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1975-12-11 第76回国会 衆議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十一日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 大野  明君    理事 菅波  茂君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 戸井田三郎君    理事 葉梨 信行君 理事 枝村 要作君    理事 村山 富市君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    大橋 武夫君       瓦   力君    小林 正巳君       田川 誠一君    田中  覚君       粟山 ひで君    山口 敏夫君       金子 みつ君    田口 一男君       田邊  誠君    田中美智子君       寺前  巖君    大橋 敏雄君       岡本 富夫君    小宮 武喜君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 田中 正巳君  出席政府委員         厚生省環境衛生         局水道環境部長 山下 眞臣君         厚生省医務局長 石丸 隆治君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 曾根田郁夫君         社会保険庁医療         保険部長    山縣 習作君         社会保険庁年金         保険部長    河野 共之君  委員外出席者         警察庁交通局運         転免許課長   八島 幸彦君         行政管理庁行政         管理局審議官  加地 夏雄君         大蔵省主計局主         計官      梅澤 節男君         厚生省環境衛生         局水道環境部環         境整備課長   山村 勝美君         運輸省自動車局         整備部車両課長 宇野 則義君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十一日  辞任         補欠選任   二階堂 進君     加藤 紘一君     ――――――――――――― 十二月九日  婦人労働者生活保障及び母性保護に関する請  願(小林政子紹介)(第三三五〇号)  同(田中昭二紹介)(第三四五〇号)  障害者生活及び医療保障等に関する請願(諌  山博紹介)(第三三五一号)  同(石母田達紹介)(第三三五二号)  同(柴田睦夫紹介)(第三三五三号)  同(寺前巖紹介)(第三三五四号)  同(土橋一吉紹介)(第三三五五号)  同(平田藤吉紹介)(第三三五六号)  同(増本一彦紹介)(第三三五七号)  同(安里積千代紹介)(第三三九二号)  同(梅田勝紹介)(第三三九三号)  同(大久保直彦紹介)(第三三九四号)  同(大橋敏雄紹介)(第三三九五号)  同(木下元二紹介)(第三三九六号)  同(鈴切康雄紹介)(第三三九七号)  同(瀬崎博義紹介)(第三三九八号)  同(津川武一紹介)(第三三九九号)  同(寺前巖紹介)(第三四〇〇号)  同(野間友一紹介)(第三四〇一号)  同(東中光雄紹介)(第三四〇二号)  同(松本忠助紹介)(第三四〇三号)  同(三谷秀治紹介)(第三四〇四号)  同外一件(小沢貞孝紹介)(第三四〇五号)  同(有島重武君紹介)(第三四五九号)  同(折小野良一紹介)(第三四六〇号)  同(野間友一紹介)(第三四六一号)  同(不破哲三紹介)(第三四六二号)  同(松本善明紹介)(第三四六三号)  同(勝澤芳雄紹介)(第三五二四号)  同(勝間田清一紹介)(第三五二五号)  同(小林信一紹介)(第三五二六号)  同(佐藤敬治紹介)(第三五二七号)  同(斉藤正男紹介)(第三五二八号)  同(下平正一紹介)(第三五二九号)  同(田邊誠紹介)(第三五三〇号)  同(中川利三郎紹介)(第三五三一号)  同(野間友一紹介)(第三五三二号)  同(原茂紹介)(第三五三三号)  同(平林剛紹介)(第三五三四号)  同(広瀬秀吉紹介)(第三五三五号)  同(藤田高敏紹介)(第三五三六号)  同(細谷治嘉紹介)(第三五三七号)  同(堀昌雄紹介)(第三五三八号)  同(松浦利尚君紹介)(第三五三九号)  同(武藤山治紹介)(第三五四〇号)  同(八木昇紹介)(第三五四一号)  同(山本政弘紹介)(第三五四二号)  雇用、失業対策確立に関する請願(佐々木更三  君紹介)(第三三五八号)  同(佐野進紹介)(第三四〇九号)  全国一律最低賃金制確立に関する請願(森井  忠良君紹介)(第三三五九号)  同(佐々木更三君紹介)(第三四〇七号)  同(佐野進紹介)(第三四五八号)  建設国民健康保険組合に対する国庫補助増額に  関する請願外一件(江田三郎紹介)(第三三  六〇号)  同(佐野進紹介)(第三三六一号)  同外三件(日野吉夫紹介)(第三三六二号)  同(山崎始男紹介)(第三三六三号)  同(八木昇紹介)(第三三六四号)  同(山本幸一紹介)(第三三六五号)  同(江田三郎紹介)(第三四一一号)  同(大久保直彦紹介)(第三四一二号)  同(不破哲三紹介)(第三四一三号)  同(山崎始男紹介)(第三四一四号)  同(江田三郎紹介)(第三四五二号)  同(大柴滋夫紹介)(第三四五三号)  同(日野吉夫紹介)(第三四五四号)  同(不破哲三紹介)(第三四五五号)  同(山本政弘紹介)(第三四五六号)  同(江田三郎紹介)(第三五一九号)  同(堀昌雄紹介)(第三五二〇号)  同(山本政弘紹介)(第三五二一号)  老人医療費無料化年齢引下げ等に関する請願  (板川正吾紹介)(第三三六六号)  同(高田富之紹介)(第三三六七号)  同(板川正吾紹介)(第三四五一号)  同(板川正吾紹介)(第三五二二号)  同(高田富之紹介)(第三五二三号)  保育予算増額等に関する請願中島武敏君外一  名紹介)(第三三六八号)  付添看護婦身分保障に関する請願大橋敏雄  君紹介)(第三四〇六号)  療術の制度化反対に関する請願外二件(細田吉  藏君紹介)(第三四〇八号)  同(粟山ひで紹介)(第三五一八号)  保育事業振興に関する請願堂森芳夫紹介)  (第三四一〇号)  せき髄損傷者に対する労働者災害補償保険の給  付改善に関する請願大橋敏雄紹介)(第三  四一七号)  児童福祉法に基づく学童保育制度化に関する  請願平田藤吉紹介)(第三四四九号)  労働者災害補償保険法施行前の労働災害による  せき髄損傷者に対する給付改善等に関する請願  (吉田法晴紹介)(第三四五七号)  皇法学師の認可に関する請願吉田法晴君紹  介)(第三四八四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 大野明

    大野委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田口一男君。
  3. 田口一男

    田口委員 きょうはひとつ大臣昭和五十一年度の予算編成大詰めを迎えておるという情勢でありますので、特に年金の問題にしぼってお伺いをしたいと思うのですが、まずその前に、ことしの八月に概算要求を出された厚生省予算のあの分厚い資料の中に、医療問題その他と同じように年金の問題だけ空欄になっておるわけですね。まだ関係方面意見調整がなされていないということはわかるのですが、あれから約百日たったのですから、大詰めを迎えた今日、特に年金関係について大体話がまとまっておるのかどうか、そのことをまずお伺いしたいと思います。
  4. 田中正巳

    田中国務大臣 先生いま、予算編成大詰めに来たというのですが、まだ内示がございませんで、これからでございます。そこで、年金医療保険につきましては、御承知のとおりいろいろフラクチュエートする要素がございますので、いまだ正式に予算要求をしておらないという状態でございます。しかし、時期も時期ですからだんだんと詰めていかねばならぬということでございまして、いまいろいろ作業を急いでいるわけでございますが、細部についてまだ詰め切らないものもございまして、いまだ決定的なワンパッケージ予算要求というものはいたしておらないというのが現状でございます。
  5. 田口一男

    田口委員 詰めが十分されていないというその理由について、新聞なんかの報道から推察をするところによれば、厚生年金国民年金について、保険料の問題も含めて、二、三度新聞に発表がされておるわけですね。たとえば、あれはいつでしたか、「予想される主な改正点」という、これは新聞の見出しです。厚生年金については、モデル給付額現行の約七万三千円から八万四千円程度に引き上げるとか、遺族年金の問題であるとか、障害年金改善の問題であるとか、こういったやや突っ込んだ改正点が公表されておるのでありますけれども、この中で福祉年金の問題について実は出されていない。  この福祉年金の問題についてしばらくひとつ大臣年金局長お尋ねをしたいのですが、五十一年の年金改定という時期を前にして、それが大幅になるか小幅になるかは別として、今日までの本委員会におけるいろいろなやりとり、それから七十五国会における予算委員会での年金性格についてのやりとり、こういった経緯から考えますと、やはり五十一年の抜本改正という際には老齢福祉年金というものについてはっきり位置づける、性格を明らかにする、これが一番大事な問題になるのではないのか、こう思うわけです。したがいまして、いろいろな発言もあるのですけれども、ひとつおさらいという意味を含めて、この老齢福祉年金性格づけについていま大臣はどのように考えてみえるのか、五十一年度の予算ということも頭に置いてお答えをいただきたいと思います。
  6. 田中正巳

    田中国務大臣 初めに、年金に関する改善についての新聞報道でございますが、いずれも私も読んでおりますけれども、別に確たるものではございませんで、いろんな話が、この間に事務当局とわれわれの間で話をしたものがございますが、そうしたものが大分時間がおくれて実は予想記事として報道をされているもののごとくでございまして、信憑性のある確定的な報道はまだないというのが実態でございます。  それから、福祉年金につきましては、これは先生御存じのとおり、最初拠出制年金に乗らないような、乗れないような人々に対して補完的な年金だ、こういうことで、俗な言葉で言うと、下世話で言うと、気は心というようなところから始まったものである。それは発足当時に月額千円といったようなところから始まったことを見てもその思想がうかがい知れるわけでございますが、次第に福祉年金というものに対する世間考え方が微妙に変化をしてきていることだけは事実でありますし、われわれもまたこれを踏まえなければならないということだろうと思います。  そこで私どもは今日のところ、福祉年金性格というものをどこに位置づけるかということについていろいろと模索をしておりますが、現実問題として確たる物の考え方、テーゼというものがまだ定着をしておらない。ただ、初期のころのようないわゆる敬老的な思想だけでは押し通せない。ここで老後生活をある程度補完するに足るものというようなことを考えて、最近福祉年金の額の計上をやってきたことは事実でございます。これをさらに抜本的に位置づけるかということについては、理想もございますし、また財源の問題もあります。そうすると、理念だけが先に出て現実がこれに伴わないということはかえってぐあいが悪いということだろうと思いますので、いましばらく、実際問題として今日の制度のような一般会計に一〇〇%依存するという場合には、やはりいま私が申したような老後生活設計のある程度支えになるものといったような考え方で進まざるを得ないのじゃないか。また明年もそうした考え方の上に立って、どういうふうな給付が適当であろうかということを考える以外に方法がなかろうというふうに実は思っているわけであります。
  7. 田口一男

    田口委員 そうすると、本年春の予算委員会でのやや突っ込んだ御答弁と比較をいたしますと、いまの大臣お答えは、後ろ向きとは言いませんけれども、まだまだこの福祉年金性格について抽象的過ぎるのではないのか。たとえば、これはもうすでに御存じだと思うのですが、四十八年十二月の国民年金審議会、この意見書に述べられておるところは、一応読んでみますと、「単に敬老的な額のものから、できるだけ生活保障的色彩が加えられるべき段階にきていると認められる。」これは四十八年の意見ですね。ところが、同じ国民年金審議会の本年の意見によれば、「老齢福祉年金年金制度における位置づけを明らかにし、できうれば、この際水準設定についての基本的な考え方を明確にすることが望ましい。」私は、四十八年と五十年の審議会意見書を比べた場合に、四十八年の場合には、いま大臣が前段にお答えになったように、敬老的なものから所得保障的なものに切りかえるべきじゃないかといったところにウエートがかかった意見だと思うのです。ところが、五十年の意見の場合には、いま大臣の、抽象的と私は言いましたけれども、四十八年に比べてややぼやけた、まあもっと検討して性格づけをはっきりしろ、こういうふうにやや後退しておる意見だと私なりに見たわけです。  そうしますと、まあ平たい言葉で言えば、老齢福祉年金というものはいま大臣お答えになったように補完的なものだ、経過的なものだ、やがては老齢福祉年金を受ける対象の者が、昭和八十年と言われておるのですが、いまから三十年程度すればゼロになってしまう、以降は拠出制年金受給資格の者ばかりだから、まあまあその間ひとつ、財政の問題もあり、このままで済ましていこうということではないかと思うのですね。三十年間という期間をですよ、極端に言えば。  そこで整理をして言えば、金額の面では、一定水準生活を維持するという考え方は、はっきり言ってこの老齢福祉年金には政府の側としてはまず持っていない、こうきめつけても私はいまの段階では言い過ぎではないと思うのですが、その辺どうですか。
  8. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 最初に、国民年金審議会意見書の四十八年と本年八月のニュアンスの相違についてお尋ねがございましたので、この審議会審議全体を、私出席いたしておりましたので率直に申し上げますと、最後先生お尋ねの、福祉年金目途としては生活保障的な方向を目指すという基本的考え方には変わりはございませんけれども福祉年金のあるべき姿として、特に福祉年金がいわば先走りと申しますか独走といいますか、そういうような形で拠出制年金水準が決められるようなことは問題ではないかという御意見が非常に強くございまして、もちろんこれと異なった意見委員もおられましたけれども、多数意見としては、そういう現行福祉年金国民年金法の中における位置づけを踏まえた、いわば筋論として、福祉年金設定のルールについてかなり批判があったことは事実でございます。しかしながら、長期的な福祉年金の志向する生活保障的な方向ということについては、四十八年当時と変わっておらないというふうに私どもは受け取っております。ですから、最後お尋ね政府見解云々ということにつきましても、基本的な方向としてそういうことを目途改善を図っていく。ただその場合に、そのときどきの財政事情等もございますから、あるいはテンポが緩やかになったりというようなことは一般論としてあろうかと思いますけれども、長期的な方向として目指すところは変わってないというふうに御理解願いたいと思います。
  9. 田口一男

    田口委員 そうすると、さっき私は最後お尋ねをしましたように、この老齢福祉年金水準という金額ですね、これは一定水準生活を維持できるしろものなんだ、またそうしなければならぬ、それはいつの日か、なるべく早くという意味合いですけれども、そういう考え方をいまお持ちなんですか。
  10. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 この一定水準生活を確保ということは非常にむずかしい問題でございますけれども、いずれにしても単なる敬老的なものでなくて、老後生活のある程度支えになるという意味生活保障的なものを目指す。しかし、具体的な水準は、先ほど申し上げましたように、やはり現行福祉年金性格を前提とする以上は拠出制年金の補完的なものでございますから、まず拠出制年金レベルがどのように決められるか、経過年金レベルがどう設定されるか、それとのバランスということは当然補完的な性格である以上考えなければいけませんので、そういう総合的なバランスを考えてそのときそのときの水準設定していかなければいかぬのではないかというふうに考えております。
  11. 田口一男

    田口委員 この一定水準生活という一定水準金額で幾らに置くか、これが当面問題になってくるわけなんですが、ちょっと参考までに、これは本年の敬老の日に出た、私の地元の伊勢新聞というところに投稿があったのですが、養護老人ホーム指導員からの短い文ですからちょっとお聞きをいただきたいのですが、養護老人ホームに入っておった七十九のおばあさんが脳卒中で急死をしたというのですね。その前後がずっとあるのですが、そこで、亡くなったYさんという方が生前こういうことを言っておったというのですよ。病気になって入院すると金が要る、さらに、死んだ場合には葬式代ぐらいは自分で残さなくちゃということを口ぐせに言っておった。御存じのように、養護老人ホームに入ってみえるお年寄りは、いろいろな生活の問題は養護老人ホームで出ますから、支給される老齢福祉年金はどう使おうと勝手ということですね。ですから、この老人ホーム指導員の文面によると、まあいろいろあって、たとえば酒なり競輪なり、または貯金をしたり、いろいろあるそうです。ところがこの亡くなったYさんの場合には、いま言ったように入院費葬式代ということを考えてためておったそうなんですが、幸か不幸か、死因がいわゆるぽっくり病、ですから入院する必要もなかったし、もうすぐに葬式。ところが葬式費用そのもの老人福祉の方で大体四万余り出たために、その金も要らなかった。だから、入院費だ、葬式代だと言ってためてきた金はそのまま宙に浮いてしまったということですね。  ここで宙に浮いてしまったことを言うのではなくて、この養護老人ホーム指導員が特に強く指摘をしておることは、一体老齢福祉年金というものは養護老人ホームに入ってみえるお年寄り状態から見て、これは限られたことかもしれませんけれども一体死を迎えるための費用なのか、何だろうという疑問を端的に言われているわけです。もし仮にぽっくり病でなくて長患いをするような場合には、これは御存じだと思うのですが、差額ベッドということもあるし、それから付き添いの方には謝礼も出さなければならない。こういうことは当然に公費の負担がないのですから、養護老人ホームに入っているとはいえ自分で出さなければならぬ。そういったことを考えて、当時月額で七千五百円ですから一日二百五十円、いま四百円、こういった金をぽつりぽつりと貯金をする。しかも、この貯金をすることは、いま言ったように死を迎えるための費用としてためておった。これではせっかくの老齢福祉年金が何になるのだ。むしろ積極的に生きる喜びを感じられるような老齢福祉年金というものにする必要があるのじゃないかということを切々と、この新聞に投稿した指導員が言っておるわけです。くどいようですが、養護老人ホームということですから、在宅の方とかそういった方とは多少趣が違うと思うのですが、一万二千円になったいまの老齢福祉年金というものが、生きるための喜び年金ではなくて、大多数のお年寄りはそういった死を迎えるための準備の金としてためておるのじゃないか。こういうことを考えますと、一定水準生活の維持ということで、いろいろな財政の制約その他のむずかしい問題があると思うのですが、この際、審議会意見書もあることですから、一万二千円よりさらに上乗せをするということが、こういった養護老人ホーム指導員なんかの毎日毎日見ておるそういう気持ちに具体的にこたえることにもなるのじゃないか、こう思うわけです。  そこで、本年の予算委員会大臣とわが党の委員との間にいろいろなやりとりがありましたけれども、その際に二万円という数字が養護老人ホームなんかの状態を考慮に入れて出されたのです。まだ予算要求として固まっていない段階なんですが、いま大臣の頭の中にある老齢福祉年金の額としては一体どんなものか。ここのところをひとつ明らかにしていただきたい。二万円と言ったけれどもどうも……というふうなことであれば、私ども予算委員会発言を盾にとってなじるというよりも後押しをする。二万円ということは少なくともこの段階では世間周知の事実なんです。これから一万二千円が少なくとも二万円になるだろう、こういう期待感を持っておるのですから、それにこたえる決意のほどをまず示していただきたいと思うのであります。
  12. 田中正巳

    田中国務大臣 福祉年金性格は、従来のような敬老的なものであってはいけない、生活のある程度支えになるものにしたい。また現実にそういう方向に向かって志向して今日まで積み上げてきたことだけは事実だろうと思います。しかし、これを一体どの水準に持っていくのがよろしいかということについてはいろいろ議論があるところであります。  そこで、これについては実際問題と理想というものとがいろいろと混淆をするのじゃなかろうかと思うのであります。私としても、やはり国民老後を何とか快適に守ろうという気持ちでいっぱいでございますから、老齢福祉年金については、老後生活を全部支えるだけのものになれるかどうか――これは将来問題ですが、そこまていけるか、あるいはその相当部分支えるようなものになれるか、いろいろ財源問題と絡み合わせて考えていかなければなるまい。理想としてはできる限り多い方がよろしいというふうに私は思っております。しかし、何分にもいま一般会計ですべてを支弁しておる制度でございますので、この金額、一万円を支給するためには六千億かかると言われる膨大な一般会計財源を要するものでございます。したがいまして、給付をわれわれの理想の姿に持っていくためには、今日の一般会計にすべてを依存するという制度ではむずかしいものというふうに思っているわけであります。  したがいまして、私が多賀谷先生の御質問に対してお答えをいたしたのも、給付金額としてはその程度のものがよかろう、決して多賀谷さんの御主張について反対はするものではないというふうに考えてそういうふうにお答えをいたしたわけでありますが、その手法については、それを実現するための具体的な方策についてはいろいろ検討をしなければなるまい。したがいまして、その財源一般会計のみに依存する場合は非常にその時期に到達するのが遅くなるであろう。また、今日のような低成長下に入りますとなおのこと、そういったようなことについての実現がおくれるであろうというふうに考えられるものですから、そうした理想を実現するためには、福祉年金を含めて、財源の求め方、財政方式等々をこの際相当根本的に考究をし直さなければそうしたようなことが実現できないというふうに考えているわけです。そうした角度から私ども理想とする福祉年金というものについての実際の額を策定するように求めていかなければならないというわけで、せっかく今日腐心をしておるわけでございます。
  13. 田口一男

    田口委員 そうすると、ずばり申し上げて、これから対大蔵省との予算折衝、こういった中で大臣がどうしてもとらなければならぬ、実現しなければならぬという老齢福祉年金金額、この十月から一万二千円、これを二万円にするのか一万五千円にするのか、こういったことについてもまだ固まっていない。まだ固まっていないというよりも、ここで言える段階になっていない、こういうことなんですか。
  14. 田中正巳

    田中国務大臣 率直なことを申し上げますと、時期が時期なものですから、事務当局から大臣の判断を実は求められておりますが、非常に重大な問題ですからしばらく考えさせてくれと言って、まだ事務当局にも私は指示をいたしておりません。したがいまして、今日段階では私がせっかく考えておるところでございまして、事務当局にもまだ指示をしていない段階でございますので、委員会等で申し上げる段階に来ていないというのが正直なところでございます。  ただ、ここで申し上げ得ることは、こうした、われわれの理想とする福祉年金金額というものを実現するための財政方式なり財源論というものを、基本的に改めていくということについては時間がございません。いまにわかにこれをやろうとしても、もう旬日を控えた予算折衝でございますので、そうしたことでなしに、明年はやはり一般会計方式によらざるを得ないのじゃないかというふうに思います。そうしたことを念頭に置きながら、一般会計で今日の財政で幾ら出せるであろうか、また幾ら出すべきであろうか、どこまで努力をすべきであろうか、いろいろ思い悩んでいるというのが今日の私の心境でございます。
  15. 田口一男

    田口委員 まだ固まっていないというのですから、幾ら追い込んでも本委員会では金額を明示してもらうということは無理なようですが、じゃ、たとえばということにしますけれども、確かに、低成長下、連日の新聞財源難、財源難ということをほえ立てておる、こういう中で五十一年度は従来と同じように老齢福祉年金財源は一般財源に求めざるを得ないであろう。そうすると、一万円で六千億かかる。仮に本年の予算委員会の二万円ということにすれば、大ざっぱな数字として一兆二千億、こういう数字になるのですが、先月ですか、大臣、札幌で発言をされたということがいろいろと新聞その他に出まして、基礎年金構想とかいろいろなことが出されたのですけれども、それは六十五歳以上、昭和五十二年度ごろからという、来年、再来年の構想のようなんですが、ここで百尺竿頭一歩を進めて、そういう基礎年金構想、これは他の公的年金との絡みもありますから大変むずかしいと思うのですが、本年の本会議でわが党の赤松副委員長が提言をされたような、これもたとえばですけれども、ひとつ厚生年金の剰余金からそれを老齢福祉年金に持っていく、こういったようなことでも工夫ができれば、二万円なり、いわゆる一定水準生活を維持できるような金額に近づける、そういうお気持ちはおありですか。
  16. 田中正巳

    田中国務大臣 いま先生のおっしゃるようなことを具現をいたしたいということでいろいろ知恵をしぼっているその一こまが、あの例の基礎年金というような手法をいろいろ考えて、こういったようなものもどうであろうかという構想でございまして、したがって、私どもが何とか、当時拠出制に乗れなかった人たちに対して給付金額を上げてあげたいものだということから知恵をしぼっている、その一つのアイデアであるというふうに御理解を願い、いろいろと今後御検討を賜りたいというふうに思うわけであります。五十二年と、あれはどうも記事が正確でありませんで、できるだけ早くやりたいものだ、五十一年には間に合いませんよ、こう申し上げたのですが、それがああいうふうに報道をされているわけであります。  それから、これを、いま言ったようなのを積立金を借りるということについても、技術的にいろいろめんどうがございますし、理論的にも問題が実はいろいろあるわけでございます。さらに、この場合、経過年金との関連をどう考えるかといったような問題もあります。まさか経過年金の方が福祉年金より低いというわけには実はいかないという問題もありますし、広範囲かつ周到な作業を展開をしなければなるまいというふうに思っておるわけでございまして、そうした、いま先生が主張するような御意見について、それに近いものにするようにわれわれはあらゆる角度からこれを検討し、努力をいたしたいというふうに思っていることは間違いがございません。
  17. 田口一男

    田口委員 では札幌発言の問題は、ここでは時間の関係もありますから追及はしませんし、私ども考え方もここでは述べませんけれども、旬日に控えた予算折衝のいまの時期にまだ思いあぐねておるということでは、結局余り期待は持てぬということですね。  さらに、いま私は老齢福祉年金に限って言っておるのですが、そうすると、拠出制年金の場合、厚生年金国民年金も含めて、さっきちょっと新聞の記事を申し上げましたけれども厚生年金七万三千円を八万円くらいにするとか、どうだこうだと言っているのですが、じゃ、来年の繰り上げられた財政抜本改定と言われておるのは、当初大臣がこの委員会なりなんなりでお述べになったことは文字どおり相当抜本的というふうな受け取り方をしたのですが、いまの老齢福祉年金に対する考え方なんかから推しはかってみますと、来年の抜本改定そのものはどうも竜頭蛇尾ということになってしまうような気がするのです。単なるいまの制度の手直し、物価スライドがあったからそれに見合うような、逆算的に標準報酬を見直したり、そういった程度の改正でお茶を濁してしまう、こういう気がするわけです。  しかし、具体的な問題でこれははっきりひとつお答えをいただきたいのですが、私が三月二十六日のこの委員会でも年金の問題で質問をした際に、大臣お答え遺族年金についてはいまの五割を、他の絡みもあるけれども七割から七割五分程度までというふうな、そういう具体的な数字を挙げてのお答えがあったと記憶をしておるのですが、新聞発表によっても、遺族年金は五〇%支給から七〇%程度に引き上げるという報道をされております。これは根拠が全くないとは言えぬと思うのですね。この遺族年金について、最近の財政制度審議会では、恩給その他に波及することがひどいから現状のままにすべきだというふうな提言もある。ところがあれに負けてもらっては困ると思うのですね。この遺族年金についてどうですか、確たるお答えをいただきたいと思います。
  18. 田中正巳

    田中国務大臣 遺族年金の五割というのについては、諸般の事情にかんがみてこれを引き上げをいたしたいというふうにかねがね考え、私もまた衆参両院の委員会で御答弁を申し上げているわけであります。ただいまもその所存には変わりはございません。ただ、新聞等で、財政当局がかなり強く異論を唱えていることも事実のようでございます。しかしわれわれとしては初心に向かって進みたいものであるというふうに思って、これについては相当かたい決意で予算折衝に臨もうというふうに考えております。  まあ、財政制度審議会、いろいろおっしゃいますが、私も二十年間社労の委員をしておりましたが、いつでも予算折衝期の直前になりますると、われわれが余りおもしろくないことをいろいろと報道をされるわけでございまして、これに注意はしなければなりませんけれども、一々あのようになるということでは私が大臣をしている意味がないのでございまして、あれをぶち破ってこそ私はやはり厚生行政の責任者になれるというふうに思っておるわけですが、しかしこれにはやはり細かい議論がいろいろあるようでございます。たとえば遺族年金の仕組みというものが、諸外国と比較して日本の場合非常にイージーになっているとか、あるいは一体同じ遺族であってもいろいろな態様のものがあるではないかというふうな、いろいろな議論がございますが、そうしたことをいろいろいま考究をいたしまして、ともあれ遺族年金が五割であるというふうなことについては、これを改善をいたしたいということでひとつ大いに努力をいたしますので、委員諸君の非常な御支援をお願いをいたしたいというふうに思っているわけでございます。
  19. 田口一男

    田口委員 その並み並みならぬ御決意を伺って、ひとつぜひとも実現のためにがんばっていただきたいし、私ども及ばずながらということを申し上げたいと思います。  そういう際に、遺族年金にまつわる実務的な問題ですね。ごちゃごちゃ申し上げるのはどうかと思うのですが、遺族年金五割を七割、八割にしなければならぬという該当者の要求が強いだけに、実務的な面で、やはり地域なんかに入っていくとどうもおかしいという声があるもんですから、ひとつ参考までにはっきりと、どうなっておるかということだけお聞きをしたいと思うのです。  四つ、いわゆる例を挙げますけれども、この場合はどうなんですか。遺族年金ですから、縁起でもない話なんですけれども、第一例として、夫が公共企業体、公務員等で共済年金、妻も共済年金、こういう場合に、夫が死亡した場合に妻に遺族年金が支給できるのか。聞くところによると支給できるというふうなことですが、それが第一例です。第二例、夫が厚生年金で妻も厚生年金の場合に、夫が死亡した場合の遺族年金が出るか出ないか。第三例、夫が厚生年金で妻が共済年金の場合に、夫が亡くなったら遺族年金が出るか出ないか。第四例は、夫が共済年金、妻は厚生年金の場合に――全部男の方が死ぬということになっているのですが、平均寿命が短いのですから仕方がないと思うのですが、夫が共済で妻が厚生年金の場合には遺族年金が出るのか出ないのか。ちょっと実務的ななにですが、ひとつ……。
  20. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 まず、遺族年金の支給要件が共済組合と厚生年金とで異なっておりますので、その点から申し上げますと、支給要件としての生計維持関係でございますけれども厚生年金の場合は単純な生計維持関係を要求いたしておりますが、共済組合の場合は夫が組合員期間十年以上かそれ未満かによって違っておりまして、夫の組合員期間が十年以上の場合は生計維持関係を問わないことにいたしております。したがいまして、十年以上の期間を持っておる者については、その限りにおいて共済組合の方が厚生年金より有利になっておる。一方、共済組合で十年未満の組合員期間を持つ者の場合は、生計維持関係厚生年金同様問われますけれども、その問われ方は厚生年金より厳しくなっておりまして、主として亡くなった夫の収入で生計を維持しておったという、そういう表現になっております。そこで、当然十年以上の期間を有する者については厚年と共済との間で違いが制度上は出てくるのでございますけれども、しからば厚生年金における生計維持関係のいわば取り扱い、認定、これが具体的にはどのようなものであるかということになろうかと思いますけれども、実際問題といたしましては、社会保険庁の方の取り扱い方針によりましてかなり弾力的でございまして、たとえば共済の場合に十年未満の場合、夫と妻がおって、妻が夫の収入より多いという場合には、これは妻には年金を出さない。ところが厚生年金の場合は、それは非常に夫の収入のはるか数倍もというふうな場合は別でございますけれども、機械的に、妻の収入が多いからといって妻に遺族年金を出さないというような取り扱いはやっておりませんで、その点はかなり弾力的な取り扱いをいたしております。したがいまして、結果といたしまして、先ほど四つの組み合わせを挙げられましたけれども、ごく例外的な場合を除きまして、厚生年金の場合も、大方は共かせぎの場合に、夫に万一のことがあれば妻には遺族年金が支給されるものというふうに御理解願って大差ないというふうに私ども考えております。
  21. 田口一男

    田口委員 そこで、遺族年金の実務的なことに関連して二つほど、これも早急に検討課題として出してほしいのですが、ことしは国際婦人年ですね。だから言うのじゃありませんけれども、前々から年金における妻の座ということがよく言われましたね。年金における妻の座で一番問題になるのは、これは率から言ったら大したことはないと言われているのですが、いわゆる被用者年金の被保険者の妻が離婚した場合、その離婚した妻については年金が全くないと言っても過言じゃないと思うのです。確かに法律的に見ますと、夫が厚生年金なり共済年金に入っておったら、当然に妻が被扶養者として遺族年金のなにがあるのですけれども、不幸にして離婚をした場合に、これは国民年金という立場から見れば、二十歳から六十歳までが加入の資格があるのですから、当然国民年金に入れば年金権というものがあるだろう。しかし、たとえば四十歳、五十歳でなった場合には、国民年金に加入をしても、実際もらえる年金はないか、または微々たるものです。こういう離婚した被用者の妻の年金権というものについて、離婚を奨励するという意味じゃないのですよ、やはり数は少ないのですが、やはり妻の座という観点からもうそろそろ明らかにしてもいいのじゃないか。御存じだろうと思うのですが、たとえばアメリカでは三つの条件がそろえば離婚した妻にも年金権が発生する。西ドイツのように年金を分割するというような方法もあると思うのですが、ここではそのどちらがいいとは言いませんけれども、離婚した被用者の妻の年金権について、やはり、さっきの基礎年金構想というものを打ち上げられているのですから、数は少ないとはいえ、ここらあたりで方向づけをする必要があるのじゃないかと思うのです。ひとつその辺の御見解を……。
  22. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 妻の年金権の問題が各方面で論議されておりまして、ことしの八月にまとめてもらいました厚生年金部会の意見書、この審議の際にもいろいろ議論があったのでございますけれども、結局、先生御指摘のように、この妻の年金権を議論する場合、一つの問題がやはり離婚のケースでございまして、それも若い年齢での離婚であれば国民年金へ加入することで年金権の保障というものは期待できると思うのですけれども、高齢になった場合の離婚は確かに一つの問題でございます。しかし、これを具体的な問題として、離婚に伴う救済ということだけでとらえるということはいかがなものであろうか。やはり妻の年金権全体の問題としてとらえるべきではないかと思います。そういうのが関係審議会の方の御意見でもございまして、これは各制度共通で非常にむずかしい問題でございますので、今後とも検討をいたしてまいりたいと思っておりますが、率直に言いまして、来年度の改正にこの妻の年金権について結論を出せということにつきましては、これは非常にむずかしい。しかしながら、たとえば加給金でありますとかあるいは遺族年金改善でありますとか、そういう形での妻の年金権の改善、実質的な前進、そういったことで一歩でも現行制度を進めてまいりたいというふうに考えております。
  23. 金子みつ

    ○金子(み)委員 関連して質問させていただきます。  いま田口議員が質問しておりましたのに厚生省から御答弁があったわけでございますが、その御答弁の中で一つ私の理解できないことがあるわけです。それもお尋ねしますが、大体お話のやりとりを伺っておりましてもそうですし、すでにおわかりのことだとは思うのですけれども、日本の年金制度の仕組みというのは男子本位につくられていますよ。女子の取り扱いは非常に不合理です。大変不公平にできています。大体、日本では平均余命は女子の方が統計から見ますと五年長いですね。そうしますと、老後の問題というのは男子よりもむしろ女子に深刻なんじゃないでしょうか。それなのに女子に対する年金問題が非常に軽々しく扱われているということは理解できないのです。いまの曾根田局長の御答弁でも、妻の年金権については非常にむずかしいとおっしゃった。困難がある。それで断片的な、たとえば妻のための加給金をふやすことにするとかあるいは遺族年金のどうとかこうとかというふうにおっしゃいましたけれども、それまたもちろん結構ですけれども、それは大変に、言うなればばんそうこうみたいな療法でございますね。いわゆる基本的な根治療法にはならない。そこら辺がなぜむずかしいのかということが非常に疑問でございます。それを答弁いただきたい。  それから関連して申し上げますけれども、いま田口議員の質問の中に出てまいりましたが、離婚の問題だけでなくて、これと関連をして、たとえばいま局長が、国民年金に加入しておればそれで一応妻の年金権が確立するようなものになるというふうにおっしゃったわけで、確かにそうだと思いますが、この国民年金なるものが、年齢制限があったり、それから任意加入であったりして、必ずしも入るということになっていないというところに一つ問題があると思うのですよ。もし妻の年金権をそれによって確立させたいとお考えになるのだったらば、私はやはり国民年金の趣旨から言えば、妻も当然入るべき形にし直さなければいけないんじゃないか。入ってもよろしい、入らなくてもよろしい、こんな不親切な言い方はないと思います。ですから、それは強制年金にするという形を考えるということがあり得ると思うのですけれども、そのことはお考えになっておるかどうか、関連してお尋ねしたいと思います。  いま一つは年齢制限の問題です。入りたいと思っても、離婚の関係と結びつけて考えても、あるいは離婚でなくて自分の仕事の関係、仕事をやめてから国年に入りたいと思っても、年齢制限があって入れないということがあります。入りたいのに入れない、これは権利を阻害することになりはしないでしょうか。そういう意味からいきまして、国年の年齢制限というものは撤廃すべきだと思います。妻の年金権を確立する意味からいっても撤廃すべきだと思いますが、それはいかがでございましょうかということでございます。
  24. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 最初の被用者の妻の取り扱い、これにつきましては考え方といたしまして二つあると思うのですが、一つは被用者保険のサイドでこの妻の処遇を図る。これは、ことしの八月提出されました国民年金審議会意見書では、考え方としては被用者サイドでこの問題を解決すべきであるというふうな考え方に立っております。それからもう一つの考え方は、いま先生がお述べになりましたように、むしろ国民年金サイドで、現在の任意加入というようないわば中途半端なと申しますか、そういうことじゃなしに、はっきり強制なら強制に踏み切るべきではないか。このいずれをとるかだろうと思うのです。  そこで私は、これはいろいろ意見があるところでありますけれども国民年金サイドで強制加入を図るというのも確かに一つの考えではございますけれども、しかしながら、不十分ながらも被用者の妻というものは厚生年金保険の方である程度の処遇を図られているというのも事実でございます。ただしこれは十分ではございませんけれども。そういうことを考えますと、やはり強制加入の取り扱いにするということは一方で保険料負担の当然負担増ということを強制することにもなりますから、果たしてそこまで踏み切ることが日本の実情に合っているだろうかどうか。それから一方で、任意加入ではございますけれども、もうすでにこの任意加入を活用して国民年金に入っておられる方が五百万を超える、被用者の妻の半分を超えるような実情もございます。そういう実態をながめますと、現在の任意加入が世間で言われているほど中途半端な制度であるというふうには率直に言って私は思っておりません。ただ、これは非常にむずかしい問題でございますので、今後とも妻の年金権との関連で慎重に検討いたしたい。  それから二番目の年齢制限のことは、先生のおっしゃる御趣旨は、現在六十歳までになっておるのを、その資格期間の六十歳をもっと延ばすということだろうと思うのですが、これはやはり二十歳から六十歳という被保険者期間、四十年でございますから、実際問題といたしましてこれを延長するということは、一方で先ほど言いましたように掛金の負担をも伴うものでございますから、制度として六十歳をさらに延長するというのは問題があるのではないか。それに、現在老齢年金の開始年齢が六十五でございますけれども、最近では六十歳からの減額年金を請求するケースも非常にふえてまいっておりまして、六十歳から年金をもらう方が一方では相当数おられるということを考えますと、年限撤廃と申しますか、延長、これはやはりどうも問題ではないかというのが私の考えでございます。
  25. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それでしたら、いま局長おっしゃいましたが、被用者年金に入っている夫の妻は大体五百万人以上国民年金に入っているから大体いいじゃないかというふうに受け取れるのですね、いま伺っていますと。それはたまたま自然発生的にそういうふうになっただけであって、国は、せっせと国民年金に加入なさい、そうでないとあなたは無年金になりますよという忠告あるいはPRをなさっていたとは思えないのですね。その親切さがなかったんじゃないでしょうか。だから、気がつかないでいて入れなかったという人がたくさんいるわけですよ。知っていれば入っていたんだ。しかしそんなことは知らなかった。知らない方が悪いとおっしゃればそれまでですけれども、しかし私は、これは国の行政としては当然知らしむべきだというふうに考えますね。そしてそういう不幸なことにならないようにするべきではないでしょうか。その点は私は、努力が足りなかったんじゃないかというふうに思います。いまにしてまあ大体いいじゃないかとおっしゃるのは、私は、それは行政府としてはおかしいというふうに思います。ですから、いまからでもおそくはないと思うのです。被用者年金の妻だけではないですね。国民年金に入っている夫もありましょうし、全然年金に入ってない人もいるわけですね。そういう人の妻の場合は、そうなりますと全く無年金でございますよね。そういうふうに無年金になる妻があるということは、さっき田口委員も言っておりましたように、せんだって三木総理が出席されたランブイエの会議に出席された国々の中では、総理は大変に自信を持ってお帰りになったように報道されていますけれども、妻が無年金になるというような国はないですね。日本だけであったということもやはり考えて、新たにその問題は一層努力をしていただきたいと思います。  それから、関連でございますがいま一つの質問があるのです。それは、夫に死に別れて子供を育てていかなければならない母子家庭がございますが、この場合に、母子年金に加入をしている家庭がございますね。大方の家庭はそうだと思います。この母子年金に入っている妻、過去において妻、未亡人ですね、この人は死別した夫の遺族年金が併給されることになっておりますね。それはいいのですけれども、その場合に母子年金の方の交付金が三分の一削られてしまうという問題ですよ。これはなぜそういうことをするのでしょう。私は非常に不都合だと思うのですね。もともと年金というのは保険料を納めているからそれに基づいて計算されて支給されるものですね。だから、こちらは決められた保険料を一〇〇%払っているのですから、支給されるものも一〇〇%払われるべきじゃないでしょうか。夫も妻もそれぞれ支払っていたわけですから、それぞれ一〇〇%支給されるべきなのに、何で三分の一削るのですか。私はこの点でも、いまの制度の仕組みが非常におかしいと思うのです。もし三分の一削って支給するのなら、保険料も三分の一割り引きしたらどうですか。そうすれば私は正しいと思うのですけれども、取る方だけは一〇〇%取って、支給する方は三分の一削るというのは私はおかしいと思うのですね。言葉は悪いですけれども、詐欺行為みたいなことになりはしないかという心配があります。その辺はいかがですか。削らないで一〇〇%お出しになる御方針ですか。それとも、もし削るのだったら保険料の方を三分の一割り引きなさいますか。その辺のお考えを、私はこれは事務的な扱いとして年金局長から、それから妻の年金権を確立するという意味から、大臣から御答弁を後でお願いいたしたいと思います。
  26. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 いま御指摘のように、国民年金に加入しておる妻の夫、厚生年金に加入している夫が死亡した場合に遺族年金と母子年金が併給されますけれども国民年金の方の母子年金は三分の一支給調整を行っておりますが、これはやはり同一の事故について二つ以上年金が支給されるような場合に、公的年金として果たしてどこまで支給するのが妥当であろうか、そういうことを考えまして、少なくとも国庫負担分相当は御遠慮願いたいということで三分の一の支給停止を行っているものでございます。幾つかの制度からの併給調整というのは、ほかにも実はいろいろ問題がございますけれども、やはり公的年金としましては、しかもこれから公的年金給付レベルというものは逐年向上していくわけでございますから、基本的方向としては、上げるべきものは上げるけれども、しかしまた同時に、ダブって支給されるようなケースでそれが一定の額を超えるようなものについては、やはり逐次調整していくのが基本的方向ではないかというふうに考えておりますので、現在の母子年金につきましての三分の一の支給調整措置、現行制度も妥当なものと私は考えております。
  27. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それだったら保険料を割り引きなさいますか。
  28. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 保険料割り引き云々は、これは公的年金でございまして、いわば私的保険であればそのような議論は私は成り立ち得ると思うのですけれども年金制度は、全体としてこういう給付設定いたします、その上で保険料が幾らになるかという計算をするわけでございますので、現在の国民年金保険料というのは本来必要な保険料のごく一部ではございますけれども、三分の一支給停止するから保険料を三分の一という議論は、公的年金の議論としてはいささか問題があるのではないかというふうに考えます。
  29. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それは厚生省の立場でそういうふうにおっしゃるのは正しいのかもしれませんけれども、受ける側の身になってみていただきたいのですよ。母子年金を受けている家庭はどういう家庭だということを考えてください。そして、その理屈一本やりでやっていかないで、本当に国民のことを考えるならば、母子家庭のことを考えるならば、そこでもう少し温情のこもった制度のやりくりということが考えられるわけじゃないでしょうか。私は、間違っていないと言い切りなさるのは、いまの制度がそういう仕組みになっているから間違っていないのだと思いますよ。そのことを申し上げているのではないのですけれども、それだから申し上げるのですよ。妻の年金権を確立するという意味合いから考えても、国民年金ということから考えても、そして弱者に力を与えようという三木総理の基本的精神から考えても、なぜそこのところにもう一つ温かい考え方で仕組みを考えるという方向にならないのでしょうか。大臣、いかがです。
  30. 田中正巳

    田中国務大臣 一番最初の私に聞きたいと言った妻の年金権の問題ですが、確かに問題でございます。私、いろいろ考えてみますと、日本の被用者年金というのは大体世帯単位、家族単位ということを考えて制度を編み出しておるものというふうに思うわけで、その基点には確かにそれがあるようでございます。したがって、奥さんは御主人の生計によって維持されているのだ。ですから、亡くなった後もあるいは老後もだんな様の年金によって庇護されるのだということでずっと貫いて理論構成しておったようですが、いまおっしゃるように離婚の場合とか、あるいは一部他にも不都合なことがあるというようなことを私知っておりますが、どうもそうしたことから問題が浮き彫りされてまいりました。何とかこれは改善をいたさなければなるまい。しかし、これは議論がたくさんあるのでございまして、いまはたまたま被用者の妻の国民年金に対する任意加入という制度があるから、これもあるからといって弁解はいたしておりますものの、十全な救済策にはならないということでございますので、これについては今後いろいろ検討いたしたい。ただ、なかなかむずかしい問題がたくさんありまして、倫理的な問題等とも絡むようでございますので、ひとつ上手にこれは改善方向に持っていきたい今日の年金制度の一つの宿題であるというふうに私は思いますので、今後とも努力をいたしたいというふうに思っております。  第二の、いま年金局長とのやりとりの問題でございますが、これはいろいろ実は議論があるのでございまして、私などもできるだけのことは、こういう母子年金の受給者についてはしてやりたい、こう思いますが、反面また、両方からオーバーラップして年金をたくさんもらうというのはよくないのだということを私の方にちょいちょい言ってくる者がありまして、私自身はどうも一〇〇%賛成できないのですけれども、そうしたことをめぐってのいろいろ議論があるわけでございます。そこで考えたのが、併給はするけれども、両方からいただくというのはよ過ぎるのじゃないかというところから、片方の方は、国庫負担分だけはひとつ御勘弁願いたい、こういうのがいまの制度だろうと思います。要は、基本的な問題というものを解決をするというところに、給付額を引き上げていけば自然に、併給をして一部カットをされるというようなことも薄まってしまうものだ、こういうふうに思いますので、できるだけひとついい方向に持っていきたいと思いますが、これには先生、かなり根強い反対論があることだけは――私も余りおもしろい話じゃないのですけれども、実際はそういうこともあります。が、私は決してそういうことが一〇〇%いいとは思っていませんから、できるだけ母子世帯についての給付をよくしようということで今後努力をいたしたい、こう思います。   〔委員長退席、菅波委員長代理着席〕
  31. 田口一男

    田口委員 いま、PR不足という話に関連して、中身は別として、国民年金強制加入の特例納付、これは本年末までやっておるのですね。それでいろいろと話があるのですが、分割納付もいいというふうなことが書いてありますけれども、九百円もさかのぼって納めるのですから、相当な金額です。それで貸付制度なんかをつくっている自治体も一、二あるようですけれども、そういう話もあって、もうしばらく延期をしてもらえないかという声があるのです。本年十二月三十一日が期限ですが、どうですか、年度末いっぱいまでさらに精力的に強制加入者に対する特例の期間を延ばすということができないか、これは実務の問題が一つ。  それから最後の質問は、いつも問題になります厚生年金の在職老齢年金の制限の問題。これは私どもは撤廃しろという気持ちを前々から強く持っているのですが、昨年若干緩和されました。そこでさらに六十五歳未満の緩和をする一つの理論づけとして、こういう点が検討に値するのじゃないかと思うのですけれども、いま全国最低賃金は一律じゃありませんから、各府県によってばらばらです。これは私の調べた限りでは、大体日額千七百円程度ですね。東京都が千七百九十四円、近々これは二千円になるという話を聞いておりますけれども、それをいま千七百円というふうに押さえてみた場合に、逆算をいたしますと、健康保険法の標準報酬月額で、三条に事細かに書いてありますが、標準報酬に引き直すと千七百円で十三級ですね。そうすると金額は五万四千円。いまの四万三千五百円未満は八〇%しか支給をしないという制限があるのですけれども、これを日額に引き直すと十級、日額千四百円。これは厚生省、労働省との違いがあるにしても、地域最賃で千七百円以下の労働者がいないという仕組みのものですから、やはり在職老齢年金の制限を緩和をするという場合の整合性を持たせる意味からも地域最賃の日額を最低限度にする、こういったことが一つの案としても妥当するのじゃないかと思うのですが、来年の改正に向けてこの在職老齢年金制度緩和についてどういうお考えを持っておるのか。いま私が申し上げた一つの案として、地域最賃の額を最低とする、千七百円ですから、十三級、五万四千円未満は八〇%、こういうことですね。それにつれて最高も当然二つ三つランク上がると思うのですが、こういう点についてお考えを示していただきたいと思います。
  32. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 最初の特例納付の期間延長の問題、これは保険庁の問題でございますが、便宜私から申し上げますと、これは率直に言いまして、去年の一月から二年間という期間を設定いたしまして、かなり保険庁の方でもPRその他に努力して、確かにいま現在そういう延長の声があることは承知いたしておりますけれども、前回も二年間ということで処理しておりますので、PRに最後まで努力するつもりでございますから、いまのところこの期間延長ということは考えておりません。  それから第二点の在職老齢年金、低在老の問題でございますが、御指摘のように、現在八〇%支給される方の限度額が標準報酬で四万二千円、これの引き上げの問題でございますが、来年の改正の一つの大きな柱でございますので目下検討いたしておりますが、考え方として、先生の御指摘になるようなものを考え方として取り入れるかどうかについてはあるいは問題があろうかと思いますけれども、結果として先生の言われましたような線に、これはまだ数字の詰めばそこまでいっておりませんけれども、できるだけこの改善には努力いたしたいというふうに考えております。
  33. 田口一男

    田口委員 では、在職老齢年金の方はひとつそういう考え方も参考にしてやってもらいたいと思うのですが、やや実務的な問題でこだわるのですが、特例納付の期間延長ですね。せっかく努力していただいておると思うのですが、私が二、三歩いた社会保険事務所関係では、どうにも窓口が市町村ですからなお十分でない。市町村の方で十分やって、広報なんかでやっておるのですが、そういう分割納付に加えて、金を貸してもらえぬかというような声もあるので、そういう制度を検討する期間としてもうしばらく延ばしてもらいたいという声が強いのですね。ですから、もうあと締め切りまで二十日しかございません。御用納めが二十八日ですから二十日もない。こういうことで、結果をひとつ中間的に見た上で、昭和五十年末まで再延長して、さらに督励をしてもらう、PRを強めてもらう、こういう点を最後に要望して私の質問を終わります。
  34. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 村山富市君。
  35. 村山富市

    ○村山(富)委員 私はまず冒頭に、来年度予算編成に当たっての厚生省の方針が出されておりますが、この方針の伝えるところによりますと、大幅に福祉予算を圧縮をして、受益者負担を増大させる、こういう方向が出されております。特に財政制度審議会の第二特別部会におけるいろいろな議論を見てまいりましても、大体それと同じような方向が出されておりまして、具体的に、たとえば医療保険の一部自己負担、つまり初診料、入院料、あるいは標準報酬月額の上限を引き上げるとか、さらに患者が負担する高額医療費の限度額を引き上げるとか、さらにまた老人医療に一部負担を導入するとか、こういうようなことが言われております。せっかく四十八年を福祉元年として福祉が充実向上し、上向きになっておるこの時期に、逆に下向きの方向に持っていかれる、こういうことになったのでは大変であるというので、関係者はいろいろ心配をいたしております。  そこで私はお尋ねしたいのですが、いまのような不況とインフレが同時に押しかけてくる、こういう経済状況の中で、最も福祉を必要とするような層が困っているんではないか。ですから、こういう経済がゼロ成長時代に入れば入るほど福祉は充実しなければならぬ、こういうふうにぼくらは思っているわけでありますが、こうした大蔵省の方針等に対して、福祉を担当する厚生大臣が来年度予算に取り組むその考え方なり決意というものをこの際承っておきたいと思うのです。福祉の向上については恐らく超党派的に念願するところでありますから、大臣の決意によってはわれわれも全力を挙げてバックアップし、支援をしたいというふうに考えておりますので、そういう意味大臣の決意を冒頭に承っておきたいと思います。
  36. 田中正巳

    田中国務大臣 先生、冒頭に、厚生省が福祉を後退させるというように……(村山(富)委員大蔵省です」と呼ぶ)間違いですから、当省の名誉のためひとつ御訂正を願いたいと思います。  財政審がいろいろそういうお話をしているのは私も聞いております。まあ、財政審のおっしゃることもすべてわからぬわけではございませんが、しかしそう物わかりよくなっては、厚生大臣、身が持てないわけでございまして、私どもとしては、こういう時勢であってもできるだけ福祉の向上をいたしたいものだというふうに実は思って、今後とも努力をいたさなければなるまいというふうに思っております。しかし、やはり福祉というものは大部分が公的負担を伴うものでございますから、やはり財源がなければどう思っても向上ができないということも事実でございますので、したがって、今日の国の財政あるいは地方公共団体における財政事情等々が非常に影響することは私は否めないというふうに思います。したがって、やはりこうしたときにはむだを省き、あるいは政策の優先度を考える、あるいは場合によっては、非常に急ぐものは別ですが、そうでないものについてはいささかお待ちを願うとかいったような工夫は必要だと思いますが、基本的に、こういう状況だから福祉をいまの線より後退させるなどということがあってはいけないというふうに思っているわけでございます。
  37. 村山富市

    ○村山(富)委員 いまも年金問題でわが党の委員から切実な質疑応答もございましたが、私は、こういう時代であってもという判断よりも、こういう経済環境にあればあるほど福祉は必要ではないかと思いますから、そういう御認識に立って今後厚生大臣の一層の努力を御期待しておきます。   〔菅波委員長代理退席、委員長着席〕  そこで具体的な問題に入るわけでありますが、一つは、救急医療の制度のあり方について若干お尋ねをしてみたいと思うのです。  救急医療の問題についてはずいぶん以前から問題にされ、議論もされてまいりました。しかし、依然として本質的な問題の解決にはなっておらない。これは現状を見ますと、全国大都市、中都市、地方の市町村を含めて、救急医療の問題については深刻な問題になっておりますし、特に休日、夜間の医療が充足されておらない。そのために急患がたらい回しにされて手おくれになって命を絶つ、あるいはまた医者の手にかからないままに途中で亡くなる、こういうような悲劇が後を絶たないわけであります。何といってもやはり人間の命というものは一番大事ですから、早急に可能な限りの措置はやはり講ずることが必要ではないかというふうに思います。  そういう観点からお尋ねをしたいのですが、現在まで厚生省がとってきた救急医療対策については、告示病院がありますね。その告示病院は、たとえば国立の場合どの程度その告示病院があるか、それは全体の国立医療機関の数の何%くらいを占めておるか。同時に、自治体病院の場合あるいはその他の公的病院の場合、私設医療機関の場合、こういうふうに区分をして、いま申し上げた告示医療機関と全体の数のパーセントを報告してもらいたいと思うのです。
  38. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御質問の、各経営別の医療施設総数と救急告示施設数の関係でございますが、一応数字として読み上げてみますと、国立関係について申し上げますと、医療施設数が六百十六カ所でございます。このうち救急告示施設として運営いたしておりますものが百カ所でございます。その割合は一六・二%という数字になっております。なお、国立について申し上げますと、先生御案内のとおり、結核療養所あるいは精神療養所等も持っておるわけでございまして、この結核療養所あるいは精神病院を除いた数字で御参考までに申し上げますと、百三十一カ所中、救急告示施設として運営いたしておりますのが九十五カ所でございまして、その割合は七二・五%という数字になっております。  自治体病院について申し上げますと、これは病院、診療所を合わせましての数字を先に申し上げますと、自治体の医療施設が千七百九十一カ所でございます。そのうち救急告示施設が四百五十三カ所、その割合は二五・三%でございます。なお、このうち病院のみについて申し上げますと、施設数が千六十六カ所でございます。そのうち告示しております施設が四百四十九、その割合は四二・一%でございます。  日赤等の公的医療機関について申し上げますと、総数三百九十五カ所、そのうち告示施設が二百五十四カ所、割合は六四・三%でございます。日赤等の公的医療機関中、病院のみについて申し上げますと、総数三百五十一カ所、そのうち告示二百五十四、七二・四%、かような数字になります。  公的全体で申し上げますと、医療施設数二千百八十六、そのうち告示施設七百七カ所、割合で申し上げますと三二・三%でございます。この公的医療機関のうち病院のみについて申し上げますと、千四百十七カ所中、七百三カ所が告示されておりまして、その割合が四九・六%という数字になっております。私的医療機関について申し上げますと、私的医療機関はほとんどが診療所でございますが、総数で申し上げますと、三万四千七百九十八カ所中、告示施設が三千九百四十六カ所、その割合は一一・三%でございます。そのうち、診療所について申し上げますと、施設数二万九千四百十八のうち告示施設千八百三十五、その割合は六・二%。病院について申し上げますと、施設数五千三百八十、そのうち告示施設二千百十一、割合は三九・二%、かような数字になっております。
  39. 村山富市

    ○村山(富)委員 この告示病院も、創設されてから、この制度ができてから考えてまいりますと、大体、数は横ばいか若干減りつつある、こういう傾向にあるのではないかと思うのです。これは消防庁が東京都の場合を例に挙げておりますが、こういうふうに指摘されておりますね。「救急告示医療機関の数については、ここ数年総体的には大きな変動はないが一昭和四十八年には二十一医療機関から協力撤回の申出がなされており、人件費、物価の高騰等により拍車をかけられ、今後益々増加する傾向にある。」言うならば返上する病院が増加する傾向にある。「撤回の申出こそなされていないが、ベッド満床、専門外等の理由により救急患者の収容を拒否する場合も多くなっており、救急医療機関としての機能の低下を示している。」こういう指摘がなされております。  これは多かれ少なかれ、東京都だけでなくて全国的に言えるのではないか。そのためにたらい回しが依然として後を絶たない、こういう状況になっておると思うのですが、こういう現象が起こってくる理由は一体どこにあると考えておるか、その点についてお尋ねします。
  40. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま救急医療施設の現状について先生の御指摘のような事態があることは、われわれも承知いたしておるわけでございますが、国全体として見ました場合に、救急告示施設について申し上げますと、この制度発足以来十数年経過いたしておりまして、現状におきましては、大体総数においてはただいま先生御指摘のように横ばいの状況にはなっておるわけでございますが、地域によって非常に格差が出ているのが現状ではなかろうかと思っております。国全体として見ました場合には横ばいでございますが、ある地域にそういった現象が起きているという点があろうかと思います。  原因でございますが、従来、救急医療告示施設というものは、先生御案内のように、主といたしまして交通外傷を対象にいたしましてこの告示をやっておるわけでございます。しかし、最近に至りまして、交通対策等が進んでまいりまして、現状におきましては交通外傷の患者は減ってまいっておるわけでございますが、取り扱う全体の患者数というのは逆にふえている。すなわち、最近の傾向といたしましては、人口の老齢化に伴います老人のいろいろな脳卒中とかあるいは心臓病、いわゆる虚血性心疾患と言われるような、そういう急病患者がふえている。あるいは、これは社会的な変化でございますけれども、核家族化に伴ういわゆる子供の急病、こういったものがふえておるところでございまして、そういった一つの疾病構造の変化に伴っての対策が必ずしも十分ではなかったという点にあろうかと思うわけでございます。  したがいまして、従来の救急告示施設に加えまして、現在われわれがとっております対策というのが、そういう内科的疾患を対象といたしましたいわゆる救急施設でございまして、そういったものの一つといたしまして、ただいま先生御指摘の休日夜間診療所あるいは当番医制度、かような対策をとっておるわけでございます。ただ、現実問題といたしまして、診療拒否に近いような状況が起きていることも事実のようでございますが、その原因を、これは東京の消防庁の記録でございますけれども、調べてみますと、やはり専門医がいないという、そういう非常に技術的な面での問題があるようでございまして、そういった意味におきまして、従来の救急告示から、そういった内科を中心としての救急医療施設に今後新たに切りかえていく必要があるのではないかと思っております。
  41. 村山富市

    ○村山(富)委員 いずれにしても返上の傾向にあるし、同時に、告示病院でも機能を果たしておらない病院がたくさんある、こういう現状にあることは認めますね。  そこで私は、これは医務局長新聞記者のインタビューに答えた記事の中にもありますけれども、こういう救急医療、夜間、休日医療といったようなものは、いまの診療報酬の体系からいいますとこれはやはり不採算医療になるのではないかというように思いますが、その点は厚生省も認められますか。
  42. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 私の発言でございますが、現在の社会保険の診療報酬の支払い方法によりますと、いわゆる出来高払い制度でございますので、待機をしていて患者が来なかったような場合のこういう救急医療というのはその体系にはなじまないものと考えております。
  43. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうすると、やはり不採算医療の部門に属するということを認めますね。  いま言われましたように、不採算医療であればあるだけに、私は、やはり一般の開業医や私的医療機関の善意に依存してやるということについてはやはり無理があるのではないか、限界があるというふうに思うのです。それだけに公的医療機関、国立とか自治体病院とかいうところにもつと主体を置いた対策を考える必要があるのではないか。これは現に消防庁が都道府県知事や厚生省の事務次官にも、四十八年か、出しておりますけれども、「公立病院に対する救急医療機関としての申し出の促進について」あるいは「国立及び公立等公的医療機関のすべてが救急医療を担当できるよう、昭和四九年度予算案の作成にあたり、必要かつ十分な措置を強く要求する」こういったような文章も出ているわけであります。私は、さっき申し上げましたように、この種の不採算部門については、これは私的医療機関に依存するのではなくて、やはり国立なり自治体病院等が地域医療の主体になって担当するということが必要ではないかと思うのです。ところが、先ほど御説明もございましたが、自治体病院についてはわずかに二五・三%しか告示病院になっておらない、こういう現状にあるわけです。こういう、当然地域住民も要求するし、あるいは関係団体からも強く要求されておる自治体病院が救急医療機関としての機能を果たし得ない現状については、どういうところに原因があると思われますか。
  44. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 これはいろいろな原因があろうかと思いますが、一つは、国立について私申し上げましたように、結核療養所あるいは精神病院を除外した数字を申し上げたわけでございますが、自治体病院につきましてはその統計がございませんので、ただいま先生御指摘のような、二五・三というような数字でございます。この辺につきましては今後さらに検討してまいりたいとは思います。それで、そういう低い数字になっている原因でございますけれども、一つは地理的な条件等もあろうかと思いますが、やはり大きな問題といたしましては、この部分が病院経営を圧迫している、こういうことも原因として考えられるわけでございまして、そういった点につきまして、従来からわれわれといたしましては公的病院等の不採算部分についての助成を行っているところでございます。
  45. 村山富市

    ○村山(富)委員 私が現状を調べてみますと、いまお話もございましたように、四百四十九の自治体病院が救急医療病院を担当しておる。ところが、現状の自治体病院というものは独立採算制を強制されて、ほとんどの自治体病院は赤字ですよ。その赤字の病院にさらに不採算部門を押しつけるということになれば、これはもう無理があるのは当然の話であって、私は、こういう現状になっておるところはやはり基本的にはそこに原因があるというふうに思うのです。  そうした現状に対していま厚生省がとられておる措置を見てみますと、昭和五十年から救急病院になっている自治体病院に運営費の補助を出しておりますが、この補助の出し方等についても、何かA、B、Cというランクを設けて、そして赤字であること、あるいは十分機能を果たしておる、実績が上がっておるというような病院だけに補助を出しておる。その実質を調べてみますと、いま申し上げましたように四百四十九ある病院の中で三百六十の病院が赤字ですよ、現実に。その赤字の中で厚生省が運営費の補助を出しておるのはわずかに五十七にしかすぎないじゃないですか。そうでしょう。こういう実態で救急医療体制が完全になされておるというふうに言えぬじゃないですか。私は、どうしてこういうことになっておるのか、なぜ赤字病院にはすべて運営費の補助をするといったような考え方になり得ないのか、そこらの考え方についてお尋ねしたいと思うのです。
  46. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 現実の姿につきましては、ただいま先生御指摘のように、一つの評価方法によりましてA、B、Cのランク分けをいたしまして、現実に助成を行っておりますのがそのAの施設についてのみでございまして、その数字はただいま先生御指摘のとおりでございます。この辺につきましてはいろいろな考えがあろうかと思います。やはり一つは、実績を上げているところに対して、はっきりした赤字が出て、したがってそれに対して助成を行うという態度で従来からまいったわけでございますが、さらにやはり今後の問題といたしましては、そういった赤字を覚悟でも公的病院としてそういう使命を持たざるを得ないところには助成をいたしまして、そういう不採算医療も当然行っていただくような方法をとってまいりたいと考えておるところでございまして、今後の問題といたしましては、Aランクの評価を受けた施設のみでなく、そのほかの施設に対しましてもさらにこの助成措置を拡充してまいりたいと考えております。
  47. 村山富市

    ○村山(富)委員 ここは基本的に少し大事なところですからなお念を押して確認をしておきたいと思うのですが、いま申し上げましたように、四百四十九ある救急告示病院の中で赤字病院が三百六十ある。その中でわずかに五十七カ所しか運営費の補助は出されておらない。ところがいまの病院の実態からしますと相当厳しい環境に置かれておる。さらに赤字が累増する傾向にある。しかもこの救急医療は不採算医療である。したがって現状では相当無理をして救急医療に対応しておる。しかしこれは不採算医療だから赤字が累増していく。もう、政府も全然めんどうを見てくれないし、この際やめてしまおうかと、こういう傾向になっていくことは当然なんです。ですから、国が救急医療体制を整備していく、こういう方針に逆行する措置がとられておるではないか、こう言われても仕方がないと思うのです。私に言わせれば、むしろ積極的に国が補助を出して、そして施設も整備して、十分機能に対応し得るような体制を整備すべきではないか、促進すべきではないか、こういうふうに思うのですが、いまとられておるこの補助金措置というものはむしろ逆行しておるというように思いますから、その点の考え方もいま一度承りたいと思うのです。
  48. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御指摘のように、現実の姿というものは、赤字施設のうちその対象となっている割合が非常に少ないわけでございまして、これについて先ほどこういう方法でやっているということを申し上げたわけでありますが、この医療施設の方もだんだん改善されておるわけでございまして、五十七という数字が四十九年四月一日現在の数字でございますが、現段階においてはAランクに格づけされるものが約七十カ所ぐらいに増加いたしております。さらに、先ほどお答え申し上げましたようにBランクの施設も多数あるわけでございまして、今後できるだけそちらの方にその助成の対象を拡充していくよう努力いたしてまいりたいと考えております。
  49. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは最後に厚生大臣に承りますが、いまあなたもお聞きになって十分おわかりになったと思うのですが、やっぱり地域医療の主体は自治体病院が、特にこの不採算医療部門については担当する必要がある。ところがその国民的な要求に逆行するような傾向にある。それはやっぱり国の政策が誤っておる。むしろ私は、もっと積極的にそういう不採算医療については国が補助金を出して、そして完備できるように、十分機能を果たせるように促進をすべきではないかというように思いますけれども、いまとられておる措置を改善をして補助を強化していく、こういう考え方があるかどうか、大臣に承ります。
  50. 田中正巳

    田中国務大臣 救急医療についてのいろいろな世間的な御批判は聞いておるので、何とかああいうことのないようにしなければならぬ。その原因がどこにあるか。いろいろな説がございます。先生のおっしゃっている、不採算であるがゆえにペイしない、したがってうまくいかないということもあるようですが、その他の理由もあるようであります。したがいまして、そうした、もし不採算なるがゆえにうまくいかないということがあるとするならば、これはやはり何らかの形でもってそういうことのないように努力をいたさなければなるまい。それが補助金でやるのがいいのかあるいは診療報酬でやるのがいいのか、その辺はいろいろ考えてみる必要があろう。急場、いますぐ直ちに私に具体的な答えをせよと言っても、私もいろいろ考えておるんですけれども現実問題として具体的な答えがございませんが、問題意識は十分持っておるつもりでありますので、できるだけ、事案の重要性にかんがみてひとつ急いでやっていきたい、こういうふうに思います。
  51. 村山富市

    ○村山(富)委員 大臣、いま現にそういう救急医療病院に対しては、さっき言いましたようにA、B、Cとランクをつけて補助金を出しているわけですよ。ですから、いまの補助金の出し方が誤っておるのではないか、むしろA、B、Cランクなんかはなくして、そして積極的に救急医療に対応できるような施設の整備なりを促進をして国民の要求にこたえるべきではないか、こういう考え方に立ち得ませんかと聞いているわけです。だから、補助金を何ぼふやすとか、そういうことでなくて、そういう考え方に立てませんか、こう聞いているわけです。
  52. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 救急告示施設あるいはもっと広い意味での救急医療施設、こういったものに対する助成の方法でございますが、最初に御説明申し上げましたように、わが国の救急告示施設というものが交通外傷を対象として整備されたという関係があるわけでございますが、やはり最近におきましてその疾病構造が変わったということで、救急医療体系そのものを今後変えていく必要もあろうかと考えておるわけでございまして、そういう意味におきまして、現在、私的諮問機関でございますけれども、いわゆる地域医療の一つの体系を完備いたしまして、その中で救急医療というものをどう取り扱うかということを御審議願っておるところでございまして、今後の問題といたしまして、地域医療という一つの体系を今後考えてまいりたいと考えておるわけでございまして、その中におきまして市町村あるいは都道府県あるいは国がどういうふうに今後こういった問題に関与をしていけばいいか、そういった点を基本的に考え直しまして、今後救急医療体系を形づくってまいりたいと考えております。
  53. 村山富市

    ○村山(富)委員 これだけに時間がとれないので残念ですけれども、冒頭に申し上げましたように、これはもう現実に深刻な状況が全国的に後を絶たないわけですから、早急に救急医療に対応し得るような施設の整備の方向に努力を願いたいと思うのです。  そこで次の質問に移ります。  主として社会福祉施設の労働基準法違反を解消するために人員増の要求をいたしてまいりました。私は二月の予算委員会の一般質問で、労基法違反の実態やあるいは施設の職場の実態や、あるいは腰痛症や頸腕症候群などが続出している状況や、こうした職業に希望を持って、せっかく意欲を燃やして働いている職員がやめていく実情などをお話し申し上げたのです。そしてしかも、入っておる児童なりがどういう扱いを受けているか、こういう実態についても申し上げました。したがってここで繰り返しては申し上げません。  しかし、ことしの七月に労働省の基準局監督課が「社会福祉施設に対する監督指導結果の概要」という書面を出しておりますけれども、この書面を見ましても、全体として七七・九%、公立が七〇・〇%、私立が八二・七%、こういう労基法違反が起こっておるわけです。この内容を見てまいりますと、たとえば労働時間、休日、休憩、割り増し賃金、健康管理、特に睡眠、仮眠施設が不備であるとか、あるいは休憩室が不備であるとか、こういう点が指摘をされております。この概要を見るまでもなく、依然として労基法違反は高い率を示しているわけです。  これは五十年度の予算を編成する際に、私の予算委員会における質問に対しても、大臣は、五十年度は五千四百五十七名を措置をしたい、五十一年度に残りを措置する、こういう答弁がなされました。ニカ年計画で何とか労働基準法違反の解消だけはやり遂げたい、こういう決意のほども示されたわけであります。この予算委員会で答弁をされた大臣考え方に現在も変わりはないかどうか、承ります。
  54. 田中正巳

    田中国務大臣 社会福祉施設職員が労基法さえ守られないということはよくないことでございますので、したがって、私としてはこれを速やかに解消いたしたいということで、五十年度予算編成の節にも大いに努力をいたしました。おおむね六千名程度を入れましたが、あと残りがあるわけでありまして、これは、私があの答弁をいたしたときと今日では実は財政事情が大分違っておるわけでございますが、しかし、私はこれだけは何としても問題の解決を図らねばなるまいというふうに思っているわけでありまして、今後とも努力をいたしたいと思っております。
  55. 村山富市

    ○村山(富)委員 大臣は私にこういうふうに言われたのですよ。労働基準法違反の解消は当然なことです。これは国が決めた法律が守られていないわけですから、したがって守られるようにするというのは当然の話なんで、何とか初年度でやりたいと思ったけれども、しかしいろいろな財政事情もあってニカ年計画になった。そしてニカ年で完全に解消するということを前提に五十年度はこれで了解した。したがって五十一年度の解消についても財政当局と了解がついております。こういう答弁があって、言うならば私も了解したわけですよ。その点はあなたは確認できるでしょう。
  56. 田中正巳

    田中国務大臣 ですから、明年、五十一年度に解決してしまいたい、こういうことで、いまかたい決意で予算折衝に臨もうということであります。
  57. 村山富市

    ○村山(富)委員 あなたははっきり「財政当局と了解がついておりますものですから」こう言っているわけです。  大蔵省見えておりますか。――この点は大蔵省はどういうふうに受けとめていますか。
  58. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 社会福祉施設の増員問題につきましては、ただいま厚生大臣から経緯をお述べになったとおりでございます。そこで、五十一年度どういう措置をするかということでございますけれども、いろいろ議論いたしますと長くなるのでございますが、先ほど委員の御指摘になりました、労働省の指摘にかかる労基法違反と社会福祉施設の増員との関係を一体どう考えるのかという基本的な問題があると思うわけでございます。たとえば、労基法違反の中でも実質的な時間違反の問題、あるいは形式犯のような問題がございます。それ                      、から、私どもがそんたくする限りでは、社会福祉施設の労使慣行というのは比較的おくれた分野ではないか。そういたしますと、同じような人員が配置されているところでも、施設の管理運営のいかんによっては労基法違反が出るところと出ないところとが出てくるのではないか。つまり形式的な頭数だけによって労基法の違反が解消されるとか解消されないというのは、なかなか割り切りのむずかしい問題であると思います。  そういう基本的な問題があるわけでございますけれども、ただいま厚生大臣がおっしゃいましたように、五十年度の概算要求の時点で約二万名、そのうち五十年度予算で措置いたしましたのは約五千五百名でございまして、残りの分について五十一年度に予算を措置しろという強い御要請がございます。私ども、問題の背景を十分承知いたしておりますので、厚生省の御要求を受けとめていま鋭意検討いたしておりますけれども、具体的に五十一年度予算で何名措置するかという問題につきましては、本日まだ申し上げられる段階でないということを御了承願いたいと思います。
  59. 村山富市

    ○村山(富)委員 予算編成の過程ですからここで具体的な回答をもちろん私も求めばしませんけれども、ただ、いまあなたが説明になったようなことはもう十分綿密に詰めて詰めて、そして実質犯の基準法違反を解消するためにはこれだけの人員が必要である、こういう算定に基づいて要求しておるわけですから、その点は十分含んでおいてもらいたいと思うのです。  同時に、これは何遍も繰り返しませんが、民間の場合なんかは基準法違反が摘発されたら直ちにやられますよ。これは国の施設だからということもあるし、同時に国が措置費を出せば解消する問題です。それをそのまま放任されておるということは、民間のレベルから考えてみても許されぬことです。ですから、これは何をおいても解消しなければならぬという決意に厚生大臣もなっておられると思うのです。やはりその実態というものを十分踏まえて、大蔵省も十分この点は含んで予算の査定に当たってもらいたいということを強く期待をしておきたいと思うのです。  それから、ここでもう一つ確認をしておきたいと思うのですが、従来から保育所等の超過負担の解消についてはずいぶん地方団体からも要求がありますし、問題化されております。その中で確認をしておきたいのですが、保育所等の建設費等に絡む数量差ですね。たとえば現行児童一人当たり五平米を六平米に是正をしたい、こういう方向が出されておりますが、この点については間違いないかどうか、確認をしたいと思うのです。
  60. 石野清治

    ○石野政府委員 保育所の面積の拡大の問題につきましては前からいろいろ議論がございまして、標準設計等も含めまして、一応九十人以下のものにつきましては一人当たり六平米という形で予算要求を行っておるところであります。
  61. 村山富市

    ○村山(富)委員 九十人以下の場合は……。
  62. 石野清治

    ○石野政府委員 九十人以下の場合は六平米、九十人以上の場合は従来どおり。
  63. 村山富市

    ○村山(富)委員 もう一つは、この数量差と同じように単価差があるわけです。これは大蔵省、建設省、厚生省等が合同調査をされまして、その結果四十九年度、五十年度、それぞれ補正がなされて、三三%引き上げられたのです。これでもって単価差は解消された、こういうふうに言われておりますが、しかし、これはその調査時点における物価値上がりに対応しただけであって、その後も物価は上がっているわけですから、したがって、単価差を完全に解消するためには、毎年毎年物価値上がりに対して引き上げるという方向をとらない限りは完全な解消にならないというように思うのですが、その点はどうですか。
  64. 石野清治

    ○石野政府委員 建築単価につきましても、先生おっしゃるとおり、四十九年の実態調査によりまして措置をいたし、さらに五十年度におきましても、八・四%だと思いますが上げまして、一応措置をいたしております。やはり毎年物価が上がっておりますので、当然そういうものは措置しなければいかぬ、こういうふうに考えております。
  65. 村山富市

    ○村山(富)委員 総括的に申し上げますが、労働基準法違反解消の問題や保育所の超過負担等の解消については、そういうことが累積されていまの保育所のいろいろな問題というものが出てきているわけですから、特に人員確保等については精力的に、厚生省ももちろんですが、大蔵省もその決意を持って取り組んでいただきたいということを強く要請をいたしておきます。ただ、たとえば五十年度も五千五百名程度措置をされましたけれども、この五千五百名の人員を完全に確保できるような指導を十分してもらいたいということが一つ。それから、いま厚生省が考えている数字、二カ年計画でやろうとしている数字だけではまだまだ労働基準法違反は完全になくならないということだけは、私はここで意見として申し上げておきますから、その点は十分含んでおいてもらいたいと思います。  そこで次に移りますが、重症児の施設についてお尋ねしたいと思うのです。この重症児施設は以前からずいぶん問題になってまいりました。特に島田療育園や、あしべつ療育院などの重症児施設はもちろんですが、いま人事院勧告等の実施をめぐって賃金の引き上げや、あるいは入所者を増員する問題、それに逆行して首切りが出る、こういったような問題も絡んで労使が対立をして、ストに突入するといったような状況にあるというふうに私は聞いております。こうした職員の方の要求に対して、日本心身障害児協会というのがありまして、そこらの発言を聞いておりますと、公務員ベースの実施はとうてい無理だ、今年度については賃上げは一切できない、こういう回答を出しております。期末手当については分割払いにする以外にない。財政事情がピンチ、じり貧状態にある。こういう中でこうした財政の苦境を乗り切るために、さっき申し上げましたように逆に入園児を増員をして、そこで収益を上げて何とかカバーしていこう、こういう苦肉の策がとられておる。このことは、人員がふえるわけですからかえって労働強化が強制されて、腰痛症や頸肩腕症候群が出てくる要因をつくっていく、こういう悪循環が繰り返されるような状況にある。こういう重症心身障害者施設の実態について、厚生省はどういうふうに認識をされておりますか。
  66. 石野清治

    ○石野政府委員 先生御案内のとおり、重心の施設につきましては全国で百十五ありまして、そのうち法人立が三十一ございます。御案内のとおり、重症施設というのは医療機関の側面と福祉施設の側面の両方ございます。したがいまして、医療費収入と、それから福祉施設に即応する分といたしまして重症指導費という形の両方でカバーして運営を行っておるわけでございます。これは発足いたしましてからもうすでに十年以上たっておりますが、当時の重症指導費は非常に低うございましたけれども、四十八年に大幅に改正いたしまして、現在では一人月額の重症指導費というのが八万六千八百八十三円というふうになっております。したがいまして、現在日用品等全部含めまして、児童一人当たり年額では二百七十八万円の収入があるわけでございます。その中で、それぞれの法人につきましては施設設備の設置者がこれらの収入を財源といたしまして年間の経営計画を立てまして、そして給与のアップの財源も捻出するというのがたてまえになっておるわけでございます。  いま先生御指摘のところにつきましては、いろいろ問題がございますが、施設によりましては人件費の水準というのがかなり違います。施設によって違いまして、非常に高いところにつきましては非常に苦しい財政になるわけでございますが、そうでないところにつきましては、一応国家公務員ベースでやっておるところにつきましては、いま特にベースアップができないというような話は聞いておりません。そういうようなことで、全国的に見まして、特に足りなくて困っておるという形で、ベースアップもできないというのは島田療育園以外については私どもは聞いておりません。そういう状況でございます。
  67. 村山富市

    ○村山(富)委員 一つは、さっきから出ております労基法違反を解消する、もう一つは、給与についてはできるだけ公務員ベースに右へならえする、これを基準にしてすべきだと私は思うのです。それを基準にして、しかも四十八年に、私どもの質問に対して前の厚生大臣も答弁されておるわけですが、重症児一人に対して介護職員を一名にする、一対一にする、こういう基本方針も立てられましたね。そしてそれを賄うために指導費を上げたり、あるいは診療報酬が引き上げられたりする、その財源を充当して何とか賄ってきた。ですから、言うならばその基準に達しつつあったわけですよ。ところが五十年度になって、いま問題になっております中医協がまだ再開されておりませんから、したがって診療報酬の改定がいつになるかわからない。診療報酬の改定がなければ指導費は上げられない、こういうことになっておりますから、さしあたり五十年度以降が大変困っているという現状にあるのではないかと思うのです。ですから、言うならば、約束した一対一というその率も崩れつつある。しかも人勧は完全実施できない。五十年度はこういう深刻な状況にあるということは御理解いくでしょう。
  68. 石野清治

    ○石野政府委員 先ほど申し上げましたように、医療費並びに医療費のリンクの問題もございますので、確かに、医療費の状況が現在わかりませんけれども、この動向を見ませんと年間の経営費がどのくらいになるかということがわからない面がございます。そういう意味で、一時的には非常に苦労して、実際上は金融機関から借金をして経営するということもございますが、医療費が上がりますと今度はその金を返していく、こういう形で経営をする。確かに一時的な御苦労はあると思うわけでございます。  それから一対一の問題でちょっと誤解があるといけませんので、この際、はっきり申し上げておきますけれども、現在の重症児の指導費というのは、要するに医療費に含まれておりません保母でございますとか指導員の人件費、あるいは省力化の機械等、いわば弾力的に、福祉施設としての運営費の補助として出しておるわけでございます。したがいまして、これは人件費に充当してもよければその他のものにしてもよろしい。仮に全部人件費に導入するとすれば、この金で一対一の人が置けるはずでございます。しかも国家公務員ベースの金額で計算した場合。そういう趣旨でございますので、それよりも高いベースとなりますと当然置けなくなるという実態がございます。これはひとつ御理解願いたいと思います。
  69. 村山富市

    ○村山(富)委員 それは十分理解しているのです。ですから、基準法違反の解消と、公務員ベースに右へならえするということを基本にしておる。それを基本にして、重症児施設の場合には一対一を急務にする、こういう前提に立っているのです。したがって、これを省力化すると言ったって、相手は物でなくて人間ですから、やはり限界があるのですよ。そういうことも含めて私どもは言っておるわけですから、十分ひとつあなたの方が御理解願っておきたいと思うのです。  そこで、あなたは簡単に、当座は困るかもしれませんが、こう言うのですが、当座が困ることが深刻なんですよ、実際に。たとえば収益を上げていく企業ならば借入金もできるかもしれない。しかし大部分は一般の善意の寄付にまっているという状況ですから、当座をしのぐ資金繰りに大変なんですよ。診療報酬がいつ上がるかわからない、診療報酬が上がらなければ指導費もなかなか改定できない、こういう現状にありますから、当座をしのぐために、いま言った基準法違反の解消と、せめて人勧だけは完全に実施をさせる、こういう基本路線を守っていくためにやはり何らかの対策を考えてやる必要があるのではないかということを私は聞いておるわけです。
  70. 石野清治

    ○石野政府委員 先ほどから何回も繰り返して申しわけございませんが、要するに施設の全体の年間計画というものを立てます場合には、当然その中で、ベースアップがどのくらいかわかりませんけれども、何らかのベースアップは行われるであろうという前提に立って年間計画を立てるわけでございます。その際に一人当たりの給与の額とかそういうものを全部決めて、そして経営しているわけでございます。大半の施設につきましてはそういうことを初めから考えておりまして、最初非常に苦しいわけでございますけれども、人の採用の仕方の問題についてもいろいろ考えるでしょうし、そういうこと全体を踏まえてやって一応しのいでおる。決して楽だとは申しませんけれども、一応大半の施設につきましては、現在借金とかいろいろな形をしながらもベースアップもやっている、一時金も支払っているというのが実情でございます。ただ、もともと非常にベースの高いところにつきましては、なかなかそれ以上に上げるというのはむずかしいところもございますので、そういうところは非常に苦労しておるということでございます。
  71. 村山富市

    ○村山(富)委員 もともとベースが高いところと言うけれども、私はそんなところを言っているわけじゃない。それは高いところもあるかもしれません。しかし、大多数はやはり公務員ベースまでなりたいということでやっているわけですから、その公務員ベースにするためにいままで厚生省も努力してたのですよ。やっとそこまでなりつつあったときに、いま申しましたように診療報酬の改定もないというので困っておる。こういう現状ですから、さっき申しましたように、ことしは人事院の勧告も完全実施はできませんよ。しかも期末手当も分割払いしかできません、こういう現状に置かれておりますから、もっと事態を深刻に受けとめてもらわなければいけないと私は思うのですよ。対立すればストライキが起こりますよ。そういう現状にあるということを考えた場合に、私はやはり診療報酬が改定されるまでの資金繰りについては、ひとつ厚生省も十分めんどうを見るとか相談に応ずるとか、こういう積極的な姿勢があっていいのではないかというように思うのですが、大臣、どうですか。
  72. 石野清治

    ○石野政府委員 私が国家公務員ベースと申しておりますのは、たとえば初任給で比較いたしましても、一応国立療養所の方が重心をやっておりますが、その場合のベースというのが国家公務員のベースになるわけです。ところが、その初任給のベースを全部比較いたしましても、施設によって非常にアンバランスがある。一番高いところは国家公務員のベースより四号俸も五号俸も初めから高いわけです。そうしますと当然、毎年上がっていくものはそれに従ってやっていますので、その差は縮まらないわけですね。そういうベースでいけば、やはり現に同じ医療費収入で同じ指導費ですから、足りないところが出てくる、こういうことを申し上げているわけでございます。
  73. 村山富市

    ○村山(富)委員 あなたは高いところばかり強調するけれども、実際の現実はそんなことじゃないですよ。だからストライキが起こったり労使の紛争が起こったりするのじゃないですか。だから、こういう問題を提起すると高いところばかり例を挙げて答弁をするようなことではなくて、やはり現状というものを正しく認識をされて、深刻な現状にあるということも十分理解をしなければいかぬと思うのですよ。  きょうは時間がございませんから、これは大臣お尋ねしますが、そういう現状にある。特にさっきから言っていますように、診療報酬の改定もちょっとおくれるでしょう。そうするとそれだけこういう施設は収入がダウンするわけです。しかも、診療報酬の改定がなければ指導費の改定もなかなかされないというようなことで大変困っておる。これは診療報酬が改定されて、それに見合うだけの財源措置がなされれば、あるいは現状起こっている深刻な問題は解消するかもわかりませんよ。ですけれども、その間の措置が大変苦しい。そのために労使の紛争が激化してストライキも起こる、こういう状況にあるわけですから、そういうところについてはやはり積極的に相談に応ずるなり、何らかの措置を講ずるなりするくらいの姿勢があっていいのじゃないかというように思いますが、大臣の見解を承ります。
  74. 田中正巳

    田中国務大臣 重症心身障害児施設の経営が非常に苦しくて、労使紛争が起こってきそうだということについては私も聞いておるわけでありまして、この種の施設のストライキというのは入っている人に一番打撃が大きいわけですからなるべくやらぬでもらいたい、こう私は思っておるわけでありまして、そうしたことでいろいろ心配をしております。重症指導費、これは医療費にリンクしているものですから、私は医療費を早く上げたくてうずうずしているわけですけれども、まあそう遠くなく何とかいくのじゃないかと私も思っておりますけれども、相手のあることですからなかなかそう簡単には――いまここで簡単なことを言うとまたしかられますから言いませんけれども、何とかしょうというように思っております。要は、この種のものについては、経営をなさる方々も、政府も、それぞれモデレートな計画を立て、またモデレートな措置をいたすように努力をしなければならないということだろうと思います。
  75. 村山富市

    ○村山(富)委員 もう時間もありませんのでやめますけれども、冒頭に申し上げましたように、こういう深刻な経済の不況に落ち込めば落ち込むほど、やはりそのしわ寄せは弱い層にかかっていくわけで、一層福祉が充実することが必要であるというように思いますから、厚生省はもちろんですが、政府全体挙げて福祉の向上にはブレーキをかけない、こういう決意で今後もがんばっていただくことを心から御期待申し上げまして、質問を終わります。
  76. 大野明

    大野委員長 この際、午後一時十分まで休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ――――◇―――――     午後一時十八分開議
  77. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  田中美智子君。
  78. 田中美智子

    田中(美)委員 まず、国年の特例納付のことについて質問したいと思います。  こういう広告が各新聞に出されているのは大臣御存じだと思います。こうしてPRをして、ことしの十二月三十一日、あと二十日間で、これにもしお金を払わなかった人は永遠に年金がなくなるわけですね。こういう重要な問題について私が質問したいのは、十月二十一日の今国会の予算委員会で共産党の荒木委員に対してこうい、う回答があっているわけです。さかのぼって払うというわけですから、お金のない人には世帯更生資金の福祉資金というのを貸すというふうに答えているわけですね。それがどうしてこの広告には出ていないのかということなんです。現実にことしになってこのPRがなされたということもおそかったけれども、それでも、おそくともことしになってテレビ、ラジオ、こういうもので一生懸命でやっているということは私は評価するわけですけれども、もう少し親切に一お金のない人が十万円近いお金をさかのぼって支払うということは、この物価高の中で実際には非常に困難なわけです。これが借りられるということを知らなければ、結局、友人関係を回ったところでいまどき十万円貸してくれるという人はほとんどないわけです、一般庶民にとっては。これをなぜしなかったのかということをちょっとお伺いしたいわけです。
  79. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 特例納付の件についてでございますが、社会保険庁といたしましては、この二年間の特例納付の期間中にできるだけ多数の方を年金に結びつけるために努力いたしたい、こういうことを考えまして広報を行ってまいったわけでございます。それで私どもとしましては、特に重点的に十月から十一月にかけましてラジオ、テレビあるいは新聞等を通じましてできるだけ努力をしたわけでございます。(田中(美)委員「質問にだけ答えてください」と呼ぶ)はい。それで、私どもとしましては、この特例納付の制度は非常にわかりにくい面もございますので、政府の広報といたしましては、特例納付の対象者、保険料額、それから納期限等を重点的に取り上げて広報いたしたわけでございます。それからただいまの世帯更生資金等の点につきましては、これは各都道府県、市町村を通じまして末端まで徹底するようにいたしておるわけでございます。
  80. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣はお手やわらかにと言われますけれども、もうちょっと誠実に答えるようにしてください。私が聞いたのは、なぜここに広告を出さなかったのかと聞いているわけです。何も、これをやっていますとか、各市町村に連絡していますとか、そんな余分なことで――国会質問というのは時間を切って、一つの質問に何分と、真剣に私は聞いているのですよ。あなたは真剣じゃないじゃないですか。何という名前の方ですか、いまおっしゃった方は。私がなぜここの広告に出さないのかと言っているのに対して、その理由を一言で言っていただきたい。余分なことは言わないでください。
  81. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 わかりました。どうも大変失礼いたしました。  特例納付制度の問題につきましては、非常に個々のケースによりまして、たとえば幾ら納めたらいいかとか、こういうような個々の問題がございますので、そこの広告の注にもございますように、詳しいことにつきましては各市町村あるいは社会保険事務所で御相談ください、こういうことで書いたわけでございます。したがいまして、ただいまの問題も含めまして御相談に応ずるという体制を整えております。
  82. 田中美智子

    田中(美)委員 わかりました。河野さん、結構です。そういうふうに、あなたは市町村に行けばいい、こういうようなことだけで十分だというお答えにしかなりません。大臣に答えていただきたいと思うのです。  庶民の立場に立ってみれば、十万円のお金をどうするかということで私のところに何人も相談に来ているわけです。これは行きなさいという形で言っているわけです。それでも、名古屋の社会福祉協議会で聞きましたら、十月には一件しかないのです。それから十一月には九件しかないのです。この中の何件かは私が送っているんですね。そんなことで市町村は何をしているのかということです。十万円のお金がないために永遠に年金権を失うのですよ。これはその人の人生にとって膨大な損失だし、そういう重大な問題を、お金のない人は世帯更生資金で借りられますので、その詳しいことは市町村に行って聞いてくださいというならわかりますけれども、そのことが一言も書いていないというこのPRは、明らかに意図的に貧乏人を排しているというふうにしか考えられないというふうに思うわけです。大臣、この点についてはどうお考えになりますか。
  83. 田中正巳

    田中国務大臣 いまおっしゃるとおり、手元にお金のない人は世帯更生資金で借りられるわけですけれども、その広告に書いていない。正直言うと、私、実は広告文までは決裁していないものですから、そしてまた自分の省の所管のことですから新聞、雑誌で見るのですけれども、いま先生のおっしゃるようなことまで私も思いが及びませんでした。親切な態度ということになれば、やはりそういったようなことについて若干触れておく方がよかったのではないかというふうに思います。
  84. 田中美智子

    田中(美)委員 そのとおりだと思います。大臣がそこまで細かく見られなかったということは、私はやはり河野さん、あなたの大きな責任だと思います。それは最終的には、対外的には大臣ですけれども。  そういう点で、大至急、あと残された二十日間の間にそれを、これから出す新聞、テレビ、ラジオ、まだちょっと計画に残っているようですので、これをふやしていただきたいと思うのです。その計画の中にこれを入れるということと、それから、できればそのスポットや新聞広告を二十日間の間に大至急ふやすという手続をやっていただきたいというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  85. 田中正巳

    田中国務大臣 実は私は広告のスケジュールを知りませんでしたが、いま残っている回数というのが予算との関係でそう余計ないようですけれども、できるだけひとつ御趣旨に沿うように努力いたしたい、かように思います。
  86. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、必ずいま残っているものを予算の範囲内でできるだけ回数をふやす、それには必ず世帯更生資金、福祉資金のことを入れるということを確認して、よろしくお願いいたします。その次に、国立医療機関の賃金職員の問題について質問したいと思います。医務局長さん来ていらっしゃいますか。――いま賃金職員が非常にふえているというふうに私ども調査ではなっているのですけれども、いま大体何名くらい賃金職員がいるでしょうか。
  87. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 昭和五十年十月一日現在の数で申し上げます。国立病院、療養所の賃金職員は、主として看護婦を中心といたします看護職員でございますが、そのうち、看護婦の資格を有する者が二千二百一名、資格を有しないその他の職員が千六百八十九名、計三千八百九十名、これが十月一日現在の数字でございます。
  88. 田中美智子

    田中(美)委員 私の調査よりも七、八十人賃金職員が多いということです。  次に加地審議官にお聞きいたしますが、そちらの方では、この賃金職員が何人ぐらいいるというふうに見ていらっしゃいますか。
  89. 加地夏雄

    ○加地説明員 ただいま厚生省の医務局長から御説明のあったとおりの、現在三千八百九十人という数字を私ども厚生省の方から伺っております。
  90. 田中美智子

    田中(美)委員 加地さん、それではあなたは賃金職員が三千八百九十人いると認めていらっしゃるわけですね。――それでは、ことしの十月三十日に国公労連との交渉のときに、あなたは、たてまえとしてはあってはならないし、賃金職員はいるはずがないというふうに答えていらっしゃる。何年も前の話ではありませんよ、十月三十日ですよ。そういうふうに答えていらっしゃるのですけれども、それは国公労連に加地さんがうそをついたのですか。
  91. 加地夏雄

    ○加地説明員 若干申し上げたいと思うのですけれども、現在、国立病院、療養所関係のみならず、賃金職員というのは各省にございます。あのときの御質問は、要するに国立病院、療養所の場合に、本来定員に入るべき賃金職員、こういうお話だったと思います。一般的に、各省でたとえばパートであるとかあるいは一時的にそういう方を雇っているという形では、もちろんいることは私ども十分承知しております。ただ、あのときの御質問はいま申し上げましたようなことでございまして、それは実は私どもの従来の経緯の問題を申し上げないと御理解いただけないのですけれども、御承知のように、昭和三十年代の半ばごろに約十一万人近い病院職員の……(田中(美)委員「余分なことはいいですよ、私の聞いたことだけで」と呼ぶ)それじゃまた後で申し上げますから。
  92. 田中美智子

    田中(美)委員 行政管理局長の小田村四郎さんという方も十一月二十六日――大臣、よく聞いていてください。国公労連との交渉のときに、賃金職員なんかいるはずがないというふうにうそぶいているわけですね。こうしていまあなたは長々と経過を話された。これは経過を十分も二十分も話されたらたまったものではありません。経過は私はよく調べております。ただあなたが労働者に対してそういう欺瞞的な言葉を使っているということを私は言っているのです。あなたは三千八百九十名の賃金職員がいるということをはっきり国会の場で認めたわけですからね。小田村四郎さんにはあなたが伝えてほしいというわけではありませんけれども。  大臣、こうしたことをやっているんですね。どうしてなのか。私は非常に憤慨にたえませんけれども大臣に言いたいことは、この賃金職員の方たちは、看護婦さんにしても、いろいろな手当も入れますと大体半分です。正職員の半分ですよね。そしてひどいことに、もうよく御存じだと思いますけれども大臣、この物価高の中で、いわゆるボーナスといわれている一時金ですね、これが十五日分という労働者があなたの管轄している中に政府の職員としているということです。これ、どうお考えになりますか。
  93. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 賃金職員でございます看護婦の給与その他につきましては、ただいま先生のおっしゃったような実情にあることはもちろんでございます。ただ、そういった職員につきましては、われわれといたしましては従来からもできるだけ待遇をよくするよう努力をいたしておるところでございまして、昭和五十年度の単価で申し上げますと、一日当たりの雇い入れ単価でございますが、看護婦の資格を有する者が二千九百十円、その他の職員につきましては二千三百二十円ということになっております。これを四十九年度との比較で見ますと、看護婦におきましては三四・七%、その他の職員で三二・六%の改善を行っておるところでございますが、今後も努力してまいりたいと思います。
  94. 田中美智子

    田中(美)委員 問題は行管だと思うのですね。あなた方がそれを見ているわけですからね。こういう問題、賃金職員が、いま言われたように医務局の方としては幾らか改善しています、こう言いますけれども、現状はことしのこの年末にボーナス十五日分しか出ないのです。あなた方はそうではないでしょう。私もそうじゃないですよ。十五日分のボーナスでこの年を越さなければならない人たちがいるということですね。この問題と、それから、三千八百九十人ものこうした、悪徳企業の臨時工扱いのようなそういう人によって日本の医療制度というものが辛うじて、そういう扱いをされた労働者によって辛うじて日本の国立医療機関が維持されているということを、加地さん、あなたはどうお考えになりますか。そしてどうしようと思われますか。
  95. 加地夏雄

    ○加地説明員 先ほどの点を確認の意味で申し上げておきますけれども、先ほど申し上げましたように、賃金職員というのは各省にございます。この間申し上げたのはそういう意味の賃金職員の話ではなくて、話は若干長くなりますので省略しますが、要するに、本来定員内に入るべき人たちが賃金職員でおるではないか、こういう御質問に対して、私も小田村管理局長も、そういうことはございません、こういうふうに申し上げたわけでございます。  それから、いま御質問の、そういう賃金職員の処遇改善と申しますか、給与とか労働条件の問題につきましては、これは私ども行政管理庁としては直接関係のない問題でございまして、定員上の問題だけでございまして、私の方から何とも申し上げることのできないことでございます。
  96. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは総定員法というものについてはどうしようと思っていらっしゃいますか。いまのお答えですと、それがある以上はどうしようもないんだし、あなたの意見は何もおっしゃらない。それがあるんだからこれでやっていくよりしようがない。これは私は数字を調べていますけれども、賃金職員が年々どんどんふえていますよ。こうした、悪徳企業の臨時工扱いにされたような労働者がどんどんどんどんふえていくということは、あなたがおっしゃるように総定員法があるからだ。ではこの総定員法をどうお考えになっていますか。
  97. 加地夏雄

    ○加地説明員 総定員法の御質問でございますけれども、その前に、先生のいまのお話の中で私の方から申し上げておきたいのは、時間が長くなりますけれども、なぜ賃金職員がたくさんふえておるかという理由をごく簡単に申し上げます。  御承知のように、国立病院、療養所でこういう大幅な増員問題が出てまいりましたのは実は四十六年度以後の問題でございます。御承知のようにニッパチ問題がございまして、ニッパチに伴う夜間看護体制を強化しなければいけない、こういう問題が一つ起こってきたわけでございます。さらに、その当時新しい厚生省の政策で、御承知のように重心、筋ジスという、ああいう不幸な方々の対策を強化するという政策で、国立病院が、あるいは療養所がそういう方々を収容するベッドを増設していったわけでございます。そういう関係で実は一時的に大量の看護婦さんを採用する問題が出てきたわけでございます。そのときに実は、御承知のように、看護婦は非常に足らない、厚生省は何しているというようなことで、看護婦の増員計画という問題が従来から言われてまいりましたけれども、大量の看護婦さんが要るようなそういう場合に、看護婦の需要関係から見て、一体それ全体が正規看護婦の中で賄い得るかどうか、こういう問題が一つございました。と同時に、もう一方におきまして、家庭に入っておられる方々で、現在は看護婦をなすっていませんけれども、正規の資格を持っていられる方がございます。そういう方々も……(田中(美)委員「私の質問に答えていないのですからね」と呼ぶ)それではその点は、そういうことで実は定員外がふえておるということを申し上げておきます。
  98. 田中美智子

    田中(美)委員 あなたのいまおっしゃっていることは、ニッパチをしなければならないとか、重心とか筋ジスをしなければならないから人が要る。人が要るならこれは正式職員として雇うのが当然じゃないですか。まるでそれが悪いみたいな、筋ジスの人がいるのが悪いみたいな、看護婦さんたちがニッパチを要求しているから賃金職員が出たような、そういうふうな逆立ちした考え方は間違っているわけです。これは大臣もこの国会で約束なさったわけですけれども、五十二年度から重心と筋ジスは一対一にするというふうに言っていらっしゃるわけです。しかしそちらの計画を、表を見ますと、四十床に対して、四十人の看護婦さんの中の十三人というのは初めから賃金職員で計算しているわけですね。そういうことはいまあなたの理由には何にもならない。総定員法が間違っているからそういうふうになっているのじゃないですか。患者さんがいるんだから、それに対して看護婦さんが要るんだ。ならば、これは全部正職員で雇うのがあたりまえではないですか。突然病人がぱっとたくさんになったのじゃないのですから、これはある程度ずっときているわけですからね。病人の数はむしろ多くなっているのですから、臨時的に、年末大売り出しのときのように急に臨時職員がたくさん要るというのとは違うわけですからね。正職員として雇うのは当然です。それなのに、総定員法があるからということなんで、結局総定員法が間違っているということだと思うのですね。この点について、あなたに対してはもう結構です、余分のことをお聞きしましても時間がもったいないですからね。大臣に一言、厚生省としてはこの総定員法というものがあることが困るんじゃないですか。これについてはどうお考えになりますか、簡単にお答え願いたい。
  99. 田中正巳

    田中国務大臣 確かに、先生おっしゃるように、総定員法の仕組みというものにはいろいろ考究しなければならぬものがあるということを私最近非常に感じております。実際行政的な支配関係にある役人とこうした現業の者との間に、別にこれは区別はないわけでございます。削減をした者を再プール、リアレンジしてやっていくという手法については、今日まででもいろいろ問題がありましたが、今後さらに問題が大きくなるんじゃないか。たとえば四、三、三という削減率だったものを四、四、二にいたしますと、五十二年あたりは一体どうするんだろうか。しかもそのころになると、私の役所なんか循環器センターなどというものができるわけで、来年についても国立大学の先生がたくさん要るということになってくると非常に問題が深刻である。この際、総定員法の手法というものは、これはひとり厚生大臣だけではできることではございませんが、国務大臣としてはやはりいろいろ検討することをやらにゃなるまいというふうに思っておるところでございます。
  100. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、いま大臣のおっしゃったように努力をしていただきたい。これが実際の患者さんにとっても働く人にとっても非常に隘路になっているわけですね。ですから、加地さんはいろいろ弁解をしておりますけれども、国公労連との話し合いの中でももっと誠意を持って、現実を見る話し合いをしていただきたい。これを加地さんに強く要求して、次の質問に移りたいと思います。  次は、重度障害者の福祉手当の問題について質問したいと思います。  これは、三木内閣が発足したときに、三木さんが施政方針演説のときに新聞の投書を持ち上げまして、そして重度の障害者に四千円の福祉年金を出すというふうな形で大きくPRされた、三木内閣のまさに目玉商品だったわけです。これで私が三月二十日の社会労働委員会に出席、私も質問し、何人かの議員が質問しています。そのときの回答というのは、私に話されましたのは、四十七万人対象者がいるのではないかという中で、そちらとしては三十万ではないかというふうに言われていたし、そしてこの福祉手当の性質というのは、これは翁さんが言われております。大臣もそれを認めていらっしゃるわけですけれども、多分にお見舞い的なものなんだというようなこともはっきりさせて、そういう答弁があるわけです。いまこの議事録もここに持って来ておりますけれども、このときにはまだ政令も省令も出ていませんでした。何しろ突然出てきたので、これからどうするかということだったから、質問して、そして中身をはっきりさせて、本当に三木さんが言っているようなものにするようにということで質疑をしたわけです。その後、政令も省令も出る。そして啓蒙もし、普及もし、そしてこの申請の作業もいま進んで、いよいよこの十月からお金は出るわけですけれども、一月に支給される、支給直前になったわけですね。  ここで私のところに手紙や、また本人などが来られたり電話をかけてきたりするのが非常にいまとみに多くなっているということは、生活保護をもらっている人たちが、これを収入認定されるのではないかという心配を、そういう傾向が厚生省の方にあるのではないかという心配をしてきているわけです。この点を私はきょうはっきりとさせていただきたいわけですけれども、せっかくお見舞い金として四千円お金は出す、当然受ける権利はあるんだ。いただいても、生活保護をもらっているからということで、収入認定で四千円取られてしまうということは、事実上もらえないということですね。生活保護をもらっている方が何人あるか、私は詳しくはわかりませんが、十万近くいるのではないかというふうに大ざっぱに計算しますと、三十万の中からまた十万が減らされてしまう。所得制限やいろいろなものがあって、お見舞い金というならば、そうした重度の障害者が心安らかに家庭の中にいられるようにということなら所得制限も要らないと思うのですけれども、いろいろな制限があって約十七万人が落とされている。その上にまた、経済的に一番苦しい生活をしている生活保護の人たちがこの四千円を取られてしまう。この現状についてはいまどういうふうに考えていらっしゃるか、どうしようとしていらっしゃるか。
  101. 翁久次郎

    ○翁政府委員 お答えいたします。  障害福祉手当の支給を受けられる方が生活保護世帯である場合、この方々に対して実質四千円の福祉手当、これが何らかの方法で御本人に渡るような方法にいたしたい、このような考え方でただいま細目を検討中でございます。
  102. 田中美智子

    田中(美)委員 ただいまといっても、もう一カ月ないくらいでしょう。本当ならば十二月に支給してほしいわけですよ、お正月を迎えるのに。もういま私がこの時点で幾ら言ったってこれは無理ですからあれですけれども、心配しているわけですから、せめてこれは一日も早く、一月になれば一万二千円入るんだという気持ちにしてあげるというのに、まだ検討しているというのでは遅いのじゃないですか。
  103. 翁久次郎

    ○翁政府委員 急いで結論を出したいと思って鋭意努力をしているところでございます。ただ、いまおっしゃいました一万二千円ではございませんので、四千円の福祉手当を、被保護世帯でこのたび障害福祉手当をもらえる人について、何らかの方法でこれは支給できるようにいたしたい、こういうことでございます。
  104. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると収入認定はしないということですか。
  105. 翁久次郎

    ○翁政府委員 生活保護のたてまえはいろいろございまして、一方で収入認定した上で別途加算という方法をとっているわけでございます。そういう方法がございますので、ただいまそういう方向で検討しておる、こう申し上げておるわけでございます。
  106. 田中美智子

    田中(美)委員 ちょっとしつこいようですけれども、非常に心配なので。検討していると言われますと非常に心配なんですね。ですから、私はいまいろいろこの実施要綱を読んでみますと、これをちゃんと直しておかなかったことがいまになってこの問題になってきているわけですね。ですから、私がいま申しますのは、いまさらこれをいますぐ変えるということはできないでしょうから、いずれにしても実害がないように、どういう名目になろうとも、一銭も減らされないできちっと四千円がプラスされるようになるかどうか、こう聞いているわけです。
  107. 翁久次郎

    ○翁政府委員 おっしゃいましたように、実害のないようにいたしたいと考えております。
  108. 田中美智子

    田中(美)委員 それでちょっとほっといたしました。ぜひ大臣、そのように、実害がないように必ず支払っていただくということをお約束していただいたと思います。  それで、今度の問題で私はつくづく思うわけですけれども、いやがらせに、三木さんが人気取りにやったなんという言い方はしたくありませんけれども、人気取りでも何であっても、本当に国民のためになることであれば、四千円を出したことは、これはいいことだというふうに私は全面的に支持しているわけです。突然、三木さんからぽっと花火のように打ち上げられて、皆さん方の方の仕事がおくれていったと思うのですけれども、そのときにやはりいつも一番貧しい人のことから考えていっていただきたいと思うのです。生活保護はどうなるんだということは、私よりあなた方の方が実務に携わって、はるかに有能で、そういうことはよく知っているわけですから、細かいことまで知っているわけですから、そのときはすぐにこの実施要綱というのを改定しておくべきでなかったか。だからいまこんなになって、生活保護を受けた人たちがこの何カ月間ずっと、いまでも非常に不安でいるわけです。もらえるか、もらえないか、私に聞かれても、私が返答ができないわけですね。それで実施要綱を見れば形の上ではもらえないというふうにしかならないのです、私が調べますと。これはただごとではないというので緊急に質問をしたわけです。  それで、これは実害がないということで安心いたしましたが、そういう点で、今後こういうものが出たとき、たとえ思いつきのようなものであっても、言ったものについては責任を持って、どこかで落ちこぼれる人がないのかという形からこういう実施要綱をつくっていただきたい。この実施要綱は四月にできているのですから、三月には私たちはこれがどうなるんだということをずっと質問しているわけですので、それを生かした実施要綱をそのときにつくっておけば、こういう不安を与えなくてもよかったというふうに思うわけです。今後、私としてはこれをぜひ直していただきたい。ずっと続くことですから、早速にこれを改定していただきたい。  それから、これと同じことは障害福祉年金老齢福祉年金にも起こるのではないですか。
  109. 翁久次郎

    ○翁政府委員 いまおっしゃいましたように、福祉年金の加算問題というのは確かに問題でございます。ただ、今後の問題につきましてはただいまのところではまだ結論が出ておりませんけれども、この点については問題があることは十分承知しております。
  110. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、この福祉手当は実害がないように払うけれども、障害福祉年金とそれから老齢福祉年金、これは実害がないようにできるかできないかはまだわからないということですか。
  111. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御承知のとおり、老齢福祉年金は千円から出発して現在一万二千円までいっているわけでございます。したがいまして、当初の福祉年金として持っていた性格、これが生活保護を受けられる人の全体としての生活との関連におきまして、いままでのような全額加算でいいかどうか、これはやはり問題があろうかと思います。と申しますのは、同じ七十以上の人は別といたしまして、七十以下の人については福祉年金は出ていないわけでございます。そういったことを考えながら、この点についてはやはり、被保護世帯が最低生活を維持できる範囲においてなおかつ老齢でありあるいは障害がある人についての加算をどうするか、こういう問題になろうかと思いまして、この点についても近く結論を出したい、こういうふうに考えております。
  112. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣老齢福祉年金というのは、いまお年寄りは非常にこれを喜んでおるわけですよ。これが少しずつ上がっていくというので、七千五百円が今度一万二千円になるということで喜んでいるわけですね。もともと私たちは、これでもって食べられるような年金にしてほしいという要求をしているわけですけれども、実際には、大臣御存じのように、これは食べられるものではなくて、現在のところ生活のお小遣いにするという意味で出されておるわけですね。そういうものがせっかく一万二千円に上がったのに、結局その上がった分だけは生活保護世帯に入らないということは、これは余りにも残酷ではないですか。
  113. 翁久次郎

    ○翁政府委員 いまお示しがありましたように、確かに生活保護世帯は生活支えるに足る費用を公費で見ているわけでございます。現在七十以上の方は平均して一万六千円くらいの衣食費になっているわけでございます。片や福祉年金の方が相当大幅に上がってまいりました。そういたしますと、それは果たして、いまおっしゃったように生活費とお小遣いとがどういう関連になるだろうか。いままでの千円、二千円、三千円、こういうものが持っていた性格と若干変わってきているわけでございます。その辺を生活保護のたてまえでどう処理するかということが、他のそういう年金をもらってない人との関連において、やはり制度として考えていかなければならぬ時期に来た、こういうふうにわれわれは判断しておるわけでございます。
  114. 田中美智子

    田中(美)委員 もともと、もらってない人との関連、これはおかしいですよ。七十歳以上のお年寄りには無条件で老齢福祉年金というものを、拠出してなくてもお小遣いとして渡すというのがあなた方のお考えなのですからね。そうですから、もらってない人との関連でというのはおかしいのであって、もともと一万二千円というのは、あなた方の考え方からすればこれはお小遣いなわけですからね。それで完全に食べられるようになったというならば、その時点でまた生活保護とどうしていくかという考え方もありますけれども、この物価高の中で一万二千円のお金で――金額としては七千五百円から一万二千円で、大幅とあなたはおっしゃいますけれども、いまのこの物価高の中で、一カ月一万二千円の小遣いで一体どれだけのものが買えますか。どれだけ孫にお小遣いをちょっと上げたりということができますか。これはお小遣いなのですからね。あちこちの孫にもちょっちょっとやりたいし、自分もちょっとたまにはおいしいものを食べたいとか、ちょっと何か遊びに行きたいというお金ですから、生活費ではないわけでしょう。そうだったら、値上げしたものを、生活保護をもらっているからといってそのまま全部取り上げてしまうというのは余りにも酷ではないですか。やはり老齢加算のところを、この実施要綱の七千五百円になっているところを上げていくというふうにすべきではないのでしょうか。
  115. 翁久次郎

    ○翁政府委員 そういう御意見があることを全然否定するわけではございません。ただ、私どもは、やはり生活保護の持っております制度の中でこういった加算問題をどう処理するかということを重点的に、かつ制度的に総合的に考えてまいりたいということを申し上げているわけでございます。
  116. 田中美智子

    田中(美)委員 この点では私は非常に不満ですけれども、できるだけの努力をして、いい検討をしていただきたい。生活保護の人たちの心を踏みにじらないようにしていただきたいというふうに思います。それから、障害福祉年金をもらっている人たちは障害もあるわけですからね。その上にお年もとっているわけですので、その点、上がった分は差し引くというふうな、こんな悲しい行政はやめていただきたいと思います。  それで最後に、今後の問題点として、福祉手当、これの所得制限というのはできるだけ緩和していただきたい。いまのように一人年間六十万なんていうのは、もう涙金になってきているときですから、これは大幅に緩和をしていただきたいというふうに思うわけです。  それから、内部疾患の方、こういう人たちがいま一、二度ですね。これをもう少し拡大していただきたいというふうに思います。  それから三番目には、障害の程度ですね。これが一級だけになっているわけですね。一級というのは本当に何もできないという人ですが、二級と一級の差というのは、現実にわれわれが見まして生活の仕方の上では――医学的には違うかもしれませんけれども生活の不便さ、いろいろな仕方においては余り変わってないと思うのですね。それで二級の人たちにもこの見舞い金というものが出るようにしていただきたいというように思います。  それからもう一つ、これは大きい問題ですけれども、診断書を出すとき、これは障害福祉年金のときには診断書が安くなっておりますね。これはわずか四千円もらうものに三千円の診断書料などを取られているわけです。恐らくそちらではうっかりして落とされているのだと思いますので、これは早急に障害福祉年金並みにしていただきたいというふうに思うわけです。  それから、物価もどんどん上がっていっているわけで、三木さんが四千円と言われたときからもうぐっと物価が上がってきておりますので、これも金額を四千円から上げていくという方向で検討していただきたい。  それから、内部疾患の場合には発病と同時に、非常に障害が重いというときには、三年たたないと出ないということではちょっと長過ぎるのではないかというふうに思いますので、こういう点も考えまして、実際に自分がもらえるのではないかと思う人たちの心が痛まないようなやり方で検討していただきたいというふうに思います。  大臣、一言お答えいただきたいと思います。
  117. 翁久次郎

    ○翁政府委員 もろもろの点についての御要望の趣旨はよくわかります。特に所得制限の問題については、やはり私どもも努力してまいりたいと思っております。ただ、等級あるいは障害の範囲、これらの問題につきましては、御承知のとおりことしこの制度が発足したばかりでございます。その点も含めて、しばらく私の方も総合的な検討をさせていただきたいというように思います。なお、金額その他の点についても、御要望の点については十分踏まえながら今後の行政に役立ててまいりたい。  ただ、一言申し上げておきますけれども、この性格が、確かに見舞い的な性格もございますということを申し上げましたので、見舞いそのものであるというようには申し上げておりませんので、その点お含みおきいただきたいと思います。
  118. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣、よろしいですね。できること、たとえば診断書料なんというのは簡単なことですので、そういうできることからどんどんやっていただきたいというふうに思います。  次の質問は、いま保父さん――保育所の、保母さんでなくて男の保父さんですね、これになりたいという方が年々ふえているというのと同時に、現在正式に勤めていらっしゃる方が約百人くらい全国にいます。この実態を調べてみましたところが、非常に父兄から喜ばれているわけです。どこの学校においてもみんな女の先生、男の先生がいるわけですね。特に小さい子供にとりまして、男性の勤務が非常に夜遅くなったりして、父親が家庭にいないということが多くなってきているわけです。こういう中で、小さな子供が保育所で保父さんに対する喜び方というのは非常に大きいわけですね。そういう点で、ぜひ、児童福祉法施行令の十三条ですね、ここが保母だけになっておりますので、これを改正していただきたいというふうに思うわけです。そして男子も保育に携わる、私は教育者と言いたいわけですけれども、その養成所にもはいれるような、こういうことをしていただきたいと思いますが、どうお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  119. 石野清治

    ○石野政府委員 ただいま先生のおっしゃった御要望のあることは私も十分聞いております。ただ、現在の児童福祉法の体系あるいはその施設の体系といいますのは、やはり一応、特に保育所につきましては女の保母さんが中心となってやるという全体の体系ができ上がっているものですから。それにはそれだけの理由があったと思います。現在中央児童福祉審議会でもいろいろ議論してもらっているわけでございますけれども、やはり先生のような御発言と、それから同時に、逆にこれは保母さん、女性としての特質を生かして、そしてやるべきだという御意見とございまして、なかなか実は結論が出ないというのが実情でございます。
  120. 田中美智子

    田中(美)委員 最後に……。私保連ですね、全国私立保育園連盟、こういうところでも強い要求を出しておりますので、いろいろな意見があるというふうな逃げ方をなさらないで、これができるような方向で検討をしていただきたいと思います。  時間がなくなりましたので、大臣の御意見を伺いまして質問を終わりたいと思います。
  121. 田中正巳

    田中国務大臣 保育に携わる男性の直接処遇職員、保父というのですか、これについていろいろ御議論がありますが、どうも私自身もこの議論がよくわからないわけで、ということは、やはり従来のしきたりというものになじんでおる向きのそういったような議論もあるようであります。しかしまた反面、なるほどなという、言うに言われぬ理由も実はあるようでございまして、その辺のことを踏まえて、ひとつこの問題の解決のためにさらに検討を進めたいと思います。
  122. 田中美智子

    田中(美)委員 それじゃ私は、保父さんの働いているところを厚生省の方は一度見ていただきたいと思うのです。そうしますともっと実感的にわかると思いますので、ぜひ前向きで検討していただきたいと思います。
  123. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 寺前巖君。
  124. 寺前巖

    寺前委員 最初に、十二月の初旬に一斉に新聞紙上でも問題になりました東京の隅田区の、製びんメーカーとしてはかなり大きな位置を占めている大久保製壕、ここは障害者が半数以上働いているということにおいて各方面から注目を浴びている工場でありますが、三十八年度には身体障害者雇用優良事業所として労働大臣の表彰も受けた工場であります。今月の初めに、常識を超えた人権無視のことを行っているということで、障害者だけの組合ができて、そして差別なくわれわれを使えということを要求して闘争があったわけです。  私は、この労働者の話を聞いている中で少し腑に落ちないことが生まれたので、特にきょうは緊急にお聞きをしたいと思うのです。というのは、ここの工場が、強制労働にわたるような、体罰を加えるというような話が働いている障害者からかなり出ます。この問題は別として、この会社の事務所のある建物を調べてみたら、雇用促進事業団からお金を借りてつくった。そして、そのお金を借りてつくるに当たっては、事務所にそれを使うわけにはいかないので、体育館をつくる、あるいは寮をつくるという名前で借りたというのです。ところが、障害者のためにわざわざ雇用促進事業団から体育館や寮をつくるのだと言って借りておきながら、その体育館をいつの間にやら事務所にしてしまったということで、雇用促進事業団から、これは目的が違うじゃないか、返せということで返還命令を受けたという前歴を持っている会社であるということがわかってきたのです。ところがその隣の建物、そこには五階建ての建物があります。一階が倉庫に使われている。二階は体育館であり、三階が図書室その他の集会所であり、四階、五階が寮であるということの形式になっていて、そしてこれは、今度は雇用促進事業団と違って年金福祉事業団からお金を借りている。ここでまた体育館というのが出てくる。ここで図書室、集会所というのが出てくる。ところが、これができたのは年金福祉事業団からお金を一億近く借りたからでしょう、これは非常に長期にわたって返済する資金です。三十年ぐらいじゃないでしょうか。そしてたしか利率も六分何厘というお金だと思うのです。安い利子で長期返済で、そして年金福祉事業団の目的によってそういう施設をつくるということで借りたはずなのに、労働者に言わすと、四十七年の八月にできて、もうその年の二カ月ほど後にはそれは倉庫に変わってしまった。エレベーターを見てくださいというのです。初めからそういう倉庫にふさわしいようなエレベーターとしてつくられていますと言うのです。切々たる訴えですよ。もう倉庫になってしまっておる。そして何とそれが、この会社というのは、障害者を半数以上雇っている会社だということでいま新しい施設がまたつくられております。障害者のモデル工場ということで、今度は新しい制度でお金をまた借りているんです。心身障害者雇用事業所、雇用促進事業団からそういう心身障害者向けの事業所の施設用のお金を貸すという制度ができて、それでまた金を借りてつくっているわけです。モデル工場というのだけれども、労働者にとってみると、とんでもない差別の運営がされている。そして一方では、お金の借り方では悪徳な借り方をすでに雇用促進事業団で一回やっている。年金の分野においても悪徳なことをやっているじゃないか、こんな障害者を食い物にする会社の運営があるか、これがその憤りであります。   〔菅波委員長代理退席、竹内(黎)委員長代理着席〕  私が厚生省に聞きたいと思うのは、年金福祉事業団からこの会社が金を借りているのかどうか、そして借りているところの体育館なりあるいは図書室、その他の施設が他の目的に使われている、すなわち倉庫に使われているという事実はどうなのか、そして同時に、それが一時的にちょっと置かしてもらったということじゃなくして、長期にわたって行われているというこの訴えについてどうなのか、こういう状態が生まれているとするならば、一体この事態をどのようにするつもりなのか。私は、年金福祉事業団が正しく目的に従って融資をされることが重要だと思うから、監督官庁としての厚生省にこの点についてのお伺いをしたいと思います。
  125. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 お尋ねの第一点の年金事業団による融資の事実の有無でございますが、御指摘のように、大久保製罐所に対する融資といたしまして四十六年度分約七千万円でございますが、教養文化施設ということで融資を行っております。なおこの施設は、先生御指摘のように一階が倉庫、これは当然融資の対象外でございますけれども、二階が体育館、三階が図書室、集会所等、四階、五階が単身寮でございます。この二階が倉庫のかわりに使われておるということにつきまして、実は最近、そのようなことを耳にいたしましたので、年金福祉事業団から取扱金融機関を通じまして調査させました結果、確かに調査日現在で多少の製品が体育館の一部に保管されておった。ただ、この製作所の場合、たまたま裏手に目下倉庫を工事中でございまして、それが近々でき上がるということもございますが、取扱金融機関からは直ちにとにかく撤去方指導いたしましたところ、間違いなく近日中に撤去するという言明を得ております。なお、どのような時点からこのような状態があったかということについては、残念ながら今回の調査では私どもそこまでまだ承知いたしておりません。
  126. 寺前巖

    寺前委員 大臣、いまお聞き及びのとおりなんです。いま低成長の段階でしょう。そうすると、これができた段階というのは、さっきもお話ししましたように、四十七年八月、生産の上がっていく段階です。両国に倉庫を借りて月間百万円という倉庫料がかかっていたという時期なんです。いま横の方に新しい倉庫ができています。それもまだ最近できた倉庫なんです。そうすると、長期にわたって倉庫はなかったのです。内部の労働者がそのことを訴えていますよ。そうすると、四十七年の八月にできて、そして十月以後今日に至るまで倉庫として使ってきた。借りるときには、労働者のために体育館をつくるのだ、労働者のために図書室をつくるのだ、こういうことを言っておきながら、これで四十八年の十月、四十九年の十月、  いま五十年の十二月ということになってきたら、長期にわたって初めから意図的に倉庫として使うということで進んできたと見られても仕方がないじゃないか。そもそもこの会社がこの建物をつくられたときに、ごまかしでベニヤでインチキに、検査さえ通ればいいという準備をしたということを当時の労働者が言っていますよ。私は、非常に悪質な会社のやり方だと思うので、これは年金福祉事業団を監督する立場から見てもいいかげんに済ますわけにはいかなかろうと思う。大臣、これはどうしたらいいでしょう。私は、大臣の率直な意見を聞きたいと思うのです。
  127. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 いずれにいたしましても、御指摘の事実は私どももはなはだ遺憾に存じます。そこで御指摘のように、長期にわたってそのような事実があったのかどうか、それについては今回の取扱金融機関の調査では必ずしも判然といたしませんので、私といたしましては、年金福祉事業団みずから、そういう問題も含めて早急に現地に調査をするようにいたさせたいと思っております。
  128. 寺前巖

    寺前委員 長期にわたってやっておった場合にはどうするのです。
  129. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 これの実態いかんによりまして所要の措置が必要と考えておりますけれども、具体的内容につきましては、調査の結果を待って慎重に検討いたしたいと考えております。
  130. 寺前巖

    寺前委員 ぼくは何回も聞くけれども、やり得だということでいいのかということを聞きたいのです。安い利子で長期にわたって借りられる、労働者を食い物にしてそんなことを年金福祉事業団にやらせておって、見つかったら、そのときにはちゃんともとへ戻したらそれでいいじゃないか、そういう指導を政府としてやるのか、それともそのときにはどうするのだということを私ははっきりさせるべきだと思いますよ、少なくとも雇用促進事業団のときには金を巻き上げたのですから。厚生省はそういうことはしないとおっしゃるのですか。一体どうなんです。
  131. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 目的外使用等のいわば妥当でない事例でございますれども、これが事実といたしました場合に最終的にどのような処分を考えるか、これはやはり実態を調べ、さらに行政指導をした上で、そういう手続も必要と思いますので、いま私がここで具体的にこういう場合にはこういう処分をいたしますと申し上げるのはいささか適当ではないのではないか。しかし、いずれにしても事業団を通じまして厳正な調査を直ちに実施させたいと考えております。
  132. 寺前巖

    寺前委員 これ以上言うたって行政的にはお答えはもうあれだろうと思うのですが、大臣にお聞きしたいと思うのです。  やり得だというようなことで済ませていいのかどうか。一片の注意を受けて、そして物を移転させたらそれでいいのかどうか。一般的に見て大臣、どういうふうに思われますか。私は、年金というものが、せっかく納めたお金がそういうふうに使われてはたまったものではないと思うのです。大臣お答えを……。
  133. 田中正巳

    田中国務大臣 具体的な事案については、いま聞いたばかりでございます。はなはだ遺憾な実態だ、もしそれが事実だとすれば、そうだということに判断をいたします。  それで、これについての処置ですが、とりあえず実態を把握しなければなりませんから、その限りにおいては、ただいま年金局長の答弁するように、年金福祉事業団みずから調査をさせるようにいたしたい。その上で出てきた事案の態様に応じて、雇用促進事業団が前にとった措置もありますからそれ等を勘案し、少なくともやり得というようなことにならぬようにいたさなければいかぬと思います。
  134. 寺前巖

    寺前委員 それでは、その件はもう終わりたいと思います。  次に、廃棄物の問題についてお聞きをしたいと思います。  もう五年になりますか、清掃法を、あのいわゆる公害国会という中で廃棄物処理法に発展をさせました。そして高度成長の中で、ずいぶん産業廃棄物が新しい形で出てくるという事態の中で法のあり方、行政のあり方についても検討を加えたと思います。ところが四年たった今日、御存じのように産業廃棄物をめぐって大問題になりました。特に六価クロムの問題をめぐっては、一体産業廃棄物はどのように処理されているのかということで、改めて社会的な問題になったと思います。  それで、指定された産業廃棄物でない産業廃棄物というのは、一般廃棄物として法律では取り扱われていると思うのですが、その一般廃棄物の方も、高度成長の中で国民生活の様態が変わりましたから、したがって、廃棄物の姿も変わったと思うのです。プラスチックその他の問題あるいは塗料その他の問題、どれをとってもやはり新しい段階に来ている。新しい段階にふさわしいような廃棄物の処理体制になっているのかどうか、私は改めて検討するところに今日来ているというふうに思うわけであります。その立場に立って、厚生省がどのような指導をし、どのような点に着目をしておるかをきょうはお伺いをしたいと思います。  まず最初に、新しい高度成長の結果から国民生活が変わってきて、その結果、廃棄物の分野においても新しいことが起こってきている、そこからいろいろな問題が出てきているという点から、一体厚生大臣として、一般廃棄物の問題をめぐってどういう点に着目をして、どういう問題を事務当局に指示をされて、そして事務当局にいつまでにこういう案を作成せよというふうな指導をしておられるのか、まず最初大臣の所見を聞きたいと思います。
  135. 田中正巳

    田中国務大臣 廃棄物行政につきましては、いろいろ問題があるわけですが、先生に率直に申し上げますが、ただいま私の役所では、産業廃棄物の問題について、その対策に狂奔をしているところでございます。しかし一般廃棄物についても、いろいろと問題がございまして、処理施設の不足とかあるいは建設用地、埋め立て処分用地の確保難などという問題がいろいろ出てきておるということでありますので、これの円滑な対策について、いろいろ財政的に、また行政的に助長するような政策を進めなければならないというふうに考えて、いま事務当局といろいろと協議をいたしているところでございますが、率直に申して、いまは産廃問題で狂奔しているというのが実情でありまして、この点については、先生、大変御不満かと思いますが、実際問題としてウエートはそっちにかかっているということを、これは正直に告白せなければなるまいというふうに思います。
  136. 寺前巖

    寺前委員 私は、産廃問題を重視して対処されるということは緊急の問題だと思います。その点では一生懸命やってほしいと思います。しかし同時に、一般廃棄物は野ざらしでいいというわけにはいかない。しかも、いわゆるごみ戦争というのが現実に大都市の周辺で起こっているわけです。  たとえば私は京都ですが、隣は大阪府です。奈良県があります。兵庫県があります。一番大きな都市といえば、何といっても大阪です。大阪府下を見ると四十三の自治体がありますが、その中でほかの町にごみの処分地を求めているのが四つ、業者に委託して処分してもらっているのが十、今年じゅうに最終処分地を確保しておかなかったらもう満杯となってしまう、どうにもならないという自治体が十七、そして現実に計画を立てたけれども反対闘争が起こって計画が実施できない自治体が三つ。こうやって見てくると、もう大阪府下のすべての自治体といっても過言でないぐらいにこの処理問題というので頭がいっぱいになっているわけです。  そして、いま私が御指摘申し上げましたように、こういう衛星都市ということになってくると、自分の町の中に土地を確保することができなくなるから、どうしたって外へ出ていかなければならない。外へ出ていくということになったら、自分の市の名前で土地を買うわけにいかぬから、間に業者を入れて、業者に委託をして土地を確保させ、そこにほかしてしまうという事態が生まれてくるわけです。それの結果としてどういうことが生まれるかといいますと、たとえば私は、先週の日曜日に京都の奈良県境へ行ってきました。そうすると、奈良県境の奈良のところに、大阪の門真市あるいは守口市の廃棄物を、寝屋川のある中間施設のところへ持ってきて、そこで業者が受け取って、その業者がいろいろな市のやっと一緒くたにして、奈良県境のところへ持ってきて、そこへ放棄しています。その下流はどこかというと京都府です。そこの管理者に聞いてみました。こんな大きな土地にほかしておったら、下流の農民が文句を言うでしょうねと、こう言ったら、いやここは奈良県であっちは京都府だからどうってことないですよ、私が京都の人間ということを知らなかったから、平気でそういうことを言うわけです。しかし私は、それが率直な状態だろうと言わざるを得ないと思うのです。直接自治体が仕事をしているわけではないのです。処理業者に渡してしまう。これが私の住んでいる京都府下の周辺に生まれてくるわけなんです。兵庫県境のところにもこういう計画が進んでいくわけです。  ですから、これは党利党略、党派的な問題じゃない。今日の高度に発達してきた日本のような姿の中においては、この新しい段階にふさわしい焼却のあり方、処分地のあり方、これは非常に大事な問題だ。自治体の固有の事務であるということで済ますわけにはいかないところに来ている。だから真剣に責任を感じてもらう必要がある。  私は、そこで次にお聞きしたいのは、都市の場合に、まず大部分が焼却をしております。その焼却炉を、りっぱなものをどんどんつくるようになってきているけれども、あの焼却炉からは、上からは煙が上がります。水をぶっかけて流します。それから残灰がつくられる。そこにそれぞれ燃やした結果の姿はあらわれてくると思うのです。煙の方のやつは集じん装置で大部分が集められるようになっております。だから、集じん装置の中に有害な重金属がたまると思うのです。それから、水をぶっかけるからこれが流れます。大部分のところを見ると、そこには活性汚泥法なりの処理がそこでされますが、しかし、そこにも重金属がたまるということになっております。それで私が見てきたら、ほとんどのところが重金属除去装置というのを持っておりません。  それから今度は残灰の方です。残灰の方は、いまも言ったように車に乗せて運んでしまう。もちろん集じん装置にたまったものも、とんとんとたたいて下へ落としてそれも積んでいってしまう。全部残灰のところの重金属のかたまりというのは積まれていってしまう。これが有害なものの姿だと思う。  そこで私は、事務当局にお聞きしたいと思うのですが、この焼却炉というものが、いまそういうところからいろいろな形で有害な重金属が出されるわけだけれども、これは最終処分地ではありません。それは危険な状態にないのかどうか、有害な重金属が住民との関係で、農作物との関係で、いまのままで危険な姿にあるのかないのか、私はその点を聞きたいと思うのです。
  137. 山下眞臣

    ○山下(眞)政府委員 ごみ焼却処理施設からの焼却灰なり集じんダストにつきまして、全国悉皆調査をいたしたというものは、実は持っておらないのでございますが、事例的に相当数の例につきまして、委託調査等によりまして調査をいたしました結果がございます。その結果によりますと、先生御指摘のとおりに、焼却灰あるいは集じんダスト、その一部の中には有害産業廃棄物の判定基準に照らしてみましても有害性があると認められるものが認められるわけでございます。昭和四十九年度に調べましたのをいろいろ集めてみますと、焼却灰につきましては、九検体調べましたうちの二検体につきまして水銀と鉛について有害なものが発見され、かつまた集じんダストにつきましては、八検体調べてみたもののうち三検体につきまして水銀、カドミウムというような有害なものが含まれておるというような状況を把握いたしておる次第でございまして、一部につきまして必ずしも十分ではないという状態にあるというふうに申さざるを得ないと思います。
  138. 寺前巖

    寺前委員 ということは、そうすると私、具体的に聞きたいんですが、焼却炉に煙の場合は集じん装置がつけてある。あそこには水をぶっかけて最後には下へ流すようになっている。それと残灰でしょう。煙の方は大気汚染防止法の対象になるんですね。水をぶっかけて流す方は、これは法的には対象になっているんですか。そこは一体どういうふうになっておって、どういうふうにするつもりなのか、ちょっと聞かしてもらいたいと思う。
  139. 山下眞臣

    ○山下(眞)政府委員 ただいま申しましたうちで、実は排水の実態調査のことに触れませんでしたので、それを一言申し上げたいと思いますが、排水につきましては、ほぼ全数を調べてみたのでございますが、確かに、いわゆる環境庁で一般的に決められております排水基準、これに照らしまして、それよりもオーバーしておるというものが七%程度認められるというような実情になっておるわけでございます。  なお、これらの点につきまして、特に排水につきましての現在の規制の状況はどうかということでございますが、実は廃棄物の処理法におきましては、一般的に廃棄物が飛散、流出しないようにしろという規定のほかに、排水につきまして公共の水域、地下水というものを汚染することがないように必要な措置をしなさい、こういう規定があるわけでございます。現在のところ、まだ水質汚濁防止法に基づきます特定施設というふうな指定を受けておらないわけでございますが、環境庁からもお見えになっておられるようでございますが、近々その指定をいたしたいということで環境庁において御検討を進めておられるというふうに聞いておりまして、私どもも、それに対応いたしました措置を積極的に進めていかなければならぬ、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。
  140. 寺前巖

    寺前委員 焼却装置が全国に何カ所あるかわかりますね。その焼却装置の中で、水へ流してしまうやつは法律的には水質汚濁防止法の対象になっていないわけでしょう。ですから、自治体へ行ってみると、まあいわば自主的に、できるだけならないようにということで活性汚泥法などで装置をしていますよ。していないところもありますが、大体新しいやつをしています。ところが、重金属を除去するような立場に立っている、そういう装置を持っているところはそのうち何ぼあるか、ちょっと教えてください。
  141. 山下眞臣

    ○山下(眞)政府委員 現在、全国のごみ焼却の処理施設の数は、千六百四十五カ所につきまして千八百八十一施設あるわけでございます。個所によりまして二施設あるものもございます。私ども調査をいたしております。その水処理の程度につきまして高度な処理を行っておるというものが約四十一施設、四%程度はある、それから中程度の処理を行っているというものが二百四十八施設、約二四%程度であろう、残りの七二%につきましては簡易処理を行って放流をいたしておる、こういうふうな状態にあるというふうに理解をいたしておるわけでございます。最近の処理施設の建設につきましては、私ども助成に当たりましても、そのような公害防除施設を指導いたしながら助成をいたしておるわけでございますが、過去のものにつきまして必ずしも十分でないものもあろうと考えておりまして、先ほど申し上げました特定施設への指定ということともにらみ合わせまして、明年度以降積極的にこれの助成等について努力をいたしていきたいと考えておるわけでございます。
  142. 寺前巖

    寺前委員 私は、有害な重金属除去という問題を、焼却炉のこの施設の中で考える必要があるのかないのかということをまず聞きたいんですよ。あなたは先ほど高度な施設というのが四十一個所あるとおっしゃったけれども、それは全部そういう有害なものを除去する設備になっているという意味ですか。まずそれを一つ聞きたいのと、それから、そういうことをする必要があると見ているのか見ていないのか、ここのところをまず一つ私は聞きたいわけです。一番大事なところなんですね。必要なのか必要でないのか。環境庁の方からでもいいですよ。
  143. 山村勝美

    ○山村説明員 焼却残灰並びに排水中の重金属含有量について、先ほど部長の方から説明いたしましたが、私どもは、やはり水の環境基準でありますとかを保持するためには何らかの処理が必要であるというふうに考えておりまして、先ほど部長は、第二点の質問になろうかと思いますが、高度な処理をしておるもの、中程度の処理をしておるものとラフに申し上げましたが、重金属に着目した処理というふうにさらに細分してみますと、先ほど高度な処理と申し上げました四十一につきましては、完全に重金属も除去できるような体制になっております。さらに中程度の中でも百五十九の施設につきましては、重金属が除去できるものと考えております。したがいまして、千八百八十一施設のうち二百施設が重金属に対応しておるというふうに考えております。
  144. 寺前巖

    寺前委員 その重金属を除去する必要があると見ているのか見ていないのかだよ。ここはどうなの。
  145. 山村勝美

    ○山村説明員 現在、水質汚濁防止法の方で排水規制が行われております。これは環境基準を守るために所要の除去装置を設けて、所要の排水基準に適合するようにしていくということが一貫して行われております。そういう見地から見ますと、現在のごみ焼却場からの排水につきましては、先ほど部長が申し上げましたように約七%において重金属……(寺前委員「除去する必要があると見ているのか見ていないのかだけを聞いておるのです。」と呼ぶ)除去する必要があると見ております。   〔竹内(黎)委員長代理退席、菅波委員長代理着席〕
  146. 寺前巖

    寺前委員 そうしたら、大部分が除去していないのだから、これは除去装置をつけさせるということがきわめて大切なことになるというふうに結論づけていいですね。これが私の聞きたい一つ。  その次に、今度は焼却炉の中に集じん装置があるでしょう。集じん装置にたまっているもの、これは全部残灰をたたいてぱあっと下へ落とすようになっておるわけですよ。それから、いまのやつは全部たれ流しになっておるわけですが、その集じん装置にたまったものと残灰、これは一体どうなんだろうか。これは残灰として全部かためて持ってほかしに行っちゃうんでしょう。それの方の処理は一体危険な姿にあるのかないのか、そこはどうなんです。
  147. 山村勝美

    ○山村説明員 集じん装置のダスト及び焼却した後の焼却残灰につきましては、特に水銀、カドミウムを中心とした産業廃棄物の有害判定基準というのがございますが、それに照らしてみて有害であるとみなされるようなものがごく一部にございます。したがいまして、そういうたぐいのものについては、有害な廃棄物として何らかの対策が必要であるというふうに考えております。
  148. 寺前巖

    寺前委員 最終処分地というのは何らかの対策をする必要がある、何らかの対策をする必要があるのだったら法的にはどうなっているのだろうか。そこの管理は一体どうなっているのだろうか。現実に最終処分地がどういう管理状況にあるのか、ちょっと説明してくれますか。
  149. 山下眞臣

    ○山下(眞)政府委員 実は、先ほど水質汚濁防止法の特定施設の件だけ申し上げたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、現在の廃棄物処理法におきまして産業廃棄物につきましては細かな規定を設けておりますが、一般廃棄物につきましては、公共水を汚染しないようにとか飛散、流出しないようにとか抽象的規定にとどまっておるわけでございます。したがいまして、この一般廃棄物の処理基準につきまして、このままでよろしいのかどうかということが問題になるわけでございますが、実は最終処分の基準にかかわることにつきましては、環境庁と御相談をいたさなければならぬことになっておるわけでございまして、環境庁におかれまして四十九年度にこのごみ焼却施設の実態調査を行われまして、それで今年度におきましてそれに基づいた処理基準の検討委員会というものを設置いたして、現在鋭意検討を進めておられるわけでございます。その結果によりまして、必要に応じまして、一般廃棄物につきましても、有害物質を含む場合の処理基準につきまして現在の規定をもっとよく整備をいたしまして、産廃に準じたような規定に整備をしていく、こういう必要性が生じてくるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  150. 寺前巖

    寺前委員 そうすると大臣、話をもっと素人的に直しまして、焼却場におけるところの水をぶっかけて流しているものは、対策を組まなければ大変だということになっているといういまのお話でしたが、そこは対策を組むために来年度ゆるがせにできないことだからどうしようとするのか。それから集めた灰は持っていく、これも何らかの規制をしなければならぬだろう。そうしたら、そのためにここにどういう対策を組む必要があるのか、来年度予算要求の中でどうしようとしているのか、これが二つ目。それから三つ目に、今度は自治体の責務だということになっているけれども、大都市の周辺の衛星都市は自分の自治体で処理できなくなってきている。よそへ持っていかなければならない実情下になってきているのだけれども、ここは具体的にどうしようというのか、この三つについてちょっと聞きたい。
  151. 山下眞臣

    ○山下(眞)政府委員 実は、まだ要求段階でございますので、これから折衝いたすわけでございますが、厚生省といたしましては、こういった事態に備えまして、一つには、ごみ処理施設につきましても排水処理がほぼできておるものも一部ございますけれども、過去のものについて不完全なものがございますので、これにつきましてしかるべき排水処理施設を設け得るように助成をいたしたいということで、補助をいたしたいという要求を一つ柱として考えておるわけでございます。  それからもう一つは、埋め立て処分地につきましても、やはり公共水域を汚染しないようにするために、擁壁でありますとかあるいは排水の処理施設だとかの施設整備が必要になってまいりますので、これらについても何らかの助成措置を講じたいということを内容にいたしました要求はいたしておるところでございまして、私どもといたしましては、できるだけその実現に努力をいたしてまいりたいと思っておるわけでございます。  それからなお、埋め立て処分地の問題につきまして、御指摘ございましたとおり一廃、産廃の問題が実は一番むずかしく、かつ大きな問題になっておるということを十分意識いたしておるわけでございます。一廃の処分地につきましては、先生冒頭におっしゃいましたように、市町村の固有事務ということで長らく市町村にお願いをいたして今日まで来ておるわけでございます。今日といえどもなおすぐれて地域性の高い問題ではあろうと思うのでございますけれども、国といたしましても、できるだけの援助について検討いたさなければならぬ、かように思っております。現在は起債の道が開かれているにとどまっているわけでございますが、先ほど申し上げましたような施設についての助成等についても努力をいたし、かつまた今後、これは各省との関係も出てくるわけでございますけれども、各地方等におきまして各種の計画、都市計画でありますとか土地に関する各種の計画等が立案されます場合には、こういった廃棄物の処分地というものを意識してやっていただきますように各方面にお願いもいたして、できるだけの努力をいたしていきたい、このように考えておるわけでございます。
  152. 寺前巖

    寺前委員 約束の時間が来ましたのでやめますが、最後大臣にお聞きをしたいと思うのです。  先ほどもあったように、産業廃棄物自身も大変です。だけれども、一般の自治体の責務になっているものも、あれ自身が排水面において危険だ、残灰面において危険だ。そしてそれが自分の自治体で処理できない段階に来ている。とするならば、もう少し広域的に国が責務を持って手を打つということを考えなければならない段階に来ている。いまのお答えでは、自治体の責務で処分地を最後的にどうするのかという問題についてのお答えはなかったわけですよ。どうするのかという問題は緊急の課題だと思うのです。大臣のこれに対する御見解。  それからまた、いまの助成政策というのは、最終処分地は起債です。その前の焼却の場合は四分の一です。こんなことでこの緊急の事態の問題解決ができるのか、もっと大幅な助成措置を検討しなければならないのじゃないか。この二点について大臣お答えをいただいて、私は終わりたいと思います。
  153. 田中正巳

    田中国務大臣 この前申し上げましたとおり、廃棄物指導行政については大いに進めなければなるまい、こう思っておりましたが、この間、大阪の黒田知事が私のところに参りまして、先生いま挙げた設例のことについていろいろ私も聞きまして、非常に問題だ、ことにああいう大阪の衛星都市では非常に問題だという認識をさらに深めました。したがって、いま山下部長の言ったこの予算要求についても、実は余りいい旗色ではございませんが、これは大いにがんばらなければならぬというふうに思っておったところでございます。  なお、広域的な処理の方法等については、今後さらに検討を前向きに続けていかなければならないというふうに思っていますが、いますぐというわけにはなかなかいかぬと思います。
  154. 寺前巖

    寺前委員 終わります。
  155. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 大橋敏雄君。
  156. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 先般報道されました国立がんセンターの薬剤科職員の収賄事件、大変な社会問題化しつつあるわけでございますが、私は、この報道を聞きましたときに、やっぱりだったのか、そうだったのかと非常に残念に思うとともに、ざんきの念にたえない。私は、特にこの事件について、その成り行きを厳しく見守っているわけでございます。と申しますのは、いまから五年前に、この国立がんセンターに関係したある種の事件を通して、もうすでにそのときに汚職のにおいがあるぞということを指摘していたのです。実は、わが党の区会議員の紹介でこの国立がんセンターの薬剤科内に働いていた一下級職員、看護助手の方ですが、その人から訴えがあったわけです。上司から大変ないやがらせや圧迫を受けている、そして職場の配置がえを一方的に強要されております。何とか実情を調査して善処していただきたい、こういう内容であったわけですが、私の手元にそのときの手紙がまだありましたので、きょうここにお持ちしております。昭和四十五年八月十九日付の手紙の内容は、区会議員に送られたものでございますけれども、二回にわたっているのですが、その内容を要約しますと、国立がんセンター設立以来勤務している一看護助手であります。当病院の管理運営は非民主的なところがある、上からの押しつけで一切が動かされているように思う、また、自分の所属は薬局であるが、ここには汚職の感を深くするようなものがある、調査してほしい、それから独身宿舎とは名ばかりで雨漏り、盗難、管理人もいないというようなずさんさである、官舎の方は医師とか上司の人ばかりが入居して、下級職員は高い部屋代のところに入れられて苦しんでいる、大変矛盾だと思うがどうか、また、今度問題になっていた矢野氏に特に汚職のにおいが強い、製薬会社のセールスマンなどと癒着している疑いがある、そしてまた、この矢野氏はずっと同じ職場に居座っている感じであるが、こういうのは前例があるのかどうか調べてほしい、というようなのが八月十九日付の手紙の内容でありました。  その次に、私の秘書あてに送られている手紙の内容、これも要約しますと、労働条件が非常に劣悪である、あるいは処遇問題、つまり自分自身に対して非常に冷遇されているという事情が細かく書いてあります。それからまた、特別昇給のあり方についても不審な点ばかりであるというような内容であります。  それから次に、私あてに来た手紙でありますが、その内容も、国立がんセンターの運営というものは非民主的な運営である、また職権乱用、人権侵害、職務逸脱、非常識な行為、特に薬剤科の職員の中には公私混同している実態がありありと見える、こういうのは一日も早く調査し善処されるべきではないか、特に私自身はこの矢野氏から職場でなぐられたり、あるいは職場にかぎをかけられて働くにも働けない状態にさせられたり、自分が仕事をとっていた机をほうり出されたり、あるいは職場の配置がえを一方的にやらされた、というような内容でありました。  私は本人ともお会いしまして、この問題をずっと聞きながら、これは無視できない重要な問題だ、早速厚生省関係の方にこの内容をつまびらかに伝えて、一日も早く実情調査をして善処せよ、このように強く要請したのであります。ところが数日後でしたか、ある程度期間たったと思いますが、つまびらかではございませんが、調査報告が厚生省のその関係者の方から私のもとになされました。また、それと同時に、その国立がんセンターの関係者も私の会館の部屋まで数名見えまして、この事件に対するてんまつの詳しい報告あるいは釈明がなされたわけでありますが、そのときの報告内容は、確かに、看護助手に対する暴力的行為あるいは暴言等については大人げない行為でありました、反省の色を含めた内容で述べたわけでありますけれども、看護助手の訴えは多少食い違いがあるようであります、むしろその看護助手の方の日ごろの生活態度というものは非常識的なところもあるというような逆な説明も加えられまして、私も非常に戸惑いを感じながらその報告を聞いたわけでありますが、数人の方々の証言的な発言でありましたので、私もその報告をそんなものかなと聞いて、むしろその看護助手本人に対して、あなたも日常生活の非常識的な行為がある旨を聞いたので、それを改めることも大事ではないでしょうか、あなたが心配していた他の問題については何もなかったという報告だからがまんしておさめてくれ、こういうことで私はその問題にけりをつけたつもりでいたわけですが、本人はどうも釈然としない、こういう気持ちできた模様でございますが、依頼した私がそのように言うのであるならば、もうやむを得ませんと力を落として一件落着と、実はこうなっていたわけです。  ところがその後、病院の看護助手の関係者の中から、公明党は弱い者の味方と言いながら期待外れであったとか、特に大橋代議士も政府とがんセンターの者に言い含められてしまったのではないかというような余り好ましくないうわさがちらほら立ったわけでありますが、私自身も釈然としない気持ちで今日まで実は過ごしていたわけです。  ところが、先ほど申し上げましたように、国立がんセンター薬剤科の汚職事件が報道されたその直後に、そうした関係者から電話が入ってまいりまして、大橋代議士さん、やはり私たちの言っていたこともまんざらではなかったでしょう、このように指摘をされたのです。私も本当に恥ずかしい思いがするやら恐縮するやらで、と同時に、あのときにもう一歩、真剣に厚生省の方々が取り組み、調査をしていたならば、この問題ももっと変わった姿で解決され、そして今日のようなああいう汚職事件にまで発展しなかったのではないだろうか、このような気でいっぱいなんです。そういう気持ちでいる私に対して、厚生省としてどういう考えでいるかお聞きしたい。
  157. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御指摘のように、五年前の事件でございまして、先生御指摘の矢野その他の薬剤科の職員は現在おりませんので、その当時の記録等でいろいろ調べてみたのでございますが、五年前、昭和四十六年にそういった事件があったことは事実でございまして、当時、先生の御指摘に基づきまして、厚生省の方におきましても国立がんセンターに調査を指示しておるところでございまして、その結果につきましては、ただいま先生おっしゃったような結果になったわけでございますが、当時の記録によりますと、先生御指摘の職員間の暴力事件については事実であったようでございます。ただその際、汚職等の疑いにつきましては、いろいろ当時調査しておるようでございますが、当時といたしましては、その事実が認められなかったので、その旨先生に御報告をしたということになっておるところでございます。ただ、そのようにその当時調査に基づきまして判断をいたしまして、そういった疑いというものがなかったことで処理いたしたわけでございますけれども、今回先生御指摘のように、当該職員が汚職事件を引き起こしたということは非常に残念なことでございまして、今後このような事件が再び起こらないように努力してまいりたいと思っております。  それから、いろいろな職員の不満でございますけれども、国立がんセンターは……
  158. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間の制限がありますから  私がいま言わんとしているのは、五年前にそういう汚職のにおいまでもうすでに指摘をした内容を調査してもらったわけですが、それがそのときは何でもなかったという報告だったわけです。しかし、事実それが続いて今日このような大きな問題に発展してきた。それに対してもっとあのときに真剣に取り組んでいただいていたならばということを言ったでしょう。私は、一看護助手、いわゆる下級職員ですね、本人もそう言っておりますが、こういう人の訴えだからということであるいは軽視をしたのではないか、こう思うわけです。私は、当人の暴力事件問題とあわせて、全般的なそうした薬剤科の汚職のにおいの問題もお願いをしていたわけです。  大臣、あなたはその当時の大臣ではないわけでございますが、厚生省の最高責任者として、仮にこういう事件の訴えがあったときに、そのようなあいまいな調査でいいのかどうか。恐らく適当にやれなんてことはおっしゃらないと思いますが、いまの局長の答弁では、決してそのときの調査はずさんではない、あいまいでもなかったのだというように聞こえる答弁でであります。私は、先ほど言ったように、私までが政府やがんセンターの言葉に煙幕を張られてだまされたのではないかと言われるほどの指摘を受けている立場にあるわけですよ。大臣の考えを聞かしていただきたいと思います。
  159. 田中正巳

    田中国務大臣 この事犯については、実はけさ私、知ったわけでございまして、よくわかりませんが、いまだんだんお話を聞いてみると、これに対する調査結果の先生に対する報告というのはずさんだった。よくあることなんですね。調べるときに自分の方に都合のいいような結果だけを調べて報告するということがあって、間々あり得ることですが、しかし、やはりこういうときにはちゃんとあらゆる角度から調べて正確なものを把握し、また、それを取り次いだ先生に恥をかかせるなんてことは、これはよくない、かように思いますから、今後はこういうことについて正確、公平、綿密な調査をしなければいかぬ、これがたとえどこから出てこようとも、ということで考えておるわけであります。
  160. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 当然のお考えだと思いますが、非常に残念でなりません。前回の委員会で、この汚職に対する問題点や、あるいは制度上の欠陥はすでに指摘されて、その是正が約束をされていたようでございますが、その後、状況はどう進展しているのか、具体的に説明していただきたいと思います。
  161. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 九月二十日、矢野の逮捕から始まったこの事件に対します当局のとった措置でございますが、順を追って申し上げますと、十月七日に各地方医務局長に対しまして、綱紀粛正に不可欠な事項の総点検を指示いたしました。  それから次に、十月十四日でございますが、全国の各国立病院長、各国立療養所長、それと地方医務局長を集めまして、私から綱紀の粛正についての訓示を行ったところでございます。なお同日、やはり薬剤科長、総婦長等に対しまして、それぞれ担当の課長から訓示を行っております。  それから次に、起訴されました矢野、竹田の両名に対する処分でございますが、矢野、竹田両名につきましては十月十五日、清水につきましては十月二十三日、それぞれ国家公務員法第七十九条第二号に基づきまして休職の処分をいたしております。  それから、十月三十一日でございますが、綱紀粛正の徹底につきまして、これは特に大臣からの御命令もあったわけでございますが、厚生事務次官から各国立病院、国立療養所長あてに綱紀粛正の徹底についての依命通達を出しておるところでございます。さらに、この事務次官の依命通達に基づきまして、私の名前をもちまして、同日付国立がんセンター総長並びに各国立病院長、療養所長あてに、さらに細部にわたっての通達を行っておるところでございます。  それから十二月一日に、今回の事件の管理責任を問うという意味におきまして、国立がんセンターの総長に対しまして文書による訓告処分を行い、さらに、これはがんセンターの病院の方でございますが、院長、副院長に対しまして、国家公務員法によります文書による戒告処分を行った。かような点が従来とってまいった点でございます。  なお、今回の事件に付随いたしまして、これは事件にはならなかったわけでございますけれども、医薬品の治験をめぐるいろいろな疑惑があったわけでございまして、その点につきましても、昭和五十年十一月二十八日付で、私の名前をもちまして、国立がんセンター総長並びに各国立病院長、療養所長に対しまして、その治験薬の取り扱いのガラス張り化と申し上げましょうか、そういった点についての通達を出しております。  これがいままでとりました措置でございます。
  162. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 ひとつ二度とこのような汚職が起こらないような体制を確立していただきたい、また、行政指導をしっかりしていただきたいことを強く要請しておきます。  もう一つ、私がこの病院の運営について問題と考えていることは、何といっても人間社会の正常な運営というものは信頼関係から生まれると思うんですね。ところがこの病院は、何となく対話あるいは末端の声が尊重されていないという向きがあるのです。これはいろいろとお話を伺っている中にそれを感じます。この国立がんセンターにもそのようないわゆる苦情をチェックし、あるいはそれを処理し、それが反映されていくような体制を確立する必要がある。特にこの国立がんセンターですね、それを私は要請しておきます。  それで実は、こういう具体的な問題があったわけです。職員として近くレクリエーションを行おうということがずっと以前から計画されて、職員のささやかな楽しみになっていたわけですが、この事件が報道されるや、もう一方的に自粛という名目で、何の話し合いもなくそれが中止をされている。恐らく皆様の気持ちの中にも自粛の気持ちは大いにあったでありましょうけれども、やはり意見意見としてそれを聞き、吸い上げ、そうした上で対話の中から、しかし、こうこうこういう事情だから今回はひとつ自粛してほしい、このような運営ならば問題はないわけでありますが、先ほども言いましたように、上からとにかく一方的に押さえつけて一切が運営されているような雰囲気がこの病院の中にあるということであります。これについてもぜひ手を入れていただきたい。このことについてのお答えをお願いいたします。
  163. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御指摘のように、国立がんセンターは他の国立医療機関と異なりまして、ちょっと特殊な性格を持っておるところでございます。これは国立病院でも同じことでございますが、特に国立がんセンターではいろいろな職種を抱えておる、特に医療機関のほかに研究所も持っておるというような問題があるわけでございまして、また、その職員につきましても医師、看護婦のように特殊な資格を必要とする職種も多いわけでございまして、そういった点で従来から管理に非常に苦労をしておるところでございまして、そういった職種間のいろんな問題が、ある意味におきましては、ただいま先生御指摘のような傾向としてあらわれたのではないかと考えておるわけでございまして、従来ともこの職員の管理につきましては、いろいろ意を用いておったところでございますが、なお今後一層、人事管理の面で先生の意を体しまして適正を期するよう国立がんセンターを指導してまいりたいと思っております。  なお、先生御指摘のこのレクリェーションの問題でございますが、これはやはり職員の皆さんが自粛というようなことで開催の時期を延長することを決定いたしたようでございますが、その後、いろいろ事件の方の後片づけも進んでおるわけでございまして、来年の一月下旬から三月上旬の間にこのレクリェーションを実施したいというようなことで、現在検討を進めておるところでございます。
  164. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私がいま言っているのは、一部の悪徳者のために多くの善良な職員のささやかなレクリェーションが問答無用式に一方的に中止、こういうあり方はよくない、だから、大いに皆さんの意見が反映されるような体制をぜひ確立していただきたい、これなんですから間違えないようにしていただきたいと思います。  それから、もう時間も迫ってまいりましたので、これは個人的な問題になりますけれども、この一看護助手の方の申し立ての中に、特別昇給の件について、昭和三十七年四月一日からがんセンターに出向以来特別昇給は一回しかしていただいていない、在職期間から見てあと二回ぐらいは当然あってしかるべきではなかったでしょうか、私は特に冷遇されているのではないかということを言っておりました。また、特別昇給は在職期間ではなくて勤務成績によって決定するということを聞いたそうでございますが、この方の場合は、現在の臨床科に配置転換される前は薬剤科で矢野氏あるいは清水氏等、今度の汚職事件を起こした人たちと一緒に働いておった。彼らの横暴について五年前に厚生省初め病院幹部に陳情し、あるいは指摘をしていたというような人ですから、むしろこうした勇気ある勤務姿勢については、他の人よりもある面では優遇すべきではないかと私は思うわけです。ですから、この辺を後で詳しく調査した上で公平な措置をとっていただきたい、これは大臣にもお願いしておきます。  最後ですから、あわせて質問しておきますが、薬物偏重医療の欠陥がまた今度の厚生省調査でも明らかになったようでございます。政管健保を対象にしてその調査結果が先日公表されていたわけでございますが、一件当たり一日平均医療費八千三百八十六円、その中にいろいろ含まれるわけですけれども、特に投薬、注射代というのが四三・五%と相変わらず薬物偏重の内容を物語っているわけでありますが、このような国立がんセンターの薬剤科の事件の発端もそういうものと関係なしとは言えませんので、この際、もともと主張なさっております医薬分業を具体的に促進されていくのかどうか、この辺もあわせて大臣お尋ねしておきたいと思います。
  165. 田中正巳

    田中国務大臣 最初に、国立がんセンターの人事管理、運営については、できるだけ円滑にやっていくように今後とも指導をいたしたいというふうに思います。所説の点につきましては、事務当局でいろいろ調査をいたすことと思います。  さて、いわゆる薬投与の過剰の問題でございますが、前々から言われていることでございます。したがいまして、このような姿というものが望ましいものではないという一面のあることは申すまでもないことでございます。したがって、このような傾向をできるだけなくするためにいろいろなやり方があろうと思います。先生お説の医薬分業もその一つかと思います。しかし、これについては今日まで医薬分業の実施あるいはこれが広く行われるようにあれやこれやの点で検討いたし、大分進んで、地方の医師会と薬剤師会の間の話し合いなどというものも進んでおりまして、ある程度前進の傾向がありますから、さらにこれを助長いたしたいというふうに思います。それからいま一つは、やはり保険医療機関が薬で利益が上がるという仕組みというものがこれを助長しているというふうに思いますので、薬価基準収載のあり方等についても検討を加え、そうしたことが余り妙味のないというふうな薬価基準というものをつくることも一つの方法だろうと思いまして、そうしたことについてもいま実施いたすべく検討をいたしている次第であります。
  166. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いま大臣お答えになったとおり、医務局長さんもそれを体して今度は真剣に、まじめにその調査に当っていただきたい。そして前回のような取りこぼしのないようにひとつよろしくお願いをしておきます。本人は非常識なところがあるなんて言われておりましたけれども、まじめな方でもありますし、話せば話すだけその人柄もわかってまいりました。ですから、そういう私のいま言わんとする気持ちも踏まえた上でりっぱな調査、そしてその結果、その一看護助手の方が公平に恵まれた立場に置かれるように強く要請して、私の質問を終わります。
  167. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 岡本富夫君。
  168. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は、きょうは心身障害者の問題につきまして若干質問いたしますけれども、身体障害者福祉法、この法律の目的は、ここにありますように「身体障害者の更生を援助し、その更生のために必要な保護を行い、もって身体障害者生活の安定に寄与する等その福祉の増進を図ることを目的とする。」こういうようにありますから、私は、一般の方と違って若干ハンディキャップがある心身障害者の方々の福祉対策、これについて大臣はどういうようにお考えになっておるのか、まずその見解を承ってから質問に入りたいと思います。
  169. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御質問の身体障害者の福祉、更生の問題でございますが、この法律にございますように、身体障害者の方々が社会復帰ができるための措置、更生医療でありますとかあるいは補装具でありますとかあるいは医療でありますとか、こういうものを行いながら、かたがた施設といたしましては身体障害者の授産施設、重度の授産施設、更生施設というようなことを行いまして収容し、授産を行っております。  別に労働省におかれまして職業訓練、補導ということもやっておられるわけでございます。  なおまた、本年からは在宅の障害者の方々のためにも福祉手当の制度が新たに発足いたしましたし、なお、いろいろ障害があるために職場の往復、自動車でありますとか、あるいは盲人の方にはそれぞれ盲人の方々にプラスになるようないろいろな施設あるいは器具、あるいは聾唖者の方々にはやはりそれにふさわしい補装具あるいはそういった施設、こういったものを総合的な施設対策とし、あるいは在宅対策として行っておるわけでございます。  なおまた、ことしで一応の完成を見ましたけれども、身体障害者の人々が社会の一員として生活し得るためのいわゆる身体障害者モデル都市という構想のもとに、両三年にわたりまして五十三都市に政府の補助金、自治体の追加補助ということで、この方々が日常生活、職場生活に遺憾のないようないわゆるモデルの構想を行いまして、これが一般に広く普及されるようにいまもこれは指導し、また各省の御協力を得ている次第でございます。
  170. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、いまはからずもあなたの方から自動車のお話が出ましたが、実はこれは厚生省が行ったのではなくして、社団法人厚生車両協会、会長さんが飛田享さんという方でありますが、この方が全国で初めて本年、昭和五十年の三月二十三日、東京の世田谷区役所の後援によりまして、座ったきりの身障者を車いすによって、さらに自動車によって社会復帰してもらうことを念願として講習会を一日開いております。これは非常に反響がありまして、当日はテレビあるいはまた各紙もその状態報道しておりました。私は、この様子を見ておりまして、実際に調査いたしますと、東京に住むAさんというのは、いままで座りきりの身障者として二十年間過ごしてきた。しかし、友人から誘われるまま講習会に参加して、自分もできるのではないかという希望がわいた。そしてこれはその前に一遍やったことがある。その講習会に参加したらしいのですが、運転免許の習得に挑戦した。そしてみごと合格して社会復帰の第一歩を踏み出した。こういう体験、また中には初めて参加した人が、参加して非常によかった、このような講習会は毎月定期的に開催してほしい、また、全国の同じ身障者の人たちも参加させてあげたい、こういうように非常に好評だったというわけです。そしていままでは寝たきりあるいは座ったきりの人たちが社会復帰をして、そして一人前に生活をしていこうという意欲が出てきておるわけです。したがって私は、厚生省の方からやはり全国的に、この飛田享さんという方は、非常に長年かかって一生懸命に献身的な努力をしているわけですけれども厚生省主導型のこういうような希望をわかせ、そしてまたみごとに生活復帰できるような講習会なんというものを開いてみたらどうか、こういうように思うのですが、その点についていかがでございますか。
  171. 翁久次郎

    ○翁政府委員 お示しの講習会あるいは訓練、こういったことにつきましては、厚生省といたしましては、身体障害者更生指導所というものが各府県にございますが、従来この施設に対しまして下肢障害の人々の、いまおっしゃいました自動車の訓練ができるための自動車の購入費の助成をしてまいっております。また、障害者の人が自分で運転できるための自動車の改造費、これにつきましても助成をしているわけでございます。したがいまして、こういった趣旨を受けて各都道府県が自主的に、いま申し上げましたような更生相談所なりあるいは更生指導所においてこういったことがどしどし行われるように期待もしておりますし、また、そのための施策を従来からも続けており、今後ともこの点についてはさらに一層進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  172. 岡本富夫

    ○岡本委員 従来から進めておったと言いますけれども、ここは初めて大体二百名参加して大々的にやった。それが非常に好評だったというんですね。だから、各都道府県にもあなたの方から呼びかけて厚生省主導型のこういう講習会を開いてみたらどうか、こういうふうに言っているわけでありまして、その点についてちょっとお答え願いたい。
  173. 翁久次郎

    ○翁政府委員 お示しのお考えはよくわかるわけでございますけれども、身体障害者の人々の福祉のための措置として国がみずからかかわらなければならない事項、それからまた、国が主導的に指導して各県あるいは社会福祉法人等にお願いしながらやっていくもの、あるいは自主的に自治体等でおやりになること、それぞれいろいろとパターンはあろうかと思います。こういった下肢障害を持った人々の自動車の訓練あるいは社会復帰というようなことにつきましては、できますことならばやはり地域の理解と、それからまた、そういった自治体の積極的な自主的な発意というものが根にあることが必要ではなかろうか。厚生省といたしましては、そういった動きをさらに助成し、あるいはまた、これに方向を与えるということが国政としてかかわるべきことではなかろうかと考えております。  ただいまお示しの点につきまして、よく御趣旨は理解いたしますが、そういった点で国といたしましては、全国的にそういった機運が盛り上がっていくような方向で行政に努力をしてまいるというように考えておるわけでございます。
  174. 岡本富夫

    ○岡本委員 前の方はいいから、結局こういったものは機運が盛り上がってきて身体障害者の人たちが社会復帰できる方向に指導していこう、これは一番最後のことで私は了承しておきます。前の方はだめですよ。  そこで次に、警察庁にお聞きいたしますけれども、社会復帰を目指す身障者にとって自動車は第二の足として大事なものでありますけれども、自動車免許習得を目指しているところの身障者のためにどのような措置をとられておるのか、これをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  175. 八島幸彦

    ○八島説明員 身体障害者の運転免許の取得の問題につきましては、警察といたしましても、交通の安全の上で支障がない限り最大限の努力をしているところでございます。そこで、身体障害者の方が運転免許を取られる場合に一番問題になりますのは、技能試験、それから適性試験と申しますか運動能力、そういう面であろうかと思いますが、直接試験をお受けになる前に、身体障害者の方の体の状態に応じてどのような車を選んだ方がいいかとか、あるいはどのような補助装具をつけた方がいいかとか、そういうようなことについてある程度助言を申し上げるということが必要であろうかということで、全国的に試験場に身体障害者に対する相談の窓口を設けているのが実情でございます。  ちなみに申し上げますと、昨年一年間にかなり全国的にも適性相談という形でその御相談に応じているわけでございますけれども、警視庁管内、東京都で申しますと、肢体御不自由な方に対して約一万人、それから耳の御不自由な方約四百人程度に適性相談という形でいろいろ御助言申し上げているというのが実情でございます。
  176. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、この報道によりますと、交通事故についても身障者の運転者の方が比率の上からは少ない、そういうようなことも言っておりますし、また事実、この会長の飛田享さんは十五年間運転免許を取って運転しておるけれども、一度も事故を起こしていないということで、最近は飲酒運転とかいろんなのがありますから、そのことから考えると、かえって非常に安全運転できるのではないかということも考えられるわけであります。  そこで、いま身障者で自動車の運転免許を持っておる人がどのくらいいるかということは、警察庁の方で把握していらっしゃいますか。
  177. 八島幸彦

    ○八島説明員 概数でございますが、現在、肢体の御不自由な方で条件つきの免許を受けておられる方約六万五千人ほどおられます。また、耳の御不自由な方では補聴器をつけるという条件のもとに約二千五百人ほどの方が免許を受けておられるわけでございます。
  178. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、いま各試験場といいますか、警察の方では試験場でいろいろと助言をしておるという話でありますけれども、そこまで来るというのが非常に問題であると思うのです。試験を受けに来るときには、相当自動車学校に行ったりしていろいろ運転できるようになってから来るわけですからね。要するに寝たきり、座ったきりのそうした人たちをそこまで社会復帰させていくということについては、これは厚生省に先ほども言いましたけれども、この自動車の講習会を、地元の盛り上がりということを言っておりますけれども、これも必要ですけれども、これを動かせるような、その地元の盛り上がりをつくれるような強力な指導といいますか、先ほど少しあなたは答えておりましたけれども、認識をもう少し新たにしていただきまして、自動車講習会の普及を厚生省の方で図っていく、これが私は大切であろうと思うのですが、これについていかがですか。
  179. 翁久次郎

    ○翁政府委員 いまお示しのありましたことは、こういった講習あるいは訓練がしやすいような環境づくり、それからまた、それが主体的にできるような機会をどんどんつくっていくということにあろうかと思います。先ほど申し上げましたように、現在の都市化の中でおくれておりますのは、こういった障害者の人々が社会の一員として働き、あるいは通勤し、あるいは生活するためのいろいろな施設が立ちおくれているということにあるわけでございまして、この点についてはモデル都市の構想によって一歩前進を図りつつあると思っております。ただ、具体的にこういった身障者のための自動車講習会、こういうものができるようにするためのいわば助成措置というものにつきましては、まだ未熟な点があると思います。その辺につきましては、私どももお示しの点について十分配慮しながら今後ひとつ考えてみたいと、こういうように考えます。
  180. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで次に、身障者の自動車の免許習得者が一般の人たちと同様二種免許が取れるような免許習得条件といいますか、こういうことをすべきではないか、こういうように考えられるわけです。いろいろ聞いてみますと、諸五郎さんという方は、試験も百点満点のうち九十五点を取らなければならぬ、それに対して挑戦して、深夜一時から二時ごろまで勉強したり、三カ月猛勉強をして、やっとこの二種の免許を取った、こういうことであります。  そこで、これは厚生省の方でありますけれども、こういった二種免許を取った人がタクシーの運転手になりたい、こういうことでありまして、若干タクシーの運転手になっている人もいるそうでありますけれども、大体普通のタクシー会社は車は一括購入して、ノークラッチ式というようなものは高くつくから、なかなかこれは高価になってしまうから使わない。普通のタクシー会社はこれを使用しない。仮に採用されても、その差額分を会社に支払わなければならぬというような現状であるそうです。したがって、この差額分なんかのこういったものに対するところの助成、こういうものは厚生省の方で考えられませんか、いかがですか。
  181. 翁久次郎

    ○翁政府委員 お示しの点につきましては、いま直ちには無理ではなかろうかと、こういうように考えます。
  182. 岡本富夫

    ○岡本委員 身体障害者福祉法施行規則、ここの十三条、これを少し変えればそういうことはできるわけですね。こうした身体障害の方々が懸命に努力して社会復帰をして、一般の方々と同じように働いて、そして国にも迷惑をかけないようにいこうという、こういった意欲に対しては、やはり積極的に支援していく、そうした方が皆さんが働く気になっていいのじゃないか。ただ動けないから、もう国からいただいて、それで休んで寝ているのだというようなことでは、かえってこれは本当の福祉にならない、こういうように考えられるわけですが、一度ひとつ、この点検討していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  183. 翁久次郎

    ○翁政府委員 十分研究さしていただきたいと思います。
  184. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、運輸省の方来ておりますね。――こういった身障者の方々が個人タクシーの認可を受けようといたしますと、現在は個人タクシーの認可は年齢三十五歳以上でタクシーの運転経験が十年以上と、こういうことですね。ところが、先ほど申しましたように、タクシーの運転手にはなかなかなれない、十年以上の経験がなければ、今度は個人タクシーの免許を取得できない、こういうことですが、何らか特別措置あるいはまた両省でお考えになって、厚生省の方と運輸省の方で考えて、どういうふうにしたらこの人たちの希望を満たしてあげることができるか。そしてここで何人かそういう方が出てきますと、もう身障者の方々は、これは寝ておったらいかぬというわけで、また一生懸命に生きるため、あるいは社会復帰するための大きな力になると私は思うのですが、その点についてお聞きしておきたい。これは運輸省と両方から……。
  185. 宇野則義

    ○宇野説明員 運輸省の車両課長でございますが、私、直接担当いたしておりませんけれども、本日出てまいりますときに担当の方で、この件に関しまして様子を伺ってまいりましたところ、個人タクシーの免許については一般の免許申請者と同じような取り扱いでしかできないのではなかろうかというふうな見解を持っておるわけでございます。厚生省の方の身体障害者対策の一環としての問題点がいろいろあろうかと思いますけれども、その辺あたりにつきましては、関係の省庁と横の連絡をとりながら検討してまいりたいと思います。
  186. 翁久次郎

    ○翁政府委員 この営業をする場合の一つの条件として、熟練ということと、やはり営業上の安全ということが二つの要素になろうかと思います。下肢障害があり、身体障害者の人がいわゆる社会人として運転をもって立つという場合に、もとより障害を克服してこの道に行く努力ということも十分評価しなければなりませんし、同時に、運輸省がいま申されましたように、安全とそれから熟練ということについてどのような評価をしていくかということも要素として考えなければいけないと思います。そういった点で、いまお示しの、できるだけその人々の社会復帰のために、国なりあるいは制度がどの程度この人たちに温かい手が差し伸べられるかということにつきまして、ただいま申し上げた二つの要件とあわせ考えながら、両省でひとつ検討させていただきたい、かように考えるわけでございます。
  187. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に、これは大臣、身体障害者雇用促進法の精神に基づいて、官公庁の車あたりも、厚生大臣の乗っている車あたりは、特に身体障害者の方が運転をするというくらいの相当思い切った――思い切ったというのはどうか知らぬけれども、よく聞いてみますと、身障者の方の方が事故が非常に少ないそうですよ。大臣も余り事故は好きじゃないでしょう。ですから、こういうような配慮あるいはまた、先ほどから申しておるようなことについてあなたの御意見を承っておきたいと思うのですが、いかがですか。厚生大臣から……。
  188. 田中正巳

    田中国務大臣 身体障害者の福祉についてはこれを進めていかねばならぬ、そしてそれが単に国や地方公共団体からの給付等々によってのみやるべきものではないので、やはり自立的な社会活動というものが中心になって身体障害者の福祉が図られるというのが望ましいものである。ただ、いま身体障害者の福祉、生活の安定ということを、自動車という仕事に関していろいろ所説を述べておられまして、一つのお考えであろうかと思いますが、だんだん自動車についても営業形態をとるということになりますと、これは社会的防衛との関連においていろいろむずかしい問題もあろうと思いますが、自動車によって生計を立てるというようなことが可能な場面においては、できるだけの助長をいたすといったようなことはやってもよろしいんじゃないかというふうに思って、今後の検討課題というふうに思います。
  189. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは大臣に特に検討課題にしてもらって、この寝たきり、座りきりの方々がどんどんこうやって社会復帰していくということは、私は非常に望ましいことであると思いますから、特に厚生大臣に要望をしておきたいと思っております。  次に、時間がありませんから、水道について一言質問をしておきたいと思うのです。これは日本水道協会が発行して厚生省水道環境部が監修しておるのですが、このパンフレットを見ますと、昭和四十八年度には百十七億立方メートルの全国年間給水量が実績として出ておる。それに対して五十年度あるいは六十年度では百五十億トンあるいは二百十億トンというような水需要が推定されておるというようにも出ておりますし、また事実、地方自治体の方に聞いてみますと、水の需要が年々ふえてきておって、この水源確保には皆非常に苦労しておるわけであります。これを見ますと、最初はその地域あるいはその地域の山から取り、あるいはまた井戸から取り、あるいはまた川から取るということで発達してきた今日の水道事業でありますけれども、最近ではそういうことではとても賄い切れない。たとえばAという市あるいは町、そこに水源が確保できないということになりますと、このパンフレットにも出ておりますけれども、今後の水源の開発については水道の広域化あるいは水質の安全確保あるいは水道料金の平均化、こういうようなものが課題になっているということも出ておりますけれども、いま地方自治体では水道事業の開発について補助金が非常に少ない。これについてどういう見解を厚生省は持っておるのか、ひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  190. 山下眞臣

    ○山下(眞)政府委員 もう先生よく御承知のとおりに、沿革的にも水道事業というのは地方公営企業ということでございまして、基本的には公共性を踏まえながら独立採算制で行っていくということをたてまえとして今日制度が組み立てられておるわけでございますけれども、御指摘のとおりに、非常に水源事情等が変化をいたしてきておりまして、あらゆる部分をそういう考え方で貫き得ない部分も生じてきておる。ことに水源の開発の問題、それから政策的に、できるだけ弱小な水道事業体は一緒になっていただきまして広域化いたしていきたい、こういう考え方を持っておりまして、現在、昭和四十二年以来、水源の開発費並びに広域化の事業に対しまして国庫補助を行ってきておるわけでございまして、昨今の情勢にかんがみ、私どもといたしましては、この助成の充実を一層図りたい、こういうことを基本的な考え方にいたしておるわけでございます。
  191. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣の見解を一遍聞きますけれども、いままで、先ほどから言いましたように、四十二年から国庫補助を三分の一出しているということですが、こういうような地方自治体の財源圧迫が結局水道料金にはね返ってきて、公共料金の値上げということで非常に困るわけです。したがって、税金はほとんど国に行ってしまっておるわけですから、これからはひとつ、国の補助制度から負担制度、こういうように変えていかなければならぬのではないか、しかもその負担率を引き上げなければならぬ、こういうような見解を持っているわけですが、厚生大臣、弱腰にならないでひとつ思い切った御答弁をお願いしたいと思います。
  192. 田中正巳

    田中国務大臣 水道事業につきましては、地方においていろいろと問題があり、実はかなりやかましいことになっているわけであります。ことに石油ショック以来コストが非常に違ってまいりました。現在程度のものではどうにもならぬ、こういうことを言っていますが、ただいま山下部長が言ったように、最初の水道に対する国並びに世間考え方と今日では微妙な違いが出てきているわけであります。したがいまして、できるだけこれについては助成をしていかなければなるまいと思っています。いま先生は負担と言いましたが、これはちょっと事業の性質上負担というのにはなじまない、やはり補助制度じゃなかろうか、私はこのように思っております。まあ補助であれ負担であれ、要するに助成がほしいのでありまして、そういうことで努力をいたさなければなるまいと思っているところであります。
  193. 岡本富夫

    ○岡本委員 実は私、日本の国の水一つを取り上げましても、上水道の水源地の問題は厚生省、利水、工業用水なんかは通産省、下水へいけば建設省というようにばらばらなんですね。ですから治水、利水、それから最後の排水、こういうものを将来一本化しなければならぬと私は思うのです。たとえば下水道なんかですと、三分の二を補助しておりますね。したがって、この三分の二ぐらいの負担を国がしていくということでなければ、これからの大事な日本の国の水を確保することができない、こういうように考えるわけです。  そこで、大蔵省来ておりますね。――あなたの方の考えはどうですか。実はある地方自治体の方からあなたの方に、あなたかどうか知りませんが、上水道の水源地の確保についての補助金の増額をお願いに行ったそうです。厚生省の方からそうやかましく言わないというような御返事があったそうでありますけれども、その点一応確かめておきたいと思うのです。いかがですか。
  194. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 いま委員御指摘になりました事実の問題でございますが、各地方公共団体の水道関係理事者の方々がずいぶん最近私どもの方に御要望にお見えになっておりますけれども、私どもが申しておりますことは、五十一年度の水道の予算につきまして、特に水源の開発あるいは広域化の事業につきまして、厚生省からは補助率の引き上げという強い要望が出ておりますけれども財政当局としては非常にむずかしい問題で実現いたしかねますというふうにお答えいたしております。
  195. 岡本富夫

    ○岡本委員 まるっきりぼくが聞いたのと逆ですな。ここではそんなことは言えませんね。いずれにいたしましても、厚生大臣、これは負担率といいますか、補助率といいますか、これの要求を厚生省の担当局長さんの方か部長さんの方ではしているかわかりませんが、大蔵当局に対しても相当やかましく言ってもらわないと、地方自治体の方では、地方自治体が赤字で、しかも水が必要である、こうして結局その反動がどこにくるかと言えば水道料金の値上げ、しかも財源確保できないと、結局水道が送れないというようなことで、地方自治体でも非常に困るわけです。同時にまた、住民が一番困るわけです。したがって、その点について厚生大臣は英断をもって、英断と言ってもそう大したことではありませんけれども、少なくとも下水道並みの補助を行えるように力を入れてもらいたいと思うのですが、いかがでございますか。
  196. 田中正巳

    田中国務大臣 私の方では、ぜひ補助率アップをいたしたいということで予算要求しているわけでありまして、私の部下に余り大蔵省にお願いをしないなんという不心得な者は私は絶対にいないと思いますので、何かのお間違いだろうと思います。地方の実態はにっちもさっちもいかないところにきているわけでございますので、私どもの方としては、何としてもこれは実現をいたしたいというふうに思っているところでありますが、いま主計官からお話があったとおり、大蔵省主計局では、これについては大変に難色を示しているということでありますので、勝負はこれからだろうというふうに思っているわけでございます。
  197. 岡本富夫

    ○岡本委員 ひとつ大臣のお力で負けないように、大蔵大臣にも特別に話をして、主計官の方にも相当陳情がきているはずですから、財政事情が許さぬからだめだなんて一言のもとにはねずにがんばってもらいたい。これをひとつ要求しておきます。  最後に、阪神水道事業団、これは通常阪水というのですが、関西地方の市町村はここから水を買っているわけです。今度この水源が非常に不足になりまして、第五次計画をやろうと言っているわけです。その第五次計画をやるときには、やはり公益事業として補助金を出すべきである。もうすでにできているのだから、大きくするやつは関係ないのだということではなくて、大きくするということは新設と同じでありますから、私は補助金を出すべきだと思うのですが、あなたのお考えを最後に聞いて終わりたいと思います。
  198. 山下眞臣

    ○山下(眞)政府委員 大変歴史の古い水道でございまして、戦前からの状態でございますために、現在までのところ補助対象にいたしておらぬわけでございますが、ただいまの第五次計画、詳細をまだ承知いたしておりませんので、よく伺いまして、十分に検討さしていただきたいと思います。
  199. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは検討事項ではなくして、第五次計画というのは、いまのでは足りないから大きくするわけです。各市はそこから水を買っているわけですから、それをやらなければ各市町村でやらなければいかぬ。それをまとめての公益事業でありますから、これは結局新設と同じことだ。その大きくする分だけは新設なんですから、その点は特に補助の対象にしていただくように要望しておきまして、きょうはこれで終わりたいと思います。
  200. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 小宮武喜君。
  201. 小宮武喜

    ○小宮委員 私は、保険財政について若干質問します。  厚生省昭和五十一年度から健康保険における家族高額療養費制度の自己負担額を現行の三万円から五万円に引き上げる方針であると伝えられておりますけれども、これが事実かどうかということと、また現行二十万円の標準報酬月額を三十万円に引き上げるというようなこともいろいろ伝えられておりますが、これは事実かどうか、この二つの問題についてひとつ御答弁を願いたい。
  202. 八木哲夫

    八木政府委員 ただいま先生からお話がございました、昭和五十一年度におきます健康保険の改正問題でございますが、厚生省といたしましては、ただいま先生からお話がございましたような問題につきまして、具体的にこうしたいという方針をまだ決めた段階ではございません。したがいまして、ただいまお話がございました点につきましては、今後の問題であるというふうに考えております。  現在の状況について申し上げますと、医療保険の問題についての厚生大臣の諮問機関でございます社会保険審議会におきまして、かねてから来年の健康保険の改正問題に取り組むということで、すでに昨年から一年以上にわたりましてこの問題につきまして御議論を賜っておるわけでございますけれども、現段階におきましては、まだその結論が出てないという段階でございまして、ただいまお話ございましたような厚生省方向を決めたという事実はございません。
  203. 小宮武喜

    ○小宮委員 厚生省としては局長がそういうことを言われたとしても、考え方は大体私がいま指摘したような考え方で社会保険審議会に諮問しておるのではないか、こういうように考えます。しかしながら、いま言われるように、審議会の結論が出ておらぬのでここで何とも言えぬということのようです。これはやはり社会保険審議会の結論が出てからこういう方針を厚生省で決めますということに順序としては、手続としてはそうなるだろうと思いますが、それはそれとして、いずれ審議会の結論も近々出ることですから、当然はっきりするわけです。  ただ、われわれが言いたいのは、標準報酬月額の二十万円を三十万円に上げることについては、私もさほど問題にする必要もなかろう、やむを得ないであろうというように考えますけれども、高額医療費の自己負担分を三万円から五万円に上げるというのは、これは四十八年の健保法改正の際も、私たちはこの制度ができたときこれを高く評価したわけです。しかしながら評価しながらも、この制度の中では同一人が同一病院で同一月内でなければならぬということで、せっかくこういう制度をつくるならば、もっと皆さん方に喜ばれるように改善をしなさいという主張をしてきた手前があります。そういうふうな意味では、今回もしも三万円から五万円に引き上げられるということになると、これは明らかに改悪だと私は思うのです。だから、いろいろ財政事情の問題はあるにしても、この問題についてはひとつ特に再考をお願いしたいということで私、意見として申し上げておきます。後でこの意見に対して大臣からも一言所見があれば、ひとつお伺いしたいと思います。  ところで今度は、問題はやはり財政の問題ですから、この問題が出てきた発端というのももともとは財政事情が悪化したということで、いまの標準報酬月額の二十万円から三十万円、あるいは高額医療費負担の問題も出てきているわけですから、その意味では政管健保が五十年度二百五十億以上の赤字が出るということが伝えられておりますけれども事実はどうか、実際どれくらい赤字が出るのかという点についての答弁をひとつ願いたいと思います。
  204. 山縣習作

    ○山縣政府委員 昭和五十年度の政府管掌健康保険の財政の見通しでございますが、前半までの実績から現時点では約百九十億円程度の単年度赤字が見込まれるというふうに推計いたしております。
  205. 小宮武喜

    ○小宮委員 百九十億の赤字が出る見通しというのは原因はどこにありますか。いわゆる赤字の原因はどこにあるかということです。
  206. 山縣習作

    ○山縣政府委員 赤字の原因といたしまして収支両面にその原因があると推定いたしておりますが、収入面におきましては、ここ最近におきます景気の停滞等が原因となりまして標準報酬月額の伸び悩みという点と、二番目といたしましては、保険料収納率におきましても若干低下するのではないか、かような見込みを立てておるところでありまして、この二点から収入面の落ち込みが予想されるわけでございます。一方、支出面におきましては、被保険者の扶養率の増加と申しますか被保険者一人当たりの扶養率が増加いたしておりますことや療養費、特に高額療養費の増加等もございまして、そのため保険給付費も増大いたしております。  この両面におきまして先ほど申し上げましたような収入不足を生ずると見込んでおるわけであります。
  207. 小宮武喜

    ○小宮委員 四十九年度の保険料収入の見込み額と実績とはとういうようになっていますか。――それでは、せっかく四十九年度の収支の答弁に立つわけですから、その意味では五十年度も収支はどういうような見込みになるのか、あわせてひとつ調べるなら一緒に調べて答弁してください。
  208. 山縣習作

    ○山縣政府委員 お待たせいたしました。四十九年度当初におきます保険料収入の予算でございますが、一兆三百七十七億円でございまして、これに対します決算は一兆八百六十三億円となっております。  五十年度の見込みでございますが、予算におきましては一兆三千六百八十五億円でございまして、今回見込んでおりますのは一兆三千六十七億円でございます。
  209. 小宮武喜

    ○小宮委員 五十年度も当初の予算の際はやはり黒字を計画しておったのじゃないですか。それがいまになってみれば赤字が出るということで、これは私、四十八年度の健保法改正の場合を非常に思い出してくるのですが、あの際も、大臣自身が答弁しておられたのは、いわゆる政管健保はちょうど四十八年度末までの累積赤字三千三十三億をたな上げして、四十九年度から財政は健全化できるという説明をしておるわけですよ。ところが、いま言うように結局四十九年度も赤字だった。もちろんその赤字の原因の中には、診療報酬を二回にわたって引き上げましたからね。だがしかし、一回の分は当初の予算の中に入っておったわけです。高額医療費の引き上げの問題も、当然その中には、綿密な計算の中には入っていたわけです。ただ、予定と違ったのは、年内に二回の診療報酬の値上げをやったというその一回分だけが余分に上がったということなんですよ。そうしますと、いまのように予算を組む場合はいつも黒字が出るように組んでみたり、それで年度末になると赤字だったということになるし、そういう点についての予算の組み方に対して、予算編成に対して、もっと慎重にもっと緻密な計算をして予算を組んでもらわぬと――ただ、私も考えますには、昨年からの不況によって非常に低操業時代に入ったということで減収になった、そのために保険料収入が減るということはもちろん考えられますけれども、やはり厚生省当局として予算編成に当たっては、そういった社会情勢の変動というものを十分見きわめて予算を組んでいただかぬと、いつもそういった意味で当初から赤字が出るということを予定して予算を組むはずはないわけですよ。だから、四十九年度にしても、五十年度にしても、実際は黒字が出るように予算は編成されておりながらも、実際年度末になってみると赤字になってくるというような問題が生まれてきますので、やはり予算編成に際しては、赤字が出るにしても、よほどの社会情勢の変化がない限りはある近い数字が出るくらいに予算で組んでもらわぬと、そういった意味で赤字が出た、赤字が出るとこうする、たとえば三万円から五万円に引き上げる高額医療費の問題にしても、結局四十八年で組んでもう二年くらいしたら今度はそれを五万円に上げなければいかぬというようなことに追い込まれるということについては、われわれはやはり問題を感じているわけです。しかしながら、これはわれわれとしてもいろいろ審議する場合に、そういうふうな点を、かなり突っ込んだつもりですけれども、やはりお互いにもっと突っ込んで審議をしなければいかぬ、こういうふうに考えております。  そこで、厚生省はこの政管健保の赤字対策としていわゆる保険料率の引き上げを図るために弾力条項の発動を考えて、現行の七・六%からこれを八%まで、最高限度まで上げようという考え方があるようですけれども、これも、先ほど言われるように、また皆さん方は、審議会にお願いしておるので、結局はそれを待ってからでないと厚生省としての正式な態度表明はできないということになるかもしれませんが、しかし、少なくとも国会で審議する場合に、われわれの考え方はこうだということを、たとえば上限の二十万円を三十万円に引き上げるにしても、家族療養費の負担の問題にしても、やはりわれわれの考えはこうなんだ、やはり弾力条項についてわれわれはこうするのだ、こう考えておるのだ、その上げ幅だとかその問題については審議会あたりでいろいろ検討願うとしても、考え方ぐらいここで少なくとも厚生省として明らかにできぬということになれば、これは何のためにわれわれがこの国会の場で審議をしておるのかということを言いたいくらいです。だから、その点については、弾力条項の引き上げの問題についてはいかが考えておられるのか、これは厚生大臣に質問します。
  210. 田中正巳

    田中国務大臣 いま先生からいろいろ御質問がございました。  まず予算の問題ですが、これはもう先生御承知のとおり、ことしの予算というのは、一般会計予算があのていたらくでございまして、非常な狂いを生じたわけですが、こちらの方の予算、この特別会計の健康勘定につきましては、狂いは出てまいりましたものの、私どもとしては、そんな大きな狂いでは実はないわけでございまして、こうやった標準報酬が、ベースアップが予想以上に低かったわけでございまして、そうした違いが出てきたということでございまして、若干の赤字が出るということははなはだ申しわけないのですが、今後とも予算編成に関しましては精細なものにして余り狂いのないようにいたしたい。何さまことしのことでございますので、これはひとつ寛容な目で見ていただきたいというふうに思います。  それから、明年度の財政対策でございますが、率直に申しまして実は一般的な傾向もまだ策定ができていないところでございますが、さらに目の前にぶら下がっている診療報酬改定の問題が実はあるわけでございまして、これがまだ決着をこれは本当に見てないわけでございまして、近く何とかいたしたいということでおるわけでございますが、まだ各方面との折衝にも実は入っておらないわけで、これを見ないと実際はかなり正確なものを出せないわけでございます。  そこで、巷間いろいろなものが新聞等に伝えられておるわけですが、おととい実は決算と見通しを説明をいたしたものですから、そこで新聞の方では、しからば一体これについてどういうことをやるのだろうかということでいろいろに実は書いてあるわけでございます。こっちの方でまだ決めてない証拠に、私もやっぱり商売柄精細に読んでみましたが、皆違うのでございまして、推測記事でございます。  そこで、私の方で感触をこの際申し上げた方がいいのじゃないか。すべては審議会にやっぱりかけなければいけませんから、大臣がここの場で断定的に申し上げると審議会からしかられるという一面もございますが、しかし、さらばといって国会は国会ですから、やはり私の感触というものをある程度申し上げた方がいいと思いますが、標準報酬引き上げについては、先生もいろいろ所説があるようですが、私もある程度これは引き上げなければなるまい。ただ、二十万から三十万、こういうことを書いてあったり先生もおっしゃるのですが、あれについても実はいろんなことを言ってきまして、もっと上げろと図に乗ったような御意見も実はあるわけでございますが、これは余り上げるのはどうかということもありますので、そこそこのところでひとつこれは上げさせていただきたいものだというふうに実は思っておりまして、これが比較的われわれの間で考え方が定着をしている問題であります。  高額医療費を三万から五万というのですが、これも実は非常に複雑な一面を持っておるわけでありまして、被保険者サイド、患者さんサイドから見たものと国保等の保険者のサイドから見たところで真っ向から違う意見がわれわれのところへ来るわけでございまして、その辺の調和をどう見出すか。また、これについては、診療報酬が同じ診療行為でも引き上がったから、したがって、ある程度引き上げるのは当然じゃないかという見方もありますし、むしろそれはそうじゃないのだ、あれはやはり患者さんなり被保険者の可処分所得で考えるべきものだという議論もあります。ただいまのところ、決して五万円にするなどということを確定をいたしたわけではございません。また、余りドラスチックなことは私もやりたくない、かように思っておりまして、いま検討中でございますが、若干の引き上げはやむを得ないのじゃないかというお声が強いようでございまして、目下いろいろと検討をいたしているところであります。  それから、診療報酬が決まっておりませんものですから、したがって来年の見通しがはっきりしない。したがいまして、保険料率をどうするかということについても実はまだ決まっておりません。また、率直に申しまして財政当局、かなりお手元不如意なものですから、したがって、下手に診療報酬を引き上げて弾力条項を使われると金が出るというような一面があるわけで、この弾力条項というのは、実は私、パテントを取っている、あれは私の考えたものなんでございまして、こういうときに、保険料率の引き上げに歯どめがかかるように政府の方もお金を出しなさいという仕掛けになっているものですから、この辺で上手に働いているなと実はほくそ笑んでいるわけでございますけれども、しかし、それにいたしましても、特別会計の中をそう不健全なものにするわけにはいきませんので、どうしたらいいかいろいろ考えておるわけでございまして、決して隠しているとか、あるいは社保審だとか健保等懇等々にお話をしていないとか、あるいは御返事がないから申せないということではございませんで、厚生省事務当局も私も、実はいろいろな角度から、いま先生のお述べになったようなことはみんな相談をいたしておりますけれども、率直に言うてこれでいこうという結論をまだ得ていないわけでありまして、どういう組み合わせになりますか、まあ予算期も近いものですから、中医協の動き等見比べながらできるだけ早く結論を出したい、こう思っているやさきでございます。
  211. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまの政管健保の収支の問題は、皆さん方一昨日と言われておりますけれども国民というのは、やはり新聞報道を見て、この問題について、いろいろな問題について非常に知っているわけですよ。知る権利とかへったくれとか、そんなことは言いません。ただ一番問題になる、たとえば自分の身近な問題は、新聞報道によって、これは非常に大事な問題だというようになると、われわれの方にすぐ尋ねてくるわけです。特に皆さん方で一番関心を持っておられるのは、厚生大臣はそのような気持ちはさらさらないようですけれども、たとえば厚生年金大蔵省が六十五歳から支給開始にするというようなことで新聞にちょっと出ました。そうすると該当者は、これは非常に関心を持っておるわけです。そうすると、そうなったら大変だということで、これは事実かとすぐ尋ねてくるわけです。だから私は、心配するなと、いまの田中厚生大臣はそういうようなことは絶対やらぬ、安心しなさい、こう言っておるわけです。そのように、ちょっと一言でも新聞報道が出たら、関係者の方々は自分の問題として、非常に神経過敏になるほど関心を持つわけです。  だから、そういうような意味で、いまの政管健保の収支は、一昨日の問題でなくて、これは前々からいろいろな形で新聞報道されておる。そういうものをみんなが見ておる。見ておるからこそ、われわれに対する質問がいろいろ出てくるわけです。だから、そういった意味では、われわれはやはり皆さん方の代表として出ておる以上は、真偽のほどをここで質問するのはあたりまえの話で、それに対して皆さん方は、ノーならノー、イエスならイエスということで厚生省考え方を明らかにすることが、新聞ではなるほど出ていたけれども厚生省はそういうような考え方でおるのかということで、国民が安心をしたり、あるいはけしからぬという声になってくるか、まあ二つしかないわけですけれども、そういう意味で、国民というものは新聞報道を見て、そしてああいうような記事の一言でもぴんとくるものがあるわけです。そういうことでわれわれも質問をしているので、審議会を開いておるから確定的なことは言えなくても、少なくとも厚生省考え方ぐらいは、やはり国会の質問に対しては答えるべきだ。それは何%引き上げるのだとかあるいは幾らにするとかいうような断定的なものは、これは審議会関係もあるからなかなかむずかしいとしても、考え方としてはこういたしたいというような考え方ぐらいは国会でやはり明らかにすべきじゃないのか。皆さん方、いつも審議会がどうだ、これがどうだということで逃げておる。そうして恐らく審議会は、ここ一週間のうちには結論が出るわけでしょう。そうすると、ここでは一週間前までは、それはわかりませんと言っていた、二十日に出るはずですから、そうすると、国会が終わって帰ったら、翌日の新聞にはちゃんと出ておるということになるわけです。そうすると、われわれから見れば、われわれが一週間前質問したときに何を答弁したのかということにもなるわけです。  だから、そういったことを特に考えていただきたいと思うのですが、それでは、診療報酬の値上げの問題も、大臣も大分御苦労されておるようで、私も御同情申し上げますけれども、中医協は何か最近話し合いがついて再開されるというような模様がまた伝えられておりますけれども、その辺の事情はどうですか。
  212. 田中正巳

    田中国務大臣 先生、この方の新聞報道はわりあいに余り間違ったことを書いておらないようでございますが、この前私、この委員会で申し上げましたが、中医協を再開するための条件というものがございまして、この中である程度のものは、私どもの努力によりまして、また関係者の御理解によって、条件を満了するものもできたわけでありまして、そうした中でやって中医協をひとつできるだけ早く再開をするようにというふうなことを、私も先日円城寺会長に申し上げて、各方面の感触をうかがっているところでございます。しかし、ここで私が余り断定的に申すと、何をまた厚生大臣、イージーに考えておるのかというふうに言われても、これは余りいい傾向が出てまいりませんものですから、これについては慎重に申しますが、従来よりは私は前進をした形になってきておる、もう一踏ん張りだと思っておりますので、折しも予算期も近いものですから、何とか予算期に間に合わせてこの問題の処理をいたしたいと思っておりますし、また、努力のいかんによっては、そのことが不可能でもないのじゃないかと思われるような状況にきましたので、なお一層の努力をいたしたいと思っている次第であります。
  213. 小宮武喜

    ○小宮委員 だから私は、断定的に言えと言っておるわけではないです。しかしながら、大分厚生大臣が努力をして非常に前向きの方に好転しておるということは喜ばしいことですが、それでは中医協が再開されたら、再開された中医協に診療報酬の値上げの問題を諮問するお考えですか。
  214. 田中正巳

    田中国務大臣 そもそも中医協を再開したいということは、診療報酬の改定をいたしたいからという意味でやっているわけでございます。したがって、条件さえそろえば、できるだけ速やかに諮問をいたしたいというのが私の真意でございます。
  215. 小宮武喜

    ○小宮委員 諮問する際は、大臣の方から何%ぐらい引き上げたいという形の諮問をするのか、こういうように政管健保赤字だから、ひとつ診療報酬について検討してくださいというような一つの具体案というものを出さずに諮問する形式をとるのか、それとも診療報酬をこれぐらい上げたいということで諮問するのか。だから、それは幾ら上げるとかいうようなことは抜きにして、諮問の形式についてちょっとお答えを願いたい。
  216. 田中正巳

    田中国務大臣 いま先生のおっしゃった幾つかの諮問の仕方が実はあるわけでございまして、過去においてもそういう経緯があったそうでございます。私もいろいろ研究しているわけですが、そのどの形式をとるか、これはいまのところまだ未定でございまして、また関係当事者、公益委員あるいは一号、二号の委員の方々の思惑等も聞いて、何とか円満に円滑にこれが進むようにしなければいかぬのですから、したがって、事をせいて失敗してもいけませんから、各方面の御意見を聞いて、そうしてできるだけ速やかに決着を得るように、しかし最後は、やはりこれは具体的なものが出てこなければどうにもならぬわけですから、その方向に向かってどういうプロセスを踏むか、これも私一存ではいかぬわけでありまして、何しろあのめんどうな中医協というところですから、したがいまして、中医協の各側の御意見をいろいろ聞いて、円満に事が進むように取り計ろうと思って、いろいろこれから打診をしようと、こう思っておるところです。
  217. 小宮武喜

    ○小宮委員 大臣も大分御苦労されるようですけれども、やはり今後もっともっとこの政管健保の赤字の問題についても掘り下げていかねばならぬ問題だと思います。しかしながら、きょうはまだ大臣局長も貝のごとく口をつぐんでなかなか言おうとしないからこれくらいにして、次はちょっと国保の問題について質問します。  国民健康保険も非常に大幅な赤字が出て、非常に困っておるということですが、この国保の赤字を招いた原因はどこにあると思いますか。
  218. 八木哲夫

    八木政府委員 先生御指摘のように、国保の財政につきましては、現在大きな問題に当面しているわけでございますけれども、国保の財政の一番大きな理由としましては、本質的に被用者保険と比べまして低所得者が多いという問題もあろうと思います。さらに大きな原因としまして、最近の大きな問題といたしまして、老人医療の問題でございます。老人医療の問題でさらに高額医療の問題、この辺の問題が特に国保の財政に大きな効果があらわれているという面が、国保財政の最も大きな問題ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  219. 小宮武喜

    ○小宮委員 国保の赤字対策について、原因はわかりましたから、対策についてはどのような措置を講じようとしておるのか。特に五十一年度予算編成の問題ももう間近に迫っているわけでございますから、そういった従来と違ったこの国保の大幅な赤字財政について、厚生省としてどのように対策を立てておるのかという点についてひとつお聞きします。
  220. 八木哲夫

    八木政府委員 現在、国民健康保険は、ただいま申し上げましたような大きな財政問題を抱えておる、しかも国民医療の確保という面から、この問題をとうてい放置するわけにはいかないということで、他の制度に比較しまして、基本的に、調整交付金を含めまして四五%の国庫補助があるわけでございますけれども、さらに最近の老人医療の問題あるいは高額医療というような問題を含めまして、五十年度予算におきましても、特別に臨時財政調整交付金につきましての特別な助成措置を強化するというようなことで、昭和五十年度予算におきましては、補正後一兆七百五十六億円という巨額な経費を計上している次第でございます。しかし、国保の五十一年度におきます問題を考えました場合に、やはり国保財政の健全化というものを図りますためには、従来の臨時財政調整交付金、この辺の問題につきまして一層強化していかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  221. 小宮武喜

    ○小宮委員 いろいろ抽象的な答弁があっておるわけですけれども、それも予算折大詰めを迎えて、それを決定しないと何とも答弁のしょうがないというところかもしれませんが、それはそれとして、この問題を検討しておる社会保険審議会の健保問題等懇談会で、定年退職後の医療制度をどうするかについて、この国保の赤字の問題と関連して、退職者の継続医療制度の問題がいろいろ新聞紙上に流れておるし、これも退職寸前の人たちあたりは非常に関心があるわけです。だから、そういった意味田中厚生大臣は、中医協の問題だけは正確に新聞報道しておる、ほかの報道は一つも当たっておらぬ、誤報だと言わんばかりの答弁をされましたけれども、これも誤報なのかあるいは正確な報道をしておらぬのか、この問題についてひとつ厚生省考え方をお聞きしたい。
  222. 田中正巳

    田中国務大臣 退職者医療問題については、実はかなり前からいろいろ議論されておりまして、五十年度予算編成の節にも、これはむしろ大蔵省から強く言われております。しかし、私はこれについて賛成していない。なぜかというと、国保サイドから見るとなるほど国保の財政を軽減させる一助になるということですが、しかし、いま保険者集団を見ますると、組合管掌健康保険ではある程度やれるかもしれません、これにもできないところも実はあるようでございますが。政府管掌健康保険、先生がさっきからいろいろわれわれに質問しているとおり、いまもうかなり財政が苦しいわけでございまして、これに下手に退職者医療をやって、数年これにおっかぶせるということになりますると――やれといったって、やれやしないということなんですが、そうすると、前に勤めておったところが大企業だから退職者医療のメリットがある、中小企業だったからだめだというのは、私は、こんな老後にまで不公正を持ち込むというのはよくない、こう思って賛成しない、いい顔しない。しかし、正直言いますと、いまだに大蔵省はやれ、やれ、こう言ってわれわれのところに来ているというのが実態であります。それがよく報道されるわけでありますが、私は、だめだ、こう言っているわけであります。しかし、全部だめだというのもいけないので、何かいい方法ないか、こう思っていろいろいま検討はしております。ある程度の話の材料になっておるもので、まだ決定はいたしていませんが、任意継続制度先生御存じの、あれを上手にある程度使えないか、これである程度のことができないかといったようなことも、いろいろ検討の俎上に上っていることだけは事実でございます。
  223. 小宮武喜

    ○小宮委員 その問題と関連して厚生大臣は、現行の国保制度とは別個に、いわゆる老齢者の健保特別制度の創設について何か事務当局に検討を命じたとかいうことでいろいろ報道もされておりますけれども、この問題については、これはそういうようなお考え方をお持ちなのかどうか。大臣、いかがですか。
  224. 田中正巳

    田中国務大臣 いま保険局長から国保の財政難の原因についていろいろ御説明がありました。あの中の一つに、いわゆる老人の医療費の問題が国保の中に大きいという説明がありました。私も実はそうだと思うわけです。しかし、これは全部ではございません。かなりの負担を国保にかけていることは間違いがございません。そこで、もともと医療費が一般の青壮年の人の四倍も五倍もかかると言われている老人、これがまた老人医療の無料化制度等々と絡み合いまして、受診率が高い、給付費が高いというこれを、そう言っては悪いのですけれども、一番弱い保険グループである国保にだけこれをおっかぶせておいて――いろんな名目で助成はしておるものの、そういったようなことで済むだろうかどうかというのが私の心配であり、また、こうした不公平というものは、私は長く続けるべきものではないというふうにかねがね考えておるわけであります。  そこで、一つの考え方でございますが、老人を別なグループにしてやれないものかどうか。しかし、この場合だれからかやはりこの老人のための医療費を支弁しなければならぬわけでありまして、国もこれについていろいろと助成もいたすでありましょうが、しかし、やはり老人自身は保険料の負担能力というものはあるものではございません。そうすれば、やはり所得がある程度ある方々に、この人たちの前の世代の人々の医療に対してある程度のめんどうを見てもらえないものであろうか。また、それをやらなければ成り立たぬわけですが、まあそういうことをいろいろ考えて検討をしているわけであります。検討していることは事実でありますが、非常にむずかしい問題でございますので、事務次官を長とするプロジェクトチームを役所の中に置いていろいろやっておりますが、何分にも財源の調達、仕組み、それから老人独特の給付の仕方というものがあるだろうというふうに思っておりまして、たとえば予防面とかあるいは健康診断とかいったようないろんな面も勘案しなくてはならぬこともあるのじゃないか。できるかできないか、いろいろ広い角度から検討をいたしておりますが、何分にもどうも費用を広く一般に求めていかなければならぬという問題がございますので、五十一年度には間に合いませんけれども、これはやはり検討は続けていかなければならないというふうに思っている次第であります。
  225. 小宮武喜

    ○小宮委員 それなら、五十一年度の通常国会にはこの法律案は提出はできないということですね。
  226. 田中正巳

    田中国務大臣 そうです。
  227. 小宮武喜

    ○小宮委員 それから、国保の赤字がいろいろ論議される中で、こういうような問題を言うのはどうかとも考えますけれども、現在この国保の被保険者の給付が七割になっていますね、本人の場合。それで、家族の場合もこれは七割なんですね。しかし、国民皆保険としていろいろ制度がありながら、国民保険だけは本人の給付が七割だということでは――ほかの保険はみんな十割なんです。いかに財政的に苦しくとも、少なくとも国民皆保険といういまのたてまえからいって、こういうように格差があるということについては、これはいかがなものだろうかという疑問を持つわけです。だから、赤字は赤字としても、やはり皆保険というたてまえからいって、この制度をそろえて、その上でまた赤字はどうするかということを考えるべきじゃないのか。ただ赤字だから上げないということじゃなくて、やはりほかの政管健保にしても国保にしても本人給付も十割なら十割にそろえて、それで赤字が出るならば、赤字はいま大臣もいろいろ考えられておったように、そろえるものはそろえて、その上で赤字をどうするかという抜本的な対策を立てるべきではないかというように考えております。  そういうような意味で、国保の保険給付を本人の場合に十割に、他の政管健保と同じようにそろえるということを考えておられるのかどうか。考えておられるということであれば、いつの時期にそろえるのか、その点ひとつ、これは大臣から。いや、局長でもいいです。しかし、最後の決め手になるところは大臣に言ってもらわないと……。
  228. 八木哲夫

    八木政府委員 ただいま先生からお話がございまして、貴重な御意見でございますが、率直に申し上げまして、国保の先ほど申し上げましたような財政状況というものを考えました場合に、現在の七割給付、これは四十八年の法改正によりまして、健保の家族についても七割給付が実現した、あるいは高額療養が実現したというようなことで、四十八年の改正におきまして、いろいろな見方があろうかとも思いますけれども医療保険制度としましては大きな前進になったというように考えられるわけでございます。  そこで、先ほど来申し上げておりますような国保の非常にむずかしい財政状況、経済状況を考えました場合に、現在の七割給付に対応しまして、現在の財政状況のもとにいかにしてこの制度をまず維持するか、これが先決問題であろうというふうに思われるわけでございます。さらに今後国民の医療費というのは、こういう低成長下でございましても、医学、医術の進歩に伴いましてますます医療費の上昇というのは考えられるわけでございますので、こういう状況下におきましての医療保険制度のあり方というものを考えました場合に、まず地固めをするという意味で、当面の国保の問題といたしましては、その財政をいかに健全化するかというのがまず先決問題であろうというふうに思われるわけでございます。  確かに、先生お話がございましたように、健保の場合には本人が十割という問題もあるわけでございますが、ただ高額療養費の制度が実現されたということによりまして、現在の七割給付というのも、質は七割のかなり上の方まで行っているということも考えられるわけでございます。当面の問題としましては、まずそういう問題でございます。  ただ、長期的な問題としましてどう考えるかという問題もあろうかと思いますけれども、これはまだ今後考えるべき問題であろうと思いますけれども、厚生大臣の諮問機関でございました長期懇の答申におきまして、たとえば各制度を通じて本人、患者負担を一割程度にするというのも一つの方向ではないかというような長期懇の御提案もあるわけでございまして、今後の医療保険制度の問題につきましては、しばらく長期的な問題として取り組むべき課題ではないかというふうに考える次第でございます。
  229. 小宮武喜

    ○小宮委員 たしか大臣は、四十八年の健保改正のときかその次の国会で、私の質問に答えて、五十一年の十月からは十割給付にしたいというような答弁をされたように私は記憶しておるのですが、そうであればかなりまた後退するようなことになってくるが、そういうような答弁をした覚えはないですか。私は聞いた記憶はあるんですがね。
  230. 田中正巳

    田中国務大臣 四十八年当時、私は大臣をしておりませんでしたから、したがって私ではございませんが、しかし、前の大臣でもそういう答弁をすれば、やはり私どもにとってかなりのオブリゲーションになっているはずですから、自覚症状があって何とかしなければならぬということになるだろうと思いますが、これは思い違いじゃなかろうかと思います。  ただいまの問題は古くて新しい問題でございます。やはり同一負担の同一給付というのが望ましい姿でありますが、しかし、十割というものがいいか悪いかという議論も世上あります。しかして一遍やったものを引き下げるというのも実際問題としてなかなかむずかしい。しかもまた、いま言うとおり国保の財政は非常に逼迫している、やろうにもやれないというのが実態であります。したがって、国保の財政というものを健全化するといったようなことについてあれやこれやの手法を駆使して、その一つに、いま私が余り確定的に言うとまたしかられますけれども、さっき私が言ったようなこともいろいろやってみて、そして国保というものがどういう給付に耐えられるかということをやはり地ならししなければいかぬと私は思うのです。その上で国保と他の健康保険制度との間の格差を縮めることができるかできないか検討をいたしたい。一つの大きな問題であるということは私もよく存じております。
  231. 小宮武喜

    ○小宮委員 一昨年の石油ショック以来、福祉という問題がかなり後退しつつあることは事実です。だから、四十八年の健保改正の場合には、あのいわくつきの健保改正でかなり前向きに答弁しておったというように私は記憶しておるのです。これは議事録があるから調べればすぐわかりますけれども、四十八年であれば田中厚生大臣でなかったことだけは明らかですが、しかし、あの当時はかなり前向きの答弁をされておったことは私は記憶しておるのです。  だがしかし、それは後にしまして、陸上の政管健保においては医療給付費に対して十三・三%の定率国庫補助がなされているわけですね。ところが、同じ政府管掌の医療保険である船員保険については、昭和四十二年度以降、疾病給付費に対して六億円の定額国庫補助に据え置かれているのです。一方、船員保険における疾病給付費の伸びも、ここ数年来非常に急速に伸びておりまして、五十年度予算においてはすでに約八十億の赤字を出しておるという問題で、この点についても、これもやはり四十八年の私の質問の場合に、ここで厚生省はこれをふやしますということを答弁しておるのです。これは議事録を持ってくれば間違いない。ところが、その答弁をしながらもまだ現在でも六億に据え置かれておるんですよ。こういうようなうその答弁をしてもらっては困るのです。少なくともここで答弁する以上は、やはり守ってもらわぬと困るのです。しかし、その点はいずれまたやりますけれども、そういうような意味でこの船員保険の疾病給付に対しても六億に昭和四十二年以降据え置かれておるということについて、過去は過去としても、いま非常に財政難の折から、これも非常にむずかしい問題と思うけれども、少なくとも二年前に約束したことは守ってもらわぬと困る。あの際もたしか十億ぐらいまでふやしますということを言っておるんですよ。だから、その意味で少なくともその約束だけは守って、五十一年度予算ではやはりいまの六億を十億ぐらいにふやすということをここではっきり言ってもらいたいと思うのです。また変な答弁をしますと、私は議事録を、四十八年のやつをみんな持ってきますからね。どうですか。
  232. 山縣習作

    ○山縣政府委員 先生がいまお示しになりましたように、船員保険の疾病部門の財政状況は確かに赤字傾向になっておりますが、過去におきます関係者の御尽力によりまして、なお積立金を有しておることも事実でございます。さらに、政府管掌健康保険と比較いたしました場合における保険料率の問題でございますとか給付水準等、なお政府管掌健康保険との比較におきましても、私どもの方でも研究を要する問題もございますので、引き続き鋭意検討させていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  233. 小宮武喜

    ○小宮委員 厚生省が引き続き検討するというのは、まあやらないということなんです。だから、その場その場だけの一きょうは私も少しにこにこしておるからいいけれども、今度やるときは少し雷を飛ばしますからね。しかしながら、それはそれとして、これは四十八年の健保法改正の場合に約束しておるのだから、そんなうその答弁をしておったということになると、これは問題ですよ。だからもう一度改めて、私は議事録を持ってきますから、今度の、次の国会あたりでまたこれはやりたいと思います。  時間がないから最後の質問に移りますが、原爆関係について質問します。  まず、被爆認定地域拡大の問題ですけれども、広島にしても長崎にしても、被爆認定地域を現在の六キロから十二キロまで拡大してほしいという陳情が、被爆者団体から非常に強い要請があっておるわけですが、この問題についても何か、私がことしの通常国会で質問した場合の答弁と、厚生省が後でいろいろ陳情に行かれた人に対する答弁とでは若干やはり変わっておるわけです。この問題について、政府として公の場所で、十二キロの認定地域の拡大について厚生省としてはどうするのかということを、ここではっきり厚生省の方針をひとつお聞かせ願いたい。これは大臣にひとつ御答弁願いたい。
  234. 田中正巳

    田中国務大臣 突然の御質問で、実は公衆衛生局長ここにおりませんものですから、私が政治的にタッチをした限りにおいて御答弁申し上げますが、(小宮委員「政治的に答弁してください」と呼ぶ)いろいろこの認定地域の拡大についての御陳情があります。しかし、六キロから十二キロということでございますが、これは私、今日直ちにこれを実現するということについてはめんどうだというふうに思っておるわけであります。しかし、六キロメーターを全然拡大を考えないということではございませんが、十二キロではいかに何でも広過ぎるのではないかというふうに私は考えて、私のところへ来た陳情者にはさように申し上げておるわけでございます。また、通常国会で六キロを十二キロに拡大いたしますという答弁は、私も公衆衛生局長もしていないはずでございます。何がしかの拡大をいたしたいというふうに答弁をしているというふうに思いますが、いずれにしましても、広島と長崎との二つの問題のバランスの問題もございます。したがいまして、これについては目下公衆衛生局でいろいろと検討をいたしているところでございまして、結論を速やかに出さなければならないと思っておったところでございますが、詳細についての事務的な検討については、私、公衆衛生局長からよく聞いておりませんものですから、感触としてはそういうところにあるというふうに心得ていただきたいと思います。
  235. 小宮武喜

    ○小宮委員 その程度のことなら私も知っているわけです。しかし、大臣も陳情をあちこちから受けておるから、やはり最後大臣が決断をすべきなんです。事務当局、公衆衛生局長に任せぬで、政治的にと言うから、私は政治的に判断してくださいと言ったわけです。政治的にひとつ判断をしてもらいたいということです。  時間がないのですから次に移らしてもらいます。  長崎の原爆病院の問題です。これも大臣よくお聞きと思いますが、昭和四十九年度において累積欠損金二億二千万を出しておるということで、五十年度になればさらに三億ぐらいふえる見通しだということで、このままの状態が続けば病院の存続も危ぶまれるということで、何とか抜本的な対策が必要とされているわけです。したがって、さしあたって五十一年度の助成についてひとつ格段の御配慮を願いたい、こういうように考えておるわけですが、厚生省考え方はいかがですか。
  236. 田中正巳

    田中国務大臣 長崎原爆病院の経営がかなり苦しいということでございますが、ただ、あの原爆病院はたしか一般患者も扱っておるんじゃなかったかと思います。両建てでございまして、広島の場合とちょっと違うように記憶をいたしております。しかし、いずれにいたしましても、原爆によって欠損を生じ、赤字を抱えているということでございますので、何らかの助成策をとりたいということでいま財政当局と折衝していますが、聞くところによりますと、財政当局は余りいい顔をしていないということのようでございますが、今後ともこれは実態を踏まえてできるだけの交渉をして、何がしかの助成の前進を実現いたしたいというふうに思っている次第であります。
  237. 小宮武喜

    ○小宮委員 五十一年度でどういうような具体的な対策を立てているのか、やはり大蔵省予算折衝の問題がありましょうが、その問題はもう少し具体的に説明していただかぬとね。もうすでにその問題も考えて予算要求やっているわけでしょう。その点ひとつお答え願いたい。
  238. 田中正巳

    田中国務大臣 これにつきましては、従来若干の助成をやっておったわけですが、ああいう研究助成費という名前でやっておりましたが、しかし、あれではもう限度が参る。それから厳密に言いますと、あのような手法をとっている限りにおいては、現実の補助金の名目と実際とが違うという問題が出てきはしないかということを非常に私どもも心配をいたしまして、これはそういう名目ではなしに、そのものずばりでもって助成をいたしたいということで、ただいま私、金額を記憶しておりませんし、書類も持っておりませんが、従来とは違ったかなりの金額を要求いたしているというのが、ただいまの状況であるというふうに私は記憶をいたしております。
  239. 小宮武喜

    ○小宮委員 公衆衛生局長がはせ参じておるようですけれども、私の方は大体持ち時間が五時までですから待つわけにいきませんので、後で局長からいろいろ聞くとして、最後に一つ、大きな問題として、原爆病院というのは、やはり被爆者にとって唯一の専門の医療機関ですから、そういった意味では、この原爆病院の存続あるいは経営の悪化というのは非常に大きな問題でございます。そういうような意味で、被爆者が安心して治療をできるように、やはりいまのような形、いわゆる日赤が人道的立場から運営しておるわけですが、そういった形をひとつこの際、もう根本的に検討して、やはりみんなの声としては、この原爆病院を国立病院に移管してほしいという強い要請があるわけですけれども、これに対しての大臣の所見を聞いて私の質問を終わります。
  240. 田中正巳

    田中国務大臣 原爆病院を国立に移管をせよというお声があることは私も聞いております。しかし、各方面のいろいろな御意見を承りまして、なお当分、日赤病院のままでもってこれに助成をして、少なくとも原爆病院が被爆者の治療に事欠かないようにしてあげなければ責務が立たない、かように思って努力をいたしたいと思っております。
  241. 小宮武喜

    ○小宮委員 質問はこれで終わりますけれども、きょういろいろ質疑応答をやってみて、私の印象から見れば、もっと前向きに真剣に答弁をしてもらいたい。何かその場、その場の行き当たりばったり、その場だけ言い逃れればいいというような感じを強く持ちます。そういった意味ではなくて、われわれが質問をする以上はやはり誠意をもってやっていただきたい。今後ともわれわれまたこの問題についてやっていきたいと思いますが、時間がちょうど来ましたので、これで失礼します。
  242. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 次回は、来る十六日火曜日午前九時五十分理事会、十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二分散会