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1975-12-10 第76回国会 衆議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十日(水曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 前田治一郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 佐野  進君 理事 中村 重光君       天野 公義君   稻村左近四郎君       内田 常雄君    浦野 幸男君       橋口  隆君    深谷 隆司君       板川 正吾君    加藤 清政君       上坂  昇君    渡辺 三郎君       米原  昶君    松尾 信人君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         経済企画政務次         官       安田 貴六君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         中小企業庁計画         部長      織田 季明君         中小企業庁指導         部長      児玉 清隆君         中小企業庁小規         模企業部長   栗原 昭平君  委員外出席者         法務大臣官房会         計課長     近松 昌三君         法務大臣官房営         繕課長     水原 敏博君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件  経済計画及び総合調整に関する件      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件、資源エネルギーに関する件並びに経済計画及び総合調整に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  3. 佐野進

    佐野(進)委員 福田企画庁長官も来てもらうようになっておるのですが、まだ来ておりませんので、これに関連する通産大臣に対する質問は一応保留をいたしまして、最初に、この前大臣中国へ行かれました。そのとき、実は私は大臣に出発される前に質問をし、また帰ってきてからも質問したいと思って質問の準備をいたしておったわけでございまするけれども国会の事情によってその機会を得ることができなくて、大臣は出発されていったわけでありますが、今回の大臣訪中問題は、いろいろな意味国内外注目を集めた問題であったと思うのであります。  たまたま行かれる用務そのものはそう大きな課題ではなかったと思うのでありまするが、そのときに置かれている情勢からいたしますると、国会の中では備蓄法案審議が行われ、あるいは繊維の問題については輸入制限を初めとする非常に重要な問題が国の中においてはあったわけであります。したがって、通産大臣が出発されるということについては、そういう面におけるところの国内外注目を背負われて行ったわけでありまして、結果的にその後の新聞報道等々をわれわれが見ておる限りにおきましては、非常に重要な話がその過程の中で行われておった、こういうような印象を受けるのでございまするが、訪中の間における大臣のそれら諸問題に対する中国側との話し合い、あるいはこちら側の意見開陳等々について、主要な点についてこの際その説明をひとつお聞きいたしたいと思うわけであります。
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 私が今回訪中をいたしました目的は、一つは、去る十一月十八日から二週間の予定で、通産省がバックアップしまして、ジェトロの主催で工業技術展覧会を開く、それに対して日本から二百数十社が参加をいたしまして、七千八百点のいろいろな機械類を陳列する、こういうことで、その開会式出席をするということで行ったわけでございます。幸いにこの方は、中国の各地から二十万人を超える中国技術者参加、見学をいたしまして、日本の新しい現在の工業水準工業技術についていろいろ研修、研究をされましたし、わが国からも千数百人の関係者中国に行きましてお互いに交流をする、そういうことで非常に大きな成果があったと思います。  これを機会に、日中間貿易はさらに飛躍的に増加をするのではないか、こういう期待を私は持っておるわけでございますが、訪中いたしましたのを機会に、中国側の要人と、石油問題とそれから日中間貿易問題につきまして話し合いをいたしました。  石油問題は、中国石油を明年以降長期的に輸入していこう、こういうことについての話し合いでございます。  それから貿易問題は、昭和四十七年九月に日中間の国交が正常化いたしまして以来、わずか三年の間に貿易額往復で三倍半に激増いたしまして、現在往復四十億ドル、こういうことになっておるのですが、四十億ドルというのはことしの見込みでございます。日本からの輸出が二十五億ドル前後、それから中国からの日本に対する輸出、つまり日本から見れば輸入が十五億ドル前後ということで、約十億ドルほどの逆ざやになっておるわけでございます。日本から見れば輸出超過ということになっておるわけでございますが、この問題をどう見るか、それから、伝統的な商品の中で若干トラブルを起こしておるものがございますが、これをどう処理するか、こういう問題を処理しながら、将来の日中間貿易を飛躍的に拡大するのには一体どういうふうな方向が望ましいか、こういう石油貿易問題につきまして、先方のこれに当たっておられます副首相以下、担当大臣数名の方々と、それぞれ個別にいろいろ話し合いをしてきたわけでございます。
  5. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、いろいろ話し合いをされたということが、先ほど申し上げておるとおり、いわゆる展覧会出席したというその主目的以上に高く、評価されているという言葉が適切かどうかわかりませんが、関心を呼んだ問題であったと思うのであります。  そこで、私はその中で、繊維の問題はしばらくおくといたしまして、石油の問題については、国内外で非常に大きな関心を呼んでおったと思うのであります。特に、中国大慶油田を初め近時開発をしつつある油田は、その埋蔵量の将来性を見るならば、優に中近東に匹敵するとまではいかなくとも、世界におけるところの産油国に対比しても非常に大きなウエートを持つ、それほどの埋蔵量があるであろうと予想されている情勢の中で、しかもわが国は、御承知のとおり、生産量というものが将来とも大陸だなを開発してもそう大きくないという形の中で、一衣帯水の中国において大きな埋蔵量を持つ、これとの関係の中における石油問題の解決を図るということは非常に大きな意味を持っておる、こういうぐあいにだれしもが感じておったわけであります。  したがって、大臣が行かれた際、この問題も非常に大きな課題になるであろう、特に経団連その他の派遣団使節団等も当時中国へ行っておられたということも聞いておるわけでございまするが、それらの関連の中で相当大きな前進的な話し合いないし取り決めが行われてきたのではないか、こういうぐあいに予想しておるわけでありますが、この点についての大臣話し合いの内部におけるところの具体的な問題について、いま少しく説明を願いたいと思うわけであります。
  6. 河本敏夫

    河本国務大臣 わが国は、一昨年の秋の石油ショック以降、エネルギー政策、特に石油政策についていろいろな基本的な方針を考えておるわけでございますが、その一つ輸入ソース多角化、こういうことを最大の戦略にしておるわけでございます。そういう意味から、中国油輸入ということは非常に大きな意義を持っておる、こういうふうに私ども理解をいたしております。  そこで、長期契約をいたしますにつきましては、いろいろ問題点があるわけです。その一つは、先方埋蔵量が一体どれほどあるのか、それからもう一つは、石油開発計画が今後どういうふうに進んでおるのか、現在の産出量はどうか、こういう問題をまず第一といたしまして、それから、長期契約をいたしますにつきましては、先方の油の品質関係日本では新しい設備が必要でございます。それにはやはり相当な設備費を必要といたしますので、一定量以上を輸入しようといたしますと価格の問題が起こってまいります。この品質価格の問題をどう取り扱うか、こういういろいろな問題があるわけでございます。  第一の埋蔵量の問題につきましては、先方担当大臣からいろいろ詳しく御説明がありましたが、それを総合的に判断をいたしますと、中国大陸とそれから渤海湾、黄海、それから東シナ海、先方東中国海というふうな表現をしておられましたが、これを総合的にその埋蔵量を推定いたしますと、ほぼ中東埋蔵量にも匹敵するのではないか、こういう印象を受けたわけであります。  それから、昨年の生産量は、いろいろ話を総合いたしますと、ほぼ六千五百万トンというふうに私ども理解をいたしました。ことしはほぼその二割の増加である、今後もほぼその率で増加するであろうが、最終的には、国内需要がどれほど伸びるか、輸出がどれほど伸びるかということを計画的に調べた上で決めたい、こういう話でございました。それについては先方からは正式の数字は表明されなかったのですけれども、アメリカの議会筋報告では、すでに御案内のように、二億三千万トンないし三億トンは可能であろう、こういう報告もされておるわけでございます。  それから、価格の問題につきましては、先方実情を十二分に承知しておられます。すでにことしの初め以降通産省からも技術者及び担当実務家を二回派遣いたしまして、詳細に問題点説明さしておきましたので、先方十分理解をしておられまして、価格については双方が納得のいく線で、かつ双方が利益になるような形で解決しようじゃありませんか、こういう話でございました。  それから、数量等につきましても、日本ではまだ新しい五カ年計画等最終的には決まっておりませんし、経済見通しもまだ明確ではないということから、数量にはこだわらない、こういうことでございます。  したがいまして、問題と考えておりました数量価格等の問題については、話し合いをすれば必ず解決する、そういう印象を受けましたので、それでは近く実務者を派遣いたしまして、実務者同士問題点最終的に煮詰めて、そして長期契約をしよう、こういう合意に達して、一応の結論を出したわけでございます。
  7. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、結果的に言いますと、実務者交渉の経過の中でそれらの問題が明らかになっていくと思うのでありますが、そういたしますと、協定をする時期は大臣としてはいつごろになるというお見通しなのか、これが一点です。  それから、価格の問題につきましては、われわれもその点について強くいろいろな面から感ずるのでありますが、たとえば中東の油を持ってくるといたしますと、中東から積み込んでシンガポールの沖を通って日本へ来るという、その距離的な問題に比較いたしましても、非常に近距離にあるということ、あるいはまた、その他いろいろな条件の中で、開発ということに対して非常に大きな金がかかるわけでありますけれども、それらの点はどうなるのかということがございますけれども、いま言われたように、われわれとしては中国の油の持つ特殊性、これがいわゆる中東の油と比較してどうなのかという、そういう内容的な問題等もございますが、結果的に言うならば、価格の面においても、それから数量中東に匹敵するほどの埋蔵量を持つということでございますから、そういう形になりますと、この面においての将来性というものは非常に大きいわけであります。  したがって、その協定の時期と、それから価格見通しと、それからいま言われた供給量ですね。供給量は、きわめて至近な距離にありますから、船舶の節約あるいはパイプライン設置等等、いわゆるシベリア開発のチュメニにおけるパイプラインあるいは鉄道建設という問題等と比較いたしますと、幾多の面において非常に有利な条件があるように考えられるわけでありますが、現段階において、これはもし大臣が直接お答えできなければエネルギー庁でも結構でございますが、少なくともここ数年、いわゆる協定に基づくところの輸入が全体のわが国輸入需要量に対してどの程度必要量を満たすことができるかという点についての試算がなされているかどうか。  それから価格についても、先ほど申し上げましたとおり、何も無理に安くしろということじゃございませんが、私どもは、わが国輸出が多いという形の中において、当然それらの面についても相当程度考慮をされるのではないかと考えられるわけでありまするが、これらについて大臣見解を、もしその点について大臣があれならばエネルギー庁の方から、ひとつ答弁をいただきたいと思います。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず数量の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、新しい五カ年計画をいま政府の方で策定中でございまして、これは来春にはでき上がると思うのです。それに基づいて最終の油の需給関係等も明確になりますししますから、大体来春、三、四月ないしは四、五月、このぐらいを目標にして進めていきたい。先方も来年から新しい五カ年計画に入るようでありますから、当然日本との長期契約もある程度その五カ年計画の中に組み入れ、考慮したい、こういうお考えがあろうかと思います。  そこで、開発お話もちょっと出ましたけれども先方開発には莫大な機械類などの投資が必要である。これは、日本との長期契約等ができれば、開発に必要とするプラント類あるいは機械類、こういうものを日本からどんどんと輸入をしたい、こういうことも言っておられました。そういうお話を伺いますと、やはり来春、さっき申し上げましたような時期を目標といたしまして話し合いを進めてみたい、こう思っております。  それから、輸送面お話が出ましたが、なるほど距離は近いのですけれども、まだ港の設備が不十分でございまして小さい船しか入れませんし、港の効率中近東の近代的な油の積み出し港から見ますと相当悪いのではないか、こういうふうに思います。したがいまして、中近東からは非常に大きな船で、しかも効率のいい港から積み出しておりますので、距離は近くても輸送面での優劣はいまのところは余りないのではないか、こういうふうに理解をいたしました。  それから、価格の問題につきましては、ことしの輸入量は八百万トンでございますが、千万トン前後のことであれば現在の設備そのままでも消化できますけれども、これがさらに大きくふえるということになりますと、当初に申し上げましたように、新しい重質油分解装置というものが必要でありますので、それには膨大な設備投資が必要になってくるわけです。  現在の日本石油精製設備というものは、中近東の軽い油を受け入れて、そして硫黄分の高い油でもそれを脱硫して良質の油にして使っていくという設備が完備をしておりますから、今度は全然性質の違う油を処理するという設備をしなければならぬわけですね。現有能力でも十分である、しかも現有設備は余っておるというのに、別の設備をしなければならぬということになりますから、コストがその分だけ高くなるわけですね。それに対する配慮というものが当然価格面である程度なされませんと、これは輸入いたしましても競争力がない、こういうことになりますから、そういう点等を十分配慮しながら価格の問題を詰めたい。そして、価格の問題が詰まらなければ輸入量というものはそう大きくは伸びない。価格の問題が解決すると相当飛躍的に伸びるのではないか、この交渉いかんにかかっておる、こういうふうに理解をいたしております。
  9. 佐野進

    佐野(進)委員 この問題で質問を続けておりまするとほかの問題にかかれませんので、実はこの問題について質問したいと思ってまだたくさん用意をいたしてまいりましたが、あと一点で終わりたいと思いますが、そういうように、大臣が行って交渉をされ、いろいろお話し合いをして理解を深めてこられたと思うわけであります。私も、中国からの石油輸入問題というものの前途がきわめて明るいということは、いまの説明をもってしても理解するわけでございます。  そこで、この協定を、まあ通産当局の係官もたびたび中国へ出向いてお話を進めておられるようでありまするが、同時に、民間ベースの話が何か先行するというか、主体になるというか、大臣が行かれたとき、たまたま経団連代表団も行っておられたというようなことも聞いておりますので、この協定の主体的な当事者はどういうところに想定されておるのか。  かつてシベリア開発の問題もそうでございましたし、あるいは石油開発の問題もそうですか、民間プロジェクトによるところの開発ということが、とかく一定条件の中で将来性があるように感ぜられながら、具体的な問題となりますると余り契約効果は上がっていない。そういうような形の中で、石油開発公団法審議の際においてもいろいろの議論がなされたわけで、私も意見を出しておるわけでありまするが、こういうことについてはこれからの協定締結、将来の中国との問題、いわゆる石油問題については非常に大きな意味を将来持っていくのではないか、こういうように感ずるわけでありまするが、大臣は、現時点における受け入れ体制といいますか、そういう協定を推進する立場に立つ主体的なものとして、政府ベースで行うようにお考えになっておるのか、民間ベースで行うように考えておられるのか、この点についての見解を聞きまして、これは後にまだ残りますので、一応きょうのこの問題についての質問は終わりたいと思うわけです。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 現在は、受け入れ体制民間窓口になっておりまして、二本立てになっております。約八百万トンの輸入をことしはいたしておりますが、一つ窓口で約六百万トン、他の窓口で約二百万トン、こういう二本立て民間輸入団体窓口にいたしておるわけでございますが、今後長期契約をいたします場合には窓口をどういうふうにしたらいいのか、契約関係はどうしたらいいのか、こういうことにつきましては、いま政府の方と関係者との間で相談をしておるところでございます。相談はまだ最終的にはまとまっておりませんが、関係者意見をよく聞きまして一番いい方法を考えたい、こう思っております。
  11. 佐野進

    佐野(進)委員 福田さんに出席を願って一番先に質問をしようと思ったのですが、出席がおくれましたので、ちょうどいま石油問題について通産大臣見解を聞いておったわけです。毎度福田さんにおいでを願うと景気問題の議論ということになるのですが、これは当面する日本経済最大課題ですからどうしてもただしておかなければならない問題だと思って、きょうも実は出ていただいたわけです。  そこで、この前の委員会の際にも私、御質問を申し上げたわけですが、第四次不況対策、これは非常に幅が広く、かつ深いものであって、これを実施すれば景気の回復は間違いないとおっしゃったと私は記憶をしておるわけであります。しかし、第四次不況対策が実施されてからすでに数カ月を経ておるわけであります。今日、日本経済が立ち直り、景気が回復したと、副総理通産大臣とも、見通しを聞きまするといつも明るいお見通しをここでお述べになるのですが、情勢はいささかも好転していないような印象を受ける。  私どもの受ける印象ですから、実態が違っておるので君の勉強が足りないのだよと言われればそれまででございますが、私どもが直接それぞれ企業関係者ないし経済実態に携わる人たち意見を聞きますると、何かますます深刻な様相を深めていっている、こういうような感じがするわけでありますが、第四次不況対策に対して、経団連等は、もはやこれでは手ぬるい、第五次の不況対策をしなさいと、強い見解の表明があるようでありますが、経済企画庁長官として、また経済担当総理としての福田さんの、現時点における不況対策といいますか、景気対策に対する認識をひとつこの際お聞きしておきたいと思うのです。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 マクロで申し上げますと、私は、日本経済はかなりいい動きをしておる。とにかくことしを顧みますと、先進諸国で黒字というか、プラス成長をする国はないのです。わが日本だけなんです。しかし、そういう中で日本経済界は非常に苦悩の色が濃い。これはまた逆に、諸外国に比べて深刻な状態だ。そういう根拠がまたあるのです。その根拠と申しますのは、一番大きなものは、わが国企業終身雇用体制をとっている。人手の遊び、それを企業内に抱えておる、こういうことであり、さらには自己資本比率が非常に低い、借入資本でやっている、それが過剰設備を出す、こういうような状態になっておりますので、金利費の負担が大変重い。  そこで、諸外国と比べますと、わが国企業は、こういう世界的不況で、世界的な操業度の低下という中では大変苦しい立場にある。その苦しい立場にあるわが日本経済、わが日本企業というものがだんだんその苦しみに耐えながら今日に至っておるのですが、これがまだ続くわけです。ですから、だんだん苦しさというものが積み重なっておるだけに苦悩感というものが濃くなるということを、経済界は何とかしなければならぬと言って訴えているというのが実情だろう、こういうふうに思うのです。  そこで、これが対策といたしましては、何と言っても企業操業度を上げるということに着目せざるを得ないのです。これが適正なところへくればそういう苦悩の原因というものが解消される。それには最終需要を喚起しなければならぬというので、第四次不況対策までの諸対策をとったのです。ことしはまあ二%程度成長になります。一%成長ではありますけれども輸出は大変な落ち込みになるわけです。それから設備投資、これも落ち込みになる。それにもかかわらず二%成長程度のものが実現されるというのは、これは国民の消費、それから政府の第一次から第四次までの対策によりまして、政府需要がかなり高い水準にきておるということで、総体としてプラス成長になるのです。  さてそこで、下半期経済の動向はどうかというと、いま御指摘のように多少のずれが見込まれると思います。しかし基調といたしましては、特に第四・四半期というような段階になると、かなり活発な需要喚起、したがって経済活動の面にも変化が出てくるということを展望し、また期待し、そうなるように諸般の手配をするという考え方でございます。  ですから、経済動きというのは、これは生き物でございますから、固定的な、硬直的な対策、対処の仕方ということは考えておりません。そのときどきの状況に応じまして、機動的、弾力的にやっていきますが、下半期経済は、多少のずれはありますものの、所期したとおりの動きになり、それを五十一年度にずっとつなげていく、こういう基本姿勢でございます。
  13. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣と話していると、いつもそういうように何か非常に明るいような——これはことしの春からもう何回も何回もやっておるわけですが、明るいようなことを言われておるのだけれども、実際はいささかも明るさを増していない。特に第一次から比較して第四次の不況対策は飛躍的にその厚みを増していっているわけですね、あなたの言われるとおり。にもかかわらず、それが所定の効果を上げてない。  しかも、世界各国は落ち込んでおる中でわが国だけが二%の成長率だ、こうおっしゃっておられますが、果たして二%の成長率になるのかどうかということについても、若干各界における見解の中に開きがあるわけで、あなたの方は経済企画庁として二%だとおっしゃっておられるわけですけれども、その二%が果たしてどの程度妥当性を持っておるかということについては、私どもはいささか疑問を持たざるを得ない、こう思っておるわけです。しかし、あなたの方で資料としてそれぞれ調査された結果としてこうだから二%になるのだ、こう言っておられるのだから、それをいまここで違うぞと論争している時間はないわけであります。  私の言わんとするところは、希望を持っての対策はもちろんなければならないし、その希望を持っての対策の中で一定の明るさを見出していただくということは当局者として当然だと思うのですが、何かやっていることやっていることが手おくれで、小出しにすることによって、むしろ十の効果を上げるものが三の効果か四の効果しか上がってないような、そういう対策政府がお立てになっておられるのじゃないか、あなたの言われる二%か四%になる回復率を示すならば、もっとそれにふさわしいような対策があるのじゃないか、私どもは前から何回も何回もその点については主張しているのですが、そういうような気がいたすわけです。  特にことしの三月か四月ごろでしたか、失業者が約百万に近いと言われ、中小企業の倒産が一千件を超えるというような時期の中でわれわれが質問をいたしまして、そういうことは年の暮れの段階の中ではほとんどあり得ないというような意味の、この対策が成功していけば間違いないというようなことを言われたのですが、いまこの暮れにきて、完全失業者が百万を超え、これは労働省の調査ですから、潜在者を含めればもっと多くなるわけです。中小企業の倒産は千三百十七件を超える、こういうような倒産数、これまたこの十二月段階においてはふえるであろうと言われるほど深刻な様相、しかも大企業はそれぞれ粉飾的な決算、こういうような言い方が適切かどうかわかりませんけれども、株を売ったり土地を売ったりしながら収支のつじつまを合わしている大企業等も相当あるとわれわれは聞かされておるわけです。  したがって、いま福田さんがお話しになりましたように、操業度を上げれば何とかなるのだ、操業度を上げるためにいまの第四次不況対策をやっておるのだ、こういうようなお話でございますが、いまの第四次不況対策は金融と公共事業、この二本の柱にいろいろなものをつけ加えておるわけでありますが、いわゆる操業度が上がるためには、先ほどお話しのあった需要が喚起されなければならぬわけでありまして、これがいまの状態の中においては喚起される、多くなっていくという見通しはほとんど持たれない。その需要を求めるために企業はいわゆるダンピングを行う。百円で当然売らなければ赤字になる物も六十円で売ってでも何とかしていこうという形の中にある。そうすると、それが強いものから弱いものへとだんだんしわ寄せがいって、もう最末端の中小企業段階に至れば、倒産か転換かということの選択を迫られてくる、そういうことになってくると思うのです。  そこで、私、時間が余りないですから、ここで基本的な経済論争をやっているあれはございませんが、私の願わんとするのは、その基本的な経済論争ではなくて、何とか景気をよくしてやるために福田さんひとつがんばってくださいよと、こういう希望を込めていま聞いておるわけですが、あなたは一体日本の総需要が、輸出から消費から、その他いろいろ含めて幾らぐらいあり、それに供給をする現在の生産量はどのぐらいあるとお考えになっておられますか。  いわゆる操業率を上げていっても、いまの操業度をもって生産しているものが滞貨の山になっておったとするならば、その操業度を上げることが景気回復につながるということの意味はないわけですね。いまの操業率が九五%だ、これで百三十兆なら百三十兆の生産力がある、これに対して需要は百十兆だというならばあと二十兆上げなければならぬし、あるいは百五十兆だというならばあと四十兆をどうするかということになってくると思うのです。  あなたは操業度操業度というお話で、この前も景気回復の決め手は操業度がこうなればと、河本通産相もそれに一緒になってそのようなことを言っておられるのですが、経済企画庁としては、日本の総生産量は今年度どの程度で、それに対して総需要はどの程度であると分析しておられるのですか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  14. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 金額につきましては政府委員から申し上げますが、金額よりはもっと端的に操業度で言いますと、九月の水準で、製造業稼働率指数で申しまして大体八四でございます。これが大体九五までいきませんと正常な経営がなし得るという状態にならぬ、こういうふうに見ておるのです。  それで、ことしの段階で八四まできた。これは底は七七であったわけです、この三月。いま九月で八四でございますが、これをことしじゅうに九〇に近いところまでぜひ持っていきたいなと思っておるのですが、まあそれに近いところまではいき得るのじゃないか、そして来年度いっぱいかけまして九五という安定点へひとつ近接をさせたい、こういうことをいま考えております。
  15. 佐野進

    佐野(進)委員 もう時間がありませんから河本さんも一緒に答えていただきたいのですが、大臣、これはあなたのように役所の人たちがあれしての調査でございませんから、数字は確実だとは言えませんけれども、私ども概算して、わが国の本年度の輸出その他総需要、いわゆる国民が消費するもの、輸出するものその他を含めて大体百三十兆円程度であり、それに対して総生産量は百五十兆程度である。そうすると、現在の生産力、操業度をもってしても約二十兆の供給過剰である。  現在の操業度をもってしても二十兆の供給過剰であるとするならば、この二十兆の需要輸出においてふやすのか、国内の消費においてふやすのか、あるいは政府対策においてふやすのか、いずれにせよこれが埋められざる限り、生産に対する消費、需要に対する供給、このバランスがとれない限り、あなたの方で数字上あるいはいろいろな対策上これこれのことになったから景気はよくなりましたと言われても、これは国民的実感の中において景気がよくなったような感じは得られませんし、実際上消費もそれぞれの家庭の中において上がってこないという形の中で、不況感というものはいつまでもわが国経済にまつわりついていくのではないか、不況感だけではなく、不況という現象が続いていくのではないかと考えるわけです。  したがって、第四次不況対策あるいは第五次不況対策が必要だ、いや五十一年度の予算の中でそれは考えるのだ、こういうように、二人の大臣はそれぞれの見解の中では差はあるわけでございますけれども、第五次不況対策という形でも、五十一年度予算でも、それはいずれでも結構でございますが、しかし、五十一年度予算では私は間に合わないような気がするのです。第五次不況対策という名のもとにとられるのかどうかは別としても、緊急的な対策として、この需要ギャップといいまするか、生産量に見合う消費量、供給量に見合う需要ですか、需要量に見合う供給ですか、これらの調整をする中で不況感を早くふっ切る、ふっ切るために御努力をなさる、そのための総合対策をおとりになる、これが必要のような気がするわけですけれども、この点について両大臣見解をひとつお聞きしておきたいと思う。
  16. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 考え方はそのとおりなんですが、ただ、デフレギャップというのは大変むずかしい議論なんです。これは二十兆円説あり、十兆円説あり、その真ん中ぐらいな説もありまして、いろいろな見方がありますが、これは総供給力というものを一体どういう見方をするか、こういうことがこの見方の違いが出てくるもとなんですが、企業が持っておる設備を全部フルに稼働してやれば、これはかなりの生産量ですよ。しかし、企業経営の面から見まして、そういうことは考えられません。これはどうしたって老朽した設備を抱えておるというようなところもありましょうし、多少の遊びということ、ゆとりというものを持っていなければ合理的な回転ができないというところもありましょうし、そういうものを捨象してまた考えなければならぬ。こういう捨象の程度をどこに置くか、そういうことでこのデフレギャップの額というものは大変違ってくるわけであります。  大体、私どもといたしますと、望ましい操業度に比べていま一〇ポイントぐらいの開きがあるのじゃないか、それを早く埋めたい。しかし、早くといったって、そう急に埋めるというわけにはまいらぬ。そこで五十一年度いっぱいぐらいまでかけてそれを埋めるようにいたしたい、こういう考え方をしておるわけなんです。これがデフレギャップが二十兆円だから二十兆円を一挙に埋めちゃうのだ、こういうようなことになると、これはまさに過熱状態でありまして、インフレとつながっていく。そういう状態考えるべきじゃない。かなりの設備の遊びがありましても、それを稼働する設備の活動で補っているという状態であれば、これはもうそれで結構だと思うのですが、私どもは、製造業稼働率指数から見てそれが大体九五、いまから言いますと大体一〇ポイントまた上げていかなければならぬ、その辺を目安といたしまして経済運営をしていく、こういう考えでございます。
  17. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま副総理の方から稼働率指数で御説明がございましたが、稼働率指数と操業率は違いますので、現在八四%の稼働率指数ということになりますと、操業率に換算しますと大体その九掛け、七五、六%の操業率でなかろうか、こういうふうに私ども考えております。  企業の方は操業率が九〇%程度になればこれは理想的だと思いますが、なかなかむずかしいのではないかと思うのです。そこで副総理は、稼働率指数を来年じゅうに九五%ぐらいまでは持っていきたい、こういうお話でございましたが、そうすると、操業率もほぼ一〇%上がりまして八五、六%ぐらいになろうかと思います。その程度になりますと、私は、まず経済が正常の姿に返った、こう言っても過言ではない、こういうふうに思いますので、いま言ったような数字を来年は実現する、これが当面の経済政策でなかろうかと判断をいたしております。
  18. 佐野進

    佐野(進)委員 時間がなくなりましたので、経済論争をまだしてみたいと思うのでありますが、いずれまた機会を見てなお続けてみたいと思います。  いずれにせよ、政府が第四次の不況対策を行った際、これで一応不況の波は乗り切れたのではないかということを、たしか自信を持ってお二人とも言っておられたと思うわけです。私どもも、しかしそれでは足りないよということはたしか当時言っておりますし、特に中小企業関係の面に対するしわ寄せはこれからますます厳しくなるので、その対応に遺憾なきを期してもらいたい、こう言っておったわけでありますが、そのおそれも現実になってきているわけです。特に本年の暮れから来年の一月、二月にかけて、この深刻な様相はますます深まりこそすれ、薄れるということはいまの情勢からするならば私どもはないような気がいたします。したがって、両大臣におかれましては、そういう点についてひとつ十分なる配慮に基づいて経済運営をやっていただきたいということを強く要望しておきたいと思うわけであります。   〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕  さらに、中小企業庁長官には、いずれまたこの問題については改めて機会を見て聞くことにして、きょうお聞きする予定でございましたが時間がございませんので、要望だけにとどめておきたいと思うのであります。  きのうも議論がございましたけれども、いわゆる何千億の金を貸す、何千億の金を三政府金融機関に出す、あるいは民間金融機関を指導する、もうわれわれの耳にたこができるほどそういう点をお聞きするのでありますが、それが倒産の危機に瀕する、あるいは倒産せざるを得ない、こういう状況に対する融資、緊急対策というものについてはきわめて冷淡である。これは金融機関がおしなべてそうなんだ。担保があって、保証人があって、しかも確実に前二年度黒字であって、返済する条件がないものには貸さない。貸さないのは金融機関として当然でありましょうが、それに対して保証をする保証機関がこれに保証をつけない。政府の緊急対策によって金を借りることができるのは、前二年度が黒字であって、資金回転がきわめて円滑で、しかも当面それほど差し迫っていないといわれる企業が借りることができる。あなた、ひとつ調査してみてください。  政府系三金融機関において融資の対象になっている企業は、絶対確実、もちろん絶対確実は必要でしょうけれども、金を借りなくてもいいところに金を貸そうとする。だから、借りなくてもいい企業ですから、金を借りる必要がないからダブってしまう、こういう例があるわけです。私ども何件も何件も取り扱って、金融機関に話すと、いや前二年は赤字になっているからだめだ、しかも大した赤字でもないのに、前年度赤字だということだけでだめだという例があるわけです。  これはひとつ両大臣お聞きになっていただいて、中小企業対策はきめ細かにやるのだ、きめ細かにやるのだとよく言われますけれども、そのきめ細かな実態がいま申し上げたようなきわめて形式的であるということも現実の問題としてあるのだということをひとつ御理解になった上で不況対策に取り組んでいただけるよう、きょうは中小企業庁長官には要望だけ申し上げて、あと具体的な質問は次回に譲ることにいたしまして、私の質問を終わります。
  19. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員長代理 板川正吾君。
  20. 板川正吾

    ○板川委員 私は、きょうは、経済の激動期に犠牲となって全く顧みられていない小規模事業の対策について通産大臣及び当局の見解を伺いたい、こう思います。  高度成長からゼロ成長時代に直面して、中小企業、零細企業の倒産が月々戦後の最高を更新しているという実情であります。一千万以上の負債を帯びて倒産した会社の統計は月々発表されておりますが、しかし一千万以上の負債を帯びて倒産した、主として中企業ですが、その下にはまた何十という零細企業がその下請等でつながっておるわけであります。ところが、一千万以上の負債で倒産した会社の中で、大手筋については会社更生法、あるいは政府のてこ入れ、金融機関のてこ入れ、こういうものが行われておるのですね。しかし、それに下請としてつながっておった零細企業については、会社更生法を適用されたという例はほとんどありませんし、政府や金融機関がこれにてこ入れをしたという例もない、こういう実態であろうと思います。  そこで、これは中小企業庁長官でいいのですが、最近における倒産の状況について、その傾向、動向について報告を願いたい。
  21. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 最近の倒産の状況でございますが、ことしの八月までは大体八百件ないし九百件台の倒産状況でございました。これは負債額一千万円以上の倒産でございます。不況が非常に長引いております割りには、高水準平穏と申しますかに推移しておったように思いますが、九月に入りまして千件台に乗りまして千三十九件になり、負債額も二千五百億円というように、前年同月に比べまして三五%アップという高い水準になりました。さらに十月には千二百七十八件でございまして戦後最高の件数になりまして、金額は千三百六十億でやや前年同月よりも減っておりますけれども、件数といたしましては戦後最高の記録をしたわけでございます。ところが、十一月になりまして千三百十七件というように十月の水準をさらに上回る件数になりまして、金額も二千四百六十二億円の負債額でございまして、前年の十一月に比べまして負債額の方は五二%増といったような高水準になっております。  最近の倒産の傾向としましては、上場会社その他大口の倒産が増加しておるということが一つの特徴でございます。それから、業種といたしまして、建設業等を筆頭にいたしまして、製造業の繊維その他万般と申しますか、各業種にまんべんなく広がってまいっておるというのが二番目の特徴かと存じます。  それから、倒産の原因について見てみますと、昨年まではいわゆる本業以外の仕事に手を出したといったようなことを原因といたします放漫経営ということによる倒産が主力をなしておったわけでございますけれども、この数カ月の状況におきましては、受注の減少、販売不振といったようないわゆる不況型の倒産が過半を占めておりまして、放漫経営による倒産というのは、件数で見ますと大体二四、五%ぐらいの比率になっております。そういう意味合いでは、不況が非常に浸透してまいりまして、各業種において倒産がふえつつある、こういう状況のように見ております。
  22. 板川正吾

    ○板川委員 中小企業庁長官に伺いますが、一千万以上の負債を帯びて倒産した会社のもとにおける下請零細企業、これの倒産状況というのはどういうふうにお考えですか、調査がしてありますか、これまた御報告を願いたい。
  23. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 私どもの方では商工リサーチ等のいわゆる市場調査会社に委託をいたしまして、負債額一千万円以下の小口の倒産につきまして、東京、広島、それからもう一カ所、大阪でございましたか、三カ所につきまして実情を調べておりますが、これにつきましては、特に最近その関係が非常に急増しておるというような状況は、三地域での調査について見た限りでは見られません。しかしながら、大口の倒産がこれだけ増加しておりますので、全国的に調査をいたしますならばやはり相当ふえておるのじゃなかろうかというようには推定いたしております。
  24. 板川正吾

    ○板川委員 零細企業の倒産状況というのはひとつ資料として後刻出していただきたい。お願いいたします。委員長にその点要望しておきます。  そこで、私がきょう取り上げたい問題点は、石炭労働者には石油関税で一定率の助成が国からあります。農家には休耕田補償が過去四年間行われてまいりました。これまた四年間で六千五百億という膨大な資金が投入されております。労働者、農民それぞれ国の助成が行われておることは御承知のとおりでありますが、さらにそのほか、勤労者に対しては厚生年金等について物価スライド制が導入され、また、企業倒産に伴う労務負債については国が一時立てかえ払いをする制度を設けるよう、目下検討されております。勤労者や農家に対する福祉政策というのは、若干でありますが前進をしております。しかし、小規模零細企業に対する福祉政策、小規模零細企業というのはみずから労働者、農民と同じように勤労者であるにかかわらず、国の助成は全くないに等しいのではないか。これは少なくとも社会的不公正の一例であろう、こう思います。  現在、これら小規模企業の事業主に対しては、小規模企業者の相互扶助の精神に基づいて、小規模企業者が廃業、転業等をした場合にはその拠出による共済制度があるが、共済金は加入者の積立金に若干の利子がつく程度であって、また四十八年から始まった還元融資についても自己の積立金の範囲で融資利用できるということであり、さらに本制度に対する国の助成というのはまことに微微たるものであります。小規模共済事業が発足して十年たちましたが、この十年間に補助金がわずかに五十一億円、出資金が十六億円にすぎません。このように、現行の小規模企業共済制度は企業者にとってはきわめて魅力の乏しいものであり、このために、全国で四百十万を数える対象企業者のうちで、この小規模共済法による加入者はわずか四十三万、全体の一〇・六%にすぎません。したがって、小規模共済制度については抜本的な改正を行う必要があるのじゃないだろうか、もっと魅力ある制度に改正をする必要がある、こう私は思います。  いま私ども社会党は、小規模共済法の改正案を来通常国会に提出する予定でありますが、その問題点について以下当局の意見を聞きたい、こう思います。  まず、小規模共済法による最近の加入、脱退あるいは掛金の収支状況等について、どういう状況でありますか。
  25. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 小規模共済事業につきましての小規模事業者の加入状況でございますが、ことしの九月末現在で加入者の累計は五十五万五千百二十一件になっております。もっともこれは累計でございまして、加入後に脱退した方がおりますので、現在在籍の加入者は四十三万二千百二十一件でございます。口数で申しますと、ことしの九月末で三百六十六万六千二百九十七口というふうになっております。  なお、加入者が積み立てました資産の残高は、ことしの九月末におきまして六百二十一億円になっております。
  26. 板川正吾

    ○板川委員 この加入、脱退状況を見ますと、脱退が非常に多いですね。昨年の統計でありますが、加入者が約九万七千、脱退者が二万四千というと、四分の一ぐらいが脱退しているということは、この制度に魅力がないからだと私は思いますが、どう考えておられますか。なぜ四分の一も脱退するのだろうか、こういう点をお考えになったことはありませんか。
  27. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 これは昨年の加入者と脱退で見ますと四分の一になりますけれども、加入いたしまして、累計に対しましてこれだけずつ脱退が出ていくわけでございますので、総体としての脱退率はこのような率にはならないのじゃないかと考えるわけでございます。つまり累計で見ますと五十万の加入者に対しまして十万の脱退でございますので、大体二割弱、こういった比率かと存じます。  脱退の事由といたしましては、一つは廃業したとか、あるいは会社が事業を停止したとかいうようないわゆる共済事由が発生したことによります脱退と、それからそうでなくて中途脱退とあろうかと存じますが、中途脱退につきましては、掛金を続けていくことにつきましていろいろ資金繰りその他であるいは困難を来したとかといったような事情があったかと存じます。   〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕
  28. 板川正吾

    ○板川委員 私の聞くところによると、中途脱退者が多い。ということは、この共済制度自体に魅力を感じなくなった、そういうところに中途脱退が多いという原因があるだろうと思うのです。そこで、私ども考えておる点は、共済金額に対して物価スライド制をとれないものか、こう思います。  実際この資金状況を見ますと、四十九年度で合計しますと、十年間で五百五十三億円も資金を集める、しかし支払った金額はわずかに二十八億弱、こういう状況ですね。五百五十三億がことしの九月では六百二十億になっておるそうですから、若干ふえておりますが、零細企業から膨大な資金を集めて、支払った金額はまだ微々たるものだ。これは実際共済という形になっていない。実質的には共済の実効を上げてない、こう思われますが、私どもはこの共済金額に対して物価スライド制を採用したらどうだろう、この物価スライド制によって、資金が不足した場合には国の補助をしてもいいのじゃないだろうか、農業やあるいは労働者に対するいろいろな国家財政からの支出を見て、零細企業四百十万人に対して、弱者に対するもっと手厚い保護があっていいのじゃないか、こう思いますが、この物価スライド制についてどうお考えですか。
  29. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 この小規模共済制度は、加入者が月々掛けました金を有利に運用いたしまして、共済事由が発生いたしましたときにその期間に応じまして共済金を支払う制度でございまして、一種の相互扶助的な共済制度ということになっております。  たとえば、一口は五百円でございますが、一口をずっと掛けたといたしました場合に、二十年間加入しておりますと十二万円を掛金として払うことになりますが、それに対します共済金は、事業の廃止等のいわゆるA共済の場合には二十八万一千円の共済金が支払われることになっております。三十年の場合には、十八万円の掛金に対しまして六十三万円の共済金が支払われることになっておりまして、大体平均いたしまして六分数厘の利回りで運用いたしておるわけでございます。  いま先生の御指摘は、この共済金について物価のスライド制を導入する考えはないかという御質問でございましたけれども、現在、こういったものにつきましての物価スライド制といいますと、国民年金と厚生年金保険のような公的年金については物価スライド制が実現を見ておりますが、こういった公的年金は強制加入制度のものでございます。私どものやっておりますこの小規模企業の共済制度は、いわばこういった国民年金的な国の制度に上乗せをする任意加入的な制度でございまして、そういう意味合いで、物価のスライド制をこれに導入するということにつきましては、共済金の支払いに非常に費用がかかる面もございまして、将来の検討事項といたしたいというふうに考える次第でございます。
  30. 板川正吾

    ○板川委員 この物価スライド制を導入するということはいろいろ問題はあるかと実は私ども考えておりますが、しかしこの零細企業者の相互扶助の目的でつくられたものに対しても、不足した場合にはそれを政府が予算の範囲内で補助するというような措置をとってスライド制を導入すべきではないかと私は思いますが、そういう考え方をわれわれは持っているということを一応承知願いたいと思うのです。  次は、この掛金の一定率に対してもっと国の補助があっていいのじゃないだろうか、私はこう思います。御承知のように、中小企業退職金共済法というのがあります。中小企業の労働者が月々積み立てをして、退職する場合にそれで退職金が下りる、こういう制度の中に、三年間掛金を掛ければ五%の補助が行われる、国の予算で、国の経費の中で五%補助が行われる、十年間積めば一〇%の補助が行われるということになっております。この中小企業退職金共済法でも不十分ですが、小規模共済法も、私は掛金の全部とは言いません、口数の全部とは言いませんが、われわれの方は十口について納付月数が十年間、百二十カ月以上ある場合には一割の割り増しをつけたらどうか、二十年掛けたら二割の割り増しをつけたらどうか、三十年以上積んだら三割の割り増しをつけたらどうか、こう思うのです。  特に、この掛金が十年前から一口五百円になっておる。十年たった今日、五百円という金額でなくて、一口千円程度にすべきではないか、そうして口数の上限を二十口で抑えておりますが、この上限を三十口程度に改定をしなければ、これまた意味の本当に薄い共済制度になって、実質的な共済制度になっていかない、魅力を感じない、私はこう思います。それで口数を三十口にし、一口を千円にして、少なくともそのうちの三分の一の十口以下についてはそういう割り増し制度をもっと強化したらどうだろう、こう思いますが、この考えはどうですか。
  31. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 この小規模共済法によりますと、五年ごとに見直しをするように法律で義務づけられておりまして、その五年目が、前回の見直しの時期から考えますと昭和五十二年度に当たります。そこで、私ども来年、中小企業関係の共済問題を検討します審議会の部会を再開いたしまして、五十二年度を目標に、改正方と申しますか、見直しをいたしまして、現状から見て妥当かどうか検討いたしたいと考えておりますが、その際の大きな検討項目としましては、ただいま先生御指摘の、一口が五百円という低い額でいいかどうかということと、最高の口数が現在二十口までとなっておりますが、これを引き上げる必要はないか、こういった点は十分最近の物価状況等もにらみ合わせまして検討すべき問題であるというふうに考えております。  もう一つの御指摘の、補助金を出したらどうか、そして給付をもっと多くして魅力のあるものにしたらどうかという御指摘でございますが、この小規模企業の共済制度を運用いたしますために小規模企業共済事業団というものを設けておりまして、そこが事務をいたしておりますが、この事業団の運営費につきましては全額国の費用で運営をいたしておりまして、事業者が掛けました掛金はすべてまたその小規模事業者に戻ってくるというふうなことで、事務費はすべて国が補助するというたてまえをとっております。  小規模事業者に給付すべき共済金について補助金を出すかどうかという点につきましては、この制度が国民年金のような、公的な年金のような強制加入の制度ではない任意の制度であるということが一つと、それから中小企業の従業員の退職金共済制度におきましては、確かに先生の御指摘のように補助金が出ておりますけれども、これは従業員のための共済制度でございまして、一種の社会保障的な要素が非常に多いと存じます。それから、現在の中小企業退職金共済制度におきます補助金は、加入口数のいかんにかかわらず、一日分につきましてその五%ないし一割の国庫補助が出ておるわけでございまして、それとのバランス等も考えながら十分慎重に検討いたしたい、かように思います。
  32. 板川正吾

    ○板川委員 中小企業労働者に対する退職金共済法ができて、今度それに引き続いて小規模企業の退職金制度である共済法ができたわけですね。これはお互いに関連性を持った法律として十年前審議をされたのです。中小企業の労働者の退職金の共済制度も任意加入だし、これだって任意加入。任意加入である点は同じです。中小企業の退職金共済法では一口分だけ五%、一〇%の割り増しがある。これが少ないという気持ちも私はありますよ。これは少ない。だけれども、それはそれとして、少なくとも十口程度というと月一万円になりますが、その程度のものについては割り増し制度をつくって国がそれを補助して、そうすることによって魅力あるものにするという必要があるのじゃないですか。そうすれば四百十万人という零細企業者がもっともっと加入しますし、もっともっと資金量も多くなると思うのですよ。この小規模事業に対する国の助成政策というのが余りにも貧困ですから、せめてこういう共済制度に対する国の助成というのがあってもいい、あるべきだ、こう思います。  もちろん中小企業退職金共済法の方はそのままでいいという意味じゃないのですよ。こちらが改正されれば、それにバランスをとって改正される性質のものであることは当然であります。そういう点で、国の予算の範囲で経費を補助して割り増しをするという必要があるのじゃないか、そうして魅力ある制度に切りかえていくべきじゃないか。補助金で事務費を補助していると言ったって、十年間で十六億でしょう。一年間に一億六千万でしょう。こんな金額で、四百万を超える零細企業に対して国の補助と言えますか。だから、事務費を全額持ったと言って余りいばっていられないのじゃないですか。いずれにしましても、経済の激動期を迎えて、零細企業に犠牲をしわ寄せして何ら対策を立てないというのは、中小企業庁としては怠慢になる、こう思います。そういうことですから、われわれはそういう考え方を持っておりますが、ぜひ将来は同調してもらいたいと思います。  次に、事業転換について、われわれはこの共済制度の中から事業転換の資金の貸付制度をつくったらどうかと思います。現在ドル対法による転換あるいは公害転換等について融資制度がありますが、その実績はどういうことになっておりますか、伺ってみたいと思います。
  33. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 ちょっといま手元にドル対法関係の融資の実績を持ってまいっておりませんので、後刻先生のお手元にお届けするようにいたしたいと思います。
  34. 板川正吾

    ○板川委員 中小企業庁の事務当局で事業転換に対する融資状況をいま把握してないというのはどうも——実は把握してないというほど少ないのですよ。  私の方の調査で申し上げましょう。ドル対法による転換をしたのは、四十八年でわずか十三件、四十九年で十八件、五十年九月まではわずかに一件。これは中小企業金融公庫から出されたものです。それから国民金融公庫で貸し付けしたものは、四十八年が九件、四十九年がわずかに二件、五十年九月までわずかに二件。全部合わせましても五十件にならないのです。  それから、公害による事業転換をした場合の貸し付けは、中小企業金融公庫によって四十八年度は十五件、四十九年度は二十一件、五十年九月までに九件、国民金融公庫から貸し付けしたのは四十八年はなし、四十九年四件、五十年九月までになし。合計しましても九十件ぐらいですね。その金額も微々たるものであります。  だから、毎月少なくとも千件前後、七、八百件から千件を超えた場合もありますが、一千万以上の負債を帯びて倒産した企業がそういう数でずっとあるわけですね。それにぶら下がってと言っては悪いのですが、それと一緒に下請をやってきた企業が、親企業が倒産したために事業転換したというのは無数にあると思うのですよ。しかし、無数にあると言いながら、政府中小企業金融公庫や国民金融公庫、こういう中で事業転換に貸し付けしたのはわずかに百件足らずという状況じゃないですか、この二年半のうちに。これで事業転換に対する政府の施策が万全であるとは私は思いません。  前に通産大臣をやりました櫻内さんは、就任早早事業転換、事業転換と口癖のように言って、われわれ転換大臣とあだ名をつけておったのですが、それほど事業転換を奨励していながら、実際事業転換で国の金融機関から転換資金を出したというのは、当時は全く皆無。いまでも二年半でわずかに百件。これじゃ零細企業というのは自分勝手につぶれていけ、こういうことを政府自身が認めているようなことじゃないのですか。だから、そうであるならば、私がさっきから言ってきましたような国の助成政策の中から小規模企業共済事業団に対する国の助成を行いつつ、この事業転換に対する貸し付けの制度をこの中に設けるべきではないだろうか、こう思いますが、いかがですか。
  35. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 いま先生御指摘のように、確かにドル対法によります転換融資の実績は余り数多くございません。これは融資の場合もいろいろ転換計画の認定その他むずかしい面がございまして、実際には一般の政府系機関の融資等を相当活用しておられるのではなかろうかというふうに考える次第でございます。  また、こういった中小企業の方々への資金面の配慮といたしましては、特に小規模零細向けには国民金融公庫で無担保融資という制度がございます。三百万円まで無担保で融資をしております。それから、信用保険の面におきまして、無担保で保証人なしで信用保証をする制度もございます。また、御承知のように、経営改善資金ということで二百万円まで無担保、保証人なしで融資もいたしておりまして、各種の零細企業向けの融資制度を設けてはおるわけでございます。  ただいまお話しの、加入者が事業の転換をする際に、事業団が預かっております掛金から転換資金の融資をしたらどうか、こういう御意見でございましたけれども、この掛金は加入者から預かりました非常に大事な金でございまして、絶対に間違いのないような運用をしなければならない、こういうことでございますので、現在はそのほとんどを金融債あるいは政府保証債あるいは定期預金という形で運用をいたしております。ただいま御指摘のような形で、本人の掛金以上に大量に融資という形で還元して融資をいたしますと、貸し倒れ等のリスクの問題もございまして、別途の資金を事業団が導入すれば別といたしまして、事業団が預かっております掛金をそういうリスクの伴う融資に回すということはいろいろ問題が多いと存じまして、この点は慎重に考える必要があるのではないかと存じます。  一方、転換の関係対策といたしましては、現在各種の環境変化によります中小企業の転換を容易にしますために、転換対策法的なものを別途検討中でございまして、成案を得次第、早い機会国会に御審議をお願いいたしたい、かように考えておりますので、そちらの方の施策におきまして転換対策は遺憾なきを期してまいりたい、かように考える次第でございます。
  36. 板川正吾

    ○板川委員 事業転換の貸し付けの条件をいろいろわれわれも考えておるのですよ。対象者を掛金納付年数が十年以上として、貸し付けの限度額を三千万、もちろん担保、保証人を要します、こういう形で、貸付期限は十二年間ぐらいにして、三年間据え置いたらどうか。問題は利子なんですが、利子は年三%ぐらいにして、そして通常金利との差額は国及び地方公共団体が利子補給する、こういう形をとったらどうか、こう思います。  いま中小企業庁長官は、リスクの多いそういう転換に資金を貸し付けすることは危険だ、こうおっしゃっておりますが、それは全く危険なしとはしません。しかし、これは国会でも、御承知のように貸し倒れ準備金の問題で論議になりました。貸し倒れ準備金で一体実質的にどのくらい貸し倒れというのがあるのか、こういうものの調査資料が大蔵省調査室から出ておりますけれども、これは四十九年下期で、都市銀行ではわずかに六億円、地方銀行で九億円、それから相互銀行が二十億円、信用金庫が六十四億円。この貸し倒れ金というのは、貸し付けの金額の割合に比して、倒産して取れなかったというのは実は都市銀行なんかほとんどないんですね。一番多いのは、やはり庶民の金融機関である信用金庫、その次は相互銀行、これが割合からいって多い。信用金庫は四十九年度下期に六十四億円という貸し倒れ金を出したわけですが、これの貸付金額の比率を出してみますと、貸付金額が二十兆二千七百億円でありますから、それに対して六十四億円の貸し倒れ金ができた。これを計算してみますと、大体三千二百億円貸して一億円の貸し倒れ金ができる、こういうことですね。  ですから、この信用金庫並みに考えても、三千二百億円貸しても一億円の貸し倒れ金という程度でありますから、貸し倒れ金が不安だからそういう制度はとるべきでないというのは、ちょっと問題の本質を見詰めてない考え方ではないですか。そんなに危険だからそういう制度を取り入れてはいけないという理由にならないのじゃないですか。
  37. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 現在共済事業団は、還元融資という形で、加入者の御希望によりまして、掛金の範囲でその七割ないし九割までを即座に貸し付けるというようなやり方をとっておりまして、加入者の当座の資金の必要についての便宜は計らっておるわけでございます。ただ、先生御指摘のように、事業転換資金といったような相当大がかりな、リスクのある一種の金融業務に類したことをこの事業団が営むということにつきましては、事業団の設立の目的等からもいろいろ問題もあろうかと存じますので、慎重に検討する必要があるのではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  38. 板川正吾

    ○板川委員 他の金融機関では、先ほど言ったように利用者がほとんどない。ですから、恐らくみんな泣き寝入りでつぶれていくか、あるいは生業として他の方法で転換していると思うのです。先ほどのように共済給付金の割り増し制度をつくるとか、一口の掛金をふやし、上限をふやす、あるいは物価スライド制などを導入すると、加入者がどんどんふえると思います。そして、小規模事業者同士の相互扶助による共済制度というものが本当に充実されてくると思いますね。そのために政府が何がしかの援助をすることは、これは社会的公正を実現する上においても必要じゃないのですか。そういう点をやれば、資金的にも相当ふえてくる。加入者もふえ、資金量もふえてきます。ですから、こういう一定条件のもとにおける事業転換の貸し付けをし、しかもその金利を国と県で負担して三%程度にしてやるということも必要ではないか、私はこう思います。  現在還元融資が行われておるといっても、還元融資は自分の積んだ範囲の融資ですからね。自分で積んでいって、金額が五十万あったら五十万の九割まででしょう、四十五万までは貸し付けます。即座に貸し付けできるという利点はありますけれども、銀行などからいえば、十年間一定の金額積めばその積んだ金額の何倍かをたとえば住宅貸し付けに回すとか、そういう金融制度もあるのですから、その貸し付けした金額の範囲で九割まで即座に貸し付けられるからいいじゃないかなんということで満足しているようでは、本当の中小企業助成政策にならぬ、中小企業庁目的にも反するのじゃないかと思います。  いずれにしましても、事業転換というのは、これから零細企業にとって厳しい一つの状況の中で必要なものであろう、こう思いますから、事業転換貸付制度を私は設けるべきだ、こう思います。  それからもう一つ、事業団の業務を拡大して、還元融資のほかに共済融資という制度をつくったらどうだろう。共済融資というのは、共済掛金の積立総額を考慮して決める。積立金額に対して二倍あるいは三倍という金額、最高限を決めて、たとえば一千万以下、こういうようなことを決めてもいいと思いますが、これは当然妥当な金利を払わなくちゃなりません。お互いに相互扶助の精神でこの共済制度ができておるわけですが、加入者をどんどんふやす、そして加入者に対して、還元融資じゃない共済貸し付けという新たな制度をつくったらどうか。その共済貸し付けも、これは運転資金というよりも、たとえば住宅、事業用施設の新設あるいは増設、改修、こういうような一定条件をつけてもいいと思います。  大体小規模事業者というのは、作業場、仕事場が自分の家と一緒ですから、住宅を直して作業場を広げるということもあるでしょう。ですから、これに一定の年限以上加入しておったならば掛金の二倍ないし三倍、そして一千万以下、こういうふうな条件で、金利は妥当な金利を払います、こういう共済貸付制度というのをつくったら、これこそ相互扶助になるのじゃないですか。いま六百二十億も積み立てをしておって、支払った金額が三十億そこそこでしょう。政府は零細企業から掛金を積み立てておいて、それを転がしているだけじゃないですか。金融債を買って転がしているというのですけれども、金融債を買って転がすならば、この共済貸付制度というのを設けて、お互いに相互扶助ですから、積んだ人に貸し付けをしたらいいじゃないですか。こういう制度を考える必要はないのですか、どう思いますか。
  39. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 先ほどお話しのございました事業転換資金、あるいはいまお話しの共済貸し付け等々、そういった制度を設けますれば、確かに加入者にとっては非常に魅力のあるものになるだろうとは存じます。ただ問題は、この共済貸し付けの場合も同様でございますけれども、本人が掛けました掛金以上に何倍かの貸し付けを行うといたしますと、貸し倒れによるリスクがあるわけでございまして、そのリスクを別途政府が補てんするというような方法を考えれば別でございますけれども、いまの預かっております掛金の中から貸し付けるという場合には、そのリスクをどうするかという点が一つの難点かと存ずるわけでございます。  それともう一つは、現在行っております還元融資は本人の掛金の範囲で行っておりますので、ほとんど無審査で貸し付けておるわけでございます。したがいまして、現在五十五万件の加入を八十人足らずの人員で処理をいたしておるわけでございますが、もしいろいろ融資業務的なことを行うとなりますと、その借りられる方の資産内容とか、あるいは返済能力の有無とか、その資金の使途によります事業計画の妥当性とか、いろいろ金融審査的な業務を行うとなりますと、その専門家も要りますし、人も相当必要となってくるといったような面もございまして、リスクの面とあわせまして事務処理の体制で非常に従来と変わった形になってまいりますので、その辺いろいろやはり検討すべき点が多いかと存ずるわけでございます。  しかし、現行の制度をさらに魅力のあるものにしまして、現在小規模事業者の一四、五%まで加入率がなっておりますが、さらにこの加入率を高めていくという趣旨からは、いろいろもっと小規模事業者にとって加入した場合に魅力のある制度にできないかどうか、私どももこれから十分検討はいたしたいというふうに考えております。
  40. 板川正吾

    ○板川委員 まあ共済金をたとえば一定の期限、われわれ七年ぐらいを考えておるのですが、七年ぐらい年々積んでおるということであれば、その過去において積んだ金額の二倍か三倍、あるいは上限として一千万以下、こういうふうなことであれば、私は、そんなに貸し倒れができて事業団の資金運用上困るなんということは恐らくないと思います。  それから、この貸し付けを審査することも、中小企業金融公庫や国民金融公庫に事務を委任すればできることじゃないですか。現在でもそういう窓口は、国民金融公庫なりなっておるでしょう。ですから、いかにこの小規模共済法というものの内容を充実していくかということに頭を置かずに、どうもそれは貸し倒れが起こると損するから貸しちゃいけないと、非常に消極的ですね。  私は、中小企業庁というのは中小企業の保護、育成に全力を挙げる省庁だと思っていますよ。その省庁が消極的に、いま経済界が非常な激動期を迎えて、倒産件数が引き続いて記録を更新しているというようなときに、そして日本経済全体が高度成長からゼロ成長という事態を迎えているときに、何も十年目だから来年度検討すると言わずに、こういう点は早急に改正してもいいんじゃないですか。私は、共済貸し付けという制度を拡充する必要があると思います。  どうも中小企業庁長官の答弁は消極的で、これでは労働者や農民に対して、この零細企業者が政策的にも助成的にも国の対象から外されておるという現状を考えて、まことに社会的不公正である、こう思いますが、どうでしょう、大臣、先ほどから聞いてくださっておるのですが、こういう考え方に対して、大臣見解をひとつ承っておきます。通商産業大臣は大企業だけの通産大臣じゃないわけでありまして、零細企業に対しても当然温かい目を向けなくちゃならぬ、こう思っておりますが、大臣見解はいかがですか。
  41. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま小規模共済制度の運用につきまして幾つかの問題点を指摘されまして、それについての積極的な意見を開陳されたわけでございますが、私も大変興味深く拝聴をいたしておりました。いま御指摘になりました幾つかの問題点を含めまして、昭和五十二年度から政府の方もこの共済制度の新しいあり方につきまして再検討を加えたい、こういう考え方を持っておりますので、その準備のためには、またそれの施行を円滑ならしめるためには、来年度中に新しい法体系を再検討したい、こういうふうに考えておるわけでございます。その際には、いま御指摘になりました幾つかの問題点審議会等におきまして十二分に検討をしていただきまして、どうすべきかということについて結論を出したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  42. 板川正吾

    ○板川委員 終わりますが、とにかく零細企業に対して国の助成というのが余りにも少ないということがつくづく感じられます。ぜひひとつ小規模共済法及びこれに関連する中小企業労働者の退職金共済法、こういうものもあわせて、労働者の退職金共済法は労働省と共管ですから相互に十分打ち合わせをして、特に小規模共済法については抜本的な改正を要求いたしたいと思いますが、われわれも来通常国会には法案を出しますから、ぜひひとつ検討願いたい、こう思います。  以上をもって私の質問を終わります。
  43. 山村新治郎

    山村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後一時五分開議
  44. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。米原昶君。
  45. 米原昶

    ○米原委員 中小企業に対する官公需の発注の問題について、いままでも何回か質問しましたが、きょうはちょっとまとめて聞きたいと思うのです。  きょうの新聞を見ますと、やはり第四次景気対策もまだ効果があらわれてないというようなことが言われておりまして、ことに中小企業の問題ですが、官公需発注の問題は非常に重要だと思うわけです。共産党としましても、官公需の五割以上を中小企業に発注することはできるはずだということを何回か言ってきました。先日の予算委員会での野間議員の質問でも明らかになったように、まだまだ改善の余地があるはずだと思うのです。通産大臣は、予算委員会の答弁で三二・九%が限度だというように言われましたが、野間議員に約束した例を見てもわかるように、各省庁等が努力すれば五割に持っていくことも不可能ではないと思うのでありますが、この点について、大臣、再考の余地はないものかどうか、まず答弁していただきたいと思います。
  46. 河本敏夫

    河本国務大臣 官公需の中小企業向けの発注はできるだけふやしていくというのが政府の基本方針でございます。一昨年は約二七%、それから昨年は途中で目標を引き上げまして約三〇%、本年はさらにそれを大幅に引き上げまして約三三%、こういう目標を置きまして、毎年できるだけふやしていこうというのが政府の基本方針でございます。しかし、予算の実施等につきましては、いろいろむずかしい会計法規等がございまして、一定の制約があるのです。そういうことから、一遍に何もかもふやすということはむずかしいわけでございますけれども、今後も機会あるたびに個々に十分検討いたしまして、ふえるものはふやしていきたい、これが基本的な考え方でございます。
  47. 米原昶

    ○米原委員 おっしゃるように、努力をされた結果としてでしょうか、かなりふえておることは事実であります。ただ、私たちも官公需法の改正案や、政府に対しても二回ほど具体的な申し入れをしたわけですが、少なくとも毎年閣議決定されている「中小企業者に関する国等の契約の方針」、これが各省庁や出先機関、政府関係機関で徹底して実施されているかどうか。この点を徹底して実施するならば、まだまだ中小企業の発注はふえるはず、こう思うわけであります。この国等の方針では、その決定された諸項目に関する措置状況を中小企業庁長官あてに通知するということになっておりますし、各様式による報告が行っているはずです。この閣議決定による実施状況は当然国会委員会にも提出していただきたいし、それを検討すべきではないか、こう思うわけですが、どうでしょうか。
  48. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 国全体として私どもが把握いたしております官公需契約の中に占めます中小企業向けの契約の割合でございますとか、あるいは特に特定品目におきます中小企業向けの発注割合とかといったような、総体としての資料は現に発表もいたしておりますし、委員会に提出するにやぶさかでございませんけれども、個々の省庁の個別の数字につきましては、各省庁が予算の執行をやっておられるというようなこともございますので、私の方でそれを提出するということは困難でございます。
  49. 米原昶

    ○米原委員 閣議決定の措置報告となる様式1から6までの通知の範囲には、各省庁、それから政府関係機関の地方出先機関や支社などは含まれておるのでしょうか。
  50. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 中小企業向けの発注の金額の実績は、地方機関につきましても全部報告をいただいておりますけれども、措置状況につきましてはただいまのところでは本省分だけでございまして、末端の方の措置状況の報告はいただいておりません。
  51. 米原昶

    ○米原委員 この様式1から6までは、国等の契約の方針に対応して、中小企業官公需特定品目の調達状況や、分割発注の契約例、中小建設業者に対する配慮など、中小企業に官公需発注の増大の努力をしたかどうかを示す重要な通知書だと思うのです。この通知を、膨大な官公需発注を抱えている地方建設局とか港湾局その他の地方出先機関がそういう状況報告をしなくてもよいということでは、この国等の契約の方針は空文に等しいものとなってしまいます。当然そういう状況をつかんで、そうして促進していけば、私はかなり発注がふえるんじゃないかと思うのですが、聞くところによると、各省庁等の官公需担当者の会議で、中小企業庁自身がいまおっしゃったようなことを認めたということでありますが、中小企業庁がそのような姿勢では、閣議決定された国等の契約の方針の実施も徹底できるはずがないのではないか。多少の繁雑さがあろうと、官公需を発注している当該機関が国等の契約の方針の措置、実施報告をしなくてもよいということは間違っておるのじゃないかと思います。この様式についての通知、報告を各地方出先機関についても求めるようにすべきであって、今年度から実施するようにすべきじゃないか、こう思うわけですが、どうですか。
  52. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 実は官公需関係の契約が年間六百万件に及んでおりまして、出先機関も三万を数えております。そういう関係で、この契約の金額面の実績報告は全部いただいておりますが、措置状況につきましては、各省庁の事務の繁雑さの関係もございまして、一応現在では地方機関の分はいただいていなかったのでございます。しかし、先生の御指摘のように、中小企業に官公需を確保するという問題の重要性にかんがみまして、地方分につきましてもこういった報告を徴収するように検討いたしたいというふうに考えております。  ただ、今年度分につきましては、すでに年度の四分の三近くが経過をいたしておりますことと、省庁によりましてはコンピューターを使いましてそういった取りまとめをしておるところもございまして、報告のやり方が変わりますといろいろソフトウエアから変えなければならない、こういうこともございますので、実施をするといたしましても明年度分からということでひとつ検討をしてみたいというふうに考えております。
  53. 米原昶

    ○米原委員 非常に件数が多いわけですから、確かに繁雑なことはよくわかるのですが、本当に中小企業に官公需をできるだけ出すということが、私は景気対策としても非常に重要な段階にきているのじゃないかと思うので、多少繁雑な点はありますが、工夫をして重要な点はやはりつかまれる必要があるのじゃないか、こういう感じがするのです。  たとえば、官公需法でも組合を国等の契約の相手方として活用しなければならないとされていることなどから見ても、共同受注を促進させる上で、どのような実績が上がっているかについても報告を求めたらいいと思う。現在は様式3の随意契約の活用例しか報告されておりませんが、各官公需発注機関に対しては、官公需適格組合だけでなくて、ほかの組合などに対する共同受注の実施経過についても報告を求めた方がいいと思う。これは「昭和五十年度中小企業者に関する国等の契約の方針」のIIの(3)「事業協同組合等の活用」の決定からいっても、このような発注を増大するよう指導し、また、組合等に関する発注実績をまとめていくべきではないかと思いますが、どうでしょう。
  54. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 この官公需の発注に当たりましては、事業協同組合等を極力活用していただくように、私どもも各省庁にお願いをいたしておるところでございます。適格組合として証明を出しました組合の受注状況につきましては、実績を全部把握いたしておりまして、たとえばその関係では、四十七年度の実績が百七十四億円、四十八年度が二百十九億円、四十九年度は三百二十億円でございまして、五割強もふえてまいっております。ただ、証明書を出しておりません一般の事業協同組合、これは全国で五万ぐらいございますけれども、この協同組合向けの発注状況についての全般は、現在はまだそういった資料を徴収しておりませんけれども関係各省庁と協議をいたしまして、先ほどお答えいたしましたように、地方支分部局等の報告も徴収するのとあわせまして、五十一年度からそういう資料を徴収するように各省庁と協議をしてみたいというふうに考えております。
  55. 米原昶

    ○米原委員 それから、共同受注を促進させるためには、いまおっしゃった中小企業等協同組合法で言う事業協同組合などに限らないで、零細な業者の任意の団体などに対しても、共同受注の体制があるなら発注対象として活用するようにしたらいいのじゃないか、こう思いますが、この点どうでしょうか。
  56. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 私ども協同組合を官公需の発注先として推進いたしておるわけでございますが、官公需の契約は国が私人として行います私法上の契約でございます。したがいまして、もし任意団体をこの契約の対象ということにいたしますと、その権利関係あるいは責任の関係がきわめて不分明になりまして、取引の安定性を欠くおそれもございますので、共同事業ということで発注します場合には、法律に基づきまして設立されました事業協同組合というものを活用するようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  57. 米原昶

    ○米原委員 おっしゃる意味はわかるのですが、実際に事業協同組合の加入率を見ますと、四十九年十二月の中小企業庁の地域問題実態調査によってもまだ三七%で、過半数の中小企業者は未組織のままであります。しかし、中小企業者の自主的な共同化の意識は最近では高まっておりまして、協同組合などに至る過渡的な組織として、任意の業者団体が数多く生まれております。四十九年度の中小企業白書も指摘するように、零細な業者ほど事業協同組合などへの加入率が悪いわけであります。また、形だけ組合になっても活動ゼロという休眠組合も多いことは、中小企業庁も知っておられることと思います。それだけに、自主的、民主的な業者の共同化を育てる必要があり、そのような意味から言っても、法に基づく組合等に限ら、ず、任意の業者の組織に対しても発注の対象とするような措置をとられるならば、それがまた協同組合化の一つの拍車になるのじゃないか。つまり過渡的なものとして共同受注ということができるようになれば、協同組合もつくりやすいのじゃないか、こういう相互関係があるのです。そういう意味でも、もしそういう実態をつかまれるならば、そういう体制ができたものは発注の対象にしていいのじゃないか、こう思いますが、どうでしょうか。
  58. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 事業協同組合の設立は、認可は決して制限的に行っておるわけではございません。四人以上の方が寄られまして協同組合をおつくりになるということであれば、一定の要件にかなうものはすべて認可されておりますので、やはり協同組合組織という形でちゃんと法律の許可を得て組織をつくられて、その形で受注されるように希望するわけでございます。先ほども申し上げましたように、任意団体でございますと、その内部構成員の権利関係、責任の関係が不明確でございますので、もし受注した事業が受注契約どおりに実行されなかったりした場合の補償と申しますか、損害賠償の問題等につきましていろいろトラブルが予想されるわけでございまして、そういう意味合いでも、この契約の対象となる法人はちゃんと法人格を持つものが必要であろうというふうに考えるわけでございます。
  59. 米原昶

    ○米原委員 では、その次に、国等の契約の方針に基づいた実績の問題点について聞きます。  まず、中小企業官公需特定品目の発注実績ですが、各省庁などを取りまとめた総額の内容を見ますと、特定品目でありながら総計で六〇%もが大企業に発注されております。特に外衣、下着類は中小企業への発注は一二・六%、織物で三六・三%、繊維製品で四二・九%、潤滑油で一一・一%であります。このような実績では、わざわざ閣議決定して中小企業向けの特定品目として指定した意味がなくなるのではないか。本来なら中小企業に全額発注してもしかるべき筋合いの品目である。この点、改善の余地があることは、この前の予算委員会で、建設省や厚生省などが野間議員に改善の約束をしたことから見ても明らかであります。この点の改善をすれば、中小企業発注はふえるはずです。また、特定品目の発注については、本省のみでなく、各出先機関にも中小企業発注品目として増大するように徹底すべきであります。閣議などで、この点、各省庁、政府機関において特別の措置をとるように私は要求します。大臣としてもそういう措置をぜひとってもらいたい。  当然、中小企業が全額やってもいいものが、いま言いましたように実績はそうなっていない、こういう問題があるわけでありますから、この問題は各省庁の地方機関、出先機関などでも、この政府の決めた特定品目はできるだけ中小企業にやれということをもっともっと徹底させるようにしていただきたい。そうすれば三三%か三四%の数字よりももっと上げることができることは、もうわかっているのです。この点、もう一度大臣がこういう問題を閣議にも出していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  60. 河本敏夫

    河本国務大臣 当初に申し上げましたように、政府の基本方針は、あらゆる努力をいたしまして中小企業に対する官公需の発注をふやしていこうというのが基本的な方針でございますから、今後とも差し支えない限度におきまして積極的にいろいろ対策を講じていきたいと思いますが、いまお尋ねの具体的な問題につきましては、長官から答弁をさせます。
  61. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 特定品目は、特に中小企業者が受注しやすい品目ということで選定をいたしておりまして、そのために発注のニュースも中小企業関係の機関を通じまして中小企業者にあらかじめ公表をいたしております。その結果、機械すき和紙におきましては九六%、印刷の関係は八七%、家具は五四%が中小企業向けに発注をされております。ただいま御指摘のございました外衣、下着類は確かに一二・六%、織物は三六・三%、それから潤滑油は一一%でございまして、この比率が低いことは私どもも承知をいたしております。  なぜこの関係は比率が低いかということでございますが、たとえば織物で申しますと、防衛庁の関係の大量の制服が中小企業向けに出ていない。それから外衣、下着類でも、防衛庁でございますとか、あるいは郵政省の関係、あるいは国鉄の職員の制服、こういうものの大量発注分が中小企業に出ていない。それから潤滑油の場合には、同じく防衛庁なり国鉄のものが中小企業に出ていない。こういうことから率が下がっておるのでございまして、いま申し上げましたような大量発注の機関分を除きますと、大体九割ぐらいが中小企業に発注されております。したがいまして、問題はこの大量発注されておるものをいかに中小企業に振り向けるか、こういうことであろうかと存ずるわけでございます。  こういった大量発注のものは、規格がやかましいとか、あるいは非常に大量でございますので中小企業の能力から受注しにくいとか、あるいは中小企業に出しました場合に、もし規格に合わないものが納入された場合のめんどうとか、そういうふうなことを考えられて、現在はまだ中小企業に出ていないのでございますけれども、こういう点につきましてもいろいろ工夫をこらしまして、極力中小企業に発注していただくように、私どももさらにこういった大量発注の機関にお願いをしてまいりたいというふうに考えております。  先般、予算委員会で野間委員から御質問のございました、たとえば建設省の外衣、下着類につきましては、今年度につきましてはもうすでに契約が終わっておりまして、購入の予定がないようでございますが、来年度以降につきましては何とか中小企業に回すように努力をしたい、こういうふうなお話を伺っております。
  62. 米原昶

    ○米原委員 おっしゃるように、確かに中小企業に簡単には発注しにくい部面があるということはわかりますが、しかし、一応閣議で決まって、わざわざ中小企業向けとして特定品目を決めたわけです。もちろん単純にそのまま中小企業に持っていけないような面があることはわかります。そこで、いまおっしゃったような工夫が必要だと思うのです。どういうふうにしたら中小企業に出して、しかも規格の統一が守られていくかというような点で工夫が要るのではないか、その点でひとつ中小企業庁の方でもよく方法を考えていただきたいと思うのです。  その次に、法務省の方に来ていただいているので、具体的にひとつ伺いたいのですが、法務省の方のこの閣議決定の措置状況を見ますと、まず中小企業官公需特定品目の調達状況では、織物では中小企業へは一二・二九%、外衣、下着類では〇・〇五%、繊維製品では二三・六九%で、特定品目でありながらきわめて中小企業への発注が少ないわけであります。この点、もっと改善できないものかどうか。また、法務省でも一定の建設事業があるはずですが、中小建設業者に対する配慮の項で全くなされていないように思うのです。こういう点で、一定の通達などを出して具体的な配慮をすべきではないか、こう思うわけですが、この点について法務省の見解を聞きたいと思います。
  63. 近松昌三

    ○近松説明員 法務省といたしましては、かねてから中小企業に対しまする発注の確保については鋭意努力をいたしてまいっているところでございます。御質問の特定品目のうちでも、昭和四十九年度の実績を見ましても、潤滑油の比率が九六・四%、印刷関係では九三・八%、さらに機械すき和紙関係では九九・六%となっておりまして、この数字をごらんいただきましても、法務省といたしましては中小企業受注について特段の配慮を傾注いたしております。そういう基本姿勢が御理解いただけようかと存じます。  ただ、御指摘の品目でございますところの織物、外衣、下着類につきましては、昭和四十九年度の実績で総額で三億八千万でございまして、その比率はまことに残念ではございますが低いわけでございます。その原因と申しますか、あるいは理由についていろいろ検討いたしておりますが、これらの品目のあるものは、主として法務省の矯正職員あるいは入管関係職員の制服、さらには矯正施設の受刑者その他収容者の使用いたしますいわゆる収容者用被服類、給与衣類等がその中心でございまして、これは収容者処遇の目的の達成のためにその衣類等についての平等な取り扱いと申しますか、公平、質の均一化を図る必要がございまして、相当期間にわたりまして全国的規模において規格の統一とかあるいは同一品質の保持を考慮しなければならない、こういう要請があるわけでございます。そのため大量発注等の方式によらざるを得ないために、中小企業者に対しまする十分な発注が困難であった経緯でございます。  しかしながら、今後は、規格の検討はもとよりでございまして、数量面及び工程面から見ましても、共同発注方式あるいは分割発注方式についていま一段と工夫をこらしまして、可能な限り最大限に中小企業に対しましての発注の機会増加させるよう、現在なお特段の努力をいたしている次第でございます。  なお、第二点につきましては、所管の営繕課長から答弁させます。
  64. 水原敏博

    ○水原説明員 営繕工事の発注に関しましては私ども営繕課の所管事項でございますので、私から御説明いたします。  法務省の所管いたしております営繕工事の発注に当たりましては、従来から分離発注を推進することによりまして中小建設業者の受注の機会の確保を図ってまいったのでございますが、昨四十九年からはさらに一層これを推進するために、次の三点につきまして改善、考慮をいたしております。  その第一は、契約予定金額に対応いたします入札参加資格区分についての改定でございます。昭和四十八年度までは、資格区分でAランクと申しますいわゆる大手企業でございますが、これにつきましては受注の機会の制限を一切付しておりませんでした。したがって、仮にこの工事金額が三百万あるいは一千万という低い金額であっても、競争入札の参加資格があったわけでございます。それからその下のBランクでございますが、中小企業と申しますのはAランクを除くB以下の企業でございますが、このBランクにつきましても一億円未満の工事という制限でございました。それからCランクにつきましては四千万円未満の工事金額に見合う入札に参加できますぞという規定を定めておりました。  しかし、これでは大企業がどの工事にでも応札できるということになります。建物を建てる際には、やはり実績がございまして、いい技術を持っておる業者を選びたいのは常でございますが、最近の建設業界の実態を見ておりますと、中小企業でも十分に大きな工事をする能力があるというふうに判断いたしたわけでございます。そこで、Aランクの業者が中小企業の工事にまで介入してくるようでは困りますので、Aランクの大手企業につきましては一億五千万円以上の工事についてのみ入札参加を認めるぞ、このような改正をいたしました。それからBランクにつきましても、従前一億円未満でございましたのを、一億五千万円未満までは入札資格があるぞ、Cランクにつきましても、四千万円未満であったのを一千万円引き上げまして、五千万円未満の工事につき入札してよろしいというふうに改正いたしたのが第一点でございます。  それから第二点は、分離発注の強力なる推進でございます。昨年の六月二十日付で官房会計課長名で、予算の効率的執行を図ることと中小企業者等の受注の機会の確保を図るために、営繕工事の発注に関する基本は分離発注で行いますぞということを定めまして、この依命通達を発して、原則として営繕工事につきましては分離発注をとることにいたしました。  いま二点まで申し上げましたが、しかしながら、これでもなお法務省の発注いたします工事は、刑務所、検察庁、法務局等、本庁工事につきましては金額が多くなります。そうなりますと自然と大手企業がとることになりますが、政府の方針でもございますし、中小企業者に対する受注確保は法律で規定もされておりますので、五十年度からはさらに一層推進を図るために、第三点といたしまして、中小建設業者による共同企業体を結成させて、大規模工事につきましても、その共同企業体、いわゆるジョイントベンチャーでございますが、これに入札参加の資格を与えることにつき配慮をいたしたわけでございます。これにつきましては、五十年の九月一日に共同請負実施要領というものを官房営繕課で作成いたしまして、各契約担当官等に通知をいたしまして、また業者に対しましても、法務省はこのような姿勢でいたしますということを通知したわけでございます。  先生の御指摘にありました四十九年度の提出資料6号様式によりますと、中小建設業者に対して配慮した例につき該当事項なしと回答いたしたわけでございますが、これはまことにここでおわびをいたさなければなりません。事務の私どもの手違いで、先ほど御説明いたしましたように、四十九年度におきましては特に配慮したのが二点、五十年度に関しましてはさらにそれを推進するための共同企業体による請負実施要領の作成をする等、政府の方針に従った方策をとらしていただいておるわけでございます。
  65. 米原昶

    ○米原委員 一定の努力がかなりやられておることはわかりました。そういう点、もっとさらに工夫してもらいたいと思います。  いまおっしゃった分割発注の問題ですが、国等の契約の方針でも、分割発注の推進ということが決定されているわけですが、他の省ではほとんど実行されていないところがかなりあるわけです。それはもちろんその事業の性格にもよりますが、運輸省、大蔵省、郵政省、労働省、それから建設関係の公団、国鉄、厚生省などは、該当ゼロとなっておるところが多いと思うのです。このような実態について見ると、せっかくの閣議決定が、この分割発注の点ではかなり空文化している印象を受けるのです。また、契約限度額の引き上げについても、中小建設業者に対する配慮も実行されてないところが——いまの法務省の話ではそういうものが出されているようですが、そういうことがされてないところが多いように思います。  以上のように、毎年閣議決定されておる中小企業者に関する国等の契約の方針は、たてまえとしては存在していても、その実態はまだまだきわめて不十分のような印象を受けます。この点、各省庁や政府機関、地方出先機関に至るまでもっと徹底するように取り決める必要がある。この点についてもう一度長官の見解を聞きます。
  66. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 結局、分割発注を進めましたり、あるいは契約限度額をさらに地方支分部局に権限委譲をする、こういうことにつきまして各省庁の御理解を得まして御協力いただくということが何より大切でございますので、今年度のこの官公需に関します政府の発注方針を閣議決定いたしました後、全国四十七カ所、一府県一カ所ずつ、全国の都道府県に参りまして、その地域の国の出先機関の方々並びに地方の受注を希望される方々にお集まりいただきまして、この方針関係説明会を催したわけでございます。  また、中央におきましては、去る十月十三日に再度各省の契約担当官にお集まりをいただきまして、こういった分割発注の推進なり契約限度額の引き上げにつきまして御協力をいただくようにお願いをいたしたのでございまして、あらゆる機会を通じまして各省庁にこういったことにつきましての御理解をいただくように努力をしてまいりたいと考えております。
  67. 米原昶

    ○米原委員 その点で、建設省は、野間議員の要求もあって、建設業務における事業協同組合の活用について、ランクづけの問題も含めて改善の通達を出したそうでありますが、その他の建設業務を持つ省庁、政府機関は、ほかにもかなりあるはずです。郵政省も委員会で、平田議員に、同様の通達を出すことを約束したそうでありますが、建設業務を持つほかの省庁、政府機関等で建設業における共同受注を促進させる措置として事業協同組合等を活用すべき通達を出すようにぜひ取り計らってもらいたいと思うのです。この問題では、そういう事態だとしますと、大臣からもぜひこの問題はもっともっと徹底させていただきたいと思います。いまのところでは、いろいろ要求を出していくと、各省庁でばらばらに認めつつありますが、まだまだ徹底しない印象を受けるのです。ぜひこの点、大臣からも格段の提議をしてもらいたい、こう思うわけです。
  68. 河本敏夫

    河本国務大臣 中小企業に対する官公需をふやすために、今後あらゆる努力を積み重ねていきたいと存じております。
  69. 米原昶

    ○米原委員 それから、これはある官公需の適格組合に聞いた話ですが、日本電信電話公社、警察庁、それから防衛施設庁では登録すら拒否しております。また、指名競争の場合、発注計画を公表しないというのは問題だと思うのです。官公需発注の公平さを確保する上からいっても、発注計画は公表すべきだと思うのです。結局、官公需担当官との結びつきの強い企業に優先的に発注が回るというような不公正は正す必要がある、こう考えるわけですが、この点について見解を聞きたいと思います。
  70. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 国の調達の方式といたしましては、一般競争入札に付します場合と、指名競争入札の場合と、随意契約の場合とございます。公表をいたしまして入札をいたしますのは一般競争入札でございますけれども、非常に費用がかかるとかいったような難点もございます。したがいまして、指名競争入札が活用されることが多いわけでございますけれども、指名競争入札につきましては、その発注の規模と参加企業者の企業規模を対応させまして、私どもとしては、先ほど法務省からもお話がございましたように、なるべく同一ランクの方で入札を行う、上位ランクの人が下の仕事におりてきて参加するということによって仕事を持っていくということのないように、同一ランクで入札をさせていただくように各省庁にお願いをいたしております。そのような趣旨の通達も建設省ではお出しいただいたわけでございます。  ただ、この指名競争入札は、一般公開入札の公表に伴う繁雑さなり費用を考えまして指名競争をやるわけでございますので、そういう意味からも指名入札は公表はされていないわけでございますが、登録してあります業者について、その発注する仕事の内容に応じて公正な指名競争入札参加への通知がなされておるものというふうに考えております。
  71. 米原昶

    ○米原委員 次に、中小企業のいわゆる高度化、組織化問題について聞きます。  これらの政府の上からの共同化、協業化については、従来から、結局中小企業の上層部ないし中層部しか対象にならないで、零細な業者が取り残されるというような批判がありました。また、共同化、組織化されても、結局大企業の単価切り下げに利用されたり、業者は莫大な借金を抱えて、その返済に四苦八苦ということも指摘されております。政府としてはこの点どのように考えておりますか。  すでに官公需問題のところで述べたように、四十九年度の中小企業白書自身も、従来の事業協同組合等の法に基づく団体などによる高度化、組織化は、従業者規模の小さい企業では余り進んでいないことを認めております。しかしながら、現在の長期にわたる不況と、大企業中小企業分野への進出や下請いじめが横行する中で、これらこれまで政府の施策の対象から外れた零細業者の中に、自主的な共同化、組織化の動きが出ているのであります。このような零細業者の運動に対して政府としては何らかの助成の措置をとるべきではないかと思いますが、この点どうでしょうか。
  72. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 小規模企業の組織化問題でございますが、現在、協同組合あるいは合併等を通じましていわゆる共同事業という形で高度化事業を行います場合には、政府から中小企業振興事業団を通じまして非常に低利の高度化資金が融通をされておりまして、大変に活用していただいておるわけでございます。  これは大規模な中小企業が多いのではないかというふうな御質問でございましたけれども、現在まで高度化資金の貸し付けをいたしました組合が、昭和三十六年から四十九年の約十五年間におきまして五千三百ございます。この組合の組合員数は約二十六万企業でございますが、この中で従業員二十人以下の小規模企業の数が二十万でございまして、全体の約八割を占めております。そういうことから見ましても、高度化事業が中小企業の中の大規模の層に偏っておるということは決してないのではないかというふうに考えております。  と同時に、特にもう少し零細な方々の利用を図りますために、共同工場アパート制度というものを設けております。これは、従業員二十人以下の小規模な中小企業者が一つの建物に集団として入りまして工場を一体的に運営するということにつきましての助成措置でございますけれども、所要資金の八割を無利子で十六年の期間で貸し付けておりまして、これは従業員二十人以下の小規模層の方だけが利用できる制度でございます。  また、今五十年度からは、国、地方自治体等がこの高度化資金を使いまして先に工場アパートを建設いたしまして、それをリースにすると申しますか、後からその中に中小企業者に入っていただきまして、十六年間で返済をしていただく。この場合には、一〇%の頭金を払っていただけばその建物に入居できる、残りの九〇%を十六年で返済する、こういう非常に有利な制度になっておりまして、これも同じように従業員二十人以下の中小企業に限って利用できるようにいたしております。  そういうふうに、高度化事業自体も中小の中でも小規模の方に非常に利用されておりますが、さらにその中でも小規模の方に限ってより優遇した形での利用のできる仕組みをいろいろ考えておるわけでございます。
  73. 米原昶

    ○米原委員 現在の中小企業者に対する政府の金融上、税制上の助成は、いわば法に基づく組合のみであります。しかしながら、零細な業者は、いきなり協同組合といっても、準備や訓練、出資上の負担などを考えると直ちには組織されないことは、白書も認めておるとおりであります。  たとえば東京の品川区に、これは私の選挙区ですが、四十九年の五月に認可された東京城南機械工業協同組合というのがありますが、その設立の経過を見ますと、昭和四十二年の五月に生まれた品川工業会が出発点になっておって、協同組合設立までには七年もの月日を要しているわけであります。この組合は中小企業庁も共同化のモデルケースとして推奨しておりますが、このような準備期間を経て生まれた協同組合であればこそ組合員の結束も固く、仕事も順調にいくのであります。すべて組合の設立に七年もかかるというわけではありませんが、自主的な共同化、組織化のこのような芽生えを大事にする必要があります。形だけは組合でも、休眠しているのやら、大企業の下請系列化に利用されているのやら、問題の多い組合もあります。それだけに、自主的、民主的な共同化、組織化を行っている動き政府としても援助する必要があります。  私の知る限りでも、たとえば神奈川県の下請工業協会や東京総合製本印刷センターなど、法制組合までには至っておりませんが、零細業者の自主的な共同化の運動があります。政府としては、このような団体に対しても、金融上、税制上の助成措置や官公需の発注の対象として扱っていただけないか、これを育てる援助をやるべきではないかと思うのです。このような零細業者の高度化、組織化を推進する必要があるのではないか、こういう点はどう思われますか。
  74. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 現在、従業員が一人から三人という非常に零細な規模の企業の組合組織率を見ますと三三%でございまして、こういった零細な層でも三人に一人は協同組合に入っておられる、こういう状況になっておりまして、必ずしも零細層が組織率が低いとは申せないと思いますが、さらにその組織化を進めてまいりたいと考えておりまして、そのために、その指導に当たっております中小企業団体中央会にいろいろ補助金等を交付しまして、組合設立の指導をいたさせておるわけでございます。  組合自体に対する助成の問題でございますが、組合として国が長期の低利金融等を行います場合には、協同組合等、あるいは商工組合とか、やはり法律に基づきます法人格を持っておることが必要であろうと考えております。その理由は、やはり組合の責任の問題等から、貸付金は返済の問題が出てまいりますので、その返済の責任を負うことにつきまして責任関係が明確になっておることが必要であろうと思うわけでございます。まだ任意団体であります場合には、組合を設立されるという方向で御努力いただくか、あるいは個々の企業として国の各種の助成制度を御利用いただく場合にはまたそれなりの各種の援助手段があるわけでございまして、政府系の金融機関によります各種の融資、あるいは府県を通じますたとえば設備近代化の資金の貸し付け、これは零細な中小企業者に限りますけれども、所要資金の五割を無利子で貸し付けております。あるいは設備のリース制度、これも零細な中小企業に対しまして期間五年で設備を貸与いたしまして、頭金一割であと九〇%を長期に年賦でお払いいただけば期間満了時にはその中小企業者の所有になる、こういうふうな制度も国と県が半々ずつ資金を出し合いまして運用をいたしております。したがいまして、個々の企業としてはそういった制度を御利用いただきたいと存じますし、団体として御利用いただく場合には、やはり協同組合法に基づく組合の設立と法人格をとった形の組織を整えていただきたい、かように考える次第でございます。   〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕
  75. 米原昶

    ○米原委員 もう時間が参りました。実はもう少し聞きたかったのですが、時間がありませんので終わりますが、つまり私の強調したいのは、最近の不況の中で、しかもきわめて自主的に、民主的に共同化を進めて成功した例と、それから政府がみずから高度化事業として進めた中には逆に失敗した例、あるいは食い物にされた例というようなのがかなりあるのです。そういう点で、本当に零細業者の中から起こってきたそういう芽を生かすように、もっともっとそういう点をつかまれる必要があるのではないか。必ずしも政府が上から計画したものが実態はうまくいってない例もかなりあります。そういう点に中小企業庁としてももっと目を向けられる必要がある、こういう意味質問したわけでありますが、別の機会にまたこの点は質問することにします。  終わります。
  76. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 松尾信人君。
  77. 松尾信人

    ○松尾委員 不況対策の問題につきまして、時間の許す限りまず質問をしたいと思います。  経済企画庁長官が昨日の経済関係閣僚協議会で十二月の月例経済報告説明されたようであります。この中で長官は、最終需要はいまだ盛り上がりを欠いているために景気の回復力は弱い、総合的な景気対策の着実な推進に努め、その効果の浸透を図りたい、このように述べておられると報道されておるわけでありますけれども、かいつまんだ要旨を企画庁の責任のある方から御説明願いたいのであります。
  78. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  昨日経済関係閣僚協議会がございまして、福田経済企画庁長官から今月の月例報告報告したわけでございます。その要旨は、最近の経済動向を見ますと、物価は比較的落ちついた状況が続いておりますけれども景気最終需要の盛り上がりが消費あるいは投資輸出それぞれについてまだ必ずしも力強くなくて、景気回復の力が弱い。この理由は、消費は実質消費の伸び方が少し停滞しているということに加えまして貯蓄率が上がっているというようなこともございますし、輸出につきましては世界の同時的な景気後退によって停滞を続けている。そういう状況で、設備投資も、過剰設備のもと、あるいは企業収益も落ちているというようなことから、現在のところ大変冷え込んでいるということがございまして、この点は機械受注からも確認されるところであります。  したがって、そういう状況の中から景気回復のきっかけをつかむとすれば、財政支出を中心にいたしました政府支出によるということでありますけれども、これまでとられました第四次の不況対策が、たとえば公共事業の支払い、対民間収支の関係で見ますと最近ふえてはおりますけれども、これが末端において必ずしも十分に浸透してない。したがって、当初期待したとおりに現在までのところ必ずしも行われてないということで景気浮揚がまだ十分でない。したがって、今後の政策運営に当たりましては、第四次対策までの効果が確実に浸透するように努力を続けなければいけない、こういうことが趣旨でございます。
  79. 松尾信人

    ○松尾委員 要旨の説明はいまあったわけでありますけれども、いままで数回の不況対策がそれぞれとり行われてまいったのでありますが、実効が上がっていない。特に第四次におきましては相当自信がある、そして最終需要三兆円の喚起等も可能なんだという非常に自信にあふれたお話でありました。   〔田中(六)委員長代理退席、委員長着席〕 今後の推移も若干見るということでありますけれども、なかなかその実効が上がっていない。一次から四次までのいままでの不況対策をやってこられたわけでありますけれども、なかなかそのようにして実効を上げ得ない。そういう点について四次も含めてどのようにいま反省しておられるのか。その反省に立ってこの後どのようにしていったならば本当の景気浮揚になるか、不況を克服できるかというような、反省とその反省に立った今後の計画等を聞いておきたいと思うのであります。
  80. 安田貴六

    ○安田政府委員 いまの松尾委員の御質問にお答えいたしますけれども、いま前段で調査局長が御説明を申し上げましたような十二月の月例経済報告の概要でございます。したがって、要約して申し上げますると、一次から四次までの景気浮揚対策を講じたわけですけれども、特に積極的な景気対策としては第四次を実施いたすことにいたしたわけでありますが、その効果が現在のところでは思うように上がっておらない、また対策の内容としての実施の進度も、補正予算がおくれたというようなこともありましょうし、いろいろな要因もありますけれども、それがおくれておるということが一つ言えると思うので、したがって、政府としては第四次景気対策の実施の推移を見守りながら、これをどうしても強力に実施を完了する、その成果をまず見詰める、そしてその上に立って次の景気対策をどうすべきかを講ずる、こういうふうになってまいるべきだと考えておるわけであります。  したがいまして、いろいろな御指摘を受ける要素を持っておることでございますけれども、いま政府としてはせっかく実施に移しておりまする第四次景気対策ですから、それの成果を上げるために全力を傾注するということにいたしておるわけでございます。
  81. 松尾信人

    ○松尾委員 どのように反省をしていられるかということに対して、余り反省の色がない。いままでの対策を見守って、そしてやる、特に第四次はそうなんだというお答えのようでありますけれども、今回の不況と従来の不況とは根底で違っておるわけであります。高度経済成長の中の不況、そういうものと、今回は石油ショックでどうしても低成長経済に入らざるを得ない。おまけにインフレと不況が同時に並行的に進んでおる。ですから、長期にわたって経済界全体も不況でございまするし、倒産の件数等もどんどんふえて史上最高を示しておりまするし、負債額も非常に多い。そうして、今後ともに暗い見通しがいま指摘をされておるわけでありますから、何かいままでの発想とは変わった発想をしなくては、末端の需要を喚起するというわけにはいかぬのじゃないか。不況対策が国民の家庭にしみ渡る、そういうような財政金融措置に切りかえていかなくては、今後またとろうとする不況対策につきましても同じような轍を踏んでいくのじゃないか、こういうことを私は考えるわけでありますけれども、政務次官、いかがですか。
  82. 安田貴六

    ○安田政府委員 お答えいたします。  政府の反省の問題を御指摘になられたわけでありますけれども政府としては、先ほどの局長説明にもありましたように、とにかく国際間における貿易の成績は非常に減退しておる。それから、国民の消費需要面におきましても同様非常に低調である。それからまた、企業間の設備投資等についても、こういう時勢ですから無理からぬことでございますが、非常に意欲も低い。そのほか、企業関係におきましては、御案内のとおり稼働率等におきましても大変低いわけでございます。そういう中におけるところの景気対策、しかも片方におきましてはやはり物価は引き上げてはならぬ。政府目標とする物価、五十一年の三月までには前年度対比九%台という一つの至上目標を持っておるわけでありまして、そういうことをなし遂げながら景気対策を講ずるということでございますから、もともとが非常にむずかしいことをやっておる。しかし、どうしてもやり遂げなければならぬことでありますからやっておるわけなんです。  したがって、ここまで参りますと、先ほど申し上げましたように、第四次の景気対策の完成とそれに伴いまする成果を見詰めながら、これからの景気浮揚ということは、これはもう申し上げるまでもありませんけれども民間の自力回復を待つだけではとても景気回復は困難なんで、財政的に苦しい国家財政なり地方財政でございますが、その中で、今後の問題としては、公共事業等を中心とする財政主導型の景気対策ということはどうしても避けられない。したがって、そういう基本的な方向は政府としてはもちろん持っておるわけでございますけれども、さしあたりとしては、第四次対策の成果を見詰めながら、今後における景気浮揚対策をどう講ずべきか、これをまた検討して積極的な方向を打ち出していく、こういう順序になってまいるものだと私は考えております。  御指摘の必要性、緊要性については十分に理解をいたし、またいろいろな御批判はあるかもしれませんけれども政府としてはできるだけのことをやっておるわけでございますので、今後ともいま申し上げましたような基本方針を堅持しながら一日も早い景気の回復のために精いっぱいの努力を払っていく、こう考えております。
  83. 松尾信人

    ○松尾委員 景気浮揚としましては今後とも公共事業を中心にやっていきたい、第四次の不況対策の中にありましても、公共事業が大きな柱になっておるわけであります。ただ、その中でわれわれが納得できませんのは、大型プロジェクト、新幹線または本四架橋の問題等々でありますけれども、要するにこういう日本のある特定の地域に偏るような景気浮揚策で、国民の広い層に向かって景気浮揚が個人消費を喚起するような方向に向いていない、いわば偏った公共事業中心の景気対策ではなかろうか、このように思うわけであります。ですから、やはり最終需要者である国民の需要を喚起する方向に、同じ金を使うならば、公共事業なら公共事業でもこれが中心になっていくでありましょうから、地域に偏らないで、各都道府県が潤っていくような金の使い方をされたらどうか、こういう問題であります。  第四次の経過を見守るとおっしゃいますけれども、見守っても、その柱がそのようなところにありますれば、いまから公共事業がどんどん行われていってそれが景気浮揚になってくると言っても、それは地域に偏っていますよ。要するに、国民全体の家計に対する影響力は非常に薄いわけですね。でありますから、われわれ公明党といたしましては、公営住宅を中心に、あわせて個人住宅も含めて、各都道府県が一律に潤っていく、そこに計画を立て、そして日本全体にまんべんなく、各都道府県にある建築業界の広いすそ野に事業が行き渡り仕事があるというような喚起の仕方が、同じ金を使うならば、国民の個人消費を喚起するためには手っ取り早くて一番有効な措置ではなかろうか、このように提案をしておるわけであります。そういう点について反省を加えて、今後また新しい第五次等のことも考えなくちゃできない場合でありますから、同じ公共事業と言うけれども日本全体に国民のすみずみまで行き渡るような方向に向きを変えたらどうか、こういう提言でありますけれども、いかがお考えですか。
  84. 安田貴六

    ○安田政府委員 こういう不況下における公共事業の選択の仕方に対する御指摘のようでありますが、私ども政府といたしましても、もちろん景気対策的な観点に立っても、あるいはまた国民の生活基盤あるいは産業基盤の整備、あるいはまた社会福祉という観点に立ってみましても、いま御指摘のありましたように、なるべく各地域にあまねく行き渡るような公共事業の取り上げ方というのは正しいやり方だと思っております。  したがって、私もそういうことにおいては同感でございますが、ただ、第四次景気対策の中で政府のとっておりまするいわゆるプロジェクトと称せられております事業に対する公共事業の配分の問題については、必ずしも国民に潤いをもたらさない公共事業だとは私は考えておらない。やはりその地域における建設業界なりあるいは商工業者の方、また、それらを通して一般の働く人方のためにもその効果は相当幅広く行き渡っていく、そういう成果をおさめ得るものだと思っておるのです。でありますから、基本的には松尾委員の御指摘のとおりでありますけれども、今度の第四次対策の中で取り上げた事業が、いまの御指摘のように国民のために広くプラスになる問題ではない、そういう点については必ずしも賛意を表しかねる、こういう見解でございます。どうぞよろしく。
  85. 松尾信人

    ○松尾委員 必ずしも賛成してもらわぬでいいわけでありますけれども、大勢的には私が指摘したとおりであります。おまけに、その力を入れている公共事業、そして、国民の各層にとせっかく政務次官が言われましたけれども、住宅金融公庫の追加分十万八千戸の融資契約率、これが十一月末でわずか一割というように非常に低いわけですね。あなたたちが期待しておられるように行われていけば、これがきちきちと効果をあらわすわけでありますけれども、末端ではどこかで狂いまして、なかなか政府が期待するような効果が上がっていない。結局公共事業の執行というものが非常におくれておるわけであります。このような事実は御存じだと思うのであります。  ですから、特に国民全体に潤うような公共事業をやる、そのような点につきまして、わずか一割ぐらいしかこの契約率がないというような事実は、幾らあなたたちが力を入れても効果は上がらぬのですよ。第四次の不況対策を幾ら見守られましても、こういうような実態ですから、実効が上がってくるのはうんとおくれていくであろう、これは指摘をするにとどめておくわけでありますけれども、私は指摘しておきます。あなたの方でも、指摘された以上はなぜそうなっているのかということをよくお調べになって、ひとつ真剣に取り組んでもらいたいと思います。  それから、何といっても個人消費を喚起しなくちゃいけないわけでありますから、それをどうするかという問題で、いまやっと所得税減税の問題が各界で主張されてまいりました。われわれは最初からこれは主張しておるわけであります。いま家計というものは、物価物価と言いますけれども、物価はもう一〇%以上も毎月毎月上がっているわけですからね。収入の方はなかなかそれに追いつきませんで、家計は非常に苦しい。おまけにそこに入ってくる金がありませんものですから、個人消費というものはもうどうしても伸びないわけですよね。どうしても家計を節約する以外にない。その家計を潤わしていくという道は、やはり住宅企業の関連のものがどんどん仕事が出てくる、そこで購買力もつく、買えばまた景気が重なってくるという二重、三重の効果があるわけでありましょうし、所得税減税の問題なんかは、思い切ってやるならばこれは直接に家計というものが即座に潤うわけであります。これは各界にやっとそのような声が出るようになりましたが、これにつきましては企画庁並びに通産大臣の所見を私は聞きたい。
  86. 安田貴六

    ○安田政府委員 景気対策と所得税の減税の問題についての御質問のようでありますが、所得税減税の問題は、確かに最近いろいろな立場の方々が議論をいたしておることは私も承知をいたしております。ただ、いま国は非常に財源難に陥っておるやさきでございます。したがって、そういう問題が一つありましょうし、またもう一つは、所得税減税をやる場合における程度と申しましょうか、幅と申しましょうか、そういうことが、いまの御指摘になっておられるような景気浮揚に効果を与える程度の所得税減税とは、一体どの程度までのものならば効果が起きてくるのか、国民の消費生活態度というのは節約的な姿勢が非常に強いことは御承知のとおりであります。したがって、そういうような効果を上げることについても大変問題点が多い。  それから、いままでの経済企画庁福田長官のこの種の質問に対する政府国会等における答弁では、景気対策のためには政府としては人為的な刺激政策はとらないということをしばしば言われてまいっておるわけであります。したがって、経済企画庁としては、現段階におきましては所得税減税に対しましてはそういう考え方はいまのところはない、こういう姿勢をとっておるわけでございまして、議論のあることはよく承知をいたしておりますが、それに踏み切るのには、いわゆる政府全体の結論としてこれは打ち出さなければならぬわけでありまして、一省庁だけの見解でどうこうするという性質のものではないと私は思っておる。特に経済企画庁立場だけではこれは決断を下し得るものではない、こういうふうに考えております。したがって、経済企画庁としては現段階では所得税減税についてはやる考えがない、こういうことをお答え申し上げておきたいと存じます。
  87. 松尾信人

    ○松尾委員 いま通産大臣にもお考えを聞くつもりでありましたけれども、その前に、どうもそのような考え方自体が、本当に日本景気というものをどのようにしていくかということのオーソドックスな考え方にとらわれておる。個人消費というものが盛んになってくれば、鉄から木材からセメントから、全部潤っていくわけですよ。野菜も売れます。魚も売れます。あらゆる日常生活必需品というものを中心にして、そしてあわせてみんなの喜ぶ住宅建設等に方向をしっかり固めていかれて、それが実効ある措置をとられるならば、必ずそこから景気は上がってまいります。  おまけに第一次から四次まで大きな財政資金を入れて、そしていまだに景気が浮揚しない、こういう段階からながめた場合には、直接的に国民の購買力を増す以外に景気浮揚はありません、こう私は思うわけです。ですから、経済企画庁考え方というものは非常に頭が固いのじゃなかろうか。そして国民の消費というものを喚起していくことが、一波が万波を呼ぶということでどんどん下から景気が上がってくるわけですよ。あなたは上からやろうとしておるのです。そうじゃなくて、下からやれば大企業の在庫はなくなるのです。そして、豊作貧乏なんかなくなるんですよ。ミカンも買いますよ。野菜も買いますよ。魚も買うのです。それをみんないま家計が苦しいから抑えに抑えてきて、物が売れない。中小企業関係がそこにいっぱいおるわけでありますけれども、商業からサービス業、製造業、そしてその上に大企業がありますが、そういう全部の物が売れ出せばいいわけでしょう。  もう時間がなくなりましたので、これ以上申しませんけれども、そういう反省をしっかり経済企画庁にとってもらいたい。特に長官からは国会での答弁で、刺激をしないのだ、そういうところに直接やりたくないというお答えを聞いておりますが、変えなくちゃいけないと思うんですね。これは政務次官も、あなたは大臣のかじ取りですから、しっかりきょうのこの問答をひとつ言うてもらいたい。ぜひとも来てもらいたいと思ったけれども、何やかにや言いながら長官は来ませんでした。午後から非常に忙しいと私、聞いておりましたので、あえて長官に来てもらいませんでしたけれども、私は非常に不満であります。  それと、私は新聞で見たわけでありますけれども通産大臣は非常に個人消費というものを景気浮揚の根源に置かれた。所得税減税についても勇敢なる発言をされておるということを聞いておるわけでありますけれども、最後になりましたが、ひとつ通産大臣の所得税減税に対する考え方、そしてそういう面からの本当の意味における日本景気対策、個人消費の喚起というものについてのお考えを聞いて、私の質疑を終わりたいと思います。
  88. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまいろいろ景気問題についてのお話がございましたが、一次から四次までの対策をやったにもかかわらず、なぜ思ったほどの効果が上がらないのか、こういう御質問もございましたけれども、その点は確かに御指摘のとおりでございます。われわれは十分反省をしてみなければならぬと思いますが、いま考えておりますのは、一つは、国際経済動きが年初に考えておりましたよりもはるかに悪い、これがやはり大きな要因になったのではないだろうか。それからもう一つは、日本経済落ち込みが非常に深い。いまも御指摘がございましたけれども、いまだかつてなかったような非常に深い落ち込みであるということ。それからもう一つは、国民経済の規模が非常に大きくなっておるということ。したがって、客観情勢が非常に悪い場合には、ちょっとやそっとの対策では深く落ち込んだ経済はなかなか動き出さない。客観情勢がよければ、ちょっと押してやれば走り出しますけれども、客観情勢が非常に悪いわけでございますし、経済の規模そのものが非常に大きい。でありますから、これを動かすのにはやはり相当な馬力が必要である、こういう点を私たちはいま反省をしておるわけでございます。  そういう観点に立ちまして昭和五十一年度の予算編成も考えてみなければならぬと思いますが、その場合に、やはり一番大きな景気回復の要因というのは、財政を中心とする公共事業、それから貿易の面では、プラント輸出等は相当引き合い等もありまして、これは国別、業種別、プロジェクト別にいろいろ整理をいたしますと、なお現在以上にまとまるものもたくさんあるわけでございますし、商品貿易を強力に進めますとトラブル等が発生しますので、プラント輸出を中心として大幅に貿易を伸ばしていく、そういう対策が必要ではなかろうか、こういうことをいま調整中でございます。  それから、民間設備投資は、やはり民間設備投資が動けるような体制を政府自身が考えていくということ。いまのような状態では民間設備投資はなかなか動かぬのじゃないか。これを動かすためには、やはり政府が積極的な配慮を払っていく必要があろうか、こう考えております。  また個人消費は、いま国民経済の分野で非常に大きなウエートを占めております。二、三年前までは五二、三%であったと思いますが、現在は財政あるいは貿易民間設備投資が減っておりますから、五五、六%にもなっておるのではないかというふうに考えております。これを積極的に動かすということが非常に大きな景気対策になるわけでございますが、これを刺激し動かすのには一体どうしたらいいのだろうか、こういうことで、税金対策等も含めて目下政府部内及び党との関連におきまして意見を調整中でございます。これだけ深い谷間に落ち込んだ経済を動かすためには、やはりいま申し上げましたようないろいろな方法を総合的にかつ強力に始動させませんと、経済というものはなかなか浮上しないのじゃないか。  私どもが一番心配しておりますのは、いま日本企業は、表面、統計によりますと完全失業者は百万そこそこでありますけれども、実際は、終身雇用制という制度によりまして数百万の余剰人員を抱えておる。早く景気を上昇させませんと、企業はもう力がなくなる。結局これに手をつけざるを得ない。そうすると爆発的に失業問題が発生してくる。こうなりますと社会不安等も起こってまいりますので、こういうことにならない前に何とか日本経済を浮揚させたいというのがいまの政府考え方でございまして、昨日も、三木内閣発足一周年に当たりまして総理から、当面の最大課題として、景気の回復が一番大事である、これに全力を尽くすように、こういうお話等もございましたので、いま関係者一同力を合わせてこの問題と取り組んでおるところでございます。(松尾委員「所得税減税は」と呼ぶ)  個人消費をさらに活発にするためには一体どうしたらいいかということ等につきましては、税金対策等も含めましてあらゆる角度から検討しておるというのが実情でございます。
  89. 松尾信人

    ○松尾委員 質問を終わります。
  90. 山村新治郎

    山村委員長 次回は、来る十二日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時三十六分散会