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1975-12-09 第76回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月九日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 藤尾 正行君    理事 越智 伊平君 理事 奥田 敬和君    理事 加藤 陽三君 理事 木野 晴夫君    理事 箕輪  登君 理事 上原 康助君    理事 大出  俊君 理事 中路 雅弘君       笠岡  喬君    近藤 鉄雄君       竹中 修一君    旗野 進一君       林  大幹君    三塚  博君       山本 政弘君    和田 貞夫君       瀬長亀次郎君    鬼木 勝利君       鈴切 康雄君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         防衛庁参事官  伊藤 圭一君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       玉木 清司君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         防衛施設庁長官 斎藤 一郎君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         防衛施設庁労務         部長      松崎鎮一郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省条約局長 松永 信雄君  委員外出席者         通商産業省機械         情報産業局航空         機武器課長   堺   司君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 十二月九日  辞任         補欠選任   受田 新吉君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任   永末 英一君     受田 新吉君     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第四号)      ————◇—————
  2. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  3. 上原康助

    上原委員 三木内閣が誕生してちょうど一年目を迎えております。ということは、坂田さんも防衛庁長官に御就任なされてからちょうど満一年を迎えたということになると思います。そこで、この一年間、特に四次防の問題なりあるいは四次防後の防衛力整備計画、またこれまで余り前面に出てこなかった日米安保条約に基づく日米防衛分担の問題等々、従来のわが国防衛基本政策といいますか、防衛構想に相当重要な検討を加えていこうとする動きが非常に強かったのじゃないかという感じを持つわけです。  そこで、これから具体的に問題点についてお尋ねをしてまいりますが、まずこの一年間を振り返ってみて、防衛庁の内部の問題なり、あるいは警察予備隊から今日の装備、戦力を持つ自衛隊まで来ている、また国民の間にも防衛政策なり自衛隊問題については、ほかの問題に比べて非常に意見が異なっております。安保問題を含めてですね。こういう国民の受けとめ方等に対して、一体防衛庁長官としてどう対処してこられようとしたのか、また今後はどのような姿勢で臨もうとしておられるのか。一年の足跡といいますか、その感想をまず聞いてから議論に入りたいと思うのです。
  4. 坂田道太

    坂田国務大臣 御案内のように、私昨年三木内閣防衛庁長官に就任いたしましたけれども、私は文部大臣をやったり厚生大臣をやったりいたしまして、防衛庁は政務次官をやった経験もございません。防衛問題は初めてでございます。そういうわけで、白紙の立場で物を見てまいったわけでございます。  しかし、私就任いたしまして申し上げましたように、どんないい装備を持った自衛隊でございましても、あるいはどんな精強な自衛隊でございましても、自衛隊のみで国を守るということはできない。やはり自衛隊国民の中に溶け込んで、国民の非常な信頼を保ち、かつ国民理解支持協力がなければ、防衛の力にはなり得ないのだ、国を守る力にはなり得ないのだという考え方を申し上げたわけでございますが、私そういう観点から、何とかして自衛隊国民信頼をかち得るものにしたいということ、それから国民防衛及び安全保障についての理解支持協力が得られるようにしたい、つまり多くの人たちの、国民合意をかち得る努力をしなければならない、こういうふうに考えました。そのために、防衛考える会を発足させましたのもそうでございますし、あるいはまた国防会議を本当にその名に値するような、実質審議が行われる場にいたしたいというふうに考えましたし、またできれば国民の一人一人が自分たち生命財産、安全というものについて考えるための材料を与えることが必要だ、そのためには防衛白書を年々つくるべきであるということで、いませっかくそれの作成作業をしておるところでございます。  自衛隊についての違憲訴訟等もございますけれども、しかし、四十七年の総理府統計によりますと、自衛隊を認めるというのは七三%あるわけでございます。それから反対というのが一二%でございます。それからわからないというのが一五%であります。私は、七三%の何らかの形で認めると言っておりましても、それが本当にわかっておられるかどうかということについて、やはりもう少し十分にわかる必要があるというふうに思いますし、あるいは一五%のわからないような人たちに対しましては、材料を提供することあるいは防衛白書等を毎年出すことによってわかっていただく、そしてその一五%がたとえば二二%になるとかいうふうな努力をしていかなければならぬ。それから一二%の反対をしておられる人たちに対しても、どういうわけで反対をしておられるのか、国民一人一人の生存と自由というものがかかっておるのですよ、これに対して主義主張は異なるといたしましても、それに対するいろいろのお考えがあってしかるべきだし、またその考えがあるだろうと思う、しかし、われわれはこういうような考えですよということをいろいろなデータを申し上げることによって、でき得べくんばひとつ自衛隊を認める方向に、この一二%が下がっていくというようなことがもし可能であるとするなら、それだけ国民の多くの層が合意を得るということでございますから、その背景があって初めて自衛隊国民信頼をかち得るし、あるいはそのもとにおいて構想いたしますところのこの防衛構想というものは国民の大部分の支持を受けるようなことになって、本当の国を守る力になり得るんじゃないだろうか、そういう考え方でずっとやってまいりましたが、この一つには、ベトナムの問題が終わりまして、ポストベトナムの情勢によって前よりも少しは安全保障あるいは防衛問題について国民の方々が考えられるようになってきたのではないかというふうに私は感じておりますし、また各新聞等を拝見いたしましても、かなりの量が最近防衛問題に割かれておるということは、昨年とことしと非常に違う点ではないだろうかというふうに思いますし、それだけ防衛問題、安全保障の問題は、私が考えておりまする方向への芽生えが出てきたということは率直に申し上げて差し支えないことじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  5. 上原康助

    上原委員 あなたがお考えになっている方向への芽生えが出てきた、歓迎すべきムードといいますか、そういう方向にあるということを強調なされたいらしいですが、その点についてはこれから伺っていきたいと思うのです。われわれは必ずしもそうは受けとめておりません。  そこで、簡単にお答えいただきたいのですが、御承知のように、昨日フォード米大統領は新太平洋ドクトリンというものをハワイで宣言をいたしました。これはわが国とも非常にかかわり合いがありますし、安全保障の面あるいはこれからの防衛政策の面とも密接にかかわり合いがあると思うのです。特にアジア太平洋地域において日本とのパートナーシップあるいは日本との経済面も強調されてはいるのですが、要するに軍事的な面でより積極的な協力体制を組みながら日本にその役割りを果たしてもらいたいということもその背景にあると私たちは思うのです。そういう面で、わが国安全保障との関係において、またこれから防衛庁が進めようとする防衛計画とこれがどうかかわってくるのかという点、いま一つは、この新太平洋ドクトリンによって、六九年でしたかに発表されたいわゆるニクソンドクトリンというものにとってかわるものだとわれわれは見ているわけですが、大分内容においては違う。そこいらの点については、防衛庁長官としてはどう見ておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  6. 坂田道太

    坂田国務大臣 私、まだフォードさんのドクトリンの詳しい内容を実は承知をいたしておりません。しかしながら、新聞等で拝見をいたします限りにおきましては、この前の三木フォード会談、それからまた当時の国防長官でありますシュレジンジャーさんと私とが八月二十九日に会談をいたしました、そのときのアメリカ政府考え方とそう変わっておるというふうには実は思われないわけでございまして、日本がやはり政治的にも経済的にも安定をしておるということが東アジアにおける平和維持あるいはそれに対する寄与になるのだ、こういう考え方、そして特にニクソンドクトリンのときには私はやはり軍事的な面が非常に強調されておったというふうに思いますけれども、今度の三木フォード会談以後は、これはむしろ三木総理からのアドバイスもあったと思うのですけれども日米安保条約というものは単に軍事的なものだけではないので、経済的その他いろいろの部面における日米間の協力関係、それによって日本政治的、経済的安定あるいは日本の安全、そういうことがやはりアジアにおける安定というものに、あるいは平和への寄与につながっていくのだ、こういう考え方でありまして、確かに私は、ポストベトナム以後のアメリカアジア政策というものは、そういう意味においては多少ニュアンスが変わってきたというふうに思うのです。しかし、ニクソンドクトリンの、みずからの国はみずからの国民によって第一義的には守ることが当然なんだというこの考え方というのは、一貫して今日もアメリカ考え方だと思いますし、それは独立国として当然なことだと思います。  日本が何をなすべきかということは、日本の安全と日本国民の平和ということを考え防衛政策考えられなければならないし、また日米安保条約というものも、日本の安全、日本国民一人一人の生存と自由のためにこそ安保条約というものが不可欠だという日本国民の気持ちから結ばれておる、こういう私は考えでございまして、非常に幅広くなってきた、むしろ政治経済部面というか、外交努力というもの、そういった部面を強調し始めてきたということは非常に結構なことではないかというふうに思っております。
  7. 上原康助

    上原委員 この新ドクトリンについては、今後のアジア諸国の反応なりあるいはいま少しアメリカ自体動きなどを見ないと、確たるコメントなり評価はできかねる面も私もあると思います。ただ指摘できる点は、アメリカが依然としてアジアにおける憲兵の役割りを果たすということについてはいささかも変わっていないということが言えると思いますね。同時に、インドシナでは敗退はしたけれども日本、インドネシア、フィリピンのこのラインを強化することによって、いわゆるアメリカアジア戦略というものはこれ以上後退はさせないという軍事的な色彩が非常に強固になってきている。それはこれから議論されるであろう日米防衛協力の問題なり、最近の安保条約により積極的にコミットしようとする日本動き等々と無関係でないということは指摘をしておきたいと思うのです。  そこで、これも一点伺っておきたいのですが、八月末のシュレジンジャー国防長官との会談なりで、この新ドクトリンが近々発表されるであろうというようなことは、アメリカ側からそのような示唆なり暗示があったのかどうか、この問題については初めて聞いたのか、この点も明らかにしておいていただきたいと思います。
  8. 坂田道太

    坂田国務大臣 新ドクトリンが発表されるようなことは何にも話はございません。そんなことはございません。しかしながら、アメリカ考え方というのは、先ほどから私が申し上げましたように、軍事面のみならず、経済政治、あらゆる部面において日米間の協力関係を深めていくことが、やはりアジアに対する、平和に対する大きい寄与になるんだという考え方は、一貫してあるというふうに思います。
  9. 上原康助

    上原委員 そこで具体的な問題に入っていきたいと思うのですが、すでに新聞その他で相当報道されてきたのですが、いわゆる日米防衛分担の問題についてまずお尋ねしてみたいと思うのです。  この構想といいますか考え方は、この四月ごろから防衛庁長官が盛んに、うまく国民を誘導する形で進めてきた。ある面では、テクニックにおいてはいままでの防衛庁長官とは——くすぐったいほど巧みにやってきている。さすがに文部大臣をやった経験があるなあと思った面もあるわけですが、新しく日米防衛協力機関を設けて、有事の際ですか、あるいは日米防衛分担について十分協議をして、何らかの取り決めをするというような考え方のようですが、これまでも予算委員会なりあるいは本委員会でも若干この議論はされてきているわけですが、昨日の読売新聞でしたかにも、明年一月中にも新機関設置をして、日米防衛協力というものが具体化をしていくという報道が大きくなされております。  そこで、これまでどのような話し合いがなされているかという点、それと、これはまあ三木フォード会談においても、そういう機関設置をするということは共同新聞発表でも出ているわけですね、それを受けて坂田シュレジンジャー会談においてより具体化をして、その作業が進められているとは思うのですが、この機関の性格、任務ですね。それから、どういうものをテーマにして日米防衛協力というものを取り決めていこうとするのか、そこいらについて確たる政府考えを、防衛庁考えを明らかにしていただきたいと思います。
  10. 坂田道太

    坂田国務大臣 日米防衛協力の問題につきましては防衛局長からお答えをいたしたいと思いますが、そもそもこの日米防衛協力の問題を私が具体化しようと最終的に決心をいたしましたのは、おたくの社会党の上田哲君の予算委員会における質問に答えまして私が申し上げたことでございます。シーレーンの問題に関連していろいろな御質問がございまして、それに答えて私は、シュレジンジャー国防長官とお会いをしたい、こういう問題も含めてお話し合いをしたいという意思表示をいたしたのであります。そして、国会でそういう意思表示をいたしましたから、政府といたしましても外務省ともいろいろ打ち合わせをし、三木総理とも御相談を申し上げ、たまたま三木フォード会談が行われたわけでございますから、その際同行されました外務大臣にその意思を伝えた。その結果として三木フォード会談でもあのような形が出てきた。そしてそのことを踏まえてシュレジンジャー長官と私とがお話をした、こういうことでございます。
  11. 丸山昂

    丸山政府委員 新しい協議機関構想でございますけれども、これは事務的に私ども外務省と現在打ち合わせ中でございます。いまのところまだ最終的な結論に達しておりません。またアメリカとの間におきましても、非公式にしてもまだ全然アメリカと交渉しているという事実はございません。したがいまして、御質問の、どういう構成メンバーになるか、どういう任務を付与するか、あるいは具体的にどういう議題について討議、研究協議することになるのか、こういう点につきましてもまだ確定した案というものには至っておりません。  ただ、概括的に申し上げますと、まず安保協議委員会の枠内においてその構想を進めるという枠組みができ上がっております。したがいまして、現在の私ども考えといたしましては、安保協議委員会下部機構として位置づけをお願いをいたしたいというふうに考えておるわけでございます。それから、この問題は当然日米防衛についての、特に有事の際の問題を中心にいたしまして検討するということを私ども考えておるわけでございますが、したがいまして、構成メンバー軍事の、防衛専門家も加わることが考えられるわけでございますが、それと、当然ながら外務省とか私どもの方の事務担当者が行う。まあ会議レベルといたしましては専門家レベルというふうに考えておるわけでございます。安保協議委員会コントロール下に置かれるということでございますので、それでよろしいのではないかというふうに考えるわけでございます。  まあ、いずれにいたしましても、さきに申し上げましたように、まだ現在問題を詰めておる段階でございますので、私ども考え方がそのまま実現するかどうかという点については、現在の段階においてはっきり申し上げられないという事情にあるわけでございます。
  12. 上原康助

    上原委員 それは少しおかしいんじゃないですか。そうしますと、昨日大々的に報道されていることは新聞が勝手に報道したということになるのですか。非公式にもまだ打ち合わせたことはないというお答えでしたが、われわれはそう見ていないわけですね。  そこで、じゃこの新しい機関というのは条約上は何に基づいて設置をするのですか。もちろん安保協議委員会下部機関として置くということですが、安保運用協議会というのもすでに設置をされているはずなんです。いろいろの機関があるにもかかわらず、新しくこれをやる、その根拠といいますか、条約上は何に基づいてやろうとしているのか。また、ここで議題になる件は、いま主に有事の際の防衛問題について日米間で話し合いたいというようなことですが、一体その話し合われる範囲の問題ですね。軍事行動有事の際に展開をしていく場合のその具体的な取り決めというものは、どういうふうに防衛庁としては考えておるのか。ここいらももう少し明らかにしていただきたいと思います。
  13. 丸山昂

    丸山政府委員 まず最初に、昨日の新聞記事を引用されての御質問でございますが、私御答弁申し上げましたように、現在の段階では外務省と私どもの間で協議をしておる段階でございまして、アメリカと公式にしろ非公式にしろ交渉はまだ全然行ってない、これが事実でございます。  それから、この条約上の根拠でございますが、安保条約運用につきましては、第四条に随時協議ということが規定されております。もちろんこの随時協議一つの形態になると私ども考えておるわけでございますが、先ほども御説明いたしましたように、安保協議委員会それ自体安保運用についての包括的な協議を行う場所でございますので、その安保協議委員会下部機構として、安保協議委員会コントロールのもとに運営されるということを私どもは期待をいたしております。そのようになるかどうかについてはいまのところはっきり確言はできない次第でございます。それから、運用協議会その他いろいろあるではないかという御指摘でございますが、運用協議会につきましては、御案内のようにここの場におきまして戦略戦術の問題は取り扱わないということになっておるわけでございまして、運用協議会それ自体は当面の問題について情報交換なりフリーディスカッションをするという場でございますので、したがいまして、いま申し上げましたような議題テーマにするということは適当でないというふうに考えておるわけでございます。  一方、これは外務省から御答弁申し上げるべきことかと思いますが、この安保運用について各種機関があるわけでございます。これは御指摘のとおりでございますが、この際、この辺について整理統合をする必要があるのではないかというふうに外務当局では考えておるようでございまして、この協議機関設置するに際して、廃止すべきものあるいは統合すべきもの、こういったものを外務省では検討しておるように私ども承知をいたしております。  それから、この協議の過程において何らかの取り決め、そういうものを考えておるのかどうかという御趣旨の御質問であったというように私ども承知いたしておりますが、この点につきましては、最初から申し上げておりますように、この協議が主体でございまして、その結果何らかの取り決めを必要とするというようなことになりました場合には、やはりしかるべき形において取り決めをするという手続上の必要が出てくるのではないかと思うわけでございます。ここの協議機関におきましては、先ほど申し上げましたように、防衛上の各種の問題について双方の認識の一致を求めて意見交換をするというふうに私ども運用をさせてまいらしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  14. 上原康助

    上原委員 そういたしますと、いま、包括的な事項については安保協議委員会でやるのだ、この新しく設置されるであろう機関はいわゆる軍事的な専門的な面を日米間で話し合う機関なんだ——そこで、包括的なことはこの機関では検討事項に入らないわけですね。
  15. 丸山昂

    丸山政府委員 包括的と申しますのは、安保条約それ自体運用についての包括的事項基本的事項、これは安保協議委員会において御協議いただくということであるように私どもは了承いたしておるわけでございます。
  16. 上原康助

    上原委員 作戦行動なり軍事面の件については、包括的な面も含むのですか。
  17. 丸山昂

    丸山政府委員 作戦行動有事の場合の日米の間の共同対処についての基本的な考え方と申しますか、こういった問題についてはやはり安保協議委員会でお話しをいただいて、その趣旨に沿った形で協議機関検討するということになるのではないかというふうに考えております。少なくとも私どもはそうあっていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  18. 上原康助

    上原委員 そういたしますと、第六条にかかわることもここで検討されるのですか。
  19. 丸山昂

    丸山政府委員 前々から申し上げておりますように、こういった協議機関設置につきましては、有事の際における日米共同対処ということについての日米の基本的な了解と申しますか、こういったものがいまだにできていないということに端を発しておるわけでございまして、私ども防衛庁サイドから申し上げますと、日米共同対処というのは、まさに安保条約の五条で、日本に対して外部からの侵略があった、こういう場合に共通の脅威に対して日米が共同して対処する、その場合の対処の仕方についての日米間の合意と申しますか調整と申しますか、こういった問題について協議機関設置が望ましいということを申し上げておるわけでございます。一方、安保条約そのもの効果から考えますと、安保条約が締結され、これが円滑に運用されるという状態に置かれることが、安保条約の大事な機能でございます抑止力を高めるということにつながるわけでございます。  そういった意味で、安保条約全体の円滑な運用について、いわゆる防衛的な意味における円滑な運営について、具体的にこれが運用されるような形に持っていくということは、いま申し上げましたように、安保条約抑止効果を高めるという意味において大変重要なものであるというふうに私ども考えるわけでございます。  したがいまして、この協議機関におきましては、私ども前々から申し上げております有事の際の問題ということに必ずしも限定せず、日米防衛協力全般について広く検討するということは、いま申し上げましたような安保抑止効果を高めるという意味において必要なことではないかというふうに考えておるわけでございます。
  20. 上原康助

    上原委員 あなたの答弁は矛盾するのじゃないですか。安保条約全体の運用とか基本的なものについては安保協議委員会検討すべき事項なんだ、新しく設置されるであろう日米防衛協力機関というのは、その下部機関としての軍事的な日米間の作戦行動有事の際の事項について話し合うものだということを言っていながら、具体的に、しからばここで取り決められる議題となるべきものは、少なくとも安保条約第五条にかかわることでなければいけないはずなんですね。だから、六条もかかわりますかということを聞くと、そういう答弁じゃ納得できませんよ。事前協議事項も対象になるのですか、この機関は。それは大臣から答えていただきたい。といいますのは、これまでの予算委員会なりの答弁を見ましても、自衛隊法第七十六条が適用される、いわゆる五条との関係はそういうのが有事の問題として政府の答弁が出てきたわけでしょう。しかしアメリカ側は、どちらかというと、いま包括的なものに持っていこうという問題提起なりそういうのがあるのじゃないですか。その点は重要なところなので、ポイントなので、大臣から明確にしておいていただきたいと思う。
  21. 丸山昂

    丸山政府委員 私の答弁申し上げておることが矛盾しているような御指摘がございましたけれども、まず安保協議委員会は、安保条約全般について包括的な運用協議の場であるということを申し上げておるわけでございます。その中で、日米防衛協力という問題については新しく設置される協議機関協議をするということになるだろう。  そこで、在来から私申し上げております防衛庁の立場としてお願いしたいと言っておったのは、安保条約第五条の有事の際、日本に対する武力侵略がございました際における日米共同対処についての問題と、それから安保条約軍事的な意味における円滑な抑止力としての効果を発揮するための必要な日米間における防衛協力の打ち合わせといいますか、こういった問題も含めて入ることになるのではないかというふうに申し上げておるわけでございまして、安保条約全般の基本的な問題については日米安保協議委員会で御協議をいただく、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  22. 上原康助

    上原委員 そういたしますと、私がお尋ねしておる六条にかかわる、いわゆるアメリカわが国の施設区域を使って作戦行動を展開していく場合のこともこの機関で話し合われるということにならないと、あなたがおっしゃる抑止力効果的に発揮をする、安保軍事面運用を円滑にしていくということにはならないのですね。その点は大臣どうなんですか。明確にしてください。それと基地の安定的使用との関係はどうなるのか。この二点、基本的なことなのでぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  23. 丸山昂

    丸山政府委員 事前協議との関係でございますが、この問題につきましては、これは私どもの方から申し上げることはどうかと思うわけでございまして、外務省の方から御聴取をいただきたいと思っておりますが、私ども考えますに、事前協議については、事前協議それ自体についての手続的な一つの体制と申しますか、これは外務省の方においてすでに確立をされておられるわけでございまして、当然、個々の事前協議が参りました場合にはそのルートに乗って決断が下される、日本政府としての結論が出るという仕組みになっておるわけでございまして、私どものいま考えております新しい協議機関においては、個々の事前協議についての問題を取り扱うということにはならないというふうに私ども承知をいたしておるわけでございます。
  24. 上原康助

    上原委員 事前協議じゃなくして、じゃ基地の使用についてはどうなんですか、含みますか。
  25. 丸山昂

    丸山政府委員 基地の使用につきましては、一般的な基地に対する評価と申しますか、これは前前から御説明申し上げておりますように、第九回の安保協議委員会設置をされました日米の幕僚の会同というものがあるわけでございます。これは御案内のように、わが方が統合幕僚会議の事務局長、それからアメリカサイドが在日米軍の参謀長、この間におきまして、日本の基地について在日米軍基地の防衛的な側面における検討ということをずっとやってまいっておるわけでございますが、私どものいまの考え方によりますと、この幕僚研究会同を解消しまして新しい協議機関の中に入れて、そこで防衛サイドから見た基地の機能の検討、こういった問題もあわせて検討をさせてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  26. 上原康助

    上原委員 大体、考えておられる内容についておぼろげながらわかるわけですが、五条だけじゃなくして、私たちは限定すべきだと思うのです。少なくとも、有事ということを——これは有事の際の取りきめをやろうというわけでしょう。平時に常設機関になるわけですか。そこをまず明らかにしてください。
  27. 丸山昂

    丸山政府委員 これも私ども考えでは、常設機関にして、平時から有事の問題を対象に検討協議を重ねてまいりたい。これは情勢の変化その他もございますし、協議すべき問題が非常に広範にわたっております。中身も相当複雑にわたりますので、常設機関としてお願いをいたしたい、防衛庁としてはそういう考え方を持っておるわけでございます。
  28. 上原康助

    上原委員 要するに、いま防衛庁として考えている、あるいは外務省アメリカ側も含めて、五条に限定はせず、もっと範囲を広げた形の日米防衛協力機関に持っていく、それが構想の中身だと理解していいわけですか。
  29. 丸山昂

    丸山政府委員 アメリカにつきましては、本件についての接触はまだ行っておりませんので、アメリカ考え方はいまのところどういうものであるかということを私どもとしては了知をいたしておりません。  幅を広げるということでございますけれども、必ずしもこれは幅を広げるという考え方ではないと私は思いますが、最初に申し上げましたように、私ども考え方は、あくまでも安保条約抑止効果を高める、そのことに目的があるわけでありまして、条約が締結されたまま実際には運用できないというような形に置かれることは好ましくない状態である、これが円滑に実施されるような形に運用されるということが、繰り返して申し上げますように、安保抑止効果を高めるゆえんであるというふうに理解をいたしておるわけでありまして、もちろん有事の際においての問題が中心になるわけでございますけれども安保条約それ自体防衛的な面から見ました場合にこれが有効に活用される、運用されるというような状態に置かれることが好ましいというふうに私ども考えておるわけでございます。
  30. 坂田道太

    坂田国務大臣 こういうふうにお考えいただいたらいいんじゃないですか。日米安保条約というものが結ばれておる、そうすると日米安保条約が有効に働く、運営されることが望ましい、ところが従来たとえば事前協議その他につきましては、もう安保協議委員会においていろいろ話し合いが行われておる、しかし一番大事な肝心かなめの五条の武力侵攻があった場合に対する何らの話し合いが行われていない、話し合う場もない、それはおかしいじゃないか、つまり第五条の問題でございますけれども、そこがいままで欠けておった、それは今度私たち考えております協議委員会下部機構においてそういう話し合いを持つということなんで、包括的に、全体としましては日米安保協議委員会があるわけで、しかし、それに五条の運用について何らの取り決めがないというのはおかしいじゃないかというのが私の疑問点だったのです。それをやはりちゃんとすべきだということで、いま防衛局長から申し上げたような形になったわけでございます。そうすることによって、日米安保条約が有効に働く、あるいは抑止的効果が働く、そして日本の安全と独立とが好ましい状況になっていくんじゃないか、こういう考え方であります。
  31. 上原康助

    上原委員 いま大臣のおっしゃる点なら少し明確になるわけです。だから私は、五条に限った運用を、五条の運用について協議する機関じゃないのかということに対しては、防衛局長はのらりくらりとして答弁しなかった。だからもう一遍確認しますが、五条に限ることを協議をする機関ですね、これは。大臣、五条に限る機関として見ていいわけですね。
  32. 坂田道太

    坂田国務大臣 もちろん五条が中心ではございますけれども、しかし包括的な日米安保条約そのもの運用というものは、やはり考えていくわけでございますから、外務省サイドから事前協議その他の問題について六条の問題がやはり話し合いになると思います。だから、事前協議外務省が従来やってきた関係にある、こういうことなんです。だから、それとこれと合わせれば、全体としてはそのことも考えられる。(発言する者あり)
  33. 藤尾正行

    藤尾委員長 静粛に願います。
  34. 上原康助

    上原委員 どうもあなたの答弁は、詰めようと、したらああだこうだと言って、くるくる変わったら困りますよ。六条も入るのかということを盛んに聞いても、大臣が答えたと思ったらまた防衛局長が横から横やりを入れる。あなたが防衛庁長官じゃないですか。  ですから、五条の有事の際にということ、五条のわが国が武力侵攻なり武力攻撃を受けた場合の日米間の防衛協力について話し合う機関だというふうに理解していいですか。この是非はもちろんありますよ。歯どめはそこに一応かけられているんですねということを私はさっきから聞いているわけですよ。そうですね。
  35. 坂田道太

    坂田国務大臣 五条が中心だということは先ほど私が申し上げたとおりなんです。
  36. 上原康助

    上原委員 それだけ言うのにそんなに時間をかけなくたっていいじゃないか。(坂田国務大臣「慎重に答弁しなければ」と呼ぶ)いまごろ慎重になったって、ノートに入らぬくらいの坂田語録をつくって何になりますか。  ではそういうことはわかりました。これは内容については日米間で詰めていないということでありますので、また、皆さんのこの日米安保協力についての、これは内部示達か何かわかりませんが、その内容わが国の国益を損なわない限り公にするというようなことも言っているわけですから、いずれ明らかになると思いますので、その段階できょうの答弁が本当かどうかはわかると思いますので、その時点でまたさらにお尋ねしたいと思います。  そこで、先ほどお尋ねしましたが、基地の安定的使用ということを盛んに防衛庁長官は最近言っているわけです。たとえば、有事の際、朝鮮半島で事が起きた場合だって、補給と後方支援については基地使用は自由だということを言っているのです。これも、防衛庁長官ともあろうものがそう簡単に基地の安定的使用なんと言うことは私はいささか軽率に過ぎると思うのですね。一体基地の安定的自由使用というのはどういう意味ですか。
  37. 坂田道太

    坂田国務大臣 私がずっと言っておりますのは、平和時における安定的使用ということを強調しているわけなんです。つまり、たとえば基地反対闘争が現実にございますね。しかし、そういうことでは、安保条約を結んで、そして有事の際にその基地を安保条約に基づいていろいろ行動をするというときに、平和時においてすらそれが使えない、演習もできないということでは、アメリカはいや気が差しまして、これはもうしまうというようなことはあり得るわけでございまして、やはり平和時においてこれが安定的に使用されるということが非常に大事なんだということを私は強調しているのです。  しかしながら、反対闘争があるのも無理からぬことがあるわけで、騒音が非常に大きい、あるいはその他いろいろの迷惑をかけておる点があるわけでございます。基地のない市町村住民と基地のあるところの市町村住民ということを考えるならば、それはない方がいいということになるのも、これは考えられることです。しかし、自衛隊の基地であろうと米軍が使用しておる基地であろうと、それが日本の安全、日本国民一人一人の生存と自由がかかっておる基地であるとするならば、それに対してやはり国全体として、政府全体として基地周辺対策というものが十分行われなければいけないのじゃないかということを私は従来ずっと強調しておるわけです。  たまたまこの間外人記者に話をしてくれということでございましたから、話をしました。それについていろいろ外人記者から質問がございまして、韓国にいろいろ事が起こった場合にどうなんだということでございましたから、外務大臣お答えになったロジスティックベース、つまり補給面についてはこれは事前協議の対象にはならないということを私がただ申し上げたということでございます。
  38. 上原康助

    上原委員 そうしますと、基地の安定的使用というのは、基地公害、基地騒音、そういう基地周辺整備をより積極的にやらなければいかぬという意味が一方においてあるわけですね。それなら少しは理解しますよ。しかし、報道されていることば、後方支援なり軍事演習なりを自由にできないと困るというところにより重点を置かれているわけですね。皆さんいろいろおっしゃいますが、自由と生存と国土を守るとかいろいろ言っておりますが、沖繩あたりは年がら年じゅう米軍が軍事演習をやって、水源地はぶち壊される、環境は破壊される、四六時中騒音に悩まされる、そういう状態に置かれているじゃないですか。そこへ持ってきて、平和時であろうが基地の安定的な使用を確保せねばならぬというようなことになると、アメリカ側はますます大手を振ってやるのじゃないですか。そうしますと、あなたは平和時というようなことをおっしゃいましたが、もちろんこれは事前協議の問題とも関係するでしょうが、これまでもしばしば言われてきましたように、シュレジンジャー国防長官が韓国に八月に行ったとき・に、韓国有事の際には沖繩嘉手納基地からB52を飛ばして九日間で戦闘を終結するんだというようないわゆる反撃体制、反撃作戦計画というものを明らかにしたわけですね。こういう事態になったときにはどうなるんですか。安定的自由使用というのを確保してあげるのですか。  それと、昨日も米兵が十二人死傷している。このキャンプハンセンで起きた事件、わかるでしょう。三人は即死、もう肉の一かけらもない、みんな吹っ飛んじゃう。六人は致死状態、これももうほとんど生命は助からない。そうしますと、結局九人は死亡しているということになりますよ。M30の迫撃砲を使っているというようなことですがね。これはアメリカの軍人だって私はこういう事故で死んでも構わぬとは言いませんよ。言いませんが、もしこういう事故が——いま伊江部落あたりでもいろいろの実弾射撃をやっている、あるいは県道一〇四をはさんでの行動もあった、そういう民間の隣接地域でこういう事件が起きた場合一体どうなるのか。だから、私たちは基地の安定的自由使用ということに対しては軽率なことでいっちゃいかぬということを今日まで言ってきたんですが、これを言うことの裏には、いまさき言ったような軍事共同作戦の問題なり、あるいは今後の新しく決めようとするポスト四次防の防衛力整備計画なりが密接にかかわり合っていると思うのですね。こういう事態に対しては、あなた防衛庁長官としては、一体国民生命財産を守るということは何も一方において基地がある方の人々は基地被害によって死んでもいいということにならないわけでしょう。われわれにだって生命財産を守る権利はあるはずなんです。そういう関係をあなたはどういうふうにお考えになって、どう理解させようとしているんですか。
  39. 坂田道太

    坂田国務大臣 私が申し上げているのは、あなたがおっしゃるような意味において言っているわけですよ。その基地がある、あるいは自衛隊の基地がある、そしてそこでいろいろな演習が行われる、それは地方の住民にとってはいろいろな迷惑を及ぼしている、迷惑を及ぼさないように努めなければならないんじゃないか、そういう責任が政府にあるんじゃないか、それは一防衛庁だけではなくて、広く政府全体として基地周辺対策というものを考えなければならないんじゃないか、それを使用するところの米軍にしろ自衛隊にしろ、少なくとも国民の安全ということを第一義に考えなければいけないんじゃないか。そういうことを私は繰り返し繰り返し言うのであって、これを繰り返し言うことが大事なんで、周辺対策が不十分なことに対して、もう少し十分すべきでないか。そうしなければ、たとえその基地が日本の安全にとって、国民一人一人の生存と自由にかかわるそういう基地であっても、それはいろいろ問題は起こる。問題が起こらないように最善の努力をすべきではないかということを申し上げておる。それが平和時において安定的使用ということを私が強調しているゆえんなんです。ですから、もうあなたのおっしゃるのとその意味においては同じなんですよ。米軍であったって人の子ですよ。その人たちがけがをしたり、あるいは生命を失ったりすることはいけないわけなんで、そういうことのないようにしてくれということです。
  40. 上原康助

    上原委員 言っていることは同じでも、防衛庁がやっていることは全然違うじゃないか。あなたが言っていることは、こういうことが書いてあるんですよ。これは先ほどおっしゃったように、いわゆる外人記者クラブでの記者会見で、韓国の特派員が、朝鮮半島の安全が日本の安全に大事と考えるなら、日本はどんな努力をするのかと質問したことに対して、あなたは、米軍は事前協議の対象となる直接発進、つまり戦闘作戦行動のために在日基地を使用することは予期しておらずから始まって、補給など後方面で使用するぐらいだろう、その場合は自由だ。自由ということは、どういう形で演習をしようが、後方支援活動をしようが、米軍が気の済むようにおやりなさいということでしょう。基地の安定的使用というものは、いま言うように基地被害の問題を中心に防衛庁、施設庁としては考えているのだということを強調せずして、現に軍事面が先行しているじゃありませんか。少なくとも防衛庁長官のお立場にある人が、これだけ問題の起きている軍事基地の件について軽々しく——有事だろうが平時だろうが、米軍の基地は事前協議の対象以外は安保条約上は自由に使えるようになっていますよということ自体政治的には大きな問題がある、そうお考えになりませんか。それを聞いているんだ。
  41. 坂田道太

    坂田国務大臣 私もその点はちゃんと考えて言っているわけでございまして   日本役割りというのは日本の自身の安全が一番大事なので、日米安保条約もそのためにあります。しかし日本が安全であるということは、韓国にとっても安全であるということです。日本政治的にも経済的にも非常にがたがたしているということは、韓国にとっても好ましくない状況ではないかと思います。私どもはやはり憲法の制約等がございまして、日本政治的にも経済的にも安全であるということが、韓半島に対してもあるいはアジアに対しても重要な役割りを果たしておる、そういう役割りでございます。軍事適用については憲法の制約で派兵はできません。しかしながら、われわれは政治的な意味における経済的諸活動に寄与するということはできる。また日米安保条約においては、もし朝鮮半島に事が起こって米軍が行動するという場合において、当然のことながら基地の使用というもの、特に補給の面につきましてこれを自由であるということでございます。これは極東の安全のためには必要なことであるのは条約に示すとおりでございます。 こういうふうに非常に政治的といいますか、そういうこと、おっしゃるようなことを考えながら私は言ったつもりでございます。
  42. 上原康助

    上原委員 有事の際の補給面の自由というのはどういうことですか。——自分で言ったことを自分で答えなさいよ。
  43. 丸山昂

    丸山政府委員 大体この前シュレジンジャー長官が参りましたときにも、記者会見において元長官が言明しておりますように、朝鮮半島においての有事の際に、日本に期待するのは補給の面における協力であるということを言っておるわけでございまして、この点については結局第一線の展開をしております在韓の米軍に対する補給を、日本の基地を通じて行うということを意味しておるというふうに私ども考えておるわけでございます。その際のいわゆるロジスティックスについてはこれは墓前協議の対象ではございませんので、そこで大臣の御発言として、その際に日本の基地を自由に使用するということによって、韓国の有事に対する日本としての協力がなし得るのではないかということをおっしゃっておるというふうに私は考えるわけでございます。
  44. 上原康助

    上原委員 それじゃちょっと整理しますが、韓国の有事、一応朝鮮半島の問題がよく例に出されるのですが、そうしますと、いまの補給のこととあるいはその他の軍事演習を含めて、平時においても自由に条約上は使えるのだ、しかし基地周辺住民に対して多大の迷惑をかけているので、その面もより配慮をしたいというのが防衛庁長官の言わんとしているところだという弁解でしたが、それはさておいて、そうであるならばもっと基地周辺の整備とか、そういった迷惑に対するものをどうするかということを全面的にやって、しかる後に話し合おうというならまだ話はわかる。その点も指摘しておきたいと思う。もうそれは余りやる時間がありませんので……。  そういたしますと、よく例に出されておりますように、朝鮮半鶴に有事が起きた場合に、沖繩嘉手納空軍基地からB52を発進させて韓国にいる火力部隊を支援をする体制を組むという計画があるということはすでに明らかにされているわけですね。それも補給行為に入るのですか。その場合は、そういうようなことまで含めて基地の安定的自由使用とはお考えになっていないと私は思うのですが、その点は大臣の考え方を明確にしておかないと、こういう行動に対してもアメリカ側は自由に使用できるんだという解釈もとりかねない面があるわけですね。あるいはまた、現に行っている射撃訓練にしても、その地域の環境なりいろんなものを考えて、少なくとも勝手気ままにはできないという、条約上はともかくとしても、政治的にもいろんな判断からしてできないという一応の規制なり、そういう規制をするための姿勢はあるということなのか、この二点についてはぜひここで明確にしておいてください。
  45. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは安保条約にございます事前協議の対象になるわけでございます。いまの補給の面は事前協議の対象にならないわけでございます。いま防衛局長が申し上げたとおりなんでございますけれども、しかしながら直接戦闘作戦行動ということになりますならば、これは事前協議の対象になるということでございます。
  46. 上原康助

    上原委員 私もそのくらいは調べてきてお尋ねしておるのです。直接発進、戦闘作戦行動が事前協議——それはこの間も外務大臣ともやりましたよ。私が聞いているのは、これだけ大々的に報道されて、これは何も私がインチキして持ってきているわけでない。アメリカ新聞シュレジンジャーさんの写真まで出ているのですよ。仮にこういうことが起きた場合は、これは安定的自由使用には入りませんねということと、そういうために行動を展開することはできないねということを私は聞いているのですよ。安保条約の対象になるということは私だってそう思いますよ。しかし、そういうようなことまでできる自由使用、あなたが言っている基地の自由使用ということにはこういうことを含んでいませんねということを明確にしてくださいと言うのです。
  47. 坂田道太

    坂田国務大臣 この点は非常に明確でございまして、シュレジンジャー長官も、いまのような計画とかなんとかということは私に対して何も申しておりません。それから日米安保条約というものは彼はよく理解しておる、こういうことでございます。
  48. 上原康助

    上原委員 そうしますと、B52を沖繩嘉手納基地から発進をさせて直接——直接というより韓国の有事が起きた場合にそういう行動を展開するということはない、日米間でそういう計画はないということじゃなくして、そこまであなたが言っている基地の自由使用には入っていないねということを私は確認しておきたいわけです。そうですね。当然だと思いますよ、これは。
  49. 坂田道太

    坂田国務大臣 日米安保条約上はいわゆる戦闘作戦行動については事前協議の定め書きがあるわけでございます。しかしながらロジスティックな、いわゆる補給面についてはないわけでございますから、そのことを私は申し上げておるというにすぎないわけであります。
  50. 上原康助

    上原委員 そうしますと、B52の使用というのは、嘉手納基地しかいま使用してないわけですね。使用というのは補給に入るのですか、あなたの解釈では。
  51. 丸山昂

    丸山政府委員 ただいま先生が御引用になっておるのは、シュレジンジャー長官が韓国に参りましたときに、第一軍団の司令官ホリングズワース中将がいわゆる九日戦争の構想で述べたものであると思います。その中にはB52が沖繩から一日千ソーティーというふうに数字では言われておりますが、そういうことで、もし北鮮の侵略があった場合には九日で戦争を終結できる見込みがあるということをシュレジンジャー長官に報告をしたというふうに伝えられておる、私どもはそれ以上のことは知っておらないわけでございます。  その場合に、B52が仮に沖繩から発進をいたしまして(上原委員「簡単にしてください」と呼ぶ)面接爆撃に発進するかどうかというその辺の具体的な事態に即して判断をいたしませんと、それがいわゆる事前協議の対象になるのかならないのかということは、それだけをもって判断をすることは困難かというふうに考えるわけでございます。
  52. 上原康助

    上原委員 これはあなた方、いま重大な答弁の食い違いを行っているわけですよ。先ほど大臣ははっきりと、その場合は事前協議の対象になりますとお答えになったのです。だからぼくもいま考えて、あのときにやめておけばよかったと思ったのだが、しかしあなたは、その場合はまたそのケースによって事前協議の対象になるかどうかを検討するというような答弁でしょう。そうしますと、朝鮮半島で有事が起きた場合に、そういう計画があるかないかは別としても、嘉手納基地からB52が使用されることはあり得る、こういうふうにお考えになっているわけですか。もう少し自信を持って、イエスならイエス、ノーならノーとはっきり言ったらどうですか。
  53. 丸山昂

    丸山政府委員 この問題は外務省の問題でございますので、私どもこれで事前協議についてイエスを言うかノーを言うかということを申し上げる立場にございませんので、それがまず前提でございます。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕  そこで、いま申し上げましたホリングズワース中将の構想のように、仮に嘉手納から発進をするということでございましても、それがそのときの態様によりまして、直接北鮮の地域に爆撃に行くのかあるいは韓国の基地に集結をしてそれから行くのかといういろいろな態様があるというふうに考えられるわけでございまして、そういった態様により一概に事前協議の対象になるかならないかということはあらかじめこの時点において判断をすることはむずかしいということを申し上げておるわけでございます。
  54. 上原康助

    上原委員 そうしますと、これは重要なことですからちょっとくどいようであれですが聞いておきますが、いわゆる防衛上はそういう使用もあり得るという判断をしておるということですね。ただ、その事態になった場合に事前協議の対象になるのかどうかは外務省をも含めてもっと検討しなければいかない、そういうお立場ですか。
  55. 丸山昂

    丸山政府委員 嘉手納以外の基地につきましては細かいデータはございません。滑走路の厚みその他がございますので私どもはっきりしたことは判断ができませんが、少なくとも嘉手納についてはB52を使用できる、実際そういう実績もあるわけでございまして、そういう能力を持っておる。したがって、朝鮮半島の有事の際に嘉手納を使用するということは可能性としてはあり得るというふうに申し上げてよろしいかと思います。
  56. 上原康助

    上原委員 大臣にこの点でもう一つお尋ねしておきますが、あなたがおっしゃる基地の安定的使用ということは、B52がそういう行動に使用されることも含めて言っておるというふうに考えていいですか。
  57. 坂田道太

    坂田国務大臣 私の言っているのは、とにかく外人記者に言いましたのは、ロジスティックベースは事前協議の対象にならないということを申しておるだけでございます。
  58. 上原康助

    上原委員 この点はまだ納得しかねますが、それと次に、新しい防衛構想というのが盛んに言われているわけですが、いわゆる従来の所要防衛力整備計画と、今度ポスト四次防として防衛庁考えておられるようである基盤防衛力との違いですね。なぜそういうふうに変更するのか。また、基盤防衛力というのは、その計画を進めていった場合に、具体的に自衛隊の兵器なりあるいは装備なり、そういう面でどういうふうに従来と異なっていくのか。これが一つ。  いま一つは、先ほど防衛白書の問題などもありましたが、また冒頭も言っておりましたように、防衛考える会の報告書なども出ているわけですね、それをどの程度取り入れていくというようなことなのか。それとの関係はどうなっているのか。この点を明らかにしていただきたいと思います。
  59. 坂田道太

    坂田国務大臣 従来、何といいますか、所要防衛力と言われておりまするものは、潜在的な日本列国を包む軍事力、それに対応いたしまして、あらゆる侵略に対して即応体制をもってこれに対処するというのが、簡単に申しますと所要防御力の考え方だと思います。ところが、日米安保条約というものがあって、そしてこれが有効に働いておるという場合において、直接侵略あるいはいろいろの侵略事態というものは非常に限定的になるであろうということが考えられるわけでございます。しかもまた、最近五カ年間見ましても、世界のデタントの傾向というものがございます。もちろん朝鮮半島には若干の危険は残っておるという認識でございますけれども、しかし基調はあくまでもデタントの方向にある。そういう事態において、なおかつ日本に侵攻しようという、そういういわゆる生起すべき可能性のある侵略事態というものは、非常に限定的なものになるであろう。争ういうことを考えますると、所要防衛力ですべてを即応体制にする必要はないんじゃないかという考え方でございまして、基盤的防衛力ということでたとえば限定的な侵略に対処できる、これには基盤的防衛力で即応できるという体制をとっておく。しかしながら、たとえば情報収集であるとかあるいはスクランブル等の警戒監視という面については、かなり平和時においても基盤防衛力を超えた力をふだん持っておくべきじゃないだろうか。あるいは人的な基盤防衛力というものは、たとえばパイロット等につきましては十年ぐらいの経験を積みませんと一人前になりません。非常に時間がかかるものでございますから、そういう人的な基盤については、いまの私が考えております基盤防衛力よりもちょっとやはりそれを超えるような教育訓練を日ごろ平和時においてもやっておく必要があるのじゃないだろうか。その他のものについては小規模以下の侵略事態に即応体制を持てばいい、そしてそこに一線、ガイドラインを引きまして、それを一つの整備すべき目標だというふうに考えることの方が実現可能だ。またユニホームの方も、そのことによってむしろ安心をする。  所要防衛力となると、どこまでわが国防衛力が高まるのか、そして毎年の予算で示される防衛力そのものは非常に小さいものであって、いつまでいったらそれが実現できるかという不安もあろうかと思います。また一面において、いままで四次防まで整備をしてまいりましたが、これはゼロから出発したのでございますから当然なことかとも思いますし、また経済成長が非常に高度でございましたからそうなったのも無理からぬと思いますけれども、どちらかと申しますと正面装備に追われてきた、そして後方支援の整備はおくれてきておる。あるいは持久、耐久力と申しますか、抗たん性という非常にむずかしい言葉でございますけれども、そういう抗たん性の部面が非常におくれておる。あるいは弾薬、油等の蓄積というものが非常に少ない。これでは有事の際においては即応力を持たないのだ。考え方としては所要防衛力では何でも対処できるようだけれども、現実の姿から言うと、後方支援体制及び油やあるいは弾というものが十分でなかったなら即応力を持ち得ない。そういう反省の上に立ちまして、むしろ正面、後方支援、あるいは抗たん性、そういうものがバランスのとれた一つの基盤防衛力、そしてその基盤防衛力でもって小規模以下の侵略事態に対しては即応力を持つという一つのガイドラインもつくってみたらどうかということで、長官指示をいたしたわけであります。  この長官指示の一つのガイドラインから、しかしながら周囲の情勢、デタントの状況の基調があるいは壊れるというような事態あるいは有事というようなことになりましても、この基盤防衛力を土台といたしましてそれを積み上げていくならば、その有事の際あるいは国際情勢が非常に変化した場合にも、短日月の間においてこれを高めることは可能であろう。しかしながら、いまの平和な時点、あるいは若干の危険は存在しましても全体として、基調としてデタントということ、そしてまた日米安保条約というものが有効に働いておるとするならば、生起すべき侵略事態というものは非常に限定的なものであるだろう、そしてそれに対しては基盤防衛力でもって対処ができるだろう、こういう考え方でもってひとつポスト四次防を考えてみようじゃないかという長官指示を内部的に実はいたしたわけであります。  これは手続上は、来年の三月までに一応その作業が終わります。それを踏まえましてもう少し検討いたしまして、そしてさらに今度は国防会議にかけます。そして国防会議におきまして、今度は大所高所から、あるいは民生あるいは経済あるいは外務等のいろいろの広い視野からもう一遍その防衛構想を見直していただいて、そこで検討した結果を私のところで引き取りましてまた検討をして、そして来年の八月あるいは最終的には来年の十二月の昭和五十二年度予算編成時期までにはもう一遍国防会議にかけて、そして国会に提出をいたしたいというふうに考えておるようなわけでございます。
  60. 上原康助

    上原委員 一口で言うと、量より質の面を重要視をしてみたいということと、あるいはこれまで平和時における防衛力の限界といいますか、そういうのが余り確定されていなかったので、そういう上限というのも見詰めながら、防衛力そのものを、防衛力整備を全般的に見直してみようということだと思うのです。ある意味では、これは当然二十四、五年の節目に当たりますし、経済事情なりどんな面でもそうしなければいかぬと思うのです。しかし実際上は、これまで言った専守防衛論とかあるいは所要防衛力、いわゆる周辺諸国の防衛力を見ながら、わが方のそれに対応していけるバランスを保つための防衛力整備だというのとさほど変わらないわけですね。むしろあなたのおっしゃるように、従来でこぼこであったものをみんなならして、りっぱな基盤をつくって、その上にもっとどしっとした防衛力をこれからつくろうということにもなりかねないわけですね。そこがあなたの巧みさかもしれませんが、しかしそれは、防衛庁長官だっていつもかわるわけだからね。中曾根構想があって、山中さんになってそれがつぶれる、あれは全部パアにしたのだと。その後余りこういった基本的な問題整備というのはなかったのですが、今度いろいろな面で出てきたわけですね。しかしわれわれは、先ほど言ったような日米共同作戦行動の問題との関係で、これは非常に重要視しているわけですよ。来年三月までに一応草案をつくって国防会議に諮る。またさらに、七月以降八月段階にかけて成案を得るということですが、もう少しこういうものは事前に国会なり、あるいは現に国防会議の事務局というのもあるわけですから、そこいらでも検討させて、しかる後にもっと具体的な作業を進めていくというのが順序じゃないかと私は思うのです。ここいらの点も指摘をしておきたいと思うのです。  そこで、では具体的に言いますと、この基盤的防衛力の整備がなされると、たとえば従来言われ、いま言われて進めつつある四次防の陸海空の目玉商品というのがいろいろありましたね。その積み残し分はどうなるのかというのが一つあります。それと、当然わが国は憲法上の規制があるし、他国に脅威を与える装備なり兵器は持てないはずなんです。そういたしますと、基盤防衛力の整備ということでは、いまの航路帯の問題からいきますと大体千海里までだあるいは数百海里だというようなこと、これは依然としてその範囲というのは将来も拡大をされないという歯どめがあるのかどうかというのが一つ。もう一つ、今後のポスト四次防との関係で、他国に脅威を与えないということであるならば——もう論理的なことを議論しても始まりません、具体的な例で申し上げますが、たとえば渡洋爆撃機なんかは持てないはずなんですね。重爆撃機あるいは長距離偵察機とか給油機とか、戦術核も含めて核兵器はもちろん、中距離ミサイル、航空母艦、ヘリ空母、原子力潜水艦、こういうような装備は将来においても、あなたが言うように防衛力の限界というもの、上限というものも加味してということであるならば、当然そういうことまでは発展をしないという歯どめがないと、あなたのおっしゃっている論理というものは、国民に対して、従来のものと変わらないのじゃないのかという指摘が出てくるわけですが、ここいらの点は一体どうなるのか。特に米側が空と海を重要視をして、その任務をわが方にもっと分担をしてもらいたいということがそもそもの最初に話があった日米協力の問題だろうと思うのです。特に有事の際を含めて。こういう問題を含めて、あわせてこれからの防衛力整備ということを考えるならば、いま私が挙げたような事柄については当然規制があるものと言わなければいかないわけですが、ここいらはどうなるのかという点を具体的にお答えをいただきたいと思います。
  61. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は、まず第一には憲法の制約、これは当然のことながら守っていかなければならないことだというふうに思っております。  それから、われわれの一次、二次、三次と、こう参りましたけれども、昭和三十二年国防会議で決めておりますわが国の国防の基本というあのことがございますが、これも変更はございません。それに沿っておる。国力国情に応じて防衛力を充実していくという考え方。  しかしながら私といたしましては、いつも申し上げておりますように、まず第一には、どんな装備を持っても、あるいは精強な自衛隊であっても、国民理解支持協力がなければだめだ。それからまた、国民一人一人に国を守るという気概がなければだめだ。つまり抵抗意思がなければだめだ。それから二番目には、憲法の制約のもとに必要最小限の防衛力は着実にこれを充実していく。しかしそれはいま御指摘になりましたように、他国に脅威を与えるものであってはならない。それからもう一つは、著しく民生を圧迫するようなものであってはならない。それから三番目には、しかしながら大規模の攻撃あるいは核の攻撃に対してはわが自衛隊のみによって十分に対処できないから、やはり安保条約というものが必要である。むしろ不可欠である。つまり、この抵抗意思と、それから防衛力と、そして日米安保条約、この三つは一つを欠くこともできない柱である。この三つが一組であって日本の独立と安全というものが守られる、そして国民一人一人の生存と自由が確保されるのだ、私はこういう考え方を実は持っておるわけでございまして、その考え方からいままでの四次防を見直して、そしてここに基盤防衛力というこの考え方を打ち出したわけでございまして、これは他国に脅威を与えるようなものであってはならないし、また著しく民生を圧迫するようなものであってはならない、こういう歯どめがございますし、それから所要防衛力ということに対して、どこまでいくかわからない、そのことにつきましては、やはり実現可能な一定のガイドラインというものを設け、しかもそれは現在の日米安保条約が有効に働いておる限りにおいて生起すべき侵略事態というものは小規模以下のものである。それに対してはこの基盤的防衛力をもって即応体制がある。しかし、その基盤的防衛力を超えて平和時においても十分考えておかなければならないのは、やはり警戒監視の体制あるいはまた情報収集という諸活動、それから人的基盤防衛力は若干基盤防衛力を超えるものを平和時においても考えるのだ、こういうことならば国民の大多数の方々に御納得がいくのではないだろうかというふうに考えておるわけでございまして、この点につきましては上原さんを初めとする社会党の皆さんもひとつ御協力、御支持を賜りたい、こういうふうに思っておるようなわけでございます。
  62. 上原康助

    上原委員 その精神訓話を聞いているわけではないのです。私が言ったように、限界があるというならばこれこれの装備はできないでしょうねということを具体的に挙げたことに対して答えていただけばいいわけです。平和時の防衛力の限界というのは、そうしますと四十八年の二月でしたか、予算委員会で一応出したあれをお考えになっているわけですか。  それと、防衛局長でいいですから、私が先ほど言って、こうこうこういう装備はできませんね、限界があるでしょう、領海においてもいま航路帯が千海里までで、あとは能力の問題なのか。装備がそこまでしかいまできないからそういうことなのか。それが拡大されるのか。そうせぬと、いま大臣が説明していることとつじつまが合わなくなるのですよ。ここを明確にしてくださいということなんです。それと、先ほど言った防衛考える会の報告書にもちょっと触れたい問題がありますので、それがどうなのか、簡単に明確にお答えいただきたいと思うのです。
  63. 坂田道太

    坂田国務大臣 防衛局長から具体的にお答えを申し上げます前に、私が先ほど先生の御指摘で少しお答えしてない点がございます。  その一つは、日米防衛協力シュレジンジャーとの会談におきましての話なんですけれども、これにつきまして防空とかあるいは対潜能力というようなことについては、私から言ったのです。シュレジンジャーから言ったのじゃない。私から、日本の安全を守るためにはむしろ防空あるいは対潜能力、特に海洋国である、しかも資源の多くを海外に仰いでおるわが国といたしまして、当然のことながら対潜能力を高めなければならない、それはそうだ、向こうもわかりました、こう言ったことですから、向こうから言って、私がそうでございますと言ったのじゃない。私が言って、向こうがそうだと言う、そこのところは非常に大事なところで、御了承願いたいと思います。  それからもう一つは、防衛考える会でございます。いろいろのサゼスチョン、御提案がございます。その中に、たとえば災害、震災、そういうようなものに対しての任務ということについて、私は防衛考える会の御指摘もごもっともなことであるというふうに思います。これは今度の長官指示にも取り上げたわけでございます。  その他防衛白書等について、大体従来防衛庁長官なりあるいは防衛庁人たちあるいは政府人たちが、防衛考えろ、あるいは安全保障考えろとおっしゃる、しかしながら考え材料を十分与えておられますか、与えていないじゃないですか——私は本当にそうだと思った。たとえば防衛白書についても、中曾根長官のときに一回出たっきりで、五年間ないわけです。でございますから、これはやはり毎年出すということが必要だというふうに思いましたし、それからまた、これは単に日本国民の方々にわかっていただくばかりでなく、やはり日本列島周辺の諸地域の国民の方方にも、日本は憲法を守っていくのです。平和外交を進めていくのですということがはっきりわかるように、やはり防衛白書の中にそれを書く、貫くべきではないだろうかというふうに考えて、いま作業を進めておるという段階でございます。
  64. 丸山昂

    丸山政府委員 海上自衛隊の範囲でございますが、これはかねがね申し上げておりますように、わが海上自衛隊の勢力整備の目標として考えておるということでございまして、先ほど御引用になりました航路帯を設ける場合には約千マイルの航路帯を二本、それから周辺数百海里というこの範囲は、現在われわれが能力的にこれをカバーできるものを持っておるわけではございません。この海上自衛隊の整備の目標として、当方で大体このぐらいのところについて一応の対潜ないしは海上交通保護の任を達し得るということを目標にしておる、こういうことでございます。したがいまして、今後防衛力整備を続けてまいりましても、あくまでもこれがやはり当面の限界でございまして、これ以上のことになるということは私ども現在の段階では考えておりません。  それから、いろいろ兵器をお挙げになりましたけれども、これは在来からいわゆる戦略攻勢と言います相手方の国へ入っていって攻撃をするという、そういう性格の兵器についてはこれを保持しない。これは一つは憲法上の問題もあるわけでございますが、そういうことを申し上げておりまして、例示的には長距離爆撃機あるいは攻撃型の空母あるいは中長距離のミサイル、こういうものは持たないのだということをかねがね申し上げておるわけでございますが、これはもう在来答弁申し上げておるとおりでございます。
  65. 上原康助

    上原委員 それと、防衛考える会のいろいろな提案があって、災害出動の問題とか、もう一つ海外派兵の問題も取り上げていますね。これについては大臣はどうお考えですか。
  66. 坂田道太

    坂田国務大臣 海外派兵はもうやらないわけでございます。ただあそこの提案の中で、国連の平和活動に対してどうするかという問題でございますけれども、この点につきましてはやはり慎重に対処しなければならない問題であって、やはり国民のコンセンサスを得られなければできないことだというふうに私は考えておりますし、ただいまそういうことは考えておりません。
  67. 上原康助

    上原委員 たとえ国連への協力と言ってみたって、いろいろ法律的な問題、もちろん憲法的な関係も出てくると思うのですね。これは人命尊重とかあるいは災害対策だということで、そもそも軍隊が海外に出るステップというのはそういうものなんですよ。したがって、慎重にやる、こうおっしゃっていますが、私も同僚議員の与党の方の御質問も見てみましたが、きわめてあやふやな答弁をなさっている。野党に対しては野党なりの答弁をし、与党に対しては与党なりの答弁。こんなへっぴり腰の防衛庁長官というのはあってはいかぬですよ。一体これはどうなんですか。国連協力でと言ってみたって、現在のシステムではできないはずなんです。この点明確にしてください。
  68. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは当然いろいろな、自衛隊法の改正その他を伴う問題でございまして、やはり国民のコンセンサスを得られなければできない問題だというふうに承知をいたしております。余りあやふやには言ってないのです。ちゃんと御答弁申し上げておるつもりでございます。
  69. 上原康助

    上原委員 それと、防衛考える会がつくった報告書をあなたお読みになりましたか。
  70. 坂田道太

    坂田国務大臣 私もほとんど全部それに出席いたしまして聞いておりますし、そのまとめの段階でも私タッチをいたしましたから承知をいたしております。
  71. 上原康助

    上原委員 防衛局長はお読みになったのですか。
  72. 丸山昂

    丸山政府委員 読ましていただきました。
  73. 上原康助

    上原委員 何か疑問を持ちませんでしたか。——なければないでいいですよ、早くお答えください。
  74. 坂田道太

    坂田国務大臣 もうちょっと何か質問していただかないと、それでないとちょっとわからないのですけれども
  75. 上原康助

    上原委員 あなた全部読んだからと言うので……。  これでどうしても納得のいかない点、重大な問題がありますよ。あなた方笑い事じゃない。これから言いますから黙って聞いてください。  その前に、わが国はいままで侵略されたことはありますか。
  76. 坂田道太

    坂田国務大臣 元寇のときに侵略されようとしたことはあるのじゃないですか。
  77. 上原康助

    上原委員 領土が侵略されたことはないのですか。——じゃ第二次大戦の場合、沖繩はどうなんですか。
  78. 坂田道太

    坂田国務大臣 沖繩それから北方領土でございますね。
  79. 上原康助

    上原委員 ここにこういうことが書かれているのです。これは荒垣秀雄先生ですか「私の防衛随想」というところですが、特に「国民防衛意識」のところ、七十六ページから七十七ページにかけて「日本に限って他国の侵略を受けることは絶対にないと思うのですかと問えば、それほど“神州不滅の思想”でもないらしい。ただ、過去の日本の軍隊というものが、日清・日露でも日中戦争・太平洋戦争でもいつも外国に出かけて行って、外国領土で戦争をしたけれども日本の国土を外敵に侵略された経験もなければ、自分の郷土や自分の住んでいる土地で、外国からの侵略軍と戦ったという経験も思い出もない。」本当にこれでいいのですか。三十年前に、二十万のとうとい人命を失って沖繩は死闘をやって、領土が侵されて踏み荒らされ、しかも二十七年間アメリカ軍事占領支配下に置かれ、今日なお基地問題でこれだけ問題を起こしておきながら、あなたが言っている防衛考える会が答申をしているのは、ぬけぬけとこういうことを国民の前に明らかにしているじゃありませんか。(「荒垣さんの随想だよ、言論は自由だ」と呼ぶ者あり)言論の自由であっても、事実と違うのじゃないですか。だから、本当にお読みになったのか、こういうことを私は聞いているのです。しかも、これを参考にしてこれからの防衛白書防衛整備計画をやるわけでしょう。これはここだけじゃないのだ。八十二ページにもそういうことが書いてある。一体これについてどうお考えですか。こういうことを堂々と——これを何冊つくったのですか。しかも国民の税金でつくっているのでしょう。私はこれは単なる一個人の書きたいほうだい、言論の自由ということで済まされる問題じゃないと思うのです。沖繩に対する侮辱じゃありませんか。速やかにこれからの削除と訂正を願いたい。場合によってはその人を参考人として呼ぶ。冗談じゃない。こういう方々が防衛専門家なんといって国民の前に理解協力を求めるということ自体が間違っている。あなたが諮問をしたのですから、その責任をあなたにとっていただきたい。
  80. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は、防衛考える会のメンバーの方々に対しまして、最初の会合を開きましたときにわれわれの方から、防衛局長なりあるいは統幕議長からいろいろ今日の自衛隊の状況なりあるいは四次防までの経過を説明しようとしたのでございますが、そのメンバーの中から、しかしわれわれはあなた方から洗脳されたくないのだ、だから自由に考えさせてもらいたい、こういうことでございまして、結構でございます。私もそういうつもりでございますということで、この防衛考える会を発足させたわけでございます。  それからまた、最終段階におきまして、私から、先生方の御意見がございましたならば、それをひとつ書いていただきたいというふうに申し上げました。それを書いていただいたわけでございます。私はそれを参考にして、そして今後防衛考える会の資料にしたいというふうに申し上げておったわけでございますし、またそれができ上がったわけでございます。ただ、おのおののお考えのこと全部に私が賛成してどうだというものではない。このことはもちろん委員会におきましてもはっきり申し上げていることでございます。
  81. 上原康助

    上原委員 ですから、私がいま指摘したことは、これでいいのですか。こういうことが国の防衛意識論の問題と国民防衛意識の問題と防衛の基本計画をつくろうという参考にする——たとえ一個人の論文であろうとこれは公的なものになっているわけでしょう。郷土や土地が外敵に侵されたこともないというのは事実と違うのじゃないですか。これについてどう考えるのかということなんです。このままほったらかしておくのですか。冗談じゃありませんよ。
  82. 坂田道太

    坂田国務大臣 私はこのことにつきまして、こうしてください、ああしてくださいというふうには申し上げたくはございません。
  83. 上原康助

    上原委員 それはどうしてですか。あなたが諮問をしたということは、任命をしたのでしょう。少なくともこういうことが書かれた以上は問題にすべきなんです。これは私一人の問題じゃないですよ。少なくとも重大なミスを犯しているということくらい認めないのですか。
  84. 坂田道太

    坂田国務大臣 そのこと自体については私は別な考え方を持っております。しかしながら、その人のお考えあるいは書かれた意味というものは、そのまま私は聞きたいというふうに思います。私の考えはまた別でございます。
  85. 上原康助

    上原委員 あなた、そんな開き直るのですか。「日本の国土を外敵に侵略された経験もなければ、自分の郷土や自分の住んでいる土地で、外国からの侵略軍と戦ったという経験も思い出もない。」これでいいのですか、本当に。こういうところにいまの日本の首脳の、あるいは防衛専門家といっている方々の、第二次大戦をどう見たのか、今後の防衛問題をどう見ているのか、その意識とその背景を如実に示しているのです。この一行というものは。だからこそ、沖繩に対する基地問題にしても何の問題にしても、沖繩は本土でないのだ、幾ら踏み荒らされようが、あれは別なんだというその思想がありありと出ているじゃありませんか。これをそのまま、別な考えはあるけれどもどうということは言えないということ自体、それは納得できません。削除する意思はありませんか、明らかに間違っているのですから。これはあなた、国民に全部読まれるのですよ。
  86. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は委員の方々がお書きになりましたことを、ありのままにお書きになったことでございます。それを訂正するとかさせるとか、そういうことはいたしたくございません。
  87. 上原康助

    上原委員 その理由だけ聞いておきましょう。私が言っているのが事実なのか、この方が書いているのが事実と思うのか。あなたはそれについては判断があるでしょう。
  88. 坂田道太

    坂田国務大臣 だから、その荒垣さんそれ自身が沖繩の問題をどういうふうに考えておるか、それはまたお聞きしてみなければわからないことで、別なお考え方があるかもしれない。あるいはあなたを説得するような考えをお持ちかもしれません。それは聞いてみたっていいと思います。だけれども、お書きになったことを訂正申し上げるというようなことは考えておりません。しかしまた、そのいろいろの一々の考え方というものを、私は防衛考える会の委員の方々に自由にお考えいただき、そして自由に発言をしていただく、そしてそのことを何か書いていただきたいということで書いていただいただけでございます。国民の一億の人がおるから、いろいろな考え方があるわけであります。われわれは自衛隊は必要であるというふうに考えます。(上原委員「それとこれとは別じゃないですか」と呼ぶ)いやいや、そういうふうに思います。いろいろな考え方がある。いろいろな考え方があるということが如実に示されている。それが出ました形においていろいろな批判が出るものだと私は思うのでございます。それをくみ上げていけばいいことである、私はそう思います。
  89. 上原康助

    上原委員 これは納得できません。こういうことは随所に出てきている。これはこの本だけじゃありませんよ。ほかの新聞にも「今日の日本」とかそういうものにも、堂々とこういうキャンペーンを張っている。これは重大な問題点だという点だけを指摘しておきたいと思う。あなたの言うことだけでは納得できません。少なくとも公的な立場にある人が書く文章において、歴史的な事実が違う。こういうことを認めるということ自体に、やはり防衛に対する問題の根本的な相違、不毛の論議をさせているのは、こういう議論が出るからなんだ。この点強く指摘をして、あなたの反省を求めておきたいと思います。  時間が大分たちましたので、たくさん問題があってまだ残してあるのですが、余り残すわけにもいきませんので……。  先ほどいろいろな基地公害に対するあれもあったのですが、これも簡単にお答えいただきたいのです。あなたが本当に基地周辺住民のことを考えて、基地の安定的使用ということを言ったのが事実であるとするならば、少なくとも騒音問題に対して——大阪国際空港の判決も先月末に出ましたね。もちろんそれに対して政府は上告はしているわけですが、嘉手納のごときは年がら年じゅう電話は聞こえない、深夜も爆音に悩まされているというか侵されているわけです。私もこれまで何回か要望もし、要求もし、抗議もしてきたのですが、なかなか解決されていない。少なくともああいう判例もある以上、また現に横田基地にしても、東京都はすでに晩の九時から翌朝の七時までは飛行停止をやってもらいたいということで要求を出すという動きもありますし、小松基地だっていろいろな支障が出ている。したがって、あなたが言うように積極的に本当に基地周辺住民のことを考えるならば、嘉手納やそういった主要な航空基地については、あの判決を前提にして九時から七時までの離着陸をとめてもらう、そのくらいの交渉をアメリカ側とやってしかるべきだと思うのだが、その意思があるのかどうなのか、その点だけ明確に答えてください。
  90. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 大臣が答えられる前に一言申し上げたいと思うのです。  横田、嘉手納について、いま御質問のような大変な騒音があって、地元の方からいつも強い要望があるということは、これも先生よく御承知のとおりでございまして、こういうものに対する処理の仕方は、従前は、日米合同委員会という機関がございますが、その下部機構としまして航空機騒音対策分科委員会というのがございます。私ども政府としては、この場に問題を持ち出して米軍の協力を要請するという方法で、従来からたとえばエンジンテストの時間、調整の時間、あるいは飛行のパターンでもう少し調整ができないか、夜間飛行の場合にも可能な限り騒音軽減の立場から考えてくれないかといったようなことをここへ持ち出して、幾たびかやってきておるわけでございます。  いま御指摘のように、これは自衛隊もそうですか、米軍の基地についても大変な——米軍の基地の場合の方が一層周辺の人に実害の多い場合がございますので、今後、政府としてはできるだけこういう場で強力に地元、周辺の御要望を踏まえて話をしていきたいと思っております。  それから、先般大阪の判決が出ましたが、これは御承知のように目下上告中のことでもありますが、こういう実例を踏まえて、私ども先ほど申し上げたように、米軍側に申し入れる場合の一つの参考材料だと考えて扱っていきたいと思っております。
  91. 上原康助

    上原委員 これは合同委員会の分科委員会で事務的にやるのもいいでしょう。しかし大臣、事務段階で決めたものを、アメリカというのはそう簡単に、はいそうですかと聞くものじゃないですよ。だから、少なくとも防衛庁長官外務大臣がそのくらいのことはやって、やってできなければまた方法もあると思いますよ。やろうともしないところに問題があって、そういう状況下で基地の安定的使用なんて言い出すから困る。これは外務大臣ともお話しになって政治折衝をやりますね。
  92. 坂田道太

    坂田国務大臣 この問題につきましては、自衛隊基地を含めまして米軍基地の騒音防止については、従来とも、何とかして住民に迷惑がかからないようにいたしたいというふうに考えております。しかし、おのずと限度があると思いますし、われわれといたしましてその接点をどこで見出すかということが非常に大事だと思います。しかしながら、従来の周辺対策というものは、私はこれで満足しているわけではございません。やはりもう少し手厚い施薬が一方になければいけない。少なくともその摩擦をできるだけ少なくしてあげるということは、われわれ政府全体として考えるべき問題じゃなかろうかと思っております。  したがいまして、私いろいろ調べました結果、基地問題閣僚協議会というものが設置されておるわけでございます。しかしながら、これもまた、どうしたわけか知りませんけれども、この四、五年開かれてないということを聞きましたので、私といたしましては、こういう問題は一防衛庁のみで解決すべきものではないのだという観点から、関係閣僚が集まっていろいろな問題を処理すべきであろう、そして基地が本当に日本の安全にとって必要であるならば、政府全体としてこれに対しての施策を考えていこうという考え方で、できればひとつ年内に第一回の会合を開きたいということで、いま準備を進めておるということを御報告申し上げたいと思います。  ただ、そういうようなことでいろいろと、判決の問題もございますし、あるいは上告をしたいきさつもございますが、関係各省ともよく相談をいたしまして、もし必要であるならば政治折衝ということもあろうかとも思いますけれども、まず問題がどこにあるかということをもう少し見きわめてみたいと思っております。
  93. 上原康助

    上原委員 そうしますと、こうしますか。年内に基地対策閣僚会議を持つ。来年は日米安保協議委員会もあるでしょう。閣僚協議会でいろいろ話し合って、騒音問題を含めて安保協ぐらいには持ち出していって日米間でも話す、そういう意思はございますね。
  94. 坂田道太

    坂田国務大臣 ないわけではありません。
  95. 上原康助

    上原委員 その問題は、ないわけではないということじゃなくて、やはりやっていただかなければ困るわけですよ。そのような行為が出てくるかどうかを見守っておきたいと思うのです。  時間が大分たちましたので、また後の外務大臣御出席のときにお尋ねしますが、あと一、二点お尋ねをしておきます。  この間も本委員会で基地労働の賃金問題を取り上げましたが、これも、防衛施設庁長官もいらっしゃいますが、実際はもう少し防衛庁長官レベル考えていただかなければいけない問題なんですよ。もう時間がありませんからたくさん申し上げられませんが、公務員の皆さんはすでに新賃金をもらって、ボーナスももらって、新しい賃金も明日もう二回目のものが払われるわけでしょう。しかし、同時同率解決といいながら、基地労働の約三万近い諸君は、今日までまだ入り口にさえ入っていないじゃないですか。私は年内二十日までの解決をやれということを強く要望して、その努力をしますということでしたが、ここまで来ると、施設庁長官ももちろんやらなければいけないと思いますが、どうですか、大臣の方が問題の指示をするなり、アメリカ側とも非公式に折衝するなりして、これこそあなた、外務大臣とも話し合ってもっと強力に年内解決を迫るべき問題だと思うのです。経過をくどくどしく聞くつもりはありません。ここまで難渋しているものを、雇用主である政府としてどうやろうとするのか、明快に答えていただきたい。
  96. 坂田道太

    坂田国務大臣 やはり相手のあることでございますので、なかなか明快にお答えできないのが残念でございますけれども、いろいろの努力をしておるということだけは御了承を願いたいと思います。でございますから、これは誠心誠意をもって対処をいたしたいというふうに考えております。
  97. 上原康助

    上原委員 解決のめどはいつごろになるのですか。
  98. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 私どもとしては、御承知のように九月十六日に申し入れをして、だんだん時日も経過しておりますので、年内に方針だけははっきりさせたいという決意でもって交渉をしておりますが、長くなるから省略いたしますが、例の二項目の検討にひっかかって米側は非常にかたい姿勢で、その二つの検討事項の解決がなければ話には応じないということでいま平行線でございますが、あすもまたさらに私自身交渉をいたしますし、年内解決ということで私どもは臨んでおります。
  99. 上原康助

    上原委員 ちょうど国鉄のスト問題もありましたが、当事者能力の問題が非常に言われているのですが、実際、施設庁長官が雇用主でありながら当事者能力がないわけですよね。米側も三軍を統括してうまく意思統一をやれない。まあ三木内閣みたいでぶらぶらしてちっとも指導性がない。一方の施設庁も当事者能力がない。その谷間で基地労働者は、あなた、去年のごときは三月になって新しい賃金が支払いされているのですよ。私はこういうことではいかぬと思うのですよ、大臣。これは何も小言を言っているのじゃない。実際そうなっているわけでしょう。相手のあることだと言っても、払うべきものを払わぬでおいて、わが方の払うべきものはどんどん払うということはあってはならないのじゃないですか。  そこで、これは年内解決に努力をするということですが、特にIHAのいわゆる諸機関労務の賃金問題の別体系などもあろうと思うのですが、これもいろいろ調査の結果を聞きましたが、実際問題として別建てにする必要のないようなファクターしか出ていないわけでしょう。これをたな上げにして年内に片づけるということ、そしてアメリカ側がもちろん人件費については支出をすべきですから、アメリカ側が払わないならそのくらい日本政府が立てかえても払いなさいよ、払うべきものですから。これはそのぐらいの姿勢がないと解決しませんよ、大臣。潜水艦をどうするか、事前協議をどうするか、有事のとき韓国をどうするかということより、働いている人のことをもう少し考えてみたらどうですか。この点、大臣の責任において年内解決に努力をするということだけではちょっと済まされないと私は思うのですね、賃金の問題ですから。そのことを別の方途ででも考えていただく決意はございませんか。
  100. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 IHAの問題あるいは定年制の問題はごく一部の人のことで、給与ベース改定は全従業員の問題である、そういう意味で非常にウエートが違うということは私どもも思っておりまして、このIHAの問題はしかるべき責任ある日米機関が話し合ったことですから、これをスキップして飛ばしてしまうというわけにいかないので、これは誠意をもって話し合うが、同時に給与改定の問題は全従業員の問題であるので、これはぜひ重大な覚悟でもって解決するように交渉に臨みたい、こういうふうに思っております。
  101. 坂田道太

    坂田国務大臣 私、去年防衛庁長官になりまして、これは一番最初上原先生から御指摘がありました問題で、昨年の年末、それから予算が決まった後でもなかなか決まらなかった、そうして御迷惑をかけておる問題なんです。しかしながら何せ相手のあることでございまして、今日もまだ解決を見ていないということは非常に遺憾に思っております。しかしながら、いま施設庁長官を初めといたしまして、誠意をもって相手側と何とか打開の道を開きたいというふうに考えておりますので、いましばらく御猶予を願いたいというふうに思います。
  102. 上原康助

    上原委員 IHAの賃金の別建て問題でちょっとだけ聞いておきますが、対象にすべき職種が大体百五十九あって、そのうち四分の一ぐらいしか実際には資料収集はできていないというのが関係者の言い分で、しかも検討参考にできるような職種、いわゆるIHAに該当するようなものは五つないし六つ程度しか実際にはないんだ、こういうことであるとすると、別建てにするような理由、根拠にはならないと思うのです。ここまでアメリカは無理押しをしてきているわけですよ。それは独立採算制と言おうが、労働者には基地内で働いている労働には違いない。政府としては、この問題はたな上げにしてスキップするわけにはいかないという施設庁長官の言い分ですが、全体の賃金の問題をこういうことでアメリカ側が固執するということは、これもまた論理としては非常に根拠の薄弱なものだと思うのですね。じゃ、大臣を含めて皆さん、少なくとも年内に解決するということでいいですね。
  103. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 いまのIHAの調査結果の問題は、いま御指摘のような、調査の結果がどういうぐあいになったかというのはいままとまっておりますが、これをいかに評価するかといったような問題がこれから残っておるので、私どもとしては、われわれの乏しい知識のほかに給与関係のいろいろな専門家の御意見も承って、この評価の仕方、扱いの仕方、そういうものをしっかりと検討して交渉に当たりたいというふうに思っております。  それから給与のベースの改定については、私どもとしてはだらだらとやっておるというのでは困るので、何とか方針だけでも年内にはっきりさせたいという決意で臨んでおります。
  104. 上原康助

    上原委員 まあ、こういう公式の場ですからそれ以上のことは言えないということかもしれませんが、この師走、こういう不況の中で、当然支払うべき賃金そのものが駐留軍関係だけが解決せずに年を越すということはあっちゃいかぬと思うのですね。私はこのことについてはもう何遍も指摘をしてまいりました。最近こういう問題は、数が減ったゆえに余り表にも出ませんが、これこそ最優先して解決すべき問題だと思うのですよ。大臣、そのことは篤と御理解をいただいて、しかも法律上の雇用主は施設庁長官なんです。施設庁長官であるということは、防衛庁長官関係あるということなんです。ですから、財源の問題で皆さんが幾ら悠々と来年いっぱいかかって調整しようがやりくりしようがいいですから、払うべきものは政府の責任においてちゃんと払う、最終的にはそこまで決意をせざるを得ないと思うのですが、そこまで含めて——もちろん話し合いで解決つけばいいですよ、御検討をいただけますね。
  105. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 昨年も非常に難航したので、ことしも状況が一応むずかしいのでやさしいことだとは思っておりませんが、私、昨今はもっぱらこの給与問題の解決以外頭にないぐらい一生懸命努力をしておりますので、いまの御意向も体して、これから一層の努力をしたいと思っております。
  106. 上原康助

    上原委員 約束の時間はもう過ぎてしまっているのですが、あと、基地返還問題その他については午後からの外務大臣御出席のときにまたお尋ねをしたいと思います。  そこで、最後に防衛庁長官、きょうはいろいろなことをお尋ねしましたが、やはりあなたがおっしゃるように、基地問題にしてもいろいろな点にしても、いまそう簡単に国民のコンセンサスを得るという方向にはないわけですよね。そういうことをどう理解をして——ただ、見解の相違だ、あるいはそれは問題にせんがための指摘だというようなことではいかぬと思いますね。そういうことで、私がきょう指摘をした問題を含めて、防衛政策の面で取り入れるべきものは取り入れていく、また絶えず言っている国民理解協力を得る、そういう方向に持っていっていただきたいと思うのです。特に、基地の公害問題とか安定的自由使用というようなことに対しては、私はどうしても長官が言っているようなことでは納得ができない。これらを含めて、抜本的に、そういう地域住民の生活問題をより積極的に解決していくということでなければいけないと思うのです。ですから、先ほどおっしゃいましたような閣僚協の問題なり安保協議会においても、軍事的な問題だけでなくして、そういう重要な住民とのかかわり合いがある問題等も含めて提起して解決をしていただくということでなければいけないと思いますので、この質問は中断ですが、この点については改めて長官の決意を聞いておきたいと思います。
  107. 坂田道太

    坂田国務大臣 私はもう繰り返し繰り返し申し上げておるように、日米安保条約というものが日本の安全と独立に不可欠な要素であるとするならば、単に防衛庁のみでなく、政府全体として基地問題には取り組むべきである、そして騒音その他住民のいろいろの公害について御迷惑をかけていることを少しでもやわらげる、あるいは御納得のいくようなことに相努めなければならないというふうに真剣に考えておるわけでございます。その一つのあらわれが基地問題協議会でもあるわけでございまして、私のこの気持ちはひとつおくみ取りを願いたいと思います。至りませんけれども、最善の努力をいたしてまいりたいというふうに思っております。
  108. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 午後一時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  109. 藤尾正行

    藤尾委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。瀬長亀次郎君。
  110. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最初防衛庁長官に対して、補給問題について御質問したいと思いますが、その前に、きょうの各新聞でも報道がありました大統領の、いわゆるニクソンドクトリンにかわるようなドクトリンの発表があり、その場合に朝鮮に対しては、朝鮮が緊張しておるといったようなことも関連いたしまして、現在の安保条約で一番問題になるのは事前協議制、これは日本が戦争に巻き込まれないような歯どめの制度としてできておるということは当然であります。その問題で、現在この歯どめをいかに強くするかということが日本国民の願望に沿い、また日本政府の方針でなければならないと考えます。三木首相はしばしば、日本と朝鮮との関係について、釜山から対馬まで三十海里しかない、韓国の動向は日本の安全に無関係ではない。朝鮮の場合はベトナムと違って目と鼻の先なので、日本の安全を守るためにも安保条約運用について厳しくしなければならないと思います。すなわち事前協議制、この歯どめを政府がまず厳しくやっていくということが当然だと思いますが、その点について長官の御意見を承りたいと思います。
  111. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 防衛庁長官に対する御質問でございますけれども安保条約に関する問題でございますので、私からまずお答え申し上げたいと思います。  御承知のとおり、安保条約の第六条によりまして、米軍は日本の安全に寄与し並びに極東における国際平和及び安全の維持に寄与するために日本にある基地を使用することが認められておるわけでございます。われわれはそういう基地を提供する義務をいわば負っておるわけでございます。しかしながらその使用の態様については、われわれは一つの制約を負っておるわけでございまして、それは安保条約の第六条の実施に関する交換公文に書かれております。それがいわゆる事前協議の問題でございまして、この内容につきましては瀬長委員も御承知だと思いますが、三つの問題について、すなわち「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本政府との事前の協議の主題とする。」ということになっておるわけでございます。したがいまして、この交換公文の趣旨に従って、基地の使用については一つの基準はあるわけでございまして、これをもってわれわれとしては必要かつ十分であると考えておる次第でございます。
  112. 坂田道太

    坂田国務大臣 防衛庁長官といたしましても、ただいまアメリカ局長から申し上げたとおりに考えております。
  113. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 「日米安保条約においても、米軍が朝鮮半島でコトが起きて行動する場合、当然のこととして基地の使用、とくに補給面では自由に使用できるようにしなくてはならない」これは坂田長官が二日午後の外人記者クラブでの「わが国の新しい防衛構想」と題しての講演の後で述べたと言われております。このことは、「とくに補給面では自由に使用できるようにしなくてはならない」と述べている、これは事実かどうか一応お伺いしてから、あとを続けます。
  114. 坂田道太

    坂田国務大臣 外人記者団にお話をし、質問に答えたことは事実でございますし、その際私が申し上げました意味は、補給面については事前協議の対象ではないという、従来から外務大臣がおっしゃっておったことを受けて申し上げたつもりでございます。
  115. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 補給は、いわゆる戦闘作戦行動にとってどういう意味を持っているのかという問題。平時のときでさえ戦闘作戦行動を前提として補給を行われるのではないか、また補給のためには兵員の移動も含まれているのか、補給についての大臣の考え方の大体の内容を言ってください。これは安保条約の問題と関連します。これは大臣が記者会見の席上で、とりわけ補給は自由であると言うのは、補給をどういうふうに考えておるのか。いま特に朝鮮との関連で補給問題は非常に大きくなっているのですね。だから、大臣のお考えをひとつ聞かせてください。
  116. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 従来から戦闘作戦行動に関しましてはいろいろ国会においても論議がございまして、政府としてはこの点については一貫して次のように申し上げておる次第でございます。すなわち事前協議の主題となります「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」という言葉に言われております戦闘作戦行動とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであります。したがいまして、米軍がわが国の施設区域から発進する際の任務や態様がこういう行動のための施設区域の使用に該当する場合には、米国はわが国と事前協議を行う義務を有するわけでございます。したがいまして通常の補給、移動、偵察等、直接戦闘に従事することを目的としない軍事行動のための施設区域の使用は事前協議の対象とはならないというふうに答弁申し上げている次第でございまして、坂田長官が先日御発言になりましたのもそういう趣旨とわれわれは了解いたしております。
  117. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 長官の御意見を聞かせてください。
  118. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいまのアメリカ局長が答弁申し上げたとおりに考えている次第であります。
  119. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 長官は記者会見で堂々と、特に補給面は自由にしなければならぬと自信を持っておられたので直接お聞きしたのですが、常に外務省アメリカ局長を出して答弁させておいて、そのとおりであるといった言い方ではなくて、もう少し自信を持って言ってほしいのです。たとえば坂田長官の、特に補給の面は自由にするという問題の提起は、私は前もって申し上げました歯どめの問題と関連するのです。いわゆる戦闘作戦行動を前提として補給が行われるという問題、さらに補給とは一体兵員の移動も含めて補給とお考えになるのか、そこら辺もひとつ明確にしてください。
  120. 坂田道太

    坂田国務大臣 私が記者会見で申しましたのも、従来一貫して外務大臣及びアメリカ局長等が国会におきまして答弁いたされておったことが私頭にありましたので、その意味お答えしたにすぎないわけでございまして、ただいまアメリカ局長が申したとおりに考えておる次第でございます。
  121. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 直接戦闘作戦行動と不可分に結んでいる補給の場合と、一般的兵たんとしての補給の場合と区別して従来答弁されているようですが、私が驚いたのは特に補給は自由というふうな発想の仕方の中に、現在の日米軍事同盟の方向への実質的移行、そういったのと結びついているのではないかということが疑われるのです。いまこの時点で基地の使用、特に補給の面では自由を保障するという言い方がどういう意味を持っているかということは長官もおわかりだと思うのです。そこで相手側からすれば、これは一たん事が起きたら補給基地をたたくというのは当然ですよ。朝鮮の場合、ベトナムと違って非常に日本と近いですね。これはかつて椎名外務大臣時代に、特に朝鮮の問題、ベトナムと朝鮮の関連で述べておられるところがあるのです。これは鯨岡議員に対する答弁として行われておりますが「ベトナム戦争がもう少し近いところで行なわれておるということになると、はっきりするわけである。」はっきりするわけであるというのは危険がより迫る。「私は、危険がないとは言えないと思う。御指摘のように、一般的にいって、安保条約体制にあるがゆえに一種の敵性を持ったと認められて、そして攻撃を受ける、あるいはその他の脅威を受けるというようなことはあり得ると思う。しかしそれは一般的な問題であって、いま非常に距離の遠ざかっておるベトナムの戦争に関しては、きわめてそれは現実的ではない、こう考える」これは一九六六年六月一日の衆議院外務委員会における椎名国務大臣の鯨岡委員に対する答弁なんです。したがいまして、ベトナムと言われても朝鮮を問題にしているわけです。したがって補給基地、そういうことがはっきりわかれば、相手国からすればここをたたく、これは軍事専門家でなくても当然のこととして受け取られるわけなんです。そういった意味で、大臣いまあなたのおっしゃった、とりわけ補給の自由という問題はきわめて重視しなければならない。非常に危険が大きい。事実、ここが補給基地になっていると、相手国からすればたたきますよ。いざという場合の発想として長官言われたわけなんだから、これに対してどうお考えになるか。非常に危険なんです。
  122. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは何度も申し上げますように、外務大臣及び外務省当局が従来国会で御答弁申し上げておる範囲を逸脱していない意味において私は使ったわけでございまして、一般的補給の問題について申し上げたわけであります。
  123. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは一般的な問題ではなくて、長官がお答えになったのは、とりわけ朝鮮の問題を取り上げて、この場合どうするかという問題に対する質問に対して長官がお答えになったという事情なんでしょう。これは一般的な問題じゃないのですよ。朝鮮に事が起これはというふうなことを想定してのことなんですね。  それでもう一つそれに対してお答え願いたいのは、政府は六〇年安保国会、当時の赤城防衛庁長官、この人が補給に関連してこう言っていますね。戦闘作戦行動と一体不可分の補給は事前協議の対象となるということを言っているのです。いまの赤城長官と坂田長官との間の食い違いがそこから出てきておるんじゃないかと思うのですが、これについてどうお考えか。
  124. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 そういう答弁があることは私たち承知いたしております。戦闘作戦行動と不可分一体の関係にある補給というものについては確かに事前協議の対象となるべきものとわれわれも考えております。その具体的なものとして、戦場におります空挺降下部隊に対して武器弾薬を補給するというふうな例が挙げられておりますが、そういうふうな場合はまさに戦場にいる部隊に対して直接武器弾薬を投下して補給するわけでございますから、これは確かに直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動とみなされるべきであろうと考える次第でございます。
  125. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの赤城防衛庁長官のその当時の問題のとらえ方と現時点での同じ防衛庁長官坂田さんのとらえ方とは、補給の問題について非常に違った印象を私は持っているわけです。したがいまして、防衛庁長官としては補給という問題を具体的にどのようにとらえておるのか。たとえば一般兵たんと戦闘作戦行動との関係ですね。それがどういう場合には戦闘作戦行動と結びつく補給である、そのときには事前協議制に基づいて拒否するといったようなことを明確にしなければならないのじゃないかと思いますが、これについてどうですか。
  126. 坂田道太

    坂田国務大臣 私が申し上げておる補給というものは、事前協議の対象とならない一般的補給ということについて申し上げたわけであります。
  127. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この前の記者の質問に対する答えは、特に補給の自由という問題は、作戦行動であれ——従来は政府は、作戦行動と結合している問題と、さらにそうでない一般的な兵たん補給と分けて考えていますね。ところが、補給は自由にするという問題のとらえ方からすると、戦闘作戦行動であれ、さらに普通に言う補給であれ自由にしなければならぬというふうな意味合いであるのか、そうでないのか、これを明確にしてもらわないと、歯どめがなくなってしまう。
  128. 坂田道太

    坂田国務大臣 韓国の記者の御質問が、何か軍事的な寄与はできないのかというような意味の御質問でございまして、われわれは憲法でそういう派兵なんということはできないことになっております。そういうような軍事寄与はできませんということをはっきり申し上げたわけでございます。なし得るものは何かというならば一般的な補給だ、こういうことを申し上げたわけであります。
  129. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうすると、これは新聞記事だからあれですが、米軍の在日基地使用、補給面なら自由といったとらえ方で、しかも内容もそうなっておるものだから私はこれを取り上げたわけなんで、当然のことながら、作戦行動と結びつく補給は拒否するという立場は変わらぬわけなんでしょうかね。
  130. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は、事前協議の対象とならない一般的補給というものはやれますということを申し上げたわけでありまして、それは自由だということを申し上げたわけであります。
  131. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうすると、作戦行動と不可分に結びついている補給であれば当然事前協議に乗る。その場合に、特に朝鮮の問題を持ち出しますが、そういった場合には拒否するのか、さらにイエスと言うのか、どっちですか。
  132. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 戦闘作戦行動と不可分の一体をなします補給に関しましては事前協議の対象となるということを申し上げておるわけでございますから、事前協議の場合に、こういう戦闘作戦行動についてイエスと言うかノーと言うかということは、従来から申し上げておりますように、わが国の国益を中心として判断をして決めるということでございます。
  133. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうしますと、具体的に一つ申し上げておきたいのは、例として、三十八度線で現実に戦闘行動が、防衛庁の言葉で言うドンパチが起きている。その場所から四十キロぐらい離れた、たとえばソウルというところにアメリカ軍の兵隊、戦車、武器、弾薬というものを空輸する。これは事前協議の対象になりますか、なりませんか、補給問題に関連して。
  134. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この事前協議がありましたときに、イエスと言うか、ノーと言うかは非常に重大な問題でございまして、あらゆる要素を考慮して、わが国の国益を中心として判断をしているわけでございますから、いま御想定になりましたような問題を一般的な形でお答え申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  135. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 一般的なことじゃなしに、ごくあたりまえの具体的な問題として取り上げておるのですが、これは私がきょう初めて聞くのではなくて、十一月四日の参議院の予算委員会で、内藤議員が宮澤外務大臣に聞いておる。答弁は、「それを議論することは私は誤解を生ずるだけであると思います。そのようなことはアメリカ考えていないように思います。」ということで逃げているのですよ。補給問題に関連して余り答えていない。これも具体的な問題なんで、一般的な問題じゃないわけだ、補給の問題が。  それで同じことですが、それではこういう場合はどうかという問題があるのですよ。ここに現実に戦火が発生した場合に、日本から兵員、武器を朝鮮半島に補給、輸送する。これは事前協議の対象になるのかならぬのか。すなわち坂田長官がおっしゃった一般の補給ではなくて、この補給は直接戦闘作戦行動になると見るのか。そう見ればもちろん事前協議制の対象になるということになって、ここら辺はどうですか。これは実に具体的な問題だ。
  136. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほど申し上げましたように、通常の補給とか、移動の場合等の直接戦闘に従事することを目的としない軍事行動であれば、事前協議の対象とならないというふうにわれわれは考えておりますが、具体的な、一つ一つの行動というものが出てまいりましたときにこの基準に当てはまるかどうかを考えるわけでございまして、一般的な形でお答え申し上げることは差し控えさせていただきたい次第でございます。
  137. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま坂田長官が出された補給の問題は、坂田長官は記者クラブでやられるときに非常に自信を持って、アメリカ向けとしてやられたのかどうかわからぬですが、きょうの答えはどうも自信がない。補給面なら基地の使用は自由、これは新聞記者であれば飛びつきますよ。いままでの政府考え方とは違って、補給面なら自由に基地は使用できるのだというような発想ですからね。ところがいまお聞きしましたら、これはそうではない。あくまで戦闘作戦行動と結びつく補給であれば事前協議制でチェックされるというふうに確認していいですね、長官。
  138. 坂田道太

    坂田国務大臣 繰り返して申し上げますように、事前協議の対象とならない一般的な補給は自由だということを申し上げたわけであります。
  139. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最後にお聞きしたい。なぜいまごろ、だれでもわかっているような一般的な、いわゆる事前協議制にならない補給は自由であるということを強調されるのか、何か政治背景でもあるのですか。
  140. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは外人記者クラブに行きましてお話ししました、それについて韓国の新聞記者の方からいろいろの質問があったわけでございます。これには答えざるを得ないわけでございます。それで軍事寄与は何かあるのかということでございましたから、われわれの方は憲法のたてまえがあって派兵なんということはできませんということを申し上げました。それからまた、経済的ないろいろなことはあるいはできるかもしれませんということを申し上げたわけです。ただ、やり得るということを考えるならば、まあ一般的な補給ということでしょう、それは自由です。こういうことを申し上げたわけです。
  141. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この補給の問題で、私、特に長官に要望したいのは、いま事前協議制というのは空洞化どころか、これはむしろないに等しいといったような方向に行きつつあるのではないか、私もその気がしてならないのですよ。だから、そういったような新聞記事を見ますと、ははあやはりそうかなということをだれでも考える、補給面であれば自由であるということになると、なるほどそうかなということになるわけなんですよ。だから、この際、歯どめとしての事前協議制というものが、本当に歯どめになるかどうかという問題は真剣に考えて発言してほしいと思いますよ。これは一般に与える影響が大きいですからね。しかも相手は日本防衛関係の大将でしょう。長官がそういった発言をされるということになりますと、結局、赤城長官が話したことといまの長官の話したこととどうも非常に違っているといったような考え方からさらに進んで、ははあ補給面であれば基地の使用は自由だなというふうに拡大して考える。そうじゃないということをはっきりここでしたわけですね。そういうふうにとらえていいですか。
  142. 坂田道太

    坂田国務大臣 私はもうそのとおりに言っているわけでございまして、別に他意はないわけでございます。いままで言ってきたこと、外務大臣がおっしゃったことあるいはアメリカ局長等がおっしゃったことを踏襲いたしまして、一般的な補給というものは自由なんだ、それが頭にございましたから、それらの点についてお話し申し上げた。実は非常に私、慎重に答えたつもりなんです。
  143. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 大体新聞に出ているような限りでは、そういったような受け取り方ではなくて、私の言ったような方向でPRされているだけに、この問題を重視して私は最初質問したわけであります。  これは午後の外務大臣に対する質問でお聞きするつもりでしたが、もう一点、いまの補給問題と関連して、いわゆる米韓条約に基づいて日本の基地にいるアメリカの軍隊が補給物資輸送のために朝鮮半島に出かける場合、これは一体どういうふうになるのか。ここら辺、アメリカ局長答えられますか。
  144. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 ちょっと御質問趣旨が必ずしも十分理解できないのかもしれませんが、アメリカ軍が日本におります限りは日米安保条約によって規制されるわけでございまして、それ以外に米韓条約によって規制されることはないはずでございます。したがいまして、いまのお話が日本におります米軍が物資輸送のため韓国に赴くということでございましたならば、通常のそういう移動とか、通常の補給でございましたら、その点は当然基地の使用の一態様として認められていると思いますし、事前協議の対象にはならないと思います。いずれにしても、米韓条約云々という問題はこれには関係のない問題ではないかというふうに考えます。
  145. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは午後の外務大臣との質疑の中で詰めることにして、第二番目に、いま第三海兵師団が現在恩納村に実弾射撃訓練をやっており、水源地、これすら破壊するという問題がありますが、この問題について防衛庁はどう考えておるのか、何か施設庁あたりで調査されたことがあると思いますが、一応それを取り上げてみたいと思いますが。
  146. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 いまのお尋ねの件は、沖繩のいわゆるキャンプ・ハンセンの恩納岳での米軍演習の関連だと存じます。  私ども承知しておるところでは金武村の屋嘉地区、それから伊芸地区に近い砲座から米軍が迫撃砲等の射撃演習をやっておる。で、最近その伊芸地区の水源地付近に向けてそういう砲撃が盛んに行われておるということでございます。その射撃訓練の結果、土地の保水力がだんだんなくなって、水が枯渇して水源地としての作用をなさなくなるということが憂えられるわけでありますが、そこで私どもとしては、この伊芸地区の水源地に射撃を続けることをできれば避けてほしいというふうに考えております。そうして住民の生活に影響を及ぼすようなことが出てこないことを望んでおりますので、わが施設庁の現地の那覇局から米軍に対してそのような申し入れをやっております。米軍は水源地に向けて弾が飛ばないように方向を変えるということを検討しておるというふうに承知しております。  もう一つ、村当局に伺いますと、いまの時点では別に水の汚濁が生じておるということはないということでございますが、私ども米軍の演習の結果、付近の住民に御迷惑をかけるということがないように考慮してまいりたいというふうに思っております。
  147. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 防衛庁としては米軍にこのような演習はやめてほしいということを要請されたのですか。されたとすれば、現在の地位協定などに基づいて当然国民の権利として要求したのか、あるいはこれはどうもちょっと困るのでという形で要求されたのか、どっちなのか、その点を伺いたいと思います。
  148. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 先ほどお答えしましたように、米軍に提供した施設の中で米軍が協定に従って演習をやっておるのでございますから、これをやめてほしいということはわれわれとしては言えませんが、この行為によって付近の人に迷惑をかけないようにひとつ配慮してほしいという観点から私どもが申し入れをしておる次第でございます。
  149. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 米軍との地位協定第三条第三項ですね、これは「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」というのがありますね。これは国民にとってはいわゆる権利として規定されておるわけなんです。アメリカのそういった行動を制限する条項があるわけなんです。ですから、堂々とこの点は地位協定何条のもとにやめる、これはいわゆる公共の安全に妥当な考慮を払っていないのだ。特に水源地でしょう。  さらに十六条などにおいても「日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動、」云々というふうに禁止規定すらあるのですね。いまの御答弁では恩納村では大体落ちついているような話しっぷりでしたが、ちっとも落ちついていませんよ。雨が降りますと一体どうなるか。撃ち込まれたはげ山から何が流れ出してくるかというと、私現に行っておりますけれども、赤水が流れてくるのですよ。飲めませんよ。あなた方人ごとのように言いますが、あの水源地の樹木が全部根元からやられてしまう。さらに草地がなくなる、それで赤土が出てくる。雨が降るとそこから流れ出して、部落のところに来ると赤水が出て、簡易水道から出るのは赤水なものだから、結局たらいに水をくんでためて沈ますのです。そして、沈んだところを飲む、これなんですよ。こういったような状況を醸し出して、しかもなおまた日本政府が、私いま安保条約の枠組の中で言っているのですよ、その中ですらこうした規定がある。それをあなた方は盾にとってやめろと言うぐらいの折衝をやらないと、あなた方に言っていることは何であるかわけがわからぬということになる。国民の利益のためにやっていないんだなということは——見るだけでも身の毛のよだつような演習をやりますから。あなた音を聞いたこともないと思うのですが。そういうことで、いまの演習をやめてほしいと言ったのでということでは解決しない問題なんですよ。長官、いかがですか、防衛庁長官として大きい問題だと思うのですよ。
  150. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま施設庁長官からお答えをいたしましたようなことでございますが、私といたしましては、こういうような地域住民の水源地が、演習の結果として飲む水が汚染をされるというような事態は問題であろうというふうに思います。具体的に調査をいたしまして、しかるべき措置をとらなければならない課題であるというふうに思います。
  151. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは長官でなくてもいいのですが、施設庁が管轄ですか、どのぐらい実際の演習の実態をつかんでいますか。たとえばどういう大砲をどのように使ってどこに撃ち込んでいるか、その辺何かつかんでいますか。
  152. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 この演習の態様については、昨今非常に激しくなっておりまして、昭和五十年八月には砲座四号で一日、砲座五号で二日、それから九月には二日、十月には合わせて八日、十一月には十六日、米軍が盛んに射撃をやっております。その前もずっとわかっておりますが長くなりますので割愛いたしますが、そういうことで、最近非常に激しい砲撃の練習をしておるということは承知しております。
  153. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 ところで、長官に少し理解を深めてもらいたいのは、ハッチ在沖第四軍調整官、これは海兵隊の基地司令官ですね、この人は十二月一日の屋良知事の抗議に対して、訓練は軍隊にとって当然である、今後も続ける、実に開き直った答弁をしているのですよ。これは施設庁おわかりじゃないのかね。こういったような形で実弾射撃訓練というのはどんどん行われて、いわゆる着弾区域の恩納岳頂上付近は伊芸区民百三十五世帯の生命源である飲料水の水源地がある。これまで樹木が生い茂り水量も豊富であった。ところが、いま申し上げましたこの激しい訓練によりまして地はだが出てしまって、このまま続けると水源地はもう大変なことになるという訴えに基づいて、山火事の心配も起こっている。だから知事は行ったのです。行ったらハッチという司令官は傲然と構えて、軍隊がおる、演習するのが軍隊じゃないか、もう開き直っておる。この形では日本国民の安全と生命、生活が守れないというとらえ方をして米軍と折衝を強力に続けないと、これは訓練をやめるとは言っていないですよ、やるんだ。これについて日本政府は、いま私が申し上げました、特に地位協定ですら国民の権利の問題として規定されているのがある。そういうものでも盾にして強力に軍に対して折衝を行って、かかる非人道的な演習はやめろということを要求するのが当然だと思うのですが、長官、いかがですか。
  154. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 いま御指摘のキャンプ・ハンセンの演習場は当然でございますし、そのほか沖繩を例に挙げますれば嘉手納の飛行場で大変な高度の騒音を出して、いろいろな御迷惑が基地の周辺の方々に及ぶわけでございます。そこで、私どもの立場では、基地を使用する米軍は協定に従って、協定の範囲内で基地を使用しておるのでございますが、そういう周辺に及ぼす御迷惑については、先ほど指摘があったような協定の精神を踏まえて、そして米軍にできるだけの配慮を申し入れることを従前やってきております。周辺の住民の具体的な要望を踏まえてやることは当然でございますし、あるいはまたときには一般的な申し入れをしておりますが、ただ、基地を提供した本来の目的に従って米軍がこれを使用しておる限り、その行為そのもの、射撃をやめろとか飛行をやめろとかということは基地を提供しないのと同じような結果になりますので、基地を提供しておる趣旨趣旨で目的を達成しなければならぬ。同時に、それから生ずるいろんないわゆる基地の周辺の公害的なものに対しては、私どもなかなか至らないのでおしかりを受けるのでございますが、できるだけの努力をして対策をしていきたいというふうに思っております。
  155. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは県知事の力ではどうにもならないということを示しておるものだから政府で何とか——私が指摘しておるのは一般的の演習を言っているんじゃないのです。水源地をたたき壊している。これは人間の公共の福祉にも反するし、さらに地位協定に規定されているものにも違反している。こういったものは自信を持ってやめさせるような折衝をしたのかしていないのかということを明らかにして、今後どうするという方針をここで出してもらわないと、毎日飲む水の問題ですから、こういうふうなことに関して政府は大したことじゃないというふうに考えておるのか、あるいはこういう射撃訓練はやめさせるようになお一層アメリカに要求して、やめさせるようにするということをここで約束できるのかできぬのかはっきりしてください。
  156. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 まず最初に、私も誤解をしたのですが、水源地と言葉で言いますと池なのかと思ったのですが、別に水源の水をたたえた池があるわけではなくて、先ほども御説明したように水源になる場所である、そういう意味合いで非常に大切だと思っております。そういう意味では、その水源になる場所から出る水を頼りにしておる基地周辺の方々にとっては、これは命にもかえがたい大切な問題であるというふうに私ども理解しておりますので、何とか基地周辺の住民の御要望に十分こたえると同時に、一方において軍が基地提供を受けてやっておる演習行為、それもある程度の目的が達せられる、本来の目的がともども達せられるようにやりたいというふうに思っております。大変重要なことだと存じておりますので、先ほど防衛庁長官からもお答えがあったように、私ども実地を一層よく把握しまして、これに対する適切な措置を真剣にやりたいと思っております。
  157. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは外務省とも関係があると思いますが、アメリカ局長はいかがですか。
  158. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほどからも御指摘がございましたように、地位協定の三条三項で、「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」ということになっておりますので、米軍が演習場を使用するに当たっては、この考慮は十分なされなければならぬとわれわれも考えております。したがいまして、現地においてすでに米軍に対して申し入れが行われたようでございますが、この水源地を避けて射撃訓練を行うようにというふうに、われわれはアメリカ側に申し入れてまいりたいと存じます。
  159. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次に、地籍の問題についてお伺いしますが、これは施設庁になるんですかね。返還前の解放地あるいは沖繩返還後の解放された地域、その面積とその中における地籍の不明な面積はわかりますか。あれば出してもらって、これに対する方針、どういう方針で不明地籍を明らかにして、返還された土地を直ちに地主が利用できる道を開いていくか、これが施設庁の大きい任務だと思うのですが、この点について何か調査がありましたら……。
  160. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 この沖繩における地籍確定の仕事は、大変いろいろなところに影響を持つ重要な仕事だと私ども理解しておりますが、ただ仕組みといたしまして、防衛施設庁が関係しておるのは、先ほど来説明がありましたように、施設として提供しておるもの、現在沖繩に所在する施設が五十九ございますが、そのうちその境界が確定してない土地を含むそういう場所が二十九施設ございます。そういう米軍に対する施設との関係においてのみ私どもはもっぱら関係がございまして、施設の外にある一般の土地についてもちろん地籍不確定のところがございますが、これは私どもできるだけいろいろな事実上の御協力をすることはやぶさかではございませんが、施設庁の本来の責務としては、いま申し上げた施設区域内の地籍未確定のところに対していろいろと努力をしておるというかっこうになっております。  ただ、復帰後返還された土地も、これは元施設であったという意味で大変関係があるのではないか、これについては、私どもできるだけの努力をしたいというふうに思っておりますが、区域外の一般のところについては、われわれとしては当面それの直接の責任を負っておるというふうには理解しておらないわけでございます。
  161. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの施政権返還後に解放された地域、これは三十八地域で大体千二百九十二ヘクタールあるわけですが、このうち二十地域二百十ヘクタールは公用地法によって自衛隊に強制使用されている。そこで、解放面積のうち地籍が明らかなものはわずかに二八・六八%、面積にして三百七十ヘクタール、これで五二・六八%、これは国土調査法による地籍調査が不可能な境界不明地域として放置されたままの状態である。いわゆる返還はされたが、返還された面積の五二%以上が地籍不明であるために地主が利用できないような状態だと言うんですね。これに対して、この地籍不明なやつを、地籍を明確にして、返還されたら地主がすぐ利用できる体制をとらなくちゃいかぬですね。その方針はありますか。
  162. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 先ほどお答えしたとおり、現在施設になっておるところで地籍がわからない土地が相当ございます。これは、これからいろいろな仕事をしていく上において、あるいは返還をした場合に、だれにどれを返していいかということを明確にする意味において地籍確定の作業が必要であるということで、施設の区域内のものについて、私ども、われわれの責任において努力しておるわけです。そのやり方は、航空写真を撮って、それをもとに現況測量図をこしらえまして、それから戦災前の航空写真と対照して、そういう資料をこしらえた上、今度はこれを地主さんにお渡しして、それを市町村界あるいは大字界、小字界というぐあいにだんだん小さく区割りを明確にして、そうして小字の中の地形地被物、ここに川がある、ここに山があったのだという昔の地形地被物と現在残っておる地形地被物と対比して区割りの測量をだんだんやっていく、こういうことについては施設庁が責任を持って、たとえば工事測量の費用が要れば工事の測量費を出すということで進めておるところでございます。  ところが、返還になったところについてはやや状況が違いまして、先ほど指摘がございました返還済みのところについては、現在私どもは直接関係しておりませんので、これはできるだけ私どもがいま申し上げたような施設の中でやっておると同じような努力をして御協力を申し上げるという考え方、解決の促進に役立っていきたいというふうには思っております。
  163. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この返還軍用地については開発庁がやっているのですか、窓口はないのですか。
  164. 銅崎富司

    銅崎政府委員 地籍調査につきましては、開発庁との間では、施政権返還前、沖繩復帰前に返りました軍用地につきましては開発庁が担当してやる、それから復帰後に返還いたしました土地は施設庁が、先ほど施設庁長官からも申し上げましたように、本来的にこの地籍調査を当庁がやるということではございませんが、やはり施設区域として提供されておったものが返還されたという意味において深い関係にございますので、それと返還のときに、契約書等におきましても原状回復をしてお返しするという関係にございますので、原状回復費の中に、そういう地籍のはっきりしないものにつきましては、境界設定費というものを計上して、それを地主の代表の方、現在では市町村あるいは地主会にお願いしておるわけですが、そういうところと協力して地籍を明確にしていく、そのやり方は、先ほど施設庁長官が申し上げましたように、四十九年度において航空測量をいたしまして、その航空測量に基づいて土地の現況図、それから戦前アメリカが撮りました航空写真などを入手しまして、そういう材料を地主の方やあるいは市町村に提供して、調査の細かいやり方、技術的な御援助それから測量業者の紹介、そういうようなお手伝いをして地籍をはっきりさせていこう、こういうことをいま考えて、その地籍の確定の作業を市町村それから地主の方々と相談しながらやっておるというのが現状でございます。
  165. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 じゃ開発庁と施設庁と両方で共同作業を進めているということですか。
  166. 銅崎富司

    銅崎政府委員 先ほど申し上げ即したのは対象が違うわけでございます。開発庁がやっておりますのは、沖繩復帰の前に米側から返されたものを開発庁がやっておる。それから施設区域、基地として復帰後も提供されて、復帰の後において返還されました土地は施設庁が担当しまして、地主さんがやる原状回復の一環として境界設定費を計上してその地籍の確定までの作業協力している、こういうことを御説明申し上げた次第であります。
  167. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまこれはあなたのところでやっておるかどうかわからぬが、集団和解方式、これで区画整理と同じようなやり方で進めておる。ところが、地主側との調整を図ろうとしているが、これは非常に無理があるのですね。自分の申請よりも土地が何割か減らされて返される、地主側が反対が強い。この場合政府が責任を持って、いわゆる地主の意見と土地面積の差が出る場合にこの差額は国が補償するという方向での特別な立法措置、これが必要でないかと思うわけなんですが、そこら辺については何かお考えがないかどうか。というのは、この問題をいまのように進めていくと、いつまでたってもこの集団和解方式なるものでは問題解決しないわけですよ。現実にもう解決しないような方向に行きつつある。だからそれを解決するために特段にいわゆる地主の意見も取り入れて、その地主の意見に従って、いわゆる減じられた土地に対しては政府が補償するというふうな立法措置が考えられぬのかどうかということですが、これについてどういうお考えなのか。
  168. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 ただいま御指摘の特別立法を考えておるかという点でございますが、この地籍調査を本格的にと申しますか、復帰後返還になった土地、それから復帰前に返還になって、しかも地籍が確定していない土地につきまして集団和解方式で地籍を確定しようということをいまやっておるわけですが、この地籍を確定するという問題は所有権にかかわる問題でございまして、これは法律で決めるとかなんとかいうことではなくて、やはり土地を持っておられる方々が集まって相談して解決をしていくというのが原則だと考えておるわけでございます。ですから、私どもはそういうやり方で現在この地籍の確定を進めているわけでございますが、まだこの確定作業をやり出して余り間もたっておりませんので、いろいろやっていく過程でどういう問題が出てくるか、いまおっしゃられますように、割り当ててみると土地が足りない、そういうときにどうするかという問題も確かに一つあろうかと思いますが、そのほか、じゃその特別立法にどういうふうな形で解決すべき事柄を盛り込んでいったらいいかという点は、実は私どもまだ確信を持ってそういういろいろな問題点を手元に集めているわけでございませんので、現在やっております方法を進めていく中でいろいろ検討をしていきたい。それから、これは施設庁だけで考えることでございませんので、やはり開発庁なり法務省なり、関係機関と十分相談をさしていただきまして検討すべきことではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  169. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この問題は、いまの返還要求のもとでどんどん返還される、返還されても地籍はわからぬ、地主は全然手に入らぬというような状態をそのまま置いておくと、とんでもないことになる。たとえば外務省が返還をアメリカと折衝する、それで返還される、それで施設庁の管轄に移っていく、地籍は不明だといったようなことでは、いつまでたってもこの問題は解決しない。だから関係省庁が特に早急にこの問題については連絡会議を持たれて、法的な措置が必要であればこういう法的な措置をするのだ、そうでなければこういったやり方をするんだという明確な線をはっきり打ち出してもらわぬといかぬと思いますが、これについて長官どうお考えですか。
  170. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 地籍確定の問題は、いまお話がございましたように、私ども土地を返還する場合にさしあたって大変困りますし、そのほかいろいろな困る重要な基本の問題なので、いま御指摘がございましたとおり私ども、この地籍確定の問題は非常にじみなかつ手数を要する問題でございますが、早急に何とか解決する努力をしたいということで、先ほどもうちの施設部長が答えましたように、かねがね関係の役所と寄り合って分担を決め、目下ようやくそれが資料ができ、本年度からはこの資料をもとにして測量をやっていこうというところへ来ておりますが、事柄の重要性を十分わきまえまして、関係の役所ともよく打ち合わせをしながら進めていきたいというふうに思っております。
  171. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次に周辺整備法と関連して那覇市内の小中高校の校舎の問題についてお伺いしたいんですが、現在の那覇市の小中高校用地における個人有地は四〇%が個人有地、これは年間借地料が四十九年で九千九百万円余り、さらに今度五十年度は借地料が上がって一億円をはるかに超えておる。この問題につきまして、これはほかの都道府県、市にもないような特殊な状況、いわゆるアメリカ軍に占領されたがために敷地が取られている。一例を挙げれば、いまの那覇飛行場のあるところは小禄小学校と垣花小学校と二つあった。この敷地はほとんど基地のために取り上げられて、現在の小中高校は個人有地を中心にして新しく設定されたのが多いわけなんですが、こういった場合に周辺整備法でいまの敷地の買収費の問題について出せるのか出せぬのかという意見が出ております。現在の、去年から出た周辺整備法、この問題で基地のためにやられたのだから当然損害賠償として要求する権利があるといったような意見がどんどん出されております。この問題は国として解決しなければ市のああいった財源ではどうにもならぬというところまで来ているので、いまの周辺整備法との関連で考えられるのかどうかという問題がありますので、これについてお答え願いたいと思います。
  172. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 いまお尋ねの件は、私どもも事情は承知いたしておりまして、御質問の中にありました当時の小禄国民学校、これは那覇空軍、海軍補助施設に接収されて土地はいまではこの補助施設の中に入っておるということでございます。そこで、こういう学校が十校ございまして、いずれもお話しのように学校の敷地、建物ともに施設にとられてしまって、外へ出ていま大変苦労しておられるという実情がございます。これに関連して借地料その他についての補助は、現在のところ、学校でございますので、文部所管でもってその経費の面を手当てをしておられます。  そこで、御質問のようにこれを基地周辺対策の一環としてやれないかということでございますが、従前の話し合いなり役所同士の分担から言いますと、この周辺対策法でやるというわけには、直ちにここでお答えするわけにはまいりませんが、そういう御要望もあることを承って一度勉強さしていただきたいというふうに思っております。
  173. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは施設庁の方で検討されるということですか。
  174. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 ただいまのところでは、周辺整備法のたてまえから言うと、この学校に対するそういう経費を見るというわけにはいかないというふうに思います。ただ周辺整備法の中に、たとえば交付金などの制度がありますので、御要望を伺って何か方法があるかどうかということを考えてみたい。たてまえとしてはわが方で出すという仕組みにはいまのところなっておりません。
  175. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最後に、嘉手納基地を中心として沖繩の米軍基地がベトナム後非常に強化されつつある、その点でお聞きしたいのでありますが、これは嘉手納基地周辺の爆音の問題とも関連します。  最初にお聞きしたいのは、嘉手納基地に現在特にベトナム後飛行機の機種、どういう飛行機がどういう任務を帯びて現在いるかどうか、調査されておると思いますので、これはどなたでもいいから説明してほしいと思います。
  176. 丸山昂

    丸山政府委員 御案内のように嘉手納には第五空軍の三百十三航空師団がございまして、そのうちの主要部隊は第十八戦術戦闘航空団でございます。ここの主要機種はファントムのF4Dでございます。これが二個飛行隊ございます。それからFの4C、同じくこれはファントムでございますが、これが現在E型と交代予定になっておりますが、これがワンスコードロン、それから偵察機型のファントムRF4Cでございますが、これが一スコードロン、そのほか雑用機若干を持っておるというふうに承知をいたしております。それからそのほかに第五空軍以外の第三百七十六戦略航空団でございますが、これはKC135、それからEC135、RC135、給油機、それから電子調査の航空機でございますが、それとSR71、これは御案内の偵察の航空機でございますが、こういったものが嘉手納にございます。
  177. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これで機種は幾つぐらいですか。飛行機の機種、何機種ですか。たとえばいまのC130とか、これを一つの機種として幾種類ぐらいございますか。
  178. 丸山昂

    丸山政府委員 種類は、いま申し上げましたように、ファントムの4D、それからファントムの4C、RF4C、AC130、EC135、RC135、KC135、SR71、それからあとP3B、これは哨戒群でございますが、こういったのが機種でございます。
  179. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 ベトナム後こういった戦闘機、爆撃機、偵察機、任務不明なもの、これが非常に増強されていると聞いておりますが、その点いかがですか。
  180. 丸山昂

    丸山政府委員 在来ファントムのF4Cというのが配備になっておりましたが、これがタイに配備になっておりましたF4Dにかわってきておるということと、それからワンスコードロン増加になったという変化を私どもとしては知っておる程度でございます。
  181. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最近C130空輸機、これが来ているのを御存じですか。
  182. 丸山昂

    丸山政府委員 C130は、私どもいまここで資料として持っておりますのは輸送空軍麾下のHC130という航空機が配備になっておることは承知をいたしております。
  183. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 EC135、電子偵察機、これはずっといます。いま申し上げたのはC130空輸機と言われておりますが、これは二機しかいなかったのが、現在真っ黒く塗られて四機駐留しているし、これが任務が不明なんですね。どういう任務を帯びて、特に真っ黒く、ちょうどあのB52よりももっと恐怖心を与えるような飛行機が現実に来て発着している。このC130空輸機が二機ふえて四機になっていることを御存じですか、その任務が何か、答えてください。
  184. 丸山昂

    丸山政府委員 ただいま御指摘のものは、先ほど私申し上げましたAC130のことではないかと思いますが、その機数については明確なところは存じておりません。
  185. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 AC130じゃなしに、C130という飛行機が、国籍も全部消しまして現に入っている。これはまだ一カ月ぐらいしかならないのですが、真っ黒く塗られてやってきておる。これは御存じないですか。
  186. 丸山昂

    丸山政府委員 その件については承知をいたしておりません。
  187. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま私お聞きしましたのは、現在われわれの調査ではっきりわかったことは機種は十九機種、これが所狭しと嘉手納基地に駐留して、ベトナム以後非常に編成も装備も増強されているというのが現実なんです。これがほとんど朝鮮へ照準を当てている。この問題で調査したのを申し上げますと、たとえばB52については午後の外務大臣との質疑の中で申し上げたいと思いますが、あの例の九日作戦ですね。これはシュレジンジャーと長官お会いになった。その前にホリングズワースという司令官ですか、この人が九日作戦、これを発表した。シュレジンジャーが一〇〇%この作戦はオーケーだと言ったような有名な作戦でありますが、これによると、嘉手納基地からB52が二分で一機、すなわち一時間三十波常時発進をして、そのサポートによって北の軍事力を九日で壊滅させる。これはスターズ・アンド・ストライプスに載っておるわけだから皆さんもうお読みになったと思います。この点については予算委員会で共産党の正森議員が質問しておりますが、これについて申し上げたいわけです。  あれは二分に一機という計算で一時間に三十波、B52の爆撃に基づくならば九日間で北の軍事力を壊滅できるという想定ですね。今度グアムが台風だというのでやってきたB52、これは十一月八日に飛来して十日に帰っています。この一機から三機、一機は午前十時四分、二機が五分、三機目が六分という一分間隔で飛び立っており、さらに十時十分から十二分まで四機から六機、さらに午前十時四十四分から四十六分まで三機が飛んでいっている。七機から九機までが十一時二十一分から二十三分まで。それから最後に十機から十二機、これは十二時四分から七分まで。さらに、あのとき十五機来たので、十三機から十五機までが十二時五十五分から五十六分とほとんど一分間隔あるいは二分間隔ということで発進をしてグアムに帰っておる。これはいまの九日作戦と関連して非常に重視されなければならないのじゃないかと思います。こういうふうなことを繰り返して行うならば、どのような事態になるかという問題が出てくると思いますが、これによる騒音は、これはB52だけじゃありません。いまの十九挙げましたこれとの関連で特に騒音の激しいのはギャラクシー、これなどは百十ホンという形で、平均して九十ホンから百ホン、嘉手納の住民は悩まされている。  これは防音装置の問題とも関連し、さらに要求も出ておりますが、こういった防音について防衛庁どうお考えになっているのか、この点をはっきりさせてほしいと思います。
  188. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 嘉手納基地の騒音でございますが、私どもの方でも基地に自動測定器を置きまして騒音の状況を把握することに努めております。あるいは離着陸の回数といった外的な数なども把握して、大体の騒音の実態というものを承知してまいっておるつもりでございますが、いずれにしても大変な騒音が出ておることは確かでございます。一例を申し述べますと、嘉手納村の屋良地区、滑走路北方一・五キロのところで、いまもお話がございましたが、最高音百七ホンが出ておる。あるいは北谷村の砂辺地区で滑走路の南西先端〇・五キロのところで最高音百十九ホン出ておることもあるといったことなども踏まえまして、この騒音対策をいろいろやることに努めております。  まず騒音対策としては、御案内だと思いますが、この騒音源をなるたけ少なくする。たとえば飛行については、飛行の規制を考える。あるいは飛行のパターンを、航路を考えてなるたけ住民の御迷惑にならないようにしていくといったこと。それともう一つは、周辺における騒音を受ける方々に対しての防音工事。これは従来公共施設の防音工事をやってまいったところでございます。幼稚園だとか学校だとか公民館だとか。そこで、昭和五十年度からはさらに個人住宅の防音工事、場合によっては、防音ではもう防げないというような場所の方に対しては、御希望を勘案しながら移転措置を考えるといったような騒音対策をやる。そういったようにあらゆる観点から騒音を規制することと、出た音を何とか防ぐという両面からいろいろと施策をめぐらして、いわゆる騒音公害に対する努力をやりつつございます。なかなか予算も限定されておりますし、いろんな事情で、地元の御希望に直ちに手際よくおこたえするというようになっておらないのでまことに遺憾に存じますが、そういう努力はいたしてまいりたいと思っております。
  189. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間がございませんので最後にこれだけ答えてください。  嘉手納村と基地司令官の間に約束をしております。一つは、午後九時から翌日午前六時までの爆音はできるだけ少なくする。二は、民間地区上空では低空飛行は避ける。これが全然実現されておりません。たとえば明け方の午前三時から四時まで飛んでいる、エンジン調整をする、夜は眠れない、子供が泣き出すということで、司令官と村が約束しているのも踏みにじられておる。そこで、いまの要求をぜひ政府の方で米軍と折衝してこの二項目をやってもらいたいということ。  もう一つは、村全世帯の防音工事、これが一。二、一戸全室防音。三、工事は速やかにやること。四、維持運営費は全額国庫負担。工事施行は住民意思を尊重してやるという五項目の要求が出ておりますが、これについて政府としてこの要求実現のために努力される考えがあるかどうか、承りたいと思います。
  190. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 最初の嘉手納村との約束については、私どもも、基地の方から嘉手納村長あてに書面で騒音対策をするという約束をしておられるということを報告を受けて聞いております。そこで、そういう書面で村長さんに約束したことでございますから、基地としてはそういう事項を守る覚悟があるのだと思いますが、私の推測でございますが、先ほどからお話があったように、なかなか基地も飛行機がかわって、パイロットが違った者が来る。しょっちゅう同じパイロットが同じ基地にずっとおるわけじゃございませんので、基地ではそのつもりでいても、なかなか個々のパイロットの飛行あるいはエンジン調整、そういったところに徹底しておらないのではないか。これは過去の私どもの感じから申し上げるのでございまして、そういうことがあるので、私どもとしても、基地が村長にお約束したことについてしっかり徹底するようにということを米軍側に申し入れをしたいと思っております。  それから五項目の防音工事に関する陳情でございますが、これは私も陳情をいただいて承知しておりますので、これをこのとおり速やかにやれば満点だろうと思うのですが、なかなか全村、全室速やかにというのは、そうすぐにはやれない。予算の都合もございますが、誠意をもって処理したいと思っております。
  191. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最後に資料の要請をしたいと思いますが、嘉手納基地だけではなしに、全国の米軍基地の実態がわかるように、たとえば部隊名、陸海空、マリーンを含めての区別、さらにその部隊の装備任務あるいは司令官名などがはっきりわかるように、沖繩基地だけじゃなしに全国の基地の実態について、内閣委員会に資料を出してもらいたいと思います。とりわけ、ベトナム以後における日米安保条約に基づく区域施設の提供されたその中での米軍の配置の問題は全国民的な要望であるだけに、この点ぜひまとめて出してもらいたいと思いますが、委員長、いかがですか。
  192. 藤尾正行

    藤尾委員長 非常に機微にわたる問題との関連もございますので、防衛庁当局並びに外務省当局と十二分に相談をした上、可能な限りの調査を出してもらうように、私から別途お願いいたします。よろしゅうございますね。
  193. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 じゃ、終わります。
  194. 藤尾正行

    藤尾委員長 鈴切康雄君。
  195. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 十日間にわたる中国、インドネシア、フィリピン、この三国を歴訪して帰られたフォード大統領は、ハワイにおきまして新太平洋ドクトリンなるものを発表されたわけでありますけれども、これについてちょっとお伺いを申し上げます。  フォード大統領の新太平洋ドクトリンなるものが打ち出されたわけでありますけれども、これに対する防衛庁長官のまず御見解を承っておきましょう。
  196. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほどお答えをいたしたのでございますが、フォード大統領の新太平洋ドクトリンというもの、原本を詳しくまだ読んでおりません。新聞程度でございますけれども、これで拝見いたします限りにおきまして、従来の考え方が非常に変わったというふうには見受けられないわけでございまして、先般三木フォード会談が行われましたその際にも述べられておりますように、ポストベトナムからアジア情勢につきまして、従来よりも軍事的な均衡ということは当然といたしましても、それに加えまして、やはり経済政治その他そういったものの重要性というもの、そのことがやはりアジアの平和あるいは安全にとって重要であるというふうに考えておられるように承知をいたしておるわけでございます。三木フォード会談の後におきましてシュレジンジャー国防長官と私、日米協力についてお話し合いをいたしましたし、その際決めましたこと、あるいはそのときのアメリカアジア戦略あるいは軍事情勢というものとはそう変わっていない。やはりポストベトナムから、特に自分の国は自分の手によって守る、そういう努力をするというところに対してはやはり積極的に援助を惜しまない、それは単に軍事的な意味だけではなくて、経済その他いろいろの面において援助をいたしたい、こういうような考え方が出ているのではなかろうかというふうに承知をいたしておる次第であります。
  197. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 六九年のいわゆるニクソンドクトリンあるいはグアム・ドクトリンですか、それに基づきますと、少なくともアメリカアジアから撤退をし、そして同盟国自体が独自の力を合わしてこれに対処する、こういう物の考え方できているわけであります。ところが今度の場合は、大変に違った点が見受けられるわけでありますけれども、それには六項目まず出ております。一つには、米国の軍事力は太平洋の安定した勢力の均衡の基礎であるということ。いわゆる撤退に対して、アメリカは撤退の部分というものについては、そのままにしているということ自体が安定の均衡を保つものであるというふうな物の考え方に変わってきているのではないか。それからもう一つは、日本のパートナーシップが米国の対アジア戦略の支柱である。こういうことが六項目の中にきめ細かく述べられているわけでありますが、そうなりますと、従来のエクソン・ドクトリンとそれに基づく相互戦略構想と、今回のフォードドクトリンと関連というものはちょっと、ただ単に防衛庁長官が同じようなものであるというような簡単なものではない、そう考えるのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  198. 坂田道太

    坂田国務大臣 私も詳しく読んだわけではございませんが、アメリカの世界戦略というものは、力の均衡という上に立ってデタントを追求していくということが述べられておるわけでございまして、軍事的に申しましても、ヨーロッパ特に中部ヨーロッパを一つの基本ポイントと考え、それから東アジアにつきましては、朝鮮半島の中の韓国及び日本一つのストロングポイントというふうに考えて、この二つの足によって世界戦略というものが組まれておる、こういう考え方だと思います。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕  たとえば、わが国と非常に関係の深い朝鮮半島自体平和維持については、確かに北と南と軍事的対決はある、あるいは小競り合い等も行われておる、しかしながら中ソもここに事が起こることを好まない、もちろんアメリカも好まない、したがって、いまここでアメリカの軍隊を韓国から引くということがない限りにおいては朝鮮半島において事が起きるというふうには考えていない、その意味において米軍の駐留が平和維持にとって必要なものである、こういうふうに考えておるのではなかろうかと思うわけでございます。またそのために日本役割りは、日本自身が平和であり政治経済が安定をしておるということが、同時に朝鮮半島にもアジアにも平和維持のために寄与するのではないだろうか、日本自身は憲法の制約があって自衛隊を持ち、自分の国は自分で守る、あるいは日米安保条約によって自衛のために必要最小限度の防衛力を持って安定をしておるということは、やはりアジアの安定のために寄与をしておるというふうに考えておる、しかし単に安保条約等のことだけではなくて、日本自身は非常に経済力を持っておる、軍事的面だけじゃないもろもろの面において寄与するものを持っておる、そういうようなことが朝鮮半島にとってもアジアにとっても安定の要素に欠くことのできないものではないだろうか、こういう考え方でございまして、従来の考え方と余り変わらない。アメリカを中心としていろいろの同盟諸国がアジアにおける安定を保つことに相互努力をし合うということ、それは世界全体の平和にとって非常に大事なんだ、こういう考え方だと思います。朝鮮半島について、あるいはアジアについて申し上げますならば、いまここで直ちにアメリカ軍が引くということは事を起こしかねない、米軍が駐留することがむしろ朝鮮半島の安全を保っておるゆえんなんだ、こういう考え方だと私は思うわけでございます。
  199. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカ局長にちょっとお聞きしますけれども、いわゆる今度の新太平洋ドクトリンについて、対日友好が戦略の柱ということで日本に対するパートナーシップ云々ということになっているわけですが、今回のフォード構想について、日本にこういうふうな考え方で打ち出したいという何らか事前のお話はございましたでしょうか。
  200. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 実はこういうまとまった形で演説をするということにつきましては聞いてはおりませんが、この考え方はいずれもキッシンジャー長官のたびたびの来日の際に聞いておりまして、その意味においてわれわれとしては別に新しい点はないと思います。ただ、従来アメリカ側が述べておりましたこと、また各方面でキッシンジャー長官が演説しておりましたことを取りまとめてこういう形で打ち出したものだというふうに理解いたしております。  いずれにしましても、フォード大統領が中国を訪問し、インドネシア、フィリピンを訪問して、その帰途において自分の旅行の印象を総括し、今後のアメリカアジア太平洋政策を総合的に述べたという意味においては注目すべきものであると考えております。
  201. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ニクソンドクトリンの場合は、いずれにしてもアジアからアメリカは漸次撤退していくのだ、それにかわって同盟国がお互いに自分の力を出し合って守るについて、足りない分はアメリカが応援してあげましょう、こういうのが従前のニクソンドクトリンの柱であった、こう私は理解しております。  いまのお話をお聞きしますと、アメリカアジアに対しては軍事的にも非常に重要なポイントにある、だから先ほど防衛庁長官が言われたように韓国においてはアメリカの撤退はないのだ、こういうふうになってきて、しかもバランス・オブ・パワーの上に立っていまそれはまず必要であると同時に、日本が大変に重大な役目をなしているというふうに変わってきたということは、少なくとも当時のニクソンドクトリンとは少し変わった考え方になってきている、そういうふうに私は考えるわけなんです。  その点についてもうちょっとお聞きしたいわけでありますけれども、このフォードドクトリンの中にあってアメリカアジアから撤退するかどうか、この点についてはどうなのか。それからもう一つは、アメリカの総合戦略構想というものはもうなくなってしまったかどうか。この二点についてはどうなんでしょうか。
  202. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 その前にちょっと申し上げたいと思いますけれども、六九年のニクソンドクトリンは、アメリカアジアからの撤退を意図したものだというふうにわれわれは必ずしも受け取っておりません。当時のニクソン大統領がアジア諸国の自助努力を大いに強調したことは事実でございますけれども、そういう自助努力をしている国に対しては引き続きアメリカとしても援助はしていくということを言っておったと記憶いたしております。  今回の場合においても、そういう言い方がASEAN諸国との関連において特にそれがはっきりと出ております。私は、このフォード大統領の新太平洋ドクトリンというものは、ベトナム後においていろいろな情勢の変化があったわけでございまして、アメリカアジアから離れていくのではないかという意見もあったわけでございますが、このドクトリンからうかがわれますところを見ますと、アメリカはあくまで太平洋国家としてアジアにとどまるのだ、またアメリカは、アジアアメリカを必要としておるのだということを自信を持って打ち出したという意味において非常に注目すべきものだと思いますが、ニクソンドクトリンの線とそれほどかけ違ったものではないというふうに理解をいたしております。
  203. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だからニクソンドクトリンの場合、先ほどおっしゃったように漸次アメリカは手を引いていく、それはそのとおりにずっとやってこられたわけですから、言われたとおりにアメリカは今日まで進めてきたわけでありますけれども、この時点においてアメリカとしてはやはり踏みとどまってというような考え方に変わってきたのじゃないかという感じがするわけでありますが、そういう意味において、アジアからさらにアメリカが今後撤退をしていくのかどうかという問題について、それはまだ御答弁がないし、それから総合戦略構想が実際にもうなくなってしまったかどうか、新しくそれに変わるものとしてこれができたのかどうかということについての関連が全然御答弁いただいてないのですけれども、その点については……。
  204. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 われわれとしては、この演説からして、アメリカアジアからさらに手を引いていくというふうには受け取っておりません。それから総合戦略構想というお話でございますが、これは私の記憶が正しければレアード国防長官の当時にそういう構想が出たようでございますけれども、その後そういう言葉としては余り使われておらないというふうに考えます。ただアメリカとしては、もちろん世界の警察官といいますか、すべての自由世界の防衛を自分一手で引き受けるという考えは持っていないことは明らかでありまして、その意味で、世界の核バランスを維持しながら各国がそれぞれその能力の範囲において守っていくことを期待していることは事実でございますが、余り、いわゆる総合戦略構想というものをいまのフォード政権においても始終打ち出しているというふうには聞いておりません。
  205. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 結局それではニクソンドクトリンと変わったところは、アジアから撤退をするということにはならぬ、要するに踏みとどまって軍事的なパワーで少なくとも同盟国に安心を与えるということを言っている。これは大変に違ってきているという点ですよ。重大な問題だと私はやはり思うのですね。そういう点について、だからニクソンドクトリンに変わると書いてあるでしょう。変わる、言うならば新しい構想というわけですから、その点もう少しこの真意についてアメリカに、防衛庁の方も、それからアメリカ局長の方も、外務省の方も、前のニクソンドクトリンとどう変わるのかということについてもう少し問い合わせをして研究をしてみる必要があるのじゃないですか。防衛庁長官は、きょう初めて私見ましたのでというお話ですけれども、そういうことでは防衛構想は今後進んでまいりませんよ。ですから、そういう意味において、もう少し研究するということをお約束いただけませんか。
  206. 坂田道太

    坂田国務大臣 この点につきましては、よく私といたしましてこの内容検討させ、研究させていただきたいというふうに思っております。  それから、実はシュレジンジャー国防長官がやめまして、そしてラムズフェルドが新しい国防長官になりました。この人から実は正式の書面が参りまして、従来のシュレジンジャー国防長官とあなたとで約束したことについては、われわれはこれを変更するというようなことはない、踏襲をしていきたいというふうに考えておるという報告がございましたことをつけ加えて申し上げておきたいと思います。
  207. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁長官防衛庁の職員給与法の質疑のときに、私は防衛庁長官に、ポスト四次防の第二次の長官の指示、御存じですね、指示を出されたことに対して、国防会議にやはり諮った後に具体的な作業を進めるべきじゃないかと、そういうふうに私ここで申し上げましたときに、防衛庁長官は、そんな考え方はないとここでは否定をされました。ところが、聞くところによりますと、その後直ちに国防懇談会にかけるというふうな手はずをおとりになったのですけれども、その経緯について、私のこの場所においてはお断りになったわけですから、経緯についてお話しを願いたい。
  208. 坂田道太

    坂田国務大臣 私がここで先生の御質問に対しましては、確かにそのときはかけるつもりはない、そういうかけるつもりのない理由といたしまして、実は国防会議実質審議という形にはあるいはならないということを理由といたしたわけでございますが、しかし私といたしましては、先生のお話をつらつら考え、いろいろ検討いたしました結果、やはりこれは実質審議にすぐさまつながらなくとも、こういうことを指示するということは、やはり国防会議の皆さま方に知っておいてもらいたいということが重要なことであるというふうに考えまして、改めまして、先生の御意思もその辺にあったろうと思いまして、実はそういうわけで国防会議懇談会を聞いて、そして私のポスト四次防に対しての長官指示についての内容を、いま私が承知しておる限りのことを御説明申し上げたわけでございます。
  209. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁長官、あなたは内外情勢調査会でいろいろ発言をされて、端的にかなりの提案をされているわけですけれども、その中に、国民合意を得るための方策の二番目として、あなたは国防会議の活発化ということを盛んに言われているわけですね。言われていながら実際はちっとも具体的にはやっていないというのは、これでは幾ら国民にPRしようとしたってそれはもう無理な話であって、実際に私は、あなたが言われるなら言われるようにきちっと国防会議というものを尊重するという立場を貫いていかなければならないと思うのです。  そこで、第一次の防衛庁長官の指示については、これは議員懇談会にお諮りになりましたか。
  210. 坂田道太

    坂田国務大臣 第一次はやっておりません。
  211. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第一次はおやりになってないでしょう。だからこういうものについては、国防会議で総理がむしろ諮問して答申を出した、答申を出したそれに対して、防衛庁長官がこういうものに対してある程度の意見も付しながら作業に入っていくというのが、これがシビリアンコントロールの、言うならば私は原則ではないかと思うのです。むしろ防衛庁長官が自分で指示をぱっと出して、後で国防会議懇談会にあわててかけて、まあその事後報告でありますけれども、こういう方向で行きますよというふうにおっしゃったんでしょうけれども、本来ならばやはり国防会議というものが、安全保障という重大な立場に立って、そしていろいろと諮問を受けた上において答申を出した、答申を出したものに対して防衛庁長官が、こういうふうなことで進んでいきますということでおっしゃるのは、これは私は本来のあなたが言う国防会議の活発化、そしてシビリアンコントロールをやるという手はずではないかなと思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  212. 坂田道太

    坂田国務大臣 その点は実を申しますと、あの際にも申し上げたとおりで、先生のお考え方が実は一つの御見識ある御意見であって、そうなくてはならないものである。しかし実際上の問題として、いまの国防会議そのものが、そういうふうにいままでやってきたかと言ったらやってきておらないし、スタッフその他を考えますと実際上の問題としてはなかなか出にくい関係にあるから、まあこの際はひとつ防衛庁で御説明を申し上げ、そしてその次、一応の作業が出てまいりましたところでお話を申し上げ、そこで活発な御議論をいただいて、さらにそれをくみ取りまして、そして八月ぐらいにもう一遍国防会議にかける、あるいは最終的には十二月にもう一遍おかけをするという、この手続を踏んで、そして先生の御指摘のような、そしてまた私自身が望んでおりまするような国防会議の活発化というものを軌道に乗せていきたい、こういうことでございまして、やはりこの十年間、余り十分な審議が行われておらなかったわけでございますから、これをすぐ、われわれの理想は理想といたしましても、そこまで機能はなかなか現実問題としてできないというふうに判断したものでございますから、実を申しますとおかけしなかったわけでございますが、しかしやはり先生から御指摘を受けますと、そういうものであってもこれは今国会、あるいは議員懇談会等に御説明申し上げた方がよろしい、そしてそれから先、作業を終えた後においてまた実質的な審議をお願いするにしましても、やはりそういう手続はとった方がよろしいというふうに私は判断いたしたものでございますから、実はここでお約束はいたしましたけれども、その考え方を捨てまして、そして先生の御指摘のとおりに実は国防会議にかけたというようなことでございます。行く行くは、あるべき姿としては、まさに先生のおっしゃるとおりだというふうに私は考えております。
  213. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま重大な御発言がちょっとあったわけですけれども国防会議が十年間ほとんど使われていない、機能を発し得ない国防会議である、こういうことになりますと、これは国防会議の本来の性質というものから逸脱してしまうわけです。実際には国防会議というのは、すべての日本安全保障に対して、総理がいわゆる議長になっているわけですから、そこがかなりの機能をしながら、そして防衛の面においては防衛の面、財政の面においては財政の面、あるいは外交の面は外交の面ということで全部コントロールして、そこにおいてすべてが動いていかなければならないというのが国防会議の主要任務だと私は思うのですね。そうなった場合、いまおっしゃるように全然国防会議にはそれだけの機能がないというようなことになりますと、事は大変に重大でありまして、国防会議を改組しながらもう少し強化をせよという声だって出てくると私は思います。そうしなければ、国防会議があってなきがもののような状態であっては、これは大変な間違いを起こすのじゃないかと思うのですが、その点国防会議に対して、組織の強化とか運営等において十分に稼働できる力を備えていくために改組をするというお考え方はないでしょうか。
  214. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は、現在ある国防会議そのものの運営をうまくやるならば相当程度にこれは機能し得るものであるというふうに実は考えるわけでございます。しかし、それをずっと積み上げてみて、なおかついろいろな問題が出てくるとするならば、そのときはそのときで考えるべきであって、私から言うならば、もう少し総理大臣を中心として各閣僚等に活発な御意見等を出し合っていただいて、そして本当に実質的な国防会議にふさわしいあり方はなし得る。また従来も私は決してそれを否定するものではございませんで、いままで開かれなかったところには開かれなかった理由もあったろうと思います。  しかしながら、この段階でポスト四次防ということ、しかも世界の情勢は非常に変化をしてきておるし、あるいはまた経済状態も安定的経済への曲がり角に来ておる。こういうようなことを考えるならば、この機会に国防会議というものが、さらにさらに日本安全保障にとって非常に大事な会議として効率的に、また有効に働くようにするということは、国防会議を形成しております一員といたしましての務めではなかろうかというふうに思います。しかし何を申しましても、これはやはり総理大臣の御主宰なさる問題でございますから、私といたしまして最大限の努力をしましても、やはりそれにはおのずと限界がございますので、その辺を踏まえまして実は今回のような措置をとったということが偽らざる事実でございます。
  215. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁長官が非常に前向きに毎年防衛白書をつくるべきである、そして現在作成中だというふうにおっしゃっていますけれども、これはいつ出る予定でしょうか。  それからもう作成中でありますから、当然それに対する項目的な面においても全部煮詰まりができておると思いますけれども、その御構想についてちょっとお伺いします。
  216. 坂田道太

    坂田国務大臣 防衛白書につきましては、この委員会で申し上げましたように大体この年末までには出したいということで、せっかく実は努力をいたしておる最中でございます。しかしそのときも申し上げましたように、実は防衛考える会が報告書をまとめるにつきまして時間を要しましたものでございますから、せっかくまとめました防衛白書というものを参考にしながらポスト四次防を考えていくということでなければならないと思いましたので、若干そこにずれが参ったわけでございます。その意味合いにおきまして、せっかく本年中ということでやっております。あるいはできるかもわかりませんが、しかしながら場合によっては来年に持ち越さざるを得ない。しかし来年と申しましても、来年の早々には出したいというふうに考えておるわけでございます。かなり進んでおります。
  217. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛局長さんにお伺いしますが、内容についてはどうですか。
  218. 玉木清司

    ○玉木政府委員 内容につきましては、大体、国の安全保障から見ました国際環境がどうなっておるか、あるいはわが国のとるべき安全保障の基本的な方向、あるいは今後のわが国防衛のあり方、そういうような基本的な問題を取り上げました総論部分と、それから自衛隊の現状と自衛隊が現在抱えておりますさまざまな課題、それを国民に報告するという趣旨から編さんいたします実情報告の各論部分、こういうもので編さんしよう、こういうことでつくっております。
  219. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは昭和四十五年の十月に出した「日本防衛」ですけれども、この内容については、出された途端に、国民に押しつける、あるいは大変に説教調であるというような批判が出てきたわけでありますけれども、そういう点について十分に御配慮された上において今度の国防白書が出されるのかどうか。これと全く同じようなシステムで出されるのか。その反省を含めてお出しになっているのかどうか。その点についてはいかがでしょうか。
  220. 坂田道太

    坂田国務大臣 四十五年に出されました防衛白書を十分読みまして、そしてそのメリット、デメリットいろいろ検討いたしました。その反省の上に立って実は今度の防衛白書を出したいというふうに進めております。それから文章等にいたしましても、やはりこれは国民の方々に読みやすくしてあげるということが必要だというふうに思います。それから防衛庁で使っておりまする特殊の言葉、デフィニション、概念というものが非常にわかりにくい部面がございます。こういうようなことについても注等をつけまして、そしてわかりやすくしたらどうかということでただいま進めておるようなわけでございます。
  221. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛予算は毎年一兆円以上の防衛予算を組んでいるわけでありますから、そういう意味において、国民に広くその内容、使途、用途、目的、そういうものを報告する義務が私はあろうかと思うのですね。そういう意味から言いまして毎国会お出しになられるおつもりであるかどうか。  それからもう一つは、国防会議にやはりかけるべきではないのだろうか。国防会議にこういうものができましたということをやはりしなくてはならない。ただ単に防衛庁でできたものをほんと出すというのではなくて、少なくとも、出していいかどうかという問題について、それを国防会議にお出しになるべきではないかと思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  222. 坂田道太

    坂田国務大臣 私といたしましては、確かに国防白書というものは、日本人の一人一人に対しまして防衛考え、あるいは安全保障考え一つの資料にいたしたいというふうに思っておりますし、特に日本の特殊の憲法を持っておるということについて、その制約等もはっきりさせなければいけない、あるいは他国に脅威を与えないとか、あるいははなはだしく民生を圧迫しないというような点も踏まえまして、日本国の国民が第一義でございますが、同時にまた周辺諸地域に対しましても、日本防衛政策がどういうものであるかということをはっきり認識していただくということが、私は非常に大切だというふうに考えておるわけでございます。また、国防会議に諮る、審議のあれにはなってないそうでございますけれども、しかし私はこれはやはり報告をすべきものであるというふうに考えております。
  223. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういうふうにして国防会議をあなたは活発に活用し、そして国民合意を得ようというのですから、少なくとも、こういう問題ができたのであって、防衛庁としてこういうことを発表していいかどうか、それはやはりその中において判断をしてもらうということが正しい方向じゃないだろうか、こう思うわけであります。  次に、この中に実は防衛について三つのことを考えておる。一つは、防衛庁長官が言われているのは、国を守る気概と抵抗という問題を出されております。それからもう一つは、憲法の制約のもとにあっても必要最小限度の防衛力ということを言っておられますね。もう一つは、核の脅威あるいは大規模の侵略に対して日米安保条約による、こういうことをこの中に言われているわけでありますけれども、そうなりますと、従来の防衛構想は小規模な侵略に対してはわが国は独力で戦うということであったのが、これが今度は、核の脅威については当然日米安保条約に頼るということでありますけれども、大規模の侵略に対しても同じく日米安保条約に頼る。こうなりますと、中規模の侵略に対してはどうなんでしょうか。
  224. 丸山昂

    丸山政府委員 在来考えておりました考え方は、この四次防の防衛構想その他にも出ておりますように、通常兵器による局地戦以下の事態に対処する、こういう言葉を用いて表現をしておるわけでございます。今度の第二次の長官指示におきましては、限定的な侵略事態という表現を用いておりますが、考え方は大体同じ考え方でございます。と申しますのは、局地戦という言葉によって表現される意味が必ずしも正確に受け取られていないという実態を踏まえてでございますが、御案内のように局地戦という言葉は、全世界的な規模で行われます全面戦争に対処する、それに対決した考え方、地域的な限定を含めて考えられるものでございまして、日本の場合に局地戦と申しますと、日本全体が影響を受けるというような侵略事態もやはり局地戦という形で表現されることになるかと思うのでございます。日本の地域を特定の地域に分けまして、たとえば北海道地域、こういったところが局地戦というような受け取り方をする向きもございますので、そういった意味では、局地戦という言葉でなしに、限定的な侵略事態ということで表現をする。  そこで本来、ただいま先生から御指摘ありましたように、小規模、大規模、中規模というような非常に観念的な分け方でございますけれども、こういう分け方をいたしますと、日米安保条約が終始抑止力を働かしているということを前提といたして考えますと、日本に米軍が駐留しておるということを前提といたしますと、大規模な侵略事態ということは、それ自体アメリカとの直接の対決を覚悟しなければならないということであるがゆえに、大規模な侵略事態というものは抑止されるという考え方一つあるわけでございます。それで今度の新しい構想、第二次で長官の出されましたいわゆる常備防衛力あるいは基盤的なものという考え方は、まずそれ自体において小規模の侵略事態には対処できる能力を持ちたいというのが大きなねらいでございます。それは、前提といたしましては、いまのような周辺の情勢というものが引き続き今後も見通し得るということ、それから安保条約が有効に働くという事態が不変であるということ、こういうことがそれぞれの前提になるかと思うわけでございますが、その場合に、小規模以上の事態、いわゆる先生のただいま御指摘のありました中規模の事態というものが起きた場合にはどうするかということで、今度の防衛計画を立てます前提としては、まず中規模の事態は起きないということ、この間において起きないというのが一つの大きな前提になっておるわけでございます。もし情勢が変わって、中規模の侵略事態というものが起きるというような情勢の変化がありました場合には、いまの基盤防衛力というものを基礎にいたしまして、これに対応できる防衛力にまでこれを拡充整備するということが必要になってまいるわけでございます。  今度の基盤防衛力はそういった事態に十分対応できるように、いわゆる中規模侵略というものに対処できる能力を整備できるその基礎的なもの、これをひとつ基盤防衛力において整備をしてまいる、こういう考え方でございまして、この防衛力整備を行います見通し得る近い将来において、小規模侵略事態を超える事態というものはまず起こらない、また起こさないように、政治その他の面において十分の措置をとるということが前提になっておるわけでございまして、くどいようでございますが、もしそういう事態が発生する可能性が出てまいりました場合には、いまの基盤防衛力を基礎にして、それに対応できる防衛力に拡充をするということがその根底にあるわけでございます。
  225. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 何だかわからないことになりますよ。小規模に対応するというのが従来の防衛構想であったわけですね。一つは、防衛構想でありますとこう書いてありまして、従来の防衛構想は小規模な侵略に対してわが国は独力で戦う、こういう考え方であったでしょう。ところが今度の場合は、核のそれに対する脅威に対しては当然これはもう日米安保条約でやるし、それから同時に、大規模の侵略に対しては日米安保条約によるのだ、こうなりますと、小規模があって、大規模があって、中規模がないなんて、そういうふうな防衛構想というのは非常にナンセンスだと私は思うのです。いまあなたがおっしゃったように、小規模の侵略というのは一定の地域、たとえば北海道、こういう考え方、あるいは小兵力で攻めてきたときの限定的な問題、これをあわせて小規模というふうに言ったわけですね。それよりも大きいものはやはり中規模ということですね。その中規模がないということであるならば防衛構想は成り立たないわけであって、そういうことから考えまして、私は、中規模まで、すなわち日本の国で守るのだ、中規模の侵略がもしあった場合には基盤防衛力をさらに拡充した上において守るのだ、そこまでは日本のいわゆる今度のポスト四次防においては当然やっていくのだということになるのじゃないかと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  226. 坂田道太

    坂田国務大臣 少し私が大ざっぱに言っているところがあるのだろうと思うのです。講演なんかでやっていますときには。というのは、三つのことを言って、その三番目に安保条約が非常に重要だということを申して、そして大規模と小規模としか言っていないものですから、中規模はどうするのだ、こういうことでございますが、厳密に申しますと、いま防衛局長が申し上げましたように、いま考えておりまする基盤防衛力の即応力というのは、日米安保という抑止力がきいている限りにおいては生起すべき侵略の事態というものは限定的な小規模の侵略事態なんだ、しかし、それ以上については独力でというわけにはなかなかいかないのだ、こういう意味のことを申し上げておるつもりでございます。でございますから、今度の長官指示につきましては、それは非常に明確に出ているのじゃないかというふうに御理解いただきたいと思います。  私が講演等で申しますのは、抵抗意思、必要最小限の防衛力、そして安保条約、この三つを言うために、国民の方々にわかりやすく説明するために、たとえば核攻撃や大規模についてはやはり安保条約がなければ独力ではやれません、こういうことを申しておるわけでございます。
  227. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカ軍の韓国駐留については、南北の軍事的バランスは通常兵器によるバランス・オブ・パワーによっているとシュレジンジャー長官があなたに言明されたと言いますけれども、具体的にはどのようなバランス・オブ・パワーなんでしょうか。
  228. 坂田道太

    坂田国務大臣 この点については、私はそのことを十分心得ながら聞いたつもりでございますが、南北の軍事的対峙があるけれども、これに対してアメリカ軍のプレゼンスが均衡がある。つまり、戦争を引き起こさない意味における軍事的均衡というものは通常兵力のみで可能ですかという質問をいたしたわけでございます。それに対して、そのとおりでございますということでございました。
  229. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、韓国において戦術核が配備されておりますけれどもアメリカにおいても韓国の戦術核については非常に危険であるから取り払え、そういうような世論もありますし、また、わが国においても、非核三原則において核兵器についてはそれなりの考え方、姿勢を持っておるわけでありますから、当然通常兵器におけるところのバランス・オブ・パワーであるならば、核兵器は取り除いた方がいいというふうに御進言なさったらいかがでしょうか。
  230. 坂田道太

    坂田国務大臣 そこまでは私は申し上げなかったわけでございます。つまり、私が聞きました真意は、通常兵器をもってしても侵略事態に対処できるか、そのとおりだ、こういうことでございまして、恐らくそういうことだと思います。しかし現実に、言明によるならば、戦術核等を配備しておるということも言明しておることでございますから、しかし、それに対することはこちらも承知してのことでございます。したがいまして、それを裏を返すならば、アメリカ軍としては通常兵器のみをもって対処できるのだという確信を述べたものだというふうに私は承知したわけであります。
  231. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから、通常兵器によってバランスが保たれているというわけですから、核兵器なんて危険なものを何も韓国に置く必要はないだろう、アメリカの方だってそういう世論もあるし、日本の方だって非核三原則があるわけですから、そういう問題について、そのときすかさず防衛庁長官が、それであるならば日本国民の世論的なものもあるし、核兵器というものは韓国から取り除いていただくような方向を示唆をしていくべきではないかと私は思うのです。少なくとも非核三原則がある日本の姿勢としてはそうなくてはならないはずだ、こう思うわけですけれども、これはこれでいいでしょう。  そして、シュレジンジャーが言ったことに、北朝鮮に対する中ソの態度について、いずれも抑制的に働いているというふうに考えているけれども、その態度の違いについても触れられたが、どういう内容であったか。態度について違いがある。中ソが抑止的に働いている。中ソがいわゆる北朝鮮に対して戦争を起こさないような抑止的な働きをしているけれども、その中ソとの関係が非常に微妙であって違いがある、そういうことまで触れられたというふうにあなたは言われておりますが、そういうふうな細かいことをきょうはひとつ聞かしていただくということでどうでしょうか。
  232. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは、中国につきましては確かに抑制的に働いたというような意味のことを申しました。ただソ連につきましては、世界の戦略的な軍事バランスを壊し得る唯一のものはソ連だというような表現をいたしております。その他いろいろございますけれども、それはお許しをいただきたいと思いますが、そういうことは申し上げていいことだというふうに思っております。
  233. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなた、こういう講演にはなかなか大胆におっしゃっておられるが、大胆であるならば、やはり国民の中にそういう細かいことまでお聞かせ願えるかと思ったら、案外とこういう国会答弁においては御遠慮されておるようでありますから、それ以上に話を進めることは無理でしょうから、一応その点はあれしまして、ポスト四次防の件についてですけれども、昭和四十八年の二月に、平和時の防衛力という成案を得て国会に提出されたわけでありますけれども、事情によりまして白紙撤回されました。しかし、防衛庁はその平和時の防衛力というものは非常に重要な参考資料として研究を続けてこられたというわけでありますけれども、ポスト四次防の防衛構想はこれを参考としておつくりになるのでしょうか。
  234. 丸山昂

    丸山政府委員 平和時の防衛力につきましては、もうくどく申し上げる必要はないと思いますが、先生御承知のとおりの経緯でございまして、あそこに平和時という概念規定がございますけれども、要するに現在日本をめぐる国際情勢と申しますか極東情勢と申しますか、こういったものが現在の状態でそのままずっと推移するというようなものを、いわゆるあそこで言う特殊な言葉でございますが、平和時という言葉で表現をしておるのでございまして、そういった意味におきましては、いままでのものと、これから考えておりますポスト四次防の考え方というものとは基本的にそう大きく違ったものではないというふうに考えるわけでございますし、この新しい考え方が出てまいりましたのは突如として出てまいったのではなくて、そういう平和時の防衛力、そういった各種のいままでの研究の積み重ねの上に、つまりそれの延長線上に一つ発展してきた考え方というふうに申し上げてよろしいんじゃないかというふうに思うわけでございます。
  235. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ポスト四次防について、前々から防衛庁長官が、十年間の見通しをつけた上に云々というようなお話も私聞いたわけでありますけれども、ポスト四次防の当面十年の見通しをどのようにお考えになっていましょうか。
  236. 坂田道太

    坂田国務大臣 私がどこかで、あるいは十年ということをちょっと口に出したかもしれませんが、当面はやはり五年ぐらいのことを実は考えておるわけでございまして、この五年というのは、朝鮮半島等におきまして多少の危険は残るといたしましても、デタントの基調というものは五カ年の間には変わるまいという一つの国際情勢の認識の上に立っておるわけでございます。しかしながら、その五年以降を策定いたしますにつきましても、これは単に国際情勢だけではなくて、経済その他いろいろなこともやはり十年くらいを考えて、その中で五年というふうに考えなければいけないのじゃないかということで十年ということをあるいは申したと記憶をいたしております。
  237. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、いろいろの考え方が実は出てくるわけですけれども考え方について一つお聞きしますけれども、ポスト四次防の当面十年の見通しというものは、ここに書いてあります。あなたがおっしゃったのだから、私それをもとにしてお話を申し上げておりますから、十年を見通すということは、大体十年は平和時である、そのように一応設定されているというふうに見てよいでしょうか。平和時である、大した、いろいろな脅威とか侵略とかそういうものはないと……。
  238. 坂田道太

    坂田国務大臣 基本的には大体そういうような方向だというふうに考えております。
  239. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういう見通しから、ポスト四次防は当面平和時十年間を見通して、そのうちの五カ年計画として、さらにその上に立って、後の五カ年は見直しをやりながら後半で煮詰めていくのか、あるいは十年の一つの見通しを立てながら、先ほど話があった平和時の防衛力のその線まで——上半期が五年でそして下半期が大体五年ぐらいの予定で、言うならば平和時の防衛力を達成していこうとされているのか、あるいは十年の見通しをつけながら毎年計画を立てていかれるのか、あるいはローリングシステムと言われているように、毎年見直しをするか、あるいは五年の間に二年と三年と立て分けて見直しをするのか、その点どうお考えになっておりましょうか。
  240. 坂田道太

    坂田国務大臣 その点がまさに、実を申しますと長官指示をやりまして、来年の三月ごろに一応各幕であるいは数量的なものも出てまいりましょうし、あるいは考え方も出てまいりましょうし、そういうものを踏んまえて、どういうふうに決めなければいけないかということでございまして、いま五年とも考えておりませんし、あるいは三年とも考えておりません。どういうふうに出てくるか、その出てきたぐあいを見まして、ひとつそれを考えていかなければいけないと思っております。非常に柔軟に考えておるわけでございます。  それで、むしろこれに対しましては先生方の御意見を当委員会におきましてお聞かせいただくということも非常に私たちとしてはありがたいことだというふうに考えておるわけでございます。ただ、五年は五年なりのメリットもございますが、しかしそれじゃローリング方式を一年一年でやっていくということがいいのか、あるいはそれを両方折衷したことで考えた方がいいのか、この辺はもう少し具体的なものが、数や量やあるいは考え方が出てまいりませんと、何とも実はまだ決めかねておるということでございます。それが率直な気持ちでございます。
  241. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ポスト四次防と言って、五次防と言わないですね。その違いがどこにあるかということが一つと、それから先ほど防衛庁に私は十年を見通して云々と言ったら、いや五年だ、そればこの議事録に載っているわけですから、五年計画であるというわけですね。この五年計画の扱いについて、それじゃ防衛局長さん、どういう考え方があるか、ひとつそれを述べていただきたいですね。五年計画だと、五年計画の中にこういう考え方があるという計画をひとつ述べてください。
  242. 丸山昂

    丸山政府委員 第一次の、四月に出ました長官指示では、これは作業それ自体は五カ年を目途とした作業、これを各幕それぞれ、各機関にも長官から命ぜられて、現在作業に取りかかっておるという状況でございます。  それで、前々からお話が出ておりますように、またいま先生からもいろいろ御示唆のお話があったわけでございますけれども、この固定的な五カ年の方式と——これはいままで一次防以来、一次防は実は三カ年計画であったわけでございますが、二次防以下は全部五カ年計画でずっと持ってまいってきております。それで、五カ年の固定方式というものをいままでとってまいりましたのはそれなりに十分意味があったわけでございます。と申しますのは、かねがね申しておりますように、わが国の現在の防衛力というのはゼロから出発しておる。装備その他は、当初はアメリカからの供与品が主体になっておりまして、途中から国産に切りかえて持ってきたというような事態もございまして、結局五カ年の固定方式という方式がいままでは一番よかったのではないか。と申しますのは、まず、財政当局も含めましてこの五カ年のはっきりした見通しを立てられるということ。したがって、まあ特にいろいろ批判の厳しい防衛費を逐次伸ばしてまいります過程においては、毎年の予算によってその都度決定されるということであってはなかなか防衛力の整備が進まなかったんではなかろうか。長期の見通しを立て、それによって財政計画もあわせて全般的な防衛計画をセットするということによって、まあ一応五カ年はひた走りに走れてまいったということであると思うのでございます。  ところで、ちょうどこの四次防までやってまいったわけでございますけれども、四次防自体は御案内のようにさんざんたるありさまでございまして、石油ショックあるいはインフレ、こういったことで実績は大変落ちてしまっておるわけでございますが、防衛力整備の方向としては一つの曲がり角に参ったというふうに私どもも判断をしておるわけでございます。  そこで、まず名称の問題でございますが、在来から言われております四次防の次の五次防というような表現で用いるかどうか、これは長官の最終的な御判断、それからなお最終的には閣議なりあるいは国防会議で御決定をいただくことでございますので、私ども事務当局といたしましては特別の考えは持っておりませんけれども、まあ在来の延長でないという意味合いで、やはり新しい名称が付せられることになるのではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。  それから、この固定方式にかわるいろいろな方式でございますが、これもいま先生からお話しございましたように、毎年の見直しをしていくいわゆるローリング方式と申しますか、これはアメリカそれからNATOの諸国では、たしかドイツであったかと思いますが、この方式を採用しているように承知をいたしております。これはそのかわり毎年四カ年の長期計画を後につけるわけでございます。四カ年の長期計画をつけてその来年度の予算を国会に提出をする、こういうことになります。この利点は、情勢の変化に対応するという柔軟性を確保できるという点において非常にいい利点があると思うわけでございますが、ただ、わが国のように防衛の整備の状態がいまのように非常に低い状態にあるもの、これからかなり思い切って整備をしてまいらなければならない問題がたくさんあるというところにおいて、果たして適当な方法であるかどうかという点についてはいろいろ問題があるように思うわけでございます。  それからあとは、結局この固定方式とローリング方式の折衷案というようなかっこうになるかと思いますが、二年の後に三年のあれをつけて全体として五カ年の長期計画というものをバックにして、最初の二年について予算化していく。もちろんこれはその年々で決めるわけでございますから、そのうちの二カ年について具体的に詰めていくというようなことになるかとも思いますし、それからまた、場合によっては三カ年ごとのローリング、三カ年でローリングをしていくというような方式、これは結局三カ年、三カ年で六カ年ということになるかと思いますが、そういうような方式もあるのではないかというふうに考えるわけでございまして、この折衷的な案になりますといろいろバリエーションがございますので、私が申し上げました以外にもいろいろな方法が考えられるようでございますが、いずれにいたしましても、こういった点については事務的にそれぞれのメリット、デメリットについても十分私どもの方で詰めて、それで最終的に政治的な御判断をいただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  243. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま、ポスト四次防ということについてはこれから検討になるけれども在来の名称は使わないだろうというお話であったわけですね。それは要するに名称が幾つかあると思うのですよ。これは恐らく国防会議で決定されなくちゃ決まらない問題ですけれども、具体的には大体どういうふうな名前か、たくさん挙げていただければ結構なんですけれども、まずそういうことをお聞きをすると同時に、このローリングシステム方式ですね、ローリングシステム方式にするにしても、少なくとも五カ年を見通した上において一応計画を練っていかれるわけですけれども、大体どれくらいの経済成長を見た上においていま作業に入っておられるか、その点について。
  244. 丸山昂

    丸山政府委員 まだ経済指標がはっきり示されておりませんので、私どもの現在の作業としては幅を持たせてその作業をやらせなければならないということでございまして、大体五ないし六%の成長率ということで考えておるわけでございますが、まだこの点について、作業結果が大変無理になるのかどうなるのかという点についての見きわめも、実は内局の方ではいまのところ皆目検討がつかないという状態でございまして、一応作業それ自体はただいま申し上げましたようなところでやらせておるという状態でございます。
  245. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 在来の名称でないというお話がありましたね、その点については。
  246. 丸山昂

    丸山政府委員 在来の名称というのは、つまりこの次、在来の言い方ですれば第五次防衛力整備計画というのが在来の考え方の上に立つものだと思うわけでございますが、それ以外のところでは、ただいま大臣からも御示唆がありましたが、新防衛力整備計画とかいろいろのことが考えられると思います。この辺につきましては、まだ私ども事務屋の段階でははっきりした案を持っておりませんので、大体その新防衛力整備計画というようなところが一案として考えられるところでございます。
  247. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 在来の一次防から四次防までは所要防衛論でしたね。あるいは脅威対抗論。これに対して今度の場合には基盤的防衛論ということなんですが、所要防衛論とか脅威対抗論というのは、基本的には抑止の姿勢であったわけですね。それが今度いわゆる基盤的防衛論となったのは、阻止力とか防止力とかそういうふうに変わったわけでありますけれども、これはどういうふうに違うのか、なぜそういうふうに変わったのか、またそれは防衛思想の変化したことによって変えたのか、あるいは防衛政策の中にどのように変わってくるのか、その点についてひとつ防衛局長……。
  248. 丸山昂

    丸山政府委員 在来所要防衛力という言葉も、実はこれは公式に使われておる言葉ではございませんで、この防衛力整備の目標として一次防から四次防を通じて考えられておったもの、これを所要防衛力という言葉で説明するとすれば、いわゆる各種の限定的な侵略事態に対しておおむね対処できる力、防衛力、こういう考え方、これがいわゆる所要防衛力ということになるかと思うわけでございます。  で、この前に、四次防までに抑止力という考え方があって、そして今度は防止力とか阻止力という言葉で説明をしておるのはその間に防衛に関する思想の転換があったのか、こういう御質問でございますけれども、在来から抑止力という考え方はとっておりません。いままでの国防の基本方針にいたしましても四次防にいたしましても、これらは皆すべて侵略を未然に防止するという言葉をずっと使ってきておるわけでございます。それから、抑止力というのはアメリカの核抑止力に依存するということで、そういう面においては抑止力という言葉を使っておるわけでございます。  これは定着した考え方ではございませんけれども抑止力、デタレンスという言葉それ自体は、相手方に恐怖を与える、脅威を与えるということによって侵略を思いとどまらせるという機能があるわけでございまして、核の場合にはまさに核の抑止力ということがそのままぴたりと当てはまると思うのでございますが、わが国防衛力は、憲法の定めるところによりまして外国に脅威を与えないものである。つまり外国に攻め入っていくという能力を全く持ってない自衛力でございますから、これに抑止力という言葉を当てはめることは必ずしも適当でないというふうに考えるわけでございまして、これは在来から、一次防からずっと通じてそういう考え方を持っておるのでございます。  しからば日本のようなこういう特殊な自衛力というものは、じゃ力を表現する場合に一体何と表現したらいいのかということでございますが、それを防止力とか阻止力とかいろいろな言葉で言われておりますが、これも必ずしも私どもの中で、またごく専門的な立場から見た場合には適当な言葉ではないので、実は新しい意義づけと申しますか、こういった点については定着した物の言い方、表現の仕方というところは現在ございません。  重ねて申し上げますが、第一次防衛力整備計画からずっと現在まで参りました基礎的、基本的な防衛力整備についての考え方、この点については思想に何らの変化はございません。前々から一貫して同じ考え方でずっと参っておるということでございます。
  249. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ポスト四次防の主要な装備、あるいは航空機、艦艇、各種ミサイル、あるいは戦車、この構想について非常に程度の高いものを少数と、あるいはそれほどよくなくても安いものを多数というようなハイ・ロー・ミックス構想というものも考えられておるようですけれども、具体的にはどういうことなんでしょうか。——装備局長ですか、防衛局長ですか。
  250. 丸山昂

    丸山政府委員 実はこの点もただいま長官指示で作業中でございますので、各幕からどういう考え方が上がってくるかということによって申し上げざるを得ませんので、私どもの現在の段階においては具体的にどういうものになるかということはちょっとむずかしいと思いますが、ただいわゆるハイ・ロー・ミックスという物の考え方、これは私は原則的には非常に結構な考え方だと思います。要するに経費対効果という面から考えて合理的な配分、それぞれの兵器における性能の優劣を踏まえてバランスのとれたものをやっていくということについては、基本的には結構なことだと思うわけでございますが、さて具体的にどういうところにこういう考え方を導入するかということになると、なかなかむずかしい問題があるように思われるわけでございます。たとえばFXについて、F16と14、15というようなものとのハイ・ロー・ミックスを考えたらどうかというお考えが、前に一度大出先生からもそういうお話が出たわけでございますが、ただ日本の場合、こういう特に狭い国で、全体の機数がきわめて少ないということが予想されるわけでございますが、その中でハイ・ロー・ミックスをやるということがどれだけのメリットがあるのだろうかというような問題もあるわけでございまして、こういう点については、航空機自体にいたしましても、いま申しましたように、別にFの14、15、16ということにしぼられておるわけではございませんが、仮にそれだけの中でのハイ・ロー・ミックスを考えましてもなかなかむずかしい問題がたくさんあるように思われるわけでございます。しかしながら、一般的な考え方としては、ハイ・ロー・ミックスという考え方も十分取り入れて検討をしていくべきであるというふうに基本的には私どもそう考えておりますし、各幕にもそういう物の考え方によってそれぞれの装備体系、兵器体系というものを見直しをしてもらうように指示をしてございますので、何らか具体的な案が上がってくるということを期待をいたしておるわけでございます。
  251. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、少し安保の第五条についてお聞きしてまいりますけれども有事における日米防衛分担について、来年の一月の中旬にも合意をして発足させる構想がすでに報じられております。その新協議機関での議題構成メンバー等は、これまでの日米間の非公式折衝で基本的に合意をされたと言われておりますけれども、その具体的な事実関係はどうなっていますでしょうか。
  252. 丸山昂

    丸山政府委員 私の方からお答えを申し上げます。  成案ができておりまして、もうすでに日米間で非公式に交渉が始まっているようなお話が伝わっておりますけれども、事実はまだ私ども外務省との間において問題を詰めておる段階でございまして、もちろん政府としての最終的な案ができ上がっておるわけではございませんし、またアメリカとの間におきましては、公式にも非公式にもまだ折衝に入っておらないというのが事実でございます。
  253. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、まだ非公式にも合意ができていない、こういうことなんですが、伝えられるところかなり詳しい内容が報じられているわけでありますけれども、大体来年のいつごろ新しい協議機関において初めての会合が持たれる予定でしょうか。
  254. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この新しい研究協議機関につきましては、八月の総理等が訪米されましたときの共同新聞発表でも若干触れておりまして、その後八月の末の坂田防衛庁長官シュレジンジャー当時の国防長官との間のお話し合いでも出たわけでございますが、安保協議委員会の枠内でこれを設置するということになっております。したがいまして、次の安保協議委員会が開かれますときに、この問題についてアメリカ側話し合いまして設立を決定いたしたいと考えております。ただ、いつこれを開きますかということにつきましては、先ほどから防衛局長から御答弁がございましたように、まだ政府部内で検討中でございまして、またアメリカ側とも話し合っておりませんので、いつ次の安保協議委員会を開くかということは決めておりません。アメリカ側とも話し合っておらない次第でございます。
  255. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本政府考え方もそれなりに固まってきていると思いますけれども、新機関の名称についてはお互いに話し合った上において決めると思うわけでありますけれども協議事項ですが、これについては五条におとどめなのか、それとも六条まで入るのか、その点をお聞きしたいと思います。  それから権限及び運営方針、日本側は日本側の考え方をもうまとめておられると思いますけれども、その点についてはどうなんでしょうか。
  256. 丸山昂

    丸山政府委員 協議内容でございますが、これは在来から申し上げておりますように、本件に関しましては有事におきます日米共同対処の大綱を決めるということから物事を発しておるわけでございます。そういう意味で、ただいま先生御指摘のように、第五条の日本に対して武力侵略があった場合に日米が共同してこれに対処するということで、これが一つの軸になるわけでございますが、もともとこういった問題が発生をいたしました根本にさかのぼって考えてみますと、いわゆる日米安保条約というものが円滑に運用をされるという、要するに中身が具体化されるということによって、安保条約それ自身の持っております抑止の効果というものがそれだけ高まってくるということに基本的な問題はあるわけでございます。もちろん有事における問題を十分詰めておくということは、これはもうその中でも一番大事なことでございますが、安保条約の中に出ております日米防衛協力というのは必ずしもこの問題だけに限定されておるわけではないわけでございまして、アメリカ軍の基地使用その他の問題も含まれるのでございまして、したがって安保条約の円滑な運用とそして安保条約抑止効果を高めるという観点からは、幅広く日米の防御協力について具体的に話を進めてまいるということの方が望ましいのではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。
  257. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる日米共同防衛ということについてはこれは五条である、これは軸になる、しかし六条も一緒に協議委員会には相まって協議をされる内容である、このようにとっていいですか。
  258. 丸山昂

    丸山政府委員 五条、六条という区分けをして言いますと、五条ばかりではないということになると思いますが、私どもこの五条、六条という考え方よりは、安保条約の円滑な実施を具体化するということによって安保条約抑止効果を高める、そういうねらいから日米防衛協力全般について、いわゆる防衛サイドの問題でございますが、これについて両者において協議をする、こういうふうに考えておるわけでございます。
  259. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたは昭和五十年八月二十六日に私への答弁の中で、日米共同防衛というものは五条に限る、こうおっしゃっているじゃないですか。そうなると、六条も入れてやるということは、極東戦略の問題まで含めて、全部包括してやるのですか。これは問題ですよ。
  260. 丸山昂

    丸山政府委員 当時、先生の御質問に対して五条を考えておるというふうに申し上げておりましたのは、防衛庁の立場になりますとアメリカとの共同対処ということでございまして、自衛隊は、五条ないしは七十六条ということでないと自衛隊としての活動ができませんので、そのことを申し上げておるわけでございます。いまの五条の問題以外には、たとえば基地の使用というような問題はいわゆる五条に限定された問題ではないわけでございますが、こういった問題は必ずしも防衛庁だけの問題ではない。自衛隊の基地を使用するというような問題に関連をいたしました場合には、これはいわゆる六条の問題になってくるかと思いますが、防衛庁自体としては直接関係するという部門はきわめて狭いわけでございますけれども、必ずしも五条だけの問題に限定をしない方が、本来、最初から申し上げていますように、安保条約抑止効果を高めるという趣旨からは、幅広く問題を検討することが好ましいのではないかというふうに考えておるということでございます。
  261. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日米安保条約第六条に基づいてアメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用する問題については、「日本国の安全に寄与し、」この部分はさほどぼくは問題はないと思うのですけれども、「並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」とこう書いてあるわけでしょう。そうしますと、すべて六条というものをあなたがそれに加えて、今度のあれに入ってまいりますと、「並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」これまで全部入れ込んで、そして今度安保協議委員会下部機構である場所において討議をされるということになりますと、これは大変な枠組みを越すことになるわけですよ。だからこそここで言いますように、先ほどフォードドクトリン日本協力が必須であるということがこういうところに絡んできているんじゃないのですか。少なくとも、私は安保五条に基づいてこれを処理をしていかなければならないというふうに思っているわけですけれども、それまで絡まして、大きく、日本の国はアジアにおけるすべての主導権あるいはアメリカ協力を約束するなんというそんな危険なことは許された問題じゃないですよ。その点について、安保五条を中心にするが安保六条もと言うけれども安保五条と六条を入れればやはりそこに大きな問題があるわけであって、この条約の中にはこういうことが書いてあるわけですから、その点についてどうもすっきりしないのですが、もう一度御答弁願いたい。
  262. 丸山昂

    丸山政府委員 六条にも出ておりますように「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持」ということになっておるわけでございまして、私どもの立場はあくまでも日本の安全を保つということ、これが主で考えておるわけでございます。したがいまして、ここに出ておりますのは、まあ日本の安全に寄与し、そして極東の安全にも寄与する、つまり日本の安全ということが第一義に考えられる、こういう場合が私どもの立場と合致するのではないかというふうに考えるわけでございます。したがいまして、五条か六条かということになりますと、六条にも、日本の安全に寄与するということにおいて六条の規定が存するわけでございまして、そういった意味においては当然この六条も関連をしてくるというふうに考えるわけでございます。
  263. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 六条において、日本の国の安全に寄与するということで関係してくる、それはまあ、そのとおりでしょう。しかし、「並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」という、そこは全然関連してきませんか。その点、はっきりしてください。
  264. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この防衛協力の問題は、ちょっともとへ戻って考えてみたいと思うわけでございますけれども、八月六日の日米共同新聞発表におきまして三木総理フォード大統領は、安保条約の円滑かつ効果的な運用のために一瞬密接な協議を行うことが望ましいことを認めて、両国が協力してとるべき措置につき、日米関係当局者が安保協議委員会の枠内で協議を行うことに同意した、こういうことになっておるわけでございまして、まさに安保条約のもとにおける協力ということでございます。そして安保条約は、その前文において響いてございますように、日米「両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有する」ということを表明しておるわけでございます。われわれといたしましては、もちろんこの安保条約というものは日本の安全を守るということが主眼でございますけれども、しかし、日本の安全というものはそれ自体だけで守られるものではなくて、極東の、平和と安全に密接に関連しておるということを認識しておるわけでございまして、そういう観点からこの防衛協力というものは考えてまいらなければならないだろうということだと存じます。
  265. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は納得しかねる問題でありますけれども、そんなことばかりしておったら先へ進みませんので次へ進みますが、第五条の日米共同防衛関係、これについては第五条は「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」こう書いてあるわけでありますけれども、「日本国の施政の下にある領域」の解釈についてはどうなんでしょうか。
  266. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 ちょっと御質問趣旨を私、十分理解いたさなかったのかもしれませんが「日本国の施政の下にある領域」というのは、もちろん日本の行政権の及ぶ範囲ということでございます。
  267. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 なぜ私がこれをお聞きするかといいますと、やはりこの条約は逐条的に詰めておかなければならない問題であるので、そういうことで、わかり切ったことではあろうけれどもお聞きしているわけです。  「いずれか一方に対する武力攻撃」の解釈についてはどうなんですか。
  268. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 「いずれか一方」と言っておるわけでございますから、日本または米国ということでございまして、日本に対する武力攻撃というものは、もちろん日本国内で起こればそれが第五条の発動である。さらに「日本国の施政の下にある領域」でございますから、日本領域にある米軍に攻撃があった場合にはこれが第五条の発動となる、こういうことでございます。
  269. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 次には、「自国の憲法上の規定及び手続に従って」の解釈についてはどういうことでしょうか。
  270. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 これは、その後に出てまいりますように「共通の危険に対処するように行動する」わけでございますが、その行動するに当たって、日本日本の憲法上の規定及び手続に従って行う、アメリカアメリカで米国憲法の規定及び手続に従って行う、こういうことでございます。
  271. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、日米それぞれの自衛権の発動の要件についてお聞きしたいわけでありますけれどもわが国の自衛権の発動の要件はどういうものがございましょうか。
  272. 丸山昂

    丸山政府委員 自衛権の発動の要件は三つあると言われておるわけでございます。一つはその侵害それ自体が急迫不正の侵害である。それからわが方がこれに対して自衛権を発動する以外に他に方法がないということでございます。それから第三番目はその発動はあくまでも必要最小限度にとどめるということでございます。
  273. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 自衛権の発動はこの三要件に該当する場合だけに限る、このように判断してよろしゅうございましょうか。
  274. 丸山昂

    丸山政府委員 そのように判断してよろしいかと思います。
  275. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 米軍の自衛権発動の要件は何でしょうか。
  276. 丸山昂

    丸山政府委員 私からお答え申し上げます。  国連憲章の五十一条によりまして、侵略に対する集団自衛権並びに個別自衛権の発動ということがアメリカの場合の要件というふうに考えられます。
  277. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 在日米軍はわが国の主権を無視して自由に自衛権を行使することができるのかどうか。
  278. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 わが国の主権を無視して自衛権を発動するということはちょっと考えられない事態でございまして、この安保条約は両国がそれぞれ持っております自衛権に基づいて結んだ厳粛なる約束でございますから、この約束の範囲内において米軍が自衛権を発動するということでございます。
  279. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃお聞きしますけれども、在日米軍の自衛権の発動とわが国の自衛権発動の三つの要件との関連はどういうふうになるのか。その点はどうなんでしょうか。——それじゃ、おわかりにならないと思いますから、もう少し具体的に言いましょう。在日米軍の自衛権の発動は、わが国の自衛権発動の三つの要件との関連に対して、それがかぶってくるのか、あるいは準拠するのか、あるいは独自になるのか、その点をお聞きすればいいでしょう。
  280. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 ちょっと御質問意味が私も十分理解できないんですが、少なくともアメリカは集団的自衛権というものを持っておるわけでございますが、私どもの憲法の解釈から言えば、わが国はいわゆる集団的自衛権を持っておりませんから、その辺が非常に違うということを御指摘になっての御質問であれば、まさにその点が違うということになると思います。
  281. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、日本の国のいわゆる自衛権発動の先ほど話があった三要件について、在日米軍とは全然関係がないのかどうか、あるいはそれに対して日本の三要件はかぶってくるのか、あるいは準拠してくるのか、その点はどうなのかということを聞いているのですよ。
  282. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 わが国の自衛権の三要件は、まさにわが国の自衛権の三要件でございますから、そういう意味では、かぶっていくというのか、アメリカの自衛権にかぶっていくということはあり得ないと思います。ただ、もし先生の御質問が、たとえば自衛隊が出動するときにはアメリカは必ず出動するのかとか、アメリカが出動するときには自衛隊が必ず出動するのかとか、そういう御質問でしたら、また別のお答えができると思います。
  283. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その次の、自衛権行使の前提要件としての急迫不正の侵害についての認定は、日米それぞれ行うのか、日米間に一致した合意が必要であるのか、それはどういう機関でなされるのか、その点についてはいかがですか。
  284. 丸山昂

    丸山政府委員 そこで、この第五条にまさしく「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め」、こうなっておるのでございます。したがいまして、急迫不正の侵害であるかどうかということは、わが国は総理がお認めになるということになるわけでございますが、アメリカはこの条項に基づいてアメリカが判断をするということになるかと思うわけでございます。
  285. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、急迫不正の侵害については、それは急迫不正の侵害である、このように日本日本でそれを判断し、アメリカアメリカで判断をする、こういうことですか。そうしますと、日米間に急迫の不正の侵害については全然別々の判断に立つ、こういうわけですね。     〔木野委員長代理退席、委員長着席〕
  286. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 自衛権の解釈として先ほどから防衛庁政府委員の方から説明があるわけでございますが、日米関係において考えますときは、あくまで安保条約五条の問題として考えるわけでございまして、それによれば、第五条に規定しておりますように、「いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め」、その認めるに当たって日米がもちろん相談することはあると思いますが、その共通の認識がまずでき上がって、その上で行動というものが出てくるわけでございます。
  287. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうすると、いまの防衛局長と違うじゃないですか。片一方は、アメリカアメリカでやる、日本日本でやる、こういうお話でしょう。片一方の方は、いろいろ御相談をした上において、そうして行動は一緒になる、こういうお話ですが、その点はどうなんですか、違うのじゃないですか。
  288. 丸山昂

    丸山政府委員 わが国に対する武力侵害につきましては、御案内のように自衛隊法の七十六条もあるわけでございまして、これが急迫不正の侵害であるかどうかという判断は、日本が独自にやるわけでございます。ここの安保五条の適用をするか否かということについて、いまアメリカ局長が申し上げましたように、日米相互において協議の結果これを適用するかどうかということを決める、こういうことであるというふうに思うわけでございます。
  289. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 自衛権行使の前提要件として、いずれか一方に対する武力攻撃の発生という時点というのは、現実に侵略攻撃が行われた場合に限定するのか、あるいは武力攻撃のおそれのある場合も含まれるのか、これはどうですか。
  290. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 従来から、この点につきましては、現実に武力攻撃があった場合というふうに解釈しております。
  291. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 在日米軍基地あるいは米軍のみに限定された攻撃があった場合、それは常にわが国の侵略とみなされるかどうか。その点についてはどうでしょうか。
  292. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 在日米軍基地に限定した攻撃でありましても、日本国の施政のもとにおける日本に対する武力攻撃と考えられますので、これは第五条の発動の問題となると思います。
  293. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 領域外の公海、公空における米軍の艦船に対する攻撃と、五条の発動時における日米のそれぞれの対応の仕方は、どういうふうになるのでしょうか。
  294. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 御趣旨が領海外における米軍艦船に対する攻撃でございますれば、第五条の趣旨からいたしまして、その適用はないものと考えます。
  295. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、第五条の発動はアメリカの艦船を守る義務はない、このように考えてよろしゅうございましょうか。
  296. 丸山昂

    丸山政府委員 ただいまの御質問の前提は領海外でございますか。
  297. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうです。
  298. 丸山昂

    丸山政府委員 領海外におきましては、アメリカの艦船を守る義務はございません。
  299. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それではさらに念を押しておきますけれども、公海上におけるアメリカの船舶について、海上自衛隊として船団護衛はしなくてもよい、このように判断してよろしゅうございますか。
  300. 丸山昂

    丸山政府委員 もちろんアメリカの艦船に対する船団護衛ということは考えておりませんし、またその責任はないものと思っております。
  301. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たとえばシーレーンの千海里以内、あるいは警備区域の数百海里以内においてもそういうことは必要ない、このように判断してよろしいでしょうか。
  302. 丸山昂

    丸山政府委員 アメリカの軍用の艦船、これはそれ自体対潜能力を持っておりますし、小さいものでも持っておるわけでございますから、もちろん当方がこれの海上交通保護に当たるという必要がないし、またその責任もないというふうに考えます。
  303. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 シーレーン千海里と周辺海域の数百海里、すなわち船団護衛と警備区域の根拠は何になっておるのでしょうか。すなわち、それは能力であるのか、行動上の限界なのか。
  304. 丸山昂

    丸山政府委員 これはかねがね申し上げておりますように能力上の問題でございます。わが海上自衛隊の能力を整備をいたします目標といたしまして、航路帯を設定いたします場合には約千マイルの航路帯を二本、それから周辺海域については約数百海里の地域において対潜活動あるいは海上交通保護の機能が果たせるようなものに育て上げたいということでございます。
  305. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 自衛隊法七十八条と安保五条の関係についてちょっとお聞きしますけれども、「命令による治安出動」の要件である「間接侵略その他の緊急事態」は、五条の発動の要件になり得るかどうか。
  306. 丸山昂

    丸山政府委員 両方の法律に絡んでおりますものですから、私からお答えいたします。  自衛隊法第三条の「直接侵略及び間接侵略」、これはまさに武力侵略そのものを指しておるわけでございまして、したがいまして、ここで言います「直接侵略」はもちろんでございますが、「間接侵略」は、安保条約第五条の武力侵略、これに該当するというふうに解釈をいたしております。  それから七十八条の「命令による治安出動」、ここに出ております「間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができない」、つまりこれは治安対象でございますので、七十八条の間接侵略はこの安保第五条の武力侵略には該当しない、こういうふうに解釈をしております。
  307. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 わが自衛隊安保五条の日本防衛に限定し、安保六条の極東地域についての防衛義務は直接的にも間接的にも関係がないと私は思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  308. 丸山昂

    丸山政府委員 御質問がちょっと……。
  309. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私も時間があるものですから、実は時間を見ながらやっているのですよ、聞くだけのことは聞かなくちゃならぬと思いまして。  わが国自衛隊は、安保五条の日本防衛に限定し、安保六条の極東地域についての防衛義務は直接的にも間接的にも全く関係がないと思うが、その点についてはどうなんでしょうかということです。
  310. 丸山昂

    丸山政府委員 六条の「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与」ということで、この点については、直接的にはもちろんでございますが、間接的にもないというふうに考えます。
  311. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 直接的にもないし間接的にもない。もう一度それじゃ……。
  312. 丸山昂

    丸山政府委員 自衛隊のこの七十六条等の武力行使でございますが、これはいま申し上げましたように、極東における平和及び安全の維持に寄与するというためには、直接的にも間接的にも関係がないというふうに思います。
  313. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五条発動下における日米それぞれの行動範囲の相違点についてちょっとお聞きしますけれどもわが国の自衛権による行動の範囲の極限はどこまで認められるのでしょうか。またアメリカの自衛権による行動の範囲はどこまで及ぶのでしょうか。その点についてお聞きします。
  314. 丸山昂

    丸山政府委員 わが国の場合の行動範囲は、憲法の解釈上、まず領海、領空を基本にいたしまして、その他必要な場合において公海、公空に及ぶこともあるということでございます。それからアメリカの場合には、日米安保条約によって日本の基地を使用して行動する範囲、これはやはり必要な範囲ということになるわけでございまして、必ずしも安保条約上の極東の範囲に限定されるものではないということは、在来から答弁されておるとおりでございます。
  315. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、日本の場合は領海、領空それから公海、公空であって、他国の領域への出動はあり得ない、こういうふうに判断してよろしゅうございましょうか。
  316. 丸山昂

    丸山政府委員 そのとおりでございます。
  317. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、日米それぞれの追跡権の範囲というのはどうなっていましょうか。どこまで追跡できますか。
  318. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 ただいまの御質問趣旨を私必ずしも的確に把握していないかもしれませんが、一般的には追跡権という概念は国際法上あるわけでございますけれども、領海、領域の中において違法行為があったという場合に、その取り締まりの観点から公海に追跡していって取り締まり管轄権を及ぼすことができるというのが、基本的な概念であると了解しております。  そこで、いまの御質問は、自衛権の発動される場合の追跡権の限界というものがどこにあるかということでございますけれども、これは一般論として自衛権という観点から物事を考えますと、御承知のごとく、侵略という行動があり、その侵略を排除するためにとられる行動が自衛権の発動としてあるわけでございます。その場合に、その行動の範囲というものは、その侵略を排除するために必要な限度ということがおのずから限界になってくるというふうに了解しているわけでございます。
  319. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、日本の場合においては、もちろん領海、領空はあたりまえですね。公海、公空まで及ぶわけですけれども、さらに相手方の国まで追跡をするという権利は与えられていないというふうに判断していいのでしょうか。それとも場合によっては相手方の国まで追跡権が及ぶ、こういうふうに判断すべきなんでしょうか。その点、そこのところが抜けているから話がわからないわけであります。
  320. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 国際法上の自衛権という観点から申しますならば、仮に、発生しました侵略を排除するために、外国の領域にまで行動が及ばなければその侵略を排除できないという場合には、その外国の領域に行動が及ぶことは許容されるというのが自衛権の本質であろうと思います。しかしながら、わが国の場合について具体的にこれを考えてみますると、先ほど防衛局長が答弁されましたように、自衛隊が外国の領域に行って行動することはないという基本方針があるわけでございます。したがって、わが国についての一つの特殊な事態というものがそこにあると思います。したがって、一般国際法上の自衛権の限界という観点から見ますと、外国の領域に及ぶことはあり得るわけでございますけれどもわが国自衛隊の場合にはその行動が外国の領域に及ぶことはないというふうに、私どもは了解しているわけでございます。
  321. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 いまの条約局長の答弁で大体尽きておりますけれどもわが国の憲法は特殊な憲法でございますから、その限りにおいて、通常海外派兵ができないとかいう言葉で申し上げているように、自衛隊が外国の領域まで出かけていくことはできないということになるわけです。  ただ、これも補足して申し上げますが、例の敵基地攻撃と自衛権の行使の範囲という有名な三十一年二月の衆議院内閣委員会における政府の見解というものはございますけれども、それを抜きにして考えれば、自衛隊が敵の基地まで攻撃することはあり得ないということになるわけでございます。
  322. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 少し問題を残したようなかっこうになってしまったのですけれども、時間もお約束の時間でありましょうから、これで質問を終わるわけでありますけれども、私ども防衛構想についてはそれぞれ見解を異にしておりますから、皆さん方と一緒の立場にはないわけでありますけれども、五条発動下における日米防衛分担話し合いの枠というのは、どこまでもあくまで五条に限定して、政府の言ういわゆる専守防衛という現在の防衛政策を拡大しないという歯どめをかけないと、安保体制の軍事的な強化あるいは自衛力の増強につながるような話し合いに深入りをして行く、非常に危険であるということを私は最後に申し上げておきたい。  先ほどからいろいろ私が次から次へとお聞きしましたことは、これからいわゆる新しい機関検討される安保五条の中の条約の解釈として重要な役割りをなしていくから私はいろいろ申し上げたわけでありますから、そういう点も踏まえてひとつお願いをしないといけないのじゃないか、私はそのように思うわけでありまして、あえてその点を提案をした次第でございます。  以上をもって私の質問を終わります。
  323. 藤尾正行

    藤尾委員長 上原康助君。  御質問に先立ちまして、山崎アメリカ局長から発言を求められておりますので、この際これを許します。山崎アメリカ局長
  324. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 十二月五日に開催されました本委員会において上原委員よりお尋ねのありました、事前協議の対象となるべき配置における重要な変更に該当する米軍の規模についてお答えいたします。  従来から申し上げておりますように、合衆国軍隊の配置における重要な変更とは、陸上部隊の場合は一個師団程度、空軍の場合はこれに相当するもの、海軍の場合は一機動部隊程度の配置の場合を言うことが、現行安保条約に関する日米双方の交渉当事者間で口頭により了解されております。なお、この了解は本年三月二十六日米側により再確認されております。  次に、合衆国軍隊は、陸、海、空軍いずれの軍についても、その任務、目的及び時点に応じ、具体的な規模、構成が異なるものであり、前に申し上げました配置における重要な変更に該当する各軍の具体的な規模、構成をあらかじめ一般的に申し上げることは困難な次第でございます。  しかしながら、合衆国軍隊の編成について現時点で当方が承知している範囲で申し上げますと、海軍につき典型的な場合として第七艦隊空母打撃部隊の場合は、タスクフォースと呼んでおりますが、一機動部隊は二ないし三のタスクグループより成り、各タスクグループは空母一隻に三ないし四隻の駆逐艦により構成されるものと承知しております。陸軍につきましては、たとえば機甲師団の場合と歩兵師団の場合とでは部隊の装備、編成に差があるようでありますが、一個師団は約一万五千名から二万名程度の兵員を有する部隊組織と考えられます。さらに空軍については、陸軍の一個師団に相当する航空師団とは、ウイング、通常これは航空団と訳しておりますが、二ないし三のウイングから成り、各ウイングは、これは通常飛行隊と訳しておりますが、二ないし三のスコードロンから構成されると承知しております。  以上、上原議員よりお尋ねのあった点についてお答え申し上げました次第でございます。
  325. 上原康助

    上原委員 いまお述べになったことは、これまで政府が答弁をしてきたこととさほど新味のないことなんです。新しい内容にはなっていないという点をまず指摘をしておきたいと思います。私が聞いたのは、これは私だけではなくして、これだけ安保条約の問題なり事前協議のことが議論をされながら、国民が納得できる内容になっていない。そのために、配置における重要な変更とか、あるいは装備の重要な変更、戦闘作戦行動、この事前協議の口頭了解覚書というもの、仮にそういうものがあるとするならば、その内容をもっと具体的に明らかにして、その上で議論をしなければいけないのじゃないのかというので、このことを指摘してきたわけですね。  そこで、いまも従来のように、陸軍は一個師団、あるいは空の場合はそれに相当する一個師団だ、そして海の場合は一機動部隊だ。そうしますと、それぞれ三つの態様があるわけですね。陸空海それぞれ一個師団に相当するものが来た場合なのか、三軍トータルして一個師団になったという場合でも対象になるのか、ここも不明なんですね。この点はどうなんですか。
  326. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 これは陸海空それぞれ別々に考えるべきものと考えます。
  327. 上原康助

    上原委員 そうなりますと、現実問題として、これは防衛局長でもいいが、現在の部隊の編成、戦略上、わが国に、平時であろうが有事であろうが、陸軍の一個師団というのは、いまおっしゃるように一万五千名から二万名程度だというのですが、それもどういう部隊なのか、歩兵部隊なのか、機甲部隊なのか、戦車大隊なのか、全然明らかにされていないわけですね。それぞれの部隊が一個師団ずつに相当するものでなければ事前協議の対象にならないというのでは、これは架空の話、余りにも現実離れしている問題なんですね。ここに国民は疑問を持っているわけですよ。いまアメリカ局長がおっしゃったようなことが戦略上あり得ますか。陸海空合わせた部隊の、フォースの能力じゃなくて、三軍それぞれ一個師団でなければいけないというような、こういうことでは私も納得できませんし、国民は絶対納得できませんよ、これは。したがって事前協議ということが幾ら議論をされてもすれ違いになっている。本当に防衛論争なり安保問題をやるというなら、こういう疑問に答えることが、国会議員の責務であり、また政府の当然の責務じゃないでしょうかね。防衛局長、その点、いまの答弁と関連して、実際にそういうことが平時にしても有事にしてもあり得ますか。
  328. 丸山昂

    丸山政府委員 ただいま日本には、陸の師団、実力部隊はおらないわけでございまして、空と海兵師団とでございます。それで、第七艦隊の例をとってみますと、いまアメリカ局長から御説明がありましたように、一タスクフォース、一機動部隊は、大体いまの時点では第七艦隊は攻撃型空母が三隻でございます。その三隻にそれぞれ大体三ないし四隻の駆逐艦がつきまして、タスクグループということになっておるわけでございます。  平時、この空母三隻が、全部そのタスクグループを入れて、いわゆる一タスクフォースとして日本に来ることが考え得るかというと、ふだんは考えることはちょっとむずかしいのではないかというふうに思います。しかしながら、有事の際に戦況がどのように展開するかということは、もう全然予測を許さないわけでございまして、一タスクフォースが日本に展開するということは、有事においては十分あり得ることであるというふうに考えるわけでございます。  それから陸海空そろってということでございますが、これはこの問題には直接関係しない問題だと思いますが、やはりそのときの情勢いかんによって考えておかなければならないことであるというふうに思います。平時においてはそのような事態が起きるということはまず考えられないことだと思います。
  329. 上原康助

    上原委員 これだけ議論するわけにまいりませんが、もうこれは聞いている方がやはり少しあきれますよね。あなた、まあ軍事問題を専門として一応やっておられるわけですが、最近の部隊の編成にしましても、あるいは仮にベトナム戦争のときだって、また言われている朝鮮半島の有事の際にしたって、主力になるのはいまは空と海ですよね、アメリカにしたって。もちろんそれは万々一を予測してということも一応は考えなければいけませんが、しかし、陸海空それぞれが一個師団に相当するものが配置をされることが事前協議の対象なんだということは、これは現実問題として絶対あり得ない。ここに安保条約の事前協議ということのごまかしがあるということだ、配置における重要な変更だけじゃなくして。そのことについて、もう少し現実的にマッチするような部隊の編成なり、あるいは協議の対象になり得るということであるならば、話は土台に乗るでしょう。しかし、いまのような御見解では、とてもじゃないがこのことに関する限り理解できません。  そこで、もう一つ重要なことは、これは条約局長でもいいし法制局でもいいのですが、安保条約の第六条に基づくいわゆる岸・ハーター取り決めという口頭覚書、藤山・マッカーサー書簡とよく言われている口頭了解——まあアメリカ側はそういうことはなかったんだということも現に指摘をされて、いや、確認したところがまたそういうことになっていますということ、これも非常に疑惑を持たれているわけですね。一体、文書もメモも何もない、取り交わしもしていないものが条約として、法律として効力を有するのかどうか、ここも国民はきわめて疑問を持っておるのですね。私は、むずかしい法律論をやるべき問題じゃないと思うのです。素朴な実感としてそう思っている。なるべく言質をとられたくない、あるいは野党は一生懸命そういうことをやろうとしているけれども、そこになお問題を複雑化して国民にはわかりにくい議論にしてしまっている。そういうことでなくして、きわめて重要なことが全然メモもなければ文書化もしていない。単なる口頭のゼントルマンズアグリーメントだったということだけで、果たして両国の重要な軍事的な取り決めとしての効力があるのかどうか。恐らくあると言うかもしれませんが、こういう国民の素朴な疑問、質問に対して、政府は一体どう答えていこうとするのか、お答えいただきたいと思うのです。
  330. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 一般論として申し上げますならば、条約が交渉されますときに、その条約の解釈ないし運用につきまして、両交渉当事者間で了解がなされる、合意がなされるということは間間あることでございます。その場合に、その了解ないし合意を文書によって確認するか、あるいは口頭で了解を確認するかという方式のい、ずれを選ぶかということは、そのときの交渉の状況その他によっておのずから決まってくるわけでございますが、この事前協議の問題に関しまして、当時の藤山外務大臣とマッカーサー・アメリカ大使との間で口頭によって了解されました内容につきましては、すでに政府が在来からも御説明しているところでございますけれども、この口頭による了解は両政府を法的に拘束するものというふうに私ども考えているわけでございます。これは、一般国際法上の問題といたしましても、口頭による了解ないし合意が両国あるいは両国政府を拘束するということは一般国際法上の原則でございまして、その点につきましては、私ども何らの疑いも持っていないわけでございます。
  331. 上原康助

    上原委員 これを文書化しなかった理由は、では何ですか。これは外務大臣からむしろお答えになった方がいいかもしれません。
  332. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 これはもともと条約第六条の、実施に関する交換公文というものに関する了解でございます。したがいまして、そういう交換公文の中身をさらに一応詰めておいたということでございますから、これはそういう口頭了解で十分であったというふうに当時の交渉当事者は考えたものと思いますし、また、いま条約局長から御答弁申し上げましたように、そういうものであってもそれなりに両国政府を拘束するものであると考えます。
  333. 上原康助

    上原委員 この件は、先ほど私が申し上げましたように、きょうの御見解でも、またそれに対する御答弁でも私は納得できませんし、国民も私の意見に賛成する方もたくさんいると思うのです。しかし、本当に皆さんが言ってきていることが事実かどうかは、必ず近い将来において明らかにされるものだと私は思うのです。こういう架空な、あるいは全然常識では考えられないような取り決めでもって、安保条約を律していこうというところに問題があるということ、これは配置の重要な変更の問題一つをとらえてみてもそうです。  そこで、ここだけにかかわっているわけにはいきませんので議論を進めますが、もう一つ戦闘作戦行動の問題についても、私はマヤゲス号の場合も具体的な例を挙げて質問をいたしましたが、それは該当しないんだということで、いろいろ理屈をつけて全く議論がかみ合わない。しかし、このことも、もう何回も指摘をされておりますように、四十七年の六月七日の衆議院の沖特委でも、戦闘作戦行動の問題について政府の統一見解なども出ているということも私は知っております。  そこで、この戦闘作戦行動の判断基準の問題なんです。出動命令を現に受けてわが国の施設、区域から出動していった場合に該当するのだ、あるいは実際にわが国の基地から飛行機なり出撃をしていって戦闘に参加をしたときだけなんだ、簡単に言うとそういうことになっているわけです。そうしますと、その判断基準というものは、戦闘作戦行動に出撃をする準備態勢を整えておるものは、全然戦闘作戦行動の範囲に入らないのかという疑問が出てくる。政府が言っている戦闘作戦行動に該当することと密接不可分の関係にあるものについては戦闘作戦行動とみなされるということは、四十七年五月二十三日の参議院の外務委員会で当時の福田大臣はそういう御答弁をしておられる。  そこで、時間が余りありませんから具体的に申し上げますが、マヤゲス号事件の場合は、第三海兵隊の一部が、いわゆる嘉手納基地から、確かにタイのウタパオ基地を経由をしたことはしているけれども、現にマヤゲス号を奪還するために攻撃を展開したということはアメリカ側自体が言っているわけです。明らかに出動命令を受けて、目的はマヤゲス号を奪還をする、そのための戦闘行動を展開するということでこれはやっているわけなんですね。どんなに皆さんが詭弁を弄しようが、国民はそうしか見ない。なぜこういう具体的なものまでも事前協議の対象にならないのかということに非常に疑問を持っているわけなんですよ。アメリカの人命尊重という立場で、事前協議の対象にはなるのだが、そういう場合は政府としては緊急事態として認めざるを得なかったというなら、話はまだ少しはすれ違いにならないでかみ合う面が出てくる。だが、戦闘作戦行動に現に二百三十名余りの海兵隊が、たとえタイ国を経由をしたにしても、出撃したという事実は隠せない。  こういうことに対してもう少し納得のいく解釈をしてもらわないと困ると思うのですよ。密接不可分にあるのは入るのか、あるいは領海、領空内でそういう命令を受けた場合には入るのか、この点についてももう少し判断基準というものがあってしかるべきだと思う。この点についてお答えいただきたいと思います。
  334. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 戦闘作戦行動に該当するかどうかというものにつきましては、ただいま上原委員からも御指摘がありましたように、昭和四十七年六月七日の衆議院沖繩特別委員会において政府が統一見解を明らかにしておりますが、その中で言っておりますように「「戦闘作戦行動」とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであり、したがって、米軍がわが国の施設・区域から発進する際の任務・態様がかかる行動のための施設・区域の使用に該当する場合には、米国はわが国と事前協議を行なう義務を有する。」ということになっておりまして、結局それを判断する基準は、その米軍が「発進する際の任務・態様」ということで判断するべきだとわれわれは考えておる次第でございます。  したがいまして、マヤゲス号の事件の場合、あのとき沖繩の海兵隊一個大隊が移動いたしましたときは、当時アメリカ政府からわが方に対して、五月十三日に海兵隊の一個大隊に対して警戒態勢をとることを命じた、いわば警戒態勢を命じて、そうして移動したのであるということでありました。そして実際問題としても、輸送機がそこで準備ができ次第海外基地へ行くということを連絡してきたのでありまして、また事実タイのウタパオ基地に移ったわけであります。その後の行動は、さらにカンボジアに対して作戦が行われたのは事実でございますが、それはその後の命令に基づくものとわれわれは了解しておるのでありまして、マヤゲス号事件の際における海兵隊の動きは、海外基地への移動であった、したがって事前協議の対象ではなかったとわれわれは考えておる次第でございます。
  335. 上原康助

    上原委員 これはあなた方の頭の中は、そういうことでしかコンクリートになっていないものだから、それ以上のことは言わないかもしれませんが、しかし聞いている国民はそれでは納得しませんよ。私は、ここで一本取った、取らなかったという議論ではないと思う。これは現実問題なんですよね。正直に申し上げて、新宿へ行くのに地下鉄へ乗ろうがタクシーで行こうがハイヤーで行こうが、それは行ったことには間違いないのです。目的と任務、態様でしょう。こういう問題は四十七年の沖特で出された統一見解の解釈をどうするかによって決まってくるのですね。なぜここまでいろいろ疑問を提起をされてもまともに答えようとしないのか、まともな解釈をやろうとしないのかというところに、安保問題の与野党の見解というもの、あるいは事前協議の空洞化、形骸化ということが指摘されているんじゃないですか。  これも、きょうは十分な時間がありませんので、こういうような実際に起こっている問題に対しても——だから一遍も対象になったことはないわけでしょう。やろうとしないから、そうなっている。核の問題だってしかり。予算委員の方がアメリカにまで行かれていろいろ御調査なさっても、やはり疑惑というものは消えていない。したがって、いまの事前協議制度というものが、制度そのものとして確立されていないばかりでなくして、平時においても戦時においても、そういう協議対象になるような性質のものでない、性格のものになっていないということ、ここをもう一度政府としては十分洗い直していただかなければいけないと思うのです。  そこで、いま大臣に配置の問題と戦闘作戦行動の点について二つを例に出して、私の納得いける答弁にはなっておりません。きょう午前中の新しく設置をされるという日米防衛協力委員会というものに対しての御見解も、ちょっと外務省という立場でお尋ねもしたいわけですが、これだけ国民は事前協議の問題について疑問を持っているわけです。解釈がただどうのこうのとか、法律論、一般論だということで片づけられる性質のものでは決してないわけですね。何回か同じようなことが議論されても、こういう疑問点に対して答えていくという意味でも——同時にまた、昭和三十五年から今日までもう十六年の日時が経過をしている。その間には兵器も、戦略上の変化というものもいろいろある。進歩もある。現状に即応した事前協議の対象事項というようなことで、もう一遍この問題については、せめていま国民が出されている、あるいは野党が指摘をしている問題等について日米間で改めて話し合いをしてみる、そのくらいはやっていただかなければいかぬと思うのですね。近々日米安保協議会もあるというし、同時にまた、安保条約の問題との関係において防衛協力ということが取りざたされている中で、国民は事前協議の問題についてはますます深い関心を持っておるわけですよ。そういう国民の素朴な感情なり疑問点に対して答えていくというのが、外務省の、あるいは防衛庁の姿勢でなければいけないと私は思うのです。この点について大臣の御所見を端的に承っておきたいと思うのです。
  336. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私はこういうふうに思うわけでございます。つまり、この事前協議という制度ができてきたゆえんを考えますと、わが国の施設、区域を米軍が利用をする、それはわが国の自衛と安全、極東の平和のためであるということ、これは条約上はっきりしておりますけれども、さあ、それを出ないために、それが守られるためにはどうしておいたらいいんだろうかということになりますと、それはやはり、ある大きさ以上の配置があるというようなときは、そういう可能性があるからそれは事前協議にかけようではないか。あるいは、ある種の装備があればそれは目的を出る心配があるから、それも協議にかけようではないか。それで済むかといいますと、仮に配置あるいは装備の量が非常に小さくても、行動の目的いかんによっては、この条約の本来目的とするところを飛び出すおそれもあるではないかという問題がやはり一つ残ると思うのでございます。  でございますから、仮に上原委員のおっしゃっているようなことを考えますと、たとえばわが国の施設、区域に戦闘機や爆撃機を置いてはいかぬというようなこと、どうせそれは攻撃に使われるではないかという議論が片方にあるとすれば、いやそれは純粋に防衛のためにも使われ得るではありませんかという議論になりますから、そういうことで線を引くわけにはいかない。そうすると、どこで線を引いたかといいますと、直接の戦闘行動の場合には、これは問題がありますから事前協議にしましょう、こういうふうなところへ私は落ちついてきたと思うのでございます。  そういたしますと、どこかに線を引いて、その内側は結構です。その外側はいけませんというふうにしなければ物事のけじめがつかぬわけでございますから、こういうことをいたしたのであって、この線の非常に近い両側ばかり議論しますと、いかにもこの線はあいまいではないかということにこれはなり得ます。しかし、大きく見れば、この線の内側と外側というのはかなりはっきりしているのであって、線を引くことに意味がないとは言えない。十分私は意味があるのだと思うので、その線の両側に非常に近いところばかり議論すれば、これは何か非常に便宜的なものだとか、いいかげんなことだということになりますけれども、そうではないので、線というものは実際、大体において内と外をはっきり決めておるわけでありますから、十分意味を持っている。その近いところだけを議論しますと、何か非常におかしなものだという印象をお持ちになることはあり得ましょうけれども、やはり線を引くということは大事なことである。  その線を、ですから配備されているものの数量で制限するということは、配置というところでやってございます。それから、持っているものを、核兵器のようなわが国の立場と異なるものを制限するというのもわかる。しかしそれ以外に、そこに置かれております戦闘機であるとか爆撃機であるとかいうものを、それ自身で制限しようとしましても、これはいかようにも使われますから、線の引きようがない。ですから、行動の目的で線を引くということは、私は一つの合理的なやり方であろうと思います。
  337. 上原康助

    上原委員 どうも私のお尋ねにはお答えにならないで、いまの線を引いた一番近い話じゃない、両端の話ぐらいもかみ合っていないのですよ、大臣。両端くらいの大きな差が出ているわけですよ。私もその線を引くことに意義がないと言っているのじゃないのですよ。それを厳格に厳密に適用しなければいけないのじゃないですか。国際条約、しかも、国の安全、場合によっては戦争に巻き込まれる危険性さえもあるということで、そもそもこの事前協議なり取り決め、口頭了解というのが出たわけでしょう。ですから、いまのような疑問というのは、過去十五年間以上続いてきているので、国会においてはこういう野党からの指摘もある、また実際に国民はこういうふうに疑問も持っているので、これに対してもう一度米側と話し合う御意思はありませんかということをお尋ねをしているわけであって、線を引いたことに意義がないと言っているのじゃないのです。余りにもエスケープピットになっている、抜け穴だらけになっているこの事前協議ということに対して、もう少し国民理解協力が得られる、納得が得られるというなら、そういうような方向で厳格、厳密に適用する話し合いというものを日米間でやるべきじゃないでしょうか。それが問題指摘に対してこたえる政府の姿勢でもあってよいのじゃないですかということをお尋ねしているのです。
  338. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでございますから、たとえば施設、区域に一切戦闘機や爆撃機を置いちゃいかぬのだという立場は、私はあり得ると思いますけれども、私どもはそういう立場をとらない。飛行機を置きますと、その飛行機は発進してはいけないのだという立場はまさかとれませんから、発進することはいいのだ。そういう場合に、仮に攻撃的な目的をもって発進してはいけませんとだけ言ったのでは、いやおれは攻撃的な目的ではなかったのだと言ってしまえばそれだけのことになりますから、そこで、はっきり直接の戦闘作戦行動はいけませんと、かなり客観的に定めるようなところで線を引くわけであって、私はこの線の引き方はかなりよくできていると思うのです。ほかに方法があるだろうとおっしゃれば、たとえばこうだというようなことは、私、承るにやぶさかでありませんけれども、どこかでやはり線を引かなければならないとすれば、こういう線の引き方というのは、私はかなり意味のある引き方だというふうに考えます。
  339. 上原康助

    上原委員 じゃ具体的に申し上げましょう。先ほど、海兵隊に待機命令が出たという連絡を受けたという。海兵隊が待機命令を受けるということは、出動命令のもう直前なんですよね。その段階から事前協議の対象にすべきじゃありませんか。もう一つは、領海、領空内で出動、出撃命令を受けたという場合も、これも事前協議の対象になるべきことじゃありませんか。  同時に、いま一つは、けさ来も議論をいたしましたが、仮に朝鮮に有事が起きて、B52が嘉手納から爆撃に発進をされる場合は事前協議の対象になりますか。われわれはなるべきだと思っている。こういう疑問に答えてくださいと私は言っているのです。これ以上具体的なことがありますか。
  340. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 マヤゲス号事件のような場合に、待機命令を受けただけで事前協議の対象にするということは無理だと思います。やはり発進の際の任務、それから態様を見てわれわれは判断すべきでありまして、繰り返しになって恐縮でございますが、マヤゲス号の場合は、われわれはその時点において、タイのウタパオ基地にあくまで移動したんだというふうに解しておるわけでございまして、その段階において、そういうことまでを含めて事前協議の対象とするのは無理であるとわれわれは考えております。  それからB52の場合、B52が非常事態において日本に配置される可能性は排除されませんけれども、それが戦闘作戦行動に出るという場合、これはもちろん事前協議の対象になると考えます。
  341. 上原康助

    上原委員 領海、領空内で出撃命令を受けた場合どうですか。
  342. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この点につきましては、先ほども申し上げましたように、戦闘作戦行動の定義といたしまして、発進する場合でわれわれは戦闘作戦行動であるか否かを判断するということにいたしておりますので、発進した後のことまでをつかまえることは、実際問題として無理であると思います。公海、公空の場合はもちろんでありますけれども、その発進後の時点で戦闘作戦行動であるかどうかということを判断するのは、実際問題として困難だと思います。そういうふうに申し上げれば、上原委員からあるいは、じゃアメリカは一種の脱法行為をやるかもしれない、こういうお話があるかもしれませんが、そこは結局、日米安保条約というものはそういう日米信頼関係に基づいてつくられておるものでございまして、先ほど大臣からもお話ありましたように、結局われわれは、だましてまでアメリカはそういうふうな行動をすることはないと確信しておる次第でございます。
  343. 上原康助

    上原委員 結局つまるところは、いつものことですが、日米間の信頼関係ということになるわけですね、皆さんのお立場で言うと。  では、私はほかの質問をしようと思ったのですが、あなたが日米間の信頼関係ということをおっしゃるならば、私が疑問を一つ提起をいたしましょう。それを調査をして答えていただきたい。  その前に、これも事前協議一つの大きな柱でありますが、核兵器の問題。これは大臣から端的にお答えいただきたいのですが、核抜き本土並みということを今日まで大変強調してこられましたが、復帰前は沖繩に核兵器は貯蔵されておったのか、おらなかったのか、改めて聞いておきたいと思うのです。
  344. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 復帰前におきましては、日本の施政権が及んでおりませんので、本当に核があったかなかったかを、われわれとしては確認する立場にはございません。
  345. 上原康助

    上原委員 では、装備の重要な変更、これはこの間も少し議論いたしましたが、核兵器の持ち込み問題、これは現在は、戦術核あるいは戦略核も含めて持ち込みに対しては政府はノーである、これももう一度確認できますね。
  346. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 その点はこの間も御答弁申し上げたとおりでございます。
  347. 上原康助

    上原委員 ですから政策上も、それは事前協議の対象になってきても、政府としてはお断わりをするということですね。
  348. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 その点は三木総理大臣が御答弁になっているとおりでございます。
  349. 上原康助

    上原委員 これも実際にそういう答弁をするから疑問を持つわけですね。疑問を持たれている。では、現在は沖繩には核兵器は全然ないというお立場をとっているわけですか。あるいは復帰前あったかもしれない、それは施政権がなかったからわからぬということで。そこで私は、ここで具体的に、この弾薬庫を調査をしてもらいたい、これを提起します。あなたは日米関係について、信頼関係だと言った。私は、事前協議の問題については、信頼関係どころか、ラロック証言にもあるように——ほかの質問をしようと思ったのですが、私が改めて問題をここで提起をいたしますから、私はその意味で残った時間を保留いたします。委員長、これは重要な問題ですからね。ここで証拠を外務大臣に見せますから、これに対して答弁をいただきたいと思います。  一つは、沖繩国会でも取り上げたことがございますが、辺野古の弾薬庫に核兵器が貯蔵されているであろうということ、私たちは現在も不信を持っている。いま一つは嘉手納の空軍の弾薬倉庫というものです。最初に、時間があんまりありませんから、辺野古の方からいきます。  防衛局長に、これを提示する前に、ちょっと一言お尋ねしておきますが、スペシャルウエポンズというのは、核兵器のことも米側では言っておりますね。
  350. 丸山昂

    丸山政府委員 はっきり向こうの定義も、書類を見てということでございませんのであれでございますが、スペシャルウエポンズと申しましたときは、いわゆる特殊兵器でございまして、核も含む。で、核ばかりではないということでございます。
  351. 上原康助

    上原委員 ですから核も含むわけでしょう。全然含まないとは言えない。じゃ証拠を出しましょう。まずこれから外務大臣見てください。皆さんはいつでもそういうことで逃げては困る。  ここにリーゼントがございますね。ここに赤いので印をしてある一〇六〇のビルディングに、スペシャルウェポンズショップと書いてある。それと一〇九七、これは弾薬庫ですね。マガジンです。その周辺の弾薬庫にいわゆるサブロック、核爆雷が貯蔵されておったということが復帰前から指摘をされた。現にここにスペシャルウエポンズショップと書いてある以上は、特殊兵器が貯蔵されておったことは明白な事実なんですね。復帰前はこれがどうなっておったか。同時に現在はどういうふうに使用されているのか。信頼関係と言うなら調査をして明らかにしてほしい。これが一つ。  いま一つは、これは一枚しかございません。嘉手納の先のとんがったところ、赤いのでちょっと見えにくいですが、マルしてあるところ、嘉手納の弾薬庫、ここに現在でも明らかに核兵器が貯蔵されておるだろうと私たちは見ておる。マガジン番号を言いますからね。それでは、ちょっと見えにくいですが、四〇〇九、それから四〇一〇、四〇一一、四〇一三、四〇一四、四〇二〇、四〇二五。特に四〇〇九と四〇一四、これは明らかに核兵器が貯蔵されておった弾薬庫だと思うし、現在もきわめて貯蔵されているであろうという疑問が持たれている。これも調査をして——恐らくまた、調査したがなかったと言うでしょう。実際にどうなっているか、調べてみてくださいよ。そしてその結果について御返答いただけますね。ちょっと委員長、いいですか。
  352. 藤尾正行

    藤尾委員長 上原委員から御説明がありますから、よく見てください。
  353. 上原康助

    上原委員 ここです。ここまで証拠を出されて、信頼関係と言えますか。
  354. 藤尾正行

    藤尾委員長 その点の御調査をしていただいて、内閣委員会に御報告いただけますか。
  355. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 復帰前の状態について、どこまでわれわれとして調査できるか定かではございませんが、現状については、米軍によく問い合わせまして調査いたします。
  356. 上原康助

    上原委員 私は、ほかの基地返還の問題についてもう少しお尋ねしたかったのですが、この事前協議の問題というのが、これほど疑惑を持たれながらも納得のいく御答弁はいただけません。いま調査をして報告をするということでしたが、その調査結果を見て、私は残された時間の質問を留保しておきます。  同時に、これは委員長に要望しておきたいのですが、委員長も内閣委員会委員長ですし、防衛問題は本来なら本委員会が十分議論をすべき点だと思うのですね、事前協議の問題も含めて。ですから、場合によっては、私がいま、具体的にここですよと場所も指摘をし、この弾薬倉庫ですよということまで具体的に挙げましたので、政府の調査結果いかんによっては、内閣委員会として立ち入り調査ぐらいやる、そして核問題について疑惑を持たれることに対してもう少し鮮明にしていくという措置をやっていただきたい。このことも含めて要望しておきたいと思うのです。
  357. 藤尾正行

    藤尾委員長 内閣委員長において処理いたします。
  358. 上原康助

    上原委員 私は、基地問題には触れられませんでしたが、きょうの外務省の御答弁には納得しかねますので、あとの質問は留保をして、その結果を見てさらにこの事前協議の問題について議論をしていきたいと思います。
  359. 藤尾正行

  360. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最初にB52の沖繩飛来について質問いたします。  B52が現在日本の基地で着陸、発進できる基地はどこどこにありますか。
  361. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 B52は台風避難のために現に沖繩の嘉手納基地に着陸しておりますから、嘉手納は着陸できることは明らかでございます。他方、いろいろな性能、形状その他から見て、横田基地も着陸可能かと推定されますけれども、これは私たちとしてはまだ十分承知しておりません。
  362. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が前もってその質問をしたのは、なぜ嘉手納基地だけをねらって、台風避難という名目をつけて、しかも返還後も六回にわたって飛来しているのかという理由を承りたいと思って聞いたわけなんです。横田もある。だが横田に来ないでなぜ沖繩に来るのか。しかも県民感情も、B52はいかなる理由があっても飛来は困ると議会すら決議したのですね。その意味で、なぜ沖繩をねらっているのか、それは何か理由がありますか。一応答えてください。横田に来ないでなぜ沖繩に来るのか。
  363. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 最近の二回の嘉手納基地への飛来は台風避難でございまして、それ以上の理由はわれわれとしても承知しておりませんし、またそれ以上の理由はなかったと考えております。その場合、距離の問題あるいは台風の進行状況その他を考えて嘉手納が選ばれたものと考えております。
  364. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 沖繩県民の統一した要求は、県議会の全会一致の決議でもわかるように、また大臣のところにも陳情が来たと思いますが、いかなる理由があろうともB52の飛来は反対である、拒否してほしいということでありますが、大臣としてはその陳情に対する処置をどうとられたか、一言でいいからお答え願いたいと思います。
  365. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 これは前々から申し上げておりますように、このB52の飛来に関しましては、昭和四十七年七月に当時の大平外務大臣とインガソル駐日大使との間で話し合いが行われまして、米側としてもB52に対する日本国民の感情というものは十分理解しておるので、平常の事態におきましては、台風避難など真にやむを得ない場合以外はB52をわが国に飛来させることはしない旨を確約しておるわけでございます。そして今回の二回にわたる飛来も、いずれも現実に台風十九号及び二十号がグアム島を襲う危険があったために、台風避難で来たわけでございまして、いわば四十七年のときの了解の範囲内において米側は行動しておるわけでございますから、われわれとしては、この点について改めて米側に申し入れるということはいたしておりません。
  366. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは県民があれだけ全会一致で県議会で決議して要求して帰ったときの県議会の代表団の感じですが、もう日本政府は頼りにならぬという感じなんですよ。幾ら何回言ってもアメリカ政府に言わない。百万以上いますからね、県民としても。B52というのは他府県では見たこともないところもあると思うのです。ところが沖繩県民は、返還後あるいは返還前も、B52がどのような役割りを果たしたかよう知っております。またこれがおっこちた場合もあります。そうした危険性について、しかも核、非核両用の運搬機、爆撃機であるということもよう知っております。これに対して政府アメリカに、しばしばやってくるのはどうも困ると言ったこともないということは、一体どう理解すればいいのか。大臣、これはどうなんですか。しばしばやってくるのは困るんじゃないですか。
  367. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 ちょっと補足して申し上げます。  沖繩県議会の方が超党派の決議をされて、大臣あての陳情書をお持ちいただきまして、それを私が受け取りまして、お話を伺いました。それで沖繩県民の方々のこの問題に対するお気持ちは十分承りました。その際にも私は、ただいま申し上げたようなことを御説明申し上げました。ただ、そういう超党派の決議がありましたことは、その際にもお約束いたしましたように、アメリカ大使館のシュースミス公使に私が口頭で伝えております。そういう意味では伝えております。ただ、先ほどから申し上げますように、従来アメリカは約束しております枠内のものであるから、われわれとしては、いわゆる抗議的な意味では伝えてはおりませんが、沖繩の方々のお気持ちは十分私としては米側に伝えたつもりでございます。
  368. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは沖繩国会でも大きい論戦になった問題で、最初に爆撃をやった当時は、まだ施政権がない、返還前でありますから。そのときも、台風避難の目的で板付にやってくると通告して、板付に来ないで嘉手納にやってきた。これは大臣も御承知だと思います。そして嘉手納にやってきたらすぐ爆撃が始まるという戦歴をこのB52は持っていますね。  そこでお伺いしたいのは、緊急やむを得ない場合一時的にということでこれを許しているわけなんですね。緊急やむを得ないという場合に、台風のほかに何かあるのか、これが一つ。もう一つは、一時的というのはどのくらいの時間を指しておるのか、あるいは十日間、あるいは一カ月ぐらいだったら一時的と言っておるのか。この問題は、いま非常に大きい問題となっているいわゆる朝鮮における九日作戦とも関連するわけなんです。ですから、二つの点、緊急やむを得ない、一時的なことであれば常駐、再配備とは関係ないというので許しておるという場合に、いま申し上げましたような台風のほかの緊急やむを得ないというのは何か、一時的にというのはどういうふうに政府理解しているのか、この二点についてお答え願います。
  369. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 緊急やむを得ないというのは、国際法、国内法でよく問題となりますいわば緊急避難の事態でございまして、これはあらゆる場面を想定することはちょっと困難であると思います。ただ台風避難の場合がその最も典型的な場合であろうというふうに考えております。それから、そういうふうな緊急避難でございますから、もちろん避難すべき理由が解消したときは当然立ち去るべきものであると思います。現に今回の場合も数日にしていずれも立ち去っておる次第でございます。
  370. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 台風避難を除く緊急避難がはっきりわからぬわけなんですね。これは実はどういうことになるのか。アメリカの恣意的な考え方で、朝鮮に事が起こった場合、緊急やむを得ないということで来る場合にはどうするのか。ここら辺どうなりますか。
  371. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この緊急避難の事態というのは、いわば平常の事態における問題でありまして、朝鮮における非常事態というふうな場合は、これはちょっと次元の違う問題として考えなければならないのではないかと思います。その際には、まさに安保条約の第六条及びその実施に関する交換公文、つまり事前協議の問題も含めてわれわれが判断すべきものと考えます。
  372. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは、緊急やむを得ない避難という場合には台風だけになりますね。それ以外に考えられないというわけでしょう。考えられますか。具体的に言ってください、具体的に来ておるんだから。
  373. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 緊急事態というのはいわば緊急事態で、なかなか定義しにくいわけでございますけれども、事例としましては、台風避難以外にも、たとえば悪天候でB52が燃料が不足したために、その基地、たとえばこの場合はグアムでございますが、グアム基地に帰投できない場合には、日本の基地にやむを得ず着陸するということはあり得ると思います。現にそういう事例が昭和四十七年の五月二十日にあったようでございます。
  374. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうしますと、グアムから出撃して朝鮮を爆撃した、その帰りに、いまおっしゃった油がなくなって、これはどうも嘉手納に行かないとおっこちてしまうという場合には、緊急避難という名目になるということですか。
  375. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、この緊急避難という問題は平時の事態として考えておるわけでございまして、朝鮮における非常事態の場合は別の次元でとらえて、これはあくまで安保条約の規定に基づいて判断さるべきだと思う次第でございます。
  376. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そういったような御答弁では、ちょっと普通の常識を持っている人じゃわからぬと思うのですね。B52は常にお供を連れて歩いていることは御承知なんですね、KC135、給油機を。B52がやってくると、必ず給油機が嘉手納にいたりグアムにいたりする。いまでもKC135は嘉手納にいますがね。したがって、緊急やむを得ないという場合のアメリカ考え方については、外務省ははっきりつかまえていない。  たとえば、台風でなくても、豪雨かなんかで燃料をやられた場合に、緊急避難という形になるのか。いずれにしても天候と関係があるのですよね。天候と関係があり、さらに作戦行動との関係がある。油が切れる、こういった場合におりるということになると、作戦行動関係があるものでないと——これはB52自身の任務、性格は戦略爆撃機ですからね。そういう場合にやはり二つ出てくるでしょう。天候、いわゆる自然現象に対する対応の仕方、さらに軍事的な対応の仕方で、どうもこのB52の性能、役割り任務が果たせないという場合、たとえばいま例にとられた給油の問題、そのときに嘉手納にやってくるということになりますと、二つのことが出てきましたね。緊急やむを得ないというのはそういった理解ですか。いま具体的に例をとられたでしょう。台風でなくても、たとえば豪雨、これは自然現象ですね。もう一つは油が切れるという問題がありましたね。これはB52は戦略爆撃機ですから、常にそういう軍事面との関連があるのですよ。だから、緊急やむを得ない場合の一時避難という問題の考え方はこの二つだ、そう理解していいのですね。
  377. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 緊急避難という法理は、国内法におきましても、国際法におきましても、あらゆるケースを網羅的に挙げるということはむずかしい。むずかしいからこそ緊急避難という法理があるわけでございまして、それに基づいて行動をする。しかし、いずれにいたしましても、日米安保条約の関連規定に反してアメリカのB52が日本に飛来し駐留することはあり得ないということは言えると思います。
  378. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの御回答で、緊急やむを得ないという問題について政府は明確な考え方を持っていないということが明らかになりましたが、今度は、B52の沖繩への駐留、発進は絶対あり得ないかどうかですね。いわゆる再配備の問題、これについて福田外務大臣は、「もしB52が沖繩にまた帰って来て、そこを基地として出撃するような事態があれば政府としては応諾をしないことをはっきり申し上げる。」拒否するという答弁をしておりますが、大臣も同じ御意見ですか。
  379. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは私は、どのような条件のもとに、どのような状況でその答弁がなされたかをつまびらかにいたしませんので、一応その答弁を離れて申し上げますが、普通の場合、B52が緊急やむを得ない場合にしか飛来しないということは、先ほど政府委員から申し上げました。しかし、それは平時の場合であって、有事の場合にB52が沖繩基地に来ることはあり得ることである。もちろん、直接に戦闘行動に発進するということになりますれば、これは事前協議の問題でありますから、これについては政府がイエスを言う、ノーを言うということは、第六条の交換公文に定められたとおりでありますけれども、飛来すること、そのこと自身は、私は絶対にあり得ないとは、これは安保条約の解釈上申し上げられないと思います。
  380. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの大臣の御答弁で、平時の場合の再配置の要求ですか、駐留、これはあり得ない。ところが、そうでない有事の場合にはあり得るということですが、有事の場合というのはどういう場合ですか。大臣が言われたので、ひとつ説明してほしいと思います。
  381. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一般にわが国の平和と安全あるいは極東の安全が脅かされるというようなことが考えられるような事態、これも厳しく定義することは困難でございますけれども、まず大まかな概念としてはそう考えていただいてよろしいかと思います。
  382. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これはこの前の衆議院予算委員会で、共産党の正森議員が坂田防衛庁長官に、いまの九日作戦、これはスターズ・アンド・ストライプスに載ったものを資料にして聞いております。そのとき長官は、そういったのを見たことがないというようなことを言っておりますが、いずれにしてもこれは具体的に問題になって、しかもシュレジンジャー国防長官が、この九日作戦、短期決戦作戦、これは一〇〇%支持するということを表明しておる。こういったような場合に、B52が沖繩の嘉手納から発進をして、一時間に三十波、だからそうなると二分で一機。三十波というのはいわゆる三十機という意味らしいのですが、二分間で一機ずつ波状的に行くという想定があります。そういうふうなことが有事の場合になるかどうか。ここら辺、宮澤大臣どうお考えになっているか、お答え願いたいと思います。
  383. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ちょっといまの御質問意味がよくわかりかねますので、もう一度。
  384. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの九日作戦をやる、その場合に有事と見てB52が沖繩に駐留する、そういったのを有事の場合と言われるのかということを聞いておるわけなんです。
  385. 藤尾正行

    藤尾委員長 瀬長君に申し上げますが、外務大臣はその九日作戦というものがよくおわかりになっていないような気がいたしますから、その九日作戦というもののアウトラインを御説明になったらいかがでございますか。
  386. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは、ホリングズワースという韓国にいるアメリカの司令官が、北の軍事力を撃滅するために九日間でやっつける、その前提として嘉手納基地からB52が一時間で三十波発進しサポートを受ける、それが前提だ、そうすれば九日間で北の軍事力を撃滅するという計画なんです。これはここの新聞にも相当に出ておりましたし、さらに「星条旗」でも出ておる。これはアメリカ局長も英語はよう達者ですから、ごらんになったと思うのです。坂田長官は、私見ていないがということをこの前答弁されていましたが、いまの九日作戦というのは、大体簡潔に要点を申し上げるとそういったことなんですね。B52と関連しているのです。B52が一時間に三十波ですから、これは二分間に一機ずつ発進をする。これが今度のグアムからやってきた十五機が、嘉手納からグアムに帰るときに、やはり一分おきに、あるいは二分おきに発進する経過から見ると、どうもこれに関係があるんじゃないかと思いますが、この点は別として、いまの有事の際というのは、そういったような想定でアメリカが駐留を求めるということはあり得るというふうな意味であるのかどうかということを聞いているわけなんです。
  387. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず、わが国の施設、区域をアメリカ軍が侵略のために用いるということは、一切許されません。これは安保条約の精神に違反をいたします。  第二の場合、わが国の安全、極東の平和が破られるおそれが現実にあって、わが国の安全を守らなければならないという状況のもとに、沖繩基地を、あるいはわが国内部の基地を利用するということはあり得ることでありますが、それが直接の戦闘作戦行動に属するものであれば、申すまでもなくそれは事前協議の対象にならなければなりません。アメリカは自由にすることができません。  第三に、いま九日作戦というような仰せがありましたが、わが国と米国との間に安保条約が結ばれており、そしてわが国の施設、区域が提供されておるということは、そのこと自身が不測の戦争を防ぐ抑止力になっているという面を見逃すわけにはまいりません。したがいまして、そういう抑止力という意味で、ただいまおっしゃいました何何作戦といったようなことが議論をされるということはあり得ることであって、抑止力の結果戦争が起こらないで済むということであれば、これは私はまことに結構なことであるということも申し上げることができると思います。
  388. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これはいま重大なお答えだと思うのですが、核抑止力として……(宮澤国務大臣「核ではありません。抑止力です」と呼ぶ)いわゆる抑止力としてまことに結構だといったような考え方ですね。こうなりますと、いま申し上げましたB52が沖繩に再配備されるというふうな再配備の要請がもしあった場合に、政府はどういう方針で臨むか、この点を明らかにしてほしいと思います。
  389. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 抑止力ということは、すでに御存じのように、現実にあるものを使うということでは抑止力ではないので、使うことあるべしということで抑止力になるのでありますから、それが私は抑止力の本来の定義であろうと思います。先ほど申し上げましたように、いわゆる有事、極東の平和やわが国の安全が危殆に陥れられるというふうに考えられる事態の場合に、わが国内の施設、区域にB52が飛来することはあり得るであろうということだけ申し上げれば十分だと思います。
  390. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これも沖繩国会の第六十八国会で同じく福田外務大臣の答弁ですが、B52の沖繩への飛来は気象上の理由であるという問題で、「ただ、沖繩県民のB52に対する感情を考えると、不時着といえどもしばしば行なわれることは好ましくないので、今後そういうことのないように米当局に申し入れをしてある。米側もこういう事態を反復しないよう努力すると言明している。」ということを答えておるのです。B52に対する沖繩県民の感情の問題、不時着といえどもしばしば行われないようにというふうなことを、はっきり外務大臣の方針として述べておるんですね。そういたしますと、B52の再配備、これを事実要求した場合に、政府としてこの再配置を認めるのか認めないのか、ここら辺をはっきりさしてもらいたいと思います。
  391. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 事態がわが国の平和と安全あるいは極東の安全を脅かすということになりましたときに、その事態を防ぐ、あるいはその事態に対する抑止力としてそれが必要であるというふうに考えれば、そういうことはあり得ることでございますけれども、御承知のように、そのような事態が簡単に私は起こるとは思っておりません。
  392. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 もし起こった場合、いわゆる再配置のアメリカの要求があった場合にはどうされるかを聞いているわけなんです。
  393. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その事態がわが国の平和と安全にどのように具体的に関係があるかということを判断して決定すべきものであって、いま抽象的にその場合には認めますというようなことを申し上げれば、これは誤解を生ずるおそれがございますから、具体的に判断をいたすとしか申し上げようがありません。
  394. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 たとえば現在沖繩の嘉手納基地も、ほとんど照準が朝鮮に当てられているということは、私は調査の結果知っておりますが、いわゆる朝鮮に事が起こった場合にB52の再配置の要求をしたというとき、具体的にそういった場合にどうされるか。いわゆる拒否されるのか、あるいはこれをイエスと言われるのか、そこら辺をはっきりさしてほしいと思います。
  395. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 朝鮮に事が起こった場合だけでは、お答えのしようがありません。どういうことが起こったのかを具体的におっしゃっていただきませんと、それがわが国の平和と安全にどのように関係があるかが判断ができません。
  396. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 じゃ具体的に申し上げますと、シュレジンジャー長官も言ったし、さらにフォード大統領も言った。いわゆる北からの侵略の問題を前提として核兵器の先制使用、これを世界に初めて宣言した。核兵器を真っ先に使うのだということを宣言したのは、これはフォード大統領が初めてなんですね。これも具体的に北からの侵略とかいうものを挙げて、核を先制使用するというようなことを言っておるんですね。こういった場合に、いま申し上げましたB52の再配置の要求があった場合にはどうなさるのか。これはいま申し上げました九日作戦との関連も出てくるわけなんです。その意味なんです。
  397. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 事態の設定がはっきりしておらないわけであります。北からの侵略が起こった場合にどうするかと言われたのか、あるいは北からの侵略があって、アメリカが核兵器を先制使用した場合にどうするかとおっしゃったのか、どういうことをおっしゃっていらっしゃるのでしょうか。
  398. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま北からの侵略がある場合に大統領は核の先制使用をするということも宣言している。こういったような状況の中で、アメリカがB52を再配備するという要求があったときどうするかという問題なんです。
  399. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その後アメリカ国防長官は、実は核の先制使用云々ということは、北が誤算を起こさないためにあの緊張した事態において自分が言ったことであって、そのようなことを現実に考えたわけではなく、そのような事態は去ったと考えるというふうにすでに言っておられるわけでございます。したがって、そういう事態はわれわれ考える必要がないと思いますが、単純に北からの侵略が起こった場合どうするかというお尋ねであれば、それは一つの設定として、それがわが国の平和と安全にどのように影響を持つであろうかということを判断して決めるべきだと思います。
  400. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 日本の安全と平和のためというふうな理解があるならば、政府がそういうふうに解釈すれば、B52の再配置、これはオーケーだということですか。
  401. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お尋ねの意味は、わが国の安全が脅かされるような事態が侵略によって起こった場合に、わが国としてB52の再配置というものを考えることがあり得るか、厳格にそういう意味のお尋ねであれば、それはその情勢に当たっていずれにすべきかを考えることになると思います。
  402. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは沖繩国会では、いわゆる沖繩県民の県民感情という問題を中心にし、さらに安全との問題もあり、B52の再配備というのは考えられぬ、もしそれがある場合には応諾できないというのが福田外務大臣お答えなんです。それと現在では非常に違った御答弁だと私思うのですが、福田外務大臣はそのときに、もしB52が沖繩にまた帰ってきて、そこを基地として出撃するような事態があれば、政府としては認められない、応諾を与えることはできない、ノーだということをきわめてはっきり述べておるわけなんです。ところが、現在の外務大臣の御答弁はそれとは別で、そういう有事の際に再配備の要求があり、日本の安全、アジアの平和のためであるということになれば、それはオーケーだというふうになるわけなんですが、その当時と現在では非常に違った御答弁だと思うのですが、この点いかがですか。
  403. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、福田外務大臣がどのような背景と事情のもとにそれを言われましたかが私にわかりませんので、それに直接お答えをすることができませんけれども、恐らくはベトナム戦争が進行している状態においての答弁ではなかったかという感じがいたしますから、それは私の設定をしております状況とは違うわけでございます。  私は実はこう思うのでございます。沖繩の県の決議のこともよく存じ上げております。わが国の安全という見地から、われわれは施設、区域を米軍に使用を許しておりますが、しかもその非常に多くのものが沖繩にございますために、沖繩県民に非常な御迷惑をかけている、それは非常に耐えがたい苦痛であろうということは、私どももよく存じておるわけでして、できるだけそのような苦痛は少なくしなければならない。またできることならば、何かの意味でそういう償いをしなければならない。われわれは、われわれ日本民族の安全というものを、非常に沖繩県民の負担において多く負っておるということをよく存じております。ですから、それについては、われわれとしてすべきことを極力しなければならないと存じますけれども、そうかと申しまして、わが国の安全が脅かされるというような事態になりましたときに何もしないでいいというわけにはまいらない。本当に日本が危なくなってもおまえそういうことをしないのかという御設問が逆にあれば、それはやはり法律で許されておること、条約で認められておることはしなければならないのが私は国民に対する政府の義務であるというふうに考えますから、それは、沖繩県民のいろいろな御苦労、そのような感情というものはよくわかります。たくさんの負担を負っていただいていることもよく存じておりますけれどもわが国全体の平和と安全ということになれば、やはり最小限のことはしなければならないのが私は政府の義務であろうと考えます。
  404. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 さらに詳しく述べますと、これは「沖繩にB52が入ってくることになった場合に、法的にそれを拒否することができるのか、できないのか。」という質問に福田外務大臣はこう答えています。いま大臣が言われたように、ベトナムとの関係も入っております。「B52が緊急着陸をしたいという申し入れがあった際には、法的にはこれを拒否する立場にない。ただ、沖繩からベトナムへ向けて直接出撃をすることについては、事前協議の対象となる。政府としては、そういう事前協議の申し入れがあった場合には、これに対して応諾を与えない方針である。」拒否する方針だ。この方針について、特にこれはベトナム出撃の場合でもそうである。仮に朝鮮に対して出撃をするということについて、これは事前協議の対象になりますね。その場合にノーと言う。これはもうはっきり福田外務大臣は、ベトナムについてノーと言うと答えています。仮に沖繩からベトナムへじゃなしに朝鮮に向け直接出撃することについては、事前協議の対象となる、そのとおりだと思うのです。政府として、そういった事前協議の申し入れがあった場合に、これに対して応諾を与えない方針であるというのが外務大臣の答弁なんですね。これは私いま朝鮮との区別をやったのだが、これはベトナムに出撃する場合のことを想定して、そういった事前協議になるが、この場合でもノーと言うという考えなんです。いま私がお聞きしたいのは、ベトナムでなくて朝鮮に向けて出撃するということについて、事前協議の対象となるわけだが、これは福田さんが言っているようにノーと言いますか、どうしますか。この点を御答弁をお願いします。
  405. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま承りましたように、福田外務大臣ベトナムへの出撃について論じておられるのであって、そのことをいま朝鮮との関連で何か同じことであるかのように御引用になりましたのは、私はまことに関係のない御引用であったと申し上げるしかありません。ベトナムの場合と朝鮮の場合とはわが国に与える影響というのはおのずから違うわけでありましょうし、わが国の安全、平和に関係する度合いも違うと思います。したがいまして、そのようなことが起こりました場合には、それがわが国の平和と安全にどれほど緊要に関係があるかによって判断すべきものであろうというふうに先刻から申し上げておるわけであります。
  406. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 ベトナムは朝鮮よりは遠い。朝鮮は本当の一衣帯水であり、朝鮮に危険が起こった場合にどうなるかという問題は、ベトナム以上に非常に関心が高いと思います。椎名国務大臣はこういったことをはっきり言っているのです。これは鯨岡委員質問に対する答えが、安保条約そのものはいわゆる敵性——安保条約があるから日本国民は全部安全だという意味じゃないと思うがというような前提がいろいろあって、椎名国務大臣は「ベトナム戦争がもう少し近いところで行なわれておるということになると、はっきりするわけである。私は、危険がないとは言えないと思う。御指摘のように、一般的にいって、安保条約体制にあるがゆえに一種の敵性を持ったと認められて、そして攻撃を受ける、あるいはその他の脅威を受けるというようなことはあり得ると思う。しかしそれは一般的な問題であって、いま非常に距離の遠ざかっておるベトナムの戦争に関しては、きわめてそれは現実的ではない、こう考える。」と言う。距離が遠いということで危険性はないとは言えない、あると一応は言っておる。私が申し上げるのは、ベトナムすらそうだ。いわゆる遠いところで、現実的に危険性はない。ところが、いま朝鮮の場合に申し上げましたが、非常に近いですね。だから、ベトナムよりはむしろいまの危険性の問題についてはよほど密度が高いんじゃないかということが当然考えられる。だから私は、ベトナムに出撃するという場合を想定して、事前協議の対象になる、そのときはノーと言う。はっきり言っておるのですね。だから、いま朝鮮に出撃をするということでB52の再配備の要求をした場合に、当然これは事前協議制の対象になると思うのですね。その場合、拒否するのかしないのか。これははっきり置きかえれば、福田外務大臣はノーと言うということを言われている。だから、そのことを私ははっきり大臣の口から朝鮮に対する問題として聞きたいわけなんですよ。
  407. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 でありますから、私が先ほどから、侵略の目的でわが国の基地を使うということは許されないと申し上げておるわけです。と申しますことは、基地が使われなければならないというときはわが国が安全を脅かされているときでありまして、そのときに敵性を帯びる云々という問題はないわけであります。すでにわが国の安全が脅やかされているわけでありますから、そこで改めて敵性を帯びるということはあり得ないわけです。おっしゃる場合は、こっちが侵略するしかないわけですが、侵略のためにわが国の基地が使われるということは一切許されないわけです。
  408. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 侵略のときには絶対に許されないということは、いま申し上げましたように、B52が朝鮮に向けて出撃をするというような場合、日本の基地からの出撃でありますから、当然事前協議制に引っかかってきて、事前協議の対象となりますね。これはお認めになるのですか。事前協議の対象になる。たとえば、B52が再配備を要求して沖繩に来る、その目的が朝鮮に出撃するという場合には、当然のことながら事前協議の対象になるということはお認めになるのですか。
  409. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ですから、先ほどから状況をはっきり設定させていただきたいと申し上げまして、北からの侵略が起こった場合というふうに設定をなすったわけであります。こちらから侵略をするというようなこと、わが国の基地をそれに使うということは、そもそも安保条約が許さないことでありますから、そんなものは事前協議の対象になりません。そんなことはそもそも許されないことなんです。事前協議の対象になるとすれば、それはわが国の安全が脅やかされている場合であって、その場合でも、面接の戦闘行動が問題になれば、それは事前協議の対象にならなければなりません。
  410. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 ですから、いまB52が再配備を要求した場合に、これを認めるか認めないかという問題、さらにそれが朝鮮に向けて出撃をするということ、これについて侵略はしないというのがたてまえである、だから、そういった想定はできないというふうな御答弁だと思いますが、いま問題になっておるのは、県民が非常に心を痛めておるのは、B52がしばしばやってきておるんですね。少なくとも施政権返還後四回やってきておる。これはいわゆる常駐再配備を目的として、県民感情をそういった方向でならしていく布石ではないかというふうなことなんです。そういうことの中から、再配備の要求が出てきた場合にはどうなさるかという問題が現実に県民の中から出ているわけなんです。というのは、県議会が何回も全会一致の決議をしてみても、どのような場合でもB52は飛来をさせないでほしいということを決議しても、これに対する政府の態度は非常に冷たい。これはいわゆる再配備の問題として政府考えており、再配備したら政府は一体どういう態度をとるだろうかということなんですね。ですからその再配備は、たぶん平時の場合にはないということはアメリカが言った、有事の場合にはあるだろうということから発展してここまで来ておりますが、現実に有事の場合の想定が、朝鮮にいまもし事が起こった場合どうするかという問題で、そのときは外務大臣としては、日本の安全、これをまず考えて、これに対する応諾の姿勢をとるということですが、いま現実にあり得ることは、嘉手納基地の態様にしても、核問題と関連してB52が再配備されるのではないかという心配が現実にあるわけです。ですから、平時の場合には再配備は絶対ないという保証があるのかどうか、この点をもう少し明らかにしてもらいたいと思います。
  411. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、平常の事態におきましては、アメリカ側としては、台風避難など真にやむを得ない場合以外には、B52を沖繩を含めたわが国——失礼しました、沖繩であれどこであれ、B52をわが国に飛来させ、ましてや駐留させることはないということは確約いたしておるわけであります。  ただ、先ほどから問題になっておりますように、非常事態の場合にはどうなるかということでございますけれども、その場合には、大臣も申されましたように、わが国の国益、つまり日本の安全を中心に考える。ただし、その日本の安全というものは極東の平和と安全とは無関係ではないわけでございます。そういう事態を総合的に判断する。B52の駐留を認めるか、あるいはまたB52がわが国の基地を使用して戦闘作戦行動に出ることを認めるか否かを判断する次第でございます。つまり、このB52の問題につきましては、まず日本に来ることについて、それが一定規模以上になりますときには配置における重要な変更になりますので、事前協議の対象になります。さらにそれが戦闘作戦行動に出るときは、また事前協議の対象になるわけでございます。その意味でわれわれとしては、このB52の行動については十分規制する手段は持っております。しかしながら、根本的にはアメリカのそういう行動がすべて安保条約の目的の範囲内で行われるべきものであることは先ほどから大臣がおっしゃっておられるとおりであります。
  412. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま大臣は侵略の問題を出されましたが、B52が一九六五年から嘉手納基地を根拠地としてベトナム爆撃をやったことは、これはもう否定することのできない歴史の事実なんです。この点については大臣はお認めになるかどうか。
  413. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 復帰前におきます米軍の沖縄におきます基地の使い方については、日本政府としては十分承知いたしておりません。
  414. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 承知していないというのではなくて、現実に国会でも問題となり、B52は沖繩に六五年から台風避難を名目にして嘉手納基地にやってきた。それでB52の北爆が開始された。これは、わからぬじゃなしに、わかっているんじゃないですか。これがわからなければ、一体外務省はどういうふうな考え方をB52に持っているのか非常に不思議でたまらぬです。これは事実国会でも問題になっているわけなんです。しかしそのときには、施政権はアメリカにある、安保条約は適用されておらないという形ではあったにしても、このB52が嘉手納基地を根拠地としてベトナムを爆撃をしたという歴史的事実はあるわけなんです。すなわち侵略の軍事行動をB52がやったという問題なんです。これを外務省はわからないということですか。
  415. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 復帰前の一時期にB52が沖繩に駐留いたしておったことはわれわれとしても承知いたしております。ただ、その行動に関しましては、われわれとしても十分把握する手段は持たなかった次第でございまして、そのことを申し上げておるわけでございます。
  416. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間がないようでありますから結論を急ぎますが、B52は、大体アメリカとしては戦歴でしょうが、いわゆるベトナム爆撃の主力だったことは歴史が実証しておるわけです。これは沖繩からももちろん行った。タイのウタパオからも爆撃をしておる。グアムからも爆撃をしに行った。しかもあのとき、むしろ嘉手納基地がその爆撃の根拠地となっていた。この事実をはっきりわからないというふうなことで逃げようとされますが、これは事実なんです。  なぜ私それを話すかと申し上げますと、B52は大体戦略爆撃機で、侵略的な軍事行動をこれまでアメリカは続けた。こういったようなB52が再配置される、あるいは常駐を要求するということは、これはまさしく、アメリカベトナム後におけるいわゆるアジア核戦略の中心がいま日本の基地を中心にして朝鮮に焦点が当てられているような場合に、B52が沖繩に配備されるということに対する国民的懸念、これは非常に濃厚なんです。こういった侵略の経歴を持つような、B52はいわゆる黒い殺し屋とすら言われておる。これが再配備要求に応じないだけではなくて、しばしば沖繩にやってくることも好ましくないということを福田外務大臣はその当時言われておるわけです。むしろ私はその考え方に立って、県民の要望に沿って、緊急やむを得ない場合ということをもう抜きにして、いかなる場合でもB52が嘉手納基地に来ないように政府としてアメリカ政府に要求することができないかどうか、私この点をはっきり大臣に要望して質問を締めたいと思いますが、この点について大臣いかがですか。
  417. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、わが国の安全のために沖繩県民に非常な負担をしょっていただいておることについては全国民が等しくそのことを知り、また心苦しく思い、何とかしてできるだけ摩擦を少なくしたい、また報いる道はないかと思っておりますことは、これは何度申し上げても申し上げ足りることがない私どもの気持ちでございます。したがって、沖繩県議会がそのような決議をなすったことについても、その気持ちは私どもよく理解をいたします。ただ、この日米安保条約というのは、わが国の安全のために設けられた取り決めでございます。その取り決めの中で、アメリカ側の事情によって、緊急やむを得ない緊急避難のような場合に、沖繩の基地をごく限られたそのような条件のもとに使用をさせてほしいと言いましたときに、これを許さないということは、そもそもアメリカ安全保障のたてまえ、仕組みを結びました精神から申しまして、いかがなものであろうかというふうに私は考えております。
  418. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 終わります。
  419. 藤尾正行

    藤尾委員長 午後七時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後六時五十八分休憩      ————◇—————     午後七時三十二分開議
  420. 藤尾正行

    藤尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。永末英一君。
  421. 永末英一

    永末委員 私は、最近防衛庁長官が新しく四次防以後に整備すべきわが防衛力の性格として、基盤防衛力を備えるべきだということを言い出されました。これらに関連をいたしまして本日は御質問を申し上げておきたいと存じます。  さて、本日のこの委員会で、防衛庁長官シュレジンジャーアメリカ国防長官との話し合いのもとで、八月に行われました三木フォード会談に基づき安全保障協議委員会の枠内で新しい日米間の安全保障条約運用に関する新協議機関をつくる、この機関の性格について述べられましたが、それはこれから質問申し上げようと思います基盤防衛構想と無関係ではございませんので、この性格を少しく明確にしておいていただきたいと思います。というのは、安保条約運用を包括的に考えることもこの新協議機関任務に含まれておるということでございますが、あのときに他の委員から質問がございましたように、第六条に義務づけられている日本国側の義務、これもまた入るのかという質問がございました。必ずしもこの質問に対して明確に答えがなかったのでございますが、私が伺いたいのは、第六条は基地貸与の規定でございまして、その基地貸与をいたします場合に、アメリカの目的としては日本防衛につけ加えて極東の安全のためというのがつけ加わっておる。したがって、疑問点は、極東の安全のためにわが方がこの新しい協議機関アメリカ協議に入るのかどうか、この一点が私は非常に気になるのでございまして、ひとつこの点の御解明をいただきたい。
  422. 坂田道太

    坂田国務大臣 私が日米防衛協力、特に作戦協力等につきましてシュレジンジャー長官合意を得、しかも年一回責任者同士が会う、そしてまた安保協議委員会の枠内において新しい協議機関を設けるというふうに考えましたのは、安保条約を結んでおって有事の際における作戦協力について何らの話し合いも行われておらない、あるいはそれを詰めるような場がないということがおかしいわけなので、その点についてやはりはっきりした合意を得、かつこれは詰めておくべき問題だという考え方でございますから、先ほどお答えを申し上げておりますように、第五条が中心になるというふうにお考えをいただきたい。
  423. 永末英一

    永末委員 五条が中心である、そして五条の起こり得べき事態を想定して四条の規定があるわけでございますね。したがって、われわれが自衛力を保有し、日本の国の安全確保に資しようといたしますのは、そこでまさに終わっているわけです。私どもの見解によりますと、第六条の基地貸与のためにアメリカが掲げておる極東の安全のためということは、それはアメリカが基地を使用される場合に、それを利用してお使いになるだろうが、そのことがわが方の自衛隊がわが方の政府によって保有され、そしていろいろな配備、装備運用が行われていることとは直接には関係がないのだ、したがって新協議機関でもその辺のけじめをはっきりさしておいていただきたいという趣旨でございますので、もう一度この点を明確にしておいていただきたい。
  424. 坂田道太

    坂田国務大臣 まさに永末委員指摘のとおりに私ども考えておるわけでございます。やはり第五条が中心になる。しかも日本の安全ということが第一義的に考えられなければいけないわけでございます。それに対する何らの話し合いも行われておらなかったこと自体おかしいということで日米協議委員会ということを考えたわけでございます。
  425. 永末英一

    永末委員 これは将来紛淆の起きないように厳重にその一線は守っていただきたい点だということを重ねて御注文をいたしておきます。  さて、基盤防衛力の構想の発表が、十月の二十九日でございましたか防衛庁長官から各幕僚長、統合幕僚会議議長並びに技術研究本部長に対して行われました。その中で抑止という言葉が一切省かれておるわけでございます。四次防におきましては、侵略を抑止する防衛力を整備するということがその目的でもございました。従来、国会におきましては抑止という言葉が何遍も使われてまいりました。ところが今度の長官指示には抑止という言葉は、注意をせられたのかどうかわかりませんが、どこにも書いてないわけです。だから、いわゆる抑止力というものの考え方をある意味で判断をされ、そして注意深くこれを避けられたのかどうかと私は思っております。したがってその意味では、抑止という言葉を用いなかった理由をまずお聞かせいただきたい。
  426. 丸山昂

    丸山政府委員 御指摘のとおり、四次防の国防の基本のところにも、侵略を抑止する防衛力を整備するという言葉が使われておりますけれども、まあ大変口幅ったいことを申し上げるわけでございますが、抑止そのものの言葉の使い方としては、主として核戦力の場合の核抑止力という使い方で普通使われるわけでございます。もちろん通常兵器による抑止力というものにも適用があることはございますが、どちらかというと、その通常兵力にしても侵攻能力、つまり相手方に攻め入って打撃を与えるという能力、その能力を評価して抑止の効果があるということで、そういう意味で使われることが多いようでございます。デターレンスというのが語源的にテロス、恐怖というものを基本にできている言葉であるというふうにも伺っておりますが、そういうことで、相手方に攻め入って打撃を与えるということ、それが抑止の効果につながっておるという考え方でございますが、わが国の場合におきましては、御案内のように他国の、周辺諸国の脅威とならないということがまずわが国防衛力整備の一つの重要な条件になっておるわけでございまして、そういう意味わが国防衛力の意味合い、機能を評価する場合において抑止力という言葉は適当ではない。これは日米安保条約を締結することによってアメリカの核抑止力を初めとする軍事力と結合いたしました場合においては、十分抑止力効果があるわけでございますけれどもわが国の自衛力それ自体といたしましてはそういう機能は持っておらないということで、防衛考える会におきましてもいろいろの方からそういう問題についての御指摘がありました。中には高坂教授は、これは拒否能力、デナイアルケーパビリティーという言葉をたしか使われております。それを防止力というような表現で使ってはどうかというようなことを御提言があるわけでございますが、ただ私どもは内部的にこれを防止力とかあるいは阻止力とかいう言葉で使うことが——実は阻止力等にいたしましてはもうすでに内部でそれなりの定義で使われている言葉がございます。たとえば海峡阻止という場合には、要するに後方の支援路を断つというような意味合いに、戦術的な意味に限定されて使われておりますので、必ずしもそういった言葉を使うことが適当でないというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、抑止という言葉を避けておりますのは大体そういう考え方でございます。
  427. 永末英一

    永末委員 いま防衛局長の御答弁にありましたように、抑止という言葉、これは翻訳語でございますが、デターレンスでございまして、もともと核戦力の意味に使われてきたものでありまして、たまたまそれが通常兵力についても使われることがございました。わが国におきましてはきわめて乱暴にこの言葉は使われてまいりました。国会におきましても、わが自衛隊——なぜ一体自衛隊を持っておるのかと言えば抑止力だと答弁された例もございます。  きょうはその意味合いで重要な御答弁があったと思いますが、その意味で明確にしておきたいのは、四次防後の防御力整備の計画をお立てになる場合に、四次防で言われた侵略を抑止する防衛力を整備するのが目標だということは、抑止する防衛力は抑止力でございましょうが、その考え方は捨てた、こう解釈してよろしいか。
  428. 丸山昂

    丸山政府委員 ここでこの表現が日米安保体制を基調として侵略を抑止する防衛力を整備しという表現でございまして、大変三百代言的で恐縮でございますが、要するに日米安保とあわせて考えた場合において、やはり日米安保体制を基調とした場合には侵略を抑止する防衛力になるんだと、こういう考え方でございますので、基本的に在来の考え方が変わっているというふうには申し上げられないと思います。
  429. 永末英一

    永末委員 そこが非常に重大なんです。だから、先ほどの新しい新協議機関で何を一体協議をしていくのかのテーマともここは関連するところである。いままではこの辺が非常に分析されずに使われておった。すなわち、日米安保条約でわが方の持つ自衛力がアメリカの持つ戦力とある意味で連結をいたしておる。アメリカの方は核戦力にいたしましても通常戦力にいたしましても、抑止を目途にいたしておる。したがって、これは一言で言いますと攻撃力そのものである、敵に手痛い打撃を与えるということがアメリカ考えている抑止力の本体ではないかと思います。有事即応であり、そしてまたその力はきわめて強大な打撃力である。わが国がそういうアメリカの戦力と日米安保条約で結合していく、そして、しかも防衛庁長官はある意味でのこれとの間の防衛協力考えねばならぬとお考えである場合に、彼らは攻撃を考える、攻撃態勢をとっていることが抑止力であると考える。われわれは政府の発表によれば専守防衛である。おのずからきわめて明確に任務が違うわけですね。したがって、その意味では侵略の未然防止、これをこのままの言葉で振りかえれば未然防止力とでも申しますか、だから四次防後の防御力整備計画における防衛力は未然防止力であるというのなら、その未然防止力というのはいわゆるいままで使ってきた抑止力とは違ったものである、ある一定の限界を持ったそういう力なんだ、こういうぐあいにお考えかどうかを明らかにしていただきたい。
  430. 丸山昂

    丸山政府委員 四次防以前におきます抑止の使い方については、先ほど先生から御指摘がありましたような非常に厳密な意味での峻別をして使っておらなかったというふうに私考えるわけでございまして、基本的な考え方は変わっておらないわけでございますが、今回この「侵略を未然に防止する」ということは、わが国が整備してまいります防衛力の性格に着目をして、それは侵略の未然防止を目的としておるのだということを明記をいたしました点で基本的に考え方は変わっておりませんが、問題の性格を明確にしたという点で今回の指示の意味合いがあるのではないかというふうに考えております。
  431. 永末英一

    永末委員 抑止力というのは、先ほど申し上げましたように相手方に打撃を与えるということが主眼でございますから、兵器体系もまたおのずからそうなってくる。それと起った意味でわれわれが未然防止力を備えなければならぬとあなた方の方でお考えなら兵器体系もまたおのずから変わってこなければならぬ、こういうことに結論的になると思いますが、いかがですか。
  432. 丸山昂

    丸山政府委員 そのとおりでございます。
  433. 永末英一

    永末委員 この点はある意味ではこの国会におきます防衛論争で重要な分岐点になるところだと私は思いますので、これはひとつ留意をいたして先に進みたいと思います。  今度の指示の中で「間隙のない防衛体制を構成」すると書いてございます。その間隙のないというのはどういう意味なんですか。
  434. 丸山昂

    丸山政府委員 日米安保条約を基調として、そしてわが国みずからも防衛力を国力国情に応じて漸次整備してまいる、こういうのが国防の基本方針から出ておりますわが国の本本的な考え方でございます。この米国との安全保障体制、これを維持するということによりまして、先ほど申し上げましたようにあらゆる侵略に対処し縛る、またあらゆる侵略を未然に防止する、こういう考え方でございまして、そこで安保体制、非常に性格の違うアメリカ軍事力というものと日本のわが防御力との間に間隙を生じないということを言っておるわけでございます。  これを別の面から申しますと、日本に対する脅威のスペクトラムという言葉をよく使用いたしますが、いろいろな段階的に分けました予想される侵略というものがあるわけでございます。この一番高いところに核戦略、戦略核による攻撃という一番高いところから、下は一番小規模の侵略事態というところまで参るわけでございますが、そのあらゆるスペクトラムに対応できる体制をつくるということでございまして、そういう意味で間隙のない防衛体制という表現を用いたわけでございます。
  435. 永末英一

    永末委員 これは米国との間の安全保障体制というものがあって、したがってそのもとにアメリカ軍の軍事力があって、そしてわが方はわが方として自衛隊の戦力を持ち、その他いろいろなものが必要だと私は思いますが、それを全部並べたら間隙がなくなる、こういう意味ですか。
  436. 丸山昂

    丸山政府委員 いま御指摘のは、アメリカの在日米軍、それからそれをバックとするたとえば核戦略体制、こういったものが背後にあり、それから在日米軍というものがございまして、そしてわが国自衛隊防衛力というものをそれにプラスをいたしまして、その全体がいかなる形の侵略に対しても対応できる能力を持つと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  437. 永末英一

    永末委員 重点の置きどころが少し違うわけでありますが、もう少し明確にするために、四月の一日に、その当時第一次の長官指示が出ました。その指示が出ましたときに記者クラブに発表された。メモもまた発表されたのでございますが、そのときの情勢判断では、「国の独立と平和を確保するにたる防衛体制を確立するには至っていない。」防衛力を漸進的に整備するように努めてきたけれども、そういう判断に立っているわけですね。  そうしますと、この四月の判断と、それからこの十月の終わりの間隙のない防衛体制を構成したい、こういうこととは、並べました場合に一体どういうことなのか。何か条件が変わったのか。変わったから今度は間隙がなくなり、四月の場合に「国の独立と平和を確保するにたる防衛体制を確立するには至っていない。」という判断をしておられるのでありますから、恐らくどこかに間隙があるから穴があいておる、こういう意味ではなかろうか。変わったのなら、どこが変わったのか、この二つの関連を御説明願いたい。
  438. 丸山昂

    丸山政府委員 この四月に出しております現在の「複雑な国際情勢のもとにおいて、国の独立と平和を確保するにたる防衛体制を確立するには至っていない。」ということは、第一次防から第四次防の中途段階でございますけれども、それぞれの防衛力整備計画を経てまいりまして、そこで現状を振り返ってみました場合に、いままでの防御力整備の現状というものをきわめて厳密、冷静に批判をいたしますと、これはやはりゼロから出発をして、できるだけ早く体制をつくり上げたいという非常に急いだ結果もあるわけでございますが、予算の制約その他もございまして、結局でき上がったものは正面装備に大変力を入れてやってまいったわけでございますが、その正面装備をバックアップするための後方体制その他が十分にできておらない。結局非常にアンバランスなかっこうで、それ自体がすぐに戦力になり得るかと申しますと、決してそういう状態になっておらないという、こういう現状認識でございます。そういう点を踏まえて、次のポスト四次防については、この四次防の反省を含めてひとつ作業をするようにという長官の御指示をいただいたわけでございます。  そこで今度の第二次の問題について、ただいま先生から御指摘のございました「間隙のない防御体制を構成して、我が国に対する侵略を未然に防止する」ということは、これは要するにわが国の防御力をあり得べき姿として保持をした場合においてはこういう形になることが望ましいのであるということで申し上げておるわけでございまして、この何者の間に思想の違いというのは特にございません。
  439. 永末英一

    永末委員 この四月の場合に「確保するにたる防衛体制を確立するには至っていない。」というのは、何かかにかやはり欠陥があるからそう判断されたに違いない。御説明を伺っていると、何か自衛隊の持っている兵力が動いていく場合、それが機能していく場合、その機能が十分に発揮できないような状態であったから防衛体制が確立されていない、こういうことでございますが、私ども自衛隊の正面兵力だけの問題ではなく、その他たくさんの点において、わが国全体の安全保障体制というか防御体制というか、それがいわばあちこち穴がありまして、動くに至っていない。四月の段階ではそのことを率直に反省されたのかと思っておった。どっちなんですか。
  440. 丸山昂

    丸山政府委員 確かに御指摘のとおりに自衛隊だけの問題ではなくて、日本の国全体としての防衛体制の問題に大変問題があるわけでございますが、ここで言っておりますのは、これはポスト四次防の防衛計画を立てる上についての長官から防衛庁内部に対して出された指示でございますので、防衛庁以外の分について特にこれを触れておるわけではございませんで、現在の防衛庁の、自衛隊防衛体制についての現状分析と申しますか現状評価と申しますか、そういった点について触れたものでございます。
  441. 永末英一

    永末委員 この点はまたもう一度後で触れるといたしまして、先ほど抑止力の問題について触れましたが、アメリカは要するに第一次的には抑止力日本列島線においても保持している。アメリカ側から見た場合に、わが方の自衛力というものは一体アメリカ抑止力に何らかの意味寄与しておると防衛長官お考えですか。
  442. 丸山昂

    丸山政府委員 アメリカ抑止力抑止力効果を発揮するためには、やはりその具体化される方法と申しますか、パターンが、メカニズムがはっきり決まっておるということが必要ではないかと思うわけでございます。日米安保条約が締結されておりまして、これによってアメリカの核抑止力というものが働くことになっておるわけでございますが、これが有効に機能するためには、日米安保条約運用されるような形になっておらなければこの効果が発揮できないというふうに考えるわけでございまして、そういう意味で、日米安保条約を有効に運用するためには、わが国自体わが国にふさわしい形で防衛力を保持し、かねがね長官が言われておりますように、国民全体が国を守るという決意を保持し、そして自衛力を持つことによって日米安保条約を有効に活用し、そしてその結果、アメリカの核抑止力を初めといたします全般的な抑止力が十分に効果を上げるものだというふうに考えるわけでございまして、わが国の自衛組織、自衛能力、いわゆる自助の精神にのっとってみずからが防衛力を整備するということなしには安保条約は、またアメリカの核抑止力は十分な効果を果たし得ないものであると考えるのでございます。
  443. 永末英一

    永末委員 私の申し上げておるのは、アメリカの戦力というのは相手方に対して打撃を与えるというところにすべてが集中せられている。わが方の自衛隊というのはそうではなくて、政府の言葉によれば専守防衛、私は専守防御と呼んでおりますが、明らかに目的、任務が違うものですね。ただ問題は、アメリカとの間で防衛に関する話し合いをしようという場合には、お互いに持っている力、任務が違うんだということを明確にしておかなければ——抑止力に対してプラスをするんだとすればアメリカアメリカなりに持っている戦力の鏡に照らしてこちらをながめる、それは実はこちらの憲法上許されている任務ではないわけでしょう。したがって目的、任務の違う力だけれども、そのことが安保条約というものに結び合わされている限りにおいてはアメリカ日本防衛というものを日本自衛隊に期待できる、こういうことなら彼らはそれを踏まえて抑止力ということを考えることができる。私はそこがポイントだと思う。核戦力でいろいろなことを申されましたけれども、そこのお互いに持っている力が違うんだということをまず意識させる、これが話し合いのもとではないかと思いますが、お答え願いたい。
  444. 坂田道太

    坂田国務大臣 まさに先生おっしゃるとおりでございまして、専守防御という憲法の制約だけではなかなか日本の独立と安全は守れない。それに対して安保条約というものが不可欠な要素としてある。しかしながら、その両方の機能をうまくつなぎ合わせれば、それに第一番目に申しております国民自身のわが国わが国民の手によって守るという気概なりあるいは抵抗の意思というものが加われば間隙のない一つ防衛力になるし、それが安保条約抑止力にもつながっていく。したがって、非常に違った機能を持っておる自衛隊アメリカ軍事力というものがうまく機能するようにするためにはどうするか。いままでは安保条約というものはあるけれどもそういう機能することについての有事の際における作戦協力防衛協力は何ら話し合いがなかった。その機能をわきまえた上でどういうふうにこれをかみ合わせるかというところ、そしてもって日本の独立と安全が守られるかというふうに考えるという意味において、あの日米防衛協力意味が出てくるというふうに思います。
  445. 永末英一

    永末委員 長官、いまあなたは協力という意味のあなたの御見解を披瀝されたわけでありますが、私はこの点で申し上げたいのは、アメリカの戦力とわが方の自衛隊の力とは目的、任務が違う、わが方はわが国防衛だということになりますと、この防衛任務は徹底的に遂行されねばならぬということが防衛庁長官なり総理大臣の覚悟でなくてはならぬ。そのことが自衛隊全員にも響き、そしてそれにのっとっていろいろな装備が持たれ、配備が行われ、訓練、教育が行われるべきだと思います。そうでなくて、そのことがはっきりさせられずに協力の話になりますと、ぼけてくるわけですね。いままでわが国防衛方針がぼけておったのはその点ではないか。  そこで、今回の指示におきましても「直接侵略については、まず独力で対処して極力これを排除」する、こう書いてある。「まず独力で対処して」——じゃ「まず」の次にどうなるのか。「極力これを排除」する、力がきわまった後はどうなるのか。きわめて方針が弱いわけですね。何かだれかを頼りにしながらやっておる。これで一体戦えるのかどうか。「まず」ではないですよ。徹底的に対処して戦うことを目途とするという目標をはっきり与えなければ——「まず」という言葉、「極力」という言葉、なぜこんな言葉が入ったのか。一体直接侵略が入った場合にどういう指導をされるのですか。お答え願いたい。
  446. 丸山昂

    丸山政府委員 大変正鵠を突かれておるわけでございますが、「まず独力で対処し」というニュアンスは、実は四次防までにはこういう表現がなかったわけでございますが、わが国日米安保条約に基づいてアメリカ軍が駐留しているという現実を押さえまして、いかなる場合においてもわが国に対して直接侵略がある場合において、まずわが国自体でこれに対処するという考え方、気構えはそのとおりでありますけれども、現実にはかなり早い時期にアメリカがこれと軌を一にしていわゆる安保五条の発動ということがあり得るのではなかろうかという考え方が若干入っておるわけでございます。直接侵略に対する対処は陸海空それぞれのこれに対する構想を立ててございますが、これはいずれもまず独力で対処することを考えております。しかしながら、陸については終始陸の地上部隊で対処するという考え方がございますが、補給その他についてはアメリカの支援を仰がなければならないということでございます。それから海空につきましては、かなり早い時期からアメリカが入るということでなければ対処の方策が立たないということでございまして、この点については陸海空それぞれ若干のニュアンスの違いがあるわけでございますけれども、一応まず独力で対処して極力これを排除するというところに自衛隊としての一つの決意があらわれておるというふうにおくみ取りいただきたいと思うのでございます。
  447. 永末英一

    永末委員 わが国防衛力保持否かという問題について、一番あいまいな点がこの点なんです。つまり、われわれは日米安保条約のもとにおって自衛隊を持っておる、その自衛隊というのは国民の側から見ますとわが国防衛を全うするに足るだけのことをやっているのかどうか。アメリカアメリカの憲法に従ってわが国が攻撃を受けた場合にどうするかを判断するのでございますから、それは日米安保条約に明確に書かれておるわけで、いつ彼らが発動するかこっちはわからぬ。その想定に立たざるを得ない。したがって、あらかじめ彼らがわれわれを必ず助けるだろうということ——助けると言ったって陸上部隊がおらぬのでありますから。それから航空部隊にしろ海上部隊にしろ絶えずおるわけでも何でもございません。しかも航空部隊も海上部隊もわが国防衛の機能を持っている編成ではないでしょう、あなた方御専門だから御存じのとおりに。外へ行って攻撃するためのものだ。だといたしますと、わが国の援助をするということになっても、彼らの考える作戦態様は異なっていると見ざるを得ない。だといたしますと、このわれわれの領土、領空、領海に侵略を企てる者ありとすれば、わが自衛隊が正面立って徹底的にこれに抗戦しなければならぬし、そのためには国民の皆様これだけのことをひとつお願いしたい、こういうのが、国民の抵抗の意思があなたの考え防衛構想一つの柱なんだと言われていることじゃないか。そう言っておりながら「まず」とか「極力」じゃ、国民の方は何だかよくわからなくなるのじゃないでしょうか。長官、どう思われますか。
  448. 坂田道太

    坂田国務大臣 平和時における基盤防衛力というものは、先ほどから申し上げますように、正面あるいは後方支援、抗たん性、そういうもののバランスのとれた、しかも即応力を持ったもので、そしてこれが小規模以下の限定的なものに対しては対処できる、こういう考え方なんで、先生のおっしゃるとおりに実は内容考えておるわけでございます。
  449. 永末英一

    永末委員 長官、私の考えておるとおりに考えておるとおっしゃいましたが、十月三十日、この長官指示について防衛局の方でこれの説明文書なるものをつくられた。その中で、こんなことが書いてあるわけですね。「我が国の防衛力は、侵略者に相当の犠牲を強いるものであることを認識させて、侵略を躊躇させる程度のものであることを示唆する」こういうこと。「躊躇」というのは、それでとまると判断されておるのですか。ちゅうちょしたって進んでくるかもしれませんね。それも「躊躇」をまた「示唆する」くらいのことである。わが国防衛力は、これだけ持っておれば決して彼らは来ないだろうというのか。来た場合には相手しなければならない。その前はどうなるかわかりませんけれども、ちゅうちょさせるくらいのものなのか、いや、これでぴしゃっととめてみせるということを国民に訴えて、四次防後の防衛力の整備について協力を求めるのか。この辺重要なことなんですね。この辺もひとつしっかりお答え願いたいと思います。
  450. 坂田道太

    坂田国務大臣 未然防止という意味はまさにそのとおりでございまして、バランスのとれた、それ自体として即応力を持った完結性のあるものだということなんです。それはいま生起すべき侵略事態に対しては対処できるのだ、こういうことなんでございます。  先生と私とニュアンスがちょっと違うと思いますのは、日本自衛隊のみをもって単独で考えるならば、これはなかなか問題があろうかと思うのです。いろいろの事態に対して対処できないし、あるいはそれらの役割りを果たせないと思うのです。しかしながら、その前提として、第一番目に国を守る気概というものが国民に浸透して、抵抗の意思というものが一人一人にあるという前提に立ち、かつ安保条約というものがあるといたします。この三つが一組なんだということで考えますと、いま持っております基盤的防衛力というものは、先生からごらんになると非常に弱いようにお思いになりますけれども、第一番目の国を守る気概というものがあり、かつ安保条約というものが抑止力として働いておる、この三つが一体となった場合は、相当大国といえども大規模な侵略というものをちゅうちょせざるを得ないんだ、こういう考え方でございまして、持っておりますそれ自体、物理的な言うならば軍事力というものは小さくとも、安保条約と国を守る気概というものが一丸となるならば相当の役割りを果たすんだ、こういう考え方でございます。先生は安保条約は別だというふうにお考えになって、単独の自衛隊ということをお考えで御説明になっておるからいまのような御疑念があるのではなかろうかというふうに拝察をするのでございますが、私の考えは実はそうなんでございまして、三つが一つだというか、したがって安保条約というのは不可欠なんだ、つまり安保条約がもしなかったとするならば、これが有効に働かなかったら、日本防衛力というものは根本的に構想を変えなければ、日本の独立と安全は守れないというのが私の考え方なんです。あくまでも安保条約というものは日本の独立と安全にとって不可欠なものだという認識に立っておるわけでございます。
  451. 永末英一

    永末委員 長官、いま国民の気概と自衛隊の持つ抵抗力と安保条約の機能とワンセットにしてお考えになりました。私は、現在の日本の平和を維持している条件の一つ日米安保条約があることを認めております。しかしわれわれの自衛隊の持つべき力というのは、その安保条約によるアメリカ抑止力が破れたときに、一体われわれの自衛隊は何をなし得るかということを政府としては国民に明確に示さなくてはならぬ問題である。それが国の安全を維持するために百要るといたしました場合に、現在の事情でそれが八十であるのか六十であるのか、それはそのときの条件によって決まるわけでありますけれども、発想としましては、いまのように自衛隊の性格の設定を行っておかなければ、初めからワンセットが望ましいと言ったってワンセットになっておらないわけであります。そしてそういうものの条件が、自衛隊の抵抗力は国を守る六〇%だ、他の四〇%はどうやって補うのだという国民考えるべき問題になってくる。国会の考えるべき問題である。そしてそのためにどういうような手段が必要かということを考えざるを得ない。望ましいことは望ましいけれども、気概を持たせるためにはどうするのだというのが政治の課題なんですね。  私は、安保条約があっても考えずに、独力で守ることを考えろと言っているのではございません。ただわが方がなぜ自衛隊を持っているかは、抑止力が破れた場合に、抵抗力とは称するけれども、一体われわれでどの程度抵抗できるのか、抵抗するためにはこれこれの準備をしなければならぬということを国民に訴えなければ、国民は税金でこれを養うわけでございますから、得心がいかなければ動きません。だから、なるほど長官が望まれるようにワンセットが望ましいけれども、問題の安保条約日本の安全に対して果たす役割りと、自衛隊が果たす役割りと、国民が最終的におれたちの国だから守ろうという気概とはそれぞれ異なった部面があり、それぞれをやるについてはやる役割りがあるということを承知してかからなければ、この問題は解決しないと思いますが、もう一度お答え願いたい。
  452. 坂田道太

    坂田国務大臣 そこがちょっと私と違うところなんで、現実の問題として安保条約は結ばれております。現実、これは抑止力として働いておる。しかし、それが十分であるかどうかということについては、私が申しますように、これをもうちょっと十二分に効果的に機能するようにしなければならないというふうには思いますけれども、いまここで安保条約が機能しないという状況ならば、根本的に防衛構想を変えなければ成り立たない。いわんやGNPの一%程度でやっていくというようなことでは、とうていわが国国民に対しまして説得力ある自衛力というものを持ち得ることはできないというふうに私は判断しております。むしろ内部の情勢を知っておりまするがゆえにそういうふうに私は考えるわけでございまして、安保条約は現に存在いたしております。その機能というものにある抑止力というものを、十分——十分ではないにいたしましても、今日平和を維持しておる一つ効果があったというふうに評価をいたしておるわけでございます。さらに、その効果というものを間隙のないものにしたいというために日米防御協力というものもちゃんとしておかなければならないということでありますし、また同時に、わが国自衛隊の能力の限界あるいは機能、それからアメリカ軍が持つ機能というものを十分知った上で、そしてどの点がわれわれに期待できるのか、またアメリカとしては、どの程度日本は、日米協力で共同して対処する場合にその機能を果たせるのかということをお互い承知した上でかからないと、間隙のない、侵略事態に対して対処ができないのではないか、こういうふうに私は思うのでございまして、それだからといって安保条約があるから自衛隊というものあるいは国民の気概というものを培うことはなかなかむずかしいのだということにはつながらないわけでございます。しかし何と申しましてもわが国国民の手によって守るのだというこの気概だけはなければ、そういうような気概もなく、防衛努力もしない、そういうようなところに対して安保条約が機能するはずはないというふうに私は考えるわけでございます。
  453. 永末英一

    永末委員 私どもは、現在わが国日米安保条約下にあり、日米安保条約わが国の安全を支えておる一つの機能をしていることは認めておるわけです。しかし、われわれが自衛隊を保有しておるのは、なるほどだから先ほど問題を出しているように、アメリカの持っている抑止力とわれわれの持つ自衛力とどういう関係があるのかという見解をただしたのはその点でございまして、しかし、われわれが自衛隊を持っているのは、その抑止が破れたときに一体どの程度それが役立つのかということを国民に説明できなければ、国民自衛隊の保持ということに対して得心がいきませんね。安保条約が役に立たぬと言っているのじゃないですよ。しかし、われわれが自衛隊を保有するのは、その抑止機能が破れ、あるいは抑止力はあっても何か起こるかもしれない、そのときにわが自衛隊——アメリカは動かない、自衛隊か動かなければならぬという場合に、その力というもの、まさに抵抗力を持たねばならぬ、そこの点を指摘しているのでございまして、それは最近の国際紛争の性格が、きわめて兵器の破壊能力が大きくなりました。たとえば一九六七年の中東戦争でもそうです。七三年の同じく中東戦争でもそうですし、またインド・パキスタン戦争でも短時日しか戦争が続かないというのは破壊力が大きいからだと思う。だからいままで政府日本国民に説明してきたように、何か非常にロングレンジの期間を置いて準備ができたりしているのじゃなくて、破壊というものは始まったら短期間で現状変革を行う、そうして行ったものを国際政治の舞台に乗せて変革されたものの状態を固定しようと図る、これがここ最近行われておる国際紛争並びにその国際紛争が落ちつく場合の国際政治のパターンではなかろうか。だといたしますと、われわれが自衛隊を保有するのは、その現状変革をやらせない力というところに重点を置いてわれわれが装備をし、編成をし、訓練をすべきではないか、そういうものを国民に知ってもらうべきではないか、私はそう思っているのです。長官、どう思いますか。
  454. 坂田道太

    坂田国務大臣 そこでは非常に焦点が合ってきたように私は思うのでございますけれども、まさにその意味において基盤防衛力、しかもそれは量より質だ、いろいろな兵器が技術革新によりましてどんどん高まってくるであろう、それに対して対応するものをやはりわれわれも備えなければならない、こういう考え方でございますし、従来のままでいきますと、所要防衛力みたいな考えでいくと、何だかやっているような形はしておりますけれども、実際はまとまった力にはなっておらない。やはりこれは油もあるいは弾薬も、あるいは後方支援体制も、そして抗たん性もというものが完結した一つの力になり得るものをやはり整備すべき目標として掲げて、そしてそれに精いっぱいの努力を払うということの方が現実的なものではないだろうか、先生の御指摘のような事態に対処できるのじゃないだろうかというふうに私は考えておるわけでございます。
  455. 永末英一

    永末委員 そういう意味では三次防に書かれ、四次防にはなくなったのでありますけれども、ある程度の有事即応性というものをわれわれの保有する自衛力は持たなければその要請に合えないと思いますが、有事即応性の必要を認められますか。
  456. 坂田道太

    坂田国務大臣 私の基盤的防衛力というのはまさに限定的な侵略事態に対しては即応体制を持つものだというふうに考えておるわけでございます。
  457. 永末英一

    永末委員 あっちこっちに一般に発表されました基盤防御力の絵がございますが、その絵でいきますと「抗たん性等」というのは現状においては一番低い。その次に低いのは補給であり、部品、弾薬である、こうなっておりますが、これらの点については、これを引き上げる特別の措置をやられる、こういうおつもりですか。
  458. 坂田道太

    坂田国務大臣 私ども考えはそうでございまして、実は長官指示の第一次でやりました意味は、その点がどうもまだ実態に即して量的には明らかになっておらないけれども、どうも正面装備に重点が置かれて、抗たん性やあるいは後方支援体制というものが十分でないように思う、この点についてひとつこれにウエートを置く、そしてバランスのとれたものをひとつ考えてみよう、そしていままでの四次防計画について冷厳な、非常にクールな眼で一遍問題を洗ってみなさい、そういう反省の上に立っていなければポスト四次防というものを立てられないのだ、こういう意気込みを示したつもりであるわけでございます。そして今度第二次の長官指示におきまして、もうちょっとそれを具体的といいますか、もう少し幕の人たちがわかりやすいような説明の仕方をしたわけであります。その図そのものが必ずしも量というものをあらわしておるとは思いません。概念図でございますけれども、しかしながら大体そういうことは当たっておるのじゃなかろうか、そういうことを注意をして、ひとつ作業をやってみなさいという指示でございます。
  459. 永末英一

    永末委員 この補給の中で部品とか弾薬はなるほど消耗すれば補給をしなければならぬ。人間については、長官どう考えておるわけですか。
  460. 坂田道太

    坂田国務大臣 人的資源につきましては、平和時のいわゆる基盤防御力よりも、少しそのガイドラインよりも高目に考えておくべき問題であるという考え方であります。あるいは情報収集等については一〇〇%、平時においてもウサギの耳を働かせるような機能も持たなければならない。あるいは警戒監視の体制については、平時においても九〇%ぐらいのものを持っておらなければいけない。そういう考え方を説明したつもりでございまして、やはりパイロット一人を養成するにしましても十年ぐらいはかかるということでございますから、人的基盤防衛力というものを高目に持っておけば、たとえば現在配備しておりますファントムが多少少なくございましても、教育訓練というものであると、たとえば二スコードロンでございましても六スコードロンの教育訓練はできるのではないだろうか、こういう意味において人的な基盤というものについては、特にこの基盤防衛力のガイドラインよりも少し上げて考えるべきだという気持ちを、それにあらわしておるつもりでございます。
  461. 永末英一

    永末委員 このお配りになった絵には少し高く書いてございますけれどもわが国には一億人以上の国民がおりまして、防衛庁長官が予算上所管しておられる人間は二十六万人ぐらいしかいない。そしてしかも欠員がなかなか補充されない。特に陸上自衛隊においてはその二割になんなんとする人間が補充できない。若年のたとえば十八歳になっていく青年を見ますと、これから年間大体八十万人程度で横ばいになっていっておる。だから人的な基盤というのは、先ほど抗たん性とか補給とかということを考える場合に、正面兵力だけではだめなんだ、こう言うのですが、人の面においては、その正面に立つ兵器に取りつく人間だけが日本防衛の問題だとお考えのようでございますね。そうなんでしょうか。
  462. 坂田道太

    坂田国務大臣 いいえ、私は第一番に、国を守る気概というものが国民の一人一人になければいけないのだという基本的な考え方を持っておるわけでございまして、やはりその抵抗の意思というものが国民一人一人に失われたならば、国を守ることができない。どんなに優秀な装備を持ちましても、私が集めましたこの二十五、六万のわが自衛隊がいかに精強でございましても、国民にそういうような気概や抵抗の意思というものが失われたならば、それは力にはなり得ないというふうに思うわけでございます。しかしそれは今後防御の問題、安全保障の問題というものが真剣に本委員会等においても議論される、あるいは国民の間にも考えられるというふうになって、初めて多くの人たち自衛隊にも入ってくるでございましょうし、よしんば入ってこられない人たちでございましても、その持ち場持ち場においてあらゆる支援を惜しまないという体制が整いまするならば、わが自衛隊有事の際において活動を始めたならば、有形無形の支援を惜しまない体制がおのずとでき上がっていく、またそのことがなければ私は国は守れないというふうに思います。
  463. 永末英一

    永末委員 国民側からいたしますと、たとえ国を守る気概を持っておりましても、政府の方がその気概を具体化させる筋道をつくっていかなければそれを現実化する方法がないわけですね。先ほど触れましたように、兵器の破壊力はきわめて強大になっている。わが国の場合には、もし相手方から、不当な侵略を受けますと、非常に狭い地域に人口が密集しておりますので、被害を受けます。その被害を受けた場合に、その被害を局限化し、そしてこれを復申していく、あるいはその人間を救う救護、あるいはまたそのためにいろいろな水、食糧等が補給困難になりますが、それを円滑にそれらの人々に補給をするやり方等々については、これは防衛庁長官として——国民の気概とは、そういう場合におれはこういう役割りを持っているんだなということが気概を現実化させることになる。そんなことと離れて、いま何も法がありませんね。気概を持てといったって、気概を持ってもどうするんだと、こうなりますね。態度で示そうよという言葉がございますけれども、態度で示し得ないものは、心に持っておりましても実は何ともならぬものである。あなた国務大臣ですから、そういうことは政府として考えなければならぬ、問題だとはお考えになりませんか。
  464. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は基本的にはそういうような考え方を持って、何かそういうような具体的な案があるならば将来考えなければならないというふうに思っております。でございますけれども、御承知のように、今日まだ防衛の問題、安全保障の問題についてなかなかコンセンサスを得ることができない状況にもございますし、また自衛隊そのものに対しても、これを認めないというような状況も一方においてあるわけでございます。そういうような国民感情というものも全然無視するわけにはまいりませんし、そういうものが漸次漸次高まっていく過程においていろいろな問題は解決されていく。やはりこのことは順序があるし、現実的に考えていかなければならぬ、しかしながら理想を忘れてはいけないというのが、私の実は考え方でございます。
  465. 永末英一

    永末委員 私は、一国の安全というのは、国民がその気にならなければ保たれないと思います。そのために政府のなす政策は、国民にどういうような危急の場合がありましてもおれたちは生き残れるんだという方法をやはり明示をし、それに対して協力を求めることだと思います。戦力の保有というのはその一つの態様にしかすぎない。まさに、われわれはわれわれの方針としてわれわれから出かけてはいかないんだ、この国を守るだけだ、このように安全保障の基礎概念をはっきりさせたといたしますと、そういう方面に対するのが、これが本当の安全保障政策の柱だろうと私は思います。まだ現在の自民党政権はそこまでいっておりませんから、これはひとつ国務大臣として御研究願いたいことだと思います。  さて、もう少し前へ進みまして、この基盤防衛力を保有したといたしましても、小規模の直接侵略事態を超える侵略事態があった場合には「情勢の変化に応じて、有効に対処できる防衛力に移行し得る」のだ、こういう御構想のようでございますが、移行するというのは一体どれぐらいの時間を考えておられるのですか。
  466. 丸山昂

    丸山政府委員 実はこの点につきましては、こういう指示に基づいて作業をさせておりますので、その作業結果が全部上がってまいりませんと、具体的にどういう部門についてどれだけの時間を必要とするかということについてのはっきりしたイメージがつかめないわけでございますが、私ども、ただいま統幕の年次防衛計画というものを立てております。これは中身は秘でございますが、たとえば来年の三月三十一日で切りまして、その時点において整備されておるもの、わが方が取得して、艦船その他については現に就役をしておるもの、これを前提といたしまして、五十一年四月以降翌年五十二年三月までの間に非常事態が発生した場合にいかにこれに対処するかという計画を立てるわけでございますが、その場合におきましても、現状におきましては大体その年度で予算でお認めをいただいておるもの、これはできるだけ早く発注するというような方法がございます。それにいたしましても、これも品目その他が限られておりまして、大体三カ月以内に整備できるもの、これを除きますと、ほとんどが一年以上の年月を、リードタイムを必要とする、こういうような状況でございます。  そこで、こういう情勢の変化に応じてということでございますが、一応こういう基盤防衛力というものを想定をいたしております前提としては、現在のような日本周辺の国際環境というものがずっと継続するという前提の上に立っておるわけでございまして、これが急激に変化をするというような場合においては問題は残ると思いますが、漸次情勢が変化するというような場合におきましては、現在の基盤防衛力という考え方から、そこに書いてございます「有効に対処できる防衛力に移行」する準備が必要だと思うのでございます。したがいまして、いかにこのリードタイムをとってできるかということは、一に政治的な決断いかんにかかわる問題であると思いますが、なお事務的には、先ほど最初に申し上げましたように各項目について具体的に詰めてみる必要があるということでございまして、これはそれぞれの作業が終わりました段階で大体のことが申し上げられるかと思います。
  467. 永末英一

    永末委員 一九六七年の中東戦争は六日間、インド・パキスタン戦争は十四日間、おととしの中東戦争は十八日間、つまり消耗が早いとそこで終わってしまうわけですね。ある意味ではそれを蓄えるために相当時間があったかもしれません。いまのお話ですと、長いもので一年、短いもので三カ月のリードタイム、こういうことでありますけれども先ほど、ある意味での有事即応性は認めざるを得ない、こうおっしゃる。そうおっしゃっておりながら、何か国民には、その基盤防衛力は有事即応性を考えねばならぬ基盤防衛力、そうして限定的な侵略事態に対して対処し得る防衛庁としての一応満点の力とするにはもう一遍移行させなければいかぬのだということは、なかなかこれはむずかしい、理解しがたい。そうなのか、基盤防衛力というのは実はレベルダウンして役に立たないんだな、こういう印象を与えがちでございますね。この辺ちょっとお考えをはっきりさせておいていただきたい。
  468. 坂田道太

    坂田国務大臣 ちょっとそこが違うのでございまして、基盤的防衛力が即即応体制で、抑止力が効いておる限りにおいて、生起すべき侵略事態というのは非常に限定されたもの、先生が御指摘のような限定されたものにはこの基盤的防衛力が即対処できるんだということなのです。でございますから、それ以上にいろいろな事態、国際情勢の変化や、あるいは安保条約がどうなるこうなるというような事態がもし起こるとするならば、それに対してこの基盤防衛力を基盤として増強するということなのでございます。いずれにしましても、ある所要防衛力ということをいかに理想には掲げておりましても、基盤的防衛力がなかったならばもうどうにもならない。しかしこの基盤的防衛力で一応の即応体制はできるんだ。いままでの考え方は、所要防衛力そのもので即応体制ができるあるべき姿というものを描き、それを整備すべき目標に実はやってまいりましたが、現実の姿としましては遅々としてそれが進まない、こういうようなことで、しかもその中身を見てみまするとアンバランスで、いわゆる抗たん性や後方支援というものは欠けておる。そういうことでは本当に先生のおっしゃるような事態に対処できないのじゃないか。したがって基盤的防衛力という一応整備すべき目標を政治的リスクをかげながら設定をして、そしてこれを一つのバランスのとれた即応力のあるものにするならば、その生起すべき小規模以下の事態に対してはいつでも即応体制ができるんです。対処できるんです。これをひとつまずつくり上げましょうという考え方で、そして情勢が今後もなお平和に移行するとするなら、しばらくの間これをもう少し近代化するようないろいろなことはやりますけれども、一応こういう考え方で進みましょう、こういうこと、そうするならばそんなに著しく民生を圧迫しないでもそういうような目標達成は実現可能ではなかろうか、こういう私の考え方なんでございます。
  469. 永末英一

    永末委員 イスラエル、アラブを三回も引き合いに出して恐縮でございますけれども、自国で兵器を生産し得ない国が戦争をやる、あるいは戦争をしかけられた場合に対応しようとすると、どこかからやはり武器を輸入せざるを得ない。ところがそういう国際問題でございますと、武器を補給する側の国もいろいろな政治的考慮があって、なかなかそれを欲しいという国の思うようには来ない。もし兵力というものが国の独立と安全とを守るとするならば、きわめて独立と安全に不利益な結果をもたらしておるのでございまして、先ほど防衛局長は発注ということがございましたけれども、その意味合いで、昭和四十五年に防衛庁は「装備の生産及び開発に関する基本方針」というものを出されました。そしてわが国の産業界に生産体制の整備をするとともに装備の国産を推進するということで、原則として自国産業に限定をして装備の開発、生産も行っていくんだという方針を決められ、恐らくはそれを前提としつつ四十七年に設定されました四次防では「装備の適切な国産化を行ない、」こういうようなことを四次ではやりました。四次防後の防衛力整備につきましてはこういう考え方を変えたのですか、残っておりますか。
  470. 江口裕通

    ○江口政府委員 ただいま御指摘の「装備の生産及び開発に関する基本方針」という考え方は、現在も基本として残っておるわけでございます。換言いたしますと、国を守る装備でございますので、これはわが国の国情に適したものをみずからの手で整えるということができますれば一番望ましいわけでございまして、防衛基盤の育成あるいは補給面の便宜、それから技術効果の波及、いろいろな利点がもちろんあるわけでございます。ただしかしながら、一面におきましてわが国の開発能力あるいは技術水準というようなものにまだ制約のある部門があるわけであります。端的に申しますと、なかなかいい、われわれの要求する性能に合致するようなものができない場合もございます。それからさらに調達数量の限界というものがございます。そういう点から若干価格が割り高になってくる、そういう場合もないわけではございません。したがいまして、そういう場合にはやはり輸入に依存せざるを得ないということになろうかと思います。いずれにいたしましても性能面の評価あるいは費用対効果、そういったものを総合的に勘案して適切に処理していきたい、こういうように考えておるわけでございます。
  471. 永末英一

    永末委員 わが国安全保障のために備えるべき力というのはいろいろございますが、私はあと時間もございませんので、いまの装備の国産という問題にしぼって最近の問題を提示をして御見解を承っておきたいと思います。  それは次期対潜哨戒機の問題でございますが、この問題は、すでに昭和四十六年、これらの方針が決まった後で、すでに現用のP2Jがきわめて旧式化しておるという前提のもとにP2Jの後継機をつくろうということが具体的な問題になりまして、すでに政府としましては二年間にわたって調査費を設けられました。ところが四十七年度に至りまして、国際経済わが国の円のためにはきわめて有利になりまして、わが国はドル保有国に変わってきたというので、ドル減らしをしたらどうだという意見が起こったらしくて、そしてP2Jの次期対潜哨戒機は白紙還元になりました。国防会議専門家委員会でこのことが議論になりましたが、結局のところ、昨年十二月、国産化が望ましいが、時間に間に合わなければ外国からの輸入もいいんだという玉虫色もいいところの答申が出ました。その後、いよいよ防衛庁坂田長官のもとでこの問題のお取り扱いが来ておるのでございますが、これはどういう措置をされるおつもりですか。
  472. 丸山昂

    丸山政府委員 ただいまお話しございましたように、国防会議専門家会議の答申、これが昨年の十二月の二十七日に提出をされまして、それを踏まえまして、翌二十八日に国防会議議員懇談会が開催された際に事務局長から披露がありまして、その結果「次期対潜機については、その装備化を検討するに際し必要となる技術的、財政的基盤等の諸条件につき、関係各省庁においてすみやかに調査検討することとする。」という御了解をいただいたわけでございます。この御了解の線に沿いまして関係省庁でその後国内開発それから外国機の導入——この外国機の導入は、この時点におきまして、その専門家会議段階におきましてはイギリスのニムロッド、フランスのアトランチック、それからアメリカのP3Cという三機があったわけでございますが、専門家会議の時点におきまして、外国機を導入するとすればP3Cであるということになったわけでございまして、そこでこのP3Cの導入、それからそれらの折衷案でございます。いろいろな形の折衷案がございますが、そういう点について検討を進めてまいったわけでございます。  国内開発につきましては、その後専門家会議で御検討いただきました当時の提出資料からその後の技術進歩の問題もございまして、再度見直しをいろいろやっていただいておるわけでございます。  それからP3Cの方につきましては、本年の五月二十五日から六月にかけまして調査団をアメリカに派遣をいたしまして、海軍省それからロッキード社等について調査をいたしてまいっております。  現在のところ、この国内開発の問題それから外国機の導入の問題についてはっきりといずれにすべきかという結論を出すまでに至っておりません。  ところで一方、先ほどからお話にございますように、ポスト四次防の問題が来年の八月までにははっきりした結論を得なければならない。このポスト四次防の中におきまして次期対潜哨戒機は有力な主要項目の一つであるわけでございまして、ポスト四次防の主要項目を国防会議、また閣議において御決定をいただきます際には、当然この次期対潜哨戒機が中に入ってまいるわけでございます。この際、対潜兵器の全体系につきまして抜本的に検討する必要が出てまいっております。これは、先生御案内のように、航空機、固定翼航空機、それからヘリコプター、それから同じ固定翼航空機にいたしましても、いわゆるVPという大型系列とそれからVSと申します小型艦載機系列、それから対港作戦の上においては当然潜水艦それから水上艦艇、それぞれの対潜兵器、こういったものも全体としてどういう体系としてポスト四次防において整備をしていくかという基本的な見直しを行わなければならないということになってまいっておるわけでございます。  そこで、いままでいろいろ国内開発あるいは外国機の導入について検討を重ねてきておりますので、その点についての資料も十分活用をいたしまして、来年度の八月に決まりますときに、国内開発にするか、あるいは外国機導入にするか、あるいはその折衷案にするか、いろいろな考え方がございます。折衷案のほかにもいろいろ考え方があるわけでございますが、こういった問題を八月にお決めをいただきたいというふうに考えておるわけでございます。そこで来年度、五十一年度の予算に間に合うように実は結論を出すということだったのですが、そういう事情もございまして、いまの段階におきましては、五十一年度予算に間に合うように結論を出すことは非常に困難な状況にあるわけでございます。  そこで、この国内開発それから外国機導入、それぞれの、在来の経緯もあり、この芽を絶やさないようにするための何らかの形の予算を五十一年度にはお願いをいたしたいというふうに考えておりまして、これは現在事務当局においていろいろ詰めておるというところでございます。
  473. 永末英一

    永末委員 いまのお話でございますと、五月末から六月末まで、アメリカのP3Cについての調査団が行ったというのですが、調査結果というのは発表されたのですか。
  474. 丸山昂

    丸山政府委員 調査結果は十一月に一応調査団から提出をされておりますけれども、この中身につきましては、実は海軍省それからロッキード社等の秘密事項もございますので、ちょっといま公表できないのはまことに遺憾でございますが、一応その調査団としての結論は出されております。
  475. 永末英一

    永末委員 秘密というのはややこしい話でございまして、それは国民に知らせないのだ。金を出すのは国民でございますから、やはり国民に知ってもらわなければ、先ほど防衛庁長官国民に国を守る気概を持てと言ったが、知らさないでおいてそうはいきませんね。やはりこれは公表せらるべきものなのでしょう。
  476. 丸山昂

    丸山政府委員 細かいデータにつきましては、かなり先方の好意によりまして特別にリリースをしてもらっておるものがございますので、こういった点については信義上、一般に公表するということは非常に困難だと思いますが、要するに全体的にどういうことであったか、結論の総体はどうであるかということにつきましては公表できるものだと思います。
  477. 永末英一

    永末委員 すでに次期、来年度予算の編成期に入っておるわけでございますが、先ほど国産化または導入いずれとも何らかの予算をつけたいとおっしゃっておりますが、それまでにP3Cの調査に対する報告は明らかになって予算がつくという段取りになりますか。
  478. 丸山昂

    丸山政府委員 五十一年度の予算につきましてはそこまで——いずれにいたしましても関係省庁の間においてはこの調査結果を十分踏まえて御検討をいただいておるわけでございますが、これを全部公にして予算がつくというようなことにはまいらぬというふうに思います。  予算につきましては、先ほど申し上げましたように直接国内開発あるいは外国機導入ということに結びつかない問題で、もっと基本的な問題もいろいろあるわけでございます。こういった部門で長期的に考えまして、たとえばコンピューターのソフト部門の体制の確立、こういった問題も、あながちPXLの問題に限定せずしても、わが国の立場としては当然考えておかなければならないことでございますし、できるだけ早くこういった部門には手をつけなければならないと思っておりますので、こういった形での予算をお願いすることになるのではないかと思います。
  479. 永末英一

    永末委員 現在のP2Jが大体役割りを果たしまして新しい対潜哨戒機が保有せられるということになりますと、それは一体、防衛庁としてはあと何年間ぐらい使うべきものだと考えて計画を進めておられるのですか。
  480. 丸山昂

    丸山政府委員 現有のP2Jがいわゆるフェーズアウトの段階に入ってまいりますのは五十七年でございます。五十七年を初年度として本格的にフェーズアウトに入ります。
  481. 永末英一

    永末委員 だから、次期の対潜哨戒機はいつごろに顔を出し、あと何年ぐらい主力対潜哨戒機として役目を果たさねばならぬという御計画か伺いたい。
  482. 丸山昂

    丸山政府委員 次期対潜機は、仮にP3Cをとりました場合には、耐用時間は七千五百時間でございますが、運用の実態から考えまして約二十年間は使用にたえるというふうに考えております。
  483. 永末英一

    永末委員 いま言葉が出ましたけれども、P3Cの現用機はいつからいまの形になって使われておりますか。
  484. 江口裕通

    ○江口政府委員 P3Cは、もともとアメリカで民間機のエレクトラを改造いたしまして、当初P3Aというので一九五九年ないし六一年に改質、改造に着手されたわけでございます。その後P3Bを経まして、一九六二年から六九年にかけまして、電算機を搭載いたしましたシステム総合化によります対潜機能向上を行いまして、この結果いわゆるP3Cというのが登場してまいっております。現実に調達になりましたのは一九六九年からでございます。
  485. 永末英一

    永末委員 先ほどの二十年というのはちょっとわかりませんけれども、これは、六九年といたしますとすでに六年間かかっておるわけですが、あと三十年ぐらい使うという意味ですか。
  486. 丸山昂

    丸山政府委員 二十年と申しますのは、導入をいたしましてからの大体の耐用年数を考えておるわけでございまして、アメリカの場合には、いま装備局長から御説明がありましたけれども、P3Cのアップデート1からアップデート2に現在入っております。アップデート1から2には大変な中の改造が行われております。したがいまして、現在アップデート3の開発をやっておる段階でございまして、同じP3Cにいたしましてもそういうタイプの違いがございますし、アップデート3はこれから出てまいりますので、それから後大体二十年ぐらいの耐用を考えておるのではなかろうかというふうに考えます。
  487. 永末英一

    永末委員 アメリカ側は、アップデート2、3は別としまして、六九年から現在のP3Cと言われる機種を対潜哨戒機として使用しておる。先ほど防衛局長のお話では、七千五百時間が耐用時間だとすると大体二十年になるという。そうしますと、早いものは一九八九年ぐらいには使えなくなる。ですから、アメリカ側としましては、恐らく一九八〇年代の半ば以後、P3Cで二十一世紀までやるか、それとも新しいものをつくるか、当然そういう話になりますね。われわれがいまやろうとしておりますのは、七〇年代の終わりないしは八〇年代に次期対潜哨戒機を持とう、P2Jは先ほどの御答弁によりますと七八年までですからね。そうしますと、その場合に、われわれはアメリカがお払い箱にするようなものをもってかかっていくか、それともどうするのか、そういう問題になりますね。その辺のお見込みはいかがですか。
  488. 丸山昂

    丸山政府委員 この辺につきましてはいま私から申し上げましたようにP3Cだけについて申しますれば、現在アップデート3を開発中でございますので、まだこのアップデート3が実際に配備につきましてから先ほど申し上げましたように二十年ぐらいのあれを考えておるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。  ただ問題は、このP3Cと並行いたしまして次期の対潜哨戒機の開発も、まだ現実には着手しておらないようでございますが、そういう計画もあるわけでございます。したがいまして大体一九八〇年代には、主としてこのP3Cのアップデート3が主役になると思いますが、それ以後についてはこの次期対潜哨戒機がとってかわることになるのではないかというふうに考えております。
  489. 永末英一

    永末委員 いま予想せられるところで、われわれが所要します次期対潜哨戒機というのは何機ぐらいが必要だというぐあいにお考えですか。
  490. 丸山昂

    丸山政府委員 実はこの機数につきましては、いままでのところはっきり詰めておりません。というのは、でき上がってまいります性能その他によって考えるということになっておりましたので、海幕自体は現在P2Jが約百機でございます。これはその前に御案内のように小型のS2Fを持っておりまして、S2Fを大型機に換算をいたしまして、それで全部合わせましてP2J等約百機というラインを持っております。海幕は、固定翼機についてはこの百機のラインを維持をいたしたいというふうに考えておるわけでございまして、そのままということになりますとまた百機ということになるわけでございますが、ただPXLとP2Jとを比較いたしました場合には、能力において格段の差があるわけでございまして、これを同様に百機必要とするという理由は、私どもは少なくとも必要性は感じてないわけでございまして、機数についてはさらに問題を詰めてまいる必要があるというふうに思います。  それから、先ほど申し上げましたように全体の対潜兵器体系の中での固定翼の位置づけということになってまいりますと、もっと問題を厳密にしぼる必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  491. 永末英一

    永末委員 兵器の性能がどんどん変わっていけば、それによってわれわれの構えも変わってまいりますから、対潜哨戒という新しい任務、対潜警戒という新しい任務は、われわれの入手し得る機器によって変わってくると思いますね。それは当然のことだと思います。その意味で一番重要なものはソフトウエアの問題だと思いますが、いままで防衛庁は、わが国が国産でやろうとした場合のいわゆるPXLと外国機を導入した場合に、どれくらい財政負担が違うかということは御計算になったことはございますか。
  492. 江口裕通

    ○江口政府委員 これは前提の立て方によりまして経費の見積もりというのは御承知のように非常にむずかしいわけでございます。したがいまして、いま公式に決定的にこの数字であるということを申す段階にはまだ入っておらないわけでございます。ただ、内部でごくラフに計算をいたした経緯はございます。非常に簡単に申し上げますと、輸入ライセンスを中心といたしまして開発を考えます場合には、取得後の補給、あるいは部品の補給でございますとか整備、維持、そういったものをある程度見込みましてほぼ同じあるいは若干含まれた要素が高いというような線になろうかと思います。  それから輸入と国内開発と比較した場合には、やはり機数によっていろいろ数字が違ってまいりますけれども、まあ大体二割五分前後の差が出るのではないか。二割五分の差と申しますのは輸入の方が安くつくというようなことになるのではないかというごく大ざっぱなめどをつけております。
  493. 永末英一

    永末委員 大ざっぱですけれども金額にしてどれぐらいになるという御算定ですか。
  494. 江口裕通

    ○江口政府委員 これも機数のとり方によりまして違うわけでございますが、おおむね六十機程度ではじきまして数千億のオーダーでございます。その中には先ほど申しました補修、整備その他のものが入っておるわけであります。
  495. 永末英一

    永末委員 数千億ではわかりませんね。二、三千億も数千億だし五、六千億も数千億だし。昔イン ア フュー イヤーズというのがあって、フューとは何かよくわからない。アメリカ人のフューというのとわれわれが数年というのではわからぬ。ちょっと国民に知らしてもらわなければ問題がよくわかりませんね。
  496. 江口裕通

    ○江口政府委員 国内開発の場合で一応百機ベースで試算いたしますと、開発費それからその機体の購入費等を合わせまして、いわゆる開発費、量産費と通常称しておりますが、そのもので約六千七百億程度でございます。
  497. 永末英一

    永末委員 その百機ベースで計算して、もし外国機をライセンス生産すればどれくらいですか。
  498. 江口裕通

    ○江口政府委員 約六千二百億程度でございます。
  499. 永末英一

    永末委員 十一月二十八日のウォール・ストリート・ジャーナルが次のような記事を載せました。それはロッキード、このP3Cをつくっている会社でございますが、これがカナダとの間に契約を結んだ。二十八日現在で数日内にこうするというのですからすでに契約は完了していると思いますが、十八機P3Cを導入する、そしてそれに対して六億四千二百万ドル初度調弁費として払う、これに対して関連装備その他のことをくっつけますと、十八機に対して九億五千万ドル払うことになる、こういう記事でございまして、これは一機当たりで計算をいたしますと、十八機と百機とうんと違いますけれども、一機当たり百十億円まず初度だけでかかるし、後々のいろいろな装備品等を考えれば、カナダが契約いたしましたものは、いまの値段でございますけれども百五十八億円かかる。そうしますと、これはラフな計算ですけれども百倍すれば一兆五千億円かかる、こういうことになるわけですね。そうすると、先ほど言われました、もしこれをライセンス生産した場合六千二百億ということになるのとちょっと二倍半も変わってくるということになるのでありまして、相手方のやつは現実の話、こっちは計算の話でございますが、国民としては一体どういう値段で——ロッキードというのはわれわれもすでに104を売りつけられたことがございますけれども、値段というものが後々変わったりするとやはり国民にとっても得心がいきかねるものでございまして、この辺の情報はすでにおとりだと思いますが、それを、情報をとっておられながら、なおかつきょうの段階で大体六千二百億ぐらいであろうと言われたのはいかがですか。
  500. 江口裕通

    ○江口政府委員 ただいま御指摘のウォール・ストリート・ジャーナル、十一月二十八日の新聞を御指摘であろうと思いますが、私どもごく最近これは入手しておりまして、この中身がまだよくわかりません。まあ言われるところは七九年から八〇年にかけて取得する、こういうことになっておりますが、関連機材を含めるというようなことも書いてございまして、その関連機材の範囲が地上施設まで入るのか、どこまで入るのか、あるいは訓練費が入ってくるのか、その辺のところは実は非常にあいまいでございます。いま私どもで六千億と申しましたのは、そういった関連費用あるいは地上施設とか、そういったものを含みません費用でございまして、それから価格のとり方も、これは五十年の一月価格ということでとっておりますので、若干の物価アップということも当然考えられるわけでございます。そういうことで、必ずしもベースが合っておらないというふうに考えておりますが、この点はもう少しよく調査をいたしまして、また御報告申し上げます。
  501. 永末英一

    永末委員 104が開発が決定いたしまして実戦部隊、実施部隊に配属直後、私はある実施部隊へ行ってみました。そうしますと、稼働機数が非常に少なかったわけですね。私はそこの司令に、どうして稼働機数が少ないのだと聞いてみました。そうしますと、大体これだけの機数を動かすにはこういう部品でよろしいということになっておったのでそれをちゃんと持っておったところ、実際飛ばしてみると違う部分が消耗して、実はアメリカ最初考えた部品の補充計画と、それから実際飛ばしみたら違うんだ、やはり風土が違うのでしょうという言葉がございました。バッジを導入いたしまして、これは国会で問題になったのでございますが、最初の値段をつけたアメリカの会社の値段と、結局われわれがアメリカに払った値段は二倍でございましたですね。これは一体どういうことだと国会で問題になりました。また、対空兵器でございますホークにつきましても、そのうちのいわばアメリカが特許を取ってわが方に生産をさせない部分については、後々値上がりをしてきても、わが方としてはこれは文句が言えないわけでございまして、結局一方交通の言い値で買わなくてはならない、こういうことでございました。そういう問題が、外国のもののライセンス生産をやる場合にあり得るわけであります。わが国に能力がなければ別でございますが、もしわが国に能力があるのなら、基盤防衛力の整備ということであるならば、そしてまた同時に、長官が国民に国を守る気概を持てと言われるのなら、おれたちで一体やれるところまでやってみようというてやらせること、そういうことがいまのような二つの効果をねらうのに重要なことではないか。いまや昭和四十七年度とは異なって、私どもの国には外貨はございません、赤字国債を出そうなんというような状態でございますので。そうなりますと、いまだに決定をせずして延ばしていかれるのか、それとももし昭和四十五年以来防衛庁の御方針が主軸は国産でやっていくべきなんだということであるのなら、それを軸にして物を考えていかれるのか、この辺で来年度予算案を編成される前に防衛庁自体としては御判断をされる時期ではなかろうかと思いますが、お答えを願いたい。
  502. 丸山昂

    丸山政府委員 今回のPXLの関係の調査をやりまして大変に勉強になりましたのは、要するに新しい兵器についてのコンピューターの持っておる意味でございますが、これがもう格段の進歩を遂げておるということでございまして、こういった点については、先ほどもちょっと触れましたけれども、コンピューターのハード面よりはむしろソフトの問題でかなりの国際水準との差があるということを認識をいたしておるわけでございます。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕  そこで、仮に国内開発をやるにいたしましても、この面について、もちろんそのハードの面についてはわが国の工業水準はきわめて高いところにございますので、相当進歩したものができると思いますけれども、問題は、でき上がった対潜哨戒機をどのように運用するかということでございまして、それは現在のP2Jを主体にしております運用構想からは全く出てこない、非常に大変な飛躍をしなければそこに到達しないという状況でございまして、したがって国内開発をするにしても、やはり相当の国内の整備体制というものを、整備体制といいますかバックアップ体制といいますか、こういったものの整備が必要であるというふうに考えておるわけでございます。  またP3Cにいたしましても、このP3C、それぞれ中のコンピューターのマスターファイル、これらについては常時大変新しい情報を常に持っておる、それで出動の直前になってそのマスターファイルを中にセットして飛び出す、こういうことでございまして、そういうものをやりますバックアップ体制が向こうでは、TSC、タクティカル・サポート・センター、こう申しておりますが、これが大変よく整備をされておる。航空機そのもの、飛んでまいります対潜哨戒機よりは、むしろそれをバックアップする体制というものの方に人員も予算も大変に多くをかけておるという実態がわかってまいっております。  そういうことで、先ほど申し上げましたように、やはりこういう現実をよく認識をいたしまして、それからまた、いままでの外国機導入等に際しましてはやはり調査不足のために後で大変御迷惑をかけておったということもありますので、外国機についてはなお念を入れてもっとよく調査をする必要があるということを痛感いたしますし、また国内の部門につきましてはいま申し上げましたいろいろ体制として弱い体制があるわけでございまして、将来、長期的に考えました場合には、相当思い切ったこの体制の準備と申しますか建設と申しますか、こういったものに力を入れていかなければならないというふうに考えるわけでございまして、最初申し上げましたように、いずれにいたしましても来年の八月のポスト四次防の主要項目であるPXLをどう決めるかということに関連をいたしまして、いまからずっと継続して私ども勉強させていただきたいというふうに思っておるわけでございます。  ついては、五十一年度の予算につきましては、先ほど申し上げましたように後の長期の開発につながるような形の予算を組ましていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  503. 永末英一

    永末委員 現在われわれが使っておりますP2Jとアメリカが現用しておりますP3Cとは、その潜水艦を発見する能力において全然違うということは防衛庁長官も体験されたようでございますが、したがって、そのP2Jでは使い物にならぬというので次期対潜哨戒機のことが考えられておる。いまソフトウエアの話が出ましたけれども、特にまたTSC等の話が出ました。NATOにおきましては、イギリスはニムロッドそれからフランス、西独、イタリー、ベルギー等はアトランチックと称する対潜哨戒機を使って、そうしてアメリカ側と一緒になって対潜哨戒、警戒をやっているわけですね。だから必ずしも同じ機種でなくてはならぬとは私は思いません。防衛庁もそういう覚悟はお持ちですか。
  504. 丸山昂

    丸山政府委員 先ほども申し上げましたように、国内開発とそれから外国機導入というだけの問題でなくて、これらのいろいろ折衷案といいますか、いろいろバラエティーの案が考えられますので、いろいろな点について検討をいたしておるわけでございます。たとえば、私どもはらわたと申しておりますが、コンピューター、電子機器の関係について相当の開きがあるわけでございまして、一方機体につきましては、すでにこのエレクトラという航空機は大変古い航空機の部類に属するのでございます。  そういう意味で、新しい航空機を国内で開発して、中身を外国のコンピューターを入れるというようなことも考えられるわけでございますが、ただここで大変問題になりますのは、いま海上自衛隊の基地は厚木、鹿屋、下総、八戸というところでありますが、ただいまのP2Jであるがゆえに、地元ではいまのところ何の問題もなく過ぎておるわけでございますが、これがジェット機ということになりました場合になかなか問題があるのではなかろうかというような問題も、これは実は大変深刻な問題として十分計算に入れていかなければならない問題だというふうに考えております。
  505. 永末英一

    永末委員 同じジェット機でございましても、104からF4にかわれば問題が起きてくる現状でございます。いろいろのことを考えねばなりませんが、一つしっかりお伺いしておきたいことは、私の承っておるところによりますと、P3Cが入れておりますコンピューターの集積回路というのはすでに古くさい。現在日本の集積回路の製作能力からすれば、もっと多量のものを処理し得る集積回路を使用して、それによってコンピューターをつくることは可能であると聞いております。防衛庁はそういう御判断をお持ちでしょうか。
  506. 岡太直

    岡太政府委員 御承知のようにP3Cの電子計算機は、恐らくいま日本で生産できる電子計算機に比べまして一世代または一世代半ぐらい古いものだと思います。したがいまして、もし新しいものをつくって搭載しますと、それが確かにサイクルタイムも速いし、集積部分も大きい、非常に軽量小型のものになるということはあると思います。  ただ、これはいまのところコマーシャルの、要するにエアコンをした場所で丁寧に使う計算機というのはいま日本で完成されておる。航空機に搭載します場合は、やはり高空に持っていくわけですから、気圧が低いとかそれから振動が加わるとか温度が変化するとか、そういう条件がございます。したがいまして、地上でできたものを直ちに上に持っていけるというわけのものではございません。そこにやはり開発の要素があるわけでございます。したがって、確かに技術は進歩しておりますけれども、開発した場合やはり時間もかかる、それから、できたものもどの程度信頼があるかというのはこれからの問題であろうというふうに考えられます。  したがって、そういうふうに考えますと、信頼度その他の面ではやはりこれから検討しなければいけない問題もあるということで、要するに甲乙つけがたい、つまりすでにできておるものとこれから計画するものでありますから、比較は非常に困難かというような状況でございます。
  507. 永末英一

    永末委員 時間も大分迫ってまいりましたので結論にならなければなりませんが、なるほどその兵器の技術面だけに着目すれば、そしてまた、それがすでに稼働しておるというところからしますと、時間的に、それを非常に早急に求むるとなると、導入ということもございましょう。しかし、これは日本の外貨事情もございますし、特に重要なのは、基盤防衛力というのが今回の私の質疑の重要な焦点でございますので、わが国の航空機産業というものは、いままでいろいろなものをライセンス生産したり自己開発したりしてやってまいりましたけれども、いまの状態以後、一九八〇年代の初頭あるいは中盤にかけまして、外国機を導入してライセンス生産をする場合と、それからわが方が独自で開発をやる場合と、それによって一体どれくらいの、わが国の航空機産業が発展していく度合いに差異があるかということを、通産省からもお見えでございますから、この際御報告を願いたいと思います。
  508. 堺司

    ○堺説明員 御質問趣旨は、新しい飛行機をライセンス生産にするか国内開発にするかでどう違うかということかと存じますが、現状をまずお話し申し上げますと、現在飛行機産業の売り上げは二千億でございまして、このうち防衛庁から御注文をいただいておりますのが八七・六%ございます。戦後、二十七年以来航空機産業を再開いたしまして二十三年ぐらいになりますけれども、平均いたしますと七七%を防衛庁に依存いたしておりまして、民間機として開発いたしましたのは、三十四年でございますかYS11を開発し、その後その成果といたしまして、民間各社が小型機MU2とかFA200を開発してまいったわけでございますが、二二%程度の民間シェアしかなかったということでございます。  翻って、過去の日本の航空機、戦後自力で開発したものを申し上げますと、一次防のときにT1という練習機を開発いたしまして、二次防では基幹にPS1、民間機としてYS11、三次防の基幹にT2とC1を主として防衛庁で開発していただいたわけでございます。四次防では残念ながら新機種の開発が行われませんでした。ポスト四次防でもし新しい機種、たとえば次期対潜哨戒機の開発がないといたしますと、現在見込まれますのは通産省でやっておりますYXという次期民間航空機でございますが、これの量産化はまだ相当先の話でございます。  現実に航空機産業というのは技術者の養成がきわめて重大な仕事でございまして、アメリカを見ますと、大体一年に一機種ずつ各社とも新しい飛行機を入れている。軍用機が入らない場合にはダグラスであればDC9とかDC10という新しい民間機をその間に入れておるということでございまして、私ども、もしライセンス生産もしくは輸入ということになりますと、輸入であれば技術力はゼロということで、日本の航空機産業の将来は非常にお先真っ暗になると考えております。ライセンス生産の場合にも、その仕事量は大体国産の場合の三分の一に減ると考えられます。特に技術面におきましては、基礎的な設計、詳細設計それから各種の試験というのは一切必要ございませんで、せいぜい治具工具または工場のレイアウトの変更とかそういうものになりますので、大体技術的な作業面では五分の一から七分の一くらいに減るのではないかというふうに考えております。
  509. 永末英一

    永末委員 航空機産業の現状並びに未来についてお話がございました。  時間がございませんので、最終的に一応防衛庁長官から締めくくりをしておいていただきたいと思います。  私は、日本安全保障問題というのは、日本民族はどうやって生き残るかという問題だと思うのです。ただ、いまの平和の条件がこういう状態でございますので、常にそれを考え国民が暮らしておるわけではございませんけれども、少なくも政治の衝に当たる者はそのことは真剣に考えなくてはならぬ問題である。防衛庁の所管されておるのはその一部分である。しかしいまの防衛生産の問題だけを取り上げましても、それはやはり国の生産力、そしてまた国の経済と密接な関係のある問題、それから防衛庁が所管されております防衛力が働きます場合にも、これは国民支持をしなければ動けない問題であることはすでに御承知のとおりでございまして、自衛隊一つ動こうといたしましても、現在のわが国にその動くための諸法令が一体整備されておるかということになると、なかなかそうとは言えない実情がございまして、先ほど、機種をプロペラ機からジェットにかえても、一体それが円満にその飛行場周辺の国民支持をされるだろうかということが防衛庁の悩みのようでございます。だといたしますと、いまの一番大きな問題の一つは、安全保障の問題が国民一人一人の問題であるということをやはり考えてもらう、これが重要な問題ではないか。気概を持てというより、その前に問題点のありかをやはり明確に国民に示して、先ほどのように秘密だから言えませんというのではなく、こういうことなんだということをやはり示して国民考えてもらう、そして国民の判断に従っていく。生きるか死ぬかということはその国民の判断が決めてくれるだろう。そういうつもりでこれらの諸問題について防衛庁長官はひとつ働いていただきたいと思います。最終的にひとつお答えを願いたい。
  510. 坂田道太

    坂田国務大臣 永末先生の基本的なお考え、私、同感するところ非常に多いわけでございます。  それから兵器体系の問題につきましても、ポスト四次防につきましては、装備等につきましてもやはり見直しを行わなければならないというふうに考えております。  それから、大体大量に使います主なる兵器、たとえば海で言うならば船、あるいは陸で言うならば戦車、そしてまたそういった主要な兵器というものは、これはやはりできれば国産ということが望ましいことでございます。しかしながら、周囲の軍事力がどんどん発展していく、科学技術も進んでいく、こういう状況でございまして、物によりましてはやはり輸入に頼らざるを得ない、あるいはライセンス生産によらざるを得ない、そういう面もできるかと思うわけでございますが、しかし日本は高い科学技術の水準にございますし、また一面において経済的な力も持っておるわけでございますから、常にそういう技術あるいは科学というものを温存していく、ポテンシャルを高めていくという努力は怠ってはならないというふうに考えるわけでございます。  ただ、実際具体的な問題でPXLをどうするかという問題につきましては、いま防衛局長あるいは装備局長等が申し上げましたように、いますぐどうだということは申し上げられませんけれども、しかしここで申し上げられますことば、どうもいまの私の考え方からしまするならば、輸入かあるいは国産かというようなことではなくて、何かそこに工夫があるのではなかろうかというふうに考えます。また予算措置等につきましても、国産というようなことを将来考えるとして、そういうようなことで判断してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  511. 永末英一

    永末委員 かつて六一戦車がつくられましたときに、それを配属された部隊を見学さしていただきました。すると、それに乗っておる自衛官が、初めて日本の国でできた戦車へ乗せてもらったといってはだの色が輝いておりましたですね。私はそういうものだと思う。そのときにわが方の六一戦車は九十ミリ砲でございますが、すでに百五ミリ砲が外国の戦車においては載っけてそれが使われておる。機能的には全く第一級ではないわけですね。にもかかわらず、やはりこれがおれたちのつくった兵器なんだということが士気高揚に非常に役立っておったのではなかったか。これらの防衛の問題というのはやはり機械力の比較ではなく、結局は国民の精神力の問題である。このことを御勘案の上、ひとつ十分に慎重に対処されんことを期待します。  終わります。
  512. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 次回は明後十一日木曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時三十四分散会