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福田(赳)
国務大臣 どうも
皆さん、しばらくでございます。常
日ごろ皆さんに
大変お世話になりまして、感銘の至りでございます。
今国会の最初の
委員会が開かれますので、この機会に当面の
経済情勢について申し上げさしていただきます。
経済情勢につきましては本
会議でも申し上げたわけでございますが、私は、前々から申し上げておりますとおり、
石油ショック前後の
経済の打撃、これは深刻なものがありまして、これを安定させるには三ヵ年の日子を要する、三ヵ年の
調整過程が必要であるというふうに考えたわけであります。その
調整過程の第一
年度が終わりまして、いま第二
年度になっておる。第一
年度は、何といっても燃え盛る
インフレの火を消す、これは大体成功したというふうに見ております。第二年目は、そういう
インフレの火の手を消した後で、なお残っておる
インフレの余じん、これを消しとめなければならぬ、そういう中で
経済の
活動を活発にするという作業をしなければならぬ、こういう問題だ、そういうふうに見ておるんです。
経済情勢を見ますと、
物価は本
年度に入りましてからも鎮静化しておりまするけれ
ども、どうも、
経済活動の方がこれは活発を欠いておる、思ったように
経済諸
活動が浮揚してまいらない、そういうふうに見受けております。
そこで、ことしの二月以来、第一次、第二次、第三次という
景気対策をとりまして
景気浮揚に力を注いだわけでございますが、まあ、そういう結果もありまして、
景気は三月から
上昇傾向をたどるようになりまして、
生産もふえる、また出荷もふえる、また
設備の
稼働率も上がってくる、こういう
傾向であります。
世界じゅうがとにかくことしは
マイナス成長である、そういうさなかで、
わが国は、非常に微弱ではございまするけれ
ども、そういう
上昇過程をたどっておる。
ところが、
経済界の中では、そういう
傾向にもかかわらず苦悩の色が満ち満ちておるというような
状態であり、
企業の採算が悪化する、
雇用情勢にも非常に
関心を持たなければならぬ諸問題も起きてくる、こういう
状態です。
特に
企業の収支、その
状態には、これは非常に憂うべき
状態が出てきておるわけでありますが、それは何かと申しますと、
企業の
稼働率は上がってきた、しかしとにかくあの
石油ショックによる
企業の
活動の落ち込み、これが非常に深刻でありまして、望ましい
稼働率まで
わが国の
企業の
操業度というものが上がってこない。先ほど、
操業度が上がってきた、こう申し上げましたが、これを
稼働率指数で見ますと、三月が底で、三月が七七%だったのです。それが八月に八三%になる。望ましい
操業度は幾つか、こう言うと、これはいろいろ議論のあるところでございまするけれ
ども、大体私
どもは九五と見ておるのです。九五に対して八三である。
設備の
遊びがある、
人手の
遊びがある。そういう
人手、
設備の
遊びのある場合におきまして、
外国の
企業におきましては首を切ります。そういうことで
企業の
人件費負担ということを免れるのでございますけれ
ども、
わが国におきましては
終身雇用体制である。そこで、遊んでおる
人手を
企業内に抱えておるという問題がある。それから
設備が遊んでおる。
外国の場合におきましては、その
設備建設に要した
資金は主に
自己資金である。
わが国においては
借り入れ資金である。こういうようなことで、
わが国とすると、
外国に比して、
企業の
人件費負担というものがこういう際には非常に重くのしかかる。そこで、
わが国経済界を見ますと、
経済界全体としては
上昇過程をたどるというにかかわらず、
一つ一つの
企業は非常に重苦しい
状態に置かれておる。こういうことが今日の
不況と言われるものの
実態ではないか、そういうとらえ方を私はいたしておるのであります。
そこで、この
不況状態、これを放置するわけにいかぬ、これから脱却を図らなければならぬ。それにはどうするかというと、やはり
企業の
操業度を上げるということである。
企業の
操業度を上げるためにはどういう
政策をとるかというと、これは
最終需要を盛り上げるほかはない。そういう
考え方になるわけでございまして、
最終需要といえば、これは申し上げるまでもありませんけれ
ども、何といっても
国民の
消費が半分を占めるわけでございますが、この
国民の
消費は、私
どもは本
年度当初の
経済見通しにおきましては、本
年度一八%ぐらいの上がりになるだろうというふうに見ておったのです。それが、今日の
実態は大体一五%ぐらいの
見通しです。しかし、ことし全体の
経済成長、
実質二・二%、
名目で言いますと一〇%であります。一〇%
名目成長の中で
消費が一五%という位置を占める、これは私は決して低い
水準ではないと思うのであります。
見通しよりは幾らか減ってはおりますものの、かなり高い
水準ではある、こういうふうに見ており、また、
国民の
消費につきましては、いま非常に堅実化しておるというか、そういう
状態ではありますけれ
ども、
経済の先行きにつきまして
国民が安定した
考え方を持ち得るというような
状態になると、さらにこれが盛り上がってくるというふうに思いますが、この
傾向というものが非常に大事なことだ、私はこういうふうに見ておるのです。
つまり、いま
資源有限時代、
世界じゅうに大きな変化が起きようとしておる、そういう中で、
政府も
企業も、また
家庭も新しい姿勢を打ち立てなければならぬ。そういう中での
家庭生活のあり方、いままでのような、とにかく使い捨て的な
考え方で行くことはとうてい期待できない、こういうふうに思うのであります。そういうことや、あるいはこれから国債が多額に発行される、その
消化ということは非常に大事な問題になってきますけれ
ども、その
消化のうらはらは何といっても貯蓄ということです。そういうようなことを考えますと、ここで
消費を何らかの
政策手段によって人工的に刺激するという
考え方は私はとりたくない。
それから、第二の
最終需要項目である
設備投資はどうかといいますと、これは
公害投資だとか
安全投資だとかあるいは
ボトルネック産業に対する
投資だとか、そういうものにつきましては
設備投資需要はあるわけでございますけれ
ども、これは一般的に申しまして、先ほど申し上げましたような適正と見られる
稼働率指数、これが九五というのに対して八三・四しか動いていないという現況のもとにおいて、この
設備投資が起こる基盤があるというふうには考えないのです。でありますから、
設備投資に
最終需要を盛り上げるという
任務を求めることは非常にむずかしい。
それから
最終需要としての
輸出はどうか、こういうことになりますと、いま
世界経済が総沈滞でありまして、先ほど申し上げましたように、どこの国も
マイナス成長だ。それを受けて貿易もまた非常な落ち込みを示しておるわけです。そういう中でありますので、私
どもいろいろ工夫はします。また、
アメリカなんかでこれから
景気回復の顕著な
動きも出てきておりますが、しかし、さらばといって、大幅に
輸出が増加いたしまして、これが
景気牽引の先達としての役目を尽くし得るかというと、そこもまた期待できない。
そうすると、どうしても
手段は
一つしかないのです。つまり
財政による
景気浮揚。ところが、御承知のように、
財政は非常に窮屈でございます。しかし、さらばといって、
日本経済をこのまま放置しておったのでは非常に憂慮すべき
状態になる。
経済あっての
財政であります。
財政は窮屈でありますけれ
ども、その窮屈の中にも
景気浮揚の
任務を担当していただかなければならぬ、そういうふうに考えまして、
財政処置を
中心とした第四次
景気対策を策定し、ただいま実施に移っておるわけでございます。
この第四次
対策を実行いたしますと、これは
景気浮揚効果約三兆円、こういうふうに見ておりますが、それが
年度内、来年三月までに六割
方実現をする、一兆八千億円、そして
わが国の下期の
経済では
年率換算実質で六%程度の
成長過程に入る、さように見ておるわけであります。非常にむずかしい諸
環境の中ではありますけれ
ども、この
目標をぜひ
実現をいたしたい、かように存じておるわけであります。
一方、
物価の方はどうかといいますと、
卸売物価は引き続き鎮静の
基調でございまして、最近の
状況は、一年間の
上昇率が一%ぐらい、非常に落ちついたかっこうになってきております。それから
消費者物価におきましては、九月が前年同期比で一〇・三%というふうになって、まだ一けたにはなりませんけれ
ども、一けたに接近する、こういう形になってきておるわけであります。それから十月の
東京都区部の
消費者物価は一〇・二%というふうになっておりますが、これは
干ばつと長雨の
関係で
野菜が暴騰いたしまして、それでそういう
数字になっておりますけれ
ども、
季節商品を除きます
消費者物価は九%となって、一けた台というものに乗っておるのであります。
こういう
情勢を踏まえまして、さらに
物価政策を推進したいと思いますが、特にその中でも
国民生活に重要な
関係のある
消費者物価の
動向には格別な
関心を払っていきたいと思うのです。
フードウイークなんというものをどんどんやりますとか、あるいは年末の物資の輸送その他配慮するとか、個別の
商品その他この上ともいろいろ注意してまいりますとか、あるいはこの冬の
野菜、そういうものにつきましても特別の措置を講ずるとか、いろいろ配慮いたしまして、本
年度の
政策目標である来年三月一けた、この
目標をぜひ
実現いたしたい、そういうふうに考えております。
そればかりではないので、
物価問題というのはこの上とも重要な問題でありますので、長期的な問題、
競争条件の整備でありますとかあるいは
流通機構の改善とか、そういう基本的な諸問題にも取り組んでいく。かたがた、
国民生活、これからいろいろ変わっていきまするけれ
ども、それに対応いたしまして、
国民が新しい
世界情勢の中でどういうふうな
生活態度であるべきかというような
生活をめぐる諸問題、あるいは
消費者としての立場をいかにして保護していくかというような、そういう基本的な諸問題にも取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。
なお、これは非常に長期的な問題になりまするけれ
ども、われわれの
任務は、この
危機をいかにして脱却するかという問題ばかりじゃないのです。その脱却した後、長きにわたって
国民生活を安定しなければならぬ、こういう重要な課題に当面しておるわけでありますが、そういう問題も当然のこととしてにらんでおるわけでありまして、ただいま勉強しておるわけでありまするが、年末までにさし
あたりいわゆる新
中期計画、五十一
年度を初
年度とする五カ年の、
経済をどういうふうに運営すべきかという
展望案、これを策定いたしたい、かように考えておるわけであります。
非常に困難な
状態の中でありますが、全力を尽くしまして当面の
危機を乗り切り、そして
長期安定路線へこれを乗せていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
ちょうど
予算委員会が十時から始まりますので、取り急ぎまして申し上げてまことに恐縮でありましたが、なお詳細につきましては、お
手元に
印刷物として差し上げてありますので、
ごらんおきを願いたいと思います。ありがとうございました。