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神崎委員 久しぶりの
委員会で、その間しかも未曾有の
中小企業が圧迫され、困っている中で当
委員会が開かれているのでございまして、ずいぶんこの間に当局にお尋ねしたいこともたまっております。ところが時間の制約がありますので、こちらの方で問題を並べまして、要約してこれからその実態を申し上げますので、答弁漏れのないように、ひとつ
大臣や長官にはよく聞いてもらって、何遍も反論を繰り返すようなことにならないようにお願いいたしたいと思うわけです。
そこで、行政指導ではだめだということを午前中も言われておりますが、私もそうなんです、行政指導ではだめだと言っておるのに、行政指導の専門官さえふやしていないのですね。大
企業を指導する体制が強化されたのでもない。全く欺瞞としか言いようがないと思うのです。
そもそも、大
企業の進出によって
中小企業の経営が根本から脅かされているというこの問題は、
昭和三十年代の初めからあるのです。その時分から問題なんです。そして、
政府の行政指導では効果がなかったということは、過去二十年の歴史ですでに明白になっておるのです。
たとえば、
昭和四十年に旭硝子とアメリカのコーニング社の合弁会社、すなわち先ほど問題になりました岩城硝子、それの理化医ガラスへの進出の問題があります。岩城硝子の側から通産省に念書を入れて、中小業者と協調していく、混乱を起こさぬと約束したのです。ところが、四十四年、理化医ガラス部門に進出した。そして四十五年、TCMという一台十億円すると言われる自動機械を発注し、中小業者の抗議を無視して、ついにことしの五月から稼働させているのであります。この機械の
生産能力は、製品数にいたしますと日産三万個と言われております。それは既存業界全体の
生産量とほぼ同じなのです。もし一〇〇%稼働率になれば完全につぶされてしまうと、中小業者はこの機械の撤去を要求し続けているわけです。これは中小業者にとっては死活問題なのです。
十年前の、中小業者を初め既存の業界と協調を図っていく、混乱を起こさないという念書は、ただの紙切れだったというわけなんです。岩城硝子はことしの七月に二回目の念書を通産省に入れております。十年前に通産省は、念書をとったから大丈夫だと言っておられた。ところがまた改めて七月に二回目の念書を入れて、依然としてやっている、全く信頼できないと業者は語っております。さらに、業者の方から伺った話によりますと、岩城硝子社長は、約束を無視して中小業者に混乱と脅威を与えていることを反省しないばかりか、何と言っているかといえば、タイミングが悪かったかなと、こう言っているのです。行政指導なんか全くの無力だ、このように中小業者は語っております。
それに、この業界ではいまから申しますような苦しみをいま味わっておるのでありますが、全国理化医ガラス工業会というこの業界の組合の中の十五から十六社は、かつて薬のアンプルガラスをつくっていた。ところが
昭和三十五年ごろ
日本電気硝子がこれに進出してきた。そこで、細工管をつくる部門へ苦労して転換をしたのであります。ところが四十五年、いま言っておる岩城硝子が細工管に進出してきた。そして昨年中にはほとんどつぶされてしまって、いまでは一社が細々と細工管をやっているというのが
現実です。そして細工管をやっていた業者が今度は水面計、魔法びんや湯沸かし器に使うものですね、これにまた転換をした。ところが、またもやこれを追っかけてきて、
日本電気硝子が水面計をつくり始めた、こういうことなんです。こうした体験を通じて、いま中小業者は、もう逃げるだけではだめだと、大
企業の規制を求める運動に立ち上がっているわけであります。
また、大
日本印刷の一〇〇%子会社のQプリントの軽印刷への進出の場合もそうであります。四十九年三月十五日、通産省生活
産業局長の名によってQプリント社長への要望書を出した。その中で、Qプリントのフランチャイジーとなる者は構造改善事業を実施中の組合員に限るものとして、アウトサイダーの場合は関係三団体と協議の上、通産省の了解を得るものという点がこれには明記されておる。ところが、翌日、つまり四十九年三月十六日付の文書で、Qプリント社長、大
日本印刷社長は、通産省の要望を遵守することを確約しますと回答した。ところが、その後この約束を無視して、Qプリントは帯広、千葉に進出をした。
日本軽印刷工業会などの運動で帯広店は一時閉鎖をされたが、中小軽印刷業者は、行政指導の限界は全く明白になったと語っております。
次に家具業界の場合を挙げます。静岡県は、わが国木製家具
生産高の約一割を占めております。近年この業界への大
企業の進出はきわめて著しく、二十社ともあるいは五十社とも言われております。静岡では毎年六月に資金を出し合って家具見本市を開いて、全国から顧客を招くという催しをやっているのであります。約二百数十社が共同出品をして見本市をやっている。ところが、昨年から大塚製薬系の大塚家具株式会社がこれと同じ日に単独見本市を開いた。しかも駅のタクシーの運転手さんに手を回して、顧客を連れてきた者には五百円のチップを渡すという悪徳商法をやっている。そこで抗議をしてもやめず、ことしはそのチップが千円になったという。しかもことしの場合、通産省が現地業者とよく協調してやっていくようにと指導し、大塚家具もそうすると約束して、その約束した数日後こういうことがやられておるのであります。
さらに、豆腐の場合はどうかということであります。業者の運動、農林省の指導もあってヤクルトが撤退を表明し、いま森永との話し合いの詰めが行われているというのが
現状です。ヤクルトの撤退は行政指導で効果があった例だと
政府当局は自讃されるでしょうが、実際はそうじゃなしに、ヤクルトの場合は採算とか向こう側の都合によって一応これをとめたというのが中身なのです。すると今度は、何と奈良県の天理市の三笠コカ・コーラが豆腐に進出するというではありませんか。一方が抑えたら一方でちゃんとこういう形で出てくる。
いま私が挙げた例、これは一つ一つをやろうと思っていたのですが、時間の関係で一挙に言うのですから、よく私が納得するような答弁をいただきたいのですが、当局の言い分や弁解もあるでしょうけれ
ども、しかし、いま例に挙げた理化医ガラス、軽印刷、家具、豆腐、いずれの場合の例でも明らかなように、行政指導というのは結局大
企業に要望し、同意を求めるということである。そして、大
企業は、仮に
政府の要望に従い、約束をしても、約束を踏みにじることがあるということです。結局のところ行政指導とは大
企業が約束を守ることを期待するしかない、こういうことなんです。行政指導の限界は明白ではありませんか。行政指導で大
企業の横暴な進出を防ぎ得た、または防ぎ得るとどうして言えるのだろう、いままでの実例の中で。この点について、いま挙げました点に
大臣と長官からお答えをいただきたいと思います。