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1975-11-11 第76回国会 衆議院 商工委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十年九月十一日)(木曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    委員長 山村治郎君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 萩原 幸雄君 理事 前田治一郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 佐野  進君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君   稻村左四郎君       内田 常雄君    浦野 幸男君       小川 平二君    越智 通雄君       粕谷  茂君    小山 省二君       近藤 鉄雄君    塩崎  潤君       田中 榮一君    橋口  隆君       八田 貞義君    深谷 隆司君       森下 元晴君    山崎  拓君       板川 正吾君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       勝澤 芳雄君    上坂  昇君       竹村 幸雄君    渡辺 三郎君       野間 友一君    米原  昶君       近江巳記夫君    松尾 信人君       玉置 一徳君    宮田 早苗君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十年十一月十一日(火曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 萩原 幸雄君 理事 武藤 嘉文君    理事 佐野  進君 理事 中村 重光君    理事 神崎 敏雄君       天野 公義君   稻村左四郎君       浦野 幸男君    越智 通雄君       粕谷  茂君    小山 省二君       近藤 鉄雄君    田中 榮一君       橋口  隆君    深谷 隆司君       山崎  拓君    板川 正吾君       加藤 清政君    上坂  昇君       竹村 幸雄君    近江巳記夫君       松尾 信人君    宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      別府 正夫君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       水口  昭君         公正取引委員会         事務局取引部長 後藤 英輔君         経済企画庁長官         官房参事官   柳井 昭司君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局長    小島 英敏君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         中小企業指導         部長      児玉 清隆君  委員外出席者         経済企画庁長官         官房参事官   出井 弘一君         農林大臣官房審         議官      関根 秋男君         農林省食品流通         局食品油脂課長 吉田鉄太郎君         労働省労働基準         局監督課長   倉橋 義定君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十六日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     玉置 一徳君 同月十八日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     玉置 一徳君 同月二十一日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     玉置 一徳君 同月三十一日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     佐々木良作君 同日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     玉置 一徳君     ――――――――――――― 九月十一日  中小企業者事業分野確保に関する法律案(  中村重光君外九名提出、第七十二回国会衆法第  三七号)  官公需についての中小企業者の受注の確保に関  する法律の一部を改正する法律案神崎敏雄君  外一名提出、第七十五回国会衆法第二五号)  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(  神崎敏雄君外一名提出、第七十五回国会衆法第  二六号)  伝統的工芸品産業振興に関する法律の一部を  改正する法律案近江巳記夫君外一名提出、第  七十五回国会衆法第四〇号)  日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の実  施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に  関する特別措置法案内閣提出、第七十五回国  会閣法第五〇号) 同月二十七日  石油備蓄法案内閣提出第八号) 同月三十日  大規模小売店舗における小売業事業活動の調  整に関する法律の一部を改正する法律案(須藤  五郎君外一名提出参法第一号)(予)  伝統的工芸品産業その他の中小企業性産業を保  護するための輸入制限等に関する特別措置法案  (渡辺武君外四名提出参法第二号)(予) 十月十一日  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(  内閣提出第二八号) 同月二十二日  伝統的工芸品産業振興に関する法律の一部を  改正する法律案中村重光君外九名提出衆法  第一号) 同月三十日  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案多賀谷真稔君外九  名提出衆法第二号) 九月三十日  石油販売業者資格制度法制化に関する請願(  宮崎茂一紹介)(第一〇号)  地熱資源開発促進法制定に関する請願黒金泰  美君紹介)(第二二号)  同外四件(原健三郎紹介)(第一九七号)  家庭用燈油値上げ規制に関する請願鈴木善  幸君紹介)(第七〇号) 十月六日  地熱資源開発促進法制定に関する請願外一件(  山崎拓紹介)(第二九七号) 同月十三日  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正等に関する請願新井彬之君紹介)(  第四三七号)  同(小林政子君外一名紹介)(第六〇四号) 同月二十三日  石油販売業者資格制度法制化に関する請願(  塩川正十郎紹介)(第九二八号)  繊維産業の安定に関する請願河村勝紹介)  (第一〇〇六号)  同(竹本孫一紹介)(第一〇〇七号)  同(和田耕作紹介)(第一〇〇八号) 同月二十八日  LPガス業者営業及び生活安定に関する請願  (広瀬秀吉紹介)(第一〇九二号)  同(河村勝紹介)(第一一六一号)  LPガス都市ガスとの流通秩序確立に関す  る請願広瀬秀吉紹介)(第一〇九三号)  第四次不況対策における中小企業救済に関す  る請願鈴木善幸紹介)(第一一五九号)  中小企業事業分野調整確保に関する請願(  鈴木善幸紹介)(第一一六〇号)  繊維産業の安定に関する請願内海清紹介)  (第一一六二号)  同(神田大作紹介)(第一一六三号)  同(渡辺武三紹介)(第一一六四号) 同月二十九日  LPガス業者営業及び生活安定に関する請願  (石母田達紹介)(第一二〇一号)  同(平林剛紹介)(第一二〇二号)  LPガス都市ガスとの流通秩序確立に関す  る請願久保三郎紹介)(第一二〇三号)  繊維産業の安定に関する請願池田禎治君紹  介)(第一二七三号)  同(折小野良一紹介)(第一二七四号)  同(小宮武喜紹介)(第一二七五号)  同(玉置一徳紹介)(第一二七六号)  下請中小企業振興法改正等に関する請願(増  本一彦君紹介)(第一三五五号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正等に関する請願小川省吾紹介)(  第一三五六号) 十一月四日  繊維産業の安定に関する請願稲富稜人君紹  介)(第一四三九号)  同(内海清紹介)(第一四四〇号)  同(春日一幸紹介)(第一四四一号)  同(河村勝紹介)(第一四四二号)  同(塚本三郎紹介)(第一四四三号)  ダウケミカル社北海道進出阻止に関する請  願(多田光雄紹介)(第一五二四号)  危険な合成洗剤規制対策に関する請願(木下  元二君紹介)(第一五二五号)  LPガス業者営業及び生活安定に関する請願  (宮田早苗紹介)(第一五二六号) 同月六日  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正等に関する請願梅田勝紹介)(第  一六六二号)  同(庄司幸助紹介)(第一六六三号)  同(中島武敏紹介)(第一六六四号)  同(三浦久紹介)(第一六六五号)  下請中小企業振興法改正等に関する請願(石  母田達紹介)(第一六六六号)  同(中路雅弘紹介)(第一六六七号)  同(増本一彦紹介)(第一六六八号)  同(増本一彦紹介)(第一七〇八号)  マルチ商法規制法制化に関する請願平林剛  君紹介)(第一七〇六号)  家庭用燈油値上げ反対に関する請願増本一  彦君紹介)(第一七〇七号)  LPガス都市ガスとの流通秩序確立に関す  る請願瀬崎博義君外一名紹介)(第一七〇九  号)  LPガス業者営業及び生活安定に関する請願  (大出俊紹介)(第一七一〇号)  同(増本一彦紹介)(第一七一一号) 同月十日  LPガス業者営業及び生活安定に関する請願  (平林剛紹介)(第一七五七号)  同(石母田達紹介)(第一八二六号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一八二七号)  同(田中昭二紹介)(第一八二八号)  同(高橋繁紹介)(第一八二九号)  同(竹入義勝君紹介)(第一八三〇号)  同(林孝矩紹介)(第一八三一号)  同(広沢直樹紹介)(第一八三二号)  同外一件(伏木和雄紹介)(第一八三三号)  同(正木良明紹介)(第一八九七号)  同(松尾信人紹介)(第一八九八号)  同(松本忠助紹介)(第一八九九号)  同(矢野絢也君紹介)(第一九〇〇号)  家庭用燈油値上げ抑制に関する請願栗田翠  君紹介)(第一八二二号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正等に関する請願中島武敏紹介)(  第一八二三号)  同(三浦久紹介)(第一八二四号)  LPガス都市ガスとの流通秩序確立に関す  る請願小川新一郎紹介)(第一八二五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十月二日  不況下における中小企業救済対策に関する陳情  書外六件(  第八三号)  中小企業事業分野確保に関する陳情書外一件  (第八四  号)  小規模事業対策拡充強化に関する陳情書  (第八五号)  家庭用燈油価格抑制及び安定供給に関する陳  情書外五件  (第八六号)  ダウケミカル社北海道進出阻止に関する陳  情書(第八七号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正促進に関する陳情書外五件  (第八八号) 同月二十一日  中小企業事業分野確保に関する陳情書  (第一四三号)  新中小企業政策確立に関する陳情書  (第一四四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  通商産業基本施策に関する事項  中小企業に関する事項  資源エネルギーに関する事項  特許及び工業技術に関する事項  経済計画及び総合調整に関する事項  私的独占禁止及び公正取引に関する事項  鉱業と一般公益との調整等に関する事項の各事項につきましては、本会期中、国政に関する調査を行うため、議長に対し、承認要求を行うこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 山村新治郎

    山村委員長 この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。  先国会どおり、小委員二十名より成るエネルギー・鉱物資源問題小委員会及び流通問題小委員会をそれぞれ設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は、委員長が追って指名し、公報をもってお知らせいたします。  なお、小委員及び小委員長辞任補欠選任等に関しましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  8. 山村新治郎

    山村委員長 通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件、資源エネルギーに関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  9. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、景気対策、独禁法の取り扱い、中小企業対策、特に分野問題を中心にして質問をしてみたいと思います。  国会が召集されてから大分時間がたちますし、委員会も五カ月近く開かれておらないという形の中で、大臣公取委員長等に対してあれも聞きたい、これも聞きたいという問題がたくさんあるわけでございますが、時間の制約等もございますので、要点にしぼって質問をしてみたいと思います。  まず第一に、景気対策であります。福田経済企画庁長官は所用のため若干時間がおくれるということでございますので、主として通産大臣質問をしてみたいと思います。  政府は、第四次の不況対策を含め、あらゆる景気対策について力を尽くしてきている、このように発表をし続けておるわけでありまするが、現況はその発表とうらはらに、日一日と深刻の様相を深めてきておるわけであります。十一月八日に発表された民間調査機関によるところの倒産記録は千二百七十九件、いわゆる新記録をつくり、その倒産もいままでと違って不況型がほぼ半数に達している、不況影響によって倒産せざるを得ない状況の中に追い込まれているということが発表されておるわけであります。といたしますると、この状態は、政府がその責任において、特に河本通産大臣は本年初頭からこの委員会の席上においてたびたび景気対策について言及し、それに対して努力しておると言いながら、その努力の成果がほとんどあらわれていない、いやむしろ深刻化している、こういうような状況下に置かれておるわけでありまするが、政府景気に対する一連の対策の失敗について、河本通産大臣見解をこの際聞いておきたいと思います。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 ことしの初めごろから現在までの景気の足取りについて見てまいりますと、一番落ち込みがひどかったのはやはり昨年の年末からことしの一、二月だと思います。大変な勢いで落ち込んでいった。そこで政府の方といたしましても何とか歯どめをかけなければいかぬということで、一次対策と二次対策を御案内のように二月と三月に実施したわけでございます。この結果、大変な勢いで落ち込んでおりました日本景気の動向もこれでやっと歯どめがかかった、こういうことでないかと私は思います。大体これで生産落ち込みがとまりまして、三月以降は微弱ではありますけれどもようやく上昇に転じてきました。月に一%ぐらいずっと上昇に転じてきた、こういうことが言えると思います。そこで、六月ごろには大体物価も安定をいたしましたので、さらに引き続いての景気対策をやろうということで第三次対策が六月に実施されまして、さらに今回引き続きまして第四次対策が実施される、こういうことになったわけでございます。  三月から十月までの生産活動を見ますと、大体稼働率指数は約六、七%上がっております。三月には七七%ぐらいであったものが、現在は八三%ぐらいになっております。稼働率指数というのと操業率というのは違っておりますから、操業率に直しますと、ほぼ七割ぐらいの操業率であったものが、現在平均七五%ぐらいに上がっておる、こういうふうに考えておるわけでございます。  ただ、第四次対策を決めましてから、いろいろな関係で実施が若干おくれております。そういうことによる影響、それからさらに九月の末にはOPECが原油価格を一〇%値上げするということを決めましたので、それによる直接間接の影響、こういう二つの影響が出ておりますので、今月の二十日現在に政府の方では地方の通産局等を総動員いたしまして、景気現状について詳細な地域別業種別調査をしてみようと思っております。その結果、もし必要とあらば第四次対策補強等も考えてみなければならぬのではないかと思いますが、いずれにいたしましてもこの下旬における産業活動現状について正確な情報を得たい、認識を得たい、こういうことで準備をしておるわけでございます。  そういうふうに、この春からは、八月を除きまして、八月は休み等が多かったものですから生産活動は一%ほど低下いたしましたけれども、おおむねずっと上昇は続けておるわけなんです。その他の指数もおおむね良好な方向に向かっておる。ただし、何分にも落ち込みが非常にひどかったものですから、若干は回復いたしましたけれども、なおよくなったという感じが出てこない、これが実情でなかろうかと思います。幸いに国際環境もだんだんとよくなりつつある気配でございますので、貿易の方も九月に大体底を打ったようでございます。上昇に転じてまいりましたりいたしますので、これからも引き続いて景気回復は進んでいくのではないか、こういうふうに私は考えております。  今度の四次対策では、下半期の経済成長を六・二%に持っていくというのが新しい政府経済見通しでもありますし、これを決めたばかりでございますから、ぜひ達成するようにしたい。そして、政府公約といたしましては、石油危機が起こりましてから三年を目途といたしまして完全に景気を軌道に乗せるというのが公約でございますから、来年じゅうにはどうしても景気を完全な姿に立ち返らせる、こういう方向でいま努力をしておるところでございます。  なお、倒産等について数字を挙げての御説明がございましたが、最近倒産は若干ふえておる、こういう傾向は事実でございます。
  11. 佐野進

    佐野(進)委員 私は通産大臣質問をしていつも矛盾を感ずることは、楽観的な見通しをいつも申し述べられるわけですね、指標がこうだ、あるいはこうなっておりますと。その楽観的な見通しを述べられることは立場上やむを得ないというぐあいに理解をすることもやぶさかではないわけでありますけれども、あなたは閣内においては景気浮揚について最も熱心に取り組んでおるという評価を得ておる大臣である。しかし、評価を得ておる大臣であるとはいいながら、現実の情勢は、その産業界実情なり経済界の実態なわを調査し、あるいは学者の意見なり見通しなりをわれわれが聞いております範囲内におきましては、あなたが言われるほど日本経済はいわゆる楽観的な見通しの中に置かれていないというのが一致した見解のようであるわけであります。  そして、あなたも、閣内においてはきわめてその深刻さを強調しながら経済対策について意見を出しておられる、こういうようなことを私どもは新聞で聞くわけでありますけれども、事この公の席である委員会の席上においては、そういうような表現と違った意味において、指数はよくなった、底入れした、対策は十分だ、不足であればやるけれどもそれ以上間違いございませんと、あなたが私ども質問に対して答えた速記録をお読みになっていただければ、その点が明らかであります。にもかかわらず、これが最後だと打ち出した四次対策も補強しなければならぬということを、四次対策を出したその直後の段階の中であなたはもうすでにそのようなことを言っておられるわけであります。  とするならば、私があなたに求めたいことは、深刻であるならば深刻であるという事態をやはり正しく把握せられて、正しく把握した上に立ってどうあるべきかという方針をはっきりお示しになっていただく。少なくとも公開の席上であるこの商工委員会の席上において、現実が深刻であるがゆえにわれわれ通産当局としては全力を尽くして取り組んでおるのである、したがってその取り組む経過の中でこれこれはどうしてもやらなければならぬことである、こういうようなことを、ただ単に不況であるからつぶれる企業があれば金を出してやるのだ、そして一時を糊塗するのだということでなくして——今度の不況は構造的なものであるということは前から言われておるわけであります。ところが、あなたは現象的な面としてとらえながら、起きておる状態に対してカンフル的な役割りを果たす対策に終始しているような印象を受けるわけであります。だからいまのような答弁が出てくるのではないかと思うわけであります。  もう四次ですよ。対策にしても四次、五次などというがごときことは、少なくとも経済運営の中における不況対策ということを銘打つにしては余りにもずさんではないか。抜本的な対策について取り組まざる限り、景気対策に対する根本的な対処の方針は打ち出されないのではないか、こういうぐあいに考えるのですが、これは経済企画庁長官が来てからもう一回質問してみたいと思いますので、あなたに原則的な面における通産行政責任者としての見解をこの際明らかにしていただきたい、こう思うわけです。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、この春には操業率は七割を割っておったと私は思うのです。それを政府の方でいろいろ対策を立てまして、操業率等もようやく七五%ぐらいまで回復をしてきた。ただしかし、七五%という操業率の中には、さらにそれより低いものもありましょうし、若干高いものもありましょうけれども、七五%という操業率産業界全体において大変不況だ、こういう感じはぬぐい切れないと思います。でありますから、私も、この春以降幾らか数字は毎月上向いておるけれども、それは微弱であって、なかなか不況感というものはぬぐい切れないのではないか、事態はきわめて深刻である、こういう認識は持っておるわけです。  ただしかし、世界的にも情勢はだんだんよくなっておりますししますから、まあ何とか新しい道が開けていくのではないか、こういう見通しを持っておるということでございまして、現状を甘く見ておるわけでは決してございません。でありますればこそ、四次対策補強等も、調査の結果によりますけれども、あるいは調査の結果が必要とするならば若干の対策が必要ではないだろうか、こういうことすら心配をしておるわけでございます。  何分にも一昨年の秋に石油危機からあれだけの大混乱が起こりまして、昨年は先進工業国が国際収支の面で大体三百億ドルぐらいなしわ寄せになっておりますし、油の出ない発展途上国もほぼ同じぐらいなしわ寄せになっておる。さらにことしは、最終的な数字はわかりませんが、大体先進工業国のしわ寄せが百五十億ドル、それから油の出ない発展途上国に対するしわ寄せが三百五十億ドルである、こういうふうに言われておりまして、世界経済が過去二年間大混乱をしてきたわけですね。それがようやく新しい秩序に落ちつこうとしておるわけでありますが、まだ落ちついておるわけではございません。そのためにこそ今度の首脳会談等が緊急に開かれる、こういうことになっておるわけでございますので、何分にも世界的な大混乱の中における景気対策でございますから、やはり世界的にある程度新しい秩序というものができてまいりませんと、本当に経済が活力を回復しないのではないか、こう思います。  でありますから、繰り返すようでございますが、だんだんいい方向には行っておりますけれども、まだまだ景気がよくなったとか、そういう状態ではない、今後とも一層の努力を必要とする、こういう状態でございます。
  13. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、きょうの大臣の答弁をずっと聞いておりますると、いわゆる国際的な情勢、世界経済の動きの中でわが国経済の進路が定まっていくような、そういう印象を強くする答弁をいま聞いておるわけでありまするが、もちろん国際経済がわが国経済に非常に大きな影響を与えることは私も否定いたしません。だがしかし、国際経済がどのようにいわゆる激動を続けたとしても、その激動に対する一定の見通しの中で、わが国経済の規模なり状態なり、それに対する対策なり、こういうものを打ち立てるのが、やはり通産行政なり経済閣僚としての大臣責任ではないかと思うわけであります。  しかし、ここでいまその問題をやっておりますると何時間あっても足りませんから、私はその問題についてこれ以上触れることはやめたいと思うのでありまするが、ただ、私が申し上げたいことは、いわゆる景気対策、世の中の景気をよくしてもらいたいという願いは国民全体の願いであるということを、この際大臣は強く銘記していただきたいと思うのです。  そこで、銘記をしていただくと同時に、端的な質問ですが、国際的な情勢はどうだこうだということはともかくとして、大臣は一体いつになったら今日の不況感というものから日本経済が脱し切れる時期になると思われるのか、こういうことについての見通しは一体どのようにお持ちになっておるのか、景気をよくしてくれという全体の願いに対して、このときならば大丈夫だ、このときまでは待ってくれという目標をやはり明らかにして、国民の期待にこたえる経済運営をするということでなければならないと思うのでありまするが、この点についての大臣見解をこの際お聞きしておきたいと思うのです。
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府公約は、先ほど申し上げましたように、石油危機が起こりましてから三年を目途として経済活動を健全な姿に戻すというのが公約でございますが、大体幾らかよくなったな、こういう感じを産業界が持ちますのは、来春には私は大体操業率が平均八割になると思いますが、八割になりますと、幾らかよくなったな、こういう感じが出てくると思うのです。しかし、もとに復したという感じが出てくるためには、やはり操業率が八五%ないし九〇%までいかなければならぬ、こういうふうに思いますので、そのためにはやはり来年いっぱいはかかる、こういう感じでございます。
  15. 佐野進

    佐野(進)委員 来年いっぱいはかかる、しかし来春にはおおむね不況感を脱したような形の中で経済運営を行うことができるであろう、こういう見通しのようであります。それが真実であるかどうか。田中さんは、うそを言ったら私はやめます、こう何回も言いながら、そのとおりにならないでやめていったわけですけれども大臣もそのことについてそこまではなかなか言わないでしょうけれども、決意というものはやはりそれを実行して初めてその意味を持つものでありますから、これは福田さんには後で責任追及を含めた意味において質問をしてみたいと思いますが、大臣は大いに奮起した決意の中でひとつ対処してもらいたいということを要望して、この問題についての質問を終わりたいと思います。  第二番目は、独禁法対策の問題であります。これは後でさらに詳しく提案ないしその趣旨説明あるいは質疑応答を通じて議論がなされると思いますので、私はこの問題に対して、政治的な取り扱いの面のみに限ってこの際質問してみたいと思うわけであります。  独禁法は、御承知のとおり衆議院のこの委員会において全会一致の修正案が成立をいたしまして、本会議においても可決し、参議院に送り込まれたわけであります。参議院におけるところの審議日数がいま少しくあるならば、これは当然今日成立しておったということはだれも否定し得ない事実であろうと思うのであります。にもかかわらず、この問題については御承知のとおり参議院における審議時間が足らないで廃案になっていったわけであります。したがって、この廃案になったという事態に対して、独禁法の成立を望む多くの国民は大きな衝撃を受け、大きな失望を感じたと思うのであります。感じただけでなく、その激しい憤りの声が連日新聞やその他に掲載されたことは、まだ私どもの耳新しい、目新しい感覚として残っておるわけであります。  こういうような状況の中で、当然臨時国会が開催されたならば第一番に提案されるであろうと思われたのが独禁法の改正案でありましたが、三木総理大臣はどのようにその見解を変えたのかわかりませんけれども、あれほど執念を持って、独禁法の成立のために政治生命をかけたとさえ言われているほど熱心な熱意を持って取り組んだ三木内閣は、今度の国会においては、この問題については党内のコンセンサスが得られないからということでこの提案を渋り、いまなお今日提案をしていないわけであります。党内のコンセンサスは、前国会の末、本委員会において、あるいは本会議において全会一致をもって成立したという形の中において、少なくとも国会の最高議決機関である衆議院段階で議決した中において完全に得られたと思うのであります。その得られておるものが否定されておるということは、明らかに一部勢力の妨害、なかんずく財界におけるところの妨害行為がその功を奏して、今日再提出ができないような状況になっていったと言っても言い過ぎでないと思うのであります。  そこで私は、福田副総理には景気問題から入っていきたいと思ったのでありますが、ちょうどお見えになりましたので独禁法問題から入らざるを得ないわけでございますので、副総理という立場に立って、経済企画庁長官できょうは御出席をいただいておるのでございまするが、まあ経済問題でございますから関連があろうと思いますので、政府はなぜ前回政府提案として独禁法改正案を提案しながら今日これを提出しないのか、しないに至った経過についでひとつ。それから副総理としてのこの問題に対する所感、見解、そのことをひとつこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  16. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 申し上げるまでもございませんけれども、本国会不況対策を主としての臨時国会でございます。そういう性格のこの国会に、経済の非常に基本的な問題を決める独禁法の改正案、これを提出することは、これは機宜を得たこととは考えない、そういうような見解に立ちまして、今回臨時国会が開催されましたけれども、独禁法の改正案はこれを次の通常国会に見送る、こういうことでございます。  この改正法案につきましては、ただいま佐野さんからおっしゃるように、衆議院は全党一致でこれを前国会では可決しておる。ところが参議院の方では、審議はされないままに廃案ということになった、そういういきさつを経ております。通常国会にはぜひ提出いたしたいという考えですが、ちょうどそういう際でありますので、あの改正法案についてもなおいろいろの意見がある、その意見の調整をこの際とっておいた方がよかろう、こういうので、自由民主党の中でもいま鋭意その調整作業を進めておる、こういう段階でございまして、次の通常国会には政府案として提出し、そして御審議を願いたい、かように考えております。
  17. 佐野進

    佐野(進)委員 今度の国会の最大の眼目が不況対策であるということについては、私どもも否定はいたしません。そして不況対策経済対策の一環として独禁法の持つ役割りがきわめて大きいということを私どもは考えておるわけです。さればこそ、われわれは四党共同提案、できるならば自民党を含めた提案にしたかったわけですが、合意を得られないので、四党共同提案でいま出しておるわけでありますが、こういう状況の中で、いわゆる長期にわたる臨時国会、さらに会期の延長問題等がうわさされている段階の中で政府が提案しないことば、きわめて遺憾だと思うわけであります。  副総理は、通常国会には必ず出す、こういうことでございますから、必ず出すという答弁があったということで、副総理に対する質問は、これは私は了解したのではなくして、副総理としては、政府としてはそういう見解だということでございまするが、これは何としても今国会の中においてわれわれは審議し、成立させたいという執念を持ってさらに努力をするということだけを申し上げておきたいと思うわけであります。  そこで、公正取引委員会委員長にお聞きいたしたいと思うのでありますが、公正取引委員会委員長は、この前の独禁法審議の際は、体が悪いのにまさに獅子奮迅の努力をされたということは、私どもも高く評価をしておるわけであります。にもかかわらず、この法案が廃案になりました。その後、廃案になったからといって公正取引委員会の動きは全く鳴かず飛ばず、廃案になったのではしようがない、あの努力は一体どこへ行ったのかと疑いたくなるほど平静な状態で今日まで経緯しているように考えるわけであります。  あの事態から今日の事態に至る経過の中で、独禁法改正の必要度が薄れたというようなこときことは、私は断じて感じない。いや、むしろ大きくなったと考えざるを得ないわけであります。そういうような状況の中で、公正取引委員会、特に委員長は、もはやきばを抜かれた何とかではないけれども、やむを得ない、仕方がないんだと言って今日ちんとしておるのではないか。したがって、独禁法問題に対する改正論議、改正論議というよりも改正の政治的な取り扱いに対する要求の高まる中で、いま動かれておる公正取引委員会の態度は、私どもはきわめて不満であります。一体どのように考えておられるのか、委員長見解をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  18. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 まず最初に、今回、独禁法改正案が前回の衆議院を通過しました与野党一致の修正案のままの形で提出されましたことに対しまして、私ども公正取引委員会としては、与党が加わっておられないことについて大変残念だと思いますけれども、野党四党が相変わらずその問題について大変な熱意を持っておられますことに対しまして、深く感謝しておる次第でございます。  その廃案になった後、私どもが鳴かず飛ばずで、何か熱意がないじゃないかというお話でございます。これは私は気持ちの上では少しも変わっておりませんし、不況であるからどうであるからということで独禁法の改正問題というものは動いたりするものではありませんから、その点、気持ちの上では何ら変わりはないということははっきり申し上げます。  しかしながら、その動きについて、もっと政府・与党になぜ働きかけないのかというふうな御不満であろうかと思いますが、これはいろいろ、まあそう言ってはなんですが、早く言えばどういう態度でいることがむしろわれわれとしてプラスになるのかということも考えた上でございます。いたずらに私どもがあっちこっち陳情に動き回る——私、実は体の都合もございましたけれども、そういうことをしてもなかなか簡単にとびらは開かないような状態が予測されたのです。そういうことでありますから、この場は私は、まあ変な話ですが動かないでいる、静かにしているということも一つのやり方ではないか、こう考えておるわけでございまして、その点、見方によって大変御不満があろうと思いますけれども、気持ちの上においては何ら変わりない。  さらに申しますれば、ぜひ政府・与党におかれましても、おかしな言い方ですが、私も政府の中の一人でございますけれども、この問題をできるだけ先に引っ張ろうということではなしに、できるだけ早く解決するという態度で臨まれることを私どもとしては心から期待するところでありまして、この臨時国会が当初から相当の長期間を予想されるというふうな、お話のとおり景気問題に主眼があるにいたしましても、前回はとにかくあのままの案で衆議院を全会一致で通ったのでございますから、参議院の審議が残されていると言っても過言ではない。としますれば、あの事前に与党の間で相当詳しい研究、検討の会が長時間持たれまして、相当詳しく吟味されたということから考えましても、それは衆議院だけの検討ではなかったと思います、自民党としての御検討があったと思いますので、それがわずかの月の間に根本的に変化するということがあっては不思議であると私ども思いますし、また仮に独禁法というものは、それは手をつけ出せばいろいろ問題はあるでしょう。  しかし、そういう問題を一応さらに時間をかけて検討することは結構でございますが、それは結構としまして、この間の程度の問題であれば、それはそれとして早く解決していただきたい、こういうのが私どもの偽らざる気持ちでございまして、再検討の問題がある、だからということでこれを先にずっと引っ張っていかれるということになると、これは私ども大変不本意なわけでございますから、そうなれば私どもはぜひこれはたってお願いしても早期提出をしていただかなければならぬ、こう考えておりますが、その熱意に変わりがないけれども、ただ態度にどうもあらわれておらぬという点は、私、重々そのお気持ちはわかりますが、そういうような次第でございますので、御理解を願いたいと思います。
  19. 佐野進

    佐野(進)委員 私どもは前回の国会において、この独禁法の修正案をつくるために、まさに与野党含めて血のにじむような努力をして修正案ができたと思うのです。したがって、商工委員会の気持ちは、私がいま申し上げておりますけれども、与党の方々を含めた全員の気持ちであろうと思うのです。そういうような形であるにもかかわらず、いま公取委員長の表明されたような動きであっては不満であるということは、これはやはり全体の気持ちであろうと思うのです。私はもう少し、高橋委員長蛮勇をふるって物事に対処するなんてよく言われているのですが、ここのところ蛮勇がどこかへ行っちゃって、借りてきたネコになっちゃったのじゃないかというような、何かどこかで圧力がかかって、その圧力が強くて動かなくなったというようなことはまさか考えませんけれども、しかし考えても差し支えないような動きにあるということに対しては、きわめて不満である。特に野党間はこの法案を再提出させるために臨時国会冒頭より血のにじむような努力をしているという現況の上に立って、いま一度、通産大臣質問いたしました後に、ひとつ答弁を一緒にお願いしたいと思うわけです。  そこで、通産大臣、この問題に対して質問いたしまするが、いわゆる公正取引委員会、通産省、中小企業庁を含みますが、ことごとに、後で問題点がありますのでその問題の指摘をする際申しますが、対立があるやにわれわれは感ずるわけであります。特に独禁法の問題等については、通産省が、この法律の提案にえらい熱意を示して努力している——もちろんそれは誤解もあろうと思うのでありますけれども、そういうような形の中で、今度の再提案に対してきわめて熱心に提案させないように動いておるという、これは話ですからわかりませんが、そういうような話があるわけでありますけれども通産大臣も閣僚の一人でありますから、恐らくそういうような動きはないと思うのでありますが、この問題に対しての考え方、福田副総理がいまお話しになったように、今回の臨時国会には不況対策で出さないが、来年の通常国会には出す、こういう言明を、あなたもそのように考えておられるかどうか、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思っております。公取委員長もあわせて答弁してください。
  20. 河本敏夫

    河本国務大臣 私の考え方は、いま副総理がお述べになったとおりでございます。
  21. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 いずれにいたしましても速やかにこの法律案が再提出され、特に与党が抜けるということでは困りますので、与党が加わった五党提案でもよろしいし、あるいは政府提案という形であればさらに結構でございましょう、とにかく早期に解決を見ることを切に期待いたします。
  22. 佐野進

    佐野(進)委員 福田さん、ちょっとお疲れのようでありますが、質問してみたいと思うのですが、実はきょう、冒頭あなたに聞いてみたいと思ったのですが、時間の都合でおいでになるのが遅くなりましたから通産大臣に聞いたわけでありますが、いわゆる景気対策であります。時間の関係もありますが、簡潔に質問いたしますので、ひとつお答え願いたいと思うわけであります。  第四次不況対策はいま実施の段階に入っております。しかし、これでもなお不足だろうということで、通産当局はその補強を考えておられるといま答弁がありました。景気対策の問題は今日の経済問題として最大の課題であることは、もういまさらあなたにお聞きするまでもないと思うのでございます。あなたにことしの初頭来私どもがたびたび質問いたしましたとき、いわゆる総需要抑制策の行き過ぎが景気を悪化させ、不況を深化させることになるから、行き過ぎについては十分配慮してもらいたいということを、繰り返しここで質問しておると思うのです。予算委員会の席上でも、私、一般質問の中でしたと記憶いたしております。それにもかかわらず、結果的に今日の不況経済情勢の落ち込みは、まさに私どもが心配したと同じような状況になっておる。あなたは調整期間だからこれはやむを得ない犠牲だとお話しになっておられます。しかし、調整期間の中に起きつつある深刻な状態は、多くの人たちに対して限りない不安と、再起することのでき得ない打撃を与えつつあります。したがって、今日景気をどうしてよくしてくれるのかというのは国民的な願望であります。この願望にこたえるのが政府責任であろうと思うのであります。  あなたは、経済は私に任しておいてくれと三木さんに言った。三木さんは数字が弱いからというので、ことさら経済の問題は避けておるようであります。とすると、今日の不況状態をつくり出したのはまさにあなたの責任であると言っても言い過ぎでないと思うのです。したがって、経済は任してくれと言うならば、景気をいつ、いかなる段階の中によくするかということも、あなたの当然果たさなければならぬ責任だと思うのであります。あなたは、一体景気はいつごろよくなるのか、国民に安心してくれという時期はいつなのか、この際、明確に御答弁をお願いしたいと思うのです。
  23. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 経済政策の眼目は、ただいまとするとやはり物価の問題と景気の問題、この二つというふうなとらえ方をしています。そこで、物価の方はある程度鎮静の方向が固まろうとしておる。その基盤を踏まえまして、ただいま景気対策に重点を移しておるわけなんです。そういうことで第四次景気対策を打ち出しましたが、その効果が下半期にはかなり顕著にあらわれてくるであろう。その結果、下半期の実質成長、これは六%程度のものになるだろう、こういう展望を持っておるわけです。  いま日本経済は、三月ごろが底でありまして、自乗だんだんと上昇過程に入っておる。ただ、その上昇勢いというものが非常に微弱なんです。ですから、三月以降ずっと見てみますと、もうこれははっきりと生産は増加の傾向です。出荷も増加の傾向だ。そういう傾向の中で、下半期は実質六%成長、年率に直しますと二・二%成長になります。  ことしというこの年は、世界貿易が非常に不振でありました。そこで、世界各国とも不況とインフレに悩まされておる。特に不況が深刻です。恐らく本年じゅうプラスの成長になる国は先進諸国の中ではないと思います。わが日本だけが、とにかく二・二%でも成長は成長だ。黒字の状態になる。そういう状態なんですが、一つ一つの企業を見ると非常に苦悩が大きい状態です。なぜかというと、日本以外の先進諸国においては、大体経営不振であるという状態では首切りをやります。わが国においてはそれをやらぬ。終身雇用体制という状態です。景気が悪ければ、業況が不振であれば、諸外国の方では首切りによって人件費の負担を免れるということです。わが国は過剰の労働力を企業内に抱えるというこの人件費負担、これは非常に重圧になるわけです。  それから、諸外国におきましては、設備をする、それをおおむね自己資本でやるのです。ですから、景気が不振になりましても、設備に要しました設備費の金利負担、そういうものに悩まされない。わが国においては設備費は大方借金なのです。そこで過剰の設備ができるというような不況状態になりますと、この金利負担というものが会社の経理を非常に圧迫する。そこで、その悩みをどういうふうに解決するかというと、結局これは企業の操業度を引き上げるほかはない。操業度を引き上げる手段は、これは経済全体を押し上げる、つまり最終需要を喚起するほかはない。  そこで、財政を中心とする最終需要対策をとったのでありますが、私は、いまマクロ的に見まするとわが日本経済は世界で一番好調な状態である、その中において一つ一つの企業をミクロで見るとこれは大変な苦悩の状態にあるという分析をしているのですが、それは要するに企業操業度が望ましい水準まで達しない、したがって過剰設備、過剰人員を企業が擁しており、その人件費負担と金利負担が企業を圧迫しておる、これが私は実態であると思い、操業度をいかにして上げるかということにねらいをつけておるわけなんです。操業度が上がるに従いまして企業の顔は明るくなる。  そこで、稼働率指数はどういう状態かというと、この三月に七七%という状態でございました。それがだんだん改善されまして、今月はまた新しい水準が出てきますが、まだそれが明らかな段階まで来ておりませんが、八月の水準におきましてはそれが八三%のところまで来ておるのです。ただいま申し上げました下半期の実質成長率六%だ、そういう状態下におきましては、企業操業度をはかる稼働率指数、それは八月の八三から九〇に接近をする、こういうふうに見ておるわけです。さて、九〇に接近したこの稼働率指数というものが望ましい稼働率指数であるかというと、そうじゃない。私どもはこれはさらに詰めてみなければならぬが、どうしても九五ぐらいのところまで行かぬと、これは企業の金利負担あるいは人件費負担、そういう圧力から免れ得ない、そういうふうに思うのです。  ですから、いまの御質問景気は一体いつよくなるのだというと、私は前々から、三年の調整期間を要する。そこで^来年度一年を待たなければならない。しかし、来年一年度待てば健康体に戻り得るという状態、それに向かって着実に景気動向というものは動いていく。そして、来年の三月末の時点では操業度は九〇に接近をする、こういうふうな見解でございます。
  24. 佐野進

    佐野(進)委員 福田さんはいつも大丈夫だ大丈夫だと言いながら、経済が苦しくなっていっているわけです。しかし、そういう九五%ないし来年の三月には九〇%の操業度になるということで努力をするということでありますから、私はその努力にまつと言う以外にない。私は実はもっと総需要抑制策の失敗というか、行き過ぎというか、そういう問題について追及してみたかったのですが、時間がございませんので、その問題に関連してこれから質問を続けていきたいと思いますので、ひとつそのときまた答弁をいただきたいと思うわけであります。  そこで、いま河本通産大臣ないし福田経済企画庁長官からお話がありましたように、来年の三月をもって景気回復感が出、来年いっぱいをもって景気回復すると言っていい状態になる見通しであるということをいまはっきり言われたわけであります。     〔委員長退席、塩川委員長代理着席〕 しかし、ミクロ的に見るならば、そういう情勢の中においても、産業間というか、業種間におけるところのばらつき、いわゆる落ち込みの度合いのひどいものは存在する、こういうようなことを申されたわけであります。私は、そういうように系列間におけるところのばらつきの存在することはもちろんでありまするが、同時に横断的にいわゆる大企業中小企業という形の中におけるところの落ち込みの差というものが、これはまたその系列間における落ち込みよりももっとひどい深刻な様相をいま見せつつあると思うのであります。したがって、政府の行われる不況対策の中においても、中小企業対策というものが特に重点を置かれて取り組まれておるわけでありまするが、今日まで中小企業対策において万全にそれがなされ得たというようなことについて満足を得べき状況にないことは、私はいまさらここで申し上げる必要がないほどだと思うのです。  そこで、私は冒頭まず中小企業庁長官に、今日の状態の中で、先ほどの経済見通しを踏まえながら、中小企業対策の重点は一体どこに置くべきかということについて、中小企業庁の見解を、この際、要点だけで結構ですから明らかにしていただきたいと思うのであります。
  25. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 当面する不況対策でございますけれども、最近の中小企業の一番の要望は仕事が欲しいということでございます。これにつきましては、中小企業だけに仕事を回すような方策というのはなかなかないわけでございまして、全般として景気を早く回復させる、こういうことが必要かと存じます。そういう意味合いにおきまして、今般の第四次不況対策におきまして、財政を中心といたしました公共事業の追加あるいは住宅金融公庫の融資枠の追加によります需要の喚起、さらに公害防止関係の投資の促進でございますとか、あるいは輸出入銀行に対する融資の追加によりますプラント輸出等の促進、こういうことが回りめぐりまして中小企業の需要の喚起に役立ってくる、こういうふうに考えておる次第でございます。  なお同時に、そういった需要喚起策が効果を上げますまでの間におきましても、中小企業が金繰り等の面におきまして困難に逢着するようなことのないように、金融面につきましても格段の配慮をいたしておる次第でございます。  今回の第四次の不況対策におきましても、中小企業の年末金融対策といたしまして、四千八百億円の政府系三機関の融資枠の追加をいたしました。今年度が年度当初に約二兆五千億円の融資枠で出発をいたしておりますので、今回の追加を加えますと約三兆円という融資枠になろうかと存じます。また、特に困っておる方につきましての政府系三機関からの融資の返済猶予の件につきましても、さらに弾力的に取り計らうように三機関に指示をいたしたところでございます。  また、民間の金融機関につきましても、年末金融といたしまして三兆五千二百億の融資目標を設定いたしまして、民間金融機関にも中小企業向けの資金の確保につきまして努力方をお願いいたしておるところでございます。  また、特に中小企業に効果のございます信用保証の面におきましても、従来から倒産関連防止関係の信用保証制度の活用を図っておるところでございますが、特に無担保、無保証によります零細企業向けの信用保証につきまして、最近の情勢にかんがみましてその限度の引き上げを図りたいと考えまして、従来の百五十万円という信用保険の引き受け枠の一人当たりの限度を二百五十万円に引き上げるという法案の改正を今臨時国会にお願いいたしておるところでございます。
  26. 佐野進

    佐野(進)委員 私は中小企業庁の持つ本質的な立場から、いまのような答弁しかでき得ないということを否定するものじゃないのです。だがしかし、中小企業庁というのはその時代時代の趨勢の中で中小企業者の欲求というか、求めている方向を正しく把握して、その把握した情勢の中で、いま言われたような経済情勢全体の中でいかにあるべきかという方針を打ち出して取り組むのが私は中小企業庁の役割りだと思うのです。ただそのときそのときの情勢の中で後追い行政だけをしているのが中小企業庁ではないと思うのです。今日中小企業の置かれている状況の中で最大の欲求は、いわゆる仕事が欲しい、仕事を剥奪される状況に対してどうやって身を守るか、こういうことが中小企業者の最大の目標であろうと思うのです。     〔塩川委員長代理退席、委員長着席〕 だから、そういう状況に対して、中小企業庁としての立場に立ってあなたが行う仕事の限界というものが、きわめて制約されているという状態の中で行うということについて私は否定するものじゃないですが、ともかく中小企業庁という役所の置かれておる歯がゆさ、もどかしさ、われわれが欲求を要求化して、それを具体的に取り上げてもらおうとする場合において、中小企業庁の果たしている役割りが、むしろ逆行的な役割りを果たしているのじゃないかと疑いたくなるような場合が多多あるわけです。  中小企業庁は中小企業全体の問題について取り扱い、各省庁にわたるところの問題についても、それに対する一定の指導性を持たなきゃならぬことは当然なんです。通産省内部に対する問題においてすらその発言権がきわめて弱いし、その発言権はむしろ後退した印象を与えるがごとき発言になる場合もあるわけです。  私は、中小企業庁を激励する意味において、中小企業庁がもっとしっかりやってほしいという意味において、以下当面一番大きな問題になっている分野問題を中心にして、二、三具体的な例を挙げながら質問をしてみたいと思うわけであります。  第一に、ことしの春あるいは五月ごろだったかと思いまするが、独禁法の審議に関連いたしまして、私は本席上におきまして野口生活産業局長に、さらに中小企業庁長官質問した問題がございます。それは理化医ガラスの問題であります。いわゆる巨大なる資本力を持ち、独占的な立場にある旭硝子が、みずから半額近い出資をする形の中で岩城硝子を設立し、その岩城硝子を設立する中において理化医ガラスを初め特殊ガラス業界を席巻し、この業界におけるところの独占的な地位を保つために行いつつある行為、今日の正常なる経済秩序を確立する中で、その企業活動を行うについては全く言語道断の振る舞いであるという意味における質問をいたし、あなたの方で、生活産業局の方において善処いたしますという答弁をいただいておるわけであります。  それからもはや半年近くたっております。今日、その行政指導が何ら行われていないと言っていいほど微温的な取り組みしかなされていない。片や岩城硝子は、その業績が顕著にこの期間中上がっております。上がるだけでなくして、さらにこの十月一日におきましては、二次取次店を招集して新規販売網の拡充を図る、そして売り上げを三倍に伸ばす、こういうような形の中で、関連業界に対して殴り込みに近いような、行政指導を全く無視した形の中において、旭硝子がこの業界に対する独占権を確立するための先兵としての役割りをいまなお強力に展開しつつある状態であります。  私は、この委員会における発言ないし答弁というものの持つ意味はきわめて大きい。特に分野調整に対しては行政指導をもって行うということを通産大臣ないし中小企業庁長官はたびたび言明しておる。その行政指導なるものが、半年たった今日、何ら顧みられるところなく、その状態に対して改善を見せていない。かつ、岩城硝子はさらに業績を発展させ、今日不況下においてすら躍進を続けておる。躍進の陰に泣く多くの中小零細企業者の存在をそのままにしておく、それが行政指導の実態であるとするならば、余りにも行政指導というものが大企業に偏り、中小企業を無視しているものと断ぜざるを得ないわけであります。  私は、ここで野口さんに聞くよりは、むしろ中小企業庁長官に聞いた方がいいと思う。中小企業庁長官は行政指導で責任を持ちます、生活産業局長は大企業中小企業を両方見ながら中小企業の立場に立って努力しようとしておる姿勢については、私は評価するにやぶさかではないわけであります。しかし、その持つ力の限界から、結果的に大企業の横暴を許さざるを得ないという状況の中で今日置かれているいわゆるパイレックスの問題等につきましても、さながらここにおいて宣伝をしております。自粛をするどころか、宣伝をしておる。「一〇%から二〇%安価になりました。」安くなるのではなくして、安くするために行われている工作というものの裏を見ることなくして、ただ安くなるという形の中において中小企業の分野へ殴り込みをかけている。このような宣伝物を出しながらやっている。こういうことに対して、その後における行政指導の実態はどうなっておるのか、簡潔にひとつ要点を説明していただきたいと思います。
  27. 野口一郎

    ○野口政府委員 前国会におきまして先生から御指摘がありまして、しっかり行政指導をせよ、こういう激励のお言葉をいただいたわけでございます。そういう御趣旨を踏んまえながら、前国会で問題になって以降、岩城硝子に対しまして行政指導を強くやってきたわけでございます。私どもの方の指導を体しまして、岩城硝子といたしましては、役所の方に七月七日付をもちまして、中小業界と十分協調を図ってやってまいります、こういう念書を出してきておるわけでございます。  今日におきまして、岩城硝子と関係する中小企業との間で必ずしも完全に話し合いがついていないという点につきましては、先生御指摘のとおりでございます。私どもも、先生の御意図を受けまして強力に行政指導をしておりますし、岩城硝子もその範囲内においてはできるだけ指導に従いつつ協調を図るように努力しているものと私どもは見ておるわけでございます。その努力が十分であるかどうかということにつきましては、私ども必ずしも完全にそれを是認するわけではないわけでございますけれども、ともかくこの春に問題になって以降、岩城硝子といたしましては、たとえば春に導入をいたしました自動成形機も、現在はそれが半分くらいに稼働率も落としておるわけでございます。  これは景気状況等も絡んでいるかとは思いますけれども、それは行政指導を受けまして会社としてもそういう方向で動かしておるわけでございますし、自動成形機でできるものの全部が理化医ガラスで、中小企業の業界と競合するものではありません。つくられるものの大体三割ぐらいが理化医ガラス系統のもので、中小企業のものと競合するものというふうに承知しておるわけでございますけれども、その機械もそういう稼働の状況等もございますこともありまして、一応私どもの行政指導に従いまして、関係業界と十分協調をとってやっていくという一環といたしまして、毎月毎月その活動状況、特に販売の状況を私どもの方に報告してもらっているわけでございます。その結果をずっと見ますと、その出荷額も春以降、五、六月ごろをピークといたしまして落ちてきておるような状況でございますし、今後もその販売活動、販売量は増加をすることがないように厳しく監視、指導を続けてまいりたいと思っておるわけでございます。  また一方、当の中小企業業界におきましても、やはり何といいましても自分自身の力をつけるということが大事かというふうに考えておるわけでございますので、生産の合理化、近代化を進めるために、及ばずながらわれわれもこの面においても指導を強めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  28. 佐野進

    佐野(進)委員 そうすると、野口さん、こういうことですね。結局この前の国会質問以降、生産量を増加させないような形の中で行政指導しておる、さらに念書を入れさせてある、さらに前回入れた念書の線に基づき努力しておる、こういうような形で私はいま理解しておいてよろしいわけですね。
  29. 野口一郎

    ○野口政府委員 中小企業業界と競合いたすのは結局販売の面でございますので、私どもでは中小業界との協調という面を毎月毎月の販売量でとらえて、これが過大にならないように指導しておるわけであります。
  30. 佐野進

    佐野(進)委員 だから行政指導というものはあいまいだと言われるんですよ。行政指導というものが持つ意味があいまいであることはやむを得ないのですが、そういうような形の中で指導しておることが、解決するということにならないわけですね。指導しておるといっても、裏でつくったり、あるいはこのような宣伝物を出して、一〇%から二〇%安くなりますといって宣伝をする。そして業績はぐんぐん上がる。三倍にも生産力を上げて利益を生み出す。片や生存の基盤を失われてしまっておる。そういうところを見ないで、ただ、いままでつくったのは幾らですか、その幾らについてどうですか、これはこうしていますか、していません、それじゃ困りますね、この程度のことでは解決にならないと思うのです。  しかも、岩城硝子は全部旭硝子からの出向社員によって重役は占められておるわけです。旭硝子に対して指導をしないで岩城硝子だけ指導したところで、これは単なる形式的な指導にしか終わらない。こういうようなことであってはならないと思うのです。なぜ旭硝子を指導しないか、なぜ岩城硝子とともに、その本質的な立場にある旭硝子に対して強力な行政指導を行わないのか、行政指導の限界というものをまざまざと見せつけられておる一つだと思います。  そこで、これだけをやっておりますと時間がなくなりますから、改めて最後に一括して質問をして答弁をしてもらいたいと思うのであります。  その次に紙器、段ボール関係であります。これも生活産業局です。生活産業局の所管する業界はきわめて中小企業が多い。大企業と混在している。したがって局長も大変な苦労だと思うのでありますが、ここにも一つの例があります。本州製紙であります。本州製紙がいま新潟ニューパックをつくるために行動されておることは、もう私が申し上げるまでもなく、少なくともこの業界における最大の話題になりつつあるわけであります。  しかも紙器、段ボール関係におきましては、御承知のとおり製紙関係会社がいわゆる材料をつくる、つくった材料を中小企業段階におけるところの業者が加工する、そのことによって業界が秩序ある発展を続けてきていることは、いまさら私が申し上げるまでもないと思うのであります。ところが、景気落ち込みあるいは景気の急上昇を願う大企業は、その資金力、組織力に物を言わせて中小企業の存立の基盤を一つ一つ奪い去る行動を行いつつあることは、もうこの席上何回も何回も指摘しているとおりであります。その一つの具体的な例がこの紙器、段ボール業界に見られておると思うのであります。本州製紙が三十に近い系列、関連、提携の企業を傘下に置き、この分野におけるところの製造、販売に至るまで三〇%近いシェアを持ちながら、独占的な状態を形成しようとしつつ、いわゆる寡占状態の中において市場支配をしようとしている行為は、まさに目に余るものがあろうということは、あなたもよく御承知だろうと思うのであります。  こういう状況に対する行政指導はきわめて微温的であります。行政指導という名に値しないような状況の中に、いまなお今日、紙器業界におきましては、この不況下において、先ほど福田さんやあるいは河本さんがお話しになっているように、操業度を九五%に上げることは、既存の落ち込んでいる操業度を上げるわけでありますが、さらに四つの大型新型段ボール工場をつくり上げる形の中において、それでなくとも仕事がなくて存立について四苦八苦している中小零細企業の業界に対して、この業界のシェアを完全に剥奪してしまおうという動きを露骨に示している。しかもこれがこの十月ごろからほとんど稼働し始めようとしている動きの中において、絶対にこういう情勢を中小企業対策として見落としておいてはならない。  強力なる行政指導の中において需給のバランスを図る、こういうことでなければならないと思うのでありますが、この点について生活産業局長中小企業庁長官はどのように取り組んでおられるか。余りにも有名な事件でありますから、いまさら私がここでそのことを知っていますかと言うことはおかしいと思いますので、いわゆる新潟ニューパックの問題の詳細を説明することを避けて、答弁だけをいただきたいと思います。
  31. 野口一郎

    ○野口政府委員 本州のニューパックの件の前に、先ほど先生のお話がございました旭硝子への指導の件でございますが、先生の御指摘のように、親会社である旭硝子に対しましても、私どもの方で、この岩城硝子と中小企業との関係につき十分な指導をするように旭硝子の方にも要請をしておるわけでございます。  それから、ただいま新しい問題として紙器の件でございますが、確かに先生御指摘のように、本州製紙は段ボールあるいは紙器の面で最大大手でございます。ただ、この会社のシェアにつきまして、この一社をとりますと、たとえば段ボールを除く紙器の生産において占めるシェアは約一割でございます。そうは言いましても最大大手でございますが、この本州が新潟県に工場をつくろうということで、昨年来問題になっているわけでございます。  従来は長野県にある工場から出荷していたのでございますが、新潟を中心とする新潟県のマーケットが有望であるというようなことで進出を企図したわけでございますけれども、ただいまのところ、現地の中小企業のメーカーとの間で十分な話し合いがついていないために、このプロジェクトは現実化しておりません。当初の計画から申しますと、ことしの秋ぐらいには工場ができ上がる計画だと聞いておるわけでございますけれども、先ほど申しましたようなことがございまして、現地のメーカーとの円満な話し合いがついたところで進めようということでございますので、現実的には進んでおらぬわけでございます。  それから、新潟県の問題だということでございまして、新潟県が両者の間のあっせんに立ってあっせん案等を提示しているわけでございます。あっせん案の提示は昨年の暮れ、十二月ごろにあったわけでございますが、それに対しまして現在両者が検討中というところで、それに対する新しい動きは現在のところ表面化しておらぬわけでございます。県が間に立ちまして何とか円満な解決をというふうに努力をしておると聞いておるわけでございますので、そういう動きを私どもウォッチしながら本省といたしましてもバックアップをしていこう、こういうことでございます。
  32. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 いま生活産業局長がお答え申し上げましたように、理化医ガラスの問題につきましては生活産業局の方で現在行政指導中でございます。私どもとしましては、中小企業の側の理化医ガラス業界でございますけれども、従来手吹きでそういった製品をつくっておったということでございまして、今度の大メーカーの方の自動成形機による進んだ製品の供給ということと競合することになりまして、非常に脅威を感じておられるわけでございますが、やはりこれに対応していきますには、中小企業側もさらに協業化を図りまして、新鋭設備の導入等を図って近代化を図る、そういうことによりまして大企業と競争することが必要かと存じますので、そういった面での近代化促進ということにさらに努力をいたしてまいりたいと考えているわけでございます。  本州ニューパックの件は、いま新潟県の方で調停中と申しますか、あっせん中でございまして、まだ本州側は土地も取得していないという状況でございますので、現実に被害が出ておるという状況ではないと存じます。なるべく早く本件の調停が功を奏することを期待いたしておる次第でございます。  一般的に申し上げまして、従来のこういった紛争は、特に安定成長期に入りますと従来以上に今後ふえてくるかと思いますけれども、従来の経験にかんがみますと、大半のケースが現実に即しました行政指導によりまして解決を見ておるわけでございます。今後もさらにこういった行政指導を現行法をバックにしながら機動的に展開いたしまして、円満な解決を見るように努力をいたしたいと考えます。  特にそういったトラブルのもとになります情報を早くキャッチすることが必要かと存じますので、そういう意味合いにおきまして、明年度予算におきまして、各商工会議所にそういった関係の調査を委嘱するモニターを置きたい、それから調査関係の予算を計上いたしたい、また各通産局に調停専門官を置きまして機動的な調停の実効を上げたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  33. 佐野進

    佐野(進)委員 中小企業庁については最後に質問しますけれども、いまのような答弁では全く不満なんです。これは不満だけれども、いまここでほかの問題もありますので、追及は後にしたいと思います。  そこで、生活産業局長、いま答弁のありました紙器関係におきましては、いわゆる新潟ニューパックについてはいまのような措置で、これは地元の話し合い、業界との話し合いがつかざる限り着工させないという態度をひとつ堅持してもらいたいと思います。  同時に、紙器業界においては問題がたくさんあるわけです。たとえば本州なり大手なりが値段を上げることによって、それが製品価格に転嫁される。いわゆる原紙の価格を上げることによって製品価格に転嫁され、ますます販売がむずかしくなる。しかし、一貫作業をしておるところの大手企業が自己の生産品をもって中小企業が経営する加工部門にまで進出いたしますならば、その打撃を受ける度合いが非常に少ない。したがって、利益が出るか、あるいはダンピングすることすら不可能ではないという形の中における問題等があるわけであります。  私は、この紙器業界について行政指導をする際、大手企業が今日的課題の中に、いわゆる不況下に置かれている経済情勢の中でその責任を果たす意味において、当然製紙なら製紙という段階においてその役割りを終わり、加工部門は加工部門として、既存業者並びに中小企業者の範囲の中においてこれをとどめるよう行政指導を行うべきが至当ではないかと思うのであります。これを今後の課題として当然検討すべきだと思いますが、その点について意思があるかないか、この点を、行政指導をするという立場に立っておられますので、局長見解を聞いておきたいと思います。
  34. 野口一郎

    ○野口政府委員 大企業あるいは中小企業を問わず、経済的なあるいは技術的な革新、進歩と申しますか、そういうものを取り入れて生産性を高めていくということが、やはり経済あるいは産業の進歩の原動力であろうかと思うわけでございます。ただ、大企業が資金力が強いとか、あるいは大企業であるがゆえにその力を不当に発揮いたしまして、経済あるいは技術面の優位性を不当に発揮して中小企業を圧迫する、これはやはり好ましくないことだと思うわけでございます。したがいまして、大筋におきまして先生のお考えよく検討さしていただき、御趣旨を体しながら進めてまいりたいと思うわけでございますけれども、やはり経済なり産業の全体としての進歩を損なわないような方向で、そういう枠組みの中で進めなければいかぬ、こういうふうに考えたわけでございます。むずかしい問題かと思いますが、よく検討いたします。
  35. 佐野進

    佐野(進)委員 次に、サッシ業界の問題について聞いてみたいと思います。  これも生活産業局の関係です。生活産業局においては、今日の不況における最大の落ち込みを建材部門が受けておるという形の中で、当初からこの部門に対していろいろな指導をしておることについては、その努力評価するにやぶさかではございません。特に中小サッシ業界が大手サッシ業界のダンピング的行為の中でその存立の基盤を失い、倒産、廃業に陥る業者の多いことは、いまさら私がここで指摘するまでもございません。  そういうような形の中で、業者もたまりかねて公正取引委員会救済方を申し入れようとしましたとき、たまたま通産省の中において、大企業の不当なるダンピング、七〇%ないし六〇%程度のダンピングを行うその状況に対して一定の歯どめをかける措置を行政指導として成功させようとしつつある段階の中で、公正取引委員会がこれに対して立入調査を行った、こういうような形の中で、いわゆる通産省の行政指導と公正取引委員会の権限とがここで衝突をいたしまして、目下紛糾といいまするか、その両者の行為の中においてきわめて深刻な状況下にサッシ業界が置かれておるというような状況の問題であります。  これにつきましては、今日サッシ業界一つだけでなく、ほとんどの建材業界がいわゆる出血受注、仕事が欲しい、仕事をもらうためにはもう採算を度外視して仕事を受ける。それも資本力の大きい力のある大企業が、この損は後の利益で取り戻すことができるという形の中において仕事をとり続ける、その行為はそのままの状況の中で許していていいものかどうか、このことについて私は大変疑問を持たざるを得ないわけでございますが、公正取引委員長、いまサッシ業界の中で公正取引委員会が行いつつあるその措置について、いまの原則的な面だけについてひとつ御説明をいただきたいと思います。いわゆる大企業がその企業の持つ力に任せて受注の問題について中小零細企業と競争し、不当なる出血受注、七〇%、六〇%、採算を度外視した受注を続ける行為は断じて認めるべきでないと私は判断するわけでありますが、公正取引委員会としてはこの点についてどのように判断されまするか、ひとつ判断を示していただきたいと思います。
  36. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 ただいまのお話は、つまり大企業といいますか、力のある事業者と、それに比べて非常に力の劣る業者とが、たとえば受注の場合の価格に明らかに差が生ずる、大企業の方が、力のある者がコスト、採算は無視しても非常に安値受注をするということ、そのことについては、これはもしそういう角度で公取に訴えがあって、私ども調査した結果、故意にそういうことを行っておられるということであれば、これは一つの不公正な取引競争、不公正な取引方法の一つのタイプに該当するかもしれません。しかし私はその実態をよく承知しておりませんから、ただいまのお話について、そういうことは具体的に当たってみた上でないとそれは何とも申し上げられない。  ただし、お尋ねがそこまでいかなかったかもしれませんが、カルテルとして、行政指導であれ何であれ、それがあってもなくても、受注品とか、それからレディーメードのものであっても、そのために安値を禁止する、安値を防ぐためにカルテル行為をやってもいいということには絶対になりませんから、この点は、独禁法のたてまえから言いまして、そういう容疑があれば当然立入検査をして事件として取り扱わざるを得ない。行政指導によって価格を調整するというか、安値受注を禁止するというふうな行為は私は許されておらないと思います。そういう点は、やはり独禁法のたてまえとしては、たとえ不況下でありましてもカルテル行為を結ぶことを黙認しておるということはできません。その辺は、問題はちょっと食い違っておるかもしれませんが、独禁法のたてまえというのはさようなものであるということは十分御理解願いたい。  特に、ただ不当廉売という問題は大変むずかしい問題でございますから、お互いにみんながコスト割れ、採算割れをやって競争している場合には、だれが不当廉売しているか、時価とは何ぞや、つまりコスト割れ販売すなわち直ちに不当廉売にならないということです。全部の業界がみんなコスト割れをやっておるという場合には、時価も下がっておるわけです。ですから、時価を不当に下回る、それからコスト割れがはっきりその社だけにある、このような場合には不当廉売になりますが、業界全体がそのような調子に足並みが何となくそうなっているような場合には、全部が廉売しているわけでございまして、不当廉売として不公正な取引方法に該当することはないと私は思います。ですから、大変認定の困難な問題であると申し上げます。
  37. 佐野進

    佐野(進)委員 この問題についてはいま少しく詳細に質問してみたいと思うのですが、時間がございませんので、後の機会に譲りたいと思います。  さて、もう一つの問題は化製問題で、農林省に質問をしてみたいと思うわけです。  いままで質問したと同じような例は、単に通産行政だけでなく、農林行政その他建設行政等々各般の中小企業問題の中に存在をいたしておるわけであります。しかし、いままで起きてきたこの種問題に対しては、私は農林省は通産省の行政指導よりも的確に処理をなされておると評価をいたしておるわけであります。評価をしておる事例が幾つかあるわけであります。にもかかわらず私がこの問題をあえて質問しなければならないのは、きわめて重大な問題であると考えるからであります。と申し上げますことは、いわゆる化製工場の問題であります。  化製品というのは、これはここで説明すると時間が長くなりまするけれども、御承知のとおり動物の残滓を集荷して、その集荷したものを処理する形の中で社会的な役割りを果たしておるわけであります。したがって、この仕事は、歴史的に見るならばきわめて困難な情勢の中でその仕事が行われ、この仕事の経過は必然的に公害問題等を発生する、そういう状況にあるわけであります。したがって、この種の業に携わる事業者は、いろいろな社会的な努力なり企業的な努力なり、そういうようなものを積み重ねて、今日辛うじてその存立の基盤を確保している状況に置かれている業者だと思うのであります。  この事業者に対して、公害を防止するために多額の借金をし、今日関東一円において、その努力の結果、集荷したものを処理する能力を持つに至った企業の存在があるにもかかわらず、しかもそれがほとんど中小零細企業者であるにもかかわらず、大企業、千葉畜産という企業日本冷蔵の系列下にあり、日本冷蔵の支配下においてこの種の業種にいま殴り込みをかけようとしておる。そしてこの殴り込みをかけようとする形の中において千葉県化成株式会社というものをつくり、千葉畜産株式会社、日本冷蔵系列の会社と経済連との共同出資においてこの大企業をつくり上げる。しかもこの企業に対して日本冷蔵がその土地を提供する。さらに、日本冷蔵が提供するだけでなく、国から五千三百万円、千葉県から五千三百万円を助成してこの工場をつくろうとしている。結果的に、この工場ができ上がる場合においては、既存の工場はその存立の意義を失うと言ってもいいほどの重大な打撃を受けるわけであります。  今日、社会的な情勢は、地方財政も国の財政もきわめて逼迫をいたしております。そのような状況の中で、既存の施設で既存の工場群が関東一円において集荷し処理する能力においてはいまだ余剰力がある。関東一円だけで集めたものを処理したとしてもまだ余剰力があるにもかかわらず、大企業の後押しをして政府が、そして県がこれに出資をして零細企業の職域を奪おうとすることは、今日中小企業問題を論ずるとき、断じて認めるわけにはいかない重大な問題ではないかと思うわけであります。  このような状況に対して、農林省は関係業者と話し合いをする、関係業者と調整をした上に補助金等の出資についてその役割りを果たしたのかどうか、あるいは関係業者の存立についてどのような配慮をしてこの工場設立の準備を進めているのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  38. 関根秋男

    ○関根説明員 千葉県化成に対する補助の件で御質問があったわけでございますが、この補助の考え方でございますけれども、最近畜産物に対する消費需要がふえてまいりまして、それに応じまして農家の家畜を飼う頭数もふえてきたわけです。ところが、農家の段階で家畜の頭数がふえますと、その家畜が事故死をする、そういうこともまたふえてまいったわけでございます。それで、農家の段階で事故死をしました家畜を処理する、こういうことが全国的に非常に必要になってまいった。片や、昭和四十五年でございますか、廃棄物の処理及び清掃に関する法律ができまして、事業者はその廃棄物を自分の責任で処理しなければいかぬ、こういう規定ができたわけでございます。これを受けまして、昭和四十六年から、私どもこういう農家の側の要望にこたえまして、五年間で全国的にこの処理を衛生的に行えるような施設について助成をする、こういう考え方で、先生がおっしゃいますような事業に対する助成をやってきたところでございます。  問題の千葉県の例でございますけれども、千葉県につきましては、ことしの春申請がございまして、十月の初めにこれを私ども割り当て内示をいたしたところでございます。この千葉県の場合、既存業者との関係がどうだというお話でございますが、私ども事業の主体といたしましては、先ほど申し上げましたように、農家の段階での家畜の事故死をしたもの、これは千葉県のお話によりますと、飼養頭数の二%程度だそうでございますけれども、これはかなりの数に上るわけでございます。そういうものが従来化製工場で処理をされてないわけでございます。こういうものを中心に、これを処理できるような施設をつくる、こういうことで千葉県化成に対して助成をしたということになっております。  この千葉県化成は、これは御承知かと思いますけれども、千葉県の経済連が過半を出資しておる団体でございまして、私ども事業の性格から見まして、この事業をやりまする主体といたしましては、県なり協同組合なり、そういうものが組織をするものに事業を認める、こういうことで千葉県のケースも認めたというのが実態でございます。  それで、先生のお話の中に、関係業界と話をしたか、こういうお話でございますが、私どもの方は、千葉県からは関係業界と話をしたということについては承っておりません。私どもといたしましては、この事業の性格の中心が、そういう農家の段階での死体処理ということでございますから、それ自身は従来の化製事業とは競合するとは思っておりませんけれども、その死体の処理と関連をいたしまして、屠畜場の残滓物というようなものを扱うようになるはずでございますので、その点につきましては一部競合する面もあるというふうに考えますので、千葉県の方とも十分協議をした上で、既存の業界と無用のトラブルが起きないように今後も指導していきたいというふうに考えております。
  39. 佐野進

    佐野(進)委員 時間がなくなりましたので、質問を終わらなければなりませんが、いまの問題、いわゆる通産省の方では、さっきの新潟ニューパックの問題につきましても、工場をつくる段階の中で話し合いをする、その他いろいろな形の中においての行政指導をしておるわけです。あなたの方ではそういうことを全然していないということがいま明らかになりました。したがって、この点については、きょうは時間がございませんので、なお深く追及することができ得ないのは大変残念でございまするが、私も本委員会において質問した経過等もございますので、改めてまた質問をしてみたいと思いますが、この種問題については、本来あるべき姿としては、当然関連業界と調和を図る形の中において事業を進めるべきであって、大企業から金を出し、土地を提供され、大企業が勝手に仕事をやるからそれについては補助をするんだという形の中においてその処理をするということは、大変行き過ぎではないかと私は思うわけであります。  私は、この業種の持つ本質的なあり方からしても、社会的問題としてきわめて重大な手落ちを農林省当局はしておるのではないか、千葉県当局もその点については配慮が足りないのではないか、このように判断せざるを得ないわけであります。したがって、いま一度答弁をいただきたいことは、この問題について関係業者、関係業界、千葉県等と十分なる話し合いの上にその措置を進めるということが約束できるかどうか、答弁してもらいたいという意味において約束できるかどうかということについて、いま一度あなたの見解を聞いておきたいと思うのです。
  40. 関根秋男

    ○関根説明員 先ほど申し上げましたとおり、この事業の中心的な部分につきましては、私ども既存の業界との競合が必ずしもあるとは考えておりませんけれども、一部につきましてはあり得る、こういうことでございますので、さらに県の方と相談をした上で、そういう問題が生じておるといたしますれば、関係業界とも私ども相談をしていきたいと思うわけでございます。
  41. 佐野進

    佐野(進)委員 いままで私は四つの業界の問題について、時間がありませんので十分突っ込んだ質問をすることができ得ませんでしたけれども質問を続けてきたわけであります。  そこで、私は通産大臣にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、今日このような経済情勢の中で中小企業者の置かれている立場というものはきわめて深刻であり、その深刻な状態を脱却するために血のにじむような努力を続けていることは、あなたもよく御承知だろうと思うのであります。したがって、この努力に対応するごとき通産行政ないし中小企業行政があってしかるべきだと思うのであります。ところが、先ほど中小企業庁長官の答弁を聞きましても、あるいは生活産業局長の答弁を聞きましても、結果的に行政指導におけるところのこの種問題の処理というものは一定の限界に突き当たらざるを得ないと思うのであります。  通産大臣は、この限界をどうやって脱却するかということについて、私どもが多年にわたって主張しておる事業分野の調整に関する問題に関しては、がんとしてその見解を変えようとしていないわけであります。私は、先ほど福田副総理の答弁の中での縦の線と横の線とのきめ細かな対策こそ今日の産業経済、なかんずく中小企業問題においては必要な対策でなければならない。このことがあってこそ初めて今日のこの不況を国民力を合わせて乗り切って、新しい経済発展の道を切り開くことができる。大企業はその力だけに任せてみずからの利益を守ろうとする行為があってはならないし、中小企業は自分みずからの努力を放棄した形の中においてただ漫然と政府対策を待つということがあってはならない。お互いに力を合わせた形の中において乗り切っていかなければならないのが当然の問題ではないかと思うわけであります。  にもかかわらず、先ほど来指摘いたしてまいりました問題は、大企業は相変わらず力に任せて中小企業分野の中に殴り込みをかけて、中小企業分野の仕事を剥奪する形の中で自己の存立の基盤を守り抜いていこう、いや、むしろ発展させていこう、こういうような動きが顕著であるということを、先ほど来の質問の中で大臣も感じていただいたと思うのであります。そういう意味合いにおきまして、今日の中小企業問題、経済問題を打開するためにお互いにしんぼうしなければならないとするならば、そのしんぼうは、中小企業に与えるしんぼうよりも、むしろ大企業に大きなしんぼうをしてもらわなければならないと思いまするが、そういうような問題について取り組む決意があるかどうか、この点をひとつ通産大臣にその見解をお伺いしておきたいと思います。
  42. 河本敏夫

    河本国務大臣 この分野調整の問題は、中小企業政策の中におきましても最大の課題でございます。これまで通産省は行政指導によりまして大部分の問題を解決してまいりましたけれども、なおいまいろいろお話がございましたような二、三の点におきまして未解決の問題が残っております。しかし、いずれにいたしましても重要な課題でございますので、これまで以上に一層努力をいたしまして、当面する分野調整の紛争問題につきまして解決するために努力を続けてまいりたいと思います。
  43. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣の御答弁としては大変前向きの答弁をきょうは初めていただきました。結構だと思うのであります。  そこで、私は中小企業庁長官にお伺いをしたいと思うのです。いま中小企業者はあなたの庁に対してどういうことを言っているかというと、中小企業庁だといったって中小企業のためにやる庁ではないんだ、中小企業庁とは、中小企業者が大企業のために奉仕する役割りへの道をつけようとしているんだ、大企業が困らないように中小企業に対する対策をしておるんだ、こういう極論すら言う人たちがふえつつあるわけでございます。たとえば分野調整の問題であなたのところへ陳情に行く。対応する係官の人たちはあなたの部下ですよ。あなたはよもやそのようなことは言わないでしょうけれども、あなたの部下の人たちは挙げてこの問題については、分野調整というがごときことはナンセンスであるというに近い言葉を言い、何とかあなたたちはあきらめないかと言っておる、経団連に呼ばれた人たちの言うことと中小企業庁の担当者の言われることとが全く同じである、こういうことが、中小企業庁へ陳情に行った人たちの感情として私たちの耳に入ってくるわけです。  われわれは、中小企業省をつくれとか、あるいはこうしてくれ、ああしてくれとかいういろいろな要求を出します。中小企業庁しっかりやってくれよ、中小企業庁こそ今日の経済情勢の中における最も必要な庁であるのだという願いを込めて、期待を込めてあなたを激励し、あなたの方から出してくる法案についてはほとんどこれを成立させる努力をしているわけです。私たちがそういう努力をしているにもかかわらず、あなたの方はかたくなにこのことに対しては拒み続けている。まさにつぼに入ったサザエのように、氷室に入ったところの人たちのように、当たってははね返すだけで、温かみを持って迎え入れようとする動きは、少なくとも通産行政の中において生活産業局よりも中小企業庁の方にないという評価をいま得ておるわけです。  この前の七月四日の商工委員会において次のような決議をなされたことを、あなたはおわかりだと私は思うのです。「大企業中小企業の分野へ進出し、深刻な影響を及ぼしている実情にかんがみ、中小企業事業分野確保のため、早急に立法措置を検討すること。」と、委員長発議において満場一致で決議しておるわけです。さらにここにある幾多の論文、近ごろ出されている学者その他の識者の論文は、経団連と中小企業庁を除いては、ほとんどがこれに対する前向きの取り扱いをすべきだという意見を出しております。通産省の五十一年度に臨むべき施策の中におきましても、いわゆる官房長の発言としての形の中においても、この問題が重要な問題であるということを指摘しておるわけです。にもかかわらず、中小企業庁がいまなおかたくなな態度をとり続けているということは不可解千万だと思う。私は、この問題に対する衆議院段階における全党的要求の中におかれている状態として、中小企業庁は今日どのように判断されておるかということの御答弁をいただきたいと思います。  最後に福田副総理に、ちょっと所管が違うけれども副総理ですからお尋ねしたいと思うのですが、先ほど来あなたは大変疲れて眠そうな顔をされているのに、よく聞いていていただいたと思って感謝するのですが、非常に重要な問題でありますから、この問題について先ほど来の見解についてどう思われるかということについて、その見解を明らかにお示しいただきたい。これは最後で結構でございます。長官の言った後で結構ですから。
  44. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 中小企業庁の設置の目的は、中小企業庁設置法にも定められておりますように、中小企業の育成、発展、そして中小企業の経営を向上させる諸条件を確立するというのが設置法に書かれている目的でございまして、私どもは日夜中小企業振興に心を砕いているつもりでございます。そのために、たとえば中小企業経済的、社会的な不利の是正という観点から、下請振興対策、あるいは官公需確保対策、あるいは中小企業の組織化対策、さらには金融面の確保その他、世界にも例を見ないような各般の中小企業振興対策が非常に広範にわたりまして実施されておるというふうに考えておる次第でございます。  分野調整の問題につきましても、大企業が大規模かつ急激に中小企業の主としてやっておりますような仕事の分野に進出することによりまして、中小企業の就業の機会を奪う、こういうふうな事情がありますときには、これの調整をやることにやぶさかでございません。随時必要に応じてその調整を行うべきである。そしてその間、中小企業の近代化を図りまして、自力でもって対抗できるように持っていく、こういうことが私どもの使命であると考えております。  ただ、これを新しい立法をもって分野調整を行うか、あるいは現行法を活用する形で実際に即しまして行政指導によって行うかということにつきましては、いろいろ利害得失がございまして、先般先国会の最終日におきまして、この立法について早急に検討を行うことという商工委員会の御決議をいただいたわけでございますが、その点につきましても現在いろいろと多角的に検討を進めておる段階でございますけれども、ただいままでの検討の結果におきましては、やはり行政指導を活用するという方が現実的である、メリット、デメリットを比較いたしましてそういうふうな結論を現在までのところでは得ておるところでございますが、さらに立法の問題については今後も検討を続けたい、かように考えております。
  45. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま佐野さんから、中小企業庁はもう大企業向き、そっちの方ばかり向いておって、中小企業の立場を軽視しているんじゃないかという御感触の御意見でございますが、私どもこうずっと中小企業庁の活動を見ておりまして、これは本当にそれとは全く逆でありまして、中小企業中小企業と言って中小企業のことを本当に真剣に考えておる、設置法の命ぜられているとおりにやっておる、そういうふうに確信をしております。まあ経済は有機的一体のものでありまして、その中で規模の大小によりまして大企業中小企業、これを区分し、これを対立させるということがあったら私は経済の効率化、経済の進歩発展を阻害すると思うのです。そうじゃなくて、経済全体の中で大企業役割り中小企業役割り、これを効率よく発揮させる、そして経済の発展、同時に社会的公正というその二つの問題を解決していく、そういうことでなければならぬ、こういうふうに考えます。中小企業庁のあり方につきましては、今後とも内閣全体としてこれを支援し鞭撻していきたい、かように考えます。
  46. 佐野進

    佐野(進)委員 終わります。
  47. 山村新治郎

  48. 板川正吾

    板川委員 私は、最近、石油の誘導価格なるものが通産省から発表されておりますので、その誘導価格なるものについて若干質問をいたしたいと思います。  新聞によりますと、こう言うと妙なニュアンスがあるのですが、実は私ども内容を十分承知しておりませんから新聞によるはかなかったわけですが、通産省は十月三十日に石油審議会の議を経て、C重油キロリットル当たり千八百円、ナフサ二千六百円という値上げをするよう誘導価格というものを発表いたしました。私は、こうした値上げが緊急性もないのに法律によらないで決められることは独占禁止法上問題があるばかりでなくて、国民経済、国民生活に重要な石油の価格が通産省と業界と、国民の目の届かない密室の中で決まってしまうということは、いわば行政権の乱用になるおそれもある、立法府として好ましくない、こういうように思いますので、以下若干の質問をいたしたいと思います。  まず第一に、今回通産省が誘導価格として石油製品の値上げを需給両業界に示したのはいかなる法的な根拠によるものか、また誘導価格というのは一体どういう性格を持つのか、この点をぜひひとつ解明していただきたいと思います。
  49. 増田実

    ○増田政府委員 お答え申し上げます。  十月三十日に石油審議会で私どもが説明いたしました、ナフサ及びC重油のいま先生がおっしゃられました誘導価格について御説明申し上げたいと思いますが、誘導価格というのは新聞に載っておりました一つのこれに対する名称でございますが、私どもの方の考え方は参考価格、こういう気持ちでございます。  それで参考価格というものがどういうように働くかということでございますが、これは石油会社の方にこの参考価格を示しまして、一応これを参考にして需要会社と価格引き上げの交渉をさせる、こういうことでございます。ですから、性格づけから言いますと、両業界に示す価格ではございませんで、石油会社の方に、通産省の方で計算して大体これぐらいの価格が適当だと思うので一応これを参考にして需要業界の会社とよく話してくれ、こういうことでございます。法的性格から言いますと、これは通産省の行政指導価格という一種ではあると思いますが、性格的に言えば非常に弱いと申しますか、これを参考にして相手会社と話をする、こういうことでございます。  その法的根拠につきましてただいま板川先生から御質問がございましたのですが、これは法律の中にこういう価格指導というのはございませんが、私どもといたしましては通産省設置法に基づいて、この流通、生産その他につきまして所管の事業に対しまして指導、育成その他を行うわけでございますから、その一環として行ったもの、こういうふうに解釈いたしております。
  50. 板川正吾

    板川委員 新聞では誘導価格と言って発表された。通産省では参考価格。まあ参考価格にいたしましても値上げを誘導することに間違いはない。そういう意味では、出した方は参考価格かもしれませんが、一般国民の側から見ればこれは誘導値上げ価格、こういうことになるのじゃないでしょうか。  それはそれといたしまして、この設置法の第三条の二号、これは一体どういうふうに読むのか、それとこの誘導価格をやる関係、誘導価格を導き出した三条の二号というものの説明をひとつしていただきたいと思うのです。設置法三条の二号をどういうふうに読んで、この誘導価格を通産省の任務として、権限として出されたのか、伺っておきます。
  51. 増田実

    ○増田政府委員 通商産業省設置法の第三条に、「通商産業省は、次に掲げる国の行政事務及び事業を一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。」という規定がございまして、その次に掲げる中の第六号といたしまして、「鉱物資源の開発及び電力等のエネルギーの供給の確保並びにこれらの利用の推進並びに発電水力の調整」というのがございます。     〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕  それからまた、同じ通商産業省設置法でございますが、三十六条の七でございます。「石油部においては、次の事務をつかさどる。」それの第一号でございますが、「石油及び可燃性天然ガス並びにこれらの製品の輸出、輸入、生産、流通及び消費の増進、改善及び調整を図ること。」ということがございます。この第三十六条の七の一号にございます、石油につきましての生産及び流通、消費の増進、改善及び調整ということが石油部の任務になっておるわけでございますが、私どもは、先ほど御説明いたしました参考価格はこの規定に基づいて行ったものというふうに考えております。
  52. 板川正吾

    板川委員 これはこの規定を準用したということは、昨年三月十二日の予算委員会において政府の統一見解がありますね。統一見解の第二にはこう書いてありますね。第一、第二、第三とありますが、第二がいま言った問題点だろうと思います。「第二に、一方、最近のように、物価抑制が最大の国民的な課題となっておりますことを考慮いたしまするならば、物資所管官庁が価格抑制の観点から、価格に関する行政指導を行なうことは必要やむを得ないものと考えられまして、その根拠は各省設置法に求めることができます。たとえば通商産業省設置法第三条第二号、石油につきましては第三十六条の七第一号でございます。」こう法制局長官が言っているわけですが、この三条の二号を読む場合に、一体この誘導価格を引き出した根拠というのはこれをどう読んでいるかということを実は聞いているのです。  三条の二号は、いま言ったように「鉱産物及び工業品の生産、流通及び消費の増進、改善及び調整並びに検査」こういう規定になっているのですけれども、これはいろいろなものを含んでおるのですが、この誘導価格を引き出した根拠というのは、どういうふうにお読みになってこの根拠を求められておるのですか、これを実は聞きたいのです。これは後に関係がありますから伺っておくのです。
  53. 増田実

    ○増田政府委員 先ほど申し上げましたが、通商産業省設置法の第三十六条の七で、石油及び可燃性天然ガスにつきまして生産、流通、消費、輸出入その他の増進、改善、調整というものを図ることにつきまして、大幅な設置法上の権限が与えられておるものと私ども解釈しております。  それから、先ほど先生が御指摘になりました衆議院の予算委員会で、これはたしか法制局長官からの御答弁だったと思いますが、カルテルと行政指導に関する見解という政府の統一見解が出ております。これは当時は物価抑制ということで今回と性格が違うわけですが、物価抑制をいたすために、価格に関する行政指導がどういう根拠になっているかということに対する回答であったわけでございますので、今回は価格の引き上げでございますから、性格を異にするものと思います。ただ、この法制局長官が答弁いたしましたのは、価格に関する行政指導が根拠として何によって動くかということにつきましては、通産省設置法の三条の二号、石油については三十六条の七でこういう価格指導ができるということでございまして、価格指導につきましては、根拠は私どもは設置法だと考えております。ただ、先ほどの繰り返しになりますが、法制局長官の答弁にありますのは価格抑制のときの解釈でございますので、今回の分につきましては、先ほど先生がお読みになりました二号の対象にはならないというふうに考えております。
  54. 板川正吾

    板川委員 設置法三条の二号に価格という文字がないのですよ。価格という文字がないから、ではこの誘導価格はこれに基づいておるというならば、一体この生産、流通の調整何がしというふうに書いてあるのをどう読んでいるのか、どこにポイントを求めておるのか、それをまず聞いておるのです。
  55. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま先生のおっしゃられましたように、三十六条の七には価格という言葉はございません。ただ「生産、流通及び消費の増進、改善及び調整」ということでございますが、たとえば価格抑制をいたしますときのこれの読み方でございますが、石油価格が非常に高騰し、これが消費その他について非常な支障を生ずるという場合は、これは当然価格について各種の行政措置を行うということになるわけでございますし、また、今回のいわゆる参考価格の提示につきましては、今後の石油生産の健全なる維持を図るということから、やはり価格を手段として生産あるいは消費につきましての改善、調整を図るということで、私どもは読み得るというふうに解釈しております。
  56. 板川正吾

    板川委員 どうも誘導価格はここにポイントがあると言っているところが、その説明があいまいなんですね。  この価格カルテルと行政指導に関する見解という内閣の統一見解がある。これは御承知のように、いまあなたも触れられたように、当時は物価抑制が至上命令であった。このまま放置することができない、したがって、設置法三条の二号によって通産省はこういう任務を持っておる、ここにポイントを置いて、国民経済の安定を図るという目的でやむを得ず値上げをするのだ、こういう理由になっていると思うのです、この第二は。  この趣旨は、それは確かに行政府の任務は複雑な社会、経済を対象としておって、ときには予測を超えた問題にも対処しなくちゃならないという場合があります。したがって、行政府は単に法律を忠実に守っていればよいという消極的な任務だけではないということは、われわれも理解を持ちます。しかし一面、行政府は国権の最高機関として国会の定めた法律による行政という原則に従う一方の義務があるわけであります。だから、法律によらない行政指導の分野が仮に設置法三条によってあるにしても、それはごく少数の範囲でとどめるべきであって、設置法の抽象的な規定を拡大して無原則に行政の分野を広げるということは、われわれはこれは好ましくはないという立場に立つわけです。ですから、設置法の四条というのは、そういう意味で三条が任務であり四条は権限である、その権限の行使は法律に基づけ、こういう規定が設けてあるのは、そういう趣旨だろうと思うのです。     〔田中(六)委員長代理退席、委員長着席〕  三条で確かに法律によらないで行政措置を講ぜざるを得ない場合があるかもしれない。しかしそれは最小限であって、設置法の抽象的な規定を拡大解釈してどこにでも指導価格、誘導価格というのができるとなったら、これは法律なんか要らないのじゃないですか。だから、そういう意味で私はこの誘導価格の法的な根拠というのを明らかにしておかないと、どこに解釈を求めておるのかというのを明確にしておかないと、どんどん拡大されていくということは立法府としてこれは簡単に容認しておくわけにいかない、こういう気持ちで申し上げているので、その点ひとつもう一遍答弁してください。
  57. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま板川先生から御指摘がありましたように、行政府の権限を無限大に広げるべきではなく、設置法に基づいた権限の中におさめるべきものだと私どもも思っております。ただ、価格の問題につきましては、これは先ほど先生から価格という文字がないということでございますが、生産あるいは流通、消費につきましての調整あるいは育成、増進をする場合には、当然価格問題が絡まるわけでございます。これは別の例になりますが、たとえば灯油の価格が非常に上がるときに、私どもは卸、元売業者あるいは小売業者に対しまして価格の指導をいたしておりますが、これはやはり流通とかあるいは消費の健全化を図るために設置法に与えられた権限というふうに考えております。そういう意味で、価格抑制につきましては、設置法に基づいて価格に行政府、通産省がタッチすることにつきましては一般に認められているところだと思います。  ただ、いま先生御指摘になりましたように、いわゆる誘導価格、私どもの言っている参考価格という値上げの分まで価格にタッチするのがこの設置法上の権限の中に入るかどうかと、こういう問題の御指摘だと思います。これにつきましては、確かに価格抑制の場合の価格に関しての行政府の介入と、それから現在やっております価格引き上げのための介入とは、性格は異にすると私どもも思っておりますが、ただ石油価格につきまして今回参考価格を提示し、また近い将来に標準額を決定いたそうと思っておりますのは、石油産業の性格から言いまして、現在の石油産業をこのまま放置いたしますとこの基盤が崩壊し、これがひいては全産業、全国民生活に影響が及ぶということで、この石油産業の流通、生産の健全化、育成、調整を図るということから、設置法上私どもは認められた範囲内でやっておる、こういうふうに解釈しておるわけでございます。
  58. 板川正吾

    板川委員 いや、だから私も、行政の任務は非常に複雑な社会、経済の事象に対して対処しなくちゃならないから、法律があったらそれを一歩も出ちゃいかぬという意味を言わないと言っているのですよ。それは法律にない場合でも行政の任務を果たさなくちゃならない。だから、それは設置法三条、任務にあるでしょう。だがしかし、抽象的な三条の規定を拡大してやたらに広げていったなら、法律による行政の原則というものが薄らいでしまうんじゃないですか。だから、そういう解釈をとるにしても、それは最小限の解釈をとらなくては、われわれ立法府としては法律をつくった意味がない。設置法で何でもできる、こういう価格という文字はないけれども、流通なら流通、生産、流通の調整と、こういうことで何でもできるとなったら、それは立法府というのは無用の長物となってしまうのじゃないですか。しかもわれわれ国会は、国権の最高機関という憲法の規定があるのですよ。ですから、法律による行政という原則も一方にあるのですから、それは最小限の権限行使でなくてはならぬし、もしそれを大っぴらに使いたかったら、法律をもって、法律を準用してやるべきだと、こういう主張をしておるのです。これはひとつよく理解してくださいよ。この問題で議論するとまた長くなりますから、先に進みます。  公取委員長、ひとつ伺いますが、内閣統一見解でカルテルと行政指導の関係に関する見解が出されておりますが、公取委員会として、こういうような場合に独禁法に違反する場合と違反しない場合がある、こう思われます。公取委員長はしばしば、法律によらないで官庁と業界が話し合いで価格を決めるのは行政による統制で、自由競争の原理に反する、こう言っておられますが、この通産省の設置法の解釈というものについて、公取委員会として見解があったらお聞かせを願いたいと思う。
  59. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 ただいまの板川さんの御質問と答弁を聞いておりまして、実は私は設置法にそういう本来的な、つまりことに三条に根拠を求めて、価格であれ生産であれ、相当強い行政指導もできるんだということには全く反対の見解でございます。それはできないのだというのが私の見解でございますが、しかしすでにお話のように法律に従って一定の手続をとっているいとまがない、つまりそういう余裕がないような場合に、すべて機械的に法律によるべしということを言っておったのでは間に合わないのですから、緊急事態に対処するためにはやむを得ない場合がある。それが私どもはその統一見解に妥協した——妥協したと言うとおかしいですが、その統一見解というのは私どもの主張と食い違っておりましたためにまとめたわけです。  それが統一見解となっておるわけですが、そのときの重点は、やはり物価抑制ということは当面の最大の国民的課題である。そういうことで、その緊急性が非常に異常に高いということが基礎になっておりまして、それなくしては三条ということは私は意味がないと思うのです。つまり、独立してその前を削ってしまったら、あとの項目だけ単独でひとり歩きするというようなものではない、これは私は絶対にそういうことは言わなければならないと思います。  確かに、設置法で任務の範囲が定めてあります。こういう任務を負っている、それはわかりますよ。しかし四条にいけば、権限の行使は法律によるとなっているのですから、当然その両方合わして見れば、法律によらずして何でもできるというものではないということは明々白々なんでございます。それでありますから、その緊急性いかんということが私は一つの判断の基準になると思います。  そういうことでありますので、もしもそういうことで設置法の三条によればその任務の範囲内では何でもできるんですよと、こうなりますと、勧告操短でもできるし、いろいろほかのものに、行政指導によって生産から流通の段階までみな、規制と言ってはなんですが、法律そのものでありませんから、違反したからといってとがめられるわけではありませんけれども、しかしながらとかく所轄官庁というものはいろいろな別の権限を持っておるわけですね。したがって、余り従順にならなければ後でしっぺ返しを受けるというふうな懸念もあるわけです。それはユーザーの側にもあるわけで、しばしばそういうことはあります。私は、いまはほとんどが自由経済、特別に公益事業等を除きましては自由経済になっていると思うのでありますが、なおそこに統制的な思想が生きている。またそれに頼ろうとする業者が余りに多過ぎる。こういう感じを持ちますから、そういうことがその行政指導による介入を呼ぶ原因になっていると思いますが、はなはだ好ましくないことである、こういうふうに思うのでございます。
  60. 板川正吾

    板川委員 もし三条の二号に基づいて何がしかの指導を行うとするならば、それはやはり本当の緊急事態で、国民経済なり国民生活にプラスになる、それをやらなければ他に適用する法律がない、しかしそれをやらなければ新しい事態に対応できない、こういう場合、緊急避難的な意味で使う場合にはとやかくは言いません。しかし、それが独立をして、前の条項はないんだ、その条件はないんだといって、三条の二号がやたらに拡大されるのは困るというのが御意見であろうと思います。私も全くその点では同感であります。  そういう意味で、この内閣統一見解というのは、最近のように物価抑制が最大の国民的課題となっておりますことを考慮するならば、価格に関する行政指導を行うことは必要やむを得ないという消極的な表現になったのであって、当然だと言っているわけじゃない。だから、これを外されてあとだけが活用されるというのは問題である、私はこう思います。  それはわかりましたから、次に行きます。これまた新聞によると、でありますが、石油に誘導価格が、値上げ価格が認められるならば、次には同じ不況で困っておる石油化学とか鉄鋼とか紙パルプというような産業界が同じように誘導値上げを期待している、こういう説がございます。一体通産省は、石油に誘導価格で値上げをしようということであれば、同じ論理で石油化学、鉄鋼、こういう基幹産業にも同種の誘導価格というものを拡大していく方針でありますかどうか、その点を伺います。
  61. 河本敏夫

    河本国務大臣 今回ナフサとC重油につきまして参考価格をつくりましたその根拠につきましては、先ほど政府委員が答弁したとおりでございますが、これは御案内だと思いますけれども、昨年の三月以降この九月期の中間決算まで四期間を通じまして、石油業界は累計数千億の大赤字を抱え込んでおる状態でございます。これまではその大赤字に対しまして、土地であるとか株式、そういうふうな持っております資産をどんどん処分いたしまして、表面発表する赤字の幅というものは数千億よりも若干下回っておりますけれども、これは次の資金調達等のことも考慮いたしまして、資産の処分によって最小限に抑えてきたわけでございます。しかし現状は、二年間に及びます資産処分によりまして、もう銀行借り入れ等をすべき担保が全然なくなってしまった、いわば崩壊寸前の姿であると申しても過言ではないと思います。  そういうふうに、鉄と並ぶ二大基幹産業であります石油が崩壊寸前にあるという状態は、これは通産省としても政府といたしましても放置するわけにはいかぬ問題で、このまま放置いたしますと石油産業が崩壊をいたしますから、そういたしますと石油安定供給ということは全然不可能になります。そういう緊急事態を考慮いたしまして、現在の石油製品の価格体系の中におきまして非常に大幅な逆ざやになっておりましてそれが赤字の一番大きな原因になっております二つの品種、先ほど申し上げましたナフサとC重油につきまして参考価格というものを緊急につくりまして、その参考価格を一つの基礎として石油業界がそれぞれの需要業界と交渉いたしまして現在の緊急事態をとりあえず切り抜ける、こういうふうに行政指導をしたというのが今回の事態でございます。  ただしかし、去る九月にはOPECの方でさらに原油の一割値上げ等がございまして、この値上げ油が二カ月ぐらいおくれで十一月の末ぐらいから順次入ってまいりますので、これもやはり相当な負担増になると思いますが、この分の処理をどうするかということにつきましては、若干の時間等もございますので、石油審議会を何回か開いていただきましてこの取り扱いを決めていただく。先ほど長官が言いましたように、あるいは法律に基づく標準価格の設定ということになろうかとも思います。これは審議をしていただいておりますので結論を言うのはまだ早いわけでございますけれども、そういう二段構えで緊急事態をとにかく救おうというのが今回の措置でございますから、その点はひとつ御理解をしていただきたいと思います。  なお、今回の措置に関連いたしまして、重立ったすべての産業にこういう参考価格を設定するのではないか、こういうお話でございますが、他の産業につきましてはそういう考えは持っておりません。
  62. 板川正吾

    板川委員 いま大臣が説明されたように、石油業界が非常に危機的な経営状態になっておる、この危機的な経営状態を緊急に改善させるために今度の措置をとった、こういうお話であります。私は、こういう行政的な措置をとる場合に、なるべく法律に基づいておやりなさい、こういう思想を持っておるわけであります。こういう場合に、いま二つの法律があるわけであります。第一は、御承知のように石油業法であります。第二は、独禁法の中にある不況カルテルであります。行政府法律に従って行政を行うという原則を忠実に守る義務があるのですから、他に法律がない新たな事態は別としまして、こういうことは私は、この二つの法律のいずれかを準用して行った方が妥当である、こう思っておるわけなんです。  そこで、これは簡単でいいのですが、なぜ石油業法十五条による標準価格という制度をとらなかったのか、この点を伺っておきたいと思います。
  63. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま大臣からお話し申し上げましたように、今後の石油価格のあるべき姿というものにつきまして石油審議会で討議を行っておるわけでございますが、その際に、標準額を決めるのがいいのか、どういう方法でやるのがいいのか、それもあわせて現在討議をいたしておるわけでございます。  それから、ではなぜ参考価格というものを標準額で決めないで、それにさきがけて、つまり石油審議会の結論が出る前に示したのかということの御質問でございますが、これにつきましても先ほど大臣からお話し申し上げましたように、石油業界が非常に危機的状況にある、その中でもナフサ、C重油につきましては現在需要会社との間でいろいろ交渉いたしておりますが、これは大部分が進んでおらないという状況でございます。これをこのまま放置するわけにいきませんので、一応役所が見まして、この価格はOPEC値上げ前の価格体系で一つの参考になるべき価格だということで示したわけでございます。ですからこの価格は、参考価格と申し上げておりますように、法的強制が何もついておらないわけでございますし、一応石油会社が需要会社と話をするときに通産省でいろいろはじいてこの価格を参考にするようにということで示すということで、この価格に決まらなければならないとか、この価格で決定しなければいろいろな問題が起こるということは全然ございません。一つの目安、こういうことでございますので、石油業界の立ち直りというものを必要とするこの緊急の段階におきまして目安を与えたわけでございまして、今後の石油価格のあり方につきましては、石油審議会の討議を経ましてできるだけ早く結論を得たい、こういうことで考えております。
  64. 板川正吾

    板川委員 なぜ石油業法でやらなかったか。
  65. 増田実

    ○増田政府委員 石油業法を適用するかどうかということにつきましては、先ほど申し上げましたように現在石油審議会の討議事項にしておりまして、石油審議会には石油価格のあり方について審議をお願いいたしておるわけでございますが、そのあり方につきましては、これを今後標準額として示すという考え方もありますし、また標準額以外のやり方、たとえば先ほど先生からも出ておりましたように、不況カルテルで価格を決めるというやり方もあるかと思いますが、そういう問題全部を含めまして結論を得たいということで、ただその結論が出るまでの時間というものがございますので、さしあたり非常に問題の逆ざやになっております二品目についてだけ目安を与えた、こういうことでございます。
  66. 板川正吾

    板川委員 私は、石油企業の危機というのは、大臣も言われましたように四十九年上、下期から特にひどくなっておりますから、その危機が突如としてあらわれたわけじゃないだろうと思いますよ。ですから、産業官庁として、そういうことを事前に承知しておるならば、あらかじめもっと前に石油審議会を開いて、たとえば石油業法で標準額を定めて販売価格を定めるというならば、そういう措置もあったのじゃないでしょうか、こう言うんですよ。この間の石油危機のときみたいにやぶから棒に幾らにするという場合に、これは予測のしようがなかったのですけれども石油企業の危機というのは、大臣もるる言ったように長い間の危機状態が続いてきたのでしょう。そうならば、石油審議会にかけて意見を聞いて標準額を決めるという手続の時間がないというはずはないじゃないかと私は思いますね。ただ、石油業法十五条では、御承知のように、価格が不当に高騰し不当に下落するという条件があり、第一条には低廉かつ安定的な石油確保するという目的の項目があって、いまの状態で暴落するということでもないし、暴落するならば現状を維持する措置をとればいいのであって、値上げを慫慂するというのはこの法律解釈上なかなかできない、こういうことであったのじゃないかと私は思いますよ。だけれども、通産省としてどういう考え方をとっておったかということを聞きたいわけであります。これはいいですよ、これによらないことはわかっているのですから。  ただ、残る合法的な措置としては不況カルテル。どうしてもこの石油業界が危機に瀕して、産業上この石油事業というものが崩壊したら大変なことになりますから、それを維持させることは当然産業庁の役割りですよ。任務ですよ。だからそれに行政的な指導をしてやろうというならば、私は、なぜ不況カルテルで救済する措置をとらなかったのだろう、こう思うんですね。独禁法二十四条の三に御承知のように不況カルテルの要件があるのであります。それは、「当該商品の価格がその平均生産費を下り、且つ、当該事業者の相当部分の事業の継続が困難となるに至るおそれがあること。」これが第一です。第二は、「企業の合理化によっては、事態を克服することが困難であること。」こういう要件があれば業界として不況カルテルを申請することができる、こういうことになっておると思うのです。  もし不況カルテルの申請があれば、公取はこれを審査して、そして決定する場合には通産大臣と協議する、これは例の行政的措置ですから、行政機関である公取委員長は行政機関の主務官庁である通産大臣と協議するということはこの前も再三議論したとおりでありますから、協議されるんですね。公取の高橋委員長の独断で一方的に決まるわけじゃないんですよ。お互いに協議して決めるんです。特に価格の場合などは、それは公取としては主務大臣意見を十分尊重して決めるという形になるのじゃないでしょうか。ですから、そういう不況要件があるならば堂々と不況カルテルの申請をして、密室で価格の値上げを決めないで、公明正大な措置によって石油企業の危機を回避する、こういう措置が当然だと私は思うんですね。  それで、何か不況カルテルを申請すると公取の高橋委員長が非常に厳しくてなかなか許可しないだろう、こういう通産省の方々の心配があるのだろうと思うのですが、まあ公取委員長は鬼のようだと言っておるそうでありますが、しかし鬼の目にも涙ということもあるのであって、私はそういう実態であるならば、公取が絶対にこれを拒否するという態度は恐らくとらぬのじゃないだろうかと思うんですよ。だから、なぜ不況カルテルで救済しようという措置を講じないのですか、ひとつ通産大臣に伺っておきます。
  67. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず最初に、なぜC重油とナフサについて参考価格というものをつくったのか、二年も前から赤字が続いておるじゃないか、こういうお話でございますが、御質問ごもっともだと思いますが、実は一番の大幅な逆ざやになっておりますナフサとC重油につきましては、石油業界と需要業界が長い間折衝をしておったわけでございます。私どもも両者の間で適当な価格に落ちつくということを期待しておったわけでございますが、なかなか現在のような経済情勢のもとにおいてはこれが進まない。特に石油業界というものは乱立しておりまして力が非常に弱い。こういうこと等もありまして交渉が妥結に達しない、困ったことだ、こういうふうに思っておりましたやさき、この九月期の中間決算等も大体出そろってまいったわけでございますが、その中間決算を見ますとこれはただごとではない、こういう状態を放置すると、これはもう近日、石油業界全体の崩壊が起こるのではないか。新規の借り入れ余力も全然なくなっておる、大変な状態である、こういうことを心配いたしまして、先般とりあえず、非常に大幅な逆ざやになっておりますC重油とナフサについて参考価格というものを設定いたしまして、両業界の交渉がそれで幾らかでも順調にいけばということで行政指導をやったわけでございます。  ただしかし、先ほど来申し上げますように、今回OPECの値上げ等がございましたので、その後の全体の価格体系、全体の石油業界のあり方等につきましては、これはよほど慎重に考えなければならぬ。そのためには石油審議会を開いていただきまして、その石油審議会の場において、今後一体どうすべきかということについて慎重に御審議をしていただきたい。いまいろいろ御指摘がございましたすべての点を含めましていろいろ検討していただいておる、こういうことでございます。
  68. 板川正吾

    板川委員 まあ答えになっていませんがね。私は、誘導価格の問題を取り上げる前に、不況カルテルでなぜやらなかったか、その方が公明正大でいいじゃないか、こう言っているのですが、答弁がないのです。まあ時間の関係もありますから、それはそれとしておきましょう。  公取委員長に伺いますが、先ほど通産大臣石油業界の危機的な状況をるる説明されましたが、石油業界の現状からいって、私は不況カルテルによって危機の打開を図ることが妥当だと思っておるのですが、石油業界からもし不況カルテルの申請があった場合に、公取として受け付けをいたしますかどうですか。
  69. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 結論についてはもちろん委員会決定事項でございますから、私がとやかく申しませんが、私どもとしまして受け付けをしないということはないと思います。もちろん不況カルテルは、条文は御存じだと思いますが、最初まず生産数量制限をやるのが第一段階でございまして、いままで価格についてまで不況カルテルが及んだ事例は一件もございません。  ですから、まず石油不況がいかなる点に基づくか、これはだれが見ても需給のアンバランスである。需給のアンバランスがあるから、それがもとになって上げたくても上がらないというのが実態ではないかと思うのです。言ってみれば需要サイドが相当に冷え込んでしまって、ぼつぼつ上昇すべき段階に来ていると思いますけれども、まだ低水準にある。そこへ供給面は恐らく、私はよく知りませんが、幾らか超過ぎみで流れているのじゃないかと思うのです。それが一体どこに起因するのか、これらは私は説明を承らないとわからないのですが、原油の輸入の段階からこの問題が始まっているのではないかと私個人は推察するのです。つまり原油の輸入が備蓄に回ればいいのですけれども、そうでなくてそのまま精製されれば、精製されたナフサのようなものはそのままストレートに石油化学のコンビナートに行ってしまうわけです。ですから、だぶつきぎみの供給になっているということがあるのではないかと思いますが、その原因が那辺にあるのか、どうしてこれだけの長い期間そういう状態が続いているのか、そういう点はよく事情を承った上でないと私は何とも判断できません。不況カルテルというものに該当するような条件が大体そろっているようには思いますが、しかしこれは十分審査した上でないと、結論的なことは申し上げることはできません。
  70. 板川正吾

    板川委員 不況カルテルを認めようという場合には、まず生産数量の調整が第一段階だと思うのです。価格の場合には、生産数量その他の措置をとってもなおかつだめな場合に価格カルテルになるという順序になっていると思います。ただ、石油の場合には現に石油業法によって生産数量を調整しています。それは石油業法によって石油の当年度及び向後五年間における精製会社、輸入会社の計画を出させて、そしてその計画がオーバーした場合あるいは少ない場合には、石油業法に基づいてそれの調整を命ずる、こういう規定になっております。ですから、その意味では一般の場合と違って、数量規制は自然にある程度行われているという実態も一つあります。  それからもう一つは、石油の実態というのは数量調整がなかなか決まらない場合があるのです。それは、船は長期的な契約になっておる、そして一日滞船すれば何百万という滞船料を取られる、だからどうしても船を早く帰してやらなくちゃならない、船を回転させるためにはタンクをあけなければならない、タンクをあけるためには業転でもやみのものでも売らないとタンクはあかないという、なかなか一般の在庫調整というものや、ためておくということができないような実情があるようであります。ですから、いずれにしましてもそういう実態を踏まえて、こういう事情があるならば不況カルテルを受け付けして、公明正大な論議を通じて妥当な措置をとるべきだ、私はこう思うのです。  私は決して石油事業というのを軽視しているわけじゃない。これは日本の産業のいわば食糧でも血液でもあるわけですから、石油安定供給というのは最大の使命です。ですから、石油企業がつぶれていいなどということは考えていない。だけれども救済する措置というのはあくまでも法的な根拠に基づいてやることが望ましいのじゃないか。緊急避難的な場合以外は法律に基づいておやりなさいと言っているわけでありますから、ひとつその点、通産大臣、誤解しないでもらいたいと思うのです。  そこで、ちょっとお伺いします。これはエネルギー庁長官でいいのですが、千八百円のC重油、二千六百円のナフサの値上げ、この値上げ数字をはじき出した計算の基礎というものをひとつ資料で出していただきたいのです。実は資料を要求しておったのだけれども来なかった。だから、これは通産省、まさに密室の中で決めるのかなと思っておったのですが、その数量の資料がございませんから、なぜ千八百円、二千六百円という値上げを決めたのか、ひとつその根拠を資料として提出をお願いしたいのです。  たとえば企業操業率をどの程度に見ておったのか、精製費を幾らぐらいに見ておるのか、標準的企業の規模というのは一体どういう内容を持っているのか、線を引く上でどこを標準的な企業の規模としたのか、あるいはあるべき価格体系を求めてそこに近寄せようとしたと言うのですが、あるべき価格体系とは何か、あるいは収益をどういうふうに見ておられるのか、こういう点は資料の中に当然あると思いますから、委員長、後で資料を国会提出するように取り計らっていただきたいと思います。  これの答弁を願います。
  71. 増田実

    ○増田政府委員 参考価格の作成いたしました根拠その他につきまして、先生のいまおっしゃられました項目に沿いまして、できるだけそれを充足するような資料を提出いたします。
  72. 板川正吾

    板川委員 さっき大臣も答弁されたのですが、企業の赤字がこのくらいある。そして逆ざやと言われておるのですが、実は新聞等によると、逆ざやが千五百円というのもありますし、二千円を超えておるところもあります。この逆ざやというのはキロリットル当たりどのくらいなのか、それから、石油各社は四十八年上期から今日までどの程度の累積赤字を出しておるのか、これの大体の数字はわかりますか。二千六百円と千八百円を出したのですからおわかりと思うのですが、この点、赤字の実態というものを説明していただきたい。
  73. 増田実

    ○増田政府委員 先ほど大臣からも御答弁がありましたが、決算の数字といたしましては、現在の累積赤字は、四十九年度下期までで大体千二百億になっておるわけでございます。しかし、大臣が申されましたように、それ以外に、各種の有価証券の処分とか、あるいは在庫の評価がえとか、いろいろな問題がございます。これは今後の増資問題あるいは社債発行問題その他に関連いたしまして、法の許される範囲内で各種の操作をいたしておるわけでございますが、これを全部各企業からさらけ出すというのは、私はいろいろな企業の立場もあると思いますので、公表いたしました分につきましては全部、有価証券報告書をまとめまして集計したものを私どもの方で用意しております。  それから、企業の赤字がどれくらいになるかということでございますが、OPECの値上げ以前におきまして、これは企業によって違いますが、逆ざやがキロリットル当たり大体千五百円です。ですから、一キロリットル売るごとに千五百円ずつの赤字になっておる、それが非常に累積して、石油企業としては非常な危機的段階にある、こういうことでございます。
  74. 板川正吾

    板川委員 これも新聞によりますとということになって申しわけないのだけれども、五十年四月から九月までの間に逆ざやがキロリットル当たり千五百円だ。平均のことを言っておられるのでしょう。これは恐らく通産省の発表でもあろうと思いますが、それから石油各社三十七社の四十八年上、下の赤字が千二百億円、五十年上期だけで千五十七億円という数字が新聞にあるのです。ところが、有価証券報告書や関係の資料を見ますと、四十九年上、下で赤字が七百九十億になっておりまして、四十八年は実は赤字になっていないという一方の数字もあるわけであります。今度C重油が千八百円、ナフサ二千六百円誘導価格で上がりますと、C重油とナフサ以外の石油というのは全く据え置きになるのですか。これに価格のバランスをとって適当に調整されるだろう、こう見ておられるのですか。この点はどうお考えですか。
  75. 増田実

    ○増田政府委員 今回のナフサとC重油につきましては、先ほど私が申し上げましたOPECの値上げ以前に、キロリットル当たり大体千五百円の逆ざやのうちの非常に大きな部分がこのナフサとC重油によって生じてきておるわけでございますが、しかしそれ以外につきましてもやはり逆ざやになっております。現在若干利益を上げておりますのはガソリンだけでございまして、あとはほとんど全部逆ざやと言っても差し支えないぐらいのことでございます。  それで、いま先生からお尋ねのありましたC重油、ナフサ以外はどうなるかということでございますが、この逆ざや分がそう大きくはございませんので、現在需給が従来に比べましては供給過剰が相当減っております。これは、供給計画を九月に変えまして、一応需要に合う供給に変えておりますので、これによりまして若干ずつ上がっていくということで、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、目安になる参考価格を掲げなくても自然に需給から調整が行われる、こういうふうに考えているわけです。ただ、ここで非常に問題のありますのは、OPECの値上げによる分はこれをそのまま放置してはなかなか上がらない。ここに石油審議会の審議をお願いしている理由がございます。
  76. 板川正吾

    板川委員 C重油が千八百円、ナフサ二千六百円、一番低目なところと逆ざやの大きいところと、こう言っておられるのですが、実はこれは私の調査によると、昭和四十五年の石油製品の価格バランスを一〇〇とします。これは昭和四十五年時代はOPECの台頭もそれほどではなかったし、自由価格であったと思うのです。このときに原油の価格を一〇〇として各製品の価格の指数をつくってみましたらば、ガソリンが三〇四、灯油が二九二、軽油が二六二、A重油が二四五、B重油が一七四、C重油が一五六、ナフサが一四八、こういうバランスになっているのですね。輸入の原油を一〇〇とすると、こういう製品価格でバランスがとれておったと思うんですよ。  その指数をまた一〇〇として最近の価格の比較をとってみますと、これは五十年の六月ですが、原油を一〇〇としてガソリンが二五三、灯油が一三三、軽油が一五五、A重油一四八、B重油一一〇、C重油八九、ナフサ一一七、こういうことになっておって、四十五年を一〇〇としますと、安いと言っておるナフサはこの比率で比較すると七九%なんです。C重油は五八%、B重油は六三%、A重油は六〇%、軽油は五九%、灯油が比較的安く四五%です。ガソリンが八三%。こういうふうに、価格のバランスを見ますとナフサが必ずしも安くなっていないのですね。C重油は五八ですから、これはA重油六〇、B重油六三、軽油五九とそんなに違っていないのですね。だからC重油とナフサが特別逆ざやが多いのだという根拠が実は私はあいまいに感じます。しかし、それは資料をもらった上でまた十分論議をしてみたいと思うのです。  時間がありませんからもう一、二申し上げます。  今度の値上げによって、たとえばC重油が千八百円、ナフサが二千六百円も仮に上がって——このとおりじゃないかもしれませんけれども、仮に上がったとしますと、そのほかの製品もバランスをとって上がるだろう。そうすると平均二千円ぐらいになるのじゃないかという感じがするわけです。これは私の胸算用ですが、誘導価格が成功してこのとおりになったとすれば、平均二千円ぐらい石油製品の価格は上がるのじゃないだろうか。二千円というと、二億七千万キロリットルが輸入される、その五%は精製その他に使われる、そうすると千三百万キロリットルぐらいは精製用に使われるわけですが、その残り、それを大ざっぱにして二億五千万としましても、二億五千万に二千円を掛けますと五千億になるのですね。ですから、さっき言った四十八年上期、下期、五十年の上期だけを計算してみても、新聞の数字が正しいというなら二千三百億の赤字になる、それから見ると倍以上価格が調整される、値上げされるという、これは私の単なる胸算用ですけれども、そういう意味ではこの調整誘導価格というのはやや過大に過ぎやしないか、こう思います。この点についてどう思われますか。
  77. 増田実

    ○増田政府委員 まず、今回のナフサ及びC重油の私どもの方で出しました参考価格というものが達成し、それでほかのものも上がったときに、キロリットル当たり二千円の値上げが全体で行われるのではないか、こういう先生の御指摘でございますが、私どもの方の計算といたしましては、いまのナフサ、C重油のあの価格を需要家側が全額のんだということになりましても、千五百円の先ほど申し上げました逆ざやのうちの約千円前後が埋まるということでございます。それから、それ以外の品目につきましては、若干の品目はじりじり上がっておりますが、五百円の分を埋めるだけにはこれはなかなかいかないと思います。ですから、結論から申し上げますと、ナフサ、C重油もあの価格が到達するのは、よほど需要業界がこれを受け入れるという姿勢を示さない限り達成は困難だと思いますし、また、それ以外の品目につきましても、現在の需給状況では上がらないということから言いまして、二千円はおろか千五百円を達成するのがなかなかむずかしい、こういうふうに私どもは見ております。  それから、先ほど先生から四十五年度と五十年度の比較、これは先生のおっしゃられるとおりの数字になっておりますが、四十五年度と五十年度を比較することについてはいろいろ問題がございます。これは先生からも御指摘ございましたが、従来は原油に対しまして灯油は大体二・九倍、三倍になっておるわけでございます。現在の灯油価格は三万円で計算いたしましても一・四倍でございます。その三万円になっておることについてもいま消費者の方々にいろいろ御迷惑をおかけしておりますが、灯油は本来、かつては原油価格の三倍であったわけです。それで、これに比較いたしましてC重油は、昭和四十五年には原油に対しまして一・五倍であったものが、現在は原油価格以下になっておる、こういう逆ざやは直したい、こういうことでございます。  それからナフサにつきましては、確かに先生御指摘のようにその後相当上がっておるわけですから、ナフサが特に低いのはおかしいじゃないかということは確かに御指摘のとおりでございますが、御存じのように、石油の品質から言いますとガソリンとナフサというものはほとんど同じようなものでございまして、ナフサが現在二万五千円でございます。それからガソリンは五万円でございますが、ナフサが若干の過程を経ますと約五千円から六千円でガソリンに変わるわけでございます。それから言いましても現在の二万五千円ないし二万五千七百円のナフサという価格はガソリンに比較してはるかに安い。ただ、こういう価格が出ておりますのは、これは国際価格とか石油価格、業界の実情とかいろいろなことで出ておりますので、これは単純なる比較では非常にむずかしいのですが、ただ、いま一番の問題になっておりますのは、ナフサがガソリンの方へ流れ込むということで、これを訂正いたしたいということでございます。
  78. 板川正吾

    板川委員 時間がありませんから最後にいたします。  この誘導価格が実施されて、出光石油が住友化学に対して値上げに応じなければ出荷停止をする、こういうペナルティつきの通告を出して、事実やったようでございますが、こういう価格の交渉を、特に石油の場合にはパイプで供給を受けているのですから、よそから買うというわけにいかないですよ、それを出荷停止の手段をもって価格の改定を迫るというのは、これはちょっと行き過ぎじゃないかと思いますが、この誘導価格にもそういう措置を認めていこうとされるのかどうかが一つです。  それから、これは通産大臣、前の通産大臣は、私は石油業法が実はいまの石油の事業に対する法律としては若干時代おくれになる点がある、不十分だ、だから石油業法を改正する意思があるかということを中曾根さんのときに聞いたらば、改正する意思はないなんて、そうあっさり言っておるのです。石油業法は、実はあの附則にありますように、五年後これを見直しする、こういうことになっておるのです。十数年たっておるのに見直しはまだ一回もしていない。ですから、これはもうこの辺で石油業法も見直しをして、そしてたとえば電気事業法なら電気事業法のようにちゃんと価格を決めるなら決める、公明正大に法律に基づいて決められるような制度というのを整備した方がいいんじゃないか。三条の二号や行政指導でやっていくというのは好ましいことじゃない。だから、石油業法の整備をどうされるのかというのを通産大臣に伺いたい。  それと、もう一つ一緒に、エネルギーの政策というのをまあ本会議等でも若干答弁しておりますが、エネルギー政策の構想というのを、これはパンフレットも出ておることですから簡単でいいですけれども、基本的な考え方を承りたい。  もう一つ最後は、石油じゃないのですが、銅の価格が非常に暴落をしておるのです。そして、これはいずれ、国際商品でありますから、そのうちまた暴騰する機会がある。この銅の値段はしょっちゅう暴落したり暴騰したり、三年間ぐらいの周期で繰り返してきているわけですが、安いうちに備蓄をしておくということも将来必要ではないかと私は思います。ことしは財政投融資で備蓄の費用を五百億、利子補給として五億円を見込んでおるというのでありますが、この重要な工業製品の資源である銅の備蓄政策というものをぜひひとつ強力に取り組んで進めてもらいたい、こう思いますが、この数点について御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  79. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず第一番に、ナフサ等今回参考価格を設定いたしました業種についての価格の交渉をする場合に、出荷停止等のそういう方法によらないで、私は極力円満な話し合いによって解決してもらいたい。出荷停止というふうなことは、これはもう避けていかなければならぬ、こういうふうに思います。  それから、石油業法改正の問題でありますが、いま通産省では議題になっておりませんが、せっかくの御指摘でございますから、なお石油業法制定当時のいきさつ、それ以降十数年間の事情、また現時点における問題点、こういう点をよく検討いたしまして、改正問題をどう取り扱うかを再検討してみたいと思います。  それから、内閣に総合エネルギー対策閣僚会議というものをつくりまして、この春以降精力的にずっと作業を進めてまいりました。これまでに七回会議を開いたわけでございますが、だんだんと大詰めに参りまして、あと二回ばかり開きますと大体結論が出ると思いますが、その時期は十二月の中旬まで、こういうふうに想定をいたしております。方向といたしましては、エネルギーの長期計画、そしてその中においても非常に重要な位置を石油が占めておりますので、現在石油が全エネルギーにおいて七七%ぐらいなシェアでございますが、これを十年計画で六三%まで持っていきたいということが一つの大きな柱になっております。それから同時に、輸入先をできるだけ分散するということ、これも一つの大きな柱になっておりますが、その他石炭、原子力、電力、こういうものを含めまして総合的な需給の見通し、それから資金計画、すべてを含めまして結論を出したい、かように考えておるわけでございます。  また、銅の問題につきましては、銅の価格はつい先般の高値当時と比べますとほぼ四割近く暴落いたしておりまして、大変な混乱状態になっておりますが、銅が産業界において占めます非常に大きな役割り、こういうことを考慮いたしますと、さらにまた輸入先等に非常に迷惑をかけておりますので、そういうこと等を考慮いたしますと、どうしても備蓄が必要である。来年から、銅に限らず、非鉄金属を中心とする備蓄政策を石油の備蓄と同じように進めていきたい、こういうことでいま具体的に予算折衝をしておるところでございます。
  80. 板川正吾

    板川委員 以上で終わります。
  81. 山村新治郎

    山村委員長 午後三時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時三十九分休憩      ————◇—————     午後三時三十二分開議
  82. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神崎敏雄君。
  83. 神崎敏雄

    神崎委員 私は、いま、中小企業問題、そして日本経済のこれからの方向にとっても重大な問題となっている大企業中小企業分野への進出問題について質問をいたしたいと思います。  中小企業庁は、最近、大企業がどの程度進出しているかという調査を行っております。その結果を中小企業白書でも明らかにしておりますが、約三割の大企業がここ三年の間に新しい分野などに進出しているということです。そして、中小業者にとっては、不況と大企業の進出の二重の苦しみとなっているのであります。  大企業の相次ぐ新分野進出の動きは、資源エネルギー危機を初め、全般的な資本主義経済の危機が新しい段階を迎えたという経済環境のもとで、大企業が引き続き高利潤を追求し、その支配力を維持、強化しようとする新たな戦略として、国内市場の無理やりの拡大、中小企業分野への進出を一層強めてきているものと思います。したがって、今後さらにこうした傾向は強まると私は思うのです。先般も質問がありましたように、中小企業の経営を圧迫する大企業の無制限的な進出に対して、有効な規制を求める多くの中小業者の要求も日々高まっております。そして、有効な規制とは一体何か。政府は行政指導で処理していくと言い、中小業者は、行政指導では効果がない、法律を決めて規制してほしい、こういう要求をしております。立法か、行政指導か、ここが争点になっているわけであります。  そこで、まず伺いますが、ことし二月、衆議院予算委員会の分科会において、河本通産大臣はわが党の金子議員の質問に対して、「大企業中小企業の分野にみだりに入り込んできて中小企業の仕事を妨害する、また分野を荒らしていく、こういうことは望ましくない」こう答弁されておりますが、その考えはいまも変わっておりませんか、まずその点をお尋ねいたします。
  84. 河本敏夫

    河本国務大臣 考えは変わっておりません。
  85. 神崎敏雄

    神崎委員 変わっておられませんということですから、続いて尋ねていきますが、望ましいことではないのですから、そういう事態を未然に防止することが重要であります。この点は異論がないはずです。大企業がみだりに進出するようなことを未然に防止するために、今後どう対策を強化されるのか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  86. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 大企業中小企業の分野調整につきましての基本的な調整の考え方といたしましては、紛争当事者の話し合いを促進するということを基本といたしまして、現行中小企業団体法の適切な運用と行政指導の一層の強化という形によりまして、この分野問題につきましてのトラブルをなるべく未然に解決をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  87. 神崎敏雄

    神崎委員 要するに、長官、従来やってきた方向が正しいのだ、だからその方向を強化すればよい、強化の中身は人をふやすことだ、こういうふうに理解してよろしいですか。
  88. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 具体的な方策といたしましては、一つは紛争の実態を常時把握をいたしたい、かように考えておりまして、そのための実情調査をさらに今年度、来年度と引き続き続けたいと考えております。  もう一つは、商工会議所を活用するということを考えております。情報の収集体制を整備する方策といたしまして、明年度から全国の商工会議所に通産省から分野調整の指導調査員というものを委嘱いたしまして、この方々にそういった中小企業と大企業の間の分野をめぐります紛争につきまして直ちに情報を集めて通産局なり中小企業庁なりそういった関係の向きに御報告をいただく。それからあと、役所等が行政指導を行うにつきまして地元の意向なりこれの影響等を十分に配慮しますために、紛争につきまして商工会議所に実情調査を委託したいと考えておりまして、その関係の調査委託費を予算として明年度要求をいたしております。  また、各通商産業局に一名ずつ中小企業調停専門官を設置いたしまして、これが機動的に、話し合いが円滑にいかない等の場合のあっせん、調停を行うようにいたしたい。また、各都道府県に中小企業調停審議会というものを設けていただきまして、地方的な問題につきましての紛争処理につきましての窓口となっていただく。そのほか、関係各省庁の行政機関、府県との連携を強化しまして、連絡会議というものを頻繁に開いてまいりたいというふうに考えております。
  89. 神崎敏雄

    神崎委員 その進出大企業を指導する人はふえるのですか。紛争受付の窓口や、それから紛争処理の事後点検をする人、これはいま長官が言われたように中央に二人、それから八つの通産局に一人ずつ、沖繩に一人、こういうふうに置くことになっておるのですね。つまり、分野調停専門官は通産省所管以外の進出大企業を指導するのではなくて、情報などを受けてそれを関係省庁に伝達する。そして調停、あっせんなどが成立した後どうなったかを点検する。窓口と事後点検の二つが任務なのですね。それでは全く話にならないのです。これまでと一つも変わらない。それでどうして——大臣に先ほど、あるいは予算委員会で答弁されたことの再確認を冒頭にとったのはそこなんです、こういう現在の望ましくない事態をこのような対策で防止し得る、こういうふうに認識されておるのかどうか。
  90. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 各通産局並びに中小企業庁の本庁に置くことに予定をいたしております中小企業調停専門官は、商工会議所でございますとか、あるいは地方自治体等と緊密な連携を保ちまして、分野問題に関係します情報を迅速に収集いたしまして、その具体的な事例に即しまして、通産局限りで調停ができるものにつきましては調停を行いますし、それから他省の所管に属する業種につきましては、所管省へ直ちに連絡をいたしまして、そちらの方に適切な処理方をお願いするというふうなことによりまして、通産局に置きます専門官並びに関係各省庁の密接な連携のもとに具体的な調停等に当たってまいりたいと考えるわけでございます。
  91. 神崎敏雄

    神崎委員 久しぶりの委員会で、その間しかも未曾有の中小企業が圧迫され、困っている中で当委員会が開かれているのでございまして、ずいぶんこの間に当局にお尋ねしたいこともたまっております。ところが時間の制約がありますので、こちらの方で問題を並べまして、要約してこれからその実態を申し上げますので、答弁漏れのないように、ひとつ大臣や長官にはよく聞いてもらって、何遍も反論を繰り返すようなことにならないようにお願いいたしたいと思うわけです。  そこで、行政指導ではだめだということを午前中も言われておりますが、私もそうなんです、行政指導ではだめだと言っておるのに、行政指導の専門官さえふやしていないのですね。大企業を指導する体制が強化されたのでもない。全く欺瞞としか言いようがないと思うのです。  そもそも、大企業の進出によって中小企業の経営が根本から脅かされているというこの問題は、昭和三十年代の初めからあるのです。その時分から問題なんです。そして、政府の行政指導では効果がなかったということは、過去二十年の歴史ですでに明白になっておるのです。  たとえば、昭和四十年に旭硝子とアメリカのコーニング社の合弁会社、すなわち先ほど問題になりました岩城硝子、それの理化医ガラスへの進出の問題があります。岩城硝子の側から通産省に念書を入れて、中小業者と協調していく、混乱を起こさぬと約束したのです。ところが、四十四年、理化医ガラス部門に進出した。そして四十五年、TCMという一台十億円すると言われる自動機械を発注し、中小業者の抗議を無視して、ついにことしの五月から稼働させているのであります。この機械の生産能力は、製品数にいたしますと日産三万個と言われております。それは既存業界全体の生産量とほぼ同じなのです。もし一〇〇%稼働率になれば完全につぶされてしまうと、中小業者はこの機械の撤去を要求し続けているわけです。これは中小業者にとっては死活問題なのです。  十年前の、中小業者を初め既存の業界と協調を図っていく、混乱を起こさないという念書は、ただの紙切れだったというわけなんです。岩城硝子はことしの七月に二回目の念書を通産省に入れております。十年前に通産省は、念書をとったから大丈夫だと言っておられた。ところがまた改めて七月に二回目の念書を入れて、依然としてやっている、全く信頼できないと業者は語っております。さらに、業者の方から伺った話によりますと、岩城硝子社長は、約束を無視して中小業者に混乱と脅威を与えていることを反省しないばかりか、何と言っているかといえば、タイミングが悪かったかなと、こう言っているのです。行政指導なんか全くの無力だ、このように中小業者は語っております。  それに、この業界ではいまから申しますような苦しみをいま味わっておるのでありますが、全国理化医ガラス工業会というこの業界の組合の中の十五から十六社は、かつて薬のアンプルガラスをつくっていた。ところが昭和三十五年ごろ日本電気硝子がこれに進出してきた。そこで、細工管をつくる部門へ苦労して転換をしたのであります。ところが四十五年、いま言っておる岩城硝子が細工管に進出してきた。そして昨年中にはほとんどつぶされてしまって、いまでは一社が細々と細工管をやっているというのが現実です。そして細工管をやっていた業者が今度は水面計、魔法びんや湯沸かし器に使うものですね、これにまた転換をした。ところが、またもやこれを追っかけてきて、日本電気硝子が水面計をつくり始めた、こういうことなんです。こうした体験を通じて、いま中小業者は、もう逃げるだけではだめだと、大企業の規制を求める運動に立ち上がっているわけであります。  また、大日本印刷の一〇〇%子会社のQプリントの軽印刷への進出の場合もそうであります。四十九年三月十五日、通産省生活産業局長の名によってQプリント社長への要望書を出した。その中で、Qプリントのフランチャイジーとなる者は構造改善事業を実施中の組合員に限るものとして、アウトサイダーの場合は関係三団体と協議の上、通産省の了解を得るものという点がこれには明記されておる。ところが、翌日、つまり四十九年三月十六日付の文書で、Qプリント社長、大日本印刷社長は、通産省の要望を遵守することを確約しますと回答した。ところが、その後この約束を無視して、Qプリントは帯広、千葉に進出をした。日本軽印刷工業会などの運動で帯広店は一時閉鎖をされたが、中小軽印刷業者は、行政指導の限界は全く明白になったと語っております。  次に家具業界の場合を挙げます。静岡県は、わが国木製家具生産高の約一割を占めております。近年この業界への大企業の進出はきわめて著しく、二十社ともあるいは五十社とも言われております。静岡では毎年六月に資金を出し合って家具見本市を開いて、全国から顧客を招くという催しをやっているのであります。約二百数十社が共同出品をして見本市をやっている。ところが、昨年から大塚製薬系の大塚家具株式会社がこれと同じ日に単独見本市を開いた。しかも駅のタクシーの運転手さんに手を回して、顧客を連れてきた者には五百円のチップを渡すという悪徳商法をやっている。そこで抗議をしてもやめず、ことしはそのチップが千円になったという。しかもことしの場合、通産省が現地業者とよく協調してやっていくようにと指導し、大塚家具もそうすると約束して、その約束した数日後こういうことがやられておるのであります。  さらに、豆腐の場合はどうかということであります。業者の運動、農林省の指導もあってヤクルトが撤退を表明し、いま森永との話し合いの詰めが行われているというのが現状です。ヤクルトの撤退は行政指導で効果があった例だと政府当局は自讃されるでしょうが、実際はそうじゃなしに、ヤクルトの場合は採算とか向こう側の都合によって一応これをとめたというのが中身なのです。すると今度は、何と奈良県の天理市の三笠コカ・コーラが豆腐に進出するというではありませんか。一方が抑えたら一方でちゃんとこういう形で出てくる。  いま私が挙げた例、これは一つ一つをやろうと思っていたのですが、時間の関係で一挙に言うのですから、よく私が納得するような答弁をいただきたいのですが、当局の言い分や弁解もあるでしょうけれども、しかし、いま例に挙げた理化医ガラス、軽印刷、家具、豆腐、いずれの場合の例でも明らかなように、行政指導というのは結局大企業に要望し、同意を求めるということである。そして、大企業は、仮に政府の要望に従い、約束をしても、約束を踏みにじることがあるということです。結局のところ行政指導とは大企業が約束を守ることを期待するしかない、こういうことなんです。行政指導の限界は明白ではありませんか。行政指導で大企業の横暴な進出を防ぎ得た、または防ぎ得るとどうして言えるのだろう、いままでの実例の中で。この点について、いま挙げました点に大臣と長官からお答えをいただきたいと思います。
  92. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 いま先生から幾つかの事例につきまして御指摘がございましたが、まず岩城硝子の件でございますけれども、この件につきましては、現在生活産業局の方で調停と申しますか、中小企業の従来からやっておられます業界側と岩城硝子との間の話し合いにつきましてあっせん中でございます。で、岩城硝子の方も現在生産状況等につきまして実情を逐一生活産業局の方に報告をする、こういうことになっております。現在あります自動成形機は確かに相当大きな能力を持っておりますけれども、これは多目的の機械でございまして、理化医ガラスだけをつくっておるわけではございません。岩城硝子側にもこの中小企業業界が成り立つように協議する用意はあるようでございまして、むしろ業界側におきましても、従来のようないわゆる手吹きによります古いやり方による理化医ガラスの製造ではなくて、新しい近代化された製造方式というものをやはり導入される必要があるのではないかというふうに考えられるわけでございまして、そういう意味合いで私ども現在商工組合の設立と、それから共同設備の導入といったふうな方向によります中小企業業界の近代化を進めるべく指導中でございまして、その場合にその近代化設備が稼働するに必要なだけ岩城硝子の方は生産を遠慮してもらう、こういうふうな方向で解決を図る必要があるのではないか、かように考えておる次第でございまして、現在話し合いを進めてもらっておるところでございます。  それから軽印刷の問題でございますが、これにつきましては、前に行政指導で大日本印刷側と中小企業の軽印刷業界との間に了解が成り立ちまして、Qプリントとしては直営店は二店しか出さない、これも市場調査という意味でのパイロット的な店とする、それ以外の店の展開につきましては、中小企業の方にフランチャイジーとなってもらいまして、その方々にQプリントが開発した技術を出しまして、このいわゆるクイックプリントというものを需要者の要望にこたえていこう、それからその場合のフランチャイジーとする中小企業は現在構造改善を実施しておる組合員に限る、こういうふうな了解であったわけでございます。  この了解に基づきまして、帯広と千葉に、Qプリントの直営店ではなくて、中小企業者をフランチャイジーとする店が出されたわけでございますけれども、帯広につきましては、従来の組合員としてやっておりました会社が別会社の形をとりましたために、了解とやや食い違っておるというようなことで、一時閉店をいたしましたが、その後話がつきまして、また店を出しております。千葉店の方も中小企業の組合員である方をフランチャイジーといたしておりまして、そういう意味におきましてはその了解事項が守られまして、現在フランチャイジーという形で、いわゆる大企業がみずから店を出す形ではございませんで、中小企業に技術を与えまして、その中小企業の方がクイックプリントの店を出していく、こういう形で解決を見ておるわけでございます。  それから家具の問題でございますが、大塚家具は従来から家具を製造しておった業者でございます。たまたまその販売の方法につきまして、静岡で、静岡の家具業界が見本市を開きますときに、同じような期間に横で家具の大売り出しをやったというようなことで、販売の方法につきまして中小企業側から非常に苦情がございましたので、この点につきましてはよく大塚家具側と話し合いをしてみたいと考えております。  豆腐の件につきましては、ヤクルトは一応撤退を表明いたしましたが、森永は現在まだ生産中でございますので、この点につきましては、農林省におきまして、中小豆腐業界と森永との間で話し合いをしてもらうように現在あっせんを継続中でございます。  いまお話しの中で、若干あっせんが継続中のものがございますが、そのほかのケースでは大半のケースが行政指導によりまして解決を見ておる例が多いように私どもは考えるわけでございます。したがいまして、行政指導が無力であるというふうには必ずしも私ども考えておりません。むしろ実情に合った効果的な解決が行政指導によって図られるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  調停の専門官が通産局一名では少ないではないか、また他省関係の分についてはそれでは手が回らないのではないか、こういう御指摘でございましたけれども、この専門官はそれを専門にやるわけでございますが、この専門官だけがこういった関係を担当するわけではございませんで、たとえば、ただいま申し上げましたように、ガラスあるいは印刷といったような場合には、所管の生活産業局の担当官がそれぞれ担当して調停を行っておるわけでございまして、省の組織を挙げまして、また関係各省にも十分連携をとりまして、この調停専門官のほかにも各省の担当官を煩わしまして調停を実施してまいりたい、かように考えております。
  93. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま長官が答弁したとおりでございまして、私も大部分のものは行政指導、話し合いで解決しておる、こう思います。  それから、特に中小企業の方にお願いしたいのは、最近は技術革新が非常に急速に進んでおるということでございます。そこで、大きな新しい機械等を入れる場合に、中小企業に資金がない、こういう場合には、協業化によりまして高度化資金を中小企業関係の資金からどんどん出していく、こういうことで、中小企業の方もやはりこの時代の流れ、技術革新というものを十分認識してもらって、やはり負けないようにやってもらう。そのためのバックアップは政府の方でもしていく、こういう考え方でございますので、やはり消費者の立場に立っても物事を考えていただく、こういうことでなければならぬ、こう思います。
  94. 神崎敏雄

    神崎委員 近代化とか技術改善の問題についても伺う用意をしておるのですが、いま挙げました、時間の都合で非常にまとめて言うたのですが、最終的に最前も言うた、たとえば岩城硝子の社長が念書を入れたり、通産当局と行政指導の中でいろいろな約束をしながら、結局は反省しないで、これはタイミングが悪かったとか、そういうような形でのうのうとやっているということなんですね。片一方は、たまたま前々から大塚というのは家具をやっておった。それはこちらも知っていますよ。しかしながら、たまたま中小企業がやっているときに、タクシーの運転手さんにチップをやってお客さんを集めてこっちへ連れてくる、こういうやり方を御存じなのか。そういうようなことから見ても、非常に行政指導とか——だからぼくもいろいろと御弁解や言いわけをされるだろうがということを前提にして言うているのですが、おっしゃっていることが具体的に下へ行っておったら中小企業はこんなに困ったりつぶれたり、われわれのところに訴えに来たりしないのです。  行政指導イコール何か。中小企業をつぶして大企業だけがまかり通る、そういうような結果としてしか残っておらないから、中小業者の人たちは、行政指導はだめなんだ、こういう強い要求になって、運動になってきているということなんですね。いまこういうようなことでおるという現状を挙げただけでも、お豆腐屋さんなどが、それこそ親代々からやっておるお豆腐屋さんが、こういう大企業にやられるようなことになれば、すべてが一体どういう形になっていくだろうか。そういうことをいわゆる中小企業の業者のサイドに立って行政指導をされる、それは話し合いの中に入ったり指導されるのでしょうが、結局、結論は中小業者が助かる行政指導がなされるのか。しんぼうして、おまえは技術改善ができてないとかあるいは近代化ができてないとかいうところであきらめさすというようなことになるというのがいままでの実態であるということなんです。  きょうまで、大企業中小企業分野への進出の問題についての国会論議の中でも、いま大臣が言われたように、いわゆる技術革新という問題もあります。そこで、それなら技術革新についていまここで申してみたいと思うのですが、大企業の進出で技術革新が進むどころか、それまでにどんどんつぶれていくのです。大企業の進出に対応して経営体質の強化あるいは近代化を図れと言われますけれども、たとえばコカコーラの進出で、近代化促進法の指定業種にされてもラムネ業者などはだめだったのです。そもそも近代化や技術改善の助成もきわめて不十分なんです。  たとえば昭和四十七年度の中小企業白書では中小小売商業の問題に触れていますが、その中で、コンビニエンスストアは家族経営を中心とする中小小売店、特に小規模小売店に向かっている、こう言っておりますけれども、その後きょうまで中小小売店のコンビニ化を促進するような格別の行政指導は何もやってない。一方、いわゆるイトーヨーカ堂、ダイエー、西友ストア、こういう大手スーパーがコンビニエンスストア方式の進出を強化しております。そしてその中で小売業界は大きな脅威を受けている。中小小売店のコンビニ化の促進の格別なる処置をとられたのか。  また、中小企業庁の技術課は中小企業者の技術開発促進などを担当しておられますけれども、中小業者への技術改善費の補助金、この実績はどうなっているのでしょうか。四十九年と五十年、申請件数と採択件数は一体どうなっているか。技術改善をやると言うけれども、ここに表がありますが、きわめて業者の言い分は反映されていない。業者の要求の半分とか三分の一しかこれにこたえておらない。それではいま大臣なり長官がおっしゃっていることにはならない。たとえば五十年度のこのための予算は五億七千万。五十一年度要求も八億五千万にすぎない。ところが、大企業のための技術開発費の予算は何と三百四十億円以上になっております。どうしてこういうような状態から中小企業の技術革新を強調されるのか。われわれは行政指導はうまくやっているけれども、中小業者というものは技術的にも非常にまずいんだし、すべての点で大きなものに負けていくのだ、できるだけ負けないように行政指導はしているけれども、結局はそうなんだ、だから、もっと技術も改善し、経営方針も合理化し、いろいろやるべきだと言って、基本的な大問題が解決されないでそういうところだけを常に強調されて責任逃れをされている。これが今日の行政指導の中身だ、あり方だ、こういうように思うのですが、これについての御意見があったら出してください。
  95. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 中小商業の振興対策といたしましては、一つは、寄り合い百貨店を形成するという場合、あるいはショッピングセンターを中小企業者がみずから寄りましてつくるという場合の資金につきまして、二・七%という低利の資金を融資いたしております。また、商店街のカラー舗装あるいはアーケードをつくりましたり共同駐車場をつくるというようなものの助成もいたしておるわけでございます。また、ボランタリーチェ−ンの組織化を行うという形によりまして、大量仕入れによります仕入れコストの節約といったようなことを進めておるわけでございます。コンビニエンスストアにつきましては、それの開店を希望する者につきましては政府系の金融機関から融資をする、こういう形で助成をいたしております。  それから技術開発の関係でございますが、先生御指摘のように、中小企業の研究のための補助金は今年度五億七千四百万円でございまして、研究の申請に対する採択率はたしか二、三割であったかと存じますが、これは研究開発でございますので、その申請をされました研究の内容によりまして、あるレベル以上のものでございませんと採択できない、こういう事情がございまして、すでにもう開発されておる研究でございますとか、あるいは非常に技術の程度が低いもの、こういうものは一応審査から外しておりますので、そういう関係で申請に対する採択率は約四分の一になっておりますが、研究補助金自体は年々増額を図っておるところでございます。  また、中小企業の技術の指導をいたします官公立の、いわゆる県立の試験所等につきましても、中小企業の技術指導関係の補助金を交付いたしております。また、国立の試験所にも中小企業向きの仕事の開発、技術開発のための資金を交付いたしております。さらに、こういった研究開発が実を結びまして企業化をしようという場合には、中小企業金融公庫に国産新技術の企業化のための資金といたしまして、低利による資金を今年度約四十五億円枠を計上いたしておるわけでございます。  大企業向けの研究補助金に比べて中小企業向けが非常に少ないではないか、こういう御指摘でございますけれども、大企業向けと申しますよりも、電子計算機でございますとか航空機でございますとか、そういった非常に先端技術をなしますものにつきましては大がかりな研究開発が必要でございまして、そういった先端技術の開発が全体としての日本の技術水準を引き上げ、日本経済の拡大がまた回りめぐって中小企業振興に資する、こういうことでございますので、あながち大企業向けの技術補助金、中小企業向けの技術補助金という形で研究補助金について見ることは的を射ていないのではないかという気がいたす次第でございます。     〔委員長退席、塩川委員長代理着席〕
  96. 神崎敏雄

    神崎委員 時間の関係で一々反論しませんが、実際問題としては、これからも挙げていきますから、よく聞いていただいたらわかると思うのです。  そこで、では従来行ってこられたような行政指導によって効果があったと言うなら、大企業の進出によってその業種、業界で中小企業の大部分は淘汰された、あるいはシェアを大きく奪われてしまったというような事例はないとここで言い切れますか。
  97. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 この分野調整のための行政指導といいます場合にも、業種、業態と申しますか、商品によりましていろいろ問題もあろうかと存ずるわけでございまして、たとえば趣味的な商品、あるいは消費者がその好みによりまして選択をするような嗜好品的なものというものになりますと、消費者利益を優先するかあるいは中小企業の保護を考えるかという点はなかなかむずかしい問題がございます。  全く同一の商品でございますならば、大企業の進出を抑制して中小企業の対応する時間的余裕を持つということも一つの方向でございますけれども、嗜好品の場合には、特に食品等の場合味がそれぞれ違うとかいったような事情がございます場合に、その商品を選択するのは消費者でございますので、消費者の好みなり希望が強いにかかわらず、その供給を抑えてそれと違う性質の中小企業商品を保護するというようなことはなかなかむずかしい面もあろうかと存じます。そういう意味合いにおきまして、消費者利益の保護と中小企業の保護というものの競合をどういうふうに解決していくかといったような問題が、商品によりましてはあるのではないかと考えるわけでございます。
  98. 神崎敏雄

    神崎委員 さらに、いま消費者の問題が出たのでありますが、消費者の問題はまた後で言うことにして、そうしたら私は事例を挙げて伺いますが、清涼飲料業界、ラムネとコーラの場合はどうでしょうか、こういうことなんですが、清涼飲料業界はラムネを中心に中小企業の分野だと言われていたのです。ところが、ビール会社などの大手が参入し、アメリカからコカコーラが日本に上陸してきた。中小企業を主としていた全国団体、いわゆる全国清涼飲料工業会を中心として、外資系飲料の阻止運動が行われた。ところが、政府は外資上陸を許可した。昭和三十二年六月二十五日、アメリカのザ・コカ・コーラ・エクスポートの一〇〇%子会社、日本飲料工業株式会社が設立された。そして翌年の三十三年三月に日本コカ・コーラ株式会社に商号変更され、現在に至っておる。  中小企業庁長官に重ねてお聞きしますが、コカコーラが日本に設立される際、中小企業庁はどういう態度をとってこられたのか、黙ってこれを見ておったのか、設立に賛成をされたのか、反対をされたのか、三つのうちどれですか。
  99. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 非常に古いケースでございまして、私も当時の事情をつまびらかに承知をいたしておりませんけれども、当時所管でございました農林省の方に、ラムネ等の清涼飲料水業界からコカコーラの日本進出につきまして反対がございまして、適切な行政指導を農林省の方にお願いを中小企業庁としてはいたしたのではないかと存じます。
  100. 神崎敏雄

    神崎委員 先ほど消費者の問題に触れられたのですが、長官、日本人がコーラを飲みたいと要求したからアメリカからコカコーラが来たのじゃないんですよ。反対に、いまはラムネが飲みたいと言っても買えなくなっているくらいなんですね。そしてコカコーラが日本じゅうにあふれておる。これは消費者サイドから見ても、消費者が要求するとか消費者を守るとかいうことにはならぬし、消費者の利益にならない、こういうことなんですね。  そこで、いまも古いことだと言われて、農林省との関連があるので、農林省は、このコカコーラの場合は、これも古いことでわからぬと言われるかもしれませんが、そないに古いことでもないわけですね、三十三年ですから。このとき農林省はどういう指導をしたのか、あるいは国内中小企業への助成策も、これはそのとき一緒におとりになったのか、どっちですか。
  101. 吉田鉄太郎

    ○吉田説明員 三十二年のコカコーラの進出に当たりましては、農林省といたしましてはまず四万ドルの外貨割当をいたしまして、しかも輸入条件も厳しく規制して厳重に取り締まるということにいたしたわけでございます。  なお、その後三十五年に自動割当に移行する際に、コーラ業界とそれから国内の関係業界との協調を図るために、次に述べますような指導を行っております。一つは、コーラの販売価格を不当に値下げをしないこと、二番目には、過大な宣伝広告を行わないこと、それから三番目には、原料等の入手に当たっては不当な取引を行わないこと、四番目には、販売に当たっては関係業界と十分な協調を保つこと、というようなことで指導すると同時に、一方、中小企業に対しましては、助成措置といたしまして、まず税制の方では租税特別措置法に基づく中小企業の合理化機械の割り増し償却、これは三十六年に指定いたしておりまして、四十七年まででございます。それからなお中小企業近代化資金助成法の対象業種に、これは四十年に指定いたしまして二百八十九件、五億五千万の金が出ております。なおそれ以外に中小企業近代化促進法の指定業種にいたしまして、これは四十一年に低利貸し付け十七件、一億九千万、このようなことで措置をいたしております。
  102. 神崎敏雄

    神崎委員 それをやられて、成果はありましたか。
  103. 吉田鉄太郎

    ○吉田説明員 この効果につきましては、まず外資系を含む大企業中小企業との間の協調の方向が確認されまして、その結果として、四十七年までに、従来中小企業団体であった社団法人の全国清涼飲料工業会に大企業が全部加盟いたしております。そして、現在では互いの立場を尊重し合いながら協調いたしております。また、いま申し上げました金融、税制等の対策等もありまして、中小企業の近代化、合理化については図られたもの、それなりの効果があったものとわれわれは考えております。
  104. 神崎敏雄

    神崎委員 では、昭和四十二年と四十九年の炭酸飲料の生産量、そのシェアは、大手と中小企業でどうなっておるか御存じですか。
  105. 吉田鉄太郎

    ○吉田説明員 四十二年におきましては、炭酸飲料が全部で八十五万七千キロリッターでございます。その中で中小が二十二万キロリッターで、シェアといたしましては二五・七でございます。四十九年におきましては全体が二百九十三万五千キロリッターで、そのうち中小が二十二万九千キロリッター、すなわちシェアといたしましては七・八でございます。  先ほど先生の方からいろいろ御指摘ございましたが、ラムネにつきましては全部中小がやっております。現在、四十九年におきましてもラムネにつきましては中小でございます。それから、いわゆる炭酸の中でのコーラ系につきましては、いわゆる大企業がほとんどでございます。それから、フレーバー系につきましては八〇と二〇ぐらいの比率になっております。それからサイダーにつきましては中小の方が二五で、大企業は七五。それから炭酸水につきましては四二と五八。こういうようなことで、炭酸飲料の中の、五つほど品目がございますが、中小の方はラムネ並びにフレーバー入りの方が重点になっております。
  106. 神崎敏雄

    神崎委員 少し数字的に違いがありますので、この点もう一回言いますが、清涼飲料業界の例で明らかにしているのですが、結論から言うと、政府は具体的には大企業の規制はやらなかったのですよ。しかし、やったことは二つあるのですね。最前おっしゃった、誇大広告はやってはいけません、不公正な取引はしないようにせよ、こういう指導はやったのですね。これがいわゆる自民党政府がよく言う公正な自由競争をさせたということ、アメリカの大会社の資本の入った大企業とわが国の中小企業と同じ土俵で、同じルールで競争させたということですよ。これがやったことの一つなんです。いま一つは、近代化促進業種に指定して、金融、税制上の措置で、いわゆる政府流の上からの近代化、これを促進したということです。先ほど答弁されたとおり。  さて、結果はどうなったでしょうか。いま農林省当局からお答えがあったように、中小企業のシェアは、四十二年の二五・七%から、昨年、四十九年はついに七・八%に減った。ここまで落ち込んだ。ところが、一方大企業のシェアはどうなったか。九二−二%に達している。  清涼飲料工業会の資料によりますと、そもそも昭和三十年にはコーラの生産量はわずかに千六百二十キロリットルだった。ところが、四十九年には九十四万キロリットルになった。実に五百八十倍。逆にラムネの生産量は、近代化業種指定の助成にもかかわらず、この十年間平均二万五千キロリットル、こういうラインでずっと横ばいで、炭酸飲料全体を含めてもいま二十二万キロリットル、このラインで低迷しているのですね。そうすると成長力はゼロだ。工業会加盟の企業数で見てもわかるのです。中小企業は、三十年当時の二千九百三十二社が四十九年には千二百七十四社と、半分以下になってしまっている。大企業は、三十年当時の六社が四十九年には六十社に、何と十倍になっている。しかも重大なことは、この六十社のうちコカコーラとペプシコーラが三十三社を占めている。  そこで、経済企画庁及び公正取引委員会にお聞きいたしますが、経企庁、公取の立場から考えて、こうした少数の大企業によってそれぞれの業界の寡占支配が進む状態をどうお考えになりますか、率直に見解を伺いたい。わが国の経済の健全な発展という点から見ても、こういう事態が広く進行することを好ましいと考えておられるかどうか、この点、両当局から御答弁願いたい。
  107. 出井弘一

    ○出井説明員 生産の集中度につきましては、業種別に異なりますし、また、同一業種の中にありましても製品別に異なります。なお、生産集中度の推移につきましても、集中度が高まっているものもございますし、低下するものもある。またさらに、集中度が高まっている業種におきましてもその順次が変わるということでございまして、今後寡占状態が進行するかどうかということにつきましては、その業種なりあるいは業種の市場の特殊性、また経済全体の動向に左右されるわけでございまして、一概には断定できないわけでございます。  本年度の経済白書では、過去の企業の集中度と製品価格の伸縮性について日米比較を行いました。これによりますと、生産集中度にさしたる相違がなくても製品価格の伸縮性は成長率が高いほど大きく、低いほど小さくなるということでございまして、今後減速経済になるということになりますと、企業の価格指向性が高まりまして、製品価格の伸縮性が小さくなるおそれがあるということを白書で指摘しているわけでございます。
  108. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 中小企業と大企業の分野の問題は私の方の直接のかかわり合いとしては大変むずかしいことなんですが、要するに、不公正な取引方法を用いて大企業中小企業を圧迫し、そして事によったら私的独占に該当するとかいうふうな行動がうかがわれる場合には、それによって規制の対象になるし、それから、いまは改正法律案が廃案になっておりますが、いわゆる独占的な地位に立ち至った場合には営業の譲渡を行うというふうな法律案が仮にできますと、これは十分なにらみになると思います。  しかし、たとえば最後にお出しになった清涼飲料のような場合、これは嗜好品なんですね。だから、コカコーラは最初のころは恐らく日本人はあんなものはきらいだと思ったのが、だんだん宣伝に乗って飲んでいるうちにシェアが非常にふえた。最近は、私の方の調べだけでは、コカコーラ的なものはシェアとしてはむしろダウンの傾向にあると思います。むしろ白色透明な清涼飲料が愛飲されたり果汁飲料がふえたりしているというふうな傾向が見られまして、こういうものは多少消費者の流行を追うというような心理も影響するのですか、ちょっとした変化が見られます。  いずれにしても、その寡占の程度が行き過ぎるということは、われわれとして今後最も厳警戒を要すべき問題として、これにいかに対処するか、独禁法をフルに活用しなければいかぬと考えております。
  109. 神崎敏雄

    神崎委員 期せずして公取委員長が法的拘束力の問題に触れられたのですが、私もそのことを後で大臣に聞きたいと思うのですが、昭和四十九年十二月十六日に、三木総理は衆議院の本会議で次のように言明しております。「しかし、今日において自由経済体制ということは、何でも自由放任というようなことが許されるわけではない。やはりルールが要る。弱い者が押しつぶされたり、また何か壁際に押しつけられるような、そういう自由経済というものは、公正な自由競争の原理というものが発揮できるとは思わない。」こういうふうに言われているのですが、この総理の立場と河本通産大臣の立場は違いますか、同じですか、この点だけ聞きたいと思います。
  110. 河本敏夫

    河本国務大臣 私も総理の考え方には同感でございます。
  111. 神崎敏雄

    神崎委員 当然であると思います。  さらに、中小企業庁長官大臣にお伺いしますが、清涼飲料業界のこの実態は、中小企業庁設置法の趣旨に照らしてどうでしょうか、こういう問題です。  中小企業庁設置法の第一条は、こう言っております。第一条、目的、「この法律は、健全な独立の中小企業が、国民経済を健全にし、及び発達させ、経済力の集中を防止し、且つ、企業を営もうとする者に対し、公平な事業活動の機会を確保するものであるのに鑑み、中小企業を育成し、及び発展させ、且つ、その経営を向上させるに足る諸条件を確立することを目的とする。」こう明記されている。ここで明確に、経済力の集中を防止するためにも中小企業を育成し発展させると言っておるのが、この法律ですね。  そこで、昭和二十三年、第二回国会中小企業庁の設置が決められておりますが、当時の議事録を私は読みました。ここにあります。その趣旨説明で、経済の民主化とか大企業の偏重の是正とかをはっきり言っておるのです。清涼飲料業界のこの実態は、私は中小企業庁設置法に反しておると言わざるを得ないのですが、大臣や長官はどういうふうにお考えですか。
  112. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 ただいま先生御指摘ございましたように、中小企業経済の活力を養うもとでございまして、大企業の寡占化に対抗して経済にバイタリティーを与えていくもとであるというふうに私ども考えております。  そのためには、中小企業が活発に活動できるようにその近代化を進めることが必要でございまして、そういった面の施策を進めておるわけでございますけれども、その近代化を進めていく上におきまして、一時的に大企業が非常に急激に大規模な進出をする、それによって中小企業の近代化もできなくなる、こういう状態でございます場合には、所要の調整を行いまして、大企業の進出に待ってもらって、その間に中小企業が近代化を進めるということが必要であろうと存じまして、そういった施策を進めてまいりたいと考えております。  ただ、あくまで前向きに中小企業の力をつけるという方向で近代化を進めることが必要と存ずるわけでございまして、中小企業と大企業の分野を固定的に考えまして、大企業の進出を一切認めないというようなやり方は、結果的に中小企業自体の近代化の意欲をそぐおそれもあるのではないかと考えるわけでございまして、そういう意味で、この分野の調整問題につきましては慎重な配慮が必要であろうと考える次第でございます。  なお、清涼飲料の件につきまして、いまの大企業に対する対抗力という意味での中小企業の意味を御指摘ございましたけれども、このような消費者の好みによりまして選択される商品につきまして、強権的にあるシェアを決めるということはなかなかむずかしい問題がございまして、消費者の賛同を得にくい面もございますので、そういった商品についてはまた別の配慮が必要ではなかろうかと存ずる次第でございます。
  113. 神崎敏雄

    神崎委員 いまの長官の答弁については議論の余地がずいぶんありまして、私の考えていることとは違いますから、時間がございませんのでまたの機会にその論争をしましょう。  先ほども言ったように、国民はコーラを飲みたいからコーラが入ってきたのじゃないんだということで代表していると思うのですが、通産大臣は、大企業中小企業の分野に進出して、仕事の妨害をするとか分野を荒らすということは望ましいことではないと、一貫して言われております。そうして三木総理も、強い者が弱い者を押しつぶしたり、弱い者が壁際に押しつけられたりするようなことは、公正な自由競争とは言えないとおっしゃっておる。こういう望ましくないことは防止しなければいけないと思うのです。  そのためには、政府は行政指導で話し合って解決していくと一貫して言われてきている。ところが、事実はそうなっておらない。行政指導では、結局中小企業がつぶされていっている。最前からずっと挙げているのはそうです。そして大企業経済力集中が進んだ事実がある。もし中小企業庁設置法の目的に沿って忠実に行政を進めるという立場に立つなら、多くの中小業者が要求し、全野党が主張するように、先ほど公取委員長も言われたように、どうしても法律を決めて、法律に基づく大企業の規制を行う、それが必要だということになるのじゃないだろうか。  どういう法律にすれば実態に合うか、それはこれから論議すべきことであると私は思います。いまはまだ法案の具体内容の論議ではないのですから、法案の具体内容を論議する段階の前に、まず法律を決めて、そして中小企業者を適正に守っていく、この点で合意が得られるならば一つの前進だと思うのです。どんな法律であろうと、とにかく大企業の新増設に規制、制限を加えるような法律は絶対だめだ、通産大臣はそういう御意見でしょうか。法律の内容によるのか、それともどんな法律もふさわしくないというふうにお考えになっておるのか、どちらなんですか。
  114. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど来幾つかの例を挙げまして分野調整の問題に論及されたわけでございますが、長官が詳しく御答弁いたしましたように、そのうちの大部分は私は行政指導で解決しておると思います。それからなお紛争中のものも、また調停が進行中のものも若干ありますけれども、これも必ず行政指導で話がつく、こういうふうに考えておるわけでございます。  根本的に中小企業対策を考えてみますのに、日本の特殊な事情から考えまして、中小企業政策というものは産業政策の中でも非常に大事な政策だと私は考えます。政府の方も、それであればこそ、考えられるありとあらゆる対策を立てて中小企業対策を進めておるわけでございますが、ここで通産省として中小企業に特に期待いたしたいことは、戦後の産業界の一つの大きな特徴というものは、技術革新が非常に激しく進んでいくということだと思うのです。それに即応するために、政府の方でも協業化をしてもらって、そして高度化資金というものをどんどん使ってもらう、そういうことがしやすいように、前国会におきましても近代化促進法の改正をしてもらったわけでございますが、大企業でも、ちょっと油断して設備の近代化を怠るとすぐに競争力を失ってしまうわけですし、それから、大企業に限らず、たとえば先進工業国の中でも、国全体がちょっと油断しておるとその国の産業が競争力を失ってしまうという例はたくさんあるわけでございます。     〔塩川委員長代理退席、委員長着席〕  そういうことでございますから、政府の方では中小企業の近代化のために全力を尽くす、金もできるだけ出していくという態勢でございますから、どうかこういう制度を活発に利用していただきまして、そして新しい技術革新におくれないように、やはりそれだけの努力をしていただくということが私は必要だと思います。  現時点におきましては、一定の業種に大企業が出ていってはいかぬということを法律で決めてしまうということは、技術革新というふうな点から考えまして、また国際競争力という点から考えまして、また消費者の立場という点から考えまして、少し行き過ぎではなかろうか、やはり行政指導で解決していった方が産業界全体の進歩発展のためになるであろう、こういうふうに考えておるところでございます。
  115. 神崎敏雄

    神崎委員 法律はまだそういう形ではつくる段階でない、結論的にはこうとれる答弁でございますが、中小企業団体の組織に関する法律と環境衛生業法の中に特殊契約というのがあります。しかし、これは大企業との合意による契約です。これとは違って、大企業等が同意しようがしまいが、その意思にかかわらず新増設に当たっては規制や制限がかかる法律が、大臣、いまもあるわけなんです。それは大規模小売店舗法と小売商業調整特別措置法がそうです。これは届け出制と許可制というような違いがあります。  そこで、次に伺いますが、小売業の中小業者の経営保護のためにこういう法律があるのに、製造業、サービス業の中小業者の経営保護のためには法律を決めるのはよくない、こう言われるのはなぜかというふうに私は思います。これは憲法上とかその他の国の法制度上、製造業、サービス業の中小業者を保護するための法律を決めることは許されない、こういうような特別な理由があるのかどうか。片っ方にはある。いま一般論的に言われたのですが、この点、法制局はどうお考えになりますか。
  116. 別府正夫

    ○別府政府委員 お答えいたします。  ただいまの大規模小売店舗法あるいは小売商業調整特別措置法のような法律が現在あるのに、製造業その他について事業分野調整の法律をつくることが憲法上問題になるかという御趣旨の御質問がございましたが、内閣法制局は、御存じのように法律案を各省庁が政策的に必要だと決定いたしましたものが回りました際に、その具体的な内容に即して判断をするというたてまえをとっておりますので、一般論としていま神崎委員おっしゃったようなことにつきましての、他に法律があるからこれにもできるはずだという点については、その内容が合理的なものであればできるであろうし、合理的な範囲を超えていれば憲法違反になる可能性があるという、一般的な御答弁しかいまの段階ではできないと思います。
  117. 神崎敏雄

    神崎委員 だから、一つの側面が合理的であればできるということであるというふうに理解をしておきます。  そこで、あくまでも政策上の問題なんですが、社会的、経済的弱者等への保護政策として営業の自由に制限を加えることは合理的理由になり得るということは、これは最高裁判例でもすでに明らかなことです。そして現にそういう法律があるわけですね。いわゆる中小小売業保護のためには法律が必要だが、製造、サービス業の中小業者のためには必要でないと言われるその合理的な理由は何なのか、重ねてそういうふうに思うわけです。  たとえば、先ほどから言っている大日本印刷が一般の市場を開設するときは許可が必要という規制がとれる法体系になっているのですね。ところが、大日本印刷が豆腐業に進出するときは規制の法律はない。これがいまの状況なんですが、豆腐業に進出するときには届け出制とか許可制とかの規制の法律があるのはよくないという、その合理的な理由は一体何なのか、この点についてひとつ納得さしてください。
  118. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 大規模小売店舗法の場合には、小売業という非常に限られた業種でございます。小売業の場合には地域的な影響が非常に大きいわけでございますが、そういう意味におきまして、特定の地域におきまして、地方でございますならば千五百平方メートル以上、大都市の場合には三千平方メートル以上という、影響を及ぼす一つの限界を設けまして、この限度以上の大きな面積の小売店舗を設けようとする場合には、その顧客吸引力から考えまして近隣の小売商との間の調整を図る必要があろうということで、大規模小売店舗法が制定をされておるわけでございます。御承知のように、この法律の母法でございます百貨店法は戦前からあった法律でございます。これに対しまして製造業、サービス業となりますと、大変に業種の数もいっぱいに広がってまいるわけでございまして、どの業種につきましてそれを中小企業の分野と判断するかという線引きが、まず第一にきわめて困難であろうかと存じます。また、その規制の内容のいかんによりましては、大変に過保護になり過ぎまして、競争のメリットが出てこない。その結果、先ほど大臣からも申し上げましたように、技術革新の問題でございますとか、消費者利益の確保の問題でございますとか、そういった別の面のマイナスが出てまいりますし、結果的に中小企業自体の近代化の意欲をそぐような場合も考えられるわけでございまして、およそあらゆる形の立法が好ましくないというわけではございませんが、その立法は非常に広範囲にわたるだけに、きわめて慎重にその影響を考慮しつつ内容を吟味する必要があるのではないか。そういったことを考えますと、当面私どもは、従来の団体法等を活用しながらやる行政指導によりましてこの目的は大体達成できるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  119. 神崎敏雄

    神崎委員 冒頭で大臣は、みだりに大企業が進出して中小企業の分野を荒らすことは望ましいことではない、こうおっしゃいましたし、また、三木総理の言葉も確認された。だから、好ましくないことが現実として横行しておったら、これはやはりどうしても未然に防止すべきだと思うのです。  そこで、製造業やサービス業の場合も、大企業が進出して中小企業に重大な影響が出た、被害や犠牲者がどんどん出ておる、これを防止するのは当然なんですね。しかし、そういう現状のようなどんな事態が起こっておっても法規制はしないということなのかということが一つ。  それから、進出大企業が行政指導に従わない。先ほど言ったように各社長はああいうことを言って聞かない。それで行政指導に従わずして、中小業者が転廃業に追いやられていっているのですね。こういう事態になってもまだ法規制はやらない。法制局は合理性があったらと言うのですが、合理性というのはどういう中身かはまたの機会にやりますけれども、しかしながら、どの程度の倒産、どの程度の転廃業が出れば法制定が必要になるのか、法制定の基準というものをどういうところに置いておられるのですか、大臣
  120. 河本敏夫

    河本国務大臣 やはり当初に申し上げましたように、大企業がみだりに中小企業の分野を荒らしてはいかぬ、こういう考え方に変わりはありません。そのために、先ほど来長官が答弁しておりますように、とにかく大企業の新しい分野への進出の動きというものを事前に機敏にキャッチしなければいかぬ、後手に回ってはいかぬということで、今度いろいろそういう機敏にキャッチするための制度を設けよう、それからトラブルが起こった場合に調停する機関というものを強力にしなければならぬ、こういうことを考えましていろいろ予算要求もしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、いま法律で一つの分野には大企業が出て行ってはいかぬということを決めることはいろいろ問題がありますので、いま申し上げましたようないろいろな行政上の諸対策を完備することによりまして一層成果を上げていかれる、大体紛争は解消できる、こういうふうに考えておるわけです。
  121. 神崎敏雄

    神崎委員 最後に、やはりこれだけの実例と具体例を並べても、なおかつこれを中小零細企業やら業者の立場に立って法規制とかあらゆることで守ってやろうという姿勢が政府にはない。従来ずっと行政指導をやってきてよかったら、いまこんな事態は起こっておらないのです。だから、それをずっと並べてきたのです。時間があったらもっとあります。御迷惑になりますから、急いでいるからこういうことになって反論を繰り返しませんが、やはり自民党政府は結局大企業を守るということにしかならないということです。  そこで、わが党は、すでに一九七三年に民主連合政府の綱領を提案いたしましたが、その中で、中小商工業者の経済分野への大企業進出を規制すると、その態度を明確にしました。また、昨年の十二月に発表した中小企業危機打開緊急措置法案の大綱では、三年間という期限を設けて、大企業中小企業分野への進出禁止を提案しました。また、七十五国会提出した独禁法の抜本的改正案でも、大企業中小企業分野への進出規制の条項を設けるなど、一貫して大企業の無制限的な進出に対しては民主的な規制を加える態度を明らかにしてまいりました。これをいま中小零細企業は求めているのです。  また、わが党は従来の政策をさらに発展させて、中小企業事業分野確保するために、大企業を民主的に規制する法律の制定を図るべく、わが党の案をいま準備しております。  きょうまでの国会審議を通じて、歴代自民党政府と三木内閣は、中小企業の育成強化への助成にはきわめて冷たく、大企業進出への有効な規制は決してやらない、まさに大企業本位であるということが先ほどからも言いましたように明白になっている。ああだこうだと言って、行政指導とおっしゃるけれども、結局そうなんです。やられておったらこんなことになっておらぬ。そこで、広範な中小企業者の切実な要求や、また十八都道府県三市六特別区の意見書、それをやってほしいという意見書が出ておるのですが、それにも背を向けて、しかも七十五国会で、この衆議院の商工委員会で五党一致して委員会決議として「大企業中小企業の分野へ進出し、深刻な影響を及ぼしている実情にかんがみ、中小企業事業分野確保のため、早急に立法措置を検討すること。」これを決定したのです、特別決議で。そのとき大臣は、その決議を積極的に尊重いたしますと、そういう趣旨の御発言もあったはずなんです。このような国会の意思を無視しているのは、これは先ほどの討論でよくわかったのですが、これでは反国民的な三木内閣だと言われても仕方がないと思うのです。  最後に、大臣、大企業の進出を規制する立法はどうしてもやるべきでないと、先ほどからも何遍も言われているが、重ねて言われるのかどうかを尋ねたい。  また、この問題は全野党が立法措置を主張しているという状況であるということと、何よりもいま中小業者の切実な要求である。また、真に国民生活本位の日本経済振興、発展を図る上で、将来のわが国の産業構造をどうするのかという非常に重大な問題だと私は考えます。そこで、できればこの国会中に中小業者、消費者あるいは学者、大企業、こういう人などの代表を参考人として国会に招いて、中小企業事業分野と大企業の進出の問題での集中審議、参考人質疑を当委員会でどうしてもやってほしいということをここで提案して、これは後でひとつ理事会に諮って、こういうことをやっていただけるかどうか御検討下さるよう委員長に要望いたしますが、最後に、まず初めの段階での、大臣はどうしても大企業の進出を規制する立法はやらぬ、さきの国会での特別決議はもう忘れたんだ、尊重せないんだ、こういう態度なのか、その点についてお答え願って終わりたい。
  122. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府は、繰り返して申し上げますように、中小企業対策というものを非常に重大に考えております。何しろ中小企業の従業員が三千万もおられるわけでございますし、日本の産業の全生産の半分は中小企業生産をしておる、こういう実情でございますから、中小企業対策というものを重視しないで日本の産業政策というものは進まぬわけです。非常に重大に考えまして、先ほど来繰り返して申し上げておりますように、考えられるあらゆる中小企業対策は次から次へ準備をいたしまして、積極的にこれと取り組んでおるわけでございます。  ただ、いまおっしゃるように立法化によって事業分野を確定するということは、現段階におきましては立法技術上非常にむずかしい問題もありますし、それから消費者保護という問題、技術革新という問題、それから過保護という問題等もありまして、果たしてこれが中小企業のためになるのであろうか、国の産業政策全体のためになるのであろうか、こういうことを総合的に考えまして、やはり現段階では、行政指導で大体のものは解決できたのだし、また、現在紛争中のものも解決できるという見通しがあるわけでございますから、行政指導でやっていく方がいいのではないだろうか、いまこういう考え方に立っておる。決して前国会の御決議を軽視するとかそういうことではございませんで、決議の御趣旨もよくわかっておりますから、そういうこともよく考慮に入れまして、全体的な立場において中小企業対策というものを進めておる、こういうふうに御理解をしていただきたいと思います。
  123. 山村新治郎

    山村委員長 神崎委員に申し上げます。  参考人招致の件は、理事会に諮って決定させていただきます。  近江巳記夫君。
  124. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは久しぶりの委員会でございまして、お聞きしたいことが非常にたくさんあるわけですが、限られた時間でございますので、何点かの問題についてお伺いしたいと思います。  まず、独占禁止法改正案の再提出の問題でございますが、いままで衆参本会議におきまして総理がいろいろ答弁なさっているわけでございますが、その中でこういうこともおっしゃっているのですね。参議院の審議に相当の曲折が予想され、他の案件審議に支障を来すので、自民党で再調整中、あるいは自民党の再調整がつくなら国会提出する、あるいはいきなり再提出して緊急案件の審議に支障があってはならないと思うので、自民党内で再調整しておる、その結果をまって再提出するかどうか決めたい——緊急案件審議に支障を来さないということであるなら、提出時期の問題でありまして、自民党内の再調整とは関係がないはずであると思うのです。自民党内の再調整が必要という点にその重点があるのかどうか。そうであるとするならば、先国会におきます総理並びに閣僚を初めとした首脳部のそういう独禁法に対する信念というものが、短時日の間に変更してしまったのかどうかという問題であります。この問題につきまして、きょうは副総理もお見えになっておりますのでお伺いしたいと思います。
  125. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 独占禁止法につきましては、政府提案が先国会において行われましたが、参議院で審議が行われず、あのまま廃案ということになった。そこで、これをどういうふうに扱いますかということを考えますときに、今度のこの臨時国会は、これは何と申しましても景気対策のための臨時国会である、まあ独占禁止法のような重要な議案を扱うのになじまない、そういう性格のものである。かたがた御承知のように、自由民主党の中で、特に参議院方面等でいろいろ意見があるのでございまして、その意見の調整も図った上、来通常国会においてはこれを提案いたしたいというので、いま目下鋭意調整中である、こういうことでございます。
  126. 近江巳記夫

    ○近江委員 時期が現在は不況対策に力を入れなければならないときであるから不適当である、こうしたことをおっしゃっているわけでありますが、高度成長から福田副総理がおっしゃる安定成長といいますか、こういう過渡期に当たって、なおさら私たちは狂乱物価の時代におきますあの無秩序な経済ルール、これを本当に立て直しをしなければならぬということをお互いが痛感したわけです。そういう中から、この独禁法改正の機運が国民の間から大きく盛り上がってきたわけであります。したがって、この時期こそこの独禁法を改正していく一番適当な時期である、これは福田副総理と根本的に違うわけですね。ですから私は、この時期にこそこの改正をすべきである、こう思うわけです。  総理がおっしゃっておりますように、他の重要案件と重なってくるとどうだという、そういう時期のことも何回もおっしゃっているわけでありますが、要するに問題は自民党内にあるわけであります。これだけ多くの国民が願っておる、それに背を向けておるわけです。国民とともにある、対話と協調であるということを三木内閣はよくおっしゃっているわけですが、対話と協調どころか、全然背を向けておられるわけであります。こういう姿勢は非常に恥ずかしい姿勢だと私は思うのでありますが、福田長官はこういう自民党の姿勢を恥ずかしいと思われますか。
  127. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほど申し上げましたように、この国会は性格が臨時国会である、しかも差し迫った不況問題を克服する、そういうことで、重要で非常に恒久的な性格を持つ独占禁止法の改正を審議するのにどうもなじまぬ、こういうことなんです。もちろん自由民主党の中、特に参議院等においてこの問題につきましていろいろ意見のあることは御指摘のとおりでございますが、そういう臨時国会という性格を考えるときに、次の通常国会を目指してやる、こういうこと、かたがたそういう意見の相違があるというのをこの際調整していくというのもまた一つの考え方じゃないでしょうかと私は思います。
  128. 近江巳記夫

    ○近江委員 まだ総理あるいは副総理の自民党のいわゆる最高首脳の方々は、国民の声がよくわかっておらない、このように思うわけです。ひとつ大地に耳をつけて吸収していただきたい、こう思うのです。  それで、来国会に出すということをおっしゃっておるわけですが、来国会にお出しにならなくても、私たちがやかましくこれを言っておるのに自民党さんが応じないということで、私たち社会党、そして共産党・革新共同、公明党、民社党と四党共同提案ですでに提出しておりまして、これは前国会の衆議院におきます修正案を全くそのとおり法案化したものであります。これは五党一致して衆議院を通しておるわけでございますから、来国会にお出しにならなくても、この四党共同提案に自民党さんが賛成すればいいわけであります。ですから、副総理としてその御努力は真剣になさいますか。当然国民の声を受けて実現しなければならない使命と責任が私たちにはあるわけであります。そういう点で、自民党が賛成できるように努力なさいますか。
  129. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま自民党の中でせっかく調整中だ、そういうきわめてデリケートな段階でございますので、この席のお答えとしますと、その調整を待つ、こういうことかと思うのです。いま早とちりの答弁をいたしまして、またこの調整に悪影響を及ぼすというようなことでも支障があるのじゃないか。私は、答弁といたしましては調整待ちであるというところにとどめておきたい、かように存じます。
  130. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは副総理の立場とすればそういうお答えも出ようかと思いますが、副総理自身は何とかまとめたい——自民党を引っ張っておられるのが三木さんであり、福田さんであるわけですから、あなた御自身のお気持ちはどうなんですか。
  131. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま非常に機微な段階に差しかかっておるわけですね。これは総理大臣としてもそうだと思うのです、いまここでこういう内容がしかるべし、こういうことを言わない方がむしろ調整にいいのじゃないか。せっかく調整中であるというのに、最高権威者の総理大臣がそういうような発言をするというようなことになったら、調整そのものにどういう影響があるかということもまた考えなければならぬ。そういうきわめてデリケートな段階であることもまた御了解を願いたいと思います。
  132. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう調整という隠れみのに隠れましてやっているわけでございますが、いわゆる微妙な影響を与えることができるお立場にあればこそ、私は副総理の勇気ある所信をここで決意表明をなさるべきじゃないか、こう思うわけです。どうでしょうか、もう一歩そこで勇気を出して……。
  133. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 非常なデリケートな段階でございますので、ただいまの答弁でお許しを願いたいと思います。
  134. 近江巳記夫

    ○近江委員 公取委員長は何とかそのことを期待したいということもおっしゃっておられましたが、本当に歯がゆい思いで見ておられると思うのです。先ほど他の委員質問に対してお答えになっておられますし、重なるかと思いますので、次に移りたいと思います。  今年度非常な不況、インフレという中で中小企業倒産をする、特に十月は千二百七十九件、これは戦後最高ですね。三木内閣になって、河本さんが通産大臣になって、そして福田さんが副総理になり、戦後最高のこういう記録をおつくりになった。これは本当に残念な記録でございます。こういうことがさらに年末に向かって心配されるわけであります。  そこで、今年度下半期六%の成長をし、年平均二・二%ということをおっしゃっているわけですが、きょうでしたか、経済企画庁が月例報告をやっておりますが、景気回復は依然として不調であるということを言っているわけですね。こういう状態の中で、実際に下半期六%ができるかということなんです。これはいまのそういう景気動向を見ておりますと、御承知のように個人消費は依然として冷え切っておるし、設備投資にしましても非常に低迷いたしております。あるいは輸出にしましても百億ドル落ち込んでおる、こういうような状況であります。政府がとっております公共事業を中心としたそういう支出にいたしましても、地方公共団体も金がないというようなことでなかなか進みもしないし、いろいろないままでの総需要抑制ということの余波がありましてぎくしゃくいたしております。どこに一体景気回復のそういう根拠があるのか。  いまそういうことを訂正するとさらに冷え込みに心理的に大きな効果を出してしまう、実情は当然その数値は訂正されるべきであるのにかかわらず、依然としてがんばっているように私たちの目には映るわけでございますけれども、本当に長官としてここは六%いけますか。二・二%年平均でいけますか、長官の忌憚のない心境と見通しをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  135. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今度財政措置をいたしまして、この財政措置の総額が一兆五千億余りになるわけです。その波及効果は大体三兆円、こういうふうに見ておりますが、この効果は、これは五十年度といたしますと、その六掛け、一兆八千億ぐらいになるだろうと思うのです。一兆八千億、そういうことになりますと下半期は実質年率で六%成長、こういうことになってくるわけです。つまりそれは全年度を通じまして——全年度というのは十二カ月を通じまして前年に比べますとこれが二・二%成長、ノミナルでいきますと一〇%成長ということになるわけです。  まあ、要するに最終需要が動いてこないと経済は盛り上がりません。最終需要項目といえば、大きなものは四つあるわけです。これは御承知のとおりですが、個人消費、これはちょっと停滞ぎみではありまするけれども、かなり堅調でございます。大体一五%程度年間動くのじゃないか、そういうふうに見ております。それから第一次、第二次、第三次、それから今回の第四次の財政効果です。これで政府の財貨、これの需要が一五、六%ぐらいにはいくのじゃあるまいか、そういうふうに見ております。これはそういうふうになるということを確信をいたしておりますがね。そうなりますと、あとの輸出、これはあるいは多少いい傾向になるかと思いますが、さほど改善を見ない。あるいは設備投資、これも大変な落ち込みでありますが、そう期待をかけぬでもただいま申し上げましたような結果になるわけでありまして、要は決めました第四次不況対策、これを着実に実行していく、こういうことで、これは政府の方では鋭意実行に力を注いでおるという段階で、下半期はまだ始まったばかりでありまして、その効果の目覚ましいものは出てきておりませんけれども、逐次出てくる、こういうふうに見ております。
  136. 近江巳記夫

    ○近江委員 実際にこれが浸透ということになってまいりますと、いわゆる春になるのではないかというようなことも言われているわけです。実際一軒の家を建てるにも、設計図を引き、見積もりをし、仕様書を書いて契約をして仕事にかかる、その間にはまた相当な長期間がかかるわけでありますし、こういうようなことで実際第四次不況対策をお組みになっても、実際の公共事業というのは約八千億ということを聞いておるわけでありますが、そうした中身からいきましても、今日デフレギャップといいますか、約二十兆円ということも言われておるわけでありますし、現実景気回復がそれだけいくか、むしろマイナスすれすれぐらいになるのではないかということも言われておるわけでありますけれども、長官の見通しとしては非常に強気な、必ずそのように予想どおりいく、そういうような御答弁であったわけでございますが、われわれとしてはお話を聞いてもなかなか納得しがたい、そういう答弁であろうかと私は思うわけです。  それで、この十二月にはいよいよ予算も編成作業に入っていかれると思うのですが、来年度の経済成長率はどのぐらいに見ておられるのですか。
  137. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 来年のことはこれから詰めていくわけですが、考え方といたしましては、ことしの経済の動きを受けまして、安定的な成長路線に移っていくという過程における適正な成長の高さということを考えておるわけです。さらに、五十一年度以降中期計画を発足させますが、その初年度としての役割りも持たせなければならぬ、こういうふうに考えております。具体的に何%というところまでは詰めておらないのでございます。
  138. 近江巳記夫

    ○近江委員 具体的に何%ということは詰めていないということをおっしゃっているわけですが、長官としては、その安定的に移行していく数値という線からいきますと、大体どのくらいになるのですか。
  139. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま経済審議会の方で、中期路線をどういうふうにしくか、これを相談している最中でございますが、その前提としてこれから十カ年ぐらいの展望をするということになるわけです。この間、委員の皆さんが集まって、一応そういう問題をどういうふうに考えるか、そういう御議論がいろいろありましたが、まあ六%ぐらいのところがいいのじゃないかなというような説が多かったようでございまするけれども、まだ決定的な路線というものは出てきておらないのです。そういう中で、ことしはとにかく二・二%成長だという、その後を受けて中期計画の初年度である五十一年度の成長の高さをどういうふうに見るか、これは余り高く見ますと、また実績がそれに及ばないじゃないかなんというような御批判も受けなければならぬ。その辺はごく慎重に決めなければならぬことだ、こういうふうに考えております。
  140. 近江巳記夫

    ○近江委員 大体六%ぐらいだということをおっしゃったわけでございますが、長官自身も、安定的に移行していく数値であるとすれば妥当な数値である、このようにお思いですか。
  141. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 経済審議会の総合部会の皆さんの中に六%というような声が多かったというふうなことを聞いておりますが、まだ最終的な詰めはしておりません。そういう段階でございますが、同時に、十年間を平均いたしまして六%といいましても、これは波があるわけなんです。その第一年度の五十一年度を一体どのくらいの高さにするか、第二年度をどのくらいの高さと見るか、第三年度はどうか、これは波があるわけでございまして、必ずしも六%なんというようなことで一貫していくという性格のものじゃない、こういうふうに思いまするし、同時に、私はこれからの経済を展望してみますと、世界経済が非常に不安定要素が多いと思うのです。そういう中で、わが国の経済成長の高さをいままでのように何%というところで固定するという考え方は妥当じゃないような気がするのです。かなり弾力的な幅を持った見通しを立てておいた方がよかろうか、こういうふうに考えておるわけであります。そういうさなかにおける来年度を一体どうするか、これはよほど慎重にこれから、世界経済の動きはもとより、また国内の経済の動きをどういうふうに見るか、その辺慎重に環境諸条件を見定めまして、そして最後の決定をしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  142. 近江巳記夫

    ○近江委員 この第四次不況対策のそうした浸透効果というものにつきまして、国民は、現場で仕事をしておられる方々等は非常に不安を持っておるわけであります。福田さんも大平さんも、祈るような気持ちでこの第四次の効果というものを見守っておるということを何かおっしゃったように私は思うわけですが、それは不安に感じておられるのは、通産大臣はその気持ちが非常に強いのじゃないかと思うのです。そういうことで、第五次不況対策であるとか、公定歩合をさらに下げるんだとかいうようなことをちらちら聞くわけでありますが、通産大臣はどういう気持ちでおっしゃっておられるのですか、またそれは事実でありますか。
  143. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、第五次対策とか、公定歩合をさらに下げるとか、そういうことは具体的に言ったことはないのですが、ただ、四次対策が御案内のように若干実施がおくれております。それからさらに、四次対策を決めましてからOPECの石油値上げが決まりましたので、この値上げによる直接、間接の影響がやはり日本経済に相当大きく響いてくると思います。  そういうことがございますので、これは四次対策を決めたときからの計画でございますけれども、十一月下旬の産業界の実態を地域別業種別あるいはまた場合によれば企業別に詳細に調査をしてみたい、こう思っております。その結果、この四次対策が順調に進行しておる、下半期六%前後の経済成長が達成される、こういうことであれば大変結構でございますが、もしさっき申し上げましたようなおくれ、OPECの影響によりまして相当悪い影響がある、何らかの補強が必要じゃないか、こういうことになりますと、これはまたそのときにその実情を詳しく報告いたしまして、政府部内でその対策を検討していく。必要とあらば四次対策の補強ということも考えられるのではないかと思います。しかし、いずれにいたしましても、この月末に実態を詳細に調べないとわからぬことでございまして、具体的な対策はそれからのことでございます。
  144. 近江巳記夫

    ○近江委員 実態調査をなさるのでしたら、特に中小企業に対する影響等を、これはもう本当に徹底して調査していただきたいと思うのです。政府のそうした調査統計等を見ますと、実際に私たちが現場へ行きましても相当なずれがあるように感ずるわけです。その点、精密をきわめるように、これはひとつ強く要望しておきたいと思います。  それから、福田長官は、これからは国際的な経済情勢というものが非常に大きな問題になってくるとおっしゃっておられるわけです。三木総理が六カ国首脳会議に出発されるわけですが、いろいろな問題があるわけでございますが、当然焦点は経済問題にかかってくるのではないかと思うのです。そういう点からいきまして、経済閣僚のキャップとして総理とは相当詰めて話をなさっておると思うのですが、わが国としてはどういうことを主として提言していくおつもりですか、どういうことを話されましたか。
  145. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一応準備委員というのがありまして、そこで下話をしております。そこで、議題をどういうふうにしようかというようなことで、各国がとっておる経済政策、それをみんなさらけ出して話し合おう、それから、そういう話し合いの中から、インフレのない成長、これを探り出すには何か共通の手段があるかどうかというようなことも話し合ってみようという、まあ景気政策に関する問題ですね。それから貿易に関する問題、さらに南北問題、資源、エネルギーの問題、それから通貨の問題、そのようないろいろな課題が掲げられておりますが、何せ三日の会談とはいうものの、正味はそうまるまる三日というわけにもいかぬような情勢の会談です。ですから、具体的にそのような問題で大きな結論が出るというようなことは私はなかなかむずかしいのではないかと思いますが、大事なことは、いま世界経済というものが非常な危機の状態にある、この深刻なる世界情勢につきまして各国の首脳が認識を同じゅうする、またその危機を打開するための協力、協調、こういうことについて各国の首脳が一致するということができますれば、これは相当大きな成果だろう、こういうふうに思いますが、個々の具体的な問題につきましては、そういう会議ではありまするけれども、いろいろ話が出てくるだろうと思うのです。そういう際にわが国がどういうふうな応待をするか、それにつきましては十分打ち合わせがしてあります。
  146. 近江巳記夫

    ○近江委員 特に福田さんが、この点はこうしよう、こうすべきだと強調して総理におっしゃった点はどこですか。
  147. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この会議をぜひ成功させてもらいたい。これはこういう首脳が集まって、どうも余り成功せず、つまり意見の一致がなかったなんというようなことでありますと、世界経済の前途に対しまして大変な影響を及ぼす。これはひとり経済問題の分野にとどまらぬと思うのです。これは世界の政治局面に大きな影響がある、そういうふうに考えますので、とにかくお互いに、世界情勢が非常に大きな変貌をしてきた、その世界経済の変貌の姿というものにつきまして各首脳が本当に理解し合う、そして蝸牛角上といいますか、お互い同士の中で角を突き合わせるというような時期じゃない、もうみんな一致団結してその局面に当たらなければならぬという理解と認識、これこそがこの会議のかなめである、これを何としても取りつけるような努力をせられたいということを私はお願いしております。
  148. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、いろいろな項目について話し合われるだろう、いまそうした見通しをお話しになったわけですが、通産大臣は今週末から中国に行かれるということも聞いておるわけです。中国とは、いま非常に中国原油の輸入問題が焦点になってきておるわけですが、その他絹糸の輸入の問題であるとか、いろいろな懸案問題があろうかと思うのですが、そうした問題につきまして、通産大臣としてはどういうことを希望なさっているのですか。
  149. 河本敏夫

    河本国務大臣 私が今週末に中国へ参りますのは、北京で来週早々、工業技術展覧会を日本政府とジェトロの共催で開くこととなっておりますが、これは非常に大規模な見本市でございまして、戦後初めてと言ってもいいくらいな大規模なものでございますので、それに出席をするということで北京に行くわけでございますが、その機会に中国との貿易問題、いまのお話の石油問題、こういう問題について先方の責任者と会って話をするつもりでおります。貿易問題につきましては、ここ二、三年は順調な形で推移しておりますけれども、両国間に問題が全然ないわけではありません。やはり若干の問題を抱えております。そういう若干の問題をどう処理し解決しながら、さらに飛躍的に今後の両国の貿易関係を拡大していくか、こういうことについて話し合いをしたいと思います。  それから石油問題につきましては、いまわが国は輸入ソースの多角化ということを最大の政策として取り上げておるわけでございますが、その立場から、中国原油の輸入ということは将来の日本にとって非常に大きな課題でございます。     〔委員長退席、塩川委員長代理着席〕 ただしかし、価格、品質あるいはまたそれに伴うわが国における受け入れ体制、こういうことに問題がございますので、そういう問題との兼ね合いにおきまして将来この問題をどういう形で取り上げていくか、こういうことについて話し合いをしたい。いずれにいたしましても、両国の経済関係というものをさらに拡大していきたい、こういう基本方針のもとに話をするつもりでございます。
  150. 近江巳記夫

    ○近江委員 中国は一千万トンぐらい輸出をという、大体そうした具体的なことを何か言っているように聞いたこともあるわけでございますが、通産大臣としては、当然品質であるとか価格であるとか、いろんな要素がからむわけでございますが、輸入の分散化というような点からいきまして、中国に対しては将来どのぐらいを輸入したいと思っておるのですか。
  151. 河本敏夫

    河本国務大臣 中国油の輸入は、一昨年が百万トン、昨年は予定より若干減りまして四百方トン、本年は八百万トンの予定をいたしております。将来これをどこまでふやすかということでありますが、これはわが国のこれからの経済見通しも、先ほど副総理がお話しになっておりましたように五カ年計画が近く決まるわけでございまして、それによって日本経済の規模も大体見当がつくと思いまするし、それから景気の動向等も大体来年じゅうには完全に回復すると思いますが、そういう景気の動向等もいろいろ考えまして需給関係というものを正確に立てなければならぬと思うのです。  また、現時点では、将来の需給関係が若干流動的である、こういう問題と、それからさっき申し上げました中国原油に関する基本的な三つ、四つの問題点、こういう問題との絡みがございますので、いまの段階におきまして、将来、来年は何千万トン、再来年はどうするかとか、そういう具体的な数字を申し上げる段階ではないと思うのです。ただ、基本的には前向きに、積極的に取り組んでいきたい、こういう考え方でございます。
  152. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、福田副総理は今年度は物価を一けたに抑え込むといつもおっしゃっておるわけですが、御承知のように公共料金が軒並みに上がってきておる。また、新価格体系ということで軒並みに価格の引き上げが行われようとしておるわけであります。こういう諸情勢の中で、一けたというのは本当にできるのですか。確信はあるのですか。何を根拠におっしゃっておるのですか。
  153. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま、公共料金が軒並み上がる、こういうお話でございますが、いま公共料金の改定を考えておりますのは、これは去年の暮れから考えておるわけなんで、すべてこれは日程にのっておるわけなんです。それから、新価格体系を名として企業が値上げをしたい、こういう動きがこれも軒並み出ているという話ですが、私はそんな動きは聞いておりません。それは鉄でありますとか石油でありますとか、そういう特別なものにつきましてはそういう動きがあることはよく承知しておりますけれども、軒並み出ているというような状態じゃない、そんな需給の逼迫しておるような状態ではないのです。  とにかく、この時点におきまして卸売物価は前年同時期に比べまして〇・八%の上昇だ、これは消費者物価の今後を占う上において非常に明るい材料だ、こういうふうに見ておるわけであります。それから今年春の春闘、これがなだらかな形で終わっておる、これも好材料だ、こういうふうに思います。そういうことで、消費者物価の方の動きも、九月、一けたにはまだなりませんけれども、一けたに接近をする。十月の東京の区部の指数も出ておりますが、これも一けたに接近し、しかも先月は野菜がうんと上がりました。五割近く野菜が上がる、その影響をかなり受けてそういうことになっておりますが、それが仮に横ばい、つまり季節的要因というものがなければ、九%ということになるわけなんです。すでにそういう状態になっております。  今後を見まして、経済がまだ需要不足の状態、そういう状態にある。そういう状態を背景としての物価の動きということを見てみますと、大体来年の三月の時点は一けた以内におさまるのではないか、そういう展望をしておるわけでありまして、公共料金について御不安のようでありますが、これはもう織り込み済みで一けたということを申し上げておるわけであります。
  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 公共料金は、消費者物価に占めるウエートはサービス料金だけで約一三%、米、たばこ、塩等を入れますと一七%に達する。そういうようなことで、織り込み済みであるとおっしゃっていますが、公共料金の値上げが次々と予想されておるわけであります。こういう点からいきますと、そういう織り込み済みであるという安易な考えでありますと、それはもう福田さんが幾らおっしゃっても一けたでおさまらぬ、私はこのように思うわけです。  大体公共料金に対する考え方というものが織り込み済みであるというような甘い考えでおられるから、次々とそういう引き上げの動きが出てくるわけであります。ですから、根本的に公共料金の抑制ということは基本方針であるわけですから、もっと福田さん自身が努力してもらわないと困る、このことを私は強く申し上げたいのです。もう一度その公共料金の基本の考え方と、それからいつも出てくるわけですが、いわゆる福祉型の導入の問題ですね、前に電気料金の場合なんかはいわゆるナショナルミニマムのそうした線も引きまして、福祉型導入というパターンをとったわけでありますが、今後公共料金につきましてそういう福祉型の料金の導入ということについてどのようにお考えか、その二つの点についてお伺いしたいと思います。
  155. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 申し上げるまでもないわけですが、昨年から、石油時代の中で、わが国がほとんど国内では産出しない、海外に頼っておるその原油がとにかく価格が四倍に引き上がってしまったのですから、わが国の物価水準に非常に大きな影響があるわけです。そこで、昨年ずっと主商品の価格の引き上げというものが行われた。私は大方一回りをした、こういうふうに見ておりますけれども、まだその引き上げ、新しい物価水準への対応、それに乗りおくれたものあるいは乗り足りなかったものというものもあるわけです。特に公共料金、これは政府政府の立場において決め得るものであります、物価政策を配慮いたしまして。私鉄運賃なんかは一回上げましたが、大方の料金は新価格水準というものに移っていないのです。しかし、これをほうっておきますとこれは大変なことになる。国の財政がいま非常に窮屈な状態にありますけれども、国の財政に結局大きなしわが寄ってくるということにもなり、また企業といたしましても、これを放置すると企業の存立にかかわるという大問題に発展するわけです。これはいずれどうしても新しいそういう事態に対応した料金に直さなければならぬ。  直すには一体どうするかという基本的な考え方といたしましては、私は、ことし酒、たばこ、郵便料金、こうお願いをしておりますが、来年、再来年、ここ二カ年ぐらいで、公共料金の改定、主なものの一回りをする、こういうふうに持っていきたいと思うのです。いまその公共料金の改定問題があるものですから、物価問題というのはこれは非常にむずかしいというか、重荷になるわけです。この問題がないと、物価は一けたなんて言わぬでももっと落ちついた動きを示し得る、こういうふうに思うのでございますけれども、しかし、この公共料金の改定問題というものは避けて通ることのできない問題である、いずれ解決しなきゃならぬ問題である、しかももう解決の時期に迫られている、その時期はことしと来年と再来年である、こういうふうにとらえ、逐次なだらかにこれが改正をいたしてまいりたい、そういう基本方針でございます。  改正する場合におきまして、いろいろ政府としての立場において配慮しなければならぬ、こういうことはもちろんでありまして、その配慮をどういう形にするかということにつきましては、その引き上げの時点における社会、経済の諸環境を見回しまして、そして妥当な考え方をとらなければならぬだろう、そういうふうに見ております。
  156. 近江巳記夫

    ○近江委員 まあこうした不況時代ということになってまいりますと、寡占状態といいますか、こういう弊害というものが非常に出てくるように思うわけであります。特にこの間の鉄鋼の引き上げであるとか、こういうものは全く同調値上げである、こうした見方が非常に強いわけでございますが、こういう時代におきますこの寡占構造等に対する政府のチェックといいますか、監視といいますか、こういうことが非常に大事になってくると思うのです。そういう点におきましては、この公取委員会の果たす役割りというものは前より一層高まってきておるのじゃないか、私はこう思うわけです。こうした風潮に対して、公取として今後どういう基本的な決意と態度で臨まれるか、まずこれを公取委員長にお伺いしたいと思うわけであります。  それから、不況カルテルの申請が、たとえば小棒であるとかセメント、ガラスの長繊維のそうしたものが出てきておるわけでございますが、いろいろとそうした動きも出てこようかと思うわけであります。この不況カルテルの認可に当たってどういう基本的な姿勢でいかれるか、まずこの二点につきましてお伺いしたいと思います。
  157. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 寡占体制の弊害ともいうべきものの一つが、御指摘のように鉄鋼の値上げのあり方ですね。私どもは鉄鋼がいまもうかっておるとかいうことを言っているんじゃないのです。それは一部例外の会社が輸出価格が下がらない部分がございますから、そういうところが被害僅少というか、むしろ黒字基調ではないかと思いますが、それを除きますと、まあ全体として赤字ベースである、そういうことは認めないわけじゃないのです。ただ、値上げに当たっての交渉のあり方というものは、従来私はああいう極端なパターンはなかったのではないかと思うのですね。  片や新日本製鉄、片やトヨタ自工、トヨタ自工はいかにも有力会社でございますが、これまでのところ御承知のように日産、トヨタなどは非常に新車の売れ行きがよくなりまして、これは公害対策の問題と関係があるのでしょう、それでもうかっちゃった、偶然に。非常に不況だと言われていたところが利益が予想外に出るというふうなことになって、そういう関係もあって自分が相当の利益を計上せざるを得ないのに、あえて頑強に抵抗するというのもいかがかというふうなことがあったのでしょう、そういうふうに見られております。  造船業界も、これは一方では、鉄の設備については受注業界でございますから、そういう点もからんでおりますが、とにかく何か一社と一社が両方で話し合いをしまして、その結果が同業どころか薄板の価格の六千八百円が厚板の方にも全く同じ幅で及ぶ、かような例は私は価格決定のあり方としてまことに奇異に存じます。事実、いま、最近問題になっておりますが、同じ鉄鋼、高炉メーカーの製品が、ある割合、何割かが、ひもつきでない店売りの方に流れているのがあります。これとは価格差が一万円も出ている。つまりその一万円はだれか流通業界がしょわなければならぬというふうなかっこうになっておりますが、かような点を考えますと、どうも言われているところの一物一価ですか、これなんかもためにする論理じゃないかというふうな感じもしまして、その価格の決め方などについてもう少し態度を自粛していただきたい。あれでは、もし仮に私どもが証拠があれば、たちまちカルテルでございますよ。  しかし、恐らくそういうことを十分用心してやっておられると思いますので、いま私どもは任意調査によって、どうしてそういうふうになったのか、そういういきさつをいろいろ詳しく承っている方で、ユーザーの方からもメーカーの方からも承っておりますが、まだ調査完了したとは申せませんので、いまここでどうこうというその取り扱いについて申し上げることはありませんけれども、しかし寡占ということがそういうふうな、とかくいわゆる価格を形成する普通の需要供給の原理に基づかないで行われるということ、これは私は将来にも十分戒心を要すべき事柄じゃないか。それに対する直接的な規制手段は、私どもは強いものは持ち合わせません。しかしながら、これは世論の批判を仰ぐというふうなこともときにあってしかるべきじゃないかと思っておりまして、そういう点では次のまた三千円という残りがあるということで、これも同様な手段によるというふうなことが予測されておりますが、はなはだもってこれは寡占体制のもたらす非常によくない、好ましくない面を端的にあらわすものではないかと考えております。  いずれにしても、これからも寡占という問題は、安定成長下において特にそういうことが、寡占業界になってしまっていますと、むだな競争をやめようじゃないか、お互いに利益をうまく出すような方法で営業しようじゃないかという考え方があり、それが実は私はいろいろな意味で、本当の意味でのよいものを安く供給するという最もよい自由経済の利点を殺してしまうことになる、これを私どもは極端に恐れるわけでありまして、独禁法というのはそのためにあるのであって、決してその自由経済を否定する、妨害するというようなものじゃありません。そういう寡占や独占の弊害を取り除いて、そしてそのメリットを生かしていくというところにその本当の値打ちがあるのでございますから、そういう点を十分私ども心に置いてやりたいし、そのためにこそ独占禁止法の改正というものを、さしあたり必要な最小限度においてその程度のものはやっていただきたいということをかねてお願いしている次第でございます。  それから、不況カルテルについては、認可の要件はそうたやすくいつでも不況カルテルが認められるということにはなっておりません。事実、事業者の相当部分がその営業の継続が困難と認められるような場合ということでありますから、それらの要件をも考慮しなければならぬし、また、これからの景気の先行きがどの辺で需要が回復過程に入っていくのかということも、これはあくまで予想でございますが、在庫がどれだけ減って、そうしてその反映として価格の持ち直しがどの時点で起こるであろうかということを考えながらやっております。  しかしながら、その予測が外れた場合には私ども延長を認めることもありまして、いずれにしてもこれから——ただ、いま実施しておりますものについては、小棒のごときはカルテルを認めた後でさらに価格が低下しているというような状態でありますので、これはカルテルを強化するということを認める方針で、すでにそれは決めておりますが、期間の問題についてもまた申請が出てくると思います。そういうものはそのときどきの情勢に応じて比較的厳格には扱っておりますが、そうかといって何でも断わるというふうなそういう弾力性のないことでは独禁法の運用はできませんから、その辺は実情に合わせて認めていく、今後もそういうものが仮に出てまいりますればそういう態度は変わらないつもりでございます。
  158. 近江巳記夫

    ○近江委員 この第四次不況対策の二兆円の中に四千八百億の年末対策というものが入っておるわけでありますが、大体こういうものを不況対策の中に入れること自体おかしいわけですよ。昨年度も四千五百億たしか出しているわけです。何も事新たに不況対策——金額をふやそうという心理効果をねらったのか知りませんが、去年でも四千五百億出しているわけでしょう。そうしますと、この十月におきましては千二百七十九件という戦後最高の倒産を示しておるわけです。一体この年末対策につきましてどれだけ真剣に中小企業のことを考えておるか、具体的にひとつお伺いしたいと思うのです。
  159. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまの御質問のちょっと前に、鉄の実情につきまして、誤解があってはいけませんので簡単に要点だけを私からも説明しておきたいと思います。  先般鉄の方は若干の値上げがありましたが、その値上げの結果、国際価格との関係はどういうことかと調べてみますと、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、この重立った数カ国の鉄鋼価格に比べましてなお大体二割ないし三割安い。私は、大企業の社会的責任というものは、よい品物を安く提供する、こういうことにあるとするならば、現在の鉄鋼業界というものは世界で一番安い鉄を供給しておる。重立った国に比べて二割ないし三割安いという水準でいま価格水準が動いておる、こういうことについてまず認識しておいていただきたいと思います。  それから、鉄鋼業界の場合は契約が二つございまして、一つはひもつきの長期契約、それから一つはスポット売り、こういうことになっておるわけなんです。ひもつきの長期契約というのは、鉄鉱石とか石炭、それから設備投資、いろんなコスト計算をいたしまして大体こういうものだろうということで長期間の供給契約をする、こういうことになるわけですね。それからスポット契約というのは市場にすぐ売り出すわけですから、その都度その都度の需給関係で値段が決まる、こういうことでございます。  今回値段の改定が行われましたけれども、スポットの分につきましては、需給関係を反映して値段はなかなか上がらない、こういう状態なんです。幾ら上げようと思っても、なかなか値段は上がらない。それから長期契約の分につきましては、これは需要家との合意に基づく相当長期間にわたる契約でありますから、当然新しい価格水準になるわけでありますけれども、これは新しい協定によって値段は動きます。だから二種類あるわけですね。必ずしも全部が同じように動いておるわけではない、こういう点についてもひとつ理解をしていただきたいと思います。  それから、鉄鋼業界は、事情をよく御存じと思いますが、設備にいたしましてもほぼ同じような設備をしておるわけですね。それから原料の鉄鉱石、石炭、これなども、豪州、カナダあるいはブラジル、こういう重立った国々から共同の購入をしておるわけですね。でありますから、原料も全部同じコストである、設備も同じコストである、こういうことでございますので、代表的企業で一つのプライスが出てまいりますと、大体それにフォローする、ほぼ同じような価格でフォローする、こういういわゆる寡占業界においては大体そういう動きだと思いますが、そういう動きになっておるということもひとつ御理解をしていただきたいと思うのです。  それから、平炉であるとかそういう分野におきましては、原料はスクラップを使っておりますし、全くその都度その都度価格が違いますから、これは高炉業界のようにはいかない。だから、事情がそれぞれの業界において違うわけですね。  そういう実情でございますから、現在は鉄鋼業界は相当な赤字経営が続いておりますから、なお若干の値上げをしませんとこれは正常な経営には戻らないと思いますので、若干の値上げがあろうかと思いますが、私どもは、鉄という品物は産業界にとって非常に重大な品物であるだけ、できるだけ早く妥当な価格に落ちつきまして、業界全体が健全な経営に移る、こういうことを期待しておるのですけれども、それは鉄鋼業界と需要業界の話し合いによって決まる、こういうふうに考えておるわけでございまして、誤解が生ずるといけませんので、実情につきまして御参考までに申し上げたわけでございます。
  160. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま通産大臣は、鉄鋼業界の代表みたいなそうしたお話があったわけでございますが、それは大臣の立場としてお話があったわけですから、それは参考に聞いておきます。  しかし、いずれにしても、価格の決め方について、やはり国民の間に疑惑が生じるようなことがあってはならぬ、これは独禁法の上から当然のことだと思います。これは先ほど公取委員長もおっしゃっていますし、どうかそういう疑惑の起こらないように、この寡占構造というものにつきましてさらにチェックをし、監視を公取の方でしっかりやっていただきたい、このように思うわけです。  それから、年末の問題でございますが、こういう危機的な状態に入っておっていいのですか、どうですか、どのようにお考えですか。
  161. 河本敏夫

    河本国務大臣 年末中小企業金融といたしまして四千八百億円を追加することにいたしておりますが、これは少ないではないか、こういう議論があるのですけれども、これは政府系の三機関に対する申し込みの実情等も十分調査をいたしまして、大体四千八百億あればまあまあ年末は大丈夫ではないだろうか、こういうふうに、十分調査をいたしましてこの金額を計上したわけでございます。そのほかにもいろいろ対策をやっておりますが、なお不十分であるということになりますと、先ほど来議論になっておりますが、非常に重大に私ども中小企業対策というものを考えておりますから、必要な対策を臨機応変に立てるつもりでおります。
  162. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう約束の時間が来まして、大分全体にずれておりますので、あと一問だけ最後にしたいと思います。     〔塩川委員長代理退席、田中(六)委員長代理着席〕  それは、この前にも私が本委員会質問したわけでございますが、マルチ商法の問題であります。大阪でも高校生が巻き込まれて自殺した事件が出ておるわけです。この高校生は私の後輩になりまして非常にショックを受けておるわけですが、その遺書をちょっと読んでみます。   先立つ不孝をお許しください。   なぜこういうはめになったかというと、エー・ピー・オーの大野という人に丸め込まれ、五月三十日に営業資金貸し付けということで四ッ橋の栄信商会という高利貸しより六万四千円借りました。三カ月で利息は約一万円くらいでした。営業資金は六万五千円であって、手付内金としてまず一千円払っていたのです。納入日は六月一日、七月一日、八月一日各二万四千九百六十円でした。最初の一カ月目は、学生の身分で二万四千九百六十円もできず、栄信商会に頼んで一カ月延ばすことにしました。その利息が五千四百六十円でした。二回目は、仕方がないので級友の青木君に六月末頼んで、二万五千円八月一日に利息一割の二千五百円を含めて返すと借用書を書いて借りました。七月一日にその借りた二万五千円を栄信商会に納入いたしました。期末考査も終わり、バイトをして借りた金青木の分二万五千円プラス二千五百円イコール二万七千五百円と、七月分二万五千円、合わせて五万二千五百円かせごうと思っていたら、バイト先が人手が要らなくなり、自宅待機。働いた金が八千円、話にならなかった。八方手を尽くしたが、もう遅かりし、バイト先がなく、仕方がなく、金のありそうな友に借金しようとしたがだめだった。青木には旅行する費用だから必ず返してくれよと証文は書いたが信用貸しのような感じだった。もうおれには金をつくることはできなく、青木に申しわけなく、結局お父ちゃんの力をかりなければならなくなったいま、死をもっておわびしたく、また、こんなことをしでかしてのうのうとよう生きていられぬ。全く恥ずかしい。こんなに早死にしたくない。これを書いているときに何度、この紙を破り捨てるようなことになってほしいと願っていたことだろう。できる限り生き続けたかった。青木には必ず返してやってください。お父ちゃん、裏切って悪かった。最後に好きな釣りでもして行きます。後のことはくれぐれも頼みます。                   雅宏  このように遺書があるのですが、本委員会で私も、いわゆる独禁法だけではなかなか対処できないということは申し上げ、ホリデイマジックの場合は勧告を受諾して何らかの救済が行われておると私は思うのですが、その後エー・ピー・オーにも立ち入りをされたわけであります。しかし、よしんば勧告をしても受諾をしなければさらに審判にかかるというようなことで、ますます被害というものが拡大してくるし、被害者がイコールまた加害者にも転化してくる。  こういうようなことになってきますと、どうしてもこの独禁法には限界があるように私は思うのです。公取委員長一生懸命がんばっていただいておることは私わかるわけですが、法自体に限界がある。ですから、どうしてもこれは新法をつくる必要がある。通産省でもこれは考えておられるわけです。まあ今国会には間に合わないとしても、もう時間がありませんから結論的にお伺いいたしますが、本当に来国会出されますか、どうなんですか。
  163. 和田敏信

    和田政府委員 昨年十二月に産構審の流通部会から、立法措置の内容を含めまして答申をいただいております。この立法に際しましては、国民の権利義務の問題、あるいは先生御指摘になりました他省庁との調整の問題等、いろいろなむずかしい問題が重々ございますが、これらの問題を解決いたしまして、次期通常国会に法案を提出することを目途としてせっかく努力中でございます。
  164. 近江巳記夫

    ○近江委員 ではこれで終わりますが、いま局長から御答弁ありましたように、来国会には必ず出して、どうかひとつそうした犠牲者をこれ以上出さないようによろしくお願いしたいと思うのです。  それからさらに、法案ができるまでまだこれは時間もかかるわけですし、しかし片一方ではそういうことがどんどん広がっているわけでありますから、これはもう文部省初め警察庁におきましても、特に青少年等が巻き込まれないように厳重な通達をしていただきたいと思うのです。監視をしていただきたい。それはひとつ内閣を代表して福田副総理に、このことは強く要望いたしたいと思います。ですから、最後に福田長官から決意を述べていただいて、終わりたいと思います。
  165. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 マルチ商法の問題につきましてはこの前もお答えしたわけですが、お答え申し上げました線に沿いましていま立法化の相談をしております。大分固まりつつあるというふうに聞いておりますが、成案を得次第、国会の御審議に付したい、かように考えます。
  166. 田中六助

    田中(六)委員長代理 宮田早苗君。
  167. 宮田早苗

    宮田委員 ただいまから質問をいたしますが、重複する面もございますけれども、その点は御理解の上、御答弁をお願い申し上げたいと思います。  せっかく福田経済企画庁長官がお見えでございますので、二、三御質問を先にさしていただきたいと思います。  さきにもそのお話が出ておりましたが、今月の六日に経済審議会総合部会の懇談会が開催をされて、新経済計画の骨組みができた、こういうことを聞いておるわけであります。同時に、福田副総理もそこにお出になったということも聞いておるわけでございますが、その中で、五十年代全体の年平均の実質経済成長率について六%前後を適当とすることで意見が一致した、こういうことを承っておるわけでございます。私はこの根拠をお問いしたいわけでございますが、何しろ、いま四次の不況対策ということで取り組まれておりますし、その効果というものがまだ不明の状態にございます。また、私ども聞いております範囲内では、個人消費を活発にするということ、これも当然のことかと思いますが、その最大の財源であります一時金あるいは賞与、この支給が大概のところ半額貯金、半額現金というようなことになっておるようでございます。極端なところになりますと、三分の一現金で、三分の二が貯金だ。分割払い、こういう傾向になっておりますので、その期待というのは不可能じゃないか、こういうふうに思いますと、せっかくの四次不況対策ということでございますけれども、案外にこの見通しというもの、か暗いのじゃないか。  そういう状態の中で、来年度から十年間の新経済計画のめどを六%ということにされた。これが適当だ、こういう考え方が出されたというところに大変疑問を感じておるところでございますが、そういうことを踏まえて、六%の根拠がございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  168. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 六%というふうにこの十カ年の年間成長率が決まったわけじゃないのです。その辺が妥当だとする意見が多かったという程度でありまして、まだ総合部会といたしましても部会としての結論を出しておる段階でもなし、まして経済審議会として結論を出しておる段階でもなし、まあいろいろ達観しまして、その辺かなという気分が多かった、こういうことのようです。私はちょっと顔を出しましたが、最後までおったわけじゃないので、円城寺部会長が記者会見をして新聞記者に語られたというところを新聞で承知しておるという程度でございます。  ただ、六%というのが出てきたということは、一つは、これからの日本経済の運営につきましては資源問題というのを何といっても考えなければならぬ。これは天井です。その資源の天井の中で、国際収支の問題だ、物価の問題だ、公害の問題あるいは国内の立地条件の問題、そういうことを考えながら適正な成長率ということを考えなければならぬ。それからさらに、雇用の問題ですね、これはまあ妥当な雇用水準というものを維持するにはどの辺が適当かという配慮も加えなければならぬ。さらには、世界経済が一体どういうふうな動きをするのだろうか、特に貿易の伸びが五十年代どういう動きになるだろうか、これも考えなければならぬ。いろいろそういう諸データを見て、皆さんのうち多数の人が、六%かな、こういうふうに考えた人が多かった、こういう段階でありまして、審議会はもちろんでございますが、政府の方でも、この辺が妥当だという考えを持ってまだ長期計画を見ておるという段階までいっていないわけであります。
  169. 宮田早苗

    宮田委員 もう一つお聞きいたしますが、この新計画は引き続き福祉型経済を目指すというようにされておるわけであります。そのために中福祉中負担ということが考えられておるようですが、この中福祉中負担とはどういうことを指しておるか、またどの程度かということに大変疑問を持つわけでございます。今日の福祉そのものが、果たして中福祉かあるいはまた中負担か、あるいは低福祉か低負担かという、こういうことまでやはり考えなければならぬのではないかと思いますが、この中福祉中負担の考え方をちょっと聞かしていた、だきたい。
  170. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今度、長期成長水準というものが決まってきます。これはどこまでも成長の水準の話でございますが、内容を問題にしなければならぬわけで、内容につきましては具体的な詰めをしなければなりませんけれども、非常に抽象的、基本的なことを申し上げますと、成長中心から生活中心へと、こういうような形にいたしたいというふうに思っておるわけです。つまり、経済がある水準で発展をする。発展をしますと、その成果というか果実といいますか、そういうものが出てくる。それがいままでの日本経済ではわりあいに次の成長というか、工場をつくるとかあるいは関連の諸施設をするとか、そういう方向につぎ込まれておりますけれども、そのかじを大きく変えまして、そして住宅でありますとか下水道でありますとか、そういう生活に関連した部面に投入するという方向になろうと思うのです。  それから同時に、これは財政の関係になりますけれども、いわゆる福祉政策、これにつぎ込むシェアというものを拡大させていきたい、こういうふうに考えておりますが、これはいまのいわゆる福祉諸施策の程度のものではないのです。もっと前進するわけですが、それが中福祉であるか高福祉であるか、これはまた国民の判断の問題だと思いまするけれども、より前進していく。それからそのためには、この経済成長の成果、そのシェアというものを福祉政策の方へ大きく重点を移していく、こういうふうな考え方でございます。
  171. 宮田早苗

    宮田委員 今日の経済状態は御存じのとおりでございまして、その点、福田副総理、経済企画庁長官に期待をするものが非常に大きいと思っておりますので、ひとつ格段の努力をしていただきたいということを希望いたしまして、大変お忙しいようでございますから、これで終わらせていただきます。  それでは、通産大臣にちょっとお聞きいたします。  五十一年度の通商産業政策が考えられておるようです。早急に適切な景気振興策を実施することによって景気回復を図って、わが国経済を安定的発展の軌道に円滑に乗せることが緊要である、こういうふうにされておるわけでございますが、いま福田経済企画庁長官がお答えになりました新経済計画の骨子の中にあります成長率六%へそして中福祉中負担の福祉型経済に対しまして、通産政策に掲げております諸政策が果たしてそれにマッチするものかどうか、これは多分に予測の御答弁ということになるかもわかりませんが、予測でも結構でございますので、六%に対します通産政策の考え方といいますか、そういう点について、せっかく新しい政策というものが出されておりますので、お答え願いたい、こう思います。
  172. 河本敏夫

    河本国務大臣 ことしの七月、通産大臣の諮問機関でございます産業構造審議会からは昭和五十年代の経済成長についての見通しという答申をいただいておりますが、それによりますと、六%の年もあれば七%の年もある、若干の上下はありますが、平均いたしまして昭和五十年代は六・六%の成長が望ましい、こういう答申をいただいております。  いま副総理のお答えになりましたのは、総理大臣の諮問機関の経済審議会における審議経過についてお述べになったわけでございますが、これは多分六%前後という意見が強いのでその見当になるのではないかというふうなおよその見通しだったと思いますが、これとても私は、六%になりますか、あるいはそれ以上になりますか、それ以下になりますかわかりませんが、一律にこの五カ年間の数字が決まるわけではない、こう思います。やはり経済状態を考えまして、それである年は若干高く、ある年は若干低く、こういうふうな幅を設けた、そして平均何%、こういうことになるのではないかと考えております。  まだ最終の数字が出ておりませんからとやかくは申し上げませんが、通産省といたしましては、やはり日本の場合には雇用問題が私は一番大事だと思っております。人口も多いわけですし、毎年数十万の人たちが新たに雇用を求めるという状態でございますから、この雇用問題を解決できるのはやはり経済でなければならぬ、こういうふうに思いますし、それからいまさつき福祉型経済というお話がございましたが、社会的不公正を是正するためにはやはり中小企業対策、あるいはまた農業対策、あるいはまた社会保障対策と、いろいろやらなければいかぬと思いますが、そういう社会的不公正を是正するに足る力ある発展でなければならぬと思います。  それから、ヨーロッパ諸国に比べまして社会資本の充実が非常におくれていることは御承知のとおりでございまして、やはりこの立ちおくれを回復するという力を持った経済でなければならぬと思いますし、それからアメリカに次ぐ経済大国としての日本の立場、責任というものは、発展途上国に対する援助、特に東南アジアに対する援助、日本と東南アジアの経済は非常に密接に結びついておりますので、こういう国々がわが国に依存するところが非常に大きいわけです。そういうことを考えますと、発展途上国に対してある程度の援助をする力を持った経済でなければならぬ、こういうふうにも考えます。さらにまた、エネルギー問題から産業構造の転換ということがこれからの重大課題でございますが、産業構造の転換をしますのには、やはり経済が気息えんえん、こういうことでは産業構造の転換はできないわけでございまして、やはり相当な勢いが必要である。  こういうことを考えますと、日本経済の成長というものは余り消極的に考えないで、公害問題などはどうしても解決しなければなりませんけれども、そういう諸問題を解決しながら、やはり日本が生きていく、あるいはまた成長していくということのためにふさわしい成長をどうしても達成するということが必要でありまして、目標を掲げて、困難な問題があればそれを解決していく、こういう積極的な対策でなければならぬ、私はこういうふうに考えております。
  173. 宮田早苗

    宮田委員 特に中小企業の問題についてお聞きいたしますが、何しろ長期にわたっております不況でございますだけに、最悪の状態というふうに見ておるわけでございます。第四次不況対策、これとともに金融の緩和の方向が打ち出されてはおりますが、例の興人が倒産をいたしましたのを契機に、金融機関は融資先を見直して、体質の弱い企業は融資が受けられぬというような傾向も見られるわけでございますので、この点について特に御指導が必要じゃないかと思いますが、どういうふうな指導をなさっておりますか、その点お聞きします。
  174. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 これから年末が迫ってくるにつれまして、いろいろ中小企業の方々の越年資金の需要がふえてまいるのではないかと考えております。特に政府系の三機関につきましては、今年度は年度初めに二兆五千億の融資枠、昨年は二兆円でございましたが、五千億ふやしまして二兆五千億の融資枠を組んだわけでございますけれども、年末の追加といたしまして、先般の第四次の不況対策におきまして四千八百億の追加を決定いたしまして、合計三兆円の融資枠にいたしておりますので、大体年末の需要にこれでこたえ得るのではないかというふうに考えております。  また、特にお困りの中小企業の方々で、従来の貸付金の返済を待ってほしい、こういう御要望がございますが、こういった方々につきましては、既往債務の返済につきまして極力弾力的に配慮するように、政府系の三機関につきまして強く指示をいたしておるところでございます。また、担保の徴求等につきましても、その評価等につきまして極力、特にお困りの向きには弾力的に取り計らうように指導をいたしておるところでございます。また、信用保証の面におきましても、保証協会の基盤を強化いたしまして、民間の借り入れにつきましての信用補完というものを活発に行っております。  また、民間の金融機関につきましては、先般年末金融といたしまして年末の融資の目標を設定いたしまして、全国銀行初め相互銀行、信用金庫等にも、その中小企業向けの融資枠の目標を確保するように、大蔵省の銀行局を通じまして指導をいただいておるところでございまして、こういった政府系並びに民間金融機関の両方の融資を待ちまして、倒産等が出ないように、無事越年できるようにいたしたいものと考えております。
  175. 宮田早苗

    宮田委員 これだけ不況が長期になりますと、企業の格差というものがますます拡大をしてきておるのではないか、こう思います。そのことによって商社、親企業の取引先、下請に対しまする再編成というものが進む、また進められておるものと思うわけでありますが、そうなりますと、再編をしたことによって賃金の格差という問題が起きてくる。特に雇用問題にも大きく波及すると思いますけれども、その点、お見えになっていると思いますが、労働省としての考え方を聞かしていただき、関連をいたしまして、この再編成に便乗をいたしまして最近大企業中小企業分野への進出というものが大変目立っておる、これはさっきも質問が大分ございました。特にクリーニング、軽印刷、メガネ製造、各製造関係等、その点顕著になっておるわけでございます。せっかく長い間かけて築き上げました中小企業がそういうことになりますと、大変残念じゃないかというふうに思っておるわけでございますので、そういう点についてもひとつ対策をお聞かせ願いたい。  特に、もう一つこれと関連するわけでございますが、事業転換について、ここまで参りますとそれも余儀なくされる場合もあるわけでありますが、そういう点についていろいろ対策を考えておいでになると思っておりますので、その点もひとつお聞かせ願いたい、この三つであります。
  176. 倉橋義定

    ○倉橋説明員 ただいま先生からお話がありましたように、現下の厳しい不況のもとにおきまして、中小企業を含みます多くの企業が深刻な影響を受けているわけでございまして、これに関連をいたしまして、特に人員の整理だとか労働条件の切り下げとか、いろいろな雇用に関係する問題が出てきているわけでございます。  労働省といたしましては、さきの国会におきまして御成立いただきました雇用保険法に基づく雇用調整給付金制度を活用いたしまして、職業安定機関が中心となりまして、関係の企業、使用者の方に対しまして、できるだけ人員の整理、労働者へのしわ寄せのないよう、また失業、解雇ということにならないようないろいろな指導をしているわけでございます。  また、事業主がこれらの努力によりましてもなかなか業務の運営ができないという場合におきまして、事業の転換をするというような場合につきましては、労働者の方々の職業の変更と申しますか、転換を促進するための訓練を実施する場合におきまして、必要な訓練の助成をする、雇用者が離職しないで、そのまま在職の形で雇用の安定を図りながら職業転換が図れるような措置も講じてきているところでございます。  このような使用者の努力に期待するところが多いわけでございますが、いろいろな労働条件の問題等につきましては、やはり使用者の努力と、さらにはそれに関係する労働者の方々の協力もまた必要でございまして、労使が忌憚のない話し合いが行われまして、そこでいろいろな雇用問題の解決の方向を出して、それによって実施されることを期待しているわけでございますが、何せこれらの問題につきましては非常に大きい問題でございまして、各種の事業主、業種等がございます。そういうものにつきましては、今後ともそれらの業種の実態を見ながら、きめの細かい指導をしてまいりたいと思いますが、仮に使用者の方が法にもとるような解雇なり労働条件の切り下げを行うような場合につきましては、労働基準監督機関におきまして、法に基づきます厳正なる監督、指導をもって臨むという態度で今後とも実施してまいりたいと思っております。
  177. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 分野調整の問題について御質問があったわけでございますけれども、私どもは、中小企業が主として活動しております分野に大企業が進出をしてくる、その進出の仕方が非常に大規模、急激等でございまして、中小企業の活動に重大な影響がある、こういうケースにつきましては、現行の中小企業団体法の活用を図り、さらにこれをバックといたしまして適切なる行政指導を図ることによりまして、大企業中小企業の調和のとれた発展を図るようにいたしたい、かように考えまして、行政指導を従来ともやってまいったところでございます。  ただいま御指摘のございましたクリーニング、たとえばエーデルワイス問題というものがございましたが、これも解決を見ております。また、軽印刷の問題ではQプリント問題というものがございましたけれども、これも大体解決を見ております。今後ともこういった行政指導を機動的に行うことによりまして、調和のある発展を図ってまいりたいと考えております。  なお、明年度の施策といたしましては、特に情報を早くキャッチする、こういう趣旨から、全国の商工会議所にモニターを置きまして、そこで情報を早くキャッチしていただく、また調整を行うにつきましての実情を商工会議所で調べていただいて、参考となる情報を関係官庁に届けていただく、こういう関係の予算を要求いたしております。また、各通産局に一名ずつ並びに中小企業庁に二名専門の調停官を設けたいというふうに考えております。それから、全国の都道府県に分野調整関係の調停審議会を設置していただきまして、地方的な問題についてそこにお諮りをして調整を行う、こういうふうなやり方をとってまいったらどうかというふうに考えておるところでございます。  次に、事業転換の問題でございますが、過去に、昭和四十六年の円の切り上げ並びに四十八年の春のいわゆる変動相場制に円が変わりましたときに、特に輸出に依存しております中小企業が非常に影響を受けましたので、それの転換等につきましていわゆるドル対法というものを制定いたしまして、これによって、特に影響を受けました中小企業が他の部門に転換する場合に、税制、金融面での特別措置を講じたわけでございます。現在もこの関係の措置は継続を見ておるところでございますが、最近このほかにも輸入が急増いたしまして困っておられる業界がございます。それから、公害の規制の強化に伴いまして、この際転業をしようかというようなことを考えておられる業種もございます。また、いろいろな事情によりまして原材料が、海外から仰いでおったのが入手が困難になってきた、そのために事業の継続が困難になってきた、こういう業界もございます。  こういった各種の、本人の努力の限度を超えまして、そういった外的な環境の変化によりまして転業を余儀なくされておる、こういう業界につきまして、そこの業界に属する中小企業の方々が転業をしたいという場合に、この転業をスムーズに運びまして、より成長性のある事業分野の方へ転換をしていただくということを促進することも必要ではなかろうか、かように考えまして、現在こういったものにつきましての転換対策の立法の検討を続けておりまして、中小企業近代化審議会にお諮りいたしまして、いまその助成のあり方について御検討願っておるところでございます。その答申をいただきまして、できますれば来春の通常国会にこういった転換対策につきましての新しい法案を御審議をお願い申し上げたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  178. 宮田早苗

    宮田委員 時間の制約がございますので、あと一点で終わらせていただきます。多分に要望も含めて質問をさせていただきます。  中小企業の大部分を占めております小規模事業、商業の安定と振興は、今日の段階では特に重要課題であろうと思います。したがって、経営の安定を図るために小規模企業経営改善資金貸付制度を改善してほしい。貸付限度額を引き上げる考えをお持ちならそれを説明していただいて、次に、政府系三金融機関の貸し付けの利息でございますけれども、これはやはり引き下げてもらわなければならぬ、同時にまた、貸付限度額を引き上げるというような対策も立てていただければ幸いだと思います。  もう一つは、信用保険制度の充実を図るために、特別小口保証制度の保証額の引き上げ、無担保保証額も上げてほしい。また、保証料の引き下げを考えてもらいたい。  以上、多分に要望的なことを申し上げましたが、これに対する考え方がありましたら、最後にひとつ御答弁願いたいと思います。
  179. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 小規模企業の経営改善資金の融資制度の改善でございますけれども、御承知のように、この資金は、無担保、無保証で一人当たり二百万円を限度として融資をいたしておる制度でございまして、大変に小規模企業の方々に歓迎をされて利用されております。昨年度は年間融資枠千二百億円でございましたけれども、今年度は二千四百億円の倍額に増額をいたしまして、また一件当たりの融資の限度につきましても、特に運転資金につきましては、従来一人当たり五十万円が限度でございましたのを百万円に引き上げたのでございます。それから融資の期間につきまして、従来、設備資金につきましては一定限度以上の額のものについて三年ということにいたしておりましたけれども、今年度からは一律に設備資金はすべて三年というように延長を図っております。明年度は一応三千四百億円の融資枠を大蔵省にお願いいたしておりまして、また、その貸付条件につきましてもいろいろ改善方をお願いいたしております。ぜひその実現を図りたいというように考えておるところでございます。  それから、政府系の三機関の融資限度の引き上げの件でございますが、三機関の普通貸し付けの融資限度は実は今年度引き上げたばかりでございまして、たとえば中小公庫の場合には、従来、昨年度までは八千万円でございましたのを、一億円に拡大をいたしまして、また、国民金融公庫は一件当たり八百万円が限度でございましたのを一千万円に、この四月から拡大をいたしたわけでございます。商工中金につきましても、組合については八億円から十億円に、組合の構成員は八千万円から一億円に拡大をいたしたばかりでございますので、いましばらくこの限度で運用をいたしまして、この限度の引き上げにつきましては今後の研究課題とさせていただきたいと考えております。  それから、信用保険の充実につきましては、ことしも二百三十億円保険公庫に出資をいたしまして、それを原資といたしまして保険料の四%引き下げを図ったわけでございます。その結果、全国の信用保証協会の昨年までの保証料が平均で申しますと大体一・一八%でございましたけれども、今年度からは平均して一・一%に、約〇・一%弱引き下げを見ておるところでございます。来年度もこの保険公庫に対する出資をさらに増額いたしまして、できましたらさらにそれをもとにしました保証料の引き下げを推進してまいりたい、かように考えております。  それから、保険の限度につきましては、特に無担保、無保証によります特別小口保険の関係は、現在は百五十万円の限度がございますところを二百五十万円に引き上げるべく、この臨時国会に改正法案を提案いたしまして、御審議をお願い申し上げたいと考えておるところでございます。  無担保保険と輸出保険につきましては、昨年限度を引き上げたばかりでございまして、現在の利用の状況から見ますとまだ相当余裕がございますので、その限度の引き上げにつきましては今後の検討課題にいたしたいというふうに考えております。
  180. 宮田早苗

    宮田委員 終わります。
  181. 田中六助

    田中(六)委員長代理 次回は、明十二日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十九分散会