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1975-12-10 第76回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十日(水曜日)     午後二時二十二分開議  出席委員    委員長 田代 文久君    理事 金子 岩三君 理事 菅波  茂君    理事 田中 六助君 理事 岡田 春夫君    理事 多賀谷真稔君 理事 多田 光雄君       三枝 三郎君    篠田 弘作君       野田  毅君    上坂  昇君       細谷 治嘉君    吉田 法晴君       渡辺 惣蔵君    鬼木 勝利君       松尾 信人君    小宮 武喜君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         通商産業省立地         公害局長    宮本 四郎君         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君  委員外出席者         通商産業大臣官         房参事官    蓼沼 美夫君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件  巡遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 田代文久

    田代委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  去る十二月六日、七日の両日、北海道炭礦汽船株式会社幌内炭鉱ガス爆発災害について、現地委員を派遣し、実情調査を行いました。  この際、派遣委員より報告を聴取いたします。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 北海道炭、硬汽船株式会社幌内炭鉱災害現地調査の結果を御報告申し上げます。  日程は、十二月六日、七日の二日間でありまして、現地では、病院に負傷者を見舞った後、札幌鉱山保安監督局北海道労働基準局北炭幌内炭鉱経営者労働組合職員組合等から説明並びに要望等を聴取した後、三笠市民会館において、北海道庁及び三笠当局から要望を聴取し、さらに北海道の各鉱業所代表者と懇談してまいったのであります。  派遣委員は、田代委員長多田光雄君、松尾信人君と私、多賀谷真稔の四名でありましたが、篠田弘作君、三枝三郎君、岡田春夫君、渡辺惣蔵君が現地参加されました。  、まず、幌内炭鉱の概要について簡単に申し上げます。  当鉱は、明治十二年、国営で開坑し、同二十二年、現北炭の前身である北海道炭礦鉄道株式会社が譲り受けたのであります。炭層は、すべて優良な一般炭であります。現在の主要な稼行区域は五片及び六片でありますが、災害の発生した七片は、採炭準備のため岩石掘進作業を実施中で、マイナス千メートルレベルという、わが国で最も深い作業現場であります。採炭方式前進式片盤向き長壁式払いであり、採炭機としてドラムカッター及びホーベルを使用し、掘進は発破を使用しております。十月末現在の労働者数は、請負組夫三百九十名を含めて二千四百七十五名。十月の出炭は約十一万トンであります。  次に災害状況について申し上げます。  災害は、十一月二十七日午前二時十五分ごろ、縦坑坑口から約手九百六十五メートル、マイナス千メートルレベルの七片区域で発生したもので、災害の種類はガス爆発と見られております。発見の端緒は、坑外誘導無線指令室にいた係員が爆発音を聞き、直ちに、坑内区域誘導無線で連絡したところ、七片区域からの応答がなかったため、同区域での災害発生を感知したのであります。  当時、坑内には三番方の四百二十五名が入坑しておりましたが、指令室退避命令により、このうち三百九十四名は無事、出坑いたしました。七片区域には三十一名が配番されておりましたが、全員が罹災いたしました。罹災者は、負傷七名、死亡十一名、行方不明十三名であります。  その後、七片区域では、爆発による崩落個所エア管断裂等が確認されたほか、致死量以上のガスと煙の充満で視界がゼロとなり、さらに温度も五十度に達して、二次災害が心配される状態となり、また四片風道にも飛び火による坑内火災が発生する状況となりました。  こうした諸情勢の悪化から、会社は、行方不明者の生存は考えられない。これ以上の救護活動は不可能であると判断し、行方不明者を早期に収容するためには、七片区域を水封ずる以外に手段はないという結論を出し、関係者及び監督官庁の承認を得て、注水作業が行われたのであります。  この作業が完了した後、坑内を探検したところ、五片で火災が発見され、また、さらに奥部での爆発音が感知されたほか、四片の火災は引き続いているなど、情勢はさらに悪化していることが判明したのであります。このため、社外から学識者の応援を求め、社内の技術陣も動員して対策検討した結果、縦坑から窒素ガス液化炭酸ガスを注入するほか、六片レベルまで注水することになり、私ども現地調査の時点では、この注水作業を実施しているところでありました。  こうした状況で、会社は当面、災害鎮静化のために、考えられるあらゆる努力を続けているとのことでありましたが、さらに、行方不明者収容については、坑内の諸条件が最もよい方向に転じた場合でも、今月二十四日以降になるとの説明がありました。一刻も早い収容を祈念してやみません。  災害原因究明も、こうした事情から、相当おくれるものと思われますが、厳密に行う必要があります。  次に、遺族補償の問題は、労災補償以外のものが、最終的に行方不明者全員収容を待たなければ決められないため、現時点では、まだ明確ではないとのことでありますが、死亡行方不明者のうち、請負組夫が七名含まれております。会社側も、最大限の措置を講ずると言明しておりますが、格差のない、万全の遺族対策を講ずるよう、強く要請する次第であります。  次に、現地における主な要望は、保安監督員制度根本的見直し会社保安確保責任体制を明確化すること。鉱山保安行政を一元的に行える体制を確立すること。鉱山保安法規を抜本的に改正すること。深部開発のための総合的な保安技術開発を促進するため、国の保安技術開発機構を設置すること。国の保安対策費を大幅に増額すること。災害復旧に必要な資金を供給する基金制度を新設するほか、当面、幌内炭鉱復旧資金確保すること。今次災害を理由とした閉山を阻止すること。行方不明者収容に全力を挙げること。災害原因究明、今後の保安対策を厳密に行うこと。罹災者遺族補償について、雇用形態の相違による差別をしないこと。深部化進行速度を緩めるため、浅部開発を促進すること。災害の影響を受ける地方自治体の財政に特別の配慮をすること。などであります。  また、鉱業所代表との懇談会においては、国立の保安技術研究開発機構設置についての考え方保安対策関係費拡充具体的内容会社間の技術交流現状保安点検の結果の周知徹底救護組織あり方等について意見を交換したのであります。  次に、この調査を通じて私どもが感じました点について申し上げます。  第一に、わが国保安技術の水準では、最近の深部開発の速い進行速度に十分、適応しているとは言い切れないように思われます。この際、浅部の再開発検討するとともに、深部開発に適応した保安関係法規抜本的見直し、総合的な保安技術研究開発体制を整備することが急務と思われます。  第二に、保安確保するため、国の保安対策関係費による助成を拡充強化して、きめ細かく実施する必要があり、このため、監督指導体制についても強化する必要があると思われます。  第三に、幌内炭鉱復旧の問題でありますが、火災規模水封区域拡大という状況から、技術面資金面で相当の困難が予想されるのでありますが、当鉱は、なお埋蔵量も多く、将来も相当な出炭量が見込めると思われますので、政府並びに関係者の積極的な努力をぜひ期待いたしたいと思うのであります。  最後に、国内石炭見直し機運がようやく緒につこうとしている、この時期に、このような多くの犠牲者を出す重大災害を起こしたことは、まことに遺憾であります。今後、石炭関係者はもとより、政府においても、さらに決意を新たにし、保安確保に万全を期して取り組むよう強く要望して、報告を終わります。
  4. 田代文久

    田代委員長 これにて派遣委員報告は終わりました。     —————————————
  5. 田代文久

    田代委員長 次に、質疑の通告がありますので、順次これを許します。田中六助君。
  6. 田中六助

    田中(六)委員 ただいま北海道炭礦汽船幌内炭鉱爆発問題につきまして、調査委員の多賀谷さんから御報告がございましたが、この件、私もまことに遺憾だと思いまして、遺族並びに負傷方々に厚くおわびを申し上げたいような心況でございます。  こういう事故が起こるたびに、私ども頭を去来するのですが、日本石炭政策というものに結びつけ合わせまして、これはどういうことだろうかという思いがするわけで、まず、そういう一つの概念から、私は数問にわたって質問してみたいと思います。  第六次答申では、二千万トンという数字を一応、目安にして挙げているわけです。目的を設定するということは、私ども政治家もそうですか、可能性を追求する目的、それと目的を掲げますと、これを実行する、つまり行動になるわけでございます。したがって、そこに日本石炭を掘る実態数字つまり机上で私どもが出して検討しておる、この数字というものは、ちぐはぐな点があるのじゃないかという疑問を持つわけでございます。この点、二千万トンという数字を出すまでに、どの程度、科学的なデータあるいは検討を加えただろうかという思いがするわけでございますが、この点について石炭部長からお答えを願いたいと思います。
  7. 高木俊介

    高木政府委員 新政策に六十年度の生産目標を一応、二千万トン以上ということを掲げてあるわけでございます。これに対しまして、いま先生から二千万トンの数字の根拠あるいは、そういう数字を挙げたときの可能性の追求の問題、いろいろ御批判の点あったわけでございますけれども、この数字につきまして詳細、御説明させていただきますと、昭和四十九年度の生産実績が二千二十九万トン、約二千三十万トンでございますけれども、全部の炭鉱数三十六炭鉱で、ただいま申し上げました二千三十万トンの生産があったわけでございまして、この三十六炭鉱につきまして、今回、答申に出します前に、審議会客先生方に冬山の坑内実情あるいは深部移行の問題、保安上、労働上の問題、いろいろ御相談いたしまして、三十六炭鉱を全部、分析いたしたわけでございます。  まず大きく御説明いたしますと、この三十六炭鉱生産増強グループ、それから生産現状維持できるだろうというグループそれから生産が大幅に減少するというグループ、の三つのグループに分けて計算いたしております。数字を申し上げますと、四十九年度の実績でまいりますと、一の生産増強グループに入ります数字が、これは大手だけでございますが三炭鉱で三百三十七万トンというのがあるわけでございます。それから二の生産現状維持グループでございますけれども、これが大手炭鉱中小炭鉱で千四百十八万トンございます。それから三の生産が大幅に減少するグループ、これが大手で六、中小が十七ございまして、二百七十四万トン、これの合計が先ほど申し上げます二千三十万トンという数字になっておるわけでございます。  これを各山別に、先ほど申し上げましたように詳細、分析いたしまして、六十年度の生産数量あるいは五十五年度の生産数量というものを決めたわけでございまして、結果を申し上げますと、六十年度で申し上げますと一の生産グループが、先ほど申し上げました三百三十七万トンから八百万トンには増強できるであろうという数字でございます。特に生産増強グループには三池それから松島、もう一つは例の北炭の新鉱でございまして、これらの山が六十年度フル操業するとすれば八百万トンは可能であるというふうに見たわけでございます。なお、二の生産現状維持グループでございますけれども、これの千四百十八万トンが、現状維持とは言いながらも、一部は縮小、いろいろな問題がございまして、一千万トンというふうに見ております。それから大幅に生産が減少する三というグループにつきましては、一応、六十年度は、あるいは残るかもしれませんけれども、試算上はゼロというふうに掲げておるわけでございまして、この二つグループで千八百万トンという数字を掲げまして、そのほかに新鉱開発ということで、これはまだ具体的にどこというふうに決まっておるわけではございませんけれども、何回も御説明いたしますように、いわゆる事業団保有鉱区消滅鉱区、あるいは新鉱開発というような点からいきまして、六十年度には二百五十万トンぐらいは、少なくとも新鉱として、できるであろうということで、トータルで二千五十万トンになりますけれども、こういう一応の目標を置きまして、二千万トン以上という数字を計算した次第でございます。
  8. 田中六助

    田中(六)委員 いま数字の上での検討というものを、かなり詳細に示されたわけでございます。ただ私が思いますのは、こういうような分析をしておるのですが、人間を扱うということ。それからもう一つは、浅い部分の採掘がだんだんなくなって深部に到達しつつある、この幌内が一千メートル以上になっている。そういう深部開発というようなことを、どういうように見ておったのか、つまり自然の条件を克服する問題ですね。炭量とか、あるいは埋蔵量そういうものの検討あるいは、それに付随する表にあらわれている諸条件、そういうものは加味されたであろうが、だんだん深部になっていく、それから深部に対する対応策といいますか、労務者対応策、そういうものが検討されたかどうか、そういうようなことはどうでしょうか。
  9. 高木俊介

    高木政府委員 ただいまの先生の御質問でございますけれども深部対策といたしましては、不幸にしまして今回、幌内では事故を起こしましたけれども、現在でも地表下九百メートル、千メートルという山が二、三あるわけでございまして、私どもの今回の二千万トン以上の数字の中では、千百メートルぐらいまでは当然、掘れるであろうということを前提に置いて、いろいろ各山の生産を見たわけでございます。  なお、労働問題の人員におきましては、答申にも出ておりますように、今後、定年退職される方々のことも考えまして、少なくとも二千万トン以上の確保のためには、年間千人以上の労働者確保するのだということが前提に入っておりまして、むしろ今後の増産あるいは拡大という点にいきますと、千人に限定するわけではございませんで、最低千人以上の労働確保できるものだということを前提偉いたして試算したわけでございます。
  10. 田中六助

    田中(六)委員 わが国は、よく炭量目標を立てて、数字をぱっと挙げて答申をするわけですが、外国の場合、たとえばイギリスが五千万トンをどうするとか、あるいは西ドイツが七千五百万トンとか、そういうようなこと、そういうものを明示して、それを目標にして採掘していくのかどうか。私はそこのところをよく知らないのですが、その点、外国の場合はどうなんでしょうか。
  11. 高木俊介

    高木政府委員 二、三の外国の例を申し上げますと、各国、石炭政策を現在、見直しまして、いろいろな対策を打っているわけでございます。まずイギリスで申し上げますと、七三年でございますけれども一億三千万トンの生産を、八五年には一億五千万トンに目標を設定しております。それから西ドイツにおきましては、七三年に九千五百万トンでございましたものを、これは大体、横ばいでございまして、八〇年に九千四百万トンということを目標に置いております。なお、フランスでございますけれどもフランス石炭生産目標ではございませんで、使用量目標ということで、八五年に三千万トンというような数字を掲げてございます。なお、EC関係で見ますと、現在、二億七千万トン掘っているわけでございまして、この現在の出炭規模を維持するということが表明されております。
  12. 田中六助

    田中(六)委員 外国の主なところは、一つ目標をやはり設定しているようで、わが国だけじゃないということがはっきりして、しかも増産への目標を立てておるようです。ただ、西ドイツイギリスあるいはフランスとは、自然条件が非常に異なっておるのが、わが国特徴でございます。それで、この特徴をやっぱりよく考え、よく検討しなければならない。つまり深部開発ということに、だんだん到達せざるを得ない、この点の方が非常に私は気になることで、これを大きく加味すべきじゃないか。これは私の意見も含めてでございますが、このように二千万トンというようなことをばんと打ち出すと、どうしても経営者つまり資本家と申しますか、そういうのは、その目的を問題にするだろうし、労働者つまり実際に石炭を掘る人たちも、やはりそういうことが頭にあって、それぞれ自分炭鉱での目標を立てる。トータルが二千万トンですから、自分炭鉱の掘る量は別ですから、そうないと言われれば、そういうことも考えられますが、いずれにしても、わが国の場合、自然条件が違うこともあって、そう、その目的数字をはっきりすることがいいのか。あるいは、もうそんなものは吹っ飛ばして、ただ石炭エネルギー資源わが国の唯一のものだ、したがって、これを大事にしなくちゃいかぬ、これを掘らなくちゃいかぬということだけでいって、足らない分は輸入するとか、あるいは外国との協定で海外炭輸入あるいは海外炭鉱を、日本技術を生かして掘るとか、そういうようなところにむしろウエートを置いた方が、事故というものから考えたときに大分、削減されていくのじゃないかという気がしますが、その点どうなんでしょう。
  13. 高木俊介

    高木政府委員 長期にわたる目標の設定問題と輸入問題の二つの御質問でございますけれども、少なくとも国内資源としてある程度の目標というものは、やっぱり定めて、それに進むべきではなかろうかというふうに考えております。しかし、いかに自然条件が悪かろうとも、あるいは労働が集まらなかろうが、必ず十年先に二千万トンということには問題があろうと思いますので、この辺は現在のいわゆる各山の現状を基礎としながら、二千万トン以上の体制に進むべく、年々ローリングプランで計画を定めていくべきではないかということで、今回ローリングプランの案を出したわけでございます。  なお、全然、生産数量その他が不明のままで今後、石炭政策を続けるということに対しましては、需要業界に対しても、これはいろいろ問題が出てまいりますし、その辺いろいろ問題があるのじゃなかろうかと思います。当然、需要業界の方では来年度、幾ら石炭を引き取る、あるいは、それによる設備の問題とか、あるいは石炭と競合する油の購入問題とか、いろいろございますので、やはり間違いのないところの生産目標というのは、余り長期は別といたしましても、ローリングプランの中で定めていくべきじゃなかろうかというふうに考えてております。  なお、輸入問題でございますけれども、先ほど申し上げますような、国内炭をできるだけ増産するというにしましても、二千万トン以上という線しか、いまのところ私どもとしては見出せぬような状態でございまして、今後もう少し基盤ができ増産できるなら、それにこしたことはございませんけれども現時点におきまして輸入問題を掲げましたのは、いわゆるエネルギー多元化という点から、石炭火力発電所というものをどんどんつくっていただくということになりますと、国内炭だけでは供給不能でございますので、その点、不足する石炭に対しましては輸入炭という問題で、開発あるいは開発をした上での輸入ということを、今回の答申に打ち出しているわけでございます。
  14. 田中六助

    田中(六)委員 私の頭の中と、ほとんどいまの御答弁は同じなんですが、やはりフィードバックというか選択余地ですね。もうこれだけでなければいかぬということよりも、日本自然条件考えて、輸入炭輸入開発炭、そういうようなものも国内炭と同じようなレベル考えた方が、むしろ事故とか、そういうものにつながらないのじゃないか。これだけ国内炭をこうしなければいかぬのだというふうなことにウエートを置くよりも、選択余地を与えてリラックスしたような石炭見直し。つまり私ども、これは多少反省しなければいかぬと私自身考えるのは、まあほかの委員の方は別ですが、石炭位置づけしろ、石炭位置づけをしないから非常に不安だ、労務者も不安、経営者も不安、そういうようなことを強調し過ぎた余りに、位置づけに焦点を合わせ過ぎて、いろいろな問題が悪い方向に波及したのじゃないかという反省を持つわけです。したがって、そのところの頭の切りかえをした方が、今後の事故との結び合わせに非常に助かるのじゃないかという思いがするのです。したがって、輸入炭とか輸入開発炭というものを、労組との関係もある、経営者との関係もあるかもしれませんが、何かこう余りはじき出すというようなことじゃなくて、同じように平等に考え、それ以上に考えていくことの方が、日本石炭政策に、むしろ大局的に言えばマッチするのじゃないかという気もしているわけで、その点、今後の一つ考え方の課題だというふうに私は思います。したがって、そういうことも反省というか、十分、検討をしてもらいたいと思います。  ここでまた、それに関連して考えられるのは、事故があった場合に、自然条件とか、そういうものを考えずに、事故があったから、すぐ保安法規を強化しろ、保安法規を整備しろという発想法に短絡させると、私はまた、これ問題じゃないかと思うのは、法律は御承知のように一人歩きをするのです。法律をつくればつくるほど犯罪者をつくる。まあ私ども国会で、年にすれば大変な法律をつくるわけですけれども、それが果たして本当に実効力があるのかどうかというと、きわめて不思議なもので、あってもなくてもいいような法律が、さも、なければならぬような調子で審議されろ場合もあるのですが、だんだん深部になっていって、法律とか机上考えられないことが展開している。たとえば、一分前に検査してチェックしておっても、ガスとかそういうものは日本の場合、一分後すぐに、いろいろな問題が起こる場合があるのです。これは世界でも有名なんですが、そういうような事故が多い。したがって法律もあるでしょう、規則もあるでしょう。私、きのうとおととい、ちょっと鉱山保安法をもう一回、読み直してみたのですが、よく検討してみると、保安法規をもう少し厳重に、こうしろああしろと言ったのが正しかったかどうか。むしろ、このような弾力性を持たしておいて、法律じゃなくて、その他の規則にゆだねておる部分が非常に多いのですが、これの方が選択余地、つまり弾力性があるというようなことで、かえっていいのではないかというような気もしてきたわけでございます。こういう点で、いま政府保安法規検討しておるということを、大臣もおっしゃったし、事務当局も言っておったのですが、私のような考え、そういうようなことについて何か。  こういう質問をすると、一部で何か後退しておるというように見る人もおるかもしれませんが、やはり私ども一つの問題に取り組むときに、違ったものもある、違った局面もあるのじゃないかという見方もしなければいけませんが、この点どういうお考えか。局長しかいないですから、その点よく……。
  15. 宮本四郎

    宮本政府委員 ただいま先生から、法規と、それからその裏に存在しております実態との関係、これをどういうふうに前進させるかという御指摘でございます。  私ども石炭鉱山において事故のないということを前提にして、それにどうしてアプローチすればいいかということを考えておるわけでございますが、やはり、その保安の根源になりますものは自主保安でございまして、当該山を一番よく知っておりますし、一番、愛しておりまして、それを育てていくという山の人々が、みずからの保安を築いていくということでなければ、幾ら法規を山のように、ただ上げても、実際は守れない。したがいまして、基本的には先生のおっしゃることに全く賛成でございます。  ただ、その法規のあり方につきましては、鉱山保安法昭和二十四年に制定されまして、その後、長い間、非常にりっぱな法典として、きわめて精緻な体系が築かれておりまして、そのおかげさまで現実に鉱山、特に石炭鉱山におけるところの災害というものが、最近まで逐年ずっと減少してまいったのだと私は思っております。そういう意味におきましては、なお不備な点がございますれば率直に反省して、これを改正するということについては、やぶさかではございませんが、それはあくまでも、その根本に流れております実態に即して、法律考えております目的が達せられる方向において、初めて十分、実施できることであるというふうに存ずる次第でございます。
  16. 田中六助

    田中(六)委員 したがって、保安法規の再点検は強く要望されておる時期でございますので、私のような見解もあるということを頭に入れて対処してもらいたいと思います。  これは、ちょっと方向が変わるのですが、この炭鉱を再開させる、つまり行方不明の人がわかってしまって、いろいろな処理ができるというようなことで、また炭鉱をひとつ再開させようじゃないか。調査団の報告にもありましたように、一日も早くというような希望もあるようですが、再開させるのには、コスト、費用といいますか、概算でいいのですが、目の子算で、なかなか困難かもわかりませんが、どの程度かかるのでしょうか。
  17. 高木俊介

    高木政府委員 実は一昨日、北炭の社長をお呼びいたしまして、いろいろ今後の再開あるいは資金問題について御相談したわけでございますけれども現時点におきましては、昨日までの現時点でございますが、六片までの水封によりまして、いわゆる通気サイドを密閉することによって五片、四片の火を消火できるのではなかろうかという計算でございまして、そういう観点に立ちまして大ざっぱな計算をすれば、六十億前後の金が必要になるというような話は聞いております。  また、その六十億の資金調達問題でございますけれども、まだ具体的に、その六片までの水封でいいのかどうかという問題もございますし、ただあら勘として六十億前後というお話をお聞きしまして、では十二月、一月の資金繰りというようなことはどうなるのかという話も聞いたわけでございますけれども、さしあたっては、いろいろ手当てをしておいでのようでございます。また、うちといたしましても、もし長引くというようなことがありますと、その後の手当てということで、もう少し具体的にお話を聞きました上で、役所としてできる範囲のことは、いろいろ努力して再建に努めなくちゃいかぬというふうに考えでおります。
  18. 田中六助

    田中(六)委員 大ざっぱに言って六十億前後という。私は大ざっぱに言って六十億前後ならば、これはまだ相当プラスしなければだめだというふうに見ておりますが、この会社の資本金、経営の状況、それからどの程度、政府資金がいままでいったかということが、もしも、すぐわかりますならば——わからなければいいのですが、そうすると今度は逆に、これを再開しようということに焦点を合わせておるさなかに、閉山のことを言っては悪いのですが、もしも、この炭鉱が閉山した場合には、資本金、いまの経営状況、雇用者、こういうものを含めて、どの程度のコストがかかるか、それはわかるでしょう。
  19. 高木俊介

    高木政府委員 まだ閉山というようなことを前提にして計算したこともございませんので、しっかりした数字は申し上げられませんし、また閉山さすべきではないというふうに考えておりますので、そういうあれも出ておりませんけれども、ただ、いま先生の御指摘の、幾らぐらいコストといいますか金がかかるかということになりますと、一番、大きなのは退職金だろうと思います。これは一人五百万としましても、千六百人あるいはまた請負夫まで入れますと二千入近い労働者がおいでになりますので、百億という計算がすぐできるわけでございますけれども、私どもは、そういうことのないように、できるだけ早く火が消され、再建の方向努力したいというふうに現在、考えておる次第でございます。
  20. 田中六助

    田中(六)委員 このことを私がお尋ねしたのは、どうもこの北炭という炭鉱に、私がいつも何となく抵抗を感ずるのは、この社長さんは雇われマダムみたいな人ではないかと思うのですが、たとえば北炭の新鉱でも、あれは百五十億が三百億ぐらいになっているのですね。御承知のように金というのは三百億あれば、日本は非常に信用制度が発達しているから、私は三百億を一千億くらいに使えると思うのです。しかも年限が決まっているのですから、それが回せるという意味ですがね。そうすると、事故に六十億前後かかるといっても、百億かかるかもわからぬ。これも私は何度も指摘したのですが、この金は今度のこういう事故の金だというようなことで、名札がついているのなら別ですけれども、それは幾らでも増幅できるわけですから、そういうふうなことがあると非常に不明朗になるし、私は、そういうことで、もしもやられると問題があると思うのです。したがって、そういう点のチェックは十分しなければいかぬのですが、いつも、そういう形だけの援助でいろいろなことは、どんどんやっていくが、政府はチェックの方を、聞かれるまで余り問題にしてないようなときが多いのですが、そういうことについての配慮というものを、どの程度いつも、しているのかということが気になるのですが、その点お答え願いたい思います。
  21. 高木俊介

    高木政府委員 新鉱開発にせよ、あるいは経営改善資金にせよ、近代化資金にせよ、これは合理化事業団を通じて交付しておるわけでございますけれども、まず会社の経理内容あるいは返済状況あるいは担保というようなことを前提に置きまして、貸した金は一応、返せるというめどがなければ、事業団としては当然貸すべきでもございませんし、また貸せるような状態でもございませんので、その点は厳重に事業団を通じまして調査し、間違いのないところで、いままで交付しているつもりでございます。
  22. 田中六助

    田中(六)委員 だから、こういう禍を転じて福にするのは経営者だけで、一般の労務者その他が被害をこうむるというようなことのないように、そういう点も十分、配慮して、この炭鉱を閉山しなければしない方針でやってもらいたいというふうに思います。  あと、遺族方々あるいは、それに関連する人々の諸問題はございましょう。また、これを手厚くやることも当然のことでございますし、他の同僚の委員からの質問が詳細にあると思います。私の持ち時間はこれで終わりましたので、終わります。
  23. 田代文久

  24. 岡田春夫

    岡田(春)委員 われわれは七日に現地調査に行ってきたのでございますが、幌内の問題について、現地では大津炭鉱長から事情を聴取いたしました。  ちょうど消火のための注水作業が行われている最中でございまして、これについて、いつごろまで注水をするのか、あるいはまた、行方不明になっている方々収容はいつごろからできるのか、こういう点について炭鉱長から事情を聞いたわけであります。それに対しまして大津炭鉱長から、注水作業は九日の夕方ぐらいまで行われる、それが完了した後、坑内条件が許される状態であるならば、良好な条件であるならば、行方不明者収容は今月の二十四日ごろから行いたい、こういう回答があったわけであります。  ところが、これに対して、きょう、われわれ事情を調べてみましたところが、注水は九日の夕方までには終わっておらない。きょう十日の朝四時半ごろまで続けられておる。しかも、実は二十四日ごろから収容を行いたいと言っておったのですが、水を揚げる揚水作業、こういう点について、われわれその後いろいろ調べてみると、現在、六片、七片まで入っている水に対して、現在のポンプの能力では三十日間ぐらい、あるいは三十五日間ぐらい必要である。こういうことになってまいりますと、十日に注水が完了して、それから三十五日間ということになると、二十四日なんということにはとうていならない、来年に入る、こういう状態が、われわれがその後、調べてみるとわかったわけであります。  しかも、先ほど入りました情報によると、けさ注水を完了した後における状態というものは、実はきわめて憂慮すべき事態に立ち至っているということを聞いております。それは、四片、五片の火の状態が、決して消えるという方向には向かっておらない、こういう状態にまで立ち至っておって、心配すべき事態になっているということを、現地の方からわれわれ情報を受けているわけでございますが、現在の状態はどうなっているのか、今後の対策としてはどうするのか、こういう点をまず伺ってまいりたいと思います。
  25. 宮本四郎

    宮本政府委員 幌内炭鉱災害状況につきましては、前回の当委員会におきまして、その時点での段階で御説明をしたわけでございます。  繰り返しますと(岡田(春)委員「前回のところはもうわかっています。いまの状態を聞きたい」と呼ぶ)前回のところは、十二月の三日に注水を開始いたしまして、六片の水封に入ったというところまで申し上げた次第でございますが、その後の経過といたしましては、先ほど先生、御指摘のございました水封の完了が今朝、私ども監督局より入手いたしております情報によりますと、五時三十五分中止いたしております。したがいまして、その後におきましては直ちに水位の観測をいたしております。六片レベルマイナス九百三十メーターということでございますので、その若干、上まで上がっておったはずでございます。したがいまして、その後は、布引にありますところの主要扇風機を回転開始をいたしております。  なお、各排気口からガスが検出されておりますので、その検出を継続いたしておりますが、その内容につきましては、詳細は入っておりませんけれども、先ほどの御指摘のように、七片、六片が相次いで水封されたにもかかわらず、依然として危険な分析になっておりまして、これは四片、五片について重大な状況に推移しつつあるということを物語っているのではないかと憂慮されておるわけでございます。  なお、これらにつきましては引き続き、その模様を検討しながら、次の対策を判断せざるを得ない状況にあるものと考えております。
  26. 岡田春夫

    岡田(春)委員 次の対策というのはどういうことなんですか。四片、五片を水封するというような場合もあり得るのか。それはいつごろまでに決まるのですか。
  27. 宮本四郎

    宮本政府委員 次の対策といたしましては、状況がよければ中に探検隊を入れまして、漸次、中に入った上で、いろいろな直接的な消火活動をやるというのがたてまえであったわけでございます。そのたてまえが貫けるかどうかという判断をしなければなりません。そのためには若干の時間が必要だと思うわけでございますが、その若干の時間も、私ども現地の判断に、これは任せざるを得ないわけでございますけれども、一両日かかるのではないかと思いますが、その上での判断の中に、御指摘のようなこともあり得ると感じる次第でございます。
  28. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ここら辺、重要ですから、もう一度、念を押しておきますが、一両日中の判断の中には、四片、五片の水封もあり得る、こういう意味ですね。
  29. 宮本四郎

    宮本政府委員 その通りでございます。
  30. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはもうきわめて憂慮すべき事態になってきたわけですが、そこで今度のガス爆発の問題について、原因その他の問題から、まず伺っていきたいと思うのですが、われわれ現地調査を行いました段階においても非常に感じた点でございますが、会社の方は、どうも生産第一主義の点を考えて、保安に対する軽視というか、甘さというか、そういう点が非常に大きな原因になっているのではないか、こういう点を私は非常に感じたわけであります。また、そういう方向にいっているのに、鉱山保安監督局の関係、まあ宮本さんの立地公害局の関係ですが、こういう会社側考え方に対して十分なチェックをやっておらなかったことが一つ、責任として問われなければならないのじゃないか、こういう感じが私はするわけであります。  たとえば具体的に言いますと、この七片の地区においては、すでに八月の二日に山はねがあって、一名、殉職をしておるのであります。しかもその後、七片ではありません、五片ですが、九月の四日には今度は坑内火災が起こっている。そして幸いにして、このときは人命に対する損害はなかったのでありますが、こういう事態で坑内火災が起こって、これはとりあえず辛くも取り押さえることができた。それから、その次に十一月の十八日になると、七片においてガスの噴出に伴う異常の破砕事故が起こっている、山はねが起こっている。これが事故の発生した約一週間前であります。しかもその上に、事故の起こりました二十七日の前の日には、午前十時四十分ごろとお昼ごろ、二回にわたって非常に大きな山鳴りが起こっている。こういうように事故が再三に起こったり、それを予知できるようないろいろなことが起こっているにもかかわらず、こういうことについて、十分な保安対策が行われなかったのではないか。私たちは、そういう点で監督局に対しても責任を明らかにしてもらわなければならない、こういう感じがするわけでございますけれども、こういうような経過等についての公害局の方で調査されている経過を御報告をいただくとともに、この間の炭鉱長の説明によると、ガス爆発とはっきり言っているわけであります。そこでこの際、一緒に御答弁をいただきたいのは、これは局としてはガス爆発と断定しているのかどうなのか。それからまた、それでは一体、火もとはどこにあったのだ、どういうことであったのか。こういう点を含めて、ひとつこれらの点についての御報告を願いたいと思います。
  31. 宮本四郎

    宮本政府委員 お答えいたします。  深部移行に伴いまして種々、困難な状況があるということは前から存じておりました。そのために、いろいろ重点的な監督を実施しておったわけであります。現に七片区域におきましては、危険な徴候が幾つか見られておったわけでございます。五十年の三月以降におきましても四回、小規模な山はねが発生しておったということを、監督局では知っておるわけであります。  それで、これにつきまして会社の方は、この地域をAランキングの警戒地域ということに指定いたしまして、幾つか、それに対応する対策をとっておりまして、たとえばボーリングの強化あるいはガス自動警報器と電気工作物とのインターロックあるいは保安施設の強化、発破対策の強化、これらはいずれも、こういう山はねの状況を聞きまして、監督局が厳しく指示をいたしておった次第でございます。さらに、稼行炭層に接近いたしました場合には、そのランキングをまた上げまして、より一層、厳重な保安監督の措置をとらせながら前進をしておった次第でございます。  また先般来、炭鉱災害が相次ぎましたので、全国の監督局に指示をいたしまして、それぞれ重点的な監察をやるように、さらには、会社相互のクロスチェックということも実施いたしましたが、特に北海道、この地区におきましては、重大災害を予防する観点から、幌内炭鉱に着目をいたしまして、準備的な監査を開始しておった最中でございます。  それから、第二に御質問の点でございますが、原因につきましてはガス爆発考えております。それは、いろいろな現象から判断をしてガス爆発考えられる、こういうふうな見方をいたしております。ただ、御存じのような状況でございますので、原因につきましては目下、何とも申し上げられない状態でございます。
  32. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまの御答弁にもあったのですが、七片の骨格坑道づくりの場合、非常に危険な状態があるというので、特別区域の指定、特Aですか、こういうようなものをやっておったというのですが、指定はいつ、したのですか。それから新聞報道によると、十一月の六日に指定を解除したと言っているのだが、これは事実ですか、どうですか。
  33. 宮本四郎

    宮本政府委員 ただいま御指摘の指定の区分でございますが、これは幌内炭鉱におけるところの内部的な基準でございまして、保安技術管理者によって、その現場、現場の状況に応じた指定をいたしておる次第でございます。たとえば新山の岩石掘進の場合には、原則的にはまずAランクに指定をするということで、一定の必要条件を満足させるような保安措置を講じながら掘進を続けるわけでございますが、たまたま、この坑道が稼行炭層または特定の断層、この場合には養老断層でございますが、それに接近いたしますと、格を上げまして特Aという指定をしたようであります。  いつ指定したかにつきましては、その接近した時点が何月何日であったか、いまデータを持っておりませんので、お答えできませんが、この炭層を貫通いたしまして、その後、平常の状態に戻ったので、十一月十三日には特Aを解除いたしまして、一般のAランキングに移しまして、引き続き注目をしておったように聞いております。
  34. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の聞いているのでは、九月の二十五日に特Aにして、十一月六日に解除をしておる。しかも六日に解除した後、十二日後、十八日に今度は非常に大きな山はねというか、そういう状態が起こっておる。それから二十六日になって、先ほども言ったように大きな山鳴りが起こっておる。解除をしておって、そういうことがあったのだったら、続いて、そういう点について何らかの措置をとらなければならぬはずだ。監督局にこれは一々、書類が出ておるはずなんだが、こういう点について監督局としては、どういう指示を与えたのか、こういう点を伺っておきたいのです。
  35. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。  監督局といたしましては、御指摘のような事情が幾つかございましたので、特にこの山につきまして集中的にガス突出あるいは山はね対策ということで、二十五日に山に入りまして、二十五日から特別監査を五名の監督官でいたすことになっておりまして、この事故の時点では、図上といいますか事務書類につきまして検査をいたして、その次の日の二十六日に内部に入る、こういう状況になっておったわけでございます。したがいまして、たとえば山鳴りの問題でございますが、これにつきましては監督官が現地におりました時点で山鳴りが起こりまして、その山鳴りの原因その他につきまして、これを会社に問いただしたわけでございます。会社側といたしましては、山鳴りがあった時点で、山の無線の司令室におきまして、各切り羽あるいは作業場の誘導無線を通じて、現場に各状況を問い合わせております。その問い合わせた結果、異常がないという確認を会社がもらっているという報告を、現地に行っている監督官が受けております。そのような状況でございます。
  36. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だから山だけではなくて、監督局の方でも、こういう問題についてはやはり相当、責任を持ってやってもらわなければならない。  ところが、それだけではない。保安についてはどうも会社も監督局の方も、私は十分、厳重な考え方でやっているとは考えられない点がある。たとえば事故の起こったのは二十七日ですね。それから注水作業を始めたのは二十九日でしょう。そのときに、さっき多賀谷委員から報告もありましたように、いろいろな経過があるわけだが、注水をするときに、ちょうど四片で消火作業に当たっていた人が二十四名、中に入っていたんだ。そしてこれに対して注水開始と退避の命令が出されていない。そして水を注いでいる。監督局長は注水に対して承認を与えたんでしょう。承認を与えたのならば、そのときに、水を入れるということになると、坑内四片に二十四名の人がいるんだから、これに対しては一体どうするんだ、外に出したか、命令を出したかということを当然、言ってなければならないはずなんだ。こういう点、全然やってないじゃないですか。そして、この二十四人の中で五人の人が第二次災害というような形で、幸いに命は守られたけれども、火傷を起こすというような事態が起こっておるじゃないですか。こういう点から考えても、会社保安について非常に甘い態度であるというだけではない。監督局自体も、いかにこういう事態であるからといって、気はせいておったり気持ちが動転しておったか知らないが、これを承認する場合において、これだけの配慮がなければ話にならぬじゃないですか。水を入れるときに坑内に二十四人も残っておったんだ。こういう点についてはどういう経過になっているのですか。
  37. 宮本四郎

    宮本政府委員 御指摘のように、二十九日二十三時五十八分、注水を開始して間もなく、四片の風道の通気が逆流いたしまして、救護隊員に被害が出たこと、そのとおりでございますが、注水に際しましては、監督局の方で非常に慎重な態度をとり続けておったわけでございます。七片の注水により四片への逆流を一応は予想したわけでございますが、水の入れ方も少しずつ入れるように、したがって念のために注水量を特に漸次にふやしていくようにという指示だとか、あるいは注水前、他の火源排除のためにガス管、エア管のバルブを閉塞することとか、注水に当たりましては、四片風道の消火隊と緊密な連絡を保ち、消火作業を行うように、さらには消火隊は通気の変化に注意し、危険のおそれが考えられる場合は、直ちに安全な個所に退避すること、この程度の指示をいたしておったわけでございます。一応の考えは持っておったわけでございますけれども、その点につきましては指示が足らなかったと思います。
  38. 岡田春夫

    岡田(春)委員 退避命令を出したのですか。水を入れるから坑内から出なさいということを局長が指示を与えたのですか、どうなんですか。
  39. 宮本四郎

    宮本政府委員 退避命令は出ておりません。危険のおそれが考えられる場合には、直ちに退避できるように、こういうことでございます。
  40. 岡田春夫

    岡田(春)委員 坑内におって危険を感ずる場合はなどと言ったって、直ちに退避できますか。そういう点でも監督局は保安問題を本当に考えているかどうか、こういう点について私は疑問と言わざるを得ないのですよ。炭鉱はもちろんのことであります。二十四人も中に入っているのに水を入れた、こんな例はほとんどないでしょう。ないでしょうと言ったら、いや、こういう例もありますなんて細かい例を出してくるかもしらないけれども、私はこれは人命尊重の点からいって非常に問題があると思う。  また、それだけではありません。五片の坑内火災が起こって一部分、密閉しましたね。密閉すれば、二本あった排気坑道の一本が現在も密閉されておるために、坑内の風量が制限されて、ガスの発生、爆発が起こりやすい条件になっておった、こういうこともガス爆発一つの大きな原因だと言われているのですが、これはどうなんです。
  41. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 先生、御指摘の風量の点でありますが、五片の坑内火災発生以前には、六つの切り羽で操業しておったわけでございます。そのために要する風量に比較いたしまして、五片の火災の密閉の後で四つの切り羽に減らしました、切り羽の二つを減らして四つということで、そのために風量が相当、要らなくなったわけでございます。実際に七片の風量を比較いたしますと、六つの切り羽の操業時に比較いたしまして風量が多少ふえている、このような状況でございます。
  42. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまの御答弁だけでは、まだ私、納得しませんが、まだいろいろな問題があるので伺ってまいります。  七片の骨格構造をつくる場合、これは私、言うまでもないのですが、七片において掘進を四ヵ所でやっているわけでしょう。その点も御存じのはずだ。それは監督局は承認しているはずだ。五十二年に採炭を開始するための掘進として、四ヵ所も一遍にやり始めたというのは、どうも何か生産第一主義で、ともかくもう進めろ進めろということで進めておったという感じが非常にする。しかも同一方向における掘進を二ヵ所、一遍にやっている、こういう場合は本当は一週間交代でやるとか、同時にやるというようなことはできるだけ避けるべきだし、そういう場合に、炭層を横切る場合における作業の仕方なんかにも非常に問題があるのじゃないか。こういう点で、深部開発の場合に、七月に起こった夕張新炭鉱の事例、こういう点の教訓が取り入れられておらないのじゃないか。あれは皆さん調査されて、十五メートルないし二十五メートルの炭層の先の方からガスの突出が起こったために事故が発生した。こういうような問題などが教訓として取り入れられてないために、こういう点から問題が起こっているのではないか。監督局の指導体制がこういう点でも問題なんじゃないかという感じがするわけです。こういう点が一つの点です。  第二点は、私たちも現場の労働者にいろいろ話を聞きました。そのときに異口同音に言っているのは、ガス抜きさえ徹底的にやっているならば、こんなことはなかったんだということを、はっきり言っているわけであります。先山の人々が言っているわけです。たとえばボーリングの場合においても、切り羽の方向に二本のボーリングを実施して、断層やガスの有無を調べながらガス抜きをする、こういうやり方よりも、二本くらいのボーリングではなくて、たとえば三井砂川の場合にはもっと四本、八本もやっている。こういう点では先進ボーリングその他のガス抜きのやり方なんかについても非常に問題があったのではないか。一体このボーリングの場合にガス抜きの規格はどういう規格でやっておったのか、こういう点についても監督局ではいろいろ調べているはずですから、この機会に明らかにしてもらいたいと思うのです。
  43. 宮本四郎

    宮本政府委員 先ほど申しましたように、ガス突出の非常に軽微なものが出ておったわけでございますので、監督局におきましては十月までの総点検と対策見直しに引き続きまして、十一月、十二月を緊急重要災害対策期間と設定いたしまして、この山に入ってまいったわけでございます。十一月二十五日、二十六日、前日でございますが、資料の調査を主体として点検をいたしておりまして、二十七日から二十九日には坑内の巡回をやるということになっておりました。この資料点検及び指示の段階におきまして、ボーリングでございますけれども、普通、探査ボーリングといたしましては、各掘進先ごとに左右に一本以上の探査ボーリングを打つ、残孔長は十メートル以上を残す。それからガス抜きのボーリングでございますが、着炭五メートル、新層十メートルに接近した場合に六本以上のガス抜きボーリングを行う、ガス去勢をやる、こういうことをやっておりました。七片区域におきましてはさらにガスの自噴圧、自噴量、これを点検いたしておりましたが、基準値は超えていなかったということを確認しております。さらにガスの自動警報器と電気工作物とのインターロック、ガスがふえますと自動的に電源が切れる装置でございますが、これを実施いたしておりました。さらに各掘進先におきましては携帯式のガス自動警報器を設置しておりまして、また保安施設といたしまして、展開地にビニールハウスを設ける、あるいは定められた坑道に遮断幕を設ける、さらには風管を断管しない装置を設ける、こういうことを義務づけておったわけでございますが、これは二十五、六日に鉱内に入りまして書類を点検いたしまして、保安日誌によって確認をいたしておったわけでございます。
  44. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いま局長の御答弁の中で、自動警報器をつけて、そういうことまでやったのだというのだけれども、確かに切り羽別に固定式のガス警報器あるいは坑道の入り口付近には集中監視システムの警報器もついておったのは事実なんです。ところが鳴っていないでしょう。鳴ってないということは一体どういうわけなんですか。こういう点をお調べになったことありますか。あなたはそういうものはつけておった、つけておったと言っているけれども、鳴っておったのですか、どうなんですか。鳴ってないですよ。それでは何%になったら警報が鳴るのですか。これは三番方で起こった事故なんですが、二番方のときにも警報器については異常はなかったと言っている。鳴ってないんだそうです。鳴っておったのですか。鳴ったのですか。
  45. 宮本四郎

    宮本政府委員 濃度は一・五%でございます。それから鳴ったか鳴らなかったかにつきましては、いまだ確認されておりませんので、これは事情の許す時点において速やかに確認をし、事実を調査させるつもりでおります。
  46. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは鳴ったか鳴らないか確認してないと言うが、二十七日に起こった事故は、そのときすぐ、わかるじゃないですか、事故が起こったなら、鳴ったか鳴らないかぐらい。あなたは本省の公害局の方で、そういうことを調べないのですか。警報器をつけなさいということを言っておって、鳴ったか鳴らないかというのはわからないのですか。どうなっているのですか。
  47. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。  実は先生、御指摘の点でございますが、ガスの発生した場所の確認が、現状では非常にむずかしゅうございまして、罹災された方が非常に多うございますので、その方々から直接、そのガスがどの地点で出て、そこにおられた方が罹災されたかどうか、その辺の確認をいたしませんと、実際、鳴ったかどうかという確認ができないというのが現状でございます。
  48. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だってあなた、救出をされて病院に入っている人やその他いるんですよ。ガスのときに鳴ったかどうか聞くくらい調べてないのですか。調べたのですか、調べてないのですか。
  49. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 現在、監督局におきましては救出作業に全力を挙げておりまして、そのほかに聞き得る範囲の事情聴取というのはやっておりますが、現在お聞きしている範囲では、その点については答えが出ておりません。
  50. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは重大じゃありませんか、鳴ったか鳴らないかも調べなかったというのでは。あなたは、いますぐ札幌に電話をかけて聞きなさいよ、五時まで大臣もいるのだから。監督局の監督行政として十分じゃないですよ。監督局の行政の手続として十分だと言えますか、どうなんですか。こんなことでは、われわれは納得できませんよ。五時まで大臣もいるのだから、調べなさい。
  51. 宮本四郎

    宮本政府委員 昨日の段階で聴取しました結果、まだ全部は終わっておるわけではございませんけれども、その段階では確認されてないという報告を得ておるわけでございますが、いまの段階で、また調べます。
  52. 岡田春夫

    岡田(春)委員 確認されてないというのは、調べなければ確認できない。だけれども、調べたけれどもわからないというのも確認されてないということになる。だから鳴ったか鳴らないかというのを聞いてごらんなさいよ。すぐわかりますよ。もし、あなたわからないなら、あなた、ここから幌内鉱業所に電話をかけたら、すぐわかりますよ。ともかく、この委員会が終わるまでに調べてください。鳴ったのか鳴らないのか。鳴らなかったなら、何ぼつけたって意味ないじゃないですか。その点はっきりしてください。
  53. 宮本四郎

    宮本政府委員 御趣旨の線に沿うて、いままで照会をしておったわけでございます。それで昨夜までは確認されておらないという返事があったわけでございますが、改めていま照会いたします。
  54. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それから、この異常があったということがあってから、十分ないし十五分後にガス爆発が起こったのですね。その間に、抗内にいる七片の人は三十一人なんだが、この人々には、それぞれ通報したわけでしょう。通報して退避しているわけですね。退避しているんだけれども不幸な状態になっているわけですね。そうすると問題は、退避をした場所というものが不完全であったのではないかということが一つありますね。いわゆる退避場が十分に遮蔽されておったのかどうか。これは入ってみなければわかりませんというような答弁をする危険性があると思うのだが、少なくともビニールで遮断した程度では、私は十分な退避場としての役割りを果たしていないのじゃないかと思う。たとえば平和炭鉱の場合、平和炭鉱はもう閉山になっておりますけれども、これを遮断するために片別に遮断枠という厳重な枠をつくって、それによって、一つの片で起こった事故が隣に波及しないようにしている。平和鉱の場合はそういうことまでやったのですよ。ところが、こういうものは全然やっていない。これは今後の教訓として、遮断枠の問題なんかは大いに研究する余地があると思う。こういう点についても、ひとつ担当局としては、しっかりした遮断枠の問題、それから退避場の遮蔽の問題こういう点に対する措置が必要だと思いますが、あなた方はどう思いますか。
  55. 宮本四郎

    宮本政府委員 先ほど申しましたように、山はね、ガス突出というようなことを経験しておりますので、念には念を入れて、いろいろな対策を講じさせておったわけでございます。たとえば発破をやる場合の位置だとか、いまおっしゃいました遮断幕、それから風管の断管に対する設備だとか、あるいは発破前後の連絡体制とか、いろいろございます。なお、そのように御指摘のような問題点についても、あわせて検討させていただきたいと思います。
  56. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大臣、お聞きいただいているわけですが、やはり深部開発保安問題というのは厳重過ぎるほど厳重にやらないと、こういうような思わない事態が起こってくるという具体的な例で、私は質問しているわけです。やはり深部開発におけるガス抜きというような問題は、現在のようにガス抜きを会社に任せてやっているということでは、問題が起こるのではないか。この前、大臣に、われわれ社会党がお会いしたときにも、ガス抜きの補助率の問題なんかについても、ちょっと研究しているのだ、ぜひとも、これは実現したいのだということを大臣も答弁しておられたのだが、私は、国の責任で、これはやったらどうなんだろうと思う。補助率を引き上げるよりも、こういう深部開発の場合の重要なガス抜きの問題については、国がやったらどうなんだ、こういう点を含めて大臣検討されてはどうかと思うのですが、いかがでしょう。
  57. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今回の事故は、私ども大変、遺憾に存じておるわけでございます。ことしになりましてから、審議会から新しい石炭政策についての答申を受けまして、新しいスタートを切ろうといたしておりましたやさきに、事故が相次いで起こりまして、九月九日には全国の事業所に対しまして、保安体制に対しても再検討せよ、こういう厳重な通達をいたしました。その直後に、また、こういう事故が起こったわけでございまして、私ども非常なショックを受けているわけでございます。  石炭政策の最大の課題は、これはもう申すまでもなく保安対策でございます。安全第一ということが石炭政策の中心でなければならぬというのが、私の基本的な考え方でございます。そういうことから、今回の事故を契機といたしまして、生産よりも、まず保安第一に考える、保安あっての生産である、こういう角度に立って、今後の石炭のあり方について再検討するように、こういう強い指示もしたわけでございます。  ただ、その保安面全体を国が責任を持ってやるということは、現在の企業形態そのものを根本的に変えませんと、なかなかむずかしいかと思うのです。現在は私企業の形をとっておりますので、生産保安は一体である、企業が双方に対して責任を持つ、国がそれを監督する、こういう仕組みになっておりますので、今後は監督を一層、強化はいたしますが、保安の責任を国が持って、国がすべての保安対策をやっていくということは、現状ではなじまないのではないか、こういうふうに理解をいたしております。
  58. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だから、われわれ社会党は企業の経営体制の問題を問題にするのですよ。人命を尊重するならば、やはり経営体制の問題を含めて、保安の問題も、これは国の手によってやるべきじゃないのか。こういう事態が起こるたびに、真剣に検討すべき問題ではないかと言ってきている。せめても大臣、どうですか、あなたの方の所管だからと言って、あなたは経営者大臣だから、役人出身じゃないのだから、こだわらないと思うのだけれども、通産行政のもとに保安行政があるというのはおかしいのじゃないですか。経営者のもとに置いて、保安生産と一緒にしている、こうおつしゃるが、この際どうですか、思い切って通産省は生産行政の面をやる、保安問題は労働省がやる、こういうように割り切って、事業経営の点から見ても、そういう点はあなたが英断をふるって、やってみたらどうですか。この点ひとつ御意見を伺います。
  59. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は先ほど、生産よりもまず保安が大事であるということを申しました。その観点に立って再検討するようにということを言ったわけでありますが、これは二千万トン生産というものに、保安を無視してこだわってはいかぬ、こういう趣旨でございます。この二千万トン体制というものは流動的に考える。それよりもまず保安を、これなら大丈夫だろうかというふうなことではなくして、絶対に心配要らない、こういう体制を常にとって、二千万トンという生産にはこだわらなくてもよろしい、こういう観点で石炭行政を進めるべきであるという趣旨について再検討しろ、こういうことを言ったわけでございます。  それから、保安の面は労働省に任せ、それから生産の面は通産省が監督をする、こういうお話でございますが、やはり生産保安というものは表裏一体の関係になっておるわけでありますので、これを別々の省で打ち合わせをしながらやるということは、いたずらに行政が繁雑になりまして、それはむしろ成果が上がらぬのではないか、私けこういうふうに思います。でありますから、むしろ、これを契機に保安対策というものをどう強化していくかということについて徹底的に検討していく、このことが大事でなかろうかと考えております。
  60. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大臣はそうおっしゃるけれども、あなたにさっき聞いていただいたように、保安よりも生産の方が主になって、炭鉱経営者の方で進めてきたのは事実なんです。こういう状態の場合に、保安管理者が会社の責任者である、鉱長である、あるいは次長であるということになると、やはり問題が起こりますよ。こういう点からいって、煩瑣になって大変だというお話だけれども、人命尊重のためには煩瑣になったっていいじゃありませんか。そういう点は、人命を尊重するという立場から御検討をいただきたい。  もう一つ、やはりこの幌内状態、四片、五片の火がなかなか消えないということになってまいりますと、事態がきわめて重大ですね。そうした場合に、二千万トンの体制の中に非常に大き影響を及ぼす危険性が出てきているわけだ。そこでこの前、参議院でも大臣から、はっきり御答弁をいただいたわけですが、あらゆる方法を講じても閉山をさせないという方針のもとで、当面の緊急対策並びに再開のための努力を、やはり通産省はやるべきだと思う。閉山はさせないということを再度ここで言明をしてもらいたいと思う。非常にいろいろな問題が、いま起こってきているけれども大臣いかがですか。もう仕方がないかもしらぬというお考えなのか。閉山はあらゆる方法を通じて阻止する、こういうことについて大臣のはっきりした御答弁を伺っておきたいと思うのです。
  61. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 幌内炭鉱現時点では非常に重大な状態に陥っておるということは、御指摘のとおりでございます。事態を十分調べまして、最終判断を下したいと思っておりますけれども現時点では閉山をする、そういう考え方は持っておりません。ただ一番、当初に申し上げましたように、生産よりも保安が大事である、こういうことを申し上げましたが、保安上、問題が残る、こういうことであれば、それまではなかなか再開にはいかぬのじゃないか。保安上すべての問題が解決されたというときになって初めて再開、こういうことになろうかと思います。
  62. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大臣ひとつお聞きいただきたいのは、現在の状態深部開発の問題ですよね。深部開発で七片、六片あるいは四片、五片、四片の場合を深部と言えるかどうかという点は、いろいろまたあれするとしても、深部開発において、このような事故が頻発をしている、それなら幌内を続けるための方法はあるんですよ。深部でない浅部の開発をやればいいんですよ。この問われわれ炭鉱長に聞いたら、七、八、九の三つの片で大体、今後、掘れると思われるのは千五百万トンある、このように答えました。ところが大臣、千五百万トンは浅い部分、浅部、それで出炭可能なんですよ。それは私も調べてまいりましたが、四片を真っすぐ水平に行って、七百メートルないし千メートルのところへ行けば着炭するんです。そこに約手五百万トンあるんですよ。幌内鉱をつぶさなくてもやれるんですよ。それでは、それをいま、なぜやらないか、それは事業団の買い上げ鉱区になっているのですよ。ここでやはり事業団の買い上げ鉱区の問題など再検討をやるべきではありませんか。弥生とか新幌内とか、こういうところの危険のないところで採炭をして、それによって幌内を続けさせる、こういう点を考えるべきだと思うのですよ。こういう点もむしろ専門的な点ですから、高木石炭部長、こういう点の見通しをはっきりつけてもらわないと、いまの大臣の答弁なんかによると、閉山するかもしれないという印象を与えておりますよ。そんなことをしたら山の中みんな、幌内だけじゃありませんよ、もうこんな深部開発はだめなんだから炭鉱はやめようじゃないかなどという声になってきますよ。いまの大臣の答弁では、非常に心配な点が出てくる。こういう浅い部分開発ででも幌内の閉山はさせない、こういう点に全力を挙げるというような明確な態度を聞かしてもらいたい。
  63. 高木俊介

    高木政府委員 ただいま大臣が申されましたのは、保安第一ということを強調されたことと思います。決して閉山さそうというようなことで、安易に考えておるわけではございません。  いま、先生がおっしゃいました浅部開発の問題でございますけれども、例の幌内から恐らく旧奔別の炭量を指しておいでになるのじゃなかろうかと思います。先生、御指摘のとおり現在、事業団の買い上げの消滅鉱区になっておりますので、この点は、次の国会にお願いいたします法律改正によりまして、こういう事業団の持っております消滅鉱区あるいは保有鉱区の再開発ということをぜひ、やりながら、本幌内の閉山を食いとめる。また閉山ではございませんけれども、国の資源として、そういう浅いところの、まだいい炭が、いま先生の御指摘の奔別だけではございませんで、たとえば赤平から赤間の鉱区に向かいました浅部の炭量もございますので、そういうことも現在の法律体系ではちょっと無理な点がございますので、次の法律のときに改正をお願いいたしまして、ぜひ、そういうところを掘らすような形で、保安確保しつつ生産も維持していきたいというのが本心でございます。
  64. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは大臣、この浅部の開発を含めて、ひとつ幌内の場合の閉山を阻止する、こういう点は、いまの石炭部長の答弁で私は了解したいと思うのだが、大臣、それでよろしゅうございますね。
  65. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま部長が言ったとおりでございます。
  66. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし、それだからといって、深部開発はやめるということはだめですよ。これは徹底的な保安に対する対策を行うとともに、それによって深部開発全体として、いま進んでいるのですから、だから、もう保安上の点をあれして、保安のための努力をやらないで、深部開発投げたなんということは、われわれ許すわけにはまいりません。やはりそれよりも、これは大臣のおっしゃるとおりだ、保安の問題をまず第一に考えて、それに対する対策を十分やって、その上で深部開発をやるということで、大臣もひとつ努力をしていただきたいのですが、そういう意味では、われわれが考えているのは炭鉱保安技術開発機関、こういうものをやはりこの際、設けるべきだとわれわれは思うのですよ。われわれ衆議院の石特の調査団が行ったときも、自民党の諸君まで含めて、これはぜひ、やらなくちゃいかぬということの意見になってきたわけです。  たとえばイギリスの場合には、石炭技術研究所というのは現在、職員が九百人おります。そして年間の予算が九百万ポンド、日本の円に直して五十四億円、これだけの金と人員を使って、深部開発における安全基準の問題その他で保安技術の研究をやっている。またフランスの場合でも、日本の場合と非常に似ている状況にあるのですが、職員が六百三十人、そして、ここでも石炭保安技術開発の問題で研究をしているために、ガスの突出、自然発火、ガス爆発、こういう問題がほとんどなくなってきている。こういう点は、ひとつ思い切って大臣検討されたらどうですか。役所に言わせると、何かいま技術研究所、技研があるからいいとか、岩見沢に保安センターがあるからいいとか、こういうような形で逃げるんですよ。やはり政治家としての大臣の場合は、思い切ってここで、あらゆる技術者を結集して、そういう技術開発についての研究機関をつくる、そういう中で深部開発の問題をやっていくのだ、そういう思い切った方針を、私はこの機会に出すべきだと思うし、それによって炭鉱労働者も、なるほど、これならおれらもやれるという勇気が出てくるのです。こういう点についての方向性、御意見を、大臣から伺っておきたいと思います。
  67. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 英国の場合は、出炭量も二億トンということで、日本と一けたも違いますし、それからエネルギー全体において占めております役割り等も異なりますので、一概に同じような状態にということは言えないかもわかりませんが、いずれにいたしましても、新しい技術開発をすることによりまして、深部開発が可能になり、同時にまた保安対策上もりっぱな成果が上げられるということは、あくまで必要だと思いますので、今回の事故を契機に、この研究開発という点につきましては、新しい角度から十分、検討してまいりたいと考えております。
  68. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これで終わりますが、大臣、この問題は開発の機構というものをつくることのために、われわれとしては今後もあくまでも強く要求をしていきます。そういうことで、保安に対する基礎的なものができて、安心した状態にならなければ、実際問題、安心して坑内に入れませんよ。そういう点は、われわれ今後ともやりますから、いまから申し上げておきます。  それから最後に、これは石炭部長の方に伺っておきますが、会社の方では、この行方不明者収容、その後は、あくまでも閉山させない、先ほどあなたもおっしゃったし、大臣もそう言われたが、そういう点では、当面の段階としても、いつ再開をするかというめどなんかも、会社の方で一つの方針があると思う。こういうめどなどについても御意見を伺っておきたい。  また、その場合に経費というのはどれくらいかかるか。さっき自民党の田中委員に対しても多少お答えがあったように思うのだが、そういう場合、やはり会社側思い切ってその金を出して再開する、それはもちろんでありますけれども、急場どうしてもやれないという場合には、政府の方が何らかの協力をしてやる、特別の融資とか、こういう点を含めて、再開のために全力を挙げるというような措置が必要になってくると思うのです。これは、まだ幌内災害の最中に、ここまで伺うのもどうかと思うのだけれども、やはり一定の見通しを持っておきませんと、閉山になるかもしらぬなどということを言っておるときに、そういう見通しがないんだから困ったものだなどと言っていたらいかぬので、これはもう復旧のために、現在の状態を何とか打開するためにも、一つの展望を与えてあげる必要があると思う。そういう点でも、この際、部長からも意見を出しておいていただきたいと思います。私、もう時間がこれだけでございますので、この点だけで終わりますが、ひとつ率直にそこら辺の意見を出してください。不十分だったら、また質問しなければならないから、ひとつ十分、納得のいくような答弁をしていただきたいと思います。
  69. 高木俊介

    高木政府委員 昨日でございますけれども北炭の社長をお呼びいたしまして、いろいろ話をお聞きし、また今後の対策について話したわけでございますけれども、昨日時点では、六片までの水封によって恐らく五片、四片の火が消えるであろうということを前提にしての話でございましたので、いま立地公害局の方からの御説明等によりますと、あるいはそれ以上の悪化要因があろうと思いますけれども、昨日時点のところで御説明いたしますと、社長のお話では、大ざっぱに計算すれば恐らく六十億くらいの損失になるのではなかろうか。その間、六片までで火が消えたとした場合の再開その他からしますと、恐らく三月末までは炭が出ないような状態じゃなかろうか。しかし、労働者方々は、仮に火が消えますと、あと、仕繰りその他でほとんどお休みするようなこともなくして作業をやってもらわなければならぬのだ。ただし、炭が出ませんので、ここへ資金繰りという点が出てくるわけでございます。この点につきまして、十二月、一月については、自分のところで、災害が起きたと同時に銀行関係に回り、金の方もある程度のめどがついておるということでございます。その残額については、よろしくお願いするという話もあったわけでございまして、私の方も早速、担当あるいは事業団等とも話をいたしまして、できるだけ、そういう方面に御協力するということで、予算も枠がございますものですから、めちゃくちゃ出すわけにはいきませんけれども、本年度の予算の枠内あるいは、もし最悪の場合になったときの予算としましては、来年度の予算のいろいろな手当てということで、本幌内炭鉱が閉山にならないような関係で、資金的には何かめんどう見てあげなくちゃならぬというふうに、前向きに取り組んでおる次第でございます。
  70. 岡田春夫

    岡田(春)委員 終わります。
  71. 田代文久

  72. 多田光雄

    多田委員 大臣にお伺いしますが、三木内閣ができてから、きのうで、ちょうど満一年になるわけですが、この間、炭鉱労働者死亡事故が何件起きて、何名の労働者が死んだか。それからもう一つは、エネルギー革命という名で、炭鉱がスクラップ・アンド・ビルドでつぶれてきて以来の、この十五年の間に、一体、日本で何名の炭鉱労働者が死んだか。これをひとつ大臣お答え願いたいと思います。
  73. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 過去十年の間に、災害による死亡者の数は大体、十分の一くらいに減少をいたしておりまして、最近は、少ないときは五十名、多いときで六十名前後で、ここ一、二年は推移をしておりますが、なお詳細な数字につきましては政府委員から答弁をさせます。
  74. 宮本四郎

    宮本政府委員 昭和四十九年十二月一日から五十年の十一月三十日まで、この一年をとりまして三十五件、六十九名の死亡のほか行方不明が十三名でございます。
  75. 多田光雄

    多田委員 わずか一年です。河本通産大臣だけの責任というわけではありませんが、河本通産大臣の任期中三十五件、そして行方不明、しかもこれは絶望と見られておるわけですが、あえて、この方々を含めれば八十二名亡くなっているのです。それから、これはいま政府当局から報告がありませんでしたが、この十五年間に炭鉱労働者は何と五千百三十名ですよ。しかも、これは子供じゃない。全部、家庭を持ち一丁前の人間が五千百三十名、死んでおるのです。この死亡の出る度合いを見ますと、全産業平均の約二十四倍です。もちろん、これは世界一でしょう。こういう人命無視というか、あるいは人命軽視というのが二十世紀の今日、公然とやられておるのです。  そこで私は大臣に、もう一度お伺いしたいことは、幌内炭鉱の今回の事故について、エネルギー資源の問題を扱う通産省として、あるいはまた炭鉱保安監督を担当する通産省として、どういうふうにお考えになっておるのか、どういう対策をとろうとしておるのか、それを伺いたいと思うのです。事故のたびに通産大臣がここへ来て、遺憾であると言うのを私は何回、聞いたかわからないのです。それを伺いたいと思います。
  76. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まず最初に、エネルギー政策全体の中で、石炭をどう考えておるかということでありますが、石油ショックが起こりまして、ちょうど二年になりますが、いま総合的なエネルギー政策の最終の取りまとめをしておりまして、大体の方向しか申せないのを残念に思いますが、その中で石炭見直していこう、こういう考え方でございます。  見直すという意味は、国内におきましても、おおむね二千万トン程度の出炭を維持したい。それから同時に外国からも、現在は原料炭を中心の輸入約七千万トンが続いておりまして、一般炭の方は輸入をいたしておりませんが、今後は原料炭もふえるでしょうが、一般炭輸入も千五百万トンくらい考慮いたしまして、十年後にはおおむね一億五百万トン程度の輸入考えてみよう。そういうことで、先般も一般炭輸入開発のために、世界の重立った産炭地域四ヵ所に調査団を派遣をいたしたわけでございます。石炭埋蔵量は御案内のように十一兆トンと、世界全体で推定をされておりまして、いわば世界各国に存在しておって無尽蔵と言ってもいいのではないか、こういう事態でございます。でありますから、石炭を見直すといいましても、世界的な視野から石炭政策考えていけばいいのではないか、私はこういうふうに思うのです。  ですからこういう最近の事故の頻発等を考慮いたしますと、生産よりも保安を第一に考えていく、二千万トンという出炭にこだわる必要はない、こういう角度から国内における石炭政策というものを考えていきたい、こう思います。と申しますのは、つい先般、九月九日に、余り事故が頻発をいたしますので、全国の事業所の保安体制について、細かく再検討を指示したばかりでございまして、その直後に再びこういう大事故が起こった。こういうことを考慮いたしますと、この際、生産よりも保安第一ということを徹底的に考えてみる必要があるのじゃないか、こういう角度から国内の石炭政策をもう一回、再検討する必要があろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  77. 多田光雄

    多田委員 いまの大臣の御発言、私、大変重大な内容を持っていると思うのですよ。それは前回の委員会で私がお伺いしたときに、石炭鉱業審議会答申では二千万トン以上ということで、それに基づいて近く閣議決定をやる予定であるというふうに言っておりましたし、石炭部長も再三、当委員会で二千万トン以上は可能であるというようなことも言っておられ、さっきの与党の田中さんの質問に対しても、そういう二千万トン以上の見通しを述べておられるわけです。ところが、保安優先で二千万トンにこだわらないという御発言、それから、いま一つ海外一般炭も千五百万トン、こういうことになっていきますと一体、国内の石炭はどうなるのだ。まさに私ども委員会が昨年、与野党一致して決めたのは、国内炭を重視していくということだったのです。そこにいま一番、問題があるし、当委員会が再三、論議したことはそこなんです。しかも五十年度の二千万トン以上自体が、この間の委員会で政府側から千九百万トン台になるということを述べておられたし、これも幌内事故は含んでないのです。つまり先ほどからの話によりますと、十二月から来年の三月まで恐らく出炭がむずかしいだろうという話もございました。そうだとすれば、これは数十万トンの減産になるわけです。そうすると、山元の労働者がささやいている、千八百万トンだって一体どうなるのだろうか、この問題なんです。これはまた私、改めて後刻お伺いしたいと思いますが、きょうは保安の問題なんで、そこに焦点を合わせてやっていきたいと思うのですが、そこに、この保安に本当に政府が取り組んでいけない政治姿勢の根本があるというように思うのです。  そこでこれは政府当局に伺いますが、保安事故による減産はどの程度ですか。少なくとも本年七月以降から主なものだけ、数量だけでよろしいですから言ってください。
  78. 高木俊介

    高木政府委員 災害関係による現在までの減、これは十二月十日現在でございますけれども、砂川、幌内、太平洋、万字それに夕張新鉱、高島、これを入れまして五十三万三千トンというのが実績で出ております。年間にこれを直しますと、今後、幌内あるいは万字の炭がどうなるかというようなこともございますので、九十万トン前後の災害減少というふうになるのではなかろうかというふうに踏んでおります。
  79. 多田光雄

    多田委員 そういう数字、それだけでも政府の五十年度の目標を割ってしまう。これは北炭の文章によったのですが、北炭五山だけとってみても、五十年度上期の出炭目標が百六十七万トン、実績は百四十七万トン、減産分の二十一万トンのうち約半分の九万五千トンが災害による減産である、こう言っているのです。つまり貴重な民族資源である日本石炭、しかもそれが二千万トン以上、私どもこの数字には賛成しておりませんが、それすらも確保できない主要な原因の一つが、この保安問題だということは、政府の御答弁でもはっきりしているわけです。ですから今日は、炭鉱労働者の命を守っていく、このことは石炭の資源を守っていくということと全くうらはらで、これは大臣も再三、述べておられますように、石炭政策保安政策だと言っておられることは、全くそのとおりなんです。ところが実際は、その命の問題で二千万トンを割ろうとしている。しかもこれは大正二年以来の落ち込みなんです。六十年前の出炭量にバックしているのです。  そこで私は大臣にお伺いしたいのですが、大臣の在任中に、こういう保安問題について、どういう抜本的な御措置をとるおつもりなのか、再度お伺いしたいと思います。
  80. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、新石炭政策の一番の骨子は二千万トン以上の出炭を継続していく、これが一番の骨子になっております。しかし私は、それはあくまで目標であって、保安上の危険を冒してまで、それを強行すべきではない。若干でも保安上、問題があるということであれば、万全の対策を期して、二千万トン以上という一応の出炭目標を掲げておりますけれども、それが仮に若干、下回るというようなことがあっても、あくまで保安第一主義に考えて、生産保安の次に考えていく。二千万トン以上という出炭を焦る余り、保安が無視される、あるいは軽視される、こういうことがあっては絶対いかぬわけでありますから、あくまで、それは努力目標ということでございまして、保安第一ということで、出炭はやはり臨機応変に考えていくべきであろう、こう考えております。
  81. 多田光雄

    多田委員 それでは、もう一度お伺いしますが、これは前回もお伺いしていることですが、どうも政府の最近の保安法規の抜本的改正というのは、石炭規則の改正に大分、力をお入れになっているようですけれども鉱山保安法、私の言っているのはメタルマインのことを言っているのじゃないのですよ。鉱山保安法の抜本的な改正をおやりになるのかどうなのか、それをもう一度、大臣に私はお伺いしたいと思うのです。
  82. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 法令の改正について、いま検討しておるところでございます。
  83. 多田光雄

    多田委員 鉱山保安法の改正をおやりになるのか、どうなのかということをお伺いしているのです。なぜならば、これは前回、六月に、はっきりとそういう御答弁をなさっているわけでありますから、私どもはそのつもりでいて、それに対する代案も考えていないわけじゃありません。おやりになるのかどうなのか、確認をいただきたいのです。
  84. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私の申し上げておりますのは、法令全体の改正について検討しておる、こういうことでございます。
  85. 多田光雄

    多田委員 それでは伺いますが、中央鉱山保安協議会でいま検討しているのは、鉱山保安法の改正を含めてやっているのですか、それとも石則の改正をやっているのですか、どっちですか。
  86. 宮本四郎

    宮本政府委員 事実に関する点だけ申し上げさせていただきます。  十一月六日、中央鉱山保安協議会石炭亜炭部会というのが開会されました。その時点におきまして、これは先生のお言葉によれば石則ということになりますけれども深部移行に伴う技術上の諸般の問題点というのを、素案といたしまして中間的に報告いたしております。  なお、本協議会は今後の議題といたしまして、先般ヨーロッパに派遣をいたしました石炭鉱業保安調査団の調査結果、こういったものも議題といたしまして、こういう素材を提供しながら、法規全般にわたりまして御討議を願う、こういうつもりでおる次第でございます。
  87. 多田光雄

    多田委員 だから、そのことは保安法の改正に手をつけるのかどうなのかということを聞いているのです。それをはっきり言ってください。もし、そうでないならば、この国会で大臣も含めて、私どもに対して、大変これはインチキという言葉を使ったならば、あれでしょうけれども、心にもないことを述べたということになるのです。保安法規の法は法律です。規則です。これの抜本的な改正をお約束されたのです。おやりになるのかどうなのか、大臣、どうでしょう。
  88. 宮本四郎

    宮本政府委員 先ほど申しましたような諸般の問題点を討議をいたしておりますのは、そこから法律上いかなる点を改正する必要があるかないか、規則上いかなる点を改正する必要があるかないか、その御討議を願っておるわけでございまして、その協議の結果によって、必要な措置をすることとなると思います。
  89. 多田光雄

    多田委員 そうすると、検討いかんによっては、法律の改正をやらないということもあるということですね、局長
  90. 宮本四郎

    宮本政府委員 御審議の結果によって措置をすることとなると思います。
  91. 多田光雄

    多田委員 これは私は、大臣含めて国会に対する食言だと思う。あれほど保安法規の抜本的な改正をやるというようにおっしゃっていて、だれでもが保安法の改正は含むものと考えている。ところが、先ほどの与党質問では、保安法改正は要らないような水をかけている。何だか、気脈を合わせて政府事務当局と一緒に、石則の改正だけでお茶を濁そうとしているんじゃないかという疑問さえ、私はわいてくる。先ほど言ったように、この十五年間に五千名以上の労働者が死んで、一年間に八十名以上の労働者が死んだ、というよりも殺されている。しかも政府が再三、言うように保安の最大の責任者は会社だと言っている。しかも大臣は、二千万トン以上ということを、生産第一でなくて保安第一でやっていくとまで言って、保安の問題を重視しておられる言葉の裏に、保安法の改正はやるかやらないかわからないような御答弁なんです。これ、どういうのでしょうか。私ども保安法の改正を前提にして作業を進めているというふうに考えている。もちろん法規も必要でしょう。これは重大なことですよ。だから、口で言っていることと腹で考えていることは違うのじゃないかと、炭鉱労働者だけじゃないですよ、だれだって考えるのはあたりまえのことなんです。保安法の改正は全く必要ないのでしょうか、それを伺います。
  92. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまの中央協議会で、法令全体を含めまして保安のあり方はいかにあるべきか、こういうことについて関係者によって検討していただいておるというのが現状でございます。
  93. 多田光雄

    多田委員 審議会だとか協議会だとか、一大体そこで出てくるのは、いつも、そのまま閣議決定だとか政府の最終決定になってしまうのですよ。私の聞いているのは、保安協議会がどうということでなくて、政府としてどういう腹でもって保安協議会に臨んでいるのか、それを伺っているのです。保安法の改正を含めて検討してくれというふうに言っているのかどうなのか、それを伺っているのです。御答弁願います。
  94. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 保安体制をこの際、強化しなければならぬというのは、私どもの基本的な考え方でございます。そういう考え方を受けまして、法律及び政令、つまり法規全体のあり方等について検討をしていただいておる、こういうことでございます。
  95. 多田光雄

    多田委員 この問題で押し問答やっていても、もう時間がなくなってしまったのです。私は、明らかに前回の御答弁よりは、はるかに後退しているというふうに考えざるを得ないのです。この問題は、さらに改めて私は今国会中に大臣にお伺いしたい、こう思っていますし、ぜひ協議会には法を含めて、法の改正という立場で一層、臨んでいただきたい、こう思うのです。  そこで私は、何で保安法の改正が必要なのか、つまり石則の改正だけではなくて、法自体の改正が必要なのかということを、時間もありませんが、簡単に申し上げたいと思うのですが、今度の事故はどういう特徴を持っているかということです。  外国から安い石油が入ってくる、エネルギー革命だ、貴重な民族資源をスクラップ・アンド・ビルドしていく。さあ今度はオイルショックだ、石炭が大事だ、掘れない、外炭だ、大臣自身が中国まで石油をお買いに行く、外炭の値段は上がってくる。それで今度は第六次の石炭政策だ、二千万トン以上だ。ところが事故が続出する。そこで政府も、先ほどおっしゃったように企業に対して指示を与える、企業もそれを受けて企業相互のクロスチェックを始めてきた、そうして国会では、保安法規の抜本的な改正をやるとなってきた。つまり、世論と国会の中でそういう問題が起きて、保安が社会問題になってきた。そういうときに高島炭鉱の重大事故、そうして今度の、数年来の未曽有の大事故が起きたのです。  ところが一体、石炭協会のやったチェックというのはどういうチェックなんだ。私ちょっとお伺いしますが、このチェックは九月二十三日から十月十四日の間に実施しているのです。たとえば今度、事故が起きた幌内炭鉱、各企業の鉱長やその他が入っているわけです。点検日程はいつからいつまでで、現場に何時間入ったか、これをちょっと教えてください。
  96. 宮本四郎

    宮本政府委員 クロスチェックの結果、住友石炭鉱業の成瀬専務が班長となりまして、北炭のこの事故を起こしました幌内炭鉱に入っております。  巡回の日程は十月六日、七日、八日、三日間でございますが、時間数については、私ども、いまデータを持っておりません。
  97. 多田光雄

    多田委員 現場に入ったのは二時間なんだ。これは現場で聞いてきたのです。あとは机上の仕事です。それから北炭新鉱の場合は、これも入ったのは午前九時から十一時までの二時間。高島炭鉱なんか、まさにナンセンスだ、その報告はこういう報告なんです。「ガス突出、自然発火等の重大災害の防止対策は、従前の技術を生かし、一貫した対策により、保安確保に努めている。」手放しでほめておいて、その直後に二名の死者、CO中毒を含めた二十余名の重軽傷者を出す災害を起こしているのです。この会社のクロスチェックの特徴というのは、ほとんど現場に入っていないということです。しかも驚いたことに、幌内へ行って聞いてみたら、保安監督官が来るよりも銀座通りにしたという。だから、来るのは通産省か銀行から来るのではないかと炭鉱労働者が言ったくらいに、きれいにしたという。大臣、その保安の一番責任を持つ会社が依然としてこれなんです。お互いにかばい合っている。  しかも今度の幌内労働者から、かってないくらい私は投書をもらっている。その一通を、本当に政府炭鉱企業家を糾弾するつもりで私、読んでみたいと思う。これは局長にも関係あることですよ。  前文略しますが、局長が入ったということが新聞に出た。新聞にはいろいろ書いてある。ところがその現場にいた炭鉱労働者がこう言ってきている。  私は今回ガス爆発災害のあった幌内炭鉱の一坑内労働者です。二十七日の災害後、救命器隊の後方の作業に、一日でも早く同僚が救出される事を祈りながら、従事していますが、二十九日のこれは新聞の名前は書いてありますが、私は略します。  ある新聞を見て余りにもそらぞらしい内容に怒りを感じ是非国会で、炭鉱保安問題として取りあげ、二度とこのような災害のおこらないような、行政指導をしてもらいたいと思います。   私は二十八日午前中、作業のために五片に入  坑しておりましたが、途中で偉い人がこの「偉い人」というのは、宮本局長、あなたのこと、一行を言うのです。  入坑するので一時待機するように上司に云はれ待機しました。   偉い人はケージで五片にさがり、五片地並の中央ベルト添斜坑四百馬力の捲室を見、更に六片にさがる人道三層風道の入口を見ただけで出坑したのです。当時、四片では消火作業爆発した七片でも火災のおきていた時です。 云々と書いて、追伸としてこう書いてある。  尚当日、偉い人が入坑するという事で、次のような事実があります。  前日、二十七日迄救命器の前進基地は六片でした。だが、状況が悪いことから、五片に基地が移されました。偉い人は前進基地で救命器隊の為の予備のサンソが、ダンボールの口をあけて、一本だけ見えたのを確認したと思います。更にその下に箱が四〜五つあったのですが、その箱の中には一本もサンソのボンベは入っていない空箱でした。表面の一本だけが早急に会社の手によりはこばれたものです。仲間が命をかけて救助の活動をしている時にこのような事がやられているのです。  これはたった一人の投書なんですが、参加する人にも聞いてみました。箱が四つだったか五つだったかわからないという人もいましたけれども、こういう政府の監督官をごまかすようなことがやられている。そしてあなた方はそれを見られない。これが放置されていて、仮に二千万トンを割る出炭なんて言ってみたって、大事故が起きないという保障はさらさらないのです。  もう時間が来てしまいました。(宮本政府委員委員長」と呼ぶ)ちょっと待ってください。この文章には若干あなた方が見て見当違いもあるだろうと思うのですけれども、新聞まで張って送ってきているのです。  そこで大臣、私この後にもっと保安監督官の問題その他お伺いしたいというふうに思うのですが、時間が来ましたので、私の質問を終わりたいと思いますけれども、これでも、なおかつ会社の責任をチェックできるのか。監督官のいまの体制でいいのか。本当に労働者にその保安をチェックできる力を与えなくて、どうして一体、保安が守られていくのか。これは文字どおりそういう状況があるのですよ。私は企業悪ということを言っているのじゃないのです。これでも保安法規の抜本的改正をやらないとすれば、そして規則だけでいじっていて、どうして問題を根本的に解決できるのでしょうか。人の子の親であり、子であるならば、だれだって命が大事なんです。しかし労働者は食わなければならないから、ときには無理もするのです。それをチェックしていくのが保安監督官であり、法律であり、規則なんでしょう。企業は生産第一じゃなくて保安が第一だと言ってみたって、実際の作業や経理の内容あるいは経営というものは、どうしても生産第一に走るのですよ。そこを政府がチェックするのがあたりまえなんです。これを私は本当に告発のつもりで言っているのです。時間が来ましたから、大臣の御答弁を願いたいと思います。
  98. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いろいろ意見をお述べになりましたが、お述べになりましたことを今後の保安行政の参考といたしまして、さらに一層、保安体制の強化を図っていきたいと思います。
  99. 多田光雄

    多田委員 終わります。
  100. 田代文久

  101. 松尾信人

    松尾委員 幌内炭鉱災害現地調査の結果は、その状態と、会社の方または組合等の方々との協議内容も含めまして、報告書が提出されてありますから、私は、時間の関係もありますので、あえて、その内容には触れません。しかし、この十一月一日の高島炭鉱災害また、それを上回る非常に重大なる幌内炭鉱災害、このような大きな事故反省材料としまして、今後の対策につきまして若干の質問をしたいと思うのであります。  いま石炭企業が抱えておる問題、これはいま、ここでも取り上げておる保安の問題が基本でありましょう。それから新鉱開発の問題炭価の問題、そうして閉山の問題、いろいろの問題を抱えておるわけであります。その中でも基本的な問題は保安の点でございましょう。そしてまた、そこには、どうしても日本石炭というものが宿命的に背負っております。深いところを掘らないとできない、こういう深部移行の問題から、特に保安事故が頻発しておりまするし、また、そこに大きな問題を抱えておるわけでありますので、どうとかしてこれを絶滅するという方向に向かって、はっきりとした結論を出しませんと、常に災害が起こっては、このように石持を開いて、また調査団が行ったりして、そして大臣も、たびたび遺憾であるということを繰り返しておる。それがまた次の災害で同じく繰り返されるということになりかねないのであります。  ですから、まず保安の問題でありますけれども、何としても十分なる技術、そして十分なる資材がそろわなくてはなりませんが、指摘されておりますとおりに、企業といたしましては、やりたいけれども十分なるお金がない。ガス抜き等の技術は非常に進んでおると言っておりますけれども、現実には、それが完全に除去されるだけの資材、設備というものが現実には投入されていない。そこでまた不測の災害ではないのでありまして、当然として、そこにまた大きな事故が起こる、これをいま繰り返しておるわけであります。法の整備も、もちろん大切でありますが、法が完全に実施されて、そして技術がりっぱに進んで、そこに事故を防ぐだけの設備、資材というものがそろわなければ、いつまでたっても事故の絶滅はできない、保安問題を常に伴う、こういうことであります。そして閉山の問題が叫ばれる。災害復旧のためにはお金が要る。そのお金も会社自身で調達ができるかどうか、また政府で大きくお世話をしなくてはできない。日本石炭予算だけでも、いま一千億、そういうものが毎年出されておりますけれども、そういうお金を使っておりながらも事故は続々と起こる、こういうことを考えてみますと、大臣、もういまの石炭企業の限界というものを、私はしみじみと感ずるものであります。保安の問題わかっておるけれども、しかし、何としても会社は赤字では暮らせません。ですから、いやでもおうでも、やはり生産というものに走りまするし、炭鉱に働く人々もまた、それについていかなければできないというような実態であります。そこに私は、いまの私企業による企業の大きな限界があると思う。  そして、おまけに閉山を申し出る。そのときに、私企業でありますから、私やめますと言われた場合に、それはまだ継続してくれと言えない。いろいろ話し合いというものはありましょうけれども、最後の腹は、向こうがやめると言ったら、どうしようもないというようないまの経済の仕組みであります。結局、私企業というものが限界に来ておる、そのためにいろいろの問題が起こりまして、日本石炭政策というものがもう実現できない。エネルギー資源政策というものも、そこに突き当たって壊れていく。そしてまた、いつの間にやら、すべてのものが外国エネルギー資源に頼っていって、そして石油ショックのような、また何かのショックを受けて、大きくあわててまた反省し直す、これを繰り返すわけですよ。  おまけに炭価の問題も企業自体で決定する力がない。通産省の指導、業界との話し合いをしてもらって、これくらいでどうかというような指導価格によって、どうやらこうやら息をついておる。そして新しい炭価が決まりましても、赤字の会社が現実に残っておる。災害では赤字、また経常的にも赤字、そうすると百五十億円もの赤字を抱えた会社なんかは、災害が起こりますと閉山を考えますよ。それは現実にあります。また幌内の方も、私はそういうところに話が飛んでいくのじゃないかという心配もあるわけです。  ですから一番、大事な保安の問題、炭価も決定できないような現状の、力の弱いというか、力のない企業の本質、いつ閉山するかわからないような実態、新鉱開発も口で言うだけで実現できない。そういうものが新しい石炭政策の前に大きく覆いかぶさっておるわけでありまして、通産大臣が幾ら決意を並べても、われわれはそういう問題を基本的に解決しない以上は、新しい石炭政策は、もう砂上の楼閣である。災害も次々に起こる。それでわれわれが、むなしくこのような委員会で叫ぶ。そしてたくさんの人々が自分のかけがえのない生命を落とす。この繰り返しを二度といたしたくありません。私一人しゃべるわけでありますけれども、よくよく、そのような日本石炭界の実情を見ると、大事な大事なエネルギー資源の問題、その底を固めていく日本石炭の問題、そういう問題は、もう私企業に任せておく段階でありませんし、任せておって彼らがやっていく力がない。とするならば、石油開発公団のごとく、思い切って公団によって赤字会社を吸収する、新鉱開発もやる、それから輸入炭の方も一括してやらせる、海外開発もやるというような基本的な発想がなされなければ、幾ら論じても、もう石炭問題を解決できる段階じゃない。基本的に変えなければ、もうだめなんだ。これだけ、まだ政府が手厚く予算を使っておって、そしてこのような問題を抱えておいて、少しも明るい見通しというものが石炭界にはございません。そこまでの決心を早急に固めなければいけない段階である。また大臣は、そのような発想をしないでいる。そして災害の絶滅、保安第一ということを一生懸命言いながらも、いつ起こるかわからない災害に常に脅かされなければいけないと私は思うのでありますけれども、そろそろ決心の固めごろと思うのでありますが、考えはいかがですか。
  102. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いろいろな御意見を同時に拝聴したわけでありますが、その一つは、災害をなくするということのために、いまの企業経営形態を考え直したらどうか、こういうことであったと思います。それからもう一つは、この石炭政策というものは世界的な規模考えていくべきである、こういう御趣旨であったと思います。  その第一の問題でございますけれども、私は企業の経営形態を変えれば、一〇〇%事故がなくなるかというと、その保障はないと思うのです。それよりも先ほど来、繰り返し申し上げておりますように、去る九月九日に全国の事業所の保安体制につきまして再点検を命じたわけでございますが、その直後にこの事故が起こったわけでございます。しからば、この事故は突然、何の前ぶれもなしに起こったかといいますと、やはり若干の前ぶれがあって起こっておるわけですね。そういうことを考えますと、やはり石炭政策というものは根本的に保安第一である、生産はその次である、こういう考え方に一〇〇%切りかえないと、これはだれが経営しても事故というものは起こってくる、こう思います。そこで先ほど来、私が質疑応答を通じて申し上げたことは、二千万トン以上という目標に余りこだわると、事故につながる危険性もあるので、新しい石炭政策では二千万トンという目標は示してあるけれども、それに対しては努力しなければいかぬ、しかし、その前に絶対保安上、安全である、こういう十分な自信がない限り、生産第一ということを考えて危険は冒してはいけない、こういうことについて共通の認識を持つべきである、私はこういうことをいま強く感じまして、その点について先般も強く指示をしたわけでございます。  それから第二の問題でございますが、政府の新しい総合エネルギー計画によりますと、昭和六十一年度における日本の総エネルギーは、石油に換算をいたしまして約七億八千万トンでございます。そのうち石油はおよそ四億九千万トンと想定いたしております。残りの二億九千万トンの石油換算のエネルギーというのは、原子力であるとかLNGであるとか、あるいは地熱発電あるいは石炭、水力発電、こういう石油以外のすべてのものを包含して石油換算二億九千万トンということになっておるわけでございます。その中で石炭の占めております地位、特に国内炭の占めております地位というのは、先ほど申し上げましたように約二千万トン、石油に換算いたしますと一千万トンであります。七億八千万トンのうち、石油に換算して一千万トンの役割りしか国内炭が果たさない、こういうことでありますので、若干、仮に二千万トンという枠が切れ込みましても、そのかわりは可能である、そういうことを考えますと、今後の石炭政策というものは世界的な視野から進めるべきであるということから、先般もアメリカそれから豪州、インド及びアフリカ、この四地域に一般炭開発地点を求めて調査団を派遣したわけでございます。石炭政策というものは、やはり世界的な視野に立って進めていくべきである、こういう考え方でございます。
  103. 松尾信人

    松尾委員 私は世界的な視野の分は何も申し上げていないのであります。また、七億八千万等のお話がありますけれども日本の国というもののあり方は、ほどほどになければ、そのようなエネルギー資源日本が持ってきて使うということについては大きな疑義がございます。  また話は戻りますけれども会社側が一生懸命になって技術開発する、また資材をそろえる、災害が起こらないように万全の体制をするということは、大きな金が要るわけであります。そして炭価が上がるわけです。上がった炭価は、彼らが思ったとおりの値段で売ることはできないのですよ。そうしますと通産省がまん中におりまして、需要者の方といろいろ話をして、やれ油が安いんだ、やれこうだ、ああだという中で炭価が決定されていきますから、どうしても思い切った保安対策の費用が現実には出せないのです。ですから、保安上、危ないなと思いながらも掘らざるを得ない。そこで事故を起こしておるのですから、会社にやらせると言いましても、会社には限界がある。これは利益追求の企業体でありますから、どうしようもない。それが保安問題、災害に一直線につながっておるわけです。それを切る以外に、この事故を防ぐ道はなかろう、こう私は言っておるわけであります。炭価は幾ら上がっても構わぬ、保安第一だからしっかりやれ、こういう指示をしてもらえばいいわけですよ。それはできないでしょう。だから、企業に任しておいたら何もできないというのが、いまの石炭界の実情なんです。  そうすると、これはすべて国が肩がわりしていかないといけない。わずか二千万トン、これは石油に換算して一千万トン、非常に比重は低いというお話でありますけれども、全部、エネルギー資源海外から安易に受けておいて、そうして大きなショックを受けたんでしょう。だから日本石炭を見直そうということになったんでしょう。それを大臣は、のど元過ぎれば熱さを忘れて、また安易な方向、高度経済成長時代のようなかっこうに戻ろうというような考えがあるような感じがする。これはおかしいですよ。三ヵ月、油がとまったらどうなりますか。海外炭に頼っておったらどうなりますか。それが危ないから、日本炭を土台にして、そうして日本のこのエネルギー資源考え直そうじゃないか、これが新しい石炭政策の発想の基本なんです。ウエートが少ないから、それから何だかんだ、このようなお話でありますけれども、そのような途方もないエネルギー資源を使うというような発想もやめて、そうして日本は、ほどほどの低成長時代の、そういう日本に合った、公害のない、人の生命を大事にするような政策に入っていきませんと、大きな災害、また大きなショックというものが来ると私は思うのですよ。そのときあなたはしまったと思いますよ。のど元過ぎたら完全に通産大臣はお忘れになっておる。だから、この石炭問題に対する取り組み方が本当に真剣じゃないと感ずるわけですよ。  話は保安に戻りましょう。会社保安を本当にやらせるならば、まだまだうんと技術開発をして、それを裏づけるだけの資材をそろえて、そして働く人々が納得するような条件を整えてやっていく以外にない。それは炭価がどのくらい上がるかわからぬ。だから日本石炭は要らぬのか要るのか、こういう問題ですよ。あなたの発想では、どうも日本石炭は要らなさそうな感じがするわけです。それでは私はいけないと思うのですよ。何のために新しい石炭政策をやるのか、日本石炭を土台にしていこう、それで、そこに保安の問題が出て、絶滅する方向で進もう、企業でそれはできないと私は言っている。あなたはできるとおっしゃるなら、企業にやらしてくださいよ。そして炭価を保証してください。いかがですか。
  104. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は決して日本石炭を軽視する、そういうことを言っておるのではないのです。日本石炭ですね。一応、目標が二千万トン以上ということになっておりますけれども、もうすでに、ことしなどは災害のために百万トン減っておるわけですね。でありますから、二千万トンというのはあくまで目標であって、若干そこに増減があっても、保安対策上、無理をしてまでやってはいかぬ。やはり保安第一だということに考えて、年によっては二千万トン若干、切れ込むような年があるかもわからぬ。また年によれば、二千万トンを超えるということが目標でありますから、大部分はそういう年が私は多いと思いますが、やはり生産を二千万トン以上どんな無理してでも確保しようということになると、そこは無理が重なりますから、やはり保安第一だ、多少でも保安上問題が残っておるということであれば、二千万トンにこだわってはいかぬ、こういうことを言っておるわけです。それでそれと同時に現在、もうすでに原料炭を中心に七千万トンからの石炭輸入しておるわけでございまして、今後さらに原料炭が四、五割ふえるでしょうし、そこへ一般炭輸入を千五百トン考えておるわけでございまして、そのためには世界的な視野で石炭政策というものを進めていかなければならぬ、こういうことを言っておるわけです。  それから、ごく簡単に、少し誤解がございますので一言だけつけ加えさせていただきますと、実は油ショックが起こりますまでの日本の十年後の石油輸入量は七、八億トンにもなっておったのです。全体のエネルギーは十億トンを相当超えておったのですね。それを新しい事態に即応いたしまして、成長率も六%前後というふうに非常に低く修正をいたしまして、その結果、日本の今後のエネルギーはどれくらいかということを想定したのが、先般の総合エネルギー調査会の中間答申でございまして、その一部分を私は説明をしたわけでございまして、六%前後の成長ということは、これまでの成長率の半分以下に低くなっております。やはり、この程度の成長をしませんと、毎年七十万前後の新しく職を求める人たちが出てきますので、雇用問題が解決できない、こういう観点から、六%前後の成長というものは雇用対策上からも絶対必要である、こういう角度から、いまの計画をつくったわけでございまして、おっしゃるように、もう石油ショックから二年たったから、何もかも忘れて高度成長に返ったんだ、そういうことでは決してございませんので、その点ひとつ御理解をしていただきたいと思います。
  105. 松尾信人

    松尾委員 いま、お答えが漏れましたのは、事故をなくするためには金が要るという問題ですよ。企業は出せないということです。そうすると、いつまでも保安問題は解決しないということです。災害は絶えない。どうしても保安第一とおっしゃるならば、企業にそれだけの力をつけてやるか。力をつけてやるとすれば、どのくらいのお金を出せばいいか、見当がつかないようになるでしょう。災害復旧も満足にできない。そして閉山という投げ出すような態度に出る。その防ぎようがない。と言えば、暗い、暗い石炭界というものがいつまでもつながるわけでありますから、発想の転換をして、そして企業の限界というものをよくよく見定められて、あえて統制経済というのではありません。石油の方にも公団ができまして、海外開発から、いろいろの問題まで、備蓄までやるようになりました。あわせてやっている。石炭の方こそが、いま公団をつくって、この緊急な時期を切り抜けていくためには、これ以外の道がない、私はこう確信しておるから申し上げておるわけであります。企業の、その問題について一言お答えいただいて、時間が参りましたから、基本的な問題は今後また、いろいろ繰り返しながら質疑を続行することといたしまして、企業にそのような力がないと私は言っています、あなたは、ではそれをどうするかということを答えてください。
  106. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 保安体制を強化するためには、政府の方でも、できるだけ補助金等の形で資金的に援助をしていきたいと考えております。  それからなお、保安体制強化のための新しい技術開発等につきましても、これまで以上に力を入れていきたい、こう考えております。
  107. 田代文久

  108. 宮本四郎

    宮本政府委員 先ほどの岡田先生の御質問に対してお答え申し上げます。  現地に照会をいたしました。その結果、ガス自動警報器は携帯用六台それから定置式が一台、設置されておりました。それから負傷された方七人にそれぞれ聞きました。この七人は作動したところを聞いたという供述の方はおられません。聞いておられません。ただし、七人の位置がかたまっておられたわけでございます。したがいまして、この七台が全部鳴らなかったかどうか、これは非常に疑問のあるところでございます。したがいまして、たとえば死亡された方のところに配置されておったものもございますし、あるいは、そのほか爆発で故障したのかもしれませんし、その辺の事情は現在、調査中でございますので、調査の結果、終わり次第、資料として提出させていただきます。
  109. 田代文久

  110. 多田光雄

    多田委員 先ほど私の質問の中で宮本立地公害局長と言ったのは、あれは橋本札幌鉱山保安監督局長のことでございまして、橋と宮、局長局長ということで若干、混乱しましたので、それを訂正しておきたいと思います。
  111. 田代文久

    田代委員長 訂正ですね。
  112. 多田光雄

    多田委員 ええ。  なお、ちょっと続けて質問させていただきます。  きょうの大臣の御答弁を伺っていまして、私は、重要な点で二つの後退があったというように思うのです。  一つは、保安確保という、いわゆるにしきの御旗を理由にして、二千万トンにこだわらない、こういうことを言っておることですね。そして海外的視野で石炭を見ていくということなんです。保安を重視すれば、経費がかかるのはあたりまえなんです。ここでも経済性なんです。つまり、かって中曽根通産大臣は、経済性で日本の国内の石炭をやってきたのは、石炭政策は失敗であった、そしてナショナルセキュリティーは確保しなければならない、こう言っておって、しかも同じように、こういうふうに日本国内炭が二千万トンを割っていくことを、あたりまえであるかのように感じている、このことは、どんなに弁解しても、二千万トンまで一体、確保できるのか、私はその不安を感ずる。私は、これは非常に重大な変更だというように思います。  いま一つは、これは先ほど言ったように、国会で、保安法規の抜本的改正を五十年度中にやりますと答えているのです。そう言っておきながら、やるかやらないかについては協議会の意見を聞いてというふうに後退しているということです。大臣がいまお帰りになりましたから、このことについて、もうこれ以上、私、追及する場を持ちませんけれども、私、委員長にお願いしたいことは、こういう重大な、これはむしろ政策的な変更と言ってもいいし、そしてまた国会に対する食言と言ってもいいと思うのです。この次の理事会で、さらにひとつ検討させていただきたい、こう思うのです。  そこで先ほど私、保安法の抜本改正をやらなければ、本当に保安確保するということは不可能に近いということについて、炭鉱の現場労働者の投書が私のところに五通も来ているのです。いままでないことなのです。それを読みましたし、それからクロスチェックをやったというチェックの内容はどうなのかということも、その一端に触れたのです。もちろん専門家ですから机上での検討も結構です。しかしながら、保安はテーブルの上で起きているのではないんですよ。まさに現場で起きているのです。そこで死ぬのは係員であり現場労働者なのです。しかも、そこには予測できないと言われるようなことが山のようにあるのです。そうだとすれば、現場に入って現場の労働者意見を聞く、係員の意見を聞く、そういうことが本当に保安をよくする姿勢だ、こういうふうに思っております。ですから私は、会社のクロスチェックも結構だけれども、そういう弱点を持っている、これが企業の保安に対する姿勢の一端を示しているというので、例に挙げたのです。ですから、保安を本当に確保しようと思うならば、企業に対して厳しいチェックが必要だし、それには規則だけの改正では不十分だから、法の中に、もっとそれを盛り込まなくてはいけないのだということも私は述べて、前回は、たとえば重大災害を起こした場合には、企業の責任者に対して罰則規定を設けていく。あるいはまた、企業の設けている保安監督員、保安監督の体制、こういうものを変えていかなくちゃならないという、抜本的な意見を一、二述べたのです。  そこで、監督の問題について私ちょっとお伺いしたいのですが、これは局長に伺いますが、北海道保安監督の現場から、例年、何名か人をふやしてほしいという要求は来ておりませんか。
  113. 宮本四郎

    宮本政府委員 ただいま北海道から何名ということは聞いておりませんが、私ども札幌監督局に、五十年度、監督局の定員全体といたしまして九十八名、それから石炭関係で七十八名の定員を持っております。それから全国で……。
  114. 多田光雄

    多田委員 全国のはよろしいです。その人員の増加の要望が来ていないかということを聞いておるのです。
  115. 宮本四郎

    宮本政府委員 いま手元に持っておりませんので。
  116. 多田光雄

    多田委員 私は、現場から、人員を十名前後ふやしてもらいたいという要望が、本省の方に出されているということを聞いているのです。そういうことは局長、御存じないでしょうか。局長は新しいから、あれだけれども、去年はどうなんですか、来ていないかどうか。
  117. 宮本四郎

    宮本政府委員 要望が出ておることは知っておりますが、数字は持ち合わせておりません。
  118. 多田光雄

    多田委員 その要望を大蔵の方にしておりますか、去年あるいは、ことし。
  119. 宮本四郎

    宮本政府委員 ことしは出しておりません。
  120. 多田光雄

    多田委員 この間も幌内へ行ってみて、ともかく札幌の局長以下、連日泊まり込みで、中には一週間も十日も自宅に帰らないという人がいるのです。しかも、いつ事故が起きるかわからないということで、大変、不安定である。しかも坑道が延びていて、とても細かな点検はできないということも、現場の監督官からも、悩みとして私は聞いているのです。それを公然と言えないのです。言えないので、廊下でひそひそ私をとらまえて、何とか先生お願いします、こうまで言っているのです。これは人命にかかわる問題であり、日本の大事なエネルギー確保の問題で、この保安確保というのはメダルの裏表なんですよ。そういう意味で局長、どうでしょう。ことしの概算要求の中に、これは一部は石炭特別会計から出ているのだから、人員を一定限度ふやすという措置をとられるかどうか、私はとってもらいたいというふうに思いますが、どうですか。
  121. 宮本四郎

    宮本政府委員 私どもといたしましては、そういう要請を踏まえまして、この次、機会あり次第、出させていただきたいと思います。
  122. 多田光雄

    多田委員 機会あるじゃなくて、私は、五十年はもう無理だから、五十一年度の概算要求の中に一定限度入れて、国会でも、それをひとつぜひ決めてもらいたい、そういう積極的な姿勢でこないと、下の人は大変なんですよ。監督官だけでなくて、炭鉱労働者自身が、炭労の要求の中にも保安監督官をふやせという要求が出ているのです。だから積極的に要求するというふうに、ひとつ御答弁くださいよ、どうなんですか。
  123. 宮本四郎

    宮本政府委員 次年度には積極的に要求させていただきます。
  124. 多田光雄

    多田委員 それはぜひ、ひとつやっていただかなくちゃいかぬと思うのです。  そこで、いろいろ政策的な問題はあれですけれども石炭部長に伺いますが、今度の幌内事故、これは目下、救出を含めて、その対策に熱中しているときですから、原因究明その他は、その後になることは当然だと思いますが、これの原因究明については、現地の人々も、この間、私ども石特が調査に行ったときに、原因究明を厳密にやってもらいたい、こういう要望がありました。これはだれも否定できないことだろう、こう思うのです。  その場合、私お願いしたいことは、いままで政府、企業、一部の研究者、学者、技術者でやっておられた。これはもちろん当然やらなくちゃいかぬ。あるいは組合も参加する、あたりまえのことなんです。しかし一番、大事なことは、現場の労働者の本当の意見を聞くかどうか、ここを私はかなめの一つだと思っている。そういう意味で、七片なら七片のあそこでは、ずいぶんだくさんの方が亡くなりました。しかし番方が違っている、そういう方々意見を十分、聞いておやりになるかどうか、これを伺いたい。  なぜなら、この間、幌内事故の起きる一ヵ月前に、これは私どもの党の現地炭鉱の支部なんですが、十七項目について会社に申し入れたのです。それに対しては回答もない。私は保安には秘密があってはいけないと思うのです。そういう意味で、現場労働者の本当の声を聞いて調査をされるかどうか、これをひとつ伺いたいと思う。石炭部長があれだったら……。
  125. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 ただいま先生、御指摘の十七項目の件につきまして、内容を承知しておりませんので、調査いたしまして対処したいと思います。
  126. 多田光雄

    多田委員 いや、そうじやなくて、それは一例として挙げたので、現場労働者の声を聞くかどうかということを聞いているのです。
  127. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 現在、石炭の鉱山におきまして保安員あるいは監督員、補佐員あるいは労働組合、こういうところでいろいろ労務者意見を吸い上げていただいておりますので、こういうところの意見を十分、尊重して対処していきたい、こう思っております。
  128. 多田光雄

    多田委員 九月十七日付で、保安監督署の方から監督指示書をこの幌内鉱に出していますね。これは五十四項目にわたっているわけです。そして九月二十日までに実施計画書と実施結果を報告せよ、こうなっているのだが、この点について言えば、七片については、私の聞いているのでは三点について指摘されていたということですが、これが確実に実施されたということを事後、確認しているかどうか、これを伺いたいと思います。
  129. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 現地からの報告によりますと、いま御指摘の点は確認されております。
  130. 多田光雄

    多田委員 それはいつ、どういうようにして確認されましたか。監督官が中に入って確認したのかどうなのか。
  131. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 監督官が次回の検査の時点で確認いたしております。
  132. 多田光雄

    多田委員 その指摘された点が、現場の七片なりの労働者に全部、知らされていると思いますか。
  133. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 現場の全労働者の方に周知されたかどうかということは確認いたしておりませんが、このような監督官の指示の内容につきましては、組合とか、あるいは監督員、補佐員、その他、関係の方には周知させるようなやり方をやっているはずでございます。
  134. 多田光雄

    多田委員 それは当然なことだろうと思う。私はこのことを現地の大津炭鉱長に聞いてみたのですが、やっていませんと言うのです。いま言われたようなことですが、私はこう思うのです。監督官から指摘されたような問題は、何も新聞で公表しろと言っているのではないのです。少なくとも現場の指摘された問題は、現場の保安係はもちろんのこと、その現場の労働者に知らせて、こういう点が役所から指摘された、お互に注意していこうということは、ごくあたりまえのことだと思う。そういうふうな指導を、これからおやりになるかどうか。これは企業内の問題じゃないです。よ、なぜなら、あなた方が指摘している問題なんだから。どうでしょうか。
  135. 宮本四郎

    宮本政府委員 私どもが出先で指摘しております事項を現場に徹底するということは、非常に大切なことでございますので、いかなる周知徹底の方法があるか検討してみたいと思います。
  136. 多田光雄

    多田委員 それは一番、大事なことなんです。ですから私は、ぜひそれはすべての山で、せっかく皆さんが指摘されたことを現場の労働者に知らせて、保安に秘密はないのですから、あってはいけないんだから、現場の労働者の協力やその他でやるようにする。それでもむずかしいのです。簡単に仕事を休めば賃金が減るし、うるさく言えば、やはりいろいろ文句も出る。しかし、あえてそれをやらないとならないのです。だから、作業をやめているときは賃金を払うようにしろ、こういうことも私どもは主張したいと思っておるのだけれども、また労働組合もそういうことを主張しておられる。そういうことをひとつ、もっとやっていただきたい、こういうように思うわけです。  それから、これは石炭部にちょっとお願いしますが、さっきも同僚議員から出ましたが、いま深部開発深部から出る石炭量、これが非常に多くなりましたね。一々パーセントはもう聞きません。これはやはり深部も含めた本当の石炭技術の研究所が必要だ、こう思うし、また、そういう研究所に必要かどうか、付属するかどうかは別にして、養成所のようなものをつくって、労働者保安技術をみがいていくということが非常に大事なんですね。あの膨大な一次、二次、三次の企業の肩がわり資金、それからNOxで、いまでもはっきりしないのですが、苫小牧東部の石炭専焼火発、私は石炭専焼火発は一般的に反対しているわけではないけれども、それに去年使わなかった、ことし使わなかった。だから合わせて十億、ちゃんとまた来年度の概算要求を組むぐらいの親切心があるならば、少なくとも、そういう研究機関というものをつくるべきだというように私は思うのだけれども、これはむしろ大臣にお伺いした方がよかったのだけれども、そういうふうなことをぜひ、ひとつ検討してもらいたいと思うが、どうでしょうか。
  137. 高木俊介

    高木政府委員 ただいま苫小牧の発電所に対して五億あるいは十億とかいうような金の問題が出ましたけれども、これは実施した場合、出すのでございまして、実はいままで予算計上しておりましたのは全部、返却させて、ほかの方に使用させていただいておるのでございますので、その点ひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。  なお、深部開発保安問題につきましては、現在、保安局の方でも例の深部開発対策委員会というようなことでいろいろ研究しておられるわけでございまして、石炭サイドとしましても石炭技研を中心にいろいろな基本的な研究をやっておるわけでございます。  私、技術屋として一言申し述べさせていただきますと、仮に千メートルのところの研究となりましても、これは五百メートルあるいは六百メートル、七百メートルというようないろいろな技術を踏んできて、千メートルというようなところの対策が確立するものというふうに確信を持っておりますし、一遍にただ千メートルのところの深部の研究ということになれば、いろいろ問題があるのではなかろうかと思います。そういう点では、基礎的な研究は大学の先生あるいは各山の専門家の方々によって、いろいろ衆知を集め、その結果を各山でどういうふうに実用化するかということが大事ではなかろうかというふうに考えております。しかし、ただいま先生の御指摘のとおりの問題もいろいろ含んでおりますので、いま現在、持っております技研あるいは国として持っております試験所、公害試験所でございますけれども、そういう点、あるいは保安センターこういう各、持っておりますいろいろな有利な点、機能をもう一遍、洗い直しまして、一番、効果的な方法は、どういう機能がいいのかということを研究させていただきたいというふうに考えます。
  138. 多田光雄

    多田委員 その洗い直しするというのは五十一年度に向けてですか。
  139. 高木俊介

    高木政府委員 いま直ちにというわけにもまいらぬと思いますけれども、各研究機関の方々といろいろ御相談した上で、できるだけ早い機会に、今後の深部開発に対する対策として、どこが主体になってやればいいかということを研究させていただきたいということでございます。
  140. 多田光雄

    多田委員 もう時間も参りましたので、あと簡単に二つだけ、まとめてお伺いします。  今度の事故で非常に被害を受けるのは、炭鉱労働者だけじゃないのです。この三笠の地方自治体が大変なんです。たとえばここの税収が五億七千五百万、そのうち炭鉱関係が二億四千八百万で、約半分なんです。それに対して大体、来年三月まで出炭ができないと想定して、四十九年度のベースで市に調べてもらった。そうすると鉱産税が三千五百八十万の減、固定資産税が五百万の減、電気税が六十万の減、合わせて四千百四十万の税収減、こう想定されるのです。そのほかに対策費として死傷者対策だとか本部対策費、救援隊、住民対策、いろいろ項目を書いておりますが、かなりの目に見えない費用を地方自治体が出しておるわけです。そうだとすれば、ぜひ通産省の方から自治省に対して、二月に出る特別交付税で幾らかのめんどうを見るというふうな話を、ひとつしてもらいたいというように私は思います。これが一つです。  それから、いま一つは、あそこの市内の商工業者、これが私も会いましたけれども、年末年始を前にして書き入れどきに、売れ行きがばったりとまってきているという話も聞いております。そうすれば、やはりこれに対して、たとえば国民金融公庫だとか中小企業金融公庫、こういう政府関係金融機関から積極的に援助してやるということも、通産省として私はめんどうを見てやる必要があるのではないか、こう思うのです。六十億と言われている北炭の援助、これも結構でしょう。しかし、そこで泣いている、こういう地方自治体や商工業者に対してめんどうを見てやらないと、本当の産炭地の振興というものはできませんので、これに対してぜひ、ひとつ努力をしてもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
  141. 高木俊介

    高木政府委員 地方自治体の問題につきましては、昨日、先生からお話をお聞きいたしまして、うちの政務次官もお約束しておるところでございますし、また私の方としましては、産炭地域振興課を通じまして実態をお話ししつつ、地方交付税の方でできるだけ有利に動くように運動したいと思っております。  なお中小商工業者に対しましては、中小企業庁の方と連絡をとって、できるだけのお力添えができるようにということで、努力したいと思っております。
  142. 多田光雄

    多田委員 最後に私は、あくまでも保安法の抜本改正を心から政府側にも要求して、私の質問を終わりたいと思います。
  143. 田代文久

    田代委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会