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1975-12-09 第76回国会 衆議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月九日(火曜日)    午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 萩原 幸雄君 理事 前田治一郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 佐野  進君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    浦野 幸男君       粕谷  茂君    橋口  隆君       深谷 隆司君    森下 元晴君       山崎  拓君    板川 正吾君       加藤 清政君    加藤 清二君       勝澤 芳雄君    竹村 幸雄君       近江巳記夫君    松尾 信人君  出席政府委員         通商産業政務次         官       渡部 恒三君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君         中小企業庁長官 齋藤 太一君  委員外出席者         運輸省船舶局監         理課長     山本  長君         建設省住宅局住         宅計画課長   京須  実君         参  考  人         (地域振興整備         公団副総裁)  本田 早苗君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件及び資源エネルギーに件する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松尾信人君。
  3. 松尾信人

    松尾委員 きょうは中小企業の問題につきましていろいろ質疑を重ねていきたいのでありますけれども運輸省の方もいまそろわれましたので、まず、中小企業下請の問題、特に当面非常に大きな問題を起こしております造船不況の問題これにつきまして質問を最初にやっていきたいと思います。  造船不況問題でございますけれども、今回の不況の中で、地場産業的な色彩の濃い造船業につきましては、たびたび私もここで質疑を重ねてまいりました。この造船不況というものは、石油需給動向に伴ういろいろ輸送量問題等も含めまして、長期的な問題と、当面する不況対策、これをどのようにして解決していくのかという、この二つの点について考えなくてはいけないと思うのであります。現在はすでに船腹の需要減、また不況のダブルパンチというわけで、非常に影響が甚大でありますので、特に大型の装置産業でありますところの造船地場産業、これに与える影響というものは非常に大きなものがあるわけであります。  まず、長期的に見ました場合に、造船というものに対して今後の見通しはどうかということでありますけれども、総括的にいろいろの問題を絡めてお答え願いたいと思うのであります。運輸省の方にお願いいたします。
  4. 山本長

    山本説明員 御説明申し上げます。  総括的にというお話でございますが、主に不況関連いたしまして、現状及び今後の問題点ということと理解いたしまして御説明申し上げます。  先生御存じのように、造船界、例の石油ショックを契機といたしまして、特に油の入国量減少及び今後の減少見込みというものを反映いたしまして、タンカー中心とする新規発注というものが激減いたしております。さらに、いままでつくられました、またいまつくられつつありますそれら船舶の増加というものも考えますれば、特にタンカーにつきましては、今後相当長期にわたって需給のバランスが回復しない。いつまでそれが回復しないかということにつきましては、いろいろ有識者の間で議論が存在しておるところでございますけれども相当長期にわたって、数年にわたっては需給ギャップが存在するであろう、その間につきましては、タンカーの、特に大きなタンカー受注というものがほとんどないであろうというふうに言われておるところでございます。  そのほかに、造船関係でもう一つの問題というのは漁船の問題でございまして、海洋法中心とする世界の論議及び現在の漁業に伴うコストと魚価との関連におきまして、将来の漁業不振というものを見越して、漁船建造量が激減しておる。この二つが現在の造船におけるいわば構造的な問題であろうかと考えます。  そのほか、一般カーゴーにつきましても、世界経済及び日本経済停滞に伴いまして、その建造意欲が落ちておることは事実でございますが、これは一つ景気の浮き沈みというものを反映した現象であろう、こういうふうに考えております。  言うならばそういう構造的な、大きく分ければ二つの要因と、世界及び日本景気停滞に伴う建造量縮小、この二つの問題が重なり合いました結果、現在の造船不況というものが論議されておる、このように理解いたしております。  運輸省が持っておりますごく最新のデータで若干御説明を申し上げますと、最近の受注実積は、これは五十年度の上期、四−九月の受注実績でございますけれども受注実績量が二百九十八万トンということでございまして、これは昨年の同期に比べまして五八%という数字でございます。約六割程度受注が落ち込んでおるというのが現状でございます。  ただ、現在造船会社は、過去に受注いたしました船舶量がまだ残っておりますので、その関係上、この上期の造船進水量というものは七百四十八万総トンという数字でございまして、進水量自身は昨年同期に比べまして九八%ということで、昨年の工事量の、若干落ち込んでおりますけれども、ほぼ横ばい数字を現在なお維持しておるということでございますが、ただいま申し上げました受注量が激減しておりますので、今後工事の量が減ってくるということが十分予想されるわけでございます。  以上でございます。
  5. 松尾信人

    松尾委員 受注量は、お話のとおりに、約五八%というように非常に落ち込んでおる。他方、生産の方の見通しは、まあまあいままでの受注量というものが相当ありましたので余り落ちていない、こういう見通しであるというお答えでありますけれども、大体今後を見通してみますると、大手の造船企業におきましても、五十一年におきましては約七〇%見当、五十二年に入りますると大体半分くらいに、五〇%見当に落ちていくというような見通しが立てられておるわけであります。特に中級、中小、こういうところは、まあまあ五十一年は横ばい程度であろう、そして五十二年以後の工事量の確保は非常に困難である、このように言われておるわけであります。  でありますから、雇用見通しでありますけれども、ことしの五月に比べまして、五十三年三月末にその八割見当は確保したいというような希望があるのみでありまして、現実にはなかなか厳しいものがあるわけであります。それはお答えのとおりと思うのでありますけれども、いずれにしても、現在の景気が仮に回復いたしましても、過剰設備というものと過剰人員というものがそこにもう当然発生しておる、これは免れることはできないと思います。でありますから、この過剰設備というものと、そしてそこにおける過剰人員対策というものはいまからもう考えていかなくてはできないわけでありますが、どのようなお考えですか。
  6. 山本長

    山本説明員 御説明申し上げます。  工事量減少見込みにつきましては、運輸省が各造船会社にヒヤリングをいたしました結果一応つかんでおります数字は、先生いま御質問の過程でお述べになりましたように、五十一年度は、これは四十九年度をベースにいたしまして約七〇%程度になるであろう。これはキャンセルの状況あるいは今後の受注見通しにつきまして不確定要素がございますけれども、総合いたしましてその程度になるであろう。五十二年度につきましては、これまたさらに不確定でございますけれども、五〇%前後といいますか、そのような数字が出されておるわけでございます。  これに伴いまして、当然そこに従事する労働者の数というものが過剰になってまいります。ただし、申し上げました現在の造船量は、大きな船から小さな船にわりあいにウエートが移ってくるというところから、必ずしもその五〇なり七〇なり数字が即従業者の働くべき数の比率であるということではないと思います。小さな船になりますと若干工数が多うございますので、その比率よりは少し高目労働者数が要るというふうな状態になるかと思いますけれども、大まかに申し上げましてそういった下降傾向があるというふうに考えます。  これにつきまして、当面とっておりますところは、各造船所造船会社につきましては本工の新規採用の中止でございますとか、あるいは残業を規制いたしますとかというふうな対策をもって、漸次リタイアー分ずつをずっと減少していくような計画を持っておるようでございます。さらに、下請等につきましては、親会社下請会社の話し合いによりまして、長期的な計画に基づき漸減の措置をとっていく。その場合に、親会社としてできる限りの下請会社に対する援助をしていくというふうなことを、運輸省自身、やる場合にはそういうふうな措置をとるようにということを親会社に指導いたしております。  そういった方針でございますが、行政的な、現実の法的な措置といたしましては、現在のところ、雇用対策といたしましては、雇用調整給付金制度適用ということで、企業が一時帰休をいたします場合の一時帰休時における給付金の差額を政府が補償するというふうな雇用調整給付金制度適用業種に、特に造船下請及び下請関連企業不況影響を受けておるものにつきまして指定をいたしております。これは運輸省がという意味ではございません。労働省の問題でございますけれども、お願いいたしまして、そういうふうな措置をとってございます。この措置がとられますと同時に、レイオフをしたその業種につきましては、その後労働者失業いたします場合に、失業給付金がさらに延長になるというふうな制度があわせとられるわけでございます。  そのほか、中小企業に対しましては、特に中小企業信用保険法に基づく業種指定というものを、これも通産省にお願いいたしまして、造船ブロック下請並びに関連業種の一部につきまして指定をいたしまして、その業種の金繰りを助けるというふうな措置を講じてございます。さらに、これも中小企業庁にお願いしてございますけれども中小企業金融公庫等を通じまして、当該業種につきまして金融面につき円滑な措置がなされるようにお願いをし、現実にも行われておる、こういうふうに聞いております。  さらに、長期の問題でございますけれども長期対策につきましては、現在運輸省におきまして海運造船合理化審議会という大臣の諮問機関がございますが、この諮問機関におきまして今後の造船業需給の把握というものを現在やっておりまして、これを通じまして、現在の造船業施設面をも含めて、今後どうあるべきかということを御審議いただいておる最中でございます。めどといたしましては、来年の春をめどにいたしましてその答申をいただきたい、こういうふうな希望をわれわれ申し上げておりまして、そういったスケジュールで答申をいただく。その答申を踏まえまして、今度は造船業自身につきまして施設がふくれ過ぎておるというふうな御批判も現在ございますので、その点についてどういうふうな政策を進めてまいるか、これに伴いまして、そこに働く従業員対策、それからやはり地域におきまして非常に大きな影響造船業は持っておりますので、その地域に対してどういうふうな対策をとっていくべきかということにつきまして方針を固めたい、こういうふうな考え方及び段取りで現在進んでおる最中でございます。
  7. 松尾信人

    松尾委員 いまのお答えの中で長期対策の問題ですけれども、五十二年実施を目途とする、海造審答申が来年の春に出されるであろう、こういうことはありますけれども、この造船界不況というものは一昨年の石油ショックのころから大体の見通しも立てられておったものでありまするし、非常に大きな問題が起こるであろうということは当然予測をされておったものであります。いまごろになって海造審の意見を聞く、来年春ごろ答申が出されるであろう、そしておもむろにそれから内容を検討して五十二年実施に進みたい、こういうことでありますけれども、これでは対策としては、時期的にも非常に大きな問題がいま起こっていますから、幾ら長期対策と言いましても、いろいろの考え方とやり方というものはそれを早く決定して軌道に乗せませんと政府方針ができませんし、できてもそれは非常に手おくれの上の手おくれである。不況というものはどんどん進んでおる。そうすると、造船界自体の先の見通しというものも先ほどあなたのお答えのとおりでありまするので、これは速急に、もう少し時期を早めてがっちりとした長期対策を立てるべきであると思うのでありますけれども、その時期を早めるとかなんとかということについての考えはありませんか。
  8. 山本長

    山本説明員 御説明申し上げます。  先ほど先生の御質問にありましたとおり、また私も御説明申し上げましたとおり、造船工事量自身見通しは、四十九年度をベースにして本年度は九〇%でありますが、来年度、五十一年度は七〇%程度というふうに推定しております。七〇%という数字は、造船会社にとりましては一応の工事量は確保しておるというところでございまして、本格的な不況と申しますか、これに突入するのは五十二年度以降から始まる、こういうふうな判断をいたしておる次第でございます。  ただ、先生指摘のように、いまの数字は全国平均的なものでございますので、これは地域的に各造船所工事量につきまして非常にアンバランスがあることは事実でございます。そういった意味におきまして、先生指摘のとおり、できるだけ早く長期対策につきまして考え方をまとめなければならないという点は全くそのとおりわれわれも考えておるところでございまして、いま審議をお願いしております作業も、できるだけ早く進め得るようにわれわれ事務当局といたしまして努力をいたしておる次第でございます。
  9. 松尾信人

    松尾委員 抽象的でなくて、来年春というようなものをどのくらい繰り上げてやるか、早急にということじゃなくて、その点も詰めて今後実施してもらいたいと思うのであります。  構内下請のことでございますけれども残業時間も非常に大幅にいまダウンしております。対前年同月比でも大体六〇%台まで落ち込んでおるわけでありますし、この余剰人員先ほどお話し雇用調整給付金受給状況、さらに退職をさせられた後の失業保険給付、これが造船界を通じて、この構内下請企業の分についてあなたの方でわかっていますか。どのくらい雇用調整給付金受給者が出て、どのくらい失業保険受給者が出ておるか、こういうことをわかっておればお答え願いたい。
  10. 山本長

    山本説明員 御説明申し上げます。  造船下請構内工減少程度につきましては、先生六割というふうな数字を申されたかと存じますが、私ども現在つかんでおります数字で申し上げますと、現状におきましてはほぼ昨年の同月に比べまして約八割程度になっておる、こういうふうな数字になってございます。  それから、一時帰休に伴う雇用調整給付金の支給の実績でございますが、本年九月までの実績数字で申し上げますと、造船下請につきましては全国で四万二千人日分支給されておる、こういう数字になってございます。  それから、その造船下請の業を離れて失業になった方の失業手当がどのように支給されておるかという点につきましては、はなはだ申しわけございませんが、現在手元に数字を持ってございません。
  11. 松尾信人

    松尾委員 そういう実態をやはりしっかり掌握しておかれるべきでありましょう。ぼくのほうの数字は、これは一時帰休関係でありますけれども造船関係で四万四千六百十二人パーデーですね。その中で長崎だけでも二万七千五百九十七名、これは一日当たりのものであります。  それで、これが結局、一時帰休で一応対応いたしますけれども、それには交付金が三カ月で限度がある。三カ月以上帰休しておりますれば次の段階は解雇である。そして失業保険受給せざるを得ない、こういうことになっていくわけでありますから、やはりこの不況実態というものが構内下請関係にどのようにいま現実影響を与えておるかということはしっかり掌握しておってもらいたいと思います。  次に、構内から離れた下請関係でございますけれども下請関係が非常に大きくこの造船不況というものの影響を受けておる。下請振興法もちゃんとできておるわけでありますけれども、この承認件数というものがいままでわずか九組合、そのくらいしかできていない。そのうちで八組合というのが造船並びに造船関係でありますけれども、この組合現状というものはどのように働いておるか、おわかりでありますか。
  12. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 先生指摘のように、下請中小企業振興法に基づきます振興計画が認可になっておりますのは全体で九件でございまして、そのうち造船関係が八件と、ほとんどを占めておるわけでございます。この振興計画に基づきまして設備近代化あるいは取引条件改善、こういうことを進めておりまして、たとえば税制上の中小企業振興準備金というものを活用いたしましたり、あるいは中小企業金融公庫といったようなところからの特別金利によります融資を受けまして、そういった主として設備近代化中心でございますけれども、従来まで進めておったところでございます。
  13. 松尾信人

    松尾委員 いま長官からお答えがありましたけれども、この法律が余り親企業にとってメリットが少ない、そういうことで広い範囲にまだ利用されていないのじゃないか、それが実情であろうと思うのであります。それで、せっかくこのように法律も施行されて九組合、その中で八組合造船関係というので、いい傾向にはあるわけでありますけれども、ところが、大蔵省が、非常に税収が減っているということで、下請振興法に基づく特別償却償却率を引き下げようとする動きがあると聞いておりますが、これはいまごろそのようなことを言うのは非常におかしいのじゃないか、こう思われるわけであります。むしろ近促法の構造改善計画並みにこれは引き上げるべきである、大蔵省考えは逆ではないかと思うのでありますけれども長官考え方はいかがでありますか。
  14. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 下請振興準備金を取り崩しまして共同施設をつくりました場合には、現行の租税特別措置法によりまして、機械設備の場合には三分の一の初年度特別償却建物は十分の一の初年度特別償却が認められております。今般租税特別措置全般整理縮減の一環といたしまして、中小企業関係租税特別措置の取り扱いにつきましては大蔵省の方からいろいろ御相談を受けておりますけれども、私どもといたしましては、本件の場合ですと下請中小企業体質改善を図るという観点から大蔵省相談をしてまいりたい、かように考えております。
  15. 松尾信人

    松尾委員 金融関係でございますけれども親会社の方が、やはり自分の方の不況のために手形サイトがだんだん延びてきておる。このような傾向に対して、運輸省並び中小企業庁はどのような手を打っておるか。それと、いままでの借金繰り延べについてはどのように手を差し伸べておるか。こういうことで、一連としましてこの不況業種金融事情はどうか。その中で、特に造船関係で非常に苦しんでおるというような下請に対する金融関係について、どのような配慮をいままで具体的になされてきたか。ケースバイケースでやっておるというお答えでありますけれども、これはいま総体的にどのような金融事情になっておるか、あわせて、親企業手形支払い延長の問題、それと、いままでの資金繰り、過去の借金繰り延べ問題等について、造船関係ではこのような手を打ちましたというものがもう出ておると思うのでありますが、お答え願いたい。
  16. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 私ども毎月約三千社の下請に、アンケート調査の形で速報的にその経理状況調査いたしておりますが、十月分の報告によりますと、これは造船を含めました全体の下請でございますけれども受注量が前年同月に比べまして八五%という状況でございまして、まだ前年を一五%下回った受注量でございます。単価はだんだん前年並みに近づいてまいっております。手形サイトはやや縮小を見ましたけれども、平均で百二十二日というサイトでございまして、依然として相当長いという感じを受けるわけでございます。  こういった状況に対しまして、特に造船につきましては信用保険法のいわゆる不況業種対象指定をいたしまして、保証を受けます場合に、通常の業種よりも倍額まで保証が受けられるという制度適用をいたしております。それから、ことしの五月だったと思いますが、民間の金融機関からの特別融資造船下請関係実施をいたしました。  なお、政府系機関につきましても、特に不況色の強いところに資金配分等も手厚くいたしまして、融資面で不安がないように手配をいたしておるわけでございます。また、特にお困りの方につきましては返済猶予措置を弾力的にとるように、再々政府系機関には指示をいたしておりまして、最近の返済猶予状況は、ことしの上半期で去年の一年間に近い額に当たる返済猶予が行われております。この点もさらに今後も弾力的に取り扱うようにいたしたいと考えております。  また担保等が、大分担保切れと申しますか、不足してまいっておるという状況もございますので、先般、今月でございますけれども、三機関通達をいたしまして、すでに借りておる方がさらに借り入れを申し込まれた場合にはその都度担保評価について見直しを行うように、それからその評価に当たりましても、これは借りる方の資金状況によりますが、特にお困りの場合には極力弾力的に計らって、担保対象となる設備等についても、たとえば普通ですと土地建物といった不動産が中心なりますけれども機械設備等担保対象に加えるとか、あるいは担保順位についても必ずしも第一順位にこだわらない、こういうふうに弾力的に計らって、担保の大分減っております中小企業者融資の面で困られることのないようにといった通達をいたした次第でございます。  こういうことによりまして、当面金融関係造船関係下請のお困りの状況について配慮をいたしておるわけでございますが、長期対策としましては、先ほど運輸省の方からお話のございましたように現在海運造船合理化審議会で検討中でございますので、その御答申を待ちまして長期対策の方は検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  17. 松尾信人

    松尾委員 いろいろ長官からお答えがありましたが、もう一つ不況業種と総括的に言いますけれども、その中で非常に大きな影響をきちっと受けておるのがこの造船関連下請である。ですから、そこのところはやはり大きく手厚くいろいろめんどうを見ていくのはあたりまえでありまして、ケースバイケースでやっておって、いま長官お答えのような金融緩和はされておるわけでありますけれども、ドル対法のときに実施されたような償還猶予を、特に不況業種の中のこの造船関連下請につきましては二年間ぐらい償還猶予をするというような包括的なお考えがあってもしかるべきであろうと思うのですけれども、そこまでの決心はありませんか、長官
  18. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 現在、償還猶予につきましては、個別に窓口で借り入れをされました企業資金状況経理状況を十分伺いまして、ケースバイケースに処理をいたしておるわけでございます。造船下請につきましては、一律に、経理内容と関係なしに二年間ぐらい返済猶予をしたらどうかという御提案でございますけれども、ただいまのところでは仕事がそうまだ急に減っておるという状況ではございませんようでございまして、漸次これから先が不況色が強くなってまいる、こういう状況のように見られます。  もちろん下請の場合には親会社よりやや早目に不況がくる、下請の性格から申しまして、先に下請にいろいろ部品等を発注しましてそれを組み立てるということからいたしますと、まず下請の方に先に将来の仕事の減少分に見合うそのしわ寄せがくるという意味におきましては、造船業自体よりも早く下請の方が不況色が強くなるということは私どももそのとおりだと思っておりますけれども、ほかにもたくさん同様の不況色の強い業種がございまして、現状におきましてはやはり他の業種とのバランス等も考えますと、一応個別に事情を伺いまして返済猶予考えるというようにいたしたいと考えておりますが、造船業下請は、他の業種がだんだんこれから不況が回復するのに反しまして、不況色が強くなる傾向にあるかと存じますので、十分下請の実情を配慮するように三機関を指導してまいりたいと考えます。
  19. 松尾信人

    松尾委員 お金の問題をいままで話してきましたけれども、要は仕事量の問題であります。でありますから、下請の方々に仕事を与えるということでありますが、新しく造船関連下請にどんな仕事があるのか、こういう問題であります。事業の転換ということも考えられますが、単に転換ではなくて、新しい分野を開拓していかなくてはいけないのではないか、こう思います。  これは一つ考え方でありまするが、「日本造船業−協力企業の新しい道」というようなことで、日本造船協力事業者団体連合会というところからの提案もあるわけであります。これは結局、下請関係工事量増大を図るために船舶解体をやったらどうか、このような提案であります。これはまことにもっともだと思いますので、運輸省の方で、いま日本の保有しておる船舶の量、そしてどのくらい新しいものを建造して、それからだんだん古くなっていくもの、解体を要する船舶というもののお調べはあると思うのでありますが、そういうものを前提にお答え願いながら、船舶解体というものが年間どのくらいあるものであろうか、そういうものを下請関係でやるとすれば、どのような発想で、解体というものを下請とつないでいったらどうなるのか、これは大企業関係もございましょう、それからドックの使用等もございましょうが、含めまして、ひとつきちっとしたお答えを願いたいと思うのであります。
  20. 山本長

    山本説明員 御質問船舶解体業への転業の問題を含めまして、造船下請業自身の仕事量の低下をできるだけ防ぐと申しますか、そういうふうな方途として運輸省が現在考えておりますのは、一つは、船舶自身の量をできるだけ確保するということがございます。これは長期見通しに立ちますと減少せざるを得ないという状態ではございますけれども、現在日本造船会社がつくっております船の大部分は輸出船でございますので、この輸出船が延べ払いという形で行われております関係上、しかもその延べ払い比率が多くなってまいります関係上、どうしてもそれに対する金融の円滑化を図りたいということで、これは先生質問の解体業とは別でございますけれども、輸出金融というものを実情に合ったようにふやしていくことによって、造船自身の受注減をできるだけ減らしていくと申しますか、造船自身の量をオファーがあったものはとれるようにしていくという形で、輸出金融の拡充ということを一つの目玉といたしまして現在努力中でございます。これが一つでございます。これがひいては造船下請の方に仕事を与えるという結果になるわけでございます。  もう一つは、国内船自身の建造意欲があるものについてはできるだけこれをつくるようにしていくという意味運輸省で推し進めております。外航船については計画造船、それから内航船につきましては船舶整備公団方式による建造、この二つにつきまして、これも財政資金との関連がございますので、これの必要量を確保するということによりまして造船自身の需要を確保し、ひいては造船下請及び関連工業に仕事が流れていく、こういうふうな方法でもって仕事を確保していきたいということで、申し上げましたのはいずれも財政資金との関連で現在努力中のところでございます。  それからもう一つ先生指摘船舶解体業の問題でございますけれども造船下請業の転業の業種といたしまして、みずから持っております技術を生かしつつ転業していく転業先という観点から見れば、船舶解体業への転業ということはいろいろな面においてメリットがある、こういうふうに考えております。ただ、日本におきましては解体に伴うコストの問題、それから、大部分が鉄でございますけれども、鉄のスクラップ価格との問題がございます。現在日本船舶解体はなされておりますけれども、ちょっといま何トンと数字を持っておりませんが、ごく微々たるものでございます。  船舶解体業で世界的に相当大きな分野を占めておりますのは、現在のところ主に台湾の産業というふうに聞いております。しかしながら、日本造船下請業の皆様方が、そういった解体業というものを一つの今後生きる道として検討されておることは事実でございます。そして運輸省といたしましても、それが一つの生業の見通しがあるものであるならば、これは非常にいい構想であろうというふうには考えております。  ただ、いま申し上げましたような解体自身の需要量、それから製鉄におきますスクラップの需要量、それから解体コストとスクラップ価格との関連、こういったものにつきまして、まだ十分な詰めというところまでいっていないというふうに判断いたしておりまして、私ども船舶関係の部局と海運関係の部局とともに現在その見通しにつきまして検討しておる最中、こういう段階でございます。  以上でございます。
  21. 松尾信人

    松尾委員 検討するということでありますけれども、これは検討ではなくて、解体しなくてはいけない船舶は毎年あるわけであります。それは、造船下請不況を脱出するというその糸口としてそういうものを与えるという一つのあなたたちの政策になるわけでありまして、これは速急にそのような方向へ傾いてもらいませんと、不況のために続々と下請なんかが倒産していく。そして二度と立ち上がれる機会をなくする。転換と申しましても、なまやさしいものではない。公共事業等の優先発注等が言われておりますけれども、これは具体的にはなかなかむずかしい。なされない。  それで、自分の技術も生かし、そして設備も生かし、大企業の遊休施設もあわせて利用できるような船舶の解体というものは、採算の問題、またスクラップの価格の問題等ありましょうけれども、この際、日本の運輸行政の中の政策一つの大きな柱として、不況脱出のために船舶解体については下請中心にやっていく。毎年毎年このくらいの解体船舶量日本にある。それをこの三年間、四年間、五年間やっていくうちにまた造船界も立ち直ってくる、このようなめどがないと、下請としても立つ瀬がない。それで、どうしていったらよかろうかという打開の方法もいま見出しがたい状態でありますから、くどいようでありますけれども、もう一回運輸省の決意というものを聞いておきたいと思います。
  22. 山本長

    山本説明員 ただいま申し上げましたように、種々検討すべき問題はございますが、私ども考え方といたしましては、そういった方面、解体業に造船下請業が出ていくということにつきましては、これは非常に適当なことだ、こういうふうに考えておりまして、この方面につきまして検討と申し上げましたけれども、積極的な、それが実現できるような方向で検討いたしておるということでございまして、方針としてもそういうことでございます。
  23. 松尾信人

    松尾委員 運輸省関係はこれで終わります。  中小企業関係に移ってまいりますけれども、十一月の企業倒産が千三百十件台を超えた、そして戦後最高を記録したわけであります。負債総額も二千四百億円台、ことしで三番目。去る三月以来九カ月間連続して一千億円というものを上回っておるわけでありますが、今後年の瀬を迎えまして倒産件数というものがまた見込まれ、年間倒産件数の記録更新ということも確実視されているわけであります。その中でやはり一番大変なのが中小企業であることは言うまでもありません。  ちょうどいま中小企業は、例年のことでありますけれども、ボーナス資金、決済資金というようなもので資金需要が非常にふえておる、それで苦しいやりくりをやっておる。そういうことでありまして、おまけに大量の国債発行というものが予定されておりまするので、金繰りは一層厳しいものになるであろう。民間金融機関というものも中小企業の方にはなかなか金を回してくれぬ、選別融資を強める、そして中小企業の倒産に拍車をかける。第四次不況対策も結局は最終需要というものを喚起するまでに至っていない、依然販売不振である。このような悪条件というものが積もり積もっておるわけでございますけれども政府も第四次不況対策で四千八百億円、あわせて信用保証の推進などもしてきたと言うものの、やはり倒産件数というものが示すように非常に厳しい実態でございます。  これをどうしていくかという当面の問題でありますけれども、いろいろお考えはあると思いますが、長官はこの年末を控えて、そしていままでの倒産なり、倒産に追い込んできたいろいろの事情、若干いま私が申し上げましたけれども、そういうものを前提にされまして、今後この年の瀬を乗り切るための中小企業対策というものはどのようにあるべきであるか、このようにしたいという具体策を聞いておきたいのであります。
  24. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 非常に不況が長引いておりますので、中小企業者の耐久力もだんだん苦しくなってきておるように察せられるわけでございまして、倒産状況もことしの上半期までは八百件とか九百件といったような数字でございまして、高水準ではございますけれどもやや平穏に推移をしておったように考えておりましたが、九月に千件台に乗りまして、十月が千二百七十八件というように戦後最高の件数を記録いたしたわけでございます。さらに十一月は千三百十七件でございまして、十月の記録を再び更新をしたという状況でございます。  しかも、倒産の内容を見てみますと、昨年の倒産はいわゆる放漫経営というもの、たとえば本業以外の不動産投資等に手を出したといったようなことのとがめからくる倒産がわりに多うございましたけれども、最近の倒産の半分は、いわゆる不況型倒産と申しますか、販売不振とか、受注がはかばかしくないとか、こういうことによる倒産が総体のほぼ半分を占めておる状況でございまして、その業種も建設業を初めといたしましてほぼあらゆる業種に広がってきておるという状況でございます。  私どもといたしましては、とにかくまじめにやっておられる中小企業が金繰りがつかないために倒産に追い込まれる、こういうことは絶対に避けたいと考えまして、特に金融面で各般の手を打っておるわけでございます。政府系の三機関融資といたしまして、今年度二兆五千億の融資枠を用意いたしておりましたが、先般四千八百億の年末融資の追加を決定いたしましたので、年間ほぼ三兆円という融資規模になります。このうち第三・四半期に一兆円強、第四・四半期に五千五、六百億円を予定いたしておりまして、年末分の第三・四半期としては去年の一〇%強の増加になっております。  資金需要の方を見てみますと、昨年よりも生産がやはり七、八%方落ち込んでおりまして、操業率も七割五分ぐらいの状況でございますので、前向きの増加運転資金の需要というのはまだ少ないようでございます。同様の意味で、設備投資資金の需要も余り活発ではございません。したがいまして、資金需要の大半は後ろ向き資金と申しますか、減産資金といった内容のものが中心でございますけれども、在庫調整の方は、昨年来ずっと生産を落としておりますので漸次進捗を見ておりまして、この十一月ごろの在庫水準は昨年の同期に比べますとやはり七、八%方低目になっております。  そういう意味合いで、資金需要も前年の資金需要に比べましてほぼ一割増ぐらいの申し込みの水準でございますので、年末の資金融資所要分としては先般の四千八百億の追加で何とか間に合っていくのではないかというふうに見ておりますけれども、今後国債の大量発行とかあるいは地方債の発行といったようなことによります金融面への影響等もあろうかと存じますので、この点は金融の情勢を慎重に見守って、適時適切な措置を講ずるようにいたしたいというふうに考えております。  また、民間の金融機関につきましては、大蔵省の方からお願いをいたしていただきまして、十−十二月の中小企業向けの貸し出し増加の計画といたしまして、三兆五千二百億の目標を先般設定いたしました。これは去年の目標の一二%増の目標でございます。政府系と民間と両方合わせましてこの年末の金融を何とかしのいでまいりたい、かように考えております。  また、特にお困りの向きには返済猶予を弾力的に措置をしてまいりたいというふうに考えております。昨年の年間の返済猶予額は三万件で約千六百億円でございましたが、ことしは上半期で二万件、千三百億円の返済猶予実施いたしております。この点、今後もさらに弾力的に取り計らうように三機関を指導いたしたいと考えます。  また、担保の徴求につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、評価あるいは担保順位、あるいは担保対象とするものにつきまして極力弾力的に計らうように、今月の初めに三機関通達をいたした次第でございます。  また、信用保証の面におきましても、この信用保証が非常に活用をされておりますが、特に零細の担保のない中小企業者のために特別小口保険の限度上げを考えまして、先般本委員会に御審議をお願いいたしまして、ただいま参議院で御審議を願っておるところでございます。  こういった金融面措置並びに先般決定を見ました第四次の不況対策によります追加公共事業あるいは住宅投資、こういうものを速やかに実施に移しまして、いまの中小企業の困難がこれ以上広がりませんように景気の回復を急ぎたいというように考えております。
  25. 松尾信人

    松尾委員 いまのような実態でございまして、後ろ向きの資金を必要とするというのはよくよくの不況であるということであります。倒産もおっしゃったとおりでありまするので、これは政府としてきめの細かい施策をがっちりやっていく以外にないのじゃないかと思います。  これは私があなたに言うのは釈迦に説法でありますけれども、事業所数で九九・四%、約五百万という企業中小企業であります。製造業の出荷額、これは約七十三兆円の五〇%を中小企業が出荷しておる。商業販売額では百十兆円、その六一%が中小企業である。従業員数というものは、全産業約三千九百万の中で中小企業が三千万人を超えておる。このようなことで、家族を含めますと日本人の過半数というものは中小企業で生活をしていらっしゃるわけでございます。  でありますから、このような人々の生活を守るということが一番大事な政府の責任である。その中で中小企業庁というものがもっぱら力を入れていかなくちゃできない分野であることは当然でございます。そして、そういう中で、いま中小企業の方々が自分の死活に関する問題として最大の関心を払っておるのが分野調整の問題でございます。  いろいろ全国大会等も開かれておりますけれども、経団連の方では、分野調整法というようなものの制定、これに反対の立場を明らかにしております。いろいろ理由を述べておりますけれども、このようにして、片や分野調整を頼む、片やそういうものは絶対要らない、こういうことで、これを放置しておきますると、大企業中小企業の対決というもの、そういう対決色というものがますます鮮明になってくる、非常におかしい状態に現在置かれておるわけでありますが、どうも中小企業庁がこの分野調整に関する限りにおいては非常に消極的である、私はそのように思います。  現在の中小企業団体の組織に関する法律、この法律に基づいて団体協約を進めておる、不調の場合には通産に訴えて行政指導をする、こういうことでありますけれども、いままで当事者でまず団体協約を結ぶ、うまくいった事例があるかどうか、そして、うまくいかないで通産省にしりが持ってこられ、これをどのように解決してうまくいったのかどうか、この点はいかがですか。
  26. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 中小企業団体法に基づきます特殊契約の申請並びに認可の実績は一件もないというのは、先生の御指摘のとおりでございます。これは、一つは、紛争の当事者がこういった法律の発動ということによります解決よりもまず当事者同士の話し合いを望みまして、話し合いがつかない場合には、この法律にも主務大臣のあっせん、調停の規定がございますけれども、この法律の発動という形でなくて、主務大臣が行政指導する、こういう形によりまして大半のケースが従来片づいておりますために、この法律の発動というところまでいかなかったのではないか、こういうふうに私、考えるわけでございます。  それで、現実にこれまで幾つかの紛争がございましたけれども、大半のものにつきましては行政指導によりまして解決を見ております。たとえば軽印刷のQプリントの問題、あるいはもやしにつきましてのユニイーストという会社の進出の問題、あるいはクリーニング業におきますエーデルワイスという会社の進出の問題、こういった問題が役所の行政指導を通じまして当事者に話がつきまして、円満解決を見たというケースが多いように思われます。もちろん、現在まだ紛争中と申しますか、妥結を見てないケースもございますけれども、これらにつきましては鋭意あっせんを続けておる段階でございまして、なるべく早く妥結を見るように努力をいたしたいというふうに考えております。
  27. 松尾信人

    松尾委員 いまいろいろお答えがありましたけれども、結局大企業としては中小企業の分野に入りたい、そうしてそこで問題が起こる、問題が起こると団体法で一応話し合いをする、そこでうまくいかない、そうして主務大臣の行政指導になるわけでありますが、行政指導の結果、結局中小企業の大きな反対に押されて大企業の方が引き下がるということで解決しておるわけでありまして、そのようなケースでいままでおさまってきておるのだと私は思うのです。  公明党の案を中小企業庁長官は一度検討されましたか、いかがですか。
  28. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 十分承知をいたしております。
  29. 松尾信人

    松尾委員 ではおわかりと思うのでありますけれども、何も、すべて中小企業の分野に入ってきてはいけない、こう言っているのではない。入ってきていい場合もありましょう。ただ、いまのように何でも自分の方で勝手に入ってくるということは困る。でありますから、大企業中小企業の分野に入ってきたいというときは、大企業がまず公告しなさい、そうして、中小企業の方がそれに対して異議の申し立てをする。公告して何も問題なければ異議の申し立てもしません。そこで問題があれば異議の申し立てをする。それを審査会に諮りまして、この審査会は地方にもありますし、中央にもあるわけでありますが、そこで結論を出して決めていくということでありまして、団体法というものが、そのままの精神が全部生かされておるわけであります。  いろいろそこで話し合いがなされるわけでありますが、いまのように団体法でもってお互いの当事者の協約というものを中心にやっていってうまくいったためしがない。そうして、それが結局行政指導でやられるということでありますが、これは一つ中小企業性の事業の分野というものを策定いたしておきまして——そしてそこが大企業、経団連が非常に反対するところでありますけれども、その分野で何もかも締め出されてしまうのではないか、このようにおそれているのでありますが、そうじゃない。やはり中小企業には中小企業性の特殊な分野があるわけでありますから、そういう分野の策定だけをいたしておいて、そこに入っていきたいという大企業は公告をする。その公告について中小企業で異議があれば異議の申し立てをする。それが地方なり中央においてそれぞれの審査会に諮られていって、そしてあわせて政府の判断も審査会において十分に反映していただいて円満に解決していったらどうかというのが、大まかに言えば公明党の案でございます。でありますから、これは反対、反対ではなくて、経団連の考え方というものもある程度反映もしておる、そのような法案を出しておるわけであります。  これは近く社会党を中心にいたしまして、われわれこの分野調整の問題につきましてはたたき台を出して、そのたたき台をもとにしていろいろの無理のない、そうして中小企業が安心できるというようなものをつくって、分野調整法というものを促進すべきであろう、こういう考え方でありますが、基本的に長官は最後までこれは反対ですか。
  30. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 各党の御提案の法案は私ども十分検討いたしておりまして党によりまして、その法案の内容が非常に厳しいものから、やや緩和されたものから、いろいろあるようでございますが、いずれにいたしましても特定の業種中小企業分野として特定いたしまして、そこへの大企業の参入について法律上の調整ないし禁止を行うということにつきましては、特定業種と申しますか、中小企業にゆだねるべき分野の線引きがきわめてむずかしいということが一つございます。それから、その業種の数が非常にふえていく懸念と申しますか、その辺の歯どめをどういうふうに考えたらいいかという問題もございます。  それから、これは法律の内容なり運用にもよることと存じますけれども、やりょうによりましては非常に競争の活力が弱められまして、技術進歩を阻害する懸念でございますとか、あるいは競争の刺激の減殺によります価格の引き上げ問題、あるいは消費者利益を阻害する問題といったようなデメリットと申しますか、マイナスの面もあるわけでございまして、立法化につきましては、現行の法律並びにそれをもととしました行政指導で足りないかどうか、十分慎重な検討が必要ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。  私どもこれまでの検討の結果といたしましては、現行団体法をバックにしながら行政指導を機動的にかつ強力に行うということによりまして、現実の日々変動する事態に即応した調整が弾力的にできるのではないか、かように実は考えておる次第でございます。  ただ、情報の収集体制等におきまして現在では必ずしも十分とは申せませんので、そういった面につきまして、たとえば全国の商工会議所に調査員を委嘱いたしますとか、あるいは役所の方も手薄な面がございますので、各通産局に調停官を置きますとか、あるいは地方的な問題については府県の調整を活用するということで各府県に調停審議会を置きますとか、そういった行政面での機構の充実はさらに図る必要があろうと考えまして、明年度予算におきまして関係方面にお願いをいたしておるところでございますが、立法化につきましてはよほど慎重な検討が必要であろう、かように考えておる次第でございます。
  31. 松尾信人

    松尾委員 これで終わりますが、結局何かやろうというときにはそれが一〇〇%いいことずくめではないわけであります。動あれば反動あり、そこには必ず反対という力が出てくるわけでありますけれども、いまのままの状態であれば、中小企業の熱願、心からの願い、そして大企業の横暴、こういうもので結局大企業中小企業のあつれきというか、感情的な問題が具体的に出てきますと、これは非常に先鋭化された反対運動になります。これはあなたの方もこの前陳情が参ったと思いますけれども、各行政府がその陳情を受けて非常に迷惑もしておる。それだけ苦しんでおるわけでありますから、これは何かのところで調整をしてまいりませんと、いまのような団体法を中心に余り力がなかったことを今度は力を入れていく、そのようなことではおさまりがつかないのじゃないか。デメリットはいろいろありますけれども、それを超えたメリットというものをわれわれは模索し、その上に立ってこのような案をつくっているわけであります。やがて出てくるでありましょうわれわれの商工委員会における分野調整法、こういうものについても、長官もフランクに心を開いて——中小企業を守っていくのがあなたの本職ですよ。中小企業がいま困っているのはどこなんだ、そういう点をよくお心得あってこの問題に対処していただきたい、また対処しなければいかぬのではないかということを申しまして、私のきょうの質問を終わります。     —————————————
  32. 山村新治郎

    山村委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  通商産業基本施策に関する件について調査するため、地域振興整備公団副総裁本田早苗君を本日参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  34. 山村新治郎

    山村委員長 引き続き質疑を続行いたします。中村重光君。
  35. 中村重光

    ○中村(重)委員 産炭地振興金の不正融資の問題について参考人にお尋ねをしたいのですけれども、エネルギー庁長官がまだ見えませんから、しばらくいたしましてからこの点に触れてまいりたいと思います。  いま中小企業庁長官との間に、年末融資の問題あるいは中小企業の事業分野の問題について質疑が展開をされておりましたが、長官に端的にお尋ねをするのですけれども、年末融資の問題について、四千八百億手当てをしたのだ、また民間金融機関も二兆五千億ぐらい手当てをしておるようだから、三兆円ぐらいになる、設備投資等が余り活発ではない、資金的にもそう大して困っていないように思われるというような印象を受ける答弁があったわけです。しかし、深刻な不況の中で心配をしているということなんだから、どうなんですか、四千八百億三機関に対して手当てをした、最近の三機関融資状況というものをあなたの方は把握をしていますか。三機関に対する申し込み等に対してどのような貸し付けの実行がなされているのか、その状況についてどの程度把握していますか。
  36. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 政府系機関に対します申し込み状況でございますが、ことしの四−六月はほぼ前年の四−六月の申込額と同額でございまして、ほぼ同じぐらいのレベルでございます。七月と八月が約四%増でございまして、九月に一〇%増になりまして、十月はまたちょっと落ちまして六%増、こういう状況でございます。  それから、申し込みに対しましての充足率は大体九割ぐらいになっております。これは従来からそういった充足率でございますので、申し込みで資金需要の強さを判断いたしますと、大体去年の一割前後あるいはそれをやや下回る水準、こういうふうな申し込みの状況でございますので、資金手当て面で一応去年の一割増しで用意をいたしておりますので、特別の事情がなければほぼこれで何とかしのいでいけるのではなかろうか、こういうふうに考えた次第でございます。
  37. 中村重光

    ○中村(重)委員 私どもは現場の状況をある程度つかんでいるつもりなんです。最近国民金融公庫の例を見ましても、借り入れ申し込みに対して申し込みの額が融資されないだけではなくて、今回は貸し出しができませんと言って断っている例が非常に多いということです。もちろん貸し出し拒否に対してはそれなりの理由というものをつけてはいるようですけれども、その根本的なものは何かと言えば、やはり資金量というものが非常に少ないということですよ。だから、いろいろな理屈をつけて申し込みに対して減額をしたりあるいは拒否をしたりしているということは、否定することのできない事実だろう、こう私は思っているのです。  この深刻な不況の中で、四千八百億の手当てというものが不十分だということはわかり切っているのですね。いまあなたは、状況を十分つかんだ上で追加融資のことについても考えてみたいというようなことなんだけれども、きょうは十二月九日ですよ。ここ十日ぐらいが年末は勝負なんです、主として設備資金じゃなくて 運転資金なんだから。昨年度だって年末融資は四千五百億でしょう。この深刻な不況の中で、わずか三百億しか積み上げはしていないわけだ。不足しているということはわかり切っている。にもかかわらず、十二月九日のきょう、状況を見てみて何とか考えてみたいというようなことではお話にならぬのじゃありませんか。四千八百億を手当てして不足なんだから——それはいま中小企業の倒産の原因というものはいろいろあるだろうけれども資金について何らかの手当てができれば、それはつなぎができて倒産というものをもっと抑えることができるだろうと私は考えているのです。金に困って倒産をしているということが倒産の中の大部分であろうと私は考えているわけだけれども、私どもが要求をしているように、あと五千億程度積み上げていくというようなことについてやる意思がありますか、ありませんか。どうですか。
  38. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 年末追加は四千八百億でございましたけれども、根っこのもともとの年間の融資計画が、ことしは二十数%増の二兆五千億の当初融資枠を組んであるわけでございます。去年は御承知のように二兆円でございまして、その二兆五千億の上に四千八百億を加えたわけでございまして、第三・四半期分としては一兆一千億ぐらいになっておりまして、去年の第三・四半期に比べまして一一%増の枠を用意いたしております。  お話しのように、個別の融資の内容について見てみますと、中には借りられなかったという事情の方も間々おありのようでございますけれども、こういった方につきましては、むしろ国民金融公庫側の資金量の云々というよりは、借りられる方の経理内容の方が事情が大きいのじゃないかと思うわけでございますけれども、そういう方につきましても極力、たとえば担保切れの方については担保の再評価をするとか、あるいは返済を猶予するとかというような配慮をしまして、何とかしのげるように、特に政府系機関でもございますので、中小企業の方の身になって配慮するように十分指導はいたしておるわけでございます。  総体の資金量として見ますと、一応はこれまでの情勢からいたしますと、いまの追加分で何とか年内はしのげるのじゃないかとただいまのところ見ておりますが、今後の推移によりまして、さらに非常に逼迫するという状況であれば、必要な措置を検討いたしたいというように考えております。
  39. 中村重光

    ○中村(重)委員 第四次不況対策を決定したそのときも、私どもはこの第四次不況対策というものは不十分であるし、また内容的に適当でないところがあるという指摘をいたしました。その際に、四千八百億の手当てというものは確かに少ないように思われる、これについては追加融資を考慮したいということを、当時通産大臣も言っておったわけなんです。いまごろ、倒産が絶えず記録を更新しつつあるこの深刻な状況の中で、なおはっきりした追加融資をここで明言できないということは、私は問題だと思っている。  なお、あなたは、民間金融機関が昨年は二兆円であった、ことしは二兆五千億だから、五千億は積み上げているのだということを言っているのだけれども、民間金融機関が本当に二兆五千億手当てを中小企業に対してしておるかどうかということについては、あなたの方でははっきりつかむことができないでしょう。ただ融資あっせんをしているのにすぎない、要請をしているのにすぎないわけですね。そして、金融機関からはこうしましたという報告を受けているだろうけれども、それは民間金融機関政府関係機関のようにはっきりしたことの把握はできないのですよ。だから、民間金融機関が去年は二兆円、ことしは二兆五千億、だから五千億上回っているのだというようなことでは、私どもは納得できないわけです。  私どもに対しまして零細な中小企業者から、毎年、国民金融公庫に対し、あるいはその他の政府機関に対して融資の申し込みをしていますから、何とかお口添え願えませんかという相談を受けることが正直に言ってあるのですよ。ことしが一番深刻なんです。また扱いについても、先ほど私が申し上げましたように、貸し付け拒否であるとか、あるいは申込額を大幅に削減しておるということは枚挙にいとまがないということを申し上げてもよろしいのです。生々しい状態を私どもはつかんでいるから、これではだめなんだから、追加融資をしなければいけませんよと申し上げているわけなんです。ともかくいまごろ、まあ状況を見ましてというふうなことでは間に合いませんよ。少なくともここ一週間程度のうちには追加融資を決定していくということでなければいけないのじゃありませんか。政府としても、第四次不況対策は不十分だから、第五次を考えなければならぬと言っているのです。だから、中小企業庁長官として、中小企業実態というものをあなたが一番つかんでいなければならない。しかし、残念ながらいまのあなたの答弁では、私どもは実情を知っているという立場から、どうしても納得できない点があるわけなんです。ともかく何とかしなければいけませんから、もう一度ひとつもっと積極的な答弁——答弁だけではなくて、それは実行してもらわなければいけませんから、お答えをいただきたい。
  40. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 私、二兆五千億と申し上げましたのは、民間の金融ではございませんで、政府系機関がことし二兆五千億でございます。昨年が二兆円でございましたので、約二十数%の増枠を年度当初の計画におきまして組んでおりまして、それに四千八百億を追加いたしましたので、年間としてほぼ三兆円の融資枠になっております。そのうちで第三・四半期だけで一兆数百億円を用意いたしておりまして、昨年の第三・四半期に比べまして約一一%、融資枠の増加になっております。  一方、申し込み状況は、先ほど申し上げましたように、十月までの状況では大体前年の申し込みに比べまして七、八%増といった状況でございますので、いまの状況であれば何とか年末は越せるのではないかというふうに一応考えておりますけれども、なお去年と違いまして国債発行とか地方債の発行といったような金融圧迫要因の事情も別途ございますので、今後の国債の発行状況等を見まして金融が非常に逼迫するような状況が見られますれば、さらにそのときに必要な措置考えたい、かように考えております。  なお、民間の年末の融資分としては、三兆五千二百億を一応目標として予定をいたしております。
  41. 中村重光

    ○中村(重)委員 当初予算に手当てをした財投というのは、そのまま積み上げてきているのではなくて、還流してまた大蔵省の方へ返還するという形だってあるのだろう。それだけ積み上げているのじゃないのじゃありませんか。  ともあれ、私が申し上げたように、非常に困っていることは事実なんです。それから、いまあなたがお答えになったような国債発行等によって中小企業に対する融資の圧迫要因というものまで加わってきているということ。それから二兆円の問題にいたしましても、あなたがお答えのとおりそれを受け取るといたしましても、中小企業の分野だって拡大されてきている。いままで中小企業でなかったものが中小企業という扱いになってきているということで、資金が必要になるのはあたりまえなんです。絶対額をふやしていかなければならないのだ。そういうことに目をつぶって、ただ積み上げた額だけでもって、一昨年はこうだった、それに対して昨年はこうだったということを言われても、実態を知っている私どもはそれはいただけないのだ。  困っていれば何とかするんだと言うのだけれども、私どもは観念的に言っているのじゃないのですよ、実態をつかんで申し上げているのです。出先は実際困っていると言っているのだから。それをあなたは机の上に来ている報告だけを見たか聞いたかして、まだ困っていないのだということでは、これはお話なりませんよ。もっと実態をつかむということを精力的にやってもらいたいということを申し上げておきます。  それから、公定歩合の数次の引き下げをやったわけですが、中小企業に対する貸し付け利息の引き下げはどういう状況になっていますか。
  42. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 先般の預金金利の引き下げ等に伴いまして、郵貯会計等の郵貯から国へ納めて預けております金利も引き下げることになったわけでございます。それに対応して財投の金利が若干下がることになりました。これらを受けまして政府系の三機関も金利を引き下げることにいたしまして、去る十一月から中小公庫と国民金融公庫につきましては〇・五%の引き下げを決定いたしました。それから商工中金につきましては、短期金利は一%の引き下げ、一年以上の長期については〇・五%の引き下げを決定いたしまして、すでに実施に移しておるところでございます。
  43. 中村重光

    ○中村(重)委員 私が伺っているのは、公定歩合の引き下げというのは政府関係金融機関には関係ないわけだ、財投の関係なんだから。民間金融機関中小企業に対する貸し付け利息というものは、公定歩合が下がってくるということになれば当然関連をしてくるわけだから、下がらなければいけない。それがどの程度下がっているのか、あなたの方は調査をしているはずだから、それを聞いているわけだ。  それから、政府系機関にいたしましても、いまあなたがお答えになったようなことだけれども、八・九%であったのが〇・五%下がって八・四%になるのだ。これとても非常に金利が高いです。もっと引き下げなければいけない。だから、八・九%を〇・五%下げた、それでも下げたということで、もうそれ以上下げる必要はないとお考えになっていらっしゃるのかどうか。計画的に引き下げていこうと考えていらっしゃるとするならば、その点についてこういう計画だということもあわせてひとつお答えいただきたい。
  44. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 財投の金利が御承知のように従来八%でございましたのが、今度七・五%で政府系機関に貸し付けられることになりましたので、財投が〇・五%下がったのに対応いたしまして、政府系中小金融機関は従来九・四%でございましたのを八・九%にいたすことにいたしたわけでございます。確かに一番低かったころに比べますとまだ高い水準にございまして、私どもとしてはさらに引き下げたいというふうに考えておりますが、問題は原資のコストの関係もございまして、赤字になって金利を下げるというのもなかなか困難でございますので、まずこの財投の金利が下がることを期待いたしておるということでございます。  商工中金につきましては、主要資金の七割強を債券の発行によって調達いたしておりますので、これは長期債券あるいは一年ものの割引債券の金利の状況によりまして、その推移に応じて弾力的に引き下げを図っております。  それから、民間の金融機関の金利の引き下げ状況でございますが、ちょっといま手元にその数字を持っておりませんけれども、今般は公定歩合の引き下げに対します金融機関の実際の実効金利の引き下げのいわゆる追随率というのは、過去の何回かの公定歩合の引き下げのときよりも非常に早く、追随率が高く引き下げが行われておるというように承知をいたしております。
  45. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほど私が申し上げた八・九%というのは、〇・五下がって八・九になったわけだ。お答えのとおり九・四%だったから、だからまだ非常に高いので、もっと引き下げていくように努力をされなければいかぬですね。  それから、民間金融機関の公定歩合の引き下げに伴うところの貸し付け利息はどの程度下がっておるかということについては、手元に資料がないということだけれども、それは手元に資料がないということではなくて、どうもあなたの方の調査が不十分だというように思っていますよ。なかなか下がってないのです。零細企業ほど民間金融機関の貸し出し利息というものは下がらないですね。それは信用力がないから、金額は小さいけれども手数は同じなんだといういろいろな理屈をつけているようだけれども、信用力の高い企業と信用力の非常に低い零細企業というものでは、貸し付け利息は弱い零細企業ほど高いというような状況にありますから、そういったようなことを改善するようにもっとあなたの方は積極的に要請をする、また調査もする、そしてまた要請をするというようなことを繰り返していかなければだめだと私は思いますよ。  それから、歩積み両建ての状況はどうなんですか。こういう不況の中にあって、あなたの方は民間金融機関に対してどの程度の要請をされたのか、また、どうなっているのか。それから、民間金融機関だけではなくて、商工中金が、歩積み両建てという形ではないのだけれども、似たような形、出資金であるとかあるいは預金であるとか、その他いろいろなことで実際の貸し出し金利というものは高くなっておる。だから、商工中金に対してこの不況の中で改善措置をどのように要請し、それが実行されているのかという点についてもひとつお答えをいただきたい。
  46. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 歩積み両建てにつきましては、中小企業者の方から、歩積み両建てによって実際の借り入れ金利が非常に高くついておるということで、これをなくすように努力してほしいという要請がございまして、特に不況のときに金利負担がこたえますので、従来から歩積み両建ての取り締まりについて、これは民間金融機関を監督しておられます大蔵省にお願いをいたしておったところではございますが、特にまた十月七日に幾つかの金融面での要請をいたしましたときに、歩積み両建ての一層の自粛ということについて取り締まりの強化方を大蔵省にお願いをいたした次第でございます。大蔵省の方ではいろいろ通達等を出されまして、特に銀行検査におきましてこの点に重点を置いて検査をされ、もし違反があれば担当の役員等々が処分を受ける、こういった厳重な取り締まりを行っておられるように聞いております。  その実情につきましては毎年二回調査が行われておりまして、年々、少なくともその調査結果で見ます限りにおいては、拘束預金の比率は低下を見つつあるように存じます。また、別途公正取引委員会におきまして、金融機関側でなくて、借りる方の側から調査を行われまして、その数字も、ちょっと大蔵省調査とは数字が違っておりますけれども、年々少しずつ減っておる、こういうように見ておりまして、さらにこういった取り締まりを強化してもらいたい、こういうように私どもとしては大蔵省なり公正取引委員会の取り締まりに期待をいたしておる次第でございます。
  47. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、先ほど申し上げた政府機関の金利を〇・五%下げて、あとはもう下げる予定はないのか。
  48. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 今後の方向といたしましてさらに引き下げしてもらいたい、私どもとしてはそういう希望を持っておりますけれども、これは財投の金利とのからみで決定される問題でございますので、当面は、先般実施をしたばかりでございますので、次の実施時期等についての予定がまだ立っておりません。ただ、長期の方向としまして、過去の低かった時期に比べますと今回引き下げ後でもまだ水準が高いと私ども考えておりますので、今後機会あるごとに引き下げるように交渉してまいりたいというふうに考えております。
  49. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、先に進みますが、先ほどの年末融資のことについて、どうもあなたの答弁の中からは、もうこれ以上追加融資をする必要はないのだというように——調査をするということを言っているのだけれども、どうも積み上げの必要がないのじゃないかというように受け取られる答弁なんだけれども、どうですか、積み上げをしますか。
  50. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 当面は、先ほど来申し上げましたように、第三・四半期に用意いたしました資金枠で何とかしのげるのではないかというように考えておりますので、むしろ第四・四半期の問題といたしまして、実績を見まして、そういった点を今後の推移を見て検討いたしたいというふうに考えております。
  51. 中村重光

    ○中村(重)委員 第四・四半期ということになってくると、これは年末が過ぎるわけだ。年末融資ということを申し上げているのだから、年末融資はもうその必要はないという考え方ですか。
  52. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 ただいままでのところでは、ただいま用意いたしております一兆千億弱の第三・四半期の資金枠で何とか年内はしのげるのじゃないかというふうに考えております。
  53. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は、相当な深刻さを、実際の実情を把握している点から申し上げているのだけれども、深刻になったら追加融資をいたしますか。
  54. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 私ども一応いまの資金枠で何とか越せるのじゃないかと考えておりますが、非常にそれでは不足するという事態が出てまいりますれば、再検討するのは当然かと考えております。
  55. 中村重光

    ○中村(重)委員 事業転換に対する立法措置を検討しているということを伺っているのですね。次の通常国会に提案をするということなんだけれども、これは造船不況関係等々からもっと具体的なこととしてお尋ねをしたいのですけれども、時間的な関係もありますからその点は他日に譲りますが、事業転換に対する立法の内容というものはどういうことなのか、産炭地振興臨時交付金制度というものもあるのですが、そういうような内容のものも取り入れるお考え方なのかどうか、その点いかがですか。
  56. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 中小企業の事業転換対策につきましては、昨日中小企業近代化審議会からの答申をちょうだいいたしましたので、その答申をもとといたしまして、これから具体的な立法化並びに助成措置の内容を固めてまいりたいと考えておりますが、基本的な考え方といたしましては、中小企業の本人の努力では克服できないような環境の変化によりまして非常に苦境に落ちておる、こういった業種につきまして業種指定いたしまして、その業種に属します中小企業の方が転換をしたいという申し出がありました場合にその計画を審査いたしまして、妥当なものでありますれば税制、金融面あるいは労働面でいろいろ政府の助成措置適用する、こういうふうな粗筋の内容になろうかと存じます。  と同時に、どういった方面に転換をしていくか、あるいはその場合の採用する技術はどうするかといったような、新しい仕事に変わるといたしますといろいろと困難が予想されますので、そういった面での情報の提供並びに診断、指導、こういったことも非常に重要になるわけでございまして、そういったこともあわせて行いまして転換を円滑にしていくというふうなことを考えておるわけでございます。  ただ、あくまでこれは中小企業の自主的な転換の申し出に対しまして助成をするわけでございまして、強制的な転換、あるいは行き先についての強制的な指示といったようなことは考えておりません。事業者の自発的な希望によりましてそのお手伝いをする、こういった趣旨の内容のものを考えております。
  57. 中村重光

    ○中村(重)委員 和田産業政策局長にお尋ねするのだけれども大蔵省で付加価値税の創設の検討は前からやっているようですが、踏み切るというようにも伝えられているわけです。この付加価値税というものが中小企業者にとっても消費者にとっても大変な悪税であるということ、これは言うまでもないことなんですが、通産省としては、この付加価値税の創設という動きに対してどのような対応を示しているのですか。
  58. 和田敏信

    ○和田政府委員 付加価値税に関します理論の背景でございますが、現在わが国の場合、法人税がすでに諸外国並みの水準に達しております。また、所得税に関しましても依然として税負担感が重いという感じがございます。さらに、今後わが国経済が安定成長を遂げてまいりますと、大幅な自然増はなかなか見込まれないという状況下にございまして、今後の税源確保策の一環といたしまして付加価値税が検討対象とされるというふうに考えております。   〔委員長退席、萩原委員長代理着席〕 ただし、当面の財源不足に関連いたしまして直ちにこれを導入するというような考え方は、事務当局にもないというふうに了解をいたしております。  当省の考え方いかんというお尋ねでございましたが、付加価値税に関しましては、中小企業あるいは流通業者等に多大の影響を与えますとともに、また、物価へのはね返りも大きいという問題もございますので、今後わが国の税体系の総合的なあり方、わが国経済の実情との関係、さらに経済的な波及効果等を含めました広い観点からの検討が慎重に行われなくてはならないというふうにわれわれとしては考えております。
  59. 中村重光

    ○中村(重)委員 慎重でなければならぬということは当然なんだけれども、私は付加価値税の導入というものは絶対にやるべきではないという考え方、ともすると通産省が、いまあなたが前段でお答えになったような方向からこれに賛成をするということになってくるとこれは重大な問題なんで、これはあくまで反対という方向でひとつ対処してもらいたいということを要望いたしておきたいと思います。  中小企業庁長官、この事業分野の問題で、実は私どもは十二日に各党話し合いをすることになっているのです。どうも中小企業庁長官を真っ先にいたしましてこれに抵抗を示しているようだけれども、先ほど質疑応答を聞いておったのだが、何か行政指導でうまくいくといったような考え方をあなたの方は持っておられるようだ。行政指導でうまくいくのだったら、大企業中小企業分野というものに対する進出が露骨にならない。いまのような大きな政治問題にならない。もし行政指導でうまくいくということならば、いままでできなかったことは、これは中小企業庁の職務怠慢だということになる。いままでできなかったことがこれからやれるのだという根拠は何ですか。
  60. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 これまで幾つか分野調整的なと申しますか、大企業の進出に伴う紛争がございましたけれども、ほとんどのケースにつきまして、当事者の話し合いないしは行政指導によりましてほぼ解決を見ておるというふうに私ども考えております。
  61. 中村重光

    ○中村(重)委員 冗談じゃありませんよ。先ほどあなたが例に挙げられたクリーニングなんかの問題でもそうなんですよ。進出は露骨になっているけれども、解決はちっともしていないじゃありませんか。私どものところには、中小クリーニングの全国の理事長を初めといたしまして、何とかひとつクリーニング業法というものをもっと強化するようにしてもらいたい、大企業が進出をしてこないように何とかひとつ事業分野というものをもっと確保するようにしてもらいたいと言ってきている。軽印刷の問題もそうなんです。例を挙げると、大企業の進出によって大きな痛手をこうむっておる。まさに私は血の叫びを上げているということが事実だろうと思う。  いまのあなたの楽観的な答弁と、余りにも現実の実情とにはずれがあるように考える。中小企業の痛みというものを一番だれよりも早く診察をして、その痛みに対して適当な治療をしていかなければならぬところの中小企業庁が、ちっともその痛みを感じていないというようなことでは、私はどうも中小企業庁の看板が泣くのじゃないかというような感じがするのだけれども、いまのあなたの答弁は楽観に過ぎる。  それから、小松次官が、原状回復要請をするということを新聞記者団との会見か何かの際に言っているようだけれども、それは具体的にあなたと十分打ち合わせをしての次官の談話だろうというように私は思うのですが、原状回復について具体的にどうこれから進めていこうというお考え方なんですか。
  62. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 次官が申しましたのは、必ずしもはっきりそういうふうに申したのではないようでございますが、それはともかくといたしまして、今後調整をするに当たりましてこれはケースバイケースなりますので、原状回復的なことをやらないと中小企業者近代化が進まないというような場合には、たとえば少し後戻りしたところまで戻って、大企業の方には現在の生産をさらに落とすとかいったようなことで、中小企業側の構造改善の実が上がるようにするというふうなことも、そのケースの内容によっては起こり得るかと思います。そういう場合には、そういった調停も考えることがあり得るというふうに考えております。
  63. 中村重光

    ○中村(重)委員 小売商業調整特別措置法十五条というのが、法的には私は大企業中小企業の分野への進出に対する調整としては一番距離の近い、的確かどうかは別として距離の近い法律であろうというように考えるのだけれども、この法律がちっとも動いていない。まさに制定以来一件か二件ぐらいしかこれは動いていないのだろうというふうに私は思うのですが、この法律を発動させて調整をしたということは、申し上げたようにそれほど少ないのです。言いかえると、それほど大企業中小企業分野に対するところの進出というものは活発であり、これに対して中小企業者というのは非常に苦しんでいるのだけれども現実にはなかなか大企業の進出を抑えることができない。いろんな法律もありあるいは行政指導の方法もあるだろうけれども現実にはそれが有効に動かないということには、やはり大企業のわがままだということを申し上げなければいけないですね。もうモラルというものは全くないですよ。  ヨーロッパの国々では、法律はないけれども、大企業中小企業との関係というものは日本ほどそうした問題は起こってきてないですね。大企業は大企業としてのやはりモラルというものを考えて、中小企業の分野に進出をするということはしないのですよ。したがって、中小企業はやはり健全な経営というものがなされてきている。そういうことだから、日本のような経済の二重構造といったようなものもない。特異な現象と言えるんですね、日本の場合は。  だから、それらのことを考えてみると、やはり中小企業の事業分野というのは、もう法律の制定以外にはないのだというふうに私は考えているのです。あなたにこれ以上質問をしても、賛成でございますということはなかなかあなたは言わないでしょう。われわれとしては議員立法でもって制定をしていくという方向で進みたい。その際に、あなたにも来ていただいていろいろな参考意見を伺いたい、こう思っていますから、私がいま申し上げたようなことは同僚議員からもいろいろ触れているわけですから、十分勉強して参考意見を述べてもらいたいということを申し上げておきます。  本田参考人にお尋ねをいたしますが、産炭地振興資金を株式会社魚貫水産に融資しているようでございますが、この融資の目的、融資の時期、融資額、融資の条件、それらの点についてひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  64. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  魚貫水産は、熊本県の牛深市にある水産加工会社でございますが、現在は畜産残滓の加工をいたしております。  資金融資につきましては、四十七年三月三十日に七千万円の設備資金、四十八年三月二十日に三千万円の増加運転資金、四十九年三月二十二日に三千万円の立ち直りの運転資金、それから本年一月十四日に一億五千万円の設備資金融資をいたしております。設備資金は十年、運転資金は五年で融資をいたしております。
  65. 中村重光

    ○中村(重)委員 この融資は、何もトラブルが起こらないでこの融資目的というものが達成されつつあるのですか。
  66. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  最初の七千万円、その次の三千万円の返済期限は前から参っておりまして、これの返済を順調に行っておりましたところ、本年五月償還が滞納するという状態に相なりました。
  67. 中村重光

    ○中村(重)委員 この担保物件はどうなっていますか。
  68. 本田早苗

    ○本田参考人 担保物件は、工場抵当といたしまして、建物二千九十二平米並びに機械一式、それから不動産抵当といたしまして、土地一万六百四十二平米、それから重役の土井の建物、五十五・五二平米の建物担保にとっております。
  69. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、その融資対象になった物件が担保物件ということになっていますか。
  70. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  御指摘のとおりでございます。
  71. 中村重光

    ○中村(重)委員 必要設備は、この融資額によって足りるということであったのですか。
  72. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  本来は、必要資金額の適当比率のものを公団から融資するというのをたてまえにいたしております。したがいまして、全額これで調達するということはないのがたてまえでございます。
  73. 中村重光

    ○中村(重)委員 だから、設備中心とする事業資金が幾らで、それに対して八〇なら八〇、九〇なら九〇ということだろうから、それがどの程度融資をされ、その不足分の調達というものを——政府資金を貸し出す場合は、ちゃんと直接の貸し付け、それから協調融資、自己資金、こうあるわけで、それに対して資金計画がぴしっと立って初めて政府資金融資という形になるわけですから、その融資計画という点をひとつお聞かせいただきたい。
  74. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  約三億の資金が必要であるということに対しまして、一億五千万の融資をいたしたのでございます。そうして残額につきましては、融資の申請時におきましては、熊本相互銀行並びに役員の資金借り入れるということであとの半分を調達するという申請に相なっておりました。
  75. 中村重光

    ○中村(重)委員 一億五千万を貸し付けているというのはおかしいですね。先ほどお答えになったように、第一回が四十七年、七千万でしょう。第二回が三千万でしょう。第三回が四十九年三月、三千万、第四回が五十年、一億五千万。実際は第五回もあるのですよ、五十年の二月かいつか、四千万。二億八千万貸し付けているのじゃありませんか。
  76. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  ただいま申し上げましたのは第四回の一億五千万の融資について申し上げたのでございまして、御指摘のように、貸し付け残は二億七、八千万になっております。それから二月に四千万出しましたのは、一億五千万のうち一月に一億一千万、そうして残りを二月に四千万、資金交付をいたしたのでございます。
  77. 中村重光

    ○中村(重)委員 それは私の調査と合うのです。私の調査でも、第四回、五十年の一月に一億一千万、第五回、五十年の二月に四千万とあるわけです。だから、おっしゃるとおり一億五千万と、こうなるわけです。そうすると二億八千万、だから、事業資金が三億ということだったから、大体融資をされた額によって足りるのじゃありませんか。
  78. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、一億五千万は第四回の融資についてでございまして、七千万並びに運転資金の六千万円は一回、二回、三回の融資で、いま御説明の外側の数字でございます。  そこで、恐らく御指摘になられる点は、実際上の資金調達と、それから融資額との関係であろうかと思いますが、おっしゃるように三億要るという申請に対しまして、設備の実際の増設は、台数が減る、あるいは中古材を利用する、あるいは安い中古機械を利用するというようなことで二億強になっておりまして、二億強に対して一億五千万を貸したという結果に相なりました。
  79. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまあなたはいろいろ御説明になったのだけれども、産炭地振興資金から二億八千万、いろいろな融資の目的というか、それはあるのだろうけれども、二億八千万出ていることに間違いないのでしょう。
  80. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  四回の融資でそれだけ出ております。
  81. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうすると、必要資金が大体それで足りるということになるのだが、設備資金に対する未払いというものが出るはずはございませんね。
  82. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  通常の場合はそういうことはないようにやっておりますけれども、本件につきましては、四回にかけてでございますが申請の三億の設備の支出を必要とするという計画に対しまして、現実には二億強しか出ておりません。
  83. 中村重光

    ○中村(重)委員 少なくともあなたの方は、この事業目的というものを達成していくためには、資金計画に基づいて、これで大丈夫ということでなければ、政府資金というものは暗中模索といったようなことで融資をしてはならないと私は考えるのです。だから、申し上げたように、政府資金がこれだけだ、産炭地振興資金というものはこれだけ出す、それから今度は協調融資なら協調融資ということもあるのでしょうから、それから何%出るんだ、それから自己資金というものはこれだけあるということはしっかり確かめなければならないのだから、それで自己資金が出る、そして円滑にその事業が運営される、そういうはっきりした目的がなければ、私は政府資金融資をしてはならないのだろうと思う。だからして、申し上げたように、計画どおりいったならば未払い資金なんというようなことが生ずるはずはないと私は考える。そうじゃありませんか。
  84. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  当方の融資はおっしゃるようにやるたてまえでございます。そのために、実際の工事は事前に進行いたしておりまして、工事の進捗に伴いましてこちらから資金を交付するという方法をとっておるのでございます。したがいまして、本件につきましては四十九年九月から五十年の一月までに工事を完了するということで申請がなされたわけでございます。そこで、工事の進捗状況を一月に聞きまして、一億数千万の工事が進んでおりましたので、これに対して一億を出しまして、残額については工事の進捗した後で出すという方法をとったのでございます。
  85. 中村重光

    ○中村(重)委員 未払い額はどのくらいあるのですか。
  86. 本田早苗

    ○本田参考人 一億五百万の未払いが出ております。
  87. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうすると、未払いがあったためにどういう事態が発生をしているのですか。
  88. 本田早苗

    ○本田参考人 これはまことにわれわれの方の審査についても手落ちがありましたけれども工事の進捗状況の報告におきまして数字が偽って報告されまして、工事の進捗はもっと多額のものであるという報告になっておりました。そのために資金交付を行ったのでございますが、後日調査をいたしましたところ、数字を水ぶくれさした報告に基づきましてわれわれが判断したという結果に相なりました。
  89. 中村重光

    ○中村(重)委員 だから、私の質問に対してお答えをいただきたいのですね。偽りの申告であったということになるのだろうと思うのだけれども、その点だけでは問題なんで、あなたの方で、その資金計画というものによって的確に政府資金融資され、そしてこの融資のいわゆる目的がやはり達成されていくのでなければならないと思うのですね。産炭地振興、それから離職者対策というようなことがあるわけだから、産炭地振興というのは地域振興ですね、それが円滑にいかなければ、政府資金はなぜ出したのだということになるわけだから、あなたの方の、少なくとも公団としての職務上の重大な問題になるだろうし、通産省としては監督官庁として、これが円滑に行われないということになってくると、これは私は重大な問題だと思いますよ。だからして、設備資金の未払いというようなものが生じておるためにどういう事態が発生をしたのかということをひとつお答えいただかなければいけないのです。それを聞いている。
  90. 本田早苗

    ○本田参考人 魚貫水産の事業経営との関連につきましては、この設備の増設は当初の能力に沿いまして増設が行われておりますが、原料調達その他の点が窮屈になりまして、当初の生産能力を満たす経営活動にはなっておりません。
  91. 中村重光

    ○中村(重)委員 増田長官に伺いますが、いま本田参考人からお聞きのとおりですが、少なくとも政府資金を三億に近い金額を融資しておるんですね。それが計画のとおりいっていない。結局はこの事業運営というものがうまくいっていないということになってくると、これは公団自体の融資がきわめてずさんであったということにもなる。これは否定できない。それから、あなたの方の監督というようなものにきわめて重大な手落ちがあったというように思うのだけれども、どのようにあなたの方はこの実態を把握しているのかということについてお聞かせをいただきたい。
  92. 増田実

    ○増田政府委員 産炭地域に誘致いたします企業に対して各種の金融的な援助を与えるということで、この事業は地域振興整備公団において行われるわけでございます。それで、私どもはこの公団に対する指導、監督の責任を負うわけでございますので、そういう意味で、ただいま中村先生が御指摘なりましたような融資が行われたことにつきましては私どもも遺憾に存じておるわけでございますし、また、これに対して監督、指導が不十分であったということを反省いたしております。  ただ、この公団に対します私どもの方の監督につきましては、これは毎年度の融資方針の策定に当たりまして、その方針につきまして公団と十分打ち合わせをいたしまして融資方針を策定する。また、各種の融資の進捗状況その他につきまして報告を受けて、それに対する指導、監督をするということで、個々の企業状況につきましては一々当たって指導はいたしておらないわけでございますが、先ほど先生が御指摘なりましたこの魚貫水産の実態につきましては、これは当然私どもも監督責任があるというふうに思っております。
  93. 中村重光

    ○中村(重)委員 それは公団は貸し付けに対する調査もずさんであったし、したがって計画のとおりいっていない。あなたの方は監督、指導の面について落ち度があったということなんだが、私はこれは重大な問題だと思うのです。結局未払いがあるために債権者は債権差し押さえをしたわけですね。それで部品なんかを取り外した。操業停止をしなければならぬという事態が発生をしてきた。それから産炭地の離職者を採用しなければならないということになって、一時四十名程度の産炭地離職者というものを採用しておった。これを首切るという事態が発生をしてきている。だから、地域振興であるとかあるいは離職対策というようなものが融資の目的なんだけれども、もう完全にその目的がそのとおり進んでいないということが実態だから、このようなずさんな融資をしたというその責任をどうとろうとお考えになっていらっしゃるのですか。  しかも、私の聞いているところによると、この魚貫水産の社長、片岡という人ですが、この方は、あなたの方で融資をされたとき、自分が立てかえがあったのだということで、融資をした金額を自分の方に持っていくというような扱いすらしたということ、それは真偽のほどは私が片岡から聞いたのじゃありませんから承知いたしておりませんが、その会社の内部の者から、そういう扱いをしたということを聞いているのです。私はこれはきわめて重大な問題であるというふうに考えるのですね。  ただいま私が幾つかの点を指摘いたしましたが、これに対して実態はどうなのか、どう責任をとろうとお考えになっていらっしゃいますか。
  94. 本田早苗

    ○本田参考人 御指摘のように、産炭地域で経営される企業が当初の目的のように経営されるということが産炭地域振興の目的に沿うわけでございますが、残念ながら本件はそういう方向に向いておらない。これをどうするかということについてでございますが、さしあたり八月に繰り上げ償還の請求をいたしました。繰り上げ償還の請求というのは、十年あるいは五年の融資に対する期限の利益を与えておるわけでございますが、この期限の利益を取り消したということでございます。そして、通常こういうケースの場合には、肩がわりをする企業あるいは再建する計画というものをよく検討いたしまして、当初の目的に沿うように企業を立て直す方向でいろいろの策を講ずるということにいたしておりますが、本件につきましてもそうした方向でまいりたいと思います。  ただ、本件につきましては、すでに会社更生法の手続の申し立てがございまして、熊本の地裁ではこれを受理しまして、保全処分をやり、いま手続を受理するという段階で、これから更生計画をどうするかということの検討をするという段階になっておりますので、その成り行きを見なければならないという事情がございます。
  95. 中村重光

    ○中村(重)委員 長官、いまお聞きのとおりなんですね。会社更生法も債権者がこれを申し立てをしている。しかも繰り上げ償還をするといっても、繰り上げ償還には相手が恐らく応じないだろう。しかも設備は中古の材料を使っているという。すると担保価値はきわめて低い。こういうことになってくると、融資をした額がそれだけ償還できないということになれば、これは重大な損失を国に与えることになる。この問題は簡単な問題じゃありませんよ。これをどう始末しますか。
  96. 増田実

    ○増田政府委員 私どももこの問題につきましては、これは重大な問題だと考えております。産炭地振興施策といたしまして、産炭地に誘致されました企業相当手厚い資金を与えて、それによって地域雇用を増進し、また、その地域の再開発を図るということでやっておるわけでございますが、たまたまただいま問題となっておりますこの企業は、ことしの五月ごろから非常に経営状況が悪くなりまして、このために企業として成り立たないような状況になってきたわけでございます。それに関しまして、ただいま本田副総裁からも御説明いたしましたように、会社更生法の適用を受け、保全命令が出ておるわけでございます。  ただ、私どもといたしましては、この事業につきまして、やはり産炭地域におきます企業というものをできるだけ育成、振興させるという立場から、今後この更生計画というものが裁判所へ出されるわけでございますが、それに沿いまして再建の見込みというものを検討いたしまして、今後のこの企業の立ち直りを応援いたしたい、こういうふうに思っております。ただ、現在までのいろいろな事実、先ほど先生からも御指摘されましたようないろいろな事実がありますので、これについては相当詳細にわたって従来の経緯あるいは各種の障害その他を十分調査、分析いたしました上で、安易な気持ちではなくてこれに対して取り扱っていきたい、こういうふうに思っております。
  97. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたのいまの答弁と、本田参考人の先ほどの私の質問に対してこれからどうするのだということについての答弁がありましたが、これは食い違っているのですね。本田参考人は繰り上げ償還を要求していると言うんだ。立ち直りを考えているわけではないですよ。ともかく債権保全を考えている。債権保全を考えるのも私は当然だろうと思うのだけれども。  では、あなたは立ち直りをさせるのだと言うのなら、どういう方法で立ち直りをさせるのか。いまの債権保全のために繰り上げ償還をさせるということとの関連はどういうことになっておるのですか。質問に対して適当に答弁されては困るのです。
  98. 本田早苗

    ○本田参考人 言葉が足らなかったようでございますので、追加させていただきたいと思います。  先ほど、繰り上げ償還を請求いたしました、これは期限の利益を喪失せしめてわれわれの方の債権の確保の一つの手だてを講じたということを申し上げました。それと同時に、通常のケースといたしましては、こうした場合に債権確保の方途を講じると同時に、肩がわりする企業を求め、あるいは再建策を検討いたしまして、この企業が経営を継続できる状態で債権も返済をされる状態にすることを通常といたしておりまして、従来からの倒産企業あるいは会社更生法の適用を受けた企業につきましても、同様な方法で再建を求め、現実に債権の回収を進めておるような状況でございますので、先ほどの長官の答えのような方向で進めてまいりたいというのがわれわれの考え方でございます。
  99. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうすると、いまあなたが答弁されたことと、いままであなたの方で扱ってきたこととは違うではありませんか。片岡が社長をやって、それでうまくやることができない。それで次に社長がかわった。その社長は非常に意欲的であった。ところが、片岡が、いま言ったようにあなたの方で貸し付けた金を自分が立てかえておったと言って、自分の方で持っていく。それで未払いはそのまま残されておる。債権者はやかましく言ってくる。運営ができない。だからこれに対するいろいろな対策をあなたの方に要求をした。ところが、あなたの方は会社の内政に干渉するということは適当でないからと言って、全然これを指導していくという方向をとらなかったではありませんか。したがって、ますます深刻になってきたではありませんか。そして告訴事件まで発生しているではありませんか。そうしておいて、いま私の質問に対して変節的と考えられるような答弁をされ、適当に私の質問に対してあなたは答えてきている。いままでは、会社の内部の問題であるから、こう言ってさわろうとしなかった。   〔萩原委員長代理退席、委員長着席〕 事態が非常に悪くなってきた。それでは、あなたの方では少なくとも二億八千万というような莫大な金を融資して、その債権を保全しなければならない、さらに融資をした地域振興であるとかあるいは離職者対策という事業目的というものを円滑にやっていこうとする、そういう姿勢がなかったということになるではありませんか。どうにもならぬような事態になってからいまのような答弁をされても、私は遅きに失すると思うし、また、そういう考え方があるのだったら、私が指摘をいたしましたように、そういううまくいくような事態が起こったときにそれに力をかしていく、そして債権も保全をするし、融資目的というものも達成されるようにやっていくことがあたりまえではありませんか。なぜにあたりまえのことをいままでやらなかったのですか。
  100. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  御指摘のように、片岡という社長から渡部という社長にかわられまして、そして渡部という方が社長として経営の任にいっとき当たられたのでございますが、両者の間の連携は必ずしも十分でなかったようでございまして、そのままでやれるかどうかという問題があったわけでございます。われわれの方といたしましては、七月の調査をいたしまして、このままではむずかしい、両者でよく円滑な連絡のもとに経営できる体制に切りかえてもらいたいということを申し上げたのでございまして、一時はそういう申し合わせができたのでございますが、申し合わせの前提となったお互いの理解の内容が食い違っておりまして、それも破約になったというような状況がございます。  そういうことで、われわれとしても、新しい経営者が入られて、それで円満に経営が移って、そして当初の目的に沿い、われわれの債権も確保できることを望んだのでございますが、必ずしも両者の間の御理解が一致しておらなかったということのために、当初の目的のような状態にならなかったのでございます。
  101. 中村重光

    ○中村(重)委員 私が申し上げたのは、要するに債権確保というものはやらなければいけないのだ。同時に、長官の答弁と同じ方向でこの会社を再建させたい、事業継続ができるようにしていきたい、こう言っているのだから、いまからそれをしなければならないのだったら、いままでにそれができるように努力をすべきでなかったのか。いま片岡社長から渡部社長という形になって、そして、いろいろあったけれども、両者の関係がうまくいかなかった。両者の関係がうまくいくように努力をすべきであった。にもかかわらず、そういった企業の内部の問題について公団はタッチすべきではないということで、やらない。事態は非常に悪くなっていった。  これからそれをしようとするのだったら、いままで申し上げたように、債権の保全である、国民の貴重な金であるということをお考えになって、それから地域振興であるとか産炭地の離職者対策ということをお考えになるならば、もっと積極的にあなたの方は乗り出していって、会社の事業目的というものがうまくいくようにやる必要があったんだということです。それをおやりにならなかったということは、これは職務怠慢だと言われても仕方がないでしょう。  それから、繰り上げ償還等をあなたの方で債権保全のためにやるということなんですが、ところが相手が応じないという場合、それからまた会社の再建をやらせるということになりましてもうまくいかないという場合に、当然執行ということが起こってくるのでしょう。ところが、担保にとっているもの、土地にしましてもあるいは建物にいたしましても、これは不足であることは間違いない。したがって、今度は片岡は、個人財産なんかにも及ぶであろうということで、片岡自身が持っている財産は子供の名義に変えたり、あるいはいろんな形で公団の方から執行される場合を予想して、いろいろな阻害行為をやっているということを私は聞いている。これもきわめて大変な問題であろうというように考えるのですが、それらの情報はあなたの方は御承知になっていらっしゃるのかどうか、どういう方法でもって債権保全をしていこうとお考えになっていらっしゃるか、もう一度お聞かせをいただきたい。
  102. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  会社の再建につきましては、先ほども申し上げましたように、最も円滑な方法で実現することにつきまして努力したのでございますが、その点がうまくいかなかったということでございます。現在は、先ほど御説明申し上げましたように会社更正法の手続をとっておりますので、しかも債権者側としてもきわめて必要な企業である、魚貫においてあの企業が経営することが地域的にも必要だという御意見も出ておりまして、したがいまして、再建計画の検討をし、実施されるという方向に向かってもらわねばならないというふうに思うのでございます。  御指摘担保の問題につきましては、われわれとしても必要な担保として一応土地、建物機械設備等をとってはおりますが、これで十分かどうかということになりますと、評価の問題と絡みまして、われわれとしてもさらに検討しなければならないと思います。  現在担保を子供の名義その他に変えておるということについては、必ずしもつまびらかにしておりませんが、その辺のことにつきましてはさらによく調べてみたいと思います。
  103. 中村重光

    ○中村(重)委員 大体いま私の指摘に対して、どの程度担保価値があるのかどうかわからないというようなことでは、当初からあなたの方は融資をするときにきわめて調査がずさんであった、あいまいな金の貸し方をしたということをあなたは証言することになるのですよ。そのようななれ合いというのか、ずさんな融資をしたということについては、公団幹部と会社側との何らかのなれ合いがあったのではありませんか。いかがですか。
  104. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  担保評価につきましては、八掛けの歩掛けで判断するというような基準がございますので、融資の際に担保の価値の評価はいたしております。ただし、これを処分したときにどうなるかということについてはこれから先の問題になるということを申し上げたのでございまして、担保評価としては一応式に基づいた評価担保価値を評価いたしておるのでございます。  それから、第二点のなれ合いがあったのではないかという点でございますが、恐らく、私の方の前融資部長が退職後この魚貫水産のいろいろの経営についてアドバイスをし、何かしたようでございますが、そのことと今回の融資とはわれわれとしては無関係でございまして、御指摘のようななれ合いの点は一切ございません。
  105. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほどのお答えの第一の、八割か九割かで担保の場合は評価をするのだということなんだけれども、申し上げたように未払いがあるのだから、未払いがあるために機械が動くところの重要な部分について取り外しをするといったような事態が起こってきている。そういうことで機械が動かぬようなことになれば、何の価値もない。あなたの方では八割か九割かで設定したかもしれないのだけれども、そういうことでは、その価値というものはきわめて減殺されるということになってくるわけだ。だから、融資の際に、そういう支払いができないような、未払いという形がなくていいようなことをしっかり把握をして融資をしていくということでなければならぬ。  設備ができているからといって、その設備について支払いが十分完了しているという形のもとに融資をするのでなければ、建物は建った、だけれども建ったからということだけで融資をしたのでは、私が申し上げたように、その建物に対するところの支払いができていなければ、その建物は不完全な担保という形になり、問題が派生することはもう当然なことなんだ。それが現実に起こってきているのだから、きわめてずさんであった。そういうことをやらなければならないのにかかわらず、十分調査をして適切なやり方をしていなかったということは、私は、職務怠慢なのか、なれ合いかということを言わなければならぬ。  私が質問もしないのに、あなたの方からお答えになったのだけれども、当時の融資関係者、それとの関係はなかったのだとあなたはおっしゃったから、実際は実情をつかんでいらっしゃるのではないかなと、あなたの答弁で私は感じたのですが、当時の融資部長というのはだれですか。
  106. 本田早苗

    ○本田参考人 宮田と申します。
  107. 中村重光

    ○中村(重)委員 宮田は、退職後、魚貫水産との関係はどうなりましたか。
  108. 本田早苗

    ○本田参考人 非公式の御指摘も受けましたので、調べましたところ、退職後、九州の方に出向いた際に魚貫水産を見学したようでございまして、その際に、東京方面の商品販路の拡大について助力を求められた、これに伴いまして、謝礼といいますか、実費といいますものとか、両者を含んだものを受け取ったということでございます。
  109. 中村重光

    ○中村(重)委員 魚貫水産からどの程度の謝礼を宮田は受けているのですか。
  110. 本田早苗

    ○本田参考人 当人の正確な名前の金額としては六十万でございます。
  111. 中村重光

    ○中村(重)委員 退職前にも魚貫水産からそういう金品を贈られたという事実を承知していらっしゃいますか。
  112. 本田早苗

    ○本田参考人 非公式の御指摘を受けましたので、その後調査いたしまして確認いたしました。
  113. 中村重光

    ○中村(重)委員 調査した結果が、先ほどの謝礼を受けたというのは、退職する前に、まだ融資部長のときに謝礼を受けたということなんですか。
  114. 本田早苗

    ○本田参考人 退職後でございます。
  115. 中村重光

    ○中村(重)委員 本田さん、退職後は謝礼どころじゃないでしょう。魚貫水産の顧問といったような地位を得て、二百万の金ははっきり帳面に載っているのですよ。毎月の手当二十万、三十万というような額を魚貫水産から受けているでしょう。非公式にそういう指摘を受けたから調査をしたということにしては、余りにもあいまいな、ずさんな調査じゃありませんか。
  116. 本田早苗

    ○本田参考人 私の方の調査では、当人の名前のアカウントは六十万でございます。
  117. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は、いまの宮田さんの後の融資部長に私の部屋に来ていただきました。その際にお尋ねをいたしましたところ、顧問か相談役という形で魚貫水産に関係をしているようでございますとおっしゃったように記憶をしておる。やめてから直ちに魚貫水産のそういう相談役、顧問の立場に立って、毎月の二十万、三十万という手当を受けているじゃありませんか。その金額が帳簿にもはっきり二百万は載っているのですよ。それを調査をしないということは余りにもずさんじゃありませんかね。そして、大した関係はないのだ、謝礼を少し受けただけだと言うようなことでは、これは、融資部長のいすにありました際に、この融資をしたことに対してどういう関係があるのかということをあなたの方では調査をしようとすることを避けたのか、調査をしたのだけれども、これが表に出ることをこれは大変だと思って伏せようとしているのか、そのいずれかとしか受け取ることができませんよ。
  118. 本田早苗

    ○本田参考人 お答えいたします。  われわれとしてはできるだけの調査をいたしました。そして、数字も銀行等で調査いたしましたが、先ほど申し上げたとおりでございます。
  119. 中村重光

    ○中村(重)委員 帳簿は、私が申し上げましたように毎月三十万程度の手当を受けておる、二百万程度は帳簿に記載されているが、別の名義で相当額が支払われているということに私の調査ではなっている。あなたはこの事実は確かめなかったのですか。
  120. 本田早苗

    ○本田参考人 私の方は銀行で調べましたが、アカウントとしては先ほど申し上げた六十万円しか発見いたしておりません。
  121. 中村重光

    ○中村(重)委員 銀行でどうしてそれがわかるのですか。銀行で調べたとおっしゃいましたね。銀行でそれがわかりますか。
  122. 本田早苗

    ○本田参考人 魚貫水産の送金の表から発見いたしております。
  123. 中村重光

    ○中村(重)委員 そういうことで実態をつかむことができようはずがないじゃありませんか。私は魚貫水産の帳簿をきちっと確かめた者からその事実を聞いている。はっきり帳簿に載っていますねと言ったら、載っています、それは間違いございません、こう言っている。あなたの方では銀行でと言うけれども、銀行ではそういうことはわかりゃしませんよ。それじゃ否定することにつながらないじゃありませんか。そういうことでは否定にならない。  私が申し上げましたような事実があるのでありますから、少なくとも二億八千万の金を融資するときに、会社と融資部長との間にはきわめて汚いそういうなれ合いがなされた。不正な行為が行われておった。だからして、こういう事態が発生してきたのじゃありませんか。未払いがある、債権者から差し押さえられる、そして部品は取り外される、操業は停止する、産炭地離職者は首切る。そうして、いまあなたの方は繰り上げ償還の命令等をしなければならなくなった。てんやわんやの状態にいま追い込まれているじゃありませんか。うみを出すものは出さなければなりませんよ。地域振興、離職者対策、この大目的をいかに達成するかということを最上、最高のものとしてやっていかなければ、公団としての責務を全うすることにならぬじゃありませんか。  増田長官、どうお考えなりますか。
  124. 増田実

    ○増田政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、産炭地域に対する企業誘致のために国がこれを積極的に推進するということで、地域振興整備公団を通じまして各種の設備資金あるいは運転資金融資あるいは出資をいたす制度を行っておるわけでございます。  いま先生から御指摘なりました個別企業につきましては、経営の状況が非常に困難になり、それと同時に会社内にいろいろ内紛が起こり、そのためにせっかく産炭地域振興のために融資いたしましたものがその実が上がらず、しかも貴重な国の金が償還が非常にむずかしいという状況に立ち至ったわけでございます。そういう意味で、私どもといたしましてはこういう事態が二度と繰り返して起こらないように十分注意いたしたいと思いますし、また本件につきましても、先ほど申し上げましたような再建策を講ずることによりまして、従来国が貸しました金額の回収を行うとともに、またこの企業の再建を行って、本来の目的であります地域振興、雇用の造出というものを図っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  125. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、私が申し上げた事実関係について通産省として調査をしてもらいたい。同時に、いまあなたがお答えになったようないわゆる債権保全の方策、それから会社をどういう方法で再建するのかといったような点について報告をしていただきたいと思うのですが、よろしゅうございますか。それによって私はまた質問することにいたします。
  126. 増田実

    ○増田政府委員 今後の本件につきましての解決策につきましては、十分公団と打ち合わせをいたしまして、今後の再建策あるいは貸し金の回収その他につきまして具体的な計画を立てていくということで考えております。  それから先ほど、これは私は知らなかったのでございますが、融資部長が退職後融資先へ就職をしたということで、本田副総裁と先生との間にいろいろ質疑応答があったわけでございますが、これは、いやしくも地域公団に勤務しておる者が世の疑惑を招くような行為があってはならないということで、これにつきましても十分私どもとして責任を持って調査いたすつもりでございます。  ただ、いまの質疑応答をお伺いいたしますと、融資部長は四十八年末、この融資を数件行った途中でやめておりまして、最後は、一番問題となっております一億五千万円のときにはすでに退職後でございます。また、自分が融資した先に顧問あるいはその他のような形で就職することにつきましては、私はこれは問題があるというふうに思いますが、ただ、もしこの融資部長在職中に将来の地位を約束するとか、あるいは金銭の授受を約束するというようなことでありましたら、これは刑事上の問題になると思いますが、融資部長をやめました後に、会社の経営のアドバイスをしてくれということで、退職後にそういう雇用関係が生じて、それに対しまして報酬が行われるということであれば、これはもっと事実を私どもの方も究明いたしますが、いまのようなことであれば、これは刑事上の問題にならないというふうに思っております。
  127. 中村重光

    ○中村(重)委員 それは刑事上の問題になるかならないかという問題は、捜査当局が判断する問題であろうと私は思います。しかし、それ以前の問題、いま言うように退職後その会社に報酬を受けるような地位についたということ、そして、会社自体はその後の融資関連をしていまここで本田参考人から答えられたような事態が発生をしてきている。そうすると、これはやはり融資部長という地位にあったときのいわゆるなれ合い融資というような形のものがなされたということは常識として判断できますね。それがやはり問題だと私は思うのですよ。だから、それらの点についてもあなたの方はやはり調査をなさらなければ、監督、指導という責めを果たすことにはならないというように考えます。こういうことがもう一度起こってはなりませんから、再びこういう事態が起こらないように厳正に調査をしていく必要があるだろうと思う。  それから、先ほどの債権保全の方法、それから会社の再建策といったようなことについてこれから対策を講ずるということでございますから、このことについてまた御報告もいただきます。私の方からも改めて質問をすることにいたしまして、この点についてはきょうは質問を保留しておきたいというふうに思います。  次に、建設省に伺いますが、本年の金融公庫向けの住宅は十七万四千戸でございますか、これが予算化されているようですが、申し込み受け付けとか、それから融資の通知、中間資金の交付、取り扱い融資機関の交付というものを経て、不況対策という面も多分に加味してくるわけですが、どうもそれにしては余り緩慢過ぎるというような感じがして、不況対策というようなものがにじみ出ないような感じがしてならないのですが、これらの点についてひとつ実情をお聞かせいただきたい。
  128. 京須実

    京須説明員 住宅金融公庫の個人住宅貸し付けでございますが、御承知のように、これは個々人の住宅の建設につきましてその資金の一部をお貸しするものでございます。したがいまして、個人が公庫の個人住宅融資の受け付けを始めますと応募いたします。受け付けが決まりまして受け付けをいたしますと、まずその方の資産、そういったものを調査いたしまして、お貸しできるという予約ができます。それが終わりましてから設計審査に入ります。設計審査に時間がかかりますために、遺憾ながら、設計審査がパスいたしまして正式にお貸しするという契約ができました以後、着工いたしますのは、申し込み受け付け以後約一カ月の期間を要するわけでございます。申し込み受け付けの一カ月後に大体着工が始まりまして、その後約一カ月でむね上げになりますと、公庫は公庫がお貸しする資金の六〇%をお貸しいたします。その後、平均いたしまして二カ月ないし三カ月たちますと全部完工いたします。完工いたしまして、抵当権設定等が終わりますと残りの四〇%をお貸しする、そういったわけでございます。  したがいまして、公庫の資金でございますと、不況対策とかそういった場合には、やはり相手がございまして、みずからすぐに発注いたしまして着工するといったことはできかねる次第でございます。したがいまして、受け付けをいたしましてから約一カ月間設計審査の手間をとりまして、それから通常の方は着工が始まる。着工が始まりますと、公庫の資金はお貸しいたしませんが、すでに御当人のお手持ちの資金あるいは民間金融機関等からの融資等がありますので、すでにその分につきましては公庫融資をてこといたしまして工事の発注が行われますから、ある程度資金の散布といいますか、景気対策には効果があると思っておりますが、公庫資金が貸し出しますのはさらにまた一カ月おくれまして、むね上げのときに六割になる、そういった次第でございます。
  129. 中村重光

    ○中村(重)委員 不況対策という点から、従来五月に受け付けをしておったのを一カ月間繰り上げて、四月に受け付けるようになさいましたね。私は具体的な事実についてお尋ねをするのですが、五十年四月二十八日に一カ月早く受け付けをした。ところが、融資決定通知が来たのは五十年七月二十一日というふうになっていますが、この間三カ月間。それから、中間資金交付がなされたのが五十年十月以降でございますから、決定通知が来てから中間資金の交付まで、この間三カ月。それから、取り扱い金融機関の交付はなお三カ月おくれて五十一年一月以降ということになります。一いまあなたは一カ月ということをおっしゃったのだけれども、これは具体的な事実ですから、この資料も私は持っているのですが、こういったことでよろしいとお考えになっていますか。
  130. 京須実

    京須説明員 先生指摘のように、本年の四月二十八日に例年よりも約一カ月早めて第一回の個人住宅申し込みの受け付けをいたしました。ところが、初日、第一日だけで融資予定枠を大幅に上回るといった事態になりまして、その方々全部には当初予定されました予算ではお貸ししかねるといった事態に追い込まれました。そのために財政当局等といろいろ折衝いたしまして、本年の第一回の融資決定は非常におくれまして、六月以降に逐次設計の審査をお願いした次第でございます。  したがいまして、設計の審査が終わりましてから資金をお貸しするわけでございますが、やはり異常でございました。そのために、一斉に工事着工されまして一時にむね上げということになりますと、資金の交付を全部受け合いかねるといったような事態でもございましたので、従来の平年度の資金の交付の状況等を勘案いたしまして、円滑な業務の遂行を図るために、公庫の方から、貸付予約あるいは資金の交付の時期を、大体いつごろになれば資金をお貸しできると思いますので、それに合わせましてむね上げあるいは工事完了等について御検討願いたいというお願いを申し上げました。  しかしながら、これは国民にとっても迷惑の多いところでございまして、また公庫としても決してよいとは思っておりません。したがいまして、第四次不況対策以降は、公庫の方で前もってお願いいたしました資金交付の時期をすべて取り消しまして、御当人の建設工事実態に合わせましていっでもお金はお貸しできます、つまり、むね上げで六割、完工で残りの四割いつでも工事の進捗に合わせてお貸しできますというぐあいに全部一斉に御通知申し上げまして、改めました。
  131. 中村重光

    ○中村(重)委員 申し込みが非常に多かったということは事実です。事実ですけれども、それにいたしましても、申し込みから決定通知まで従来一カ月であったのです。それが、いかに申し込みが多かったからといって、三カ月というのは余り長過ぎる。それはお認めになるだろうと私は思うのですよ。六月以降だったというのが、実際は五月二十一日ということになっている。そして、中間交付資金がこれまた三カ月おくれて十月以降、これもいままで一カ月ぐらいでしたね。そうすると、従来はもう通知が来たらすぐ建ち家ができた。ところが今回は、不況対策だからといって申し込みを一カ月早めておきながら、従来は六月には建ち家ができたのが、今回の扱いのために十月以降にならなければ建ち家が建たなくなったのですよ。これで不況対策ということになるでしょうか。これは申し込みが多かったということだけでは済まされませんよ。
  132. 京須実

    京須説明員 まことに申しわけございませんが、申し込みが非常に多いために当初の予算で間に合いかねまして、そのためにいろいろ財政当局と折衝いたしました。したがいまして、予想を上回りました申込者の方々全部にお貸しできると決定いたしましたのが約一カ月後でございました。そのために非常におくれました。なおかつ、受け付けの際にいろいろお願いを申し上げまして、一時にむね上げとかそういった工事が進捗いたしますと、公庫といたしましては資金をお貸しできないという事態になりますと非常に御迷惑がかかる向きもあろうかと思いまして、個々の方々には設計審査の終わりました順に、あなたにはいつごろお貸しできますという御予約を申し上げました。これはまことに申しわけない次第でございまして、建築される方々にとってそのために非常に御迷惑があっただろうと反省しております。  したがいまして、本年度の第二回以降につきましては、設計審査を終わりまして着工が始まりまして、その後はむね上げがあれば六〇%、完了があれば残り四〇%というように、全部御当人の設計あるいは工事の進捗の状況に合わせまして資金交付できるようにしております。また、第一回につきましても、九月中旬に全部お手紙を差し上げまして、いっでも設計ないし進捗状況に応じまして資金の交付をいたしますというぐあいに改めました。まことに申しわけなく思っております。
  133. 中村重光

    ○中村(重)委員 第一回の貸し付けの際に、私が指摘をいたしましたようなことは適当でないということで、これを改めて、いまお答えになったようなやり方でもってこれを促進していきたいと言っているのだというようなことでございますが、今後さらに改善をして、できるだけ早く受け付けをし、そして融資決定をして、不況対策にふさわしいような、あるいは個人住宅というものも今日の住宅事情からきわめて深刻でありますから、それに対応するようなやり方をしていくという考え方だと理解をしてよろしいですか。
  134. 京須実

    京須説明員 先生お話のとおりでございまして、今後とも特に公庫の個人住宅貸し付けにつきましては、資金をなるべく早目にお貸しできるように努力をしようと考えております。特に第二回の受け付け分につきましては、この年末を控えまして極力十二月までに皆さんの設計審査を終わりまして、なるべく十二月中に一部はお貸しできるように、極力早めるように努力をしております。
  135. 中村重光

    ○中村(重)委員 第一勧銀は、住宅金融公庫の個人住宅資金貸し付けに絡んで不正受け付けを行ったとして、公庫から委託業務停止処分を受けたということが伝えられているのですが、まだ同じようなことをやった銀行があるのだろうと思うのですけれども、その点はどうなったのか。それから、処分をした銀行。その点とあわせて、この処分は解除をするのか、しないのか。そういう不正をやった企業は、ある一定の期間が来たならばこれを解除するというようにお考えになっていらっしゃるのか。だとするならば、その期間はどの程度か。
  136. 京須実

    京須説明員 本年度の第一回の公庫の個人住宅申し込みに際しまして、一部の金融機関におきまして特定の会社の工事のものにつきまして一括で申し込みを受け付けるといった事態がございました。その他書類の不備等いろいろございましたのですが、個々人のミスにわたります一般の国民の方々のミスは、調査の結果補完できるものは極力補完いたしましたが、特定の企業向けの融資等につきまして一括で金融機関が受理したもの、こういうものにつきましては公庫の方でその反省を求めた次第でございます。  しかしながら、処分ではございませんで、これは住宅金融公庫が個々の金融機関と契約をしております委託業務でございます。したがいまして、金融公庫の方で処分ということではございませんで、当該最も不正の度合いが悪質でありました二つ金融機関につきましては、金融公庫といたしましては委託業務を一時中止いたしますということにいたしました。それは六カ月と聞いております。  処分と言うとちょっとニュアンスが違うのでございますが、これにつきましては公庫法に対する違反と申しますよりは、公庫が業務を委託する際に極力個々の申込者一人一人に面接をして申込書を受け取ってほしいという指導をいたしまして、その指導といいますか、公庫の要望に対して違反をして、一まとめで特定の業者から個人住宅申し込み受け付けをしたという点でございました。それに対するミスでございますので、公庫が貸付契約に基づきまして契約を一時とめるということにしたわけでございます。
  137. 中村重光

    ○中村(重)委員 だから、これからの対策対策として、そういう不正をやった銀行が三銀行かが明らかになっているわけですね、それに対しては当然取引停止処分ということをやったわけでしょうから、一定の時期が来たらこれを解除するということになっているのかどうか、いま私の質問お答えになったかどうか聞きとれなかったのですけれども、解除するとすると、どの程度の期間の後に解除をするということになっているのかという点です。  それから、いま一括して受け付けをしたと言うのですが、その一括をして受け付けたのは新日本製鉄の百七戸というのも例として伝えられているわけですが、その事実についてもお答えをいただきたいし、ほかにそういう事実があるかどうかという点もあわせてお答えをいただきたい。
  138. 京須実

    京須説明員 公庫が一定期間業務を停止いたしますという一定期間でございますが、それは五十年九月一日から五十一年三月三十一日までということで業務の停止をいたしました。  また、その不正の態様でございますが、申し込み受理におきまして一定の業者の枠を事前に受け付けの際に確保するといったような形になりまして、お話の新日本製鉄といったようなものにつきましてまとめて受け付けをするといったような事態になりました。これが第一勧銀の稲毛支店でございます。そのほかに日本住宅金融の名古屋支店におきましても、同様に特定の建設業者分につきましてまとめて融資をしようとした、そういう事態でございます。
  139. 中村重光

    ○中村(重)委員 一括引き受けをしたのは新日本製鉄ということも伝えられているのだが、その事実はどうかということ、それから、そういったようなことがほかにもあるのじゃないかと思うのだけれども、そうした事実がほかにもあるかどうかという点はいかがですか。
  140. 京須実

    京須説明員 新日本製鉄もそういう一括申し込みをした事実がございました。また、その他の機関につきましても、程度の差はございますが一括申し込み受け付けをしたという事例はございます。
  141. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、一括申し込みに関連をしてくるのだけれども、建築業者が手続を代行する行為というのは認めているわけですね。
  142. 京須実

    京須説明員 原則として認めておりません。認めておりませんので、その業者が一括して持ってくる、それが一括代行ということでございます。
  143. 中村重光

    ○中村(重)委員 手続を代行することは認めていない。そうすると、そういうことが一括引き受けということを誘発することになるという点ではわかるのだけれども、一括でなくとも、現実には建築業者のところに行って設計をしてもらったり、あるいはついでに申し込みもあなたの方でやってくださいというようなことでやっているのだろうと思うのだけれども、今後一切そういうことはやらせないということですか。
  144. 京須実

    京須説明員 金融公庫の方で金融機関にお願いしておりますのは、原則として、公庫の貸し付けを希望している御当人に現実金融機関までおいで願いたい、その上で予算とかあるいはその方の収入とか、そういうものをお聞きした上で、貸し付けできるかどうかという判断もしたいという指導でございました。  しかしながら、たとえば先生指摘のように、業者に設計等を頼みまして、あと細かいことはわからぬからお願いしますといったことも、現実にはございます。たとえば、業者が特定の一人の方の代行に参った場合、これは家族と申しますか、ほぼ親戚、知人とかと同様でございますので、そういうものにつきましては、個々に御当人をお呼びいたしまして御当人にお会いいたしまして、明らかに御当人がみずから公庫に申し込みをする意思があったということを確認いたしまして、そういう一人一人のミスにつきましては特別に配慮して貸し付けをしております。  でございますから、一括申し込みと申しますのは、本当に公庫の申し込みの意思があったかどうかも必ずしも明らかでないといった方々を一まとめにいたしまして公庫に申し込みをいたしまして枠をとるという行為が特に問題でございますので、そういった一まとめにして代理申し込みをするといったような行為を特に厳正に規制したい、このようなことを考えておる次第でございます。
  145. 中村重光

    ○中村(重)委員 大工さんとか左官さんでもって組合をつくっているのがありますね。たとえば全建総連とかいうようなものがある。こういった組合が、組合業務としてお客さんから設計を依頼されるということ、そして申し込みもついでに依頼を受ける。しかし、あなたの方では、それは一括引き受けにつながってくるからということで、本人が金融機関の窓口に来るようにという指導をするということなのですが、大企業の場合と違って、そうした労働組合なんかの場合、それから住宅建築の協同組合なんというようなものもつくられているのだろうと私は思うのですが、そういったような組合等がなす行為も、今回起こったような大企業等の建築のために一括引き受けをやったという不正行為との関連から、一切今後はやってはいけない、こういう方針でお臨みになりますか。
  146. 京須実

    京須説明員 公庫融資希望される方にもいろいろ家庭の事情がございますし、お忙しい方もいようかと存じます。したがいまして、明らかに公庫融資希望なさっておる特定の一人の方あるいはごく少数の方々から頼まれてまいりましたという書類を持ってきた場合に、全部拒否をするかどうか、この点は慎重に考えたいと思います。
  147. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまお答えのように、あくまで不正につながるようなことは厳しく扱っていかなければならない。しかし、申し上げたように、大工、左官さんのそうした組合とか、それからそうした人たちをもって住宅建築の協同組合がつくられている、そのことがやはり住宅建築をする個人の非常な福利につながっていくといったような場合等々、使い分けというものもしなければならないのだろうし、実情に即するように、ひとつその点はいまのお答えのように対処してもらいたいということを希望しておきます。  それから、民間住宅建設に対する期待というものが非常に大きいわけですが、不況対策という面からもそうだし、それから、これから先安定経済成長に移行するという場合におきましても、引き金産業は、住宅産業というものが私は期待されているのだというふうに思うわけなんです。ところが、そういう期待にかかわらず、資材の高騰、それから土地の値上がりといったような点から、百九十万戸の建設予定であったものが百三十万戸に減るといったような事態が起こっておるようです。  ところがこれに反して、矢野局長にお答えをいただきたいのですが、建設資材、合板、セメント、ガラス製品、あなたの所管外のものもこれにあるのですが、小棒、これはあなたの所管になるわけで、あなたの所管のもの、所管外のもので資材の値上がりというものが非常にはなはだしい。それで結局、不況であるからといって大工さんや左官さんの賃金は抑えられる。一方、資材の値上がりというような形で住宅建築というものが進行していかないということが今日の実情であろうというように思うのですが、そうした建築資材等の値上がりというものを抑えていくために、通産省としてはどのような対策をお持ちなのかという点をお聞かせいただきたい。
  148. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 私どもの所管は、先生の御指摘のとおり小棒、平電炉メーカーの製品でございます。現状は、不況カルテルを一月まで延長していただくことに最近決まったわけでございますが、現在の価格が大体四万五千円ないし六千円、高値で四万六千円、それから安値で四万五千円でございます。今後の原材料の値上がりということはまた別になりますけれども、私どもは、当面におきましては、大体六万円から六万五千円というのが現在のいわば妥当な価格ではないかと見ておるわけでございます。それで、鉄くずは二万五千円というところですが、いわば鉄くずの回収業者として安定した営業ができるには、大体三万五千円あるいは約四万円近い数字で採算がとれるというように私どもは見ておるわけでございますが、現在そこまでいっておりません。  ただ、物不足のときに小棒が九万円を超える、場合によっては十万円を超えるというような時期がございました。こういうような場合には、高炉メーカーへの増産指示ということで市況を冷やすということもいたしますし、それから、いわば物価抑制という面では、小棒メーカーに対していま申し上げたような標準的な考え方がわれわれあるわけでございますから、そのラインを超すような場合には、これに対して生産量の増加ということで冷やすことと、小棒メーカーに対して適正な価格で売ってもらう体制で指導いたす、こういうことにしてございます。
  149. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間の関係もあり、ずいぶん長くなりまして御迷惑をおかけしますから、いずれまた適当な機会にお尋ねをすることにいたしますが、こうした資材の値上がりというものが住宅建設に対して大きな影響を及ぼしてくる。ひいてはそのことが、額に汗して働かなければならないところの、そうした大工、左官さんを中心とする労働者に対する賃下げ等の圧迫という形になっていくだろう。それが額に汗して働く労働者の犠牲という形になってはならないと私は思うのです。だから、住宅建設を促進する面からも、そうした働く労働者の生活安定という面からいっても、建設省は資材値上がりに対して重大な関心をお持ちにならなければいけないのではないかと思います。その点に対して建設省としてはどのような対応策を持っておられるのか。また、合板なんかは建設省自体の所管でもあるわけですが、そうした資材関係関係省庁との連携というものをどう進めておられるのか、また進めていこうとしていらっしゃるのか、ひとつお聞かせいただいて、それによって私の質問をきょうは終わりたいと思います。
  150. 京須実

    京須説明員 先生おっしゃいますとおり、建築資材等の値上がりがございますと一般国民の迷惑が非常に大きいわけでございます。したがいまして、私どもは通産省と協力いたしまして、極力資材の安定、あるいは労務価格の安定、さらにそれを通じました住宅建設価格の安定について、今後とも努力したいと思っております。  また一方、住宅金融公庫のたとえば個人住宅融資でございますが、その融資の額を上げまして、極力全額お貸しできるように、次第にそこまで持っていきたい、そのように考えております。現在は法律で八割まででございますが、残念ながら実績といたしましては五十年度第一回分でやっと四五%程度になったといったような次第でございまして、まだまだ公庫融資の貸付額も十分とは思っておりません。したがいまして、そういったような公庫融資の貸付限度額の引き上げといった点にも努力したいと考えております。
  151. 山村新治郎

    山村委員長 次回は、明十日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時二十一分散会