○
福田(一)
国務大臣 私は今度、このいまの現
段階において、いま申されたような人件費の問題あるいは経費の合理化を図るというようなことだけに問題をしぼって
措置をしていこうという
考えではございません。しかし、その問題をネグレクトしていいとは私は
考えておりません。現に、ニューヨークな
ども十年間の福祉の先取りが今日の破産を招いておるのでありまして、日本においても福祉
関係を充実せねばいけない、ニューヨークに続けというような
意見がずいぶんありまして、これを模範にした時代もあったことは、これはもう明瞭でございます。ニューヨークではこうしておった、スウェーデンではこうなっておる、こういうような
意見がよく
国会その他の場においてもあったわけでありますけれ
ども、私は何もニューヨークを云々するつもりはございませんが、海外でこうあったからそれだから日本もこうしなければいけないという議論は、いままでにやっていい議論であって、これからはそういう
考え方は捨てなければならない。日本の国土において日本の国力においてどれだけのことができるかということを、今度は
一つの別の柱として立てる。海外の事情ということを
一つの柱に立てることは依然として必要でございます。しかし同時に、日本の国土というものにおいてはどれくらいの
財政力があるか、また、それにおいてはどういうような福祉の実現を図っていくかというのは、それぞれによって違うわけですね。皆同じような福祉行政をやったらいいというわけでもなければ、パーセンテージも同じでなければいけない、そういう議論はなかったわけでありますけれ
ども、そういうことではなくて、私は日本の力というものをはっきり認識をし、そしてその上に立って福祉の行政を進めていく。また、もし収入がなかなかふえないというような
段階ならば、場合によっては経費の振りかえ、緊急でないものは抑えて、そして福祉の方へ回すという物の
考え方も当然あってしかるべきであると思うのであります。それから同じくこの福祉行政をやっていく場合にも、一年でもって一挙にやるということができなければ、二年なり三年なり五年なりという長期の見通しで、ことしはこれまで、来年はこうしてと、こういうような立て方もあるのではないかと思うのであります。そういうふうに全体としてやはり世界の経済情勢をにらみ、それからその中において世界経済に対してわれわれがやらなければならない
問題点も踏まえ、同時にまた、日本の風土、国土、そしてこういう狭小な国土の中に一億一千万以上の
人口があり、しかもこれがまだ一億三千万までふえるのではないかと言われている時代であります。私は、国民総生産が
伸びるということをよく——どの程度伸ばすかということはいろいろ議論が出ておるところでありますが、たとえば四%
伸びるとか六%
伸びると言いますけれ
ども、
人口が一%ずつふえれば、今度は所得ということになるとその分だけはカットしなければならないわけですね。そういう点も含めて
人口問題というのが最近ちょっとネグレクトされておる、世界の経済の問題を
考えるときにもこの問題が余り取り上げられておらない、日本の場合もそれが案外取り上げられておらないことがあると思うのです。
人口急増地域の高等学校の増設云々の問題もよく私はいまの
段階においてせなければならぬということはわかっております。それじゃ今度は減ってきてまたそれが要らなくなるような時期が六、七年後にあるということも
考えると、これらもにらみ合わせながら施策を
考えていくということも必要になる。少し言い過ぎになりますけれ
ども、とにかく私の言うているところは、
人口問題ということも加味しながら、やはり施策というものをここで
考えなければいけないのではないかということを申し上げたわけでございます。
いずれにしても、私たちとしては、しかし、福祉問題をネグレクトしていいなどという
考えは毛頭ございません。同時にまた、いままで言っておったが、それだけにハイライトを当てたかとおっしゃるけれ
ども、私たちは何もそこだけにハイライトを当てたわけじゃなくて、やはり人件費の問題も、また経理、
経営の合理化も同時に
考えていかなければならない問題である、このように認識をいたしておるわけでございます。