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1975-11-18 第76回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十八日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 大野  明君    理事 菅波  茂君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 戸井田三郎君    理事 葉梨 信行君 理事 枝村 要作君    理事 村山 富市君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    瓦   力君       田川 誠一君    田中  覚君       登坂重次郎君    橋本龍太郎君       山口 敏夫君    阿部喜男君       金子 みつ君    川俣健二郎君       島本 虎三君    田口 一男君       田邊  誠君    森井 忠良君       田中美智子君    寺前  巖君       大橋 敏雄君    岡本 富夫君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 長谷川 峻君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 井出一太郎君  出席政府委員         厚生大臣官房審         議官      中野 徹雄君         社会保険庁医療         保険部長    山縣 習作君         労働省労政局長 青木勇之助君         労働省労働基準         局長      藤繩 正勝君         労働省婦人少年         局長      森山 直弓君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 石井 甲二君  委員外出席者         経済企画庁長官         官房参事官   額田 毅也君         経済企画庁長官         官房参事官   出井 弘一君         経済企画庁総合         計画局計画官  長尾 俊彦君         文部省大学局学         生課長     十文字孝夫君         農林省構造改善         局農政部就業改         善課長     近長 武治君         郵政省郵務局次         長       林  乙也君         郵政省人事局審         議官      魚津 茂晴君         労働大臣官房労         働保険徴収課長 中谷  滋君         労働省職業安定         局雇用政策課長 小粥 義朗君         労働省職業安定         局失業保険課長 北村 孝生君         自治省税務局市         町村税課長   栗田 幸雄君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月十八日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     阿部喜男君 同日  辞任         補欠選任   阿部喜男君     稲葉 誠一君     ――――――――――――― 十一月十四日  保育事業振興に関する請願竹内猛紹介)(  第二一三四号)  同(東中光雄紹介)(第二一三五号)  同(正森成二君紹介)(第二一三六号)  同(大柴滋夫紀介)(第二一七一号)  同(神崎敏雄紹介)(第二一七二号)  同(小林政子紹介)(第二一七三号)  同(松本忠助紹介)(第二一七四号)  同(久保三郎紹介)(第二二二三号)  同(中島武敏紹介)(第二二七〇号)  療術制度化反対に関する請願外一件(金子一  平君紹介)(第二一三七号)  同(戸井田三郎紹介)(第二一三八号)  同外一件(野田卯一紹介)(第二一三九号)  同(大柴滋夫紹介)(第二一六七号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第二一六八号)  同外二件(武藤嘉文紹介)(第二一六九号)  同外一件(江藤隆美紹介)(第二一九七号)  同(小澤太郎紹介)(第二二三〇号)  同(中川一郎紹介)(第二二三一号)  同外一件(粕谷茂紹介)(第二二六七号)  同外二件(島田安夫紹介)(第二二六八号)  同(和田耕作紹介)(第二二六九号)  高齢者年金制度改善等に関する請願川俣健  二郎君紹介)(第二一四〇号)  同(島本虎三紹介)(第二一四一号)  同(島本虎三紹介)(第二一七〇号)  同(石母田達紹介)(第二一九八号)  雇用失業対策確立に関する請願(有島重武君  紹介)(第二一六五号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二一六六号)  同(石母田達紹介)(第二二六五号)  医療保障制度改善に関する請願石母田達君紹  介)(第二二二四号)  雇用促進に関する請願(林百郎君紹介)(第二  二二五号)  年金福祉事業団貸付運用方針改善等に関する  請願石母田達紹介)(第二二二六号)  同(田中美智子紹介)(第二二二七号)  同(中島武敏紹介)(第二二二八号)  同(津川武一紹介)(第二二二九号)  同(石母田達紹介)(第二二六六号)  腎臓病患者医療及び生活改善に関する請願  (枝村要作紹介)(第二二三二号)  同(田邊誠紹介)(第二二三三号)  同(枝村要作紹介)(第二二七一号)  同(田邊誠紹介)(第二二七二号)  同(和田耕作紹介)(第二二七三号) 同月十七日  医療制度確立に関する請願湊徹郎紹介)  (第二二九七号)  せき髄損傷者に対する労働者災害補償保険の給  付改善に関する請願村山富市紹介)(第二  二九八号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二五三七号)  療術制度化反対に関する請願角屋堅次郎君  紹介)(第二二九九号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第二三〇〇号)  同(佐々木良作紹介)(第二三〇一号)  同(広沢直樹紹介)(第二五三二号)  保育事業振興に関する請願角屋堅次郎君紹  介)(第二三〇二号)  同(和田耕作紹介)(第二三〇三号)  年金福祉事業団貸付運用方針改善等に関する  請願中島武敏紹介)(第二三〇四号)  腎臓病患者医療及び生活改善に関する請願  (枝村要作紹介)(第二三〇五号)  同(田邊誠紹介)(第二三〇六号)  同(田邊誠紹介)(第二五三三号)  全国一律最低賃金制確立に関する請願(青柳  盛雄君紹介)(第二四九二号)  同(荒木宏紹介)(第二四九三号)  同(諫山博紹介)(第二四九四号)  同(石母田達紹介)(第二四九五号)  同(梅田勝紹介)(第二四九六号)  同(浦井洋紹介)(第二四九七号)  同(金子満広紹介)(第二四九八号)  同(神崎敏雄紹介)(第二四九九号)  同(木下元二紹介)(第二五〇〇号)  同(栗田翠紹介)(第二五〇一号)  同(小林政子紹介)(第二五〇二号)  同(紺野与次郎紹介)(第二五〇三号)  同(柴田睦夫紹介)(第二五〇四号)  同(庄司幸助紹介)(第二五〇五号)  同(瀬崎博義紹介)(第二五〇六号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二五〇七号)  同(田代文久紹介)(第二五〇八号)  同(田中美智子紹介)(第二五〇九号)  同(多田光雄紹介)(第二五一〇号)  同(津金佑近君紹介)(第二五一一号)  同(津川武一紹介)(第二五一二号)  同(寺前巖紹介)(第二五一三号)  同(土橋一吉紹介)(第二五一四号)  同(中川利三郎紹介)(第二五一五号)  同(中路雅弘紹介)(第二五一六号)  同(中島武敏紹介)(第二五一七号)  同(野間友一紹介)(第二五一八号)  同(林百郎君紹介)(第二五一九号)  同(東中光雄紹介)(第二五二〇号)  同(平田藤吉紹介)(第二五二一号)  同(不破哲三紹介)(第二五二二号)  同(正森成二君紹介)(第二五二三号)  同(増本一彦紹介)(第二五二四号)  同(松本善明紹介)(第二五二五号)  同(三浦久紹介)(第二五二六号)  同(三谷秀治紹介)(第二五二七号)  同(村上弘紹介)(第二五二八号)  同(山原健二郎紹介)(第二五二九号)  同(米原昶紹介)(第二五三〇号)  雇用失業対策確立に関する請願新井彬之君  紹介)(第二五三一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 大野明

    大野委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。登坂重次郎君。
  3. 登坂重次郎

    登坂委員 私は、労働災害法についての労働省態度並びに基本的姿勢をひとつお伺いしたい、こう思うわけであります。  労働省設置以来、近ごろ労使慣行が非常によくできておりまして、労使とも法の精神の何たるやを理解して非常にうまく運営されておる、かように承知いたしておりまするが、労働者もあるいは使用者も、ともにお互いの立場において労使協調ということが特に今日において最も大事なことであるということは、お互い認識の上に立っておると思うのであります。  そこで私は、具体的な問題は避けたいと思うのでありますが、労働災害補償保険というものを一般の国民にわかりやすく、どういうふうに実施されておるか、それをまず基準局長よりひとつお伺いしてみたいと思うのであります。
  4. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労働者の健康を知るということは大変大事なことでございます。労働者がいろいろな原因でけがをする、あるいは健康を害するということがございまして、それに対しては一般的に広く健康保険制度その他の制度があるわけでございますが、なかんずく業務けがをする、あるいは病気になるというような場合には、これは非常に重要なことでございますので、従来から事業主責任の有無にかかわらず、業務に起因して起こる災害につきましては、いわゆる無過失賠償責任というものに基づきまして労働者災害補償保険制度というものがあるわけでございます。  沿革をたどれば、戦前からそういったものが健康保険法あるいは労働者災害責任扶助保険法というようなものがありまして、戦後装いを新たにして労災保険法というものができたわけでございまして、そういうことで現在、累次の改正を経まして、原則としてすべての労働者事業場にこの制度適用になっておるというわけでございます。
  5. 登坂重次郎

    登坂委員 労働者健康保持、無過失責任に対しても全責任を持つ、それは結構なことであります。  そこで、この労働保険基金とかそれの運用についてはどういうふうになっておりますか。
  6. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労災保険は、御承知のように全額使用者負担になっておるわけでございます。
  7. 登坂重次郎

    登坂委員 その経理内容あるいはその保険収支とか運用についての詳細の方法は、どういうふうに運用されておるわけでありますか。
  8. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労災保険制度は、原則として全業種に適用があるわけでございまして、そしていま申し上げましたように、全額事業主保険料をもって支弁をしております。したがいまして、これについては、御承知のように労働保険特別会計を設定いたしまして、国の一般会計経理とは切り離してこれが行われておる、こういうことでございます。
  9. 登坂重次郎

    登坂委員 その保険の決算は年々どういうふうな経理内容で報告され、また運営されておるわけですか。
  10. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 手元に四十九年度の労災保険収支状況がございますけれども、これについて申し上げますと、四十九年度は三千五百三十四億円の保険料の収納がございました。これに対して補償費として支払われているものは二千三百二十三億円でございます。したがいまして、収支率は六五・七%となっておるわけでございます。ここに若干の余裕がございますけれども労災保険といたしましては、支払い基金といたしまして、この保険請求が非常にふえましたときにも、それに対応できるように十分な余裕を持って逆用をしておる、したがって、余裕金はいわゆる資金運用部資金に預け入れまして運用をしておる、こういう体制になっておるわけでございます。
  11. 登坂重次郎

    登坂委員 その請求とかあるいはそういう労災認定とかいうのは、保険審議会というか委員会があると思うのでありますが、それに対して年にどのくらいそういう問題に対して提訴件数がありますか。
  12. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労災保険は、個々の労働者請求によって支払うということになるわけでございます。ただ問題は、保険政府が運営をいたしており、したがって、最終的には政府がその請求に従ってこれがたとえば業務上であるかどうか、あるいは請求内容が妥当であるかどうかということについて処分決定をいたしますけれども、それに対して不服があります場合には、これはまず第一段階といたしましては、都道府県労働基準局に置かれております労働保険審査官に異議の訴えをするということになっております。それによって第一次的な決定がなされるわけですが、なおそれに不服のある場合には、さらに中央に設けられておりますところの労働保険審査会に再審査の申し立てをする、そこで最終的に裁決がなされる、こういう制度になっておるわけでございます。
  13. 登坂重次郎

    登坂委員 労働基準局というと、あなたのところの地方機関である地方労働基準局あるいは監督署というような、その職務権限はおのおの任せられておるのでありましょうが、最前線の監督署においてそれだけの処理能力を持っておるかどうか、いままでそういうときにおいて問題がなかったかどうか。
  14. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 当委員会でもしばしば論議がなされますように、労働基準行政全体につきまして大変業務量がふえてまいりまして、それに対応する十分な職員が配置されていないということからいろんな御迷惑を労使双方にかける場合が少なくないのでございますが、労災保険につきましても、特にここ数年全面適用ということが行われました結果、非常に業務量がふえてまいりまして、私どもは、それに対応して増員等を極力精力的に行ってまいりましたけれども先生案内のように、政府全体といたしましては、職員をある程度人員を抑制するという基本方針もございまして、なかなか思うに任せませんが、現在、八千名足らずの労働基準行政の全職員を挙げてその困難な業務をいかにして処理するかということで日夜苦心をしておるわけでございます。全力を挙げまして、できるだけ関係労使に御迷惑をかけないようにさらに努力をいたしたいと思うわけでございます。
  15. 登坂重次郎

    登坂委員 労災保険給付内容について説明してもらいたい。
  16. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 御承知のように労災保険は、業務負傷しもしくは疾病にかかりました場合に、それに要する療養あるいは休業の費用というものを補償する保険でございます。  内容といたしましては、まず第一には療養給付がございます。それから療養のために休業しなければならない場合に、生活の資たる賃金が受けられないわけでございますから、それに対して休業補償が支給されます。それから療養が終わりましても障害が残るという場合がございます。これに対しては障害補償がございます。それから不幸にして亡くなられました場合には当然遺族補償が出る。そのほか葬祭料というようなものがございます。  なお、御承知のように業務上の災害のみならず、最近では、制度改正によりまして通勤途上災害にも同じような制度があるわけでございます。  なお、従来は一時金でありましたものを、昭和三十五年の改正以降、精力的に改正が積み重ねられまして、重度障害補償あるいは長期傷病補償というものについては年金制度が導入されておるということも御承知のとおりでございます。
  17. 登坂重次郎

    登坂委員 労働者負傷は完全に国家並びに労災補償しなければならぬということは自明の理でありまするが、しかし、その長期療養とかあるいはその補償給付内容を変更する場合、無限に永久に――どういう種類でどういう場合においてそれをあなたの方で労災区別支給をするのか、判定をするのか、それをひとつ……。
  18. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先生いまお尋ねの点は、いわゆる療養補償あるいは休業補償というものを続けてまいりましてもなかなか治らない、あるいは治癒という認定がむずかしいというような場合に、それじゃずっと療養を続けていくのかという点であろうかと思いますけれども、御承知のように労災保険制度は、基本には労働基準法がございまして、労働基準法災害補償というものがあるわけでございますが、労働基準法災害補償においては、三年療養を続けましてなお治らないというような場合には、打ち切り補償というものをやりまして、それによって補償の責めを事業主が免れるということになっております。この基準法基本原則を裏打ちいたしております労災保険におきましても、いまの年金制度の導入というようなことから、打ち切り補償にかわりまして長期傷病補償給付という制度がございますけれども、やはり三年を経過しましてなお治らないというような場合には、長期傷病補償給付というものに移行する、政府が必要と認めた場合に、そういう制度に移行するという制度がございます。  なお、これに伴いましてよく起こってまいります問題といたしましては、業務上の災害によって療養を受け休業しているという場合には、労働基準法の十九条の規定によりまして解雇制限という措置がある。この点と絡みまして、いろいろ認定に関して労使の間に問題が生じがちであります。これにつきましても、労災保険法では、打ち切り補償と同じように、長期傷病補償に移行します場合、やはり同法十九条の規定によりまして事業主解雇制限の制約が解除される、かような制度になっているわけでございます。
  19. 登坂重次郎

    登坂委員 その長期療養に切りかえた場合に、労働者のいわゆる給付内容が落ちるのかどうか、その点いかがでございますか。
  20. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 長期傷病補償給付は、御承知のように給付基礎日額の六〇%を年金として支給するという制度になっております。また、先般の改正によりまして、特別給付金がさらにその上に二〇%乗ることになりましたので、原則として八〇%の給付がなされるということになっております。療養の必要があれば、もちろん療養給付は支払われるわけでございますから、療養に対する給付と、それにいまの長期傷病給付年金八〇%の額が労働者に支給される、かようになるわけでございます。
  21. 登坂重次郎

    登坂委員 補償給付は現給の六〇%、特別加給二〇%、そういうことになって支給されるわけでありますね。
  22. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 長期傷病補償給付の場合はさようでございます。
  23. 登坂重次郎

    登坂委員 そうしますと、その補償給付を受ける場合の基礎給与ですね、負傷した当時の現給、たとえば何年前、それに対して今度はスライド制を若干認められたようでありまするが、それの六〇%でありますか。
  24. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいま先生仰せのごとく、原則被災の前三カ月の給与、いわゆる平均賃金相当額というものをベースにいたすわけでございます。ただ、非常に長年にわたりましてそういう事態が続きますと、最近のような物価の上昇あるいは賃金の変動ということでは必ずしも実情に沿わないということからスライド制がございまして、それによって適切な改定が行われるという制度になっておるわけでございます。
  25. 登坂重次郎

    登坂委員 それでは、ある事例に基づいて質問したいのでありますが、その療養費を受けておる者に本給プラス家族手当、あらゆる給与手当というものを包含して、ずっと昇給も含めて出しておる、それでありまするけれども基準監督署の方ではさらにそれに二〇%加えろという指示を出しているということは、それで正しいのでありますか。
  26. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 従来、この特別給付金という制度がなかった時代、つい数年前までそういう時代でございましたが、その場合には、いま申し上げたように、給付給付基礎日額の六〇%になるわけでございます。それで、それでは労働者生活を保持する上で十分でないという主張がなされておりまして、そしてまた、多くの場合に労使で協議をなされまして、労働協約あるいは就業規則事業主が自主的にあるパーセンテージの付加給付をなされるという事例が多々あったわけでございまして、そういう場合に二〇%を乗せるというようなことがあり、その方が好ましいというようなことを、あるいは申し上げたことがあるかと思いますけれども、御案内のように先般の改正特別給付金制度というのができましたので、いま御説明申し上げたように現状では八〇%になっておるわけでございます。  さらにその上に、事業主の方が何らかの給付を乗せられるということ、このこと自体は労使で御相談の上にお決めになることでございますから、とやかく申し上げる筋合いではございませんけれども、従来の六〇%では足りないという点については給付改善をやっていただきまして、現在では八〇%になっているというのが現状でございます。
  27. 登坂重次郎

    登坂委員 とにかく長期療養給付に切りかえるとか切りかえないとか、これは先ほど雇用関係等を結ぶむずかしい点であるから判断に著しむと、こういうわけでありまするが、しかし、労働省としての態度はどうあるべきですか。
  28. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 およそ労働者業務上の被災というものにつきましては、大変お気の毒な事情にございますので、できるだけ徹底して療養していただくということがまず必要でございます。したがいまして、業務上の認定あるいは療養等につきましても、できるだけ実態に即しましてその治療の完璧を期せられるようなそういう態度でわれわれとしては臨まなければならぬということは言うまでもないところでございますが、しかしながら、非常に長い期間療養を続けられて休業が続くという場合に、長期療養補償給付というものに移行する方が御本人にとってベターであると考えられる場合が多々あるわけでございまして、現在、御承知のように脊損患者等重度障害者については、そういう移行が多々なされているわけでございます。そこで、そういう判断政府がやります場合には、これは長期傷病補償給付に移行していただくということになるわけでございます。基本原則はそのとおりでございます。  ただ問題は、こういった点が先ほども申し上げましたように、解雇制限との関連を持っているために、間々労使紛争の問題になりかねないのでございますけれども、そういう点につきましても、われわれはできるだけ関係医療機関等の確実な医証というものによりまして厳正公平な認定をしてまいりたいというふうに思うわけでございます。
  29. 登坂重次郎

    登坂委員 私も、具体的な問題は避けたいと思って質問に立ったのでありますが、それであなたの方の基本的姿勢はわかったわけでありますが、間々それに例外があるということ、また、それをどうしても解決できないというようなことはあり得るのかどうか、もう一遍お尋ねしたい。
  30. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 基本的な姿勢としてはいま申し上げたとおりでございますが、何せ業務上の負傷という問題は、ケースケースによりましていろいろな問題がございます。中には非常にむずかしい困難な問題も多々あるわけでございます。したがいまして、私どもは、いま申し上げたような基本的な態度を保持しつつも、それぞれのケースに従って、労使双方にとって御迷惑のかからないように、しかも公正妥当な処分という原則を貫くことができるように努力を重ねたいというふうに思っておりますが、特に判断につきましては、非常に専門的な医学上の判断というものを伴うものでございますので、私どもとしても専門家会議その他を通じてできるだけ幅広い、しかも最新の医学常識というものを求めまして、そういうことによって処分の過ちなきをさらに期してまいりたいというふうに思うわけでございます。
  31. 登坂重次郎

    登坂委員 その点について労災保険では三年という現実の期間の設定があるわけですね。その三年を超え、もしくはそれに若干のゆとりがあったにいたしましても、それは固定患者として認定すべきものか、しないものか、それはどういう基準でいままで監督署は当たっておったのか、その態度についてひとつ明確にしていただきたい。
  32. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いまお挙げになりました点は、労災保険法について申し上げますと、十二条の八の第三項というところに「長期傷病補償給付は、療養補償給付を受ける労働者負傷又は疾病が療養の開始後三年を経過してもなおらない場合における当該労働者に対し、政府が必要と認める場合に行う。」とございます。ですから、政府が必要と認めるという、まあいわば自由裁量の判断がそこに入るわけでございます。しかしながら、これは沿革的には先ほど申し上げましたように、打ち切り補償と同じような考え方に基づいておりますので、三年たてばそういう、つまり解雇制限が解除できるという制度とのうらはらとしてこれは考えていかなければならないのでございますけれども、しかしまあ脊損患者でございますとか、そういう非常に重度な場合は判断しやすいのですけれども、最近はむち打ち症とか腰痛とか頸肩腕症候群とかいろいろ自訴を相当訴えるようなそういう種類の疾患も多うございますけれども、そういうような場合になかなか具体的な判断がむずかしい。特にもうあとしばらくすれば治るかもしれないというような場合に、まあ三年たったから機械的にどうこうするというようなことは余り適当ではない。しかし、それじゃもうすぐ治るのかどうかという点につきまして、ただいま申し上げましたように、非常に微妙な医師の判断が伴うものでございますから、その辺につきましては、私どもも症状調査とかあるいは診断命令とかいろいろな制度運用いたしまして、公正な迅速な処理というものをいたしたいというふうに思うわけでございます。
  33. 登坂重次郎

    登坂委員 私は、そういうあなた方のはっきりしない、法をつくって法を守らない、守れない、こういう態度について、労使ともに遺憾と思うし、あなた方の指導監督の態度が非常に緩慢であると言わざるを得ない。と申すのは、ある中小企業において、もう六年もそういうお互いに不信行為。また、そういうことがありますと、第三者の行為に対する非常な不信感を持つ。組合とは何ぞや。それに対して労働基準監督署というものはなれ合いか。あくまで労働者を守るということがこれは正しいことだ。私も、社労委員の一人として、やはり公傷に対しましては、できるだけこれは手厚くしなければいけない。しかし、それを監督署は知っておって、二年や三年じゃなくて六年も放置しておく、そういうことがあっていいのかどうか。それは余りにも法に甘えているということを言わざるを得ないと思うのであります。今後そういう場合があったら、どういうふうな態度をとるつもりでありますか。
  34. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いまお挙げになりましたような例も時たまあるわけでございますが、私どもとしては、それぞれ必要なときに必要な調査を行って対処してまいっておるつもりでございますけれども、しかしなお、私どもといたしましても、先ほど言いましたように、非常に業務量もふえているというようなことから、事務の運営に必ずしも完璧でないという点は十分反省をしなければならぬと思っております。  なお、先生がいまお考えの六年というようなケースにつきましては、最近におきまして症状調査というものを精力的に進めておりまして、そういった結論を待って、私どもとしては、やはり決めるべきものは決めるというようなきちんとした行政運営をしなければならぬというふうに痛切に感じておりますので、そういうことでせいぜいやらせていただきたいというふうに思うわけであります。
  35. 登坂重次郎

    登坂委員 私は、労働基準法をくぐっているとか、あるいはそれを無視しているという意味ではないのでありますが、とにかく零細企業、二十人か三十人の企業の中でそういう不信行為があって、お互いに不信のなすり合いをしているというようなことは、労働省としてその監督の任に当たるもの、もう少し親切であってしかるべきだ。私は使用者に云々せよと言うわけではない。一般の労働慣行を守る意味においても、そしてそれが長期療養に切りかえられても給付内容が落ちないというふうな態度でおるなれば、労働基準監督署としては六年も放置しておくというのは余りに不遜な態度ではないか。  大臣、そういう点についてどうお考えになりますか。
  36. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 労災保険というものは、先生御存じのように労働者を守るために非常に大事なことだと私は思うのです。たとえばせんだって三菱重工の爆破事件があったときは、これはいずれ労災にみんなああいう被害者の方々が入ってくるのじゃなかろうかと思いまして、私なども、その現場まで歩いて行きまして、その日のうちに見まして、そして中央労働基準監督署にそういう書類が来た場合の手配などもいたしたようなことでございますが、いずれにいたしましても、労働者の安全、そしてまた将来の健康、こういうことから、いままでも一生懸命やりましたけれども、こうした先生の御指摘などをまた一つの契機にいたしまして、全体を、おくれているものあるいは理解の届かないものに対しては、慎重に判断をして適切な処置をとってまいりたい、こう思っております。
  37. 登坂重次郎

    登坂委員 では、終わります。
  38. 大野明

    大野委員長 住栄作君。
  39. 住栄作

    ○住委員 私は、当面一番重要な問題になっております雇用、失業問題を中心にして質問したいと思うのでございますが、時間が限られておりますので、ごく要点についてだけ申し上げて、答弁もひとつ要領よくお願いをしたいと思うのです。  雇用・失業情勢は非常に厳しいのでございます。ということは、日本の経済の現況も御承知のようなことで非常に不況であるということで、政府はいままで四次にわたる不況対策をやってきた。九月に総合的な第四次の不況対策をおやりになっておるわけでございますが、これも不況対策はでき上がったけれども、その重要な柱である金融対策が立ちおくれた、対応が必ずしも十分でなかった、あるいはまた不況のてこと考えられている補正予算の状況も当初よりは通過がずれておるというようなこともございまして、なかなか容易でない事態じゃないかと私は考えておるわけでございます。  そこで、企画庁にお尋ねしたいのでございますが、企画庁は十月に昭和五十年度経済見通しの改訂試算をおやりになっておる。そこでどういうことを言っておるかというと、本年下期の経済成長、これは実質で年率換算六・二%程度、上期あるいはそれ以前の状態に比べますと、これはかなり高い成長率を見込んでおられるのじゃないか。それからまた、鉱工業生産も下期には年率一二・六%程度の伸びを示すのだ、こういうことを言っておられる。私ども選挙区を歩いておりまして、中小企業の経営者の皆さんからもいろいろな意見を聞くわけでございますが、とにかくもう景気はよくなるのだよくなるのだと思っておるけれども一向に明るさが見えない、底ばい、地の底をはっておるようなものだ、これから年末を控えてどうしていいかわからない、経営を維持していけるかどうか、そういう点について非常に危惧の念を持っておられる。そういうようなことから、試算のようなことが、下期のことですから、来年の三月までの状況ですから、果たしてそういうようにいくのかいかぬのかというようなことについてまずお伺いしたいと思います。
  40. 額田毅也

    ○額田説明員 御指摘の点につきまして、まず経済見通しの方から御説明さしていただきますが、五十年度の経済の状況は、先生すでに御承知のとおり四月から六月までの国民総生産の実績の速報が出てまいりました。これが成長率にいたしまして〇・八%、約一%弱の成長率になっておるわけでございます。経済見通におきましては、いま実質で申し上げておりますが、本年度上期のGNP、国民総生産の伸び率を〇・九%程度と見ておるわけでございます。このように約一%弱ぐらいの経済の伸びの力が現在の経済に反映している、しかし、これは回復力が非常に弱いということで、御承知の先般第四次の不況対策を決定したわけでございます。  この四次の不況対策において行われました公共事業その他の措置が国民総生産に与えます需要効果はどれぐらいか、約一兆六千億円の直接の投資ないし事業が行われるわけでございます。そこで一兆六千億円に対しまして全体としての需要創出効果は約倍ぐらい、三兆円ぐらいであろう、ところが来年の三月まで、すなわち本年度中の効果はどれぐらいであろうかということで考えてみますと、この一兆六千億円を含めまして約一兆八千億円程度、三兆円の約六割程度が五十年度に実質的に需要の創出されるものに相なるだろう、こういうふうに見たわけでございます。先ほど申し上げましたように、上期の経済の伸びる力というのが実質で〇・九%程度、約一%弱の力を持っておる。この一兆八千億円の新しい需要が創出されますと、その需要というのは、大体ことし、五十年度の名目の国民総生産は約百五十兆程度でございますので、年度間で約一・二%ぐらい総生産を引き上げる力があるわけです。これは実質にいたしましても同じことです。そういうことで五十年度の成長率を実質二・二%程度と考えたわけでございます。  上期と下期に分けまして物を考えますと、上期が、先ほど申し上げましたように〇・九%の伸び、それを今度は下期で、いま申し上げました要素を勘案いたしまして計算いたしますと、下期は上期に対して約三%程度伸びる、そこで全体として成長が二・二%というふうになるだろう、こういうふうに考えたわけであります。ただ、先生承知のようにこのマクロの見通しというのと現実の企業の業績というものは必ずしも同じでございません。これはミクロでございます。  鉱工業生産は、御承知のように三月を起点といたしまして漸次回復してまいりました。この回復力というのは、四月から九月までで約六・〇程度の回復率でございまして、この回復率は相当高いわけでございますが、現実の企業の業績という点になりますと、その鉱工業生産の回復がまだ前年の同期を上回っていない、もう一つは、物価が鎮静いたしておりまして、名目面で利益というものがまだなかなか出てこない、こういう二点から、業種によりましてまだ明暗が存在する状態でございます。ただ、先生すでに御承知のように最近、繊維とかあるいは弱電とか消費に画結いたしております産業の分野におきましては生産が伸びてきておるということが言われておる次第でございます。本年度下半期に、先ほど申し上げましたように三%程度の実質の成長になる、鉱工業生産では約六%程度上期に対して伸びると思いますが、そういうことを通じまして漸次景気が回復してくる、かように考えておる次第でございます。
  41. 住栄作

    ○住委員 いろいろ御説明いただいたのですが、本当言うともう少し突っ込んで議論したいのでございますが、時間もないので残念でございますけれども、やはり私は、いまおっしゃいましたマクロとミクロのギャップというものを、これはどうしても実感として割り切れない気持ちを持っておるのですが、同じように操業率につきましても、改訂試算では本年度の末に九〇台に持っていこう、恐らく今後の操業率というものはなかなか一〇〇の水準に戻るということは容易なことでないと思うのでございますが、この点につきましても果たして九〇%までいけるのかどうか、これはマクロとミクロというような差といいますか、そういうこともあると思うのでございますが、そういうこと等も考えて今度雇用、失業についてお伺いしたいのですが、改訂試算では「雇用、失業面にも、次第に明るさが増し、完全失業者数は、本年度下期平均で、前年同期に比べ七%程度の減少が見込まれる。」こう書いてあるのですが、本当にこういうような考え方でいいのかどうか。率直なところ、これからの年末それから来年の初めにかけて雇用、失業についてどのようにお考えになっておられるか承っておきたいと思う。
  42. 額田毅也

    ○額田説明員 雇用、失業問題につきましては、先生非常に御造詣の深いところでございますので、私どもの方から御説明するのもなんでございますが、やはりさきに申し上げましたように、鉱工業生産が下期には大体六%程度ふえる、こういうことを前提といたしまして、現在、御承知のように稼働率が八月現在で八三・四ポイントという数字でございます。これは三月の七七ポイントから約六・四ポイント上がりまして八三・四になっておる。この鉱工業生産の伸びとその稼働率の増勢というものを考えますと、恐らく年度末には九〇近くの稼働率になるのではなかろうかというのがこの経済の見通しにおける考え方でございます。  雇用面につきましては、むしろ労働省の方がお詳しいかと思うわけでございますが、現在、九月の失業率あるいは完全失業者数というのはなお非常に厳しい状態でございます。ただ、御承知のように残業時間がここ約四カ月連続してふえてまいりました。また、十月の新規求人数も久方ぶりに増加に転ずるというふうな、雇用関係におきましても明るい指標が見えてきておるわけでございます。そういう事情を背景といたしまして、さきに述べました生産指数、操業率の伸びとともに失業面にも漸次明るさが出てくるのではなかろうか、かように考えている次第でございます。
  43. 住栄作

    ○住委員 もう一点、今後のやや中期的な雇用の見方をお伺いしておきたいと思うのですが、私ども現在、新しい中期計画を企画庁でいろいろ検討されておると聞いておるのでございますけれども、やはり今後のそういう経済運営の基本の目標としては、雇用をどう確保し、安定的な雇用というものをどうつくり出していくかというのが大きな基本的な目標にならなければならないと思っておるのでございますけれども、現在すでにフレーム等もつくっておられますけれども、そういう中で雇用というものをどのような観点でとらえられておるか、お伺いしておきたいと思います。
  44. 長尾俊彦

    ○長尾説明員 お答えいたします。  国際的に見まして望ましい雇用水準といいますと、経済の発展段階であるとかそこにおける経済の状況とか、そういうことで違ってきておりますし、また、当然違わなければならないという問題も一つあるかと思います。ただ、わが国初め先進資本主義諸国では、経済政策の基本目標の一つとして、完全雇用の確保を挙げておりますし、現在つくっております新しい経済計画においてもこの姿勢は堅持する考え方でございます。しかし、経済計画の今度の計画期間におきましては、成長率が低下するという問題がございますし、その中で物価、雇用、資源配分等の各政策の斉合性を保ちながら経済をバランスさせていかなければならないという問題がございます。したがいまして、失業率、それから有効求人倍率をどのように維持しながら完全雇用を確保していくかということは、私どもとしても非常に重要な問題でありまして、これに関しましては、経済計画全体の中で検討を深めていくということで現在作業をいたしております。
  45. 住栄作

    ○住委員 そこで、やはり雇用というものを本当に重要な課題として考えていっていただきたいのでございますが、その場合、いまもおっしゃいましたように望ましい雇用状態と申しますか、それは言葉では言えるわけでございますが、そういうものをはかる指標というもの、これは労働力調査の完全失業者だとか就業状態だとか、それから求人、求職の倍率の問題もありましょうし、あるいは失業保険雇用保険の受給率等もあると思うのですが、しかし、いずれもいろいろの欠陥がないではないと思うのです。やはり雇用を重視して雇用問題を経済運営の一つの目標として考えていく場合に、そういう望ましい雇用状態をはかる物差しがどうしても確立されていないと適切な対策が打てない、こういうこともあると思うのです。そういうようなことについて、企画庁としてやはりはっきりした考え方を持つべきだと思うし、また、そういう考え方を持つために現在の統計というものが不備であるならば、それは企画庁の指導によって私は直していくべきだと思うのですが、こういうような点について御所見を承っておきたいと思います。
  46. 長尾俊彦

    ○長尾説明員 いま先生おっしゃいましたことは、労働力調査をどう評価するかということだと思うのでございますが、労働力調査はわが国の各種の労働統計の中ではやはり基本的なものだというふうに考えております。新経済計画の策定に必要な経済フレームにおきましても、就業者数等を算出する際には国勢調査、それからこの労働力調査をともに信頼すべきデータとして現在も使用しております。ただ、新経済計画におきましては、雇用の安定というのが非常に重要な問題になってきましたし、経済運営の上では雇用・失業情勢を的確に把握することの重要性というものは非常に高まってきている、こういうように考えられます。  こうした観点から労働力調査を見ますと、確かに、従来から言われていますように、アメリカの労働統計などに比べますと、失業者が景気に感応的でないということが指摘されるわけですけれども、ただその場合、その背景には失業者の定義の相違もございますので、労働力調査の精度の問題いかんということに帰すことはできないと思うのでございますけれども、なお私どもとしても検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  47. 住栄作

    ○住委員 私はやはり、本当に雇用問題を真剣に議論していくためには、雇用の状態がどうだというその指標というものがしっかりしていないといかぬと思うのでございまして、そういう点、これから計画をつくられ、経済運営の基本をつくられる企画庁で常に検討をして、りっぱな、だれでも納得できるような、そういう指標によって雇用問題の議論ができる、そうしてまた雇用政策が展開できる、こういう体制をぜひつくっていただきたいと思っております。企画庁、もう結構です。  そこで、労働大臣にお伺いしたいのでございます。いまいろいろ企画庁からお話がございましたけれども、私は、改訂試算の結果から見ましても、率直に言って、これから三月末までの状態を考えてみましても、そううまくいかぬのじゃないかという感じを持っておるわけです。そういう意味で、かなり雇用、失業には十分な配慮をし、十分な体制をとらないと、非常にまずい結果になるのじゃないか、こういうことを恐れておるわけでございますが、労働大臣として今後の雇用政策あるいは雇用行政をどうやっていくか、そういうようなことについて御所信を承っておきたい。
  48. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 何といいましても、近代国家は完全雇用を目指していかなければならぬ、こういう大事な問題だけは取り外したくない。それには景気変動があります際でも、それを維持していくためにどうやらなければならぬか。一番先には失業者を出すまい。委員会あるいは国会で御審議いただいた雇用保険法によって、それが功を奏して、雇用調整給付、また最近、よく新聞紙あるいは雑誌でも言われているように、訓練などにおいて、そうした離職者の方々が訓練されている金などを出し、その手当もしていくというふうなことなどもやりつつ、一般といたしましても、いまある制度をとにかくフルに活用して、こういう場合には全国数百あるところの職安の諸君が懸命にお世話申し上げるということが一つ。さらには、いま企画庁でやっておる見直しと一緒に、私の方の雇用対策計画というものを人間関係を中心にした――従来のような高度経済成長でだれでもだれでもということでなくして、いま申し上げたような危険性があることですから、人間を中心にした雇用計画というものの見直しを、いま作業をやっておるところでありまして、私は、日本の、ときにどんな変化があっても世の中がわりに安定しているということは、雇用者が安心している姿、希望を持っている姿、こういうものが一番大事じゃなかろうかと思いまして、そういう面においては先生の御心配されているものに対して対処してまいりたい、こう思っております。
  49. 住栄作

    ○住委員 ぜひお願いをしたいと思います。  次は、大学生の就職問題についてお伺いしておきたいと思うのでございますが、実は、私どもことし多くの履歴書を預かっておりまして、いろいろ頼まれておりましても、なかなか成功率が従来と比べて低いので、大変悩んでおるわけでございます。大企業の方は十一月の一日に入社試験を大体終わっております。その結果を見ましても、大変厳しいのが現状だと思うのです。そしてこれから恐らく中小の中堅企業等あたりでいろいろな採用等も行われると思うのですが、これまた私の実感で恐縮でございますけれども、例年と違って来年の大学卒業生の就職問題が非常に厳しいことは、だれしも考えておると思うのでございますが、一体、文部省でそういう現状をどのように把握しておられるか、お伺いしたいと思います。
  50. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 ただいま先生からお話がございましたように、来春の大学卒業予定者の就職につきましては、現在の経済情勢の影響を受けまして、大変厳しいものが予想されているわけでございますが、私どもといたしましては、この九月に求人活動開始以後、その実態を把握するために、全国の大学を対象にいたしまして、大学に対する企業からの求人申込状況がどうなっているかというものの調査を行ったわけでございます。  ことしの場合は、九月一日から求人活動開始でございますので、求人活動開始から一月たちました九月末現在と、それから昨年の場合は五月一日から求人活動開始でございましたので、昨年の五月末と比較する、それによって求人の勢いがどの程度であろうかという比較調査を行ったわけでございますが、その結果では、求人数あるいは求人件数、求人企業の数におきまして、両方ともほぼ大差はないという結果が出ているわけでございます。ただし、ことしの場合九月ということで、昨年に比べますと求人活動時期が四カ月ほど繰り下がっているということがございますから、今後どのぐらいの伸びが予想されるかという問題もございますし、それからこの調査におきましては、求人の中身につきましてアンケートをとったわけでございます。その中身につきましては、やはり大企業からの求人が減少している、そのかわり、新規で中小企業からの求人が若干ふえている、それから採用中止を通知してきた企業が多い、そういうような意見が多くの大学から寄せられているわけでございます。  いずれにいたしましても、まだはっきりしない段階でございまして、大体十一月からいよいよ実際の試験開始ということで始まっており、まだ一月たっておりませんので、これからの実際の就職決定、内定の状況というものを、これも全国の大学を通じまして実際に把握する調査を今後いたしたいというふうに思います。そういうような状況をさらに把握して、今後実態がどういうふうに変化していくか、フォローしていきたいと思います。
  51. 住栄作

    ○住委員 もう時間もございませんので、ほかにいろいろお伺いしたい問題も多く残しておるのでございますが、それは別の機会に譲りまして、大学の卒業生の就職問題でございますが、私は、これからやっぱり相当努力をせぬといかぬと思っております。わが自民党におきましても、就職対策本部もつくりまして、いろいろ大学生の就職問題、これは大変大事な問題ですから一生懸命にやっておるわけでございますが、昔、私ども経験があるのでございますけれども、やっぱり大学卒業生の就職問題が非常に困難な時代がございました。そういうときに、政府が一体となって、文部省、労働省その他関係各省が集まりまして、いろいろこの問題はどうしたらいいかという対策を練ったときもございます。聞くところによりますと、商工会議所も非常に努力しておられまして、委員会等もつくって、特に中小、中堅企業にいい人材を確保しようということで、積極的に努力をしておられるということも聞いておるわけです。まだまだ未就職者が私は多数残っておると思うのです。そういう段階で、やはり求人の情報というものを広く交換し合って、そうしてきめの細かい手を差し伸べてやらなければ、相当の未就職者が残るのじゃないか。これはまた非常に大きな問題になると思うのです。現在それぞれの省でおやりになっておられるようでございますけれども、ひとつ政府の方でもそこらあたりもう少し腰を入れて、おやりになっておられるとは思うのでございますが、中央でも、あるいはブロックにおいても、何かそういう組織をつくって、できるだけいい求人をロスにしないように、そういう連携体制を強めていく、そして対策に万全を期する、こういう措置がどうしても必要なんじゃないかと思うのでございますが、労働大臣の御所見をお伺いして終わりたいと思います。
  52. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 何といっても青春の時を学校で四年間、そして体も鍛え、勉強して、自分の人生をどこかの仕事で開拓しようということでございます。いままでの高度経済成長の場合は、大学学生の就職はだれも心配しないでよかった。四月に求人活動が四年生になって始まるとすぐにどこか内定しておりました。しかし、こういう不況のときですから、まず一番先に考えたことは、来年の三月いまのような不景気ならばとても採用は一人もだめでございますということがありましたから、その就職活動を九月の説明会、十一月一日の選考開始というふうにまず設定して、ここに今日までいろいろな情報をとってみますと、大体事務系統で五三%、それから技術系統で四四%内定したというふうにずっと統計などもフォローしております。おっしゃるとおり労働省、文部省さらにはまた日経連そしてまた商工会議所さらには各県の知事さらには各県の商工会議所というところと情報を交換しながらやっているわけでありまして、十一月一日の選考開始以来まだ一カ月たっておりませんから、それをいままでの経過を精査しながら、いまから先また万全の措置を講じて大いにひとつあっせん努力――ただその場合に、学生諸君にも超大企業にだけ集中するくせがあります。しかし、やはり人生を切り開くためには、自分が待望されておるところに行ってぶつかってもらいたい。寄らば大樹の陰だけじゃだめでして、一人が一枚の歯車になるか、五枚の歯車になるか、そういう姿勢も大事なんだ。ということは、昭和六十年になると高等学校の卒業生と大学の卒業生が同じ数になると言われる。その場合に、大学出だからエリートだからというかっこうにはいかない。それはやはり適応性というものを考えてもらわなければならないのじゃないかどいうように私は実は感じている。ですから、そういう意味でごあっせん申し上げたい、こう思っております。
  53. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 枝村要作君。
  54. 枝村要作

    枝村委員 私は、三公社五現業の労働基本権問題について、いまから質問いたしたいと思います。  この問題につきましては、連日のように新聞、放送などマスコミの報道がきわめて盛んに展開されておりまして、国民の関心もきわめて大きくなりつつあると思います。そしてまた一方では、労使双方の、あるいは政府、各党の動きも活発になり、真剣味を帯びてきておるのでございますが、いわば大詰めに近づいたというような緊迫感を伴っておるというように思っております。  そこでこの際、私は、政府の一定の方針を明らかにしていただくことが、時期的に見てもきわめて適切であると考えるからお伺いするわけでありますが、初めに、去る六月三日の本委員会で、長谷川労働大臣が政府の統一見解として述べられた数点について、再度確認という意味も含めて意見を伺っていきたいと思います。  第一は、ストと処分の繰り返しという悪循環は今回を最後としたい、こういう表明があったのでありますが、いまもその言明に変わりはないかということ。  第二は、閣僚協議会、専門委員懇談会では、労使は腹蔵なくその意見を述べてもらいたい、なお、閣僚協としては結論を出す場合、引き続き必要に応じ労使の意見も徴するけれども、公制審答申の趣旨に沿い、誠意を持って広い見地から検討することにしたい、こう言っておられるのであります。  第三は、従来からしばしば答えられておりましたが、秋までには結論を出すという方針に変わりはないのか。  以上、一括して労働大臣の答弁をお願いいたしたいと思います。
  55. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えいたします。  私が六月三日の本委員会において政府の統一見解として申し上げましたストと処分の悪循環を断ち切りたい、こういう考えはいまも変わっておりません。  さらにはまた、労使の意見聴取につきましては、専門委員懇談会によってすでに行われたところでありますけれども関係閣僚協議会においても関係組合から意見を開陳したいというお申し出があることは承知しております。関係閣僚協議会としても事情の許す限り誠意を持って対処する方針であると承知しております。  さらにはまた、秋までというお話がありましたが、その秋までについてもそのとおりだと思っております。
  56. 枝村要作

    枝村委員 その次に、官房長官にお伺いいたしますが、公共企業体の民営論につきまして、去る十一月五日、参議院の予算委員会で質疑が行われておることは御承知のとおりでありますが、その際三木総理大臣は、明確に民営移管は考えていないというふうに答えられておるのでありますが、それは間違いございませんか。
  57. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 私もさように承知をしております。
  58. 枝村要作

    枝村委員 またその際、社会党の質問に対して、三公社当局がいずれも民営論に対して反対の態度を述べておるということも御承知のはずだと思いますが、そのとおりでありますか。
  59. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 私もその席に居合わせておりまして、そういう御発言のあったことは承知をしております。  それから、さっきの御質問でございますが、総理は、この民営論が出ましたときに、さっき御指摘のようなお答えをしておりますと同時に、この問題は一つの研究課題でもあろうかということをつけ加えておったように承知をしておるつもりでございます。
  60. 枝村要作

    枝村委員 ところが、そういう研究課題だというような発言は一音一句もないのです。ここを読み上げましょうか。最後に「公共企業体の経営形態、いろいろ議論があるわけです。それは当事者能力というような面からもそういうものが出てくるわけですが、政府は民営移管は考えておりません。」とはっきり言って、あと、いまあなたが言われたような検討するとかなんとかいう言葉の濁しなんかというのは一つもない。いいですか。
  61. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 いま私が付言いたしましたのは、たしかその後の本会議だったように思いますが、最初におっしゃったのは、たしか参議院の予算委員会のように記憶をしておりますが、何か二度にわたっておるような感じがいたします。
  62. 枝村要作

    枝村委員 それは明確に、いつどこでそういう検討課題だなんということを言ったか、はっきり調べてください。  そこで、官房長官にこういうことを聞くのはどうかとも思いますけれども、御大の総理大臣が民営否定論を述べたのですから、あなたも大番頭でありますからそのとおりだと思います。そういたしますと、いわゆる民営論否定はスト権の分断論否定にも通ずると当然のように考えられるわけなんですが、いかがお考えですか。
  63. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 いま御指摘のような民営論否定は分断論否定につながる、こういう御意見でございますが、さように私も考えますが、しかし問題は、目下専門委員懇談会においてずいぶん長い時間をかけ、きわめて熱心に御検討をいただきました結論が近く出るであろうというふうに期待をしておりますので、この結論というものを十分に尊重して閣僚協議会で取り上げたい、こう考えております。
  64. 枝村要作

    枝村委員 専門懇は大体いつごろ結論を出すことになっておるのですか。
  65. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 すでに大筋の議論は終わったようでありまして、結論の起草委員というものができて、目下その作業を取り急いでおる、かように聞いておるような次第でございます。いずれにせよ、この秋ごろまでということでずっとやってまいりましたから、もうそれほど手間取るものではなかろう、かように心得ております。
  66. 枝村要作

    枝村委員 うわさによれば二十五日ごろだというように言っておりますけれども、大体秋までに結論を出すという目標がありながら、いま大筋ではまとまったがという、そういう論議過程では実際にはその約束も守られぬということになるのでしょう。一体どこに理由があってそういうふうにおくれているのか、あなたお答えできるまでやってください。
  67. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 枝村さん先ほど御指摘のありましたように、これは非常に重要な問題でございます。かつまた長い問の懸案であります。したがいまして、専門懇におかれましては、私も時折様子などは見てまいりましたが、きわめて熱心に御論議を展開されました次第でございまして、そういう点十分なる審議を尽くしたい、こういうお気持ちから、あるいは若干手間取っておるとごらんになっておられるようでございますが、その熱意のほどが現状かようなことに相なっておる、こう理解をいたしております。
  68. 枝村要作

    枝村委員 そうでしょうか。いま小野座長は一週間ほど外国に行かれておるようでありますね。やはりそういうことも含めておくれておるのか。おくらせておるということになるのではないかというように私は思います。先ほど言いましたように、あくまで結論を出すのであったら、もし優秀な方がそろっておられるならば、そのために誠意を持って努力して審査を進めれば、もういまごろは出ておらなくちゃならぬ。ところがその時期に、しかも最高責任者である小野座長が一週間も外遊するなんということを考えますと、本当にこの問題に真剣に取り組んでおるのかどうか、その責任者としてのそういう態度、措置、行動であるのかどうか、こういうふうに疑われても仕方がないと思います。これは私だけの意見でなくして、多くの関係者の方々一様に不信感を持っておる。  それともう一つは、専門懇はこれまで一体どういうことを論議してきたのか。話に聞けば、経営形態論を先行させ、労働基本権の問題は二次的な取り扱いをしておるというように聞いておるのです。どのような答申を出すか知りませんが、今日の労使の実態を踏んまえたものを基盤とした、そしてまた国民が望んでおる方向でスト権というものが取り扱われる論議というものが本当に真剣に集中的に行われるべきではないかと思っておるのでありますけれども先ほど言いましたように、経営形態先行論を今日でもなおかつ広げておる。しかも、その内容については、後から労働大臣にも質問していきますけれども、たとえば昨今の新聞を見ましても、国鉄の関係については幹線だけを残して地方線は全部民営にするとか、そういうことなどが一生懸命やられておる。これは実際的にはスト権の問題というものはたな上げする、スト権を否認するという考え方と同じではないか、こういうように私は思っておるのであります。  そこで、専門懇の委員は一体どういう経歴の持ち主がおるのか。詳しい報告は要りません。要りませんけれども、そういうのも単にどこかの大学の経済学の先生だということでなくして、やはり本当に調べていくべきではなかろうか。労働基本権を主張するに本当に値する人物であるかどうかといういわゆるそういう委員を選考する。まあ、いまごろになっては遅いですけれども、選考する基準についても疑いを持たざるを得ぬと思っております。岩井委員が辞退したことも、あるいは公労協が専門懇の解体を要求してあんなものは問題にしない、こういうことを言っているのも、そこに私は原因があると思う。こういう権威のない、各方面から非難を浴びるような専門懇、こういうことに対して私どもは、それから出す結論と答申というものがどんなものであろうとも、そこにはそれに対する信頼性というものは失われておる、こういうふうに思われても仕方がないのではないでしょうか、官房長官。  そしてまた、国際的にもこれに対して批判しておるのです。ILOに対する公労協の報告に対するILOの態度が明らかにされておりますが、その中でこの専門委員会の構成は、労使関係の問題を検討するためのものとしては国際的常識の三者構成となっておるが、これはなっていない、問題がある、国際的にも批判されておるんですね。そして選ぶ場合でも、労働法学者というものはいま日本にはたくさんいらっしゃいます。労働運動に非常に関心を持って真剣に勉強されておる人がおるにもかかわらず、そういう人たちも入れてない。こういうふうに考えてみますと、もう一度言いますけれども、専門懇の答申は問題にならぬという意見が圧倒的に今日多いということを官房長官知っているかどうか、お答え願いたいと思います。
  69. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 いろいろと御指摘がございましたので、逐次お答えをいたしたいと思いますが、まず小野座長がいま不在であるということにお触れになりました。これは私、小野さんのためにも一言申し上げておきたいのでありますが、やはりアジア放送連合という本来のお仕事のために余儀なくせられたものでございまして、そのために小野さんが専門懇を非常に軽視しておるというふうなことは全くございません。小野さん自身も大変気を使っていらっしゃいましたし、また留守中といえども先ほど申し上げた起草委員その他で問題を魚詰めていくような手配をなさって出ていっていらっしゃる、こういうことをあえて申し上げておくつもりであります。  それからまた、専門懇が、長い間議論をしてきたが、その点が労働基本権の問題を外れて少し見当違いではないかというふうな御指摘と伺いました。これは私の知る範囲におきまして、そもそも労働基本権とは何ぞや、非常に基本的な問題と取り組んでおることも事実であります。そしてそのためには、経営形態のあり方であるとかあるいは当事者能力の問題であるとか、こういうものにも言及して議論をされるということは、これはもうこれだけの大問題でございますから、そのバックグラウンドに対してメスを入れるということは当然だろう、私はこういうふうに思っておるような次第でございます。  それから、委員の構成がどうも腑に落ちないという御指摘でありますが、これはこれだけの大きな問題を国民的視野のもとに検討しなければなりませんので、各界各層にわたっての非常に高い見識をお持ちの方々を網羅したということでありまして、労働側から見るとあるいはどうも少し労働代表が少ないではないかというような御指摘かもしれませんけれども、そういう点は私どもといたしましては、これは各界各層からしかるべき人選のもとに構成せられておるのであって、まず今回におきましては、りっぱな人選のもとにこの専門懇が構成されておる、こういうふうに存じておる次第でございます。  あるいは途中で岩井さんが辞表を出されたということもございますけれども、私どもは岩井さんのごとき非常に練達な経験者が一枚加わっておることが何よりも必要であるということで、極力私の立場においては慰留を申し上げておるというのが現状でございます。  ざっとお答えをいたしました。
  70. 枝村要作

    枝村委員 その岩井委員があきれ果ててやめちゃったんですからね。おおよそいまの専門懇の性格というものがどういうものかわかるわけです。私は、時間があれば専門委員の一人一人がどういう経歴でどういう考え方を持っておるかということをきょうやりたかったのですけれども、時間が三十分しかないというからやらぬだけであって、しかも経営形態なんか、これは公制審の答申がありますから全然触れぬでもいいということは私は言いません。しかし元来、スト権の問題は最低生活保障という憲法にのっとって、そしてそのために団結権、団体交渉権、団体行動権というのが出てくる。これはいままで裁判所における判例でもあるわけなんですね。だから、そのための専門懇でなければいけないのが、どうも見ておりますと経営形態を先行させ、当事者能力の問題、こういうことばかり一生懸命やって、国鉄の小委員会でも先ほど言いましたように、ああいうだれもが受け入れもしないようなことをやっている。ですから、自民党の倉石さんでも、専門懇がどんなものを出そうが、あんなものは問題ではないと言うようになってきているわけですよ。ですから政府としても、もちろんあなた方が任命したのでありますから、これはどうこう言いませんけれども政府独自の考え方でやはりしゃんとした結論を早く出すようにしてもらいたいと思います。  しかも、今日のスト権をめぐる情勢はきわめて緊迫しておる。公労協は十一月二十五日にスト権の結論を出せというように政府に要求しております。そしてそれが入れられなければ、十一月二十六日から全面的なストライキを行う、こういう状態になっております。ですから、こういう情勢を官房長官十分踏んまえて、政府が約束した時期までに、秋までにこれを実行する。もしそれがなければ、いま言いましたような情勢にあるだけに大変な事態が予想されるわけであります。  そういうことで官房長官にもう一度、責任者として約束した時期には、われわれとすれば二十五日までに出せ、こういうことを主張しますが、必ず明らかに結論を出してもらいたいと思います。国会は十一月二十四日でおしまいですからね、七十六臨時国会は。このスト権というような重要な問題は、やはり皆さんが国会に報告し、各党がそれぞれの意見を言う、こういうことを行っていくことが正当な筋道だと思います。二十四日で国会は終わるのですからね。それまでにあなた方の基本的なスト権に対する方針を出すべきである。それを出さぬとするならば、あなた方は国会軽視もはなはだしいと言われますよ。これは国会で約束した事項でありますだけに、ぜひ出していただくことを強く要求しておきたいと思います。その点、官房長官の考え方をこの際ひとつ明確にしていただきたい。
  71. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 専門懇のことにつきまして、私がこれを評価するとか価値判断をするとかいうことは慎まなければなりませんので、これに対してはりっぱな結論が出ることを期待しておる次第でございます。  私は岩井さんにも、ずっと長い間専門懇におつき合い願って、もうまさにゴール寸前というときにおやめになるようなことは困るではないかというふうにも実は申し上げておるような次第でございます。  そこで、さて専門懇の意見が出ると閣僚協はこれを受けとめて、もう本当に鋭意精力的にこの問題を議題にいたしまして極力急ぐつもりでございます。しかし、まだいまの段階といたしましては、期日を切って、しからばさようかくかくと即答を申し上げかねるという状況でございますが、できるだけ誠意を持っていたすことだけは申し上げておきます。
  72. 枝村要作

    枝村委員 では、労働大臣に今度は質問いたします。  先ほどから言いますように、今日このスト権をめぐる情勢について労働大臣はどのように把握して認識しているかということを伺っていくわけでありますが、六月三日の本委員会であなたは政府見解として述べられておる中で重要な問題提起を行われておるのです。それは「悪循環を断ち切り、新しい労使関係を打ち立てるということは、政府だけではできることではありません。関係労使を初め、各党の協力を得なければできない問題であります。」こういうように言っておられます。まことにそのとおりであろうと私は思います。  まず、悪循環を断ち切るために労使の協力が必要と力説されておりますが、いま三公社五現業は労使とも、悪循環を断ち切るためにはスト権を回復する以外にない、こういうことが公式にないしはその意向であるということで貫かれておるのであります。一番問題とされる当事者がこのようにはっきりとスト権を付与せよとの意向を示しているのでありますから、政府はこれを無視することは絶対にできない。あなたもそういう提言をされておる。最大にこれは尊重すべきであるというように思うのでありますが、どうですか。とりわけ三公社当局の見解は、これは三木総理も公式な見解として衆議院予算委員会で堀質問に答えておるのでありますから、この考え方、意見、意向というものを労働大臣は最大に尊重すべきであると思いますが、お伺いします。  官房長官も、ついでにと言ってはおかしいですけれども、いまの質問に答えてください。
  73. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 どんな制度が生まれましても、労使の協調、そういうものがなければまずいという信念に私は変わりはありません。と同時に、三公社の方々が委員会で当時あるいは国会で申されたことを私も承知しておりますし、また労使ともどもから専門懇で意見が開陳されたということを新聞でも拝見しております。そうした全体のものを含めて専門懇の皆さん方が結論をお出しいただく、それを私たちは期待をしているところであります。
  74. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 労使関係について労働大臣が言われましたことは、これは一つの原則であると承知をしております。そこで、当局側が国会で述べられたこと、これは私ども十分尊重しなければならない御意見だと思っておりますが、同時に、専門懇で述べられましたことは、こういうことは高度の政治判断を要する問題だというふうなニュアンスのことも言っていらっしゃる。したがいまして、閣僚協がこれは結論を出さなければならぬ問題でございますが、いずれにもせよ、それらを踏まえまして閣僚協として労働側あるいは経営側の意見を聞くというふうな機会も持たなければならぬのではないかというふうに現在考えておるのでございます。いずれにもせよ閣僚協においては、先ほど申し上げましたように、この問題をきわめて重大に受けとめて閣僚協としての審議を急ごう、こう考えております。
  75. 枝村要作

    枝村委員 私は、専門懇のことをもう言っておらぬのです。いまの当事者の、特に当局のそういう意見は最大に尊重することが、これからの労使関係の問題、それぞれの企業体の再建にもつながるのですから、あなたもお答えになりましたように、これを重要な意見として尊重していただくようにお願いいたしたいと思います。  その次に、各党の協力を得なければならぬというように大臣は言われた。そこで野党四党はそれぞれ付与の方法に若干の相違はあるけれども原則として一括してスト権を与えろ、こういう主張でありますが、この問題について私のいま言ったことに間違いがあるかどうか答えてください。
  76. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 いろいろな方々の協力、国民の協力も必要でございまして、こうした審議の過程においては、それぞれ意見を述べられる、それを私たちは参考にしながらいろいろまた高度の政治判断をしなければならぬ、こう思っております。
  77. 枝村要作

    枝村委員 野党四党が一括して付与せよという主張であることは知っておるのでしょう。
  78. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 いろいろな方々に会うとそういう御主張のあることも存じ上げております。
  79. 枝村要作

    枝村委員 野党四党の考え方はあなた方は認識し把握されておる。そのときに問題は自民党でしょう。これはまだ一本にまとまってはいないのですけれども、さまざまな意見があることを私も承知しております。その中にはきわめて真剣に実態論として取り扱おうとする意見が相当強いように見受けます。今日の労使関係をさらに近代化するためには、また先ほど言いましたように、スト権のあるなしがそれぞれの企業体の再建に大きく影響する、それからいまのままの状態でいくと国民生活に重天な影響を与えることになり、これは放置することはできない、こういうふうな実際の問題として分析して、その立場から考えるべきだというような意見が自民党の中にもたくさんある。そういうものを含めていま鋭意結論を出そうとしておるわけでありますが、そういう動きをしておるということについて労働大臣は御承知かどうか。
  80. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 私は、専門懇の中にも入っておりませんから専門懇にどういう意見が出たかもわかりませんけれども、いろいろな方々がそれぞれの意見を述べに来られるのは素直にお伺いもしております。また、自由民主党の中にも新聞の上あるいはまた会った人々によってはいろいろな意見を述べておることも承知しております。そして新聞の上でございますが、自民党でもいろいろな調査会などが生まれまして、そこでも早く結論を出そうじゃないか、こういうふうに話が進んでいるやにも聞いておりますが、内容一つ一つについてはどういうふうな結論になるかということは、いまのところ私は存じ上げておりません。
  81. 枝村要作

    枝村委員 もう時間がありませんから急ぎますが、そういうふうに直接あなたが大きく御協力を求められておる当事者双方、各党の協力の一つの大きな動きは、いま言ったように大勢としてスト権を与えねば今日の労使関係、そしてそれぞれの再建は成り立たぬという方向にどう見てもなっておるというように客観的に言えると思います。それから、そのほか国民の世論は一体どうか、まだまだ無関心な点がたくさんあると思いますけれども、こう緊迫してくればくるほど国民の関心も先ほど言いましたように高まってくる。いまのところマスコミを通じて私どもが知る限りでは、やはりスト権は付与すべきである、これが大勢であるように私は考えるのであります。これはあなたの返答は要りません、まあ余りいい返答はないでしょうから。  いずれにしても、だれがどうとどめようともスト権は回復させるべきだという大きな潮流になっておることは否定できないと思うのです。スト権なんか与えるなという人たちでも、そういう情勢の認識は一様に持っておられると思うのです。ですから、このような情勢を労働大臣は正しく判断して、私がいつも言うように歴史的な大事業をあなたの手でひとつ間違いなくやってもらおう、こういうことなんです。労働大臣は閣僚協の中でもその立場上きわめて重要な地位にあり、中核であるというように私は思っておるのです。あなたが六月三日の本委員会で述べられましたように、公制審答申の趣旨に沿って誠意を持って広い見地から検討していただくことになるわけでありますが、その際、再び申し上げますが、毅然たる態度でいま言いましたような情勢を正しく判断し分析して、あなたの強い主張を貫いていくようにしてもらいたいと思っております。その点についての所見、決意なりあれば答えていただいて、私は質問を終わりたいと思います。
  82. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 先ほどからあなたの御質問の中に二十四日ですか返事を出せとか、あるいは座長がよそへ行っているのはいかぬとかいろいろお話がありましたが、一方また公労協の方々が二十六日からストだとかということがありまして、私はこの事態をいろいろな新聞いろいろな人の話を聞きながら思うのですが、こういう大事なときにはぜひひとつ感情的にならないで、政府も、ああいう温厚篤実な井出官房長官も誠意を持ってやると言っておりますし、私も関係閣僚の一人としてやるつもりがあります、専門懇の諸君の意見を参酌しながらやろうと思っておりますので、どうぞ余り感情的にならないでやってもらいたい。そうして期待はされておりますが、関係閣僚協、専門懇の意見なども踏まえながら将来の日本の大問題だという感じ方で対処してまいりたい、私はこう思っておるところでございます。
  83. 枝村要作

    枝村委員 どうも私の質問に対して、気に入るようなことにはいかぬまでも、少なくともいままでのあなたの言動などを見て、この際この時期で、実は委員会は会期中にはきょうだけですからね、だから、もう少しはっきりしていただけるものだという考えでおったのですが、残念でなりません。しかし、あとわずかの日数に迫りましたので、いま言われた物情騒然たる世の中にならぬように二十六日までの間に結論を、しかもスト権を与えるという方向で出していただくように強く要求しておきます。  委員長、続いて雇用・失業対策について基本的な問題で質問しようと思って私は通告をしておりましたが、これは取り消しまして終わります。
  84. 大野明

  85. 島本虎三

    島本委員 大臣もいま枝村委員の質問をお聞きのとおり、スト権の問題と雇用問題がいま重大な焦点になってきております。この高度経済成長の、いわば自由主義国第二位の日本の経済ですが、戦後三十年、倒産と解雇の状態は最近まことに目まぐるしいものが生じてまいりましたし、この一月から六月までには二百九十万人が離職しているという報告がされております。失業者は百万人を超えておる。求人倍率は最悪。二月のピーク時の〇・五の状態である。雇用は昨年同月比五三%減、特に新卒者はだめである、こういうようなデータであります。中高年齢者やパートタイマー、ことに婦人の場合は深刻でありますが、こういうような問題に対処して、労働大臣としてはどのようにお考えですか。これはまことに重要なのでありますが、御見解をお聞かせ願いたい。
  86. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 やはり何といっても働く能力と意思のある者が職場がないことは大変なことでございます。しかもこういう、従来が一〇%上がったところが、昨年はマイナス、そしてことしは努力によって、先ほど経済企画庁から話がありましたように二・二%の成長率までできるわけでありますが、こういうときに、おっしゃるような出かせぎの方々とかいろいろな方々の問題が一番先にしわ寄せされるものですから、私は先日も閣議で、実は日雇いの方々、出かせぎの方々が、公共事業が今度実施されるに当たりまして雇用に結びつくように建設省、農林省、それから運輸省、そういう関係機関の協力を得るために、さらにはまた知事さん方との連絡をとるために、工事施行前の事情を把握いたしまして、求人開拓に全力を挙げることにより就労を確保したい、そういうことを踏まえまして、十一月四日の閣議でもこの問題に対して発言をいたし、関係閣僚の協力を求めたわけであります。そういうことで、及ばずながらこうしたときにこそしっかりお手伝いすることが私たちの責任だと、こう思って、労働省関係機関は本当に懸命にやってもおりますし、やらせているつもりでございます。
  87. 島本虎三

    島本委員 大臣のその気持ちは私なりに理解できるんです。ところが、本年の六月三日、社会労働委員会で、あなたは田邊委員のスト権の付与の問題にはっきり答弁なすった。それは秋までに決着をつけるという。第二問目は、これは政府の統一見解であると。ところが、現在の状態は低迷している状態。あなたが話していること、これは私は高く評価するけれども、現実はそのとおりに即応されておらない。そうだとすると、中高年齢者雇用促進法が昭和四十六年に制定され、これは十月から実施されているはずでありますが、その中に、やはり法律ができても、果たして中高年のこの失業者、こういうようなものは完全に就労の機会を与えられ、法律の意図するとおりに行われているかどうか問題じゃないかと思うのであります。この点は一体どうなっておりますか。この問題は局長の方から御答弁願います。
  88. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 ただいま御指摘ございました中高年法が四十六年に制定されまして、中高年齢者の雇用率の制定あるいは就職のいろいろな援護措置等が実施されておりまして、一昨年の石油ショック以来の不況、それまでの時点におきましては、中高年対策としては十分な成果を上げてきた、かように考えておりますが、この石油ショックを契機といたしまして不況が深刻となってまいりまして、雇用情勢全体は非常に厳しい情勢が続いております。そういう中でやはり一番しわ寄せを受けやすいこの中高年齢者、特に高年齢者の再就職の問題、雇用の安定といったことが非常にむずかしい環境の中に置かれておりまして、私どもは、ただいま大臣から御答弁ございましたように、特にこの高年齢者層を対象にいたしまして再就職の確保ということでいま努力をいたしておるわけでございます。
  89. 島本虎三

    島本委員 やはりそれも法律が制定された目的、趣旨、それに沿うて運用されておる、こう思うのがわれわれの立場です。しかしながら、やはり石油ショック以来、そうじゃないということ。しかしながら、やはり法律で決められていることですから、それを克服してでも失業者の就労のために、また生活の安定のためにやるのがサービス機関としての労働省の立場でなければならないし、その先頭に立つのが大臣なんです。  では、中高年失業者雇用促進法によって失業者求職手帳制度というものがあったはずでありますが、あれは活用されておりますか。法律でやって活用されているということならいいのですが、何人くらい交付され、活用されておりますか、事務当局でいいですよ。
  90. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 四十六年に中高年法が制定されまして、それからいま御指摘になりました中高年齢失業者の求職手帳制度が発足したわけでございます。これによりまして就職指導あるいは職業訓練等実施してまいっておりますが、四十七年、四十八年、四十九年と逐次対前年に比較いたしまして一四、五%、あるいは四十九年は二〇%、五十年に入りまして前年に比べて手当の増額等を図ることによりまして、この求職手帳制度の充実を図ってまいっておりまして、私どもが四十六年に先生方の御審議によりまして成立いたしました手帳制度も十分効力を発揮してまいった、かように考えております。
  91. 島本虎三

    島本委員 発揮していないんだよ。発揮していないから、活用されているか、何人適用されているか聞いているのです。
  92. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 手帳の発給件数はただいま手元に持っておりませんが、年間平均四千程度の手帳が発給されております。
  93. 島本虎三

    島本委員 念のため、それは何年度ですか。
  94. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 四十七年度以降でございます。四十六年に制定されまして、四十七年度以降大体年間平均四千件程度になっております。
  95. 島本虎三

    島本委員 これは四千人ということになりますか。
  96. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 そうでございます。
  97. 島本虎三

    島本委員 これでばかり時間とるのは困るのでありますが、ここまで来た以上、もう一つ念のために聞いておかないと次に進めない。  雇用対策法の中で農民、自営業者、農業をやめて求職申し込みをする人たちを訓練する、この訓練を受けるときの失業保障的な制度として職業転換給付制度というようなものがあったと思うのです。これはもう農業、出かせぎ労働者、こういうふうな人に対して適用されていなければならないと思うのですが、昨年は何人くらい適用されましたか。
  98. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 いま手元に詳細な数字を持ち合わしておりませんので後ほど御報告いたしますが、御承知のように一昨年まで、四十八年までは人手不足ということで、農業から転換する方々が職業訓練を受け、あるいは就職指導を受けることによって、二次産業あるいは三次産業に転職をされておりました。具体的にこの職業転換対策の対象になりまして手当を受けられた方はごく短期間で就職をされるというような状態でございましたので、私ども雇用対策法によりますこの制度も、それ相当の効果を上げてまいっておりますが、その後は農業からの転換者というものはだんだん減少してまいっておりまして、こういった一次産業からの転職者に対しましても、今後こういった雇用対策法によります職業転換給付制度を十分活用してまいりたい、かように考えております。
  99. 島本虎三

    島本委員 したがって、これはそういうような場合を予想してつくられたのでありますから、失業者が積極的に利用できるように改善すべきなんでありますが、依然としてこの点は数少ないはずです。それで法律ができても、やはり法が目的どおりに実施されない、こういうようなことであってはいけないわけであります。いま、これは雇対法によるもの、または中高年齢者雇用促進法、これによるもののみを聞いたわけであります。民間の日雇い労務者の仕事ということになると、これに当てはまらない、もっとみじめな状態になっているんじゃないかと思うのであります。せめて法律によって救済され、また、それを意義づけられているものはまずまず不十分ながらも生き長らえる。しかしながら、民間の日雇い労務者の仕事は一体どういうふうになっていますか、これをひとつ報告願いたいのであります。
  100. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 御承知のように日雇い労働者、こういったいわゆる短期的な就労者につきましては、できるだけ常用化を促進するというような施策をとってまいっておりまして、全国的に言いますと、日雇い労働者の登録数は漸次減少してまいっております。これにつきましても、昨今の不況の影響を受けまして、本年に入りまして横ばい、いままでずっと減少してまいりました登録日雇い労働者数が、ことしに入りまして横ばい、ないしは若干部分的に増加している傾向もございますが、それにいたしましても、これに対します求人がこの不況の影響を受けまして急激に減ってまいっております。従来のような、いわゆる人手不足時代のような就労状況でないことはもう御承知のとおりでございます。しかしながら、全体として見ますと、一般的な傾向としては、こういった日雇い労働者の方々の就労も、雇用保険法によります失業給付の対象になります二カ月平均二十八日以上の就労は一応確保されているような状況でございます。  ただ、その中で東京、大阪等の山谷とか釜ケ崎とか、こういった地区で求人の減少によります就労困難な事態が出てまいっておりまして、こういった点につきましては、先ほど大臣からもお答えがございましたように、それぞれの地域につきまして地元都道府県当局とも連絡をとりながら、この求人の確保、就労の確保に努力いたしておるような状況でございます。
  101. 島本虎三

    島本委員 局長にちょっと注意しておきますが、私、最前列にいてもあなたの声が私の耳には乙女の声のようにか細く聞こえる。堂々たる体躯のようにいい声を出して答弁してください、一回、一回耳をそばだてなくてもいいように。  確かに求人が減っているということ、いま答弁がございましたが、しかし失業者が減っているということになると、労働者が減っているということになりますと、一人一人の就労は高くなってもしかるべきじゃないか。いかに求人が減り、労働者がふえたか減ったか、私の手元にあるこの数字によりますと、山谷の玉姫労働出張所、これは余りにもひどいじゃありませんか。たった二日より月に就業してない、こういうような月もあるじゃありませんか。これはどういうことなんですか。責任は国ですか、都道府県ですか、市町村ですか。  これはまたちょっと別な資料ですが、東京都が四十九年度の冬期または四十九年度の特別枠というようにして出してやったときにはちょっと日数が上がるんですね、十日というふうに。しかし十日でもこれは少ないですね。私も、これを見て実際びっくりするのです。こういう人はどうして生活しているのですか。また、生活できないような状態でいわゆる公共職業安定所、こういうようなものを運営さしておくということは、ちょっと私は理解に苦しむのであります。少なくとも生活ができるような状態にしてサービスをし、指導してやるのが労働省のたてまえ、こういうように思うのですが、この人たちはどういうようにして生活できるのですか。月に二日くらいのあれでもってどうして生活できますか。これは三日、四日、五日、六日、これより多い月はございません。六日ぐらい働いて、月どうして生活できるのですか。どういうようにこれを生かしておいて指導しているのですか。これは大臣ですか、局長ですか。――では大きい声で答弁してください。
  102. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 山谷地区の日雇い労働者の方々の就労状況は、確かに本年に入りまして従来から見ますと悪化してまいっております。いま玉姫労働出張所、いわゆる山谷地区の就労状態が月に二日か三日でしかないのじゃないかというお話でございますが、山谷地区の労働事情は非常に特殊な事情がございまして、この労働形態も先生承知だと思います。  玉姫で登録をしております日雇い労働者の方々は三千数百名おられます。この実態を見てまいりますと、そのうちの約半数強が常用ないしは臨時、一定期間就労するという形で、その残りの四五、六%は日々就労という形で、いわゆる玉姫の労働出張所なりあるいは山谷の労働センターに出てきて、そして安定所なり労働センターの紹介を受ける、あるいは直接雇用されている、こういう状態でございます。  そこで、いまお話のありました二日ないし三日といいますのは、玉姫労働出張所で受け付けた求人を輪番紹介した回数が月に三日程度だ、こういうことでございます。この山谷地区で日々就労しておられます方々は、安定所の紹介で就労する場合と、それから民間のいわゆる求人者側と直接取引で就労する場合、あるいは自分の縁故あるいは友達の紹介等で就労する人たち、こういうものが全部入りまじって月間ある程度の就労が確保されているという状態でございます。  昨年の暮れの就労状況を見ましても、月間十四、五日以上というのが大体全体の三分の二程度を占めておりまして、十日未満というのが大体二五%くらいある、こういうのが通常の状態でございます。そのときから見ますと、いわゆる安定所の輪番紹介によります日数が大体五、六日から七、八日あったものが二、三日程度に下がっておるということで、確かに非常に厳しい状況になっておりますので、いま御指摘になりましたような東京都当局が特別求人を出すことによりまして、この山谷地区の月間の就労日数を確保していく、こういう措置がとられております。これがことしの九月に東京都の方で求人を打ち切ったというようなこともございまして、先般来、東京都当局とも相談をしながら、特別求人を従来どおり続けるというような措置をとってもらうように話を進めておりまして、大体こういう線が確保されたようでございます。私どもは民間の求人開拓、確保に努力いたしますと同時に、東京都の従来から出されておりました特別求人によりまして、山谷地区の方々の日々の就労につきましても、できるだけの努力を続けてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  103. 島本虎三

    島本委員 言葉でできるだけの努力というのはいいのでありますが、窓口であろうと民間であろうと二日、三日、これくらいの働きで一カ月の生活の維持なんかできるわけはない。その間、全く放置された状態になっている、無行政状態です。  私は直接本人から受けました。その中である四十六歳になる男の人は、やはり二日しか自分は与えられない。その二日の仕事の中から一日一食に切り詰めた。そして二十日には即席ラーメン、二十一日の一食カレーライス、二十二日は即席ラーメン、二十三日も即席ラーメン、二十四日は焼きそば一皿、二十五日は食パンだけ、二十六日は即席ラーメン、二十七日はカレーライス、これが少しよかった、こういうような状態で、一日一食、これで食いつなぎをしているような状態だとすると、全く私としては予想できないことなんです。これも特殊事情があるからいたし方がないのだ、これは放置しておいていいものかどうかということです。そうじゃないはずです。これは中には生活保護の適用の申請をしている人もあるのですが、病気をしていないからといって、収入があるはずだということで一日、二日、また三日、四日くらいの収入しかない者に対しては生活保護の適用も受けられない。  大臣、これが本当だとしたらとんでもないことです。病気になっても、この間どういうふうにしてやっているのかわからぬでしょう。こういう状態でほったらかされているのです。私はそれを見る場合に、生活の苦労は並み大抵ではございませんし、私どもの方で聞いたところによっても、まさかと思うことがやられていて、これが生活の知恵か、こう思うことがありますが、サケの頭を百円で買ってきて、その百円のサケで一週間食いつないだ、こういうようなこともあるんだそうであります。こういうような状態にしておくということは政治の貧困じゃありませんか。行政の貧困じゃありませんか。特殊地帯だとしてもしそれを放てきしておいたならば差別待遇じゃありませんか。サービス機関であると言いながら、労働省自身は職安の面では実体がないじゃありませんか。一体これはどういうことなんですか。  大臣、こういうようなことは許したらだめだと思うのです。二日間しかない者の生活生活保護の適用を受けようとしても、丈夫だからだめだといって断られてきている、これは五十歳近くの人です。大臣、これは残酷というより言葉がありませんよ。――もうあなたはいいから大臣、決意をちょっと述べてください。
  104. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 こういう厳しい時代には、一人一人が生きる苦労というものは大変でございます。私は、いま先生が御指摘のことを、いろいろな委員会などでも御指摘をいただくものですから、先ほど局長からも御答弁させましたけれども、東京都の方に特別に要請して、年末の仕事を出してもらうことを話もし、さらには数日前でしたか、東京都の労働局関係の諸君、さらにはまた、いまの玉姫初め労働出張所の責任者の方々に労働大臣の部屋に来てもらいまして、こうした事態の話も聞くからいままでも非常に熱心にやってもらっていただろうが、私の方も内閣に対してしたり東京都に対してしているから、さらに一層努力してもらいたい、こういうふうにお願いをしたことであります。  そうした方々に接触する諸君の話を聞いても、埼玉あたりに働きに行ったそういう人々が賃金の不払いになったところを、わざわざ追っかけていって賃金を取ってきてやる、従来やってないようなことまでやってでもお手伝いするという気持ちに実は胸打たれたわけでありまして、おっしゃるとおり、こういう厳しいときに一番しわ寄せのある諸君に対しては、ひとつほかの方以上の努力と施薬をやってまいりたい、こう思っております。
  105. 島本虎三

    島本委員 一体、具体的な問題としてこの食べられないような人たち、この人たちの収入の枠ばあるのかないのか。二日か三日、これしかないと言う。そうなったら日雇い失業保険も役に立たない。そうすると健保はどうなるか、これさえも役に立たない。一体病気になったらどうすればいいのか。体力も能力もあるのに、これは原因は何でしょうかね。こういうことをしておかれないはずです、いまの憲法のもとで。そうするならば日雇い労働者に対する失業納付に特例を設けて、月間十四日の職業安定所の出頭によってでもこれを給付してやってもいい、こういうことぐらいはやってやらないと病気になったらどうなりますか。これはもう間接に人殺しを容認しているようなことにさえなる。自殺教唆かもしれない。こういうようなことを考えたら深刻じゃないかと思うのですが、いまのような給付の問題はどうお考えでしょうか。
  106. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 日雇い労働者雇用保険の失業給付の問題でございますが、これは月平均十四日、二月で二十八日ということで給付が行われることになっております。先ほど先生の御指摘のございましたように、日雇い労働者の方々の就労の実態を見ましても、昨年の暮れ以来、非常に就労が厳しくはなっておりますけれども一般的に全国的に見ますと、この雇用保険の受給要件を満たすことはさほどむずかしい問題ではございません。ただ一部に、いま御指摘になりましたような山谷地区のような問題がございますが、これは就労の確保をできるだけ図るということで、いま大臣からお話しございましたように、東京都と緊密な連絡をとりながら就労増を図ってまいっております。私ども、この山谷地区の方々につきましても、昨年まで程度の就労は確保できるように年末年始にかけまして特別求人も出す、こういう措置をとることにいたしております。  保険の受給要件を、そういったたてまえを崩して給付したらどうか、こういう御指摘に対しましては、この保険制度のたてまえから受給要件を出頭という形に切りかえることは、保険制度の根幹を崩すことになりますのでそれは別といたしまして、この受給要件を満たすように就労の確保に努力をしてまいりたい、かように考えております。
  107. 島本虎三

    島本委員 二日や三日でできないからこれを言うのです。満たさせると言うなら、それに対する反対給付があってしかるべき、担保があってしかるべきだ。特殊地帯であると言うならば、憲法のもとではっきりあなたは失業者を救済するための重大な任務を負っている。一体これはどういうことですか。口だけで言ってもだめなんです。私どもの尊敬する大臣は、スト権の問題できちっとここでやって政府統一見解だと言ってもまだ低迷している。まして局長がそこで言ったからといってだめですよ。本当に信用できるならば、それに対して特例はこの際考えなくてもそれに準ずるような方法をこう行いますとか、あるいはやれなくても同じような効果を及ぼすような方法を考えるとかならいい。どうもこの点では私はまだまだ言葉だけの答弁だ、こういうふうに思っている。中に愛情と誠意が感じられない。  いま失業保険の印紙の売買さえ行われているということを知っていますか。一枚三百五十円で買って、最後の一枚が必要だったら三千円までするのだ、こういうような実態だということを聞いて唖然としているのであります。ましてその中に手配師が入ってあっせんをして、病気した場合のこの失業保険なんかの印紙に対してはもう融通し合わせている、こういうようなことであります。これは犯罪行為じゃありませんか。  こういうふうなことだって、やってやらないからこれが発生するのです。すべて労働省責任に帰する問題だと私は思うのです。これはそのままにしておいてはとんでもないことになると思います。これを知っているかどうか。これに対する対策……。
  108. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 山谷の就労実態につきましては、先ほどから申し上げておりますように、非常に厳しい情勢にございますので、こういった人たちの就労確保については、私どもは大胆の御指示を得まして最大の努力をいたしてまいっておりますし、また、今後も続けてまいります。  で、東京都の特別求人が出てまいりますと、大体昨年程度の就労は確保できるかと、かように考えておるわけでございます。  いま御指摘になりました、雇用保険の日雇い労働者の印紙の売買の問題でございます。本年に入りまして東京、大阪でこういった実例が出ておることも承知いたしております。こういった不正受給につきましては、もう厳正な処分をいたさなければなりませんし、今後とも不正は不正としてこういう問題については的確な措置をとってまいるつもりでございます。  それにいたしましても、こういった罪を罰するということもさることながら、そういう事態が起こらないように月十四日、二月二十八日の就労を確保していくということが私どもにとっては最大の要務だ、かように考えております。山谷地区のような特殊事情についてももちろんでございますけれども、その他の地区で仮に一日、二日足りないために印紙の売買が行われるというふうなことにならないように、就労確保ということで全国の安定所を督励いたしまして、十分な措置をとってまいりたいと思います。
  109. 島本虎三

    島本委員 じゃ今後は来月から十四日は必ず確保してやる、こういうふうな答弁であるとして私は了解したいと思います。また一カ月後にデータをもらってどうなっておるか調べますが、いまでも二日、三日、これが十四日に上がるんですね、間違いありませんね、大臣も聞いているのだから。
  110. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 そのために第四次景気対策が決定されまして、それに伴う補正予算も先般御審議いただいたわけでございます。私どもこの補正予算が一口も早く実施されることによりまして、全国の安定所に登録されている日雇い労働者の方々が公共事業その他で就労の確保を図られる、そのために担当の窓口で求人開拓を実施いたしまして、こういった就労の確保に最善の努力をしてまいりたい、それによりまして、あぶれたときに雇用保険の失業給付が受けられるように最大限の努力をしてまいりたい、かように考えております。
  111. 島本虎三

    島本委員 もう時間がないので残念なのでありますが急ぎます。  最大の努力というのは言葉なんですよ。だから、実態として必ずそれをやります、そばで大臣問いているのですから、努力するということは必ずやるという意味だ、こういうふうに解釈していいですね。
  112. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 実は、きょうも全国の県の職業安定課の担当補佐を集めまして、これからのこういった就労対策あるいは求人開拓につきまして指示をいたしております。これは全国の安定課職員が一丸となって、先出御指摘のような方向で努力をしてまいりたいと思っております。
  113. 島本虎三

    島本委員 わかりました。  仕事がなくて長崎では自殺をした人もいます。聞いていませんか。あえて言うと北松の浪崎洋子さん四十二歳、この人のだんなさんが前は炭鉱に勤めておった、それが失職した、何回行ってもどうも窓口では受け付けてもらえない、子供たちを抱えてどうにもならなくなって自殺をしてしまったという例さえあるのだ。  そういうふうにしてみると、都道府県と相談してという言葉があるのですが、やはり大臣、国の方がその裏づけをやって金をやるのでないと、向こう自身、財政逼迫した自治体でやはりできないのであります。ですから、こういう点を十分考えて、そうでなければまた失対に入れてやるようにして救済するか、そうでなければ国から金を出してやって、やりなさいと言ってやるか、それでなければ雇用保険を窓口へ出頭したことで認めてやる、まあ昔の失業保険ですね、こういうふうにすること以外にはないんじゃないですか、救済するのには。これはもう結論でありますが、恐らくこれ以外にはないでしょう。口で何を言ったって、またきょう終わってしまえば、後は横を見て笑っているかもしれない。そんなことであってはだめだから言うのだ。  いまの三つ、もう一回失対に入れるような制度改正をするか、それでなければ都道府県に国の責任によって金を出してやる、それと、このいまの雇用保険法の適用というのですか、これを、出頭したことによってそれはもう効力を発生するように認めてやる、こういうようなことでいいんじゃないかと思うのですが、大臣の神の声を聞かしてもらいたい。
  114. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 いろいろ御回構いただくお話でございますけれども、やはり問題は働く口をお互いがつくってあげるということが一番大事だと思いまして、東京都の場合でも、私の部屋まで東京都の労働局の方に来てもらったり、あるいはまた、そういう所管の所長さんに来てもらって、実情を聞いて、そして年末の手配をしてもらいたいということをお話し申し上げているのでして、まあ信用されないと言われればそれっきりでございますけれども、この次ここの委員会に来てあなたに怒られぬよう一生懸命ひとつがんばりますから、御理解いただきたいと思います。
  115. 島本虎三

    島本委員 理事の方から、もう予定の時間が過ぎたからやめろということであります。本当はこの問題はもう少し詰めたいのでありますが、いずれ口を改めてもう一回やらしてもらいます。  最後に、やはり以前に、皆さんが知っておられると思うのです、局長も知っているのですが、中高年齢者雇用促進法、昭和四十六年、これを審議している際に、定年制の延長は六十五歳をめどにして、そしてとりあえず六十歳までは最大の努力を払う、当時の大臣がそうおっしゃった。これは私の脳裏に焼きついているのであります。この定年制の問題に対してどうなっているのか、雇用率の義務づけ、こういうようなことも当然必要でありますが、高齢者に対する雇用の拡大がさっぱり行われておらない。中高年齢者雇用促進法という法律ができておっても、このような状態だ。これに対して拡大する最大の方法をひとつ教示願いたい。  それと同時に、失対制度の五十年再検討がいま行われておりますが、七回ぐらいまで研究会が行われたそうですね。この際、賃金問題を含めて審議の経過、これも明らかにしてもらいたい。これが私の最後の質問であります。
  116. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 四十六年にいわゆる中高年法が制定されます際に、この委員会におきましていろいろと熱心な御審議をいただきました。その際に、いま御指摘になりました六十五歳ということは、定年を六十五歳まで延ばすということではなくて、これは先生ちょっと誤解していらっしゃるのじゃないかと思いますけれども、六十五歳までを労働力として雇用対策の対象として法律的に考えます、それで定年は、いわゆる戦前の五十五歳定年というのがいまだに一般化している、これをできるだけ六十歳まで延ばしていくような具体的な施策を進めていきたい、こういうことをその当時申し上げたかと思います。その後、これは実は、定年延長の問題は所管は労働基準局でございますけれども、私ども雇用関係から、特にこの定年延長ということには重点を置いていろいろと配慮を加えてまいったわけでございますが、本年に入りまして、従来、この二、三年来定年が若干ずつ、五十五から五十六、五十七、五十八と延びてまいっておりましたが、こういう不況で定年の延長が足踏み状態にございます。その中でも、五十五歳以上の高年齢者の就業問題、雇用の安定ということは非常にむずかしい情勢になってきておりますので、ことしは大臣が先頭に立たれまして、特に当面六十歳までの定年延長ということで、昨年から予算的にも定年延長の奨励金制度ができる、あるいは中高年齢者のいわゆる雇用制度を活用する、こういったことで、できるだけ定年延長六十までという目標を掲げていま努力をいたしております。来年度、実はいま、雇用率の問題を中高年齢の雇用率ではなくて高年齢者の雇用率、しかも、それを事業所単位に雇用率をつくってみてはどうか、これを支えにして定年延長、六十歳までの定年を延ばすということをもっともっと強力に進める必要があるのじゃないかという具体的な検討をいまいたしております。こういうことで、成案を得られましたならば、また先生方の御意見を承らしていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  117. 石井甲二

    ○石井政府委員 失対事業の五十年の検討の経過でございますが、これはいろいろな問題がございますけれども、一つは、失業対策事業を打ち切らないということについては、この前の国会の幕切れにおきまして、大臣からはっきり申し上げておいたわけでございます。したがいまして、その枠内におきまして、現在、失対事業の就労者の問題といたしまして一番大きな問題は、やはり年々高年齢化いたしまして、現在、平均の年齢が六十を超えまして六十・二歳ぐらいだと思います。それから女性の方が非常に多くなりました。これは大体六二%ぐらいだと思いますけれども、そういう方々について、失業対世事業を打ち切らない、継続するという今後の展望の中でどういう就労の実態を確保したらいいのかということを基本にいたしまして、先ほど先生御指摘のように七回ばかり審議を継続しております。現在のところは、各委員先生方がそれぞれ手分けをいたしまして、実際に就労の現場を視察いたしまして、そういう現地の状態、あるいはその中でいろいろな陳情もございましたが、そういうことを含めまして、さらに具体的な実施の内容あるいは事業のあり方あるいは就労の形、そういうことを含めまして、今後、失対事業を打ち切らないという前提の中での、また、そういった年齢その他の条件を考慮した上での最適なあり方をどうするかということを現在検討中でございます。現在検討の渦中でございますので、私どもといたしましては、来年の四月施行を目標にいたしまして、できるだけ早く結論を出していただくようにお願いをしたい、こういう状況でございます。
  118. 島本虎三

    島本委員 終わります。
  119. 大野明

  120. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大臣、多分御記憶だろうと思いますけれども、昨年の通常国会で私、本委員会におきまして、郵政省の郵便集配の業務の中で郵便集配請負という制度があることについて質問をいたしました。  思い出していただくために、質疑の要点を繰り返しますけれども、この郵便集配請負という名のもとで千五百名を超える郵便労働者の方々が、安い請負料で、しかも身分の保障もなく、労働基準法上の労働者とも認められないままの劣悪な労働条件で働いております。しかし、私どもの知る限りでは、この方々は常勤の職員とほとんど変わるところがなく、当然、労働基準法上の労働者として認定される筋合いのものではなかろうか。  私は、まず昭和三十七年五月十八日の最高裁の判断に示されておりますように「労働者として労基法の保護を受けうるか否かは、その契約の名目に限らず、労務提供の形態を実質的に観察して決しなければならない。」これを基調にしながら、特に労働省で編さんされました「労働基準法」この解説の中での、いわゆる請負と労働契約の関係についての解説を一つずつ援用申し上げながら、これらの労働者基準法上の適用があるか否かについての質問をさせていただきました。この見解に従って郵便集配請負の制度をつぶさに検討してまいりますと、労働省基準法の解説にもありますように、作業の遂行に当たっては郵政当局の指揮監督を受け、明らかに使用従属の関係があるという多くの事例も申し上げたはずでございます。また、作業に要する器具、資材等についても、これまた郵政当局から提供されておる。さらに事業の計画や損益の計算等については請負人は一切無縁なものである、そういう点についても触れさしてもらいまして、したがって、郵便集配請負人は当然、労働基準法上の労働者であることが明白であるから、そのことを労働省の見解として明らかにしていただきたい、しかし、行政のサイドからするならば、すべての問題が直ちに解決するものとも思われませんので、ひとつ関係の向きで可及的速やかに検討をお願いしたい、こういう御質問を申し上げまして、私の記憶に間違いがなければ、大臣からの御答弁は、大臣のお父さんかおじいさんかが郵政事業に関係をされておって、大臣も郵政事業のことは知っておる、しかし、今日そういう気の毒な人がなお残っておるとするならば、これは十分調査をして善処をしたいので時間をかしてもらいたい、こういうことであったように記憶しております。  その後大臣は、お約束のとおりに労働省当局をしてこの実態調査をやらせたというふうにも承っておりますが、その実態調査の結果が一体どういうふうな御見解になったのか聞かせていただければ幸いと思います。
  121. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 前に阿部先生から、そういうお話があったことを私も記憶しております。しかも、住此の一人一人と密着して集配している方々の実情を改めてお伺いしたので、当時、感銘深く聞いて、そのことを早速労働省関係当局に調査を依頼したことでありまして、内容については局長から答弁させます。
  122. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労働基準法上の労働者の性格につきましては、ただいま先生がお挙げになりましたような、そういうメルクマールで判断をしてまいるわけでございます。ただ、その中に認定というお言葉が出てまいりましたけれども労働者であるかどうかを個別に認定するという、そういう処分を行うということはないわけでございまして、具体的に事案が起こりました場合に、労働基準法適用があるかどうか、具体的な事案の判断のときに、この方は労働者であるかどうかということは、当然その前提として判断されなければならない、こういうことに相なるわけでございます。  そこで、いま御質問になりました点については、そういう先生の御質問を受けまして、労働省では二月三日に関係都道府県基準局長に対し、「郵便物集配請負人等の労務提供の実態調査について」という通達を出しまして、実態調査を行いました。三月から四月にかけまして、これらの郵便物集配請負人等の業務の実態、それから労働者と認められるかどうかというような判断をするための事項につきまして、関係の都道府県から五十人の請負人を選びまして、そして直接に基準局あるいは監督署職員が面接をするというような方法によって調査を行ったわけであります。  調査の項目は、細かくなりますので、ごく基本的な点だけを申し上げますと、たとえば就労日とか就労時間の拘束がどうだ、就労場所の拘束がどうだ、労務提供の過程、方法について指示があるかどうか、業務用品の負担関係がどうであるか、契約違反があったときにどういうような制裁といいますか処置がなされるか、労務の代替制はどうか、事故があったときの賠償責任はどうか、あるいは健康管理はどのように行われているか、あるいはいろいろな報酬がありますが、その報酬の性格はどんなものかというようないろいろなことにつきまして、調査項目を詳細に設定をいたしまして面接調査を行いました。  その結果は、実は業務の実態がまちまちでございまして、これらの請負人等が一律に労働者であるかどうかということを判定することは大変むずかしいということを感じたわけでございますが、しかし、調査をした対象の中には、業務の実態が常勤の職員の場合とほとんど差異が認められないという者も確かに含まれておるわけでございまして、そういう者はやはり労働基準法上の労働者として取り扱うのが適当ではないかというふうに考えるわけでございます。
  123. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いまの幾つかの調査項目の中で、たとえば拘束時間等の例もお挙げになったようでございますし、それから器具の貸与の問題もあったようでございますが、たとえば拘束時間一つを見ましても、通常六時間以上といえば、一日のうちのほとんどを拘束されておると私には考えられるし、郵政省が手当等を支給しているのは、大体四時間以上勤務した場合には一日分の手当を支給する、こういう規定もあるようですから、これも私は、いま直ちにすべてそのままとは申しませんが、その数から申しますと、たとえば八時間以上拘束されておる方々が千五百五十四名中の六百六十四名、六時間以上が四竹二十八名、六時間以上だけでも実に千名を超える、こういうような実態でございます。  ところで、いま局長の御答弁によりますと、含まれておるというようなお話でございました。概念として、含まれておるというと非常に少ない数のような気がするのですけれども、その含まれておると言われる数は、大体パーセントでどのぐらいのものになるということでしょうか。
  124. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先ほど申し上げましたように、事例調査でございますのでおのずから限度がございまして、五十人といういわば標本的な請負人をピックアップいたしまして調査をいたしました。その場合に、専業的な者あるいは兼業的な者、いろいろな形態によって分けましたので、その五十人のうち、たとえばそういう労働者性の方が何人いらっしゃったからといって、それで全体が何%というふうなわけにはまいりませんので、サンプルも非常に少ない。  それから、そういうやり方をしておりますので、これは一概に申し上げられないというふうに思うわけでございますけれども、ただ、大変極端な場合を申し上げますと、たとえば労働時間は、拘束時間が郵便局への到着後郵便局を出発するまで九時間三十分もある、それから制服制帽も貸与されている、健康診断も年一回受診しているというような、正規の職員に準ずるような形の方も確かにありましたし、また、非常に極端に労働者性が薄いとでも申しますか、そういう例を挙げますと、配達時間が三時間三十分にすぎない、集配の途中化粧品のセールスも一緒にやるというようなこととか、家へ帰ってからは別に待機の必要もない、郵便局に行くのが月に二回、労務の代替制という点でも友人にやらせる、制服制帽は貸与されているけれども、自転車は自分の物を使用するとか、そういう方もある。非常にいろいろな形態があるというのが実情でございます。
  125. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いま私は、一つ勤務時間の事例を挙げまして、その数を申し上げたのです。したがって私は、大多数の方が該当するというふうには思いますけれども、それは悉皆調査ではございませんから、いま局長がおっしゃるとおりだと思います。そうしますと、先ほどのお言葉の中で、含まれておるというのは、これは数を示すものではなくて、実態として述べられたのだ、そういうふうに理解してようございますか。
  126. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いま先生の仰せのとおりでございまして、その割合がどのぐらいかというのは、この調査ではちょっと困難ではなかろうかと思います。
  127. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 ついでですからちょっとお伺いしておきたいのですが、基準法上の労働者であるということが直ちに労組法上の適法組合になるかどうか、これは疑問のあるところで、労働委員会認定を待たなければなりません。しかし、常識的に考えてこれは非常にうらはらなものだと思うのですが、労働行政を監督される労働省の立場で、こういう方々の組合が当然、常識的には労組法上の労働組合たり得るだろうということになりましょうか。
  128. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労組法上の労働組合であるかどうかということは、ただいま先生おっしゃいましたように、労働委員会に手続をとりまして、その審査が要るわけでございます。つまり労働組合法に定めます手続によって、いろいろな不当労働行為の審査とかなんとか、そういうようなことによる利益を受けようとする場合には、当然そういう審査が前提になるということでございます。  それから、労働組合法上の労働者の場合と基準法の上での労働者の場合とは必ずしも一致いたしません。たとえば失業者は、労働基準法上では労働者に該当しないけれども、労働組合法上では労働者であるというようなことはよく言われるとおりでございます。しかし、大ざっぱに申しまして、労働基準法適用を受ける労働者は、それは労組法上の労働者であるということは言える、こういうふうに思います。
  129. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 どうも明快な回答をいただきまして……。  郵政省、お見えになっておりますか。――では、郵政省に次にお伺いしたいのですけれども、この議論をいたしました際に、とりあえずの措置として郵政当局でも、われわれは賃金と考えておりますが、請負料の改定などを行って処遇の改善を図りたい、こういう御答弁を当時いただいた記憶がございます。その後、昭和四十九年度、五十年度でこの方々の処遇の改善がどの程度行われたのか、わかっておればちょっとお示し願いたいのですが……。
  130. 林乙也

    ○林説明員 お答えいたします。  まず、本年度でございますが、本年度におきます集配請負人の処遇改善につきましては、七月一日にその適用をさかのぼりまして基本料を二二%引き上げるということを基本にいたしまして、全体といたしましては平均二七・三%、特にその中で最高といいますか、最高クラスになりますと約三一%の引き上げというような形での請負料の改定を検討いたしておりまして、本年は本務者の平均のベースアップが約一四・五%程度というふうに聞いておりますが、それと比較いたしますとかなりの処遇の改善を図るように取り運び中でございます。  なお、昨年は九月一日にその適用を改定いたしまして、その改定率は約三五%でございました。一昨年は十月一日に改定いたしまして、改定率は約二三%というようなことで、ここ数年来、私どもといたしましては、請負料の改定につきまして特段の配慮をいたしてまいった所存でございます。
  131. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 郵政当局も非常に私は努力をされておると思いまして、努力を多といたします。ただ、いまお話を伺いますと、実施の時期が去年は十月ですか十一月ですか、ことしは七月ということですが、これは将来、やはり普通の一般労働者賃金改定と合わせて四月から実施、そういう方向で検討が願えますか。
  132. 林乙也

    ○林説明員 これは予算の関係もございまして、将来にわたっていつからというようにいま直ちにお答えできないわけでございますけれども、気持ちといたしましては、昨年十月一日をことし七月一日にいたしたわけでございますから、そういうようなことで努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  133. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それから、この前も申し上げたのですが、これは昭和二十八年の七月三十日、法律第九十四号で、いわゆる郵便物運送委託法の一部が改正されました。このときにこの制度ができたわけですが、この附帯決議に「本法施行に当り左の諸点を留意すること。一、これによつて事業の施設の改善、技術の向上及び能率の増進を期すること。二、郵便業務は国家専掌とする本旨にかんがみ、委託業務は漸次出来得る限り縮小すること。就中通常郵便物の取集、配達等を請負とすることは、特例の場合を除き避くべきこと。」以下ありますけれども、こういうような附帯決議が行われております。当然、国会の附帯決議でございますから、郵政当局も努力されておると思いますが、特に昨年の私の質問から一年半です。どういう努力がなされたか、具体的に一、二例を示してもらいたいと思います。
  134. 林乙也

    ○林説明員 ただいま集配請負人は、全国で約千五百五十名程度ございます。先生案内のように、昭和二十六、七年当時の定員法改正の問題を契機といたしまして、この集配請負人が多く設定されたわけでございます。  ただいま先生の御指摘になりましたような点につきまして、私どもといたしましては、まず何よりも請負料の面につきまして、それを改善することによって、その時勢時勢に応じました賃金あるいは諸般の物価等に見合うようなことで処遇を改善してまいりたいということを基本にいたしてまいったわけでございますが、ただいま御指摘の、国家専掌の業とすべしという点につきましては、昭和四十一、二年当時に約百名ばかりの請負直轄化と申しますか、国の直接運営する業務というようなことで改定いたしました。その後、その点につきましては、定員事情等もあるいは財政事情等もこれありまして、四十一、二年当時の官名程度の請負人の直轄化にとどまっておるということでございます。
  135. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これはたゆみなく努力を続けてもらいたいと思いますし、特に私が懸念するのは、今日の過疎化の現象の中で、この制度を悪用してさらに請負区をふやすというようなことがあっては絶対に許されないと思います。したがって、この解消に努むることはもとよりですが、改めて請負区をつくるというようなことはよもやお考えではなかろうと思いますが、どうでしょうか。
  136. 林乙也

    ○林説明員 若干の集配請負区の増減というのはございますが、これは現在、直配で行っておりますのを請負化するというような形での異動ではございませんで、郵便規則八十五条と申しますか、いわゆる僻陬の地におきまして、集配を実施いたしておらない地域が全国に若干ございますが、そういった地域に対する配達業務を開始する際に、とりあえずは請負という、請負区による方法によりまして集配を開始するということでの請負区の設定はいたしております。今後の請負の設定ということになりますと、こういった形で行われるものと考えております。
  137. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そうしますと、八十五条適用地については、これの集配をするためにとりあえずの措置として請負区をつくることはいままではあった。それ以外のところで改めてつくるというような考えはない、こう理解していいですか。
  138. 林乙也

    ○林説明員 現在のところ、地方におきましてそういった計画はございません。
  139. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いま大臣並びに労働省基準局長さんのお話もございまして、われわれが主張してまいりましたように、やはり集配請負人の中に、私は相当すると思いますが、基準法上の労働者認定されるべき者、認定という言葉は妥当でないとおっしゃいましたが、そういうものがあると、そういうお話でございます。これが基準法上の労働者ということになれば、どういう点が大体いまと変わってくるわけでございますか。これは人事局関係ですか、具体的に……。
  140. 林乙也

    ○林説明員 一概にはなかなか申せないかとは思いますが、何よりもまず勤務関係でございます。休日、休暇の関係あるいは週休の関係、これあたりからまずはっきりと変わってまいろうかと思います。それから身分保障の問題、それから退職等に伴うところの退職手当等の問題。そういった何よりもまず勤務関係の問題について変わってこようかというふうに考えております。
  141. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私が先ほど労組法上の適法な組合として認められるだろうかという質問をしたのはそこにあったのですが、そうなれば当然、それら労働条件については、該当する労働組合等との問に十分な話し合いが行われて決定をされなければならないというふうに理解をいたします。  そこで最後になりますが、先ほど労働大臣の見解が示されたわけですから、これに従ってひとつこれからの該当する方々の労働条件等の問題につきましては、関係の労働組合その他と十分検討を重ねて、一日も早くこの集配請負人の方々が安んじて郵便の業務に労働することができるようた措置を郵政当局にもお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  142. 魚津茂晴

    ○魚津説明員 お答えいたします。  先ほど来の労働省の御答弁で、現在の郵便集配請負人の中で、一律には言えないけれども、常勤職員と同じような実態を持っていて、その意味では基準法上の労働者とみなすべき人がいるのじゃないかというお話でございますが、私たちといたしましては、この労働省の御答弁につきまして後刻詳細そのお考えを承りまして、基本的にどう対処していくかということを決めてまいりたいと思います。  特に先生御指摘の労働基準法上の労働者ということになったことに伴う必要な労働条件等の問題につきましては、その内容に応じまして、それにふさわしいやり方で関係の人たちと十分話し合って決めてまいりたい、かように思う次第でございます。
  143. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 労働省政府でございますし、郵政省も政府でございます。後刻検討という言葉は必ずしも私は満足じゃございません。しかし、この前も申し上げたように、行政のサイドでもいろいろな手続がございましょう。そういう意味でそのことは取り上げませんし、時間も来たようですから、ひとつ十分関係の向きと連絡をとりながら、私が質問をした趣旨を生かして対処していただくということをもう一度明確に答えていただいて、質問を終わりたいと思います。
  144. 魚津茂晴

    ○魚津説明員 お答えいたします。  要は先生のきょうお話しになった趣旨を十分体しまして、ふさわしい方法で解決を図ってまいりたい、かように存ずる次第でございます。
  145. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 終わります。
  146. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 田口君。
  147. 田口一男

    ○田口委員 何分時間が最後でしわが寄ってきましたので、簡単にやりたいと思います。  具体的な問題に入る前に、労働省その他で発表しております数字の持つ意味ですね、それについてまず傾向をひとつ確かめてみたいと思います。  労働投入量という言葉がありますね、雇用者数に労働時間を掛けたのが労働投入量と言うそうでございますけれども、その傾向なんかを見てまいりますと、わが国の雇用調整の方法が、従来からよく言われておりますように、景気が悪くなる、そうなるとまず第一に所定外労働時間を削減する。それでもなおかつ不況に対応できないということになれば、その企業が抱えておる臨時雇い、それから日雇い労働者の削減、まあ首を切る。それでもなおかつ対応できないということになれは、三番目の措置としては所定内の労働時間を短縮していく。そしてなおかつそれで不十分であれば、いよいよ本工、本社員の削減、首を切っていく。こういうことがよく言われておるのですけれども、いまも申しましたように、労働省なり経済企画庁から出しておりますいろいろな数字を、分析するところまではいってないのですが、見てみますと、とりわけわが国とアメリカ、西ドイツ、この三国のいまの関係の数字を見た場合に、こういった数字が出ておるのです。これは四十八年十一月から本年の六月までの数字をとらえておるのですけれども、まず一本の場合に生産の減少幅が、製造業をとってまいりました場合には、この期間一七・三%落ち込んでおる。そして労働の投入量そのものが一二・九%落ち込んでおる。この生産の減少の幅と投入量の幅が四・四%。ところがアメリカの場合には、同じ期間で生産の減少幅が一五・八、労働投入量が一三・六、この関連数字が二・二%の幅しかない。まあ短いわけですね。さらに西ドイツの場合には、とらえた時点が六月が三月になっておりますけれども、生産の減少幅が九・五で労働投入量も同じく九・五というふうに幅が全くない。こういう数字があるわけであります。  そこのところからまず言えることは、さらにこの労働投入並、時間と雇用者の減少の幅を、中身を調べてみますと、わが日本の場合には、四十八年十一月から本年の六月までの期間中の落ち込みの幅が、雇用者の減少が六・五、労働時間の減少が六・八、むしろ暗闘の減少の方が多い。ところがアメリカの場合には、雇用者の減が一〇・九で時間の減少が三・〇、雇用者の方が多いわけですね。西ドイツでも同じような傾向で雇用者の減が六・三で時間の減少が三・五。  こういった数字がおたくの方から出された資料なんかからうかがえるのですが、大体そういう傾向と見ていいのかどうか。そのことをまず確かめたいと思います。
  148. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労働投入量をどういうふうに見るかというのは、それぞれ各国において、こまかい点を申し上げれば違うと思うのですけれども、いま先生がおっしゃいましたように、雇用調整をどういうふうなやり方でやるかということも、各国でそれぞれ慣行がございまして、御承知のようにアメリカあたりでは、先任権制度一般でございますから、シーニオリティシステムでございますから、まず年の若い者から解雇をする。それから労働契約に対する観念も非常に割り切った考え方でございますから解雇が先に出る。そういう意味で労働時間の減少よりは解雇が際立って出てくるという傾向があろうかと思います。わが国の場合は生涯雇用、年功序列賃金というような形でございますから、なるたけ雇用を維持するということでございまして、まず労働時間の短縮、特に時間外労働の税制というようなことから出てくる。そういうように各国それぞれの慣行なりあるいは労使のあり方というようなもので違うと思いますけれども、しかし、一般的に景気後退に従ってだんだんと労働力投入量が減少していくという点では、やはり軌を一にするものがあるのじゃなかろうかというふうに思います。
  149. 田口一男

    ○田口委員 私が確かめたいのは、確かにいま挙げたアメリカと西ドイツと比較をしていろいろ労働慣行、こういったもの、先任権制度、そういう違いは理解しますが、ただ言えることは、この十一月六日、物特委員会で蒲田副総理がごあいさつをされておるのですが、この中に「わが国とすると、外国に比して、企業の人件費負担というものがこういう際には非常に重くのしかかる。」こういった表現、前後はありますけれども、こういうごあいさつがあるわけであります。これでも示されておりますように、いま言った所定外を落とす、臨時日雇いを落とす、所定内を落とす、そして本工に入っていくという傾向がわが国の雇用調整の一つの特徴と見た場合に、いまの時点ではっきり言えば、副総理の言を待つまでもなく、結局客観的な、批評家的な言い方をすれば、いままでのわが国の労使慣行から言っても、過剰労働力というものを企業としては抱え込みながら、しかも、ことしなんか出ておりますように、新規採用を抑える、こういう状態が続いていくということを示しておると思うのです。新規採用を手控える、しかも過剰でありながらも容易に首が切れない、だから過剰労働も抱えている、こういう状態を、いまの三国比較の場合にも数字として如実に物語っておるのじゃないかと私は思います。  そうなってまいりますと、そういうところから私はいよいよ具体論に入るのですが、その数字から言われることで問題が三つほどあると思うのです。  第一に、所定外の労働時間を減らして、その次に日雇い、臨時雇いを前切る。そうなると、先ほど勘本委員からも御質問がありましたが、臨時雇い、日雇い労働者雇用対策、いわゆる失業対策、こういったものをいまの時点では労働省としてはもっと真剣にやる必要があるのじゃないか。  それから、さっき言いました六・八%の数字の中には臨時、日雇いが入っておるのかどうか。本工もひっくるめての六・八%という数字になるのか。ちょっと聞いたところでは二十数%の臨時、日雇いが首切られているということになっているのじゃないかと言われておるのですが、その実態の把握はどうなのか。いますぐ数字はむずかしいと思うのですが、そういったものの把握の上に立って失業対策、求人対策というものをまずどういうふうに講じておるのか、そこをひとつお答えいただきたいと思います。
  150. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 午前中からお話しございましたように、最近のこういった厳しい情勢の中で雇用情勢は底ばい状態といいますか、そういった状態が続いております。そういうことで、一方では企業はいろいろな形で雇用調整を進めております。もちろんその中で雇用調整の一つとして、新規採用、中途採用の手控えというような事態がございます。そういうことから中高年にしわ寄せが起きる、あるいはパートとか臨時季節労働者にしわ寄せが起きる、こういう状態がことしの春以来ずっと続いておりますが、最近、三月を起点にいたしまして鉱工業生産も少しずつ上向いてきております。それを受けて当然、雇用情勢も好転しなければならないわけでございますけれども、何しろその伸びが非常に緩やかでございまして、加えてこの雇用へのはね返りというのは相当のタイムラグがありまして、半年ぐらいのタイムラグを見ざるを得ません。必ずしも雇用の面ではそういった好転がまだ期待できないような状態が続いております。しかし、その中でも新規求人倍率等につきましては、大体少しずつ明るい芽が出始めておるように見えております。  その中で、一般の求人の伸びは非常に渋い状態ではございますけれども、いま御指摘になりました、不況に際しまして雇用調整の一番先頭に立たされがちなパート、臨時、こういった面の求人がかなり上向いてきているというような点も見受けられておりますので、私どもは今回の総合的な景気対策の実施によりまして、雇用面で特に中高年とかあるいはパートとか重点的に考えなければならぬこういった階槽の人たち、あるいは日雇い労働者の就労確保、こういった面につきまして、この景気対策の実施に伴って求人の確保、就労対策を実施してまいるわけでございますが、当初は十二月ごろからという感じも持っておりましたけれども、やはり景気対策の実施が若干ずれ込んでおるというような関係あるいは補正予算の成立がおくれたといったようなことから、どうしてもこういった具体的な結果が出てまいりますのは年明け、一月以降になるのじゃないか、こういう感じを持っております。そういったことを踏まえながら、御指摘のような点について十分な努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  151. 田口一男

    ○田口委員 経済企画庁来ておりますね。
  152. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 来ております。
  153. 田口一男

    ○田口委員 いま局長がお答えになったことに関連をしてお尋ねをしたいのですが、さっきも住委員の方から少しお尋ねがあったようですけれども、第四次不況対策との関連でとらえた場合、第一次から第三次までで皆さんがおっしゃっておるように約一兆八千億の追加需要があったと言われておるんですね。それでもなおかつ雇用という面からいくと余り効果がなかった、余りというより全くなかったと言ってもいいのじゃないか。ところが今回第四次、あれを出された当時は、相当財界も歓迎をしておる傾向でありましたけれども、追加需要三兆円と見込まれておる今度の第四次不況対策そのものが、どれだけいま言った失業者を吸収するか、雇用量を増大させるのか、そういった数字の計算なんかはしておられると思うのですが、大体どういうふうに見ておるのか、そこを……。
  154. 額田毅也

    ○額田説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、第一次対策から第三次対策まで行われておるわけですが、確かに一次-三次の対策というのは、五十年度の上期に主として効果があらわれてきておるというふうに考えております。鉱工業生産指数の面におきましては、おかげさまで三月一〇四・七という鉱工業生産でございました。これは四十五年基準でございますが、これが九月は迷執ではございますが、一一二・八と数字は上がってきております。鉱工業生産ないし稼働率は上がっておりますが、御指摘のように雇用につきましては、現在、失業者数が高いわけでございまして、まだその明確な効果というものを見るに至っていないようでございます。  第四次の対策は、御承知のように景気回復力の弱いのを補強いたしまして、景気回復力を高めたいということでございます。年度内に四次対策で追加いたしました事業規模一兆六千億円を加えまして、約一兆八千億円程度の国民総生産に対する需要創出効果がある。それを前提にしまして特にそういう産業面について申し上げますと、鉱工業生産指数は上期に対して約六%、年率にいたしますと倍になりますから一二%強でございますが、六%程度上昇しておる、こういう前提を考えておるわけでございます。稼働率もまた御承知のように八月が八三・四という数字でございます。これは年度末には九〇近くまで回復することになろうかと思います。それに伴いまして雇用面で具体的にこの求人求職という関係がどのようになってくるか、これは非常に流動的な要素もまだございましてむずかしいわけでございますか、全体としての感触では私ども、本年度の下期平均で前年同期に比べ七%程度失業者数で回復するのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  155. 田口一男

    ○田口委員 いろいろな要素がございますから予測はむずかしいと思うのですが、ここでひとつ理屈として経済企画庁にお尋ねをしたいのですが、いまの問題に関連をして昭和四十八年のいわゆる経済白書、これは後で大臣の答弁をいただきたいと思いますが、このいただいた資料の、ページ数を見ますと一六三ページに、賃金の下方硬直性という見出しでこういったことを言っておるのです。専門ですから繰り返す必要もないと思うのですが、三十年代、四十年代と年代を分けてここで言っているのは、たとえば昭和四十年代には、失業率が〇・三ポイント低くなったら賃上げ率が八%上がる。ところが、四十五年-四十七年には失業率が〇・三上がったら賃上げ率が三%下がった。だから、賃上げ率と失業率との関係は、失業率が上がれば賃上げ率が下がるし、こちらが下がれば賃上げ率が上がるというあたりまえのことを言っておるのです。  そこで、経済企画庁として言わんとするところを私なりに推測をすれば、こういうことを言おうとしておるのじゃないかと思うのですが、そこを確かめたいのです。いままで四十八年にそういったことを言っておきながら、数字として示しておいて、完全雇用という問題を見た場合に、総需要抑制策をとったということは、言葉をかえて言うと、一時期完全雇用政策を放棄したというわけですね、狂乱物価なんかがありましたから。ああいった経験からずっといくと、労働大臣がいつもおっしゃっているように、失業ということは労働者にとって一番つらいことである、そういったことから、今後、完全雇用をそれこそ完全にやっていこうとするならば、いまの日本の賃金状態は、賃上げじゃなしに賃金の水準は下方硬直性を持っておるから企業としても大変に重荷になっておる。だから、皆さんが完全雇用をやってほしい、完全雇用政策を欲するならば、それを受け入れるに足る賃金水準でなければならぬということを四十八年のこの賃金下方硬直性のくだりの中で言おうとしておるのか、端的に言えば、そこのところをまず経済企画庁にお聞きしたいのです。完全雇用してほしければいまの賃金水準では高過ぎますよ、もう少し下げれば雇用量も増大するのですよとこの数字から見て言おうとしておるのか。  そこで、今度は大臣にお尋ねしたいのですが、もしそういう数字の示すのが事実とすれば、先ほどから同僚議員が何回となく雇用の問題で質問をしておりますように、国民の一番理想は完全雇用であり、しかも賃金はいままでの水準を維持し、毎年、毎年ある一定の上昇を見る、これが一番望ましいと思うのですが、こういった狂乱物価、不況とインフレが共存する今日の状態から見て、いまの日本の経済の体制の中では、完全雇用もやれ、賃金もいままでの上昇をやれということは幻想にすぎぬのじゃないか、こう言う人もあるんですね。そういう考えについて大臣、どういうお考えを持っているのか。まず経済企画庁のお考えと、それを受けての大臣のお答えをお聞きしたいと思います。
  156. 出井弘一

    ○出井説明員 先生御指摘のとおり、昭和四十八年度の経済白書におきまして、四十八年までの傾向を見ますと、四十年代に入りましてからは失業率の増減にかかわらず賃金が上昇したという事実はございます。しかし、わが国の場合を見ますと、イギリスのように失業率も高まり、賃金上昇も続くという国もございますが、わが国の場合は総需要の動向に非常に影響されやすいという傾向がございまして、現にいま、一昨年の石油ショック以来、総需要抑制によりまして景気が減速するとともに賃金の上昇率もかなり低下をいたしてきております。これによって見ますと、今後のわが国の賃金上昇率とそのときの景気の情勢ということでそれぞれに応じた率で動くということでございまして、今後とも物価の安定ということを踏まえまして、インフレ期待がなくなればそれに応じた賃金上昇率になるということで、完全雇用と物価の安定の両立した形で経済は安定的な形で成長していくというふうに考えておるわけでございます。
  157. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 賃金というのは、やはり労働力の需給関係が一番影響するのじゃないでしょうか。そういうことからしますと、高度経済成長時代はとにかく人が欲しいということからして、賃金が、生産性のときには内側ときには外側の時代もあったけれども伸びてきた。ところがいま、石油ショック以来、世界の経済というものはケインズの経済理論がつぶれてしまって新しいモデルが一つもない。やはりスタグフレーションプラスアルファ雇用不安、それをどう解決していくかというのがそれぞれの悩みだろうと私は思うのです。  先生が御説明されたアメリカの場合には失業者がいま八・二%、八百万、その中には十六歳から十九歳は五人に一人、日本の場合には若年労働者はそれほどあり得ない。そして成長率は世界がマイナス。  それで、せっかくの努力の中で私たちが一番心配したのは、昨年の春闘では消費者物価が二七%、これを受けて立って三二・九%の賃金、そうすると国の経済と勤労者並びにその家族、国民一般が、何といっても一番大事なことは物価の安定ということ、この物価安定に国民全体の良識を働かして、これがせんだっての賃金一二・一%、そしてそれが経済の安定なりということになってきたわけでして、物価の安定とそれから近代国家の目標は、やはり雇用の安定ですから、それを両面どうマッチさせるかというところに、新しいモデルに私たちがチャレンジしておるという姿が今日である。だから、今度のランブイエの会議でも、結局自分の国だけではだめだから、景気刺激というものを世界の連帯でどうするかという課題になってきておる。  ですから、国内といたしますと、いろいろなケースがありますけれども、終身雇用、ときには悪口言う者もあるけれども、二、三日前のNHKの夜の七百五十社の会社の終身雇用に対する考え方を見ますと、やはり七五%が終身雇用である。こういうようにお互いに連帯意識になっておる。そういう中にどう雇用の安定と物価の安定というものを図っていくか。幸いにして、物価の安定はよその国から見ればときには奇跡と言われたが、これをまた来年の三月末に九・九、その中には、国民の中には二五%の貯金、貯蓄率があるというような、いろいろの総合の中に物価の安定と雇用の安定確保を図っていく大事な時期だ。  ですから、こういうところの御議論というものを非常に傾聴しながら、その刺激によってまた足りないところは経済企画庁初め各省ともどもに相談をしながら、この二つの面にバランスをとっていく、それをひとつやっていく、こういう考え方であります。
  158. 田口一男

    ○田口委員 時間が迫ってきましたので、ただいま大臣それから経企庁からお答えなんですが、確かにかつて経験したことのない事態ですから、予測ということもむずかしいと思うのですけれども、それだけにこういう説もちらほら出てきておるのです。いままでの経験に立って言えば、インフレを抑えるために総需要抑制をやった、その総需要抑制が雇用の面にはね返って大変な問題になってきておる。となると完全雇用を――完全雇用といってもアメリカ、イギリス、西ドイツ、日本の場合には、分子、分母も国によって違いますからはっきりは言えぬと思うのですが、一般的に完全雇用をやる場合には、物価も安定をし、完全雇用もやりということは、あっちも立てこっちも立てということは、いままでの経験からちょっとむずかしいのではないか。だから、完全雇用の方に力点を置くとすれば、いまは物価を一けた台に抑えるという目標ですけれども、二けた台になってもある程度しようがないのじゃないかというふうな説もちらほらあるわけです。そうなると、これはまた違った面で物価問題で苦労しなければならぬ。  こういうことですから、これはお互いに英知を出し合ってこの事態を乗り切らなければならぬと思うのですが、その一つとして、さっき言った労働投入量の日本の現状から見て、これもある人の言い分なんですが、四十八年の十一月時点の稼働率まで高めれば、いま雇っておる労働者をふやさなくても、労働時間を延ばせば数字の上ではちょうどよくなるのじゃないかという見方もあるのです。労働時間を短縮してともかく切り抜けておるのだから、景気がよくなって稼働率が高まって時間を延長すればもとへ戻る。これは雇用の問題では何にもならぬのですから、前々から言われているように、この際は労働時間短縮、週休二日制という問題を、労働者のレジャーとかなんとかいう面ではなくて、雇用量を拡大するという面から私はもっと真剣に考えなければならぬのじゃないかという気がするわけです。  そういう点について、これは後でお答えをいただきたいのですが、時間がありませんから、こういった厳しい雇用問題の中での具体的な問題を三つほど取り上げて、関係行政当局からお答えをいただきたいと思います。  その第一は、厚生省、これは本来二十一日にでもやるべきことなんですけれども雇用の問題に関連して言いますと、そういうむずかしい失業がどんどん続出しておる。労働者は安易に首を切られませんから解雇反対闘争をやる。そこで健康保険適用問題があるわけですね。昭和二十五年に保険局長通達というのが出されておるのですが、一方的に事業主の方からおまえさんはもう首だ、この事業所を閉鎖しますと言えば、その日から政管健保にしろ何にしろ被保険者じゃなくなってしまう、こういう現実なんです。この昭和二十五年の通達第六十八号を見ますと、そのときは被保険者の資格がなくても、中労委やその他の裁判なんかで身分が回復すれば、さかのぼって被保険者の資格を与えますよ、こういう通達なんです。それが果たして今日のこういった雇用不安のある、いろいろな問題が激発をしておる時期にふさわしい健康保険の資格云々ということになるのかどうか。  この辺について、私は先に一方的に質問の第一としてやりますけれども、少なくとも係争中といいますか、解雇反対闘争を続けて一応の決着がつくまでは、健康保険の資格は認めるべきじゃないか、こう思うのです。そういったことでいろいろと関係する労働者の諸君などから私に相談があるのですが、それに関連して調べてみますと、いまだ今日に至るまで古くさい厚生省保険局の通達が出ておるのです。たとえば、いま雇用の調整をするために休職発令をしておる会社が多いんですね。三年間休職だ、そのかわり月給やりませんよ、三年たったらもうやめてもらう、こういった休職者についても休職発令の際に健保の資格がなくなってしまう。なぜかと調べてみますと、これは私の間違いかどうか確かめたいのですが、いまから四十四年前の昭和六年二月四日の保発第五十九号で、休職発令をし給料の支給がなければ健保の資格は喪失したものとみなす、こういう通達が今日も生きておるのかどうか。それから昭和十年十一月に、これも四十年前ですが、関連して言いますと、いま自動車がこういう事情ですね。事故をちょいちょいやります。公安委員会処分で運転停止三十日とか五十日とかちょいちょい食らいます。そうすると、自動車運転手がそこで働いておって運転免許の停止三十日以上食った場合には、当然に企業は運転手の職種として雇っておるのですから賃金を払いません。そうすると健康保険の被保険者の資格を喪失させるのが望ましい、こういった通達が四十年たった今日でも健保については生きておるのかどうか。生きておるとすれば、はなはだ浦島太郎みたいで、いまの時代から見れば通達もびっくりするのではないかと思うのです。さっき言った解雇反対闘争係争中の健保資格等に絡んで、いま言った昭和六年の通達、昭和十年の通達なんかはいまの時世にふさわしくない。しかも雇用状態がこういう緊迫した状態ではふさわしくないと思うのですが、その辺改善する気持ちがないのかどうか、まず厚生省から……。
  159. 山縣習作

    ○山縣政府委員 お答え申し上げます。  先生最初に御質問になりましたのは、解雇につき係争中の労働者につきましての健康保険の被保険再資格の問題でございます。この点につきましては、健康保険の被保険者の資格は、適用事業所におきます事業主と被用者との間の実質的な雇用関係の存続を基本として私ども取り扱っておるところでございますし、また、被保険者資格の得喪と申しますか、資格の取得、喪失、これは事業主の届け出を待って処理されておるところでございます。したがいまして、事業主から解雇を事由とする所定の資格喪失層が提出されたというような場合におきましては、その解雇の処分につきまして労使間に争いがある場合におきましても、その処分が明白に法令に違反しておる、あるいは明らかであると判断されるような場合を除きまして、当該被用者の被保険者資格を喪失する処分を従来から行ってきておるところでございます。しかしながら、その解雇処分につきまして、その解雇を無効とする労働委員会決定や裁判所の確定判決があった場合には、それに基づきまして資格を復活することといたしておりますし、また、雇用関係の存続につきまして裁判所の仮処分があった場合には、その仮処分に基づきましてその時点において被保険者資格を付与する。したがいまして、その問におきまして事故が発生いたしました場合におきましては、療養費あるいは傷病手当金の支給等さかのぼって措置をするということで処理しておるところでございます。御承知のとおり、このような手続を実施いたしておりますのは、保険者であります者が解雇の無効を認定するというわけにはなかなかまいらないわけでございまして、何らかの客観的な基準に基づきましてやるとなると、いま申し上げましたような措置が適当だろうということで実施しておるところでございます。  次に、一般的な休業等の取り扱いでございますが、先ほど申し上げましたように、実質的な雇用関係の存続を基礎として認定いたします関係におきまして、休職中の者でありましても実質的な雇用関係が継続しておりますれば、当然被保険者の資格を継続するわけでございます。その認定といたしましては、その期間賃金あるいはそれにかわる休業手当等が支給されておるというのが一般的な判断の基礎になろうかと思います。しかしながら、このことのみで私ども判断をいたしておりませんで、休業手当等が支払われないという場合におきましても、労働協約あるいは就業規則等によりまして、復職が保障されておるというような場合におきましては、資格の継続を認めるということで、従来からさような措置をしておるところでございます。  なお、最後に申されました自動車運転手の例でございますが、これは御承知のとおり確かに戦前の通知でございまして、戦前の雇用関係が明白でない場合におきましては、かような取り扱いもなされたのではなかろうかと思いますが、現在、通常の場合におきましては、免許の停止というような場合におきましても、いわゆる内勤と申しますか、事務あるいは自動車整備等に従事させておるというのが実態でございまして、そういうような現状雇用関係におきましては、当然、被保険者資格は継続をする、かように取り扱っておるところであります。
  160. 田口一男

    ○田口委員 もう予鈴が鳴りましたからこれで終わりますが、いまの厚生省の見解、係争中の問題について言えば、仮処分の何らかが出た場合、解決した場合には、さかのぼってということでしょう。しかし、その間が問題だと言うんですね。しかも聞いてみると、国民健康保険があるじゃないですかということもある。ところが、自治省にも一緒に言いますから簡単に答えてほしいのですが、たとえば荷を切られて健保の資格がない。そんなものを待っておってもしようがないから国民健康保険に入る。そうすると国民健康保険料保険税は前年度の所得に対してかかるのですからごっそり取られるんですね。これは解雇じゃありませんけれども、定年退職の場合でもやめて退職金をもらう、国民健康保険へ入る。第一年次はもう保険税が大変なものです。退職金もらったからいいじゃないかと言うけれども、退職金はほかの方から取られる、子供に。こういったケースもあるのですから、退職者医療の問題もありますけれども、それができるまでの問は何らかの減免という措置が国民健康保険料保険税で考えられないのか。  同じことが地方税でも言えるんですね。解雇された、ところが翌年の市民税、県民税はこれまたがぽっとかかる、保険料もがぽっとかかる、こういう実態があるのですから、いまのこういう御時世の中で、やはり特例として減免または延べ払いを認める、こういう措置がとられないのか。いま言った健保の係争中の問題云々については、これはもっと真剣に考えてもらいたい。これに対するお答えをいただいて、質問を終わります。
  161. 中野徹雄

    ○中野政府委員 先生仰せのとおりに、従前、健康保険等に加入しております者は、退職しました際に前年度所得に対してその国保税を賦課するというたてまえから、御指摘のようないわば所得が減った段階で高い保険料が取られるという問題があることは事実でございます。また、これはしばしば指摘されている点でございます。ただ、国民健康保険の場合におきましては、先生案内のとおりに、国保独自の所得の把握というようなこともなかなかむずかしい面がございまして、結局、市町村民税の税の賦課方式にいわば連動するという形で、国保税の仕組みを少なくともその応能割りの部分につきましては採用せざるを得ないというのが、いわば仕組みの上の実態でございます。ただ、先生のおっしゃいますような問題、確かにいろいろ指摘もされておりまして、そのような観点から四十三年に退職手当関係を積算の中から除くとか、あるいはまた一方では国保税の全体額の頭打ちの制度を設けまして、そのようないわばアンバランスを是正するという形で今日まできておるわけでございます。しかし、やはり先生仰せのような問題もございますので、たとえば健康保険制度におきますところの任意継続制度の活用とか、あるいはいま話題になっております退職後の医療の確保の問題等に検討を加えまして、できる限りの努力を、問題の軽減解決の努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次筋でございます。
  162. 栗田幸雄

    栗田説明員 住民税につきまして、前年課税のために、退職いたしました年に前年の所得を課税標準にいたしますので、税金が重いといったようなことで減免の措置がとられないかどうかという御質問でございますが、一般的な問題じゃなくて、個々のケース・バイ・ケースでその人に担税力がないという場合には、減免の措置を条例でとることができます。それからまた、資金画の都合がつかないという場合には、徴収猶予という制度もございますので、そういったようなものを活用していくということで今後指導していきたい、このように考えております。
  163. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 この際、午後二時三十分まで休憩いたします。     午後一時五十六分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十一分開議
  164. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中美智子君。
  165. 田中美智子

    田中(美)委員 最近、不況を理由にして婦人労働者の首を切っていくということがあちこちで次次と起きているようです。  それで、まず住友セメントの問題についてちょっと……。御存じだと思います。一応お話ししておきましたから御存じだと思いますけれども、住友セメントでは不況だということで千二百名の希望退職者を募って、全従業員に対して、わら半紙一枚に「希望退職募集基準」という書いたものを文書で渡しているわけです。その基準の中には六つ基準が示されているわけですね。農業をやっている者、商業をやっている者、病弱者、それから――大臣よく聞いていてください。四番目に有夫の婦、というのは夫のある婦人ということです。それから高齢者、他に収入源のある者、こういう基準を出して千二百名の希望退職を募っているわけです。いま私が話したいのは、これが住友セメントの基本的な行き方ですね。その中で私がいまちょっと例にとりますのは、これは新聞にも報道されておりましたが、栃木工場で二百十四名の希望退職者を出しているわけです。その中で女子が十九名。この十九名の女子はやめていったわけですけれども、一応希望退職に応じたわけですね。そこにはいろいろの経過があったようですけれども、それをちょっと飛ばしていきまして、四名がどうしてもやめたくない。希望退職ということですから、やめたくないということでやめなかったわけですね。そうしましたら、ちょうどこれはマックスの場合と非常によく似ているわけですけれども、配置転換が行われまして、どういうわけでしょうか、婦人の場合にはいつも配置転換というと便所掃除に行かされるわけですね。こういう状態が起きているということを御存じでしょうか。
  166. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 いま直接御指摘の事例については、私はいまここで初めて聞いたわけであります。あるいは先生がうちの役所の者に事前に何か調査でも申し込んであれば調査したものがあるかもしれませんけれども、この事態は直接には存じません。
  167. 田中美智子

    田中(美)委員 この六つの基準について大臣はどのようにお考えになるでしょうか。
  168. 森山直弓

    ○森山(真)政府委員 先生御指摘の事例につきましては、詳細についてはまだ私どもの方で十分把握いたしておりませんけれども一般的に申しまして、女子であるということだけを理由にして配転あるいは退職というようなことの基準にすることは好ましくないというふうに考えております。
  169. 田中美智子

    田中(美)委員 好ましくないということはもうわかり切ってることだと思います。もちろん大臣も、好ましくないということは御存じだと思うのですね。それについて労働省はどのように御指導していただけるでしょうか。これは文書にして労働者に配っているわけですね。「有夫の婦」と、こういうふうに書いているわけですから、夫のある婦人というのはもうやめてもらうと、こういうことですね。
  170. 森山直弓

    ○森山(真)政府委員 さらに事実を詳細に調査いたしまして、必要がございましたらば適当な措置をとりたいというふうに考えております。
  171. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは大臣、これについては調査をしまして、どのような指導をしたかということを私の方に報告していただけますでしょうか。調査はどれぐらいの日にちがかかって、いつごろまでに御報告していただけますでしょうか。この名前を一応言っておきますが、鈴木由紀子さんという方と、野辺嘉美さんという方と、松本幸子さんという方が、特に業務命令に従わないということでいやがらせをされているわけですね。その配転先というのは、便所掃除をさせたり草むしりをさせたり、机は全部取ってしまって、何か倉庫みたいなところに入れたりと、まあ言い出すと切りがないようないろいろないやがらせをしているということですね。それに対していつごろ調査ができ、いつごろどのような指導ができるか、いつごろ私に報告ができるか。
  172. 森山直弓

    ○森山(真)政府委員 事実を詳細調査してみませんと正確な日数は申し上げられませんけれども、できるだけ速やかに先生に御報告申し上げるようにいたしたいと存じます。
  173. 田中美智子

    田中(美)委員 速やかというのは大体どれくらいでしょうか。
  174. 森山直弓

    ○森山(真)政府委員 事態の複雑さ、その他詳細について調べてみませんと、時間がどれくらいかかるかということはいまお約束いたしかねますけれども、いままでの経験から申しまして十日あるいは二週間程度で大体調査ができるものと考えております。
  175. 田中美智子

    田中(美)委員 早速調査しまして、もとのところにきちっと返し、もとどおりの仕事が続けられるように御指導していただきたいというふうに思います。これは当然の要求だと思いますが、大臣いかがでしょうか。
  176. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 まあ、前後の事情をよく調べた上で、局長も熱心でございますから、いろいろ考えております。
  177. 田中美智子

    田中(美)委員 こういう事例は探すだけでなくて、もう次々と出ているわけですけれども、もう一つの事例を申し上げたいと思うのです。  これは、住友セメントにしても天下の大企業と言われた大企業であるし、雪印乳業などは、まあ赤ちゃんまでが知っている天下の大企業です。この資本金百億円の大企業が、不況という理由によっていま臨時工を約九カ月にわたって次々と首を切っているということが出ているわけです。これを労働省がそのまま、いままで指導せずに来ているということ自体、私としては非常に不思議に思うわけです。小さな企業の中であったことが労働省の耳に入らないということならばまだしも、天下の雪印が六十人の主婦ばかりの臨時工を次々と首を切っているという事態が起きています。これはことしの三月から始めているわけですけれども、一遍に六十人を全部切っていかないわけですね。まず最初に八人の首を切ったわけです。その理由というのは、ある日突然、期限が切れたから一カ月後にやめてほしいと、こういう通知があったわけですね。このことも一応調べておいてほしいということはそちらの方に申し入れてありましたけれども、日にちがないということもあったかもしれませんのでどこまで御存じかわかりませんが、一応そういうことがあったわけです。そうして、この最初の八人のうち四人は結局やめたわけですけれども、後の四人のお名前は、井水伊津子さんという方と、柴田あや子さん、田井八重子さん、後藤一子さん、この四人です。この四人は全部夫があり子供がある方です。この四人は早速、不当ではないかということで、組合をつくりまして、現在も会社と交渉をしているわけですね。もう二百何十日という間、会社と交渉して、不当な首切りではないかという形でいま闘っているわけです。その間にも次々と五人、七人、十一人というふうにして、この六十人を十一月の末日までに全部なくしてしまうという方針で首を切っているわけですね。で、この切り方は、今度その次に切る人たちには、この四人の組合の中には入ってはいけないという一札を取って首を切っているわけですね。これに入りませんという一札を書けば、これに対して一時金をプラスしているわけです、退職金のほかに。その四人の組合に入らないという誓約書を書けばお金をやるというふうな、こういう人道的に考えても全くひどいやり方でほかの人たちの首を次々と切っていく。まさに脅迫的にして首を切っていっているわけです。こういう状態が起きておりますので、現在、男子の労働者の間にも、余りにもひどいのではないかというようなことで協力する人たちもふえてきているし、また地域の人たちが、もう何百人もの支援団体というのができまして、母ちゃんがんばれという形で――みんなこの方たちは中年なんですね。母ちゃんがんばれという形で、これはいま非常に大きくなっていっています。この方たちの年齢というのは三十代の末から五十代にひっかかるという年齢の方たちです。  解雇の理由なんですけれども、期限が切れたという一通の通知だけで来たわけですけれども、もともと臨時工ですけれども契約を更新して、ずうっと三年、五年と働いてきているわけです。一週間とか一カ月前にちょっと臨時雇いで入ったというのとは違うわけですね。三年、五年とずっときているわけです。そうすればこの次も雇われるであろうという期待権というものもあると思います。いままで裁判などでも判例は出ているわけですね、臨時工であっても。そういう人に対して理由がはっきりしないということで聞きますと、ある課長は、中年だから、中年がごろごろしていると若い人たちが伸び伸びと働けないと、これはもうだれが考えても理由にならない理由を課長が言っている。工場長に聞いてみると、これは期限が切れたんだから仕方がないんだ、こういうふうに言う。それからある課長に言いますと、仕事が変わったために人が余ったんだ、人手が余ってきたから仕方がないんだと、こういうふうに、同じ会社で働いているところの課長、工場長、みんな違うことを言っているわけです。一貫した正しい首切りの理由というのがないわけですね。この状態をぜひ労働省に知っていただくと同時に、至急調査をしていただきたいわけですけれども、この事実が本当であるならば大臣はどのように思われますか。
  178. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 昨日、先生の方からお話がございましたので、とりあえず私どもでわかる限りで調べましたので、まずその御報告をさせていただきたいと思いますが、大体は先生いま言われたようなことですけれども、若干食い違いがございます。雪印乳業東京工場、北区赤羽にございまして、男三百八十七人、女子七十人という程度の工場でございます。それで、四十九年の四月一日から五十年三月三十一日という有期の契約で臨時工のダンボールの労働者、中年婦人二十名弱を雇っております。包装の簡便化に伴いまして臨時工を契約満了時に解雇するということで、十二名解雇をいたしたわけでございます。これは予告を二月の二十八日にしておりまして、規定の退職金にプラス三万円を加えてやっておるようなわけでございます。先ほど、こういう臨時工でも何回かそれが更新されれば通常の労働者と同じ扱いを受けるのじゃないかというお話がございましたが、そのとおりでございまして、したがいまして、恐らく会社は予告手当が必要だということでこういう措置をしたんだろうと私は考えるわけでございます。それから総評系の労働組合から申し入れがありまして、そうは言っても生活が困る人については引き続いて雇用してほしい一解雇する十二名についても会社をあっせんするというようなことをやるというような話し合いで、結局八名は円満に退社をする。しかし残りの四名がどうしても雪印で働きたいということで、会社、組合も非常に困った事情にあったということを私どもとしては承知をいたしておるわけでございます。  そこで、ただいまのお話でございますが、一般的には、労働判例の積み重ねで、権利乱用ということは大変厳しく最近の裁判例でも言われておるわけでございまして、また単に女子であるということを理由として解雇するというようなことは、憲法あるいは労働基準法の精神からも適当でないということは、いま婦人少年局長からもお答えしたとおりでございます。ただ不況下におきまして企業がやむを得ず人員整理をする場合であっても、したがいまして私どもとしてはできるだけ労使で納得のいくまで話し合いをしていただくということが一番適当であるというふうに思います。しかし、基準法に触れるというようなことであれば、これはもう私どもとしては厳重に監督指導していきたいと思いますけれども、あくまでも労使で十分話し合っていただくというのが原則ではないかというふうに思うわけでございます。
  179. 田中美智子

    田中(美)委員 労使で話し合うと言っても、いまあなたのおっしゃったことは、会社が困っている、こういう御報告をなさいましたけれども、首を切られた労働者が困っているということは全然おわかりにならないわけですか。
  180. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 私どもの出先からの報告によりますと、組合も会社も双方が非常に困って、組合も手を引いたというような報告が入っておるわけでございます。しかしなおその四名の方はどうしても雪印で働きたいということで主張なさっておるという報告を受けておるわけでございます。
  181. 田中美智子

    田中(美)委員 よく大臣は、首を切るときに、いままでいろいろお話し合いの中で、夫が病気で困っているとか母子家庭だとか、そういう人たちは考慮するというようなことをいろいろ言っていますよね。しかしこういう人たち一つ一つ見てみますと、夫が病弱であったり入院していたり――そういうことがなくても労働権というのがあるわけですからね。これはお調べになりましたか。いまあなたは会社の言い分を聞いてこられただけであって、調べたというお言葉を使いましたけれども、調べたということは、労働省がちゃんとした中立の立場に立って、会社の方が切ることが妥当であるのか、労働者が切られて当然なのか、それともそうでないのかということを調べることが調べたということじゃないですか。いまおっしゃったのは会社の言い分を聞いてきただけじゃないですか。あなたは、労働省というのは会社の下請機関ですか。私は何も会社の言うことを聞いてくださいときのう申し上げていませんよ。正しい立場でそれを判断をしてほしいと、こう言ったわけです。あなたの判断を聞きたいわけです。大臣の判断を聞きたい。労働省判断を聞きたいのです。会社の判断、会社の言い分を聞いてきてくださいなんて私はあなたに頼んだ覚えもないし、労働省が雪印乳業のメッセンジャーボーイだと私は思っていませんので、そういう点で伺っているわけです。大臣、いかがでしょうか。いまの調査、いまおっしゃったことは大臣どう思いますか。
  182. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 きのうのきょうでございましたので、とりあえず情報を申し上げたわけでございまして、なお必要があれば詳細に調査をしなければならぬと思いますけれども、本件については労働者側から労働基準監督署に申告がなされたということはまだないわけでございます。したがいまして会社側の情報ということになりましょうが、しかし、いま私どもとしては、これだけの調査でこの件について是非を判断するということはいささかまだ早いかと思いますけれども、ただ、先ほども申し上げましたように、有期の労働者であるということであれば、期間が満了して当然退職をするわけであります。にもかかわらず、それが連続して更新されるようなときには、先生おっしゃいますように期待権という問題が生じてまいります。そうすれば、それは解雇予告手当というものを必要とします。そういう所定の手続はとっておるようでございますから、直接基準法に触れるという問題は、現在の承知している限りではどうもまだないんじゃないかと思います。それ以上、事が適当であるかどうかということはまた別問題でございますが、なお十分調査させていただきたいと思います。
  183. 田中美智子

    田中(美)委員 いまのあなたのおっしゃったことはメッセンジャーボーイであって、雪印乳業のメッセンジャーボーイをしたにすぎない。いささか早いと御自分もお認めになっていらっしゃるのでね。会社側としてはちゃんと契約をしていると、こうおっしゃいますけれども、私どもの方ではそのようには聞いておりませんので。調査というのは両方の言い分を聞いていただかなければ、両方の言い分を聞いて、確かな証拠でもって、期待権があるかどうかというものを見ていただかなければならないというふうに思うわけです。課長が、中年だから、若い人が伸び伸びと働けないなどと言っていることを、これは確かにあったかどうかということ、これをちゃんと調査していただきたいと思います。課長の名前も全部わかっているわけですからね。調べていただきたい。これはぜひ調べて返事をしていただきたい、こういうことを言ったかどうかですね。これがもし言っているとすれば、こういう理由は解雇の理由にはなりません。いまあなたがおっしゃったように、期限が切れたんだから首切るんだというなら、一貫してこういう契約をして、この日が来たんだからこの日だということなら、一カ月前に通知をするもくそもないわけでしょう、そんなことは。あなたがおっしゃるようなことはちゃんと決まっているわけでしょう。決まっていないから一カ月前に予告をしているわけでしょう。ということはそこにまだまだ、臨時だけれども契約されていくという期待があったわけです。きのうNHKのテレビでも夜やっておりました。女子大生と就職の問題です。女子学生の就職を考える会というのが、ある出版会社に勤めている婦人労働者が十年間というものずっと臨時で、アルバイトということで勤められているということを言っておりました。このように、婦人は本工と同じように働いていながら、中では同じように扱っていながら賃金を変えている。仕事は同じようにさせておきながら賃金を変えている。臨時工、アルバイトという名前で、そして首切るときには簡単に、いまあなたがおっしゃったのと同じようなことを企業が言っていると思うわけです。ですからこれを早急に調べて、先ほどの件とともに私の方に報告をしていただきたいと思います。特に、中年だから、若い人が伸び伸びと働けないと言った課長をはっきりと労働省の方でも調べていただきたい。私の方では全部わかっておりますので調べていただきたい。大臣、よろしいでしょうか。
  184. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いまこういう御発言でございますから、私どもとしてはもう一度十分調査をいたしたいと思います。ただ、問題があれば労働者の方からも労働基準監督署に申告をなさっていただければ、私どもとしてはいつでも活動いたしておるわけでありますから、どうぞさようにお願いしたいと思います。
  185. 田中美智子

    田中(美)委員 それから、いまのは一つの事例として私は出したのですけれども、こういう書類を手に入れたわけです。これは「雇用調整に当たっての留意事項」というもので日経連が出しているわけです。これを全部読みますとちょっと時間がかかりますので要約していきますけれども、「人員整理については」というので、ずっとこういうふうに書いてあるわけですね。その中に「一旦、意志統一がなされたなら、勇敢に実行することが必要である。」首を切ることを勇敢に実行するとか、「一時帰休制の目的」では「人員整理によらずに従業員に危機感を与え」ておく方がいいということが書いてある。そして、人員整理の「事例」として、イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チまで書いてある。これにはまず最初に「満五十才以上の男子」と書いてあるわけです。定年延長をするとかなんとかということを大臣もいつか言っていらっしゃったし、そういうふうに国民に期待を与えているわけです。そういうときに日経連がこういう指示をしている。満五十歳以上の男子、ここから首を切っていく。それから「満三十才以上の女子」これから百を切っていく。その次には「有夫の女子」と書いてあるわけです。全部読みますとあれですけれども、もう一つには「心身に故障のある者および病弱者」と書いてあるのです。大臣はこの問も、随害者は一・三%、一・六%、二・〇%にしようかというふうな、期待を国民に持たせるように障害者の職場を開拓すると言っているわけです。そういうときに堂々と日経連がこういうふうに、障害者を切っていくのだ、三十歳以上の女は切るのだ、夫のある女は切るのだ、五十歳以上の男は切るのだ、こういうことを事例でもって書いている。最初のは心構えとかいろいろなことを言っているわけです。それから気をつけるべき事項だとか、トラブルがなるたけ起きないように、こういう闘争に巻き込まれないようにというようなことが書いてある。「事例」としてこんなに鮮やかに書いてあるのを見ますと、これはことしの三月に出されたものですから、この資料を労働省が御存じないはずはないと思うのですけれども、御存じでしょうか。
  186. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 私の方は日経連のメッセンジャーボーイでありませんから、知りません。
  187. 田中美智子

    田中(美)委員 知らないということは、いま労働省が知る努力をすべきじゃないですか。私は何もあなたをメッセンジャーボーイにして、日経連に行って聞いてこい、こんなふうには言っていません。しかし、日経連がどういう姿勢労働者の首を切っていくか、労働者をどのようにして働かせているかというのを調べるのがあなたの責任じゃないですか。知るのはあなたの努力じゃないですか。私はあなたを私のメッセンジャーボーイにしようとはしていません。そんなふうには思っていませんよ。大臣はそれを知っていただけると思っているのです。私ごとき一国会議員が日経連のこういうものを知っているのに、日本国の労働大臣が知らないというのはおかしいじゃないか言っているのです。どうでしょうか。
  188. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 残念ながら知りません。
  189. 田中美智子

    田中(美)委員 私は非常に怠慢だと思うのですね。ぜひこれを調査し、日経連に対して強い指導をしていただきたいと思うわけです。これに沿ったやり方がなされているんじゃないかというのがこれなんです。「有夫の女子」だとか、「生活に支障のない者」というのがあります。住友セメントで出ているこういうものがこれに沿ってやられているのではないかというふうに思える事例が次々と出てきているわけです。まだたくさんありますので、あとまだ石母田議員が事例を出されると思いますけれども、一応この事例と日経連のこれが符合する。こういうやり方でやったのでは、男子も定年制なんというものには期待は持てないし、三十歳定年制はなくなるとか結婚退職制はもうなくなるのだといったって、どんどんやられているわけですね。国際婦人年だからということじゃないですよ。こういう日経連のけしからぬ行き方に対して、大臣がもっと強い労働大臣になってほしいということを要求しているわけです。メッセンジャーボーイにしようなどとは思わないし、なってもらっては大変です。もっと強い大臣になって、こういうものをきちんと指導してもらいたいと思っています。いかがでございましょうか。
  190. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 その書類をひとつそのうちにコピーでも見せてください。さっき労働省局長が答えれば、企業から調査すればすぐそれがメッセンジャーボーイじゃないかというふうなお話もありますから、私は思わず、それを存じ上げておりませんから、日経連がやったことについて一々私は知っていないという意味でメッセンジャーボーイでない、こう申し上げたのです。そういう事例がありましたら、私どもの方も参考にして、是正すべきものは是正するように私の方の所管としてやりたいと思います。
  191. 田中美智子

    田中(美)委員 その点、ぜひよろしくお願いします。私が何か言うとすぐメッセンジャーボーイという言葉はちょっと気にかかりますが、何か言うことではなくて、いまおっしゃったように会社と労働組合が困っています。そこだけ聞いているのです。本人に聞いていないわけでしょう。それではメッセンジャーボーイではないかと言っているわけです。時間がありませんので、次にいきたいと思います。  いま非常に大きく社会問題になっておりますが、女子大学生の雇用というのが非常に狭められておりますけれども、その中で、きょうは四年制の女子大学の点についてだけちょっとお伺いしたいと思うのです。  これはきのうの夜のNHKの、女子大学生の就職を考えるとかいう、鈴木アナウンサーのあれを見ました。これでも盛んに言われておりましたが、私のところにたくさんの陳情が来ております。そういう中で、たとえば、女子大の卒業生が、一流企業から三名の女性の募集が出ていたというので三百人が詰めかけた。ところが二名はコネクションか何かわかりませんけれどももう決まっている。結局一般募集は一人だということで、三百分の一ということなんですね。それからまたある企業も、十五名の募集があるというので五百名の女子大生が詰めかけたわけです。そうしましたらそのうちの十名は、わかりませんけれども、コネクションだとかいろいろなことでもう決まっている。結局は五名しかとらないのだということで、五百人が受験して百分の一という、こういういろいろな事例で、何とかしてほしいという陳情が来ているわけです。これに対して、労働省としてはどのようにしていこうとお考えになっていますか。
  192. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 一般論しかお答えできないかもしれませんけれども、従来の非常に高度経済成長のときには、四年生にでもなれば四月、五月には就職が決まった。こういう低成長になりましてから、男女もろともに来年度の就職は非常にむずかしいじゃなかろうかということからして――従来は労働省は大学卒業生の就職にはほとんど無関係、大学の就職部、学生部が推薦すれば、人の足りないぐらいですから、どんどんどんどん就職できたわけです。ところが来年は大変だという話がありましたから、私の方の役所とすれば、これはまず就職決定の時期を延ばそうじゃないかということで、従来四月、五月でやったものを、九月に説明会、十一月の選考開始、その間景気の上昇を待つということでやってきまして、これだって私の方だけでできるものじゃありませんから、日経連なりあるいはまた文部省なり私立大学連盟等々とも話をしてきたわけです。そしていまその推移を見ておりますが、一般論としますと、ことしの大学卒業生は三十四万と言われておるのですね。ですが、一番いわゆる大企業中の大企業に従来学生が殺到しているのです。そういうところが三割、四割求人をダウンしたというふうなことなどもあり、一方中小企業の方々はこういうときに学生を採用したいという希望などもあって、私たちの調べによりますと、十三大学、上場した一部、二部の百五十の会社等々を調べてみますと、大体いままでのところは二・一倍という数字も出ているわけです。そして十一月から選考開始されたのです。まだその結果はわかりませんが、ただ、私もあなたと同じように国会議員でございますから、私のところにも大学生がたくさん来ます。短期大学の女子卒業生はなかなかむずかしいようです。四年制の方がずっとむずかしい。こういうところに、短期と四年制大学の差が出ているというところに私たちも心配しているわけでありまして、先日もある企業と相談してみましたところが、説明会はだれでも来れますから、一万人も来られたので試験する場所等々の話なども出まして、やはりなかなか厳しい状態、一般の者も厳しい状態、こういうふうに聞いております。一つ一つの具体的ケースはちょっとわかりません。
  193. 田中美智子

    田中(美)委員 いま社会問題になっておりますので、新聞にも、テレビにも放映されるということで、厳しい、厳しいということはいろいろ出ているわけです。厳しいのはよくわかっています。特に婦人の場合にはもともと厳しいのです。それがことしは特に厳しくなっていることで、その根は同じものだというふうに私は思っております。しかし、こういうふうに大きな社会問題になっているからこそ、よけいに労働省が何をやってくださるのか。ただ厳しいということがわかるだけでは困るのです。それはだれでもわかっているので、何をしてくださるか、どういう努力をしてくださるかということを言っているわけです。時間がありませんので簡単に答えてください。
  194. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 ただいま大臣からお答えございましたように、従来、大学卒業生の就職問題は労働省で扱っておりません。大学と企業、あるいは大学生個人と企業、こういう形で就職が行われておりました。ことしの三月、卒業生の採用内定取り消しといったような問題が起こって以来、労働省がその矢面に立たされるようなかっこうになりました。労働大臣が陣頭に立たれまして採用取り消し問題を解決していただくと同時に、来年はもっと厳しいだろうということから、従来青田刈りで四月、五月早々にもう就職問題が扱われた、こういうことでは来年の三月卒業生の問題はとっても大変なことになりはしないか、こういうことで、ことしは採用時期を十一月に繰り下げて、ある程度採用見通しのつくような事態、そういう時期まで繰り下げる、こういう措置をあえてとったわけでございます。したがいまして、いまお話ございましたように、求人の条件としては、大企業、中小企業を含めますと就職希望者に対して二倍程度のものがある。こういうことで、大学生がいままでのように超大企業だけに偏るのでなければ、就職は十分可能だと思います。  それで、十一月一日から選考開始になりまして、まだ中間的に仄聞する程度でございますけれども、大学によっては五〇%、半分程度は内定している。あるいは女子大生につきましては、都内の五大学について見ますと、これは抽出で学生からの聞き取りでございますが、大体三分の一程度が内定している。こういう状況で、確かに四年制の女子の大学卒業生については、就職戦線は、いままでのような、昨年までのような状況でございますと非常に厳しいだろう。ですからそういった意味でも、就職……(田中(美)委員「ちょっと私の回答と違いますのでとめていただきたいと思います」と呼ぶ)そうではございません。ですから私どもは学生に対しても、思考を変えなさい、本当に自分の適性、能力を考えて就職希望先を変えなさいという指導をしているわけです。企業に対しては女子大生も採ってください、こういう指導をしているわけでございます。
  195. 田中美智子

    田中(美)委員 私の聞いたのは、何をどういう努力をしていただけるか、どういう状態になっているかということです。私の聞き取りの調査では、まだ内定は一割というふうにしか聞いていませんが、きのう労働省の方に聞いたら、さっぱりわかりませんという返答でした。いま遠藤さんは三割と、こういうふうに言っていらっしゃるのですね。それはもう調査の仕方の違い、認識の違いかもしれません。同じ労働省の中で、きのうわからないという返事、きょうは三割という返事。私がいま伺っているのは、どういう努力をしていただけるかと、どういう努力をしていらっしゃるのかがわからないから聞いているわけですね。それに対するお答えをなさらないで、大臣と同じような、ただ厳しい厳しい、女子大生もこうしてください。こういうことは、私も女子大生に対しては、こうしたらいいんじゃないかということを一生懸命注意をしています。この間もお茶の水女子大に行ってそういう話をしてきているので、そんなことをあなたに教えてくださいと言っていません。何をあなたがしてくださるかということを聞いているわけですよ。  それをなぜ聞くのかというのは、時間がありませんから大急ぎでやってしまいますが、きのういただきましたこの求人奨励状というもの、一万の企業に出されたというものをいただきました。この中には中高年者や障害者という言葉はありますけれども、特にいま厳しくなっている女子大生については一言も触れていないわけですね。これはただ大学生ということだけであって、女子大生というのは何も触れていないわけです。ですから、日経連にもお願いしています、何もしていますと、それは口ではあなた方はしていただいているのかもしれません。そこまで疑いませんがね。しかし、実際に物になってきちっと、特に女子大生がこうなっているから、これだけ社会問題になっているからという形のお願いというものはここには全くあらわれていないということです。それから、大学生の問題で十三の大学の調査が出ているという調査をいただきましたが、これを見ますと、この調査は女子大学一つもありません。この中で、いま大臣が二・一倍という言葉を使われましたけれども、これは求人が二・一倍になっているわけですね。しかしこれは全部女子大学は入っていません。ただこの中には女子学生もいることは事実ですけれども。ですから、女子大学生が特にいろいろの差別を受けて、雇用差別を受けているという状態の中で、差別を受けているからこそ、特別に女子大生を何とかしてくださいということは文書なり何なりでお願いする。ただ口でしましたということは証拠がないわけでしょう。きちっと、こういうことをしました、それから調査をしてみたらこんなふうに男子と女子では違います、女子がこんなになっていますということを労働省がやるのが当然じゃないでしょうか。その点をぜひ努力していただきたいということをお願いしたくていま質問しているわけです。大臣、いかがでしょうか。――遠藤さん結構です。もう時間がありませんので大臣にお願いします。
  196. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 私どもは、大学卒業生の就職問題につきまして男子と女子の差別をいたしておりません。先般来の御質問でもございましたように、従来からの大学卒業生の採用条件につきましても、たとえば初任給等も女子と男子とで差別はございません。したがいまして、大学生一般の就職が非常に困難であるからこそ、私の名前で全国一万の企業に対し、また知事に対しあるいは商工会議所等に対して、大学卒業生の採用方をお願いしております。女子を特別にどうしてくれという希望は申し出ておりません。
  197. 田中美智子

    田中(美)委員 遠藤さん、話にならないのです。もう一度婦人問題を基本的にちゃんと勉強し直してください。  大臣、どうですか。遠藤さんは、女子と男子と差別を自分はしていないんだから、特に女子大学生をお願いする必要はない、こういうふうに言われたわけです。大臣はどうでしょうか。
  198. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 まあ、環境が非常に厳しいことは先生もおわかりのとおり。そういう中に、私たちは女子大学生も採ってもらいたいという気持ちを持って、いろいろ、たとえば商工会議所とか各県の知事さんあたりに労働省の方からもお願いしたりして、そういう中に女子大学生のことも含めて考えていきたい、こう思っています。
  199. 田中美智子

    田中(美)委員 女子大学生の非常に大きな差別を、雇用差別というものを、局長はそれは全くわからないというのはしようがないですね。やめていただくよりしようがないのじゃないかというふうに私は思います。これは女子大学生に、職業安定局長というのはこういう考え方なんだということを私はあちこちで講演していきたいと思いますけれども、長谷川労働大臣はそうであっては世界に対して恥ずかしいと思います。どうか大臣だけでも、せめて大臣だけでも全力を挙げて女子大生の就職に努力をしていただきたいと思います。  質問を終わります。
  200. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 石母田達君。
  201. 石母田達

    石母田委員 私もきわめて限られた時間でございますので、できるだけ大臣に直接簡潔にお答え願いたいと思います。  初めに私、先ほどスト権の問題でのやりとりを見ておりまして、二、三確認しておきたいというふうに考えます。それは、明確に結論を出す期日については言えないけれども、秋に結論を出すということについては変わりはない、こういうふうに聞きましたが、普通、秋というのは、あなたは深い秋というのがあるそうですけれども、日本では十二月に入ると師走といいまして、どんなに非常識な常識をもってしても十二月は秋とはいわない。ということになりますと、何月何日ということではないけれども、十一月中というのが常識だと考えておりますけれどもどうでしょうか。
  202. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 非常にソフトなタッチでの御質問でございまして、秋といえばやはり、深い秋といっても十一月の末くらいまでだろう、こういうふうなことで私どもも期待しているところであります。
  203. 石母田達

    石母田委員 その場合に、期待とか努力とかいうようなことではなくて、もうここまで引き延ばしてきたのですから、その場合の結論というのはもちろん専門委員会での結論と同時に、よく言われる与党内、あなた方から言わせれば自民党との調整ですね。これはよく、独占禁止法の改正案については与党内の調整がとれなかったということをもって今国会に出さない理由にされているあなたの方の政府態度ですから、この問題に限ってはどうなんでしょうか。当然その与党内の調整を得た上での結論を出されるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  204. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 前の答弁にこだわるわけじゃありませんけれども、秋は十一月末でもいいますけれども、このごろのように、二、三日前には秋でも夏みたいな、裸になって歩くというようなときもありますから、なるべく十一月の末と期待しておりますけれども、その辺の余裕はひとつお考えおき願いたいと思います。  自民党でもいろいろな調査会でいろいろな意見が出ていることは私も承知しております。いずれにしましても、自民党のこうした調査会、懇談会の皆さん方も、こういう大問題でありますから、これの推移を見きわめながらそれぞれの考え方をお出ししてくるものだ。またそういうものを、政府与党でございますから、私はある場合には、専門懇の結論などが出た場合に党の方の意見を参考にすることもあるだろう、こう考えているわけであります。
  205. 石母田達

    石母田委員 そうすると、当然そういう自民党との調整をいろいろ参考にした上での結論だというふうに理解していいわけですね。  さらに、先ほど民営化は考えていないということをまた再確認されましたけれども、このことは一般的じゃなくて、いま専門委員会の中でも出ている意見、あるいはもし仮に専門委員会からそういう意見、結論が出た場合でも、それに対して民営化は考えていないという態度政府としては臨まれるということに理解していいですか。
  206. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 先生案内のように、昨年、田中前総理の時代の後でも、民営論などが非常に議論されたこともございます。ですから、民営論も言われたり、いろいろなことが言われていままで来たことも事実でございます。そういう中において、総理が国会答弁の中に、先ほど官房長官とのやりとりを聞いておりましても、予算委員会かどこかで民営は考えていないという話もあったり、あるいは本会議のときには、しかし民営ということも一つの考え方として将来の問題だというふうな御答弁もあったようなことは聞いておりまして、いずれにしても、そんなことが全部専門懇で議論されて、一応の何がしかの考え方がまとまって出てくるものだろう、こう思っているわけであります。
  207. 石母田達

    石母田委員 もう少し的確に質問に答えてください。民営化は考えていないという答弁もあったそうですけれども、その答弁についてはそうでない答弁もあるから、決して民営化は考えていないという政府の答弁は政府態度ではない、固執した態度というのか、そういう態度ではない、そうでない場合もある、一つの意見にすぎない、こういうことに言い直すのですか。
  208. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 総理は国会の場において、民営ということは考えていない、こう言われましたけれども、専門懇の結論が出た上で関係閣僚協議会を開いたときに、そうした問題についてはっきりした結論が出される、こう私は思っております。
  209. 石母田達

    石母田委員 ですから結論ではなくて、結論を出すときに、政府の、総理が答えた民営化は考えていないという方向で専門懇から出た意見について臨まれるのかどうか、それに変わりがあるのかどうかということを言っているのです。いまこの態度で臨まれるのかどうかということです。
  210. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 それは私がここであなたから御質問されましても、関係閣僚は非常に多いわけです。そういうことでございますから、私自体の意見というもの、またそこでこんな結論が出るだろうということ、これはちょっと申し上げることは、まさにそういう問題についてはいま私は貝になりたい、こういうことであります。
  211. 石母田達

    石母田委員 そうすると、ちょっとくどいようですけれども、民営化は考えていないというのは総理の答弁であって、あなたは同じ閣僚だけれども私はまた違った意見を持っているかもしれない、あるいはこれと同じ意見だということについて、これは総理個人の答弁だ、そういうことですか。
  212. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 ただいまは私がお答えできないという立場を御理解いただきたいと思います。
  213. 石母田達

    石母田委員 わかったようなわからないような答弁ですね。問題にならない。  それで、私はスト権の問題については再三ここでやってまいりましたが、御承知のように、官公労の労働者が終戦後は憲法に基づいてスト権があったわけですね。それが御承知の四八年七月のマッカーサーの書簡によって、しかも国会でも諮られない政令二百一号によってスト権が奪われているというのが現状で、現在先進諸国においてはほとんどこれが認められているという状況の中で、日本だけが非常に不当な仕打ちを受けて多数の処分者、あるいはまたストと処分の繰り返しということで、国民的にも大きな迷惑をかけてきているという事態が続いてきているわけです。こうした中で、スト権の問題については、これまでの政府態度を改めて、官公労働者に対する憲法に基づく、スト権を含む労働基本権の回復ということについて、ぜひ私は抜本的な態度をとられることを望みたいと思います。  さて、私は次の問題に移りたいと思います。  それは、先ほど田中議員からもいろいろお話がありましたが、最近の雇用、失業の問題の中で、特に大企業がこの不況を利用していわゆる人減らし、合理化といいますか、あるいはそれをやりやすくするための不当な労働者に対する圧迫を加えているという事実があります。  そこで、私が一つの例として申し上げたいのは、三井造船の千葉工場で「不良従業員取扱要領」というものを出しております。この目的は「現在の企業をとりまく厳しい情勢に対処するため、人事管理面での対策の一環としてとりあげねばならぬ対策の一である。」こういうことで、この中で「企業をとりまく厳しい情勢に対処する」ということで、この企業では五年間に約二千人の人員の整理をするというような計画も発表しているわけです。その人員整理の促進といいますか、早めるための一つの施策として「不良従業員取扱要領」があるわけです。「つまり、不良従業員に対しては、今までの定着補導という考え方を改め、厳しい管理姿勢で臨み人員の少数化を促進することを目的とする。」こういう目的のものです。これはどういうことかと申しますと、まず「第一次処理」として括弧して(退職勧告)、第一は「勤怠不良者」、第二に「勤務不良者」、第三番目に「病弱身体欠陥者」という、病人とか身体障害者が含まれている。そして四番目に「退職希望者」、こういうような人たちを第一次処理。この中で特に反抗的な者とかいろいろな者について特別に添え書きがしてあるわけであります。さらに「第二次処理」として括弧して(プール化)。目的は「不良従業員のうち特に問題があり退職勧告にも応じない者をプール化して特殊業務に従事させ、強力に退職へ誘導する。」そこにはただし書きが書いてありまして、「極力第一次処理」つまり「退職勧告によつて退職させるが、それができない場合、第二次処理に移す。」こういうふうにただし書きがついております。そうしてその中で、こうした者を「受入れ後は人事部付」として、「業務内容」で「人の嫌がる仕事をさす。」こういうことで、「工場内の清掃」あるいはまた「物品整理等」とか「雑役」とか、その他若干書いてあります。  こういうものが出て、いわゆる身体障害者とか病弱者というような人まで含めて、人のいやがる仕事を、退職しない場合にはそういう仕事までさして強力に退職に追い込む、このような要領によって管理がなされておる、あるいは整理を促進させる、このような内容について労働省として知っておられるか。知っておられるとすれば、このようなものについてどういうふうに考えているかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  214. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいまお挙げになりました事例につきましては、九月の二十九日に赤旗紙上に報道されておりまして、それに続きまして十月の十八日に、これは地方版ですけれども朝日新聞でも報道されております。私ども労働基準局といたしましても、十月二十一日に千葉造船所の人事部長等を招致いたしまして事情を聞いておりますので、その辺につきましては、いまおっしゃいました「要領」の写しも入手しておりまして承知をいたしております。ただ、これはその後労働組合あたりからも相当厳しい批判が出てきたようでございまして、結局最終的にはこの文書を撤回するということで、回収を決定したというふうに私どもは聞いておるわけでございます。
  215. 石母田達

    石母田委員 これは撤回するのが当然な文書であるというふうに、労働省としてはそう考えていますか。
  216. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 私どもとしましては、労働基準法違反というような問題があるかどうかということをいろいろ検討いたしましたのですが、まだこれが実施段階に入っておりません関係もあって、直接これでどうということはないのですけれども、しかし、内容的にはやはりいささか常識に反する点が見受けられるのじゃないか。だから結果的にはやはりそういう措置がとられたのは当然であろうというふうに思います。
  217. 石母田達

    石母田委員 わが党の柴田議員も直接工場などに行きましたけれども、まだ廃棄されているということが明確にわかっておりませんので、いまのお答えで、廃棄をした、撤回したということでございますが、その時期はいつごろですか。
  218. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 私ども聞いておりますのは、八月の二十九日の部課長会議で当該文書の回収を行うことを決定したということでございます。ただ、これに基づいて人事の職員が回収に回っておると、こう聞いておりまして、そういうことでございます。
  219. 石母田達

    石母田委員 回収をしたということは、その後これに基づいてのいろいろな措置は行われていないというふうに理解していいですか。
  220. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 回収されたならば行われないであろうと思いますけれども、そこまで徹底して私ども見ておるわけではないわけでございます。
  221. 石母田達

    石母田委員 実はこの工場に勤めている中村二三男、菊池英、この二人から「人権侵犯救済申立書」が千葉の人権擁護の方に申し立てられたわけです。その内容を見ますと、この中村二三男さんという人は八年ほどこの工場に勤めている人ですけれども、鉄構工場工作課生産技術係で電子計算機の操作作業に、いわゆるコンピューターに従事している労働者です。この労働者に対して大木工作課長から、いわゆるクレーンによる鉄板運搬作業に従事するよう求められたけれども、申し立て人としてはヘルニアのため必ずしも健康がよくないということで、これを再考されたいというふうに言ったわけです。それで白金というある病院の診断書を持っていったけれども、これは信用ならぬから指定医に診てもらえ。それで指定医に診てもらったところがやはり同じような病状で、手術の必要はないけれども現在の職務で働き、かつ治療を続けるならば差し支えない、こういう診断が出ている。ところが九月三日になって、この大木工作課長は再度この運搬作業に従事すべきであるということを指示して、再度拒否するならば人事部に預けると通告した。なお同時に、「あなたが共産主義であることは公然の事実だ」と再三にわたり述べ、右作業がえが前記活動家を退職に追い込むねらいを持った「不良従業員取扱要領」というものに明らかに基づいた行為であるということが暗示された。そして九月四日にさらに人事一課長からこの中村君に対して、いわゆる人事部付の配置転換をするということと、同時に、草むしり等の雑作業に従事すべきだと、この業務命令が発令されたわけです。そして、本人はヘルニアですからね、私も最近腰を痛めてわかっているのですけれども、この病状が悪化し、とうとう再起不能になった。再起不能というよりも起居不能になった、九月十日になって。そして九月十一日診断書を提出して善処を求めたが聞き入れられずに、十月十日、とうとう入院している状況なんです。  こういう仕打ちというものは一体どういうところから出てくるのか。しかも、本人が共産主義者であるとかなんとかというようなことで、懲罰的ないわゆる人事、まさに先ほど読み上げたこの「不良従業員取扱要領」に基づくようなこうした行為が、あなたが言っている八月二十九日に撤回したと称した以後において行われているのです。  同時に、菊池英という人、これまた腰椎分離症の病気に罹患しているのですけれども、これはやはりこの八月の初めに藤田作業長からいわゆる配置がえすることを命じられて、草むしりにさせられて従事させられているわけです。そのときに、「お前は民青の活動をしており、影響があるため安心出来ないから造船工場から追い出すんだ。ざこはいいがお前のような幹部は置いておけない、考え方が変わったら元に戻してやる」こういうふうに言われて、この先ほど読んだ「不良従業員取扱要領」を見せ、「民青をやっている者は会社内の雑役に回し、退職に追い込む方針であると明記されており、おれの立場としてはどうすることも出来ない、この配転を断れば、どこか遠くへ配転されるだろう」。そして九月一日から草むしり等の作業に従事させられているわけです。  こうした問題について、腰椎分離症の者が草むしりをすればどんな結果になるかということは、明らかにこの中村さんの事態が示しているわけですよ。こういう非道な、非人間的なことを大企業がやっているのだ。しかも、あなたが確認した、いわゆる八月二十九日に撤回した後にもこういう非道なことをやっている。私は、労働省としてこうした問題について、この「要領」が撤回されたというならば、この内容においてもきちんと再発を防止する、もちろんこの二人についての救済措置も含めて適切な処置をとることを要望したいと思うのです。この点についてどうでしょうか。
  222. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 一般に、労働者が工場、事業所の中でどういう仕事をするかということは労働契約の内容によって定まるわけでございますが、日本の慣行といたしましては、職種なり就労場所を非常に細かく限定しての契約ではなしに、会社に採用されるというようなことで生涯雇用の場に入っていくのが通常であろうと思います。そこで、こういうような不況の際に企業もいろいろ企業努力をいたしまして、従業員の最適配置というようなことでいろんな政策を出されると思いますし、それが労働契約の解釈上合理的な範囲であれば、これは労働者もそれに従って労働に従事するというのが契約の当事者としては当然であろうと思いますが、いまここでお挙げになりましたので私つまびらかにはいたしませんが、いまお挙げになりましたような事例でございますといささか問題があろう。思想、信条のゆえをもって差別待遇をすることは労働基準法によって禁止されているところでありますし、それからまた強制労働というものも禁止されておるわけでございますから、そういった精神からいいましても、余り行き過ぎのあるような問題についてはよく内容調査して、十分私どもとしても監督指導をしなければならぬというふうに思うわけでございます。
  223. 石母田達

    石母田委員 私は労働大臣に答弁願いたい。  私は再三あなたに対してもここで申し上げた。こうした大企業が、まさに憲法も通用しないのだというようなことを公言しながらもこういう不当なことをやっている。そういうことをさせない、大企業であろうともあなたはそういうものについてはびしびしやりたいということを再三ここでも言明しましたが、これが現実に行われているということ。またいまの局長が言ったあのようななまぬるいやり方では絶対だめなんだ。私は、もう一度大臣として、このような問題について、特に三井造船のこの問題が撤回された後にこうした事態が起きていることについて、厳重に大臣の方からも指導していただきたい、こういうふうに思います。
  224. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 こういう不況な時代に自分の職場を確保する、それが自分の家族の生活の源泉になるということでございますから、勤労の場所というものがいかに大事なものであるかということは、主義、信条、どうであろうとも、その職場に入ってきた人、みんな私はおわかりいただいていると思うのです。そういうときに、不況が経営者だけによって克服できず、やはり労使ともどもにそういう気持ちにならなければならぬと思いますから、管理の至らない面については私の方から、ただいま局長も申しましたけれども、そういうものに対しては厳重に監督指導をしながら、労使ともどもにこの不況を乗り切る、そうした気持ちというものを出していきたい、こういうふうに考えています。
  225. 石母田達

    石母田委員 局長、この問題について調査して、そういう事実があるならば早速これを救済して、それからまたこういうものについて厳重に講じた処置を、再発を防止するという点について、後で私の方に報告してもらいたいと思います。よろしゅうございますか。
  226. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 調査の上、先生の方に御報告いたします。
  227. 石母田達

    石母田委員 次に、日雇い労働者の就労について、この間寺前委員が十一日の日に質問を行いました。私も職安を視察いたしまして、特に横浜の寿町あるいは山谷地区の職安を早朝から視察いたしました。その中で、特に極端に就労日数が低くなっている民間日雇い労働者の問題について緊急な措置が必要であるということについて大臣にも申し入れいたしまして、大臣もこの点については同感を示して、いろいろな措置についてお話がありました。  そこで、その就労条件を保障するものとして、最近東京都が特別就労事業をやるということで、私の聞いているところでは、二万二千人を四月まで、そして毎日四百人程度の特別就労事業によって救済を一部にしたい、こういうふうに聞いておりますけれども、この点はこのとおりでしょうか。
  228. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 そのとおりでございます。
  229. 石母田達

    石母田委員 これは遠藤局長寺前委員の十一口の質問に答えまして、山谷のような問題については、いわゆる年末年始にかけて東京都と事務当局と十分連絡をとりながら、こういう人たちが従来就労しておりました実態にできるだけ近い線にまで就労確保をできるよう最大の努力をしてまいるつもりです、こういうふうに答弁されております。こういう一つの成果といいますか、努力の結果だというふうに見てよろしゅうございますか。
  230. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 あなた方からも陳情をいただきましたし、また国会でいろいろな方々からもこういう問題について非常に御同情ある御発言をいただきました。     〔竹内(黎)委員長代理退席、菅波委員長     代理着席〕それを体しまして、私は先日閣議で実は御報告いたしまして、今度の景気対策の予算の場合に、公共事業を出す場合に、建設省、農林省、運輸借、こういうところは公共機関に情報を早く提供してもらいたい。大臣の発言によって下の方が非常にやりやすくなるということでございましたから、それを申し上げ、一方また局長が東京都の方に参って折衝をし、さらにはまた、私どもの部屋に、山谷を初めそうしたところの労働紹介所の所長さんに来てもらって、東京都の方からも来てもらって、最近の実情等もお聞きしながら、いま局長が申し上げた一日四百人くらい、年末からお正月にかけてというふうな話も受け、大いにこちらが喜びもし、また激励もし、いまから先の御精進もお願いしたところであります。
  231. 石母田達

    石母田委員 こういうようなものについて、山谷だけではなくて、同じような条件にあるような寿町とか愛隣地区とか、多少程度は違いますけれども、そうした私の見てきたところについても、かなり就労日数が低いというような場合にはこうしたものをぜひ同じように前進させていただきたい、こういうふうに思いますけれども、大臣どうでしょうか。
  232. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 日雇いの求人確保につきましては、全国的に日雇い登録の人たちの就労確保を図っておりまして、これは各都道府県知事に対しましてもそういう指示をいたしております。特にいま御指摘の愛隣地区あるいは寿町等につきましても、従前の就労状態に近い線までできるだけ努力するように、こういう指示をさせておるわけでございます。
  233. 石母田達

    石母田委員 これはいろいろ指導したのはあれなんですけれども、財源が一銭も出ないというのでは……。やはりいまの地方財政危機の中では単費だけでやるというのは困難なわけですけれども、こういう問題についてぜひ何らかの財源的な援助といいますか、財政的な援助というものについて考えられぬかどうか、あるいはそういうものは検討する余地があるのかどうか。この点について、これまた大臣にお伺いしたいと思います。
  234. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 これは先般来の第四次総合的景気対策の中で公共事業費等、そういったものが積算されておりまして、これが各都道府県、地方自治体等、あるいは民間の投資の増強といったような形で出てまいりまして、これを受けて、こういった日雇いの求人開拓の強化に努めて、そういうことによって最近少しずつよくなってきている、こういうことでございますので、これから年末から来年にかけまして、さらに一層こういった民間を含めた求人開拓に努力をしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  235. 石母田達

    石母田委員 これは財源的に一銭の援助もないということでは困るので、都としても実は九月に財源がなくて切れてしまったのです。だけれども、年末年始にこのままでいったら大変だということで十二月二十五日から再開される、こういうことでございますので、国としてもこうしたものを援助していくという姿勢をぜひとっていただきたいというふうに思います。  きょうは時間がございませんので、われわれ野党四党が共同で雇用及び失業対策緊急措置法案を提案しているわけですが、残念ながら最低賃金法案と同じように、野党四党の議題を単独で正式に議題にするということについては自民党が承知をしません。参議院ではあのように原爆援護法が本会議で討議されるというような事態ですが、これは一口に言うと力関係で、野党の力が弱いということで、何の理由もなく私どもは正式の議題として審議できないというのは非常に残念であります。けれども、私は、この四党案に盛られた内容というものは、今日の失業、雇用の緊急な問題を解決する上できわめて重要な内容が含まれているというふうに考えております。先ほどの千葉の三井造船の問題にしましても、ああいう社会的に不当な解雇というようなものに追い込むようなものについては規制するとか、あるいはいま極端に就労日数の低いものについての失業保険の資格要件についても特別な緩和の措置をとるべきだというようなことで、月七日、二カ月十四日というような問題についてもこの四党案で触れて、現在の解決についてきわめて重要な資するところあるというふうに思っております。いずれ、われわれはどうしてもこの問題について徹底的な審議実現を図りたいというふうに考えております。  最後に一言、二、三分ですけれども先ほどの学卒者の就職の問題で、ことしの二月十五日の予算委員会で私が学卒者の問題について質問したときに――採用取り消しの問題なんです。そのときに長谷川国務大臣は――ちょっと聞いていてください。遠藤局長はないと言ったんだけれども、いま議事録を読んだら、「来年就職をあっせんする場合には、ことし内定を取り消したような企業はこういう企業であるからということを、その諸君によく知らせておく。ある場合にはそういう企業を公表もする。こういう姿勢どもとっております。」というふうに言っておりました。このことについて遠藤局長は、そんなことは言いっこないと言うが、遠藤局長はちょうどこのときいませんでしたから。労働大臣はこういうふうに言ったと私は記憶しておりますし、そういうことを言ったことについて、今回ももうすでに始まっておりまして、またこういう事件が起きることのないように、こうした問題についての大臣の決意と、その後どういう具体的な方法をとっておられるのかという問題について、最後に質問したいと思います。
  236. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 昨年、おととしの暮れからのオイルショックで、ああいうふうに内定、そして取り消しということがあって、御心配された先生方からの御質問、私は国会の場というのはそういう意味で非常にありがたいと思うのです。いままでは全然労働省関係しなかった大学生の就職の問題です。そこで私の気持ちは、せっかく内定しておいて取り消しするような、そういう悪質な企業というものはけしからぬのだ。だから、その国会の場の議論から出まして、そういう企業が内定取り消しをまた取り消してちゃんと入れてくれたというような実例がたくさんあり、さらにまた、各県知事があっせんをして、高等学校、中学校の内定留保したやつなどを全部入れてくれたということでして、議論の中から問題が非常によく前進された、こういうふうに感じておることを御理解いただきたいと思います。
  237. 石母田達

    石母田委員 結局、この態度には変わりないわけでしょう、大臣としては。どうですか。
  238. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 悪質なものに対しては、私はそういう意味で変わりはありません。
  239. 石母田達

    石母田委員 終わります。
  240. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 大橋敏雄君。
  241. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 本日の委員会は、深刻な不況の中で大変不安を抱いている労働者の実情に対して、その雇用・失業の保障について集中的に審議をしようではないかということであったわけですが、私もその本題に入る前に、やはりもう一つ重要な問題と言われておりますスト権問題について若干触れてみたいと思います。  御承知のように、労働者の権利として持っていたいわゆるスト権ですね。もともとあったものを占領軍が一方的に取り上げたんだという考えの中から、どうしても返してもらいたいというのが始まりであろうと思います。昭和三十六年に総評がスト権奪還を決めて以来かれこれ十五年になるわけでございますが、公労協関係で七百七十人がスト権を取り戻すストのために首を切られている、あるいは数十万人が何らかの処分を当局から受けているということですね。当局と組合側は、スト権奪還スト、処分処分撤回ストというようなイタチごっこを繰り返してきたわけでございますが、当局の処分にもかかわらず組合のストは一向に減ることなく、逆に回数もふえ、規模も大きくなり、戦術がエスカレートしてきた。国労、動労の順法闘争は、一昨年の上尾駅騒動に見られるように大衆暴動まで起きる始末になったわけです。労使双方とも何とか決着をつけたいために、昨年の春闘で政府は一年以内、五十年秋までに結論を出すと、言質を労働側に与えたわけです。  私もこの社労に所属いたしましてかれこれ九年になるわけですが、その間労働大臣が数名交代なさいましたけれども、いままでの労働大臣の中で見る限りにおいて、長谷川労働大臣は、この労使の正常化といいますか、そういうものに対する熱意、努力というものは私は評価できると思います。そういうことで、十一月末までには何とか結論を出すんだということになったわけだと思いますが、すでに国鉄、専売公社、電電公社の三総裁が、条件つきだがということを前置きしながらも、はっきりスト権を与えるべきだとの見解を去る十月二十一日、国会で明らかにしたわけです。これも御承知のとおりだと思います。  そこで、先ほども質問があっておりましたが、労働大臣が六月三日の国会答弁で、スト、処分、ストという悪循環は今回を最後としたい、このようにおっしゃったわけです。私はその決意はりっぱだと思いますし、経過からいってもそれは実現できるであろうと私も思っておりました。ところが先ほども、その秋というのはいつごろかということで大変詰め寄られていたわけですが、明確な答弁はなかったようであります。が、もうすでに報道で御承知のとおりに、大規模なスト権奪還ストの闘争方針も打ち出され、その態勢に入ったわけですね。二度とこういうことをさせない、悪循環は断ち切りたい、こうおっしゃっていた労働大臣の決意は変わりないかということと、そうして、いま計画されようとしている奪還ストを中止させるだけの確信があるかどうか、これをまずお尋ねをいたします。
  242. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 私が国会で皆さんの前に、スト、それから処分、こういう悪循環を断ち切りたい、こう申し上げたことはいまでも変わりありません。恐らく国民全体もそうじゃないでしょうか。そういう姿勢には変更はありません。ただ後段の、いま公労協の諸君ですか、その問題につきましては、まあ相手がやることなのでどうにも……。私は心の中では、何とかそういうことのないようなことを願い、しかも一方、新聞でごらんのとおり、一部新聞報道ですけれども、熱心に専門懇もいろいろ動いておることはおわかりのとおりでございます。またどこの党でもいろいろそれに対する考え方をお出ししょうとしているときでありますから、私は、こういう不況なときでありますし、政府も各党もそうした熱心なときに、二十六日、そんなことを一体――これは、対話と協調はいろいろなところに必要なんでして、なるべくならばぜひひとつお避けいただきたい、こういうふうな感じ方を持っております。
  243. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ストは相手がやることだからというようなことでは今度は済まされないと思います。御承知のように、四十年六月、ドライヤー調査団勧告があって以来、政府も公制審を通してその審議を進めてきたわけですね。それがなかなか結論が出ないで、十年たってようやく三論併記というかっこうになったわけです。そこで今度閣僚協議会だとか専門懇だとかというものを設けられて、熱心に審議されているように見えますけれども労働者側から見れば、やはり公制審と同じように隠れみのになっているのではないか。しかももう十一月末、いわゆる秋までに結論を出すという政府のこの確約に対して絶大なる信頼感を持っておると思うのですけれども、それが着々とこの日にちが迫ってくる。その動きがまだ明確にない。やはりやらざるを得ないかというような心境になってきているのだと思いますよ。ですから、これまでようやく、あれほど根強い不信感が正常化されてきて信頼関係が芽生えてきていたときですから、長谷川労働大臣の英断でもって、それこそ二度とストが起こされないような結果を生み出していただきたい。強く要望します。もう一言答えていただきたいと思います。
  244. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 その場合に、私たち政府といたしますと、御承知のように専門懇というものをずっとお願いして、新聞で聞きますと三十数回やっているわけです。そして、これも新聞ですけれども、起草委員ができていろいろ書いているというかっこうで、さらにまたその上に、先ほども御議論が出ましたけれども、座長さんが外遊されておって、帰ってこられるのが二十三日。二十四日が休み。そして二十五日、片っ方の方は二十六日ということなので、その辺の調和というものは一体どうなるのか、そこに問題があろうかと思って、私はですから、こういう大事なときは私たちが一生懸命やっているこの姿なども御理解いただいて、感情的にならないような形においての結論をお待ちいただく。また、関係閣僚も総理も御答弁申し上げたように、ことしの秋、これは出します。それが十一月の末か、あるいは多少ずれる、いろいろな時間的な問題があるかもしれませんけれども、そういう姿勢を出しておるのですから、私は、感情的にならずにお願いしたいという気持ちがいっぱいでございます。
  245. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは本題に入りますが、まず最初に、当面する不況のもとで、雇用・失業情勢というものは大変な事態に立ち至っているわけです。先般われわれが四党で提案した趣旨説明の中にも述べておりましたように、負債一千万円以上だけのものでも月に一千二百件を超す企業倒産、あるいは企業の首切り、表面にあらわれた失業者だけでも百万人に達しています。さらに、企業が抱えている過剰人員というものは二百万人を超え、また安定所に行ってもろくな仕事がないということで、やむを得ず家庭に引きこもっている中高年の婦人属の方も多くて、実質的な失業者は三百万人を超える状態になろうとしているわけです。しかも、企業は低成長時代を見越しておりますから求人をふやすという考えはもうなくなってきておりますし、大量失業が長期にわたって定着する危険性がある、私はこう思うのでありますが、こうした雇用、失業の現状について労働省はどう認識しているのか、また今後の見通しについてどう考えているか、初めにお聞きしたいと思います。
  246. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 確かに昨今、雇用・失業情勢は大変厳しい条件の中に置かれております。ただ、先ほど来お話がございましたように、ことしの三月を起点にしまして、経済情勢は鉱工業生産も上向いてまいってきておりますが、ただ、それが雇用、失業の面に反映するにはまだ余りにも非常に微弱でございます。その中で残業時間が次第に増加してきております。そういう明るい面も出てきております。しかし、九月の完全失業者はいまお話のように九十九万、一・九%、昨年に比べますと四十数%上回っております。こういう厳しい情勢が続いておりまして、これからも今年度末ぐらいまではこういった情勢が、少しずつよくなりながら続いていくだろう、こういう感じはしております。  ただ、幸いなことに、この夏以来、新規の離職者、新しく出る失業者も少なくなってきております。やや鎮静化してきている。それから失業給付の受給者も、七月、八月、九月と八十数万を数えておりましたが、十月は、まだ正確な数字は出ておりませんけれども、七十万台にかなり減少してきている。滞留も少しずつではありますけれども減る傾向にある。しかしその反面、企業の側の求人が、全体として上向きつつありますけれども、やはり四十八年までの高度成長時代のそういった幻想からなかなか離れ去りがたくて、回復過程には入っておりますけれども、いわゆる回復感というものにはほど遠い、いわゆる不況感という、そういう心理的な要因も加わりまして求人がなかなか伸びてこない。こういうことで、有効求人倍率は依然として〇・五五前後を低迷しております。私どもは、先般決定されました第四次の総合的景気対策、補正予算の執行等によりまして、これから景気が少しずつ上向いてきて雇用の面に好影響が出ることを期待しながら、雇用の確保に努力をしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  247. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 経企庁の方、来ていますか。――いまの大変な不況というものは、物価安定に傾斜し過ぎた政府の経済政策の失敗だ、私はこう考えております。しかも、いまだに物価対策といわゆる雇用の安定とをともに達成するなんというきれいごとといいますか、こういうことを言って、思い切った景気対策の実施を怠っておられる。このため雇用・失業情勢はきわめて深刻な事態に立ち至っているわけでございますが、先般の年次経済計画の見直しでは、総合的な景気対策の実施により本年度下期の失業は減る、このような楽観された見方をなさっているのですね。経済企画庁としては雇用・失業情勢の現状と今後の見通しについてどのように認識していらっしゃるのか、ここで聞いておきたいと思います。
  248. 額田毅也

    ○額田説明員 お答え申し上げます。  まず最初の御質問の物価の問題でございますが、御承知のように、石油危機後、狂乱といわれた非常に激しい物価騰貴が起こりました。やはり経済の運営といたしまして、この物価騰貴をおさめて、そして国民の皆さんが物価の面で安定した、安心した生活が送れるというのが第一番であるという情勢がしばらく続いたわけでございます。そういう意味で、昨今卸売物価はおかげさまで鎮静いたしました。消費者物価も今年度末、前年同月比九・九%になる見込みでございます。やはり国民の生活にとりましてこの物価という問題は常に大事な問題であるかと考えている次第でございます。  なお、景気対策でございますが、御承知のように一次から三次の対策を行ってまいりました。第四次をそれに加えまして、総事業費で約一兆六千億円に上る景気対策が行われたわけでございますが、その結果、先ほど労働省からお話がございましたけれども、三月から鉱工業生産指数が順次回復してまいりまして、上半期におきましては、三月の指数一〇四・七に対しまして九月では一一二・八と、これは速報でございますが、約八ポイントの改善を見ているわけでございます。  それで、雇用問題というのは一つには、先ほども御質問がございましたが、公共事業の施行面におきましていろいろ雇用面の改善の問題もございましょうが、民間におきます鉱工業生産指数が伸び、やはり設備の稼働率が高まるということが雇用問題には一番いい影響を及ぼす問題であろうと思うわけでございます。そういう意味で、経済見通しでは八月に八三・四と出ました設備の稼働率を本年度末に九〇近くまで回復する、こういうことによって雇用面に漸次明るさを取り戻したい、こういう形で見通しが生まれておるわけでございます。
  249. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 りっぱな御説明をなさるのですけれども、実態的には大変なものなんです。ですから、総合的な景気対策の実施によって本年下期の失業は減るのだというような考え方をなさったこと自体、経済官庁で雇用問題の重要性を余り認識していらっしゃらなかったのではないかということを私は指摘したいのです。  もう一つは、わが国では、失業情勢の改善は景気の回復から時間的に相当おくれるという基本的な事柄があるわけですが、こういうことさえそちらの方はわかっていなかったのじゃないか。私はこれはその証拠だと思っているのです。こういう点を十分知った上で雇用・失業情勢を考え、計画していかないと、今度のような大きな失敗が起こると思うのです。今後についての物の考え方をもう一度お尋ねしたいと思います。
  250. 額田毅也

    ○額田説明員 御承知のように、経済の運営にとりまして雇用問題はきわめて大事な問題であることは、先生の御指摘のとおりでございます。私どもといたしまして、やはり景気回復局面におきます稼働率の上昇、鉱工業生産指数の上昇ということに努めることによりまして、雇用情勢は景気の回復から若干時を置いて改善されてくるものでございますが、できる限り雇用問題に明るさを増しますように努力してまいりたいと思います。
  251. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 余りぴんときませんけれども、時間に限りがありますので、あなたはお帰りになって結構です。  政府は楽観的な見通しを述べておりますけれども、本年九月の完全失業者は九十九万人となっております。中高年齢者の滞留は著しくて、求人倍率も先ほどおっしゃるように〇・五となり、就職しようにもできないのが現実であります。これらの人々の生活を保障することがいま政府の行うべき一番重要な施策だと私は思うわけであります。こういうことから、われわれは先般野党四党の立場でまとめて法案を出したわけです。  そこで、雇用保険法による失業給付給付日数というのは、現在の雇用・失業情勢のもとにおいては必ずしも十分なものとは言えないと私は思うのであります。給付口数の一律延長の必要性について労働大臣はどう考えられているか。また、雇用保険法に規定されております個別延長などの給付日数の延長制度を弾力的に運用すべきではないかと思うのでありますが、この点についてお尋ねをいたします。
  252. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 昨年の暮れに成立いたしまして、ことしの四月一日から施行になっております雇用保険法によりまして、従来の失業保険法によります保険金の給付と異なりまして、今回の失業給付基本手当給付日数は、就職の難易度を物差しにしまして、中高年齢者あるいは身体障害者、そういったたぐいの就職の比較的困難な方々に対しては最高三百日というような取り決めが行われておりまして、この給付日数の決め方、決定の仕方についてはきわめて適切なものであったのではないかと私ども考えております。さらにそれに加えまして、就職の困難な実態に応じて、個人別の延長制度、職業訓練を受ける場合の訓練延長、あるいは全国的な失業情勢が一定の水準まで達したという場合には全国一律延長といった延長制度も設けられておりますので、こういった制度を十分運用することによりまして現在の失業の事態に十分対処できる、私どもはかように考えております。と同時に、個別延長なり訓練延長にいたしましても、すでにこの適用を受けている人たちがいらっしゃいまして、これによって再就職の確保を図っていく、こういう方策をとっておりますので、現行の雇用保険法の失業給付制度を十分運用することによって対処できると考えております。
  253. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私はこの点は労働大臣に聞きたかったのですが、局長が、いまの制度を十分運用して、弾力的にそれを運用して云々という答弁をしておりますけれども、いまの不況の実態というのは大変なものなんですね。しかも、失業給付を受けて期限が切れる、それまでに再就職ができないという実態になっているわけですよ。ですから、私はどうしてもこういうときは時限的に何か法律をつくって延ばしてやるべきだ。そうでないと、失業保険は切れたわ、仕事はないわ、どうなるのだ、こうなるわけですよ。労働者の不安というものはここに集中しているわけですから、これはいろいろと法改正はなされましたけれども給付日数を一律に延長して与えていくという考え方、これも永久というのではなくて時限的で結構ですが、こういう大変な不況の中にあるのですから特段の配慮をすべきである、こう思うのですけれども
  254. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 皆さんの御理解をいただきまして、やはり三百日というのは私は非常な英断だったと思うのです。一年間で労働者が働く日数は二百二、三十日でしょうね。それを三百日。そういうことをしながら個別延長とかいろいろな手を考えております。そういうふうにお互いに配慮してきたことでありますから、皆さん方が四党でお出しになったものを私も拝見し、あるいは組合の諸君にもだんだん会って話を聞きましたが、いろいろな場合を考えながら雇用保険法を出して、前向きの姿勢でここでひとつ受けとめてみよう。この姿勢の中に、いまから先の問題についてはまたそのときそのときの、従来あるものの適切な活用をしてまいりたい、こう申し上げまして、いますぐおっしゃることにお答えはできませんけれども、十分な活用をひとつ考えていきたい、こう思います。
  255. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 われわれが言わんとしている気持ちも十分理解はできるわけでしょう。いまの立場ではとても言える段階ではないだろうと思いますので、私たちの気持ちだけは十分と胸に秘めておいていただきたい。  それから、基本手当給付率ですね。これが六〇%から八〇%の幅をもって決定されたわけでございますが、生活の安定のためにこれで十分と考えるかどうかという問題です。私たちは給付率をもっと引き上げるべきである、むしろ低い方を引き上げるべきである、こういうふうに思うわけです。
  256. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 雇用保険法によります失業給付基本手当給付率は、いま御指摘にありましたように、失業前の賃金の六〇%ないし八〇%、こういうことになっております。これは欧米各国のいわゆる失業保障の給付の水準からいたしまして決して低いものではございませんで、きわめて妥当なものと考えておりますが、これを一律に八〇%に引き上げろというような御指摘もございます。これは、もしそういうことになりますと非常に不当な給付内容になってしまいまして、私どもはとうていこれを引き上げる考えを持つわけにまいりません。と申しますのは、現行の六〇%ないし八〇%、賃金の額の低いところでは八〇%ということになっておりますが、仮に六〇%という線で標準的な賃金を計算いたしますと、実質は手取り月収の九〇%に当たります。現行の六〇%の給付率で失業前の月収手取り額の九〇%に当たります。これを仮にもし八〇%ということにいたしますと、おおよそ一二〇%程度の給付ということになるわけでございます。     〔菅波委員長代理退席、委員長着席〕 そうすると、失業前の月収よりも、失業して失業給付を受けた方が二〇%ぐらい割り高になる。こういうことになったのでは、雇用保険制度のいわゆる失業給付制度のたてまえから全く乖離したものになってしまいます。したがいまして、私どもはこの六〇%ないし八〇%という、雇用保険法によって新しく決められた給付率はきわめて適正なものだと考えておりますので、お説ではございますけれども納得しがたいと思います。
  257. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 その点、私はちょっと勉強不足で、どうもやられたみたいだけれども、六〇%で実質的に月収の九〇%が支給されるのですか。では私はもう一回後でこの問題に取り組んで、間違っていたら改めますね。
  258. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 これは先生をとっちめたようなかっこうになって申しわけございませんで、もう少し敷衍して御説明いたしますと、失業保険時代から雇用保険法に引き継ぎまして、実は六〇%というものの計算の基礎になります賃金が他の社会保険と違いまして、いわゆるボーナス、諸手当全部含まれております。したがいまして、ほとんどの場合が例外なしに夏冬のボーナスのいずれか入る。極端な場合は二回のボーナスが全部入る場合もございます。それを月割りにして計算をいたしておりますから、したがって、いま申し上げました、失業前の月収の手取り額、これは月収から税金なり保険料なりそういったものを差っ引きました手取り額に対して比較いたしますと、六〇%が九〇%に当たるということでございますので、そういう計算になるということを申し上げたわけで、決して先生のあれをとっちめたわけではございません。
  259. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それじゃ、最近大変企業倒産が発生しているわけですけれども労働者は職を失うとともに、当然支払われるべき賃金どももらえないで困っている例がたくさん出ているのですよ。いわゆる不払い労働債権については、企業が支払うのは当然でありますけれども、現に事業主に支払い能力がないような場合には、労働者を救済する措置を講ずるのが私は政府の責務だと思っております。労働省において、この労働債権の不払い問題についてどのように措置をしようと考えているのか、これをお尋ねします。
  260. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 まあ、賃金というのは勤労者にとっての収入であり、御家族の何よりの生活の原資でございますから、そういうものが未払いになるということは大変なことであります。そこで、こうした不況のときでありますから、この委員会でもいろいろ附帯決議も出されたり、あるいはまた労働基準法研究会のこの七月二十一日の労働債権の履行確保に関する総合的な報告に基づきまして、いま必要な施策を講じているところでありまして、こういうときにこそ、賃金不払いを受けた労働者に対して昭和五十一年度から何らかの具体的な措置をひとつ講じてまいりたい、そういうことでいま作業をやっております。これはぜひひとつ国会に提出し、皆さん方の御協賛を得たいという構えで作業していることを改めて御報告申し上げます。
  261. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私たちがすんなり賛成できる内容にして提出をしていただきたいと思います。  そこで、いろいろお話ししてきましたけれども雇用保険の失業給付については、失業者の生活の安定のためにぜひとも改善をしてもらいたい。しかし、それ以上に大事なことは、現在働いている人々が失業しないようにすることがより重要だ、こういうことを常日ごろよく労働大臣もおっしゃっているところでございますが、そのためにこそ、企業の野方図な解雇を抑えて、これ以上解雇が出ないようにすることが必要ではないかと思うのであります。  そこで、まず現在の法制度では解雇規制はどうなっているのか。また、そのような規制の程度では解雇抑制は無理だと考えるが、労働大臣の見解を伺いたい、これが第一点です。  もう時間がないからまとめて言いますから、記録をとってくださいね。  次に、労働基準法による解雇予告は一カ月前だけれども、これだけの期間では、現在のような不況下で再就職をする先を見つけるのも困難であります。労働省は、解雇予告制度について現行のままでよいと考えているかどうか。  三つ目、現在のような雇用・失業情勢のもとで、解雇は企業対個人の問題というよりも社会全体として取り組むべき問題である。労働者使用者の代表、公益を代表する者の三者構成の委員会で、解雇の社会的妥当性を審査し、企業も労働者もその結論に従うという制度をつくることは当然ではないかと思うのでございますが、いま申し上げました三つの問題についてお答えを願いたいと思います。
  262. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 労働者の解雇についての労働基準法規定は最低基準でありまして、労使の話し合いや行政指導によってそれ以上の基準が設定されることが多くて、さらにはまた、御承知のように判例の積み重ね、解雇権の乱用の理論の確立などによって不当な解雇は実質的に規制されております。さらにはまた、雇用対策法の中で大量雇用変動の際の事前届け出の制度規定されているなど、法律や制度は十分整備されていると考えます。特に雇用不安の大きい身体障害者や中高年齢者につきましては、現行の雇用制度の活用を図る一方、より一層の制度の改善を図るために法律改正を行うこととしておりまして、これらの規定を活用しながら、事業主等に対して指導を強化して雇用の安定に努めていきたい、こう思っております。  最後にお話のありました解雇の問題は、本来労働者使用者との間の問題として団体交渉の事項にもなっております。その当否について労使間に争いがあるときは、その紛争を円滑に処理するための機関として、御承知のように公、労、使の三者による行政委員会としての労働委員会が中央及び各都道府県に設置されているので、重ねて新しい組織を設けるということはいかがなるものか、こういうふうに私は考えております。
  263. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 われわれ四野党で提出しております法律の内容をもう少し研究してもらいたいと思います。いまおっしゃったような委員会とまた違った趣旨の委員会ですから、いまのような不況時代には当然こういう委員会を構成して真剣に取り組む必要があることがおわかりになろうかと思います。  時間の関係がありますので次に進みますが、これは要望なんですけれども、不況が深刻化するにつれまして、取引関係で弱い立場にある下請事業者の倒産が相次いでいるわけです。こうして倒産すれば失業者が出るという関係になりますので、こうした下請事業者の窮状を打開するために、わが公明党は十五日に下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案を国会に提出しております。これは支払い条件について現行規制をより強化し、親事業者と下請事業者との公正な取引を確保することによって下請事業者の経済的利益の保護を図ろうとするものであるということになっているわけでございます。これは直接の所管の法律とは違ってきますけれども、いま労働者を守るという立場から当然この問題についても真剣に取り組んでもらう。いずれ閣議でこういう問題が議題になろうかと思いますので、このときには、わが党が提案しております下請代金支払遅延等防止法の改正内容を十分理解していただいて議論をしていただきたいということを強く要望いたしておきます。  次に、現在、企業が解雇する場合、まず目をつけるのが身体障害者や高齢者といった弱い層であるのは周知のとおりでございます。能率が悪いから云々ということは強者の理屈であって、いまの時代にはそのようなことは許されないはずであります。大企業ほど身体障害者の雇用率を達成しない割合が高くなっておりますし、時代おくれの五十五歳定年をがんとして維持しているのも大企業でございます。このようなことを規制することが政治の役割りであり、行政の務めではないかと、私はこう思うわけでございまして、高年齢者や身体障害者の雇用を守るため政府として緊急対策を講ずべきだと考えておりますが、この点についてお答えを願いたいと思います。
  264. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 こうした不況のときに、身体障害者あるいは高年齢者の問題は大変でございます。私はみんなで、やはり日本民族というものは非常に得り集まったというのですか、いたわり合いながら民族が形成されて今日まで来ていると思います。国民連帯がこうしたときにこそ発揮される。ですから、中高年齢者の問題にいたしましても身障者の問題にいたしましても、こういうときには事業所別にいまから率を設定するとか、さらにはまた、どうしても率を達成できないところは賦課金のようなものでも出してもらって、そういう方々の施設に充てていくとかというふうなことを実はいま考えながら役所の中で作業をし、それを経営者も、またそうした一生懸命働こうとする皆さん方にも御理解いただきながら、生活のいささかの足しあるいは安定の材料にと、こういうふうな感じを持っているものであります。
  265. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 不況の長期化に伴って日雇い労働者の状況は実に厳しいんだ、これから冬場に向かってますます深刻になっていくわけでございますが、先ほども労働大臣は、関係各省にいろいろと仕事が出るように要請をし、その対策に当たるというお答えがあったわけですが、この日雇い労働者の問題についての考えをもう一度あらためて聞きたいということ。  もう時間が来ましたので最後にまとめて申し上げます。  まず労働省にお尋ねしたいことは、昨年来の深刻な経済不況により全般的な求人の減少、雇用の伸び悩み、休職者の増加が続いておりますけれども、特に経済変動の影響を受けやすいのは日雇い労働者と並んでまた出かせぎ労働者でございます。この出かせぎ労働者については、建設業あるいは製造業を中心として大幅に求人が減少しております。出かせぎの場所がない。求人があっても非常に安い賃金で、いわゆる労働条件が切り下げられている。また就労しても途中で解雇される、あるいは賃金を払ってもらえないといった事態が続々と起こっていることを聞いておりますが、このような現状に対して労働省はどのような対策を講じているのかということ。  それから、農林省の方来ていますね。――農政の基本としては、本来出かせぎを出さないでも農業のみにより安定した生活を営むことが可能になることを目標とすべきではないかと思うのです。いまはもう農業切り捨て政策と言われて、農業政策に対する政府の考え方はきわめてまずいと思います。そういうことからこうした出かせぎ労働者がやむにやまれず出るわけでございますけれども、このためには、規模拡大等の施策によって農業自体の基盤整備に努められるとともに、就業構造の改善を図るべきだと私は思うのでありますが、農林省は出かせぎ労働者の解消のためにどのような施策を講じようとなさっているのか、これは最後に篤とお尋ねしたいと思います。
  266. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 日雇い労働者の就労問題と並びまして、これから冬に向かって、冬場出かせぎに出る人たちの就労をいかに確保するかということは、私どもにとっても当面非常に緊急に重要な問題として考えてまいっております。そこで、先般来、出かせぎ県を中心にいたしまして担当責任者を招集いたしまして、冬場の出かせぎの就労確保の問題について具体的に検討を進めてまいっております。  確かに求人はいままでに比較いたしますと四〇%ぐらい減っている、こういう実情でございます。しかしながら求人も若干伸びている面もございまして、一応最近までの状況でございますと、出かせぎを希望する人たちに対しましては何とか就労の場を確保できる。で、ある県におきましてはちょうど昨年よりは一割程度出かせぎ希望者が減った。これは三年続きの豊作で農家収入がふえてきた。それから賃金等につきまして、昨年より上がってはおりますけれども、残業時間が短くなったというようなことで必ずしも収入増にならないというようなことから、出かせぎをことしは取りやめるという人が一割程度いるというようなことともあわせまして、一応ことしの冬場の出かせぎは何とか求人の確保、就労の場が確保できるような状況にあるように感じておりますので、今後とも、これからの出かせぎに出る人たちの就職の場を何とかして確保していくように最善の努力をしたいということで、第一線機関を督励いたしておるわけでございます。
  267. 近長武治

    ○近長説明員 お答えいたします。  御質問の要点は、特に農業政策が十分でないので出かせぎが農村地帯で非常に多発しておる、農政の基本としては出かせぎがないということが望ましいのであるけれども、農林省としては一体いかなる考え方でいかなる政策を進めていくのか、こういうことであったかと存じます。  御承知のように、昨今の非常に厳しい経済情勢の中で、製造業等を中心にいたしまして、出かせぎ者に対する求人は昨年に引き続きまして非常に減ってきておるわけでございます。また特に、求人がございましても、農家の方が希望しておりますような就労条件となかなか一致しないというようなことであろうかと思います。そういう点につきましては常日ごろから労働省等とも緊密な連携をとりまして、特に労働省におきましては職安の組織を非常に活用していただきまして、広域的な求人の活動等は幅広くやっていただいているわけでございます。  出かせぎの問題というのは、対策の考え方としてはいろいろあるわけでございますが、まず第一点について、農政の基本としては一体出かせぎがないことが望ましいのかどうか。これは農政の基本としては、出かせぎのないということが非常に望ましいというふうに私としては考えております。従来からも農林省の政策の方向としては、出かせぎのない農業経営を確立するように各般の施策、価格対策あるいは構造改善のための農地に対する投資でございますとか、そういうことは充実して努力してきたつもりではございます。特に昨今、全体的に国民の食糧の安定的な確保という要請が強まっておりますので、これは単に五十一年度施策にとどまらず、長期的な農業施策も、地元で十分に農業として生活できるようにということが基本であろうかと存じます。  ただ、現実には農家からの出かせぎを一挙に解消するということは非常にむずかしゅうございます。そこで、そのためには、まず地元における他産業への就労機会の拡大を図るということも必要ではないか。農業から他産業への就業というのは、経済の流れといたしましてやはりやむを得ないものがございますので、そういう点で労働省あるいは通産省等とも緊密な連携をとりながら、地域における就労機会の確保のために施策を強化いたしまして、農家が他産業に就労する場合には、極力在宅通勤の形で就労できるようにというような方向で努力してまいりたい。  それからもう一点は、農家が出かせぎに出る場合において、やはり出かせぎから戻ってまいりますれば農業に従事するわけでございます。そういたしますと、出かせぎに行っている間の安全な就労あるいは安定した就労条件による出かせぎというようなことも重要であろうかと思います。従来、こういうような考え方に基づきまして農林省におきます出かせぎ対策を進めてきたわけでございます。  それから、特に出かせぎ地域におきます市町村等の方の御意見を従来から聞いてまいりますと、やはり長期的に見て出かせぎということが地域の市町村としても望ましいことではないので、むしろ農家の側として地元を見直すようなことを考えていただきたいという希望が非常に強くございました。それで、昨今の不況ということだけでなくて、やはり農家の側も地元においてそれなりの就労機会を確保したいということで、実は本年度から新しく、出かせぎが非常に多い地域におきまして出かせぎを農業政策の側から極力解消または抑止を図りたいということで、出稼地域農業者就業改善対策実験事業というものを開始いたしまして、地域の実態に即応した、言うなれば地域の資源をなるべく活用します、例で申し上げますと、従来はたとえば山菜はそのままの形で単純に乾燥したような形で出していた。それはもう少し処理、加工をするというような形で出したらどうか。あるいは地域における民芸的な意味合いでの農林関係の資源の活用というのもあるではないかというようなことで、さしあたり五十年度からそういうような事業を始めることにいたしまして、特にそれは地域の実態に即応したような形でやるということが重要でございます。そこでそういうような形で地元における雇用機会の拡大の方向に努力を傾けていきたい。  およそ以上のような考え方で農林省としても政策を進めてまいりたいと考えております。
  268. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間が経過しましたので、これで終わります。
  269. 大野明

    大野委員長 小宮武喜君。
  270. 小宮武喜

    ○小宮委員 雇用問題については先週も質問しましたけれども、さらに引き続いて質問したいと思います。  この前も指摘しましたように、労働省雇用情勢の悪化に伴って八月に緊急雇用対策というものを打ち出したわけですが、その緊急対策を見ますと、労働省は自分の腹は痛めないで、他人のふんどしで相撲をとるような内容になっておるようにどうも見受けられます。したがって、本当に実効が上がるかどうかも疑問だと思います。もっと労働省が自分の腹を痛めてもやろうと思えばやる方法はあるのじゃないかということを考えるわけです。たとえば雇用保険法の失業保険給付日数を、野党四党が提案したように一律百八十日延長の問題にしても、やはり今日のこの不況が長期化するという中で労働省としては考えるべきじゃないかというように思うわけですが、この問題についての労働大臣の所見をまず承りたいと思います。
  271. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 当面の厳しい雇用・失業情勢に対応して労働省で進めております当面の雇用対策は企業におんぶするだけじゃないか、こういう御批判のようでございます。雇用の問題は、企業に雇っていただくということしかないわけですから、その企業が雇いやすくする、あるいは解雇をできるだけさせないようにする、雇っている者を安定させる、安定した雇用につけさせる、こういうことで、そういった環境を整備し、雇いやすくするいろいろな援助措置をとる、こういうことによって私どもは失業した人たちの再就職の場を確保し、あるいは現に雇用されている中高年齢者あるいは身体障害者、こういった人たちが失業しないで済むようにしていく、こういう対策を進めておるわけでございます。決して企業におんぶするだけだというわけではございません。  なお、雇用保険法によります失業した人たちの給付日数の問題についてもお触れになりましたけれども、これは先ほど来お答え申し上げましたように、雇用保険法によりまして、従来の失業保険法によります給付制度とは変わって、就職のむずかしい人についてはできるだけ給付日数を長くする、そしてその間に再就職を図っていく、こういった措置をとっておりますと同時に、給付日数の延長というようなことも、個人別に就職の困難な実態に対応しながら給付日数を延ばしていく、あるいは、技能を身につけていただくために職業訓練をやる、その職業訓練の期間中は全面的に給付を続行する、こういった制度適用いたすことによりまして十分御期待に沿えるのではないか、かように考えております。
  272. 小宮武喜

    ○小宮委員 現行制度でも、いわゆる五十五歳以上の人たちが失業した場合は六十日間の個別延長制度がございますが、実際にこの個別延長制度適用を受けられた方がいるかどうか、その点いかがですか。
  273. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 この給付延長の制度は四月一日から施行になっておりますので、いまお話しになりました五十五歳以上の高年齢者でございますと三百日になります。ですからまだその発動はございません。ただ、一番短い九十日の給付日数の人たちがこの七月以降すでに出ておりまして、二百数十件適用者がございます。これから三百日の人たちが十カ月後に出てまいりますと、当然この適用が出てくる、かように考えております。
  274. 小宮武喜

    ○小宮委員 現行法でも、この雇用保険の受給率が四カ月間連続で四%を超えた場合は全国一律三カ月間の延長制度がございますが、それは労働省はいやその受給率が四%に達していないということを言われるかもしれません。この失業率あたりは、まあ受給率もそうですが、やはり欧米の諸国と比べて、いろいろ各国違いがありますね。しかも、この前も質問したように、潜在失業者という問題を入れれば、いまの失業者の数というのはこれはもう三倍に達するであろうということも言われておりますし、そういうような意味では、来年の上半期ぐらいまでこの不況が非常に深刻化していくということがあれば、全国一律三カ月間の延長制度ぐらいはせめてひとつ発動するような考え方を持っていいのではないかというように考えますが、これもひとつ所見だけ聞いておきます。
  275. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 確かに雇用情勢が厳しい、御指摘のとおりでございますけれども、来年の上半期までこの失業問題が深刻化するということではなくて、むしろこの七月-九月、十月あたりが失業情勢としては私は底だと、こういうふうに見ております。これからは、ことしの春以来鉱工業生産も上向いてきておりますし、景気の回復過程に入ってまいります。それが徐々に半年ぐらいおくれて雇用面に波及してまいります。そういたしますと、いまのどん底の状態からだんだん上向いてくるわけでございます。  そういう中で、現に失業している人たちは雇用保険法による失業給付を受けております。この失業給付給付水準も、先ほど申し上げましたように大体失業前の月収手取りの九割、賃金の低い層についてはまあ十割という程度の給付を受けながら再就職をあっせん申し上げておるわけでございます。同時に、すでに給付期間を過ぎて延長した人たちもございますが、そのほかに職業訓練を受けながら就職運動を続けておられる、こういう方もありまして、それにつきましてもすでに二万数千名がこの対象になっております。で、いままでの好況時代の昨年に比較いたしますと、すでに四〇%ぐらい対象人員もふえております。こういった訓練延長なりあるいは個別延長によりまして、再就職までの期間生活の安定を図っていく、こういう措置をとっておりまして、これから景気も上向き、したがって雇用情勢も少しずつ好転をしていこうというときに、現在でもまだこの受給率は全国延長の基準から見ますと約一ポイントぐらい下がっております、三%弱というような状態が続いておりまして、これがこれより以上さらに今後悪化するというわけではございません。むしろこれから好転をしていく。全体の受給者も、八月が八十四万前後をしておりましたのが十月には大体七十万台まで落ちてくるような数字が予見されております。今後こういった数字も好転するのではないかというふうに見ておりますので、むしろ全国延長の基準からだんだん遠ざかっていく、私どもが期待しております望ましい方向に向かっておるわけでございますので、全国延長の基準を緩和してこの際やれと、まあお説ごもっともかとも存じますけれども、私どもはその必要はないんじゃないか、こういうふうに考えております。
  276. 小宮武喜

    ○小宮委員 私は先週も指摘をしましたけれども労働省はどうもやはり楽観的な見方ばかりしておるのじゃないかという気がしてならぬのですよ。だから、この前も言ったように、これだけ雇用情勢が悪化したというのは、やはり労働省にも一半の責任があるのじゃないかということをこの前も指摘しましたけれども、この前も、失業者は大体九月から来年の三月までは横ばいではないかということをやはり局長は答弁されておるわけですね。労働省の見通しのように推移をしてもらうならばこれはいいわけですよ。しかし、最近労働省にしても、各省みなそれぞれ政府が発表するやつは案外当たったやつはないわけです。そういった意味では、幾ら局長がここで言っても、なるほどそうかということで納得するまでにはなかなか私の気持ちは傾かないのですよ。それで、物事を楽観的というよりも最悪のことを考えながら行政はやっていかぬと、楽観的な物の見方ばかりしておって行政をやると、ややもすれば大きな過ちを犯すということになるので、私自身はやはりもっと最悪の状態を考えながらこの問題について質問をしているわけです。  それから、雇用調整給付金の問題についても若干お聞きしますが、これはことしの一月から発足しまして、一月、三月といろいろ指定されていましたけれども、それから六カ月間の期限が切れて、さらに三カ月間の延長がされた業種もそれぞれあります。しかしながら、再延長ということになると労働省は非常に厳しい方針で臨んでおるようでございますが、この雇用調整給付金の支給期間にしても、いまは各企業、事業所からはやはり一年なり一年半なりひとつ延期してくれという声が非常に強いのですね。しかしながら労働省は、再延長ということになればなかなか厳しい方針で進んでおる。法律上見れば、三カ月ごとにということになっているけれども、一回しかできないとか二回しかできないという制限はないわけですね。事情によっては、必要に応じては何回もやっていいようにわれわれは法律は解釈しておるわけです。労働省の言わんとすることもわからぬでもございません。しかしながら、省令で決められておるいわゆる七十五日の支給日数について、この六カ月間の中でまだ全部消化してない事業所もあるわけです。もちろん消化してあるところもあるでしょう。そういった意味では、ただ期限を六カ月間指定した、仮に三十日延長したとしても、その省令で決めている七十五日の支給日数を完全に消化をしていない企業もあるわけですね。だから、そういうような問題についてはもっとやはり幅を見てもいいのじゃないかという気もします。  しかし、労働省が一番抵抗を感じている問題はやはり金のことですね。やはり労働省は金の問題と、それからあくまでこの雇用調整給付制度そのものが一時的な救済制度であるという、この二点に非常にこだわっていまの延長制度についてもいろいろ論議があるようでございますが、こういうような不況がもっともっといまの場合深刻になっていくのじゃないかと言うし、労働省は非常に好転するというような見方もしておるようですけれども、こういうような情勢の中で、そういった再延長の問題についても、課長もこれは非常に前向きで、いろいろ大分理解ある態度を示しておりますけれども、やはり局長なり大臣がだめだと言えばこれはもうしまいですから。だから、そういった意味ではもっと課長あたりが仕事がやりやすいようにしてもらわなければちょっと困りますから、その点について、局長、どうですか。
  277. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 この雇用調整給付制度につきましては、ことしの一月一日に急速繰り上げ実施になりまして以来、業種指定を実施いたしておりまして、ちょうど半年たちましたことしの七月、九月、十月の時点で延長措置もとってまいりましたし、一部不況の継続しております業種につきましては再延長の措置もとっております。延長あるいは再延長になって、私が非常に厳しい基準を押しつけているかのようなお話でございましたけれども、私は決してそういうことではございませんで、生産の面なり雇用の面、両方の面から実態を精査いたしまして担当の課長が事務的に取り決めたものにつきまして、私がとやかく拒否するようなことは決していたしておりません。実態に応じましてこの制度をよりよく運用する、そして労使の御期待にこたえるように逆用してまいりたい、かように考えておりまして、今後とも、そういった延長の措置につきましても十分実態に即した運用を図ってまいりたい、こういうように考えております。  ただ、いまお話しのように、一部確かに、先生のおひざ元の長崎の造船業のごときにつきましてはちょっと他の不況業種と違った要素を持っておりまして一指定期問を一年半あるいは二年にしたらどうかというような御意見もあるかと思いますが、制度の趣旨、たてまえ、それ自体が一時的な不況に対応してこれをしのいでいくための措置、そういうことでございますので、むしろ、一年を超えて一年半、二年にわたるようなものは、産業政策、構造的な要因をどうやって克服していくかということが問題でございます。私どもは、そういうものについてまで雇用保険法によります雇用調整給付金の制度を拡張していくということについてはいかがか、こういうふうな感じも持っているわけでございます。  また、いま先生御指摘になりましたような、これを延長あるいは再延長することによって、給付の額がふえて財源的に困るのじゃないか、だから締めようとしているのではないか、こうおっしゃっておりますけれども、決して私どもはさようなことは考えておりませんで、当初予算で百四十二億計上いたしておりましたものが、もうすでに三百億を超しております。さらにこれからもまたふえるだろうと思います。そういったものに必要な財源は十分私どもは確保していく考えでおりますので、決してそういった財源の面からこれを制約していこうというような考え方は毛頭持っていないことを御理解いただきたいと思います。
  278. 小宮武喜

    ○小宮委員 性格そのものは一時的な救済制度であったとしても、いま言われるように、第四次不況対策にしてもいつごろから具体的に実効を上げるかどうかはなかなか疑問だというような情勢の中で、いわゆる失業を防止するためには、やはりいまの制度を最大限もっと活用するということが必要ではないか。ほかに方法があれば別ですよ。失業を防止するための何らかのほかに方法があればいいけれども、ない現在においては、雇用調整給付制度というものをやはりもっと十分活用していく、またこれをもっと緩和していくということも必要ではないかというふうに考えます。  そこで、金の問題は言うな、心配するなと局長は言っておられるようですけれども、それはなかなかそうもいかぬでしょうし、それでは具体的に金の問題を質問しますから……。  雇用調整給付金財源は、いま言われたように三百四十三億と言われておるわけですが、この財源は大体昭和五十年度の来年の三月までの見込み財源なのか。この三百四十三億というものの根拠は大体どういうようなことになっておりますか。
  279. 小粥義朗

    ○小粥説明員 当初予算に見込みました百四十二億に、その後予備費の使用二百一億を加えまして、財源措置として三百四十三億でございますが、その三百四十三億をはじきました際の考え方としては、一応第三・四半期いっぱいの所要見込みというものを夏以前の時点で推計いたしまして見込んだものでございます。したがって、第三・四半期いっぱいのものという考え方で見ております。
  280. 小宮武喜

    ○小宮委員 雇用調整給付制度がことし一月発足してから八月までの累計を見ますと、事業所数で四万一千四百八十一事業所、休業対象被保険者数で二百七万九千十九人、休業延べ口数で一千七百九十三万四百一日、支給総額も三百七十三億八千五百万円に上っているわけですが、明年三月までの見通しはそれぞれどうなるのか、その点ひとつ御説明を願いたい。
  281. 小粥義朗

    ○小粥説明員 雇用調整給付金の支給見込み額が来年三月いっぱいまでにどれぐらいになるかということは、私どもできるだけ正確につかみたいと思っていまいろいろの検算をいたしておりますけれども、対象業種の適用範囲が七月以降、それ以前に比べて減りましたこと、さらに十月以降また範囲が若干狭まっております。そうした範囲が変わってきておりますことで、それではその適用対象の事業所がどれぐらいの規模でさらに今後一時休業をやっていくか、必ずしも従来の数カ月の実績だけでははかりがたい面がございます。月によって相当の波もございますので、九月までの実績は得ておりますが、十月以降の実績を見た上でその辺もう少し正確にはじきたいと思っておりまして、現在、年度いっぱいでどれぐらいになるかという細かいところまでは正確に数字を得ておりませんが、四百億を上回ることも考えられるのじゃないかという程度の見込みを立てて、いま検算を急いでおるところでございます。
  282. 小宮武喜

    ○小宮委員 財源のためにたとえば適用職種を解除するとか極力抑えるとかということは、大体基本的には考えていないのですね。
  283. 小粥義朗

    ○小粥説明員 その点は先ほど職業安定局長もお答えいたしましたように、そういう考え方は持っておりません。
  284. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 これは前々から申し上げましたように、こういう金は出し惜しみさせないように大蔵省に言うておりますし、それから、あなたが先ほど御評価いただきましたように課長が熱心にやっておりまして、そういうところは再延長をやらしていることも御承知のとおりでございまして、こういうときにこそ一生懸命お手伝いするようにというところに大事な視点があると思っております。
  285. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほど答弁があったように、二百億の予備費ももう取り崩したわけですね。そこらで、あと九月、十月にも予備費を取り崩すというような話をちょっと伺ったのですが、予備費は取り崩したのかどうか。そして予備費は現在幾らあるのか。予備費がなくなった場合にいわゆる財源不足になりますね。そういうような場合に、いま大臣が言われたように、その金はかなり大蔵省と話をして、必ず財源不足というような事態は来させないというように理解していいですか。予備費は幾ら取り崩して、現在幾ら残っておるのか。だから私先ほど聞いたのは、そういうふうな考え方に立った場合に、この調整給付金が来年の三月までどれぐらい支出されるのかという問題も兼ね合わせて質問しておるわけです。
  286. 小粥義朗

    ○小粥説明員 予備費を取り崩しましたのは二百一億ぽっきりでございます。それ以後は取り崩しておりません。  今後の支給所要額に見合う財源をどうするかということの関連でございますが、雇用調整給付金は雇用改善等事業費の中で支出されているわけでございまして、その雇用改善等事業費の中には他の諸給付もいろいろございます。その中では、この不況のためにかえって就職の件数等も減って、そのために余裕のある給付金等もございます。夏の時点で予備費を使用することにいたしましたのは、まだ年度入ってそれほど日もたたないということから、それらの他の給付余裕等も見定めがたいということも考慮いたしまして予備費の使用をしたわけでございますけれども、その後の情勢等を見ますと、他の給付についての余裕等も十分見込まれますので、その分を充当することによって十分対処できるというように考えております。
  287. 小宮武喜

    ○小宮委員 この保険法では、雇用改善事業の財源とそれから失業保険財政との流用ができないようになっていますね。だから、私が財源不足の問題を心配したのはそこなんです。しかしながら、いま言うように失業者を食いとめるための雇用調整給付制度ですから、それをやめたら失業者になるわけですから、こちらの方に移るわけですから、そういうような意味では、その辺の財源の流用あるいは一時借り入れとかというような問題も考えながら融通し合って、雇用調整給付制度をやはりもっと拡大していくというようなことを考えるべきじゃないかということを私は考えておるものですからそういうような質問をしたわけですけれども、しかしながら、失業保険財政の方も今度は聞いてみないとどうなっておるかということで、労働省はこの雇用保険料の収入を五十年度当初予算では六千七百七十億と見込んでおりますけれども、この収入の見込みは今後どうなるのか、この点いかがですか。
  288. 中谷滋

    ○中谷説明員 昭和五十年度の雇用保険保険料の収入でございますけれども、五十年度の予算では五千七百七億円を見込んでおります。その見込みにつきましては、ただいま年度途中でもございますし、経済情勢が非常にむずかしいこともございまして、正確な年度の見込みを立てることは困難でございますけれども、現在の保険料の徴収決定額やそれから過去の収納率の状況等から推計いたしますと、予算額の五千七百七億円の保険料収入を確保することはかたいというふうに見込んでおります。
  289. 小宮武喜

    ○小宮委員 確保できるということですか。
  290. 中谷滋

    ○中谷説明員 そうでございます。
  291. 小宮武喜

    ○小宮委員 失業者の給付の問題ですが、この給付の問題についても、労働省は受給者を月平均五十万四千人、一人当たりの平均支給額を五万六千二百五円、それからそのための失業保険給付の総額を四千五百七億計上しておる、こういうように承っておるわけですが、こういうような数字がどうも甘いんじゃないか。たとえばいま言うように受給者を月平均五十万四千人というと、先ほどからの話によれば失業保険受給者はかなり高いですね。だからそういったことで労働省の考え方はどうもこの不況に対する認識が甘いということを指摘せざるを得ないのです。保険料の中にもそういうことが出てきておるわけです。非常に高目で見ておる。出す方は失業者が少なくなったような勘定になっておるから、だから雇用情勢の悪化について非常に認識が甘いんじゃないかというようなことを、こういうような予算の中からも私はくみ取って言っているわけですよ。そういうようなことで、実際たとえば失業者数がことしの一月で九十九万人、二月で百八万人、三月が百十二万人、四月が九十八万人、五月が九十一万人、六月が九十二万人、七月が八十七万人、八月が九十四万人、九月が九十九万人になっているわけですが、この失業者と失業保険の受給者との関係はどうなっておるのか。いわゆる失業者はいま私が申し上げたとおりでございますが、この一月以降の保険の受給者の数字はどうなっておるか、その点を説明願いたい。
  292. 北村孝生

    ○北村説明員 雇用保険の受給者の実人員でございますが、五十年の三月までは失業保険と申しておりましたので、失業保険の受給者についてでございますが、一月は九十万五千人、二月は九十八万八千人、三月は百八万七千人、四月は百四万九千人、五月は八十三万八千人、六月は八十四万二千人、七月は八十八万六千人、八月は八十七万一千人、九月は八十三万三千人ということで、五十年度の、本年度の四月から九月までの平均は約八十八万人というふうになっております。
  293. 小宮武喜

    ○小宮委員 いま答弁がありましたように、労働省の計算よりかなり失業保険の受給者が多いのですよ。だから失業保険財政も狂ってくるのはあたりまえなんですね。そういうようなことから、失業保険の受給者が政府が考えておるより非常に予想を上回ったということで、これは労働大臣が先ほども話がありましたように、大蔵省と協議をしてさらに一千七百五十億の追加を決めたということで、これは非常に幸いですが、そのうちの一千三百四十億を資金運用部の雇用保険の積立金から取り崩したわけですね。そうすると、その金といわゆる国庫負担の四百十億でやろうとしておるわけですが、年度内これだけで賄い切れるかどうか、その点いかがですか。
  294. 北村孝生

    ○北村説明員 先ほど申し上げましたように、本年の四月-九月の平均は八十八万人程度でございますが、今後の見込みといたしましては、資格喪失者数が本年四月以降減っておる。それから受給資格決定件数でも七月以降は対前年同月比でマイナスになりまして、八月、九月はそういう状態が続いておる。新規の受給者につきましても増加率がだんだん減ってまいりまして鎮静化してきておる。十月につきましては、先ほど局長から申し上げましたように、まだ確定した数字ではございませんけれども、対前年同月比ほぼとんとんのような傾向が見られておるということで、新規の発生は横ばいないし若干減少するような見通しが立てられておるわけでございます。そういうようなことがございますが、一方で中高年齢者を中心といたしまして保険に長期に依存をするという形のものがございますので、そういうことを勘案をいたしまして、本年度の受給者の実人員は、新規の発生は前年並み、とんとんぐらいになるだろうけれども、受給者実人員としては去年よりもなお高い水準で残るであろう、このように見込んでおります。そこで全体といたしましては、年平均といたしましては八十万人を超えるであろう、こういう見通しをいたしまして先ほどの試算をいたしました。それで先生先ほどお話のございましたような積立金の取り崩しと国庫負担を入れまして保険給付費を見込んだわけでございます。  それからなお、雇用保険制度が発足初年度であるということで、見通しにつきまして、失業保険時代の実績から見通すことについては、それだけではなく若干余裕を見なければならぬということ、それから雇用・失業情勢の見通しにつきましても安全度を見たいというようなことで、予備費の方へ積み増しをいたしまして、もし不測の事態が起きても対処できるように予備費を残しております。それによって万全の対処ができる、このように考えております。
  295. 小宮武喜

    ○小宮委員 雇用保険積立金は今年三月で五千百四十億、こう言われていたわけですが、今回一千三百四十億取り崩したということで残り三千八百億になっていると思いますが、明年度三月までの積立金はどれくらいになりますか。
  296. 北村孝生

    ○北村説明員 先生お話しのように、積立金から千三百五十三億円を取り崩しましたので、四十九年度末の積立金の額が五千百四十九億円、それからいまの千三百五十三億円を差し引きますと三千七百九十六億円になります。しかし、先ほど御説明いたしましたように、不測の事態に備えて予備費に約千二百億円程度を積んでおります。したがいまして、見通しが狂いませんでこれがまるまる残るとなりますと、それに千二百億円を足しますと約五千億円残る、こういう感じになります。しかし、見通しが、私ども給付費そのままの見通しでいかないで、若干狂いますとこれを使うということになりますので、これを幾ら使うかによりまして五十年度末の積立金の額は変わってまいります。
  297. 小宮武喜

    ○小宮委員 時間も来たようですから、最後に、不況の深刻化に伴う賃金不払いの問題について若干質問します。  労働省がまとめた昨年度下半期の賃金不払い概況によっても、不払い件数は六千六十三件、対象労働者数が五万九千七百八十六人、不払い総額は百七億五千四百万円に上っているのです。そして上半期の分まで含めると、件数で七千六百三件、労働者数で七万三千八百三人、不払い額は百三十六億四千二百九十六万円に達しておりますね。そうしまして、不払いのうちで四千八百五十件が何とか解決をしている。それから九百五十七件が解決不能なんです。まだ未解決が一千七百九十六件、こういうふうになっておるわけなんですが、五十年度の四月以降、賃金不払い概況がどうなっておるかということと、もう一つは、賃金不払いについて、労働大臣の私的諮問機関である労働基準法研究会から「労働債権の履行確保に関する報告書」が大臣の手元に出ておりますが、この報告書の内容を簡単に説明してもらいたいということと、この報告書をもとにして賃金不払い救済制度の構想を労働省で取りまとめておるということですが、それによりますと、来年の七月に発足させる方針のようですけれども、この点がどうなっておるか。  特に、意見も言わしてもらえば、構想がまとまっておるということであれば、やはり来年の七月と言わず早急に実施すべきじゃないのか。そうしないと、来年の七月というと、いま労働大臣も言うように、また局長も言われるように、景気が上向いてくるときなんですよ。そうすると、救済制度の構想をせっかくまとめながらも、いま一番深刻なとき必要な救済制度であるにもかかわらず、労働省は来年の七月に発足させるとなると、そのころは不払いはかなり減ると見なければなりません、景気回復に向かうときですから。そういうふうなところに労働省のずる賢さというか、そういうふうな点があるのだけれども、やはりいま本当に必要なのは、現在不払いを受けて賃金ももらえない人たちに対して早く救済制度を設けるべきであって、それを来年の七月というのはどうも私は理解がいきませんけれども、その点もあわせて最後にそれぞれから答弁してください。
  298. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいまお挙げになりました賃金不払いの数字でございますが、百七億、これは昭和四十九年の十月から五十年三月までの期間のものでございます。それでその後いろいろ解決をいたしまして、五十年三月末には七十億残っておるという数字であります。百七億という数字自体がその前の期に比べて二・七倍ということで非常に大きくなっております。  その後どうなっておるかという御質問でございますが、賃金不払いの数字は年二回取りまとめておりまして、上期、下期でやっておるものでございますから、今度は上期、四月から九月いっぱいまでの数字をいま取りまとめ中でございまして、まだ全体まとまっておりません。ただ、きょう先生の御質問があるということで、いま集計中のものをさっと私、斜めに見てまいりました感じでは、特段の変化もなく、相当な規模で推移をしていくんじゃないかというふうな感じでございます。(小宮委員「横ばいですか」と呼ぶ)ええ。ですから、できるだけ集計を急いでこの実態の把握に努めたいと思います。  そこで、賃金不払い対策でございますが、いまお話がありましたように、労働基準法研究会から名月三十一日に報告が出まして、賃金の支払いを促進する措置というようなこと、それから企業の倒産があったときの賃金不払いに対する具体的な救済措置、あるいは退職金の保全のための措置、さらには社内預金の保全のための措置、こういうものについてさらに改善の努力をすべきだ、こういう答申でございます。それを受けていま鋭意検討を進めておるわけでございますが、何と申しましても賃金不払いは事業主責任そのものでございますから、ここにまず迫っていくということが一つ必要であろうというふうに思います。と同時に、どうしても支払えないというようなときにいわゆる立てかえ払いというような形をとるか、何らかのそういう救済措置が必要ではなかろうか。それから退職金や社内預金についてもいろいろな保全措置を講ずる必要があるのではないかということで、その方向でいま鋭意努力を重ねておるわけでございます。  そこで、先ほど労働大臣からもお答え申し上げましたように、次の通常国会にそういったものを内容としましたものをぜひ御提案いたしたいと思っておりますが、もっと早くやるべきでないかというお話につきましては、先般の雇用保険法成立のときの附帯決議でも早くやるべしというお話がありまして、あのときの労働大臣の御答弁でも、実は当時は五十一年度から一部の産業について、それからその次の五十二年度から他の産業についてと、こういうような御答弁を申し上げたわけでございますが、その後の情勢から見まして、いま御指摘のように猶予を許しませんので、私どもとしては来年度全部、全産業対象にこの措置を急ぎたいということで、いま鋭意やっておるような次第でございます。
  299. 小宮武喜

    ○小宮委員 大臣、何かないですか。
  300. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 これは何と言っても事業主責任というのを一番先にやらなければならないのは御承知のとおりです。それと同時に、常時においても何かあった場合には賃金の先取り特権、それから社内預金の保全、こういうことを一番先にやること、そしてどうしてもやむを得ない場合には、賃金はやはり勤労者の生活の源泉、家族の生存権ですから、それを立てかえ払いをする。何せ大事業でございます。法務省との相談もございます。法務大臣とも相談をしておりまして、そういう中から、間に合うか、時期が遅くなりはせぬかというふうなおしかりもあるでしょうけれども、それだけの大法案をやるという苦心のところをひとつお考えいただいて、御理解をいただきたい、こう思っております。
  301. 小宮武喜

    ○小宮委員 それではこれで質問を終わります。
  302. 大野明

    大野委員長 次回は明後二十日木曜日午前十時理事会、正午委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十三分散会