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吉田委員 いままで申し述べましたことに
関連をして、CO切り捨てが実際に行われておるようでありますが、その例を一、二挙げますけれ
ども、
労災法との
関係について、こういう
災害なり、あるいは
災害の結果、起こりましたCO症状に対しては、
労災法は不備ではないかと考えられますから、その点について
お尋ねをいたしたいと思います。
労災法の不備の点については、あるいは、これは労働省の所管だということで逃げられるかもしれませんけれ
ども、その辺は
政務次官、来ておられますから最後に
政務次官に伺いたいと思います。
これは
山野の被害者そして患者さんの例を一つ引きますと、中岡一行さんという北九州市八幡区木屋瀬に住んでおる人の例であります。
「くずれかかったボタ山のふもとにバラックの一軒屋がポツンと建っており、それが中岡さんの家だった。ほほの肉がこけ、顔色も悪い。白いものが目立つ、油っ気のない髪の毛をかきむしりながら、中岡さんはボソッといった。「ありゃ上田組に入ってから、すぐじゃった。あの組からは五人が
坑内に入っておったが、わし一人が助かった。組の親方はなんちいうたかの……よう思い出せんが……。なんせ、わしが先ヤマで後向きが四人で掘進しょった。
坑内の、いちばん、奥のようだったな」 中岡さんは戦後、南方から復員するとすぐ、筑豊の小ヤマに働き口を見つけた。そのころの小ヤマは手掘り
作業であった。落盤やガスから身を守るのは、長年のカンと地質を読み取る熟練度だけである。負けず嫌いな気性と屈強なからだの中岡さんは四、五年もすると、腕のいい掘進工になっていた。ところが、中岡さんが働いていた有田
炭鉱が
閉山になってしまう。失業してブラブラしているところに、中岡さんの腕を知っていた上田組が声をかけた。」これは
山野鉱業が第二
会社になった、いわば組です。そして、その組夫としての中岡さんの例が挙げてある。上田組が声をかけたので「その誘いにのり、
山野鉱へきて十数カ月後に
事故にあったのである。中岡さんの場合も、救出されたのは
爆発から約八時間後だった。「そら、ちょうど狂犬病のごとあったですよ」とかたわらで妻の美代子さんがいった。「目がつり上がり、キョロキョロして、いっときもじっとしとらん。私の顔を見てん、だれかわかりゃしぇん。
事故の次の日、九大に入院したけど、こりゃ、助からんかもしれんち、思うたですよ」。九州大学に入院してからも中岡さんはひと言もしゃべらず、立たせたら立ったまま、坐らせたら坐ったまま、動こうともしなかった。むりに動かすと、猛然と暴れ出した。美代子さんの顔を見て妻であることがのみこめるようになるまで三、四ヵ月かかったという。」
ところが、その人がCO患者としては認められていないのであります。その認められなかったのは、医師が認めなかったわけでありますが、
炭鉱の病院と、あるいは労災病院あるいは
調査団等々の診察を経ても、なかなか患者と認められて取り上げられない。そこで「身体的な欠陥補充に重点を置き、精神神経的な障害を軽視するという現行
労災法の不備を
指摘するのは容易である。だが、それ以上に自覚症状治癒という
三池の切り捨て
政策の図式が、ここでもみごとに展開されていることに驚かされるのである。」こう書いてあります。
で、CO患者に対する
法律ができたことは御
承知のとおりであります。この
法律は
通産省の所管であろうと思う。石炭
関係法令集に書いてございますので、私はそうだと思うのですが、その
法律の適用を受けるためには、一酸化炭素によって脳神経系統に異常があるとして、CO患者と認められなければならない。その病院のことは厚生省に
関連をいたします。
関連をいたしますが、せっかく
法律をつくっても、それで救われることがないような実情になっているという点は、これは
通産省として御存じなのかどうか。時間がございませんから、たくさん挙げることは省略をいたします。先ほど一例を読み上げました。その中にたくさん書いてございますが、それは、CO患者がCO患者として認められない。その後の
三池の経験を、これは経営者は経営者として何かくみ取っておるようですが、その結果は、CO患者をできるだけ出さないように、一酸化炭素中心患者が出ても、中毒患者として認めないという態度が見られるようでございますだけに、そこのところは、私は
一般、法上の問題よりも以前の問題があると思いますけれ
ども、そういう点について、これはいま
労災法の欠陥を
指摘しているわけでありますが、その前の問題だ。その前の問題を私は先ほど御
質問申し上げましたけれ
ども、やはり人の命を大事にするという精神が立地公害局だけでなしに、
通産省の中になければ、あるいは経営の中になければ、私はどんな
法律をつくっても、あるいはどんなりっぱなことを言われても、それが実際に行われないという結果になるという
意味で、こういう問題を提出しているわけであります。
政務次官のひとつの御
答弁を願います。