○
福田(一)
国務大臣 もうこれは
三谷さんも十分御
理解をしていただいておると思うのでありますが、
高度成長から低
成長へ入ってくる原因は、
一つは大きく国際的な問題が絡んでおるということはおわかりを願えると思うのであります。しかし、この点については副総理がしばしば
国会においても答えておるのでありますが、その
見通しが若干甘かったという
意味においては
政府の
考え方は確かに甘い面があったと思うのでありますけれども、しかし、インフレになったときにはもうそれ以上の大変な
悪影響存国民に与えるであろうということで、物価問題を重点に置いて
施策をやってまいりました。その結果において、ある程度の不況といいますか、
経済の停滞が起きたことも、これまた事実であります。そのことが
税収に響いてまいりました。そうして
国税三税が
落ち込み、同時にまた、
国税三税に基づくところの
地方交付税、
税率三二%に基づくものが非常に落ち込んだということと、
法人税を主体とするところの
地方税の
関係の
税収がまた非常に落ち込んだということが、今日の非常な困難な情勢を導き出したわけでございます。
そのときにこの問題をどういうふうに
処理していっていいかということについてでございますが、国の方の
税収も御
案内のように二七%も落ち込んだという
段階であって、国の
財政自体が非常な困難な
状況に陥ったわけであります。これまで
交付税率を
改定いたしましたのは四十一年でございますが、そのときには国の
財政は、
減税をやるとか、いろいろの、まあどちらかと言えば国に余力があったときに
減税をやる。
減税をやりますれば
交付税の
税収が減ってくることは当然であります。そのときならば、これはもう
地方の
税収落ち込みという問題もありますからして、
地方に対する
交付税の減額ということが起きますから、これは当然やはり
税率を上げてもらわなければならないという
主張は正しい
主張であり、また理屈の合った、筋の通った
意見であったと思うのでございます。その結果が二・五%の増となって三二%という数字が出てきたことはあなたも御存じのとおりだと思います。
ところが、今日は国の
財政自体が数兆円のいわゆる
公債を
増発をしなければならないというような
事態に陥っておるのでございまして、
国自体の
財政が非常に苦しい
事態に落ち込んでいるそのときにおいて、しかもいま
予算を審議していただいておるこの
臨時国会が開かれておるのでありまして、それに、もう十一月の末から十二月の初めにかけては、
予算編成の大綱を決定していかなければならないということもあり、この
段階において多くの問題を
大蔵省との
折衝に持ってまいりましても、これは期間的にも非常に問題がある、時期的にも問題があるという二つの面があるわけでございます。
そういう点から見まして、今回のこの法案、
地交法の審議に当たりましては、そういう点も勘案をいたしまして、われわれといたしましてはやはり
落ち込みの分、いわゆる三
税落ち込みの分については一応
借り入れをいたしまして、そうして
地方交付団体は、当初考えておったところの国からのこの
交付税、いわゆる
収入というものは落ち込まないようにしてやる。さしあたりこれは絶対に落ち込まないようにしてやるという
措置をとったわけでございます。一方、この
地方税の
落ち込みによります
対策につきましても、これまた一兆何がしかの
落ち込みが出てまいったのでありますけれども、これは起債によって賄ってもらう以外にいまの
段階においては道がないわけでございまして、そこで、これについては国の方も
公債の
増発をいたすわけでございますから、この
公債が順調に消化されるかどうかという問題は、これはわれわれとして当然考えなければならない問題でございます。
そこで、相なるべくは、これは
政府資金によって賄うべきであるという
意味合いにおいて強く
折衝をいたした次第でありますが、御
案内のように国の
財政自体も非常に困難を来し、そして
政府資金の使途も各方面にございますために、何としてもわれわれの
要求である七割はひとつ
政府資金で持ってもらいたいということはどうしても困難でございまして、これは絶対に認められないという
意見であったのでありますけれども、われわれが粘って、とにかくようやく二千億円は
政府資金で賄ってもらうということにいたしたわけであります。しかし、それが御
案内のように
政府資金の場合と、そして
地方で
縁故債で募集する場合とでは非常な
金利の格差がございますから、二千三百億円というものは、これは
金利負担を国でやってもらうということにいたしまして決着をつけて、ただいまここに提案をいたしておるようなわけでございます。
それから今度の
補正予算におきまして、
公共事業等をやります場合の
裏負担の問題が出てまいるのでありますが、その分は二千六十六億円ほどになりますけれども、このうちの千七百億円は、こういうような苦しい
時代でございますから、それは全部
政府資金で賄ってもらうということで、これもずいぶん苦労をいたしたのでございますけれども、約八割以上というものを
政府資金で賄う、
政府資金で
処理をするということにいたしたわけでございまして、われわれといたしましてはこの時期から見て、そして国の方の
財政の状態から見て、
地方に対して
年度当初において約束しただけの金は、方法は別としても、とにかくさしあたり全部これを与えるということはここに実現したわけでございまして、その
意味ではある
意味で私は評価をしていただいてもいいのではないか、こういう考えを持っておるわけでございます。
もちろん、
地方の
財政が非常に困っておるということは、これはもうよくわかりますけれども、しかし一方において国の
財政も非常に困っておる。国の
財政がいささかでも余裕があるというようなときに
地方の方が非常に困っておるのならば、これはもう適当な
要求をいたすことは当然でありまして、もしそれをしておらなかったとすれば、われわれは
責任を感じなければならないのであります。私は、
財政の
見通しを誤ったという
意味においておしかりを受けるのならばやむを得ないと思うのでありますけれども、この
段階において
措置をする場合において、予定をいたしました、いわゆる
地方財政計画に基づいて私
たちが
地方に出しますと言った金は、全部これが渡るようにしておるわけでございます。もちろん、この場合におきましても
縁故債の問題が相当ございますから、これはわれわれが非常に心配をいたしたところでありまして、もし
縁故債が適当に応募されないということであればこれは大問題でありますので、この点については特に
覚書をつくりまして、そしてもし応募されない、具体的に——それは私は全部が全部そうなるとは思いませんが、ある地区において、ある
市町村において、府県においてそういうことが起きたときには、直ちに私
たちが
大蔵省と連絡をとって、そうして
大蔵省もその場合には極力そういうことのないようにちゃんと
資金が得られるように努力をしますという
覚書をつくっているわけであります。一方、あなたがおっしゃったようにこれが非常に大きくこういうような
借金でもって
地方財政を賄っていくということであれば、
地方に大きな
負担がかかるではないかという点もごもっともな御
意見であると思うのであります。しかしいまは国も非常に困っておるときであり、そして
経済が
高度成長から低
成長へ入るというときに、国の方においてもこれは非常な決意をもって問題をどう
処理していくかという必要に迫られておるときであり、さらにまた、
地方においても私はそういうことをしなければならない時期に逢着しておると思うのでありまして、この
意味では国、
地方が一体になって問題の解決に当たるということが最も必要なことであると私は信じておるわけでございます。
以上申し上げましたようなところで大体私
たちがとりました
措置については御
説明を申し上げたと思うのでありますけれども、しかし、今後のこの
経済を伸ばしていく、いわゆる
地方財政の現
段階の仕組みにおいて伸ばしていくということについては、
収入をふやすという
意味においてはこれはいろいろのことも考えられないわけではございませんが、国が困っておるときに、いまここでとやかく言うことは私は非常に困難である。しかし、
法律に基づいて国がしなければならない問題があり、
法律に基づいてわれわれがしなければならない問題があるとすれば、これまた当然のことでございます。そういう
意味からいいますと、いわゆる
地方交付税法の六条に基づきますところの、二年以上も、三年も赤字がふえていくというようなことであれば、国にいかなる困難がありましょうとも、
法律でございますからして、われわれは当然
要求をしなければなりません。ところが、それはその法文に照らしましても、いまはその
段階にないことは
三谷さんもわかっていただけると思うのでございまして、そういう
意味で今回の
措置が非常によかったというようなことはもちろん申し上げませんけれども、私
たちとしては、
地方公共団体に
年度当初において約束した
収入は一応確保しておるという
意味においては、ひとつ御
理解をしていただきたいと思います。
今後の問題については、
政府全般の
施策とにらみ合わせながら、
地方自治のため大いにひとつがんばらなければならないと思っております。したがって、私が申し上げておりますことは、来
年度においてはやはりいままでの行
財政の
見直しということについて根本的に考え直すべきときである。三十一年に
行政のある程度の
見直しが行われておりますが、自来、
調査会その他でいろいろのことが申し入れられたり決議があったりしておりますけれども、まだこれが全部実現しておるとは言えません。したがって、たとえば
政府の
補助金の問題とかその他の問題等々を今後統合するようなやり方ができるのかどうかということも考えなければなりません。しかし、これも言うべくしてなかなか簡単でないことは、セクショナリズムというものが
政府間の問題にございまして、そうしてその
意味でなわ
張り争いというものがありますからして、これを統合すると言うてもなかなか問題もありますし、それからまた、
一つ一つの
施策につきましては、それぞれの部分について、議員あるいは
県会議員あるいは
市町村会議員というものが皆ついておるのであります。ところが、今日の世相はどういうことかと言えば、全体の問題よりは
個々の
権利を
主張するという
風潮が非常に強いときであります。個人の
主張を認めるべきである、あるいはまた、一部分の方の
主張があった場合にはそれはやはり無視してはいけないのだ、こういうような
風潮が非常に強いときであります。ここに私は、いわゆる
議会制民主主議の
一つの大きな難関が横たわってきておると思うのでありまして、
議会制民主主義というものが多数決という
原則で常に行われておればこの問題はそれほどのことではないのであります。いわゆる
住民パワーと称することとか、あるいは若い者の力とか、いろいろの
意味で表現はされておるが、
個々の
権利を
主張して全体の
権利との調和というものを忘れた
風潮が今日非常に強いということが、
行政の問題を
処理する場合に非常に大きな問題になっておることも
三谷さんはわかっていただけると思うのであります。
私は、以上述べましたような
考え方に基づきまして、今日の
事態は、
世界経済から来る
影響等も考慮しながら、国全体を通じ、
政治全体を通じて、一応新しい観点に立って見直すべき
時代に来ておるのだ。その中において、
地方自治をどれだけ推進していけるかということについて熱意を持って対処する必要はあるけれども、今
年度さしあたり私
たちがやりましたことについては、当初、
地方自治体に約束したことを全部実現いたしておるのでございますからして、急にいま
根本論の問題と絡み合わせてこの問題の
処理をおくらせていただくことは、われわれとしては非常に残念であると考えておるということを申し述べたいと思うのであります。