大臣発表、あるときは
石油業法による
標準価格、あるときは
指導価格ということでいろいろやってきましたけれ
ども、いずれにいたしましても、この
流通経費、
元売りから業者を通しまして
消費者に行く全部の
流通経費が百四十八円ということになっております。御承知のように、人件費は中小
企業でも六八・一%、労政局の発表でも上がっております。われわれは三年間も同じマージンでは人も雇えない、自分たちも廃業していかなければならないというような情勢になっております。現にわれわれ燃料
関係で、四十八年以後七十九軒の店が廃業いたしました。ことしあたりはまたほかの副業にやっておられる方も、どうも
灯油については
経費が出ないということで、
相当やめられるのじゃないかと思うものであります。
では、
標準価格でなくて
指導価格ならば適当に売ったらいいじゃないか、どうして高く売れないのかというような御質問があると思います。それにつきましては、まず第一に
通産省といたしまして、常にわれわれに前年度の
流通経費より極力上げないようにという御指示があります。われわれはこの御指示を受けまして、協会員に全部その趣旨を通知いたします。次に
灯油は
生活必需品として非常に重要なものになっておりまして、四十八年度に不当にも安く三百八十円に決めたということのために、
消費者がそれから値が上がるのに対して非常に抵抗が強いということであります。そのほかに
消費組合のいろいろな働きがありまして、われわれ非常に販売に苦しんでおります。たとえばわれわれ
業界の仲間で、このくらいに売らなければやっていけないじゃないか、このくらいに売ろうじゃないかと言えば、公取に違反でつかまります。逆に
消費者はみんな共同して、これ以下で買おうじゃないか、たとえば団地あたりで
消費者が連合いたしまして、おまえのところこれ以下にしなければ買ってやらないぞ、
灯油ばかりじゃない、ほかのものも買わないぞとおどかされれば、何としてもこれをよろしゅうございますと言って売らざるを得ないということであります。また、われわれがいろいろ物を買いますのに、それの原価というものはわかりません。幾らで買っているかほとんどわからない。ほかの店より安いからまあ安いだろうということで買いますが、
灯油につきましては原価、
元売りサイドから出る
値段がすぐ公表されます。だから、非常に、もうけてはいけない、このくらいにしろということを
消費者に言われるわけです。またこれが
生活必需品でありますので、目玉
商品に使われる。金物屋さんな
ども、
灯油はもうからなくてもいいのだ、損しても売る、そうすれば金物が売れるじゃないかというような
政策でやられるわけです。またテレビあるいは新聞な
ども、できるだけ上がらないように、
消費者の味方といいますか、安く報道いたします。それから
モニターな
ども、どうも安いところ、安いところと調べてやっているわけであります。
ここに一つ日刊新聞がありますが、ここに「
灯油高値」と大きく出ております。「早くも六百六十五円 一かん・
全国平均 昨年より六十円高
通産省の
調査 在庫は十分なのに?」こういう記事が出ております。いかにもわれわれが六十円よけいもうけて最近売り出したというように感じるように書いてあります。しかしながら、われわれの仕入れは四千四百円ぐらい、キロで上がっておりますので、結局十八リッターで八十円上がっております。それなのに、六十円上げては非常に不当であるというようなことを書いてありますので、非常にわれわれが苦しんでいる次第であります。
最後に、
消費者と申しますか、
国民の皆さんにお願いしたいのは、
家庭用灯油が余り高くならないということは、われわれも努力いたしますが、
元売りさんが
赤字、逆ざやで精製している、販売しているということでは、
安定供給に対してはどうも責任を持ってもらえないというような気がいたしますので、多少高くてもがまんしていただきたい。また、
流通業者に対しては、最低の賃金ぐらい
確保するようにお支払いを願いたい。一
家庭で一月の
消費量は大体四かんであります。百円上がりましても、大体一
家庭で一月四百円であります。しかしながら、
北海道あたりの極寒地は、それの比例にはならないと思いますが、それにつきましてはいろいろ特別なる配慮と申しますか、
企業側としても越冬燃料資金とかいうものをふやしていただかなければならないとは思います。それで、この百円上げましても決して
家庭用灯油は局くない。
物価指数から申しましても、ほかのものと比べて決して率が上がってない。ほかのものよりも
物価指数で低いところにいる。また、同じ燃料
関係で
都市ガス、電気に比べましても、
灯油が百円といたしますと、それだけのカロリーを出すのには
都市ガスは百八十円、電気は三百十二円というような計算も出ておりますので、どうかそういうことをひとつあれして、がまんしていただきたいと思うものであります。
それから最後に、
消費者の大多数の人が
家庭用灯油を買うのに、どういうことを希望しているかということでありますと、必要なときに必要な量だけ一番手近なところから買いたい、これが多くの
一般家庭の主婦の考えであります。たとえば必要なときというのは、きょうなくなる、今晩までに持ってきてください、これをお願いしたい。いろいろ何曜日に集まりますから、何曜日に
配給がありますからということは余り好まない。自分がいつでも欲しいとき、また必要な量だけ 結局一かんあればいいわけです。それを三かんとか五かんとかまとめてとりなさい、そうすれば安いということは、非常に
消費者、一般の
家庭の人は喜ばない。特に、消防方面でも、余り安いからといって多く買わないようにという
指導があります。一
家庭で五かんずつも買って、マンションあたりで百軒もあって五百かんも入れたらば、火事のときどうするんだというようなこともよく言われておりますので、そういう点もお考え願いたい。そうして、どこどこへかんを持って集まれということも困る。自分の近所にお願いしておけば、持ってきて自分のかんに入れてくれるというようなことを希望している、こう思いますので、大多数の人がこういう
意見であるということもひとつ記憶していただきたい、こう思います。
いずれにいたしましても、
石油は大多数が輸入品であります。
石油パニックもいつ起こるかわかりません。危険物でありますので、
石油に対してはある
程度の
流通機構の制度化も必要じゃないかと存ずるものであります。
長い間ありがとうございました。