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1975-12-05 第76回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月五日(金曜日)     午後二時三十分開議  出席委員    委員長 大野  明君    理事 菅波  茂君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 戸井田三郎君    理事 葉梨 信行君 理事 枝村 要作君    理事 村山 富市君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    大久保武雄君       大橋 武夫君    加藤 紘一君       粕谷  茂君    瓦   力君       塩川正十郎君    田川 誠一君       田中  覚君    高橋 千寿君       登坂重次郎君    野原 正勝君       羽生田 進君    橋本龍太郎君       山口 敏夫君    綿貫 民輔君       稲葉 誠一君    金子 みつ君       川俣健二郎君    島本 虎三君       田口 一男君    田邊  誠君       森井 忠良君    吉田 法晴君       田中美智子君    寺前  巖君       大橋 敏雄君    岡本 富夫君       沖本 泰幸君    伏木 和雄君       和田 耕作君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         労 働 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         内閣官房長官 海部 俊樹君         内閣法制局長官 吉國 一郎君         労働大臣官房審         議官      細野  正君         労働省労政局長 青木勇之助君  委員外出席者         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二十九日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     二階堂 進君 十二月五日  辞任         補欠選任   小林 正巳君     塩川正十郎君   二階堂 進君     加藤 紘一君   粟山 ひで君     綿貫 民輔君   岡本 富夫君     沖本 泰幸君 同日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     二階堂 進君   塩川正十郎君     小林 正巳君   綿貫 民輔君     粟山 ひで君   沖本 泰幸君     岡本 富夫君     ――――――――――――― 十一月二十日  看護教育改善に関する請願多田光雄君紹  介)(第三一七八号)  人工膀胱使用者採尿器具等無料給付に関す  る請願野間友一紹介)(第三一七九号)  老人医療費無料化年齢引下げ等に関する請願  (板川正吾紹介)(第三一八〇号)  同(清水徳松紹介)(第三一八一号)  同(高田富之紹介)(第三一八二号)  雇用及び失業対策緊急措置法制定に関する請願  (石母田達紹介)(第三一八三号)  同(紺野与次郎紹介)(第三一八四号)  全国一律最低賃金制確立等に関する請願(芳賀  貢君紹介)(第三一八五号)  同(三浦久紹介)(第三一八六号)  同(渡辺三郎紹介)(第三一八七号)  同外六件(藤田高敏紹介)(第三三一三号)  療術制度化反対に関する請願伊東正義君紹  介)(第三一八八号)  同(佐野憲治紹介)(第三一八九号)  同外一件(田川誠一紹介)(第三一九〇号)  同(羽生田進紹介)(第三一九一号)  健康保険改悪反対等に関する請願大橋敏雄  君紹介)(第三一九二号)  日雇労働者雇用失業対策確立に関する請願  (紺野与次郎紹介)(第三一九三号)  腎臓病患者医療及び生活改善に関する請願  (大橋敏雄紹介)(第三一九四号)  無認可保育所の助成に関する請願大橋敏雄君  紹介)(第三一九五号)  せき髄損傷者に対する労働者災害補償保険の給  付改善に関する請願津川武一紹介)(第三  一九六号)  戦時災害援護法制定に関する請願外二件(河上  民雄紹介)(第三一九七号)  歯科診療報酬引上げに関する請願大橋敏雄君  紹介)(第三一九八号)  保育事業振興に関する請願北側義一紹介)  (第三一九九号)  同(山本政弘紹介)(第三二〇〇号)  雇用失業対策確立に関する請願大橋敏雄君  紹介)(第三二〇一号)  同外一件(太田一夫紹介)(第三二〇二号)  同(加藤清二紹介)(第三二〇三号)  同(北側義一紹介)(第三二〇四号)  同(兒玉末男紹介)(第三二〇五号)  同(田口一男紹介)(第三二〇六号)  同(田代文久紹介)(第三二〇七号)  同(津川武一紹介)(第三二〇八号)  同(寺前巖紹介)(第三二〇九号)  同(中村茂紹介)(第三二一〇号)  同(楢崎弥之助紹介)(第三二一一号)  同(米内山義一郎紹介)(第三二一二号)  同(和田耕作紹介)(第三二一三号)  同外一件(渡辺三郎紹介)(第三二一四号)  全国一律最低賃金制確立に関する請願阿部  未喜男紹介)(第三二一五号)  同(佐野憲治紹介)(第三二一六号)  同(柴田健治紹介)(第三二一七号)  同外一件(島田琢郎紹介)(第三二一八号)  同外一件(島本虎三紹介)(第三二一九号)  同外一件(田代文久紹介)(第三二二〇号)  同(津川武一紹介)(第三二二一号)  同(寺前巖紹介)(第三二二二号)  同(古川喜一紹介)(第三二二三号)  同外一件(細谷治嘉紹介)(第三二二四号)  同(美濃政市紹介)(第三二二五号)  同(森井忠良紹介)(第三二二六号)  同(山田耻目君紹介)(第三二二七号)  同(和田耕作紹介)(第三二二八号)  建設国民健康保険組合に対する国庫補助増額に  関する請願阿部喜男紹介)(第三二二九  号)  同(井上普方紹介)(第三二三〇号)  同(板川正吾紹介)(第三二三一号)  同(稲葉誠一紹介)(第三二三二号)  同外一件(江田三郎紹介)(第三二三三号)  同外一件(大久保直彦紹介)(第三二三四  号)  同(太田一夫紹介)(第三二三五号)  同(勝間田清一紹介)(第三二三六号)  同(金子満広紹介)(第三二三七号)  同(河上民雄紹介)(第三二三八号)  同(小林政子紹介)(第三二三九号)  同(紺野与次郎紹介)(第三二四〇号)  同(斉藤正男紹介)(第三二四一号)  同外二件(佐野憲治紹介)(第三二四二号)  同(柴田健治紹介)(第三二四三号)  同(田中美智子紹介)(第三二四四号)  同(高沢寅男紹介)(第三二四五号)  同(津金佑近君紹介)(第三二四六号)  同(土橋一吉紹介)(第三二四七号)  同(中島武敏紹介)(第三二四八号)  同(福岡義登紹介)(第三二四九号)  同(松本忠助紹介)(第三二五〇号)  同(八木昇紹介)(第三二五一号)  同(山崎始男紹介)(第三二五二号)  同(山田耻目君紹介)(第三二五三号)  同外二十九件(山本政弘紹介)(第三二五四  号)  同(米内山義一郎紹介)(第三二五五号)  同(和田耕作紹介)(第三二五六号)  休日、夜間救急医療体制確立等に関する請願  (庄司幸助紹介)(第三三一一号)  療術制度化に関する請願外十五件(佐藤文生  君紹介)(第三三一二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月二十日  福祉政策のための予算充実に関する陳情書  (第二一八号)  婦人の社会的地位向上のための母性保護充実等  に関する陳情書外一件  (第二一九号)  母性保障基本法制定に関する陳情書外五件  (第二二〇号)  市町村社会福祉協議会充実強化に関する陳情  書外一件  (第二二一号)  暮らせる年金実現に関する陳情書外二件  (第二二二号)  医療制度改善等に関する陳情書外五件  (第二二  三号)  休日及び夜間診療体制に対する国庫補助に関  する陳情書  (第二二四  号)  救急医療機関整備促進等に関する陳情書外二  件  (第二二五号)  難病者等に対する特別措置法制定に関する陳情  書外一件(  第二二六号)  スモン病患者の救済に関する陳情書  (第二二七号)  予防接種事故に対する賠償責任制度確立に関す  る陳情書外三件  (第二二八号)  原爆被爆者援護法制定に関する陳情書  (第二二九  号)  原爆による胎内被爆小頭症患者援護措置に関  する陳情書(第二  三〇号)  愛知県に理学療法士及び作業療法士養成施設  設置等に関する陳情書  (第二三一号)  国民健康保険制度財政強化に関する陳情書外  二件  (第二三二号)  公費負担制度による医療費請求事務簡素化等  に関する陳情書  (第二三三号)  診療報酬是正等に関する陳情書  (第  二三四号)  社会保険診療報酬引上げ等に関する陳情書外  一件(第二  三五号)  雇用促進に関する陳情書外一件  (第二三六号)  身体障害者雇用促進に関する陳情書  (第二三七号)  雇用及び失業対策確立に関する陳情書外五件  (第二三八  号)  全国一律最低賃金制確立に関する陳情書外二件  (第二三九  号)  食品添加物に対する安全対策強化に関する陳情  書(第二四〇  号)  産業廃棄物処分規制強化に関する陳情書  (第二四一号)  三公社現業スト権付与反対に関する陳情書  (第  二四二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件(公共企業体等  の職員の労働基本権に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 大野明

    大野委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  本日は、三木内閣総理大臣出席を求め、限られた時間内での質疑でもございますので、かねて理事会で中し合わせの時間を厳守していただく上うお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸井田三郎君。
  3. 戸井田三郎

    戸井田委員 きょうは三木総理大臣にお越しを願って、スト権の問題について御質問をさせていただきたいと思っております。  今回の、八日間にわたって行ったかつてない長期の国労あるいは動労を中心とした公労協人たちストは、文字どおり日本列島を半身不随の状態に陥れたということであります。そのために巨大な経済的な損失を国家国民に与え、同時に国民の諸権利というものが著しく踏みにじられておるということであります。本来、法によって保護されなければならない善良なる国民の多くが、法を無視した実力行使のもとにはかり知れない損害を受けたという、そして打撃をこうむっておるのは国民であるということであります。その法をあえて無視して行った公労協人たちはどういうことを言っておるかというと、生きる権利のためだということを言っておるわけであります。しかし論より証拠、この違法ストで困ったのは、生きる権利を奪われたのは国民なんです。そういうことが侵害されておるわけでありますから、そこで、いろいろな損害というものを与えて、国鉄は別に倒産せずして、生きる権利だと言っている人たちは、確かに生きる権利保障されて失職も何もしないという状態であるわけですから、こういうようなことは非常に国民の怒りを買っているわけなんです。国民ばかりじゃなくて、私に、ある国鉄OBのお年寄り、お年寄りといっても、OBで五、六十歳の方ですが、その人が泣くように言ってきた。われわれ国鉄というものは、百年の歴史の中でとにかく安全に生命を保つために本当に努力してきたのだけれども、いまはこんなことになってしまった、どうなんだろうかということで、むしろ国鉄の中で飯を食ってきたそういう人たちの中でも非常な心配をされておるわけであります。こういうような状態の中で、今度のストというものに対して、総理基本的なお考えをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  4. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま戸井田君の御指摘のように、私は、今回の違法ストほど遺憾なことはないと思うわけでございます。何となれば、議会制民主主義基本である法律を尊重するという精神を真っ向から踏みにじったからであります。目的のためにはどんな手段に訴えてもいいという考えは、民主主義とは両立しない考え方であります。また万一、この政治体制を破壊するということを目的とした手段であるという考え方が一部にあるとすれば、それは論外なことであります。三公社現業に対して一定の条件のもとでスト権を与えよという意見と与えてはならぬという両論があるわけでございますが、私は、過去二十七年にわたって果てしなく紛争を重ねてきたこの問題を早く合理的に解決をして、たび重なる国民の迷惑をなくそうと考えていたわけであります。だからこそ違法スト処分、そのための撤回、抗議の違法スト、また処分、こういう悪循環を何とか断ち切りたいと私は心から念願をしておるものであります。そのためにこそストは中止をするようにと何回となく繰り返して私は公労協人たちに訴えたのであります。ところが、法を無視してストが強行されたことは、条件つきストを認めたとしても、またその条件撤廃のための違法ストをするのではないかという不信感を植えつけたことは事実であります。これはまことに残念なことであります。力と力の対決ではいかなる問題の解決もできるものではないと思います。議会主義のルールに従って話し合いによるほかスト権問題の解決はない。全生涯を議会制民主主義のためにささげてきた私としては、違法スト圧力によって信念を曲げるということは絶対にできない。問題の根幹は、憲法保障された労働基本権とまた同じ憲法保障された国民一般公共的な利益擁護、この二つ保障のどこに調和点を求めるかということが問題の中心であり、その調和点というものを最終的に決めるものは国会において法律で決めなければならぬ。公共性の強い企業ほどいわゆる公共利益に対する配慮の度合いが多くなることは当然であります。そこに私企業ストライキとは違った条件があるわけでございます。気に入らぬ法律は無視するということであれば、これはもう全く話は別の話になってくるわけでございます。だから、政府スト権を与えないから違法のストをやっても仕方がないという言い分は通用いたしません。公労協側国会決定、すなわち法律を守るという態度を立証しない限り、問題は無限に悪循環に陥ってしまうわけでございます。その点を労働組合側もよく理解をしてもらいたいと願うわけでございます。
  5. 戸井田三郎

    戸井田委員 いま総理もごらんのとおりに、大変激しい状態の中でこういう審議をするわけですから、これ自体がやはり労政一体ストライキであり、政治ストであると思うんですよ。それで総理、三公社現業等労働基本権問題等に関する政府基本方針についてという十二月一日の閣議決定、これは私、大変決断されて、結構だったと思うのです。結局この中で総理が一番に挙げているのは遵法精神であります。遵法精神であり、その補足説明の中で明らかに違法ストと言明をされておるわけであります。そういう状態の中で、しかも先ほど言ったように、いろいろな国民の中に大変御迷惑をおかけしている。一つスト処分スト悪循環が繰りかえされているというけれども、私は、一つ処分というものを厳正にしなかったら、こういう悪循環はどんどん繰り返されるし、そうでないまじめな人というものはどうしたらいいのであろうかということを考えていただかなければならないと思います。  それで、総理答弁で大変時間がたってしまいましたので、私は重ねていろいろ言いますけれども、このスト権の問題については、これは本当に基本的な問題で、公務員スト公務員制度の根本的な一つの問題であります。それで、生存権というようなことをいろいろ言っておりまするけれども、人間が本来固有に持っている権利スト権というものは、これはもう本質的に違うと思うんですよ。そのために民間人たちが……(発言する者あり)こういう状態なんです。民間人たちに対して与えられているスト権というものは、団結権、そして争議権というものがだれに威力を与えるかといったら、それは働いている人がその力によって、お互いに得たところの企業利益というものを配分するのに、著しく働いている人の権利が侵害されてはいけないから、団結権を持って、そして交渉して対等の立場を得る。私たち自由社会の中では、やはりそういう弱い立場の者を保護するために与えられた権利なんですよ。しかもそういう人たちが、私は国鉄に就職しましたといっても、だれも強制されて行っているのではないんですよ。自分で行っているのです。自分で入っているんですよ。そういうような中で、もしそういう自分権利というものを主張するのを、それをはたの方が国会とかこういうようなところでいろいろ第三者が冷静にやるのだったらいいけれども、よこせと言って力でもって取るようなものじゃない、私はこう思うのです。そこらあたりが、力で取っていけば、一回スト権を与えるでしょう、条件づきで与えたとすれば、今度はその条件を撤廃するということをやるのです。そういうようなことをしたら、まさに悪循環だと思うのです。総理の御見解をひとつお願いします。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国権の最高機関としてのこういう国会の場があるのですから、一切のものは、スト権を付与するというならば、法律改正を伴うのですから、国会審議しなければならぬ問題であって、それを国会の外で、力でもって、力の圧力によって政府自分の言うことを聞かそうという考え方は、議会制民主主義考え方ではない。だから、私が政府基本方針を出しましたのも、私の抱いておる信念に真正面から触れたからであります。労働基本権の問題というものは、やはりでき観る限り尊重しなければならぬわけでありますが、しかし一方においては、公共利益というものの擁護ということも憲法保障されておるのですから、二つの問題があるわけですから、これをどういうところで調和点を図るかということが立法の問題点だと私は思いますので、外の力によっては絶対に政府はそれに屈服しない、国会の場で話し合ってこの問題を解決しようということで、どこまでも政府は対話と協調の精神を崩さずにこの問題を解決したいと考えておるものでございます。(発言する者あり)
  7. 大野明

    大野委員長 せっかく総理を呼んで審議中でございますので、静かにお開き取り願いたいと思います。
  8. 戸井田三郎

    戸井田委員 いま言ったように、実力でそういうような条件をかち取ろうとすれば、公務員全般にそういったものがもし敷衍していったら大変なことになると思うんですね。それだったらおれたちにもスト権を与えろというようなことで、しまいには警察官までよこせとか消防の人までよこせとかいうようなことにまでどんどん発展していったならば、無制限にこれは広がっていってしまうと思うのです。そうなってきたならば、国の秩序というものも何も維持されなくなってくると思うのです。そういう意味において、いま言われておるスト権というものは公務員制度の根本にかかってくる問題だ、そういう姿勢でひとつ厳然たる態度をとっていただかなかったならば、もう次々にそういったものに発展してしまう。そういうようなことになったら日本の国というものは法治国家ではなくなってきます。その点について総理の御見解をひとつお伺いしたいと思います。
  9. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、民主主義を守っていくすべての前提条件法律を守るということだと思う。ある立場の人がその法律は気に食わぬ法律であっても、改正されるまでは法律を守るという精神がなければ民主主義というものは維持できるものではありません。だから、どうしてもこれが悪法だと思うならば、その悪法をこういう国会の場で改正をすべきであって、その国会の手続を経ること、そのことをいとうて力によって解決しようというそのやり方だけは、これはもう——この考え方は私ばかりではないと思う。ここにおる野党の諸君だって、国会で決めなければならぬものを国会の外、力で決めるということは、そういう一つの行き方に対しては御賛成なさらないはずだと思う。そういうふうに考えるわけでございます。
  10. 戸井田三郎

    戸井田委員 総理は、この問題が大変重要な問題であるという認識に立って審議機関をつくって検討しようというお考えがこの間新聞にも出ておりましたが、その場合に、先般、十二月一日にされた閣議決定の中で「公共企業体等関係閣僚協議会専門委員懇談会意見書の趣旨を尊重し、その内容の具現化につき検討を行う。」というふうに第二項で書いておりますが、一部には、これが玉虫色だとかなんとかいうようなことが言われておるわけですが、この尊重という意味は、前向きでひとつされるのかということでありますが、私はこれを読んでみました。すばらしい意見書だと思うのです。(発言する者あり)
  11. 大野明

    大野委員長 お静かに願います。
  12. 戸井田三郎

    戸井田委員 非常に研究もされて、自分たちに気に食わない結論が出たならばこれはいかぬというものでなくして、第三者がこれだけ真剣にやって、しかもこれだけ本当に系統立った結論というものをお出し願ったのですから、これをあくまで尊重するという精神をひとつ貫いていっていただきたい、かように思います。  それからもう一つ、時間がありませんからお聞きしたいのですが、これからのこういうような争議状態、これは国民が本当に心配しておるんですよ。ですから、これからのあり得べき労働慣行というものを、総理のお答えの後に労働大臣にひとつお答え願いたいと思います。
  13. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、この問題の処理を後ろ向きではないということです。前向きにこれは決めたいと考えておるものでありますが、そのためには、やはり法律は守る、この保証がなければいけません。(発言する者あり)
  14. 大野明

    大野委員長 お静かに願います。
  15. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 しかもまた、今日のような労使関係不信——労使関係信頼関係を回復しなければ、やはり労働秩序というものは維持できるものでもない、そういうことを踏まえてこの問題を前向きに合理的に解決をしたいと私は念願しておるので、後ろ向き解決しようという考え方は私にないということを明らかにいたします。
  16. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 だんだん総理大臣から御答弁がありましたが、やはり将来ともに健全な労使関係をどう確立していくかというところに邁進しなければならぬ、こう思っております。
  17. 戸井田三郎

    戸井田委員 前向きの検討をされるということでございます。  それともう一つは、国民の中に、最近はこのストに対して非常に腹を立てて訴訟問題を起こそうという人がたくさん出ておるのです。こういうような問題もいままで余りなかったのです。今度初めて起こったことなんですね。そういう意味において、やはり政府もこういうことを踏まえてひとつ御検討をお願いしたいと思います。  一言御要望いたしまして、私の質問を終わらしていただきます。
  18. 大野明

    大野委員長 次に、田邊誠君。
  19. 田邊誠

    田邊委員 労働基本権労働者生存権であります。これは憲法規定によって明確に、制限なしに与えられるべきものと定められておるのであります。  総理は、ついせんだって先進六カ国会議に行かれました。日本近代先進国の仲間入りをしたということを誇示されたと聞いておるのであります。これらの国において、労働基本権、すなわち団結権団体交渉権争議権、その労働基本権の重要な要素であるスト権公共部門労働者にもほとんど例外なしに、経営形態の差異に関係なく認めていることは、総理先刻御承知のとおりだろうと思います。わが国においては、占領政策によって不当にも公労法地公労法スト規制法等のいわゆる制限法制定をされて、この権利が奪われてきたことは、だれしもが憲法の条項に照らして誤りであると指摘しておるのであります。自来二十七年間、日本労働者はこの不当に剥奪された権利を回復するために忍耐強い、苦痛に満ちた運動を進めてきたのであります。そして昨年の春闘における五項目の合意、今年の秋までには結論を出すというこの約束の履行を迫って、今回整然たるストライキを行ってきたのであります。しかるに十二月一日に出された政府基本方針は、この当然の要求に何一つ答えていないと私は思います。われわれは全く失望し、そしてまた三木内閣のこの問題に対するところの考え方の逆しまに対して大きな憤りを感ぜざるを得ないのです。しかし、わが党はあくまでも政府に対してスト権を認めさせる、そのことが総理も言っているところの近代民主主義国家をつくる上に必須の要件である、このように考えて、この主張に基づいてこれから国会を通じて三木総理に対してこれの実現に向かって迫っていきたいということをあらかじめ申し上げておきたいと思います。  きょうの論議は、国会審議のいわば口火を切る意味でありまして、とりあえず私は、一日に出されました政府基本方針の中における主要な部分について、その疑義をただすことを中心として若干の質問を展開してまいりたいと思います。どうぞ総理答弁は簡潔に、そしてあなたの所信を、偽らざる所信を明快にお答えいただくことを心からお願いします。  第一は、いま総理は、政府考え方というのはストの威力によってこれを行うものじゃない、こういうふうに言われました。私は、このストライキというのは、いま申し上げたように労働者のやむにやまれぬ、いわば憲法を守る観点に立った行動であると思いますけれども、政府基本方針が出され、そして組合は自主的に判断をして、整然とストライキを中止いたしました。ストライキは中止されましたね、総理。あなたの言う対話の場所はできたと思います。したがって、今後このスト権を付与するという政府結論を出すまでの間に当然のことながら労使の意見は十分聞く。特に労働者意見を十分聞く機会を持つという、三木総理の言っている対話の姿勢を持ってひとつ労働者との対話を実行してもらいたいことについて、まずもって大臣の所信を承っておきたいと思います。
  20. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま田邊君は、ストが整然と終わったと言ってそのことを評価されておるようですが、私は、今回のストぐらい不幸なストはなかったと思うんですよ。それは、ここの中の民社党でも公明党でも条件つきで付与したらどうかという意見だったわけですね。それがそういう人にまで条件を与えても、その条件撤廃ストがまた続くのではないかという不安を与えましたね。だから、何か不信感というものを増幅さす不幸な結果になったと私は思いますよ。だから田邊君は、整然とやめたということを評価される前に、このストをやめて政府に合理的な解決を迫られるという態度であったならば、政府はいろいろ組合側との対話というものもできたでしょうし、非常に私は不幸な事件だと思う。こういう雰囲気の中では時間をかけなければ、これは対話といっても、この不信感というものをなくしていく努力をする期間がかかると私は思いますね。非常に不幸な事件であった。  しかし私は、労使関係を力の対決で解決しようという論者ではないんですよ。これは話し合いで解決せなければならぬという論者でございますから、今後政府検討を進めるに従って労働組合側意見も十分に聞きたいと思っております。
  21. 田邊誠

    田邊委員 今後に処する総理意見を聞いているわけでありますから、どうかその点を冷静に受けとめてあなたは答弁をしていただきたいと思います。  この政府方針の二つ目に、専門懇の意見の趣旨を尊重するとなっております。私は一体、この専門懇の意見書というのは何を見て、何を目的にして論じてきたのか、全くその良識を疑うのであります。識者が言うように、この意見書は、まさに十九世紀の初めに労働者が決起をしたときに、いわゆる弾圧をもって処したそのいわば世界の歴史に逆戻りしたのじゃないかと錯覚を与えているほどの内容であります。日本の使用者も、十年前に日本の使用者が言っているようなことを論じているじゃないかと言っておるのであります。これはもちろん専門懇の人選、その構成自身が誤りであったことに起因すると思うのであります。公制審は一応労、使、中立の三者構成でありましたけれども、専門懇は全く一方的に政府の言いなりほうだいの学者、識者で構成されている。労働者の代表はわずかに二人。この公労法等の労働法を論ずるに当たっての労働法の学者は一人という状態であります。したがってわれわれは、この専門懇というものが全くこの基本権を論ずるにふさわしくない土俵で論じられてきたことに対して大きな憤りを感じておるのであります。  きょうは専門懇の意見書の内容に触れる時間がありませんから、それはまたじっくりとお伺いいたしますけれども、まず専門懇の意見書には、労働基本権問題に限ってみてもかなり多様な意見が存在していますね。したがって政府は、これから労働基本権問題を検討するに際しては、これらのいろいろな意見というものを当然検討の対象にされると理解してよろしゅうございますか。
  22. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 一言専門懇の名誉のために言っておきたいのは、政府の言いなりになったということは、田邊君、言葉が少し過ぎますね。そういうことはありません。これは相当免職を持った人たちの集まりですから、そういう自分考え方に従ってこの問題に対する意見書を出したのであって、政府の言いなりということは絶対にございません。しかし、この専門懇の一つ意見書は全体として検討さるべきことは当然のことであって、今後政府結論を出すまでには各方面の意見も聞くことは言うまでもないことでございます。
  23. 田邊誠

    田邊委員 したがって、この専門懇の意見書というのは、趣旨を尊重すると言っていますけれども、政府検討を行うに際しては専門懇のいろいろな意見というものを随所に取り上げるということであって、それをそのまま政府の方針とすることではないというふうに考えてよろしゅうございますね。一言でいいですから。
  24. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国民に対して責任を負っておるのは政府ですから、いろいろな審議会とか懇談会、そのことが直ちに政府意見に一から十までなるというわけのものではございません。
  25. 田邊誠

    田邊委員 したがって、政府検討する場合には、この専門懇の意見書ばかりでなくて、他の要素というものをいろいろと勘案しながら総合的に判断をしていく、こういうように私は理解をいたします。よろしゅうございますな。
  26. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは三十回にわたって専門懇が非常に意見検討されたので、私は貴重な意見であると思っております。しかし、それがそのまま政府の方針になるということではございません。いろいろな方面の意見を聞きたい。
  27. 田邊誠

    田邊委員 いま日本労使関係に最も重大なことは、何といっても団体交渉をやはり深めていくことではないかと思うのです。団結権団体交渉権争議権は、これは三位一体のものでありまして、いずれもが実は重要なファクターでありますけれども、私は、近代的な労使関係の樹立という点から言えば、やはり団体交渉を十分に煮詰めていくということが必要だろうと思うのです。しかし、それにはやはりその背景に争議権を認めているというところに実はこの団体交渉が十分深まる大きな前提があるということは、これはもう言わずもがなであります。ところが御案内のとおり、三公社現業の現在の状態というのは、この団体交渉を深めようにも深められないいろいろな要素があります。特に当事者能力が欠けておるということが労使関係を悪化させ、紛争を激化させる大きな原因になっておるということは、総理が御案内のとおりだろうと思うのであります。そういう意味合いでもって、政府見解の第三項にそのことが含まれておりますけれども、この第三項の趣旨というのは、いま申し上げたような観点から、これは当然、当事者能力の強化という点に主眼がある。そしてその一環として、この経営のあり方及び料金法定制度等の改正検討するという意味であると理解してよろしゅうございますか。
  28. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 労使関係を、労使の紛争を解決するためには両方が当事者能力を持って話し合わなければならぬわけです。いま田邊君も御指摘になったように、使用者側のその交渉能力というものは非常に弱いわけですから、これはやはり料金法定主義とかあるいは企業のあり方等、こういうものを全般的に検討してみたいということでございます。それは当事者能力ということが一番重点になることは当然でございます。
  29. 田邊誠

    田邊委員 政府基本方針の中で一番重要な点は、何といっても公労法等の関係法規の改正の問題であります。これは非常に多岐にわたっておる中身でありますから、ひとつ総理とこれから国会の場所を通じてその内容について論じてまいりたいと思っておりますから、きょうは多くを申し上げません。しかし、これはもう総理も記者会見等でもって認めておりますように、このスト権問題、労働基本権問題の中で一番重要な要素というのは、これは何といっても公労法、その中の十七条、この廃止の問題ということであることは御案内のとおりでありまして、十七条廃止と一体の関係にある十八条の廃止も当然でありますけれども、そういった点で、この公労法について政府が全体的な検討を行って必要な改正を行う、こういう中にはこの公労法十七条廃止の問題が含まれておる、このように理解してよろしゅうございましょうね。そして当然、この問題が、私がいま申し上げた観点から言いますならば、この問題処理の最重要な課題である、こういうように認識してよろしゅうございましょうな。
  30. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 公労法十七条、これはやはり検討されなければならぬことは当然でございます。全般とにらみ合わせてこれは検討されなければならぬということでございます。
  31. 田邊誠

    田邊委員 そしていま総理から答弁がありましたように、そうしてまた先ほど労働大臣からも答弁がありましたが、問題は、これから先いわば日本労働運動の中でもって最も中核をなすといわれる三公五現の労使関係、この労使関係をいかに健全化するか、いかに正常化するかということが重要なんでありまして、私の六月三日の質問に対して労働大臣は、逐次労使関係は正常化に向かいつつある、これをさらに発展させることを期待すると答弁いたしました。われわれはそういった観点に立って、このいわば法律改正の手続をする際に、あくまでも健全な労使関係、この確立を期するということが第一義の目的でなければならない、こういうように思っておるわけでありまするから、そういった点から見て、公労法等の現行法を改正することは、すなわち現在よりもいわば近代的な労使関係を打ち立てる上に立って決して後退するような改正ということはあり得ない、こういうようにわれわれは理解をしていかなければならないと思いますけれども、御見解はどうでしょうか。
  32. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 政府の願っておることは、労使関係を健全なものにする、いまは御承知のようにこういうどろ沼に入ったような状態ですから、これをやはり健全なものにする、そういう見地から全般的に検討をしてみたい。
  33. 田邊誠

    田邊委員 基本方針政府は早く結論を出したいとおっしゃっています。本来ならば、この秋までに、言うなればこの労働基本権の問題、そのいわば中心課題であるスト権を認めるということについて政府は明確な態度を出すべきであった。ところが、この基本方針のどこを見てもそのことが実はうかがわれない。実はぎわめて当面を糊塗した基本方針であるということをわれわれは考えざるを得ないのであります。そういたしまするならば、われわれとしては、この政府の責任というのはあくまでも逃れることはできないけれども、この基本方針というものを一応踏まえてあなた方は早急にこの結論を出すために全力を尽くさなければならない立場に立っていると思うのであります。そしてこの早急な結論というのは、昨年の春闘において当時の田中内閣が、いわゆる春闘共闘委員会との間における五項目の合意をいたしました。その中では、二年以内、できれば一年半以内というのがこの秋でありましたけれども、二年以内には結論を出すということを約束しておるのであります。したがって、政府がこれから先結論を急ぐ際に、この合意文書もあることを十分踏まえまして、できるだけ早い結論を出すというふうにわれわれは政府の督励をしなければならないと思っておりまするけれども、総理もその決意がございますか。
  34. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 政府が願っておることは、労使関係を健全化するということで、これは政府の方針の第一番にそのことを掲げてあることは御承知のとおりでございます。そういう意味で、年限は切ってはありませんが、できるだけ速やかに結論を得て、それを立法事項は国会に提出し、行政的な面で改革のできる点は改革をして労使関係の健全化を図りたいと考えております。
  35. 田邊誠

    田邊委員 あなた、昨年の、これはあなたの前の田中内閣です、ここでいわゆる取り決めをした五項目の合意文書、これは承知でございますね。これがあることはあなたは十分承知の上でもって事を運ぶということにわれわれは認識してよろしゅうございますか。
  36. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これだけの大問題を起こしたのですから、私は、公務員制度審議会あるいはまた前内閣と取り交わされた口頭了解事項、全部承知いたしております。そういうことで、いま私は、それを踏まえて御答弁を申し上げておるということでございます。
  37. 田邊誠

    田邊委員 この労働基本権問題については国会でしばしば論議をいたしました。そして何と言っても、この労使関係の正常化を願う者は、われわれ、あるいはいま三木総理もそう言われましたけれども、そればかりでなくて、実際に労使関係に携わっている人々はより切実な気持ちだろうと私は思うのであります。そういう意味合いでもって、この三公五現の労使関係の当事者の考え方というのは、私は一つの重要な要素ではないかと思います。去る十月二十一日の本院の予算委員会におきまして、わが党の堀委員質問に対して、三公社のそれぞれの総裁はこう答弁をいたしております。専売公社の総裁は「争議権を付与する方向を支持するという立場、」これは阪田元総裁以来の実は立場でありますが、「争議権を付与していくべきであるという見解をとってまいっておるのであります。」こう答弁をされておりますね。それから電電の米澤総裁は「先ほどお話しいたしましたような条件スト権を付与することが望ましいというふうに思います。」と答弁されている。国鉄の藤井総裁は「一定の条件をつけましていわゆるスト権を付与していく方が好ましいというふうに私は考えております。」こういうふうに答弁をしておるのであります。当事者であるところの三公社の総裁が、実はいろいろな経緯を踏まえ、現在までの労使関係の正常化を願いながら努力してまいりました。その結果得た結論というのは、いずれも、いわば一定の条件はありまするけれども、スト権は付与すべきであるというこういう意見を、これは国会の場所で実は答弁をいたしておるのでありまして、これはいわば公的な企業の経営の責任を持つ者として、これでなければこれから先の労使関係あるいは国鉄を初めとするところの経営の再建、これができない、こういう私はせっぱ詰まった気持ちからの意見であり、より現実的な意見であると実は思っておるのでありまして、これを万一否定するようなことがあるとすれば、この経営というものは非常にやりずらくなるということはもう御承知のとおりでありまして、政府と三公社総裁との意見は一致することが何といっても望ましいというふうに私は思っておるのでありまするけれども、総理は、この三公社の総裁の当事者としてのせっぱ詰まった意見に対して、一体どういうふうに答えようとしているのか、ひとつこのあなたの現在の心境と考え方をぜひお示しいただきたい、このように私は思っておるのであります。
  38. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私自身も聞いておったわけですから、当事者の公式的な発言というものは、これを参考にいたすことは当然でございます。そして政府は一方において、国民の生活を守るという重大な責任があるわけで、公共利益擁護するという一つの大きな責任を持っておる。したがって、労働基本権が絶対でほかの憲法上の保障は全然考慮する余地なしというふうに私は考えない。したがって、国鉄の当事者だけの見解政府見解というわけにはいきません。政府は、やはり国民全体の利益を守るという、こういう義務を負うておりますから、憲法の条章にもあるわけですから、それを踏まえてどういうところに一つ調和点を見出すことが長い将来の日本労使関係のためにいいかということで判断をしなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  39. 大野明

    大野委員長 関連質疑を許します。枝村要作君。
  40. 枝村要作

    ○枝村委員 関連質問をいたしますが、三公社現業等スト権については、経営形態を民営にしなければ認められないというような意見があります。専門懇の意見書もそのような考え方に立って出されておるというふうに思いますが、私、これは全く誤っているというように思っております。この点については、わが党が十一月二十一日に、このような意見書先進資本主義国の実情と比較してみるときわめて時代に逆行する意見である、こういう見解をすでに明らかにしておるのでありますが、これは総理ごらんになりましたか。——ごらんになっておらないとすれば、ひとつ十分見てから参考にし、検討してもらいたいと思いますが、先ほど田邊委員も言いましたように、あなたが率先して参加した先進国首脳会議、これに参加した各国のいずれもが、先ほど田邊委員指摘しましたように、経営形態の問題とは関係なくスト権というものは存在さしておる、こういうふうにこのわが党の見解もその中で明らかにしております。ですから、経営形態の変更をスト権付与の前提とする考え方は全く誤っているということだけではなく、スト権との関係を離れても、公社を民営に移管するというような考え方はきわめて不適当であるというように考えるのであります。この点については、三公社の総裁も、去る十一月五日の参議院の予算委員会において、わが党の寺田熊雄委員質問に対して次のとおり答弁しておるのであります。きょう三公社の総裁をお呼びしょうと思いましたけれども、時間の関係で求めておりませんので、その議事録によって私は一応紹介しておきたいと思います。泉専売公社総裁は「七十一年に及ぶ歴史を持っておりますし、それから現在公社制度で消費者に対するサービスも円滑にまいっておると思うのでございまして、これを公社制度を廃止しなきゃならぬという理由はないように思います。」こう言っております。また、藤井国鉄総裁は「公共企業体としての現体制のもとで民営の長所を生かしつつ公共的な観点を十分配慮し、真の公共企業体として自主的、能率的な運営が行われることが望ましいと私どもは考えております。」こう言っている。米澤電電公社総裁は「電電公社の経営につきましては現在の公共企業体の経営が一番いいんじゃないかと思います。」こういうふうにそれぞれ民営移管に対しては反対をしておるのでありますが、ひとつ総理、この問題を検討するに当たっては、このような三公社の総裁の見解を十分念頭に置いてやってほしいと思いますが、いかがでしょうか。
  41. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、日本がこんなにスト処分との悪循環を繰り返しているようなことでは、労使間の健全な関係はできない、そういう点で、本当にこの問題を解決したいと考えておるわけです。したがって、国鉄あるいはその他の三公社現業の当局者の言というものも参考にしながら、経営のあり方あるいは料金の決め方、いろいろな点で全般的な検討をこの機会に加えてみたいと思っておる次第でございます。
  42. 田邊誠

    田邊委員 いまいわば三公社現業労働基本権に対するところの考え方、それから経営のあり方に対しての考え方、これはそれぞれ国会答弁としてあなたはお聞きをしておるはずであります。いまもまたそれをわれわれは繰り返したのであります。したがって、いろいろな意見がありましょう、いわば机上でもっていろいろなことを考え人たちがおりましょう。しかし国鉄にいたしましても、いわば百年の長い歴史の中でもって今日の経営の条件というものを生み出してきた。そういういろいろな経緯を見まするならば、私は、この三公社の当局が国会でもって答弁しておることは何よりの重しであると思うのです。現実的に何よりも採用しなければならぬ発言であると思うのです。したがって、実はいろいろな意見というものを三木総理は勘案しなければならぬでしょうけれども、やはりあなたは現実政治をやっておるわけですから、何もよその国の学者の言っていることや、あるいはまた何かこう本をつくって、それでもって楽しんでいるという政治をあなたはやっているのじゃない。刻一刻動いている今日の日本の政治の舞台の中でもって、一体この労働基本権の問題、この三公社現業が当面しておるところのいろいろな再建の問題、こういう問題に対してあなたはどう処理するのかということがいま迫られているはずでありまして、したがって、この労働基本権の問題あるいは経営の問題に対して三公社の総裁が言っていることに対してあなたは十分聞くべきである、こういうわれわれの主張に対して、あなたは誠意を持ってお答えしていただきたい、こう思っていますが、よろしゅうございますな。
  43. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 当局者のいろいろな見解というものは、これは重要な参考にはしますが、三公社現業政府立場は、少しわれわれの責任範囲が広いわけですね。われわれは、国民生活全体に対して守っていかなければならぬという責任を政府が持っておるのですから、それは公共利益との間に調和を図らなければ、労働基本権だけで問題を処理するということは政府としてはできない。これは事情の許す限り尊重したいという私は論者ですよ。しかし、それがもう絶対のものだというふうには考えていない。やはり公共利益擁護という一面もある。これとの間の調和を図っていくのだということが私の考え方でございます。
  44. 田邊誠

    田邊委員 これはあなた自身も国会の中でもって実際に、経営形態の変更はむずかしいということを言っておるじゃありませんか。そしてこの労働基本権スト権問題は、いまもう目睫の間に解決を迫られておるのです。したがって、このことを前提とするならば、いわゆる経営問題等は、それがなされなければ労働基本権に触れることはできないなんという考え方をとることは、私は現実にできないと思うのです。そうでしょう。そういった点から見ても、このいわば三公社の総裁の意見、そしてこれを受けたあなたの経営形態の変更はなかなかむずかしいという意見、これを踏まえてぜひこの問題の処理に当たってもらうことを私はこの際、特に強く要求しておきます。  時間がございませんから次の質問ですが、一番問題になっておりますることは、何といっても労使の健全な関係を樹立するということ、そしてそのためには、いわば一番労使間の紛争の種になっておるところのストライキ処分悪循環、これを断ち切るということであります。二十三年の政令二百一号、これによってスト権が剥奪されてから公労関係労働組合だけでも実に千十六人の解雇者、百五万人に及ぶところの処分者が出ているのであります。これを何としても断ち切らなければ健全な労使関係はできない、こういう認識、これはもうだれしも一致しておる。総理と私どもの間においても一致しておる。したがって総理も、成田委員長との党首会談においても、そしてまた予算委員会においても、このスト処分悪循環は断ち切りたいということを言っておる。それはそのとおりですね。いまも変わりませんね。一言答えてください。
  45. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、心からそれを願っておるわけです。だからこそ、公労協に対してストはやめてもらいたい、やはりストをやるということになれば処分問題が必ず起こってきますよ、だから、この悪循環を断ち切るためにもストはやめてもらいたいということを私は再三言ったんですがね。それでもあえて強行されたということは、これは処分問題が起こらざるを得ないと思います。むろんこれは三公社現業の当局者でその範囲等については検討されなければならぬけれども、やはりその問題が起こってくるんですよ。それを知ったからこそ、悪循環を断ち切るためにストだけはやめてもらいたいと、私あんなに訴えたことを田邊さん御存じでしょう。そういうことでございます。
  46. 田邊誠

    田邊委員 労働大臣、あなたも六月三日の私の質問に対して、スト処分悪循環を断ち切りたいというこの総理の意向を受けて、処分というのは六月三日以降において行われたあの処分をもって終わりにしたい、今回限りにしたいと、あなたは明確に答弁されていますね。それは今日も変わらないですな。
  47. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 総理国会で何遍も申し上げましたし、私もそういう信念に変わりありませんが、そういう意味からしましても、違法ストというものはやめてもらいたいという念願をしておったわけであります。
  48. 田邊誠

    田邊委員 したがって総理、あなたもいま言われましたように、処分というのはこれは絶対行ってはならぬのですよ。そして処分権者は、これは総理大臣じゃありませんから、いわゆる三公社現業の当局ですね。したがって、仮に処分があったといたしましても、これは処分権者が過去の経緯を踏まえながらそれに対して対処する、こういうことは当然のことです。そのとおりでしょう。
  49. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、こういう処分問題が起こらぬために、ストをやめてもらいたいと言ったんですがね。それを強行したのですから、やはり処分問題というものが起き上がることはやむを得ませんが、それはやはり国鉄の当局者がその範囲などについては決定すべきものだと思っております。
  50. 田邊誠

    田邊委員 それでは時間でありますから、総理答弁政府基本方針から見て、これはなかなかもって前進をすることができないということに対して私は大変残念であります。しかし、われわれはあくまでもスト権を認める、そういう観点に立って、今後国会を通じてさらに論戦を深めて、ぜひひとつ総理の決断をお願いしたいということを特に私は要求をいたしまして、質問を終わります。(拍手)
  51. 大野明

    大野委員長 次に、石母田達君。
  52. 石母田達

    石母田委員 私はきょう、官公労働者ストライキ権の問題について、総理質問したいと思います。  先ほどから総理は、この官公労働者スト権問題が、労働者スト権を付与するのかしないのか、こういうことをめぐって果てしない紛争が続いている、こういうことを言われました。これはまた国民生活にも重大な影響を及ぼしているわけであります。  そうした中で、今度の政府基本方針というのは、一体スト権を認める方向でこの問題を解決しようとしているのか、それともスト権を認めないで、処分や刑事罰で押さえつける体制を一層強める方向で解決しようとしているのか、このいずれなのかをはっきり首相からお伺いしたいと思います。
  53. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はやはり、労使関係労働問題というものを刑事罰の強化によって解決しようという論者ではないのです。しかし、そのための大前提というものは、公労協がやはり法律を守るということですよ。それは守るということでなければ、違法のストをやっておいて、そしてこれは条件つきで付与したらいいという論者もいまやっぱり説得力を失っておるでしょうね。それなら条件をつけた場合にストはやらぬという保証はどこにあるのかと言われたときに、条件つき付与論者の説得力というのはもう非常に弱まってしまった、あのストによって。非常に私は残念だと思っている。したがって、これはやはり相当な時間というものが要りますね。どうしてかと言ったら、相互の不信感情というものが非常に増幅したのですから、あのストによって。そういう点でまことに残念なことでございますが、まあしかしやったんですからね。違法ストを強行したのですから、このことによって国民の中に失われた信頼感というものを、労働組合側も取り戻すために努力をしてもらいたいと私は思うわけでございます。
  54. 石母田達

    石母田委員 問題をそらさないでいただきたい。あなた自身も言っているように、この解決は、スト権を認めるのか認めないのか、この問題をめぐって争われているわけです。したがって、認めるということになれば、たとえば公労法で言えば十七条の問題です。この削除以外にないわけでしょう。これをやらずに一体、処分処分とか刑事罰というような方向で、あなたの言う先ほどからの悪循環というものを断ち切れると思うのかどうか。私どもは、奪われたスト権を回復し、処分をすべきではないと思っているけれども、あなたは一体どうなんだ。
  55. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 先ほどもお答えしたように、ちゃんとした法律があるのですからね。法治国としてやはり、違法ストをやれば処分問題というのは起こってくるのは当然でありますが、ただ、早く悪循環を断ち切るためには、組合側がこれからはもう法律は守る、自分が気に入らぬと思っても自分見解だけで法律を無視するようなことはしない、この保証があることは、失われた信頼を回復するために絶対に必要な条件だと私は思うのですよ。そうでなしに、いまスト権を与えるのか与えないのかといって、こういう雰囲気の中で、こういう問題が決定される舞曲気でないと私は思う。そういうことで、われわれも労使関係の健全化を願っておるものですから、そういう意味から各政党においても、どうか、いま私の言ったような、すべての前提は法律を守るという、このことから出発しないとこれは解決できないということを御理解願って、そして日本労働運動を健全なものにしようじゃありませんか。
  56. 石母田達

    石母田委員 三木総理、あなたは前提とかこう言っているけれども、私が聞いているのは、あなたが示した基本方針というのはスト権を認める方向なのか、認めない方向なのか、どっち向きなのだということを聞ているのですから。簡潔にそのことだけ聞いているわけです。
  57. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは先ほど言いましたように、政府はやはり国民生活を守っていく責任があるわけですから、スト権の問題、スト権を付与するとか付与しないというその一つ前に、やはり現在ある法律は守るということでなければ、私は国民だって安心しないと思いますよ。だから、そういうことはたな上げにしておいて、スト権を与えるのか、与えないのか、こういうふうなことで問題が解決できもものじゃない。いつまでもこういう状態が続いていく。だから、まあ鶏と卵の話というかもしれぬが、まず最初に労働組合が、これからはもう違法なストはやらぬ、法律は守る、そのかわりに労働基本権は最大限度に認めてもらいたいというような立場に立てば、私はこの問題の解決というものはそんなにむずかしいものじゃない。その保証が、国民も納得するような保証があれば、この問題は解決はむずかしいとは思わない。それでなくして、これだけやはり国民に何か不安を与えたでしょう。不安を与えたものを残しておいて、さあスト権を与えるのか、与えないのかということは……(発言する者多し)
  58. 大野明

    大野委員長 答弁中ですから静かに聞いてください。
  59. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は本当の解決の道にはならぬと思います。どうかそういうことの大前提をつくり上げることに野党の諸君も御協力を願いたいと思うのでございます。
  60. 石母田達

    石母田委員 これは明らかに意識的に私の質問を避けておるとしか思えない。私は内容を聞いているのに、あなた自身が、自分が示した方針が、解決のために一体スト権を認めるのか、認めないか、どっち向きの回答だということを言えない、こういうものではとてもいまのこの重大な事態を解決できないことは明白であります。  戦後三年間、官公労働者に、旧労組法やあるいは憲法第二十八条によってもスト権保障されていた。それがいわゆる米占領軍のマッカーサー司令官の書簡によりまして剥奪、奪われたものであると私たちは理解しておりますけれども、一体あなたはどういう認識ですか。
  61. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 スト権というものが公労法改正で行われたわけですね。こういう経過というものは私は詳細に知っておるわけでございます。そしてその後、いままでの歴代政府がこの問題と取り組んできたことも私はよく知っておるわけです。私は、そういう経過というものは踏まえなければならぬにしても、やはり皆、自分が気に入らぬ法律は守らなくてもいいのだという思想は民主主義の思想ではないですよ。その中で、社会の秩序というものはルールを守る、法律を守るということがやはり民主社会のルールですよ。それは、気に入らぬ法律は守らなくともいいということになれば社会の秩序というものは維持できませんから。私は労働問題に対してそんなに後ろ向きの者ではないのですよ。私でもってすら、こういう状態に対して国民を説得するのはむずかしいと思うのですよ。そういうので、この問題は解決を早くすべきだと思う。与野党が一致して、労働組合は組合としての法秩序を守る、これの保証というものがこの問題解決の一番の近道であるということに対して、やはり野党の皆さん方もどうか協力をしてもらいたい。
  62. 石母田達

    石母田委員 私は強く委員長にも要求したい。三木総理、もっとまじめに私の質問に答えていただきたい。  私が質問しておるのは、戦後三年間スト権があったわけでしょう。それがいわゆるマッカーサー司令官の書簡によって、全面的な争議行為の禁止ということによってスト権が奪われた、この事実については、あなたはお認めになるのかどうか、それをもう一度その点だけ。
  63. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 マッカーサーは当時、労働者権利をできるだけ与えようとして、最初は与えておったわけですね。それが、ゼネストとか、何か労働運動自体にもやはりいろいろな不安な材料があってああいうことになった経過だと私は思う。最初には、マッカーサーの指令でストが禁止されたことは事実でございます。
  64. 石母田達

    石母田委員 その当時、公労法制定当時総理大臣であった、亡くなった吉田元総理大臣が「回想十年」という本を書かれております。その第二巻の中でこういうことを言っております。「ただ私の思うには、公務員労働組合の罷業禁止は、最初に与えたものを後に剥奪したのであるから、そこに一種の無理があったことは争われない。」これは、あなたがいま言った経過のことを、その当時を回顧してこのように吉田元総理は言っておるわけです。  さて、このマッカーサー書簡でありますが、この書簡に基づいて——これは言うまでもなく当時の芦田内閣に出された手紙であることは御承知のとおりです。この芦田内閣は、これを命令と解釈して、いわゆる政令二百一号を出してストライキを全面禁止したわけであります。あなたが所属されていた国民協同党は、民主党や社会党とともにこの連立内閣の与党であったわけです。しかもあなたはこの国民協同党の委員長で、最高の責任者でありました。  その国民協同党の大島多藏議員が、当時、国公法の改正、つまり、この政令二百一号に基づいて争議行為を禁止する、その他の改正を行いました昭和二十三年の十二月一日の議事録でこういうことを討論されております。「さらに重大なることは、憲法保障されたる数々の基本的人権を侵害するものではないかと思われるがごとき規定を発見することであります。さらにまた、公務員といえども、本質的には一般労働者と何ら異なるものがないにもかかわらず、その職権のゆえに、一般労働者と比して、あまりにも厳格なる拘束を強要せられるかに思われる点があるのであります。」このように、憲法に反するような事項が、この国公法の改正、つまり九十八条による争議行為の禁止、そうした問題にあるということを明確に述べているわけであります。同時に、公労法の問題を審議いたしました第四国会の本会議におきまして、同じく国民協同党を代表してといたしまして、大島多藏議員が次のように発言をしております。「かかる過渡的な、一時的な国辱的法案が撤廃される日の来ることを切望いたしまして、本案に賛成するものであります。」つまり、この議事録全体を見ますと、まさにアメリカの占領軍の超憲法的な圧力のもとで、やむなく賛成の立場をとらざるを得ないという問題がここかしこに出てくる中で、こういうことをはっきりと述べているわけであります。  あなたは当時の国民協同党の委員長としてこういう見解をとられたわけですけれども、いまでもこの見解に変わりがないのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  65. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 何十年も前の話でありますが、私はこう思うのです。やはりいろいろな過去のいきさつというものは踏まえなければなりませんが、いま後ろ向きで、あのときにこういうことを言った、あのときにこう言ったということよりも、前向きに、日本労使関係をどうして健全なものにするかということにわれわれの議論を集中する方が適切でないでしょうか。私も記憶してないですが、そういうことがあったのでしょう。しかし、やはりそういういろいろ過去の発言を取り出してきてこれを責めるよりも、前向きに、日本労使関係の健全なるために……(発言する者多し)
  66. 大野明

    大野委員長 答弁中ですから静かに聞いてください。
  67. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 健全化のためにどうするかというものを各政党でひとつ考えてみようじゃありませんか。それが私は問題の解決の近道だと思うわけでございます。
  68. 石母田達

    石母田委員 これはあなた自身の問題ですから、問題をそらさないで。  その当時、国民協同党の最高責任者として、あなたの党の代表がこういうことを述べられている、こういうことについて全然責任持てない、そういうことをやったことも全然記憶がないと言われるのかどうか。もう少しあなたは党首としての立場からの発言をしていただきたいと思います。
  69. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、そういう読み上げられるようなことが過去あったのでしょう。しかし、私は、何でこのようにますますどろ沼に入ってきたのかというと、労働組合側が、これは違法なストでしょう、それを繰り返し繰り返しやってきて、そうしてやはり国民に対して少なからず不安、不信を与えたということが、世の中の態度というものを組合側に対して非常に厳しくしているのですよ。今度のあのストというものが、労働組合側としてもいかに不幸な事件であったかということを、やはり組合側も教訓としてもらいたい。これはいろいろ国会内においても、政党の中でも相当条件つき付与論者がおったのですよ。こういうストを続けていったら、その人が説得力を失っているじゃありませんか。条件をつけた場合に、その条件を守るという保証があるのかと聞かれたときにやはり説得力が非常に弱まりますから、私は、どうしても問題の出発点は、やはりそのときの法律を守って、そしてお互いに、力でなしに話し合いで、国会の場で議論を尽くしてこの問題を解決するという方法が一番建設的な方法だと思うから言っておるわけでございます。
  70. 石母田達

    石母田委員 この大島議員の発言がなされた当時の国会の状況、私、議事録を読まさせていただきました。その中で至るところに「速記中止」というところがあります。たとえば昭和二十三年十一月二十五日衆議院の労働委員会で、この公労法の問題で、「労働者というより人民としての基本権利を奪うものだと思う。この点についてのお考えを聞きたい」と言うと「速記中止」。それから、「これについて憲法違反ではないか」と言うと「速記中止」、こういうところが至るところにあります。この点について、賀来才二郎という当時労働省の労政局長をやっておりました方が、最近次のような証言をされております。当時「労働省と内閣法制局も憲法違反の疑問は持っていた。ただオヤジ、つまりアメリカがこわいから言えない。政党だって、共産党が労働委員会で反対しただけだった。国会審議でも、当時はスト禁止は違憲という議論が出ると速記をストップした。」つまり、その当時、憲法違反だという言葉が出ただけで速記がストップされたというふうに証言しているわけであります。また、GHQの圧力を受けて、そうして「実は公労法は書簡いらいの米側の指令だ。同法では争議権を取られることになっており、違憲だとはいえないので質問をやめてくれ」こういうことを証言されているわけであります。そして「将来、占領軍が撤退した場合、公労法だけが残って違憲問題でやられるぞ、ということは少なくともわれわれ労働省はわかっていた」こういうことも述べているわけであります。  私は、このようなアメリカ占領軍の不当な超憲法的な圧力のもとで、基本的な人権を無視し、憲法を無視し、それに基づく法秩序も乱暴に踏みにじってこうしたことが決められている状況のもとで、このような国民協同党の代表の発言があったのだと思います。  私は、その当時三木首相が国民協同党の党首として、そのようなことはあったと思うということを言っておられますけれども、いまでもこの見解について同じような見解を持っているのか、変わっているのか、これをもう一度はっきり答弁していただきたいと思います。
  71. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はいま総理大臣として、国民に対して責任を持っておるわけです、国民生活を守るというわけで。だからその問題は、いま労働組合のあり方がどういう状態にあるかということも、私がいろいろ判断するときの重大な材料にしなければならぬ。過去のいきさつというものも踏まえますよ。しかし、現実の国民生活に責任を持っておる者として問題にするのは、いまの組合のあり方というものが私の判断の重要な一つの大きな要素になるということは御理解を願っておきたいのでございます。
  72. 石母田達

    石母田委員 あなたはその当時の協同党の委員長としてそのような発言をされているなら、全く無責任な党首であったというほかありません。いままで明らかにされた歴史的な事実によっても、このようにマッカーサーの書簡による政令二百一号、それに基づく争議行為の全面禁止がいまなお二十七年間続いているわけです。これを全面的に回復する以外に解決の道はないのです。そして、これを占領制度の遺産、その当時から違憲の疑いがあると言われている、この憲法をじゅうりんした法律を二十何年問も固執し、持ち続けてきている。  こういう問題の中で、今回政府の示した基本方針というものは、全くこれらのスト権の禁止を維持し、さらに刑事罰でこれを強化する。先ほどは処分もするというようなことを言っております。また、このスト権の問題にかこつけて、いわゆる法定主義の運賃を国会にも諮らずに決めるということさえも検討するという。そういうことをどんどん政府の意思として出そうとしている。国民にとっても重大な問題です。  私どもは、全面的なスト権の回復を要求し、さらにまた、今後は処分を行わない、そしてこれまで不当な法律によって処分した人々の実損を回復する、この三つの要求の実現のために今後とも闘うことを、決意を表明いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  73. 大野明

    大野委員長 次に、大橋敏雄君。
  74. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私はまず、今回のスト権をめぐる社会的混乱の一切の責任が政府にある、なかんずく三木総理、あなたにあるということを厳しく指摘いたします。スト権問題に対する政府結論のおくれ、いわゆる公約違反からスト権奪還ストという事態を招いたのであることは事実であります。政府は謙虚に、率直にこれを認めて、その立場から国民の皆様におわびをするべきだと思います。約束どおり今秋に結論を出して、その内容がこれまでの経過を十分踏まえた上での誠意ある内容であったならば、今回のスト権ストは起こっていないはずであります。不義、裏切り、うそをつくというのは最も混乱の要因であります。  そこで私は、ただいまから総理にこれまでの経過を思い起こしていただいて、一つずつ確認をとっていきたいと思いますが、先般の予算委員会で三公社の各総裁が、条件つきだがという前置きはしておりましたけれども、スト権を付与するという旨の答弁をいたしましたね。お聞きになっているはずです。そして総理もこれを公式見解だとお認めになったはずであります。間違いないと思いますが、私は、三公社の各総裁の表明したそのことを総理は尊重なさるのかどうか、まずこれをお尋ねしたいと思います。
  75. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 公共企業体の当局者の見解というものは重要な参考にはいたしますけれども、繰り返して述べておるように、基本権問題という狭い範囲内だけで問題を政府は判断することはできない。国民全体の共同の利益、この調和を図らなければ、そういうことを全然無視して、そしてこの労働基本権問題を解決するということは、政府立場としてはそれはできないことは御承知のとおりでしょう。労働基本権は最大限度尊重するつもりですよ。しかし、それは一方においてやはり共同の公共利益というものと調和を図らなければ。基本権だけがひとり歩きするものではないということでございます。
  76. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は、この各総裁が述べたいわゆる予算委員会での条件つき付与の内容について尊重しますか、しませんかと聞いているのです。ただそれだけでいいですよ、尊重するか、しないか。
  77. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまお答えしているでしょう、重要な参考にいたしますと。
  78. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それではあなたは、総裁の意見とあなたの意見が違うというのか、同じだというのか、どうなんですか。
  79. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、国鉄総裁と総理大臣とはおのずから責任の範囲が違いますから、総理大臣総理大臣として国民全体の生活を守るという責任も持っておるのだ。したがって、労働基本権とどこで調和点を見出すかというのが総理大臣の任務だと考えております。
  80. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いいですか。私はもう納得いきません。今度のスト権ストというものは、決して抜き打ち的に一挙にストに訴えられたものではありません。スト権問題と、公労協政府との従来のいきさつあるいは経過など、前の質問者が述べていたように、公制審の八年にわたる審議の結果の答申、それを受けて政府労働者が、いわゆる政労協議会五項目の了解事項もとっておりました。また、スト処分スト、これも打ち切りたいと公約しておりました。予算委員会での先ほど言った三総裁の条件つき付与の答弁総理もこれを公式見解と認めております。ということは、あくまでも前向きの結論答弁が、あるいは回答が、声明が出されて当然だという条件が整っていたわけです。にもかかわらず、この前出ました内容は全然裏切った内容であります。  もう一度聞きますけれども、尊重なさるか、なさらないか。——それでは理解なさいますか。
  81. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、大橋君も御存じのように、そばで聞いておったのですが、それは総裁の言としては私自身もよく理解をしておるわけです。
  82. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでは、理解をなさったということですから、公労法改正というものはその精神にのっとってなさるのかどうか、この点をお尋ねいたします。
  83. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 大橋君がそこへ持ってきたら、また繰り返さざるを得ない。国鉄総裁と総理大臣とは任務が違う。もう少し広範囲な責任を総理大臣は背負わされておるから、基本権は最大限度尊重するけれども、一方、憲法において公共利益擁護するという条項もあるわけでございますから、これを踏まえて判断を下さなければならぬということでございます。
  84. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それではお尋ねしますが、先ほどあなたは、ストをやったから返事をしなかったというような答弁をなさいましたが、じゃ、もしストがなかったのならばスト権付与の表明を十一月いっぱいになさったのかどうか、どうですか。
  85. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういうことは答弁はできませんが、ストがあったのに、全然なかった場合ということを仮定していろいろ御質問があってもそれは答えるに適当でないと思いますが、少なくとも政府の判断に、方針を出す場合の判断にあの違法ストというものが影響を与えたということは、否定することはできないと思います。
  86. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は十一月の十八日にこの社会労働委員会で、政府が公約に違反した場合はストが計画されておりますよ、御承知ですかと言って労働大臣に詰め寄りました。そして政府はもうすでに、秋いっぱいに結論を出すと答えたし、スト処分ストも打ち切りたいと公約しているのだから、いまのうちに手を打たなければ大変な事態になりますよと警告をいたしました。その間、一週間以上ありますよ。何をなさいましたか、どれほどの努力をなさいましたか、おっしゃってください。
  87. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 大橋君も御存じだと思いますが、政府は、専門委員懇談会、この意見書も尊重するということを述べてきたわけであります。ストが決行されたのはまだその意見書も出ない前でありますから。したがってこれは、意見書というものも踏まえながら政府の方針を出す、後にいろんなこれに対する反対運動ということは、それでも違法ストはいけませんけれども、いろいろ政府に対してスト権を回復してもらいたいという要求があることは、これはわれわれとしてもそれに対して対話をやっていく考えはあったでしょう。しかし、政府の方がまだ何も基本的な方針を述べる前に、ちゃんとスケジュールを組んでストをやるのですからね。政府の判断というものに対して非常に影響力を与えたあのストというものは、組合にとっても私は不幸なストであったと思いますね。そうでしょう。やはり国会の立法事項でしょう。最終的に決めるのは国会ですからね。その国会で決めることを決めないで、外で、総理大臣スト権をやると言わなければストを継続するぞと、こう言われて、ああよろしゅうございますと言う総理大臣というのは、国民は決して、そういういわゆる安易な態度総理がとることを国民は望んでいないと私は信じますよ。
  88. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでは、あなたは国会で、国会でとお逃げになりますけれども、行政府の責任者としてのあなたの見解はどうだったのですか。どうですか、それは。
  89. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、労使関係が健全なものにならないで、こういう違法ストが繰り返されている状態というものに対して、このことは、これはやはりわれわれとしても、何とかもう少しこの問題を、悪循環を断ち切るためにもっと方法はなかったのかという反省はいたしますけれども、何分にも違法なストを先へやったという事実は、これは私自身だっていろいろな判断をする場合にこの材料というものはやはり無視するわけにはいかないということになってきますから、やはりまず最初に組合側がああいうことを繰り返さないで、そしてもっと冷静な雰囲気でこの問題を解決しようではないかということでございます。
  90. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 公労協スト権ストに追い込んだのは政府の裏切り行為からなんですよ。あなたは知らぬからですよ。私もこの国会に参りましてかれこれ九年になります。この社労委員会で毎年毎年この問題で議論してまいりました。政府は何と答えましたか。公制審で審議しておりますので、その結論が出たらば、その結論が出たらばということで、公制審を隠れみのとして逃げてまいりました。しかし、二年前に公制審は答申を出しました。三論併記だといえども、スト権付与の方向を示唆したものとして評価されていたのですよ。それを受けて、政府労働者側との協議会を開いたのじゃありませんか。しかも、五項目を合意事項となさったのじゃありませんか。当然、結論を迫られていたんですよ。その時期を、秋の時期をずらし、それのみならず、内容というものが全くこれまでの経過を無視したものと言わざるを得ません。ということは、総理のリーダーシップ、総理の政策判断はないのかと私は疑いたくなります。一体どうなんです、そこは。
  91. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 大橋君は、争議権の問題は政府の公約違反だと言われますが、第三次公務員制度審議会のをよく読んで見たんです。ところが、いろいろ三論が併記されてあって、しかもどう言っておるかというと、この問題については、現業職員の争議権については、「三公社現業等労働組合の現状に対する認識および争議権を与えることによる将来の労使関係の見通しについての差異」があって意見がまとまらなかったというのがこの公務員制度審議会の結論でございますから、政府争議権を三公社現業に対して付与するという約束をしたということは、私はいろいろ調べてみたけれどもないんですね。結論を出すということは言いましたけれども、争議権を与えるということを言ったことはないし、また公務員制度審議会でもこの結論意見がいろいろあってまとまらなかったというのが、答申の最後のやはり結論になっておりますから、どうも政府が公約したのに公約違反だと大橋君が言われることは承服いたしかねるわけでございます。結論を出すということに時間が長くかかり過ぎたでないかというおしかりは甘んじて受けますが、公約違反というそのおしかりに対しては承服できないということであります。
  92. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それじゃ約束違反にいたしましょう。四十九年四月の政府と春闘共闘委との五項目の了解事項の中に、「この協議会においては、三公社現業等争議権等及び当事者能力強化の問題の解決に努力する。」努力をするんですよ。そして期限も切られているのですね、この中で秋までにはということで。いいですね。違反じゃありませんか。公約違反じゃないですか。  それから、自民党、また政府がいつも言っておることは、ストスト権付与とは違うんだとしょっちゅうおっしゃっていますね。ですから私は言うんですよ。スト権付与についての総理のお考えは当然明快に打ち出されてしかるべきである。しかもその条件は、いままでの経過あるいは経緯を踏まえてみれば、当然出さなければならない時期に来ていたわけですから、総理としての、行政責任者としての立場からもこれを明確に示さなければならぬはずであります。どうですか。
  93. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題については、先ほど繰り返し私が言っておるように条件つき付与論者も相当にあったんですね。それが、こういうストを繰り返して、しかも今度はいままでにない長期なストであって、国民生活に非常なやはり少なからず打撃を与えたので、条件をつけて与えたらその条件を守るという保証はどこにあるのかと、こう聞かれたときに、条件つき付与論者というものが非常に立場を弱くしたわけですね。だからどうしてもいまの時期において、右か左と決定するということは私は適当な時期でない。しかも、争議権というものはいろんなやはり当事者能力なども関係してきますね。労働問題を話し合いで解決しようとするのに、一方の当事者が何にも当事者能力——労働条件改善というのはいろいろ金のかかることでしょう。そういうものに、そういうだけの権限を持ってないということでは平和的に解決できませんから、単に争議権だけだというのではなくして、それに、その問題を判断する前にいろいろ前提として解決しなければならぬ問題がありますから、だからいまこういう中で右、左、言ってみろということはそれは非常に無理である。  ただ、私が言いたいことは、私は労働問題というものを治安問題の次元で考えておる論者ではないということである。私は前向きに労使問題を考えたいと思っておる論者なんですよ。それだけれども、その論者にまで、やはり今日のこういう状態の中で前向きの結論はどうして出るのでしょうか。そういう点で、やはりこの問題は、労使関係というものがもっと信頼を回復することが結論を出す一つの大きな前提だと考えておる次第でございます。
  94. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 きょうはきわめて制限された時間の中で、私は残念でなりません。これは引き続き他の機会に移しますが、要するに、総理はリーダーシップを持たない、総理の政策判断を持っていないんだ、私はこのように判断します。いままでのお答えを聞いていてそう理解せざるを得ない。声明の内容を見てみましても、スト権付与の方向明示には触れないで、逆にスト権を否定し、あるいは経営形態変更など、専門懇意見書具現化でありますし、あるいはスト処分につながる法秩序の厳守などを盛り込んだ内容であって、いままでの経過やあるいは合意事項等の問題点を全く無視した、無責任きわまる内容での声明であったということをつけ加えて、私の質問を終わります。
  95. 大野明

    大野委員長 次に、和田耕作君。
  96. 和田耕作

    和田(耕)委員 この八日間の、大変国民に迷惑をかけたストライキも終わったわけでございますが、その間、私ども民社党は、三木さんが、いろいろと新聞で報道をされておるわけで、何か筋の通らぬ形で妥協するんじゃないかという心配を持ち続けておりました。しかしながら、十二月一日の政府声明によりまして、スト圧力には屈しない、そして法をしっかり守るということを前提にしなければならない、こういう御主張をなさったことで、実は私どもはある一面でほっとしたのです。政府のこのスト権等についての見解は、私どもとはっきり違います。違いますけれども、法律を守るという点は、この問題のみならず、政治の根本であるという点では私どもは完全に一致いたしておりまして、この点は二百六十万の同盟の労働者諸君もそのことをはっきり認めておるわけでございます。その点で高く私は評価したいと思っております。  そこで質問をいたしたいと思うのですけれども、法を守るということは、私の考えでは、違法のストはやらない、もしやれば処分をする、そしてこの労働基本権であるスト権の問題については国会審議をする、この三つだと思うのですけれども、いかがでしょう。
  97. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も同感です。
  98. 和田耕作

    和田(耕)委員 まず、違法ストをやらぬという問題でございますけれども、しかしこれは何ぼそういうことを言いましても、これをやらない保証がないわけです。現実にないわけです。この十年間、とりわけこの二年間の状態を振り返ってみましても、田中内閣のときの春闘共闘委との話し合いというのがありますけれども、この際に、政府はこの話し合いのときに、「政府関係閣僚協議会を設置することとしたのは、労働基本権問題を真剣に検討する姿勢であることを確認する。」こういう言葉がありますね。とりわけ、こういうことでは異例の「真剣に」という言葉が入った、一生懸命やるんだということなんですね。このときに、これは私どもを含めての印象は、いよいよ政府スト権付与の問題について真剣に考慮を始めたなという印象を持ったのです。公労協の諸君がスト権付与近しという期待を持ったことも、これは無理からぬことだと私は思う。そしてまたこの春に、六月三日でしたか、三木総理が社労委員会で、スト権スト処分の循環を断つということを申された。あのときの、労働大臣もおられたわけですけれども、雰囲気から言っても、秋には何らかこのスト権の問題について展望が開けてくるんじゃないかという期待を私どもも持った。公労協の諸君もそれを持ったとしても決しておかしくはない、こういう事態があったわけなんですね。こういうふうな状態がある一方で、公労協側で特に反省をしてもらわなければならないのは、そう言いながら違法のストライキを十数回も繰り返した、この二年間で。こういうふうなことが続いておりますと、いまも総理も強調されておるように、違法ストをやってくださるな、そんなわけにいかぬ、やるんだという状態のもとでは、どのような審議機関が設置されましてもこの問題を解決する目安は立たないと私は思うですけれども、いかがでしょう。
  99. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 和田さんごらんになっても、国会で本当に三木解決しようと考えておるなとごらんになったに違いない。私はおざなりな答弁はしてないのです。ところがこうやって違法ストで、政府の方針もまだ出ない前ですから、ちゃんとスケジュールを組んでそうしてこんな長期のストをしますと、私が前向きに何か判断を下そうと思っても下し得ないじゃありませんか。これは民社でも私はそうだと思うんですね。いま言われた条件つけたって、その条件を守るという保証があるのかと聞かれたら、和田さん自身でも、あるとはおっしゃられないでしょう。そういうところに、こういう違法ストによって問題の解決を相当おくらしたことは事実ですね。私は残念だと思う。私自身は、これは結論を引き延ばすためにああいうことを言っておるんじゃないですよ。こんなことを毎年繰り返して、たくさんな処分者を出して、こんな労使関係というものは一日も早くもっと健全なものにしなければいかぬと心から思っておるわけだ。しかし、いま申したような違法ストというものは、組合の諸君もやはりこういう点は考えてもらいたいと思うんですね。自民党の中だって、ああいうストをやられると皆やはり硬化してきますからね。組合も硬化してきている。両方が硬化した者がぶつかるようなことになって、解決になりませんから、まことに残念だと思うわけでございます。(「総理、生き生きとしておる」と呼ぶ者あり)
  100. 和田耕作

    和田(耕)委員 余り生き生きとしているとは思われないんですけれども、ここで私、提案めいた質問ですけれども、この二年間の状態から見て、これから何ぼ一生懸命検討するというようなことをしましてもこういう状態が続く限りはこの問題についての結論は出ない。ということになりますと、新しい状態をつくり出さなければならないということじゃないかと思うんですね。そうなりますと、ただ公労協違法ストをやりなさんなと言うだけでは、これはなかなかやらないという保証はないわけです。そこである一定の時期を限って、まあ、総理はできるだけ早くということを申しておりますけれども、一年半なり二年——これは余り長いこと時期をとっても、もう十年もそれ以上もやってきておるのですから、内容自体はもう言い尽くされておるのですから、一年半、少なくとも二年以内にはとにかく労働基本権を尊重するたてまえで結論を出すんだというぐらいのところは、これは言ったって何もおかしくないですよ、憲法保障されていることですから。それはその他の、国民利益もあるし、公共利益もありますけれども、労働基本権を尊重する立場において二年のうちには検討するんだというような声明でもお出しになって、この二年のうちにはいかなることがあっても政治スト違法ストはやりなさんな、こういうことを考えませんと、何ぼ口でいろいろなことを約束されてもできやしませんと私は思うんですね。いかがでしょう、こういう考え方は。
  101. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはやはり、これからは違法なストはやらない、目的のためには手段を選ばぬというようなことはやらぬという保証が第一番でしょうね。それはやはり何らか示す必要があるんですね。示す必要があるので、いま言われたような、これからストをしない時期がずっと長く続いていくということは、やはり国民に与えた不信感解消に役立つでしょうね。私自身が、この問題というものは引き延ばそうという考えはないけれども、いろいろな問題があるでしょう。切り離しては考えられない、いま言ったような当事者能力の問題もありますし、いろいろな企業のあり方もありますし。だから、私はちょっと期限を切るということの危険を感ずるのですよ。期限を切りますと、どうしたって皆さんは攻めてくるだろうし、われわれもまた急いで、検討を十分せんならぬような問題があるのに中途半端にすることはやはりよくない、国民生活に重大な影響を与えますから。初めは私は期限を切ろうかと思ったのですよ。ところが、実際この問題を期限を切って、そのときはいかにも誠意があるようであっても、それが、いままでの経過を見ておると、制度審議会などでもいろんな経過を見ていますと、期限を切って、そしてもしそれがなかなか実行できないというようなことになってはいかぬと思って大事を踏んだのですが、その期限を切ってないことは、ぐずらぐずら引き延ばそうという意図でないということだけはひとつ御理解を願いたいのでございます。
  102. 和田耕作

    和田(耕)委員 それはわからぬでもありません。たとえば田中内閣のときに二年間の期限を切った。内閣はかわるということもありますから、三木内閣がいつまで続くということもないわけですから、そういうなかなかやりにくいこともあると思いますけれども、しかし、これはいまも申し上げたとおり何かのきっかけがないと……。こういう場合には、そのきっかけを政府がつくるべきです。それは政府の責任です、こういう国民生活の問題を責任を持っておられるのですから。何かそういうきっかけをつくって、そして冷却期間のようなものを置いて、そして国会審議をするということについてぜひとも御検討いただきたいと思います。  それから第二の問題でございますけれども、この処分をするという問題ですね。これも、法治国ですから、違反をすれば処分をするということは当然のことだと私ども思うんですね。これはこの春の春闘でも、政府がいろいろと他の政治的な理由で妥協したり、わけのわからぬような口実にするおそれがあったから、特に私どもの委員長の春日と同盟の書記長の天池とが強く政府に警告したこともありました。これは当然のことだと思うんですよ。しかし、労働運動の歴史を見てみますと、法律を犯したってストライキをやらなければならぬこともあるんです。またあったんです。これからもあるでしょう。公労協の諸君も、法権を犯してストライキをやるくらいの気魄でやれば……。処分を恐れるなんてみみっちい感じでやってくださるなということですよ。違法のストをやることもありましょう。今後あると思いますよ。処分を恐れないで堂々とやったらそれらしい迫力を持つのです。処分を恐れて、違法ストはやるわ、処分はいやだというようなことで裏取引をするなんて、そんなけちなことをしなさんなということを私は申し上げたい。  と同時に、今回のストで私どうしてもよくわからないのは、私もよく知らなかったのですけれども、国鉄労働組合の諸君の中で、動力車もそうですけれども、今度の、国民に大変な迷惑をかけたこのストライキをやっておいて、当局としてストの参加者というのはわずか二万人前後だ、こういうあれですね。国労と動力申合わせて約二十八万くらいおると言われておりますけれども、二十六万の人は普通のように月給を取り、普通のような生活をして、しかも仕事はしてないという状態は、これはいろいろ理屈はあると思いますよ、しかし常識としてそういうことが認められるかどうかということなんです。いかがでしょうか。
  103. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 こういう問題を起こさないようにと思ってしたのですけれども、やってしまったのですね。そうすればやはり処分問題になる。これはどういうふうな処分にするかということは、やはり当局者というものが処分権者になっていますから、いま御指摘のあったような問題も含めて、処分権者たる当局者にいろいろ注意をいたします。
  104. 和田耕作

    和田(耕)委員 この問題については、私お願いしたいことは、果たしてその問題がどういう実情になっておるのか。また、今回のストが整然と行われたということですけれども、整然と行われるについては当局の手助けがあったんではなかったかという問題等を含めまして、具体的に調査をしていただいて、報告していただきたいと思います。いかがでしょう。
  105. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、政府は監督の責任を持っておるのですから、これだけの大きなストライキですから、実情に対しては十分な調査をいたします。  ただ、和田さん、私は言いたいのは、このスト一つの転機にできないか、日本労使関係の健全化のために。これだけの大きな被害を国民も受けたことはないでしょうね。だから、これを一つの転機にして、与野党が日本労働連動というものの健全化の出発点にしようということで、皆がやはり日本の将来の労使関係のために御努力を願いたい。われわれもこれは解決しなければいかぬですよ、こんな問題は。そういう点で私どもも責任を感じてやりますが、国会の場においても、与野党の諸君がやはりこの問題の解決というものに御協力を願いたいということを切に訴えておく次第でございます。
  106. 和田耕作

    和田(耕)委員 いま総理が最後におっしゃられたことは、私は完全に賛成です。そしてぜひとも熱意を持って……。いまも、いろいろ質問する方の立場もあり、いろんな立場質問がありましたけれども、やはり労働者としての基本権という問題は、これは確かなことです。そして先進国のどこでも、いろんな形ではありますけれども、与えられておることです。そしてまた、国民生活と調和しているところもあれば、してないところもあるでしょうけれども、とにかく民主社会をしっかりそれで維持していることです。したがって、そのような問題については、それを含めて、ぜひとも今回のいやな事件を契機にして正しい方向を目指してがんばっていただきたいと思います。  ただ、私、いまのこの処分等の問題について、特にはっきりただすことをただしておかなければならぬと思うことは、国鉄労働組合の中にも鉄道労働組合という約八万の組合員がおるのです。(「第二組合だ」と呼ぶ者あり)そして郵政の、郵便局の中にも約五万の郵便労働者という人がおるのです。これは、第二組合という声がありますけれども、りっぱな労働者であることは間違いない。この労働者の諸君が、法律を守って、そしてできるだけ、国民の足として、あるいは国民の目として、耳として、がんばっていきたいということを願っておることは事実なんです。したがって、この人たちの気持ちを踏みにじるということは、そしていろんな形の、より高い立場か何か知らぬが、妥協するということはいけないと思う。いままでの例からいって特にそれは申し上げるわけです。  しかし、私どもは、いまの一番大事なことは、総理が最後に言った、この不幸な事件を契機にして、本当に日本国民にとって大事な足である、大事な目であり耳であるこの公共機関の労使関係を、何とかりっぱなものに立て直していただきたいと思う。そのためには、はっきりしていることは、政府みずからがイニシアチブをとる責任があるということなんです。したがって、先ほどの問題でも、ストをやってくださるなということもわかります。しかし、ストをやらないような一つのきっかけを政府としておつくりになる、そのことが大事だと私は思いますよ。そういうことのために私どもは全力を挙げて御協力を申し上げたいと思います。  私どもは、これは申し上げるまでもございませんけれども、条件つきスト権を与えるべきだ、こういうことによって、国鉄あるいは郵便局の中でも良識のある八〇%以上の人はそれを機会についてくるだろう。いまの状態が一番悪いということなんです。一部の指導者がその気になればすぐストライキが打てる。また、いまのようにごくわずかな人数が賃金カットを受けるような状態ストライキが続けられる、こういうことはいけません。もっと条件をつけて、そして正しいストライキ権を与えるという方向でぜひとも御考慮いただきたいと思います。
  107. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 和田君の御指摘になったような、このストの中でも一生懸命鉄道を守ろうとした人たちがおるわけです。こういう人に失望を与えることは政府態度としてはできません。したがって私どもはこの後の処置に対しては考えますが、もっと大事なことは、これを契機にして健全な労使関係を打ち立てるということだと思う。国鉄にしても郵便にしても、まあこのごろは乱れてきましたけれども、これはやっぱり世界に誇るべき国鉄であり郵便であったわけですから、その名誉ある伝統をもう一遍回復せなきゃならぬ。そのためにはひとつ政府——私は逃げようとしておらぬですよ。これは解決しなければいかぬと私自身が思っている。しかし、私が解決しようというものの一番有力な支えになるものは、国会の場で与野党の諸君が一緒になって、この問題を解決しようということに御協力願うことが、組合に対して大きな影響力を与えますよ、これは。そういうことで、これを転機にしようということについてどうかひとつ御協力を賜りたいということを重ねてお願いをいたしておく次第でございます。
  108. 和田耕作

    和田(耕)委員 じゃ終わります。
  109. 大野明

    大野委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十二分散会