○野口
政府委員 お答えに入る前に、この繊維問題懇話会における一つの大きな柱は、御
指摘のように輸入問題へどういうふうにアプローチするかということでございまして、そのまた背景には去年からことしの春ぐらいまでにかけましての輸入の急増ということがあったわけでございますけれ
ども、
景気の落ちつきに伴いまして、実は輸入はこの春ぐらいから大分鎮静をしてきております。現在の輸入の
状況は、大体繊維製品にとりますと月一億ドルちょっとぐらいという
状況でございまして、一−九月で合計で九億ドル弱と、まさに月
平均一億ドル、こういうような
状況でございます。これは
先生よく御存じのとおり、輸入が非常にふえたときには二億ドルの輸入があったわけでございます。ということで、現在輸入が大分落ちついているということにつきましては、私
どもの方も、それから業界の方の
認識も一致しておるわけでございます。
ただ、業界あるいは私
どももそうなんですが、輸入についての非常に懸念される点は、現在は落ちついているけれ
ども、
景気が回復したらまたふえるのではないか、そうすると、このように体力が衰えている繊維業界は大変なことになる、こういう
認識でございます。一方、
景気は回復させなければいかぬわけでございますので、そのときにどういうふうに輸入に対処するかというのが
先生がいまお述べになりました輸入問題の基本を貫く
現状認識であり、その
対策としてのねらいの一番底にある問題でございます。
そこで、特に今後ふえるのではないか。確かにじりじりと輸入はややふえつつございます。この春くらいには月九千万ドルぐらいだったのが、いま一億一千万ドルを超えるという
状況でございますので、微増の
状況ではありますがふえつつあるわけなんで、先ほど言いましたような輸入急増への不安が非常にあるわけでございます。そこで、こういう不安を解消するにはどうしたらいいか、そういう
考え方で幾つかの施策が述べられているわけでございますが、もちろん政府に要求することのみならず
民間側でやるべきことはやるべきだということで、業界のとるべき
対策ということでも幾つか挙がっているわけでございます。
私
どもとすれば、政府にこういうことをやってもらいたいということのみならず、そういう前に業界としてなすべきことをぴちっとやってもらいたい、それにつきましては、政府も業界がやることについては大いにお手伝いをいたします、こういうたてまえでございますけれ
ども、政府としてそれじゃどういう手を打つのだということにつきまして、全体のたてまえは七項目の施策、
措置が並んでいるわけでございます。
先日の六大国首脳
会議における貿易制限
措置の
自粛ということとこの提言との
関係を
先生お尋ねになっているのかと思いますけれ
ども、私
どもの方の基本的な
考え方は、大原則としての自由貿易、貿易の自由ということを原則としつつも、個々の産業に対しまして、輸入の急増というようなことがありまして影響がある、あるいは被害を受けるというような場合には、そういう品目、
業種ごとの具体的な
状況に応じてそういう事態を回避あるいは克服するために妥当な
措置をとる、こういうのが提言の底に流れている
考え方でございます。
そこで、第一に
先生がおっしゃった輸入成約統計の改善活用、こういうようなことから始まりまして、特殊な場合には輸入貿易管理令による報告徴収をやるというような
措置でございますが、これは、ともかく私
どもの基本的な
考え方は、まず第一に輸入の動向をウォッチいたしまして、それに対して必要な場合には
行政指導をやる、こういうことでございますので、そういうベースになるための情報の入手、あるいは実態の把握と
現状の
判断、こういうことをやるための
措置が述べられたわけでございます。
しかし、具体的にさらに輸入がふえてまいりまして、個々の
業種に被害なりあるいは影響が出るというような場合には、国内にありましては商社あるいは流通業界への指導、外に対しましては
関係国との話し合いというようなことを進めて、話し合いによって秩序ある輸入を実現しよう、こういうことでやってきているわけでございます。しかし、さらに事態が悪化をいたしまして、当該産業に重大な被害が生ずるというようなことになりました場合には、ガットあるいは繊維多国間協定に基づいていろいろな
措置がとれるようになっているわけでございますけれ
ども、そういう
措置も発動せざるを得ないようなことになろうかと思うわけでございますが、貿易自由というたてまえからいたしまして、そういうような直接的なあるいは法的な輸入制限
措置はできるだけ回避をいたしたい。先ほど申しましたような輸入成約統計のウォッチ、あるいは業界、特に輸入業界、流通業界への指導、あるいは相手国との話し合いということによって、できるだけ円満に本件を解決したいというのが私
どもの
考え方でございます。